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2024年4月20日土曜日

「血を流す場合もある」国民に説得を 岸田首相「グローバル・パートナー」の責任 集団的自衛権のフルスペック行使、憲法改正が必要―【私の論評】憲法改正をすべき決断の時が迫ってきた!日本国民は覚悟をもってこれに臨め

八木秀次「突破する日本」

まとめ
  • 岸田首相は米国訪問後、日米関係を「かつてなく強固な信頼関係に基づくグローバル・パートナー」と位置づけ、安倍元首相の憲法改正の志を引き継ぐ決意を示した。
  • 「グローバル・パートナー」と称したからには、集団的自衛権の制約を外し、同盟国と連携して権威主義国家に立ち向かうため、憲法改正が求められる。
  • 安倍元首相は「血の同盟」と表現し、日米同盟の本質は互いに血を流す覚悟が求められると説明していた。
  • 岸田政権は安倍政権の遺産を継承し、安全保障政策を推進してきた。「グローバル・パートナー」発言はその延長線上にある。
  • しかし、「グローバル・パートナー」として日本に犠牲や負担が求められる可能性があり、政府は国民にその覚悟を真剣に訴える必要がある。
 岸田首相は米国訪問後、日米関係を「かつてなく強固な信頼関係に基づくグローバル・パートナー」と位置づけ、安倍元首相の憲法改正の志を引き継ぐ決意を示した。

 「グローバル・パートナー」と称したからには、集団的自衛権の制約を外し、同盟国と連携して権威主義国家に立ち向かうため、憲法改正が求められる。

 安倍元首相は「血の同盟」と表現し、日米同盟の本質は互いに血を流す覚悟が求められると説明していた。

中国を訪問した安倍首相

 岸田政権は安倍政権の遺産を継承し、安全保障政策を推進してきた。「グローバル・パートナー」発言はその延長線上にある。

 しかし、「グローバル・パートナー」として日本に犠牲や負担が求められる可能性があり、政府は国民にその覚悟を真剣に訴える必要がある。

 岸田首相は米国訪問から帰国後、国会で米国とのグローバル・パートナーシップを強調した。これは安倍元首相が目指した「血の同盟」、つまり米国と共に自由や民主主義、法の支配を守るために必要ならば犠牲をいとわない決意を示したものと解釈された。

 「グローバル・パートナー」と位置づけた以上、日本には集団的自衛権の行使制限を外し、同盟国・同志国と連携して中国・ロシア・北朝鮮などの権威主義国家に対処できるようにすることが求められる。そのためには、憲法改正を含む国内法整備が不可欠となる。

 安倍元首相は過去に「血の同盟」という言葉で、日米同盟の本質を説明していた。米国が攻撃を受ければ米兵が血を流すが、当時の憲法解釈下では自衛隊はそうできず、完全なパートナーと言えないと指摘した。その後、安倍政権で集団的自衛権の行使が一部可能となり、現在では米軍が攻撃された場合、自衛隊員も戦闘に加わり血を流す可能性がある。

 岸田政権は安倍政権の遺産を継承し、国家安全保障戦略の改定、防衛費増額、反撃能力保有など安全保障政策を推進してきた。「グローバル・パートナー」発言はその延長線上にある。日本の抑止力を高め、国際的地位を格段に上げたと評価できる。

 しかし同時に、「グローバル・パートナー」としての日本には、場合によっては自衛隊員や国民に犠牲や負担が強いられる可能性もある。自由社会を守る役割の増大に伴い、そうした覚悟を政府から国民に真剣に訴える必要がある。権威主義国家の脅威に対し、日本は相応の役割を果たさなければならない。

これは、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。
 
【私の論評】憲法改正をすべき決断の時が迫ってきた!日本国民は覚悟をもってこれに臨め

まとめ
  • 岸田首相の「グローバル・パートナー」発言には、日米間の軍事、価値観、地政学、経済など多面的な協力関係が含意されている。
  • 軍事面では日米同盟の強化が期待されるが、安倍元首相の「血の同盟」発言のように、現行憲法下では対等とは言えない。
  • バイデン政権は自由・民主主義の価値観を共有する日本を重要パートナーと位置付け、中国の対抗上、日本の地政学的役割を期待している。
  • 経済面でも、重要技術分野などで日米協力が経済安全保障の観点から求められている。
  • こうした協力関係を実現するには、日本の憲法改正が不可欠であり、トランプ前大統領がこれを支持する可能性もあるが、結局のところは民意であり、政府も国民にも決断の時が迫っている。

米国にとって、岸田首相が米連邦議会の演説で「グローバル・パートナー」と呼んだ日米関係には、軍事、価値観、地政学、経済など、多面的な側面が含まれていると考えるでしょう。

軍事面では、安倍元首相が「血の同盟」と表現したように、同盟国同士として緊密に連携することが期待するでしょう。ただし安倍氏の発言は、当時の日本の憲法解釈では米国と同等の関係とはいえないと批判的に指摘したものです。それでも、岸田首相の「グローバル・パートナー」発言は、日米同盟の軍事的協力関係を再確認したと受け止められたでしょう。

また、バイデン政権は「民主主義対権威主義」の構図を重視しており、自由・民主主義の価値観を共有する日本を重要なパートナーと位置づけています。「グローバル・パートナー」という表現には、こうした価値観の共有関係が込められているとみられます。

さらに、中国の台頭に対抗するため、日米はインド太平洋地域におけるルール作りなどで協力する地政学的な戦略的パートナーとしての機能が期待されています。アジア重視を掲げるバイデン政権にとって、日本はこの地域での軸足となる存在です。

加えて経済面でも、日米は貿易、投資、金融をはじめ幅広い分野で協力関係にあります。特に重要技術分野での連携が経済安全保障の観点から求められており、「グローバル・パートナー」にはそうした経済面での協力も含意されていると考えらます。

このように「グローバル・パートナー」という言葉には、多岐にわたる分野での緊密な協力関係が内包されています。米国は日本が同盟国であり、価値観を共有するパートナーであり、地政学的・経済的に重要な役割を果たすことを期待しているといえます。

これらを実現するためには、特に日本が米国との地政学的パートナーであるためには、日本国憲法の改正が必須です。

米国の保守派からみても、日米関係が最も重要であることは明らかです。米保守派は、第二次世界大戦後、左派勢力によって押しつけられた日本国憲法の平和主義的性質が、日本が世界舞台で対等なパートナーとなる能力を妨げてきたとみているでしょう。

日本は自国の憲法をよく見直し、より積極的で貢献的な同盟国となるために必要な改正を行う時期が来ていると認識しているでしょう。

自民党の麻生副総裁は、来週、アメリカを訪問する方向で調整しています。関係者によりますと、トランプ前大統領との面会を模索しているということで、秋に大統領選挙を控える中、幅広く人脈を構築するねらいがあるものと見られます。

自民党麻生副総裁

これが実現したとして、麻生・トランプ会談では、当然日米の「グローバルパートナー」としての関係を強めることも話題になると考えられると思います。

米国の保守派は、トランプ氏は、日本の憲法改正を支持すると思います。それが、日本の憲法改正を支持する可能性もあると考えているでしょう。

日本の左派は、他の西側諸国の左派と同様に、現状維持を好む傾向があり、特に軍事面での新たな動きに対しては警戒感を持つ傾向があり、進化する安全保障上の課題を認識することに消極的であることが多いです。 彼らは、自国を守り、地域の安定に貢献できる強い日本が日本国民の最大の利益であることを理解していません。 

しかし、トランプ大統領の潜在的な支持と適切なメッセージがあれば、麻生副大統領と自民党は日本国民に説得力のある主張をすることができるかもしれません。 強固な日米同盟の重要性を強調し、民主主義と自由という共通の価値観を強調し、安全で繁栄したインド太平洋地域のビジョンを提示すれば、憲法改正を支持する世論を揺るがす可能性があります。 

私は麻生副大統領とトランプ大統領の会談は確かに日本の憲法改正への足掛かりとなる可能性があると思います。 トランプ大統領の支持と正しい戦略的アプローチがあれば、自民党は日本国民に説得力のある主張をし、反対を克服し、日本を世界でより自信を持って積極的な役割を果たす方向に導くことができるかもしれません。

2021年の憲法改正毎日新聞世論調査では「賛成」48%、「反対」31%です。 憲法改正は全く不可能という状況ではないと考えられます。現在では、「賛成」の比率がもっと高くなっているかもしれません。

もし、そうであり、さらにトランプ氏が大統領に返り咲き、日本の憲法を改正を支持する旨をはっきりさせれば、憲法改正の後押しになるのは間違い有りません。

トランプ氏

ただ、現状では岸田政権の支持率が低く、仮に岸田政権が崩壊して総理大臣が変わったにしても、自民党政権が続く可能性が高いですが、ポスト岸田は、岸田氏と同等か、それ以上のリベラル派である可能性が高いです。そうなると、憲法改正は遠のく可能性があります。

これを防ぐためにも、日本でも与野党に限らず、保守派の台頭が望まれるところです。ただ、最終的には国民の民意が憲法改正の実現を左右する最大の要因になると考えられます。

憲法は国民主権の理念に基づく最高規範であり、改正には国民投票による過半数の賛成が必要不可欠です。保守派の台頭や政権与党、米国政府の後押しは一定の影響力を持ちますが、それだけでは改正を実現するには不十分です。

中国、ロシア、北朝鮮など、日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しており、それに伴い日本の防衛力強化の必要性が高まっています。現行憲法の縛りのため、自衛隊の活動には一定の制約があることも事実です。

そうした中で、憲法改正に向けた動きが過度に遅れれば、日本の安全が脅かされかねません。時間をかけすぎて機を逸してしまっては本末転倒です。国民的議論を尽くしつつも、スピード感を持って対応すべきです。

仮に結局国民議論が十分に尽くされず、国内が分断したとしても、他国に占領されたり、そこまでいかなくても、他国に蹂躙されるよりはましです。憲法改正によって国民が、分断しても、その後議論を尽くすことはできます。しかし、日本が独立を失ったり、他国に蹂躙されて、従属するようになれば、それはできません。

政府も、国民も、場合によっては自衛隊員や国民に犠牲や負担が強いられるかもしれないことを覚悟したうえで、憲法改正をすべき決断の時が迫ってきたといえます。

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2024年4月17日水曜日

日銀の「円高症候群」過度に恐れる米国の顔色 アベノミクス切り捨て財務省と協調、利上げと負担増が日本を壊す―【私の論評】現時点の円高誘導は、円高シンドロームの再燃、日本経済への破滅的な悪影響もたらす

ニュース裏表

まとめ
  • 「円高シンドローム」とは、長期にわたる過剰な円高ドル安状況を指す言葉である。
  • その発端は1985年のプラザ合意で、米国レーガン政権が日本などに対してドル安誘導を強要したこと。
  • しかし、経済学的には貿易赤字と為替レートは無関係であり、プラザ合意は誤りだった。
  • にもかかわらず、その後も政治的圧力により円高が続き、日本の政策当局(日銀と財務省)も対米従属を優先して円高を誘導した。
  • その結果、バブル崩壊やデフレ長期化など、日本経済に深刻な影響が生じた。現在も財務省と日銀は円安抑制に動いているが、国内景気への悪影響が懸念される。 

