2019年10月13日日曜日

自然災害大国ニッポン、災害で壊れたインフラ「そのまま放置」のワケ―【私の論評】令和年間は緊縮財政を捨て、公共投資に力を入れよ、現状ではそれが国富を高めることになる(゚д゚)!

自然災害大国ニッポン、災害で壊れたインフラ「そのまま放置」のワケ
もとは私たちのお金なのに…

財務省に気をつかって…

9月11日に発足した第4次安倍晋三第2次改造内閣の基本方針に、「国土強靭化」という文言が躍った。

「まず何よりも、『閣僚全員が復興大臣である』との意識を共有し、熊本地震、東日本大震災からの復興、そして福島の再生を、更に加速する。全国各地で相次ぐ自然災害に対して、被災地の復旧・復興に全力を尽くす」という。

千葉県を襲った台風15号など、自然災害による被害は枚挙に暇がない。

台風19号により一部結界した千曲川の堤防
'18年には「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」が閣議決定され、国土交通省の'20年度概算要求は7兆円を超えた。だが、どうも国交省には財務省に対して及び腰なところがある。

まず、財務省は引き続き緊縮財政一本槍で、'25年度の国・地方を合わせたPB(基礎的財政収支)の黒字化目標を譲らない。「国土強靭化」の軸はインフラ整備になるが、PB黒字化の前でこうした事業は悪者扱いになる。

インフラ整備は建設国債を財源とすることが一般的だ。赤字国債とは異なり、ただ使われるものではなく、長期的視点では社会に有用な資産を残すものだ。ところが、バランスシートの上では、建設国債もただの「借金」のような扱いになる。あくまで財務省の理屈では、インフラ整備のための建設国債発行はできるだけ避けたいのだ。

とはいえ、これだけの災害が頻繁に起こっているのだから、国交省もより強気で臨むべきなのだが、どこか財務省に遠慮がちだ。その一例が、国債マイナス金利という絶好の環境をうまく生かしていないことだ。

マイナス金利下では、国は国債を発行すればするだけ儲かる理屈だ。国債調達資金を塩漬けしてもいいが、インフラ投資にまわすのが現状では最上ではないだろうか。

国交省内には、公共投資の採択基準がある。公共投資による社会便益が費用を上回っていることが条件だ。これは先進国ではどこでも採用されている基準で、社会便益をB、費用をCとすれば、B/Cが1を超えるものが採用という数式だ。

ただし、これを計算するうえで、現在の価値と将来予測される価値を調整するために、「社会的割引率」が用いられる。詳しい説明は省くが、この割引率(4%が一般的)を適用すると、よほど計画性のない公共事業でないかぎり、B/Cは1を超える。計算上はだいたいのインフラ整備が採用されるのだ。

向こう4~5年は超低金利が続くと予想されている。それにもかかわらず、国交省は割引率を見直すことなく、一方で公共投資を「自主規制」し、財務省の緊縮財政に協力する格好になっている。国土強靭化に熱心な政治家や関係団体も、国交省役人が財務省の走狗となり、社会的に必要な投資を制限していることに気づかない。

防災のためのインフラ整備は待った無しだ。南海トラフ地震や首都直下型地震が、今後30年間で起こる確率は7割以上だという。これらに備えるうえで、マイナス金利環境は絶好のタイミングだ。

人命のかかった防災対策で財務省が緊縮を突き通す道理はなく、国交省も財務省に気を遣っている場合ではない。秋の臨時国会では両省がどのような態度を取るのか、注視する必要がある。

『週刊現代』2019年10月5日号より

【私の論評】令和年間は緊縮財政を捨て、公共投資に力を入れよ、現状ではそれが国富を高めることになる(゚д゚)!

こちらは、札幌市ですので、台風が直撃することもなく、今回の台風による被害はありませんでした。このブログの読者の方々は、全国にいらっしゃいますので、被害に遭われた方々もいらっしゃると思います。

被害に遭われた方々に、まずはお見舞い申し上げます。一日も早く復興されますことをお祈り申し上げます。
さて、振り返りますと「平成」(1989~2019年)は、“災害の時代”だったといえるのではないでしょうか。

10名以上の死者・行方不明者を出した主な自然災害だけに絞っても、その発生数は15件に上ります(下表)。


単純計算では、2年に1度は何らかの自然災害が発生し、10名以上の死者・行方不明者が出ていることになります。この数字を多いと見るか、少ないと見るかは、人によって判断が分かれるところかもしれないです。

全国の交通事故による死者数を見ると、毎年減少傾向にはあるものの、それでも3,500人以上に上ります。死者数だけを比べれば、交通事故死のほうがよほど深刻だといえるからです。

ただし、自然災害では、人が死ぬという人的な被害だけにとどまらず、建築物やインフラなどが破壊されるという物的な被害も発生します。その経済被害は、莫大な額に上ります。

東日本大震災の被害総額は16兆円以上(内閣府試算)、西日本豪雨では1兆円以上(国土交通省試算)にもなります。福岡県の年間GDPが19兆円ほど(16年県民経済計算)なので、2つの災害の経済被害は、福岡県経済が消滅するのと同等だといえます。

自然災害は国民の命を奪い、国民の経済力―ひいては国力までも根こそぎ奪います。平たくいえば、自然災害によって国民は死に、生き残った者は貧しくなるのです。
「激甚災害」に指定された九州北部豪雨(福岡県朝倉市など)による被害総額は、2,000億円(福岡県試算)近くに上りました。東日本大震災や阪神・淡路大震災(内閣府試算で約10兆円)に比べるとさすがにケタが違うのですが、ローカルな被害総額としては甚大なものです。

とはいえ、「2,000億円の被害が出た」と嘆いてばかりいても仕方がないです。取り戻さなければいけないのです。それが、災害からの復旧・復興の最も重要な中身の1つです。

復旧・復興には、被害総額と同等かそれ以上の投資が必要になります。阪神・淡路大震災には16兆円以上、東日本大震災には35兆円以上の復興関連予算がこれまでに投じられました。

「予算は国家の意思を示す」という言葉があります。国の予算を見れば、その国が何をしたいのかが見えるという意味を含んでいます。ときの首相が「内閣を挙げて復興に取り組む」などと宣言するのは単にパフォーマンスであって、実際に費用を予算に盛り込むことこそが、真の意思表示に当たります。

何をもって復興完了とするか定かではないですが、被災自治体などが策定した復興計画などが完了すれば、一応「復興は終わった」とみなすことができるようです。

それでいきますと、阪神・淡路大震災の場合は10年後の2005年度に復興が完了、東日本大震災も10年後の20年度に復興が完了する予定ということになります。九州北部豪雨の復興計画は、5年後の22年度中が目標年次です。

ちなみに、10万人を超える死者を出した関東大震災(1923年)では、発災から6年で復興事業が完了。7年後の1930年3月に帝都復興の勅語が出されています。

時間や場所、規模などが異なる災害を単純比較することはできないですが、平成の復興はスピーディーとはいえないようです。なぜ復旧に時間がかかるのかだが、単純に「国力が低いから」と考えて差し支えないと思われます。国力には、政治力、財政力、行政力を始め、危機管理能力なども含まれます。

緊縮に凝り固まった財務省

出典:国土交通省

「国力の低さ」の一例は、「公共投資額」の低さに見て取れます。上表は、1989年度から2018年度までの「平成の御世」の公共投資の推移を示すもので、しばしば引用される有名なグラフです。

これを見る限り、平成初期の投資額は増加傾向にあり、98年にピークの14.9兆円に達しました。その後は減少が続き、10年度以降は、ピークの3分の1である5兆円程度で推移しています。

なお10年度は東日本大震災が発生した年ですが、それ以降、基本的に投資を増やしていません。前半に阪神・淡路大震災、後半に東日本大震災を経験しながらも、平成年間を通して、公共投資を減らし続けてきたわけです。平成は、「災害の時代」であるとともに、「公共投資削減の時代」でもあったといえます。

日本政府は、自然災害が多発し、復旧復興や災害対策が必要なのにも関わらず、元手となる投資額を減らし続けてきたわけです。なぜ政府は、このような不可解なことをするのでしょうか。たとえば、財務省の財政制度等審議会の資料のなかに、こういう文言があります。

「公共事業については、『量』で評価する時代は終わり、選択と集中の下、より少ない費用で最大限の効果が発揮されているかという『質』の面での評価が重要な時代になっている」。

「人口減少社会の本格的な到来も踏まえれば、予算の総額を増やすということではなく、引き続き総額の抑制に取り組むなかで、日本の成長力を高める事業と防災・減災・老朽化対策への重点化・効率化を進めていく必要がある」。

この文章からは、「とにかく予算は減らす。メリットのある事業しかやらない」という強いメッセージが伝わってきます。防災関連はやらないとはいえないが、「重点化・効率化」という“クギ”を刺しています。

一見もっともらしいようにも思えますが、「本当に大事な事業で、かつ効率的にならなければ予算はつけないよ」という意図が見え隠れしています。

財務省のこうした意見は、「緊縮財政」の考え方に基づいています。財政規律(プライマリーバランス)を遵守し、いわゆる国の借金を増やさない(減らす)という政策的立場です。

この立場の是非について、このブログでは全く間違いであることをこのブログで過去に訴えてきました。それにしても、緊縮財政という明確な政策意図の下、公共投資額が減らされ続けてきたことは、多くの国民が知っておく必要があるでしょう。

「令和」を災害の時代にするな

自然災害は、前兆があれば予測はできるのですが、あらかじめ「いつ」「どこで」発生するかを予想することはできないです。そのため、災害対策は基本的に事後対応になります。今にも崩れそうな崖、ちょっと雨が降ったら溢水しそうな河川などは、予防保全的に対策を講じる必要があります。

上の記事にもあるように、政府は昨年、「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」として、人命とインフラを守るため、3年間で7兆円を投じることを決めました。何もしないよりはマシですが、事業効果は限定的だと言わざるを得ないです。

日本全国をカバーするには、事業規模が小さすぎるからです。かつての政府には「10年間で200兆円」を投資する「国土強靭化」の構想があったのですが、新たな政策は投資額比率にして約8.5%に過ぎないです。「インフラなどの機能維持」に成り果ててしまった感があります。

緊縮財政が続く限り、令和の御世でも、このような対症療法的な“行きあたりばったりな”災害対策は続いていくでしょう。それは「災害の時代」を繰り返すリスクを孕み続けていることを意味します。そのような状況下で起こった自然災害は「天災」ではなく、もはや「人災」といえるのではないでしょうか。

旧民主党、ならびにそこから派生した野党の議員などは、民主党が政権与党だった時代に「コンクリートから人」などというキャッチフレーズで、公共工事をどんどん減らしたという経緯があります。その象徴が八ッ場ダムだったともいえます。

八ッ場ダムは群馬と利根川流域の人々を救った

台風19号による河川の氾濫が相次ぐ中、国が来春の運用開始を目指し、10月1日に貯水試験を始めたばかりの八ッ場(やんば)ダムに称賛の声があがっています。

利根川水系の最上流にある八ッ場ダムは、2016年6月14日からコンクリート打設を開始し、2019年6月12日に打設完了式を開催。また、2019年10月1日には試験湛水(たんすい)が開始されたばかりでした。

