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2022年8月22日月曜日

元首相は「変なことをすると、運も逃げていく」と語っていたが、今の岸田首相はその状況なのだろうか―【私の論評】内閣改造で大失敗して支持率が低下する岸田政権に、明日はあるのか(゚д゚)!

元首相は「変なことをすると、運も逃げていく」と語っていたが、今の岸田首相はその状況なのだろうか

髙橋 洋一
経済学者
嘉悦大学教授
プロフィール





平均的な生活をしていた岸田首相がコロナ感染

 岸田首相がとうとう新型コロナに罹ってしまった。といっても、別に驚くことはない。

 バイデン大統領は先月下旬に陽性反応になり、一度陰性になったが、8月はじめに再び陽性となる「リバウンド」もしている。筆者のまわりの知人も、コロナに罹った人は少なくない。

 その意味で、岸田首相も平均的な日本人と同じである。コロナウイルスは人を選ばないので、普通の行動をしていればコロナに罹っても不思議はない。

 岸田首相は、8月15日から夏休みで、22日から公務の予定だった。始まりも終わりも、日本人の平均的な夏休みスケジュールだった。家族とゴルフ、温泉、旅行と、これも典型的な夏休みの過ごし方だろう。

 こうして平均的な日本人と同じ行動をとったら、コロナに罹るとは、まさにこれぞ平均的すぎる。

 22日から公務の予定だったが、21日に陽性反応が出た。これにより、25日から予定していた外遊(アフリカ、中東)はとりあえずやめることになった。今月末まで今後10日間は自宅療養だ。

 もっとも公邸に住んでおり、住まいと職場がひとつになる「職住一体」なので、執務には支障がないだろう。そもそも、岸田首相はトップダウン型ではなく、周囲の者が準備したことを慎重に実施していくタイプだ。「検討使」とも揶揄される所以でもある。だから首相がいなくても上手く回るといったら、叱られるかもしれないが……。


 岸田首相は、これまでワクチンを4回打っている。3回目は3月4日、4回目は8月12日だ。残念だったのは、4回目を打ったばかりで陽性反応が出たことだ。一般的に、ワクチンの接種で効果を発揮するような十分な免疫ができるのは打ってから7日程度経って以降とされている。もう少し早く打っていればよかったかもしれない。

 ワクチンを接種するかしないかは本人の自由であるが、一定の効果があることは知られている。岸田首相は4回目のワクチン接種後であったが、コロナに罹ったから、ワクチンの効果はないと早合点してはいけない。

 ところで、岸田首相の夏休み初日の15日午後、岸田首相は約10冊の本を購入したと報じられた。その中で、筆者が「あれっ?」と思ったのは、『フランクリン・ローズヴェルト 大恐慌と大戦に挑んだ指導者』だった。

 そこで筆者は、「彼は共産主義に甘く日本人を含む人種差別論者であるのを理解して読まないと」とツイートした。

 報じられた夏休み中の日程を見るかぎり、岸田首相はまだ読んでないかもしれないが、読むときにはよく注意してほしいものだ。

重症化率も死亡率も断トツの低さ

 コロナウイルスの感染者は、8月上旬にピークを迎えたように見えたが、再び増加している。政府は行動制限を行わない方針としているが、医療が逼迫している自治体も増えている。感染症法の区分や感染者数の全数把握の是非、ワクチン接種の促進などはどう考えるべきか。

 これまで新規感染者数でみると、1~6波が来ており、今度は7波となる。これまでの波で、死亡率(=死亡者数/感染者数)、重症化率(=重症者数/感染者数)はどうだっただろうか。

 死亡率は1波から5.7%、1.0%、2.2%、1.6%、0.4%、0.2%と推移した。重症化率は、1波はデータがないが、2波以降は21.6%、24.5%、24.9%、12.5%、1.3%と動いていった。それぞれの波の性格が違うため、厳密にいえば一定の補正が必要で、素データでみるのはやや適切でないところもあるが、おおよその傾向は出ている。

 大雑把にいえば、変異株で置き換わった結果の各波は、変異すればするほど、感染力は強くなるが、死亡率や重症化率は低下する傾向のようだ。7波では、季節性インフルエンザとあまり変わらないと話す専門家も少なくない。死亡率も重症化率も、6波の半分程度まで下がりそうだ。


 世界の状況をみると、G7諸国では、6波あたりが最大になっている。人口比の数字では、今の日本の新規感染者数の1.3~4倍程度であった。7波は日本を除くG7諸国では6波ほどではなく、日本がG7でトップになっている。

 といっても、重症化率や死亡率は他のG7諸国と比べて一桁違いの断トツの低さなので、それを考慮すると、大騒ぎする必要はないだろう。

 今の状況で問題なのは、重症化はしないものの、感染と認定されると元気なのに仕事ができないことだろう。筆者のマスコミ関係の知人でコロナ陽性になった人がいる。本人はまったくの無症状で体調に問題はないのだが、自宅からのリモート活動さえメディアの内規でできないらしい。

 この方の事情は知らないが、子供の間では感染しても熱も出ないので、子供から家族が感染し、そのために仕事ができないという話もしばしば聞く。そうした事情から、実際にはコロナ陽性になったという事実を隠した人も少なくないらしい。

 全数調査はもうやめよ

 5、6波の頃から、地域の保健所が感染症法上2類相当では事実上機能していないという話もしばしば聞く。現場の医療機関でも、全数調査による労働強化が医療サービスの低下にもなっているという。データとしても、死亡率と重症化率は季節性インフルエンザともそれほど大きく異なるわけでもないので、感染症法の区分の見直しという議論もあった。

 筆者としては、感染者数を全数把握することは、いかがなものかと思う。一部のマスコミは「コロナの隠蔽」というが、全数調査ではなくサンプル調査は継続すればいい。すべての場合に全数調査が必要ということはなく、テレビの視聴率調査でも800程度のサンプル調査だ。現場に過剰な負担をかけてまで全数調査に拘るべきではない。

 また、2類から5類への見直しに反対するのが、補助金をもらいたい医療側の思惑という説が出ているが、もし本当ならとんでもないことだ。

 ワクチン接種の促進はするべきだ。特に筆者のような高齢者や基礎疾患のある人は、罹っても重症化しないようにワクチン接種するのはいい。ワクチン接種をするのは自由であり、悪質なデマを広げて他人のワクチン接種を邪魔するのはいただけない。

 岸田首相が一刻も早く回復されることを祈っているが、折角ならば、ご自身が体験して、普通の人がどのように困っているかもわかってもらいたいものだ。

 岸田首相のコロナというニュースが出たあと、毎日新聞の20、21日の世論調査で、岸田内閣の支持率は36%で7月より16ポイント低下という話がきた。

 旧統一教会との関係が原因と毎日新聞はいいたいのだろうが、先週の本コラムで酷評したように10日の内閣改造があまりに酷かったのが本質的な理由だ。

 内閣改造のスケジュールも不自然だし、それでワクチン4回目接種が遅れて、首相がコロナに罹患したのだとしたら、これまで岸田政権に味方していた「運」も離れだしたのか。故安倍元首相が「変なことをすると、運も逃げていく」とかつて言っていたが、まさにその状況なのだろうか。

 コロナ対応でも「検討使」連発、防衛事務次官・海上保安庁人事、EEZ内に中国のミサイル着弾でも電話抗議だけ、NSC未開催などの「不始末」の後で、酷い内閣改造をしてしまったから、運が逃げていったのかもしれない。

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高橋洋一氏の近刊『安倍さんと語った世界と日本』(ワック)が9月1日発売

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髙橋 洋一(経済学者)

【私の論評】内閣改造で大失敗して支持率が低下する岸田政権に、明日はあるのか(゚д゚)!

上の記事にもでてく、毎日新聞の20、21日の世論調査結果のグラフを以下に掲載します。

上の記事で、高橋洋一氏は「旧統一教会との関係が原因と毎日新聞はいいたいのだろうが、先週の本コラムで酷評したように10日の内閣改造があまりに酷かったのが本質的な理由だ」としています。私のもそう思います。

内閣改造を行ってもなお支持率に改善傾向がみられず、むしろ支持率が低下するのは極めて異例のことです。一般には内閣改造・党役員人事は人身刷新の効果があり、内閣支持率を押し上げる効果があります。

具体的に言えば、閣内にいる不安材料を閣外に追い出すことでリスクヘッジを行うと同時に、人気政治家を抜擢にすることで内閣支持を取り付けることにより支持率はあがります。

内閣改造をして支持率が下がるのですから、岸田首相の人事というか、ほとんどが数日前に決まってことから、派閥の力学によって、他派閥と事前に話し合いをした結果の人事なのでしょうが、これは明らかに大失敗です。

内閣改造によって岸田首相は、政治姿勢では、党内派閥に配慮した布陣で一体何をやりたいのか見えてきません。政策方針では、新型コロナや物価高への対応に信念が見えず、指導力不足ばかりが目立ちます。

8月から、大手4社が電気料金を値上げしています。東京電力は一般的な家庭で9000円台になりました。食料品は値上がり、電気ガスも値上がり、ガソリン価格も高止まり。これでは、支持率が下がるのは当たり前でしょう。

政権の無為無策は、安全保障問題でも同じです。

日本は、中国とロシア、北朝鮮という核を保有する「独裁・専制主義国家」に立ち向かう「自由・民主主義陣営」の最前線に位置しています。まさしく、「世界で、もっとも危険な脅威にさらされている国」なのです。


