2020年10月3日土曜日

トランプ氏、コロナ感染は「逆風」か「追い風」か 最先端「抗体カクテル療法」実施、軽症&早期回復なら大逆転再選も―【私の論評】トランプが2週間の隔離プロセスが終了直後の第二回討論会に出られれば、完璧な「オクトーバーサプライズ」になる(゚д゚)!

 トランプ氏、コロナ感染は「逆風」か「追い風」か 最先端「抗体カクテル療法」実施、軽症&早期回復なら大逆転再選も


マスク姿でホワイトハウスを出るトランプ大統領

 米国が非常事態だ。新型コロナウイルスに感染したドナルド・トランプ大統領(74)は米国時間2日、首都ワシントン郊外の軍の医療施設に搬送された。発熱や倦怠(けんたい)感などの症状があり、臨床試験中の人工抗体薬で治療している。米軍の最高司令官でもあるトランプ氏の容体が今後、重症化する事態となれば、世界の安全保障体制に与える影響も大きく、1カ月後の大統領選にも大打撃だ。一方、軽症で回復すれば、大逆転再選の目も出てくる。 

 「これから病院に行く。私は元気だと思うが、念のための措置だ」

 トランプ氏は2日、ツイッターに動画を投稿、健在ぶりを強調した。

 スーツにマスク姿でホワイトハウスの庭に駐機した大統領専用ヘリコプター「マリーンワン」に歩いて乗り込み、ウォルター・リード国立軍事医療センターに入院。予防的措置としており、数日間、同施設内で執務に当たる。

 CNNは、トランプ氏に2日朝から発熱の症状があると報じた。同日昼の電話会合に出席せず、マイク・ペンス副大統領(61)が代わりを務めた。

 ホワイトハウスはトランプ氏の同日午後の状態について「倦怠感がある」とする専属医の記録を公表。米製薬企業リジェネロンが開発し、臨床試験中の人工的な抗体による薬の投与を受けていると明らかにした。

 リジェネロン社は、2つの抗体を組み合わせた「抗体カクテル療法」の臨床試験で、患者のウイルス量が減り、症状が軽減されたとの結果を発表している。

 西武学園医学技術専門学校東京校校長で医学博士の中原英臣氏は、「抗体カクテル療法は、2つのモノクローナル抗体を組み合わせて用いる治療法だ。1つの抗体よりも2つを組み合わせた方が治療効果があると見込まれている。米国では最近認められた治療法で、最先端の治療の一つを利用するということだろう」と解説する。

 最大の関心事が1カ月後の大統領選への影響だ。トランプ氏の選対本部は2日、11月の大統領選に向け計画している集会やイベントはオンラインで実施するか延期すると発表した。

 これに対し、9月29日の第1回候補者討論会でトランプ氏と激論を交わした民主党のジョー・バイデン前副大統領(77)は2日、検査を受けた結果、陰性だったと明らかにした。

 拓殖大海外事情研究所の川上高司教授は、トランプ氏の容体について「重症化や死亡といった万一の事態も想定しうる。その場合、ペンス副大統領が大統領候補になり、副大統領候補を再度選出するため共和党大会が開催されるが、間に合うか分からない」と指摘する。

 トランプ陣営にとって危機的な状況に陥ったことは間違いないが、トランプ氏が軽症で早期に回復した場合は、別のシナリオも浮上する。

 「トランプ氏が体力的に回復して、健康な姿を見せることができれば、国民や共和党員の支持を集めるだろう。バイデン氏がコロナ対策の追撃をためらうようなことがあれば、トランプ氏が有利になることも考えられる」と川上氏は語る。

 バイデン氏は2日、激戦州の一つ、中西部ミシガン州のイベントに参加し、トランプ夫妻の早期回復を祈っていると表明した。バイデン陣営は、トランプ氏を攻撃するネガティブキャンペーンも取りやめた。

 米カリフォルニア州弁護士のケント・ギルバート氏は、トランプ氏の入院が、かえって存在感を高めるのではないかと強調する。

 「トランプ氏が激戦区を訪れることができないのは確かに痛いが、経済では2日に発表された雇用統計でも、失業率が7・9%と5カ月連続で改善しているという実績もある。民主党やメディアに攻撃され続けてきたトランプ氏だが、今回のコロナ感染によって、『もう4年続けてもらわないと困る』と国民が目を覚ますことになるだろう。メディアの報道もトランプ氏の容体に時間を割いており、バイデン氏が何かを発言したところで国民には響かない」

【私の論評】トランプが2週間の隔離プロセスが終了直後の第二回討論会に出られれば、完璧な「オクトーバーサプライズ」になる(゚д゚)!

米国主要メディアは火曜日の夜に行われた討論会を「史上最悪の討論会」などとトランプ大統領をこき下ろして報道していますが、日本のメディアもそれを鵜呑みにして一緒にこき下ろして報道していて滑稽です。

米メディアがトランプ氏をこき下ろしている理由は次回の討論会までに討論会のルールを変更しようという魂胆があるからです。そうしないとバイデン氏が残り2回も討論会を生き残れないからです。

討論会でのバイデン

そのようなことも理解せずに日本のメディアはそのまま米メディアの翻訳して報道していて本当に情けない限りです。何やら司会者が討論者のマイクの電源を切れるような「サイレント・ボタン」を設置するのはどうか?などといった話も出てきています。

そんな機能が司会者側に設置されれば、機関銃のように喋れるトランプ大統領には不利になります。バイデン氏は討論の途中、やはり単語が出にくい場面がありました。やはり認知症の疑いがあるのではないかと私は感じました。

NBCの人気ドラマ「The Blacklist ブラックリスト」(日本ではNetflixでみられます)に出てきたモサドのエージェントでFBIに潜入したサマルという捜査官が任務中の事故で血管性認知症に冒されて失語症や記憶を失い始めるシーンがありましたが、あのようなな感じでした。

サマル・ナヴァービ役のモズハン・マーノ

ホワイトハウスはフロリダ州での集会など大統領が2日計画していた政治イベントをキャンセルしました。トランプ氏の隔離が続くことから、ウィスコンシン、ペンシルベニア、ネバダなど重要州への訪問を含む今後数日の予定も中止されるでしょう。

集会に姿を見せ有権者と触れ合うことで、資金を集めるとともに支持者の熱狂をあおるのがトランプ氏のスタイルです。また、選挙戦の最終盤で焦点を新型コロナから移し、最高裁判事指名や景気回復、暴動などに向けたい考えでした。しかし今や、今後数週間の話題はトランプ氏の健康状態に集中するでしょう。

得意の政治集会や、選挙の焦点をずらす作戦が不可能ならば、民主党候補バイデン氏の世論調査でのリードを覆すのは難しくなる公算も大きいです。

ただ、トランプ氏の陽性判定のわずか72時間程度前に討論を行っているバイデン氏も、自主隔離に入るかどうかを決めなければならないでしょう。バイデン氏陣営は今のところトランプ氏の感染についてコメントしていないですが、対立候補の病気を喜んでいるような様子は決して見せずにトランプ氏の新型コロナ対応への批判を続けるという適度な姿勢を保つことが必要になります。

今後の米大統領戦のポイントは以下の2つです。 

(1)症状の重さ 
(2)回復の早さ 

症状が重ければ、現職の大統領としての実務が続けられなくなります。ホワイトハウスというかなり厳重に感染対策が行われているはずの場所で、側近に続いて大統領夫妻が感染したとなれば、ホワイトハウスの統治機能そのものに大きな疑問符がつきます。 

これまでトランプ氏のコロナ政策を批判してきた野党・民主党は、ここぞとばかりに、『自業自得』だと批判の声を高めることが予想され、トランプ支持者から見てもトランプ氏がこれまで主張してきたことの信ぴょう性が崩れることになります。ただ、その一方で重症化すれば同情の声もあがり、病気の人への批判はやりづらくなるという面もあります。 

一方で、症状が治まって比較的回復も早かった場合は、逆にトランプ氏に『有利』に働く可能性もあります。 

支持者らはトランプ氏自身が言っていたように「やはりコロナは大したことなく、大統領は強い人だ」と再認識することになりますし、選挙集会なども予定通り行われれば、トランプにとっては、自分はコロナから回復した「強い指導者」であるとアピールする場となるので、追い風になる可能性もあります。

米国で開催されたコロナパーティー

さらに、トランプ氏の容態が良かろうが、悪かろうが、トランプ支持派にはかなりの危機感が芽生えたと思います。共和党内も、トランプ支持で結束を固めることになるでしょう。米国内の保守派もそうなるでしょう。

そういう意味では、今回の感染判明が一方的にトランプに不利になるわけではありません。今後の最大の注目点はトランプ氏が重症化するか、比較的早く回復するかというところです。

次に予定されている二回目の大統領候補者の討論会は10月15日ですからちょうどトランプ大統領の2週間の隔離プロセスが終了するときです。なんというタイミングなのでしょう。しかも討論会の舞台をトランプ大統領の第2の庭であるフロリダ州に変更したのは6月ごろでした。

このタイミングで、トランプ氏が、二回目の討論会に出ることができれば、トランプ氏にとっては、かなり有利な展開になります。それにしても、まるで最初から図ったようなタイミングです。それにトランプ氏としても、多少体調が悪くても、他者に感染させる可能性がなければ、無理をしてでも出るでしょう。

米国では選挙の直前に驚くべきことが起きて選挙情勢を大きくひっくり返すことを「オクトーバーサプライズ」と言いますが、まさに文字通り、10月に入ったばかりでの感染確認は、最大のオクトーバーサプライズになったと言えるかもしれません。

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2020年10月2日金曜日

10万の兵がにらみ合う中印国境、一触即発の恐れも―【私の論評】総力戦になれば長期化し、両国だけの問題では済まず、周辺国を巻き込むのは必至(゚д゚)!

