2021年3月22日月曜日

米中「新冷戦」が始まった…孤立した中国が「やがて没落する」と言える理由―【私の論評】中国政府の発表する昨年のGDP2.3%成長はファンタジー、絶対に信じてはならない(゚д゚)!

米中「新冷戦」が始まった…孤立した中国が「やがて没落する」と言える理由

「中所得国の罠」から抜け出せない


i国家観の対立が明確になった瞬間

先週18、19日の米中外交協議は、米中による非難合戦で始まった。これは、米中間の新「冷戦」の幕開けと言えるだろう。

初会合は、米国のアラスカだった。中国にとっては完全「アウェー」だが、米国との対決は避けて通れない道だ。

米側はアントニー・ブリンケン国務長官とジェイク・サリヴァン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)、中国側は楊潔篪(ヤン・チエチー)中国共産党中央政治局委員と王毅(ワン・イー)外相とが出席した。


冒頭から、ブリンケン米国務長官は「新疆ウイグル、香港、台湾」を持ちだした。これに対し、楊潔篪政治局委員も、「中国には中国式の民主主義がある。内政干渉するな。米は黒人虐殺の歴史がある」と反論した。

協議の内容はそれぞれ2分間だけマスコミ公開という段取りだったが、互いに「待て」といいながら、1時間も米中対立がマスコミに映し出された。

要するに、米中の国家観の対立が明確になった瞬間である。

トランプ前政権では、貿易問題の二国間問題が端緒だった。政権終盤では中国のジェノサイド認定をして中国の非民主主義観を否定するなど、まさに国家体制の在り方を問題視したが、バイデン政権でもその流れは止まってない。もちろん、これはアメリカ国内の中国観が一変したことも背景にある。

通常であれば、外交辞令もあるので、こうした会談では食事会があるが、今回は新型コロナ対策という名目で計画もされていなかった。中国への「もてなし」で、食事なしとはキツい。今後の米中関係を暗示しているかのようだ。

i日米豪印と中国の対立を意味する

バイデン政権は、このアラスカ会談に先立って、同盟国との意見疎通をして用意周到だった。

3月12日、日米豪印の、菅義偉首相、バイデン米大統領、モリソン豪首相、モディ印首相の間で初の首脳会談がオンラインで行われた。

3月16日、東京において、茂木外務大臣、岸防衛大臣、ブリンケン国務長官、オースティン国防長官は、日米安全保障協議委員会(いわゆる「2+2」)を開催した。

3月17日、ソウルにおいて、米韓で「2+2」を開催した。ただし、東京の共同声明では、中国を名指しし北朝鮮の非核化が盛り込まれていたが、このソウル会合では盛り込まれていなかった。はっきりいって、韓国は、日米が中心となっている中国包囲網の蚊帳の外だ。

ともあれ、日米豪印クワッドがしっかり機能していることを確認した上で、バイデン政権は中国に対峙した。米中の国家観の対立は、日米豪印と中国、つまり民主主義対一党独裁非民主主義との対立でもある。

アメリカの指摘したのは、中国の「核心的利益」だ。これへの妥協は中国ではありえないので、アメリカが折れるか、米中で激突するかしか、選択肢はない。「核心的利益」は、アメリカが名指しした、新疆ウイグル、香港、台湾のほか、南シナ海と尖閣だ。

筆者が「核心的利益」を本コラムで取り上げたのは、今から10年以上前の本コラム発足直後の2010年10月4日〈尖閣問題を「核心的国家利益」と位置づけた中国の「覇権主義」〉だ。

その後の本コラムなどを読んでいる方にはわかるだろうが、その当時から、新疆ウイグル、南シナ海、香港の現在はある程度予見出来た。それがいよいよ台湾と尖閣にも及んできた。

i中国経済は今後どうなるのか

奇遇なことであるが、そのコラムでは、中国の覇権主義を多国間協調で抑えよと主張している。筆者が、第一次安倍政権で官邸勤務の時に、今の日米豪印のクワッドの初期段階を垣間見ていたので、安全保障での多国間協調をいったわけだが、今のバイデン政権はまさにそれを実戦しようとしている。

こうした中国の覇権主義を支えるのは、中国経済だ。これまで中国経済が伸びてきたからこそ、覇権主義を続けられたともいえる。

となると、中国の覇権主義の裏にある中国経済の今後が予想できれば、覇権主義の行方も占うことが出来るだろう。もっとも、こうした予測は、短期的な経済予測よりはるかに難しいが、やってみよう。

まず、楊潔篪政治局委員は、中国の一党独裁体制の優位性を今回の新型コロナを押さえ込んだからといった。これは、データからみると、確かにいえる。

民主主義国と非民主主義国で新型コロナ拡大について、どちらが封じ込めるのかといえば、非民主主義国だ。新型コロナ拡大の防止のためには、人々の行動を制限するのが手っ取り早いが、非民主主義国では国家による強制的な措置が迅速に行えるからだ。

実際に、各国について民主主義指数によって民主主義の度合と新型コロナ死亡者を100万人あたりで数値化すると、非民主主義のほうがいい成績だ。民主主義指数として英エコノミスト誌が毎年公表しているものの最新2020年版で、世界163ヶ国でみると、民主主義指数と100万人あたり死亡者数の相関係数は0.46だ。


もちろん、民主主義国の中でも、適切な手続きにより非常事態宣言を予め規定しそれを適切に行使して対応することもできるので、民主主義国では上手く対処したところもあり、やり方次第とも言える。

民主主義指数で8より高く、100万人当たりコロナ死者が200人より低い国は、世界の中でも優等生といえるが、それらは163ヶ国中9ヶ国しかない(上図の右下の赤枠内)。

それらの国は、オーストラリア、フィンランド、アイスランド、日本、モーリシャス、ニュージーランド、ノルウェー、韓国、台湾だ。日本はこうした意味で世界の優等生でもある。

i中所得の罠にハマる国

ただし、民主主義は、経済成長と深い関係があり、非民主主義国で成長するのは難しいのが、これまでの歴史だ。

開発経済学では「中所得国の罠」というのがしばしば話題になる。一種の経験則であるが、発展途上国が一定の中所得までは経済発展するが、その後は成長が鈍化し、なかなか高所得になれないのだ。ここで、中所得の国とは、一人あたりGDPが3000~10000ドルあたりの国をいうことが多い。

これをG20諸国の時系列データで見てみよう。1980年以降、一人あたりGDPがほぼ1万ドルを超えているのは、G7(日、米、加、英、独、仏、伊)とオーストラリアだけだ。

アルゼンチンとブラジルは、1万ドルがなかなか破れない。2010年代の初めに突破したかに見えたが、最近まで1万ドルに届いていない。インドは3000ドルにも達していなし、インドネシアは最近5000ドルまで上がってきているが、まだ1万ドルは見えない。

韓国は、2000年代から1万ドル以上を維持しており、今は高所得国入りしているといってもいいだろう。メキシコは、2010年頃までは順調に上昇してきたが、1万ドルの壁に苦悩し、1万ドル程度で低迷している。

ロシアは、2010年ごろに1万ドルを突破したかにみえたが、その後低迷し、今は1万ドル程度となっている。サウジアラビアは、豊富な石油収入で順調に上昇してきており、2000年代中頃から、1万ドル以上を維持して、今は高所得国入りだ。

南アフリカは、順調に上昇してきたが、2010年あたりから8000ドル程度に壁があるようで、それを超えられないでいる。

 i中国の「民主主義」が抱える問題

トルコも、2010年くらい1万ドルを一時突破したようにみえたが、その後低迷し、1万ドルの壁で低迷している。中国は、これまで順調に伸びてきたが、現在が1万ドル程度であり、これからどうなるのかが注目だ。

以上のG20の状況をまとめると、高所得国はもともとG7諸国とオーストラリアであった。それに1万ドルの壁を破った韓国、サウジ。残りは中所得国で、1万ドルの壁に跳ね返されたアルゼンチン、ブラジル、メキシコ、ロシア、南アフリカ、トルコの6ヶ国、まだそれに至らないインドとインドネシア。それに1万ドルになったと思われる中国だ。

さらに、世界銀行のデータにより2000年以降20年間の一人当たりGDPの平均を算出し、上の民主主義指数を組み合わせてみると、面白い。中所得国の罠がきちんとデータにでている。


民主主義指数が6程度以下の国・地域は、一人当たりGDPは1万ドルにほとんど達しない。ただし、その例外が10ヶ国ある。その内訳は、カタール、UAEなどの産油国8ヶ国と、シンガポールと香港だ。

ここでシンガポールと香港の民主主義指数はそれぞれ、6.03と5.57だ。民主主義指数6というのは、メキシコなどと同じ程度で、民主主義国としてはギリギリだ。

もっとも、民主主義指数6を超えると、一人当たりGDPは民主主義度に応じて伸びる。一人当たりGDPが1万ドル超の国で、一人当たりGDPと民主主義指数の相関係数は0.71と高い。

さて、中国の一人当たりGDPはようやく1万ドル程度になったので、これからどうなるか。中国の民主主義指数は2.27なので、6にはほど遠く、今の程度のGDPを20年間も維持できる確率はかなり低い。

GDP数字を改ざんすることもできるし、かつて崩壊前のソ連では行われていた。そのため、いつ中国経済が息詰まるとは言いにくいが、これまでの社会科学の経験則からは、そろそろ成長の限界に近づいているのだろう。

i中国の経済発展の見込みの少なさ

中所得国の罠をクリアするためには、民主主義の度合を高めないといけない。それと同時に、各種の経済構造の転換が必要だといわれる。

その一例として、国有企業改革や対外取引自由化などが必要だが、本コラムで再三強調してきたとおり、一党独裁の共産主義国の中国はそれらができない。

共産主義国家では、資本主義国家とは異なり生産手段の国有が国家運営の大原則であるからだ。アリババへの中国政府の統制をみると、やはりだ。

こう考えると、中国が民主化をしないままでは、中所得国の罠にはまり、これから経済発展する可能性は少ないと筆者は見ている。一時的に1万ドルを突破しても跳ね返され、長期的に1万ドル以上にならない。10年程度で行き詰まりが見えてくるのではないだろうか。

中国はどの程度の民主化をすればいいかというと、民主主義指数6程度の香港並みをせめてやるべきであった。しかし、逆に香港を中国本土並みにしたので、香港の没落も確実だし、中国もダメだろう。

【私の論評】中国政府の発表する昨年のGDP2.3%成長はファンタジー、絶対に信じてはならない(゚д゚)!

