2020年11月24日火曜日

韓国自動車産業炎上! 「米GM撤退」示唆、EV電池出火「LG」「サムスン」製リコール騒動 ウォン高進行で輸出急減速も―【私の論評】日本が締結する貿易協定にも、翻弄され続ける韓国(゚д゚)!

 韓国自動車産業炎上! 「米GM撤退」示唆、EV電池出火「LG」「サムスン」製リコール騒動 ウォン高進行で輸出急減速も 

韓国GMでは労使問題が起きている

 韓国経済に“冬将軍”到来か。主力の自動車産業で、米ゼネラルモーターズ(GM)が労働組合のストライキを背景に韓国撤退を示唆したほか、韓国産バッテリーを搭載した電気自動車(EV)で出火やリコール騒動が相次いでいる。為替も約2年ぶりのウォン高ドル安水準で、輸出に急ブレーキとなりかねない。

 ◇

 「韓国にこれ以上の投資や新製品を割り当てることができなくなる。非競争的な国にしている」

 深刻な現状を語るのは、GMの上級副社長兼海外事業部門代表、スティーブ・キーファー氏だ。ロイター通信が18日伝えた。韓国での労働組合によるストライキで約1万7000台の生産に影響が出ており、週末には2万台に達するとの見方を示した。

 韓国メディアによれば、韓国GMの労組は17日から20日まで断続的にストを実施したほか、10月から残業・特別勤務拒否も続けた。

 キーファー氏は「短期的に重大な影響を及ぼす」としており、組合に「自動車の生産が人質にされている」とも表現した。

 にもかかわらず、韓国GM労組は23日から25日まで、勤務時間を半減させる新たなストを決議したと朝鮮日報(日本語電子版)が報じた。生産態勢への影響が続くのは確実だ。

 そもそも韓国GMは2014年から6年連続の赤字で、新工場への投資が保留されているほか、同社のカハー・カゼム社長が9月に「労使紛争が悪化すれば、GM本社は韓国からの撤退も検討するだろう」と述べており、撤退が現実味を増している。

 韓国の自動車業界では、最大手の現代(ヒュンダイ)自動車も労使の対立が常態化している。現代自動車グループの起亜自動車労組も24日から27日まで勤務時間を半分にするストに突入した。

 元商社マンで韓国事情に詳しい朝鮮近現代史研究所所長の松木國俊氏は、「韓国の労組は会社の経営が苦しくても、発表される業績を信用せず、目先の利益のために衝突を繰り返す傾向がある。法律も労働者に有利なため組合を抑制することは難しい」と指摘する。

 また、韓国政府が「第2の半導体」とも称し、期待を寄せる韓国産EVバッテリーもトラブル続きだ。

 米GMは17~19年に生産されたシボレーのEV「ボルト」のバッテリーに不具合が見つかったとして、約6万8000台のリコール(回収・無償修理)を発表した。バッテリーは韓国のLG化学製で、米道路交通安全局(NHTSA)が同モデルの火災事故について調査中だという。バッテリーが完全に充電された時に火災が発生する危険があるとしている。

 現代自動車でも、LG化学のバッテリーを搭載した「コナEV」が、昨年7月から先月までの期間に韓国内外で13件の火災を発生させており、韓国や欧米、中国でリコールを実施する。

 そのほか、サムスンSDI製のバッテリーを搭載したBMWやフォードの一部モデルでもリコールが実施されていると韓国メディアは報じている。

 追い打ちをかけるのは、為替のウォン高だ。米大統領選で勝利宣言した民主党のジョー・バイデン前副大統領が巨額の財政支出による景気浮揚策を打ち出していることからドル安が進行、10月はじめの1ドル=1160ウォン台から、今月18日に1103ウォンまでウォン高が進む場面もあった。

 前出の松木氏は「韓国はこれから本格的に訪れるEV時代に期待を寄せていたが、これだけ事故が確認されれば、信用を回復させるのは至難の業だ。為替がウォン高であることからも、短期・中期的に自動車業界が韓国経済を支えるのは難しい」と断言した。

【私の論評】日本が締結する貿易協定にも、翻弄され続ける韓国(゚д゚)!

米GM撤退など、韓国自動車業界には厳しい状況が続いています。しかし、韓国の自動車業界というか、日本と競合する産業などがこのようなことになることは、昨年の1月にはもう予想できました。

日本のメディアなどはほとんど報道しませんが、韓国の自動車産業が不利になったのは、EV電池出火「LG」「サムスン」製リコール騒動だけが原因ではありません。もっと根本的なものがあります。

それは、日本と欧州とのEPAの発効です。このことについては、すでに昨年の年初にこのブログでも予想していました。その記事のリンクを以下に掲載します。
日欧EPA、世界GDPの3割 あす発効、世界最大級の自由貿易圏誕生へ―【私の論評】発効によって一番ダメージがあるのは韓国(゚д゚)!
仏ボルドーのワイン醸造元。日欧EPA発効で欧州産ワインの市場拡大が見込まれる

EPAとは関税撤廃をともない経済連携協定のことです。日欧EPAの規模等はこの記事御覧ください。EPAそのものについては、他のメディアにあたってください。ここでは、詳細は解説しません。

EPAというと、韓国は日本より以前から韓国欧州EPAを締結してきました。そのことが、欧州への輸出ということで考えると、韓国を日本よりは有利にしていました。なぜなら、欧州輸出に際しては、韓国の乗用車は関税が撤廃されているのに、日本車はそうではなかったのです。この有利さが日欧EPAが発効したことでなくなってしまったのです。

さて、日欧EPAが発効するとなぜ韓国に不利になるのか、それが掲載されている部分をこの記事より引用します。
"
例えば、日本からEUへオレンジを100万円分輸出します。EUが設定しているオレンジへの関税は、日本産が10%、韓国産の物が0%であるとすればどうるなでしょうか。
この場合、EU側の輸入者にとっては、
  • 日本産であれば10万円の関税(100万円の10%)
  • 韓国産であれば、関税はゼロ。
という状況だったのです。日欧EPAを結べば、この関税負担分がなくなり、これまでよりも価格競争力をつけた物を輸出できます。これが自由貿易協定を結ぶメリットの一つです。

日欧EPAが発効すると、韓国には、どのような影響があるのでしょか? それを考えるときは、日本とEU、そして韓国の三か国を多面的にとらえる必要があります。一般的に韓国で有名な企業(サムスンなど)は、日本企業と似た製品を輸出しています。しかし、もう少し韓国製品を詳しく見ると、製品の核となる部分は、日本からの輸入に頼っていることが多いです。

つまり、日本から製品に使う部品を輸入して、韓国の工場で最終完成品医にした後、EUへ輸出しています。韓国からの輸出品であれば、韓国とEUとのFTAを使い、関税ゼロで輸出ができます。また、韓国は、アメリカともFTAを結んでいるため、西へ東へと自在に関税ゼロで輸出ができるようにして、自国の競争力を保っていたのです。

ところが、日欧EPAが発効すると、関税面での不利な扱いが徐々に解消されていきます。関税無しで輸出ができるのは、日本の輸出企業にとって大きな追い風です。

では、一方の韓国企業を考えてみましょう。この場合、これまで当たり前にあった日本製品との関税の壁がなくなるため、まさに逆風です。本音のレベルでいうと、韓国企業にとって「日欧EPAの発効」は最も忌み嫌うところでしょう。

日欧EPA発効で、韓国国内自動車業界が少なからず打撃を受けるという見方が出ています。グローバル舞台で競争関係にある日本自動車企業がEU市場で関税引き下げ分を値下げしたり、マーケティング拡大、ディーラー網管理などのさまざまな戦略を通じて韓国車のシェアを蚕食する可能性があるからです。

韓国自動車産業協会の関係者は、『中国市場の供給過剰、米国市場の成長鈍化など主要市場が厳しくなる中、世界3大市場の欧州まで日本に奪われるかもしれないという危機感が強まっている』とし、『製品の競争力を高められるよう全方向での協力が必要な時期』と述べました。

おそらく、今後日本企業の韓国からの引き上げなども予想できるため、韓国の関連株(輸出企業・船会社・自動車など)も安くなりそうです。
"
実際、日欧EPAが発効してから、1年目で日本としては何がどう変わったのか以下に掲載します。


日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が発効して今年の2月1日で1年になりました。相互に関税を引き下げた結果、輸出では自動車や和牛、輸入ではワインが伸びました。国内自動車メーカーなどが恩恵を受け、消費者もより手頃な価格で欧州産品を楽しめるようになりました。一方、欧州産との競争激化に直面し、対応に追われる業界もあります。

日欧はEPAで、相互に貿易品目の9割超を関税撤廃の対象とし、知的財産権の保護や電子商取引など幅広い分野のルールも整備しました。発効により、世界貿易額の4割を占める巨大な自由貿易圏が誕生。政府は日本の実質GDP(国内総生産)を約5兆円(約1%)押し上げる効果があると試算しています。

輸出では乗用車への10%の関税が段階的に引き下げられ、発効8年目に撤廃される。牛肉や日本酒の関税は即時撤廃されました。財務省の貿易統計によると、2019年2~11月の輸出額は、自動車が前年同期比19%増加。和食ブームを追い風に和牛が28%増、日本酒は5%増となりました。

輸入については、関税が撤廃されたワインが12%増加しました。750ミリリットルのワイン瓶が1本当たり100円程度安くなったことに加え、販売店の宣伝が奏功しました。豚肉やチーズの輸入も増えており、国内業者は厳しい競争環境に立たされています。

EUを離脱する英国とは今春にも貿易交渉を始めています。当面は移行期間で、英国は日欧EPAの枠内にとどまることになります。日英交渉では、自動車関税の撤廃時期などが焦点になりそうです。

現在は、自動車の関税が、従来よりは低くなったとはいえ、まだ撤廃されたわけではありません。発効から8年目で撤廃されるわけですから、この時が来ると韓国自動車産業への悪影響はさらに深刻になるでしょう。

日米間も昨年新たな貿易協定を結んでいますから、これも韓国にとっては輸出に関しては、日欧EPAのような効果をもたらしています。

RCEPにも、日本が参加しています。そのため、RCEPでも韓国は日本に対して相対的に有利にはなりません。

GMが韓国からの撤退も検討しているのは、労働争議もありますが、そのほかにも、日欧EPA、日米の貿易協定、RCEPなどで、韓国で車を生産することに意義を見いだせなくなりつつあるという側面もあると思います。

それに今回のコロナ禍です。我が国の輸出依存度は下から2番目の「14.8%」で、米国に次ぐ「内需大国」です。因みに、韓国の輸出依存度は「38.6%」です。コロナ禍で輸出が期待できない現在、輸出依存度が高いことはかなり不利です。韓国はもっと内需を増やすべきでしょう。


国際競争力というと見栄えは良いですが、いざ貿易が不振になれば、悪影響をもろに受けるということです。やはり、米国のように内需を伸ばせるだけ伸ばして、輸出依存度は低いにこしたことはないです。輸出依存度が高いということは、外国の悪影響をもろにかぶりやすいということです。

韓国の産業構造は、日本とかなり似通ったところがあります。今後様々な分野で、韓国は一層不利になっていきます。韓国としては、日本と同じような産業構造を改め、韓国の得意な分野をつくらなければ、この状況しばらく続くことでしょう。韓国はしばらくは、日本が締結する貿易協定に翻弄され続けることになります。

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2020年11月23日月曜日

【日本の解き方】コロナからの経済復活を急げ! 欧米中より遅れ目立つ日本、財政出動と金融緩和の発動を―【私の論評】財務省を有名無実にし、政府・日銀連合軍で財政出動をすみやかに(゚д゚)!