10万の兵がにらみ合う中印国境、一触即発の恐れも

岡崎研究所

 中印の国境紛争は単なる小競り合いなのか、それとも、軍事衝突のリスクが現実のものとなっているのか。今や、軍事衝突のリスクが無視できなくなってきているように見える。


 構図としては中国が攻勢を強めており、インドがこれに強く反発している。中国が攻勢を強めている動機は明らかでないが、ジョンスホプキンス大学SAISのアジア計画責任者Devesh Kapurは、9月13日付けフィナンシャル・タイムズ紙掲載の論説‘India and China are edging towards a more serious conflict’で、一つの仮説として、中国はチベット情勢を憂慮しているのではないかと言っている。なるほど、6月15日に発生し、インド兵士が20名死亡したと報じられている衝突は、中国チベット自治区に接するインド、ラダック地方にあるガルワン渓谷で起きている。渓谷ではインドが実効支配線のインド側で道路を建設中で、中国はそれを一方的な現状変更とみなし、約8000名の部隊を展開させていたという。インドはダライラマとチベットの亡命政府を受け入れており、中国が圧力を加えようとしたのかもしれない。

 中国が攻勢を強めている第二の理由として考えられるのは、中国が新型コロナをめぐる情勢に乗じて強めている対外攻勢の一環ではないかということである。中国はいち早くコロナ情勢を終息させ、各国がコロナ対策に追われているすきに対外攻勢を強めている。南シナ海における実効支配の強化がその一つとして挙げられている。香港に対する強硬策もそうではないかと見られている。ただこれは推測の域を出ない。

 第三の理由は、インド側による刺激である。インドは実効支配線のインド側で滑走路や道路建設などを進め、軍備増強の布石としている。6月15日のガルワン渓谷での衝突も、中国側が、インド側が道路建設で現状を一方的に変更したとみなし、大規模な軍を動員したことが背景にある。中印いずれも相手が国境の現状を変更しようとしていると考えている。

 ただ、両国政府とも事態の悪化は避けたいと考えており、6月15日の事件以前にも6月6日の中将級会談を初め、高位級実務者会談を数回開いている。6月15日の事件を受けて、9月に入りモスクワで開催された上海協力機構の場を利用して、4日には中印の国防相会談、10日には外相会談が行われ、係争地域の軍事的緊張を緩めるため対話を続け、現地部隊の接触を避けるべきであるとの認識で一致した。しかし、効果は望まれない。それは中印両国が、係争地のラダック地方に両国を合わせ10万人と言われる大規模な軍を集結させていると見られるためである。

 インドでは6月15日の衝突でインド兵20名が死亡したことに対し、対中世論が硬化し、モディ首相に中国に対ししっぺ返しをするよう圧力を加えているという。国境地帯からの撤兵は考えられない。他方、中国も、緊張の原因はインドにあると主張し続けているので進んで撤兵することは考えられない。モディ首相のしっぺ返しがどのような形をとるか分からないが、もししっぺ返しが行われたら中国側は黙ってはいないだろう。

 中印の軍事衝突を避けるために介入するとしたら米国であろうが、いま米国では大統領選挙の最中で、介入どころではない。仮に大統領選挙中でなかったとしても、米国が火中の栗を拾うような介入をするか疑問である。それに現在米中は激しく対立しており、他方でインドとの関係を強化している。米国は米印の間で中立的な立場はとれず、中国が米国の介入を受け入れないのではないか。

 中印併せて10万の兵が係争地帯で目と鼻の先でにらみ合っているのはまさに一色触発の状況であり、誤算が起こりうる。中印の軍事対決は危機的状況にあると言わざるを得ない。

【私の論評】総力戦になれば長期化し、両国だけの問題では済まず、周辺国を巻き込むのは必至(゚д゚)!

今回の紛争の端緒は、中国側によるものであることを示唆する衛星写真が公開されています。

衛星写真は地球の画像を手掛ける企業Planet Labsが衝突翌日の6月16日に撮影。ロイターが入手した写真によると、1週間前と比べ衝突の起きたガルワン渓谷で活動が活発化した様子が見て取れます。樹木のない山沿いとガルワン川の中に機械類設置されているのが見られます。

米カリフォルニアのミドルベリー国際大学院で東アジア不拡散プログラム担当ディレクターを務めるジェフリー・ルイス氏は「写真は中国が渓谷で道路を建設しているほか、川をせき止めている可能性もあるように見える」と指摘。「多くの車両が実効支配線(LAC)の両側にあるが、中国側がはるかに多いようだ。インド側が30─40台で中国側が100台を優に超えている」と述べました。

中国外務省の趙立堅報道官は、現地の状況を詳細に把握していないとしつつ、インド軍が最近の数日間に複数の場所で中国領に侵入したと強調。インド軍は撤退すべきだと述べました。

インド軍は、中国との紛争地域で6月15日夜に起きた同国軍との衝突により、兵士ら少なくとも20人が死亡したと発表しました。死者数は数十年ぶりの規模。中国側は死傷者の詳細を明らかにしていません。

中印の軍事力を比較した表を以下にけいさいしておきます。多少古い資料です。人口は現在は中国がほぼ14億に近く、インドが13.5億です。


グローバル・ファイヤーパワー(Global Firepower)の「2020年軍事力ランキング(2019 Military Strength Ranking)」によると、中国の軍事力は世界3位、そしてインドは4位と肉薄していますが、実際の両国の軍事力の差は大きいです。

両国の人口は他の国を大きく引き離しています。その分、両国とも兵力も多いですが、インド軍の方が兵員は多いです。

航空戦力は3位と4位になりますが、その差は1000機以上もあり、戦闘機の数は中国が倍と航空戦力は中国が勝っています。さらに中国は第5世代のステルス戦闘機(実際は第4世代であると軍事評論家も多い)を保有しており、インドは旧式のMig戦闘機が多く性能的にも分が悪いです。

戦車に関してはインドが多いです。中国の最新は99式、インドはT-90になり、どちらも第3世代戦車です。現在先進国の戦車は3.5世代です。次世代の第4世代戦車は、未だいずれの国も開発に成功していません。

しかし、世界一地形が険しいヒマラヤの山岳地帯では戦車の運用率は下がります。山岳地帯ではヘリが効果を発揮するのですが、中国の方が数は多いです。

艦艇の数は中国が圧倒的に多いです。しかし、両国は国境こそ接していますが、洋上の距離は非常に遠いです。海上戦闘は起こらなそうですが、中国はミャンマー、カンボジア、パキスタンの港の建設支援をしており、これは軍港としての利用を目的としている考えられ、インド洋まで作戦展開できる能力があります。

さらに、先日もこのブログに掲載したように、中国はタイに運河を建設しようと目論んていますが、これができあがれば、中国の艦艇は、マラッカ海峡を通らずに、インド洋に進出できます。こうなれば、中印の海上戦闘も十分起こりうる可能性があります。

軍事予算に関しては中国が圧倒的に上回っています。人件費の違いこそありますが、中国はここ最近、最新の兵器を揃えており、軍事費は年々増加している。その点、インドの兵器は旧式化するなど性能差は大きいです。


インドは中国と合わせパキスタンともカシミールで領有権問題を抱えています。Googleマップでもこの地点の国境線は点線などでぼやかされています。パキスタンとは中国以上に火種を抱えており、過去に4度の大規模な武力衝突を起こしています。

紛争の際、中国はパキスタンを支援しており、もし中印間で衝突が起こった場合はパキスタンが中国に加勢すること明らかです。パキスタンの軍事力は世界15位になり、力は小さくはなく、インドからしてみれば挟撃される形になります。周辺国ではネパール、ブータンはインド寄りですが、両国とも軍事力は貧弱でお世辞にも力にはなりません。

中印で紛争が起こった場合に一番懸念すべきは両国ともに核兵器を持っている点です。そもそも、インドが核兵器を持った理由は1962年の中印国境紛争にあります。この紛争でインドは中国に敗れ、核武装に至ったのです。

そうして、インドに対抗する形でパキスタンも続いて核武装に至っています。このような戦略兵器の点では、中国は米国、ロシアに次ぐ3番目の戦力を誇り、短距離、中距離、潜水艦発射、大陸間弾道ミサイル(ICBM)などのさまざまな弾道ミサイルを生産および配備しています。 

20,000 kmの射程超える東風41は地球上のあらゆる場所を射程に収めています。インドに関しては最も射程が長いBlaze 5ミサイルで範囲は5000〜8000 kmです。こちらもインド北端からであれば中国全土を射程に収めています。戦局によっては戦略核兵器の行使も辞さない可能性は絶対ないとはいえないです。

インド政府は今のところ静観の構えですが、インド国内で中国への反発が急速に高まっているのは確かです。 インド政府が今後米国の動きに応じるようなことになれば、腹を立てた中国がインドに対して懲罰のための軍事行動に出る可能性は十分にあります。

1979年のベトナムへの軍事介入の再来です。 鄧小平は「ベトナムを懲らしめる」と息巻いていたようですが、ベトナムの抵抗に遭い苦い敗北を喫しました。ところが国内では、大規模な戦争を主導したことで確固たる権力基盤を固めたと言われています。

この経緯を習近平が知らないはずはありません。 新型コロナウイルスの蔓延により、米軍の活動が停滞している隙を突くかのように、中国は南シナ海の実効支配の既成事実を図るなど「火事場泥棒」的な動きを強めています。

「新型コロナウイルスと今年夏のスーパーサイクロンのダメージでインド軍は弱体化している」と判断し、兵員を投入すれば、1962年以来の大規模紛争になってしまうかもしれないです。 一方、物理的な衝突によって、インドのモディ首相は中国の影響力抑止に向け国民のさらなる支持を得ることになるでしょう。

インド モディ首相(左)と習近平

人口で世界第1位、アジアでの経済規模第1位の中国と、人口で世界第2位、アジアでの経済規模第3位のインド。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が4月27日に明らかにした報告によれば、昨年の軍事費世界第2位は中国(2610億ドル)、第3位はインド(711億ドル)です。 

日本では台湾や香港、朝鮮半島などに対する中国の動向に関心が高いですが、核兵器を共に有する中パキスタンとインド間の大規模な軍事紛争の勃発リスクについても警戒が必要ではないでしょうか。

結論としては軍事力に関しては中国の方が上で地政学的にも有利です。しかし、両国とも大国なだけに膨大な戦力を擁しており、総力戦になれば長期化し、両国だけの問題では済まず、周辺国を巻き込むのは必至です。このまま、何もないことを願うばかりです。

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2020年10月1日木曜日

アンティファは「意見」とバイデン、一方ホワイトハウスは数日前にテロ組織指定に向けた動き―【私の論評】討論会のバイデン氏は、トランプ氏を「レイシスト」とレッテル貼りするだけで完全に精彩を欠いていた(゚д゚)!

