2015年9月5日土曜日

民主など 首相の大阪でのテレビ出演に抗議―【私の論評】最初から誰が正しいか何が受け入れられるかで意思決定するな!すれば与野党ともドツポにはまる(゚д゚)!

民主など 首相の大阪でのテレビ出演に抗議


安全保障関連法案を審議している参議院の特別委員会の理事懇談会で、民主党などは、法案の審議中に安倍総理大臣が大阪を訪れ、民放のテレビ番組に出演したことは国会軽視だと抗議し、来週までに政府に経緯を説明するよう求めました。

安倍総理大臣は4日、民放のテレビ番組に出演するため大阪を訪れ、4日夜に東京に戻りました。

これについて、安全保障関連法案を審議している参議院の特別委員会の理事懇談会で、民主党などは「われわれは、毎日でも安倍総理大臣が出席して審議をするよう求めているのにもかかわらず、法案の審議が行われている最中にわざわざ大阪まで行って、テレビ番組に出演することは国会軽視だ」と抗議しました。

そして、政府に対して来週8日の委員会までに経緯を説明するよう求めるとともに、納得できる説明がなければ、9日以降の審議には応じられないと伝えました。

【私の論評】最初から誰が正しいか何が受け入れられるかで意思決定するな!すれば与野党ともドツボにはまる(゚д゚)!

安倍総理も大変です。国会で野党の幼稚な質問に粘り強く答えている間は国民への説明が足りないと言われ、テレビに出て国民にわかりやすく話せば国会をサボるなと言われる有様です。

これについては、左翼系メディアLITERAが、とんでもない論評をしています。

http://lite-ra.com/2015/09/post-1452.html

これに関しては、経済学者の田中秀臣氏も以下のようなTweetをしています。
ここまでくると、野党や左翼系の安倍総理に対する批判は、批判ではなく、単なる安倍嫌いであると言っても良いと思います。

それにしても、安倍嫌いには非常に問題があります。かの経営学のドラッカーは以下のように述べています。

最初から誰が正しいか何が受け入れられるかで決定してはならない

この言葉の意味は重要です。この言葉を良く理解すれば、なぜ今の国会審議があれほどまでに、空虚で意味のないものになっているのかを良く理解できます。

ドラッカー氏は、『経営者の条件』という書籍で以下のように述べています。
 決定においては何が正しいかを考えなければならない。やがては妥協が必要になるからこそ、最初から誰が正しいか、何が受け入れられやすいかという観点からスタートしてはならない。
これは、意思決定の過程においては、まずは「誰が正しくて、誰が間違いか」などという論議すべきではなく、あくまで「何が正しくて、何が間違いか」という議論をすべきであって、そうでなければ、全く不毛な論議となってしまい、まともな意思決定ができなくなってしまうということです。

いわゆる「安倍嫌い」は、最初から「誰が正しくて、誰が間違いか」という主張をしているに過ぎません。要するに、上のTweetで田中氏が述べているように、「自分と意見違うものはリンチという徹底した態度」ではまともな論議ができず、まともな意思決定もでなきないということてず。

そのためでしょうか、国会での最近の安保法制の議論など、全くまともな議論になっておらず、国民にとっても理解しがたいものになっています。

しかも、大方の政治家は、せっかくの意思決定も実行されなければ意味がないと思うものです。そのため、最初から落としどころとしての妥協を考えてしまいます。

妥協には昔から知られているように2つの種類があります。1つは古い諺の「半切れのパンでも、ないよりはまし」、1つはソロモンの裁きの「半分の赤ん坊は、いないより悪い」との認識に基づくものです。

前者では半分は必要条件を満足させる。パンの目的は食用であり、半切れのパンは食用となる。しかし、半分の赤ん坊では妥協にもなりません。

ラファエロ作『ソロモンの審判』
『ソロモンの審判とは、』旧約聖書に出てくる話であり、イスラエルの賢王ソロモンが、いかにも当時の絶対専制君主らしく、子を剣で半分に切って女二人で分けよと審判します。このような妥協ならしないほうがずっとましです。

民主党などの野党は、とにかく「安倍嫌い」の立場から、安倍総理の主張は全く間違いであり、自分たちが正しいものとして、物事を考えているようです。そうして、そのスタンスで安倍総理に対峙するものですから、とにかく憲法解釈の変更による集団的自衛権に関わる、安保法制は違法として、安倍総理に対峙しようとします。

そのため、全く話が噛み合いません。そうして、いずれ妥協の段階に入るとは思いますが、安倍総理の立場からすれば、民主党などの言うとおりに妥協してしまえば、まともな「戦争抑止法案」とはなりえず、それこそソロモンの裁きの「半分の赤ん坊は、いないより悪い」という結果を招いてしまい、とんでもないことになってしまうため、妥協はできません。そのため、無意味な審議は長引くばかりです。

ドラッカーは、何が受け入れられやすいか、何が反対を招くから触れるべきでないかを心配することは無益であって、時間の無駄だと言います。心配したことは起こらず、予想しなかった困難や反対が突然ほとんど対処しがたい障害となって現れるとしています。

かつての自民党は、安全保障に関して、非常に曖昧な態度をとりました。これが、今日の事態を招いたことも否めません。これは、ここで説明すると長くなってしまうので、かわりに以下の動画を掲載させていただきます。


この動画をご覧いただければ、「日本は戦後集団的自衛権を行使していない」は大嘘であることが良くご理解いただけるものと思います。


この動画をご覧いただければ、内閣法制局の言っていることは意味不明であることがわかります。第2回サンフランシスコ講和条約~吉田内閣末期にも、集団的自衛権の解釈はコロコロ変­わっています。「日本は戦後集団的自衛権を行使していない」は大嘘であることがわかります。


この動画をご覧いただければ、鳩山一郎内閣の林修三内閣法制局長官のもと、安全保障政策は大きく前進したことが理解できます。「日本は戦後集団的自衛権を行使していない」という主張は全くの大嘘であることがわかります。

メディアでは、「戦後一貫した憲法解釈を守ってきた内閣法制局」と「それを変えようとしている安倍内閣」との構図で報道されています。しかし、これはそもそも大嘘であることがわかります。

それどころか、岸信介・池田勇人内閣では核武装まで容認し、集団的自衛権の行使など自明でした。そもそも、日米安保条約など、集団的自衛権を行使するための条約であるという理解が当たり前でした。そうして、現実には、日本はアメリカの基地を日本に置くということで、集団的自衛権を行使しています。

上の三つの動画では説明されていませんが、朝鮮戦争勃発から池田内閣までの解釈をすべてひっくり返したのは佐藤栄作内閣の高辻正己長官です。法制局がのたまう「戦後一貫した憲法解釈」など、せいぜい佐藤内閣・高辻長官以来の話にほかなりません。

佐藤栄作政権期に境に集団的自衛権の解釈は変わっています。以前の「(集団的自衛権を)持っているから行使できる(あるいはその都度考慮する)」から、「持っているが行使はできない」への変化が始まりました。この時代には、ベトナム戦争がありました。日本に集団的自衛権はあるが、米国のために他国に自衛隊を派兵することはできないということで、社会党との国会運営をめぐる調整で、佐藤政権が妥協したためこのような妥協が行われました。

さてこの妥協がその後どのような結果を招いたのか現状を見ていれば、よく理解できます。

ドラッカーは、意思決定における、妥協について『経営者の条件』で以下のように語っています。
 何が受け入れられやすいかからスタートしても得るところはない。それどころか、妥協の過程において大切なことを犠牲にし、正しい答えはもちろん、成果に結びつく可能性のある答を得る望みさえ失う。
 さて、佐藤政権による妥協と、その後政権による妥協の継続が、今日のような状況を真似いていて、安倍総理が苦労をしているということです。