【日本の解き方】コロナからの経済復活を急げ! 欧米中より遅れ目立つ日本、財政出動と金融緩和の発動を

各国の株価は上昇傾向だが、実体経済も追随できるのか

 世界の主要国の経済をみると、新型コロナウイルスの発生源とされる中国の堅調が目立つ。感染拡大が続く欧米と、感染第3波が来ている日本の経済の回復にはどのぐらいの時間がかかるのだろうか。

 各国の株式市場が高値を更新してきた。市場は、半年先を思い描きながら値動きしているとみることもできる。実際には、株式の価格は半年先を半分程度取り込んで値動きしている。あくまで半分程度なので、株式市場は将来の鏡と言ってもぼんやりとしており、将来を確実に予見するとはいえない。

 コロナワクチンの開発をめぐっては、現時点で米ファイザーと米モデルナが好成績を上げている。投資家はさらに先を読み、半年後にワクチンが世界中に行きわたり、コロナは克服され、経済が戻るというシナリオで動いている。実際に値上がりしている銘柄は、ワクチン関連のみならず、旅行、航空、飲食あたりだ。バブルと違って全銘柄が上昇というわけではないが、各国の経済対策により資金供給が潤沢なので、幅広い銘柄が買われている。

 10月に公表された国際通貨基金(IMF)の見通しでも、2020年の世界経済の成長率は4・4%減だが、21年はワクチンの普及が進むとして5・2%のプラス成長を見込む。地域別では、日本では20年に5・3%減、21年に2・3%増、米国は20年に4・3%減、21年に3・1%増、ユーロ圏は20年に8・3%減、21年に5・2%増、中国が20年に1・9%増、21年に8・2%増となっている。

 注目すべきは、20年の落ち込みをどの程度の期間で回復できるかだ。IMFの見通しを使うと、日本は23年、米国とユーロ圏は22年、中国は21年とされ、中国の早さと日本の遅さが気になるところだ。

 なお、10月の発表では、6月時点より、20年は上方修正、21年は下方修正されている。目先の短期リスクは和らいだが、21年では貿易の停滞が長引き、回復は鈍化するというのが、IMFの見立てだ。

 要するに、今の株式市場はあくまで半年先までの夢を見ている状況だ。この点、現状の経済苦境に悩まされている一般人と、半年から先を予測しているIMFとでは、見ているところが異なるのだ。

 筆者が本コラムで、半年後以降、失業者が120万人程度以上増加し、それによる自殺者は6000人以上としているのは、何も政策を打たないという最悪のシナリオを想定して半年から先を見ているからだ。

 IMFの見通しは、政策発動を見込んでいるが、日本の回復が遅いというのは、政策が遅いという意味がある。

 本コラムで繰り返して主張しているが、コロナ禍は、デフレ圧力が強く、2%のインフレ目標にも達しそうにないので、カネを刷って対策が可能だ。つまり、政府が国債を発行して財政出動し、同時に中央銀行が国債を購入し金融緩和しても、事実上財政負担はない。欧米もその手法なので、日本も同じようにやればいいだけだ。 (内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】財務省を有名無実にし、政府・日銀連合軍で財政出動をすみやかに(゚д゚)!

今年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は4四半期ぶりのプラス成長となりました。見かけ上は年率換算で前期比21・4%という記録的な高成長でしたが、コロナ禍の戦後最悪級の落ち込みからの戻りは鈍く、景気回復にはほど遠いのが実情です。


このままでは年末から年明け以降、失業や倒産が激増する懸念もあります。これを防ぐためには消費税の減税や毎週1万円もらえる給付金の導入のほか、雇用調整助成金や「Go To」キャンペーンの継続が必要です。

21・4%という成長率は、バブル期の1989年10~12月期に記録した12・0%増を超え、比較可能な80年以降で最も高くなりました。ところが、これは四半期の成長率が1年間続いたと仮定した年率換算で、コロナ禍のように特殊要因があった場合、ブレが生じやすいです。前期比5・0%増という数字のほうが実情を反映しているといえます。

4~6月期の落ち込みが深かった分、経済再開と補正予算が効いてきたと考えられます。ただ、落ち込み自体は諸外国に比較してそれほどでもなかったにもかかわらず、欧米に比べ、回復の弱さは鮮明です。

実質GDPの実額をみると、1~3月期に526兆円だったのが、緊急事態宣言が出ていた4~6月期には483兆円と約43兆円落ち込みました。今回の7~9月期は507兆円と24兆円増えたものの、戻りは約半分程度に過ぎません。

以下は、日経に掲載されいたGDPの増減率ですが、これはかなり誤解を招くグラブです。



しかし、実額ベースでみると、以下のようになります。


7~9月期はGDPの過半を占める個人消費が前期比4・7%増となり、牽引役となりました。緊急事態宣言が5月下旬に全面解除され、全国民に配った特別定額給付金10万円や、7月にスタートした「GoToトラベル」などの政策が結果に反映されています。

コロナ感染「第3波」が襲来し、「GoTo」を中止すべきだとの声もありますが、『GoTo』はやめるべきではありません。家計調査でも、宿泊費やパックの旅行代金の支出がコロナ前の5割強~6割まで戻ってきており、続けなければいけないのは明らかです。

『GoToトラベル』で感染拡大したという実証的根拠もないので、3密を回避し、ターゲットを絞った対策を拡充する方が旅客業や飲食業にプラスになると考えられます。

10~12月期は消費を下支えした給付金の「10万円」効果が薄れるほか、輸出も欧米のコロナ感染再拡大で伸び悩む恐れもあります。そうして国内の雇用情勢も懸念材料です。

コロナ前に2・4%だった完全失業率は3・0%まで上昇しています。失業率の上下動とGDPの変化が連動する法則を基にすると、失業率1%の悪化でGDPは8%相当低下し、金額では43兆円の損失になります。第3次補正予算は40兆円規模の財政政策が必要です

これを考えると大規模な第3次補正予算の編成による財政支出をすぐにでも実行すべきです。

企業も厳しい状況が続いています。現状では倒産ラッシュにはなっていませんが、小規模零細の飲食店の廃業や倒産は確実に増えています。建設業もコロナ禍の前に得られた受注をやっているだけで、中小零細の建設業は足元で受注が減ってきています。将来を悲観して廃業する経営者も出てきています。

雇用調整助成金の期限となっている年末が企業の正念場となる。森田氏は「休業支援金や雇用調整助成金で倒産は抑えられているが、体力があった企業も借り入れが増えている。延長を絶対にしてほしいとの声も多いです。息切れのような形で12月に倒産や廃業などが増えるでしょう。

現状では、個人に対してにも企業対してにも、とにかくお金を配ることが重要でする。

欧米のデータでも持続的な家計支援が効果を発揮しており、消費税の減税や、感染収束まで1人当たり週1万円の支給を続ける定額給付金も検討すべきです。雇用調整助成金や持続化給付金など、企業への支援も青天井にするぐらいの構えも必要です。

借り入れ依存の枠組みでは企業や個人も借金漬けから抜け出せなくなり、長期停滞の原因になりかねないです。現金を配り、持続的にお金を使える枠組みにすべきです。

こういうことを言うと、すぐに財政がどうのこうのという人がいますが、今そのようなことを言っているべききでしょうか。経済の落ち込みということでは、コロナ禍は明らかに戦後最大規模です。今こそが、戦後最大の財政政策、金融政策を実行すべき時です。

池上彰氏のテレビでの解説では「国の借金は国民が返済する」これが膨らむと財政破綻を招くという理論をもっともらしく語っています。しかし、 国民の多くがこの理論を信じている事は非常に問題があります。特にコロナ禍の現状でこれを信じることは問題です。

単に「国の借金」が膨らんでいくことで財政破綻になるというなら、世界中の古今東西のすべての国は財政破綻だらけになるはずであり、それこそ人類は滅亡していたはずです。

多くの国民がこの理論を信じで誰が得するのか、それははっきりしています。財務省です。本当は、財務省にとっても特なことはないと思うのですが、彼らは悪い頭でそれを信奉し、とにかく愚直に緊縮、増税して目の前の税収さえ増えせば良いと考えています。それが正しいこと、人の道に反しないことと頑なに信じているのです。

財務次官太田充氏

そのことが、自分の子供や子孫にも悪影響を及ぼすことまで考えが回らないようです。とにかく、愚直に緊縮・増税で、財務省高級官僚の権益を増大して、条件の良い天下り先を増やして、高級官僚の退官後、ハッピーライフを目指すのみです。国民などどうでもよく、国民は自分たちの欲望を満たすための道具としか考えていないのです。

財務官僚の行動は、すべて法律に基づく行動しかしないと言います。給付金に様々なハードルを設け、消費税減税には応じない財務省。彼等、官僚は頼るのは法律しかないのです。根底は法律です。

言い換えれば、彼らは他の事は出来ないのです。答弁書を作成する国語力は評価しますが、国民の実情が関係なく、自身で物事を判断する能力はありません。

財務省に関する法律は何かといえば、主なものは以下の2つです。
 
財務省設置法
第一章 総則
第三条
財務省は「健全な財政の確保」、適正かつ公平な課税の実現、税関業務の適正な運営、国庫の適正な管理、通貨に対する信頼の維持及び外国為替の安定の確保並びに貨幣事業及び印刷事業の健全な運営を図る事を任務とする。

財政法
第一章 財政総則
第四条
「国の歳出は公債または、借入金以外の歳入をもってその財源としなければならない。」
以下省略。

上記の内容で財務官僚が重視するのは「健全な財政の確保」と「国の歳出は公債または、借入金以外の歳入をもってその財源としなければならない。」という部分で、これを守る事こそが彼等の仕事であると叩きこまれています。

これに異を唱えるという事はキャリアから外れるという事を意味するので、絶対に国債の発行には否定的だし、消費税の引き下げにも応じない様です。

官僚個人の良心、国民の窮状などは関係なく、すべて法律通りに仕事をする事しか眼中にないが彼等なのです。それも、省益のためにそうするのです。


民間企業であれば、憲法に相当する規程、それに基づく規則などがありますが、規程や規則にだけ基づきそれだけしか実行しないような社員など、とても幹部や役員になどなれません。民間企業などては、利益などをあげて成果を出さないような社員は、いくら規程や規則を守っても、認めれず、出世などできません。役員や社長になどなれません。

それに、実際に成果をあげるのに、障害となるような規程や規則は、すぐに変えてしまうでしょう。法律を変えない政治家にも問題があります。

厚労省の役人がコロナ対策で早期に中国人の入国禁止を提言しなかったのも、法律で「国民の命を守る」と書いてないからだといいます。財務省の官僚とはそうした人間なのです。

このような役所などもういらないです。政府は第二次補正のときのように、財務省抜きで政府が大量の国債を発効し、日銀がそれを買い取るという方式で積極財政と金融緩和を進めていくべきです。これをどんどん進めて、財務省を有名無実化し、いずれ財務省は解体すべきでしょう。

財政状況悪化を訴える談話で…隠されていた“不都合な数字” 国債はほぼ日銀が買い取る事実— 【私の論評】財務省を満足させて、顧客を蔑ろにすれば、大企業もマスコミも、いずれ存続不能となる!(◎_◎;)

国際的にも異常!財務省をサポートする「使えない学者」たち 震災でもコロナでも増税路線 マスコミも「アメ」与えられ…情けない日本の現状 ―【私の論評】異次元の積極財政と金融緩和を迅速に実行し、増税・コロナによるダブルパンチ不況をいち早く抜け出すべき(゚д゚)!

2020年11月22日日曜日

バイデン氏「三日天下」の可能性 消せない不正選挙疑惑、トランプ氏大逆転は最高裁判決が鍵 大原浩氏緊急寄稿 ―【私の論評】2000年の米大統領選でも、投票システム不正疑惑があったことを日米メディアは忘れたか(゚д゚)!

 バイデン氏「三日天下」の可能性 消せない不正選挙疑惑、トランプ氏大逆転は最高裁判決が鍵 大原浩氏緊急寄稿 

激突!米大統領選

米主要メディアは大半がバイデン氏の味方だ

 米大統領選は民主党のジョー・バイデン前副大統領(78)が勝利宣言して2週間が経過した。共和党のドナルド・トランプ大統領(74)の法廷闘争についても「無駄な抵抗」のごとく報じられることが多いが、国際投資アナリストの大原浩氏の視点は違う。大原氏は緊急寄稿で、バイデン氏が「三日天下」に終わる可能性すらあると指摘する。

 現在、日米の「偏向」メディアは、バイデン氏がまるで大統領に就任したかのような記事を垂れ流している。もちろんこれは大きな誤りである。

 トランプ氏が負けを認めないのは往生際が悪いなどという批判も出回っているが、米大統領選の法廷闘争では2000年に民主党候補だったアル・ゴア氏の先例がある。連邦最高裁が12月12日にジョージ・ブッシュ氏勝訴の判決を下すまで「ゴネ」たのだ。まさに「大ブーメラン」である。

 少なくとも12月14日の選挙人投票日までは、「誰が大統領になるかまだ分からない」のだ。現在、選挙に対して膨大な訴訟が「宣誓供述」や「証拠」を根拠に行われており、再集計の結果によっては、バイデン氏の「勝利」が三日天下に終わる可能性もまだある。民主党支配地域の裁判所では、民主党有利の判決が下される可能性が高いから、再集計が適正に行われトランプ氏勝利に結びつくかどうかは不明だが…。

 したがって、最高裁で「不正選挙そのものが無効」という判決が出るかどうかが鍵である。

 不正選挙疑惑で一番大きなものは、選挙投開票サービスを展開しているドミニオン社に関するものだろう。もし、同社のシステムによって、トランプ氏の票が突如削除されたり、バイデン氏側に動かされたりしていることが証明されれば、全体の集計結果に対する信頼性が根底から覆るから、最高裁で「選挙無効判決」が出る可能性がそれなりにある。

 連邦最高裁がエイミー・バレット氏の判事就任によって、さらに共和党有利の陣容になったと考えられることも見逃せない。

 どのような理由にせよ12月14日に選挙人投票を行うことができなかったり、どちらも270人の選挙人を獲得できなかったら、下院で大統領選出が行われるのだが、この投票は一般的な下院での議決とは異なり、50州それぞれから1人ずつが選ばれて投票する。下院全体の議席数では民主党が優勢だが、「優勢な州の数」は、今回の選挙でも共和党が勝っており、ここに至ればトランプ氏勝利の可能性が高い。

 現在のバイデン氏はまるで「本能寺の変」の後の明智光秀のように思える。安易に「自分が天下を取った」気分になった「三日天下」の後、豊臣秀吉に敗れた。

 トランプ氏の強みは、秀吉が「中国大返し」という尋常ではない作戦を成功させるために部下の力を最大限に発揮させたのと同じように、トランプ氏のために身を粉にして働く元ニューヨーク市長で弁護士のルドルフ・ジュリアーニ氏をはじめとする支持者を多数抱えていることだ。

 もちろん、民主党や偏向メディアの妨害をくぐり抜けて「勝利」を獲得するのは簡単ではない。オールドメディアの「報道しない自由」や大手SNSの「拡散制限」によって、真実が国民に伝わりにくい部分があるのは事実だ。

 第2次南北戦争さえ起こりかねない米国の混迷の中で思い起こすべきは、エイブラハム・リンカーン大統領の有名な言葉である。

 奴隷解放を目指す北軍(共和党)を率いて南軍(民主党)と戦い、4万5000人の死傷者を出したゲティスバーグの戦いでは、《人民の人民による人民のための政治》という名言を残したことで知られるが、ほかにもこんな言葉がある。

 《すべての人を少しの間騙(だま)すことはできる。一部の人を永遠に騙すこともできる。しかし、すべての人を永遠に騙すことはできない》

 いくら「報道しない自由」を駆使し、「拡散制限」を行っても「すべての人を永遠に欺くことはできない」のである。

 ■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。

【私の論評】2000年の米大統領選でも、投票システム不正疑惑があったことを日米メディアは忘れたか(゚д゚)!