中所得国の罠(中進国の罠ともいう)については、このブログでも何度か掲載したことがありますので、上の高橋洋一氏の中国は、中所得国の罠に嵌るという主張は当然の主張であり、正しいと思います。

上の高橋洋一氏の記事の中には「中所得国の罠をクリアするためには、民主主義の度合を高めないといけない。それと同時に、各種の経済構造の転換が必要だといわれる」とありますが、これをさらにはっきりといえば、民主化、政治と経済の分離、法治国家化です。

これができない国は、何がすぐれていても、結局のところ先進国にはなれません。日本は、明治維新で民主化、政治と経済の分離、法治国家化を強力に推進しました。アルゼンチンは、先進国にはなれたものの、これらが十分でなかったか、ある時点で後退したといえます。

中国の場合は、香港やウイグル自治区の現状をみていれば、とても民主的とはいえませんし、経済のあらゆる面を政府が規制しており、憲法は中国共産党の下に位置しているという有様です。これでは、中所得国の罠からは逃れられず、今後中国のさらなる経済発展はないでしょう。

これができない国は、中進国の罠にはまるのです。現在まで、発展途上国から先進国になったのは、日本だけです。先進国から発展途上国になったのはアルゼンチンだけです。世界には、この2つの国と、先進国と、発展途上国があるだけです。中国が例外となることもありません。

中国国家統計局が1月18日に発表した速報値によれば、中国の2020年の国内総生産(GDP)は2.3%のプラス成長で、101兆6000億元と初めて100兆元の大台を突破しています。

昨年12月1日に発表されたOECDの「エコノミックアウトルック(経済見通し)」では、2020年の世界経済の成長率をマイナス4.2%としていますから、「共産党発表を信じれば」中国は偉大な成長を遂げる国ということになります。

ただし、このブログにも何度か述べてきたように、中国の経済統計、特にGDPは出鱈目です。だから、過去においては各省のGDPの合計よりも、中国政府の発表した中国の全体のGDPのほうが、大きいというような齟齬が生じていました。これは、さすがに最近は改善されたようですが、それにしてもGDPそのものの信ぴょう性はないと言って良いでしょう。

その他にも、鉱工業生産指数とGDPの間に齟齬が生じていたり、輸出・輸入(これらは相手国があるので、相手国のデータは信ぴょう性がある)とGDPの間に齟齬が生じていたりで、出鱈目ぶりは未だ改善されていません。

2020年7月に「テンセント・フィナンシャル・レポート―『新型コロナ』後、8割近い国民の収入が減少、投資財テク傾向は堅調―」という世論調査結果が発表された。この調査によって新型コロナ感染症の蔓延で78%の中国人が収入が減少したとし、29.5%の人が消費を減らして貯蓄すると回答しました。

78%の中国人の収入が減少しているのに、本当に経済成長しているのでしょうか。

2020年の自動車の販売台数は、前年比7.4%減と大きく落ち込んだ2019年の2070万台をさらに下回り、1929万台(前年比6.8%減)となりました。

2020年のスマホの販売台数も、前年比6.0%減と大きく落ち込んだ2019年の3.9億台からさらに落ち込み、3.1億台(前年比20.8%減)となりました。

このような状態でGDPが前年比2.3%も成長したということがありうるのでしょうか。もうこれはファンタジーと言っても良いくらいです。

ファンタジーのような重慶の夜景

英民間調査機関「経済・ビジネス研究センター」(CEBR)は、「中国が2028年に米国を抜いて世界トップの経済規模になる」という見通しを昨年12月26日発表しました。これは、無論中国政府の発表した統計数値を信じた上でこのような公表をしたのでしょう。

中国では、地方政府も危機的な状況にあります。地方政府は、「地域経済振興」を大義名分として独自に資金調達を行っています。ただし、多くの資金が地方幹部の私的利益確保のために使われています。

「地域経済振興」のために使われた資金は、うまくいけば実際に地域経済を活性化させ利益を生むから返済可能かもしれません。「地方共産党幹部振興」のために使われた資金は、彼らの懐に入るだけで、例え利益を生んだとしても返済するつもりはないようです。

これまでは、中国全体の経済が好調で、貸し手が次から次へと現れたから、いわゆる「ねずみ講原理」で、「借金を借金で返す」ことも難しくはありませんでした。しかし、ねずみ講が最終的には破綻することが明らかなように、「借金の自転車操業」もいつか終わります。

もう、中国の破綻は目に見えています。中国の破綻は20年前からいわれてきましたが、それを中国政府はなんとか隠しおおせてきたのですが、今後数年以内に隠せなくなるでしょう。

そうして、中国は先進国になれないまま、没落していくことでしょう。

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2021年3月21日日曜日

Go To トラベルは感染拡大に無関係 国立感染研の研究者らが報告まとめる―【私の論評】査読対象ですらない、ころころ変わるマスコミの報道は信用できない(゚д゚)!

Go To トラベルは感染拡大に無関係 国立感染研の研究者らが報告まとめる


国立感染症研究所の研究者らが、天候や人々の移動と感染者数の関係を調べ、移動を活性化させるとしたGo To トラベルキャンペーンが、新型コロナウイルスの感染者数の増加には関係ないとまとめたことがわかった。この研究者らは、Go To トラベルが感染を抑制した可能性があるとも言及している。

常磐大学の栗田順子専任講師や国立感染研の研究者らは、「Effects of the second emergency status declaration for the COVID-19 outbreak in Japan(邦題:日本におけるCOVID-19流行に対する第2次緊急事態宣言の影響)」と題した論文を投稿し、査読前の論文(プレプリント)が公開されている。

この研究では、感染者数から割り出される感染の実効再生産数と、気候や人々の移動の相関を調べている。緊急事態宣言の発出時に、実効再生産数が低下しているが、Go To トラベルの開始時に、緊急事態宣言発出と同様に再生産数が低下している。


その他のデータの検証でも、Go To トラベルと感染拡大の間の因果関係は確かめられず、Go To トラベルが新型コロナウイルスの感染拡大に関係ないと結論づけている。さらに、Go To トラベルの開始や終了などの報道が、一般市民の感染防止の意識をよりかきたて、感染の抑制に寄与した可能性も示唆している。

査読(他の研究者らによる評価・検証など)を受けていない論文であり、実際の感染状況には多くの要素が関係していることを踏まえる必要がある。しかし、これらのデータは、「Go To トラベルによって新型コロナウイルスが感染拡大しており、旅行を止めれば抑制できる」といった考え方に対し一考の余地があることを示唆している。

【私の論評】査読対象ですらない、ころころ変わるマスコミの報道は信用できない(゚д゚)!

査読はまだの状況とはいえ国立感染研の研究者らが、Go To トラベルは感染拡大に無関係という論文を発表をしたという事実は、まだ査読前の結果ではあるのですが、ひとつの考察のきっかけとして参考になることは間違いないです。

この論文は、以下のリンクからご覧いただけます。(英文)


私自身は、昨年2つのグラフを根拠として、GOTOトラベルが感染拡大とは無関係の可能性があることをこのブログに掲載しました。

その記事のリンクを以下に掲載します。
GoToトラベル 28日から1月11日まで全国で停止へ 首相表明―【私の論評】GOTOトラベル批判は筋悪の倒閣運動の一種か(゚д゚)!
この記事は、昨年の12月14日のものです。詳細はこの記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事より二つのグラフ等を掲載します。

"
下のグラフは、日本の感染者数の推移です。下のグラフで7月22日は、日本でGOTOトラベルが始まった日です。


私自身は、GOTOトラベルの開始そのものには当初は、反対でした。しかし、GOTOトラベルを開始してある程度時を経て9月、10 月あたりには、コロナ感染者数が減りました。そのため、GOTOトラベルを実施したとしても、旅館やホテルさらには、旅行に出かける人たちが、それなりのコロナ対策を実施すれば、感染そのものを増やすことはないのだと納得できました。

以下に韓国の感染者数の推移を掲載します。なお、上の記事にもあるように、韓国ではGOTOトラベルのようなものは開催されていません。



韓国に関しては人口が4000万人程度なので、日本の約1/3です。最近の韓国はコロナ感染者数が1000を超えた日もありますが、これを日本にあてはめると3000を超えたことになります。

これは、3000近くになった最近の日本の状況と良く似ています。しかし、この韓国ではGOTOトラベルのようなことは実施していません。以上のようなことをみるとGOTOトラベルだけをやり玉にあげるのはおかしいです。

"
感染症の専門家でもない素人の私ですが、このデータからみれば、GOTOトラベルが感染拡大の元凶のように言うのは疑問を感じてしまいました。

しかし、これだけでは、GOTOトラベルと感染拡大は直接関係はないとは言い切れなないとは思いました。

ただ、このブログにもたびたび掲載させていただいている、高橋洋一氏もGOTOトラベルで移動する人は、日本人全体の移動の1%に過ぎないことを指摘しており、多くの人が疑問を呈していました。それに、観光地で重大な感染拡大が起きたという事実もありません。

