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2024年7月13日土曜日

バイデン大統領の衰退が国際危機を生む―【私の論評】バイデン大統領の認知能力低下と米国の危機:新たな指導者の必要性と世界秩序への影響

バイデン大統領の衰退が国際危機を生む

まとめ
  • アメリカの現職大統領の明らかな能力弱化は国際危機をも生みかねない。
  • 反米陣営が対米警戒を減らして、より大胆な侵略や膨張の行動に出る危険が生まれた。
  • 不法入国者問題、露中朝イランの反米的な行動の激化を懸念する声も。


 バイデン大統領の認知能力の衰えが顕著になり、民主党内からも撤退を求める声が上がっている状況は、単なる国内政治の問題にとどまらず、国際的な影響を及ぼす可能性がある。大統領の能力低下は、国際的な危機を引き起こす潜在的な要因となり得る。特に懸念されるのは、中国やロシアなどの反米勢力が、バイデン大統領の弱みにつけ込む危険性が高まっていることだ。

 歴史的に見ても、アメリカの大統領選挙の年は国際的な異変が起きやすい傾向がある。今回の状況は、アメリカでの大統領選挙による空白や混乱が、バイデン大統領の衰退によってさらに強調されている。これにより、アメリカの国際的な指導力や軍事抑止力が弱くなったと判断する材料を、対立的な立場の国々に提供してしまっている可能性がある。

 専門家らは、バイデン大統領の衰退により、様々な危険な動きが起こる可能性を指摘している。例えば、メキシコ国境からの危険分子の侵入増加、ロシアの反米的行動の激化、中国の反米的言動の増加、北朝鮮の対外姿勢の強硬化、イランとその傘下のテロ組織の活動の活発化などが懸念されている。これらの推測は、アメリカの国際的な影響力の低下と、反米勢力の台頭を示唆しており、国際秩序の不安定化につながる可能性がある。

 このような分析は、バイデン大統領の個人的な状況が、より広範な国際的な安全保障の問題につながる可能性があることを強調している。大統領選挙の結果や、バイデン氏の今後の対応が、単にアメリカ国内の政治だけでなく、世界の安全保障環境にも大きな影響を与える可能性がある。したがって、この問題は慎重に観察し、対応していく必要があるだろう。

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】バイデン大統領の認知能力低下と米国の危機:新たな指導者の必要性と世界秩序への影響

まとめ
  • バイデン大統領の認知能力低下が米国の国益と世界秩序の安定を脅かしている。
  • 外交政策の失敗(アフガニスタン撤退、ウクライナ対応、イラン核問題、日本のLGBT法への介入など)が顕著。
  • エネルギー政策(キーストーンXLパイプライン中止など)が米国の経済と安全保障を危険にさらしている。
  • バイデン大統領は安倍元首相の決断を見習い、国家の利益のために退くべき。
  • 民主党は新たな候補者を擁立し、エネルギー自立、国境管理、毅然とした外交政策を実行すべき。
米民主党は、米国の国益と世界秩序の安定のために、即刻バイデン大統領に代わる新たな候補者を擁立すべきです。これは単なる政治的駆け引きの問題ではなく、国家の安全保障と世界の安定に関わる緊急の課題です。

アフガニスタンの首都カブールからカタールに向け出発した米空軍の大型輸送機の機内。米空軍提供(2021年8月15日撮影)。

バイデン大統領の認知能力低下は、もはや隠しようのない事実となっています。アフガニスタンからの無秩序な撤退、ロシアのウクライナ侵攻に対する優柔不断な対応、イランの核開発を事実上容認する弱腰外交など、その影響は国際社会全体に及んでいます。

特に懸念すべきは、日本のLGBT理解増進法への不適切な介入です。バイデン政権は、自国内で実現できていないLGBT関連の連邦法を、同盟国である日本に押し付けようとしました。

これは日本の国内事情や文化的背景を無視した、一方的な圧力です。日本の法案は、「全ての国民が安心して生活できるよう留意する」という文言が盛り込まれるなど、日本社会の実情に配慮した内容となっていましたが、バイデン政権はより急進的な内容を求めたとされています。無論こうした圧力を跳ね返すことができない、岸田政権にも問題はありますが、このような介入は、同盟国の主権を軽視し、国際関係を損なう危険性があります。

東京レインボープライドに参加するエマニュエル米国大使 SNSより

さらに、イエメンのフーシ派テロリスト指定解除、記者会見での度重なる言い間違いや混乱、国境管理の失敗と不法移民の急増、インフレ対策の遅れと経済政策の混乱、同盟国との関係悪化、中国に対する一貫性のない外交姿勢など、問題は山積しています。

エネルギー政策においても、大統領就任直後に、キーストーンXLパイプライン建設の中止しています。このパイプラインは、カナダのアルバータ州から米国のテキサス州までの原油輸送を目的とした大規模プロジェクトでしたが、環境への懸念を理由に建設許可が取り消されました。

そうして、連邦所有地での石油・ガス掘削制限など、米国のエネルギー自立を脅かす決定が次々と下されています。これらの政策は、米国の経済と安全保障を危険にさらすものです。

この状況下で、バイデン大統領は日本の安倍元首相の高潔な判断を見習うべきです。安倍元首相は、持病の悪化により二度にわたって自ら総理の職を辞しました。これは個人の野心よりも国家の安定を優先した、真のリーダーシップの表れでした。

バイデン大統領も同様に、自身の健康状態が国家の安全保障と世界の安定に与える影響を真摯に受け止め、潔く退く勇気を持つべきです。


米民主党は、党利党略を超えて、国家の利益を最優先に考えるべきです。バイデン大統領の続投は、米国の国際的地位をさらに低下させ、敵対国の挑発を招くリスクがあります。新たな候補者を擁立することで、米国の指導力を回復し、同盟国との信頼関係を再構築する必要があります。

具体的には、エネルギー自立政策の推進、強固な国境管理、そして毅然とした対外政策を実行できる候補者を選ぶべきです。同時に、同盟国の主権と文化的多様性を尊重し、一方的な圧力を避ける外交姿勢も求められます。それによって初めて、米国の国益を守り、世界の安定に貢献することができるのです。

民主党が自らの政治的利益よりも国家の未来を優先するなら、今こそバイデン大統領に代わる新たな候補者を擁立する時です。これは、米国の将来と世界秩序の安定のために不可欠な決断なのです。バイデン大統領自身も、安倍元首相の決断を見習い、個人の地位よりも国家の利益を優先する勇気を持つことが求められています。

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2024年6月21日金曜日

変化が始まったEU、欧州議会 選挙の連鎖は続くのか?―【私の論評】日本メディアの用語使用に疑問、欧州の保守政党を"極右"と呼ぶ偏見

変化が始まったEU、欧州議会 選挙の連鎖は続くのか?

まとめ
  • 2024年6月の欧州議会選挙で右派・極右政党が躍進し、EUの政策に影響を与える可能性が高まった。
  • 移民政策の厳格化、環境規制の緩和、ウクライナ支援の見直しなど、EUの主要政策に変更が生じる可能性がある。
  • フランスでは選挙結果を受けてマクロン大統領が議会を解散し、極右政党のさらなる躍進が懸念されている。
  • 世界的に保護主義化の傾向が強まっているが、これは一時的な反作用である可能性もある。
  • 右派の躍進によるEUの政策変更は、日本の自動車産業などにとってはチャンスとなる可能性がある。
欧州議会選挙マップ(青が与党)

 2024年6月6日から9日にかけて実施された欧州議会選挙は、EUの今後5年間の政策方針を決める重要な選挙となりました。この選挙では、多くの国で右派・極右政党が躍進し、全体で20%以上の議席を獲得しました。これらの政党は、インフレ、移民問題、環境規制などに対する不満を背景に支持を集めました。

 フランス、ドイツ、ポーランド、イタリアなど主要国で右派勢力が伸長しましたが、全体としては中道右派の欧州人民党(EPP)が最大会派を維持し、連立3会派で過半数を確保しました。しかし、右派の躍進により、EUの移民政策、環境政策、ウクライナ支援などに影響が出る可能性が高まっています。

 特に注目されるのは、移民政策の厳格化、環境規制の緩和、ウクライナ支援の見直しなどです。右派・極右政党は、これらの問題に対してより保守的な立場を取っており、EUの従来の政策方針に変更を迫る可能性があります。

 フランスでは、選挙結果を受けてマクロン大統領が議会を解散し、新たな選挙に突入しました。極右政党のさらなる躍進が懸念されており、フランスの政治情勢が欧州全体に影響を与える可能性があります。

 この選挙結果は、世界的に広がる保護主義化の傾向を反映しているとも言えます。グローバル化に伴う様々な問題に対処するため、「自国は自国で守る」という考え方が強まっているようです。しかし、この傾向は一時的な反作用である可能性もあり、中長期的な視点で状況を見極める必要があります。

 一方で、このような変化は日本にとってチャンスとなる面もあります。例えば、EUでの「EVへの完全移行」に対する異論の高まりは、日本の自動車産業にとって有利に働く可能性があります。日本が強みを持つハイブリッド車やプラグインハイブリッド車の技術が再評価される可能性があるからです。

 今回の欧州議会選挙の結果は、EUの政策決定に大きな影響を与えるだけでなく、世界の政治経済の動向にも波及する可能性があります。今後のEUの動向、特に移民政策や環境政策、対外関係などの分野での変化に注目が集まっています。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。「まとめ」は元記事の要点をまとめて箇条書きにしたものです。

