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2018年8月27日月曜日

平和ボケと批判された人民解放軍のビジネス活動が全面禁止へ―【私の論評】統治の正当性が不確かな中共がまともな軍隊を持つことを強引に進めれば、自身が滅びる(゚д゚)!

平和ボケと批判された人民解放軍のビジネス活動が全面禁止へ

人民解放軍を視察した習近平

中国の習近平国家主席は7月末、中国共産党の最高意思決定機関である党政治局常務委員会を開催し、現在、中国人民解放軍が行っているビジネス活動を年内いっぱいで全面的禁止することを決めた。

 習氏は「軍の本分は戦うことであり、商売ではない。商売をする時間があれば、軍事演習を行うべきだ」などと檄を飛ばした。軍機関紙「解放軍報」は7月初め、社説で「中国軍は平和ボケ」などと指摘し、軍の怠惰な雰囲気に強い警戒感を示していた。

 中国国営新華社電によると、軍による「有償服務(ビジネス)」は10万6000件以上に上っており、この決定を受けて、年内にすべて禁止する措置を軍内の各部門に通達。「これに抵触すれば、重大な処分を受けることになる」としている。

 軍のビジネスとしては、軍傘下の病院での政府関係者を中心とする診察や治療、軍の学校での研修、軍所属研究機関での委託研究、倉庫や埠頭の使用のほか、軍の出版、映像、音響などの事業の代行など。

 習氏は2015年3月の中央軍事委工作会議で、軍のビジネス活動を全面的に禁止する考えを明らかにしたほか、2016年3月には具体的に「3年以内」との期限を提示している。今回の党政治局常務委での決定は、この3年以内の禁止期限を3カ月間前倒しすることになる。

 日本人の感覚からすれば、軍が内職ともいえる10万件以上ものビジネスを行っていること自体が驚きだが、中国人民解放軍はもともと野戦軍で、しっかりとした軍規や組織があったわけではない。志願兵中心の自然発生的な軍隊であり、食糧や武器なども「自給自足」する風潮が強かった。このため、軍本体が野菜を作ったり、鶏や豚や牛を育てるほか、副業で資金を得るという伝統が残っていた。

 1980年代に改革・開放路線が導入されると、このような軍内に残る伝統の影響もあって、軍本体がビジネスに手を染めるケースが増え、それとともに、腐敗問題が深刻になってきた。

 軍内の地位を得るために、汚職が蔓延。軍内に保管されていた戦闘機、戦車、装甲車、小銃、戦略用燃料、大量の野戦ベッド、軍靴などの軍需物資が、忽然と「消えて」転売されていた事実も明るみになっている。

 『習近平の正体』(小学館刊)などの著作もあり、中国問題に詳しいジャーナリストの相馬勝氏は習氏の実質的な『内職禁止令』について、次のように指摘している。

 「習氏が最高指導者に就任するや、『反腐敗運動』が本格化し、多数の党・政府・軍の幹部が逮捕されているが、解放軍報は最近、「軍は『平和病』にかかっている」などとして軍の体質を鋭く批判している。これは習氏が米国との対立激化や悲願である台湾統一などを控え、軍の戦闘力に大きな不安を抱いていることも影響しているだろう。そして、今回の軍のビジネス全面禁止命令は習氏の焦りを如実に現しているといえよう」

【私の論評】統治の正当性が不確かな中共がまともな軍隊を持つことを強引に進めれば、自身が滅びる(゚д゚)!

中国共産党は経済政策ですら権力闘争の道具にしてしまう恐ろしい集団です。それは激しい利権の奪い合いであり、日本で例えるなら、反社会的勢力や裏社会における仁義なき戦いそのものでする。

中国においては、あらゆる法律、規制が派閥闘争の妥協の産物であり、実際にその法律、規制が守られるかどうかさえ、現場を仕切るさまざまな暴力装置(軍、警察)の気分次第で決められてしまいます。

中国の城管


たとえば、中国では「城管(じようかん)」と呼ばれる、都市管理局に相当する部局の公務員が路上秩序を維持するという名目で露天商を次々に暴行しています。

日本では違法駐車の取締員のような立場の「城管」がなぜそんなことをするか理由はよくわかりません。一説によれば露天商がいわゆる「ショバ代(賄賂)」を払わなかったからとか、たんに威張り散らして街をわが物顔で支配しているなどといわれています。

また、全国各地で大暴れする「城管」は、時として人民解放軍と「戦闘状態」に陥ることもあるといいます。

たとえば、2013年9月4日午後5時、山東省青島市石老人村で、城管(都市管理官)と、解放軍の大乱闘が発生しました。軍の高級幹部用マンションに付属する邸宅管理棟がその敷地をはみ出て建てられた違法建築物であることから、現地の城管が自治体の指示で管理棟を取り壊しに行ったところ、これに反対する解放軍兵士が解体を妨害、乱闘となりました。

人数的に勝ち目もなくボコボコにされた軍兵士は銃を持ち出そうとしたそうですが、事前の申し入れから経済格差で豪華なマンションがこれ以上注目を引くことを恐れた軍幹部が青年兵士たちを押しとどめ、なんとか殺傷沙汰にはならなかったとのことでした。

さて、この記事を読んで多くの人が疑問に思ったことでしょう。なぜ、人民解放軍の高級幹部は豪華な邸宅に住んでいるのか。それは、日本のために日夜活躍する自衛官たちが一般の公営住宅と同程度の官舎で暮らしているのとは対照的です。

そもそも、人民解放軍がアメリカ軍や日本の自衛隊と同じく軍隊だと思ったらトンデモない勘違いです。人民解放軍とは「武装する総合商社」であって、われわれ日本人が考えるところの軍隊ではありません。

しかも、人民解放軍は、共産党の配下であり、言ってしまえば共産党の私兵です。国民の生命と財産を守ることら主要任務とする国民国家の軍隊とは全く異なる組織です。

人民解放軍は国境地帯で故意緊張を誘発しては中央政府に予算を要求し、不動産開発、ホテルやバーの経営、資源貿易などさまざまなビジネスに投資する立派な「産業」なのです。

よって高級幹部が豪華なマンションに住んでいたり、軍の経営するホテルで毎晩幹部たちが宴会をしていたり、直営バーにロシア人の売春婦がたくさんいたりすることに驚いてはいけないのです。

解放軍の腐敗は、幹部だけのことではありません。一般の兵士からその親まで巻き込んだ、腐敗の嵐が吹き荒れているといっても過言ではありません。

中国では現実はどうかは別にして、軍隊は、安定した就職先と捉えられています。実際、ある程度上級の階級になれれば、そうだったのでしょう。軍隊への入隊は『待遇、福利がよく一生を保障される』という意味で、鉄で作ったおわんのように割れずに安定している『鉄飯碗』になぞらえられています。多くの親たちはわが子を入隊させるために軍幹部にこぞって賄賂を贈るのです。

賄賂の相場は、2万元(約34万6000円)から30万元(約519万円)といいます。軍隊内では、官位を“商品”として売買する「売官買官」なる行為も横行しています。

こうした腐敗によって解放軍全体の質は史上最低レベルにまで低下しています。遊び好きな将校の中には、自分の部下をお抱えのコンピューターゲームのアップグレード係にする傍若無人な『配属』までやっている始末です。

党指導部は、以前からこうした兵士たちの劣化に危機感を抱き、綱紀粛正に躍起でした。2013年11月に行われた第18期中央委員会第3回総会(3中総会)では、「反腐運動」と銘打った軍部の腐敗撲滅運動を展開しました。これに先立つ、同3月には前代未聞の軍紀も発布していました。

『軍人違反職責罪案件立案標準規定』では、主に防衛戦における将校・兵士の逃亡・投降行為について規定しています。党指導部は、外国と戦争が起きたとき、解放軍の将校・兵士が敵前逃亡してしまうことを恐れているのでしょう。しかし、党指導部が軍紀で定めるのも無理はないです。敵前逃亡の例が実際にあるからです。

「東京を爆撃する」とほざいた羅援少将

中越戦争開戦直前の1979年、解放軍少将で中国戦略文化促進会の常務副会長を務める羅援氏、つまり冒頭で「日本は火の海」と挑発したその本人が、党高級幹部だった父親の口利きで前線勤務を免れています。彼はあちこちで『日本、米国と戦争する』と息巻く解放軍きってのタカ派です。しかし、そう吹聴する本人が戦争逃亡兵だったのだから笑えないです。

口先だけの見かけ倒しは、まだあります。2009年1月にはこんなことも起きました。中国の大型貨物船がソマリアの海域で海賊に襲われ、船員が人質として拿捕(だほ)されました。中国世論は「貨物船を武力で救出すべきだ」と沸き立ち、これを受け、中国艦隊がソマリア海域に派遣されました。とこめが、武力奪還はならなかったのです。

中国政府はソマリアの海賊におとなしく400万米ドル(当時で約3億6000万円)の身代金を差し出して、商船と船員を取り戻したのです。単なる威嚇のために艦隊を派遣したに過ぎなかったのです。

アデン湾で警備に当たる中国人民解放軍海軍の艦艇

これは、人民解放軍の常套(じょうとう)手段である『孫子兵法』の『戦わずして屈服させる兵法』です。日本に対しても同じハッタリ戦術を使っているに過ぎません。心理戦を仕掛けているだけで、実戦となれば、解放軍は何もできないでしょう。1894年の日清戦争の結末を再演することになるだけです。すなわち、敗北です。

ましてや、いずれの先進国の軍隊にも同じような条件で戦えば、勝つことはないでしょう。勝つのは、一般市民を弾圧したり、自分たちより圧倒的に不利な状況で戦う弱小国の軍隊を相手にしたときだけでしょう。

このような、腐敗まみれの人民解放軍は実際に米軍は無論のこと日本の自衛隊にでさえ対峙したときに、全く勝ち目はないでしょう。解放軍の腐敗は、幹部から下士官まで浸透しています。賄賂の実体をみれば、それは誰の目にも明らかです。誰が腐敗まみれの上官のために本気で戦うことができるでしょうか。

だからこそ、習近平は人民解放軍のビジネス活動を全面禁止しようとしているのでしょうが、それくらいのことで、人民解放軍がまともになるとは考えられません。

本来ならば、ある程度時間をかけて、人民解放軍とは全く別の軍隊組織をつくり、それこそヒトラーが突撃隊幹部を暗殺して、有名無実にしてしまったように、人民解放軍の幹部を情け容赦なく粛清するなどの過激なことをしない限り、習近平はまともな軍隊すら手にすることはできないでしょう。

突撃隊地用エルンスト・レーム(左)とヒトラー
ヒトラーは、レームを粛清した

このような手段を避け、先進国からみてまともな方法で、新たなに軍隊を創設するということになれば、それこそ国民国家の軍隊を創設しなければならず、民主化、政治と経済の分離、法治国家化をすすめる必要があり、そうなれば中国共産党による統治を根本から改めなければならず、その時は現体制は崩れることになります。

人民解放軍の腐敗などといいますが、統治の正当性が不確かな中国共産党中央政府がまともな軍隊を持つことを強引に進めれば、自身が滅びることになります。

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2018年5月27日日曜日

日大アメフト内田前監督は「次の理事長」ともいわれた実力者―【私の論評】日大理事会は真摯さに欠ける理事を全員辞任させよ!さもなければ、組織が完全腐敗し、いずれ崩壊する(゚д゚)!

