2022年5月1日日曜日

日本には憲法9条があるから、自衛隊は違憲である…そんな「憲法解釈」は根底から間違っている―【私の論評】集団的自衛権の行使を「限定」せず、現時点で備えうるすべての機能を備えられるように、憲法解釈を是正すべき(゚д゚)!

日本には憲法9条があるから、自衛隊は違憲である…そんな「憲法解釈」は根底から間違っている

篠田 英朗

 ロシアのウクライナ侵攻に対し、日本はどのような態度をとるべきなのか。東京外国語大学の篠田英朗教授は「日本国憲法は、国際協調主義を掲げており、国際法に沿って行動する『軍隊』の存在を否定していない。そうした前提のうえで、日本も国際秩序を維持するために努力するべきだ」という――。(後編/全2回)

■憲法9条1項の文言は、素直に国際法に調和している

 (前編から続く)日本国憲法は、前文において、「恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想」を自覚して、「平和を愛する諸国民の公正(justice)と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意」し、「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたい」とうたっている。

 そして「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認」して、国際協調主義の「政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務」だという信念を披露している。

 「平和を愛する諸国民(peace-loving peoples)」は、1940年大西洋憲章から1945年国連憲章に至るまで、一貫して連合国(United Nations)のことを指す概念として用いられていた。したがってここで「平和を愛する諸国民の公正(justice)と信義に信頼」するとは、アメリカを筆頭国とする連合国が作った国際法体系を信頼し、それに沿った安全保障政策をとっていくという趣旨であり、つまり日米安全保障条約に裏付けられた将来のサンフランシスコ講和条約を見通したものだった。(参考記事:「英語で読めばわかる『憲法解釈』の欺瞞」)

 日本国憲法9条の冒頭の「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」、という文言は、前文の内容を再強調する意図を持つものであった。1928年の不戦条約と、1945年国連憲章の文言を切り貼りしただけと言ってもよい、憲法9条1項の文言は、素直に国際法に調和しているものとして読むべきである。国際法に挑戦して、侵略に正当に対抗するために用意されている自衛権を否定するものだ、と読むことは、不可能だ。

■憲法9条が定めたのは「大日本帝国軍の解体」である

 憲法9条2項は、「戦力不保持」と「交戦権否認」を定めている。ここで「戦力」は、もともとは「war potential」という連合国が使用していた行政用語であり、大日本帝国軍の解体に伴って接収対象となった違法な「戦争」をする潜在力のことである。すでに1項で国際法に沿って「戦争」の違法が定められているので、2項でその潜在力の保持も否定するのは、全く当然のことである。

 つまり、憲法9条が、ポツダム宣言受諾に沿って、大日本帝国軍を解体する国内法上の根拠を提供している、ということである。将来にわたって国際法において合法である自衛権行使の手段もついでに保持しない、という意表を突いた含意は、認められない。

 「国の交戦権(the right of belligerency of the state)」という概念は、実際には国際法において存在しない。それを「認めない」と宣言したところで、いわば「幽霊の存在を認めない」と宣言するのと同じなので、現実の世界には何も変化をもたらさない。単に「国際法を遵守する」と宣言することと同じである。

■9条が否定した「交戦権」とは何か

 それではなぜあえて「交戦権」なるものの存在を否認するかというと、戦中に権威ある戦時国際法のマニュアルを作っていた信夫淳平らが、大日本帝国憲法の「統帥権」規定などを根拠に、主権者は自由に宣戦布告をして戦争を行う「交戦権」を持っているなどと主張していたからである。日本も加入していた国際連盟規約および不戦条約に反した考え方であったが、真珠湾攻撃後の日本における軍部主導の政治状況の下では、出版を目指すのであればとらざるをえない立場であった。

 憲法9条2項が否定しているのは、戦中の日本に存在していた、国際法を否定するこの「交戦権」なる概念である。それによって憲法は、国際法遵守の態度をよりいっそう明確にする。憲法9条に、国際法に留保を付す意図はない。

 素直に日本国憲法典を読めば、憲法が国際法に合致したものであることは、自明である。そもそも日本を、国際法を遵守する国に生まれ変わらせるために制定されたのが、日本国憲法である。その背景と趣旨を考えれば、憲法が国際法を否定するはずはないのは当然であり、留保の要素もあるはずがない。

■憲法学者の陰謀論めいた「絶対平和主義」説

 ところがほとんど陰謀論者めいた憲法学者のイデオロギー的解釈によって、本来の憲法の国際協調主義的は埋没させられることになった。

 連合国軍総司令部(GHQ)総司令官であったダグラス・マッカーサーは、回顧録において、次のように述懐した。「第九条は、国家の安全を維持するため、あらゆる必要な措置をとることをさまたげていない。……第九条は、ただ全く日本の侵略行為の除去だけを目指している。私は、憲法採択の際、そのことを言明した。」

 ところが憲法学者は、マッカーサーは冷戦の勃発によって態度を変えたのだ、と主張する。当初は、国際法から乖離(かいり)した絶対平和主義を標榜していたはずだ、というのである。その根拠は、いわゆる「マッカーサー・ノート」と呼ばれる憲法草案起草を部下に命じた際の走り書きだけである。

 しかし、単なる走り書きの内部メモの文言を拡大解釈させて憲法解釈の指針とまでしてしまうのは、全く不適切である。マッカーサーは、部下たちが国際法に合致するように文言を整備した憲法草案に、何も異議を唱えていない。

 憲法学者は、憲法9条の冒頭に国際協調主義の前文の趣旨を確認する文言を挿入した芦田均(憲法改正小委員会の委員長)を、憲法9条を捻(ね)じ曲げる姑息(こそく)な行動をとった人物だと非難したうえ、その画策は憲法学通説によって打ち破られたといった「物語」も広めている。

 だが、憲法そのものの一貫した趣旨を明確にしようとした芦田が、なぜ非難されなければならないのか。根拠のない解釈を「憲法学者の大多数の意見だ」という理由で押し付けようとする、憲法学者のほうが横暴なのではないか。

■日本国憲法は国際法上の自衛権を否定したのか

 1946年に憲法案が審議された際、共産党の野坂参三議員が、新憲法は「自衛戦争」を認めないのか、という質問をしたのは有名である。これに対して当時首相であった吉田茂は、次のように答えた。

 「私は斯(か)くの如きことを認むることが有害であると思ふのであります(拍手)近年の戦争は多く国家防衛権の名に於(おい)て行はれたることは顕著なる事実であります、故に正当防衛権を認むることが偶々(たまたま)戦争を誘発する所以(ゆえん)であると思ふのであります」(第90回帝国議会 衆議院 本会議 第8号 昭和21年6月28日)

 これをもって憲法学者は、吉田は国際法上の自衛権を否定し、絶対平和主義をとっていた、などと主張する。「自分は国際法上の自衛権を否定したことはない」という後の吉田の説明を、憲法学者は否定する。

 だがこれは、国際法の概念構成を無視した、悪質で不当な糾弾である。そもそも質問者の野坂が、憲法は「自衛戦争」を認めているのか、と聞いた時点で、戦前の日本の軍部が自己正当化の道具として用いたあの「自衛戦争」を、憲法は認めているのかという問いになってしまっている。

 戦前の軍部が主張した「自衛戦争」なるものを、日本国憲法は国際法の考え方に沿って、認めない。吉田の回答はごく原則的なもので、何らおかしなところがない。しかしそれは国際法上の自衛権の否定とは、全く違う。

 戦前・戦中の日本の軍部が主張した「国家防衛権」や「国家の正当防衛権」なるものは、いずれも国際法に存在しない概念だ。「交戦権」や「自衛戦争」も同様である。吉田が否定したのは、国際法に存在しないそうした概念を振り回し、現代国際法では認められない行為が許されるかのような詭弁(きべん)を使うことであって、国際法上の自衛権を否定したわけではない。

 そもそも国際法では認められていない概念を、ドイツ国法学の擬人法的な「国家は生きる有機体で、自然人と同じような権利義務の主体だ」といった考え方で強引に採用しようとするから、「自衛戦争」といった奇妙な概念を認める否か、という押し問答が生まれる。混乱は、戦前にプロイセンに留学した者たちが学界を寡占的に支配し、ドイツ国法学に沿った憲法理論があたかも人類普遍の真理であるかのように思い込みがちだったところから、生まれてきている。つまり学者たちの陰謀あるいは誤解の所産でしかないのである(参考記事:「東大名誉教授が掲げる『憲法学者最強説』のウソ」)

■国際法概念に沿った憲法解釈や改憲を

 日本国憲法は、国際法を遵守することを求めている。したがって憲法解釈も、国際法に沿って素直に行えばよい。そうすれば、国際法にも憲法にも存在しない奇異な概念から成り立つ「『交戦権』や『自衛戦争』を日本国憲法は認めているか否か」といった類いの問いを、深刻に受け止める必要もなくなってくる。「戦争は一般的に違法であり、そのため対抗措置としての自衛権の行使は合法である」、という国際法の原則だけを淡々と述べ、それに沿って憲法を理解すれば十分だということになってくる。

 ウクライナにおける具体的かつ深刻な国際的な危機を目撃して、今や日本社会にも、憲法学通説の憲法解釈では現実に対応できないという認識が広がっている。それは憲法典がおかしいからではない。冷戦時代の左右のイデオロギー対立の構図の中で、素直な憲法解釈がないがしろにされたことが、諸悪の根源なのである。今こそ、国際法に沿った、素直な憲法の理解を確立したい。

 イデオロギー対立の結果、憲法解釈が混乱してきている事情はある。それを改善するには、憲法改正を行うべきだということであれば、それはそれで歓迎である。例えば9条3項を新設し、国際法に沿って行動する「軍隊」が、憲法9条の規定にも憲法全体の理念にも反していないことを明らかにするのは、適切だろう。

 いつまでも冷戦時代のイデオロギー対立にとらわれ、素直に憲法を理解することを恐れたままでは、日本の安全保障政策および国家としての体系性は、いよいよ近い将来に壊れていく。現実を直視すべきだ。

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篠田 英朗(しのだ・ひであき)
東京外国語大学教授
1968年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大学大学院政治学研究科修士課程修了、ロンドン大学(LSE)大学院にて国際関係学Ph.D取得。専門は国際関係論、平和構築学。著書に『国際紛争を読み解く五つの視座 現代世界の「戦争の構造」』(講談社選書メチエ)、『集団的自衛権の思想史――憲法九条と日米安保』(風行社)、『ほんとうの憲法―戦後日本憲法学批判』(ちくま新書)など。
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【私の論評】まずは、集団的自衛権の行使を「限定」せず、現時点で備えうるすべての機能を備えられるように、憲法解釈を是正すべき(゚д゚)!

上の記事の前編は以下のリンクからご覧になれます。


わたし自身は、上の論考に近いもの憲法学の京都学派の論考をもとに何度かこのブログに掲載したことがあります。その典型的な記事のリンクを以下に掲載します。
佐々木惣一の「憲法第九条と自衛権」―【私の論評】安保法制=戦争法案としてデモをする人々は、まるで抗日70周年記念軍事パレードをする人民解放軍の若者と同じか?