本体工事がほぼ完成した群馬県長野原町の八ツ場ダム=6月12日午前9時48分

国土交通省関東地方整備局の速報によると、13日午前5時現在の水位は標高573.2メートルとなり、満水時の水位(標高583メートル)まで10メートルほどに迫ったそうです。台風によるダムの被害は確認されていません。

周辺では11日未明から13日朝までに累計347ミリの雨が降り、山間部から流れ込んだ水でダム湖の水位は約54メートルも上昇しました。水没予定地に残された鉄橋も11日時点では見えていましたが、完全に水の底に沈みました。

もし、八ッ場ダムがなかったら、群馬県が終わっていたという声もあがっています。ネット上には以下のような声が上がっていました。
「無駄な治水事業など無い」「民主党政権のままだったら下流は今頃大洪水か」「これで助かった命はたくさんあるんだろうな。現場の方、大変お疲れ様でした」
旧民主党政権が実施したパフォーマンス的事業仕分けのようなものは、百害あって一理なしといえると思います。

旧民主党の議員だった人たちは、巨大な投資をどう思っているのでしょうか。これは、私の推測ですが、ひよっとすると、巨大ダムなどに巨大な投資をすると、投資した資金はこの世から消えてしまうと思っているのではないでしょうか。

このブログの読者であれば、よもやそのような人はいないと思いますが、そんなことはありません。このような巨大なインフラ投資は、工事をすることにより、工事を請け負う会社にお金が入り、多くの人々に賃金がわたり、また政府に税金が戻ってきます。

さらには、こうした巨大インフラ工事をしたことにより地域がより安全となり、利根川水系付近にはさらに多くの人々が集まり、それまでなかった新たな事業機会が増えることになります。地域の人々がその機会を獲得して、様々な事業を展開すれば、これらの地域に新たな富が創造されることになります。

そうなると、政府が投資をしたよりもはるかに大きな富が創造され、政府も投資したよりも、さらに大きな富を税金として回収できることになります。

このようなインフラ投資を徹底して行って急速な経済発展をしたのが最近までの中国です。ただし、最近では国内のインフラ投資はほぼ一巡して、めぼしい投資先が亡くなっているのも事実です。そのため、中国政府は「一帯一路」というプロジェクトで、海外でも投資をして儲けようとしています。

「一帯一路」はこのブログでも過去に説明したように、中国政府の思惑通りにうまくいくことはないでしょうが、いずれにせよ、インフラ投資は条件を満たせば地域や政府を潤すのは事実です。習近平など現状の日本が国内に巨大インフラ投資案件がかなりあることを知れば、羨ましく思うことでしょう。そうして、単に羨ましがっているだけではなく、民間会社などを通じて北海道の土地を買い漁ったりしているようです。

昔の政治家など、マクロ経済政策に疎くて、経済対策というと公共工事によるインフラ投資だと思いこんでいる人も大勢いました。

しかし、このようなごうつくばりの政治屋たちが、利権を貪り、あまり必要もないような公共工事を行い過ぎたため、日本ではこれに対する批判が高まりました。

確かに無駄な工事などはする必要はないですが、社会便益をB、費用をCとすれば、B/Cが1を超えるもののみ採用するという方式を取り続けていれば、何も不都合は起きなかったのに、1を超えるものまで実施してこなかったというのが今日の姿です。

さらには、上にもあるように、国債マイナス金利という絶好の環境を活かしていないというのも問題です。国債はなせか、将来世代へのつけを回すものとして、忌み嫌われるようになりましたが、本来は自然災害などのときに、自然災害にあった世代だけではなく、インフラ投資の恩恵にあずかる将来世代にも応分に負担してもらい、世代間の公平を期して導入されたものです。

これも勘違いしている愚かな議員が大勢います。旧民主党の議員などは、馬渕氏や金子洋一氏などを覗いて、全員がそうです。自民党にも大勢いますが、若手で小泉進次郎などその典型例だと思います。

国債がマイナス金利であるという、絶好のタイミングを捉え、ゼロ金利になる程度までは、国債をどんどん発行し、それを財源として、令和年間は、公共投資を強力に推進すべきです。

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2019年10月12日土曜日

民主党へのしっぺ返しもあるトランプ弾劾調査―【私の論評】トランプ弾劾は不可能、禁じ手を複数回繰り出す民主党は相当追い詰められている(゚д゚)!


 9月27日、ウクライナ疑惑をきっかけに、ペロシ下院議長(民主党)がトランプ大統領弾劾調査の開始を発表した。大統領にとってこれまで以上に事態は深刻ではあるが、民主党にとっても来年の選挙で大きなしっぺ返しが来る恐れがある。 

トランプ大統領

 今までにも、モラー特別検察官による調査をはじめ、民主党の特にプログレッシブが弾劾を求める材料はあったが、ペロシ下院議長がそれをどうにか抑えてきた。しかし、トランプ大統領がウクライナのゼレンスキー大統領に対し、 議会が既に承認していた同国への軍事資金援助を遅らせ、引き換えにバイデン前副大統領の息子に絡む疑惑調査を依頼したとの内部告発をきっかけに下院議長も弾劾調査に踏み切らざるを得なくなった。

 軍や国家防衛、インテリジェンス歴のある民主党新人下院議員7名が9月23日付ワシントン・ポスト紙に投稿し、世界に安定をもたらし、アメリカの国家安全保障のために議会が割り当てた予算を大統領が個人の利益のために利用したのであれば、国家の安全を脅かし、汚職の罪は非常に重いことになり、弾劾に値すると論じたのも影響を与えた。

 弾劾訴追は、下院の単純過半数で可決となるが、上院での弾劾裁判での有罪判決には2/3が必要であり、共和党が多数の上院では現状当然不可能である。 

 ペロシ議長がこれまで弾劾調査に踏み切らなかったのは、弾劾訴追が無駄な努力となるだけでなく、来年の選挙での民主党へのしっぺ返しを恐れたためである。クリントン大統領は弾劾された史上二人目の大統領だが、下院で共和党が弾劾を可決し、上院がそれを否決した後、大統領への支持率が大きく伸びただけでなく、1998年の中間選挙で民主党が大躍進した。

 国民の弾劾への支持は充分でない。9月18日発表のポリティコ/モーニング・ コンサルト世論調査によれば、議会が弾劾調査を開始することへの賛成はわずか37%で、半分が反対である。アメリカ人は、法を非常に重視するので、法に基づいて選出された大統領を裁く、それも議会が裁くことに強い抵抗がある。いずれの党が多数を占めようと国民の議会に対する信頼が常に低いことも影響しているだろう。

 民主党支持者では数字は全く違う。次の民主党大統領予備選で票を投じるとしている有権者の68%が弾劾調査を支持し、反対はわずか20%である。この数字とウクライナ疑惑を考慮すれば、民主党指導層は弾劾調査に踏み切らざるを得なかっただろう。

 トランプ大統領の支持率は相変わらず低く、個人として嫌う率は51%と歴代大統領の中で一番高い。また、NBC/WSJ調査によれば、 トランプ大統領が再選されることに、回答者の半分がとても嫌と答えた。

 ウクライナ疑惑が発覚し、民主党指導層だけでなく、米政治の専門家たちの多くも、大統領が民主主義統治のルールを破壊し、国の安全保障を危険にさらした可能性を議会が調査する責務を遂行せざるを得ないと判断しだした。疑惑が真実であれば、他国を選挙でのライバルに泥を塗る画策に加担させるために、大統領は議会が承認した軍事・安全保障予算を利用したことになるばかりでなく、アメリカへの信頼を失墜させ、さらにはこうした 行為は以後大統領あるいは国が他国に脅される理由ともなる。上記の軍やインテリジェンス経験者である民主党下院議員7名の投稿はそれを明確に表現したと言える。

 ホワイトハウスは民主党やメディアからの圧力を受け、トランプ大統領のゼレンスキー大統領との会話記録を公開したが、これはあくまでホワイトハウスがまとめた要約でしかなく、大統領の会話記録として慣例である発言を全てそのまま記録したものではない。

 26日に明らかになった内部告発文によれば、トランプ大統領が米大統領の権力を利用し、ウクライナ大統領に圧力をかけ、米大統領選挙でのライバルに関する調査を強要することで選挙に介入させようとした。さらには、ホワイトハウスの上級官僚たちが会話記録の全容を隠すために、通常使われるサーバーからホワイトハウス外からアクセスできないサーバー に移すという隠匿行為があったと述べている。

 一方、弾劾調査はトランプ大統領の望むところ、という見方もある。混乱や怒りを招き対立を深めるのはトランプの手法であり、トランプ大統領は地盤固めのために弾劾調査を利用するだろう。親トランプ派の民主党攻撃は既に激しいものになっている。

 今後、どれだけ冷静に法にのっとった議論を展開できるかは、ペロシ議長の腕の見せ所だが、票決がどうであれ弾劾調査に対する民主党の姿勢が来年の選挙の行方に大きく影響するだろう。

【私の論評】トランプ弾劾は不可能、禁じ手を複数回繰り出す民主党は相当追い詰められている(゚д゚)!

米国では下院では過半数の賛成があれば、弾劾裁判を始められますが、最終的な評決は上院の3分の2が必要です。米国上院は共和党が与党ですから、20人程度の上院議員が寝返らないと、3分の2は取れません。

そのようなことは、現在の共和党の議員たちにできるわけなどありません。ニクソン大統領のウォーターゲート事件がありましたが、あのときニクソン氏は、弾劾されそうになったため自ら辞任しました。

リチャード・ニクソン氏

なぜ弾劾されそうになったかと言うと、当時の共和党の議員が彼を見捨てたからです。そこで、これはもう万事休すだということで辞任したのです。

しかし、いまの共和党の議員がトランプ氏を見捨てる等といえば、どうなるでしょうか。当時のニクソン氏と比較すれば、圧倒的に高い支持率のトランプ氏、それに発信力、粘り強さ、執着心、これを考えたら難しいです。

下手に弾劾に賛成してトランプ陣営を寝返りでもしようものなら、自らの支持者に離反されるおそれがあり政治生命を失ってしまう可能性すらあります。

そうすると共和党の議員の寝返りを考えている議員も、二の足を踏んで、20人も簡単に寝返ることはないでしょう。だから、弾劾などできません。裁判はできたとしても、弾劾にはならないということです。

そうなると、民主党支持者は「民主党は何をやっているのだ」となるでしょう。民主党はまさににルビコン川を渡ってしまい、難しい状況陥ってしまいました。大統領の弾劾は米国においては、禁じ手といっても良いくらいの手段なので、民主党支持者の中にもこれに反対する人も多いです、これではトランプ氏が辞任となることはないです。

大統領選も間近ということで、民主党も代表争いをやっています。この最中に、ウクライナ問題で、まさに火中でもあるバイデンさんや息子さんが、何やら怪しいことをやったのではないかという嫌疑がかかってしまったということです。

