2022年1月10日月曜日

「国の借金」は子供に回るのか 積極財政でも健全化になる “財務省史観”は国民に有害だ―【私の論評】将来世代が、給付金を未来から現在にタイムマシンで送ることができれば、それは将来世代のつけ(゚д゚)!

日本の解き方


財務省は「国の借金」を強調するが…

 18歳以下への10万円の給付や予算規模が107兆円と過去最大になったことなどが報じられるたびに、「子供たちの将来にツケが回る」などと懸念する論調がある。これは事実なのか。

 ファイナンス論や会計学からいえば、そもそも借金のみで考えることがおかしい。個人での相続を考えても、借金だけが相続されるわけでなく、資産も相続される。政府が永続的な主体として借金があるとしても、それに相応の資産があれば、ファイナンス論から見れば破綻しないが、それであれば、子孫に対してもツケだけを強調するのはおかしいとなる。つまり、グロス債務ではなく資産を考慮したネット債務を見なければ、きちんとした議論はできない。

 財務省は借金のみを強調するので、財政状況に対して、マスコミや学会を含めまともな議論ができなくなっている。結論を言えば、企業でグループでのバランスシート(貸借対照表)が決定的であるのと同じく、政府でも中央銀行を含めた統合政府のバランスシートでみて、そのネット債務額がポイントだ。

 しかし、今は政府の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)で財政をみている。もちろんPBは財政状況の一部を表している。数式で恐縮だが、グロス債務対国内総生産(GDP)比の変化は、「PB赤字対GDP比」と、「『前期のグロス債務対GDP比の数値』に『金利から成長率を引いたもの』を掛けたもの」の和になる。今の状況では、成長率が金利より大きいので、多少のPB赤字でも、グロス債務対GDP比は上昇しない。

 筆者は15年ほど前にこの数式を経済財政諮問会議の資料として提出したこともある。この意味で、PBはグロス債務の動きを記述するための道具だ。

 ネット債務対GDP比はどう決まるか。結論を簡単に言えば、上の式から、中央銀行によるマネー増加対GDP比を引けばいい。中央銀行の保有する国債は、統合政府でみると、会計的にはグロス国債から相殺できるからだ。

 今のネット債務はほぼゼロである。その変化も、当分の間、その算式から考えるとマイナス傾向である。となると、狭義の政府で積極財政策をとっても、ネット債務対GDP比を大きく増加させなければ、財政健全化に資するともいえる。

 今、国債発行による積極財政をすれば、より将来の付け回しを減らせる可能性もある。一つは、将来投資をして、しっかりとした資産を残すことだ。であればネット債務は増えないし、資産が将来の社会収益を生み出す。もう一つが、中央銀行がインフレ目標の範囲内で国債を購入し、ネット債務を増やさないようにすればいい。

 残念ながら、今の財務省のグロス債務だけ見る方法では、正しい財政状況を見ることができないので、正しい財政健全化の議論もできない。まして、正しい積極財政も理解できない。まともな財政議論をするために、ネット債務からの議論をすべきであろう。でないと、財務省は国民に無益どころか有害になる。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】将来世代が、給付金を未来から現在にタイムマシンで送れば、それは将来世代のつけに(゚д゚)!

上の記事の高橋洋一氏の説明は、会計学上の常識です。まともな企業で、財政赤字だけみて、「赤字が赤字」がと、取締役会議などで大騒ぎすれば、それこそ「馬鹿」といわれておしまいです。

そのような事がわからない、政治家や官僚が日本ではあまりに多すぎです。民間企業では当たり前のことが、政治の世界では、当たり前になっていないことに改めて驚かされます。

国債を発行して、様々な対策をすればそれが即「子供たちの将来にツケが回る」という考えは明らかな間違いです。これについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ コロナ追加経済対策、批判的な報道は「まともだという証明」―【私の論評】ノーベル経済学賞受賞サミュエルソンが理論で示し、トランプが実証してみせた 「財政赤字=将来世代へのつけ」の大嘘(゚д゚)!
これは、2020年12月15日詳細は、この記事をご覧いただくものとして以下に一部を引用します。 
20世紀を代表する経済学者の一人であるポール・サミュエルソン(ノーベル・経済学賞受賞)は、たとえば戦時費用のすべてが増税ではなく赤字国債の発行によって賄われるという極端なケースにおいてさえ、その負担は基本的に将来世代ではなく現世代が負うしかないことを指摘しています。

なぜかといえば、戦争のためには大砲や弾薬が必要なのですが、それを将来世代に生産させてタイムマシーンで現在に持ってくることはできないからです。その大砲や弾薬を得るためには、現世代が消費を削減し、消費財の生産に用いられていた資源を大砲や弾薬の生産に転用する以外にはありません。

将来世代への負担転嫁が可能なのは、大砲や弾薬の生産が消費の削減によってではなく「資本ストックの食い潰し」によって可能な場合に限られるのです。

このサミュエルソンの議論は、感染拡大防止にかかわる政府の支援策に関しても、まったく同様に当てはまります。政府が休業補償や定額給付のすべてを赤字財政のみによって行ったとしても、それが資本市場を逼迫させ、金利を上昇させ、民間投資をクラウド・アウトさせない限り、赤字財政そのものによって将来負担が生じることはありません。
ノーベル賞を受賞した経済学者ポール・サミュエルソン氏
そして、世界的な金利の低下が進む現状は、資本市場の逼迫や金利の高騰といった経済状況のまさに対極にあるといってもよいです。それは、政府が感染拡大防止のために実施した経済的規制措置によって生じている負担の多くは、将来の世代ではなく、今それによって大きく所得を減らしている人々が背負っていることを意味します。そうした人々に対する政府の支援は、まさしくその負担を社会全体で分かち合うための方策なのです。

これについては、他の記事でさらに解説を加えました。

しかし、サミュエルソンのこの主張も、当たり前といえば当たり前です。サミュエルソンは、あまりにも当たり前のことをわからない人が多いので、このような主張をしたのでしょう。国債は政府の借金です。政府はどこから借金をしているかといえば、国債を購入する機関投資家や個人投資家からなどです。

誰が当面のつけを払っているかといえば、これらの投資家が払っているのです。これら投資家は、国債に支払った資金が手元にあれば、事業をしたり投資したりできますが、それで国債を購入してしまえば、それができなくなるのです。そうして、その投資家は現在の様々な取引によって得た資金を用いて国債を購入しています。結局、現世代が負担しているのです。

しかし、国債の償還によって、投資家は元金と金利を受け取ることができるのです。愚かな人は、これが将来世代への付けになると考えているのでしょうが、それは完璧な間違いです。

政府がよほど無意味な投資でもしない限り、公共工事や他の事業が行われ、それが富を生み出し、税金として政府に戻ってくることになります。

公共工事で堤防をつくったら、何にも富を生み出すことはないではないかと言う人もいるかもしれません。そうでしょうか。堤防をつくって安全になれば、そこには住人が増えます。住人が増えれば、商店や病院ができます。工場ができたり、住民サービスの様々な施設ができて、税収が増えることになります。

無論、そうなるまではかなりの時間がかかり、個人や一企業がそのようなことをしても損失だけで、何も富を生み出すことはできないかもしれません。しかし、政府は長い間待つことができます。しかも、個人や企業と違って、税金収入を得られます。そうして、出来上がった堤防は将来世代も使うことができるのです。

それにあまりにも当たり前すぎて、わざわざ述べるべきかどうか迷うところですが、堤防をつくるために、政府が支出して土木会社などにお金を払い工事を実施すれば、その工事に携わる人たちは、それで収入を得て消費や投資をしたり、さらには税金を払うことになります。政府は、税収を得ることできます。これが、家計や個人とは大きな違いです。政府が何かつくったり消費すれば、そのお金が家計のようにそっくり消えてしまうわけではないのです。

そうして政府は国が崩壊することでもない限り、不死身と言っても良い存在です。これは、個人や企業などとは大きな違いです。個人の寿命は数十年、企業の寿命は日経が昔調べた資料によれば、30年です。これは、今から考えると、会社というより、一事業の寿命は30年というほうが正しいかもしれません。しかし、現在のコーポレート化された組織であっても、不死身ではありません。

だから、国債を発行して政府は様々な事業を行うことができるのです。というより、国民のためにそうしなければならないのです。黒字を積み立てるだけで、何もしない政府は、存在意義がありません。ただ、もちろん無制限にそのような事はできないです。もし、無制限にそのようなことをして不都合が生じた場合、過度のインフレになります。

この場合は、心配する必要はありますが、財政赤字自体を心配する必要はありません。過度のインフレにさえならなければ、政府は財政破綻の心配などせずとも、財政赤字状態を100年でも200年でも、継続することできます。 

このようなことをいうと、インフレを過度に心配する人もでてくるでしょうが、現状の日本では2%くらいのインフレであれば、全くは心配ありません。むしろ賃金が上昇するなどのメリットのほうが多いです。

そうして、今の世界は、よほどのことがない限り過度なインフレになりにくい状況になっています。これについても、以前このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

世界が反緊縮を必要とする理由―【私の論評】日本の左派・左翼は韓国で枝野経済理論が実行され大失敗した事実を真摯に受け止めよ(゚д゚)!

野口旭氏 2021年4月1日、日本銀行政策委員会審議委員

 詳細はこの記事をご覧いただものとして、この記事において、野口旭氏は、現在世界がインフレになりにくい状況を以下のように述べています。

一つの仮説は、筆者が秘かに「世界的貯蓄過剰2.0」と名付けているものである。世界的貯蓄過剰仮説とは、FRB理事時代のベン・バーナンキが、2005年の講演「世界的貯蓄過剰とアメリカの経常収支赤字」で提起したものである。バーナンキはそこで、1990年代末から顕在化し始めた中国に代表される新興諸国の貯蓄過剰が、世界全体のマクロ・バランスを大きく変えつつあることを指摘した。リマーン・ショック後に生じている世界経済のマクロ状況は、その世界的貯蓄過剰の新段階という意味で「2.0」なのである。

各国経済のマクロ・バランスにおける「貯蓄過剰」とは、国内需要に対する供給の過剰を意味する。実際、中国などにおいてはこれまで、生産や所得の高い伸びに国内需要の伸びが追いつかないために、結果としてより多くの貯蓄が経常収支黒字となって海外に流出してきたのである。

このように、供給側の制約が世界的にますます緩くなってくれば、世界需要がよほど急速に拡大しない限り、供給の天井には達しない。供給制約の現れとしての高インフレや高金利が近年の先進諸国ではほとんど生じなくなったのは、そのためである。

この「長期需要不足」の世界は、ローレンス・サマーズが「長期停滞論」で描き出した世界にきわめて近い。その世界では、財政拡張や金融緩和を相当に大胆に行っても、景気過熱やインフレは起きにくい。というよりもむしろ、財政や金融の支えがない限り、十分な経済成長を維持することができない。ひとたびその支えを外してしまえば、経済はたちまち需要不足による「停滞」に陥ってしまうからである。それが、供給の天井が低かった古い時代には必要とされていた緊縮が現在はむしろ災いとなり、逆に、その担い手が右派であれ左派であれ、世界各国で反緊縮が必要とされる理由なのである。