だからこそ、安倍晋三元首相は今年2月、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、「米国と核共有の議論を始めるべきだ」と提言していました。ところが、政府はいち早く否定し、自民党もろくに議論しないまま、フタをしてしまいました。

防衛費は「5年間でGDP(国内総生産)比2%」の目標を掲げたが、一方で、安倍氏の強い反対を振り切って、防衛力強化の要となる防衛事務次官を交代させる人事を断行しました。さらには、内閣改造で、岸田防衛大臣をやめさせ、どうしようもない防衛大臣に変えました。こうした姿勢が、国民に「一体、どこまで、やる気があるのか」と疑念を抱かせたのは当然だと思います。

参院選前までは、異例に高い支持率を謳歌(おうか)してきた岸田政権ですが、いったん今回のように、歯車が逆回転し始めると、元に戻すのは難しいです。何もしないで、マスコミや国民の目を欺いてきただけなので、人気回復に何かをしようとしても、抜本的対策は出てこないからです。

例えば、ガソリン代や食料費の高騰には、期間限定でもいいから、ガソリン税や消費税の引き下げで対処すべきです。ところが、財務省管理内閣である、岸田政権には望むべくもないです。むしろ、ドタバタすればするほど、ポイント還元のように、その場しのぎの弥縫策が国民に見透かされ、火傷してしまう可能性が高いです。

国民の生活に密着したことで、岸田政権が今すぐにすべきことを以下にまとめます。

    岸田政権がやるべきこと
円安を過剰に気にしない
・消費税の厳然・凍結(⇒価格の引き下げ)
・ガソリン税引き下げ(⇒価格の引き下げ)
・補償・投資の拡大(困った人を助ける)

脱「 輸入依存」体質
・原発再稼働(安全性確認は当然の前提)
・水力発電の加速
・食料自給率の向上(農業・漁業の活性化策)
このくらいのことにすぐに実行すれば、支持率はまた上がってくると思います。ただ、何をするにもお金がかかります。これを安倍・菅政権のときのように、日銀・政府連合軍により、政府が巨額の国債を発行し、日銀がそれを買い取るという方式で実施して、今秋あたりにすぐに補正予算を組めばば良いのですが、コロナ復興増税などの名目でそれを実行することにでもなれぱ、景気が低迷し、岸田政権は奈落の底に落ちることでしょう。

実行するにしても、内閣府が試算した、需給ギャップ20兆円(高橋洋一氏の試算では30兆円)に相当する真水の補正予算を組めば見込みがありますが、10兆円程度の予算て真水で数兆円レベルの補正予算であれば、全く見込みはないでしょう。

参院選直後までは、なんとかなってきたものの、今回の内閣改造で、自民党内の反主流派を刺激したため、政権の足元を揺るがす可能性もあります。ただ、自民党内には安倍元首相の路線を引き継ぐべきと考える人も多いですから、この人たちが、何とかしようと努力するはずです。しかし、今回の内閣の陣容をみれば、その努力は報われないのではないかと思います。

何とかしようと、試行錯誤した結果、岸田政権そのものが障害になっているということになれば、岸田バッシングの声が巻き起こるでしょう。

このブログでは、岸田政権が、派閥の力学と財務省の意向だけで動けば2年目を迎えることなく、崩壊するだろうという趣旨で記事を掲載しましたが、岸田内閣が今のままで、何ら抜本的な改革をしない限り、この予想は当たるでしょう。今回の毎日新聞の世論調査結果により、ますますこのことを確信しました。

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時刻: 8月 22, 2022 0 件のコメント:
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2022年8月21日日曜日

安倍氏死去/台湾で安倍元首相の追悼音楽会 頼副総統「感謝の思いは変わらない」―【私の論評】国葬儀の規模の大きさから、マスコミはこの詳細を報道せざるを得なくなり、多くの人々が安倍氏の偉大さを再確認することに(゚д゚)!

安倍氏死去/台湾で安倍元首相の追悼音楽会 頼副総統「感謝の思いは変わらない」

 先月8日に凶弾に倒れた安倍晋三元首相を追悼する音楽会が20日、台北市内で開かれた。安倍氏と親交があった頼清徳(らいせいとく)副総統はあいさつで「安倍元首相に対するわれわれの思いと感謝は、彼の逝去によって変わることはない」と述べ、安倍氏を悼んだ。

 音楽会は聯邦商業銀行など民間の企業や団体が主催。客家語歌手の謝宇威さんや医師でテノール歌手の劉立仁さん、全盲のシンガーソングライター、大山桂司さんなど台日の歌手らが出演した。また、安倍氏の実弟である岸信夫首相補佐官や高市早苗経済安全保障担当相らがビデオメッセージを寄せた。

安倍元首相の追悼音楽会にビデオメッセージを寄せる岸信夫首相補佐官

 頼氏は、台湾での地震発生時の支援や新型コロナウイルスワクチンの提供、国際社会での台湾支持など、生前の安倍氏が進めた台湾への支援を振り返り、安倍氏の死去によって「台湾も家族のような良き友人を失った。国際上の損失でもある」と悲しみをあらわにした。また、安倍氏が提唱したインド太平洋の安全保障戦略上の方針は安倍氏の逝去によって止まることはなく、さらに大きな力を生み、インド太平洋の平和を安定化させる効果を発揮していくことだろうと述べた。

安倍元首相の追悼音楽会の様子は以下のリンクからご覧になれます。

https://www.youtube.com/watch?v=OF4fQp7NgU8&feature=emb_imp_woyt

【私の論評】国葬儀の規模の大きさから、マスコミはこの詳細を報道せざるを得なくなり、多くの人々が安倍氏の偉大さを再確認することに(゚д゚)!

日本では、亡くなった安倍元首相にまでネガティブな報道が多いですが、台湾ではこのようなコンサートまで開催されているのです。

以前にも述べたように、安倍元首相は、安保法制の改定・付加などをはじめ国内で様々な貢献をしたとともに、国際的にも多くの貢献をしました。その中でも最たるものは、安全保障のダイアモンドの提唱からはじまり、インド太平洋戦略を提唱し、提唱するだけではなく、実際に行動し多くの国々を巻き込み、世界に新たな枠組みを構築し、秩序をもたらしたことです。

特に米国のトランプ大統領が、中国は、米国に熾烈な「地政学的戦い」を挑んていることを理解し、この新たな枠組みの重要性を理解したことは大きいです。

この新たな秩序がなけば、台湾をはじめ多くの国々が、現在より熾烈な中国の干渉や脅威にさらされていたはずです。

このような安倍元首相の業績を称え、素直に安倍元首相に感謝しているからこそ、台湾ではこのような追悼音楽会が開催されたのでしょう。

安倍晋三元首相が参院選の街頭演説中に銃撃され、死亡したニュースは世界中を駆け巡り、大きな衝撃を与えた。世界各地で安倍氏の功績をたたえる動きが広がり、安倍元首相が暗殺されてからの一月で日本政府に寄せられた追悼メッセージは260の国・地域や機関などから計1700件以上にのぼりました。

以下に、インド太平洋地域からいくつか安倍元首相を追悼する国の事例をあげます。

安倍首相(当時)とインドモディ首相

安倍晋三元首相が7月8日に銃撃されて死去したことを受け、モディ首相は翌9日、半旗掲揚を指示し、国を挙げて喪に服した。襲撃事件の詳細は、主要各紙の1面に取り上げられました。

グジャラート州首相時代から親交があったモディ首相は、異例の長文の手記「わが友、安倍さん」を公開し、「最も親しい友人」の1人の悲劇的な死に対し、言葉にできないほどの衝撃と悲しみを受けていると述べました。

「安倍晋三氏は、世界有数の政治家、傑出した指導者であり、世界をより良い場所にするために人生を捧げた。経済や世界情勢に関する彼の鋭い洞察は常に私に深い印象を与えてくれた。日米豪印のクアッド(QUAD)首脳会合(2022年5月24日記事参照)、ASEAN主導のフォーラム、インド太平洋構想、アジア・アフリカ成長回廊(AAGC)を含むインド太平洋でのインドと日本の協力、災害レジリエント・インフラ連合など、全て安倍氏の貢献から恩恵を受けた」と賞賛しました。

また「常に日印関係の強化に情熱を注ぎ、日印協会の会長に就任したばかりだった」として、東京での安倍元首相との直近の会談の写真を共有し、深い弔意を示しました。

カンボジア フン・セン首相と安倍首相(当時)

カンボジアの、フン・セン首相は8日、岸田文雄首相に宛てた書簡で哀悼の意を表し、2013年から安倍元首相が同首相と協力し、カンボジアと日本の2国間関係を戦略的なパートナーシップに発展させた功績をたたえた。また、同首相は翌9日には自身のフェイスブック()にボイスメッセージを発信し、カンボジアとの2国間関係だけでなく、メコン地域やASEANに対する安倍元首相の貢献に謝意を表明。カンボジア国民に対して、10日は喪に服し、全土でカンボジア国旗を半旗にするよう指示しました。

同首相の指示を受けて9日、トン・コン観光相は通達を発出、全土で10日はカラオケやディスコ、ビアガーデンなどの営業停止、レストランでのアルコール提供を禁止しました。

情報省は安倍氏死去を悼む歌を2曲作り、その動画をフェイスブックに投稿。外務省や法務省なども追悼のメッセージを投稿しました。また、ノロドム・シハモニ国王は日本の天皇陛下に追悼レターを送りました。