日大アメフト内田前監督は「次の理事長」ともいわれた実力者

2018年5月、アメリカンフットボールの悪質な反則行為問題について、
羽田空港で取材に応じ、うつむく日大の内田正人監督

 日本大学アメフト部が起こした悪質タックル事件は、監督を辞任することを表明した内田正人氏(62)が“首謀者”とされたことで、混迷を極めた。問題のプレーは5月6日、関西学院大学との定期戦で起こった。パスを投げ終えて2~3秒後の無防備なQBに、日大選手が背後から猛タックル。倒れた選手は全治3週間のケガを負った。

 タックルをした選手は、「“(反則)やるなら(試合に)出してやる”といわれた」と周囲に話していたことが相次いで報じられ、内田氏の指示が疑われている。日大選手は関東学生連盟から処分を受け、内田氏は辞任を表明した会見で「一連の問題は全て私の責任」と語ったが、反則を指示したかについては語らず、関学大側に文書で回答するとしている。

 日大は、本誌・週刊ポストの取材に対して「監督についてはラフプレーを指示した事実はありません。ですから、現在は責任を問う状況になっていません」(広報部)と話していたが、結局は辞任に追い込まれた形だ。大学側がそこまで擁護し続けた内田氏とは、どういった人物なのか。

 スパルタで知られる日大の名将、故・篠竹幹夫監督のもとでQBとして活躍し、後にコーチとなって支えた。2003年に監督に就任すると、大学日本一を決める甲子園ボウルに5度の出場を果たす。昨年は27年ぶり21度目の日本一に導いた名将である。

 監督であると同時に、日大卒業後は大学に就職した職員でもある。保健体育事務局長という役職から、理事を経て、現在は5人しかいない常務理事となっている。日大関係者が明かす。

「内田さんは出世街道を歩んできた“日大エリート”です。日大には体育会の入部人数や予算を差配する保健体育審議会があり、その事実上のトップが内田さん。前トップが今の田中英壽理事長で、このポジションは日大の出世コースといわれています。

 内田さんは人事部長も兼ねていて人事権も持つ。学内では田中理事長の側近と見られており、“理事長に万一のことがあれば次は内田”といわれている実力者です」

 アメフト部の監督は辞任したが、大学の常務理事という立場は続くことになる。

【私の論評】日大理事会は真摯さに欠ける理事を全員辞任させよ!さもなければ、組織が完全腐敗し、いずれ崩壊する(゚д゚)!

スポーツの世界では、スポーツ・インテグリティ(sports integrity)ということが最近いわれています。

これは、何かといえば、だいたい以下のことに集約されます。

1.「インテグリティ」とは、「高潔さ・品位」「完全な状態」を意味する言葉。 
2.スポーツにおけるインテグリティ(スポーツ・インテグリティ)とは、「スポーツが、様々な脅威により、欠けることなく、価値ある高潔な状態」。 
3.本来、スポーツには、人々を幸福にして、社会を善い方向に導く力があるといわれている。スポーツが本来持つ力を発揮するためには、誠実性・健全性・高潔性が守られていることが前提。
以下に、このスポーツ・インテグリティを脅かす要因についてのチャートを掲載します。



今回の事件はスポーツ・インテグリティを脅かすものであって、その結果あのような事件が起こってしまったものです。

スポーツ・インテグリティに関しては、笹川財団の行った昨年のセミナーのレジメが詳しいです。
「スポーツ・インテグリティについて考える」 

そうして、今回の事件では、スポーツ・インティグリティの毀損の理由としてガバナンスの欠如についてはあまり報道されていません。これに関しては、日大自体のガバナンスの欠如、それと学生スポーツそのものをガバナンスする機構が欠けているということをこのブログでは指摘しました。おそらく巷の報道よりは、かなりガバナンスについて突っ込んだものになっていると思います。

それに関する記事のリンクを以下に掲載します。
日大悪質タックル問題 醜聞にまみれた米名門大の「前例」―【私の論評】我が国では大学スポーツという巨大資源をガバナンスの範疇から外し腐らせている(゚д゚)!
日大選手の記者会見 

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事では、日本では学生スポーツ全体をガバナンスする機関もなく、日大のガバナンスにも問題があること、特に内田正人氏が、日大の常務理事と監督を兼任していたことが問題であることと、日大自体のガバナンスの正当性に問題があること等を指摘しました。

この記事では、ガバナンスとはそもそも何かというその定義や、あるべき姿なども掲載しました。

また、ガバナンス(統治)の正当性については、以下のようにまとめました。
社会においてリーダー的な階層にあるということは、本来の機能を果たすだけではすまないということである。成果をあげるだけでは不十分である。正統性が要求される。社会から、正統なものとしてその存在を是認されなければならない。
そのような正統性の根拠は一つしかない。すなわち、人の強みを生かすことである。これが組織なるものの特質である。したがって、マネジメントの権限の基盤となるものである。 
そうして、この記事では述べませんでしたが、ガバナンスの正当性の根拠である「人の強みを活かす」ことであることはかなり重要なことです。そうして、この点を理解していないマネジメントも多いです。

そうして、これはマネジメントするもの、すなわちマネジャーのインテグリティに多いに関わっています。インテグリティは、スポーツ界はもとよりありとあるゆる組織のマネジャーに必要不可欠な資質なのです。

「インテグリティ」(integrity)とは誠実、真摯、高潔、整合性などの概念を意味する言葉です。組織のリーダーやマネジメントに求められる最も重要な資質、価値観を示す表現として、特に欧米の企業社会でよく使われます。

あらゆる組織のーのインテグリティ(誠実さ)を最優先し、法令順守だけでなく、より幅広い社会的責任の遂行と組織の倫理の実践を目指す広義のコンプライアンス経営を、インテグリティ・マネジメントと呼びます。

米国企業の経営方針や社員が守るべき行動規範を記した文面には、「インテグリティ」という言葉が頻繁に使われています。「人を雇うときは三つの資質を求めるべきだ。すなわち、高潔さ、知性、活力である。高潔さに欠ける人を雇うと、他の二つの資質が組織に大損害をもたらす」(スティーブ・シーボルト著『一流の人に学ぶ自分の磨き方』より)と語ったのは、世界一の投資家と呼ばれるウォーレン・バフェット氏です。

ここで「高潔さ」と訳されている概念がインテグリティです。インテグリティを伴わない知性や活力は危険でさえあり、それならばいっそ愚かで怠惰な人間を雇うほうがましだと、バフェット氏は主張しています。


この言葉を好んで用い、インテグリティこそが組織のマネジメントを担う人材にとって“決定的に重要な資質”だと喝破したのが、経営学の大家ピーター・ドラッカーでした。ドラッカーはたとえば著書『現代の経営』で、次のように語っています。
マネジャーが学ぶことのできない資質、習得することができず、もともと持っていなければならない資質がある。(中略)それは、才能ではなく真摯(integrityの日本語訳)さである。 
部下たちは、無能、無知、頼りなさ、不作法など、ほとんどのことは許す。しかし、真摯さ(integrity)の欠如だけは許さない。 
真摯さ(integrity)に欠けるものは、いかに知識があり才気があり仕事ができようとも、組織を腐敗させる。
三番目の言葉には、先述したバフェット氏の指摘との共通性も感じられます。とはいえ、「高潔さ」「真摯さ」といわれても、あまりに漠然としていて、いまひとつピンとこないのも事実です。

人を雇ったり、リーダーを選んだりする場合、要するに、インテグリティに優れた人とはどういう人のことなのか、具体像がこの言葉だけからではつかみにくいです。

実はドラッカー本人でさえ、「インテグリティの定義は難しい」と語っています。ただし、“インテグリティの欠如”を定義するのは難しくないとしています。ドラッカーは、インテグリティの欠如した人物の具体例を、『現代の経営』中で次のように列挙しています。
  • 人の強みではなく、弱みに焦点を合わせる者
  • 冷笑家
  • 「何が正しいか」よりも「誰が正しいか」に関心をもつ者
  • 人格より頭脳を重視する者
  • 有能な部下を恐れる者
  • 自らの仕事に高い基準を定めない者
上記のような者は、たとえ他の何かが優れれていたとしても、真摯さ(integrity)に欠け、組織を腐らせるとしています。

マネジメントの担い手としてインテグリティに優れた人材を充てようと思ったら、逆に、このような“インテグリティの欠如”を物語る特徴にフォーカスして人を判別すべきだと思います。

ドラッカーは「真摯さ(integrity)は習得できない。仕事についたときにもっていなければ、 あとで身につけることはできない。 真摯さはごまかしがきかない。 一緒に働けば、その者が真摯であるかどうかは数週間でわかる。 部下たちは、無能、無知、頼りなさ、無作法など、 ほとんどのことは許す。しかし、真摯さの欠如だけは許さない。 そして、そのような者を選ぶマネジメントを許さない」としています。

さて、日大の内田正人常務理事はどうなのでしょうか。会見などでの発言を聴いている限りでは、真摯さに欠ける面があるようにも、思われます。

日大の理事会は、内田氏に限らず、理事の中に真摯さに欠ける人間がいるかどうかを精査すべきです。ドラッカーが指摘するように、理事会にともに他の理事働いたことのある理事は、すでにそれを判別できるはずです。



日大理事会は、真摯さに欠ける理事がいたら、すぐにもそのような人物は辞任させ、真摯さに欠けない人間だけで、理事会を構成するようにして、今一度スポーツだけではなく、すべての分野においての統治機能を強化するべきです。それが今回の不祥事のようなことを起こらないにするための第一歩です。

これをしなければ、日大の組織は完璧に腐敗し、いずれ崩壊することになります。なぜなら、どんな組織も社会が許容するから存続が許されているのであり、社会が許容しなければ、どんな巨大組織であっても一夜にして崩壊するからです。

現状を放置すれば、やがて日大もそのような運命をたどることになるでしょう。

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2017年10月9日月曜日

もし米朝戦わば 北朝鮮軍には実際どれだけ攻撃力があるのか―【私の論評】機雷戦で北朝鮮は崩壊する(゚д゚)!