アンティファは「意見」とバイデン、一方ホワイトハウスは数日前にテロ組織指定に向けた動き

<引用元:FOXニュース 2020.9.30

バイデンと民主党は「組織化された極左過激派の脅威を軽視・否定」したい:ジャーナリストのアンディ・ンゴ氏

Andy Ngo


民主党大統領候補のジョー・バイデンは、29日に行われた最初の大統領候補討論会でアンティファを非難するよう求められた際、暴力的な左翼過激主義を「意見」として片付けた―が、その主張にホワイトハウスを含め、共和党と彼らを間近で取材してきた一部の人々が異議を唱えている。

「アンティファは意見であって、組織ではない。それは(トランプの)FBI長官が言ったことだ」とバイデンはオハイオ州での討論会で述べた。

バイデンは、FBIのクリストファー・レイ長官が9月初めに、アンティファは「本当のこと」であり、FBIはアンティファに自分を重ね合わせる人物を含め、「暴力的な無政府主義の過激主義者と我々が形容する者に対して、相当な数の適切な根拠に基づく捜査」に取り組んできたと述べた証言のことに言及していたようだった。

「我々はアンティファを、組織というより思想や運動と見なしている。誤解のないように言うが、我々は暴力的な無政府主義の過激主義者に対して、相当な数の適切な根拠に基づく国内テロ捜査を実際に行っている」とレイ長官は語った。

また長官は、アンティファ運動に自分を重ね合わせる人物が、捜査中の「小グループや中心点と形容できる物と局所的に融合」していると述べた。

つい先週、トランプ大統領はアンティファをテロ組織に指定する計画を導入した。過去に実行を示唆していたことだ。

アンティファは長年暴力や暴動の背景になってきた。ルーツは2007年のオレゴン州ポートランドにまで遡るが、夏の期間ポートランドのような全国の都市での暴力増加の背景となっており、そうした場所では連邦裁判所が何カ月も包囲された。

ウィリアム・バー司法長官は以前CNNに対して、「大規模な暴力事件のある全ての都市の全ての警察署長と話して来たが、全員がアンティファを暴力の込め矢(旧式の銃で銃身に弾を詰める道具)と認定している」と語った。

連邦議会では、テッド・クルーズ上院議員(共和、テキサス)がアンティファと他の過激団体に関する公聴会を開き、暴動を「組織化されたテロ攻撃」と呼んでいる。

「こうした暴動は自然発生のものでも、単なる偶然でもない。むしろ、恐怖を植え付けて政府の基本的な機関を解体することを目的とした組織的なテロ攻撃だ」とクルーズ議員はFOXニュースに語った

一方で、アンティファを長年取材しているジャーナリストで、昨年のアンティファ暴動による襲撃で重傷を負ったアンディ・ンゴは、グループが「意見」に過ぎないという主張に反発した。

ンゴはアンティファに関する本の出版も予定しているが、FOXニュースに次のように語った。「バイデンが昨年その発言を行っていたら、弁解の余地があっただろうと思う。だがこれまで、明確なアンティファによる組織化された要素のある暴動が何カ月も続いている。アンティファに関する議会公聴会も行われた。刑事告訴された事件の一部にはアンティファのつながりを示す証拠もある」

ンゴはこう続けた。「バイデンの発言で、この問題に関して、彼―そして民主党―は、リベラルの現状を保持したいと考えているということが分かった。つまり、組織化された極左過激派の脅威を軽視して否定したいということだ」

彼はまた、ポートランドでの暴力は何カ月も継続しており、人々のグループが共通の意見で団結した場合よりもはるかに組織化されていると指摘した。

「アンティファに関して知る必要があることは、組織化されたセル(小集団)やグループを含む思想であり運動であるということだ。メンバー、参加者、そして資金なしにシアトルやポートランドのような場所で何カ月も暴動が続くことはない」と彼は語った。

それは下院で共和党が繰り返したテーマでもあり、先週FBIに誰が暴動に資金を提供しているか捜査するよう強く求めていた。

「司法省とFBI幹部は、こうした犯罪組織に資金提供した者に法の裁きを受けさせ、こうした人物や組織によって大打撃を受けた地域に正義をもたらす必要がある」と24人の共和党議員が書簡の中で述べた

【私の論評】討論会のバイデン氏は、トランプ氏を「レイシスト」とレッテル貼りするだけで完全に精彩を欠いていた(゚д゚)!

バイデンの「アンティファは意見であって、組織ではない。それは(トランプの)FBI長官が言ったことだ」との発言は、大統領候補者の発言としては明らかに問題があります。

以下に米国におけるアンティファの活動についてふりかえっておきます。

2017年8月12日と13日ヴァージニア州シャーロッツビルでは、南北戦争の南軍司令官リー将軍の銅像撤去に反対する白人至上主義者のデモ隊と、これに抗議する極左団体アンティファが衝突し、3名の死者を出しました。

その一周年にあたる2018年8月12日、ワシントンで計画されていた白人至上主義者のデモは、人数でこれを上回るアンティファの抗議を前に、自発的な中止に追い込まれました。

アンティファとはアンチファシスト(anti-facist)の略称で、人種差別や性差別などに反対する団体です。米国には白人警官による黒人容疑者への暴力を批判し、抗議デモで世論を喚起する「ブラック・ライブズ・マター」などの社会運動がありますが、これらとの決定的な違いは、アンティファが暴力を辞さない点にあります。

アンティファは他の左翼やリベラル派と同じく「多様性」や「包摂性」を強調し、ヘイトに抗議しますが、主な活動はその価値観の普及ではなく、人種差別主義者、性差別主義者とみなされる個人・団体への妨害や襲撃にあります。

シャーロッツビルでの衝突から約半月後の2017年8月27日には、カリフォルニア州バークレーで、トランプ支持者の集会にアンティファが乱入。この集会には白人至上主義者以外も参加していましたが、アンティファが見境なく暴行を加える様子が映像に記録され、14人が暴行容疑などで逮捕されました。

アンティファは小さな団体や個人のネットワークで、全体を代表する指導者や組織はありません。そのため、全貌は明らかでなく、支持者の人数も不明ですが、著名な哲学者ノーム・チョムスキーをはじめ多くの専門家は、アンティファのルーツがファシズムの台頭した1930年代のヨーロッパにあるとみています。

国家権力への不信感が強く、弱者の人権を強調する運動の流れは、第二次大戦後のヨーロッパで反戦運動、学生運動、環境保護運動などを吸収しながら生き残り、冷戦後の1990年代には地球規模での市場経済化に反対し、これを進めるG7やG20の首脳会議にもバリケードを設けたりして抗議する反グローバリズム運動に発展しました。

これらヨーロッパの左翼運動には、選挙への参加や平和的なデモなどを通じて社会の変革を目指す穏健派だけでなく、破壊活動を行う急進派も珍しくありません。例えば、2000年にパリ近郊でスローフード運動家が「資本の力で文化の独自性を破壊する」グローバル化の象徴とみなされたマクドナルドの店舗を襲撃・破壊したことは、その代表です。

こうした急進派左翼の思想とスタイルが人種差別主義の広がる米国に渡り、「ブラック・ライブズ・マター」などの影響をも受けながら確立されたのが、現在のアンティファとみられます。

黒いTシャツをきて、ゴーグル、マスク、ヘルメットなどで顔を隠すのがアンティファの基本スタイルで、男性の場合、極右にスキンヘッドが目立つのと対照的に長髪も珍しくないですが、これらはヨーロッパの急進的左翼にも共通します。

アンティファの主な標的は人種差別的、性差別的な言動の目立つトランプ政権で、トランプ氏の就任式があった2017年1月20日には、黒ずくめの活動家らがホワイトハウス近くで警察車両や停車中のリムジンに火をつけたり、周辺のマクドナルド店舗の窓ガラスを割ったりして、217人以上が逮捕されました。

アンティファの急激な台頭は、トランプ政権の警戒を呼んでいます。

アンティファの一般的な認知は、シャーロッツビルでの衝突をきっかけに高まりました。シャーロッツビルでの衝突の3人の死者のうち、2人は抗議デモをヘリで監視していた州兵でしたが、残る1人は白人至上主義者が暴走させた自動車にひかれた女性でした。そのため、大手メディアの多くはアンティファの暴力を批判しながらも、白人至上主義者を主に批判しました。

