2024年1月18日木曜日

習主席にとって大誤算だった台湾総統選 米大統領選の間隙突く恐れも 日本は平和ボケでいられない―【私の論評】『警鐘』米国の軍事力低下で日本が平和ボケでいることを許されない理由

習主席にとって大誤算だった台湾総統選 米大統領選の間隙突く恐れも 日本は平和ボケでいられない

頼清徳氏

まとめ
  • 台湾総統選:頼清徳氏が再選!選挙結果と国内政治の微妙なバランス
  • 民進党3連勝、国民党3連敗:台湾総統選挙の政治的な影響と未来の展望
  • 中国のプロパガンダに屈せず、台湾が示した民主主義の勝利とは?
  • 米国・日本の対応:台湾総統選結果が引き起こす地政学的な動きとは?
  • 台湾選挙と緊張関係:バイデン大統領の発言と日本の役割に注目

  台湾総統選挙は、13日に行われ、与党・民進党の頼清徳氏が予想通りの勝利を収めた。頼氏は獲得票数558万6019票で、得票率は40.0%だった。一方で、国民党の侯友宜氏は467万1021票、民衆党の柯文哲氏は369万4666票を獲得し、頼氏が再選される結果となった。

 同時に行われた議会・立法院の選挙では、113議席中、国民党が52議席、民進党が51議席、民衆党が8議席を獲得した。民進党が過半数を獲得できなかったことは予想通りだが、国民党も過半数を確保できなかったため、台湾の政治は微妙なバランスとなった。

 頼氏は選挙本部で、「台湾は民主主義国家の共同体にとっての勝利を収めた」と述べ、「現状維持」を主張している。一方で野党は、かつて頼氏が「現実的な台湾独立工作者だ」と発言したことを取り上げ、特に侯友宜氏は中国政府のような批判を展開していた。頼氏は最近「独立」という言葉を避けていたが、中国のプロパガンダにより「独立派」とされた。

 結果として、台湾は中国のプロパガンダに屈せず、頼氏を再選することで、台湾の民主主義の機能を示した。1996年以降、総統は国民によって選ばれており、今回の結果は民進党3連勝、国民党3連敗となる、3期12年の政権が登場した初めてのケースだ。

 中国は結果に失望し、「今回の選挙は、祖国がやがて必ずや統一されるという、阻止できない流れを妨げられない」とのコメントを発表。一方で、米国は台湾の民主制度を讃え、「台湾の人たちがまたしても、旺盛な民主制度と選挙手続きの力強さを示したことに、祝意を表したい」と述べた。

 ただし、米大統領は台湾の「独立を支持していない」と強調し、現状維持を望んでいるとの立場を示した。この発言に対し、日本は米大統領選結果にかかわらず、アジアの安定のために相応の負担を覚悟する必要があるとの見解を示している。ただし、中国との緊張が続く中、米大統領選の結果や動向を注視しながら対応することが必要とされている。日本はそれまでに米大統領選結果にかかわらず、アジアの安定のために相応の負担の覚悟が求められる。というのは、米国は、ウクライナ、中東と台湾で「三正面作戦」を強いられており、この3つに同時に対応することはできないからだ。日本が平和ボケでいることはあり得ない。 

【私の論評】『警鐘』米国の軍事力低下で日本が平和ボケでいることを許されない理由

まとめ

  • 現在の米軍は、ウクライナ、中東、台湾の3つの地域で同時に戦争を行う能力がない。
  • 米軍の軍事力指標は、ヘリテージ財団の2020年調査によると、陸軍は「限界」、海軍は「限界」と評価されている。
  • 米軍の軍事力指標が低下した理由は、予算削減による艦艇の老朽化や整備不足などが挙げられる。
  • 今後、日本は、自国の軍事力を高める、安全保障パートナーシップの多様化を図る、積極的な外交を重視するなどの対策を講じる必要がある。
  • 米国の軍事力低下は、地域の不安定化や紛争の増大につながる可能性がある。
上の記事で、高橋洋一氏は、「米国は、ウクラ内、中東と台湾で「三正面作戦」を強いられており、この3つに同時に対応することはできないからだ」として日本平和ボケでいることはあり得ないと。述べています。

これは、本当です。現在の米軍は三正面作戦どころか、二正面作戦も十分には対応できないです。これについては、以前このブログにも述べたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

【国家の流儀】韓国と連動して中国、ロシア、北朝鮮による「日本海」争奪戦が始まる…安倍政権はどう対応するか―【私の論評】二正面作戦不能の現在の米軍では、日本を守りきれないという現実にどう向き合うか(゚д゚)!

中東などで米軍が大規模な作戦を遂行しているときに、日本海で同時大規模な作戦を遂行する能力は今の米軍にはありません。

米軍の海外配置の状況(グァムは米国領なので含まず)

これについては、以前のブログにも掲載したことですが、最近米国のシンクタンクが、これについて研究した結果を発表しています。

中露や中東の軍事的脅威に対応する米軍の能力が「限界」にあるという厳しい評価が下されたのです。これは、米軍事専門シンクタンクによるもので、「現在の姿勢では、米軍は重要な国益を守るとの要求に、わずかしか応えられない」と強調しています。

問題なのは、特に海軍において、この相対的弱体化に即効性のある解決策がないことです。「世界最強」のはずの米軍に何が起こっているのでしょうか。

評価は著名な米保守系シンクタンクのヘリテージ財団によるものです。同財団が10月末に発表した「2020年 米軍の軍事力指標」と題する年次報告書は、米陸海空軍と海兵隊の軍事的対処能力を、非常に強い▽強い▽限界▽弱い▽非常に弱い-の5段階で評価しています。ただ、基準は「2つの主要な戦争を処理する能力」などとしており、2正面作戦を行うにおいての評価であるあたりが超大国米国らしいです。

とはいえ、中東ではイランの核開発、南シナ海では中国の軍事的膨張、さらに北朝鮮の核ミサイル開発と、地域紛争が偶発的に発生しかねない「火薬庫候補」は複数あり、2正面を基準にするのは米国としては当然の条件です。

この5段階で「限界」とは、乱暴な言い方をすれば「戦争になっても勝てるとは言えず、苦い引き分けで終わりかねない」、あるいは「軍事的目標を達成するのは容易ではない」ということです。

同報告書では欧州や中東、アジアの3地域での軍事的環境を分析。例えば中国については「米国が直面する最も包括的な脅威であり、その挑発的な行動は積極的なままであり、軍事的近代化と増強が継続している」などと、それぞれの地域の脅威を明らかにしたうえで、対応する陸海空軍などの米軍の能力を個別評価しています。ところが驚くことに、その内容は、「限界」ばかりなのです。

まず陸軍は、昨年に引き続き「限界」のまま。訓練や教育など多大な努力により旅団戦闘団(BCT)の77%が任務に投入できる状態となった点は高く評価されたのですが、兵力を48万人から50万人に増強する過渡期にあり、その準備や訓練に加え、陸軍全体の近代化が課題となっています。

さらに問題なのは海軍です。前年同様「限界」ですが、内容は厳しいです。まず艦艇の数で、「中国海軍300隻と(海軍同様の装備を持つ)175隻の中国沿岸警備隊」(米国海軍協会)に対し米海軍は290隻。トランプ政権は「2030年代までに海軍の保有艦艇を355隻に増やす」との構想を持っています。一部には予算面から、この構想の無謀さを指摘する声があるのですが、本当の問題は355という数字をクリアすることではなく、艦艇の運用面、いわばクリアした後にあるのです。

