第三次世界大戦は「すでに」始まっている、企業は今すぐ備えよ
まとめ
- シリアのアサド政権の崩壊は、世界の紛争が相互に関連し、第三次世界大戦が始まっていることを示している。
- JPモルガンのダイモンCEOも、複数国での同時多発的な戦闘を指摘し、リスクの高さを警告している。
- ロシアのウクライナ戦争がシリアの政権防衛能力を低下させ、紛争の相互関連性が高まっている。
- ビジネスリーダーは、世界的な紛争が経済やサプライチェーンに与える影響を考慮し、リスク管理が必要である。
- 紛争の中で倫理的な機会を見出し、企業の社会的責任を果たすことが重要である。
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8日、ダマスカスで、アサド政権の崩壊を喜ぶ人たち |
シリアのバッシャール・アサド大統領の独裁政権の崩壊は、世界の紛争が相互に絡み合っている現実を浮き彫りにし、第三次世界大戦がすでに始まっているといっても良い状況にある。JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOもこの見解を支持し、国際金融協会(IIF)の年次総会で、「第三次世界大戦はもう始まっている」と警告した。彼は、複数の国で同時多発的に戦闘が行われている現状を強調し、リスクの高さを訴えている。
ロシアのウクライナ戦争が、シリアのアサド政権の防衛能力を低下させ、結果的に政権が崩壊に至ったことが、ダイモンの主張を裏付けている。ロシアがシリア内戦に介入していなければ、アサドは早期に追放されていた可能性が高い。現在、ロシアの国力がウクライナ戦争によって消耗し、イランもイスラエルからの攻撃を受けてシリアでの戦闘を維持することが難しくなっている。
これらの紛争が単なる局地的な問題ではなく、相互に関連した世界規模の紛争の一部である。具体的には、大国が直接または代理を通じて関与し、政治的・経済的・イデオロギー的な目的が絡み合っていることがその特徴だ。このような状況は、第一次・第二次世界大戦の初期に類似しており、局地的な紛争が世界規模の対立に発展する可能性が高い。
ビジネスリーダーにとって、このような情勢は重大な影響を及ぼします。世界的な紛争が拡大することで、経営する事業やサプライチェーン、顧客にも影響が及ぶため、リスクを認識し、適切な対応策を講じる必要がある。ダイモンCEOが述べたように、「この問題が自然に解決するのを待つわけにはいかない」との認識が必要だ。
また、紛争の中で新たな機会を見出すことも重要だ。これは単に利益を得ることではなく、企業が人道支援活動やサプライチェーンの強化、被災地域の復興に貢献する方法を特定することを意味する。こうした行動は企業の社会的責任に合致し、地域社会の信頼を築くことにもつながる。
第三次世界大戦は過去の二つの世界大戦とは異なる形で進行する可能性が高い。戦争は断続的に続く可能性があり、一時的な休戦に惑わされず、長期的な視野で新たな紛争の時代に備える必要がある。
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【私の論評】第三次世界大戦の兆候と国際情勢の緊迫化:エマニュエル・トッド、エドワード・ルトワックの警鐘
まとめ
- ワシントン・ポスト紙に掲載されたコラムで、コラムニストのウィルは、ロシア、北朝鮮、イラン、中国との間で実質的に第三次世界大戦が始まっていると警告し、国際関係における緊張の高まりを指摘している。
- ロシアのウクライナ侵攻が西側諸国との対立を激化させ、北朝鮮やイランの動きにも影響を与えている。
- 中国の軍事的拡張や台湾への威圧が、欧米との関係をさらに緊張させる要因となっている。
- 米国の指導者たちが危機的状況を軽視し、適切な対策を講じないことで国際的な緊張が悪化する可能性があるとウィルは警鐘を鳴らしている。
- エマニュエル・トッドやエドワード・ルトワックも、国際情勢の複雑さと戦争のリスクについて警告しており、日本も真剣に備える必要がある。
2024年10月16日付のワシントン・ポスト紙に掲載されたコラムで、コラムニストのウィルは、ロシア、北朝鮮、イラン、中国との間で実質的に第三次世界大戦が始まっていると警告している。この主張は、国際関係における緊張の高まりを背景にしている。
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ロシアのウクライナ侵攻開始を伝えたテレビの画面 2022年2月25日 |
ウィルはまず、ロシアのウクライナ侵攻を挙げ、これが西側諸国との対立を激化させていると指摘している。ロシアはウクライナの主権を侵害し、国際秩序への挑戦を行っている。この行動は、北朝鮮やイランの動きにも影響を与えている。北朝鮮は核兵器の開発を続け、ミサイル発射を繰り返しており、国際的な懸念が高まっている。イランは中東での影響力を拡大し、地域の安定を脅かす存在となっている。
さらに、中国の軍事的な拡張や台湾に対する威圧も、欧米との関係を緊張させる要因となっている。南シナ海での領有権主張や台湾への圧力を通じて、中国の行動は顕著に表れている。ウィルは、複数の地域での対立が相互に影響し合い、国際的な安全保障に対する脅威が増大していると強調している。
