2021年4月10日土曜日

【日本の解き方】中国が狙う「一帯一路」の罠 参加国から富を吸い上げ…自国の経済停滞を脱却する魂胆も―【私の論評】国際投資の常識すら認識しない中国は、儲けるどころか世界各地で地域紛争を誘発しかねない(゚д゚)!

【日本の解き方】中国が狙う「一帯一路」の罠 参加国から富を吸い上げ…自国の経済停滞を脱却する魂胆も

習近平

 中国の習近平政権による経済圏構想「一帯一路」については、参加した途上国の債務が問題になっているほか、米国が対抗する方針を打ち出している

 中国経済は行き詰まりつつある。その根拠は1人当たり国内総生産(GDP)が1万ドルを超えないという「中所得国の罠」だ。この壁を越えるためには、一部の産油国などを例外とすれば、一定の民主主義が必要だ。英エコノミスト誌の公表している民主主義指数でいえば、少なくとも香港と同程度の「6」以上を要するが、しかし、中国の民主主義指数は「2・3」程度しかない。

 中国が、非民主的な専制国家でありながら、1人当たりGDPが1万ドルを長期にわたって突破するのは、これまでの社会科学の理論からみると難しい。そこで、短期的には台湾侵攻など政治的な不満のはけ口を求める懸念もある。

 一方、産油国が中所得国の罠の例外になっているのは国内に莫大(ばくだい)な石油資源があるからだ。これと似たような環境としては、海外に中国依存の経済圏を作ることが考えられる。軍事的な侵攻ではなく、経済的に領土を拡大し、その富を中国に吸い上げるというものだ。もちろん中国が軍事的に優位な地域が条件となる。

 筆者は中国の一帯一路は、こうした戦略に基づいていると考えている。その結果、中国は世界の覇権を狙っているともいえる。

 しかし、一帯一路は、同様に中所得国の罠に陥ったアジアや中東、アフリカの途上国を相手にせざるを得ないが、それらの国を借金漬けにしたあげく、闇金まがいの取り立ても辞さない。こうした形で覇権をうかがう中国に対抗するため、バイデン米政権はジョンソン英首相との会談で経済圏構想を提案した。

 中国は、以前からアジアや中東、アフリカの途上国に経済支援を行い、2014年に習氏が一帯一路構想を提唱する前から影響力を強めてきた。15年にはアジアインフラ投資銀行(AIIB)を設立し、金融面で一帯一路構想を後押しした。

 しかし、AIIBは、日米の参加が得られず、まだ十分に機能していない。19年末の融資残高は、約23億ドルしかなく、日米主導のアジア開発銀行(ADB)の約1100億ドルに見劣りしている。

 アジアや中東、アフリカの途上国では、インフラ整備が不十分なのは事実だ。日米は国内でのインフラ整備を進めるとともに、その力を海外にも活用すべきだ。日米で国内と世界のインフラ整備を提唱していくのがよく、そのための枠組み作りが必要だろう。

 中国が中所得国の罠に陥りながら、民主化せずに同じ環境の国を利用してそれを脱しようとすることがそもそも間違いだ。それでは、他の国にも希望はない。長期的な経済発展のためには民主化が必要なので、まずは中国自らが民主化してこの「罠」から脱すべきだ。(内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】国際投資の常識すら認識しない中国は、儲けるどころか世界各地で地域紛争を誘発しかねない(゚д゚)!

かつて欧米列強と言われていた国々(英米独仏露)の国々は、18世紀以降植民地を持っていました。そうして、本格植民地化によって、現地人を搾取して、利益を収奪したという一般的なイメージがありますが、植民地経営はそれほど簡単なものではなかったですし、収奪する程の利益など、植民地にはほとんどありませんでした。

海外を植民地化することは莫大な初期投資がかかり、費用対効果という観点からは、とても受け入れられるようなものではありません。常時、軍隊を駐屯させる費用、行政府の設置・運用とその人件費、各種インフラの整備、駐在員の医療ケアなど、莫大な費用がかかります。その上行政的手続きも極めて煩雑になってきます。

初期コストや投資金を無事に回収し、安定的に利益が出せるかどうかの保証などもありません。植民地ビジネスはリスクが大きく、割に合わないのです。「植民地=収奪」という根拠のない「つくられたイメージ」を一度、捨てるべきです。

教科書や概説書では、植民地経営の成功例ばかりが書かれています。例えば、オランダはインドネシアを支配し、藍やコーヒー、サトウキビなどの商品作物を現地のジャワの住民に作らせ(強制栽培制度)、大きな利益を上げていたというようなことです。

オランダ東インド株式会社に所属していたアムステルダム号

しかし、このような成功例はごく一部であって、ほとんどの場合、投資金を回収できず、損失が拡大するばかりでした。実際、19世紀、ヨーロッパのアフリカの植民地経営などはほとんど利益が上がりませんでした。

これは、当然といえば、当然です。今日の国際投資の常識は、「自国より成長率の高い国や地域に投資すれば利益をあげられる」と教えています。過去の植民で成功したのは、たまたま、投資した地域が、自国よりも経済成長をしていたか、多少投資することによって経済成長ができたからでしょう。それ以外の植民地は成功するはずもありませんでした。

では、なぜ、欧米は大きなリスクをとりながらも、植民地化に取り組んだのでしょうか。それは経済的な動機というよりも、思想的な動機が強くあったからでした。

近代ヨーロッパでは、啓蒙思想が普及しました。啓蒙とは「蒙を啓く」つまり無知蒙昧な野蛮状態から救い出す、という意味です。啓蒙は英語でEnlightenment、光を照らす、野蛮の闇に光を照らす、という訳になります。啓蒙思想に基づき、西洋文明を未開の野蛮な地域に導入し、文明化することこそ、ヨーロッパ人の使命とする考えがあったのです。

イギリスのセシル・ローズ(Cecil John Rhodes、1853年~1902年、は南アフリカのケープ植民地首相)などはこうした考え方を持っていた典型的な人物でした。

セシル・ローズ

ローズは、アングロ・サクソン民族こそが最も優れた人種であり、アングロ・サクソンによって、世界が支配されることが人類の幸福に繋がると考えていました。この独善的考えが、植民地の人々に嫌われたという面は否めないです。

開明化された地域が資本主義市場の一部に組み込まれれば、利益をもたらすという狙いも最終的にはあったかもしれないですが、「文明化への使命」という考え方が割に合わない植民地経営のリスク負担を補っていたのです。

当時のヨーロッパ人は、今日の我々が考える以上に非合理的であり、昔ながらの精神主義に拘泥していたと言ってよいです。

実は、日本の植民地政策にも、このような啓蒙思想を背景とする思想的動機が強くありました。韓国や台湾を植民地化しても、当時の日本に利益など全くありませんでした。元々、極貧状態であった現地に、日本は道路・鉄道・学校・病院・下水道などを建設し、支出が超過するばかりでした。それでも、日本はインフラを整備し、現地を近代化させることを使命と感じていました。

特に、プサンやソウルでは、衛生状態が劣悪で、様々な感染症が蔓延していたため、日本の統治行政は病院の建設など、医療体制の整備に最も力を入れたのです。

李王朝末期頃の韓国

日本人はヨーロッパ流の啓蒙思想をいち早く取り入れ、近代化に成功し、今から考えると、何の儲けにもならないことのために、植民地の近代化を前提として、植民地政策を展開しました。

「植民地=収奪」というのはつくられたイメージと言わざるを得ないです。植民地支配によって、我が国は「多大の損害と苦痛」を「与えた」のではなく、「被った」のです。特に経済的にはそうでした。日本の植民は期間も短く、儲けにまでいたったものはありません。

このような経験をしているからこそ、現在ではかつての西洋列強も我が国も、植民地など持とうとしません。そうして、投資するにしても、儲けるためであれば、自国より経済成長している国や地域に投資するのです。

日本では、デフレが酷くて経済が停滞していた頃から、民間企業が米国やEUなどにかなり海外に投資していました。これは合理的な判断です。これはまだ名残があり、昨年5月末に財務省から公表された「本邦対外資産負債残高の状況(2019年末時点)」によれば、日本の対外純資産残高は前年比23兆円増の364兆5250億円と2年連続で増加し、29年連続で世界最大の対外債権国の座を維持する結果となりました。金額的には5年ぶりに過去最高を更新しました。

しかし、植民地経営というネガティブな経験をしたことのない中国は、かつての西洋列強などと同じ間違いをしようとしています。

一帯一路は、中所得国の罠に陥ったアジアや中東、アフリカの途上国を相手にせざるを得ないのですが、それらに投資しても儲かることはありません。少なくとも、中国より経済発展している国や地域に投資すれば良いのでしょうが、そもそもそのような国や地域は中国の助けをあまり必要としません。

仮に、中所得国を借金漬けにしたあげく、闇金まがいの取り立ても辞さないようにしたとしても、元々富がないのですから、そこから簒奪できる利益はわずかです。これは、どう考えても成功しようにありません。

ただ、中国が借金をかたに、弱小国の社会を自分の都合の良いように作り変える危険性は否定できません。そうなると、それらの国々の社会は不安定化することになり、地域紛争などに繋がる可能性はあります。

そのため、米国が対抗する方針を打ち出しているのは良いことです。無論米国は、これで儲けるのではなく、中国の影響力を排除するのが狙いです。いくらバイデンであっても、習近平ほど愚かではありません。

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2021年4月9日金曜日

米中対立下の世界で「いいとこどり」はできない―【私の論評】米中冷戦は、米ソ冷戦と同じく、イデオロギー対立、大国間の勢力争いという2つの要素で戦われいずれ決着する(゚д゚)!

米中対立下の世界で「いいとこどり」はできない

岡崎研究所

 中国政府は、3月11日に閉幕した全人代で、香港の立法委員選挙の制度を変えることを打ち出し、香港の一国二制度をほぼ完全に葬り去ろうとしている。直接選挙される立法委員を50%から22%まで減らす。従来は行政長官を選んでいた選挙委員会の権限を拡大し、立法会の議員の一部も選ぶようにする。資格審査委員会を設置し、候補者が「愛国主義」であるかどうかなどの審査を受けるように求める。などといった内容である。これは、中国による自由主義の価値への重大な挑戦の最新の例の一つである。


 こうした香港情勢をとらえて、エコノミスト誌3月20日号は‘How to deal with China’と題する社説を掲載し、これから中国に見られる専制と自由の価値を擁護する勢力間の長い闘争が行われていくという情勢判断をしている。香港の自治と民主政が中国に踏みにじられていったこと、中国の政治の在り方を見て、こういう判断に行きついたということだろう。3月下旬のアンカレッジでの米中会談を見ても、この情勢判断は正しいと思われる。

 日本は、米中対立の時代が来ていることを明確に理解し、その価値観からして米国の側に立つというのが基本である。安全保障は米国に依存するが、中国との関係も特に経済面では重視するというような姿勢をとれるような生易しい状況ではない。

 この米中対立については、イデオロギー対立なのか、経済・技術の主導権争いなのか、あるいは大国間の勢力争いなのか、いろいろな説明があるが、これらの対立が複合的に重なり合ったものであると考えるべきだろう。米ソ冷戦時代はソ連の経済力は弱く、対立はイデオロギー対立と軍事対立を中心に行われたが、今度の米中対立は、中国が強い経済力を持つ中で、経済技術面での競争がかなりの比重を占めることになるだろう。これが物事を複雑化する。

 短期的には、もし選択を迫られれば多くの国は西側より中国を選ぶ可能性もある。中国は64か国にとり最大の商品貿易パートナーであるが、米国は38か国にとりそうであるに過ぎないからだ。長期的には、国の大きさ、多様性、革新性により、中国は外部圧力に適応できる能力を備えているかもしれない。香港での民主主義の後退は香港のドル決済や株式市場の繁栄に影響を与えていないし、中国本土への投資も盛んであるという。レーニンは「資本家というものは自分を縛り首にする縄さえ利潤のためには売るものである」といったことがあるが、大企業も徐々に中国への投資などを考え直すべきであろう。

 上記社説は、厳しい米中対立を予測しつつも、対応策として対中国「関与」が唯一賢明な道であるというが、これには必ずしも賛成できない。「関与」は何を意味しているのか、分からないが、中国の国際法違反を看過して普通の対話をするということならば、賛成しがたい。ダメなものはダメとし、それなりのコストを課していくべきであろう。

 より長期的には、中国の勢いはそれほど続かないと思われる。人口の少子高齢化はすでに始まっており、一人っ子政策のマイナスは大きくなっている。特に若年層での男女の比率の不均衡は、さらなる少子化につながる。環境面での制約、水不足や大気汚染はいまそこにある危機である。さらに言うと、専制体制は政治の不安定化の危険と隣り合わせである。国民の負託を受けているとの正統性がない政権には脆弱性がついて回るものである。

【私の論評】米中冷戦は、米ソ冷戦と同じく、イデオロギー対立、大国間の勢力争いという2つの要素で戦われ、いずれ決着する(゚д゚)!