米主要メディアは大半がバイデン氏の味方です。これはこのブログでは以前から述べてきたものです。米国の大手新聞は、すべてリベラルです。米国のウォール・ストリート・ジャーナルを保守系と報道する日本のメディアも一部ありますが、これは間違いです。

ウォール・ストリート・ジャーナルは歴史は古いですが、リベラル系です。歴史が古いことが自体は、保守系ということになはなりません。米国の大手新聞はすべてリベラルです。

これを日本に当てはめてみると、米国の大手新聞は、日本でいえば、朝日、毎日、読売のようなもので、産経新聞のような保守系といわれる新聞はありません。産経新聞以外の新聞を購読していると、日本では偏りがででくることは容易に想像できます。米国には保守を代弁する大手新聞はないのです。

米国の大手テレビ局はFOXTVを除いてすべてリベラル系です。米国では大手既存メディアは、FOXTVを除いてすべてがリベラルなのです。

日本のメデイアのほとんどが、米国の報道というと、米国のリベラルメディアの報道を吟味することもなくそのまま流しているのが実情です。

そのため、米国に関する情報の大部分を日本のメディアに頼っている多くの日本人は、米国のリベラルな側面ばかりをみており、保守系の側面は知らないと言っても過言ではありません。そのため、今回の大統領選挙に関しても多くの日本人は、一部の米国情報に直接触れる人を除いて、リベラル派の報道ばかりで、保守系の報道には事実上接していないと言って良いです。

だから、日本では多くの人が、トランプ氏が負けを認めないのは往生際が悪いと判断するのは、いたしかたないところがあると思います。

冒頭の大原浩氏の記事です、米大統領選の法廷闘争では2000年に民主党候補だったアル・ゴア氏の先例が述べられていますが、実はこのときは電子投票への疑念が多く報道されていました。

2000年の大統領選で用いられたタッチパネル式投票機

2000年のこの大統領選では、票の集計に用いられていたタッチパネル式の機械の多くが時代遅れのものであり、中には随分昔につくられたものがあったことが問題となりました。

当時米国の投票産業は、ごく一部の企業による寡占状態にあることが問題にされました。こうした企業は企業主に関する情報の公開を免除さていることも問題となりました。このような企業には本来公平であることが期待されるべきですが、大統領まで含む政治家と密接な関係を持つ企業もあるとされました。

しかも、それらの企業は投票システムの仕組みについての情報公開を拒んでおり、これらの企業に雇用されているソフトウェアエンジニアやサポートエンジニアしか、ブログラムの内部にアクセスすることができないことが問題となりました。

そうして、従来と異なることとされたのは、プログラマが投票システムの中へ検知できないバックドア(秘密の侵入経路)を作り出す可能性があり、一度に何百万もの票を改変するすることが可能であることでした。

電子投票反対派はリベラル・メディアも含めて、こうしたやり方、大きな墓穴を自ら掘っているようなものだと主張していました。以上は、2000年当時の大統領選挙をサイトで検索すると現在でもかなり出てきます。



この事実何やら、今回の大統領選挙におけるトランプ陣営が主張するドミニオン社に関する不正疑惑とかなり似ていると思います。

2000年時点で、このような疑惑を報道していたリベラル系メデイアが、トランプ陣営が当時と似たような主張をすると、まるでそれ自体がすべてフェイクであるかのように、報道してしまうというのは、はっきり言ってダブルスタンダードです。さらに、大手SNSの「拡散制限」までしてしまうのはいかがなものかと思います。

明らかにフェイクであることがはっきりしているものは、良いですが白黒がはっきりつかないものまで、封じている懸念があります。それを多くの人は検証できません。もしこの懸念が事実だとすれば、恐ろしいことです。そうだとすれば、これは明らかに民主主義に対する脅威です。

米国大統領選挙で民主党副大統領候補に選ばれた「カマラ・ハリス」は、日米の偏向マスコミによって持ちあげられていますが実態は、極左主義政治家で野心家のいわば、米国版辻元清美と言っても過言ではないです。

カマラ・ハリスを黒人と米国リベラルメディアは報道しますが、ジャマイカ人の父とインド人の母のハーフだけに個人的には黒人と言うには違和感があります。

バイデン氏が当選しても高齢で認知症の傾向があるので任期途中で辞任する可能性があります。その場合、このカマラ・ハリスが女性初の大統領になる可能性があるだけに事態は深刻です。

私自身は、今回の大統領選では、民主党からは当初サンダースなどの極左系候補が立候補していたので、なぜ穏健派とみられるバイデンに絞らないのかと不思議に思っていました。

結局バイデン氏が最終的に民主党の候補者となったのですが、副大統領候補がカマラ・ハリスになったということで、これはとんでもないことになったと思いました。副大統領ということは大統領が業務が遂行できなくなったときに、大統領になるという可能性も排除できないからです。


おそらく、民主党の主流派の中には、このような危機を感じている人も多いと思います。当然民主党の大統領選挙人の中にもそのような危機感を抱く人もいると思います。カマラ・ハリスよりはトランプもしくはペンスのほうがましと考える人も多いでしょう。その意味では、バイデンは副大統領候補の選択に完璧に失敗したと思います。

となると、今後選挙の不正疑惑の解明が進みトランプが共和党系の選挙人を獲得し、さらに民主党系の選挙人の中に離反者がでれば、12月14日の選挙人投票でトランプが勝利ということもあり得ます。ここで敗北しても、上の記事にもあるようにさらにトランプにはチャンスがあります。ここまできたからには、トランプは最後の最後まで粘るでしょう。

まだ、トランプが負けと決まったというわけではありません。日本人もこれらの事実を認識した上で、冷静に大統領選挙の推移を見守るべきです。

私には、なぜ日本の保守論客たちの中にさえ、この不正疑惑を追及する者を知的に劣ったもののように小馬鹿にするものすらいるのか、全く理解できません。

選挙に不正疑惑があると思うなら、アル・ゴアが法定論争をしたという事実があるにもかかわらず、トランプがそれをすると「無駄な抵抗」のごとく日米マスコミがこぞって報じるのか全く理解できません。

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2020年11月21日土曜日

習氏、TPP参加「積極的に検討」 APEC首脳会議―【私の論評】習近平の魂胆は、TPPを乗っ取って中国ルールにすること(゚д゚)!

 習氏、TPP参加「積極的に検討」 APEC首脳会議

中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は20日、環太平洋経済連携協定(TPP11)への参加を「積極的に考える」と表明した。日米中など21カ国・地域のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議にオンラインで出席して述べた。習氏がTPP11の参加検討を表明するのは初めて。

APEC首脳会議で議長を務めるマレーシアのムヒディン首相

習氏は「中国は地域経済の一体化を進め、アジア太平洋の自由貿易圏を一日も早く完成させる」と述べた。日中韓など15カ国が署名した東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)協定についても「歓迎する」と成果を強調した。

TPPは米国を含む12カ国で署名したが、トランプ米政権が2017年に離脱を宣言、米を除く11カ国で18年末に発効した。米はRCEPにも参加していない。習氏は19日の関連会議でも米国の保護主義を念頭に強く批判しており、米国の政権移行期にアジア太平洋地域で中国の存在感を高める狙いがある。

中国がTPP11に参加するには加盟国の同意を取りつける必要がある。国有企業の改革や工業製品の関税ゼロ、非関税障壁の撤廃などを高い水準で実現することも求められる。国有企業が大きく工業製品の関税率も高い中国にとって参加のハードルは高い。

20日の首脳会議は菅義偉首相、トランプ米大統領らも出席し、3年ぶりに首脳宣言を採択した。

日本や中国などが15日署名したRCEP協定に参加する15カ国の大半はAPECにも参加しており、域内で貿易自由化を加速する機運が高まる。APECはTPP11やRCEPを土台に、参加国・地域の一段の経済統合をはかる方針だ。

【私の論評】習近平の魂胆は、TPPを乗っ取って中国ルールにすること(゚д゚)!

元々は米国が提唱したTPPからトランプ大統領が選挙公約通りに離脱しましたが、中国は米国がTPPで留守の間に、TPPを乗っ取って中国ルールにしたいのでしょう。WTOにおける中国の振る舞いをみれば、それは容易に想像がつきます。

TPPの現状のルールは先進国にとっては当然のことで、加入するのは難しくないですが、中国にとってはかなり困難です。中国が現在のままのTPPに加入するためには、国内の体制を変えなければ無理です。

特に、民主化、政治と経済の分離、法治国家化は必須です。これができないと、TPPのルールを満たすことは不可能です。しかし、これを実行してしまえば、中国共産党は国内で統治の正当性を失い、共産党一党独裁制は崩れ、現体制は崩壊することになります。


そのようなことを中国共産党が許容できるはずもありません。にもかかわらず、TPP加入をするというのなら、これはTPPの高いハードルを乗り越えるというのではなく、中国にとって都合の良いようにハードルを低くするということを意図しているとしか考えられません。

日本としては、この高いハードルを低くすることなく、その上で英国や台湾をTPPに取り込んでも、民主主義陣営のTPPを守るべきです。そうして、次の米国大統領が誰になったとしても、米国にTPPが中国包囲網にもなることを理解させ、復帰してもらうべきでしょう。

そうして、TPP「拡大」は、米国と中国を牽制するだけではなく、混沌とする世界に新たな秩序をもたらし、世界を救うことにつながることになります。

このTPPを日本という軍事的・経済的覇権によらない国が旗振り役を務めたということが大きいです。

最早世界は、軍事・経済的覇権によって振り回され続けることに倦んでいるのだと思います。ここに、日本が世界でリーダーシップを発揮できる好機が訪れたともいえます。

日本のTPP参加大反対していた方々は、この中国の魂胆を見抜けずサポートしていたようなものです。このTPP参加反対していた人たちは、「米国に良いようにしてやられる」と語っていましたが、その後米国が抜け、その他反対派の人々の語っていた、日本にとって不都合になるようなことは未だに起こらず、急速に反対運動はしぼみました。

TPPに反対していた人たちは・・・・・・

米国が抜けても、日本が努力してTPPを米国抜きでも発効させたことは、自由主義世界にとっては幸いでした。

さて、最近はRCEPが調印されましたが、中国主導だから、加入すべきでないとした方々も、中国の魂胆が見抜くことができず、結果として中国をサポートしているようなものです。

RCEPは経済連携とはいうものの、そのルールは物品貿易やサービス貿易の自由化(FTA)に限りなく近いものです。そのため、TPPの厳しいルールのように忠告にとっては体制変更が必要ないため、中国も加入することができます。

RCEPがスタート後、どちらの方向に向かうのか、次のステージが気になるところです。ただ、日本もインドもRCEP参加しないとなると、ASEAN諸国はすぐにでも、中国に取り込まれることになります。そうして、中国、ASEAN諸国、韓国の強力な経済圏ができあがることになります。これらの国々でますます中国の覇権が強まることになります。

日本がRCEPに加入しないということは、日本がASEAN諸国が中国に取り込まれることを許容することになります。

これは、日本としても避けたいので、敢えてRCEPに参加し、中韓に対抗しASEAN諸国を日本のルール(自由主義圏で通用するルール)で取り込み、いずれは米国もASEAN諸国もTPPに取り込む方向に持っていくべきです。


日本の危機というと、すぐに尖閣、台湾危機を煽る人が多いですが、無論こちらも脅威ですが、中国がTPPのルールを中国ルールに変えようとすることや、RCEPでASEAN諸国が中国に取り込まれしまうようなことも、日本はもとより世界にとって脅威です。この脅威はもっと多くの人に認識されてしかるべきと思うですが、そうではありません。メディアは、発効したり調印された事実を淡々と述べるだけです。

日本としては、TPPを大いに発展させ、1993年以降の世界貿易の変化を反映したTPP協定の規定をWTOに採用するように働き掛けることができます。これには、EUも賛成するでしょう。
TPPのルールを世界のルールにするのです。単なる先進国だけの提案ではなく、アジア太平洋地域の途上国も合意したTPPの協定をWTOに持ち込むことには中国も反対できないでしょう。

TPPのルールがWTOのルールとなれば、中国は中共を解体してもTPPルールを含む新WTOに入るか、新WTOには入らず、内にこもることになります。内にこもった場合は、中国を待つ将来は、図体が大きいだけのアジアの凡庸な独裁国家に成り果てることになります。その時には他国に対する影響力はほとんどなくなっているでしょう。

いずれにせよ、TPPは加盟国だけではなく世界にとって、有用な協定になる可能性が高まってきたのは事実です。日本は、TPPのルールを世界の自由貿易のルールとするべくこれからも努力すべきです。


TPP「拡大」打ち出して米国と中国を牽制―【私の論評】世界は、軍事・経済的覇権によって振り回され続けることに倦んでいる(゚д゚)!

