2016年2月10日水曜日

マイナス金利に文句言うのは 銀行の関係者だけだ―【私の論評】ドイツ銀行の不振まで、マイナス金利のせいにしてしまう浅ましさ(゚д゚)!

マイナス金利に文句言うのは 銀行の関係者だけだ

日銀は(2016年)1月29日、マイナス金利を導入した。その後、株式市場、為替市場は乱高下した。それでマイナス金利悪者論が闊歩している。

それらは世界経済の動きが原因であり、残念ながら日本の金融政策が世界を動かしているわけでない。

にもかかわらず、マイナス金利には否定的な論評が多い。

日銀決定の影響は

■日銀当座預金に金利で「濡れ手に粟」

筆者は、この状況を揶揄して、2月3日に次のようなツイートをしたところ、これまでに1400を超えるリツイートがあった。この種の堅い話題では珍しい。
多少言葉が不正確で乱暴なのはご容赦願いたいが、銀行を通してみると、マイナス金利の意味がよくわかる。テレビなどで、エコノミストらが批判するのは銀行の子会社にいて、親会社の銀行がマイナス金利を嫌っているからだ。

一般人が銀行に当座預金しても金利はつかない。ところが、銀行は日銀に当座預金すると、0.1%の金利が付いていた。銀行は一般人から当座預金ではゼロ金利であったが、それを仕入れとして、日銀に当座預金すると、0.1%の金利が付くので、濡れ手に粟だった。

この制度が導入されたのが、前の白川・日銀総裁時代の2008年である。

今回、マイナス金利を決めた日銀政策決定会合は象徴的だった。

賛成は、黒田委員、岩田委員、中曽委員、原田委員、布野委員。反対は、白井委員、石田委員、佐藤委員、木内委員。白井委員は学者出身であるが、石田委員、佐藤委員、木内委員は民間金融機関出身である。賛成には民間金融機関出身者はいない。賛成委員は安倍政権下で黒田体制になってからの任命、反対委員は民主党政権下で白川体制での任命である。

■「個人の預金金利がマイナスになる可能性はない」

白川前総裁は、日本経済より銀行を優遇する政策を行ったが、この当座預金への0.1%付利はその典型だ。

銀行の日銀当座預金残高は250兆円。その大半に0.1%の金利が付いているので、これだけで銀行は年間2200億円の利益を得ている。そもそも、当座預金に金利をつけることがおかしい。

この付利は、次の金融緩和で見直される可能性がある。今回の騒動は、この2200億円を守りたい銀行が必死になっていると見たほうがいい。

あえていえば、一般人からゼロコストの預金を受け入れ、それを貸出にまわさず、日銀当座預金している銀行は社会的にはいらない。貸出先がないと仕事をしない銀行もいらない。金融再編で消えても一般人は困らない。

なお、日銀のマイナス金利政策の導入を受けても、個人の預金金利がマイナスになる可能性はない。マイナス金利になるなら、預金せずに、家の金庫に置いておいた方がいい。もしみんなが預金しなくなると、銀行は仕入れがなくなるわけだから経営できなくなる。だから、銀行は仕入れをするためにマイナス金利にしないはずだ。

++ 高橋洋一

【私の論評】ドイツ銀行の不振まで、マイナス金利のせいにしてしまう浅ましさ(゚д゚)!

上の、記事さすがに高橋洋一氏の書いたものですから、マイナス金利について余すところなく、掲載されています。

それにしても、このマイナス金利悪者論者に関しては、高橋洋一氏が主張するように、銀行関連の人たちだけではないようです。マスコミもそのような主張をするものが多いです。

その典型的な例をあげておきます。これは、産経新聞の記事ですが、産経に限らず他紙でも似たような論調が多いです。
欧州発金融不安? ドイツ銀の株価が急落 マイナス金利で収益圧迫 銀行株一斉売り
ドイツ銀行
 詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にはこの記事の出だし部分のみを掲載しておきます。
 欧州の金融最大手のひとつ、ドイツ銀行の株価が急落している。債券の利払い能力に不安が高まったためだ。マイナス金利政策の導入など欧州中央銀行(ECB)が超低金利状態を保ち、利ざやが縮小していることも収益を圧迫。銀行株の売りは欧州全体に広がり、金融システム全体の健全性に対する懸念がくすぶる。 
 ドイツ銀の株価は8日に9・5%急落し、9日も4・3%の大幅安で、年初からの下落率は40%を超えた。2015年12月期に68億ユーロ(約8800億円)の純損失を計上し、4月末に予定されている3億5千万ユーロの利払いができるか疑問視された。
この記事、明らかな錯誤があります。それは、「マイナス金利政策の導入など欧州中央銀行(ECB)が超低金利状態を保ち、(ドイツ銀行の)利ざやが縮小していることも収益を圧迫」という部分です。

これを読むと、多くの読者は、日銀がマイナス金利政策の導入をすると、日本の銀行の利ざやが縮小すると考えると思います。

ECBは、そもそも銀行の銀行です。銀行の銀行であるECBがマイナス金利を導入すれば、ドイツ銀行などのような市中銀行は、ECBに金を預けておけば、預かり料をはらわなれればならないことになるので、ECBにあまりお金を預けなくなります。

ルーチンで決まったような、決済などの必要なお金のみ預け、その他は引き出し自分のところに保管するか、他に貸出をすることになります。それだけのことです。これで、それまでよりも、利ざやが減ることになるという考えそのものが不思議です。

いいですか、お金を置く場所を変えるだけです。ドイツ銀行の利ざやがそれによって減るには減りますが、激減するわけではありません。これをもって、ドイツ銀行の利ざやが減って、業績悪化につながったというのは、あまりにも乱暴な極論です。EUには多くの銀行が、あります。ドイツ銀行が、マイナス金利で不振になったというなら、EUの銀行がことごとく、不振になっているはずてです。ドイツ銀行の不振はもっと他の原因にあるとみるべきです。

そもそも、ドイツ銀行は、ECBと取引をして利ざやを稼ぐのではなく、あくまで市中銀行として、企業などに融資してお金を稼ぐ機関です。

確かに、ドイツ銀行などの市中銀行が、決済などに預けるお金にはマイナス金利がかかることになりますが、微々たるものでしょう。

ECBとしては、マイナス金利にすることにより、市中銀行がなるべくお金をECBに預ける料を減らし、市場に出回るようにしたということです。ただし、これは、以前このブログにも掲載したように、あまり効果は出ていないことを掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
日銀のマイナス金利 投資・消費の増加につながるか―【私の論評】マイナス金利政策は当然!10%増税では、優先順位を間違えたECBよりも始末が悪いことに(゚д゚)!
さて、このマイナス金利政策は、ECBではあまり効果が出ていないのですが、日本で実行すれば、それなりの効果はあります。この記事から、その部分を述べた部分を以下にコピペします。
ユーロ圏では欧州中央銀行のドラギ総裁がマイナス金利政策を実施しましたが、これといってマイナス金利の効果は確認されていません。にもかかわらず、今回黒田総裁がマイナス金利政策を導入したのは、どうしてなのでしょぅか。 
その違いは、日本とユーロ圏の量的緩和の「量」にあります。以下の図を見てください。ユーロ圏の中央銀行である欧州中央銀行(ECB)がマイナス金利導入を発表したのは、2014年6月5日。つまり、ECBは本格的な量的緩和を実施して、マネタリーベースが急拡大する前の段階でマイナス金利を導入してしまっていたのです。
ECBのマイナス金利導入は、時期尚早でした。日本の場合は、日銀の金融緩和策によって、「日銀当座預金」に銀行の預金がかなり積み上がった状態になってしまっいるので、EUとは異なり、導入すればそれなりの効果が期待できるというわけです。
また、ドイツ銀行の不振が、リーマン級のショックを世界経済に与えるとの論調もありますが、それもかなり疑問符がつきます。

