2023年2月20日月曜日

大阪で米海軍が強襲揚陸艦「アメリカ」公開 最新鋭戦闘機など搭載―【私の論評】「アメリカ」は、金正恩斬首部隊を送り込むために編成された「ワスプ」打撃群の後継艦(゚д゚)!

大阪で米海軍が強襲揚陸艦「アメリカ」公開 最新鋭戦闘機など搭載

大阪港に寄港した米海軍の強襲揚陸艦「アメリカ」=20日午前、大阪市住之江区

 米海軍の強襲揚陸艦「アメリカ」が20日、大阪市住之江区の大阪港に寄港し、報道陣に公開された。米海軍の強襲揚陸艦が日本の商業港に寄港するのは初めて。同艦は物資を補給するために数日間滞在した後、陸上自衛隊と米海兵隊が離島防衛を想定して行う日米の合同訓練「アイアン・フィスト」に参加する。

 米海軍によると、アメリカは全長257メートル、幅32メートル、満載排水量約4万5690トン。航空機20機以上を搭載でき、3千人以上が乗船可能。北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の海洋進出などを念頭に、アジア太平洋地域の安定強化を担う強襲揚陸艦「ワスプ」の後継艦として令和元年、佐世保基地(長崎県佐世保市)に配備された。

 在日米海軍司令部はこの日、空母のように、戦闘機やヘリコプターを発着させることができる甲板を報道陣に公開。最新鋭のF35Bステルス戦闘機やヘリコプターなど約10機が並び、ミサイル発射機のほか対空レーダーの様子もみられた。艦内では、かじ取りを担う操だ室のほか、航空機を整備する格納庫が公開された。

艦長のショッキー・スナイダー大佐(左)

 艦長のショッキー・スナイダー大佐は報道陣の取材に「アジア太平洋地域の平和と安定のため、自衛隊との連携強化は重要な任務だ」と述べ、合同訓練の意義を強調した。

【私の論評】「アメリカ」は、金正恩斬首部隊を送り込むために編成された「ワスプ」打撃群の後継艦(゚д゚)!

同艦は米海軍が保有するアメリカ級強襲揚陸艦の1番艦で2014(平成26)年10月11日に就役、2019年12月から第7艦隊の所属艦として長崎県の在日米海軍佐世保基地に配備されています。

強襲揚陸艦は、兵員、車両、装備品を輸送し、直接海岸や海岸線に着陸させるために設計された海軍の艦船の一種です。通常、水陸両用作戦で使用され、海から地上部隊を展開し、領土の占領や人道的任務などの軍事的目標を支援することが多いです。

このような作戦で強襲揚陸艦が必要とされる理由はいくつかあります。まず、海や海域などの大きな水域を越えて部隊や装備を移動させ、沿岸地域に直接届けることができる輸送手段を提供することです。これは、敵がその地域を支配し、従来の港湾や飛行場が利用できない場合に特に重要です。

第二に、強襲揚陸艦は、海岸近くの浅瀬で活動できる特殊な能力を備えており、兵員や装備を迅速に降ろし、展開することがでます。通常、強襲揚陸艦は、車両や人員を素早く船外に出すために、ランプ(斜路)があり、船首の扉を下げることができ、また、船から海岸まで部隊や物資を輸送する揚陸挺を発進させる能力を有するものもあります。

第三に、強襲揚陸艦は重武装・装甲されており、敵の攻撃から自らを守り、輸送する兵員を守ることができます。また、戦闘機やヘリコプターを備え、さらに対空ミサイルや小火器、大砲を備え、上陸する兵士を援護します。

アメリカ級水陸両用強襲揚陸艦は、アメリカ海軍が水陸両用強襲、人道支援、災害救援、特殊作戦などさまざまな任務に使用する大型多目的船の一種です。

ここでは、アメリカ型水陸両用強襲揚陸艦の主な特徴を紹介します。

大きさ 全長844フィート、重量44,000トン以上と、水陸両用強襲揚陸艦としては世界最大級。

飛行甲板 ティルトローター機MV-22オスプレイ、F-35BライトニングII戦闘機、CH-53Eスーパースタリオンヘリコプターなど、さまざまな航空機をサポートできるよう、2.5エーカー以上の広さの飛行甲板を有しています。

CH-53Eスーパースタリオンヘリコプター

ウェルデック 船尾にある広いスペースで、上陸用舟艇や水陸両用車の出入りのために浸水が可能。

コマンド&コントロール 高度な指揮統制システムにより、軍事作戦のための浮遊司令部として機能します。

医療施設 手術室、歯科診療所、負傷者受け入れ施設などの高度な医療施設を備え、人道的・災害的な救助活動を支援します。

自己防衛のための装備 RIM-116 ローリング・エアフレーム・ミサイル(RAM)システムなど、高度な防御システムを搭載し、空とミサイルの脅威から身を守ることができます。

全体として、アメリカ級水陸両用強襲揚陸艦は、さまざまな軍事・人道的活動を支援できる多用途で強力なプラットフォームです。そのサイズ、能力、先進技術により、アメリカ海軍の重要な資産となっています。

米軍艦船が大阪港に入るのは極めて珍しく、専門家によると2016年の掃海艦「パトリオット」(アベンジャー級)以来になるのではないかとのことです。

入港した理由については明らかにされていませんが、この専門家の話しでは、九州や沖縄エリアで2月16日から3月12日までの期間、日米共同訓練「アイアン・フィスト23」が行われていることから、その関連で大阪に姿を見せたのではないかといいます。

なお、「アメリカ」は飛行甲板上にF-35戦闘機を載せた状態で入港しています。

2018年米軍は従来の原子力空母による打撃群に加え、強襲揚陸艦にイージス艦2隻を加えた、新たな打撃群を西太平洋に展開させることを決めていました。当時はワスプ級をこれにあてました。ワスプ級の強襲揚陸艦でも、30機程度のヘリコプターを運用できます。

これは「金正恩斬首作戦」に投入する特殊部隊を一気に多方面に送り込むためです。この情報は、北朝鮮にも伝わるように流されました。正恩氏は「自分が殺される」と生命の危機を感じたはずです。

「アメリカ」はこのワスプの後継艦であり、さらに強力になっています。北の核ミサイルの増産は、確かに日米韓にとって脅威ですが、金正恩氏にとっても両刃の剣になりかねないです。北朝鮮はおそらく、ミサイルと核弾頭を別々に管理しているとみられます。

朝鮮中央テレビが今年1月に公開した、金正恩氏と娘のキム・ジュエ氏が一緒に訪れたミサイル施設の写真には、弾頭が取り外されたミサイルがずらりと並んでいる場面が写っていました(写真下)。


ただ、数が増えれば増えるほど、金正恩氏が完璧にコントロールできるか定かではありません。北朝鮮は、PAL(Permissive Action Link=行動許可伝達システム。暗号なしでは核弾頭の安全装置を解除できない安全装置)のような、高度な核の安全管理システムを導入していないとみられています。

金正恩氏が米軍の脅威におびえて核兵器を増産すればするほど、自身に降りかかる災厄への懸念もまた増えていくことになります。さらに、強襲揚陸艦「アメリカ」を中心とする打撃群は、いつ北朝鮮の海域に侵入し、金正恩斬首部隊を送り込んでくるのかわかりません。米国はオサマ・ビンラディンを斬首した国です。どちらにしても、正恩氏が抱えるストレスは深刻になる一方でしょう。

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2023年2月19日日曜日

中国軍がなぜ日米戦争史を学ぶのか―【私の論評】中国が日米戦争史で学ぶべきは、個々の戦闘の勝敗ではなく兵站(゚д゚)!

中国軍がなぜ日米戦争史を学ぶのか


【まとめ】

・中国人民解放軍が太平洋戦争の歴史を熱心に研究し始めた.

・中国側の動機は、今後起きるかもしれない米中戦争に備えることだと考えられる。

・人民解放軍は米軍との大規模な戦争を考えるうえで、太平洋戦争の教訓を活かそうとするだろう。


最近、中国人民解放軍が日米両国が戦った太平洋戦争の詳細な歴史を熱心に研究し始めたことがアメリカでの調査で明らかとなった。

中国側の動機は、今後太平洋の広大な海域で起きるかもしれない米中戦争に備えることのようだという。日本にとっても深刻な事態となる展望なのだ。

日本側としてはまず、アメリカとの戦争に備えるというような危険な隣国の存在を改めて認識すべきだろう。そのうえで同盟国のアメリカが中国側のそんな危険な動向を十二分に意識して、その対策をも考えているという現実を認識すべきである。

そうした認識はみな、日本自体の国家安全保障や防衛政策へと直結する基本点だといえよう。

アメリカの首都ワシントンに所在する安全保障の大手研究機関「戦略予算評価センター(CSBA)」は1月中旬、「太平洋戦争の中国への教訓」と題する研究報告書を公表した。

副題に「人民解放軍の戦争行動への意味」とあるように、太平洋で日本軍と米軍が戦った際の詳細を中国の今後の軍事行動への教訓にするという中国側の研究内容を調査し、分析していた。

約100ページの同報告書を作成したのはCSBAの上級研究員で中国の軍事動向については全米有数の権威とされるトシ・ヨシハラ氏である。

日系アメリカ人学者のヨシハラ氏は海軍大学教授やランド研究所の研究員を務め、中国人民解放軍の動向を長年、研究してきた。ヨシハラ氏は父親の勤務の関係で台湾で育ったため中国語に精通し、中国側の文書類を読破しての分析で知られている。

では中国はなぜいまになって70数年前に終わった太平洋戦争の歴史を熱心に学ぼうとするのか。ちなみにこの太平洋戦争を大東亜戦争と呼ぶことも適切だろうが、アメリカと日本の軍隊が主戦場としたのはやはり太平洋だった。

ヨシハラ氏は中国側のこの研究の目的について「近年、中国軍関係者による太平洋での日米戦争の研究が激増してきたが、その背景には習近平主席が『人民解放軍を世界一流の軍隊にする』と言明したように、2030年までには中国軍はとくに海軍力で米軍と対等になる展望の下で太平洋の広範な海域での米軍との戦争研究を必要とするようになったという現実があるといえる」と述べている。

ヨシハラ氏の分析では、中国が太平洋戦争での米軍の戦略や戦術、さらには日本軍の敗北要因を分析し、その結果、どんな教訓を得たのかを知ることはアメリカ側にとっても今後の中国の対米戦略を占う上で重要だという。

その目的のためにヨシハラ氏は中国側の人民解放軍当局、国防大学、軍事科学院などの専門家たちが2010年から22年の間に作成した太平洋戦史研究の論文、報告類、合計100点ほどの内容を通読し、分析したという。

中国側のそれら報告書類は人民解放軍内の調査文書や軍民共通の紙誌掲載の論文などから広範に収集されている。

そのような中国側の太平洋戦史研究の文書多数を点検したこの報告書はその膨大な中国側の太平洋戦争研究のなかで、分析をミッドウェー海戦、ガタルカナル島攻防、沖縄戦の3件にしぼり、中国側の考察の主要点を次のようにまとめていた。

ミッドウェー海戦

日本海軍が空母4隻を一挙に失ったこの戦いでは米軍は日本側の暗号を解読し、情報戦で当初から勝っていた。日本側は情報戦、偵察が弱かった。空母よりもなお戦艦の威力を過信していた。さらに日本側には真珠湾攻撃や東南アジアでの勝利での自信過剰があった。