一般市民も弔意を示しています。フン・セン首相が在カンボジア日本大使館に弔問し、自筆のメッセージを寄せたというフェイスブック投稿には、13日時点で8万8,000件の反応があり、7,000件を超えるコメントがついています。また、ジェトロ職員が利用したトゥクトゥク(三輪タクシー)のドライバーや飲食店のオーナーも、こちらが日本人と気づくと、哀悼の意を表する場面も見られたといいます。

カンボジア政府関係者によると、外国要人の死去に伴って追悼メッセージを政府として送ることはありますが、これほどの対応は異例とのことです。国民が親日的で、また、安倍氏が良く知られていたことがうかがえます。

ブータン ワンチュク国王と安倍首相(当時)

安倍晋三元首相が銃撃され死亡した事件を受け、ブータンは9日を追悼の日とし、国内各地や海外の大使館などで半旗が掲げられた。

ブータン外務省によると、寺院でワンチュク国王夫妻や政府高官らが安倍氏に祈りをささげたという。外務省は「ブータンと日本は緊密な友好関係を築いており、ブータンの重要な開発パートナーだ」としている。

安倍氏は2019年、天皇陛下の「即位礼正殿の儀」参列のため来日したブータンのワンチュク国王と会談しています。

オーストラリア議会は、7月26日安倍晋三元首相の追悼決議を行っています。


日本では、主要メディアが安倍元首相に対するネガティブな印象操作を安倍氏の死後ですら継続していますが、その中にあって「産経新聞」の発行元である産業経済新聞社(産経新聞社)が募集していた、安倍晋三元首相を追悼するクラウドファンディング(クラファン)が8月15日までに締め切られ、最終的に4000万円が集まりました。

当初の目標額は500万円だったため、8倍の金額が集まったことになります。政府は暗殺された安倍元首相の国葬を9月27日に実施する方針を示しており、同社も国葬に合わせて発行する特別紙面で弔意を示すそうです。

海外では、高く評価されている安倍元首相について、いら立ちを覚えた米国在住の作家馬場信浩氏は以下のようなツイートをしています。私のツイートも含めて馬場氏のツイートを以下に掲載します。



実は、多くの人々がこのように思っていると思います。そうでなければ、第二次安倍政権が最長の政権になることなどあり得ません。安倍氏に対して亡くなってからまで、ネガティブな印象操作をするニッポン人は、樒 (しきみ)と言っても何のことなのかわからないかもしれません。榊(さかき)も知らないのかもしれません。

政府が、9月27日に東京・北の丸公園の「日本武道館」で営む安倍晋三元首相の「国葬」(国葬儀)の参列者数について、昭和42年の吉田茂元首相の国葬と同規模の約6千人を軸に調整していることが分かっています。6日、複数の政府関係者が明らかにしています。

55年前に行われた吉田氏の国葬では当初、会場となった武道館の収容能力を踏まえ、参列者数は吉田氏の遺族や国会議員、外交団など6220人と想定し、実際に6千人余りが参列した。今回の安倍氏の国葬でも会場は同じ武道館が使用されることから政府は参列者数も同規模の約6千人を目安として警備体制などの準備を進めています。

ただ、吉田氏の国葬でも70カ国を超える外交団が参列しましたが、「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を掲げ、国際的に存在感を示した安倍氏には、 8月6日現在で、米国のバイデン大統領をはじめとする260の国や地域などから1700件以上の弔意が寄せられています。外交団の参列希望も吉田氏を上回ることが予想されます。

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時刻: 8月 21, 2022 0 件のコメント:
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2022年8月20日土曜日

コロナ前を超えていないGDP、インフレ目標達成にもほど遠く…経済成長へ真水で30兆円の景気対策が必要だ―【私の論評】今秋の補正予算の組具合で、いつか来た道「失われた三十年」を繰り返すか否かの分かれ道が見えてくる(゚д゚)!

 コロナ前を超えていないGDP、インフレ目標達成にもほど遠く…経済成長へ真水で30兆円の景気対策が必要だ


高橋洋一


 15日に公表された今年4~6月期の実質国内総生産(GDP)を年率換算ベースで見ると、全体で2・2%増とプラス成長だったが、市場予想(2・5%)よりも低かった。1、2カ月前まで3%台の予想だったので、徐々に下がってきた予想をさらに下回ったことになる。

グラフはブログ管理人挿入

 これまでの推移をみると、2020年4~6月期にコロナ禍の影響で大きく落ち込み28・4%減だった。その後、7~9月期が23・7%増、10~12月期が6・7%増と回復した。

 しかし、21年1~3月期は1・4%減、4~6月期が1・8%増、7~9月期が2・1%減、10~12月期が4・0%増、22年1~3月期が0・1%増と一進一退だった。

 実額をみると、20年1~3月期が544兆円、4~6月期が500兆円、7~9月期が528兆円、10~12月期が536兆円だった。21年1~3月期が534兆円、4~6月期が537兆円、7~9月期が534兆円、10~12月期が539兆円。22年に入ると1~3月期が539兆円、4~6月期が542兆円となっている。

 4~6月期の実質GDPの実額542兆円はコロナ前を超えたという報道もあったが、これは19年10~12月期の541兆円を超えたという意味で、20年1~3月期の544兆円は超えていない。マスコミは当局の説明をうのみにしてはいけない。

 年度ベースの実質GDPの水準をみても、18年度が555兆円、19年度が550兆円、20年度が525兆円、21年度が537兆円なので、こちらもコロナ前の水準を回復していない。

 今期の内訳は民間消費が4・6%増、住宅投資が7・3%減、設備投資が5・8%増、政府消費が2・2%増、公共投資が3・8%増、輸出が3・7%増、輸入が2・7%増だった。

 民間消費は、新型コロナウイルス対策の蔓延(まんえん)防止等重点措置の解除で伸びた。設備投資もまずまずだ。しかし、住宅投資はいまいちだ。

 公共投資はかろうじて6期連続マイナスという汚名を返上できた。しかし、予算は確保しているのに執行がうまくできていない状況に変わりはない。事実上の公共事業採択基準になっているコストベネフィット(費用便益)分析における社会的割引率が4%と高すぎることを含め、執行の弊害を全て洗い直す必要がある。公的部門の投資で民間活動を引き出すべきで、民間部門の動きを待ってから政府が動くというのは本末転倒だ。

 いずれにしてもコロナ前を十分に回復していない。相当額のGDPギャップ(総需要と総供給の差)が存在しており、エネルギー・原材料価格が上昇しても、価格全般が上昇する「物価上昇」につながりにくい。

 8月19日公表の7月消費者物価は、総合2・6%の上昇、生鮮食品を除く総合2・4%の上昇だが、物価の基調を示す生鮮食品・エネルギーを除く総合は1・2%の上昇とインフレ目標の2%には程遠い。

 今後の経済成長のためには、秋の臨時国会の補正予算で、「真水で30兆円程度」のしっかりした景気対策が必要だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】今秋の補正予算の組具合で、いつか来た道「失われた三十年」を繰り返すか否かの分かれ道が見えてくる(゚д゚)!

上の記事で、高橋洋一氏は、以下のように語っています。
4~6月期の実質GDPの実額542兆円はコロナ前を超えたという報道もあったが、これは19年10~12月期の541兆円を超えたという意味で、20年1~3月期の544兆円は超えていない。マスコミは当局の説明をうのみにしてはいけない。
これは冒頭のグラフや以下のグラフをご覧いただければ、すぐに理解できます。下のグラフのほうが目盛りが細かいのと、19年平均と19年10-12月期を示していますのでより理解しやすいです。


これを見ると、2019年10~12月期の実質GDPは、前期比年率で11.3%ポイントも下がっています。日本のメディアによる経済報道においては「コロナ前水準」の比較対象として2019年10~12月期を用いる事が多いようですが、これはとても適正であるとは考えられません。

19年10~12月期といえば、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動により前期比年率マイナス11.3%もの落ち込みとなっており、通常よりも水準が大幅に低い時期でした。このように極端に落ち込んだ特殊な時期を「コロナ前」の比較に用いることは誤解を招きやすいです。

思い返すと2019年10月1日、2度にわたり延期されていた消費税率の引き上げが行われ、8%から10%に税率が引き上げられました。このため、増税前の9月までに消費者が商品購入を急ぎ、その反動から10月以降は一気に需要が落ち込んだのです。

実際、22年4~6月期の実質GDPの水準は、コロナ前ピークである19年4~6月期対比でマイナス2.7%、19年(暦年)平均対比でマイナス1.9%ポイントも下回っています。「コロナ前」としての比較対象としては、こちらのほうが適していると考えられます。

結局のところ、『22年4~6月期にコロナ前水準を回復』という言葉は適当ではなく、実際には経済活動の正常化には未だ距離がある状況という認識のほうが妥当です。

正確な比較対象として、「コロナ前」の水準を2019年4~6月期とすれば、今回発表した実質GDPは「コロナ前」に比べてマイナス2.7%であり、決して景気回復したとはいえません。

さらに、以下にコロナ禍が始まって以降の、名目GDPの四半期・年率換算のグラフを掲載します。

クリックすると拡大します

日本の総需要(名目GDPベース)のピークは、2019年7-9月期(消費税増税前)の562兆円(四半期・年率換算)でした。その後、消費税増税により縮小が始まり、そこにコロナ禍による経済活動の停滞がおこりました。

