2021年4月6日火曜日

台湾めぐり白熱する米中の応酬 迫る有事の危機―【私の論評】中国が台湾に侵攻しようとすれば、大陸中国国内もかなりの危険に晒される(゚д゚)!


 3月26日、台湾の防空識別圏(ADIZ)に、戦闘機10機、爆撃機4機を含む中国軍機合計20機が侵入した。昨年夏以来、ADIZへの侵入は度々あったが、今回の21機は最多となった。


 これに先立つ丁度1週間前の3月19日付のTaipei Times社説は、中国の習近平共産党総書記のレトリックから窺える中国の台湾に対する軍事的脅威の深刻さを指摘し、台湾政府は国民にそのことを明確に伝えるべきだ、と警告していた。

 この社説は、中国の台湾への軍事的侵攻の可能性はますます高まりつつあり、それに対処するため、台湾当局は一層の警戒心と危機意識を持ち対抗策を講じなければならない、と警鐘を鳴らすものとなっている。

 たしかに、最近、習近平は軍に対し、「戦争準備をおさおさ怠るな」との呼びかけを頻発しており、それが、台湾への攻撃を意図したものか否か必ずしも明白ではないが、本社説の言うように台湾侵攻を意味していると見ても必ずしも間違いではないだろう。

 本社説によれば、ここ1年の間に少なくとも4回、習近平は「いかなる時においても、戦闘行為をとれるよう万全の準備を行え」と指示したという。特に、その内の1回(昨年5月)では、全人代出席の人民解放軍司令官たちに対して、「台湾独立諸勢力(Taiwan Independence Forces)」を名指しして、これらに対し軍事闘争の準備を強化せよ、と命令したという。

 興味深い指摘は、習近平がこれらの指示を出した時、中国の人民解放軍の中には「平和ボケ(peace disease:平和病)」が広がっている、と習が繰り返し発言した点である。最近の中印国境紛争も解放軍兵士たちに戦闘経験をもたせるためではなかったか、との本社説の指摘はやや穿ち過ぎの観があるが、実際に中国軍が本格的な戦争体験をしたのは1979年の中越戦争が最後である。

 バイデン政権発足以降も、中国は台湾に対し軍事的、外交的圧力を強めており、台湾海峡上空に軍用機を出動させ、また、南シナ海など台湾海峡近辺でも軍事演習を繰り返している。最近は台湾の主要農産物であるパイナップルを禁輸するなど、経済面で新たに制裁を科した。

 中国にとって台湾はあくまでも、中国自身がいう「核心的利益」の筆頭に位置しているが、蔡英文政権が主張するように、2300万人を擁する自由で民主主義の「中華民国(台湾)」は中華人民共和国の施政下に入ったことはかつてない。蔡は、台湾は主権が確立した独立国である、との立場を堅持し、中国との間で対話を通じ、現状を維持しようとしている。

 「台湾関係法」によって台湾に防御用の兵器を売却することにコミットしている米国にとっては、バイデン政権下においても台湾の重要性が全く変わらないことは、先般のブリンケン=楊潔篪のアラスカ会談からも明白である。その際、楊潔篪は、台湾を含むいくつかの問題は純粋な「内政問題」であり、中国にとって妥協の余地は全くないと言い放った。

 台湾の軍関係者たちの中には、中国がもし台湾に対し軍事攻勢をしかけるとしたら、まずは南シナ海にある台湾の実効支配する東沙諸島や太平島のような離島ではないか、そして国際社会の反応を試そうとするのではないか、という見方をする人たちが少なくない。

 なお、最近、米上院の公聴会において、米インド太平洋軍司令官に指名されたアキリーノは「中国による台湾侵攻の脅威は深刻であり、多くの人が理解しているよりも差し迫っている」との考えを示している。将来、台湾周辺海域や台湾において、軍事的に一旦「有事」が発生し、米軍(主として在日駐留米軍)が台湾防衛のために出動するという事態になったとき、日本としても米軍の行動を支援するために自衛隊を出動させるという事態になるであろうことは、岸防衛大臣がオースティン国防長官に述べたと報道されているところである。

 蔡英文政権は、かかる米国、日本の動きを歓迎しているが、今後は日米台の三者間で如何なる事態に対し、如何に協力し合うか、という類の協議をおこなうべきことが急務の課題となるものと考えられる。

【私の論評】中国が台湾に侵攻しようとすれば、大陸中国国内もかなりの危険に晒される(゚д゚)!

かつて台湾は、大陸中国と戦ったことがあります。そうして、その戦いで、台湾自体が中国に侵入されることはありませんでした。大きなものではまずは、第一次台湾海峡危機(1954年 - 1955年)です。

国共内戦の結果、1949年に中国国民党率いる中華民国政府は中国大陸での統治権を喪失し、台湾に移転したのですが、中国西南部の山岳地帯及び東南沿岸部の島嶼一帯では中国共産党に対する軍事作戦を継続していました。

しかし1950年になると、舟山群島海南島が中国共産党の人民解放軍に奪取され、また西南部でも人民解放軍がミャンマー国境地帯に進攻したため、国民党は台湾及び福建省や浙江省沿岸の一部島嶼(金門島、大陳島、一江山島)のみを維持するに留まり、東シナ海沿岸での海上ゲリラ戦術で共産党に対抗していました。

朝鮮戦争の影響で沿岸部における侵攻作戦が休止しはじめ、中国の視線が徐々に朝鮮半島へ移転するのを機に国民党は反撃を幾度か試みたものの(南日島戦役東山島戦役)戦果が期待したものとはほど遠く大陸反攻への足がかりを築くことができませんでした。そして、朝鮮戦争が収束するにつれ共産党の視線は再び沿岸部へ向きはじめるようになりました。

この間人民解放軍はソ連から魚雷艇やジェット戦闘機を入手して現代的な軍としての体制を整えつつありましたた。

1954年5月、中国人民解放軍は海軍や空軍の支援の下大陳島及び一江山島周辺の島々を占領し、10月までに砲兵陣地と魚雷艇基地を設置した。9月3日から金門島の守備に当たっていた中華民国国軍に対し砲撃を行いました(93砲戦)。

11月14日に一江山島沖で人民解放軍の魚雷艇が国民党軍海軍の護衛駆逐艦『太平』(旧アメリカ海軍デッカー (護衛駆逐艦))を撃沈すると周辺の制海権を掌握しました。 1955年1月18日には解放軍華東軍区部隊が軍区参謀長張愛萍の指揮の下、一江山島を攻撃、陸海空の共同作戦により午後5時30分に一江山島は解放軍により占拠され、台湾軍の指揮官である王生明は手榴弾により自決しています。

一江山島を失った台湾側は付近の大陳島の防衛は困難と判断、2月8日から2月11日にかけて米海軍と中華民国海軍の共同作戦により大陳島撤退作戦が実施され、浙江省の拠点を放棄したことで事態は収束を迎えました。

  中国人民革命軍事博物館(北京)に展示されている旧日本軍の97式戦車。
  戦後の国共内戦で中国共産党に鹵獲されて使用された「功臣号」の塗装。

次は、第二次台湾海峡危機(1958年)でした。

1958年8月23日、中国人民解放軍は台湾の金門守備隊に対し砲撃を開始、44日間に50万発もの砲撃を加え、金門防衛部副司令官である吉星文趙家驤章傑などがこの砲撃で戦死しています。

この砲撃に対し台湾側は9月11日に中国との空中戦に勝利し、廈門駅を破壊するなどの反撃を行こないました。この武力衝突で米国は台湾の支持を表明、アイゼンハワー大統領は「中国はまぎれもなく台湾侵略」を企図しているとし、また中国をナチスになぞらえましたた。

9月22日にはアメリカが提供した8インチ砲により台湾は中国側への砲撃を開始、また金門への補給作戦を実施し、中国による金門の海上封鎖は失敗、台湾は金門地区の防衛に成功しました。9月29日、蔣介石は金門島の危機に際してはアメリカの支援なくとも中国と戦闘態勢に入ることを述べました。

10月中旬、ダレス国務長官は台湾を訪れ、台湾に対してアメと鞭の態度で臨むことを伝えた。つまり蔣介石が金門・馬祖島まで撤収することを条件に、援助をすると伝えました。蔣介石は10月21日からの三日間の会談で米国の提案を受け入れるが、大陸反撃を放棄しない旨も米国へ伝えました。

10月6日には中国が「人道的配慮」から金門・馬祖島の封鎖を解除し、一週間の一方的休戦を宣言し、米国との全面戦争を避けました。

翌1959年(昭和34年)9月、健康上の理由で首相を辞職した石橋湛山は回復後、私人として中華人民共和国を訪問し、9月17日周恩来首相との会談を行い、冷戦構造を打ち破る日中米ソ平和同盟を主張。

この主張はまだ国連の代表権を持たない共産党政権にとって国際社会への足がかりになるものとして魅力的であり、周はこの提案に同意。周は台湾(中華民国)に武力行使をしないと石橋に約束しました(石橋・周共同声明)。のちの日中共同声明に繋がったともいわれるこの声明および石橋の個人的ともいえる外交活動が、当面の危機を回避することに貢献しました。

先に、この砲撃に対し台湾側は1958年9月11日に中国との空中戦に勝利と掲載しましたが、意外かもしれませんが63年前の1958(昭和33)年9月24日、はじめて実戦で空対空ミサイルを射撃したのは台湾空軍でした。この空中戦は台湾では、「9・24温州湾空戦」と呼ば38機の台湾空軍F-86F「セイバー」と、53機の中国空軍MiG-17が激突する台湾海峡危機における史上最大の空中戦となりました。

台湾空軍のF-86F「セイバー」

そしてこの日、台湾空軍のF-86Fの一部には米海兵隊から供与された秘密兵器、のちにAIM-9B「サイドワインダー」と呼ばれる赤外線誘導型空対空ミサイルがはじめて搭載され、6発発射し実に4機のMiG-17を撃墜するという大戦果をあげました。

このAIM-9Bは現在のAIM-9X-2へと至るサイドワインダー・シリーズ最初の実用型ではありますが、実はこのAIM-9B、現代では想像もつかないほど性能の低いミサイルでした。

どのくらい性能が低かったのかというと、ミサイル先端部の赤外線検知器(シーカー)の感度が悪く、強い近赤外線を発するエンジンノズルしか捕捉できないため敵機の背後に遷移することが必須だった上に、照準可能な射角は中心線からわずか3.5度。さらに発射時は2G以上の旋回を行ってはならず、敵機は回避せず水平飛行していないと命中せず、射程は2kmしかありませんでした。

