2022年2月20日日曜日

中国艦が豪哨戒機にレーザー照射、「脅迫行為」とモリソン首相―【私の論評】背後には中国海軍の脅威を無効にしかねない、P-8A哨戒機への中国のいら立ちが(゚д゚)!

中国艦が豪哨戒機にレーザー照射、「脅迫行為」とモリソン首相


オーストラリアのモリソン首相は20日、中国軍の艦船が豪軍の哨戒機にレーザー照射したことを「脅迫行為」だと非難し、中国政府に説明を求めた。

首相は会見で「脅迫行為に他ならない。(レーザー照射は)挑発がなかったにもかかわらず行われたもので、正当化できない。このような脅迫行為は断じて受け入れられない」と述べた。

オーストラリア国防省は19日、同国北方の排他的経済水域(EEZ)上空を17日に飛行していた哨戒機が中国軍の艦船からレーザー照射を受け、操縦士が生命の危険にさらされたと発表した。同国防省によると、中国艦はもう1隻とともにアラフラ海を東に向けて航行していた。同海域はオーストラリアとパプアニューギニアの間に位置する。

同国防省は「未熟で危険な軍事行為」だとした。

【私の論評】背後には中国海軍の脅威を無効にしかねない、P-8A哨戒機への中国のいら立ちが(゚д゚)!

上の記事によると、レーザー照射した中国の艦艇は、アラフラ海を東に向けて航行していたといいます。以下にアラフラ海の地図を掲載します。


アラフラ海はかなりオーストラリアに近いです。上の地図で「チモール海共同石油開発地域」とは、2011年に国際石油開発帝石が、インドネシア共和国アラフラ海マセラ鉱区のアバディガス田の開発でロイヤル・ダッチ・シェルを戦略的パートナーに選定し、保有権益90%のうち、30%をシェルの関連会社に譲渡することで合意し、両者で開発をすすめている地域です。

今回中国の艦船から、レーザー照射を受けたオーストラリアの哨戒機は、おそらくは米国製のP-8哨戒機だと思います。

このP-8は多くの国々で採用されています。日本は、自前のP-1を運用していますが、ご存知のようにこれは過去に韓国艦艇からレーザー照射を受けています。

米軍のP-8A哨戒機

このP-8は過去にも中国の艦艇からレーザー照射を受けています。

2020年2月28日付米ブライトバートオンラインニュースに「中国軍艦、米軍機に対して“危険かつ不当な”レーザー照射を浴びせる挑発行為」という記事が掲載されました。その記事の内容を翻訳して以下に掲載します。

米海軍は2月27日、西太平洋のグアム基地沖を飛行中の米軍機が2月17日、近くを航行する中国軍艦から“危険かつ不当な”レーザー照射を受けたことを明らかにした。

米太平洋軍の報道官が同日、『ネイビー・タイムズ』紙(1951年発刊)のインタビューに答えたもので、グアム基地の380マイル(約600キロメートル)西沖を飛行中のP-8Aポセイドン哨戒機に向けて、中国軍駆逐艦から浴びせられたもので、海上衝突回避規範(CUES、注後記)に違反する不当な行為だと非難した。

同報道官によれば、有事の場合を除き、飛行中の飛行機にレーザー照射を行うことは、乗員の健康・安全を脅かすだけでなく、計器等にも被害をもたらし、衝突や墜落等の重大事故を引き起こす可能性があるという。

シンガポールのS.ラジャラトナム防衛研究所コリン・科(コー)研究員は香港『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』のインタビューに答えて、“至近距離のレーザー照射は無用な衝突等を引き起こしかねず、非常に危険”だと語った。

同研究員は更に、“P-8A機が中国軍艦に近すぎたとされたのかも知れないが、それでも同艦に衝突する恐れなどないはずで、レーザー照射は無用で危険な挑発行為だ”とも言及した。

これと反対に、香港軍事評論家の孫中平(ソン・チョンピン)氏は同紙に対して、中国軍艦が余りにグアム基地に近すぎ過ぎたことを“不満に”思って、米海軍がレーザー照射の問題を殊更強調したものだと批評した。

同氏によれば、“近すぎ過ぎた相手に警告を発するのは通常の行為”だという。

ただ、肉眼で見えない危険なレーザー照射で“警告”することは、別の話だとも言及した。

なお、米海軍によれば、同機はフロリダ州のジャクソンビル基地から沖縄嘉手納基地に派遣されていて、同海域を監視飛行していたものだが、事態発生後嘉手納基地に戻り、“損害状況について調査中”だという。

同日付中国『環球時報』では、「軍事専門家;中国軍艦がレーザー照射を行ったとの米軍の非難は“中国の脅威”を誇大宣伝するものと批評」という記事を掲載しています。これも日本語に翻訳したものを以下に掲載します。

中国人民解放軍海軍研究所の軍事専門家である張軍事(チャン・チュンシェ)上級研究員は2月28日、米海軍が前日、グアム島沖を飛行中の米軍のP-8A哨戒機に中国軍駆逐艦“呼和浩特(フフホト)”からレーザー照射を浴びせられたと非難した事態について、米軍機が同艦に異常接近してきたことから防衛手段として行ったものだと明言した。

同研究員は『環球時報』のインタビューに答えて、米海軍は、レーザー照射が乗員を危険にさらすもので、CUESに違反するものだとしているが、米軍機が同艦に猛スピードで接近してきて、同艦の航行及び通常訓練を妨害しようとしてきたための止むを得ない対抗措置だったと説明している。

更に同研究員は、目下米議会で予算折衝が行われている最中、米国防総省がより多くの国防予算を得るため、そのタイミングに合わせてこのレーザー照射事件を殊更強調して、“中国の脅威”について誇大宣伝しているものだとも付言した。

(注)CUES:他国の海軍同士が西太平洋地域の洋上で不慮の遭遇をした場合に取るべき艦艇及び航空機の行動を定めた規範。2014年に合意され、日米中ロ豪加等太平洋圏の21ヵ国が署名。

2020年には米国のP-8にレーザーを照射し、今度は北京で五輪開催中にオーストラリアのp-8に照射するということで、中国としてはかなりP-8に神経をとがらせているようです。

それは、なぜなのでしょうか。それはこの海域で中国海軍がオーストラリアに気付かれてはならないことに気付かれたか、あるいは気付かれたと思ったのかもしれません。

そういう特殊事情があるかもしれませんが、先の米国のP-8といい、今回のオーストラリアのP-8といい、共通するのは、中国の哨戒機よりも、はるかに哨戒能力が高いということです。

そうなると、オーストラリア海軍は中国の潜水艦をより発見しやすくなり、相対的に中国海軍の海戦能力が劣ってしまうことになります。オーストラリアは現状では、潜水艦は旧式のものを数隻保有しているだけで、中国のほうが圧倒的に多数の潜水艦と艦艇を保有しています。

しかし、オーストラリアは中国潜水艦を探知する能力が高ければ、中国の潜水艦のオーストラリアへの脅威をより低減することができます。もし、中国がP-8並の性能の哨戒機を製造できれば、互角ということになりますが、そうではないので、相対的に中国海軍のほうが、海戦能力が劣ることになってしまいます。

このP-8は米国とオーストラリアだけではなく、他国でも配備したり、配備を計画しています。

以下に配備国、配備を計画している国のリストを掲載しておきます。なお、配備を計画とは、配備するかしないかを検討しているという意味ではなく、配備すること自体を決めている国ということであり、いずれ配備するということです。

〈配備中の国〉

米国、インド、オーストラリア、イギリス

〈配備予定の国〉

ノルウェー、ニュージランド、韓国、ドイツ

今後さらに、配備を予定する国も増えてくるでしょう。

なぜ、このようなことを各国がするかといえば、無論中国海軍に対抗するためです。現代の海戦の主役は潜水艦であり、水上に浮かぶ艦艇はミサイルや魚雷の標的になり、すぐに沈められてしまうからです。

そのため、対潜水艦戦闘力(ASW)こそが、本当の戦力です。中国よりもASWが優れていればいるほど、中国海軍の脅威を低減できます。

オーストラリア軍のP-8A哨戒機

オーストラリアは原潜の配備も検討しています。すでにP-8を導入したオーストラリアが、潜水艦も配備すれば、日米英のように中国海軍はさほど脅威ではなくなります。

このようなことによる中国の苛立ちも、今回のレーザー照射の背景にあると考えられます。

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2022年2月19日土曜日

米空母と沖縄で3回目訓練 海自―【私の論評】米国は最早プーチンの「ロシア大国幻想」に付き合うつもりはない(゚д゚)!

米空母と沖縄で3回目訓練 海自

沖縄東方で訓練する原子力空母エーブラハム・リンカーン(右から2隻目)など日米の艦艇

 海上自衛隊は18日、米海軍の原子力空母エーブラハム・リンカーンや巡洋艦、駆逐艦の計3隻と沖縄東方で16、17日、共同訓練を実施したと発表した。海自は護衛艦いなづまと練習艦はたかぜが参加した。戦術技量や相互運用性の向上が目的としている。

 リンカーンは沖縄周辺への展開を続けており、海自が共同訓練を公表したのは1月中旬以降、今回で3回目となる。日米は台湾有事への懸念を念頭に、短期間に共同訓練を重ねることで、中国に対するけん制姿勢を強く示す狙いだ。

 防衛省によると、東シナ海や太平洋にかけての海域では今週、中国のミサイル駆逐艦や情報収集機が沖縄本島と宮古島の間を往復するのを確認している。日米と中国側のにらみ合いが激しくなっているとみられる。

【私の論評】米国は最早プーチンの「ロシア大国幻想」に付き合うつもりはない(゚д゚)!