「戦争したくなくて震える」というキャッチで札幌で挙行された安保法制改正反対のデモ

 これは、安保法制改正の審議が行われていた、2015年7月26日の記事です。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の一部分を掲載します。

私自身は、日本国憲法はGHQ により定められたものであり、日本人の手によるものではないのですが、さすがにいくら当時のGHQが日本の弱体化を図っていて、日本国憲法は彼らの草案によるものではありますが、どう考えでも、自衛のための戦争、戦力保持、交戦権を完全否定しているとは考えられません。
いくら当時のGHQが、コミンテルンのというソ連のスパイに浸透されていたという歴史的事実があるにしても、ソ連にしても、いかなる国であろうと、自衛権まで完璧に否定するような憲法などあり得ないと考えていたし、それが常識だと思います。
当時のソ連としては、国際的紛争の手段として、将来日本が復活して再度強大な軍事力を用いれば、過去には関特演に圧倒され怯えていたソ連もいずれまた脅威に晒されることになる恐れも十分あったので、これは完全に否定したものの、自衛権まではさすがに否定しきれなかったと思います。
自衛権を否定する憲法を草案したとしたら、それは採用されるはずもないという判断というか、そもそもそんなことはあり得ないということで、少なくとも潜在意識中にはそのような観念があったと思います。だからこそ、日本国憲法9条も、佐々木惣一氏の指摘するように、自衛権そのものまで否定するものではないと私は、考えます。

その後、このブログには、日本国憲法は、国連憲章やパリ不戦条約などを前提としたものであり、そのような憲法は日本だけではなく、他の国の憲法にも存在することも掲載したことがあります。 

パリ不戦条約とは、第一次世界大戦後に締結された多国間条約で、国際紛争を解決する手段として、締約国相互で戦争の放棄を行い、紛争は平和的手段により解決することを規定したものです。パリ条約(協定)、パリ不戦条約、ケロッグ=ブリアン条約(協定)とも言います。


当条約には期限や、脱退・破棄・失効条項が予定されていないため、この条約は現在でも有効との論があります。

当条約と類似の著名な主張、各国憲法、国際条約などには以下があります。

●1713年 サン・ピエール『永久平和の草案』(国際法による戦争放棄を主張)

●1791年 フランス憲法(1848年憲法の前文、1946年憲法の前文に復活)
フランス国民は、征服の目的をもって、いかなる戦争をも行うことを放棄し、またいかなる国民の自由に対しても決して武力を行使しない。— 1791年 フランス憲法

●1931年 スペイン憲法(国際紛争を解決する手段としての戦争の放棄)

●1935年 フィリピン憲法(国際紛争を解決する手段としての戦争の放棄)

●1945年 国際連合憲章
いかなる紛争でもその継続が国際の平和及び安全の維持を危くする虞のあるものについては、その当事者は、まず第一に、交渉、審査、仲介、調停、仲裁裁判、司法的解決、地域的機関又は地域的取極の利用その他当事者が選ぶ平和的手段による解決を求めなければならない。— 国際連合憲章第33条 (1945年6月)
●1946年 日本国憲法
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。— 日本国憲法第9条第1項 1946年 
●イタリア共和国憲法
イタリアは、他人民の自由に対する攻撃の手段としての戦争及び国際紛争を解決する手段としての戦争を放棄する(以下略)— イタリア憲法第11条1946年 
●ブラジル憲法

●1947年 東ドイツ憲法

●1949年 西ドイツ憲法
諸国民の平和的共存を阻害するおそれがあり、かつこのような意図でなされた行為、とくに侵略戦争の遂行を準備する行為は、違憲である。これらの行為は処罰される。— ドイツ基本法第26条第1項
以上の国々では、日本を除いてすべて軍隊が存在しますし、日本以外の国で自衛権を放棄している国などありません。こういう現実をみれば、日本だけが軍隊も持てない戦争もできないなどという日本の憲法解釈は単なる錯誤であることがおわかりいただけると思います。

ただ、京都学派の佐々木惣一氏は、1965年に亡くなられていますし、現代的な見地からこの問題に踏み込んだ論考は私には、できませんでしたし、似たようなことは当時から何人かの人たちがしていたのですが、それでも大きな動きになるようなことはありませんでした。

佐々木惣一氏

ただ、ロシアによるウクライナに対する武力侵攻により、憲法問題にも関心が集まり、篠田 英朗の現代的な観点からの、上記のような論考が公表され、まさに我が意を得たりという思いまがします。

今後保守、リベラル・左派を問わず、篠田 英朗のこの論考を無視して論を展開することは許されないと思います。既存の憲法学者らはこれを無視するでしょうが、それは傲慢不遜というものです。

現行憲法下で侵略に抵抗する自衛権の行使は何ら問題がない事は自明といえます。であれば今必要な議論は、本来は戦力によっての日本の自衛力を高め、実際に侵略された時にどう抵抗するかの議論すべきであると考えます。

そうして、保守派の9条改正論議は、リベラル・左派さらには一部の保守派による自衛権の行使に問題ありとする根拠なき誤解、曲解を完璧になくすために、改正するというように展開していくべきではないかと思います。

ただ、現在の日本国憲法は「連合国=国連」を「信頼」しています。国連安全保障理事会の常任理事国であるロシアはもちろん、国連加盟国である北朝鮮も含む、「諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」ことになっているのです。

そうして、これは「国連が定める武力行使禁止一般原則」および集団安全保障や個別的・集団的自衛権の仕組みを信頼して、自分たちの安全と生存を維持する、ということを意味しているのです。

ところが、今回のロシアのウクライナ侵攻によって、「国連が定める武力行使禁止一般原則」は平然と安保理の常任理事国によって破られたのです。

もはや国連の「集団安全保障」が機能していないのです。「個別的・集団的自衛権の仕組み」(日米同盟)が重要性を増すことになりました。

やはり集団的自衛権の行使を「限定」せず、現時点で備えうるすべての機能を備えられるように、憲法解釈を是正する必要があります。それが今回の教訓です。

そうして、憲法改正をするなら、日本には自衛権があることはもとより、集団的自衛権の行使を「限定」しないことをはっきりとさせる内容とすべきです。そうして、これは国連憲章でも認められた独立国の固有の権利であることもはっきりさせるべきです。

それとバイデンが大統領選挙選でヒラリーを応援しているときの応援演説で、「トランプは日本の憲法は米国が作ったことを知らないようだ」と発言していたように、日本国憲法は実質的に米国がつくったものなのですから、これを日本国憲法として国民が認めるかどうかという国民投票によって確認する必要があります。

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2022年4月30日土曜日

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シュレーダー元独首相に批判 プーチン氏友人、ロシアで巨額報酬

シュレーダー氏と韓国人妻

 ドイツのシュレーダー元首相(78)への批判が高まっている。ロシアのプーチン大統領の長年の友人で、ロシア軍によるウクライナ侵攻開始後も、ロシアの複数のエネルギー企業幹部にとどまり巨額報酬を得ているためだ。所属する社会民主党(SPD)からの離党や、シュレーダー氏個人に制裁を科すことを求める声も強まってきた。

 1998~2005年に首相を務めたシュレーダー氏は、プーチン氏の求めに応じ、パイプライン事業「ノルドストリーム」を推進。ドイツが天然ガスの「ロシア依存」を強める契機となった。シュレーダー氏は首相退任後も、同パイプライン運営会社の株主委員会会長や石油大手ロスネフチ取締役会会長など、数々のロシア企業の役員を務め、ロビー活動に協力してきた。ショルツ首相らによるポスト返上の求めにも応じていない。

 シュレーダー氏は23日の米紙ニューヨーク・タイムズのインタビューで、ロシアとの関係を「過ちとは認めない」「過去30年はうまくいってきた」などと強弁。戦争は過ちとしつつ、戦争を終えられる唯一の人物の信を失ってはならないと、プーチン氏との関係を続ける意向を示した。実際に両氏は3月にモスクワで面会したが、成果は何もなく終わったもようだ。

 ウクライナ侵攻後、独連邦議会(下院)内のシュレーダー氏の事務所職員は、長年の側近も含め全員辞任。エスケンSPD党首は、シュレーダー氏のプーチン氏擁護は「全くばかげている」と離党を求めたほか、複数の与野党議員が制裁を科すことを主張。ビルト紙が28日公表した世論調査でも、59%が制裁に賛成した。

【私の論評】シュレーダーだけを悪魔化することなく、メルケルやバイデン等の責任も追求せよ(゚д゚)!

シュレーダーは今日のロシアのウクライナ侵攻の要因の一つを作り出した人物でもあります。

ロシアの前身であるソ連は、冷戦中もずっとウクライナ、ポーランド、ベラルーシなどを経由する陸上パイプラインで西ヨーロッパにガスを供給していたのですが、ソ連崩壊後は、そのパイプラインからウクライナにガスを抜かれるという問題を絶えず抱えていたといいます。

1970年代からウクライナは欧州でも有数の天然ガス産出国であり、まだソ連邦の一部であった75年のピークには、年産651億m³を産出する純輸出地域だったとの記録があります。その後次第に生産量が減少し、2012年ごろには黒海でのガス田を中心に年産120億m³の水準にまで落ち込み、現在ウクライナは天然ガスの純輸入国になっています。

天然ガスが不足してきたこのウクライナとロシアの間には、ソ連邦の一部であったウクライナに旧ソ連が格安でガスを提供していたものの、その後ソ連邦の解体とウクライナの独立に続く西側傾斜を受けて、ロシアが天然ガス価格を大きく引き上げるという確執が始まりました。

その後パイプラインでウクライナを通って欧州に輸出されるロシアの天然ガスを、ウクライナが中間抜き取りしているのではないかという疑惑が起き、ロシアはウクライナを通過するパイプラインのロシアによる管理権を主張したのですが、ウクライナ政府はこれを拒否しました。

ウクライナとロシア間のガスを巡る対立から、ロシアが06年と09年の2度にわたり、ウクライナ向けガス供給を停止したことから、同国を経由するEU向けガス供給も止まることになり国際問題となりました。

14年のクリミア紛争以降、ウクライナはロシアからの直接輸入を止め、ロシアから一旦西欧に輸出されたガスを再輸入するという変則的な形でガスを調達し、一方ロシアはウクライナを迂回して直接西欧にガスを送るパイプライン、ノルドストリーム1,2やトルコストリームを建設して、ウクライナ離れを加速してきたのです。

ただ、2019年に稼働するはずだったこのパイプライン計画には、当初から、1本目の時とは比べ物にならないほどの反発がありました。米国はもちろん、東欧の国々も南欧の国々も、皆、それぞれの理由で反対しました。

しかし、何と言っても一番激しく反対していたのがウクライナでした。これが開通すれば、ウクライナのパイプラインは今度こそ完全に用済みです。それにより、EUにとってのウクライナの存在価値は急低下し、ロシアに軍事的に飲み込まれても、誰も助けてくれない可能性は高いと考えられました。

つまり、ノルドストリーム2は、ウクライナにとって国家の存亡が掛かった案件であったのですが、それをドイツは強引に進めたのです。これによってウクライナのドイツに対する不信感がさらに募ったことは、不思議でも何でもありませんでした。

ロシアからEUへのパイプライン

2014年にはロシアがクリミアを併合しました。しかし、ドイツ政府の親ロシア姿勢は揺らぐことなく、まさに先々月のロシアのウクライナ侵攻まで連綿と続きました。ちなみに、2020年の時点で、ドイツのロシアガスへの依存は55%を超えていました。ノルドストリーム2が運開すれば、それは70%を超える予定でした。

 2019年、しかし、米トランプ政権の実施した強硬な制裁により、ノルドストリーム2の工事は一時ストップしました。ところが20年の5月、新しく大統領となったバイデン氏が5月末にメルケル首相(当時)を訪問し、「プロジェクトはすでにほぼ完成しており、これを妨害するのは米欧関係にとって生産的ではない」という彼の鶴の一声で工事が再開されたのです。 

ただ、バイデン大統領が何と言おうが、米国議会は超党派でパイプラインに反対していたため、この年の夏、ドイツ政府は米国との間で困難な調整を、秘密裏に、しかもウクライナ抜きで続けていたと言われています。 

ところが、それから2年余りで、世界情勢は激変しました。2021年の末には、ロシアの軍事的脅威の膨張のため、ドイツは親ロシア政策を続けることが困難になりました。そして、ついに22年2月22日、ノルドストリーム2の認可手続きの凍結を発表しました。 

すると、その2日後の24日、ロシアはウクライナに攻め込んだ。これにより、ドイツのエネルギー政策は完全に破綻し、米国がかねてより警告していたロシアエネルギーへの過度な依存による安全保障上の問題が現実のものとなったのです。

3月17日、ゼレンスキー大統領はドイツ議会でのオンラインスピーチで、激しい口調でドイツの対ロシア政策を責めました。ドイツの議員たちは自分の耳が信じられなかったに違いない。この小国の大統領に罵倒されながら、しかし最後には皆が立ち上がって拍手をしていたのは少々滑稽にさえ見えました。 

ゼレンスキー大統領のドイツ攻撃はそれだけではない。ブチャで大量虐殺が行われたという報道があった後、4月4日に現地を視察した氏は、こう言いました。

 「私はメルケル氏とサルコジ氏をブチャに招待する。ロシアに対する14年間もの譲歩が、我々をどこへ導いたかを見てもらうために」 

その日、社民党のシュタインマイヤー大統領は公式に、「これまでの自分のロシアに対する認識、およびノルドストリーム2を継続しようと思っていた態度は間違いであった」と認めた(もっともウクライナに対する謝罪はしていない)。 