このあたりについては、私が説明するよりも、その道のブロの人の記事をご覧になったほうが良いと思います。以下に、矢口新氏の記事のリンクを掲載します。
世界恐慌の噂を検証~ドイツ銀行が破綻するとは思えない10の理由=矢口新
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、矢口新氏はドイツ銀行が破綻するとは思えない理由を10あげています。その一つ一つが十分納得のいくものです。

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、矢口氏は一番最後の理由で以下のように述べています。
リーマン・ブラザーズは高レバレッジ体質でした。その後、ボルカールールなどで銀行のレバレッジの縮小が続いています。前述の「大き過ぎて潰せない」銀行への新規制でも、換金可能な資金の確保が要求されるということです。
レバレッジ(英語:leverage, gearing)とは、経済活動において、他人資本を使うことで自己資本に対する利益率を高めること、または、その高まる倍率をいいます。特に、リーマン・ブラザーズは異常なほどの高レバレッジ体質だったので、この一社の破綻が、他社にとてつもない影響を及ぼしました。

それから、私自身は、あのリーマンショツクに関しては、一家言があります。それは、日本におけるリーマンショツクは、本当の意味でのリーマンショツクではなく、日銀ショツクであるというものです。

実際、あのリーマショック後に、リーマン・ショックの悪影響を直接被った、米英、EU、中国等では、経済の不振を払拭するために、大規模な金融緩和を実行しました。そうして、比較的短期間のうちにリーマン・ショックから回復しました。

ところが当初はリーマン・ショックの影響は、軽微と見られていた日本においては、他国が金融緩和をしても、日銀はしなかったため、当時のデフレをさらに深化させ、円高も亢進してしまい、まさにひとり負けの状況でした。


だから、私は、日本におけるリーマン・ショックは、日銀ショックと呼称しています。実際、これは正しい見方です。あのとき、日銀が大規模な金融緩和に転換していれば、日本はあそこまで、一人負け状態になるはずはありませんでした。もともと、当時の金融業界は、あまり余裕がなく、サブプライムローンに手を出しているところなどほとんどありませんでした。

以上のようなことを考えれば、マイナス金利悪者論は完璧に間違いであることがわかると思います。最近の株価や、為替の乱高下は、マイナス金利とは全く関係なく、世界経済の動きが原因であり、マイナス金利をやめると、株価や為替が安定するなどということは全くありえません。

それにしても、あろうことか、ドイツ銀行の不振まで、マイナス金利のせいにしてしまうマイナス金利悪者論者の浅ましさは酷いものですし、それを見抜けず、マイナス金利悪者論者の言説に惑わされて、悪者論者の片棒をかつぐマスコミもいかがなものかと、思ってしまいます。

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2016年2月9日火曜日

ホリエモンが56億円“宇宙詐欺”にあっていた!―【私の論評】投資も、技術も失敗と激しいしばき合いがあるから成功する(゚д゚)!


堀江貴文氏 写真はブログ管理人挿入 以下同じ
“ホリエモン”こと堀江貴文氏(43)が約56億円の現金をだまし取られたとして、米テキサス州で訴訟を起こしていたことが分かった。

週刊文春が入手した裁判資料によると、「本件は、民間の宇宙船マーケットで起きた詐欺」として、堀江氏がヒューストンの弁護士であるアート・ドゥラ氏らを訴えている。

堀江氏はロシア製の宇宙船「アルマズ」を利用した宇宙プログラムに投資していたが、後に宇宙船が展示以外に使えない“ポンコツ”であることが判明。投資金などの返還を求めている。一方、ドゥラ氏側は裁判で「何ら不正行為は行っていない」と全面否認している。

2005年に「アルマズ」に乗り込む姿を披露した堀江貴文氏
 堀江氏に取材を申し込むと、取材には応じず、自らのブログで事実関係を認めた。そのうえで「どうせ文春は面白おかしく『ホリエモン詐欺に引っかかる(笑)』と書いて(中略)茶化すつもりだろう」としている。

“情報強者”の立場から社会的発言を続けてきた堀江氏だが、これほど大きな舞台装置で騙されることは「想定外」だったのだろうか。


【私の論評】投資も、技術も失敗と激しいしばき合いがあるから成功する(゚д゚)!

堀江氏は、週間「文春」のやり方に余程腹をすえかねたのでしょうか。以下のようなツイートをしています。


上の記事で、ブログで事実関係を認めたとありますが、そのブログ"HORIEMON.COM"の内容を以下に掲載します。
週刊文春のクソ記者から突然電話がきた
朝ランニングしていたら、突然知らない番号からスマホに着信があった。余り使わないスマホから自動転送にしていたので番号が出ないけど、普段電話に出ない私にわざわざかけてくるというのはよっぽどの重要な電話だと思いでたら、なんとどこで調べたのか週刊文春のクソ記者からの突然の取材電話だ。失礼な奴だ。メールで事務所あてに問い合わせるのが当たり前だろ。なので速攻で切ったら何度もかけてきやがるので着信拒否にした。そしたら事務所あてのメールアドレスに取材内容が書いてあった。 
どこで調べたのか判らないが、私が宇宙開発で詐欺にあった的な内容が書かれている。確かにエクスカリバーアルマズというロシアの宇宙船をリノベーションしてロケットで飛ばす会社に投資をしていたのは事実だし、日本円で50億円以上投資していたのも事実。んで、そこの社長だったArt Dulaに対して賠償請求をしているのも事実だ。で、どうせ文春は面白おかしく「ホリエモン詐欺に引っかかる(笑)」と書いて、まるで私が別で投資をして順調に育ってきているインタステラテクノロジーズのロケット開発まで茶化すつもりだろう。 
ほんとこいつらの頑張っている人の足を引っ張ったり、茶化したりする最低の下劣さには辟易する。まあこんな最低の雑誌をいかしているのは、それを読んでいる下劣な読者のせいなんだけどな。エクスカリバーアルマズに関しては当初ロシアに契約交渉に行ったり計画を精査したりして順調に進んでいると確信していた。現在は訴訟中の為これ以上の事は言えないが、もし一部でも残存している資金が返ってくるならばインタステラテクノロジーズの宇宙開発の方に再投資ができるならば、それがベストだと思える。 
なんというか、こんなネタで週刊文春の部数増に貢献すると思うと虫酸が走るので先に記事にしてやった。もう文春が新事実を書くことはないと思うので文春買う意味ないぞ。 
(エクスカリバーアルマズに関して詳細は こちらの記事 へ。)
さて、以下に堀江氏の宇宙開発に関連する動画を掲載します。