まさに、先のドラッカーの言葉の通りです。

最初から誰が正しいか何が受け入れられるかで決定してはならない

最初から安倍嫌いによる、野党の自分たちが正しいとか、佐藤内閣のように、何が受け入れられやすいかで、意思決定をしてはならないのです。そのような意思決定をしているから、今日の国会審議は不毛なものになっているのです。

これを打開するには、野党側はつまらない「安倍嫌い」をすっぱりやめて、何が正しく、何が間違いかを考えるようにすべきです。

安倍自民党としては、佐藤内閣における妥協の内容をわかりやすく説明して、妥協によって、日本の安全保障は、まるで「半分の赤ん坊」のようになっている現状を訴え、従来の憲法解釈に戻す旨を直截に国民に訴え、過去の妥協の失敗を繰り返すべきではありません。

今回、妥協をしてしまえば、日本の「安全保障」は機能しなくなり、それこそ中国の思う壺です。そうなれば、中国はますます居丈高になることは必定です。というより、中国は過去の日本が「半分の赤ん坊」のような、安全保障法制しか持ち合わせていないので、その隙に乗じてアジアで自分たちの好き勝手、やりたい放題をしてきたのです。今回妥協すれば、与党はドツボにはまってしまいます。

いずれにしても、いくら野党が大騒ぎしても、自民党は今回は妥協せず、安保法制は参院でも承認されることになると思います。そうして、数年経ても戦争は起こらないということになり、マスコミも過去の安保法制や、PKO法案などのようにいずれ、これに反対することもなく、当然のこととして報道することになるでしょう。

このまま野党や、左翼が「安倍嫌い」の立場で、反対を続ければ、悲惨な末路が待っていると思います。その兆候はもうみられています。

特に、最近の安倍政権の支持率は上昇気味で、しかも若者層の指示が目立っています。それについては、以下の産経新聞の記事をご覧になって下さい。
安倍内閣の支持率は本当に底を打ったのか? 実は安倍政権を支持しているのは若者たち
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部データのみ引用させていただきます。

(1)昨年8月(2)今年2月(3)6月(4)7月(5)8月の5回にわたり世代別の安倍内閣支持率を見てみると、男性はすべての調査で(1)20代(2)30代の順で支持率が高いという結果に。一方、女性はかなりのばらつきが見られるが、それでも20代は5回の調査中4回も3位以内に入っている。
野党は、「安倍嫌い」で、頭の回路が狂い、「何が正しい、何が間違い」という議論で、意思決定しません。さらに、野党は、日本国の安全保障にに関しても最初から多数の国民に受け入れられやすい議論で意思決定をしています。そのため、まともな意思決定ができません。このままでは、野党もドツボにはまります。

これを続けていれば、ドラッカー氏が語るように「正しい答えはもちろん、成果に結びつく可能性のある答を得る望みさえ失う」ことになり、機能不全に至ってしまいます。もうすでに、そうなりかけています。安倍内閣の支持率が上がっても、野党の支持率はほとんど上がっていない事実がその査証だと思います。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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【関連図書】

憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使は、「違憲」「合憲」と即断する前に読んでいただきたい書籍三冊を以下にチョイスさせていただきました。

日本人が知らない集団的自衛権 (文春新書)
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賛成・反対を言う前の集団的自衛権入門 (幻冬舎新書)
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2015年9月4日金曜日

中国、100兆円規模の資金逃避か “宴の後の厳しい現実”―【私の論評】中国経済を見れば、貿易・経常収支は黒が良いという認識は非常識であることがよくわかる!


「抗日戦争と世界反ファシズム戦争勝利70周年」の記念行事で閲兵する習近平国家主席=3日、北京
抗日戦争勝利70周年記念の軍事パレードで「強い中国」を強調した習近平国家主席。しかし、北京上空の人為的な青空は4日午前、再び汚染された。「閲兵ブルー」と同様、株や人民元を強権的に誘導する政策効果も長くは続かない。海外投資家は不信感を強め、100兆円規模の巨額資金も流出、“宴の後”には厳しい現実が待ち受けている。

 北京市内の微小粒子状物質「PM2・5」を含む汚染指数は4日午前、「不健康」レベルを示す155を記録。普段の大気汚染状態に戻った。

 上海株式市場でも、政府系とみられる資金で人為的に買い支えられてきたが、政権のメンツを保つための「パレード相場」も終わりそうだ。

 すでに株価の乱高下をめぐって英ヘッジファンド中国部門の女性トップが拘束されたと報じられた。また、ロイター通信は、規制当局の会合に呼び出されたあるファンドの幹部が、友人に「もし私が戻ってこなかったら、妻の面倒をみてくれ」と伝えたというエピソードを紹介。ロイターは別のコラムで「中国の強権的な手法が投資リスクを大きくしている」と警鐘を鳴らす。

 実体経済も厳しい。中国国家統計局などが公表した製造業の景況感指数は3年ぶりの低水準となった。大気汚染を改善するため、1万2000カ所余りの工場の操業を停止させたことも影響したとされるが、問題がより根深いのはいうまでもない。

 そして中国経済の異変を象徴するのが資金流出だ。「中国のアキレス腱は対外資本収支」とみるのは武者リサーチ代表の武者陵司氏。「2013年末から15年3月末の間の経常黒字は2952億ドル(約35兆円)だったが、(本来なら経常黒字で増えるはずの)対外純資産残高は逆に5922億ドル(約71兆円)も激減しており、合計8874億ドル(約106兆円)の対外資産価値が消失した計算になる。消失した金額の巨額さを説明できるのは資本逃避だけだ」と分析している。

 人民元政策が迷走している背景にも資金流出問題がありそうだ。8月に突如人民元を切り下げた習政権だが、今度は一転して人民元の売り規制に転じた。武者氏は「景気対策のためには元安が必要だが、それは中国経済の命綱である資金流出を招く。二律背反に当局が追い込まれている」と指摘している。

 抗日行事直前の2日には、国際通貨基金(IMF)が報告書を公表、「中国の景気減速に伴う金融市場の混乱が収まらず、新興国経済の先行きは厳しさが増している」と指弾した。

 5日までトルコで開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でも中国経済が主要議題となり、IMFのラガルド専務理事が世界経済の先行きに懸念を表明する見通しだ。

 抗日行事には日本や欧米主要国の首脳が不参加だったが、経済面でも世界の中国離れが加速しているようだ。

【私の論評】中国経済を見れば、貿易・経常収支は黒が良いという認識は非常識であることがよくわかる!

