2022年1月17日月曜日

もう手遅れ!岸田政権の「オミクロン対策」と「増税論」は根本的に間違っている―【私の論評】岸政権のお粗末ぶりが、誰にでもわかるように顕在化してからではすべてが手遅れに(゚д゚)!

もう手遅れ!岸田政権の「オミクロン対策」と「増税論」は根本的に間違っている

「場当たり対応」でどこまで持つのか

なぜ10~11月に手を打たなかったのか

 岸田政権がオミクロン対策で苦慮している。濃厚接触者の待機期間を短縮するなど「柔軟な対応」を強調しているが、一方でワクチンの3回目接種は進まず、米軍基地での感染拡大問題でも米国との交渉は遅きに失したとの見方もある。政府の対策が十分なのか。

 新型コロナの感染症法上の分類について、安倍元首相や維新の松井大阪市長、さらには小池都知事からも2類相当から5類への引き下げする案が出ている。しかし岸田文雄首相は、「感染急拡大している状況で変更するのは現実的ではない。2類から5類に一旦変更し、その後、変異が生じた場合、大きな問題を引き起こす」と消極的だ。

  5類への引き下げ決定は、新型コロナの感染者数が極めて少なかった昨年10~11月にやっておくべきだった。ワクチンの3回目接種は、在庫があったその時期に手を打たなかった。そのため沖縄では医療従事者が感染し医療にも支障が出ているという。分類変更もそれとも同じで、波静かなときに何も準備しなかったことが問題だ。今さら手遅れだが、手順を間違えたと言わざるを得ない。

  筆者の見立てでは、第6波では一日あたりの感染者数はこれまで最高になるだろうが、死亡率は第5波より小さくなるとみている。せいぜい0.2%程度であり、ひょっとしたらインフレエンザ並み(0.1%程度)になる可能性もある。

岸田政権の「場当たり対応」の罪

 また、岸田首相の「今後変異があるから、変更すると大問題を起こすので対応できない」というロジックもおかしい。これはやらないことをいう「官僚答弁」である。

  一般論として、ウイルスは変異するたびに感染力は強くなるが弱毒化していく傾向がある。もちろんその一般論に当てはまらないことも少ない確率であり得るが、そのときには再び分類を変更すればいい。「柔軟に対応する」と岸田首相は言うが、こうした柔軟性こそ持つべきだ。変異があるからこそ、迅速に対応すべきなのだ。

  こうしてみると、菅政権時代との差は著しい。菅前首相は、厚労省に任せていたところ「ワクチン接種は11月までかかる」と言われたので、河野太郎氏をワクチン接種担当大臣に任命し、実務主体に厚労省だけではなく総務省を加えて地方自治体が動きやすいように工夫したという。その結果、1日100万本という、メディアからは無謀と言われた目標を驚異的なスピードでクリアし、ワクチン接種は先進国でトップレベルになった。

菅前総理

  ワクチンの調達に関しても、菅前首相は、バイデン大統領と西側諸国ではじめての対面での首脳会談を行い、それと合わせてファイザー社社長とも交渉し、日本として有利なワクチン調達を行った。

  ひるがえって岸田政権では、堀内ワクチン接種担当大臣の存在感もなく、実務対応力はかなり貧弱になっている。ワクチンの3回目接種は先進国間で比べれば信じられないくらいにスピードが遅い。岸田首相は未だに日米首脳会談も開催できていないため、ファイザー社を含めてワクチン調達でトップ会談が行えていない。現場の医療関係者からも、「菅政権のときのほうがやりやすかったと」いう声が挙がる。

  岸田政権は「先手、先手」と口では言うが、実際は、先を読まずに、場当たり対応しているだけだ。しかも、本コラムで書いたように、官僚を後ろから撃つようなこともしているので、ますます官僚の初動が鈍くなっている。「国民に対して仕事をする」という観点から見れば、岸田政権は菅政権と比較して仕事をしていないのだ。

相変わらずPBに固執して「増税」へ

 その一方で、増税への布石は着々と進んでいるようだ。1月14日、今年最初の経済財政諮問会議を開催し、岸田首相は、国と地方合わせた基礎的財政収支(PB)を2025年度に黒字化する目標を維持する考え方を示した。諮問会議で示された中期財政試算を容認した形だ。

  筆者は、1月3日付本コラム『「日本は借金で破綻する」は本当か? 財務官僚の大嘘を暴く グロス債務だけ見るのは笑止千万』において、「今の片手落ちのPB目標による経済運営」は、基本的に政府のグロス債務残高をコントロールするための指標なので不十分と断言し、統合政府でのネット債務残高を財政健全化に使うべきとしている。

  しかし、政府では相変わらずPBに固執している。先日のコラムで数式を出さなかったが、以下のとおりだ。


  要するに、PB対GDP比とともに、マネタリーベース増対GDP比も加味して見なければ、本当の財政健全化の指標になり得ない。

財政健全化にもつながらない

 政府のPBは地方政府も含んでいるが、国だけとしても2020年度PB対GDP比は▲9.3%と大きい。それを2025年度に黒字化しようとするのは、大増税を唱えているのに等しい。

  しかし、本当の財政状況である統合政府のネット債務対GDP比はほぼゼロである。しかも、2020年度のPB対GDP比▲9.3%としても、マネタリーベース増対GDP比は19.6%だったので、これらを合計すれば10.3%(前期債務残高対GDP比、前期マネタリーベース対GDP比、成長率、金利も影響があるが、今の時点でこれらの影響は少ないので無視)。これは実質的なPBは実は黒字化していることを意味している。そのため、統合政府ベースのネット債務残高は減少し、ほぼゼロになっているのだ。

財務省

  PB対GDP比が▲9.3%で黒字化するなら大変だろうが、実は+10.3%ならもっと赤字でもいいことになる。

  そもそも政府のグロス財務残高に着目するのは会計的にも誤りだし、その間違ったPB黒字化に向けて増税することは、かえって政府全体の財政健全化にならない。

  今国会が今日1月17日から始まるが、国会で財政健全化議論をしっかりやってほしい。特に、グロス債務残高だけで議論する財務省やマスコミの欺瞞を糺すべきだ。そのグロス債務残高から出てくるのが、PB黒字化だ。

  はっきり言おう。政府のPB黒字化目標は、会計的にもファイナンス論からも、完全な誤りである。

【私の論評】岸政権のお粗末ぶりが、誰にでもわかるように顕在化してからではすべてが手遅れに(゚д゚)!

上の記事をみていると、岸政権のお粗末ぶりが誰にでもわかるようにはっきり健在化してからでは、すべてが手遅れになりそうです。

岸田政権には、外交・安保も経済も、何も期待できないようです。

まずは外交面では、岸田首相は昨年12月24日、中国当局による新疆ウイグル自治区などでの人権弾圧を受けて、やっと北京冬季五輪への政府代表の派遣見送りを表明しました。

ジョー・バイデン米大統領が「外交的ボイコット」を明言したのは同6日でした。それから、岸田首相は「適切な時期に」「わが国の国益に照らして」などと、のらりくらりを繰り返ました。

では、逆に「我が国は閣僚を北京五輪に覇権する」といえるだけの、胆力や、国民の理解をえられるだけの理念でもあるのかといえば、そのようなこともないようです。


「人権」は、人類にとって普遍的価値であるはずです。岸田首相は何を伝えたいのか、まったく理解に苦しむ対応であり、結果として中国を利しただけです。

一部では、岸田首相とバイデン大統領の、初の対面での日米首脳会談がセットされないのは、米国が「岸田政権の対中姿勢」に不信感を持っているためと伝えられています。

日本の外相は「政界屈指の親中派」とされる林芳正氏です。この人は、過去には年に中国に7回も行ったことがあるそうです。しかも、外務大臣になったとたんに、中国からの招待があったことを明かすなど、外交儀礼も知らないような振る舞いをみせました。

バイデン政権が、この人事に不信感を持つのは当然といえます。「外交的ボイコット」をめぐる対応も加えて、米国の怒りを買った可能性が十分あります。

この人に期待しても無理なのかもしれませんが、日本は外交面で、明確な立場を表明すべきです。

明確な立場とは、外交・安全保障分野では、日本が東アジアにおけるリーダーシップを発揮することです。日本と米国、日米豪印による戦略的枠組み「QUAD(クアッド)」の関係強化や、自衛隊と欧米各国の軍との共同訓練の増加など、着実に進めるべきです。

2022年度の予算案で防衛費は前年度比1・1%増の5兆4005億ですが、1%程度の増加では米国は「誤差の範囲」としか評価しないでしょう。憲法改正のための具体的な議論の進展も米国は注視しています。


経済もほとんど期待できないようです。先進各国でCPI(消費者物価)が大きく上昇するなかで、日本のエネルギー除いたベースのCPIコアは前年比-0.6%(2021年11月)です。携帯電話料金の引き下げで押し下げられているので、これを除けばエネルギー除くCPIコアはプラスにはなりますが、それでも1%未満あたりでしょう。

米国とは異なり、日本ではインフレ率が依然として低すぎるので、今後の政策対応次第ではデフレに陥るリスクを回避する必要があります。そのため、必要な政策対応も米国とは大きく異なでしょう。

 2021年の米国で見られたように、効果的で十分な財政政策がしっかりと実現されていれば、日本でも経済成長が上振れ同時に2%に近づくインフレ上昇が起きていた可能性もあったかもしれません。

実際には2021年1-3月からは経済成長が止まり、ほぼゼロ成長で停滞したことで、CPIはわずかなプラスにとどまったのです。最大の要因は、米欧対比では規模が小さいコロナ感染拡大に対して、医療資源が早々に逼迫したことにあります。 

このため、緊急事態宣言が長きにわたり発動され、民間の経済活動が抑制されてしまいました。医療機関に対して危機時のガバナンスが行われた米欧のように医療資源が機能していれば、2021年に日本でも経済成長率は上振れになった可能性があります。 

その上で米国同様に、経済成長押し上げに直結する大規模な給付金などで家計の支出が刺激されれば、米国と同程度の高成長が起きたに違いありません。そうなれば、日本で最大の問題であった低インフレから脱却して、米欧と肩を並べるようなインフレ率の大幅な上昇の可能性があったのではないかと思います。

2022年早々に日本でもオミクロン変異株の広がりで感染者は増えていますが、治療効果が高い経口薬が広がれば、新型コロナの状況は大きく変わる可能性があります。新型コロナが経済成長を抑制しなければ、日銀の金融緩和政策の効果が強まり、米欧に追いつく格好で日本のインフレ率も2%に近づくシナリオにも期待できるでしょう。 

このブログにも掲載したように、11月の企業物価指数は前年同月比9・0%上昇の108・7で、伸び率は比較可能な1981年1月以降で最大、指数は85年12月以来、約35年11カ月ぶりの高い水準となっています。ここで岸田政権が、積極財政を打ち出していれば、物価目標を達成できる可能性もでてきます。

岸田政権がしっかりとコロナ対応を繰り出し、成長を高める経済政策を行う可能性は低いようです。むしろ、アベノミクス路線からの転換につながりそうな、「新しい資本主義構想」が具体化する中で、脱デフレの前に経済成長を抑制する可能性が高いと思います。 

「コンクリートから人へ」のキャッチフレーズを打ち出し増税政策に邁進して、官僚に金融政策を任せた、かつての民主党政権の失敗を繰り返す可能性すらあります。 

民主党が支持率の高い人気政党だった頃に東京の地下鉄で掲載された広告

また、2021年の日本の経済成長を抑えた医療体制逼迫に関して、これを回避する十分な対応ができていない可能性があります。外国での先例からすれば、オミクロン株の感染者は、昨年半ばのデルタ株感染者拡大時よりも大きく増える可能性が高いです。

