2025年4月30日水曜日

商品価格、26年にコロナ禍前水準に下落 経済成長鈍化で=世銀—【私の論評】日本経済の試練と未来:2025年、内需拡大で危機を乗り越えろ!

商品価格、26年にコロナ禍前水準に下落 経済成長鈍化で=世銀

まとめ
  • 世界銀行は、貿易摩擦による経済成長鈍化で、商品価格が2025年に12%、2026年に5%下落し、コロナ禍前の水準に戻ると予測。
  • エネルギー価格は2025年に17%、2026年に6%下落し、インフレ率を2022年に2%ポイント以上押し上げたが、2023・2024年はインフレ鈍化に寄与。
  • 商品価格下落はインフレリスクを緩和するが、商品輸出依存の途上国に悪影響を及ぼす可能性があり、自由貿易や財政規律の強化が推奨される。

世界銀行の報告によると、貿易摩擦による世界経済の成長鈍化で、商品価格は2025年に12%、2026年に5%下落し、コロナ禍前の水準に戻る見込み。2022年のエネルギー価格高騰は世界のインフレ率を2%ポイント以上押し上げたが、2023・2024年はインフレ鈍化に寄与。

価格下落はインフレリスクを緩和する一方、商品輸出依存の途上国に悪影響を及ぼす可能性がある。エネルギー価格は2025年に17%、2026年に6%下落し、北海ブレント原油は2025年に1バレル64ドル、2026年に60ドルに。石炭価格も2025年に27%、2026年に5%下落。金価格は2025年に最高値を更新後、2026年に落ち着く見込み。自由貿易の推進や財政規律の強化が途上国に推奨される。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】日本経済の試練と未来:2025年、内需拡大で危機を乗り越えろ!

まとめ
  • 世界経済の危機と日本の影響:世界銀行の2025年予測によると、商品価格下落でインフレは抑えられるが、貿易利益は商品輸出国で縮小し、日本も鉄鋼輸出(2023年4兆円)の価格10%下落などで影響を受ける。
  • 内需拡大策の不十分さ:2025年の所得税減税(1兆円規模)や賃上げ(5%予測)は、需給ギャップ20兆円を埋められず、円安による家計圧迫や中小企業の利益圧迫で効果が限定的である。
  • 過去の成功例:安倍・菅政権のコロナ対策100兆円補正予算は、需給ギャップ100兆円を対象に雇用調整助成金で失業率2.8~3.0%を維持し、日銀の金融緩和が雇用を支えた。
  • 2025年補正予算の遅れ:2024年度補正予算(13.9兆円)は成立したが、2025年度補正予算は与党調整不足や金利懸念で審議が進まず、需給ギャップ対応が不透明である。
  • 必要な対策:需給ギャップを埋める大胆な財政出動(消費税減税や直接給付)、日銀の金融緩和継続、円安抑制の為替介入で内需を強化し、GDP成長率1.1%を死守すべきである。
世界経済の嵐と日本の試練


世界銀行の「一次産品市場見通し」(2025年4月29日)が突きつける現実は厳しい。商品価格は下落し、インフレの火は抑えられるが、貿易の利益は商品輸出国で縮小する。日本もその荒波に飲み込まれるのだ。

2023~2024年のエネルギー価格下落がインフレを抑え、2023年中東紛争での原油価格低下(90ドルから83ドル)がそれを証明する。IMFの2025年予測も、関税のインフレ圧力を価格下落が打ち消すと断言する。

だが、貿易の利益は確実に削られる。途上国の3分の2が商品輸出に依存し、2023年の金属価格12%下落がザンビアやコンゴの財政を直撃した。インドの2023年米輸出制限はバングラデシュの食料危機を悪化させた。中国の2025年経済成長率4.5%への鈍化予測も、商品需要の低迷を物語る。

日本も無傷ではいられない。2023年の鉄鋼輸出額4兆円が、グローバル金属価格12%下落で圧迫された。2024年第2四半期、中国の鉄鋼需要低迷で日本の鉄鋼輸出価格は10%下落、東南アジアでの競争激化が追い打ちをかけた。2025年の経済成長率1.1%予測は、貿易依存の日本の弱さを浮き彫りにする。

この危機を前に、日本はどう動くべきか。答えは一つ。内需を燃え上がらせることだ。
内需拡大の失敗と過去の教訓
2025年の内需拡大策は、はっきり言って力不足だ。2024年度補正予算(13.9兆円)は2024年12月17日に成立し、物価高対策や能登半島地震復興、AI・半導体振興を盛り込んだが、2025年度は動きが鈍い。3月31日、2025年度本予算(115.2兆円)が成立したが、補正予算の審議は進んでいない。4月上旬、政府が物価高やトランプ関税対応の補正予算を検討したが、与党内の調整不足や金利上昇懸念で現国会での提出は見送られた。需給ギャップ約20兆円(日本経済研究センター推計)への対応が議論されるが、審議日程や金額は未定だ。
現行策も弱い。2024年補正予算の所得税減税(1兆円規模)は低所得層に届かず(みずほリサーチ&テクノロジーズ)、日銀のゼロ金利政策は円安(2024年1ドル150円台、野村證券予測)を招き、輸入物価上昇で家計を締め上げる。2025年春闘の賃上げ率5%予測も、中小企業の6割が利益圧迫に苦しむ(帝国データバンク2024年調査)現実では空手形だ。
安倍政権時代の2020年4月の安倍総理と菅官房長官
過去の成功に光を当てる。安倍政権の2020年、60兆円のコロナ対策補正予算、菅政権の2020~2021年、40兆円の補正予算は、計100兆円を投じ、当時の需給ギャップ100兆円(内閣府推計)を埋めるべく設計された。国債発行と日銀の買い取りで資金を確保し、雇用調整助成金で休業手当の最大90%を補助。日本の失業率は2.8~3.0%で踏みとどまり、米国の7.8%(2020年)の雇用崩壊を回避した。日銀の金融緩和がなければ、企業の資金繰りは破綻し、雇用は守れなかった。

だが、2025年の需給ギャップ20兆円に対し、1兆円減税は焼け石に水だ。コロナ期の給付金は低所得世帯の消費を5%押し上げたが、財政赤字懸念(財務省)で同様の給付は期待薄である。
真の道と日本の未来
輸出多角化や自由貿易は未来を切り開く。2024年の半導体輸出10%増、TPPによる2023年アジア輸出回復は希望の光だ。だが、技術開発や通商交渉に時間が必要で、トランプ関税リスク(世界経済成長率0.7%下押し)への即応性はない。
現在の日本は、いまだデフレギャップが存在する
2025年の内需策が弱い理由は、家計への直接給付や中小企業への補助金が乏しいからだ。需給ギャップ20兆円を埋めるには、コロナ期のような大胆な財政出動が不可欠だ。日銀の金融緩和は雇用維持に欠かせないが、消費税減税のような強力な一手がなければ、消費は火を噴かない。
安倍・菅政権の100兆円補正予算は、需給ギャップを的確に捉え、日本が危機を乗り切れる国であることを示した。あの果断な支援を再現し、2025年の実質GDP成長率1.1%を死守する。それが日本の使命だ。地政学的リスクが迫る今、ちまちました策を捨て、内需を一気に燃え上がらせる。日本の未来は、その決断にかかっている。
出典:世界銀行「Commodity Markets Outlook」2025年4月29日、IMF、日本貿易振興機構、日本鉄鋼連盟、内閣府、みずほリサーチ&テクノロジーズ、日本経済研究センター、ジェトロ、野村證券、帝国データバンク、財務省、厚生労働省、総務省、米国労働統計局、NHK、朝日新聞、読売新聞、過去事例。

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2025年4月3日









2025年4月29日火曜日

オタクの知識が日本の安全保障のカギになる…軍事研究のプロ2人が異色の「会いに行ける情報機関」を作ったワケ—【私の論評】情報革命の衝撃:民間インテリジェンスが切り開く日本の安全保障とコロナ起源の真実