  最初期型のAIM-9B「サイドワインダー」(一番下)。傑作ミサイルとして
  ソ連にさえコピーされ世界中で使用された

それにしても、従来は戦闘機対戦闘機の戦闘においては、機銃掃射等でしか撃墜するしか術がなかった戦闘機をミサイルで撃ち落とすことができるようになったのですから、これは当時としては、軍事上の大イノベーションであると世界に受け止められました。

そのようなAIM-9Bがなぜ6発中4発も命中したのかというと、中国空軍側のMiG-17が背後の敵機に気付かず水平飛行していたからでした。しかし、それでもAIM-9Bが空中戦の歴史に与えた衝撃はすさまじいものがあり、世界中で機関砲軽視・空対空ミサイル重視のブームが発生し、機関砲を搭載しない戦闘機が多数開発されます。

最後は、第三次台湾海峡危機です。これは、1995年7月21日から1996年3月23日まで台湾海峡を含む中華民国(台湾)周辺海域で中華人民共和国(中国)が行った一連のミサイル実験により発生した軍事的危機。1950-60年代の危機と区別して「台湾海峡ミサイル危機」とも言います。

1995年半ばから後半にかけて発射された最初のミサイルは、中国の外交政策と対決すると予測されていた李登輝政権下の台湾政府に強力なシグナルを送ろうとしたものと見られた。第2波のミサイルは1996年初めに発射され、1996年中華民国総統選挙への準備段階にあった台湾に対する脅迫の意図があると見られました(ただし非公式の事前通告があったことが後に判明しています)。

これに対し、米軍はベトナム戦争以来最大級の軍事力を動員して反応しました。1996年3月にクリントン大統領はこの地域に向けて艦艇の増強を命じました。当時この地域には、空母ニミッツインディペンデンス(「独立」の意)を中心とした2つの空母打撃群がいました。そしてニミッツ打撃群は台湾海峡を通過しました。

この危機に対して、中国の首脳部は1996年に、米軍が台湾の援助に来航することを阻止できないと認めざるを得ませんでした。そうして危機はさりました。

当時の、中国軍は米軍の空母打撃群に対して対抗する術はなく、このときの悔しさから、後に空母建造や強力な空軍、ミサイルの開発へとつながったとされています。

第三次台湾危機においては、米空母打撃群がその終息の決めてになりましたが、第二次台湾海峡危機においては、台湾軍も相当活躍しています。そうして、後の航空機の戦術を変えた「サイドワインダー」のように、現在の台湾軍も隠し玉を持っています。それは以前のこのブログにも掲載したことがあります。そのブログのリンクを以下に掲載します。
中国爆撃機など20機、台湾の防空識別圏進入 米が英に「一帯一路」対抗策を提案 識者「中国軍が強行上陸の可能性も」―【私の論評】中国が台湾に侵攻すれば、台湾は三峡ダムをミサイルで破壊し報復する(゚д゚)!
台湾の防空識別圏に飛来したH6K爆撃機の同型機(上)。下は台湾のF-16戦闘機

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
台湾は、長年かけて自主開発した中距離巡航ミサイル「雲峰」の量産を2019年から開始しています。アナリストによると、雲峰の飛行距離は2000キロで、台湾南部の高雄から北京を納める距離です。
消息筋によると、現状でも、台湾側は中近距離ミサイルによって、中国本土の三峡ダムを破壊することを含め、抑止体制を十分に整え終わっているとされています。
「雲峰」の射程距離は2000キロというのですから、北京は無論のこと三峡ダムをはじめとして、中国のかなりの部分をカバーしています。上の地図をみてもわかるように、中国の2/3
程度をカバーしています。

台湾国営NCSISTは4月15日に雲峰 (Yun Feng) LACMの発射試験を行っています。雲峰はラムジェット推進でマッハ3で飛翔し、射程は1,500~2,000kmと言われている。

しかも、これは配備計画ではなく、すでに2019年から量産体制に入っているというのですから、現在でも少なくとも数十発、もしかすると数百発を配備しているかもしれません。これは、中国にとっては脅威でしょう。しかも、それが台湾独自によって開発されたものというのですから、これも中国にとっては驚きだったでしょう。

数十発のミサイルが、三峡ダムに打ち込まれた場合、これを中国が阻止するのはほとんど不可能です。三峡ダムが破壊された場合、中国の国土の4/3が浸水するといわれており、そうなってしまえば、中国は台湾侵攻どころではなくなります。

当然のことながら、このミサイルは三峡ダムだけではなく、中国のありとあらゆる軍事基地を狙っているでしょう。空軍基地は無論のこと、軍港や、あるいは原発、その他インフラなど、爆撃すれば効果的なところはいくらでもあります。

さらに、台湾は雲峰のほかにも長距離ミサイルを開発中です。さらに、台湾は、ミサイルだけではなく、最新鋭の通常型潜水艦を建造中であり、これと最新の対潜哨戒能力をつければ台湾の守りは完璧になります。

特に潜水艦の建造に成功すれば、台湾は今後数十年は中国に侵攻されることはないと米国の専門家は指摘しています。これについては、このブログにも掲載していますので、興味のある方は是非ご覧になってください。ただし、これは建造を開始したのが、昨年ですから、完成するのは数年後のことになります。

現状でも、中国が台湾に侵攻しようとした場合、台湾単独で中国と戦ったとしても、中国も無傷ですむということはなく、大きな犠牲が出るということです。

台湾に日米やQUADなどが加勢すれば、ほとんど不可能でしょう。たとえ侵攻しても、このブログでも何度か述べているように、中国は台湾に上陸した陸上部隊を維持することは不可能です。

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2021年4月5日月曜日

「非同盟」から「西側」へ 拡大するインドの役割―【私の論評】インドは経済発展し、いずれ先進国に仲間入りするが、中国は先進国になれないまま没落する(゚д゚)!

「非同盟」から「西側」へ 拡大するインドの役割

岡崎研究所

 第二次世界大戦後、インドは自主独立、非同盟を外交の柱にしてきたが、近年、インドは、西側諸国と外交、安全保障上の連携を深めるようになった。軍事的には、既に、数年前から、海軍の合同軍事演習として、「マラバール作戦」を展開し、インドと米国の他、日本、豪州も加わって多国間の合同軍事演習となっている。インドは、人口数から言って、世界最大の民主主主義国であり、約8億人の有権者がいる。その意味では、立派は「西側」の国家である。そして、モディ政権は、「自由で開かれたインド太平洋」地域に、大きくコミットしている。


 米国でバイデン政権が発足して約2か月、3月12日、日米豪印の「クワッド」の初めての首脳会議がオンラインで開催され、4か国間の協力の重要性が改めて浮き彫りにされた。会議ではワクチン、気候変動、最先端技術について、それぞれ作業部会を設置することが合意され ている。ワクチンについては、東南アジアを中心にアジア諸国に新型コロナワクチン10億回分を2022年までに提供することとされた。ワクチンではインドも重要な役割を占める。インドはワクチン大国で、インドの製薬会社「セラム・インスティテュート・オブ・インディア」 がアストラゼネカとノババックスのワクチンを大量生産する契約を結んでいる。中国のワクチン外交が云々されているが、インドも中国に負けないワクチン外交を展開できる。ただしインドのワクチン外交は「クワッド」の枠内で行われることとなる。

 インドの第二次世界大戦後の独立直後の外交の柱は非同盟であった。ネルーが1954年に発表したもので、冷戦のさなかにあって、米国、ソ連 のいずれの陣営にも属さないことを表明した。 非同盟政策はいわば冷戦の産物とも言えうるものであり、ソ連の崩壊とともにその意味を失っている。

 インドが西側諸国との関係を重視するようになった背景には中国の台頭がある。3月12 日の「クワッド」首脳会議の後に発表された声明では、4か国の首脳が「東シナ海及び南シナ海における、国連海洋法条約を含む国際法をはじめとするルールに基づく海洋秩序への挑戦に対応するために連携することで一致した」と述べられている。中国を名指しはして いないが、中国を念頭に置いての見解であることは明らかである。クワッドの首脳会談後には、バイデン政権で国防長官に就任したオースティン長官が、日本と韓国の後、インドを訪問し、米印国防大臣会談がニューデリーで行われた。ここでも、インドのシン国防大臣とオースティン国防長官との間で、平和で安定的なインド太平洋地域の為に、両国の連携が欠かせないことが確認された。

 米印関係の変遷の中では、核の問題が重要な役割を果たしてきた。1974年にインドが「平和的核爆発」と称して核実験を行うと、米国は強い懸念を表明し、非核国における濃縮と再処理を禁止する方針を明らかにした。その後、2007年7月、米印両国は、原子力協力協定を結び、インドは民生用原子力施設にIAEA(国際原子力機関)の査察を受け入れることに合意し、米国は原子力関連の技術と燃料の供給についてインドに協力することを表明している。米国が、インドの軍事用原子力施設にはIAEAの査察が行われないことを認めたことは、米国がインドをNPT上の核保有国としては認めないが、事実上の核兵器国として認めたことを意味すると考えてよい。

 日本にとって、インドが西側諸国との関係を強化することは歓迎すべきものである。自由で開かれたインド・太平洋は、日本にとって特に重要である。日本とインドはそのようなインド・太平洋の確保、維持のために積極的に協力して いくこととなるだろう。

 今夏、英国で開催される予定のG7(西側主要先進諸国)サミットでは、日米英仏独伊加(プラスEU)の7か国の他、豪州、韓国と並びインドが招聘されている。西側の一員として、インドの役割は大きくなって行くだろう。

【私の論評】インドは経済発展し、いずれ先進国に仲間入りするが、中国は先進国になれないまま没落する(゚д゚)!

