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2022年9月16日金曜日

同盟国のカザフスタン元首相がプーチン政権を批判―【私の論評】米中露の中央アジアでの覇権争いを理解しなければ、中央アジアの動きや、ウクライナとの関連を理解できない(゚д゚)!

同盟国のカザフスタン元首相がプーチン政権を批判

カザフスタンのアケジャン・カジェゲリディン元首相

 ロシアのウクライナ侵攻を巡り、ロシアの同盟国である中央アジアのカザフスタンの元首相がプーチン政権を批判し、ソ連崩壊を繰り返すことになると警告しました。

 カザフスタンのアケジャン・カジェゲリディン元首相は、ドイツメディアのインタビューに答え、ロシアのウクライナ侵攻を巡るロシア側の主張を「理解できない要求」だと批判しました。

 また、ロシア国内で中央政府に対する地方の不満が高まっていて、ソ連邦崩壊時と同じ状況に陥っているとし、ロシアが連邦制を維持できず政治的に分裂する可能性があると指摘しました。

 カザフスタンは、石油や天然ガスなど豊富な資源を有していて、ロシアにとって重要な同盟国です。

 先月には、カザフスタンだけでなくキルギス、タジキスタンもアメリカなどと共同軍事演習をするなど、中央アジアの国々のロシア離れが進んでいます。

【私の論評】米中露の中央アジアでの覇権争いを理解しなければ、中央アジアの動きや、ウクライナとの関連を理解できない(゚д゚)!

カザフスタンについては、今年の1月トカエフ大統領は11日、抗議デモを鎮圧するため先週派遣を要請したロシア主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構(CSTO)」の部隊が2日後に撤退を開始すると表明したことをこのブログに掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
カザフ、ロシア主導部隊が2日後に撤退開始 新首相選出―【私の論評】中露ともにカザフの安定を望む本当の理由はこれだ(゚д゚)!
カザフスタン トカエフ大統領

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事より結論部分を引用します。
中露としては、大統領がトカエフだろうが、誰だろうが、とにかく安定していて欲しいというのが本音でしょう。トカエフ政権が崩壊するようなことでもあれば、力の真空が生まれます。そこに乗じて米国が暗躍し、中露の両方に国境を接するカザフスタンに親米政権でも樹立されNATO軍が進駐することにでもなれば、それこそ中露にとって最大の悪夢です。

米国にとっては、アフガニスタンでの失地を大きく回復することになります。失地回復どころか、アフガニスタンは現状では、中国とは一部国境を接していますが、ロシアは国境を接しているわけではないのですが、カザフスタンは両国と長い国境線をはさんで隣接しています。

中露にとっては、かつての米国にとってのキューバ危機のように、裏庭に米軍基地ができあがることになります。それ以上かもしれません。冷戦中にカナダやメキシコに、親中露政権が樹立され、中露軍基地ができるような感じだと思います。そこに長距離ミサイル等を多数配備されることになれば、中露は戦略を根底から見直さなければならなくなります。ロシアはウクライナどころではなくなります。中国は海洋進出どころでなくなるかもしれません。
カザフスタン情勢は、プーチンや習近平にとって、鬼門ともいって良いような、恐るべき地政学上の脅威です。
バイデン氏が副大統領だった2013年11月、ウクライナのヤヌコーヴィチ大統領が率いる親露政権を転覆させようと、当時のバイデン副大統領やヌーランド国務次官補などマイダン革命を起こし、遂にヤヌコーヴィチをウクライナから追い出すことに成功しました。

こうして2014年6月に、バイデン氏は、米国の傀儡政権であるようなポロシェンコ政権を樹立させました。ただ、米国も予想していなかったようですが、ポロシェンコ政権はあまりに腐敗が酷すぎ、結局その後コメディアンであるゼレンスキーにとって変わられたのです。

ウクライナ大統領選におけるポロシェンコ(左)とゼレンスキー(右)

そうして、バイデンの画策というか、大括りでいえばオバマ政権の画策は、実はこれに留まりませんでした。その中の一つに、2015年11月に設立された「C5+1」があります。

これは米国が、プーチンが自らの「縄張り」と考える「中央アジア5ヵ国」に入り込んで、「5ヵ国」に支援をして、米国寄りにしていこうという目論見に基づき設立されたもので、「中央アジア5ヵ国+米国」外相会談を意味します。

バイデンとしてはウクライナをコントロールできるようにしたことだけでは不安を感じたのでしょう。プーチンの周りにはCSTOという軍事同盟もあるので、「中央アジア5ヵ国」を切り崩しておかないと不安だという思いがあったにちがいないです。


米シンクタンク、戦争研究所は今月15日の戦況分析で、ロシアがウクライナ侵攻に伴い旧ソ連諸国の基地に駐留する部隊を動員したことで、同諸国でロシアの影響力が弱まり、地域情勢が不安定化している可能性を指摘しました。

ウクライナ侵攻後に中央アジアのタジキスタンとキルギスの国境での軍事衝突や、アルメニアとアゼルバイジャンとの間で係争地ナゴルノカラバフを巡る争いが再燃しています。

戦争研究所は欧米メディアを引用し、タジキスタンのロシア軍基地からは約1500人がウクライナに派遣され、さらに600人が動員される予定としました。

米中露は、元々中央アジアで熾烈な争いをしていたのです。そうして、カザフスタンは中央アジアでは人口は最大であり、経済も一人あたりGDPでは1万ドルを少し超えたロシアよりは、低い9千ドル台にすぎないのですが、それにしても国全体では中央アジアで一番経済規模が大きいです。この国の動きは、中央アジア諸国に大きな影響を与えることになります。

現状では、プーチンはウクライナ戦争で手一杯ですし、ウクライナ戦争の本当の相手は、米国であることは十分に承知しているでしょう。最近もこのブログで示したように、こうした米国の存在がなければ、プーチンと習近平は、ユーラシア大陸の覇権を巡って戦うことになるでしょうが、今はそれどころではありません。

プーチンは、中央アジア5ヵ国の心が「バイデン」になびきさえしなければ、習近平にどんなことでも譲歩しようと考えているに違いありません。

日本では、米国の野心である、中央アジアでの「C5+1」のことがあまり報道されておらず、中央アジアの今日の動きや、ウクライナとの関連がが理解されていないようです。

これを理解しないと中央アジアの国々のロシア離れがなぜ進んでいるのか、その本質は理解できないです。なんの背景も説明せずに、カザフスタンの元首相がプーチン批判をしたことや、旧ソ連諸国の基地に駐留する部隊を動員したことで、同諸国でロシアの影響力が弱まり、地域情勢が不安定化ことだけを個別に報道したとしても、ほとんど無意味です。

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2022年2月28日月曜日

「逆キューバ危機」と言えるウクライナと中露共同声明―【私の論評】中露の思惑はウクライナでは外れそうな状況になってきた(゚д゚)!

「逆キューバ危機」と言えるウクライナと中露共同声明

岡崎研究所

 2月4日、中国の習近平主席とロシアのプーチン大統領は北京で首脳会談を行い、中露共同声明を発した。この共同声明には、その長さ(約5000語)と言い、中味と言い、些か驚かされた。

 基本的には、双方の文言提案の寄せ集めの感を受けるが、安全保障等重要部分については双方が調整、それぞれの政策を相互に支持し合い、中露連携を強く打ち出している。それは「新たな枢軸」の結成と言っても良い。要注意である。声明の主要点は次の通り。


(1)世界は「新たな時代」に入っている。多極化、経済のグローバル化、情報化、グローバル・ガバナンス制度・秩序の変化、世界のパワー配分の変化(米衰退論が透けて見える)を強調。国連安保理中心のガバナンス、国際法に基づく秩序の擁護を強調。(この部分は中国主導の起案か)。

(2)第I部:「民主主義は普遍的価値であり、一部の国の特権ではない」。(「民主主義」の語が中露のナラティブにハイジャックされないように要注意)。

(3)第II部:ユーラシア・パートナーシップの拡大や一帯一路計画に言及の上、経済発展の重要性を強調。気候変動、コロナ問題などにも言及。

(4)第III部:安全保障につき、中露は相互の「核心利益」を擁護する。「ロシアは一つの中国の原則を支持する、台湾は中国の固有の一部である、如何なる形であれ台湾の独立に反対することを再確認する」。ウクライナと明示しないで、「両国は近接地域での外部勢力による干渉を排除し、カラー革命に反対し、当該地域での両国の協力を強化すると述べ、テロ反対にも言及。双方は「北大西洋条約機構(NATO)の更なる拡大」に反対する。

 中国は欧州安保に関するロシアの提案を支持。アジア太平洋の閉鎖的なブロック化に反対、米のインド太平洋戦略を警戒する。ABMシステム(弾道弾迎撃ミサイル制限)を廃棄すべき。オーカス(AUKUS)を非難、核・ミサイル不拡散を守るべき。米のアジアや欧州での中・短距離ミサイルの配備計画の中止を求める。宇宙にも言及。福島の「核汚染水」の海洋投棄を懸念。

(5)第IV部:共同して「新たな形の国際関係」を築く。両国は第二次大戦の結果を堅持する。両国の友情に限界はなく、協力に禁止区域はない。WTOを支持。APECを強化する。

 ワシントンポスト紙コラムニストのイグネイシャスは、2月8日付け同紙掲載の論説‘The crisis in Ukraine is one for the history books’において、ウクライナ危機は将来専門家達による事例研究のひとつになると言い、上記の中露共同声明はケナンのソ連封じ込め戦略の中露版と考えることもできる、ウクライナを巡る対立は「逆キューバ危機」である、などと指摘している。その通りであろうと思われる。目下のウクライナ危機は、それほど歴史的な意味合いを持っている。

 ロシアとの話合いは続いている。何か動いているのではないかと思われるが、交渉の正確な状況は分からない。プーチンは長年の冷戦を米と共に管理することに成功してきたロシアの指導者であるという意味では、一定の合理主義者だと思われる。

 そうであれば、エスカレーションを支配しバイデンを困らせる危険なゲームを楽しんでいるとも考え難い。他方、プーチンは、ウクライナに対して、強迫観念に近い執着を持っているようにも見られる。不可解なのは、具体的に達成可能な何を達成しようとしているのか、よく分からないことである。

バイデンの積極的な情報戦

 ベラルーシやロシア西部、クリミア沖に集結する部隊や艦隊の写真は尋常でない。特にウクライナとの間での誤算が心配になる。プーチンには問題を外交で解決する責任を発揮してもらわなければ困る。

 今回の危機へのバイデンの対応は総じて評価されるだろう。特に目立つのは、積極的な諜報情報の発信である。単にアフガンでカブール政権の余命を読み誤ったことに対する教訓だけのようには思えない。危機の際の情報戦が地上の形勢に影響すると考えての事であろう。

 実際、ロシアは米国の発信を嫌がっている。また今回は軍関係者の意見をよく聞き、周到な部隊展開などを行っているように見える。もう一つアフガンとの違いは、同盟国との連携が大きく改善されていることだ。

 他方、バイデンはウクライナのために戦争をする意図はないと明言しているが、1月19日の「ロシアのウクライナへの侵攻が侵攻に留まるならば西側の対応も小規模にとどまる」旨の発言と相俟って、もう少し慎重な発言をすべきではないかとの印象も受ける。しかし、米露直接衝突は何としても避ける必要があること、プーチンに誤算させないことを確保するために米国の意図は明確にし、他方で侵略が何時あってもおかしくないとの情報戦は積極的に続けることで状況をコントロールしようとしているのかもしれない。

【私の論評】中露の思惑はウクライナでは外れそうな状況になってきた(゚д゚)!

