2020年10月6日火曜日

アゼルバイジャンとアルメニアで因縁の戦いが再燃した訳―【私の論評】周辺諸国や米国がこの紛争に中途半端に介入し続ければ、混乱を増すだけ(゚д゚)!

 アゼルバイジャンとアルメニアで因縁の戦いが再燃した訳

A War Reheats in the Caucasus

<ナゴルノカラバフの帰属をめぐる長年の紛争が解決されぬまま暴発を繰り返す背景と歴史>

9月下旬に始まった軍事衝突は沈静化の糸口が見えない(写真は29日、砲撃するアルメニア軍)

アルメニアが実効支配するアゼルバイジャンのナゴルノカラバフ自治州で両国の軍隊が衝突し、にわかに緊張が高まっている。

両国はいずれも旧ソ連の共和国だが、ナゴルノカラバフの帰属をめぐってソ連崩壊前から対立。ここ数年も小競り合いが多発していた。ただ、今回の衝突は1990年代のような全面戦争に発展しかねない。詳しい背景を探った。

過去の全面戦争とは?

同自治州の独立宣言に伴い、1992年から94年まで続いたナゴルノカラバフ戦争のことだ。欧米ではあまり知られていないが、この戦争では民族浄化の嵐が吹き荒れ、約3万人の死者と100万人の難民が出た。うちざっと7割はアルメニアの占領地から逃れたアゼルバイジャン人だ。


ナゴルノカラバフは現地語で「山岳地帯の黒い庭」を意味する。その名のとおり美しい高原地帯で、アルメニア人、アゼルバイジャン人双方がこの地に愛着を抱いている。

アルメニア人がこの地域の住民の多数を占めるが、ロシア革命後、後にソ連共産党となるボリシェビキがこの地域をアゼルバイジャン共和国に編入した。アルメニアとアゼルバイジャンがソ連の共和国だった時代には、そのことはあまり問題にならなかった。アゼルバイジャン共和国内には多くのアルメニア人が住み、逆にアルメニア共和国にも多くのアゼルバイジャン人が住んでいたからだ。

アルメニア人の多くはキリスト教の正教徒で、アゼルバイジャン人の多くはイスラム教シーア派だが、ソ連時代には宗教は公認されていなかったため、信仰の違いもさほど問題にならなかった。だが1980年代にソ連の統制が緩むと、ナゴルノカラバフにいるアルメニア人がアゼルバイジャンの支配に抗議の声を上げ、アルメニアへの編入を求めるようになった。

1988年には民族的な対立が激化。アゼルバイジャンの首都バクー北部の都市スムガイトでアゼルバイジャン人がアルメニア人を襲撃し、多数の死者が出る事件も起きた。

1991年にソ連が崩壊すると、ナゴルノカラバフは一方的にアゼルバイジャンからの独立を宣言。アゼルバイジャン、アルメニア共にこの地域の領有権を主張して譲らず、世論は主戦論にあおられ、戦争突入は不可避の事態となった。

悲惨を極めた戦争は時には喜劇の様相も見せた。ソ連軍が解体されたため、膨大な数のロシア人の傭兵が生まれ、アゼルバイジャン側とアルメニア側に分かれて戦った。一夜にして敵側に寝返る者もいた。

当初は劣勢だったアルメニアが終盤で優位に立ち、1994年にロシアの仲介で停戦が成立。ナゴルノカラバフはアルメニアの実効支配下に置かれた。

アゼルバイジャンはすんなり負けを認めたのか

その逆だ。敗戦は深いトラウマを残した。自治州を失い、そこに住んでいた同胞がアルメニア軍に追い出されたからだけではない。アゼルバイジャンの人口はアルメニアの約3倍。国の大きさでも国力でも格下の相手に負けたのは耐え難い屈辱だった。

そのためさまざまな陰謀論が飛び交い、アメリカがひそかにアルメニアを支援したという説まで流れた。実際には、徴集された兵士から成るアゼルバイジャン軍は志願兵で構成されたアルメニア軍に比べ士気が低かったことが大きな敗因だ。加えてロシアもアルメニア側へのテコ入れを強め、武器を提供し、軍事訓練を行っていた。

アゼルバイジャン人の遺恨の深さを物語る悪名高い事件がある。2004年にNATOがハンガリーの首都ブダペストに非加盟国の将校を集めて英語訓練セミナーを行った。アルメニアとアゼルバイジャンもこれに参加。夜に参加者が宿舎で寝ているとき、アゼルバイジャンの将校ラミル・サファロフがアルメニアの将校をおので殺し、ほかのアルメニア人も殺そうとした。

これだけなら常軌を逸した個人の犯行にすぎなかっただろう。だがアゼルバイジャンはハンガリーで終身刑になったサファロフの身柄引き渡しを要求。8年後に連れ戻すと大統領が即座に恩赦を与え、少佐に昇格させて住居と未払いの給与を与えた。アゼルバイジャン大統領府の外交部トップはサファロフを「母国の名誉と国民の尊厳を守って投獄された」英雄とたたえた。

なぜ何も解決しないのか?

交渉でより強い立場を維持して、武力侵攻という疑惑をかわすために、アルメニアはナゴルノカラバフを自国の領土に組み込むのではなく、名目上の独立共和国としてきた。ただし、「アルツァフ共和国」を名乗る傀儡国家は、国際的にほとんど承認されていない。

アメリカとロシアは、恒久的な解決策を探る上で重要な役割を演じてきたが、長年の努力も無益なままだ。アメリカに関しては、アルメニア系アメリカ人のロビー団体がそれなりに影響力を持っているが、アゼルバイジャンもアメリカの石油会社との関係に多額の投資をしている。

公式には、2000年代半ばから「マドリード原則」に基づく交渉が進んでいる。アルメニアが占領地を放棄して、難民は故郷に戻り、紛争地域の住民の権利が保障されて、最終的に領土の帰属問題が解決されることを目指す。

ただし、双方とも主張を曲げるつもりはない。特に、いずれの国も指導者が権力を維持する上でナショナリズムが非常に重要な役割を果たしており、妥協には国民が強く反対している。

「アルツァフ共和国」の首都ステパナケルトのシェルター

今年に入って事態が悪化した原因は?

具体的な要素はいくつかある。夏から国境付近で小競り合いが続き、互いに相手が先に仕掛けてきたと非難している。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で社会のストレスが高まり、経済は破綻しかけていて、政治家はいつも以上に愛国心を前面に押し出している。

新たな戦争が起きれば事態は変わるのか?

アゼルバイジャンがナゴルノカラバフを奪還することはなさそうだ。最初の交戦では双方に犠牲者が出たが、アルメニアが発表した映像を信じるなら、物理的な破壊の被害はアゼルバイジャンのほうがはるかに大きい。

独立機関の評価では、アゼルバイジャンの軍備はいまだに貧弱だ。兵士の士気は低く、腐敗し、非効率的で、脱走率は20%近くに達する。

2008~14年は石油収入で新しい装備に巨額の資金を投入したが、原油価格が暴落。政治の混乱と残忍な弾圧が続くなか、アゼルバイジャンは財政的な苦境に立たされている。

アゼルバイジャンが予想外の猛攻撃に出ても、ロシアによる直接的な介入を招き、短期間で停戦を余儀なくされる可能性が高い。ロシアと、両国と国境を接するイランなどは仲介を申し出ている。

一方で、紛争の拡大も懸念される。特に、トルコはアゼルバイジャンを強く支持している。トルコ人はアゼルバイジャン人と文化や経済など結び付きが強く、アルメニア人とは長年対立してきた。1915年にオスマン帝国で起きたアルメニア人のジェノサイド(大量虐殺)をトルコは今なお否定しており、両国の関係は険悪だ。

当初の紛争に見られた宗教的側面は、民族主義的な熱狂に比べると控えめで、ナゴルノカラバフがチェチェンのようなジハード(聖戦)の大義になったことはない。過去には約2000人の元ムジャヒディン(アフガニスタンのイスラム・ゲリラ組織)がアゼルバイジャン側で戦ったが、主に経済的な理由からだった。しかし、それも今回は変わるかもしれない。

とはいえ、最も可能性が高いのは、小規模かつ痛みを伴う戦争の後に、未解決の停戦状態が続く筋書きだろう。今回の戦闘の犠牲者の大半は、紛争が始まったときは生まれてさえいなかったのだが。

From Foreign Policy Magazine

【私の論評】周辺諸国や米国がこの紛争に中途半端に介入し続ければ、混乱を増すだけ(゚д゚)!

アゼルバイジャンとアルメニアはともにコーカサス地域に属する国々です。日本にいると、コーカサス地域のニュースを聞く機会はめったにないです。「コーカサス」で思いつくのはジョージア出身の力士や、長寿にいいと言われるヨーグルトなど、ごく限られたものではないでしょうか。


ところが、陸路でアジアからヨーロッパをつなぐ要衝にあるコーカサスの3か国には近年、日本も関与を深めています。アゼルバイジャンのエネルギー開発には日本企業も投資しているほか、アゼルバイジャンからジョージアを通り黒海に抜ける約460㎞の国際幹線道路の整備事業にも日本が参加しています。


コーカサス地方


2018年には河野太郎外相がコーカサス3か国を歴訪、「コーカサス・イニシアチブ」を発表して人材育成やインフラ整備分野での支援を促進する方針を表明しました。


中国が広域経済圏構想「一帯一路」を推進するべくコーカサスでの存在感を増している中、この地域で歴史的に負の遺産を持たない日本は、いずれの国からも信頼できる友として歓迎され、良好な関係を保っています。


これら3か国との友好関係の深化は、ユーラシア全体の平和と安定にも影響するため、日本の存在感を示す好機にもなります。


また、日本のエネルギー自給率は1割程度にとどまっています。石油、天然ガス、石炭の化石燃料が全体の8割を占めており、エネルギーの安定供給が喫緊の課題です。エネルギー安全保障に必要な供給源の多角化の観点からも、この地域の重要性は無視できません。


ナゴルノ・カラバフ紛争の和平に関与してきた米露両国は、今回の交戦を受け、即座に停戦を呼びかけましたた。米国が懸念しているのは、二か国間の緊張やエネルギー資源そのものよりも、EUにおいてロシアの影響力が拡大することです。

EUの天然ガス総輸入量の約4割はロシアからです。ロシアのエネルギー輸出は、「純粋なビジネス」という見方もある一方で、米国は「エネルギーの政治利用」を強調します。コーカサスの緊張でこの地が不安定化し、パイプラインのオペレーションにも悪影響が出れば、EUのさらなるロシア依存を招きかねないという強い懸念があります。

当のEUは、米国と異なり、地理的にも歴史的にも関係の深いロシアをEU経済から排除することはできないのが現実です。特にドイツでは、脱原発に向け安価なガスの供給源確保が課題となっており、現に、ロシアからの天然ガスをバルト海経由でドイツに運ぶパイプラインの完成が間近に迫っています。