日本や他の先進国が、インドとの関係を強化するのは理にかなっています。まずは、経済的にみてもそうです。中国は、これからも経済成長していくと見ている人もいるようですが、その見方は間違いです。中国はこれから、中所得国の罠にはまり、以降は経済発展しません。一方インドはこれから経済成長をし、現在の3倍くらいの規模になる可能性もあります。

なぜそのようなことがいえるかといえば、民主主義指数とGDPとの関係をみていけばそれは明白だからです。それについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米中「新冷戦」が始まった…孤立した中国が「やがて没落する」と言える理由―【私の論評】中国政府の発表する昨年のGDP2.3%成長はファンタジー、絶対に信じてはならない(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、高橋洋一氏はこの記事で以下のように語っています。
世界銀行のデータにより2000年以降20年間の一人当たりGDPの平均を算出し、上の民主主義指数を組み合わせてみると、面白い。中所得国の罠がきちんとデータにでている。

中所得国の罠とは、様々な国で経済発展をするのですが、10000(日本円では100万円)ドル前後から伸びなくなったり、一旦10000万ドルを超えて成長しても、それ以下に押し戻されるというのがほとんどということです。

その罠の正体は、結局経済を伸ばそうとしても、多くの国々が民主化、政治と経済の分離、法治国家化をしないことです。先進国といわれる国々では、これらを実施して、10000ドルの壁を超えて、今日先進国になっているのです。

日本を訪れたもデイ印首相(手前)と安倍首相(当時)

そうして、10000万ドルの壁を超えるのは、非常に難しく、産油国などの一部を除いて、今日この壁を超えて先進国になったのは、日本だけです。逆に10000ドルの壁を超えて先進国になっていたものが、押し返されて10000ドル以下になり、発展途上国になったのはアルゼンチンだけです。

高橋洋一氏は、最近同じグラフをIMF(国際通貨基金)のデータを使って作成しています。IMFデータにより2000年以降20年間の一人当たりGDPの平均を算出し、民主主義指数を組み合わせています。以下にそのグラフを掲載します。


高橋洋一氏は、このグラフに関して以下のように説明しています。
民主主義指数が6程度以下の国・地域は、一人当たりGDPは1万ドルにほとんど達しない。例外は産油国と小国である。民主主義指数6を超えると、一人当たりGDPは民主主義度に応じて伸びる。一人当たりGDPが1万ドル超の国で、一人当たりGDPと民主主義指数の相関係数は0.68と高い。

中所得国の罠をクリアするためには、民主主義の度合を高めないといけない。と同時に、各種の経済構造の転換が必要だ。その一例として、国有企業改革や対外取引自由化などが必要だが、本コラムで再三強調してきたとおり、一党独裁の共産主義国の中国はそれらができない。

共産主義国家では、資本主義国家とは異なり生産手段の国有が国家運営の大原則であるからだ。なお、上に書いたようにTPPはそのような要素を盛り込んでいる。

上の一つの図からいろいろなことがわかる。

中国の一人当たりGDPはようやく1万ドル程度になったので、これからどうなるか。中国の民主主義指数は2.27なので、6にはほど遠く、今の程度のGDPを20年間も維持できる確率はかなり低い。

となると、中国はこれから経済停滞に陥る可能性がでてくる。
インドは現段階では一人当たり6000ドル程度だが、民主主義国なので、今後経済発展が期待できる。民主主義6.61なので、一人当たりGDPは今の3倍程度まで上昇しても不思議ではない。
今後経済的に中国は衰退し、インドが発展していくのは明らかです。インドの2020年10~12月期(2020年度第3四半期)の経済成長率は、前年同期比0.4%となり、3四半期ぶりにプラス成長に回復した。10~12月期は、タイやインドネシアなどでは経済成長率がマイナスであり、これと比べれば、インド経済はV字型回復を遂げたと言ってよく、成長力の強さが示されました。

2020年3月25日から5月31日までインド全土で実施されたロックダウンによって、政府や企業の活動がほぼ機能麻痺状態に陥り、4~6月期の経済成長率は大幅に落ち込んだが、7~9月期以降は、行動規制が緩和され経済活動が正常化に向かったことを反映し、景気が回復しました。この数字は信頼できます。

一方中国は昨年は、GDPが2.3%成長というのは、全く信用できないことは、以前のこのブログでも掲載しました。

民主化、政治と経済の分離、法治国家化をするとなぜ経済が伸びるのかといえば、これを実施すれば、星の数ほどの中間層が生まれ、これらの中間層が、自由に社会・経済を実行するからです。

そうして、彼らが自由に社会・経済活動をする過程において、国中のありとあらゆるところが、イノベーションが起こるからです。そうして、社会全体が発展し、社会の遅れた部分が一掃され、急激に経済発展するのです。

一方、中国などでは、民主化、政治と経済の分離、法治国家をしてしまえば、中国共産党は統治の正当性を失い崩壊して、新しい体制ができあがることになります。それは、中国共産党が拒むでしょうから、中国は経済発展できないのです。

中国共産党が、大金をばらまき、号令をかけ、共産党主導でイノベーションを行えば、たしかに資金を投下された部分では、イノベーションが起こるでしょうが、それはいわば、いくかの点におけるイノベーションになるか、せいぜい直線状にしかおこらず、社会の遅れた部分の大部分が温存され、それがネックとなり経済は発展しないのです。これが、中所得国の罠の本質です。

中国は先進国になれないまま没落していく運命

そうして、その社会の遅れを政府だけでは改善・改革できないのです。やはり多数の中間層を輩出させ、それらが自由に社会のあらゆるところで、イノベーションを起こすからこそ、社会が発展し、結果として経済も発展するのです。

中国では昨年、「一国二制度」をとりやめ、香港を中国に併合しました。しかし、中国がこれからも経済発展したければ、大陸中国こそ、かつての香港のようになるべきだったのです。

一気にそうしなくても良いですから、時間をかけて少しずつでも行い、大陸中国が香港のようになっていけば、中国はこれからも経済発展できたでしょうが、中国は逆をやってしまいました。社会も経済も発展しないまま、中国は先進国になれずに没落していくことでしょう。

インドはこれからも社会変革を行い、経済が発展していけば、いずれ先進国の仲間入りができるでしょう。

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2021年4月4日日曜日

ハンター・バイデン、NYP暴露の中心となったMacBookが「確かに」自分のものである可能性あるとついに認める―【私の論評】TIME誌とハンター・バイデンの暴露は、いずれも司法取引の一環か(゚д゚)!

ハンター・バイデン、NYP暴露の中心となったMacBookが「確かに」自分のものである可能性あるとついに認める

<引用元:ニューヨーク・ポスト 2021.4.2

ハンター・バイデンは、昨年本紙が暴露した衝撃的ニュースの中心となったノートパソコンが「確かに」自分のものである可能性があると白状した。2日のインタビューで明かしたものだ。

CBSの「Sunday Morning」とのインタビューで、バイデン大統領の渦中の息子は、2019年4月にデラウェア州のコンピューター修理店持ち込まれたMacBook Proが実際に自分のものであるかどうかを「イエスかノー」であからさまに質問された。


「私は答えが何なのかよく分かりません。それが正直な答えです」「見当もつきません」とハンター・バイデンは2日に公開されたインタビューの抜粋の中で述べた。

だが自分のものである可能性があるかどうかと質問されると、「確かに」と答えた。

「確かに、私から盗まれたノートパソコンがそこにあった可能性はあります。私がハッキングされたものである可能性があり、それがロシアの情報機関だった可能性があります。私から盗まれた可能性があります」と彼は続けた。

ハンター・バイデンは、「Beautiful Things」というSimon & Schuster系のGallery Booksから4月6に新たに出版される回顧録の宣伝で珍しくメディアに登場した。

白熱した2020年大統領選挙の最終盤に、本紙はハンター・バイデンのノートパソコンにあったメールの山を暴露し、腐敗とつながりのあるウクライナの天然ガス会社であるブリスマを含め、当時の大統領候補だった父親と息子の外国でのビジネス・ベンチャーとのつながりに疑問が提起された。

メールから、バイデンの息子が当時副大統領だった父親にブリスマの役員を紹介したことが発覚した。その後1年足らず後にバイデン副大統領は確かに、同社を捜査していた検察官を解任するようウクライナ高官に圧力を掛けた。

決して明かされることのなかった会議について、ブリスマの相談役であるVadym Pozharskyiが2015年4月17日にハンターに送った感謝のメールの中で言及されている。

水濡れで損傷したMacBook Pro―ボー・バイデン財団のステッカーが貼ってあった―は、2019年4月にデラウェア州のコンピューターショップに持ち込まれたが、持ち込んだ人物は引き取りに現れなかった。

それはその年の12月にFBIによって押収された。

ウクライナとのつながりに加えて、コンピューター上の他のメールからハンターが中国最大の民間エネルギー企業との取引の可能性について話していたことが分かった。

ある取引はバイデン息子の関心を相当引いたようであり、「私と家族にとって興味深い」と呼んでいた。

コンピューターには非常に個人的な写真と録画も含まれており、露骨な12分間の動画には、(過去に薬物依存で苦労していた)ハンターがコカインを吸引して身元不明の女性とセックスに及んだ様子があったようだ。

さらに上院共和党は、9月にハンター・バイデンの海外での取引に対する調査結果を公開した。彼らは、オバマ政権が当時の副大統領の息子がエネルギー産業で何の経験もないのにブリスマの役員に加わった際に「明白な警告サイン」を無視したと述べた。

腐敗していたと報じられるエネルギー企業―「月に5万ドルも」支払っていた―でのハンター・バイデンの立場は、父親がウクライナに対する米国の政策に関与していたことから差し迫った利益相反の可能性を生み出した、と報告書には書かれていた。

バイデン大統領と息子はどちらも不正を否定し続けている。

(以下略)

【私の論評】TIME誌とハンター・バイデンの暴露は、いずれも司法取引の一環か(゚д゚)!