なぜ、このような結果になるかといえば、おそらくGOTOトラベルで移動する人々は元々全体の移動に占める割合はかなり低いですし、それにGOTOトラベルで移動する人々は、移動中も移動していないときでも、コロナ感染症に対する対応はほとんど変わらないのだと思います。

普段コロナ対策を慎重にしている人が移動したからといって、極端に普段の行動を変容させることはないということでしょう。だから、移動中の人の感染率が極端に高まったり、あるいは受け入れ側の感染率が極端に高まったはしないのでしょう。それに受け入れ側もそれなりに気を配ったということで、Go To トラベルは感染拡大に無関係という結論に結びついたのではないでしょうか。

これに関して「査読前だから信用出来ない」「国の機嫌を損ねると予算が削られる立場の人が書いた論文」などと否定的なことを言ってる人達もいるようですが、査読対象ですらないころころ変わるマスコミの報道は信用できるとでも思っているのでしょうか。

さらに、査読が終了して、公表された場合どうするのでしょう。その後もこの論文の論拠を強化するようなエビデンが次々と出てきた場合どうするのでしょうか。

先日10周年を迎えた、東日本震災における、放射能問題と同じく、エビデンスにもとづかない批判などは厳に慎むべきものと思います。


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2021年3月20日土曜日

イージス艦「はぐろ」就役 「ミサイル防衛能力の役割を期待」―【私の論評】日米イージス艦、潜水艦、哨戒機が黄海で哨戒活動にあたり北はもとより中国を牽制(゚д゚)!

イージス艦「はぐろ」就役 「ミサイル防衛能力の役割を期待」


海上自衛隊の最新鋭イージス護衛艦「はぐろ」が、19日に就役した。

イージス護衛艦「はぐろ」は、まや型護衛艦の2番艦として建造され、19日に、海上自衛隊に引き渡された。

「はぐろ」は、味方の艦船や航空機などをネットワークで結び、レーダー情報をリアルタイムで共有できるCEC(共同交戦能力)を備え、日本の防空の中核を担うことになる。

これで、日本の弾道ミサイル防衛を強化するため、防衛省が進めてきたイージス艦の8隻体制が整った。

岸信夫防衛相「本艦は、総合ミサイル防衛能力の担い手としての役割を期待されており、1日も早く任務に即応しうるよう、日々の訓練に精励してください」

「はぐろ」は、長崎県の佐世保基地に配備され、就役訓練を行ったうえで、警戒監視などの実任務にあたる。

(FNNプライムオンライン3月20日掲載。元記事はこちら

【私の論評】日米イージス艦、潜水艦、哨戒機が黄海で哨戒活動にあたり北はもとより中国を牽制(゚д゚)!

イージス護衛艦「はぐろ」の海上自衛隊への引き渡しのニュースは、多くのメディアで報道されていますがね、イージス艦の8隻体制とは何を意味するのか、これについてはほとんど報道されていません。本日はそれについて掲載します。

政府は、2015年1月14日に閣議決定した平成27年度予算案で、防衛省はミサイル防衛(MD)の要となるイージス艦1隻(前回就役の「まや」)の建造費を計上しました。30年度までにもう1隻(今回就役した「はぐろ」)調達する予定で、海上自衛隊のイージス艦は8隻になるとされました。


当時の6隻態勢から8隻態勢への転換が今回なされたわけです。海自関係者は「この2隻分の差が大きな変化をもたらす」と説明していました

イージス艦は4年に1度、半年間の定期検査を受けなければならず、これとは別に1~2カ月間の年次検査も必要となります。この間、乗員は船体整備などを行っており、イージス艦を運用する能力は落ちてしまいます。再び洋上に出た後に乗員の練度を最高レベルに戻すにはさらに数カ月かかるというのです。

日本の主要都市を弾道ミサイルから守るためには、最低でもイージス艦2隻が必要となります。8隻態勢になることで「常に最高の状態でイージス艦2隻が任務に就ける」(海自関係者)というわけです。

海自のイージス艦は、米国が開発した防空システム「イージス・システム」を搭載した護衛艦です。同時に多数の対空目標を捕らえるフェーズドアレイ・レーダーを搭載し、十数個の敵に向けてミサイルを発射できます。

北朝鮮が弾道ミサイルを発射した場合はイージス艦の海上配備型迎撃ミサイル(SM3)が大気圏外で迎撃し、撃ち漏らせば地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が着弾直前に迎撃します。

前回の「まや」に続き、今回新たに調達されたイージス艦は共同交戦能力(CEC)を搭載し、さらに進化しました。

それまでのイージス艦は、味方の艦艇が捕捉した敵の情報を受け取っても、改めて自分のレーダーで敵を捕捉し直さなければ攻撃できませんでした。ところが、新システムでは僚艦の敵情報を受け取れば、そのデータを基にして即座に攻撃できます。

ただ、イージス艦を運用する自衛隊には苦い教訓があります。北朝鮮が24年4月13日に弾道ミサイルを発射した際、失敗に終わった事実を海自イージス艦は把握できなかったのです。

イージス艦といえども水平線の向こう側を低空で飛ぶミサイルを捕捉することはできません。より北朝鮮に近い黄海に展開していれば、発射失敗を確認することができました。

ところが、黄海にいたのは米軍と韓国軍のイージス艦だけで、海自イージス艦はいなかったのです。自衛艦による黄海展開に対し、韓国や中国が嫌がることに配慮したのです。

ただ、状況は変わっています。海自は現在で、艦艇や航空機を派遣しています。これは、以前のブログにも掲載しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。この記事は、2018年1月21日のものです。
核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対する国連安全保障理事会の制裁決議を履行するため、海上自衛隊の護衛艦や哨戒機が昨年12月から日本海や朝鮮半島西側の黄海で、外国船から北朝鮮船舶への石油などの移し替えがないか警戒監視活動に当たっています。


黄海・東シナ海などを常時警戒監視しているP3C哨戒機が不審船を発見した場合、護衛艦を現場に派遣します。政府関係者は「監視活動を顕示することで北朝鮮への石油製品の密輸を抑止することにつながる」としています。

ここで、黄海という言葉がでてきますが、黄海での海自による警戒監視活動は戦後はじめのことです。これは、中国側からすれば脅威だと思います。自分たちは尖閣付近の海域で船舶を航行させたり、最近では潜水艦を航行させたりしていたのが、日本の海自が黄海で監視活動を始めたのですから、彼らにとってみれば、驚天動地の日本の振る舞いと写ったかもしれません。

しかし、黄海初の日本の海自による監視活動に関して、日本のマスコミは当たり前のように報道しています。中国側も非難はしていないようです。中国としては、米国側から北への制裁をするようにと圧力をかけている最中に、監視活動にあたる日本を批判すると、さらに米国からの圧力が大きくなることを恐れているのでしょう。

このようなこと、少し前までのオバマ政権あたりであれば、「弱い日本」を志向する人々が多かったので、批判されたかもしれません。というより、そのようなことを日本に最初からさせなかったかもしれません。そうして、中国は無論のこと、大批判をしたかもしれません。そうして、日本国内では野党やマスコミが大批判をしていたかもしれません。

このようなことが、すんなりと何の摩擦もなくできるのは、やはり米国では「強い日本」を志向する勢力が大きくなっているからであると考えられます。

このような哨戒活動をして、実績をつくった日本は、イージス艦も当然黄海にも派遣していることでしょう。そうして、当然のことながら、日本の潜水艦も随分まえから派遣していることでしょう。

なぜなら、日本の潜水艦は静寂性(ステルス性)に優れており、このブログにも過去に何回か述べているように、中国の貧弱な対潜哨戒能力ではこれを発見できないので、日本の潜水艦は自由に水中を航行して、 様々な情報活動にあたるとともに、模擬訓練で中国の艦艇を沈める訓練もしていることでしょう。

昨年10月14日に進水した最新鋭潜水艦「たいげい」


当然のことながら、米原潜もいずれかに潜んでいることでしょう。日米の潜水艦、イージス艦は、バラバラに行動しているのではなく、互いに密接に情報を交換しつつ、黄海で監視活動にあたっていることでしょう。

共同交戦能力(CEC)を搭載した、「まや」、「はぐろ」などでは、日米は協同で、攻撃できる体制を整えつつあるでしょう。

そうして、これは北朝鮮のみならず、中国に対してもかなりの牽制になっているはずです。中国が台湾奪取への動きをみせれば、すぐに黄海上の日米のイージス艦等に察知されてしまうでしょう。

中国としては、このようなことはさせたくないのでしょうが、黄海には米国のイージス艦も存在するわけですから、なかなか正面切って非難することができないのかもしれません。

ただ、中国としては、この事実を日米に対して表立って非難すると、国内で中国海軍の脆弱性が暴露される危険もあるので、沈黙しているのかもしれません。そのかわり、尖閣付近で示威活動を派手に行い、国内向けプロパガンダをしているといのが実情かもしれません。

今回のイージス護衛艦「はぐろ」の就役により、常時少なくとも二隻のイージス艦で日本列島をカバーして、北朝鮮のミサイル等に対処することができます。当然のことながら、これは中国への牽制ともなります。

潜水艦20隻体制も完成したこと等もあわせると、これで日本の防衛力もかなり向上したといえます。

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2021年3月19日金曜日

LGBT外交の復活、異質な価値観を押し付け―【私の論評】LGBT外交で中国を利するバイデンは、国内で足元をすくわれる(゚д゚)!