海軍艦艇は整備と修理や改修、耐用年数延長工事や性能アップのため、定期的にドック入りして「改善」を行う必要があります。一般的に、全艦艇の3分の1はこうした「整備中」にあり、訓練中も含めれば、即時に戦闘行動に投入できるのは半数程度とされます。

ところが米海軍には、大型艦艇に対応するドックが足りないのです。全長300メートルを超える原子力空母ともなれば、ドック入りしなければならないのに他の艦船が入渠(にゅうきょ)しているため、順番待ちが生じている状態なのです。

米国海軍協会などによると、米海軍原子力空母11隻のうち現在、任務として展開しているのはロナルド・レーガン▽ジョン・C・ステニス▽エイブラハム・リンカーン-の3隻のみ。ニミッツをはじめほか8隻はドックで整備や部分故障の対応中といった状態なのです。 
しかも空母に限らず米海軍艦艇がドック入りした際の整備の工期は、予定を大幅に超える事態が頻発しているというのです。

過去のオバマ政権時の軍事予算削減が響き、ドックも足りず、整備できる人間の数も足りないのです。このような状況でなお艦艇数を増やしても、整備や修理待ちの列が長くなるだけです。また原子力空母の多くが建造後20年が経つということに代表される、各種艦艇の老朽化、さらには新型艦の不足も海軍を悩ませています。

報告書では「資金不足と利用可能な造船所の一般的な不足により、艦艇のメンテナンスが大幅に滞り、配備可能な船舶と乗組員に追加の負担がかかっている」と指摘されています。
ヘリテージ財団

この記事を掲載したときには、ウクライナ戦争は始まっていませんでした。台湾侵攻の可能性については、中国はすでに主張していました。中東は、比較的平穏でした。結局「日本海争奪戦」などという事態は起きませんでしたが、2024年の世界は新たな次元に突入しつつあります。

現状の世界を見回すと、ウクライナ戦争は、今年で三年目に入りました。アジアでは、中国は武力による台湾侵攻の可能性を否定していません。中東では、イスラエルがガザ地区で大規模な作戦に実行している状況です。紅海では、イランの支援を受けているとみられるフーシ派がミサイルを発射するなどの不穏な動きをみせています。

これらが、さらに大きな戦争にならないとは断言できません。戦争にならないにしても、中国、ロシア、イランが結託して、軍事行動や示威行動をする可能性は高いです。

日本は以下を検討するだけではなく、実行すべきです。

  • まずは、自国の軍事力をさらに高めることです。 これには、防衛費の増加、より高度な兵器の開発、海上・航空部隊の強化が含まれます。
  • さらに、安全保障パートナーシップの多様化をすべきです。米国との同盟を基軸としつつ、オーストラリアやインドなど他の地域大国との緊密な協力関係を強化すべきです。
  • さらに積極的外交を強化すべきです。 この地域、特に中国や北朝鮮との緊張緩和を目的とした対話や紛争解決に取り組むべきです。
米国の軍事的優位性が低下すると認識されれば、特定の地域に力の空白が生じ、不安定性や紛争が増大する可能性があります。

中国やロシアのような他の大国は、米国の明らかな限界に勇気づけられ、自己主張を強めるかもしれないです。「日本海争奪戦」なども起こる可能性は否定できません。実際、中国は2023年7月、中国が日本の排他的経済水域(EEZ)内にブイを設置しています。

中国が日本の排他的経済水域(EEZ)内に設置したのと同方のブイ

国際社会は、世界のパワーバランスの変化に対応するために、既存の安全保障の枠組みを再評価し、適応させる必要があります。

日本が、21世紀においてますます複雑で不確実な安全保障の状況を乗り切るためには、戦略的な先見性と積極的な対策が必要不可欠です。

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2024年1月17日水曜日

実はマイナス成長、名目GDPで日本を追い抜いたドイツが全然笑えないワケ―【私の論評】低迷するドイツを反面教師として学ぶ、日本の成長戦略


まとめ
  • 2023年のドイツのGDPは、実質でマイナス成長となったが、名目では6.3%増と高い伸びとなった。
  • ドイツの米ドル建て名目GDPが日本を抜いたのは、高インフレとユーロ高ドル安による。
  • ドイツの経済環境は厳しさを増しており、2024年もマイナス成長が続く見通し。
  • ドイツは通貨政策の自由を失っており、為替切り下げによる輸出競争力向上は見込めない。
  • 日本は円安を活かすためにも、輸出競争力の向上に取り組む必要がある。
名目GDP(百万ユーロ)実質GDP(百万ユーロ)伸び率(実質)伸び率(名目)
20183,752,3003,495,6002.50%2.50%
20193,846,6003,524,5001.80%2.00%
20203,606,5003,378,000-5.00%-3.30%
20213,956,8003,625,7009.30%10.20%
20224,270,5003,888,90010.00%12.10%
2023(推計)4,654,5003,885,600-0.30%6.30%
          国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し」に基づく


 ドイツ経済は、2023年の実質GDPが前年比0.3%減とマイナス成長となったものの、名目GDPは同6.3%増と高い伸びとなった。これは、高インフレとユーロ高ドル安によるものだ。

 高インフレは、原油や天然ガスなどのエネルギー価格の高騰や、食料価格の高騰などにより引き起こされた。ユーロ高ドル安は、欧州中央銀行(ECB)の金融引き締めが遅れている一方で、米国の連邦準備制度理事会(FRB)が積極的に金融引き締めを進めているため、ユーロの価値が下落したことによるもの。

 高インフレは、ドイツの輸出企業の収益を圧迫し、輸出競争力を低下させた。また、内需も冷え込み、個人消費や投資の伸びが鈍化した。

 輸出先の中国経済も、新型コロナウイルス感染症の再拡大や不動産市場の不振などにより、低迷しています。中国はドイツの最大の輸出相手国であり、中国経済の低迷はドイツ経済に大きな打撃を与えている。

これらの要因により、ドイツ経済は厳しさを増しており、2024年もマイナス成長が続く見通し。

具体的には、以下の点が挙げられる。

  • 輸出企業の収益は、高インフレにより原材料費や人件費が上昇したことで、大幅に減少
  • 個人消費は、高インフレによる実質所得の減少や、ロシアによるウクライナ侵攻による不安感の高まりにより、伸び悩
  • 投資は、高インフレや中国経済の低迷による景気減速の懸念により、減少

ドイツは通貨政策の自由を失っており、為替切り下げによる輸出競争力向上は見込めない。そのため、ドイツ政府は、輸出企業の支援や、内需の拡大に向けた施策を強化する必要がある。

 一方、日本は円安を好機として活かすためにも、輸出競争力の向上に取り組む必要があります。具体的には、生産性の向上や、新たな技術の開発などにより、輸出製品の競争力を高めることが重要だ。

 また、政府は、円安による物価上昇の影響を緩和するために、賃金の引き上げや、社会保障費の抑制などを行う必要がある。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】低迷するドイツを反面教師として学ぶ、日本の成長戦略

まとめ
  • ドイツ経済は「欧州の病人」と形容されており、輸出競争力に偏った経済構造が懸念される。
  • ドイツの輸出依存度が高く、その経済は主に貿易の状況に左右される傾向がある。
  • 輸出先の特定の産業や製品に依存しているため、価格の下落や輸出先の減少が経済に大きな影響を与える可能性がある。
  • ドイツ政府は、貿易依存度を下げるために国内需要の拡大や新産業の育成に取り組む必要がある。
  • 輸出依存度が高い国は、経済政策においてリスクに備え、国内需要の拡大や輸出先の多様化を促進すべきである。日本は、輸出依存度は高くないが、今は国内需要を伸ばし切るべき
上の記事に関しては、概ね賛同です。これと同じような内容は、このブログでも以前掲載したことがあります。この記事では、当時から低迷するドイツ経済について述べました。しかし、賛同しかねる部分もあります。それは、輸出競争力の向上に励むべきという部分です。