20年4-6月期(最初の緊急事態宣言が出た四半期)は、511兆円という信じがたい水準に落ち込みます。

その後、「少し戻して横ばい」が続いており、22年4-6月期は545兆円。つまりは、名目実績ベースで見ても、現在の日本は19年増税前と比較し、名目ベースで20兆円近いデフレギャップ(総需要不足)を抱えていることになります。

現在、日本はGDPデフレータベースのインフレ率がマイナス化しています。要するに、デフレが継続しているのです。

デフレータがマイナスの場合、名目GDPが増加しなくても、実質GDPは成長しているように「計算されてしまう」のです(実質GDPは、元々、計算で算出します以下に計算式を示します)。


多くの政治家は、GDP統計に関する知識がないため、財務省の公表する内容を、何も吟味せずオウム返しのように、報道する日経新聞をはじめとする報道機関の報道に軽くだまされてしまうのでしょう。


岸田政権は、GDPデフレータがマイナスというデフレ状態であるにも関わらず、「すでにコロナ禍前を回復した。補正予算は不要。通常予算も抑制」と、緊縮財政を推進してくるかもしれません。それどころか、あれこれ理屈をつけて「増税」をしてくるかもしれません。


ただ、自民党内には積極財政派も多いですから、まったく補正予算を組まないということはないかもしれません。

先に、名目ベースでの需給ギャップは約20兆と述べましたが、上の高橋洋一氏の試算では30兆となっています。これは、まずは名目ベースと実質ベースの違いです。

内閣府の試算では、実質ベースで需給ギャップは20兆円です。この違いは、内閣府は需給ギャプが少なめになるように計算しているからです。これについては、以前このブログでも述べたことがありますので、興味のある方は、これを参照していただきたいと思います。

ただ、内閣府が需給ギャップが20兆あると公表しているのですから、岸田政権が最低でもこれに相当する額の補正予算、それも真水の予算を組むべきです。そうでないと矛盾します。

この規模の予算を組んでおけば、あまり景気が落ち込こともなく、失業率もあまりあげることもなく推移し、また来期にでも真水の10兆円規模の補正予算を組めば、需給ギャップは解消すると思います。

しかし、今秋の補正予算を組まないとか、組んだとしても、真水で数兆円の桁違いの予算を組めば、その後岸田政権は緊縮路線を走り、来年の3月の日銀黒田総裁の任期終了にともない、金融引締派の総裁を据え、いつか来た道である「失われた三十年」を繰り返すことになるかもしれません。

最悪なのは、補正予算の財源を消費税増税やコロナ復興税で賄うことを条件に、補正予算を組むことです。こうなると「失わた三十年」は確実になるとみるべきでしょう。岸田政権は、かつての民主党政権のように財務省管理内閣になったとみるべきでしょう。

そうならないように、自民党内の積極財政派は頑張るでしょうが、安倍総理がなくなり、強力な後ろ盾がなくなってしまい、さらに今回の改造人事によって、財務省は政治的な圧力を心配せずに、緊縮的な補正予算と来年度予算編成の態勢ができたみられ、現在どれだけ主張を通せるか非常に心もとない状況にあります。

今後どのようになるかは、先に述べたように今年秋の補正予算の組み具合によってはっきりするでしょう。岸田政権が緊縮路線に走ることがはっきりすれば、次の政局は自民党内では「自民党自体は毀損することなく、いかに岸田政権をなるべく短期政権にするか」という方向で政局が動き出すかもしれません。

この動きにマスコミや、野党も連動してほしいものですが、「統一教ガー」などと叫ぶばかりでは、「もり・かけ・桜」の繰り返しになるだけで、大きな政局の流れからは、また無関係な存在になることでしょう。岸田政権が、崩壊して総選挙になっても、何も変わりなく、党勢や、存在感を増すこともないでしょう。

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時刻: 8月 20, 2022 0 件のコメント:
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2022年8月19日金曜日

破産宣言のスリランカ 債務再編主導を日本に依頼へ―【私の論評】スリランカは、日本に開発途上国から化石燃料を奪う事の非を欧米に理解させ、その開発・利用への支援を再開して欲しいと願っている(゚д゚)!

破産宣言のスリランカ 債務再編主導を日本に依頼へ

2015年10月 スリランカのウィクラマシンハ首相(当時)と首脳会談をした安倍首相(当時)

 深刻な経済危機に陥り、破産を宣言しているスリランカのウィクラマシンハ大統領は18日、ロイター通信の取材に対し、債務再編の協議の主導を日本に依頼する考えを示した上で、来月、日本を訪れ、岸田総理大臣と会談する意向を表明しました。  スリランカ・ウィクラマシンハ大統領「誰かが主要債権国を集める必要があり、我々は日本に依頼する」  ウィクラマシンハ大統領は、このように述べ、債務再編に関する協議の主導を日本に要請する考えを示しました。その上で、来月に日本を訪れ、岸田総理と会談する意向を表明しました。  スリランカの2国間債務は約62億ドルに上ると推定され、日本や中国、インドが主な債権国です。16日には、中国の調査船がスリランカ南部の港に入港し、インド側が「スパイ船」と批判するなど、中国とインドは、スリランカへの影響力拡大をめぐり対立しています。  ウィクラマシンハ大統領としては、経済危機からの脱却のため、日本の主導で、債務再編の交渉を円滑に進めたい狙いがあるとみられます。

【私の論評】スリランカは、日本に開発途上国から化石燃料を奪う事の非を欧米に理解させ、開発・利用への支援を再開して欲しいと願っている(゚д゚)!

スリランカの議会は先月20日、ラニル・ウィクラマシンハ首相を新たな大統領に任命しました。同国では政府に対する大規模な抗議行動を受け、先週にゴタバヤ・ラジャパクサ前大統領が国外に逃亡。その後、辞任していました。

ウィクラマシンハ氏は議会では対立候補のドゥルス・アラハッペルマ氏を134対82と大差で下したものの、国民の人気は低いといいます。

新大統領は今後、経済危機と、数カ月にわたる抗議運動による混乱を収める必要があります。

スリランカの経済が破綻し大規模デモがおきて政権が転覆したのは、数々の失政が重なった結果ですが、とどめの一撃となったのは燃料費の高騰でガソリンが輸入できなくなったことでした。

スリランカの最大都市コロンボで最近みられる、ガソリンスタンドでたくさんの車やバイクが行列ぎょうれつをつくる光景

いまの開発途上国でのエネルギー危機は、単にウクライナの戦争のせいではありません。近年になって、欧米の圧力によって化石燃料事業への投資が停滞していたことが積み重なって、今日の破滅的な状態を招いているのです。

インド人の研究者である米国ブレークスルー研究所のビジャヤ・ラマチャンドランは科学雑誌Natureに書いています。
「近代的なインフラを最も必要とし、世界の気候変動問題への責任が最も軽い国々に制限を課すことは、気候変動の不公正の極みである」。
ラマチャンドランは、国際援助において、気候変動緩和をすべての融資の中心に据えるという近年の方針について、偽善であり、二枚舌だとして、猛烈に抗議しています。
「それは、経済開発に使える資源を必然的に減らすことになり、しかも地球環境にはほとんど貢献しない。・・なぜそのような努力をするのか。世界銀行とIMFの主要株主である富裕国は、これまでのところ、エビデンスや合理的なトレードオフに基づく気候変動政策の策定にはほとんど関心を示していない。 
それどころか、天然ガスを含む化石燃料への融資を制限し、自国では思いもよらないような制限を世界の最貧国に対して課すことを、自画自賛しているのである。その規制の中には、化石燃料への開発金融をほぼ全面的に禁止することも含まれている。 
世界銀行は、気候変動緩和政策と貧困削減の間の急激なトレードオフを最もよく理解しているはずである。しかし、国内の環境保護団体を喜ばせたい資金提供者が課した条件には従うしかなかったようだ。・・欧州連合は、自分たちはクリーンエネルギーの原子力発電所を停止し、天然ガスの輸出入を増やし、国内の石炭発電所を新たに稼働させる一方で、開発金融機関に対しては、貧困国でのすべての化石燃料プロジェクトを直ちに排除するよう主張している。」
「さらに悪いことに、EUの官僚たちは現在、『何がクリーンエネルギーか』をめぐって一進一退の攻防を繰り広げている。燃料不足に直面する加盟国から、原子力や天然ガスまで定義(タクソノミー)を拡大するよう圧力がかかっている。その一方でEUの広報担当者は、“EUの柔軟な分類法は、開発政策に反映されることはない”と明言した。つまり天然ガスはヨーロッパ人にとってはグリーンだが、アジアやアフリカの人々にとっては事実上禁止されるということだ。」
何十億人の人々が、先進国のエリートたちによって、化石燃料のない、貧困に満ちた未来へと組織的に強制されているのです。気候危機説を信奉する指導者たちが、開発途上国の化石燃料使用を抑圧しているからです。哲学者のオルフェミ・O・タイウォは、この現象を「気候植民地主義」と呼んでいます。

残念ながら、日本もこれに加担しています。

6月22日に、日本の外務省はバングラデシュとインドネシアに対する政府開発援助(ODA)による石炭火力発電事業支援の中止を発表しました。CO2の排出が理由であり、G7の意向に沿った形です。


