2020年6月7日日曜日

“中国の貧困”をまさかの暴露、李首相の真意とは?— 【私の論評】売り家と唐様で書く三代目と言う格言を地でいく習近平は、四面楚歌の状態にある(゚д゚)!


全人代で飛び出した「月収1000元が6億人」発言

(澁谷 司:JFSS政策提言委員・アジア太平洋交流学会会長)

李克強首相

 今年(2020年)528日、中国の李克強首相は、全国人民代表大会の記者会見で「昨2019年、中国人の平均年収は3万元(約45万円)だった」と公表した。だが、一方で、「中国には月収1000元(約15000円)の人が6億人もいる」と明かしたのである。

 月収1000元ということは、年収12000元(約18万円)にしかならない。この月収では、1キロ30元(約450円)以上もする肉は食べられない。また、中小都市の1カ月分の家賃にもならないだろう。

 一般に、貧困は「絶対的貧困」と「相対的貧困」とに分けられる。世界的には、「絶対的貧困」は1日当たり1.90米ドル(約205円)以下の収入とされる。月収にすると57米ドル(約6150円)、年収は684米ドル(約73800円)である。

 世界的基準から見ると、月収1000元しかない中国の6億人は「絶対的貧困」層には当たらない。

 では、この月収1000元の6億の人々をどのように位置付けたら良いのだろうか。確かに、「絶対的貧困」とは言えないが、中国国内でも平均年収額の40%しかない。したがって、「相対的貧困」層と言えよう(ちなみに、我が国では、1人世帯の場合、年収約122万円以下が「相対的貧困」に当たる)。

 問題は、月収1000元の人々が6億人も存在する中国が、(今年中に)「小康(ややゆとりのある)社会」を実現したと言えるだろうか。もちろん“ノー”である。

 実は、20163月、王岐山 中央紀律委員会書記(当時)が、第135カ年計画(2016年~2020年)で「小康社会」を実現するという目標を掲げた。けれども、昨2019年から今年にかけ「新型コロナ」の世界的蔓延で、習近平政権は、今年のGDP目標数値さえ打ち出すことができなかった。

 そのため、王が掲げた今年末までに「小康社会」実現という目標は、“絵に描いた餅”に終わる公算が大きい。

「習近平派」に対する反撃か

 さて、この度、李克強首相は、なぜ中国共産党に“不都合な数字”を暴露したのだろうか。

 元来、経済に関しては、首相の“専権事項”だったはずである。ところが、前述の通り、首相でもない王岐山が、第135カ年計画で「小康社会」を実現するとぶち上げた。李首相からすれば、王による“越権行為”である。無論、それを許したのは、習近平主席だろう。

 同時に、習主席は、かねてより劉鶴副首相を重用してきた。だから、これまで李首相には、ほとんど出番がなかったのである。

 もしかすると、今回、全人代での記者会見で、李首相は「習近平派」に対する反撃を試みたのかもしれない。習主席の「中国の夢」を打ち砕くためである。

 当然、李首相には党内で確固たる「反習近平派」の支持があると見るべきだろう。そうでなければ、たとえ首相といえども、やすやすと中国の実態を暴露することはできなかったはずである。

習近平の暴走に眉をひそめる元老たち

「反習派」の代表格は江沢民系「上海閥」に間違いない。習主席と王岐山の「反腐敗運動」で同派は徹底的に叩きのめされた。習主席らに対する同派の深い怨みは、想像に難くない。

 他方、胡錦濤系「共青団」(李首相の出身母体)は、以前、微妙な立ち位置だった。だが、現時点では「反習派」の一翼を担っているのではないだろうか。

 201211月、胡錦濤主席は辞任する際、(これ以上)「腐敗がはびこれば党が不安定となるリスクが増し、党の統治が崩壊する可能性がある」と党内で訴えた(したがって、最初「共青団」は習主席と王岐山の「反腐敗運動」を支援していたふしがある)。その時、胡主席は江沢民前主席ら古参幹部に対し、習近平新指導部へ干渉しないよう、涙ながらに訴えたと伝えられる。胡主席は、任期時、散々、江沢民元主席らから干渉を受けたため、新指導部には自らが経験した苦労をさせたくなかったのだろう。ところが、皮肉にも、それが習主席の“暴走”を招いたとも言えよう。

 実際、「反習派」は「紅2代」「紅3代」(元党幹部の2世・3世)の中にも存在する。また、一部の元老たちは、習主席の政治手法―終身制導入や「第2文革」発動等に対し、眉をひそめているだろう。


家族も離反し、四面楚歌?

 近頃、習近平夫人の彭麗媛と娘の習明沢が、習主席と別居したと報じられている。その理由だが、彭夫人と明沢が、中国共産党による香港への武力弾圧に反発しているからだという。2人は、香港版「国家安全法」制定にも反対だと噂されている。明沢はハーバード大学で心理学を専攻したが、香港出身の友人もいる。そのため、香港市民に深く同情しているかもしれない。

 このように、目下「習近平派」は“四面楚歌”の状態にあると言っても過言ではない。だからこそ、習政権は、香港版「国家安全法」の制定や尖閣諸島や南シナ海等で強硬路線(「戦狼外交」?)に転じているのではないだろうか。

[筆者プロフィール] 澁谷 司(しぶや・つかさ)
 1953年、東京生れ。東京外国語大学中国語学科卒。同大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学等で非常勤講師を歴任。200405年、台湾の明道管理学院(現、明道大学)で教鞭をとる。20112014年、拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。20203月まで同大学海外事情研究所教授。現在、JFSS政策提言委員、アジア太平洋交流学会会長。
 専門は、現代中国政治、中台関係論、東アジア国際関係論。主な著書に『戦略を持たない日本』『中国高官が祖国を捨てる日』『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる!「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)等多数。

【私の論評】売り家と唐様で書く三代目と言う格言を地でいく習近平は、四面楚歌の状態にある(゚д゚)!

習近平を一言で言えば、他の中共幹部と同じく、自らも不正行為をしているにもかかわらず、多くの幹部の腐敗を追及し失脚させ、カメラを大量配置して反対派人民を監視し、スマホアプリで「習近平思想」を押しつけただけの男です。

中国の建国の父は、毛沢東であり、中国の経済発展は、鄧小平の成果であり、習近平はそれを食い潰しているに過ぎません。売り家と唐様で書く三代目と言う格言を地でいくような男です。


そのことが、どうやら中国共産党内部でも「共通の見解」になりはじめたようです。
武漢肺炎の処理の方法が不評だったのでしょう。さらに、これによって、全世界から不興を買うような行動ばかりする習近平には、愛想が尽きたのでしょう。

現状の中国で何が起きているかは不明です。しかし、習近平にリーダーシップがあるようには見えません。

習近平政権のリーダーシップが期待されるのは、胡錦濤政権が解決できなかった課題への取り組みです。その課題は、解決方法によって、大きく 2 つに分類できます。 1 つは、一党支配の「枠」に付け足す、修正にとどまる課題です。

例えば、格差縮小のための社会保障や所得引き上げなど民生分野の改善や都市化などが該当します。

もう 1 つは、一党支配の「枠」を壊す必要のある課題です。例えば、共産党の権力を監督するための政治改革です。 前者の課題には、胡錦濤政権のやり残した余地が大きいです。

その原因の 1 つは、胡錦濤のリーダーシップの欠如にあると思われます。政策の策定過程、実施過程で胡錦濤が 軍や国有企業、主力産業などの既得権益層の抵抗を排除することができなかったのです。

習近平政権になったからといって、既得権益層が消滅するわけではありません。 しかし、主席になったばかりの、習近平は、胡錦濤に 比べると抵抗を排除することが可能と思われ成果が期待できたのです。



他方、後者の課題に取り組むことは、習近平でも難しいでしょう。なぜならば、習近 平も江沢民や胡錦濤と同様に、一党支配の「枠」の中から誕生した総書記だからです。そのため、習近平が一党支配の「枠」を壊すような政治改革、例えば選挙制度の 導入や司法制度改革、メディア改革を行うことは考えられないです。

例えば、「協商民主」は、そもそも西側の選挙による政策選択である「選挙 民主」のアンチテーゼとして提起されたものであり 、しかも「国の政権機関や政治協商組織、党派、団体などのチャネル」といった既存のチャネルに限定されています。

また党内選挙での差額選挙方式も、政策を選ぶのではなく、人を選ぶ選挙にすぎません。 報告で言及された「党の指導を堅持し」、「西側の政治制度のモデルをそのまま引き 写しにしない」ということは、党中央が政治改革において越えてはならないラインと しての認識を示しています。

それは、「政治協商」にせよ、「差額選挙」方式にせよ、党 中央が認識する一党支配の「枠」内での政治的寛容性の範囲内にあるということです。中国が一党支配体制という世界でも特異な政治体制であることから、政治改革には常に注目が集まります。しかし実際に中国国内で一党支配の「枠」を壊すような政治改革 を求める声はまだ大きくないです。