これに対して、トランプ大統領は衝突の原因が双方にあると力説。これを受けて、ホワイトハウスはウェブサイト上で「アンティファをテロ組織に認定するべき」という署名募目を開始。30万人以上の署名が集まりました。

その後9月1日、アメリカの政治専門ニュースメディア、ポリティコは、国土安全保障省とFBIはオバマ政権時代の2016年からアンティファを白人至上主義団体クー・クラックス・クラン(KKK)などと同じく「国内のテロリスト」とみなしていたと報道しました。

一方、もともとトランプ政権と対立してきた多くの大手メディアには、シャーロッツビルの後もアンティファを擁護する傾向が目立ちました。

先述のように、シャーロッツビルでの衝突から一周年にあたる8月12日、ワシントンではアンティファの圧力の前に白人至上主義者がデモを中止せざるを得なくなったのですが、これに関して同日付けのニューヨークタイムズは「多くのワシントン住民は事態がより悪い方向に向かわずに済み、さらに悪い連中(bad guys)が効果的に追い払われたことに安心した」と述べ、「アンティファが意見の異なる者の言論を暴力で封じるのをみたくない」と白人至上主義者のデモ隊を説得した住民の声を紹介するなど、暴力を容認しないまでも、アンティファによってデモが押さえ込まれた結果を支持しました。

今年は、アフリカ系アメリカ人ジョージ・フロイドさんの暴行死を受けて過去数カ月、米国の諸都市で抗議活動が行われていますが、その中にアンティファも存在します。デモ隊の一部は暴徒化しています。オレゴン州ポートランドで8月29日にトランプ大統領支持派の1人が死亡した事件で、警察はアンティファ支持を自称する人物について調べています。

アンティファの活動家は、白人至上主義者グループのデモに積極的に抗議することで知られています。ADL(名誉毀損防止同盟)によると、デモに抗議するほとんどのアンティファの傾向は非暴力的ですが、極右グループとの衝突で何度か暴力に発展しているといいます。

この運動の活動の多くは、相手の身元や職業などの個人情報を暴露する「ドクシング」(晒し)といった戦法を用いており、このことは他のグループから広く批判されています。さらに、研究者によれば、アンティファに関わる一部の人々、特に無政府主義思想を持つ人々は身体的な暴力に訴えることもあるといいます。

これ以外にも、アンティファを自称する人々による行動は、偏狭な考えを持っているとみなした相手に怒声を浴びせることから、より過激な手段までさまざまです。警察は2017年、カリフォルニア大学バークレー校で起きた、保守系メディア「ブライトバート・ニュース・ネットワーク」の当時の記者による講演中止を求めるデモで、火炎瓶を投げ、器物を損壊した行為とアンティファとの関連を認めました。これらの衝突は超党派の非難を呼びました。

研究者らは、どれくらいのメンバーがアンティファで活動しているのかを把握するのは不可能だと指摘しています。アンティファには統一した組織がないからです。しかし、研究者らによると、2016年にトランプ氏が大統領に選ばれた後、アンティファの活動は増えたといいます。

トランプ大統領は6月31日日曜、ツイッターへの投稿で戦闘的左派団体「アンティファ」をテロ組織に指定したことを明らかにしました。

ウィリアム・バー司法長官によれば、FBI連邦捜査局のテロ対策課はアンティファ、および同系列のグループによる武力行使について、テロと見なして捜査を開始しました。FBIは56の作業グループからなるテロ対策課と連携し、犯罪組織メンバーの特定を進めていくということです。

ウィリアム・バー司法長官

日本のメディアは、バイデンのかなりの問題発言をとりあげないばかりか、トランプ氏が度々バイデン氏の發見を遮ったことを報道し、まるでトランプ氏が狂ったピエロでもあるかのような報道をしています。

しかし、米司法長官がアンティファ、および同系列のグループによる武力行使について、テロと見なして捜査を開始しているのですから、これを「意見」と表現することにはかなりの問題があります。

私の今回の討論会の印象は、バイデン氏はトランプ氏のことを「差別主義者」とか「史上最悪の大統領」とレッテル貼りするだけで、全く論理的ではないですし、トランプ氏の質問に対しても具体的に回答できずはぐらかすだけで、完全に精彩を欠いていたというものです。

これは、以下の動画をご覧いただければ、おわかりいただけると思います。


この「はぐらかし」が、トランプ氏がバイデン氏の発言を遮った理由です。トランプ氏はバイデン氏に返答をさせるために遮ったのです。

以下のトランプ大統領のツイートに添付された動画をご覧いただければ、おわかりなると思いますが、ハーシェル・ウォーカー氏も語っているように、トランプ氏はレイシスト(人種差別者)ではありません。パイデン氏や、反トランプ派はトランプにレイシストというレッテルを貼り、貶める作戦を展開しているようにしか見えません。




トランプ氏が反イスラムというのも、全くの嘘です。それは、最近のアラブ諸国とイスラエルの和平を仲介したことでもはっきりしていると思いますし、アラブメディアの多くもトランプ氏に肯定的です。 

米国のメディアのほとんどが、特に大手テレビ局はすべてリベラルなので、トランプ氏報道に関しては偏向しているのは理解できますが、日本のメディアもトランプ氏を狂ったピエロのように報道するのはいただけません。

日本のメディアの多くは、日々日本を中国の傘下に入れようと、奮闘努力しているようですが、たとえ親中派のバイデンが大統領になったとしても、バイデンは民主党の操り人形のようなものであり、民主党のほとんどの議員も今やドラゴンスレイヤー(反中派)ですら、中国に対する厳しい態度は、トランプ政権と同じかそれ以上なる可能性が高いです。

それを考えれば、もっとまともな報道をすべきと思います。もう、少し前までの中国は幻想に過ぎないのです。今のままだと、マスコミは安倍ロスどころか、中国ロスでさらに苦しむことになるでしょう。

米国は、中共が崩壊するか、崩壊しなければ、経済的に弱体化して、他国に影響を及ぼせなくなるまで、制裁を継続するでしょう。そのようになるまでには多少時間がかかるかもしれませんが、中国の未来は暗く見込みがないということがはっきりするのには、さほど時間を要しないでしょう。そうなった時の、マスコミや野党、自民党の親中派の中国ロスは、かなり大きく衝撃的なものになるでしょう。

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2020年9月30日水曜日

菅首相の徹底した“情報収集術” 高い処理能力と速い政治決断、官僚はこれまでにない緊張感 ―【私の論評】菅総理の卓越した情報収集力に、マスコミも大緊張を強いられることになる(゚д゚)!

 菅首相の徹底した“情報収集術” 高い処理能力と速い政治決断、官僚はこれまでにない緊張感 

高橋洋一 日本の解き方

9月26日 福島を訪問した菅総理(左)

 菅義偉首相が連日、有識者と会食していることが話題になっている。菅氏はどのように情報収集し、どのように政治判断につなげるのだろうか。

 仁徳天皇の逸話にあるが、高台に登って国を見渡し、民家のかまどに煙が立っていなければ、民が貧しいと判断した。そして、3年間の徴税をやめた。

 政治家の仕事も、国民の声を拾って、政策として実現することだ。

 情報収集のやり方は政治家それぞれだが、菅首相は、役所の統計だけではなく、自ら集めた生の声を重視している。そして政治家としてこの情報収集にかなりの時間を割いている。その際、聞き上手でもっぱら聞き役に徹しているようだ。さらに、複数の異なるタイプの情報ソースを持ち、相互チェックもしているようだ。

 ある役人から聞いたことだが、資料を渡して、歩きながら説明しても、菅首相の目はしっかりと資料を見ており、しかも説明より先を見て、説明者が追い付かなかったという。

 資料全体を一瞬で読み込み、理解する人は、いわゆる仕事のできる人によく見かけるタイプで、情報処理能力の極めて高い人だ。

 こういう人は、一度聞いた説明を忘れない。そして、仕事の進捗(しんちょく)プランができているので、その後チェックして、適切に対応できているかを確認し、状況に応じて、政治決断をする。どんな職場にもいるが、仕事のできる幹部そのものだ。


 政治決断の結果は、それまで作業に当たっていた人の思惑とは異なっているかもしれない。もっと時間をかけて慎重に検討したいと思っていても、幹部の要求はもっと早くやるというものかもしれない。

 政治決断の結果、一定の成果を得るためには、担当する人を変えることもあるかもしれない。それは民間企業でもよくある話だ。そういう意味では、これまでの政治家にはない仕事への厳しさがあるのではないか。

 筆者のこれまでの印象では、菅首相はいろいろと話は聞くが、決断は速いと思う。話の途中でも決断し、すぐに指示を出すことも珍しくない。

 しかも、菅首相は官房長官を歴代最高の7年以上も務めた。首相に上がる情報は原則官房長官にも上がり、その過程で霞が関幹部官僚の大半の能力を把握し、頭の中に整理しているはずだ。

 官僚にとって、霞が関の人的情報を含めて各種の情報収集にたけ、政治決断の早い首相は、頼りがいもあるが、思い通りにならないという怖い側面もあるだろう。

 これまでの首相は、みこしに担がれ、比較的官僚には優しく、言いなりになる人が多かった。しかし、菅首相はたたき上げであり、仕事の成果を求め、決して官僚の言いなりにならないし、卓越した情報収集能力がある。

 官僚の間にはこれまでにない緊張感があるのではないか。その緊張感が官僚の良い仕事につながれば何よりだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】菅総理の卓越した情報収集力に、マスコミも大緊張を強いられることになる(゚д゚)!