バイデンの息子ハンター・バイデン氏の自伝が発売されるという発表があったのは、かれこれ2ヶ月くらい前でした。

当時は米アマゾンの中国系ランキングで1位になったことも話題となりました。


バイデン親子

父親である、ジョー・バイデン氏が権力の座についた直後の出版であることから、アルコール中毒やコカイン中毒になったことくらいは無論掲載するものの、そこから家族の愛情や自らの使命感から立ち直るといういような美談を演出した書籍になるのかと、想像していましたが、どうもそうでもないようです。

ただ、ハンター・バイデンの実の母親と、姉が交通事故でなくなったという悲劇に見舞われたことは、掲載されていると思います。

既に漏れ伝わってくる前評判を聞く限り、当初私が想像していた内容とは随分違うようです。

アル中、コカイン中毒は隠し仰せないので掲載されているのは、当然のことながら、義理姉との不倫、不特定多数の人との性生活、裏社会との繋がり、さらにはウクライナからの賄賂や中国との疑惑など、今まで話題になったハンターバイデンの疑惑を全て網羅する形になっているようで、しかも「その噂は事実であった」と暴露した内容のようです。以下にこの書籍の表紙の写真を掲載します。

この表紙から察するに「父親との思い出」などの美談も掲載されているのでしょうが、それがメインではないようです。

これについては、少し前にあったTIME誌の「不正選挙疑惑」暴露と同質のものを感じました。

TIME誌は、米大統領選投票にかかわる不正行為について、自己肯定をしてはいるものの、「噂とされていた事は全部事実でした」と結果として吐露した形になっていました。

カバール(いわゆるディープステート)等が、スウィングステート(米国合衆国大統領選挙の勝者総取り方式において、共和党・民主党の支持率が拮抗し選挙の度に勝利政党が変動する州を指す言葉)の議会の同意なしに州政府が有権者法を変更するように違法に働きかけ、それに成功したとしています。

本来いずれの州においても、選挙法を変えるには合法的には議会の同意が必要ですが、この手続をせずに州政府の独断でこれを変えたスウィングステートがあったのです。

このあたりは、他のメディアでも詳細に解説しているものがあるので、詳細はそちらにあたっていただきたいです。

私には、このタイム誌による、不正選挙の暴露と、ハンターバイデンの自伝による暴露は非常に似たところがあるように感じられます。

ハンターバイデンは、書籍プロモーションのためもあり、最近はテレビのインタビューも受けているのですが、そこでも衝撃的な話をしています。

米大統領選前話題になった「ハンター氏のラップトップ」ですが、あのPCは冒頭の記事にもある通り概ね自分のものと認めています。

ラップトップ本体については「分からない」としたものの、データについてはどうやら彼のものとみて間違いないようです。

あの衝撃的なデータの数々は「自分の物」と認めた衝撃は大きいです。

米大統領選前から民主党は、ハンター関連の疑惑を一切封殺する動きを見せていて、主要メディアも同様に封殺していました。TwitterやFaceBookですら、そのようなコメントを検閲し、封殺する動きをしていました。

にもかかわらず、わざわざ今になって、どうしてここまでの暴露をするのでしょうか。過去の民主党の体質を考えれば、クリントンの違法なメールの件もあったように、知らぬ存ぜずを突き通すのが彼らのやり方に見えたのですが、本当に不思議です。

ただ、バイデン就任の時から様々な噂があったように、この政権が実質的にな権力を掌握していないなら話は別です。

この憶測が事実であれば、これも予定調和的な動きなのかもしれません。

また今回のハンターバイデンの行動で思い出されるのが、以下の動画です。これはホワイトハウス公式動画なのですが、1時間16分30秒くらいからはっきり聞こえる奇妙な声が入っています。




この声は「この時を待っていた。司法取引に応じる」と言っていて、発したのはハンター・バイデンではないかとも噂されていました。

もうすぐ発売されるハンターの自叙伝及びそれに関連する行動を見ている限り、やはりあの声はハンターだったのではないかと思ってしまいます。

そして、今目の前で起きている自伝による告白なども「司法取引の一貫」なのではないかと思っています。そうして、Time誌の暴露自体も司法取引の一種だったのではないかと思えてきます。

というか、先に紹介したあの動画(司法取引するという声が入っていた動画)が公開されたのは、1月22日。今から2ヶ月半前ですが、不思議なことにこの動画は公開され続けています。

2ヶ月もあれば、変な声を無くした形でアップし直す時間も充分あるし、ましてや非公開にすることだってできます。なぜそうしないのでしょうか。

しかも、ホワイトハウスといえば、国家の中枢機関にもかかわらず、なぜしないのでしょう。

ちなみに、背景にトランプ元大統領らしき人が映り込んでしまう動画(ホワイトハウス公式)も、まだ公開し続けています。不思議です。


しかし先ほど申し上げた通り、この政権が実質的にな権力を掌握していないなら話は別です。バイデンは自らの意図で、ホワイトハウス公式動画を削除することもできない状況にあるということなのかもしれません。実質的に権力を掌握している何者かが、このようにして、バイデンに因果を含めているとも受け取れます。

そう言えば、4月9日にアメリカで開催される予定となっていた日米首脳会談の日程変更になりましたね。当初は9日の会談日程を検討していたのすが、1週間先送りしました。

新型コロナウイルス対応が影響したとみられますが、サキ報道官は詳細には言及しませんでした。

これも普通であれば、あり得ないことなのですが、これがバイデン政権の現実です。1周間先送りしなければならない切実な理由があるのでしょう。

菅総理がワシントンD.C.入りできるのかどうか、入ってみたらどんなことになっていたのか、注目です。

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2021年4月3日土曜日

【日本の解き方】解散総選挙はいつあるのか 重箱の隅を突く野党の不甲斐なさ、自民党に主戦論引き起こす―【私の論評】菅政権の課題、新型コロナ危機にある日本経済と社会の立て直しと、衆議院解散と総選挙での勝利の達成は目前に迫ってきた(゚д゚)!

 【日本の解き方】解散総選挙はいつあるのか 重箱の隅を突く野党の不甲斐なさ、自民党に主戦論引き起こす


菅首相

 野党側から内閣不信任決議案の提出を検討するという話が出ていることを受けて、自民党の二階俊博幹事長が「直ちに衆院解散で立ち向かうべきだと首相に進言したい」と発言した。現状で衆院解散のタイミングについて何が考えられるのか。

 衆院の任期は残り約半年だ。任期満了までいろいろな解散・総選挙のパターンがあるが、(1)4月訪米・重要法案成立後(2)7月4日の東京都議選と同日選(3)9月20日の自民党総裁選後(4)10月21日の任期満了-が一応考えられる。

 当然ながら衆院解散は菅義偉首相の専権事項だ。3月26日、2021年度予算が参院本会議で可決後、記者団から「いつ解散総選挙があってもおかしくないのでは」と問われると、菅首相は「いつあってもおかしくないとは私は思っておりません。コロナ対策、やるべきことをしっかりやる必要があると思っています」と答えた。ただし、解散はみんなが思うときにはなく、思わないときにやるという政治格言もあるので、さっぱり分からないというのが事実だ。

 もっとも、自民党の衆院議員からみれば、10月の任期満了近くの追い込まれ解散にはしたくない。麻生太郎政権時に、追い込まれ解散となって、09年に政権を失ったトラウマがあるからだ。

 そこで、野党から内閣不信任決議案が出るというのは、追い込まれ解散にならないという「渡りに船」の話なのだろう。

 しかも、内閣不信案の件は、立憲民主党が言い出したものが、その理由として今国会の政府提出法案にミスが相次いでいることに関し、行政に対する信頼が失われることを掲げていたのは笑止千万だった。

 本コラムでも書いたが、法案の単純ミスは人のやることなので、やむを得ないことだ。ちなみに、米国の官報を見てみたら、修正は山のように出ていた。それに比べると、日本の単純ミスは少ないものだ。なにより単純ミスなので、法案解釈の際に支障にもならず、人命に関わるような重大事案ではない。

 与野党国会議員もマスコミも法案をつぶさに読んだのか不明だが、何をいまさら問題にするのか分からない。一部野党は、週刊誌記事を国会質問の材料にしてきたが、そのネタも尽きてきたので、法案の単純ミスという重箱の隅を突く愚挙に出てきたのかもしれない。

 こうした一部野党の不甲斐なさを感じ取った二階幹事長が、それなら解散で受けて立つという言い方になったのだろう。

 NHKによれば、3月の菅政権の内閣支持率は40%、自民党支持率は35・6%なので、過去の政権から見て決して悪い数字ではない。今解散総選挙をしても与党の負けはないだろう。

 なぜ支持率が下がらないのか、「反スガ」は不思議だろうが、本コラムで書いたように半年で菅政権はコロナ対策と経済の両立も成し遂げるなど、結果を出している。それも、自民党内で、内閣不信任なら解散という主戦論を引き起こしている理由だろう。 (内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】菅政権の課題、新型コロナ危機にあった日本の立て直しと、衆議院解散と総選挙での勝利の達成は目前に迫ってきた(゚д゚)!

このうち一つの新型コロナ対策は、感染も経済も立派にやり遂げています。これは先日もこのブログに掲載しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
衆議院任期まであと半年…菅政権の支持率が「悪くない」水準にある、シンプルな理由―【私の論評】人口が1億人超という括りでも、先進国という括りでも、日本が感染症・経済対策でトップとは疑いようのない事実(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より二つのグラフを以下に再掲します。



日本の感染症対策は、世界トップクラスです。G7(フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダの7つの主要な先進国)ではトップであり、私が調べた限りでは、人口1億人以上の国でもトップです。

経済対策においては、様々な指標がありますが、失業率がもっともシンプルな比較法だと思います。なぜなら、他の指標が悪かったにしても、失業率が低ければ、政府による経済対策はうまく機能しているとみられているからです。その意味では経済指標では、失業率か最も重要です。

その失業率においても、日本は上の表でしめさせているように、1月の対前年比では、+0.5となっています。

これは、感染対策でも、経済対策でも、菅内閣のパフォーマンスはかなり良いということを示しています。

無論、感染症対策でも、経済対策でも、完璧とはいいませんし、細かなことでは、「ああすべき」「こうすべき」ということはあっても、大局的に成功していることの証です。

本来「細かな」重箱の隅をつつくような議論は、政府に対して行うべき筋のものではありません。それは、都道府県、市町村などの各自治体に向けられるべきものです。政府ができることは、お金を出すことであり、それに関しては菅政権は着実に実行しています。その結果が、低い失業率です。

現状ではおそらくコロナ第4波は来るでしょうが、マスコミや野党が大騒ぎしているレベルになることはないでしょう。日本は世界の波と比べたらさざ波レベルです。医療崩壊が起こりそうになった真相は、コロナ対策予算は世界トップクラスなのに病床数不足は地方自治体が公立病院に手当しなかったのが原因です。仮に、第4波が来ても病床を増やして医療崩壊しなければ全く問題はありません。

1年前を振り返ると、「東京の3月25日の感染者数は212。この数は、偶然にも、3月11日時点のニューヨーク州の感染者数と全く同じ。ニューヨーク州はそれからわずか2週間で、その数が3万2000を超えた」等と、ニューヨーク在住の著名邦人が、それも複数の邦人が「したり顔」で語っていましたし、一部の日本在住の著名米国人がそう語っていました。結局そのようなことは起こらず、日本も東京も米国に比較すれば、さざ波程度の感染に終始しました。