動画の説明を簡単にしておきます。これは、視聴者からホリエモンに質問があり、それに応えるというシリーズ動画です。

この回での質問は、「ロケットの人材を増やす為には、もっと女性の技術­者が増えるべきだと思います。そこで『リケジョ』ならぬ『ロケジョ』みたいな感じで宇­宙に興味のある『宇宙女子』をどんどん支援していく事はできませんか?」というものと、「中高生の­うちからロケットに興味を持たせる事も大切です。ロケット女子が活躍する漫画やアニメ­、映画がヒットすれば全国の学校にロケット部ができる筈です。最近だと『けいおん!』­や『そふてにっ』等、女学生+部活ものはヒットしやすいです。」というものです。

ホリエモ­ンの回答はいかに!? ゲストは準レギュラーのアイスマン福留さんです!



下の動画は、堀江貴文氏の宇宙に対する思い入れを話しているTEDの動画です。


堀江貴文氏は本気で、宇宙に取り組もうとしています。ブログ冒頭の記事では、『“情報強者”の立場から社会的発言を続けてきた堀江氏だが、これほど大きな舞台装置で騙されることは「想定外」だったのだろうか。』と締めくくっています。

しかし、投資でも、技術開発でも、いつも成功できるとは限りません。TEDの動画でも、堀江氏は、失敗したところの動画を聴衆に見せています。その失敗を、聴衆もおおらかに笑ってみています。

かといって、失敗ばかりでもどうにもなりませんが、最後に成功すれば、それで良いわけです。そうして投資し続けたり、研究開発を長年にわたって、続けるというのなら、それは野球でいうところの打率のように見て、評価すべきなのです。

野球のバッターだって、いつも良い成績を収められるとは限りません。長い間、続けていれば、うまくいかないときだってあります。しかし、それでも諦めずに続けていれば、また良い時期もあり、そうして長い間にわたって、高い打率を上げることができれば、そのバッターは能力のあるバッターということになります。

そうして、民間の投資や、技術開発は、多くの人が投資をしたり、技術開発をしてしばきあうことによって、成長していくのです。

あの、iPhoneやiPadとほぼ同じようなプロトタイプを、ノキアがアップルに先駆けて開発していたことを知っている人は少ないかもしれません。しかし、ノキアはそれを市場に投入する機会を狙っていたのですが、残念ながらノキアは市場に投入する時期を間違えて、アップルに完璧に負けてしまいました。

ノキアがアップルより半年も先に、このプロトタイプを市場に投入していたら、状況は大きく変わっていたかもしれません。

ノキアの最初のスマホは、市場導入時期がアップルのiPhoneよりも遅れてしまった
ノキアは、スマホやタブレットなどは、まだ市場に投入しても、ユーザーには受け入れらないと判断していたのです、そうこうしているうちに、後発のアップルに追いぬかれてしまいました。

この事例のように、最初のうちは、誰が成功するかなど、誰にもわかりません。しかし、とにかく他者に抜きん出ようとして努力をして競争して、互いにしばきあって、どこかの企業が成功すれば、それが場合によっては、大きな産業を生み出すこともあるのです。

これを否定してしまえば、優れた投資や、優れた技術なども生まれてきません。それは、計画経済の共産主義がことごとく失敗したことからも明らかです。

“情報強者”のホリエモンでさえ、失敗することはあるのです。というより、資本主義市場における、民間企業は失敗の連続です。その失敗から立ち直り、最後に成功できる企業が次世代を創りだすのです。

しかし、この失敗を許容しない社会は本当につまらない社会になると思います。これは、小保方さんのSTAP細胞についても同じことがいえます。このブログにも以前掲載したように、本来ならば、小保方さんのSTAP細胞に関しても、たとえ小保方さんが間違えていたとしても、どこかで許容されるような社会でなければ、優れた投資活動や、優れた技術開発が阻害されてしまうと思います。

まあ、この程度の茶化しで、堀江氏が尻込みするということなど考えられませんが、このような週刊誌のやり方が、野放図に際限なく行われ、そうして多くの人々が、失敗を許容しないような社会になったとしたら、そのような社会には発展性はありません。

堀江氏の今回の投資の失敗など、笑って許容するくらいの度量が欲しいものです。何やら、私自身は、彼も時にはこんな大失敗をするのかと、思い、かえって親しみがましました。私は、とにかく失敗だけはしないようにする人間は、全く見込みのない人間だと思います。そんな人間に、未来は切り開けないです。そのような人間が世の中の主流となってしまえば、我が国の発展もありません。

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2016年2月8日月曜日

安倍内閣 「支持する」50% 「支持しない」34%―【私の論評】この結果は、野党があまりに不甲斐ないから!このままだと、次の選挙でも与党の大勝利(゚д゚)!

安倍内閣 「支持する」50% 「支持しない」34%


NHKの世論調査によりますと、安倍内閣を「支持する」と答えた人は先月より4ポイント上がって50%、「支持しない」と答えた人は1ポイント下がって34%でした。

NHKは今月5日から3日間、全国の20歳以上の男女を対象に、コンピューターで無作為に発生させた番号に電話をかける「RDD」という方法で世論調査を行いました。調査の対象となったのは1574人で、68%に当たる1063人から回答を得ました。

それによりますと、安倍内閣を「支持する」と答えた人は先月より4ポイント上がって50%でした。一方、「支持しない」と答えた人は1ポイント下がって34%でした。

支持する理由では、「他の内閣より良さそうだから」が40%、「実行力があるから」が23%、「支持する政党の内閣だから」が14%だったのに対し、支持しない理由では、「政策に期待が持てないから」が42%、「人柄が信頼できないから」が22%、「支持する政党の内閣でないから」が10%となっています。

安倍内閣の経済政策について尋ねたところ、「大いに評価する」が6%、「ある程度評価する」が50%、「あまり評価しない」が30%、「まったく評価しない」が10%でした。

景気が回復していると感じるかどうかについては、「感じる」が11%、「感じない」が49%、「どちらともいえない」が36%でした。

甘利前経済再生担当大臣と甘利前大臣の秘書が建設会社の関係者から現金を受け取っていたことについて、甘利前大臣の説明に納得できるかどうか聞いたところ、「大いに納得できる」が3%、「ある程度納得できる」が23%、「あまり納得できない」が38%、「まったく納得できない」が28%でした。

甘利前大臣が政治とカネの問題で辞任したことの安倍政権への影響については、「大いに影響がある」が19%、「ある程度影響がある」が44%、「あまり影響はない」が24%、「まったく影響はない」が6%でした。

北朝鮮がミサイルの開発を進めていることに対し、日本政府が十分な対応をしていると思うか尋ねたところ、「十分な対応をしている」が20%、「十分な対応をしていない」が35%、「どちらともいえない」が36%でした。

民主党と維新の党が合流して一つの政党になることを期待するかどうか聞いたところ、「大いに期待する」が4%、「ある程度期待する」が17%、「あまり期待しない」が39%、「まったく期待しない」が34%でした。

【私の論評】この結果は、野党があまりに不甲斐ないから!このままだと、次の選挙でも与党の大勝利(゚д゚)!