キューバ危機時にソ連の輸送船を監視する米哨戒機

キューバ危機とは、キューバにソ連軍のミサイル基地が建設中であることに抗議して、1962年10月22日以降、米国が戦艦と戦闘機でキューバを海上封鎖した事件のことです。 米国大統領J.F. ケネディは、キューバから攻撃があった場合にはソ連によるものとみなして報復するとしました。

逆キューバ危機とは、この言葉を用いなかったものの、このブログにも掲載したことがあります。以下にその記事のリンクを掲載します。
カザフ、ロシア主導部隊が2日後に撤退開始 新首相選出―【私の論評】中露ともにカザフの安定を望む本当の理由はこれだ(゚д゚)!

トカエフ大統領

これは1月11日の記事です。カザフスタンのトカエフ大統領は11日、抗議デモを鎮圧するため先週派遣を要請したロシア主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構(CSTO)」の部隊が2日後に撤退を開始すると表明しました。

カザフスタンでは暴動などがあったため、ロシアはロシア軍主導のCSTOの部隊を急遽派遣し、その後迅速に引き上げさせています。そのロシア側の考えをこの記事では分析しています。その部分を以下に掲載します。
中露としては、大統領がトカエフだろうが、誰だろうが、とにかく安定していて欲しいというのが本音でしょう。トカエフ政権が崩壊するようなことでもあれば、力の真空が生まれます。そこに乗じて米国が暗躍し、中露の両方に国境を接するカザフスタンに親米政権でも樹立されNATO軍が進駐することにでもなれば、それこそ中露にとって最大の悪夢です。

米国にとっては、アフガニスタンでの失地を大きく回復することになります。失地回復どころか、アフガニスタンは現状では、中国とは一部国境を接していますが、ロシアは国境を接しているわけではないのですが、カザフスタンは両国と長い国境線をはさんで隣接しています。

中露にとっては、かつての米国にとってのキューバ危機のように、裏庭に米軍基地ができあがることになります。それ以上かもしれません。冷戦中にカナダやメキシコに、親中露政権が樹立され、中露軍基地ができるような感じだと思います。そこに中長距離ミサイル等を多数配備されることになれば、中露は戦略を根底から見直さなければならなくなります。ロシアはウクライナどころではなくなります。中国は海洋進出どころでなくなるかもしれません。
中露は、この逆キューバ危機に対処するためにこれからも、綿密に協力しようとしているのです。

ウクライナへの侵攻も、プーチンの頭の中では、基本的にはこのカザフスタンへのCSTOの派遣と同じような理屈によるものでしょう。

ただ、カザフスタンのトカエフは親露・親中的であり、カザフスタンのトカエフ政権が安定すれば、カザフスタンがNATOに加入したり、ウクライナのように親欧米的な行動をとることはないとみられることから、ロシアとしては、それ以上のことをする必要性もないためすぐに部隊を退かせたのです。

ウクライナに関しては、NATO入を検討したり、親欧米的であるため、侵攻して、ドンバス地域だけではなく、首都のキエフにも侵攻しようとしているようです。とくかく、ロシアの最終目標としてはウクライナを絶対にNATOに加入させないようすることだと考えられます。


ただ、上の記事にもあるように、不可解なのは、具体的に達成可能な何を達成してこれを実現ようとしているのか、よく分からないことです。

私としては、ロシアは本当は、ウクライナ全土に侵攻して、ゼレンスキー政権を倒して、ウクライナにロシアの傀儡政権を樹立して、ウクライナが未来永劫にわたって、NATOに入ることを阻止し、ウクライナをロシアのNATOに対峙する緩衝地帯としたいのでしょうが、それは軍事的にも経済的にもできないのでしょう。

そのため、次善の策として、ドンバスを独立させ、ロシアの傀儡政権を樹立させ、さら首都キエフなどの都市部に攻勢をかけ、占領するような素振りをみせ、ゼレンスキーを投降させるか、海外に脱出させ、ウクライナに傀儡政権まではいかないまでも、親ロシア政権を樹立させ、間違ってもNATOに加入することがないようにしようとしているのではないかと思います。

ただ、現状では思いの外頑強なウクライナ軍の抵抗にあることと、ゼレンスキー大統領がキエフにとどまり続けることを表明しているため、手詰まり状態になっているのだと思います。

ロシア側にとって、ウクライナ側の抵抗も予想以上でしょう。ソ連時代のアフガン侵攻と同じような泥沼化を避けられるかどうか。長期化すればするほど、ロシア国内の反戦ムードはますます高まり、欧米はウクライナ軍に軍事物資を供給し続けることになります。

ちなみに、米国はアフガニスタンに20年間もとどまり続けることができました。しかし、ロシア軍はこのように長期にわたって、ウクライナにとどまり続けることは、軍事的にも経済的に無理です。10日で戦費がつきるという話もありますが、これはウクライナ側の発表です。特に根拠はないのですが、私はは最長で、数ヶ月というところだと思います。

この戦い、ウクライナ軍は善戦していますが、その裏には米国の諜報活動があると思います。先日もこのブログで述べたように、ロシアの兵站は鉄道に頼るところが大きいので、米軍は偵察衛星を用いて、当然のことながら、鉄道を監視しその情報をウクライナ側に伝えていると考えらます。

そうすると、ウクライナ側はロシア軍からあまり不意打ちを仕掛けられることはなく、逆にウクライナ側はロシア軍に対して不意打ちを仕掛けられるのが容易だと思われます。衛星による監視や、諜報活動では米軍はかなり優れています。

その能力を生かして集めた情報をもとに、米国は効果的な戦術を考え出し、それをウクライナに伝えるなどのこともしているでしょう。兵站に関しても、ロシアに妨害されにくい方法を考えてウクライナ軍に実施している可能性もあると考えられます。

ロシア軍の進撃が停滞しているうちに、ウクライナ軍が順次強化、それも最適に強化されるということも考えられます。

この状況だと、プーチン大統領の思惑というか、中露の思惑とは真逆の事態になりかねません。

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2022年2月23日水曜日

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国家の流儀


赤軍に捕虜にされたポーランド軍将兵 多くがカティンの森事件で殺害された

 ウクライナ危機に際して、「ロシアの立場も理解すべきだ」と語る政治家や識者がいる。

 確かに、ロシアの言い分を正確に理解すべきだ。だが、ロシア側の言い分を正当化すべきではない。それは、旧ソ連、共産党一党独裁時代の人権弾圧、全体主義による「犯罪」を擁護することになるからだ。

 第二次世界大戦後、ポーランド、チェコ、ハンガリーなどの中・東欧諸国はソ連の影響下に組みこまれ、バルト三国は併合された。これらの国々は50年近く共産党と秘密警察による人権弾圧と貧困に苦しめられてきた。

 意外かもしれないが、そうした中・東欧の「悲劇」が広く知られるようになったのは、1991年にソ連邦が解体した後のことだ。日本でも戦後長らく、ソ連を始めとする共産主義体制は「労働者の楽園」であり、ソ連による人権弾圧の実態は隠蔽されてきた。

 ソ連解体後、ソ連の影響下から脱し、自由を取り戻した中・東欧諸国は、ソ連時代の人権弾圧の記録をコツコツと集めるだけでなく、戦争博物館などを建設して、積極的にその記録を公開するようになった。

 そこで、私は2017年から19年にかけて、バルト三国やチェコ、ハンガリー、オーストリア、ポーランドを訪れて、各国の戦争博物館を取材した。それらの博物館には、ソ連と各国の共産党によって、いかに占領・支配されたか、秘密警察によってどれほどの人が拷問され、殺されたのか、詳細に展示している。

リトアニア KGBジェノサイド博物館(江崎道朗氏撮影)

 旧ソ連時代の共産党一党独裁の全体主義がいかに危険であり、「自由と独立」を守るため全体主義の脅威に立ち向かわなければならない。中・東欧諸国は、このことを自国民に懸命に伝えようとしているわけだ。

 それは、ウラジーミル・プーチン大統領率いるロシアの指導者たちが再び、中・東欧諸国を脅かすようになってきているからだ。プーチン氏らは、旧ソ連時代の「犯罪」を「正当化」し、ウクライナを含む旧ソ連邦諸国を、再び自らの影響下に置こうとしている。

 この動きに反発した欧州議会は、例えば19年9月19日、「欧州の未来に向けた欧州の記憶の重要性に関する決議」を採択している。この決議では、いまなお「ロシアの政治的エリートたちが、歴史的事実をゆがめて共産主義者の犯罪を糊塗(こと=一時しのぎにごまかすこと)し、ソ連の全体主義的体制を称賛し続け」ていることを非難し、「ロシアが悲劇的な過去を受け入れるよう求め」ている。

 日本固有の領土である北方領土を「不法占拠」され、シベリア抑留に代表される「人権侵害」を受けてきた日本もまた欧州議会と連携し、ソ連・共産党時代の「犯罪」を正当化するプーチンらと対峙(たいじ)すべきなのだ。

江崎道朗(えざき・みちお) 評論家。1962年、東京都生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集や国会議員政策スタッフなどを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究などに従事。「江崎塾」を主宰。著書『日本は誰と戦ったのか』(KKベストセラーズ)で2018年、アパ日本再興大賞を受賞、19年はフジサンケイグループの正論新風賞を受賞した。著書に『日本人が知らない近現代史の虚妄』(SB新書)、『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(扶桑社)など多数。

【私の論評】日本はプーチンの価値観を絶対に受け入れられない(゚д゚)!

プーチンがなぜこれほどまでに、ウクライナに拘泥するのか、ほとんどのメディアはその本質を報道しません。

プーチンにとっては、ウクライナはあくまで自分たちの持ち物なのですです。元KGBである彼の故郷はロシアではなくソ連邦なのです。

専門家が注目したのは、昨年7月にロシアのウラジーミル・プーチン大統領が発表した論文です。プーチンは「ロシアとウクライナは同一民族だ」と主張、1000年の歴史を強調しています。ウクライナの首都キエフは、ロシアにとって父祖の地。日本人にとっては、熱田神宮や愛知県が韓国にあるようなものと言いたいのでしょうか。 なぜこの時期にプーチンがと考えるより、常に考えていたと解釈すべきです。

ソ連崩壊後、ロシアのボリス・エリツィン大統領を、米国のビル・クリントン大統領はあざ笑い続けました。’90年代を通じたバルカン紛争の末に、エリツィンは傘下のセルビアを守り切れませんでした。

他のバルカン諸国は米欧の軍事同盟であるNATO入り、ロシアの束縛から離れ、米国の庇護下に入りました。そしてNATOは東方拡大しました。こうした旧ソ連からみれば屈辱的な状態を背景に、ロシアの独裁者となったのがプーチンなのです。

プーチンは’08年北京五輪の時も、西側陣営に馳せ参じたグルジアに侵攻。領土を掠め取りました。これに米国抜きのヨーロッパは、なすすべがありませんでした。隙あらばと、プーチンは’14年には、ウクライナからクリミア半島を奪いとりました。

我々にとっては「侵攻」であっても、プーチンにすれば「失地回復」以外の何物でもないのです。

ウクライナを狙うのは、彼が旧ソ連を取り戻そうとする行為の一環なのです。プーチンは故郷であるソ連邦の歴史を不意にしたくないし、ソ連の崩壊が米ソ冷戦の敗北だったとは決して認めたくないのです。

例えばプーチンは、ガスプロムという天然ガスの企業を用いて、ロシア人から搾取を続けています。かつてイギリスが東インド会社でやっていたような植民地化を自国で行っているのです。この事実だけから見ても、彼がロシアの愛国者ではなく、ソ連への忠誠心が高いことがわかります。

現代ロシアを理解するうえで重要なことは、ロシアとソ連は別物ということです。ロシアを乗っ取ってできた国がソ連ですから、両者を同一視するべきではありません。現在ではほとんど評価されず、単なる酔っぱらいとみられているエリツィンは間違いなくロシアの愛国者ではあったのですが、そのエリツィンから大統領の地位を禅譲されたプーチンがやっていることは、ソ連邦の復活であり、ロシアに対する独裁です。