【私の論評】日本メディアの用語使用に疑問、欧州の保守政党を"極右"と呼ぶ偏見 

まとめ
  • 日本の主要メディアが欧州の保守派政治家を「極右」と呼ぶことは偏見を含み、不適切である。特に、民主的に選出された政治家に対してこの用語を使用することは、その妥当性が疑わしい。
  • 欧州議会選挙で躍進した保守派政党は、EUの権限拡大や大規模な移民流入に反対し、各国の主権や文化を重視する立場を取っている。これらの政策は極端ではなく、多くの有権者の支持を得ている。
  • 米国の共和党や英国の保守党など、他国の主要な保守政党が「極右」と呼ばれることはほとんどない。日本のメディアも他国の政治傾向を安易に断定すべきでない。
  • 「極右」という言葉は、20世紀前半のファシズムや国家社会主義を指す言葉として使用されてきたが、現代の政治的言説では不適切に適用されることが増えている。
  • 欧州の保守派政党の躍進は、日本の保守派にとって自らの主張の正当性を裏付ける材料となるり、移民政策への反対や伝統文化の保護、技術革新と環境保護のバランスを重視する政策提言が可能になる。また、防衛力強化やデジタル主権確立の動きも、日本の保守派にとって重要なチャンスとなる。
上の記事では、極右という言葉を使っていませんが、他のメディアでは極右が躍進という言葉を使っているものが多いです。これには違和感を感じます。

G7サミットでイタリアのジョルジャ・メローニ首相が議長を務めましたが、日本の主要メディアは彼女を含む欧州の保守派政治家を「極右」と呼んでいました。この表現は偏見を含み、不適切です。

イタリアのジョルジャ・メローニ首相

欧州議会選挙で保守派政党が躍進したが、これらの政党はEUの権限拡大や大規模な移民流入に反対し、各国の主権や文化を重視する立場を取っています。しかし、これらの政策が「極右」と呼ばれる理由は不明確です。

「極右」という表現は、民主的な選挙で多数の支持を得た政党や政策に対して使用されており、その妥当性は疑わしいです。この用語の使用は、使用者自身の政治的立場を反映している可能性があります。EUの政策に対する批判や移民政策への反対が自動的に「極右」とされるべきではないです。日本のメディアは、他国の政治傾向を安易に断定することを避けるべきです。

「極右」という言葉は、20世紀前半のファシズムや国家社会主義など、極端な全体主義的イデオロギーを指す言葉として使用されてきました。しかし、現代の政治的言説では、この言葉が民主的に選出された保守的政治家や政党に対して不適切に適用されることが増えており、これは問題視されるべき状況です。

突撃隊員を閲兵するヒトラーとレーム(1931年9月)

例えば、イタリアのジョルジャ・メローニ首相は、2022年の選挙で民主的に選出され、G7サミットの議長を務めるなど国際舞台で活躍しています。同様に、フランスのマリーヌ・ルペン氏も国民の広範な支持を得ており、2022年の大統領選挙では決選投票に進出しました。これらの政治家たちが「極右」と呼ぶことは、彼らの政策や支持基盤の実態を正確に反映していないと言えます。

彼らの政策を詳しく見ると、国家主権の尊重、伝統文化の保護、慎重な移民政策、家族の価値観の重視など、典型的な保守的価値観に基づいていることがわかります。これらの政策は、グローバリゼーションや急速な社会変化に対する不安を抱える多くの有権者の懸念に応えるものであり、全く極端といえるものではありません。

さらに、欧州議会選挙の結果を見ても、保守派政党の躍進が顕著です。2024年の選挙では、ドイツの「ドイツのための選択肢(AfD)」が第二党に躍進し、フランスでは「国民連合」が与党を大差で破りました。これらの結果は、保守的な政策に対する有権者の支持が広がっていることを示しています。

国際的な文脈を考えると、米国の共和党や英国の保守党など、他の国の主要な保守政党が「極右」と呼ばれることはほとんどありません。例えば、米国のドナルド・トランプ元大統領は、移民政策や国家主義的な姿勢で知られていますが、一般的には「保守派」または「右派」と呼ばれることが多いです。

「極右」という言葉の使用は、政治的な立場を過度に単純化し、重要なニュアンスを失わせる危険があります。例えば、環境政策に関して、多くの「極右」と呼ばれる政党が気候変動対策に慎重な姿勢を示していますが、これは必ずしも環境保護を否定しているわけではなく、経済的影響を考慮した上での慎重な姿勢である場合が多いです。

また、「極右」という言葉の使用は、特定の政治勢力を不当に貶める効果があり、建設的な政治的対話を阻害する可能性があります。例えば、2016年のイギリスのEU離脱(Brexit)を支持した人々が「極右」と呼ばれることがありましたが、これは国民投票で過半数の支持を得た政治的選択を不当に否定的に描写することになります。

代わりに「保守派」という中立的な用語を使用することで、より公平で偏りのない政治的議論が可能になります。これは、民主主義の健全な発展に寄与し、多様な政治的見解を尊重する社会の構築につながります。私自身も、日本のメディアに影響されていて、無意識に「極右」という言葉を使うこともありましたが、これを機会にきっぱりとやめようと思います。

結論として、「極右」という言葉の代わりに「保守派」を使用することは、現代の複雑な政治的現実をより正確に反映し、建設的な政治的対話を促進する上で重要です。これは、民主主義の原則を尊重し、多様な政治的立場を公平に扱うための重要なステップとなるでしょう。

米保守派の集会

日本の保守派にとって、現在の欧州の政治的変化は重要なチャンスをもたらす可能性があります。まず、欧州での保守派政党の躍進は、日本の保守派にとって自らの主張の正当性を裏付ける材料となるでしょう。特に移民政策や伝統文化の保護といった分野で、欧州の動向を参考にした政策提言が可能になるかもしれません。

また、EUのEV政策への異論の高まりは、日本の自動車産業にとって有利に働く可能性があります。これは単に経済的な機会だけでなく、技術革新と環境保護のバランスを重視する保守的な立場を強化する機会にもなるでしょう。

さらに、欧州の防衛力強化の動きは、日本の防衛産業の発展や自衛隊の役割拡大を主張する保守派にとって追い風となる可能性があります。欧州との防衛協力を通じて、日本の安全保障政策の見直しを促す機会にもなるかもしれません。

加えて、欧州でのデジタル主権確立の動きは、日本の保守派が主張する国家主権の重要性を裏付ける事例として活用できるでしょう。これは、グローバル化の中での国家の役割を再定義する議論につながる可能性があります。

これらの機会を活かすためには、日本の保守派が欧州の動向を注視し、国内の文脈に適した形で政策提言を行っていくことが重要です。同時に、単なる模倣ではなく、日本の独自性を保ちつつ国際協調を進める姿勢が求められるでしょう。

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2024年6月14日金曜日

大学入試の「女子枠」、国立の4割導入へ 背景に「偏り」への危機感―【私の論評】日本の大学のジェンダー入学枠に反対 - アイデンティティ政治の弊害

大学入試の「女子枠」、国立の4割導入へ 背景に「偏り」への危機感



 国立大学における女子枠導入の現状は朝日新聞の調査によると、全体の4割に当たる33大学が、入試に「女子枠」を導入済みもしくは導入する方向にある。主に理工系の学部を中心に、学生の多様性確保が狙いとされている。

 既に12大学が導入済みで、17大学が導入を決定している。導入時期は1994年度から2026年度まで幅広く、女子枠の募集人員は全体の1%程度から十数%程度と大学によって異なる。

 入試形式は総合型選抜や学校推薦型選抜が中心で、一般選抜には女子枠は設けられていない。さらに4大学が導入の方向で検討中であり、今後も拡大が予想される。

 例えば、大阪大学は2024~2025年度に計143人の女子枠を設け、現在13%の女子学生の割合を2割超に増やす方針を掲げている。

 一方で、男女平等の観点から批判的な意見もあり、慎重な検討が求められています。国立大学の女子枠導入は、学生の多様性確保と男女平等のバランスを取ることが重要な課題となっています。

 この記事は元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になって下さい。


【私の論評】日本の大学のジェンダー入学枠に反対 - アイデンティティ政治の弊害


まとめ

  • 日本の大学がジェンダー入学枠(女子枠)を設けようとしていることは、アイデンティティ政治の一例であり、グループ間の対立を助長する有害な政治手法である。
  • アファーマティブ・アクション、スポーツの人種枠制度、政治におけるジェンダークオータ制、エンターテインメント業界の人種的優遇など、アイデンティティ政治の具体例が米国で深刻化している。
  • 女子枠の設置は、女性が学業で成功するには特別扱いが必要であるというメッセージを送り、実力主義を損なう。また、男女間の反発と対立を助長する。
  • 実力主義を支持し、性別ではなく個人の内面を重視すべきである。女性が不利な状況にあれば、社会的にその障壁を取り除くべきである。
  • 個人のアイデンティティに着目するのではなく、日本国民としての法の下の平等を追求し、誰もが公平な機会を得られるようにすべきである。
日本の大学がジェンダー入学枠(女子枠)を設けようとしているのは、アイデンティティ政治の厄介な一例と言えます。この政治的手法は残念ながらアメリカでは一般化しており、今や世界中におぞましいその姿を現しつつあります。

日本ではまだ一般にはあまり知られていないとみられる、アイデンティティ政治とは左翼による分断と破壊のゲームなのです。人種、性別、その他の属性による違いを強調することで、グループ間の対立を意図的に助長する戦術です。アフリカ系アメリカ人公民権運動の穏健派指導者として非暴力差別抵抗活動を行ったマーティン・ルーサー・キング牧師が夢見たのは、人格そのものを見るということでした。しかし左翼は個人をグループの一員へと矮小化し、憎しみと分断を煽るのです。