昨日も中国「抗日70周年パレード」について、掲載しました。なぜ、中国がこのパレードを実行しなくてはならなかったのかについて詳しく解説させていただきました。

その答えは、簡単にいえば、現中国政府の統治の正当性が希薄であるということにつきます。まだ、ご覧になっていない方は、是非ご覧になって下さい。

さて、中国経済をよく見ていると、経済に関する知見が深まります。経常収支などという言葉を勘違いする人も大勢いて、まるで家計のように考えて、経常黒字が黒であれば、経済にとって良いことであり、経常収支が赤であれば、経済にとって悪いことと認識している人々が大勢います。

国際収支、およびその要素のいずれかが赤字とか黒字ということ自体は何の意味も持たない


しかし、これは全くの誤りです。これは上の記事からも良く理解できます。その部分を上から引用します。
「中国のアキレス腱は対外資本収支」とみるのは武者リサーチ代表の武者陵司氏。「2013年末から15年3月末の間の経常黒字は2952億ドル(約35兆円)だったが、(本来なら経常黒字で増えるはずの)対外純資産残高は逆に5922億ドル(約71兆円)も激減しており、合計8874億ドル(約106兆円)の対外資産価値が消失した計算になる。消失した金額の巨額さを説明できるのは資本逃避だけだ」
これを見ても、たとえ経常収支が真っ黒であっても、対外純資産残高はマイナスということであり、これは現状の中国の経済をみれば、決して良ことではないことを示しています。特に中国においては、対外金融純資産(要するに中国が外国に貸し付けているお金)がかなり減っています。

さらに、対外金融純資産残高(要するに日本国が外国に貸し付けているお金)に関してしは、過去の日本が深刻なデフレのときであっても、大幅な黒字どころか、世界一だったことも留意すべきてす。これをもって、日本政府には借金がありますが、かといって、日本国そのものが借金づけなどということはなく、日本は世界で一番海外にお金を貸し付けていた国ということになります。




しかも、この金額はバブルの頃よりも増えています。では、これが良いことかといえば、そんなこともいえません。なぜ、バブルの頃よりも対外金融純資産が増えているかといえば、日本は深刻なデフレ・円高にみまわれていたため、酷いデフレのために、日本国内ではモノが売れず、日本国内で新たな設備投資や人材投資をしても無意味なので、多くの企業などが海外に投資をしたということです。

さらに、円高ということもあり、日本国内で生産して、海外に輸出しても、無意味になったため、さらに、日本国内に投資するよりも、海外に投資をして、海外でモノを生産して、そこで売るか輸出するほうが良いということになって、海外への投資が増えたのです。

国内のデフレと、円高という二重の重荷から、逃げるため、多くの企業などが、海外に投資をしたため、対外金融純資産がもともと高かったものが、デフレのまっただ中であるにもかかわらず、バブルのときの水準をも上回ったということです。

これは、日本の経済に良いことかといえば、決して良いこととはいえませんでした。本来、日本がデフレ円高でなければ、海外投資に回っていたお金も、もっと日本国内に投資され、この対外金融純資産がバブルの時の水準を上回るなどということはなかったかもしれません。

これと同じように、経常収支や貿易収支などが、黒になったから良いとか、赤になったからダメとか、そんな単純な認識は、完璧な間違いです。赤字や、黒字の内容を分析した上で、初めてそれが日本経済にとって良いことなのか、悪いことなのかを理解することができます。

このような事例は、中国経済をみていると良く理解できる事例があります。そのもう一つの事例として、過去の中国の貿易黒字について述べます。これについては、以前このブログに掲載したことがありますので、その記事のリンクを以下に掲載します。
中国:1月の貿易黒字は過去最高-内需の弱さ浮き彫りに―【私の論評】安倍政権批判のためには何でもする日本の敵マスコミ諸氏! 中国は貿易黒字で大躍進ではないのですか! 嘘つき日本マスコミの実体が良く理解できる記事(゚д゚)!
中国の輸入は激減して、それが過去最高の貿易黒字になっているという。日本は?

この記事は、今年の2月のものです。この当時の中国の状況をみていれば、貿易黒字が過去最大になったとしても、それは中国の経済が良くなったことを意味しているのではなくて、中国の経済がかなり悪化していることを示していました。それに関する部分のみを、以下に引用します。
税関総署(ブログ管理人:無論これは中国の役所です) が8日発表した1月の輸入は前年同月比19.9%減少し、約5年ぶりの大幅減。ブルームバーグ・ニュースがまとめたアナリストの予想は3.2%減だった。輸出は3.3%減少(予想中央値5.9%増加)し、貿易黒字は600億ドルに達した。
原油や鉄鉱石など商品への国内需要が減少する中で、不動産価格下落と製造業の活動縮小は中国政府が景気刺激策を強化する必要がある可能性を示している。また、輸出と輸入が減少し、貿易黒字が過去最高となったことは、政府の為替レート管理を複雑にする。

ブルームバーグのエコノミスト、トム・オーリック氏はリポートで輸出減少に関して、「競争力の低下と外需の弱さへの懸念を浮き彫りにするものだ」と指摘。同氏は輸出入ともに驚くべき数字で「刺激策へのさらなる動きを強めるものだ」と述べた。同氏は1-3月に政策金利が1度引き下げられると予想する。
要するに、この当時の中国の輸入が激減したため、輸出も減少はしているものの、輸入ほどは激減していないため、貿易黒字が過去最高になったということです。

これをご覧いただいても、貿易黒字が、過去最高だとしても、この中国の事例のように、輸入が激減したためにこのようなことになる場合もあるのです。

この事例をみてもわかるように、貿易黒字が大幅に増えたからといって、それが必ずしも経済が良いことの証にはならないのです。

貿易赤字も、単純に赤字だからといって、経済が悪いということにはなりません。たとえば、景気が突然かなり良くなって、消費がかなり増えたとします。そうなれば、国内企業はどんどんものが売れることになります。

しかし、突然消費が上向けば、企業もそれにすぐ対応することはできません。なぜなら、生産を増やすにしても、まずは、製造設備を増やすために、設備投資をして、さらにその設備を動かすために、人を雇わなければなりません。さらに、その人を教育・訓練して、設備を我道できるようにしなければなりません。

そうなると、せっかく消費が上向いているにもかかわらず、企業はすぐには増産することはできません。それでも、消費は上向いていますから、消費者の要望を満たすため、貿易会社は海外からの輸入を増やします。

そうなると、輸出はそのままで、輸入が増えるため、貿易赤字になります。だから、貿易赤字になったからといって、それ自体が即日本経済が悪化しているなどという認識は全くの間違いです。

以上のように経常収支や、貿易収支なとが、黒になったから、即それが経済が良いこと、赤になったから、即それが経済に悪いこととするのは、全く誤った認識です。赤字になろうが、黒字になろうが、その原因を分析してみてはじめて、その意味するところが理解できるものであり、数値そのもが良い悪いを示すものではありません。

こんなことは、企業業績についてもいえることです。皆さんは、Amazonという企業はご存知でしょう。最近もかなり業績が良いようです。しかし、このAmazonも売上は過去最大であるにもかかわらず、純利益は大幅減というときがありました。

なぜそうなっていたかといえば、かなりの額の先行投資をしていたからです。このような、先行投資があったからこそ、現在のAmazonは市場において盤石の地位を築いたのです。


Amazonのプラスデータの変化 

しかし、マスコミは経常収支や、貿易収支に関して、誤った認識で報道することが多いです。企業業績に関しても、見誤ることも多いです。私たちは、そのような報道に騙されるべきではありません。

そうして、中国の経済は、ここでは詳細は掲載しませんが、正しい見方をしても、どうみても悪化しています。そうして、しばらくはこの状態が続きそうです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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【関連図書】

中韓が、なぜ抗日記念式典なる馬鹿げた奇行をするのか、このような奇行が繰り返され真の理由は何なのか、そのような疑問に答えてくれる書籍三冊を以下にチョイスさせていただきました。

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2015年9月3日木曜日

習主席&朴大統領、安倍首相にすり寄り 背景に経済的苦境 日中韓首脳会談へ―【私の論評】安倍総理への擦り寄りと同時に、抗日70周年パレード挙行というこの矛盾の源は中共正当性の脆弱さにあり!