2002年にアレクサンダー・レベジというロシアの政治家がなくなりました。彼はロシアの自由化を進め、チェチェン紛争の凍結にも尽力した人物です。NATOや日米同盟にも融和的でした。何より、近代文明とは何かを理解しつつ政策を実行しようとしました。

アレクサンダー・レベジ

彼は、このブログにも述べたとおり、ロシア史のなかでも、一番のまともな人物と言って良い存在です。しかし、彼の末路はヘリコプター事故死でした。ロシアではなぜか、プーチンの政敵が謎の事故死を繰り返します。このレベジについてなんら言及せず、プーチンは親日家だからなどと平気で言っているような輩は救いようのない大馬鹿者か、ロシア工作員です。

ロシアを支配しているのは、徹底した「力の論理」です。自分より強い相手とはケンカをせず、また、自分より弱い相手の話は聞かないのです。今回のウクライナ問題でもはっきりしたように、日本が北方領土などで話を進める気のない相手に交渉を持ち込んだところで、条件を吊り上げられるだけです。

そもそも、かつて丸山穂高氏が語ったように、戦争で取られたものは戦争で取り返すしかない、というのが国際社会の常識です。力の裏づけもないまま、話し合いで返してもらおうなどと考えている時点で、日本はあまりに甘すぎるのです。

そうして、西側諸国も一枚岩ではありません。米英仏独といった西側の大国は、必ずしもNATOの拡大を望んでいません。ソ連や帝政ロシアに苦しめられた東欧諸国はNATOに入りたいでしょうが、ロシアとの対峙は欧米にとっては迷惑な話でもあるのです。

だから、本当はロシアの隣国のウクライナは、NATOにいれるのではなく緩衝地帯として使いたいのです。  

現在世界唯一の超大国である米国は、中国の台頭を脅威に感じています。ヨーロッパの問題など、本当は英仏独に任せておきたいのです。中国との対峙に専念したいのです。

そのため、中東にも不用意な手出しはしないし、アフガニスタンからも引きあげました。そうしたこの米国の心理を、プーチンは突いたのです。

10万を超えるロシアの地上軍が、ウクライナに集結している。これでは、ウクライナ全土を占拠するには到底足りないですが、それでも経済的に小国になってしまったロシアにとっては、かつてない大規模な動員です。

戦になるか否か、本気度は地上軍を動員するか否かが最大の指標です。今回のプーチンは、明らかな本気を見せています。ただ、できるのは、このブログでも以前述べたように、ウクライナのいくつかの州、もしくは州の一部止まりです。それ以上は兵站が持ちません。それでも、ロシアにとっては、できる限りの兵力の結集です。

これに対し、バイデン米大統領は1月24日(現地時間)、フランス・ドイツなど欧州の同盟の首脳らと80分間ほどオンライン形式で会談し、ロシアのウクライナ攻撃阻止および攻撃時の対応策について議論しました。

こうした外交努力とは別に、米海軍のニミッツ級原子力空母「ハリー・トルーマン」などがこの日、NATO(北大西洋条約機構)の指揮の下、地中海一帯でロシアのウクライナ侵攻に対応した大規模な海上訓練に入りました。

米空母「ハリー・トルーマン」

ホワイトハウスとNATOは米空母打撃群が冷戦後初めてNATOの指揮・統制下で訓練を始めたと明らかにしました。米国防総省は米軍8500人に対し、有事の際、欧州のNATO即応部隊(NRF)に直ちに合流できるよう非常待機命令を出しました。

ロシアを地中海に絶対に出さない、との姿勢です。1万人に満たない数の小出しながら、陸軍の動員も決めました。遅まきながら、バイデンも舐められまいと身構えたのです。

米欧は、ウクライナを本気で守る以外のあらゆる方法で支援するでしょう。金を出し、兵站を整え、兵器を渡し、戦い方を教える、国境の外に軍隊を集結させる、等々です。

中国は、グルジア侵攻の時と同じくオリンピック最中だったこともあり、その後も安全地帯で、一の子分のプーチンが米欧を翻弄するのを睥睨しているだけで良いです。

ましてや、米欧がロシアに拘泥しているので、笑いが止まらないでしょう。中国の狙いは台湾。米欧が束になってロシアの侵攻を止められないとなると、台湾への野心をむき出しにするでしょう。

中国は、現状では台湾に侵攻するだけの海上輸送力がなく、まともに台湾に侵攻はできませんが、ロシアがこれからもウクライナの奥地に侵攻すれば、それを参考にするかもしれません。

ウイグルや香港など、中国共産党からみれば彼らの私有物なのです。助ける方法などありません。むしろ今の中国は他人の持ち物を奪おうとしているのです。

欧米と中露の根本的な違いは何でしょうか。「人を殺してはならない」との価値観が通じる国と通じない国です。日本は明らかに「人を殺してはならない」との価値観の国々と生きるしかありません。そうして、同盟の最低条件は「自分の身を自分で守る力があること」です。

国際社会では軍事力がなければ何も言えないのです。ようやく「防衛費GDP2%」が話題になりましたが、それで間に合うのでしょうか。 いきなり核武装しろとまでは言いませんが、国際社会での発言力は軍事力に比例します。金を出さなければ何もできないです。

このブログでのべてきたように、ロシアの現状のGDPは、韓国より若干下回る規模です。一人あたりのGDPでは、韓国を大幅に下回ります。

にもかかわらず、ロシアが世界で存在感を保てるのは、まずはロシアは旧ソ連の核や軍事技術を継承する国であること。さらに、軍事力では未だに世界第二位の地位にあることです。

コロナ収束はもちろん、景気回復もさっさと成し遂げ、軍事費を増やさないと何もできないです。それとも、このブログにも掲載したように、日本は冷戦の最中に、ソ連の潜水艦をオホーツク海に封じ込めるなどの貢献をしたにもかかわらず、今までのようにすべての周辺諸国の靴の裏を舐め、「殴らないでください」とわびながら生きるとでもいうのでしょうか。

現在の中露やイランの暗躍は、すでに新たな冷戦といって良いレベルに達しています。この新冷戦においても、日本は勝利に貢献する可能性も大きいです。それでも、まだ周辺諸国の靴の裏を舐めながら生きるというのでしょうか。これは、自分自身の生き方の問題です。

先に述べたように現在のロシアは経済的には取るに足らない小国に成り果てています。なぜ、そうなったかといえば、冷戦に負けたからです。

中国も冷戦に負けたのですが、当時の中国は経済的にも、軍事的にも取るに足りない国でした。しかも冷戦中に米国がソ連に対峙ということで、仲間に引き入れ、そこから日本や米国、EUなどの支援により、経済を伸ばし、今日のような姿になっています。ただ、今でも一人あたりのGDPはロシア並で、人口はロシアが1億4千万人に対して、中国は14億人であり、10倍です。

だからこそ、国全体ではGDPは今やロシアの10倍です。世界第二位です。だから、冷戦敗戦国という意識はあまりないようです。

世界は、そうして日本は、一人あたりのGDPでは遥かに劣る冷戦敗戦国「必要なら人を殺しても構わない」という価値観の中露にこれからも、振り回され続けるわけにはいきません。

米国としては、昨日も述べたように、シェール・ガス・オイルを増産して、産油国・ガス供給国としてのロシア経済の息の根を止めることが最優先課題だと思います。これは、バイデン政権には期待できないようですが、今年の中間選挙後には、共和党が多数派になり、実現できるかもしれません。

日本とEUは今まで以上に米国に協力して、軍事的にも経済的にも両国を追い詰めるべきです。私達は、「必要なら人殺しをしても良い」という価値観は絶対に受け入れられないし、そのような社会に住みたくないし、自分たちの子孫もそのような社会で生活させたくないはずです。

私自身は、このブログで何度か述べているように、日本が新冷戦に勝利すれば、北方領土は戻ってくる可能性は高くなるとは思いますが、それにしても、現状のように軍事費をおさえて、憲法や法律でがんじがらめにしているようでは、戻ってこない可能性もあると思います。

いくら経済安全保障で徹底的にロシアを追い詰めたとしても、最後には軍事力が物を言います。日本も軍事力と経済力の両方のパフォーマンスを発揮すれば、現在の韓国なみのGDPのロシアを凌駕できます。そうなれば、インド太平洋地域における軍事バランスは崩れ、日本が圧倒的に有利になります。

実は、冷戦で日本が勝利したときは、ロシアに対して北方領土を返還させる絶好の機会でした。しかし、当時の日本はいまよりも軍事費は小さく、しかも、憲法や法律のくびきも現在よりも強く、その機会を徒にふいにしてしまいました。新冷戦勝利のあかつきには、過去の愚を繰り返すべきではありません。

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2022年2月17日木曜日

自民・高市氏、外相対応に懸念 日ロ経済協力会合めぐり―【私の論評】露がどちらに転んでも非常に分が悪いシナリオを米英が描いていることを理解しない能天気な林外相(゚д゚)!

自民・高市氏、外相対応に懸念 日ロ経済協力会合めぐり

自民党の高市早苗政調会長

 自民党の高市早苗政調会長は17日の党会合で、ウクライナ侵攻の可能性が取り沙汰されるロシアとの間で経済協力に関する閣僚会合を開いた林芳正外相の対応を批判した。政府が先進7カ国(G7)各国と連携し、侵攻した場合の制裁発動を検討中だとして「G7の結束を乱そうとするロシアを利することになる。大変強い懸念を覚えた」と述べた。

 外務省側が、閣僚会合を開いたのは事前に予定されていたためだと説明したと言及。高市氏は「臨機応変に会談を延期するなど、いろいろな方法があった」と指摘した。

【私の論評】露がどちらに転んでも非常に分が悪いシナリオを米英が描いていることを理解しない能天気な林外相(゚д゚)!

日ロ両政府は15日、林芳正外相とレシェトニコフ経済発展相が共同議長を務める「貿易経済政府間委員会」をテレビ会議形式で開きました。閣僚レベルで両国の経済関係全般について協議するのが目的。ロシアによるウクライナ侵攻の懸念が強まり、対ロ経済制裁が議論されるタイミングでの開催を疑問視する声もありました。

テレビ会議形式で開いた、日ロ貿易経済政府間委員会の共同議長間会合に臨む林外相=15日午後

政府間委員会は1994年に両国が設置で大筋合意しました。共同議長間会合は2020年12月以来。林氏はロシアとの対話の継続に言及する一方、「現下のウクライナ情勢に重大な懸念を持って注視している」と伝達。緊張を緩和し、外交的解決を追求するよう求めました。レシェトニコフ氏はウクライナには触れず、新型コロナウイルス禍にあっても両国の経済関係は進展しているとして「さらに協力を進めたい」と語りました。

高市政調会長の主張は、当然であり、高市氏のほうがまともな外交感覚を持っていると思います。林外相は完璧に外交感覚がずれているとしか言いようがありません。

自民党外交部会の佐藤正久部会長は16日午前に党本部で開かれた会合で、ウクライナ情勢をめぐる政府の対応について「外務省のチグハグ感と当事者意識のなさが半端ないと言わざるを得ない。この2カ月間、たったの一度も林芳正外相と欧州の外相の会談は開かれていない」と批判しました。

佐藤氏はまた、15日に岸田文雄首相がウクライナのゼレンスキー大統領、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長と電話会談した一方、林氏がロシアのレシェトニコフ経済発展相とのテレビ電話形式の会議に出席したことについて「首脳会談の裏で、制裁を検討している相手に対しなぜ経済協力なのか。このチグハグ感は批判されてもしようがない」と述べました。

岸田政権は何をしているのか、本当に理解しているのでしょうか。今話すべきは、ロシアに対する制裁をどうするかであって、経済協力ではないはずです。

このずれまくりでは、ウクライナ情勢を本当に理解しているのか、心配になってきました。

このブログにも過去に示してきたとおり、現在ロシアはウクライナに侵攻して、ウクライナを屈服させて、ロシアの思い通りにさせることは不可能です。できるのは、たとえハイブリット戦を駆使したとしても、ウクライナの東のいくつかの州、それも州全部ではなく、一部しか占拠できないでしょう。