このブログでも何度か掲載してきたように、現在のロシアにはウクライナに侵攻して、全土を制圧するだけの力はありません。にもかかわらず、バイデン政権がロシアのウクライナ侵攻の可能性を非難する背後には、ロシアがウクライナに侵攻すれば、米国は経済制裁の大義を得て、ロシアを孤立させ経済的に弱らせることができるということがあるのでしょう。

「ノルドストリーム2」を葬り去り、自国産のシェールオイル・ガス、小型原発などのエネルギーをドイツへと輸出する道も開けるかもしれないです。

それにロシアの関心を西方に縛り付け、インド太平洋地域で中露両国と向き合うというリスクを避けながら、問題を長期化させロシアの力をじわじわと削ぐこともできます。

そうした考えは、先日もこのブログで紹介したばかりの、バイデン政権による初の「インド太平洋戦略」にも透けて見えます。

バイデン政権は最近バイデン政権としては初の「インド太平洋戦略」を公表した

先日もこのブログで指摘したように、この戦略には、ロシアという言葉が一つもありません。その部分を以下に再掲します。
インド太平洋戦略について述べているわけですから、出てこないのは当たり前といえば、当たり前なのかもしれませんが、それにしても、インド・太平洋地域というと、ロシアもオホーツク海を介して太平洋と繋がっているのですから、何らかの影響力があれば、言及されるはずです。

米国としては、ロシアのインド・太平洋地域における影響はなしとみているといえると思います。実際そうなのでしょう。ロシアの太平洋艦隊も、ロシアの原潜等も、米国には脅威とみなしていない、少なくとも米国のコントロール下にあると見ているのだと思います。無論、それには日本の強力な対潜水艦戦闘力(ASW)等が関係していると思います。

そうして、この地域における最大の脅威はとりもなおさず、中国であるということです。そうして、これこそが米国にとって大きな脅威であると認識しているのです。しかも、軍事力だけではなく、経済力や技術力などによるこの地域への浸透と不安定化を懸念しているでしょう。
さて、その中露は2月4日に、北京五輪開会式直前に首脳会談を行っています。この首脳会談の終了後、日付が変わった5日未明に、新華社通信が「中華人民共和国とロシア連邦の新時代の国際関係と全世界の持続可能な発展に関する共同声明」を発表しました。全文はA4用紙6枚以上にわたり、両国の共通認識や合意事項がびっしり記されていました。

この声明は、ロシア側でも公表され、サイトに掲載されています。これは英語でも掲載されており、その一部を以下に日本語訳をして掲載しました。

この声明については、各種報道がなされていますので、この声明の全文の内容を知りたい方は他のメディアにあたっていただきたいと思います。

私は、この声明のうち特に「IV」に注目しました。以下にその内容の日本語訳を掲載します。長い文章なので、時間のない方は赤字の部分にだけ読んでいただいても結構です。

"
新時代を迎えた国際関係と世界の持続可能な開発に関するロシア連邦と中華人民共和国の共同声明

2022年2月4日

中華人民共和国の習近平国家主席の招待により、ロシア連邦のウラジーミル・V・プーチン大統領は2022年2月4日に中国を訪問しました。両首脳は北京で会談を行い、第24回冬季オリンピック大会の開会式に参加した。

IV

双方は、ロシアと中国が世界の大国として、また国連安全保障理事会の常任理事国として、道徳的原則を堅持し、その責任を受け入れ、国際問題における国連の中心的調整役割を有する国際システムを強く提唱し、国連憲章の目的と原則を含む国際法に基づく世界秩序を守り、多極化を進め、国際関係の民主化を進め、一層繁栄し、安定し、公正な世界を共に作り、新しいタイプの国際関係を共に構築しようと考えている点を強調した。

ロシア側は、中国側が提案した「人類運命共同体」構築という構想が、国際社会の連帯を強め、共通の課題に対応する努力を強化することに意義があることを指摘する。中国側は、国際関係の公正な多極化システムを構築するためにロシア側が行っている努力の意義に留意する。

双方は、第二次世界大戦の成果と既存の戦後世界秩序を強く支持し、国際連合の権威と国際関係における正義を守り、第二次世界大戦の歴史を否定し、歪曲し、改竄しようとする企てに抵抗するつもりである。

世界大戦の悲劇の再発を防止するため、双方は、ナチスの侵略者、軍国主義者の侵略者およびその共犯者の残虐行為に対する責任を否定し、戦勝国の名誉を傷つけ、汚損することを目的とする行為を強く非難する。

双方は、相互尊重、平和的共存、互恵的協力を基礎とする世界の大国間の新しい種類の関係の確立を求める。両者は、ロシアと中国の新しい国家間関係は、冷戦時代の政治的・軍事的同盟関係より優れていることを再確認する。両国の友情には限界がなく、協力の「禁じられた」領域もなく、二国間戦略協力の強化は、第三国を狙ったものでも、国際環境の変化や第三国の状況変化に影響されるものでもない。

双方は、国際社会の分裂ではなく統合の必要性、対立ではなく協力の必要性を再確認する。双方は、国際関係を、弱者が強者の餌食となるような大国間の対立状態に戻すことに反対する。また、国際問題に合意なしに間接的に取り組むことに反対し、パワーポリティクス、いじめ、単独制裁、治外法権の適用、輸出管理政策の乱用に反対し、世界貿易機関(WTO)のルールに沿った貿易円滑化を支持する。

双方は,外交政策の協調を強化し,真の多国間主義を追求し,多国間プラットフォームにおける協力を強化し,共通の利益を擁護し,国際及び地域のパワーバランスを支持し,グローバル・ガバナンスを向上させる意図を有することを再確認した。

双方は、世界貿易機関(WTO)の中心的な役割に基づく多国間貿易システムを支持・擁護し、WTO改革に積極的に参加し、単独アプローチ及び保護主義に反対する。双方は、パートナー間の対話を強化し、共通の関心事を有する貿易・経済問題についての立場を調整し、グローバル及び地域のバリューチェーンの持続可能かつ安定的な運用の確保に貢献し、より開放的、包括的、透明、無差別な国際貿易・経済ルール体系を促進する用意がある。

双方は、G20が国際経済協力問題及び危機対応措置を議論する重要なフォーラムであることを支持し、G20内の連帯と協力の精神の活性化を共同で促進し、国際的な疫病対策、世界経済の回復、包括的持続可能な開発、公正かつ合理的に世界経済の統治システムを改善し、グローバル課題に集団的に取り組む等の分野における同協会の主導的役割を支持する。

双方はBRICS内の戦略的パートナーシップの深化を支持し、政治・安全保障、経済・金融、人道的交流の3つの主要分野での協力拡大を促進する。特に、ロシアと中国は、公衆衛生、デジタル経済、人工知能技術を含む科学・イノベーション・技術分野での交流、及び国際プラットフォームにおけるBRICS諸国間の協調の強化を奨励する意向である。双方は、BRICSプラス/アウトリーチ形式を、地域統合協会や途上国・新興市場国との対話の効果的なメカニズムとして更に強化するよう努力する。

ロシア側は、中国側が2022年に同協会の議長を務めることを全面的に支持し、第14回BRICS首脳会議の実りある開催を支援する。

ロシアと中国は、上海協力機構(SCO)を包括的に強化し、国際法、多国間主義、平等、共同、不可分、包括的かつ持続可能な安全保障という普遍的に認められた原則に基づく多心的世界秩序の形成におけるその役割を更に強化することを目指す。

両者は、SCO加盟国の安全保障に対する挑戦と脅威に対抗するメカニズムの改善に関する合意を一貫して履行することが重要であると考え、この課題に対処する文脈で、SCO地域反テロ機構の機能拡張を提唱する。

双方は、貿易、製造、輸送、エネルギー、金融、投資、農業、税関、電気通信、イノベーション及びその他の相互利益分野におけるSCO加盟国間の経済交流に、先進技術、省資源技術、エネルギー効率及び「グリーン」技術の使用を含め、新たな質及びダイナミクスを付与することに貢献する。

双方は,2009年の国際情報セキュリティ分野における協力に関する上海協力機構加盟国政府間の合意に基づくSCO内及び専門家グループ内の実りある相互作用に留意する。この文脈で、2021年9月17日にドゥシャンベで開催されたSCO加盟国首脳会議において、2022年から2023年の国際情報セキュリティの確保に関するSCO共同行動計画が採択されたことを歓迎する。

ロシアと中国は、SCOの進歩的な発展にとって、文化的・人道的協力の重要性がますます高まっていることから進める。SCO加盟国の人々の相互理解を強化するため、文化的なつながり、教育、科学技術、医療、環境保護、観光、人と人との接触、スポーツなどの分野における交流を効果的に促進し続ける。

ロシアと中国は、アジア太平洋地域における経済問題についての多国間対話の主要なプラットフォームとしてのAPECの役割を強化するために引き続き努力する。双方は、地域における自由、開放、公正、無差別、透明かつ予測可能な貿易・投資環境の創出に焦点を当て、「2040年までのAPEC発展のためのプトラジャヤ指針」を成功裏に実施するための協調行動を強化する意向である。特に、新型コロナウイルス感染症のパンデミック対策と経済復興、幅広い様々な生活領域のデジタル化、遠隔地における経済成長、APECと同様のアジェンダを持つ他の地域の多国間協会との間の相互関係の確立に重点を置く予定である。

双方は、「ロシア・インド・中国」形式での協力を発展させるとともに、東アジアサミット、安全保障に関するASEAN地域フォーラム、ASEAN加盟国国防相会議、対話パートナーなどの場での交流を強化することを意図している。ロシアと中国は、東アジアにおける協力の発展におけるASEANの中心的役割を支持し、ASEANとの協力の深化に関する調整を引き続き強化し、公衆衛生、持続可能な開発、テロ対策及び国際犯罪対策の分野における協力を共同で促進する。双方は、地域アーキテクチャの重要な要素としてのASEANの役割の強化という利益のために、引き続き協力する意向である。
"
www.DeepL.com/Translator(無料版)で翻訳しました。

この声明は2月4日の日付で公表されています。バイデン政権による「インド太平洋戦略」は2月14日に公表されています。中露はアジア太平洋等の表現で、この地域に関与する内容などを述べていますが、米国はこのロシアの関与などについて、「インド太平洋戦略」では完璧に無視しているのです。

しかも中露首脳会談声明文には、明らかに日本に対する記述もあります。それが赤字の部分です。

以下に赤字の部分を再掲します。

「双方は、第二次世界大戦の成果と既存の戦後世界秩序を強く支持し、国際連合の権威と国際関係における正義を守り、第二次世界大戦の歴史を否定し、歪曲し、改竄しようとする企てに抵抗するつもりである。

世界大戦の悲劇の再発を防止するため、双方は、ナチスの侵略者、軍国主義者の侵略者およびその共犯者の残虐行為に対する責任を否定し、戦勝国の名誉を傷つけ、汚損することを目的とする行為を強く非難する」

この部分は明らかに日本に向けて発せられているといえると思います。後ろの段落の「軍国主義者の侵略者」とは日本を指しているのでしょう。

にもかかわらず、バイデン政権の「インド太平洋戦略」ではロシアに関しては、一言の言及もないのです。

これは、インド太平洋においては、ロシアは一切関わらせないという意思表明とも受け取れます。これは、ロシアがインド太平洋地域に関われば、ただでさえこの地域は中国の浸透などで複雑化しているものがさらに複雑になるからであり、それを避けたいという意図があるのでしょう。