LGBT外交の復活、異質な価値観を押し付け

バイデン大統領

 バイデン米大統領は2月4日に国務省で行った就任後初の外交政策演説で高らかに訴えた。

 「米国が戻って来たと世界に伝えたい」

 トランプ前大統領が掲げた「米国第一」から多国間主義に回帰し、国際問題に積極的に関与していく決意を示したものだ。だが、途上国、特にアフリカ諸国では、別の意味で米国が戻って来たと受け止めた人も多いに違いない。

 別の意味とは何か。オバマ元政権が推し進めたLGBT(性的少数者)の国際的な権利向上、いわゆる「LGBT外交」の復活である。外交演説は中国やロシアに関する発言に注目が集まったため、大手メディアはほとんど報じなかったが、バイデン氏は次のように宣言している。 トランプ前大統領が掲げた「米国第一」から多国間主義に回帰し、国際問題に積極的に関与していく決意を示したものだ。だが、途上国、特にアフリカ諸国では、別の意味で米国が戻って来たと受け止めた人も多いに違いない。

 「LGBT問題で国際的なリーダーシップを回復する。LGBTを犯罪として扱う動きと戦い、LGBTの難民や亡命申請者を守るなど権利向上に努める」

 バイデン氏はさらに、海外援助をLGBT外交のツールとして利用することなどを政府機関に指示する行政命令を出した。これは経済援助の条件として途上国に同性愛行為の非犯罪化などを迫ったオバマ政権の手法を踏襲したものだ。

 米国が超大国のパワーを振りかざし、保守的な倫理観を保つ途上国に同性愛を肯定する異質な価値観を押し付けるのは、弱い者いじめにほかならない。特に植民地支配された歴史のあるアフリカ諸国は、オバマ政権の脅迫的なやり方を文化的に侵略しようとする「文化帝国主義」だと激しく反発していた。

 このため、アフリカの宗教界はトランプ氏の再選を熱烈に望んでいた。各国の国家主権や伝統的価値観、信仰の自由を尊重するトランプ氏の姿勢を高く評価していたためだ。

 アフリカの宗教界では既にバイデン政権への警戒感が高まっているが、懸念を一段と強めたのは、国務省傘下の対外援助機関、国際開発局(USAID)のトップにサマンサ・パワー元国連大使が起用されたことだ。パワー氏はオバマ政権でLGBT外交を主導した人物の一人であり、パワー氏は海外援助とLGBT問題を露骨に紐(ひも)付けすると予想される。

 ナイジェリア・カトリック教会のエマニュエル・バデジョ司教は、USAIDはパワー氏の下で「アフリカの宗教的・文化的価値観に対し、思想的・文化的な襲撃を仕掛けてくることは間違いない」と、悲観的な見通しを示した。

 バデジョ司教は、オバマ政権で国務長官を務めたヒラリー・クリントン氏をこう酷評したことがある。

 「世界には3種類の人間がいる。神を信じる者、神を信じない者、自分を神と思う者だ。クリントン氏は自分を神と思う人間の一人だ。宗教的価値や信念はクリントン氏にとって大切でないとしても、それを変えろと要求する権利はない」

 バデジョ司教は、パワー氏に対しても同じ見方をしているに違いない。

 一方、アントニー・ブリンケン国務長官は、LGBT問題担当特使を任命する意向を示している。

 LGBT外交は米国の国益を促進するどころか、途上国の反米感情を助長する可能性の方が高い。中国との覇権争いが最重要課題である時に、そのような取り組みをする余裕があるのだろうか。

 「米中新冷戦」の激化に伴い、各国は米国と中国のどちらの陣営につくべきか選択を迫られている。歪(ゆが)んだ価値観外交は途上国を米国から遠ざけ、中国の陣営に追いやる一因になりかねない。

(編集委員・早川俊行)

【私の論評】LGBT外交で中国を利するバイデンは、国内で足元をすくわれる(゚д゚)!

米国のバイデン大統領(78)が就任初日の20日に「LGBTQ差別禁止」に関する大統領令にサインしたことが思わぬ波紋を呼んでいます。長年、差別を受け続けてきた全米中の性的マイノリティーの人たちから称賛の声が上がった一方で、スポーツ界からは「女性アスリートが抹殺される」という批判的が上がっています。

米国の第46代大統領に就任した直後から数々の大統領令にサインし、自らの政策をさっそく実行し始めたバイデン氏。就任初日の20日には17の大統領令にサインしたが、その中の一つ「LGBTQ差別禁止」は、全米中の性的マイノリティーの人たちを歓喜さましせた。

というのも、トランプ政権時代は、保守的な支持層を意識して性的マイノリティーの権利保護に否定的だったため、不当な差別で職を失ったり、医療を受けられなかったりするケースが少なくなかったからです。

一方、バイデン氏は副大統領だったオバマ政権時代から性的マイノリティーの権利保護で指導的立場を取ってきました。その姿勢は閣僚人事にも表れ、運輸長官に指名されたピート・ブティジェッジ氏はゲイを公表した初の閣僚となりました。

今回の「LGBTQ差別禁止」の大統領令は、昨年6月に連邦最高裁が「職場でLGBTQを性的指向・性自認に基づいて解雇することは違法」とした歴史的判決に基づいているといいます。

一方でこの大統領令に問題点を指摘する声も上がっているといいます。

「大統領令には『性同一性や性的指向に関係なく、すべての人は法律の下で平等に扱われる』としたうえで『子供たちはトイレ、更衣室、学校のスポーツへのアクセスが拒否されるかどうかを心配することなく、勉学に励むことができる』という一節がある。この部分が元男性のトランスジェンダーアスリートの増加につながるととらえられ『女子アスリートが抹殺される』と保守派から問題視する声が上がった」(在米ジャーナリスト)

    コネチカット州の高校生陸上選手、テリー・ミラー。トランスジェンダー女性である
    彼女や他の選手が州の大会で優勝を独占した結果、3人の女性選手が競技への参加資格
    において「自認する性」を優先する州の方針に異議を唱えた

この声は思った以上に大きく、ツイッターでは「#BidenErasedWomen」というハッシュタグがつけられ、全米でトレンド入りするまでに拡大しています。

スポーツの世界で、元男性のトランスジェンダーアスリートをどう扱うかは、いまだに議論されている難しい課題です。

IOC(国際オリンピック委員会)では2015年にガイドラインを制定。「性適合手術を受けていなくても男性ホルモンのテストステロンを1年以上、一定レベルに抑制できている」などの条件で出場を認めています。東京五輪もこのガイドラインを基に女性としての出場を認めています。

ある五輪競技関係者は「難しい問題ですね。女性として生まれてきた女子アスリートから見たら、元男性のトランスジェンダーアスリートはもともと体のつくりが違うため、フィジカルの差が大きくなりすぎる。いくらテストステロンを抑えたとしても、女性では超えられない潜在的な壁がある」と明かしています。

皮肉にもトランプ前大統領は退任前の17日、こんな事態を想定してかせずか、バイデン氏の大統領令を担保する昨年6月の連邦最高裁判決について「長年性別によって分けられてきた分野にまで解釈を広げるべきではない」として、適用範囲の限定を狙った司法省通達を出していました。

バイデン氏にとっては、長年LGBTQの権利を守る活動を続けてきて、それを実現する大統領令にサインしただけのつもりが、まさかの部分にケチをつけられた形です。

バイデン氏の「LGBT外交」は、外交ではなくて、足元から崩れていく可能性が大きいです。トランスジェンダーの女性が、女子スポーツに進出するようになれば、米女子スポーツは崩壊するでしょう。

下は、中国のトランスジェンダー女性とされる人の写真です。

  2019年7月11日、中国の全国陸上競技選手権大会で優勝した湖南女子チーム。
  「男女混合リレー?」と2選手の性別に首をかしげる人が多いようだ


それでも、米国がトランスジェンダー女性を女子スポーツに参加することを認め続ければ、米国の女子スポーツは、多くのの種目で、米国トランズジェンター女性が勝つことになり、世界の女子スポーツは崩壊するでしょう。

最後に、日本の国会議員杉田水脈氏は「LGBTの人たちは生産性がない」と主張したことで、かなり叩かれましたが、彼女は言葉のつかいかたを間違えたと思います。私なら「全人類が、LGBTになれば、特にLGだけになれば、人類が崩壊する。BTはそれを助長する」といいます。これは紛れもない事実です。私自身は、彼女はこれを言いたかったのだと思います。無論これは、LGBTとされる人々を差別せよ、と言っているわけではありません。

これには現状では誰も反論できないでしょう。反論したとしても無意味です。これも、いずれ人工子宮なるものができれば、そうとばかりは言っていられなくなるのかもしれませんが、それにしても、これには確実に倫理的な問題が絡むでしょうし、それに現状では、普及しておらず、まだ未来の話です。

LGBTの人たちを不当に差別することはやめるべきだと思うのですが、スポーツの世界まで、LGBTを貫けば、とんでもないことになります。これは、誰にでもわかりやすいことなのですが、それ以外の分野でも、表には出てこない問題もかなりあるのではないかと思います。それが、表にでてくれば、バイデン政権は弱体化するでしょう。

中国にも上の写真で示したように、トランスジェンダーの女性スポーツ選手はいます。しかし、習近平自身は「トランスジェンダー外交」までは考えていないようです。

中国政府のLGBTに対する態度は「合理的」です。ゲイは社会の安定や経済発展のために「使える」ので支持し、レズビアンなどは放置されるか、意見の違いを公にすれば弾圧されます。多様な個人が集合体として社会をつくるという考えはなく、権力者がつくりたい社会の部品として有用かどうかという、いわば自分の都合で峻別しているにすぎないです。

セクシュアリティーだけではありません。現在の中国社会は合理性や生産性のみを優先して設計され、その枠に当てはまらない少数民族、宗教者、障がい者などのマイノリティーに対しては一貫して冷たい態度を取っています。これをやめない限り中国はまともにならないでしょう。

ただ、現状においては、LGBT外交で、結果として中国を利するバイデンは、国内で足元をすくわれることになりかねません。実際、そのようになりつつあります。日本でも自民党が、これを推進すれば、そうなりかねません。

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2021年3月18日木曜日

安保上のリスクも…「LINE」個人情報、中国で閲覧可能問題 政府が違法性の調査開始 韓国資本による海外流出の懸念が明らかに―【私の論評】日本人は、合理的な割にはリスクやデメリットに対して警戒心がなさ過ぎ(゚д゚)!