もし米朝戦わば 北朝鮮軍には実際どれだけ攻撃力があるのか

トランプ大統領のツイート
 トランプ米大統領は10月1日、北朝鮮に核・ミサイル問題で対話の意思の有無を尋ねていると公言したティラーソン国務長官に、「時間の無駄だと伝えた」とツイッターに投稿した。9月26日の記者会見でも、軍事的な選択肢の準備は完全に整っており、北朝鮮にとって壊滅的なものになると警告したが、本気で「武力行使も辞さず」と考えているのだろうか。当然、軍事衝突が起きれば北朝鮮の猛反撃も予想される。

 朝鮮半島問題研究家の宮田敦司氏が、ミサイルだけではない北朝鮮の攻撃力について分析する。

* * *

 米国の武力行使に対する北朝鮮軍の反撃の手段は、戦略軍が保有する弾道ミサイルだけではない。100万人以上の兵力を保有する地上軍、海軍、空軍も反撃することになる。北朝鮮軍は、日本、韓国、米国(グアム)へ弾道ミサイルを発射する一方で、在韓米軍と韓国軍の北進を防ぐために韓国へ侵攻する。

 北朝鮮軍は「烏合の衆」と揶揄されることがあるが、実際のところ、どのような戦闘を行うのか再確認することにしたい。

 ■地上軍-ソウルを攻撃できない可能性も

 米軍の武力行使に対して、北朝鮮軍は弾道ミサイルを発射するとともに、非武装地帯付近に配備されている長射程砲や多連装ロケットを発射して反撃する。ソウルを攻撃可能なのは300門に限定されるが、実際にソウルが「火の海」になるかどうかは別として、ソウルに砲弾が落下すれば、少なからず被害が出ることは間違いない。

 北朝鮮軍は約102万人の地上兵力を保有しているが、このほかにも準軍隊である「教導隊」(17~50歳)約60万人、「労農赤衛軍」(17~60歳)約570万人、「赤い青年近衛隊」(14~16歳)約100万人があり、これらが北朝鮮の防衛に動員される。

 また、米韓軍の海岸からの上陸や空挺作戦(落下傘降下)に備えるための兵力は残すことになるため、すべての地上兵力が韓国侵攻へ投入されるわけではないが、半数以上の地上兵力が非武装地帯の突破を試みるだろう。しかしこれは容易なことではない。

 北朝鮮軍の侵攻に備えて、韓国陸軍は非武装地帯沿いに12個師団を配備している。このことから、非武装地帯に直接張り付いている歩兵大隊は72個となる。本稿では詳しい計算は省略するが、このうちの韓国軍1個大隊を無力化(30%程度の損害を与える)するためには、砲弾を10万4615発撃たなければならない。

 これは、あくまでも韓国軍の歩兵大隊1個に対する攻撃である。1個大隊が布陣している面積は、正面幅3.5km、縦深2kmにすぎない(非武装地帯の総延長は248km)。極めて狭い突破口を開けるのにこれだけの弾数が必要になるのだ。

 しかも、韓国軍の防御ラインは一線ではなく、ソウルに最も近い北朝鮮軍第2軍団の正面では最大6線の防御ラインが配備されているといわれているので、乱暴な単純計算だが最低でも60万発は撃たなければならない。

 そもそも、ソウルが「火の海」になったり、北朝鮮軍が非武装地帯を電撃的に突破するという考え方は、韓国軍の反撃を一切考慮していない。韓国の尹光雄国防長官は2004年10月、北朝鮮軍の長射程砲が射撃を開始してから、韓国軍は多連装ロケットを6分以内、長射程砲を11分以内に撃破することが可能と述べている。

 ■海軍-機雷敷設とゲリラ戦

 北朝鮮海軍の任務は次の4項目が考えられる。

 1.米韓両軍の基地の破壊もしくは妨害

 →特殊部隊の潜入支援

 2.韓国の主要港への機雷敷設

 3.米軍艦艇の補給路の遮断

 4.北朝鮮の各主要港の安全確保

 これらの任務には、主にロシア製のロメオ級とウィスキー級の旧式潜水艦があてられる。北朝鮮の潜水艦で注目されるのは、サンオ級(1000トン、乗組員30人)沿岸用潜水艦とユーゴ級小型潜水艇など、特殊な潜水艦を保有していることだ。

 では、北朝鮮海軍はこれらを用いてどのように戦うのか。簡単に言えば海上および海中でのゲリラ戦だ。ゲリラ戦なら老朽化した艦艇や潜水艦でも可能である。潜水艦の任務は機雷敷設となる。北朝鮮海軍が保有する潜水艦は機雷を24~28発搭載できる。つまり、計算上は潜水艦部隊全力で1回に600発以上の機雷が敷設できる。

 例えば、対馬海峡一帯に機雷を敷設すれば、米空母機動部隊の展開を遅らせることができるかもしれないし、米韓連合軍の航路を大混乱に陥れることもできる。1隻でも触雷すれは機雷警報が発せられ、一時的にせよ、全ての艦艇の運航が止まる。

 しかし、米韓連合海軍が本格的に活動を始めたら作戦を遂行することが出来なくなる。つまり、北朝鮮海軍の潜水艦が出撃できるのは1回きりとなる。この1回で、どれだけの機雷を敷設できるのかが勝負なのだ。

 ■空軍-パイロットは技量不足、戦闘機の半数は飛行不能

 前述した大量の砲撃の問題に目をつぶったとしても、地上部隊に対する航空機の援護がなければ、地上部隊は戦力を発揮できない。他国の空軍と同様に、北朝鮮空軍の最も重要な任務も航空優勢(制空権)の確保である。

 しかし、航空優勢を確保するための北朝鮮空軍のパイロットの技量が問題となる。1996年に韓国へ亡命したミグ19のパイロットは10年間での総飛行時間は350時間だった。1996年当時でこの飛行時間なのだから、現在はもっと短くなっているだろう。(なお、航空自衛隊と韓国空軍は1年で150時間前後)

 北朝鮮空軍は1000機以上の航空機を保有している。しかし、比較的新しい航空機は、ミグ29戦闘機16機、スホーイ25攻撃機35機だけだ。しかし、これらの航空機は交換部品の不足などから稼働率は低くなっているはずだ。

 たとえ稼働率100パーセントだとしても、旧式機が大半を占める北朝鮮空軍が、韓国空軍の新鋭戦闘機と互角に戦い、航空優勢を確保することは不可能だろう。

 戦闘機がまともに戦えないとなると、残る選択肢は片道切符での韓国の軍事目標に対する体当たり攻撃となる。つまり、人間が操縦する巡航ミサイルというわけである。実際に1998年には「自殺決死隊」(特攻隊)が編成されている。

 戦闘機の体当たり以外で重要な任務は何かというと、300機保有しているプロペラの複葉機であるアントノフ2輸送機による特殊部隊の空輸となるだろう。アントノフ2は旧式だが巡航速度は時速160km、離陸距離は180m、着陸距離は170mなので、高速道路はもとよりゴルフ場でも200mあれば離着陸が可能だ。

 アントノフ2は、北朝鮮へ帰還することを考慮せず、なおかつ天候などが理想的な状態であれば理論的には西日本へも到達できる。

 ■軍事パレードの効果

 米国が金正恩体制を崩壊させるために攻撃を仕掛けてこないという確信があれば、正規軍の実際の能力は低くてもよい。とはいえ、大規模な軍事パレードや軍事演習などを行って、米国をはじめとする関係国に、「北朝鮮軍の能力の高さ」を誇示するデモンストレーションは適時行う必要がある。

 金正恩の前で軍事パレードや軍事演習はできても、正規軍は一部の精鋭部隊を除いて崩壊寸前の状態にある。このような状況だから、政治的により高い効果が期待できる弾道ミサイルや核兵器の開発を続ける必要性が出てきたのだ。

 ■中国の介入

 そもそも北朝鮮への攻撃は、米海軍が保有している3000発のトマホーク巡航ミサイルを全て使用しても足りない。北朝鮮軍が大きな打撃を受けることは間違いないが、トマホークだけで壊滅はしないだろう。

 このため攻撃が短期間で終わることは考えにくい。本格戦闘が終了し、大部分の将兵が戦わずして投降し、残存勢力による目立った抵抗がなかったとしても、数百万人もの将兵の武装解除には多大な時間がかかるだろう。

 たとえ、最終的な勝利が望めない「烏合の衆」でも、兵器の老朽化や燃料不足で能力を100パーセント発揮できなくても、朝鮮半島を混乱させて戦争を長引かせることはできる。戦争が長引けば中国軍の介入があるかもしれない。こうなると北朝鮮軍にもチャンスが巡ってくる。

 このため、米国が北朝鮮へ武力行使するにあたっては、事前に中国から「どのような事態になっても中国軍は介入しない」という確約を得ておく必要がある。さらに、金正恩政権崩壊後の新体制について合意しておくことも必要だろう。これは非常に厄介な問題で、確約や合意を得ることは簡単なことではない。

 冒頭で少し触れたが、ティラーソン米国務長官は9月30日、訪問先の北京での記者会見で、北朝鮮と「対話ルートを持っている」として、対話に臨む用意があるのかを「探っている」と述べている。

 トランプ大統領が「対話」に反対しているとはいえ、事態はまさに北朝鮮の思惑どおりに動いている。北朝鮮の弾道ミサイル発射や核実験は、米国との交渉を開始するにあたり、自国が有利な立場になったと確信するまで継続されるだろう。

【私の論評】機雷戦で北朝鮮は崩壊する(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事では、北朝鮮海軍による機雷敷設とゲリラ戦の懸念が掲載されています。しかし、これは日本にとってはさほど脅威ではない可能性が大です。それどころが、北朝鮮が、機雷を撒けば、それが北の命取りになります。