そもそも、このブログでも何度が述べてきたように、ロシアの一人あたりのGDPが韓国を大幅に下回り、国単位では人口の少ない韓国とほぼ同程度の現在のロシアでは、できることは限られており、そうしたロシアにこの地域をかき回されたくないという考えがあるのでしょう。

それもあるため、ロシアのウクライナ侵攻の可能性を非難し、あわよくばロシアに対してさらに大きな制裁を課して、ロシアのインド太平洋地域での行動を封じてしまう腹づもりなのだと思います。バイデン政権としては、プーチンの「ロシア大国幻想」に付き合うつもりはないのでしょう。

ロシア大国幻想に浸るプーチン

ロシアは旧ソ連の核と軍事技術を継承する国であり、決して侮ることはできませんが、それしても軍事的にも経済的にも超大国ではありませんし、中国のように人口も多くはなく、大国と呼べるような存在ではなくなりました。

さらに、将来的にロシアが勢力を盛り返し、ソ連のように強大になることもほとんどあり得なくなりました。そのロシアができるのは、北朝鮮のように核ミサイルを発射するなどのことをして、存在感を増すことであり、それがロシアにとってはウクライナ侵攻であり、極東での艦隊行動の活発化です。

現在のロシアは北朝鮮よりは、経済的に良い状態なので、いずれも不十分ながらもウクライナ侵攻準備や極東での艦隊行動の活発化などで存在感を増すことができますが、ウクライナに侵攻して、米国などから厳しい制裁を課せられた場合、それもできなくなり北朝鮮のようにミサイルを頻繁に発射するようになるかもしれません。ただ、それでは何も変えることはできず、物事を複雑化させるだけです。

北朝鮮のミサイル発射

そんなロシアに、米国は日米と中国の対峙には関与させるつもりはないのでしょう。

そうして、中露首脳会談の共同声明ではで上記で示したように、「日本」と明記はしなかったものの、日本に対して歴史問題を蒸し返そうとしているのは明らかです。そうして、その日本はG7では唯一ロシアと領土問題を抱えています。

しかし、米国としては歴史問題を蒸し返すつもりも、蒸し返させるつもりもないことを明確に示すため、日米共同訓練を直近で3回も繰り返しているのだと考えられます。

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2022年2月18日金曜日

国際的な格付けで台湾の好成績相次ぐ、蘇行政院長が政府職員らに感謝―【私の論評】日本では鉄の三角形を弱めなければ、台湾のような経済的自由を獲得できない(゚д゚)!

国際的な格付けで台湾の好成績相次ぐ、蘇行政院長が政府職員らに感謝

蘇貞昌行政院長が17日の行政院会で、最近、国際的な国別評価の多くで台湾が好成績を挙げていることに触れ、「政府の職員たちを誇らしく感じる」と述べて感謝した。写真は「経済の自由度評価」を示した図。台湾は人口2,000万人以上の国として唯一「自由」評価を獲得した。(蘇貞昌行政院長のフェイスブックより)

蘇貞昌行政院長(首相)が17日の行政院会(閣議)で、最近、国際的な国別評価の多くで台湾が好成績を挙げていることに触れ、「政府の職員たちを誇らしく感じる」と述べて職員たちに感謝した。

蘇行政院長は、ここ1カ月間、国際的な国別評価における台湾の好成績が相次いでいると述べ、1月25日にドイツのトランスペアレンシー・インターナショナル(TI)が発表した「2021年腐敗認識指数(CPI)」で台湾が180カ国中25位だったことを例に挙げた。25位は台湾にとってTIが1995年に同ランキングを発表するようになってから26年で最高の成績。蘇行政院長はまた、2月10日にイギリスのエコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が発表した「2021年民主主義指数」レポートで、台湾は167カ国のうち「完全な民主主義(Full democracy)」とされる21カ国の一つに評価されたことを指摘。台湾は2年連続で「完全な民主主義」入りを果たしたのみならず、全体のランキングでも前年の世界11位から8位へと上昇し、米国、フランス、ドイツ、イギリス、カナダなどの大国をも凌駕。アジアでも昨年に続いてトップだった。

蘇行政院長はさらに、2月14日に米シンクタンク「ヘリテージ財団」が発表した「2022年度版世界の経済自由度指数」にも言及。このレポートで台湾は177カ国中わずか7カ国しかない「自由(free)」の評価を受け、初めて「経済的に自由な国」の仲間入りを果たした。人口2,000万人以上の国で「自由」と評価されたのは台湾のみ。世界ランキングで台湾は6位だった。なお、同レポートでは、台湾は過去5年間経済成長を維持する極めてまれな経済体であると絶賛している。

蘇行政院長は、蔡英文総統が総統に就任して以来、政府職員と国民が共に努力する中、台湾は民主と自由の体制を守りながら民主の発展を深め、開かれて公平な経済貿易環境の構築に力を尽くすと共にクリーンな政治を厳格に要求してきたと強調。台湾は新型コロナウイルスの影響や中国からの不断の脅威と圧迫に向き合いながらも依然としてその強靭性を発揮して経済の活発な発展を実現し、次々と好成績を挙げてきただけでなく、国際的に重要な格付けでもますます評価を高め、過去最高の成績を挙げるなど世界から大いに評価されるようになっていると話した。

【私の論評】日本では鉄の三角形を弱めなければ、台湾のような経済的自由を獲得できない(゚д゚)!

ロシアの順位は、136位です。ウクライナは122位です。中国の順位は、66位です。日本の順位は18位です。米国の順位が27位で比較的低いのが印象的です。

「2021年腐敗認識指数(CPI)」の全体をご覧いただきたい方は、以下のリンクよりご覧になってください。

腐敗認識指数 国別ランキング・推移

以下に一部を引用します。



「2022年度版世界の経済自由度指数」では、上位10か国・地域は、シンガポール、スイス、アイルランド、ニュージーランド、ルクセンブルク、台湾、エストニア、オランダ、フィンランド、デンマークでした。
 
台湾の世界順位は昨年と同じでしたが、総合ポイントは80.1ポイント(満点は100ポイント)と、昨年の78.6ポイントを上回りました。また、世界平均あるいはアジア太平洋地域の平均と比べると、20ポイント余り上回りました。

米国のヘリテージ財団は14日、2022年版の「世界の経済自由度指数(Index of Economic Freedom)」を発表した。台湾は評価対象となった184か国・地域のうち6位で、アジア太平洋地域では3位だった。写真は台湾の世界順位の推移を示すグラフ。(国家発展委員会サイトより)

経済自由度指数はポイントが高いほど自由であることを意味し、総合ポイントが80ポイント以上であれば「自由(Free)」と格付けされます。2022年版で台湾は初めて「自由」の仲間入りを果たした。今年、「自由」に格付けされたのは世界で7カ国だけだけでした。

アジア太平洋地域で見ると、台湾は3位でした。これは世界順位19位の韓国、35位の日本を上回る快挙。韓国は「自由」の下の「おおむね自由(Mostly free)」に、日本はさらにその下の「適度に自由(Moderately free)」、そして中国は最低レベルの「抑圧された(Repressed)」に格付けされました。中国の世界順位は158位でしたた。

全体的に見ると、2022年度の世界の経済自由度指数は平均60ポイントで、昨年より1.6ポイント下がりました。アジア太平洋地域の平均は58.5ポイントでした。

経済自由度指数は4つの側面(法制度、政府の規模、管理監督の効率、市場の開放)と、その下に設けられた合計12の指標で経済の自由度を評価します。台湾は12の指標のうち、「ビジネスの自由」、「貿易の自由」、「貨幣の自由」、「財産権の保護」、「政府の支出」など8つの指標で80ポイント以上を獲得しました。一方、「労働者の自由」は68.7ポイント、「金融の自由」は60ポイントにとどまるなど課題も残りました。

ヘリテージ財団がまとめたレポートによると、過去5年間で台湾の経済自由度指数は大きく向上した。台湾は各領域で高いポイントを獲得しており、それに加えて「司法の有効性」、「労働者の自由」などの指標でも成長が見られます。その結果、台湾の経済自由度指数は2017年に比べて3.6ポイント増え、今年は初めて「自由」の仲間入りを果たしました。

レポートでは同時に、台湾が「ビジネスの自由」や「金融の自由」などの方面でも努力すれば、さらなる躍進が期待できると指摘しています。

日本が、「経済自由度指数」が低いことはある程度納得がいきます。それは日本には、どの産業でも強力な鉄の三角形が築かれているからです。それについては以前もこのブログで述べました。その記事のリンクを以下に掲載します。
【日本の解き方】菅首相1年間の大きな功績 懸案を次々処理した「仕事師内閣」、対韓国でも厳しい姿勢貫く―【私の論評】新政権は、雇用の維持、迅速な鉄の三角形対策ができる体制を整えれば、長期安定政権となる(゚д゚)!
日本には様々なルールや規制があります。それに守られ、いわゆる“既得権益”を受けている人たちがいます。農業の分野で言えば、日本は零細農家を守るため、株式会社は農地を持つことができません。

当初は意味のある制度だったのでしょうが、農業が国際化されてきた今日日本は世界的にみても良い作物を作れるのですから、株式会社に農業にも参入してもらい、生産性を上げ、輸出もしたほうが良いはずです。

ところが“入ってはいけない”という人たち、そこに結びついた政治家たち=族議員、そして業界の既得権益を持った人をつなぐ役割を担っている官僚がいます。この三角形がスクラムを組み、新しいことをやろうとするときに妨害するのです。こうした三角形はどこの国にもありますが、日本の場合はそれを取り持つ官僚組織がかなり強い状態で維持されています。


それは、医療の世界にも厳然として存在します。医師会、族議員、厚生官僚による三角形(医療ムラ )は厳然として存在してるのです。これは、ある意味「加計問題」と本質は同じです。

1年以上も前から、コロナ病床は、かなり増床すべきことはわかっていました。そうして、昨年の補正予算でも、それに関する予算は潤沢につけられていたにもかかわらず、この医療ムラの猛反撃にあい、現在に至るまで大きく増床されることはありませんでした。感染症対策分科会も、こうした医療ムラの圧力に対抗できなかったのか、結局対策といえば、病床の増床ではなく、人流抑制ばかりを提言していました。
尾身会長

そのため、コロナ感染者数が増えるたびに、野党・マスコミは、医療ムラを批判するのではなく、菅政権を批判しました。尾身会長は、マスコミに利用された形になったといえます。これは、間違いなく菅政権を追い詰めていきました。特に、マスコミは感染者数が増えるたびに、不安を煽り、様々な印象操作で菅政権を追い詰めました。