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2020年11月20日金曜日

これが安保の真実、米軍は尖閣に駆けつけてくれない―【私の論評】日本は独力で尖閣を守れない、占領されても奪還できないとは都市伝説か(゚д゚)!

これが安保の真実、米軍は尖閣に駆けつけてくれない

菅・バイデン電話会談でまたもや繰り返された悪しき前例

尖閣諸島の魚釣島(出典:内閣官房ホームページ

(北村 淳:軍事社会学者)

 日本の主要メディアの報道によると、日本時間の11月12日、菅義偉首相と次期大統領就任が確実となりつつあるバイデン前副大統領が電話で会話を交わした際、バイデン氏は「尖閣諸島は日米安保条約第5条の適用対象である」と明言したとのことである。

またも繰り返されたパターン

 国防とりわけ尖閣諸島防衛に関しては、菅首相も歴代政権の悪しき前例から一歩も脱却しようとはしていないようである。

 すなわち、アメリカ政府高官たちに「尖閣諸島は日米安全保障条約第5条の適用範囲である」と明言させ、日本の主要メディアに「アメリカの○○○○○は、アメリカによる日本の防衛義務を定めた日米安保条約第5条が、尖閣諸島に適用されることを確認した」といった報道をさせる。それによって、「尖閣諸島において中国が何らかの形で武力を行使した場合には、アメリカ軍が出動して日本を救援してくれる」というイメージを日本国内に流布させる、というパターンを繰り返しているのである。

 日本の歴代政権にとっての尖閣諸島防衛戦略は、このようなパターンを繰り返すことだけと言っても過言ではない。

日本に広まっている願望的期待

 昨今の現状はどうあれ、中国によって尖閣諸島が占領されているといった事態がいまだに生じていない限り、日本政府が「尖閣諸島の施政権は日本にある」と公言している以上、第三国間の領土紛争には介入しないことを基本原則としているアメリカ政府(とりわけ国務省や国防総省)としては「尖閣諸島は安保条約第5条の適用対象である」と判断せざるを得ない。したがって、米政府高官たちが日米安保条約と尖閣諸島との関係に触れる際に、「尖閣諸島は安保条約第5条の適用対象である」との立場を表明することは当然である。

 もちろん日本政府は、この事情は百も承知だ。そこで日本政府はアメリカ側にそのような「当然の表明」を述べさせることによって、日米同盟が対中牽制になっているかのごとき印象を日本国内向けに宣伝するのだ。

 そして“仕上げ”は日本メディアの報道である。多くの報道が「日米安保条約第5条はアメリカの日本防衛義務を定めている」と表現してしまっている。そのため、日本社会では「中国が尖閣諸島を占領したり、何らかの形で軍事力を行使した場合には、同盟国アメリカが強力な軍隊を投入して中国軍を追い払い日本を護ってくれる」という願望的期待が広まってしまうのだ。

米軍人たちの危惧

 本コラムでも幾度か触れたことがあるが、「日米安保条約第5条はアメリカの日本防衛義務を定めている」という表現は正確ではない。この点に関しては、筆者周辺の東アジア戦略環境それに日米安保条約に精通している米軍将校や軍関係法律家たちも、筆者同様に大いに危惧している。

 菅首相とバイデン氏の電話会談のニュースを受けて、日本で「日米安保条約第5条はアメリカの日本防衛義務を定めている」と考えられている状況を是正するために「アメリカ軍や国務省関係の法律家の間では常識とも言える“事実”を日本の人々に理解してもらわねばならない」といった声も寄せられてきている。

日米安保条約第5条の本当の中身
 日米安保条約第5条からは、尖閣諸島を巡って中国が軍事攻撃を仕掛けた場合、米海軍第7艦隊は直ちに横須賀や佐世保から南西諸島に急行し日本の敵勢力を撃退する、といった解釈が自動的に生ずることは決してありえない。

 日米安保条約第5条が取り決めているのは、このような事態が発生した場合、アメリカ側(国務省、国防総省、太平洋軍司令部など)としてはアメリカ合衆国憲法や各種法令・手続きに従って行動する、ということである。

 具体的には、尖閣周辺で進行中の軍事的状況を分析し、米側としての対処策を討議し、おそらくはホワイトハウスや連邦議会は、「尖閣諸島(という無人岩礁群)での日中間のトラブルに対してアメリカ軍を投入することは、核保有国である中国との軍事衝突の可能性を勘案すると、アメリカとしては価値を認められない」と判断することになるであろう。

 もちろん、日本はアメリカにとり重要な同盟国の1つである。しかし、そうだからといってアメリカとしては、核戦争へとつながりかねない危険を冒してまで、日本の“岩”のために軍隊を投入する価値は見出せない、というのが現実の姿である。

 上記のような解釈は、東アジア情勢ならびに日米安保条約に精通している米軍関係者などに尋ねれば、ごく普通のものであることが容易に理解できるであろう。

 要するに、日本社会に浸透してしまっている「日米安保条約第5条はアメリカによる日本防衛義務を定めたものであり、万が一にも尖閣諸島を巡って日中軍事衝突が発生した場合には、強力なアメリカ軍が中国侵攻部隊を撃退し日本を防衛してくれる」などというシナリオは、日本だけで信じられている手前勝手な都市伝説にすぎないということなのである。

中国軍相手の島嶼奪還は不可能に近い(写真:米海兵隊)


【私の論評】日本は独力で尖閣を守れない、占領されても奪還できないとは都市伝説か(゚д゚)!

尖閣諸島に人民解放軍が上陸したら、米国の助けがないと日本は尖閣諸島奪還は不可能の近いのでしょうか。ましてや、日本が尖閣に上陸した中国軍や民兵などに対して手も足もでないのでしょうか。私は、そうではないと思います。

これはおそらく軍事機密なのであまり公表されていなのでしょうが、もし尖閣諸島に中国軍が上陸したとしても、日本には20隻以上の潜水艦からなる、潜水艦隊が存在ししかもその潜水艦はステルス性がかなり高く最新型はほとんど無音に近く、対潜哨戒能力の低い中国にはこれを発見できず、これで十分反撃可能であると思います。

尖閣に中国軍が上陸すれば、これを日本の潜水艦隊で包囲し、近づく艦艇や航空機を破壊するかそこまでいかなくとも牽制して近づけないようにすれば、尖閣に上陸した中国や民兵などは補給ができずに、お手上げになります。これに対して既存のメディアや軍事評論家らは、なぜか潜水艦を用いない作戦ばかりを想定して、到底中国にはかなわないような説明をします。

これと似たようなことは、南シナ海の中国軍基地に対して最近何度が述べてきました。というのも、米軍の海洋戦術が明らかに変わったと思われる節があったからです。

米軍はすでに5月下旬に潜水艦の行動に関して公表しています。潜水艦の行動は、通常どの国も公表しないのでこれは異例ともいえます。

この潜水艦群の動きは太平洋艦隊司令部のあるハワイ州ホノルルの新聞が同司令部からの非公式な通告を受けて今年5月下旬にマスコミで報道されました。太平洋艦隊所属の潜水艦の少なくとも7隻が西太平洋に出動中であることが同司令部から明らかにされました。

その任務は「自由で開かれたインド太平洋」構想に沿っての「有事対応作戦」とされています。この構想の主眼は中国のインド太平洋での軍事膨張を抑えることだとされるため、今回の潜水艦出動も中国が覇権を目指す南シナ海や東シナ海での展開が主目的とみられます。

無論、当時空母でコロナが発生したという事情もからんでいるでしょう。空母打撃群が水平のコロナ罹患で出動できない間隙をぬって中国が不穏な動きを見せないように牽制したものと思います。逆に、米軍は空母打撃群でなくても潜水艦隊があれば、中国の動きを牽制できると考えているともいえます。

原潜は構造上どうしても騒音がでて、静寂性は通常型には劣るのですが、それでも中国の対潜哨戒能力よりは米軍のほうが世界一の能力を持っていることから、米軍にとっては明らかに有利です。中国の原潜は米国に比較しても、かなりの騒音を出すので、世界一の哨戒能力を持つ米軍に簡単探知されてしまいます。

これは、明らかに戦術の変更を示していると思います。仮に戦闘が起こったとして、それに対抗するために空母打撃群を派遣すれば、中国にとっては格好の標的になるだけです。すぐに撃沈されてしまうでしょう。そのような戦術は時代遅れです。

現代の米国の潜水艦は、核武装も含む様々な武装をしており、単純には比較できませんが、その破壊力は空母打撃群に匹敵します。これからの時代は相手を牽制したり、戦闘における初戦においては、過去のように空母打撃群か最初に出るのではなく、潜水艦隊が最初にでて、敵の艦艇や航空機やミサイルなどの脅威を取り除き、その後に空母打撃群が追撃戦をするという形に変わるでしょう。

5月の太平洋艦隊所属の潜水艦の少なくとも7隻が西太平洋に出動中という公表は、米海軍の戦術の変更の現れと見るべきと思います。私自身は、この発表よりも随分前から、米軍は戦術を変更していたと思っています。そうして、日本もそれに近い戦術をとっていると思われます。

日本では、海上自衛隊の3,000トン型潜水艦の1番艦が先月の14日に進水、旧日本海軍の潜水母艦に因んで「たいげい」と命名されました。

10月14日に進水した最新鋭3000トン型潜水艦「たいげい」

この「たいげい型潜水艦」はそうりゅう型潜水艦の後継艦で最新の「18式長魚雷」や海自の潜水艦として初めて「女性自衛官専用の居住区画」を備えるなど話題になっていますが、海外メディアが最も注目しているのは通常動力型潜水艦のゴールデンスタンダードである「AIP機関」ではなく「リチウムイオン式電池」による推進方法を採用している点です。

AIP機関を採用した「そうりゅう型潜水艦」の11番艦と12番艦は既にAIP機関を廃止してリチウムイオン式電池を採用しているため特に目新しさは感じないのですが、たいげい型潜水艦はリチウムイオン式電池採用を前提に設計された初めての潜水艦なので海外からすると11番艦「おうりゅう」よりも注目度が高いです。

特に米メディア「The Drive」は中国海軍の存在が日本のリチウムイオン式電池採用の決断を後押ししたと指摘しています。

中国海軍は攻撃型原潜「Type093」と比較して音紋が大幅に減少していると予想されている「Type095」の建造準備に取り掛かっており、国産AIP機関を搭載した通常動力型潜水艦「Type039A」を計20隻建造(内17隻が就役)するなど潜水艦戦力を急速に増強中で、遼東半島と山東半島の間にある中国唯一の原子力潜水艦建造施設「渤海造船所」の拡張中(5隻以上の原潜を同時建造できる規模らしい)です。

そのため日本は潜水艦の静粛性能を高めるためAIP機関よりも低振動な「リチウムイオン式電池」採用に踏み切ったと説明、リチウムイオン式電池は火災や発熱問題など安全性に対するリスクが付き纏いますが、AIP機関採用の潜水艦よりも優れた水中加速性能を日本の潜水艦にもたらすだろう言っており、日本は静粛性能と水中加速性能で中国に対抗するつもりだと評価しています。

さらにThe Driveは、リチウムイオン式電池による推進方式が通常動力型潜水艦のゴールデンスタンダードになるのかは今のところ不明ですが、少なくとも日本は潜水艦へのリチウムイオン式電池採用に自信を持っており、実用化に向けて順調にスケジュールを消化しているのは明らかだと付け加えました。

スウェーデン発祥のドイツによって普及されたAIP機関と同じように、日本がリチウムイオン式電池を採用した潜水艦の運用実績を積み重ねれば通常動力型潜水艦のゴールデンスタンダードに近づくと言う意味で、世界中の国が日本の「たいげい型潜水艦」に注目しているのは間違いないです。