このような機雷が敷設されたとして、それを捕獲して、爆発しないようすることを掃海といいます。

海上自衛隊の機雷
このような掃海は海上自衛隊が持つ特殊な技術であって、世界に類を見ない世界一の技術を持っています。第二次大戦中、日本周辺は機雷で封鎖され、輸送路を断たれたとき我が国は破れました。世界に誇る連合艦隊も緒戦だけで、あとは海上封鎖という我が国軍部が想像もしていなかったアメリカ軍の巧妙な戦術に翻弄され、敗れ去りました。

このため掃海に関しては日本は戦時中から研究を重ね、ある程度の実績を挙げてきました。しかし、大型爆撃機(B29)に多くの機雷を搭載し、日本近海の海上を低空で飛びながら機雷をバラ撒くという新戦術で、あまりにも多くの機雷をばらまかれ、お手上げになってしまったのが実情でした。

戦後は、アメリカ軍が自ら撒いた機雷の除去に苦慮し、終戦時接収していた旧海軍の小型艦艇を貸与という形で機雷除去の掃海を命じ、旧海軍軍人が集まり、掃海に従事し、それが海上保安庁創立の礎になり、さらに海上自衛隊に引き継がれ、現在に至っています。、海上自衛隊創立の母体は掃海部隊なのです。

戦後も触雷による沈没事故は数多く起きており、青函連絡船は夜間の航行は禁止となり、昼間だけでした。見張り専用の船舶が同航し、浮遊機雷の発見に努め、避けて航行するのがやっとでした。その危険性が無くなったのは昭和30年代であって、掃海部隊の尽力によるものです。

実践で鍛えられてきた海上自衛隊の実力は世界でずば抜けた実力を有しており、また世界はそれを認め、期待しています。ペルシャ湾掃海は最初にアメリカ海軍、イタリヤ海軍、イギリス海軍などが掃海に従事し、浮流機雷は除去しましたが、残りは海底に潜む磁気機雷で、この掃海は海上自衛隊にすべてを任せ撤収しました。

機雷除去の訓練(出典:海上自衛隊掃海隊群HP)
海上自衛隊は、100%の掃海を目指し、掃海部隊の実力を発揮し、完全に100%の掃海を成し遂げました。この実績につては、世界の国々、特にタンカー乗りは『Japan Navy(正式にはJapan Maritime Self-Defense Force)』を大絶賛しています。

さて、このような高度の掃海能力を持っていることは、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
日本単独で「核武装国」中国を壊滅させる秘策は機雷―【私の論評】戦争になれぱ中国海軍は、日本の機雷戦に太刀打ち出来ず崩壊する(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に海上自衛隊の掃海能力に関係する部分だけ引用します。

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さて、日本にも昔から、掃海母艦、掃海艦、掃海艇、掃海管制艇があります。そうして、海上自衛隊が機雷掃海のために保有する艦艇は27隻に上ります。米国や英国など主要国の掃海艦艇は20隻以下とされおり、海自は世界一のの陣容を誇るのです。

「日本は高い掃海能力を持っている。掃海によって機雷を敷設することが無意味になっていく。つまり抑止力にもなる」

安倍晋三首相は一昨年6月9日の参院決算委員会で、自衛隊の掃海能力について、誇らしげにこう語りました。

最新鋭の「えのしま」型掃海艇は、木造船を使用してきた海自で初めて強化プラスチックを船体に使用し、耐用年数が大幅に延びました。掃海艇より大型の「やえやま」型掃海艦は潜水艦を標的とする深深度機雷の処理も行うことができます。

掃海艇「えのしま」
掃海艦「やえやま」
「うらが」型掃海母艦は旗艦として補給支援や機雷敷設などを行うほか、ヘリコプターの発着艦が可能で、掃海艇を狙った機雷を処理するためダイバー(水中処分員)を現場海域に送り届けます。「いえしま」型掃海管制艇はラジコンのような遠隔操縦式掃海具を操り、掃海艇が入れない水深の海域に敷設された機雷を処理します。

掃海母艦「うらが」
こうした総合力は、対潜水艦哨戒能力と並ぶ海自のお家芸ともいえます。一昨年7月の閣議決定で集団的自衛権の行使が認められたことにより、政府は新たに可能となる活動の1つとして、停戦合意前に中東・ホルムズ海峡で行う機雷掃海活動を挙げたのも、このためでした。

自衛隊が初めて海外での任務に投入されたのも、機雷掃海活動でした。

湾岸戦争終結後の平成3年、海上自衛隊はペルシャ湾掃海派遣部隊を送り込みました。当時はすでに他国海軍が活動しており、“遅参”した自衛隊に割り当てられた掃海区域は「最も危険で難しい場所しか残っていなかった」(海自関係者)といいます。過酷な条件下で海自部隊は約3カ月間に34個の機雷を無事に処分し、他国海軍から高い評価を受けたのです。
平成3年4月、湾岸戦争終結を受け、機雷掃海のためペルシャ湾に
向けて出航する、海上自衛隊の掃海派遣部隊=海上自衛隊横須賀基地
安倍首相が「高い掃海能力」を誇るのは、このときの経験も裏付けとなっています。ただ、防衛省関係者は「当時の海自部隊は装備面では他国に劣っていた面もあった」と指摘します。特に、水中に潜って爆雷を投下する装置にはカメラが付いておらず、水中処分員が目視で機雷を確認せざるを得なかったといいます。

海自が装備の遅れをカバーできたのは、先の大戦の“遺産”によるところが大きかったのです。

終戦当時、日本周辺海域には旧日本海軍が防御用に敷設した機雷約5万5000個のほか、米軍が敷設した約1万700個の機雷が残っていました。主要航路の掃海は昭和40年代後半まで行われ、現在も港湾工事前の磁気探査で機雷が発見されることがあります。これを処理してきた海自の経験が、精密で効率的な掃海能力を培ってきたのです。

機関砲や爆雷投下で処分できない機雷は、生身の水中処分員が潜って機雷に爆薬を取りつけます。水中処分員には体力、知力、精神力が要求され、海自の特殊部隊「特別警備隊」と同様に精鋭隊員が選ばれる。東日本大震災では「えのしま」型掃海母艦「ぶんご」に集約されたダイバーが、水中での行方不明者捜索に当たりました。

ホルムズ海峡だけではなく、東アジアでも有事の際は中国などが機雷を敷設して米軍や海自の艦艇を封じ込めようとする可能性が高いです。もちろん、ペルシャ湾派遣以降、海自掃海艦艇は「えのしま」型や「うらが」型などの導入により世界トップレベルとなっていいます。人と装備の両方を兼ね備えた海自掃海艦艇が担う役割は大きいです。
"
さて、このような能力を持つ海上自衛隊です。半島有事の際には、この能力を使わない手はないと思います。この記事では、中国と機雷戦になったことを想定しいますが、北朝鮮とて同じです。

もし北朝鮮がブログ冒頭の記事のように潜水艦で機雷を敷設することにでもなれば、北朝鮮の軍港前にも日米の潜水艦によって機雷を撒き、それを公表するのです。同時に北朝鮮の海域で、米潜水艦によって敵軍艦を雷撃してもらい、わざとらしく「機雷が作動したと思われる」とアナウンスするのです。

すると北海軍の防衛ドクトリンがスタートすることになります。彼らは外国軍の潜水艦を近づけ北朝鮮に近づけないように、大量の機雷を撒かせることでしょう。こちらが機雷を撒くと、向こうも機雷を撒くのです。そうしてレバレッジ(梃子作用)が働いて、我が国の自衛行動が数倍の効果を生むことになります。

北朝鮮には撒いた機雷の位置を精密に記録するという訓練も装備もありません。そうして、北朝鮮の製機雷には時限無効化機構もついていません。

自分たちで撒いた機雷により、北朝鮮沿岸は半永久に誰も航行ができない海域と化します。もし、北朝鮮の機雷の数が十分でなかった場合は、日米間で撒けば良いのです。そうして、彼らは様々な商品を船で受け取ったり、送り出せなくなります。

外国船籍の原油タンカーが北朝鮮沿岸には近寄らなくなります(無保険海域となるのでオーナーが立ち寄りを許可しない)結果、北朝鮮沿岸部の都市では、石油在庫はたちどころに闇市場向けに隠匿されて、表の市場には出てこなくなるでしょう。他の生活必需物資も同様です。

およそ精鋭の掃海部隊があったとしても、大量の機雷の除去には数十年を要します。北朝鮮軍にはその準備がないので、北朝鮮は「石油高」「電力高」「輸出ストップ」に長期的に苦しむことになります。闇石油を押さえた軍閥が強くなり、石油を支配していない中央政府と大都市・大工場は逼塞します。この場合、クーデターがおこることも十分に考えられます。

機雷戦のメリットは、いったんスタートすると、核をチラつかせた脅しや、北朝鮮得意の政治的工作をもってしても、事態を元には戻せないことです。

そして、機雷戦がいったん始まれば、北朝鮮沿岸海域は長期にわたって無保険化することが確定するので、戦争の決着がどうなるかとは関係なしに、北朝鮮経済の未来は終わります。一方、日米韓は、たとえ北朝鮮が機雷を撒いたにしても、日本の掃海技術によって、支障が出ることはあまり考えられません。機雷戦がスタートした時点で、日米韓の勝利が決まるのです。

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2017年10月8日日曜日

安倍総理の演説妨害者を説教するおばちゃん、超絶有能―【私の論評】「安倍憎し」ばかりを繰り返すなら、今度はマスコミ、リベラル・左翼全体が崩壊する(゚д゚)!

