2022年6月12日日曜日

中国からも米国からも逃げ出す中国人。富豪と研究者が向かった意外な国―【私の論評】米国のロシアへの経済制裁の真の目的は地政学的戦いで中国が米国に対抗できなくすること(゚д゚)!

中国からも米国からも逃げ出す中国人。富豪と研究者が向かった意外な国


5月23日、日米首脳会談を終えたバイデン大統領が、有事には台湾防衛のため軍事的に関与すると発言し、米中双方を慌てさせる事態となりました。台湾に関連して度々起こるバイデン大統領の失言騒ぎの意図を紐解くのは、メルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』著者で、多くの中国関連書を執筆している拓殖大学教授の富坂聰さん。こうした米中の緊張関係を嫌って米国から中国系研究者が流出していること、一方中国からはゼロコロナの窮屈さを嫌い富豪が離れ始めていることを伝え、共通の逃避先として選ばれている国を挙げています。

中国から逃げる富豪とアメリカから逃げる中国の知識 漁夫の利を得る意外な国とは

中国発の国際ニュースを読んでいて気付くことがある。それは今年に入り、台湾を扱う頻度が増していることだ。なぜ、国際ニュースかといえば、言うまでもなくアメリカが台湾問題に触れることに反応しているのだ。

直近の大ニュースは5月23日、バイデン大統領の失言だ。日米首脳会談後に行われた記者会見の場で記者から「有事には台湾の防衛に軍事的に関与する意思があるか」と問われ「イエス」と答えた。「われわれが約束した責務だ」と付け加えることも忘れなかった。

ホワイトハウスは直ちに火消しに回り、オースティン国防長官も米国の立場に変更はないと続いた。そして最後はバイデン氏自らが「あいまい政策(武力介入の有無を明確にしない)は変わったのか」と問われたのに対し「変化していない」と答え、「『一つの中国』政策にも変化がない」と修復に努めた。

台湾の蔡英文政権からすれば、期待の次に落胆が続いたような感覚だろう。だが、一方の中国も「これで一安心」というわけにはいかないのだ。バイデン発言はアメリカの隠れた意図を徐々に鮮明しただけと受け止めているからである。

というのも同様の発言は昨年にも二度発せられていて、中国側の抗議で発言が修正されているものの、すぐにまた約束と反する言動で中国側が揺さぶられるからだ。

バイデン政権の意図は明確で、言うまでもなくアメリカが台湾問題に口を出すことの「常態化」だ。そして本来はハードルの高い台湾への兵器の売却や相互訪問のレベルを上げてゆくことだ。その先にあるのは事実上の中台切り離しだ。

守る中国は少しずつ陣地を奪われるようにレッドラインを後退させられてしまう。アメリカの元国務長官・ヘンリー・キッシンジャー氏の言葉を借りれば「by a gradual process develop something of a ‘two-China’ solution」だ。

キッシンジャー氏は5月23日、バイデン発言を受けて米CNBCのインタビューに応じている。記事のタイトルは「台湾を米中外交の交渉の核にしてはならない」だ。つまり、現在のアメリカの対中外交が危険水域に入り始めていると警告しているのだ。

こうした状況をみれば米中対立が簡単には収まらないとの予測が定着するのは不思議ではない。ネガティブな空気はアメリカに住む中国人の社会を直撃している。なかでも影響を受けているのが学術界だ。

中国の国際紙『環球時報』のウェブ版は6月1日、米誌『ネイチャー』の記事を受けて米中の共同研究の数がここ3年間で激減したと報じている。顕著なのは米中それぞれの研究機関に所属する研究者が、共同で執筆した論文の発表数だ。記事で紹介されたデータによれば、3年間で20%も下がったという。まさに激減だが原因は政治由来だ。

周知のようにアメリカは知的財産の保護や安全保障上の理由を挙げて中国系の研究者に対する取り締まりを強化してきた。いわゆるチャイナ・イニシアチブ(イニシアチブ)だが、これは開始から3年で大きな曲がり角を迎え、今年初めにはプログラムを終了させた。

イニシアチブの失敗を先陣切って報じたマサチューセッツ工科大学の『MITテクノロジーレビュー』(1月18日)は「混乱する米国の対中強硬策、チャイナ・イニシアチブのお粗末な実態」と報じた。要するにスパイ疑惑で3年間大騒ぎしたが、ほとんど成果はなかったという意味で、冤罪の犠牲となった人々には大きな傷が残ったのだ。具体的な後遺症となったのが中国系研究者のアメリカ離れと学術界における米中協力の減少の進行だった。

ここに追い討ちをかけたのがヘイトクライムである。アジア人が狙われるケースが増えて安全が脅かされたのだ。カリフォルニア州立大の憎悪・過激主義研究センターが暫定値として主要都市での憎悪犯罪を集計した対アジア人のヘイトクライムの統計によれば、2021年は15都市で計2106件。20年に比べて5割増え、地域別ではニューヨーク市でほぼ倍増の538件。西部カリフォルニア州ロサンゼルス市でも7割増の615件だったと、『日本経済新聞』は伝えている。アジア系にとっての生活環境悪化は顕著だ。

こうした変化を嫌ってアメリカを離れようとする研究者は多い。だが複雑なのは彼らがそのまま中国に戻るわけではない──もちろん戻る人も多いが──ということだ。裏側でイギリスやカナダ、オーストラリアが食指を伸ばし、スカウトしているからだ。

一方、上海のロックダウン解除から少しずつ日常を取り戻しつつある中国では、いま1本の記事が人々の注目を集めている。『時代読財』が発信した〈1万5000人の富豪が資産とともに移民となる 中国は資産の持ち出しを厳格に管理〉という記事だ。

これはロックダウンに代表される中国の厳格過ぎる感染対策を嫌って、大都市の金持ちたちの間で「中国逃避」の流れが起きているという現象を報じたものだ。いわゆる古くて新しいキャピタルフライトの問題だが、いま大きな流れとなれば問題は深刻だ。

受け皿はアメリカと思われそうだが、実はそうではない。興味深いのは、彼らが逃避先として選ぶのは、やはりカナダやオーストラリア、そして東南アジアなのだということだ。

米中それぞれの問題で逃げ出す富豪や研究者たち。その避難先が東南アジアやカナダ、オーストラリアであれば、米中対立の漁夫の利は彼らが得ることになるのだろう。

【私の論評】米国のロシアへの経済制裁の真の目的は地政学的戦いで中国が米国に対抗できなくすること(゚д゚)!

このブログでは過去に何回か掲載したことがありますが、まずは2020年の世界の人口について振り返っておきます。中国とインドが14億人でアメリカ3.3億人であるのに対し,ロシアは1.65億人と全世界の1.9%である。因みに日本の人口は1.25億人です。

つぎに、新型コロナ発生前の2019年の名目GDPのシェアを見ておきます(IMF)。ロシアのGDPは,世界第11位の170百億ドルであり、韓国の164百億ドルとほぼ同じです。これに対し、米国は2,143百億ドルで12.6倍の規模です。日本が507百億ドルで約3倍です。

新型コロナ発生後の2021年の名目GDPの状況もほぼ変わらないです。ロシアのGDPは177百億ドルで世界第11位です。米国は2,299百億ドルでロシアの13倍。この時点で韓国は,179百億ドルとロシアを上回りました。

そうして注目すべきは中国が、1,745百億ドルとアメリアの4分の3にまで迫ってきてはいますが、一人たりGDPでは、1万ドルをわずかに超えた程度であり、これはロシアとあまり変わりありません。

中国の人口は、ロシアの人口の10倍であり、GDPも約10倍です。中露の一人あたりのGDPは、台湾、韓国などはもとより、バルト三国のうちの一つであるリトアニアよりも小さいのです。このリトア二アの人口は約280万人であり、空軍には輸送機はありますが、戦闘機や爆撃機はありません。

リトアニアのシャウレイ空軍基地では7日、NATO加盟国など17カ国から約3000人の兵士、50の航空機が参加した大規模な演習が行われていました。しかし、リトアニアは戦闘機を持っておらず、駐留するのはスペインとチェコの空軍です。

もともとバルト3国は、ソ連崩壊後の混乱で、航空戦力を自分たちで賄うことができませんでした。「空軍基地」ではあるものの、リトアニアが持っているのは、輸送機など攻撃能力を持たないものです。

https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000257415.html

リトアニア空軍、スロビカス指揮官は、「『もっと機体を』と常に思っています。戦闘機とパイロットは軍の予算には高すぎます。今の情勢下では我々の戦力は不十分なので、NATOの支援は重要です」と語っています。

このようなリトアニアよりも、中露の一人あたりのGDPは低いのです。これを考えると、いかに両国が国民を犠牲にして大きな軍事力を持ち、それを維持しているのかが実感できます。

そうして、ロシア経済は原油価格に大部分を依存します。その原油価格の指標となるのは,アメリカのWTI(West Texas Intermediate)原油の先物市場です。この価格が2020年4月20日に1バーレル当たり―37.63ドルをつけました。この時期にはロシアのウクライナ侵攻は難しかったのです。

この価格が、わずか2年後、ロシアのウクライナ侵攻後の2022年3月7日には130.50ドルとなりました。1次産品である原油の先物市場価格の乱高下は通常でですが5月26日時点でも111ドルです。

ただ、ロシアの原油埋蔵量は世界6位に過ぎない上に、さらに枯渇が取りざたされています。石油のような1次産品が需給ひっ迫すると,価格が急騰します。次に、「代替生産」が起こり,価格は急落します。また、歴史的に、時間をかけると「技術進歩」が1次産品問題を克服します。1次産品問題はイノベーションにより克服され、今日があります。したがって、ロシア抜きの世界経済は存立可能です。



そのことがわかっているし、現状のロシアのGDPは韓国以下であり、とても米国やEUと地政学的な戦い(経済安全保障など)をして勝つことはできないプーチンは今が最後のチャンスと考えウクライナに侵攻したのかもしれません。

以上の経済状況を踏まえて世界のロシアへの経済制裁の効果を評価する際に、ロシアのウクライナ侵攻の根底にあるのは米中覇権争いであることを認識すべきです。

ロシアへの経済制裁の効果は、短期的には石油など禁輸する国があっても追加的に輸入する国もあり、弱められる。中長期には、高価格が維持されれば、石油はロシアからアメリカなど代替が進む可能性があり、小さなロシア経済が更に弱体化します。つまり、中長期に経済制裁は有効です。

ただし、ロシアがよく言われる北朝鮮化するとしても経済制裁によりプーチン大統領を排除できるかといえば難しいです。また仮に死亡したり、失脚したとしても、強権国家が管理を強化しても北朝鮮、中国でさえ政権を変えるまでには進まないでしょう。ロシアも同じでしょう。プーチンが消えても、次のプーチンが大統領になるだけです。

こうした状況下で、米国は、中国を意識したロシアへの制裁を継続することは理解できます。中国の最大の損失は、現状の戦争犯罪者であるプーチン氏と習近平氏の同盟が続けば、中国がロシアと同じ強権国家として世界中の国々がブランド化されることになります。現在の第4次産業革命下では、「世界全体からの多様性のあるイノベーション人材」の招致が不可欠です。