マーティン・ルーサー・キング牧師

米国におけるアイデンティティ政治の深刻な例をいくつか挙げましょう。 

アファーマティブ・アクション - この大学入学試験や雇用における制度では、人種や性別などを考慮し、特定のグループを他より優遇しています。つまり、その属性を持つ人々は実力だけでは成功できず、特別扱いが必要だというメッセージを送っているのです。

スポーツの人種枠制度 - 一部プロスポーツリーグや報道機関では、監督、幹部、解説者などの役職に一定数の非白人を採用することを義務づけています。これは個人の肌の色のみで判断し、資格や能力を無視する制度なのです。 

政治におけるジェンダークオータ制 - 政党や組織の中には、女性候補者やリーダーを一定割合にするためにジェンダークオータを設けているところもあります。これは女性を一枚岩と見なし、皆が同じ考えや投票行動をするという発想に基づいています。

エンターテインメント業界の人種的優遇 - 最近では、実力よりもアイデンティティに基づく受賞や評価を優先する動きがあります。これは芸術的な卓越性が人種や性別によって決まるという、トークン主義的な発想からくるものです。

さて、なぜ大学入試に「女子枠」を設けることが、この有害なアイデンティティ政治の一例となるのでしょうか。

第一に、女性が学業で成功するには特別扱いが必要だというメッセージを送ることになります。これは教育の場で優秀であることを何度も証明してきた女性の知性と能力を軽んじるものです。

第二に、実力主義の姿勢を損なうことになります。大学入試は人口統計的な目標ではなく、主に学業成績と潜在能力に基づいて行われるべきです。そうでなければ、望ましい男女比を理由に、資格ある男子学生が不当に入学を拒否される可能性があります。

第三に、男女間の反発と対立を助長することになるでしょう。男女は対等に競い合い、協力し合うべきです。クオータ制は不平等感や怒りを生み、男女を対立させかねません。

私は、国立大学出身です。理学部の生物学科に所属してましたが、そのころ同じ学科には、男子学生が8人、女子学生が3人所属していて(ただし当時は動物学と植物学が分かれていた)、明らかに男子学生のほうが多かったのですが、それで危機感など感じたことは全くありませんでした。大学の先生たちもそんなことで、危機感など全く感じていなかったと思います。

北海道大学理学部

入試に関しては、随分昔のことなのですが、ある出来事を鮮明に覚えています。知人の優秀だった女性が医大を受験したのですが、試験が終わってしばらくしたときに「試験どうだった」と聴いてみたところ、悲壮な面持ちで「全然だめだった。おそらく落ちた」と答えていました。

ところが、蓋を開けてみると、何とその方は「トップ合格」だったのです。これについて、ある予備校の先生に聴いてみたところ「かなりよく勉強している人は、自分の解答の粗について十分理解している。特に選択式ではない記述試験ではそうであり、だから評価が厳しくなり、できなかったと思ってしまう傾向がある。一方であまり勉強していない人に限って、自分の解答の粗についてほとんど理解していないので、何かを間違えなく回答しており、かなり良く出来たと思い込むのです」と納得できる答えをいただきました。その後様々な受験生をみているとこのことは、よく当てはまっていたと感じました。

このような女性も大勢いると思います。女性枠を設ければ、このような女性も女性枠があったから自分は合格できたのだと思い込み、一生引け目を感じて生活していくことになりかねません。

札幌医科大学

私たちはこの有害なアイデンティティ政治に反対しなければなりません。実力主義を支持し、性別やその他の表面的な属性ではなく、個人の内面を重視すべきです。また、女性が入学しにくいという何等かの非合理な障壁あるとすれば、それを女子枠で解決するのではなく、社会的にその障壁をなくす工夫をするべきです。それを人為的に女性枠で解消しようとするのでは、社会の障壁は残り続けることになります。それこそ、左翼の思う壺です。

そうして一番重要なのは、個々人の様々なアイデンティティに着目するのではなく、それは個性として認めたうえで、日本国民として法の下での平等を追求すべきです。ジェンダー割当制に反対し、誰もが公平な機会を得られるようにすべきです。アイデンティ政治が蔓延していき、それが社会を席巻すれぱ、日本社会も米国社会のように大きく分断されることになりかねません。アイヌ新法やLGBT理解増進法が成立した現在、日本もそちらのほうに傾きつつあるといえます。

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2024年6月11日火曜日

トランプ氏有罪で共和党が連帯した―【私の論評】EU選挙で極右躍進と保守派の反乱:リベラル改革の弊害が浮き彫りに

トランプ氏有罪で共和党が連帯した

古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視」
まとめ
  • トランプ前大統領に対する有罪評決が共和党全体の連帯を強めた。
  • 上院で共和党が勢いに乗って民主党に逆転勝し多数派となる展望も。
  • 有罪評決が、民主党の団結や連帯を強める結果になった。


ニューヨーク地裁におけるドナルド・トランプ前大統領への有罪評決は、共和党内の勢力をかつてないほど一気に団結させる効果をもたらした。共和党側は一致して、この評決を民主党による政治的な工作、トランプ氏への選挙妨害、そして司法制度の武器化と激しく非難している。

これまでトランプ氏に距離を置いていた共和党の有力議員たちも、今回は有罪評決への反発からトランプ支持に回った。上院共和党総務のマコーネル氏は評決の逆転を予想し、スーザン・コリンズ氏は検事の捜査の動機に問題があったと批判した。さらにトランプ大統領の弾劾に賛成していたロムニー氏までもが、有罪評決が有権者のトランプ支持を減らすことはないと明言した。

こうした共和党の動きは、11月の連邦議会選挙で共和党が上院で多数派になる展望をも示唆している。下院の共和党議長も今回の裁判を民主党の政治攻撃と糾弾した。

政権関係者のペンス前副大統領やヘイリー元国連大使も、評決を非難しトランプ支持を表明している。トランプ陣営とそれ以外の共和党員の微妙な立場の違いが、この有罪評決への反発で一掃され、かつてない共和党内の結束が生まれたといえる。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事を御覧ください。

【私の論評】EU選挙で極右躍進と保守派の反乱:リベラル改革の弊害が浮き彫りに

まとめ
  • 欧州議会選挙で極右勢力が躍進し、EUの政治的先行きが不透明に。
  • 保守派が、安全な国境や言論の自由を求める「保守の反乱」を強めている。
  • 過度の平等主義やアイデンティティ政治の進展が社会に負の影響を及ぼしている。
  • キャンセル・カルチャーやポリティカル・コレクトネスが言論の自由を脅かし、対立を助長。
  • 現代のリベラル派は、個人の自由と多様性を尊重する真のリベラルの理念に立ち返るべき。
米国では上の記事にあるとおり、保守派が利害を乗り越え結束しつつあります。一方欧州連合(EU)の欧州議会選(定数720)は9日、大勢が判明し、極右勢力が躍進しました。これを受けフランスのマクロン大統領は仏国民議会(下院)の解散総選挙を発表。EUの政治的な先行きが一段と不透明になりました。

親EU会派が引き続き過半数を維持する見通しですが、今回の選挙結果はフランス、ドイツ両政府にとって痛手となりました。

欧州議会選でイタリアのメローニ首相(写真)が率いる右派「イタリアの同胞」が国内第1党に

この現象は、私がかつてこのブログに述べた保守の反乱が加速していることを示すものと考えられます。

保守の反乱とは、以下のようなものです。
保守派は、安全な国境、安全な地域社会、言論の自由、豊かな経済を望んでいます。「極右」のレッテルを貼られた指導者たちは、サイレント・マジョリティの声を返しているだけなのです。

メディアが彼らを中傷し、理性的な保守派を黙らせようとする一方で、私たちは保守派は、もう黙ってはいません。多くの人々は、法、秩序、伝統、愛国心の尊重と生存のバランスを取りながら生活しています。そうして、このバランスを崩す急激な改革は、社会を壊すと多くの人達が再認識するようになったのです。最近設立されたばかりの日本保守党の支持者の急速な拡大も、それを示しています。

日本はもとより、他の国々の指導者も、この傾向に耳を傾けるべきです。人々はいつまでも過激な行き過ぎを容認することはないでしょう。指導者は、騒々しい過激派グループのためだけでなく、国民全体のために政治を行わなければならないのです。

リベラル・左派的な社会工学による改革よりも、国益を優先させる賢明な改革が答えです。未来は、常識のために立ち上がり、自国の文化を守り、ポリティカル・コレクトネスやキャンセル・カルチャーの狂気に対して果敢に「もういい」と言う勇気ある政治家たちのものです。結局のところ、それこそがこの新しい保守の反乱の本質なのです。

 リベラル・左派的な社会改革は、平等と多様性の理念から様々な変革を推し進めてきました。しかしその過剰な進展が、かえって大きな負の影響を社会にもたらしつつあります。

まず、過度の平等主義は、努力と実力に応じた格差を是正するあまり、個人の自由な活動意欲を損ね、生産性の低下を招きつつあります。高額所得者への過剰な課税は、働く意欲を失わせかねません。また企業への過剰な規制は、事業活動を衰退させ、経済成長を阻害する要因となります。

一方、移民の受け入れ拡大は、移民コミュニティの治安悪化や、現地住民との文化的軋轢から社会分断を生む危険性があります。伝統的価値観の軽視は、家族や地域コミュニティなどの社会の基礎的な紐帯を弱体化させかねません。

さらに、キャンセル・カルチャーの台頭により、表現の自由が脅かされ、建設的な議論が阻害されてしまいます。キャンセル・カルチャーとは、不適切と見なされる発言や行為に対し、社会的制裁を加えて"存在しなかったことに"する動きです。