大統領にしてみれば、潔いと褒められると思っていたかもしれないですが、そうは問屋がおろしませんでした。

現在のドイツ大統領は、社民党のフランク=ヴァルター・シュタインマイヤー氏。氏は、シュレーダー政権下では官房長官を、また、第1次、第3次メルケル政権では外相を務めました。大統領に就任したのは2017年で、最近2期目の続投が決まりました。ちなみに生粋の親露派です。

 4月12日、前代未聞の出来事が起こった。そのシュタインマイヤー大統領が、ポーランド、およびバルト3国の首脳と共にキーウを訪問しようとしたところ、氏だけがウクライナ側から「来てくれるな」と断られたというのです。

13日、ポーランドとバルト3国の首脳はシュタインマイヤー大統領抜きで予定通りキーウを訪れ、勇ましい記念写真を公表しました。ただシュタインマイヤー氏が同行できないことを残念がる首脳はいないようでした。 

ゼレンスキー大統領に会ったポーランド、およびバルト3国の首脳

一方、ゼレンスキー大統領はドイツに対し、当然のように戦車や対空ミサイルといった兵器の供与を求めています。ウクライナは今や世界の民主主義のために戦っているのであり、民主主義を標榜する国はウクライナを支援しなければならないと言わんばかりです。 

ショルツ首相はこれまで色々な理由をつけて殺傷兵器の供与を拒んできたのですが、今、緑の党のベアボック外相が供与を主張し始めました。社民党よりもさらに平和主義者だった緑の党にしては、驚くべき豹変です。

ウクライナ側は現在、兵器供与の決定権を持つショルツ首相のキーウ訪問を強く要請しているといいます。シュタインマイヤー大統領の件が解決しないうちは、首相のキーウ訪問はあり得ないですが、解決は時間の問題でしょう。 

では、その後、ウクライナ側から正式な招聘があれば、ショルツ首相はキーウへ行き、兵器の供与を軌道に乗せるのでしょうか。 

右手でロシアのエネルギーを輸入し、1日に6億ユーロもの大金を送金しながら、左手でロシア兵を殺傷する兵器をウクライナに供与するというのは、大いなる矛盾ではないでしょうか。しかも、それを理由にロシアがガスを止めれば、ドイツの経済は崩壊するというのにです。 

ショルツ首相をはじめ、ドイツの政治家たちは、これまでにも増してウクライナとの連帯を強調しています。であれば、武器は、そうしてガスはどうするのでしょうか。

ドイツは今、あたかも罠に落ちたかのように、八方塞がりの中で呻吟しています。

その呻吟の最中、冒頭の記事にもあるように、ドイツのシュレーダー元首相への批判が高まっているわけですが、シュレーダー氏はこれは制裁の対象にもなり得ると思います。

ただ、シュレーダー氏だけを悪魔化し、全部の責任を彼だけになすりつけるようなことはすべきではないです。メルケル首相やその他、ロシアにタイルエネルギー依存に拍車をかけた人たちの責任も追求すべきです。そうして、できれはバイデンの責任も追求すべきです。

ドイツにはこういうことに対する前科があります、それは第二次世界大戦の戦争責任をナチスを悪魔化し、全部の責任をナチスになすりつけ、自分たちもその被害者であるという立場をとり、今にいたるまで真摯に反省していません。ドイツの知識人、言論人もそのような立場の人が多いです。

これは、第二次世界大戦の戦争責任を特定の人物や集団の責任とはしなかった、日本とは大きく異なります。日本では、ドイツのような合理化はしませんでした。ただし、誤解を招かないように言いますが、当時日本はナチスドイツのような全体主義国家にあったわけではありません。当時の日本をナチス・ドイツと同列に並べて論じるのは間違いです。無論これは、極東軍事裁判などが不当なものであったこととはまた別の問題です。

そうして今日のドイツの苦悩に、加担したともいえるバイデンは、米国内でシェールオイル・ガスの採掘を再開すれば、それをEUに輸出すれば、EUの窮地を救い、自国のエネルギー価格の高騰を抑えることにもなり、今年秋の中間選挙にも有利になると思うのですが、なぜかこれを実施しません。私は、このブログでも何度か述べてきたように、これは期限つきでも良いから実行すべきと思います。

日本の岸田首相もこれについては煮えきらない態度を続けています。日本はEUのようにロシアにエネルギーを依存していることはないですが、エネルギー価格は高騰しつつあります、夏にには電力不足か懸念されています。

岸田首相とバイデン大統領

日本でも動かせる原発はすぐに稼働すれば、電力不足は解消されますし、エネルギー価格の高騰を抑えることもできます。にもかかわらず、岸田首相はそれをしようとしません。それに、サハリン1,2の事業からの撤退も決めません。

日米両政権とも、このままでは長期政権にはなりえず、短期で終わることになりそうです。

現役の政治家は、選挙によって国民から評価がされることになりますが、シュレーダー氏やメルケル氏など現役ではない元政治家などは、ウクライナ戦争が歴史となった頃には、徹底的に責任を追求すべきです。現在それを行えは、それこそロシアのプロパガンダに加担することになりかねません。

ロシアのウクライナ侵略自体は、プーチンがその責を負わねばならないです。しかし、戦後に客観的にプーチン以外の戦争を助長した人々の責任も問わずに、シュレーダーのみを悪魔化するようなことがあれば、同じことがまた繰り返されることになりかねません。

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2022年4月29日金曜日

鳥インフル「H3N8型」ヒト感染初確認、中国からの入国拒否検討を 当局は「偶発的」「リスク低い」とコメントも…コロナと同じ轍許すな!―【私の論評】岸田政権が続けば、いつか来た道を繰り返し、中国のインバウンド頼みを繰り返すことに(゚д゚)!

 有本香の以読制毒

鳥インフル「H3N8型」ヒト感染初確認、中国からの入国拒否検討を 当局は「偶発的」「リスク低い」とコメントも…コロナと同じ轍許すな!


習近平総書記

  中国で鳥インフルエンザ「H3N8型」の、最初のヒト感染が確認されたという。中国の国家衛生健康委員会が26日、河南省駐馬店市に住む4歳の男児の感染を確認したと発表。同委員会は、同型のヒトへの感染確認は初だが、「偶発的に鳥類からヒトへの感染が起きたもので、大規模流行のリスクは低い」としている。

何しろ中国当局のコメントだ。額面通り受け取って安閑とするわけにもいくまい。「ヒトへの感染は偶発的」「リスクは低い」などの文言を見ると、既視感とともに悪い記憶が蘇る。2020年1月、新型コロナウイルス始まりの頃に、同様の表現が繰り返されたからである。

2年前の同年1月9日、筆者はまさに本コラムで「中国で「謎の肺炎」発生! SARSの惨禍繰り返すな」と書いて警鐘を鳴らした。しかし、この時点で日本政府は完全ノーガード。中国の春節(旧正月)という、インバウンドのかき入れ時を目前に控えていたためだが、政府は頑として通常通りの構えを崩さず、水際対策も後れをとった。

筆者のコラムでの警告から約2週間後の同月23日に、中国湖北省武漢市で前代未聞の「都市封鎖」がなされたところから大騒ぎとなったが、この直前まで日本政府は「特に問題はない」かのようなアナウンスを繰り返していた。

 当時の報道を読み返すと、武漢市封鎖の5日前、加藤勝信厚労相(当時)は「持続的なヒト→ヒト感染の明らかな証拠はない」「新たな発症者が出ているということではない」などと強調、国民に「冷静な対応を呼び掛けた」とある。

 コロナとインフルエンザの違いはあるものの、新たな感染症を侮って同じ轍を踏むことは許されない。今回こそ正確かつ迅速な状況把握と先手先手の対策、その一方、状況変化に応じた柔軟な対応が求められる。

 現状の報道で、「H3N8型」のリスクは低いかのように伝えられているが、そうとも言い切れない。1889~91年に世界的に流行した「ロシア風邪」「アジア風邪」と呼ばれた感染症の例だ。この原因となったウイルスは特定されていないものの、H3N8によるとする報告が後年(2006年)に出されている。

 鳥インフルエンザは渡り鳥などが運ぶため、人や物の出入りだけを厳しくしても意味がないという声がある。しかし、歴史的にみても中国大陸は「流行病の火薬庫」だ。その国からわが国への入国渡航に、特段の注意を要することは言うまでもない。

 現在、新型コロナ対策のために、中国との出入国者は他国と同様に制限されているが、これを開放すべきという声は高い。「観光目的の入国」再開を望む提言もある。経済再生のためには、他国と比べて厳しすぎるわが国の水際対策に変更が必要だという意見は分かる。

 しかし、中国ではいまもロックダウンが行われ、新たな感染症の報告もあったとなれば、しばらく他国よりも厳しい措置で望むしかなかろう。

 私見を言うなら、当面の間、中国からの「入国拒否」も視野に入れるぐらいの厳格な措置を検討すべきだ。「馬鹿な。それでは干上がる業界が出る」という声が上がるだろうが、そんな声は聞き飽きた。中国頼みの金もうけがいかなる結果を生むか。この2年で学ばなかった業界があるなら、それは自ら選んだ「滅びへの道」だと言っておく。

■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。

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【私の論評】岸田政権が続けば、いつか来た道を繰り返し、中国のインバウンド頼みでコロナに厳格に対応できなくなる(゚д゚)!

上の有本氏の記事と似たような記事をこのブログではすでに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

中国の新型コロナ『武漢で感染拡大したおととしに匹敵』 封鎖ラッシュの上海は“ゼロコロナ”強化も―【私の記事】中国でいつ致死率の高いコロナ感染症が爆発してもおかしくない理由。警戒を強めよ(゚д゚)!

この記事では、新しい伝染病ではなく、中国でいつ致死性の高いコロナ感染症が爆発してもおかしくないことを解説しました。ただ、新しい伝染病が発生する可能性も否定できません。それについては、コロナが発生して、日本でも患者が出始めた頃にこのブログに掲載したことがあります。

そうして、その原因はいずれも、有本氏が上の記事に掲載しているように、歴史的にみても中国大陸は「流行病の火薬庫」だということです。

その部分をこの記事から少し長いですが引用します。

現在、世界を震撼(しんかん)させている新型コロナウイルスのような新興感染症が、中国を起点に多数登場しているのはなぜでょうか。背景には、20世紀末から急速に経済成長した中国が、人類が1万年かけて経験した開発や都市化をわずか30年ほどの間で経験したことがあるとみるむきもあります。

ただ、この30年説は正しくはないかもしれません。それは、冒頭の記事で示されている日本軍の雲南省でどんな感染症が発生しているかを示した地図の存在からも明らかです。この地図は、1935年あたりに作成されたものです。

この頃は中国はまだ完全に発展途上国といって良い状況でした。となると、中国発の伝染病が多発する原因は、都市化以前に農業のために森林を切り開き、野生動物を家畜化するといった生態系への働きかけ(開発)によって流行したことが考えられます。そうして、今でもそのようなことが繰り返されている可能性があります。

ただし、今回のコロナに関しては、「世界の工場」となった中国が、国際貿易や人の移動の面でその存在感を高めていることも、新型コロナ感染症をグローバルに拡大させる要因となりました。

流行の中心地となった中国の武漢市や湖北省などでは、大規模なロックダウン(都市封鎖)が行われ、人々の活動を制限して感染症の抑え込みを行いました。流行の中心が欧州や米国に移ると、多くの国で外出制限や学校の休校措置がとられ、世界はなかば鎖国のような状態となりました。

ほぼ同時にこれほど大規模な活動の制限が求められたことは、感染症の歴史においても、経済社会の歩みの中でも初めてのことです。

「疫病史観」を紐解けば、私たちが想像している以上に、感染症が人類の歴史に大きな影響を及ぼしてきたことが理解できます。考えてみると、農業化や工業化、さらに都市化という人類史の基本的なトレンドは、人々が集まって大きく生産や消費を行うことを前提としてきました。

しかし、今回の新興感染症は、私たちがそうした行動をとることを許しません。経済社会を成り立たせている基本的な活動が、感染症流行の要因になっているのです。現在、起きていることは、経済社会のあり方が根本から変わる転換点と後に位置づけられるのかもしれないです。

ただ、現在の先進国の都市では、伝染病の発信源になることはほとんどありません。それだけ、先進国は、上下水道を整えたり、防疫・医療体制を強化してきたのです。

それよりも、同じ一つの国で、奥地では農業のために森林を切り開き、野生動物を家畜化する等といった生態系への働きかけ(開発)によって元々伝染病が流行しやすくなった中国が、20世紀末から急速に経済成長し、沿岸部では人類が1万年かけて経験した開発や都市化をわずか30年ほど成し遂げたことが流行に拍車をかけたといえるでしょう。

まさに、中国は、伝染病の「ゆりかご」と言っても良い状況なのです。

 中国では、現在もコロナ感染症ウイルスが変異を起こして、致死性が高くなることもありえますし、さらに新たな伝染病が発生する可能性も否定できないのです。 

だとすれば、有森香氏が上の記事で述べている、結論通りにするしかないのかもしれません

私見を言うなら、当面の間、中国からの「入国拒否」も視野に入れるぐらいの厳格な措置を検討すべきだ。「馬鹿な。それでは干上がる業界が出る」という声が上がるだろうが、そんな声は聞き飽きた。中国頼みの金もうけがいかなる結果を生むか。この2年で学ばなかった業界があるなら、それは自ら選んだ「滅びへの道」だと言っておく。

 確かに、私達日本人は 私見を言うなら、中国頼みの金もうけがいかなる結果を生むか学んできました。中国のアウトバウンドを期待するのは本当に危険なことです。

ただ、それを期待せざるを得なかったのには理由もあります。それについては、他の記事で詳しく説明しています。その記事のリンクを以下に掲載します。

日銀審議委員人事に悪い予感…インフレ目標軽視は「雇用軽視」 金融政策は旧体制に逆戻りか―【私の論評】今後日銀が金融政策を間違えば、制裁中のロシアのように景気が落ち込みかねない日本(゚д゚)!