感染者が増えても弱毒化したと見られる変異株に応じた適切な対応が行われれば良いですが、今後もコロナは2類感染症として原則対応されるのですから、感染者数が増えれば病床使用率も上昇するでしょう。 

岸田政権は、病床確保のための「見える化」のシステム整備を行っていますが、病院間の情報共有が進んでいない事例がみられます。また、病床と医療人材の双方を増やすインセンティブを高める充分な予算措置、そして医療機関へのガバナンスを効かせる法的措置が行われていません。

実際岸田政権は病床確保強化のための感染症法改正案について国会への提出を見送っています。先日もこのブログで示したように、次の国会で岸田政権が提出する法案はほとんどないようです。夏場の参議院選挙を控えて、資源を選挙に回すために危機に備えた対応強化を控えたいのでしょうか。 

また、諸外国ではブースターワクチンの接種が相当に進んでいますが、日本でのブースター摂取率は1月7日時点で75万人と、諸外国対比で圧倒的に低いです。オミクロン変異株の重症化を防ぐためにワクチン接種は必要だろうが、ブースター接種の遅れも、事態が流動的に動く中で日本の保健行政が依然として十分機能してない可能性を示してます。 

2021年同様に米欧対比で少ない感染拡大であっても病床使用率が上昇すれば、再び経済活動自粛が強要されます。日本は、ゼロコロナを目指して厳しい経済統制が行われる中国とは異なりますが、強い同調圧力によって似たような経済停滞が起きてしまう可能性があります。デフレ克服の機会を、2022年も再度逸することになりそうです。

私は、安倍政権だったときも、菅政権だったときも、是々非々で批判すべきところは、批判し、評価すべきところは評価してきました。菅政権は、コロナが収束していない状況では、そのまま継続すべきとこのブログで主張しました。しかし、岸田政権になってからは、批判ばかりです。菅政権が今も継続されていたとすれば、現在の岸田政権よりは、はるかにマシだったと思います。

甘利氏が幹事長から外れたにしても、岸田政権の体たらくは酷いものです。このままだと、民主党政権とあまり変わらないようになってしまうかもしれません。

岸田首相はこのまま夏の参院選まで、明確な立場を示さないつもりかもしれないです。それでは、岸田政権に期待することも、支持することもできないです。これほど酷いとは、誰も思っていないかったのではないでしょうか。

今後岸田政権が、良い法に方向転換することは期待できないようです。であれば、自民党としては新たな総裁のもとで、やりなおされた方が良いのではないでしょうか。

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2022年1月16日日曜日

トンガ噴火で気候変動に懸念 SNSで「令和の米騒動」不安視する声―【私の論評】本当の大問題は、中国経済の低迷とトンガ噴火による寒冷化の悪影響が重なるかもしれないこと(゚д゚)!

トンガ噴火で気候変動に懸念 SNSで「令和の米騒動」不安視する声

トンガ沖海底火山噴火の様子

 南太平洋のトンガ沖で発生した海底火山噴火で、気候変動や穀物生産への影響を心配する声がSNS(ネット交流サービス)上で相次いでいる。1991年のフィリピン・ピナツボ火山の噴火が原因になった日本のコメ大凶作「平成の米騒動」を引き合いに、「令和の米騒動」が起きるかもしれないと不安視する声もあり、懸念が広がっている。


 <平成の米騒動って、覚えていますか(略)あの時、初めてタイ米食べたわ 今回はそれ以上の、世界的な気候変動がありそう>  ツイッターに投稿された「平成の米騒動」を引き合いに出すこの投稿は、16日正午現在で1万3000件以上リツイートされている。

  平成の米騒動は、93年に起きた深刻なコメ不足だ。80年ぶりとなる記録的な冷夏で日本全国のコメが不作に。コメの全国作況指数は74と戦後最悪で、国の備蓄も底を突いた。国はタイ米を緊急輸入し、コメを販売する店には長蛇の列ができるなど、大騒ぎになった。

  この原因になったのが、20世紀最大級とされる91年のピナツボ火山の巨大噴火だ。噴出物が成層圏に大量に放出され、地球全体の平均気温が最大約0・5度下がるなど、世界の気候に影響を及ぼした。 

 今回のトンガ噴火も、噴火の規模がピナツボ火山と同程度の可能性がある。ツイッター上では、ピナツボ火山と同様、気候変動や穀物生産への影響を懸念する声が相次いでいる。<噴火の粒子で日光が遮られて農作物生産に影響でたら目も当てられないんだけど、どうなるか……>

  中には、平成の米騒動にちなんだ「令和の米騒動」という言葉をツイートする投稿も。<さて…今年は冷夏と厳しい冬になりそうですね……令和の米騒動にならなきゃ良いけど><トンガの大噴火で令和の米騒動が起こりうるのか……津波だけの問題じゃないし対岸の火事でもない>

  一方で、<当時とは気候も栽培環境も違っている。同じ事が起こるとは思えない>、など、大規模な影響を否定する意見もあった。【山下智恵/デジタル報道センター】

【私の論評】本当の大問題は、中国経済の低迷とトンガ噴火による寒冷化の悪影響が重なるかもしれないこと(゚д゚)!

大規模な海底火山噴火から30時間以上が経過したトンガの詳しい情報は依然分かっていません。一方、津波は南北アメリカ大陸にも到達しています。

 ニュージーランドのアーダーン首相は、

 「沿岸部では商店などの建物に被害があり、大がかりな撤去作業が必要です。首都ヌクアロファは厚い火山灰に覆われているが状況は安定しています」

こう述べたうえで17日に軍の偵察機を派遣するとしています。被害が最小限に留められることを祈るばかりです。日本も、トンガに対してできるだけの支援をすべきと思います。

これだけ大きな噴火となると、日本にも何らかの形で大きな影響がでるかもしれません。

確かに、上の記事でも指摘されているように、日照不足で冷夏だった1993年は東北や関東の太平洋側を中心にコメを中心に農業被害が相次ぎ、タイや米国などからコメを輸入して「平成の米騒動」ともいわれました。

私は、この頃には函館に転勤になったばかりの頃でした。確か8月になっても、18度くらいの天候が続き、涼しいというより寒いという感じでした。セブンイレブンの前に、たたずむライダーが厚手の革ジャンをまとったままだったのを記憶しています。


今回のトンガ噴火では、コメ不足への不安はさほど深刻にはならないように思います。それにはいくつかの理由があります。

1つが品種改良の進歩です。当時、冷害の被害が特に大きかった品種が宮城県を中心に栽培されていた「ササニシキ」でした。「コシヒカリ」に次ぐ、全国2位の作付面積を誇ったほどの銘柄米だったのですが、寒さには弱かったのです。ササニシキを中心に作付けしていた宮城県では、93年の水稲の収穫量が19万1100トンと前の年に比べ62%も減ったほどでした。

これを機会にササニシキは急速に作付面積を減らしていきましたた。代わりに伸びたのが、ササニシキより寒冷地に強い品種として作られた「ひとめぼれ」でした。ひとめぼれの全国の作付面積に対する割合は18年産で9.2%とコシヒカリの35%に次ぐ2位になっています。

寒冷地に強いコメ作りが進んだ結果、産地がさらに北に進んだというのが2つ目の理由です。亜熱帯が原産のイネですが、今では北海道が日本で第2位の大産地となっています。けん引役となっているのが全国5位の作付面積を誇る「ななつぼし」です。

ひとめぼれ系列の品種に、耐冷性に優れた品種を掛け合わせており、いっそう寒さに強いです。梅雨のない北海道のなかでも温暖とされる道央の日本海側を主な産地としており、冷夏の原因とされるオホーツク海高気圧の影響は比較的受けにくい地域とされます。

日本では、米の作付けが始まるまでには、まだ間があります。冷夏が予想される場合は、冷夏に強い米の作付けが強化される可能性もあります。

さらに日本人の食生活の変化も見逃せないです。農林水産省によるとコメの総需要量は93年度の971万トンから17年度には824万トンと15%減りました。家庭におけるコメの購入量はパンや麺類の購入に比べても減少のペースが大きいです。「コメがなければパンを食べればいい」。そんな実態に日本人の食生活が近づいているといえます。

ただ、今回のトンガ沖の海底火山の大爆発は、南半球で発生しており、南半球のブラジルやオーストラリアの秋小麦の収穫が噴煙で大被害を受ける可能性があります。大豆、とうもろこし、小麦、それを餌とする畜産物含め輸入食糧価格が高騰するおそれもあります。現在の日本は、こちらのほうが脅威かもしれません。

さらに、その後も噴煙が漂い続け、北半球にも悪影響を及ぼし続ける可能性もあります。そうなると、全世界的に経済か落ち込む可能性もあります。

年明けに、このブログではユーラシアグルーブによる、今年の10大リスクを掲載しました。最大のリスクは中国のゼロコロナ政策の失敗です。さらに、4位には「中国の内政」が上げられていました。習政権に対するチェック機能が働かず、中国経済の停滞など政策を誤るや恐れが指摘されていました。

私自身は、オミクロン株が流行仕出してから、コロナの脅威はかなり減り、全世界的に収束にむかいつつあることから、習近平政権は、結局コロナ対策を間違えたにしても、強権政策で乗り切り結局は中国でも近日中にはコロナは収束に向かうのではないかと考えています。

それよりも、中国経済が停滞するのは間違いないと思います。それについては、先日もこのブログに掲載しましたので、その記事を参照していただきたいと思います。


問題は、中国経済の低迷の悪影響と、トンガの海底沖火山の噴火による寒冷化の影響が重なるかもしれないということです。

この両方は、今後少なくと2年くらいは続きそうです。このダブルパンチにより、世界経済は悪影響を受ける可能性があります。

これについては、ある程度はっきりするのは1〜2ヶ月後になると思われます。その後も岸田政権がもたついて、これに対する対策として、積極財政や量的金融緩和を迅速にしなければ、政権支持率が落ちることが考えられます。

元岸田政権の現在のグタグタぶりは、以下の動画をご覧いただければ、おわかりいただけるものと思います。


岸田政権にとっては、トンガ噴火で夏の参院選に向けて、大きな不確定要素を抱えることになるでしょう。ただ、反応の鈍い岸田政権では、大きな不確定要素を抱えていることも気づかないかもしれません。

なぜなら、立憲民主党をはじめ、最近では全部の野党がグタグタ感を醸し出しているからです。これについては、長くなってしまうので、また別の記事にまとめようと思います。

そのため、岸田政権は参院選でも圧倒的勝利というわけにはいなかいまでも、なんとか体面を保つ程度には勝利できるかもしれません。

しかし、中国経済の低迷と、トンガの海底沖火山の噴火による寒冷化の影響が今後2年くらい続くとなると、岸田政権の経済政策では、乗り切るのが難しくなる可能性が高くなります。

そのときに岸田政権がどのような行動をするか、もっと大きなくくりで自民党がどのような動きをするかによって、大きな政局含みの展開となるかもしれません。

最後に、トンガは2011年の東日本大震災の時、「トンガより愛を込めて」のメッセージとともに里芋などを日本に届けた親日国であるとともに、複数のラグビー日本代表選手の母国でもあることを述べてきおきます。

トンガは、ラグビーがさかんで、日本代表のバル・アサエリ愛、中島イシレリの両選手らの母国です。トンガ代表が試合前に披露する戦いの踊り「シピタウ」も有名です。

トンガ代表が試合前に披露する戦いの踊り「シピタウ」

1人当たりの国民総所得(GNI)は日本の4万1500ドルに対し、トンガは4300ドル(19年)。主にマグロやカボチャを日本に輸出しています。輸出額は約3800万円(20年度)です。

日本は「草の根・人間の安全保障無償協力」を通じ、学校や診療所の建設、給水施設の整備などを支援しています。青年海外協力隊による日本語、そろばん教育も20年以上続いています。

南太平洋唯一の王国として知られるトンガの王室は長年、日本の皇室と親密な交流を重ねています。東日本大震災の際は、義援金20万パアンガ(約900万円)を寄せ、11年4月には里芋などを届けてくれました。

外務省ウェブサイトには、この時、里芋生産者の代表が「トンガと日本の人々の愛であふれた里芋は、被災者にとってどのような味がするでしょうか。被災者が一日も早く元気を取り戻すことを願っています」と述べたことが掲載されています。

トンガの被災者が一日でも早く元気を取りどすことを願います。

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2022年1月15日土曜日

令和4年度物価上昇率見通し1%台に上げか 日銀、17日から決定会合―【私の論評】実は、オミクロン株よりも日銀が金融引締に転じることのほうが、はるかに恐ろしい(゚д゚)!