同様にアイデンティティ政治の過剰な進展は、人種や性別で人々を分断し、対立を助長する恐れがあります。アイデンティティ政治とは、個人や集団のアイデンティティ(性別、人種、民族、宗教など)に基づいて、権利や利益を主張する政治運動のことを指します。

具体的には、これまで差別されてきた少数者集団(女性、有色人種、LGBTなど)が自らのアイデンティティを前面に押し出し、機会の平等や権利の獲得を訴える動きがこれにあたります。

アイデンティティ政治の目的は、こうした集団が社会から受けてきた不当な扱いを是正し、平等な地位と権利を獲得することにあります。しかし一方で、アイデンティティに基づく過度な主張は、かえって人々を性別や人種で分断し、対立を助長することになりかねません。

またポリティカル・コレクトネスの追求も、言論の自由を損なう危険があります。ポリティカル・コレクトネスとは、性別、人種、宗教などのマイノリティに配慮した言葉遣いを求める動きですが、過度になれば言論の萎縮を招きかねません。

少数派の権利重視があまりにも極端になれば、多数派の不満が高まり社会の不安定化につながります。さらに、伝統や歴史への配慮不足は、社会の連続性を損ね、アイデンティティの喪失につながる可能性もあります。

こうした弊害が指摘されるなか、最近の米国やEUでは、リベラル・左派の改革への保守派から反発が高まっています。共和党はトランプ氏有罪評決に一致して反発し、EUの欧州議会選でも極右勢力が伸長するなか反移民や伝統重視への回帰を求める動きが出てきました。

こうした動きは、リベラル改革の弊害への危惧から、保守勢力がその是正を求めている現れと言えます。キャンセル・カルチャーやアイデンティティ政治、ポリティカル・コレクトネスの過剰な進展への批判の声が、その一因となっているのです。

一方、現在のいわゆるリベラル派の多くは、真のリベラルとはいえない状況になっています。真のリベラルとは、個人の自由と権利を最優先に考えながらも、寛容性と平等の実現を目指す立場です。彼らは個々人の選択の自由を尊重し、強制や不当な規制に反対します。同時に、人種、宗教、性別を問わず、多様性を受け入れる開放性があります。少数者の権利にも配慮しつつ、機会の平等と社会的公正の実現に努めるのがリベラルの理念です。

また、伝統的な因習に捕らわれることなく、新しいものを積極的に受け入れます。宗教的戒律よりも合理主義と科学的根拠を重んじ、社会の改革と進歩を前向きに支持する姿勢があります。ただし、利己主義に走ることなく、過度な平等主義の追求をするものではありません。

理想的なリベラル派の例としては、米国の建国の理念にも影響を与えたジョン・ロックが有名です。英国の経済学者で社会改革を訴えたジョン・スチュアート・ミルも代表的なリベラル思想家です。日本人では、明治時代に個人の自由と権利を強く訴えた福沢諭吉が、リベラル的思想の先駆けと評されています。

真のリベラルは、時代を見据えつつ、個人の自由と多様性の調和、そして寛容と合理性の共存を目指し続けるものであって、社会工学による改革を推進するものでありません。現代のリベラル派の中には、リベラル理念から逸脱した極端な傾向が見られます。真のリベラルは、個人の自由と権利、合理主義、寛容性を尊重しつつ、機会の平等と社会正義を追求する必要があります。アイデンティティ政治に走ることなく、すべての個人の自由と多様性を包摂する姿勢が重要になっています。

よって、リベラル派はこの反省を踏まえ、リベラル精神の本来の理念に立ち返るべき時期にきているのではないでしょうか。

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2024年6月10日月曜日

「改正入管法」きょうから施行 3回目以降は難民申請中でも強制送還可能に―【私の論評】改正入管法の背景と弱点、不法滞在者の母国が受け入れ拒否した場合どうするか

「改正入管法」きょうから施行 3回目以降は難民申請中でも強制送還可能に

まとめ
  • 入管法が改正され、難民申請は原則2回までとし、3回目以降は「相当の理由」を示さない限り強制送還対象とする。
  • 在留資格がない外国人は、「監理人」の監督下で収容施設外で生活できる「監理措置」制度を導入。
  • 収容中の外国人は3か月ごとに収容の必要性を見直す。
6月8日改正入管法参院で可決

「改正入管法」が10日から施行され、難民申請中の強制送還規定が見直されます。難民申請は原則2回までとし、3回目以降は「相当の理由」を示さない限り強制送還対象となります。また、在留資格がなく強制送還対象の外国人は、「監理人」の監督下で収容施設外で生活できる「監理措置」制度が導入されます。収容中の外国人も、3か月ごとに収容の必要性が見直されることになります。この改正は、難民申請を繰り返して日本に留まる外国人や、入管施設での長期収容の問題に対処するためです。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。「まとめ」は元記事を箇条書きにまとめたものです。

【私の論評】改正入管法の背景と弱点、不法滞在者の母国が受け入れ拒否した場合どうするか

まとめ
  • 入管法改正の背景に、難民不認定後に繰り返し申請する「事実上の在留」が増加し、在留を長引かせるケースが多発。
  • 仮放免許可者による無許可就労が横行し、法的手続きの適正性が問われた。
  • 強制送還が進まない外国人の長期収容問題が深刻化し、収容施設の過剰収容と劣悪な環境が人権問題を引き起こした。
  • 難民認定申請を入管手続きの引き延ばしに利用する外国人が多く、入国管理の難航が批判された。
  • 改正法では「監理措置」制度が導入され、収容ではなく管理措置で在留を監督する一方、母国の同意がなければ強制送還が困難なままである。
  • 不法滞在者の母国側の受け入れ拒否に対処する方法として、母国に対する支援の打ち切りや支援と引き換えに受け入れを促す、国際的な圧力を通じて母国に受け入れを促すなども検討すべきである

マスコミは報道しない、日本国内の移民・難民受け入れ反対デモ

今回入管法が改正されたのには、以下のような背景があります。

1.難民不認定後に繰り返し申請する「事実上の在留」
一部の外国人が難民不認定後に再び申請を行うことを繰り返し、結果的に長期間日本に残り続けるケースが多発していました。2021年には約5,800人が難民不認定後に再申請しています。
2.仮放免許可者の無許可就労の横行
 仮放免により在留特別許可を受けた外国人の中に、無許可で就労する者が多数いたことが指摘されていました。2022年には約6,700人の無許可就労が確認されています。

 3.在留資格のない外国人の長期収容問題

在留資格がなく強制送還が進まない外国人を収容する施設が慢性的な過剰収容状態にありました。代表的な例がスリランカ人でした。

2014年から2017年にかけて、スリランカ人の仮放免者や不法残留者が相次いで収容されましたが、スリランカ政府が受け入れを拒否したことから、強制送還ができない状況が続きました。その結果、最長で約6年間にわたる長期収容例が発生しました。

このように、国籍による強制送還の困難さから、長期収容を余儀なくされる事態となり、人権侵害の懸念が高まりました。収容施設は常に過剰収容状態で、環境の劣悪さも指摘されていました。

長期収容による精神的ストレスから、自傷行為に及ぶ収容者もいたと報告されています。こうした状況から、収容期間の上限設定や環境改善の必要性が主張され、今回の改正の大きな背景になったと考えられます。

4.難民認定申請を入管難航の「口実」に利用

 一部の外国人が難民認定申請を在留手続きの「引き延ばし」に利用し、入国管理を難航させているとの批判がありました。

このように、難民制度の潜脱的利用、無許可就労の横行、長期収容問題など、様々な問題点が改正の背景にありました。制度の適正運用と人権への配慮のバランスを図る必要があったと考えられています。

ただ、今回の改正入管法でも、不法滞在者の母国が受け入れを拒否した場合でも、不法残留者などを強制送還できるようになったわけではありません。

強制送還の実施には、あくまで受入国の同意が必要不可欠です。母国が受け入れを拒否すれば、引き続き強制送還は事実上困難となります。

長期収容問題の解決策として、改正法では「監理措置」制度が新設されましたが、これは収容を代替する制度であり、強制送還の実施には母国の同意が引き続き必須となります。

「監理措置」制度とは、従来の収容施設への収容に代わる新たな在留管理の措置です。対象は強制送還が執行できない在留資格を持たない外国人です。

この制度のもとでは、収容ではなく、入国者収容所の外に設けられた住居で生活することになります。ただし、出入国や行動の制限など一定のルールに従う必要があり、「監理人」と呼ばれる専門スタッフによる監督下に置かれます。

つまり、収容施設に長期間収容されることなく、より自由な環境で生活できる一方で、逃げ出しや無秩序な在留を防ぐための管理体制が設けられているというわけです。

長期収容を避けつつ、一定の在留管理を継続するための制度と位置付けられています。ただし、強制送還の実施そのものは、従来通り母国の同意が必要となります。

長期収容問題の改善に一定の役割を果たすものの、制度発足後の運用などに課題もあり、抜本的解決には至らない可能性もあると指摘されています。

欧米諸国においても、母国が不法滞在者の受入れを拒否した場合、不法滞在者を強制送還することはできません。これは国際法上の原則です。EUの加盟国間の移送や、米国の一時的な第三国への移送はできますが、母国への強制送還とは異なります。

つまり、母国の同意なく強制送還を行える例外はほとんどありません。したがって、日本の入管法改正でも、母国が受入れを拒否すれば、従来通り強制送還は困難となる可能性が高く、長期収容問題の根本的解決につながらない可能性があります。

ただ、ドイツでは変化の兆しがみえます。

ドイツでは近年、難民申請を却下されながらも滞在を許可されていた外国人による重大事件が相次ぎ、国民の間で外国人犯罪への厳しい対応を求める機運が高まっていました。

具体的には、5月末にマンハイムでアフガン人男性による集会襲撃事件があり、5人が負傷、警官1人が死亡するなどの被害がありました。この男性は難民申請を却下されながら、個別事情から国外退去が猶予されていた例でした。