インフレになりにくい現在の世界では、財政赤字を恐れて、投資をしないことのほうが、経済運営においてはるかに危険なことなのです。 

ノーベル経済学賞を受賞した、ジョセフ・スティグリッツ教授は、EUがパンデミック前のルールに立ち戻ることは間違いであり、公的債務のGDP比を減らすには投資で分母を増やすべきだとして、より柔軟で思慮深い財政運営を求めていますが、これは全く正しいです。

ジョセフ・スティグリッツ氏

 感染症対策の一環として、国債を増発し、それで給付金を支給したとして、それがすぐに将来世代=子どもたちのつけになるというのは全くの間違いです。サミュエルソンが語るように、将来世代が、給付金を未来から現在にタイムマシンで送ることができれば、将来世代のつけになりますが、タイムマシンがなければやりたくても、それはできません。

財務省の(矢野康治)事務次官が、このまま日本が借金まみれだと、タイタニック号のように氷山にぶつかって沈没してしまうという趣旨の与太論文を(月刊誌「文芸春秋」に)掲載しました。

しかし、安倍元首相は昨年暮の公演で「日本は決してタイタニック号ではない。日本がタイタニック号だったら、タイタニック号が出す国債を買う人はいない。ちゃんと売れている」と主張しました。これは、全く正しいです。そうして、以下のように続けました。

「新型コロナ禍での巨額の補正予算は、国債でまかない、そのほとんどは市場を通じて日本銀行に購入している。決して孫の代に(借金を)背負わせているわけではなく、借金を全部背負っているのは日本銀行だ。

荒っぽい言い方だが、日本銀行は国の子会社。立派な中央銀行だが、5割は政府が株を持っているから、連結決算上は債務ではないという考え方も成立する」

「子供たちの将来にツケが回る」と語る人たちは、空想科学小説、それもあり得ない与太話をしているに過ぎないのです。

このような政治家や官僚の与太話等に惑わされて、不安を感じる必要性などまったくありません。

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2022年1月9日日曜日

「習政権なす術なし」中国“ロックダウン失敗” 北京五輪まで1カ月…経済低迷、国内では物々交換も 石平氏「今後は国民の不満や批判の『ゼロ』対策」―【私の論評】コロナがインフル並になることを信じ、強権的な中国版「ゼロコロナ政策」にすがり秋の党大会を迎える習近平(゚д゚)!

「習政権なす術なし」中国“ロックダウン失敗” 北京五輪まで1カ月…経済低迷、国内では物々交換も 石平氏「今後は国民の不満や批判の『ゼロ』対策」

鉄条網で封鎖された居住区の出入り口で、生活物資を受け取る住民ら=24日、中国陝西省西安

 中国のコロナ対策が「世界最大のリスク」に浮上した。北京冬季五輪まで1カ月を切り、国内の一部都市をロックダウン(都市封鎖)しているが、米調査会社は封じ込めに失敗する可能性が高く、国内外の経済混乱を招くと指摘した。封鎖地域では食料不足や当局者による暴行騒動などに発展、住民の不満も噴出している。

 米調査会社ユーラシア・グループが年初に公表した今年の「10大リスク」をまとめた報告書で「最大のリスク」に挙がったのが、中国の「ゼロコロナ」政策だ。「幅広いロックダウンと効き目が限定的なワクチン」でオミクロン株との戦いを強いられていると説明。「当初の成功と習近平国家主席のこだわりで、方針転換は不可能になった」と分析する。

 その上で、感染拡大の封じ込めに失敗する可能性が高く、政府による社会・経済統制の強化とそれに対する不満の増大を予測。中国経済の低迷が続き、世界的なサプライチェーン(供給網)への打撃を深刻化させ、インフレのリスクを増大させると警鐘を鳴らした。

 中国製ワクチンについては効果の低さも指摘されており、国内各社が、ファイザーやモデルナと同タイプのmRNAワクチンの製造・開発に着手している。前出の報告書は、混乱状況が「少なくとも自国製のmRNAワクチンを国民に行き渡らせるまで、最短でも今年末まで」続くとの見方を示した。

 昨年12月下旬からロックダウンを行っている陝西省西安市では、食料品や生活必需品の不足、医療サービスの受診などに影響している。

 同市内で痛みを訴えた妊婦が陰性証明の期限が切れていたため病院に入れず、寒い屋外で約2時間待たされた末に大量出血、死産したと報じられ、住民らの非難が噴出した。保健当局は謝罪し、病院を受診する人に48時間以内の陰性証明の提示を義務付けていた措置をやめると発表した。

 中国版ツイッター「微博(ウェイボ)」では、ポータブルゲーム機とインスタントラーメンに中華まん、白菜やにんじんなどの野菜と生理用品などを物々交換する映像も投稿されている。

 防疫担当の職員が住民を暴行する映像もSNSに投稿されたほか、ロックダウン前に住民が脱走したことも報じられた。

 河南省禹州市でも3日からロックダウンが行われている。

 関西福祉大の勝田吉彰教授(渡航医学)は「重症呼吸器症候群(SARS)流行当時、1人の感染者のみで住居を封鎖するなどした対策の成功体験があるのだろうが、今後はロックダウンだけで抑え込みはなかなか難しい。(mRNAなど)欧米のワクチン導入も検討すべきではないか」と語った。

 評論家の石平氏は「習政権は従来の対策と自国産のワクチンについてメンツを重視するあまり、なす術がない。今後はコロナの『ゼロ』対策ではなく、強権的抑圧によって国民の不満や批判の『ゼロ』対策をするしかないのではないか」と皮肉を込めた。

【私の論評】コロナがインフル並になることを信じ、強権的な中国版「ゼロコロナ政策」にすがり秋の党大会を迎える習近平(゚д゚)!

米調査会社ユーラシア・グループが年初に公表した今年の「10大リスク」をまとめた報告書で「最大のリスク」に挙がったのが、中国の「ゼロコロナ」政策であり、そのことはこのブログにも掲載しました。

ユーラシア・グループの予測では、習近平がコロナ感染症を制御できなくなり、国内でサプライチェーンが崩壊し、それが世界に悪影響を与えるとされました。

これを巡っては2つ対照的な出来事があります。一つは、中国のゼロコロナ政策の失敗を予感させるものです。

それらは、中国・西安で妊婦が陰性証明の期限切れを理由に診療を拒否されて死産した事件で、衛生当局のトップが謝罪しましたというものです。 

中国では、西安市衛生健康委員会・劉順智主任:「女性に深く謝罪する。果たすべき仕事が果たされなかったことを深く謝罪する」 という報道がなされています。主任というと、日本では職位としては低いですが、中国ではその部署のトップを意味する言葉です。

冒頭の記事にもあるとおり、事実上のロックダウンが続く陝西省西安では1日、妊娠8カ月の女性が陰性証明の期限が4時間ほど切れていたため、診療を拒否されておなかの赤ちゃんが亡くなりました。 

西安市衛生部門のトップは6日、女性に謝罪したうえで、こうしたケースが他にも起きているとして、「直ちに改善措置を取り、コロナ禍の医療ニーズを確保する」と頭を下げて謝罪しました。


中国では、この他にもコロナ感染に関して、とんでもない動画が出回り、すぐに当局によって削除されています。

陝西省興平市では、感染地区から帰ってくる家人を家に入れないために、家のドアノブを男が針金で固定したり、扉を溶接しました。ある都市では、規則を破った市民に対しては反省文を書かせ、公開謝罪をさせました。ロックダウン中の西安では、なぜか防護服を着た作業員が路上火炎放射器で消毒作業をしている動画が出回りました。

日本では、大企業や政府役人が頭を下げて謝罪するという姿は、見慣れたものですが、中国では地方政府の幹部がこのように頭を下げて謝罪するというのは、初めてではないでしょうか。

これは、中国では異例中の異例です。私自身は、このようなことで下級幹部が謝罪した事例はあったことを知っていますが、中共の地方幹部のトップが公に謝罪した例を知りません。これは、国民の不満が鬱積しており、それに対する中国共産党の懐柔策なのだと考えられます。

中国では、元々国民の共産党政権に対する不満はかなり強く、建国以来毎年平均数万件の暴動が発生したといわれています。それが、2012年あたりから、10万件を超えるようになり、政府も暴動件数を公表しなくなりました。

もともと国民の憤怒のマグマが煮えたぎっていたところに、中国版「ゼロコロナ政策」である「社会面清零政策」が行われたのです。これは先進国などでいう「ゼロコロナ政策」とは似て非なるものであり、数字上コロナ感染者がゼロになれば、住民の生活や命はどうなっても構わないという政策です。

「社会面清零」に関する報道をする中国CCTVの画面

これでさらに国民の憤怒がさらに高まっていたところに、このような事件が起こり、国民の憤怒が頂点に達したのでしょう。これは、さすがに中共政府も従来のように隠蔽、弾圧や日本を悪者に仕立てるなどの方法では乗り切ることができないと判断したのでしょう。だから、トップの謝罪という事態になったのでしょう。

もう一つは、中国がゼロコロナ政策でなんとか難局を切り抜ける可能性もでてきたという事実です。

現在爆発的に感染が増えつつあるオミクロン株について、各国のデータをみると従来の変異株より入院率や死亡率は低く、「インフルエンザ並み」との指摘もあることです。

英統計サイト「アワー・ワールド・イン・データ」によると、5日時点の新型コロナによる致死率(感染者のうち死亡した割合)は英国が0・15%、イタリアは0・46%、フランスは0・29%だった。昨年1~2月時点では各国ともに3%台で、低下傾向は顕著です。

国立感染症研究所の資料によると、昨年12月23日までに報告されたイングランドのオミクロン株感染例など29万5694例のうち、19日までに入院が366例、死亡が29例認められました。2日のタイムラグはありますが、単純計算で入院率は約0・12%でした。

昨年8月、英公衆衛生庁の研究者が英医学誌「ランセット」に掲載した論文では、同年3~5月の新型コロナ患者のうち2週間以内に入院したのはアルファ株が2・2%、デルタ株が2・3%にのぼっていましたた。

日本では、第5波当時の入院率や死亡率はインフルエンザより10倍リスクが高いとされましたが、現状はインフルエンザと現時点のオミクロン株の入院率はいずれも0・1%程度で同等のレベルです。

歴史的にみると急性ウイルス感染症でパンデミック的な流行が3年以上続いた記録はなく、そろそろ風邪の一種になる方向に収束する可能性も高いです。

もし、そうなると、習近平政権は、中国製ワクチンがオミクロン株に効き目が低かったとしても、「社会面清零政策」をやり抜いても、しばらくすれば、コロナ感染症は中国でも収束する可能性があります。

習近平政権にとって、今回のオミクロン株の急速な感染は、悪い面ばかりではありません。それは、北京五輪の各国の外交的ボイコットを、国内ではオミクロン株のせいにできるからです。

習近平政権は、たとえ東京五輪のように無観客でも強行し、北京五輪を成功させ、国威発揚に利用するでしょう。

そうして、焦点は秋の党大会に移ることでしょう。中国共産党は2022年秋、5年に1度の党大会を開きます。通例であればトップが交代する10年に1度の節目ですが、今回は習近平総書記(国家主席)の3期目続投が確実視されており、習氏を支える指導部人事が最大の焦点です。

昨年の共産党大会

この直前までに、コロナ禍が収束していれば、良いでしょうが、それまでにコロナが収束していない場合は、習近平の国家主席の3期目続投は危うくなるでしょう。

それに加えて、個人崇拝の復活や経済・社会の統制強化など毛沢東時代への回帰を強める習氏の路線には、党内で異論も根強いです。減速する経済や長引く米中対立も、3期目始動の不安材料です。

それまでは、習近平は気を抜けません。海外からオミクロン株にも効き目があるとされる、ワクチンを導入すれば、面子が丸つぶれとなるので、なす術はありません。ただコロナがインフルエンザ並になることを信じて、強権的な中国版「ゼロコロナ政策」にすがり、その日を迎えるしかないでしょう。その過程で、「社会面清零政策」はますます苛烈になるかもしれません。

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2022年1月8日土曜日

「強力な措置」習主席が称賛 カザフスタンの抗議デモ鎮圧に―【私の論評】カザフスタン情勢が中露に与えるインパクト(゚д゚)!