トランプ大統領は、中国にも捜査しろと依頼しています。頼む相手が間違っているのではないかとも思われますが、もしかすると中国も実施するかもしれません。そうなると、バイデン氏がさらに泥に塗れという事態も想定されます。
現状では、民主党の支持率も落ちていて、ウォーレン氏という方がかなり盛り上がって来ています。上り調子の背景には、相次いで打ち出す大胆な政策があります。

富裕税の導入、「アマゾン解体」、学生ローン帳消しなどで、穏健派からは実現性を疑問視する声も根強いです。ところが、ウォーレン氏は7月末の討論会で「『できない』と言うために、なぜわざわざ大統領を目指すのか理解できない」と切り返し、喝采を浴びました。


確かに、彼女の方が他の穏健派の候補者よりは、新しい感じもしますが、しかし彼女は根っからのリベラルですから、はたして民主党をどれだけまとめられるか疑問符がつきます。

民主的な選挙で選ばれた大統領を政治的な動機で糾弾し解任しようとする弾劾措置への反発は、米国民の間で従来から根強いものがありました。だからこそ民主党のペロシ議員は、昨年11月の中間選挙前も、「ロシア疑惑」が高まったそれ以前の時期でも、弾劾への動きには一貫して反対してきたのです。

もしも今回の弾劾措置に対してトランプ大統領が上院の支持を得て勝利を宣言したとき、同大統領への支持がさらに高まり、民主党への支持が減るというシナリオは十分に考えられます。

さらにもっと確実な見方として、今回の「ウクライナ疑惑」を理由とする弾劾手続きが、民主党側の大統領選の先頭走者であるバイデン氏への支持を大きく減らすことも予想されます。



バイデン氏には、オバマ政権の副大統領だったとき自分の息子の疑惑に関連して、ウクライナ政府に圧力をかけたという情報が流れています。トランプ氏への「ウクライナ疑惑」への調査に関連して、その疑惑が改めて浮上してしまう危険性があります。だからこそ今回の弾劾に関しては、「バイデン氏を大統領選から追い落とすための陰謀」という説も流れているくらいです。

やはり、民主党は最初から禁じ手とわかっている「弾劾」を今回だけではなく過去にも画策して結局失敗しており、相当追い詰められているとみべきです。

次の大統領選挙は、民主党にとってそんなに簡単ことではありません。そうなると、やはり余程のことがない限りトランプ氏が勝つ可能性がかなり高まったと見るべきでしょう。

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2019年10月11日金曜日

日本の景気後退が「すでに始まっている可能性が高い」十分な根拠―【私の論評】実は日本政府には、簡単に効果のある経済対策を実行できる余地が十分にある(゚д゚)!

景気動向指数は「悪化判断」へ


10月7日に公表された8月分の景気動向指数(一致CI)は、前月から0.4ポイント低下し、内閣府による景気判断は「下げ止まり」から、再び「悪化」に下方修正されました。景気動向指数は複数の経済指標によって作成されますが、日本の景気変動を最も的確に示す指標の1つです。

内閣府の判断が悪化に転じたことは、日本が景気後退に至っている可能性が高いことを意味します。この判断は景気動向指数から機械的に決まりますが、政府の意図などとは関係なく、日本経済がいわゆる後退局面に近い状況にあることを客観的に示しています。

一方、景気動向指数の構成項目の多くは、製造業の生産活動の変動を反映するため、必ずしも経済全体の動向を表していない可能性もあります。春先から持ち直している個人消費、そして企業の景況判断を示す日銀短観の業況判断DIの水準などを踏まえると、「すでに景気後退に陥っていると判断するのは早計」との見方もできます。

また、今回は8月分の指数ですから、家電、日用品などにおいて増税前の駆け込み消費が9月に現れた影響で景気動向指数が持ち直し、来月には景気判断が上方修正される可能性が残ります。

はたして、日本の景気はすでに景気後退局面に入っているのか、いないのか。筆者が「すでに入っている」と考える理由を解説します。

消費増税後の景況感の焦点

この先の景気動向指数について考えるうえでの問題は、消費増税後の10~12月以降の景気情勢です。筆者は、消費増税によって10~12月は個人消費が大きく減速し、GDP(国内総生産)成長率はマイナス成長に至る、とみています。

仮に9月に景気動向指数が一時的に持ち直したとしても、10月以降も景気動向指数の低下は続くと予想します。そうであれば、約1年前の2018年10月頃をピークに、すでに景気後退が始まっていたと認定される、とみています。

消費増税の悪影響に加えて、海外経済の減速が長期化することも日本経済の成長下押しになると考えます。米中の経済紛争は、関税引き上げに加えて、一部企業の禁輸などにも広がりつつあります。

すでに、2018年12月から世界貿易量は前年比でマイナスに落ち込み、その後も停滞が続いています。貿易停滞を受けて、国内需要がしっかりしている米国を含めて、世界的に製造業の景況感悪化が広がっています。

広がる米中摩擦の波紋

そして、2018年から続く米中による関税引き上げの対象範囲は、2019年に広がっています。関税引き上げに伴う米中間の貿易や経済活動への悪影響はこれから本格化するとみられ、製造業の生産調整は長期化するでしょう。

製造業の生産調整を長期化させるのは、米中関税引き上げだけではありません。グローバル展開する米中の企業にとって、経済合理性に基づかない通商政策などの不確実性が極めて高いため、企業は設備投資抑制を強めているとみられます。設備投資需要の減少が製造業の売り上げ・生産を下押しする経路が今後明確になる、と筆者は予想しています。

確かに一部、アジアの半導体セクターなどに生産調整終了の兆しがみられます。しかし、貿易活動全体への下押しが続くため、景気底入れの期待は裏切られる可能性が高いとみています。

米国経済については、明るい動きもみられます。米連邦準備制度理事会(FRB)が2019年7月から利下げに転じる中で、調整していた住宅投資が回復に転じました。さらに、インフラ投資など政府による歳出拡大が2019年から明確になり、これらが米国経済の成長を支えしています。

ただ、製造業の業績悪化が非製造業や労働市場に及ぶ兆しもみられており、今後、米国経済は2%を下回る成長率に減速するとみています。

2020年にかけて中国次第の状況に

世界経済の減速が続く中で、経済成長を下支えする各国の金融・財政政策の役割は2020年にかけて高まります。

先に説明した通り、米国では金融・財政政策いずれも成長押し上げに作用しています。一方、中国では2018年末からの政策効果が明確に現れておらず、これが2019年の世界経済減速の最大の要因と筆者は考えています。

ただ、中国については、中央銀行による利下げ余地はかなり大きく、政治判断次第ですが、大規模な財政政策の発動が想定できます。2020年にかけての世界経済は、中国をはじめ成長率停滞に直面する各国で、成長率を押し上げる政策が行われるかどうかが、先行きを左右するでしょう。

米国以外では各国の政策対応が限定的にとどまると筆者は想定しており、経済成長率の減速は長引くと警戒しています。

改めて日本の状況を分析する

こうした観点で日本経済をみると、慎重にならざるを得ません。2018年後半からすでに日本は景気後退局面に入った可能性が高い、と筆者は判断していますが、この主たる要因は世界経済の減速です。

さらに2018年夏場に日本銀行が長期金利の上昇を容認する、引き締め方向への政策転換ミスも要因として挙げられます。日銀が引き締めを始めたことが日本の景気後退を招くパターンが、繰り返されたのかもしれません。

追い討ちをかけるように2019年10月から消費増税が始まり、財政政策が再び緊縮方向に明確に転じました。増税対策は行われていますが、ネットでは2、3兆円規模で恒常的な家計所得の目減りが起きており、これを補う政策対応は実現していません。

景気後退リスクが高まる中で安倍政権が増税判断に踏み出したのは、日銀が金融緩和を引き締め方向に動いたのと同様に、政策判断ミスと言えるでしょう。

先に説明したように世界経済減速に対して、多くの国が金融・財政政策により対応している中で、日本では金融・財政政策が双方ともに緊縮的に作用すれば、景気停滞が続くのはやむをえません。

今後、安倍政権の経済政策が大きく変わり、増税負担を上回るインパクトで、家計所得全体を押し上げる対応が実現すれば、米国同様に底堅い経済成長が実現するかもしれません。ただ、こうした財政政策の発動は期待できないと筆者は考えています。

<文:シニアエコノミスト 村上尚己>

【私の論評】実は日本政府には、簡単に効果のある経済対策を実行できる余地が十分にある(゚д゚)!

景気動向指数(一致CI)は、春先に一旦「悪化」となったのですが、その後、生産の一時的な反発もあって「下げ止まり」となっていました。しかし、指標が改定され、いま見直すと、一致CIは「下げ止まり」の条件を満たしておらず、「悪化」が続いていたことが分かりました。

これは、冒頭の記事で村上氏が指摘しているように、日本の景気がこの春までにすでに「景気後退」に入っていた可能性を示し、それが今なお続いていることになります。

政府は景気動向指数の落ち込み幅が小さいとして、景気後退ではないと言いたいようです。

しかし、景気先行指数は2017年11月の102.9から足元の91.7に11.2ポイント低下し、一致CIも2017年12月の105.3から今年8月の99.3まで6ポイント低下しています。

前回の景気後退となった2012年3月から2012年11月の間では、一致CIは97.1から91.2に5.9ポイントの低下となっていました。

現在の一致CIの低下幅はこれを上回ります。前回が民主党政権だったから「景気後退」と認定し、現在は自公の安倍政権だから「後退」ではない、というのであれば、あまりに恣意的すぎます。

景気悪化の主役は輸出の不振で、これが生産や投資の一部に波及していますが、その中でGDP(国内総生産)の半分以上を占める個人消費にも負担となる消費税の引き上げを強行しました。

景気認識とともに、消費税の影響についても政府の認識に甘さが伺えます。

消費増税、最後に駆け込み

西村経済再生大臣は8日、「一部の家電で9月に駆け込みが見られたものの、全体でみると前回に比べると駆け込みは大きくない。消費税引き上げ後の食料品、日用品の売り上げは1−6日の間で前年比1.1%減で、前回引き上げ時の19%減に比べて影響が小さい」と述べました。

しかし、駆け込みは当初少なかったとしても、消費税引き上げ間際、特に9月最後の週末には結構、家族総出の買い出しも見られました。

大手百貨店の売り上げは9月に宝飾品や高額品を中心に2桁の増加となったと言い、スーパーでも最後の週末にはビールなどの酒類やトイレット・ペーパーなど、カートいっぱいに詰め込んで買う姿が見られました。

家電などは買い替えサイクルの影響もありますが、需要・購買力の面から駆け込みができなかった面があります。

そもそも食料品については軽減税率が適用されたので、この面では駆け込みも反落もありません。半面、日用品についてはできる範囲で最後に駆け込んだと見られます。

ポイント還元に混乱

政府が消費税対策として胸を張るポイント還元については、随所で混乱が見られます。

そもそも、街を歩いても「5%ポイント還元」の赤いポスターを張ってあるお店があまりありません。

「5%ポイント還元」の赤いポスターを張ってあるお店

なんでも、全国200万の中小店舗のうち、ポイント還元を実施している店は50万店にすぎず、今申請中のお店を入れても80万店にすぎないと言います。

その中で、赤いポスターを張ってあるスーパーで買い物をしてみたのですが、キャッシュレスの支払い手段はクレジット・カードだけで、スマホ決済もパスモなども使えません。

そのクレジットも、VISAやマスターが使えず、間もなくJCBが使えるようになるといっていましたが、ほとんどの人が現金決済をしていました。唯一使えると言われたクレジット・カードで支払いましたが、明細にはどこにも5%のポイントの表示がありません。カスタマーサービスの人に聞いてみても、初めての試みで、どのように還元されるのかわからないと困惑気味でした。