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上の記事では「米中それぞれの問題で逃げ出す富豪や研究者たち。その避難先が東南アジアやカナダ、オーストラリアであれば、米中対立の漁夫の利は彼らが得ることになるのだろう」としていますが、そもそも米国にいようが中国にいようがはたまたそれ以外のEUなどの国にいようが、中国籍の中国人でノーベル賞を獲得した学者は存在しません。

それと、日米やEUなどと比較して、東南アジアやカナダ、オーストラリアなどの国が全く及ばないことがあります。それは、日米EUあたりだと、弱点などはあったにしても、ほぼすべての産業基盤があります。

日米EU以外は、多くの産業の基盤がなかったりします。たとえばオーストラリアには最近AUKUSに入り原子力潜水艦の技術を得ることを決めたことからもわかるように、オーストラリアには原子力産業も潜水艦を建造できる造船技術も育っていません。

様々な科学技術的な研究をするにしても、多くの産業基盤が揃っている国でないと、なかなか本格的な研究はできないです。いずれの分野でも本格的な研究をしたいなら、日米やEUにとどまるしかありません。特に現在のような地政学的な戦いにより、いつ制裁などを受けるかわからないような時代はそうです。

ロシアのように、先端技術を生み出そうとしても、満足に半導体や精度の高いベアリングすら手に入らないようでは話にならないです。最新型の戦車や戦闘機を作ろうとしても、制裁で半導体が使えなくても、すぐに代替品が使えるようでないと話にならないのです。

本当の意味での、先端技術を生み出すためには、おおよそすべての他の先端技術を素早く容易に取り込むことができなければ、不可能です。

中国人研究者は、そのほとんどは一流ではないし、一流で志の高い研究者はやはり米国などにとどまるでしょう。これからは、特にそうです。そんなことよりも、中国が人材を得ることができるかどうかが、今後の米中の地政学的戦い(経済とテクノロジーの戦い)の趨勢を決めるのです。中国人研究者がどこに行くかなどは些細な問題にすぎません。

ロシア制裁の継続は、中国強権国家ブランドを確定し、中国への世界からの人材招致を難しくすることになります。「人口減少時代」に入る中国が、米中経済覇権争いで米国に対抗できなくなります。これこそが、中長期のロシア経済制裁の最大の効果となるでしょう。

米中の地政学的戦いは、ロシアが呼び水となり、中国が本格的に人材を得ることができなくなり、技術的にも経済的にも米国に勝つことができず、それで米国の勝利で終わることになるでしょう。


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2022年6月11日土曜日

都の太陽光発電義務化で「ジェノサイド」の加担に 素材の半分以上がウイグル産、米ではすでに輸入禁止―【私の論評】義務化反対都民は、都へのパブリックコメントはもとより、義務化賛成派の議員に陳情しよう(゚д゚)!

エネルギー大問題


小池都知事は、太陽光パネル設置義務化を打ち出した

 東京都が提案している「太陽光パネル義務付け」は、東京に広い家を買えるお金持ちは元が取れるが、一般国民は電気料金の負担が増えるだけだ、と前回書いた。

 だが、家を買える人がみな元を取れるわけでもない。東京に家を買うという場合、大抵はギリギリの敷地に、建ぺい率や容積率などを考慮してパズルのように家を建てる。屋根の向きも思うに任せない。

 太陽光発電のためには南向きに程よい傾斜になった広い屋根が望ましいが、そんな家を建てる余裕がある人はどれだけいるのか。85%の住宅に義務付けるというが、思ったほど発電できなければ、建築主も損をする。結局のところ、庶民は、家を買っても買わなくても損をするのではないか。

 そもそも、そこまでして太陽光パネルを導入すべきか。

 米非営利団体「共産主義犠牲者記念財団」(VOC)は5月24日、中国共産党によるウイグル人迫害の新たな証拠として「新疆公安文書」を公表した。

 ホームページを見ると、新疆公安当局のシステムへのハッキングで流出した機密文書や膨大なデータのほか、3000人近くの収容者の写真がある。文書には収容所から逃亡しようとする者に対する射殺命令、殺人許可なども含まれる。

 このジェノサイド(民族大量虐殺)が、政府首脳部の指示によるものであることも明らかになった。英国とドイツの外相は中国を非難し、王毅国務委員兼外相に調査を要請した。

 いま、世界における太陽光発電用の多結晶シリコンの80%は中国製だ。そして、その半分以上が新疆ウイグルにおける生産であり、世界に占める新疆ウイグルの生産量シェアは、実に45%に達する。

 いま太陽光発電を義務付けることは、ジェノサイドへの加担になりかねない。米国はすでに法律によってウイグル製品をすべて輸入禁止にしている。

 さて、この住宅への太陽光パネル義務化の話は、もともと国土交通省で検討していたところ、「無理がある」として見送られたものだ。小池百合子都知事は国がやらないとなると、ますます張り切るということだろうか。

だが、それよりも、国ができなかった新疆ウイグル自治区におけるジェノサイドの非難決議をしたうえで、新疆ウイグル産の製品の輸入禁止を国に訴えてはどうか。

■杉山大志(すぎやま・たいし) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。1969年、北海道生まれ。東京大学理学部物理学科卒、同大学院物理工学修士。電力中央研究所、国際応用システム解析研究所などを経て現職。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)、産業構造審議会、省エネルギー基準部会、NEDO技術委員などのメンバーを務める。産経新聞「正論」欄執筆メンバー。著書に『「脱炭素」は嘘だらけ』(産経新聞出版)、『中露の環境問題工作に騙されるな!』(かや書房)、『SDGsの不都合な真実』(宝島社)など。

【私の論評】義務化反対都民は、都へのパブリックコメントはもとより、義務化賛成派の議員に陳情しよう(゚д゚)!

一戸建て住宅を含む新築建築物に太陽光発電のパネルの設置を義務付ける条例改正案の制定を都が検討していることについて、七日、八日の都議会本会議では、議員から「多くの反対の声が寄せられている」などとして、慎重に都民の意見を聞くように求める声が相次ぎました。

都が検討する案によると、一戸建てなど中小規模の建物では、建築主ではなく、中小規模の建物の供給量が都内で年間二万平方メートル以上の住宅メーカーに義務が課されます。

写真はイメージ

ただ一般住宅で太陽光パネルを設置するには百万円程度が必要。公明の谷村孝彦氏は「都民からは住宅価格に設置費用が上乗せされてしまえば、都民への義務化と変わらないとの指摘が出ている」とし、「最終的に都民に(パネル設置の)選択の余地を残すなど、納得と理解を得るべきだ」と求めました。

これに対し、小池百合子知事は「個人が設置の有無を選択できる弾力的な仕組みを前提に、さらに具体的な検討を進める」と答弁。新築住宅を建てる人の一部がパネル設置をしないケースでも住宅メーカーが義務を達成できるような制度を検討するとしました。

また都民ファーストの会の荒木千陽氏が義務化に伴い、都民や事業者への支援を求めたのに対し、知事は「専門家の意見をうかがい必要な支援につなげていく」と新たな支援策を検討する考えを示しました。

都民ファーストの会の荒木千陽氏

自民の柴崎幹男氏は「SNSなどで非常に多くの反対の声が寄せられている。(六月二十四日まで実施する)パブリックコメントの結果を踏まえ、義務化には慎重な議論をさらに重ねるべきだ」と指摘。栗岡祥一環境局長は「都民や事業者から出ているさまざまな課題に丁寧に答え、理解と共感を得られる制度と支援策を検討する」と述べました。

上の記事を書いた杉山大志は、他の記事で以下の様なことも述べています。
 150万円の太陽光パネルを購入すると、建築主は15年で元が取れることになっているが、実は発電される電気の価値はわずか50万円しかない。残りの100万円は再生可能エネルギー賦課金や、電気料金のかたちで一般国民の負担になる。

 「東京に日当たりも良く広い家を買って、理想的な日照条件で太陽光発電パネルを設置できるお金持ちな人が、一般国民から100万円以上を受け取って太陽光発電を付け、元を取る」というのが、「太陽光発電義務化」の正体だ。
東京都の「太陽光発電義務化」は太陽光を設置できる金持ちな人が、一般国民から100万円以上を受け取って太陽光発電を付け、元をとった上に、一般国民に強制的にジェノサイドに加担させる仕組みともいえます。

これは、絶対に反対すべきと思います。パブリックコメントは以下からできます。都民の皆さんで、この問題についてコメントしたいかたはぜひしていただきたいと思います。


それと、都民の方は、SNSなどで都議などに陳情すべきと思います。陳情というと、すぐに上田令子氏などへの陳情を思い浮かべるかもしれませんが、上田氏はすでに小池百合子氏には反対の立場ですから、陳情自体は上田氏などにしてもあまり意味がありません。

6月7日、東京都議会は最終日の議会で小池百合子都知事に対し一人会派「自由を守る会」の上田令子議員により「不信任決議」がが提出されましたが、3分の2の賛成を得られず、否決されました。

以前にもこのブログで述べたように、国会議員であろうと、自治体の議員であろうと、陳情するなら、自分の考えに賛成の議員ではなく、反対派の議員にすべきなのです。それもできれは、多数派の議員にすべきなのです。

仮に上田氏に対して、太陽発電義務化に反対の陳情をしても、上田氏はそもそもこれに反対であるし、残念ながら一人会派なのでほとんど効果が期待できないからです。

上田令子議員都議会議員

そうではなく、多数派で、太陽発電義務化に賛成の都議に陳情することのほうがはるかに有意義です。多くの人がこのような陳情をすれば、多数派の議員を太陽光発電義務化に反対の立場に転向させることになれば、陳情は大成功ということになります。

もちろん、上田氏に対して応援のメッセージを送ることはやぶさかではありませんが、それと陳情は別ものです。私は応援するなとといっているわけではありません。応援と陳情は全く別物ということを言いたいだけです。

上の記事でも、自民の柴崎幹男氏は「SNSなどで非常に多くの反対の声が寄せられている」としています。賛成派の議員に多数の陳情がいけば、それは太陽光義務化に反対する議員も出てくるかもしれません。

そうして、何よりも都議会議員に対する陳情は、国会議員に対する陳情の練習にもなります。国のことよりは、都のような地方自治のほうが身近で理解しやすいです。地方で練習して、いずれ国会議員に対する陳情をすれば、やりやすいです。

最近は陳情もSNSでできるようになり、従来と比較すれば、かなり敷居が低くなりました。これを利用しない手はありません。

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2022年6月10日金曜日

台湾問題で米中激突!国防相が初の対面会談  バイデン政権、新たな武器売却で強い姿勢も…「習氏の“3期目”見据え問題起こしたくない」中国―【私の論評】地経学的臨戦態勢にある米中で実は、軍事トップ同士の会談は大きな意味はない(゚д゚)!