この記事のタイトルには中国という文字が含まれておらず、一見中国とは関係ないようにみえますが、中国についても述べています。これも少し長いですが、その部分を以下に引用します。

過去のデフレの真っ最中には、実は円が異様に高くなり日本で原材料を組み立てて、輸出するよりも、中国や韓国で組み立てて、そこから輸出したほうがコストがかからないという異常事態が発生しました。当然のことながら、日本から原材料を輸入しそれを組み立てて、輸出する中国や韓国のほうがさらに安いという状況でした。これでは、日本の国際競争力が落ちるのも必然でした。

このような状況では、国内で様々な製品を製造するよりも、国外で製造した方が安いということになり、日本国内の産業の空洞化がすすみ、中国や韓国の多数の富裕層を生み出すことになりました。

中国富裕層

 特に韓国では、原材料を製造する技術も高くないし、そういうことをしようとする地道な技術者や経営者を馬鹿にし卑しみ、組み立てる人間が一番偉いという文化があり、日本のデフレはまさにこうした韓国にとっては、うってつけであり、日本がデフレの底に沈んでいるときには、優れた部品や素材を開発する日本を卑しみ、我が世の春を謳歌していたといっても過言ではありません。

挙げ句のはてに、日本では中国の富裕層をインバウンドともてはやし、これに頼るしかなくなる事業者も生まれでる始末でした。何これ?日本人あまりに惨めじゃないですか?なんで金持ちにしてやって、さらに奉仕までしなくてはないのですか?中韓が得ていた莫大な利益は、本来は日本企業や日本国民が得るものだったのではないですか?日銀がまともな金融政策さえしていれば、このようなことは起こらなかったはずです。

さすがに現在のロシアは制裁対象でないのでこのようなことはできないですが、もしロシアがそれができるなら、極東に様々な工場や工場団地を造成して、日本企業を誘致し、そこで組みたてと製造輸出を行い、儲けまくってニューオルガリヒが生まれることになるかもしれません。

このようなことはあり得ませんが、ただ制裁などの対象になっていない国である程度産業基盤のある国では、中国や韓国の大成功にあやかり、日本から安い原材料を輸入し、それを組み立てて大儲けする国も現れるかもしれません。そうして、そうした国で富裕層を生み出し、日本人がその富裕層を大歓迎するなどという、過ちが繰り返されるかもしれません。

そうなれば、現在コロナ禍からも立ち直りきっておらず、ロシアによる制裁による原油高などの悪影響を受けたうえ、さらにデフレということで、2重パンチで、景気が落ち込みデフレスパイラルのどん底に沈み、それこそ制裁を受けているロシアのように経済がどん底に沈み、失われた20年が再現されることにもなりかねません。

ウクライナに侵略したロシアが景気の落ち込みによって苦しむのは、自業自得で致し方ないですが、日本が自分の首を自分でしめるような真似をすることは、まっぴらごめんです。

有森氏の記事の結論もあわせて、以上の内容も踏まえて結論を述べるとすれば、以下のようなことになるでしょう。

日本は中国のインバウンドに頼らなくても良いように、積極財政と金融緩和でデフレがすみやかに脱却して中国からの「入国拒否」も視野に入れるぐらいの厳格な措置を検討すべきということになるでしょう。

ただ、来年の3月には、日銀総裁人事があり、黒田総裁に変わる新しい総裁が誕生します。岸田氏がどのような人物を選ぶのかで、日本はまたとんでもないことになり、中国インバウンド頼みの事業者が増え、中国で危険な伝染病が発生しても、厳格な態度を取れないかもしれません。

岸田首相

このブログでも先に述べましたが、岸田政権の補正予算はあまりにしょぼくて、需給ギャップが30兆円以上もあるとみられる、現状では焼け石に水です。

このまま岸田政権にまかせておけば、また1〜2年もすれば、同じことの繰り返しになるでしょう。

いつか来た道のように、中国のインバウンド頼みでコロナに厳格に対応できなくなります。

それを避ける意味でも、岸田政権は短期政権にすべきです。

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2022年4月28日木曜日

「法の支配違反」ハンガリーへのEUの対応―【私の論評】EU「法の支配」の原則に違反したハンガリーへの予算配分を停止できる新ルールを発動する手続きに着手(゚д゚)!

「法の支配違反」ハンガリーへのEUの対応

岡崎研究所

 4月3日に行われたハンガリーの議会選挙では、現職のオルバン首相の党であるフィデスが圧勝し、結束してオルバンを打倒しようとした野党の企ては不発に終わった。フィデスの得票率は53%であったが、獲得議席数は135(総議席数は199)で3分の2を制した。


 オルバンは勝利演説で「われわれの勝利は巨大であり、月からも見えるし、ブリュッセルからももちろん見える」と述べた。敵はかつてなく多かったと述べ、ブリュッセルの官僚、ジョージ・ソロスの帝国、主流の国際メディア、そしてウクライナの大統領に言及した。ゼレンスキーは欧州でプーチンを支持しているのは唯一ハンガリー首相だと厳しく批判したことがある。

 あたかもハンガリーの選挙が終わるのを待っていたかの如く、4月5日、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は、欧州連合(EU)資金に関する「法の支配」のコンディショナリティの仕組み(新型コロナウイルスによるパンデミックからの復興基金の設立に合わせて2020年12月に導入が合意されたもの)をハンガリーに対して近く発動することを表明した。

 コンディショナリティの仕組みは「加盟国における法の支配の原則の違反がEU予算の健全な財政管理あるいはEUの財政上の利益の保護に十分直接的に影響を与えあるいは与える深刻なリスクがある」場合にEUが適切な措置を取ることを規定している。

 欧州委員会が以上の要件が満たされる事態を認定した場合には理事会に適切と認める措置を提案し、理事会は特定多数決(加盟国数の55%、人口比で65%以上の賛成)で提案を採択出来る。適切な措置の対象は復興基金を含むEUの全ての資金であり、措置としては資金援助の支払い停止や削減などが列挙されている。

オルバンとの共生はできない

 これまでオルバンに対抗する上で有効な手段を持たなかったEUにとって、コンディショナリティの仕組みは強力な武器に違いない。しかし、この仕組みを働かせるのは容易でないように思われる。

 「法の支配」の原則の違反を理由に財政的な制裁を課すにはEUの予算と復興基金の資金が詐欺、腐敗、あるいは利益相反の故に適正に使われないことを具体的に証明せねばならない。それは骨の折れる作業であるに違いない。手続きに時間もかかる。

 しかし、当面、手続きが継続中にハンガリーに復興基金からパンデミックからの復興支援のための資金が提供されることにはならない。それは痛手であろう。また、ウクライナ戦争へのハンガリーの対応は他のEU加盟国とは際立って違っており、仲間を失うリスクを冒している。殊に、ポーランドを失うことになれば、オルバンは孤立感を深めるであろう。

 オルバンが容易に白旗を上げるとは予想されない。しかし、この機会を逃せば、EUがオルバンに規律を強いる機会は彼の在任期間の今後4年の間ないであろう。新型コロナウイルスと違って、オルバンと共生する訳には行かないように思われる。

【私の論評】EU「法の支配」の原則に違反したハンガリーへのEU予算配分を停止できる新ルールを発動する手続きに着手(゚д゚)!

ハンガリー オルバン首相

欧州司法裁判所は2月16日、「法の支配」を無視するポーランドとハンガリーに対する資金提供の停止を合法とする判決を下しました。

欧州連合(EU)は、両国が司法やメディアを政治支配し国民の権利を制限することで、欧州の法の支配に違反していると主張。順守しない場合には、両国への資金提供を停止する方針を示していました。両国は異議を申し立てていたが、司法裁がこれを退けた形です。

判決を受け、両国に対する数十億ユーロの資金提供停止に道が開かれました。EU内部の結束が揺らぎ、EUの国際的な立場にも影響が及ぶ可能性もあります。

EUのフォンデアライエン欧州委員長は判決について「EUが正しい軌道に乗っていることが確認された」と歓迎。欧州委員会が数日中に対応を決めると述べました。

ハンガリーのオルバン首相率いるフィデス・ハンガリー市民連盟は判決について、同国への「政治的報復」だと反発。ポーランドのモラウィエツキ首相は記者会見で、EUの「中央集権化」は危険だと批判しました。

同国の汚職・腐敗もすさまじいものがあります。オルバン首相の友人や家族が政府融資や公共事業を通じて財を成しています。オルバン氏の地元、フェルチュートの町には総人口の2倍を超す4000人収容の豪奢なサッカースタジアムが建設され、“お友達”の一人が巨万の富を手にしました。

各国の腐敗を監視する国際非政府組織、トランスペアレンシー・インターナショナルによると、汚職は「今や(同国の)システムの一部にすらなっている」といいます。

ちなみに、同組織の世界腐敗度ランキングでは、73位:(順位が低いほど腐敗が進んでいる)でした。ちなみに、18位:日本 73点、27位:米国 67点、32位:韓国 62点、66位:中国 45点(点数が高い高いほど腐敗が進んでいる)でした。

日本人の中には、日本を腐敗まみれとする人たちもいますが、世界水準でみればそんなことはありません。他国では、動く金の金額の桁が違います。

以下にハンガリーの腐敗度指数の推移のグラフを掲載します。年々低下傾向であることがわかります。


クリックすると拡大します

オルバン政権は、選挙対策ともとれる歳出拡大路線の経済政策を実施してきました。インフレ対策として21年11月にガソリンや軽油の価格に上限を設け、2月にはこの措置を3カ月間延長すると表明しました。22年の月額最低賃金も前年比約2割増やすことで労働組合などと合意しました。一方、企業の税負担の軽減も進めています。

ハンガリーの2月の失業率は3.7%とEU全体(6.2%)を大きく下回り、経済状況は好調という実感を持つ有権者は多かったようです。保守層にはオルバン氏が生活に安定をもたらす「強いリーダー」に映ったようです。

右翼による反EUデモでEU旗に火を付ける参加者 ブタベスト

一方で、EUとの関係は近年あつれきが生じていました。直近ではロシアやウクライナを巡る外交ですれ違いが起きていました。

オルバン氏はロシアがウクライナ国境に大規模な兵力を配置し、侵攻への警戒が高まっていた2月上旬、モスクワを訪れて自国への天然ガスの供給拡大の約束を取り付けました。EUが決めた経済制裁に対しても調整の過程で反対まではしませんでしたが、一貫して消極的な姿勢を見せてきました。