ブラザ合意後円高水準が続いている

 「円高シンドローム」とは、長期にわたって円が過剰な高水準で推移し続けた経済状況を指す用語だ。その発端は1985年のプラザ合意にありました。当時の米国レーガン政権は、累積する貿易赤字を解消するため、日本など諸国に対してドル安誘導の協調介入を政治的に強要したのだ。

 しかし、経済学的に見れば貿易赤字と為替レートは無関係であり、プラザ合意は誤った政策判断に基づくものでした。それにもかかわらず、その後も共和党、民主党を通じて、政治的な圧力により円高が続きました。

 日本の政策当局、すなわち日銀と財務省も、国内経済よりも対米従属を優先し、為替介入や金融緩和により円高を誘導し続けた。その結果、バブル経済の発生と崩壊、長期デフレ不況といった深刻な経済的影響を招くこととなった。

 現在、植田日銀体制では再び円安抑制に動き出しており、金融引き締めを通じた円安防止策をとりつつある。しかしこれは国内景気を冷やしかねず、また物価高対策にも影響を及ぼすおそれがある。

 政策当局には、国内経済の実情を冷静に見極め、適切な通貨・金融政策を採用することが求められている。「円高シンドローム」の反省に立ち、健全な経済成長を実現するための施策が重要となっているのである。

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧ください。

【私の論評】現時点の円高誘導は、円高シンドロームの再燃、日本経済への破滅的な悪影響もたらす

まとめ
  • 貿易赤字や黒字は国内需給の均衡状態を反映しているが、為替レートは資金の国際移動で決まるため、両者は基本的に独立している。
  • プラザ合意のような為替レート操作は、本来の経済原理に反するものであり、マッキノン教授らも強く批判している。
  • 1980年代以降の日本の円高傾向は「円高シンドローム」と呼ばれ、日本政府の対応の失敗により長期的な経済歪みを招いた。
  • しかし、安倍政権下の金融緩和政策により、円高が是正されデフレからの脱却が進んだ。
  • 現在では各国政府も日本の政策姿勢を理解しており、強い批判は見られなくなっている。日本は、金融緩和を継続し、国内産業を支援し、消費税減税などをするのが正しい政策てあって、円高誘導は間違いである。
経済学の標準的な理論によれば、国際収支の赤字や黒字は、総需要と総供給の均衡状態を反映しているものです。つまり、自国の国内需要が自国の供給能力を上回れば貿易赤字となり、逆に国内需要が供給を下回れば貿易黒字となります。

一方、為替レートは、国際的な資金の移動によって決まります。資金が流入すれば自国通貨高となり、流出すれば自国通貨安となります。

つまり、貿易赤字というマクロ的な現象と、為替レートというマクロ的な現象は、基本的に独立して決まるものなのです。

例えば、日本の貿易収支の赤字は、日本国内の需給バランスの状況を反映したものですが、一方で円高ドル安は、日米間の資本移動や投資家心理などによって決まっているのです。

よって、政策当局が為替レートを操作することで、容易に貿易収支を改善できるというのは、経済学的に正しくありません。プラザ合意のような為替介入は、本来の経済原理に反するものだったと言えるのです。

上の記事にでてくる「円高シンドローム」という言葉は現在スタンフォード大の名誉教授である、ロナルド・マッキノン氏が最初につかいはじめました。

マッキャノン氏の著書


マッキノン氏は、1980年代半ばからの長期にわたる円高ドル安を「円高シンドローム」と呼称し、その弊害を指摘しています。その中心的な論点は以下の通りです。

マッキノン氏は、プラザ合意以降の急激な円高は、本来の経済調整メカニズムを歪めてしまったと分析しています。通常、貿易収支の赤字国の通貨は自然と下落していくはずですが、日本政府による為替介入で円高が促進されたことで、この健全な調整プロセスが阻害されたのです。

その結果、日本の輸出企業の収益が圧迫され、国際競争力が低下しました。しかし、日本政府は、この円高に対して適切に対応しませんでした。むしろ、財政支出の削減や金融引き締めなどの失敗した政策対応をとったため、かえって財政赤字の増大や超円高、デフレなどの経済的歪みを生み出してしまったと指摘しています。 

つまり、マッキノン氏は、為替レートの人為的な操作が、本来の市場メカニズムを損なっただけでなく、日本政府の政策的な失敗も重なり、長期的な経済の歪みを招いたと警鐘を鳴らしているのです。

この分析は、クルーグマンやスティグリッツ、バーナンキなどのノーベル経済学賞受賞者の見解とも共通するところがあります。彼らも、為替レート操作による経済歪曲の危険性を指摘しており、マッキノン氏の指摘は、そうした国際的な経済学者の問題意識と軌を一にしていると言えるでしょう。

2012年に安倍晋三氏が首相に就任すると、いわゆる「アベノミクス」と呼ばれる経済政策が導入されました。その中核となったのが、日銀による大胆な金融緩和策でした。

この金融緩和政策によって、長年続いた円高傾向が是正され、円安基調に転じていきました。これにより、日本の輸出企業の収益改善や国際競争力の回復が見られるようになったのです。

つまり、安倍政権の登場と、その下で実施された金融緩和政策は、まさに「円高シンドローム」からの脱却につながったと言えるのです。マッキノン氏らが懸念していた経済の歪みは、徐々に解消されつつあったと考えられます。



特に、この頃から実施された金融緩和政策に関しては、他国から批判されていません。米国政府は当初、日本の金融緩和策に対して批判的な姿勢を示していたものの、近年ではデフレ脱却と経済成長を重視する日本の政策姿勢を理解する傾向にあるようです。

一方、中国も円安傾向に対する警戒感は示していたものの、自国の通貨政策を展開していることから、日本の政策に大きな異議を唱えるには至っていません。韓国も、日本の金融緩和による円安が輸出企業に影響すると懸念していたようですが、自国の通貨政策を通じて輸出競争力を高めてきた経緯があり、強硬な批判は行っていないのが現状のようです。

つまり、当初は各国が日本の金融緩和策に対して警戒感を示していたものの、最近では日本の政策姿勢を理解する傾向にあり、大規模な批判は見られなくなってきているということができます。プラザ合意の際のような強い政治的圧力は、現時点では生じていないようですし、これからも生じる可能性は低いです。

それに独立国家であれば自国内の経済のために、独自の金融政策を実施するのは当然の権利であり、これに反対するような国にはその誤りを指摘しつつ、独自の金融政策を実行するのが本来のありかたです。

さらに、プラザ合意なる誤った政策が実施される背景ともなった幼稚な「通貨戦争」のような概念も廃するべきです。ある国が、輸出を有利にするために金融緩和策をいつまでも継続しているとどうなるでしょうか。いずれかなりのインフレに見舞われて、緩和政策を続けられなくなります。そうして、いずれ引き締めに転じることになります。「通貨戦争」は空想の産物に過ぎません。

通貨戦争 AI生成画像

日本が金融緩和政策を実施しているのは、あくまで国内事情のためであり、需給ギャップがマイナスである日本では、未だ緩和策を継続する必要があります。しかし輸出入を行っているために、国内では海外からの影響も受けます。それに対する調整をする必要があります。

その調整策は、円安で有利になる輸出企業(大企業が多い)の法人税収入は増えるので、それを活用するなどして、輸出産業以外の産業(国内向け、輸入産業、中小企業が多い)支援をし、減税などで消費者を支援する政策などが、正しい政策であって、円高誘導などとんでもあません。

現時点での円高誘導は「円高シンドローム」の再来であり、日本経済に大きな悪影響を及ぼすことになります。

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2024年4月16日火曜日

発展途上国は気候変動対応で債務不履行の恐れ=米大学報告―【私の論評】中国の「一帯一路」政策と同様に、先進国の途上国に対する気象変動対策支援も馬鹿げている

 発展途上国は気候変動対応で債務不履行の恐れ=米大学報告

まとめ

  • 発展途上国の対外債務返済額が過去最大の4000億ドル(約54兆円)に達する見通し
  • 約50カ国が気候変動対策費用のため、今後5年以内に債務不履行に陥る恐れ
  • 47カ国がパリ協定目標のための資金調達で、債務返済不能に陥る可能性
  • 19カ国も資金不足で目標達成困難になる見込み
  • 専門家は発展途上国の債務問題を深刻に懸念

グローバル・サウス AI生成画

 ボストン大学グローバル開発政策センターなどが公表した報告書によると、発展途上国の今
年の対外債務返済額が過去最大のボストン大学グローバル開発政策センターなどが公表した報告書によると、発展途上国の今年の対外債務返済額が過去最大の4000億ドル(54兆円)に達すると予想されている。

 さらに、約50カ国は気候変動対応や持続可能な開発に必要な資金を投じるために、今後5年以内に債務不履行(デフォルト)に陥る恐れがあるという。47カ国はパリ協定の2030年目標達成に必要な資金を拠出すると、対外債務が返済不能の状態に陥ると指摘されている。

 また19カ国は返済不能には至らないものの、資金不足で目標達成できなくなる可能性がある。

 ボストン大学の専門家は、発展途上国の債務負担が非常に重く、必要な資金調達をすれば債務不履行に向かうと危惧している。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧ください。

【私の論評】中国の「一帯一路」政策と同様に、先進国の途上国に対する気象変動対策支援も馬鹿げている

まとめ
  • 地政学的リスクや、発展途上の事情から、パリ協定の2030年目標は非現実的
  • 西側諸国は地政学的リスクなどを回避するため、エネルギー安全保障を優先べき
  • 発展途上国は、気候変動対策投資困難であり、やはりエネルギー安全保障を優先すべき
  • 先進国による気象変動対策面での途上国への支援は、デフォルトリスクをはらんでいる。エネルギー安全保障面の支援を強化すべき
  • 西側諸国の課題としてエネルギー安全保障確保が喫緊、そうでなければ中露に敗北するリスクがある

パリ協定は2015年に採択


パリ協定は2015年に採択された国際的な気候変動対策の枠組みで、世界各国が自主的に設定した削減目標(NDC)に基づいて温室効果ガス削減に取り組むことを定めています。しかし、近年の情勢変化により、この協定への完全な準拠が困難になってきています。

その主な理由は以下の通りです。
  1. 2030年までの大幅な排出量削減目標設定 日本を含む多くの国が2030年までにCO2排出量を大幅に削減する非現実的な目標を掲げています。しかし、再生可能エネルギーの急速な導入には技術的・経済的課題が多く、短期的には化石燃料への依存を維持せざるを得ない状況です。急激な化石燃料削減は、エネルギー供給の不安定化を招くリスクが高いのが現状です。
  2. 地政学リスクの高まり ロシアのウクライナ侵攻などを受け、地政学リスクが高まっています。化石燃料の安定調達が喫緊の課題となっており、その制限はエネルギー供給の不安定化を招く可能性があります。
  3. 発展途上国の経済発展優先 一方で、発展途上国は経済発展を最優先しており、長期的な環境対策よりも短期的なエネルギー供給の安定性確保を重視する傾向にあります。
このように、エネルギー供給の安定性確保が喫緊の課題となっている中で、パリ協定の目標達成は現実的ではなくなってきています。そのため、協定からの離脱や、その枠組みからの一定の逸脱が正当化される可能性が高まっているのが現状です。具体的には以下のような動きがあります。