米国には、CDCという感染専門組織があって、どのような感染症にも米国は完璧に対応できるなどと、日本国内の感染症専門家も語っていましたが、そうではないことが、白日のもとにさらされました。

1年前のツイートから

米国では、減少を続けていた新型コロナウイルスの新規感染者が再び増加傾向となり、警戒感が広がっています。

CDC=疾病対策センターによりますと、直近7日間平均の1日あたりの感染者数は、1月上旬のおよそ25万人から3月14日にはおよそ5万3000人まで減少していました。しかし、再び増加傾向となっていて、29日にはおよそ6万1000人となっています。

特にニューヨーク州で増加が著しく、ニューヨークタイムズ紙の集計によると、直近7日間で10万人あたりの一日の新規感染者数が全米で最多となっています。ニューヨーク州では、レストランの店内飲食の人数制限が2月から段階的に緩和され、現在は定員の50%で、外食する人も増えています。

一方、ワクチン接種は加速していて、30日までに少なくとも1回接種した人が9604万人で人口の28.9%、必要な回数を完了した人は5342万人、16.1%となっています。

米国の人口は、3.282億人 (2019年)であり、日本は人口が1.263億人 (2019年)ですが、それにしても米国の感染は桁が違います。

そもそも、これだけパフォーマンスの良い菅内閣に対して「内閣不信任案」を突きつけるような動きを野党がしていること自体が驚きです。

それに加えて、立憲民主党の枝野氏は、最近考えられないような戯言を語っています。

倒閣しか頭にない?立憲民主党枝野代表

立憲民主党の枝野幸男代表は2日午後の記者会見で、菅義偉内閣の新型コロナウイルス対応を批判し、「一刻も早く退陣していただきたい」と述べました。ただ、衆院選を実施できる状況にはないとして、現行の衆院勢力のままで立民を少数与党とする「枝野内閣」を暫定的に組閣し、秋までに行われる次期衆院選までの間の危機管理にあたることが望ましいとの持論を打ち上げました。

枝野氏は、内閣不信任決議案の提出の可能性を問われ「明日にでも出したいような、(菅内閣を)信任できる状況ではない。ただ、今は衆院解散・総選挙による政治空白を作れる状況でないのははっきりしている」と強調しました。

その上で、日本と同じ議院内閣制の国では、危機の際に政府が機能しない場合に少数政党が選挙管理内閣(次期選挙までの暫定内閣)を担う例があると説明。「私の下の内閣で当面の危機管理と選挙管理を行わせていただくべきだ」と述べました。

菅政権にスタート時点から、直面する課題が二つありました。一つは、新型コロナ危機にある日本経済と社会の立て直しです。もう一つは、早期の衆議院解散と総選挙での勝利です。これは、すでに見通しがたったと思います。

この状況だと、一つ目の課題コロナ危機の日本経済と社会の立て直しは成功し、もう一つの衆院解散総選挙の勝利も確実になりそうです。そうなれば、菅政権が長期政権になる可能性もでてきます。

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2021年4月2日金曜日

人権かビジネスか…問われる中国進出企業 ウイグル問題への非難で不買運動拡散 無印、アシックスも対応に苦慮―【私の論評】日本企業も米国からセカンダリーボイコットの対象にされかねない(゚д゚)!

人権かビジネスか…問われる中国進出企業 ウイグル問題への非難で不買運動拡散 無印、アシックスも対応に苦慮

北京市内にある無印商品の店舗

 中国による新疆ウイグル自治区の人権侵害を欧米企業が非難する姿勢をみせ、中国国内では不買運動が広がるなどの騒動になっている。中国に進出している日本企業も無関係ではない。人権かビジネスかで対応に混乱もみられる。

 ◇

 H&Mやナイキ、アディダスなど欧米企業がウイグルの人権侵害を非難する声明を出したところ、中国共産党・政府系メディアらが一斉に批判し、中国国内で不買運動が拡散した。H&Mは通販サイトの商品検索を停止され、ナイキはモデルを務めるタレントが契約を打ち切った。

 日本企業では、「無印良品」を展開する良品計画は、中国共産党の機関紙、人民日報系の環球時報に対し、一部製品に使用されている「新疆綿」の使用を継続すると説明したと報じられた。同社の中国版ネットショッピングサイトを確認したところ、4月2日現在、「新疆綿」と記載された製品が販売されている。

 同社広報・ESG推進部広報課は、「無印良品を展開する良品計画は、強制労働等いかなる形態の人権侵害も許容せず、国連の『ビジネスと人権に関する指導原則』をはじめとする国際規範に則って人権の尊重に努めています」とコメント。

 新疆綿を使った製品が日本国内で販売されているかという質問には「全ての綿花および糸は、国際労働機関(ILO)が定める強制労働禁止を含む労働基準の遵守を条件とするオーガニック国際認証を取得したもの」とし、現時点で「重大な問題点は確認できていない」と回答した。

 スポーツ用品大手のアシックスの中国法人は、中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」の公式アカウントで、今後も新疆ウイグル自治区産の綿花を購入することを発表したが、その後、投稿は削除された。同社は、「中国法人のアカウントは、商品やサービスについて発信することが目的であるため、弊社が承認したものではない」と削除した理由を説明した。

 一方、新疆ウイグル自治区に関する製品を使用しているかという点については「弊社のCSR(企業の社会的責任)の方針に基づき、材料の調達ポリシーに合致していると確認している。材料選定のガイドラインに基づいて配慮された材料調達を行うようサプライヤーに指導を強化している」と回答した。

 いずれも旗幟(きし)鮮明とまではいかないようだ。

 ファッションジャーナリストの南充浩氏は、「中国市場はそもそも、現地でライバル企業との競争が激しい。企業にとっては人権問題についてどれだけ信念があったとしても、売上高に占める中国のウエートが態度を左右することになるだろう」と指摘した。

【私の論評】日本企業も米国からセカンダリーボイコットの対象にされかねない(゚д゚)!

「無印良品」を展開する良品計画の株価が急落し、およそ8カ月ぶりの日中下落率を記録しました。ファストファッションのヘネス・アンド・マウリッツ(H&М)が新疆ウイグル自治区で生産されるコットンの調達を停止したことをきっかけに、中国で外国ブランドの不買活動が活発化するとの懸念が広がっています。

26日の日本株市場で、良品計画株は一時前日比6.8%安の2494円まで売り込まれ、下落率は昨年7月10日以来の大きさとなりました。

良品計画株式会社の株価の推移(一ヶ月)

良品計画は25日、ブルームバーグの取材に対し、中国・新疆ウイグル自治区の強制労働および少数民族差別に関する各種報告書や報道を注視しており、深い懸念を抱いていると表明しました。

新疆綿については「当社の行動規範に沿って生産した商品を販売している」と書面で回答。その上で、「製造委託先工場が強制労働など深刻な人権侵害に加担していると判明し、良品計画が影響力を行使しても是正が期待できない場合には取引関係の解消も選択肢として検討する」とした。

ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリストのキャサリン・リム氏は、良品計画が懸念を表明したことでH&Mと同様の位置づけに置かれる可能性があると指摘し、不買運動の対象になり得るとの見方を示した。 

中国では、H&Мの商品が24日夕時点でアリババグループの通販サイト「淘宝(タオバオ)」において購入できなくなりました。25日のストックホルム市場でH&M株は一時4.6%安と続落しました。対照的に、中国本土のブランドで「新疆綿」の支持を表明したスポーツウェアブランドの李寧(LI-NING)の株価は26日の取引で一時9%高と続伸しました。

ジェフリーズ証券の25日付のリポートによると、中国のスポーツウエアセクターは株の売買のボラティリティが顕著に上昇したといいます。

岩井コスモ証券投資調査部の有沢正一部長は、良品計画株について会社側、経営側が何か踏み込んだことをしなければ、売りはきょうで収まる可能性があると分析。「結局中国の動きをみるしかない」と述べました。26日午後時点で、タオバオのサイト上では無印良品の「新疆綿」関連製品が購入できる状態にあります。

このほか、ファーストリテイリングも不買運動の対象になる懸念が出ています。中国共産主義青年団北京市委員会の機関紙、北京青年報は微博(ウェイボ)公式ページ上に掲載した25日付の記事で、ナイキやギャップなど他のブランドと並んでファストリ傘下の「ユニクロ」ブランドについても名指しで批判していました。

ウイグル人の小さな子どもが綿摘みをしている動画より

無印をはじめとする「新疆綿」を使い続ける企業は、米国のセカンダリーボイコットの対象になることを恐れていないのでしょうか。

セカンダリーボイコットとはたとえば、中国等の ボイコットの相手方に対する不買・拒否・排斥運動などを、第三者に呼びかけ、行わせることで、相手方に圧力や打撃を加えることです。

米国が明らかにしているセカンダリーボイコットの内容は大きく3つあります。まず制裁対象国(中国など)と金融取引をする第3国のいかなる金融機関も米国金融網への接近が遮断される可能性があります。

また相当な水準の商品やサービス、技術を取引した個人や機関も制裁対象となります。対象国(中国など)と取引するだけで制裁が可能な史上最高レベルです。

米国の金融網への接近が遮断されるということは、何を意味するのかといえば、国債決済ができなくなり、貿易もができなくなるということです。

米国はすでにセカンダリーボイコットを発動したことがあります。

昨年8月中国の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)に対する新たな規制を、アメリカが発表しました。また、米国は既存の規制に関しても強化しており、ファーウェイの存続に危険信号が灯りはじめました。

昨年5月、アメリカはファーウェイが設計に関与し、製造に米国の技術が使用される半導体の輸出禁止を発表しましたが、その禁輸の対象を米国の技術が関与するすべての半導体に拡大したのです。

これにより、ファーウェイは半導体生産に関する新たな発注ができなくなりました。内製化したいのはやまやまでしょうが、中芯国際集成電路製造(SMIC)に対するオランダ・ASMLの半導体製造装置の輸出が規制されており、2~3世代前の技術しか使うことができないのです。そのため、小型化が必要なSoC(複合CPU)をつくれず、スマートフォン事業の展開ができなくなったのです。