上の記事では、米中のイデオロギー対立なのか、経済・技術の主導権争いなのか、あるいは大国間の勢力争いなのか、いろいろな説明があるが、これらの対立が複合的に重なり合ったものであると考えるべきだろうとしています。

そうして、米ソ冷戦時代はソ連の経済力は弱く、対立はイデオロギー対立と軍事対立を中心に行われたが、今度の米中対立は、中国が強い経済力を持つ中で、経済技術面での競争がかなりの比重を占めることになるだろうとしています。

しかし、私はそうは思いません。特に経済についてはそうです。以前このブログでは中国経済について分析しました。その記事のリンクを掲載します。
中国経済、本当に崩壊危機の様相…失業者2億人、企業債務がGDPの2倍、デフォルト多発―【私の論評】中国には雇用が劣悪化しても改善できない構造的理由があり、いまのままではいずれ隠蔽できなくなる(゚д゚)!
中国・人民大会堂(「Wikipedia」より)

この記事で、中国の経済統計はそもそもフェイクであり、フェイクであることを前提とすれば、中国が経済発展して、米国経済を追い抜くなどという考えはファンタジーに過ぎないことを解説しました。以下に、この記事より引用します。
中国が発表した昨年(2020年)の四半期ごとのGDP成長率は、前年同期比で1-3月期がマイナス6.8%、4-6月期がプラス3.2%、7-9月期がプラス4.9%、10-12月期がプラス6.5%です。この数字を前期比に変えると、年率換算で1-3月期がマイナス37%、4-6月期がプラス60%、7-9月期がプラス13%、10-12月期がプラス12%です。

1-3月期のマイナス37%は随分大きなマイナスに見えるかもしれないですが、英国の4-6月期のマイナス60%と比べると遥かに軽いことになります。

確かにコロナ禍は英国に大きな打撃を与えました。コロナ禍前のイギリスの完全失業率は4.0%でしたが、コロナ禍発生後に最大で5.1%にまで上昇しました。失業率が1.1%も上昇し、それが一時的にはGDPマイナス60%という大きなブレーキにつながったのです。

中国政府が発表する失業率統計はGDP同様全くあてにならないことで有名であり、これをそのまま真に受けるわけにはいきません。では、他の機関はどのような数値を出しているのみてみます。

アジア開発銀行は6290万人から9520万人が新たに失業したのではないかと推計しました。「スイス銀行」の俗称で知られるUBSは7000万人から8000万人が新たに失業したのではないかと推計しました。中国の有名エコノミスト、李迅雷氏も、新たな失業者は7000万人を超えるとし、これによって失業率が20.5%まで高まったのではないかと述べています。
更に引用します。
中国のスマホの国内出荷台数は2016年に5.6億台だったのが、2017年に4.9億台、2018年に4.1億台、2019年に3.9億台、2020年に3.1億台と、年々縮小し続けています。スマホは2〜3年もすればバッテリーのもちが悪くなって買い替えたくなるものだが、買い替え需要があまり発生していません。スマホは中国でも、多くの人の必需品になったようですが、それにしても横ばいではなく、年々下がっているのです。

中国の乗用車の販売台数の推移はどうかといえば、2017年に2376万台だったのが、2018年に2235万台、2019年に2070万台、2020年に1929万台と、やはり年々落ちています。これを見ると富裕層の消費も伸びているとは考えにくいです。

これでは、毎年6%以上の経済成長を続けてきたという話自体がフェイクだと考えないと辻褄が合わないです。

以上で示したように、中国の経済統計はそもそも出鱈目です。これは信用するわけにはいきません。

さらに、このブログでも 何度か掲載してきたように、中国経済には2つの構造的な大問題があります。一つ目は中進国の罠であり、2つ目は国際金融のトリレンマです。

一つ目の中進国の罠は、一種の経験則であすが、発展途上国が一定の中所得までは経済発展するが、その後は成長が鈍化し、なかなか高所得になれないのだ。ここで、中所得の国とは、一人あたりGDPが3000~10000ドルあたりの国をいうことが多い。10000ドルというと日本円でいえば、100万円くらいです。

確かに、日本ではパートやアルバイト等でない限り、普通に働いている人で、年収が100万という人はいないです。

中国に関しては、現在年収を平均すると、10000ドル前後になっています。そうなると、中進国の罠にはまる可能性が高まっているわけです。

どうして、中進国の罠があるかといえば、以下に私の仮説を掲載します。結局中進国では、民主化、政治と経済の分離、法治国家化が十分になされないので、ある一定程度まで経済が発展しても、その後は発展しないというものです。

かつての先進国のように、これらがなされれば、多数の中間層が輩出されて、それらが自由に社会経済活動を行い、その結果として経済発展するのです。その過程においては、社会のあらゆる層や、地域でイノベーションが起こります。

多くの中進国で、経済発展がとまってしまうのは、民主化、政治と経済の分離、法治国家化がなされず、その結果として多数の中間層が輩出されることもなく、これらが自由に社会経済活動をすることもできません。

このような社会で、現在の中国のように、政府が号令をかけて、多くの資金を提供してイノベーションをしたとしても、社会の多くの層や地域でイノベーションが起こることはなく、遅れた社会が温存され、結局のところ経済成長が止まってしまうです。

これは、現在まさに中国ははまり込んでいる罠であり、今後中国は経済発展することはないでしよう。

さらに、もう一つの構造的な問題は、国際金融のトリレンマにはまってしまい、中国は経済政策の一環として、独立した金融政策を実施できいないということがあります。これも先のリンクの記事から引用します。

 先進国が採用するマクロ経済政策の基本モデルとして、マンデルフレミング理論というものがある。これはざっくり言うと、変動相場制では金融政策、固定相場制では財政政策を優先するほうが効果的だという理論だ。

 この理論の発展として、国際金融のトリレンマという命題がある。これも簡単に言うと(1)自由な資本移動、(2)固定相場制、(3)独立した金融政策のすべてを実行することはできず、このうちせいぜい2つしか選べない、というものだ。
 先進国の経済において、(1)は不可欠である。したがって(2)固定相場制を放棄した日本や米国のようなモデル、圏内では統一通貨を使用するユーロ圏のようなモデルの2択となる。もっとも、ユーロ圏は対外的に変動相場制であるが。

 共産党独裁体制の中国は、完全に自由な資本移動を認めることはできない。外資は中国国内に完全な自己資本の民間会社を持てない。中国へ出資しても、政府の息のかかった国内企業との合弁経営までで、外資が会社の支配権を持つことはない。

 ただ、世界第2位の経済大国へと成長した現在、自由な資本移動も他国から求められ、実質的に3兎を追うような形になっている。現時点で変動相場制は導入されていないので、結果的に独立した金融政策が行えなくなってきているのだ。

中国では、雇用がかなり悪化していますが、これを是正するには、大規模な金融緩和をすることが必要不可欠なのですが、それを中国共産党はできないのです。

これは、中国が民主化、政治と経済の分離、法治国家化の実施、変動相場制に移行しなけばは、これからも中進国の罠にはまりつづけ、独立した金融緩和が実施できないことを意味します。

であれば、中国がこれから過去のように経済発展する見込みはないということです。ここで、元の議論に戻ります。

1988年ソ連ではじめて行われたミスコンの様子


現在の米中の対立は、イデオロギー対立、経済・技術の主導権争い、大国間の勢力争いが複合的に重なり合ったものでしたが、今後中国は経済発展できないので、いずれ、イデオロギー対立、大国間の勢力争いという2つの要素で戦われることになるでしょう。

米ソ冷戦時代と同じく、いずれ決着がつくことになるでしょう。私は、おそらく10年くらいで決着がつくと考えています。

その時には、中国共産党は崩壊し、ある程度の民主的な国家がいくつかできるか、あるいは緩い連合体を形成するなどの形になると思います。

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2021年4月8日木曜日

太陽光発電業界の中国強制労働への依存がバイデンのクリーンエネルギー経済を脅かす―【私の論評】日米ともに太陽光発電は、エネルギー政策でも、安全保障上も下策中の下策(゚д゚)!

太陽光発電業界の中国強制労働への依存がバイデンのクリーンエネルギー経済を脅かす

太陽光パネルの上で寝そべる助成 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

<引用元:ワシントン・フリービーコン 2021.4.7
共和党、民主党、そして労働組合幹部というのはありそうもない組み合わせが連立して、太陽光発電産業が中国の強制労働収容所とつながりのある製品に依存していることを懸念している。ジョー・バイデン大統領のクリーンエネルギー経済推進を脅かす動きだ。

中国西部の新疆地域―中国が100万人以上のウイグル人に厳しい強制労働体制を強いている場所―は、太陽光発電部門のサプライチェーンを支配している。太陽電池の製造に欠かせない原材料であるポリシリコンは世界の半分近くが新疆製だ。その経済的依存は、太陽光発電産業と現代の奴隷制度を結び付ける信頼性のある報道に言及する、議員と組合幹部の超党派グループの注目を集めている。

最初に声を上げたのは米労働総同盟産別会議(AFL-CIO)のリチャード・トラムカ議長だった。2020年に民主党支持に何百万ドルも費やした組合のトラムカは、5月の書簡で「組織的な強制労働の説得力がある証拠」を理由に、新疆から輸入される太陽光発電製品をブロックするようホワイトハウスに求めた。数週間後、8人の共和党上院議員のグループはKeep China Out of Solar Energy Act(太陽光エネルギー中国排除法案)を発表した。「共産主義中国で製造または組み立てられた」太陽電池パネル購入に連邦資金を使用することを禁止するものだ。

議会民主党もその動きに参加している。ジェフ・マークレー(民主、オレゴン州)上院議員は3月に太陽エネルギー工業会に対して、特定の新疆製品を禁止することで「気づかないうちに外国での人権侵害に貢献することから消費者を保護する」よう強く求めた。全国貿易協会は1,000以上の太陽光発電企業の代表として、会員に「6月までに新疆地区から完全に撤退」するよう求めたと述べて答えた。