ショルツ独首相

このような背景から、ショルツ首相は6日の連邦議会演説で「ドイツで保護を受けている人物による凶悪事件に憤慨する。凶悪犯罪者はシリアやアフガニスタンであっても送還されるべきだ」と述べ、難民申請が拒否された者を含め、国外退去対象の大幅な見直しに言及しました。

つまり、従来は難民認定を受けない場合でも、出身国での迫害リスクなどから国外退去を猶予してきましたが、そうした例外措置を大幅に制限し、凶悪犯罪者については確実に強制送還する考えを示したものと受け止められています。

ただし、具体的な制度改正の詳細は不明で、連立与党内にも人権侵害に当たるとの異論もあり、今後の動向が注目されています。

令和3年において、出入国管理及び難民認定法違反により退去強制手続を執った外国人は1万8,012人で、そのうち不法就労事実が認められた者は1万3,255人でした。退去強制手続を執った外国人の国籍・地域は93か国・地域であり、ベトナムが最も多く、全体の53.7%を占めました。

不法残留者は1万6,638人、不法入国者は182人、資格外活動者は37人でした。在留資格別では、「技能実習」が最も多く、次いで「短期滞在」、「特定活動」が続きました。また、不法就労の稼働場所別では、関東地区が最多で、中部地区も一定の割合を占めています。なお、退去強制令書により送還された者は4,122人で、令和3年末現在、退去強制令書が発付されている被仮放免者は4,174人です。

日本国内の不法滞在者数の推移

今回入管法が改正されましたが、不法滞在者の母国が受け入れ拒否をする場合もあります。こうした場合どのようにするか、ドイツの動向もうかがいつつ、対応を決めていくべきでしょう。

不法滞在者の強制送還に関する問題は確かに複雑で、国際法や外交関係も絡むため、一筋縄ではいきません。しかし、現実的な対策を講じなければ、日本も深刻な事態に陥る可能性があります。母国が不法滞在者の受け入れを拒否する場合、支援を打ち切る、あるいは支援と引き換えに受け入れを促す方法も検討する必要があるでしょう。

まず、支援を打ち切ることは短期的には外交関係に悪影響を及ぼすかもしれませんが、長期的には不法滞在者の問題を解決するためには避けられない手段となるかもしれません。また、不法滞在者の人権を尊重することは重要ですが、国家の法と秩序を守ることも同様に重要です。適切な手続きを踏んだ上で、送還を進めることが必要です。

他国との協力も重要で、国際的な圧力を通じて母国に受け入れを促す方法もあります。柔軟な対応が必要であることは理解しますが、具体的な施策については迅速かつ決断力を持って実行することが求められます。国際社会全体で協力し、共通の解決策を早急に模索することが重要になるでしょう。

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2024年6月8日土曜日

米国人の過半数、「借金をしてまで大学に行く必要なし」と回答―【私の論評】学生運動の限界:高等教育の歴史と社会変革の未達成


まとめ
  • 大多数の米国人が、学位取得のために多額の借金を背負うことに価値を見出していない。
  • 学生ローン残高の高止まりと授業料の高騰が、その背景にある。
  • 非大卒者の収入は増加基調にあり、大卒者との格差が縮小傾向。
  • 企業が採用で学位取得を必須としなくなる動きもあり、大学の価値が相対的に低下。
  • 調査結果から、良い仕事に就くための大学の重要性が低下していると米国民が認識していることがうかがえる。


米国の有名リサーチ会社、ピュー研究所の最新調査で、米国人の大多数が大学の学位取得のために多額の借金を負うことに価値を見出せていない実態が明らかになった。調査対象者の22%しか「借金を背負ってでも大学に行く価値がある」と答えておらず、47%が「借金がなければ価値がある」、29%が「いずれにしろコストに見合わない」と回答した。すでに大学を卒業した人々の間でも、過半数が借金を払って進学することに懐疑的であった。

こうした見方の背景には、米国での学生ローン残高の高止まりと授業料の高騰があげられる。一方で、最近10年間の収入動向をみると、非大卒の若年層の実質収入は増加基調にあり、大卒者との格差が縮小傾向にある。特に男性非大卒者の収入は1970年代の水準に達していないものの、女性非大卒者と比べると高い。

加えて、多くの企業が採用で学位取得を必須条件としなくなり、スキル重視に転換したことで、「良い仕事に就くための大学の価値」を疑問視する声が高まっている。調査では49%が高給与職への大学の重要性が低下したと答え、65%が重要性は中程度以下と回答した。

こうした結果から、米国社会で大学教育の価値に対する懐疑的な見方が強まり、コスト面でも就職面でも大学進学のメリットが薄れつつあることがうかがえる。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事を御覧ください。

【私の論評】学生運動の限界:高等教育の歴史と社会変革の未達成

まとめ
  • 米国では、過去に大学教育が広く奨励され、経済的な障壁なく多くの人に高等教育の門戸を開くことが求められていた。
  • 1960年代の学生運動は、大学教育の機会均等を求める動きの一環として、既存の価値観や体制に対する反発が広がった。
  • ドラッカー氏は、学生運動の背景に若者人口や大学生数の増加があり、これが反抗運動を生んだと分析している。
  • 現在は少子高齢化と大学教育に対する価値観の変化があることと、ドラッカー氏が指摘したように、学生運動が建設的な代替案を提示せず、運動が社会改革に結びつかなかった点が認識されている。
  • 学生運動が長期的に再燃する可能性は低いと考えられる。
過去には、米国社会で大学以上の高等教育を受けることが強く奨励されており、できる限り大学に行くべきだという価値観が広く共有されていました。

米トルーマン大統領

その一例として、1947年に発表された「高等教育のための大衆的機会均等に関する大統領委員会報告書」(通称「トルーマン委員会報告書」)があげられます。この報告書は、戦後の米国社会における高等教育の役割と重要性を強調し、以下のような見解を示しています。

「米国において、高等教育の門戸は、能力さえあれば、あらゆる市民に等しく開かれていなければならない。...中産階級や貧困層出身の有能な学生であっても、経済的理由から高等教育を受ける機会を失うべきではない。」

このように、経済的状況に関わらず、可能な限り多くの人が高等教育を受けることが望ましいと位置づけられていました。

また、1960年代に発表された「高等教育のための機会均等に関する報告書」も、大学教育のさらなる機会拡大を求めています。同報告書は「多くの優秀な学生が経済的理由で大学に行けない」状況を指摘し、連邦政府による財政支援拡充を提言しました。

このように、トルーマン政権時代から1960年代にかけて、大学教育を受けることが個人の社会的上昇に不可欠であり、できる限り多くの人に門戸を開くべきだとの認識が、政策文書からも窺えます。当時は確かに、大学に行くことが一般的な価値観とみなされていたと言えるでしょう。

そうして、この動きは1960年代の米国学生運動にも結びついたと考えられます。

1960年代は世界中で学生運動の嵐が吹き荒れた時代でした。

日本を含めた先進国を中心に、大学生らが従来の価値観や体制に疑問を呈し、大規模なデモやストライキを展開しました。ベトナム戦争への反対、人種差別への抗議、大学の権威主義的体制へのアンチテーゼなどが主な運動の背景にありました。

こうした学生運動の潮流を小説や映画でも取り上げられ、代表作の一つが1970年の映画「The Strawberry Statement」(原題)です。この映画は、ジェームズ・サイモンズの同名小説を映画化した作品です。

物語は1960年代後半のニューヨークの架空の大学を舞台に展開します。主人公のサイモンは、当初は受け身の学生でしたが、やがて学生運動に身を投じ、大学側との対立が深まっていきます。大学は徐々に弾圧的な姿勢を強め、遂には武力鎮圧にまで至ります。

この映画は、ベトナム戦争をはじめとする時代の矛盾に疑問を投げかける学生たちの思いと、それに対する体制側の威圧的な反応を描き出しています。タイトルの"Strawberry Statement"は、作者が風刺的に用いた言葉が由来だと言われています。

つまり「The Strawberry Statement」は、1960年代の学生運動の実相を活写した問題作であり、当時の大学生の価値観の変容と体制側との対立を象徴的に表した作品と言えるでしょう。

映画『いちご白書』のポスター

最近米国では学生運動が再燃しています。パレスチナ・ガザ地区でのイスラエルの軍事作戦を受け、米国の大学キャンパスでパレスチナ支持の学生運動が活発化しました。一部の運動はイスラエル批判を越え、反ユダヤ主義的とみなされる言動に走る事態となりました。

コロンビア大学などでは、学生による構内占拠が起き、連邦議会から大学への介入要求が相次ぎました。学長は辞任に追い込まれる事態にまで発展しました。

今回の米国の学生運動が1968年のような規模の暴力的運動に発展するかは不透明ですが、コロンビア大学では卒業式の中止が決定される事態となり、大学側の対応が試される事態となっています。

このような学生運動の展開は、1968年の世界的な大学紛争の嵐を想起させます。フランス、米国、日本などで当時は激しい学生運動が起きていました。日本では東大の機動隊導入で運動が過激化し、入試中止にまで至りました。

この事実をもって米国で学生運動の嵐が再燃したり、これが日本などの他の国々でも、飛び火するのではと懸念する人もいます。しかし、私は学生運動は短期的に再燃することはあっても、長期的に再燃し続けることはないと思います。