ファーウェイは子会社であるハイシリコンのSoC・Kirinを製造できなくなったため、クアルコムなどのSoCを利用してスマホをつくろうとしていました。しかし、今後はクアルコムのSoCをファーウェイに販売した企業や台湾積体電路製造(TSMC)なども制裁対象になってしまうことになったのです。また、ファーウェイがサーバー用にインテルなど他社のCPUやチップを購入した場合も同様に、川上から川下まですべてが制裁対象になってしまうことになりました。

この状況では、汎用品を含むすべての半導体製品をファーウェイに売ることはできなりました。唯一例外があるとすれば、米国原産の技術をまったく使っていない製品や半導体ということになりますが、それをつくるのは不可能です。

また、中国企業などでファーウェイに半導体やサーバーを不正に販売する企業も出てくると思われますが、関与した企業はセカンダリーボイコット(二次的制裁)の対象になることになったのです。さらに、不正な製品や技術を利用してつくられたモノやサービスを販売、輸出できるのかという問題も出てくるわけです。

また、米国は事実上の禁輸リストである「エンティティー・リスト」にファーウェイの関連会社38社を追加しました。さらに、8月13日が期限となっていた禁輸の例外措置も打ち切ることを発表しており、以降ファーウェイのスマホや携帯電話の保守にかかわる取引も禁止されました。


このような米国ですから、いくら政権がトランプ政権からバイデン政権に変わったからといって、米国が日本の企業をセカンダリーボイコットの対象にしないという保証はなく、そうなれば、確実に対象の企業はビジネスができなくなります。結果として倒産ということになります。

中国でビジネスできないのと、米国からセカンダリーボイコットの対象にされることのいずれが打撃が大きいかといえば、無論後者です。

そのことを知っているからこそ、日本の企業でも、上の表にもあるとおり、ウイグル人の強制労働に関与している企業との取引を停止するという企業も多いのです。

日本の企業も中国の肩を持つような発言や行動をいつまでつも続けていれば、とんでもないことになります。


日米豪印クワッドが国際社会に示した意義―【私の論評】QUAD協定には「毒薬条項」を盛り込んででも、中国の政治的介入から守り抜くべき(゚д゚)!

中国経済、本当に崩壊危機の様相…失業者2億人、企業債務がGDPの2倍、デフォルト多発―【私の論評】中国には雇用が劣悪化しても改善できない構造的理由があり、いまのままではいずれ隠蔽できなくなる(゚д゚)!

中国爆撃機など20機、台湾の防空識別圏進入 米が英に「一帯一路」対抗策を提案 識者「中国軍が強行上陸の可能性も」―【私の論評】中国が台湾に侵攻すれば、台湾は三峡ダムをミサイルで破壊し報復する(゚д゚)!

習近平に逃げ場なし…人権弾圧を続ける中国に、アメリカ・EUが反撃を始めた!―【私の論評】菅首相は自ら制裁措置を取ろうと取るまいと、中国に進出している日本企業の商業活動を同盟国・米国から妨害されてしまいかねない(゚д゚)!

2021年4月1日木曜日

ボトムアップのバイデン政権、「親中」否定の動きは歓迎も…気にかかるケリー特使の動向 下手をすると、中国に人権を売りかねない ―【私の論評】いざという場合には、QUAD諸国はケリー氏をペルソナ・ノン・グラータに指定してでも結束せよ(゚д゚)!


バイデン米大統領

 バイデン米大統領は就任後初の記者会見を3月25日に開いたが、これまでの外交や内政、経済対策からどのような方向性が見えてきただろうか。

 この記者会見は用意周到な準備の上で行われたようだ。バイデン氏による説明は当然としても、質問する記者やその内容に関しても、事前に用意していたかのような手持ちメモもあったという。

 高齢で危うさのあるバイデン氏を揶揄(やゆ)する向きもあるが、決して非難されるものでなくバイデン政権の性格を表しているものだといえる。

 前の政権ではトランプ前大統領のツイッターが政策の方向性を示すなどトップダウンで進んだが、バイデン政権ではボトムアップだ。

 ボトムで支える国務省も万全の体制で臨んでいる。記者会見での事前準備もしっかりしていたが、ブリンケン国務長官は国務省出身で、今回の対中政策でキーパーソンになっている。

 16日からの1週間、ブリンケン国務長官は、東京で日米、ソウルで米韓、アラスカで米中、ブリュッセルで米欧をこなして、対中包囲網を構築してしまった。

 また、米インド太平洋軍司令官に指名されたアキリーノ太平洋艦隊司令官(海軍大将)は上院軍事委員会の公聴会で、中国による台湾への軍事侵攻について「予想より近い」と話した。こうした一連の動きの締めが、バイデン氏の記者会見だったというわけだ。今のところ、ボトムアップのバイデン政権は互いに連携し、うまく機能しているようだ。

アキリーノ太平洋艦隊司令官

 バイデン政権が、対中関係を、民主主義対専制主義と話したことは大きい。バイデン氏に対する「親中」とのレッテル貼りを否定する狙いもあるようにうかがえた。筆者は、こうした変化が本当であれば、素直に歓迎すべきだと思っている。

 この点、日米で首脳が同時期に交代したのはある意味で幸運だ。安倍晋三氏とトランプ氏は両者の個人的関係が深く、日本は国益を確保したが、菅義偉氏とバイデン氏では、両国の官僚機構が活用される。安倍政権時代、手持ち無沙汰だった外務省の出番が来て、外務官僚も張り切っている。菅氏もバイデン氏もそれぞれ新任なので、かえってやりやすいのだろう。

 日本の外務省と米国務省という両国の官僚機構が相互に連携すると、かなり強固な日米関係になると期待できる。

 懸念材料は今のところ少ないが、バイデン政権内のケリー大統領特使(気候変動問題担当)の動向は気にかかる。政治的にケリー特使はブリンケン国務長官より格上であるし、気候変動のためには米国は中国に配慮せざるを得ない。下手をすると、中国に気候変動で妥協するために人権を売りかねないという懸念がある。

 そうならないために、日本としては環境政策でも米国と連携しつつ、4月上旬に菅氏が先進国初の米大統領との直接対談相手に選ばれたことを最大限に活用してもらいたい。(内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】いざという場合には、QUAD諸国はケリー氏をペルソナ・ノン・グラータに指定してでも結束せよ(゚д゚)!

昨日のブログで、私は以下のような主張をしました。
温暖化は中国にとっての格好の隠れ蓑になるかもしれません。今の中国は昨日も述べたように失業者が2億人ともされています。そうなると、消費活動は停滞し、産業活動も停滞するはずです。にもかかわらず、中国は昨年の経済成長は2.3%であり、奇跡的なV字回復をしたことにしています。

経済が停滞した、中国では今後温暖化目標など、何もしなくても達成できる可能性が大きいです。しかし、習近平は中国の努力によって、達成したように見せかけるでしょう。

バイデン外交は始動したばかりです。そうして、ジョー・バイデンが中国と深い関係を持ち、息子のハンター・バイデンが中国に買収されてしまっているのは紛れもない事実です。

現在ジョー・バイデンの登場によって習近平は、政治的には有利な立場に立っているのは事実です。

習近平がこれを、利用するのは間違いありません。温暖化で協力したみかえりに、バイデンから譲歩を得ようと画策するのは目にみえています。

これと同じような懸念を高橋洋一氏は持ったようです。 実際以下のように主張しています。

懸念材料は今のところ少ないが、バイデン政権内のケリー大統領特使(気候変動問題担当)の動向は気にかかる。政治的にケリー特使はブリンケン国務長官より格上であるし、気候変動のためには米国は中国に配慮せざるを得ない。下手をすると、中国に気候変動で妥協するために人権を売りかねないという懸念がある。
ケリー大統領特使(気候変動問題担当)

オバマ政権で米国務長官を務めたた当時のケリー上院外交委員長は2013年1月24日、上院公聴会で米中関係の強化に取り組む意向を示し、「中国重視」の姿勢を鮮明にしました。

オバマ政権がアジア重視戦略に基づいて進めている米軍再編に対しても、ケリー氏は中国に誤解を与えていると疑問視していました。これをもって、日米同盟などを軸とする米アジア外交が後退する可能性もあると当時多くの専門家が指摘していました。実際、オバマ政権下で、米アジア外交は後退しました。

「中国側は、米国が彼らを取り囲もうとしているのかと言っている」。ケリー氏は公聴会で、日中が争う沖縄県・尖閣諸島や南シナ海での中国の海洋進出への対処方針を聞かれ、オーストラリア北部に米海兵隊がローテーション(巡回)駐留することなどを挙げ、中国への軍事的けん制に真っ向から反対しました。

ケリー氏をよく知る関係者によれば、同氏はもともと対中融和派とされています。当時の公聴会で、米中間の経済的な懸案事項に言及しながらも、不透明な軍事費の増額や人権問題に踏み込まなかったところにそうした姿勢がにじみ出ていました。

また、「アジア重視」のスローガンが「欧州や中東などとの関係を犠牲にしてはならない」とも戒めました。

ケリー氏の発言が際立っていたのは、アジア外交の方針を述べる上で、日米同盟など域内の同盟関係への取り組みについて全く言及しなかったことです。オバマ政権が重視している東アジアサミットなど多国間の協力の枠組みにも触れませんでした。

当時のクリントン国務長官も2009年1月の指名公聴会で中国を重要な存在と指摘しましたが、それ以上に「日米同盟はアジア地域における米外交の礎石だ」と表明していました。

就任後の最初の外遊で日本を訪問するなど日米関係を重視し続けてきました。24日のケリー氏の指名公聴会は約3時間40分続きましたが、次期国務長官の口から「日本」という言葉は一度も聞かれませんでした。

2014年11月6日付米Diplomat誌のウェブサイトで、ティエッツィ氏が、米国のアジア回帰に関するケリー国務長官の最近の発言を取り上げ、アジア回帰は、クリントン前長官が提唱した当時とは性格が変わり軍事的側面が大きく後退している、と述べました。

ケリー国務長官の米中関係に関する同年11月5日の演説は、米国のアジア回帰が、2011年に発表された当初とは性格が異なってきているとしたのです。

ケリー氏は、「リバランスを定義づける4つの柱」として、(1)持続的な経済成長、(2)クリーンエネルギー革命を通じた気候変動対策、(3)ルールに基づいた安定した地域に貢献する、規範と機構の強化による緊張緩和、(4)アジア太平洋の人々が、尊厳、安全、機会を与えられた生活を送れるよう保証することを挙げました。