一党支配の「枠」を修正するだけの余地はまだ大きいです。胡錦濤がやり残した課題に、 習近平がリーダーシップを発揮し取り組むだけで、多くの民衆は習近平政権を評価し、 党と社会の亀裂を修復することは可能と見られていました。そのため、短期的、総書記長になってから5年ぐらいは、 習近平政権は安定を勝ち取ることが可能であるとも見られてきました。

習近平は、胡錦濤政 権 10 年の失政のおかげで、「猶予」期間を手にしたといえるかもしれれませんでした。しかし、習近平が総書記長になった2013年からすでに、今年は7年目です。修復を進めつつ、支持を得て、政権基盤を再編し強化しながら、他方で「枠」を 壊す必要のある課題について,どう対応するかも問われつつあります。


「枠」を壊すという意味では、先ほども述べたように、習近平は建国の父である毛沢東や、中興の祖ともいえる、鄧小平による経済発展に及ぶような成果は何も挙げていないし、その見込みも全くありません。

本年2020年は、中国の二つの100年計画の一つ「小康社会の全面的実現」目標の期限である建党100周年の2021年より一年前であり、もしこの時点で習近平が、毛沢東や鄧小平に匹敵するする成果をあげることができれば、習近平政権にとっては長期独裁を全党および人民に納得させるだけの効果を持つ歴史的偉業になります。

そのためでしょうか、習近平焦っているようではありますが、米国などとの対立はますます激化し、コロナ対応などでは、多くの国々との対立を深め、一向に大きな成果は挙げられそうにありません。

だからこそ、売り家と唐様で書く三代目と言う格言を地でいくような習近平は、四面楚歌の状態にあるのでしょう。

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2020年6月6日土曜日

香港デモ同様の手口か。全米に広がる暴動の裏に中国「関与」の噂―【私の論評】米国人の中共に対する憤りは、コロナ禍も相まってますます激烈になる(゚д゚)!

香港デモ同様の手口か。全米に広がる暴動の裏に中国「関与」の噂

米国の暴動

燎原の火のごとく全米中に広がり、収集がつかない状況となっている大規模な暴動。各地で放火や略奪が多発していますが、その裏に「あの国」の関与が囁かれ始めているようです。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、「デモ隊のなかに中国からの指示を受けた工作員が紛れ込んでいてもなんら不思議ではない」としてそう判断する理由を記すとともに、日本に対しても尖閣海域でも不穏な動きを見せる中国への警戒を呼びかけています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2020年6月3日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【中国】中国のアメリカ暴動への関与疑惑が出はじめた

トランプ大統領SNS投稿 暴動起こしている人たち「急進左派」

ミネソタ州ミネアポリスで白人警官が偽札使用の容疑で拘束した男性の首を圧迫し死亡させた事件をきっかけに、全米で大きな暴動が発生しています。抗議デモに便乗して店を襲撃、略奪を行う輩や破壊活動を行うアナーキストなども入り混じって、アメリカは大変な混乱状態にあります。

これほどまでに騒動が大きくなった一因には、新型コロナウイルスによる失業拡大で、貧困層のフラストレーションがたまり、人種差別による事件をきっかけにそれが一気に爆発したと言われています。

発展途上国など、コロナ災禍により多くの被害が生じた地域や国では、これから経済的なダメージが本格化すると見られており、このアメリカの混乱が他国へと広がれば、感染と同じくらい、あるいはそれ以上に世界情勢は大きなショック状態に陥ることが懸念されます。中国発の新型コロナの怖さは、負の連鎖がどこまでも続くことです。

この状況に、トランプ大統領はツイッターで、暴動を起こしている者を「アナーキスト」として、「野党・民主党が主導する都市や州は、ミネアポリスの州兵の鎮圧を参考にすべきだ」と述べました。

このようなアメリカの状況について、中国は積極的に国内で報道しています。香港での人権弾圧をアメリカから批判されているだけに、「アメリカも人のことをいえるのか」ということを、国内にアピールする狙いがあるのでしょう。

以前、アメリカがウイグルでの人権弾圧を批判し、人権侵害に関わった当局者に制裁発動をするための「ウイグル人権法案」を可決した際には、中国政府は「アメリカは先住民を虐殺したではないか、こんな法案をつくる資格があるのか」と反発しました。

ウイグル人権法案可決に激怒、「アメリカも先住民を虐殺した」と言い始めた中国

とはいえ、150~400年前の先住民弾圧と、現在の少数民族弾圧を同一に語るのは、明らかに欺瞞です。それならば清末のイスラム教大虐殺の洗回を中国はどのように考えているのか。そもそも中華歴代王朝は周辺民族をすべて野蛮な夷狄として扱ってきました。夷狄とは、その文字を見てもわかるように、禽獣のことです。

米中の民族問題は、それぞれまったく異なるものです。中国のほうは非漢族の言語を潰して漢化させる同化主義であり、民族浄化でもあります。

それはともかく、中国は自らの正当性を主張するために、とにかく屁理屈をこねて、相手の不当性を訴えます。

中国南部広東省の省都広州にある「リトルアフリカ」の路上に集まる人々(2018年3月2日)

以前のメルマガで、中国ではアフリカ系の黒人が新型コロナ感染の第2波の元凶であるかのように目され、入店拒否や住居からの退避、さらには集団隔離が行われているということをお伝えしました。こうした黒人差別によって、中国はアフリカ諸国から抗議を受けています。

「銃殺してしまえ」…コロナ禍の中国で深刻な黒人差別が始まった

そうした批判を交わすため、さかんにアメリカでの黒人差別の様子や、それによって大きな暴動が起こっていることを報じているわけです。

こうしたやり方は、中国の「三戦」という戦術に基づいたものです。これは、2003年に修正された「中国人民解放軍政治工作条例」のなかに盛り込まれた、人民解放軍の戦術です。

この三戦とは、世論戦、心理戦、法律戦の3つのことです。世論線とは国内および国際世論に影響を及ぼし、自分たちへの支持を築くこと、心理戦は威嚇や脅迫、恫喝などによって相手の士気を低下させること、そして法律戦は国際法や国内法を利用して、相手の不当性に非を鳴らすとともに、自らの絶対的な正当性を主張することです。そのためにはどんな屁理屈も厭わない。

たとえば、南シナ海の領有権については、「古文書に書いてある」などという不確かな情報を根拠に、とにかく「漢の時代から管理していた」などと主張し、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所から「中国の主張に根拠なし」という判決が下されれば、西側諸国が勝手に決めた国際法に従う必要はないとし、「そんな判決は紙くずだ」と吐き捨て、まったく判決を守ろうとしません。

言い換えれば、あくまで自己中心的で、自分の都合いいように何でも解釈するということです。

今回のアメリカでの暴動についても、中国はアメリカの黒人差別を人権問題だとして、ウイグルや香港問題に口を挟むなと牽制するつもりなのでしょう。

ところで、この全米での暴動について、中国が裏で関与しているのではないか、という噂があちらこちらから出てきています。

私もよく知る元中国人の石平氏は自身のツイートで「アメリカの『抗議者』、どういうわけか中国共産党党旗、中国の国旗を掲げている。暴動の背後に中共の暗影があるのではないかとの疑惑が深まっている」と述べ、ジャーナリストの門田隆将氏もこの投稿をリツイートしながら、「やはりというべきか“中国の関与”が取沙汰されてきた。SNS上の映像では中国語が飛び交い、抗議者の掲げる旗に中国国旗も」と指摘しています。

ジャーナリスト・門田隆将氏 米国全土の暴動で「“中国の関与”が取沙汰されてきた」

以前、香港デモでは変装した香港警察や中国軍がデモ隊に潜り込ませ、過激な暴動を演出したことがありました。香港人は英語が話せるのに、彼らはまったく英語を話せなかったことから、大陸の中国人だということがバレたことがありました。

こうしたことも、世論戦の一環なのです。そのため、アメリカでのデモ隊のなかに中国からの指示を受けた工作員が紛れ込んでいても、なんら不思議ではありません。

台湾も、中国から多くのフェイクニュースを流されており、蔡英文政権も中国発のフェイクニュースによって扇動されないよう注意を呼びかけています。

武漢発のパンデミックを利用して、中国は南シナ海だけでなく、尖閣海域にも手を伸ばしているという、不穏な動きがあります。日本は中国の火事場泥棒への警戒を緩めてはいけません。

【私の論評】米国人の中共に対する憤りは、コロナ禍も相まってますます激烈になる(゚д゚)!