因みに進水した潜水艦「たいげい」は艤装工事を行い2022年3月頃に就役する予定で、同艦の就役をもって海自の潜水艦22隻体制が完成することになります。

現在でも20隻以上の潜水艦隊をもち、旧式のAIP機関のものも含めて、その静寂性は世界のトップであり、リチュウム電池式は、ほとんど無音に近いです。これは、リチュウム電池にしただけでなく、元々日本の工作技術が世界トップ水準だからできることです。これを中国軍の対潜哨戒機は探知できません。逆に中国の潜水艦は日本が、簡単に発見できます。

であれば、尖閣が中国軍に占領されたとしても、ここに艦艇や航空機などを派遣したり、レインジャー部隊を派遣して、わざわざ中国軍の的にするのではなく、最初に潜水艦艇5隻くらい派遣して、尖閣諸島を包囲してしまえば良いです。

近づく中国の補給線や補給用航空機などは、近づけば破壊すると脅せば良いです。それでも近づけば本当に破壊すれば良いです。さらに、日本は機雷の掃海能力は世界一ですから、尖閣付近に機雷を敷設して、潜水艦隊の戦術を補うこともできます。

中国もこれに対抗して、機雷を敷設すると、掃海能力が格段に劣っているので、逆に自分で自分の首をしめることになりかねません。これに対して、日本は日本が設置した機雷はもとより、中国の機雷も容易に除去できます。

中国軍や民兵などが尖閣諸島に上陸したとしても、上記のような戦術をとれば、日本単独で上陸した勢力の補給を断ち、無能力化することができます。

そんなこと、日本ができるわけがないではないかという声も聞こえてきそうですが、実際に中国が尖閣諸島に上陸し、基地でも設置するそぶりを見せれば、状況は大きく変わるでしょう。そうなれば、中国が沖縄や日本に対して触手を伸ばしてくるだろうことは、誰にも予想がつきます。

しかも、米国の大手世論調査専門機関ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)が10月6日に発表した世界規模の世論調査報告によると、多くの先進国における反中感情は近年ますます強まり、この1年で歴代最悪を記録しています。

同調査によると、反中感情を持つ14か国とその割合は、高い順番から日本では86%にも及びます。


尖閣にまかり間違って、中国が尖閣に上陸すれば、中国に対する国民感情はとりかえしがつかない程に硬化し、政府はどのような形にせよ、中国排除の方向で進むことになるでしょう。それとごろか、親中敵な自民党の派閥や、野党、マスコミなどは、国民の憤怒のマグマを直接浴びてとんでないことになるでしょう。そうして、憲法改正がなされ、日本も普通の国になるどころか、中国にとって大きな脅威になるでしょう。核武装についても国会で審議され、実行されるかもしれません。

国会で議論していると中国に既成事実化されてしまうなどという方もいらっしゃるかもしれませんが、3年や5年も放置しておけば別ですが、少なくとも2年以内くらいに決心して十分準備して中国の上陸部隊を兵糧攻めにすれば、中国軍はこれに対して何もできずお手上げになるだけですから、十分に間に合います。中国は怒りまくるでしょうが、どうしようもありません。

まかり間違って小型中距離核兵器でも使おうものなら、全世界から総スカンをくらうだけではなく、日本も核武装しかねず、そうなれば日本は中国にとって大きな脅威となるでしょう。

そんことになるのが、分かりきっているので、中国は尖閣地域で様々な示威活動をしたとしても、尖閣にはなかなか上陸しないのです。上陸して維持できる自信があれば、とうの昔に上陸しています。だから、尖閣諸島付近で示威敵行動を繰り返して、既成事実を作ろうとしているのです。裏返せば、軍同士で直接対決すれば、負けるのは明らかなので、それしかできないということです。

潜水艦隊戦ということになれば、米国も加勢しやすいので、おそらく早い時期から加勢すると思います。いやそれどころか、英国、インド、豪州も加勢するかもしれません。これで潜水艦隊の各国の合同チームができるかもしれません。日本の潜水艦隊はほとんど無音に近いステルス性を駆使して、情報収集の尖兵となり同盟国に中国軍の最新動向を伝えることになるでしょう。

これがうまくいけば、インド太平洋地域全域で日米英豪印協同で同じようなことをすれば良いです。そうすれば、中国軍はインド太平洋地域から駆逐できます。

そんなうまい話があるものかという方には、現実の中国の海洋進出がどうなっているかを示せばある程度ご理解いただけると思います。中国海軍のロードマップでは、2020年の今年は太平洋において第二列島線を確保することになっていますが、それどころか未だに尖閣を含む第一列島線すら確保できていません。それが中国海軍の実力です。

これは、どう考えてもいくら中国が空母や最新鋭といわれる艦艇や、宇宙兵器や超音速ミサイルを開発したとしても、そもそも哨戒能力が格段に劣っているので、結局中国の護衛艦や潜水艦もすぐに撃沈されてしまうので空母を護衛できず、中国艦隊も島嶼上陸部隊も用をなさないということです。結局中国海軍は政治的な意味しかもたず、海洋の戦いは、金をかけてもボロ船(哨戒能力が極度に低い)しかつくれない陸上国の中国には無理なのです。

とはいえ、油断は禁物です。以前にもこのブログに述べたようにランドパワーの中国が、海洋進出を諦めて、陸に専念するようになれば、国境を接している国々にとって大きな脅威となります。

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2020年11月19日木曜日

相次ぐ受難、習近平の標的にされる中国の起業家たち―【私の論評】経済に直接介入し、民主化せず、憲法は共産党の下では中国は経済発展しない(゚д゚)!

 相次ぐ受難、習近平の標的にされる中国の起業家たち

逮捕され失脚させられる民間企業経営者、何が起きているのか?

(福島 香織:ジャーナリスト)

中国浙江省杭州市にあるアント・グループ本社

 中国で企業家に愛国、報国を求める動きが強まり、中国共産党に批判的な企業家に対しては圧力が強まっている。

 河北大午農牧集団を創業した中国の著名な農民企業家、孫大午が11月11日未明、突然警察に連行され逮捕された。この事件より1週間ほど前の11月3日には、カリスマ経営者の馬雲(ジャック・マー)が作り上げたアリババ帝国を揺るがす、金融子会社アント・グループ(旧アントフィナンシャル)上場取り消し事件があった。さらに11月17日には南京のIT企業・福中集団の会長、楊宗義が連行された。

 この2年、中国では企業家、実業家たちが次々と逮捕されたり失脚させられたり、あるいは不当な圧力を受けたりしている。民営企業の資産接収も相次いでいる。一体これはどういうわけなのか。

「違法な資本収集」の疑いで連行された楊宗義

 江蘇省揚州市公安当局が11月17日に発表したところによると、民間から「江蘇福信財富資産管理有限公司が違法に資本収集した」という通報を受けて、オーナーの楊宗義を違法公衆資金預金横領の容疑で刑事強制措置として連行した。捜査によると、福信公司は高額のリターンがあると喧伝して大衆から資金を違法に収集していた疑いがあるという。

 楊宗義は「南京最初の富豪」とも呼ばれた実業家で、南京市商会の副会長や南京市の政治協商委員も務めていた。幼いころ父親を亡くし、生活苦の中で南京大学化学部を卒業。空港で偶然出会ったシンガポール企業の社長に、流暢な英語能力を気に入られて雇用され、南京市のパソコン市場開拓の仕事を任された。そこで経験を積んだあと、1995年のITバブルの兆しに目をつけ、20平方メートルに満たない事務所を借りて裸一貫でパソコン企業・福中電脳を立ち上げた。それが25年後、保有資産40億元の福中集団(元南京福中情報産業集団)に成長した。楊宗義は慈善事業家としても知られており、財界誌フォーブスの慈善家番付にもしばしば登場していた。

 だが今年(2020年)1月に、福中集団四川有限公司は、同社のビジネストラブルを仲裁した地元の成都市成華区人民法院から指導を受ける。そして5月になっても法院が指導した改善が見られないことから、「消費制限」裁決を受けることになり、その成功物語に陰りがさしていた。消費制限令を受けると、生活や仕事に必要ない高額の消費、例えばラグジュアリーホテルの使用や飛行機のファーストクラス利用などが制限される。そもそも裁判所からこの処分を受けること自体が、いわゆる「信用スコア」の大きな減点になり、さまざまなリスクを負うことになる。

 福中集団は「狼文化企業」(いわゆるブラック企業)と呼ばれており、社員の間に不満があったともいわれている。楊宗義自身が「春節休みの4日以外、1年中毎日、決まった時間に出勤する」というモーレツ社長で、誰も社長に逆らえない状況だったとされ。その意味では敵の多い人物であったともいえる。

 だが、今回、楊宗義が連行された理由が、本当に経済犯罪のみといえるかどうかは微妙だ。というのも、ほんの数日前に別の民営企業家も逮捕されているからだ。

習近平体制に批判的だった孫大午

 前述したように11月11日、河北大午農牧集団の創業者である孫大午が家族や企業幹部らとともに突然連行され、企業資産が当局に接収された。孫大午は地元では人望があったので、ネット上で現代版「地主狩り」「土豪狩り」などとささやかれた。

 孫大午は退役後の1984年に、兵役時代の農牧経験をもとに鶏1000羽、豚50頭の農場からスタートして1995年には中国500強民営企業にまで事業を拡大したカリスマ経営者だ。今や大午集団の従業員は9000人以上、固定資産は20億元、年平均生産額は20億元超えという超優良企業である。

 そうした実績をもとに、孫大午は、国家の庇護のもとに胡坐をかいた国営農場や国有企業の在り方や共産党の経済政策について、しばしば厳しい意見を発表していた。

 例えば2003年4月31日、同社のサイトで「小康社会の建設と課題」「李慎之を悼む」「2人の民間商人の中国の時局と歴史に関する対話」といった3つの文章を発表した。ところが、地元公安局から「国家機関のイメージを著しく損なった」として、サイトの閉鎖を命じられ、6カ月の営業停止と罰金15000元が課されてしまう。

 さらにその年の5月29日に、孫大午は3000人の農民から1億8000万元の資金を違法に集めたとして逮捕され、同時に違法に弾薬を所持していたなどとされた。結局、孫大午は懲役3年、執行猶予4年、罰金10万元の刑を受け、また大午集団としても30万元の罰金を支払わされた。

 この時、孫大午を弁護した法律家の中には、新公民権運動の旗手として知られ、のちに国家政権転覆煽動罪で逮捕され実刑判決を受けた法学者、許志永もいた。ちなみに4年の刑期を終えて出所していた許志永は今年2月、習近平退陣論を発表したため、再度身柄を拘束されている。

 今年5月、孫大午はSNSで、許志永ら失踪中の(実は当局に拘束されている)人権派弁護士や法律家らについて、関心を持ち続けるように訴えていた。10月には米国の政府系メディア、ラジオ・フリーアジアに、「公有制度は共産党が発明したものであり、社会主義経済の基礎は本来私有経済であるべきだ」といった発言を掲載し、公有経済回帰の政策を打ち出す習近平体制に批判的な態度を示していた。

 逮捕の直接的な原因については深く説明されていないが、8月に大午集団の建物を近くの国有農場が強制収用しようとして、従業員と警察がもみ合いとなり、20人以上が負傷する事件があった。大午集団側は、当局の対応への抗議を発表していた。こうした一連の行為が「挑発罪」などに当たる、と見られたのかもしれない。

馬雲の発言が習近平の癇に障ったか?