ドラッカー氏

上の記事で、高橋洋一氏は、徹底した“情報収集術”と、高い処理能力と速い政治決断について述べています。情報について、経営学の大家ドラッカー氏は以下のように主張しています。
データそのものは情報ではない。情報の原石にすぎない。原石にすぎないデータが情報となるには、目的のために体系化され、具体的な仕事に向けられ、意思決定に使われなければならない。(『未来への決断』)
情報の専門家とは道具をつくる者です。ところが道具として、いかなる情報を、何のために、いかにして使うかを決めるのは、ユーザーです。ユーザー自身が、情報に精通しなければならないです。

ほとんどの政治家が、情報が自らの意思決定に対して持つ意味を考えていないようです。したがって、情報をいかに入手するか、いかに検証するか、既存の情報システムといかに統合するかが、今日最大の問題です。

かつては、とにかく情報を持つことが勝利への道でしたた。軍隊でも企業でも同じでしたた。ところが、情報革命により、情報が氾濫しました。今では、誰でもクリックするだけで、世界中のあらゆることについて情報を得られます。

その結果、情報力とは、情報を入手する力ではなく、情報を解釈して利用する力を意味することになりました。情報のユーザー自身が、情報の専門家にならなければならなくなりました。情報もまた、ほかのあらゆるものと同じく、使われて初めて意味を持ちます。
コンピュータを扱う人たちは、いまだにより速いスピードとより大きなメモリーに関心をもつ。しかし、問題はもはや技術的なものではない。いかにデータを利用可能な情報に転化するかである(『未来への決断』)
データに詳しくなることと、情報に精通することは違う、とドラッカーは主張しているのです。そうして、それを見分けるのに重要なのは、次の2つの問いに答えられるようになることだとしています。

1つは、企業経営者として(菅総理なら総理として)いかなる情報を必要とするか、もう1つは、自分個人としていかなる情報を必要とするか、で。

そうして、これらの問いに的確に答えるには、次の3つの点を真剣に考え抜かなければならない、としています。

第1点は、自分の職務とその本質は一体、何なのか、そして本来どうあるべきか。
第2点は、自分が寄与貢献できるのは何であり、また何であるべきか。
第3点は、自分の関わっている組織の基礎(ファンダメンタルズ)をつくる事柄は一体、何か。

以上の3点に関する、それぞれ異なった型の情報が必要であり、それらを別個に、独自のコンセプトでもってバックアップしておかなければならないのです。

それには外部の情報、内部の情報、そして組織を超えた情報、この3つを押さえることが重要になる、とドラッカーは言います。

さらには、組織としての成功も、自分個人としての成功も、すべてこの3問に的確に答え得るかにかかっている、と喝破します。

単なるデータ」に詳しいことから、「本当に必要な情報」に詳しくなるためには、上記の3つの問いに十分答えられるようにすることが必要不可欠であり、21世紀のマネジメントの真のあり方だとして、ドラッカーは重視しています。

菅氏は、このようなデータと情報の違いを長い間の経験から、熟知しているのだと思います。だからこそ、菅首相は、役所の統計だけではなく、自ら集めた生の声を重視しているのでしょう。

総理になる前から、このようなことを垣間見ることができた事例があります。

菅官房長官(当時)は昨年5月9日から12日の日程でアメリカ・ワシントンとニューヨークを訪問しました。危機管理を担う官房長官の外遊は“異例“で、歴代の官房長官を見ても平成以降は米国本土への外遊はなく、ホワイトハウスにまで乗り込んだ菅長官訪米は、まさに異例中の異例でした。

菅長官が会談した相手はペンス副大統領、ポンペオ国務長官、次期国防長官に指名されていたシャナハン国防長官代行といったトランプ政権のまさに中枢の面々で、北朝鮮情勢や拉致問題などについて意見交換を行いました。

菅官房長官(当時)とペンス副大統領(昨年5月10日 ワシントンDC)

この中で特筆したいのは、国務長官や国防長官といった閣僚だけではなく、政権ナンバー2のペンス副大統領が菅長官をホワイトハウスに迎え入れ会談したことです。ペンス副大統領が面会をする相手は各国の首脳級に限られ、閣僚クラスの面会はなかなか実現しないといわれていました。

菅氏が意識していたかは別にして、副大統領はポスト安倍を意識していたはずです。菅長官は、ペンス副大統領ら会談相手と「次もまた会おう」と約束したといいます。早速、6月にシャナハン国防長官代行が来日する際には表敬訪問を受けました。

元々、菅氏本人と、側近には米国に太いパイプ持つとされています。このパイプと菅氏自身の情報分析力が、このときにも生かされたと思います。

菅総理は、高い情報収集力を活かし、安倍前総理大臣にも匹敵するような、それでいて菅氏独自の外交を展開することも期待できます。

それにしても、日本のマスコミは相変わらず、どうしようもありません。安倍前総理が、現役で総理大臣をしていたときには、安倍外交を無視して(最悪は安全保障のダイヤモンド構想を報道しなかったので日本人で知らない人が未だに多い)ほとんど報道しなかったのですが、総理が菅氏に変わると、途端に安倍外交は良かったが、菅外交は心もとないなどと批判しています。

そのマスコミは、菅政権誕生の直前には、安倍政権の転換を求める報道をしていました。しかし、これはおかしなことです。安倍総理は、選挙で負けたわけではありません。あくまで病気で退いたのです。であれば、後継政権は、まずは安倍政権の政策を踏襲し発展させていくのが筋です。

今後選挙で、菅総理が安倍政権とは異なる政策をかがげて、大勝利したというならばともかく、マスコミが安倍政治の転換を求めるのは筋違いです。それでは、安倍政権を選挙という民主的手続きで、継続させた民意にそむくことになります。

特に、マスコミの情報収集力は格段に低いです。それは、トランプ大統領の登場を予測できなかったことでもはっきりしました。マスコミはとにかく「時の権力と対峙する」のが自分の仕事であると思っているようで、データを利用可能な情報に転化することができず、反権力を是とする、些末なデータばかり収集し、それに基づき報道するだけで、誰にとっても役にたたない存在になってしまいました。今のマスコミの報道は、野党にとってすら役にたたないと思います。

そのようなことをしているうちに、情報収集に長けた菅総理には、マスコミにとってこれまでにない緊張感を強いられることになりそうです。それはなぜかといえば、菅総理が官房長官だったときの、記者会見にもみられるように、マスコミは自分でも気づかないうちに、かなり低能力化していて、くだらない質問をいなすことが、度々ありましたが今度は官邸VSマスコミという構図に変わるからです。


その緊張感がマスコミの良い仕事につながれば何よりですが、まずは無理でしょう。現在のマスコミの記者の能力は地に落ちました。私は、マスコミは左よりというよりは、下(特に能力)なのだと思っています。これからも、マスコミは見当違いの愚かな報道を繰り返し、一部の老人には受け入れられるでしょうが、やはり情報収集に長けた大学生、高校生、中学生などの若者に馬鹿にされ、新聞は購読されなくなり、テレビもみられなくなり、ますます衰退していくことでしょう。

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2020年9月29日火曜日

南シナ海の人工島造成戦略を太平洋諸国に向ける中国―【私の論評】南シナ海の中国軍事基地は、何の富も生まず軍事的にも象徴的な意味しかないのに中国は太平洋でその愚を繰りすのか(゚д゚)!

 南シナ海の人工島造成戦略を太平洋諸国に向ける中国

岡崎研究所

 オーストラリアの海洋・環境関係コンサルタントのスティーブ・ライメイカーズが、中国が人工島造成戦略を、南シナ海からさらに南太平洋に拡大しているとの趣旨の論説を、9月11日付のオーストラリア戦略政策研究所(ASPI)のサイトに寄稿している。


 南太平洋は、中国と台湾による外交関係の争奪戦の前線である。現時点で中国と外交関係を樹立した国が10、台湾と外交関係を持つ国が4である。中国と外交関係を持つ国のうち、ソロモン諸島とキリバスは昨年9月に相次いで外交関係を台湾から中国に切り替えた。キリバスについては、前任のトン大統領の時代の2003年に台湾と外交関係を樹立したが、マーマウ大統領(2016年以来現職、今年6月に再選を果たし現在2期目)が中国との外交関係に戻したという経緯がある。彼は親中国である。今年1月には北京を訪問した。

 マーマウは、気候変動への対応について前任のトンとは著しく異なる立場を取っている。トンは気候変動によって水没の危機に晒されるキリバスの実情について世界を啓発することに力を注ぎ、浮体の人工島を構想してみたり、フィジーの島を購入して国民の移住を始めたりもしたらしい。しかし、マーマウは気候変動に適応するという立場である。彼は、2017年にボンの気候変動会議で演説し、「気候変動は確かに深刻な問題であるが、我々はキリバスがタイタニックのように沈没するとは信じない。我々の美しい国は神の手によって作られたのだ」と述べたが、彼は気候変動と戦うことを世界に求めるのではなく、キリバスを「太平洋のドバイ」にする開発計画への協力を求めたという訳である。その手段がライメイカーズの論説にある、中国によるタワラ環礁とキリティマティ環礁に予定されている2つの港の建設である。「美しい国」キリバスのサンゴ礁が、この巨大工事によって深刻な打撃を受けることは、誰の眼にも明らかである。

 「太平洋のドバイ」を太平洋の真ん中に作るというのは現実離れしているが、ラグーンを浚渫し、その土砂で土地をかさ上げして造成し、そこに港を作ることはその道の専門家に言わせれば技術的には可能なことらしい。この構想に協力する国があるとすれば、中国しかないであろう。中国のことだから南シナ海で用済みとなった浚渫船を動員して 2、3年でやってのけるかも知れない。