米国はこうした動きに対し、2017年に成立した対露制裁法に基づき、段階的に制裁を発動。今回の武力衝突と時を同じくし、ポンペオ米国務長官は「米欧の安全保障の脅威に対し、我々はあらゆる措置を講じる」と述べ、同パイプライン計画への更なる制裁強化を警告しました。ロシアへのけん制とEUへの圧力と取れますが、その裏には、米国内でだぶついている液化天然ガスをEUに輸出したい思惑もあるようです。

アゼルバイジャン人はトルコ系で言葉が通じ、ソ連崩壊後、関係を強化してきました。最近も7~8月、アゼルバイジャンでトルコ軍は合同演習を行っていました。9月27日の開戦直後からトルコはアルメニアを非難しており、アゼルバイジャンを背後から支援しているとみられています。

ロシアとトルコはすでに、シリアとリビアの内戦で対立する立場を取っており、アゼルバイジャンとアルメニアが本格的な紛争に巻き込まれれば、コーカサス地方で新たな代理戦争が起きる可能性も排除できません。

イスラエルは、最大の敵であるイランを封じ込めるためにアゼルバイジャンとの良好な関係を維持したがっています。

同じ理由で、米国は2016~17年の約300万ドルだったアゼルバイジャンへの安全保障関連投資を、2018~19年には約1億ドルに引き上げた。アルメニアが2018会計年度にアメリカから受け取った安全保障支援金は420万ドルだけです。

そのため、ナゴルノ・カラバフの状況は、アメリカとイランの対立に関わってきます。イラン政府は冷静さを求め、和平交渉の仲介役を申し出ました。イスラエルと米国があらゆる手を使ってイランの外交的影響力を弱体化しようとしているなか、イランにしてみればこの紛争は、自国の影響力を拡大する格好の手段となるでしょう。

このように、アゼルバイジャンとアルメニアの紛争には、米国や近隣諸国の様々な思惑がからんでいるのです。

以前述べたように、ロシアのGDPは今や東京都なみであり、米国抜きのEUとも本格的に対峙することはできません。しかし、コーカサス地域は、経済的に豊かな国はなく、ロシアにとっては比較的に関与しやすいです。ただし、本格的な介入はできないでしょう。その上、現在の米国は中国との対峙を最優先しているので、この地域にはあまり関わりたくはないでしょう。

現在の米国、ロシア、トルコ、イスラエルなどがこの紛争に関われば、中途半端な介入しかできません。それを継続すれば、以前もこのブログに掲載したように、この地域の混乱を増すばかりになります。

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2020年10月5日月曜日

【日本の選択】菅首相に求めたい解散総選挙の決断 日本国憲法に「首相の専権事項」の明記なし―【私の論評】安倍政権が、金融政策をセオリー通りに実行できるようにし、菅政権が財政政策をセオリー通りにできるようにすれば、日本は盤石で菅政権は安定(゚д゚)!

【日本の選択】菅首相に求めたい解散総選挙の決断 日本国憲法に「首相の専権事項」の明記なし

 菅新政権誕生! 

衆院本会議場

 「解散は首相の専権事項」。衆院解散について語られる際に、必ずといってよいほど繰り返される台詞(セリフ)である。だが、意外な事実として、日本国憲法において衆院の解散が、首相の専権事項であるとは明記されていない。

 衆院の解散について明確に記されているのは日本国憲法の第69条だ。「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」と定められている。

 この憲法を読むと、解散は首相の専権事項というよりも、不信任案が可決し、追い込まれた形でのみ解散ができることになっている。首相自身が時機をうかがって、解散権を行使することにはなっていない。

 首相自身が解散権を行使する根拠とされるのが憲法第7条である。第7条では「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ」と定められ、この「国事に関する行為」の中に「衆院を解散すること」が掲げられているのだ。解散の際に「7条解散」などと称されるのは、こうした解散権について曖昧な憲法に由来する。日本国憲法の改正が必要なのは、首相の解散権が曖昧な点にも求められるといってよい。

 憲法上、さまざまな解釈があるのは事実だが、現実には、時の首相が衆院の解散を決断する。戦後、自らの手で解散の時期を定められず衆院議員の任期満了選挙に追い込まれたのは、三木武夫首相だけである。当時は中選挙区制で派閥の領袖(りょうしゅう)の影響力が現在とは比較にならぬほど大きかった時代だ。三木首相は派閥の領袖たちの同意を得られずに解散することができなかった。

 首相たるもの、解散を自らの手で定められぬとあっては恥だとする文化が存在する。現在の衆院議員の任期は来年の10月。必ず、任期の満了前に菅首相は解散を仕掛けるだろう。多くの衆院議員が関心を寄せているのは、いつ解散が行われるかだ。これは菅首相以外の誰にも分からない。

 だが、菅首相がこの選挙を乗り切れなければ菅内閣は瓦解(がかい)し、自民党は弱体化するだろう。数合わせに終始する野党は、目の前の内閣を打倒することに関心を寄せるのみで、自らの具体的な政権構想を提示するには至っていない。仮に自民党が大敗し、菅内閣が崩壊すれば、日本政治は混沌(こんとん)状態に陥るだろう。

 大阪都構想を問う住民投票、連立内閣を組む公明党の意向、9月の自民党総裁選…。解散を遅らせ、全ての問題を一気に解決したいとの気持ちは理解できる。だが、一度下がり始めた支持率を戻すのは困難なことも事実だ。

 菅首相には早期解散を決断していただき、長期政権への地盤を築き上げていただきたい。国難の時代、野合する野党が跋扈(ばっこ)するのは日本の悲劇に他ならない。 =おわり

 ■岩田温(いわた・あつし) 1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。拓殖大学客員研究員などを経て、現在、大和大学政治経済学部准教授。専攻は政治哲学。著書・共著に『「リベラル」という病』(彩図社)、『偽善者の見破り方 リベラル・メディアの「おかしな議論」を斬る』(イースト・プレス)、『なぜ彼らは北朝鮮の「チュチェ思想」に従うのか』(扶桑社)など。ユーチューブで「岩田温チャンネル」を配信中。

【私の論評】安倍政権が、金融政策をセオリー通りに実行できるようにし、菅政権が財政政策をセオリー通りにできるようにすれば、日本は盤石で菅政権は安定(゚д゚)!

私自身は、ブログ冒頭の記事のように菅首相が早期解散に踏み切ることには大賛成です。現在菅政権の支持率は70%と高いです。健在解散総選挙をすれば、余程の番狂わせでもない限り、大勝利でしょう。


そうすれば、確かに菅政権は、長期政権への地盤を築き上げることになるでしょう。ただ、それだけでは不十分です。それに加えて、安倍政権にもみられたように、経済や雇用を良くすることです。

これができない限り、菅罫線は安定政権にはなりえません。安倍政権が長期安定政権になりえたのは、財政政策は増税などで結局失敗しましたが、日銀の金融政策を転換し、大規模な金融緩和政策に踏切り、継続したことによる、雇用の劇的な改善です。

これなくして、憲法論議や安保問題のみに取り組んでいたとしたら、第一次安倍内閣のように第二次安倍内閣も短命に終わったことでしょう。

なぜ、そのようなことがいえるかといえば、国民にとっては、憲法や安保も大事なのですが、まずは日々の暮らし向きが安定しなければ、政権を支持することはできないということがあります。

特に、その中でも雇用は重要です。まずは、雇用がある程度安定していなければ憲法論議、安保論議ということにはならないのです。

安倍晋三氏は、総理大臣になる前から、アベノミックスを強く打ち出しました。その内容は、皆さんご存知のように、積極財政、金融緩和政策、成長戦略です。積極財政は二度にわたる増税で結局はうまくいかず、成長戦略もほとんど手つかずでしたが、それでも金融緩和は継続したため、雇用が劇的に改善しました。これこそが、安倍政権の長期化の原動力だったと言って良いです。

金融政策に関しては、日銀がイールドカープコントロールを実行するようになってから、抑制的な緩和に転じましたが、それでも緩和を継続していたので、雇用はかなり改善されました。


そうして、何よりもコロナの第二次補正予算のときに、政府と日銀がタッグを組み、政府が国債を発行し、日銀がそれを全額買い取る方式を実行して、補正予算は他国に比較しても遜色がないというか、かなりの対策を打つことができ、大成功でした。これで、当初の日本のコロナ対策は「世界に類例のない規模の経済対策」となり、合格点をつけられる状況になりました。

さらに、日本のマスコミは不安を煽り、日本のコロナ対策が失敗したとの印象操作をしていましたが、日本のコロナの感染者数や死者数は桁違いに少なく、世界の中では成功した部類ですし、しかも人口が1億人を超える国家としては、最も成功しています。

今後も日銀・政府の連合軍は、危機的状況における経済政策にも用いられる枠組みとなる可能性が出てきました。これこそが、安倍政権の貴重なレガシーといえます。

安倍晋三氏が、金融政策をセオリー通りに実行できるようにし、菅氏が次の段階で、財政政策をセオリー通りにできるようにすれば、日本は安泰です。日本経済は最近安定傾向ですが、それにしても未だに韓国よりも経済成長率が低いとか、一人あたりのGDPが韓国並というような、ありえない状況(2019年、韓国は2%成長、日本は1%以下になる見込み)を改善できると思います。

この緊縮財政の転換を実現すれば、菅政権は長期政権になるでしょう。ただし、菅氏の年齢は71歳であり、安倍総理の年齢は65歳ということもあり、安倍政権のような長期政権にはならないでしょうが、それにしても一期で終わりということではなく、それ以上の長期になる可能性が大です。

菅政権

具体的には、菅政権が長期政権を目指すというのなら、まずやるべきことは消費税減税でしょう。持続化給付金では、最近詐欺が横行していますが、消費税減税では詐欺が横行することもなく、役所もほとんど何もせずに、対策を打つことができます。

菅政権は、いまのところ携帯電話の通信料引き下げなどの規制緩和に関する政策を打ち出してていますが、規制見直しを実現するには、経済全体の安定成長そして雇用の機会を増やして世論の支持を得なければ、大きな抵抗に直面して実現が難しくなります。

菅政権が、規制緩和をスムーズに実現するために、当面は、コロナ禍の後の経済状況をしっかり立て直して、2%インフレを実現させて経済活動正常化を最優先にすべきです。

このため、菅政権が長期政権になるかどうかは、今後繰り出す政策の優先順位、そして繰り出すタイミングや順番が重要でしす。仮に経済安定化政策が不十分にしか行われず失業率が高止まる経済状況が長期化すれば、世論の支持を失い政権基盤が弱まるので、政治的な抵抗によって目指す改革の実現が困難になります。

菅政権が、優先すべき政策の順番を間違えたり、財政政策を柔軟に行使せず経済安定化政策が不十分に留まれば、大手メディアや多くの政治家の背後にいる権益者の抵抗がより強まり、そうした中で改革を断行すると政権基盤が大きく揺らぐでしょう。これが、改革を志す菅政権が抱えるリスクシナリオです。

やはり、菅総理は、安倍政権の政策継続と、財政政策をマクロ経済的にセオリー通りにできるようにすること(これも立派な規制改革)を公約として、選挙に打っでて、大勝利しその後にまずは経済を良くすることに専念すべきです。そのようにして、盤石な基盤を固めた上で、様々な改革に取り組んでいくべきです。

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2020年10月4日日曜日

菅首相、行革で10億円切り込む!? 日本学術会議任命見送り、朝日「学問の自由脅かす暴挙」産経「侵害には当たらない」―【私の論評】人事の本質を理解しない野党は、ますます勢力を弱める(゚д゚)!