安保上のリスクも…「LINE」個人情報、中国で閲覧可能問題 政府が違法性の調査開始 韓国資本による海外流出の懸念が明らかに

今月1日にヤフーと経営統合したLINEの出沢剛社長(右)

 政府の個人情報保護委員会は17日、無料通信アプリ「LINE」(ライン)の利用者の個人情報が、委託先である中国の関連会社から閲覧可能な状態になっていた問題などについて、同社の情報管理に違法性がなかったかどうか、経緯や実態の調査を開始した。専門家は、安全保障上のリスクも懸念している。

 「事実関係を確認の上、適切に対応する」

 加藤勝信官房長官は17日の記者会見で、こう語った。

 LINEによると、中国にある複数の関連会社が2018年夏ごろから、アプリの監視や開発業務の過程で、日本国内のサーバー内にアクセス可能な状態だった。名前や電話番号のほか、不適切な書き込みだとして利用者がLINEに通報した会話内容などが閲覧できるという。

 また、韓国にある関連会社のサーバーには、利用者の画像や動画のデータを保管していた。

 法律では、利用者の同意なく個人情報を第三者に提供したり、海外に持ち出したりすることは禁じられている。LINEの指針では、利用者データを第三国に移転することがあるとしながら、国名の記載はなかった。

 LINEは、不正な情報漏洩(ろうえい)は発生していないとしたうえで、「説明が不十分だった」と謝罪した。

 ネットセキュリティーに詳しい神戸大大学院工学研究科の森井昌克教授(情報通信工学)は、「LINEは、韓国資本も入っているアプリなので海外への情報流出は懸念されていた。(報道で問題が)明らかになったが、本来は自発的に公表すべきだった」と指摘する。

 安全保障リスクも懸念されるという。

 評論家で軍事ジャーナリストの潮匡人氏は「中国には、民間企業を政府の情報収集活動に協力させる法律もある。日本には危機意識の薄さもみられる。日本政府は日常の通信手段に潜む危険を注意喚起し、危機管理を強化すべきだ」と語った。

【私の論評】日本人は、合理的な割にはリスクやデメリットに対して警戒心がなさ過ぎ(゚д゚)!

ご存じのようにLINEは、NHN Japanが提供する無料通話とチャットができるスマートフォンのアプリです。音声通話をネット経由のデータ通信で行うのですが、音声データは比較的容量が小さいため、かなり長く話したとしても定額制のパケット料金内に収まってしまいます。
 
ゆえに、実質的に通話料金がかかってこず、「無料通話」と言われるわけです。そこで、小遣いが限られていたり、少しでも通信費を安く抑えたい若年層や留学生などを中心に、爆発的に迎え入れられました。



なにしろ、サービス開始から約1年で、我が国での利用者が2000万人、アジアを中心に世界ではユーザーが4500万人を突破しているというのですから、あなどれません。

  ただ、実際にユーザーによくよく話を聞いてみると、人気の最大の理由は少し違う部分にあったようです。

メッセージをやり取りする時に、いちいちメールボックスを開いたり、返信ボタンを押したりしなくていいからということがあるようです。数年前、若い世代と話をしていたときにはじめて知りました。

   私自身は、LINEを使っていないため、そういう事情は知らなかったので、少なからず驚きました。

  わずか2つか3つのアクションであっても、面倒なものは面倒、やらなくて済むならやりたくない、という若年層が持つある意味での合理性をうまく汲み上げているところが、LINEがヒットした大きな理由であるようです。

私がLINEを使わないのは、アドレス帳データを預けたくないという1点に尽きます。一般には公開されていない人物や会社の連絡先が山ほど入っているので、見ず知らずの他人に預けることなど、恐ろしくてとてもできません。

LINEに限らず他のアプリでもそのようなものがありましたが、使っていません。確か、英語学習者とネーティブスピーカーをつなぐアプリだったと記憶しているのですが、これも恐ろしくて使えませんでした。

 しかも、現地法人とはいえ韓国企業といえば、通信大手のKTが半年以上にわたりハッキングを受けていることに気付かず、計870万人分の契約者情報を流出させたという事件があったことを忘れることはできません。いかに口頭で「きちんと管理しています」と言われても、この目で確かめるまではうかつに信用などできません。

若年層のユーザーもLINEを使っていると、元彼とかケンカして口もききたくない相手とかのアクティビティを教えてきたり、友人になりませんかと、レコメンドしてくることがあるそうでが、それはLINEの運営会社がアドレス帳データを持っていってるからなのでしょう。LINE運営会社は、ユーザーの人間関係を知ってるのからこそ、このようなことができるのです。
 
若い世代は、合理的な割には、リスクやデメリットに対して警戒心がなさ過ぎのような気もします。LINEは神様や予言者じゃないのですから、知ってるってことの裏には、理由があるに決まっているはずです。

無論、facebookやtwitter、YouTubeも昨年あたりから、ユーザーの投稿内容を検閲してみたり、甚だしい場合は、アカウントを凍結してみたり、挙句の果てトランプ米大統領のアカウントを永久凍結したりと問題が散見されました。LINEは表立って、はっきりとユーザーにわかるような操作はしてはいないようですが、裏で何をしているかなどわかったものではありません。

これでは、先に述べたように、若い世代は、合理的な割には、リスクやデメリットに対して警戒心がなさ過ぎと言ってもおられません。若い世代というよりは、すでに日本人はと言い換えるほうが適切だと思います。

性犯罪にも利用されるSNS

 LINEに限らず、GoogleやFacebookようにな会社は、自分の人生と直接関係があるわけではありません。一私企業に行動を把握され、監視されるのは、気分の良いものではありません。

使用を避けられるものなら、できるだけ避けておきたいです。最近では、なるべくこのような会社に個人データを蓄積されたり、利用されないように、パソコン、iPhone、iPadのブラウザはBRAVEを用いるようにしています。SNSも主にBRAVEで使っています。

このBRAVEを用いると、YouTubeなどCM(これって本当に苛つきます)が入らないので重宝しています。それと、ブラウズしていても、広告が入らないところが素晴らしいです。今後このようなサービスが興隆していくと良いと思います。ただ、なにもかもシャットアウトするというのは、不便なときもあります。どの程度自分の情報が特定のサービスに利用されても良いのか、ユーザーが自身で設定できるようになれば、ベストだと思います。

パソコンとスマホのBRAVEの初期画面

それにしても、このLINE日本では様々なところに浸透しており、様々な企業それも大手企業で用いられたり、地方自治体や学校等でも用いられたりして驚くことがあります。

保守派として有名な西岡力氏は、2019年に「LINEは危ない。韓国人はKCIAが全部見ていることが明らかになったので、みんなやめた。LINEは韓国政府に見られていると思ったほうが良い」と指摘しています。LINEの危険性については、LINEがサービスをはじめた当初(2011年 6月)から指摘されていました。

それにしても、以下のようなツイートには本当に驚いてしまいます。


平井卓也氏といえば、現在では、デジタル改革担当大臣です。2017年といえば、LINEの危険性については、予測されていたはずです。これだけ、警戒心のない人が、政府のデジタル改革を推進しても良いものでしょうか。

そう思うのは、私だけではないはずだと思います。

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2021年3月17日水曜日

台湾TSMCを繋ぎ留めようと必死の米国―【私の論評】半導体の世界では、中国に対する反撃が日米台の連携によって進みつつある(゚д゚)!

台湾TSMCを繋ぎ留めようと必死の米国

岡崎研究所

 2月24日、バイデン大統領は重要部材のサプライチェーンの見直しを命ずる大統領令に署名した。100日以内に半導体、大容量バッテリー、医薬品、レアアースの重点4品目についての見直しを求めている。この作業は中国を標的にしたものでないと説明されているが、過度な中国依存を脱却し、緊急時にも耐え得る強靭なサプライチェーンを構築し、安全保障上の懸念を払拭することを目指していることは明らかである。その手法としては国内生産の増強、戦略備蓄、緊急時の生産拡大余剰能力の確保、同盟諸国との協力の組み合わせが考えられているようである。半導体について言えば、台湾や日本、韓国との連携が当然視野に入って来るであろう。



 これに関連して、2月26日の英フィナンシャル・タイムズ紙では、同紙イノベーション担当エディターのジョン・ソーンヒルが、台湾の半導体受託生産企業(ファウンダリー)であるTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company, Ltd.:台湾積体電路製造)の躍進振りを描写した上で、TSMCが米国か中国かを選択することを余儀なくされつつあると述べている。

 TSMCの半導体は、アップルのiPhone、医療器具、F-35戦闘機を動かし、世界の半導体売上高の55%を占めている。その先端技術は、他企業が追随することを今のところ許さない状況だ。