安倍内閣の支持率については、ANNでも調査をしていて、今月1日にその内容を発表しています。その内容の動画を以下に掲載します。



安倍内閣の支持率はこの調査では50.4%で、1年ぶりに5割を回復しました。金銭授受疑惑を巡る­甘利前経済再生担当大臣の辞任は今の時点で大きく影響しなかった形です。

夏の参院選が刻々と迫る中、民主党は、政党支持率1割以下という超低空飛行を続けています。民主党は、国会論戦の序盤に浮上した甘利明前経済再生担当相の「政治とカネ」をめぐる疑惑で「反転攻勢のチャンス」と色めき立っちましたが、世間には、政策論戦そっちのけで疑惑追及に血道を上げていると映ったのでしょうか、支持率は逆に下落してしまいました。
今や何をやっても「ブーメラン」で、民主党に帰ってくるようです。甘利氏の電撃辞任により追及の気勢もそがれ、脱力感だけが残りました。それでも色めきたっている民主党の面々をみると、もう本当に白けるばかりです。

そうして、私は民主党の「ブーメラン」を見ていると、西城秀樹さんのブーメランストリートという曲を思い出してしまいます。その曲の動画を以下に掲載します。



今月3日の衆院予算委員会で、民主党の岡田克也代表は安倍晋三首相との直接対決で、甘利氏の金銭授受疑惑に切り込みました。
「甘利氏はアベノミクスの司令塔、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の最終交渉もした。きちんと検証するべきだ」
「巨大な権限を持つ人が疑いをかけられていることに、首相は危機感を持つべきだ」
対する首相は、
「TPP交渉に影響するわけがない」と色をなして反論し、「影響を与えたというならば、具体的にどの品目に影響を与えたのかを言わないと、無責任な誹謗中傷だ」
 とまくしたてました。

「政治とカネ」をめぐる論戦はヒートアップしたましたが、岡田氏が約1時間の質疑時間のうち疑惑追及に費やしたのは、わずか10分ほどでした。疑惑解明も必要だが、追及一辺倒では世論が辟易しかねません。こんな意識が働いたとみられる。

実際、民主党の追及姿勢について世論は評価していません。むしろ逆効果となりました。甘利氏が閣僚辞任を表明した1月28日直後の報道各社の世論調査をみると、その傾向は一目瞭然です。

民主党の支持率は、共同通信9・5%(前回比0・2ポイント減)、読売新聞7・0%(前回比1・0ポイント減)、毎日新聞は横ばいとはいえ、わずか7・0%にすぎませんでした。逆に内閣支持率は軒並み数ポイント増え、5割を回復した調査も少なくありませんでした。

1月22日の衆院本会議で甘利氏の経済演説の際に、民主党など野党6党が「甘利氏から明確な答えがないまま演説は聴けない」として、ぞろぞろと退席したことも多くの人の心証を害したようです。

1月22日の衆院本会議で民主党など野党6党がぞろぞろと退席
自民党の平将明衆院議員が自身のツイッターで、退席の様子を書き込みました。
「私も議場にいたが、政策論争ではなく、政局的展開になったとたんに、民主党がガラッと元気になったのをみて、この党の本質をみた気がした。何人かの若手は怒りではなく本当に嬉しそうな顔をして議場から出て行った」
国民からもそんな民主党の体質を見透かされているのです。

民主党の長島昭久元防衛副大臣は1月30日の自身のこのことに関して自身のブログ『翔ぶがごとく』懸念を表明しています。以下にそのブログの内容を転載します。


民主党の長島昭久元防衛副大臣
 のっけから誤解を恐れず言わせて貰えば、「国会戦術上」の甘利問題は、あの潔く辞任表明した会見でほぼ勝負がついてしまったと思う。これ以上、国会の場で甘利問題を深追いしても逆効果になってしまう(つまり、スキャンダル追及で政権に打撃を与えるという思惑が国民の支持を広げる可能性は高くないどころか、逆に反発すら招く恐れがある)のではないか。小渕元大臣も仕留められなかった国会が、甘利前大臣にとどめを刺すのは難しいだろう。これが国会の限界なのだと思う。 
 ここから先は、斡旋利得があったかどうか等、秘書の件も含め司直の手に委ねるべきものだ。もちろん、甘利前大臣自身が認めているように、政治家及び政治事務所による役所(今回は国交省およびUR)への口利きや金銭授受行為は、違法か否かに拘らず、政治的、道義的責任を免れず、厳しく正されるべきことは言うまでもない。ましてや、国家の最高権力者たる現職大臣である。再発防止のため新たな法整備の必要もあるかもしれない。また、そういった点をめぐり、国民の疑問にきちんと答える(野党としてしっかり正す)べきとの議論は残るだろう。しかし、党を挙げて、しかも予算審議を人質に取ってまで取り組むべき問題なのかどうか、真剣に考え直すべきだろう。政治倫理を扱う別の委員会も存在する。 
 言うまでもなく、予算委員会で議論すべき問題はいくらでもある。甘利大臣が担当していたTPPから始まって、政府の異常な金融緩和、消費税の引き上げ、それに伴う軽減税率の是非や総合合算制度を諦めてしまったことの是非、原発再稼働、北朝鮮のミサイル実験、中国の軍事的拡張と経済崩壊の可能性等々、枚挙に暇がない。 
 その上で、改めて国政(政府)を正す責務を有する野党の立場で考えてみると、甘利大臣辞任がもたらす問題の核心は、甘利大臣の罪状というより、甘利大臣が第二次安倍政権の中で果たしてきた役割が突然取り除かれてしまったことにあると思っている。 
 つまり、これまで3年間にわたり安倍政権の安定性を担保してきたのは、閣内における鉄の結束だろう。それは屢々「トリプルA」と呼ばれてきた安倍・麻生・甘利の三枚看板だ。そこに菅官房長官の調整力が加わり盤石の体制を誇ってきたものだ。アベノミクスの進め方をめぐり、消費税や金融緩和、財政政策など閣内でも意見が相克するような場面はこれまでいくらでもあった。しかし、その局面のたびに、総理の信頼厚い盟友・甘利大臣が果たしてきた役割はきわめて大きかった。ここ数日、甘利大臣の力量をめぐってメディアでも激論が交わされたが、私の見るところ、安倍政権における甘利大臣の価値は、政策力でも交渉力でもなく、総理の信頼を背景にした政権内のバランサー的な役割だったと思っている。 
 したがって、甘利大臣の後継に石原伸晃氏が起用されることが決まった直後の大臣会見で、事もあろうに政権の要である麻生副総理が石原氏の手腕にビッグ・クエッション・マークを付けてみせた時には、思わずのけぞってしまった。これが政権の綻びになる可能性を秘めているからだ。その意味で、巷間囁かれているように今回の甘利大臣辞任が安倍政権の「終わりの始まり」だとすれば、それは甘利前大臣の罪状の故にではなく、甘利大臣が閣外に去ることによる政権内の不協和音の顕在化にあるのではないかと推察する。 
 であるからこそ、野党は、すでに大臣自ら職を辞し幕引きを図った事案の罪状暴きに奔走するのではなく、真正面から堂々と安倍政権に政策論争を挑み、建設提案を突きつけ、閣内不一致を暴き出すことに全力を傾けるべきなのだ。野党として、スキャンダル攻撃に血道をあげるより、政策論争で政権を追い詰める方がよほど憲政の常道に叶うし、国民の利益になるはずだ。この週末は、野党にとっても頭を冷やすにはちょうどいい。
長島氏の不安は的中したといえます。しかし、民主党は追及の手を緩めようとしません。確かに甘利氏の疑惑に絡む斡旋利得の有無など真相究明は欠かせないですが、司直に委ねる部分が多く、立法府での甘利氏不在の追及には限界があります。