ガダルカナル島攻防

アメリカ側の補給、兵站が圧倒的に強く、日米両国の総合的国力の差が勝敗を分けた。日本軍は米軍のガタルカナル島の飛行場の効果を過小評価し、空爆で重大な損害を受けた。日本軍は地上戦闘では夜襲と肉眼偵察を重視しすぎて被害を急増した。

【沖縄戦】

米軍は兵員、兵器などの物量で圧倒的な優位にあった。だが日本側は米軍の当初の上陸部隊を水際でもっと叩くことが可能だった。空からの攻撃が海上の巨大な戦艦(大和)を無力にできることを立証した。だが日本側の自爆の神風攻撃はかなりの効果をあげた。

以上の諸点からヨシハラ氏は中国側のこの太平洋戦史研究の全体の目的や、そこから得たとみられる教訓、考察などについて以下の諸点をあげていた。

 ・中国側は習近平政権の登場以来、太平洋戦争の研究の分量や範囲を大幅に増し始めたが、その原因は習近平政権がアメリカとの大規模な戦争の可能性を真剣に考慮するようになったことだろう。

 ・中国軍には近年、実際の戦闘経験が少なく、とくに海上での大規模な戦争の体験がない。アメリカとの全面対決ではやはり太平洋戦争での日米戦でのような広大な海域での衝突が予測されるため、太平洋戦の歴史はとくに大きな意味を持つようになった

 ・日本軍は最終的には敗れたが、その過程での先制の奇襲攻撃や自爆覚悟での神風特攻隊による攻撃はアメリカ側を揺らがせ、単なる物理的な次元ではなく、心理戦争というような側面でも大きな被害を与えた。

 ・アメリカ軍による日本軍の暗号解読などインテリジェンス面での米側の優位は個別の戦闘でも決定的な有利をもたらした。情報収集、偵察などのインテリジェンス戦が実際の最終戦闘の帰趨までをも決めることが立証された。

 ・ガタルカナル戦や沖縄戦での日米両軍の物量の圧倒的な差異は両国の総合的な国力の差から生じたことが明白だった。だからこんごの大規模な戦争でも当事国のとくに経済面での総合的な強さが軍事動向を左右することが再確認された。

 ・沖縄戦での日本の世界最大の戦艦「大和」の沈没が明示した海上戦闘での空軍力の決定的な効果は、戦艦よりも空母の威力、さらには海上での空戦でも地上基地からの空軍力の効果の絶大さを立証した

以上のような考察を述べたヨシハラ氏は、中国の人民解放軍が将来のアメリカ軍との大規模な戦争を考えるうえで、太平洋戦争からの以上の諸点を教訓として活かそうとするだろう、と結んでいた。

【私の論評】中国が日米戦争史で学ぶべきは、個々の戦闘の勝敗ではなく兵站(゚д゚)!

大東亜戦争において、日米は総力戦を戦ったのであり、個々の戦闘は確かに戦艦や空母、航空機が登場し、大掛かりで、しかも戦闘地域は、かつての陸の戦いよりは、はるかに広範な海域で行われ、長期間に渡って行われましたが、それにしても個々の戦闘にだけ注目していては、大事なことを見過ごすことになります。

第2次世界大戦中の米軍の傾向食糧「Cレーション」

日米の太平洋戦における中国の分析も、そうしてヨシハラ氏の分析にしても、重要なことを見逃していると思います。それは、いわゆる通商破壊(Commerce raiding)です。

通商破壊とは重要な海域を海上封鎖し、敵国の海上交通路を機能不全に陥れて兵站を破壊しようとする戦略のことです。

通商破壊戦を行う事、また敵国の通商破壊戦から自国の商船・輸送船を守る事こそ海軍の存在意義でもあります。

海上交通路を麻痺させる手段としては以下のようなものが挙げられます。
  • 敵国籍の艦船に対する海賊行為の奨励
  • 港湾施設への襲撃(艦載砲や爆撃を用いる事が多い)
  •  艦隊(潜水艦・水上艦)や航空隊(攻撃機・爆撃機)を派遣し、目標海域を通る船を撃沈して回る
  • 海峡や港湾に機雷を仕掛けて通行不能にする
これを最初に体系的に潜水艦(Uボート)を用いて効果的に行ったのがドイツです。これについては、以下の記事を参照願います。
戦争のやりかた一変! ドイツが始めた「無制限潜水艦作戦」とは? いまや弾道ミサイルまで
第二次世界大戦中の太平洋戦において米軍は、通商破壊を組織的に体系的に熱心に行いました。一方日本はそうではありませんでした。

これは、なぜなのでしょうか。まずは、日露戦争を経て確信となった佐藤鉄太郎の「制海的軍備優先思想=艦隊決戦至上主義」は、日 本海海戦の勝利のイメージと一体になって教条化したと同時にこの思想は東郷元帥の権威とあまって、日本ではいわば詔勅化し、犯し得ない聖域となってしまったことがあります。 

潜水艦が実戦で威力を発揮する兵器として登場したのは第一次大戦です。この潜水艦を日 本海軍が通商破壊戦に運用しようとしなかったのは、第一次大戦すなわち総力戦という戦争形 態の大きな変化に、それまでの戦い方を組織として適応させることができなかったことによると考えられます。 第一次大戦前の日本の海軍戦略は制海権、海上の管制を目的とする艦隊決戦至上主義でした。

日本は、日英同盟により英国の要請を受けて、1917年4月から、海軍・第二特務艦隊を地中海に派遣し、英国をはじめとする連合国の海軍の艦隊をドイツの潜水艦による脅威から連合国艦隊を守る任務に就きました。巡洋艦1隻と駆逐艦8隻、後には駆逐艦4隻も増派されますが、日本の艦隊は、地中海における業務の際、マルタ島とエジプトのアレクサンドリアを結ぶ地中海の海上交通路の護衛任務を中心に活動しました。

またさらに、日本の帝国海軍の活動は、地中海でアレクサンドリアとマルセイユとの間を結ぶ「ビッグ・コンボイ」と呼ばれる護送船団の基軸でもあったことは、日本人にはあまり知られていないことです。その時の犠牲者たちは、今もマルタ島のイギリス海軍の墓地などに葬られています。つまり、異国の地に眠っている日本の将兵も居るのです。

しかしながら、地中海におけるこの第二特務艦隊の護衛任務から得た貴重な教訓を、帝国海軍、つまり日本は無視することになりました。

無論、日本海軍に通商破壊の概念がなかったということではありません。あくまで、自由な通商破壊戦の前提としての海上管制を獲得する ための艦隊決戦優先主義でした。しかし、艦隊決戦そのものは、本来海上の管制のための手段にすぎないです。この手 段にすぎない艦隊決戦主義が戦争形態の変化にもかかわらず日本海軍においては、目的化し教条化し事実上の「詔勅」となっていたのです。 

日本では、総力戦という「新しい現実」も、艦隊決戦という視点から観察されました。そのため潜水艦とい う艦隊決戦の目的である「海上の管制という概念」の修正を迫る新兵器も、艦隊決戦にどう役 立てるか、どう資するかという形で取り込まれていったのです。日本は、今で言う空母打撃群を世界で最初に創設して、運用したのですが、これも艦隊決戦にどう役立つかという観点から組み込まれることになりました。

実は、日中戦争期の数度の演習の結 果、艦隊決戦に資する敵艦の漸減手段として潜水艦を運用することは通商破壊戦に運用するのに比し て効果的でないという現場からの所見が度々提出されていました。

ところがこうした、演習がもたらした新しい現 実にも、帝国海軍は組織としては機敏に反応することもなく従来からの運用方針を踏襲することになりました。

この選択は、 太平洋戦争の日米潜水艦戦に重大な影響を及ぼしました。特に潜水艦の生産という側面に勝敗を分 ける致命的結果をもたらしました。

 1941年時点での日本の潜水艦建造施設は三つの海軍工廠と二つの民間造船所の五ヶ所でした。
一方、米国は二つの工廠と一つの民間造船所の三ヶ所に過ぎませんでした。戦争に入ってから二ヶ 所の民間造船所が加わりました。

にもかかわらず、1942年から1944年までの潜水艦の両国の竣 工数は、90隻と171隻で、米国は日本の約2倍生産しました。1941年の時点で米国は潜 水艦の生産は通商破壊戦用を主目的とすることに決定していました。そのため、潜水艦の性能自体は、日本に比べて全ての点で見劣りする平凡なタイプのものに限定しました。

しかし、米軍はこの性能的に劣る潜水艦を有効に活用し、通商破壊はもとより、偵察活動も効果的に行いました。第二次世界大戦中米軍は、東京湾内に潜水艦を派遣して、頻繁に偵察稼働を行っていました。

さらに、米軍は体系的な通商破壊の一端として、飢餓作戦(Operation Starvation)を実施しています。これは、太平洋戦争末期に米軍が行った日本周辺の機雷封鎖作戦の作戦名です。この作戦は米海軍が立案し、主に米陸軍航空軍の航空機によって実行されました。日本の内海航路や朝鮮半島航路に壊滅的打撃を与えました。

飢餓作戦の一環でB-29爆撃機から投下されたパラシュート付きのMk26機雷

こうして、日本は米国との総力戦に負けたのでした。日本も決して手をこまねいていたわけではなく、たとえば、スーパーフォートレスと呼ばれた日本本土攻撃に加わったB29の搭乗員は米側の資料では、3千名以上が亡くなったとされていますが、これは日本の特攻隊員の4千名以上死亡者に匹敵する程の数です。ただ、特に通商破壊で痛めつけられた日本は、戦争末期には総力戦を続ける能力はほとんど残っていませんでした。

戦後も日本はこの反省に立ち、海上自衛隊の戦術思想や日本の海運に影響を残しました。特に掃海能力の向上につとめ、日本の海自の掃海能力は現在では世界一とも言われています。また、潜水艦の能力向上にもつとめました。さらに、対潜哨戒能力では米軍と並び世界トップクラス2まで技量をあげています。

中国は、こうした日米の総力戦の実態を学ぶべきです。個々の戦闘の勝敗も重要ですが、体系的に組織的に国単位での兵站を守るとか、敵方のそれを破壊するなどの戦略のほうが重要なのです。

このブログでは、兵站を重要視しないロシアを批判したことがありますが、海の戦いでも兵站は重要なのです。

中国は2020年南シナ海と東シナ海、黄海、渤海の4海域で同時に軍事演習を行うなど大規模な演習をしましたが、10月になると小規模なものに変化しました。しかも南シナ海で軍事演習を行ったですが、他の海域では行っていません。それに対して日米の合同軍事演習は、堅実にインド洋でも行っています。これは、何を意味するのでしょうか。結局兵站の差であるといえます。

軍事演習は定期的に行い、部隊の練度向上と練度維持に行われるというのが表の目的ですが、裏の目的は仮想敵国への政治的な恫喝です。

そのため米国は、中国共産党への対抗措置として合同軍事演習を行っているのです。政治の延長の仮想敵国への恫喝として軍事演習が行われているのですが、物資消費は実戦と同じです。

端的に言えば兵士1人当たり1日3000kcalの食糧、重さではおよそ100キログラムです。2万人規模の一個師団なら、2000トンの物資を消費します。さらには、弾薬その他消耗品の補給も必要です。

米軍のMRE(Meals,Ready to Eat=携行食)