オタクの知識が日本の安全保障のカギになる…軍事研究のプロ2人が異色の「会いに行ける情報機関」を作ったワケ

まとめ
  • DEEP DIVEの設立:小原凡司氏と小泉悠氏が、日本の安全保障強化のため、非営利の民間インテリジェンス機関「DEEP DIVE」を設立。公開情報(OSINT)と衛星情報を活用し、透明な分析で早期警戒情報を提供。
  • クラウドファンディングの成功:目標1000万円に対し、2933人から約4232万円を集め、市民の高い期待と共感を得て活動基盤を構築。
  • 特徴的な役割:①根拠を示す分析、②多様な知見を集める「議論のハブ」、③政府・民間・自治体をつなぐ情報共有の橋渡しを目指す。例:中国ウイグル地区の衛星画像公開で情報募集。
  • 背景と課題:日本の安全保障情報が英語圏に依存し、政府の機密情報が民間や地方に共有されない問題や、ウクライナ戦争予期の失敗を背景に、独自の情報機関の必要性を強調。
  • 市民参加と目標:非営利運営で、支援者を「安全保障の一口株主」と位置づけ、セミナーや会員制度で「会いに行ける情報機関」を目指す。安全保障を身近なものに変える挑戦。

日本の安全保障環境が不安定化する中、軍事評論家の小原凡司氏と東京大学准教授の小泉悠氏が、非営利の民間インテリジェンス機関「DEEP DIVE」を設立した。公開情報(OSINT)と衛星情報を駆使し、明確な根拠に基づく分析を提供することで、日本社会に早期警戒情報を届けることを目的とする。クラウドファンディングでは当初目標の1000万円を大幅に上回り、2カ月で2933人から約4232万円を集め、予想を遥かに超える期待と共感を得た。この資金で基盤を固め、持続可能な活動を目指す。
DEEP DIVEの特徴は三つある。①衛星画像や公開情報を用いた透明な分析を行い、反証可能な根拠を示す。②軍事や安全保障だけでなく、建設や地域研究など多様な専門家の知見を集める「議論のハブ」として機能。③政府、民間、地方自治体をつなぐ情報共有の橋渡し役を担う。例えば、中国ウイグル地区の謎の穴の衛星画像を公開し、一般や専門家から情報を募ることで、ネットワーク型の分析を推進。こうした形態は、英国の「ベリングキャット」に着想を得た、日本独自のオープンなインテリジェンスの形だ。
設立の背景には、日本の安全保障情報が英語圏のシンクタンク(例:ストラトフォー)に依存し、政府の機密情報が民間や地方自治体に共有されない課題がある。さらに、2022年のウクライナ戦争を日本のロシア研究コミュニティが予期できなかった反省も動機となっている。DEEP DIVEは、資金とやる気さえあれば入手可能な衛星情報や電波情報(ELINT・SIGINT)を活用し、自治体や民間企業が危機管理や避難計画に使える「実践的な情報」を提供する。

非営利の一般社団法人として運営し、東京海上ディーアールとの業務提携など、持続可能なビジネスモデルを構築中だ。事務作業に苦労しながらも、支援者には「安全保障の一口株主」としての当事者意識を促し、セミナーや会員制度を通じて「会いに行ける情報機関」を目指す。安全保障を国家や専門家だけのものではなく、市民が参加できる身近なものに変える挑戦として、危機感と新しい可能性への期待を背景に活動を展開。支援者からの激励や参加意欲も、DEEP DIVEの理念が広く共鳴していることを示している。

この記事は、元記事の要約です。元記事は、三人の鼎談ですが、その鼎談を元に新聞記事風にまとめたのが、この記事です。

【私の論評】情報革命の衝撃:民間インテリジェンスが切り開く日本の安全保障とコロナ起源の真実

まとめ
  • 情報革命と民間インテリジェンス:インターネットの普及と衛星画像の低コスト化がOSINTを進化させ、DEEP DIVEのような民間インテリジェンス機関の設立を後押し。情報収集の民主化が個人や民間団体の分析を可能にした。
  • インターネットの力:2000年代のSNS(Facebook、Twitter)やWeb 2.0により、リアルタイム情報が増加。2011年のアラブの春やベリングキャットのMH17調査は、OSINTの統合力を示す。
  • 衛星画像の進化:民間衛星(Ikonos、Planet Labs)の発展で、衛星画像が手頃に。2021年の中国ミサイルサイロ発見やウクライナ紛争での活用は、市民参加の安全保障分析を証明。
  • 民間インテリジェンスとラボリーク説:Stratfor、Jane’s、東京海上ディーアールが民間インテリジェンスのモデルを提供。DRASTICやXコミュニティはWIVの不透明性を暴き、ラボリーク説を推進。トランプ政権の2025年サイトはOSINT成果を反映。
  • 民間インテリジェンスの未来:民間機関は政府の機密情報の限界を補い、透明な情報で危機管理を支援。市民参加で安全保障を身近にし、英語圏依存を打破。民主的議論と迅速な危機対応を可能にし、日本独自のプラットフォームを築く。
DEEP DIVEのような民間インテリジェンス機関の誕生は、情報革命の最前線に立つ日本の挑戦だ。インターネットの爆発的な普及によるオープンソース・インテリジェンス(OSINT)の進化、衛星画像の驚くべき入手しやすさ、そして既存の民間インテリジェンス機関の成功モデルが、この新たな動きを後押ししている。これらは情報を民主化し、国家や大企業だけでなく、個人や民間団体にも高度な分析の扉を開いた。

インターネットと衛星画像:情報の民主化

中国の夜の照明を捉えた衛星写真 これでGDPが推測できるという・・・・

インターネットの普及は、OSINTを革命的に変えた。ニュース、SNS、公式文書、動画を分析するOSINTは、1990年代までは新聞や書籍に頼るしかなかった。しかし、2000年代のWeb 2.0、2004年のFacebook、2006年のTwitter(現X)の登場で、情報は爆発的に増え、誰もがリアルタイムで発信・入手できるようになった。

Statistaによると、2022年のSNSユーザーは46億人、2025年時点でインターネットユーザーは世界人口の75%に迫る。2011年のアラブの春では、市民がTwitterやYouTubeで抗議の映像を公開し、研究者が瞬時に情勢を分析した。ベリングキャットは2014年のマレーシア航空MH17便撃墜事件で、SNS写真とGoogle Earthを駆使し、ロシアの関与を暴いた。この手法は、軍事や文化の壁を越えて情報を統合する力を示す。

衛星画像の進化も見逃せない。かつては軍事機密か大金の必要な衛星画像が、2000年代以降、民間衛星産業の飛躍で手の届くものに変わった。1999年のIkonos打ち上げを皮切りに、Planet LabsやMaxar Technologiesが低コスト・高解像度の画像を提供。2020年代には、1シーン数万円のサブスクリプションで個人でも購入可能だ。

合成開口レーダー(SAR)の進化で、夜間や悪天候でも撮影でき、カナダのRADARSAT-2は2022年のウクライナ紛争で民間にデータを供給した。2021年、OSINTコミュニティが中国の核ミサイルサイロ拡張を衛星画像で突き止め、IEEE Spectrumは「衛星は安全保障の新境地」と評した。北朝鮮の軍事基地や中国の不審な施設を衛星画像で分析する例は、市民参加の力を示す。衛星画像の価格は、リアルタイム監視で数十億円、月次レポートで数億円、簡易レポートなら数千万~数百万円と用途に応じて選べる。

民間インテリジェンスとラボリーク説

コロナウイルスの写真と模式図

既存の民間インテリジェンス機関は、新たな道を照らす。米国のStratforは1996年設立のシンクタンクで、地政学リスクを公開情報と人的ネットワークで分析。2001年の9.11テロや2011年のリビア内戦を予測し、企業や政府に重宝される。日本の商社がStratforに頼る現状は、英語圏依存の壁を浮き彫りにする。

英国のJane’s(現Janus Intelligence Services)は軍事情報の権威で、衛星画像や公開情報を基に、兵器や軍事施設のレポートを販売。日本の民間インテリジェンス機関としては、東京海上ディーアール株式会社のリスクマネジメント部が挙げられる。リスク評価や危機管理サービスを提供し、地政学リスク分析に取り組む。日本の民間インテリジェンスは欧米に比べ小規模だが、東京海上ディーアールは商業的補完として機能する可能性がある。これらの機関は、OSINTや衛星情報の商業的可能性を示し、持続可能な道筋を指し示した。