令和4年度物価上昇率見通し1%台に上げか 日銀、17日から決定会合

日銀黒田総裁

 日本銀行は17、18日に金融政策決定会合を開き、四半期に一度公表する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、令和4年度の消費者物価上昇率の見通しを引き上げる方向で検討する。昨年10月の前回リポートで示した0・9%から1%台前半にするとの見方が有力だ。原材料価格の高騰などを受け値上げの動きが出ているためだが、日銀が目標とする物価上昇率2%を達成する状況ではなく、大規模な金融緩和策は維持される方向だ。

 背景にあるのが原油高や円安の進行などによる企業の輸入コストの上昇だ。企業同士の取引価格を示す国内企業物価指数は昨年11月に前年同月比の伸び率が比較可能な昭和56年以降で最大の9・2%を記録し、12月も8・5%(速報)で過去2番目の大きさだった。

 こうした輸入コスト高を販売価格に反映する動きが食品業界などで相次いでおり、12月の日銀企業短期経済観測調査(短観)では、販売価格が「上昇」したと答えた割合から「下落」の割合を差し引いた指数が大企業の製造業でプラス16と6ポイント上昇、非製造業でプラス10と4ポイント上昇した。

 日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は今月12日の支店長会議で、物価の先行きに関して「徐々に上昇率を高めていく」との見通しを示した。日銀はこれまでの展望リポートで物価動向について「下振れリスクが大きい」と評価してきたが、今回の会合では今後の物価上昇を見据え表現を改める可能性がある。

 ただ、岸田文雄政権が求める企業の賃上げが進まなければ値上げの動きも広がりを欠き、市場では物価上昇率が2%になる状況には当面ならないとの見方が強い。このため、日銀は短期金利をマイナス0・1%とし、長期金利を0%程度に誘導する金融緩和政策を維持する見通し。

【私の論評】実は、オミクロン株よりも日銀が金融引締に転じることのほうが、はるかに恐ろしい(゚д゚)!

日銀は5日、2021年末の国債保有残高が20年末と比べて約14兆円少ない約521兆円だったと発表しました。前年末比で国債の保有残高が減少するのは、08年以来13年ぶりです。日銀は2%の物価上昇目標の達成に向けて大規模な金融緩和を続ける姿勢を崩していないが、金融市場では「事実上の量的緩和の縮小」(エコノミスト)との受け止めもあります。

日銀は13~20年の8年間で国債保有を421兆円増やし、全体の国債発行額に占める保有比率は4割を超えた。日銀は20年の新型コロナウイルス禍など非常時には購入量を増やす一方、平時は購入を減らしてきました。


21年3月には日本株に連動する上場投資信託(ETF)の購入方針も市場が動揺したときに大規模に買う方向へと改めました。21年末の残高(購入簿価)は36兆3400億円で、前年からの増加額は1兆400億円となり、20年の年間増加額(7兆500億円)から急減しました。

この状況は、白川日銀前総裁以来です。白川氏といえば、日銀はインフレをコンロールできないという、「日銀理論」の論者で、インフレ目標に頑強に反対してきました。

過去の日銀の金融政策の間違いは、まずは06年3月の福井俊彦元総裁時代に株価・地下は上がってはいたものの、一般物価は量的緩和停止を実施したことにはじまりました。

それに続き白川日銀時代には、日銀が保有する長期国債の残高を銀行券の発行残高の範囲内とする「銀行券ルール」に縛られ、結果として国債購入ができず、マネタリーベース(銀行券+当座預金)の拡大をしなかったことです。

2014年に黒田氏が日銀総裁になってから、2016年までの日銀は異次元の緩和を実施していましたがが2016年にイールドカープ・コントロールを導入して以来中途半端な緩和に転じてしまいました。

13年4月から16年9月までのマネタリーベース対前年同月比の平均は37%増ですですが、それ以降は11%増にとどまっています。直近の状態は10%にも達していないです。

「銀行券ルール」で縛られた白川日銀は、マネタリーベースを増加させるために、国債購入ではなく金融機関への貸出増加を行いました。ピーク時には、貸出のマネタリーベースに占める割合は4割程度でしたが、十分なマネタリーベース増はありませんでした。

黒田日銀は、国債増によってマネタリーベース増を行ったので、貸出はマネタリーベースの1割程度と安定していました。しかし、20年のコロナ危機以降、貸出は増加し、今や2割程度まで上昇しています。

政府の国債発行量が多くないので、マネタリーベース増を維持するために、コロナ危機を契機に貸出増となった事情もあるとは思います。

黒田総裁が大規模な金融緩和を始めてから9年近くとなりますが、早期達成するとしていた2%の物価目標はいまも「相当遠い」(黒田総裁)状況が続いています。この状況なら、本来ならさらに量的・質的金融緩和を拡大して継続すべきです。

政府が国債発行量をさらに少なくして、日銀がさらに量的緩和の縮小をするようなことにでもなれば、また日本は深刻なデフレに見舞われなかねません。

過去の深刻なデフレの期間に何が起こっていたかといえば、自殺者の増加です。これについては、このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【正論】「欲ない、夢ない、やる気ない」……現代日本の最大の危機はこの「3Y」にある 作家・堺屋太一―【私の論評】団塊の世代以上の世代には想像もつかない現代の若者の窮状(゚д゚)!
堺屋太一氏

堺屋太一氏は、2019年に他界されましたが、この記事は2016年のもので、まだご存命のときです。この当時は、日銀は異次元の緩和から、イールドカーブ・コントロールで緩和を手控える直前でした。異次元の緩和で、雇用情勢が劇的に変わっている最中でしたが、それにしても、酷いデフレと、就職氷河期の記憶が生々しく残っている時期でした。

この記事は、結果として堺屋氏を批判することにもなっていますが、その批判の矛先は、主に過去の政府や日銀による政策に向けられたものです。

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事から一部を引用します。
自殺者数と景気は相関が高いことが知られていますが、この数年間の経済状況の改善と、さらに自殺対策にここ数年経費を増加させていく方針を採用していることもあり最近は自殺者数が減っています。類似の事例はホームレス対策にもいえ、ホームレス数は景気要因に関わらず対策費の増加に合わせて減少しています。

自殺者数の減少については、マクロ(景気)とミクロ(自殺対策関連予算の増加スタンス)の両方が功を奏していると考えられます。

自殺対策関連予算の推移はまとまったデータがないので拾い集めてみると

平成19年 247億円 平成20年 144億円 平成21年 136億 平成22年 140億 平成23年 150億 平成24年 326億 平成25年 340億 平成26年 361億 となってます。

以下に、失業率と自殺者数の推移のグラフを掲載しておきます。
日本がデフレに突入した、97年あたりからそれまで、2万台であった自殺者数が、一挙に3万人台になっています。このグラフをみただけでも、経済政策の失敗は自殺者数を増やすということがいえそうです。
経済政策の失敗は自殺者を増やすであろうことは、容易に想像できます。私は、2000年代に会社で人事を担当していたことがありましたが、そのあたりに採用した新人から、様々な話をきき、その当時の若者はとてつもない状況におかれていたことを肌身で感じたことがあります。

とくにかく、就職が悪夢のようになかなか決まらないこと、国立大学を卒業しやはり国立の大学院に行った女性の新人が卒業と同時に奨学金などの名目で数百万円の借金を抱えていることや、その当時の学生たちの極めて質素な生活ぶりなどを聞き、これはただ事ではないと、ひしひしと感じていました。

だからこそ、自殺者の推移に関しても、他人事ではなく、身近に感じられたのだと思います。

ただ、当然のことながら、採用は極めてやりやすく、逆に不気味さを感じたことを覚えています。その当時は、多くの企業が採用を手控え、採用するにしても能力などは二の次にして、いわゆるコミュニケーション能力を重視していました。

ただ、このコミュニケーションという言葉が曲者で、要するに「調整型」の人材を採用したいのですが、「調整型」というのでは、格好が悪いので「コミュニケーション」という言葉を用いていたようです。

実際、当時「コミュニケーション能力重視」というキャッコピーを用いていた企業の採用担当者に「御社におけるコミュニケーション能力」とは何かという質問をしてみたところ、「報・連・相」重視などと答え、コミュニケーションの本質に迫るような答をした人はいませんでした。

そうして、この記事では、『経済政策で人は死ぬか』という書籍を紹介していますが、この書籍でははソ連が崩壊した直後のロシアで男性の平均寿命が自殺や病気で60歳未満になった事例などを丹念に分析し、経済政策のまずさが自殺者を増やす可能性がかなり高いことを示しています。

経済政策が極端にまずく、特に失業者が増えるような政策をしてしまえば、自殺者が増えるのは当然のことだと思います。それに、若者のやる気を削ぐことにもつなかります。これに思いが至らないひとは、想像力が欠如しているのではないかと思います。

現状では、オミクロン株の脅威がメディアで盛んに喧伝されていますが、感染者は増えたものの、死者はほとんど出ていません。

私は、経済政策の不味さが、自殺者を増やす可能性が高いことを考えると、オミクロン株よりも日銀が金融引締に転じることのほうが、はるかに恐ろしいと思います。白川貧乏神のように、日銀が金融引締に転ずることがあれば、景気が悪くなり、失業者が増え、自殺者が増加する悪夢が再燃しかねません。

企業の採用で再び「コミュニケーション重視」という空疎なキャッチフレーズが目立ってくれば、悪夢の再来かもしれません。

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2022年1月14日金曜日

小池都知事、新型コロナ「5類」引き下げ要請の狙い オミクロン株感染者は若者大半、沖縄「重傷者ゼロ」だが… 岸田首相は〝静観〟―【私の論評】今後個々の政治家のオミクロン株への対応の仕方で、その地金がみえてくる(゚д゚)!