これを適宜補うためには、作戦本部が予め消費を予測し、生産・輸送・備蓄・補給がネットワークとして存在しなければならないのです。

人民解放軍の軍事演習は、上にも述べたように9月には4海域で同時に行われました。ところが1ヶ月を経過すると、人民解放軍の軍事演習は南シナ海などの一部で行う様になりました。これは中国共産党が、開戦初頭で敵を数で圧倒する構想を持つことの証左です。ところが1ヶ月を経過すると、人民解放軍の攻勢が止まることを示しています。実際、しばらくの間中国軍は大規模な演習はしませんでした。

これが、実戦となると、米軍は徹底的に中国軍の兵站を叩くことになるでしょう。イージス艦などの艦艇は無論のこと、航空機や、攻撃型原潜で中国軍の兵站はもとより、通商破壊も行うことでしょう。

これでは、中国海軍は長期間にわたり行動することはできません。

戦史家のマーチン・ファン・クレフェルトは、その著作『補給戦――何が勝敗を決定するのか』(中央公論新社)の中で、「戦争という仕事の10分の9までは兵站だ」と言い切っています。

第2次世界大戦よりもはるか昔から、戦争のあり方を規定し、その勝敗を分けてきたのは、戦略よりもむしろ兵站だったというのです。端的に言えば兵士1人当たり1日3000kcalの食糧をどれだけ前線に送り込めるかという補給の限界が、戦争の形を規定してきたというのです。

エリート中のエリートたちがその優秀な頭脳を使って立案した壮大な作戦計画も、多くは机上の空論に過ぎないのです。

中国が実際に海戦を戦うことになれば、何よりも重要なのは兵站であり、米軍は中国の兵站線を通商破壊で徹底的に破壊することは目に見えています。

戦に素人である、中国の人民解放軍は、日米間の戦闘や戦略ばかりに目がいくようですが、兵站と米軍の通商破壊力にも目を向けるべきです。

海戦においては、現在でASW(Anti Submarine Warefare:対潜水艦戦争)が重要であり、これが強いほうが、海戦を制します。米軍はASW能力は世界一です。これによって、米軍は戦略的にも有利ですが、通商破壊に関しても圧倒的に有利です。

現在の中国が米軍と海戦を戦うなど無謀の一言です。中国が学ぶべきは、第二次世界大戦中の日米の戦闘ではなく、兵站と通商破壊です。そうして、通商破壊も無論、味方の兵站を守り、敵方のそれを破壊することが目的であり、重要なのは兵站であり、戦略で勝てたとしても、こちらのほうが劣っていれば、総力戦に勝つことなどできません。

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2023年2月18日土曜日

【速報】北朝鮮が弾道ミサイル発射 元日未明以来 17日には挑発行為示唆する談話も―【私の論評】台湾のように中国と対峙する姿勢をみせない北は、国際社会から時々ミサイルを発射する危険な「忘れられた国」になりつつある(゚д゚)!

【速報】北朝鮮が弾道ミサイル発射 元日未明以来 17日には挑発行為示唆する談話も

北朝鮮の軍事パレードで登場した大陸間弾道ミサイル(ICBM)=8日、平壌(朝鮮中央通信配信)

 韓国軍は、北朝鮮が18日午後5時22分ごろ(日本時間同)、平壌の順安空港一帯から日本海に弾道ミサイル1発を発射したと発表した。大陸間弾道ミサイル(ICBM)級で、日本の防衛省によると、約66分間飛行し、北海道の渡島大島西方沖約200キロの日本の排他的経済水域(EEZ)内に午後6時27分ごろ、落下したと推定される。

 北朝鮮の弾道ミサイル発射は1月1日以来で、日本のEEZへの着弾は昨年11月以降初めて。防衛省によれば、飛行距離は約900キロ、最高高度は約5700キロに達したとみられる。通常より高角度の「ロフテッド軌道」で打ち上げられた可能性がある。


 岸田文雄首相は、情報収集・分析や航空機・船舶の安全確認の徹底、不測の事態に備えた万全の態勢の構築を指示した。

 北朝鮮は今月17日の外務省報道官談話で、米国が北朝鮮に関する国連安全保障理事会の会合開催に動いたと批判。「正常な軍事活動の範囲外での追加的行動」を検討すると警告していた。ミサイル発射には、米国への反発を示す狙いがあるもようだ。

【私の論評】台湾のように中国と対峙する姿勢をみせない北は、国際社会から時々ミサイルを発射する危険な「忘れられた国」になりつつある(゚д゚)!

北朝鮮は、従来から国際的注目を引くために様々な動きに出ています。そうした行為はもはや恒例行事と化し、従来のサプライズ感も失われました。北朝鮮の姿勢から察するに、北の指導者たちは、自国が国際社会から孤立した「隠者の王国(Hermit Kingdom)」であることに不満はないのでしょうが、国際社会から「忘れられた国(Forgotten Land)」になることは何としても避けたい、というところがあるのでしょう。

最近の人工衛星/ミサイル発射実験をはじめ、北朝鮮が定期的に大胆な行動に出ることに対しては、米国およびその同盟国に対話を強要し、譲歩を引き出すための行為だ、と見る向きが大半であり、こうした見解はもっともに思えます。

この構図は、もう10年以上も変わりないように見えます。ただ、年々北のミサイル発射技術が高まっているのも事実です。しかし、金正恩とその同志の真の望みは何なのでしょうか。そうして、その代わりに北朝鮮は何を差し出せるのというのでしょうか。

北朝鮮の核兵器開発プログラムを終わらせることが、米国にとって最重要課題であることは論を待ちません。とりわけ、北朝鮮のミサイル技術が米国本土を射程距離圏内に収めたであろう段階の今、絶対に譲れないところです。

軍事パレードを視察した金正恩総書記と娘のジュエ氏(8日)

この点に関する分析の大半専門家などが、北朝鮮に核兵器保有を断念させることは不可能ではないが極めて困難としています。これはおそらく正しい見方です。しかし、核兵器開発プログラムのみならず、核兵器自体をも廃棄した国があることは想起しておく価値がります。なかでも最重要なのがウクライナです。

ソ連が崩壊しウクライナとして独立した時点で、国内には世界第3位の核兵器保有国となる程大量の核兵器が存在していました。

1986年に発生したチェルノブイリ原発事故が、ウクライナにとって大きな引き金となったことは言うまでもないでしょう。あのような悲劇が、北朝鮮をはじめ世界のいずれの場所においても再び発生することを望む者はいないでしょう。

当時のウクライナは結局、核兵器がもたらすメリットはわずかしかない、という判断を下したのであり、安全保障と財政的補償のバランスがとれた枠組みを模索していたのです。後者については、後日米国、ウクライナ、ロシアの3カ国交渉の過程で浮上し実現したものです。ウクライナは、核弾頭をロシアに引き渡したのです。

北朝鮮も当然安全保障と金銭的な見返りを望んでいます。だが、その額はどの程度で、どのような種類の安全保障なのか、そうして、最終的に、北朝鮮は本当に核兵器保有を断念するでしょうか。

もちろん、チェルノブイリ事故を別にしても、ウクライナと北朝鮮の間には多くの違いがあります。とりわけ最も重要なのは、ウクライナの指導者が、核兵器は自国の安全保障に資するところはわずかしかない、という判断を下した点です。

もうひとつ、同様に重要なことがあります。当時ウクライナが核兵器備蓄の一部だけでなく、米ソ軍事交渉や米ソ政府関係者としての経験を有する外交官や専門家を含む外務・国防官僚の一部も、旧ソ連から受け継いだという点です。

これが、核放棄プロセスの異例のスピードにつながったのでしょう。交渉が6カ国間ではなく3カ国のみであった点も、このスピード化に貢献しました。最後に、ウクライナは共同覚書(最終的には、英国を含む4カ国で締結された)で定められた安全「保障」に満足し、米上院の批准承認が必要な条約による安全保障を主張することはありませんでした。

もっとも、ウクライナは第一次戦略兵器削減条約(START I)を継承したのですが。北朝鮮との「重要な取引」には朝鮮戦争を終結させる正式な平和条約が求められる可能性があるため、交渉および実行はより困難になることが予想されます。

このような差はあるものの、ウクライナの核兵器廃棄という決断は、北朝鮮について考える上で有益なヒントとなったのは確かです。そのひとつとして、ウクライナは旧ソ連構成国であり、冷戦時代米国と対立関係にあったのにもかかわらず、米国からではなく、ロシアから自国を守るための安全保障を求めた、という事実があります。

その背景として、1990年代のウクライナは、誕生から間もなく、国家として脆弱な状態にあったこと、独立国家としての威厳に乏しく(民族的にロシア人が多いことも一因)、またロシアとの国境線が長い上に、両国の相互関連性は強かったことと、ウクライナがやや経済的に依存状態にあったことがあります。

こうした構図を念頭に置いて考えると、北はかつてのウクライナとは異なり、中国の朝鮮半島への浸透を嫌っているのは確かなようです。大半のアナリストは、北朝鮮は基本的に中国を信頼できる庇護者、経済的ライフラインとみなしており、一方で自国が目的を追求する必要に迫られれば、問題なく裏をかく可能性がある国であると見ているようですが、それは間違いでしょう。

北朝鮮には選択肢が限られていることを考えれば、これは論理的評価ではあります。しかし一般的に、大国と国境を接する小国は脅威を感じるものです。巨大な隣国と連携を深め、安全保障を確保しようとしている時ですら、どこか安心できないのが普通です。北朝鮮は、中国との関係に不満を抱いているとみるべきです。

中朝関係史を長期的視点で見た場合、北朝鮮指導者の一部が、中国、特に上り調子にある中国への圧倒的経済依存を苦々しく感じているのは間違いないでしょう。

こうした観点からすれば、核兵器は実際のところ、中国からの政治的独立を保持しうる唯一の方法なのです。結局、対中関係において、核兵器以外の切り札を北朝鮮が見出すのは難しいです。相手は人口にして50倍、財政規模で250倍の超大国です。

金日成が核配備に乗り出した当初、そうした目論見があったとは思えないですが、この30年間、中国が経済力、政治力、軍事力を高める中で、北朝鮮にとって核兵器が対中国の交渉上の切り札となっていった考えるほうが自然です。

そうして、このブログでは度々指摘したように、北朝鮮ならびその核があることが、中国が朝鮮半島に浸透することを防いでいるのです。多くの人は、台湾にばかり注目しますが、中国は隙さえあれば、朝鮮半島に浸透し、我が物にし、朝鮮半島を中国の自治区か省にしようと目論んでいると考えるのは自然なことだと思います。

これがほとんど話題にならないのは、北に核兵器と長距離ミサイルがあるからです。台湾にも長距離ミサイルはありますが、核はありません。もし、北に核がなければ、現在朝鮮半島はとうの昔に、中国の一部になっていたかもしれません。一方、台湾に核兵器があれば、中国も現在のように度々台湾を威嚇することもなかったかもしれません。

これが想像の賜物でなく真実であるとしたら、北朝鮮が米国の関心を引こうと頻繁に行なっている行為についての解釈も違ってきます。北朝鮮が中国に懸念を抱いているということであれば、そうした見解をおくびにも出せない6カ国協議よりも、米国との2国間交渉を強く望んだのは当然です。

これは、北朝鮮指導者が、米国や日本、韓国に対する安全保障に懸念を抱いていない、という意味ではないです。おそらく抱いているでしょう。しかし同時に、対中関係における現実的安全保障を北朝鮮に提供できる国は、全世界を見渡しても米国以外にはないです。