ちょうどその同日、この夏の電力不足に対応するため、停止していた火力発電所の再稼働を急いでいる、とのニュースが流れました。千葉県の姉崎火力発電所5号機、愛知県の知多火力発電所5号機などです。

自分の国で電力不足になると火力発電に頼る一方で、途上国の火力発電所は見捨ててしまうというのは道義にもとります。日本がいま電力不足なのは事実だですが、バングラデシュほど慢性的に電力が不足し停電が頻発し経済に甚大な悪影響を及ぼしている訳ではありません。

開発途上国の化石燃料利用を禁止する一方で、今後は経済開発を再生可能エネルギーで実現しろと命じるのは、発電の物理的現実と何十億人もの貧困を否定する傲慢さを示すもの以外の何ものでもありません。

これに対して、叛逆する指導者たちも出てきています。6月、ニジェールのモハメド・バズーム大統領は、次のように述べた。
「アフリカは、2022年末までに外国の化石燃料プロジェクトに対する公的融資を打ち切るという西側諸国の決定によって罰せられている…我々は戦い続けるつもりだ。アフリカ大陸が天然資源を開発することを許可すべきだ。100年以上にわたって石油とその派生物を搾取してきた者たちが、アフリカ諸国が資源の価値を享受するのを妨げているのは、率直に言って信じがたいことだ。」
他方で、能力を有する諸国は、エネルギー増産に励んでいます。国際価格が暴騰したのだから、当然の行動です。

中でも、すでに世界最大の石炭消費国である中国は、エネルギー不足を食い止めるため、生産量の増加に躍起になっています。昨年は世界最多の41億トンの石炭を生産していたのですが、2022年には更に3億トンの生産を追加する計画です。

2021年7月から10月にかけては、年間2億7000万トンの生産能力を追加しており、これは南アフリカの全年間生産量(年間約2億4000万トン)を上回ります。

また、中国には新たな炭鉱計画があり、今後数年間でさらに年間5億5900万トンの生産能力を追加する予定である。これは、世界第3位の石炭生産国であるインドネシアの年間生産量(年間5億6400万トン)よりも多いです。

中国は資金も技術もあるので増産できます。ところが殆どの開発途上国は資金も技術も欠いていて、たとえ資源を有していても、エネルギー不足と価格高騰の窮状にあえいでいまう。これを助けないならば、一体何のための国際支援なのでしょうか。

来年2023年は日本はG7議長国となります。開発途上国から化石燃料を奪う事の非を欧米に理解させて、化石燃料の開発・利用への支援の再開を訴えるべきです。

もしこれに失敗すれば、開発途上国は本当に欲しいものを供給し支援してくれる国々を頼るようになるでしょう。それはロシアであり、中国になるでしょう。

開発途上国は先進国が呼びかけた対ロシア経済制裁に殆ど参加しませんでした。つまりいつまでも先進国の言いなりにはならないということです。

そうした中での、スリランカによる債務再編主導の日本への依頼です。スリランカは、開発途上国から化石燃料を奪う事の非を欧米に理解させて、化石燃料の開発・利用への支援の再開を訴えて欲しいのだと思います。

日本の化石燃料を用いた発電など、かなり技術が進んでいます。石炭火力発電というと、皆さんのイメージの中には、もくもくと真っ黒な煙をあげるものというイメージがあるかもしれません。

しかし、最近の石炭火力発電は、環境にかける負荷がずいぶんと減ってきています。たとえば、横浜市にある磯子石炭火力発電所は、「クリーンコール技術」とよばれる技術を活用し、大気汚染物質の排出を大幅に削減しています。2002年のリプレース(建て替え)前に比べると、窒素酸化物(NOx)は92%、硫黄酸化物(Sox)は83%、粒子状物質(PM)は90%減っています。

特に日本は世界でも最高効率の発電技術を持っています。発電効率が向上すれば、少量の燃料でたくさんの電気をつくることができるようになり、そのぶん、火力発電から排出されるCO2の量も削減されます。また、大気汚染物質の排出も大幅に削減しています。今後もさらなる技術開発をおこない、効率化とCO2削減を進んでいくでしょう。

世界には、どうしても石炭をエネルギー源のひとつとして選択せざるを得ない国が存在しています。その理由は、安定した供給をおこなうことができるという「エネルギー安全保障」、そして「経済性」にあります。

国際エネルギー機関(IEA)の分析では、インド、東南アジア諸国を中心とした新興国では、経済発展とともに、今後も石炭火力発電のニーズが拡大する見通しとなっています。新興国にとって、安く、安定的に採れる石炭は、引き続き、重要なエネルギーなのです。

2017年11月に開催された「東アジアサミット」、2017年9月に開催された「ASEAN+3エネルギー大臣会合」においても、ASEAN諸国からは、エネルギー安全保障と同時にCO2削減にも貢献するクリーンな石炭火力発電技術について、積極的に活用していきたいとの言及がありました。また、その導入のため、金融面・技術面で支援を求める声もありました。

2017年11月に開催された「東アジアサミット」中央は安倍総理(当時)

日本は、海外に対して、再生可能エネルギーや水素、排出したCO2を貯める「CCS」や貯めて使う「CCUS」などを含んだ、さまざまなエネルギーの選択肢を提案し、支援しています。日本は、石炭火力発電を選ばざるを得ない国々に対しては、日本ができる貢献として、日本が持つ高効率発電技術の輸出をおこなっているのです。これは、途上国の発展に対する貢献になることはもちろん、アジア地域全体の温暖化対策、大気汚染物質の削減への貢献にもなります。

こうした事実があるからこそ、スリランカは日本に期待しているのでしょう。ロシアのウクライナ侵攻にともない、欧米諸国はロシアに対する制裁を強化しました。それに反発したロシアはエネルギーによって、西欧諸国を脅かしはじめました。

現在世界の多くの国々がエネルギー問題に直面しています。日本は、スリランカの債務再編を主導するだけではなく、エネルギー分野まで踏み入ってスリランカを支援すべきでしょう。

そうして、スリランカにとどまらず、日本の技術力によって、化石燃料を使いつつも環境を保全できるように、世界中の国々対して支援ができるように様々な努力を重ねていくべきでしょう。

その過程で、日本自身もエネルギー安全保障と、CO2 の削減に取り組んでいくべきです。原発なども視野に入れて取り組むべきです。この必要性は、ロシアのウクライナ進行によって多くの国が認識するに至りました。

石油などのエネルギー資源に昔から悩まされてきた日本だからこそ、エネルギー問題に敏感で、省エネ等様々な技術開発に取り組んできたのです。今こそ、日本が世界に貢献し、存在感を増す絶好の機会だと思います。

将来的には、小型原発や核融合炉にも挑戦し、世界のエネルギー問題を解決し、世界をエネルギー問題からの軛から解き放つべきです。これに向けて道筋をつければ、岸田総理は安倍総理と並んで、日本の傑出した宰相として高く評価されることになるでしょう。

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2022年8月18日木曜日

台米の貿易交渉、今秋開始へ 行政院「貿易協定締結へ」―【私の論評】岸田首相は、TPP加盟で、中国については反対、台湾は賛成と表明すべき(゚д゚)!

台米の貿易交渉、今秋開始へ 行政院「貿易協定締結へ」


 台湾と米国の経済連携の強化に向けた新協議体「21世紀の貿易に関する台米イニシアチブ」の交渉が今秋、正式に開始する見通しだ。行政院(内閣)は18日、双方は「なるべく早期に具体的成果を出し、貿易協定を締結したいと願っている」と説明した。

 台湾と米国は今年6月、新協議体の始動を発表。貿易の円滑化やデジタル経済など11分野を柱とする。米通商代表部(USTR)が17日夜、報道資料を出し、今秋の協議開始について明らかにした。

 USTRのサラ・ビアンキ次席代表は、「台湾との貿易や投資における関係深化を促し、双方が価値を共有する貿易の優先事項の推進につながる」との考えを示した。

【私の論評】岸田首相は、TPP加盟で、中国については反対、台湾は賛成と表明すべき(゚д゚)!

米台の貿易交渉は、日米など14カ国が参加表明した経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」に台湾が加われないため、米台イニシアチブを代替の枠組みとするとされています。 IPEFと他の貿易協定の関係を以下に掲載しておきます。


今月初めにナンシー・ペロシ米連邦下院議長が台湾を訪問して以来、米中間の緊張が高まっています。

中国は台湾を、自国から分離した省とみており、いずれは再び中央政府の支配下に置かれるべきだと考えている。一方で台湾は、独自の憲法と民主的に選出された指導陣を持つ独立国家を自認しています。

アメリカは台湾を正式に承認していないですが、強力な関係を維持しており、台湾が自衛できるよう武器を販売しています。

これとは別に、ダニエル・クリテンブリンク米国務次官補(東アジア太平洋担当)は18日、中国政府の「威圧感の増大が(中略)台湾海峡の平和と安定を脅かしている」と発言。

「平和と安定を損なおうとする中国政府の現在進行形の動きに直面する中で、我々は長年の方針に沿って、平和と安定を守るために冷静かつ断固とした措置をとり続け、台湾を支援していく」としました。

中国は、台湾に対する軍事的威嚇だけではなく、経済的にも報復する姿勢を示しています。

中国は台湾産のかんきつ類や一部水産物の輸入と、天然砂の台湾向け輸出を一時停止しました。果物から害虫や殺虫剤を検出したことなどが理由というが、誰も信じないでしょう。強大な経済力で対立する相手に圧力をかける経済的威圧は中国の常套手段です。