上の黄文雄氏の記事では、香港デモでは変装した香港警察や中国軍がデモ隊に潜り込ませ、過激な暴動を演出したことがあったとしています。これは、いかにもありそうな話で、中国が、そのようなことをしていたとしても驚くには、値しません。

しかし、現実の中国はそれ以上のことをしていました。デモが10週目に入ろうとしていた、昨年の8月10日に、中国政府は米国が香港の抗議デモを扇動しているとして非難を強めました。

同9日には全身黒ずくめの数百人の参加者が市内の国際空港に集まり、3日間の座り込みを始めました。週末に予定されていたいくつかのデモが地元警察によって禁止されたことで、さらなる衝突につながる可能性がありました。中国政府は数日前、香港警察が騒動を沈静化できなければ直接介入に踏み切る用意があると警告しました。

中国本土と香港の中国政府系メディアは同8日と9日、香港の米総領事館員ジュリー・イーデー氏がホテルのロビーで反対派の主要人物らと面会した写真を公開しました。5年前に香港を揺るがした抗議デモの主導者、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏(22)の姿もありました。

中国の国営英字紙チャイナデイリーなど本土のメディアはこの面会を、米国の「黒い手」が抗議活動の背後にある証拠だと論じました。一部のメディアはイーデー氏の経歴や子供の名前も公表しました。

国営の中国中央テレビ(CCTV)は同9日、米中央情報局(CIA)は2000年代に旧ソ連諸国で起きた抗議活動「カラー革命」を扇動したことで知られると伝えました。中国政府は今週、香港の騒乱はカラー革命の様相を呈しているとの見方を示しました。

香港の米総領事館員の報道官は、イーデー氏はコメント要請に応じられないと述べました。

黄氏は9日、自身も自身の団体も全米民主主義基金や米政府から資金を受け取っておらず、また米総領事館からも物資や助言を受けていないと述べました。

昨年の香港デモで星条旗を掲げる参加者達

確に香港のデモでは、デモ隊の中には米国の星条旗を掲げる人たちもいましたが、それは米国に煽られたということではなく、米国の支援も期待していることを表明したものであると思われます。実際その後米国では11月に香港人権・民主主義法が成立しました。

この法律に対しても、中国は「内政干渉」だと強く抗議をしました。しかし、国際法においては、人権に関わるものに関して、内政干渉には当たらないとされています。

ここで、国際法の適用などの可否などの判断はしませんが、それにしても確かなことがあります。中国が米国が香港のデモを煽ったとか、内政干渉であると主張するなら、国際司法裁判所などに提訴すれば良いと思うのですが、なぜかそのようなことはしないですし、国際法という言葉も用いることはありません。

そもそも、中国は南シナ海の領有に関して、上の記事にもあるように国際司法裁判所に提訴され、「中国の南シナ海領有に関しては、全く根拠がない」との裁定を下されています。にも関わらず、中国はその裁定を守るどころか、最近でも南シナ海の実効支配地域の軍事化を強化している有様です。

それに、中国は未だに、米国が香港デモを煽ったと言う証拠をあげていません。もしあげていたとすれば、これをもとに、米国を徹底的に叩いていたでしょう。


中国が米国の暴動を裏で煽っているとすれば、その理由は明らかです。上で、黄文雄氏が述べている理由もありますが、そのほかにもトランプ大統領の再選阻止という目的もあるでしょう。

ただし、次の大統領が仮にトランプ氏以外の、バイデン氏やその他の人になったとしても、今後の米国の対中国政策はあまり変わらず、中国に対して厳しいものになるでしょう。なぜなら、米国では既に議会が上下院ともに、中国に対して厳しい見方をしているからです。

それよりも何よりも、米国人の多くが、今や中国に対して、厳しい見方をしているからです。今回の米国内の暴動が、中共によって煽られたことが、今後の調査などで明らかになれば、米国人の中国に対する憤りは、中共がもたらしたコロナ禍も相まってますます激烈になるでしょう。

さて、最後に新唐人テレビの動画を掲載します。


この動画では、ホワイトハウス付近の放火現場で飛び交う中国語をはじめ、 暴動の背後に中共の鬼影があることが示されています。

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2020年6月5日金曜日

野党が追及する専門家会議の「議事録未作成」…基準定めたのは民主党政権 意見採用は政治家の役割―【私の論評】専門家の意見を採用する政治家は、本来の意味でのゼネラリスでなければならない(゚д゚)!

野党が追及する専門家会議の「議事録未作成」…基準定めたのは民主党政権 意見採用は政治家の役割だ 

高橋洋一 日本の解き方

立民蓮舫代表




















 新型コロナウイルスの政府専門家会議が議事録を作成していないと報じられた。

 まず、現状がどうなっているのかを見てみよう。新型コロナウイルス感染症対策本部と新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の開催状況、資料、議事概要は、官邸のウェブサイトで公表されている。対策本部は1月30日から5月25日まで36回開催され、専門家会議は2月16日から5月29日まで15回開催されている。

 議事概要について、対策本部は3月1日開催の第16回まで、専門家会議は3月9日開催の第6回までそれぞれ公表されている。なお、対策本部は新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき設置され、メンバーは首相を本部長として閣僚である。専門家会議は医学的な見地からの助言を行うために設置され、座長は脇田隆字・国立感染症研究所所長、副座長は尾身茂・独立行政法人地域医療機能推進機構理事長などとされ、必要に応じ、その他関係者を出席させるとされている。

 議事概要の公表が遅れていることについて、政府は、各会議の参加者の全員に確認してからでないと公開できないので時間がかかっていると説明している。

 筆者が現役の官僚の時には、秘密保持のために議事概要について手間がかかるやり方をしていた。委員のところに直接に出向き、議事概要のコピーを渡さずに、その場でチェックしてもらっていた。今はどのように行っているのか知らないが、コロナによる外出自粛もあったなかで、確認やチェックに時間がかかったのかもしれない。

 「議事録」と「議事概要」の差は、基本的には発言者を特定するかどうかである。専門家会議で議事録が作成されていないと報道されているが、正確にいえば、発言者が特定されない議事概要が作成されているが、その公表が昨今の事情で遅いということになる。

 ここで問題は、なぜ議事録ではなく議事概要なのかに絞られる。官房長官の記者会見によれば、専門家会議は政策の決定や了解に関わらないので発言者を特定しない議事概要にすることとし、初回会合で委員の了解を得たという。この手続きは、東日本大震災後の2011年4月1日に民主党政権で決定された「行政文書の管理に関するガイドライン」に定められたものだ。

 専門家会議は助言するにすぎないので、発言者が特定されない議事概要の作成とすることで問題はない。一部野党が攻めているようなマスコミ報道であるが、そのうち「ブーメラン」になりはしないか。専門家会議ではいろいろな意見が出ても、それらのうち何を採用するかは、政治家の対策本部の役割だ。

政府は批判を受けて、専門家の了解が得られれば、発言者を一部明示するなどの対応を含めて検討に入ったと報じられている。

 ただ、専門家会議での発言者を特定すると、新元号の制定時にあったように、マスコミの取材攻勢が特定の研究者の研究活動に迷惑になりうることもある。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】専門家の意見を採用する政治家は、本来の意味でのゼネラリスでなければならない(゚д゚)!
専門家とは、一体どのような人たちなのでしょう。簡単に言ってしまえば、特定の分野における専門知識を持つ人ということだと思います。
コロナ対策専門家会議

では、専門家と言われる人々の責任とは、どのようなものなのでしょうか。これについては、経営学の大家ドラッカー氏は次のように語っています。
素人は専門家を理解するために努力すべきであるとしたり、専門家はごく少数の専門家仲間と話ができれば十分であるなどとするのは、野卑な傲慢である。大学や研究所の内部においてさえ、残念ながら今日珍しくなくなっているそのような風潮は、彼ら専門家自身を無益な存在とし、彼らの知識を学識から卑しむべき衒学に貶めるものである。
ここでは、知識社会における組織に関してその専門家のあり方を論じてみたいと思います。ドラッカー氏は知識労働のための組織について、以下のように語っています
知識労働のための組織は、今後ますます専門家によって構成されることになる。彼ら専門家は、自らの専門領域については、組織内の誰よりも詳しくなければならない。(『ポスト資本主義社会』)
いまや先進国では、あらゆる組織が、専門家によって構成される知識組織です。

そのため昔と違って、ほとんどの上司が、自分の部下の仕事を知らないのが普通です。そもそも今日の上司には、部下と同じ仕事をした経験がないのです。彼らが若かった頃には、なかったような仕事ばかりです。したがって彼らのうち、部下たる専門家の貢献を評価できるだけの知識を持つ者もいません。

いかなる知識といえども、他の知識よりも上位にあるということはありません。知識の位置づけは、それぞれの知識に特有の優位性ではなく、共通の任務に対する貢献度によって規定されます。


このようにして、現代の組織は、知識の専門家によるフラットな組織です。じつにそれは、同等の者、同僚、僚友による組織なのです。

そしてそのフラットな組織において、彼らの全員が、まさに日常の仕事として、生産手段としての自らの頭脳を用い、組織の命運にかかわる判断と決定を連日行なうのです。

つまり、全員が責任ある意思決定者なのです。

 もっともドラッカーは、自分よりも詳しい者が同じ組織にいるようでは、専門家とはいえないと言います。
現代の組織は、ボスと部下の組織ではない。僚友によるチームである。(『ポスト資本主義社会』)
専門家会議に出ている人たちも、そのような専門家なのです。そうして、知識そのものに関しては、知識自体が重要なのであって、その知識を誰が生み出しのか、ということ自体は重要ではありません。さらに、専門家の知識自体は、他の人はその全貌を理解することはできません。