台湾問題で米中激突!国防相が初の対面会談  バイデン政権、新たな武器売却で強い姿勢も…「習氏の“3期目”見据え問題起こしたくない」中国

ロイド・オースティン米国防長官

 ロイド・オースティン米国防長官と、中国の魏鳳和国務委員兼国防相が、シンガポールで開幕するアジア安全保障会議(10~12日)に合わせて、初めての対面会談を行う。世界の安全保障環境が複雑さを増すなか、最大の焦点は「台湾問題」とみられる。軍事的覇権拡大を進める中国に対し、ジョー・バイデン政権は会談直前、台湾に新たな武器売却を通知して強い姿勢を見せた。

 「遠くない将来に会うことを楽しみにしている」

 オースティン氏は5月の議会証言で、魏氏との会談にこう意欲を見せていた。会談では、米中対立や台湾問題、南シナ海の緊張、ロシアのウクライナ侵攻、北朝鮮による核・ミサイル開発など、多くの論点で応酬が激化しそうだ。

魏鳳和国務委員兼国防相

 米政府高官は「われわれの立場からすれば、会談は地域的、世界的な問題における競争の管理に焦点が当てられると見込んでいる」と述べた。ロイター通信が報じた。

 台湾問題では、バイデン大統領は5月の来日時、台湾への軍事的関与について記者に聞かれて、「イエス(当然だ)」「それが、われわれのコミットメント(約束)だ」と語っている。米国の「あいまい戦略」の転換とも受け止められた。

 さらに、台湾外交部(外務省)は9日、米政府が海軍艦船の付属部品と関連する技術支援など、総額1億2000万ドル(約160億円)相当分を売却すると台湾政府側に通知したと発表した。バイデン政権下での武器売却は4度目となる。

 今回の米中国防相会談をどう見るか。

 中国事情に詳しい評論家の石平氏は「中国はこれまで通り、強い言葉で米国を牽制(けんせい)するだろうが、実際は何もできない。(ロシアのウクライナ侵攻を受けて)中国の台湾統一(台湾侵攻)に国際社会の同意が得られるはずがない。自由主義陣営は着々と連携を強めている。中国の習近平国家主席も『3期目政権』を見据えて、秋の党大会まで問題を起こしたくないというのが本音だろう」と指摘した。

【私の論評】地経学的臨戦態勢にある米中で実は、軍事トップ同士の会談は大きな意味はない(゚д゚)!

上の記事にもある通り、台湾国防部(国防省)は9日、米政府が台湾に対し海軍艦艇の部品などの売却を決めたと報道資料で明らかにしました。売却額は1億2000万米ドル(約160億6600万円)。中国軍の航空機や艦艇が台湾周辺での活動を活発化させていることから、米国が売却に同意したといいます。

同部によると、売却計画は米議会に通知され、1カ月後に発効する見通しです。

総統府の張惇涵(ちょうじゅんかん)報道官は9日、報道資料で心からの謝意を表明。バイデン米政権発足以来4度目で、今年に入ってからは3度目の武器売却の発表となったことに言及し、米政府の台湾の国防における需要に対する重視の表れである上、台米間の強い協力関係を示し、台湾の自衛力向上に寄与すると歓迎しました。

国防部(国防省)は9日、米政府が台湾に対し海軍艦艇の部品などの売却を決めたと報道資料で明らかにした。売却額は1億2000万米ドル(約160億6600万円)。中国軍の航空機や艦艇が台湾周辺での活動を活発化させていることから、米国が売却に同意したといいます。

同部によると、売却計画は米議会に通知され、1カ月後に発効する見通しです。

総統府の張惇涵(ちょうじゅんかん)報道官は9日、報道資料で心からの謝意を表明。バイデン米政権発足以来4度目で、今年に入ってからは3度目の武器売却の発表となったことに言及し、米政府の台湾の国防における需要に対する重視の表れである上、台米間の強い協力関係を示し、台湾の自衛力向上に寄与すると歓迎しました。

総統府の張惇涵(ちょうじゅんかん)報道官

オースティン米国防長官は10日、アジア安全保障会議(シャングリラ対話)出席のため訪れたシンガポールで、中国の魏鳳和(ぎ・ほうわ)国務委員兼国防相と会談しました。台湾問題やロシアのウクライナ侵攻などについて協議。ロイター通信によると、オースティン氏は台湾を不安定化させる行動を控え、ロシアを支援しないよう魏氏に要求しました。

中国メディアによると、魏氏は「『一つの中国』原則は中国と米国の関係の政治的な基礎」と強調。米国が進めている台湾への武器売却が「中国の主権と安全の利益を深刻に損なう」と非難しました。

両者の対面での会談は、昨年1月のバイデン米政権発足以来初めてです。米側によると、中国が会談を申し入れたもようです。

米国は中国を「国際秩序を作り替える意思を持つ」(ブリンケン国務長官)と警戒する一方、対話も重視。中国は米主導で「対中包囲網」構築が進んでいることにいらだちを見せますが、緊張が高まることも望んでいません。会談では偶発的衝突を回避する方策も議論された可能性があります。

3年ぶり開催のアジア安保会議では、オースティン氏が11日、魏氏が12日に演説する予定。会期中に開かれる日米韓3カ国の防衛相会談では、7回目の核実験に踏み切る可能性が指摘される北朝鮮情勢について協議される見通しです。

実は米国と中国の真の戦場は、軍事力ではなく、経済とテクノロジーの領域にあります。なぜなら、軍事的には中国はいまだ米国に対抗できる力がなく、外交戦略においては、中国に対峙しているのは、米国一国ではなく、すでにより広範な反中国同盟だからです。

軍事的には、米軍が攻撃型原潜を3隻程度台湾海峡に常駐させれば、中国は台湾に侵攻できません。なぜなら強力な米攻撃型原潜によって、台湾海峡の中国の艦艇をすべて撃沈できるからです。それは、米攻撃型原潜が桁違いに攻撃力が強いこと、さらに米軍はASW(Anti Submarine Warefare :対潜水艦戦闘)において、中国海軍に対して比較にならないほど強いからです。

メンテナンス中のシーウルフ級攻撃型原潜巨大さがよくわかる

米海大などがシミュレーションを行うときは、原潜を考慮に入れることはないです。これを入れてしまうと、ゲームそのものの目的(予算獲得など)を潰してしまうことになるからです。原潜だけでなく、総合的な海軍力でいえば、米国が圧倒的であることは疑いがないです。

このような事実を言ってしまえば、中国は台湾に軍事侵攻できないのは明白です。また、米海軍も予算を獲得しにくくなります。それに米国では未だ、空母打撃群信奉者が多いです。米海軍は正しく情報を開示しつつも、オバマ時代の緊縮で、航空母艦等の稼働率が劇的に低下するという危機的状況に陥りつつあるということを主張すべきでしょう。

稼働率の低下の最大の原因は、海軍工廠(こうしょう)と民間造船所を含んだアメリカ国内における造艦・メンテナンス能力の不足にあり、これはすぐに改善されるものではありません。これこそ米海軍の深刻な問題です。

ただこうした地味な内容よりも、原潜抜きで米中が戦うことを想定すれば、中国にもかなり勝てる見込みがでてきて、白いので耳目を惹きつけることができ、なんと言っても予算獲得のためには、効果的です。

ただし原潜が闘うことを前提とすれば、中国軍が台湾に多数の人民解放軍を上陸させることができたにしても、米国が台湾を攻撃型原潜で包囲すれば、人民解放軍はこの包囲を解くことができず、上陸した部隊は補給が途切れてお手上げ状態になります。

それに現在では海中の巨大武器庫と化した、米攻撃型原潜は、魚雷はもとより巡航・対艦・対空ミサイルを多数搭載し、ありとあらゆる強力な攻撃が可能です。ある意味では、水中の空母のようものです。

そんなことは、米中双方ともわかっていることですが、米国としては最近ではプーチンが常軌を逸して、最初から不可能に近いウクライナ侵攻に踏み切ったということもあり、牽制のために台湾に武器を供与したりしているわけですが、海軍力で米軍が中国軍よりも圧倒的に強いという事実は変わりません。

プーチンとしては、GDPが中国の1/10であり、今や韓国を若干下回るような規模では、中国のように米国やEUに対して「地政学的戦い」を挑むことはできないので、無謀な軍事的侵攻をせざるを得なかったかもしれません。それにしても、あまりに無鉄砲でした。

それに中国側からみれば、米軍が偶発的にでも中国を攻撃すれば、通常兵器では中国軍には太刀打ちできないことは最初からわきりきっていますし、それを挽回するには中国は核兵器に頼らざるを得なくなることが予め予想され、それこそ核戦争にエスカレートしかねないので、それは避けたいのです。

だからこそ、米国と中国の真の戦場は、軍事力ではなく、経済とテクノロジーの領域であり地政学的な戦いになるのです。

地経学的な戦いとは、兵士によって他国を侵略する代わりに、投資を通じて相手国の産業を征服するというものです。経済を武器として使用するやり方は、過去においてもしばしば行われてきました。

ところが中国が特殊なのはそれを公式に宣言していることです。その典型が「中国製造2025」です。これは単なる産業育成ではなく、たとえばAIの分野に国家が莫大な投資を行うことで、他国の企業を打倒すること、そして、それによって中国政府の影響力を強めることが真の狙いなのです。

その意味で、中国は国営企業、民間企業を問わず、「地経学的戦争における国家の尖兵(せんぺい)」なのです。たとえばイギリスがアジアを侵略する際の東インド会社のような存在なのです。

中国企業がスパイ行為などにより技術の窃盗を繰り返したり、貿易のルールを平然と破ったりするのは、それがビジネスであると同時に、国家による戦争だからです。

トランプ政権になって、米国がそうした行為を厳しく咎(とが)め、制裁を行うようになったのも、それを正しく「地経学的戦争」だと認識したからであり、だからこそ政権が交代しても、対中政策は変わらなかったのです。

トランプは2018年3月に鉄鋼25%、アルミニウム10%、さらに中国からの輸入品600億ドル分にも追加関税をかけると発表した。そして7月から9月にかけて2500億ドル分の中国製品に追加関税をかけたのです。

これらの措置は中国経済に大きなダメージを与えました。この関税戦争は、2020年1月に、トランプ大統領と中国の劉鶴(りゅうかく)副首相が合意書を交わすことで一応の収束をみたのですが、地経学的臨戦態勢は続いています。バイデン政権になっても、トランプ時代におこなった中国への追加関税は維持されたままなのです。

そうして、今回の米中の軍トップの会談は、米中の地政学的戦争にはあまり関係はありません。せいぜい、米国も中国も勘違いして、偶発的衝突を回避するための話し合いということではは意味があったとは思いますか。

米中軍事トップの会談など、地政学的戦いには大きな意味はもちません。

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2022年6月9日木曜日

日銀黒田総裁の“値上げ許容”発言 本人は発言撤回したものの庶民の怒りは収まらない!あなたは値上げを許容できていますか?―【私の論評】黒田総裁批判でまた露呈したマクロ的見方ができない人たち(゚д゚)!

日銀黒田総裁の“値上げ許容”発言 本人は発言撤回したものの庶民の怒りは収まらない!あなたは値上げを許容できていますか?