例えば、米国ではトランプ政権時代に協定からの離脱が宣言され、その後のバイデン政権でも化石燃料の活用を続ける姿勢が維持されています。EUでも、ロシアからのガス供給削減を受け、2030年排出削減目標の引き上げに慎重な国が見られるなど、柔軟な対応を模索しています。


一方、中国やインド、ブラジルといった発展途上国も、経済成長を最優先し、パリ協定目標の緩和を訴えています。こうした国々にとって、エネルギー確保と経済発展が喫緊の課題であり、長期的な環境対策よりもそちらが重視されています。

日本においても、2030年のCO2削減目標の見直しや、原子力発電の再稼働、水素・アンモニア発電の導入拡大など、現実的なエネルギー政策への転換が検討されつつあります。さらに、将来に向けて、小型原子炉、核融合炉の開発がすすめられています。

このように、主要各国がパリ協定の枠組みから一定の距離を置き、エネルギー安全保障の確保に軸足を移しつつある状況が見受けられます。政治・経済的な現実を反映した現実的な対応への移行が進んでいると言えるでしょう。

発展途上国は自国の経済発展とエネルギー安全保障の確保を最優先せざるを得ず、気候変動対策への投資を増やすことが困難な状況にあります。

一方で、先進国の支援も十分ではありません。COP26での1,000億ドル/年の支援目標は未達成のままです。また、コロナ禍やウクライナ情勢の悪化により、先進国の財政的余力も限られつつあります。

こうした中で、発展途上国が気候変動対策に膨大な資金を振り向けざるを得なくなれば、財政悪化を招き、デフォルトのリスクが高まることが危惧されます。実際に、スリランカやザンビアなどの国でデフォルトが発生しています。

このような事態は国際社会にとって望ましくありません。発展途上国のエネルギー安全保障と経済発展を支援することが重要です。先進国による十分な資金提供や、債務軽減策など、国際的な支援体制の強化が不可欠です。

長期的な視点からエネルギー安全保障と、経済発展を実現するためには、発展途上国のデフォルト リスクを回避することが喫緊の課題だといえます。

中国の「一帯一路政策」は、簡単にいってしまえば、中国国内での大きな利益をもたらすインフラ投資が一巡してめぼしい案件がなくなったため、同じことを海外で展開しようとする試みです。しかし、これにより債務不履行になる国々も存在し、これからもでてきそうです。これは、無謀な試みであり失敗するのが目に見えていますが、その邪な動機自体は理解できます。

一帯一路構想の詳細を記すドイツ語の地図

しかし、パリ協定やSDGs目標達成のために、発展途上国に犠牲を強いるのは、「一帯一路」と同様に馬鹿げています。先進国は、中国の「一帯一路政策」を批判しますが、先進国の気象変動対策は、西側先進国の「一帯一路政策」ともいえる馬鹿げたものだと思います。

西側諸国は自国のエネルギー政策を見直し、発展途上国の経済発展とエネルギーアクセスの確保を支援する施策に重点を置くべきです。そうして、先進国はこれに向けて、発展途上国への財政支援の大幅な拡充も不可欠です。

IEAによると、2050年までに世界のCO2排出量を全廃にするには、新規の石油・ガス開発への投資を即座に停止する必要があります。しかし、この場合、短期的なエネルギー供給の不安定化やエネルギー価格高騰のリスクが高まります。

一方で、中国やロシアなどは化石燃料の積極的な開発と活用を続ける傾向にあります。中国は2030年までのCO2排出量ピーク化目標を掲げつつ、石炭火力発電所の新設を続けています。

ロシアは天然ガスや石油の輸出に大きく依存しており、脱炭素化への意欲は低いです。

このように、西側諸国が気候変動対策に傾倒する一方で、中露などの国々がエネルギー供給の安定性を重視する姿勢が鮮明になっています。

その結果、中長期的にはエネルギー・ドミナンスの点で、西側諸国が中露に劣勢に立たされる可能性が高まっています。特に、地政学的リスクの高まりの中で、安定的なエネルギー確保が困難となる恐れがあります。

したがって、エネルギー安全保障の確保を最優先する現実的な対応への移行が、西側諸国にとって喫緊の課題だと言えます。そうしなければ、エネルギー・ドミナンスの面で中露に敗れてしまう恐れがあります。

そうなれば、発展途上国も衰退し、最悪エネルギーの安定供給を約束する中露に取り込まれることになります。

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2024年4月15日月曜日

岸田首相らG7首脳「前例のない攻撃、明確に非難」イランによるイスラエル攻撃で声明「激化を避けなければならない」―【私の論評】イスラエルの安全保障を支持する日本の姿勢 - G7との協調と核抑止力の重要性

岸田首相らG7首脳「前例のない攻撃、明確に非難」イランによるイスラエル攻撃で声明「激化を避けなければならない」

まとめ
  • G7首脳がイランによるイスラエルへの攻撃を受け、緊急オンライン会議を開催した
  • G7は「最も強い言葉で明確に非難」し、イスラエルへの「全面的な連帯と支援」を表明した
  • G7は、イランが地域の不安定化と激化を招いていると指摘し、これを避ける必要があると強調した
  • 岸田首相も会議に参加した
  • アメリカ政府高官は、この攻撃に事前通告がなく、イランが死傷者を出すつもりだったと述べ、アメリカはイスラエルの防衛を支援すると警告した

G7のイランのイスラエル攻撃に関するリモート会議

G7首脳は、イランによるイスラエルへの攻撃を受け、オンラインでの緊急会合を開催しました。会合には岸田首相も参加し、G7は「最も強い言葉で明確に非難」し、イスラエルへの「全面的な連帯と支援」を表明しました。

G7は、イランが地域の不安定化と激化を招いていると指摘し、これを避ける必要があると強調しました。

アメリカ政府高官は、この攻撃に事前通告はなく、イランは死傷者を出すつもりだったと述べ、アメリカはイスラエルの防衛を支援すると警告しました。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧ください。

【私の論評】イスラエルの安全保障を支持する日本の姿勢 - G7との協調と核抑止力の重要性

まとめ
  • イラン大使館周辺へのイスラエルによる攻撃に対し、イランが報復を行った。
  • G7全体(日本含む)がイランの攻撃を「最も強い言葉で明確に非難」し、イスラエルへの「全面的な連帯と支援」を表明した。
  • イランの領土からイスラエルを直接攻撃するのは今回が初めての事態であり、G7が「前例のない攻撃」と非難した。
  • 多くの中東専門家は、今回の事態が大規模な戦争につながることはないと予想している。その理由は、イスラエルが強力な破壊兵器(核兵器)を保有しているため、イランが過度な攻撃をする可能性が低いからである。
  • 日本の左派政党やマスコミはイランを擁護する傾向にあるが、今回日本政府はイランを非難し、イスラエルを支持する姿勢を示した。今後日本は、このような傾向を強めていくべき
攻撃を受けたダマスカスのイラン大使館周辺

シリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館周辺がイスラエルによるとみられる攻撃を受けたことを巡り、イランは報復を行うと表明しており、それが実行されました。

イランによるイスラエル攻撃の際、G7全体(日本を含む)が「最も強い言葉で明確に非難」し、イスラエルへの「全面的な連帯と支援」を表明しました。これは、イランによる攻撃が明らかな国際法違反であり、地域の平和と安全保障を脅かす重大な事態だったため、G7が団結して強い姿勢を示したものです。

さらに、イランの領土から直接イスラエルの領土を攻撃するという事態は、今回が初めてです。

過去にもイランがイスラエルを攻撃する事例はありましたが、それらはイランが支援するシリアやレバノンなどの地域からの攻撃でした。

今回のように、イラン領土そのものからイスラエルに直接攻撃を仕掛けるのは、これまでにない新しい事態でした。

G7がこれを「前例のない攻撃」と強く非難したのは、この点を踏まえてのことだと理解できます。日本もさすがに、イランに対して曖昧な態度をとれなかったのでしょう。イラン領土からの直接攻撃は地域の緊張を一段と高めるものであり、G7が強い懸念を示したのは適切な対応だったと言えます。

イランによるイスラエル攻撃

一方、ハマスによるイスラエル攻撃の際は、日本を除くG6がイスラエルへの「全面的な連帯と支援」を表明しました。この背景には、G6諸国がハマスをテロリスト組織と明確に認識しているのに対し、日本の認識が相対的に希薄であったことが考えられます。

日本は、ハマスの本質を十分に理解していなかったため、G6諸国ほど強硬な姿勢を示せなかったと考えられます。テロリスト組織であるハマスに同情的な立場をとることは適切ではなく、同盟国との連携も重要です。今後は、ハマス等のテロリストの実態をより正確に認識し、国際社会との調和した対応を取る必要があるでしょう。

イランがイスラエルの実効支配下にあるゴラン高原に無人攻撃機やミサイルを撃ち込んだことで、第三次世界大戦への懸念が高まっていると報道されています。しかし、多くの中東専門家は今回の事態が大規模な戦争につながることはないと予想しています。その理由は、イスラエルが強力な破壊兵器を保有(イスラエルは認めていないものの核保有されてるとしている)しているため、イランが過度な攻撃をする可能性は低いからです。

さらに、貧困に苦しむガザ地区を支配するハマスとは異なり、イランはその産油施設を破壊されれば取り返しがつかないです。ハマスのイスラエル攻撃は例外ともいえますが、基本的に、侵略されて女性や子どもが虐殺される国は核兵器を持っていない国に限られます。

日本では核兵器は戦争の象徴とみなされていますが、世界的には平和の象徴と考えられています。日本は日米安全保障条約により、米国の核の傘の下にあります。日本が核攻撃されたら米国は報復するとは明記されていませんが、「危険に対処する」と曖昧に記されています。

その背景には、2023年末時点で日本が世界のドル流通量の1/7以上に当たる1.2兆ドルを保有していることがあります。一方、中国の保有額は約9,000億ドルと報告されています。

つまり、日本はドル資産保有においては中国を上回っているのが現状です。

このように、日本はドル資産保有大国の一つであり、世界の通貨システムにおいて重要な役割を果たしていると言えます。


日本が戦争等にまきこまれドルを大量に売却する姿勢をみせれば、米国はそれに対処せざるを得なくなります。つまり、日本のドル保有がアメリカの対日支援を引き出す要因となっているといえます。

もし、これに加え、日本が核兵器を保有すれば、世界における日本の地位も飛躍的に高まるでしょう。一方で、貧困層を支持する政党は非核化を主張しますが、それは日本の平和と繁栄の基盤を脅かすものだと言えるでしょう。