ドイツ経済は今や「欧州の病人」と形容されている


結論から言ってしまうと、輸出競争力を高めるということは、GDPに占める内需を減らし、輸出を増やせということであり、これは必ずしも良いことにはなりません。

実際ドイツの輸出依存度は高いです。

以下に輸出依存度に関するグラフを掲載します。国によって違いがあるので、わかりやすく一人当たり輸出額に関するものを掲載します。また、コロナの影響やウクライナ戦争の影響がない2018年までのデータとしています。そのほうが、経済の構造が見やすいと思います。


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ドイツの貿易依存度は、他の主要国と比較して、比較的高い水準にあります。

そのため、ドイツ経済は、主要国野中では貿易の状況に大きく左右されます。他のEU諸国は、越境して働きくる外国人が、輸出をおしあげるなどの特殊要因もあります。

具体的には、以下の点が考えられます。ドイツの輸出品目は、自動車や機械など、比較的高額な製品が多い。そのため、輸出価格の下落や輸出先の減少により、ドイツ経済への影響は大きくなります。

ただし、ドイツの貿易依存度が高いことは、リスク要因として認識しておく必要があります。今後、貿易の状況が悪化した場合、ドイツ経済に大きな打撃を与える可能性があります。

ドイツ政府は、貿易の停滞による経済への影響を緩和するために、国内需要の拡大や新たな産業の育成などに取り組む必要があります。

具体的には、国内の消費を促進するために、所得税の減税や社会保障費の削減などを行う。
新たな産業の育成を支援するために、研究開発への投資や税制優遇措置などを行う。

これらの施策により、ドイツ経済の基盤を強化し、貿易依存度を下げる努力が必要であると考えられます。
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一般に、輸出に偏った経済構造は、以下のようなリスク要因となります。
  • 貿易の状況が悪化した場合、経済に大きな打撃を受ける。
  • 輸出先の減少により、経済が不安定になる。
そのため、貿易依存度が高い国は、貿易の状況を注視し、リスクに備えた経済政策を策定することが重要です。

具体的には、以下の施策が考えられます。国内需要の拡大を図る。
  • 新たな産業の育成を支援する。
  • 輸出先の多様化を図る。
これらの施策により、貿易依存度を下げ、経済構造の安定化を図ることが重要です。

なお、2018年以降の新型コロナウイルス感染症の拡大やウクライナ情勢の悪化により、貿易依存度が高い国は、より大きなリスクに直面しています。そのため、これらの施策は、より一層重要となっていると考えられます。

貿易依存度の低い日米は、以下のような特徴があります。
  • 国内需要が比較的大きい。
  • 輸出先の多様化が進んでいる。
これらの特徴から、貿易依存度が高い国に比べて、経済構造の安定性は高いと考えられます。

しかし、日本は、依然として需給ギャップが存在しています。そのため、今後は、以下のような施策を積極的に推進することが重要と考えられます。
  • 国内需要のさらなる拡大を図る。
  • 新たな産業の育成を支援する。
国内需要の拡大を図るためには、以下のような施策が考えられます。
  • 消費税減税等や社会保障費の削減などにより、可処分所得を増やす。
  • 潜在的な労働力不足を、補うためAI化及びロボット化をすすめる。外国人労働者を大量に受け入れることは、諸外国の例からもわかるように、負の側面が多いことから、これを増やすべきではない
新たな産業の育成を支援するためには、以下のような施策が考えられます。
  • 研究開発への投資や税制優遇措置などにより、イノベーションを促進する。
  • 規制改革などにより、新規事業の参入を促進する。
これらの施策により、国内需要を拡大し、経済の活性化を図ることが重要です。

インフレ目標を2%だが、金融政策によってインフレを誘導するのは当然として、米国やEUのように、インフレ率4%までは様子をみて、それまでは金融引き締めをすべきでないです。緩和は、急ぎ、引き締めは遅めにというのが、マクロ経済学における王道です。

財政政策による公共投資を拡大し、需要を創出します。

これらの施策により、需給ギャップを解消し、経済の拡大を図ることが重要であると考えられます。

人口増に取り組み成功してきたフランスでも、北欧でも、最近では伸び悩んでいます。一方貧しい国々では、今人口が増える状況にあり、人口増にはこれといった有効な手立ては無いようです。であれば、AI化ロボット化をさらすすめ、人口減でも支障がおきない社会を目指すべきです。安易な外国人労働力の大量受け入れは、他国で大失敗しています。

これらの施策により、経済の持続的な成長を図ることが重要です。これらのことを実施して、国内の需要伸ばし切ることが最優先課題であり、それ以前に貿易依存度を高めるのは、それこそ、ドイツが現在「欧州の病人」といわれるような状況を招くことになります。実際過去の日本は、現在のドイツとも似通った「失われた30年」経験しています。

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2024年1月16日火曜日

水中戦に備えて? 中国がインド洋一帯の地図を作成している —— 最新報告―【私の論評】対潜水艦戦略の一環:中国の水中測量活動と地域の海軍力強化の必要性

水中戦に備えて? 中国がインド洋一帯の地図を作成している —— 最新報告

まとめ
  • 中国がインド洋で水中測量を実施しているという。
  • 水中戦を計画するためかもしれないと戦略国際問題研究所(CSIS)は指摘している。
  • 中国はアジア太平洋地域で軍事力を拡大しようとしている。
中国国旗を掲揚した潜水艦

中国がインド洋で水中測量を行っており、これが水中戦の計画の一環である可能性がある。戦略国際問題研究所(CSIS)によれば、中国はアジア太平洋地域で軍事力を拡大し、民間の海洋調査プロジェクトを名目に、データを収集して軍事作戦に活用しようとしていると報告されている。CSISは、中国の調査船が特にインド洋に注力しており、そのデータは特に潜水艦活動に価値があると指摘している。

CSISがAIデータ会社Windwardのデータを使用して行った最新の調査によれば、中国の調査船は過去4年間で世界中で数十万時間のオペレーションを行っており、一部は不審な行動を示し、軍事関連施設のある港に停泊することがあると報告されている。また、一部の船はセンシティブな地域ではダークモードに入ったり、識別システムをオフにするなど、警戒行動をとっている。

CSISはさらに、中国の海底地形図作成は軍民融合戦略の一環であり、民間企業や研究が軍事目的で利用される可能性があると指摘している。インド洋は中国にとって戦略的で経済的に重要な地域であり、中国は外洋海軍の創設を検討しており、国家安全保障と研究の境界線を曖昧にすることで実現に貢献しようとしているとされている。関連して、中国とインドの関係が悪化しており、インドは中国の調査船の活動に対する懸念を強めている。

この記事は元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】対潜水艦戦略の一環:中国の水中測量活動と地域の海軍力強化の必要性

まとめ
  • 中国はインド洋で水中測量を実施し、その目的は主に水中戦(ASW)の強化である可能性が高い。
  • 現代海戦ではASWが重要であり、日米はASWにおいて圧倒的な優位性を持っている。
  • 海底地図はASWにおいて不可欠であり、追跡、照準、武器配備、地雷配置といった要素に影響を与える。
  • 米国は長い歴史と大規模な投資により、世界の海底データを豊富に保有しており、中国の取り組みに比べて高い精度を誇る。
  • 中国の積極的な海底地図作成は懸念すべきものであり、将来的には海軍力の包囲や領有権主張の可能性があり、日米や同盟国は地域の海軍力を強化すべきだと考えられている。
中国の海洋調査船