指摘したいのは、6月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)でも7月末の日米経済政策協議委員会(経済版2プラス2)でも、中国を念頭に置き、経済的威圧に対処する考えを確認したことです。台湾が中国の圧力にさらされている以上、台湾に寄り添い、支えるのは民主主義国の責務です。

日本は当事国ではないから傍観するというのでは中国の振る舞いを黙認することになります。台湾と連帯するため日本が取るべき行動はあるはずです。手始めに、中国と台湾が昨秋、ともに申請したTPP加盟で、中国については反対、台湾は賛成と岸田文雄首相が表明してはどうでしょうか。日本の同意がないと中国加盟の道は閉ざされます。いつまでも強権姿勢を改めない中国がTPPにそぐわないことを、まずははっきりさせるべきです。

そうして、IPEFには、問題があります。

それについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
バイデンが転換すべき「貿易臆病」のナラティブ―【私の論評】TPPに復帰し中国を封じ込め「地政学的戦争」に勝利すれば、バイデン氏は歴史名を刻むことに(゚д゚)!
問題はIPEFの実効性です。米国の関税率引き下げが期待できず、自国の非関税障壁の縮小を迫られるならば、新興国にとりIPEFに参加するメリットは不透明と言えます。一方、日本政府は、TPP加盟こそが米国の本来採るべき道と考えているようです。萩生田光一経産相は、5月10日の閣議後会見で、IPEFに関し「加盟国のメリットが不明瞭」と率直に語りました。

米国もそうした指摘は十分に認識しているのでしよう。IPEFの交渉の柱とする「公正な貿易」、「サプライチェーンの回復」、「インフラと環境への投資」、「税制と腐敗防止」の4つの分野に関し、個々の国が全ての議論に参加する必要はなく、個別に選んで参加できる方式を導入する模様です。

それでも、今のところASEAN10ヶ国でIPEFへの参加が見込まれるのはシンガポールだけと言われています。トランプ前大統領がTPPから離脱したツケは、米国のインド太平洋戦略に大きなダメージを与えていると言えます。

このようなことがあるので、台湾は米国と貿易交渉をすること自体はやぶさかではないのでしょうが、IPEFに準ずる貿易協定になるため、あまり期待はしていないでしょう。

実際、ブログ冒頭の記事は、「フォーカス台湾」という台湾のサイトの記事なのですが、事実を淡々とは述べていますが、台湾側の期待などについては、触れられていません。

台湾はTPP協定を熱心に勉強していますし、大陸中国とは異なり、民主化が進み、市場は自由化し、変動相場制を導入しています。加入交渉に時間はかからないでしょう。台湾が高いレベルの協定を受け入れて中国ができないということになれば、中国のメンツは保てないです。

中国のTPP加入申請は、米国がTPPから離脱したために起こったものです。米国では自由貿易に反対する勢力も強いですが、中国に厳しい態度で臨むべきだとする勢力も強いです。米国が中国に対抗しようとするなら、TPPに復帰することが望ましいことを米国に働きかけるべきです。

TPP交渉を開始したオバマ政権の副大統領だったバイデン大統領なら、中国との関係でもTPPは重要であることを理解するでしょう。また、通商関係では、連邦議会は大きな力を持っています。

中国の台頭を懸念するチャック・シューマー民主党上院院内総務

中国の台頭を懸念するチャック・シューマー民主党上院院内総務などにもTPPの重要性を訴えるべきでしょう。仮に復帰のために必要があると米国が要望するのであれば、米国が希望するTPPの環境章や労働章を見直してもよいと思います。

岸田首相が、TPP加盟で、中国については反対、台湾は賛成と岸田文雄首相が表明し、最終的に台湾と米国をTPP に加入させることに成功すれば、世界が安倍元総理を注目したように、岸田首相を注目することになるでしょう。再び日本が、安倍総理時代の時のように、世界で自由貿易や、安全保障でリーダーシップを発揮する契機となることでしょう。

菅前総理は、安倍元総理のリーダーシップを継承しましたが、岸田総理はどうなのか、非常に疑問です。しかし今更これを継承しないというのなら、日本に存在感は地に落ちるでしょう。ましてや、親中派路線を強行することにでもなれば、日本も中国に並んで、世界から邪悪な存在とみなされかねません。

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2022年8月17日水曜日

米共和「反トランプ」急先鋒のチェイニー氏、下院予備選でトランプ氏「刺客」に敗れる―【私の論評】24年の次期大統領選に向け、着実に道筋をつけつつあるトランプ氏(゚д゚)!

米共和「反トランプ」急先鋒のチェイニー氏、下院予備選でトランプ氏「刺客」に敗れる

破れたリズ・チェイニー氏

 米国の中間選挙(11月8日投開票)に向け、ワイオミング州で16日、連邦下院選の共和党候補を決める予備選が行われた。複数の米メディアによると、昨年の連邦議会占拠事件を巡ってトランプ前大統領への批判を強める現職のリズ・チェイニー氏(56)が、トランプ氏の推薦を受けた「刺客」候補に敗れることが確実になった。

 ワイオミング州は保守の牙城で、保守層に対するトランプ氏の影響力が依然として強固なことが示された。チェイニー氏は議会占拠事件を巡るトランプ氏の 弾劾だんがい 訴追決議に賛成した共和党議員10人の1人。事件を巡って下院が設置した特別調査委員会の副委員長としてトランプ氏の責任を追及するなど、党内の「反トランプ」の急 先鋒せんぽう だ。

 トランプ氏はチェイニー氏の対抗馬として弁護士のハリエット・ヘイグマン氏(59)を推薦した。

【私の論評】24年の次期大統領選に向け、着実に道筋をつけつつあるトランプ氏(゚д゚)!

エリザベス・リン・チェイニー(英語: Elizabeth Lynne Cheney, 1966年7月28日 - )は、アメリカ合衆国・ウィスコンシン州出身の政治家、共和党員。愛称のリズ・チェイニーとも称されています。

セカンドレディ・リン・チェイニーとディック・チェイニー副大統領の長女で、ジョージ・W・ブッシュ政権下で国務副次官補(近東担当)などの要職を歴任しました。

2017年からはワイオミング州選出のアメリカ合衆国下院議員を3期務めています。2019年からは下院共和党で3番目に高い地位である共和党会議議長に選出されました。

ネオコンの主導的な政治家の一人であり、他国への介入を避けるトランプ政権のモンロー主義的外交政策には批判的態度を取ってきました。共和党の指導者でありながら、トランプ大統領の弾劾決議に賛成票を投じたため、トランプ支持者や共和党右派によって批判を受けています。2021年5月には党内の内部対立が原因で党会議議長を解任されました。

ハリエット・ヘイグマン氏

今回勝利した、ヘイグマン氏は弁護士で、共和党全国委員会の元メンバーでした。ヘイグマン氏は2018年のワイオミング州知事選に立候補したが敗れていました。13年には上院選に出馬したチェイニー氏のアドバイザーを務めてもいました。

ヘイグマン氏は2021年9月9日の声明で「多くの州民と同様、私は国政を目指したリズ・チェイニー氏を支持した」「しかしその後、チェイニー氏はワイオミング州を裏切り、国を裏切った。そして私をも裏切った」と述べていました。

7月26日、トランプは昨年1月の米大統領退任後、初めて首都ワシントンに戻り、自身を支持する政治団体の会合で演説しました。

「この11月、わが国の破壊を止め、米国の未来を救うために投票しよう」

11月の中間選挙を控え、トランプが矛先を向けるのは与党民主党だけでなく、エスタブリッシュメント(支配層)派と呼ばれる既得権益を持つ共和党内の支配層に近い議員たちです。先日もこのブログに掲載したように、米国の富の大きな部分を握ってるわずか上位0.1%がエスタブリッシュメントです。

このエスタブリッシュメントは、過去においては、大統領は無論のこと、連邦議員や、地方議員などの選挙にも大きな影響力を発揮してきました。この状況から、米国では大統領もエスタブリッシュメントの操り人形だと揶揄されてきたのです。


しかし、トランプは違いました。
実業家のトランプ氏はエスタブリッシュメントの資金ではなく、自ら選挙キャンペーン費用を調達し、大統領になりました。

トランプ氏はエスタブリッシュメント派を「腐敗した組織」と切り捨て、急進的な改革を志向する党内の「草の根派」の支持者らに自身への忠誠を求めました。

ここで言葉を整理しておきます。エスタブリッシュメントとは、先にも示したように、米国の富の大きな部分を握ってるわずか上位0.1%の実質上の米国の支配層のことです。エスタブリッメント派とは、エスタブリッシュメントに親和的な議員、大統領のことです。

トランプ氏は、大統領在任中にも反エスタブリッシュメント色を深めました し、大統領を退いてからは地方選の予備選にも、「刺客」の候補者を次々に送り込み、地方政治に深く関与するエスタブリッシュメントに脅威を与えています。

その象徴となったのは、5月に行われたアイダホ州知事選の共和党予備選でした。トランプの支持を受ける草の根派の現職副知事ジャニス・マクギーチン(59)が、エスタブリッシュメント派と目される現職知事ブラッド・リトル(68)に挑みました。

マクギーチンは副知事在任中、知事のリトルと激しく対立。リトルが出張で州外に出た隙を狙い、知事代理の権限で新型コロナウイルス対策のマスク着用義務やワクチン接種義務を独断で取り消したこともありました。こうした仕事ぶりが災いし、予備選の結果はマクギーチンが得票率で20ポイントも差をつけられる大敗でした。