 孫大午が逮捕される前の11月3日には、5日に予定されていた中国最大手Eコマース企業アリババ傘下のフィンテック企業アント・グループの上海・香港同時上場が急遽取りやめになるという事件が起きた。アントの上場は中国証券市場最大級IPOと注目されていた。

 この上場急遽取りやめも、孫大午の逮捕と全く無関係ではない、という見方がある。

 11月1日にアリババ創始者の馬雲(ジャック・マー)と企業幹部が中国金融当局に呼び出されて、「面談」した結果、3日に上場取りやめが発表された。この上場取りやめは習近平自らの命令によるものだったと一部で報じられている。

 上場取りやめの理由については、アントの目玉商品である「花唄」「借唄」といった個人・個人経営者向けクレジットローンや消費者金融が、本質は銀行の発行するクレジットカードやローンと同じなのに、民営フィンテックであるがゆえに規制の網をくぐり抜けていたこと、こうした民営企業も対象にした少額ローンに関する法規が間もなく出されることなどが背景にあったと思われる。だが、それ以上にささやかれているのが、馬雲が10月24日に上海で行われた外灘金融サミットで、中国内外の規制がイノベーションを阻害し発展や若者の機会を大切にしていないことを批判した発言が習近平の癇(かん)に障ったのではないか、という理由だ。

 7月には、明天系の金融・保険企業9社の資産が「経営リスクがある」として当局に接収された。明天系と呼ばれるトゥモロー・ホールディングス創業者は、香港の高級ホテルから北京当局に拉致されていまだに行方不明扱いの大富豪、蕭建華が創業者だ。彼の失踪(実は北京で拘束されている)が経営リスクを招いたという意味では、大企業の富が、体制の罠によって奪われたという言い方もできなくはない。

 また9月には、民営企業ではないが上海光明乳業が「国家の尊厳と利益を損なった」として30万元の罰金が科された。同社の広告に、中国の南シナ海領有を示す九段線が描かれていなかったことが原因だった。

企業に「愛国・救国」を求める習近平

 こういう企業、実業家たちの受難の真の理由は、習近平が最近、実業界、経済界に対して打ち出したイデオロギーが大きく関与していると私はみている。

 習近平は11月12日に江蘇省を視察に訪れた際、南通博物苑を訪れ、清末の実業家・張謇の展示を参観。張謇を中国民営企業家の先賢と模範にするように、との談話を発表している。張謇が創設した中国初の民間博物館、南通博物苑を愛国主義教育基地とし、多くの青少年が張謇に学び、習近平が掲げる4つの自信(社会主義への道、制度、理論、文化に対する自信)を固めるようにと訴えた。

 習近平が張謇に言及するのは今年で2度目だ。1回目は7月21日に行われた企業座談会である。習近平は5人の愛国企業家模範に言及し、その中の1人が張謇だった。

 張謇は1894年、42歳で科挙の状元(最終試験で1位の成績を修めた者)となり、清朝最後の皇帝・宣統帝の退位詔書を起草、民国臨時政府樹立後は実業総長となった。実業家として、最初期の民族軽工業を起こし、日本の博物館制度や教育制度に影響を受けて博物館や学校をつくるなど、国近代化の先駆者と呼ばれている。同時に「実業救国」を掲げた愛国主義者であり、袁世凱が壬午事変にどう対処すべきかを張謇に訊ねると、「朝鮮前後六策」を出して、李氏朝鮮を併合して中国領土とし、日本を攻撃して琉球(沖縄)を奪取すべし、と助言した。

 習近平が張謇を取り上げて民営企業家に伝えたかったのは、「実業」と「愛国・救国」はセットでなければならない、ということだろう。つまり実業家たちに求めることは経営手腕のみならず、富国強兵のために国と党への献身だ。

 企業運営チェーンには国境がないが、企業に祖国はある。祖国に対する崇高な使命感と強烈な責任感があるかどうかが企業家に最も求められることであり、言外に「民営企業が儲けた金は国家と党のために使え」「党と国家に批判的な企業はいつ取り潰されるとも限らない」ということを示しているのではないか。

 習近平のこうした企業家に対するイデオロギーチェックは、2年前の民営企業座談会で「企業家精神を掲揚し、愛国敬業をなし、法を守って経営し、創業イノベーションを行い、社会に報いる模範たれ」と演説をぶって以来、顕著となった。

民営企業は「改革開放牧場」の牛や羊なのか

 愛国・愛党を理由に民営資本を弾圧するやり方は、かつて毛沢東が地主やブルジョアや知識層を弾圧した歴史に通ずるものがある。

 地主や土豪、知識人たちを階級の敵として、「土地や富を奪い弾圧してもよい」というシグナルを共産党トップが出すことで、政治や社会に不満を抱える庶民の攻撃の矛先が「ブルジョア・金持ち」たちに向かい、社会主義体制への批判がそがれるということを、習近平は毛沢東に学んだのかもしれない。

 また、民営企業家の多くは裸一貫から大企業家になったカリスマが多く、馬雲のように国際社会からも支持されていたりする。習近平と比較しても指導者としての資質が高い。自分の長期独裁政権確立の障害となりそうな有能な政治家を、反腐敗キャンペーンの名目で排除してきた習近平にとって、カリスマ経営者は自分の無能さを際立たせる脅威の存在に思えるかもしれない。

 10月の第五回中央委員会総会(五中全会)で習近平政権は、国際環境の変化に対応して、経済政策の柱として「大内循環、双循環」を打ち出した。この考え方の根幹は、“共産党がコントロールできる経済”である。今後も中国市場が西側自由主義市場からデカップリング(切り離し)される流れは止まらず、中国は自力更生、計画経済のスローガンに象徴される毛沢東路線回帰に寄っていきそうだ。

 中国のカリスマ民営企業家たちは、鄧小平の改革開放路線の一種の産物だ。中国経済のグローバル化の中で資金とチャンスを得て、共産党とも利益供与関係を結ぶことで、限定的な自由市場を手に入れて成長してきた。だがこの自由市場は、所詮、共産党が作ったが企業家の放牧場のようなものだ。共産党にしてみれば、牛や羊を肥え太らせ、ミルクや羊毛を収穫するように、企業家を育てていたに過ぎない。そこから利益を得て中国を世界第2の経済体にのし上げた。

 だが、習近平政権は、この大きくなりすぎた「改革開放牧場」をより厳密にコントロールするために、牛や羊を間引く作業に出始めた。大きく、従順でない企業から屠(ほふ)れば、その他の企業は大人しく党に従順になろう。だが、そのような党に従順で大人しい企業、あるいは企業家に中国経済を牽引していくパワーがあるのかどうか。その答えは、たぶんこの数年で現れてこよう。

【私の論評】経済に直接介入し、民主化せず、憲法は共産党の下では中国は経済発展しない(゚д゚)!

私は中国は「中進国の罠」に嵌ったので、これから停滞し続けるとこのブログに掲載しました。これについては、過去に何回か掲載させていただきました。そうして、これはマクロ的な見方で中国の停滞を予測したものであり、上の福島香織氏の記事は、これを裏付けるものだと思います。以下に、最近掲載した「中進国の罠」に関する記事のリンクを掲載します。
中国・習政権が直面する課題 香港とコロナで「戦略ミス」、経済目標も達成困難な状況 ―【私の論評】中国は今のままだと「中進国の罠」から逃れられず停滞し続ける(゚д゚)!

習近平
 
この記事は、今月10日のものです。詳細はこの記事をご覧いただくものとして、まずは「中進国の罠」とはどのようなものかを示す部分を以下に引用します。
この「1万ドルの壁」とは、中進国の罠といわれるものです。中進国の罠とは、開発経済学における考え方です。定義に揺らぎはあるものの、新興国(途上国)の経済成長が進み、1人当たり所得が1万ドル(年収100万円程度)に達したあたりから、成長が鈍化・低迷することをいいます。
実質経済成長率と一人当たりGDPの推移(60年代以降):1万ドル前後で中所得国の罠に陥る国も

中国経済が中進国の罠を回避するには、個人の消費を増やさなければならないです。中国政府の本音は、リーマンショック後、一定期間の成長を投資によって支え、その間に個人消費の厚みを増すことでした。

ところが、リーマンマンショック後、中国の個人消費の伸び率の趨勢は低下しいています。リーマンショック後、中国GDPに占める個人消費の割合は30%台半ばから後半で推移しています。

昨年の個人消費の推移を見ても、固定資産投資の伸び率鈍化から景気が減速するにつれ、個人消費の伸び率鈍化が鮮明化しました。これは、投資効率の低下が、家計の可処分所得の減少や、その懸念上昇につながっていることを示しています。

現在、中国政府は個人消費を増やすために、自動車購入の補助金や減税の実施を重視しています。短期的に、消費刺激の効果が表れ、個人消費が上向くことはあるでしょう。ただ、長期的にその効果が続くとは考えにくいです。

この記事では、社会のあらゆる方面でイノベーションが起こらないことが「中進国の罠」にはまる原因だとしました。その部分を以下に引用します。

現在の中国が経済発展をして、中進国の罠から抜け出すためには、高橋洋一氏が上の記事で主張しているように、経済的な自由が必要です。

経済的な自由を確保するためには、「民主化」、「経済と政治の分離」、「法治国家化」が不可欠です。これがなければ、経済的な自由は確保できません。

逆にこれが保証されれば、何が起こるかといえば、経済的な中間層が多数輩出することになります。この中間層が、自由に社会・経済的活動を行い、社会に様々なイノベーションが起こることになります。

イノベーションというと、民間企業が新製品やサービスを生み出すことのみを考えがちですが、無論それだけではありません。様々な分野にイノベーションがあり、技術的イノベーションも含めてすべては社会を変革するものです。社会に変革をもたらさないイノベーションは失敗であり、イノベーションとは呼べません。改良・改善、もしくは単なる発明品や、珍奇な思考の集まりにすぎません。
   イノベーションの主体は企業だけではなく、社会のあらゆる組織によるもの
    ドラッカー氏は企業を例にとっただけのこと

そうしてこの真の意味でのイノベーションが富を生み出し、さらに多数の中間層を輩出し、これらがまた自由に社会経済活動をすることにより、イノベーションを起こすという好循環ができることになります。

この好循環を最初に獲得したのが、西欧であり、その後日本などの国々も獲得し、「中進国の罠」から抜け出たのです。そうしなければ、経済力をつけることとができず、それは国力や軍事力が他国、特に最初にそれを成し遂げた英国に比較して弱くなることを意味しました。

もちろん中国がイノベーションを行っていないというつもりはありません。中国もイノベーションは政治主導で行っています。

しかし、政治主導のイノベーションは社会全体からいえば、点のイノベーションに過ぎないのです。 中国共産党が、価値あると認めたイノベーションのみを実施しても、他の社会の様々な部分でイノベーションが起こらないと、社会の様々な部分であらゆるイノベーションが起こらないと、非合理、非効率な部分が残り経済の急速な発展は起こらないのです。

今日の先進国は、点のイノベーションから、面のイノベーション、さらに立体的なイノベーションが様々な社会の分野で起こり、様々なイノベーションが有機的に結合し、さらに爆発的なイノベーションを生み、社会の発展につれて新しいイノベーションが爆発的に起こり、それが経済発展に結びつき、今日に至っているのです。

たとえば、物流を考えると、小売業者だけがイノベーションを起こしても、卸業者、メーカーもそれに対応したイノベーションを起こさなければ、非効率や非合理が維持され、経済発展に結びつくことはないのです。

中国のように、軍事、人民監視、富裕層の資産形成等の分野に限ったイノベーションでは限りがあり、急激な経済発展にはつながらないのです。しかも、このイノベーションはそれぞれの社会にあったものにしなければなりません。

たとえば、発展途上国のアフリカの奥地の水道のない地域で、すぐに水道を敷設したり、他所から大量の水を運んでくることはできないですが、できないことを嘆くだけではなく水を運ぶ容器を工夫することでもイノベーションは起こせます。下の写真は水を運ぶ容器です。

円筒のプラスチックの容器の真ん中に穴をあけ、そこに紐を通して簡単に水を運べるようにしたものです。こうしたイノベーションでもこの地域の社会には非常に役に立っているのです。従来だと子供が一度に運べる水の量は限られていて、何度か水くみに行かなければなりませんでした。

しかし、この容器を使えば、一度に比較的楽に大量の水を運べ、従来水くみに時間をとられてて学校に行けなかったような子どもたちが学校に行ける時間の余裕を持てるようになったのです。このようなイノベーションは、その社会の実情を知っていなければできません。政府にはできません。その地域の実情を知りつつ、ある程度資金に余裕のある中間層が実施すべきものです。

このようなイノベーションが、これだけで終わることなく、社会の変化にあわせて起こり続けていけば、経済は発展し続けるのです。それを保証するのが、「民主化」、「政治と経済の分離」、「法治国家」なのです、逆にいえば、これを確保して、政府が社会を放置するのではなく、適切に社会の方向性を定めれば、政府がほとんど何をしなくても、多数の中間層が生まれ、彼らが爆発的なイノベーションが起こし、社会・経済が発展するのです。そうして、それが近代以降の政府の正しいありかたです。

私達の身の回りにも昔は使った物やサービスの中に、今は使われないものが結構あると思います。それは、社会のあらゆる場所でイノベーションが行われてきたことの証です。

社会のあらゆる部分でイノベーションが起こらないと、なぜ経済が発展しないのか、それは簡単に理解できます。

たとえば、政府がいくらイノベーションに力をいれても、政府には限界があります。明治維新において、政府は最初は現在の中国のように政府主導のイノベーションを行いましたが、その結果できあがつた金融機関や工場などを徐々に民間に移譲して、民間でイノベーションが起こるようにしました。

その裏付けとして憲法や法律も整備し法治国家化し、さらに経済に直接政府が関与しないことにしました。もし、それを実行しなかったとしたら、その後発展途上国のままだったでしょう。

近代的な役所ができあがり、近代的な軍隊ができあがっても、社会の様々な分野でイノベーションが起こらず、一般家庭にはいつまでも電気もない、まともな通信手段もない、近代的な教育も受けられないという状況であれば、経済発展しようもありません。

現代の中国も同じことです。大都市は一見現代的にもみえますが、その中にも多数の貧困層が存在し、一歩都市部を出れば未だ社会が遅れています。さらには、民衆に対する弾圧も未だに続いています。経済は未だに政府の厳しい統制下にあります。憲法は中国共産党の下に位置づけられています。この状況では社会に多数のイノベーションが起こることは期待できず、経済発展はできません。

上の福島香織氏の記事は、特に「政治と経済」の分離ができていない中国の現実を露呈したと思います。先進国なら、政府が民間企業の経営者に圧力をかけることなど許されることではありません。

民間企業の経営者が政府を批判するには、それなりの理由があります。たとえば政府の様々な規制が、当該企業にとって成長できないことの原因になることは、往々にしてありえることです。事業家の彼らからすれば、自らの事業に邪魔となる規制に関しては、批判するのが当たり前です。

これは、先進国では当たり前であり、これを批判したとしても、政府や特定の政府高官を批判しているとはみなされません。政府としても、その批判が妥当であると判断すれば、規制を撤廃したり、新たな法律を作ろうとしたりするだけの話です。

しかし「政治と経済の分離」が行われていない、中国では政府批判とみられて圧力をかけられたり、はなはだしい場合には逮捕されたり拘束されたりするのです。

上の記事で福島氏が述べているように、中国の民間企業家たちは、鄧小平の改革開放路線の一種の産物です。中国経済のグローバル化の中で資金とチャンスを得て、共産党とも利益供与関係を結ぶことで、限定的な自由市場を手に入れて成長してきたのです。

それを潰すような真似をするということは、自らイノベーションの芽を潰すことになります。これでは、中国で先進国のような社会のあらゆる分野で起こる、立体的イノベーションなど期待できません。それは、中国が「中進国の罠」から今後も抜けられないこと示しています。

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2020年11月18日水曜日

ロシアの脅威に北欧スウェーデンが選んだ軍拡の道―【私の論評】菅政権が財務省と戦う姿勢をみせなければ、経済も安保も安倍政権の域を出ないとみるべき(゚д゚)!