 この驚異的な企業であるTSMCをはじめとする半導体製造企業が民主主義の台湾で発展したことは祝福すべきことであり、米国はじめ西側諸国はこれを資産として守るという姿勢が必要である。フィナンシャル・タイムズ紙の論説はTSMCにとっての懸念は米国と中国の間の地政学的な緊張であるが、この両者の間でのTSMCのマヌーバーの余地は小さくなって来ていると書いている。実体的にどういうことがあるのか必ずしも分からないが、西側諸国がTSMCを失うことがあってはならない。最先端半導体の供給源を失うことは壊滅的影響を持ち得る。

 TSMCの問題もその関連で検討されねばならない。TSMCはトランプ政権の圧力もあって既にアリゾナ州に進出することを決定し、現在、工場建設を進めているが、TSMCを繋ぎ止めるためには、それがビジネスの観点から見ても合理的であるように工夫される必要があるのであろう。更には、TSMCという一企業にとどまらず、台湾全体を安定したサプライチェーンに組み込むとの観点に立ってTPPに米国が台湾とともに参加する可能性が探求されるべきではないかと思われる。

 日本との関連でいえば、TSMCは、茨城県つくば市に、日本企業と提携して研究開発の拠点を設立することを決めている。米国アリゾナ州の工場建設も考えると、今後、日台米の連携が、この地政学上の優位を決め得る半導体分野で行われることが予想される。

現代社会において「半導体」は必要不可欠な存在だ。日本は半導体市場におけるシェアは大きく落としてしまったが、半導体の製造に必要な機械や材料の分野では日本企業が今なお大きな影響力を持っている。

中国メディアの電子発焼友はこのほど、半導体製造装置や材料のうち「重要なものになればなるほど、米国や日本企業の独占状態にある」と論じる記事を掲載した。

現在、激化している米中摩擦において半導体や半導体の製造装置が大きな焦点となっている。記事は、中国の華為技術(ファーウェイ)は半導体メーカーに対して、米国企業の製造装置を使わない生産ラインを構築するよう要請したと伝えつつ、中国企業は米中摩擦によって半導体が入手できなくなったり、生産できなくなったりする事態が生じることを強く警戒していることを指摘した。

【私の論評】半導体の世界では、中国に対する反撃が日米台の連携によって進みつつある(゚д゚)!

半導体製造では分業化が進んできました。それに遅れたのが日本でした。半導体の設計ツールは米国勢、ファブレス企業(工場を持たない会社)は米国を中心に誕生し成長してきました。その流れは日本で拒否され、台湾、最近では中国へと流れていきましたが、日本ではファブレス企業は成長できませんでした。


日本の半導体企業は、設計から製造まで一貫して行うIDM(Integrated Device Manufacturer:垂直統合のデバイスメーカー)にこだわり続け、ファブレスもファウンドリ(実際に半導体チップを生産する工場)もそれらのビジネスの本質を理解できないまま、衰退していきました。


今日残った売上額5,000億円以上の大手半導体メーカーは、東芝から独立したキオクシアとソニーセミコンダクタソリューションズ、そしてルネサスエレクトロニクスだけとなりました。この内キオクシアとソニーはそれぞれメモリとCMOSイメージセンサという大量生産品で昔ながらの大量生産工場を持つ会社です。需要が続く限り、大量生産品は成長できるが、需要が落ち込み始めると危うくなります。

日本が今でも得意な分野は、半導体を製造するための装置と材料です。最近では、フッカ水素が、有名になりましたが、これは他国でも製造できるものの日本以外のものを使うと、製造はできますか、歩留まり率がかなり低くなってしまいます。


日本では半導体を製造するメーカーが弱くなったために、その製造を支援する製造装置メーカーは海外企業に向けて出荷を続けています。売上額の海外比率は極めて高いです。半導体テスターのアドバンテスト社(旧タケダ理研工業)は、海外比率が95%くらいに達しています。半導体製造は今や、米国と台湾、韓国が大きな市場となっています。

またウェーハ完成後、チップに切り出してからパッケージングするまでの後工程では、OSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)と呼ばれるパッケージ専門の請負業者がいます。ここでは、ウェーハからチップを切り出し、それをリードフレームと呼ばれるメタルの基板にチップを載せ、チップ上のパッドと呼ばれる電極部分とリードフレーム上の各配線端子との間をボンディングワイヤーでつぎます。最後に樹脂で固めて封止します。最後にICが正常に動作するかどうかのテストを行います。

後工程での製造装置も日本が得意です。ディスコ社はウェーハからチップを切り出すダイシング装置に強いです。新川、カイジョー(旧海上電気)など比較的中小のメーカーが多いです。プリント回路の実装に強かったヤマハ発動機がボンディング装置やマウンティング装置の新川と、モールディング装置のアピックヤマダを買収しました。産業再編も活発になっています。


世界の半導体製造装置市場において、半導体の生産に必要な製造装置と材料の分野においては日本企業が大きなシェアを獲得しています。半導体設計に関しては、米国が大きなシェアを獲得しており、日本企業の製造装置と材料を使わずに半導体を生産するのも非常に難しいです。台湾のTSMCも日米なしには、半導体を製造できません。

現在の半導体産業では結局日米企業が要所を押さえている状況にあり、中国の半導体製造装置・素材メーカー、ファブレス企業も発展しつつありますが、日米の企業と比べるとまだ大きな差があるのが現状です。米中摩擦がさらに激化すれば、半導体の材料や製造装置を舞台に激しい駆け引きが繰り広げられるであろうことになるでしょう。

そのときに、日米側にTSMCがついているということは、非常に重要なことです。半導体製造装置や材料のうち「重要なものになればなるほど、米国や日本企業の独占状態にある」ことから、TSMCも当然のことながら、日米を選ぶのが合理的な判断です。

この日米台の背景には、言うまでもなく、トランプ政権でのファーウェイ排除の動きがあります。トランプ政権がファーウェイを世界市場から締め出す動きを加速させてきたことは周知の事実です。

CPACで演説するトランプ氏

2020年5月15日、米国政府は、ファーウェイが設計した半導体の製造をファウンドリー(半導体を受注製造する企業)が受託した場合、米国の技術やソフトウェアを使用する際には、米国商務省の許可を義務づけました。

つまり、米国原産技術やソフトウェアを使って半導体をつくることを禁止したわけです。これにより、世界最大のファウンドリーである台湾のTSMC(台湾積体電路製造)は、ファーウェイ向けの半導体製造が不可能になりました。

TSMCの主要顧客には、アップルやクアルコム、エヌビディアといった世界的な企業が名を連ねています。TSMC時価総額は約39兆円で、同20兆円であるトヨタの2倍の規模を誇り、半導体業界では世界1位です。半導体の世界では、TSMCなしにグローバル・サプライチェーンはつくれない状況になっているのです。

そして、このTSMCの上客だったのがファーウェイです。ファーウェイはTSMCに自社開発の半導体チップの生産を委託してきました。米国政府の決定は、事実上、これを禁止するものでした。


今後日米台による半導体による、経済安全保障体制を強化していくことは、中国に対する大きな牽制となります。

今後、世界の半導体サプライチェーンは大きく変化する可能性があります。一つのシナリオは、日・米・台を軸に、世界の半導体供給網が再整備される展開です。 

先にもあげたように半導体の設計・開発と生産の分離が進む中、米国は、最先端の製造技術や設計・開発に関するソフトウエア(知的財産)の強化に取り組むでしょう。米国が中国の人権弾圧にIT先端技術が使われていることを問題視し、半導体製造技術などの流出を食い止めるために制裁を強化する可能性もあります。 

台湾では、TSMCが微細化や後工程への取り組みを強化している。 また、わが国は旧世代の生産ラインを用いた半導体の供給や、高付加価値の関連部材、製造装置などの供給者としての役割を発揮しつつあります。 

それは半導体産業を強化したいEUにとっても重要です。車載半導体を手掛ける欧州の半導体企業は、生産をTSMCなどに委託しています。最先端の半導体生産に用いられる極紫外線(EUV)露光装置に関して、唯一の供給者であるオランダのASMLは米国の知的財産などに頼っています。 

半導体業界における日米台の連携は、EU各国企業にも大きく影響します。国際社会と世界経済の安定に、半導体サプライチェーンが与える影響は増すでしょう。 

日米台の連携は様々な分野で進んでいる

このように考えたとき、韓国政府とサムスン電子などの企業が、半導体業界の変化にどう対応するかが不透明です。 

TSMCは2021年内に回路線幅3ナノメートルの半導体の生産を開始すると、見込まれています。ファウンドリー分野でTSMCとサムスン電子とのシェアや技術面での格差は、今後拡大していく可能性が高いです。 

他方で、メモリ半導体や家電などの分野において、韓国の企業は、中国企業に追い上げられています。文政権の政策は、国際社会における韓国の立場と、韓国企業の変化への対応力にマイナスの影響を与える恐れがあります。

半導体の世界では、中国に対する反撃が日米台の連携によって進みつつあります。欧米のテクノロジーの盗窃により急進してきたのが中国の半導体です。それを断ち切ろうというのがトランプ政権の対中政策でした。

半導体を制する者が、次のテクノロジーを制し、それは経済、軍事における覇権を握ることになります。トランプ政権は終わりましたが、日米台の連携は始まったばかりです。これが今後の中国覇権とアジアの行方を左右する要素になると思われます。

これは、時がたつにつれて、ボディーブローのように中国に効いていくものと、思われます。1976年9月6函館に旧ソ連のミグ25が緊急着陸してベレンコ中尉が米国に亡命しました。そのときに、技術者がソ連の当時の最新鋭機ミグ25を調査して驚いたことがあります。

なんと、電子部品の一部に真空管が使われていたというのです。当時は、半導体はあまり用いられてはいませんでしたが、トランジスターは用いられていました。現在の中国も当時のソ連のようになりかねません。最新型の半導体を使えないことは、当時よりも現在のほうが圧倒的に不利です。


それを阻止するために、中国は台湾を奪取して、TSMCを傘下に収めようとするかもしれまません。しかし、それを実行したとすれば、習近平は愚かです。なぜなら、日米あってのTSMCなのですから、日米から分離したTSMCは、現在までの最新型の半導体は、部品・材料の備蓄の範囲内では製造できるでしょうが、その後はできなくなります。

無論、日米は中国が台湾を奪取することを許すべきではありません。そうして、それは日米が協同すれば、このブログにも過去に述べてきたように、十分に可能です。

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2021年3月16日火曜日

最新鋭掃海艦「えたじま」が就役――海自艦艇最大のFRP船―【私の論評】尖閣で、小競り合いではなく戦闘になれば日本が圧倒的に有利な理由(゚д゚)!