中韓首脳会談で、習主席(右)と握手する朴大統領。危険な一線を踏み越えた

 中国の習近平国家主席と、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が、安倍晋三首相に折れてきた。北京の人民大会堂で2日、中韓首脳会談を行い、来月末にも、ソウルで日中韓首脳会談を開催する方向で一致したのだ。背景には、安倍晋三首相の「米議会演説」や「戦後70年談話」が成功したうえ、中韓両国の経済的苦境もありそうだ。

 習氏「(中韓)両国人民は日本の侵略に対する抵抗と、民族解放の戦いにおける勝利を通じて団結し助け合ってきた」

 朴氏「両国がともに経験した苦しい歴史が、今日の友好の大切な土台となっている」

 首脳会談の冒頭、両首脳はこう強調したという。韓国は戦前、日本の一部であり、「両国人民は…抵抗」という歴史認識はやや疑問だが、中韓の蜜月関係を見せつけるシーンといえそうだ。

 会談では、安倍首相を批判するやりとりもなく、韓国が自国開催に向けて調整中だった日中韓首脳会談に中国側が出席の意向を示した。日本政府高官も同日夜、基本的に受け入れる考えを示し、2012年5月以来の3カ国首脳会談が開かれる見込みとなった。

 中韓首脳が軟化した背景は何なのか。

 ジャーナリストで東海大学教授の末延吉正氏は「安倍外交が成功したといえる」といい、続けた。

 「安倍首相は4月、米上下両院合同会議で演説して日米同盟を深化させた。安全保障関連法案も成立の一歩手前までこぎ着けている。日米同盟の抑止力を強めた意味は大きい。8月14日に発表した戦後70年談話はよく構造設計されていて、中韓だけでなく、国内からも文句のつけにくい内容だった。こうしたなか、中韓とも経済的に厳しくなり、日本に強硬姿勢を取り続けられない状況になってきた。日中韓で外交を前進させる環境が整った。ただ、これからが勝負だ。米国も含めて国益をかけた主導権争いが展開されるだろう」と語っている。

【私の論評】安倍総理への擦り寄りと同時に、抗日70周年パレード挙行というこの矛盾の源は中共正当性の脆弱さにあり!

中韓は、上のように安倍総理に擦り寄ってきているのですが、それとは裏腹に本日は盛大な「抗日70周年パレード」を実行しています。中国共産党と軍は本日3日、北京市中心部の天安門広場と目抜き通りの長安街で「抗日戦争勝利70周年」の記念行事を実施し、軍事パレードで国産弾道ミサイルなどの新兵器を初公開、軍事力を国内外にアピールしました。
抗日70周年パレード
この抗日戦争勝利のパレードは、習近平国家主席が2012年に就任してから最大の政治イベントであり、1949年の共産党政権発足以降、抗日戦争勝利をテーマに軍事パレードを実施するのは初めてのことです。

習主席は「中国人民は巨大な犠牲を強いられながら、世界の反ファシズム戦争勝利に大きな貢献をした」と述べ、「戦勝国」としての立場をアピールしました。また、「世界各国は協力を核心とする新たな国際関係を積極的に構築すべきだ」とも述べ、中国が国際秩序への関与を強めていくことに意欲を示しました。また、中国軍の人員を30万人削減すると発表しました。

抗日70周年記念パレード前に演説した習近平

会場となった天安門広場に集まった軍隊の人員数は12,000人、軍装備品は500種類にものぼりました。また、200あまりの戦闘機が色煙で上空をカラフルに彩りました。

天安門広場上空を色煙で華やかにいろどった航空機

日本と戦ったとされる、退役軍人が100人以上も参加しました。平均年齢は90歳で、最高齢は102歳でした。習近平国家主席はこのパレードの指揮をとり、世界中から訪れる外交関係者を歓迎しました。

中国共産党は、日本の非人道的な占領は、中国に深い傷を残し、地政学的な緊張の根底になっていると主張しています。

抗日闘争は、中国共産党草創期の根幹をなすものです。共産党は自分自身を、日本によって破滅寸前まで追い込まれた偉大な文明国家を、解放してよみがえらせた救世主だと位置づけているのです。

そうして、習近平国家主席はこのシナリオにのっとり、「中国の大復興」といったスローガンを掲げ、「チャイニーズドリーム」を唱えています。

今回の「70周年抗日パレード」は、この共産党の歴史物語の集大成となるものでした。

中国は世界中のリーダーをこのパレードに招待しましたが、日本の安倍総理はもとより、アメリカのオバマ大統領も参加を見送りました。また、ヨーロッパのリーダーたちは、チェコを除いて全部参加しませんでした。北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)第1書記も参加しませんでした。

参加したのは、以下の諸国です。

【首脳級】(30人)

ベラルーシ大統領、ボスニア・ヘルツェゴビナ大統領評議会議長、カンボジア国王、チェコ大統領、コンゴ民主共和国大統領、エジプト大統領、カザフスタン大統領、キルギス大統領、ラオス国家主席モンゴル大統領、ミャンマー大統領、パキスタン大統領、韓国大統領、ロシア大統領、セルビア大統領、南アフリカ大統領、スーダン大統領、タジキスタン大統領、東ティモール大統領、ウズベキスタン大統領、ベネズエラ大統領、ベトナム国家主席、エチオピア首相、バヌアツ首相、アルゼンチン副大統領、キューバ国家評議会第1副議長、アルジェリア下院議長、ポーランド下院議長、北朝鮮・朝鮮労働党書記、タイ副首相

【政府代表】(19人)

オーストラリア退役軍人相、ブラジル国防相、フランス外相、ハンガリー外相、インド外務副大臣、イタリア外相、リビア外相、マレーシア首相特使、オランダ国務相、チュニジア国防相、ニュージーランド元副首相、シンガポール元副首相、イギリス前司法相、カナダ駐中国大使ら大使館員、ドイツ(同)、ルクセンブルク(同)、パプアニューギニア(同)、米国(同)、EU(同)

【国際・地域組織】(10人)

国連事務総長世界保健機関(WHO)、国連教育科学文化機関(ユネスコ)、国連工業開発機関(UNIDO)、赤十字国際委員会(ICRC)、独立国家共同体(CIS)、上海協力機構上海協力機構地域対テロ執行委員会、集団安全保障条約機構、アジア相互協力信頼醸成措置会議

出席者は、習近平国家主席が期待していたより多くはありませんが、彼にとってそれは大きな問題ではないのかもしれません。一番重要な観客は、テレビでパレードを見る数億人の中国人民だからです。

そもそも、中国も韓国もこのブログ冒頭の記事のように、中韓は巧みな安倍外交により、国際的に孤立しつつあるなか、両国とも経済が低迷しています。だからこそ、日本に対して擦り寄りの姿勢を見せているわけです。

それに、そもそも、現在の中華人民共和国はの建国は1949年、韓国の建国は1948年です。日本の敗戦は、1945年です。本日開催された、現在の中国、すなわち中華人民共和国による「抗日70周年パレード」はここからすでに矛盾しています。

日本が敗北した後に独立した中国と韓国が、「抗日70周年記念パレード」を祝うなどということは、歴史的にみて全くあり得ないことです。

事実、日本が戦争をしたのは、現在の大陸中国ではなく、戦後台湾に逃れた中華民国が大陸中国にあったときに、この中華民国と戦っています。ブログ冒頭の記事では、パレードはに「日本と戦ったとされる、退役軍人が100人以上も参加しました。平均年齢は90歳で、最高齢は102歳でした」という記述がありますが、これはかなりの矛盾です。