 ロシアの脅威に北欧スウェーデンが選んだ軍拡の道

岡崎研究所

 10月19日付の英Economist誌が「スウェーデンは、数十年間で最大の軍事力増強に着手した。理由はロシアである」との解説記事を掲載している。


 スウェーデンでは、10月14日に新国防法案が提出され、過去70年間で最大の軍拡を予定している。理由は、暗殺から侵略まで、ヨーロッパにおけるロシアの脅威が増し、スウェーデン人の対露警戒心が高まっているからである。

 近年、スウェーデンは、ロシアが領空と領海を頻繁に侵犯したとして非難してきた。それでスウェーデンは、NATO(北大西洋条約機構、注:スウェーデンは非加盟国)や、米国、他の北欧諸国と、軍事的関係を深めてきた。 

 新国防法案が成立すれば、国防予算を2021年~2025年の間に275億スウェーデン・クローネ(約31億ドル)増加することになる。これは、軍隊の50%増も賄う。軍隊は、正規兵の他、徴兵兵士、地元の予備役を含め9万人になる見通しである。

 冷戦終結後、徴兵制は10年前に廃止されたが、ロシアの脅威の高まりによって2017年に男女ともに復活した。スウェーデンの議会や国民から大きな反対はなかった。18歳以上の男女が年間8千人、徴兵される。また、上陸部隊がスカンジナビア最大の港、ゴーテンブルグに再び置かれることになる。

 民間防衛では、サイバーセキュリティ、電力網、および保健の分野のために、より多くの資金が投じられるだろう。

 スウェーデンは中立国であるが、ロシアの脅威を強く認識するに至り、軍拡路線にかじを切ったという興味深いエコノミスト誌の解説記事である。国際情勢全般に与える影響は大きくないが、ご紹介する。

 北欧は、ノルウェーがNATOの加盟国、フィンランドが親ロシア、そしてスウェーデンが中立国ということで微妙なバランスを保ちつつ、平和を維持してきた。が、ロシアの最近の動きがスウェーデンを刺激し、スウェーデンが脅威に対応する必要を感じ、軍拡しているということである。国防費を一挙に40%増にするのは予算に飛躍はないという中でかなり強い対応である。スイス、スウェーデンは武装中立国であるが、周辺の国に脅威を与えることはほぼない。

 ロシアは何の意図でスウェーデンの領海、領空を侵犯し、スウェーデンのような国の警戒心を高めているのか、理解できない。北方領土に軍を配備し、演習をして、日本から抗議されているのと同じような愚行ではないかと思われる。

 ロシアの経済は、いまやIMF(国際通貨基金)のGDP統計で韓国以下であり、かつ石油価格は新型コロナ・ウィルス、温暖化対策等で今後回復しそうにもない。プーチン大統領は国際的に大国として大きな役割を果たしているロシアを演出するために、シリアやリビアに進出し、ベネズエラに傭兵を出すなど、やりすぎている。こういうことは、ロシアの衰退につながると思われる。

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さて、スウェーデンとロシアということになると、経済はどのくらなのかということになります。なぜか多くの日本人は、ロシアの経済を大きくみる傾向があります。等身大でみるべきでしょう。

実際どうなのでしょうか。2014年の数値では、関東圏とロシアはほぼ同じぐらいだったのですが、資源価格の下落により、ロシアの2015年の名目GDPは1兆3684億ドルとなり、中部と近畿を足した額(約1兆4015億ドル)に近い規模となりました。ロシアがアメリカに挑むのは、経済規模で言えば、中部と近畿でアメリカに経済競争をしかけるようなものなのかもしれません。

北海道と東北をあわせたくらいが、スウェーデンです。そのため、中部と近畿を足した程度のロシアのほうがGDPは大きいですが、それにしても何倍ということもないです。

これに関して興味のあるかたは、是非以下のサイトをご覧になってください。


この程度のロシアが軍事費では世界第4位の軍事費を資質しています。


しかし、ロシアは周辺を中国、日本などに囲まれ、日本などには米軍が存在するということで、今回スウェーデンが軍事費を大幅に増大することは意味のあることです。これで、ロシアに対してかなりの牽制になるでしょう。

では、日本はどうかといえば、できれば軍事費1%の枠など取り払い少なくとも2%にすべきです。2%にすれば、現状の2.5%から5%近くになり、インドより多くなります。なぜそのようなことを言うのか、日本と米国との関係から紐解いていきます。

トランプ大統領は台頭する中国に対決姿勢を示してきました。これに関しトランプの暴走との誤解があるようですが、実体は違います。トランプ大統領は議会で超党派を組んで中国と対決しています。

仮にバイデン政権になったとしても、温度差はあるでしょうが、方向性は変わらないでしょう。そもそも、米国民主党といえども、強すぎる中国は好まないです。

ただ全面的な対決姿勢かというと、トランプですら違いました。かつて、ロナルド・レーガンはソ連を潰すと宣言、自らの任期8年では果たせなかったのですが、後任のジョージ・ブッシュの時代に実現しました。

レーガンとブッシュは、景気回復を成し遂げた後、軍拡競争を挑み、国際協調体制による包囲網を構築、あらゆるインテリジェンスを駆使して、ソ連崩壊に導きました。 

では、今の中国が滅び際のソ連のような状態かと言えば、違います。習近平の共産党支配は強固であるし、経済力はアメリカに追い付け追い越せの世界第二位の実力、外交的にはむしろ攻勢をかけているほどです。

このような中国をすぐに捻り潰す力は、今の米国にはありません。ただ、様々な手段を用いて、かつてのソ連が崩壊して、現在のロシアのような状況にすることはできるでしょう。だからこそトランプは、中国に圧力をかけて、政治的経済的取引を有利に持ち込もうとしていたのです。

バイデンも、基本路線は変わらないでしょう。中国の方は、仲間があまりいないトランプよりも、国際協調による対中包囲網を実現しかねないバイデンこそ警戒しているともいわれています。もっとも中国は、それを黙って見ているほどお人よしではないでしょう。

さて、こうした流れの中で安倍外交はなにをやってきたのでしょうか。孤立するトランプの友達でいました。この場合の「友達」とは「仲良し」であって「仲間」ではありません。

「仲間」とは何かといえば、いざという時に、一緒に武器を持って戦う存在のことです。たとえば、英国は米国の政権が共和党だろうが民主党だろうが、米国の戦いには兵を派遣して戦ってきました。もちろん、時に独自の判断で米国についていかない時もありますが、「原則として一緒に戦う仲間」です。

「仲間」とは、場合によっては対立する場合もありますが、その対立を超えて結びつくものです。「仲良し」とは根本的に異なります。

翻って安倍外交はどうだったのでしょうか。トランプは、日本に対等の同盟国にならないかと持ち掛けてきました。その為に自主防衛を容認する発言をしました。ところが安倍首相は早々に拒否しました。

軍事抜きの外交を選んだのです。確かに孤立するトランプは日本を無下にすることはできませんでした。しかし、それが日本の国益となったでしょうか。安倍政権は結局日本がマトモな軍事力を付けることを嫌がる勢力と戦うのを回避したのです。

 では、日本がマトモな軍事力を付けることを嫌がる勢力とは誰でしょうか。国内においては最大の勢力は財務省です。テレビ局や野党などは、大したものではありません。彼らは、財務省の走狗であるに過ぎません。そうして、現在の財務省は財布の紐を締めることだけが仕事です。

マクロ経済も理解せず、経済を発展させて、税収を増やすなどということは眼中になく、悪すぎる頭で国家の財政をまるで家計のように考えています。そうして、国家予算つまり国の支出は、大半が福祉と地方へのバラマキに消えています。

そのバラマキを支える為に財務省は増税と緊縮財政に走っています。そんな中で、防衛費は額が大きくて抵抗力が小さいです。福祉や土木を削ろうものなら族議員から業界団体までが束になって抵抗してくるのですが、防衛に関心を持つ国民や政治家は少ないです。財務省には「防衛費を削れなければ、何を削るか」という頭しかないのです。経済を発展させるという考えは全くありません。日本が、中国の脅威にさらされているという現実も無視です。

そうはいっても、財務省は様々な手をつかい、政治家、官僚、マスコミを籠絡したため、安倍政権に限らず歴代の政権が財務省と対峙できなかったのも事実です。民主党の野田政権などその最たるものです。野田政権は財務省なしでは何もできない情けない政権だったと、渡辺喜美氏が喝破していました。財務省の意向に逆らい、増税を二度も延期した政権は安倍政権がはじめです。それだけ、財務省の権力は強大なのてす。歴代の政権が、少なくと安倍政権と同程度抵抗し続けていれば、日本は今頃もっとまともな国になっていたと思います。

かつてバイデンは日本の憲法はわれわれが書いたと発言していた

今までの歴代米国旗大統領は、強い日本を本質的に忌避し、首輪をつけた状態に置きました。では、それが今後の米国の国益になるのでしょうか。バイデンがは「弱い日本」を首輪につないでおきたいのでしょうか、それとも「自立した強い日本」を望むのでしょうか。我が国は、後者こそが日本だけでなく米国の国益になるのだと説得すべきでしょう。

そして強い日本となるには裏付けが必要です。安倍内閣のGDP0.95%の防衛費では合格最低点に達していません。平時で2%が標準でしょう。本気で中国を潰すなどと考えるなら、7%も視野に入れなければならないでしょう。

ただ、精神論だけ言っても裏付けが無ければ意味がありません。では、その防衛費を増額させる財源はどこからひねり出せば良いのでしょうか。 経済成長以外にありえないです。安倍内閣は8年も政権を独占しながら、雇用は回復したものの、景気回復自体は達成できませんでした。
それどころか2度の消費増税により景気回復を腰折れさせていたところに、現在のコロナ禍です。

今でこそ巨額の給付により国民経済は何とか支えられていますが、ではいつまでこれを続けるのでしょうか。財務省やその走狗たちが、言うよりははるかに持ちこたえられます。しかし、いつまでもとはいきません。それとて、今すぐ金融緩和をやめてしまえば、リーマンショック以上の大不況が押し寄せてくることになります。

コロナ禍を収拾、そして景気回復を成し遂げなければ、外交などできはしません。古い格言に「外交と軍事は車の両輪」とある。軍事抜きの外交など、発言力は十分の一です。

もし菅内閣が本気で外交をやるならば、防衛費GDP2%程度の軍事力を持たねば話にならないですし、その為にはコロナ禍とデフレ経済を早々に退治しなければ、軍事力の裏付けとなる経済力が回復しないです。

米中対立の中で、我が国の選択肢は二つしかありません。一つは翻弄され続けるだけの存在。もう一つは自分の力で生きる国となることです。

この記事の冒頭で示したように、日本の経済力は未だ侮れません。ただ、それは他国に比較すれば人口が多いということで、国全体ではGDPが比較的大きいということです。その日本は、財務省の緊縮一辺倒の姿勢、過去の日銀の金融引締一辺倒の姿勢により、今日経済が落ち込み、一人あたりのGDPが韓国を下回る程の水準に落ち込みました。

これは、ありえないことです。金融緩和をせずに、最低賃金だけをあげるという明らかな間違いをした文在寅大統領の韓国に負けているのです。それだけ、日本が過去に、特に平成年間のほとんどの期間において、誤った財政政策、金融政策をしてきたことは、日本を凋落させたのです。

この体たらくは、一重に財務省の財政政策と、日銀の金融政策が根本的に間違っていたからです。国民のせいではありません。財務省や日銀さえ、間違った政策を繰り返さなければ、日本のGDPはもっと大きく、一人あたりで韓国に追い越されるなどという悪夢のようなことはなかったでしょう。

ただし、現在の韓国は金融政策に失敗して、雇用は最悪の状態となっており、日本の最近の経済対策は雇用を良くしたということでは合格点だったといえます。実際、雇用が悪化しなければ、経済対策はうまくいったというのが、まともな経済アナリストの見方です。


菅政権としては、財務省を有名無実にして、金融政策のなんたるかが全くわかっていない日銀官僚も有名無実にして、まずは経済を立て直し、一日もはやく軍事費を最低2%にして、日本の国力の増強に努めるべきです。

スウェーデンですら、ロシアに翻弄され続けることを潔しとせず、軍事費を大幅に増強するのですから、中国に翻弄され続けることになりかねない日本も最低でも2%にすべきです。そのためには菅政権は日本がマトモな軍事力を付けることを嫌がる最大勢力であるマクロ経済に疎い財務省と戦う姿勢を貫くべきです。そうして、国民経済を良くして、防衛費も拡張すべきです。日本はそれができるだけの十分な潜在能力があります。

菅政権が財務省と戦う姿勢をみせなければ、結局経済も安全保障も安倍政権の域を出ないとみるべきでしょう。そうして、長期政権にもなり得ないでしょう。

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2020年11月17日火曜日

コロナ不況による年末倒産阻止へ“40兆円”規模の投入が必要 「GoTo」「消費減税」「給付金」で財政政策を 識者「現金配布が重要」―【私の論評】危急存亡の今こそ積極財政や金融緩和策を実行しないことこそが、将来世代の大きなつけとなる(゚д゚)!