カードの請求書が来た時によく見てみないと、本当に還元されるのかわかりません。

値引きと便乗値上げ
イートインと持ち帰りで税率を区別したり、同じ店の中に複数の税率の商品があってレジが対応できない店もあります。

中には手書きのレシートを用意して却って手間暇がかかるケースや、複数税率に対応できないとして、8%一本にして実質値下げで店が負担するケースも少なくありません。NHKの受信料も消費税は8%のままで、実質2%の値下げとなります。

その反面、消費税率の引き上げに伴う「便乗値上げ」も見られます。

ある公営図書館に併設されるレストランでは、先月まで税込み750円だったランチが800円になり、680円のメニューが720円に上がりました。他のメニューも同様に値上がりしていますが、どう見ても消費税の引き上げ分2%を大幅に超えた値上げです。

10月になってさすがに客足は鈍っています。

最悪の環境で消費増税

今回の消費税引き上げ、実施のタイミングもやり方も多くの問題を露呈しています。

政府は「緩やかな景気回復」といっても、内閣府の景気動向指数が今年の春以降、「景気後退」の可能性を警告される中で決断し、実行してしまいました。

タイミングとしては最悪の時期で、輸出の弱さに個人消費まで落ち込めば、「緩やかな回復」は通用しなくなります。

しかも、消費税の影響を緩和したいとは言え、複雑にしてしまったため、企業のコスト負担を高め、それでも対応が間に合わなくて混乱するケースが見られます。

さらに消費者の間にもキャッシュレス決済に抵抗のない人・手段を持つ人と、セキュリティの不安からスマホ決済に躊躇して現金払いで高くつく人、家も車も買う予定がなく「減税」と無縁な人など、負担の度合いは人さまざまで、不公平感も伴います。

目立った事前の「駆け込み」的な消費の盛り上がりは見られなくても、精一杯駆け込んだ可能性も否定できません。

その場合、10月以降の消費が低迷し、景気の悪化が進む可能性がありますが、その時に、政府はどんな手を打つのでしょうか。

経済対策はいくらでもある

日本政府のできる経済対策はいくらでもあります。それに関しては、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
残り3週間!「消費増税で日本沈没」を防ぐ仰天の経済政策がこれだ―【私の論評】消費税増税は財務省の日本国民に対する重大な背信行為(゚д゚)! 
この記事では、高橋洋一氏の経済対策を掲載しています。それは、金利がマイナスになっている国債の現状を逆手にとり、財務省がゼロ金利になるまで、国債を無制限に発行して、経済対策につかうというものです。詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事より一部を引用します。
財務省がゼロ金利までの無制限国債発行を行うと、日銀が今やっている金融政策とも相乗効果が出てくる。 
日銀は、イールドカーブコントロールといい、長期金利がゼロになるように国債買入を行っている。ただし最近の日銀の国債購入は、異次元緩和が始まった当初の年間80兆円ベースから、30兆円ベースまで落ち込んでいる。これは、市場の国債が品不足であるからだ。このため、金融緩和圧力は高くない。
ここで、財務省がゼロ金利まで国債無制限発行に乗り出せば、日銀の金融緩和効果はさらに高められる。しかも、得た財源で景気対策を行えば、まさに財政・金融一体政策となり、目先の消費増税ショックを回避できる可能性も出てくる。しかも、金利正常化で金融機関支援にもなる。 
逆にいえば、こうした「美味しい」金利環境を財務省が見過ごし、金利ゼロまでの無制限国債発行を行わないとすれば、それは彼らが増税しか頭にない「無能官庁」であることの証明といえる。
これは、考えてみれば、当たり前といえば当たり前です。国債とは政府が政府外から借金をする手段ですが、その金利がマイナスというのですから、そのマイナスの分は国債を発行した政府の儲けということになります。

こんなのは、小学生でもわかる理屈です。このような美味しい、対策を行わない手はありません。これで対策を行いつつ、消費税もいずれ5%にでも戻すというような政策を行えば、 消費増税ショックを回避できる可能性はかなり高まります。

国債を発行する行為は、難しいものではありません。財務省は何の苦もなくすぐにできることです。

これを財源として、軽減税率などやめて、わかりやすい給付金制度にするとか、さらに消費税が駄目というのなら、他の税金を下げることにより、消費税増税のショックなど簡単に回避できる可能性はかなり高いです。

もし、これから先景気がかなり落ちても、財務省が金利ゼロまでの無制限国債発行を行わないとすれば、それは彼らが増税しか頭にない「無能官庁」であり、財務官僚は「無能官僚」と烙印を押されても仕方ないです。

金子原二郎参院予算委員長

それにしても、本日の参院予算委員会では、いつもどおりで、与野党ともに、審議の内容は予算以外のものがほとんどでした。本当に情けない限りです。一体日本の政治家は、現状を認識する能力があるのでしょうか。本当に困ったものです。

【関連記事】

池上彰さんへ、消費増税について議論しませんか 政府の主張を代弁?財政危機あおる解説に疑問 ―【私の論評】野党は、臨時国会を「三点セット」(関電、あいちトリエンナーレ、NHK)で終わらせるな(゚д゚)!

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2019年10月10日木曜日

「タイトルがヘイトだ」 アイヌ新法に疑義呈する講演会めぐり小競り合い―【私の論評】アイヌを利用した差別利権の温床になる「アイヌ新法」(゚д゚)!


  アイヌ新法に疑義を呈する講演会の会場前で、一部の参加者と「ヘイトスピーチだ」と
  主張する人々との間に割って入る北海道警=札幌市白石区 

アイヌ新法に疑義を呈する講演会をめぐり、参加者の一部と「講演会のタイトルがヘイトスピーチだ」と主張する反ヘイト団体のメンバーらとの間で小競り合いが発生、警官が出動する騒ぎに発展した。現場は、会場となった貸しホールのある札幌市白石区民センター前の歩道。開催前に反ヘイト団体が市に対して利用制限を求め、当日は約20人が「アイヌ差別は違法」と書いた横断幕などを掲げていた。(筆者注:講演会が行われたのは9月21日)

「アイヌになれる?」

 一方が「やれるものならやってみろ」と叫ぶと、もう一方が「触ってない」と怒鳴り返す。講演会開始の約1時間前。公道上に怒号が響く中、講演会の趣旨に賛同して街頭演説をしていた女性が声を張り上げた。

 「意見の違う者に言論の封殺をしてくるのはなぜなのか。私たちは警察の許可を得て街頭演説をしている。もめごとを誘発するのはご遠慮いただきたい」

 講演会のタイトルは「あなたもなれる? みんなで“アイヌ”になろう?」。憲法改正の実現などを目指す日本会議北海道本部が主催して9月21日夜に開かれ、「アイヌ先住民族、その不都合な真実20」などの著書がある医師の的場光昭氏と、元道議の小野寺秀(まさる)氏が講師を務めた。

アイヌ新法めぐる議論

 アイヌ問題をめぐっては、アイヌ文化を生かした地域振興のための交付金創設を柱とするアイヌ施策推進法(新法)が5月に施行され、初めて「先住民族であるアイヌの人々」と明記された。しかし、新法が土地や資源などに関する先住民族としての権利に触れていないことを課題とする意見もある。新法には「アイヌの人々」の定義に関する規定がなく、「アイヌの定義があいまいだ」と疑義を呈する人々もいる。

 主催団体の日本会議北海道本部に対し、事前に抗議や中止要請を行った団体はなかったが、道本部によると、個人から開催に反対するメールが1件あったほか、講師2人を名指しして危害を加えることをにおわせる手書き文書1件がファクスで届いたという。
市の承認に賛否23件

 一方、ヘイトスピーチ反対活動を行う団体「クラックノース」は9月12日、札幌市に対し、利用承認を取り消すか、条件付きにするよう要望書を提出した。

 新法4条のアイヌ差別禁止規定を根拠に挙げ、「題目は、アイヌの独自の民族としての一体性を否定し、誰でも“アイヌ”というものになれるのだと民族的アイデンティティーを剥奪したヘイトスピーチだ」などと主張している。

 会場は先着順や抽選で利用者が決まる有料の貸室の一つで、講演会や発表会、音楽活動などに利用できる。道本部の講演会は予定通り行われ、市は「貸室であり、承認時に講演会の内容までは確認しない。今回は不承認の要件に該当するという判断には至らなかった」としている。

 市白石区地域振興課によると、開催前にメールなどで市に寄せられた意見は計23件。このうち「使用させるべきではない」という趣旨は17件で、「利用承認を取り消すべきではない」も6件あった。

会場内も騒然

 講演会には参加費1000円(学生無料)を払えば誰でも入れるため、当日は反ヘイト側や多数の報道機関も入場した。

 講演会では、的場医師が「(アイヌを先住民族と初めて明記した)アイヌ新法ができて、(差別禁止規定の)第4条によって、アイヌが先住民族であることを否定すると『ヘイトだ』といわれるようになった」。小野寺元道議は「騒いでいる方たちは厳密な定義があるというが、実際は結婚するとアイヌになれる」などと持論を展開した。

 質疑応答の場面では、意見を表明する反ヘイト側に対し、他の参加者から「質問をしろ」と抗議する声が上がり、会場は約5分間にわたって騒然となった。

【私の論評】アイヌを利用した差別利権の温床になる「アイヌ新法」(゚д゚)!