ベリングキャット以外のOSINTグループでは、DRASTIC(Decentralized Radical Autonomous Search Team Investigating COVID-19)がラボリーク説を強く推し進めた。2020年春に結成されたこの分散型グループは、専門家とアマチュアがXや公開データベースを駆使し、武漢ウイルス研究所(WIV)の研究と安全管理の不備を暴いた。

2021年、WIVが2012年のコウモリコロナウイルス(RaTG13)データを隠していた事実を突き止め、ラボリーク説の根拠とした。2025年2月のル・モンドは、DRASTICの調査がWHOや米国政府を動かし、「陰謀論」から真剣な議論へと転換したと報じた。匿名メンバー「The Seeker」は、WIVの2018年機能獲得研究計画を公開。2023年、米国エネルギー省やFBIがラボリーク説を支持する一因となった。

DRASTICは武漢市場の動物感染証拠の欠如を強調し、2022年のScience誌の動物起源説に反論したが、状況証拠への依存や科学的検証の不足で批判も浴びた。XやRedditの非公式OSINTコミュニティもラボリーク説を後押しした。2020年以降、武漢の病院やWIV周辺の衛星画像、交通データを分析。2019年秋の異常な活動(駐車場の混雑増加)を指摘した。

ハーバード大学の2021年研究は、衛星画像と検索データで2019年秋の感染開始を示唆し、ラボリーク説の間接的証拠となった。Redditのr/OSINTでは、WIVの資金やEcoHealth Allianceとの関係を追う議論が盛んだ。匿名Xユーザーが2019年9月のWIVデータベースオフライン化を発見し、DRASTICが拡散。2021年のニューヨーク・タイムズや2023年の米国議会報告書に影響した。しかし、科学的証拠の不足や政治的バイアスの懸念から、主流科学界では懐疑的な見方が強い。

トランプ政権のラボリーク説サイトと民間OSINTの輝かしい貢献


2025年4月、トランプ政権はCovid.govを「Lab Leak: The True Origins of COVID-19」(写真上)と題したウェブサイトに刷新した。このサイトは、コロナウイルスが武漢の研究所から漏洩したとするラボリーク説を力強く主張。ニューヨーク・タイムズによると、サイトはWIVの安全性問題や機能獲得研究を強調するが、新たな直接的証拠は提示していない。

民間OSINTグループの貢献は、このサイトの基盤を築いた輝かしい成果だ。DRASTICやX上のコミュニティは、WIVのデータ不透明性や2019年秋の異常活動を丹念に掘り起こし、ラボリーク説に説得力を持たせた。DRASTICが発見したRaTG13データの隠蔽やデータベースのオフライン化は、サイトの「自然起源の証拠がない」という主張に直接反映されている。XやRedditのOSINT愛好家は、衛星画像や交通データからWIV周辺の異変を指摘し、ハーバード大学の2021年研究を支えた。これらの努力は、市民の情熱と技術が、従来の政府や科学界が見過ごした可能性を浮かび上がらせた好例だ。

トランプ政権のサイトは、民間OSINTの成果を広く世に知らしめる役割を果たした。ベリングキャットやDRASTICの手法がなければ、こうした議論はここまで広がらなかった。CIAやFBIが「低信頼度」でラボリーク説を支持する背景にも、OSINTコミュニティの地道な調査がある。政治的色合いや証拠の限界が議論されるが、民間OSINTは、透明性と市民参加を通じて、真実追求の新たな道を切り開いている。

民間インテリジェンスの未来

2022年のウクライナ侵攻では、Maxarの衛星画像がロシア軍の動きを可視化し、SAR画像が戦術的失敗を露呈。2022年1月のトンガ火山噴火では、日本の気象衛星「ひまわり」が噴煙を捉え、災害時の衛星画像の即時性を示した。報道実務家フォーラム(2021年)で、ロイターのクリスティン・チャン氏は衛星画像を「報道の武器」と位置づけた。

インターネットと衛星画像の進化は、情報収集を市民の手に委ねた。XやTelegramはリアルタイム情報共有を可能にし、衛星画像の低コスト化は民間での地政学リスク監視を現実のものにした。政府の機密情報が民間や地方に届かない課題を、民間機関は透明な情報で埋める。

民間インテリジェンス機関の活動は、現代の安全保障に欠かせない意義を持つ。政府の情報は機密に縛られ、民間や地方自治体に届かない。

民間機関は、透明な情報で危機管理や住民避難を支え、英語圏依存の日本の現状を打破する。市民を巻き込み、安全保障を身近にすることで、民主的な議論を呼び覚ます。政府の限界を補い、多様な知見を結集して迅速な危機対応を可能にするのだ。民間インテリジェンスは、情報収集の民主化を体現し、日本独自の安全保障プラットフォームを築く先駆者として、未来を切り開く。

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2025年4月28日月曜日

中台で情報戦激化の様相…中国が台湾のサイバー部隊を名指し非難—【私の論評】中台サイバー戦争の最前線:台湾侵攻より現実的なデジタル戦の脅威

中台で情報戦激化の様相…中国が台湾のサイバー部隊を名指し非難

まとめ
  • サイバー空間での情報戦の激化: 現代の情報戦はサイバー空間が主戦場となり、中国と台湾の間で対立が激化。中国国家安全省が台湾国防部所属の4人をサイバー攻撃関与者として特定し、氏名やIDを公開する異例の措置を取った。
  • 台湾のサイバー部隊と中国の牽制: 台湾は2017年にサイバー専門部門を設立し、中国への情報窃取や破壊工作を行ったとされるが、中国はこれを阻止したと主張。台湾の軍事審判制度復活への対抗として、中国は情報公開で能力を誇示。
  • 中国のサイバー戦能力と警告: 中国はサイバー戦部隊を強化し、台湾の民進党政権を「台湾独立を目論む」と非難。情報公開は台湾当局や住民への威嚇と国内監視強化を意図し、情報戦の緊張の高まりを示す。

現代の情報戦は、かつてのスパイ活動とは異なり、サイバー空間が主戦場となっている。元RKB解説委員長の飯田和郎氏が4月28日のRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』で解説したところによると、中国と台湾の間で情報戦が激化している。中国国家安全省は、台湾国防部所属の4人を中国へのサイバー攻撃に関与したとして特定し、氏名、顔写真、台湾のIDナンバーまで公開する異例の措置を取った。

台湾は2017年にサイバー専門部門を設立し、中国への機密情報窃取や破壊工作、反プロパガンダ活動を行ったとされるが、中国はこれを全て阻止したと主張。中国は台湾の軍事審判制度復活への牽制として情報を公開し、情報収集力とサイバー戦能力を誇示。日本の防衛白書によると、中国のサイバー戦部隊は強化されており、台湾の民進党政権への警告と国内市民への監視強化も意図している。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】中台サイバー戦争の最前線:台湾侵攻より現実的なデジタル戦の脅威

まとめ
  • 中台間の情報戦はサイバー空間で激化し、中国が2025年3月に台湾のサイバー部隊4人を名指し公開、情報収集力と威嚇を示す。
  • 台湾の2017年設立のサイバー部隊が中国への攻撃を仕掛けたとされるが、中国は阻止と主張。台湾の軍事審判制度復活への牽制が背景。
  • 2024年、台湾へのサイバー攻撃が倍増(1日240万件)、重要インフラを標的に。中国のグレーゾーン戦術と偽情報キャンペーンが民主プロセスを脅かす。
  • 台湾侵攻はノルマンディー上陸作戦を上回る困難さで非現実的。サイバー戦は低コストかつ即効性が高く、現実的な脅威。
  • 地政学的対立と技術進化がサイバー戦争を加速。インド太平洋の安全保障に影響し、国際的なサイバーセキュリティ基準と台湾支援が急務。
台湾軍の「資通電軍(情報電子戦軍)指揮部」