民主党など野党は甘利氏の参考人招致などを求めますが、与野党会派の全会一致が慣例で、実現の見通しは立ちません。

それにしても、民主党の国会での論争を聴いていると、そもそも民主党にはこの日本をどのようにしたいのか、経済をどうしていくのが、社会をどうしていくのか、などという考えは全くなく、とにかく自民党に対峙して、何で反対して、自民党に競り勝つことのみ考えているようにしかみえません。

そんな中で、民主党の政策論争といえば、全くお話にならないほどの低レベルです。無論、民主党の中にもまともなことをいう人もいるにはいるのですが、本当にごく少数派です。安保法制のときの、民主党の論議は結局のところ「戦争法案」のレッテル貼り一辺倒で、全く議論になっていませんでした。

さらに、経済に関してはあまりにレベルが低すぎです。それについては、以前のこのブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
民主党議員よ、頼むから少しは経済を勉強してくれ!~『朝ナマ』に出演して改めて感じた、日本の野党のお粗末さ―【私の論評】第二社会党の道を歩む民主に期待は無駄!本当は増税政党の自民も無理!期待できるのは今は次世代の党のみ!

この記事の元記事は高橋洋一氏が書いています。この記事は、昨年の11月10日のものです。民主党議員の経済オンチぶりについては、この記事をご覧いただくものとして、この元記事の高橋洋一氏の結論を以下に掲載します。
ここまで民主党がダメだと、安倍政権は民主党が今の体制のうちに、解散総選挙を仕掛けたくなってしまうのではないか。与党がそんな手を打てなくなるような野党が必要である。
ここでいう解散総選挙とは、参院の選挙は決まったことですから、今年の夏に実行されますが、年内に衆院も解散して、総選挙を行うかもしれないということです。

実際に、安倍首相の側近である自民党の下村総裁特別補佐は、7日朝、フジテレビの「新報道2001」に出演し、衆議院の解散・総選挙について、「年内に90%くらいあるのではないか」と、実施の可能性が高いという考えを示しました。

自民党の下村総裁特別補佐は「年内にですね、90%くらいの可能性で、わたしは(解散・総選挙が)あるという前提で考えた方がいいのではないかというふうには思います」と、衆議院の解散・総選挙が、年内に行われる可能性が高いという見通しを述べ、その理由として、「2017年4月に消費税が10%に引き上げられ、経済的に厳しい状況が出てくるかもしれない」と指摘しました。

また、衆院選挙の具体的な時期について、下村氏は、「ダブルや年末」と述べて、夏の参院選と衆院選を同日に行う、ダブル選挙の可能性にも言及しました。

もし、衆院も解散総選挙となれば、民主党は今のままであれば、歴史的な大敗北を喫して二度と立ち上がれないくらの打撃被るのではないかと思います。

丁度、あの社会党が、PKO法案成立後の選挙で、大敗して、存続すら不可能になったのと同じようなことになります。私は、はっきりここに予測しておきます。

そうして、この記事では、当時の「次世代の党」の経済対策が、もっとも優れていることを掲載しました。しかし、「次世代の党」は、「日本のこころを大切にする党」に名称を変更しました。

知名度が低いのにさらに、党名変更ということで、おそらく影響力の強かった石原慎太郎氏のイメージから脱却して、新しい党に生まれ変わろうとの趣旨で行ったのでしょうが、選挙には不利であると考えられます。

大阪維新の党も、どうしても、地域政党の性格が強いので、あまり大きな動きにはならないと考えられます。そうなると、他の野党の状況をみあわせると、今年の夏や、もしかすると行われる衆院選挙では、またまた、与党が大勝利を収めることになるのではないかと思います。

唯一の懸念は、経済が良くなりきらないうちに、10%増税を決めたり、憲法論議を進めたりすることです。10%増税をすれば、8%増税も大失敗だったのに、とんでもないことになるのは明らかです。本格的に経済が悪くなれば、その時の政権が誰のものであり、政権を放棄せざるをえなくなります。

憲法論議に関しては、自民党の憲法素案はまだまだ、非常に詰めが甘すぎます。無論、改憲はいずれすべなのですが、もっと、もっと詰める必要があります。まだ、詰めきってもいないうちに、憲法論議で時間を費やしたり、選挙の公約にすれば、与党にとってはあまり良いことはないと思います。特に、経済が悪化しているときの憲法論議は避けるべきです。

憲法解釈にも、いろいろあって、京都学派の解釈によれば、日本国憲法9条は、国際紛争を避けるための手段として、武力を保持したり行使することは、明確に禁止していますが、自衛戦争にのために武力を保持したり、行使することまでは禁じていないとしています。

この解釈に従えば、自衛隊は違憲でも何でもありません。こういうことも考え合わせ、新たな憲法の草案には、もっと時間を費やすべきであり、もっと大日本帝国憲法の内容を吟味したり、その成立過程を学び、まともな憲法草案にしてから、議論すべきものと思います。

このような危機はあるものの、今年の夏の参院では与党が大勝利することは余程のことがない限り、間違いないでしょうし、衆院解散総選挙があってもやはり、与党が大勝利ということになると思います。

それもこれも、野党があまりにも不甲斐ないからです。野党は、自民党に対峙することばかりに血道をあげるのではなく、まともな政策論争ができるように、努力すべきです。

野党がまともな政策論争をして、与野党が切磋琢磨することによって、我が国はさらに良くなるはずです。

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2016年2月7日日曜日

北朝鮮、特別重大報道で「人工衛星発射成功」を宣言―【私の論評】韓国にはるかに立ち遅れた北朝鮮が、水爆や長距離弾道ミサイルに挑戦できるのはなぜ?