安倍総理の演説妨害者を説教するおばちゃん、超絶有能

安倍総理が登場した街頭演説で10名ほどの集団が大声で騒ぎ始め、妨害行為を行った。そこに現れたのは1人のおばちゃん。勇猛果敢に妨害者を説教し始める。

まずは当日の様子から。
自民党演説会において「お前が国難」「アベ政治を許さない」などというプラカードを掲げ、「帰れ」とコールする集団が映っている。周囲の聴衆は演説を聞きに来ているのにこの10名ほどの団体がうるさくて仕方がない。

また、集団にはTBSのカメラが密着取材していることも判明。わずかな人数なのにズームで映すことで大勢いるように撮られていると批判の声があがった。これで「100名超の抗議者が」などと報じるのはマスコミの常套手段だ。

森友・加計学園問題はすっかり冤罪と判明したので今度は「国難」というキーワードで安倍総理を責め始めた。もっともその意味合いはよく分からないが…。

さて本題はここから。迷惑な集団に対し勇敢に立ち向かったおばちゃんがいたのだ。

▼安倍やめろと大声でコールする。


▼一体どこから集まってきたのやら。



▼と、そのときおばちゃん目の前に立ちふさがる!そして「うるさい!」と一喝。



▼警察に対して指示を出す様子は超大物。思わぬ事態に集団は硬直してしまった。


攻撃は強くても守りは弱いというのが集団の特徴なのかもしれない。偏屈な連中が1人のおばちゃんに圧倒された瞬間は実に爽快であった。

最後に一句。

TBS、逆から読むと、しばき隊。

【私の論評】「安倍憎し」ばかりを繰り返せば今度はマスコミ、リベラル・左翼全体が崩壊する(゚д゚)!

安倍総理の演説の妨害は、当然良いことではありません。このような妨害行為は、警察署に通報があれば、警察は現場を確認します。そのうえで、注意や警告などがあります。それを守らなければ、最悪謙虚ということになります。交通違反のようなもので一発アウトではないですが、警察の警告を守らなければアウトになります。

都議会議員選挙と違い、今回は国政選挙ですので、政党としても比例名簿を出しているため、公示後は政党党首などに対する暴言行為なども陣営に対する自由妨害になる可能性が高いです。公示前は選挙活動ではないので自由妨害ということにはならなです。

公示後は、見かけたら即通報すべきです。 自由妨害行為は一発検挙案件です。 過去の事例でいえば一発検挙案件であり、このような妨害を見かけたら警察にすぐに通報しすべきです。インターネット上の書き込みも虚偽や誹謗中傷は摘発対象です。こちらも警察などへ通報すべきです。 ルールを守って正しい選挙をすべきです。

さて、私はこうした選挙妨害に限らず「#お前が 国難」「アベ政治を許さない」等のような、キャンペーンは当のリベラル・左翼やマスコミにとっても良い結果を招くことにならないと思います。

これについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
リベラル勢力たちの自業自得 「反安倍なら何でもあり」では国民から見捨てられるだけ―【私の論評】マネジメントの原則から見る民進党消滅の要因(゚д゚)!
「立憲民主党」を設立した枝野氏
詳細は、この記事をご覧いただくもとして、以下に少し長くなりますが一部を引用します。

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旧民進党は、言葉づかいや、関連して扱うスキャンダルの内容は変わるもの、結局8〜9割方が「アベ政治を許さない」という主張でした。これだと、早晩(民進党は)滅ぶ運命だったのです。

 なぜそのようなことになるかといえば、主に3つの理由があります。


第1は、自分たちの使命は「政権や権力と戦うこと」と定義してしまうと、本来の使命を考えなくなってしまうことです。

これは、誰が考えてもわかります。「政権や権力と戦うこと」自体は、手段に過ぎません。「政権や権力」と戦って、相手を潰したり、あるいは弱めたりすれば、自分たちの主張が通りやすくなります。
これは、あくまで自分たちの主張を通すための手段です。戦って、相手を潰したり、弱めた後には、自分たちは何をしたいのか、何をするのかはっきりしていなければ、全く意味がありません。
経営学の大家であるドラッカー氏はリーダーシップと、使命について以下のように語っています。
真のリーダーは、妥協を受け入れる前に、何が正しく、望ましいかを考え抜く。リーダーの仕事は、明快な音を出すトランペットになることである。(『プロフェッショナルの条件』)
ドラッカーは、リーダーシップとは、人を引きつける個性のことではないといいます。そのようなものは煽動的資質にすぎないとしています。まさに、「安倍政治を許さない」は、扇動的キャッチフレーズに過ぎないものです。

また、仲間をつくり、人に影響を与えることでもないといいます。そのようなものは、セールスマンシップにすぎないといいます。小池百合子氏も今のところ、上手にセールスマンシップを発揮しているに過ぎないのです。

ドラッカーはリーダーシップは、カリスマ性でも資質でもないとしています。それでは、リーダーシップとは何なのでしょうか。ドラッカーは、リーダーたることの第一の要件は、リーダーシップを仕事と見ることだといいます。

信頼がない限り、従う者はいません。そもそも、リーダーに関する唯一の定義が、つき従う者がいることです。

リーダーが公言する信念とその行動は、一致しなければならないのです。リーダーシップは、賢さに支えられるものではないのです。一貫性に支えられるものなのです。

リーダーシップとは、組織の使命を考え抜き、それを目に見える形で明確に確立することである。リーダーとは、目標を定め、優先順位を決め、基準を定め、それを維持する者である。(『プロフェッショナルの条件』)
「アベ政治を許さない」はどう考えても、政党の使命を考え抜き、それを目に見える形で明確に確率したものではありません。使命が明らかになっていれば、このようなキッチフレーズが出てくるはずがありません。民進党は、自らの使命を考え抜くことができず、その結果として、目標や優先順位も決められず、基準も定められず、したがってそれを維持することもできませんでした。これでは、崩壊するのが当然です。


第2に「アベ政治を許さない」では、まともな意思決定ができないということがあります。経営学の大家ドラッカー氏は、意思決定について以下のように述べています。
決定においては何が正しいかを考えなければならない。やがては妥協が必要になるからこそ、最初から誰が正しいか、何が受け入れられやすいかという観点からスタートしてはならない。(『経営者の条件』)
決定においては何が正しいかを考えなければならないというのは、別な方面からると、誰が正しいか、誰が間違いであるかを考えてはならないということです。

これは、誰でも理解できます。社会問題を解決したり議論するときに、「誰が正しい、誰が間違い」などと議論することは不毛な結果しか招きません。やはり、「何が正しい、何が間違い」という議論をすべきです。

これは、一見誰にとっても当たり前のことのようにみえます。しかし、本当に当たり前でしょうか。多くの皆さんは、当たり前でない人たちを日々ご覧になっているはずです。そもそも「アベ政治を許さない」というキャチフレーズそのものが、「安倍が間違いで、自分たちが正しい」という前提に立っています。

これでは、まともな意思決定などできるはずはありません。それに、「アベ政治を許さない」というキャッチフレーズは、頭を使わなくても良いということもあります。何か政治信条などに、根ざしたキャッチフレーズだと、それを大勢の人々に理解してもらうには、それなりに説明したり、鼓舞しなければならず、かなり頭をつかいます。

しかし、このようなものでは、「あっ、安倍政権を倒すことが正義」だということで、このフレーズを広めるほうも、受けるほうも、頭をつかうことをしなくなります。まともな意思決定のできない組織はどんな組織であれ、早晩滅びます。


第3に民進党は、「アベ政治を許さない」という信念に凝り固まって、妥協の仕方が下手だということもあります。ドラッカーは次のようにも述べています。
頭のよい人、しかも責任感のある人は、せっかくの意思決定も実行されなければ意味がないと思う。そのため、最初から落としどころとしての妥協を考える。(『経営者の条件』)
安倍総理は、意思決定においては、最初から落とし所の妥協を考えているわけではありません。無論政治の世界には妥協はつきものなので、全く考えないということはないですが、少なくとも、野党と比較するとその度合いはかなり少ないです。

ドラッカーは、妥協について以下のように述べています。
妥協には2つの種類がある。1つは古い諺の「半切れのパンでも、ないよりはまし」、1つはソロモンの裁きの「半分の赤ん坊は、いないより悪い」との認識に基づく。前者では半分は必要条件を満足させる。パンの目的は食用であり、半切れのパンは食用となる。半分の赤ん坊では妥協にもならない。(『経営者の条件』)
ギュスターブ・ドレ〈知者ソロモン王の裁き〉
実際、民進党をはじめ、野党の多くは、何が国民から受け入れやすいかという観点から、護憲という立場を崩さないことを前提に物事を考え、最初から落とし所を考えるため、北朝鮮の危機にまともに対応できるような意思決定ができません。北朝鮮どころか、国際情勢からかけ離れた意思決定しかできません。
"
以上のように「アベ政治を許さない」などというキャチフレーズでキャンペーンをすることは、民進党自身にとっても良いことではなく、それは民進党の急速な衰退をもたらし、挙句の果てに、民進党の崩壊を招いてしまったのです。

そうして、「アベ政治を許さない」というキャンペーンは、民進党自身だけではなく、日本の新聞・テレビなどのほとんどのメディアもこれに加担しました。

今年の都議選でもこのようなキャンペーンがみられました。これについても、このブログに掲載しました。そのリンクを以下に掲載します。
「左がかった人たち、安倍政権をたたきつぶそうと必死」阿比留編集委員が講演、わが国の将来は―【私の論評】これからマスコミの一部と官僚支配が作る日本最期の厳しい時代がくるかもしれない(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、マスコミは「アベ政治を許さない」一部の人たちが、選挙妨害しているところを切り取って報道して、結果としてこの人たちを応援しました。

この動きの同一線上に、「もりかけ」問題もあります。とにかく、アベ憎ししか言わない、民進党などの野党にほとんどのマスコミが応援しました。

このような酷いキャンペーンをするマスコミを懸念した、阿比留氏は、この記事で「これからマスコミの一部と官僚支配が作る日本最後の厳しい時代がくるかもしれない」という警告をしています。

しかし、現実はどうだったでしょうか。「安倍憎し」で凝り固まった、民進党が事実上崩壊しました。

結局、「アベ政治を許さない」というキャッチフレーズに凝り固まった、民進党に対し、「アベ政治を許さない」という方針に基づき、様々な応援キャンペーンを繰り返したマスコミは、欠局民進党の劣化を強化し、崩壊をはやめる結果を招いたに過ぎないのではないでしょうか。

マスコミがもう少しまともで、民進党の使命は"「政権や権力と戦うこと」ではない"と批判したり、「アベ政治を許さない」では、まともな意思決定ができない批判したり、"正しい妥協の仕方を学ぶべき"と批判していれば、この状況は変わったかもしれません。

私自身は、民進党がまともになってほしいという考えから、これらの批判を繰り返してきました。なぜなら、民進党のような野党がまともになり、自民党の強敵になれば、自民党も引き締まり、結果として良い政治風土が定着することを期待できるからです。