 ソロモン諸島の首相も昨年10月に北京を訪問し、「一帯一路」、中国によるスタジアム建設、中国企業によるインフラ建設などの合意が発表された。中国の企業が地元政府からツラギ島全体をリースする契約をしたとされ一時物議を醸したが、これは一端政府によって無効とされたらしい。

 もう一つ、ライメイカーズは、フランス領ポリネシアに注意を喚起している。この中国による投資プロジェクトは、養殖場を作り既に存在する滑走路を使って水産物を中国に輸出するというものであるが、既に3年前に取沙汰されていた。その後どうなったのか、論説が言及しているリース契約を含めプロジェクトの現状はどうなっているか。

 南太平洋の諸国が脆弱で中国に取り込まれる危険が常にあることは明白である。中国の資金援助によって作られる施設やインフラがいつの間にか軍事目的に転用され、米国や豪州の軍事的な行動の障害になり得る危険があることも、ライメイカーズが指摘する通りであろう。しかし、中国にとって南太平洋は南シナ海とは決定的に異なる。戦略的な緊急性はないと言って良い。現時点では南太平洋での影響力拡大の努力がどれ程の将来を睨んだ軍事的な下心があってのことか確かなことは言い得ない。妙案はなく、平凡な結論にしかならないが、豪州および米国、日本は警戒を怠らないことはもとよりとして、これら諸国との対話に配慮し、彼等の経済開発と気候変動対策のニーズに極力応えるしかないであろう。

【私の論評】南シナ海の中国軍事基地は、何の富も生まず、軍事的にも象徴的な意味しかないのに中国は太平洋でその愚を繰りすのか(゚д゚)!

米国の戦略家ルトワック氏は、南シナ海の中国の軍事基地は、象徴的な意味しかなく、米軍なら5分で吹き飛ばせると語っていました。

この言葉の裏には、米海軍の中国に対する圧倒的な優位性があります。それは、このブログでも何度か述べてきました。

米軍は、圧倒的に優れた世界一の哨戒能力(潜水艦や、空母など艦艇を、航空機を探索する能力)を持つにもかかわず、中国はかなり劣っています。それ加えて、米軍の原潜は、中国の原潜と比較すると、ステルス性も、攻撃力も段違いに優れています。

米バージニア級攻撃型原潜

中国が超音速対艦ミサイルを持っていたとしても、宇宙兵器を開発したとしても、発見することが困難な相手には無意味です。

これでは、目の見えない人間と、目の見える人間の戦いのようなもので、中国には全く勝ち目がありません。中国の潜水艦、艦艇、航空機などは、戦端が開かれてすぐに、魚雷やミサイルで狙い撃ちされ、撃沈・撃破されるでしょう。その一方で中国人民解放軍は、米原潜を発見することは困難なのです。

その後、米原潜が南シナ海の中国の軍事基地を封鎖すれば、南シナ海の中国軍は、食糧、水、燃料などを補給することができず、お手上げになるだけです。

28日、中国の人民解放軍が4つの海域で同時に軍事演習を実施しました。台湾とアメリカをけん制する狙いがあるとみられますが、現状の軍事力の米中の質の差を考えると、このような演習にどのような意味があるのか、疑問符がつきます。

28日、中国の人民解放軍が軍事演習を行ったのは南シナ海と東シナ海、黄海南部、渤海の4つの海域です。このうち黄海南部では30日まで毎日午前8時から午後6時まで軍事演習が行われるとして、中国の海事局は演習期間の周辺海域の船舶の航行禁止を発表しました。


二隻のまともに着艦出来ない空母と、空母を守れない護衛艦(米原潜を発見できないのですぐに撃沈されるの意味)、居場所通知機能付き(すぐに米軍に発見されるの意)の潜水艦で演習したとしても、ほとんど意味がありません。逆にこれだけ、中国の艦艇が集まる機会はないので、今の段階で米原潜が中国の海軍力を根絶できるチャンスだったともいえるかもしれません。

無論、米軍もこの機会を無駄にはしなかったでしょう。どのような演習をしたかを探索するのは無論のこと、中国の潜水艦の音紋を収集したり、空母や艦艇の能力を推し量ったり、場合によっては、中国艦艇や原潜を米原潜で撃沈するシミレーションも行ったことでしょう。

南シナ海の中国軍基地は、中国経済にも甚大な悪影響を与えつつあります。中国はいま、南シナ海の8つの環礁を埋めたて、軍事基地化しています。スプラトリー諸島の3つの環礁(スービ礁、ミスチーフ礁、ファイアリークロス礁)を埋め立て3000メートル級の滑走路を作り、そのほかの4つの環礁(ガベン礁、クアテロン礁、ヒューズ礁、ジョンソン南礁)にはレーダー施設を作っています。

さらにパラセル諸島のウッディー島には対艦ミサイルと長距離地対空ミサイルも配備しています。中国共産党は、南シナ海全体の制空権・制海権を確保し、中国のコントロール下に置くためには、どれほど「シーパワー」が必要かは見当もつかないようです。これには、おそらく軍事費を毎年10%以上拡大し続けてもまだ間に合わない軍事力、装備、要員の拡大が必要です。

経済が萎縮し、格差が拡大し、人民の不満が高まり、国内は一触即発の治安状況にあるなかで、どれだけシーパワーに国家資金を投入し続けることが可能なのでしょうか。

中国にとっての南シナ海は、北朝鮮にとっての核・ミサイルと同じような存在で、国の面子を取り繕うために南シナ海の領有権を主張し、一度主張したことは絶対に取り下げたり、変更することはできません。

しかし、その南シナ海の維持管理のための莫大の国家予算を、人民生活の向上に使えばどれだけの貧困層が救われるか、少し考えれば分かりきったことです。北朝鮮の核やミサイルは、ただ単に金正恩のための「使われない玩具」としての価値しかなく、金正恩がもてあそぶ「高価な玩具」のために、その下の人民は飢えと寒さでいずれ皆消滅する危機に瀕しています。

同じように中国にとって、第一列島線のなかの東シナ海・南シナ海全体を囲いこみ、人口島建設や制空・制海権を確立しようという目的は、この海域に戦略核ミサイルを搭載した原子力潜水艦を潜航させ、米国に代わる世界覇権を確立するための世界戦略の一環として南シナ海を中国の内海にすることです。

しかし、そうした戦略核や原潜の存在を誇示し、「シーパーワー」の力を見せ付けるが日が実現できたとしても、世界の国々と人類が中国の覇権に従うことはおそらくないでしょう。なぜなら「海洋パワー」になれない中国は、超大国にはなることはできないからです。

したがって南シナ海は、今のところ領土的にも資源的にも何の価値もなく、絶海の孤島の「リゾート基地」として、ただ兵士の休養と暇つぶし以外には何の役にも立ちません。ところが、そのような無駄な軍事基地を守るために、国費のなかから莫大な維持管理費をかける一方で、その日の生活の糧にも困っている大陸本土の億単位の貧困層は無残にも取り残され、政治から無視され続けているのです。

中国から南シナ海の埋め立て環礁への試験飛行した時の旅客機のキャビンアテンダント 2016年

少しでも頭を働かせて考えてみれば誰にでも分かることですが、南シナ海全域の管轄権を維持するためには、人員の交代や補給などで、無数の艦船と航空機を本土との間で往復させ、そのやりくりのために大量の燃料を駄々漏れ状態で無駄使いすることになります。

埋め立てでできた島は侵食されやすく、様々な機器も常に潮風にさらされるため、これらをメンテナンスし続けていくためにも、膨大な費用がかかります。中国の軍事基地は、南シナ海に存在するだけで、膨大な金食い虫になるのです。

中国は、南シナ海に原子炉を設置して、この問題を解決しようとしているようではありますが、たとえそれが成功していたにしても、航空機や艦艇の多くは電気ではなく、燃料を必要とします。基地の電灯や、その他電力で動く機器などの電力の心配はなくなるかもしれませんが、それ以外は補給に頼るしかありません。

水に関しては、原潜のように原子炉のエネルギーにより作り出すことができるかもしれませんが、何よりも小さな島では、農業や牧畜などもできず、兵士の食糧は補給以外にありません。また、定期的に交代させる必要もあります。

人工島を作っても経済・軍事的には何の価値も生み出さない一方で、貴重な珊瑚礁の自然を埋め立てることによって、海洋生物や天然資源を再生不可能なまでに破壊し、周辺海域の汚染を広げる結果をもたらしています。

日本の自然保護団体やグリーンピースや、シーシェパードが抗議運動などでこの海域に出没しないのが不思議です。そうすれば、彼らは人民解放軍に拿捕されたり、攻撃されるのを恐れているのかもしれません。無論、それ以外にも理由はありそうですが・・・・。

太平洋諸国でも、中国は同じことを繰り返そうとしています。愚かとしか言いようがありません。中共は自ら弱体化の道を歩んでいるようです。

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2020年9月28日月曜日

米軍「全面撤退」で20年のアフガン紛争に終止符か―【私の論評】トランプの目的はアフガンの「和平」ではなく、米軍の駐留を終わりにすること(゚д゚)!