現代の情報戦は、サイバー空間を舞台に中台間で火花を散らす。中国国家安全省が2025年3月、台湾国防部の情報通信電子戦司令部(ICEFCOM)に属する4人をサイバー攻撃の首謀者として名指し、氏名、顔写真、IDナンバーを公開した。この大胆な行動は、中国の情報収集力の凄まじさを示し、台湾の当局や民衆を震え上がらせる狙いがある。台湾はこれを「でっち上げ」と一蹴し、対決姿勢を鮮明にする。
台湾は2017年にサイバー専門部隊を立ち上げ、中国への機密窃取や破壊工作、反プロパガンダを仕掛けたと中国は主張する。中国はこれをことごとく跳ね返したと豪語するが、その裏には台湾の頼清徳総統がスパイ防止策として軍事審判制度を復活させたことがある。中国の情報公開は、この動きへの強烈な牽制だ。日本の2024年防衛白書によれば、中国のサイバー戦部隊は3万人規模で再編された可能性があり、その力は侮れない。
2024年、サイバー戦争は新たな段階に入った。台湾国家安全局の報告では、2024年に政府ネットワークへのサイバー攻撃が1日240万件に激増し、前年の2倍に達した。これらは中国の国家支援ハッカーの仕業で、政府だけでなく通信、交通、防衛関連の基盤を狙う。フィッシングやDDoS攻撃が猛威を振るい、中国の軍事演習時には台湾の交通や金融への嫌がらせが急増した。台湾は多くの攻撃を防いだが、中国の執拗な攻勢は脅威そのものだ。
「Anonymous 64」を伝える中国の英語メディア
中国は台湾のハクティビスト集団「Anonymous 64」を名指しで非難し、軍関係者3人の個人情報を暴露。この集団が中国の電力網や通信網を攻撃したと糾弾する。台湾はこれを中国のプロパガンダと切り捨て、逆に自らが攻撃の標的だと訴える。中国のグレーゾーン戦術も過熱する。2025年4月の「海峡雷霆-2025A」演習では、東シナ海で実弾演習を繰り広げ、台湾のエネルギー施設や港湾への模擬攻撃動画を公開。TikTokを通じた偽情報や反米プロパガンダが台湾のソーシャルメディアを席巻し、民衆の信頼を揺さぶる。
台湾はICEFCOMを中心にサイバー戦を強化する。1000人の精鋭が中国の軍事システムに侵入し、ミサイル追跡に成功。侵攻時には同盟国との連携時間を稼ぐ戦略だ。中国のサイバー企業が台湾の「Green Spot」(台湾に拠点を置くサイバー攻撃グループ)による攻撃を指摘するように、台湾の力は中国の防衛計画を脅かす。
中台の緊張を語る時、台湾侵攻の可能性がよく持ち出される。だが、これはノルマンディー上陸作戦を凌ぐ史上最大の作戦を必要とし、地理的制約や国際的反発を考えれば、すぐには実現しない。対して、サイバー空間の戦いは低コストで即効性があり、物理的リスクもない。軍事インフラの破壊、経済の混乱、国民の動揺を直接引き起こすサイバー攻撃は、はるかに現実的な脅威だ。中国は台湾の基盤や民主プロセスを狙い、戦わずして優位を握ろうとする。
史上最大の作戦 ノルマンディー上陸作戦
この激化の根底には、地政学的対立と技術の進化がある。頼清徳の独立志向や米国の台湾支援が中国の警戒心を煽り、AIや偽情報の活用で攻防は高度化する。サイバー攻撃は軍事から心理戦、経済戦へと広がり、台湾の団結と安定を切り崩す。中国の情報公開や演習連動の攻撃は、台湾への圧力と世界への力の誇示だ。一方、台湾のサイバー強化は中国の侵攻意図への抑止力となる。

この対立は、インド太平洋の安全保障を揺さぶる。米国や日本の関与が欠かせない。サイバーセキュリティの基準確立と台湾の支援は急務だ。中台のサイバー戦争は、民主主義と地域の安定を賭けた闘争だ。物理的侵攻が非現実的な今、サイバー空間こそ台湾の存続と平和を脅かす主戦場である。国際社会は結束し、ルール作りと防御力強化に動くべきだ。台湾の抵抗力と地域の未来を守る支援策が、今、求められている。

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2025年4月27日日曜日

中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も—【私の論評】中国の教育崩壊:1222万人の若者が絶望に沈む共産党の失策

中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も

まとめ
  • 中国の若者の間で、過酷な労働環境や経済的圧力から逃れるため、努力を拒み引きこもる「ネズミ人間」が増加。これは「寝そべり族」の進化形で、1日中ネットサーフィンし、デリバリーで食事を済ませる生活が特徴。
  • 背景には、2010年代の中国経済の急成長と「996勤務」による競争激化、賃金停滞、生活費上昇、若年失業率16.5%(2025年3月)があり、若者は「高圧環境」への反抗として社会から離脱。
  • 共産党は「ネズミ人間」が主流化すれば脅威となると警戒し、ワークライフバランス促進や雇用対策を打ち出すが、2025年に過去最高の1222万人の卒業生が見込まれる中、効果は不透明。
ネズミ人間 AI生成画像

中国で、過酷な労働環境や経済的逆風から逃れるため、若者の間で「ネズミ人間」という新たなトレンドがSNSを中心に広がっている。これは、2021年頃に流行した最低限の生活しかしない「寝そべり族」の進化形で、努力や社会参加を拒み、引きこもって1日中ベッドでネットサーフィンし、デリバリーで食事を済ませるライフスタイルを自嘲的に指す。

背景には、2010年代のITブームや「996」(午前9時~午後9時、週6日労働)といった過酷な働き方による競争激化、賃金停滞、生活費高騰、2025年3月の若者(16~24歳)の失業率16.5%(学生除く)など、不安定な社会状況がある。ロンドン大学のスティーブ・ツァン氏は、これを「高圧環境」への若者の反抗と分析。

一部の若者は、親世代の経済成長による貯蓄に支えられ、仕事を完全に放棄する者もいる。中国政府は3月にワークライフバランス促進やインターンシップ拡大、雇用奨励金など経済活性化策を発表したが、2025年に過去最高の1222万人の大学・大学院卒業生が見込まれる中、効果は不透明。ツァン氏は、習近平国家主席の技術大国目標には若者の労働意欲が不可欠だが、「ネズミ人間」が少数派にとどまらず主流化すれば、中国共産党にとって深刻な問題になり得ると警告する。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】中国の教育崩壊:1222万人の若者が絶望に沈む共産党の失策

まとめ
  • 中国の高等教育投資は、若者の夢と経済成長を支えるはずだったが、2025年の1222万人の卒業生に対し、若年失業率17.6%(2024年9月)による「過教育失業」が深刻化し、失敗に終わる。
  • 地方大学の質の低さや暗記偏重の教育が、卒業生の創造性や労働市場ニーズとのミスマッチを招き、米国、EU、日本の成功例(高収入、低失業率、産学連携)に遠く及ばない。
  • 共産党の統制が大学の自由を奪い、人的資本投資の不足や都市・農村の教育格差が問題を悪化させ、「ネズミ人間」のような社会離脱者を生む。
  • 教育の質向上、産学連携、大学自治、公平な機会が必要だが、共産党の独裁下では民主化や法治国家化がなく、政治と経済が不可分に結びついていて改革は不可能。
  • 共産党は若者を切り捨てAIに依存するだろうが、この矛盾は社会の不満と経済停滞を加速させ、党自身の崩壊を招く暗黒の未来へ向かう。
中国伝播大学2024年卒業式

中国の高等教育投資は、若者の夢を花開かせ、経済を世界の頂点に押し上げるはずだった。だが、現実は無残だ。2025年に1222万人の大学・大学院卒業生が世に送り出されるが、2024年9月の若年失業率は17.6%に急騰し、過剰な供給が「過教育失業」の泥沼を広げている。

清華大学や北京大学は世界に名を轟かせるが、地方の新設大学は資金も教員の質も底をついている。卒業生はIT企業や成長産業の要求に追いつけず、サービス業に沈む。河南省の大学を出た若者が都市で低賃金の雑用に追われる姿は、教育の崩壊を突きつける。