特に日本では、まだまだマスコミの報道を信じる人が多いので、強力な医療ムラを崩壊させるには、仕事人内閣の菅内閣ですら、時間と労力がかかることは無視して、菅内閣を責め立てました。野党もその尻馬にのり、菅内閣を糾弾しました。

マスコミが、菅内閣ではなく、医療ムラを批判していたら、状況は変わっていたかもしれません。まさに、仕事師内閣が短命政権になったのは煽るマスコミとそれにのせられる人たちよるものです。

この記事では、農業や医療に関する「鉄の三角形」について述べましたが、他の産業等にもそれは存在します。

さて、この鉄の三角形がどのように機能するのか、以下に述べます。

政官財が以下の行動を取ることにより、国益・国民益より省益・企業益・私益が優先されるのです。
  • 財界等の業界団体や圧力団体が政治献金で族議員に代表されるような政治家を支援し、財界に影響力のある官僚を天下りで懐柔する。
  • 官僚は所轄業界をまとめ、その利益代表として動き、政治家・財界を許認可権限・公共事業・補助金振り分けで影響力を持つ。
  • 政治家は官僚・財界の通したい予算・法案成否について影響力を行使し、財界から政治献金を集め、官僚への限定的指揮権を持つ。
日本では政官財だが、南アフリカでは政労資(財)が鉄の三角形を形成しています。党議拘束の弱い米国では、軍や政策形成に利害を持つ圧力団体が個々の議員を支援する事で鉄の三角形の一翼を担っています。どの国にも、形式や強さは異なるもののこの三角形は存在します。

しかし、日本のそれは他国に比較して、度を超えて強力なのです。

その日本の鉄の三角形の中でも最たるものは、財務省、財界、族議員らの三角形でしょう。それに続くのは、日銀、金融業界、族議員の三角形でしょう。

これらの三角形が日本をどう毀損したかといえば、失われた30年を招いてしまったことです。

今から31年前、1990年の東京証券取引所は1月4日の「大発会」からいきなり200円を超える下げを記録しました。1989年12月29日の「大納会」でつけた史上最高値の3万8915円87銭から、一転して下げ始めた株式市場は、その後30年が経過した今も史上最高値を約4割ほど下回ったままです。長期的な視点に立てば、日本の株式市場は低迷を続けています。

その間、アメリカの代表的な株価指数である「S&P 500」は、過去30年で約800%上昇。353.40(1989年末)から3230.78(2019年末)へと、この30年間でざっと9.14倍に上昇しました。かたや日本は1989年の最高値を30年間も超えることができずに推移しています。

そうしてもう一つ、この30年間、他国は賃金が上昇したのに、日本は上昇しませんでした。

この違いはどこから来るのかという議論は日本でもありましたが、何かといえば構造改革が言われてきました。そうした議論が繰り返される中で、財務省は何をしたかといえば、増税等の緊縮財政を取り続け、平成年間には何度も消費税増税を繰りかえしました。

日銀は、2013年に黒田総裁が登場する前までの、白川総裁までは、実体経済とは無関係に、とにかく金融引締を続行しました。その後2013年に黒田総裁が登場し、異次元の包括的な金融緩和を実施し、日本経済は順調に伸びるようにみえたのですが、2014年に消費税増税をしたため、また落ち込みました。

さらに、日銀は金融緩和を続けてはいるのですが、2016年には、イールドカーブ・コントロールを導入して、金融緩和を控えめなものにしてしまいました。

日本は、未だデフレから完璧に脱却していないにもかかわらず、結局2019年10月にも消費税増税をしました。

そのため、日本は平成年間のほとんどの期間デフレであり、令和になってからも未だデフレから完璧に脱却したとはいえません。コロナ感染症による経済の停滞により今後も予断を許せない状況にあります。

「2022年度版世界の経済自由度指数」の話から内容が少しずれたようにもみえますが、日本では強固な鉄の三角形をなくすことまではできないでしょうが、弱くすることが喫緊の課題だといえると思います。

日本は、台湾ではどのように経済的自由度を高めたのか、真摯に学ぶ必要がありそうです。

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2022年2月17日木曜日

自民・高市氏、外相対応に懸念 日ロ経済協力会合めぐり―【私の論評】露がどちらに転んでも非常に分が悪いシナリオを米英が描いていることを理解しない能天気な林外相(゚д゚)!

自民・高市氏、外相対応に懸念 日ロ経済協力会合めぐり

自民党の高市早苗政調会長

 自民党の高市早苗政調会長は17日の党会合で、ウクライナ侵攻の可能性が取り沙汰されるロシアとの間で経済協力に関する閣僚会合を開いた林芳正外相の対応を批判した。政府が先進7カ国(G7)各国と連携し、侵攻した場合の制裁発動を検討中だとして「G7の結束を乱そうとするロシアを利することになる。大変強い懸念を覚えた」と述べた。

 外務省側が、閣僚会合を開いたのは事前に予定されていたためだと説明したと言及。高市氏は「臨機応変に会談を延期するなど、いろいろな方法があった」と指摘した。

【私の論評】露がどちらに転んでも非常に分が悪いシナリオを米英が描いていることを理解しない能天気な林外相(゚д゚)!

日ロ両政府は15日、林芳正外相とレシェトニコフ経済発展相が共同議長を務める「貿易経済政府間委員会」をテレビ会議形式で開きました。閣僚レベルで両国の経済関係全般について協議するのが目的。ロシアによるウクライナ侵攻の懸念が強まり、対ロ経済制裁が議論されるタイミングでの開催を疑問視する声もありました。

テレビ会議形式で開いた、日ロ貿易経済政府間委員会の共同議長間会合に臨む林外相=15日午後

政府間委員会は1994年に両国が設置で大筋合意しました。共同議長間会合は2020年12月以来。林氏はロシアとの対話の継続に言及する一方、「現下のウクライナ情勢に重大な懸念を持って注視している」と伝達。緊張を緩和し、外交的解決を追求するよう求めました。レシェトニコフ氏はウクライナには触れず、新型コロナウイルス禍にあっても両国の経済関係は進展しているとして「さらに協力を進めたい」と語りました。

高市政調会長の主張は、当然であり、高市氏のほうがまともな外交感覚を持っていると思います。林外相は完璧に外交感覚がずれているとしか言いようがありません。

自民党外交部会の佐藤正久部会長は16日午前に党本部で開かれた会合で、ウクライナ情勢をめぐる政府の対応について「外務省のチグハグ感と当事者意識のなさが半端ないと言わざるを得ない。この2カ月間、たったの一度も林芳正外相と欧州の外相の会談は開かれていない」と批判しました。

佐藤氏はまた、15日に岸田文雄首相がウクライナのゼレンスキー大統領、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長と電話会談した一方、林氏がロシアのレシェトニコフ経済発展相とのテレビ電話形式の会議に出席したことについて「首脳会談の裏で、制裁を検討している相手に対しなぜ経済協力なのか。このチグハグ感は批判されてもしようがない」と述べました。

岸田政権は何をしているのか、本当に理解しているのでしょうか。今話すべきは、ロシアに対する制裁をどうするかであって、経済協力ではないはずです。

このずれまくりでは、ウクライナ情勢を本当に理解しているのか、心配になってきました。

このブログにも過去に示してきたとおり、現在ロシアはウクライナに侵攻して、ウクライナを屈服させて、ロシアの思い通りにさせることは不可能です。できるのは、たとえハイブリット戦を駆使したとしても、ウクライナの東のいくつかの州、それも州全部ではなく、一部しか占拠できないでしょう。

プーチンは、2000年の就任演説以降「大国ロシア」という言葉を頻繁に使用してきましたが、現在もそうして将来も「大国ロシア」になる可能性はほとんどありません。現在のロシアは、NATOと正面から対峙する力もありません。NATOとロシアが戦争になれば、ロシアには全く勝ち目はありません。

昨年6月22日対ドイツ戦争の開始から80年を迎えたことを受け、モスクワのクレムリン宮殿脇にある戦没兵士をまつる「永遠の炎」に献花し「ロシアは偉大で強力な大国であり続ける」と表明した。 

にもかかわらず、バイデン米大統領やボリス・ジョンソン英首相が、ロシアが今すぐにでもウクライナに侵攻すると煽っています。

これはなぜかといえば、まずはロシアがハイブリット戦を駆使して、本格的な軍事侵攻をせずにウクライナの一部をかすめ取ることに対する危惧でしょう。実際、ロシアはクリミアを独立させたという前科があります。こういうことを中国が得意のサラミ戦術のように何度も繰り返せば、やがてウクライナの大きな部分が、ロシアの手に落ちることも十分に考えられます。

それだけは、絶対に許さないぞという強い決意を示すために、バイデンやジョンソンがロシア侵攻を煽っているという側面は否定できないでしょう。

戦争を回避できれば、それは粘り強い交渉で平和をもたらしたという米やNATOの功績となります。そうなれば、バイデンにとってはアフガン撤退の失敗等の失地回復につながることになります。それで、秋の中間選挙が少しは有利になるかもしれません。

英国では、昨年12月16日にボリス・ジョンソン首相に近い与党・保守党の下院議員が議会規則に違反するロビー活動で辞職した問題で、空席になった議席の補欠選挙が行われ、保守党は200年近く維持してきた牙城ノース・シュロップシャー選挙区の議席を争い、野党・自由民主党に敗れました。

さらに、英国の首相官邸で新型コロナウイルス対策の行動規制下にあった時期にパーティーが開かれていた不祥事をめぐり、ジョンソン首相が窮地に立たされています。新疑惑の発覚がとどまらず、自身の参加も認めて謝罪しました。ところが、有権者は、厳しい規制を求めてきた政府の規則違反に不満を高め、与党・保守党内で首相の進退を問う声が強まってきています。

ジョンソン首相も、戦争が回避できれば、失地を回復できるチャンスがあります。

     主要7カ国(G7)首脳会議が開かれる英南西部コーンウォールで、
     ボリス・ジョンソン英首相とジョー・バイデン米大統領が初めて対面

一方、内政面では年金改革、人口減少、平均寿命の 引き上げ、出生率の減少、フルシチョフ時代に建てられた住宅(フルシチョフカ)修繕問題、 地方と都心との格差や貧困問題などの問題を抱えているプーチンはさらに支持率の低下に悩むことになるでしょう。