米国の太陽光発電を新疆のジェノサイドから遠ざけようという広範な取り組みは、バイデン政権の「クリーンエネルギー経済」が直面する課題を明らかにしている。ホワイトハウスの気候担当高官は、太陽光発電分野がとりわけ追いやられた化石燃料労働者に対して「組合の高賃金の仕事」を提供することができると豪語していた。だが中国が業界を完全に支配しているということは、米国のほとんどの太陽光発電関連業務は単に中国製の部品を設置することを伴うことを意味する。バイデン政権の環境保護庁の長官は、最近の承認公聴会で「我々が設置したいと考えるほとんどの部品は中国製だ」と述べてその力関係を認めた

ハートランド・インスティテュートのジェームズ・テイラー所長は、中国製品なしにバイデンが提案している規模で風力・太陽光発電を増やすことは「全く不可能」であると本紙に述べた。またバイデンが約束した「高賃金の仕事」は「米国ではできない」と主張した。

「従来型の発電所はこの米国に建設される。この米国で生産される材料で建設される。この米国で運営され維持される。そして永久にこの米国で従業員を雇う。比較すると、風力・太陽光の材料はおもに海外で採掘・生産され、設備はおもに海外で製造され、創出される雇用は・・・どちかかといえば一時的なものだ」とテイラーは述べた。

ホワイトハウスはコメントの要求に回答しなかった。

新疆の別名である東トルキスタンの亡命政府のサリー・フーダイヤ―(Salih Hudayar)首相は、2016年以前には新疆では世界の太陽光発電製品の9パーセントにあたる原材料しか生産していなかったと述べた。中国政府はその年再教育収容所の開設に着手した。現在その数字は400パーセント増加した。ワシントンに拠点を構えるコンサルティング会社であるHorizon Advisoryの報告によると、急激な生産能力の拡大は強制労働を利用したことが原因となっている可能性が高い。
  東トルキスタンの亡命政府のサリー・フーダイヤ―(Salih Hudayar)首相

西側の企業は新疆製のポリシリコンを輸入することで「中国にへつらっている」とフーダイヤ―は述べた。「彼らはただ中国で取引できるようになるために自分たちの道徳的、倫理的、西洋の価値観を売り渡している」と彼は語った。

太陽光発電産業だけが新疆とのつながりで非難を受けている産業ではない。世界の衣服の約5分の1は、新疆で生産された綿を使用している可能性がある。その多くはウイグル人強制労働者が生産したものだ。H&Mやナイキのような西側のアパレル企業が2020年に新疆製の綿を避けるという誓約書に署名した一方で、中国の国家主義者たちが全ての腹立たしい西側企業の全国的なボイコットを支持すると一部の企業は立場を変えた。

ウイグル系米国人であるハドソン研究所のヌリー・ターケル上級研究員によると、中国政府が新疆での残虐行為を断固として認めないために―そしてそれを認める西側の国を罰することを厭わないことから―バイデン政権が苦境に立たされている。バイデンは概して中国に対する対立的なアプローチを支持しているが、気候変動の課題については独裁国家と協力することを希望している。

だがその協力は、ウイグル人を犠牲にしたものとなるべきではないとターケルは述べた。

「気候変動を意識している米国人が望んでもいないのに継続中の現代の奴隷制に加担することになるのは良心に照らして受け入れ難い」とターケルは述べた。
(訳者注:原文ではgreen energyという言葉が混在していたが、全てclean energyとして翻訳した。)

【私の論評】日米ともに太陽光発電は、エネルギー政策でも、安全保障上も下策中の下策(゚д゚)!

日本では、太陽光発電が大きな問題になっています。現在問題となっているのはメガソーラー。大規模太陽光発電です。先月8日(2021/3/8)奈良県平群町でメガソーラーの建設差し止めを求め地元住民が提訴しました。

甲子園球場およそ12個分の面積にソーラーパネルを敷き詰めるため、大規模な森林を伐採するという計画に対して、土砂災害の発生の恐れがあり、生態系破壊に繋がるなどと反対の声が上がっています。

そうして、このようなトラブルが全国各地で起きています。さらに、問題は建設時だけではありません。寿命を迎えた大量のソーラーパネルの処分問題も浮上しているのです。

20年後には80万トンものパネルが廃棄され、産業廃棄物処理場がひっ迫する可能性も懸念されています。

クリーンなイメージのソーラー発電ですが、その本質を正しく理解しないと環境だけではなく、日本経済にも悪影響を与えかねません。

先にも述べたように、先月8日、奈良県平群町で大規模太陽光発電(メガソーラー)の建設を巡り、地元住民ら約1000人が工事の差止を求め奈良地裁に提訴しました。

建設計画は、約48ヘクタールの土地(甲子園球場12個分)の森林を伐採。ソーラーパネル、約5万3000枚を敷き詰める。これににより生態系がすでに破壊されていますし、景観も悪化します。

しかも建設予定地は土砂災害警戒区域で、土砂災害の恐れがあります。住民は「自然破壊によって得られるエネルギーはクリーンとは言えない」としています。

自宅に設置するくらいなら問題は、ほとんどないでしょうが、計画性のないメガソーラー設置に対する反対運動がこれから頻発していくことになるでしょう。

ソーラーパネルは、身近なものにたとえると、テレビのディスプレイみたいなものです。中に金属の板が入っていて、ガラスがあって、鉄骨があって、それに電子部品も入り、これを支えるコンクリートがあります。メガスケールで敷き詰めるわけです。

であれば、それに対応して、公害対策や土砂崩れの対策もすべきです。でもあれだけのスケールの開発をやるのに、問題が起きないようによく確かめてやるべきだったにもかかわらず、拙速に全国各地にメガソーラを設置してしまったのです。。

現状のままだと、2040年には、ソーラーパネル破棄問題が必ず起こります。現状設置されているパネルが一斉に寿命を迎えるため、廃棄されることになりますが、その廃棄量は80万トンといわれています。当然のことながら、今のままだと処分場ひっ迫するのは目に見えています。


廃棄された太陽光パネル

資源エネルギー庁の調査によりますと、破棄を想定して費用を確保していない事業者は74パーセントといわれています。ではどうするのでしょうか。放置するのでしょうか。あるいは、不法投棄するのでしょうか。後々問題になるのは明らかです。

そもそもソーラーパネルは構成材料が多いですし、全国各地に作ったパネルの撤去作業は困難だといわれています。こういう問題が2040年以降に一斉に噴出してくるのです。

ある程度規模の大きな会社なら社会的責任も問われるので、撤去して処分するでしょう。しかし、小さな業者も多数このメガソーラ設置に参加しています。そうなると、2040年には会社によっては倒産したり、メガソーラ事業を廃止しているかもしれません。そうなると、2040年以降には、全国至るところで、メガソーラが打ち捨てられる状況になるのです。

太陽光発電は、エネルギー問題で国政の中でも重要な問題でいろいろと議論もありますが、一番重要なのは発電能力です。太陽光パネルを東京の山手線内全体に敷き詰めても原発の半分以下しか発電できないのです。

太陽光発電、要はエネルギー効率が極端に低いのです。低いからこそ、メガソーラーのように、広い面積が必要になるわけです。

しかし、石炭等は、最近イメージが悪くなり嫌われていますが、実はあれこそ究極の自然エネルギーであり、そもそもあれは化石です。恐竜がいた頃に木がいっぱい生えていて、それが化石になって大量に溜まっていて、それを採掘すればすぐに燃料になります。

ですから、石炭の火力発電所で発電すれば、メガソーラーよりも、圧倒的に少ない面積で済みます。同じ電力なら、石炭による火力発電のほうが、メガソーラのように、大量の森林を伐採しなくても、建設できます。

石炭による火力発電というと、大気汚染などのマイナスイメージを抱きがちですが、最近の火力発電所はそうではありません。石炭が燃焼するとSOx(硫黄酸化物)やNOx(窒素酸化物)、ばいじん(すすや燃えカス)が発生します。日本は高度成長時代には大気汚染が深刻な問題でしたが、過去40年以上にわたり環境対策技術や効率的な燃焼方法を開発するなど環境負荷を低減する努力を行ってきた結果、世界の石炭火力を牽引する存在となりました。

このようなことを考えると、どっちらが自然でクリーンかといえば、石炭による火力発電です。

今日、石炭火力の煙はきちんとした浄化処理を行ったうえで大気中に放出されています。つまり“黒い煙”どころか、ほとんど何が出ているか見えない状態なのです。

実はクリーンな日本の石炭による火力発電

そんなことはわかりきっているのに、FIT(固定価格買い取り)制度が状況を悪くしていまいました。

これは、再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が買い取ることを国が約束した制度です。

2012年より開始され、20年間継続されます。これは、2012年7月1日民主党政権下でスタートしています。今年の2022年で終了します。詳しくは、以下のサイトを御覧ください。


これは、日本のエネルギー自給率向上が目的で、再生可能エネルギーの普及促進を目指したものです。そのため東日本大震災の後、原発での発電が中止され、エネルギー問題をどうすべきかという問題に直面し、一躍メガソーラなどが脚光を浴びたのです。

皆さんも、これに類した広告をご覧になったことがあると思います。「今こそソーラー発電に投資を!」「エコで儲かる!」「頭金ゼロで毎月○万円の収入」「20年にわたって国が保障してくれる!」

ただし、エネルギー効率が極端に低いソーラー発電で儲かる人はほんの一部です。たとえば、かなり大きな家を持っている人や、それから地主です。こういう人たち土地を貸してメガソーラーを設置すれば儲かるでしょう。それからそこへ投資する投資家も儲かります。それからそこで建設を請け負った事業者も儲かります。しかし、どうして儲かるかというとそれを払う人がいるからです。

再生可能エネルギー(ソーラー発電など)で発電した事業者や個人は、電力会社にそれを売ります。それも、固定価格で買い取ります。そうして、電気利用者にそれを供給します。そして、我々は電気料金の再エネ賦課金で払っているのです。これは、FIT制度が今年で終了するので、すぐにでも終了させるべきです。

これは、平均的な家庭で年に2万円程度の負担になっています。現在のシステムではソーラー発電が増えると国民の負担も増えることになるのです。そうして、電気代が上がることは日本経済全体にとって損失ということになります。

本来なら、もっと厳しく入札条件などを設定し電気を安く買い取るようにすべきでした。しかし、今から考えると、政府は凄い高い値段で政府が買い取ることになってしまいました。

そもそも、太陽光発電の電気は、元々使いものにならないものです。晴れてないと使えないし、昼間しか使えません。今日は曇っているから新幹線を止めるというわけにはいきません。ですから結局、太陽光発電所を作っても火力発電所は必要なのです。

そのため、メガソーラーがあっても火力発電所が必要で現在でも稼働しているのです。これは、本当に無駄です。メガソーラー発電所の価値など本当はないにもかかわらず、本当の価値の2倍とか5倍とかで政府が買い取って、それを国民が負担しているというのが実態なのです。

メガソーラーが設置された東北地方の山(Google Earth)

そうして、私自身はトランプ氏と同じく地球温暖化には懐疑的です。地球温暖化(説)はフェイクだらけです。例えば地球温暖化説の信奉者は、台風が増えていると、強くなっていいますが、統計を見ると増えていないし、雨量も何も変わっていないです。