一方で、ウクライナへの支援には及び腰でした。EU内では伝統的に軍事介入に慎重なドイツまでウクライナに対する武器供給に踏み切ったのですが、オルバン氏は「戦争に巻き込まれないようにしたい」という理由で承認していません。

ウクライナ政府はハンガリーについて「EU内の親ロシア勢力」とみています。ゼレンスキー大統領は3月下旬のEUでのオンライン演説で、オルバン氏を名指しし、ロシアと手を切るよう迫りました。

ハンガリーのオルバン首相の報道官が8日、CNNの取材に答え、同国はロシアと戦うウクライナに対し武器を供与するつもりはないと明らかにしました。

オルバン首相の国外向けの報道官を務めるコバチ・ゾルタン氏は「ハンガリーの立ち位置は揺るがない。今回の戦争に武器や兵士の供給という手段で加わるつもりはない」と語った。

ウクライナのゼレンスキー大統領は先月の演説で、オルバン首相を批判。ハンガリーに対し「どちらの側につくのか国として決める」よう告げていました。

一方のオルバン首相は3日の総選挙での大勝を受け、ゼレンスキー氏を攻撃。陣営にとって「戦わなくてはならなかった多くの敵」の一人だったと明言しました。

今回の選挙で与党勝利に一役買ったのはオルバン氏が進めてきたメディア統制です。政府に批判的なメディアには公共広告を減らし、政権に近い人物が買収するという手口を繰り返してきました。20年には影響力の大きかったリベラル派の独立系ニュースサイト最大手の編集長が突然解任されました。

国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」の21年の報道自由度ランキングでハンガリーは180カ国・地域のうち92位。オルバン氏が政権を握った10年の23位から急低下しました。

米著名投資家のジョージ・ソロス氏らが民主化人材育成のためブダペストに創設した「中央ヨーロッパ大学」も国外移転に追い込み、反政権の芽を摘みました。ネポティズム(縁故主義)がはびこり、政権に近い実業家らが不当に蓄財しているとの批判も多いです。

欧州連合(EU)欧州委員会は27日、「法の支配」の原則に違反した加盟国へのEU予算配分を停止できる新ルールを、ハンガリーに発動する手続きに着手しました。公共調達などをめぐる汚職や、不正対策の不十分さを問題視しました。昨年のルール導入後、発動は初めてです。

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2022年4月27日水曜日

韓国代表団〝特別面会〟は失敗か 岸田首相、反対意見押し切り…韓国メディアは「譲歩」示唆、報道放置すれば事実捻じ曲げる危険―【私の論評】岸田氏には勤まらない、日本のリーダーに必要なものとは(゚д゚)!

韓国代表団〝特別面会〟は失敗か 岸田首相、反対意見押し切り…韓国メディアは「譲歩」示唆、報道放置すれば事実捻じ曲げる危険

 岸田文雄首相は26日、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)次期大統領が派遣した「政策協議代表団」と官邸で面会した。韓国側による一連の「反日」暴挙への解決を待たず、反対意見を押し切って〝特別扱い〟したかたちだ。これに対し、韓国メディアは「岸田政権の譲歩」を示唆するような報道をしている。

韓国の政策協議代表団から表敬を受ける岸田首相(右端)=26日午前、首相官邸(内閣広報室提供)

 「日韓関係を健全な関係に戻すべく、日本の一貫した立場に基づき、尹次期政権とは緊密に意思疎通を図りたい」「国と国との約束を守るのは国家間の関係の基本だ」

 岸田首相は、韓国代表団との面会後、記者会見でこう語った。両国関係の改善は韓国側の努力次第と、くぎを刺した。

 ところが、韓国メディアの報道は違う。

 「韓日両国が未来志向的な関係に発展するよう、共同利益のため互いに努力しなければならないとの認識で一致した」(26日、聯合ニュース日本語版)、「韓国人が日本を訪問する際の隔離免除、ビザ免除措置の復活(中略)を提案し、岸田首相が肯定的な立場を表明した」(同日、朝鮮日報)などと、日本側の〝努力〟や〝譲歩〟を報じる内容となっている。

 林芳正外相の満面の笑顔の写真を掲載したメディアもある。

 自民党の保守系グループ「日本の尊厳と国益を護(まも)る会」代表の青山繁晴参院議員は「日韓両国が『互いが努力することで一致した』という報道は誤りだ。私は、岸田首相から事前に『韓国側から具体的な関係改善の行動が示されない限り、政権の姿勢は変わらない』と聞いている。日韓関係を戦後最悪にしたのは、理不尽な『反日』行動を続ける韓国の責任だ」と語った。

 今回の特別面会をどうみるか。

 朝鮮近現代史研究所所長の松木國俊氏は「韓国人は、自らの願望を優先して、事実を捻じ曲げてでも都合のいい方向に話を持っていく民族性がある。報道を放置すれば、韓国次期政権は『日本も努力すべきだ』『岸田首相が認めた』などと主張しかねない。早急に報道を否定すべきだ。岸田首相は油断していたのか…。面会に応じたのは失敗だった」と分析した。

■文政権下での主な「反日」暴挙

・韓国国会議長(当時)による「天皇陛下(現上皇さま)への謝罪要求」

・韓国海軍駆逐艦による海上自衛隊哨戒機へのレーダー照射事件

・日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄決定

・いわゆる「元徴用工」訴訟をめぐる異常判決

・自衛隊旗(旭日旗)への侮辱

・不法占拠する島根県・竹島への韓国警察庁長官上陸

・世界文化遺産への「佐渡島の金山」推薦に反発

【私の論評】岸田氏には勤まらない、日本のリーダーに必要なものとは(゚д゚)!

なぜ岸田が韓国の代表団にわざわざ会ったのか、全く理解に苦しみます。韓国のユン・ソクヨル氏は大統領に就任しておらず、まだ新政権、政府の人間ではないです。であれば、日本で対応すべきは政府の人間ではなく、自民党の人というのが当たり前です。

ユン・ソクヨル氏

これは外交の常識で、訪日の前に代表団は米国を訪れているが、米国政府関係者は彼らに会っていません。日本側が会うなら、官僚が妥当です。

問題は日本側だけでなく、韓国側にもあります。韓国側が会いたいのなら2週間後に新政権が発足してからで良いはずです。今回の先方のやり方は、非常識です。GSOMIA(日韓秘密軍事情報保護協定)の行方や韓国海軍駆逐艦による海上自衛隊P-1哨戒機へのレーダー照射事件など、重要事案が山積みになっていることを鑑みるべきです。

韓国代表団が岸田首相を始め各閣僚と会談している間も韓国は竹島や周辺海域にドローンまで投入し詳細な島の地形や周辺海域のデータを収集。これが韓国のやり方です。

本日の産経新聞

維新は、馬場伸幸共同代表名で抗議の緊急声明を発表しました。抗議文は外務省を通じ首相にわたっています。再び韓国に舐められる首相の“前のめり姿勢”に痛烈抗議です。しかし、外交儀礼上も、外交戦略上も、あり得ない代表団と岸田首相との会談に抗議したのは維新のみです。

岸田氏はすでに、日本のリーダーとしては、ふさわしくないようです。ただ、この言葉ほどごかいされているものはないと思います。

経営学のドラッカー氏はリーダーシップについて以下のように述べています。
リーダーシップとは人を引きつけることではない。そのようなものは煽動的資質にすぎない。仲間をつくり、人に影響を与えることでもない。そのようなものはセールスマンシップにすぎない」(『現代の経営』)
参院選まで、支持率を落とさないように、ひたすら重要なことは「検討します」などと発言して「検討士」などとも揶揄されている岸田氏は、とてもリーダーシップを発揮しているようにはみえません。

リーダーシップとは仕事であるとドラッカーは断言しています。リーダーシップの素地として、責任の原則、成果の基準、人と仕事への敬意に優るものはないとしています。

ドラッカー氏は、リーダーシップとは、資質でもカリスマ性でもない。意味あるリーダーシップとは、組織の使命を考え抜き、それを目に見えるかたちで確立することであるとしています。リーダーとは、目標を定め、優先順位を決め、基準を定め、それを維持する者であると断言しています。

リーダーは、妥協を受け入れる前に、何が正しく望ましいかを考え抜く。リーダーの仕事は明快な音を出すトランペットになることだとドラッカーは言います。

リーダーと似非リーダーとの違いは目標にあるといいます。リーダーといえども、妥協が必要になることがあります。しかし、政治、経済、財政、人事など、現実の制約によって妥協せざるをえなくなったとき、その妥協が使命と目標に沿っているか離れているかによって、リーダーであるか否かが決まるとしています。

ドラッカーは多くの一流のリーダーたちを目にしてきました。外交的な人も内省的な人もいた。多弁な人も寡黙な人もいたといいます。
リーダーたることの第一の要件は、リーダーシップを仕事と見ることである。(『プロフェッショナルの条件』)
リーダーシップに関して、ドラッカー氏は次のようにも語っています。
リーダーシップとは、人のビジョンを高め、成果の基準を高め、人格を高めることである。(『マネジメント』) 

 安易に韓国の代表団にあってしまう岸田氏には、この点にも問題があります。リーダーシップとは、組織の中の人もそうですが、組織の外の関係者のビジョンを高め、成果の基準を高め、人格を高めるものであるからです。岸田氏の態度は、韓国に対して安易に妥協をするとしか受け取れません。韓国の代表団もそう受け取ったことでしょう。

このブログでは、最近岸田首相を批判していますし、それだけではなく岸田政権は短命に終わらせるべきとも主張しています。

これは安倍政権や菅政権においては、なかったことです。両政権に関しては、是々非々で批判したこともありましたが、辞任すべきと言ったことは一度もありません。

特に菅政権については、コロナが収束する前に、辞任すべきではなく、継続すべきと主張しました。

岸田政権の有様をみていると、まさに私のこの主張は正しかったと思います。自民党にお灸をすえるべきだとか、菅氏は辞任すべきだと主張していた人たちは、猛反省すべきです。そのような人たちが、岸田政権を生み出してしまったということを反省すへきです。

お灸をすえるべきと言っていた人たちは、自民党がまた下野すれば良いとでも思ったのでしょうか。現状ではそのようなことは、絶対にすべきでありません。自民党に様々な問題があるのは事実ですが、現在の日本の野党にも問題がありすぎです。

先日もこのブログで述べたように、自民党が下野して政権交代した民主党がどうなかったか、まだ記憶に新しいところです。民主党政権は何も決められず、3年半漂流していたというのが実態でした。

もし現在政権交代したとしたら、民主党のように酷くはなかったとしても、政権を維持するのが精一杯ということになり、現在重要とみられる案件を解決することはできないでしょう。岸田政権と左程変わらないどころか、それを下回る可能性すらあります。

そのようなことだけは避けるべきです。それにしても、現在の岸田政権はあまりに酷すぎます。外交では、自らすすんでなにかをやろうとすれば、今回のような非常識なことしかできませんし、そもそも米国に要請されたことはしますが、その他は何もしません。

エネルギー政策でも、バイデン政権の何もしない姿勢に右ならえをしたのか、何もしません。安保でも経済安保は骨抜きになってしまいました。

経済政策においても、「新しい資本主義」という言葉をあげたものの、昨日の記者会見では「現在検討させている、決まったら公表」するなどと信じがたいことを語っていました。まともなリーダーであれば、ビジョンを持っているのが当然であり、そのビジョンをもとに検討させているとして、そのビジョンについて説明するのが当たり前だと思います。

ここまで、酷いともう二の句が告げません。記者会見をみていると、倦怠感すら感じてしまったので、途中で見るのをやめました。安倍・菅氏が総理大臣であれば、少なくともビジョンは語ったと思います。

リーダーシップの本質は仕事なのですから、重要な仕事をしないで、参院選で勝利できるように、ひたすら重要な意思決定は忌避し内閣支持率を維持しようとする姿勢では、とてもリーダとして仕事をしているとはいえません。

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2022年4月26日火曜日

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日本の解き方


 国際通貨基金(IMF)は19日発表した世界経済見通しで、2022年の世界の実質成長率を3・6%(2021年は6・1%。以下カッコ内は21年の数字)とし、1月時点の予測から0・8ポイント下方修正した。日本も原油高や長引くコロナ禍が打撃となり、22年の実質成長率は2・4%(1・6%)と1月時点の見通しから下振れとなった。