 菅首相、行革で10億円切り込む!? 日本学術会議任命見送り、朝日「学問の自由脅かす暴挙」産経「侵害には当たらない」

 菅義偉首相が、科学者で構成する政府機関「日本学術会議」が推薦した新会員候補のうち、6人の任命を見送った問題が注目されている。会議の梶田隆章会長は近く、任命しなかった理由の説明と6人任命の要望書を政府に提出する方針だが、菅首相は「法に基づいて適切に対応した結果だ」と明言した。年間10億円以上の税金が投入される同会議の存在意義とは。

 新聞各紙は3日朝刊で、この問題を取り上げた。

 東京新聞は前日に続き1面トップで「任命拒否へ解釈変更の可能性」と報じるなど、大々的に取り上げている。あの望月衣塑子記者も「広がる批判」との記事を担当。社説では「任命拒否の撤回求める」との見出しで、「憲法が保障する学問の自由に権力が土足で踏み込む暴挙だ」と訴えた。

学術会議 任命に関する東京新聞の記事 クリックすると拡大します

 朝日新聞と毎日新聞も1面トップや政治面で報じ、朝日新聞は社説で「学問の自由 脅かす暴挙」、毎日新聞は「看過できない政治介入だ」などと菅政権を批判した。

 これに対し、産経新聞は「人事を機に抜本改革せよ」との見出しの主張(社説)で、「学問の自由の侵害には当たらない」「任命権は菅義偉首相にあるのだから当然だ」「学術会議が推薦した会員をそのまま任命する従来のやり方こそ、改めるべきだ」と記したうえで、同会議について以下のように踏み込んだ。

 「学術会議は平成29(2017)年、科学者は軍事研究は行わないとする声明を出した」「技術的優位を確保する日本の取り組みを阻害しかねない内容だ」「(欧米諸国でも)防衛当局と産業界が協力して先端技術を開発するのは当たり前」「一方で、海外から集めた先端技術の軍事利用を図る中国から、多数の科学者を受け入れている事実には目を伏せたままだ」

 読売新聞は政治面で、「首相『法に基づき適切に対応』…学術会議候補6人の任命見送り」とのタイトルで報じた。

 日本学術会議は戦後間もない1949年に設立。民間のシンクタンクが自由闊達(かったつ)に政策研究や提言をしている現在、菅首相は「行政改革」の一環として同会議に切り込むのだろうか。

【私の論評】人事の本質を理解しない野党は、ますます勢力を弱める(゚д゚)!

日本学術会議任命見送に関しての、大手新聞の報道は産経新聞を除いて、常軌を逸しています。他の新聞も概ね異常です。

これは、下の岩田温氏の動画をご覧いただけると、なお一層御理解いただけるものと思います。


会議の梶田隆章会長は近く、任命しなかった理由の説明と6人任命の要望書を政府に提出する方針だそうですが、この方社会常識に著しく欠けています。そもそも、人事の基本がわかっていないようです。

そもそも拒否の理由や登用の理由は人事である以上言えないし、言うべきでもありません。人事でその理由をいちいち対象者に語るようなことをすれば、まともな組織運営ができなくなります。

人事の理由をオープンにしなければならなというのなら、学術会議を政府機関としておくことが不適切ということになり、学術会議を政府機関でなくするような組織改変をせざるをえなくなります。

そもそも、そのようなことは社会常識であり、学術会議のメンバーもほとんどの人が大学などの組織に属しているはずであり、大学の人事で、その理由を対象者に話すことなどありえないということは知っているはずです。また、まともな社会人で、会社の人事に疑問をいだき、人事の理由を問いただすような人はいません。

会社の採用でも、対象者に採用の是非の理由を公表することはありません。入試だってそうです。対象者に合否の理由を公表することはありません。対象者はそれを自分で推量するしかないのです。

こんな、当たり前の社会常識が、梶田隆章会長には欠けているようです。そもそも、人事とはすべての組織において何ものにもまさる真のコントロール手段です。

これについては、以前このブログにも何度か掲載したことがあります。その記事の最新のもののリンクを以下に掲載します。

この方には、人事がどのようなものであるかも理解していないのかもしれません。このブログでは、人事に関しては何度か掲載したことがあります。

その最新の記事のリンクを以下に掲載します。
菅政権の政策シナリオを完全予想!改革を実現するために最も必要なこととは?―【私の論評】菅総理の政策は、継続と改革!半端な政治家・官僚・マスコミには理解できない(゚д゚)! 


詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に人事に関する部分を引用します。

"
経営学の大家ドラッカー氏も、人事こそ他のコントロール手段と比較して、組織において最も効果のある真のコントロール手段であるとしています。
貢献させたいのならば、貢献する人たちに報いなければならない。つまるところ、企業の精神は、どのような人たちを昇進させるかによって決まる。(『創造する経営者』)
ドラッカーは、組織において真に力のあるコントロール手段は、人事の意思決定、特に昇進の決定だといいます。それは当然です。いかに数値などによる精緻なコントロールシステムを構築したとしても、人事によるコントロールにまさるものはありません。

それは組織が信じているもの、望んでいるもの、大事にしているものを明らかにします。

人事は、いかなる言葉よりも雄弁に語り、いかなる数字よりも明確に真意を明らかにします。

組織内の全員が、息を潜めて人事を見ています。小さな人事の意味まで理解しています。意味のないものにまで意味を付けます。この組織では、上司に気に入られることが大事なのか、それとも真に組織に貢献することを求められているのか。

“業績への貢献”を企業の精神とするためには、誤ると致命的になりかねない“重要な昇進”(平たくいえば各部の昇進)の決定において、真摯さとともに、経済的な業績(民間企業の場合)、を上げる能力を重視しなければならないのです。
"
ドラッカーは、民間営利企業の人事を例にとって話していますが、それは日本学術会議任命人事でも同じことです。日本学術会議のメンバーは選挙によって、国民から選ばれるわけではないので、任命権者が真のコントロール手段として用いるのは、当然のことです。それができない組織は崩壊します。新聞や、野党はそれを狙っているのかもしれません。

この問題で、立憲民主党など野党は7、8両日開かれる衆参両院の内閣委員会で、菅政権への追及を強める方針だ。26日召集で調整中の臨時国会前に、菅義偉首相が出席する予算委集中審議の開催を迫ることも検討するそうです。


立憲民主党などの野党も、党内人事というものがあります。この党内人事の理由を立憲民主党などは過去に公表したことがあったでしょうか。当然ありません。いや、自民党や他の党でも、それは公表しません。そんなことをしていれば、党運営などできなくなります。

民間企業でも、正当でも、学術会議も組織の人事の理由を公表しないのは当然のことです。それを学術会議のみ違えるのは、ダブルスタンダードということになります。

日本学術会議は、人文・社会科学や生命科学、理工など国内約87万人の科学者を代表し、科学政策について政府に提言したり、科学の啓発活動をしたりするために1949年に設立されました。。210人の会員は非常勤特別職の国家公務員で、任期は6年間。3年ごとに半数が交代します。

中曽根政権下(1983年)では政府高官が「実質的に首相の任命で会員の任命を左右するということは考えていない」と国会で答弁していますが、これは学術会議はまともな活動するのが前提での答弁であると考えられます。実際学術会議はまともな活動をしてないことが以前からもいわれており、最近も明らかになりつつあります。

この国会での政府答弁を根拠として、任命にあたって会議推薦を拒否できないという法律論は無意味です。そのような議論がまかりとおるのであれば、憲法9条を唱えておけば世界平和になるというお花畑論のような議論もまかりとおることになります。

このことを野党がいくら追求したとしても、無意味です。野党が追求したとしても、菅総理はこのことに関しては、型通りの答弁を繰り返すだけで、埒が明かなくなる野党は得意の審議拒否をするでしょうが、それでも何も変わらず、また国会をサボっていると多くの有権者に批判されることでしょう。

これでは、全く民主主義的とはいえません。野党は、倒閣をしたいなら、非常識な人事のダブルスタンダードで政府を批判するのでなく、民意をくみとり、有権者に納得される政策を打ち出し、選挙で勝負すべきなのです。

このようなことに精力を費やす野党は、国会の審議時間を無駄づかいするだけですし、今後党内人事に関して党員にいちいち説明しなければならないことにもなりかねず組織運営に支障をきたし、ますます勢力を弱めることになります。

これは、表には出てこないでしょうが、人事の説明がないことに反発する野党議員がでてくるのは想像に難くないです。

考え見てください、たとえばあなたの会社の社長や幹部が、他の会社で人事の説明がないことを舌鋒鋭く激しく批判したとして、自分の会社で人事の説明をしないというのであれば、当然多くの社員はそのことに反発するか、それ以前に自社の社長は常識なしだと思うでしょう。

これは、多くの新聞社でも同じことになりかねません。

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2020年10月3日土曜日

トランプ氏、コロナ感染は「逆風」か「追い風」か 最先端「抗体カクテル療法」実施、軽症&早期回復なら大逆転再選も―【私の論評】トランプが2週間の隔離プロセスが終了直後の第二回討論会に出られれば、完璧な「オクトーバーサプライズ」になる(゚д゚)!