皮肉にも、そして残念なことに、上述の論法に頼れば、北朝鮮に核兵器を廃棄させることはより難しくなってしまいます。なぜなら、その代償として、米国はより高次の安全保障を、より信頼性の高い形で北朝鮮に提供しなければならないからです。それは、現状のウクライナをみても明らかでです。核を捨てたウクライナは、現在ロシアから侵攻されています。

ウクライナに関しては、米国は経済支援は行ったものの、ウクライナはNATOに入ることはできず、結局現状ではウクライナはロシアに侵攻されています。ただ、米国やNATO諸国の軍事ならびに経済的支援があり、ロシアはウクライナでかなり苦戦しています。

ただし、ウクライナでは失敗したものの、米国は過去において、これ以上の難題を切り抜けてきた実績があります。20年前のソ連解体時、米国はロシアや旧ソ連に所属していた国々に大規模な暴動が発生しないよう支援を行いました。

ウクライナやカザフスタン、ベラルーシを説得して核放棄にまで持っていきました。さらには、東西ドイツ再統一の支援も行いました。ただ、ウクライナに関しては、現在ロシアからの侵攻という手痛い打撃を被ってしまいましたが、それでもソ連崩壊後の混乱を最小限に留めることには成功しました。

2002年の核保有国

このようなことから考えると、第一の、そして最も重要な問いは、「北朝鮮の真の望みは何か」なのです。

一つ確かなのは、金正恩は、金王朝を存続させるため、中国の浸透を嫌い、親中派とみられた、血の繋がった金正男、おじである張成沢氏を殺害し、核開発をしミサイル開発も継続しているのです。

ウクライナでの失敗を繰り返さないために、米国そうして日本は何をしなければならないのでしょうか。朝鮮半島への中国の浸透を防ぐということでは、日米や北の望みは一致しています。

まずは、ウクライナでの戦争をロシアの一方的な敗北で終わらせるべきです。その後のウクライナの安全保障をどのようにするか、さらにはどのように経済発展させるかが鍵となるでしょう。

私としては、まずはウクライナをNATOとEUに加入させ、安保と経済発展させるべきと思います。しかし、そのためには、ウクライナも民主化をさらにすすめなければならず、特に酷い腐敗は撲滅しなければなりません。

さらに、西側諸国は中国との冷戦に勝利して、中国に体制を変えさせるか、そこまでできないのなら、徹底的に弱体化させるべきです。特に、軍事的に弱体化させるべきです。そうなれば、現体制の北朝鮮と、そうして金王朝の唯一の存在意義である、朝鮮半島への中国の浸透の阻止という意義がなくなります。

ただし、そうはいっても、ウクライナの例もあるように、中国もしくは現在中国の一部が将来、現在のロシアのような存在になり、北を侵攻するなどということもあり得ます。現実に、それに近いことが現在ウクライナで起こっています。

こうしたことに対処するため、アジアにも拡大NATOかそれに準ずる組織をつくり、北もそれに加入できる体制を整えるべきです。さらに、北がTPP等に加入することを迫るべきと思います。NATOやTPPに入るには、それなりに体制を整えなければならず、北も他国との集団安全保障体制を整えたり、市場の開放や、民主化などが迫られることになります。

それが嫌なら国際社会から時々ミサイルを発射する核開発をする「忘れられた国(Forgotten Land)」になるしかありません。ミサイルを何発発射しようと、核兵器を多く持とうと、それで何をするのか、はっきりした目標や目的がなければ、あるいあってにしても、それを国際社会にわかるように表明しなけけば無意味です。本音とは裏腹に、台湾のように中国と対峙しようとする姿勢を国際社会に見せない今の北朝鮮は、まさにそうなりつつあります。

これについては、台湾のように旗幟を鮮明にしなければ、最悪中国からも、西側からも反発され、孤立することになります。それこそ、文在寅時代の韓国のようになり、この政権がまかり間違えて長く続いていれば、韓国は世界で孤立したでしょうが、これと同じような運命を辿ることになります。

台湾は、李登輝総統のもとで、民主化したことと、国内に親中派も多数存在しながらも、現政権は中国と対峙する姿勢をはっきり国際社会に向かって表明しています。だから「忘れられた国」にもならず、西側諸国等から支援や応援を受けることができるのです。


安倍晋三氏(右)と握手を交わす李登輝氏=2010年10月、台北市

台湾とは違い、四方が海に囲まれておらず、中国と陸続きの北にとっては、中国との対峙をはっきり表明することは、勇気のいることだと思います。しかし、中国からの浸透を防ぐためには、将来的にはこれは避けられないことだと思います。

ただ、中国に対峙する意図もはっきり表明してこなかった北に対して日本政府が強い対抗措置を講じてこなかったことで、北朝鮮をつけあがらせ、日本国民を危険に陥れているという事実には変わりはありません。

北朝鮮が言葉によって自らの意図を表明せずに、これからもミサイルを発射し続けるなら、彼らに通じる言葉は力以外にないとみなし、日本もそれなりの対応をすべきです。朝鮮総連の破産申し立てや、国連安全保障理事会で北朝鮮の人権問題や、正恩氏の人道犯罪の責任を問う議題を設定すべきですし、さらに厳しい制裁を課したり、日本国内で暗躍する工作員を逮捕し、強制退去などを実施すべきです。日本は早急に勝負をかけるべきです。

ミサイルを打とうが、核開発しようが、拉致問題があったにもかかわらず日本が厳しい態度をとってこなかったからこそ、北は日米韓はもとより、本当は中国にもかなり脅威を感じていることはおくびにも出さず、とにかく自分たちの都合の良いように、世界を手球にとろうとしたのでしょうが、もうその手の内は、すっかり見透かされており通用しないことを彼らに周知させるべきです。

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2023年2月17日金曜日

打ち上げ中止「H3」会見で共同記者の質問に批判相次ぐ ロケットを救った「フェールセーフ」とは―【私の論評】失敗とはその場で爆発、リフトオフ後に爆発、制御不能で爆破等を指し、今回は「中止」と呼ぶのが妥当(゚д゚)!

打ち上げ中止「H3」会見で共同記者の質問に批判相次ぐ ロケットを救った「フェールセーフ」とは

JAXAの岡田匡史氏(H3プロジェクトチームプロダクトマネージャ)

 2月17日の午前10時37分に打ち上げ予定だった、JAXAの次世代主力ロケット「H3」の試験1号機が、発射直前に突然打ち上げ中止となった。ライブ配信では、補助ブースター「SRB-3」が点火しなかったためとのアナウンスがあったが、その後、異常を検知してシステムがSRB-3への着火信号を送出しなかったことが判明している。

 午後2時から行われた会見では、JAXAの岡田匡史氏(H3プロジェクトチームプロダクトマネージャ)が登壇し、経緯を説明。同氏によると、ロケットの自動カウントダウンシーケンスは予定通り開始され、メインエンジン「LE-9」が着火し正常に立ち上がったあと、ロケット下部(エンジン上部)に設置された1段制御用機器が異常を検知。SRB-3への着火信号を送らなかったことから、打ち上げ中止となった。なお、SRB-3側にも異常はなく、制御用機器が検知した異常そのものについては原因究明中という。

 会見はJAXAの公式チャネルで配信されていたが、話題となったのが共同通信のとある記者の質問だ。「中止と失敗という問題についてもう一度確認したいです。ちょっともやもやするものですから」と切り出し、岡田氏に中止と失敗の違いについて質問した。以下はその一問一答だ。

共同 中止という言葉は、みなさんの業界でどう使われているかは別として、一般に意図的に止める、計画を途中で意図してやめる時に中止といいます。今回はカウントダウンも続いているし、飛ぶはずの機体が飛ばないなという状況に見えますが、正体不明の異常が起きて、システムが正常に作動して止まったのかもしれませんが、意図しない異常による中断、中止ということだったのでは。意図的ではなく止まっちゃったよということは一般に言う失敗ではないかと思うのですが、どうですか?

岡田 こういった事象が時々ロケットにはあるのですが、その時に自分たちは失敗と言ったことがありませんので。やはり、われわれが非常識かもしれませんが。

共同 それを失敗と呼ばれたからと言って、何か著しく不具合があるわけではないですよね。みなさんの中では失敗と捉えてないけれども、失敗と呼ばれてしまうことも甘受せざるを得ないという状況ではないですか。どうですか?

岡田 どのような解釈をされるのかは、受け止めた方、受け止められ方はもちろんあると思いますので、そうではないですとは言い難いですけれども、ロケットというものは基本安全に止まる状態でいつも設計しているので、その設計の範囲の中で止まっている、つまり意図しないというのはその設計の範囲を超えて、そうじゃない状態になることは大変なことになると思いますが、ある種想定している中の話なので、そこに照らし合わせますと失敗とは言い難いと思います。

共同 わかりました。確認ですが、つまりシステムで対応できる範囲の異常だったけれども、考えていなかった異常が起きて打ち上げが止まった。こういうことですね。

岡田 ある種の異常を検知したら止まるようなシステムの中で、安全、健全に止まっているのが今の状況です。

共同 わかりました、それは一般に失敗といいます。ありがとうございます。

岡田 ありがとうございます。

 今回のH3ロケットは、メインエンジンは着火したものの発射はしておらず、打ち上げが見送られた状態といえる。岡田氏は他の記者からの質問に対し、「失敗というのはいろんな定義もあると思うが、打ち上げにおいてカウントダウンシーケンスで止まったものは打ち上げ中止と思っている」と説明している。

 誘導ともいえる質問に対し、YouTubeのコメントだけでなくそれを視聴していたTwitterユーザーも記者に対し苦言を呈した。特に最後の「それは一般に失敗といいます」という文言に言及するユーザーが後を絶たず、「ひどい質疑だった」「捨て台詞を投げてびっくりした」といったコメントが多く投稿された。また、共同通信が初報で「発射失敗」と報じてTwitter上で批判を浴びたことと質問を関連付けるユーザーも見られた。


「フェールセーフ」という考え方

 機械には、いざという時のために「フェールセーフ」という概念がある。装置が故障した場合を想定し、安全に動作を止めることで周辺の被害を最小限に抑える設計手法だ。今回の場合は、異常は発生したものの、それを検知してシステムが正常に停止した。異常時でもロケットをコントローラブルな状態で維持できたのは、補助ブースターに着火信号を送らないという機構が正常に働いたためだ。

 岡田氏も「ロケットがスタートして打ち上げるときは常に安全な状態を確保することが第一優先。そういう意味では安全に止まったということ。非安全な状態で止まったわけではない。異常を検知して安全に止まるシーケンスが正常に働いて安全に停止している状況。直前にLE-9エンジンも正常に立ち上がっているし、異常の検知も正常に行われていると理解している」と述べ、異常状態が制御下にあったと説明している。

 「成功か失敗か」だけでいえば、正常な打ち上げ自体には失敗し、異常を検知して打ち上げ前に止めるシステムの稼働は成功したといえそうだ。部分を見れば成功も失敗もあるわけで、全体をまとめるのならばJAXAの言う通り「中止」が近いように感じる。いずれにせよ、最も大事なのは、機体や搭載していた衛星が損傷することなく、次に打ち上げられる機体が安全な状態で残っていることだ。岡田氏は「ものすごく悔しい」と会見で涙する場面もあったが、原因究明に努めつつ次の打ち上げに向けて挑むとしている。

【私の論評】失敗とはその場で爆発、リフトオフ後に爆発、制御不能で爆破等を指す。今回は「中止」と呼ぶのが妥当(゚д゚)!