北朝鮮、特別重大報道で「人工衛星発射成功」を宣言




北朝鮮は7日正午(日本時間午後0時30分)、国営メディアの「特別重大報道」を通じて「地球観測衛星『光明星-4』号を軌道に進入させるのに完全に成功した」と報じながら、長距離弾道ミサイルの発射実験が成功したことを宣言した。

同通信は「『光明星-4』号発射の完全成功は偉大な朝鮮労働党の科学技術重視の政策の党機関紙・結実であり、自主的な平和的宇宙利用権利を堂々と行使して国の科学技術と経済、国防力を発展させていくことから画期的な事変となる」と強調した。

朝鮮中央通信の報道全文は次の通り。(※編集部訳)

朝鮮国家宇宙開発局 地球観測衛星「光明星ー4」号を成果的に発射したことに関連した報道を発表
【平壌2月7日発 朝鮮中央通信】朝鮮民主主義人民共和国国家宇宙開発局の科学者、技術者は国の宇宙開発5カ年計画、2016年の計画に基づき、新たに研究開発した地球観測衛星「光明星-4」号を軌道に進入させることに完全に成功した。
運搬ロケット「光明星」号は、主体105(2016)年2月7日9時に平安北道鉄山郡東倉里から発射されて、9分46秒である9時09分46秒に地球観測衛星「光明星-4」号を軌道に正確に進入させた。 
「光明星-4」号は、97.4゜軌道傾斜角で、近地点高度494.6キロ、遠地点高度500キロの極軌道を回っており、周期は94分24​​秒である。 
「光明星-4」号には、地球観測に必要な測定機材と通信機材が設置されている。 
「光明星-4」号打ち上げの完全成功は、偉大な朝鮮労働党の科学技術重視政策の誇らしい結実であり、自主的な平和宇宙利用の権利を堂々と行使し、国の科学技術と経済、国防力を発展させていく(注:太字はブログ管理による)うえで画期的な出来事となる。 
太陽朝鮮の最大の民族的祝日である光明星節(訳注:金正日氏の誕生日)の日が日々近づきつつあり、2月の澄んだ青い春の空に刻まれたチュチェの衛星の恍惚とした飛行機雲は、われわれの宇宙科学者、技術者が偉大な金正恩同志と尊厳高きわが党が、わが国と人民に捧げる最もきれいな忠誠の贈り物である。
朝鮮民主主義人民共和国国家宇宙開発局は、偉大な朝鮮労働党の科学技術重視政策を高く奉じ、今後もチュチェ衛星をより多く万里大空に打ち上げるだろう。 
チュチェ105(2016)年2月7日 平壌
【私の論評】韓国にはるかに立ち遅れた北朝鮮が、水爆や長距離弾道ミサイルに挑戦できるのはなぜ?

北朝鮮は従来は、事実上の長距離弾道ミサイルの打ち上げであっても、『地球観測衛星』の打ち上げとしか発表しませんでしたが、今回は「国防力を発展させていく」とも発信しており、長距離弾道ミサイルの発射実験が成功したことを宣言しました。

この強引な、人工衛星打ち上げの背後には何があるのか、本日の産経新聞に以下のような記事がありました。
【正恩支配 何が起きた】「核実験…中国に見せつけてやる」 若き指導者が自信を深めた3つの理由とは?
平壌で開かれた朝鮮労働党と朝鮮人民軍の拡大会議に出席した金正恩第1書記(中央)。
右から4人目が金英哲氏とみられる人物(労働新聞のウェブサイトから)
 詳細は、この記事をご覧いただくものとして、若き指導者が自信を深めた3つの理由を以下に要約して掲載します。
  1. 核実験の名分にも「米の敵視政策」への自衛を掲げるとともに、「われわれが最も警戒しなければならない国」と中国を名指ししている。中国の思い通りにならないという断固たる意志を見せつけてやるために、元帥(金第1書記)の指示で水爆実験を実施した。
  2. 正恩政権は2012年に「6・28措置」と呼ぶ経済策を打ち出し、農業改革に取り組んできた。取れ高の一定割合を農民が自由に扱えるようにし、生産意欲を鼓舞するのが狙いだ。この成功を金正恩は過信している。
  3. 4日付党機関紙、労働新聞は、会議の席上、紺の人民服姿で金第1書記のそばに座る金英哲(ヨンチョル)氏を写した写真を掲載した。対北情報筋は、昨年末に事故死が発表された金養建(ヤンゴン)氏に代わって、対韓政策を統括する党統一戦線部長と書記を兼務したとの見方を示した。相次ぐ挑発で外交的な亀裂を招いたとして本来、問責されるべき人物が、対外交渉を担う最側近の地位を固めた。
 今回は本当に人工衛星打ち上げに成功したのでしょうか。これを確認するには、今後各国の観測結果などの公表を待つしかありません。

実は、北朝鮮の人工衛星打ち上げは過去にはすべて失敗しています。それに関しては、以下の記事をご覧ください。
一度も成功してない北朝鮮の「人工衛星」
辺真一(ピョン・ジンイル)氏
この記事は、コリア・レポートの編集長である辺真一氏によるものですが、この記事の中で、辺氏は、北朝鮮が「衛星」と称する発射は、1998年8月と、2009年4月、2012年4月、そして直近の2012年12月12日の計4度がありましたが、これらの打ち上げはすべて失敗であったことを信頼に足るエビデンスをもとに主張しています。

人工衛星の打ち上げというと、あの韓国ですら、打ち上げに初めて成功したのは、2013年1月30日のことです。

韓国は、人工衛星の打ち上げに2002年に着手して以来、2度の打ち上げ失敗を経て、この時についに「羅老号」による人工衛星打ち上げに成功しました。羅老号は、韓国の技術で開発した宇宙環境観測機能を装備した羅老科学衛星を載せて宇宙に飛び立ち、衛星を無事軌道に乗せた。31日の午前3時28分には、韓国科学技術院人工衛星研究センターにある地上局と羅老科学衛星が初交信に成功しました。

このの成功によって韓国は、旧ソ連、米国、フランス、日本、中国、イギリス、インド、イスラエル、イランに続いて10番目の衛星打ち上げ成功国になりました。

ロケット羅老
羅老ナロ朝: 나로호英: NaroもしくはKSLV-IKorea Space Launch Vehicle-Iロシアのクルニチェフ国家研究生産宇宙センターと大韓民国の韓国航空宇宙研究院 (KARI) が共同開発した人工衛星打ち上げロケットです

羅老は390人体制の専門人材により開発されたロケットで(韓国側だけの人数かどうかは不明)、ロシア国内で製造されるアンガラ・ロケットの第1段を基盤としており、射場となる羅老宇宙センターもロシアの技術援助のもとに設立されました。