この退役軍人とやらに、直接インタビューしてみれば、それはすぐに虚偽であるということがわかるでしょう。もし、彼らが本当に戦ったとすれば、その当時は、中華民国に属していた人がほとんどで、戦後に台湾に逃れずに大陸中国に残った人々であると考えられます。

そうでない人は、当時は、毛沢東の共産党ゲリラに属した人たちかもしれませんが、彼らが戦ったのは、中華民国であって、日本とは戦ってはいません。たとえ、戦ったとしても、本格的な戦争で戦ったというのではなく、ほんの小競り合い程度のものと考えられます。

国民党軍空爆を避け、延安から脱出する毛沢東
韓国に関しては、日本が大東亜戦争に敗北したときには、日本の統治下にありました。独立したのも、日本と戦って独立を勝ち取ったというわけではなく、大東亜戦争後にアメリカに統治され、その後に独立しました。

こんな歴史修正は明白なことなので、多くの国々が、「抗日70周年パレード」には参加しなかったのです。特に第二次世界大戦の真の戦勝国である、アメリカや、EUの国々は、そんなことは重々承知であり、そのような歴史を修正するパレードに参列してしまえば、中国の歴史修正を認めたことになるし、それを認めれば、中国を戦勝国として認めることになるからです。

このような歴史的事実があるからこそ、過去の中華人民共和国は、「抗日70周年パレード」など一度も行ったことはありませんでした。

しかし、今日それを行うにはそれなりの意味があります。これは、上で述べた中国共産党の、「日本の非人道的な占領は、中国に深い傷を残し、地政学的な緊張の根底になっているとの主張」に多いに関係があります。

先に述べたように、共産党は自分自身を、日本によって破滅寸前まで追い込まれた偉大な文明国家を、解放してよみがえらせた救世主だと位置づけています。

なぜこのような主張をするかといえば、そうしなければ、現中国共産党中央政府の正当性を主張できないからです。共産党中央政府は、建国当初とてつもない惨禍を中国人民にもたらしました。

これについては、以前のこのブログでも掲載したことがありますので、その記事のURLを掲載します。
陳腐すぎるアカ攻撃 菅や仙谷などタダの政権亡者―共産主義は良い思想ですか?
菅氏が総理大臣だった頃の民主党政権の管理総理と閣僚
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事はまだ日本が菅内閣による民主党政権だった頃の記事です。以下に、中国人民の惨禍の部分を掲載します。
20世紀は「戦争と革命の世紀」だったということができます。そして、革命はもちろん多くの戦争に関わって、多数の犠牲者を出したのが、共産主義でした。この共産主義の総括をすることなくして、21世紀の世界を語ることはできません。  
◆犠牲者は1億人
平成9年(1997)にフランスで『共産主義黒書』が刊行されました。本書は、共産主義の犯罪を厳しく検証しています。編者ステファン・クルトワによると、共産主義による犠牲者は、8,000万人から1億人にのぼるとされます。この数字は、ヒトラーのナチズムによる犠牲者数とされる2,500万人を軽く上回ります。(恵雅堂出版から一部翻訳あり) 
クルトワは同書において、共産主義体制により殺害された犠牲者数の国・地域別の一覧を提示しています。それによると、 
ソ連       2,000万人
中国       6,500万人
ベトナム       100万人
北朝鮮       200万人
カンボジア     200万人
東欧         100万人
ラテンアメリカ     15万人
アフリカ       170万人
アフガニスタン  150万人
コミンテルンと権力を握っていない共産党   約1万人
-----------------------------------------------------
総計         約1億人
となっています。 
ソ連と中国における犠牲者が圧倒的に多いわけですが、ソ連に関してはかなり控えめの数字です。次に書くように、6,200万人という数字も出されているからです。
・・・・・・・・・・・〈中略〉・・・・・・・・・・ 
◆中国の場合
 毛沢東は、昭和32年(1957)2月27日、「49年から54年までの間に80万人を処刑した」と自ら述べています。(ザ・ワールド・アルマナック1975年版)。周恩来は、同年6月、全国人民代表大会報告で、1949年以来「反革命」の罪で逮捕された者のうち、16%にあたる83万人を処刑したと報告しています。また、42%が労働改造所(労改、強制収容所)に送られ、32%が監視下に置かれたと述べています。 
毛沢東は、その後もさまざまな権力闘争や失政を続けましたが、丁抒らの研究によると、大躍進運動と文化大革命によって、2,000万人が死に追いやられたとされています。  
『共産主義黒書』では、ジャン・ルイ・マルゴランが、ほぼ信頼できる数値として、内戦期を除いた犠牲者の数を、次のように総括的に提示しています。 
・体制によって暴力的に死に至らしめられた人
 700万~1,000万人(うち数十万人はチベット人)
・「反革命派」としてラーゲリに収容され、そこで死亡した人
約2,000万人
・昭和34~36年(1959~61)の「大躍進期」に餓死した人
 2,000ないし4,300万人
このようなとんでもない惨禍をもたらした中国では、どの家庭でも、親戚などの身内や、その縁戚まで含めると、少なくとも誰か一人くらいは毛沢東などにより、命を失っているという状況です。ですから、本来建国の父である毛沢東を国家の英雄として祀り上げることができません。

そうして、建国の父がそのありさまでですから、現中国共産党中央政府の統治の正当性など、もともと希薄なわけです。こんな、中国ですから、建国以来毎年平均して、2万件もの暴動が発生したといわれています。それでも、中国は軍事力によって、人民をおさえつき、何とか治安を維持することができました。

しかし、2010年あたりからは、暴動の件数など発表しなくなり、おそらく毎年10万件以上あるのではと推測されているという状況です。

そんな状況の中で、習近平政権が登場したわけです。習近平としてして、自分を中心とする共産党政権の統治の正当化し、その存立基盤を盤石にしようとしました。

そのため、上にも掲載したように、習近平国家主席はこのシナリオにのっとり、「中国の大復興」といったスローガンを掲げ、「チャイニーズドリーム」を唱えたのです。

そうして、今回の「70周年抗日パレード」は、この共産党の歴史物語の集大成となるものだったのです。

習近平の掲げる中国夢、クリックすると拡大します。

要するに、今回のパレードは、中国共産党の正当性を盤石にするための、共産党の修正歴史物語の集大成であるということです。だからこそ、このパレードは、共産党政府の人民に対するデモンストレーションなのです。

 そのような嘘物語を人民にデモンストレーションしなければならない、中国の体制は決して盤石とはいえません。

実際、最近では、経済も落ち込み、さらに西側には、第二イスラム国の脅威も迫り、AIIB(アジアインフラ投資銀行)の失敗は確実のものとなり、外交的には安倍外交に完膚なきまでに打ちのめされ、そのため、習近平は国内では、日本を悪者にしたてて、中国内の求心力を高め、国外では日本に対する擦り寄り姿勢を示す、という苦しい状況に追い込まれているのです。

中韓の安倍総理への擦り寄りと、抗日70周年パレード挙行というこのあい矛盾した、出来事が、ほぼ同時に起こっているのは、こうした苦しい国内事情が中国にはあるからです。

韓国も同様です。韓国の場合も、日本から独立を勝ち取ったというわけでもなく、建国直後から独裁政治が行われました。民主化されたのは、1987年6月29日からであり、韓国の盧泰愚大統領候補(民主正義党代表委員)が発表した政治宣言で正式名称は「国民の大団結と偉大な国家への前進のための特別宣言」により民主化が行われました。そのため、韓国政府の正当性は元々希薄です。