「強力な措置」習主席が称賛 カザフスタンの抗議デモ鎮圧に


 中国の習近平国家主席はカザフスタンのトカエフ大統領にメッセージを送り、抗議デモの鎮圧について「思い切って強力な措置を取った」と称賛しました。

  習主席は7日、トカエフ大統領へのメッセージで、「大統領は重要な時に思い切って強力な措置を取り事態を速やかに沈静化させた」と評価したうえで、「政治家としての責任を示した」と強調しました。

  また、「外部勢力が意図的にカザフスタンに動揺をもたらすことに断固反対する」とし、トカエフ大統領やロシア政府と同様に、外国が抗議デモを扇動したとの主張を展開しました。

  カザフスタン最大都市アルマトイでは6日、治安当局が発砲しデモの参加者少なくとも30人が死亡しています。

【私の論評】カザフスタン情勢が中露に与えるインパクト(゚д゚)!

下にカザフスタンの地図を掲載します。ご覧いただくと、カザフスタンは中露と国境を接していることがわかります。また、カザフスタンはロシア領をはさみつつもウクライナと近接した地域にあります。


中国としては、カザフスタンの抗議デモなどが、中国に飛び火することを懸念し、カザフスタンが強力な措置をとり沈静化したことを歓迎しているのでしょう。

何しろ、中国の新疆ウイグル地区は、カザフスタンと国境を接しています。カザフスタンが不安定になれば、中国も影響を受けることになります。

中央アジアのカザフスタンは世界有数の資源国であり、元々はロシアと関係が深い一方、近年は中国とも関係を強めてきました。ナザルバエフ前大統領は2019年に退任しましがも、その後も事実上の指導者として影響力を残してきました。

他方、昨年来の新型コロナ禍で経済は悪影響を受け、足下では国際原油価格の上昇や通貨テンゲ相場の下落も重なりインフレが加速感を強めるなど、景気に悪影響を与えつつあります。

カザフスタン政府は今月から天然ガス価格の大幅引き上げを実施しましたが、デモの動きが全土に広がる事態となり、内閣総辞職に追い込まれるとともに、トカエフ大統領は全土に非常事態宣言を発令しました。

また、デモの一部がナザルバエフ氏を批判したなか、トカエフ氏はナザルバエフ氏の事実上の失脚を決定するなど「政変」に発展しています。さらに、事態鎮静化に向けて生活必需品の価格統制に動くとともに、ロシアが主導するCSTOに部隊派遣を要請しました。

CSTO(集団安全保障条約機構)旧ソ連諸国から成る独立国家共同体(CIS)の中で、集団安全保障条約の加盟国が構成する軍事機構です。現在の加盟国はロシア、ベラルーシ、アルメニア、カザフスタン、キルギス、タジキスタンの6カ国です。2007年の首脳会議で平和維持部隊の創設がきまりました。

今回、各国がカザフに派遣する平和維持部隊は2500人程度の見通しで、状況に応じて増派される可能性もあります。

6日、ロシア中部イワノボで、カザフスタン行きの輸送機に載せられるのを待つ軍用車両=ロシア国防省提供

タス通信によると、CSTOの平和維持部隊が訓練ではなく、実際に任務を遂行するのは初めてです。ロシアは精鋭の空挺(くうてい)部隊などを投入。国営テレビは軍用車両が走行したり、兵士らが軍用機に乗り込んだりする様子を繰り返し放映しました。

ブリンケン米国務長官は7日に国務省で記者会見し、カザフスタン政府がロシア軍部隊の派遣を要請したことについて「なぜ外部の支援を必要と感じたのか分からない」と述べ、カザフ当局の対応に疑問を呈した。その上で、詳細を調べていると明らかにした。

ブリンケン氏は会見で「法や秩序を維持し、人権を尊重した形でデモ隊に適切に対応する能力をカザフ当局は確実に持っている」と説明。「最近の歴史の教訓では、ロシア人がひとたび家に居座れば、立ち退かせるのは非常に難しい」と指摘し、ロシア軍の動向に警戒感を示しました。

また、カザフのトカエフ大統領が、デモ鎮圧のため治安当局や軍に警告なしの射殺を認めたことに関し、ジャンピエール米大統領副報道官は7日、記者団に「治安維持における軍の自制を求める。国際社会は人権侵害などを注視している」とくぎを刺しました。

ロシアのプーチン大統領は昨年12月23日、年末恒例の記者会見を開き、北大西洋条約機構(NATO)がさらなる東方拡大をしないよう米国とNATOに確約を要求していることをめぐり、「ボールはNATO側にある。即座に(ロシアの安全を)保証せねばならない」と述べ、対応を迫っていました。

ロシア側はNATOの東方不拡大など自国の安全保障に関し、米国とNATOに条約などを締結するよう要求しており、それぞれと来年1月初めに交渉が始まる見通しだとしていました。

プーチン氏は会見で、米国やNATOが交渉に応じる姿勢を見せているとし、「肯定的な反応だ」と語りました。一方で、東西冷戦終結後に東欧諸国がNATOに加盟し、ポーランドやバルト三国などにNATOの部隊が駐留している状況を踏まえ、NATOがロシアを「だました」と一方的に非難しました。


プーチン大統領は、NATOの東方拡大をおそれているようです。ロシアはウクライナ国境付近で兵力を増強し、欧米は露軍によるウクライナ侵攻を警戒していますが、露専門家の間では、緊張を高めてNATO側を交渉に引き込むプーチン政権の戦略の一環との見方も強いです。

プーチン氏は会見でウクライナへの対応について、「交渉とは無関係」とする一方、「ロシアの行動は自国の安全保障にのみ左右される」と述べ、露側の要求を受け入れるよう圧力をかけました。

今回、ロシアがカザフスタンに、CSTOに部隊をはじめて派遣したのは、NATOの東方拡大を牽制するという意味あいもあるでしょう。中国にとっても、ウクライナがNATOに加入し、さらにカザフスタンに新米政権ができることにでもなれば、従来は西からの脅威をほとんど考慮しなくても良かったものが、考慮せざるを得なくなり、東西から挟まれる状態になります。これは、中国としては、なんとしてでも避けたいでしょう。

今後は同国が米ロ対立の「代理戦争」の舞台になる可能性もあります。さらに、中国が関与を強めるなど地政学リスクに発展していく可能性もあります。そうなると、米中露対立の代理戦争になる可能性もあります。

カザフスタンの治安回復のため展開した部隊に死傷者が発生すれば、プーチンのウクライナ作戦展開には大きなプレッシャーとなるでしょう。ウクライナでは戦死多数の発生は避けられないです。

ウクライナ軍はロシア軍の比ではないとはいえ、カザフスタン住民よりは手ごわい敵だからです。それに、ロシアの一人あたりのGDPはいまや、韓国を大幅に下回っている上に、現状のロシア軍の兵站は多くを鉄道に頼っており脆弱なこともあり、ウクライナ、カザフスタンの両面作戦を実行するのは難しいです。

Atlantic Councilに寄稿したウクライナ、ウズベキスタンで米大使だったジョン・ハーブストJohn Herbstは「当初のCSTO配備が失敗に終われば、プーチンはジレンマに直面する。軍備増強前のウクライナ情勢は手詰まり状態だった。カザフスタンで国民の反対運動で改革志向の新政権が誕生したり、トカイエフが中国や上海協力機構に政権維持の支援をもとめればはロシアの中央アジアでの立場が悪化する。

そうなるとプーチンがウクライナ国境地帯から部隊を撤収しカザフスタン騒擾状態の制圧に当たらせ、中央アジアでのロシアの立場を強めるべきなのか。これを実行すれば、ウクライナでの大規模軍事攻勢よりもリスクは低くなる」と語っています。

1月9日から10日にかけて米ロがウクライナ情勢についてジュネーブで会談する予定で、今のところカザフスタンの不安定状況の影響は出ていないようです。ただし、ウクライナではロシアは、今はカザフスタン情勢のため行動に移れないとの見方が強いです。

米国は、トカイエフ政権の崩壊すれば力の真空が生まれ、これに対して何らかの動きをするでしょう。この場合、プーチンはウクライナに専念できなくなるだけでなく、自身の権力基盤にも揺らぎかねません。これについては、当然のことなが中国も懸念していることでしょう。

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2022年1月7日金曜日

北朝鮮 北京五輪・パラ不参加 「敵対勢力の策動」とコロナが原因―【私の論評】今年の世界は、「ゼロコロナ」に拘泥せざるをえない国と、そうではない国との間で大きな違いがでる(゚д゚)!

 北朝鮮 北京五輪・パラ不参加 「敵対勢力の策動」とコロナが原因


北朝鮮が、北京オリンピック・パラリンピックに参加しないことを明らかにした。

これは、朝鮮中央通信が7日朝に報じたもので、北朝鮮当局は、中国側に渡した書簡で、北京大会に「参加できなくなった」と伝えた。

理由として、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大と、「敵対勢力の策動」を挙げている。

書簡ではまた、アメリカなどの外交的ボイコットを念頭に、「中国への陰謀が悪質になっている」と非難したうえで、大会の成功に向け、中国への全面的な支持を強調した。

IOC(国際オリンピック委員会)は、東京大会に参加しなかった北朝鮮の資格を停止しているが、北京オリンピックには、個人参加を検討するとしていた。

【私の論評】今年の世界は、「ゼロコロナ」に拘泥せざるをえない国と、そうではない国との間で大きな違いがでる(゚д゚)!