 最新鋭掃海艦「えたじま」が就役――海自艦艇最大のFRP船


海上自衛隊の最新鋭掃海艦「えたじま」が3月16日、就役した。ジャパン・マリンユナイテッド横浜事業所鶴見工場で同日、引き渡し式と自衛艦旗授与式があった。掃海艦の就役は2018年3月の「ひらど」以来、3年ぶりとなる。海上自衛隊呉基地の第3掃海隊に配備される。えたじまは、高性能化した機雷の除去などの任務に当たるが、特に潜水艦を狙う深深度機雷を排除する能力に優れる。

えたじまは2017(平成29)年度計画掃海艦で、艦名は広島県の江田島に由来する。同島は1888(明治21)年に海軍兵学校が東京築地から移転して以来、海軍ゆかりの島として知られる。海軍兵学校の代名詞ともなっている。


えたじまは掃海艦「あわじ型」の3番艦。あわじ型は、もともと海自初の掃海艦で既に退役した世界最大級の木造艦「やえやま型」の性能向上型だ。えたじまの総工費は約177億円。

●FRP製掃海艦として世界最大級

えたじまは、あわじ型の1番艦「あわじ」と2番艦「ひらど」とともに海自で最大の繊維強化プラスチック(FRP)製掃海艦だ。FRPで建造した掃海艦としては世界最大級となる。FRPは軽くて強度が高い。海中の機雷除去をする海自の艦艇としては、あわじ型掃海艦に先立ち、2012年に初めてFRP製となる新型掃海艇「えのしま」が就役した。それまでの船体は機雷に感知されない木材で造られていた。えのしま型掃海艇の3隻を含め、えたじまは船体がFRP化した6隻目の海自の掃海艦艇となる。

えたじま、船体に木材ではなくFRPを使うことで、やえやま型とほぼ同じ寸法ながら軽量化された。さらにFRPを採用することで、耐衝撃性を確保しつつ、使用年数が大幅に長くなる長寿命化が図られている。海上幕僚監部広報室によると、寿命は木造艦船が約20年に対し、FRP製は30年超になるという。

●えのしま型掃海艇より約120トン大型化

えたじまは基準排水量690トンで、前級のやえやま型掃海艦より約310トン小型化する一方、えのしま型掃海艇(MSC)よりは約120トン大型化した。全長は67メートルで、全幅11メートル、深さ5.2メートル、喫水2.7メートル、ディーゼル2基2軸、軸馬力2200馬力、最大速力は約14ノット。乗組員は約60人。

えたじまは、広範囲にわたる深度の機雷探知を可能にする深深度掃海装置1式を備える。海面上を漂流する機雷を昼夜を問わず遠距離から探知できる光学式監視装置(レーザー・レーダー)一式も搭載している。浮上した機雷を処理するための20ミリ機関砲1基も備える。

えたじまは、対機雷装備として、使い捨ての機雷処分具となる三井造船製の自走式機雷処分用弾薬(EMD)や日立製作所製の新型可変深度式探知ソナー(VDS)システムのOQQ-10を搭載。さらに無人水中航走体(UUV)として水路調査用で自律行動型の米ウッズホール海洋研究所製のリーマス600など多くの新装備を搭載している。えたじまは内外の技術の結晶ともいえる。

防衛省・海上自衛隊は2020年度予算に、えたじまに続くあわじ型4番艦の建造費126億円を計上している。

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【私の論評】尖閣で、小競り合いではなく戦闘になれば日本が圧倒的に有利な理由(゚д゚)!

昨年あたりから、海自では様々な艦艇が、進水しています。これらの進水は、概ね個別に報道され、互いの関連はあまり報道されていません。互いの関連がわからないと全体像は見えてきません。本日は、それに関することを掲載します。

昨年は、海上自衛隊に令和4年3月就役予定の新型潜水艦の命名・進水式が10月14日、神戸市の三菱重工業神戸造船所で開かれ、艦名は大きな鯨を意味する「たいげい」と命名されました。

昨年10月14日に浸水した最新鋭3000トン型潜水艦「たいげい」


防衛力整備の指針「防衛計画の大綱」では平成22年以降、中国の海洋進出を念頭に日本が保有する潜水艦を16隻から22隻に増強する目標を掲げてきました。たいげいが部隊に投入されると、22隻体制が実現することになります。

今月は、新しい護衛艦「くまの」、「もがみ」の相次ぐ進水がニュースになっていました。皆さんの記憶にもまだ新しいと思います。
「海上自衛隊の新型護衛艦(全長133メートル、排水量3900トン)の命名・進水式が3日、三菱重工業長崎造船所(長崎市)で行われ、『もがみ』と命名された。2022年以降に就役する。昨年11月に三井E&S造船の玉野艦船工場(岡山県玉野市)で進水した『くまの』に続き、2隻目。

海自は、中国軍の海洋進出や北朝鮮の弾道ミサイルへの対応など任務が増大する中で、慢性的な人手不足に陥っている。新型艦は船体をコンパクト化し、運用システムを集約化。乗組員は約90人とイージス艦の3分の1程度に抑えた。複数のクルー制も導入し、限られた人員による護衛艦の運用体制を維持する」(3月3日付 時事通信)
記事にあるようなコンパクト化のほか、レーダーに映りにくいステルス性能も話題になっていました。ただ、ほとんど報道されていなかったことがあります。


それは機雷戦能力です。海上自衛隊が「くまの」、「もがみ」に与えた新たなコンセプトは、これまで掃海艇が担っていた掃海能力を備えさせ、日本列島沿岸の防備を固めるというものですが、無人機雷排除システムとともに装備されている簡易型機雷敷設装置が備わり、機雷戦能力が装備されました。

機雷戦能力が与えられたということは、日本が本気で中国の海洋進出を阻止する方向に舵を切ったとみえます。これまで海上自衛隊の能力は対潜水艦戦(ASW)に特化されており、「ASWのための海軍」という異名すら奉られてきたほどでした。

ただ、見逃してならないのは海上自衛隊の対機雷戦(AMW)能力の高さです。1991年、湾岸戦争後のペルシャ湾の掃海に派遣された当時、海上自衛隊のAMW能力は世界一とさえ評価されていたほどです。

その後、掃海艇の老朽化などで世界一の評価は返上しなければならない時期もありましたが、いまや掃海艦の導入と掃海艇、掃海ヘリコプターの新型への更新も進み、再び世界一の評価を回復しました。海上自衛隊のAMW能力は、掃海母艦(5700~5650トン)2隻、掃海艦(690トン)2隻、掃海艇(570~510トン)17隻、掃海ヘリコプター10機という勢力です。これは、米中をもしのぎます。

これまで、海上自衛隊のAMW能力は北朝鮮に対するものとして説明されてきました。機雷は、ミサイルや戦闘艦艇に比べて安価で大量に設置でき、しかも一隻数百億から数千億円もする高価で高性能な軍艦を沈めることができる恐ろしい兵器です。そのため、そこに機雷があるかもしれないという情報だけで、敵の海軍の動きを大きく制限することもできます。

北朝鮮が海峡部分などの日本周辺や朝鮮半島沿岸に機雷を敷設し、日本などの船舶の航行を妨害したり、朝鮮半島有事に北朝鮮に上陸する部隊を阻止したりしようとしたとき、それを除去するのが海上自衛隊に期待されているとの説明でした。

むろん、その位置づけは今後も変わらないでしょう。しかし、そこに「くまの」、「もがみ」のような機雷敷設能力を備えた艦艇が加わると、海上自衛隊は本格的な機雷戦能力を備えた海軍に生まれ変わることになります。

なにができるようになるかといえば、例えば、尖閣諸島をめぐって中国との関係が極度に緊張したとき、機雷戦を国際的に宣言すると同時に迅速に尖閣周辺に機雷を敷設し、中国の接近を阻止することが可能になります。その能力を持つこと自体が、中国に尖閣への手出しを躊躇わせる抑止力となることは言うまでもありません。

それだけではありません。場合によっては、世界各国が軍事的にも中国包囲網を敷く中で、機雷敷設によって中国に出入りする船舶を完全にコントロールし、中国が経済的に成り立たないようにすることもありうる話です。中国の掃海能力はきわめて限られていますから、これも中国に無謀な企てを放棄させるうえで、高い抑止効果があります

そうして、上の情報を組み立てていけば、尖閣防衛もより確かなものになったことが、はっきりしてきます。

以前このブログでは、尖閣有事のとき、日本の潜水艦隊がどう戦うのかをシミュレーションしてみたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
偵察衛星、無線傍受、サイバー情報戦、その他等で得たインテリジェンス情報から、中国海軍が尖閣奪取必至と判断され、中国沿岸基地では海軍の出動準備がなされたとの情報が入ったとします。

南西諸島各港に前方配備されたFFM2くまのクラスが、数隻全力で尖閣北方海域に出撃。そこで、左舷後方ハッチから機雷をばら撒くと、今度は全速で南下し、掃海母艦と合流。海自のFFM艦隊と掃海母艦が尖閣付近に機雷原を作り、南西諸島各海峡を機雷封鎖します。