一方、ロシアが耐え切れずに開戦に踏み切れば、それはロシアにとって自殺行為となるでしょう。バイデン氏やジョンソン氏は、何のためらいもなく、ロシアに対する厳しい制裁を発動するでしょう。現在予想されるのは、ドル・ポンドとルーブルの交換停止です。

そうして、EUもすぐにこれに追随して、ユーロとルーブルの交換停止に踏み切るでしょう。こういうことを言うと、ロシアの資源量が圧倒的なのに対し、EUはエネルギー資源に乏しく、そEUはロシアの強引な天然ガスを利用した外交攻勢や価格引き上げ構成に悩まされるから、EUは対ロ経済制裁に慎重にならざるを得ないという人もいるでしょう。

しかし、現実の天然ガスの長距離パイプラインによるビジネスでは、供給国と需要国の間で、一方的な立場の有利、不利は存在しません。パイプラインでの取引では、物理的に取引相手を変えられないからです。

その一方で、天然ガスは石油・石炭・原子力・新エネルギーでいつでも代替可能なものであり、供給国が人為的に価格を引き上げたりすると、たちまちに需要不振になってしまいます。なによりも、供給カットなどを行うと、供給国は国際社会での信頼を一挙に失ってしまいます。

要するに、ロシアなど供給国が、需要国に対して価格引き上げや供給カットで外交攻勢をかけることは事実上不可能なのです。現実の天然ガスビジネスでは、供給国と需要国の交渉力は、ほぼ対等の関係にあるのです。

そのため、EUも米国、英国に続いてユーロとルーブルの交換停止に踏み切るでしょう。ドイツと日本も、マルク・円とルーブル交換の停止に踏み切るでしょう。これですべての基軸通貨とルーブルの交換が禁止され、ロシアは貿易がかなりしにくい状況に追い込まれます。

どちらにしても、ロシアにとって非常に分が悪いシナリオが描かれているようにしか見えません。

ロシアが弱体化すれば、領土問題はかなり交渉しやすくなります。先日も述べたように、ロシアが戦争に踏切り、厳しい制裁を受ければ、今でも韓国なみのGDPしかないロシアが、北朝鮮なみになることも十分に考えられます。そうなれば、ロシアは北朝鮮のようにミサイルを発射し続けるようになるかもしれません。しかし、現在の領土を守り抜くのは困難になるでしょう。

その時には、北方領土が日本に帰ってくる可能性はかなり高くなるはずです。日本としても、ロシアに対してどのような制裁を課すのが北方領土返還に有利なるかを考えるのが、いまやるべきことです。

このような時期に、日本の外務大臣が、ロシアとの間で経済協力に関する閣僚会合を開くなど、林芳正外相と外務省には本当に外交センスがあるのか本当に疑わしいくなってきました。いや、外務省には元々外交センスがないのがわかっていましたが、林外相にもそれがないことが明らかになったと思います。

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2022年2月16日水曜日

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ロシア、一部部隊が基地帰還開始と発表-NATO事務総長は慎重

「慎重ながら楽観的になる根拠」だが撤退の証拠待ちたい-事務総長
ベラルーシと黒海での軍事演習は20日終了の予定

ロシアとベラルーシの軍事演習

 ロシアはウクライナ国境付近での軍事演習が終了し、一部の部隊が所属基地に帰還し始めたと15日に発表した。米国と欧州諸国は、ロシア軍がウクライナに侵攻する可能性を警戒してきた。

  市場はロシア側による今回の動きを危機緩和の兆しと受け止めて好感した。ここへきて外交的解決を追求する動きが活発化しており、ロシアのプーチン大統領も西側との協議継続を支持した。ロシア側は一貫して侵攻の意図を否定している。

 米国と北大西洋条約機構(NATO)はロシアが約13万人の兵士をウクライナ国境付近に集結させたとし、侵攻の可能性を指摘し撤退を要求していた。ロシア側は自国内の軍の移動は内政問題だと主張した。

 ロシアは隣国ベラルーシで数年ぶりの大規模演習を実施しているほか、黒海で海軍演習を行っている。これらは20日に終了する予定だ。

 プーチン大統領は米国およびその同盟国に対し、一段のNATO拡大禁止を含む安全保障についての包括的な保証を求めていたが、米国側はこれを拒否。他の安全保障問題について協議を提案した。ロシアのラブロフ外相は14日、米国側の提案について「建設的」だとしてプーチン大統領に対話継続を提言した。

 NATOのストルテンベルグ事務総長は15日、ブリュッセルで記者団に対し、ロシア軍の一部部隊撤退の発表について「慎重ながら楽観的になる根拠」を与えるものだと発言。その上で「今のところ緊張緩和に向けた兆しは見えない」とし、ロシア部隊撤退の証拠を待ちたいとの考えを示した。

原題:Russia Says Some Troops Are Returning to Base After Drills (1)(抜粋)、NATO Awaits Evidence of Pullback Russia Flagged: Ukraine Update(抜粋)

【私の論評】ロシアがウクライナに侵攻すれば、米国による末恐ろしい制裁が待っている(゚д゚)!

ロシア国防省は一部の部隊がウクライナとの国境付近での軍事演習を終え、基地に帰還しつつあると明らかにした。インタファクス通信が15日報じました。ロシアと米欧の緊張が緩和する可能性があります。

 報道によると、大規模な演習は続いていますが、南部と西部管区の一部部隊は訓練を終え、基地に向かっているといいます。 英国のトラス外相は、ロシア軍がウクライナとの国境から全面的に撤収するのを確認するまでウクライナ侵攻の意思がないと信じることはできないと述べました。

   ロシア南部での訓練終了後、鉄道の輸送貨車に積載される
   ロシア軍の戦車。2月15日にロシア国防省が提供した

 国営ロシア通信(RIA)が公開した国防省提供のビデオ映像には、戦車などの装甲車が貨車に積み込まれる様子が映っています。 国防省は一部装備品の輸送にはトラックを使用し、一部の部隊は徒歩で基地に戻るとしました。 ロシア軍は10万人以上の部隊をウクライナ国境周辺に配置。10日から20日までベラルーシと合同演習を行っています。 国防省の発表を受けてルーブルは1.5%高となりました。

今後どうなるかは、ウクライナ次第であり、どうなるかは現時点ではまだわかりません。以下の動画をみていただけると、ロシアがウクライナに侵攻するしないはウクライナ次第であることと、もしロシアがウクライナに侵攻した場合、ロシアにとっては天地がひっくりかえるようなとてつもない制裁が待っていることがわかります。


詳細は、この動画をご覧いただくものとして、この動画では、ウクライナ問題の本質は、NATOにウクライナが入るか入らないかであり、これを巡って米国・NATOとロシアが争っているということです。

以下にウクライナ周辺の地図を掲載します。これをみれば、ウクライナがNATOに入ることは、ロシアにとってNATOとの大きな緩衝地帯をなくすことになります。


NATOの加盟国は現在以下30カ国です。アイスランド、アメリカ合衆国、イタリア、英国、オランダ、カナダ、デンマーク、ノルウェー、フランス、ベルギー、ポルトガル、ルクセンブルク(以上原加盟国)、ギリシャ、トルコ(以上1952年2月)、ドイツ(1955年5月当時「西ドイツ」)、スペイン(1982年5月)、チェコ、ハンガリー、ポーランド(以上1999年3月)、エストニア、スロバキア、スロベニア、ブルガリア、ラトビア、リトアニア、ルーマニア(以上2004年3月)、アルバニア、クロアチア(以上2009年4月)、モンテネグロ(2017年6月)北マケドニア(2020年3月)

ウクライナがNAOTに加盟すると、グルジアも入る可能性もあります。そうなるとロシアの安全保障は大きく脅かされることになります。

だからこそ、ロシアとしてはウクライナには是が非でも、NATOに入ってもらいたくないのです。そのため、ロシアがウクライナに侵攻した場合は、

そうして、上の髙橋洋一氏の動画にありますが、米国はロシアがウクライナに侵攻した場合は、ルーブルと基軸通貨(ドル、ユーロ、ポンド、円)の交換禁止を発動するつもりのようです。

そうなった場合、ロシアは貿易があまりできなくなります。そうなると、経済がかなり悪くなります。交換禁止の期間がどのくらいになるかにもよりますが、20年も継続された場合、現在韓国並のGDPが北朝鮮なみになるかもしれません。本当に恐ろしい制裁です。

米中の争いは関税によるものが多いですが、これも元と基軸通貨の交換を禁止してしまえば、中国はあまり貿易がてきなくなり、最も効果があると考えられますが、そうなると米国、EU、イギリス、日本なども中国と経済的な結びつきが多いため、こちらがわも結構被害を被ってしまうため、実施しないのでしょう。

ただ、米国と中国の経済のデカップリングが進めば、米国の被害は少なくなるのて、実施する可能性があります。

ロシアの場合は、元々ロシアの経済が現在では、GDPが韓国並ということと、一人あたりのGDPでは韓国を大幅に下回る状況ですから、通貨交換を停止しても、米国にはさほど大きな影響はありません。

ドイツ北東部を走る、ロシアからの天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」

ただ、EUはロシアの天然ガスに依存しているところがあるので、厳しいでしょう。そのため、米国はまずはドルとルーブルの交換停止しつつ、EUのエネルギー問題を解消し、解消でき次第ユーロとの交換停止ということに踏み切るでしょう。ポンドや円も続くことになるでしょう。

これを実行されると、ロシアはウクライナどころでなくなります。国民から大きな反発をくらい、プーチン政権は崩壊するかもしれません。

そもそも、先日もこのブログで示したように、現在でもロシア経済は決して良いとはいえませんし、天然ガスや原油の生産も原産傾向です、人口も減少も日本よりも酷い状況にあります。

そこにこのような過酷な制裁が課されれば、ロシアはとてつもないことになります。長期間この制裁が続けば、先程述べたように、ロシアの経済は北朝鮮なみになるかもしれません。その時にはロシアは国防すらおぼつかなくなります。北朝鮮のように定期的に核ミサイルを発射するようになるかもしれません。それにしても、国土を守り切るのは相当難しくなるでしょう。

私には、そこまでの覚悟がプーチンにあるとは思えません。だから、いずれ引くのではないかと思います。ただ、プーチンとしては、NATOがさらに東に拡大すれば、かなり面倒なことになることをNATO加盟諸国やウクライナに思い知らせたかったのでしょう。

その目的は達成できたと思います。あとはウクライナがどのように動くか次第のところありますが、プーチンが今後ゴネつづけても良いことはないと思います。

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2022年2月15日火曜日

ロシア艦艇24隻を確認 日本海・オホーツク海―【私の論評】バイデン政権に完璧に無視されたロシア太平洋艦隊(゚д゚)!