北朝鮮で年明けに放送されたミュージカルです。

巨大な頭部を持つ着ぐるみが、コロナ対策を指南…。消毒の次は検温。体温計は最新式です。

実は、北朝鮮の感染状況、全く情報がありません。今年はコロナ対策を最優先とする、そんな方針を明らかにした金正恩総書記ですが、果たして、どうなっているのでしょうか。

コリア・レポート、辺真一編集長は上の動画で、「コロナの感染者はゼロと、いまだかつて1人も感染者・陽性者が出ていないと言っている」「誰もワクチンを接種していないと…、中国もロシアもワクチンの提供を申し入れているが、北朝鮮が応じたという報道もない」と語っています。

さらに、辺氏は、「北朝鮮の映像をチェックすると信じ難いことが多々ある。金正恩総書記が出席する会議。全国から6000人が一堂に集まって、室内で集会を開いている、2時間も3時間も。誰もマスクを着用していないんですね。ちょっと今のご時世ではありえないようなことが北朝鮮では垣間見られている、ということはもしかすると、平壌には一人も感染者がいないのではないか、そういう見方も成り立つ」

しかし、一方で。

「人口の半分近く48%が栄養失調の状況にある。抵抗力が強くない。むしろ不安材料はいっぱいだと思う」

公式発表による感染者ゼロ。しかし、それを裏付けるデータはありません。

「(感染者が)いるのかいないのかを検証しようがないと言いましょうか、客観的に裏付けになるようなものはないということですよね」とも語っています。

ただ、北朝鮮は感染者の発生を認めたこともありました。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は昨年4月17日、北朝鮮当局者が一般国民を対象にした講演で、国内3カ所で新型コロナウイルスの感染者が発生したことを認めたと伝えました。

北朝鮮は現在まで、対外的には「国内の感染者はゼロ」であるとする立場を取り続けていましすが。RFAの報道が事実なら、北朝鮮は近く、対外的にも感染者の発生を認めるかもしれないとされていました。そうすれば、すでに感染症対策での助力を申し出ている米国など国際社会から、支援を受け取ることができたかもしれなかったからです。

北朝鮮の北部・両江道(リャンガンド)の住民はRFAに対し、3月末に各職場や人民班(町内会)ごとに「元帥様の方針貫徹のために新型コロナ防疫事業にひとつになって取り組もう」と題した講演会が行われ、講師を務めた当局者が「朝鮮は最もすぐれた社会主義医療保健制度のおかげで、全世界的に感染者が最も少ない」としつつ、「感染者が発生したのは平壌市と黄海南道(ファンヘナムド)、咸鏡北道(ハムギョンブクト)3カ所だけだ」と強調したと伝えました。

また、平壌の住民も同様に「当局は住民講演会で、平壌市、黄海南道、咸鏡北道の3カ所で新型コロナウイルス感染者が発生したと明らかにした」と証言したといいます。

両江道の住民の証言によれば、講師はまた「住民たちが新型コロナウイルスに対する党の防疫指針をまともに守らず、人民経済に甚大なダメージをもたらした」と述べたといいます。

北朝鮮は新型コロナウイルス対策として最も過激な行動制限を行っており、規則違反が発覚した感染者が処刑されたとの情報もあります。実際、北朝鮮は体制の危機を迎えるたびに恐怖政治を強化し、国民の反発をけん制してきた。

「会場に集まった人々は、感染者が発生したという講師の言葉に、しばらくザワついたとされています。新型コロナウイルスによって南朝鮮(韓国)をはじめ全世界で人々が大量に死にゆく状況下でも、わが国は党の徹底した非常防疫対策でひとりの犠牲者も出ていないと強弁していた当局が、どんな理由から感染者の存在を認めたのかを皆が興味深く思っている」(両江道の住民)と発言しました。

またこの住民は、「わが国の地図で見ると、咸鏡北道はいちばん上に、黄海南道はいちばん下の方にあり、平壌はちょうどその中間だ。それなのに、これら3カ所でだけ感染者が出たという話を信じられるか。北端から南端までウイルスが広がったなら、すでに全国に拡散しているのだろう」との見方を騙ったとされています。

外務省海外安全ホームページの北朝鮮の地図、すべてレベル2「不要不急の渡航中止(感染症)」と表示されている。クリックすると拡大します。

韓国の情報機関・国家情報院は昨年11月3日の国政監査で、北朝鮮が新型コロナウイルス対策を怠った幹部を最高刑で死刑とする「コロナ怠慢罪」を新設したことなどを報告しました。北朝鮮は自国の防疫体制の脆弱ぜいじゃくさを認め、新型コロナで「30万人死ぬか、50万人死ぬかわからない」とする文書も作成していたといいます。

今回、北朝鮮が北京五輪、パラリピックに参加しない旨を公表したのは、やはりコロナが万円しているか、蔓延することを極度に恐れていることの証だと思います。さらに、コロナに対する備えもほとんどできていないというのが、実体なのだと思います。

北朝鮮の朝鮮中央放送は5日、新年に入り、新型コロナウイルスの流入と感染を徹底的に遮断するための「非常防疫戦」が一層強化されていると伝えました。世界中で新型コロナとの闘いが3年目に入った今も北朝鮮は「感染者数ゼロ」を主張していますが、ウイルスの流入と万が一の感染拡大の可能性に神経をとがらせている様子がうかがえます。 

北朝鮮の防疫活動(労働新聞)

朝鮮労働党中央委員会は昨年12月27~31日に第8期第4回総会を開き、新型コロナ対応を「国家事業の第一順位」に据え、「ささいな緩みや抜かりもなく強力に展開していかなければならない最重大事業」に掲げました。

手洗いやマスク着用、消毒などの基本的な対策は昨年と変わりないですが、防疫の重要性が強調されただけに、さらに警戒を強めているようです。 

中央放送はこの日、「平壌市と沿線、沿岸地域の主要地点と周辺地域で非常防疫の実態を具体的に把握し、わずかなすきも発生しないよう先んじて関心を向けている」と伝えました。

北朝鮮では、中国の「社会面清零政策」のような政策がすでに行われているか、さらに大掛かりに実施されているか、実施されようとしているのではないでしょうか。

中国の「社会面清零政策」は、先進国などでいう「ゼロコロナ政策」とは似て非なるものであり、数字上コロナ感染者がゼロになれば、住民の生活や命はどうなっても構わないという政策です。

例えば、平城などの重点地区とそうではない部分を明確に分離して、平城などで感染者が発生した場合は、感染者とその接触者とみられる人を、感染も有無なども確かめず、平城市内に追い出し、平城市街からの交通を絶ち、境界線で必要物資を受け取るとか、感染者や接触者の住居などは焼き討ちするなどして、とにかく平城市内等は感染者ゼロを保つということが行われているのではないでしょうか。

昨日は、中国がゼロコロナ政策に失敗し、国内サプライチェーンが毀損され、それが世界経済にも悪影響を与えることが、世界最大のリスクになる得ることをこのブログに掲載しました。北朝鮮でもゼロコロナ政策に失敗して、国内が大混乱するという可能性もあります。

最近の北朝鮮によるミサイル発射も、コロナによる疲弊を見透かされないようにするための、デモンストレーションなのかもしれません。

日本でもマスコミはオミクロン株の報道を盛んにしていますが、確かに感染力は、強いようですが、死者はほとんど出ていません。以下に死者数の推移のグラフを掲載します。


最近ではコロナワクチンの他にも飲薬が普及しつつあります。日本では、ワクチン+飲薬という対処法でもう少しで、コロナ感染症を普通の風邪のように扱える日がくると思います。日本も、「ゼロコロナ」にいつまでも拘泥していると、中国や北朝鮮のようにとんでもないことになりかねません。

とはいいながら、日本では人権が中国や北朝鮮よりは尊重されているので、とんでもないことにはならないでしょうが、そうはいっても、たとえば医療崩壊などが起こってしまえば、とんでもないことになり、人権無視ということになりかねません。

北朝鮮は、ワクチンも飲薬もない状況です。中国はワクチンはありますが、中国製ワクチンはオミクロン株にはあまり効き目がないようです。両国とも「ウィズコロナ」政策をしたくてもできない状況です。

しかし、日本は違います。日本はワクチンと飲薬などで、コロナ感染症を風邪のように扱える目処がたてば、すぐにコロロな感染症を二類から五類に分類し直すべきでしょう。感染症に強い強靭な社会を目指すべきです。

今年の世界は、「ゼロコロナ」に拘泥せざるをえない国と、そうではない国との間で大きな違いがでることになるでしょう。

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2022年1月6日木曜日

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新型コロナ、中国本土で新たに189人感染確認


【新華社北京1月6日】中国国家衛生健康委員会は6日、31省・自治区・直轄市と新疆生産建設兵団から5日に報告を受けた新型コロナウイルスの新規感染者(無症状感染者除く)が189人だったと発表した。

【私の論評】先進国の「ゼロコロナ政策」とは似て非なる中国の「社会面清零政策」の末恐ろしさ(゚д゚)!

上の記事は、中国メディア新華社の記事をそのまま、転載しました。新華社(しんかしゃ)は、中華人民共和国の国営通信社です。正式名称は新華通訊社。日本では新華社通信(しんかしゃつうしん)として知られています。

この報道からみると、最新の中国のコロナ感染者数は、189人であり、死亡者は0人です。人口が約14臆人の中国では、この数字は両方ともほぼ0に近く、この数字が本当であれば、中国のコロナ感染症はほぼ収束したと言っても良いようです。

しかし、実際には北京オリンピックを1ヵ月後に控えた中国のコロナ対応に国内で不満の声があがっています。

米国・CNNによると、中国のゼロコロナ政策は大規模検査、長期間の隔離、感染確認後即座にロックダウンなどが行われているそうです。

中国中部の大都市で人口約1300万人の西安市では去年12月9日~23日、新型コロナの234人の市中感染が確認され、23日午前0時からロックダウンに入りました。

各家庭1人だけ2日に1回、食料品など購入の外出のみ可能だそうです。

感染対策のため封鎖された居住区の出入り口=5日、中国陝西省西安市

その後も感染拡大が収まらず、食料品などの買い物も禁止され、住民の自動車の運転も禁止。西安市在住の男性は「外出禁止後、政府から1度野菜だけが届いた。お米だけ、ヨーグルトだけ届いたという人もいる。隔離中の人がいる家には封印のお札のようなものが貼られる」と語ったそうです。

中国メディアの報道では粛々と検査を受ける市民や食料の配給が行わえる様子が報じられました。

中国のSNSでは食糧難を訴える人が急増。西安での食材の買い出し困難についても拡散され、きょう時点で4.3億回以上閲覧されましたが、検閲により現在は削除されています。

1月1日に行われた西安市のコロナ感染防止コントロール指揮部のビデオ会議で、1月4日までに西安市の新規コロナ感染者をゼロに抑えるゼロコロナ政策目標が打ち出されました。2日には陝西省の書記、劉国中が、社会面清零(ゼロコロナ)目標をできるだけ早く実現せよ、と通達しました。