教育は暗記に偏り、創造性や問題解決力は育たない。米国の学生に遠く及ばないのだ。「十三五計画」(13次五カ年計画)で金を注ぎ込んだが、人的資本への投資はGDPの3.3%にすぎず、物理的資本の45%に押し潰される。経済的リターンは微々たるものだ。文化大革命で中断された高考(大学入学試験)が1977年に復活した後も、雇用の改善はわずかで、高給の仕事にありつくのは束の間の夢にすぎない。

対して、米国、EU、日本は高等教育投資で輝く成功を収めている。米国では、スタンフォードやMITの卒業生がシリコンバレーで起業し、GoogleやAppleで世界を変える。連邦準備制度の報告によれば、大学卒業生の生涯収入は高校卒の2倍だ。

EUでは、ハイデルベルク大学やエコール・ポリテクニークが産学連携で革新を生み、SAPやシーメンスがAIやIoTで世界を牽引する。欧州委員会のデータでは、大学卒の失業率は非卒の半分以下で、賃金は30~40%高い。

日本では、東京大学や京都大学が半導体やロボティクスで世界をリードし、トヨタのハイブリッド技術を支える。文部科学省の統計によれば、大学卒の年収は高校卒より30~50%高い。これらの国では、労働市場に合った教育、質の高い学び、投資のバランス、大学の自由、公平な機会が富を築く。

中国の大学入学試験(高考)

中国の惨状は、こうした条件が欠けているからだ。数を増やすことに狂奔し、地方大学の質は地に落ちた。経済成長の鈍化と産業の変化が卒業生の需要を減らし、雇用のミスマッチを悪化させた。人的資本への投資は貧弱で、都市と農村の教育格差は広がる。農村の学生は知力も健康も不利だ。

共産党の鉄の統制は大学の自由を絞め殺し、カリキュラムは党の命令に縛られる。創造性は潰され、革新は生まれない。「996勤務」の過酷さと競争の重圧は、若者の心を粉々にし、「ネズミ人間」という逃げ場に追いやる。SNSには、デリバリーで飯を済ませ、引きこもる姿を自嘲する投稿が溢れる。教育が成功への道を開かず、絶望が若者を飲み込むのだ。

この破滅を覆すには、教育の質を高め、産学連携を強め、大学の自由を広げ、公平な機会を確保するしかない。だが、共産党の独裁下では、それは空しい夢だ。一党支配は学問の自由を踏みにじり、経済と政治の癒着は資源を食い潰す。法治国家の不在は公平性を葬る。

民主化、経済と政治の分離、法治国家化がなければ、大学は革新の場にならず、労働市場との調和も教育の質も上がらない。だが、共産党はそんな変革を絶対に許さない。権力の座を死守するため、改革の芽を摘み取る。


現状、共産党は若者を切り捨て、AIや技術開発に突き進むだろう。だが、これは本末転倒だ。教育投資は社会を豊かにするためにある。共産党は自己保身と党の利益のためだけに動く。この矛盾は日々膨らみ、若者の絶望と社会の不満を爆発寸前まで高める。

行き着く先は、経済の停滞と社会の分断だ。「ネズミ人間」の増殖は、希望を捨てた若者が社会から逃げる姿そのものだ。共産党の支配が続く限り、この負の連鎖は止まらない。中国は技術大国への道を閉ざし、閉塞感に沈む。

共産党が若者を切り捨て、AIにすがる愚策は、党自身の首を絞める毒となる。若者の未来を潰し、社会を腐敗させる暗黒の未来が待つだけだ。教育で未来を切り開くはずの若者が、引きこもりに逃げる現実を変えるには、共産党の体制をひっくり返すしかない。だが、それは夢のまた夢だ。共産党の鉄の意志は、変革を殺し、国を内側から蝕む。

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2025年4月26日土曜日

英紙の視点「トランプ関税によって日本が持つ圧倒的な“生存本能”が試されている」—【私の論評】トランプ関税に挑む日本の魂:フィナンシャル・タイムズの浅薄な幻想

英紙の視点「トランプ関税によって日本が持つ圧倒的な“生存本能”が試されている」

まとめ
  • グローバル化の危機: トランプ2期目の保護主義政策(関税重視、移民批判)やHSBC会長の「グローバル化終焉」発言により、世界経済を支えたグローバル化が揺らぎ、歴史的転換期を迎えている。
  • 日本のグローバル化による成長: 日本は戦後約80年間、グローバル化の恩恵で経済大国に躍進(1960年代後半に世界2位)、海外展開で企業収益を拡大し、世界経済と連動した成長を遂げた。
  • 平和と貿易の戦略: 資源不足を貿易で克服し、米軍の保護下で平和主義的な起業家精神を発揮、「沈まない空母」として地政学的地位を確立し、文化大国としての富を築いた。
  • トランプ政権の影響: 関税政策や日米安保への疑念が日本に経済的・地政学的打撃を与える可能性が高く、関税免除失敗などで国内の不安が増大している。
  • 日本の生存本能: 明治維新や戦後復興で示した適応力とプラグマティズム(イデオロギーを捨て生存優先)を発揮し、過去の迅速な戦略(例:天安門事件後の中国進出)を活かして危機を乗り越える可能性がある。

トランプ2期目の発足により、世界経済を支えてきたグローバル化が深刻な危機に瀕している。英経済紙「フィナンシャル・タイムズ」は、明治維新と戦後復興という二つの歴史的転換期を乗り越えた日本の「生存本能」に注目し、この激動の時代を生き抜くヒントがあると論じる。グローバル化は長年、政治指導者や企業経営者、歴史家に支持され、世界に安定と繁栄をもたらしてきたが、トランプ大統領の関税重視政策や副大統領J・D・バンスの移民批判、さらにはHSBC会長の「グローバル化終焉」発言により、その基盤が揺らいでいる。

日本は戦後約80年間、グローバル化の恩恵を最大限に受け、1960年代後半には世界第2位の経済大国に躍進。バブル崩壊で中国に抜かれた後も、企業の海外展開を加速させ、売上高は1991年比で約3倍に成長した。CLSA証券のストラテジストは、日本企業の収益が世界経済の動向と密接に連動していると指摘。平和主義的な起業家精神と貿易で天然資源不足を克服し、米軍の保護下で「沈まない空母」として地政学的地位を確立、文化大国としての富と国際的影響力を築いた。

しかし、トランプ政権の保護主義や日米安保への疑念は、日本に経済的・社会的な打撃を与える可能性が高い。2月の石破茂首相の訪米は成功とされたが、関税免除の約束を取り付けられなかったことで国内の不安が高まる。それでも日本は、過去の適応力とプラグマティズムで知られ、1989年の天安門事件後の中国進出のような迅速な戦略でグローバル化を活用してきた。明治維新や戦後復興期に示した「イデオロギーを捨て生存を優先する」姿勢は、少子高齢化や人口減少に直面する現代でも有効だ。日本の比類なき生存本能が、トランプ政権下の新時代でどのように発揮され、危機を乗り越えるのか、その展開が大いに注目される。

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【私の論評】トランプ関税に挑む日本の魂:フィナンシャル・タイムズの浅薄な幻想

まとめ
  • 天皇を中心とする霊性の文化の重要性:日本の真の力は、天皇を頂点とする霊性の文化に根ざし、これは日本人の魂の基盤であり、捨てれば日本のアイデンティティが失われる。
  • フィナンシャル・タイムズの誤った分析:記事は明治維新や戦後復興の適応力を称えるが、霊性の文化を無視し、グローバル化の終焉やトランプの脅威を誇張、プラグマティズムを過剰に礼賛する。
  • 明治維新の成功とドラッカーの洞察:ドラッカーは、明治維新が「和魂洋才」で天皇の文化を守りつつ西洋技術を融合させたため成功したと評価、世界が日本に学ぶべきだと説く。
  • 中国国交回復の誤り:1972年の中国との国交回復は、霊性の文化を軽視した近視眼的判断であり、中国の台頭とサプライチェーンの脆弱性を招いた失敗。
  • 現代日本の試練と使命:少子高齢化や技術遅れに直面する日本は、天皇の霊性の文化を保持しつつ、新たな戦略で人口減少や技術の壁を克服する必要がある。
 関税男(tarrif man)を自認するトランプ大統領