理解できるなら、そもそも専門家など必要ありません。だからこそ、複数の専門家で話し合い、これが現状では最適であろうということが官邸などの政治家がわかれば、それで良いということになります。

であれば、議事録などなくても、概要があれば良いということになります。


一方官邸の政治家や、他の政治家は、専門家ではないですが、ゼネラリストであることが求めらます。ゼネラリストというと、なんでもできる人と言うイメージがありますが、現代の知識社会においては、それはゼネラリスではなく、何もできない人のことです。

ドラッカー氏によると、ゼネラリストとは「自らの知識を知識の全領域に正しく位置づけられる人」ことであり、そのような人は、ほとんどいないとしています。そういうことができる人か、いずれトップマネジメントになるのです。政治家も本来はそうでなければなりません。

だからこそ、知識社会で働く人々が、自らの仕事の成果を生かしてもらうには、「ほかの人のニーズや方向、限界や認識を知らなければならない」としています。

ドラッカー氏は、「変化はコントロールできない。できるのはその先頭に立つ事だけである」と言っていますが、昨日の専門家(スペシャリスト)は、現代の経営環境では、今日は「無能の人」となるリスクを秘めています。ましてや組織のリーダーにならなければならない人やトップマネジメントは、変化を先回りするぐらいのスピード感が必要としています。

それには、真のゼネラリスト育成に踏み出す努力が欠かせません。専門のない「何でも屋」でなく、「統合力」においてスペシャリティを持ち、スペシャリストを使いこなせるだけの「知識の幅」「論理性」「クリティカル・シンキング」「交渉力」を持った人材の育成には確かに時間が掛か借ります。しかしそれは無意識に、個々の努力に期待していても、偶然を除いてできないことです。意識的な試みは避けて通れないのです。

このようなことを考えると、専門家の意見を採用する政治家は本来の意味でのゼネラリスでなければならず、「議事録がー」と頓珍漢で素っ頓狂な主張をする野党政治家などは、まずはゼルラリストとしての素養を身につけるべきです。

そうして、ゼネラリスになるにしても、政治家もある程度自分の専門分野を持つことが必要です。そのようなことをせずに、国会ではとにかく倒閣のことばかり考え、目先のことで倒閣の材料を探すことばかりに集中したためでしょうが、日本の野党は、日に日に衰弱するばかりです。

野党の存在は、政治の世界には、不可欠なはずです。しかし、今のままでは、無意味な存在になるだけです。そうして、無能な野党に胡座をかくような与党であっては、与党も野党と同じような運命を辿ってしまいます。

与党の政治家も、真の意味でのゼネラリストの素養を身につけるべきです。

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2020年6月4日木曜日

「種苗法改正」はなぜ必要なのか 改正案の中身は農家の知的財産保護に主眼 「外資に支配される」も杞憂 ー【私の論評】TPP芸人に変わって、種苗法芸人たちが出てくるか(゚д゚)!

「種苗法改正」はなぜ必要なのか 改正案の中身は農家の知的財産保護に主眼 「外資に支配される」も杞憂

高橋洋一 日本の解き

平昌冬季五輪で、カーリング女子日本代表の選手が休憩時間に食べて話題になったイチゴ

種苗法改正案について、ネットを中心に「海外への不正な流出を防ぐ」として賛成する意見と、「農家が苦しくなる」などと反対する声で二分されている。改正案は、今国会での成立が見送られるとの観測もある。

 著名人がSNSで取り上げたという経緯もある種苗法の改正案だが、農林水産省のサイトはなかなか丁寧に解説していた。江藤拓農水相の記者会見(2020年5月19日)も掲載されており、そこにある法案概要などの方も分かりやすい。

 なお、筆者は政治関係などでよく分からないものについてツイートすることを非難するつもりはないことをあらかじめ断っておく。どのようなものであれ、興味を持って発言するのはいいことだ。

 農水相の話でも言及されていたが、今回の改正法のきっかけになった一つの事件は、2018年の韓国・平昌(ピョンチャン)冬季五輪で、カーリング女子日本代表の選手が休憩時間に食べて話題になったイチゴが、日本から流出した品種を元に韓国内で交配されたものだったという事実だ。このほかにも、高級ブドウのシャインマスカットなど、果物の国外流出が後を絶たない。

 今回の改正案の中身は、農家の知的財産権の保護だ。新たな植物品種を育成した者は国に登録することにより、知的財産権の一つである「育成者権」(著作権と同様のもの)を得て、登録品種の種苗、収穫物、加工品の販売などを独占し権利を保護する。

 ちょっと信じがたかったが、現行法では合法的に取得した種苗には育成者権が及ばないため、海外にも容易に持ち出せてしまう。この穴を埋めるため、農水省は昨春から有識者の検討会を開き、法改正案をまとめた。

 今回の改正案では、育成者権の届け出時に輸出できる国などを指定することで、指定国等以外での農作物収穫を制限することができ、結果として新しいブランドの確立に尽力してきた農家を保護することができる。

 ネット上では、今回の改正案で、農家が次期作に備え、収穫物から種や苗を採る「自家増殖」ができなくなるという不安を表明している。たしかに、改正案には、農家の権利保護のため、自家増殖の見直しが含まれている。従来は原則自由だったが、誰が自家増殖をしているか把握できるよう開発者の許諾を必要とした。

 しかし、対象はあくまでも登録品種だ。米の84%、みかんの98%で、リンゴの96%、ブドウの91%、ばれいしょの90%、野菜の91%など主要作物の9割前後は一般品種であり、それらの一般品種は自家増殖しても問題ない。家庭菜園は規制の対象外だ。

 法案の反対理由として「外資に支配される」というものもあるが、これまで日本の農家は利益を失い、その犠牲の上で外資が儲けていた。法改正されれば日本の農家に適正な利益をもたらすので、逆に国内品種で漁夫の利を得ていた外資は、困ることになるだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】TPP芸人に変わって、種苗法芸人たちが出てくるか(・Д・)!

今回の改正が影響するのは、上の高橋洋一氏の記事にもあるように、「登録品種」です。ゆめぴりかやつや姫、サツマイモの紅はるか、シャインマスカット、イチゴのあまおうなどが該当する。これらについて、これまでは農家の権利として、自家採種や自家増殖ができたのが、改正されると、こうした行為に育成者の許諾が必要になります。

改正案は一般には「自家採種の原則禁止」だとして騒がれています。ただ、「登録品種」の自家採種はそもそも難しいです。なぜなら、ほとんどがF1種だからです。このF1に関しては、中学や高校の生物学の教科書にも出ていたと記憶しています。

高校の生物学のテキストより

これは、雑種強勢を利用したもので、2つの異なる親の優れた形質を発揮する。固定種に比べ、生育や形状がそろいやすく、病気に強い性質を持つものが多いです。F1は「雑種第一代」という呼び方が示すように、その種をとって繁殖させても、初代ほど優れた形質が均一には現れません。

そのため、たとえ種が採れる登録品種であっても、実際に採種する農家は少ないと見られます。手間がかかる上に、本来の品質からのズレが起きやすいからです。

たとえば、コメだと種もみの更新率(毎年新たに購入する割合)は9割に達します。一般品種も含めての話なので、登録品種の更新率はより高いと推測されます。農家にとって種もみは基本的に毎年買うものです。

効率的な生産を目指す農家ほど、育苗のアウトソーシングをする傾向があります。これは、農業そのものの市場がしぼみつつあるにもかかわらず、野菜の購入苗(育てずに買ってくる苗)の市場がまだ伸びているとされることからも明らかです。

改正が影響するとしたら、それは主に自家増殖の部分になることは間違いないです。ただし、影響範囲はかなり限られそうです。

専門的に見ていくと細かな条件や例外のようなものがあって判り難い部分もありますが、一般家庭でガーデニングや家庭菜園を楽しむ分については、音楽やマンガの著作権と同様に考えておけばトラブルになることはほとんどないと思われます。 私たちがたとえ、誰か有名人の唄を歌ったにしても、それが単なる楽しみであり、それで利益を得るということがなければ、犯罪にはならないのと同じです。

また、自家採種を行っている農家の場合であっても「開発者の権利を一定期間保護して、開発者に適正な利益を還元する」という常識的な判断基準で行動すれば問題になることもありません。また「この行為は微妙かな???」と思える事案については公的な機関の発表したQ&Aの中に回答がある場合がほとんどです。

ネット上(ブログのまとめ記事、Twitterなど)では公的機関の発表した情報(一次情報)すら確認せずに、デマ情報をそのまま拡散している人が多いので要注意です。必ず公式情報を確認しましょう。

*より正確な情報を知りたい方は農研機構 (種苗管理センター/品種保護対策/よく寄せられる質問)などでご確認ください。

種苗法などに興味を持ってSNSなどに書き込むこと自体は、悪くないと高橋洋一氏は語っていますし、私自身もそうは思うのですが、ただ、あまり事実確認をしないで他の人のSNS 記事などを読んだだけで、反射的に反応するのは、良いことではないと思います。


このことについては、私はTPPのことを思い出してしまいます。日本がTPPに加入することを検討していた時期には、多くの人がこれに反対していました。

とにかく、TPPに加入したり、検討しただけでも、米国に良いようにされてしまう、米国に支配されてしまうとか、とにかく大変なことになると大騒ぎしていました。ところが、米国でトランプ大統領が登場すると、大統領選挙の公約に挙げていたTPPからの離脱を本当に実行してしまいました。


トランプ氏の脱退の理由は、TPPに加入すれば、日本などに良いようにされてしまう、日本に支配されてしまうとか、とにかく大変なことになるというものでした。これで、日本がTPPに加入するととんでもないことになると騒いでいた人たちの主張は間違いであることがはっきりしました。

このブログでも、このような人たちを揶揄してTPP芸人と呼びました。

種苗法にも似たようなところがあります。種苗法が改正されるととんでもないことになると騒いでいる人たちは、いずれ種苗法芸人と言われるようになるかもしれません。


2020年6月3日水曜日

麻生氏の「豹変」が象徴する政府と日銀の“対コロナ連合軍” 相変わらずのマスコミ報道には笑ってしまう ―【私の論評】ピント外れのマスコミには理解できない日本国債の真実(゚д゚)!