ところが1月2日、陝西省で新たに92人の新型コロナ感染者が出ています。うち90人が西安市の住人です。3日には西安市だけで95人の感染者が出ました。

西安市では12月23日に都市封鎖(ロックダウン)が始まり、8日ぶりに新規感染者が100人を切ったという意味では徐々に落ち着いてきているにもかかわらず、1月4日までに新規感染者をゼロにするなど、あまりに非科学的・非現実的に思われます。

ところが、インターネット上に流れた西安市の「強制隔離」風景の動画を見たとき、多くの市民たちは気づくことになりました。「ゼロコロナ」とはコロナウイルスを徹底排除せよ、ということではなく、コロナ感染者を社会から徹底排除し、「ゼロ」とすることだったのです。

実際、感染拡大の可能性のある「小区」(集合住宅の集まる住宅区、団地)の住民が、数万人単位で「社会」と隔絶された僻地の「収容施設」に収容されていました。

ここで問題の本質は、中国でコロナ対策としての「社会面清零」モデルの概念が固まったことでしょう。在カナダ華人の人気YouTuber文昭が、こうした「社会面清零」措置の例の動画などを挙げて、こう解説していました。

「社会面清零の概念は、人と社会を分離して、強制収容キャンプモデルで管理するということだ」

市内の居住区に住民がおらず、空っぽであれば、そもそも人がいないのですから、ゼロコロナが達成されたことになります。仮に隔離施設内で新規感染者が発生しても、それは新規感染者にカウントされません。なぜなら、彼らは社会から隔絶されたところにいるからです。

中国の「社会面清零政策」は、先進国などでいう「ゼロコロナ政策」とは似て非なるものであり、数字上コロナ感染者がゼロになれば、住民の生活や命はどうなっても構わないという政策です。

そうして、重要なのは、政策として打ち出された「社会面清零」が、中央からの無茶な指示を受けた現場官僚たちが、何とか帳尻を合わせるために人民を欺く論理として確立したことです。そうして、この論理は中国内の他の地域でも感染者が発生すれば、適用されることになるでしょう。

「社会面清零」に関する報道をする中国CCTVの画面

中国は2020年、厳格なロックダウンと国産ワクチンの普及によって新型コロナウイルスの封じ込めに成功したとしていました。全体主義が成功を大成功を収めたようにもみえました。

そうして、先日もこのブログで述べたように、中国では国家が国民を信用していないので、国民にすべての情報を知らせ、国民の判断を尊重するという仕組みが機能していません。そのため政府は失敗が許されません。権力者は常に全知全能、無謬の存在を演じ続ける以外にないのです。

ウイルスにはこの世界から駆逐できるタイプのものとそれが不可能で共存以外の道がないタイプのものがありますが、新型コロナは明らかに後者です。初期の段階で前者だと信じたが故のゼロコロナ政策であり、それで大成功してしまったため、今更やめるわけにはいかないのでしょう。

先進国においては、すでに「ゼロコロナ政策」はやめているか、いずれやめて「ウィズコロナ政策」に柔軟に転換するでしょう。しかし、中国はできない可能性が高いです。

自らの手段が功を奏し、それを国威発揚にまで用いてしまったため、その後は他の選択肢が取り得なくなるというパターンは、今回のコロナ対策に限った話ではありません。「一党専制」という一見、強力な仕組みの最大の弱点はここにあります。

中国製コロナワクチン

しかしながら今日では、オミクロン株のように感染力の高い変異株が登場しています。先日もこのブログでも掲載したように、中国の「ゼロコロナ政策」が世界のリスクになると予測した、ユーラシアグループは、中国の国産ワクチンの効果は限定的であり、変異株への対応力は不十分であると指摘しました。

同グループは、中国がこれまで貫いてきたゼロコロナ政策は失敗し、より大規模な感染症拡大と、それに伴う厳しい封鎖や措置を引き起こすと分析しています。そして、これは中国のサプライチェーンの混乱、世界的な経済不安リスクにつながるということになりそうです。

感染者零を目指すために、感染者や感染者とみられる人々の人権を無視して、強制隔離し、挙げ句の果に作り手、運び手まで隔離して、国内のサプライチェーンを破壊し、それが世界を不安に陥れかねないというのですから、本当に末恐ろしいです。

世界は、中国のどの部門が脆弱なのか見極めて、それがどのくらいの悪影響を自身にもたらすのか、前もって準備するしかないようです。ただ、相手が感染症ですから、それがどの程度サプライチェーンを毀損するのか、予め予想するのは難しいです。ただ、この危機が起こり得ることを予め認識しておくべきことは言うまでもありません。

オミクロン株が中国でも、重症者・死者数が少なくなり、中共が頑な「社会面清零政策」から柔軟に「ウィズコロナ政策」に転換することを願うのみです。

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2022年1月5日水曜日

空軍、F16Vの「エレファントウォーク」初公開 戦力を誇示/台湾―【私の論評】ハイコストパフォーマンの軍備をすすめる台湾軍(゚д゚)!

空軍、F16Vの「エレファントウォーク」初公開 戦力を誇示/台湾

F-16Vのエレファントウォーク

中国の軍用機の台湾防空識別圏進入が相次ぐ中、空軍は5日、嘉義基地で戦闘機「F16V」12機を用いた「エレファントウォーク」の訓練を実施し、戦力を誇示した。F16V(ブロック20)によるこの種の訓練を外部に公開するのは初めて。

国防部(国防省)の統計によれば、台湾の防空識別圏に昨年進入した中国軍機は延べ約960機に上る。台湾海峡の中間線越えや台湾の南東海域への進入も複数回あった。

「エレファントウォーク」とは、多数の航空機を滑走路に集結させ、矢継ぎ早に地上滑走させる訓練。多数機運用能力や即応態勢を誇示する狙いがある。

また、この日はF16Vの緊急発進(スクランブル)の訓練のほか、昨年11月のF16V部隊発足式で初公開されたヘルメット装着式統合目標指定システム(JHMCS)も再度お披露目された。

ヘルメット装着式統合目標指定システム(JHMCS)

【私の論評】ハイコストパフォーマンの軍備をすすめる台湾軍(゚д゚)!

米国が台湾に「F-16V」の売却を決めたのは、トランプ政権のときです。トランプ米政権が2019年11月20日、台湾に対し米国製戦闘機「F-16V」の最新型を66機売却することを決めました。

当時、中国は「断固として反対する」「内政干渉だ」(外務省の華春瑩(か・しゅんえい)報道局長)と強く反発しましたが、裏を返すとF-16Vの高性能に対する警戒の現れでもあります。

中華民国(台湾)国防部は昨年11月18日(木)、性能が大幅に向上したF-16V戦闘機が台湾南西部にある嘉義市の空軍基地に配備されたと発表しました。

昨年11月18日、台湾・嘉義県の空軍基地で行われた、F-16V戦闘機部隊の発足式

F-16Vは、台湾空軍が運用する既存のF-16A/B戦闘機と外見的には似ているものの、桁違いの性能を持つ新型機で、レーダーやアビオニクス、コックピット周りなども一新され、エンジンもより出力の向上した新型を搭載しています。

特に搭載されているAESAレーダー「APG-83」は、旧型(APG-66)に対し総合的な能力は2倍に向上しているといいます。電子機器の性能向上により、軽く小さなレーダーとなっています。

実戦で最も際立つ結果を残した現代ジェット戦闘機といえば、F-15「イーグル」です。F-15は1979(昭和54)年に最初の撃墜を記録して以降、現在に至るまで100機以上を撃墜し、なおかつ空中戦で撃墜された機数はゼロという、100対0のキルレシオ(撃墜、被撃墜比)を達成しています。これまで一度も負けたことがない圧倒的な戦歴から、F-15は(少なくともF-22やF-35が登場するまでは)強い戦闘機の代表格として知られています。

しかしF-15は高性能と引き換えに、あまりに高価すぎるという欠点がありました。開発国であるアメリカ空軍さえ十分な数を揃えることが困難であり、F-15はとっておきの切り札としつつ、同時に数的な主力を担う安価な戦闘機が必要となりました。こうした経緯から、安価で軽量なF-16「ファイティングファルコン」が開発されました。

F-16とF-15のエンジンは同一のものです。したがってエンジン1基を備えるF-16のエンジンパワーは、2基を備えるF-15の半分しかありません。F-16は劣化F-15であるという認識は古くからあり、F-16の開発計画名「LCF」は「ローコストファイター(低価格戦闘機)」の頭文字ではなく「ローケイパビリティファイター(低性能戦闘機)」である、などと陰口を叩かれたことさえありました。

ところがF-16は実戦へ投入されると、安さだけが取り柄の低性能機ではないことがすぐに証明されました。1982(昭和57)年、イスラエル空軍へ供与されたF-16は「ベッカー高原上空戦」において、たった1週間で44機のシリア空軍機を撃墜し損害ゼロという圧倒的な戦果を挙げます。これは同航空戦におけるF-15の40機撃墜損害ゼロを上回る戦果であり、F-15に比肩しうる強い戦闘機であることを実証しました。

「ベッカー高原上空戦」のイスラエル軍F-16ガンカメラによる画像

ちなみに、F-16のキルレシオは実に80対2に達し、撃墜された事例も事故であることを考慮すると、100対0のF-15にほぼ比肩しうる実績を残しました。

F-16の強さの秘訣は、意図的に安定性を落とし機動性を高める「静安定緩和」など、新技術を惜しみなく投じた点にありました。F-15は強い戦闘機ですが、その設計思想は極めて保守的であり、どちらかというと「高性能なF-4」といえる古い部類の飛行機です。両機は同じエンジンを搭載した兄弟でありながら、実に対照的であり、弟分のF-16はエンジンパワーのハンデを技術で克服しました。

F-15と同等の高性能機でありながら、F-15より安価なF-16が売れない筈はなく、2020年現在までに29か国が導入し、生産数は約4588機を数えるに至りました。いまなお政治的な事情からF-35を導入できない国にとっては魅力的な選択肢です。さらに、現在でも様々な改造が繰り返されています。このようなF-16を母体として、改造されたF-16Vです。台湾が中国と戦うには、十分な性能を有しているといえます。

一部報道によると、性能が陳腐化している既存のF-16A/Bについても、保有する141機すべてについて、1100億台湾ドル(約4500億円)を投じて改良する方針だそうで、これまでに64機の改良が行われたといいます。

これらF-16Vの新規導入と、F-16A/Bのアップデートによって、旧式化したF-5E/F戦闘機は退役させる計画のようです。

台湾は、このブログにも以前掲載したように、対潜哨戒機P3Cを備え、潜水艦の開発にも着手しています。強力な地対艦ミサイルや、地対空ミサイル、長距離巡航ミサイルも装備しています。

そうして、概していえると思うのですが、非常にコストパフォーマンスの高い軍備をしていることがうかがわれます。特に中国軍対するコストパフォーマンスが高いです。このあたりは、徹底的に検討してから、配備しているのでしょう。まさにF-16Vの配備はその象徴であると思います。

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2022年1月4日火曜日

世界「10大リスク」1位は中国の「ゼロコロナ政策」失敗…各国の政情不安定化も―【私の論評】今年最大の地政学的リスクは、中国の対外関係ではなく国内問題(゚д゚)!