ロシア艦艇24隻を確認 日本海・オホーツク海

海上自衛隊が確認したロシア艦艇。手前から商船の砕氷艦、「グリシャV級フリゲート艦」
「マルシャル・ネデリン級ミサイル観測支援艦」と続き、一番奥は「ロプチャーI級戦車揚陸艦」


 防衛省は15日、今月1日以降、日本海とオホーツク海南部の海域で活動するロシア海軍の「ウダロイ級駆逐艦」など艦艇計24隻を確認したと発表した。岸信夫防衛相は同日の記者会見で「ウクライナでの動きと呼応する形で東西で活動を活発化させている」との認識を明らかにした。

 ロシア海軍の艦艇24隻には駆逐艦のほか、フリゲート艦やミサイル護衛哨戒艇、潜水艦、揚陸艦、さらに補給艦や病院船なども含まれていた。それぞれの目的や狙いは不明だが、日本海やオホーツク海南部を航行。中には商船の砕氷艦とともに隊列を組んでいたケースもあった。

 海上自衛隊は護衛艦「しらぬい」や哨戒機「P3C」が情報収集や警戒監視に当たった。日本への領海侵犯などはなかった。

 岸氏は会見で「全艦艇によるこの時期の軍事演習は異例」とした上で「ロシア軍が東西で活動し得る能力を誇示するため、オホーツク海などでも活動を活発化させている」と述べた。

 ロシア側は1月20日、地中海や北海、オホーツク海などで1~2月、艦艇計140隻以上が参加する演習を行うと発表。目的は「海からの軍事的脅威への対抗」などとしていた。

【私の論評】バイデン政権に完璧に無視されたロシア太平洋艦隊(゚д゚)!

この24隻の艦艇のほとんどは、ロシアの太平洋艦隊に所属していると思います。そうして、ロシア太平洋艦隊はこのところ、今回に限らず最近活動を活発化させているようです。

たとえば、このブログにも掲載したように、中国海軍とロシア海軍の艦艇計10隻が10月18日に津軽海峡を通過した。この艦隊はその後太平洋を南下、さらに鹿児島県の大隅海峡を通過しました。

さらに、昨年10月下旬ロシア国防省は軍事演習の異例の公開をしたり、潜水艦基地や最新鋭艦も披露し、ロシア極東戦力の一端を明らかにしました。

極東に新しく配属されたボレイ型原子力潜水艦「ウラジーミル・モノマフ

このロシア海軍の行動については、日米とも政府が公表したり、マスコミで報道されたりしていますが、ホワイトハウスはどう見ているのでしょうか。

実はその回答が最近だされています。それについては、このブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
米バイデン政権が「インド太平洋戦略」を発表 「台湾侵攻の抑止」明記 高まる日本の重要性―【私の論評】現在バイデン政権は、ウクライナ問題に対処しているが、最優先はインド太平洋地域の安定であることを、改めて明らかにした(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事ではアメリカのバイデン政権は11日、最重要と位置づけるインド太平洋地域での外交や安全保障、経済政策の指針となる「インド太平洋戦略」を発表しました。中国に対抗する姿勢を強調し、台湾への軍事侵攻を抑止する方針も明記されていることを掲載しました。

この戦略は、上記で述べたロシア海軍の行動の後に出されていることに注目していただきたいです。

あれだけロシアが存在価値を示すようことを繰り返し行ったにもかかわらす、この戦略にはロシアのことは一言も述べられていないのです。ロシアは、極東に太平洋艦隊を配置しています。にもかかわらず、一言も触れていないのです。これに関する部分をこの記事から引用します。
米国が現状のように、ロシアによるウクライナ侵攻の危機が叫ばれている時にこのような戦略を公表する意図は何なのでしょうか。ちなみに、バイデン政権のこの戦略の中には、ロシアもウクライナも一切でてきません。

インド太平洋戦略について述べているわけですから、出てこないのは当たり前といえば、当たり前なのかもしれませんが、それにしても、インド・太平洋地域というと、ロシアもオホーツク海を介して太平洋と繋がっているのですから、何らかの影響力があれば、言及されるはずです。

米国としては、ロシアのインド・太平洋地域における影響はなしとみているといえると思います。実際そうなのでしょう。ロシアの太平洋艦隊も、ロシアの原潜等も、米国には脅威とみなしていない、少なくとも米国のコントロール下にあると見ているのだと思います。無論、それには日本の強力な対潜水艦戦闘力(ASW)等が関係していると思います。

そうして、この地域における最大の脅威はとりもなおさず、中国であるということです。そうして、これこそが米国にとって大きな脅威であると認識しているのです。しかも、軍事力だけではなく、経済力や技術力などによるこの地域への浸透と不安定化を懸念しているでしょう。

以下に結論部分を引用します。

現在バイデン政権は、ウクライナ問題に対処はしていますが、最優先はインド太平洋地域の安定であることを、改めて明らかにしたというのが、今の時期にわざわざ「インド太平洋戦略」を公表したことの背景にあるのは間違いないでしょう。

バイデン政権としては、旧ソ連の核や軍事技術を継承しているロシアは決して侮ることはできないものの、今や一人あたりGDPが韓国を大幅に下回るロシアに、振り回されることなく、インド太平洋地域の戦略を第一義に考えていることをアピールするという目的もあったのではないかと思います。

そうしなければ、マスコミはウクライナ問題ばかり報道し、バイデン政権はウクライナ問題に忙殺されているように国民から受け取られ、同盟国からもインド太平洋地域を軽視していると受け取られかねません、それだけは避けたかったのでしょう。 

バイデン政権としては、もはや強敵とはいえないロシアに振り回されて、インド太平洋地域を疎かにしてしまえば、それこそ今秋の中間選挙に向けて、共和党から批判され支持率がさらに低下するのは目に見えています。

また、中国の脅威にさらされている、日本、台湾、オーストラリア、ASEAN諸国からも不満の声があがりかねません。

だからこそ、インド太平洋地域の安定こそが最優先であることを、はっきりさせておく必要があったのでしょう。

そうして、実際米国としてはロシア太平洋艦隊にはあまり脅威を感じていないのでしょう。そうして、その背景には日本の存在があります。これについても、以前のブログで解説しましたので、そこから一部を引用します。
(米国は)ロシアは旧ソ連の核兵器と軍事技術を継承しており、決して侮れる相手ではないものの、インド太平洋地域においては当面大きな脅威になるとはみなしていないのでしょう。そんなことよりも、この地域への中国の浸透のほうが、かなり大きく深刻であると判断しているのでしょう。

ロシアの動き封じるという意味では、日本は新冷戦においても冷戦時に旧ソ連を封じ込めたのと同じくロシアをオホーツク海で封じ込めています。さらに東シナ海、南シナ海でも米軍に協力し西側諸国に大きく貢献しているといえます。
日本の潜水艦はこの付近の海域を巡航しており、当然のことながら今回のロシア海軍の動きを察知していたことでしょう。しかし、ロシア側には、日本の艦艇や哨戒機の行動は探知できても、ステル性に優れた日本潜水艦の動きは探知できません。

日本の潜水艦はこの付近の海域で情報収集にあたっているでしょうし、ロシア海軍が異常な行動を起こせば米軍に知らせる体制は出来上がっているでしょう。それに米原潜も哨戒活動にあたっているでしょう。米国にとっては、この海域においてロシアの不意打ちを警戒する必要はないのでしょう。

このあたりは、以前にも述べたように潜水艦の行動は極秘中の秘なので、公表はされませんが、日米ともに、ロシアの動きを監視しているのは間違いないでしょう。実際先日も、ロシアがクリル諸島付近の海域を領海侵犯したと公表しています。

米国はこれを否定していますが、領海近くで哨戒活動にあたっていたのは間違いないと思います。日本も哨戒活動にあっていた可能性もありますが、それはロシア側が発見できないでしょうから、なんともいえません。

ただ、ソースが明らかになっていないので、事実かどうかは確認できないですが、韓国中央日報に以下のような記事が掲載されています。
【コラム】周辺国に大きく遅れた韓国の潜水艦戦力 補完が至急
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
日本は冷戦時代、北海道とサハリンの間の宗谷海峡に2隻、北海道と本島の間の津軽海峡に2隻、大韓海峡(日本名・対馬海峡)に2隻の潜水艦を配置した。潜水艦隊司令官を務めた小林正男提督は「米国の要請でロシアのウラジオストクから太平洋に向かう旧ソ連の潜水艦を監視しなければならなかった。そのためには3つの海峡にそれぞれ2隻を配置する戦略に基づき、交代・整備などを考慮して16隻体制という潜水艦保有戦略が構築された」と述べた。

日本はさらに毎年1隻を退役させ、新しく1隻を建造している。このため潜水艦技術も毎年発展し、艦齢が平均8年にもならない先端潜水艦で武装、非原子力潜水艦で世界最高と評価されている。2011年からは米国の要請で東シナ海と南シナ海に抜ける2カ所に計8隻の潜水艦を常時配置し、22隻体制に変わった。毎年1隻ずつ退役させるが解体はせず、演習艦という名目で保存しているため、運用可能な潜水艦は計30隻ほどと推定される。
この記事が正確なものかどうかはわかりませんが、それにしてもこれに近いことが行われているのは間違いないでしょう。日本は潜水艦22隻体制をとっていますから、この潜水艦隊は日本近かくの海域に潜んでいることは間違いなく、現在でもオホーツク海のいずれかの海域に潜んでいるでしょう。

2018年函館に寄港した潜水艦「なるしお」

さらに、このブログにも掲載したことがあるように、旧ソ連軍は最盛期の時であってさえ海上輸送能力が十分ではなく北海道に侵攻できるだけの力はありませんでした。現在のロシア軍はそれ以下です。

そういうこともあって、米国はオホーツク海や太平洋でのロシアの動きにはあまり脅威を感じないのでしょう。

それにしても、最新の「インド太平洋戦略」にロシアという文言が一言もないというのが、現在のバイデン政権の考えを雄弁に語っていると思います。いくらプーチンが去勢をはってみたところで、いまや一人あたりのGDPが韓国に大幅に下回るロシアにできることは限られています。インド太平洋地域におけるバイデン政権の最優先課題はやはり、中国なのです。

そうして、この戦略には「日本」という言葉は2度でてきます。以下にその部分だけを引用します。
  • オーストラリア、日本、韓国、フィリピン、およびタイとの 5 つの地域条約同盟をさらに深める。
  • 拡大抑止と韓国・日本の同盟国との連携の強化、朝鮮半島の完全な非核化の追求 
バイデン政権としては、日本をはじめとする同盟国等も米国が中国と対峙するための支援を惜しまないでほしいと願っているのでしょう。

こうした中で、ロシアを囲い込みに協力している日本は、米国に対してかなり貢献しているといえるでしょう。その安心感もあって、戦略のなかに「ロシア」という文言は一言も出さなかったのでしょう。冷戦時と比べれば、隔世の感があります。

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2022年2月14日月曜日

原発が最もクリーンで経済的なエネルギー―【私の論評】小型原発と核融合炉で日本の未来を切り拓け(゚д゚)!