地球温暖化で猛暑なっているなどと言われていますが、私自身は猛暑は地球温暖化のせいだとは思っていません。地球温暖化といっても江戸時代から比べて0.7度しか上がっていないですし、30年前から比べると0.2度ぐらいです。それに太古には、温暖化で南極大陸の氷が溶けて、地表が見えていた時期もあったことが確認されています。私自身は、地球温暖化説は、説にすぎないものであると考えています。

ソーラー発電の最大の問題は、その覇権を握るのは中国だということもあります。以下に、太陽光パネルのシェアランキング(2019年)をあげておきます。
1位、ジンコソーラー(中国)
2位、JAコソーラー(中国)
3位、リナソーラー(中国)
4位、カナディアンソーラー(カナダ)→製造は中国
5位、ロンジコソーラー(中国)
なんと5位までが、中国です。世界が太陽光発電をやればやるほど中国が儲かるようにできているのです。

中国は世界一の石油輸入国、米国は世界一の産油国です。石油からソーラーへの流れが主流になれば、中国に利があるのは当然のことです。

去年、習近平国家主席は「2060年までにCO2の排出量をゼロに!再生可能エネルギーを全電力の8割に拡大する!?」と言ってます。

ソーラーパネルの中にはシリコンが入っていますが、これがパネルの心臓部です。これを中国が製造していますが、そののシェアが世界の8割を占めています。さらにその内6割がウイグルで作成されています。世界の半分は新疆ウイグル自治区で作成されているのです。

なぜそこで作っているかというと、中国は今でも石炭による火力発電で発電していて、低コストで豊富な電力を使えるからです。実は、シリコンを製造するには、豊富な電力が必要だからです。

それに、中国では環境規制があまいですから、公害対策をほとんどしなくても良いので、さらに安く作れます。さらに、ウイグル人を強制労働させて、安くしているのです。太陽光パネルのシェアランキングでほとんど中国製が占めているのはそのせいです。他の国々では、どうしてもコスト高となり、中国勢には勝てません。

このようなからくりがあるからこそ、ジョー・バイデン大統領のクリーンエネルギー経済推進は、中国の強制労働に依存することになるのです。

それに以前このブログでも指摘したとおり、温暖化は中国に利益をもたらすかもしれません。
温暖化は中国にとっての格好の隠れ蓑になるかもしれません。今の中国は昨日も述べたように失業者が2億人ともされています。そうなると、消費活動は停滞し、産業活動も停滞するはずです。にもかかわらず、中国は昨年の経済成長は2.3%であり、奇跡的なV字回復をしたことにしています。

経済が停滞した、中国では今後温暖化目標など、何もしなくても達成できる可能性が大きいです。しかし、習近平は中国の努力によって、達成したように見せかけるでしょう。

問題は、中国が温暖化目標を達成したと公表した場合、バイデン政権が中国に対して宥和的になる可能性です。それだけは、絶対避けるべきでしょう。 

さらなる脅威もあります。サイバーテロという言葉を皆さんは、ご存知だと思います。最近、ある国が他の国にサイバー攻撃で発電所を止めるってことをしています。

実際ロシアはウクライナの発電所をそれで2016年に止めて大停電にしました。イランも止められています。英国では電気事業を民営化のため民間企業に売ったのですが、それが転売されてしまい、3分の1ぐらい中国に握られてしまいました。

現在中国から指令を出すとロンドン大停電を起こせるようになっているかもしれません。昨年夏、中国とインドの軍隊が人里離れたガルワン渓谷の国境地帯で突如衝突し、石やこん棒を使った戦闘で互いに死者を出しました。

その4カ月後、約2400キロメートル以上離れたインドの2000万人都市ムンバイで大規模停電が発生。鉄道は停止し、株式市場も閉鎖。新型コロナウイルスのパンデミックが最悪の状況を迎えていたさなかに、病院までもが人工呼吸器を動かし続けるため非常用発電に切り替えなければならなくなりました。

これら2つの出来事には関連性があるとみられていましたが、新たな調査によって、その正しさが一段と裏付けられました。ムンバイの大停電は中国のサイバー攻撃だった、という見方です。

日本も現在、中国制のソーラーパネルが至るところで設置されています。この設置には、中国系の事業者が関わっているものも多いです。そうすると、ソーラー・バネルによって、中国に繋がている可能性もあります。ソーラー・パネルは安全保障上でも問題があるといえます。

日本でも、これだけ太陽光パネルに関する問題があるのですから、当然米国でも問題があるでしょう。ただ、米国は日本より国土が格段に広いので、あまり目立たないだけでしょう。しかし、実際に仔細に調べていけば多くの問題があるでしょう。

日米でも国土や環境が違うにしても、ソーラーパネルの発電効率がかなり低いこと、さらに、ソーラーパネルのシェアのほとんどが中国が占めているという事実、その背景はウイグル人に対する強制労働があることには違いありません。バイデン政権は、かつての日本の民主党のように悪乗りしてバカマネをすべきではありません。

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2021年4月7日水曜日

北京冬季五輪、不参加 「ジェノサイド」言及の米が同盟国と「共同ボイコット」検討 英やカナダも追随か 中国に「悪夢の到来」―【私の論評】北京はボイコット、東京五輪は部分的にも開催するのが、民主主義国のベストシナリオ(゚д゚)!

北京冬季五輪、不参加 「ジェノサイド」言及の米が同盟国と「共同ボイコット」検討 英やカナダも追随か 中国に「悪夢の到来」


 来年2月に開幕する北京冬季五輪だが、そこに自由主義陣営の姿はないかもしれない。米国務省のネッド・プライス報道官は6日、中国の人権侵害や新疆ウイグル自治区での「ジェノサイド(民族大量虐殺)」を批判したうえで、同盟・友好国との「共同ボイコット」も選択肢という認識を示したのだ。北京五輪への懸念は他の自由主義国でも浮上しており、米国が決断すれば大きな流れになりそうだ。

 「北京五輪は私たちが協議し続ける分野だ」「協調した取り組みが、米国の利益だけでなく、同盟・友好国の利益にもなる」

 プライス氏は、記者会見で共同ボイコットの可能性を問われ、こう語り、同盟・友好国と協議する方針を明らかにした。

 ただ、「(北京五輪は)まだしばらく先だ」と述べ、米政府として決定はしていないと説明した。

 北京五輪ボイコットについては、ホワイトハウスのジェン・サキ報道官が2月25日、「最終決定していない」と語っていたが、やや進展した印象を受ける。共和党議員からも同時期、ボイコットや開催地変更を求める声が上がっていると、ロイターが報じている。

 ジョー・バイデン大統領は3月25日に行った就任後初の公式記者会見で、今後の世界情勢を「民主主義勢力と専制主義勢力の戦い」といい、中国による人権侵害の責任を追及していくと強調していた。 米国務省が同月30日に発表した国別人権報告書では、ウイグルで「市民100万人以上が恣意(しい)的な収監や、その他の手段で身体的な自由が奪われている」などと非難し、証拠も十分にあると指摘していた。

 他の自由主義国も厳しい姿勢を示している。

 英国のドミニク・ラーブ外相は昨年10月、北京五輪をボイコットする可能性を議会で示唆した。カナダ下院は2月22日、中国の人権侵害を非難する決議を圧倒的多数で採択した。決議には、カナダ政府が開催地の変更を国際オリンピック委員会(IOC)に働き掛けるべきとの要求も盛り込まれた。

 評論家の石平氏は「米国は、ウイグルの実態を調べ上げており、ジェノサイドとの認識は変わらない。米国が、北京五輪ボイコットを決断すれば、他の自由主義諸国も追随する可能性は高い。中国にとって『悪夢の到来』といえる。習近平政権は威信をかけて五輪を成功に導こうとしている最中であり、対抗するカードは持っていない」と指摘した。

【私の論評】北京はボイコット、東京五輪は部分的にも開催するのが、民主主義国のベストシナリオ(゚д゚)!

ブリンケン米国務長官が中国政府による新疆ウイグル自治区でのイスラム教徒少数民族の弾圧を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と認定したことに続き、カナダ下院も2月22日、中国新疆ウイグル自治区で行われているイスラム教徒のウイグル族らへの人権侵害は「ジェノサイドだ」と非難する決議を採択した。

東京オリンピックより、北京オリンピックの方が開催できないか、開催しても無意味な大会になる可能性が非常に高くなってきました。ジェノサイドは、平和の祭典であるオリンピックとは真逆です。これでは本当に厳しいです。


米国は、政府がジェノサイド認定をして、カナダは、議会がジェノサイド認定をしました。この動きは当然のことながら、ヨーロッパに広がります。

すでにヨーロッパでは、100以上の団体が、「ボイコットすべき」と主張しています。ヨーロッパと北米が参加しなかったら、冬季オリンピックは成り立ちません。

参加国はロシアと中国と韓国と日本くらいしかいなくなってしまうでしょう。そうなれば、オリンピックではなく、アジア大会だと言われてしまうことになります。

この人権問題はかなり重要なことです。これに対して、日本政府がどのように対応するのかというところは興味深いです。外務省の人が意味不明な発言をしています。 「ジェノサイド条約に日本は加盟していない」と語っていました。 

外務省は几帳面で、国内法の整備を理由にしているのでしょうが、ジェノサイドなどいけないに決まっています。必要であれば、国内法を整備すればいいし、国際協定にはいろいろな抜け穴がありますから、それを利用して加盟してしまうという手もあります。

だから、国内法未整備が、ジェノサイド認定をできないことの理由にするのは相当無理があります。現在日本政府はこれをどうするか検討しているところでしょう。 

外務省の課長レベルが、「日本はジェノサイド認定しません」ということを言ってしまったのですが、それは政府の見解とは違います。これからどうすべきか、ヨーロッパの動きを見ながら検討すべきです。日本がもし認定してしまったら、北京オリンピック開催は相当難しくなるでしょう。

ジェノサイド条約(集団殺害罪の防止および処罰に関する条約)では他国に武力介入してでも集団殺害を防止すべきことになっていますが、現行の憲法ではこの行為はできません。また、この条約では実行者だけでなく扇動したものも処罰の対象ですが、これも現国内法ではできないのです。故に批准できないのでしょう。批准するには憲法の改正と刑法に扇動の罪を追加する必要があります。

       緑はジェノサイド条約調印と批准国 黒緑は加盟もしくは継承国

ただ、限定されているとはいいながら、集団的安全保障が法改正でできるようになった仁保です。ジェノサイド条約には、国連加盟国の3分の2以上、152ヵ国が批准しているといます。日本も批准すべきです。これには、様々な条項があり、いまのままでも私はできると思いますが、それでも難しいのであれば、国内法を整備すれば良いと思います。

北京オリンピックボイコットの背景はそれだけではありません。東京オリンピックの開催は正念場を迎えています。そうして、開催したとしても現在の状況だと観戦客等がいない限定された形で行われる可能性が高いです。

これに対して、一党独裁体制下の中国は、中央の意向が末端まで強制的にに届けられます。陽性者の隔離から事業所の操業停止まで、中国共産党が必要と判断すれば強制的に人権など無視した、対処が可能です。

事実中国は早い段階で感染抑制に成功したとしています。打撃を受けた経済も世界に先駆けて立て直したとしています。ただ、これらは両方とも信用できません。かりに感染抑制に成功したとしても、非人道的な方策でそれを成し遂げた可能性が高いです。さらに、昨年の3.2%の経済成長はこのブログでもそのからくりを述べたように、全くのファンタジーです。

ただ、国家プロジェクトの履行という面でみれば、非人権的な強制力を持つ中国の優位は動かない。22年の冬季五輪にも、万全の感染対策を講じて臨むつもりでしょう。

ただし、中国は、先にも述べたように、香港の統制強化、ウイグル族弾圧、南シナ海への強引な進出などで国際社会から厳しい批判を受けています。

国際秩序を揺るがしている中国が、五輪を国威発揚に利用するようなシナリオは避けるべきです。これを考えると、『コロナ克服五輪』を 東京で開く意味は大きいです。

昨年9月25日の国連総会でビデオ放映された菅首相の演説(国連ウェブTVから)

「スポーツと政治は別」という建前はありますが、パンデミック(世界的流行)を経ての最初の五輪開催地が民主主義国なのか、全体主義国中国なのか、は現行の世界秩序維持を目指す側と、これに挑戦する側の、どちらが力を持つのかという問題に直結します。

首相は2月19日の先進7カ国(G7)首脳によるテレビ会議でも、東京五輪への協力を要請、各国の支持を得ました。

五輪の実現は感染防止対策、観客制限、世論の喚起など、山積する課題に日本側が答えを出していくことが前提ですが、民主主義国陣営の後押しも、カギを握っているといえます。

北京はボイコット、東京五輪は部分的にも開催するというのが、民主主義国のベストシナリオといえるでしょう。

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2021年4月6日火曜日

台湾めぐり白熱する米中の応酬 迫る有事の危機―【私の論評】中国が台湾に侵攻しようとすれば、大陸中国国内もかなりの危険に晒される(゚д゚)!