 トランプ氏、コロナ感染は「逆風」か「追い風」か 最先端「抗体カクテル療法」実施、軽症&早期回復なら大逆転再選も


マスク姿でホワイトハウスを出るトランプ大統領

 米国が非常事態だ。新型コロナウイルスに感染したドナルド・トランプ大統領(74)は米国時間2日、首都ワシントン郊外の軍の医療施設に搬送された。発熱や倦怠(けんたい)感などの症状があり、臨床試験中の人工抗体薬で治療している。米軍の最高司令官でもあるトランプ氏の容体が今後、重症化する事態となれば、世界の安全保障体制に与える影響も大きく、1カ月後の大統領選にも大打撃だ。一方、軽症で回復すれば、大逆転再選の目も出てくる。 

 「これから病院に行く。私は元気だと思うが、念のための措置だ」

 トランプ氏は2日、ツイッターに動画を投稿、健在ぶりを強調した。

 スーツにマスク姿でホワイトハウスの庭に駐機した大統領専用ヘリコプター「マリーンワン」に歩いて乗り込み、ウォルター・リード国立軍事医療センターに入院。予防的措置としており、数日間、同施設内で執務に当たる。

 CNNは、トランプ氏に2日朝から発熱の症状があると報じた。同日昼の電話会合に出席せず、マイク・ペンス副大統領(61)が代わりを務めた。

 ホワイトハウスはトランプ氏の同日午後の状態について「倦怠感がある」とする専属医の記録を公表。米製薬企業リジェネロンが開発し、臨床試験中の人工的な抗体による薬の投与を受けていると明らかにした。

 リジェネロン社は、2つの抗体を組み合わせた「抗体カクテル療法」の臨床試験で、患者のウイルス量が減り、症状が軽減されたとの結果を発表している。

 西武学園医学技術専門学校東京校校長で医学博士の中原英臣氏は、「抗体カクテル療法は、2つのモノクローナル抗体を組み合わせて用いる治療法だ。1つの抗体よりも2つを組み合わせた方が治療効果があると見込まれている。米国では最近認められた治療法で、最先端の治療の一つを利用するということだろう」と解説する。

 最大の関心事が1カ月後の大統領選への影響だ。トランプ氏の選対本部は2日、11月の大統領選に向け計画している集会やイベントはオンラインで実施するか延期すると発表した。

 これに対し、9月29日の第1回候補者討論会でトランプ氏と激論を交わした民主党のジョー・バイデン前副大統領(77)は2日、検査を受けた結果、陰性だったと明らかにした。

 拓殖大海外事情研究所の川上高司教授は、トランプ氏の容体について「重症化や死亡といった万一の事態も想定しうる。その場合、ペンス副大統領が大統領候補になり、副大統領候補を再度選出するため共和党大会が開催されるが、間に合うか分からない」と指摘する。

 トランプ陣営にとって危機的な状況に陥ったことは間違いないが、トランプ氏が軽症で早期に回復した場合は、別のシナリオも浮上する。

 「トランプ氏が体力的に回復して、健康な姿を見せることができれば、国民や共和党員の支持を集めるだろう。バイデン氏がコロナ対策の追撃をためらうようなことがあれば、トランプ氏が有利になることも考えられる」と川上氏は語る。

 バイデン氏は2日、激戦州の一つ、中西部ミシガン州のイベントに参加し、トランプ夫妻の早期回復を祈っていると表明した。バイデン陣営は、トランプ氏を攻撃するネガティブキャンペーンも取りやめた。

 米カリフォルニア州弁護士のケント・ギルバート氏は、トランプ氏の入院が、かえって存在感を高めるのではないかと強調する。

 「トランプ氏が激戦区を訪れることができないのは確かに痛いが、経済では2日に発表された雇用統計でも、失業率が7・9%と5カ月連続で改善しているという実績もある。民主党やメディアに攻撃され続けてきたトランプ氏だが、今回のコロナ感染によって、『もう4年続けてもらわないと困る』と国民が目を覚ますことになるだろう。メディアの報道もトランプ氏の容体に時間を割いており、バイデン氏が何かを発言したところで国民には響かない」

【私の論評】トランプが2週間の隔離プロセスが終了直後の第二回討論会に出られれば、完璧な「オクトーバーサプライズ」になる(゚д゚)!

米国主要メディアは火曜日の夜に行われた討論会を「史上最悪の討論会」などとトランプ大統領をこき下ろして報道していますが、日本のメディアもそれを鵜呑みにして一緒にこき下ろして報道していて滑稽です。

米メディアがトランプ氏をこき下ろしている理由は次回の討論会までに討論会のルールを変更しようという魂胆があるからです。そうしないとバイデン氏が残り2回も討論会を生き残れないからです。

討論会でのバイデン

そのようなことも理解せずに日本のメディアはそのまま米メディアの翻訳して報道していて本当に情けない限りです。何やら司会者が討論者のマイクの電源を切れるような「サイレント・ボタン」を設置するのはどうか?などといった話も出てきています。

そんな機能が司会者側に設置されれば、機関銃のように喋れるトランプ大統領には不利になります。バイデン氏は討論の途中、やはり単語が出にくい場面がありました。やはり認知症の疑いがあるのではないかと私は感じました。

NBCの人気ドラマ「The Blacklist ブラックリスト」(日本ではNetflixでみられます)に出てきたモサドのエージェントでFBIに潜入したサマルという捜査官が任務中の事故で血管性認知症に冒されて失語症や記憶を失い始めるシーンがありましたが、あのようなな感じでした。

サマル・ナヴァービ役のモズハン・マーノ

ホワイトハウスはフロリダ州での集会など大統領が2日計画していた政治イベントをキャンセルしました。トランプ氏の隔離が続くことから、ウィスコンシン、ペンシルベニア、ネバダなど重要州への訪問を含む今後数日の予定も中止されるでしょう。

集会に姿を見せ有権者と触れ合うことで、資金を集めるとともに支持者の熱狂をあおるのがトランプ氏のスタイルです。また、選挙戦の最終盤で焦点を新型コロナから移し、最高裁判事指名や景気回復、暴動などに向けたい考えでした。しかし今や、今後数週間の話題はトランプ氏の健康状態に集中するでしょう。

得意の政治集会や、選挙の焦点をずらす作戦が不可能ならば、民主党候補バイデン氏の世論調査でのリードを覆すのは難しくなる公算も大きいです。

ただ、トランプ氏の陽性判定のわずか72時間程度前に討論を行っているバイデン氏も、自主隔離に入るかどうかを決めなければならないでしょう。バイデン氏陣営は今のところトランプ氏の感染についてコメントしていないですが、対立候補の病気を喜んでいるような様子は決して見せずにトランプ氏の新型コロナ対応への批判を続けるという適度な姿勢を保つことが必要になります。

今後の米大統領戦のポイントは以下の2つです。 

(1)症状の重さ 
(2)回復の早さ 

症状が重ければ、現職の大統領としての実務が続けられなくなります。ホワイトハウスというかなり厳重に感染対策が行われているはずの場所で、側近に続いて大統領夫妻が感染したとなれば、ホワイトハウスの統治機能そのものに大きな疑問符がつきます。 

これまでトランプ氏のコロナ政策を批判してきた野党・民主党は、ここぞとばかりに、『自業自得』だと批判の声を高めることが予想され、トランプ支持者から見てもトランプ氏がこれまで主張してきたことの信ぴょう性が崩れることになります。ただ、その一方で重症化すれば同情の声もあがり、病気の人への批判はやりづらくなるという面もあります。 

一方で、症状が治まって比較的回復も早かった場合は、逆にトランプ氏に『有利』に働く可能性もあります。 

支持者らはトランプ氏自身が言っていたように「やはりコロナは大したことなく、大統領は強い人だ」と再認識することになりますし、選挙集会なども予定通り行われれば、トランプにとっては、自分はコロナから回復した「強い指導者」であるとアピールする場となるので、追い風になる可能性もあります。

米国で開催されたコロナパーティー

さらに、トランプ氏の容態が良かろうが、悪かろうが、トランプ支持派にはかなりの危機感が芽生えたと思います。共和党内も、トランプ支持で結束を固めることになるでしょう。米国内の保守派もそうなるでしょう。

そういう意味では、今回の感染判明が一方的にトランプに不利になるわけではありません。今後の最大の注目点はトランプ氏が重症化するか、比較的早く回復するかというところです。

次に予定されている二回目の大統領候補者の討論会は10月15日ですからちょうどトランプ大統領の2週間の隔離プロセスが終了するときです。なんというタイミングなのでしょう。しかも討論会の舞台をトランプ大統領の第2の庭であるフロリダ州に変更したのは6月ごろでした。

このタイミングで、トランプ氏が、二回目の討論会に出ることができれば、トランプ氏にとっては、かなり有利な展開になります。それにしても、まるで最初から図ったようなタイミングです。それにトランプ氏としても、多少体調が悪くても、他者に感染させる可能性がなければ、無理をしてでも出るでしょう。

米国では選挙の直前に驚くべきことが起きて選挙情勢を大きくひっくり返すことを「オクトーバーサプライズ」と言いますが、まさに文字通り、10月に入ったばかりでの感染確認は、最大のオクトーバーサプライズになったと言えるかもしれません。

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2020年10月2日金曜日

10万の兵がにらみ合う中印国境、一触即発の恐れも―【私の論評】総力戦になれば長期化し、両国だけの問題では済まず、周辺国を巻き込むのは必至(゚д゚)!

10万の兵がにらみ合う中印国境、一触即発の恐れも

岡崎研究所

 中印の国境紛争は単なる小競り合いなのか、それとも、軍事衝突のリスクが現実のものとなっているのか。今や、軍事衝突のリスクが無視できなくなってきているように見える。


 構図としては中国が攻勢を強めており、インドがこれに強く反発している。中国が攻勢を強めている動機は明らかでないが、ジョンスホプキンス大学SAISのアジア計画責任者Devesh Kapurは、9月13日付けフィナンシャル・タイムズ紙掲載の論説‘India and China are edging towards a more serious conflict’で、一つの仮説として、中国はチベット情勢を憂慮しているのではないかと言っている。なるほど、6月15日に発生し、インド兵士が20名死亡したと報じられている衝突は、中国チベット自治区に接するインド、ラダック地方にあるガルワン渓谷で起きている。渓谷ではインドが実効支配線のインド側で道路を建設中で、中国はそれを一方的な現状変更とみなし、約8000名の部隊を展開させていたという。インドはダライラマとチベットの亡命政府を受け入れており、中国が圧力を加えようとしたのかもしれない。

 中国が攻勢を強めている第二の理由として考えられるのは、中国が新型コロナをめぐる情勢に乗じて強めている対外攻勢の一環ではないかということである。中国はいち早くコロナ情勢を終息させ、各国がコロナ対策に追われているすきに対外攻勢を強めている。南シナ海における実効支配の強化がその一つとして挙げられている。香港に対する強硬策もそうではないかと見られている。ただこれは推測の域を出ない。

 第三の理由は、インド側による刺激である。インドは実効支配線のインド側で滑走路や道路建設などを進め、軍備増強の布石としている。6月15日のガルワン渓谷での衝突も、中国側が、インド側が道路建設で現状を一方的に変更したとみなし、大規模な軍を動員したことが背景にある。中印いずれも相手が国境の現状を変更しようとしていると考えている。

 ただ、両国政府とも事態の悪化は避けたいと考えており、6月15日の事件以前にも6月6日の中将級会談を初め、高位級実務者会談を数回開いている。6月15日の事件を受けて、9月に入りモスクワで開催された上海協力機構の場を利用して、4日には中印の国防相会談、10日には外相会談が行われ、係争地域の軍事的緊張を緩めるため対話を続け、現地部隊の接触を避けるべきであるとの認識で一致した。しかし、効果は望まれない。それは中印両国が、係争地のラダック地方に両国を合わせ10万人と言われる大規模な軍を集結させていると見られるためである。

 インドでは6月15日の衝突でインド兵20名が死亡したことに対し、対中世論が硬化し、モディ首相に中国に対ししっぺ返しをするよう圧力を加えているという。国境地帯からの撤兵は考えられない。他方、中国も、緊張の原因はインドにあると主張し続けているので進んで撤兵することは考えられない。モディ首相のしっぺ返しがどのような形をとるか分からないが、もししっぺ返しが行われたら中国側は黙ってはいないだろう。

 中印の軍事衝突を避けるために介入するとしたら米国であろうが、いま米国では大統領選挙の最中で、介入どころではない。仮に大統領選挙中でなかったとしても、米国が火中の栗を拾うような介入をするか疑問である。それに現在米中は激しく対立しており、他方でインドとの関係を強化している。米国は米印の間で中立的な立場はとれず、中国が米国の介入を受け入れないのではないか。

 中印併せて10万の兵が係争地帯で目と鼻の先でにらみ合っているのはまさに一色触発の状況であり、誤算が起こりうる。中印の軍事対決は危機的状況にあると言わざるを得ない。

【私の論評】総力戦になれば長期化し、両国だけの問題では済まず、周辺国を巻き込むのは必至(゚д゚)!