記者会見の動画を以下に掲載します。


フェールセーフとは、装置はいつか必ず壊れることを前提とし、故障時や異常発生時でも、安全側に動作させることで絶対に人命を危険に晒させないようにシステムを構築する設計手法です。

ロケットや原発など、複雑で高価でしかも事故が起こればかなり危険なシステムの場合も、誤作動を起こすこともあることを前提として、その場合人名を危険にさらさないように、そうして、システム全体や大きな部分が毀損しないように、システムを構築する設計手法です。

簡単な例だと、踏切遮断機が故障した場合に、重力により自ら遮断管がゆっくり降りてくる(自重降下)機構により踏切通行者の安全を確保します。

列車検知装置が故障した場合、列車がいてもいなくても「在線(列車あり)」と判断し、「赤(停止)」を現示させることで衝突を防止します。

このように鉄道信号保安装置は常に安全で信頼できるシステムであるために、様々な手法を用いて構築されています。

フェールセーフを身近に体感できるのが、自動車のブレーキシステムでしょう。そのなかでも「停車する」という動作には、さまざまな安全が確保されています。

トラックなどのエア圧力式のブレーキを搭載する自動車は、エアの圧力低下を検知すると自動でブレーキがかかるというフェールセーフ設計が適用されています。

フットブレーキ機構は、ブレーキを主導的にコントロールする重要パーツであり、部材を含めてダメージトレランス(損傷許容設)が設計されています。車検時などに動作確認をして、定期的に交換するなどのメンテナンス対応を行います。

タイヤのブレーキパッドなどの部品は、1つが壊れても他のタイヤで停止できるのでフォールトトレランス (耐障害性)が利用された設計です。

最近、自宅のガス給湯システム(風呂、暖房、床暖房)の当初の保守点検無料サービス期間が過ぎたので、メンテナンス契約をガス設備会社と結びました。点検に来た人が語っていましたが、給湯システムも現在ではフェールセーフ機能がついており、検知器が何らかの異常を検知すると、給湯システムは自動的に止まるようになっているそうです。

そのため、止まるときには、何か前触れがあるということはなく、いきなり止まるそうです。それによって安全が確保されるそうです。

こちら、北海道は札幌ですが、北海道ではガス湯沸かし器による一酸化炭素中毒死事故あり2人の方がなくなっています。事故は1990年12月に帯広市で発生。湯沸かし器は不正改造され、排気ファンが動かない状態でした。

自宅の給湯システムは、このガス湯沸かし器のメーカーのものを使っているわけではないのですが、この事故が記憶に残っていたので、安心のために、私は今回の給湯システムのメンテ契約では、価格に応じていくつかの種類があったのですが、その中で最高のものにしました。

ガス湯沸かし器の中毒事故でなくなった方の遺族

今回のH3ロケットの発射においても、まだ解明はされていないですが、何かのトラブルがあって、フェールセーフ機能が働き、途中でとまったということです。もし止まらなかったら、かなり危険なことになっていたかもしれないですし、高価で複雑なシステムが毀損して、大打撃を被っていたかもしれません。

それを未然に防ぐことができたのですから、良しとすべきです。上の共同通信の記者は、このようなことも思い浮かばなかったのでしょう。本当にお粗末です。こういう記者にはもう取材させないほうが良いです。

堀江貴文氏は今回の出来事に関して、動画を公表しており、これを失敗と呼ぶのは悪意を感じるとしていて、堀江氏自身は、中止と呼んでいます。その動画を以下に掲載します。


この動画などみていると、共同の記者の無知蒙昧には哀れみすら感じてしまいます。フェールセーフが働いて止まったのは予期しうる問題を検知して正しく安全に止まったというわけで、失敗とは言えないでしょう。
失敗とはその場で爆発とか、リフトオフした後に爆発とか、制御不能で爆破とか、そういうことをいいます。

これは、他国でも同じことでしょう。

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2023年2月16日木曜日

ロシアはウクライナに全陸軍の97%を投入し、激しく損耗している──英国防相―【私の論評】ブフレダールでなぜか正面突破を試み粉砕されるロシア軍はすでに断末魔か(゚д゚)!

ロシアはウクライナに全陸軍の97%を投入し、激しく損耗している──英国防相


2月上旬、ドネツク州ウフレダールの戦いで劣勢になったロシア軍部隊は、無傷の戦闘車や戦車を少なくとも30両、戦場に放棄して逃げ去ったようだ(英国防省)。動画を見ると、周りには破壊されたり爆破された車両も多く散らばっている


<ロシアは陸軍を「ほぼ丸ごと」ウクライナに投入している。その人員と戦車が大幅に損耗しているとすればヨーロッパの安全保障に大きな影響がある、と英国防相は語った>

イギリスのベン・ウォレス国防相は、ロシアがウクライナに陸軍をほぼ丸ごと投入していると語った。

ウォレスは2月15日、NATO国防相会議に出席するため訪れていたベルギーのブリュッセルから、英BBCのラジオ番組「トゥデイ」に出演。「今やロシア陸軍の97%がウクライナに配備されていると推定している」と述べた。国防相会議にはNATOのイエンス・ストルテンベルグ事務総長も出席し、会議終了後に記者団に対して、ウクライナでの戦争によりNATOの軍事支出が増えており、加盟各国に国防費の増額を促したと語った。

ウォレスは「トゥデイ」で、イギリスがウクライナを支援することで、イギリスの国防が損なわれることはないと述べた。

「ウクライナがロシアを打ち負かす手助けをすることは、むしろイギリスの安全保障を強化することになる」と彼は言う。「もしロシア陸軍の97%がウクライナに投入され、損耗率がきわめて高く、戦闘力が40%低下し、ロシアが保有する戦車の約3分の2が破壊されるか破損しているとすれば、それはヨーロッパの安全保障に影響をもたらすに違いない」

こんな進軍はみたことがない

ウォレスはまた、ウラジーミル・プーチン大統領が率いるロシア軍は、ウクライナの複数の前線で進軍を試みるなかで大量の兵士を失い、厳しい局面を迎えているとも語った。

「大規模攻勢をかけて突き進むために、一方の勢力がこれだけの人員を投入する例は、これまでに見たことがない」とウォレスは述べた。「つい先日の進軍でも、ロシア陸軍は大きな犠牲を出した」

「トゥデイ」出演に先立ち、ウォレスはBBCのテレビ番組「BBCブレックファースト」にも出演。イギリスがウクライナ軍に対して、近いうちにジェット戦闘機を供与する可能性は低いと述べた。

戦闘機は供与できない

「今後数カ月、あるいは数年以内に、イギリスが必ずしもジェット戦闘機を提供することになるとは思わない」と彼は述べ、その理由としてジェット戦闘機の運用にはパイロットや整備士など「かなりの数の人員」が必要になると指摘した。

「ジェット戦闘機を運用するには何百人ものエンジニアやパイロットが必要だ。数カ月で育成できるものではない」と彼は言った。「英空軍の人員を200人もウクライナに割くわけにはいかない」

ウォレスは、イギリスはウクライナ支援について、もっと大局的なアプローチを取っていると説明した。

「我々は、いま展開されている戦いでウクライナがロシアを撃退するのを助けるだけでなく、長い目で見てウクライナがこの戦争から立ち直るのを支援していかなければならない」

【私の論評】ブフレダールでなぜか正面突破を試み粉砕されるロシア軍はすでに断末魔か(゚д゚)!

英国防省は12日の報告で、冒頭の記事の動画にもでている、ブフレダールのような戦場でのロシア軍の損失拡大について、「様々な要因が絡んでいる公算が大きい。具体的には熟練の兵士や連携の欠如、前線一帯での資材の不足などだ」と分析しています。

まさに、このような状況なので、ロシアの戦車兵は戦車を捨てて脱出するのでしょう。そもそも、燃料が足りないのかもしれません。弾薬なども、戦車に搭載されたものを使い切ってしまえば、いつ補給されるのかわからないのかもしれません。

部品も供給されず、メンテの目処もたたないのかもしれません。そうなれば、戦車はただの鉄の塊にすぎません。さらに、無謀な戦いで、戦車が真っ先に標的にされやすいからかもしれません。こちら側から反撃できない的からミサイルの標的にされれば、戦車は鉄の棺桶になるだけです。

この2週間にウクライナ軍のドローンがブフレダール戦争で撮影した約20件の映像によると、四方が開かれた広い道路でロシア軍のタンクがウクライナ軍のドローン攻撃を受けて破壊される場面などが見えます。

 慌てたロシア軍戦車が地雷が埋設されたところに突っ込んで爆発したり、驚いて逃げる兵士の一部が炎に包まれたりする映像もあります。ウクライナ軍のドローンは爆撃を加えてロシア軍の進撃を阻んでいます。
ロシアはブフレダールに投入された自国軍の第155海兵旅団が計画通りに攻撃を進めているという立場です。ロシアのプーチン大統領は12日、テレビ演説で「現在、海兵隊の歩兵が作戦を遂行している」とし「英雄的に戦っている」と述べました。

プーチン大統領

ウクライナの当局者によると、ブフレダール周辺に展開するロシア軍には職業軍人からなる部隊のほか最近動員された兵士、DPR(ドネツク人民共和国)の民兵、「パトリオット」と呼ばれる民間軍事会社の歩兵などが不規則に加わっているといいます。パトリオットはロシア国防省に近い会社と言われています。

ブフレダール周辺での苦戦は、より広範なロシア軍の攻勢にとっても良い兆しとはならなりません。米シンクタンクの戦争研究所(ISW)は、こうした失敗がロシアの超国家主義者らの確信を一段と弱める公算が大きいと指摘しています。これらの層は、ロシア軍に戦況を決定する攻勢をかける能力があるとの見解を示しています。

しかし、ロシア軍が作戦のペースを上げる中、ウクライナ軍の部隊の一部では弾薬が不足しつつあります。専門家らはウクライナ側の課題として、前線の部隊に砲弾や対戦車ミサイルなどを迅速に再供給することを挙げました。



ブフレダールの戦闘を検証してきた軍事史家のトム・クーパー氏はこの町を、「何もない平らな砂漠の真ん中に立つ、巨大で高くそびえる要塞(ようさい)」と形容しています。

ロシア軍は3カ月にわたりブフレダールの奪取を試みています。これが成功すれば、ウクライナ軍は近くの鉄道を遮断するのが難しくなります。この鉄道はドネツク州とロシアの占領下のクリミア半島とをつないでいます。

クーパー氏によれば、ロシア軍はブフレダール周辺に兵士約2万人、主力戦車90両、大砲約100門などを投入しているといいます。

しかし、1月の最終週に始まった攻撃は致命的な失敗に見舞われていると同氏は指摘。相当狭いルートを進むロシア軍の部隊は、ブフレダールの高い建物に陣取るウクライナ軍の視界に常に入ります。同軍の砲撃は前進するロシア軍部隊に大損害をもたらすだけでなく、後方からの戦力の供給や退却ルートに対しても打撃を与えているといいます。

ロシアの有力な軍事ブロガーの多くも、ブフレダールへの自国の攻撃を厳しく批判しています。DPRで国防相を務めたイーゴリ・ストレルコフ氏は兵士らが「射撃場の七面鳥のように撃たれている」と非難。テレグラムへの投稿で、多くの優れた戦車や精鋭ぞろいの落下傘兵、海軍歩兵隊員が失われていると述べました。