小池都知事、新型コロナ「5類」引き下げ要請の狙い オミクロン株感染者は若者大半、沖縄「重傷者ゼロ」だが… 岸田首相は〝静観〟

東京都のモニタリング会議後、取材に応じる小池百合子知事=13日午後、東京都庁

 新型コロナウイルスのオミクロン株感染が爆発的に増えるなか、東京都の小池百合子知事が、感染症法上の位置付けについて、季節性インフルエンザ相当で危険度が最低の「5類」への引き下げも含め検討するよう国に求めた。東京では月内に新規感染者が1万人を超えるとの予測もあり、病床逼迫(ひっぱく)が懸念される一方、感染の大半が若者で、沖縄県では県基準の重症者が「ゼロ」というのも現実だ。

沖縄では11月あたりから、コロナ感染の死亡者はゼロ人が続いている

 都のモニタリング会議では、直近7日間平均の新規感染者が20日時点で9576人との試算が示され、「1万人を超えることは現実的に起こり得る」との声も出た。

 13日時点の病床使用率は15・1%。都は20%で蔓延(まんえん)防止等重点措置、50%で緊急事態宣言を国に要請するとした。

 一方で小池氏は「感染を止める、社会は止めない」と述べ、5類相当への引き下げを含めて検討を求めた。

 新型コロナウイルスは感染症法上の1~5類とは別の「新型インフルエンザ等感染症」に分類され、入院勧告や外出自粛の要請など強い措置が可能で医療費が公費負担となる1~2類に近い。5類相当となれば、保健所を介さずに医療機関で対応が可能となるが、入院費が自己負担となる可能性もある。

 安倍晋三元首相や松井一郎大阪市長は5類相当への見直しを検討すべきだとの見解を示すが、岸田文雄首相は13日、新型コロナの感染症法上の分類を当面見直さない考えを示した。

 元厚生労働省医系技官の木村盛世氏は「5類への引き下げによって、企業や組織で感染者が出ても影響は最小限になり、医療従事者や保健所の負担も低減される。一定期間、医療費を公費負担にするなど柔軟な対応も可能ではないか」と語る。

 厚労省によると、最近1週間の感染者のうち、30代以下が全体の71・1%を占め、20代が突出している。

 国立感染症研究所が10日までに厚労省のシステムに登録されたオミクロン株の感染者817人のデータを解析したところ、軽症者は61・7%で中等症は0・7%、人工呼吸器などが必要な重症者はいなかった。

 感染爆発状態の沖縄も県基準の重症者は13日時点で0人。国基準では35人だった。

 国のまとめでは13日時点の全国の重症者は125人で前日から20人増えており油断はできないが、柔軟な対応も求められる。

 前出の木村氏は「今後、国民の半分が感染者、全員が濃厚接触者になる事態も考えられる。現行制度のままではオミクロン株ではなく人災として医療崩壊を招き、経済の息の根を止めることになりかねない」と警告した。

【私の論評】今後個々の政治家のオミクロン株への対応の仕方で、その地金がみえてくる(゚д゚)!

上の記事にも掲載されている、医師で元厚労省医系技官の木村盛世氏は、5日、日本テレビ系「情報ライブ ミヤネ屋」に出演。新型コロナウイルスのオミクロン株が急拡大していることについて元大阪府知事の橋下徹氏らと議論。「感染を無理に止めない」と発言して、司会の宮根誠司もあわてて「その考えは日本人にはない」と確認する事態となりました。

木村氏は、第5波が急減したことについて、「人流抑制がどの程度効果があったかは分からない」と話し、その上で、現在のオミクロン株への対応について「南アフリカのようにワクチン接種がかなり低いところでも収束してきているわけですから、ワクチンも治療薬もできたなかでは、感染を無理に止めない。医療体制を万全に整えることが私たちがやらなければならないこと」と指摘しました。

これには宮根が「感染を無理に止めないとおっしゃいましたよね?日本人にはその感覚はないんですよ」と目を丸くしたが、木村氏は冷静。「無理に感染する必要はないけど、感染は山を描く。ということは一定程度の感染ができないと、下がってこないということ」と持論を展開した。

木村氏はオミクロン株の感染力が高いことについても「感染力が強くなるということは、変異したウイルスが私たち共存していく絶好の条件を得られたということ。コロナでも変異を繰り返しながら、感染の数は増えながら致死性は減っていて、通常の風邪に近づいていくことになる」と前向きにとらえました。

また「この感染症はある日突然消えてなくなるものではなく、変異する前からほとんどの人にとって、軽症で無症状。にも関わらず、かかったら隔離して、社会活動を止めなければならないこんなバカげたことはない」「効果がどれだけあるか分からない自粛やまん防を繰り返すのは止めた方がいい」などと刺激的な物言いで自説を述べました。

続けて「(コロナの)致死性は、変異が進む前からも多くの人にとっては通常の風邪かインフルエンザ並みで済んでいます。そんな感染症をここまで社会的に重篤に扱われることによって、人為的医療ひっ迫を起こしている」と話し、指定感染症2類相当に扱われている状況から5類相当に引き下げることを提案しました。

木村氏は、同じ「情報ライブ ミヤネ屋」で、さらに率直な意見を述べています。下にその動画を掲載します。


結論からいうと、「コロナはもはや医学の問題では無く、利権と政治パフォーマンスの問題」というのです。

私もそう思います。たとえば、上の記事で、東京都の小池百合子知事が、感染症法上の位置付けについて、季節性インフルエンザ相当で危険度が最低の「5類」の引き下げも含め検討するよう国に求めたとあります。

これは、一見まともな対応をしているようにもみえますが、「検討するよう国に求めた」というところがミソです。

結局小池知事は、現状のままオミクロン株の感染が増えていくと、医療が逼迫するのは目に見えているという危機感を抱いているのでしょうが、それにしても、自分から2類から5類に引き下げるべきとはっきり言ってしまった場合、何か不都合が生じた場合、自らの責任になるかもしれないという危機感も抱いているのでしょう。

政府に対して「5類に下げることを求める」という形にすれば、いずれに転んでも、いざというときには自分ではなく政府のせいにすれば、自らの責任は免れることができます。

そのような保険をかけるために、政府に対してこのような要請ををしたのでしょう。小池東京都知事の過去の行動をつぶさにみていれば、そのくらいのことしか考えていないだろうと考えるのは私だけではないでしょう。

沖縄の玉城デニー知事は、ことさらコロナ感染を煽り、「米軍由来」だと騒ぎ立て反基地運動に利用しようとしているのではと、勘繰りたくもなります。

一方オミクロン株の市中感染拡大が懸念される中、安倍元首相が、現在感染症法で上から2番目の「2類相当」に分類されている新型コロナウイルスの位置付けについて、季節性インフルエンザと同じ「5類」に格下げすることも選択肢との認識を示し、注目を集めつつあります。発言は、読売新聞の3日付朝刊のインタビューで掲載されました。以下にその紙面から一部を引用します。


安倍氏のインタビューは、岸田政権のここまでをテーマにしたもので、ここ最近一部で報じられている岸田首相との「不仲説」を否定。デフレ脱却などの政策面に触れた後のコロナ対策のくだりで、岸田政権の3回目のワクチン接種前倒しを「大いに評価」。さらに「今年はさらに踏み込み、新型コロナの法律上の位置付けを変更してはどうか」と提起しました。

新型コロナは感染症法で現在、ジフテリアや結核、鳥インフルエンザでも病原性の高い「H5N1」型などの「2類」に相当すると特例的に位置付けられていますが、入院治療を原則としているため、病院や保健所への負担が大きく、5類に格下げし、軽症者や無症状については隔離施設や自宅療養とするなど、現場の負担を和らげるべきとの意見が出ています。

安倍氏も同様の考えのようで、「感染の仕組みが次第に解明され、昨年末には飲み薬も承認されました。オミクロン株への警戒は必要ですが、薬やワクチンで重症化を防げるならば、新型コロナを季節性インフルエンザと同じ『5類』として扱う手はあります」と述べました。

安倍氏は20年8月に首相退任を表明した記者会見で、2類相当の運用を見直す方針を示していたのですが、後継の菅政権では専門家などから慎重な意見が強まったこともあり、見送られました。

安倍元首相

自民党の細野豪志衆院議員はツイッターで「読売朝刊で安倍元総理が『新型コロナを季節性インフルエンザと同じ5類として扱う手はあります』と発言。インパクトは大きい。日常を取り戻したいという気持ちはみんな同じ。飲み薬が普及すれば可能性があるが、政府内には慎重な意見が多く、年明け早々大議論になるだろう」との見通しを示していました。

ただ、東京都ではこの日、新規感染者数が3か月ぶりに3桁となる103人に増加。沖縄県でも昨年9月25日以来となる130人にまで急増しました。毎日新聞によると、新規感染者の増加を受けて岸田首相は後藤厚生労働相に対し「臨機応変に対策に取り組まないといけない」と指示を出したといいますが、岸田政権では昨年12月初め、国交省が航空各社に国際線予約停止を要請し、その後、批判が強まったため撤回したばかりです。

安倍氏の提言が受け入れられるかは不透明です。安倍氏は20年8月に首相退任を表明した記者会見で、2類相当の運用を見直す方針を語っていました。

岸田政権は、優柔不断であり、未だ分化会や、官僚の意向などを気にしているのでしょう。

今後、オミクロン株への対応や発言等により、個々の政治家の本質というか、地金がでてくるのではないかと思います。またとない機会となるかもしれません。ただ、いずれにせよ、政治的パフォーマンスや利権は抜きにして、国民とって最も良いと考えられる対応をすべきと思います。

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2022年1月13日木曜日

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断末魔の中国
北京冬季五輪の開会式が行われる通称「鳥の巣」こと国家体育場

 新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の感染拡大が懸念されるなか、北京冬季五輪(2月4~20日)の開催が近づいてきた。中国の習近平国家主席は「われわれには素晴らしい大会を世界にささげる自信と能力がある」と強調するが、相次ぐ選手の感染報告を受けて、強豪スイスの選手団長が「延期検討」に言及するなど、先行きは混沌(こんとん)としている。中国については、自由主義諸国の「外交的ボイコット」につながった新疆ウイグル自治区などでの人権弾圧だけでなく、経済的危機や米中対立の激化など、問題が山積している。評論家の宮崎正弘氏が、断末魔のうめきを放つ隣国を考察した。


 新型コロナの感染拡大で、中国・西安など多くの都市がロックダウンした。別の伝染病情報もある。オミクロン株の猖獗(しょうけつ=流行)により北京冬季五輪は開催そのものも危ぶまれている。

 中国の伝統的な正月風景も帰省客が激減して寂しく、肝要の北京で五輪ムードが盛り上がっていない。

 欧米各国の「外交的ボイコット」は、中国当局による新疆ウイグル自治区でのジェノサイド(民族大量虐殺)への外交的制裁だが、感染症や伝染病の再流行となると、次元が異なる。

 そのうえ、度重なる軍事的威嚇で、世界中を見渡しても中国の友人はいなくなった。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、対欧米戦略の行き詰まりから、ことさら中国との蜜月を演じているだけである。

 日本経済研究センターの予想では「2033年に中国がGDP(国内総生産)で米国を超える」とか。

 人口が日本の10倍、米国の5倍近いから、単にGDP統計なら、そうしたシミュレーションも成り立つだろう。

 何しろ、80兆円を楽々と越える累積赤字を気にせずに、中国は新幹線を次々と開通させ、昨年末、営業キロが4万キロを突破した。これは国有企業だから赤字でも構わないが、民間企業となると倒産する。中国全土、見渡す限りのゴーストタウンだ。

 習主席が呼号する「共同富裕」の掛け声や良し。皆が一緒に豊かになろうと言うのだから、共産革命の原点に戻るわけだ。実は、この新幹線に戦々恐々なのが不動産を何軒も持つ共産党幹部である。

 「共同富裕」は裏を返すと「共同貧乏」だった毛沢東時代に戻ろうと解釈される。現実には、毎月5000円程度で暮らす人々が多く、その一方で未曽有の金持ちがいる。

 中国のハイテク企業は米ウォール街から追い出され、新規上場もできなくなった。そのうえ、インターネット通販最大手「アリババグループ」などに罰金を科し、予備校、家庭教師、ゲームへの強力な規制をかけた。

 「ハイテクの前進基地」といわれた広東省深圳市では、ビッグテック企業が軒並み「30%レイオフ」「35歳以上は肩たたき」の噂が乱れ飛び、サラリーマンは戦々恐々である。

 米国は、米中対決を戦略レベルで捉えているから、中国の経済力を削ぎ落すことに長期目的を置く。特に、デジタル人民元の普及を脅威視する。戦後のブレトンウッズ体制下の「ドル覇権」が破壊されるかもしれないと恐れているためで、今後も規制は強まるこそすれ、緩和方向へは向かわないだろう。

■宮崎正弘(みやざき・まさひろ) 評論家、ジャーナリスト。1946年、金沢市生まれ。早大中退。「日本学生新聞」編集長、貿易会社社長を経て、論壇へ。国際政治、経済の舞台裏を独自の情報で解析する評論やルポルタージュに定評があり、同時に中国ウォッチャーの第一人者として健筆を振るう。著書に『中国が台湾を侵略する日』(ワック)、『歩いてみて解けた「古事記」の謎』(育鵬社)、『日本の保守』(ビジネス社)など多数。

【私の論評】デジタル人民元の普及が無意味になった中国では、何年も前からいわれてきた断末魔に近づきつつある(゚д゚)!