これに先立つ3年前、ヒラリー・クリントン前長官は、「アジア回帰」のオリジナル版を発表しました。Foreign Policy誌の記事で、クリントンは米国の新しいアジア戦略の6つの行動基本を挙げました。二国間同盟の強化、中国を含む新興勢力との実務的協力の深化、地域の多国間機構への関与、広範な軍事的プレゼンスの強化、民主主義と人権の促進です。

ケリー氏の再定義は、クリントンのものと、いくつかの重要な点で異なっていました。特に、リバランスの経済的側面(特にTPP)が前面に出されていました。これは、単に政治的ジェスチャーである可能性もありました。当時TPP交渉は行き詰まっていました。しかし、ケリー氏の再定義は、「アジア回帰」に対して中国から頻繁に向けられる、「同盟・軍事偏重」との批判に対応するものでした。

ケリー氏の新しい定義では、クリントンが重視していたアジア回帰の軍事面は、見当たりませんでした。当時オバマ政権は、アジア政策において、軍事から経済・外交問題に、徐々に焦点を移していました。これは、一つには、当時ISISとの戦いやウクライナ危機に対応しなければならないという必要性から来るものでした。

しかし、リバランスの軍事面の重要性を引き下げる決定は、意図的な選択でもあったでしょう。リバランスにおいて、経済面に焦点を当てることは、「対中封じ込めである」との中国の不満の根拠を小さくすることが予想されました。気候変動対策をリバランスの課題に加えることは、米中が「アジア回帰」の枠組みの中で協力する余地を与えることになりました。それは元来の定義からは抜けていたことでした。

クリントンの6つの目標のうち、3つが中国に関することである。ケリーの再定義では、4つの目標全てが、中国との共通の土俵を提供し得る。もちろん、これらの目標を追求するために米国の戦略を実行する際は、中国の国益と衝突が生じるであろう。必要性からであれ、外交的配慮からであれ、オバマ政権は、「アジア・リバランス」の論争的な側面を目立たなくさせた、と指摘しています。
出典:Shannon Tiezzi,“So Long Deployment, Hello Employment: Redefining the Rebalance to Asia”(The Diplomat, November 6,2014)
http://thediplomat.com/2014/11/so-long-deployment-hello-employment-redefining-the-rebalance-to-asia/
ケリー当時国務長官は、ジョンズホプキンス大学のSAISで行った米中関係に関する演説において、米中関係の強化がリバランス戦略の鍵になる要素であることに疑いの余地は無いとして、「今日の世界において、最も重要なのは米中関係であるということだ。米中関係が21世紀の姿を決める大きな要因になる」と述べていました。

クリントン国務長官の退任以降、米国のアジア回帰が変質していることがしばしば指摘されていましたが、ケリーが演説で提示した4つの柱は、改めてそのことを示していました。

オバマ政権が、中国を刺激しないよう、事実上の「中国封じ込め」としてクリントンが提示したアジア回帰を変容させた、という分析は、その通りでしょう。当時のオバマ政権が言う「アジア重視」は、もはや「中国重視」であると言っても過言ではなかったように思います。ケリー氏が4つの柱の一つとして挙げている気候変動対策については、早速、11月の米中首脳会談で、両国の削減目標で合意に達し、世界の耳目を集めました。

ケリー氏の新定義は、TPPをアジア回帰の中心に位置付けていました。TPPがアジア回帰の中心というのは言い過ぎですが、重要な構成要素であることには違いなく、TPPが無事に締結されるに越したことはありませんでした。この点は、共和党が両院で多数を占めた議会とオバマ政権との数少ない一致点でした。しかし、後にトランプ政権はTPPから離脱しました。そうして、日本が旗振り役となり、米国抜きのTPPが成立しました。

そうして、結局オバマ政権がアジア回帰を再々定義してクリントンのオリジナル版に戻することはありませんでした。米国のアジア回帰の空洞化は、トランプ政権が成立するまで、続きました。

バイデン政権と中国の習近平指導部の外交トップによる初めての対面での会談がアラスカ州で行われ、米中双方の『プロパガンダ合戦』になりましたが、中国側に言われ続けたブリンケン氏の『外交素人臭さ』もあらわになりました。

ブリンケン米国務長官(右)は先月18日、中国の外交担当トップ、楊潔篪(ヤン・ジエチー)
共産党政治局員(左)とアラスカ州で会談した

早速、米共和党から『対中国で弱腰だ』と批判されています。バイデン政権は表向きは中国と『競争的な姿勢』を見せていますが、本音は違うようです。

いずれ、気候変動対策の大統領特使になった『親中派』のジョン・ケリー元国務長官が中心に出て、対中宥和を打ち出す可能性はかなり高いです。日本としてしては、要注意です。

昨日の記事では、温暖化について以下のように述べました。
温暖化は中国にとっての格好の隠れ蓑になるかもしれません。今の中国は昨日も述べたように失業者が2億人ともされています。そうなると、消費活動は停滞し、産業活動も停滞するはずです。にもかかわらず、中国は昨年の経済成長は2.3%であり、奇跡的なV字回復をしたことにしています。

経済が停滞した、中国では今後温暖化目標など、何もしなくても達成できる可能性が大きいです。しかし、習近平は中国の努力によって、達成したように見せかけるでしょう。

中国は、故がなく、経済成長2.3%の数字を出すはずはありません。習政権は、これを前面に打ち出し、中国が温暖化で大成功したように見せかけるつもりかもしれません。

この大成功をケリー氏が利用して、中国への宥和政策への転換をはかる可能性はかなり高いです。

これに対して、QUAD諸国やその他の米同盟国は、今から中国のGDPの嘘をエビデンスとともに告発できる体制を整え、ケリーが対中国宥和政策に踏み切ろうとした場合、中国の温暖化目標達成は出鱈目であることを白日のもとにさらし、米国の対中国宥和政策は全くの間違いであることを糾弾すべきです。

そうして、昨日も述べたように、QUAD諸国は、「毒薬条項」を盛り込んででも、中国の政治的介入から守り抜くべきです。あるいは、ケリー氏が明らかに、中国に人権を売り渡した場合には、ケリー氏をQUAD諸国特に日・豪・印はペルソナ・ノン・グラータに指定するくらいのことをすべきです。それくらいのショックを与えなければ、バイデンは覚醒しないでしょう。

これには、特に外交の専門家の方々などは、そんなことができるはずがないと言う方もいらっしゃるかもしませんが、QUAD所属国のほとんどの国には、あらゆる形で中国は深く浸透していることを考えると、生半可なことではこれに対応できません。

そうでないと、世界はまたとんでもないことになり、米中協同による中国寄りの新世界秩序が形成されることになりかねません。そうして、他国を無視してG2で世界新秩序が作られるようになれば、それこそ目もあたられらません。世界は闇につつまれることになります。

世界がオバマ政権のときのように、米国がグタグタになり、世界が大混乱するようなことだけは、避けるべきです。

そのようなことになる前に、米国共和党、民主党主流派と良心派が、このようになることを阻止していただきたいものです。

QUAD諸国は、米国が中国に対して宥和的になることだけは、二重三重の備え、いや、五重六重の備えをしてこれを絶対防ぐべきです。

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2021年3月31日水曜日

日米豪印クワッドが国際社会に示した意義―【私の論評】QUAD協定には「毒薬条項」を盛り込んででも、中国の政治的介入から守り抜くべき(゚д゚)!

日米豪印クワッドが国際社会に示した意義

岡崎研究所

 日米豪印4カ国(クワッド)の首脳、菅義偉総理、ジョー・バイデン米大統領、スコット・モリソン豪首相、ナレンダラ・モディ印首相は、3月12日に初の四カ国首脳会議をオンライン形式で開催した。翌日3月13日付のワシントン・ポスト紙には、4首脳が連名で投稿し、インド太平洋地域の自由と繁栄を連携して守ると国際社会に宣言した。


 バイデン大統領は政権発足直後から、外交に積極的に取り組んでいる。バイデン・ドクトリンとでも呼ぶべき 1)米国主導での国際社会への関与、2)民主主義など政治価値の推進、3)新型コロナウイルス、気候変動など国際的課題への取り組み、4)同盟国との連携及び国際機関への関与、5)政策専門家の重用などの、外交指針も明示した。

 政権発足前には、米国民の新型コロナウイルス感染への対応、米経済活動の再開と雇用の創出、国民の分断と対立の解消など国内政策に集中すると思われたが、予想以上に外交に注力している。トランプ前大統領の4年間で混乱し脆弱化した、リベラルな国際秩序を重視する国々には好感すべき滑り出しだ。

 ワシントン・ポスト紙に寄せられた論説では、日米豪印の首脳が連名でインド太平洋地域にクワッドとして取り組む宣言を行った。クワッドによる 1)民主主義的価値を基盤とした協働、2)新型コロナウイルスと気候変動への取り組み、3)インド太平洋地域の平和と繁栄の促進、4)東南アジア諸国、太平洋島嶼国、インド洋地域との連携が柱である。

 米国がクワッドを主導して、これまで概念的だった「自由で開かれたインド太平洋構想」に、具体的に四カ国が共有する行動指針を国際社会に示した意義は大きい。さらに、年内にはオンライン形式ではなく、実際に首脳が集ってクワッド首脳会合を目指すとしており、喫緊の課題に迅速に対応するという決意も伝わってくる。

 ワシントン・ポスト紙の論説は、スマトラ沖地震、新型コロナウイルス感染、気候変動など、インド太平洋全域に共通の危機への対応をクワッドの出発点、そして存在意義として打ち出している。共通の危機に対する含意の背景には中国の国内外における行動への強い警戒感があるが、中国を名指しすることはせず、中国も協力しやすい人道援助や災害救済を柱として書いている。中国と米国のどちらかを選択することを回避したい地域諸国、中でも東南アジア諸国への配慮が示されているのだろう。バイデン政権ではキャンベル・インド太平洋調整官が論説の作成に関与していると言われるが、北東アジア政策に加えて東南アジア政策も意識してきた人物であり、クワッドの鍵を握る存在なのだろう。

 ただ、政策の構築と遂行は全く別である。クワッドはインド太平洋全域の平和と繁栄のために協働することを宣言したが、「悪魔は細部に宿る」の通りで、新型コロナウイルスのワクチンで成果を出せるか、中国に対して東南アジア諸国も抱き込みながら対応できるかが、四カ国首脳に問われている。日本には、菅首相の4月の訪米でバイデン大統領と共に「インド太平洋構想」の強いメッセージを打ち出すことが期待されている。日米同盟を基軸に、この地域に具体的にどのような貢献ができるのか、域内諸国も注視する日米首脳会談となろう。

【私の論評】QUAD協定には「毒薬条項」を盛り込んででも、中国の政治的介入から守り抜け(゚д゚)!