しかし、マスコミはそのようなことはなく、民進党の考えに迎合するだけで、「アベ政治を許さない」という姿勢で報道を続けました。これでは、欠して民進党を応援することにはなりません。結局、甘やかしているにすぎません。

その結果、マスコミは民進党の崩壊を助長したことにも気付かず、今でもその姿勢は変わっていません。

「#お前が国難」というキャッチフレーズも、「アベ政治を許さない」と根本的には何も変わりません。おそらく、「アベ政治を許さない」ばかりでは飽きられてしまうので、新しい言葉にしただけで、その根本の「安倍憎し」では同じことなのでしょう。

特に、ブログ冒頭の記事にあるように、TBSは都議選のときの報道と同じように、また一部を切り取って報道し、「アベ憎し」の姿勢で報道を続けています。

今後も「安倍憎し」てキャンペーンを続けると、一見リベラル・左派を応援しているようにみえながら、その実破壊することになります。

このブログでは、次の選挙で、民進党は牛歩戦術の後の選挙で崩壊したのと同じ運命を迎えることであろうことを予言しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
民進党、お決まりの空騒ぎ 「加計問題」追及も現地視察門前払い、法務委では大騒ぎ―【私の論評】歴史は繰り返す!牛歩戦術で社会党はどうなったか?
「加計学園」獣医学部建設予定地を視察する今井雅人衆院議員(前列左)ら
民進党プロジェクトチームのメンバー=5月19日、愛媛県今治市
この記事で、の結論部分では結論部分で以下のような予言を掲載しました。
第二次世界大戦の敗戦後、初めて議会に進出した日本社会党や日本共産党もまた、牛歩戦術を使うようになりました。日本国憲法が公布され、帝国議会から国会となってから、本格的な牛歩の最初は、野党時代の日本自由党が、大野伴睦の発案で行われました。自民党が政権を握っていた55年体制下では、日本社会党や日本共産党が得意とした戦術であり、その後の自公政権下でも民主党などが行うことがありました。 
ただし、社会党は党としては行わず、議員個人の裁量に任せるという形を取っていました。一回の投票での最長記録は1992年のPKO法案採決阻止を目的とした下条進一郎参院国際平和協力特別委員長問責決議案での13時間8分です。 
ちなみに、社会党が存続していたときには、この「牛歩戦術」を最も頻繁に行ったのは社会党でした。そうして、その社会党はこの最大の牛歩戦術をとった次の選挙では大敗を喫し、その後なくなりました。
衆院本会議場でのPKO協力法案の投票を真剣な表情で見守る傍聴人=1992年6月15日
上の写真は、衆院本会議場でのPKO協力法案の投票を真剣な表情で見守る傍聴人の写真です。傍聴人以外にも、当然のことながら、テレビなどで多くの国民がこれを見守りました。 
その衆人環視ともいえる最中に、社会党は牛歩戦術という審議妨害活動を敢行したのです。社会党としては、自分たちは国民のために、努力している姿を見せたつもりだったのでしょう。そうして、次の選挙で多数の国民は、社会党に厳しい審判を下したのです。 
このように国民から大ききな批判を受けた『牛歩戦術』。 今の民進党は、同じことをしています。  
彼らはここ数年、戦争法案というレッテル貼りや、森友学園問題、加計学園問題という論点が不明確な事で、安倍総理、自民党のイメージ低下を訴求しています。しかし、その根底は「牛歩戦術」と同じ議事妨害を展開しています。
しかし、よく考えてみるべきです。『牛歩』のあと、当時、最大野党だった社会党はどうなったのか、ということを。 歴史は繰り返します。
今回の選挙で旧民進党は事実上崩壊しましたが、それでも、「希望の党」から率候補して、選挙で当選した議員が、民進党に戻るなどして、再度民進党が事実上再建されるかもしれません。しかし、それでも「安倍憎し」をやめなければ、次の選挙までもたず確実に崩壊するでしょう。
この予言は的中したと思います。私は、これと同じような予言は数年前から行っていました。民進党が崩壊しても、リベラル・左翼やマスコミが「アベ政治を許さない」「#お前が国難」という姿勢を取り続ければ、リベラル・左翼全体そうしてマスコミが、今後民進党と同じく崩壊の憂き目にあうことになるでしょう。

そうして、マスコミが「アベ政治を許さない」「#お前が国難」をキャッチフレーズに、効果的にキャンペーンを行えば、行うほど、崩壊のスピードがはやまることになります。その崩壊は、今回のように予測できず、突然発生し、関係者は大いにうろたえることになるでしょう。

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2017年5月5日金曜日

ルペン氏、偽ニュースも利用=挽回に必死―仏大統領選―【私の論評】ローマ帝国が瓦解したように、EUもいずれ崩壊する(゚д゚)!

ルペン氏、偽ニュースも利用=挽回に必死―仏大統領選

国民戦線のルペン候補
 フランス大統領選の決選投票が7日に迫っている。

 世論調査では中道系独立候補のマクロン前経済相(39)が優勢を保ち、極右政党・国民戦線(FN)のルペン候補(48)は足踏みが続く。挽回に必死のルペン氏は、偽ニュースさえ利用してマクロン氏を批判したり、事実に基づかない主張を繰り返したりするなど、なりふり構わない姿が目立っている。

 「あなたが租税回避地に口座を持っていると後で判明しないことを願う」。ルペン氏は3日のテレビ討論で、金融機関勤務時代に巨額の報酬を得たマクロン氏の「税逃れ疑惑」に言及した。マクロン氏は「中傷だ」と直ちに否定している。

 仏メディアによると、ルペン氏がこの発言のために参照したのは、トランプ米大統領の支持者とみられる人々が3日に英語で配信した偽ニュースとされる。この記事は「マクロン氏脱税か」と題し、同氏の偽造サインが書かれた租税回避地の口座運用に関する偽の契約書まで掲載していた。

 親ロシア的な考えを持つルペン氏の当選を狙い、ロシアが情報操作を仕掛けた可能性も取り沙汰される。マクロン氏は4日、虚偽情報流布の疑いで当局に被害届を出し、検察が予備捜査に着手している。

 また、ルペン氏は3日の討論で「ユーロ導入を機に物価が上昇した」と主張した。しかし、仏紙ルモンドは「ユーロ導入以前から物価上昇は始まっている」と反論。同紙は、事実誤認に基づくルペン氏の発言が19に上ったと指摘した上で、昨年の米大統領選で誇張や放言を繰り返したトランプ氏の手法と類似していると分析した。

 ルペン氏は自国通貨復活や移民受け入れ制限を通じ景気や治安を改善すると主張。失業やテロの不安におびえる人々の支持を集める。しかし、ルペン氏の思想は排他的だとして危険視する層も多い。仏紙レゼコーが4日発表した世論調査結果では、マクロン氏が61%の支持を得て39%のルペン氏を引き離している。

【私の論評】ローマ帝国が瓦解したように、EUもいずれ崩壊する(゚д゚)!

独立候補のマクロン前経済相
上の記事を読んでもわかるように、相変わらず日本のマスコミの報道は浅薄です。このブログでは、もっと根本に遡り、EUが今後どうなるのか、私の考えを掲載させていただきます。

マクロン氏もルペン氏も既存政党出身ではないという共通点があり、それが選挙の帰趨をわかりにくいものにしています。そうして、両者の経済政策は好対照です。マクロン氏は、欧州連合(EU)や単一通貨ユーロの枠組みを堅持し、合法的な移民についても受け入れるとしています。内政では、公務員・議員定数削減を行いつつ、法人税減税や失業保険創設などを訴えています。

他方、ルペン氏は、自国優先主義を主張しています。具体的には、ユーロからの離脱と旧通貨フランの復活、外国人を雇用する企業への追加課税、輸入品への3%関税-といった政策を掲げています。

両者の違いは、フランスの「失業率10%」をどう見るかで異なってきます。フランスの失業率は、1970年代初めは3%台を切る水準でした。それが急速に上昇し、9%台がほぼ定位置になってしまいました。そうして、最近では10%の水準です。

フランスの失業率の推移
隣国ドイツはの失業率は、3・9%です。ドイツにとっては、失業率を下げるための金融緩和は不要であり、フランスの高失業率は構造失業率が高いためで、構造改革して失業率を下げるべきだという理屈になります。

しかしフランスにとっては、金融緩和すれば10%の高失業率を下げる余地がまだあるのに、フランスは単一通貨のユーロ圏でもあるので、金融政策は自国の自由にはならず、ドイツの事情をくむ必要があるため実施できません。そこでユーロを離脱してフランスの事情だけで金融緩和できるようにすれば雇用を確保できることになります。

さらに、財政政策についても問題があります。フランス経済は簡単にいえば、より積極的な財政政策を必要としていることは明白です。しかし、EUの中心国であるドイツは相変わらず財政規律を重視するスタンスを崩していません。また積極的な財政政策もEUの制約に服さなければいけません。マクロ経済政策的には金融政策も財政政策も自由度がかなり限られているのです。

そうしてやっかいなことに、ドイツにはもともと財政規律を重んじる土壌があります。この秩序(オルド)を重んじる経済思想の風土は、戦後のドイツ経済思想の根幹といって良いものです。

このオルド自由主義は、ルペン氏や米国のトランプ政権を支えているようなポピュリズム的傾向を否定しています。例えば、大衆消費、大衆向きの生産が拡大し、それが産業の独占化を招き、経済を閉塞(へいそく)してしまう、というのがオルド自由主義の見方です。全く理解に苦しむ、謎と言っても良い理論です。

オルド自由主義は、20世紀ドイツで生まれた社会思想で、自由主義思想の一つです。オルドー自由主義、秩序自由主義ともいいます。オルド自由主義に基づいて社会的市場経済がつくられた。また、新自由主義の源流の一つとされる。独占・寡占を導く古典的自由主義(自由放任主義)と計画経済はともに全体主義や経済の破綻を導くと批判し、消費者主権の経済を主張しました。そのため再分配を支持し、カルテルやコンツェルンを否定している。

オルド自由主義の創始者ヴァルター・オイケン
このオルド自由主義は、債務(政府の借金)を否定的にとらえている倫理的な価値判断も強く、そのため積極的な財政政策を嫌い、財政的な秩序を重んじる傾向にあります。簡単にいうと、大衆の欲求よりも、道徳的な秩序を最優先に考えるものです。このオルド自由主義の経済思想が、ドイツの経済政策や世論さえも拘束しています。