上の記事で、宮崎氏は、

"日本経済研究センターの予想では「2033年に中国がGDP(国内総生産)で米国を超える」とか。

人口が日本の10倍、米国の5倍近いから、単にGDP統計なら、そうしたシミュレーションも成り立つだろう。"

と述べています。

しかし国民一人当たりのGDPということでは、中国は10,000ドル前後(日本円では、100万円前後)です。2020年の比較では、世界64位に過ぎません。以下にその比較を掲載します。
・世界の1人当たり名目GDP 国際比較統計・ランキングです。
・各国の1人当たり名目GDPと国別順位を掲載しています。
・単位は米ドル。
・IMF統計に基づく名目ベースの人口1人当たり当たりGDP(国内総生産)。
・米ドルへの換算は各年の平均為替レートベース

韓国、台湾はおろか、リトアニアよりも低いのです。そうして、中国経済はこれ以上伸びない可能性が大きいです。

それは、中国が中所得国の罠から抜けられない可能性が高いからです。中所得国の罠とは、発展途上国が経済成長をしても、最初のうちは政府主導で伸びていくのですが、国民一人当たりのGDPが10,000ドルあたりからは伸び悩み、10,000ドルから超えられない現象のことをいいます。

なぜそうなるかといえば、発展途上国のほとんどが民主化されていない事が多く、民主化をすればその後も経済が伸びる傾向になるのですが、結局民主化することができなくて、伸び悩むということのようです。

台湾が一人あたりのGDPが中国よりはるかに高いのは、やはり民主化が中国より進んでいるからでしょう。

民主化が進めば、政治と経済の分離が行われ、法治国家化もすすみます。その結果、多数の中間層が生まれ、彼らが自由に社会経済活動を行うことができ、社会変革を行い、その結果として社会が豊かになり経済が発展するのです。

大陸中国は、民主化が行われてこなかったので、こういうことが起こらず、一人あたりのGDPでは台湾やリトアニアにもはるかに低いのです。以前にもこのブログ述べたように、中東欧諸国は一人ひとりの国民が豊かになることを夢見て、中国の一帯一路に関連する投資を歓迎したのでしょうが、中国にはそのようなノウハウはないのです。

あるとすれば、独裁者とその追随者が儲かるノウハウだけです。中東欧諸国が、中国に失望するのは、時間の問題だったともいえます。

中国は、民主化や資本市場の自由化等をすすめなければ、結局国際金融のトリレンマ(三すくみ状態)から逃れられず、独立した金融政策が行うことができず、これから過去のように経済が飛躍的に伸びることはありません。

日本は、良く一人あたりのGDPが低いといわれ、その主な原因は構造的なものとする人もいますが、それは間違いです。その主な原因は、平成年間のほとんどの期間にわたって、実体経済を無視して、日銀は金融引締政策を続け、財務省にいたっては、現在でも未だに緊縮財政に執着しているからです。

この経済政策の間違いが、一人あたりのGDPを低くしてきたのです、そのためもあって、日本人の賃金は30年近くも上がらなかったのです。いまや日本人の賃金は、OECD諸国の中でも、最低の部類に属します。しかし、日本の一人あたりのGDPの低さは、正しい金融政策や財政政策を行えば、克服することができます。日本は、中国よりは、民主化がはるかに進んでいるからです。

しかし、上の記事でも述べられているように、その中国がデジタル人民元の普及をしようとしています。デジタル人民元にしても、国際金融のトリレンマの状況はかわらず、中国は独立した金融緩和を実施することはできません。

人民元をデジタル化しようが、しまいが、中国は国際金融のトリレンマにはまりこんで、たとえば失業率が著しくあがっても、なかなか金融緩和政策をとることはできません。大規模な金融緩和をしてしまえば、すぐに過度のインフレになってしまいます。だから、やりたくてもできないのです。

その中国がなぜデジタル人民元を普及させようとしているのでしょうか。それは人民元のデジタル化により資本取引を管理したいということだと思います。中国人は政府を信用していないので、お金を国外に持ち出したり、投資したりします。デジタル人民元にすれば、それを全部監視できるます。無論、自分たちにとって都合の悪いことがあれば、すぐにも規制をするでしょう。

ありていにいえば、中国は戦後のブレトンウッズ体制下の「ドル覇権」が破壊するなどのだいそれたことを考えているのではなく、デジタル人民元の普及を資本取引の規制の一環として熱心にやっているのです。

中国人が資産を大量に外に持ち出すことに、中国共産党は睨みを効かせていることを認識させるためでしょう。そうして、あまり派手にやれば、何らかの規制が入ることを認識させるのが狙いでしょう。

「デジタル人民元」とは言っても、他のデジタル通貨と異なり、全部の取引を政府が把握するつもりでしょう。いざ「外に持ち出そう」というときには何らかの規制がかけらるようになるでしょう。

いままではこっそりやることができたのですが、それができなくなるのです。当然のことながら、国内での取引の監視を強化することでしょう。そうなると、習近平の反対勢力の金の流れを詳細にわたって監視することができます。テロリストや政敵などが、どこから資金を得ているのか、詳細に把握することができます。

米国の大学院などでMBAの学位取得のために勉強するとき、大学の教授が口を酸っぱくして言う言葉は"Follow the money"(金の行方を追え)です。ビジネスの現場で取引先と何らかの交渉を行う際、いろんな枠組みでビジネスを行うことになるわけですが、その際お金の流れをきちんと把握して、先方がどこで儲けようとしているのかがわかっていればカモにされることはないですし、すべてのビジネスモデルにおいて、本当はどこで儲けていることが明らかになるからです。



これと同じで、中国共産党がデジタル人民元を普及させることに成功すれば、従来のカメラなどによる監視よりもより間口も広く、奥行きの深い監視ができるわけです。

しかし、国内外で制限があったにせよある程度はできた資本の移動ができなくなれば、まともにビジネスもできなくなります。

デジタル人民元が普及する前に、富裕層は、様々な手段を駆使して、手持ちの資産をドルに変えて、海外に持ち出すことでしょう。それを恐れてか、中共はしばらく前から持ち出しの規制を強化しています。

現状では、中国国内でドルが積み上がっています。前例のない規模の貿易黒字と債券市場への記録的な資金流入が背景にあります。それに、企業ベースでも個人ベースでも、ドルの国外持ち出し規制は厳格化されています。米国の金利が異常なほど低いのは「アジアの貯蓄過剰」が関係しており、これが米国のサブプライム住宅ローン危機をあおったと非難された時代以来見られなかった水準に膨らんでいます。

当時、中国は流入したドルで積極的に米国債を買い入れていました。ところが今は外貨準備高の大きな割合を占める米国債はほぼ横ばい状態。つまり、どこか別の場所でドルが使われていることを意味するのですが、正確にそれがどこかは謎です。

中国に流入したドルの一部は中国の銀行に預金として置かれますが、中国の国際収支における不整合の大きさで実態ははっきりしていません。ただそれでも、不動産開発大手の中国恒大集団など個別企業がドル建て債務の返済に苦しむ中でも、世界経済に将来生じ得るショックに対してこうしたドルが中国にとって重要なクッションとして機能することは確かです。

ドル建て債務の返済に苦しむ恒大集団

早い話が、中国は不動産大手等に公的資金を投入しているのでしょう。これからも、投入を続けるのでしょう。デジタルであろうが、なかろうが人民元は中国がドルや米国債を大量に保有しているからこそ、保証されている面は否めません。

それに、不動産大手がドル建て債務で苦しんでいるということから、やはり中国でも大口の資本取引等は現状でもドル建てで行うのでしょう。それに、人民元を大量に擦り増して投入することになれば、深刻なインフレに見舞われるのでしょう。

現状では、米国が金融緩和の縮小に向かうのに逆行して中国が緩和を進めるとすれば、人民元安を招くでしょう。そうして、中国国内はインフレに見舞われるでしょう。

一方で人民元相場が下落すれば、ドル建ての負債を抱え既に資金難にある中国企業には一段と圧力が加わるとともに、15年の事実上の元切り下げ後と同様の資本流出につながるリスクもあります。

このような状況では、人民元のデジタル化をして監視を強化してもあまり意味がないです。ドルは米国の通貨であり、中国がドルをデジタル化してそれを監視できれば良いのですが、それは不可能です。

一方米国は、ドルのデジタル通貨化はしていませんが、国際取引のほとんどが今なおドルを用いて行われています。そのため、デジタル通貨のように細かな部分まで監視することはできませんが、かなり詳細に世界の金融取引を監視することができます。

この状況では、中国はコストも手間もかかる、人民元デジタル化をすすめることはできないと思います。

そうして、これから中国はドルの流れをさらに規制し、国内から海外に流出することを防ぐでしょう。そうなると、貿易もできず、中国内の外国企業はいままでよりも、海外に資産を持ち出すことができなくなります。ますます、中国でビジネスをする意味が薄れてきます。

何年も前から、中国の断末魔がいわれてきましたが、今度こそ本当にその状況に近づきつつあるようです。それても、中国は国民を弾圧して、国民から富を簒奪すれば、それで当面は維持できるかもしれません。しかし、富を散弾し尽くした後はどうするのでしょうか。それでも、今度は国民すべてを奴隷にして、共産党幹部たちの生活だけは、以前の水準を維持するつもりなのでしょうか。

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2022年1月12日水曜日

景気指数、11月は過去2番目の上昇幅 自動車などの生産改善=内閣府―【私の論評】コロナ感染症に従来と同じ対応をすれば、また景気が落ち込むだけ(゚д゚)!