プーチンは、2000年の就任演説以降「大国ロシア」という言葉を頻繁に使用してきましたが、現在もそうして将来も「大国ロシア」になる可能性はほとんどありません。現在のロシアは、NATOと正面から対峙する力もありません。NATOとロシアが戦争になれば、ロシアには全く勝ち目はありません。

昨年6月22日対ドイツ戦争の開始から80年を迎えたことを受け、モスクワのクレムリン宮殿脇にある戦没兵士をまつる「永遠の炎」に献花し「ロシアは偉大で強力な大国であり続ける」と表明した。 

にもかかわらず、バイデン米大統領やボリス・ジョンソン英首相が、ロシアが今すぐにでもウクライナに侵攻すると煽っています。

これはなぜかといえば、まずはロシアがハイブリット戦を駆使して、本格的な軍事侵攻をせずにウクライナの一部をかすめ取ることに対する危惧でしょう。実際、ロシアはクリミアを独立させたという前科があります。こういうことを中国が得意のサラミ戦術のように何度も繰り返せば、やがてウクライナの大きな部分が、ロシアの手に落ちることも十分に考えられます。

それだけは、絶対に許さないぞという強い決意を示すために、バイデンやジョンソンがロシア侵攻を煽っているという側面は否定できないでしょう。

戦争を回避できれば、それは粘り強い交渉で平和をもたらしたという米やNATOの功績となります。そうなれば、バイデンにとってはアフガン撤退の失敗等の失地回復につながることになります。それで、秋の中間選挙が少しは有利になるかもしれません。

英国では、昨年12月16日にボリス・ジョンソン首相に近い与党・保守党の下院議員が議会規則に違反するロビー活動で辞職した問題で、空席になった議席の補欠選挙が行われ、保守党は200年近く維持してきた牙城ノース・シュロップシャー選挙区の議席を争い、野党・自由民主党に敗れました。

さらに、英国の首相官邸で新型コロナウイルス対策の行動規制下にあった時期にパーティーが開かれていた不祥事をめぐり、ジョンソン首相が窮地に立たされています。新疑惑の発覚がとどまらず、自身の参加も認めて謝罪しました。ところが、有権者は、厳しい規制を求めてきた政府の規則違反に不満を高め、与党・保守党内で首相の進退を問う声が強まってきています。

ジョンソン首相も、戦争が回避できれば、失地を回復できるチャンスがあります。

     主要7カ国(G7)首脳会議が開かれる英南西部コーンウォールで、
     ボリス・ジョンソン英首相とジョー・バイデン米大統領が初めて対面

一方、内政面では年金改革、人口減少、平均寿命の 引き上げ、出生率の減少、フルシチョフ時代に建てられた住宅(フルシチョフカ)修繕問題、 地方と都心との格差や貧困問題などの問題を抱えているプーチンはさらに支持率の低下に悩むことになるでしょう。

一方、ロシアが耐え切れずに開戦に踏み切れば、それはロシアにとって自殺行為となるでしょう。バイデン氏やジョンソン氏は、何のためらいもなく、ロシアに対する厳しい制裁を発動するでしょう。現在予想されるのは、ドル・ポンドとルーブルの交換停止です。

そうして、EUもすぐにこれに追随して、ユーロとルーブルの交換停止に踏み切るでしょう。こういうことを言うと、ロシアの資源量が圧倒的なのに対し、EUはエネルギー資源に乏しく、そEUはロシアの強引な天然ガスを利用した外交攻勢や価格引き上げ構成に悩まされるから、EUは対ロ経済制裁に慎重にならざるを得ないという人もいるでしょう。

しかし、現実の天然ガスの長距離パイプラインによるビジネスでは、供給国と需要国の間で、一方的な立場の有利、不利は存在しません。パイプラインでの取引では、物理的に取引相手を変えられないからです。

その一方で、天然ガスは石油・石炭・原子力・新エネルギーでいつでも代替可能なものであり、供給国が人為的に価格を引き上げたりすると、たちまちに需要不振になってしまいます。なによりも、供給カットなどを行うと、供給国は国際社会での信頼を一挙に失ってしまいます。

要するに、ロシアなど供給国が、需要国に対して価格引き上げや供給カットで外交攻勢をかけることは事実上不可能なのです。現実の天然ガスビジネスでは、供給国と需要国の交渉力は、ほぼ対等の関係にあるのです。

そのため、EUも米国、英国に続いてユーロとルーブルの交換停止に踏み切るでしょう。ドイツと日本も、マルク・円とルーブル交換の停止に踏み切るでしょう。これですべての基軸通貨とルーブルの交換が禁止され、ロシアは貿易がかなりしにくい状況に追い込まれます。

どちらにしても、ロシアにとって非常に分が悪いシナリオが描かれているようにしか見えません。

ロシアが弱体化すれば、領土問題はかなり交渉しやすくなります。先日も述べたように、ロシアが戦争に踏切り、厳しい制裁を受ければ、今でも韓国なみのGDPしかないロシアが、北朝鮮なみになることも十分に考えられます。そうなれば、ロシアは北朝鮮のようにミサイルを発射し続けるようになるかもしれません。しかし、現在の領土を守り抜くのは困難になるでしょう。

その時には、北方領土が日本に帰ってくる可能性はかなり高くなるはずです。日本としても、ロシアに対してどのような制裁を課すのが北方領土返還に有利なるかを考えるのが、いまやるべきことです。

このような時期に、日本の外務大臣が、ロシアとの間で経済協力に関する閣僚会合を開くなど、林芳正外相と外務省には本当に外交センスがあるのか本当に疑わしいくなってきました。いや、外務省には元々外交センスがないのがわかっていましたが、林外相にもそれがないことが明らかになったと思います。

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2022年1月25日火曜日

バイデン政権がウクライナ危機を失地挽回に利用?保守派の論客は「不干渉」訴え―【私の論評】 日米とその同盟国は、悪の3枢軸こそ本当の敵であることを片時も忘れるな(゚д゚)!

バイデン政権がウクライナ危機を失地挽回に利用?保守派の論客は「不干渉」訴え 


米国はウクライナ問題に関わるべきではないという意見が、保守派の間から上がり始めた。 

【画像】輸送機に積み込まれるウクライナへの物資(カリフォルニア州・トラビス空軍基地)

ウクライナへの「不干渉」訴える声

FOXニュースの看板キャスターで、保守派の論客として知られるタッカー・カールソン氏は、18日に放送された自身の番組の中でこう言った。
 今回のウクライナ危機の原因を考えてみましょう。なぜロシアが腹を立て、衝突の危機が迫っているのでしょうか?その理由はこうです。米国政府は長年にわたってウクライナをNATO(北大西洋条約機構)に加盟させるよう推し進めてきました。もしメキシコが中国に軍事的に支配されたらと考えてみてください。我々は当然、それを疑いもない脅威と受け取るでしょう。ロシアもNATOによるウクライナの支配をそう見ているのですが、間違っているでしょうか。それに引き換え我々は、ウクライナをNATOに押し込んでもなんら得なことはないのです。 
(FOXニュース「タッカー・カールソン・トゥナイト」1月18日放送)
 この発言は大きな反響を呼び保守・革新双方から批判の声があがったが、カールソン氏は屈せず、21日には自身の番組で“ウクライナ不干渉説”を説いた。
 昨日はロシアとウクライナの戦いという暗い話題について話しました。ワシントンでは超党派のネオコンの同盟が、この衝突を発火させるべく仕掛けてきました。米国の外交問題の当事者たちは数億ドルもの兵器を世界でもっとも不安定なこの地に送り込み、爆発が起きるのを期待して待っているのです。 その期待が叶う日が近いようです。爆発は起きそうですし、それは米国をいとも簡単に紛争の中心に吸い込むことになるでしょう。私は昨夜そう言ったわけです。しかし正直言って、信じられないことです。我々は本当に戦略的に意味のない地域の腐敗した国のために戦わなければならないのでしょうか。我々の国で他にもいろいろな問題を抱えている時にです。正常な人間ならばそんなことをするわけがないでしょう。それなのになぜそうなるのでしょうか。 
(FOXニュース「タッカー・カールソン・トゥナイト」1月21日放送)
カールソン氏は「ネオコン(新保守主義者)」に対抗する「ペイリオコン(伝統的保守主義者)」で、外交的には「孤立主義」の立場をとり、かつてトランプ前大統領にアフガニスタン撤退を助言したと言われる。

バイデン政権の「ワグ・ザ・ドッグ」作戦?

ウクライナ問題に対しては、別の視点から疑問を挟む声もある。
 この(バイデン)行政府は、ウクライナ問題を「ワグ・ザ・ドッグ」に利用しようとしています。
 保守派のコメンテーターのジャック・ポソビエック氏は、19日に公開したポッドキャストでこう言及した。 

「ワグ・ザ・ドッグ」とは、直訳すれば「(尾が)犬を振る」で「本末転倒」を意味するが、かつて同名の映画(邦題『ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ』)が、大統領のスキャンダルを隠すために米国が架空の戦争を始めるという筋書きでヒットした。

 現実でも、ビル・クリントン元大統領が1998年8月にアフガニスタンとスーダンに爆撃を命じたが、それは同じ日に大陪審で行われたインターンの女性との不倫問題の聴聞から世間の関心を逸らすための「ワグ・ザ・ドッグ」だったと言われている。

 ポソビエック氏は、ホワイトハウスのスタッフから得た情報として、行政府はその失地挽回と国民の関心を逸らすためにウクライナとロシアの間の緊張激化を利用していると、そのポッドキャストで語った。 
彼ら(バイデン政権)は武装衝突を利用して米国の若者たち、あなたの息子や娘たちを戦地に送り込もうとしているのです。政権の国内的、対外的な信頼感を取り戻すために。
 そして同氏はポッドキャストでこう警告した。
 これは「ワグ・ザ・ドッグ」に他なりません。そしてウクライナで米国人が殺されるのです。ちょうど(アフガニスタンの)カブールで起きたのと同じように。私の言葉を信じなさい。
 こうした中、バイデン政権の新たな支持率が47%という世論調査の結果が23日伝えられた。 最近の平均支持率より5ポイントほど上昇している。それも、バイデン政権には厳しいFOXニュースの行った調査なので説得力がある。「ワグ・ザ・ドッグ」作戦が功を奏しているのかもしれない。

【私の論評】日米とその同盟国は、悪の3枢軸こそ本当の敵であることを片時も忘れるな(゚д゚)!