 3月26日、台湾の防空識別圏(ADIZ)に、戦闘機10機、爆撃機4機を含む中国軍機合計20機が侵入した。昨年夏以来、ADIZへの侵入は度々あったが、今回の21機は最多となった。


 これに先立つ丁度1週間前の3月19日付のTaipei Times社説は、中国の習近平共産党総書記のレトリックから窺える中国の台湾に対する軍事的脅威の深刻さを指摘し、台湾政府は国民にそのことを明確に伝えるべきだ、と警告していた。

 この社説は、中国の台湾への軍事的侵攻の可能性はますます高まりつつあり、それに対処するため、台湾当局は一層の警戒心と危機意識を持ち対抗策を講じなければならない、と警鐘を鳴らすものとなっている。

 たしかに、最近、習近平は軍に対し、「戦争準備をおさおさ怠るな」との呼びかけを頻発しており、それが、台湾への攻撃を意図したものか否か必ずしも明白ではないが、本社説の言うように台湾侵攻を意味していると見ても必ずしも間違いではないだろう。

 本社説によれば、ここ1年の間に少なくとも4回、習近平は「いかなる時においても、戦闘行為をとれるよう万全の準備を行え」と指示したという。特に、その内の1回(昨年5月)では、全人代出席の人民解放軍司令官たちに対して、「台湾独立諸勢力(Taiwan Independence Forces)」を名指しして、これらに対し軍事闘争の準備を強化せよ、と命令したという。

 興味深い指摘は、習近平がこれらの指示を出した時、中国の人民解放軍の中には「平和ボケ(peace disease:平和病)」が広がっている、と習が繰り返し発言した点である。最近の中印国境紛争も解放軍兵士たちに戦闘経験をもたせるためではなかったか、との本社説の指摘はやや穿ち過ぎの観があるが、実際に中国軍が本格的な戦争体験をしたのは1979年の中越戦争が最後である。

 バイデン政権発足以降も、中国は台湾に対し軍事的、外交的圧力を強めており、台湾海峡上空に軍用機を出動させ、また、南シナ海など台湾海峡近辺でも軍事演習を繰り返している。最近は台湾の主要農産物であるパイナップルを禁輸するなど、経済面で新たに制裁を科した。

 中国にとって台湾はあくまでも、中国自身がいう「核心的利益」の筆頭に位置しているが、蔡英文政権が主張するように、2300万人を擁する自由で民主主義の「中華民国(台湾)」は中華人民共和国の施政下に入ったことはかつてない。蔡は、台湾は主権が確立した独立国である、との立場を堅持し、中国との間で対話を通じ、現状を維持しようとしている。

 「台湾関係法」によって台湾に防御用の兵器を売却することにコミットしている米国にとっては、バイデン政権下においても台湾の重要性が全く変わらないことは、先般のブリンケン=楊潔篪のアラスカ会談からも明白である。その際、楊潔篪は、台湾を含むいくつかの問題は純粋な「内政問題」であり、中国にとって妥協の余地は全くないと言い放った。

 台湾の軍関係者たちの中には、中国がもし台湾に対し軍事攻勢をしかけるとしたら、まずは南シナ海にある台湾の実効支配する東沙諸島や太平島のような離島ではないか、そして国際社会の反応を試そうとするのではないか、という見方をする人たちが少なくない。

 なお、最近、米上院の公聴会において、米インド太平洋軍司令官に指名されたアキリーノは「中国による台湾侵攻の脅威は深刻であり、多くの人が理解しているよりも差し迫っている」との考えを示している。将来、台湾周辺海域や台湾において、軍事的に一旦「有事」が発生し、米軍(主として在日駐留米軍)が台湾防衛のために出動するという事態になったとき、日本としても米軍の行動を支援するために自衛隊を出動させるという事態になるであろうことは、岸防衛大臣がオースティン国防長官に述べたと報道されているところである。

 蔡英文政権は、かかる米国、日本の動きを歓迎しているが、今後は日米台の三者間で如何なる事態に対し、如何に協力し合うか、という類の協議をおこなうべきことが急務の課題となるものと考えられる。

【私の論評】中国が台湾に侵攻しようとすれば、大陸中国国内もかなりの危険に晒される(゚д゚)!

かつて台湾は、大陸中国と戦ったことがあります。そうして、その戦いで、台湾自体が中国に侵入されることはありませんでした。大きなものではまずは、第一次台湾海峡危機(1954年 - 1955年)です。

国共内戦の結果、1949年に中国国民党率いる中華民国政府は中国大陸での統治権を喪失し、台湾に移転したのですが、中国西南部の山岳地帯及び東南沿岸部の島嶼一帯では中国共産党に対する軍事作戦を継続していました。

しかし1950年になると、舟山群島海南島が中国共産党の人民解放軍に奪取され、また西南部でも人民解放軍がミャンマー国境地帯に進攻したため、国民党は台湾及び福建省や浙江省沿岸の一部島嶼(金門島、大陳島、一江山島)のみを維持するに留まり、東シナ海沿岸での海上ゲリラ戦術で共産党に対抗していました。

朝鮮戦争の影響で沿岸部における侵攻作戦が休止しはじめ、中国の視線が徐々に朝鮮半島へ移転するのを機に国民党は反撃を幾度か試みたものの(南日島戦役東山島戦役)戦果が期待したものとはほど遠く大陸反攻への足がかりを築くことができませんでした。そして、朝鮮戦争が収束するにつれ共産党の視線は再び沿岸部へ向きはじめるようになりました。

この間人民解放軍はソ連から魚雷艇やジェット戦闘機を入手して現代的な軍としての体制を整えつつありましたた。

1954年5月、中国人民解放軍は海軍や空軍の支援の下大陳島及び一江山島周辺の島々を占領し、10月までに砲兵陣地と魚雷艇基地を設置した。9月3日から金門島の守備に当たっていた中華民国国軍に対し砲撃を行いました(93砲戦)。

11月14日に一江山島沖で人民解放軍の魚雷艇が国民党軍海軍の護衛駆逐艦『太平』(旧アメリカ海軍デッカー (護衛駆逐艦))を撃沈すると周辺の制海権を掌握しました。 1955年1月18日には解放軍華東軍区部隊が軍区参謀長張愛萍の指揮の下、一江山島を攻撃、陸海空の共同作戦により午後5時30分に一江山島は解放軍により占拠され、台湾軍の指揮官である王生明は手榴弾により自決しています。

一江山島を失った台湾側は付近の大陳島の防衛は困難と判断、2月8日から2月11日にかけて米海軍と中華民国海軍の共同作戦により大陳島撤退作戦が実施され、浙江省の拠点を放棄したことで事態は収束を迎えました。

  中国人民革命軍事博物館(北京)に展示されている旧日本軍の97式戦車。
  戦後の国共内戦で中国共産党に鹵獲されて使用された「功臣号」の塗装。

次は、第二次台湾海峡危機(1958年)でした。

1958年8月23日、中国人民解放軍は台湾の金門守備隊に対し砲撃を開始、44日間に50万発もの砲撃を加え、金門防衛部副司令官である吉星文趙家驤章傑などがこの砲撃で戦死しています。

この砲撃に対し台湾側は9月11日に中国との空中戦に勝利し、廈門駅を破壊するなどの反撃を行こないました。この武力衝突で米国は台湾の支持を表明、アイゼンハワー大統領は「中国はまぎれもなく台湾侵略」を企図しているとし、また中国をナチスになぞらえましたた。

9月22日にはアメリカが提供した8インチ砲により台湾は中国側への砲撃を開始、また金門への補給作戦を実施し、中国による金門の海上封鎖は失敗、台湾は金門地区の防衛に成功しました。9月29日、蔣介石は金門島の危機に際してはアメリカの支援なくとも中国と戦闘態勢に入ることを述べました。

10月中旬、ダレス国務長官は台湾を訪れ、台湾に対してアメと鞭の態度で臨むことを伝えた。つまり蔣介石が金門・馬祖島まで撤収することを条件に、援助をすると伝えました。蔣介石は10月21日からの三日間の会談で米国の提案を受け入れるが、大陸反撃を放棄しない旨も米国へ伝えました。

10月6日には中国が「人道的配慮」から金門・馬祖島の封鎖を解除し、一週間の一方的休戦を宣言し、米国との全面戦争を避けました。

翌1959年(昭和34年)9月、健康上の理由で首相を辞職した石橋湛山は回復後、私人として中華人民共和国を訪問し、9月17日周恩来首相との会談を行い、冷戦構造を打ち破る日中米ソ平和同盟を主張。

この主張はまだ国連の代表権を持たない共産党政権にとって国際社会への足がかりになるものとして魅力的であり、周はこの提案に同意。周は台湾(中華民国)に武力行使をしないと石橋に約束しました(石橋・周共同声明)。のちの日中共同声明に繋がったともいわれるこの声明および石橋の個人的ともいえる外交活動が、当面の危機を回避することに貢献しました。

先に、この砲撃に対し台湾側は1958年9月11日に中国との空中戦に勝利と掲載しましたが、意外かもしれませんが63年前の1958(昭和33)年9月24日、はじめて実戦で空対空ミサイルを射撃したのは台湾空軍でした。この空中戦は台湾では、「9・24温州湾空戦」と呼ば38機の台湾空軍F-86F「セイバー」と、53機の中国空軍MiG-17が激突する台湾海峡危機における史上最大の空中戦となりました。

台湾空軍のF-86F「セイバー」

そしてこの日、台湾空軍のF-86Fの一部には米海兵隊から供与された秘密兵器、のちにAIM-9B「サイドワインダー」と呼ばれる赤外線誘導型空対空ミサイルがはじめて搭載され、6発発射し実に4機のMiG-17を撃墜するという大戦果をあげました。

このAIM-9Bは現在のAIM-9X-2へと至るサイドワインダー・シリーズ最初の実用型ではありますが、実はこのAIM-9B、現代では想像もつかないほど性能の低いミサイルでした。