景気指数、11月は過去2番目の上昇幅 自動車などの生産改善=内閣府

内閣府が11日公表した11月の景気動向指数(速報値、2015年=100)は、指標となる一致指数は前月から3.8ポイント上昇した。写真は都内で昨年1月撮影

内閣府が11日発表した2021年11月の景気動向指数(2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が93.6となった。前月比では3.8ポイント上昇と2カ月連続でプラスとなった。前月比のプラス幅は1985年1月以来、過去2番目の大きさ。

自動車生産回復、基調判断は据え置き

項目別では、耐久消費財出荷や鉱工業生産指数が改善した。部品供給不足が解消しつつある自動車や二輪車などの生産回復がけん引した。自動車用非鉄・鋼材の生産拡大も寄与した。

数カ月後の景気を示す先行指数は1.5ポイント上昇の103.0と、前月比で2カ月連続のプラスだった。自動車や化粧品などの出荷拡大により最終需要財在庫率などが改善した。新規求人数や中小企業売上見通しDIなども改善した。一方、新設住宅着工床面積やマネーストックは指数を下押しした。

一致指数の動きから内閣府が機械的に決める景気の基調判断は10月の「足踏みを示している」との表現を据え置いた。判断引き上げには3カ月移動平均の3カ月連続でのプラス継続が必要。11月の3カ月移動平均は5カ月ぶりに前月比プラスに転じたばかり。

【私の論評】コロナ感染症に従来と同じ対応をすれば、また景気が落ち込むだけ(゚д゚)!


プラス幅が、1985年1月以降、2番目の大きさとなったなどと言われると、喜んでしまう人もいるかもしれませんが、と言われると喜んでしまうかも知れませんが、実際はどうなのでしょうか。それは、上のグラフをご覧痛たげれば、おわかりになると思います。

遡ると指数は2020年の最初が高くて、指数95.5でした。それがコロナの影響で2020年5月には73.5まで下がり、そのあと「グッ」と上がったのです。2021年4月には95.0。ほとんど前までと一緒になったわけです。

そのあと2021年9月に半導体不足で88.7まで下がりました。現状はそこからの回復過程なのです。こういう状況を「デッドキャットバウンス」と英語で言いますが、「叩きつけた猫は跳ね上がる」ということです。


何かの理由で下がったものは上がるのです。それは、グラフをご覧いただければ、ご理解いただけると思います。数字的には2020年の最初のときまで戻っていなのです。最低水準から少し上がっただけです。2020年1月というと、コロナ流行の直前にまでは戻っていないのです。

水準的には上がったといえるかもしれませんが、それは「いちばん下の水準から少し上がった」というだけのことです。短い2ヵ月間だけを見て喜ぶわけにはいきません。

本来であれば下がらなくてもいいところが下がっていて、いまはそれが上がったというだけのことです。

半導体不足もあり、8月~9月にはコロナの第5波があって、経済的にも回せる状況ではありませんでした。

今度は第6波です。そのときに過去と同じ政策を取るのか、取らないのかという観点が重要になってきます。同じ政策を取って行動抑制をしたら、また景気が下がります。

新型コロナウイルスは弱毒化しているわけですので。さすがに同じ政策は取れないのではないでしょうか。海外でも同じ政策を取っているところはほとんどありません。

ウイルスが弱毒化しているときには、弱毒化しているなりの政策をしなければいけないはずです。本質的なのは感染症の分類です。新型コロナ感染症の分類は2類相当なのだけれど、これを5類に下げるというのが普通のやり方でしょう。

このブログでも以前述べたように、日本では2016 年にはインフルエンザの感染者数が1週間で200万超となったのですが、インフルエンザは5類相当の扱いなので、行動制限もなく、医療崩壊も経済の落ち込みもありませんでした。2016年当時の動画を以下に再掲します。


コロナ感染症は感染拡大当初は、未知の感染症であり、日本では諸外国と比較すると、感染者数、死者数ともに、かなり低めでしたが、未知の感染症であり、しかもワクチンは普及しておらず、飲薬もない状況でした。

しかし、現在流行しているオミクロン株は、感染力は強いものの、毒性は弱く、現在ではワクチンも飲薬もある状況です。であれは、従来とは異なる対処方法を実行すべきです。コロナ感染症をインフルエンザと同じ分類にして、無症状者は自宅待機、症状の出ている人は、入院はするものの、通常の病棟に入院し、一般人の行動抑制はなしにすべきです。

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2022年1月11日火曜日

カザフ、ロシア主導部隊が2日後に撤退開始 新首相選出―【私の論評】中露ともにカザフの安定を望む本当の理由はこれだ(゚д゚)!

カザフ、ロシア主導部隊が2日後に撤退開始 新首相選出

カザフスタンのトカエフ大統領は11日、スマイロフ前第1副首相(写真左)を首相に任命した。議会下院は直ちに同氏を首相に選出した。北京で2019年3月撮影

カザフスタンのトカエフ大統領は11日、抗議デモを鎮圧するため先週派遣を要請したロシア主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構(CSTO)」の部隊が2日後に撤退を開始すると表明した。

CSTOの平和維持軍の主要任務が無事終了したとしている。撤退は10日間で完了する見通し。

これに先立ち、大統領はスマイロフ前第1副首相を首相に任命。議会下院は直ちに同氏を首相に選出した。

大統領は資産格差の是正を進め、鉱山会社からの税収を増やすと表明。政府調達で不正をなくす意向も示した。

【私の論評】中露ともにカザフの安定を望む本当の理由はこれだ(゚д゚)!

今回の騒乱の背景にあるのは、燃料価格の値上げなどといった単純な経済問題ではないようです。1991年にカザフスタンが旧ソ連から独立した時から2019年3月まで、28年にわたって初代大統領を務めてきたヌルスルタン・ナザルバエフと、2代目のトカエフ現大統領との雌雄を決する権力闘争とみるべきでしょう。

ヌルスルタン・ナザルバエフ氏

土着派で剛腕なナザルバエフ前大統領と、国際派でインテリのトカエフ大統領は、元々馬があわず、この3年近く、両者はつばぜり合いを続けてきました。ナザルバエフはそもそも、トカエフを後継者にしたくなかったようです。ところが、トカエフはロシアと中国の後ろ盾を得て、大統領の座を射止めたようです。

今回の騒乱に乗じて、トカエフ大統領は、ナザルバエフ派を一掃しようとしているのでしょう。1月5日、トカエフ大統領はテレビで国民向けに演説し、ナザルバエフの国家安全保障会議の終身議長職を解き、自らが議長に就任したと発表しました。おそらく、これから起こるのは、ナザルバエフ前大統領の身柄拘束だとみられます。

今回の騒乱が起きるや、トカエフ大統領は8日には情報機関の国家保安委員会が、ナザルバエフ氏の最側近、カリム・マシモフ前委員長を国家反逆罪で拘束したと発表しました。さらに、マシモフ氏の元側近で国家保安委員会のマラト・オシポフ副議長とダウレト・エルゴジン副議長を共に解任したと明らかにしました。これは前述のように、いずれナザルバエフ逮捕まで持って行こうとしていると見るべきでしょう。

トカエフ氏は旧ソ連時代に、モスクワ国際関係大学で中国語を専攻しています。その後、ソ連外務省に入省、1983年に北京語言大学に留学しています。1984年からソ連が崩壊する1991年まで、中国のソ連大使館で外交官を務めていました。中国語は流暢で、後にCCTV(中国中央広播電視総台)のインタビューを、通訳なしで受けたこともあります。

トカエフ氏は1992年に、独立した母国カザフスタンの外務次官になり、1994年には外務大臣になりました。外務大臣は、1994年から1999年までと、2002年から2007年まで、計10年も務めています。その間、中露とのパイプ作りに励み、2013年に上院議長に就任しました。

トカエフ大統領

ロシアのプーチン政権は、トカエフ大統領に与したようです。ナザルバエフ等よりも、元ソ連
外務省の外交官であるトカエフの方が、よほど信頼できるからでしょう。だからこそ、初めてCSTOを派遣したのでしょう。

ロシア軍は8日、20機以上の大型輸送機イリューシン76を使い、ロシア西部イワノボ州から兵士をカザフに輸送し始めたと発表した。これに先立ち、急襲を得意とする精鋭の空挺くうてい部隊を送り込んでいました。CSTOからカザフに派遣された兵士の総数はベラルーシやタジキスタンを含む5カ国の約2500人ですが、大部分はロシア兵です。

空挺部隊というと、以前にもこのブログに掲載したように、後続の陸上部隊が到着することを前提として、ピンポイントで、橋頭堡を構築することなどが主任務です。後続部隊が来なければ、限られた戦力では持ちこたえられません。しかも、今回は空挺師団ではなく、あくまで空挺部隊で総勢2500人です。

ロシアのTVの画面などでは、多数の装甲車が並んだ画像やイリューシンなどを写してさも、大部隊を投入するようにみせかけていましたが、これはロシアのプロパガンダに過ぎません。そもそも、2500人の兵しか送らないということは、カザフスタンで本気で戦争をしようなどとは、鼻から考えていなという証拠です。本気で戦争をする気であれば、今頃後続部隊が陸路でカザフスタンに向かっているはずです。

大型輸送機イリューシン76に乗り込む空挺部隊

それができない理由がロシアにはあります。まずは、現状ではウクライナ問題があります。現状では、一人あたりのGDPでは韓国を大幅に下回るロシアは、ウクライナとカザフスタンの両方で同時に、大規模な作戦を行うだけの力はありません。

だからといって、優れた軍事技術を持ち、旧ソ連の核兵器を継承するロシアを侮ることはできません。現在でも、全世界を破壊してもまだ、ありはまるだけの核兵器を有しているのです。しかし、軍事力で外国に攻め込むとか、外国を制圧するということになれば、話は別です。その力はほとんどありません。自国の長大な国境線を守ることすら難しいです。

プーチン大統領は10日、ロシアが主導する旧ソ連諸国の集団安全保障条約機構(CSTO)の首脳会議で、政府に対する抗議デモが発生したカザフスタンを外国が後ろ盾するテロリストから守ることができたとして勝利を宣言しました。同時に、他の旧ソ連諸国もCSTOが守ると表明しました。

カザフスタンの抗議デモについては「破壊的な内外の勢力が状況を利用した」との見方を示し、「政権を揺るがす試みは許さない」と述べました。ただ、内外の勢力について、具体的には述べませんでした。

中国も基本的にはロシアと同様の姿勢でしょう。第一に、2月4日に北京冬季オリンピックの開幕を控えています。そんな時、隣国で内乱など起こってほしくないでしょう。第二に、あのような暴動が、国境を挟んだ新疆ウイグル自治区で起こってほしくないでしょう。

トカエフ政権が国民にあまり無慈悲なことをすると、今度は新疆ウイグル自治区の150万人のカザフ族が黙っていないでしょう。ともかく、一刻も早く騒動が収まってほしいと願っているでしょう。

習主席は7日、トカエフ大統領へのメッセージで、「大統領は重要な時に思い切って強力な措置を取り事態を速やかに沈静化させた」と評価したうえで、「政治家としての責任を示した」と強調していました。

中露としては、大統領がトカエフだろうが、誰だろうが、とにかく安定していて欲しいというのが本音でしょう。トカエフ政権が崩壊するようなことでもあれば、力の真空が生まれます。そこに乗じて米国が暗躍し、中露の両方に国境を接するカザフスタンに親米政権でも樹立されNATO軍が進駐することにでもなれば、それこそ中露にとって最大の悪夢です。

米国にとっては、アフガニスタンでの失地を大きく回復することになります。失地回復どころか、アフガニスタンは現状では、中国とは一部国境を接していますが、ロシアは国境を接しているわけではないのですが、カザフスタンは両国と長い国境線をはさんで隣接しています。

中露にとっては、かつての米国にとってのキューバ危機のように、裏庭に米軍基地ができあがることになります。それ以上かもしれません。冷戦中にカナダやメキシコに、親中露政権が樹立され、中露軍基地ができるような感じだと思います。そこに長距離ミサイル等を多数配備されることになれば、中露は戦略を根底から見直さなければならなくなります。ロシアはウクライナどころではなくなります。中国は海洋進出どころでなくなるかもしれません。

カザフスタン情勢は、プーチンや習近平にとって、鬼門ともいって良いような、恐るべき地政学上の脅威です。

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2022年1月10日月曜日

「国の借金」は子供に回るのか 積極財政でも健全化になる “財務省史観”は国民に有害だ―【私の論評】将来世代が、給付金を未来から現在にタイムマシンで送ることができれば、それは将来世代のつけ(゚д゚)!