政府は、アイヌ民族を先住民族と初めて明記した「アイヌ新法」の案を、2月15日に閣議決定しました。政府は、アイヌ文化の振興を外国人観光客の増加にもつなげたい考えで、今の国会で法案を成立させる方針だとされています。

FNNの報道によると、この法案は、北海道などに先住してきたアイヌを、初めて「先住民族」と明記したうえで、「アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会の実現」を掲げている。そのうえで、サケなどの伝統的な漁法の規制緩和や、アイヌ文化を振興する新たな交付金の創設が盛り込まれています。

この「アイヌ新法」にはさまざまな問題点が指摘されており、最近、論壇誌やインターネットTVなどでも取り上げられ、話題となっています。

その中で、この問題について以前から警鐘を鳴らしてきた札幌在住の工芸家・砂澤陣氏が、2016年に出版した『北海道が危ない!』という本が注目されています。



ちなみに砂澤氏は、「いわゆるアイヌ系」の血を引く方であり、自らを日本国民と称すされる、世界的に有名な彫刻家である砂澤ビッキ氏の長男です。  

砂澤氏は、『北海道が危ない!』の中で、「自分たちの利権のために現代アイヌを『先住民族』に仕立て上げても、健全な形での文化継承など望めない」と訴えています。それはなぜなのか、ここで紹介します。

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なぜ差別を再生産するのか

 観光地で「見る」アイヌは、神秘的であったり、自然の中で穏やかな生活をしているイメージを持つ人が多いだろう。

観光地でみるアイヌ

 しかし、それは大きな錯覚である。

 特にアイヌ協会に所属するアイヌは、いわゆる税金依存の落ちこぼれアイヌ、アイヌコンプレックスの集団であると断言してもよい。このようなことは昨日今日のことではない。遡れば昔々、江戸時代松前藩お抱えアイヌの頃からある。

 アイヌ内の差別は一般常識では到底理解できない領域にある。

 不正がメディアで報道されても、自分たちが処分されないことをいいことに横暴を繰り返す。立派な公金横領であろうと、詐取したお金の返還命令だけで終ると高を括り、内側への辱めと行政への恫喝をしながら外では、弱者を謳うのである。

 アイヌは自分たちの歴史への無知と腐敗体質を改善する力のなさを棚に上げ、行政やあらゆる場所で恫喝したり弱者を装ったりしながら、ありもしない差別をでっち上げ、「差別の再生産」を繰り返している。これをやられると相手側は面倒を嫌い、アイヌの要求に従ってしまう。このようにして差別利権が生れるのだ。

 アイヌ協会札幌支部などは、横領を行なった者たち自らが記者会見を開き、自分たちの不正を行政に擦り付けようとし、マスコミもそれを「人権擁護」とばかりに取り上げる。結局、正しい調査も改善策も出されるはずもなく、中途半端な道庁の調査と知事の「二度とこのようなことがないように……」といったおきまりのコメントで幕引きである。

 本来アイヌ政策は、アイヌ協会など通さなくとも市役所などの窓口に行けば受けられるのだが、そうしたことすらも行政の怠慢によって行われず、アイヌ協会役員の特権となっているのだ。泣きを見るのは、長年にわたるアイヌ協会の不腐体質の改善に一部の望みを託し、協力してくれたアイヌのお年寄りたちなのである。

 アイヌ生活支援政策を受ける時、ほとんどは協会役員の印鑑が必要だったり、歌や踊りの保存会に所属する場合でも同じだ。それが、俺の言う事に従わないと政策を受けさせないという暗黙の圧力にさえなっている。

 こうしたお年寄りや、まともなアイヌたちは、差別を受けながら協会内で我慢して過ごす以外に道は残されていないのである。

 アイヌ自立支援政策だ、文化保存政策だというものの、客観的な現状調査もなされず、歴史認識もあいまいな中での税金による助成は、自立を拒む者を生み出すだけだ。自立する意思を失わせることは弱者を虐げることにしかならない。

 アイヌ協会が行っていることは、弱者の自立心を奪い、補助金漬けにしながら、彼らを利用し、「まだまだ差別が存在する」と弱者利権を貪っているのである。

 私は思うのだが、本当に弱者を救済するということは、日本に昔からある「弱気を助け強気を挫く」という日本人の気質にこそあるのではないだろうか?

 古くさく任侠気質の言葉だと思う人もいるかもしれないが、こうした言葉の教育の方が、「人権擁護」「差別撤廃」などという看板を掲げて、ウラで利権を貪るようなやり方よりも、どれだけ多くの人を救えるかと私は思わずにはいられない。

 こうして書くと、「アイヌの事なのにシャモに何がわかるか! 何が日本人の気質だ」という声が聞えてきそうだが、それこそが甘えであり、自立しない逃げ口実にしか過ぎない。いわゆる「アイヌ」も同じ日本国民であり、意思伝達ツールも日本語である。アイヌ側の甘えとそれを放置し、同じ「人」として対等に扱わないことこそ「差別」というのではないだろうか。

 その意味で、行政や知事の対応は、アイヌに理解を示しているのではなく、差別再生産に加担しているとしか思えない。

これは日本国民全体の問題だ

 自分たちの不正行為の入り口に「アイヌ」の看板を掲げ、アイヌと日本の誇りに泥を塗るのはもうやめてもらいたい。

 そして読者のみなさんには、このアイヌ問題を、「北海道の問題」という概念で捉えないでいただきたい。沖縄と同じで、「日本の問題」であると考えてもらいたいのだ。

 アイヌ政策には国費も大量に使われており、その活動は北海道に留まらない。彼らは税金をわが物顔で使い、しかも領収書の偽造、不正経理は一向に減らず、国内外で活動を続けている。これらは紛れもなく「犯罪」であり、アイヌだからと言ってこれを見過ごすことこそ、「差別」なのではないだろうか。

 「アイヌとは何であるか」すら明確にせず、補助金や自治権を要求し、日本人とアイヌの分断を画策するかのごとき振る舞いを、アイヌの血を引く日本人として絶対に許せるものではない。私は自分の出自・郷土・国を信じ、これからも声を挙げていく覚悟だ。

アイヌの「誇り

 繰り返す。自分たちの利権のために現代アイヌを「先住民族」に仕立て上げても、健全な形での文化継承など望めない。アイヌ文化を守ることは、北海道の文化を守ることであり、幅と奥行きのある日本文化を守ることでもあるという意識を持ってこそ、すべての道民、国民の積極的で自発的な理解と協力が得られるのである。

 ところがプロ・アイヌたちは、アイヌ文化を日本文化から切り離して敵対させ、利権のために独占しようとする。あいつはシャモ(和人)だ、あいつの踊りは嘘だ、刺繍の図柄は盗んだものだ――と、彼らは非アイヌの人々がアイヌ文化に関わることを極度に嫌うが、そのような不寛容な姿勢で本当の文化継承ができるだろうか。

 私の闘いは終わらない。今後もアイヌ協会や諸団体の不正、そして行政システムの歪みを指摘し続けようと思っている。

 とはいえ、私が個人で動いても、いつも市・道・国という行政の壁にぶち当たる。市議や国会議員に相談に行くと、触らぬアイヌに何とやらで、いつも適当な逃げ口実ばかりだ。真相を追及して改善しようという勇気を持つ政治家には出会えない。そのため、あと一歩というところで詰めを欠いている。

    だが、負けるわけにはいかない。今後、アイヌ政策は国に委ねられ、全国的に「似非アイヌ」が出現し、国民の税金を我が物顔で搾取する不正が広がるのは確実だからだ。

 私は、この問題を取り上げてくれる勇気ある方がいるなら、何処へでも足を運び現状を訴えたいと思う。アイヌが本当の「誇り」に目覚めるまで。

砂澤陣(すなざわ・じん)氏


砂澤陣(すなざわ・じん)

 昭和38(1963)年生まれ。彫刻家砂澤ビッキの長男。ビッキ文様を継承するとともに、ビッキ作品の修復・保全活動、さらに自らも木工製品の制作を手がける他、注染で仕上げる「日本手拭い」の図案も手がけている。ブログ「後進民族アイヌ」でアイヌの自立を訴え、アイヌ利権とアイヌ史研究の偏向性の問題を告発し続けている。著書『北海道が危ない!』(育鵬社)が話題となっている。
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いわゆる「アイヌ問題」に関して、知らない方が、その問題の全容を知るためには、この書籍は格好の書籍だと思います。特に現状のその危険性について知るには、他に勝るものはないと思います。

アイヌ新法において、アイヌと認定するのは国でなく、公益社団法人北海道アイヌ協会が認定しています。アイヌ協会の理事長が承認すれば、アイヌと認められ、補助金等を受けられのです。

アイヌ協会は、「アイヌの血を引くと確認された者」のほか、その家族・配偶者・子孫、養子縁組による者にまでアイヌと認定しています。アイヌの血を引いていなくともアイヌと認定されれば、異常に手厚い社会保障の特権を受けることができるのです。

昭和63年(1988年)の調査では、東京在住のアイヌが2700人と推計されました。ところが、今は7万5000人と急増しています。アイヌ協会が認定すれば、誰でもアイヌになれるから、補助金目当てのにせアイヌが増えていると見られるのです。

北海道アイヌ協会には、アイヌ系日本人が全員加入しているのわけではありません。加入しているのは、全体の1割程度であり、約9割のアイヌ系日本人は、協会に加入していません。大多数のアイヌ系日本人は、真面目に日本人として生活しています。問題は、特権を悪用する一部のアイヌ協会員なのです。

北海道では、アイヌの文化や伝統の保護のために、アイヌ協会に対して、毎年多額の補助金や委託金が支出されています。もとは皆さんの税金です。ところが、公金の不正支出や不正受給など、多くの問題が指摘されています。補助金等が一つの利権となっているのです。これをアイヌ利権といいます。

平成22年(2010年)9月に、アイヌ協会の役員が補助金を水増し請求し、不適切な支給を受けていたことが発覚しました。ところが、逮捕も訴追もされませんでした。その後もこの種の問題が起こっています。

北海道では、経済的な理由で大学進学が出来ないアイヌの子弟とされる学生に年間で最大100万円を貸し付ける制度があります。修学資金貸付制度といいます。平成24年(2012年)の時点で、利用総額24億9千万円のうち、返還に応じたのは、160万円だけでした。これは0.06%に過ぎないです。

以後も、ほとんど返還されていません。アイヌ協会の役員が一族で修学資金を受け、月に計100万円以上を受け取っていたケースもあります。

また、アイヌを対象とした就職支援制度があります。職業訓練受講生に対し、月に13~14万円が支給されます。通常は一度訓練を受けたら就業するのが普通ですが、複数回の受講を行っている例があります。1年おきに10年受け続けたケースもあり、支給額は5年分で780万円以上にも上ります。

また、アイヌと認定された人々には、住宅購入資金の貸出制度があります。これも非常に杜撰な状態で貸し出されており、そのほとんどが返還されていません。税金で貸し付けを受けて建てた家を転売していたケースすらあります。

ここまでいくと、「たかり」といっても過言ではありません。なお、アイヌ協会の会員には、創価学会員が多いとも聞きます。

このようにアイヌ協会には、様々な不正支出・不正受給が指摘されているのですが、道もマスコミもその問題を追及しようとしません。そのため、多くの道民はアイヌ協会の問題点を知らされていないのです。

実際、北海道に長年住んでいる私もこの問題については数年前までは知りませんでした。多くの道民もそうだと思います。

何しろ、もうすでにアイヌ民族とはお目にかかったこともなく、お目にかかったことのない民族を差別することは無論できないですから、アイヌ民族が差別を受けているというい話は、学校でも、職場でも聞いたこともありません。

ただし、アイヌ系の血が入っているという人は、何人か知っています。ただし、そういう人たちも、日本人であり、日本人と同じ価値観と、生活様式で生活しています。

無論こういう人たちは、アイヌ民族などとは呼べず、日本人としか呼びようがありません。あえて区別するとしたら、アイヌ系日本人というところでしょうか。しかし、わざわざ「アイヌ系日本人の○○」ですなどと自己紹介する人などいません。無論、これらの人がアイヌ系日本人であるがゆえに差別されたとか、いじめらたことがあるとも言っていたことはありません。

無論他の理由で学校いじめられたことがあると言っていた人はいるように記憶していますが、「アイヌ系」だからというのはないです。

こうした生活実感からすると、やはり「アイヌ問題」とは後から人為的に作られたものといわざるを得ません。

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2019年10月9日水曜日

中国より日本のほうがマシなことに気づいたロシア―【私の論評】日米にはいずれ中露にくさびを打ち込める時が訪れる(゚д゚)!