別の投稿では「同じ場所に真正面から突っ込むのは愚か者だけ。町は重度に要塞化され、攻撃側には極めて都合が悪い。何カ月もそうした状況が続いている」と、指摘しました。

ロシアの軍事ブロガーらには、テレグラムのチャンネルの登録者が数万人から数十万人いるとさとされています。

プフレダールのようなところを攻めるには、徹底的に軍事施設を爆撃・砲撃するか、あるいは包囲をして、兵糧攻めにするなどのことが考えられますが、ロシア軍は正面から突っ込んで、甚大な被害を出しているようです。なぜ、このような非合理なことをするのか信じられません。

正面突破といえば、聞こえが良いですが、これは旧日本軍の万歳突撃のようなものです。補給など絶たれた南太平洋の島嶼の守備隊は、水際作戦として万歳突撃を繰り返しましたが、ペリリュー島守備隊を指揮する中川州男大佐は万歳突撃を禁止し、縦深防御ができる体制を整え、持久戦を行うよう命令しました。このあたりから、日本軍は万歳突撃をやめました。

日本軍の万歳突撃 映画『太平洋の嵐』より

硫黄島守備隊の栗林忠道中将も万歳突撃を禁じ、縦深防御の体制を整え、十人の敵を殺すまで死ぬ事は許さない「一人十殺」を標語にしました。万歳突撃を禁じた結果、米軍は大出血を強いられる羽目になりましたが、日本軍は降伏することなく万策尽きた後は万歳突撃をして果てました。ただ、万歳突撃により、すぐに戦闘能力がなくなったのと比較すれば、持久戦に持ち込むことができ、米軍の進軍をかなり遅らせたという戦果は間違いなくありました。

翻って、現在のロシア軍をみると、ブフレダールで正面突破を試みようとするのですから、驚きです。ドイツ軍に侵攻されたソ連では、初戦では負け続けましたが、後に縦深防御でドイツ軍を苦しめ、反転攻勢に打って出ることに成功しました。

その末裔である現在のロシア軍が、正面突破などしようとするのですから、もうロシア軍も終焉に近づいたのかもしれません。

ただ、ウクライナ軍も疲弊していますし、先にもあげたように弾薬が不足気味ですから、ウクライナ軍は攻勢を控え気味にしつつも、攻撃は続行しているので、ブフレダール攻防戦は膠着状況のようにみえるだけかもしれません。

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2023年2月15日水曜日

中国船がフィリピン船に“レーザー照射” 日米・フィリピンの安保連携を牽制か―【私の論評】中国外交部と軍の齟齬は、さらに拡大して激烈な闘争や内戦に発展する可能性も(゚д゚)!

中国船がフィリピン船に“レーザー照射” 日米・フィリピンの安保連携を牽制か


 フィリピンの沿岸警備隊は巡視船が中国海警局の船からレーザー照射を受ける瞬間の映像を公開しました。中国側が安全保障分野で連携を深める日米やフィリピンを牽制(けんせい)した可能性があります。

 フィリピン沿岸警備隊が6日に撮影した映像。映っているのは中国海警局の船で、画面手前のフィリピンの巡視船に向けて2度、軍用級のレーザー照射があったと説明しています。AP通信によりますと、フィリピン側は乗組員がレーザーによって一時的に見えなくなるなど身体的な影響があったと伝えました。

 中国外務省・汪文斌副報道局長:「中国海警の現場対応は専門的かつ冷静でした。フィリピン側が主張するような事は起きていません。現在、この海域は安定しています」

 レーザー照射が撮影されたのは南シナ海にある南沙諸島の近海で、中国が一方的に海域の領有を宣言して以降、フィリピンや他国と海洋権益などで係争中の場所です。マルコス大統領は中国大使を呼び出し、妨害行為に「深刻な懸念」を表明。

 軍事ジャーナリストの小原さんはレーザー照射の危険性について、こう指摘します。

 笹川平和財団・小原凡司上席研究員:「レーザーポインターでも人の目に当てれば、しばらく見えなくなる。まぶしくてその場で見えないだけでなく、しばらく見えなくなることもあるので、出力をより上げているものであればその期間が長くなるかもしれないし、実際に失明の可能性もある危険な行為」

 去年6月に就任したマルコス大統領は前任だったドゥテルテ氏の『親中国路線』から修正する姿勢を見せるなか、今回のレーザー照射が起きた3日後の今月9日、日本を訪問。

 浜田靖一防衛大臣:「共同訓練等の一層の促進が期待でき、心より歓迎致します」

 中国の海洋進出を念頭に、インド太平洋地域での安全保障面の連携強化を確認しました。

 また、今月に入ってアメリカのオースティン国防長官がフィリピンに渡り、アメリカ軍の駐留拠点を増やすことで合意。フィリピンとアメリカの「相互防衛条約」が南シナ海にも適用されることなどを確認しました。

 中国外務省・汪文斌副報道局長:「アメリカ側が『相互防衛条約』を用いて中国に対し不当な圧力を掛けてきました。だが、そうしたことで我々の権益を守る決心と意志を揺るがすことは決してできない」

 フィリピンによる日本やアメリカとの連携に反発の姿勢をあらわにする中国。

 笹川平和財団・小原凡司上席研究員:「今、他国を敵に回すような行動を取り始めたわけではないと思う。反対に今まで中国の行動を公にしなかった国々がしっかり公にし、対応するようになったという方が正しい。ドゥテルテ政権下では少し『中国寄り』の姿勢を示してきたが、『こうした行為は許さない』ことを改めて公にし、抗議する姿勢を示した。それにより『中国は何をやってきたか』が改めて明らかになったということ」

 マルコス大統領と習国家主席は先月上旬に会談し、南シナ海問題の外交的な解決で合意したばかりでした。中国を巡っては「偵察用」とみられる気球でアメリカと応酬が続くなか、今度はレーザー照射で別の国とも外交問題に発展し、緊張が高まっています。

【私の論評】中国外交部と軍の齟齬は、さらに拡大して激烈な闘争や内戦に発展する可能性も(゚д゚)!

さて今回のレーザー照射といい、先日の気球騒ぎといい、中国はなぜこのタイミングでこのようなことをするのでしょうか。

習近平主席は昨年10月下旬の党大会で個人独裁体制を固めて政権の3期目をスタートさせてからは、国内経済の立て直しと国際的孤立からの脱出のため、悪化している対米関係の改善に乗り出していました。

バリ島で会談した習近平とバイデン

昨年11月14日、には習近平は、バリ島で国際会議参加の機会を利用してバイデン大統領と3時間にわたる首脳会談を行いました。会談の中で習主席は「共に両国関係を健全で安定した発展軌道に戻す努力をしたい」と語り、関係改善と対話継続の意欲を示しました。

そして昨年12月30日、習主席は今年3月開催予定の全人代を待たずにして異例の「閣僚人事」を行い、前駐米大使の秦剛氏を外務大臣に任命しました。

外相に就任した2日後の今年元旦、秦剛氏はさっそく米国のブリンケン国務長官と電話会談を行い、新年の挨拶を交わしたと同時に、「米中関係の改善・発展させていきたい」と語りました。

米国務長官との電話会談の9日後、秦外相は本来一番の友好国であるはずのロシア外相との電話会談を行ったのですが、その中でロシア側に対し、今後の中露関係の「原則」として「同盟しない、対抗しない、第三国をターゲットとしない」という「三つのしない」方針を提示しました。

それは明らかに、米国を中心とした西側に配慮してロシアと関係見直しに出た挙動であって、習政権の対米改善外交の一環であろうとも思われます。

こうした中で、ブリンケン米国務長官の2月訪中が双方の間で決定され、長官は2月5日、6日の日程で北京を訪問する予定でした。 ところが「ブリンケン訪中」の直前になって、中国の放った偵察気球一つでそれが延期されることとなりました。その後も、全部が中国の気球かは、まだわからないものの、カナダやアラスカでも行われことが報じられ、さらに止めの一発のように、今回のレーザー照射です。

中国スパイ気球撃墜の瞬間

偵察気球が米国側によって撃墜されたことによって、米国朝野の対米姿勢はさらに厳しくなる一方、習近平主席のメンツが丸潰れとなり、米中関係はより一層悪化することになりました。

この一連の出来事から、中国内の事情がすけてみえてきます。それは、何かといえば、政権内のいずれかの勢力が最高のタイミングで習近平の対米改善外交を潰しに取りかかった可能性です。

偵察気球を放ったのは中国軍である可能性が高いですし、今回のレーザー照射は海警局によるものであり、習主席の対米改善の潰しに暗躍したのは人民解放軍ではないかという推測も成り立ちます。

2021年2月1日に改正された法律により、中国海警局は中国の人民解放軍の最高意思決定機関である中央軍事委員会の指揮のもとで「防衛作戦の任務を遂行する」ことが明確になりました。

海警局の母体はもともと中国国務院(政府)の国家海洋局で、行政組織でした。非軍事色を出して米国や周辺国との軍事的衝突を避けながら南シナ海など実効支配海域を広げる狙いがあっりました。しかし、この時から中国海警局は「準軍事組織」となり、中央軍事委員会の指揮のもとに行動するようになったのです。

これは、気球、レーザー光線照射ともに、軍が意図的に行った可能性があります。

レーザー光線に関してはまだ発生したばかりなので、何ともいえませんが、「気球事件」への対応において外交部門は一貫として柔軟に対応し、対米改善路線を継続させたい思惑のようですが、、それに対して、国防省は外交部とは異なる対応をとっています。 

2月5日、米国による気球撃墜の事態を受け、中国国防省報道官は「談話」を発表して「厳重なる抗議」を行いました。さらに「類似する事態に対して必要な手段で処置する権利を保留する」とも発言しましたが、この発言は明らかに、もし米国側の気球などが中国に飛んでくるという「類似する事態」が発生した場合、中国軍はそれを撃墜するという「必要な手段による処置」をとる用意があるという意味です。 

中国の国防省はここで、軍事手段による対米報復を強く示唆していますが、これは、中国外務省の「反応する権利の保留」よりは一歩進んだ強い表現でした。しかも、この発言は理解するようによっては、「誤って入った気球の撃墜は不当である」という中国外務省の主張を事実上否定したものと受け取れます。

同じ習近平政権の下で、外務省と国防省の姿勢の違いが明確になっていて、「政権内不一致」がが明確になっているのです。

2月7日、米国国防総省報道官は、気球撃墜の直後に米国側が中国国防相との電話会談を申し込んだが断られたと発表しました。今の時点では、習近平指導部の意思としてそれを断ったのか、あるいは国防相もしくは軍が自らの判断で断ったのかは判然としません。

しかし、この態度は、中国外務省が一貫として主張している「意思疎通」とは明らかに矛盾しています。またもや、政権内での乱れを露呈しています。そうして、もし電話会談の拒否が軍の意思であるというなり、ブリンケン米国務長官訪中直前のタイミングで偵察気球を放って米中対立を作り出して、習主席の対米改善潰しをしたのは、まさに中国軍の意図である可能性はさらに高まったといえます。

さらに、2月8日、外務省毛寧報道官は定例の記者会見で、「どうして中国国防相は米国側との電話会談を拒否したのか」と問われると、「それは国防省に聞いてください」と即答で突き放しています。

国防省と外務省との間に齟齬のあることは明々白々です。さらに9日、国防省報道官は「談話」を発表し、「対話の雰囲気にない」との理由で電話会談拒否の姿勢を説明しました。そうして同時に「類似する事態に対して必要な手段で処置する権利を保留する」と対米報復を再び示唆したのです。