日銀の黒田総裁による“値上げ許容”発言が波紋を広げています。

今日国会の場で発言を撤回しましたが、実際、街の人たちは相次ぐ値上げを許容出来ているのでしょうか。

【写真を見る】日銀黒田総裁の“値上げ許容”発言 本人は発言撤回したものの庶民の怒りは収まらない!あなたは値上げを許容できていますか?

■黒田総裁「値上げ許容」発言 撤回も…「分かっていない」
食べ物から洋服、そして家電まで、全199店舗、東京・板橋区の商店街「ハッピーロード大山」。

利用客
「大山は物価が安くて生活しやすい」

ただ、この商店街にも値上げの波が押し寄せていました。

6月7日に発表されたものでは、
「コカ・コーラ」の500ミリリットルが10月1日の出荷分から140円が160円に値上げ。

30代
「これ全身ユニクロなんですよ。基本的にユニクロで買い物させてもらっています」

そのユニクロも、8月から順次販売する秋冬向けの一部商品を値上げし、例えばフリースの一部商品は1990円から2990円に。

こうした中、6月6日、日銀の黒田総裁が、相次ぐ値上げに「許容度も高まっている」などと発言。

批判が相次ぎ、6月8日の国会で…

日銀・黒田総裁
「家計が値上げを受け入れているという表現は全く適切ではなかったということで撤回致します」

誤解を招く表現だったと発言を撤回しました。

本当に「値上げ許容度は高まっている」のでしょうか。商店街の人に、緊急調査を実施。

どの程度、値上げを「許容できる」のか「できない」のかを、数値で示してもらいました。

「値上げ許容度は高まっていない」にシールを貼った、こちらの2人。
どのくらい許容できないのかというと…

その度合いは、2人とも100%を超えました。

許容できない100%超
「一般市民の家庭の気持ちはわかっていないですよね」
「(黒田総裁は)ご自分で買い物されないとおっしゃっていたのであまりわかっていないのかなと」

許容できる30% 
「30%くらい。公共料金とかは値段上がっているなと感じるんですけど、まだそんなに急激に圧迫するような状況ではないので」

許容できない100%超
「本当はもっと振り切ってこっちいきたいくらい。黒田さんの発言?冗談じゃないね。上級国民の発言ですからね。実際に庶民の暮らしをしてみたらいいんですよ」

ではみなさん、この値上げラッシュをどんな工夫で乗り切っているのでしょうか。

20代
「安いときにまとめ買いしてストックしておくってことはしていますね」

30代
「野菜とか値上がっているものは控えたり他のもので補って」

■物価の優等生 バナナも値上げ? 店は?“努力の限界”
「安くておいしい」と人気の“物価の優等生”バナナも値上がりするかもしれません。

ラウレル駐日フィリピン大使
「現状のままを継続するというのはフィリピンのバナナ生産者にとって現実的ではなくフェアでもない」 

6月8日、フィリピン大使館は、全国のスーパーの業界団体に、バナナの小売価格を上げるよう申し入れました。

肥料価格の上昇などが理由で、果物の中で、最も輸入量が多いというバナナは、8割近くがフィリピン産。このニュースに…
   
30代
「バナナはすごく食べますね子どもは。他の値上げされてないフルーツを買うとか」

一方、お店側は、原材料費などが値上がりする中、どう対応をしているのでしょうか。

1936年創業の老舗の「新井精肉店」。揚げ物に使う油やパン粉などの価格が上昇し、6月1日からメンチカツなどの揚げ物のほとんどを10円ほど値上げ。

牛肉などの販売価格は据え置きにしていますが、肥料や輸送費が高騰しているといい…

新井精肉店 新井真之店長
「利幅が少なくなってきているので本当にたいへんですね」

カレーパンが人気商品だという、パン屋さん「マルジュー」。
   
マルジュー 伊東正浩代表取締役
「カレーパンだと揚げ油、中の油脂、上がらないものがないくらいすべて上がっています」

油のほかにも、パンの原料となる小麦や、食材、電気代などが値上がりしていることで今後、商品の価格を上げざるを得ないといいます。

マルジュー 伊東さん
「企業努力で吸収できるという範囲を完全に超えているというのが現状です」

2021年7月にオープンした、テイクアウト専門のドーナツ店「いっ久どーなつ大山茶屋」

いっ久どーなつ大山茶屋 伊藤泰翼オーナー
「テイクアウトで渡す袋だったり、飲み物のカップだったり何から何まで小麦粉とかもそうなんですけど全部上がっているので、正直結構きついです」

今後、値上げに踏み切るか、検討中だといいます。

【私の論評】黒田総裁批判でまた露呈したマクロ的見方ができない人たち(゚д゚)!

上の記事は、マクロ経済の話を個々人の物語で語るという間違いをしています。物語とは、主に人や事件などの一部始終について散文あるいは韻文で語られたものや書かれたものです。そもそも、国全体について語っていませんし、それにもともと国全体を物語で語るようなことはできません。

逆にマクロ的な分析に基づき、代表的、あるいは対照的な人、あるいは両方の人に関して物語を書くことはできますが、その逆は不可能に近いです。物語は、理念や理想や個人や組織などの実態に迫ることはできますが、国全体に迫るには無理があります。そのようなことを、与党、野党を問わず多くの政治家や、多くのマスコミが繰り返してきました、今回のことでも何も変わっていないことが露呈したと思います。


日銀の黒田総裁が6月6日、「家計の値上げの許容度も高まってきている」と発言しました。これは共同通信の「きさらぎ会」という講演で述べたものですが、7日の参院財政金融委員会のなかで「適切ではなかった」として陳謝しました。

ただ、スピーチ原稿などを見ると、きちんとデータも揃えて出しています。 これは、通常の物価予想調査です。データもあるし、謝る必要もなかったと思います。 そのデータを以下に掲載します。


マクロ経済の話なので、マクロ経済についての反論があるならいいのですが、マスコミ等はそうではなく、「自分にはそういう余裕がない」という一部の一方的な意見を書くだけなのです。

それに、アンケート調査にも、余裕がないという人が半分くらいいるのです。黒田総裁の話しいは、「許容できる人の割合が増えた」という、それだけの話なのです。

割合が少し増えたというだけなので、相変わらず「許容できない」という人はかなりいます。それはそれで「割合が増えた」ということは正しいのだけれども、こういうときに、マスコミの人はストーリーとして一部の例だけを言うわけです。全体の話をしていないから、議論にならないのです。

黒田さんは全体論として、徐々に許容している人が増えていると指摘していますし、それに「自分は許容していない」という人も、データにも入っています。 昨年(2021年)の8月は57%が許容しなかったのですが、今年の4月には44%になったと指摘しているのです。逆に言うと、許容する人としない人は、五分五分と言えば五分五分なのです。 

そういう意味では、許容しない人の意見があるのは間違いありません。そういうことではなく、全体の数字の変化を言っているだけなのですが、マスコミにはこの話は難しいようです。

ただし、大きな問題点はここにあるのではなく、現在の日本の大きな問題点は、GDPギャップ(需要と供給の乖離)があることです。内閣府の推計で現在の日本のGDPギャップ約20兆円あるととされています。この推計は低めであると考えられます。過去にも、GDPギャップがプラスになっても完全雇用を達成しなかった場合もります。

10兆円くらいは少なめに見積もっているようですから、本当は現状では30兆円くらいあるのです。 そうして、このギャップをどうやって埋めるのかということが問題の本質です。

内閣府の

黒田総裁は、コロナ禍で消費が抑えられ、どこにも使えなかったもの貯蓄になっている状態にあり、この強制貯蓄が爆発すると主張しているのです。しかし、大きなGDPギャップがあった場合には呼び水が必要です。これは誘い水政策ともいいます。不況期において財政支出を呼び水として、民間需要を喚起し景気を回復させようとする政策です

呼び水がないと、消費は爆発はしません。 強制貯蓄があったにしても、将来が不安ですから貯蓄を取り崩すことはないのです。呼び水があって、初めて消費があり、景気がよくなり出すのです。最初にだれが消費爆発のきっかけをつくるのかといえば、それは政府なのです。

黒田総裁ははそうではなく、強制貯蓄があるから政府は何も対策をしなくとも良いという主張をしているわけです。この論法は、財務省がよくやる論法です。私はそちらの方が問題だと思うし、これはマクロ経済の話なのです。マクロ経済のGDPギャップを誰が最初に埋めるか、どのように埋めるか。埋めなければ失業が増えるだけなので、どうやって埋めるかということです。今回の黒田氏批判は、その政策議論まで到達すればいいと思ったのだけれども、どうもそうはなりそうもありません。

今回の黒田総裁のスピーチ原稿は、日銀のホームページに載っています。確かに、「強制貯蓄が」と言う言葉がでてきます。 財務省いつもそれを言っています。「強制貯蓄が~」という人は、財政出動したくない立場の人なのです。

強制貯蓄がどうせ爆発するから、民間は絶対に出るので財政出動は要らないという立場なのです。 しかし、マクロ経済的には強制貯蓄を引き出すためにも、最初に財政出動が必要なのです。順番を間違えるととんでもないことになります。そこをポイントとして政策議論してもらうと面白いのですが、野党の質問を聞いていると、全く無理なようです。「黒田さんは買い物をしたことがあるのですか?」という話ばかりですから話になりません。

そういう意味では、私は黒田総裁の考えには、大反対です。ただ、マスコミが黒田批判をしているのとは全く違う次元で反対です。

そもそも、会社などで、長期戦略などを考えるときに、何も考えずにただ街にでていろいろな人にインタビューして、個々の人のストーリを集めてきて、それに基づき戦略を立てれば、馬鹿といわれるだけだと思います。

様々な数字から仮説を立て、既存の数字で足りない場合は、自ら調査をして仮説を練り直し、その上で仮説に基づき、多くの人に直接話しを聴いたりした上で、長期戦略を立案することになります。ただ、それでも仮説に過ぎません。

では、どうするかといえば、3年毎に見直すなどのことをします。うまく行けば、それで良いですし、うまくいかない部分は練り直します。無論取締役以上は直接戦略を立案したり、それを実行することはないですが、戦略以前の理念、理想、方向づけ、さらに問題を浮かびあがらせること、選択を提示し、エネルギーの結集をしなければなりません。それには、論理的思考水平的思考は無論のこと統合的思考が重要です。

統合的思考とは、相克するアイデアや問題事項の対立点を解消することにより、より高次の第三の解答を見つけ出す思考法のことです。理論的思考や、水平敵思考によって、いろいろなアイディアが浮かんできます。ただし、アイディアがたくさんあるだけでは、実行に移すことはできません。

それどころか、混乱するだけです。ここで、数多くのアイデアを取捨選択、統合するとともに、実施すべき順番を考える必要があります。また、数多くのアイデアを束ねるだけではなく、一言で言い表したりして、誰にも理解できるようにして、さらに高次元にする必要があります。それが、統合的思考です。経営者クラスはこれができなければなりません。