バイデンが失地回復を狙っていることについては、すでにこのブログにも掲載しています。昨日も掲載したばかりです。その部分を以下に引用します。
中国への強硬姿勢に対しての米国内での支持は大きいです。「中国に厳しく」という世論はますます強く、対中国政策で弱気な対応を見せれば、それはバイデン氏の民主党政権にとって国民の支持を失いかねない局面に直結することになります。

秋には中間選挙があります。2021年11月の2つの州知事選挙、バージニア州ではバイデン大統領が応援に入ったにもかかわらず民主党候補が破れ、ニュージャージー州でも民主党の現職知事が大苦戦して辛くも逃げ切りました。中間選挙の結果、そして次期大統領選の結果によっては超大国の指導者がまた変わるかもしれません。

2022年の世界も“世界唯一の超大国”と言われる米国を中心に動くでしょう。2月の北京冬季五輪パラリンピックを見据えた外交戦術、さらにロシア軍が国境に展開して緊張が続くウクライナ情勢など外交の課題は山積です。その一方、苦戦している国内での支持率。バイデン政権2年目は、秋の中間選挙に向けて、国内外の多くの緊張と共に歩んでいくことになる。

移民政策でも、アフガン撤退でも明らかに失敗したバイデン、今年の中間選挙のことを考えると、中露に対して弱い姿勢は見せられません。何らかの形で、失地を回復する必要があります。

米国のウクライナ情勢に対する対応のすべてがバイデンの失地回復のためということはないでしょうが、そういう要素があるのは間違いないです。

21日にジュネーブで行われた米露外相会談で、バイデン米政権は、外交による事態打開に道を残しました。ロシアの要求に対して「文書での回答」を約束したことで、プーチン露政権に言質を与えて交渉の幅をせばめるリスクも負ったといえます。ただ、どのような回答をするかによって、失地回復のための交渉なのか、そうでないのかも、ある程度判断できると思います。

一方ウクライナ国内の現状はどうなのか述べておきます。

「ウクライナの子どもは悪い環境で生まれて悪い選択だけを強要される。そしてその人生は良くならない。政治家は権力さえ手にすれば同じ失敗を繰り返すからだ」。 2015年10月に初放送されたウクライナの国民ドラマ『国民のしもべ(Servant of the People)』の第1話に登場するセリフです。

ドラマの中で小市民であり高校の歴史教師である主人公は、国民の生活よりも自分の利益を真っ先に考える政治家に怒り激しい批判を浴びせ、偶然撮影されたこの様子がSNSを通じて人気を呼び、結局大統領になります。

 その役を演じたウォロディミル・ゼレンスキーは4年後、実際にウクライナの大統領になりました。清廉潔白な政治新人であることを前面に出し、決選投票で73.2%という高い得票率を記録しました。

ウクライナ国民は17歳でロシアのコメディテレビショーに出演して知名度を上げてきたコメディアンに希望をかけるほど、前職大統領の腐敗と無能に身震いしていたのでしょう。

しかし12万7000人を要するロシア軍が侵攻の準備を完了した危機の中で、ゼレンスキー大統領はウクライナ国民の期待とは異なる姿を見せています。

19日(現地時間)この日、ウクライナ裁判所が国家反逆容疑を受けているペトロ・ポロシェンコ前大統領に対して検察が請求した拘束令状を棄却して内紛はさらに泥沼化しています。令状実質審査が行われた裁判所の周囲にはポロシェンコ氏の支持者が集まり、警察と小競り合いが起きました。

ポロシェンコ氏の支持者は大統領宮に向かって行進しながらゼレンスキー大統領に対して抗議デモを行いました。 ポロシェンコ氏は2019年大統領選挙でゼレンスキー氏に敗北して再選に失敗した政治的ライバルです。

彼は在任時代だった2014~2015年、ウクライナ東部ドンバス地域の親ロシア分離主義勢力の資金調達を助ける大量石炭販売に関与したという容疑で調査を受けている間、先月ポーランドに出国しましたが17日にウクライナに復帰しました。

キエフのスタジアムで2019年4月19日、ウクライナ大統領選の決選投票を前に
討論するウクライナのポロシェンコ大統領(左)とゼレンスキー氏

帰国当時の第一声は「危機に瀕している祖国を助けるために帰ってきた。ゼレンスキー氏は全く関係がない容疑を私にかけて粛清を行おうとした。彼はロシアの攻撃に対して何をするべきかも分かっていない」でした。

 国が風前の灯火の状態だというのに、前・現職指導者が団結どころか政治的な争いを繰り広げているのです。17日、米国ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は「ウクライナと西側間の会談で疎外されたゼレンスキー大統領が国内問題に重点を置いている」と指摘しました。

19日、ウクライナ首都キエフでゼレンスキー大統領に会ったトニー・ブリンケン米国務長官も「ロシアに対抗するウクライナのリーダーたちが団結した戦線を形成しなければならない」と強調しました。

ウクライナが本当に危機に瀕していれば、前・現大統領とも利害を超えて、協力すると思うのですが、そうではありません。ウクライナ危機はさほど深刻ではないのか、あるいは前・現大統領とも愚かなのかどちらかです。

一方ウクライナと中国の関係をみてみます。中国とウクライナは2013年末、友好協力条約を締結。両国は中国の100億ドル以上の投資計画で合意し、ウクライナ側も「一帯一路」を全面支援しました。

2014年のロシアによるクリミア併合以降、中国がロシアに代わってウクライナ最大の貿易相手国となり、特にウクライナ製兵器の輸出先は中国向けが圧倒的に多いです。

人民解放軍系企業が穀倉地帯のウクライナ東部で、200万ヘクタールの農地を50年間租借し、中国最大規模の海外農場を建設する計画を進めているとの報道もありました。

友好協力条約には、ウクライナが核の脅威に直面した場合、中国が相応の安全保障を提供するとの一節があります。ウクライナを脅かす国はロシアだけであり、ロシアのウクライナ攻撃では中国がウクライナを擁護するとも読めます。

1月初めには、習主席とゼレンスキー大統領が国交樹立30周年の祝電を送り合い、「戦略的パートナー関係の発展」を誓ったばかりでした。中国はロシアのクリミア併合を承認していません。

そうしたウクライナですが、ウクライナ政府は、同国の航空エンジン製造大手「モトール・シーチ」の中国企業による買収を阻止することを決めています。ゼレンスキー大統領は、昨年3月23日、関連する大統領令に署名しました。中国への軍事技術流出を警戒する米国が買収に懸念を示していました。

阻止の背景には、ロシアとの対立で米国の支援を得たいゼレンスキー政権の思惑があります。ウクライナの国家安全保障・国防会議が11日に開かれ、ダニロフ書記が「近い将来、モトール社はウクライナ国民と国家に戻されることが決まった」と説明していました。

1907年設立のモトール社はソ連の軍用ヘリコプターや輸送機のエンジンを製造し、ソ連崩壊後もロシアが大口顧客でした。しかし、2014年のロシアによるウクライナ南部クリミア半島併合で両国関係が悪化。ロシアとの取引を停止した結果、経営難に陥っていました。

こうした中、モトール社買収を狙ったのが中国企業「北京天驕航空産業投資」(スカイリゾン)で、19年末までに株式の過半数を取得したとされます。しかし、米国はウクライナに買収を認めないよう要請。20年8月に行われたゼレンスキー氏との電話会談で、ポンペオ米国務長官(当時)は「モトール社の買収を目指していることを含め、ウクライナにおける中国の悪意ある投資への懸念」を表明していました。

米商務省は昨年1月、スカイリゾンが「外国の軍事技術の獲得を進めていることは米国の安全保障と外交利益に対する重大な脅威」として、米国製品の輸出を制限する軍事企業のリストに加えました。スカイリゾンが中国人民解放軍と深い関係を持つとも指摘しました。

このような状況をみていると、ウクライナが米中露の間で揺れ動いていることがよくわかります。ただ、モトールシーチへの中国の悪意ある投資を阻止したことで、やはり米国寄りであることが見て取れます。

プーチン氏(左) とライシ氏(右)

こうした最中イランの反米・保守強硬派のライシ大統領は19日、去年8月に就任して以降初めてロシアを訪れ、プーチン大統領と会談しました。

冒頭でプーチン大統領は、国際社会の課題に対してイランと緊密に協力していると強調したうえで「核合意をめぐりイランの立場を知ることは、非常に重要だ」と述べました。

これに対し、ライシ大統領は「両国関係は戦略的で永続的なものになるだろう。アメリカの一方的なやり方に、ロシアとともに対抗していく」と述べ、アメリカの制裁に対抗するため経済面などで両国の連携を強化する考えを強調しました。

イランの核合意をめぐる協議では、アメリカが解除する制裁の範囲などをめぐって意見の隔たりが大きく、妥結のめどは立っていません。

ライシ政権としては、伝統的に友好関係にあるロシアとの関係強化を図ることで、核合意の立て直しに向けた協議でアメリカに譲歩を迫るねらいもあるものとみられます。

ライシ師は20日にはロシア下院で演説、「北大西洋条約機構(NATO)がさまざまな口実を使って独立国家に侵入を図っている」と米欧を非難し、ウクライナ侵攻も辞さないとするプーチン氏を援護射撃しました。外国の首脳が下院で演説するのは極めて異例。プーチン氏がライシ大統領を歓迎し、厚遇した証と受け取られています。

イランは核協議が不首尾に終わった場合、不倶戴天の敵であるイスラエルが核施設などに軍事攻撃を仕掛けてくると警戒しており、SU35、S400ともイスラエルに対する強力な抑止力になると見られています。イスラエルはロシアと良好な関係を維持しており、今後、イランへの兵器売却を思いとどまるようロシア側に働きかけることになるでしょう。

首脳会談での具体的な合意については公式的には発表されていないですが、今年で期限切れとなる「経済・安全保障協力協定」の枠組みを更新することで一致したといいます。特に安全保障面では、ロシアがイランに対し100億ドルに上る兵器売却で合意したとされ、イランが強く求めていた最新鋭戦闘機SU35や地対空ミサイルS400も含まれている模様です。

新協定のモデルになったのはイランが昨年3月に中国と締結した戦略協定です。

中国がイランのエネルギー、通信、交通などの分野に総額4000億ドル(約44兆円)を投資するのと引き換えに、イラン原油を安価で安定調達するというのが骨子。制裁で苦しむイランにとっては国益にかなう協定です。イランはロシアからの兵器購入費約100億ドルの支払いについては、中国からの石油代金の未回収分でまかなうのではないかと観測されています。

イランとロシアによる関係強化により、世界の対立軸はこの2カ国に中国を加えた「反米枢軸」と「米国連合」という図式に収れんしつつあります。とりわけ、米国の制裁に対抗しようとするイランの動きが目立ちます。イランは昨年9月、ライシ師がタジキスタンで開催された「上海協力機構(SCO)」首脳会議に出席、機構への正式加盟が承認されたのですが、これもそうした動きの一環です。

SCOは中国とロシアが主導し、8カ国で構成。オブザーバーで参加してきたイランは9番目の加盟国となります。プーチン氏にとってもイランとの関係強化を世界に見せつけることはプラスです。

中露とイランは3カ国枢軸を誇示するようにこのほど、ペルシャ湾の外側のオマーン湾付近で海軍の合同演習を実施しました。

ウクライナ危機も、「3カ国枢軸」と「米国連合」という図式の中で見ていく必要があります。ただ、その中で一番の強敵はやはり中国です。ただ、この悪の3枢軸は互いに協力しあうでしょう。

たとえば、ロシアによるクリミア併合以降、中国がロシアに代わってウクライナ最大の貿易相手となったり、友好協力条約を結びウクライナが核の脅威に直面した場合、中国が相応の安全保障を提供するとしてロシアのウクライナ攻撃では中国がウクライナを擁護するような素振りをみせましたが、今後もこのような行動をとるでしょう。

このようなことが、今後ウクライナ以外でも行われるでしょう。この三者は互いに連携しており、現実には「3カ国枢軸」にとって最も良いように動くことになるでしょう。ロシアは、中国やイランに軍事技術の提供をある程度強化するかもしれません。

バイデンを含む民主党も、無論共和党にとっても選挙、特にこの秋の中間選挙は重要でしょう。ただ、バイデンは「ワグ・ザ・ドッグ」だけで動くのではなく三国枢軸こそが、本当の敵であると見極めるべきです。共和党もそうです。両者とも選挙に勝つために、悪の3枢軸を利することがあってはならないです。


バイデン政権が同盟国との関係を強化しているのはいかに超大国とはいえども米単独で「反米枢軸」と対峙していくのは財政的にも軍事的にも耐え切れなくなり、応分の負担を要求せざるを得ない、というのが実情でしょう。特に日本は対中、対ロシアの最前線に位置し、同政権にとっての日本の存在価値は格段に上がりました。今後も日本が米戦略にさらに組み込まれていくでしょう。

しかし、昨日も述べたように、これは同時に日本の存在感を高めるチャンスでもあるのです。

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2022年1月24日月曜日

日米、沖縄南方で異例の大規模共同訓練の狙いとは 中国や北朝鮮の軍事的覇権拡大の姿勢に警戒か 識者「演習が有事のテストになる」―【私の論評】米・中露対立は日本にとって大きな懸念事項だが、存在感を高める機会ともなり得る(゚д゚)!