 コロナ不況による年末倒産阻止へ“40兆円”規模の投入が必要 「GoTo」「消費減税」「給付金」で財政政策を 識者「現金配布が重要」



 今年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は4四半期ぶりのプラス成長となった。見かけ上は年率換算で前期比21・4%という記録的な高成長だったが、コロナ禍の戦後最悪級の落ち込みからの戻りは鈍く、景気回復にはほど遠いのが実情だ。このままでは年末から年明け以降、失業や倒産が激増する懸念もある。専門家は、消費税の減税や毎週1万円もらえる給付金の導入のほか、雇用調整助成金や「Go To」キャンペーンの継続が必要だと訴える。


 21・4%という成長率は、バブル期の1989年10~12月期に記録した12・0%増を超え、比較可能な80年以降で最も高くなった。とはいえ、これは四半期の成長率が1年間続いたと仮定した年率換算で、コロナ禍のように特殊要因があった場合、ブレが生じやすい。前期比5・0%増という数字のほうが実情を反映しているといえる。

 上武大の田中秀臣教授は、「4~6月期の落ち込みが深かった分、経済再開と補正予算が効いてきたと思う。ただ、落ち込み自体は諸外国に比較してそれほどでもなかったにもかかわらず、欧米に比べ、リカバリー(回復)の弱さは鮮明だ」と苦言を呈する。

 実質GDPの実額をみると、1~3月期に526兆円だったのが、緊急事態宣言が出ていた4~6月期には483兆円と約43兆円落ち込んだ。今回の7~9月期は507兆円と24兆円増えたものの、戻りは約半分程度に過ぎないことが分かる。

 7~9月期はGDPの過半を占める個人消費が前期比4・7%増となり、牽引(けんいん)役となった。緊急事態宣言が5月下旬に全面解除され、全国民に配った特別定額給付金10万円や、7月にスタートした「GoToトラベル」などの政策が結果に反映されている。

 コロナ感染「第3波」が襲来し、「GoTo」を中止すべきだとの声もあるが、田中氏は「『GoTo』をやめるのは愚論だ。家計調査でも、宿泊費やパックの旅行代金の支出がコロナ前の5割強~6割まで戻ってきており、続けなければいけないのは明らかだ。『GoToトラベル』で感染拡大したという実証的根拠もないので、3密を回避し、ターゲットを絞った対策を拡充する方が旅客業や飲食業にプラスになる」と反論する。

休日の表参道ではマスク姿で多くの人々が行き交っていた=15日午後

 10~12月期は消費を下支えした給付金の「10万円」効果が薄れるほか、輸出も欧米のコロナ感染再拡大で伸び悩む恐れもある。そして国内の雇用情勢も懸念材料だ。

 田中氏は、大規模な第3次補正予算の編成による財政支出が待ったなしだと力説する。

 「コロナ前に2・4%だった完全失業率は3・0%まで上昇している。失業率の上下動とGDPの変化が連動する法則を基にすると、失業率1%の悪化でGDPは8%相当低下し、金額では43兆円の損失になる。第3次補正予算は40兆円規模の財政政策が必要だ」

 企業も厳しい状況が続く。企業の信用情報に詳しい東京経済情報部副部長の森田幸典氏は「現状では倒産ラッシュにはなっていないが、小規模零細の飲食店の廃業や倒産は確実に増えている。建設業もコロナ禍の前に得られた受注をやっているだけで、中小零細の建設業は足元で受注が減ってきている。将来を悲観して廃業する経営者も出てきている」と明かす。

 雇用調整助成金の期限となっている年末が企業の正念場となる。森田氏は「休業支援金や雇用調整助成金で倒産は抑えられているが、体力があった企業も借り入れが増えている。延長を『絶対してほしい』との声も多い。息切れのような形で12月に倒産や廃業などが増えるだろう」との見通しを語る。

 前出の田中氏は、個人にも企業にも、とにかくお金を配ることが重要だと強調した。

 「欧米のデータでも持続的な家計支援が効果を発揮しており、消費税の減税や、感染収束まで1人当たり週1万円の支給を続ける定額給付金も検討すべきだ。雇用調整助成金や持続化給付金など、企業への支援も青天井にするぐらいの構えも必要だ。借り入れ依存の枠組みでは企業や個人も借金漬けから抜け出せなくなり、長期停滞の原因になりかねない。現金を配り、持続的にお金を使える枠組みにすべきだ」

【私の論評】危急存亡の今こそ積極財政や金融緩和策を実行しないことこそが、将来世代の大きなつけとなる(゚д゚)!

7月〜9月のGDPの伸びに関しては、以下の高橋洋一氏が作成したグラフをご覧いただければ、どのくらいのものかよくお分かりいただけると思います。


7-9月期は過去最高の伸び率を実現しているのですが、1年前の水準と比較すると35兆円も乖離しています。上の記事にもあるように、緊急事態宣言が出ていた4~6月期には483兆円と約43兆円落ち込みました。今回の7~9月期は507兆円と24兆円増えたものの、戻りは約半分程度に過ぎないことが分かります。

新型コロナ禍による経済不況が普通の不況と違うのは、その悪化のスピードがかなり速いことです。この経済環境の悪化の速さが、多くの国民や事業者に社会的な不安をまきおこし、メンタルヘルスの毀損や自殺者さえも増加させているのです。 

そして最も不都合な点は、雇用の悪化のスピードほどには、経済の回復の速度が追いつかないということが十分考えられるということです。

そのため、目の前では、冒頭の記事にもあるように、様々な対策を迅速に行う必要があります。

ただし、様々な財政出動を行えば、財政が逼迫とい人もいますが、現在の日本の状況そんなことはありません。MTT論者いうように、何の制限もなく、青天井の財政政策による対策を行えば、いずれかの時点でインフレになり大変なことになりますが、上で述べた程度か、それよりも大きい規模で行っても何も不都合は起こりません。

従来は政府債務を減らさないと財政破綻すると騒いできた国内の政官財学界、メディアの多数派が今回は積極財政に関して沈黙しています。現状をみれば、緊縮財政どころではないとは小学生でもわかる真実だから、自粛しているのでしょうかか。いや、そうではないでしょう。そもそもデフレの国で財政破綻が起きるという理論そのものが机上の空論だからです。

「財政破綻」とは市場で信認を喪失した国債の相場が暴落、即ち国債金利が高騰することです。近年では2012年のギリシャが典型例で、10年物国債利回りは30%近くまで上がりました。

しかしギリシャはEUに属しているため自国通貨を持たないうえに、国債の大半を外国の投資家に買ってもらっていました。ユーロ不安が起きれば、信用度を表す格付けが低いギリシャ国債は投機勢力によって真っ先に売られるのは必然でした。しかも自前の発券銀行はないのですから、日米のようにカネを刷って国債を買い支えることもできないのです。

そんなギリシャや、中南米の財政、通貨不安常習国のケースを、日本に当てはめるというのはもともと無茶です。

グラフを見ましょう。コロナがもたらすデフレ不況阻止に向け、大規模な国債追加発行を繰り出している米欧の国債金利はコロナ・パンデミック(世界的大流行)勃発後、下がる基調にあります。市場は先行き予想で動きます。政府債務の膨張見通しが財政破綻の症状である国債金利高騰にならないことは明白です。
慢性デフレでカネ余りがひどい日本の場合、金融機関の国債需要が旺盛で、買い手が金利を払う羽目になるマイナス金利でも買ってしまうのです。これは、おそらく外債を買ったり、外国に金を預けたりすれば、為替リスクがあり、それよりは日本の国債のほうがよほど安全だからでしょう。

安全でなければ、外債を購入したり、外国に大量に資産を預けるはずです。そうしないで、日本国債を購入するのはバカ真似と謗られるはずです。

政府が仮に100兆円規模で国債を発行しても、日銀が現状の国債購入にとどめても、金利ゼロで推移するでしょう。

そうして、それをかなり上回る国債を発行して、危険なゾーンに入り込んだときには、国債の金利が間違いなく跳ね上がります。跳ね上がらない限り、いくら国債を発行しても、財政は破綻しないですから、国債を発行しすぎるリスクなどないのです。仮にそのようなリスクが発生したとすれば、国債発行をやめて、国債を日銀がすぐ買い戻せば良いだけの話です。

それに、他の指標もあります。日銀の物価目標2%がありますが、これを誤解している人もいて、2%にならないのがおかしいという珍妙なことをいいますが、これは2%以下であれば、良いという指標です。

いくら日銀が金融緩和をしても2%以上にならなければ良いという指標です。2%を超えればインフレになるので、緩和政策をやめよという指標です。

これも簡単な指標です。以上、国債の金利がはねあがる、物価目標の2%が超えない限り、政府がいくら国債を発行して、積極財政をしても、日銀が緩和政策を実行しても、日本経済には何ら不都合はおきません。この指標超えて、国債を発行し続けたり、日銀が緩和を続ければインフレになります。

しばらく前に、滑稽な「岩石理論」というのがありましたが、緩和を拡大していくと、当然、引き締めなければならない時がきます。その時には、拡大させたマネタリーベースを縮小させなければならないのですが、あまりにも拡大したマネタリーベースを縮小するには危険が伴うというのです。景気の過熱を抑えるために国債を売却するとすれば、金利はさらに高騰する。これが、経済を混乱に陥らせるというのです。

要するに、緩和をやりすぎると、岩石が転がり落ちるのを止められないのと同じく、経済の混乱がとめられなくなというのです。しかし、実際そのようなことはありませんでしたし、これからもそのようなことはないでしょう。実際、現在までの緩和や国債の発行で、物価目標2%には達しませんでしたし、国債のマイナス金利傾向は変わりませんでした。

そもそもコロナ禍による軽座の悪化の速度はかなり速いので、経済の回復の速度が追いつかないことは十分に考えられますから、岩石理論などで、緩和を抑制するなどのことは大きな間違いです。仮にやりすぎたら、止めば良いだけです。

コロナ禍による経済の悪化と比較すれば、通常の経済の悪化ははるかに緩慢なものです。実際、あのバブルの象徴で有名なジュリアナ東京も、バブルが崩壊した後に設立されました。気ついたときに、積極財政をやめ緊縮財政に切り替えたり、緩和をやめて緊縮に転ずれば、確実に制御できます。

要するに、いくら国債を発行しても、国債金利が上がらない限り、日銀が金融緩和をしても、物価目標2%を超えない限り、日本経済には何の悪影響もないし、ましてや将来世代のつけにもならないということです。

これに反論する方は、ぜひとも当ブログに質問のメッセージを送ってください。まかりまちがって、あなたの理論が正しいければ、ノーベル経済学賞がとれる可能性があります。そういう才能を埋もれさせたくないので、是非ご連絡ください。

とくにかく「岩石理論」などの珍奇な理論で、財政が破綻するなどという人の意見などを聞いているほど、日本経済は余裕はありません。すぐにでも、冒頭の記事にあるような対策を実行すべきです。

危急存亡の現在これをやらないで、日本経済を毀損すれば、それこそ将来世代に対して申し訳がたちません。今こそ、戦後最大の経済対策のやりどきです。現在積極財政や緩和策を実行しないことこそが、将来世代の大きなつけ回しとなります。

いまそれをやらないということは、他国から攻撃を受けたときに、本当はそうではないのに、屁理屈をつけて財政が赤字になるから、防衛戦争をしないと言っているのと同じような売国行為ともいえます。

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