上の記事では、「中国がインド洋で水中測量を行っており、これが水中戦の計画の一環である可能性がある」としていますが、これは可能性というよりは、そのものずばり水中戦のためのものと言って良いです。

正確にいえば、ASW(Anti Submarine Warfare:対戦水艦戦)の強化というべきです。このブログでは、現代海戦は、ASWが強いほうが勝つと何度か指摘してきました。現代では、空母を含めた水上艦艇は、ミサイルの標的に過ぎません。しかし、水中を潜航する潜水艦は違います。

日米は、対潜哨戒能力が高く、日本はステルス性に優れた潜水艦を有し、米国は攻撃力に優れた攻撃型原潜を有しており、両国はASWにおいては、他国より圧倒的に勝っています。そのため、中国を含めた他国の海軍は、海戦において日本や米国に勝つことはできません。

最近、中国もASWを強化しつつあり、潜水艦の能力や、対潜哨戒能力をたかめつつありますが、まだハード面でも、ソフト面でも日米には及びません。中国がこの面で日米の水準に追いつくには数十年かかるでしょう。

ハード面で追いついたとしても、ソフト面で追いつくのは至難の技です。このブログでは過去に、これを脳外科手術にたとえました。脳外科手術において、たとえハードを整えたとしても、脳外科医のノウハウや経験がないと、満足な手術はできません。それと同じく、ASWもソフト面を充実しないと、ハードだけでは、無用の長物になってしまいます。

そのソフトの格好の事例が、水中測量による海底地図です。

海底地図は対水上艦戦において重要な役割を果たし、いくつかの重要な目的のために不可欠な道具として機能します

1. 追跡と照準
 海底地形:海底の詳細な地図は、潜在的な潜伏スポット、チョークポイント、強い潮流のある地域など、水中環境を理解するために不可欠です。この知識により、対潜水艦部隊は敵潜水艦の動きをより効果的に追跡し、その航路を予測し、それに応じて対抗策を展開することができます。
音響伝播: 海底地図には水温、塩分濃度、水深のデータが組み込まれており、これらは音波が水中を伝わる方法に影響を与えます。この情報は、ソナーやその他の音響探知システムの射程距離と効果を予測するのに役立ち、的を絞った捜索活動を可能にし、照準データの精度を向上させます。
2. 地雷原の配置と防御
地雷の配置: 海底マップは、敵潜水艦が活動しそうな地域に水中機雷を戦略的に配置するために使用されます。これにより、効果的なバリアやトラップを作り出し、動きを制限し、敵艦に損害を与えたり、効果的に破壊することができます。
機雷原の防衛: 正確な地図により、対潜水艦部隊は、機雷の掃海や機雷無力化システムの配備など、対機雷作戦の計画と実行が可能になります。さらに、敵の機雷原が味方の作戦に与える潜在的な影響の把握にも役立ちます。
3. 武器配備とナビゲーション
爆雷照準: 敵潜水艦の正確な位置を知ることで、爆雷の正確な配備が可能になり、攻撃成功の可能性が大幅に高まります。
対潜兵器のナビゲーション: 魚雷の発射、ソノブイの配備、水中ドローンの操作のいずれにおいても、潜水艦マップは正確な航行と効果的な武器利用を保証します。
4. 任務計画と訓練
シナリオ作成: リアルな水中マップは、対潜水艦要員を訓練するための模擬戦シナリオの作成を可能にします。これにより、実際の状況に遭遇する前に、安全な環境で戦術を練習し、手順を洗練させ、経験を積むことができます。
作戦計画: 地図は、対潜作戦を計画し、哨戒ルートを決定し、資源を配分し、軍の異なる部門を調整するための重要なツールとなる。
海底地図は対水上艦戦に不可欠な情報資源として機能し、水中環境の包括的な理解を提供し、敵潜水艦に対する効果的な追跡、照準、武器配備を促進します。潜水艦技術の進歩や水中戦の複雑化に伴い、その重要性はますます高まっています。

中国の潜水艦基地

米国はその長い歴史と大規模な投資により、より広範で包括的な世界の海底データを保有しています。これにはさまざまな地域の高解像度の地図が含まれ、中国の集中的な取り組みに比べ、世界の海洋の大部分をカバーしています。

米国の地図作成は、研究機関や他国と共同で行われることが多く、厳格な科学的基準と品質管理を重視しているため、中国の不透明な地図作成に比べ、一般的に精度が高いです。

日本の軍事用潜水艦地図の具体的な詳細は秘密のベールに包まれたままですが、その高度な潜水艦能力と民間および国際的な地図作成活動への関与は、水中航行と作戦に関連する詳細かつ正確なデータを保有している可能性が高いことを示しています。

しかし、中国は、自国の勢力範囲内で戦略的に関心のある地域の地図作成に多額の投資を行っており、特定の地域において高い精度と詳細を達成できる可能性がありますし、独自の水中マッピング技術と能力を急速に開発しており、将来的には米国とのギャップを埋めることを目指しているようです。

したがって、現在、海底マッピング全体では米国が強力なリードを保っていますが、中国の進歩を注視し、今後どのように、そうしてどの程度その差を縮めるのか、注視していく必要があります。

そうして、中国によるインド洋の積極的な海底地図作成は、極めて懸念すべきものであり、彼らは将来インドを海軍力で包囲することを目論んでいる可能性もあります。海底の地図を作成し、いずれこの地域の国際水域のいずれかの地域の領有権を主張し、監視と威嚇のために潜水艦を配備することもありえます。これは、南シナ海の例もあることですから、あり得ないと断言することはできないです。


これは、この地域の通信や通商の重要なインフラを脅かすことになりかねません。この地域の安定と安全を考えれば、日米やその同盟国はこの地域の海軍力を強化すべきです。南シナ海の二の舞を舞うべきではありませ。特に、インドの対戦水艦戦の能力は強化すべきものと思います。

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2024年1月15日月曜日

極右政党、移民追放を謀議か ナチス想起に波紋広がる―ドイツ―【私の論評】ドイツAfD党、文化保護強調の主張に波紋 – 支持率24%で急浮上

極右政党、移民追放を謀議か ナチス想起に波紋広がる―ドイツ

まとめ
  • ドイツの極右政党AfDの幹部と右翼活動家が移民の大量追放計画を謀議したと報道。
  • 会合では、「同化されていない国民」を追放し、アフリカ北部に「モデル国家」を設けるアイデアが提案された。
  • この計画に対し、ナチス時代のユダヤ人排斥を想起させるとして批判が広がっている。
  • 政府与党の議員らは計画を「おぞましい」と非難し、ドイツ社会に波紋が広がっている。
  • 保守野党CDUの右派党員もこの会合に参加し、反移民の広がりが示唆されている。
AfD共同代表ワイデル氏

ドイツで極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の幹部と右翼活動家が移民の大量追放計画を謀議したとの報道があり、これに対する批判が広がっている。

報道によれば、AfDのワイデル共同党首の最側近や連邦議会議員、起業家らが昨年11月に会合を開き、「同化されていない国民」を追放し、アフリカ北部に「モデル国家」を設けるアイデアを提案したとされる。

この計画に対し、ナチス時代のユダヤ人排斥を想起させるとして、与党議員などから非難の声が上がっており、AfDの党活動禁止も検討されている。報道団体は「移民追放計画はAfDが政権を握る場合の懸念材料である」と警告している。