日本の解き方


財務省は「国の借金」を強調するが…

 18歳以下への10万円の給付や予算規模が107兆円と過去最大になったことなどが報じられるたびに、「子供たちの将来にツケが回る」などと懸念する論調がある。これは事実なのか。

 ファイナンス論や会計学からいえば、そもそも借金のみで考えることがおかしい。個人での相続を考えても、借金だけが相続されるわけでなく、資産も相続される。政府が永続的な主体として借金があるとしても、それに相応の資産があれば、ファイナンス論から見れば破綻しないが、それであれば、子孫に対してもツケだけを強調するのはおかしいとなる。つまり、グロス債務ではなく資産を考慮したネット債務を見なければ、きちんとした議論はできない。

 財務省は借金のみを強調するので、財政状況に対して、マスコミや学会を含めまともな議論ができなくなっている。結論を言えば、企業でグループでのバランスシート(貸借対照表)が決定的であるのと同じく、政府でも中央銀行を含めた統合政府のバランスシートでみて、そのネット債務額がポイントだ。

 しかし、今は政府の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)で財政をみている。もちろんPBは財政状況の一部を表している。数式で恐縮だが、グロス債務対国内総生産(GDP)比の変化は、「PB赤字対GDP比」と、「『前期のグロス債務対GDP比の数値』に『金利から成長率を引いたもの』を掛けたもの」の和になる。今の状況では、成長率が金利より大きいので、多少のPB赤字でも、グロス債務対GDP比は上昇しない。

 筆者は15年ほど前にこの数式を経済財政諮問会議の資料として提出したこともある。この意味で、PBはグロス債務の動きを記述するための道具だ。

 ネット債務対GDP比はどう決まるか。結論を簡単に言えば、上の式から、中央銀行によるマネー増加対GDP比を引けばいい。中央銀行の保有する国債は、統合政府でみると、会計的にはグロス国債から相殺できるからだ。

 今のネット債務はほぼゼロである。その変化も、当分の間、その算式から考えるとマイナス傾向である。となると、狭義の政府で積極財政策をとっても、ネット債務対GDP比を大きく増加させなければ、財政健全化に資するともいえる。

 今、国債発行による積極財政をすれば、より将来の付け回しを減らせる可能性もある。一つは、将来投資をして、しっかりとした資産を残すことだ。であればネット債務は増えないし、資産が将来の社会収益を生み出す。もう一つが、中央銀行がインフレ目標の範囲内で国債を購入し、ネット債務を増やさないようにすればいい。

 残念ながら、今の財務省のグロス債務だけ見る方法では、正しい財政状況を見ることができないので、正しい財政健全化の議論もできない。まして、正しい積極財政も理解できない。まともな財政議論をするために、ネット債務からの議論をすべきであろう。でないと、財務省は国民に無益どころか有害になる。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】将来世代が、給付金を未来から現在にタイムマシンで送れば、それは将来世代のつけに(゚д゚)!

上の記事の高橋洋一氏の説明は、会計学上の常識です。まともな企業で、財政赤字だけみて、「赤字が赤字」がと、取締役会議などで大騒ぎすれば、それこそ「馬鹿」といわれておしまいです。

そのような事がわからない、政治家や官僚が日本ではあまりに多すぎです。民間企業では当たり前のことが、政治の世界では、当たり前になっていないことに改めて驚かされます。

国債を発行して、様々な対策をすればそれが即「子供たちの将来にツケが回る」という考えは明らかな間違いです。これについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ コロナ追加経済対策、批判的な報道は「まともだという証明」―【私の論評】ノーベル経済学賞受賞サミュエルソンが理論で示し、トランプが実証してみせた 「財政赤字=将来世代へのつけ」の大嘘(゚д゚)!
これは、2020年12月15日詳細は、この記事をご覧いただくものとして以下に一部を引用します。 
20世紀を代表する経済学者の一人であるポール・サミュエルソン(ノーベル・経済学賞受賞)は、たとえば戦時費用のすべてが増税ではなく赤字国債の発行によって賄われるという極端なケースにおいてさえ、その負担は基本的に将来世代ではなく現世代が負うしかないことを指摘しています。

なぜかといえば、戦争のためには大砲や弾薬が必要なのですが、それを将来世代に生産させてタイムマシーンで現在に持ってくることはできないからです。その大砲や弾薬を得るためには、現世代が消費を削減し、消費財の生産に用いられていた資源を大砲や弾薬の生産に転用する以外にはありません。

将来世代への負担転嫁が可能なのは、大砲や弾薬の生産が消費の削減によってではなく「資本ストックの食い潰し」によって可能な場合に限られるのです。

このサミュエルソンの議論は、感染拡大防止にかかわる政府の支援策に関しても、まったく同様に当てはまります。政府が休業補償や定額給付のすべてを赤字財政のみによって行ったとしても、それが資本市場を逼迫させ、金利を上昇させ、民間投資をクラウド・アウトさせない限り、赤字財政そのものによって将来負担が生じることはありません。
ノーベル賞を受賞した経済学者ポール・サミュエルソン氏
そして、世界的な金利の低下が進む現状は、資本市場の逼迫や金利の高騰といった経済状況のまさに対極にあるといってもよいです。それは、政府が感染拡大防止のために実施した経済的規制措置によって生じている負担の多くは、将来の世代ではなく、今それによって大きく所得を減らしている人々が背負っていることを意味します。そうした人々に対する政府の支援は、まさしくその負担を社会全体で分かち合うための方策なのです。

これについては、他の記事でさらに解説を加えました。

しかし、サミュエルソンのこの主張も、当たり前といえば当たり前です。サミュエルソンは、あまりにも当たり前のことをわからない人が多いので、このような主張をしたのでしょう。国債は政府の借金です。政府はどこから借金をしているかといえば、国債を購入する機関投資家や個人投資家からなどです。

誰が当面のつけを払っているかといえば、これらの投資家が払っているのです。これら投資家は、国債に支払った資金が手元にあれば、事業をしたり投資したりできますが、それで国債を購入してしまえば、それができなくなるのです。そうして、その投資家は現在の様々な取引によって得た資金を用いて国債を購入しています。結局、現世代が負担しているのです。

しかし、国債の償還によって、投資家は元金と金利を受け取ることができるのです。愚かな人は、これが将来世代への付けになると考えているのでしょうが、それは完璧な間違いです。

政府がよほど無意味な投資でもしない限り、公共工事や他の事業が行われ、それが富を生み出し、税金として政府に戻ってくることになります。

公共工事で堤防をつくったら、何にも富を生み出すことはないではないかと言う人もいるかもしれません。そうでしょうか。堤防をつくって安全になれば、そこには住人が増えます。住人が増えれば、商店や病院ができます。工場ができたり、住民サービスの様々な施設ができて、税収が増えることになります。

無論、そうなるまではかなりの時間がかかり、個人や一企業がそのようなことをしても損失だけで、何も富を生み出すことはできないかもしれません。しかし、政府は長い間待つことができます。しかも、個人や企業と違って、税金収入を得られます。そうして、出来上がった堤防は将来世代も使うことができるのです。

それにあまりにも当たり前すぎて、わざわざ述べるべきかどうか迷うところですが、堤防をつくるために、政府が支出して土木会社などにお金を払い工事を実施すれば、その工事に携わる人たちは、それで収入を得て消費や投資をしたり、さらには税金を払うことになります。政府は、税収を得ることできます。これが、家計や個人とは大きな違いです。政府が何かつくったり消費すれば、そのお金が家計のようにそっくり消えてしまうわけではないのです。

そうして政府は国が崩壊することでもない限り、不死身と言っても良い存在です。これは、個人や企業などとは大きな違いです。個人の寿命は数十年、企業の寿命は日経が昔調べた資料によれば、30年です。これは、今から考えると、会社というより、一事業の寿命は30年というほうが正しいかもしれません。しかし、現在のコーポレート化された組織であっても、不死身ではありません。

だから、国債を発行して政府は様々な事業を行うことができるのです。というより、国民のためにそうしなければならないのです。黒字を積み立てるだけで、何もしない政府は、存在意義がありません。ただ、もちろん無制限にそのような事はできないです。もし、無制限にそのようなことをして不都合が生じた場合、過度のインフレになります。

この場合は、心配する必要はありますが、財政赤字自体を心配する必要はありません。過度のインフレにさえならなければ、政府は財政破綻の心配などせずとも、財政赤字状態を100年でも200年でも、継続することできます。 

このようなことをいうと、インフレを過度に心配する人もでてくるでしょうが、現状の日本では2%くらいのインフレであれば、全くは心配ありません。むしろ賃金が上昇するなどのメリットのほうが多いです。

そうして、今の世界は、よほどのことがない限り過度なインフレになりにくい状況になっています。これについても、以前このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

世界が反緊縮を必要とする理由―【私の論評】日本の左派・左翼は韓国で枝野経済理論が実行され大失敗した事実を真摯に受け止めよ(゚д゚)!

野口旭氏 2021年4月1日、日本銀行政策委員会審議委員

 詳細はこの記事をご覧いただものとして、この記事において、野口旭氏は、現在世界がインフレになりにくい状況を以下のように述べています。

一つの仮説は、筆者が秘かに「世界的貯蓄過剰2.0」と名付けているものである。世界的貯蓄過剰仮説とは、FRB理事時代のベン・バーナンキが、2005年の講演「世界的貯蓄過剰とアメリカの経常収支赤字」で提起したものである。バーナンキはそこで、1990年代末から顕在化し始めた中国に代表される新興諸国の貯蓄過剰が、世界全体のマクロ・バランスを大きく変えつつあることを指摘した。リマーン・ショック後に生じている世界経済のマクロ状況は、その世界的貯蓄過剰の新段階という意味で「2.0」なのである。

各国経済のマクロ・バランスにおける「貯蓄過剰」とは、国内需要に対する供給の過剰を意味する。実際、中国などにおいてはこれまで、生産や所得の高い伸びに国内需要の伸びが追いつかないために、結果としてより多くの貯蓄が経常収支黒字となって海外に流出してきたのである。

このように、供給側の制約が世界的にますます緩くなってくれば、世界需要がよほど急速に拡大しない限り、供給の天井には達しない。供給制約の現れとしての高インフレや高金利が近年の先進諸国ではほとんど生じなくなったのは、そのためである。

この「長期需要不足」の世界は、ローレンス・サマーズが「長期停滞論」で描き出した世界にきわめて近い。その世界では、財政拡張や金融緩和を相当に大胆に行っても、景気過熱やインフレは起きにくい。というよりもむしろ、財政や金融の支えがない限り、十分な経済成長を維持することができない。ひとたびその支えを外してしまえば、経済はたちまち需要不足による「停滞」に陥ってしまうからである。それが、供給の天井が低かった古い時代には必要とされていた緊縮が現在はむしろ災いとなり、逆に、その担い手が右派であれ左派であれ、世界各国で反緊縮が必要とされる理由なのである。