世界「10大リスク」1位は中国の「ゼロコロナ政策」失敗…各国の政情不安定化も

米政治リスクの調査会社ユーラシア・グループは3日、2022年の世界の「10大リスク」を発表した。1位に「No zero Covid」(ゼロコロナ政策の失敗)を挙げた。中国が新型コロナウイルスの変異型を完全に封じ込められず、経済の混乱が世界に広がる可能性を指摘した。


報告書は冒頭で、米中という2つの大国がそれぞれの内政事情から内向き志向を一段と強めると予測。戦争の可能性は低下する一方で、世界の課題対処への指導力や協調の欠如につながると指摘した。

国際政治学者のイアン・ブレマー氏が率いる同社は年頭に政治や経済に大きな影響を与えそうな事象を予測している。21年の首位にはバイデン米大統領を意味する「第46代」を選び、米国民の半数が大統領選の結果を非合法とみなす状況に警鐘を鳴らした。予測公表の2日後、トランプ前大統領の支持者らが選挙結果を覆そうと米連邦議会議事堂に乱入した。

22年のトップリスクには新型コロナとの戦いを挙げた。先進国はワクチン接種や治療薬の普及でパンデミック(感染大流行)の終わりが見えてくる一方、中国はそこに到達できないと予想する。中国政府は「ゼロコロナ」政策を志向するが、感染力の強い変異型に対して、効果の低い国産ワクチンでは太刀打ちできないとみる。ロックダウン(都市封鎖)によって経済の混乱が世界に広がりかねないと指摘する。

先進国はワクチンの追加接種(ブースター接種)を進めている。ブースター需要が世界的なワクチンの普及を妨げ、格差を生み出す。ユーラシア・グループは「発展途上国が最も大きな打撃を受け、現職の政治家が国民の怒りの矛先を向けられる」と指摘し、貧困国はさらなる負債を抱えると警告する。

2番目に大きいリスクとして挙げたのは、巨大ハイテク企業による経済・社会の支配(テクノポーラーの世界)だ。米国や欧州、中国の各政府は規制強化に動くが、ハイテク企業の投資を止めることはできないとみる。人工知能(AI)などテクノロジーの安全で倫理的な利用方法を巡って、企業と政府が合意できていないため、米中間、または米欧間の緊張を高めるおそれがあるという。

米議会の中間選挙後の混乱もリスクに入れた。11月の同選挙では野党・共和党による上下院の過半数奪還が「ほぼ確実視されている」と指摘する。与党・民主党は共和党系州知事が主導した投票制限法に批判の矛先を向ける一方、共和党は20年の大統領選で不正があったとの主張を強めると予想する。共和党がバイデン大統領の弾劾に動き、政治に対する国民の信頼が一段と低下する可能性にも言及した。

【私の論評】今年最大の地政学的リスクは、中国の対外関係ではなく国内問題(゚д゚)!

昨年暮れに、日本では、中国の台湾侵攻がまことしやかに囁かれていました。このブログでは、それはあり得ないことをいくつかのデータをもとに解説しました。

ユーラシア・グループの今年の予測でも、中国の台湾侵攻に関するリスクについては掲載されていません。地政学的危機の分析に定評のある、ユーラシア・グループも、それはあり得ないと分析しているのでしょう。

ユーラシア・グループによる昨年2021年の10大リスクは、以下のリンクからご覧いただけます。興味のある方は、是非ごらんになってください。


今年の最大のリスクは、UG(ユーラシア・グループの略、以下同じ)によれば、何と中国のゼロコロナ政策の失敗です。

確かに、UGは中国のゼロコロナ政策は20年には非常に大きな成功を収めたのですが、今は「はるかに感染力の強い変異株に対し、より広範囲のロックダウンと効果の限られるワクチンといった手段で闘う」状況にあると説明。

「オミクロン株に対する人々の抗体は実質的にゼロだ。ロックダウンを2年続けたことで、再開するリスクが一層大きくなった」と分析しました。コロナ対策の当初の成功とそれへの習近平国家主席の執着が「方向転換を不可能にしている」というのです。

ユーラシア・グループのイアン・ブレマー社長はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「極めて容易に感染し得るが命を脅かすことがそれほどないウイルスと共生する力は、中国のゼロコロナ政策とは正反対に位置している。ゼロコロナ政策はこうしたウイルスに対して機能しないだろうが、中国はそれを堅持するだろう」と述べ、「これは主としてウイルスが招いている課題ではなく、中国政府が自国のやり方から抜け出せないという問題だ」と論じました。

中国のコロナ発生状況のグラフを以下に掲載します。

クリックすると拡大します

昨年から、かなり少ないです。今年1月1日の7日間の平均でも、204人です。中国の人口は、14臆人ですから、これは収束したようにもみえます。

私自身は、この統計自体は信用はしていません。以前GDPに関しても、このブログでは中国のそれは信用できないことをその根拠をもとに主張したことがあります。中国の経済統計は、「政治的メッーセージ(ブロパガンダ)」に過ぎない、断じました。

ですから、コロナ感染者数もプロパガンダに近いものなのだと思います。ただ、それは別にしても、習近平中国指導部は、「ゼロコロナ」であらねばならないと考えているのでしょう。

中国社会は、すべてを国家が決め、国民はそれに従います。国民の間には上から知らされた「とにかくウイルスは怖い」という観念が強く刻まれたままになっています。そうであるからこそ、ゼロコロナの政策を変えられないのです

ゼロコロナの維持は、中国の閉鎖性をさらに高める政策が継続されることで、中国国内の人々とその他世界の人々の意識との落差がいま以上に大きくなり、中国をめぐる国際環境はますます悪化することになります。

ありていにいえば、中国では国家が国民を信用していないのてで、国民にすべての情報を知らせ、国民の判断を尊重するという仕組みが機能していません。そのため政府は失敗が許されなません。権力者は常に全知全能、無謬の存在を演じ続ける以外にないのです。

自らの手段が功を奏したがために、それを国威発揚に利用してしまったがため、その後は他の選択肢が取り得なくなるというパターンは、今回のコロナ対策に限った話ではありません。「一党専制」という一見、強力な仕組みの最大の弱点はここにあります。

これが地政学的な危機をもたらすのは間違いないようです。中国各地でロックダウンが行われれば、昨年あったマスク騒動のようなことが、日本でもおこる可能性があります。それも、大規模に起こる可能性もあるでしょう。生活必需品で中国に頼っているようなものは、要注意です。

昨年までは、中国といえば、中国による外国への介入や干渉が大きな地政学的脅威だったのですが、今年は中国の国内問題がそうなりそうです。

コロナ対策といえば、日本も中国と同じ間違いを犯す可能性は十分にあります。「ゼロコロナ」に拘泥して、しかも病床を増やさないなどの状況が続けば、最近はオミクロン株の感染が増える傾向があり、感染者が増えた場合、しなくても良いというか、本来日本では死者がかなり少ないので、起こりようもない医療崩壊が起こる可能性もゼロとはいえません。

岸田首相

幸いなことに、岸田文雄首相は4日、三重県伊勢市での記者会見で、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の対応について、「自治体の判断で、陽性者を全員入院、濃厚接触者を全員宿泊施設待機としている現在の取り組みを見直す」と述べています。

習近平政権よりは、柔軟な対応ができそうです。ただし、現状ではまだそうでもないですが、感染者が本格的に増えた場合、保健所が対応できない事態は起こりえます。それをなくす意味でも、コロナ感染症を現在の感染症分類の2類から5類に変えるべきです。

5類に分類を変えてしまえば、コロナ感染症もインフルエンザや普通の風邪と同じ扱いができるようになり、保健所がパンクすることも、病床が不足することもなくなります。

2番目、3番目の予測もありそうです。4番目はこれまた、中国の内政に関するものですが、習近平政権は、昨年は中国企業に対する規制を強化したばかりです。この傾向は今年も続くとみられます。これにより、中国経済停滞のリスクはますます強くなるでしょう。

5番目の、ロシアのウクライナ侵攻については、このブログでは、年末にその確率は低いと予測しました。その根拠は、ロシアはいまや一人あたりのGDPが韓国よりも大幅に劣ることと、兵站の大きな部分を鉄道に頼るという致命的な欠陥があることです。

ただ、ロシアはウクライナの侵攻をちらつかせ、米国に対して制裁を弱めることを期待してると私は睨んでおり、実際プーチンはバイデンとの電話会談をする機会を得ました。ウクライナ問題がなければ、このようなことはなかったかもしれません。

バイデンが煮えきらない態度をとったり、譲歩をしてしまえば、地政学的な危機を生み出すのは間違いないです。

ロシアがウクライナに侵攻するしないは別にしても、地政学的なリスクが高まるのは間違いないです。

前線のウクライナ軍を視察するゼレンスキー、ウクライナ大統領

6番目の、イランによる地政学的な危機も理解できるものです。

7番目の、「脱炭素政策とエネルギー政策」も納得できます。脱炭素政策の内容を知れば知るほど、脱炭素と安易に語るべきではないことが、誰にでも納得できると思います。

8番目の、アフガニスタンなどの力の空白も理解できます。アフガニスタン情勢に、中露などが中途半端に介入すれば、泥沼にはまるのは必定です。

9番目の「価値観の衝突に敗れる多国籍企業」にも納得です。米中の対立などにより、中国に進出したり拠点を置いている企業、米中双方からデカップリングされることになりかねません。

10番目のトルコについても、納得です。トルコ統計局が3日発表した2021年12月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比36%でした。単月では19年ぶりの高さで、前月の21%から跳ね上がりました。通貨リラ安による輸出増がけん引して国内総生産(GDP)は膨らむが、賃金上昇が物価高に追いつかず、市民生活は圧迫されています。

今年も、さまざまリスクがありますが、今年最大の地政学的リスクは、中国の国内問題になりそうです。当ブログでも、これに注目し、何か新しい動きがありましたらお伝えします。今年もよろしくお願いします。

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2022年1月3日月曜日

台湾煙酒がリトアニア産ラム酒2万本買い取り=中国の足止めで行き場失う―【私の論評】今後中国に接近するのは、独裁者とそれに追随する一部の富裕層だけが儲かるノウハウを欲するような国ばかりになる(゚д゚)!

台湾煙酒がリトアニア産ラム酒2万本買い取り=中国の足止めで行き場失う


台湾煙酒は3日、中国の港で足止めされて行き場を失っていたリトアニア産のラム酒約2万400本を買い取ったと発表した。台湾の消費者に対し、リトアニアへの応援を呼び掛けている。

リトアニアは台湾への代表機関設置を発表して以降、中国から圧力を受けている。昨年11月には、台湾の代表機関「駐リトアニア台湾代表処」が首都ビリニュスに設置され、業務を開始した。リトアニア側の代表機関は今年初頭に台湾に設置される見通し。

台湾煙酒によれば、昨年12月初旬、中国税関の電子通関手続きシステムの「原産地」リストからリトアニアが削除され、リトアニアから輸出した貨物が中国の港で足止めされた。中国は後にリトアニアをリストに再度加えたものの、すでに足止めされていた貨物は依然として受け入れが認められなかった。

同社は同18日、駐リトアニア代表や財政部(財務省)からの相談を受け、中国に輸出するはずだったリトアニアメーカーのラム酒が行き場を失っていることを知ると、関係先に連絡を取り、ラム酒を買い付けたという。

ラム酒は今月上旬に台湾に到着する予定。ラベルを新しく貼り替えた後で販売するとしている。

【私の論評】今後中国に接近するのは、独裁者とそれに追随する一部の富裕層だけが儲かるノウハウを欲するような国ばかりになる(゚д゚)!