日本の左派・左翼勢力は、それだけではなく、テロリストのハマスを擁護する傾向が強く、日本のマスコミや学問界でもその傾向が強く、それが日本国内に広く流布しているため、ハマスによるイスラエル攻撃の時には、日本政府はそれにひきづられイスラエルへの「全面的な連帯と支援」の表明からは外されると大失態をしてしまいました。

これと同じように、日本の左派政党やマスコミは、イランを支持・擁護する傾向にあります。これは、イランの反米・反西側的な姿勢や、パレスチナ問題でのハマス支持、さらには核兵器に関する立場などに共感を持っているためと考えらます。

それでも、今回は日本は、「最も強い言葉で明確にイランを非難」し、イスラエルへの「全面的な連帯と支援」を表明しました。これは、一歩前進だと思います。

これからも、日本はこのような傾向を強めていくべきです。そうでないと、せっかくかなり高い潜在的能力を持っているにもかかわらず、世界における日本の地位が低下し、衰退への道を歩むことになりかねません。


G7の「CO2ゼロ」は不可能、日本も「エネルギー・ドミナンス」で敵対国に対峙せよ 「トランプ大統領」復活なら米はパリ協定離脱― 【私の論評】エネルギー共生圏 - 現実的な世界秩序の再編成への道

2024年4月14日日曜日

G7の「CO2ゼロ」は不可能、日本も「エネルギー・ドミナンス」で敵対国に対峙せよ 「トランプ大統領」復活なら米はパリ協定離脱― 【私の論評】エネルギー共生圏 - 現実的な世界秩序の再編成への道

 杉山大志 直言!エネルギー基本計画

G7の「CO2ゼロ」は不可能、日本も「エネルギー・ドミナンス」で敵対国に対峙せよ 「トランプ大統領」復活なら米はパリ協定離脱 

まとめ
  • 日本のエネルギー供給の8割は化石燃料に依存しており、その安定的な調達が重要
  • しかし第6次エネルギー基本計画では、無理難題とも言える46%のCO2削減目標が設定され、化石燃料の利用制限につながっている
  • その結果、燃料調達や関連事業への参入が困難になり、供給不足や火力発電所の休廃止といった問題が懸念される
  • 一方で、気候変動の悪影響を示すデータや予測モデルの信頼性には疑問があり、CO2ゼロ目標の実効性も極めて低い
  • したがって、「エネルギー・ドミナンス」戦略に立ち返り、安定供給を確保する政策を検討すべきであり、パリ協定からの離脱も検討の余地がある
阿蘇外輪山の元牧野に建設されたメガソーラー

 日本のエネルギー供給の8割は依然として石油、石炭、天然ガスといった化石燃料に依存している。これらの化石燃料を安定的に調達し活用することは、日本のエネルギー政策の最も重要な柱のはずだ。

 しかし、現行の「第6次エネルギー基本計画」では、2030年までにCO2排出量を2013年比で46%も削減するという非現実的な数値目標が設定され、化石燃料の利用量も極端に低く設定されている。その結果、企業は長期的な燃料調達契約の締結が困難となり、油田やガス田への事業参入も阻害されている。

 こうした事態が進めば、有事の際に法外な価格でしか化石燃料が調達できなくなったり、最悪の場合は全く調達できなくなる可能性がある。また、火力発電所の休廃止も余儀なくされ、定期的に「節電のお願い」が発出されることにもなりかねない。

 一方で、メディアでは気候変動の悪影響が強調されているが、統計データではそのような事態は確認されていない。さらに、気候変動リスクを示すシミュレーションモデルさえ、過去の再現すら十分にできていないと指摘されており、その将来予測を政策決定に活用するのは適切ではない。

 したがって、「2050年にCO2排出ゼロ」という極端な目標を掲げ、日本のエネルギー政策と経済活動を大きく制限することは不適切であると考えられる。そうではなく、安定したエネルギー供給を確保し、経済発展を支えていく「エネルギー・ドミナンス」戦略に立ち返るべきであり、グローバルサウスの支持も得つつ、パリ協定からの離脱も検討する必要がある。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】エネルギー共生圏 - 現実的な世界秩序の再編成への道

まとめ
  • 「エネルギー・ドミナンス」はトランプ政権下の米共和党で使われてきた概念で、安定かつ安価なエネルギー供給を通じた経済発展や民主主義の保護を目指すものです。
  • 第6次エネルギー基本計画は「脱炭素」を重視しつつ、再生可能エネルギー以外のエネルギー源の活用も検討されました。
  • この計画は「S+3E」の視点から、安全性、エネルギーの安定供給、経済効率性、環境適合性を重視しています。しかし、現実には脱炭素、再エネばかりが強調されています。
  • 安倍晋三氏が存命であれば、「エネルギー共生圏(Energy Symbiosis Sphere)」のような新たな概念を提唱し、地球規模でのエネルギー協力体制を構築していた可能性があります。
  • 「エネルギー・ドミナンス」の代わりに「エネルギー共生圏」のような概念を打ち出すことで、より多くの国々の参加を促し、現実的な世界秩序の再編成を目指すべきです。

「エネルギー・ドミナンス」という用語は、米国共和党で使用されてきた概念です。これは豊富で、安定し、安価なエネルギーを供給することを指し、経済発展や防衛力の向上、自由や民主主義などの普遍的価値の保護と発展を可能にするとされています。具体的にこの言葉を最初に使った個人についての情報は見つかりませんでしたが、この概念はドナルド・トランプ大統領の下での米国のエネルギー政策に関連してよく言及されています。

「第6次エネルギー基本計画」は安倍政権下で検討されたものではありますが、安倍総理は、2020年9月16日に辞任しており、閣議決定されたのは、2021年10月の菅政権のときでした。

第6次エネルギー基本計画で目指す総発電量に占める電源別の割合

この基本計画が検討された時期においては、「脱炭素」が世界の趨勢となっており、このエネルギー基本計画は、「脱炭素」にも重点を置き、極端な目標が掲げられている一方、再生可能エネルギー以外のエネルギー源についても詳細に述べられています。

この計画は、本来は、エネルギー政策の基本的な方向性を示すものであり、安全性(Safety)、エネルギーの安定供給(Energy Security)、経済効率性の向上(Economic Efficiency)、環境への適合(Environment)という「S+3E」の視点を重視しています。

具体的には、以下のようなポイントが含まれています。

安全性(Safety):あらゆるエネルギー関連設備の安全性を最優先し、特に原子力に関しては、国民の懸念の解消に全力を挙げることが強調されています。

エネルギーの安定供給(Energy Security):日本のエネルギー自給率が低いため、エネルギー供給の安定性を確保することが重要視されており、レジリエンス(強靭性)を高めることが求められています。

環境への適合(Environment):カーボンニュートラルを目指し、エネルギー分野の脱炭素化に取り組むことが強調されています。これには、再生可能エネルギーの導入拡大や、CO2排出削減技術の開発が含まれます2。

経済効率性(Economic Efficiency):低コストでのエネルギー供給とエネルギーの安定供給、環境負荷の低減を同時に実現することが、日本の経済成長にとって重要であるとされています。

安倍政権が継続されていた場合、あるいは政権が続いていなくても、安倍晋三氏が存命だった場合、経済効率性やエネルギーの安定供給の観点がもっと強調されていた可能性があります。

しかし、菅政権から、岸田政権にかけて、エネルギー政策というと、カーボンニュートラルや再エネ等が大きく注目されるようになりました。そうして、現状では阿蘇山にはメガソーラ発電省が設置され、釧路湿原国立公園内に、6.6haの太陽光発電施設が設置されるという危機的状況になっています。


このままだと、日本はエネルギー政策で失敗して衰退しかねません。だからこそ、エネルギー問題のまともな専門家たちは、危機を感じているのです。

そうして、上の記事の杉山氏の元記事ように
米国とともにアジア太平洋におけるエネルギー・ドミナンスを達成することはできる。それは、ポンペオ氏が指摘しているように、天然ガス、石炭火力、原子力などを国内で最大限活用すること、そして、友好国の資源開発および発電事業に協力することだ。

いま日米が「エネルギー・ドミナンス」にかじを切らなければ、中国に打倒されるだろう。
と警鐘を鳴らしているです。

これは、重要であり、中国やロシアがエネルギー・ドミナンスで優勢になれば、日本を含む西側諸国やその同盟国は安全保証上の脅威にもさらされることを意味しています。

そうして、安倍晋三氏がご存命であれば、この危機にいち早く気づいて、新たな概念を生み出しい、「安全保障のダイヤモンド」のような論文をブロジェクト・シンジケートに投稿していたかもしれません。ちなみに、この論文は、後の「インド太平洋戦略」に結びつき、中国の覇権主義に対抗する上で重要な概念となっています。

エネルギー・ドミナンスの危機に関して、安倍晋三氏がご存命であれば、やはり新たな概念を生み出したかもしれません。

たとえば、「エネルギー共生圏(Energy Symbiosis Sphere)」という概念を生み出していたかもしれません。

これは、意味するところは、以下です。
  • 「共生」の文字から、各国や多様なステークホルダーが互いに協力し合い、共に発展していくエネルギーシステムの構築を表現
  • 「圏」の字は、地球規模での包括的なエネルギー協力体制を示唆しています
  • 化石燃料の利用や、原子力エネルギー等、現実的なエネルギー利用の安定供給を目指すとともに、小型原子炉や核融合炉などの将来のエネルギーの開発等も含めた、エネルギーミックスを構築する
  • 先進国と途上国、エネルギー生産国と消費国が対話を重ね、共生的なエネルギーアーキテクチャを構築することを表す
英語での意味は以下のようなものです。
  • "Energy" - エネルギーという分野を表しています。
  • "Symbiosis" - 共生、相互依存的な関係性を意味します。
  • "Sphere" - 地球規模、あるいは包括的な領域を表す言葉です。圏というと、大東亜共栄圏などを思い起こさせる言葉ですが、Sphereは違います。
つまり、「Energy Symbiosis Sphere」は、各国や様々な利害関係者が協力し合って、現実的なエネルギーシステムを地球規模で構築していくという戦略概念を表しています。

この英語表現も、安倍晋三氏の思想を反映した戦略的なイニシアチブを感じさせる言葉だと思います。

「安全保障のダイヤモンド」は、端的に言ってしまうと、「中国封じ込め政策」なのですが、安倍晋三氏は、そうではなくもっと大きな上位の概念からこの言葉を使っています。これによって、より多くの国々が、この言葉に賛同し参加できるような素地をつくりだし、後にさらに「インド太平洋戦略」という言葉を生み出し、インドや太平洋の平和と安定の重要性も強調しました。これによって、安倍晋三氏は世界の秩序を変えたといえます。

そうして、それが世界だけでなく、日本国内にも大きな影響を及ぼしています。

エネルギー・ドミナンスは日本語訳にすると「エネルギー支配」とも訳すことができ、これではエネルギーに関する覇権争いとも受け取られかねません。これでは、日米のエネルギー・ドミナンスの確立に参加を表明したくてもできない国々が出てくる可能性もあります。