米軍「全面撤退」で20年のアフガン紛争に終止符か

岡崎研究所

 9月12日、カタールの首都ドーハでタリバンとアフガニスタン政府代表のアフガン和平交渉が始まった。これまでの長い経緯を考えれば、交渉が始まったこと自体アフガンの和平に向けた大きな前進と言える。



 元来会談は3月10日に始まる予定であったが、ガニ大統領がタリバンの捕虜の釈放を渋り、反発したタリバンが政府軍への攻勢を強めたため、交渉開始が遅れていたものである。

 タリバンとアフガン政府代表の会談に先立ち、米国とタリバンが2月にドーハで会談し和平合意を達成している。そこでアフガン政府がタリバンの捕虜5,000人を、タリバンがアフガン政府軍の捕虜1,000人を釈放することが合意された。

 アフガン政府抜きで交渉が行われたことはアフガン政府にとっては屈辱的なことであったろうが、アフガンでの現状を反映したものであった。ガニ大統領はタリバンの5,000人の捕虜、特にそのうちの400人の重罪捕虜の釈放を渋った。おそらく米国のハリルザド特使の説得があったのであろうが、ガニ大統領は400人の重罪捕虜の釈放については、国民大会議(ロヤ・ジルガ)の判断を仰ぐとの決定をし、国民大会議が9月10日にようやく釈放の決定をしたものである。

 今回のアフガン和平交渉を推進したのはトランプ大統領であった。トランプは2016年の大統領選挙でシリア、イラクに加えてアフガニスタンからの米軍撤兵を公約に掲げ、そのためアフガンでの和平交渉を推進しようとした。

 トランプはまず駐アフガン米兵を12,000人から8,600人に削減し、ついで11月までに4,500人まで削減することを決定した。2月のタリバンとの和平会談で、タリバンがアフガン国土をテロ攻撃に使わないという約束をすれば、米軍とNATO加盟国の軍を14か月以内に(来年4月ごろ)完全撤収することに合意した。

 これは二つのことを意味する。一つはトランプの当初の希望にもかかわらず、大統領選挙までの完全撤退はないということである。トランプも現実を認めたことになる。

 第二は、タリバンが約束を守れば米軍が完全撤退することである。米国政府の中には、アフガンの治安部隊の訓練のため4,000人前後の米兵は残すべきであるという見解があったが、その見解は採用されなかったことになる。米国はもしタリバンが約束を破ったら完全撤退はすべきでない、という意見もあるが、タリバンから見れば、約束を守れば14か月以内に米軍とNATO軍が完全撤退することが合意されているので、来年4月ごろまで約束を守るようにするのではないだろうか。

 もしバイデン大統領が実現したらどうなるか。バイデンは以前からアルカイダの復活を阻止するために小規模なテロ対策部隊は残すべきであるとの見解を持っていたことで知られている。バイデンは以前から米国のアフガンに対するコミットメントには懐疑的であったので、仮に完全撤退となっても反対はしないのではないかと思われる。その背景は米国世論のアフガン疲れである。9.11直後は、アルカイダ撲滅のためアフガンへの軍事攻撃を全面支持したが、その後アフガンの米国にとっての重要性が急速に薄れたこともあり、米国世論は米軍の全面撤退を支持するだろう。

 タリバンとアフガン政府の交渉は当然のことながら難航することが予想される。アフガン政府は統治の形態をめぐって、たとえば民主的選挙と女性の権利を定めた憲法を受け入れなければならないと主張し、タリバンは難色を示すだろう。合意の成立が容易でないことは周知の事実である。しかし、交渉が始まったこと自体画期的で、軍事的解決の選択肢がない以上、何とか妥協点を見出すための努力が行われ、米国や関係国も支援の手を指し伸ばすこととなるだろう。

【私の論評】トランプの目的はアフガンの「和平」ではなく、米軍の駐留を終わりにすること(゚д゚)!

アフガニスタンに米軍が駐留して、長い間戦争をしていることは多くの人がご存じだと思います。しかし、そのきっかけが何だったのかという詳しいことになると、日本では知られていないというか、もう19年も続いているので、関心もなく、風化しているというのが実情でしょう。

以下に現在のアフガニスタン戦争がどのように始まり、どのような経過をたどり現在に至っているのか簡単に整理しておきます。

9.11同時多発テロ

2001年、9.11同時多発テロが起きるとアメリカ合衆国のブッシュ大統領は直ちにビン=ラディンらアルカーイダの犯行と断定し、その引き渡しをアフガニスタンのターリバーン政権に要求しました。

米国は、ターリバーン政権の拒否を見越して武力行使を準備、周辺国への根回しを開始しました。また国連安全保障理事会、NATO、EUなども次々とテロへの非難決議を採択し、ロシア・中国を含む60ヵ国以上がアメリカ合衆国を支持する声明を発しました。

一方でブッシュ大統領は、この戦いはイスラーム教徒を相手にする十字軍の戦い「クルセード」と表明し、世界各地のイスラーム教徒の反発が起きたため発言を取り消したが、イスラーム圏では反米暴動が各地で起きました。

10月7日、米・英軍(有志連合)はインド洋の艦船から戦闘爆撃機による攻撃を開始、また潜水艦から巡航ミサイルを発射して、カーブルのターリバーン政権中枢やアルカーイダの訓練所などの空爆を開始しました。

この空爆でアフガンに投下された爆弾は、第二次世界大戦中、1941年から42年のロンドン大空襲でドイツ軍が投下した爆弾の半分に相当する1万トンに達しました。空爆に加えて、武器や砲弾の援助を受けた反ターリバーンの「北部同盟」が攻勢に出て、マザリシャリフ、ヘラート、首都カーブルを制圧しました。アメリカ・イギリス地上部隊は最後のターリバーンの本拠カンダハール攻略に参加しました。こうして戦闘2ヶ月でターリバーン政権は崩壊しました。

米軍の支援のもとで戦った「北部同盟」は、もともとはターリバーンの主体であるパシュトゥーン人以外のアフガン人であるタジク人やウズベキ人の部族長が寄り集まった軍閥集団で、かつてのソ連軍の侵攻の際には、パシュトゥーン人もその他の部族もゲリラ兵として協力して戦った仲間でした。

米軍に支援された北部同盟は、2001年末までにターリバーン政権を首都カーブルから追い出し、権力を奪回しました。これによってアフガニスタン人同士だけで戦う「アフガニスタン内戦」から、米軍・政府軍対ターリバーンという構図の「アフガニスタン戦争」に転化したと言えます。

また、米兵に助けられている政府軍よりもターリバーン兵(最も彼らもパキスタンやサウジアラビアの支援を受けていたと言われているが)を味方と感じる者が多く、ターリバーンの勢力はじりじりと回復していきました。

2003年のイラク戦争勃発によって世界の関心はアフガニスタンから離れていったこともあり、日本もふくめた世界の多くが知らないまま、アフガニスタンではターリバーンが国土の約半分を支配するほどになっていました。

2009年に登場したオバマ政権も米軍の撤退には踏み切れず、状況の悪化から帰って増派すると声明しました。しかし、再選時にはアフガニスタンからの段階的撤退を公約、2014年12月にはNATOが主導する国連治安支援部隊(ISAF)が公式に任務を終了しました。

そのかわりに米軍が「確固たる支援任務」と証する部隊を駐留させ、政府軍の支援と指導に当たることになりました。この部隊はNATO主導とは言え、実態はアメリカ軍で、なおも1万3000人の米兵が駐留しました。

「国際治安支援部隊」から「確固たる支援任務」への移行式典(2014年12月8日カブール)

ところが、トランプ大統領は、アメリカの負担を減らすこと、アメリカ兵を長期駐留から撤退させることを掲げて大統領選に当選、2020年3月にターリバーンとの講和を成立させ、撤退の具体化を図っているのですが、アフガニスタンの内戦再燃の危惧も予測されています。

このように米軍はアフガニスタンからの撤退を先延ばしにするうちに、2001年から2020年まで20年経過し、今までのアメリカの関わった戦争で最も長かったベトナム戦争(一般的に1955年~1975年とされる)とほぼ同じ最長の戦争となってしまったのです。
米国はタリバンが国際テロ組織に協力しないなら米軍は、撤退するという立場です。アフガニスタンからの米軍撤退は既定路線ですが、イスラム国は同国で勢力を拡大中です。タリバンがアルカイダを受け入れなくても、イスラム国は既に勝手に侵入して地盤を固めつつあります。アフガニスタンは、イスラム過激派にとっては外人に邪魔されず存分に戦える安全地帯となりそうです。

トランプ大統領は「和平」協定合意に向けタリバンともアフガニスタン政府とも話し合いがうまく進んでいると発言していました。「和平」協定と言っていますが、彼の目的は20年近く続いた米軍の駐留を終わりにすることであって、アフガニスタンに「和平」をもたらすことではありません。

しかし、だからといつて米国を責めるべきでもありません。米国の判断は正しいともいえるでしょう。確かに米軍の撤退は、アフガニスタンに和平をもたらすわけではありませんが、アフガニスタンで紛争が続き、米国からの支援もないということになれば、いずれ決着がつき、新たな秩序が形成されるからです。

そのほうが、米国が中途半端に関与し続け、紛争が更に長引くよりは良いと思います。これが2001年の時点では事情が違います。あの時はアルカイダがアメリカを攻撃したので多くの米国人も米国のアフガニスタン関与を支持したのです。
ところがその後は、違います。オバマ大統領がアフガニスタンで行ったのは、すべてのアフガニスタン人を救って民主制度を根付かせるというものです。

もちろんアフガニスタン側も米兵と一緒に喜んで写真に写ったりしたわけです。なぜなら米国から700億ドルもの資金が流れ込んでくるからであり、そのうちのいくつかはオーストラリア人が使い、カブール政府が受け取ったり、結局豪華な邸宅やイタリア製の配管などに化けたりしたわけです。

  アフガニスタン国民軍の女子戦術隊による作戦訓練。この女性兵士の
  特殊部隊は、女性と児童の捜査、訊問、医療支援などに従事(2018年)

このようなアフガニスタンやイラクの民主化というのも、時間がたつとその熱が冷めてきます。それが、今回の米軍の撤退に結びつくわけです。

ところがもう一つ戦争が長引いた原因があります。こっちはかなり真剣に見ていかなければなりません。

その原因は長期的に、世界中で行われている紛争と同じものであり、そうしてこれは間抜けな外部からの介入が原因であり、その動機は人間の最高の「善意」にあるのです。

先日もこのブログで掲載したように、米国の戦略化ルトワックは『戦争にチャンスを与えよ』で、紛争等に関わるなら正規軍を50年くらいは派遣して、秩序をつくりかえるくらいの気構えが必要であって、中途半端に関わるのは混乱を増すだけだと言っています。

アフガニスタンも、この例に漏れません。米国はアフガニスタンに関与するなら、爆撃等だけで終了しすぐに撤退するか、本気で介入するなら中途半端をせずに、最初から50年くらいも正規軍を大量に派遣するつもりで、秩序をつくりかえるのか、はっきりさせるべきでした。

しかし、中途半端な介入をしてしまったため、結局ほとんど何も変えられなかったのです。米軍はアフガニスタンに行って、アフガニスタンの伝統的な生き方をやめさせようとしました。しかし、先日新聞の意見欄にも書かれてましたが、米軍が何年間も介入したにもかかわらず現地の女性は抑圧されたままです。

2020年9月27日日曜日

マスコミが報じる「国債格下げ」より「CDS」の方が信頼できるワケ―【私の論評】少し冷静に考えれば、財務省は札つきの「狼少年」であることは明らか(゚д゚)!