今回の紛争の端緒は、中国側によるものであることを示唆する衛星写真が公開されています。

衛星写真は地球の画像を手掛ける企業Planet Labsが衝突翌日の6月16日に撮影。ロイターが入手した写真によると、1週間前と比べ衝突の起きたガルワン渓谷で活動が活発化した様子が見て取れます。樹木のない山沿いとガルワン川の中に機械類設置されているのが見られます。

米カリフォルニアのミドルベリー国際大学院で東アジア不拡散プログラム担当ディレクターを務めるジェフリー・ルイス氏は「写真は中国が渓谷で道路を建設しているほか、川をせき止めている可能性もあるように見える」と指摘。「多くの車両が実効支配線(LAC)の両側にあるが、中国側がはるかに多いようだ。インド側が30─40台で中国側が100台を優に超えている」と述べました。

中国外務省の趙立堅報道官は、現地の状況を詳細に把握していないとしつつ、インド軍が最近の数日間に複数の場所で中国領に侵入したと強調。インド軍は撤退すべきだと述べました。

インド軍は、中国との紛争地域で6月15日夜に起きた同国軍との衝突により、兵士ら少なくとも20人が死亡したと発表しました。死者数は数十年ぶりの規模。中国側は死傷者の詳細を明らかにしていません。

中印の軍事力を比較した表を以下にけいさいしておきます。多少古い資料です。人口は現在は中国がほぼ14億に近く、インドが13.5億です。


グローバル・ファイヤーパワー(Global Firepower)の「2020年軍事力ランキング(2019 Military Strength Ranking)」によると、中国の軍事力は世界3位、そしてインドは4位と肉薄していますが、実際の両国の軍事力の差は大きいです。

両国の人口は他の国を大きく引き離しています。その分、両国とも兵力も多いですが、インド軍の方が兵員は多いです。

航空戦力は3位と4位になりますが、その差は1000機以上もあり、戦闘機の数は中国が倍と航空戦力は中国が勝っています。さらに中国は第5世代のステルス戦闘機(実際は第4世代であると軍事評論家も多い)を保有しており、インドは旧式のMig戦闘機が多く性能的にも分が悪いです。

戦車に関してはインドが多いです。中国の最新は99式、インドはT-90になり、どちらも第3世代戦車です。現在先進国の戦車は3.5世代です。次世代の第4世代戦車は、未だいずれの国も開発に成功していません。

しかし、世界一地形が険しいヒマラヤの山岳地帯では戦車の運用率は下がります。山岳地帯ではヘリが効果を発揮するのですが、中国の方が数は多いです。

艦艇の数は中国が圧倒的に多いです。しかし、両国は国境こそ接していますが、洋上の距離は非常に遠いです。海上戦闘は起こらなそうですが、中国はミャンマー、カンボジア、パキスタンの港の建設支援をしており、これは軍港としての利用を目的としている考えられ、インド洋まで作戦展開できる能力があります。

さらに、先日もこのブログに掲載したように、中国はタイに運河を建設しようと目論んていますが、これができあがれば、中国の艦艇は、マラッカ海峡を通らずに、インド洋に進出できます。こうなれば、中印の海上戦闘も十分起こりうる可能性があります。

軍事予算に関しては中国が圧倒的に上回っています。人件費の違いこそありますが、中国はここ最近、最新の兵器を揃えており、軍事費は年々増加している。その点、インドの兵器は旧式化するなど性能差は大きいです。


インドは中国と合わせパキスタンともカシミールで領有権問題を抱えています。Googleマップでもこの地点の国境線は点線などでぼやかされています。パキスタンとは中国以上に火種を抱えており、過去に4度の大規模な武力衝突を起こしています。

紛争の際、中国はパキスタンを支援しており、もし中印間で衝突が起こった場合はパキスタンが中国に加勢すること明らかです。パキスタンの軍事力は世界15位になり、力は小さくはなく、インドからしてみれば挟撃される形になります。周辺国ではネパール、ブータンはインド寄りですが、両国とも軍事力は貧弱でお世辞にも力にはなりません。

中印で紛争が起こった場合に一番懸念すべきは両国ともに核兵器を持っている点です。そもそも、インドが核兵器を持った理由は1962年の中印国境紛争にあります。この紛争でインドは中国に敗れ、核武装に至ったのです。

そうして、インドに対抗する形でパキスタンも続いて核武装に至っています。このような戦略兵器の点では、中国は米国、ロシアに次ぐ3番目の戦力を誇り、短距離、中距離、潜水艦発射、大陸間弾道ミサイル(ICBM)などのさまざまな弾道ミサイルを生産および配備しています。 

20,000 kmの射程超える東風41は地球上のあらゆる場所を射程に収めています。インドに関しては最も射程が長いBlaze 5ミサイルで範囲は5000〜8000 kmです。こちらもインド北端からであれば中国全土を射程に収めています。戦局によっては戦略核兵器の行使も辞さない可能性は絶対ないとはいえないです。

インド政府は今のところ静観の構えですが、インド国内で中国への反発が急速に高まっているのは確かです。 インド政府が今後米国の動きに応じるようなことになれば、腹を立てた中国がインドに対して懲罰のための軍事行動に出る可能性は十分にあります。

1979年のベトナムへの軍事介入の再来です。 鄧小平は「ベトナムを懲らしめる」と息巻いていたようですが、ベトナムの抵抗に遭い苦い敗北を喫しました。ところが国内では、大規模な戦争を主導したことで確固たる権力基盤を固めたと言われています。

この経緯を習近平が知らないはずはありません。 新型コロナウイルスの蔓延により、米軍の活動が停滞している隙を突くかのように、中国は南シナ海の実効支配の既成事実を図るなど「火事場泥棒」的な動きを強めています。

「新型コロナウイルスと今年夏のスーパーサイクロンのダメージでインド軍は弱体化している」と判断し、兵員を投入すれば、1962年以来の大規模紛争になってしまうかもしれないです。 一方、物理的な衝突によって、インドのモディ首相は中国の影響力抑止に向け国民のさらなる支持を得ることになるでしょう。

インド モディ首相(左)と習近平

人口で世界第1位、アジアでの経済規模第1位の中国と、人口で世界第2位、アジアでの経済規模第3位のインド。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が4月27日に明らかにした報告によれば、昨年の軍事費世界第2位は中国(2610億ドル)、第3位はインド(711億ドル)です。 

日本では台湾や香港、朝鮮半島などに対する中国の動向に関心が高いですが、核兵器を共に有する中パキスタンとインド間の大規模な軍事紛争の勃発リスクについても警戒が必要ではないでしょうか。

結論としては軍事力に関しては中国の方が上で地政学的にも有利です。しかし、両国とも大国なだけに膨大な戦力を擁しており、総力戦になれば長期化し、両国だけの問題では済まず、周辺国を巻き込むのは必至です。このまま、何もないことを願うばかりです。

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2020年10月1日木曜日

アンティファは「意見」とバイデン、一方ホワイトハウスは数日前にテロ組織指定に向けた動き―【私の論評】討論会のバイデン氏は、トランプ氏を「レイシスト」とレッテル貼りするだけで完全に精彩を欠いていた(゚д゚)!

アンティファは「意見」とバイデン、一方ホワイトハウスは数日前にテロ組織指定に向けた動き

<引用元:FOXニュース 2020.9.30

バイデンと民主党は「組織化された極左過激派の脅威を軽視・否定」したい:ジャーナリストのアンディ・ンゴ氏

Andy Ngo


民主党大統領候補のジョー・バイデンは、29日に行われた最初の大統領候補討論会でアンティファを非難するよう求められた際、暴力的な左翼過激主義を「意見」として片付けた―が、その主張にホワイトハウスを含め、共和党と彼らを間近で取材してきた一部の人々が異議を唱えている。

「アンティファは意見であって、組織ではない。それは(トランプの)FBI長官が言ったことだ」とバイデンはオハイオ州での討論会で述べた。

バイデンは、FBIのクリストファー・レイ長官が9月初めに、アンティファは「本当のこと」であり、FBIはアンティファに自分を重ね合わせる人物を含め、「暴力的な無政府主義の過激主義者と我々が形容する者に対して、相当な数の適切な根拠に基づく捜査」に取り組んできたと述べた証言のことに言及していたようだった。

「我々はアンティファを、組織というより思想や運動と見なしている。誤解のないように言うが、我々は暴力的な無政府主義の過激主義者に対して、相当な数の適切な根拠に基づく国内テロ捜査を実際に行っている」とレイ長官は語った。

また長官は、アンティファ運動に自分を重ね合わせる人物が、捜査中の「小グループや中心点と形容できる物と局所的に融合」していると述べた。

つい先週、トランプ大統領はアンティファをテロ組織に指定する計画を導入した。過去に実行を示唆していたことだ。

アンティファは長年暴力や暴動の背景になってきた。ルーツは2007年のオレゴン州ポートランドにまで遡るが、夏の期間ポートランドのような全国の都市での暴力増加の背景となっており、そうした場所では連邦裁判所が何カ月も包囲された。

ウィリアム・バー司法長官は以前CNNに対して、「大規模な暴力事件のある全ての都市の全ての警察署長と話して来たが、全員がアンティファを暴力の込め矢(旧式の銃で銃身に弾を詰める道具)と認定している」と語った。

連邦議会では、テッド・クルーズ上院議員(共和、テキサス)がアンティファと他の過激団体に関する公聴会を開き、暴動を「組織化されたテロ攻撃」と呼んでいる。

「こうした暴動は自然発生のものでも、単なる偶然でもない。むしろ、恐怖を植え付けて政府の基本的な機関を解体することを目的とした組織的なテロ攻撃だ」とクルーズ議員はFOXニュースに語った

一方で、アンティファを長年取材しているジャーナリストで、昨年のアンティファ暴動による襲撃で重傷を負ったアンディ・ンゴは、グループが「意見」に過ぎないという主張に反発した。

ンゴはアンティファに関する本の出版も予定しているが、FOXニュースに次のように語った。「バイデンが昨年その発言を行っていたら、弁解の余地があっただろうと思う。だがこれまで、明確なアンティファによる組織化された要素のある暴動が何カ月も続いている。アンティファに関する議会公聴会も行われた。刑事告訴された事件の一部にはアンティファのつながりを示す証拠もある」

ンゴはこう続けた。「バイデンの発言で、この問題に関して、彼―そして民主党―は、リベラルの現状を保持したいと考えているということが分かった。つまり、組織化された極左過激派の脅威を軽視して否定したいということだ」

彼はまた、ポートランドでの暴力は何カ月も継続しており、人々のグループが共通の意見で団結した場合よりもはるかに組織化されていると指摘した。

「アンティファに関して知る必要があることは、組織化されたセル(小集団)やグループを含む思想であり運動であるということだ。メンバー、参加者、そして資金なしにシアトルやポートランドのような場所で何カ月も暴動が続くことはない」と彼は語った。

それは下院で共和党が繰り返したテーマでもあり、先週FBIに誰が暴動に資金を提供しているか捜査するよう強く求めていた。

「司法省とFBI幹部は、こうした犯罪組織に資金提供した者に法の裁きを受けさせ、こうした人物や組織によって大打撃を受けた地域に正義をもたらす必要がある」と24人の共和党議員が書簡の中で述べた

【私の論評】討論会のバイデン氏は、トランプ氏を「レイシスト」とレッテル貼りするだけで完全に精彩を欠いていた(゚д゚)!