 ロシアは日米欧の経済制裁を背景にマイナス8・5%(4・7%)に落ち込み、ウクライナはマイナス35%(3・4%)とした。米国3・7%(5・7%)、ユーロ圏2・8%(5・3%)、英国3・7%(7・4%)と、いずれの国・地域も下振れし、21年より大きく低下することになる。

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 22年のインフレ率はどうなるか。世界で7・4%(4・7%)、日本が1・0%(マイナス0・3%)、ロシア21・3%(6・7%)、ウクライナは算出困難(9・4%)、米国7・7%(4・7%)、ユーロ圏5・3%(2・6%)、英国7・4%(2・6%)だった。

 ロシア(とおそらくウクライナ)では、戦争時によくみられるように供給不足から猛烈なインフレになる。その他の国も一定のインフレになりそうだが、日本は需要不足なので、インフレというほどではない。

 それでは22年の失業率はどうなるか。世界平均のデータはなく、国別では日本2・6%(2・8%)、ロシア9・3%(4・8%)、ウクライナは算出困難(9・8%)、米国3・5%(5・4%)、ユーロ圏7・3%(7・7%)、英国4・2%(4・5%)となっている。

 ロシア(とおそらくウクライナ)は、猛烈なインフレになるが失業率も高くなり、典型的なスタグフレーションが見込まれる。他の国では、多少インフレになるが、失業率は低下する。

 全体をみると、ロシアとウクライナでは、経済成長率の大幅な低下とインフレ率、失業率の大幅な上昇が予想され、その他の国では、経済成長率の低下とインフレ率の上昇、失業率の低下という見通しだ。ウクライナ侵攻が長期化すればこの傾向は続くだろう。

 侵攻されたウクライナにとっては、許しがたい災難だ。侵攻したロシアは、世界からの経済制裁を受けて代償を払うのは自業自得である。その他の国もロシアの侵攻により成長鈍化というとばっちりを受けるが、雇用が改善するのは、やや救いがあるといえる。

 こうした中で、先進国の中では日本は相対的に良いパフォーマンスにみえる。成長率は改善、インフレ率もマイナスからプラスとなるが、それほどのインフレでもない。その上、失業率も改善する。もともとデフレ傾向だったので、世界的なインフレによる影響を受けにくいためだ。これは日本にとっては千載一遇のチャンスである。

 世界の先進国は、経済制裁で協調しているが、経済政策までは協調していない。それぞれの国で事情が異なるからだ。世界ではインフレ傾向を抑制するための金融引き締め(利上げ)が主流だが、日本は決してまねをしてはいけない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】誰が千載一遇の好機を活かせるか(゚д゚)!

高橋洋一氏は、この記事では「日本経済は千載一遇の好機」としていますが、別の記事、例えば昨日の記事では、「予備費の積み増し程度では効果も限定的」ともしています。

この記事のリンクを以下に掲載しておきます。
補正予算編成は決まったが…予備費の積み増し程度では効果も限定的 今は検討より実行すべきときだ―【私の論評】参院選直前には、エネルギー価格等が上昇し、岸田政権の無為無策ぶりが暴かれる(゚д゚)!
菅前首相

これは、一見矛盾するようにもみえますが、両方とも正しいです。

高橋洋一氏は、昨日の記事では、以下のような結論を語っています。
 現在の予備費(最大5兆円)の範囲ではGDPギャップを埋めるにはほど遠い。となると、半年後には失業率上昇という代償を払うことになる。需要が弱く、エネルギー価格と原材料価格の上昇分をなかなか転嫁できずに経営困難に陥る企業が多く見られるだろう。

 ウクライナ危機に対抗する経済政策を立案するのは簡単だ。しかし、それを実行する政治がなんとも情けない。

 今国会での補正予算が編成される方針になったことはいいが、2兆5000億円で予備費の積み増し程度の規模では、効果も限定的なものにとどまる。

 岸田首相は、結論を出さずに「検討する」というので、ネット上で「検討使」と揶揄(やゆ)されている。今回も、トリガー条項発動について、伝家の宝刀「検討する」が行使された。「検討に検討を重ねる」「さらに検討するかを検討する」など、「検討する」の無限ループにならないように期待したいところだ。

 大規模な補正予算編成についても、今は検討するときではなく、実行すべきときだ。 

実は、世界経済がどうであろうと、日本は未だデフレから立ち直っておらず、30兆円以上もの需給ギャップがあり、需要が大幅に落ち込んでおり、これに対する対策は何をやるにしても、まずは補正予算30兆円以上を組む必要があります。

昨日の記事では、この記事に対して、いつものように、論評というか補足を行っています。昨日の記事の結論部分を以下に掲載します。

現状のような、目の前に良くて済的破滅、悪ければ軍事的破滅がある時代には、仕事をする政治家が必要です。様々な美辞麗句を並べたり、「検討します」などと言って結局なもしない政治家に用はありません。

これで、日本は生まれ変わるでしょう。ちなみに、このようなことは誰でも思いつくこどであり、自民党内ではそのような考えを持っている人もいるでしょう。

だかこそ、岸田政権の経済政策や、外交、安保、エネルギー政策、食糧政策、などに岸田総理対して苦言を呈する人がいないのかもしません。もうすでに、岸田政権を短期政権にしようとする勢力が蠢いているのでしよう。

今のまま、岸田政権が、経済対策、エネルギー対策をほとんど何もしなければ、参院選の頃には、エネルギー価格などがはねあがり、岸田政権の無為無策が明らかになるてしょう。その頃を境に大きな政局の動きがでてくるかもしれません。

仕事をする政治家とは菅前総理大臣のことです。 私は現在菅政権が継続されていれば、何のためらいもなく大型の補正予算を組んだと思います。30兆円台の補正予算まではくまなくても、少なくとも総務省が算出した需給ギャップ17兆円程度の補正予算は組むでしょう。

そうなると、たとえ現状では不足気味の予算であっても次の機会に同程度の補正予算を組んで、実行すれば需給ギャップは解消され日本は完璧にデフレから脱却できます。

そうして、現状現在の日本は他国のようにインフレ状況にはなく、むしろデフレであり、大型補正予算を組んでも、他国のようにインフレになる心配はありません。

これについては、以前このブログでも違った切り口から述べています。 その記事のリンクを以下に掲載します。

アメリカの「利上げ」、意外にも日本経済に「いい影響」を与えるかもしれない…!―【私の論評】米国の利上げの追い風でも、酷い落ち込みならない程度で終わるかもしれない日本経済(゚д゚)!
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事より一部を抜粋します。
円安と原油高、小麦粉などの資源高を分けて考えてみます。円安にはメリット、デメリットの両面があるとしても、短期的には景気に対してメリットが大きいと考えるのが一般的です。購買力を低め内需を低迷させる効果と比べ、外需を増加させる効果の方が大きいとみられるためです。

こうしたメカニズムを確認するには、マクロ計量モデルの推計結果が有用です。日本では、少なくとも数年の期間では自国通貨安(円安)は国内総生産(GDP)にプラスの影響を及ぼします。先にも述べたように、これは内閣府の短期マクロモデルでも確認できます。10%の円安によって、GDPは0.2~0.5%程度増加します。
このように自国通貨安が経済全体にプラスの影響を与えることはほとんどの先進国でみられる現象です。どの国も総じて輸出産業は世界市場で競争している優良企業群で、輸入産業は平均的な企業群です。優良企業に恩恵を与える自国通貨安は、デメリットを上回って経済全体を引き上げる力が強いとみるべきです。
 
 例えば、経済協力開発機構(OECD)のインターリンクモデルでみても、輸出超過、輸入超過の貿易構造にかかわらず自国通貨安は短期的には景気にプラスです。その影響は貿易依存度によって異なり、依存度が高い国ほどプラス効果が大きいです。

日本は、先進国の中では内需依存で貿易依存度が低いことから、円安の効果は他の国と比べると実はそれほど大きくはありません。ただ、これは逆の方向からいえば、市場関係者らが唱える円安弊害論は、一部の産業に限られており、日本経済全体の話ではないのが実態です。

米国が利上げを実行して、日本は利上げはせず、金融緩和を継続すれば、日本のほうがより緩和をすることになり、これは円安にふれるのは当然です。この円安を活用して、日本経済を回復させ、発展させることは十分に可能です。

その根拠としては、無論日本がデフレ気味であり、これから大規模な積極財政や金融緩和を行ったとしても、超インフレに悩まされることはありません。むしろ今はそれを実行すべきなのです。

経済政策としては、デフレを解消するのは、インフレを抑えつつ景気や雇用を維持するのとを比較すれば相当やりやすいです。雇用やインフレ率をにらみながら、積極財政と金融緩和を実行し、雇用が改善されずに、インフレ率だけがあがるようになれば、積極財政や金融緩和をやめれば良いだけです。

他国のように、インフレ率がすでに高まっていて、利上げなどの金融引締を行わなければならない国の経済運営はかなり難しいです。景気の低迷や、雇用の悪化を防ぐのは至難の技です。だからこそ、高橋洋一氏は、千載一遇の好機としているのです。

そうして、できれぱ、ガソリン価格の高騰に対する対策として、トリガー条項解除もすべきですし、それにエネルギー価格や資源価格の高騰などにも対応するため、消費税減税を実行すべきですし、原発も稼働できるものは稼働して、電気代の高騰を防ぐべきです。そうしないと、今年の夏あたりの暑さで、都内などでは停電せざるをえなくなるかもしれません。

やるべきことは、財政政策でも、金融政策でも、安保でもエネルギー・政策でも明々白々です。

ただ、現状の岸田内閣では、補正予算を渋るくらいですから、全く経済センスはなく、期待できません。だかこそ、最初のほうの引用記事では、自民党は経済だけでなく、安保や外交でも期待できない岸田政権を短期政権にして、仕事師といわれた、菅前総理に再登板願って、この千載一遇のチャンスをものにすべきであると主張したのです。

仕事師菅氏が総理であれば、安保、外交、エネルギー政策などでも一定の成果を必ず残すことでしょう。現在ほど先が見えて、何をすべきかが明白な場合には、菅氏のような仕事師こそ、総理になるべきです。今の時期なら、安倍元総理よりも、菅氏のほうが適任だと思います。

コロナ対策では、ワクチン接種の速度を驚異的にあげ、欧米諸国に追いつき追い越した菅政権も、日本特有の鉄のトライアングル(特に医療村)に阻まれて、病床確保には失敗しました。とはいいながら、医療崩壊を起こすことなく、経済政策では一番重要な指標である失業率も低いままで、岸田政権にバトンタッチすることができました。

このような失敗も糧として、仕事師の本領を発揮していただきたものです。

それに、菅総理は仕事師一辺倒というわけではありません。菅前首相自らが語るところによれば、皇位継承を巡る政府の有識者会議の報告書は「男系継承を明確に打ち出した」とのことです。 

その内容は、現岸田文雄内閣になり報告書にまとめられ、国会に提出されました。その内容は極めてバランスの取れた提案です。神武天皇の伝説以来の伝統を守り、「悠仁殿下への皇位継承をゆるがせにしないこと」を大前提としています。

悠仁殿下

今すぐ秋篠宮家から皇位継承権を取り上げたい人や、日本の歴史を踏みにじりたい人達以外には、誰もが納得できる案です。正直言って、政府の有識者会議の報告書には安堵しました。

これには、異論のある人もいて、近代の価値観を当てはめて、皇室批判をする人もいますが、このことに何の意味があるでしょうか。私は、神武天皇の伝説以来の日本の伝統を守るべきと思います。ことさら、これを否定することに意義を見出せません。皇位継承と、真子さんと小室圭の結婚問題とは、全くの別問題です。

今後、ウクライナ戦争が長引いたり、中国のゼロコロナ政策が失敗し中国のサプライチェーンが毀損される可能性もあり、そうなるとますます、デフレ傾向は強まる可能性があり、補正予算35兆円以上にしたほうが良いかもしれません。2億5000万円では話になりません。

今のままだと、半年後くらいには確実に失業率が増加しはじめます。それ以前に、参院選のはじまる夏には、電力不足や本格的なエネルギー価格や資源価格の高騰がはじまるでしょう。岸田政権は黙っていても短期政権になるでしょう。