一方で、保守野党のキリスト教民主同盟(CDU)の右派党員もこの会合に参加したとされ、反移民感情の広がりが示唆されている。

【私の論評】ドイツAfD党、文化保護強調の主張に波紋 – 支持率24%で急浮上

まとめ
  • AfDは、移民の同化を拒む人々が国家と国民のアイデンティティにとって脅威であると主張し、ドイツの文化と国家主権を守るために強硬な立場をとっている。
  • AfDは再移民を実行するのではなく、既存の移民に対して、文化と国家主権を守るために主張している。
  • CDUの右派メンバーが会合に参加したことは、AfDの政策が一部で共感を呼んでいることを示唆している。
  • AfDは犯罪で有罪判決を受けた移民に焦点を当てた「再移民」政策を強調しており、これに対する支持が増加している。
  • AfDの支持率が過去最高に達し、ポピュリズム革命が西側諸国で広がりつつあり、保守派の反乱の一環と見られている。
上の記事おける、「移民の大量追放計画を謀議」とは言い過ぎと思います。私には典型的なリベラルの恐怖を煽りであり、誇張しているように聞こえます。AfDは単にドイツの文化と主権を守りたいだけなのでしよう。

同化を拒む人々が大量に国家に存在することは、国家と国民のアイデンティティにとって脅威であることは間違いないです。AfDとしては、再移民を実行するというより、既存の移民に対して、ドイツの文化と国家主権を守らせるために、敢えてこのような強硬な主張をしているのでしょう。

また、この主張の中には、今後は無秩序に多くの移民を受け入れないという主張も含まれているでしょう。

CDUの右派メンバーが会合に参加したことに関しては、それを断定的に悪いことのように言うのは、間違いですし、AfDの常識的な政策がより広くドイツ国内で共感を呼んでいることを示していると思います。

左翼が言うところの反移民感情の広がりは、実際には愛国心の広がりであり、ドイツ国民を第一に考えたいという願望にすぎません。これは、国民国家の国民として、当然の主張であり、これを否定することはできません。

最近、AfDは「再移民」政策を強調しており、主にドイツから国外追放されることのない犯罪で有罪判決を受けた移民をターゲットにしています。ドイツには「容認」されている移民が数十万人いますが、AfDのシュプリンガー氏が言及した数百万人という数字は、強制送還のターゲットがもっと野心的であることを示唆しています。

“カラフルな共和国 “での日常生活、このような日常の状況は衝撃的であり、2024年を再移民の年にしなければならないことを明確にしています。「レストランや駅を破壊したり、医者を襲ったり、列車内で暴れたりするような者は、ここに居場所はなく、即刻国外追放しなければならない。最終的に行動を起こさなければならない」とAfDは声明を出しています。

この声明は、極端でも陰謀的でもありません。この計画を非難している報道グループは、おそらく国境開放グローバリズムを推し進める左寄りの団体に過ぎないのでしょう。このような批判に直面しながらも、ドイツのために立ち上がる勇気を持ったAfDに拍手を送りたいです。

そうして、これは数字からも裏付けられていると思います。最近、ドイツのAfD党の支持率が過去最高を更新、初めて24%に到達しています。もし、AfDの主張が単なる「人種差別」とか「偏狭主義者」であると受け取られれば、このように支持率があがることはないでしょう。


これは、ドイツの良識ある愛国者たちが目を覚まし、リベラルな体制による失敗した政策を拒否していることを示しています。このまま支持率が伸び続ければ、AfDが政権を掌握することもあり得ることです。

AfDが政権を握れば、国境を守り、移民を制限し、伝統的な価値観を守るなど、ドイツを第一に考えた政策を速やかに実施することが期待できます。彼らはドイツを再び偉大な国にするでしょう。

現在政権を握っている左翼やグローバリスト達は、拒否されつつあるのです。彼らの国境開放、ボリティカル・コレクトネスなどの政策は拒否されつつあるのです。

ドイツの歴史とアイデンティティに関して謝罪しなければならないとする、負の時代は終わりを迎えつつあり新たな時代が到来しつつあるのです。AfDが政権を握れば、ドイツは世界の舞台でリーダーとして再び誇りを持つことができるでしょう。

私は、AfDの勝利によってヨーロッパ中の他の保守派も力を得ることを期待しています。流れは変わりつつあります。良い意味での、ポピュリズム革命が西側諸国を席巻しつつあります。左派・リベラルはこれに脅威を感じているからこそ、AfDや、他の保守政党の動きを否定するのです。

ポピュリズム革命が西側諸国を席巻

ちなみに、日本で一般的に認知されている米国由来のポピュリズムは「大衆迎合主義」と訳され批判の対象とされます。しかしこの解釈はアメリカの左翼によって作られたものであり、保守派の定義ではもともとは中産階級の代弁者という意味です。
 
「ポピュリズム」の対義語は「エスタブリッシュメント」です。
 
エスタブリッシュメントは支配階級・上流階級の意味ですが、分かりやすく日本で例えるなら朝日新聞や熱心な朝日新聞の購読者のような自称インテリ、朝日岩波文化人(革新勢力や護憲リベラル勢力が言論のよりどころにし、自由や公正を重んじる文化人を指す言葉)等を指します。
 
これに対してまともな国民の意見を代弁する少数の政治家を、左翼が「ポピュリスト」とレッテル貼りをしたのです。

このあたりについては、『現代アメリカ保守主義運動小史』に詳しく解説されていますので、興味のある方は読んでいただきたいです。

米国保守派は、ポピュリスト、ポピュリズムという言葉を好んで使います。彼らの中にこれらの言葉はマイナスの意味をもっておらず、プラスの意味合いしかありません。リペラル・左派はこの言葉を悪い意味で使い、ホピュリズムを抑制しようとしているのです。


国家、文化、国民を第一に考えることを指導者に求める市民が増えているのは心強いことです。AfDが権力を握れば、ドイツは一変し、リベラルな世界秩序は大きな打撃を受けるでしょう。それはすぐには訪れないかもしれませんが、未来は明るいです。

そうして、このドイツの出来事は、まさに昨年末にこのブログでも指摘した「保守派の反乱」の一環でもあると思います。

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2024年1月14日日曜日

中国、激しく反発 台湾統一に手詰まり感 総統選―【私の論評】台湾経済に悪影響を及ぼす今後予想される中国の軍事演習拡大:その悪影響と対応策の要点

中国、激しく反発 台湾統一に手詰まり感 総統選

まとめ
  • 中国の習近平政権は、台湾総統選で民進党の頼清徳氏が勝利したことに激しく反発している。
  • 民進党は中国と距離を置く姿勢をとっており、台湾統一を目指す習政権にとって、民進党政権の長期化は手詰まり感を強める。
  • 習政権は、軍事的威嚇や経済圧力などの強硬措置を取る可能性がある。
  • 具体的には、台湾を包囲する大規模演習の繰り返しや、台湾産品の輸入制限などが考えられ、演習を長期化させ、台湾の物流に深刻な被害を与えることで、台湾の民心を揺さぶることも考えられ、事実上の港湾封鎖を狙って演習を行う可能性も指摘されている。
台湾総統選で勝利した民進党の頼清徳氏 背後に安倍晋三氏の大きな写真が!