原発が最もクリーンで経済的なエネルギー

岡崎研究所

 ロバート・ハーグレイヴス(ThorCon International共同創立者)が、1月26日付のウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)に、「もしきれいな電力が欲しいのなら、核分裂を利用せよ。核事故は起こるが、害のリスクは極めて小さい」との論説を寄せ、原子力発電を推奨している。


 この論説の筆者はダートマス大学で教えている人物で、原子力エンジニアリング会社、ThorCon Internationalの創立者である。そういう彼の立場からの論説と言えるが、同時に原発の利用を推奨して、それなりに説得力のある論を展開していると言える。

 地球温暖化と、それに伴う気候変動は、すでに台風やハリケーン・サイクロンの巨大化、山火事の多発と巨大化などで、人類に大きな災害をもたらしている。多くの死者も出ている。

 これから脱炭素社会を作っていく必要ははっきりしているが、その中で、「(火力のように二酸化炭素を排出しない)クリーンで(再生可能エネルギーより)経済的な」原子力発電を重視していく事が必要であろう。再生可能エネルギーで世界のエネルギー需要をまかなえればそれでもいいが、今後も増え続ける発電の断続性など、克服すべき課題は多い。これに対し、原発は既に確証された技術である。事故が起きたときに、被害を限定するために原子炉の小型化、地下への設置などの方策も考えられるだろう。

 世界的には、ハーグレイヴスが言うように、原発をさらに作る方向が、EUでの原発のグリーン認定の動きや中国の原子炉建設計画などで出てきている。世界では、現在、57の原発が建設中であるという。

 欧州では、英国のジョンソン首相、フランスのマクロン大統領が国内での新しい原発の建設を承認した。中国は1年当たり10基の原発を約束しているというし、中東等でも原発建設が予定されている。

 ドイツの原発ゼロ政策はこの動きに反するが、気候変動への懸念が広がるにつれ、原発は増える方向にあると判断される。

日本も科学的、建設的な議論を

 日本に関しては、2011年の東日本大震災による福島原発の事故により、それまで54基あった原発はほとんどが稼働停止となった。10年経った21年3月現在で、定期検査中も含めて稼働中のものは9基のみである。また、21基につては既に廃炉することが決まっている。今後、現在停止中の原発をどのように再稼働して行くのか、廃炉の決まった原子炉の放射能物質の処理をどうするのか、具体的道筋がまだ見えて来ない。

 日本の中長期的エネルギー政策をどうするか、脱炭素社会の経済構造をどうするかなど、感情的短絡的議論ではなく、より冷静で科学的、建設的かつ世界的視野をもった論議を期待したい。

 21年夏には、持続的エネルギーとされている太陽光パネル設置の土地開発で、水害による人的被害が大きくなったという指摘もあった。ただ、論説でも指摘された通り、事故があったから使用ゼロではなく、事故の再発防止を徹底して行く方向で、技術が人間の生活にもたらす恩恵には真摯に向き合って行く姿勢が大事ではないだろうか。飛行機にしても、車の交通事故、ロケットなどにしても、そうして継続されているのだろう。

【私の論評】小型原発と核融合炉で日本の未来を切り拓け(゚д゚)!

原発を巡っては現在主に2つの動きがあります。

一つは上の記事にもある通り、小型化です。

ざっくりと言ってしまうと、小型原発は、従来の原理の原発を小型化したものです。従来の出力100万キロワット超の原子力発電所と異なり、1基当たりの出力が小さい原子炉のことです。大型の原子炉に比べ冷却しやすく、安全性が高いとされます。

2011年の東京電力福島第1原子力発電所の事故をきっかけに欧米を中心に「原発離れ」が進みました。しかし脱炭素の機運が高まる中、温暖化ガスをほぼ出さず、大型炉よりも安全で低コストの小型炉に注目が集まっています。小型原発は規模が小さいがゆえに、たとえ電源がなくても、冷却ができるため、より安全とされています。

これは、従来の原発より出力が小さい「小型モジュール炉(SMR)」として、脱炭素社会に適した次世代技術として注目を集めています。米国など主要国の後押しを受け、メーカーが開発を加速。発電量が天候に左右される風力、太陽光など再生可能エネルギーの弱点を補う「安定性と柔軟性」(米企業)に期待が高まる一方、コスト面から専門家の間には商用化に慎重な見方もあります。

1年の多くが氷で閉ざされるロシア北東のチュコト自治管区ぺベクの港に、全長144メートルの巨大な「船」が停泊している。船内では小型原発2基(出力計7万キロワット)が稼働し、地域の電力源を担う。開発したロシア国営企業ロスアトムは、既存の火力発電所などに取って代わることで「年間5万トンの二酸化炭素(CO2)排出を削減できる」と説明しています。

ロシア国営企業ロスアトムが開発した小型モジュール炉を搭載した船

SMRは、脱炭素の機運が急速に高まる中で、小回りの利く安定電源の候補として浮上しました。米国やカナダ、英国が開発資金を拠出しているほか、昨年10月にはフランスのマクロン大統領も巨額投資の方針を打ち出しました。日本でも萩生田光一経済産業相が今月6日、SMR開発をめぐる国際連携に政府が協力する方針を明らかにしました。

開発を競うメーカーで、商用化に最も近いと目されるのが米新興企業ニュースケール・パワーです。出力7.7万キロワットのSMRは米当局の許認可手続きで先行し、2027年の稼働開始を目指します。同社は「需要に合わせて供給量を調整できる」と、発電量が不安定な自然エネルギーの補完的役割を強調。外部電源や注水に頼らず、原子炉を自然冷却する「これまでにない性能」を持つと安全性をうたいます。

半面、原発が避けて通れない核廃棄物の処理問題や、事故のリスクは解消されていません。SMRは安全性やセキュリティー面を考慮すると、発電コストが割高になり、商用化のハードルはかなり高くなる可能性も指摘する識者もいます。

ニュースケール社が設計したSMRの上部約3分の1の実物大模型=米オレゴン州コーバリス

もう一つの動きは、核融合炉です。これは、原子核融合反応を利用した、原子炉の一種です。発電の手段として2022年時点では開発段階であり、21世紀前半における実用化が期待される未来技術の一つです。

これに関しては、「核大国」米国の現状を把握しておくべきでしょう。 米国は原子力発電所の国内での新設はもちろん、輸出もできないデッドロックに直面していました。ところが 豪州に対する原潜の技術供与により、オーストラリア原潜向けに発電所用の小型原子炉を「輸出」できる展望が開け、デッドロックから脱出する道筋が見えてきたのです。

それは原子力関連の技術維持にも役立ちます。 米国の国益にとって決定的なブレイクスルーであり、原子力産業と軍産複合体にとっては「光明」とも言えます。 原潜向けの小型原子炉は、発電所に使われる「加圧水型原子炉(PWR)」とほぼ同じもので技術的な差はありません。

米国は上記でも述べたように、部品を現地に運んで組み立てる「小型モジュール炉(SMR)」を開発中で、オーストラリア南部アデレードで組み立てるとみられます。

一方核融合は水素などの軽い原子核どうしが融合して新しい原子核になる反応で、太陽など恒星の中心部で生み出される膨大なエネルギーの源。発電にあたり温室効果ガスや、高レベル放射性廃棄物を排出しないことから、エネルギー問題や環境問題の解決につながるとして期待がかかります。

核融合炉の詳細については、以下を御覧ください。


核融合炉の利点・欠点は以下のようなものです。

〈利点〉
  • 核分裂による原子力発電と同様、温暖化ガスである二酸化炭素の排出がない。
  • 核分裂反応のような連鎖反応がなく、暴走が原理的に生じない。
  • 水素など、普遍的に存在する資源を利用できる。
  • 原子力発電で問題となる高レベル放射性廃棄物が継続的にはあまり生じない(もっとも古くなって交換されるダイバータやブランケットといったプラズマ対向機器は高い放射能を持つことになる。ただし開発が進められている低放射化材料を炉壁に利用することにより、放射性廃棄物の浅地処分やリサイクリングが可能となる)。
  • 従来型原子炉での運転休止中の残留熱除去系のエネルギー損失や、その機能喪失時の炉心溶融リスクがない。
〈欠点〉
  • 超高温で超高真空という物理的な条件により、実験段階から実用段階に至る全てが巨大施設を必要とするため、莫大な予算がかかる。
  • 炉壁などの放射化への問題解決が求められる(後述)。
核融合関連の技術開発に取り組む京都大発のベンチャー、京都フュージョニアリング(KF社、東京)は2月2日までに、核融合発電の実証実験プラントの建設を計画していることを明らかにしました。2023年中にも着工し、核融合反応で生じたエネルギーを発電用に転換する技術開発を進めます。同社によると、核融合を想定した発電プロセスの実証施設は世界でも例がないといいます。


核融合炉内の反応で生み出されるエネルギーはそのままでは発電に使えず、転換には特有の技術が必要とされます。

計画するプラントでは、核融合反応でエネルギーが放出される状況を疑似的に再現し、同社が開発する装置で熱エネルギーに変換。さらに発電装置を駆動することで、実際に電気を起こします。プラントは十数メートル四方に収まる規模で、想定している発電能力も数十キロワットとごく小規模といいます。

核融合発電を巡っては、現在、実用化できる規模の反応を安定的に維持するための開発競争が繰り広げられています。KF社は、こうした技術的ハードルが近い将来に克服されることを見越し、さらにその先の技術を確立させることでスムーズな実用化につなげます。長尾昂社長は「核融合発電を実用化するにあたって将来、避けては通れない部分。知見を重ねて技術的に先行したい」といいます。

同社は2日、三井住友銀行や三菱UFJ銀行といった大手金融機関やベンチャーキャピタルから総額約20億円の資金を調達すると発表。技術開発の加速や人員体制の強化などに充てるとしている。

プラントは23年中の着工を目指し、現在、建設候補地の検討を進めています。実証プラントに設置する装置の製造は国内のメーカーに依頼する方針といい、国内で技術やノウハウを蓄積することで、将来的な国際的競争力も確保します。

小型原発も、核融合炉も日本も手がけており、日本でも将来的には両方とも実用化される可能性は高いです。まさに、日本は小型原発と核融合炉で日本の未来を切り開きつつあるといえます。

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2022年2月13日日曜日

ロシア「米潜水艦が領海侵入」 米軍は否定―【私の論評】日本は新冷戦においても冷戦時と同じくロシアを封じ込め、東・南シナ海で米軍に協力し、西側諸国に大きく貢献している(゚д゚)!