トランプの関税が世界を揺らし、日本の真価が試されている。英経済紙「フィナンシャル・タイムズ」は、明治維新や戦後復興の適応力を称えるが、その目は曇っている。日本を動かすのは、天皇を頂点とする霊性の文化だ。これは単なる観念ではない。日本人の魂の根底に流れる、生きる力そのものだ。これを捨てれば、日本は消える。ピーター・ドラッカーは、明治維新の奇跡をこの文化の力に帰し、世界が日本に学ぶべきだと断言する。フィナンシャル・タイムズは、この真実を見ず、浅薄な危機論と空疎な楽観論に溺れる。その誤りを、暴く。

グローバル化の終焉? 日本の不屈の力

フィナンシャル・タイムズは、トランプの保護主義やHSBC会長の言葉を振りかざし、「グローバル化の終焉」を騒ぐ。だが、これは誇張だ。世界貿易機関(WTO)の2024年データでは、世界貿易量は3.2%増と堅調だ(WTO推計)。日本企業の海外売上高は1991年比3倍に跳ね上がり、グローバル化の力を証明する(JETROデータ)。トランプの関税は自動車産業を苦しめるが、ASEANへのサプライチェーン移行やデジタル経済が新たな道を切り開く。記事は、この現実を無視し、終焉の幻想に囚われる。

日本の戦後成長をグローバル化と米国の庇護だけに帰するのも的外れだ。1960年代の高度成長は、内需とインフラ投資が牽引し、輸出はGDPの10%未満だった(経済企画庁データ)。土地改革、財閥解体、教育投資、通産省の産業政策が経済を鍛えた。ソニーやトヨタの技術、アニメやJ-POPの文化が世界を魅了した。日本の強さは、天皇を中心とする霊性の文化に根ざす。記事は、この魂の力を軽んじ、表層的な物語に逃げる。

トランプの影と日本の底力

下関戦争の写真

記事は、トランプの関税や日米安保への疑念が日本を「経済的・地政学的に叩きのめす」と煽る。笑止千万だ。日本の経済は多角化し、2024年の輸出先は米国(18%)、中国(17%)、ASEAN(15%)が拮抗する(JETROデータ)。関税の衝撃は限られ、円安(2025年4月時点で1ドル=150円)が輸出を後押しする。観光業や半導体の内需も盾となる。日米安保への疑念はトランプの虚勢に過ぎず、米国のアジア戦略における日本の価値は不動だ。記事は、日本の底力を侮る。

「圧倒的なプラグマティズム」を礼賛するが、その中身は空疎だ。幕末の尊皇攘夷は、単なる打算ではない。天皇を頂点とする霊性の文化が、外国への抵抗(長州藩の攘夷決行)や国家観を燃やした。薩摩や長州が開国に転じたのは、武士の内紛や欧米の軍事力(1863年の薩英戦争)との対峙が生んだ苦渋の選択だ。明治維新を打算の勝利と飾る記事は、尊皇攘夷の魂を見ない。ドラッカーは、明治維新の成功を、天皇中心の文化を守ったことに帰す。日本の適応力は、霊性と現実の融合にある。記事はこの真実を踏みにじる。

霊性の魂と未来への挑戦


記事が掲げる「イデオロギーを捨てろ」は、日本の魂を切り裂く暴論だ。天皇を頂点とする霊性の文化は、神道や仏教に根ざし、日本人の心を結ぶ。これは観念ではない。生きる力の源だ。尊皇攘夷、明治維新の神道復興(1868年の神仏分離令)、 当時世界的に見ても先進的だった大日本帝国憲法、伝統文化(茶道、能)の保護は、この霊性が導いた。

ドラッカーは、明治維新が「和魂洋才」で西洋技術を日本の魂に溶かし込んだからこそ、非西欧で唯一の成功例となったと喝破する。インドやペルシャが西洋化で躓いた時、日本は天皇の文化を守った。ドラッカーは、グローバル化と文化の衝突を乗り越えるには、「変わるもの」(技術革新)と「変わらないもの」(天皇の霊性の文化)の調和が必要だと説く。天皇は、この「変わらないもの」の守護者として、戦乱やコロナ禍でも日本を支えた。記事は、この魂を無視し、打算に話をすり替える。

この打算の過信は、1972年の中国との国交回復にも表れる。これは明らかに間違いだった。日本の指導者は、経済的利益と国際的調和を期待し、中国共産党との関係を急いだが、これは日本の霊性の文化を軽視した近視眼的判断だ。中国は、その後の経済的台頭(2024年GDPは米国に次ぐ2位)と軍事的膨張(南シナ海の領有権主張)で、アジアの安定を脅かす。

日本企業は中国市場に依存し、サプライチェーンの脆弱性を露呈した(2024年、半導体供給網の混乱)。国交回復は、短期的な利益を追い、天皇中心の価値観や地政学的慎重さを蔑ろにした失敗だ。記事が称える「プラグマティズム」は、こうした歴史的誤りを正当化する危険な幻想である。

現代日本の試練は重い。少子高齢化(2025年で人口の29%が65歳以上)、労働力不足、官僚の硬直性が足枷だ。1989年の中国進出は輝いたが、米中対立と中国の減速(2024年GDP成長率4.5%)下では危険だ。エネルギー高騰やサプライチェーンの混乱も重荷だ。記事はこれを軽視し、「生存本能」と曖昧に逃げる。明治維新や戦後復興は、伊藤博文や吉田茂の外交手腕、若年人口の活力と国際環境に恵まれたが、今は違う。原発再稼働の遅れやデジタル化の停滞が、打算の限界を晒す。トランプ関税への具体策(FTA拡大、産業再編)も示さず、記事は空虚だ。

結論

フィナンシャル・タイムズは、トランプ関税が日本の力を試すと見抜くが、肝心な点で躓く。「圧倒的なプラグマティズム」は中身がなく、尊皇攘夷の魂、天皇を頂点とする霊性の文化を見ず。この文化は観念ではなく、日本人の魂の基盤だ。これを捨てれば、日本は消える。1972年の中国国交回復は、打算の過信が招いた誤りだ。

ドラッカーは、明治維新の奇跡を天皇の文化の力に帰し、世界が学ぶべきだと叫ぶ。記事は、グローバル化の終焉やトランプの脅威を誇張し、高齢化や技術の遅れの試練を軽んじる。その分析は、薄っぺらい危機論と楽観論の寄せ集めだ。日本の使命は、天皇の霊性の文化を守り、人口減少や技術の壁を打ち破る新たな道を切り開くことだ。トランプの嵐など、日本の魂の前では、ただの風だ。

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2025年4月25日金曜日

【コラム】トランプ氏が取り組む6つの戦争、全て敗色濃厚-ブランズ—【私の論評】西側の未来を切り開く中国覇権を粉砕するトランプ6つの戦い!

 【コラム】トランプ氏が取り組む6つの戦争、全て敗色濃厚-ブランズ

まとめ

  • トランプの対立と試練:トランプ大統領は「平和の使者」を自称したが、ウクライナ戦争、中東紛争、イラン核問題、中国との冷戦、台湾問題、貿易戦争の6つの対立に直面し、世界の平和、経済、民主主義に影響を及ぼす分岐点に立つ。
  • 自ら招いた障壁:経済弱体化(株価暴落、リセッション懸念)、同盟国の困惑、戦略的信頼低下、国防総省や国家安全保障会議の混乱がトランプ氏の危機管理を困難にしている。
  • 迅速な対応の必要性:トランプ氏の決断力と効果的な対応が欠如すれば、米国と世界は高い代償を払うリスクがある。