空母いずもとイージス艦まやの機動艦隊が南西諸島東側海域に入ったとき、そうりゅう型潜水艦、たいげい型潜水艦は青島、上海の軍港と南西諸島の間に潜んで、中国空母艦隊を牽制します。

現在、中国空母は対潜哨戒機を持たず、艦載機J15も対潜爆弾を持っていません。護衛しているフリゲート艦たちの対潜能力も低いので、中国空母近くに海自潜水艦が行ければ、確実に撃沈できます。

海上自衛隊は長年、ソ連潜水艦と戦って来て、その対潜哨戒能力のレベルは恐ろしいほど高いです。その経験を対中潜水艦戦に投入していますから、浅海に潜む音の大きい中国潜水艦はそうりゅう型搭載の18式魚雷で撃沈できます。

このブログでは、以前から掲載してきたように、日本の潜水艦は静寂性(ステルス性)に優れ(リチュウム電池を動力とする、最新型ではほとんど無音)ていて、しかも中国の対潜哨戒能力が低いので、日本の潜水艦を探知することはできません。そのため、自由に尖閣諸島周辺を航行できます。それとは真逆で、中国の潜水艦は日本はすぐに探知できます。

しかも、海自は自ら設置した機雷はすべて敷設場所を認識しているので、これに妨げられることはありません。

海自の機雷


尖閣諸島付近に、機雷をばらまけば、中国海軍の掃海能力はかなり低いので、掃海に手間取り、尖閣に上陸はできません。それでも、人的被害をものともせず、掃海を無理やり実行して、尖閣に兵を送り込んだとしても、再度機雷を敷設されたり、日本の潜水艦で尖閣諸島を包囲されれば、補給ができず、尖閣諸島に上陸した人民解放軍もしくは民兵はお手上げになります。

さらに、空母やその護衛艦、強襲揚陸艦なども、日本の潜水艦にほとんど撃沈されることになります。

航空機での補給という手もあるでしょうが、まずは効率が非常に悪いということと、航空機を護衛する中国の戦闘機はこれもステルス性に劣るので、すぐに地対空ミサイルで日本の護衛艦等に撃ち落とされ、これも絶望的です。

世界一の軍事大国である米国といわれる米国ですが、潜水艦のステルス性や、対潜哨戒能力、掃海能力のような分野では総合的には日本の方が勝っています。なぜ、これらの分野が日本では優れるに至ったのでしょうか。

まず、対潜水艦能力についは、大東亜戦争のころの日本は対潜水艦の能力自体は高かったのですが、運用のう力が低く米国の潜水艦から大きな打撃を受けました。米軍の潜水艦は、大戦中東京湾に侵入して、情報収集にあたっていたほど、運用面ではすぐれていました。

一方日本は、航空機を3機も搭載できる、後に米軍のポラリス型潜水艦の原型になったといわれるほどの当時としては世界最大の超大型潜水艦を大戦中に建造しており、建造能力にたけていたのですが、運用面では効果的ではありませんでした。

当時世界最大の日本海軍伊400型潜水艦

そこから教訓を得た日本は、戦後は海上自衛隊で対潜水艦能力に力を入れ、強力なソナーを装備した護衛艦や最新の対潜水艦ミサイルを装備しているほか、対潜哨戒機も多く保有していて、その規模と実力は中国も甘く見ることはできないほどになりました。

特に、対潜哨戒能力については、冷戦中のオホーツク海における、哨戒活動が日本の哨戒能力を格段にあげました。一時に米国のそれを上回るともいわれていた時期がありました。現在でも、かなり高いです。おそらく、世界第二位でしょう。中露は、日米にははるかに及びません。

掃海能力についても、太平洋戦争中に米国が数多くの機雷を日本近海に敷設したため、日本は戦後、長期間にわたって機雷の除去を行わざるを得ない状況に追い込まれたため、能力が高まりました。

先の大戦末期の1945(昭和20)年3月、米軍が発動した「飢餓作戦」では、爆撃機や潜水艦で日本の港湾周辺や航路に敷設された1万2035発の機雷により、商船670隻125万トンが撃沈され、輸送能力の62・5%が失われました。終戦までのわずか半年で、日本の港湾に出入りできた船舶は85万トンから15万トンに減少し、海上輸送はほぼ窒息状態となったのです。

日本ではあまり知られていませんが、この掃海能力は朝鮮戦争の際にも発揮され、多くの機雷を除去することに成功しました。ただし、このときには戦後初の戦死者も出ています。ただ、当時の日本政府が表に出さなかったため一般にはほとんど知られていません。

日本の総合的な対潜水艦能力と掃海能力は非常に優れており、米国ですら総合力では日本には及びません。そのすべては太平洋戦争での敗戦と、米ソ冷戦時のオホーツク海の対ソ対潜哨戒にから来ているといえます。

無論、中国には核兵器があり、日本には核兵器はありません。そのため、いよいよになれば、核で脅しという手もあるでしょうが、日本には米軍が駐留しているし、実際中国が核兵器を用いることはできないでしょう。

もし、尖閣奪取のために、これを使えば、超大国としての中国は丸つぶれになります。それに、そんなことをすれば、日本はそれに報復するためにも、核兵器を開発することになるでしょう。かつて、バイデンが習近平を「日本は一晩で核保有可能」と脅したそうですが、それが本当になるでしょう。

日本が中国から核攻撃を受ければ、世論は激高し、日本の親中派・媚中派の政治家、官僚、財界人なども、政治生命や、官僚、財界人としての影響力を完璧に失うことでしょう。

最後に、このブログでは、よく物事に優先順位をつけるべきであると主張してますが、それは軍事力についてもいえると思います。

中国の軍事力と、日本の軍事力を比較すると、中国は総合的に開発されているといえますが、日本は対中国に特化しています。それも海洋戦に特化しています。

それは、予算や何のための軍事力であるかということで違いが生じているようです。まずは、ご存知のように、予算が違います。中国は膨大な予算を軍事力に使っていますが、日本はGDPの1%という枠があり、そこからほとんどはみ出ることはしません。

そのため、中国のようにあれもこれもと、予算を総合的に使うことはできません。そのため、対中国、それも海洋先に絞った予算ということになったのでしょう。当然といえば、当然です。

それと、何のための軍事力かといえば、中国は超大国を目指しており、場合によっては海外に大量の軍隊を送り、特定の地域を制圧することも視野にいれています。一方の、日本は、そもそも海外に大量の軍隊を制圧するなどのことは考えていません。

日本の軍事力は、あくまで基本的に自国を守ることです。そのため、海外に大量の軍隊を送り込む必要性もありません。

こうした、両者の違いが、両者の軍事力の大きな違いを生んだのでしょう。そうして、優先順位をつけるという方式はここでも、優位性を生んだようです。

日本は、目に見える形で着々と軍事力をつけていますが、中国のそれは総合的であり、陸上はもとより、海洋や宇宙にまで手を伸ばしていますが、結果として、日本の潜水艦を探知することもできず、静寂性に優れた潜水艦も建造できず、掃海能力に劣っています。

そうして、この差を中国はあと数十年かかっても埋めることはできません。

先日も述べたように米国の経営学会では忘れされてしまったかのような、偉大な経営学の大家ドラッカー氏は優先順位について以下のように述べています。

いかに単純化し組織化しても、なすべきことは利用しうる資源よりも多く残る。機会は実現のための手段よりも多い。したがって優先順位を決定しなければ何事も行えない。(『創造する経営者』)

誰にとっても優先順位の決定は難しくありません。難しいのは劣後順位の決定です。つまり、なすべきでないことの決定です。一度延期したものを復活させることは、いかにそれが望ましく見えても失敗というべきです。このことが劣後順位の決定をためらわせるのです。

優先順位の分析については多くのことがいえます。しかしドラッカーは、優先順位と劣後順位に関して重要なことは、分析ではなく勇気だといいます。彼は優先順位の決定についていくつかの原則を挙げています。そしてそのいずれもが、分析ではなく勇気にかかわる原則です。

 第一が、「過去ではなく未来を選ぶこと」である。 

 第二が、「問題ではなく機会に焦点を合わせること」である。

 第三が、「横並びでなく独自性を持つこと」である。

 第四が、「無難なものではなく変革をもたらすものに照準を当てること」である。

容易に成功しそうなものを選ぶようでは大きな成果はあげられない。膨大な注釈の集まりは生み出せるだろうが、自らの名を冠した法則や思想を生み出すことはできない。大きな業績をあげる者は、機会を中心に優先順位を決め、他の要素は決定要因ではなく制約要因にすぎないと見る。(『経営者の条件』)

まさに、日本は、中国の脅威をなんとしても防がなければならない、そのためには中国に比して日本が長けている部分を最大の機会とみなし、予算など他の要素は決定要因ではなく、制約要因にすぎないと見たからこそ、今日中国に対する備えができたのだと思います。

そうして、この傾向は安倍政権以降になり一層色濃くなりました。その具体的な動きは、安倍総理の9年前の論文、「安全保障のダイヤモンド構想」から始まったといえるでしょう。この流れはやがてインド太平洋構想、QUADにまでつながっていきました。

この日本のやり方は、多くの人々に教訓を与え、そうして勇気づけるものともなりました。そのせいでしょうか、日本の軍事力は昨年は世界のトップ5にランキングされました。

ただ、いくら日本が優先順位をつけても、中国が今後も軍事予算を増やし続ければ、日本の優位性は崩れていくことになりかねません。そのようなことを防ぐためにも、少なくとも防衛予算の1%枠は早々に破るべきです。

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