このように、国内の雇用確保で考えればルペン氏の政策のほうが分がいいです。しかし、対外関係重視だとマクロン氏の政策にも一理あり、これはフランス国民の選択に委ねられることになります。

ルペン氏が勝利すると、短期的にはユーロの動揺が起こることでしょう。これはギリシャ危機の時に、ユーロがかなり混乱したことの二の舞いです。

もっとも、長期的にみれば、ユーロという単一通貨で複数の国を縛り付けておき、さらにはオルド自由主義により他国の財政政策を縛り付け、結果としてドイツだけが独り勝ちになるというデメリットよりも、複数通貨によって各国で最適な金融政策と財政政策をするメリットの方が上回ります。

マクロン氏が勝利すれば、今の体制が維持されるので、短期的には大きな混乱はないはずです。しかし、フランス国内の高い失業率を下げるのは容易ではないです。しかも移民受け入れにも支障が出て、長期的には問題含みになることは必定です。

私自身は、EUはいずれ破綻するものと思っています。人為的にたとえ一つの経済圏を作ったとしても、それを構成している各国の経済レベルがあまりにも違います。少し考えれば判ることですが、ポルトガルとスゥエーデンの経済はかなり異なります。ポルトガルの経済は未だ労働集約的ですが、イギリス、ドイツ、イタリアなどの先進国では資本集約的な経済になっています。

そのため、EU圏内で、不振対策をしようということになると、ごく標準的なものにならざるを得ず、一旦不況に陥れば、回復するまで結構時間がかかります。

EUのように、ヨーロッパ全体が団結して、大きな影響力を持とうという試みは、大昔からありました。その起源はローマ帝国にまで遡ります。ローマ帝国が栄えていたころは、現在のイギリス、スペイン、フランス、ドイツなど現代のEU圏にある経済大国がすべてローマ帝国の版図に編入されていました。

だから、ヨーロッパの人たちには、大昔からローマ帝国への憧憬の念や、憧れの念がありました。そのため、ローマ帝国滅亡より、機会があれば一致団結しようとしました。これは、古くは神聖ローマ帝国にまで遡ります。

ナポレオンのヨーロッパ征服、ヒトラーのナチスドイツによるヨーロッパ征服なども、ことごとく失敗しました。

おそらく、これからも無理だと思います。だから、私は、EUも結局は成功しないと思います。長い間には必ず失敗し没落していくものと思います。

過去のローマ帝国は、強力なローマ軍団による他国に抜きん出た軍事力があったからこそあれだけ版図を広げて、維持することができたのであり、現代では過去のローマ帝国の再現など単なる幻想に過ぎません。

それと、 現在のEUは過去のローマ帝国とは違い、意思決定にあまりにも時間がかかりすぎます。ローマ帝国の意思決定は、ローマ帝国の元老院(皇帝による場合もあった)によって行われました。しかし、現在のEUは欧州会議によるものです。元々は別の国だった数々の国の代表者からなる会議を運営するのは至難の技です。

そうして、当のローマ帝国も瓦解しているわけですから、EUが将来どうなるかなど、推して知るべきです。

ローマ帝国の重装歩兵
さらに、経済対策も、EUの経済対策は、必ずしも個々の国にとって良いことばかりではありません。EU全体の経済という考え方で行うため、この経済対策では経済が良くならない国には、不満が鬱積することになります。

EUは、いずれ滅ぶでしょうが、最近その予兆として、イギリスの国民投票によるEU離脱の表明、今回のルペン氏の躍進など様々な綻びが目立って来ているのだと思います。

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2017年2月7日火曜日

支那とロシアが崩壊させる自由主義の世界秩序―【私の論評】世界は戦後レジームの崩壊に向かって動いている(゚д゚)!

支那とロシアが崩壊させる自由主義の世界秩序

孤立主義ではいられないトランプ政権

ロバート・ケーガン氏
 世界に国際秩序の崩壊と地域戦争の勃発という2つの重大な危機が迫っている。

 米国は、第2次大戦後の70余年で最大と言えるこれらの危機を招いた責任と指導力を問われている。米国民がドナルド・トランプ氏という異端の人物を大統領に選んだ背景には、こうした世界の危機への認識があった──。

 このような危機感に満ちた国際情勢の分析を米国の戦略専門家が発表し、ワシントンの政策担当者や研究者の間で論議の波紋を広げている。

 自由主義の世界秩序が崩壊へ向かう

 この警告を発したのは、ワシントンの民主党系の大手研究機関「ブルッキングス研究所」上級研究員のロバート・ケーガン氏である。

 ケーガン氏は米国学界でも有数の国際戦略研究の権威とされ、歴代政権の国務省や国家情報会議などに政策担当の高官として登用されてきた。従来は保守派の論客とされてきたが、近年ではオバマ政権でも政府の諮問機関に招かれ、国際戦略情勢に関する政策などを提言してきた。昨年の大統領選ではヒラリー・クリントン候補の政策顧問を務めている。

 ケーガン氏は1月24日に「自由主義的世界秩序の衰退」と題する同論文を発表した。同氏はこの論文で、第2次大戦以降の70余年の間、米国主導で構築し運営してきた自由主義の世界秩序は、崩壊に向かう最大の危機を迎えたと指摘する。

 危機の原因となっているのは、支那とロシアという反自由主義の二大国家の挑戦だ。1991年のソ連崩壊以後の米国の歴代政権が「唯一の超大国」の座に安住し、とくにオバマ政権が軍事力を縮小して「全世界から撤退」したことがその状況を招いたという。

 支那、ロシアの軍事力行使の危険性が高まる

 ケーガン氏の論文の要点をまとめると以下の通りである。

・世界は第2次世界大戦の終結から現在まで、基本的には「自由主義的世界秩序」に支えられてきた。この秩序は民主主義、自由、人権、法の統治、自由経済などを基盤とし、米国の主導で構築され運営されてきた。

・しかしこの世界秩序は、ソ連崩壊から25年経った今、支那とロシアという二大強国の挑戦により崩壊の危機を迎えるにいたった。

・支那は南シナ海、東シナ海へと膨張し、東アジア全体に覇権を確立して、同地域の他の諸国を隷属化しようしている。ロシアはクリミア併合に象徴されるように旧ソ連時代の版図の復活に向かっている。両国はその目的のために軍事力の行使を選択肢に入れている。

・支那とロシアの軍事的な脅威や攻撃を防いできたのは、米国と同盟諸国が一体化した強大な軍事力による抑止だった。

・だが、近年は米国の抑止力が弱くなってきた。とくにオバマ政権は対外的な力を行使しないと宣言し、国防費の大幅削減で米軍の規模や能力はすっかり縮小してしまった。

・その結果、いまの世界は支那やロシアが軍事力を行使する危険性がかつてなく高まってきた。武力行使による膨張や現状破壊を止めるには、軍事的対応で抑止することを事前に宣言するしかない。

 米国はリーダーシップを取り戻すべき

 ケーガン氏は論文で以上のように、いまの世界では支那とロシアの軍事行動による地域的な戦争の危機が高まっており、その結果、自由主義的な世界秩序の崩壊がありうると警告していた。

 トランプ政権は米軍の再増強や「力による平和」策を宣言しながらも、世界における超大国としての指導的立場や、安全保障面での中心的役割を復活させることには難色をみせている。

 だがケーガン氏は、世界の危機への対策としては、米国が世界におけるリーダーシップを再び発揮することだという。

 ケーガン氏は、今回の大統領選で米国民がトランプ氏を選んだのは、オバマ政権の消極的政策のために世界の危機が高まったという認識を抱き、オバマ路線とは異なる政治家を求めたからだとみる。トランプ大統領は、まさに非常事態だからこそ生まれた大統領だということだろうか。

【私の論評】世界は戦後レジームの崩壊に向かって動いている(゚д゚)!

世界の危機が高まっていると、警告するのは、ロバート・ケーガン氏だけではありません。たとえば、ジョセフ・ナイ氏も警告しています。ジョセフ・サミュエル・ナイ・ジュニア(Joseph Samuel Nye, Jr.、1937年1月19日 - )は、アメリカ合衆国の国際政治学者。ハーバード大学特別功労教授。アメリカ民主党政権でしばしば政府高官を務め、知日派としても知られます。

この、ジョセフ・ナイ氏が、「キンドルバーグの罠」という論文を先月9日に発表しています。この論文なかなかの優れものなので、以下にナイ氏の写真ととも、この記事の要約を掲載します。

ジョセフ・ナイ氏
キンドルバーグの罠 
トランプ次期大統領が対中政策の方針を準備するにあたって、歴史の教える注意すべき二つの大きな「罠」がある。 
一つ目は、習近平主席も引用した「ツキュディデスの罠」(Thucydides Trap)である。これは古代ギリシャの歴史家が発したとされる「既存の大国(例:米国)が台頭しつつある大国(例:支那)を恐れて破壊的な大戦争が起こる」という警告だ。 
ところがトランプ氏が気をつけなければならない、もう一つの警告がある。それは「キンドルバーガーの罠」(Kindleberger Trap)であり、これは支那が見た目よりも弱い場合に発生するものだ。 
チャールズ・キンドルバーガー
 チャールズ・キンドルバーガー(Charles Kindleberger)は「マーシャル・プラン」の知的貢献者の一人であり、後にマサチューセッツ工科大学で教えた人物だ。 
彼は破滅的な1930年代が発生した原因として、アメリカが世界大国の座をイギリスから譲り受けたにもかかわらず、グローバルな「公共財」(public goods)を提供する役割を担うことに失敗したことにあると指摘している。 
その結果が景気後退であり、民族虐殺であり、世界大戦へとつらなる、国際的なシステムの崩壊だというのだ。 
では力を台頭させている今日の支那は、グローバルな「公共財」を提供できるのだろうか? 
一般的な国内政治において、政府は国民全員の利益となる「公共財」、つまり警察による治安維持やクリーンな環境を生み出している。 
ところがグローバルなレベルになると、安定した気候や金融・財政、航行の自由のような「公共財」というのは、世界で最も強力な国が率いる同盟関係によって提供されるのだ。 
もちろん小国はそのようなグローバルな「公共財」のために貢献するインセンティブをほとんどもたない。彼らの小さな貢献は、そこから得られる利益の差を生むことはないため、彼らにとっても「タダ乗り」が合理的なものとなるからである。 
ところが最も強力な国は、小国たちの貢献の効果や差を感じることができる。だからこそ最も強力な国々にとって「自ら主導する」のは合理的なことになるのだ。もし彼らが貢献しないとなると「公共財」の生産は落ちてしまう。 
この一例がイギリスである。第一次世界大戦後に彼らがその役割を果たせないほど弱体化した後、孤立主義的なアメリカはそのまま「タダ乗り」を続けたために、破滅的な結果を生んだのだ。 
何人かの専門家は、支那は十分な力をつけても(自分たちが創設したわけではない)その国際秩序に貢献せずに、「タダ乗り」を続けると見ている。 
これまでの経過は微妙なところだ。支那は国連体制から利益を受けており、たとえば安保理では拒否権を持っている。平和維持軍では第二の勢力となっており、エボラ熱や気候変動の対処のような国連の計画にも参加している。 
また、支那は世界貿易機関(WTO)や世界銀行、そしてIMFのような多国的経済制度からも大きな恩恵を得ている。