高橋洋一 日本の解き方

麻生財務大臣

新規国債の発行額が、当初予算と1次、2次補正を合わせて過去最大の90兆2000億円に達したと報じられた。

相変わらずマスコミは財務省の言う通りに国債発行額だけを報道しているのかと笑ってしまう。現状はマイナス金利なので、10年以内の年限で国債を発行すると儲かるのが実情だ。

今回の2次補正では予備費10兆円が計上された。本コラムで「100兆円基金」を提唱してきた筆者からみれば、金額は足りないけど、基金とほぼ同じ性格である予備費10兆円計上は一歩前進と評価できる。

なぜ基金の創設を提唱したかといえば、マイナス金利を活用するというのが基本にある。普通のプラス金利であれば、利払いコストを伴う基金を事前に準備する必要はなく、事後で十分だ。しかし、今はマイナス金利なので、事前に用意するのが理にかなっているのだ。

いずれにしても、戦前の大恐慌並みの経済ショックの際に、過去最大規模の国債を発行するのは当然である。それでも財務省の事務方は財政再建の旗を降ろさないが、麻生太郎財務相には、事務方とは違う良い兆候もある。麻生氏は5月12日の記者会見で、政府の借金が増え過ぎることによって日本財政が信頼されなくなる可能性を指摘してきた財務省を「オオカミ少年」と表現したのだ。

この麻生氏の「豹変(ひょうへん)」は、22日の黒田東彦(はるひこ)日銀総裁との共同談話の伏線だったと筆者はにらんでいる。

財務相と日銀総裁の共同談話発表は異例のことで、英国の欧州連合(EU)からの離脱を問う国民投票で金融市場が不安定化した2016年6月以来、およそ4年ぶりだ。

コロナ・ショックは戦争状態ともいえるような非常事態だ。そこで麻生氏が共同談話で「日銀と政府の関係は、きちんと同じ方向に向いていることがすごく大事なことだ」と語ったことが重要だ。

筆者はかねてから、こうした政府と日銀との連合軍を主張していた。経済政策としては、財政政策と金融政策の同時・一体発動を意味しており、コロナ・ショックという戦後初、戦前の大恐慌に匹敵するくらいの経済危機に対し、政府の危機感を示すものだ。

政府と日銀との連合軍では、政府が大量の国債発行によって財源調達を行うが、その一方で、日銀がその国債の買い入れを行う。これによって政府が巨額の有効需要を創出でき、不況の下支えをする。まさに大恐慌スタイルの経済政策だ。

この政策のリスクは、インフレ率が高まることだ。しかし、コロナ・ショックは基本的に需要蒸発した需要ショックなので、当面はインフレというよりデフレを心配すべきときだ。

こうした状況では、さすがに財務省の事務方もすぐには財政再建や増税を言い出すことはないだろう。ただ、ひそかにその準備くらいはしていてもおかしくない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】ピント外れのマスコミには理解できない日本国債の真実(゚д゚)!

麻生氏の5月12日の記者会見の模様を財務省のサイトから引用します。

麻生副総理兼財務大臣兼内閣府特命担当大臣記者会見の概要(令和2年5月12日(火曜日))

【質疑応答】

問)追加的な経済対策について伺います。安倍首相が昨日の予算委員会で必要であればこの国会でと述べ、自民党での2次補正予算に向けた議論も始まりましたが、改めて規模やスケジュール、予算措置についての考えを伺えますでしょうか。

また、追加の対策により財政の健全化がさらに遠のくおそれもありますが、そのことについてどう考えるでしょうか。

答)まずは先般、4月30日に成立をした1次補正をまず直ちに執行へ移していただいて、総力を挙げて支援を皆さんの手元に早いところ届けなければいけないというところが一番なんだと思うのですが、加えて先般の5月4日でしたか、安倍総理の方から飲食店の家賃負担の軽減の話とか、雇用調整助成金等についての運用等いろいろ出ておりましたし、よく言われるアルバイト学生の支援等、与党において今いろいろ検討もされておられるようなので、速やかな追加的な措置を講じていくというところなんだと思いますので、いろいろ野党もご意見があるようですから、検討を踏まえながら対応していかなければいけないということだと思っています。

2次補正という話は、新しい政策というより1次補正のところで不足しているんじゃないかと言われている部分について主に補足していく、補充していくというのが基本的な考え方かなとは思っております。財政健全化という話がありましたけれども、経済を成長しない限りは財政健全化しませんから、そういった意味では今度の緊急経済対策を速やかに実行することによって雇用とか事業とかが継続され、底割れしないようにしておいた上で、世界経済も今完全に止まった形になっていますから、日本だけが成長するわけではありませんので、そういったものと波長が合えば最高ですけれども、そううまくはいかないでしょうから、日本としては確かな成長軌道に乗せなければいけないところなので、経済の健全化というものをやっていった上での財政健全化ということにならざるを得ないということだと思っています。

問)今おっしゃった財政健全化のところで、経済が成長しないと健全化しないというのはそのとおりだと思うのですけれども、今月8日に発表された国の借金が既に2019年度末で1,114兆円ということで過去最大であるということで、これがさらにどんどん膨らんでいくことによって投資家から見た日本の財政への信認というのが損なわれてしまうのではないかというふうなおそれもあるかと思うんですが、そのあたりの懸念についてはどのようにお考えでしょうか。

答)何十年たって、そうすると金利が上がるんじゃなかったっけね。そこが問題なんだよね。借金が増えて赤字公債を最初に再び出し始めたのが1994年。1994年の金利が幾らだったか調べてごらん。そしてその頃の借金は270、280兆円じゃなかったかな。記憶だからあまり確かじゃない、金利が5%ぐらいだったろう。4.7だったか、そんなもんだ。今幾らだ、1,100兆円だろう。10年ものの国債の金利は幾ら。

問)0%。

答)借金が増えて、200ないし50~60から1,100といえば4倍に増えたんだ。

4倍に増えたら金利はもうちょっと上がるんじゃないの。何で下がるんだ。国債が増えても、借金が増えても金利が上がらないというのは普通私達が習った経済学ではついていかないんだね、頭の中で。

今の答えを言える人が多分日銀にもいないんだと思うけれどもね。そこが問題なんだ。金利が上がるぞ、上がるぞと言って狼少年みたいなことをやっているわけだよね。

だけど現実問題としては本当に上がっていないんだよ。そこのところは真剣に考えなければいけないところなので、我々は金利が低いうちにさっさと金利が高いものから低いものに交換しようとかいろいろ、低いは低いなりに考えなければいけないところなので、低いからできているという経済政策は今のうちだからやれるというのだったら、それは今のうちにさっさとそれを最大限に活用してやっていかなければ、経済対策、財政政策を考えなければいけないということだと思いますね。

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ここでは、狼少年(財務省)の言うように、なぜ国債の金利が上がらないのかその訳を解説します。

2020年3月末の国債及び借入金残高は1114兆円ですが、10年国債金利は0%前後で推移しています。この水準は日本銀行のyield curve controlによって引き下げられたものですが、QQEが始まる前から1%を割り込んでいました。


ちなみに、QQE(キュー・キュー・イー)とは、"Quantitative and Qualitative Monetary Easing"の略で、量的・質的金融緩和のことをいいます。これは、日本銀行が2013年4月の政策委員会・金融政策決定会合において導入を決定した、従来とは量・質ともに次元の違う金融緩和策を指し、FRBECBなどの「QE(Quantitative easing):量的金融緩和」とは区別されます。

「借金が増えても金利が上がらない」のは全く不思議なことではなく、経済学の常識で十分に説明できます。

個人や民間企業では借金が増えると金利が上がるのは、利払いや元本返済ができなくなるリスクが上昇するからです。個人には寿命があるので、借金が増えるほど死ぬまでに完済できなくなるリスクは上昇します。民間企業は寿命は定まっていないですが、かつて日経ビジネス社は「企業の寿命」という書籍を出していました。

