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岡崎研究所
- NATOは中国をロシアのウクライナ侵攻の「decisive enabler」(決定的な支援者)として非難し、グローバルな脅威に対する認識を強めている。
- 中国はロシアに半導体や戦闘機部品などを供給しており、ロシアが戦争を継続する上で決定的な役割を果たしている。
- 米国とドイツは欧州に長距離火力を増強する計画を発表し、NATOの抑止力と対応能力の強化を目指している。
- 中国の南シナ海における行動は、国際航行の自由を脅かすだけでなく、戦略原潜の配備を通じて米本土や欧州全域への攻撃能力を獲得する軍事戦略的意図がある。
- NATOは中国の行動を欧州と太平洋の安全保障に対する「システミックな挑戦」と位置づけ、対応を強化しているが、世界が冷戦初期のような危険で不安定な状況に直面する中、米国のリーダーシップの在り方が問われている。
NATOは、2024年7月にワシントンで開催された首脳会議において、ウクライナへの新たな長期支援を発表した。この会議での共同宣言では、中国がロシアの戦争継続を支える重要な役割を果たしていることが強調され、中国の「無制限のパートナーシップ」と「ロシアの防衛産業基盤への大規模な支援」が、ロシアのウクライナ戦争を決定的に支援していると述べられた。具体的には、中国はロシアに対して数百万ドル相当の半導体、戦闘機部品、ナビゲーション機器などを供給しており、これがロシアの軍事能力を維持する上で不可欠な要素となっている。
さらに、米国とドイツは、欧州に長距離火力を増強する計画を発表し、NATOの迅速な対応能力を強化することを目指している。特に、米国は2026年から新たに開発中のトマホークミサイルや極超音速ミサイルを欧州に配備する予定であり、これによりNATOの抑止力が向上すると期待されている。この増強には防衛費の増額が必要であり、欧州諸国がその責任を果たすかどうかが重要な課題として浮上している。
また、南シナ海での中国の行動も深刻な懸念材料だ。中国は南シナ海全域に歴史的権利を主張し、軍事施設を建設しているだけでなく、戦略原潜を配備することで米本土や欧州全域への攻撃能力を強化している。南シナ海は国際航行の自由にとって重要な海域であり、中国の行動はこの自由を脅かすものと見なされている。特に、中国の新型原潜は長射程のミサイルを搭載できる能力を持ち、これにより南シナ海が中国にとって戦略的に重要な地域となっている。
NATOは、中国の行動を欧州と太平洋の安全保障に対する「システミックな挑戦」と位置づけ、これに対抗するための対応を強化している。しかし、世界が冷戦初期のような危険で不安定な状況に直面する中、米国がそれに対応できるリーダーシップを発揮できるかどうかという問題も依然として残っている。このように、NATOは中国のロシア支援を非難し、グローバルな脅威に対する強靭さを増しているが、依然として多くの課題が残されていることを強調している。
- 世界が不安定な状況に直面する中、米国のリーダーシップが重要であり、それはトランプかハリスのどちらが大統領になるかにかかっている。
- カマラ・ハリスの外交経験不足や不明確な対中政策は、米国の国際的信頼性を損なう可能性がある。
- トランプ氏の再選は中国に対する強硬姿勢を強化し、同盟国への支援を増やす一方で、国際的緊張を高めるリスクもある。
- 中国とロシアの連携強化によるユーラシア同盟の形成は、新たな地政学的脅威となる可能性がある。
- 中央アジア諸国を巡る米中ロの影響力争いが続く中、国際社会は多面的アプローチを取る必要がある。
さらに、ハリス氏の経済政策が国際関係に与える影響も懸念されます。特に、中国との貿易関係において強硬策を採る場合、経済的な対立が激化し、米国経済に悪影響を及ぼす可能性があります。軍事的対応においても、経験不足が障害となり、ロシアのウクライナ侵攻や中国の南シナ海における行動に対して迅速かつ効果的に対応できるかが疑問視されます。
これらの課題に適切に対処できなければ、米国の国際的な立ち位置が揺らぎ、同盟国との関係が悪化する可能性があります。結果として、米国のリーダーシップが低下し、グローバルな安全保障環境が不安定化するリスクが高まります。保守派の観点からは、これらの懸念が現実のものとなることは、国家の安全保障にとって深刻な脅威となるでしょう。
また、米国の経済的利益を守るために、中国との貿易関係において厳しい制裁が再導入される可能性があり、これが国際的な経済環境に影響を与えるでしょう。トランプ氏の「アメリカ第一」政策は、国際秩序の変化を促し、米国のリーダーシップを再確認させる一方で、国際的な対立を激化させる危険性も孕んでいます。
このような状況下で、トランプ政権がどのように国際的な課題に対処するかが、米国の国際的な立ち位置や安全保障環境に大きな影響を与えることになるでしょう。保守派にとっては、これらの政策が国益を守るために必要な手段と見なされる一方で、国際的な緊張を引き起こす要因ともなり得るため、注意深い対応が求められます。
ユーラシア経済連合+中国が「ユーラシア同盟」になる可能性も・・・ |
ロシアは歴史的に中央アジアに強い影響力を持っており、旧ソ連時代からの政治的、経済的、文化的つながりを維持しています。集団安全保障条約機構(CSTO)を通じて軍事的な影響力も保持しています。
中国は「一帯一路」構想を通じて、中央アジアへの経済的進出を加速させています。インフラ投資や貿易拡大を通じて、これらの国々との経済的結びつきを強化しています。また、上海協力機構(SCO)を通じて政治的、安全保障面での協力も進めています。
一方、米国は「新シルクロード」構想を掲げ、中央アジアとの関係強化を図っています。テロ対策や民主化支援を通じて影響力の維持を試みていますが、地理的な距離もあり、中国やロシアほどの影響力は持ち得ていません。
このような状況下で、ユーラシア同盟の形成は現実的な可能性として浮上しています。中国とロシアの戦略的パートナーシップが深化し、経済的な相互依存が強まることで、中央アジア諸国もこの同盟に取り込まれる可能性があります。特に、エネルギー供給やインフラ投資における協力が進むことで、地域全体の軍事的な結束も強化されるでしょう。
しかし、ユーラシア同盟の形成には多くのリスクと課題も伴います。中央アジア諸国は、一方的な依存を避けるため、米中ロの間でバランスを取ろうとする傾向があります。また、これらの国々は自国の主権と独立性を重視しており、どの大国にも完全に取り込まれることを望んでいません。
このような状況に対して、国際社会は多面的なアプローチを取る必要があります。特に、既存の同盟関係を強化し、経済的相互依存を戦略的に活用することが求められます。また、中央アジア諸国への経済協力や外交的関与を強化することで、特定の大国の影響力が過度に強まることを防ぐ努力が必要です。
8月にカザフスタン訪問予定の岸田首相 |
日本においても、中央アジア諸国との関係強化が重要です。「自由で開かれたインド太平洋」構想を推進する中で、中央アジアとの連携を深めることで、地域の安定と繁栄に貢献することができるでしょう。同時に、米国や欧州諸国と協調しながら、中央アジアにおける民主化や経済発展を支援することも重要です。
結論として、中央アジアを巡る米中ロの影響力争いは、今後も続くと予想されます。この地域の安定と繁栄のためには、大国間のバランスを保ちつつ、中央アジア諸国の自立性を尊重する国際的な取り組みが不可欠です。