インフレになりにくい現在の世界では、財政赤字を恐れて、投資をしないことのほうが、経済運営においてはるかに危険なことなのです。 

ノーベル経済学賞を受賞した、ジョセフ・スティグリッツ教授は、EUがパンデミック前のルールに立ち戻ることは間違いであり、公的債務のGDP比を減らすには投資で分母を増やすべきだとして、より柔軟で思慮深い財政運営を求めていますが、これは全く正しいです。

ジョセフ・スティグリッツ氏

 感染症対策の一環として、国債を増発し、それで給付金を支給したとして、それがすぐに将来世代=子どもたちのつけになるというのは全くの間違いです。サミュエルソンが語るように、将来世代が、給付金を未来から現在にタイムマシンで送ることができれば、将来世代のつけになりますが、タイムマシンがなければやりたくても、それはできません。

財務省の(矢野康治)事務次官が、このまま日本が借金まみれだと、タイタニック号のように氷山にぶつかって沈没してしまうという趣旨の与太論文を(月刊誌「文芸春秋」に)掲載しました。

しかし、安倍元首相は昨年暮の公演で「日本は決してタイタニック号ではない。日本がタイタニック号だったら、タイタニック号が出す国債を買う人はいない。ちゃんと売れている」と主張しました。これは、全く正しいです。そうして、以下のように続けました。

「新型コロナ禍での巨額の補正予算は、国債でまかない、そのほとんどは市場を通じて日本銀行に購入している。決して孫の代に(借金を)背負わせているわけではなく、借金を全部背負っているのは日本銀行だ。

荒っぽい言い方だが、日本銀行は国の子会社。立派な中央銀行だが、5割は政府が株を持っているから、連結決算上は債務ではないという考え方も成立する」

「子供たちの将来にツケが回る」と語る人たちは、空想科学小説、それもあり得ない与太話をしているに過ぎないのです。

このような政治家や官僚の与太話等に惑わされて、不安を感じる必要性などまったくありません。

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2022年1月9日日曜日

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「習政権なす術なし」中国“ロックダウン失敗” 北京五輪まで1カ月…経済低迷、国内では物々交換も 石平氏「今後は国民の不満や批判の『ゼロ』対策」

鉄条網で封鎖された居住区の出入り口で、生活物資を受け取る住民ら=24日、中国陝西省西安

 中国のコロナ対策が「世界最大のリスク」に浮上した。北京冬季五輪まで1カ月を切り、国内の一部都市をロックダウン(都市封鎖)しているが、米調査会社は封じ込めに失敗する可能性が高く、国内外の経済混乱を招くと指摘した。封鎖地域では食料不足や当局者による暴行騒動などに発展、住民の不満も噴出している。

 米調査会社ユーラシア・グループが年初に公表した今年の「10大リスク」をまとめた報告書で「最大のリスク」に挙がったのが、中国の「ゼロコロナ」政策だ。「幅広いロックダウンと効き目が限定的なワクチン」でオミクロン株との戦いを強いられていると説明。「当初の成功と習近平国家主席のこだわりで、方針転換は不可能になった」と分析する。

 その上で、感染拡大の封じ込めに失敗する可能性が高く、政府による社会・経済統制の強化とそれに対する不満の増大を予測。中国経済の低迷が続き、世界的なサプライチェーン(供給網)への打撃を深刻化させ、インフレのリスクを増大させると警鐘を鳴らした。

 中国製ワクチンについては効果の低さも指摘されており、国内各社が、ファイザーやモデルナと同タイプのmRNAワクチンの製造・開発に着手している。前出の報告書は、混乱状況が「少なくとも自国製のmRNAワクチンを国民に行き渡らせるまで、最短でも今年末まで」続くとの見方を示した。

 昨年12月下旬からロックダウンを行っている陝西省西安市では、食料品や生活必需品の不足、医療サービスの受診などに影響している。

 同市内で痛みを訴えた妊婦が陰性証明の期限が切れていたため病院に入れず、寒い屋外で約2時間待たされた末に大量出血、死産したと報じられ、住民らの非難が噴出した。保健当局は謝罪し、病院を受診する人に48時間以内の陰性証明の提示を義務付けていた措置をやめると発表した。

 中国版ツイッター「微博(ウェイボ)」では、ポータブルゲーム機とインスタントラーメンに中華まん、白菜やにんじんなどの野菜と生理用品などを物々交換する映像も投稿されている。

 防疫担当の職員が住民を暴行する映像もSNSに投稿されたほか、ロックダウン前に住民が脱走したことも報じられた。

 河南省禹州市でも3日からロックダウンが行われている。

 関西福祉大の勝田吉彰教授(渡航医学)は「重症呼吸器症候群(SARS)流行当時、1人の感染者のみで住居を封鎖するなどした対策の成功体験があるのだろうが、今後はロックダウンだけで抑え込みはなかなか難しい。(mRNAなど)欧米のワクチン導入も検討すべきではないか」と語った。

 評論家の石平氏は「習政権は従来の対策と自国産のワクチンについてメンツを重視するあまり、なす術がない。今後はコロナの『ゼロ』対策ではなく、強権的抑圧によって国民の不満や批判の『ゼロ』対策をするしかないのではないか」と皮肉を込めた。

【私の論評】コロナがインフル並になることを信じ、強権的な中国版「ゼロコロナ政策」にすがり秋の党大会を迎える習近平(゚д゚)!

米調査会社ユーラシア・グループが年初に公表した今年の「10大リスク」をまとめた報告書で「最大のリスク」に挙がったのが、中国の「ゼロコロナ」政策であり、そのことはこのブログにも掲載しました。

ユーラシア・グループの予測では、習近平がコロナ感染症を制御できなくなり、国内でサプライチェーンが崩壊し、それが世界に悪影響を与えるとされました。

これを巡っては2つ対照的な出来事があります。一つは、中国のゼロコロナ政策の失敗を予感させるものです。

それらは、中国・西安で妊婦が陰性証明の期限切れを理由に診療を拒否されて死産した事件で、衛生当局のトップが謝罪しましたというものです。 

中国では、西安市衛生健康委員会・劉順智主任:「女性に深く謝罪する。果たすべき仕事が果たされなかったことを深く謝罪する」 という報道がなされています。主任というと、日本では職位としては低いですが、中国ではその部署のトップを意味する言葉です。

冒頭の記事にもあるとおり、事実上のロックダウンが続く陝西省西安では1日、妊娠8カ月の女性が陰性証明の期限が4時間ほど切れていたため、診療を拒否されておなかの赤ちゃんが亡くなりました。 

西安市衛生部門のトップは6日、女性に謝罪したうえで、こうしたケースが他にも起きているとして、「直ちに改善措置を取り、コロナ禍の医療ニーズを確保する」と頭を下げて謝罪しました。


中国では、この他にもコロナ感染に関して、とんでもない動画が出回り、すぐに当局によって削除されています。

陝西省興平市では、感染地区から帰ってくる家人を家に入れないために、家のドアノブを男が針金で固定したり、扉を溶接しました。ある都市では、規則を破った市民に対しては反省文を書かせ、公開謝罪をさせました。ロックダウン中の西安では、なぜか防護服を着た作業員が路上火炎放射器で消毒作業をしている動画が出回りました。

日本では、大企業や政府役人が頭を下げて謝罪するという姿は、見慣れたものですが、中国では地方政府の幹部がこのように頭を下げて謝罪するというのは、初めてではないでしょうか。

これは、中国では異例中の異例です。私自身は、このようなことで下級幹部が謝罪した事例はあったことを知っていますが、中共の地方幹部のトップが公に謝罪した例を知りません。これは、国民の不満が鬱積しており、それに対する中国共産党の懐柔策なのだと考えられます。

中国では、元々国民の共産党政権に対する不満はかなり強く、建国以来毎年平均数万件の暴動が発生したといわれています。それが、2012年あたりから、10万件を超えるようになり、政府も暴動件数を公表しなくなりました。

もともと国民の憤怒のマグマが煮えたぎっていたところに、中国版「ゼロコロナ政策」である「社会面清零政策」が行われたのです。これは先進国などでいう「ゼロコロナ政策」とは似て非なるものであり、数字上コロナ感染者がゼロになれば、住民の生活や命はどうなっても構わないという政策です。

「社会面清零」に関する報道をする中国CCTVの画面

これでさらに国民の憤怒がさらに高まっていたところに、このような事件が起こり、国民の憤怒が頂点に達したのでしょう。これは、さすがに中共政府も従来のように隠蔽、弾圧や日本を悪者に仕立てるなどの方法では乗り切ることができないと判断したのでしょう。だから、トップの謝罪という事態になったのでしょう。

もう一つは、中国がゼロコロナ政策でなんとか難局を切り抜ける可能性もでてきたという事実です。

現在爆発的に感染が増えつつあるオミクロン株について、各国のデータをみると従来の変異株より入院率や死亡率は低く、「インフルエンザ並み」との指摘もあることです。

英統計サイト「アワー・ワールド・イン・データ」によると、5日時点の新型コロナによる致死率(感染者のうち死亡した割合)は英国が0・15%、イタリアは0・46%、フランスは0・29%だった。昨年1~2月時点では各国ともに3%台で、低下傾向は顕著です。

国立感染症研究所の資料によると、昨年12月23日までに報告されたイングランドのオミクロン株感染例など29万5694例のうち、19日までに入院が366例、死亡が29例認められました。2日のタイムラグはありますが、単純計算で入院率は約0・12%でした。

昨年8月、英公衆衛生庁の研究者が英医学誌「ランセット」に掲載した論文では、同年3~5月の新型コロナ患者のうち2週間以内に入院したのはアルファ株が2・2%、デルタ株が2・3%にのぼっていましたた。

日本では、第5波当時の入院率や死亡率はインフルエンザより10倍リスクが高いとされましたが、現状はインフルエンザと現時点のオミクロン株の入院率はいずれも0・1%程度で同等のレベルです。

歴史的にみると急性ウイルス感染症でパンデミック的な流行が3年以上続いた記録はなく、そろそろ風邪の一種になる方向に収束する可能性も高いです。

もし、そうなると、習近平政権は、中国製ワクチンがオミクロン株に効き目が低かったとしても、「社会面清零政策」をやり抜いても、しばらくすれば、コロナ感染症は中国でも収束する可能性があります。

習近平政権にとって、今回のオミクロン株の急速な感染は、悪い面ばかりではありません。それは、北京五輪の各国の外交的ボイコットを、国内ではオミクロン株のせいにできるからです。

習近平政権は、たとえ東京五輪のように無観客でも強行し、北京五輪を成功させ、国威発揚に利用するでしょう。

そうして、焦点は秋の党大会に移ることでしょう。中国共産党は2022年秋、5年に1度の党大会を開きます。通例であればトップが交代する10年に1度の節目ですが、今回は習近平総書記(国家主席)の3期目続投が確実視されており、習氏を支える指導部人事が最大の焦点です。

昨年の共産党大会

この直前までに、コロナ禍が収束していれば、良いでしょうが、それまでにコロナが収束していない場合は、習近平の国家主席の3期目続投は危うくなるでしょう。

それに加えて、個人崇拝の復活や経済・社会の統制強化など毛沢東時代への回帰を強める習氏の路線には、党内で異論も根強いです。減速する経済や長引く米中対立も、3期目始動の不安材料です。

それまでは、習近平は気を抜けません。海外からオミクロン株にも効き目があるとされる、ワクチンを導入すれば、面子が丸つぶれとなるので、なす術はありません。ただコロナがインフルエンザ並になることを信じて、強権的な中国版「ゼロコロナ政策」にすがり、その日を迎えるしかないでしょう。その過程で、「社会面清零政策」はますます苛烈になるかもしれません。

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