もう自民党の一部では、そのようなことを重々承知で、次の政権を目指した駆け引きが始まっているかもしれません。

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2022年4月25日月曜日

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日本の解き方



 岸田文雄首相は、物価高騰に対応する緊急対策を26日にも公表する意向を示した。また、2022年度補正予算案の編成を指示する考えも表明した。

 自民、公明両党は、緊急対策の財源に22年度予算の予備費を活用し、使用した予備費の穴埋めなどに補正予算を充てる方針を確認した。約2兆5000億円規模の補正予算案の編成を政府に求め、今国会で成立を図るという。

 自民、公明、国民民主の3党は19日の3党協議で、ガソリン税の一部を減税する「トリガー条項」の発動を先送りする一方、当面は石油元売り会社への補助額を増やし原油高に対応するよう政府に求めることで合意していた。

 今回のロシアによるウクライナ侵攻では、エネルギー価格上昇や原材料価格上昇が懸念されている。しかしながら、本コラムで強調してきたように、国内には供給が需要を上回る「GDPギャップ」が相当額ある。筆者は30兆円程度以上と試算しており、約17兆円とする政府の試算は過小推計だと考える。

 GDPギャップにより、エネルギー価格や原材料価格の上昇が最終消費価格に転嫁できないことへの対策は比較的シンプルだ。それらの価格上昇を抑えるために、ガソリン税や個別消費税を減税することだ。

 その一方で、値上がり分を価格転嫁し、その悪影響を吸収するために、GDPギャップを解消するくらいの有効需要を作る補正予算が必要だ。要するに、減税財源を含んだ大型補正予算が最良の経済対策になる。

 いまウクライナ危機を巡り、防衛費の増額が議論になっているので、これを補正予算でやってもいい。有効需要を作るとともに、国際情勢の変化に対応する一石二鳥の策だ。

 現在の予備費(最大5兆円)の範囲ではGDPギャップを埋めるにはほど遠い。となると、半年後には失業率上昇という代償を払うことになる。需要が弱く、エネルギー価格と原材料価格の上昇分をなかなか転嫁できずに経営困難に陥る企業が多く見られるだろう。

 ウクライナ危機に対抗する経済政策を立案するのは簡単だ。しかし、それを実行する政治がなんとも情けない。

 今国会での補正予算が編成される方針になったことはいいが、2兆5000億円で予備費の積み増し程度の規模では、効果も限定的なものにとどまる。

 岸田首相は、結論を出さずに「検討する」というので、ネット上で「検討使」と揶揄(やゆ)されている。今回も、トリガー条項発動について、伝家の宝刀「検討する」が行使された。「検討に検討を重ねる」「さらに検討するかを検討する」など、「検討する」の無限ループにならないように期待したいところだ。

大規模な補正予算編成についても、今は検討するときではなく、実行すべきときだ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】参院選直前には、エネルギー価格等が上昇し、岸田政権の無為無策ぶりが暴かれる(゚д゚)!

上の記事のようなことは、私もこのブログに先日掲載したばかりです。少しでも経済をかじった人ならば、上記のようなことはすぐに気づきます。一体このお粗末な補正予算で何をしようというのでしょうか。これでは、何をしてもたかが知れており、今のままであれば、半年後には失業率か上昇しはじめるのは、確実です。

岸田文雄首相は、生まれついての三世議員です。親戚一同官僚一家。閨閥(けいばつ)に押し上げられて派閥の領袖、絶望的な人材難の中で自民党総裁、消去法で総理大臣に就任しました。悪い意味での「サラリーマン政治家」です。 


この方、出世して総理大臣になりたいのはよくわかりましたが、総理大臣になって何をしたいのか、さっぱりわかりませんでした。それもそのはず、首相に就任してから有識者を集めて「新しい資本主義」とは何かを検討させています。

岸田首相は、経済だけではなく、外交等でも何をしたいのか、さっぱり見えません。

ロシアがウクライナを侵略した同時刻、岸田首相は参議院予算委員会に出席していました。立憲民主党の蓮舫議員が「国家安全保障会議を開かなくていいのですか。我々は柔軟な対応をしますよ」と呼びかけているのに、「適切な時期に開きます」としか答えませんだした。 

その場で「今すぐ開きます」と答えられない時点で、事の優先順位がついていません。隣国が侵略戦争を始めた以上に重要な事柄などあるのでしょうか。 結局、役人からカンペが差し入れられて、委員会を中断、国家安全保障会議を開くに至たりました。 

蓮舫議員と言えば「最悪の民主党政権」の象徴のような人物です。しかし、今や自民党の政権担当能力は、その蓮舫以下に落ちぶれてしまったようです。自民党幹部は「野党に言われて開いたのではない」と強弁しますが、昔の自民党なら野党に言われる前にカンペを差し入れたものです。

プーチンのウクライナ侵攻に際して、G7各国は経済制裁、SWIFT(国際銀行間通信協会)からの排除を決断しました。米国に英国とカナダは即座に同意、フランス・ドイツ・イタリアも賛同しました。

後刻、アメリカは「岸田文雄首相と日本政府はプーチン氏のウクライナ攻撃を非難するリーダーだ」と、わざわざ声明しました。要するに、日本は他の国の陰に隠れてロシアに石を投げようとしたら、アメリカに「お前が前に出ろ」と突き出された格好です。 

自民党には「NATOの話なので、あちらの調整を待っていた」などと意味不明な言い訳をSNSで絶叫する国会議員もいましたが、恥ずかしくないのでしょうか。 調整とは平時に行うことです。戦時において即座に旗幟を鮮明にするのが政治です。

調整など官僚でもできますが、戦時における決断は政治家にしかできないです。むしろ米欧諸国が手間取っているなら、自由主義陣営の間で日本が尊敬される好機だったではないでしょうか。愚かとしか言いようがありません。

一方で、「ロシア経済分野協力担当大臣」なる、世にも恥ずかしい大臣だけは、なぜか絶対に無くしません。野党の国民民主党の玉木雄一郎代表や伊藤孝恵参議院議員やNHK党の浜田聡参議院議員に「ロシア大臣」の廃止を提言されても、岸田首相は明確に拒否しました。

ただしその理由は「経済制裁を行うのが大事であって、大臣を廃止するつもりはない」と日本語になっていないだすが。彼は、一体どこの国の総理大臣でしょうか。

ロシア経済への協力「サハリン2」は経済産業省が進め、多くの大企業を巻き込んでいる国際プロジェクトです。その調整に手間取ったのでしょうか? 

しかし、調整が必要ならば経済産業省で行えば良いです。歴代ロシア大臣はすべて経産大臣の兼任なのですから。別に補償金が必要でもなく、名前を消すだけなのですから、首相が決心すればリアルに1時間で実行可能のはずです。  

その後「サハリン2、まずは民間企業が対応考える必要=岸田首相」とのニュースが飛び込み目眩がしました。

しかし、まだあります。ロシアの侵攻前、駐日ウクライナ大使が林外相に面会を求めてきたのですが、1か月も放置したとされています。理由不明ですが、結果責任で事務方の1人や2人、馘首でしょう。 

停戦交渉においてウクライナは、NATO加盟を諦める代わりに、ウクライナが指名する国々がウクライナの安全を保障する体制を求めました。 

ウクライナが指名する国々とは、まず国連安保理常任理事国の米英仏中露。大国なので当然です。ついで、独伊加のサミット参加国。準大国扱いです。そしてトルコとポーランドの周辺の関係国。さらにイスラエル。 確かにイスラエルはインテリジェンス大国でロシアとの関係も深い。 

しかし、日本はどこに。本来日本は、このような役割を担っても良いはずです。しかし、日本はこの面では役たたずと、ウクライナにはみなされたようです。ただ、戦後の復興に関しては日本の経済力をあてにしているようです。

公開情報を拾うだけで、これだけの不祥事です。参議院選挙で岸田自民党が勝てば、3年間は選挙の必要が無いです。そうなると、良くて経済的破滅、悪ければ軍事的破滅ではないでしょうか。 

ロシアの脅威に対抗する為、「日本も核保有を」との声が盛り上がっていますが、今の自民党に政権を任せるべきではありません。 では、どうすべきでしょうか。

 私は若田部日銀総裁を誕生させ、そうして菅義偉前首相に再登板願うしかないと考えます。参議院選挙で自公を過半数割れに追い込み、第2次菅内閣を日本維新の会と国民民主党が助けるべきでしょう。 

菅前首相

まずコロナ禍など、さっさと終わらせるべきです。現在コロナでもたついているのは、世界でも大きなところでは、日本や中国くらいなものです。中国はゼロコロナ政策の失敗でとんでもないことになりそうです。現在では、ワクチンはもとより、飲薬もできコロナを2類から5類に引き下げても何の問題もありません。

このくらいのことすらできないようでは、日本も中国のようにゼロコロナ政策で沈没しかねません。

これをやるのは、現在では慈恵会医科大教授の大木隆生先生にコロナ大臣をお願いするしかないです。そうして、来年3月の日銀人事では、若田部副総裁の総裁昇格で本格的景気回復を目指すべきです。 

安倍・菅政権のときのように、財務省にはノータッチにさせ、政府日銀連合軍で、政府が大量の国債を発行し、日銀がそれを引き受けるのです。これによって、政府は大量の資金を得て、様々な対策を打つのです。

どのくらいの規模にすべきかといえば、100兆円くらいが理想です。ちなみに、このくらい国債を発行したからといって、現在の日本は未だ2%の物価目標すら達成できていないのですから、超インフレにもならず、むしろ緩やかなインフレとなって、日本はデフレから完璧に脱却できるでしょう。政府の借金にもならず、将来世代への付けともなりません。

国土強靭化、安全保証、エネルギー問題、食糧問題などに大鉈を振るい、日本を根本からつくりかえるのです。それができるのは、菅仕事師内閣しかありません。

私自身は、このブログでも主張したように、菅政権は継続すべきであったと思います。菅政権が崩壊したのは、日本ではコロナ禍が収まる前でした。菅政権は、コロナの病床確保には失敗したものの、ワクチン接種を驚異的な速度で実行して、接種率を世界一の水準にまで高めました。結局医療崩壊も起こさず、大局的には成功したといえます。

菅政権は、短期間でそのほかにも様々な実績をあげています。以下にそれを一覧表にまとめたものを掲載します。
このようなことから、高橋洋一氏は菅内閣を「仕事師内閣」として評価しています。私もそう思います。何もしない、岸田内閣とは随分違います。

現状のような、目の前に良くて済的破滅、悪ければ軍事的破滅がある時代には、仕事をする政治家が必要です。様々な美辞麗句を並べたり、「検討します」などと言って結局なもしない政治家に用はありません。

これで、日本は生まれ変わるでしょう。ちなみに、このようなことは誰でも思いつくこどであり、自民党内ではそのような考えを持っている人もいるでしょう。

だかこそ、岸田政権の経済政策や、外交、安保、エネルギー政策、食糧政策、などに岸田総理対して苦言を呈する人がいないのかもしません。もうすでに、岸田政権を短期政権にしようとする勢力が蠢いているのでしよう。

今のまま、岸田政権が、経済対策、エネルギー対策をほとんど何もしなければ、参院選の頃には、エネルギー価格などがはねあがり、岸田政権の無為無策が明らかになるてしょう。その頃を境に大きな政局の動きがでてくるかもしれません。

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2022年4月24日日曜日

米国、中国も「道連れ」制裁か プーチン大統領を擁護、デフォルト迫るロシア救済…第三国の〝抜け穴〟許さない! 「二次的制裁」という伝家の宝刀も―【私の論評】中国を停戦協定に介入させれば、「蟻の一穴」の諺通り、世界はとてつもない惨禍に見舞われかねない(゚д゚)!