マクロ経済政策においては、このような考え方ができないと、その本質を理解し、何を実行すべきかを認識することはできません。

マスコミにもかつては、幹部などではこのようなことができる人もいたのでしょうが、今ではそうではないようです。官僚でも、政治家でもそのような人は少ないようです。

ただ、民間企業にはそのような人も存在します。結局民間企業は、幹部や経営者クラスにでもなれば、様々な戦略などの方向づけなどを行いますが、それがまともだったのか、まともでなかったかは、数年後にすぐに明らかになります。どんなに優れているように見えても、理想的であって、正しく見えても、目標である経済的利益が得られなかった場合は、それは失敗であったことがはっきりするからです。

ただ民間企業とはいっても、たとえグルーパル企業のような巨大企業であったにしても、やはり国全体と比較すれば、小さいです。特に、日米などではそうです。人口数百万くらいの国であれば、大企業にあてはまる考えを国や政府に当てはめてもさほどの齟齬は生じないかもしれませんが、人口が数千万人〜1億人を超えるような国では、それはできません。

大企業で養った、統合的思考が国でも同じようにすべて適用できるかといえばそうではありません。そのため、大企業にあてはまる考えを国や政府に当てはめて奇妙奇天烈、摩訶不思議な主張をする大企業の経営者もいます。

ただ、安倍元総理のように少数ながらも、統合的思考ができる人もいるわけですから、まったく無理ということはないのでしょうが、それにしても今の日本の現状は心もとないです。安倍元総理のことを評して「細かいこと、チマチマしたことが嫌いな人」と評するメディアもありましたが、彼らは安倍元総理が統合的な思考をしているということに思いが至らないのでしょう。

統合的思考によらず、論理的・水平的思考でのみ国の状況や政府の政策を考えると、家計や大企業で通じる考え方を国や政府の政策にあてはめて論議をしがちであり、それは無意味であるどころか、良くて徒労、はなはだしくは有害になったりします。

ただ、一筋の希望もあります。それは、多方面から情報を集める能力持ち、それらを分析し、統合できる若い世代が育っていることです。こういう人たちが増え、テレビのワイドショーだけが情報源であるような人たちが減っていけば、日本でもマクロ的な見方ができるようになるでしょう。

多くの政治家や官僚、メディアの人たちもなぜ自分たちの考えが若者から支持されなくなってきたのか、あるいは自分たちが尊敬されなくなったのか良く考えてみるべきです。

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2022年6月8日水曜日

原発再稼働阻む〝国民の不信感〟 司法も社会的コスト考慮せず…安全と電気供給は両立できる―【私の論評】停電で多数の死者が出る前に、原発を稼働させるべき(゚д゚)!

日本の解き方


泊原発

 電力不足が懸念されるなか、札幌地裁は北海道電力泊原発1~3号機の運転を差し止める判決を出した。一方、島根県の丸山達也知事は中国電力島根原発2号機の再稼働に同意した。

 北電を相手取った訴訟の判決で、谷口哲也裁判長は「基準で求められている津波防護施設が存在しない」と運転差し止めを命じた。廃炉措置については「廃炉まで必要な具体的な事情はない」として認めなかった。

 泊原発の1~3号機は2011年3月の東日本大震災後、順次停止したが、北電は13年7月の国の新規制基準施行と同時に再稼働を申請。現在も原子力規制委員会で審査が続いている。

 原告らは11年11月に提訴、10年余りにわたる裁判で、積丹半島西岸付近に海底活断層があるか、防潮堤が最大想定の津波を防げるかなどが審理された。

 その判決が今回出たが、確定しない限り再稼働を止める効力はない。

 原子力規制委員会も司法も、再稼働しない場合の社会的コストを考慮しているとはいえない。約10年にわたって審査や審理をしているが、その間、再稼働していないので、電力料金の高騰やブラックアウト(大規模停電)のリスクもある。

 本当に安全性だけを考慮するのであれば、原発はない方がいいのだろう。だが、それでは、電力供給という社会的使命が達成できない。

 安全を考慮しながら社会的コストを低減するには、再稼働をさせながら、同時に安全対策を講じるのがいい。原発は稼働中と不稼働中のリスクに顕著な差はない。であれば、稼働させながら安全対策を講じれば、安全と電気供給の両立が可能だ。

 活断層があるかどうかは、今後のリスク対策を考える上で、それほど重要であると思えない。

 これまでの地裁、高裁段階での、差し止め判決や仮処分決定は、以下のとおりだ。

①高速増殖炉「もんじゅ」(03年、名古屋高裁金沢支部)②志賀原発2号機(06年、金沢地裁)③大飯原発3、4号機(14年、福井地裁)④高浜原発3、4号機(15年、福井地裁)⑤高浜原発3、4号機(16年、大津地裁)⑥伊方原発3号機(17年、広島高裁)⑦伊方原発3号機(20年、広島高裁)⑧大飯原発3、4号機(20年、大阪地裁)⑨東海第2原発(21年、水戸地裁)。⑧は大阪高裁、⑨は東京高裁で係争中だが、他はすべて上級審などで判断が覆っている。

 原発に限らず、原子力にはアレルギーが強い。各地の係争をみても全国的な傾向だといえる。福島第1原発事故により安全神話が根底から崩れたので、信頼回復は困難だ。

 一方で、世界的なエネルギー逼迫(ひっぱく)で、原発を再稼働しないことによる社会的コストも大きい。日本の原発再稼働が少なく、天然ガスを余計に輸入することに対し、欧州などから批判も出てくる可能性がある。それらのバランスを取ることが必要だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】停電で多数の死者が出る前に、原発を稼働させるべき(゚д゚)!

北海道電力泊原発1~3号機の運転差し止めを命じた札幌地裁の谷口哲也裁判長(50)は兵庫県出身で、平成10年に任官。大阪地裁や京都地裁などで主に民事畑を歩み、担当した訴訟で検察を批判することもありました。

令和2年4月に札幌地裁に着任。北海道白老町のマイクロバス横転事故を巡り、刑事裁判で無罪が確定した運転手の男性が国に損害賠償を求めた訴訟の判決で今年1月、検察側の捜査のずさんさを指摘した上で「起訴は違法だった」と指弾しました。


泊原発の運転差し止めや廃炉などを求めた裁判で、北電は、運転差し止めを命じた一審の判決を不服として、2日、控訴しました。この裁判は裁判として、そろそろ私達は、電力問題についてリアルに考えなければならないのではないでしょうか。

皆さんご存知のように2018年9月6日3時7分の北海道胆振東部地震で、道内最大の石炭火力発電所・苫東厚真発電所が止まってしまい、北海道全域がブラックアウトに陥りました。私は札幌在住ですので、このブラックアウトを経験しました。国内電力史上、最大規模の大停電は復旧にも時間を要し、北海道の私たちは厳しい生活を送らざるを得ませんでした。

これ本当に大変です。水については公園の水が出ていたで、そこから汲んでつかいました。マンションの高層階に住んでいる人は、エレベーターは動かず、それに水汲みが大変なようでした。私は運良く、携帯電話、パソコン、IPadなど複数の端末があったので、電気を節約しながら、サイトなどから情報を得ることができました。

WIFIルーターも所有しているので、これも重宝しました。コンビニ、スーパーでは当然のことながら、商品は品薄状態が続きました。ちなみに我が家の近くの大手スーパは営業停止になりました。地産地表の地元スーパーは営業していたので、助かりました。

透析患者さんの中には、自分の通っている病院では透析ができず、大きな病院で透析をしたかたもいました。それも、大きな病院側の都合があって、人によっては夜中とか、早朝の方もいたそうです。

ただ、2日くらいのことだったので、何とかはなりましたが、これが1週間以上も続けばはとんでもないことになります。

苫東厚真発電所をあえて「石炭火力発電所」と紹介したのは、この発電所が石油でも天然ガスでもなく、石炭を燃焼させ発電している施設であることを思い起こしてほしいからです。

この数年、世界的に「脱石炭」の大きな流れがきています。「地球環境のことを考えるならば、環境負荷が大きい石炭火力はやめるべきだ」という意見が勢いを持つようになり、フランスは2021年までに石炭火力発電を全廃することを決め、ドイツも脱石炭火力に向けた委員会を立ち上げ、2018年末までに廃止時期を含んだ最終案をまとめるといいます。ひところ大気汚染が深刻だった中国も、石炭燃料の使用量削減などで大気の状態はかなり改善しています。

民間企業の側からも「脱石炭」の動きは強まっていました。アップルやフェイスブックは、自社で使うエネルギーを100%再生可能エネルギーにすると表明しています。日本国内でも、日本生命や明治安田生命が石炭火力への投融資から撤退するとしています。日本の世論ももちろん「脱石炭」でした。そう、胆振東部地震の前日までは、です。


胆振の地震で大規模なブラックアウトが起きると、少なくとも日本国内で「脱石炭」を煽るような報道はなくなりました。一刻も早く苫東厚真の石炭火力発電所が再稼働し、以前のように発電できるように、と願うようになりました。

これは、当然のことと思います。

ただ不審に思うのは。北海道には現在停止中の泊原子力発電所があることです。私は、むしろこの泊原発の早期再稼働に向けた準備を今すぐにでも行わせるべきだと思っています。少なくとも、北海道における安価かつ安定的な電力供給のための1つの選択肢ではあるはずです。

ところが、北海道全域を襲った非常事態を前にしても、泊原発の活用についての話が、政治の側からも役所の側からもほとんど出てきませんでした。これは異常な事態と言わざるを得ないです。なぜなら、多くの政治家や官僚は、原発再稼働こそが電力危機を回避する唯一の現実的方法だということを重々理解したはずだからです。

しかし実際には、政府からは菅義偉官房長官(当時)が会見の中で、「現在、原子力規制委員会で新規制基準に基づく安全審査中であり、直ちに再稼働をすることはあり得ない」と述べたのが、唯一「泊原発再稼働」に触れた発言でした。

ただ公の場で泊原発の稼働について発言人はほとんどいません。例外的に「再稼働」を堂々と主張しているのは自民党の青山繁晴参議院議員くらいではないでしょうか。

もちろん霞が関にも声を上げる者はいないし、泊原発を新規制基準に基づいて審査している原子力規制委員会の更田豊志委員長も、「今回の地震で審査が影響を受けることはない。急ぐこともない」と従来の方針を変えようともしませんでした。

では、マスコミはどうだったかとえば、原発再稼働を正面から主張しているのは主要紙では産経新聞のみで、後は再稼働反対の論陣を張っていました。

まるで、日本全体が「原発再稼働」について、強烈な言論統制下にあるかのようです。もちろん誰も統制してはいません。ただ批判を恐れて、自ら口を閉ざしてしまっているとしか思えません。

これではあたかも世の中全体で、「電力については、北海道電力がなんとかするまで、道民はじっと耐えよ」と言っているのと同じです。

規制委員会の新基準に基づく審査の下では、泊原発の再稼働はいつになるかは全く予想できないところにもってきてしかも札幌地裁は北海道電力泊原発1~3号機の運転を差し止める判決を出したのです。しかし旧基準に照らし合わせるならば、その気になれば、2週間もあれば再稼働ができてしまいます。実は、法的にも問題はないです。

あとは地元の知事が同意すれば良いです。この知事同意にも法的な根拠はないのですが、地元自治体と電力会社との間の協定に基づいて、電力会社は知事と議会から了解をもらうことが一般化しているにすぎないです。つまり、本来はその気になれば泊原発の再稼働は今すぐにでも可能なのです。