韓国は共産主義国家ではなかったので、上で示した、共産主義黒書には、記載がありませんが、独裁政権のときには、中国ほどではありませんが、多くの国民を虐殺したという忌まわしい出来事がありました。

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民主化の進展によってそれまで隠されてきた数々の事件が明るみとなりましたが、その規模の大きさと、自分たちの政府・軍が国民を大量に殺戮したという歴史的事実の重みにより、韓国人自身が歴史から目を背け、真実を明らかとすることを拒んできた。

以下に主な事件を列挙します。

済州島四・三事件

1948年4月3日に済州島で起こった島民の蜂起にともない、韓国政府・韓国軍・韓国警察などが引き起こした島民の虐殺事件。島民の5人に1人にあたる6万人が虐殺され、済州島の村々の70%が焼き尽くされた。韓国軍は島民の住む村を襲うと、若者達を連れ出して殺害するとともに、少女達を連れ出しては数週間に渡って輪姦、虐待を繰り返し惨殺した。

麗水・順天事件 

1948年10月19日、済州島四・三事件鎮圧のため出動命令が下った国防警備隊第14連隊(約2,000名)が反乱を起こした。韓国政府は直ちに鎮圧部隊を投入し、1週間後の10月27日には反乱は鎮圧された。事件後、韓国政府の左翼勢力摘発は過酷を極め、反乱部隊に加えて、反乱共謀者として非武装の民間人8000名を殺害した。

聞慶虐殺事件

1949年12月24日に大韓民国慶尚北道聞慶郡(現:聞慶市)で、共産匪賊に協力したなどとして、韓国陸軍第2師団第25連隊の第7中隊第2小隊第3小隊が非武装の女性、子供、老人の88人を射殺した。事件は長らく共産匪賊による仕業とされていたが、2007年6月26日に韓国政府の犯行であったことが明らかにされた。

保導連盟事件 
1950年6月25日の朝鮮戦争勃発を受け、李承晩大統領の命令により、韓国軍や韓国警察が共産主義からの転向者やその家族を再教育するための統制組織「国民保導連盟」の加盟者や民間人など、少なくとも20万人以上を大量虐殺した事件。

江人道橋爆破事件

1950年6月28日午前2時30分頃、およそ4,000人の避難民が渡っていた漢江人道橋を、避難民もろとも韓国軍が爆破し、約500~800名が死亡した。
この橋梁の爆破によって、前線で北朝鮮軍と交戦中であった韓国軍主力の退路が断たれ、背後を遮断されたことを知った各部隊は雪崩を打ったように後退を開始し、戦線は瞬く間に崩壊することとなった。

国民防衛軍事件

中国義勇軍の参戦による戦局の悪化を打開するべく韓国政府は国民防衛軍を組織した。1951年初頭、韓国は北朝鮮・中国両軍の攻勢を受け、前線からの後退を決定し、およそ50万の将兵が大邱や釜山へと撤退することとなった。この撤退の際に、国民防衛軍司令部の幹部達が国民防衛軍に供給された軍事物資や兵糧米などを不正に処分・着服。

その結果、極寒の中を徒歩で撤退する将兵達に対する補給物資が不足し、9万名余りの韓国軍兵士が餓死・凍死する「死の行進」となった。

江華良民虐殺事件

1951年1月6日から1月9日にかけて、韓国軍、韓国警察、民兵は北朝鮮統治時代に北朝鮮に協力したなどとして島民212人から1,300人を虐殺した。この事件前の1950年には、保導連盟事件で、すでに140人の島民が虐殺されていた。

山清・咸陽良民虐殺事件

 1951年2月8日、韓国陸軍第11師団第9連隊第3大隊は
居昌郡に隣接する山清郡今西面、咸陽郡柳林面の一帯にある12の村々の住民705人を集め、パルチザン殲滅と称して殺害した。

居昌良民虐殺事件

1951年2月9日から2月11日にかけ、2月8日に山清・咸陽良民虐殺事件を引き起こした 韓国陸軍第11師団第9連隊第3大隊が共産匪賊のパルチザンを殲滅するためと称し、無実の市民を719名を虐殺した。犠牲者お内訳は、3歳以下100人、4~11歳未満191人、11歳~15歳未満68人、15歳~60歳未満294人、60歳以上66人であった。

韓国においても、建国後これだけ酷い虐殺が繰り返されたため、韓国政府自体の統治の正当性は希薄です。そのため、民主化された後の韓国政府も統治の基盤が脆弱であるため、過去の歴史を修正し、日本を悪者に仕立てて、統治の正当性を強化しようと努力し、「慰安婦問題」などもその過程ででてきたものです。

以上簡単にまとめると、中韓は、政府の統治の正当性が低いため、それを補うため日本を悪者に仕立てる歴史修正を行ってきたという過去の歴史があるということです。これがうまくいかなければ、政府の存在そのものが危険に晒されるのです。本来は、全く新たな政府をつくりだすとか、今の政府の統治の正当性を増すべく様々な努力をすべきものを、日本を悪者に仕立てるという安易な道を選んでしまったため、大きななつけが今日まわってきたということです。

日本としては、中韓の擦り寄り姿勢があったにしても、安易に資金援助などするべきではありません。安倍総理としては、すくなくとも、東シナ海の日中中間線の自国側海域で、海洋プラットホーム(軍事転用可)増設の軍事的脅威を取り除くことを約束させ、約束だけではなく、実行させることはもとより、南シナ海の脅威も取り除くことを約束させるべきです。


それにおよばず、現代中国共産党中央政府の国内問題である、民主化、政治と経済の分離、法治国家化に関しても、改善を要求し、その期限ももうけさせるべぎてす。

中国の日本に対する軍事的脅威を取り除いた後、上記の要求を期限付きで実行を開始しはじめたことをもって、中国とまともな交渉にはいり、援助するなり何をするなりの具体的な行動を起こすべきです。そうして、中国が約束をなかなか履行しないのなら、援助はすぐに中止すべきです。

そうして、国内において、憲法解釈変更にによる集団的自衛権の行使に関する安保法制を成立させ、中国に約束を履行させるための担保とすべきです。これがなければ、中国は過去もそうであったように、いつでも約束を反故にすることでしょう。

このようなことを中国が承諾しない限り、安倍総理は習近平にはにこやかに対応しつつも、こちら側からは何もしないという姿勢を堅持すべきです。

韓国に対しては、中国の出方に大きく左右されますから、日本としては、中国への対応を厳しく行い、韓国に対しては、歴史修正の部分に対しては厳しい対応をして、後は放置という方針を貫くべぎです。

私は、そう思います。私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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2015年9月2日水曜日

五輪エンブレム撤回に追い詰めた「ネット捜査」の功罪 森元首相に責任論も… ―【私の論評】現代の高度知識社会に適応できない人々(゚д゚)!