ロシア「米潜水艦が領海侵入」 米軍は否定


 ロシア国防省は12日、クリル諸島(北方四島と千島列島)近くのロシア「領海」で米海軍の潜水艦を探知したと発表した。ロシアのインタファクス通信などが報じた。米軍はロシアの発表を否定し、米ロ対立がインド太平洋地域でも改めて浮き彫りになった。

 ロシア国防省によると、同国の太平洋艦隊が軍事演習を実施していたクリル諸島近くの海域で米海軍の攻撃型原子力潜水艦を探知したという。ロシアは「しかるべき措置」を講じたところ、潜水艦が領海内から出たと主張した。

 米国のインド太平洋軍の報道担当者は12日の声明で「ロシアの領海で我々が活動していたという主張は真実ではない」と反論した。「潜水艦の正確な位置についてコメントはしないが、我々は国際水域で安全に飛行し、航行し、活動している」と強調した。

 米国とロシアはウクライナ情勢をめぐり対立を深めている。バイデン米大統領とロシアのプーチン大統領は12日に電話協議したが、米政府高官は記者団に対し「数週間前からの状況に根本的な変化はなかった」と説明した。米政権はロシアがウクライナに侵攻すると懸念し、ロシアは否定している。

【私の論評】日本は新冷戦においても冷戦時と同じくロシアを封じ込め、東・南シナ海で米軍に協力し、西側諸国に大きく貢献している(゚д゚)!

ロシア側は、どのような報道をしているかは、以下のリンクをご覧ください。

https://ja.topwar.ru/192232-istochnik-raskryl-podrobnosti-obnaruzhenija-amerikanskoj-podlodki-v-rajone-kurilskih-ostrovov.html

これは、ロシア語のソースを機械翻訳をしたもののようで、ロシアのどの艦艇がどの潜水艦(バージニア型)を発見したかなどの詳細は記述されているものの、大筋では上の記事で示されている内容と同じであり、ここでは特に内容を掲載はしません。

米バージニア型原潜

潜水艦の行動は、各国海軍とも極秘だ。米国大統領でも、米原子力潜水艦の動きは知らさていません。これは、世界共通です。日本も例外ではありません。

ただ、日本でも例外はあります。

それは、このブログにも掲載したことがあります。海上幕僚監部は2020年9月15日、当時実施中の「2020(令和2)年度インド太平洋方面派遣訓練」に、潜水艦1隻を追加派遣すると発表しました。

潜水艦の行動は先にものべたように、「極秘中の極秘」であり、この公表は極めて異例でした。同盟国・米国も了解しているとみられます。国際法を無視して、南シナ海の岩礁を軍事基地化している中国への牽制とともに、中国の具体的行動への“警告”と分析する関係者もいました。

米中貿易戦争が激化するなか、中国の軍事的挑発を阻止する狙いだったのでしょうか。中国は反発しましたが、動揺を隠しきれないようでした。

海自の「そうりゅう型」潜水艦

当時安倍晋三首相は同年9月17日夜、テレビ朝日系「報道ステーション」に生出演した際、「自衛隊の訓練は、練度を向上させるためで、どこか特定の国を想定したものではない。南シナ海における潜水艦の訓練は15年前から行い、昨年も一昨年もしている」と説明しました。

重ねて、当時の安倍首相は「事実上、そうした訓練は(近隣国である)相手方も、十分に承知していることが多い」とも述べており、中国を意識したメッセージであることは、間違いありませんでた。

中国は南シナ海のほぼ全域に歴史的権利があると主張し、独自の境界線「九段線」を引いています。

国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所は2016年、こうした主張を否定したにもかかわらず、中国は、スプラトリー(中国名・南沙)諸島の岩礁を勝手に埋め立てた人工島に滑走路やレーダーを建設したほか、パラセル(同・西沙)諸島に地対艦ミサイルを配備し、軍事拠点化を進めています。

当時防衛省がリスクを侵してまで潜水艦派遣公表したのには意図があったと考えられます。これはあくまで推測ですが、中国が南シナ海で何らかの許容できない行動をしたのではないでしょうか。

中国は現状を少しずつ変更して、軍事的覇権を強める戦術を取っています。自衛隊がそれを察知し、米国と情報共有したうえで、中国側にメッセージを伝えたとみるのが自然でしょう。

自衛隊の哨戒能力は世界最高です。日本周辺で各国艦船や潜水艦の動向をリアルタイムで把握しています。当時の中国の抑制的な反応を見る限り、日本のメッセージは伝わったのではないでしょうか。

これについて解説した私のブログではこのメッセージについて、「海洋戦術・戦略においては、中国は日米に到底及ばないことを誇示するため」のものとしました。これは図星でしょう。

中国がいくら艦艇数を増やしてみたところで、現代の海戦の主役は潜水艦です。水上に浮かぶ艦艇は、今やミサイルや魚雷で破壊される標的にすぎません。

中国は無論攻撃型原潜や、通常型潜水艦も建造していますが、それでも日米の世界トップクラスの哨戒能力で中国の潜水艦の行動は逐一日米に把握されてしまいますが、日米の潜水艦の行動、特にステルス性に優れた日本の潜水艦の行動は全く把握できていません。

ASW(対潜水艦戦闘力)では、日米に到底及ばない中国は、海洋戦においては日米に勝つことはできません。実際に日米あるいは、日本と単独とでも真っ向から海戦になった場合には、中国は勝てません。

だからこそ、防衛省は上記のようなメッセージを発信したのでしょう。そうして、この強いメッセージに対しても、中国は抑制的な反応しかしませんでした。これは、日本を下手に刺激すると、日本がさらに南シナ海に多数潜水艦等を派遣して、中国海軍の動きを完璧に封じる挙に出ることを恐れたためと考えられます。

そうして、ロシアが今回「米潜水艦が領海侵入」を公表したことにも何らかのメッセージが込められていると受け取るのが普通でしょう。

それは無論のこと、米国に対する牽制でしょう。実際米国は現在アジア太平洋地域に空母3隻のほか2隻の強襲揚陸艦も派遣しており、これはベトナム戦争以降最大数の派遣です。

これについても以前このブログに掲載したことがあります。以下に一部を引用します。
米国としては、ウクライナ情勢に関しては、無論米国も関与するつもりでしょうが、それにしても大部分はウクライナに任せいざというときは、NATOにかなりの部分を任せるつもりなのでしょう。

それよりも、中国・北の脅威に対処するとともに、ロシアに対して東側から圧力を加えることによって、ロシアの軍事力を分散させることを狙っているのでしょう。実際、ロシアは戦車や歩兵戦闘車、ロケット弾発射機などの軍事装備を極東の基地から西方へ移動し始めています。米当局者やソーシャルメディアの情報で明らかになっています。
実際、ロシアは広大な国土を守備しなければならず、国土の東側の部分で日米が大々的に軍事演習などを実施されると、こちら側にも兵力を割かなければならなくなります。

ロシアはこうした動きを牽制するためにも、「米潜水艦が領海侵入」 したことを公表したのでしょう。

ただ、昨日このブログに掲載したように、バイデン政権はインド太平洋戦略をホワイトハウスのサイトに公表しましたが、その中でロシアについては一言も言及していません。

新たにインド太平洋戦略を公表したバイデン政権

昨日のブログでは、このあたりについて以下のように言及しました。
米国としては、ロシアのインド・太平洋地域における影響はなしとみているといえると思います。実際そうなのでしょう。ロシアの太平洋艦隊も、ロシアの原潜等も、米国には脅威とみなしていない、少なくとも米国のコントロール下にあると見ているのだと思います。無論、それには日本の強力な対潜水艦戦闘力(ASW)等が関係していると思います。

そうして、この地域における最大の脅威はとりもなおさず、中国であるということです。そうして、これこそが米国にとって大きな脅威であると認識しているのです。しかも、軍事力だけではなく、経済力や技術力などによるこの地域への浸透と不安定化を懸念しているでしょう。
実際、上の記事にもあるとおり、米国のインド太平洋軍の報道担当者は12日の声明で「ロシアの領海で我々が活動していたという主張は真実ではない」と反論したのみです。

ロシアに関しては、冷戦中に日本がそうしたように、日本の優れた対潜哨戒能力で、ロシア海軍特に、潜水艦の動きを封じ込めるだろうと考えており、さらには今や一人あたりのGDPでは韓国を大幅に下回るロシアにできることは限られているので、特に脅威とはみなしていないのでょう。

日本の対潜戦闘力(ASW)は、はやばやと潜水艦22隻体制を整えるとともに、日本独自の新型哨戒機P1も多数導入したうえ、対潜ヘリコプター搭載護衛艦を各種導入し、冷戦時よりもさらに強化されており、当然のことながら中国とともにロシアの動きも監視しており、米国としてはインド太平洋地域でのロシアの動きはさほど脅威とは感じていないのでしょう。

ただ、だからといって、ロシアは旧ソ連の核兵器と軍事技術を継承しており、決して侮れる相手ではないものの、インド太平洋地域においては当面大きな脅威になるとはみなしていないのでしょう。そんなことよりも、この地域への中国の浸透のほうが、かなり大きく深刻であると判断しているのでしょう。

ロシアの動き封じるという意味では、日本は新冷戦においても冷戦時に旧ソ連を封じ込めたのと同じくロシアをオホーツク海で封じ込めています。さらに東シナ海、南シナ海でも米軍に協力し西側諸国に大きく貢献しているといえます。

ただ、軍事に疎いマスコミがこれを報道しないのと、先に潜水艦の行動は「極秘中の極秘」であり、政府も防衛省もほとんど公表しないので、あまり注目されないだけです。

日本はこうした動きを継続拡大し、新冷戦でも西側諸国にさらに貢献すべきです。これには、岸田政権そのものにはあまり期待できそうもありませんが、岸防衛大臣には期待できそうです。そうして、新冷戦に日本が勝利すれば、日本の国際的地位は飛躍的に高まり、国内でもこれを評価しないわけにはいかなくなるでしょう。

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