その書籍では、「企業の寿命は30年」といわれていました。私は、これは正しいと思います。ただし、「企業の寿命」というよりは、「事業の寿命」といったほうがより正しいと思います。

現在の大企業だと、複数の事業を運営するのが当たり前なので、大企業が30年以内に潰れるということは滅多にありません。ただ、中小企業で一つの事業しか営んでいない企業は、他の事業を模索したり、複数の事業を営むようなことをしておらず、一つの事業だけ、営んでいるところで、何らかの革新を行わないところは、確かに30年もすれば、倒産の危機に見舞わています。

そうなると、事業の寿命は、人の寿命よりも短いともいえるわけです。

事業が業績悪化時に資金繰りが苦しくなると、借換できなくなり、倒産のリスクは借金が増えるほど上昇します。

しかし、政府にはのような寿命はなく(going concern)、さらには、政府には徴税権があり、民間企業の営業収益に相当する税収が途絶えるリスクも無視できます。フローの利払費を税収で十分に賄える間は「優良な借り手」なので、金利収入を求める貸し手がいなくなることはありません。


国債残高にかかわらず、いつまでも借り続けられることは、借金が増えることが信用リスクの上昇に直結しないことを意味します。従って、金利に織り込まれるもう一つのリスクのインフレリスクが上昇しない限りは国債金利も上昇しないわけです。


日本は消費者物価の上昇率も、名目GDPの成長率も低いままなので、国債金利が上がらないのは当然ということになります。

この当たり前のことがわからないので、高橋洋一氏は、「相変わらずのマスコミ報道には笑ってしまう」というのです。

笑う高橋洋一氏、笑う門には福来たる?

マスコミは、金融や財政のこととなる、ほとんど理解していないようで、狼少年の財務省が「金利がー、金利がー」と言うと、すぐに騙されてしまうのです。それも、何回も騙されて、騙されるたびに金利が上がっていないのに、まだ騙され続けているのです。

これを滑稽といわずして、何と言えば良いのでしょう。そろそろ、気づけよということです。

これくらいのことは、経済や金融の知識がなくても常識で考えればわかると思うのですが、どうもそうではないようです。そもそも、財政や金融に関して、知識どころか、センスもないようです。

多分、上のグラフや説明を読んでみても、ピンと来ない人も多いのではないかと思います。そのような方のために、以下の動画をおすすめします。



さすが、上念氏です。国債について本当にわかりやすく解説しています。これをご覧なれば、さらに良くご理解いただけるものと思います。

さて、その上で、マスコミの方に質問したいと思います。

野党はよく国会で、安部総理や大臣などに、クイズのような問題を出すことがおおいです。だから、本当はこのようなことはしたくないのです。マスコミの方々に質問してみたいです。

さて、経団連は2日、定時総会を開き、中西会長の3年目がスタートしました。中西会長は新型コロナウイルスの感染拡大によって、打撃を受けている経済を成長させるために、デジタル化に一層取り組む考えを示しました。

総会で中西会長は「全世界に未曾有の大打撃を与えている新型コロナウイルスの感染拡大の克服と、ダメージを受けた経済の成長の実現という2つの大きな課題に取り組む必要がある」と述べました。

そのうえで「感染拡大をきっかけにテレワークや遠隔医療、オンライン授業などデジタルのパワーを使った新しい生活様式への変化が出てきました。これを元に戻すことなく、むしろ先に進める形で推進していきたい」と述べ、新型コロナウイルスの感染対策として広がったデジタル化に一層取り組む考えを示しました。

さて、中西会長はデジタル化の推進で、生産性を高めるということを言っていました。

そこで、質問です。「デジタル化で生産性が飛躍的に何倍も上がったとします。その時に、日銀が何もしないでそのままにしていたとしたらどうなりますか?」

答えは「デフレになります」です。このくらいは常識だと思うのですが、マスコミ関係者の方々は、ひよっとするとこれも分からないのではないかと思います。

これに関しては、詳細は解説しません。なぜ「デフレ」になるのか、わからない人、考えも及ばない人は、自分は相当経済センスが悪いと思うべきです。

まずは、本当に簡単なことから勉強をし直したほうが良いと思います。そうして、まともな経済記事を書けるようなってください。

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2020年6月2日火曜日

米国の研究機関に堂々と巣食う中国のスパイたち―【私の論評】コロナが変えた世界では、5年〜10年で起こる変化が1年〜2年になる(゚д゚)!

米国の研究機関に堂々と巣食う中国のスパイたち

   2018年11月1日、米国司法省は、米半導体大手「マイクロン・テクノロジー」のDRAM技術を狙った
   スパイ活動を行ったとして、中国の国有企業を連邦大陪審が起訴したと発表。この日、ジェフ・
   セッションズ司法長官は、中国による情報窃取や経済スパイ活動に対処していく「チャイナ・イニシア
   チブ」を発表した。

  最近、米国の大学や研究機関で「中国絡み」のトラブルが頻発している。

 2020年1月28日、米マサチューセッツ州の名門大学であるハーバード大学で、化学・化学生物学部長のチャールズ・リーバー教授(60)がFBI(連邦捜査局)によって逮捕された。ナノサイエンスの分野における世界的権威であるリーバーの逮捕容疑は、中国の武漢理工大学で研究所を設立するとして中国政府から約150万ドルを受け取っていた上に、毎月5万ドルの支払いを中国から受け取っていたこと。これらは当局へ報告の義務があるが、リーバーは捜査員に虚偽の説明をしたことで逮捕された。

チャールズ・リーバー容疑者

  さらに5月には、オハイオ州のクリーブランド・クリニックで研究者をしていた中国系アメリカ人チン・ワンが、中国政府から研究助成金を受けて中国の研究施設で役職をもっていることを米国で虚偽申告したとして逮捕されている。

 ■ 中国政府が推し進める「千人計画」 

 実はこの2人、中国政府が国策として海外の優秀な人材を支援する「千人計画」に参加していた。のちに詳しく見るが、この「千人計画」に関与している米国内の科学者たちはかなりの人数に上り、彼らを米国当局は「中国政府のスパイ行為に協力している」と睨んでいる。上述の摘発もその流れの中で実施されているのである。

  その動きが最近の米中関係の悪化にともない、より強化されている。いま米国政府は、新型コロナウィルスの責任問題や貿易不均衡問題、また中国の通信機器大手ファーウェイなどとの取引をめぐる争いに加えて、こうした米国内で中国政府につながりのある学者や中国人留学生などに対する締め付けを厳しくしているのだ。

 2018年11月から、米国司法省は、冒頭のリーバーやワンの事件で取り沙汰された千人計画など中国側と関与している者たちによるスパイ活動の取り締まりや重要インフラのサイバー攻撃からの保護などを含む「チャイナ・イニシアチブ」を始動した。この時、当時のジェフ・セッションズ司法長官は中国政府のスパイ活動に「もううんざりだ」と吐き捨てた。ちなみにFBIでは、その2年前から千人計画を捜査し、関係各所には注意を促していたが、“スパイ活動”が鳴りを潜めることはなかった。

 ■ 「千人計画」にすでに1万人以上が参加

  中国で2008年にはじまった「千人計画」は、中国興隆のために国外にいる中国人科学者などを中心に人材を確保することを目的としている。米情報当局者がメディアに語ったところによると「すでに1万人以上が参加しており、参加者は本職でもらっている給料の3~4倍の給料が提供される」という。

  特に米国が警戒しているのは、生物科学医学の分野などでの研究開発の情報や知的財産に関するスパイ活動で、米当局は昨年から180件に及ぶ調査を行なっている。その過程で、世界的にも知られるような主要な研究所などほとんどすべてでこうした疑いのあるケースが浮上しているという。「共同研究」などの名目で知的財産を盗まれ、中国で勝手に特許が取られている場合もあり、米当局は中国政府とつながりのある研究者や学生などが研究所などから情報を盗む「スパイ工作」に関与していると見ている。

  2019年にも、米カンザス大学で中国系の准教授が中国の大学との関係を隠していたとして起訴されている。これまでも中国は同様の手口で情報を盗んできているし、サイバー攻撃でハッキングを行なって米重要機関から知的財産や機密情報を盗んでいる。だからこそ米当局は厳しい取り締まりに乗り出している。

  中国政府に繋がっている「協力者」は、大学や研究機関のみならず、民間企業にも潜んでおり、その数は600人ほど確認されているという。うちの4分の1はバイオテクノロジー系の企業にいるらしい。 

 こうした中国政府の関与が疑われる「スパイ工作」は米中貿易交渉の中でも議題に挙がるほど深刻になっている。

 米国による締め付け強化は、科学者だけでなく、中国からの留学生に対しても行われている。トランプ政権はつい最近、中国から留学している人民解放軍とつながりのある大学院生などの入国拒否や制限を実施すると発表した。これにより3000人ほどの留学生や研究員に影響が及ぶことになる。

■ 軍人が学生を装い米国留学 

 米政府関係者がメディアに語ったところによれば、「中国政府は、軍とつながりのある大学から海外に留学する学生の選別に関与しており、学生の中には留学先の学費を免除する代わりに情報収集をするという条件で留学の許可を得ている者もいる」という。