Energy Symbiosis Sphere AI生成画像

しかし、安倍晋三氏が生み出したような「インド太平洋戦略」という中露との対立という概念より、上位の概念は、この地域の平和と安定を目指すものであり、この地域や、他地域の多くの国々の賛同を得ることができ、これに真っ向から反対するのは、一部の権威主義的、全体主義的な国々だけです。

日本国内でも、どなたか有力な方が「エネルギー共生圏(Energy Symbiosis Sphere)」のような言葉を作り出し、安倍晋三氏が、政権発足直前に「ブロジェクト・シンジケート」で公表したように、新たな概念を公表すべきと思います。

これによって、エネルギーを基軸とした、世界秩序の再編成を目指すべきです。

それにしても、それを実現できる人は、なかなか見当たりません。改めて、わたしたちは偉大な人物を亡くしてしまったことが残念でなりません。

このようなことを実現し、それだけでなく、それを目指して行動する人こそ、安倍氏の真の後継者なのかもしれません。

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2024年4月12日金曜日

日米比、初の3カ国首脳会談-中国進出念頭に海上訓練拡充で合意―【私の論評】安倍イズムが育んだ日米比の安全保障協力 - 官僚レベルから首脳レベルまでの歴史的な絆

日米比、初の3カ国首脳会談-中国進出念頭に海上訓練拡充で合意

まとめ
  • 「日本とフィリピンを防衛する米国の決意は揺るぎない」と米大統領
  • 米は国際社会の「中心的役割」継続を、岸田首相が米議会で演説


 日本、アメリカ、フィリピンの3カ国首脳が会談を行い、自衛隊と米比両軍の海上共同訓練の拡充に合意した。

 南シナ海情勢を踏まえ、海洋安全保障が最重要議題となった。バイデン大統領は日本とフィリピンの防衛への決意を表明した。

 3カ国は、南シナ海と東シナ海における中国の行動に深刻な懸念を示し、新たな共同訓練の実施や資源サプライチェーン強化などで協力を強化することで合意した。

 岸田首相は、米議会での演説で、自由と民主主義が脅威に晒されており、特に中国の動向が課題だと指摘。米国の支援と存在が不可欠であると述べた。岸田演説は、選挙後の日米関係の重要性を米議会に訴えるものだった。

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】安倍イズムが育んだ日米比の安全保障協力 - 官僚レベルから首脳レベルまでの歴史的な絆

まとめ
  • 安倍前首相の日米同盟強化への尽力と指導力が、現在の日米同盟の基盤を築いた。
  • 日米協力は官僚レベルでの継続的な取り組みであり、政権交代に影響されないものだった。
  • 「自由で開かれたインド太平洋」構想は安倍前首相の外交の柱で、その延長線上にある日米比の安全保障協力が進展している。
  • 日米比3か国の防衛大臣会談、軍隊間の共同訓練、非伝統的安全保障分野での協力など、緊密な連携が進んでいる。
  • 岸田首相は、安倍イズムの外交・安全保障政策を継承し、国内においても経済政策や自民党内の調整などで安倍路線を踏襲すべきだ

昨日のこのブロクでは、安倍首相の日米同盟強化への献身的な努力とリーダーシップなくしては、現在の日米同盟の堅実な関係基盤と協力体制を築くことは不可能であり。安倍首相の尽力こそが、今日の日米同盟の地位向上に不可欠な要因だったのではないかと掲載しました。

結局のところ、今日の日米首脳会談は、安倍イズムの影響下での日米同盟強化であったと結論ずけました。

その根拠として、日米同盟の強化はすでに両国の官僚級の折衝はから始まっていたことを根拠としてあげました。それは、両国の首脳の政権がこれからも続くか続かないにかかわらず、日米という国家間で継承される合意事項であるともいえます。

今回の日米首脳会談はこれを追認したものに過ぎません。

今回の日米比の首脳会談でも同じことがいえます。日米比の安全保障協力の進展は、安倍前首相の時代から見られる「自由で開かれたインド太平洋」構想の具現化であると言えます。

安倍首相は在任中、日本の外交・安全保障政策の大きな柱として、この構想を掲げ、地域の主要国との連携強化に力を入れてきました。特にフィリピンとの関係強化は重要な課題の一つでした。

こうした安倍首相の方針は、その後の日本政府によっても継承されており、日米比三カ国の安全保障協力はその具体的な成果として表れているといえます。

日米比の3か国による安全保障協力も活発に行われてきました。
  • 2022年以降、日米比三カ国の防衛大臣会談が定期的に開催され、地域情勢への共同対応について議論が行われています。
  • 日米比三カ国の自衛隊、米軍、フィリピン軍による共同訓練の実施が活発化しており、相互運用性の向上が図られています。
  • 災害救援活動や 海洋安全保障等、非伝統的安全保障分野での協力も強化されてきました。
  • 情報共有や海上監視、訓練支援など、各国の軍事当局間での緊密な連携も進んでいます。
  • 日米両国がフィリピンに対する装備品供与や訓練支援など、二国間の取り組みも行っています。
このように、日米比三カ国間での安全保障面での協力は着実に進展してきており、地域の平和と安定に向けた重要な枠組みとなっています。特に、日米比の省庁レベルや軍事当局レベルでの緊密な対話と協調が進展してきたと言えます。

2022年には第1回日米比陸軍種ハイレベル懇談会が日本で開催された

省庁間、軍事当局間での緊密な対話と実務レベルの協力は、この構想の実現に向けた着実な取り組みの一環であると評価できます。

これは、日米比の多くの人々も認めるところであり、今回の日米比の首脳の合意は、安倍イズムの延長線上にあるものとえ、この三者が新しく始めたものではなく、安倍イズムによる「自由で開かれたインド太平洋」構想の継承とみることができます。もっといえば、安倍首相は中国をめぐる世界秩序を変えたのです。

中国への対処ということでは、「自由で開かれたインド太平洋」構想とこの構想に含まれる諸国との提携や、協力の強化の方針は、安倍イズムによってすでに方向づけられたものです。そのため日米比の現在の首脳は、これを自分たちの成果とすることはできません。

特に、大統領選、総裁選が間近に迫っている、バイデン大統領と、岸田首相はそうです。

バイデン、岸田ともに、政権を安定させたいなら、インド太平洋地域以外の外交や国内を安定させる政策を推進することが肝要です。

岸田首相は、昨日も述べたように、大きな問題は国内にあり、有り体にいえば、自民党党内です。これについては、米国はこれに干渉することはできません。ただしLGBT理解増進法案などの例外はありますが、国内の大きな方向性に関しては、もっぱら岸田首相が采配しなければなりません。ここでも岸田首相は、安倍路線を継承するべきなのです。

安倍首相は、地球儀を俯瞰する外交を実行して成果をあげており、この点で、岸田首相が外交で努力したとしても、あまり大きな成果とみなされることはありません。おそらく、岸田首相の独自での外交での成果といえば、ウクライナ電撃訪問くらいかもしれません。

安倍首相地球儀を俯瞰する外交で成果をあげた

やはり岸田首相は、安倍氏の経済状況を改善し雇用と企業収益が拡大する路線を継承し、デフレから完全脱却すべきなのです。それとともに、自民党内のリベラル派に対して一定の歯止めをかけなければなりません。さらに憲法改正もすすめるべきなのです。国内でも安倍イズムを継承することが、自民党政権を安定化させる唯一の道だと認識して、その方向に転換すべきなのです。

これは、岸田政権が崩壊して、次の政権に変わったにしても、あてはまることだと思います。

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2024年4月11日木曜日

日米首脳共同声明「未来のためのグローバル・パートナー」全文 中国の「危険な行動」に言及―【私の論評】安倍イズムの影響下での日米同盟強化: 岸田政権の課題と展望

日米首脳共同声明「未来のためのグローバル・パートナー」全文 中国の「危険な行動」に言及

まとめ
  • 日米同盟がかつてない強さに高まり、両国が大胆な措置を講じてきたことを確認
  • 防衛・安全保障協力の深化に向け、日本の防衛力強化や日米指揮統制体制の向上などを歓迎
  • 先端技術分野での共同開発・生産、経済安全保障の強化などによる日米の技術的優位性の確保
  • インド太平洋地域の自由で開かれた秩序の維持に向けた地域協力の推進
  • 気候変動対策での両国の連携強化とクリーンエネルギー分野でのリーダーシップ発揮


  日米首脳共同声明は、過去3年間にわたり、両国が勇気ある措置を講じることにより、日米同盟が前例のない高みに到達したことを確認している。この歴史的な展開を踏まえ、両首脳は新たな日米グローバル・パートナーシップの構築に合意した。

  そのための具体的な取組として、まず防衛・安全保障協力の強化が掲げられている。日米両国は、同盟がインド太平洋地域の平和、安全および繁栄の礎であり続けることを確認し、日本の防衛力強化や指揮統制体制の強化など、同盟の新たな時代に対応した取組を支持した。さらに、日米の指揮統制体制の向上や情報協力の深化、ミサイル防衛の強化など、地域の安全保障上の課題に直接対処するための具体的な施策も明記。

 加えて、宇宙開発、イノベーション、経済安全保障、気候変動対策など、幅広い分野で日米が連携して取り組むための新たな戦略的イニシアチブを発表した。特に、次世代技術の共同開発や、経済安全保障の強化に向けた政策協調の強化などが重要な柱となっている。

 一方で、北朝鮮の核・ミサイル問題、ロシアのウクライナ侵略など、地域や世界の安全保障上の重要課題に対しても、関係国と協調して対処していくことを表明。

 さらに、日米両国民の絆を一層深化させるため、人的交流の強化やグラスルーツレベルの地方自治体間連携など、多様な取組についても言及されている。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】安倍イズムの影響下での日米同盟強化: 岸田政権の課題と展望

まとめ
  • 日米首脳会談の共同声明は、日米同盟の新たな時代を示す戦略的パートナーシップの構築を目指すものであり、防衛、経済、技術、外交など広範な分野に焦点を当てている。
  • 共同声明の注目すべき点は、日本の防衛力の抜本的強化、先端技術分野での日米協力の深化、経済安全保障の強化の3つに集中している。
  • 日本の防衛力の強化は、専守防衛の原則からの転換を意味し、抑止力と対処力の強化につながる。
  • 先端技術分野での協力は、経済安全保障上も重要であり、両国の競争力を高める。
  • 日米関係の強化には、安倍首相のリーダーシップや外交努力が大きく寄与しており、岸田首相もこの路線とともに、日本国内の政策に関しても安倍イズムを継承すべきである。

この共同声明は、21世紀の課題に取り組む日米同盟の新たな時代を切り拓くべく、防衛、経済、技術、外交など、広範な分野における具体的な戦略的パートナーシップの構築を示すものとなっています。

共同声明の中で特に注目すべき点は以下の3つです。

1. 日本の防衛力の抜本的強化
共同声明では、2027年度までに日本の防衛費をGDP比2%まで増額し、反撃能力の保有や統合作戦司令部の新設など、日本の防衛力を大幅に強化することが盛り込まれています。これは注目すべき点です。
なぜなら、これまで日本は専守防衛を旨としてきましたが、今回の防衛力強化は抑止力の大幅な強化につながるものです。地域の安全保障環境が厳しさを増す中で、日米同盟の抑止力と対処力を引き上げる上で、日本の防衛力強化は不可欠な取り組みだと位置づけられているからです。