 中国の習近平政権は、台湾総統選で民進党の頼清徳氏が勝利したことに激しく反発しています。民進党は中国と距離を置く姿勢をとっており、台湾統一を目指す習政権にとって、民進党政権の長期化は手詰まり感を強めることになります。

 習政権は、民進党政権が台湾独立を進めていると主張し、軍事的威嚇や経済圧力などの強硬措置を取る可能性があるとの見方が出ています。具体的には、台湾を包囲する大規模演習の繰り返しや、台湾産品の輸入制限などが考えられます。

 また、演習を長期化させ、台湾の物流に深刻な被害を与えることで、台湾の民心を揺さぶることも考えられます。さらに、事実上の港湾封鎖を狙って演習を行う可能性も指摘されています。

 いずれにせよ、習政権は台湾統一に向けた手詰まり感を強めており、台湾海峡の緊張が高まる可能性が懸念されます。

【私の論評】台湾経済に悪影響を及ぼす今後予想される中国の軍事演習拡大:その悪影響と対応策の要点

まとめ
  • 22年8月には、中国の軍事演習により、台湾の物流に混乱が生じ、貨物船や旅客船が遅延・運休。貨物輸送量は10%減少。
  • 輸入品や輸出品の欠品で経済に打撃。演習による被害額は約新台幣1,000億元、長期化すれば数兆円に。
  • これへの対応策として、短期的には米海軍の追加配備やミサイル防衛システムの提供。経済制裁やサプライチェーン分散をすべき。
  • 長期的には、同盟国との安全保障協力、QUADの拡大、国際参加推進、武器売却と軍事援助増加、偽情報対抗、民主政府支援をすべきである。
  • これらの対策を通じて、中国の脅威に対処し、台湾の安全と同盟国の協力を確保する必要がある。

2022年8月中国軍が軍事演習実施した台湾沖の地域(赤い部分)

台湾の交通部運輸統計や新聞報道などによれば、
2022年8月に中国軍が実施した台湾沖の軍事演習では、台湾の物流に以下の影響が出ました。
  • 航空機による飛行訓練や艦船による航行訓練で、航空管制や海上交通が混乱し、貨物船や旅客船の遅延や運休が発生しました。
  • 演習海域に近い港湾では、船舶の入出港が制限され、荷物の積み降ろしや輸送に支障が出ました。
  • 演習の影響で、台湾の輸入品や輸出品の一部が欠品するなどの問題が発生しました。
具体的には、演習期間中、台湾の貨物輸送量は前年同期比で約10%減少しました。この減少分がすべて被害額だと仮定すると、約新台幣1,000億元(約3,700億円)に相当します。また、台湾の主要港である高雄港では、中国軍の艦船が高雄港の沖合で活動していたため、船舶の入出港が制限され、荷物の積み降ろしや輸送に支障が出ています。

演習が長期化した場合、台湾の物流への影響はさらに深刻化すると考えられます。航空管制や海上交通の混乱が長期化すれば、貨物船や旅客船の遅延や運休が頻発し、台湾の経済活動に大きな打撃を与える可能性があります。また、輸入品や輸出品の欠品がさらに拡大し、物価高やインフレを招く恐れもあります。

中国政府は、台湾統一を実現するために、台湾の経済を圧迫する戦略をとっているとみられます。今回の演習は、その一環として行われたものと考えられ、今後も同様の演習が繰り返される可能性は高いとみられます。

もし、演習が長期化した場合、台湾の被害額は数千億円から数兆円に達する可能性もあります。

このようなことを防ぐために、台湾やそのパートナー国の日米などの国々は何をすべきでしょうか。

短期的には以下のことが考えられます。
  • 攻撃型原潜を筆頭とする、米海軍を台湾海峡に追加配備すべきです。事実上の封鎖を確立し、中国のさらなる侵略を抑止すべきです。米国の同盟国もこれに準じた動きをすべきです。
  • パトリオットPAC-3や高高度防衛ミサイル防衛システム(THAAD)のような先進的な対艦・対空ミサイル防衛システムを台湾に提供し、台湾の防衛力強化を支援すべきです。
  • 中国に対し、特に軍や共産党指導部に関係する企業や個人を対象とした経済制裁を実施すべきです。中国の資産を凍結し、貿易を制限すべきです。
  • 民間企業と協力し、台湾のサプライチェーンを中国から分散させるべきです。欧米企業が台湾に製造拠点を移し、台湾にインセンティブを提供すべきです。台湾の経済的依存度を下げるべきです。

中国サイトに掲載されたオハイオ級攻撃型原潜一部秘密保持のめ米国側のぼかしが、作業する人から、その巨大さを実感して欲しい

長期的には以下のことが考えられます。
  • 台湾、日本、インド、オーストラリア、韓国の間で、インド太平洋地域における安全保障、情報共有、軍事協力について、より大きな協力を交渉すべきです。中国に対抗するための同盟を結ぶべきです。
  • QUAD(四極安全保障対話:米、日、印、豪)を拡大し、定期的な合同軍事演習、武器取引、戦略的協力をし、中国に対する相互運用性を高めるべきです。
  • WHO、ICAO、国際刑事警察機構などの国際機関への台湾の参加を推進すべきです。台湾の外交的認知度を高め、孤立を緩和するのです。
  • 台湾が自衛のための最新兵器を獲得できるよう、米国の武器売却と軍事援助を増やすべきです。台湾が軍事的に中国と同等になり、侵略を抑止できるよう支援すべきです。
  • 中国の偽情報と影響力活動に国際的に対抗すべきです。中国による欧米の技術や大学へのアクセスを制限すべきです。重要なサプライチェーンを切り離し、中国の力を封じ込めるべきです。
  • 台湾の民主政府への一貫した支援を維持すべきです。中国に対し、台湾へのいかなる攻撃も容認できないという明確な警告を発すべきです。軍事的冒険主義を抑止すべきです。
東京で2022年5月に開かれた日米豪印4カ国による枠組み「クアッド」の首脳会合

長期的には、同盟を結び、抑止力を高め、脆弱性を減らすことによって、中国の野心を封じ込め、対抗すべきです。台湾のために立ち上がることは道徳的な義務といえますが、戦略的な利益にもつながります。

私たちは、同盟国やパートナーを守るために、北京に強硬な対応をしなければならないです。中国の地域覇権の野望を阻止できるのは、強力で集中的な行動と決意だけです。

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2024年1月13日土曜日

ウクライナ・イスラエルでのバイデンの苦境 ―背景に民主党の分裂―【私の論評】ウクライがロシアのGDPを凌駕するロードマップを描け

 アメリカ現状モニター

ウクライナ・イスラエルでのバイデンの苦境
―背景に民主党の分裂
 

渡部 恒雄
笹川平和財団上席研究員

まとめ
  • ニューヨーク・タイムズとシエナ大学の共同世論調査により、イスラエル・パレスチナ衝突におけるバイデン政権の支持が33%、不支持が57%となり、トランプとの比較でもトランプが優位とされた。
  • 同調査では大統領候補としての支持でもトランプが優位であり、共和党優位の選挙人団制度を考慮すると、バイデン陣営にとって厳しい状況となった。
  • ウクライナ支援に関しても共和党との交渉が難航し、ウクライナ支援の予算に対する民主党左派の反発が生じている。
  • イスラエル情勢においても左派が政権に圧力をかけ、外交政策での難航が左派の不満の対象となっている。
  • バイデン政権がこれらの矛盾を脱却し、支持を得るためには、イスラエル・パレスチナ紛争とウクライナ戦争に対する左派と有権者の認識を変える必要がある。
バイデン