インド太平洋において日米から中核的な役割を期待されているのが、日米豪印Quadです。Quad各国は、豪州に対する経済強制をはじめ、それぞれが中国と深刻な問題を抱えています。Quadの対話レベルは、トランプ政権により外相級に、バイデン政権により首脳級へと一貫して引き上げられており、その将来性には大きな期待が集まっています。

          QUADは12日(現地時間)、初の首脳会議をオンラインで行った。 シドニーから
         参加するオーストラリアのスコット・モリソン首相(左)。

今回のオンラインサミットでは、ワクチン、重要・新興技術、気候変動についての作業部会の立ち上げという成果も上がりました。だが協力の制度化はこれからが本番といえるでしょう。

この地域の平和と安定を維持する上で依然として最も重要なのは、抑止力と対処力を兼ね備えた日米同盟です。バイデン政権はこうした考えを明らかにするため、ブリンケン国務長官、オースティン国防長官の初の外遊先として東京を選びました。

日米2+2での最大の注目点は、中国を名指しして批判したことです。前回2+2では「地政学的競争及び威圧的試み」といった表現が用いられました。これはもちろん中国を念頭に置いてのことですが、中国に対する姿勢を硬化させていたトランプ政権下での開催だったにもかかわらず、中国の名指しは回避されました。今回の言及で、バイデン政権の中国に対する強い危機感が反映された格好です。

日米豪印サミット、米韓2+2では中国への直接の言及が避けられたことから、対中脅威認識を日本が米国と高度に共有していることが示されました。尖閣諸島での領海侵入や海警法制定をはじめ、政治的、経済的、軍事的及び技術的な課題を引き起こしているのは中国であり、日本は自らの戦略上の判断として名指しでの中国批判に踏み切ったのです。

一方で米国は、日本防衛の手段として核能力が含まれると改めて表明しましたが、これも中国による現状変更の試みに対する危機感の表れです。

加えて台湾海峡の平和と安定の重要性が盛り込まれました。これは、6年以内の台湾侵攻の可能性という、インド太平洋軍のデービッドソン司令官による連邦議会上院軍事委員会での証言と軌を一にしているといえます。

インド太平洋軍のデービッドソン司令官


そうして日本の報道などでは見落とされがちですが、重要な意味を帯びたのがオースティン国防長官のインド訪問でした。インドは日、豪、韓国とは異なり、米国の条約上の同盟国ではありません。

しかしながら、国防長官が政権発足後の早い段階でインドを訪問したのは、中国についての安全保障上の懸念を米印が共有しているからです。インドにとっては中国との国境紛争で45年ぶりに死者が出たことが大きかったようです。

インド太平洋の重要な同盟国及びパートナーとの連携を深化させた上で、バイデン政権が臨んだのが中国との協議でした。この協議が行われたアラスカ州アンカレッジで、ブリンケン長官にサリヴァン大統領補佐官が合流したのですが、米中会談の幕開けは大荒れでした。

会議中に楊潔篪中国共産党政治局委員がふるった長広舌は異常だったと言わざるを得ないです。そしてアラスカから帰国した王毅外交部長は、広西桂林でラブロフ外相を迎え、中露の結束と米国への対抗を鮮明にしました。

一連の外交日程は、菅義偉総理のアメリカ訪問で山場を迎えることになります。菅総理はバイデン大統領と対面で会談する最初の外国首脳となり、日米同盟の重要性が改めて示されることとなるでしょう。

日米の戦略レベルでの足並みはほとんど一致していますが、例えばウイグル問題へのスタンスについての調整、すなわち日本によるより強い姿勢が必要となるでしょう。だが急激に高まる中国の脅威を考えれば、調整範囲は全体からみれば若干にとどまると言って差し支えないでしょう。

大いに議論を深めるべきは、日米同盟の将来像についてです。それは駐留経費負担といった同盟管理の文脈を越え、中国の脅威を見据えながらインド太平洋及び世界全体を視野に入れたものでなければならないです。

デービッドソン司令官は上院軍事委員会で、米軍の量的優位だけでなく、いくつかの領域では質的優位も崩れつつあると証言しており、対中抑止力をいかに維持するかが重要かつ喫緊の課題となっています。沖縄を含む第一列島線上でのミサイル網の構築は、待ったなしの状況です。

一方でプレスの前での緊迫した応酬にもかかわらず、バイデン政権は気候変動での米中協力を引き続き模索しています。もそも、中国では温暖化などの前に、人権が侵害されているのは明らかであり、人権侵害をしたまま、温暖化に取りくんだとしても、無意味です。

温暖化は中国にとっての格好の隠れ蓑になるかもしれません。今の中国は昨日も述べたように失業者が2億人ともされています。そうなると、消費活動は停滞し、産業活動も停滞するはずです。にもかかわらず、中国は昨年の経済成長は2.3%であり、奇跡的なV字回復をしたことにしています。

経済が停滞した、中国では今後温暖化目標など、何もしなくても達成できる可能性が大きいです。しかし、習近平は中国の努力によって、達成したように見せかけるでしょう。

バイデン外交は始動したばかりです。そうして、ジョー・バイデンが中国と深い関係を持ち、息子のハンター・バイデンが中国に買収されてしまっているのは紛れもない事実です。

現在ジョー・バイデンの登場によって習近平は、政治的には有利な立場に立っているのは事実です。

習近平がこれを、利用するのは間違いありません。温暖化で協力したみかえりに、バイデンから譲歩を得ようと画策するのは目にみえています。

上の記事にもあるように、政策の構築と遂行は全く別です。クワッドはインド太平洋全域の平和と繁栄のために協働することを宣言したのですが、「悪魔は細部に宿る」の通りで、バイデンが中国に譲歩してしまう危険性は無視できません。


そうならないように、日豪印は、米国を牽制するべきです。それも、努力目標などではなく、制度的に米国が中国に譲歩できない仕組みをつくるべきです。

2018年米国がトランプ政権下で、メキシコやカナダと合意した新たな自由貿易協定に、中国との自由貿易協定を厳しく制限するいわゆる「毒薬条項」が盛り込まれ、今後の日米交渉にも影響が出かねないとして、注目を集めました。

毒リンゴを食べたら死んでしまいます。同じように“毒薬条項”とは、その条項を発動すれば、契約そのものをご破算にすることが出来るというものです。主に企業の敵対的な買収を防ぐための対抗策などにも使われてきた言葉です。

米国は、NAFTA=北米自由貿易協定の見直しを求めて交渉した結果、2018年10月までにメキシコやカナダと新たな合意を結びました。米国通商代表部が公表したその条文案の中に、以下のような文言が盛り込まれていました。

3か国のうち1か国が「“市場経済でない国”と自由貿易協定を発効させれば」他の2か国は「この協定を“打ち切ることも出来る”」というのです。

“市場経済でない国”とは、ずばり中国のことです。当時のロス商務長官は、中国による知的財産権の侵害など、不公正な慣行を正当化するような“抜け道”を塞ぐのが目的だと言っています。

要は「米国の知らないところで米国の意に反する合意を中国と結ぶな!」そう釘を刺したかたちです。当然中国は反発しました。そして当時問題とされたのは、その後の日本と交渉する貿易協定にも同じような条項を取り入れたいと、トランプ政権が考えているとされていたことです。

仮に日米協定にも、こうした「毒薬条項」が盛り込まれたら、どうなるのかと懸念されたのです。当時日本が中国を含めて交渉している日中韓FTA=自由貿易協定やRCEP=東アジア包括的経済連携協定にも影響が出かねないともされていました。

最悪の場合、日本企業は、米国市場をとるか?それとも中国市場をとるか?いわば二者択一を迫られてしまうことになるかもしれないと危惧されていました。

そうした厳しい事態に追い込まれないためにも、“悪魔は細部に宿る”そう地米国の格言に言うとおり、その後の日米交渉には、細心の注意が必要となるといわれていました。

幸いなことに、その後日米協定に「毒薬条項」が盛り込まれることはありませんでした。これは、日本がインド・太平洋地域の安全保障に関しては、当時の安倍総理がその危機言い始め、QUADに関しても、安倍総理が最初に提唱したことなどもあり、さらには当時の安倍総理が当時のトランプ大統領と良い関係を構築したことになどにもよるでしょう。

「毒薬条項」とまではいかなくとも、QUADにおいても、いずれの国であっても、他国にみえないところで、中国に譲歩すれば、何らかの罰則が与えられるなどの、仕組みは構築しておくべきと思います。

そうすることにより、米国のバイデン政権はもとより、日本の自民党の二階氏などの親中派、媚中派を牽制することもできますし、インドやオーストラリアにも、親中派は存在するため、それらがいつ息を吹き返し、中国に譲歩するかなどのことは、ありえないことではないです。

いわゆる、QUADに属する国々の親中派・媚中派が中国に利するようなことをした場合、彼らの資産を凍結するとか、公職追放とか、QUAD諸国ならびに、QUADに親和的な国々に入国できなくするなどの措置を取るなどのことが考えられます。

さらには、これらの人をそそのかした中国人の資産凍結、QUAD諸国ならびにこれに親和的な国々に入国できなくするなどの措置もとれば完璧だと思います。

いずれ、QUADはそこまでしても、これに属する国々の安全保障を守り抜き、中国と対峙していくべきものと思います。

こんなことを言うと、人非人のように思われるかもしれませんが、それだけ中国各国への浸透は思いの外深いですし、現在でも中国夢という虚妄に浸り、中共のプロパガンダを信じ込み、中国で大金儲けをしようと考える人は多いです。

そうではなくても、中共のハニートラップにかかってしまい、頭ではわかっていても、下半身がいうことをきかず、中共のいいなりになる人も多いです。

そんなことで、世界の秩序が中共に都合良い良いに作り変えられてしまってはたまったものではありません。QUAD諸国は結束を固めるためにも、何らかの制度を導入すべきでしょう。

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