日米、沖縄南方で異例の大規模共同訓練の狙いとは 中国や北朝鮮の軍事的覇権拡大の姿勢に警戒か 識者「演習が有事のテストになる」

海上自衛隊が米海軍と実施した共同戦術訓練。右端は米原子力空母、エーブラハム・リンカーン

 海上自衛隊は23日、米海軍と沖縄南方で17~22日に共同戦術訓練を実施したと発表した。欧米諸国がロシアのウクライナ侵攻に警戒心を募らせるなか、北朝鮮は今年に入って極超音速ミサイルや弾道ミサイルの発射を繰り返している。中国が台湾への軍事的圧力を強める可能性も指摘される。日米共同訓練の狙いに迫った。


 注目の共同訓練には、米海軍の原子力空母「カール・ビンソン」と、同「エーブラハム・リンカーン」、強襲揚陸艦「アメリカ」と、同「エセックス」、ドック型揚陸艦1隻、巡洋艦2隻、駆逐艦3隻が参加。海自からはヘリコプター搭載型護衛艦「ひゅうが」が参加した。

 これに対し、中国や北朝鮮は軍事的覇権拡大の姿勢を崩さない。

 台湾国防部は23日、中国軍機が相次いで台湾南西の防空識別圏(ADIZ)に進入したと発表した。進入したのは、戦闘機「殲16」24機と、戦闘機「殲10」10機、爆撃機「轟6」1機、対潜哨戒機「運8」2機、通信対抗機「運9」2機の合わせて39機とみられる。日米共同訓練が始まった17日から4日連続で台湾のADIZに侵入している。

 北朝鮮は今年に入り極超音速兵器などを4回、計6発発射している。

 日米、中国の動きをどうみるか。

 軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「年明けから動きをみせる北朝鮮を含め、日米は中国に警戒心を強めている。空母と揚陸艦を合わせて5隻が参加する訓練は異例の規模だ。特に米国は、北京冬季五輪終了後、ロシアのウクライナ侵攻に乗じて、中国が東アジアで動き出すとみており、演習が有事へのテストになる」と指摘した。

【私の論評】米・中露対立は日本にとって大きな懸念事項だが、存在感を高める機会ともなり得る(゚д゚)!

上の記事にもあるように、中国軍機が相次いで台湾南西の防空識別圏(ADIZ)に進入した意図は、日米の訓練実施を受けて中国の兵力、火力を見せつける意図があった可能性があります。

台湾のシンクタンク、国家政策研究基金会の掲仲副研究員は、進入した機数が過去最多レベルではなく、進入した空域も台湾の南西に集中しており日米が訓練を行った範囲からは離れていることから、弱腰になっていないという態度を示すと同時に、意図しない事態の発生を避ける狙いがあったとの見方を示しいます。

米海軍の異例の行動は、これだけではありません。香港(CNN)によれば、 米海軍のオハイオ級弾道ミサイル原子力潜水艦「ネバダ」が最近米領グアムに寄港しました。アナリストからはこれについて、インド太平洋地域の緊張が高まる中で同盟国と敵の双方にメッセージを送る動きだとの指摘が出ています。

トライデント弾道ミサイル20基と核弾頭数十発を搭載するネバダは15日、グアムにある海軍基地に入港しました。弾道ミサイル原潜がグアムに寄港するのは2016年以来で、寄港が発表されるのは1980年代以降でわずか2度目です。

米海軍のオハイオ級弾道ミサイル原子力潜水艦「ネバダ」が先週末、米領グアムに寄港した

米海軍の声明では今回の寄港について「米国と地域の同盟国の協力を強化し、米国の能力や柔軟性、即応態勢、インド太平洋地域の安全と安定に対する継続的な関与を示すものだ」としています。

通常、米海軍が保有する弾道ミサイル原潜14隻の動きは極秘にされています。これらの潜水艦は原子力を動力とするため一度に数カ月連続で潜航することが可能で、航続時間を制約する要素は150人を超える乗組員の生活維持に必要な物資のみとなる。

海軍によると、オハイオ級潜水艦は平均77日間にわたって海にとどまり、その後はメンテナンスや補給のために約1カ月港に滞在します。

ワシントン州バンゴーやジョージア州キングズベイにある母港の外では艦影が撮影されることさえまれです。徹底した秘密主義の結果、弾道ミサイル原潜は「核の3本柱の中で最も生残性の高い部分」となっています。核の3本柱にはこれ以外にも、米本土のサイロに格納される弾道ミサイルや、B2やB52のような核兵器を搭載可能な爆撃機があります。

ただアナリストによると、台湾の地位を巡る米中間の緊張がくすぶり、北朝鮮がミサイル実験を強化する中、米国は弾道ミサイル原潜を展開することで中国や北朝鮮には不可能なメッセージを発することができるといいます。北朝鮮は潜水艦プログラムを開発中ですが、まだ実戦配備レベルに達していません。

米海軍の元潜水艦長で、現在は新アメリカ安全保障センターでアナリストを務めるトーマス・シュガート氏は「意図的かどうかはともかく、弾道ミサイル原潜はメッセージを送っている。米国は100発あまりの核弾頭を相手の玄関先に配置することができるが、相手はそれを知ることすらないか、あるいは大した対応が取れない、というメッセージだ。これが逆の立場になることはありえず、そうした状況はしばらく続く」と述べました。

北朝鮮による弾道ミサイル原潜の開発計画はまだ始まって間もないです。中国は推定6隻の弾道ミサイル原潜を保有しますが、米海軍の保有数には見劣りしますし、米海軍の戦力とは比較にならないという分析が多いです。

また戦略国際問題研究所の専門家による2021年の分析によると、中国の弾道ミサイル原潜は米国のものほどの能力はありません。中国の094型弾道ミサイル潜水艦は水中作戦時米潜水艦の倍の騒音を発するため探知されやすいほか、ミサイルや弾頭の搭載量でも劣るというのが、米戦略国際問題研究所(CSIS)の分析です。

他にも異例な動きはあります。米国防総省は24日、原子力空母2隻の打撃群が訓練のため南シナ海に入ったと明らかにしました。軍幹部は、同盟国を安心させ、「有害な影響に対抗」する決意を示すのが目的と述べました。

国防総省によると、「カール・ビンソン」と「エイブラハム・リンカーン」の原子力空母打撃群が23日に南シナ海に展開し始めました。

上の記事にもあるように、「カール・ビンソン」と「エイブラハム・リンカーン」は沖縄南方で17~22日に日本と共同訓練を行っていますから、この共同訓練が終わってから、すぐに南シナ海に展開したということになります。

この展開力も米軍の強みです。巡航速度がはるかに遅い中国の空母にはできない離れ業です。

米原子力空母「エイブラハム・リンカーン」クリックすると拡大します

両打撃群は、対潜水艦、空や海上の戦いを想定した訓練を実施します。

米海軍は23日、両打撃群が台湾の東岸沖のフィリピン海で海上自衛隊と訓練を実施していると明らかにしました。

一方北大西洋条約機構(NATO)は24日、ロシアによるウクライナ侵攻に備え、東欧に臨時の部隊を待機させ、艦隊や戦闘機を増派すると発表しました。ウクライナのNATO加盟を警戒するロシアは、NATO不拡大を確約するよう米欧に要求しています。バイデン政権は今週、ロシアの提案に文書で回答しますが、確約は拒絶する方針です。

ロシアはウクライナ国境周辺に軍部隊を展開しています。米国務省は23日、在ウクライナ米大使館職員の家族に国外退避を命じました。英国も同様の措置を取りました。

22日、ウクライナの首都キエフで、訓練を受ける同国兵士ら

バイデン米大統領は19日、就任から20日で1年となるのを控え、ホワイトハウスで記者会見した。緊迫するウクライナ情勢について「ロシアはウクライナに侵攻するだろう」との「推測」を示したうえで、その場合、「深刻な代償を支払うことになる」と大規模な経済制裁を発動する意向を強調し、ロシアをけん制しました。

 バイデン氏は会見で、ロシアのプーチン大統領が外交による緊張緩和か軍事侵攻かの「選択」を求められていると説明。侵攻を選んだ場合の制裁として、「ロシアの銀行はドル取引ができなくなる」と述べた。世界の主要金融機関が参加する国際銀行間通信協会(SWIFT)からの排除を念頭に置いた発言とみられます。

これについては、米国家安全保障会議(NSC)は、西側諸国が「国際銀行間通信協会」(SWIFT・本部ベルギー)システムからロシアを遮断する可能性を排除したとする報道を否定しました。

中国への強硬姿勢に対しての米国内での支持は大きいです。「中国に厳しく」という世論はますます強く、対中国政策で弱気な対応を見せれば、それはバイデン氏の民主党政権にとって国民の支持を失いかねない局面に直結することになります。

秋には中間選挙があります。2021年11月の2つの州知事選挙、バージニア州ではバイデン大統領が応援に入ったにもかかわらず民主党候補が破れ、ニュージャージー州でも民主党の現職知事が大苦戦して辛くも逃げ切りました。中間選挙の結果、そして次期大統領選の結果によっては超大国の指導者がまた変わるかもしれません。

2022年の世界も“世界唯一の超大国”と言われる米国を中心に動くでしょう。2月の北京冬季五輪パラリンピックを見据えた外交戦術、さらにロシア軍が国境に展開して緊張が続くウクライナ情勢など外交の課題は山積です。その一方、苦戦している国内での支持率。バイデン政権2年目は、秋の中間選挙に向けて、国内外の多くの緊張と共に歩んでいくことになる。

移民政策でも、アフガン撤退でも明らかに失敗したバイデン、今年の中間選挙のことを考えると、中露に対して弱い姿勢は見せられません。何らかの形で、失地を回復する必要があります。

プーチン大統領がウクライナ国境に軍を展開して、武力で威嚇して圧力をかけているのは、おそらく、バイデン大統領の国内の弱い支持基盤を見越して、ウクライナのNATO加盟を阻止し、欧州でのNATOの中距離ミサイル配備をけん制することで、自国の安全保障をより確実にすることが狙いでしょう。

しかし、それが達成されなくとも、欧州の同盟国との連帯をトランプ前政権の違いとして打ち出していきたいバイデンの指導力が低下して、2024年の大統領選挙で、ロシアに「優しい」トランプ大統領が再選されることなど、米国の弱体化と米欧の連帯の弱体化を期待する複合的な狙いがあると考えられます。

中国にとっても、このような米国の同盟国との紐帯を弱める方向性は、自らの利益に沿うものであり、逆に日本にとっては懸念すべき要素です。

かつての日本にとって日米同盟とは、自国を守るための最強のツールとしての意味しかありませんでした。ところが、今や、日米同盟を機能させることは、米国の窮地を救い、長期的な国際秩序の方向性を決める重い課題となっています。その意味で日本の責任は重いと同時に、日本にとっては存在を高める大きな機会でもあります。

その意味でも、日米の沖縄南方で異例の大規模共同訓練は大きな意義のあるものであったと思います。

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2022年1月23日日曜日

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ウクライナで政権転覆画策か ロシアで動き、英が「異例発表」

18日、ロシアが実効支配するウクライナ南部クリミア半島を移動するロシア軍の装甲車両の列

 英外務省は22日、ロシアでウクライナに親ロシア指導者を就任させようとの動きがあると発表した。親ロシアのヤヌコビッチ元政権下で最高会議議員だったムラエフ氏が最有力視されているという。トラス外相は「ウクライナの政権転覆を狙うロシアの活動が明るみに出た」との声明を出した。機密情報の発表は異例だ。

トラス外相

 ロシアはウクライナ国境周辺に推定10万人の軍隊を展開。21日に米ロ外相が直接会談したが、緊張緩和への具体的合意はなかった。ロシアの軍事侵攻の可能性に危機感を抱く英国は阻止へ外交努力を続け、情報収集を強化している。ロシア外務省は「偽情報」だと非難した。

【私の論評】米国が「ウクライナ反浸透法」を成立させ、露の現状変更を許さなければウクライナ問題は解決する(゚д゚)!