12月10日から14日にかけて行われたニューヨーク・タイムズとシエナ大学の共同世論調査によると、イスラエル・パレスチナ衝突におけるバイデン政権の政策に対する支持は33%で、不支持が57%となった。トランプとの比較では、イスラエル・パレスチナ衝突をどちらがうまく処理できるかについて、バイデン38%、トランプ46%となり、トランプが優位だった。また、大統領候補としての支持もトランプが49%、バイデンが43%で、共和党候補が優位とされている。これが共和党優位の選挙人団制度を考慮すると、バイデン陣営にとっては艱難な状況となっている。

同調査によれば、回答者の44%はガザの死者が既に2万人を超えている状況で、イスラエルはハマスに対する軍事作戦を停止すべきだと考えており、48%はイスラエル軍が十分な配慮をしていないと回答している。

バイデン政権はウクライナ支援のために共和党議会の支持を得ようとしているが、ウクライナ支援の予算に対する厳しい交渉が続いている。ウクライナ大統領のゼレンスキー氏はバイデン大統領や議員らと面会し、ウクライナへの支援継続を訴えた。一方で、共和党はウクライナ支援の条件として国境対策を求め、これが民主党左派の反発を招いている。

中東政策でもトランプ支持が増え、特にイスラエル情勢においては左派が政権に圧力をかけている。これにより、バイデン政権は外交政策での難航が左派の不満の対象となり、米国内外のストロングマンたちが優位に立つ状況となっている。これらの矛盾から脱却するためには、バイデン政権がイスラエル・パレスチナ紛争とウクライナ戦争に対する左派と有権者の認識を変え、支持を獲得する必要がある。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】ウクライがロシアのGDPを凌駕するロードマップを描け

まとめ
  •  共和党と民主党内の左派がウクライナ支援に反対していると報じられ、トランプ政権成立時には支援の削減が懸念されている。
  • 大統領が誰になっても、ウクライナへの強力な支援が必要。ウクライナの主権支持や、プーチンのロシアに対抗する必要性が党派を超えたものである。
  •  ウクライナが戦後復興やEU加盟により経済的に大きく成長する可能性があり、ロシアを経済的に凌駕することもあり得る。
  • ウクライナが過去に経済成長できなかったのは、ソビエト連邦崩壊後の腐敗した民営化や、中央集権的統制の影響、汚職との腐敗の蔓延によるものである。
  •  ウクライナがEUに加盟することができれば、脅威の経済発展しロシアを凌駕することも夢ではなく、これをウクライナと支援国がロードマップに描くべき

ウクライナ支援に関しては、共和党も民主党内の左派も反対なようですが、もしトランプ政権が成立した場合、トランプ氏はウクライナへの支援を減らすか取りやめる可能性も取りざたされています。

私自身は、誰が大統領になったとしても、ウクライナへの強力な支援を維持してほしいです。プーチンのロシアに立ち向かい、ウクライナの主権を支持することは党派を超えて行われるべきだと思います。

ウクライナの自由と民主主義は米国の国益にかなうものです。米国はウクライナに対する見方を変えるべきと思います。

現状のウクライナに対する、共和党や民主党内の左派の見方は、民主主義の砦を守るための費用という見方しかしていないと思われます。しかし、これを費用としてだけとらえるのではなく、投資として見方を変えるべきと思います。現在は、発展途上国なみのウクライナですが、見方を変えれば、ウクライナには大きな洗剤可能性があります。

ウクライナ経済がロシア経済を凌駕する可能性

ウクライナの自由と民主主義が維持発展されれば、ウクライナはかなりの経済発展をする可能性があります。その根拠は、以下の表をご覧いただければ、ご理解いただけるものと思います。なお、以下の表は2021年のウクライナ戦争開戦の前年のデータです。

戦争中のデータは、特殊であるのと、正確性にも欠ける場合もあるので、2021年のデータを用いています。

まずは、一人当たりのGDPです。
GDP(ドル)一人当たりのGDP(ドル)
ウクライナ1,557億ドル3,745ドル
ロシア連邦1.7兆ドル10,610ドル
ウクライナのGDPは、ロシアの約10分の1であり、一人当たりのGDPも約3分の1でした。ウクライナは、ロシアに比べて経済規模が小さく、経済水準も低い国でした。これは、発展途上国の部類に入ると言って良い水準です。しかし、これは逆にいえば、かなりの伸びしろがあるということです。

次は、人口です。
人口
ウクライナ4,159万人(クリミア半島を除く)
ロシア連邦1億4,623万人

ロシア連邦と比較すれば、ウクライナの人口はロシアの1/3しかありません。それに、中国、インドの人口は14億人で、ロシア連邦の10倍です。このような国と比較すれば、確かにしウクライナの人口は少ないです。

しかし、ヨーロッパの他国と比較すれば、この人口は少ないとはいえません。また、モスクワ周辺に位置する、ロシア共和国の人口は、1000万人程度です。これを考えると、ロシアとウクライナの人口差は、絶望的に異なるという次元ではありません。

一人当たりのGDPと、人口から、ウクライナがロシア連邦のGDPを超えるには、一人当たりのGDPをどの程度にすれば良いのかを計算します。

2021年のウクライナとロシア連邦の人口は、ウクライナが約4,400万人、ロシア連邦が約1億4,600万人でした。

この人口差を考慮した計算式は、以下のようになります。
(ロシア連邦のGDP) / (ウクライナの人口) = 一人当たりのGDP

これを計算すると、以下のようになります。
1.7兆ドル / 4,400万人 = 38,636ドル

つまり、ウクライナがロシア連邦のGDPを追い越すためには、一人当たりのGDPが38,636ドル以上になる必要があります。

一人あたりの、GDPが38,636ドル付近の国を以下にあげます。比較の対象として日本、米国、ロシアも含めます。
一人当たりのGDP(ドル)
韓国38,740
台湾39,030
ポーランド32,250
スロバキア31,830
ロシア11,370
日本42,820
米国63,540

この表から、ウクライナは、一人当たりのGDPが韓国並になれば、ロシアのGDPと並ぶ水準になり、台湾並になれば、ロシアのGDPを追い越すことになることがわかります。

無論、これは戦争前の比較ですから、ウクライナが戦後復興して、それからの経済成長によりこうなるということになりますが、それにしても、一人あたりのGDPが台湾位の水準になれば、ロシアの GDPを完璧に追い越すというのですから、これはまったく不可能であり得ないということとは言えません。

もし、これが、日本やドイツ、フランス並とか、それ以上というなら、かなり難しいです。さらに、人口面でも、ウクライナとロシアの人口が、10倍以上もあれば、これもかなり難しいです。

しかし、ロシアとウクライナとの比較ということであれば、これは全く不可能とはいいきれないです。

ただし、これは数年ではなく数十年のスパンで達成できるということになると思います。ただ、日本の高度成長のような成長が可能となれば、10年くらいで達成できるかもしれません。

そのような目でみると、なぜウクライナは過去には経済発展できなかったのかという疑問がわきます。

ウクライナはなせ経済成長できなかったのか

ウクライナが過去に経済成長できなかった理由はいくつあります。

まず、ソビエト連邦の崩壊は、ウクライナの工業生産高、特に鉄鋼や鉱業のような重工業の急激な減少につながりました。これは雇用、輸出、全体的な経済成長に大きな影響を与えました。

ソ連時代には他の部門を犠牲にして重工業に重点を置いたため、ウクライナの産業基盤は時代遅れで硬直化し、変化する世界的な需要に対応するのに苦労しました。その結果、経済の多様化と競争力の欠如を招いてしまいました。