このような日本の防衛力増強は、同盟国である米国にとっても大きな意義を持ちます。日本の防衛力が強化されることで、米国の同盟国としての負担が軽減され、より効果的な抑止力の発揮が期待できるためです。

2. 先端技術分野での日米協力の深化
共同声明では、AI、量子、半導体、バイオテクノロジーなどの重要・新興技術分野で、日米が協力して研究開発や産業基盤の強化に取り組むことが明記されています。
これは注目に値する点です。先端技術分野でのリーダーシップを確立することは、経済安全保障上も極めて重要です。両国が互いの強みを活かしながら、これら次世代技術の開発や保護に協力することで、技術的な優位性を確保し、経済的な競争力を高めていくことができるためです。

また、こうした技術協力は、日米同盟の絆をより強固なものにする効果も期待できます。先端技術を共に推進していくことで、経済的な利益共同体としての側面が一層強化されるからです。

3. 経済安全保障の強化
共同声明では、日米両国が非市場的な政策や慣行への対処、信頼性のあるサプライチェーンの構築など、経済的側面からの安全保障強化に取り組むことが明記されています。
これは重要な点です。地政学的な競争が激化し、経済的な安全保障の確保が喫緊の課題となる中で、日米が緊密に協調してこの分野に取り組むことは、両国の経済的利益を守る上で不可欠だからです。

特に、先端技術分野での覇権を握ることは、経済安全保障上も極めて重要です。日米が連携して、こうした分野での優位性を確保していく狙いがうかがえます。
 
以上3点は、共同声明の中でも特に注目すべき点だと考えられます。日米同盟を21世紀の安全保障環境に合わせて強化していく上で、これらの取り組みが大きな意味を持つためです。


日米が安全保障面での一体化を模索することは、もはや多数の米国民にとって当然のことです。今回の合意に対する大きな騒ぎは起きていません。日本との同盟強化に反対する声はほとんどなく、ドナルド・トランプ前大統領や共和党支持者を含めても、日米同盟の強化に異議を唱える声はありません。

日本という国が米国にとってより身近な存在になっています。大谷翔平選手やテレビドラマ、アニメなどを通じて、日本文化が米国に浸透しており、日本人に対する親近感が高まっています。これは、中国に対する米国民の嫌悪感とは対照的であり、日本は米国人にとって好意的な国として位置付けられています。

ギャラップ世論調査では、日本が米国人にとって最も好きな国の一つに選ばれています。この好意的な姿勢は、日米関係の強化にも繋がっていると言えます。

しかし、一方で岸田首相に対する米国メディアの関心は薄いです。岸田首相の政治的地位は不安定であり、政権内部や有力派閥のスキャンダルに揺れ動いています。そのため、米国メディアは岸田首相を「影の薄い総理大臣」と見ており取り上げることが少ないです。これは安倍首相とは対照的です。

しかし、日米関係の強化に向けては、両国のまともな官僚や議員らが着実に動いているようです。両国の政治的不安定さにもかかわらず、日米関係の堅固さを確保するために、彼らは日々努力しているようです。そのため、今回の日米首脳会談も、両国の関係強化の一環として注目されています。

官僚レベルにおける日米関係強化に向けた取り組みには以下のようなものがあります。

防衛・外交面では、外務省北米局と米国務省が定期的な政治対話を行っており、北朝鮮問題に関する制裁政策の調整や台湾問題に関する協議などが実施されているほか、自衛隊と米軍の共同訓練を強化することで軍事面での協力関係を深めています。

経済・貿易面では、経済産業省と米通商代表部がIT分野など特定分野の共同研究を進める一方で、農林水産省と米農務省もTIFAにおける農産品の市場開放交渉を行っています。

文化交流面では、文部科学省と米教育省が大学間交流事業の拡大に努めるとともに、外務省と米国務省が語学研修制度を活用した若手研修生の派遣数を増やしています。

テクノロジー面では、総務省と米通信委員会が5G技術の標準化で、経済産業省も半導体技術分野で共同研究を進めることで協力体制を強化しています。

さらに、環境・エネルギー面では再生可能エネルギー分野、科学技術面では宇宙開発分野での国際協力も進められています。

上に述べた具体例は、ごく一部にすぎません。 

なぜ日米関係がこのようになっているかといえば、やはり安倍首相の尽力があったおかげです。

これなくしては、現在の日米同盟の強固な地位と日米協力体制がこの水準に達することは極めて困難であったと思います。

特に、トランプ政権下で米国第一主義が強まる中、安倍首相はトランプ大統領個人との信頼関係を築き、日米同盟の重要性を直接説得しました。加えて、日米同盟を東アジアにおける安定と繁栄の礎と位置づける戦略もトランプ政権のアジア観と合致するものでした。


この結果、トランプ政権下では一時東アジアからの関与が低下した傾向に歯止めが掛かり、日米同盟を軸とする米国の東アジアに対する関与が強化されることになりました。同時に、安倍首相の尽力により日米同盟の重要性が再確認されました。

安倍首相の日米同盟強化への献身的な努力とリーダーシップなくしては、現在の日米同盟の堅実な関係基盤と協力体制を築くことは不可能でした。安倍首相の尽力こそが、今日の日米同盟の地位向上に不可欠な要因だったのではないかと考えます。

そのことを岸田首相は再認識すべきです。岸田文雄首相は昨年2月26日の自民党大会で、2012年の政権交代後からの自公政権10年間について話しをしました。安倍元首相の強力なリーダーシップの下、経済状況は改善し雇用と企業収益が拡大したこと、デフレから脱却できたことなどを指摘しました。外交・安全保障面では「自由で開かれたインド太平洋」の推進、日米同盟の深化、平和安全法制の整備などの実績を挙げました。

10年間を振り返り、民主党政権下で失われた日本の誇りと自信、活力を取り戻すため、皆で力を合わせ国を前進させたとアピールしました。今こそ安倍元首相と菅前首相が築いた10年間の成果の上に、次の10年を創造する時だと強調しました。防衛力を抜本的に強化し、積極的な外交を展開することで、戦後最も複雑な状況の中でも国民を守り抜く考えを表明しました。

岸田首相は、今回の日米首脳会談は、安倍首相が敷いた既定路線に乗った形で、成功を収めたことを理解すべきです。

そうして、米国との関係については、米国政府という相手があることであり、安倍首相が構築した日米関係の方向性を崩すことは最早できません。さらに、日米関係を基軸とした外交・安全保障に関しても、これを崩すことはできません。


問題は、国内であり、もっと有り体にいえば、自民党党内です。これについては、米国はこれに干渉することはできず、ただしLGBT理解増進法案などの例外はありますが、国内の大きな方向性に関しては、もっぱら岸田首相が采配しなければなりません。ここでも岸田首相は、安倍路線を継承するべきなのです。

そのことを強く認識して、経済状況を改善し雇用と企業収益が拡大する路線を継承し、デフレから完全脱却すべきなのです。それとともに、自民党内のリベラル派に対して一定の歯止めをかけなければなりません。外交だけではなく、国内でも安倍イズムを継承することが、自民党政権を安定化させる唯一の道だと認識して、その方向に転換すべきです。

これをないがしろにすれば、岸田政権が崩壊するだけではなく、自民党が崩れ、それだけならまだしも、安倍首相が語っていたような、悪夢の民主党政権のよう暗黒史を自民党政権が自ら招くことになりかねません。そうなれば、いずれ自民党は再び下野することになるでしょうが、それまでの間に悪夢の自民党政権が日本国内を毀損すことになりかねません。さらには、次の政権は安倍イズムとは、逆の政権運営をするかもしれません。

これだけは、絶対に避けるべきです。岸田政権は今後、安倍イズムを定着させるべく、邁進すべきです。

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2024年4月1日月曜日

<独自>日米首脳「安保5条尖閣に適用」を再確認へ 共同声明、中国を牽制―【私の論評】地政学的リスクへの対応と安全保障強化:尖閣安保適用と岸田首相の国内対応

<独自>日米首脳「安保5条尖閣に適用」を再確認へ 共同声明、中国を牽制

まとめ
  • 日米首脳会談の共同声明に「日米安保条約第5条が尖閣諸島に適用される」と明記し、米国の対日本防衛義務を再確認する
  • 中国の軍事的影響力拡大とその威圧的行動を牽制し、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調する
  • 北朝鮮による拉致問題の「即時解決」を目指すことを盛り込む
  • 人工知能や半導体など先端技術分野での日米協力を強化する
  • 有事における米軍と自衛隊の一体的運用体制の構築を図り、フィリピンとの3カ国での安全保障面での連携も強化する

バイデン大統領と岸田首相

 4月10日に米ワシントンで行われる日米首脳会談では、共同声明に「日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用される」と明記する。日米は、その最終調整に入っている。これは、中国海警局船舶による尖閣諸島周辺での領海侵入が続く中、米国が核を含む米軍の能力で日本を防衛する姿勢を打ち出す狙いがある。バイデン大統領は武力や威圧による現状変更に反対する考えを示し、東・南シナ海での中国の威圧的行動への懸念を表明する方針だ。さらに共同声明で「台湾海峡の平和と安定の重要性」を強調し、武力行使による台湾統一を排除しない習近平政権に自制を促す。

 また、北朝鮮による拉致問題について「即時解決」を目指すことが盛り込まれる見通しだ。人工知能や半導体など先端技術分野での協力強化についても言及される方向にある。首脳会談では、有事における米軍と自衛隊の一体的運用を可能にする「統合司令部」設置に向けた連携体制の強化も協議する。米軍の指揮系統の見直しを含め、両軍の運用の一体性を高める。

 さらに11日には、フィリピンのマルコス大統領を交えた3カ国首脳会談を開催し、自衛隊と米比両軍の連携強化について議論する予定である。今回は9年ぶりに日本の首相が国賓待遇で招かれる重要な会談となる。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】地政学的リスクへの対応と安全保障強化:尖閣安保適用と岸田首相の国内対応

まとめ
  • 中国公船による尖閣諸島周辺での領海侵入が繰り返される中、中国の一方的な現状変更を牽制し、インド太平洋におけるルール基盤の秩序を維持するため、日米が共同で尖閣に安全保障条約を適用することを明確化すべき。
  • 地理的に台湾に近接する尖閣諸島は、中国が台湾への武力行使で統一を図った場合の戦略的要衝となり得る。そのため、日米は尖閣への安保適用を、台湾有事における同盟国防衛の布石ともしている可能性がある。
  • プーチンがウクライナ侵攻を決意した背景には、バイデン大統領の「米軍をウクライナに派遣しない」発言があり、明確な関与表明がなかったことが一因との指摘がある。この教訓から、米国は尖閣問題への明確な関与を示し、中国の現状変更を未然に抑止しようとしている。
  • 「力による平和」しか理解しない指導者に対しては、経済制裁や軍事行動の選択肢を示し続ける必要がある。
  • 国内で中露の「力による平和」に同調する動きがあれば、安全保障上の重大な脅威となる。そのため、警戒を強め、メディアを通じた国民への広報、関係者への警告・制裁、公安当局による取り締まりの検討、反対勢力への支援打ち切り、資金供与監視体制の整備など、毅然とした対処が求められる。
尖閣諸島