 しかし、国防省=軍が「対話の雰囲気にない」と明言した以上、外務省としても当面は米国側との対話を模索し難くなります。捉えようによっては国防省=軍はこの「談話発表」を持って、外交ラインが依然として希望している対米改善の道を封じ込めようとしているように見えます。 

このような政権内不一致と国防省の強行姿勢の背後には、習近平主席が秦剛新外相を使って進めている対米改善に対し、不満と反発を持った中国軍の暗躍があるようです。

したがって例の「気球事件」は、対米改善を妨害しようとする中国軍によって引き起こされた可能性は否めないところにもってきて、今回のレーダ照射です。もしそうであれば、軍を含めた習近平政権全体は今後、ますます危険な方向へと走っていく可能性も出てきました。

先日もこのブログで述べたように、中国海軍の潜水艦を含めて艦艇のすべては渤海で製造したり、大掛かりなメンテを行うという不合理なことを未だに行っています。これについては、このブログでも述べたばかりです。その記事のリンクを以下に掲載します。
米韓、黄海上空で再び戦闘機訓練 中国けん制も狙いか―【私の論評】米軍が黄海で演習するのは、中国の潜水艦の建造・メンテは渤海で行うという大きな弱点があるから(゚д゚)!
中国の潜水艦を含む艦艇のメンテは潜水艦も含めて、大掛かりなものは、すべて渤海湾内の造船所で行わなければなりません。

そうなると、水上艦艇はまだしも、すべての潜水艦は黄海を通り、渤海にでなければメンテはできないことになります。渤海に行くためには、必ず水深浅い黄海をとおらなければなりません。

中共は、なぜこのような不合理なことを未だに続けているのでしょうか。それには、いろいろな観測がありますが、その中で最も合理的と思われるのが、様々な艦艇、特に潜水艦は、中国共産党にとって脅威になるからというものです。

中国の人民解放軍は、普通の国の軍隊とは違い、中国共産党の下に位置し、いってみれば共産党の私兵であり、いくつかの軍(戦区)にわかれており、その軍が、戦車や航空機、艦艇を持ち、核兵器も持っている軍もあるという異様な形態をしています。しかも、この軍はそれぞれ自ら事業も展開しており、これが不正の温床ともなっています。
それぞれの軍自体が、共産党の私兵であり、事業も展開しているのです。日本でたとえると、商社が武装しているようなものです。

そうして、共産党は決して一枚岩ではなく、派閥争いが絶えません。最近は、習近平が掌握しつつあるとはいっても未だ完璧ではありません。いつ派閥争いが激化し、軍隊もそれに呼応して、いつ中国共産党中央政府にたてをつくかわかったものではありません。

だからこそ、中国共産党は今でも北京の直接の勢力下にある渤海でだけ、潜水艦のメンテを行わせているのでしょう。

もし、自らの勢力下にないところの造船所で、潜水艦のメンテを行えば、造反しやすくなり、造反されれば、北京にミサイルを打ち込まれ、中国共産党中央政府は崩壊するかもしれません。それも核を打ち込まれれば、とんでないことになります。そんなことを避けるためにも、今でも渤海でしかメンテをさせないのでしょう。 

もともと、このような状態にあるので、習近平の腐敗撲滅などで、軍には不満が蓄積されており、習近平とそれに連なる外交部に対して意趣返しをしているという可能性もあります。

しかし、こうしたことがエスカレートしていけば、最初は偵察気球を飛ばしたり、海警局の船がフィリピン船に向けてレーザーを照射するだけではなく、 軍事行動に打って出るという可能性もなきにしもあらずです。

昔は、いずれの国でも、軍や軍の一部の造反が、権力者の最も大きな脅威でした。中露北やミャンマーでは、いまでもそうなのです。

憲法も、法律も共産党の下に位置づけられる中国においては、共産党の中で造反が起これば、これはとんでもないことになるわけです。なぜなら、共産党造反派は被造反派に対して、理屈上は、憲法や法律に縛られずなんでもできるからです。

中国共産党の下に憲法や法律が位置するということは、習近平のような独裁者が統治するのには都合が良いようにもみえますが、共産党内部で造反が起これば、これから自分を守るのは、憲法でも法律でもなく、むき出しの権力であり、武力であり、知略以外にありません。均衡していれば、良いのですが、これが崩れれば、大闘争、内乱・内戦などに発展することは、十分にあり得るのです。

このこともあるため、中共は海外より、自分の国の内部の都合で動かざるをえないのです。他国の脅威と同じか、時と場合によっては、中共内部の造反のほうが、より脅威になりえるのです。

さて、今回の異変は、単なる意趣返しなのか、あるいは激烈な闘争や、内戦にまで発展するかは、まだみえてきません。何か変化があれば、また報告させていただきたいと思います。



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2023年2月14日火曜日

成田悠輔「高齢者は集団自決した方がいい」NYタイムズが発言報じて世界的大炎上「この上ないほど過激」―【私の論評】成田悠輔氏のような学者に、徹底的に欠ける統合的な思考方法とは(゚д゚)!

成田悠輔「高齢者は集団自決した方がいい」NYタイムズが発言報じて世界的大炎上「この上ないほど過激」

成田悠輔氏

 「高齢者は老害化する前に集団自決、集団切腹みたいなことをすればいい」といった主張が物議を醸している。発言者は、経済学者で米イェール大学のアシスタント・プロフェッサー・成田悠輔氏だ。

 各界の重要ポストを高齢者が占めている日本の現状に対し、成田氏は、2022年2月1日、堀江貴文氏と対談したYouTube動画『【成田悠輔×堀江貴文】高齢者は老害化する前に集団切腹すればいい?成田氏の衝撃発言の真意とは』で、世代交代を本気で考えようとして、次のように述べている。

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 「(高齢の偉い人々を)1ミリも尊敬していないかのような雰囲気をみんなが醸し出すようになると、やっぱり誰しも周りに必要とされていない感をガンガン出されるとつらいと思うんで、少し世代交代につながるんじゃないか」

 その後、高齢化が進む日本社会の解決策として、「安楽死の解禁・強制」などにも触れている。

 「成田氏の発言は、2021年12月17日の『少子化ってダメなこと?人口減少で60代が労働力の中心に?ひろゆき×成田悠輔』(ABEMA)などでも触れられており、持論なのは間違いないでしょう。この意見に対し、侃々諤々の議論が巻き起こっています」(週刊誌記者)

 実際、SNSでは、

 《「集団自決」発言も知ってるけど、これ「年寄りは死ね」って意味じゃなくて70代80代にもなって重要ポストにしがみつき若者の成長の芽を摘むような社会に将来はない、世代交代が必要ってことでしょ。》

 といった肯定派もいれば、

 『#成田悠輔をテレビに出すな』とのハッシュタグをつけ、《こういう乱暴で非常識なことを言う人は、まず自分が高齢になったら率先してやりますという約束してから言うべきですね》などと批判する意見も多数投稿されている。

 そして、この問題がついに海外へも飛び火。2月12日付の米紙『ニューヨーク・タイムズ』が、成田氏の「集団自決」「切腹」発言について「この上ないほど過激」と報道したのだ。

 同紙は、成田氏がアメリカの学会で無名である一方、「彼の極端な主張は、高齢化による経済停滞に不満を持つ何十万もの若者のフォロワーを獲得している」と紹介。

 さらに、丸と四角のレンズの眼鏡をかけ、Tシャツやパーカーのカジュアルな姿でメディアに登場する成田氏は、「アイビーリーグ(米名門私立大学の総称)のブランドを利用している」とも述べている。

 同記事を受け、東大名誉教授のロバート・キャンベル氏は、成田氏の発言への批判とともに、国内メディアがまともに取り上げていないことへの疑問をこうツイートした。

 《高齢者に集団自決とはあくまで問題提起であり「抽象的な比喩」とする成田悠輔氏。太平洋戦争、優生保護法、やまゆり園の大量殺人事件もメタファーとでも言うのでしょうか。国内メディアより先に米国NYTが深掘りして「提起」を問うこと自体、日本の、メディアの問題です》

 ニューヨーク・タイムズの報道を受け、イギリスの『デイリー・メール』『テレグラフ』、ドイツの週刊誌『シュピーゲル』なども、次々に後追いし、世界的に炎上状態となっている。ちなみに、当該記事を紹介したニューヨーク・タイムズのツイートは、2187万ビューを超えている。

 「seppuku」という言葉とともに、世界の耳目を集めることになった成田氏の発言。だが、日本の高齢化社会が待ったなしで、早急な対策が必要なのも事実。はたしてこの騒動、着地点はどこになるのだろうか――。

【私の論評】成田悠輔氏のような学者に、徹底的に欠ける統合的な思考方法とは(゚д゚)!

私自身も、自分もそうならないためにも、自戒をこめて、「老害」について、このブログにも語ることはあります。しかし、成田氏のように過激なことを言ったこともありませんし、そもそも言えないです。

確かに、この世の中に老害という現実は存在しています。それについては、このブログでも述べたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
国葬やアフリカへの4兆円支援、本当に税金の無駄遣いなのか 反対派の批判は的外ればかり―【私の論評】私達保守派は、老害から若者と自分自身、社会を守らなければならない(゚д゚)!

写真でみる限り、集会に参加している若者はいない

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の結論部分を掲載します。

今、社会全体に“老害”がはびこっているのです。 Q. 身の回りに「老害だなぁ」と感じる人はいますか? YES…66.7% NO…33.3% ※20~40代の男女2000人にアンケートを実施。回答期間:2022年6月8日(水)~6月14日(火)

もちろん、高齢者が全員老害化するわけではありません。ですが、会社員時代に得た地位やプライドを引退後も捨てきれない人や、脳機能の衰えによって感情のコントロールが利かなくなった人が一定数いるのは事実です。

高齢者の数が右肩上がりで増えているため、そのぶん必然的に老害化による傍若無人ぶりも目立っているのかもしれません。 

世界保健機関の定義によると、高齢者とは65歳以上を指します。この定義に鑑みれば、日本では総人口の29.1%が高齢者ということになります(’21年時点。総務省統計局の発表より)。

迷惑行為のみならず、日本は高齢者優遇の政策に偏る「シルバー民主主義」に陥っているとの指摘もあり、政治や企業の中枢ではいまだに高齢者が幅を利かせているのが実情です。

写真はイメージです
こうした状況を放置すれば、老害と呼ばれる高齢者が増えるのも当然で、社会全体が老害に蝕まれる前に対処法を学ばなければいけないです。 老害(ろうがい)とは、組織や社会で幅を利かせすぎて言動が疎まれる高齢者、また、傍若無人な振る舞いによって他人に必要以上の負担や迷惑をかけている高齢者などを指す表現です。

そうして、誰もが年を重ねれば、老害となる可能性もあるのです。自分自身が老害にならないために、周りのご老人たちが老害とならないようようにする方法はあるはずです。老害によって、若者だけではなく、日本社会が蝕まれていくことは避けなければなりません。今後、このブログではその方面にも踏み入っていこうと思います。
このようなことを掲載すると、私は老人に対して、マイナスのイメージだけを抱いているように思われるかもしれません。後で述べますが、決してそうではないです。ただ、一部の老人に対して、マイナスのイメージも否定はできません。多くの老人がテレビのワイドショーを鵜呑みにしている様をみると、本当に「老害」はとんでもないと思うことがあります。

特に、老人たちの「アベガー」の発言にはうんざりしたことがあります。居酒屋に行くと、老人たちの「森友がー、加計がー、安倍がー」などという声を一度ならず、何度も聞いたことがあります。それも大した根拠もなく、テレビの受け売りを話しているだけです。

