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岡崎研究所
侵攻については、多くの社説、論説が各紙に出されているが、2月24日付でニューヨーク・タイムズ紙に掲載された、米外交評議会のリチャード・ハース会長の論説‘The West Must Show Putin How Wrong He Is to Choose War’が納得できる。ハースの言う通り、西側はプーチンに如何に戦争を選択したことが間違っているかを示さなければならない。
今度のプーチンのやり方は到底許されるものではなく、国連憲章にも乱暴に違反したことであり、プーチンの狙い通りになることは阻止する必要がある。そのためには、長期戦も覚悟してやるべきことをやっていくということだろう。
国際秩序や平和維持に責任を有する国連常任理事国であるロシアが武力侵攻という蛮行を行ったのは極めて重大なことである。国際連盟が第2次大戦の発生を防げず崩壊したように、国際連合も崩壊の瀬戸際に立たされているように思える。いずれにせよ、ロシアには国際連合安全保障理事会の常任理事国たる資格はない。こういう政治面でのロシア排除も考えていくべきであろう。
今回の侵攻は、ロシア自身にとって、長期的に大きなマイナスになり得る。侵攻前に書かれた記事だが、エコノミスト誌2月19日号の社説‘Whether he invades Ukraine or backs down, Putin has harmed Russia’は参考になる。
同社説によれば、プーチンは戦術的利益を得たとしても、長期的、戦略的には負けている、と指摘する。具体的には、「(西側の制裁を補うため)中国への依存を強めれば、ロシアを中国のジュニア・パートナーにしてしまうだろう。中露の専制主義者の同盟はロシア国内に心理的コストをもたらす」、「プーチンは治安当局者への依存を深め、ロシア国家の他の柱である自由な資本家とテクノクラートの敗北になるだろう」、「停滞と憤激が反対派に蓄積され、それに対しより残酷な弾圧が加えられるだろう」などと指摘する。
そして、「西側は活性化し、ロシアのガスに背を向ける決心をするだろう。ウクライナはロシアにとってお金と人命を費やす問題になり、プーチンはパリア(のけ者)になろう。ロシア自身は短期的には制裁で、その後はアウタルキー(自給自足経済)と弾圧で損なわれるだろう」と予測する。
現実となりつつある「長期的なマイナス」
西側、特に北大西洋条約機構(NATO)、先進7カ国(G7)の団結、ウクライナ人の反発、スウェーデンやフィンランドのNATO接近などの動き、煮え切らなかったドイツの国防政策転換などをみれば、エコノミスト誌の社説の言う通りであろう。ロシアは核兵器保有国であるが、核兵器はそう簡単に使える兵器ではない。ロシアの経済は国際通貨基金(IMF)統計の国内総生産(GDP)では韓国以下である。
カール・ビルト元スウェーデン首相は、プーチンは「insane(気違い沙汰)」なことをやっていると言っている。プーチンが戦略的に考え、今の自分のアプローチは色々な欠点があることに気づき、現実的に力関係を冷静に考え、適切な判断に至ることが望まれる。
なお、ロシア人がウクライナとの戦争を支持する気持ちはほとんどなく、ウクライナ戦争では、クリミア奪回後のプーチン支持率の急上昇のようなことにはならないと大方の人が考えている模様である。
英国軍の国防参謀総長は「ウクライナに侵攻しているロシア軍の主要戦力が打撃を受けていることから、ウラジーミル・プーチン ロシア大統領がウクライナ戦争で敗北する可能性もある」と分析しました。
6日(現地時間)英国日刊紙“ザ・タイムズ”などによると、英国のトニー・ラダキン国防参謀総長はこの日、英国BBC放送に出演し「計画通りに進んでいないウクライナへの侵攻により、(プーチン大統領は)自らロシアを混乱の中へと追い込んだ」とし「ロシアの主要戦力がすでにウクライナから深刻なダメージを受けていることから、ウクライナを制圧するのはもう必然だとは言えない状況になった」と説明しました。英国のトニー・ラダキン国防参謀総長 |
プーチン露大統領 |
ウクライナ領土防衛軍の民兵によって捕虜となったロシア兵 |