五輪エンブレム撤回に追い詰めた「ネット捜査」の功罪 森元首相に責任論も… 

佐野氏デザインによる五輪エンブレムのポスターを剥がす自治体職員

新国立競技場に続く、五輪エンブレムの使用中止。公表から約1カ月で国家的事業の組織決定を覆したのは、ネット社会の徹底した疑惑追跡だった。ネット上には「ネット民大勝利!」との言葉が踊る一方、制作者の佐野研二郎氏(43)に対する個人攻撃も過熱し、ネットの功罪が浮き彫りに。決断を遅らせ傷を広げた運営側の責任は明確にされず、新国立問題とうり二つの玉虫色の決着となった。

「ネット民大勝利!」「ネットがマスメディアと大手広告代理店に勝利した」…。1日に使用中止が報じられると、ネット上のサイトには、歓喜ともいえるコメントが次々と書き込まれた。

新潟青陵大学大学院の碓井真史(まふみ)教授(社会心理学)は、「ネット上で、類似作品や写真の無断使用など次から次と発覚した。検証には相当多くの人が参加したとみられる。それなりの専門性を持った人もいたと思うが、素人でも力を合わせると、プロでも簡単にできないことができてしまうということ。ネットの集合知で、事実が明らかになったのはすごいことだ」と話す。

検索サイト「グーグル」では画像ファイルを入力すると、類似の画像が表示される機能があるなど技術の進歩もあった。「STAP細胞論文問題でもネットが先行した。リアルな世界では権威ある人を批判することはリスクを伴うが、ネット上は権威に関係なく自由に発言でき、その成果だ」と碓井氏は続ける。

一方で、個人攻撃がエスカレートしたことも事実だ。佐野氏は1日、メディアへの批判とともに「もうこれ以上は、人間として耐えられない限界状況」と深刻なネット被害を訴えた。個人の会社のメールアドレスが話題となり、連日中傷のメールが送られてきたほか、記憶にないショッピングサイトやSNSから入会確認のメールも届いたという。家族や無関係の親族の写真がさらされる事態にもなった。

佐野研二氏


碓井氏は「この人は悪い人となると、何を言っても構わないとリンチのような状況が起きる。リアルな場面では警察が介入して止めることができるが、ネット上ではある方向に動き出すと、止められない怖さがある」と指摘する。

佐野氏にはもちろん非はあるが、対応が後手に回った運営側の責任はうやむやのままだ。

「結局、誰に責任があるのか」。1日の大会組織委員会の会見ではたびたび質問が飛んだが、元財務次官で組織委の武藤敏郎事務総長は、「さまざまな人がかかわった。どこか一カ所に責任を負わせるべきではないと思うし適切ではない」と歯切れの悪い回答に終始。「選んだのは審査委員会。状況に対処して新しいものを作っていくのがわれわれの責任」と繰り返した。

遠藤利明五輪相は2日の衆院文科委員会で、「組織委、審査委員会、デザイナー、三者三様の立場で責任がある」との見解を示した。

そんな中“戦犯”にあげられているのは、元首相で組織委の森喜朗会長だ。関係者の間では、新国立問題に続き、エンブレムまで白紙撤回することで森氏に恥をかかせられないとの配慮が働いた、とする見方が少なくない。森氏は1日、取材陣に囲まれ「残念な結果になった」と問われると「何が残念なんだ」とムッとした表情で語った。

森氏の辞任を求める声は高まっており、スポーツ評論家の玉木正之氏は「遅きに失したが、新国立問題に続いて見直しの方向に進むのは評価できる。国家的プロジェクトで問題が相次いだのだから、森氏は責任をとるべきだ」と語る。

エンブレムのデザインは今後、公募をやり直して選考する。迷走を続ける東京五輪が再び国民の支持を得られる日はくるのか。

【私の論評】現代の高度知識社会に適応できない人々(゚д゚)!

今回の、この出来事は、現代がもうすでに知識社会に突入しているというのに、まだまだ多くの人々がそれに気づいていないことを象徴しているように思えます。

われわれの社会は、もうすでにかなり知識社会に突入しています。これについて、ドラッカーは、歴史の転換期であるとしています。彼は、『ポスト資本主義社会』(1993年)において、この転換期は、1965年から1970年の間のどこかで始まり、2020年頃まで続くと語っていました。

私たちは、そのまっただ中にいて、すでにかなり知識社会に移行わけです。知識社会とは、平たくいうと、富の源泉が、従来のようにモノや、カネ、情報ではなく、知識となる社会のことをいいます。



知識社会に入ってから、知識という言葉の意味も変わりました。従来の知識といわれていたものと、現在の知識といわれるものとの意味あいは異なります。従来の知識ある人とは、とにかくモノを知っている人という意味でした。だから本をたくさん読んで、その中にあるものを記憶しているだけでも、知識人といわれました。

しかし、知識社会における、知識とは、成果を生むための高度に専門化された知識のことです。書籍などに書かれている内容は、知識ではなく情報です。

そうして、この意味での知識は高度化するほど専門化し、専門化するほどに単独では役に立たなくなります。他の知識と連携してはじめて役に立つものになります。知識は、他の知識と結合したとき爆発します。

得意な知識で一流になると同時に、他の知識を知り、取り込み、組み合わせることで大きなパフォーマンスをあげられようになります。だからこそ、現代は必然的に組織社会ともなります。無論、組織とはいっても、従来の知識社会でなかった社会のそれとは随分異なったものになります。

しかしながら、知識社会においては、知識そのものを競争力要因とするわけにはいかないのです。今日の知識社会は、情報の伝達力飛躍的な向上が前提となっています。だから、知識そのものは瞬時に伝播するようになりました。

今日新たな知識であっても、従来と比較するととんでもない速さで陳腐化して、時代遅れとなります。だからこそ、この知識社会において30年、40年にわたって手にすることのできる競争力要因は知識労働者しかないのです。

そうです。知識そのものよりも、より高度な新たな知識を生み出す知識労働者を抱えているかいなかが、現代社会における企業などの組織間競争の中で、勝利を収め続けるための重要な要素となるのです。

このことに佐野研二郎氏はもとより、大会組織委員会の人々も気づいていないのだと思います。彼らは、まだ知識社会になる以前の社会常識で物事に対処しようとしているのです。だからこそ、五輪エンブレム撤回という事態を招いてしまったのです。

ここで、話をもっと具体的にしましょう。知識社会の前提となる、情報化は随分前から整うようになりました。この最初の革命は、印刷技術でしたが、前世紀においては、コンピュータならびにそのネットワークが発展して、今日はさらに高度になりました。

知識そのものが従来と比較すると、かなりのスピードで伝播するようになりました。この恩恵は素晴らしいもので、今日のわたしたちは、コンピュータの前に座っているか、タブレット端末や、スマートフォンであれば、どこにいても、世界中のありとあらゆる、デザインを見ることができます。

これによって、多くの人々が恩恵をうけました。佐野氏もその例外ではなかったことでしょう。デザインでも、その他のアートでも、他の分野でも、最初は先人のつくったものを参考にして、模倣したり、模倣するだけではなく、そのコンセプトを学んだり、その技能や技術を学び、自らの知識を高め、新たな知識を創造していくことが、かなりやりやすくなりました。

そうして、様々な分野の知識を模倣して、自らの素早く事業を展開する人々も現れました。たとえば、iPadやiPhoneを開発したあのスティーブ・ジョブズも模倣の天才した。