バイデンの「アンティファは意見であって、組織ではない。それは(トランプの)FBI長官が言ったことだ」との発言は、大統領候補者の発言としては明らかに問題があります。

以下に米国におけるアンティファの活動についてふりかえっておきます。

2017年8月12日と13日ヴァージニア州シャーロッツビルでは、南北戦争の南軍司令官リー将軍の銅像撤去に反対する白人至上主義者のデモ隊と、これに抗議する極左団体アンティファが衝突し、3名の死者を出しました。

その一周年にあたる2018年8月12日、ワシントンで計画されていた白人至上主義者のデモは、人数でこれを上回るアンティファの抗議を前に、自発的な中止に追い込まれました。

アンティファとはアンチファシスト(anti-facist)の略称で、人種差別や性差別などに反対する団体です。米国には白人警官による黒人容疑者への暴力を批判し、抗議デモで世論を喚起する「ブラック・ライブズ・マター」などの社会運動がありますが、これらとの決定的な違いは、アンティファが暴力を辞さない点にあります。

アンティファは他の左翼やリベラル派と同じく「多様性」や「包摂性」を強調し、ヘイトに抗議しますが、主な活動はその価値観の普及ではなく、人種差別主義者、性差別主義者とみなされる個人・団体への妨害や襲撃にあります。

シャーロッツビルでの衝突から約半月後の2017年8月27日には、カリフォルニア州バークレーで、トランプ支持者の集会にアンティファが乱入。この集会には白人至上主義者以外も参加していましたが、アンティファが見境なく暴行を加える様子が映像に記録され、14人が暴行容疑などで逮捕されました。

アンティファは小さな団体や個人のネットワークで、全体を代表する指導者や組織はありません。そのため、全貌は明らかでなく、支持者の人数も不明ですが、著名な哲学者ノーム・チョムスキーをはじめ多くの専門家は、アンティファのルーツがファシズムの台頭した1930年代のヨーロッパにあるとみています。

国家権力への不信感が強く、弱者の人権を強調する運動の流れは、第二次大戦後のヨーロッパで反戦運動、学生運動、環境保護運動などを吸収しながら生き残り、冷戦後の1990年代には地球規模での市場経済化に反対し、これを進めるG7やG20の首脳会議にもバリケードを設けたりして抗議する反グローバリズム運動に発展しました。

これらヨーロッパの左翼運動には、選挙への参加や平和的なデモなどを通じて社会の変革を目指す穏健派だけでなく、破壊活動を行う急進派も珍しくありません。例えば、2000年にパリ近郊でスローフード運動家が「資本の力で文化の独自性を破壊する」グローバル化の象徴とみなされたマクドナルドの店舗を襲撃・破壊したことは、その代表です。

こうした急進派左翼の思想とスタイルが人種差別主義の広がる米国に渡り、「ブラック・ライブズ・マター」などの影響をも受けながら確立されたのが、現在のアンティファとみられます。

黒いTシャツをきて、ゴーグル、マスク、ヘルメットなどで顔を隠すのがアンティファの基本スタイルで、男性の場合、極右にスキンヘッドが目立つのと対照的に長髪も珍しくないですが、これらはヨーロッパの急進的左翼にも共通します。

アンティファの主な標的は人種差別的、性差別的な言動の目立つトランプ政権で、トランプ氏の就任式があった2017年1月20日には、黒ずくめの活動家らがホワイトハウス近くで警察車両や停車中のリムジンに火をつけたり、周辺のマクドナルド店舗の窓ガラスを割ったりして、217人以上が逮捕されました。

アンティファの急激な台頭は、トランプ政権の警戒を呼んでいます。

アンティファの一般的な認知は、シャーロッツビルでの衝突をきっかけに高まりました。シャーロッツビルでの衝突の3人の死者のうち、2人は抗議デモをヘリで監視していた州兵でしたが、残る1人は白人至上主義者が暴走させた自動車にひかれた女性でした。そのため、大手メディアの多くはアンティファの暴力を批判しながらも、白人至上主義者を主に批判しました。

これに対して、トランプ大統領は衝突の原因が双方にあると力説。これを受けて、ホワイトハウスはウェブサイト上で「アンティファをテロ組織に認定するべき」という署名募目を開始。30万人以上の署名が集まりました。

その後9月1日、アメリカの政治専門ニュースメディア、ポリティコは、国土安全保障省とFBIはオバマ政権時代の2016年からアンティファを白人至上主義団体クー・クラックス・クラン(KKK)などと同じく「国内のテロリスト」とみなしていたと報道しました。

一方、もともとトランプ政権と対立してきた多くの大手メディアには、シャーロッツビルの後もアンティファを擁護する傾向が目立ちました。

先述のように、シャーロッツビルでの衝突から一周年にあたる8月12日、ワシントンではアンティファの圧力の前に白人至上主義者がデモを中止せざるを得なくなったのですが、これに関して同日付けのニューヨークタイムズは「多くのワシントン住民は事態がより悪い方向に向かわずに済み、さらに悪い連中(bad guys)が効果的に追い払われたことに安心した」と述べ、「アンティファが意見の異なる者の言論を暴力で封じるのをみたくない」と白人至上主義者のデモ隊を説得した住民の声を紹介するなど、暴力を容認しないまでも、アンティファによってデモが押さえ込まれた結果を支持しました。

今年は、アフリカ系アメリカ人ジョージ・フロイドさんの暴行死を受けて過去数カ月、米国の諸都市で抗議活動が行われていますが、その中にアンティファも存在します。デモ隊の一部は暴徒化しています。オレゴン州ポートランドで8月29日にトランプ大統領支持派の1人が死亡した事件で、警察はアンティファ支持を自称する人物について調べています。

アンティファの活動家は、白人至上主義者グループのデモに積極的に抗議することで知られています。ADL(名誉毀損防止同盟)によると、デモに抗議するほとんどのアンティファの傾向は非暴力的ですが、極右グループとの衝突で何度か暴力に発展しているといいます。

この運動の活動の多くは、相手の身元や職業などの個人情報を暴露する「ドクシング」(晒し)といった戦法を用いており、このことは他のグループから広く批判されています。さらに、研究者によれば、アンティファに関わる一部の人々、特に無政府主義思想を持つ人々は身体的な暴力に訴えることもあるといいます。

これ以外にも、アンティファを自称する人々による行動は、偏狭な考えを持っているとみなした相手に怒声を浴びせることから、より過激な手段までさまざまです。警察は2017年、カリフォルニア大学バークレー校で起きた、保守系メディア「ブライトバート・ニュース・ネットワーク」の当時の記者による講演中止を求めるデモで、火炎瓶を投げ、器物を損壊した行為とアンティファとの関連を認めました。これらの衝突は超党派の非難を呼びました。

研究者らは、どれくらいのメンバーがアンティファで活動しているのかを把握するのは不可能だと指摘しています。アンティファには統一した組織がないからです。しかし、研究者らによると、2016年にトランプ氏が大統領に選ばれた後、アンティファの活動は増えたといいます。

トランプ大統領は6月31日日曜、ツイッターへの投稿で戦闘的左派団体「アンティファ」をテロ組織に指定したことを明らかにしました。

ウィリアム・バー司法長官によれば、FBI連邦捜査局のテロ対策課はアンティファ、および同系列のグループによる武力行使について、テロと見なして捜査を開始しました。FBIは56の作業グループからなるテロ対策課と連携し、犯罪組織メンバーの特定を進めていくということです。

ウィリアム・バー司法長官

日本のメディアは、バイデンのかなりの問題発言をとりあげないばかりか、トランプ氏が度々バイデン氏の發見を遮ったことを報道し、まるでトランプ氏が狂ったピエロでもあるかのような報道をしています。

しかし、米司法長官がアンティファ、および同系列のグループによる武力行使について、テロと見なして捜査を開始しているのですから、これを「意見」と表現することにはかなりの問題があります。

私の今回の討論会の印象は、バイデン氏はトランプ氏のことを「差別主義者」とか「史上最悪の大統領」とレッテル貼りするだけで、全く論理的ではないですし、トランプ氏の質問に対しても具体的に回答できずはぐらかすだけで、完全に精彩を欠いていたというものです。

これは、以下の動画をご覧いただければ、おわかりいただけると思います。


この「はぐらかし」が、トランプ氏がバイデン氏の発言を遮った理由です。トランプ氏はバイデン氏に返答をさせるために遮ったのです。

以下のトランプ大統領のツイートに添付された動画をご覧いただければ、おわかりなると思いますが、ハーシェル・ウォーカー氏も語っているように、トランプ氏はレイシスト(人種差別者)ではありません。パイデン氏や、反トランプ派はトランプにレイシストというレッテルを貼り、貶める作戦を展開しているようにしか見えません。




トランプ氏が反イスラムというのも、全くの嘘です。それは、最近のアラブ諸国とイスラエルの和平を仲介したことでもはっきりしていると思いますし、アラブメディアの多くもトランプ氏に肯定的です。 

米国のメディアのほとんどが、特に大手テレビ局はすべてリベラルなので、トランプ氏報道に関しては偏向しているのは理解できますが、日本のメディアもトランプ氏を狂ったピエロのように報道するのはいただけません。

日本のメディアの多くは、日々日本を中国の傘下に入れようと、奮闘努力しているようですが、たとえ親中派のバイデンが大統領になったとしても、バイデンは民主党の操り人形のようなものであり、民主党のほとんどの議員も今やドラゴンスレイヤー(反中派)ですら、中国に対する厳しい態度は、トランプ政権と同じかそれ以上なる可能性が高いです。

それを考えれば、もっとまともな報道をすべきと思います。もう、少し前までの中国は幻想に過ぎないのです。今のままだと、マスコミは安倍ロスどころか、中国ロスでさらに苦しむことになるでしょう。

米国は、中共が崩壊するか、崩壊しなければ、経済的に弱体化して、他国に影響を及ぼせなくなるまで、制裁を継続するでしょう。そのようになるまでには多少時間がかかるかもしれませんが、中国の未来は暗く見込みがないということがはっきりするのには、さほど時間を要しないでしょう。そうなった時の、マスコミや野党、自民党の親中派の中国ロスは、かなり大きく衝撃的なものになるでしょう。

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2020年9月30日水曜日

菅首相の徹底した“情報収集術” 高い処理能力と速い政治決断、官僚はこれまでにない緊張感 ―【私の論評】菅総理の卓越した情報収集力に、マスコミも大緊張を強いられることになる(゚д゚)!