ところが、政治家も官僚もマスコミもあえてそれに触れようとはしません。批判を恐れて、「触らぬ神に祟りなし」を決め込んでいます。

結局、北海道の電力供給事情は今もいっぱいいっぱいの状態です。苫東厚真に大きなトラブルが起きれば、一気に需給はひっ迫します。その一方で、泊原発がまったく稼働せず管理費ばかりを食い続けている状態なので、肝心の北海道電力の経営が日に日に厳しくなっています。北海道の電力事情は、今も非常事態下にあると言ってよいです。

私は機会があるごとに「泊原発は再稼働させるべき」と発言してきましたしし、自分のツイッターでもたびたびそう主張してきました。それに対して、一部の人からは賛同のつぶやきが返されてくるですが、多くは「福島の二の舞になる」とか「直下型地震が起きたらどうする」といった批判です。

しかし、もしも直下型地震がやってきたとしても、それで原子炉が壊れることはありません。放射能が漏れるわけでもありません。今回の胆振東部地震でも、泊原発は一時、外部電源が失われたが、非常用ディーゼル発電機がきちんと稼働し、事故は起こりませんでした。仮に活断層が多少ずれたところで福島第一原発のような大事故が起こるわけではないのです。

実は政治家や官僚、電力や原子力の専門家もそのことはよく分かっています。それなのに、ごく一部の専門家らを除き、「原発再稼働」については一切口を閉ざしてしまっています。世間の「原発アレルギー」を極度に恐れてしまっているのです。

北海道胆振東部地震の後、北海道の冬を迎えるにあたり、太陽光や風力発電を火力発電に取って代わらせるべき、といったような意見は全く聞かれませんでした。個人の住宅で自分のところの電気の一部を太陽光発電で賄うということは可能ですが、太陽光は夜には発電しないし、社会のインフラを支えるほどの出力も安定性も望めません。胆振東部地震で、そのことがよりはっきりと認知されたのではないでしょうか。

加えて、2018年10月13~14日の2日連続で、九州電力が太陽光発電の出力制御に踏み切りました。需要の減少が見込まれている時間帯に太陽光発電施設から多量の電気が供給されると、大規模な停電を引き起こす可能性があるからです。

専門家の中には、九州では太陽光発電を制御する事態がありえると語る人もいました。そうなったときに、一部の新聞は『玄海原発が再稼働したから太陽光を制御することになる』と書くだろうことが予見されました。

実際、出力制御が発表されると、新聞やテレビの中には、「玄海原発が稼働したので電力供給量が増え、再エネ事業者が割りを食わされた」的な報じ方をした新聞社が多数ありました。

しかし、事実はそうではありません。原発が動いているから太陽光を抑制したのではありません。調整する役割は、普段は火力発電所が担っています。それでも調整しきれなかったから太陽光を抑制したのです。

なにより太陽光の電気はFITという固定価格買い取り制度の下で再エネ事業者から買い取っているのでコストはべらぼうに高くつきます。そのツケは、われわれ一般消費者の電気料金に回されているのですが、そのことはマスコミも積極的に報じようとしませんでした。その姿勢は今も変わっていません。電気代の高騰で危機は煽るものの、その実体を報道はしません。

私はこのブログでは原子力を推していますが、それはコスト面で莫大なメリットが国民にも国家にもあるからです。何と言っても既設原発は発電コストが安いです。実際、大飯、高浜の原発を再稼働させた関西電力は電気料金を引き下げました。九州電力も、2019年4月1日から電気料金を値下げしました。ただ、今年4月からはまたあげています。これについては、詳細は九州電力のホームページをご覧になってください。

コストはインフラにとって極めて大切な概念です。だが、世の中の世論の大勢は「安全性をないがしろにしてまでコストを優先する必要はない」といいます。さらに、「原発は低コストと言っても、放射性廃棄物の処理や最終的な廃炉コストも含めると高くつく」という意見もあります。

しかしそれも正確ではありません。

仮に国内の既存原発をフル稼働させたとして、そこから出てくる使用済み核燃料を管理するコストは、年間10億円にも満たないのです。再処理した後の高レベル放射性廃棄物は、熱を冷ますために地中で50年ほど保管しなければならないですが、そのコストは年90億円ほどです。

一方、福島第一原発の事故後、全ての原発を停止させていた時期に、火力発電用の化石燃料を日本は大量に輸入していた。そのコストは、最大で、2013年当時の為替レートでみると、1日100億円以上だ。単純計算で年間3兆6000億円にもなります。

それに比べれば、使用済み燃料や高レベル放射性廃棄物の管理コストはずっと安くつくのです。

それを政治家や霞が関の役人は知っています。であれば、電力供給体制が脆弱化している北海道においては、せめて泊原発の再稼働を推し進めるべきではないでしょうか。

安全性やコストについての正確な情報も提示せず、ただただ世論の反発を恐れて、「規制委員会のお墨付きが出るまでは我関せず」の態度を取り続けるのは、将来に禍根を残すことになりかねないです。

一部の反発を恐れるあまり、環境には多大な負荷をかけ、電力会社には化石燃料の購入に膨大なコストをかけさせ、国民にも余分な電気料金を負担させ続けています。このような異常事態はそろそろ終わりにするべきです。

海道胆振(いぶり)東部地震直後に、撮影された星空

今回の判決で、北海道電力は、火力発電に依存しながらの電力安定供給をさらに強いられる形になりました。今後、災害時はもちろん、電力需要が逼迫する夏場や冬場には、停電リスクがさらに高まったといえるます。

実際、SNSでは、この判決を受け、「北海道の停電危機がさらに高まった」とする声が多いです。 以下に代表的な声をあげておきます。
《北海道の夏も暑くなっているのに…使わずに節電しろと言われる道民が気の毒》
《ここで再稼働できなかったら厳冬期に停電するリスク増えるけど北海道民はそれで良いのだろうか?》 
 《電気需要が上がった時には計画停電でもするのかな?電気が必要なのは冷房暖房だけじゃないぞ。医療関係だと命に関わる。会社も学校も家庭も電気無しで過ごせるのか?》
《今後、当然起こりうる電気代高騰は受け入れるの?》 
現状、北海道電力では約半分が火力となっており、燃料高でコストが上昇しています。ならば、太陽光や風力など、比較的安い再生可能エネルギーなら問題ないかというと、それも厳しいです。というのも、電力の需給バランスが崩れる恐れがあり、先の九州電力の例のように、5月に入って2度、再エネの受け入れを停止しているのです。 

さらに、送電網の増強も目指していますが、こちらも遅々として進んでいません。いずれにせよ、この夏と冬、北海道の電力はかなりの綱渡りになることが予想されます。

停電では死者が出ます。 東日本大震災の停電および計画停電によって関東でさえ 酸素吸入装置の停止で女性1名死亡、蝋燭転倒火災が男女2人が死亡、信号機が停止して死亡事故ふくめ事故は37件というありさまでした。 在宅人工呼吸器だけでなく透析可能な病床が減少することになります。このようなことを長い期間に渡って続けられるとはとても思いません。

車が交通事故を起こすので、車すべて停止ということになったらどうなりますか。原発の稼働停止もこれに近いものがあります。

二度とブラックアウトを起こさないためには、やはり北海道では泊原発の稼働は避けて通れません。

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2022年6月7日火曜日

岸田内閣の支持率が高い理由 論争なくマスコミも批判せず…参院選後に「緊縮」の嫌な予感―【私の論評】参院選自民大勝の後の「黄金の3年間」に私達がなすべきこと(゚д゚)!

日本の解き方

読売新聞の調査では内閣支持率64%、3回連続上昇


 各種世論調査で岸田文雄内閣が高い支持率を記録している。

 自民党の福田達夫総務会長は5月31日の記者会見で「傾向は各社あるが一番厳しくても50%、高いところは70%で正直あり得ないと思っている」「指導力や政策がどうこうでなく首相の人柄が大きい」と述べた。

 国民民主党の玉木雄一郎代表は「安倍(晋三)政権は良くも悪くもいろいろなことをやって支持率も上下したが、リスクを取らず何もしないほうが支持率を一定に保てる」と分析した。

 岸田政権は、政治的な論争を避けるためか、問題となる案件について議論すらしない傾向がある。

 その一つが核の問題だ。ロシアのような核保有国が核を威嚇に使う時代となり、5大国が核を保有し他国は保有しないのを原則とする核不拡散体制が大きく揺らいでいる。

 そこで「核シェアリング(共有)」の議論もしていいはずだが、その議論すら封じてしまった。岸田首相は、核を使用された広島出身であることを理由としたが、二度と核を使用されないためにも、日本こそ議論する資格があるにも関わらずだ。財務省でよくいわれる「雉も鳴かずば撃たれまい」という戦略にみえる。

 野党も巻き込んだ争点がないので、マスコミは岸田政権を批判しない。もともと左派色のある岸田政権なので、左派系メディアは批判しにくい。一方で、岸田政権に近いメディアも当然、批判しない。首相の個人的なスキャンダルもなく、マスコミの出番はなくなっている。

 そうしたなかで外遊や各国首脳との会談でメディアへの露出は多いことが、政権の高い支持率につながっている。

 これを裏付けるデータもある。安倍政権とその後の菅義偉政権は若者の支持率が高く、マスコミ報道に左右されやすい傾向がある高齢層の支持率が低かった。岸田政権はその逆だ。岸田政権は、マスコミで批判がなく露出度が高いので、高齢層ほど支持率が高いという見方ができる。まさに、政策より人柄のなせるものだろう。

 これだけ政権支持率が高く、いわゆる青木率(政権支持率+自民党支持率)は100を超える勢いなので、7月に実施される参院選はかなりの確率で勝てるだろう。野党のふがいなさもあって、岸田政権は今のところ楽勝ムードだ。自民党は緩んではいけないと引き締めに躍起になっているほどだ。

 問題は、参院選後、大きな国政選挙がない「黄金の3年間」で何か仕掛けてくるか、これまで通り何もしないのかだ。

 筆者の嫌な予感だが、何か仕掛けてくるとすれば、「安倍・菅政権で緩んだ財政を立て直す」という理由で、コロナ増税など緊縮措置を行うことが考えられる。来年の日銀総裁人事でも「緊縮派」を持ってくるかもしれない。

 逆に世間の反発を恐れて選挙後も何もしないという場合、日本に本当に必要な改革も進まなくなるだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】参院選自民大勝の後の「黄金の3年間」に私達がなすべきこと(゚д゚)!