 経営学の大家ドラッカー氏は、1960年代後半の学生運動の背景の1つとして、若者人口の増加や大学生の絶対数の増加をあげていました。

具体的には、以下の著書の中でそのように述べています。

『マネジメント 課題、責任、実践』(Management: Tasks, Responsibilities, Practices, 1973年)

  • この中で、ドラッカーは「ベビーブーム世代が大学に入ったことで、学生数が爆発的に増えた」と指摘しています。
  • そして「大量の若者が集まれば、必ず何らかの反抗運動が起こる」と分析しています。

つまり、ドラッカー氏は学生運動が活発化した背景として、若者人口や大学生の絶対数の増加という量的な要因を1つの原因とみなしていたということがわかります。

無論それだけではなく、価値観の変化や大学教育の問題点など、質的な要因もありました。ただし若者人口の絶対数増加は、学生運動が巨大な社会現象として興隆する上で必要不可欠な量的基盤であり、ドラッカーもそれを重視していたと理解できます。

今日の少子高齢化の社会においては、若者人口の絶対数増加はなく、絶対数の減少が顕著になっています。

さらに、上の記事にもある近年の調査結果が示すように、高等教育を巡る価値観は大きく変容しつつあり、借金を払ってまでも大学に行く必要性については、米国社会で疑問視される傾向が強まっています。

社会の大勢が、大学は行けるなら行くべきものという考え方が主流で、しかも若者の人口が増えつつある社会においては、学生運動が興隆しますが、大学に借金してまで積極的にいくべきところではないという価値観が大勢をしめ、少子化で若者が減少する社会においては学生運動が、一時的に興隆するようにみえても、長く続くことはないでしょう。

1960年代の日本の学生デモ

さらに学生運動が社会に改革をもたらさなかったことも、学生運動が今後再燃することはないことの根拠になりえると思います。

ドラッカーも学生運動を評価してはいません。ドラッカーが1960年代後半の学生運動について言及している主な著書は以下のとおりです。

『断絶の時代』(The Age of Discontinuity, 1969年)

  • この著書の中で、ドラッカーは学生運動を「権力の空白」と呼び、既存の制度や権威に対する挑戦と位置づけています。
  • しかし同時に、学生運動が建設的な代替案を提示していないことを批判しています。
『新しい現実』(The New Realities, 1989年)

  • この著書でも1968年の学生運動を取り上げ、「反体制的」であり「単なる抗議」に終始したと評価しています。
  • 学生たちが大学の既得権益に反発しつつ、自分たちも将来の既得権益層になろうとしていた矛盾を指摘しています。
『マネジメント 課題、責任、実践』(Management: Tasks, Responsibilities, Practices, 1973年)
  • この著作では、学生運動に関する直接的な言及はありませんが、大学教育の改革の必要性を説いています。
  • 専門教育に偏重し、人間性や倫理教育が軽視されていることを危惧しています。

ドラッカーは学生運動の一時的なインパクトは認めつつも、その目的や手段、大学体制への批判の一貫性のなさに疑問を呈していたことがわかります。

いわゆる学生運動が、何らかの改革や、改善に結びつき、社会を良い方向に変えていたのなら別ですが、そうではなかったのですから、これが長続きする可能性は低いでしょう。無論これは、米国だけではなく、先進国に共通することであり、日本などで学生運動が再燃する可能性はかなり低いでしょう。

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米、反イスラエル学生デモ拡大 バイデン氏、再選へ影響懸念―【私の論評】日本への警鐘:アイデンティティ政治とビバリーヒルズ左翼の台頭に見る危機

 米、反イスラエル学生デモ拡大 バイデン氏、再選へ影響懸念

まとめ

  • 全米の大学で、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ攻撃を非難するデモが拡大している。
  • デモはニューヨークのコロンビア大から始まり、ワシントンにも波及しており、バイデン大統領の支持基盤である若者の離反が懸念される。
  • コロンビア大では、学生らが大学にイスラエル関連企業とのつながりを断つことなどを要求し、抗議活動が行われている。
  • 全米の大学では、抗議活動に参加した数百人が拘束され、一部で授業中止や卒業式の主要式典の中止などの影響が出ている。
  • バイデン大統領は、反ユダヤ主義的な活動を非難しつつも、イスラエルへの軍事支援とガザの人道状況改善の両立に苦慮している。

イェール大学学生の親パレスチナデモ

 全米の大学で、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ攻撃を非難するデモが広がっている。これは、ニューヨークの名門コロンビア大学から火が付き、首都ワシントンにも波及している。このようなデモの拡大は、バイデン大統領にとって深刻な問題となっている。なぜなら、これらのデモは民主党支持の傾向が強い若者の離反を意味し、バイデン大統領の再選に影響を与えかねないからだ。特に、コロンビア大学では抗議活動が活発化し、学生らは大学に対しイスラエル関連企業とのつながりを断つことなどを要求している。

 全米の大学では、抗議に参加した数百人が拘束されるなどの影響が出ている。例えば、南カリフォルニア大学(ロサンゼルス市)では保安上の理由から卒業式の主要式典を中止し、エマーソン大学(ボストン市)では授業を取りやめるなどの措置が取られている。しかしながら、一部の抗議活動には反ユダヤ主義的な要素も混じっており、大学側は表現の自由と差別助長の阻止との間で難しい判断を迫られている。

 さらに、抗議活動の影響は学内にとどまらず、ホワイトハウスから数ブロック西のジョージワシントン大学で、イスラエルへの対外支援法を成立させた政権に抗議する声も上がっている。バイデン大統領は、これらのデモについて「反ユダヤ主義の抗議活動を非難する。同時に、パレスチナ人の状況を理解しない人々も非難する」との立場を示しているが、イスラエルへの軍事支援とガザの人道状況改善の両立は容易ではなく、混乱収束に向けた妙案は見えていない。

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【私の論評】日本への警鐘:アイデンティティ政治とビバリーヒルズ左翼の台頭に見る危機

まとめ
  • 米国での出来事は、日本が陥りかねない危険信号が現れており、これに目を向ける必要がある。
  • かつての労働者階級の代表とされた「左翼」がエリート層の価値観に同化し、"ビバリーヒルズ左翼"と呼ばれる存在になりその支持基盤から離れている。
  • アイデンティティ政治といわれる、個々のアイデンティティに基づく政治的主張が対立や分断を助長し、偏見や敵対心を増大させる恐れがある。
  • 米国では難関とされる、カリフォルニア大学アーバイン校やコロンビア大学での抗議行動や反ユダヤ主義的な行動が報告されている。
  • 日本でも米国と同様の兆候が見られ、伝統的な価値観や勤労精神を守り、エリート主義に囚われた考え方を排除する必要がある。
米国で起こっている出来事に目を向ける必要があります。なぜなら、そこには日本が陥りかねない危険信号が現れているからです。

日本が陥りかねない危険信号 AI生成画

米国では、かつて労働者階級の代表として位置づけられていた「左翼」と呼ばれる勢力が、今やその本来の支持基盤から離れ、いわゆるエリート層の価値観に同化しつつあります。

これを私は「ビバリーヒルズ左翼」と呼んでいます。これはもちろん、日本でも人気のあった米国のドラマ「ビバリーヒルズ高校白書/ビバリーヒルズ青春白書」を念頭においたものです。

この「ビバリーヒルズ左翼」は、裕福な環境で育った人々の集まりであり、勤労者の現実的な課題から目を背け、知的エリートの関心事にのみ熱心です。以前は労働組合の集会に参加していた彼らが、今やアイビーリーグの大学キャンパスに集まるようになりました。

このグループは、安全保障、国民の食の確保や雇用創出などの現実的な問題よりも、リベラルな価値観の推進やアイデンティティ政治に熱心です。彼らが関心を寄せるのは、移民問題やLGBT、マイノリティの権利など、アイデンティティに関する課題が多いです。

ビバリーヒルズ青春白書

最近の一部の名門大学での反イスラエルデモの過激化は、まさにこの「ビバリーヒルズ左翼」の影響が学生運動に及んでいる例です。デモは時に反ユダヤ的な言動に走り、大学側を危機に追いやっています。特に優秀な学生ほど、反ユダヤ主義的なプロパガンダに洗脳されやすい傾向にあると指摘されています。

米国で有名校とされる、カリフォルニア大学アーバイン校(University of California, Irvine)では、イスラエル関連のイベントに対する抗議行動や反ユダヤ主義的な行動が報告されています。

同じく有名校とされるコロンビア大学(Columbia University)でも、イスラエル関連の講演会やイベントに対する抗議行動や妨害が発生し、反ユダヤ主義的な言動が報告されています。

反イスラエルの姿勢が問題なのは、それが極端な反ユダヤ主義につながる危険性があるからです。イスラエルに対する批判が一線を越えれば、ユダヤ人への差別的な言動や憎悪犯罪に直結します。これは絶対に許されません。

このような状況に対して、大学側は厳しい対応を迫られています。大学は多様な価値観を受け入れる場であると同時に、学生に安全な環境を提供する責任があります。反ユダヤ的な言動は構内の治安を脅かし、大学の中立性や知的開放性を損なうおそれがあります。そのため、大学はデモの過激化を放置することはできません。

アイデンティティ政治への過度の焦点は、米国民の分断と対立を助長します。"ビバリーヒルズ左翼"は、米国民を"違い"で定義し、"被害者"意識を植え付けようとしています。

アイデンティティ政治とは、個々の人々や集団が自らのアイデンティティ(身元や所属、属性)に基づいて政治的主張や行動を展開することを指します。これは、性別、人種、民族、宗教、性的指向、身体的能力など、さまざまな身元や属性に関連しています。