岡崎研究所

 ロシアの独立系評論家イノゼムツェフが、4月24日付 Moskovsky Komsomolets紙掲載の論説で、ロシアにとって中国は頼りにならず日本の方がましであるとして、これまでの対中関係の見直しを提唱しています。論説の要旨は次の通りです。

イノゼムツェフ氏

 これまで、ロシアは中国との提携を重視して米国に対抗してきた。しかし、今回の米中首脳会談では、中国にとってはロシアより米国の方がはるかに重要であることが明白となった。中国は、対米経済関係を守るためなら、米国の言うことでも聞くのだ。

 中国はロシアを資源供給国と見下げ、製造業に投資しない。ロシアの企業の株を買い占めるだけである。

 カラガーノフとその一派(代表的オピニオン・リーダー。政権に近い)は中ロの蜜月は不変だと繰り返しているが、中国はロシアを支えることに対して、いつも恩着せがましく対価を要求する。

 日本はサハリンの石油ガス資源を開発してくれたし、トヨタ、日産は工場も建てた。日本は経済成長を支えている海洋諸国家への出口でもある。また「東」でありながら、西側の一部でもある。

出典:Vladislav Inozemtsev,‘Pundit sees Japan as better bet for Russia than China’(Moskovsky Komsomolets, April 24, 2017)

中ロ間に走った亀裂

 この1、2カ月、中ロ間にかすかな亀裂が走った感があります。それは、この論調が指摘するように、3月の米中首脳会談以後、中国が米国に協力的な態度を目立たせていることに起因します。国連安保理では、シリアの化学兵器、北朝鮮非難の双方で、中国が米国寄り、あるいは棄権の態度を取り、米国のイニシアチブをつぶそうとするロシアを孤立させました。

 これはおそらくプーチンの反発を呼んだのでしょう。習近平は4月26日に自らの最側近、共産党中央弁公庁主任の栗戦書に自分のメッセージを持たせて訪ロさせ、プーチンはこれと会談しています。クレムリンのホームページには、栗が「中国のロシアに対する関係には何の変化もない」ことを習近平のメッセージとして繰り返した旨、記載されています。中国は5月14、15日に北京で「シルクロード首脳会議」を開きましたが、プーチンに欠席されるようなことがあれば、面子丸つぶれになっていたところです。

 プーチンは、そのような中国を尻目に、ロシアの国際的立場維持のための措置を立て続けにとりました。5月初め、メルケル・ドイツ首相、エルドアン・トルコ大統領と相次いで会談、トランプ大統領に電話して同大統領との関係を維持、シリア情勢平定化に向けて立場をすり合わせると同時に、北朝鮮については話し合いによる解決を慫慂するなど、ロシアを世界政治の舞台にしっかりと位置付けて見せました。

 この10年余、中ロは提携を強めて米国による干渉を防ぎ、2008年金融危機以降は「米国の時代は去った。これからは多極化世界の時代だ」との宣伝を行ってきましたが、上記の経緯が示すように、最近、ものごとは再び米国を軸に動き始めた感があります。そして、中ロの間では、以前から指摘されてきた摩擦要因が頭をもたげてくる可能性があります。北朝鮮情勢で中国が陸軍の重要性を再認識し、これまで海軍・空軍に重点配布してきた国防費を陸軍に回すようになれば、中国の関心はこれまでの海洋から内陸部に向き、それはロシアとの摩擦を大きくするでしょう。

 本件論調は日本にとって歓迎するべきものではありますが、筆者のイノゼムツェフは政権側の人物ではありません。論調がどこまで政権内部の動きを反映したものかは分かりません。

【私の論評】日米にはいずれ中露にくさびを打ち込める時が訪れる(゚д゚)!
中国を支配したモンゴル帝国による13世紀のロシア支配(いわゆる「タタールのくびき」)や、19世紀のロシアによる清朝からの領土(現在の露極東沿海地方)の強引な割譲など、長大な国境線を有する両国には歴史上、侵略や領土紛争が絶えませんでした。

そうした対立は、両国が共産主義体制を敷いた現代に入っても続きました。旧ソ連時代には、共産陣営内での主導権争いや領土をめぐって大規模戦争が起きる寸前に至ったこともありました

しかし冷戦終結やソ連崩壊などを経て、互いの技術や資本を欲した両国の関係は改善。2001年には両国間で善隣友好協力条約が締結されました。その後もアムール川(中国名・黒竜江)の中州の領有権をめぐる長年の紛争が解決され、両国の国境が画定されました。

さらに現在は、両国にとって“共通の敵”である米国の存在もあり、ロシアと中国の関係は一般的に良好とされています。実際、昨今の中露両国は共同歩調が目立ちます。

習近平・中国国家主席による今年6月5~7日のロシア訪問は、5月下旬のトランプ米大統領の訪日を思わせる手厚い歓待でした。

サンクトペテルブルク大学名誉博士号を授与される習近平

中露は昨年、露極東で大規模な合同軍事演習を行うなど、軍事面でも関係を深めています。プーチン氏は首脳会談で「両国の戦略的パートナーシップは、かつてないほどの高水準に達している」と強調しました。

両首脳は、イランや北朝鮮といった問題はもちろん、第5世代(5G)移動通信システムの分野でも連携することで合意。プーチン氏は、米国が排除に動く中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)について、「前代未聞のやり方で世界市場から排除されようとしている」と中国の肩を持ちました。

中露首脳は、14日にキルギスで行われた上海協力機構(SCO)首脳会議のほか、大阪で行われた20カ国・地域(G20)首脳会議でも顔を合わせました。

中露両国についてはこれまで、米国に対抗するための「政略結婚」にすぎず、「蜜月」は長続きしない-との見方が語られてきました。

しかし、米中対立の深まりとともに、中国はロシアを自陣営に抱き込む動きを強めています。中国にとって、豊富な地下資源と軍事力を擁する隣国はありがたい存在です。ロシアも、米国の「一極支配」を打破し、国際舞台での影響力を高める上で中国と組むのが得策だと考えているようです。

ただし、ロシアには、4千キロもの国境を接する中国に対して潜在的な警戒心があります。

ロシア極東で中国と4千キロもの国境を接する

ソ連時代とは立場が逆転し、今や中国の経済規模はロシアの8倍以上もあります。対して、現在のロシアの経済は韓国並です。

広大なロシア極東部の人口が600万人にすぎないのに対し、隣接する東北3省には1億3千万人が住む。うかうかしていれば、中国の人とカネに国土を席巻されかねないのです。

だからこそロシアにとって、中国との関係は死活的に重要なのです。ウクライナ介入で米欧に対露制裁を科されている状況では、なおさら中国に依存せざるを得ないです。ロシアとしては、自国の「裏庭」と考える中央アジア諸国が、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」にのみこまれるのを抑制する必要もあります。

ロシアは、国際政治の「極」の一つでありたいと望んでおり、中国の弟分として埋没したくはないようです。将来的に、ロシアが対中関係を改める可能性は十分にあります。しかし、その機はまだ全く熟しておらず、日本が中露にくさびを打ち込めると考えるのは楽観的にすぎるでしょう。

最近、インドのモディ政権が日露両国に対し、経済を中心に3カ国で協力する枠組みを提案していることが判明しました。関係国の複数の外交筋が明かしました。


米国と中露との対立が先鋭化する中、インドはこの対立軸とは異なる新たな枠組みを持つことで両陣営の間でバランスを保ち、外交や経済活動の選択肢を広げる狙いがあります。ロシアは提案を前向きに受け止めていますが、日本は対米関係にも配慮し慎重に検討していく構えです。

以前からこのブログに掲載しているように、米国がさらに対中国冷戦を継続しつつ強化すれば、中国経済は弱体化し、そのときにはロシアの中国に対する不満が爆発し、ロシアが中国との関係を改めることは十分にありえます。

さらに、中露の対立が激化したときには、日米が中露にくさびを打ち込み、ロシアを対中国冷戦の一角に据えることも可能になるかもしれません。

さらに、中露対決が激化すれば、その時こそ日本にとつて、北方領土交渉かかなり有利なるのは間違いありません。

現在日本は、そのことも考え合わせ、対中冷戦に加担すべきなのです。来年、習近平を国賓待遇で迎えいれるなど、とんでもないです。

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2019年10月8日火曜日

池上彰さんへ、消費増税について議論しませんか 政府の主張を代弁?財政危機あおる解説に疑問 ―【私の論評】野党は、臨時国会を「三点セット」(関電、あいちトリエンナーレ、NHK)で終わらせるな(゚д゚)!

池上彰さんへ、消費増税について議論しませんか 政府の主張を代弁?財政危機あおる解説に疑問 


池上彰氏

消費増税に絡んで、国の借金や財政破綻の懸念に関する話が出てきている。消費税と国の財政の関係はどうなっているのか。

10月1日の消費増税の前に、テレビで各種の番組が組まれた。筆者も9月28日、大阪・朝日放送の情報番組「教えて!ニュースライブ正義のミカタ」で解説した。

そこでは、(1)米中貿易戦争など世界経済が危ういタイミングでの消費増税は最悪(2)消費税を社会保障に使う国はなく、社会保障が心配なら歳入庁を設置して社会保険料の漏れをなくすことが先決(3)軽減税率は不合理なので給付付き税額控除で代替(4)新聞の軽減税率対象はエコひいきで、裏には財務省からの天下り(5)マイナス金利の活用で5兆円程度の財源捻出可能(6)いっそのこと全品目軽減税率適用を(7)これらを10月4日からの臨時国会で議論すべきだ-と、これまで地上波で言えなかった話をした。もっとも、本コラムの読者ならおなじみの話だろう。

この番組は関東では放送されないが、好評で視聴率も高かったらしい。

同じ日に、テレビ朝日で放送された「池上彰のニュースそうだったのか!!」でも、ジャーナリストの池上彰氏が消費税について解説していた。その内容は筆者には「いま財政が危ないので消費増税」という財務省のプロパガンダのように思えた。

池上氏は番組で「とりあえずは大丈夫でも、借金がひたすら増え続ければ、いずれ財政破綻する危険性が高まる」と話していた。しかし、借金だけをみるのは不十分で、資産を同時に考慮すると日本の財政は危なくない。実際には財政破綻の確率は5年以内で1%程度しかなく、先進国の中で最低水準だ。

さらに、池上氏は説明の中で「政府と日本銀行は全く別のもの」と述べた。形式的には、日銀は政府と別法人であるが、理論上、政府の連結子会社だ。財務を見るときには、グループ企業は一体で連結して分析する。政府と中央銀行を一体連結して考えるのは、経済学で「統合政府」という考え方もあるくらい当然のことで、池上氏の説明は不正確だといえる。

筆者にとって、番組での池上氏の発言は、政府の主張を代弁しているように聞こえてしまう。そしてその説明は間違いだとしかいいようがない。

池上氏の番組には経済の専門家は出演しておらず、池上氏が居並ぶタレントに語りかける形式だった。タレントは池上氏に同意する役割のようにみえる。

池上氏をめぐってはかつて、専門家らに取材したことを明示せずに番組内で使うという問題が指摘されていたが、今回の場合、取材先は財務省関係者だったのだろうか。

筆者は、いまの状態で財政危機をあおるのは不見識だと考える。財政危機なのかどうかについて、“破綻論の家元”ともいえる財務省との公開討論にいつでも応じる用意がある。しかし、財務省側は逃げ回るだけで、決して応じない。

この際、池上氏の番組に筆者を呼んでくれれば、国民にとって有意義な議論ができるはずだ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】野党は、臨時国会を「三点セット」(関電あいちトリエンナーレNHK)で終わらせるな(゚д゚)!