財務省管理内閣ともいわれて揶揄されている、岸田政権ですが、参院選後の「黄金の3年間」で、確かに増税を仕掛けてくるかもしれません。

ただ、現実にはそう簡単ではないでしょう。岸田政権には安倍政権にはなかった良い点もあります。安倍菅政権ならメディアと野党にぶっ叩かれてなかなか進まなかった案件が進んでいます。


原発再開、憲法改正、防衛費拡大、安倍政権なら蜂の巣を突いた状態で、官邸前で大騒ぎして反対する人たちが大勢いました。岸田政権ではそのようなことはありません。やはり安倍総理にはファンも多かったものの、アンチファンも多かったのでしょう。とにかく、やることなすこと、些細なことでも話題となりました。

一方岸田首相は確たる信念もないようですから、叩けば転びます。叩いて動かせば良いのです。

そうして、叩いて動かす急先鋒が安倍元総理といえるかもしれません。最近安倍晋三元首相のメディア露出が際立っています。

保守系月刊誌の「正論」「月刊Hanada」「WiLL」の毎号にインタビューか、対談が掲載されています。テレビでは5月6日のBSフジの看板番組「プライムニュース」に生出演しました。

一方で、情報誌「選択」も安倍氏について毎月取り上げるが、こちらはほとんどがこき下ろす記事です。

双方のタイトルを比較すると分かりやすいです。

▼正論(7月号)「いまこそ9条語るべき」(古森義久氏との対談)▼WiLL(6月号)「プーチンは力の信奉者」(北村滋氏との対談)▼Hanada(5月号)「私が会ったプーチンとゼレンスキー」(インタビュー)▼選択(6月号)「安倍晋三『妄言』と暴走の理由」(記事)―。

次は安倍氏の政治講演、参院選自民党候補の応援ですが、これがすごいです。

3月26日=北海道千歳市。4月2日=福岡市、3日=山口市、8日=福井市、17日=福島県郡山市、23日=那覇市。5月9日=大分市、15日=松山市、18日=福岡市、29日=富山市。6月1日=東京、といった状況です。

産経新聞(6月2日付朝刊)が「派閥領袖(りょうしゅう) 再び夜動く―参院選へ結束と探り合い」と報じたように、夕食のメンツもまた興味深いです。

5月19日、麻生太郎自民党副総裁、茂木敏充幹事長と東京・赤坂のうなぎ料理店「重箱」。この3人の会食は3月14日以来です。

5月31日、菅義偉前首相と東京・松濤のフランス料理店「シェ松尾」。それぞれ夫人同伴で、安倍氏お気に入りのフレンチ。

松濤のフランス料理店「シェ松尾」

6月1日、二階俊博元幹事長と都内ホテルのアンダーズ東京。安倍派の西村康稔前経済再生相、稲田朋美元政調会長、二階派の林幹雄元幹事長代理、武田良太元総務相が同席。この会食が最も生臭いです。

大型連休中の安倍氏はゴルフ三昧でした。〝コロナ明け〟ということでしょうか、河口湖の別荘に首相秘書官経験者、友人を夫人ともども招き、バーベキューとゴルフを楽しみました。

男子ツアー「フジサンケイクラシック」の競技会場である富士桜カントリー倶楽部、富士ゴルフコースなどで4ラウンドプレーしたといいます。

側聞したところでは、ハーフで50を切った日の夜は、富士吉田市の焼き肉屋まで出向いて大いに食べ、飲んだといいます。要するに、最近は元気いっぱいなのです。

岸田文雄首相に政策上の注文は少なくないはずですが、この露出の意図するところはただ一つ。参院選後の内閣改造・党役員人事です。「最大派閥を忘れるな」ということです。


このようにして、安倍元総理は、岸田首相を叩くことができますから、かつて安倍氏が総理だったときに、二階派を人事でも政策でも一定の配慮をせざるを得なかったように、岸田総理も安倍派を配慮しないわけにはいきません。それも、安倍氏が二階氏を配慮した以上に配慮さぜるを得ないでしょう。

そうして、私達も岸田首相を叩くことはできます。もちろん、直接叩くことはできませんが、間接的に叩くことはできます。もちろん叩くというのは、本当に叩くとか、罵詈雑言を浴びせるということではありません。駆け引きなど、あらゆる手段をつかって、岸田政権の行動を変えることです。

ただし、原発を再稼働させたければ、原発反対派の自民党議員に対して、再稼働させるべきであると陳情すべきです。防衛費を2%にしたいなら、防衛費をあげることに反対している議員に陳情すべきです。積極財政をさせたいなら、緊縮派の議員に陳情して、積極財政の必要性を理解してもらうべきです。それも、できるだけ多数派で力のある議員にそうすべきです。そうして、最近ではツイッターでも陳情ができるようになり、陳情の敷居は従来から比較するとかなり敷居が低くなりました。これを利用しない手はありません。

民主党の政権交代で、野党が政権につけば、政治は官僚主導になることは多くの人が理解したと思います。これは最悪です。結局政権は何もできず、財務官僚の言いなりでした。当時のみななの党の代表渡辺喜美氏は、「野田政権は、財務省に頼らないと何もできない政権」と批判していました。実際、民主党政権は、増税をすることを確実にした他は、三年半重要なことは何も決められず、漂流していたといっても良い状況でした。

ただし、これは民主党政権に限らず、他の自民党以外の政党が政権の座についたとしてもほとんど変わらないでしょう。そもそも、他の政党では省庁とのパイプもなく、話しあいをしたり、コミュニケーションをはかるシステムがありません。その結果、官僚主導の政治にならざるをえないのです。だから、政権交代は官僚にとっては、大喜びすべきことなのです。

しかし、岸田政権であっても、自民党政権であれば、まだ相当ましです。安倍元総理や、まともなマクロ経済観を持った議員、外交や安保でもまともなセンスを持った議員も多いです。こういう人たちが、岸田氏を叩くとともに、私達も様々な議員に対して陳情することによって、こうした勢力に対して間接的にでもかなり応援できます。

このブログては、ロシアが変えたパランス・オブ・パワーについて述べたことがあります。日本の政治は、総理大臣や政権のみによって動くわけではありません。動く要素は多くありまずか、野党がそれに関われることはほとんどありません。

ましてや野党が政権与党になった場合、野党政権はほとんど力はなく、政治は官僚主導で動くことになります。自民党が政権与党である限り、自民党議員の派閥と、財務省などの官僚によるパランス・オブ・パワーで具体的な政策が決まり、実行されることになるのです。

この仕組には問題があります。特に、役人がバランス・オブ・パワーの一角をしめているのは大問題です。これは、いずれ是正されなければなりません。ただ、現在はそのような時ではありません。

現状では、日本はコロナ禍から立ち直っておらず、新たにウクライナ問題もあります。このような時期には変革よりも、既存のシステムにおいて、リアルに政治を変えていく地道な努力が求められます。この時期に構造改革のようなウルトラCをやろうとしてもうまくはいかないどころか、後退することになりかねません。

私自身は、保守であり、現実主義者です。その立場からすれば、いかなるウルトラC もすべきではなく過去に実証された確実な方法で着実に改革を実行すべきと思いますが、それにしても、「黄金の3年間」は、特に政権交代や、政治システムの大幅な改定などの毒薬、劇薬になりかねない事柄は実施すべきではないと思います。

良くしようとして、かえって破壊する後退するということはありがちなこどです。私はウルトラCはすべきではないと思いますが、どうしてもやりたければ、政治的、経済的、外交的にも安定した時に実施すべきものと思います。

ただし、すでに誰の目からみても明らかな、現時点での現実的な積極財政、安保の見直し、憲法の見直しなどは、現実的に着実に実行すべきと思います。パランス・オブ・パワーを保守派、積極財政に傾かせるように動くことが肝要だと思います。

大きな国政選挙がない「黄金の3年間」に私達がなすべきことは、これだと思います。

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2022年6月6日月曜日

財務省の「猿芝居」に騙されてはいけない 「骨太の方針」を巡って「財政再建派」がやっていること―【私の論評】「驕れる者久しからず」の言葉どおり「財務省の終わり」が始まりつつある(゚д゚)!

財務省の「猿芝居」に騙されてはいけない 「骨太の方針」を巡って「財政再建派」がやっていること
財務省の別働隊

 5月23日付の本コラム「財務省の超エリート「次官候補」は何に追い込まれたのか? 逮捕劇までに財務省で起こっていたこと」で、6月7日に閣議決定される予定の政府の「骨太の方針」を巡る自民党積極財政派と自民党財政再建派(これは事実上財務省の別働隊)との争いが背景になっていることを書いた。

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 逮捕された財務省高官は、世間から見ればとんだお門違いをしていた可能性があるが、財務省はまだ懲りないらしい。


 先日の本コラムで紹介した自民党の若手の「責任ある積極財政を推進する議員連盟」(共同代表:中村裕之農林水産副大臣)は、財務省の言い分もきちんと勉強して、しっかりした反論を行っている。自民党であっても、若手は財務省に騙されていない。

(1) 国債はすべて将来の税金で返済されなければいけない
(2) 日本国債残高が大きく将来世代にツケを残す
(3) 日本は財政破綻する

 といった財務省のプロパガンダに対しては、的確に反論できる。本コラムの読者であれば、以下の反論は簡単なものだろう。

(1) 安倍元首相も言うように、半分以上の日銀保有国債では税金償還の必要はない
(2) 債務のツケでなく立派な資産を残せばいい
(3) バランスシートから見れば日本の財政破綻の確率は5年間で1%程度


 自民党内でもベテラン議員ほど財務省に丸め込まれが、積極財政議連など若手では自分の頭で考え財務省の説明に疑問を持つ人が多くなっている。

 筆者は、財務省の説明に30年前から疑問をもち、政府のバランスシートを作って周囲の政治家に説明してきたが、ここ数年、理解者が急増しているのを感じる。

「PB黒字化」を消えたように見せかけて

 さて、骨太の方針はどうなっているのか。5月31日、骨太の方針の「原案」が出た。

 前回の「骨太の方針」で明記していた財政健全化の「堅持」や、「2025年度の国・地方を合わせたPB黒字化」といった文言が消えている。

 これを、財政再建への姿勢が弱まったように報道するマスコミもあった。

 しかし、これは財務省の「猿芝居」だった。たしかに「2025年度の国・地方を合わせたPB黒字化」の文言は消えているが、その他の箇所で「令和5年度予算において、本方針及び骨太方針2021に基づき、経済・財政一体改革を着実に推進する」と書かれている。「骨太2021」ではしっかりと「PB黒字化」が書かれている以上、何も変わりはないのだ。


 かつてであれば、これで自民党もマスコミも騙されて終わる。今回、マスコミは相変わらず節穴だったが、自民党は違った。財政政策検討本部(本部長:西田昌司、最高顧問:安倍晋三)や責任ある積極財政を推進する議員連盟は、何も変更がないのをめざとく見つけている。

 もっとも、財務省も「猿芝居」がバレたところで、必死に抵抗するだろう。というのは、親族に財務官僚が大勢いる岸田氏が総理だからだ。6月7日の閣議決定はどうなるのだろうか。

 菅政権のときには、だんまりを決め込んでいた矢野康治財務次官が、岸田政権になった途端に月刊『文藝春秋』で持論を展開したことを記憶している読者も多いだろう。昨年10月11日付の本コラム「財務事務次官「異例の論考」に思わず失笑…もはや隠蔽工作レベルの「財政再建論」」で書いたが、あれほどの無知をさらけ出したのに、岸田総理は不問に付している。

弛みきった財務省

 今の世界情勢では、安全保障に手を抜けない。財政再建路線を堅持した来年度予算案では、世界に太刀打ちできない。

 1月17日付の本コラムで述べたように、今の財務省のいうPBは基本的に間違っている。一部の政府部門だけでPBを算出しており、すべての政府部門のPBを計算しないと、本当の財政の姿はわからない。

 だが筆者のような包括的なPBによれば、既に問題のない「財政再建終了」の状態になっている。財務省のような間違った財政の見方で財政運営したら、国を滅ぼしてしまうだろう。

 はっきり言って、最近の財務省は弛みきっている。先日の財務省高官の逮捕、国税庁職員による補助金詐取など、考えられない事態が次々に起きている。

 財務省改革には、主計局の分離などいろいろなものがあるが、筆者がもっとも効果的と思うのは、国税庁を分離し、年金機構の徴収部門と合体させる「歳入庁」の新設だ。この考え方は、世界標準でもある。税と社会保険料は法的には同じであり、一緒に徴収するのが世界では当たり前だ。国税庁の財務省からの支配を取り除き、税の徴収のプロとしての人材有効活用にもなる。

 この案は、かつて民主党政権で公約にもなっていた。ところが、財務省の巻き返しにより消えていった。これをどの党が実行できるかどうか、日本の今後を占うものといってもいいだろう。

髙橋 洋一(経済学者)

【私の論評】「驕れる者久しからず」の言葉どおり「財務省の終わり」が始まりつつある(゚д゚)!