アイデンティティ政治の負の側面は、しばしば社会の対立や分断を深め、個々のアイデンティティに基づいた偏見や敵対心を助長することです。

例えば、アイデンティティ政治が進むと、特定のアイデンティティグループが自らの権利や利益を強調し、他のグループとの摩擦が生じます。これにより、社会全体が対立状態に陥り、対話や協力が阻害される可能性があります。

また、アイデンティティ政治はしばしば単純化や過剰な一般化を招きます。特定のアイデンティティに基づいて個人やグループをラベリングし、その属性に応じて全ての行動や意見を決定付けようとする傾向があります。これにより、個々の多様性や複雑さが無視され、個人の自由や多様性が制限されるおそれがあります。

さらに、アイデンティティ政治はしばしば感情的な反応や怒りを引き起こし、合理的な討論や協力を難しくします。このような感情的な偏見や敵対心は、社会の結束や共存を脅かす要因となります。

アイデンティティ政治が過度に強調されると、社会は分断され、対立が激化する可能性があります。その結果、個々のアイデンティティが優先されることで、全体の共通の利益や社会の結束が犠牲にされるおそれがあります。

ビバリーヒルズ左翼はアイデンティ政治等のリベラルな理想論に惑わされ、現実から遠ざかった考えに走っています。多くの国民が直面する生活の困難や雇用の不安を見過ごしているのが現状です。"進歩"を掲げながらも、彼らの本当の狙いは、エリート主義的な価値観を押し付けることにあるかもしれません。

滑稽なアイデンティティ政治  AI生成画

残念ながら、日本でも同様の兆候が見られます。いわゆる「リベラル」と呼ばれる一部の層が、多くの国民の実態から遊離した理想論や表面的な正義を追求しています。例えば、最近の「LGBT理解増進法」成立をめぐっては、自民党内の保守派からも国民の生活への影響を十分に考慮せずに急いで成立させたとの批判がありました。

安倍政権は例外的であり、1990年代以降の自民党はリベラル政党とみなすことができます。自民党は結党時の保守的な価値観に立ち返り、国民の生活を最優先に考える政党に再びなるべきです。

このままでは、米国と同じ道を歩むことになりかねません。日本の伝統的な価値観、すなわち勤労を尊重し、個人の自立を重視し、国民全員が平等に自由に恵まれる社会を大切にしなければなりません。

私たち日本人は、祖先から受け継いできた誇り高い文化や価値観を決して忘れてはいけません。自由という尊い価値は、努力と責任を尊重することなくしては守られません。これを守り、次世代に継承することが、私たちの責務です。

エリート主義にとらわれた考え方が、日本に蔓延することを許してはいけません。日本の伝統的な勤労精神と自立の志こそが、国の繁栄につながる道です。

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2024年4月22日月曜日

「バイデンはウクライナを邪魔するな」ロシア製油所へのドローン攻撃に対する停止要求は不当―【私の論評】バイデン路線の致命的失敗 、ウクライナ放置とエネルギー政策の無策で同盟国は大混乱

 「バイデンはウクライナを邪魔するな」ロシア製油所へのドローン攻撃に対する停止要求は不当

岡崎研究所

まとめ
  • ウクライナがロシアの主要な製油所を自国のドローンで攻撃し、ロシアの戦争遂行能力を10~14%破壊した。
  • バイデン政権がウクライナにこうした製油所攻撃の停止を求め、石油価格上昇やロシアの報復を危惧しているようだ。
  • 米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙の社説がこうした要求を批判し、ウクライナの選択肢が限られる中で製油所攻撃の重要性を主張している。
  • ゼレンスキー大統領自身もウクライナの反撃権を主張し、バイデン政権に疑問を呈している。
  • WSJの社説は、バイデン政権に対し、少なくともウクライナの邪魔をしないよう、武器使用の自由を認めるべきと提言している。

WSJの紙面

 ウォールストリート・ジャーナル紙は4月5日付けの社説で、バイデン政権がウクライナによるロシアの製油所に対するドローン攻撃の停止を求めたことを批判的に論じている。同紙によれば、ウクライナはこれまでロシアの主要な製油所のうち少なくとも15か所を自国のドローンで攻撃し、ロシアの戦争遂行能力の10~14%を破壊したという。これらの攻撃は国境から750マイル以上離れた深く砂地に入ったところでも行われ、ウクライナの軍事的なイノベーションを示すものである。

 しかし、フィナンシャル・タイムズ紙の報道では、バイデン政権がウクライナにこうした作戦の停止を求め、「ドローン攻撃は石油価格を押し上げ、ロシアの報復を招くリスクがある」と警告したとされる。実際に米国のNATO大使も「ロシア領内の標的を攻撃することは米国が特段支持するものではない」と語っている。

 社説はこうした態度を批判し、ウクライナがロシアの侵略に対して自国の領土防衛以外に取り得る選択肢は限られている中で、製油所攻撃によりロシアの戦争資金源を遮断し、プーチン政権に打撃を与える重要性を指摘している。さらに、ゼレンスキー大統領自身も「なぜウクライナが反撃できないのか」と不満を示しており、バイデン政権の対応に疑問を投げかけている。

 結論として社説は、下院共和党の妨害でウクライナ支援が滞る中、バイデン政権が最低限すべきことは「ウクライナの邪魔をしないこと」であり、むしろウクライナの武器使用の自由を確保すべきだと提言している。

【私の論評】バイデン路線の致命的失敗 、ウクライナ放置とエネルギー政策の無策で同盟国は大混乱

まとめ
  • ウクライナにはロシアの侵略から身を守る固有の権利があり、西側諸国はウクライナの主権と自由を断固として支持しなければならない。
  • ウクライナは製油所などの重要目標への攻撃を行う権利があり、WSJの社説のこうした主張は正しい。経済的考慮によってウクライナの反撃を制限してはならない。
  • バイデン政権の弱腰な対応はウクライナに降伏と宥和の圧力をかけるものであり、歴史の教訓と自由・民主主義への断固たる取り組みから得られる強さを忘れたようなものだ。
  • バイデン政権の外交政策は全般的に弱腰であり、アフガニスタンからの撤退の失敗、ウクライナ侵攻に向けた誤解を招く発言、イラン核合意への譲歩的姿勢、エネルギー政策の失敗は世界に混乱をもたらした。
  • このようなバイデン政権の弱腰な外交政策は、敵国とその協力者を勇気づけ、同盟国を弱体化させ、世界をより危険な場所にしている。強力で断固としたリーダーシップが必要である。
ゼレンスキー ウクライナ大統領

ウクライナにはロシアの侵略から身を守る固有の権利があり、日本を含む西側諸国は彼らの主権と自由を断固として支持しなければならないです。 バイデン政権の弱気な姿勢は、ウクライナに対し、製油所などの重要目標への攻撃、降伏と宥和の圧力を控えるよう求めています。

それはあたかもバイデン政権が歴史の教訓と、自由と民主主義への断固とした取り組みから得られる強さを忘れたかのようです。 

今回の戦争は、ウラジーミル・プーチンの専制的で拡張主義的な野望によって強制された戦争です。このような紛争において、ウクライナは敵の戦争遂行能力を無力化するために必要なあらゆる手段を講じるあらゆる権利を有しており、それには製油所などの戦略的資産を標的にすることも含まれます。 

WSJの社説の主張は完全に正しいです。 ウクライナの反撃は合法であるだけでなく、道徳的にも正当化されます。 国際法は自衛権を認めており、特に戦時規則に違反し凶悪な残虐行為を繰り返してきた相手と対峙した場合、ウクライナは侵略者に対して戦いを挑む権利を有しています。

バイデン大統領

 原油価格の高騰とロシアの報復に対するバイデン氏の懸念は見当違いで短絡的です。 私たちは、侵略に対する対応が経済的考慮によって決定されることを許すべきではありません。 自由世界は明確なメッセージを送らなければなりません。

私たちはそのような行為を容認せず、私たちの価値観とそれを共有する人々を守るために団結すべきです。西側諸国の人々は、 ゼレンスキー大統領の勇気と決意にもとづく呼びかけに耳を傾け、武器であれ、諜報であれ、あるいは自国の資源を必要に応じて活用する自由であれ、ウクライナが勝利するために必要な支援をウクライナに提供すべきです。

 バイデン政権の外交政策は、弱腰でありこれが敵を刺激し、米国の立場を弱体化させたことは、明らかです。 

何よりもまず、アフガニスタンからの悲惨な撤退がそれを示しています。 バイデン氏の性急かつ無計画な撤退により、米国民とそのパートナーは立ち往生し、脆弱な立場に置かれてしまいました。

バイデンはアフガニスタンのパートナーに背を向け、彼らをタリバンのなすがままにし、決意と強さの欠如を示して敵を勇気づけることになりました。 その後、ロシアのウクライナ侵攻に向けて、バイデンの発言は弱々しく、一貫性がありませんでした。

バイデン大統領は2022年1月19日の記者会見で、「小規模な侵攻」という表現は使用しませんでした。しかし、「ロシアによるウクライナ侵攻」について問われた際、NATO加盟国間で対応が分かれる可能性があることを示唆しました。

一部メディアがバイデン発言を「小規模な侵攻なら対応が分かれる」と誤報したことから、この「小規模な侵攻」発言があったかのように広まってしまいました。

このような誤解を招いた発言は、ロシアにウクライナ侵攻のコストを過小評価させてしまった可能性があります。これは事後的に大きな非難を浴びました。

ただし、バイデン政権の当初の意図は、あくまでも本格的なウクライナ侵攻には断固たる対応をすると示唆することだったようです。しかし、発言を誤って受け止められてしまったことは間違いありません。バイデン氏が当初から徹底抗戦を主張するなどの発言をしていれば、このような間違いは起こらなかったでしょう。こればプーチンに積極的な行動を取るよう促す結果となりました。 