昨年は、中国が台湾に意地悪をして、台湾産パイナップルを輸入しませんでしたが、日本が買い付けました。日本の買付高は、従来の中国の買付高を上回ったそうです。

私も購入しました。美味しかったです。私は、それ以外にも、台湾産パイナップルケーキも購入しました。これも良かったです。また、機会があれば、購入したいです。

台湾のパイナップルケーキ

さて、人口約280万人のヨーロッパの小国バルト三国に一つリトアニアは、昨年は大国・中国相手に大立ち回りを演じて、世界の注目を集めました。かつてはちょうど30年前に消滅したソ連邦の構成国のひとつで、現在はEU加盟国です。日本との関係で言えば、第二次世界大戦中にこの地に赴任していた日本人外交官・杉原千畝氏がユダヤ人に発給した「命のビザ」が有名です。

昨年5月、リトアニア議会が中国の新疆ウイグル自治区での人権問題について「ジェノサイド(大量虐殺)である」と決議しました。さらに中国が中・東欧で進める経済構想圏から離脱しました。

昨年7月には台湾がリトアニアに事実上の大使館に相当する機関を設置することを発表、リトアニアも台湾に同様の機関を置くと発表しました。蔡英文総統が就任して以来、ここ5年間で台湾は中国の戦狼外交によって7ヵ国との外交関係を失っていました。

台湾がヨーロッパに代表機関を置くのは18年ぶりといいます。蔡総統の右腕である陳建仁・前副総統はリトアニアを訪問して「リトアニアは自由と民主主義の先駆者だ」と称賛しました。

中国は、この動きに反発を強めました。まずは駐リトアニア大使を召還し、中国にあるリトアニア大使館の名称を変更して外交上の「格下げ」にしました。

さらに12月21日のロイター電によれば、多国籍企業に対してリトアニアとの関係を絶たなければ中国市場から閉め出すと圧力を掛けました。

リトアニアがこれほど中国と対決姿勢をとるのは、中国がロシアと接近していることの警戒感があるとされています。両国とも強権主義の国であり、リトアニアはかつてソ連に併合された歴史もあります。そのため、30年前のソ連解体の過程でもっとも早く独立宣言をしたのはリトアニアでした。

リトアリアに限らす、中東欧諸国では中国に限らず、中国が政治・経済の両面において強い影響力を誇った時代は終わりつつあります。これについては、このブログでも掲載したことがあります。その記事の、リンクを以下に掲載します。
中東欧が台湾への接近を推し進める―【私の論評】中国が政治・経済の両面において強い影響力を誇った時代は、徐々に終わりを告げようとしている(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくもとして、以下に一部を引用します。
中国は人口が多いので、国全体ではGDPは世界第二位ですが、一人あたりということになると未だこの程度(1万ドル前後)なのです。このような国が、他国の国民を豊かにするノウハウがあるかといえば、はっきり言えば皆無でしょう。

そもそも、中国が「一帯一路」で投資するのを中東欧諸国が歓迎していたのは、多くの国民がそれにより豊かになることを望んでいたからでしょう。

一方中国には、そのようなノウハウは最初からなく、共産党幹部とそれに追随する一部の富裕層だけが儲かるノウハウを持っているだけです。中共はそれで自分たちが成功してきたので、中東欧の幹部たちもそれを提供してやれば、良いと考えたのでしょうが、それがそもそも大誤算です。中東欧諸国が失望するのも、最初から時間の問題だったと思います。

ちなみに、日本、台湾、中国、リトアニアのGDPの推移のグラフを以下に掲載します。

一人あたりの名目GDPということでは、リトアニアも中国を上回っています。リトアニアも中国とあまり違いがない時代もありましたが、それはやはり冷戦の悪影響を受けたためでしょう。

台湾は、中国やリトアニアよりも高いです。これらの国々は日本をはじめ、中国よりは民主化がすすんでいます。民主化と経済発展には相関関係があります。民主化が進んでいる国のほうが、経済発展する可能性が高いです。それは、この引用記事に掲載した高橋洋一が作成したグラフでもわかります。

点の一つ一つが各国の一人あたりのGDPを示します

このグラフからもわかるように、民主化されていない発展途上国が、経済発展をしても、民主化しないと1万ドル前後で成長か止まってしまうのです。これを中進国の罠といいます。例外産油国などの特殊な例外をのぞいてはほとんどありません。

リトアニアとしては、最初は経済が発展しているようにみえる中国に期待したのでしょうが、実際蓋をあけてみると、失望することばかりだったのでしょう。

これは、当然といえば当然です。リトアニアは一人ひとりの国民を豊かにしたいと期待してたのでしょうが、中国にはそのようなノウハウは全くなく、世界をみまわしてみると、台湾という民主国があり、人口はリトアニアよりは、多いですが、中国(人口約14臆人)と比較すれば、小さな国です。

しかし、台湾のほうが一人あたりのGDPは高いです。そうであれば、リトアニアにとっては、台湾のほうがより参考になると考えたのでしょう。しかも、台湾は半導体などで、先端分野を切り開いている国です。何よりも、中国よりもはるかに民主的ということで、リトアニアは、台湾と親交を深めることに決めたのでしょう。

リトアニアや他の中東欧諸国等の行動をみていると、今後中国に接近する国は、非民主国であり、独裁者とそれに追随する一部の富裕層だけが儲かるノウハウを欲するような国ばかりになるのではないかと思います。

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2022年1月2日日曜日

ロシアのコロナ死者、公式発表の2倍超…最多の米に次ぐ65万人とロイター報道―【私の論評】今年は、マスコミに煽られて人生を諦めるようなことがあってはならない(゚д゚)!

ロシアのコロナ死者、公式発表の2倍超…最多の米に次ぐ65万人とロイター報道

モスクワ市内で新年を祝う人たち(1日)

 ロイター通信は、ロシアの新型コロナウイルスによる死者数が約65万9000人に上り、米国の約82万人に次いで世界で2番目の多さになっていると報じた。国際的な集計に使われている露政府対策本部のデータで死者数は30万人超で、2倍以上の差があることになる。

 露政府は新型コロナによる死者を、ウイルスが死亡の「根本的な原因」だったと診断した場合のみ認定している。既往症の悪化などで死亡した関連死は含んでいない。これまでも「過少申告」を指摘されてきた。

 ロイター通信は昨年末、露統計局と独自の集計をベースに、2020年4月以降の新型コロナの死者数を算出。世界2位のブラジル(約62万人)を上回る数字となった。露有力紙RBCも昨年末、死者数が約63万人に達したと伝えている。

【私の論評】今年は、マスコミに煽られて人生を諦めるようなことがあってはならない(゚д゚)!

新年早々なので、穏やかでありたいとは願ってはいるのですが、上の読売新聞の記事をみていると、私はイライラします。

なぜなら、実数だけを比較しているので、実体が全く見えてこないてのです。そもそも、米国、ロシア、ブラジルでは人口が違います。2020年の統計では、米国3.295億人、ロシアは1.441億人、ブラジルは2.126億人です。人口を無視して、実数だけあげられても、深刻度合いがどの程度なのか、比較などできません。

そこで、実体はどうなのか知りたいと思い、読売新聞社オンラインの提供する「主な国の新規感染・死亡者数」というサイトから100万人あたりの新規死亡者数のグラフをみてみました。

そのグラフが以下です。


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100万人あたりで、比較すると、ロシア政府が公表する数字であっても、ロシアが10月4日あたりから、ロシア、アメリカ、ブラジルでは一番死者が多いです。これをみただけでも、ロシアは一番数が多いということがわかります。さらに、ロイターによれば、本当はこの倍くらいは死者がいるということですから、これは米・ブラジルよりはかなり多いということになります。

ただし、100万人あたりで、数人とか、十数人という数自体は、さほど深刻でもないと思います。なぜ、上の記事ように大騒ぎするのか良くわかりません。無論、亡くなった方はお気の毒ですが、インフルエンザや他の病気で死亡する人の数のほうがもっと多いはずです。交通事故の死亡者のほうがはるかに多いです。最近の統計では、ロシアの道路では、毎日平均で約50人が死亡しているのです。

上のグラフに日本を付け加えると、以下のようになります。

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日本では、ゼロ近傍の日が続いています。そのような日本では、全国て初詣が行われおり、大勢の人が集まっています。

明治神宮

ロシアでは確かに、100万人あたりの死者は多いですが、それにしても一番上の写真は、モスクワ市内で新年を祝う人たちですが、ほとんど人がマスクをせず、屈託なく陽気に笑っています。この人達は、本当に人生を楽しんでいるように見えます。

冒頭の記事を書いた記者は、この写真をみても何も感じないのでしょうか。私は感染症に関して、感染者数や死者数の実数だけで報道しても本当の深刻さなどはわからないということは、昨年コロナ禍がはじまった頃から、主張してきました。

マスコミは、ロシアのコロナによる死者数を煽る一方で、ロシアのウクライナと侵攻も煽っています。本当にコロナで死者数が増えて、深刻な状態になっているのなら、ロシアはウクライナ侵攻どころではないはずです。こうした矛盾にも気づかないのでしょうか。

マスコミの姿勢は未だ変わらないようです。最近は、オミクロン株など感染力は強いものの、死者が少ないことから、やはり弱毒性であることは明らかになりつつあります。さらに、ワクチンだけではなく、治療薬も出回るようになってきました。コロナは普通の風邪やインフルエンザに近づきつつあるようです。

ほとんど死者が増えない日本では、他の国々から比較すれば、もはやコロナは収束したとみなして良いかもしれません。

それでも、特に冬期はコロナだけではなく、インフルエンザもありますから、マスクや手洗いなども励行し、三密も避けるようにはしつつも、私達もロシアの人たちのように人生を素直に楽しもうではありませんか。マスコミに煽られて、人生を諦めることや、歪んだ認識を持つことがあってはならないと思います。

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2022年1月1日土曜日

蔡総統、中国をけん制「情勢を見誤るべきでない」=元日の談話/台湾―【私の論評】現在の蔡英文政権に唯一心配な点は、過去の日本のように失われた20年を招いてしまう可能性(゚д゚)!