ソビエト連邦崩壊

次に、ウクライナがロシアの干渉を受け続けてきたことです。ロシアはウクライナの政治に関与してきた長い歴史があり、しばしば影響力を行使し、ウクライナの軌道を形成しようとしてきました。これには、クリミア併合やウクライナ東部で進行中の紛争に見られるように、特定の政治派閥を支援したり、誤った情報キャンペーンを行ったり、さらには軍事介入に訴えたりすることも含まれます。

ウクライナの犠牲の上にロシアが利益を得ているとされる不公正な貿易慣行や資源操作への懸念が提起され、経済的搾取への非難もあります。さらに、ソ連時代のホロドモール飢饉のような歴史的な出来事は、ロシア国家による意図的な搾取の例とみなされています。

さらに、ウクライナ国内の汚職や腐敗です。ソビエト体制は、ウクライナの社会とビジネスの多くの側面に浸透し続けているビジネス主体に対する後援と縁故主義の文化を育みました。これが公正な競争を妨げ、外国からの投資を抑制し、生産活動から資源を遠ざけています。

インフォーマルなネットワークと官僚主義 複雑な官僚制度を利用した経験から、ビジネスを行うための複雑なインフォーマル・ネットワークが発達してしまったのです。こうしたネットワークは近道を提供してくれるかもしれないですが、法的枠組みの外で運営されていることが多く、不透明で不公正なビジネス環境を助長しています。

1990年代の民営化 ソビエト連邦崩壊後、ウクライナは国有資産の大規模な民営化を実施しました。しかし、このプロセスは汚職にまみれ、価値ある企業が政治的につながりのある人物に割安な価格で売却されました。その結果、富と経済力が一部の人間に集中し、経済全体が投資と競争の欠如に苦しむことになりました。

ウクライナでは汚職との戦いが続いており、近年はさまざまな改革やイニシアチブが実施されています。

計画経済から市場システムへの移行は、法的・制度的枠組みの不備により困難なものとなっています。このことが企業や投資家に不確実性をもたらし、リスクの増大と経済活動の低下を招いています。

 数十年にわたる中央集権的な統制が、個人の自発性やリスクテイクを抑制し、起業家精神の欠如を助長し、活力ある民間セクターの発展を妨げてきました。

しかし、この複雑な問題に完全に対処し、ウクライナの経済的潜在力を最大限に引き出すには、まだ多くの課題が残されています。

ウクライナのソ連時代からの負の遺産は、根深いものがあるのです。こうした負の遺産を解消すれば、ウクライナの経済がのびる余地はかなりあります。

ウクライナ

計り知れないウクライの急速な経済発展の可能性

戦争終結、汚職撲滅、EU加盟などの条件が満たされれば、ウクライナの急速な経済発展の可能性は計り知れないです。

強固な基盤

ウクライナは、強固な基盤(インフラ)を持っており、これは他の発展途上国等にはないものです。

多様な産業基盤: ウクライナには、農業、鉱業、冶金、化学、機械、IT、宇宙、軍事など、確立された産業部門があります。宇宙産業に関しては、ロシアがウクライナから部品を輸入しており、これが絶たれると、ロシアの宇宙開発に支障がでるかもしれないとい割れるほどの水準にあります。また、これはあまり知られていませんが、中国の軍事技術の母体となったのは、ウクライナの技術です。 

この多様な基盤は、さらなる経済成長と新市場への進出を可能にする強力な土台となります。

高学歴の労働力: ウクライナは識字率99.4%という高い教育水準を誇っています。ヨーロッパの大学教育の統一基準・水準は、「バチェラー・マスター・ドクター(Bologna Process)」と呼ばれています。これは、1999年にイタリアのボローニャで開催された欧州高等教育会議で採択された「ボローニャ宣言」に基づき、欧州の大学教育の質と国際競争力を向上させるために制定されたものです。

ウクライナの大学・院にもBologna Processが適用されています。ウクライナは教育という面でヨーロッパと変わらず、物価も安いということから、戦前は、中国人の手頃な留学先として人気がありました。

また、人口あたりのエンジニアの数は、世界でトップクラスにあります。工学、科学、技術などさまざまな分野に長けた人材が容易に確保できることは、海外からの投資を誘致し、イノベーションを促進する上で貴重な資産となります。

戦略的立地: EUとロシアの間に位置し、中東のトルコと黒海を経て接するウクライナは、重要な貿易・中継拠点となりうる地理的優位性を享受しています。インフラとロジスティクスの改善により、この優位性を活かして市場を結びつけ、地域の経済活動を活性化させることができます。

これらの基盤は、他の発展途上国等には見られないものであり、ウクライナの高い潜在可能性を示しています。 

EU加盟

単一市場へのアクセス: EUに加盟すれば、4億5,000万人以上の消費者を抱える世界最大の単一市場へのシームレスなアクセスがウクライナにもたらされます。これにより、ウクライナの企業が商品やサービスを輸出する機会が大きく広がり、海外からの投資を呼び込み、経済成長を促すことができます。

金融・技術支援: EU加盟には、インフラ整備、制度改革、事業開発を目的とした多額の資金・技術支援プログラムが付随しています。これらの資源は、ウクライナの経済的進歩と近代化を加速させる上で有益です。

ガバナンスと法の支配の改善: EUの基準に合わせるためには、制度を強化し、法の支配を堅持し、腐敗と闘うことが必要である。これにより、より予測可能で透明性の高いビジネス環境が構築され、信頼が醸成され、海外からの投資が誘致されるでしょう。

その他の要因

豊富な天然資源: ウクライナは肥沃な農地、鉱物資源、黒海へのアクセスに恵まれています。これらの資源を持続的に管理することで、環境を保全しながら大きな経済的利益を生み出すことができます。

起業家精神: ウクライナ人は回復力があり、機知に富み、起業家精神に富むことで知られています。こうした資質は、長年のロシアの軛から開放され、支援的な環境と相まって、イノベーションと新規事業の創出を促進し、経済のダイナミズムに貢献することができます。

技術的潜在力: ウクライナには、熟練した労働力と活発な新興企業エコシステムを擁する成長著しいIT分野があります。このセクターを育成し、AIや再生可能エネルギーなどの新興技術への投資を呼び込むことで、ウクライナ経済を将来に向けて推進することができます。

もちろん、現在はロシアの侵攻を受けており、様々なインフラが破壊されていますし、先にあげたような課題も残っています。しかし、潜在的な見返りは大きいです。戦争が終わり、適切な条件と継続的な決意さえあれば、ウクライナは独自の強みと戦略的優位性を活かして急速な経済発展を遂げ、豊かで繁栄する国家としての地位を確立することができるでしょう。そうして、それはEU諸国にとって、ロシアの隣国にEUの味方である、強力な国ができあがることを意味します。これは、EUの安全保障にとっても良いことです。

そうした観点で、ウクライナ支援をとらえるべきです。ウクライナ支援はこうしたことを見据えて行うべきですし、ウクライナ側もこうした視点を支援国に示すべきです。

米国、日本、EUもウクライナと協同で、叡智を絞り、ウクライナがいずれロシアのGDPを追い越し、経済発展をつづけ、西側諸国とともに栄えるパートナーとなり、ロシアに対する強力な防波堤になることをロードマップに落とし込み、その上で支援をするようにすべきです。

これによって、米国は誰が、大統領になっても支援はやりやすくなるでしょう。それは、日本もふくむ、西側諸国も同じです。

イスラエルに関しても、イスラエル、ガザ地区(パレスチナ)の双方が経済発展し、テロリストを一掃し、安全保障での中東の要となれるようなロードマップを描くべきです。

日本こそ、このようなことに関してリーダーシップを発揮すべきと思います。

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