これに関しては、以前このブログでも、リミックスという言葉でこのことを掲載しました。ここで解説していると非常に長くなるので、以下にその記事のリンクを掲載します。


Remixの概念は音楽業界からきている
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、いわゆる世間一般でいわれている新しいものなど、実は大部分がリミックスという手法で作成されていることを掲載しました。リミックスに関する部分のみ以下に掲載します。 
家電の開発もそうですが、何か新しいものをつくることの近道、特に私を含めた凡人にとっての近道は、リミックス(REMIX)です。REMIXとは、copy(複写)、transform(変形)とcombine(結合)です。これらをそれぞれ、単独で行うこと、あるいはいくつかを組み合わせて行うことすべてを含みます。音楽の世界でも、テレビ番組でも、映画でも、政治の世界でも、文学でも、アートでも同じです。ただし、Remixということが良くいわれるようになったのは、音楽の世界からです。しかし、ここでは、本題ではないので、詳細はのべません。しかし、皆さんも、古いアーティストとの楽曲など、リミックス版として発売されいることもあることは、よくご存知だと思います。音楽界でいう、リミックスについては、wikipediaなどで調べていただけたら、幸いです。 
あの、アップルコンピュータのOSも、マイクロソフトのOS(ウインドウズ)も同じことです。これらには、ゼロックスが開発したOSがもとになっています。マイクロソフトのwindowsは、アップルからパクったという話しがありますが、そうではありません。あのiPhoneや、iPadもリミックスから成り立っています。これらには、市場に投入する時期に失敗した、ノキアのスマートフォン、タブレット端末の手本がありました。おどろくなかれ、これらは、iPhoneか発売される5年前に原型が完成しており、iPhoneや、iPadの持っているすべてまでとはいいませんが、特徴的な機能はすべて網羅していました。 
このremixの実態については、アメリカの高画質動画サイトvimeoに4回シリーズが投稿されている「Everyghing is a Remix」にあますところなく表現されています。これだけ、分かりやすく、豊富な事例で誰もが短時間で納得できるものを私はいまだかつて見たことがありません。まさに、秀逸な動画です。

以上で、リミックスが何を意味するかお分かりになったものと思います。

ただし、この動画に関しては、英語バージョンなので、日本語バージョンもしくは、日本語字幕のついているものはないかと探してみましたが、ありませんでした。

ただし、TEDには、この動画の作成者が、リミックスについて語っていて、字幕もついているものがありましたので、そのリンクを以下に掲載しておきます。
さて、知識社会である現在では、このようなリミックスがかなり広範にありとあらゆる分野で行われていて、様々なモノ・コトが素早く市場に投入されるようになっています。市場に投入するのが遅くなれば、携帯電話の雄であったねノキアのように昨日の、トップが敗者になってしまうということも頻繁にあります。

今やインターネットで、ありとあらゆるデザインを見ることができるし、そのコンセプトも容易に理解できることが多いですかから、これはデザイン業界の世界も例外ではありません。

上の記事では、「検索サイト「グーグル」では画像ファイルを入力すると、類似の画像が表示される機能がある」と掲載してありますが、これは本当です。

以下はGoolge画像検索の画面です。

検索のキーワードを入れても画像を探しますが、カメラのアイコンをクリックすると、自分のパソコンなどに保存してある写真もしくは、サイトで探した写真のURLを入れることによって、似たような画像を多数検索できます。

本日テレビをみていたら、佐野氏がエンブレム使用例として出した、他者の撮影した、成田空港の写真のことが話題になっていました。

成田氏のエンブレム使用例は、下の写真です。

クリックすると拡大します
上の写真の右の写真は、海外のブログの以下の写真を転用したものです。エンブレムの部分のみ、切り貼りしたものです。

クリックすると拡大します
現在なら、フォトショップという写真編集用のソフトがありますから、この程度のことはインターネットで写真をダウンロードして、それをもとに加工することはそんなに難しいことではありません。

これは、リミックスの初歩的なやりかたということができると思います。東京オリンピックエンブレムに関しても、佐野氏もしく佐野氏部下などが元々のデザインをインターネットで見て、それを元にして作成した可能性は十分にあります。

それにしても家電製品などでは、リミックスなど当然行われていますがの、部品は他の製造業者から仕入れたり、ただたんに模倣するだけではなく、他の様々な要素をとりいれたりして差別化をはかっています。

また、差別化を図らないと、すぐに陳腐化してしまいます。スマートフォンの場合などは、アンドロイド端末と、iPhoneを比較すると圧倒的にiPhoneのシェアが高いそうで、やはり様々機能や、デザインが独自路線でかなり差別化されているからでしょう。それに比較すると、アンドロイドフォンは最初からGoogleに規格など決められていますから、このような結果になっているのかもしれません。

iPhoneのシェアは日本でも60%近いとする調査もある

このリミックスという考えから言うと、デザインの世界でもリミックスは当然のこととして行われているでしょうから、佐野氏を盗作だとして一概に非難することもできないと思います。

ではなぜこのようなことが起こってしまったのでしょうか。それは、このブログの冒頭の記事のようなことも無論あると思います。ただし、私はこれは本質ではないと思います。

やはり、本質は上で述べたように、佐野氏や大会組織委員会の人々が、現在が高度な知識社会になりつつあることに気づいてないことが本質なのだと思います。

知識社会の現在は、誰もが知識を得ることがたやすくなっています。インターネットをみれば、誰もが簡単に世界中の類似デザインを見ることができます。

昔なら、デザイン見比べるにしても、かなり費用と時間がかかりましたが、今では本当に簡単に瞬時でできます。

デザインなども、リミックスするにしても、ただ単純に模倣するだけでは、すぐに多くの人が知ることになってしまいます。インターネットに何らかの形で掲載されてしまえば、あっという間です。

今では、デザイナーの卵のような人や、デザインを学ぶ学生なども、当然のこととして、インターネットで普段から様々なデザインを検索して見ていることでしょう。一般の人も、ネット検索は無論のこと、ピンタレストなどのSNSで普段から様々なデザインを見ている人は珍しくありません。

ピンタレストの画面 ありとあらゆる写真を関連付けてピンすることができる

最終的に出来上がったデザインも、これを知識とみなせば、知識社会の現在、従来と異なり情報として、様々なデザインが頭の中に入っている人は質、量とも段違いです。

そんな環境の中で、簡素なリミックスをするのでは、とてもプロとはいえません。簡素なリミックスなら、現在では素人でもできるようになっています。たとえば、映像技術など今では、10年、20年前と比較すると、かなり高度な知識をネットからほとんど無償で得ることができます。それを活用して、特にそのための学校にも行かず、ブロの仕事場に弟子入りすることもなく、自分で学んで短期間でブロになっている人も大勢います。

そうして、若いときにプロになった人でも、時がたつと過去の技能はすぐに陳腐化してしまい、自ら新たな知識を獲得して、活用できるようにしなければなりません。

そんな時代には、どんな仕事も過度に競争的にならざるをえません。一昔前の時代とは競争環境が全く異なるのです。

そんな時代には、デザインの技法もかなり高度にならざるをえません。コンセプト形成にはじまり、そのコンセプトを実現すべく、色、形、配置様々な要素の高度な知識に基づいて、高度なデザインを仕上げる必要があります。

その過程でむろん、リミックスが適用されることはあると思いますが、それにしても、佐野氏のリミックスは低次元でした。この低次元なリミックスのため、佐野氏のデザインは、ネットで公開されるや、あっという間に多くの人たちに見透かされ、あっと言う間に陳腐化してしまったのだと思います。

そうして、このデザインを選定した大会組織委員会もそのような認識はなかったと思います。おそらく、佐野氏から提出されたデザインで、似たようなものがないかどうか、画像検索もあまりしていなかったと思います。

このようなことから、私は大会組織委員会のメンバーも現代の高度な知識社会に適合しているとは思えないので、メンバーを差し替えた上で、新たなデザインを選定すべきものと思います。そうしなければ、これからも似たような事例が頻繁に起こることになると思います。

それに、過去の日本はデフレのどまんなかにあったので、デフレ圧力により過度に競争することにあまり意味がなくなってしまっていましたが、今後デフレが解消されるにおよび、ふたたびインフレ圧力により、どのような分野でも商品やサービスに付加価値をつけることが求められ、さらに競争は激烈になることを忘れるべきではありません。

私はそう思います。皆さんは、どう思われますか?

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