蔡総統、中国をけん制「情勢を見誤るべきでない」=元日の談話/台湾

新年の談話を発表する蔡総統

蔡英文(さいえいぶん)総統は1日、総統府で新年の談話を発表し、台湾と中国は地域の平和と安定を維持する責任を共同で背負うと強調。中国に対し「情勢を見誤るべきでない」とけん制した。

蔡氏は、今年は多くの課題に向き合わなければならないとした上で、台湾の国際参加▽経済発展パワーの維持▽社会安全システムの強化▽国家主権の防衛―を「堅実な政権運営」のための柱だと強調した。

国際参加については東南アジア諸国などとの関係を深化させるほか、自由貿易協定(FTA)締結に向けた米国との貿易投資枠組み協定(TIFA)協議、環太平洋経済連携協定(TPP)への加入などに注力する考えを示した。

経済面では、台湾産業の影響力と競争力を高めなくてはならないと指摘。インフレや住宅価格の高騰に対応し、実質所得の増加や生活水準の向上を図るとした。

また「香港の情勢を引き続き注視する」と表明。投票率がわずか3割にとどまった昨年12月の立法会選挙や多くのメディア関係者が逮捕されたことに触れ、香港の民主主義の発展と人権や言論の自由に対する懸念を示した。

蔡氏は民主主義と自由を追い求めることは犯罪ではないとし、台湾が香港を支持する立場は変わらないと語った。

中国との関係については、「圧力に屈せず、支持を得ても冒険はしない」とする台湾の立場を改めて説明。双方が努力して人民の生活に関心を払い、社会や国民感情を安定させてこそ、平和的な方法で問題に向き合い、解決策を見いだせると呼び掛けた。

【私の論評】現在の蔡英文政権に唯一心配な点は、過去の日本のように失われた20年を招いてしまう可能性(゚д゚)!

皆様、明けましておめでとうございます。昨年中はお世話になりました。今年もよろしくおねがいします。今年の当ブログは台湾の話題から始めようと思います。

蔡英文総統が、中国に対し「情勢を見誤るべきでない」とけん制したのには、それなりの背景があります。

「台湾有事」が切迫しているというシナリオがまことしやかに論じられ、中には尖閣諸島(中国名:釣魚島)奪取と同時に展開するとの主張すら出ています。「台湾有事論」の大半は中国の台湾「侵攻」を前提に組み立てられていますが、その主張が見落としているのは、中国軍の海上輸送力です。

これについては、昨年末も述べたばかりです。それを以下に要約すると以下のようになります。
中国が台湾を武力統一しようとする場合、最終的には上陸侵攻し、台湾軍を撃破して占領する必要があります。来援する米軍とも戦わなければならないです。

その場合、中国は100万人規模の陸上兵力を発進させる必要があります。なぜなら台湾軍の突出した対艦戦闘能力を前に、上陸部隊の半分ほどが海の藻くずとなる可能性があるからです。

100万人規模の陸上兵力を投入するためだけにでも5000万トンほどの海上輸送能力が必要となります。これは中国が持つ全船舶6000万トンに近い数字です。

中国側には台湾海峡上空で航空優勢(制空権)をとる能力がなく、1度に100万人規模の上陸部隊が必要な台湾への上陸侵攻作戦についても、輸送する船舶が決定的に不足しており、1度に1万人しか出せないのです。そしてなによりも、データ中継用の人工衛星などの軍事インフラが未整備のままなのです。
以上の理由のため中国が、台湾に数年以内に軍事力を用いて侵攻するとは考えられません。まずは海上輸送力を増強し、一度の100万人程度の陸上兵力を発進させる能力をつける必要があります。

ただし、軍事的以外の方法での台湾浸透というやりかたもあります。国際社会から台湾を孤立させ、中国に頼る以外の選択肢をなくすとか、台湾社会に工作員を深く浸透させて、中国側に寝返らせ、最終的に台湾を傘下におさめてしまうななどのやり方もあります。

ただし、そもそも「危機管理」や「安全保障」とは、「事を起こさないようにどう備えるか」、また、「もし起こった時にどうするか」を考え、事前に準備することです。そうして、事が起こったら即座に対応する事が常道です。

その観点から台湾はさらに軍事力を増強するとともに、軍事力以外での中国浸透にも備えていくべきであるのは言うまでもありません。これに対して、日本が台湾有事にどのように行動すべきかを備えるべきであることも言うまでもありません。

ただ、少なくとも当面の軍事的侵攻は確率的にかなり低いことから、蔡英文総統は「情勢を見誤るべきでない」とけん制することができたのでしょう。さらに、日本ではあまり報道されないものの、上記のような内容は、詳細に台湾でも多くの国民に共有されていると思います。

もし、軍事的脅威が身近に迫っていれば、蔡英文総統は、もっと穏やかな表現を選んだと考えられます。それに、今頃台湾から脱出する人も大勢いて、ニュースになっているはずです。日本にも帰化を望む人など、大勢が来ているはずです。

それに台湾在住邦人も有事に備えて、台湾から脱出し日本に帰ってきているはずです。そのようなニュースは台湾でも、日本でも報道されていません。

2020年に一国二制度が踏みにじられた香港からはかなりの人が脱出しました。昨年はパンデミックのまっただ中にあったにもかかわらず、台湾だけで1万800人余りの香港市民が居住許可を取得しました。この数は前年のほぼ2倍です。

今年1月末に英国が海外市民(BNO)旅券の受け付けを開始すると、2カ月間で3万4300件の申請がありました。議会に提出された公的な見積もりによると、通年では約12万件と、1990年代前半に香港から移住した年間人数の2倍になりました。これは年金の脱退や、多くの移住プログラムで必要とされる犯罪歴の照会申請増加などでも裏付けられています。

このような動きは台湾ではみられません。もし本当に中国の脅威が身近に迫っているというのなら、昨年あたりからそのような動きがみられるはずですが、そのようなことはありません。

さて、蔡英文総統の、「新年の談話」では、ほとんどの話が同意できるのですが、一つ気になることもあります。

それは、経済面では、特に国内で、インフレや住宅価格の高騰に対応し、実質所得の増加や生活水準の向上を図るとした点です。実際にインフレ率はどうなのか、以下に日本・米国・台湾のインフレ率の推移を示すグラフを掲載します。

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インフレ率に関しては、日台は米国と比較して低めです。米国は昨年は単月では、6%を超えたこともあります。台湾では、2021年の推計値では、1.6%です。これは、日本の-0.17%と比較すれば、まともですが、それでも高いとはいえません。失業率は、2021年の推計値は台湾は4%近いです。日本は、2%半ばです。

日本を筆頭に、韓国、台湾などの国々はなぜか、あまり金融緩和をしない傾向があります。それでも、日本では安倍内閣が成立した、2013年4月より金融緩和に踏切、その後はイールドカーブ・コントロールで控えめながらも、現在でも緩和を続けており、失業率は比較的低い状況を維持しています。それ以前は、金融引締を継続していました。

米国はもともと失業率が高いですが、それでも2021年の推計では、 5%台であり、若干高めの水準ではありますが、昨年末では4.2%(前月:4.6%、市場予想:4.5%)と前月から▲0.4%ポイント低下し、市場予想を上回る改善を示しました。(3%〜4%は米国では普通)

日台と米国とでは、明らかに政策の違いがあります。米国は一時高いインフレ率を許容し、中央銀行が量的緩和を拡大し、さらに政府もこれに呼応して積極財政を実施しました。これは、「高圧経済」といっても良い政策です。

「高圧経済論」とは潜在成長率を超える経済成長や完全雇用を下回る失業率といった経済の過熱状態を暫く容認することで、格差問題の改善も含めて量・質ともに雇用の本格改善を目指すというものです。

米国はこの高圧経済政策はコロナ禍に見舞われた後のトランプ政権時代から、さらにバイデン政権でも継続されました。バイデンはインフラ投資法案を成立させ、さらに大型予算「ビルド・バック・ベター(よりよき再建)」を組もうとしましたが、議会に阻止されてしまいました。ただ、今年はまたこれに取り組むことでしょう。

日本や米国との対比からみると、台湾は失業率が3%台もしくはそれ以下になるまでは、金融緩和の余地が十分にあると思います。このあたりは、まともな台湾経済の専門家の意見を聞きたいものです。ただ、余地はあるとはいえると思います。

蔡英文総統の発言には気になるところがあります。それは、「インフレや住宅価格の高騰に対応し、実質所得の増加や生活水準の向上を図る」としている点です。

インフレは一般物価でみるものであり、住宅価格は個別物価であり、一般物価と個別物価を同一次元でみるべきではありません。インフレ・デフレの問題はあくまで一般物価をものさしにしなければなりません。実際現在の台湾のインフレ率は高いとはいえません。

日本では、一般物価をみないで、○○の物価が上がった、□□の物価が上がった、△△の物価も上がったなどと大騒ぎして、挙げ句の果に「スタグフレーションになる」と騒ぐ、マスコミや識者までいます。愚かとしか言いようがありません。

日本では、どちらかというと、デフレ気味ですか、住宅価格は人手不足で上がり続けています。住宅価格が高騰すると、家を購入することを諦めた人は、それを他の消費に振り向けるける傾向がみられようになります。そうなると、他の物価が上がりやすい傾向になります。

個別の物価だけ注目しても全体は見えてきません。だから、住宅価格だけで物価の全体の動向をみるのではなく、一般物価でみるべきなのです。台湾が現在の状況で金融引締などすると、景気が落ち込むことになるでしょう。

日本では、1990年代のバブル時代に日銀が土地・株価が高騰していることを理由に金融引締に転じてしまいました。そもそも、土地・株価は一般物価とは別ものです。しかも、その当時の一般物価をみてみると、決してバブルではなく、適正範囲内に収まっていました。

日銀があの時期に必要のない金融引締に転じたため、その後バブルは崩壊し、失われた20年という、日本はデフレから抜け出せない時代が続いたのです。日本国内では、なぜかあまり、そのことがあま理解されていませんが、台湾ではどうなのかと心配になってしまいます。

台湾にも、このような日本の過去の間違いを繰り返してほしくありません。韓国では、近年金融緩和をせずに、機械的に最低賃金だけをあげ、雇用が激減するという、考えられないような致命的なミスをし、その余波はまだ続いています。

台湾は、今後しばらくは、「高圧経済」を目指すべきです。その上で、失業率が下がらない状態が続けば、高圧経済をやめれば良いのです。それが、実質所得の増加や生活水準の向上を図る最大の近道です。今の段階で、金利を上げるとか、量的緩和をやめるとか、金融引締に転じるというようなことはすべきではありません。

経済が悪化すれば、国民の不満が鬱積しそれこそ中国に浸透されやすくなります。国民党が勢いを盛り返すことにもなりかねません。国内の経済の安定も安全保証上重要なのです。蔡英文政権で唯一懸念することといえば、このことです。もちろん、これは私が老婆心から言っているだけで、これが外れている可能性は高いかもしれません。

ただ、やはり蔡英文政権には、正しい経済政策をとって欲しいです。そうして、経済政策では煮えきらない、日本の岸田政権に手本を見せてほしいものです。そうして、日台首脳会談が開催されることにでもなれば、その手本について、人の話を聞く耳を持つ岸田総理に話していただきたいものです。無論、対中国政策についても然りです。

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