韓国の人工衛星打ち上げロケットは、ロシアの技術を導入したものです。

最初の弾道ミサイルは、第二次世界大戦中のナチスドイツが開発したV2ロケットで、戦後ドイツにいた技術者や資料が、アメリカとソ連に流出し、ミサイルやロケット技術の発展に寄与しました。

北朝鮮のミサイル技術も、ソ連の流れを汲むものですが、すでに完成された技術をつかっており、精度を更新するための工夫はあっても、ほとんど進化していません。

とはいいながら、自前で、車や航空機を製造することができるある程度技術のある国にとっては、そうなのですが、発展途上国などではなかなかそうはいきません。

にも関わらず、北朝鮮が成功したしないは別にして、とにかく人工衛星発射に挑戦できるだけの技術基盤をどのようにして構築したのでしょうか。

無論、旧ソ連の技術を転用してたりしているはずですが、それにしても、特に韓国と比較して、著しく技術面でも、経済面でも遅れてしまった北朝鮮でなぜそれが可能になったのでしょうか。

それは、歴史を遡るとおのずと答えがでてきます。

大東亜戦中・戦前はご存知のように、朝鮮半島は日本に統治されていました。そうして、実は、日本統治時代、電源開発や工業化において、南朝鮮よりも、北朝鮮の方がはるかに進んでいました。

朝鮮と満洲の国境を流れる鴨緑江の水系には当時世界最大級の水豊ダムがあり、支流の赴戦江、長津江、虚川江にもダムがありました。

現代の水豊(スプン)ダム
このダムは太平洋戦争の泥沼化の中、1944年3月、水豊水力発電所(発電能力:60万kW)と共に竣工しました。この発電規模は当時の世界最大級であり1940年当時の日本国内の水力発電規模280万kWと比較してもその大きさは容易に比較できます。7基の発電機は各々約10万kWの発電能力を持っていたが、当時世界最大級の能力であり、製造を受注した東京芝浦電気(現在の東芝)は製造のために新工場を建設しました。

1945年8月9日、ソ連軍(赤軍)侵攻により、7基の発電機のうち5基を略奪されました。略奪された発電機は、カザフスタン共和国、イリティッシュ川(エルティシ川)上流のダムで確認されています。

朝鮮戦争中に雷撃を含む、アメリカ軍機の攻撃を受けたが、ダム構造が堅牢であったため決壊を免れました。ただしこの攻撃で北朝鮮では発電能力が激減し一時、広域にわたって停電しました。戦後に北朝鮮は発電能力を増強して復興しました。竣工から70年以上経過した現在もダム本体は大きな改修工事が行われず現役であり、現在も北朝鮮の重要なエネルギー源の一つです。なおダム湖は中朝国境となっていて、北側は中国領です。

戦中には、この電力を使い、北部の日本海に面した興南という地に、日本窒素肥料(現チッソ)が大規模な化学工場を建設し、硫安などの肥料を量産していました。

最近の北朝鮮の旅客機の客室乗務員 スカートの丈が短くなった
戦後、日本から莫大な工業資産を引き継いだ北朝鮮の経済は長い間、農業国の韓国より優位に立っていました。1975(昭和40)年の一人当たりの国民所得は、韓国120ドルに対し、北朝鮮は190ドルでした。しかし、その10年後、韓国580ドル、北朝鮮450ドルと逆転しました。

これは昭和40年の日韓国交正常化に伴う日本からの経済協力(無償3億ドル、有償2億ドル)を経済発展のために使った当時の朴正熈大統領をはじめとする韓国民の努力の成果でした。

北朝鮮はすでに日本統治時代の資産を食いつぶし、現在のような状況に陥っています。しかし、日本から受け継いだ工業技術などは細々とでも、引き継いできたのでしょう。特に、民生分野ではかなり立ち遅れてしまいましたが、日本統治時代の資産の上に、旧ソ連などの技術などを継ぎ足し、継承しているのだと思います。

だからこそ、発展途上国であり、経済的にも恵まれず、人民が食うや食わずの状態でありながらも、人民を犠牲にしてでも、軍事技術などは何とか維持発展させ、核兵器や弾道弾などの技術に挑戦できるのです。

もし、北朝鮮が日本の統治を受けておらず、中国の属国のままであったとしたら、今頃、核兵器や大陸間弾道弾などとは無縁の国であったことでしょう。技術的な基盤がまったくないところに、ソ連などの技術を移転したとしても、自前で核兵器や、大陸間弾道ミサイルなど、なかなか開発できるものではありません。

この事実は、マスコミ等ほとんど報道しませんが、紛れも無い事実です。

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2016年2月6日土曜日

【日本の解き方】中国経済もはや重篤なのか 食い止められない資本流失―【私の論評】日銀に振り回され続けるか、資本規制かを選択せざるをえなくなった中国(゚д゚)!


日銀の黒田東彦総裁
日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁が個人的見解としたうえで、中国の人民元について「国内金融政策に関して一貫性があり適切な方法として、資本規制が為替相場の管理に役立つ可能性がある」と述べたと報じられた。

 物やサービスの移転を伴わない対外的な金融取引のことを資本取引という。日本の外為法では、居住者と非居住者との間の預金契約、信託契約、金銭の貸借契約、債務の保証契約、対外支払手段・債権の売買契約、金融指標等先物契約に基づく債権の発生等に係る取引、および証券の取得または譲渡-などが定められている。

 このほかにも、居住者による外国にある不動産もしくはこれに関する賃借権、地上権、抵当権等の権利の取得、または非居住者による本邦にある不動産もしくはこれに関する権利の取得も、資本取引とされている。

 こうした取引は、金融機関を通じて行われるので、資本取引を規制しようとすれば、金融機関を規制することとなる。規制の方法としては、全面禁止、取引許可、取引届出、取引報告などがあり、前者から後者にいくにつれて規制が弱くなる。

 黒田総裁が指摘した、為替管理と資本取引の関係を理解するには、「国際金融のトリレンマ(三すくみ)」を知る必要がある。それは、「独立した金融政策」「固定為替相場制」「自由な資本移動」のうち、2つまでしか同時に達成することはできないというものだ。

 この法則に従うと、資本取引規制によって自由な資本移動をあきらめれば、独立した金融政策と固定為替相場制を達成できる。つまり、国内物価の安定のために金融政策を使うことが可能となり、為替相場も安定させられるというわけだ。

 中国の資本規制は原則として許可制で、先進国が原則として報告だけなのに比べて格段に規制が強い。それでも香港などを経由した資本流出の動きを食い止められないようだ。

 もっとも、中国が本気になれば規制強化は容易だろう。なにしろ、中国では、問題を起こしたとして摘発された場合、政治的失脚までありえるからだ。

 筆者はかつて中国でのコーポレート・ガバナンス(企業統治)に関する国際会議に出席した際、強烈な思い出があった。国有企業ばかりの国で、コーポレート・ガバナンスなんて所詮無理と思っていたところ、中国政府関係者が「中国では粉飾は死刑にもなります」と説明したのだ。さすがに、この発言には度肝を抜かれた。その延長線で、資本流出を勝手に行えば、重罰というのもあり得るだろう。

 先進国では、貿易自由化の後に資本を自由化するというのが一般的な流れだ。しかし、中国の場合、貿易の自由化を進めたが、ここに来て資本規制が必要となったことで、貿易も規制せざるを得なくなるかもしれない。

 すでに水面下では強烈な資本取引規制が行われているともいわれている。それでも資本流出が続いているのであれば、中国経済はかなり重篤だろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日銀に振り回され続けるか、資本規制かを選択せざるをえなくなった中国(゚д゚)!

