【パリ 7日 AFP】大統領選挙の決選投票が実施された6日、ニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)候補が勝利を確信して演説を行った。選挙速報では、サルコジ候補が53%、セゴレーヌ・ロワイヤル(Segolene Royal)候補が47%の票を獲得したと伝えられました。
国民運動連合(Union pour un Mouvement Populaire、UMP)のサルコジ候補は、パリの中心部で喜びに満ちた支持者らを前に「今こそ国民がわたしに与えてくれたものに報いるとき。一緒に新しい歴史の1ページを記そう。その1ページは、すばらしく美しいものになると確信している」と発言しました。
決選投票を争った社会党(Parti Socialiste、PS)のロワイヤル候補については、「多くの国民が支持するロワイヤル氏の考えを尊重したい。そうすることがロワイヤル氏に投票した数百万の人々を尊重することにつながる」と語りました。
一方でロワイヤル候補も敗北を認め、パリで支持者らを前に演説し「次期大統領が全国民の利益のために使命を果たすことを願う」と述べました。
また大統領府(Elysee palace)によると、ジャック・シラク(Jacques Chirac)大統領は同日、電話でサルコジ氏に祝福の言葉を伝え、今後の成功を祈ると語りました。
さて、皆さん今回の結果をどのように受け止めたでしょうか?
私は、今回の結果は妥当だと思います。規制の多すぎるフランスでは、一度市場主義の原則を導入する必要があります。その意味でも今回はサルコジ氏を大統領にする選択肢しかなかったと思います。福祉政策を重視するというロワイヤル氏の主張は時代錯誤です。
しかし、自由主義経済を導入するだけでは、経済は良くなるかもしれませんが、社会がどうなるか?ということが問題になると思います。やはり、以前「未来社会への変革」で掲載した共同体に関する内容がフランスにも積極的に導入されることが望まれと考えます。イギリスではすで相当前から共同体(NPO)が法律的にも定義され、社会福祉の分野にどんどんNPOを参加させるということが、国の政策として取り入れられます。
日本では、いわゆるNPOの歴史が短いので、こう書くと何のことやらわからない方も多いと思いますのでここで多少補足しておきます。
いわゆるソ連という国が台頭するまでの世界、特に先進国では、どこの国でも小さな政府が常識でした、エリザベス朝のイギリスの大蔵省は10人程度で運営していました。社会福祉に関してはそのほとんどが、NPO自身が実施したり、国がNPOに委託して実施していました。
ところが、ソ連が台頭し、大きな政府を標榜し、国が国民の面倒をすみからすみまでみると言い出したのです。これを聴いた先進諸国は脅威を感じ、大きな政府、社会福祉を国が行い国民の面倒をすみからすみまで、見るという福祉国家政策を打ち出しました。イギリスでいわれた標語「ゆりかごから墓場」までは、これを意味します。
ところが、これを実施した、ソ連はご存知の通り崩壊しました。他の先進国でもなかなかうまくいかず、失敗の連続でした。今や日本以外の先進国では、政治に対し多くの期待を持つ人びとはいなくなりました。そうなのです、もともと国という組織は、いわゆる基盤をつくることはできても、基盤の上で何か具体的なことをすることはできないものなのです。基盤の上で何かを行うということになると、それこそ先進国の場合は多様なニーズがありすぎて国家では無理なのです。(注:世界の先進国中の中で、政府による救済という幻想を本気で信じて、マスコミもそれを煽ってるような政治的幼児性を持っている国は日本だけかもしれません、恥ずかしいことです)
そのため、各国はソ連が台頭する前の状況に戻そうとしているのです。だから、イギリスでも、いや世界の多くの国でNPOに力をいれているのです。
その意味で、フランスもまずは、自由主義経済を導入しつつ、小さな政府、NPOの活性化を行っていくことが望まれます。これなしに国民の幸福を追求することはできないでしょう。移民の問題にしても、政府が前面出て包括的な政策を実施するだけでは絶対にうまくいきません。有能なNPOを多数輩出させ、多くの移民の多様なニーズに応えて行くことが望まれます。ロワイヤル候補のいう、福祉政策の充実など百害あって、一利なしです。今回のフランスの選挙では、やはりフランスの良識が働いたものと考え、私は一定の評価を与えるべきと考えます。
今後サルコジ氏がどのような社会政策を取り入れていくのか注目すべきと考えます。今回選挙でサルコジ氏に投票した多くの人が、今回の選挙がフランスの分水嶺になるかもしれないことを気がついていないかもしれません。自由主義経済に突入するということは必ず、多かれ少なかれ、血を見るということです。さらに、投票しなかった人達も影響を受けるかもしれません、自由主義経済に突入するということは厳しい社会に突入することに間違いないのですが、移民などの中にも優秀な人がいれば、新たな雇用の道が開けることを意味しているからです。おそらく、どちらにしても、自分たちにだけ都合の良い経済や社会にはならないということです。しかし、一部のフランス良識派には、このことを理解してサルコジ氏に意図して意識して、票を入れたものと考えます。