  実際に1月には、人民解放軍の傘下にある国防科学技術大学と関係がある29歳の女性軍人が、学生を装ってボストン大学に留学し、2年近くにわたって物理学や医用生体工学の学部に出入りして情報を中国に送っていたとしてFBIに指名手配されている。 


 また2019年12月には、ハーバード大学に留学していた中国人のがん研究者ジェン・ザオソンががん細胞の入った生物試料の瓶を21本も隠し持って中国に帰国しようとしたところ、ボストン空港で逮捕された。

  こうした事態を踏まえて米国務省は、2018年から中国人研究者らに対し、センシティブな情報や研究を行う大学や研究機関への留学ビザの期間を1年に短縮(1年ごとに更新可能)した。一方で、留学生がもたらす学費などのビジネスは莫大で、2019年は450億ドル(全留学生)のカネが米国もたらされていることから、学部生については引き続き留学を許可している。

 締め付けがどんどん厳しくなる中国人留学生に対する態度は、大学によっても差があるようだ。

  筆者は米マサチューセッツ工科大学(MIT)に留学していたが、その際に、大学側と知的財産の所在を明確にして大学から無断で持ち出さないと合意する文書にサインをさせられた。米国の名門大学や大学の研究機関などでも大学院生や研究者などに対するそうしたルールは徹底している。特にマサチューセッツ州のボストン近郊には名門大学が近くにいくつもあり、どこも大学の研究の扱いは厳しいはずで、実際にMITなどでは中国人留学生や教員が摘発さえるケースは聞かない。それどころか、研究協力をしていた中国のAI関連企業が中国国内でウイグル族などへの監視に関与しているとして、研究関係を直ちに解消している。それだけにハーバードの教授の逮捕は衝撃的だった。

  もっともハーバードは中国政府と関係は悪くない。そのため逮捕された教授以外でも、中国共産党の息のかかった教授などが暴露されている。有能な人材を多数輩出しているだけに、そうした外国からの影響にも人々は注目している。

 ■ 日本だって当然中国スパイの標的 

 筆者は少し前に、イスラエルの元情報機関関係者と話をしていて、中国の対外工作について見解を聞いたことがある。

  「中国人の裏の活動は私たちも注視しています。サイバー攻撃で知的財産を盗もうとしてくることも把握しています。イスラエルでも米国でも、中国からの留学生は警戒が必要です。なぜなら、彼らの家族は中国国内にいて、言わば人質のようなものです。家族が人質なら、指示されたことはやらざるを得ない。それが情報を盗むというスパイ工作に繋がるのは当然でしょう」

  誤解ないようにはっきりしておくが、すべての中国人留学生や研究者がスパイだと言っているのではない。ただよからぬ目的を持っていたり、中国共産党から指示を受けたりして動いている人たちが中にいることは米国の例からも明らかである。 

 もちろん、これは米国だけの話ではない。「中国人スパイ」は、世界各地で様々な手を尽くして組織的に情報を盗もうとしている。日本でも最近、三菱電機が中国政府系ハッカーらによって8000人以上の人事情報や機密情報が盗まれたと話題になっていた。

  日本の政府機関や研究機関、民間企業が、中国だけでなく世界中の情報機関やハッカー集団から「おいしい標的」として目をつけられているのは事実だ。米国並み、とは言わないが、外国からの公然・非公然のスパイ活動に対し、もっと警戒レベルを挙げておく必要があるのではないだろうか。

山田 敏弘

【私の論評】コロナが変えた世界では、5年〜10年で起こる変化が1年〜2年になる(゚д゚)!

中国の千人計画については、このブログでも過去に掲載して、警鐘を鳴らしたことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【瓦解!習近平の夢】「千人計画」は知的財産泥棒? “超ハイレベル人材”で科学的発展目論むも… 米は違反者摘発へ本腰―【私の論評】トランプ政権の“泥棒狩り”は、日本にとっても他人事どころか今そこにある危機(゚д゚)!

千人計画」のロゴ 写真はブログ管理人挿入 以下同じ

この記事は、2018年11月14日のものです。この頃から、中国の「千人計画」や、それ以前から稼働していた「外専千人計画」等が知られていました。

無論、その頃から米国は、この「千人計画」等にかかわる、米国内のスパイを摘発していました。日本でも報道されたので、ご存知の方々も多いと思います。

ただし、その規模や奥行きは、米国内でも考えもおばなかった規模のようです。

実際2019年11月にもそれについて米国内で報告がなされてました。

中国の国外で研究を行っている研究者らを中国政府が募集する人材募集プログラムにより、米国政府の研究資金と民間部門の技術が中国の軍事力と経済力を強化するために使われており、その対策は遅れている、と米国議会上院の小委員会が2019年11月に公表した報告書が指摘しました。

報告書は、上院国土安全保障政府問題委員会調査小委員会(委員長Rob Portman;共和党所属、オハイオ州選出)が超党派報告としてまとめ、公表しました。

Rob Portman

報告書の調査は、米国の連邦捜査局(FBI)、全米科学財団(NSF)、国立衛生研究所(NIH)、エネルギー省、国務省、商務省、ホワイトハウス科学技術政策室の7つの組織を対象に8カ月間かけて行われました。同小委員会は2019年11月19日、この報告に関する公聴会を開き、議論しました。

報告書などによると、中国は2050年までに科学技術における世界のリーダーになることを目指しているそうです。中国政府は1990年代後半から、海外の研究者を募集して国内の研究を促進しており、そうした人材募集プログラムは現在、約200あります。その中で最も有名なものが、「海外高層次人才引進計画」(千人計画、Thousand Talents Program)です。報告は千人計画を詳しく分析しています。

千人計画は2008年に始まり、2017年までに7000人の研究者を集めたとされる。ボーナスや諸手当や研究資金が用意され、対象は中国系の研究者とそれ以外の場合の両方がある。Portmanは、千人計画の契約の実例のいくつかの規定を取り上げた。契約は、参加する科学者たちに、中国のために働くこと、契約を秘密にし、ポスドクを募集し、スポンサーになる中国の研究機関に全ての知的財産権を譲り渡すことを求めている。

さらに契約は、科学者たちが米国で行っている研究を忠実にまねた「影の研究室」を中国に設立することを奨励している。NIHの副所長Michael Lauerは、「中国は、影の研究室のおかげで米国で何が進んでいるかを世界に先駆けて知ることができます」と議員たちに説明した。「NIHが、影の研究室の存在を米国の研究機関に知らせると驚かれることがしばしばで、多くの研究機関は職員が中国に研究室を持っていることを知りませんでした」とLauerは話した。

報告書によると、エネルギー省の調査では、米国立研究所に所属していたあるポスドク研究員は、千人計画に選ばれて中国で教授職を得、中国に戻る前にこの研究所から機密扱いではない3万件の電子ファイルを持ち去ったといいます。この研究員は中国の研究機関に対し、米国での自分の研究分野は高度な防衛力を持つために重要なものだと話し、中国の防衛力の近代化を支援する研究を計画していたといいます。

こうした中国のプログラムに対し、FBIや米国の研究機関の対応は非常に遅く、研究機関は米国の研究を守るための取り組みを組織しなければならない、とPortmanは指摘しました。「私たちは、もっと素早く行動しなければなりません」と彼は話しました。

報告書は、外国の人材募集プログラムに参加している研究者には、その契約条件などの完全な開示なしに米国の研究資金を得られないようにすべき、などと提言しています。また、基礎研究で得られる成果には可能な限り制約をかけないという、米国政府が1985年から採用してきた基本方針の再検討を求めています。Portmanらは対策の立法化にも言及しています。

この問題の調査で、中国系の研究者たちが不公平に標的にされているという懸念も生じています。報告書は、米国政府出資の研究を守ることと国際協力を両立させることは今後も必要だとしています。

米国大学協会(ワシントンDC)の政策担当副会長のTobin Smithは、「報告は、人材募集プログラムの契約内容を徹底的に調べることにより、この問題を生々しく伝えています。大学教員たちに、こうした人材募集プログラムに加わる場合は注意しなければならないことを気付かせるには、この報告が役立つはずです」と話したとされています。

2018年時点でも、「千人計画」などについては、その脅威が認識されていたにも関わらず、2019年時点でも、塀国内ではまだ取り組みが遅れていたようです。

それが、今年の1月には米マサチューセッツ州の名門大学であるハーバード大学で、化学・化学生物学部長が逮捕されたというのですから、米国でもようやっと取り組みが本格化してきたようです。

そうして、この動きは加速するでしょう。なぜなら、現在はコロナウイルスの蔓延による影響が世界を覆っており、コロナが変えてしまった世界は過去とは異なるものになるからです。

特に、米中対立は世界経済をどう変えるのでしょうか。リスク分析を専門とするアメリカの国際政治学者、イアン・ブレマー氏は本日の「Newsモーニングサテライト」テレビ東京に出演して以下のようなことを語っていました。