中国のGDPなどの経済統計は、出鱈目であることをこのブログでも過去に何度か掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
やはり正常ではない中国経済 GDPと輸入統計に食い違い ―【私の論評】政治的メッセージである中国の統計や戦争犠牲者数は、人民の感情に比例する?
2015年は輸入がマイナスになっている。この状況で
GDPがプラスとはとても思えない・・・・・・・・
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事では、確かに中国の国内統計は出鱈目なのですが、それにしても貿易は相手があることですから、相手国の貿易統計などは正確なものも多いですから、それらを集計すれば、中国の輸出・輸入など正確に把握することができることを掲載しました。

そうして、中国のGDP統計など、所詮「政治的メッセージ」に過ぎないことを掲載しました。

そうして、輸入からみると、中国のGDPは、政府が発表しているのとは異なり、おそらくマイナス成長になっているであろうことも掲載しました。

このように、いくら中国の国内の経済統計などが出鱈目であったとしても、輸出・輸入は相手があることなので、相手国の統計を集計すれば、中国の輸出入もどの程度であったか、大体の数字はつかめます。

そうして、それは資本取引も同じです。資本取引も、貿易と同じように相手国があることですから、中国の統計が出鱈目であったとしても、相手国の統計を集計すれば、中国の資本取引もほぼ正確につかむことができます。

そうして、中国からの資本流出が莫大な量にのぼることは、すでに周知の事実です。もう、それは昨年の時点ではっきりしていました。

2013年末から15年3月末の間の中国の経常黒字は2952億ドル(約35兆円)でしたが、本来なら経常黒字で増えるはずの対外純資産残高は逆に5922億ドル(約71兆円)も激減しており、合計8874億ドル(約106兆円)の対外資産価値が消失した計算になっていました。消失した金額の巨額さを正しく説明できるのは資本逃避だけです。

昨年の、8月に突如人民元を切り下げた習政権でしたが、ところがその直後から人民元の売り規制に転じました。これは、景気対策のためには元安が必要なのですが、それは中国経済の命綱である資金流出を招くことになり、ジレンマに当局が追い込まれていたものです。

しかし、ジレンマどころか、本来はブログ冒頭の記事にあるように、深刻な「国際金融のトリレンマ(三すくみ)」状況に追い込まれていたということです。

景気回復を狙い「固定為替相場制」をあきらめて、人民元を切り下げたところ、資本流出が加速したため、今度は資本規制に乗り出したということです。

日本をはじめとするいわゆる先進国は、「固定為替相場制」を放棄して、変動為替相場制に移行しています。これによって、「独立した金融政策」「自由な資本移動」を同時に達成することができました。

しかし、中国の場合は「固定為替相場制」を維持していますから、これをこれからも維持し続けるというのなら、国際金融のトリレンマを克服するためには、「独立した金融政策
」もしくは、「自由な資本移動」のうちのいずれかを捨てなけれはならないということになります。

以下に国際金融のトリレンマの図と若干の説明を掲載します。

  • ある国はこの3つの「自由な資本移動」「固定相場制」「独立した金融政策」のうち2つだけを受容することができます。もしある国が a の位置を選択し、「自由な資本移動」と「固定相場制」を導入するのであれば、金融政策の独立性は失われます。
  • 実際の例としては欧州連合ユーロ圏が挙げられます。もしユーロを受容し自国通貨を放棄すれば、ユーロ圏内で為替を固定することになります。また、域内での自由な資本移動も認められています。しかし、金融政策はすべて欧州中央銀行に一任することになります。

「独立した金融政策」とは、特に現在の中国にとっては具体的に何を意味するのでしょうか。中国が、固定相場制を堅持し、自由な資本移動も堅持したとしたら、何がおこるかといえば、それは日本などをはじめとする、外国の金融政策に左右され「独立した金融政策」を実行できなくなるということです。

実際にそれはもうすでに発生していました。日本が2013年の4月から、金融緩和に転じてから、円安状況になり、それまで円高の状況とは異なり、中国経済にとっては、独立した金融政策が脅かされる事態となりました。

それまでの、中国の経済発展を支えていたのは為替操作によるキャッチアップ型の経済成長であり、円高とデフレを放置する日本銀行によるものでした。

慢性的な円高に苦しんでいた日本企業は、過度な「元安」政策をとる中国に生産拠点を移し、出来上がった製品の一部を逆輸入していました。日本国内で一貫生産するより、わざわざ中国を経由した方がもうかる構造になっていたのです。

日銀は、「デフレ政策で日本の産業空洞化を促進し、雇用と技術を中国に貢ぎ続けていた」のです。まさに、日本経済はこれによって、中国に振り回されていたのです。

しかし、2013年の4月から、日銀が金融緩和に転じたため、この構造は崩れ、今度は中国が日本の金融政策に振り回されるようになり、「独立した金融政策」を維持することが困難になってきたのです。

2013年に異次元の包括的金融緩和を発表した黒田総裁
この状況を本格的に脱するには、中国が構造転換をして、経済的な中間層を増やし、その結果個人消費を増やす必要があります。しかし、これは文字通りの構造転換であって、実行するには10年くらいはかかるものです。

短期的には、中国がこれからも「固定相場制」を捨てないというのなら、「独立した金融政策」を捨てるわけにはいかないので、黒田総裁がブログ冒頭の記事の中で述べていたように、結局「自由な資本移動」を捨てるしかないということです。結局「資本規制」しか選択肢はないということです。

それにしても、資本規制を強めるというのなら、中国国内の資本が海外に逃避することはなくなりますが、海外から中国内に資本が大量に入ってくるということはなくなります。

となると、今までの中国の経済発展の構造は維持できません。今後、中国が構造転換をしないかぎり、これは変わりません。

ということは、いずれにしても、中国の経済の回復は長期間望めないということです。この構造転換に失敗すれば、中国も中進国のジレンマから逃れることができず、図体がでかいだけの、ありふれたアジアの独裁国家に戻るということになります。

発展途上国などの経済が飛躍的に伸びて、新興国などともてはやされても、なぜかほとんどの場合、その後経済成長ができなくなり、所得が発展途上国と、先進国の中間あたりで、止まってしまうという現象がよく見られます。それを中進国のジレンマと呼びます。

中国は、おそらくこのジレンマから抜け出すことはできないでょう。できるとすれば、中国の体制が根本的に変わり、民主化、経済と政治の分離、法治国家化を推進する体制になった場合のみです。現状の体制のままでは、抜けだせません。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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