ロシアのウクライナ侵攻については、昨年暮にどうなるか予想しました。その結論は以下のようなものです。

一人あたりGDPでは、韓国を大幅に下回る現在のロシアでは、そもそもウクライナ全土を併合するような大戦争はできません。それに、ロシア軍の兵站は鉄道に頼っているため、鉄道網が破壊されると、補給ができなくなるという致命的な欠陥があります。

それに、現在のロシアは、インフレの加速したため、中銀は金融引き締めの度合いを強めているほか、感染再拡大による影響も顕在化するなど、足下では幅広く企業マインドが下押しされるなど景気の悪化が懸念されています。

中略

ロシアによるウクライナ侵攻もかなり確率が低いと思います。ただ、状況が悪化した場合、来年はドネツク州への侵攻はあるかもしれませんが、年明けすぐということはないでしょう。ただ、確率は低いです。
そうして、現在のロシアが、ウクライナを屈服させて従わせるのは至難の業であることも、この以前このブログに掲載しました。

これを裏付ける情報もあります。ロシア国防省は昨年4月23日、ロシアが実効支配するウクライナ南部クリミア半島に演習を名目に増派していた部隊が撤退を始めたと明らかにしています。ロシアのショイグ国防相が同年同月22日、部隊に帰還命令を出していました。ショイグ氏は、ロシア南部のウクライナ国境付近に集結している部隊にも帰還を命じていました。

ウクライナのクリミア半島で上陸訓練をするロシア軍兵士ら

さらに、ロシアはカザフスタンに派遣していた小規模な空挺部隊を早々と引き上げました。その理由は、ロシアはカザフスタンとウクライナでの両作戦を実施するだけの力はないからです。

そうして、中露両国が恐れているのは、以前もこのブログで指摘したように、以下のようなものだと推測できます。

中露としては、大統領がトカエフだろうが、誰だろうが、とにかく安定していて欲しいというのが本音でしょう。トカエフ政権が崩壊するようなことでもあれば、力の真空が生まれます。そこに乗じて米国が暗躍し、中露の両方に国境を接するカザフスタンに親米政権でも樹立されNATO軍が進駐することにでもなれば、それこそ中露にとって最大の悪夢です。

米国にとっては、アフガニスタンでの失地を大きく回復することになります。失地回復どころか、アフガニスタンは現状では、中国とは一部国境を接していますが、ロシアは国境を接しているわけではないのですが、カザフスタンは両国と長い国境線をはさんで隣接しています。

中露にとっては、かつての米国にとってのキューバ危機のように、裏庭に米軍基地ができあがることになります。それ以上かもしれません。冷戦中にカナダやメキシコに、親中露政権が樹立され、中露軍基地ができるような感じだと思います。そこに長距離ミサイル等を多数配備されることになれば、中露は戦略を根底から見直さなければならなくなります。ロシアはウクライナどころではなくなります。中国は海洋進出どころでなくなるかもしれません。

結局ロシアが、ウクライナに拘るのは、ウクライナがNATOに加わることを是が非でも阻止したいということに尽きると考えられます。

ウクライナがNATOに加われば、ロシアはNATOと直接国境を接することになり、これはロシアにとっては大きな脅威です。それに、現在のロシアでは、米国抜きのNATOと戦っても勝てる見込みはありません。

無論ロシアには、核もあり、旧ソ連から継承した軍事技術もあり、侮れる相手ではありませんが、それにしても通常兵器による戦いでは、初戦では軍事技術に優れたロシアが勝利をおさめるかもしれませんが、本格的な戦争になれば、そのための兵站を維持できるだけの経済力はありません。

プーチンとしては、ウクライナを親露的にできれば、軍事的にウクライナに侵攻しなくても、NATOの脅威を取り除くことができます。ロシアでウクライナに親ロシア指導者を就任させようとの動きはプーチンの立場にたてば、当然といえば当然です。

これは、台湾と中国との関係にも似たところがあります。中国も台湾に武力で侵攻するのは難しいことをこのブログに掲載したことがあります。それは、中国軍の海上輸送力が脆弱であり台湾に一度に十分な兵力を送ることができず、小出しにするしかないからであるとしました。

そうすると、小出しにした人民解放軍は、その都度台湾軍に個別撃破されることになります。これでは、中国は海上輸送力を劇的に改善するまでは、台湾に侵攻できないのははっきりしています。

しかし、それでも中国にできる方法があります。それは、人民解放軍をこっそりと目立たないように民間人のようにみせかけて、少しずつ台湾に送り込むことです。あるいは、台湾人でも中国に親和的な人々を取り込んで、こっそりと軍事訓練をして、人民解放軍に組み込むことです。

中国は、かつて南シナ海でサラミ戦術で成功しています。台湾併合もサラミ戦術ですこしずつ台湾内に人民解放軍を増やしていけば成功することもしれません。

両者合わせて30万人も超えれば、クーデターなどのみせかけて、台湾を絡め取ることができます。直接軍事力を用いなくても、このような方法なら長い年月をかけて、台湾を併合することができるかもしれません。

そうして、これに米国が対抗するためには、私は米国が「台湾反浸透法」を成立させて、台湾への中国の不当な浸透があった場合には、制裁を課すなどの措置をすべきと思います。さらに、中国が台湾に人民解放軍を合法的にみせかけて送り込む等の挙に出た場合は、一定数以上の米軍を台湾に派遣する等の旨をはっきりさせるべきでしょう。

このようなやり方を、ウクライナにも適用すべきと思います。米国が「ウクライナ反浸透法」を成立させて、ウクライナへのロシアの不当な浸透があった場合には、制裁を課すなどの措置をすべきと思います。無論、ロシア産ガスを取引材料にした場合もそのような制裁を課すべきと思います。

ただ、それ以前に、EUはロシア産ガス以外のエネルギー源の多様化も進めるべきでしょう。これも、ロシアに対抗する措置となり得ます。

さらに、ロシアがウクライナに非合法な手段で親ロシア指導者を就任させようとの動きをした場合、さらにロシアがウクライナにいかなる理由であれ、軍を派遣すれば一定数以上の米軍もしくはNATO軍をウクライナに派遣する等の旨をはっきりさせるべきでしょう。無論、これはウクライナの了承も得る必要があります。

無論、これはバイデン大統領が主張するように、ロシアによる現状変更を一切許さないという前提で行うべきでしょう。これを裏返せば、米国も現状変更をしないことを意味します。

バイデン米大統領とプーチン露大統領

このような条件のもとで、バイデン氏がプーチン氏と交渉すれば、ウクライナを巡る緊張がとける可能性は十分あると思います。

バイデン政権も現状では中国対応が最優先課題であり、ロシアが現状変更しないと確約し、それを遵守すれば、ことさら事を荒立てたくはないでしょう。

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2022年1月11日火曜日

カザフ、ロシア主導部隊が2日後に撤退開始 新首相選出―【私の論評】中露ともにカザフの安定を望む本当の理由はこれだ(゚д゚)!

カザフ、ロシア主導部隊が2日後に撤退開始 新首相選出

カザフスタンのトカエフ大統領は11日、スマイロフ前第1副首相(写真左)を首相に任命した。議会下院は直ちに同氏を首相に選出した。北京で2019年3月撮影

カザフスタンのトカエフ大統領は11日、抗議デモを鎮圧するため先週派遣を要請したロシア主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構(CSTO)」の部隊が2日後に撤退を開始すると表明した。

CSTOの平和維持軍の主要任務が無事終了したとしている。撤退は10日間で完了する見通し。

これに先立ち、大統領はスマイロフ前第1副首相を首相に任命。議会下院は直ちに同氏を首相に選出した。

大統領は資産格差の是正を進め、鉱山会社からの税収を増やすと表明。政府調達で不正をなくす意向も示した。

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今回の騒乱の背景にあるのは、燃料価格の値上げなどといった単純な経済問題ではないようです。1991年にカザフスタンが旧ソ連から独立した時から2019年3月まで、28年にわたって初代大統領を務めてきたヌルスルタン・ナザルバエフと、2代目のトカエフ現大統領との雌雄を決する権力闘争とみるべきでしょう。

ヌルスルタン・ナザルバエフ氏

土着派で剛腕なナザルバエフ前大統領と、国際派でインテリのトカエフ大統領は、元々馬があわず、この3年近く、両者はつばぜり合いを続けてきました。ナザルバエフはそもそも、トカエフを後継者にしたくなかったようです。ところが、トカエフはロシアと中国の後ろ盾を得て、大統領の座を射止めたようです。

今回の騒乱に乗じて、トカエフ大統領は、ナザルバエフ派を一掃しようとしているのでしょう。1月5日、トカエフ大統領はテレビで国民向けに演説し、ナザルバエフの国家安全保障会議の終身議長職を解き、自らが議長に就任したと発表しました。おそらく、これから起こるのは、ナザルバエフ前大統領の身柄拘束だとみられます。

今回の騒乱が起きるや、トカエフ大統領は8日には情報機関の国家保安委員会が、ナザルバエフ氏の最側近、カリム・マシモフ前委員長を国家反逆罪で拘束したと発表しました。さらに、マシモフ氏の元側近で国家保安委員会のマラト・オシポフ副議長とダウレト・エルゴジン副議長を共に解任したと明らかにしました。これは前述のように、いずれナザルバエフ逮捕まで持って行こうとしていると見るべきでしょう。

トカエフ氏は旧ソ連時代に、モスクワ国際関係大学で中国語を専攻しています。その後、ソ連外務省に入省、1983年に北京語言大学に留学しています。1984年からソ連が崩壊する1991年まで、中国のソ連大使館で外交官を務めていました。中国語は流暢で、後にCCTV(中国中央広播電視総台)のインタビューを、通訳なしで受けたこともあります。

トカエフ氏は1992年に、独立した母国カザフスタンの外務次官になり、1994年には外務大臣になりました。外務大臣は、1994年から1999年までと、2002年から2007年まで、計10年も務めています。その間、中露とのパイプ作りに励み、2013年に上院議長に就任しました。

トカエフ大統領

ロシアのプーチン政権は、トカエフ大統領に与したようです。ナザルバエフ等よりも、元ソ連
外務省の外交官であるトカエフの方が、よほど信頼できるからでしょう。だからこそ、初めてCSTOを派遣したのでしょう。

ロシア軍は8日、20機以上の大型輸送機イリューシン76を使い、ロシア西部イワノボ州から兵士をカザフに輸送し始めたと発表した。これに先立ち、急襲を得意とする精鋭の空挺くうてい部隊を送り込んでいました。CSTOからカザフに派遣された兵士の総数はベラルーシやタジキスタンを含む5カ国の約2500人ですが、大部分はロシア兵です。

空挺部隊というと、以前にもこのブログに掲載したように、後続の陸上部隊が到着することを前提として、ピンポイントで、橋頭堡を構築することなどが主任務です。後続部隊が来なければ、限られた戦力では持ちこたえられません。しかも、今回は空挺師団ではなく、あくまで空挺部隊で総勢2500人です。

ロシアのTVの画面などでは、多数の装甲車が並んだ画像やイリューシンなどを写してさも、大部隊を投入するようにみせかけていましたが、これはロシアのプロパガンダに過ぎません。そもそも、2500人の兵しか送らないということは、カザフスタンで本気で戦争をしようなどとは、鼻から考えていなという証拠です。本気で戦争をする気であれば、今頃後続部隊が陸路でカザフスタンに向かっているはずです。

大型輸送機イリューシン76に乗り込む空挺部隊

それができない理由がロシアにはあります。まずは、現状ではウクライナ問題があります。現状では、一人あたりのGDPでは韓国を大幅に下回るロシアは、ウクライナとカザフスタンの両方で同時に、大規模な作戦を行うだけの力はありません。