連邦議会上下両院の予備選ではトランプの推薦が強く作用しますが、有権者の生活に直結する地方政治の代表は実績や好感度で選ぶというところがあります。こうした傾向は各地の地方選予備選で顕著に表れ、ジョージア州でも大物知事として知られる現職ブライアン・ケンプが、トランプの「刺客」候補を大差で破りました。ただ、反トランプ派の勝利はこれくらいのものでした。

そうして、共和党内では草の根派が着実に力をつけています。かつてエスタブリッシュメント派一色だった共和党は、10年の保守派運動「ティーパーティー(茶会)」で政治に関心のなかった層を取り込み、16年大統領選で当選したトランプがさらに大きなうねりを生み出しました。今やアイダホ州共和党の要職は大半が草の根派です。

中間選挙で与党・民主党の苦戦を予想する見方が広がるなか、攻勢を強めてきたのが共和党のトランプ前大統領でした。

220人以上の候補者に推薦を出して勢力を広めつつ、共和党内の「反トランプ派」には「刺客候補」をぶつけて再選を阻んできました。近く、2年後の大統領選に向けた出馬宣言をするかどうかも注目されています。

昨年1月の議会襲撃事件を受け、民主党はトランプ氏の弾劾(だんがい)訴追を提案しました。これに共和党から賛成した下院議員が10人。これらの議員が「裏切り者」として狙い撃ちにされているのです。

10人のうち、予備選を勝ち抜いて11月の中間選挙に出馬できる議員は2人にとどまります。3人は予備選で「刺客」に敗れ、4人は不出馬を決めました。

そして最後の1人が、リズ・チェイニー下院議員でした。ブッシュ(子)政権の副大統領だったディック・チェイニー氏を父に持ち、自らも過去3回の選挙で圧勝してきました。

ところがトランプ氏を批判したことで状況は一変しました。16日に投開票されたワイオミング州予備選に向けて、世論調査では「刺客候補」にリードを許す苦しい展開となりました。

米連邦下院選のワイオミング州共和党予備選に向けた集会で、トランプ前大統領(右)の支持を受け、握手するハリエット・ヘイグマン氏=米ワイオミング州キャスパーで2022年5月28日

そうして、今回ワイオミング州では、トランプ前大統領への批判を強める現職のリズ・チェイニー氏(56)が、トランプ氏の推薦を受けた「刺客」候補に敗れることが確実になったのです。

トランプ氏は6日にはテキサス州で開かれた保守系団体の集会で、「バイデン(大統領)をクビにする」と気勢を上げました

中間選挙で完全復権を果たし、24年の次期大統領選に向け道筋をつけるのかの、答えは3カ月後に出ます。ただ、今回リズ・チェイニーがトランプの刺客に敗北したことで、トランプ氏は、この道筋を着実につけつつあるといえます。

トランプ氏は、現在機密文書に関連して家宅捜査を受けたことなどが、報道されていますが、これに対して、私は米民主党はトランプ弾劾に続き、スパイ容疑でトランプ氏を貶めようとしたが、失敗に終わると断言しましたが、その見立ては正しかったと確信を深めました。

もし、これが本当だとすれば、今回のようにチェイニー氏がトランプ氏の刺客に敗北することなど考えられないからです。

日本のANNニュースも、このニュースを取り上げていました。そのニュースは以下のリンクからご覧いただけます。

https://www.youtube.com/watch?v=prr04qJSt6Y

このニュースでは、米CNNがコマーシャルを中断してまで、リズ・チェイニー氏が敗北したことを伝えていました。

そうして、最後のほうでは、アメリカを分断したトランプが共和党内でも、分断をはかっていると批判していました。

しかし、米国はもともと随分前から分断しており、オバマの頃から分断が激しくなり、それ故にトランプが登場したというのが現実です。実際オバマが大統領時代の米国を調べれば、分断が酷くなっていたことを確認できるはずです。

また、トランプが共和党を刺客を送ることにより、新たに分断したようなことを語っていますが、これも間違いです。

米国で最初の、反エスタブリッシュメントの大統領は、ケネディ大統領です。ですから、この頃から民主党はエスタブリッシュメント派とその反対派で分断していました。その頃から共和党も分断していました。

共和党にも、民主党にもエスタブリッシュメント派と反対派が存在し続けています。米国政治においては、共和党、民主党という党派の別があるとともに、エスタブリッシュメント派とその反対派が存在してきたのです。

その時々で、エスタブリッシュメント派が優勢であるとか、そうてもないときもありましたが、分断していたのは事実です。

ケネディ以後、はっきりと反エスタブリッシュメントを掲げた大統領は、民主党にも共和党にもいませんでしたが、トランプ大統領が反エンタブリュッシュメン派を掲げた大統領として登場したのです。これを理解しないと、メディアのネガティブな報道にも関わらず、トランプ人気がなぜここまで続くのか理解できません。

このあたりの事情も知らないで、トランプ氏が刺客を送ることにより、共和党内での分裂を招いたというのは、あまりにも浅薄な見方です。

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2022年8月16日火曜日

FBI家宅捜索に新展開:トランプには持ち帰った文書を機密解除する「内務規定」があった―【私の論評】 背景には「トランプに弱みを握られた」かもしれない有力者の不安がある(゚д゚)!

FBI家宅捜索に新展開:トランプには持ち帰った文書を機密解除する「内務規定」があった

<引用元:JustTheNews 2022.8.13>
トランプ前大統領事務所が、マーアラゴの機密文書につながったこれまで申告されなかった手続きを説明

 
ドナルド・トランプ事務所は12日、FBIがマーアラゴの邸宅から押収した機密文書は、大統領在任中に夜も継続して作業するためにホワイトハウスの住居への持ち込みを許可した「内務規定」の下で、機密解除されていたと本紙に述べた。

公式声明は、FBIとバイデン政権司法省が、トランプが大統領記録法が適用される記録を盗んだかスパイ防止法において機密文書の取り扱いを誤ったかを捜査する中で、前大統領の弁護の焦点となる可能性がある。それらの容疑は12日にフロリダ州連邦裁判所によって公開された捜査令状に含まれたものだ。

大統領の弁護は、大統領と副大統領には米国政府の究極的な機密解除権限があり、もっとも最近ではジョージ・W・ブッシュが2003年に、バラク・オバマが2009年に出した大統領令によって、大統領と副大統領は他の連邦機関や当局者が従わなければならない厳重な機密解除手続きに従うことを特別に免除されるという法的な原則に根差している。

トランプは数週間の間、退任後に保有していた機密印のある文書は全てこれまでに機密解除されたものだと主張してきた。12日夜、本紙に提出された声明では、トランプの記憶でその機密解除が一体どのように行われたかを説明していた。

これらの文書がマーアラゴに存在していたという事実こそ、機密であるはずがなかったいう意味だ、と前大統領の事務所は述べた。「誰もが共感できるように、自宅に仕事を持ち帰らなければならないことは誰でも時として起こることです。アメリカ大統領も全く同じです。トランプ大統領は、次の日の仕事の準備をするために、大統領執務室から自宅に機密文書を含む文書を持ち帰ることがしばしばありました」

声明は続く。「大統領執務室から住居へと持ち去られた文書は機密解除されたと見なされるという内務規定がありました。文書を機密化したり機密解除したりする権限は、もっぱら合衆国大統領にあります。大統領が委任した機密権限を持つ一部の事務手続きを行う官僚が機密解除を承認する必要があるという考えは、ばかげています」

政権の後半でトランプのために働いた2人の元側近は、トランプが日常的に文書を提出した秘書官や情報局員に返さずに住居に持ち帰っていたことに気付いていたと述べた。内務規定があったかという質問に対してある元職員は「それに異議を唱える者も、異議を唱えることも知りません」と答えた。

通常大統領が機密解除した文書はその後、回収されてからそれまでの機密の印に取り消し線が引かれて機密解除の印がつけられる。だが大統領の元高官は、大統領の機密解除権限は絶対的であり、機密解除の決断が即座に下されることもあったことを認めた。

ある元政権高官は、外国の首脳との会談中に大統領が極秘情報をその首脳に与え、極秘とマークされた文書で見た情報を単に伝えるだけで機密解除した例について語った。別の高官は、大統領が会議中に極秘の文書を受け取ったが、ある高官は機密レベルが低かったために退席しなければならなかったという例について語った。

「大統領は即座にその職員が留まって極秘の情報を知ることを許可しました。その時点でそれが大統領の職務にプラスになったからです」とその人物は本紙に語った。

議会、司法省、そしてインテリジェンス・コミュニティで前大統領をけなす人々は、前大統領の主張に異議を唱えるだろう。だが国家安全保障法に詳しい高官は、大統領の機密解除権限は広範囲であり、そのプロセスはブッシュとオバマの2003年と2009年の大統領令が明確にしたように、偶発的である場合が多いと裁判所は通常考えてきたと述べた。

2009年に出されたオバマの大統領令第13526号は、あらゆる連邦政府高官と機関が機密解除のために従う必要のある厳しい手続きを提示したが、在職中の大統領と副大統領をそうした手続きに従うことから明確に免除した。

「現職大統領や副大統領、現職大統領のホワイトハウス職員や現職副大統領の職員、現職大統領の任命した委員会、委任者、役員、また現職大統領にもっぱら助言と補佐を行う大統領府の他の存在から生じた情報は、本条の項(a)の適用から除外される」とオバマの大統領令には書かれている。

FBIはトランプの声明にある「内務規定」があったことを知るか認めることができる高官や証人を見つけようとするだろうと高官は述べた。だが結局のところ、大統領の機密解除権限は広範囲であり、裁判所からはそのように見なされるだろうと高官は述べた。

【私の論評】 背景には「トランプに弱みを握られた」かもしれない有力者の不安がある(゚д゚)!