トランプ米大統領は2期目の就任演説で「平和の使者」と自称したが、3カ月後、以下の6つの対立(「戦争」と表現)に直面し、世界の平和、経済、民主主義に影響を及ぼす重要な局面を迎えている。
  1. ウクライナ戦争:ロシアの侵攻による進行中の戦争。トランプ氏は制裁で和平を目指したが、プーチン大統領の強硬姿勢で難航。ロシアへの圧力強化(制裁やウクライナ支援)か、戦争の放棄かを選ぶ必要があり、欧州やNATOの安全保障に影響。
  2. 中東の戦争(イエメン):イエメンの親イラン武装組織フーシ派への米国の攻撃。抑止に失敗し、紛争が激化中。
  3. 中東の戦争(イスラエル・ハマス):イスラエルがハマス壊滅を目指す戦闘。イエメン紛争と並行し、中東の緊張を高める。
  4. イランの核開発を巡る潜在的な戦争:イランの核兵器開発が大規模戦争の引き金となるリスク。トランプ氏は穏健な交渉(最小限の抑止)か、強硬な要求(核プログラム根絶)を迫られ、夏までに合意がない場合、米国やイスラエルによる軍事行動の決断が必要。
  5. 中国との新たな冷戦:米中間の対立が激化。台湾問題では、中国の軍事的圧力に対し、商業紛争の後退(弱さの露呈)か、全面対立の覚悟かを選ぶ必要がある。
  6. 貿易戦争:トランプ氏が導入した高関税による世界各国との商業対立。中国を除く国への関税は90日間猶予されたが、長期的な通商合意か、対中競争での同盟強化が急務。
これらの課題に対し、トランプ氏は自ら招いた経済弱体化(株価暴落、資本流出、リセッション懸念)、同盟国の困惑、戦略的信頼低下、国防総省や国家安全保障会議の混乱といった障壁に直面。迅速かつ効果的な対応がなければ、米国と世界に深刻な代償が伴う。
ブルームバーグ

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】西側の未来を切り開く中国覇権を粉砕するトランプ6つの戦い!

まとめ
  • 中国の覇権への対抗戦略:トランプは、経済支配、軍事拡張、技術覇権、一帯一路による中国の脅威を最大の危機と見なし、6つの対立(ウクライナ戦争、中東紛争、イラン核問題、中国との冷戦、台湾問題、貿易戦争)を意図的に仕掛ける。目的は中国の全体主義体制を民主化や法治国家化に変えることだ。
  • 元の記事の甘い認識:元の記事はトランプの行動を「混乱」や「失策」と批判するが、中国の覇権がもたらす経済奴隷化、軍事抑圧、監視社会の恐怖を軽視する傍観者的視点であり、危機の深刻さを見誤っている。
  • ディカップリングと西側結束:トランプは関税や技術的ディカップリングで中国を孤立化させ、ウクライナや中東の紛争を活用してNATO、アジア、イスラエルを対中国の戦線に引き込む。西側の再編は中国の分断戦略を打ち破る。
  • 経済自立とエネルギー革命:株価暴落やリセッションを中国依存解消の代償と割り切り、シェールガスや石油の生産拡大でエネルギー革命を推進。2030年までにエネルギー自給率90%を目指し、西側の経済と安全保障を強化する。
  • 長期的な成否の評価:トランプの戦略の成否は数年後の未来で決まる。経済混乱や同盟国の離反は試練だが、対中貿易赤字の縮小や西側の結束が鍵となり、勝利はトランプの手にかかっている。
トランプ米大統領が繰り出す6つの対立は、中国という米国と西側諸国にとっての最大の脅威に挑むための果敢な戦略だ。上の記事は、トランプの行動を傍観者的に眺め、「混乱」や「失策」と決めつける。しかし、これは中国の覇権が世界を覆う恐怖—経済の奴隷化、軍事による抑圧、監視社会の到来—をあまりにも軽んじた甘い認識だ。

中国の経済支配、軍事拡張、技術覇権、国際的影響力は、自由と繁栄を根こそぎ奪う。好むと好まざるに関わらず、西側は中国と立ち向かわねばならない。しかし、対立とはいっても、何も中国を滅ぼすわけではない、目指しているのは、どんな形であれ現在の中国の全体主義体制から、民主化、政治と経済の分離、法治国家化された体制に変わることだ。その先頭に立つのがトランプだ。

中国の脅威を打ち砕く戦いの火蓋
中国の脅威は絵空事ではない

中国は西側にとって最大の敵だ。サプライチェーンを牛耳り(レアアースの9割を支配)、南シナ海や台湾で軍事力を振りかざし、ファーウェイの5GやAIで技術の頂点を狙い、一帯一路で途上国を手中に収める。もし中国の覇権が世界を覆えば、経済は中国の奴隷と化し、軍事力で自由が踏みにじられ、監視技術で個人の尊厳が消える。

上の記事は、この危機を軽視し、トランプの6つの対立を「混乱」と誤解する。トランプは真実を見抜いている。中国を経済的・外交的に孤立させ、米中「ディカップリング」を加速させるため、対立を意図的に仕掛けるのだ。関税政策は、中国を除く国に90日間の猶予を与え、中国への圧力を絞り込み、西側との協調を固める巧妙な一手だ。

2025年3月のウォール・ストリート・ジャーナルでは、ベセント財務長官が「中国はトランプの罠に落ちた」と発言。中国の過剰反応が国際社会での孤立を招いた。ウクライナ戦争や中東紛争も、中国の同盟国(ロシア、イラン)を牽制し、西側を対中国戦線に引き込む。

トランプのウクライナ支援継続は「中国への警告」であり、2025年1月のポリティコでは、トランプが「中国のAIが民主主義を脅かす」と警告し、技術的ディカップリングを加速する方針を打ち出したことを報道した。中国の脅威を打ち砕く戦いは、火蓋を切ったばかりだ。

西側を一つに束ねる同盟の再編

中国の覇権は、西側を分断し、経済で縛り、軍事で脅し、技術で監視する。元の記事は、トランプの同盟国との摩擦を「失敗」と決めつけるが、これは中国の脅威に対する西側の覚醒を促す戦略の一環ととらえるべきだ。

トランプはウクライナや中東の紛争を巧みに操り、欧州(NATO)、アジア(日本、韓国、オーストラリア)、イスラエルを対中国の鉄壁の戦線に引き込む。一時的な困惑は、大きな目的の前では小さな代償だ。トランプの強硬姿勢は、西側を新たな秩序に導く戦略だ。ウクライナでのロシア制裁やイラン核問題の強硬策は、中国の同盟国を弱らせ、西側に共同の戦いを迫るものだ。

2025年1月のフィナンシャル・タイムズは、トランプがNATOに「防衛費増額と対中連携」を突きつけた事実を報じる。関税政策は「西側結束の起爆剤」と評価できる。2025年3月の豪州ABCニュースでは、トランプがAUKUSを強化し、「中国の南シナ海進出を抑止」と表明したことが報道された。トランプの戦いは、西側を一つに束ね、中国の脅威に立ち向かう壮大な再編劇でもある。

経済の自立とエネルギー革命の切り札

Drill Baby Drill(掘って掘って掘りまくれ)


中国の経済支配—サプライチェーンやレアアースの独占—を打ち破るには、米国の自立が不可欠だ。元の記事は、トランプの経済混乱を「弱点」と批判するが、中国の覇権が広がれば、西側経済は中国の足元にひれ伏す。トランプは株価暴落やリセッション懸念を、中国依存を断つ「必要コスト」と割り切っているのだろう。

そうして、エネルギー革命は、トランプの最大の切り札だ。脱炭素・再生可能エネルギーからの脱却、シェールガスや石油の生産拡大、小型モジュール炉の実用化、核融合炉の開発は、中国の資源支配を打ち破るだろう。トランプの1期目(2017-2021年)では、米国が2020年に世界最大の石油・ガス生産国となった(米国エネルギー情報局)。

2025年2月のロイターは、トランプがサウジアラビアと組み、「中国のエネルギー依存を減らす」と報じた。2025年3月のブルームバーグは、「2030年までにエネルギー自給率90%」の目標を掲げたことを報じた。エネルギー革命は、経済を鍛え直し、西側のエネルギー安全保障を固める。

結論

トランプは、中国の脅威—経済の奴隷化、軍事の抑圧、監視社会—に立ち向かう西側の旗手だ。元の記事は、トランプの戦いを冷ややかに眺め、中国の覇権がもたらす恐怖を軽んじる。6つの対立は、中国を孤立させ、西側秩序を守るための罠だ。エネルギー革命は、経済を鍛え、西側の自由を支える。