上の高橋洋一氏の記事の内容の繰り返しになってしまいますが、本が財政破綻しようもないことや、政府と日本銀行は一体であり一帯としての呼称は一般的に統合政府と呼ばれていること、社会保障は保険として扱うべきであり、消費税等とはもともと関係なく、財源は保険料として徴収すべき性格のものであることなど、このブログの読者であれば、ほとんど常識といっても良いくらいのものです。

さらに、もう増税が決まってしまったのですから、それであれば、今更増税のすべきではないと言っても手遅れなので、現状の国債金利がマイナスであることを最大限に活用して、国債を大量発行して経済対策に当てることも、常識中の常識です。

何しろ金利がマイナスということは、政府がカネを借りる手段である、国債を発行すれば、政府はマイナス金利分儲かるということなのですから、発行して経済対策に当てれば良いのです。

さらに、経済対策をするというのなら、複雑な軽減税率などやめて、給付金などで低所得層などを支援するような対策を打てば良いのです。さらには、全品軽減税率ということにすれば良いのです。

しかし、これらが日本常識にならないのは、このブログでも過去に主張してきたように、財務省の増税キャンペーンにと、それの尻馬に乗るマスコミによるものであることも、このブログで過去に何度か主張してきたことであり、これもこのブログの読者であれば、ほんど常識になっているものと思います。

そうして、尻馬に乗るマスコミの代表が、池上彰氏であると言っても過言ではないです。
さて、上の高橋洋一氏の記事にも指摘されている、池上彰の消費税に関する報道の動画を以下に掲載しておきます。


さて、直近の日本経済はどうなっているのでしょうか。現状では8月が最新のものです。

https://www.boj.or.jp/statistics/tk/tankan09a.htm/9月日銀短観、大企業・製造業DIはプラス5 3期連続で悪化2019/10/1。 https://nikkei.com/article/DGXLASFL01H8X_R01C19A0000000/… 8月の景気指数、4カ月ぶり「悪化」に2019/10/7 。https://nikkei.com/article/DGXMZO50683810X01C19A0MM8000/…

と軒並み悪い結果が出ています。

明日は、景気ウォッチャー調査の結果もでますが、この状況だとこれも悪くなりそうです。

今月の月例経済報告はいつやるか未定ですが、しれっと景気判断が悪化でしました等と発表するだけで終わるのでしょうか。すでに臨時国会も始まっていますから、本来は景気対策しか手がないように思えるのですが。

ただし、麻生さんは追加経済対策は必要ないと言ってましたが、今のうちに本格的な対策を打たないととんでもないことになりそうです。

これだけ、経済指標が悪いにもかかわらず、増税をしているわけですから、本来ならば、野党の攻め時なのに「三点セット」(関電あいちトリエンナーレNHK)というのであれば全く心もとないてす。

無論この「三点セット」を無視せよとまではいいませんが、現状の財政問題と比較すれば、小さいです。

消費増税を最初に打ち出したのは自公政権での税法改正だったことは歴史的事実です。しかし、それにそそのかされ、政権与党として自公と協力してマニフェストにもない増税法を成立させた2012年時点の民主党政権は誤っていました。

猛省が必要です。そしてその後、2014年と今回と2度の増税の判断をしたのは自公政権でした。与党内での真剣な議論の中で鈴木洋一元衆議院議員(民主党)が、増税法に入れ込んだ「景気(弾力)条項」は、増税延期を財務省がのむ交換条件として自民公明政権が法律改正をして消し去ってしまいました。

わが国には所得の再分配が必要です。政府はそのための財源がないと言い張りますが、それは誤っています。緊縮財政を離れて再分配を行う財源はすでに目の前にあります。

すでに述べたように、国債を新たに発行して、あるいは格差を是正する目的で税金を集めて、それを全額日々の暮らしに追われている就職氷河期世代をはじめとする国民、若者たち、子育て世代に給付金として直接再分配すればいいのです。

必要なのは財源ではなく、政治的決断です。これまでそうした決断を下せる政党がなく、政治が政治としての役割を果たしていないから問題が起きているのです。

このブログでは、デフレ脱却の実現、緊縮財政への反対、就職氷河期世代への支援を主張してきました。これは、これからのわが国に絶対に必要な政策です。どれほどさえぎる壁が厚くても景気をよくし、賃金が上がるようにしていかなければなりません。

本来ならば、野党はこのようなことを主張すべきなのです。増税に関して、野党(現役議員という意味)で増税に関してまともな発言をしているのは現在は、昨年暮の補欠選挙で返り咲いた馬淵澄夫氏と、令和新選組の山本太郎氏くらいかもしれません。

馬渕議員は、「日本の借金1000兆円という数字自体を疑ってみる必要がある」ということと「消費税を引き下げよ」ということを昨年下野していたときに語っていました。

https://wpb.shueisha.co.jp/news/politics/2018/11/28/107637/

馬渕は民主党政権時代から、このようなことを語っていたのですが、当時の民主党の幹部らは聞く耳をもちませんでした。その後、民主党政権が崩壊した後の馬渕氏が所属していた幹部も右に習えでした。現在馬渕議員は無所属ということもあって、残念ながら、いくら正論を語っても大きな声にはなりません。

一方令和新選組の山本太郎氏は、上で紹介した池上氏の番組内容を真っ向から論破しています。それは以下の動画をご覧いただくとご理解できると思います。



このことに関して、ブログ記事にしている人もいます。そのブログの記事のリンクを以下に掲載します。


ただし、このブログは反安倍の立場から書かれているので、首をかしげざるを得ないことも買いてあります。私は、安倍政権に関しては、是々非々で、賛成するところも多々ありますが、反対するところもあります。無論、増税は大反対です。ただし、外交政策や、憲法改正に向けての努力に関しては、こころもとないとこもありますが、概ね賛同しています。そうして、両手をあげて賛成ではないのですが、それにしても野党があまりにだらしなく、今のところ安倍政権に変わる政権はないと考えています。

いずれにせよ、山本太郎氏は、財政に関しては、まともなことを言っています。この程度のことなら、このブログの読者の方々なら常識の範囲だと思います。さらに、このくらいのことは、本来高校でまともに政治経済を勉強した人なら誰でも知っていることです。

山本太郎氏に関しては、増税反対とか、日本が財政反対するはずがないということに関しては、賛成ですが、他の事柄についてはとても賛成するわけにはいきません。

しかし山本太郎氏もこのことに気づいたのですから、他の野党の議員、特に野党の幹部の人なら、財務省のキャンペーンがいかに強力であったにしても、やはり財政に関しては、もっとまともな考えを持つべきです。

さらに、野党が単純な反権力=反安倍というスタンスではなく、国民の立場に立って、論理的に筋道をたてて、高橋洋一が主張しているような、経済対策を実行するように国会で主張して、政策案を提出すれば、自民党の中にも反増税がいますから、それこそ財務省主導の際限のない増税キャンペーンを阻止することができるかもしれません。

ちなみに、増税反対の政策であれば、どの政党であれば、高橋洋一氏や、田中秀臣氏、情念司氏のような人たちも、政策立案に喜んで助け舟を出すと思います。そのような良心的な評論家、エコノミストはこの日本に大勢いると思います。さらに、野党は、鈴木洋一元参議院銀や、馬渕議員などにの声にも耳を傾けるべきと思います。

増税見送りもあり得ると語っていた萩生田光一文部科学相

野党の攻撃により、増税の悪影響を取り除くために、大きな経済対策が導入されることになれば、それこそ、麻生財務相は辞任ということになるかもしれません。そこまでいかなくても、次の組閣で麻生氏が財務大臣でなくなれば、野党の大勝利です。そうなれば、有権者も野党に振り向く人も現れるかもしれません。

有権者としては、財政や安保なども含めて、野党がまともな政策を打ち出せば、別に自民党ではないと考える人もでてくるでしょう。そうなれば、与党も財務省にやすやすと籠絡されることもなくなるかもしれません。そうして、与野党が切磋琢磨して、国民のために努力する体制ができあがるかもしれません。

それができたときに、日本の野党ははじめてまともな仕事をしたと国民から一定の信頼を勝ち得ることができるかもしれません。

それをせずに、臨時国会を「三点セット」(関電あいちトリエンナーレNHK)で終わられせば、国民からの信頼はまた地に落ちることでしょう。そうして、有権者からは大馬鹿と思われ、二度と這い上がることはできないかもしれません。

そうなると、安倍政権もこれから先、経済がますます悪化した先には、有権者の信頼を失うかもしれません。その後は、財政政策を根本的な変えない政党が政権与党になったとしても、短期政権で終わることになり、財務省はぬか喜びし、10%増税はおろか、20%増税、25%増税にまで突っ走ることになるかもしれません。

このまま増税して、まともな経済対策も打たないということになれば、与野党ともに疲弊することになるのです。特に野党はますます疲弊することになるでしょう。

自民党は、増税を決めてしまったので、自民党議員がいまさら自ら先頭に立って増税に反対するわけにもいきません。それは野党の役割です。今こそ野党は、国民のため、日本の政治主導のため、そうして自分たちのために、決起すべきなのです。

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2019年10月7日月曜日

台湾問題だけでない中国の南太平洋進出―【私の論評】海洋国家を目指す大陸国家中国は、最初から滅びの道を歩んでいる(゚д゚)!