コロナ危機は少なくとも3年は続き、世界経済は10%以上縮小するだろう。 
最大の懸念はどれほど多くの職が失われるかだ。最も心配しているのは米中の対立だ。今は米中の相互依存が薄れ、技術をめぐる冷戦が起きている。 
米中は互いの技術に投資せず、互いに介入を許さない状況だ。米中の溝は深まり、その影響は経済の他の分野にも広がるだろう。 
米中間の不信が強まる中で、両国で人件費は上昇している。米中にまたがっていたサプライチェーンを国内に戻す動きが強まるだろう。
グローバル化からの急激な逆行は世界の姿を変えるとブレマー氏は指摘しています。ブレマー氏は「10年かけて起こるような変化が1~2年の間に起きるだろう。破壊的なことで、世界の地政学を変えてしまう。民主主義や自由市場の有効性や正当性も変えてしまうだろう。世界を緊張が覆うことになる。」などと述べました。

私もイアン・ブレマー氏の指摘は正しいと思います。米中対立が先鋭化しつつある現在、米国の研究機関に堂々と巣食う中国のスパイたちも、コロナ以前であれば、5年〜10年かけて摘発が行われだのでしょうか、今後は1年〜2年にスビードアップされることになるでしょう。

先に掲載したリンク先の記事の結論部分を掲載します。
日本と米国は同盟関係にあります。だから、日本には米国の情報もかなり蓄積しています。これが、中国に盗まれるということもあります。これは、明らかに米国にとって大きな不利益です。 
さらに、米国の技術ではなくても、日本の技術が中国に盗まれ、「中国製造2025」に大きく寄与することになれば、これも米国は自国にとって不利益とみなすことでしょう。 
このように、日本経由で中国に米国の不利益になる形で、情報が漏れれば、米国は黙っていないでしょう。それこそ、日本に対して制裁を課すということにもなりかねません。 
トランプ政権の“知的財産泥棒狩り”は、日本にとっても他人事どころか今そこにある危機なのです。
この記事を書いた、2018年11月14日時点では、日本の本格的な危機に対処するには、なんとなく5年から10年と思っていました。しかし、コロナによって変わった世界においては、1〜2年で、そのような脅威に日本が見舞われるかもしれません。

今のところ、政府はコロナ対策で目いっぱいのところがあると思いますが、こうしたコロナによって変わった世界にを目を配り対策を立てておくべきと思います。特に中国への対応は、旗幟を鮮明にすべきです。

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2020年6月1日月曜日

トランプ、暴力的抗議を受けアンティファをテロ組織に指定と発表―【私の論評】暴力集団は、日本でも許されるものではない(゚д゚)!

トランプ、暴力的抗議を受けアンティファをテロ組織に指定と発表

<引用元:FOXニュース 2020.5.31

「アメリカ合衆国はアンティファをテロ組織に指定することになる」とツイートしたトランプ大統領

トランプ大統領は31日、米国政府は極左団体のアンティファをテロ組織に指定すると発表した。

トランプが、ジョージ・フロイドの死を受けて全国で起きている暴動をアンティファのせいだとする中での動きだ。黒人男性のフロイドは武器を持っていなかったが、5月25日もミネソタ州ミネアポリスで警官に拘束された際に警官に8分以上膝で首を抑えられた後死亡し、その様子はビデオにとらえられていた。

「アメリカ合衆国はアンティファ(ANTIFA )をテロ組織に認定することになるだろう」とトランプは31日の午後ツイートした。

警察に対する平和的な抗議として始まったものがエスカレートした背景に誰がいるのかは明確になっておらず、極左過激派と白人至上主義者の両方に非難が向けられている。

「アンティファと極左勢力だ。他のせいにするな!」とトランプは30日にツイートしていた。

マイク・ポンペオ国務長官は、略奪、放火、暴力の背後に誰がいるのかについて決定的な態度で語るのを控えている。長官はFOXニュースの「Sunday Morning Futures」出演中に暴動を「アンティファ的」と呼んだが、平和的な抗議から全く異なるものに発展したのが「厳密にどのような状況だったのか分かるのはまだこれからだと思う」と述べた。

ミネソタ州司法長官のキース・エリソンは「Fox News Sunday」で、州外から来ている人々がミネアポリスの暴力行為に関与しているという証拠があると述べたが、特定の団体や思想と関連があるかどうかについては明言しなかった。

2019年には上院でアンティファを国内テロ組織に指定する決議案が提出され、アンティファは「平和的な集会と言論の自由という民主主義の理想とは正反対に相当する」とされた。

ビル・カシディー上院議員(共和党、ルイジアナ)とテッド・クルーズ上院議員(共和党、テキサス)が共同で提案した法案は、アンティファに関連する人物がICE職員とジャーナリストのアンディ・ンゴに対して起こした脅迫と行為を受けて提出された。

【私の論評】暴力集団は、日本でも許されるものではない(゚д゚)!

C.R.A.C.(元レイシストしばき隊)の米国版ともいえる集団で、保守系の人間が大学で講演会をすると聞くと、その大学に押しかけて妨害するなどの活動を繰り返しています。もっともアンティファの方が歴史は古く、C.R.A.C.にもアンティファを真似ている部分が多いです。

第二次世界大戦前の欧州にルーツを持つアンティファは、ナチズムと人種差別主義に対抗することを標榜しており、その基本指針は「ファシストが政府や社会に根を張って第2のナチスドイツを誕生させることを阻止する」です。

もっとも、表現・宗教の自由などをうたった憲法修正第1条を軽視し、暴徒を動員して「ヤジで相手を黙らせる」ので、これではファシストと変わらないという批判もあります。

アンティファの組織としての実態は謎に包まれており、全米各地に200もの拠点があるとされますが、支部として明確に認知できるのはオレゴン州ポートランド市内の事務所だけだといいます。

アンティファのイデオロギー面での代弁者はマーク・ブレイという政治活動家で、『アンティ・ファシスト・ハンドブック』という著書を出して、アンティファの政治理念などを説明しています。

立憲民主党・杉並区議会議員のひわき岳が2019年10月にツイッターに投稿した動画は新宿で行われたデモの様子を撮影しており、アンティファの旗が映っています。


東京渋谷でもアンティファの旗を掲げた左翼組織がデモを行った他、2019年8月のあいちトリエンナーレの展示「表現の不自由展・その後」が中断された件では、アンティファ名古屋支部が展示の再開を要求する団体に主張の場を提供しています。

ごく最近も東京都渋谷区では5月30日、警察官の対応に抗議するデモがありました。同月23日、渋谷警察署の警官が職務質問を拒否したクルド人男性を、取り押さえたことが発端となりました。男性は当時、路上駐車していた。別のクルド人男性がその模様を撮影した映像をネットに投稿し、複数のネットユーザーが米国の騒乱と関連付けて転載していました。

30日のデモには、このクルド人男性を含む180人近くが参加したとされます。一部の参加者は「ANTIFA」の旗を掲げていました。このデモへの参加を呼び掛けるため、多言語のANTIFA関連のアカウントもデモ参加を呼び掛けました。

現地取材のフリージャーナリスト・Gregor Wakounig氏は、デモ参加者について「自発的な反ファシスト、特定政党の支持者、無政府主義者、他の政治的見解の人々が集まった」とツイートしています。

立憲民主党の石川大我議員がデモに参加しています。公開された映像によると、石川議員はデモ終了時に、騒動について「国会で大きく取り上げる」と述べました。

この出来事について、政治学者の岩田温が以下の動画で解説しています。


アンティフアの危険性については、この岩田氏の動画で十分におわかりいただけたものと思います。

日本では、左翼と言われる人たち、吉良よし子(日本共産党)、有田芳生(立憲民主)、辛淑玉が、ANTIFA(アンティファ)のロゴが入ったTシャツを着て、アピールしています。このことに関して、危険な匂いを感じるのは、岩田氏だけではないでしょう。




足立康史衆議院議員(54)が1日、ツイッターで話題になったアンティファに言及しました。
 
アンティファ(Antifa)は上でも述べたように、左派の反ファシズム団体。米国では警察官に拘束された黒人男性が死亡した事件をきっかけに全米で広がる抗議デモが過激化し、暴徒と化しています。

これをあおっているのがアンティファだとして、トランプ大統領は31日テロ組織として指定すると発表。日本も無関係ではないとして1日、420万ツイートを超えるほど話題になりました。

これについて足立議員は「日本には、スパイ防止法もちゃんとした情報機関もないから、なかなか面倒だけど、破防法を含めて当局の適切な対応が求められますね」と慎重なコメントを残しています。

アンティファのような極左暴力集団は普段は、あまり見向きもされないのですが、現在のようにコロナウイルスなどで、多くの人が疲弊しているときなどに、活動を活発化させ、多くの人々を自分たちの味方につけたり、自分たちにとって有利になるように、社会を作り変えたりしようとします。

米国の暴動にアンティファが関与したり、日本でも姿をみせるということは、アンティファなどの極左暴力集団が、コロナ禍に乗じて活動を活発させようとしている兆候かもしれません。

我々としても、今後アンティファの動きには、注目し彼らが暴力を行使することがないように監視を続けていくべきと思います。

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