スーパーに買い物に行くと、高齢の御婦人が「アベ政治を許さない」と記したストラップをハンドバッグや財布につけているのを何度か見たことがあります。私は、そもそも政治とは、政策を是々非々で論議するものであり、特定の個人が良いとか、悪いとかの考えで論じたことなどありません。それは、明らかな間違いです。政府が悪い、特定の個人が悪いという考え方では、最初から自らの思考に枠をはめているようなものです。


だからこういう人たちをみるとうんざりしてしまうのです。同じ高齢者であっても生涯学習、百名山めぐり、軽度なスポーツ、孫の世話、休日にはこんなごく普通の何気ない日常が待っている人もいます。その一方で、反アベ高齢者たちの休日の選択肢が「政治デモ」という現実でした。

しかも、安倍晋三という存在によって、皮肉なことに彼らは活力と居場所が与えられてきたのです。しかし、安倍元総理が暗殺されてしまった現在でも、反アベの高齢者たちに安らぎや癒しなどあるはずもありません。彼らは、「アベ政治を許さない」「アベは今すぐやめろ」こう絶叫しているうちが実は至福の時であったことを心の片隅に留めた方が良いです。

では私が高齢者すべてを、「老害」として退けるのかといえば、そのようなことはありません。特に私は、ご老人の中には、いわゆる統合的思考に優れている人がいることに従来から注目してきました。

実は、人間による思考方法は、一つではなく、大きく3つあります。その中の一つが統合的思考です。これについては、このブログにも随分前に掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
BOOK REVIEW 『これからの思考の教科書』- ビジネススキルとしての思考法を順を追って学べる良書―【私の論評】常に革新的であるために、一つの思考方法に凝り固まるな!!アインシュタインと菅総理大臣から真摯に学ぼう!!

アインシュタインと菅総理

この記事の元記事の、ブックレビューのリンクは切れているので、以下にまだ生きているリンクを以下に掲載します。

これからの思考の教科書 ~論理、直感、統合ー現場に必要な3つの考え方~ 単行本(ソフトカバー) – 2010/9/28
この記事は、2010年11月16日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、このきじより、3つの思考方法についてのまとめを以下に掲載します。

ロジカル・シンキング(理論的思考)
物事を広く深く考え、分析し、相手にわかりやすく伝えるために、問題を構造化する思考法のこと。これは、ビジネスの基本です。最低限、この思考法ができない人は、ビジネス・マンとはいえません。特に、新人では、こうした思考法ができない人が多いです。 しかし、こうした思考方法ばかりして、そこから、一歩もはみ出さない人は、発展性がないですし、人間的魅力も感じられませんね。

しかし、まずは、こうした思考法を身につけるべきです。また、ロジカル・シンキングは、より上位の思考法である、水平思考や、統合思考の基礎なるものです。これができない人に、より上の思考をすることはできません。
ラテラル・シンキング(水平的思考)
ある問題に対し、今まで行われてきた理論や枠にとらわれずに、全く異なった角度から新しいアイデアを生もうとする思考法のこと。英国のデボノが1967年ころ唱えたものです。ロジカル・シンキングだけでは、出てくるアイディアは、確実にできるものではあるものの、どうしても月並みなものになってしまいがちです。 
そんなときに、全く見方を変えて、新たなアィデアを出すのがこの考え方です。会社であれば、部長までのクラスの人は、この考え方ができなければ、今の時代は務まりません。
インテグレーティブ・シンキング(統合的思考)
相克するアイデアや問題事項の対立点を解消することにより、より高次の第三の解答を見つけ出す思考法のこと。理論的思考や、水平思考によって、いろいろなアイディアが浮かんできます。ただし、アイディアがたくさんあるだけでは、実行に移すことはできません。 
それどころか、混乱するだけです。ここで、数多くのアイデアを取捨選択、統合するとともに、実施すべき順番を考える必要があります。また、数多くのアイデアを束ねるだけではなく、一言で言い表したりして、誰にも理解できるようにして、さらに高次元にする必要があります。それが、統合思考です。経営者クラスはここまでできなければなりません。
理論的思考については、役人や学者に優れた人が多いです。そうして、彼らの職責からいって、彼らは理論的思考一本槍で十分につとまります。

民間企業となると、理論的思考一本槍では、月並みなイノベーションしかできませんから、水平的思考も必要になります。

ただ、理論的思考と水平的思考だけでは、いかなる組織でも、混乱を招くことになります。そこで、統合的な思考が必要になってくるのです。 安倍元首相を例にすると、第一次安倍政権までの安倍氏の思考方法、は論理的思考と、水平的思考にとどまっていたものと思います。しかし、総理を辞任し、自民党が下野していた期間を安倍氏は無駄にしませんでした。

様々な情報を吸収し勉強しただけではなく、思考法を変化させ、統合的思考を身につけたようです。そうして、これこそが政治家にとって、一番重要な思考方法です。政治家の中には、現場が重要などと語って現場を重視する政治家もいます。確かに現場を見なければなりませんが、統合的な思考ができることが、その前提です。それができずに、ただ現場ばかりみている政治家は、無意味どころか害をなします。政治家などやめて、社会事業活動などして、直接困った人たちを助けるべきです。

論理的思考を身に着け総裁に返り咲き、衆院選で選挙に勝ち、総理に返り咲くことが決まった時期に、安倍元総理は「安全保障のダイヤモンド」を公表しています。

まさに、安倍元総理の統合的思考方法が、花開いたのがこの論文だと思います。

この論文は、外交や安保の土台になっていたものと考えられます。安倍総理は、これをさらに発展させ、インド太平洋戦略を提唱しました。これこそ、安倍元総理の統合的思考の真骨頂です。

今考えると、安倍元総理は、こうした戦略の枠組みがあって、その上で、日々の外交や安全保障や、憲法改正や経済について考え、行動していたのだと思います。

第一次安倍政権までの、安倍氏は、保守を全面に打ち出していましたが、こうした統合的思考は芽生えていなかったのだと思います。私自身も、実は第一次安倍政権までの安倍氏については、あまり評価はしていませんでした。高く評価するようになったのは、第二次安倍政権になってからです。

統合的思考は、若いうちからそれができる人は稀です。ある程度の年齢がいってから、できるようになる人が多いです。安倍元総理も例外ではなかったのだと思います。それは、なぜかというと、統合的思考ができるようになるためには、様々な経験を積まないとなかなかできないからです。中には例外的な人も存在し、子供の頃から様々な経験をつみ、早熟で大人になってすぐにそれができる人もいますが、それは例外中の例外であり、そういう人は天才と呼ばれるのです。

そうして、多くの人は、会社の中で統合的な思考を身につける前に、定年を迎えます。これができるようになる人は、少ないです。これができるようになれば、民間会社であれば、役員になれる確率が高まり、いずれ役員になる人もでてきます。

しかし、多くの人は役員になることはできません。なぜ多くの人が役員になれないかといえば、まずは人数的な問題もあるでしょう。一部の人だけではなく、多数の人が役員になれば、企業は維持存続が難しくなるからです。

そうして統合的思考法ができない人は、日本社会や国際社会まで視野に入れるこもかなわず、このような思考法をする人をなかなか理解できなかったりします。自分の思考の枠組みの中でだけ考えて、そのような考え方をする人を冷酷だとみなしたり、凡庸だとみてみたり、時代遅れであると勝手に判断したりします。

挙げ句の果てに、統合的な考え方に基づいて行動する企業の一面だけをみて、その企業やその企業を統治している役員を、悪の権化のように考える人もいます。これは、政治家も同じようなもので、統合的思考にもとづき、国や社会のために誠実に行動している政治家を、自分の思考方法や価値判断だけで判断して、短絡的に悪の権化のように思い込む人もいます。

個々の企業による特殊な事情もありますが、まともな企業に限った場合、その時々の利益や売上だけではなく、企業の存続や社会との調和まで含めた、統合的思考ができるできないは大きな分かれ道となります。統合的思考ができる人が、いずれ役員になり、そうではない人は定年を迎えるのです。日本では、年齢に伴い強制的にそうなりますが、米国などでは、多くの州で自己判断でそうなります。

理論的思考や水平的思考は、若い人のほうが相対的にすぐれていますから、統合的思考ができない人は、相対的に若い人より仕事ができなくなり、それを自ら悟り退職するのです。一方統合的思考ができる人は、年齢を重ねてもさらに円熟味を増し、役員としてスカウトされたりするのです。

しかし、統合的な考え方ができる人は少ないので、まともな会社では、外部からも役員を導入することもあります。

日米に限らずまともな企業においては、いかに社員として優秀だったにしても、統合的思考を欠いた人を民間企業は役員にすることはできません。そんなことをして、統合的思考を欠いた多くの人が役員になれば、役員が理論的思考と水平的思考の持ち主だけで構成されていれば、混乱を招くだけであり、企業は崩壊します。多くの企業の破綻の原因はこのようなところにもあります。

ただし、特定の企業の中では統合的な考え方ができなくても、社会の中でそれができる人はいます。そういう人が、いわゆる世話役になったり、まとめ役になったりしたり、そこまでいかなくても、仲間をつくったりで、生涯学習、百名山めぐり、軽度なスポーツ、孫の世話、休日には何気ない普通の日常を過ごしているのだと思います。

このような人は、たとえ定年になったとしても、今までの知見を活かして、社会のなかで、有益で有意義な生活を続けられるのだと思います。そうして、自分の能力や経験を活かして、身の丈に合った統合的な思考をしつつ、子供や孫の行く末を見守ったり、ときには助けたり、あるいは地域の繁栄や発展などに知らずしらずのうちに寄与しているのだと思います。こういう人を私達は、昔から「知恵者」や「知恵のある人」などと呼んで尊敬してきたのだと思います。

一方、テレビのワイドショーなどに踊らされる「老害」老人たちには、そのような考え方はできないのでしょう。身の丈にあった統合的な思考法ができないからこそ、特定の信条や、モノの考えかたに偏り、中途半端な理論的思考と、水平思考に煽られ、自分の考えはどんなときでも正しく、それ以外は悪であると思い込み、さらに煽られた自分に酔い、突飛な発言、行動などをして「老害」ぶりを発揮するのだと思います。

学者の中にもそれに近い人も大勢います。まずは、学術会議の学者、特に理事会のメンバーもそうでしょうし、個人の典型例は山口二郎氏だと思います。


先に述べたように、学者は分析的思考だけで、職責を全うすることはできます。そういう人たちがいて、専門的に物事を考察し、論理的に物事を記載し、論文に残すことは、それだけでも勝ちがあります。ただ、学者としても、自分の研究が社会の中でどのような部分を占めているのか、何をすることが社会を豊にしたり発展させるのかなどについては、日頃から考えなければならないと思います。

自分の専門だけではなく、そのような考えも持って日頃努力していれば、学問の幅も広まり、いずれ統合的な考え方もできるようになり、学者としての職責を果たすだけではなく、学者として社会に貢献できるようになるのでしょう。実際、私はそのような学者の方々にお目にかかったこともありますし、定年後に大活躍している方も大勢知っています。

「高齢者は集団自決した方がいい」と語る、成田悠輔氏は、統合的思考ができない人なのでしょう。そうして、実際成田氏は、現在はそのような思考方法だけで十分生きていけるし、自分だけは「老害」とは無縁だと考えていられるのでしょう。だから、高齢者は全部切って捨てたほうが良いという極端な考え方になるのでしょうし、安倍元総理の思考も理解できなかったのでしょう。

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