 菅首相の徹底した“情報収集術” 高い処理能力と速い政治決断、官僚はこれまでにない緊張感 

高橋洋一 日本の解き方

9月26日 福島を訪問した菅総理(左)

 菅義偉首相が連日、有識者と会食していることが話題になっている。菅氏はどのように情報収集し、どのように政治判断につなげるのだろうか。

 仁徳天皇の逸話にあるが、高台に登って国を見渡し、民家のかまどに煙が立っていなければ、民が貧しいと判断した。そして、3年間の徴税をやめた。

 政治家の仕事も、国民の声を拾って、政策として実現することだ。

 情報収集のやり方は政治家それぞれだが、菅首相は、役所の統計だけではなく、自ら集めた生の声を重視している。そして政治家としてこの情報収集にかなりの時間を割いている。その際、聞き上手でもっぱら聞き役に徹しているようだ。さらに、複数の異なるタイプの情報ソースを持ち、相互チェックもしているようだ。

 ある役人から聞いたことだが、資料を渡して、歩きながら説明しても、菅首相の目はしっかりと資料を見ており、しかも説明より先を見て、説明者が追い付かなかったという。

 資料全体を一瞬で読み込み、理解する人は、いわゆる仕事のできる人によく見かけるタイプで、情報処理能力の極めて高い人だ。

 こういう人は、一度聞いた説明を忘れない。そして、仕事の進捗(しんちょく)プランができているので、その後チェックして、適切に対応できているかを確認し、状況に応じて、政治決断をする。どんな職場にもいるが、仕事のできる幹部そのものだ。


 政治決断の結果は、それまで作業に当たっていた人の思惑とは異なっているかもしれない。もっと時間をかけて慎重に検討したいと思っていても、幹部の要求はもっと早くやるというものかもしれない。

 政治決断の結果、一定の成果を得るためには、担当する人を変えることもあるかもしれない。それは民間企業でもよくある話だ。そういう意味では、これまでの政治家にはない仕事への厳しさがあるのではないか。

 筆者のこれまでの印象では、菅首相はいろいろと話は聞くが、決断は速いと思う。話の途中でも決断し、すぐに指示を出すことも珍しくない。

 しかも、菅首相は官房長官を歴代最高の7年以上も務めた。首相に上がる情報は原則官房長官にも上がり、その過程で霞が関幹部官僚の大半の能力を把握し、頭の中に整理しているはずだ。

 官僚にとって、霞が関の人的情報を含めて各種の情報収集にたけ、政治決断の早い首相は、頼りがいもあるが、思い通りにならないという怖い側面もあるだろう。

 これまでの首相は、みこしに担がれ、比較的官僚には優しく、言いなりになる人が多かった。しかし、菅首相はたたき上げであり、仕事の成果を求め、決して官僚の言いなりにならないし、卓越した情報収集能力がある。

 官僚の間にはこれまでにない緊張感があるのではないか。その緊張感が官僚の良い仕事につながれば何よりだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】菅総理の卓越した情報収集力に、マスコミも大緊張を強いられることになる(゚д゚)!

ドラッカー氏

上の記事で、高橋洋一氏は、徹底した“情報収集術”と、高い処理能力と速い政治決断について述べています。情報について、経営学の大家ドラッカー氏は以下のように主張しています。
データそのものは情報ではない。情報の原石にすぎない。原石にすぎないデータが情報となるには、目的のために体系化され、具体的な仕事に向けられ、意思決定に使われなければならない。(『未来への決断』)
情報の専門家とは道具をつくる者です。ところが道具として、いかなる情報を、何のために、いかにして使うかを決めるのは、ユーザーです。ユーザー自身が、情報に精通しなければならないです。

ほとんどの政治家が、情報が自らの意思決定に対して持つ意味を考えていないようです。したがって、情報をいかに入手するか、いかに検証するか、既存の情報システムといかに統合するかが、今日最大の問題です。

かつては、とにかく情報を持つことが勝利への道でしたた。軍隊でも企業でも同じでしたた。ところが、情報革命により、情報が氾濫しました。今では、誰でもクリックするだけで、世界中のあらゆることについて情報を得られます。

その結果、情報力とは、情報を入手する力ではなく、情報を解釈して利用する力を意味することになりました。情報のユーザー自身が、情報の専門家にならなければならなくなりました。情報もまた、ほかのあらゆるものと同じく、使われて初めて意味を持ちます。
コンピュータを扱う人たちは、いまだにより速いスピードとより大きなメモリーに関心をもつ。しかし、問題はもはや技術的なものではない。いかにデータを利用可能な情報に転化するかである(『未来への決断』)
データに詳しくなることと、情報に精通することは違う、とドラッカーは主張しているのです。そうして、それを見分けるのに重要なのは、次の2つの問いに答えられるようになることだとしています。

1つは、企業経営者として(菅総理なら総理として)いかなる情報を必要とするか、もう1つは、自分個人としていかなる情報を必要とするか、で。

そうして、これらの問いに的確に答えるには、次の3つの点を真剣に考え抜かなければならない、としています。

第1点は、自分の職務とその本質は一体、何なのか、そして本来どうあるべきか。
第2点は、自分が寄与貢献できるのは何であり、また何であるべきか。
第3点は、自分の関わっている組織の基礎(ファンダメンタルズ)をつくる事柄は一体、何か。

以上の3点に関する、それぞれ異なった型の情報が必要であり、それらを別個に、独自のコンセプトでもってバックアップしておかなければならないのです。

それには外部の情報、内部の情報、そして組織を超えた情報、この3つを押さえることが重要になる、とドラッカーは言います。

さらには、組織としての成功も、自分個人としての成功も、すべてこの3問に的確に答え得るかにかかっている、と喝破します。

単なるデータ」に詳しいことから、「本当に必要な情報」に詳しくなるためには、上記の3つの問いに十分答えられるようにすることが必要不可欠であり、21世紀のマネジメントの真のあり方だとして、ドラッカーは重視しています。

菅氏は、このようなデータと情報の違いを長い間の経験から、熟知しているのだと思います。だからこそ、菅首相は、役所の統計だけではなく、自ら集めた生の声を重視しているのでしょう。

総理になる前から、このようなことを垣間見ることができた事例があります。

菅官房長官(当時)は昨年5月9日から12日の日程でアメリカ・ワシントンとニューヨークを訪問しました。危機管理を担う官房長官の外遊は“異例“で、歴代の官房長官を見ても平成以降は米国本土への外遊はなく、ホワイトハウスにまで乗り込んだ菅長官訪米は、まさに異例中の異例でした。

菅長官が会談した相手はペンス副大統領、ポンペオ国務長官、次期国防長官に指名されていたシャナハン国防長官代行といったトランプ政権のまさに中枢の面々で、北朝鮮情勢や拉致問題などについて意見交換を行いました。

菅官房長官(当時)とペンス副大統領(昨年5月10日 ワシントンDC)

この中で特筆したいのは、国務長官や国防長官といった閣僚だけではなく、政権ナンバー2のペンス副大統領が菅長官をホワイトハウスに迎え入れ会談したことです。ペンス副大統領が面会をする相手は各国の首脳級に限られ、閣僚クラスの面会はなかなか実現しないといわれていました。

菅氏が意識していたかは別にして、副大統領はポスト安倍を意識していたはずです。菅長官は、ペンス副大統領ら会談相手と「次もまた会おう」と約束したといいます。早速、6月にシャナハン国防長官代行が来日する際には表敬訪問を受けました。

元々、菅氏本人と、側近には米国に太いパイプ持つとされています。このパイプと菅氏自身の情報分析力が、このときにも生かされたと思います。

菅総理は、高い情報収集力を活かし、安倍前総理大臣にも匹敵するような、それでいて菅氏独自の外交を展開することも期待できます。

それにしても、日本のマスコミは相変わらず、どうしようもありません。安倍前総理が、現役で総理大臣をしていたときには、安倍外交を無視して(最悪は安全保障のダイヤモンド構想を報道しなかったので日本人で知らない人が未だに多い)ほとんど報道しなかったのですが、総理が菅氏に変わると、途端に安倍外交は良かったが、菅外交は心もとないなどと批判しています。

そのマスコミは、菅政権誕生の直前には、安倍政権の転換を求める報道をしていました。しかし、これはおかしなことです。安倍総理は、選挙で負けたわけではありません。あくまで病気で退いたのです。であれば、後継政権は、まずは安倍政権の政策を踏襲し発展させていくのが筋です。

今後選挙で、菅総理が安倍政権とは異なる政策をかがげて、大勝利したというならばともかく、マスコミが安倍政治の転換を求めるのは筋違いです。それでは、安倍政権を選挙という民主的手続きで、継続させた民意にそむくことになります。

特に、マスコミの情報収集力は格段に低いです。それは、トランプ大統領の登場を予測できなかったことでもはっきりしました。マスコミはとにかく「時の権力と対峙する」のが自分の仕事であると思っているようで、データを利用可能な情報に転化することができず、反権力を是とする、些末なデータばかり収集し、それに基づき報道するだけで、誰にとっても役にたたない存在になってしまいました。今のマスコミの報道は、野党にとってすら役にたたないと思います。

そのようなことをしているうちに、情報収集に長けた菅総理には、マスコミにとってこれまでにない緊張感を強いられることになりそうです。それはなぜかといえば、菅総理が官房長官だったときの、記者会見にもみられるように、マスコミは自分でも気づかないうちに、かなり低能力化していて、くだらない質問をいなすことが、度々ありましたが今度は官邸VSマスコミという構図に変わるからです。


その緊張感がマスコミの良い仕事につながれば何よりですが、まずは無理でしょう。現在のマスコミの記者の能力は地に落ちました。私は、マスコミは左よりというよりは、下(特に能力)なのだと思っています。これからも、マスコミは見当違いの愚かな報道を繰り返し、一部の老人には受け入れられるでしょうが、やはり情報収集に長けた大学生、高校生、中学生などの若者に馬鹿にされ、新聞は購読されなくなり、テレビもみられなくなり、ますます衰退していくことでしょう。

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2020年9月29日火曜日

南シナ海の人工島造成戦略を太平洋諸国に向ける中国―【私の論評】南シナ海の中国軍事基地は、何の富も生まず軍事的にも象徴的な意味しかないのに中国は太平洋でその愚を繰りすのか(゚д゚)!