米国、中国も「道連れ」制裁か プーチン大統領を擁護、デフォルト迫るロシア救済…第三国の〝抜け穴〟許さない! 「二次的制裁」という伝家の宝刀も

プーチン大統領(左)を一貫して擁護する習主席

 西側諸国がロシアへの非難を強めるなか、擁護姿勢が際立つのが中国だ。ウラジーミル・プーチン大統領と親しい習近平国家主席は対露制裁に反対を明言し、経済面でもデフォルト(債務不履行)が迫るロシアを救済している。米国は制裁の抜け穴を作った国への「二次的制裁」も視野に入れており、米欧と中露の対立構図は鮮明だ。


 習主席は21日、中国海南省で開かれた経済会合「博鰲(ボアオ)アジアフォーラム」年次総会の式典で、米欧の対露制裁を念頭に「一方的な制裁の乱用に反対する」と強調した。「冷戦思考は世界平和の枠組みを壊すだけで、捨てるべきだ」とも述べ、ロシア寄りの姿勢を見せた。

 中露は日本への威嚇でも歩調を合わせているようだ。防衛省統合幕僚監部は20日、ロシア海軍の駆逐艦や政府系天然ガス企業「ガスプロム」関連のパイプ敷設船など計6隻が対馬海峡を抜け、東シナ海から日本海へ北上したのを確認した。同じ日に中国海軍の情報収集艦1隻が鹿児島県の奄美大島付近の海域を通過し、東シナ海から太平洋に移動した。

 経済でも中国の影がちらつく。欧米や日本が経済制裁を行い、ロシア国債は5月にもデフォルトとなる可能性が高まった。一方で中国はロシアから原油や小麦などの輸入を増やしている。

 中国経済に詳しい第一生命経済研究所の西濱徹主席エコノミストによると、中国の3月の輸入額全体は前年同月比0・1%減と弱含みである一方、ロシアからの輸入額は同26・4%増と対照的な動きをみせた。

 西濱氏は「足元はゼロコロナの問題が大きいが、物価が上振れしている中で家計部門の痛みを和らげるため、ロシアと付き合うことで影響を抑えられる面もあるのかもしれない」と分析する。

 対露制裁を主導する米国は、第三国にも自国の制裁を順守させる「二次的制裁」という伝家の宝刀を持つ。

 福井県立大学の島田洋一教授は「米議会の中ではロシアの金融機関に抜け穴を与えた中国の金融機関に口座を持たせないとする法案も出ている。こうした金融機関における第三国制裁が一番効くことになるのではないか。西側諸国の一部の天然ガス輸入が継続している限り、中国への制裁も難しいが、米国から欧州への天然ガス供給体制ができれば、中国への制裁の可能性も高まるだろう」との見通しを示す。

 ジョー・バイデン米政権はウクライナに兵器の追加供与を進める一方、ロシアの「戦争犯罪」と、中国の「人権弾圧」の監視を継続している。

 米国務省が12日公表した「2021年版人権報告書」では、ロシアが93ページ、中国が90ページとほぼ同量の紙幅が割かれた。

 ロシアについて、ウクライナ東部で親露派武装勢力の「訓練や戦闘などを継続した」と記した。障害者や性的少数者らを標的とした暴力的犯罪もあると強調した。

 中国に対しては100万人以上のウイグル人が強制収容され、200万人が「再教育」を受けたと指摘する。恣意(しい)的な監禁や身体的自由の剥奪、強制不妊手術、強姦、拷問などの行為を列挙した。

 報告書は中露を「権威主義国家」と指弾した。民主主義国としての米国の本気度が問われている。

【私の論評】中国を停戦協定に介入させれば、「蟻の一穴」の諺通り、世界はとてつもない惨禍に見舞われかねない(゚д゚)!

ジョー・バイデン政権というか、現状の米国は議会から、司法まで、中国は「権威主義国家」であり、西側の技術を剽窃したり、強制労働などで不当に安いコストで様々な製品の製造を行い、それを米国等に輸出するなどして儲け、富を貯め込み、第二次世界大戦後の米国を頂点とする世界秩序に挑戦し、それを作り替えようする、敵であるとみなしています。

これは、米国が今後民主党政権になるのか、共和党政権になるのかでは変わらず、もはや米国の意思といっても良いです。


無論、ロシアは米国にとって敵であるとはみなしてはきましたが、近年は中国をより警戒するようになっていました。その理由は明らかで、このブログでも指摘してきたとおり、中露の一人あたりのGDPは中国と同程度(100万円前後)ではあるものの、中国の人口はロシアの10倍の1億4千万人であり、そのため中国のGDPは、ロシアの10倍であり、米国の安全保障の観点からみれば、中国のほうがロシアよりもはるかに大きな脅威であるからです。

ロシアのGDPは現在韓国を若干下回る程度であり、東京都と同程度です。にもかかわらず、あの広い国土を中国の1/10程度の人口で守らなければならないのです。


ただ、現在はロシアがウクライナに侵略したため、ロシアの暴挙を放置するわけにもいかず、ロシアに強く対峙していますが、中国のほうがはるかに大きな脅威であると考えていることには変わりはありません。

ロシアに関しては、すでに様々な外国企業の工場が操業停止を決めています。これは、ロシア国内では、部品が入手困難になることが予想されることや、売上をドルで受け取れなくなることが予想され、操業しても無意味になることが考えられ、ロシアの軍需工場もいずれ、兵器の製造が不可能になるとみられます。

しかし、中国はロシア以上の敵であるにもかかわらず、ロシアに対する制裁よりは、中国に対する制裁のほうが甘いので、現在の中国はロシアほどの窮地には至ってはいません。

ただ、このブログも示したように、「権威主義国家」である中露のうち、露をいくら制裁などで、弱らせたにしても、中国が現状のままの状態であれば、たとえロシアが弱体化したとしても、米国にとっては中国による懸念は拭い去ることはできません。

一方、中国が弱体化してしまえば、ロシアの脅威などとるに足りません。黙っていても、ロシアは弱体化します。北朝鮮もそうなります。

米国の優先するのは、やはりロシアよりも中国なのです。米国が中国に対峙しようとする姿勢は変わっていないどころかますます強化されたみるべきです。

このようなさなか対露制裁を主導する米国は、中国が米国の制裁に反してロシアを利するような行動にでれば、ためらうことなく「二次的制裁(secondary sanctions)」という伝家の宝刀を抜くでしょう。たとえ、バイデン政権がそうしなくても、米国議会はそのように動き、バイデン政権にそうさせるでしょう。

このような米国の態度について、批判するむきもあります。たとえばプーチンがウクライナ軍事侵攻に入った翌日の2月25日、習近平はプーチンと電話会談して、「話し合いによって解決してほしい」という要望を、プーチンに直接伝えました。

ところが同日、バイデン政権のプライス報道官は、記者会見で、ロシア軍のウクライナからの完全撤退でもない限り「停戦交渉のオファーなどは無意味なので、受けるな」という趣旨のこと発言をしたこと等から米国は、最初から停戦交渉を阻止しようとしてきたというものです。

確かに一刻も早い「停戦」が望ましいのは間違いないこととは思います。しかし、以前もこのブログで述べたように、バイデンは、ウクライナ戦争関する事柄でも、中東諸国やイスラエル、トルコ等とはある程度妥協しても良いですが、中国と妥協してロシアを説得させ停戦交渉成立させるべきではありません

早期停戦実現のため米国が妥協して、中国に停戦協定に関わらせ、停戦が実現してしまえば、習近平の存在感は嫌がおうでも高まります。下手をすると、習近平はノーベル平和賞を受賞するかもしれません。そうなると、習近平はそれを活用して、国内での権威付け行い、統治の正当性を強化するでしょう。

そうなると、習近平は余勢をかって、喜び勇んで台湾併合にはずみをつけるかもしれません。その後世界は中国にさらに翻弄されることになるでしょう。これは、悪い妥協です。バイデンはこの種の妥協は、絶対にすべきではありません。

今のところ、そのような兆候はありませんから、さすがのバイデンも中国に利するような真似はしないつもりなのでしょう。

もしも、戦争を少しでも早く終わらせることを大義名分として、バイデンが悪い妥協をしてしまえば、中露に大きな勘違いをさせてしまうことになるでしょう。

ウクライナ侵攻や、台湾侵攻などの暴挙を行ったとしても、米国は戦争を早期集結させるために、すぐに妥協するから、俺たちは何をやっても酷いことにはならないという勘違いをさせることになります。

中露の「権威主義国家」体質はウクライナ戦争後も温存されることになります。そうなれば、ウクライナの戦争は終了したとしても、ウクライナ危機が去るどころか、過去もそうであったように、ロシアのウクライナへの侵略は今後も繰り返されることになるでしょう。ロシアはその時々で、自分の能力にみあった侵略を小刻みに行い、時間をかけつつもいずれウクライナ全土を手に入れ、その次はモルドバに侵攻するかもしれません。

このようなことはたとえ目の前の戦争は早期に終了したとしても、ウクライナの将来に禍根を残すことになり、決して良いこととはいえません。早期停戦も大事ですが、どのような停戦の仕方をするかも非常に重要なのです。

ロシアが侵攻を小出しに何回も繰り返せば、ロシアはソ連邦だった頃の版図を取り戻すことになるかもしれません。今回のロシアの侵攻がドンバス地方のみに限られていれば、ロシアのウクライナ侵攻は早期に成功していたかもしれません。そうして、米国がこれに妥協して、停戦を安易に認めてしまえば、クリミアの併合と、ドンバス併合に勢いづいたロシアは、ソ連邦だった頃の版図を取り戻すために、8年ごとに侵略を繰り返すことになったかもしれません。

そのロシアのやり方を見習い、中国も台湾に侵攻し、その次は尖閣諸島、次は沖縄、その次は日本本土に侵攻するかもしれません。挙句の果てに、日本を南北で分断し、北はロシアが統治、南は中国が統治という事になりかねません。


分割統治の悪夢は過去にも起こりそうになったことがあります。多くの戦死者を出した第二次世界大戦は、日本の降伏によって幕を下ろしました。終戦後は通称GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の統治下、ほぼほぼ米国の管轄に置かれました。

しかしこの”8月15日”というタイミングで行われたポツダム宣言の受諾が、一週間後にずれていただけで、日本はドイツや朝鮮半島のように分割統治されていた可能性があると言います。

上の地図でもわかる通り、もし分割統治されていれば東京は4か国による統治が計画されていたので、ベルリンの壁にようなものが出来ていたのかもしれません。四国地方だけ公用語が中国語になっていたかもしれません。そうして東北地方・北海道はソ連統治下に入っていた可能性がありました。

そのようなことにならなかったのは、まさに不幸中の幸いでした。

さて、中国が台湾に侵攻すれば、ロシアが仲介し、早期停戦を行い、それがうまくいけば、プーチンはノーベル平和賞を受賞し、プーチンはそれを利用して、国内での権威付け行い、統治の正当性を強化するでしょう。

そうなると、プーチンは余勢をかって、喜び勇んでモルドバ併合にはずみをつけるかもしれません。ロシアがモルドバに侵攻すれば、中国が仲介に入り、早期停戦を行い。ということを何度も繰り返し、最終的に、時間をかければ中露が世界中を取り放題ということになりかねません。

そんなことは断じて許すことはできません。だからこそ、バイデン政権のプライス報道官は、記者会見で、ロシア軍のウクライナからの完全撤退でもない限り「停戦交渉のオファーなどは無意味なので、受けるな」という趣旨のこと発言をしたのでしょう。

私から言わせれば、プライス報道官の発言は穏当すぎると感じるくらいです。私なら「無意味」どころか、「停戦交渉のオファーを受ければ、中露を利して、世界をますます不安定化させることになるだけであり、断じて許さない」と言うと思います。

まさに、「千丈の堤も蟻の一穴より崩れる」のことわざ通り、中国に停戦協定に介入させれば、世界はとてつもない惨禍に見舞われることになるかもしれません。

そうして、日本もウクライナ戦争を契機に、安全保証のあり方を検討すべきです。もしバイデンがポンコツすぎて、早期停戦させんがために、中国に停戦協定に関わらせるようなことがあれば、上記の最悪のシナリオを招くことになりかねません。

実際、バイデンはアフガニスタンの無惨な撤退でも、ロシアのウクライナ侵攻でも、それを助長するような発言や行動しています。今後そのようなことをしないという保証はありません。

そうして、バイデンがそのようなことをしなくても、今後中露が他国の領土に侵攻しないという保証はありません。そのときに、時の米国大統領が中露を利するような悪い妥協をしないという保証もありません。

日本としては、そのようなことになっても自分の領土は守れるように、そうして、EU諸国等と協同で米国の誤りを正し、中露の「権威主義国家」から世界を守ることができるように、今から準備すべきです。

最期に念を押しますが、「権威主義国家」の独裁者とは、我々自由主義陣営に住む住人には、その本質は理解不能です。ですから、我々は少なくとも彼らが「やる」といったことは、いずれ必ずやると受け止め、それに対する準備を怠るべきではありません。

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