どのくらい性能が低かったのかというと、ミサイル先端部の赤外線検知器(シーカー)の感度が悪く、強い近赤外線を発するエンジンノズルしか捕捉できないため敵機の背後に遷移することが必須だった上に、照準可能な射角は中心線からわずか3.5度。さらに発射時は2G以上の旋回を行ってはならず、敵機は回避せず水平飛行していないと命中せず、射程は2kmしかありませんでした。

  最初期型のAIM-9B「サイドワインダー」(一番下)。傑作ミサイルとして
  ソ連にさえコピーされ世界中で使用された

それにしても、従来は戦闘機対戦闘機の戦闘においては、機銃掃射等でしか撃墜するしか術がなかった戦闘機をミサイルで撃ち落とすことができるようになったのですから、これは当時としては、軍事上の大イノベーションであると世界に受け止められました。

そのようなAIM-9Bがなぜ6発中4発も命中したのかというと、中国空軍側のMiG-17が背後の敵機に気付かず水平飛行していたからでした。しかし、それでもAIM-9Bが空中戦の歴史に与えた衝撃はすさまじいものがあり、世界中で機関砲軽視・空対空ミサイル重視のブームが発生し、機関砲を搭載しない戦闘機が多数開発されます。

最後は、第三次台湾海峡危機です。これは、1995年7月21日から1996年3月23日まで台湾海峡を含む中華民国(台湾)周辺海域で中華人民共和国(中国)が行った一連のミサイル実験により発生した軍事的危機。1950-60年代の危機と区別して「台湾海峡ミサイル危機」とも言います。

1995年半ばから後半にかけて発射された最初のミサイルは、中国の外交政策と対決すると予測されていた李登輝政権下の台湾政府に強力なシグナルを送ろうとしたものと見られた。第2波のミサイルは1996年初めに発射され、1996年中華民国総統選挙への準備段階にあった台湾に対する脅迫の意図があると見られました(ただし非公式の事前通告があったことが後に判明しています)。

これに対し、米軍はベトナム戦争以来最大級の軍事力を動員して反応しました。1996年3月にクリントン大統領はこの地域に向けて艦艇の増強を命じました。当時この地域には、空母ニミッツインディペンデンス(「独立」の意)を中心とした2つの空母打撃群がいました。そしてニミッツ打撃群は台湾海峡を通過しました。

この危機に対して、中国の首脳部は1996年に、米軍が台湾の援助に来航することを阻止できないと認めざるを得ませんでした。そうして危機はさりました。

当時の、中国軍は米軍の空母打撃群に対して対抗する術はなく、このときの悔しさから、後に空母建造や強力な空軍、ミサイルの開発へとつながったとされています。

第三次台湾危機においては、米空母打撃群がその終息の決めてになりましたが、第二次台湾海峡危機においては、台湾軍も相当活躍しています。そうして、後の航空機の戦術を変えた「サイドワインダー」のように、現在の台湾軍も隠し玉を持っています。それは以前のこのブログにも掲載したことがあります。そのブログのリンクを以下に掲載します。
中国爆撃機など20機、台湾の防空識別圏進入 米が英に「一帯一路」対抗策を提案 識者「中国軍が強行上陸の可能性も」―【私の論評】中国が台湾に侵攻すれば、台湾は三峡ダムをミサイルで破壊し報復する(゚д゚)!
台湾の防空識別圏に飛来したH6K爆撃機の同型機(上)。下は台湾のF-16戦闘機

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
台湾は、長年かけて自主開発した中距離巡航ミサイル「雲峰」の量産を2019年から開始しています。アナリストによると、雲峰の飛行距離は2000キロで、台湾南部の高雄から北京を納める距離です。
消息筋によると、現状でも、台湾側は中近距離ミサイルによって、中国本土の三峡ダムを破壊することを含め、抑止体制を十分に整え終わっているとされています。
「雲峰」の射程距離は2000キロというのですから、北京は無論のこと三峡ダムをはじめとして、中国のかなりの部分をカバーしています。上の地図をみてもわかるように、中国の2/3
程度をカバーしています。

台湾国営NCSISTは4月15日に雲峰 (Yun Feng) LACMの発射試験を行っています。雲峰はラムジェット推進でマッハ3で飛翔し、射程は1,500~2,000kmと言われている。

しかも、これは配備計画ではなく、すでに2019年から量産体制に入っているというのですから、現在でも少なくとも数十発、もしかすると数百発を配備しているかもしれません。これは、中国にとっては脅威でしょう。しかも、それが台湾独自によって開発されたものというのですから、これも中国にとっては驚きだったでしょう。

数十発のミサイルが、三峡ダムに打ち込まれた場合、これを中国が阻止するのはほとんど不可能です。三峡ダムが破壊された場合、中国の国土の4/3が浸水するといわれており、そうなってしまえば、中国は台湾侵攻どころではなくなります。

当然のことながら、このミサイルは三峡ダムだけではなく、中国のありとあらゆる軍事基地を狙っているでしょう。空軍基地は無論のこと、軍港や、あるいは原発、その他インフラなど、爆撃すれば効果的なところはいくらでもあります。

さらに、台湾は雲峰のほかにも長距離ミサイルを開発中です。さらに、台湾は、ミサイルだけではなく、最新鋭の通常型潜水艦を建造中であり、これと最新の対潜哨戒能力をつければ台湾の守りは完璧になります。

特に潜水艦の建造に成功すれば、台湾は今後数十年は中国に侵攻されることはないと米国の専門家は指摘しています。これについては、このブログにも掲載していますので、興味のある方は是非ご覧になってください。ただし、これは建造を開始したのが、昨年ですから、完成するのは数年後のことになります。

現状でも、中国が台湾に侵攻しようとした場合、台湾単独で中国と戦ったとしても、中国も無傷ですむということはなく、大きな犠牲が出るということです。

台湾に日米やQUADなどが加勢すれば、ほとんど不可能でしょう。たとえ侵攻しても、このブログでも何度か述べているように、中国は台湾に上陸した陸上部隊を維持することは不可能です。

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2021年4月5日月曜日

「非同盟」から「西側」へ 拡大するインドの役割―【私の論評】インドは経済発展し、いずれ先進国に仲間入りするが、中国は先進国になれないまま没落する(゚д゚)!

「非同盟」から「西側」へ 拡大するインドの役割

岡崎研究所

 第二次世界大戦後、インドは自主独立、非同盟を外交の柱にしてきたが、近年、インドは、西側諸国と外交、安全保障上の連携を深めるようになった。軍事的には、既に、数年前から、海軍の合同軍事演習として、「マラバール作戦」を展開し、インドと米国の他、日本、豪州も加わって多国間の合同軍事演習となっている。インドは、人口数から言って、世界最大の民主主主義国であり、約8億人の有権者がいる。その意味では、立派は「西側」の国家である。そして、モディ政権は、「自由で開かれたインド太平洋」地域に、大きくコミットしている。


 米国でバイデン政権が発足して約2か月、3月12日、日米豪印の「クワッド」の初めての首脳会議がオンラインで開催され、4か国間の協力の重要性が改めて浮き彫りにされた。会議ではワクチン、気候変動、最先端技術について、それぞれ作業部会を設置することが合意され ている。ワクチンについては、東南アジアを中心にアジア諸国に新型コロナワクチン10億回分を2022年までに提供することとされた。ワクチンではインドも重要な役割を占める。インドはワクチン大国で、インドの製薬会社「セラム・インスティテュート・オブ・インディア」 がアストラゼネカとノババックスのワクチンを大量生産する契約を結んでいる。中国のワクチン外交が云々されているが、インドも中国に負けないワクチン外交を展開できる。ただしインドのワクチン外交は「クワッド」の枠内で行われることとなる。

 インドの第二次世界大戦後の独立直後の外交の柱は非同盟であった。ネルーが1954年に発表したもので、冷戦のさなかにあって、米国、ソ連 のいずれの陣営にも属さないことを表明した。 非同盟政策はいわば冷戦の産物とも言えうるものであり、ソ連の崩壊とともにその意味を失っている。

 インドが西側諸国との関係を重視するようになった背景には中国の台頭がある。3月12 日の「クワッド」首脳会議の後に発表された声明では、4か国の首脳が「東シナ海及び南シナ海における、国連海洋法条約を含む国際法をはじめとするルールに基づく海洋秩序への挑戦に対応するために連携することで一致した」と述べられている。中国を名指しはして いないが、中国を念頭に置いての見解であることは明らかである。クワッドの首脳会談後には、バイデン政権で国防長官に就任したオースティン長官が、日本と韓国の後、インドを訪問し、米印国防大臣会談がニューデリーで行われた。ここでも、インドのシン国防大臣とオースティン国防長官との間で、平和で安定的なインド太平洋地域の為に、両国の連携が欠かせないことが確認された。

 米印関係の変遷の中では、核の問題が重要な役割を果たしてきた。1974年にインドが「平和的核爆発」と称して核実験を行うと、米国は強い懸念を表明し、非核国における濃縮と再処理を禁止する方針を明らかにした。その後、2007年7月、米印両国は、原子力協力協定を結び、インドは民生用原子力施設にIAEA(国際原子力機関)の査察を受け入れることに合意し、米国は原子力関連の技術と燃料の供給についてインドに協力することを表明している。米国が、インドの軍事用原子力施設にはIAEAの査察が行われないことを認めたことは、米国がインドをNPT上の核保有国としては認めないが、事実上の核兵器国として認めたことを意味すると考えてよい。

 日本にとって、インドが西側諸国との関係を強化することは歓迎すべきものである。自由で開かれたインド・太平洋は、日本にとって特に重要である。日本とインドはそのようなインド・太平洋の確保、維持のために積極的に協力して いくこととなるだろう。

 今夏、英国で開催される予定のG7(西側主要先進諸国)サミットでは、日米英仏独伊加(プラスEU)の7か国の他、豪州、韓国と並びインドが招聘されている。西側の一員として、インドの役割は大きくなって行くだろう。

【私の論評】インドは経済発展し、いずれ先進国に仲間入りするが、中国は先進国になれないまま没落する(゚д゚)!