財務省の世論誘導、そのやり方とは?

政府見解は財務省意見でもある」。よくそう言われるものの、財務官僚が自ら意見を表明することはなく、「御用審議会」を通じて意見を出す。万が一、意見が間違っていても、「財務省が間違ったのではなく、審議会が間違った」というためだ。

財務省の御用審議会はいくつもあるが、その一つが「政府税制調査会」だ。同調査会は8月5日にウェブ会議方式で総会を開催したが、その場で、新型コロナウイルス対応で財政の悪化が深刻となっていることに懸念を表明。

政府税制調査会(昨年)

消費税増税を中核に据えた、骨太の議論が必要ではないか」と、財務省の意向通りの意見を表明した。

こうして審議会を利用する他にも、財務省は自分たちに有利な情報をマスコミにクローズアップさせ、世論を誘導することもある。

最近で言えば、「海外の格付け会社が日本国債の格付けを引き下げた」というニュースも、これにあたる。

かつて'00年代のはじめ、財務省は格付け会社の国債格付けには根拠がないとして、猛烈に反論したことがある。そのときの文書は、今も財務省ホームページに残っている。

しかし、今や状況は一変した。コロナ対策の消費減税を阻止し、将来的な増税への道筋をつけたい財務省にとって、国債の格付けが下がることは好都合だ。

海外の格付け会社も、日本の財政基盤を不安に思っている。増税が必要だ」とアピールすることができるからだ。

そもそも、こうした格付けがまったくあてにならないことは、リーマンショック前には「適格証券」とお墨付きを与えていた証券に、ショック後は軒並み「投資不適格」の判断を下したことからも明らかだろう。財務省も、そんなことは百も承知だ。そのうえで、格付けを自分たちに有利なように利用しようとしているのだ。

では、見識ある市場関係者の間では、日本国債の信頼性はどのように見られているのか。

基準となるのは、市場で取り引きされる国債の「保険料」である「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」だ。

現時点における日本国債のレートから計算すると、5年以内の破綻確率は0・5~1%程度と計算できる。これは、先進国の中でトップクラスの安全性であり、破綻リスクは限りなくゼロに近い。

こうしたことはあまりマスコミで報道されていないが、ネット番組では盛んに報じられている。

先日も有名なお笑い芸人が自らのチャンネルで「国債格下げを報じるマスコミより、市場で取り引きされるCDSの方が信頼できる」と主張していた。財務省は、マスコミより先に彼らに接近したほうがいいのではないか。

筆者としては、政府は財務省の思惑に乗ることなく、むしろ消費減税をおこなったほうがいいのではないかと考えている。

減税には定額給付金と似た効果がある上に、国会の手続きを考えても、はるかに早く実現でき、効果が出るからだ。

その証拠に、イギリスやドイツも時限的な消費減税をしようとしている。

10月にも臨時国会が開催され、補正予算などが議論される。そのとき、解散総選挙になるかもしれないが、消費減税も大きな争点になるだろう。

『週刊現代』2020年9月5日号より

【私の論評】少し冷静に考えれば、財務省は札つきの「狼少年」であることは明らか(゚д゚)!

日本が財政破綻などしようもないことは、国債の金利が低くマイナスもしくはほとんどゼロに近いことでも、はっきりしすぎるくらいはっきりしています。

金利がマイナスとは、購入した国債を国が償還するときに、金利を払うのではなく、逆にいただくことができるということです。金利がマイナスということは、政府が国債を発行すれば、将来世代への付けになるどころか、金利分が儲かるということです。


このようなこともわからない人というか、わからないふりをしている人がたくさんいるなど、本当に異常だと思います。

そういう人たちに問いたいです。財務省が破産するかもしれないと懸念している投資家たちが、日本国債を買っているのはどうしてでしょうか。その理由は、「日本国債は日銀が買ってくれるから」ということではありません。なぜなら、日本国債を日銀に売って、受け取るのは日銀券か日銀への預金なので、日本政府が破産するときに日本政府の子会社である日銀に対する預金や日銀券を持っていても、意味がないのです。

 

多額の現金を手にしている投資家にとって、選択肢は限られています。日本円の資産を持つとしたら、紙幣を金庫に入れておいたり、日銀やメガバンクに預金したりするより、日本国債を持っているほうがまだ安心なのです。

 

国債を買ったとしても、日本政府が破産するリスクがあります。そのリスクを避けようとすると、米国債等を買うしかありません。しかし、それには為替リスクが伴います。

 

仮に投資家が、「今日から明日までの運用を考えよう。明日以降のことは、明日考えればいいのだから」ということで、運用を検討するとします。明日までに日本政府が破産する可能性は非常に小さい一方、明日までにドル安になって為替差損を被るリスクは比較的高いといえます。

 

そのように考えるなら、日本国債を持っているのがいちばん安全な資産運用だ、ということになります。だから投資家たちは日本国債を所有しているのです。

 

もちろん、明日までにドル高円安になって為替差益を稼げる可能性もありますし、米国債の利回りは日本国債の利回りより高いので、米国債を選択する投資家もいるとは思いますが、投資家は基本的にリスクを嫌うので、よほど日米金利差が開いているのならともかく、そうでないない限り多くの投資家が日本国債を選択します。


多くの投資家がそうすることと、財務省が何十年にわたって「財政破綻するかもしれない」と脅しても、一向にその気配すらなく麻生財務大臣が揶揄するようにまるで「狼少年」のようであり、もうその脅しにはのらなくなっているからこそ、日本の国債は短期でも長期でも金利がゼロにかなり近いか、マイナスになっているのです。


麻生財務大臣


マイナスになっても購入するのは不思議だと思う人もいますが、大量の現金を金庫にいれておけば、火災や強盗にあうかもしれませんし、米国債などを買えば、場合によっては多大な為替リスクを負うことになるかもしれないのですから、やはり国債ということになるのでしょう。


投資家は長い間投資をしてきていますし、その長い経験から、もう財務省は「狼少年」であることを見抜いているのでしょう、だかこそ、日本国債の金利は、長期でも金利がゼロに近いか、マイナスになっているのです。


それに、日本が世界最大の債権国(世界で最も金を外国に貸し付けている国)、言い換えると対外金融純資産が世界一であることを考えれば、日本が財政破綻することなど考えられません。


実際コロナ禍などの不安から、9月下旬に入り、国債金融市場では数々の不安材料が多発し、危機回避の気配が高まりましたが、こうした状況下、金融市場ではドルおよび米国債が買われる一方、株を筆頭とするリスク資産が手放されていますが、その中で「不安の逃避先」として囃し立てられてきた金もしっかり売られていることにも注目したいところです。

株価下落などを補填する「換金売り」で含み益の実現が企図されているとの解説が目立ちますが、そもそも本当に危なくなった時に換金される資産は安全資産として金の「位(くらい)」がそれほど高くないようです。

今回の危機回避の局面で買われたのはドル、そして円です。具体的に数字を見ると、9月14日を基点として23日までの対ドルの変化率を見た場合、上昇したG10通貨は円だけであり、それ以外の通貨は全て対ドルで下落しました。為替市場では伝統的な反応といえます。また、金や銀、プラチナなどの貴金属も対ドルでは軒並み下落しました。

結局、「有事のドル買い」と「世界最大の債権国通貨の円買い」は最も深刻な危機回避局面では威力を発揮するのです。なお、世界最大の経常黒字国(貿易黒字国)であるドイツを擁するユーロも本来、この状況で買われてしかるべきですが、今回の危機回避の震源が「欧州のコロナ第二波懸念」であり、また過去3か月でユーロは猛烈に買われてきたという経緯も踏まえれば、対ドルで売られるのは致し方ないともいえます。

今回のように、世界金融市場が危機的な状況になると、ドルとともに円が買われます。そうして、円高傾向になります。日本が財政破綻するというのなら、危機的状況で回避策として円が買われるのはなぜなのでしょうか。

金よりも安全な日本国債

考えてみれば、金が日本国債よりも絶対安心な資産であるとすれば、日本の投資家は、日本国債ではなく、金を大量に購入するのではないでしょうか。しかし、そのような話は聞いたことはありません。日本では、金よりも日本国債が安全な資産ということです。

「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」は、過去にこのブログにもとりあげたように、重要な指標であることは間違いないですが、別にその指標に頼らなくても、少し冷静に考え場、財務省は札付きの「狼少年」であることは明らかです。

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