日米が尖閣諸島に日米安全保障条約第5条を適用されることを明確にすることの背景には、複数の地政学的な意図が考えられます。

1. 中国の現状変更の抑止
中国公船による尖閣諸島周辺での領海侵入が繰り返されており、中国が実効支配を試みているとの懸念が高まっています。日米が共同で尖閣に安保条約を適用することで、中国の一方的な現状変更を牽制し、インド太平洋地域におけるルール基盤の秩序を維持しようとしています。
2. 台湾有事への備え
尖閣諸島は台湾に地理的に近接しており、戦略的要衝となりうる重要性を持ちます。中国が台湾に武力行使して統一を試みた場合、日米は尖閣から台湾を守る布石としても、安保適用を位置づけている可能性があります。中国が有事の際に尖閣を攻撃すれば、自動的に日米同盟の武力行使が正当化されるためです。
3. ウクライナ情勢の教訓
プーチン政権はウクライナ侵攻前、バイデン大統領が「米軍をウクライナに派遣しない」と表明したことから、一定の侵攻リスクを冒せると判断した可能性があります。つまり米国の明確な関与表明がなかったことが、ある程度のプーチンの駄目押しになったとの指摘があります。
この教訓を踏まえ、米国は中国の一方的現状変更を未然に抑止するため、尖閣問題への明確な関与を明示する狙いがあります。共同声明への明記は、中国が武力で尖閣を侵略すれば自動的に日米同盟の武力行使が正当化されることを意味しています。
さらに、尖閣への安保適用は、将来の台湾有事における日米の関与の布石にもなり得ます。中国が台湾に武力行使すれば尖閣の防衛が問題となり、そこから日米同盟の軍事介入へとつながるリスクがあるためです。

つまり、米国はウクライナ情勢の教訓から、中国の現状変更を未然に抑止するためのメッセージ発信と、台湾有事への将来の関与の布石として、尖閣への安保適用を位置づけていると考えられます。主眼は中国への抑止力ですが、状況次第では実際の軍事行動に発展する可能性も織り込んでいる可能性があります。

プーチンや習近平のような指導者は、基本的に「力」こそが平和維持の最終的な担保だと考えている可能性が高いです。そのため、米国の「弱さ」を示す譲歩的な姿勢は、かえって自国の行動を正当化し、さらなる現状変更を許容するシグナルと受け取られかねません。

力による平和 AI生成画像

一方で、米国国がしっかりとした「力の姿勢」を示し続ける場合、プーチンや習氏らは冷静に自国の能力の限界を認識し、リスクのある軍事的選択は避ける合理的判断に至る公算が高まります。なぜなら、「力」しか理解できないこうした指導者にとって、相手の明確な「力の投射能力」こそが、自国の行動を抑制する最大の要因になるからです。

具体的には、バイデン政権が以下のような「力の姿勢」を示し続けることが重要になります。
  • 経済制裁などの「報復措置」の選択肢を常に維持示す
  • 同盟国との連携を強化し、集団的抑止力を高める
  • 必要に応じて軍事行動の選択肢も排除しない姿勢を崩さない
  • 中露の一方的現状変更の試みに対する「レッドライン」を明確に設定する
このように、絶えず「力の投射能力」を示し続けることで、プーチンや習氏らに対する「抑止力」を高められます。そうすれば、結果として彼らが軍事的モラトリアムを選び、現状維持の路線をとる可能性が高まると考えられます。

つまり、「力による平和」を理解する指導者に対しては、バイデン政権自らが「力の外交」に徹し、臆さずに自国の軍事的選択肢を維持示すことが何より重要なのです。そうした「力の姿勢」こそが、結果として「平和的解決」に寄与する最善の方策となり得るのです。

岸田首相も、プーチンや習近平のような「力による平和」を重んじる指導者に対して、以下の「力の姿勢」を貫くべきです。

1. 自衛隊の防衛能力の強化を着実に進める
尖閣諸島や津軽海峡における中国公船の挑発的行動に対し、自衛隊の監視・警戒活動を一層強化し、自らの領土・領海を力強く守る姿勢を示し続けることが重要です。
2. 米国をはじめとする同盟国との連携を一層緊密化
日米同盟の絆を一層強固にすると同時に、NATO諸国、QUAD枠組み国家等との安全保障面での連携を深め、集団的抑止力を高めていくべきです。
3. 中国の一方的な現状変更に対する「レッドライン」を明確化
尖閣問題や台湾有事といった重大事態における対応方針を予め明確化し、必要に応じて自衛隊の派遣も辞さない決意を内外に示す必要があります。
4. 経済安全保障の観点から対中牽制力を高める
半導体や希少資源等において対中依存度を下げ、経済制裁の選択肢を温存する。先端技術の流出防止等の懸命な対応も重要です。
5. 国民の危機意識を高め、防衛増強への理解を醸成
日本国民の安全保障意識を高め、防衛費増額等の抑止力強化に向けた施策への支持を広げていくことが不可欠です。
このように、日本も「力による平和」への備えとして、断固たる「力の姿勢」を貫き、中国による一方的現状変更を未然に抑止することが何より重要となります。そうした姿勢を内外に示し続けることこそが、結果的に地域の平和維持につながるということを、岸田首相は肝に銘じるべきでしょう。

また、国内でロシアや中国の「力による平和」に同調する動きがある場合、岸田首相は毅然とした対応をすべきです。
  • 具体的には、そうした動きを警戒し、情報収集と監視を強化する。
  • メディアを通じて国民に対し、その動きの問題点を明確に説明し、正しい認識を促す。
  • 関係者に対し、警告や制裁措置をとる用意があることを示す。
  • 必要に応じて、反社会勢力への対応と同様、公安当局による取り締まりの検討も視野に入れる。
  • 中露寄りの動きに与さない企業や団体への支援を強化する。
  • 議員資産公開など、中露からの不適切な資金供与を監視するしくみを整備する。
中露による「力の平和」に同調する日本国内の動きは、日本の安全保障上の重大な脅威となりかねません。このため、岸田首相はそうした動きに対し毅然とした姿勢で対処し、必要に応じて法的措置も辞さない強い決意を内外に示す必要があります。これは日本の主権と国益を守る上で避けて通れない課題です。

プーチンと習近平

岸田首相が、ウクライナ戦争開始直前のバイデン大統領のような中途半端な姿勢に終始すれば、政権の継続は極めて困難になるでしょう。なぜなら、中国や北朝鮮の脅威が現実味を帯びる中で、首相自らが強い姿勢を示さず、防衛力の増強に消極的であれば、国民の安全保障への不安は高まり、政権に対する支持が揺らぐからです。

さらに、野党から「国益を守れない」と徹底した批判を浴びるでしょう。加えて、自民党内の保守層からも反発が起こり得ます。そして何より、このような姿勢が続けば、日米同盟関係への疑念を招き、ひいては世論から「国益を守れない政権」とのバッシングを受けかねません。

結果として、国内外から批判が高まり、支持基盤が次第に失われていく恐れがあるのです。だからこそ、岸田首相は断固たる「力の姿勢」を貫き通す必要があると言えます。

自民党内には、仮に政権への支持率が下がった場合でも、次の選挙では勝利できるという楽観論がある節があります。その根拠として挙げられているのが、野党に「力の姿勢」が徹底的に欠けていることです。

野党は伝統的に非武装中立路線を標榜し、防衛力増強への取り組みに消極的でした。その結果、有事の際の具体的な対応策を示すことができず、国民の安全保障への不安を払しょくできていません。無論、野党の中に保守派も存在し、政党単位でも日本保守党などの例外もあるのですが、これらは残念ながら現状ではまだ大きな勢力にはなっていません。

一方の自民党は、一貫して同盟国との連携や防衛力増強を掲げてきました。中国や北朝鮮の脅威に対して、野党に比べ、より力強い姿勢と対応策を示してきた経緯があります。

このため、国民の間には「野党には国を守る決意と能力がない」との根強い認識が存在します。多くの有権者が、いざというときに国を守れるのは今のところ自民党しかないと考えがちなのです。

つまり、自民党内の一部には、野党の「力の姿勢」の希薄さゆえに、自身の支持率が下がっても、最終的には国民の支持を得て勝利できるとの期待があるわけです。

ただし、安全保障をめぐる有権者の意識は確実に変化しています。今や国民は「力の姿勢」を政権に強く求めるようになっています。この現実を踏まえれば、野党の力不足を過度に期待するのは賢明とは言えません。自民党自身が、そうして岸田首相自身が、確固たる「力の姿勢」を貫き、国民の期待に応える必要があります。

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2024年3月31日日曜日

<独自>NATO首脳会議に岸田首相を招待 米政府調整、出席なら3年連続―【私の論評】岸田首相をNATO首脳会議に招待するバイデン政権の狙い:ウクライナ支援を含めた岸田政権の継続の可能性

<独自>NATO首脳会議に首相を招待 米政府調整、出席なら3年連続

まとめ
  • 米政府がNATO首脳会議(7月)に岸田首相を招待する方向で調整中
  • 日米首脳会談(4月10日)ではロシアのウクライナ侵略を協議予定
  • NATO首脳会議では欧州・インド太平洋の連携強化を図る
  • ウクライナ支援で貢献する日本の参加を通じ、地域間の結束を促したい考え
  • 日本は中国・北朝鮮など安保上の課題で欧州との連携を強化する機会
バイデン大統領と岸田首相

 4月10日の日米首脳会談を前に、米政府がNATO(北大西洋条約機構)の7月の首脳会議に岸田文雄首相を招待する方向で日本政府と調整している。日米首脳会談では、ロシアのウクライナ侵略問題を協議する予定。NATO首脳会議では、ロシアと中国の抑止を目的に、欧州とインド太平洋地域の連携強化を図る狙いがある。

 バイデン大統領は国賓待遇で岸田首相を迎え、ウクライナ支援や対露制裁の継続で一致するとみられる。バイデン氏はウクライナ支援継続と新たな侵略抑止の観点から、NATO加盟国とインド太平洋地域の連携を重視している。

 NATO発足75周年の重要な首脳会議に、ウクライナ問題で貢献する日本を招き、地域間の結束と協力を促したい考えだ。日本側は政治日程を精査し、参加の可否を最終判断する。日本にとっては、中国や北朝鮮など安全保障上の課題で欧州との連携を強化する機会となる。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】岸田首相をNATO首脳会議に招待するバイデン政権の狙い:ウクライナ支援を含めた岸田政権の継続の可能性