日本や他の先進国が、インドとの関係を強化するのは理にかなっています。まずは、経済的にみてもそうです。中国は、これからも経済成長していくと見ている人もいるようですが、その見方は間違いです。中国はこれから、中所得国の罠にはまり、以降は経済発展しません。一方インドはこれから経済成長をし、現在の3倍くらいの規模になる可能性もあります。

なぜそのようなことがいえるかといえば、民主主義指数とGDPとの関係をみていけばそれは明白だからです。それについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米中「新冷戦」が始まった…孤立した中国が「やがて没落する」と言える理由―【私の論評】中国政府の発表する昨年のGDP2.3%成長はファンタジー、絶対に信じてはならない(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、高橋洋一氏はこの記事で以下のように語っています。
世界銀行のデータにより2000年以降20年間の一人当たりGDPの平均を算出し、上の民主主義指数を組み合わせてみると、面白い。中所得国の罠がきちんとデータにでている。

中所得国の罠とは、様々な国で経済発展をするのですが、10000(日本円では100万円)ドル前後から伸びなくなったり、一旦10000万ドルを超えて成長しても、それ以下に押し戻されるというのがほとんどということです。

その罠の正体は、結局経済を伸ばそうとしても、多くの国々が民主化、政治と経済の分離、法治国家化をしないことです。先進国といわれる国々では、これらを実施して、10000ドルの壁を超えて、今日先進国になっているのです。

日本を訪れたもデイ印首相(手前)と安倍首相(当時)

そうして、10000万ドルの壁を超えるのは、非常に難しく、産油国などの一部を除いて、今日この壁を超えて先進国になったのは、日本だけです。逆に10000ドルの壁を超えて先進国になっていたものが、押し返されて10000ドル以下になり、発展途上国になったのはアルゼンチンだけです。

高橋洋一氏は、最近同じグラフをIMF(国際通貨基金)のデータを使って作成しています。IMFデータにより2000年以降20年間の一人当たりGDPの平均を算出し、民主主義指数を組み合わせています。以下にそのグラフを掲載します。


高橋洋一氏は、このグラフに関して以下のように説明しています。
民主主義指数が6程度以下の国・地域は、一人当たりGDPは1万ドルにほとんど達しない。例外は産油国と小国である。民主主義指数6を超えると、一人当たりGDPは民主主義度に応じて伸びる。一人当たりGDPが1万ドル超の国で、一人当たりGDPと民主主義指数の相関係数は0.68と高い。

中所得国の罠をクリアするためには、民主主義の度合を高めないといけない。と同時に、各種の経済構造の転換が必要だ。その一例として、国有企業改革や対外取引自由化などが必要だが、本コラムで再三強調してきたとおり、一党独裁の共産主義国の中国はそれらができない。

共産主義国家では、資本主義国家とは異なり生産手段の国有が国家運営の大原則であるからだ。なお、上に書いたようにTPPはそのような要素を盛り込んでいる。

上の一つの図からいろいろなことがわかる。

中国の一人当たりGDPはようやく1万ドル程度になったので、これからどうなるか。中国の民主主義指数は2.27なので、6にはほど遠く、今の程度のGDPを20年間も維持できる確率はかなり低い。

となると、中国はこれから経済停滞に陥る可能性がでてくる。
インドは現段階では一人当たり6000ドル程度だが、民主主義国なので、今後経済発展が期待できる。民主主義6.61なので、一人当たりGDPは今の3倍程度まで上昇しても不思議ではない。
今後経済的に中国は衰退し、インドが発展していくのは明らかです。インドの2020年10~12月期(2020年度第3四半期)の経済成長率は、前年同期比0.4%となり、3四半期ぶりにプラス成長に回復した。10~12月期は、タイやインドネシアなどでは経済成長率がマイナスであり、これと比べれば、インド経済はV字型回復を遂げたと言ってよく、成長力の強さが示されました。

2020年3月25日から5月31日までインド全土で実施されたロックダウンによって、政府や企業の活動がほぼ機能麻痺状態に陥り、4~6月期の経済成長率は大幅に落ち込んだが、7~9月期以降は、行動規制が緩和され経済活動が正常化に向かったことを反映し、景気が回復しました。この数字は信頼できます。

一方中国は昨年は、GDPが2.3%成長というのは、全く信用できないことは、以前のこのブログでも掲載しました。

民主化、政治と経済の分離、法治国家化をするとなぜ経済が伸びるのかといえば、これを実施すれば、星の数ほどの中間層が生まれ、これらの中間層が、自由に社会・経済を実行するからです。

そうして、彼らが自由に社会・経済活動をする過程において、国中のありとあらゆるところが、イノベーションが起こるからです。そうして、社会全体が発展し、社会の遅れた部分が一掃され、急激に経済発展するのです。

一方、中国などでは、民主化、政治と経済の分離、法治国家をしてしまえば、中国共産党は統治の正当性を失い崩壊して、新しい体制ができあがることになります。それは、中国共産党が拒むでしょうから、中国は経済発展できないのです。

中国共産党が、大金をばらまき、号令をかけ、共産党主導でイノベーションを行えば、たしかに資金を投下された部分では、イノベーションが起こるでしょうが、それはいわば、いくかの点におけるイノベーションになるか、せいぜい直線状にしかおこらず、社会の遅れた部分の大部分が温存され、それがネックとなり経済は発展しないのです。これが、中所得国の罠の本質です。

中国は先進国になれないまま没落していく運命

そうして、その社会の遅れを政府だけでは改善・改革できないのです。やはり多数の中間層を輩出させ、それらが自由に社会のあらゆるところで、イノベーションを起こすからこそ、社会が発展し、結果として経済も発展するのです。

中国では昨年、「一国二制度」をとりやめ、香港を中国に併合しました。しかし、中国がこれからも経済発展したければ、大陸中国こそ、かつての香港のようになるべきだったのです。

一気にそうしなくても良いですから、時間をかけて少しずつでも行い、大陸中国が香港のようになっていけば、中国はこれからも経済発展できたでしょうが、中国は逆をやってしまいました。社会も経済も発展しないまま、中国は先進国になれずに没落していくことでしょう。

インドはこれからも社会変革を行い、経済が発展していけば、いずれ先進国の仲間入りができるでしょう。

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2021年4月4日日曜日

ハンター・バイデン、NYP暴露の中心となったMacBookが「確かに」自分のものである可能性あるとついに認める―【私の論評】TIME誌とハンター・バイデンの暴露は、いずれも司法取引の一環か(゚д゚)!

ハンター・バイデン、NYP暴露の中心となったMacBookが「確かに」自分のものである可能性あるとついに認める

<引用元:ニューヨーク・ポスト 2021.4.2

ハンター・バイデンは、昨年本紙が暴露した衝撃的ニュースの中心となったノートパソコンが「確かに」自分のものである可能性があると白状した。2日のインタビューで明かしたものだ。

CBSの「Sunday Morning」とのインタビューで、バイデン大統領の渦中の息子は、2019年4月にデラウェア州のコンピューター修理店持ち込まれたMacBook Proが実際に自分のものであるかどうかを「イエスかノー」であからさまに質問された。


「私は答えが何なのかよく分かりません。それが正直な答えです」「見当もつきません」とハンター・バイデンは2日に公開されたインタビューの抜粋の中で述べた。

だが自分のものである可能性があるかどうかと質問されると、「確かに」と答えた。

「確かに、私から盗まれたノートパソコンがそこにあった可能性はあります。私がハッキングされたものである可能性があり、それがロシアの情報機関だった可能性があります。私から盗まれた可能性があります」と彼は続けた。

ハンター・バイデンは、「Beautiful Things」というSimon & Schuster系のGallery Booksから4月6に新たに出版される回顧録の宣伝で珍しくメディアに登場した。

白熱した2020年大統領選挙の最終盤に、本紙はハンター・バイデンのノートパソコンにあったメールの山を暴露し、腐敗とつながりのあるウクライナの天然ガス会社であるブリスマを含め、当時の大統領候補だった父親と息子の外国でのビジネス・ベンチャーとのつながりに疑問が提起された。

メールから、バイデンの息子が当時副大統領だった父親にブリスマの役員を紹介したことが発覚した。その後1年足らず後にバイデン副大統領は確かに、同社を捜査していた検察官を解任するようウクライナ高官に圧力を掛けた。

決して明かされることのなかった会議について、ブリスマの相談役であるVadym Pozharskyiが2015年4月17日にハンターに送った感謝のメールの中で言及されている。

水濡れで損傷したMacBook Pro―ボー・バイデン財団のステッカーが貼ってあった―は、2019年4月にデラウェア州のコンピューターショップに持ち込まれたが、持ち込んだ人物は引き取りに現れなかった。

それはその年の12月にFBIによって押収された。

ウクライナとのつながりに加えて、コンピューター上の他のメールからハンターが中国最大の民間エネルギー企業との取引の可能性について話していたことが分かった。

ある取引はバイデン息子の関心を相当引いたようであり、「私と家族にとって興味深い」と呼んでいた。

コンピューターには非常に個人的な写真と録画も含まれており、露骨な12分間の動画には、(過去に薬物依存で苦労していた)ハンターがコカインを吸引して身元不明の女性とセックスに及んだ様子があったようだ。

さらに上院共和党は、9月にハンター・バイデンの海外での取引に対する調査結果を公開した。彼らは、オバマ政権が当時の副大統領の息子がエネルギー産業で何の経験もないのにブリスマの役員に加わった際に「明白な警告サイン」を無視したと述べた。

腐敗していたと報じられるエネルギー企業―「月に5万ドルも」支払っていた―でのハンター・バイデンの立場は、父親がウクライナに対する米国の政策に関与していたことから差し迫った利益相反の可能性を生み出した、と報告書には書かれていた。

バイデン大統領と息子はどちらも不正を否定し続けている。

(以下略)

【私の論評】TIME誌とハンター・バイデンの暴露は、いずれも司法取引の一環か(゚д゚)!

バイデンの息子ハンター・バイデン氏の自伝が発売されるという発表があったのは、かれこれ2ヶ月くらい前でした。

当時は米アマゾンの中国系ランキングで1位になったことも話題となりました。


バイデン親子

父親である、ジョー・バイデン氏が権力の座についた直後の出版であることから、アルコール中毒やコカイン中毒になったことくらいは無論掲載するものの、そこから家族の愛情や自らの使命感から立ち直るといういような美談を演出した書籍になるのかと、想像していましたが、どうもそうでもないようです。

ただ、ハンター・バイデンの実の母親と、姉が交通事故でなくなったという悲劇に見舞われたことは、掲載されていると思います。

既に漏れ伝わってくる前評判を聞く限り、当初私が想像していた内容とは随分違うようです。

アル中、コカイン中毒は隠し仰せないので掲載されているのは、当然のことながら、義理姉との不倫、不特定多数の人との性生活、裏社会との繋がり、さらにはウクライナからの賄賂や中国との疑惑など、今まで話題になったハンターバイデンの疑惑を全て網羅する形になっているようで、しかも「その噂は事実であった」と暴露した内容のようです。以下にこの書籍の表紙の写真を掲載します。

この表紙から察するに「父親との思い出」などの美談も掲載されているのでしょうが、それがメインではないようです。

これについては、少し前にあったTIME誌の「不正選挙疑惑」暴露と同質のものを感じました。

TIME誌は、米大統領選投票にかかわる不正行為について、自己肯定をしてはいるものの、「噂とされていた事は全部事実でした」と結果として吐露した形になっていました。

カバール(いわゆるディープステート)等が、スウィングステート(米国合衆国大統領選挙の勝者総取り方式において、共和党・民主党の支持率が拮抗し選挙の度に勝利政党が変動する州を指す言葉)の議会の同意なしに州政府が有権者法を変更するように違法に働きかけ、それに成功したとしています。

本来いずれの州においても、選挙法を変えるには合法的には議会の同意が必要ですが、この手続をせずに州政府の独断でこれを変えたスウィングステートがあったのです。

このあたりは、他のメディアでも詳細に解説しているものがあるので、詳細はそちらにあたっていただきたいです。

私には、このタイム誌による、不正選挙の暴露と、ハンターバイデンの自伝による暴露は非常に似たところがあるように感じられます。

ハンターバイデンは、書籍プロモーションのためもあり、最近はテレビのインタビューも受けているのですが、そこでも衝撃的な話をしています。

米大統領選前話題になった「ハンター氏のラップトップ」ですが、あのPCは冒頭の記事にもある通り概ね自分のものと認めています。

ラップトップ本体については「分からない」としたものの、データについてはどうやら彼のものとみて間違いないようです。

あの衝撃的なデータの数々は「自分の物」と認めた衝撃は大きいです。

米大統領選前から民主党は、ハンター関連の疑惑を一切封殺する動きを見せていて、主要メディアも同様に封殺していました。TwitterやFaceBookですら、そのようなコメントを検閲し、封殺する動きをしていました。