だからといって、優れた軍事技術を持ち、旧ソ連の核兵器を継承するロシアを侮ることはできません。現在でも、全世界を破壊してもまだ、ありはまるだけの核兵器を有しているのです。しかし、軍事力で外国に攻め込むとか、外国を制圧するということになれば、話は別です。その力はほとんどありません。自国の長大な国境線を守ることすら難しいです。

プーチン大統領は10日、ロシアが主導する旧ソ連諸国の集団安全保障条約機構(CSTO)の首脳会議で、政府に対する抗議デモが発生したカザフスタンを外国が後ろ盾するテロリストから守ることができたとして勝利を宣言しました。同時に、他の旧ソ連諸国もCSTOが守ると表明しました。

カザフスタンの抗議デモについては「破壊的な内外の勢力が状況を利用した」との見方を示し、「政権を揺るがす試みは許さない」と述べました。ただ、内外の勢力について、具体的には述べませんでした。

中国も基本的にはロシアと同様の姿勢でしょう。第一に、2月4日に北京冬季オリンピックの開幕を控えています。そんな時、隣国で内乱など起こってほしくないでしょう。第二に、あのような暴動が、国境を挟んだ新疆ウイグル自治区で起こってほしくないでしょう。

トカエフ政権が国民にあまり無慈悲なことをすると、今度は新疆ウイグル自治区の150万人のカザフ族が黙っていないでしょう。ともかく、一刻も早く騒動が収まってほしいと願っているでしょう。

習主席は7日、トカエフ大統領へのメッセージで、「大統領は重要な時に思い切って強力な措置を取り事態を速やかに沈静化させた」と評価したうえで、「政治家としての責任を示した」と強調していました。

中露としては、大統領がトカエフだろうが、誰だろうが、とにかく安定していて欲しいというのが本音でしょう。トカエフ政権が崩壊するようなことでもあれば、力の真空が生まれます。そこに乗じて米国が暗躍し、中露の両方に国境を接するカザフスタンに親米政権でも樹立されNATO軍が進駐することにでもなれば、それこそ中露にとって最大の悪夢です。

米国にとっては、アフガニスタンでの失地を大きく回復することになります。失地回復どころか、アフガニスタンは現状では、中国とは一部国境を接していますが、ロシアは国境を接しているわけではないのですが、カザフスタンは両国と長い国境線をはさんで隣接しています。

中露にとっては、かつての米国にとってのキューバ危機のように、裏庭に米軍基地ができあがることになります。それ以上かもしれません。冷戦中にカナダやメキシコに、親中露政権が樹立され、中露軍基地ができるような感じだと思います。そこに長距離ミサイル等を多数配備されることになれば、中露は戦略を根底から見直さなければならなくなります。ロシアはウクライナどころではなくなります。中国は海洋進出どころでなくなるかもしれません。

カザフスタン情勢は、プーチンや習近平にとって、鬼門ともいって良いような、恐るべき地政学上の脅威です。

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2021年12月25日土曜日

岸田首相「1月訪米」“絶望” 外相・防衛相見送り、2プラス2はオンラインに切り替え 識者「ボイコット表明の遅れ影響」―【私の論評】岸田政権は、安倍・菅政権の方針を学び踏襲し両政権ができなかったことを成し遂げた後に独自カラーを出せ(゚д゚)!

岸田首相「1月訪米」“絶望” 外相・防衛相見送り、2プラス2はオンラインに切り替え 識者「ボイコット表明の遅れ影響」

バイデン米大統領は、岸田首相に不信感を持っているのか

 林芳正外相と岸信夫防衛相が来年1月上旬に予定していた訪米を見送る方向で調整に入った。米国側の提案で、新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の感染拡大を理由にしている。岸田文雄首相と、ジョー・バイデン米大統領による初の対面による日米首脳会談の1月開催も絶望的となった。岸田首相はやっと、北京冬季五輪の「外交的ボイコット」を表明したが、遅すぎて米国の不信感を高めたとの指摘もある。

 産経新聞は25日朝刊で、1月7日に開催予定だった日米外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)が、米国側からオンライン形式に切り替えるよう提案があったと報じた。

 菅義偉政権下の今年3月、東京で開催された日米2プラス2では、「自由で開かれたインド太平洋」の推進などで一致し、年内に改めて開催することで合意していた。

 バイデン氏は今月6日、中国当局による新疆ウイグル自治区などでの人権弾圧を受けて、北京冬季五輪に政府代表を派遣しない「外交的ボイコット」を表明した。英国やオーストラリアなどがすぐ同調した一方、岸田政権は「適切な時期に」「国益に照らして…」などと決断を先延ばし、24日になって表明した。

 首相周辺は「(米中間で)微妙なバランスをとった」と語っているが、人類の普遍的価値である「人権」と「損得」をてんびんにかけた、「米中二股外交」ではないのか。

 同盟国が即賛同しないことで、「米国の求心力を弱め、事実上、中国共産党を助けた」という指摘もある。

 日米2プラス2が対面で開催されなければ、外相らの微妙な事前調整も困難となり、岸田首相の通常国会開会前の「1月訪米」は相当厳しい。

 ジャーナリストの長谷川幸洋氏は、「日本が東アジアの当事者にもかかわらず、米国は『岸田首相は、ここまで中国に配慮するのか』と驚いているはずだ。2プラス2のオンライン開催は、米国の不快感を示すサインだ。『外交的ボイコット』の表明が、あまりにも遅れたことが影響している。これで1月の日米首脳会談は絶望的とみていい。岸田首相は10月に就任したが、通常国会閉会後の来年5月以降まで日米首脳会談が開催されない、極めて異例の事態に陥りそうだ」と語った。

【私の論評】岸田政権は、安倍・菅政権の方針を学び踏襲し両政権ができなかったことを成し遂げた後に独自カラーを出せ(゚д゚)!

米国での感染者数は増加傾向にあり、平均で1日191,326人の新規感染者が報告されています。1日平均人数のピークだった 1月8日の76%になります。

パンデミック(世界的大流行)開始以降、同国では感染者52,134,735人、死者819,218人が報告されています。以下に最近の日時統計のグラフを掲載しておきます。


確かに直近では、増えつつあることが認識できます。では、菅義偉政権下の今年3月、東京で開催された日米2プラス2(日米外務・防衛担当閣僚)時にはどうだったかといえば、以下のグラフが示すように、7間平均の死者数は3月15日では、7人ということで、かなり収束していました。


菅総理は、4月15日から16日まで、米国を訪問しています。その頃には死者数は2000人くらいとなっており確かに多くはありましたが、訪問の意思決定はその前になされており、その時には、感染者数・死者数とも少なかったといえます。

そのため、米国が「オミクロン株」などを理由に、2プラス2をオンラインで開催することにしたのは、格別不自然とは言えないと思います。

ただ、岸田首相は10月に就任しましたが、通常国会閉会後の来年5月以降まで日米首脳会談が開催されないという事態になりそうなことはあながちありえなくもない状況になってきました。

なぜなら、「外交的ボイコット」を表明したのが、24日と遅れたこともありますが、それ以前に林外相がしでかした、外交的不手際です。それは、このブログにも最近掲載したばかりです。その記事のリンクを以下に掲載します。
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林外相

詳細は、この記事をご覧いただくものとして一部を以下に引用します。
林芳正外務大臣は11月21日、フジテレビの番組に出演し、18日の中国・王毅外相との電話協議のなかで、中国訪問を打診されていたことを明らかにしていました。応じるかどうかについては、「現時点では何も決まっていない」としていました。

公式訪問は、招いた側が招かれた側の同意か感触を得たうえで発表するのが、普通の外交儀礼です。招いた側が友好姿勢を示す一方、応じるかどうかの選択を相手に委ねるのが普通です。ところが、今回は招かれた側の日本の外務大臣が3日遅れで、一方的にテレビで公表しました。これだけでも、十分に異例でした。

このことがあった上で、さらに 岸田政権の北京冬季五輪の「外交的ボイコット」を表明したが、遅すぎて米国の不興を買ってしまったおそれが十分にあります。

南アフリカ政府は24日、新型コロナウイルスの陽性者と接触しても無症状の場合は隔離や検査は不要との新方針を発表しました。コロナを巡る状況を勘案し、封じ込めから緩和策への移行が妥当としています。

南ア保健省は新たな方針の要因として、オミクロンなど感染力の高い変異株の出現、人口の60%がワクチン接種や感染したとの推計、無症状者が多いことや診断症例が少ないことなどを挙げました。南アでのオミクロン株騒ぎも収束しつつあります。

そうなると、5月あたりには米国でも収束している可能性があります。いまのところ、米国でコロナ禍により、感染者・死者数が増えているのは事実なので、岸田政権が米国の不興を買ったかどうかは、まだはっきりしない部分があります。

しかし上の記事でも指摘されているように、通常国会閉会後の来年5月以降、米国でコロナ感染が収束していても、日米首脳会談が開催されないということにでもなれば、極めて異例であり、米国の不興を買ったのは間違いないとみて良いでしょう。

そうならないように、岸田政権は今からでも失地を回復する努力をしていただきたいものです。

そうして、岸田政権はまずは、経済政策、外交政策に関しては、安倍・菅政権の政策をしばらくは踏襲するべきです。安倍・菅政権の政策がすべて満点とはいいませんが、方向性としては良かったです。

安倍政権は結局二度も増税してしまったとか、菅政権においては、コロナ病床確保には失敗たなどの失敗はありました。しかし、安倍政権下では、雇用が劇的に改善ました。菅政権においては、結局医療崩壊に陥ることもなく、ワクチン接種を強力に推し進め、結果としてコロナ収束に導いたほか、経済対策においては先進国中もっとも失業力を低くしたという偉業を達成しました。

外交政策においては、安倍政権においては、全方位外交で、特に中国包囲ということで成功しました。菅政権においては、安倍外交を踏襲するということで、目立った失点はなかったと思います。

岸田氏が属していた宏池会はしばらく総理を務める人がいなかったため、政権を担当したことがありません。その間に世界は激変しました。

そのことを考えれば、経済、外交、安全保障などの重要な政策は、まずは安倍・菅政権の政策の結果ではなく、その方針をよく研究して踏襲して、様子をみるべきでした。岸田カラーはそれ以外のことで出すべきでした。

これは、バイデン政権を参考にすべきでした。バイデン政権は現在のところ、結局トランプ政権を政策を踏襲しているところが多いです。移民政策では中途半端で、多くの国民から不興を買っています。経済対策についても踏襲していますが、さらに大きな対策を打とうとして、民主党の議員からも不興を買っています。

しかし当初は親中的政策に走るのではないかとも危惧されていましたが、対中政策に関してはトランプの政策を継承しています。バイデン政権がもしこれを外して、親中的な政策をうちだしていたら、政権の支持率は地に落ちたでしょう。

トランプのほうがより積極的だったとは思いますが、バイデンも中国に対して現状変更は絶対に許さないという厳しい姿勢で臨んでいます。

岸田政権は、まずは経済・外交政策、安全保障政策でも、安倍・菅政権の方針を真摯に学びとり、その精神まで自分のものとして、それを踏襲した上で、両政権ができなかったことを成し遂げその後に独自のカラーをだすべきでした。

安倍元総理大臣と菅前総理大臣

特に、安倍政権がなぜあのような長期政権になり得たのか、真摯に学ぶべきです。また両政権がなし得なかったことを実施することは、何もないところから始めるよりは、始めやすいですし、なぜなし得なかったのかも学べます。

岸田総理は、完全に順番を間違えてしまいました。しかし、いまならまだ間に合います。新しい資本主義なる、意味不明のキャッチフレーズは捨て去り、高市政調会長が総裁選で主張していた経済対策を参考にするとか、安倍総理の外交政策を参考にするなどして、政策の大転換をはかるべきです。

そうでないと米国の不興を買い続け、国内からも、特に保守層から不興を買ってしまうことになると思います。

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