 南シナ海の人工島造成戦略を太平洋諸国に向ける中国

岡崎研究所

 オーストラリアの海洋・環境関係コンサルタントのスティーブ・ライメイカーズが、中国が人工島造成戦略を、南シナ海からさらに南太平洋に拡大しているとの趣旨の論説を、9月11日付のオーストラリア戦略政策研究所(ASPI)のサイトに寄稿している。


 南太平洋は、中国と台湾による外交関係の争奪戦の前線である。現時点で中国と外交関係を樹立した国が10、台湾と外交関係を持つ国が4である。中国と外交関係を持つ国のうち、ソロモン諸島とキリバスは昨年9月に相次いで外交関係を台湾から中国に切り替えた。キリバスについては、前任のトン大統領の時代の2003年に台湾と外交関係を樹立したが、マーマウ大統領(2016年以来現職、今年6月に再選を果たし現在2期目)が中国との外交関係に戻したという経緯がある。彼は親中国である。今年1月には北京を訪問した。

 マーマウは、気候変動への対応について前任のトンとは著しく異なる立場を取っている。トンは気候変動によって水没の危機に晒されるキリバスの実情について世界を啓発することに力を注ぎ、浮体の人工島を構想してみたり、フィジーの島を購入して国民の移住を始めたりもしたらしい。しかし、マーマウは気候変動に適応するという立場である。彼は、2017年にボンの気候変動会議で演説し、「気候変動は確かに深刻な問題であるが、我々はキリバスがタイタニックのように沈没するとは信じない。我々の美しい国は神の手によって作られたのだ」と述べたが、彼は気候変動と戦うことを世界に求めるのではなく、キリバスを「太平洋のドバイ」にする開発計画への協力を求めたという訳である。その手段がライメイカーズの論説にある、中国によるタワラ環礁とキリティマティ環礁に予定されている2つの港の建設である。「美しい国」キリバスのサンゴ礁が、この巨大工事によって深刻な打撃を受けることは、誰の眼にも明らかである。

 「太平洋のドバイ」を太平洋の真ん中に作るというのは現実離れしているが、ラグーンを浚渫し、その土砂で土地をかさ上げして造成し、そこに港を作ることはその道の専門家に言わせれば技術的には可能なことらしい。この構想に協力する国があるとすれば、中国しかないであろう。中国のことだから南シナ海で用済みとなった浚渫船を動員して 2、3年でやってのけるかも知れない。

 ソロモン諸島の首相も昨年10月に北京を訪問し、「一帯一路」、中国によるスタジアム建設、中国企業によるインフラ建設などの合意が発表された。中国の企業が地元政府からツラギ島全体をリースする契約をしたとされ一時物議を醸したが、これは一端政府によって無効とされたらしい。

 もう一つ、ライメイカーズは、フランス領ポリネシアに注意を喚起している。この中国による投資プロジェクトは、養殖場を作り既に存在する滑走路を使って水産物を中国に輸出するというものであるが、既に3年前に取沙汰されていた。その後どうなったのか、論説が言及しているリース契約を含めプロジェクトの現状はどうなっているか。

 南太平洋の諸国が脆弱で中国に取り込まれる危険が常にあることは明白である。中国の資金援助によって作られる施設やインフラがいつの間にか軍事目的に転用され、米国や豪州の軍事的な行動の障害になり得る危険があることも、ライメイカーズが指摘する通りであろう。しかし、中国にとって南太平洋は南シナ海とは決定的に異なる。戦略的な緊急性はないと言って良い。現時点では南太平洋での影響力拡大の努力がどれ程の将来を睨んだ軍事的な下心があってのことか確かなことは言い得ない。妙案はなく、平凡な結論にしかならないが、豪州および米国、日本は警戒を怠らないことはもとよりとして、これら諸国との対話に配慮し、彼等の経済開発と気候変動対策のニーズに極力応えるしかないであろう。

【私の論評】南シナ海の中国軍事基地は、何の富も生まず、軍事的にも象徴的な意味しかないのに中国は太平洋でその愚を繰りすのか(゚д゚)!

米国の戦略家ルトワック氏は、南シナ海の中国の軍事基地は、象徴的な意味しかなく、米軍なら5分で吹き飛ばせると語っていました。

この言葉の裏には、米海軍の中国に対する圧倒的な優位性があります。それは、このブログでも何度か述べてきました。

米軍は、圧倒的に優れた世界一の哨戒能力(潜水艦や、空母など艦艇を、航空機を探索する能力)を持つにもかかわず、中国はかなり劣っています。それ加えて、米軍の原潜は、中国の原潜と比較すると、ステルス性も、攻撃力も段違いに優れています。

米バージニア級攻撃型原潜

中国が超音速対艦ミサイルを持っていたとしても、宇宙兵器を開発したとしても、発見することが困難な相手には無意味です。

これでは、目の見えない人間と、目の見える人間の戦いのようなもので、中国には全く勝ち目がありません。中国の潜水艦、艦艇、航空機などは、戦端が開かれてすぐに、魚雷やミサイルで狙い撃ちされ、撃沈・撃破されるでしょう。その一方で中国人民解放軍は、米原潜を発見することは困難なのです。

その後、米原潜が南シナ海の中国の軍事基地を封鎖すれば、南シナ海の中国軍は、食糧、水、燃料などを補給することができず、お手上げになるだけです。

28日、中国の人民解放軍が4つの海域で同時に軍事演習を実施しました。台湾とアメリカをけん制する狙いがあるとみられますが、現状の軍事力の米中の質の差を考えると、このような演習にどのような意味があるのか、疑問符がつきます。

28日、中国の人民解放軍が軍事演習を行ったのは南シナ海と東シナ海、黄海南部、渤海の4つの海域です。このうち黄海南部では30日まで毎日午前8時から午後6時まで軍事演習が行われるとして、中国の海事局は演習期間の周辺海域の船舶の航行禁止を発表しました。


二隻のまともに着艦出来ない空母と、空母を守れない護衛艦(米原潜を発見できないのですぐに撃沈されるの意味)、居場所通知機能付き(すぐに米軍に発見されるの意)の潜水艦で演習したとしても、ほとんど意味がありません。逆にこれだけ、中国の艦艇が集まる機会はないので、今の段階で米原潜が中国の海軍力を根絶できるチャンスだったともいえるかもしれません。

無論、米軍もこの機会を無駄にはしなかったでしょう。どのような演習をしたかを探索するのは無論のこと、中国の潜水艦の音紋を収集したり、空母や艦艇の能力を推し量ったり、場合によっては、中国艦艇や原潜を米原潜で撃沈するシミレーションも行ったことでしょう。

南シナ海の中国軍基地は、中国経済にも甚大な悪影響を与えつつあります。中国はいま、南シナ海の8つの環礁を埋めたて、軍事基地化しています。スプラトリー諸島の3つの環礁(スービ礁、ミスチーフ礁、ファイアリークロス礁)を埋め立て3000メートル級の滑走路を作り、そのほかの4つの環礁(ガベン礁、クアテロン礁、ヒューズ礁、ジョンソン南礁)にはレーダー施設を作っています。

さらにパラセル諸島のウッディー島には対艦ミサイルと長距離地対空ミサイルも配備しています。中国共産党は、南シナ海全体の制空権・制海権を確保し、中国のコントロール下に置くためには、どれほど「シーパワー」が必要かは見当もつかないようです。これには、おそらく軍事費を毎年10%以上拡大し続けてもまだ間に合わない軍事力、装備、要員の拡大が必要です。

経済が萎縮し、格差が拡大し、人民の不満が高まり、国内は一触即発の治安状況にあるなかで、どれだけシーパワーに国家資金を投入し続けることが可能なのでしょうか。

中国にとっての南シナ海は、北朝鮮にとっての核・ミサイルと同じような存在で、国の面子を取り繕うために南シナ海の領有権を主張し、一度主張したことは絶対に取り下げたり、変更することはできません。

しかし、その南シナ海の維持管理のための莫大の国家予算を、人民生活の向上に使えばどれだけの貧困層が救われるか、少し考えれば分かりきったことです。北朝鮮の核やミサイルは、ただ単に金正恩のための「使われない玩具」としての価値しかなく、金正恩がもてあそぶ「高価な玩具」のために、その下の人民は飢えと寒さでいずれ皆消滅する危機に瀕しています。

同じように中国にとって、第一列島線のなかの東シナ海・南シナ海全体を囲いこみ、人口島建設や制空・制海権を確立しようという目的は、この海域に戦略核ミサイルを搭載した原子力潜水艦を潜航させ、米国に代わる世界覇権を確立するための世界戦略の一環として南シナ海を中国の内海にすることです。

しかし、そうした戦略核や原潜の存在を誇示し、「シーパーワー」の力を見せ付けるが日が実現できたとしても、世界の国々と人類が中国の覇権に従うことはおそらくないでしょう。なぜなら「海洋パワー」になれない中国は、超大国にはなることはできないからです。

したがって南シナ海は、今のところ領土的にも資源的にも何の価値もなく、絶海の孤島の「リゾート基地」として、ただ兵士の休養と暇つぶし以外には何の役にも立ちません。ところが、そのような無駄な軍事基地を守るために、国費のなかから莫大な維持管理費をかける一方で、その日の生活の糧にも困っている大陸本土の億単位の貧困層は無残にも取り残され、政治から無視され続けているのです。

中国から南シナ海の埋め立て環礁への試験飛行した時の旅客機のキャビンアテンダント 2016年

少しでも頭を働かせて考えてみれば誰にでも分かることですが、南シナ海全域の管轄権を維持するためには、人員の交代や補給などで、無数の艦船と航空機を本土との間で往復させ、そのやりくりのために大量の燃料を駄々漏れ状態で無駄使いすることになります。

埋め立てでできた島は侵食されやすく、様々な機器も常に潮風にさらされるため、これらをメンテナンスし続けていくためにも、膨大な費用がかかります。中国の軍事基地は、南シナ海に存在するだけで、膨大な金食い虫になるのです。

中国は、南シナ海に原子炉を設置して、この問題を解決しようとしているようではありますが、たとえそれが成功していたにしても、航空機や艦艇の多くは電気ではなく、燃料を必要とします。基地の電灯や、その他電力で動く機器などの電力の心配はなくなるかもしれませんが、それ以外は補給に頼るしかありません。

水に関しては、原潜のように原子炉のエネルギーにより作り出すことができるかもしれませんが、何よりも小さな島では、農業や牧畜などもできず、兵士の食糧は補給以外にありません。また、定期的に交代させる必要もあります。

人工島を作っても経済・軍事的には何の価値も生み出さない一方で、貴重な珊瑚礁の自然を埋め立てることによって、海洋生物や天然資源を再生不可能なまでに破壊し、周辺海域の汚染を広げる結果をもたらしています。

日本の自然保護団体やグリーンピースや、シーシェパードが抗議運動などでこの海域に出没しないのが不思議です。そうすれば、彼らは人民解放軍に拿捕されたり、攻撃されるのを恐れているのかもしれません。無論、それ以外にも理由はありそうですが・・・・。

太平洋諸国でも、中国は同じことを繰り返そうとしています。愚かとしか言いようがありません。中共は自ら弱体化の道を歩んでいるようです。

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