ウィルはまた、アメリカの政治指導者、特にハリス副大統領とトランプ前大統領がこの危機的状況に対する認識が不足していると批判している。彼らが現実の脅威を軽視することで、適切な対策を講じることができず、国際的な緊張がさらに悪化する可能性があると警鐘を鳴らしている。指導者たちがこの状況に対して強固な立場を取らず、外交的な解決策を模索する姿勢が欠けていることが、さらなる危機を招く要因となっているとしている。
このように、ウィルのコラムは、国際関係における複雑な脅威を強調し、現代の指導者たちがそれに対処するための意識と戦略を持つべきだと訴えている。彼の視点は、現在の国際情勢が非常に不安定であり、早急な対策が求められていることを示唆している。
ロシアのウクライナ侵攻が第三次世界大戦の始まりであるとの指摘は、驚くべき警告であるが、ソ連崩壊を正確に予測した、フランスの著名な社会学者エマニュエル・トッドは、すでに2022年5月に同様の見解を示している。トッドはロシアの行動が国際秩序に与える影響を深く掘り下げ、特に2014年のクリミア併合を重要な転換点として位置づけている。
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エマニュエル・トッド氏 |
トッドは、クリミア併合をロシアの西側諸国に対する挑戦の始まりと見なし、この出来事が国際的な緊張を高め、最終的には大規模な軍事対立を引き起こす可能性があると警告している。彼は、ロシアの行動が単なる地域的な問題ではなく、グローバルなパワーバランスに影響を与えるものであると主張している。この観点から、ロシアの侵攻は単一の国の問題ではなく、より広範な国際的な紛争の一環と捉えられるべきだと言う。
さらに、トッドはロシアの行動が他の国々、特に西側諸国にどのような反応を引き起こすかを考察し、これがさらなる対立を生む可能性があることを強調している。国際的な安全保障の枠組みが揺らぎ、各国がそれぞれの立場を強化する結果、冷戦時代のような二極化した世界が再現される危険性についても言及している。
つまり、トッドの見解は、ロシアの行動を単なる地域的な紛争として片付けるのではなく、国際社会全体に波及する大きな歴史的な流れの一部として理解する必要があるとするものである。後から振り返れば、クリミア併合が新たな世界的な緊張の始まりであったと認識されるかもしれないというトッドの予測は、国際関係の複雑さと不確実性を強調している。これは、現在の状況を考える上で重要な視点を提供しており、今後の国際情勢を見極める上での警鐘となる。
米国の戦略家エドワード・ルトワックは、さらに古くから第三次世界大戦について警告している。彼は1990年代から2000年代にかけてさまざまな著作や講演で言及しており、特に著書『戦争の後』や『戦略の技術』で国際関係の変化や戦争のメカニズムについて詳しく論じている。
ルトワックは1993年に発表した『戦争の後』の中で、冷戦後の新たな国際秩序におけるリスクについて警告している。アメリカが単独超大国としての地位を確立した後、他の大国がその影響を受ける中で新たな緊張が生まれる可能性があると述べている。特に中国やロシアの動向が重要であり、これらの国々がアメリカに対抗するために軍事的手段を取る可能性を指摘している。
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エドワード・ルトワック氏 米戦略国際問題研究所 (CSIS) 上級顧問 |
また、ルトワックは「平和は戦争の糧である」という考え方を強調し、長期間の平和が逆に戦争のリスクを高めることがあると述べている。長い平和が続くと、国家間の対立が潜在的に蓄積され、偶発的な事件が戦争を引き起こす引き金となる可能性があると警告している。このような見解は、近年の国際情勢における緊張の高まりを考える上で重要である。
さらに、ルトワックは権威主義的な政権が国内の問題を外部の敵に転嫁することで、戦争のリスクを増大させることについても触れている。具体的な例としてロシアのウクライナ侵攻を挙げ、プーチン政権が国内の経済問題や政治的圧力を外部の対立に利用していると指摘している。国内の不安定さが外部との対立を引き起こし、戦争のリスクを高める可能性があると述べている。
これらの発言は、国際関係の複雑さを理解する上で非常に重要であり、第三次世界大戦の可能性についての警戒を促すものである。ルトワックの理論は、現代の国際情勢における戦争のリスクを探るための貴重な視点を提供している。
ただし、第一次、二次世界大戦のように、大国や主要国が実際に戦争するかどうかは別にして、これらの国々の利害が複雑に絡み合い、今後世界各地で武力衝突が頻発するのは間違いないだろう。これを第三次世界大戦の呼ぶか、呼ばないかは別にして、大規模な武力衝突が起こる可能性は否定できない。
こうした状況を踏まえると、日本も紛争や不測の事態に対して真剣に備える必要がある。特に周辺国の軍事的動向や地域の緊張の高まりを考えると、日本が単に平和を期待するだけでは不十分であることは明らかである。
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