2015年にはAIIBを創設し、これを世銀の対抗馬にすると見る人もいたが、実際は世銀と協力しながら国際的なルールを遵守している。 
その一方で、去年の南シナ海の領土問題におけるハーグの判決の拒否は、支那に対する大きな疑問を投げかけることになった。 
それでもこれまでの支那の行動は、自らが恩恵を受けているリベラルな世界秩序をつくりかえようとするものではなく、むしろその中で影響力を増そうというものだ。 
ただしトランプ政権の政策によって追い込まれると、支那は世界を「キンドルバーガーの罠」に落とす、破滅的な「タダ乗り」をする国になる可能性が出てくる。 
同時に、トランプはより有名な「ツキュディデスの罠」にも警戒すべきである。つまり弱すぎる支那よりも、強すぎる支那である。 
もちろんこの「罠」は、不可避であるわけではないし、その効果も誇張されることが多い。 
たとえば、政治学者のグレアム・アリソン(Graham Allison)は、1500年以降の既存の大国が台頭する大国に直面した16のケースのうち、12回が大戦争につながったと論じている。 
グレアム・アリソン氏
ところがこの数は不正確である。なぜならどれがその「ケース」に該当するのかが不明確だからだ。 
その一例として、イギリスは19世紀なかばに世界大国であったが、それでもヨーロッパ大陸の中心部に新たなドイツ帝国が誕生するのを見逃している点などが挙げられる。 
当然ながら、イギリスはそのおよそ50年後となる1914年にドイツと戦うことになったのだが、これは一つのケース、もしくは二つのケースとしてカウントされるのか微妙なのだ。 
第一次世界大戦は、単に台頭するドイツに直面した既存の大国であるイギリスというケースではなく、それに加えてドイツ国内におけるロシアの台頭に対する恐怖が原因であるし、衰退しつつあったオーストリア=ハンガリーにおけるスラブ系のナショナリズムの盛り上がりに対する恐怖のように、古代ギリシャの例とは違う無数の要因によるものであった。 
現在のアナロジーに関していえば、今日の米中間のパワー・ギャップは、1914年当時におけるドイツとイギリスの間よりもはるかに大きい。注意を促すという点ではたしかに比喩というのは有用だが、歴史的に不可避なような感覚を醸し出しはじめると危険なものになってくる。 
さらに古代ギリシャのケースでも、ツキュディデスが解説したようなシンプルなものではない。 
彼は第二次ペロポネソス戦争の原因はアテナイの力の台頭がスパルタの恐怖を起こしたことにあると主張しているが、イエール大学の歴史家であるドナルド・ケーガン(ブログ管理人注:ブログ冒頭の記事にでてくるロバート・ケーガンの父)の研究によれば、アテナイの国力は実際は台頭しておらず、紀元前431年に戦争が勃発した時のバランス・オブ・パワーは安定化し始めていたのだ。 
ドナルド・ケーガン氏
むしろスパルタに「リスクを冒しても戦争をすべきだ」と思わせたのは、アテナイの政策面での間違いだった。 
アテネの台頭は同世紀初期の第一次ペロポネソス戦争のほうの原因となったのだが、その後の30年間は停戦が続いた。ケーガンによれば、より破壊的なものとなった第二次ペロポネソス戦争が発生するためには、まだ消えさっていない火種を再び点火する火花と、それをマズい政策の選択を選び続けることによって煽ることが必要だったのだ。 
これをいいかえれば、この戦争は「非人間的な力」ではなく、難しい状況におけるマズい決断によって発生したのだ。 
これこそが、支那の台頭に直面する現在のトランプにとっての課題だ。彼は「強すぎる支那」と「弱すぎる支那」に同時に対処しなければならないからだ。つまり彼は「キンドルバーガーの罠」と「ツキュディデスの罠」の両方を避けなければならないのである。 
究極的にいえば、彼が避けるべきなのは、人類の歴史をむしばんでいる「計算違い」や「思い違い」、そして「早とちりの判断」なのである。
結論をリーダーの失策というところに求めているのは実務経験のあるナイ氏だからでしょうか。

それにしても、最近もトランプ政権のカオスぶりが目立ちます。

ドナルド・トランプ(Donald Trump)次期米大統領が国防長官への起用を発表しているジェームズ・マティス(James Mattis)元中央軍司令官(66)は先月12日、上院軍事委員会で開かれた指名承認公聴会の場で、ロシアが北大西洋条約機構(NATO)を破壊しようとしていると非難し、米国はかつての敵国ロシアに立ち向かう必要があるとの考えを示しました。

狂犬との異名を持つジェームズ・マティス氏
元海兵隊大将のマティス氏によるこの痛烈なロシア批判は、近く上司となるトランプ氏の対ロシア観とは懸け離れています。トランプ氏はこれまで、「非常に頭が切れる」などとウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領の指導者としての手腕を繰り返し称賛し、両国間の関係改善を訴えてきました。

公聴会でマティス氏は、現在の世界秩序が直面している緊迫した状態をどのように認識しているかという質問に対して、第2次世界大戦(World War II)以後で最も大きな攻撃にさらされていると回答。「(その攻撃は)ロシアやテロ集団によるものであり、南シナ海(South China Sea)で支那が行っていることもそうだ」と指摘しました。

さらにマティス氏は、トランプ氏同様、ロシアとの関わり合いを深めることは受け入れるとしながらも「プーチン氏との協力の範囲については、ごく控えめな期待」しか抱いていないと強調しました。

ということで、アメリカという超大国も、政権中枢が混乱すると余計で無駄な戦争を起こす可能性もなきにしもあらずです。

ただし、ジョセフ・ナイ氏は、もっぱらトランプ大統領が「計算違い」や「思い違い」、そして「早とちりの判断」をする可能性を述べていますが、私としては、習近平やプーチンのそれのほうが、可能性は大きいと思います。

習近平やプーチンは、オバマ政権が軍事力を縮小して「全世界から撤退」したことを受けて、支那は海洋進出し周辺諸国の隷属化する道を歩み、ロシアはクリミア併合に象徴されるように旧ソ連時代の版図の復活に向かっています。

そうして、支那はもともと、建国以来ウイグル、チベット、内蒙古、満州などに侵略して版図を広げました。旧ソ連は、建国から崩壊まで、毎年平均するとオランダと同程度版図を拡大してきました。

これを考えると、ロバート・ケーガンが主張するように、支那、ロシアの軍事力行使の危険性があることを前提に、自由主義的な世界秩序の崩壊を防ぐために、米国はリーダーシップを取り戻すべきです。

米国がリーダーシップを取り戻すことにより、支那・ロシアが今後軍事力の行使を諦めればそれで良いですが、もし行使すれば、米国としてもこれに対抗するため行使する他ないでしょう。

米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は先月25日、米当局者の話として、トランプ政権が国連などへの拠出金の削減や、一部の多国間条約からの離脱を目指す二つの大統領令署名を検討していると報じました。国連への関与を大幅に見直し、政権が掲げる「米国第一」主義を推進する狙いがあるとみられます。

ご存知のように、国連とは英語では"United Nations"であり、これは直訳すれば、「連合国」です。国連とは、第二次世界大戦の戦勝国のための組織です。米国がここへの関与を大幅に見直し、関与をあまりしないようにするということは、米国が戦後体制から離脱することを意味します。

トランプ氏は大統領選で、支那の対米輸出拡大を批判して「45%の関税をかける」と繰り返していました。また、支那が通貨安誘導によって輸出を促進していると訴えていました。

しかし、これは事実上WTO加盟国に対してはできない措置です。どうしても、米国が支那に対して「45%」の関税をかけるということになれば、WTOを脱退しなければなりません。これも、戦後体制からの脱却を意味します。

ここまでしないとしても、米国としては、支那に対して金融制裁措置をとることもあり得ます。

戦後体制を概要を決定したヤルタ会談(前列左よりチャーチル、ルーズベルト、スターリン)
日本の保守層は、「戦後レジーム」からの脱却ということを主張してきました。私も、当然のことながらこれには賛成です。

ただし、私たちは現在米支露が「戦後レジーム」を崩壊させるほうに動いていることを理解すべきです。そうして、最悪のシナリオでは米・支・露三つ巴の戦争が起こる可能性さえあり得るということを銘記すべきでしょう。さらに、このことは日本を含めた世界中の国々に大きな影響を与えます。日本は、遅ればせながら今からでもそれに備える必要があります。

戦後体制が崩れれば、そのときには、北朝鮮のミサイル発射にも、支那の海洋進出にも、あらゆる外交課題について日本はアメリカに全面的に頼ることはできないと考えて臨むべきです。

日本の後ろにもうどのような場合でも、アメリカが存在していて、必ず助けるてくれるとは限らないと、覚悟するよりないのです。もう与野党で馬鹿な議論、誹謗合戦をしている暇はないのです。

しかしこれは、当たり前のことなのです。自分の国のことを他国に憚らず自分で決め、自分で守るのは、トランプ(大統領)に言われることなく、自明の理屈なのである。無論その時に、米国との対等同盟関係を築くことも選択肢の一つです。

しかし、アメリカに頼りきって、アメリカに守られながら生きる日本の時代、日本にとっての「戦後レジーム」は、間もなく終了するとみなすべきなのです。そもそも、これは当然のことです。どんなに強固な体制であっても同じ体制が永遠に続くことなどあり得ないのです。時代の変化にあわせて変わっていくのが自明の理です。

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