岡崎研究所

 10月1日の中華人民共和国建国70周年を前に、中国は南太平洋の島嶼国、ソロモン諸島、キリバスの二か国に対し、立て続けに台湾と断交させ、中国との国交を樹立させた。ソロモン諸島と台湾の断交は9月16日、キリバスは9月20日であった。台湾を承認している国は今や世界中で15か国のみとなってしまった。蔡英文政権成立時の22か国から3年半の間に、実に、7か国が減少したことになる。


 台湾との外交関係の切り崩しは、中国の建国70周年に合わせて行われた。その意図は、習近平体制にとっては、米中貿易紛争の出口がはっきりしない上に、香港をめぐる大規模デモの継続に収束のめどが立たない状況下で、何とか自らが「核心的利益」と位置付ける台湾問題に対し、効果的な圧力を加え、台湾を追い詰めていることを、内外に誇示したいというのが本音であろう。

 中国としては、来る1月11日の台湾総統選において民進党・蔡英文に対する圧力をますます強化し、台湾の生存する国際空間をどんどん狭めたいところであろう。蔡英文自身は、ソロモン諸国の決定は中国が1月の総統選挙に介入しようとする新たな証拠であるとして、「ここ数年、中国は金銭や政治的圧力で台湾の国際社会での場を抑圧してきた」と批判した。

 ソロモン諸島が台湾と断交し、中国と国交を樹立した直後、一週間もたたずしてキリバスも台湾と断交した。この時の断交について、蔡英文政権の呉外相は「キリバスは最近、台湾の民用機の購入費用の贈与を要求し、台湾側が提案した商業ローン方式を拒否した。中国は複数の航空機や船舶の贈与を約束したという」と述べた。これは、中国の南太平洋諸国に接近する場合の台湾切り崩し策の典型例であろう。

 台湾の国家安全会議は9月25日、中国が来年1月の総統選挙に影響を与えるべく今後取ると想定される措置・策略について報告書を公表したが、その中で、年末までにさらに1~2カ国との断交に追いやられる恐れがある、としている。今回の台湾と断交しなかった太平洋の島嶼国の中から、総統選の直前のタイミングで外交関係を台湾から中国に切り替える国が出てくるということは、あり得そうな話である。中国による「金銭外交」の形をとった圧力強化が、台湾の総統選挙において、民進党、国民党、その他政党のいずれに有利に働くかは予断を許さないところである。

 なお、南太平洋のバヌアツは中国承認国であるが、最近、ここに中国が軍事拠点を作るのではないかとの噂が絶えない。もしそのような動きが加速されるようになれば、それはオーストラリアの裏庭に当たる場所であり、中国の言う「第2列島線」の中での軍事拠点化になり得るものである。「自由で開かれたインド太平洋」の構想に賛同する米国、豪州、日本などの国々にとって、そのような中国の動きは断じて無視できないものである。中国の太平洋島嶼国への浸透は、台湾外交の問題にとどまるものではなく、はるかに広範な地政学的意味を持っている。

【私の論評】海洋国家を目指す大陸国家中国は、最初から滅びの道を歩んでいる(゚д゚)!

「一帯一路サミット」が4月25~27日に北京で開催されました。今年のサミットは、150カ国以上が参加し、出席する首脳の数も増えました。

興味深いのは王毅国務委員兼外相の発言でした。サミットを前にした19日、記者会見を行い、「一帯一路は、地政学的なツールではなく、参加国に債務危機をもたらすものではない」とわざわざ断ったのです。

敢えてこうした発言をしたのは、「地政学上のツール」でしかなかったということが誰の目にも明らかになってきたからでしょう。

地政学者で海軍戦略家のマハンは「海を制する者は世界を制する」と述べましたが、マハンのシーパワー論に学ぶ中国は、西はジブチ、ギリシアのピレウス港、東はスリランカのハンバントタ港、オーストラリアのダーウィン港など、着々と海洋進出を固めています。

今後中国の触手が伸びていきそうなのが、南太平洋島嶼諸国です。

ハドソン研究所のシニア・フェローであるジョン・リー氏がこの問題を論じているので、そのレポートの要点を紹介します。



南太平洋島嶼諸国は貧しい国が多く、外部からの商業ベースでの投資を呼び込むのが難しいです。このため海外のODAに依存する国が多いのですが、そのなかでも中国のODAに依存するケースが後を絶たないのです。

たとえばフィジー共和国の人口は85万人。同国に対して2006から2013年の間に提供されたODAのうちの約50%が中国からのものです。

中国は、フィジー共和国、クック諸島、サモア独立国、トンガ王国、バヌアツ共和国等の島で、軍事的にも使用可能なインフラ施設を建設しています。

中国は、日本列島から台湾、フィリピン、南シナ海に至る第一列島線を絶対防衛ラインとし、東シナ海、南シナ海を聖域化し、いずれは伊豆・小笠原諸島からグアム・サイパンなどを結ぶ第二列島線まで進出し、第二列島線の外にアメリカを追いやることを目標としていますが、この列島線上に親西側諸国が並んでいると、第一列島線、第二列島線を突破できません。

このため、第二列島線上に位置する南太平洋島嶼諸国に軍事拠点をつくることで、ここから西側の影響力を排除し、第二列島線を突破することを考えています。

島嶼諸国の中でもバヌアツ共和国のケースは深刻です。中国とバヌアツは、ルーガンビル埠頭に軍事基地を造ることを協議しているといいます。この埠頭は、中国が54万ドル(約6000万円)の政府ローンを組み、2017年の半ばに建設されています。

冒頭の記事にもあるように、中国の島嶼諸国に対する援助によって、台湾との国交を断絶する国も増えました。
昨年11月に行われたAPECで、日米豪の3カ国は、アジア太平洋地域に対して民間資金による投資推進を行う覚書を結びました。こうした民間資金に加えてODAも重要です。

米国は、2017年の国家安全保障戦略、2018年の国防権限法で示された目標を実現するために、ODAを戦略に組み込むべきです。

中国は「先民後軍」の戦略で、ひも付きのインフラ整備を行い、債務の罠に陥れて、その国の港湾などを横取りする作戦を行ってきました。

ペンス副大統領やポンペオ国務長官らが幾度となく「中国の借金に頼るのは危ない」と警告しても、南太平洋島嶼諸国にとって、中国のお金はのどから手が出るほど欲しいものとなっています。島にはこれといった製造業もなく、若者の流出は続いているためです。逆に言えば、最貧国の足元に付け込む戦略を持っているのが中国です。

このまま放置すれば、ジブチのように中国によって軍港が築かれる日も遠くないです。

日本は、外務省と防衛省との縦割り行政で、安全保障の観点からODAを戦略的に運用する発想に欠けています。

フィジーの人口は約85万人で、南太平洋島嶼国で最大の人口を擁していますが、これは東京の世田谷区よりも少ないです。日米豪で戦略的なODAの支援を行えば、南太平洋島嶼国に軍港が築かれるのを防ぐことができるはずです。ODAを戦略的に運用することは、日本が最初に提唱したインド太平洋戦略を推進するものとなりえます。

ODAは人道的な支援に限定されるべきではないです。2018年のアメリカの国防総省の年次報告で、一帯一路は、「グローバルな覇権戦略」と言われています。いま必要なのは「挙国一致」で、中国の覇権戦略を先回りして阻止することです。

ただし、中国の南太平洋進出が吉と出るか、凶と出るかということになれば、凶と言わざるを得ません。

中国の未来を地政学的に見てみると、国家方針たる一帯一路(海陸のシルクロード)はランドパワーとシーパワーの確保があって初めて可能になることに注意しなければならないです。思い出されるのは『海上権力史論』を唱えたアルフレッド・マハンのテーゼです。彼は「大陸国家であることと海洋国家であることは両立しない」と述べ、両生国家の在り方を否定しています。

このテーゼは、他の史家も唱えるところで、大陸国家たるモンゴル帝国の経済的弱点は陸上輸送のコストは海上輸送のそれよりもはるかに大きいことでした。大陸国家は陸続きであるために、必然的に強大な陸軍が求められ、現中国を例にとっても115万もの陸上兵力を有しています。これを日本の14万、アメリカの49万と比較すると膨大な数です。しかもこの数は、近年の兵力削減を済ませた後の数なのです。

他方で、海上国家は防衛にかけるコストが少ないです。また、膨張する場合でも、大陸国家に見られるような他国領をすべて治める必要はなく、シーレーンのチョーク・ポイント(要衝)のみを押さえておけばそれで済みます。とりわけ、地政学的な要衝と物資の集まる集積地を押さえれば、相手の死命を制することが可能となります。大英帝国はこのようにして7つの海を支配しました。現在の中国はまさに、これを狙っているのです。

では、大陸国家と海洋国家が衝突すれば、どうなるのでしょうか。 両国家がきわめて相性が悪いことは、ハルフォード・マッキンダーの次の言葉からもよく分かります。「人類史は、ランドパワーとシーパワーの衝突の歴史である」 と。

このテーゼは、両者(海洋国家と大陸国家)の性格傾向から見て正鵠(せいこく)を射ているように思われます。そのテーゼをさらに深めたのが、ニコラス・スパイクマンのリムランド論です。「リムランドを支配するものがユーラシアを制し、ユーラシアを支配するものが世界の運命を制する」とした上で、スパイクマンはこう述べています。


「自分たち(米国)の安全を守るためにはヨーロッパとアジアの政治に積極的に協力しなければならない」(『平和の地政学』)と。海洋国家は、リムランド制圧に動く大陸国家の動向を見過ごすことはできないのです。日米が中国の海洋進出に対抗して「開かれたインド太平洋自由構想」をぶつけている現状は、まさにそのことを示しているのです。

そもそも、中国にはこれといった同盟国がいません。とりわけ、大国は皆無です。ロシアが唯一それに当たりますが、そのロシアは軍事的には侮れないとはいいながら、現状のGDP は韓国なみであり、とても大国とはいえません。

そのロシアを離反させれば、ほぼ同盟国は皆無となります。EUは中国と経済的利害をもってつながっていましたが、2012年あたりから関係が冷え込み始めました。

中国の弱点は、他国に輸出できるソフトパワーを持っていないことです。人民中国が思想的に唯一輸出できたものは毛沢東思想であったのですが、その毛思想は中国の伝統をことごとく壊してしまい、かつその毛思想も自ら放棄したため、今や文化的に誇れるものは皆無です。かつてのローマ帝国と比較すれば、さらに実態が明らかになります。

「ローマは3度世界を征服した。1度は武力で、1度はキリスト教で、1度は法で」(ドイツの法学者イェーリングの言葉)。では、現中国はどうでしょうか。上の言葉で言えば、武力しか持っていません。キリスト教(宗教・思想)や法(普遍的法体系)に当たるものがまるでないのです。これは、他国を真に魅了するものがまったくなく、経済と軍事のみで自己アピールしなければならないことを意味しています。

ここが、過去の中華帝国とまったく違います。かつての中華帝国も周辺国への恫喝と侵攻を繰り返したのですが、その高度な文明の故をもって尊敬も勝ち得ていました。それが現中国にはないのです。これは、世界帝国として台頭するには致命的な欠陥となるでしょう。

現在の中国は鄧小平が劉華清(中国海軍の父)を登用し、海洋進出を目指した時から両生国家の道を歩み始めました。そして今、それは習近平に引き継がれ、陸海併せ持つ一帯一路戦略として提示されるに至っています。しかしこれは、マハンの「両生国家は成り立たない」とするテーゼに抵触し、失敗に終わるでしょう。

劉華清(中国海軍の父)

事実、両生国家が成功裏に終わった例はありません。海洋国家たる大日本帝国は、大陸に侵攻し両生国家になったため滅亡しました。大陸国家たるドイツも海洋進出を目指したため2度にわたる世界大戦で滅亡しました(ドイツ第2、第3帝国の崩壊)。ソビエト帝国の場合も同じです。よもや、中国のみがそれを免れることはないでしょう。一帯一路を進めれば進めるほど、地政学的ジレンマに陥り、崩壊への道を早めてゆくことになります。

とはいいながら、先にも述べたように、日米はやはり南太平洋の国々に対して、OADなどで支援をするべきでしょう。日米がこれを実行すれば、中国はさらにこれらの国々への支援を増やさなければならないことになります。それは、中国の崩壊への道を早めることになります。

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