にもかかわらず、わざわざ今になって、どうしてここまでの暴露をするのでしょうか。過去の民主党の体質を考えれば、クリントンの違法なメールの件もあったように、知らぬ存ぜずを突き通すのが彼らのやり方に見えたのですが、本当に不思議です。

ただ、バイデン就任の時から様々な噂があったように、この政権が実質的にな権力を掌握していないなら話は別です。

この憶測が事実であれば、これも予定調和的な動きなのかもしれません。

また今回のハンターバイデンの行動で思い出されるのが、以下の動画です。これはホワイトハウス公式動画なのですが、1時間16分30秒くらいからはっきり聞こえる奇妙な声が入っています。




この声は「この時を待っていた。司法取引に応じる」と言っていて、発したのはハンター・バイデンではないかとも噂されていました。

もうすぐ発売されるハンターの自叙伝及びそれに関連する行動を見ている限り、やはりあの声はハンターだったのではないかと思ってしまいます。

そして、今目の前で起きている自伝による告白なども「司法取引の一貫」なのではないかと思っています。そうして、Time誌の暴露自体も司法取引の一種だったのではないかと思えてきます。

というか、先に紹介したあの動画(司法取引するという声が入っていた動画)が公開されたのは、1月22日。今から2ヶ月半前ですが、不思議なことにこの動画は公開され続けています。

2ヶ月もあれば、変な声を無くした形でアップし直す時間も充分あるし、ましてや非公開にすることだってできます。なぜそうしないのでしょうか。

しかも、ホワイトハウスといえば、国家の中枢機関にもかかわらず、なぜしないのでしょう。

ちなみに、背景にトランプ元大統領らしき人が映り込んでしまう動画(ホワイトハウス公式)も、まだ公開し続けています。不思議です。


しかし先ほど申し上げた通り、この政権が実質的にな権力を掌握していないなら話は別です。バイデンは自らの意図で、ホワイトハウス公式動画を削除することもできない状況にあるということなのかもしれません。実質的に権力を掌握している何者かが、このようにして、バイデンに因果を含めているとも受け取れます。

そう言えば、4月9日にアメリカで開催される予定となっていた日米首脳会談の日程変更になりましたね。当初は9日の会談日程を検討していたのすが、1週間先送りしました。

新型コロナウイルス対応が影響したとみられますが、サキ報道官は詳細には言及しませんでした。

これも普通であれば、あり得ないことなのですが、これがバイデン政権の現実です。1周間先送りしなければならない切実な理由があるのでしょう。

菅総理がワシントンD.C.入りできるのかどうか、入ってみたらどんなことになっていたのか、注目です。

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2021年4月3日土曜日

【日本の解き方】解散総選挙はいつあるのか 重箱の隅を突く野党の不甲斐なさ、自民党に主戦論引き起こす―【私の論評】菅政権の課題、新型コロナ危機にある日本経済と社会の立て直しと、衆議院解散と総選挙での勝利の達成は目前に迫ってきた(゚д゚)!

 【日本の解き方】解散総選挙はいつあるのか 重箱の隅を突く野党の不甲斐なさ、自民党に主戦論引き起こす


菅首相

 野党側から内閣不信任決議案の提出を検討するという話が出ていることを受けて、自民党の二階俊博幹事長が「直ちに衆院解散で立ち向かうべきだと首相に進言したい」と発言した。現状で衆院解散のタイミングについて何が考えられるのか。

 衆院の任期は残り約半年だ。任期満了までいろいろな解散・総選挙のパターンがあるが、(1)4月訪米・重要法案成立後(2)7月4日の東京都議選と同日選(3)9月20日の自民党総裁選後(4)10月21日の任期満了-が一応考えられる。

 当然ながら衆院解散は菅義偉首相の専権事項だ。3月26日、2021年度予算が参院本会議で可決後、記者団から「いつ解散総選挙があってもおかしくないのでは」と問われると、菅首相は「いつあってもおかしくないとは私は思っておりません。コロナ対策、やるべきことをしっかりやる必要があると思っています」と答えた。ただし、解散はみんなが思うときにはなく、思わないときにやるという政治格言もあるので、さっぱり分からないというのが事実だ。

 もっとも、自民党の衆院議員からみれば、10月の任期満了近くの追い込まれ解散にはしたくない。麻生太郎政権時に、追い込まれ解散となって、09年に政権を失ったトラウマがあるからだ。

 そこで、野党から内閣不信任決議案が出るというのは、追い込まれ解散にならないという「渡りに船」の話なのだろう。

 しかも、内閣不信案の件は、立憲民主党が言い出したものが、その理由として今国会の政府提出法案にミスが相次いでいることに関し、行政に対する信頼が失われることを掲げていたのは笑止千万だった。

 本コラムでも書いたが、法案の単純ミスは人のやることなので、やむを得ないことだ。ちなみに、米国の官報を見てみたら、修正は山のように出ていた。それに比べると、日本の単純ミスは少ないものだ。なにより単純ミスなので、法案解釈の際に支障にもならず、人命に関わるような重大事案ではない。

 与野党国会議員もマスコミも法案をつぶさに読んだのか不明だが、何をいまさら問題にするのか分からない。一部野党は、週刊誌記事を国会質問の材料にしてきたが、そのネタも尽きてきたので、法案の単純ミスという重箱の隅を突く愚挙に出てきたのかもしれない。

 こうした一部野党の不甲斐なさを感じ取った二階幹事長が、それなら解散で受けて立つという言い方になったのだろう。

 NHKによれば、3月の菅政権の内閣支持率は40%、自民党支持率は35・6%なので、過去の政権から見て決して悪い数字ではない。今解散総選挙をしても与党の負けはないだろう。

 なぜ支持率が下がらないのか、「反スガ」は不思議だろうが、本コラムで書いたように半年で菅政権はコロナ対策と経済の両立も成し遂げるなど、結果を出している。それも、自民党内で、内閣不信任なら解散という主戦論を引き起こしている理由だろう。 (内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】菅政権の課題、新型コロナ危機にあった日本の立て直しと、衆議院解散と総選挙での勝利の達成は目前に迫ってきた(゚д゚)!

このうち一つの新型コロナ対策は、感染も経済も立派にやり遂げています。これは先日もこのブログに掲載しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
衆議院任期まであと半年…菅政権の支持率が「悪くない」水準にある、シンプルな理由―【私の論評】人口が1億人超という括りでも、先進国という括りでも、日本が感染症・経済対策でトップとは疑いようのない事実(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より二つのグラフを以下に再掲します。



日本の感染症対策は、世界トップクラスです。G7(フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダの7つの主要な先進国)ではトップであり、私が調べた限りでは、人口1億人以上の国でもトップです。

経済対策においては、様々な指標がありますが、失業率がもっともシンプルな比較法だと思います。なぜなら、他の指標が悪かったにしても、失業率が低ければ、政府による経済対策はうまく機能しているとみられているからです。その意味では経済指標では、失業率か最も重要です。

その失業率においても、日本は上の表でしめさせているように、1月の対前年比では、+0.5となっています。

これは、感染対策でも、経済対策でも、菅内閣のパフォーマンスはかなり良いということを示しています。

無論、感染症対策でも、経済対策でも、完璧とはいいませんし、細かなことでは、「ああすべき」「こうすべき」ということはあっても、大局的に成功していることの証です。

本来「細かな」重箱の隅をつつくような議論は、政府に対して行うべき筋のものではありません。それは、都道府県、市町村などの各自治体に向けられるべきものです。政府ができることは、お金を出すことであり、それに関しては菅政権は着実に実行しています。その結果が、低い失業率です。

現状ではおそらくコロナ第4波は来るでしょうが、マスコミや野党が大騒ぎしているレベルになることはないでしょう。日本は世界の波と比べたらさざ波レベルです。医療崩壊が起こりそうになった真相は、コロナ対策予算は世界トップクラスなのに病床数不足は地方自治体が公立病院に手当しなかったのが原因です。仮に、第4波が来ても病床を増やして医療崩壊しなければ全く問題はありません。

1年前を振り返ると、「東京の3月25日の感染者数は212。この数は、偶然にも、3月11日時点のニューヨーク州の感染者数と全く同じ。ニューヨーク州はそれからわずか2週間で、その数が3万2000を超えた」等と、ニューヨーク在住の著名邦人が、それも複数の邦人が「したり顔」で語っていましたし、一部の日本在住の著名米国人がそう語っていました。結局そのようなことは起こらず、日本も東京も米国に比較すれば、さざ波程度の感染に終始しました。

米国には、CDCという感染専門組織があって、どのような感染症にも米国は完璧に対応できるなどと、日本国内の感染症専門家も語っていましたが、そうではないことが、白日のもとにさらされました。

1年前のツイートから

米国では、減少を続けていた新型コロナウイルスの新規感染者が再び増加傾向となり、警戒感が広がっています。

CDC=疾病対策センターによりますと、直近7日間平均の1日あたりの感染者数は、1月上旬のおよそ25万人から3月14日にはおよそ5万3000人まで減少していました。しかし、再び増加傾向となっていて、29日にはおよそ6万1000人となっています。

特にニューヨーク州で増加が著しく、ニューヨークタイムズ紙の集計によると、直近7日間で10万人あたりの一日の新規感染者数が全米で最多となっています。ニューヨーク州では、レストランの店内飲食の人数制限が2月から段階的に緩和され、現在は定員の50%で、外食する人も増えています。

一方、ワクチン接種は加速していて、30日までに少なくとも1回接種した人が9604万人で人口の28.9%、必要な回数を完了した人は5342万人、16.1%となっています。

米国の人口は、3.282億人 (2019年)であり、日本は人口が1.263億人 (2019年)ですが、それにしても米国の感染は桁が違います。

そもそも、これだけパフォーマンスの良い菅内閣に対して「内閣不信任案」を突きつけるような動きを野党がしていること自体が驚きです。

それに加えて、立憲民主党の枝野氏は、最近考えられないような戯言を語っています。

倒閣しか頭にない?立憲民主党枝野代表

立憲民主党の枝野幸男代表は2日午後の記者会見で、菅義偉内閣の新型コロナウイルス対応を批判し、「一刻も早く退陣していただきたい」と述べました。ただ、衆院選を実施できる状況にはないとして、現行の衆院勢力のままで立民を少数与党とする「枝野内閣」を暫定的に組閣し、秋までに行われる次期衆院選までの間の危機管理にあたることが望ましいとの持論を打ち上げました。

枝野氏は、内閣不信任決議案の提出の可能性を問われ「明日にでも出したいような、(菅内閣を)信任できる状況ではない。ただ、今は衆院解散・総選挙による政治空白を作れる状況でないのははっきりしている」と強調しました。

その上で、日本と同じ議院内閣制の国では、危機の際に政府が機能しない場合に少数政党が選挙管理内閣(次期選挙までの暫定内閣)を担う例があると説明。「私の下の内閣で当面の危機管理と選挙管理を行わせていただくべきだ」と述べました。

菅政権にスタート時点から、直面する課題が二つありました。一つは、新型コロナ危機にある日本経済と社会の立て直しです。もう一つは、早期の衆議院解散と総選挙での勝利です。これは、すでに見通しがたったと思います。

この状況だと、一つ目の課題コロナ危機の日本経済と社会の立て直しは成功し、もう一つの衆院解散総選挙の勝利も確実になりそうです。そうなれば、菅政権が長期政権になる可能性もでてきます。

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