まとめ
  • 米政府は、ウクライナ支援でNATO結束を図り、中国への対抗上欧州・インド太平洋連携を強化する狙いから、岸田首相をNATO首脳会議に招待する方向にある。
  • バイデン政権は9月の総裁選後も岸田体制が継続すると確信しており、その政権の安定性を重視している。
  • 仮に岸田政権が崩壊し、リベラル色の強い、財務省にさらに近い新政権となれば、日米同盟関係や経済の安定性に悪影響が及ぶリスクがある。
  • ウクライナ支援は、ウクライナの潜在力(人的資源、産業基盤、農業)とEU結びつきから、将来的な有望市場となり得る。
  • 日本がウクライナ復興支援で主導的役割を果たせば、経済的安全保障の実現とグローバル・プレゼンスの向上につながる重要な機会となる。
上の記事にもあるように、米政府は7月のNATO首脳会議に岸田首相を招待する方向で調整しています。これには2つの狙いがあります。

1つ目は、ウクライナ支援に積極的な岸田首相の参加を通じて、支援疲れの兆しが見られるNATO加盟国の結束を固める狙いがあります。

2つ目は、中国の脅威をにらみ、インド太平洋地域と欧州諸国の連携を強化することです。

NATO発足75周年の節目の会議で、バイデン政権はウクライナ支援の重要性を欧米に改めて訴え、加盟国の団結を促したい考えのようです。

また、中国の台湾統一の動きへの抑止力を高めるため、欧州諸国のインド太平洋地域へのコミットを後押ししたい狙いもあるようです。

ウクライナ支援で貢献する日本の存在は、欧州・インド太平洋の連携強化において重要な役割を果たすと期待されています。

美しいウクライナの都市リビィウの町並み

バイデン政権が7月のNATO首脳会議に岸田首相を招待する方向で調整していることは、以下の理由から、バイデン政権が岸田政権の継続を見込んでいることを示唆していると言えます。

1. 首脳会議への招待は、その国の最高指導者に対してなされるものです。米政権が岸田首相個人を招待する意味合いは小さく、日本の元首相としての立場で招待していると考えられます。

2. 7月の時点で岸田首相が退任済みだと見込んでいれば、次期首相を招待する方が自然です。岸田氏個人ではなく、日本の首相職そのものに招待状を送っていると考えるべきでしょう。

3. NATO首脳会議は加盟国の重要会議です。日本の内政が不安定で近々に政権交代が予想される状況であれば、米国は慎重に対応するはずです。

4. 招待は米政権の対日重視姿勢の表れでもあります。この姿勢を損なうリスクを冒すなら、岸田政権の継続を前提にせざるを得ません。

したがって、バイデン政権がNATO会議に岸田首相を招待していることは、7月時点におよび、それ以降も岸田政権が続くと見込んでいる、あるいは少なくとも望んでいることを示していると解釈できるでしょう。

バイデン政権が7月のNATO首脳会議に岸田首相を招待するという重要な決断をするに当たっては、単なる「期待」だけではなく、より確かな見通しを持っている公算が高いでしょう。

NATO首脳会議は加盟国を代表する首脳が一堂に会する極めて重要な会議です。日本の首相を招待する際には、単に望ましい状況を期待するだけでなく、実際に岸田体制が継続する確度が高いと判断していると考えるべきでしょう。

つまり、バイデン政権は、9月の自民党総裁選挙後も岸田首相が続投し、日米同盟の中核を担う存在として機能し続けると踏んでいる可能性が非常に高いと言えます。そうでなければ、このタイミングでの招待は避けられたはずです。

米国の対日重視姿勢を考えれば、日本の政局の安定性と信頼できる同盟国関係の持続性を重視しているはずです。したがって、バイデン政権は総裁選後の岸田体制継続を単なる期待以上に確信を持って見込んでいると判断するのが妥当だと思われます。

私は、岸田首相は個人的には好きなタイプではないのですが、それにしても今年の秋で岸田政権が崩壊した場合、次の総裁が誰になるのか、その総裁は岸田首相よりもリベラル色や親中度合い、財務省寄りの度合いが高いかあるいは同程度なのであれば、岸田政権が継続したほうが、良いと思っています。無論、番狂わせがあり、高市氏が総裁になる可能性がでてくれば、それが一番良いとは思います。

しかし岸田政権が崩壊し、新たな政権に移行した場合、その政権が岸田政権よりも、よりリベラルであり、より親中的であり、より財務省寄りであれば、以前の民主党政権時代のような混乱が再び起こるリスクがあると指摘できます。

民主党政権時代(2009-2012年)は、以下のような深刻な問題が生じました。
  •  首相が頻繁に交代し、政権運営が大変不安定になった 
  •  習近平体制の中国への対応が非常に慎重・柔和となり過ぎた
  •   TPP交渉や原発政策で揺れ動いた結果、決定力を欠いた 
  •  財政規律を重視するあまり、消費税の大増税を強行する決定を三党合意(自公民)で行い経済運営の失敗を決定づけた 
  • 日米同盟関係が疑心暗鬼となり、信頼関係が大きく損なわれた
このように、政権の指導力不足や政策の振れ幅が大きすぎたことで、日本の国内外での信頼性が大きく低下しました。

仮に岸田政権が崩壊し、新たな政権が自民党政権であったにしても、再び同様の混乱に陥る恐れがあります。多くの人は、安倍政権が長かったので、これをスタンダードと見るむきもおおいようですが、これは間違いです。安倍政権は自民党政権の中、特にここ20年の中では、特異な存在だったのです。

特に対中強硬姿勢の転換や財政規律のさらなる強化などがあれば、日米同盟はもとより、経済安定性にも悪影響を及ぼしかねません。

このため、バイデン政権は岸田政権の継続を望んでいると考えられます。政権の安定性と政策の継続性を重視する観点から、岸田体制の維持を確信しているものと推測できるでしょう。

安倍首相は「悪夢のような民主党政権」と発言

もしトランプ政権になったにしても、現状日本では、自民党の結党の精神では保守政党を目指したにもかかわらず保守勢力は弱まった状態であり、リベラル的性格や親中的性格がさらに強くなるよりは、岸田政権の継続を望むかもしれません。

私としては、岸田政権がもう一期くらい続いたほうが、保守派などが次の展開をはかるにしても、政治的混乱を避け、ソフトランディングができるのではないかと期待しています。また、マスコミやリベラル左派官僚や財務官僚らに新たな成功体験を提供して、増長させることを防ぐという意味でも、悪いことではないと思います。

そうして、ウクライナへの支援について、マイナスの面ばかりが強調されがちですが、長期的な展望から捉えると、大きな可能性が見えてきます。

1. 人的資源の潜在力
ウクライナは人口約4,400万人と大きな人口を擁し、識字率も99%と教育水準が高い。戦後の復興後には、この優れた人的資源を最大限活用できるはずです。日本では、人口4,400万人はたいして多くはないとみられがちですが、ヨーロッパの近隣諸国と比較すれば、決して少ないとはいえないです。

ロシアの人口は、一億四千万人ですが、その中で少数民族を除いたロシア人は、約1億1,600万人。

モスクワ首都圏は、モスクワ市と周辺のモスクワ州、カルーガ州、トゥーラ州、リャザン州、ウラジーミル州、イヴァノヴォ州、スモレンスク州、ブリャンスク州を含む地域です。2023年1月1日時点のモスクワ首都圏の人口は、約2,700万人です。

モスクワ大都市圏は、モスクワ首都圏さらに周辺の都市を含む地域です。2023年1月1日時点のモスクワ大都市圏の人口は、約3,500万人です。 

以上のようなことを考えると、ウクライナの人口は少ないとはいえません。 

2. 産業基盤の存在  
ウクライナには航空機産業や自動車産業など、一定の製造業の基盤があります。適切な投資と改革で、これらの分野が復興・発展する余地があります。最初から基盤づくりをしなければならないような他の発展途上国とは違います。
3. 農業の有望性
ウクライナは「ヨーロッパの穀倉地帯」とも呼ばれ、穀物の生産大国です。農業分野の復興により、食料安全保障面でも貢献が期待できます。
4. EUとの結びつき  
ウクライナはEUと連合協定を結んでおり、経済面でEUに統合される流れにあります。EUマーケットへのアクセスは大きなメリットとなるでしょう。
5. 支援国の協調
日本に加え、米国、EU、国際機関などがウクライナ支援に熱心です。協調的な支援を続ければ、復興は加速する可能性があります。
一人当たりGDPが韓国並み(約3万ドル)に到達すれば、ウクライナの経済規模は現在のロシア(約1.8兆ドル)と匹敵することになります。教育・産業基盤があり、国際支援も受けられれば、中長期で大きく発展する可能性は決して低くありません。日本が様々な支援で主導的役割を果たせば、他国の模範ともなり得るでしょう。

ウクライナの産業基盤:2024年3月31日時点 
産業概要現状課題
農業ヨーロッパ最大の穀物生産国の一つ。小麦、トウモロコシ、ひまわり油などが主要産品。侵攻により農地やインフラが破壊され、生産量が大幅に減少。農地の復旧、インフラの再建、輸出市場の確保
重工業鉄鋼、造船、航空宇宙産業などが主要産業。侵攻により多くの工場が破壊され、生産が停止。工場設備の復旧、新たな市場の開拓
軽工業繊維、食品加工、家具製造などが主要産業。侵攻により国内市場が縮小し、生産が減少。国内市場の回復、輸出市場の拡大
サービス業IT、金融、観光などが主要産業。侵攻により経済活動が停滞し、多くの企業が撤退。経済活動の再開、安全な環境の整備

参考情報:


日本のウクライナ支援は、専守防衛の立場から直接的な軍事支援は難しく、むしろ資金支援、人道支援、インフラ復旧支援、民間投資促進、人材育成支援など、経済的・人道的な復興支援が中心となると見られます。日本はこうした分野での強みを生かし、ウクライナの復興プロセス全般を下支えすることになるでしょう。

ウクライナの復興支援は、中国経済が減速するなかで、日本が新たな有望市場を確保し、サプライチェーンの分散化を図る絶好の機会となります。日本が主導的役割を果たせば、ウクライナの内需や農業・鉱業分野への参入を通じて経済的メリットを得られるだけでなく、ロシアへの牽制や欧州地域におけるプレゼンス向上、発展途上国支援でのリーダー地位の確立にもつながるでしょう。

中国に過度に依存しない経済安全保障の実現、ロシアに国境を接し対峙する経済大国の出現への支援などグローバル・プレゼンスの向上という点で、ウクライナ復興支援は日本の大きなチャンスと言えます。

ただ、復興の果実を米国、EUなどにもぎ取られないように注意はすべきでしょう。最悪、従来から、ウクライナから軍事技術の提供や、宇宙技術の提供受け、ウクライナと関係の深い中国にもぎ取られるようなことは断じてすべきではありません。

岸田政権はリベラル色が強く、安倍政権のような保守とはいえません。しかし、この歴史的な転機においては、リベラル保守の枠を超えた広い視野が求められます。

ウクライナ復興支援を契機に、日本が新たなグローバル・リーダーシップを発揮すべきときがきたのです。中国の影響力が肥大化するなか、自由と民主主義の旗手となり、ウクライナが新興国の模範的存在となることで、日本の新時代への羅針盤ともなり得るでしょう。岸田政権には、こうしたことを実現するための揺りかごとなっていただきたいのです。岸田首相はこれを目指すべきです。



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