3日の自民党政務調査会の会合では、2023年度予算案をどうするのかということが話題になりました。現在、骨太の方針という、予算案の最初にやらなければならない議論をスタートさせているのですが、「積極財政派」と「財政再建派」の間で怒声があがるほど大バトルになりました。

財政慎重派の方は、やはり財務省の意向に忖度して、緊縮財政の方向に持って行こうとしています。それに対して、積極財政派の本部を率いている西田政調会長代理が激怒して、「これでは政調会を開いている意味がないではないか」と言ったのです。

西田政調会長代理

 財務省は、2023年度予算について上限をはめようとして躍起になっています。当初予算で非社会保障費、年金、介護、医療を除いた分に関しては、年間3百数十億円しかプラスにならないのです。財務省にこのようなキャップをはめられてしまうと。

防衛予算のGDP比2%などは夢のまた夢となります。安倍元総理は、防衛費増額のための5兆円の財源は、政府日銀連合軍で調達できるとしていましたが、2%どころか、0.01%とかそのようなことになってしまいかねません。

そうしてこような上限に関する質問が3日の政調会で出たのです。それに対して、内閣府を代表して出た委員がそれを認めてしまったのです。それで自民党政務会が紛糾したのですです。

西田政調会長代理はこの会議の席で「私は(党内)政局にしたくないから、譲歩に次ぐ譲歩を重ねてきた。それに対する答えがこれか。裏切られた」という趣旨のことを語ったとされています。

骨太の方針が、その先の予算編成に影響し、本予算が決まっていくから、方針案(財務省)の内容が島嶼の想定ともかなり違うというのです。方針案に関しては、積極財政派の安倍氏と、規律派と言われる麻生さんの間でかなり詰めたされますが、火種はまだ残っているのです。

 安倍、麻生氏で落としどころをつくったにも関わらず、それに焦った財務省が霞が関文学を用いて、毒を忍び込ませたのです。それにみんなが気付いてしまったのです。

骨太の文言としては、経済あっての財政だというような書き方をして、プライマリーバランスの黒字化に関しても25年という年限にこだわらないというような、2025年度プライマリーバランス黒字化の文言は落ちたので安心したら、他のところでごまかしの文言が入ってきたのです。

それが、上の髙橋洋一氏も指摘していた「令和5年度予算において、本方針及び骨太方針2021に基づき、経済・財政一体改革を着実に推進する」と言う文言なのです。「骨太2021」ではしっかりと「PB黒字化」が書かれている以上、何も変わりはないのです。

さらに内容をよく分析してみたら、過去と同様に「3年間で1000億円」というキャップをはめるのだということでした。積極財政派の議員が「これは本当か」と質問したところ、内閣府サイドは、それを認めてしまったのです。 内閣府のなかの陣容を見ても、決して財政規律派一辺倒というわけではありません。 

なかには本当に財政出動をやりたいし、やるべきだと思っているけれども、立場上は言えないという人もいると考えらます。 その辺りの思惑が働いたでしょうし、それで3日に決着がつかず、きょう(6日)へ持ち越しになりました。

ただ、防衛費に関しては、バイデン大統領との間で日米首脳会談を行い、そこで出た話です。実施しないとさすがにまずいです。ある意味では国際公約ですから、政治の意志なのです。それを政治的に責任を負わない財務官僚が、勝手に書き換えて良いはずがありません。完璧に役人の矩(のり)をこえています。

そうして、財務省は防衛費を増やすけれども、その代わりに「ここを減らす」、「ここを増税する」などというところで担保しようしていると考えられます。財務省が「増税した分は防衛費のプラスアルファを認める」ということになると、国民生活にとってどうなのかということになります。 

ふりかえってみると消費増税も、当時の菅(直人)政権が言い出した国際公約だという話から始まっていました。財務省のやり方は、どんどん巧妙になっているように見えます。 

岸田総理は、その辺りに意識がないものですから、主計局長の説明で首を縦に振ってしまったらしいです。それを盾に財務省はいろいろなところへ話を持ち込んでいるようです。 財務省としては「総理のご意向ですから」ということになります。

しかも、先週の経済財政諮問会議でこの内容は総理の発言で出ていたそうです。なぜその辺りをきちんとメディアは報道しないのかという問題があります。 

しかも、そのうち議事録が出るでしょうし、議事要旨はもうある程度出ています。この先の5年~10年を決めるような話が、いまされているわけです。 そうなのです。このまま進んだら、それこそ自民党内から内閣不信任案を出しても良いのではという事象です。無論、100%出ないでしょうが。ただ、この出来事はそれくらいのことだと思います。

ことしの「骨太の方針」をめぐり自民党政務調査会の会合が本日開かれ、防衛費について、NATOの加盟国がGDPの2%以上を目標としていることを例示し、防衛力を5年以内に抜本的に強化するなどとした政府の案を大筋で了承しました。

政府案では、防衛費について、NATO=北大西洋条約機構の加盟国がGDP=国内総生産の2%以上を目標としていることを例示したうえで、防衛力を抜本的に強化する期限を「5年以内」と明記しています。

また、台湾をめぐる問題に関連して「ことし5月の日米首脳会談で両首脳は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促した」と本文の注釈に加えられました。

このほか、来年度の予算編成をめぐって、前回の会合で、歳出改革の内容を盛り込んだ「骨太方針2021に基づき」という文言を削除すべきだという意見が出されましたが、この表現は維持する一方「重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない」という一文が追加されました。

政府は、自民党内の手続きを経て、7日にも「骨太の方針」を閣議決定することにしています。

自民党政務調査会の木原稔副会長は記者団から「基礎的財政収支」の黒字化目標について見解を問われたのに対し「岸田総理大臣も『財政健全化の旗は降ろさない』と述べており、それに尽きる。経済あっての財政で、順番を間違えてはならないが、健全化の旗は立っていると認識している」と述べました。

自民党政務調査会会合

結局、財務省は岸田総理の発言なども利用しつつ、思い通りに財政政策を実施していくのでしょう。ただ、これは完璧に財務官僚の矩をこえています。「骨太の方針」については、閣議決定の後にその内容が公表されるでしょう。そのときにまた改めて、論評を加えたいと思います。

ただ、過去20年以上にわたって、髙橋洋一氏をはじめ様々な人達が、財務官僚のおかしさ、全く理にかなわない財務省理論の間違いを暴き続けきたので、最近は風向きが変わって来たと思います。

そもそも10年以上前なら、積極財政派は数が少く、自民党政務調査会の会合では積極財政派はガス抜き程度に意見を述べる機会が与えられるだけで終わっていたことでしょう。しかし、今は違います、会合で怒号が飛び交ったり、西田政調会長代理が「私は(党内)政局にしたくないから、譲歩に次ぐ譲歩を重ねてきた。それに対する答えがこれか。裏切られた」と発言するなど随分と変わってきています。それも、まともな積極財政派が増えてきたからでしょう。

上の記事で、「はっきり言って、最近の財務省は弛みきっている。先日の財務省高官の逮捕、国税庁職員による補助金詐取など、考えられない事態が次々に起きている」としていますが、その他にも事件が起こっています。

昨日は、車内で妻を殴り鼻の骨を折るけがを負わせたとして、警視庁小金井署は傷害の疑いで東京都小金井市の東京国税局税務相談官、武藤静城(しずき)容疑者(59)を逮捕した。どやら日常的に暴力をふるっていたようです。

矢野謙次財務次官

さらに、4月27の文春電子版には『矢野財務次官「娘の夫DV」で異例捜査』という記事が掲載されています。週刊誌の記事なので、真偽の程はわかりませんが、それにしても時代の流れを感じます。

従来だと、マスコミも国税局を有する財務省に対しては、余程はっきりとした「犯罪」の証拠でも無い限り、このような記事はなかなか掲載しなかったものです。それは、やはり財務省は国税局を使い脱税の嫌疑をかける得る恐ろしい役所という認識があったからでしょう。

そのような危険は今でもないとはいえませんが、今では財務省の権威も落ち、週刊誌もそこを突いた記事を掲載すれば、世間の耳目を捉えることができると考えるようになってきたのでしょう。

そもそも、財務省の財政破綻論にはかなり無理があります。そもそも、デフレとは正常な経済循環からは逸脱した状況であり、異常な状況であるという認識が彼らにはありません。議員をはじめ大勢の人がそのことに気づきつつあります。例外は、情報源がテレビのワイドショーである高齢の「ワイドショー民」くらいになってきました。

理論武装をした積極財政派が増えてきた現在、絶対的に自分が正しいと信じていると思います。それをこのような形で役人が平気で矩をこえ、理解不能な理論で、とにかく増税、とにかく緊縮をしようとし、実際にそのようにしていくわけですが、積極財政派の遺恨は、嫌がおうでも高まります。いずれ大爆発して、財務官僚は多くの人の憤怒のマグマに焼き尽くされると思います。

ただ、積極財政派という言葉も本来異様なのです。なぜなら、経済対策とはその時々の実体経済に即して行われるべきものであり、緊縮か積極かなどと派閥の対立によって議論されるべき筋のものではないからです。しかし、財務省がいかなる場合でも、緊縮財政をしようとするから、このような言葉が生まれてしまったのでしょう。

多くの人は、財務官僚など尊敬していないでしょう。テレビで数年前までは、「財務官僚をリスベクトする」と語っていた弁護士の八代英輝氏は現在はそのようなことは一切いわなくなりました。もう、そのような空気ではないのでしょう。

高橋洋一氏は財務省に警戒していますし、私も警戒を緩めるべきときではないとは思いますが、それにしても、「驕れる者久しからず」の言葉どおり「財務省の終わり」が始まりかけているような気がしてなりません。

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