経済混乱や同盟国の離反、エネルギー政策の不確実性は試練だが、トランプの戦いは数年後の未来で評価される。そうして、この戦いは、既存の経済合理性や軍事合理性には当てはまらない戦いになる。中国の闇に立ち向かうトランプの戦いは、西側の命運を握る。勝利は、トランプの手にかかっている。

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2025年4月24日木曜日

「前例ない干渉」と政権非難 大学学長らが共同声明―米—【私の論評】腐敗まみれで奈落の底に落ちた米大学:ルーズベルト神格化と倫理崩壊でトランプの介入を招く

 「前例ない干渉」と政権非難 大学学長らが共同声明―米

まとめ

  • トランプ政権の圧力: 政権は大学にDEI見直しや反ユダヤ主義取り締まりを要求し、従わない場合は補助金打ち切りで圧力。
  • 大学の反発: ハーバード大など250人以上が介入を非難する声明を発表し、自由な学問を強調。ハーバード大は提訴。
ハーバード大学の教授陣 記事の内容とは直接関係はありません

米国の大学学長や学術団体代表ら250人以上が、トランプ政権の高等教育への過剰な介入と政治的干渉を非難する共同声明を発表。政権は「多様性、公平性、包括性(DEI)」推進の見直しや反ユダヤ主義取り締まり強化を大学に求め、従わない場合は補助金打ち切りで圧力をかけている。

声明は不当な介入を認めず、自由な大学運営を重視し、建設的な関与を要求。ハーバード大は補助金凍結の無効を求めて政権を提訴した。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】腐敗まみれで奈落の底に落ちた米大学:ルーズベルト神格化と倫理崩壊でトランプの介入を招く

まとめ

外国資金の汚染: 中国の「千人計画」で研究流出、150人以上関与、MD Andersonで解雇(NIH, 2020)。ハーバードのリーバー教授が関与隠しで逮捕(DOJ, 2020)。MITの伊藤穰一がエプスタインから52万5,000ドルを受け、匿名化で隠蔽(New Yorker, 2019)。
リベラル偏向と神格化: DEIで保守派を排除、共和党支持者の信頼31%に急落(Gallup, 2023)。歴史研究がルーズベルトのニューディールを神格化、日本への戦争責任検証を避ける(Eric Fonerの教科書)。モーガン、慰安婦研究で排除され日本移住(JAPAN Forward, 2024)。
学術的自由の崩壊: スタンフォードやワシントン大学の誤情報研究が保守派の訴訟で中止(Chronicle, 2025)。フロリダ州がDEI禁止、カリキュラム制限(Inside Higher Ed, 2023)。
社会の信頼喪失: トランプが大学を「左翼の洗脳機関」と攻撃、資金削減を脅迫(Truth Social, 2025)。伊藤の隠蔽でXにマネーロンダリング疑惑。モーガンが「チャイナマネー腐敗」を非難(Okinawa Speech, 2018)。
トランプの介入: 170以上の大学がDEI禁止と補助金打ち切りを非難、ハーバードが提訴(Harvard Crimson, 2025)。モーガンは「腐敗是正」と支持、伊藤の事件は倫理監視強化の口実(X, 2024)を与えた。

米国の大学は、かつて学術の自由を誇る聖域だった

米国の大学は、かつて学術の自由を誇る聖域だった。しかし、今、倫理の崩壊、リベラルなイデオロギーの暴走、民主党の価値観への盲従が、大学を腐敗まみれの奈落の底に突き落としている。外国からの汚れた資金、保守派への弾圧、倫理を無視したスキャンダル、そして歴史研究がフランクリン・ルーズベルトへの過剰な礼賛に染まる惨状が、トランプ政権の介入を招いている。大学は自らの手で信頼を破壊し、危機に沈む。この実態を、目を背けられない事実とともに暴く。

外国政府の暗い影が、大学の信頼を食い潰している。中国の「千人計画」は、米国の科学者を誘惑し、研究成果を中国に流出させる罠だ。2018年以降、NIHは150人以上の科学者が関与し、87の機関で違反を確認。MD Anderson Cancer CenterやMoffitt Cancer Centerでは、関与者が解雇された(NIH, 2020)。ハーバード大学のチャールズ・リーバー教授は、千人計画を隠し、2020年に逮捕された(DOJ, 2020)。

さらに、MITメディアラボの元所長・伊藤穰一(現千葉工業大学学長)は、性犯罪者ジェフリー・エプスタインから52万5,000ドルの寄付を受け取り、匿名化して隠蔽した。エプスタインを「ヴォルデモート」と呼び、ビル・ゲイツらからの750万ドル以上の寄付を仲介。伊藤はエプスタインの邸宅を訪れ、若い女性を連れた彼をラボに招くなど、倫理をかなぐり捨てた。2019年に辞任したが、MITの調査は「集団的判断ミス」と断じた(MIT Report, 2020)。これが、米国の大学の倫理の底だ。

性犯罪者ジェフリー・エプスタイン

リベラルなイデオロギーの暴走が、腐敗を加速させる。DEI(多様性、公平性、包括性)は、リベラルな価値観を押し付け、保守派を締め出す。2023年のギャラップ調査では、共和党支持者の大学への信頼は31%に急落(Gallup, 2023)。歴史研究は、民主党の理念に縛られ、フランクリン・ルーズベルトのニューディールや戦争指導を神聖視する「神格化」に陥っている。

ルーズベルトの経済政策は大成功と持ち上げられ、日本への戦争責任やヤルタ協定の検証は避けられる(例:Eric Fonerの教科書)。この偏向は、東京裁判史観やWGIP(戦争責任情報プログラム)を固守し、客観性を葬る。米国出身の歴史学者ジェイソン・モーガンは、ウィスコンシン大学で慰安婦問題の保守的研究を「歴史修正」と非難され、指導教員に排除された。

米国での未来を絶たれ、日本の麗澤大学に移住。「米国の大学はポリティカル・コレクトネスとルーズベルト神格化で腐り、研究は日本でしかできない」と訴える(JAPAN Forward, 2024)。ハーバードのJ・マーク・ラムザイヤーも、慰安婦「契約説」で「否定論」と攻撃された(2021)。伊藤のエプスタイン事件は、リベラルな「倫理」を掲げるMITが、金銭を優先した偽善を暴いた。

J・マーク・ラムザイヤー氏の動画のキャプチャー画像

学術の自由は、息絶えつつある。スタンフォードやワシントン大学の誤情報研究は、保守派の訴訟で潰された(Chronicle, 2025)。フロリダ州はDEIを禁止し、大学のカリキュラムを縛った(Inside Higher Ed, 2023)。モーガンは、米国の歴史研究が民主党の枠に縛られ、広島・長崎原爆投下の正当化や日本の戦争責任の過剰な強調を押し付けると糾弾。伊藤のスキャンダルは、倫理の基盤が崩れた大学の姿をさらけ出した。

社会の信頼は、地に落ちた。トランプは大学を「左翼の洗脳機関」と切り捨て、連邦資金削減を突きつける(Truth Social, 2025)。エプスタイン事件で伊藤の隠蔽が明るみに出て、Xではマネーロンダリング疑惑が飛び交う。モーガンは「米国はチャイナマネーで腐敗」と保守派の怒りを煽った(Okinawa Speech, 2018)。これらの声が、大学への攻撃を後押しする。

トランプ政権の介入は、この危機への答えだ。2025年4月22日、170以上の大学がDEI禁止や補助金打ち切りを非難した(Harvard Crimson, 2025)。ハーバードは補助金凍結で提訴(Reuters, 2025)。モーガンは介入を支持し、「リベラルな腐敗とルーズベルト神格化を正す」と断言(X, 2024)。伊藤のスキャンダルは、倫理監視強化の口実を政府に与えた。

米国の大学は、外国資金の汚染(千人計画、エプスタイン)、リベラル偏向(DEI、ルーズベルト神格化)、倫理の崩壊、信頼の喪失で、腐敗まみれの奈落の底に落ちた。モーガンの排除と伊藤のスキャンダルは、介入を招く危機の象徴だ。学術の自由は死に、大学は自ら招いた代償を払う。倫理とバランスを取り戻さなければ、大学の未来は闇に閉ざされる。

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