イラン核合意(JCPOA)もバイデン氏の弱点を示す一例です。 同政権は、テロを支援し地域の不安定化を図る政権に対して譲歩し、制裁を緩和することで、この欠陥のある協定を復活させようと躍起になっています。 

このアプローチは宥和的なメッセージを送り、ならず者国家が処罰されずに行動することを奨促す結果となっています。 中東では、バイデンは敵に立ち向かい、同盟国を支援することができませんでした。 バイデンはイランに対しては弱腰であり、シリアなどにおけるロシアの影響力に適切に対抗することもできていません。

 バイデン政権は同盟国イスラエルにも批判的で、エルサレムの首都認定を取り消すなど、イスラエルの安全を損なう政策を推進してきました。

バイデン政権の外交面での弱腰な態度や失策は、エネルギー政策の失敗にも起因しています。就任直後のキストンXLパイプライン計画の中止や、フラッキング規制の強化などにより、米国のエネルギー自給能力が低下しました。

ロシアのウクライナ侵攻に伴う制裁でロシア産原油の供給が減少する中、バイデン政権は代替調達に遅れをとり、OPECなどに原油増産を要請しましたが、応じてもらえませんでした。

こうしてエネルギーコストが高騰し、家計を直撃し、インフレ高進に拍車をかけました。エネルギーの安全保障を軽視したことで、ロシアや産油国に弱腰を強いられる結果となったと言えます。このようなエネルギー政策の失策が、バイデン政権の弱腰外交の一因ともなっているのです。

習近平とバイデン

中国に関してはバイデン氏はほとんど無力です。 新疆ウイグル自治区での人権侵害や香港での弾圧には適切に対処していません。 同政権の貿易に対するアプローチも弱く、不公正な行為や知的財産の窃盗に対する中国の責任を追及することに失敗しています。 

そして北朝鮮のことも忘れてはいけません。 バイデン氏は、核兵器と弾道ミサイル計画の継続的な開発に対して空虚なレトリックを発するばかりです。 同氏にはこの脅威に対処する明確な戦略がなく、行動の欠如が金正恩氏の攻撃性を高める結果になっています。 以上は、バイデンの弱気な外交の一部にすぎません。 

バイデンは、LGBT外交も推進しました。これは米国の国益を促進するどころか、途上国の反米感情を助長する可能性の方が高いです。中国との覇権争いが最重要課題である時に、そのような取り組みをする余裕があるのでしょうか。

 「米中新冷戦」の激化に伴い、各国は米国と中国のどちらの陣営につくべきか選択を迫られています。歪んだ価値観外交は途上国を米国から遠ざけ、中国の陣営に追いやる一因になりかねないです。

バイデンは我々西側諸国の敵を勇気づけ、同盟国を弱体化し、世界をより危険な場所にしたといえます。 バイデン政権の外交政策は西側諸国のとって災厄であり、 米国は、米国国と同盟国を危険にさらす無謀で不器用なアプローチではなく、米国の利益と価値観を守る強力で断固としたリーダーシップが必要です。

それが、同盟国にとっても良い結果をもたらすことになります。米国の軸がブレることは、中露北とその協力者たちを勇気づけることになるだけです。

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2024年4月12日金曜日

日米比、初の3カ国首脳会談-中国進出念頭に海上訓練拡充で合意―【私の論評】安倍イズムが育んだ日米比の安全保障協力 - 官僚レベルから首脳レベルまでの歴史的な絆

日米比、初の3カ国首脳会談-中国進出念頭に海上訓練拡充で合意

まとめ
  • 「日本とフィリピンを防衛する米国の決意は揺るぎない」と米大統領
  • 米は国際社会の「中心的役割」継続を、岸田首相が米議会で演説


 日本、アメリカ、フィリピンの3カ国首脳が会談を行い、自衛隊と米比両軍の海上共同訓練の拡充に合意した。

 南シナ海情勢を踏まえ、海洋安全保障が最重要議題となった。バイデン大統領は日本とフィリピンの防衛への決意を表明した。

 3カ国は、南シナ海と東シナ海における中国の行動に深刻な懸念を示し、新たな共同訓練の実施や資源サプライチェーン強化などで協力を強化することで合意した。

 岸田首相は、米議会での演説で、自由と民主主義が脅威に晒されており、特に中国の動向が課題だと指摘。米国の支援と存在が不可欠であると述べた。岸田演説は、選挙後の日米関係の重要性を米議会に訴えるものだった。

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】安倍イズムが育んだ日米比の安全保障協力 - 官僚レベルから首脳レベルまでの歴史的な絆

まとめ
  • 安倍前首相の日米同盟強化への尽力と指導力が、現在の日米同盟の基盤を築いた。
  • 日米協力は官僚レベルでの継続的な取り組みであり、政権交代に影響されないものだった。
  • 「自由で開かれたインド太平洋」構想は安倍前首相の外交の柱で、その延長線上にある日米比の安全保障協力が進展している。
  • 日米比3か国の防衛大臣会談、軍隊間の共同訓練、非伝統的安全保障分野での協力など、緊密な連携が進んでいる。
  • 岸田首相は、安倍イズムの外交・安全保障政策を継承し、国内においても経済政策や自民党内の調整などで安倍路線を踏襲すべきだ

昨日のこのブロクでは、安倍首相の日米同盟強化への献身的な努力とリーダーシップなくしては、現在の日米同盟の堅実な関係基盤と協力体制を築くことは不可能であり。安倍首相の尽力こそが、今日の日米同盟の地位向上に不可欠な要因だったのではないかと掲載しました。

結局のところ、今日の日米首脳会談は、安倍イズムの影響下での日米同盟強化であったと結論ずけました。

その根拠として、日米同盟の強化はすでに両国の官僚級の折衝はから始まっていたことを根拠としてあげました。それは、両国の首脳の政権がこれからも続くか続かないにかかわらず、日米という国家間で継承される合意事項であるともいえます。

今回の日米首脳会談はこれを追認したものに過ぎません。

今回の日米比の首脳会談でも同じことがいえます。日米比の安全保障協力の進展は、安倍前首相の時代から見られる「自由で開かれたインド太平洋」構想の具現化であると言えます。

安倍首相は在任中、日本の外交・安全保障政策の大きな柱として、この構想を掲げ、地域の主要国との連携強化に力を入れてきました。特にフィリピンとの関係強化は重要な課題の一つでした。

こうした安倍首相の方針は、その後の日本政府によっても継承されており、日米比三カ国の安全保障協力はその具体的な成果として表れているといえます。

日米比の3か国による安全保障協力も活発に行われてきました。
  • 2022年以降、日米比三カ国の防衛大臣会談が定期的に開催され、地域情勢への共同対応について議論が行われています。
  • 日米比三カ国の自衛隊、米軍、フィリピン軍による共同訓練の実施が活発化しており、相互運用性の向上が図られています。
  • 災害救援活動や 海洋安全保障等、非伝統的安全保障分野での協力も強化されてきました。
  • 情報共有や海上監視、訓練支援など、各国の軍事当局間での緊密な連携も進んでいます。
  • 日米両国がフィリピンに対する装備品供与や訓練支援など、二国間の取り組みも行っています。
このように、日米比三カ国間での安全保障面での協力は着実に進展してきており、地域の平和と安定に向けた重要な枠組みとなっています。特に、日米比の省庁レベルや軍事当局レベルでの緊密な対話と協調が進展してきたと言えます。

2022年には第1回日米比陸軍種ハイレベル懇談会が日本で開催された

省庁間、軍事当局間での緊密な対話と実務レベルの協力は、この構想の実現に向けた着実な取り組みの一環であると評価できます。

これは、日米比の多くの人々も認めるところであり、今回の日米比の首脳の合意は、安倍イズムの延長線上にあるものとえ、この三者が新しく始めたものではなく、安倍イズムによる「自由で開かれたインド太平洋」構想の継承とみることができます。もっといえば、安倍首相は中国をめぐる世界秩序を変えたのです。

中国への対処ということでは、「自由で開かれたインド太平洋」構想とこの構想に含まれる諸国との提携や、協力の強化の方針は、安倍イズムによってすでに方向づけられたものです。そのため日米比の現在の首脳は、これを自分たちの成果とすることはできません。

特に、大統領選、総裁選が間近に迫っている、バイデン大統領と、岸田首相はそうです。

バイデン、岸田ともに、政権を安定させたいなら、インド太平洋地域以外の外交や国内を安定させる政策を推進することが肝要です。

岸田首相は、昨日も述べたように、大きな問題は国内にあり、有り体にいえば、自民党党内です。これについては、米国はこれに干渉することはできません。ただしLGBT理解増進法案などの例外はありますが、国内の大きな方向性に関しては、もっぱら岸田首相が采配しなければなりません。ここでも岸田首相は、安倍路線を継承するべきなのです。

安倍首相は、地球儀を俯瞰する外交を実行して成果をあげており、この点で、岸田首相が外交で努力したとしても、あまり大きな成果とみなされることはありません。おそらく、岸田首相の独自での外交での成果といえば、ウクライナ電撃訪問くらいかもしれません。

安倍首相地球儀を俯瞰する外交で成果をあげた

やはり岸田首相は、安倍氏の経済状況を改善し雇用と企業収益が拡大する路線を継承し、デフレから完全脱却すべきなのです。それとともに、自民党内のリベラル派に対して一定の歯止めをかけなければなりません。さらに憲法改正もすすめるべきなのです。国内でも安倍イズムを継承することが、自民党政権を安定化させる唯一の道だと認識して、その方向に転換すべきなのです。

これは、岸田政権が崩壊して、次の政権に変わったにしても、あてはまることだと思います。

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