そもそも機密文書というものは、大統領権限等によって解除されるものです。それにほとんどの機密文書は、いずれは機密解除されるものです。機密にしておくべき期間が長いか、短いかの違いはあるものの、いわゆる当初機密文書された文書が、未来永劫にわたって機密にされれば、誰も真実を知ることができなくなります。

はっきりいえば、機密文書なるものは、いずれ公表されることを予期しつつ、作成されるものです。本当に機密にしたいものなど、文書にするはずがありません。文書にせず心に刻みこみ、大統領など関係者は墓場まで持っていくべきものです。民主国家においては、そのようなことは極わずかだと思います。中露などの全体主義国家ではその割合はかなり大きいでしょう。

多くの人が、真実を知ることができなければ、国政でも外交でも支障が生じます。これは、企業などでも同じです。たとえば、ある企業が大々的なキャンペーンをする場合、ライバル会社に知られないようにするために、その内容は当初は機密です。

しかし、大々的なキャンペーンをするとなれば、かなり多くの人々を動かさなければなりません。そこで一部機密は解除されることになります。そうして、直前には正社員はもちろん、パート・アルバイトまで知ることになります。そうでないとキャンペーンは実施できません。

さらに、キャンペーン期間中は逆に、お客様を含め多くの人々に知ってもらうようにします。そうでないとキャンペーンの意味がありません。このあたりを理解せずに、とにかく機密主義で、本当に直前になってからしか開示しなければ、キャンペーンは大失敗します。

公文書も同じことであり、一時発信された、機密文書が未来永劫にわたって機密でありつづけるとすれば、国政も何もできません。それに、国民も政府が正しく行政を行っているのか確かめることもできません。だからこそ、中露、北朝鮮などの国は別にして、多くの民主国家では一定の手続きに従い情報開示がされています。

そうして、機密解除された文書は多くの人が閲覧できます。

日本では、国立文書館で閲覧できます。これは、Webでも閲覧できます。

https://www.digital.archives.go.jp/

米国の公文書も閲覧できます。

https://www.gale.com/jp

現在では誰でも閲覧できる過去の機密文書 クリックすると拡大します

では、なぜ機密文書の扱いが問題になっているのでしょうか。

米国政府のもつ数多くの機密情報、トランプは大統領として知り得る立場にありました。

CIAの中南米での非人道的行為、ロッキードマーチン社とアフリカ独裁者との関係、中国に買収されていた有力政治家等など、国益の観点から未だ開示されていないかなり多くの機密情報があるはずです。

しかし、どのような機密情報があるかわからないわけですから、実際に保管されている情報以上に関係者は心配しているでしょう。

「我々の恥部であるX情報も保管されているかもしれない、もしそうなら絶対公開されては困る」と思っている有力機関、個人は多いでしょう。そして彼らは「トランプにそれを見られたかもしれない」と恐れているはずです。

今回の強制捜査で、どういった機密資料をトランプの自宅から押収したかを大雑把にでも公表されれば「少なくとも我々はトランプの関心事ではなかったようだ」と多くの有力関係者は安心できるでしょう。

その意味で、このFBIの強制捜査は機密の暴露を心配する関係者の要望にも沿うものと言えます。

また、こういった「トランプに弱みを握られた可能性がある」と思う人達が、トランプは嘘つきであると言う印象を世界中に与え、発表する手段を奪う事を画策することも十分にありえます。

彼らが意図して意識して、そうしたかどうかは別にしても実際にそうなっています。

彼らが大手のマスコミに影響を与えて反トランプのキャンペーンをしているのかもしれません。トランプを恐れる有力機関の力が自然に結集されているようです。これをトランプは「ディープ・ステート」と呼んでいるようです。

トランプ氏は、政治界の部外者の身として、政府の汚職をなくすことを国民に約束し、それを比喩した「Drain the swamp.(沼地のヘドロ水を抜く)」は選挙時のスローガンでした。

「ディープ・ステート」というと、何やら陰謀論めいた響きがありますが、米国にはいわゆるエスタブリッシュメントといわれる、ほんの一部の支配層が支配する国であることが広く知られています。私は、トランプ氏は、このエスタブリッシュメントのことを「ディープ・ステート」と呼んでいるだと思います。

そのエスタブリッシュメントのうちの多数派の中国に対するエンゲージメント派は、いずれ中国は民主化するであろうと見ていたようで、中国は将来的に米国にとって自分たちが御せる良い市場になると信じていたようです。

米国には親中派のエンゲージメント派と中国反対派のコンテインメント(封じ込め)派が存在しており、アメリカの富の大きな部分を握ってるわずか上位0.1%エスタブリッシュメントの多くがエンゲージメント派であったため、米国の中国に対する態度は、将来も変わらないだろうと見られていました。

そうして、この0.1% のエスタブリッシュメント派の富により、米国の政治がかなり左右されてきました。これは、陰謀論でもなんでもなく、多くの米国人が認めるところです。そもそも、大統領など彼らの操り人形にすぎないと揶揄されてきました。

ところが、エスタブリッシュメント派とは全く関係ない、トランプが大統領になったわけですから、彼らの心は穏やかではないでしょう。

これは、マスメディアが想像していた以上に米国民の既存のエスタブリッシュメントの影響が大きい政治体制 への不満と怒りが大きく、 トランプ候補に賭けるリスクを冒してでも変化を求めた帰結であったといえます。

そうして、このトランプ大統領は、中国は米国に対して「地政学的戦い」を挑んでいることをはっきりと認識した初の米国大統領になりました。

地経学的な戦いとは、兵士によって他国を侵略する代わりに、投資を通じて相手国の産業を征服するというものです。経済を武器として使用するやり方は、過去においてもしばしば行われてきました。

そうして、中国が特殊なのはそれを公式に宣言していることです。その典型が「中国製造2025」です。これは単なる産業育成ではなく、たとえばAIの分野に国家が莫大な投資を行うことで、他国の企業を打倒すること、そして、それによって中国政府の影響力を強めることが真の狙いなのです。

その意味で、中国は国営企業、民間企業を問わず、「地経学的戦争における国家の尖兵(せんぺい)」なのです。たとえばイギリスがアジアを侵略する際の東インド会社のような存在なのです。

中国企業がスパイ行為などにより技術の窃盗を繰り返したり、貿易のルールを平然と破ったりするのは、それがビジネスであると同時に、国家による戦争だからです。

トランプ政権になって、米国がそうした行為を厳しく咎め、制裁を行うようになったのも、それを正しく「地経学的戦争」だと認識したからであり、だからこそ政権が交代しても、対中政策は変わらなかったのです。この点については、エスタブリッシュメントの、完全敗北であり、彼らの権威もかなり落ちたでしょうし、この点だけでも、彼らにとっては脅威に感じられたでしょう。

トランプ大統領のこの認識は、まともなものです。それ以外問題についてもたとえば、移民政策についても、国境の壁などについて馬鹿げたもののように報道されていましたが、実は極まともな主張をしていますし、さらにトランプ減税で米国の雇用はかなり良くなり、投資の国内回帰も顕著になり、雇用も格段に良くなりました。それが米国の一般市民の心を動かしました。

このトランプ氏が大統領時代にエスタブリッシュメントの様々な秘密を掴んでいて、いずれそれを根拠に自分たちを攻撃してくるのではないかという恐れを抱くのは、当然のことだと思います。そもそも、トランプ氏はそれ以前の、エスタブリッシュメントの影響下にある大統領ではなく、彼らからすれば、何をするか予想もつかないのです。私は、今回のFBI家宅捜索には、このことが背後にあると思っています。

そうして、日本では上記で述べたような、トランプの業績や立場を報道機関は報道していません。トランプは貧乏な白人を騙しているといった解説ばかりが目につきました。

現在でもバイデンは中国に対して厳しい姿勢を維持しています。エスタブリッシュメントの中国ビジネスの夢は絶たれてしまいました。

テキサス州知事は、バイデンの人権的な国境政策に強固に反対しており、トランプの政策を支持しています。史上最大の不法移民が押し寄せているからです。

テキサス州知事は独自にトランプの壁の建造を続け、捕まえた不法移民をホワイトハウスのあるワシントンDCに航空機なども用いて搬送して釈放しています。バイデン大統領への警告であり露骨な嫌がらせです。

しかし、これらを日本のTV局や新聞はほとんど報道していません。不思議な事です。

さらには、亡くなった安倍元総理に対しても生前から執拗な攻撃や、安倍元総理に対しては、何を言っても良いという雰囲気をつくりあげてきました。亡くなってからもまだ、続いていましす。インド太平洋戦略に関して、安倍総理が大きな役割を果たし、実質的に世界の構造を変えてしまったたことも報道されていません。

そもそも、中国は日本を含む西側諸国に対して「地政学的戦い」を挑んでいることをはっきりと認識したのは安倍元総理が最初です。それは、2012年の第2次安倍政権発足直後、首相名で発表されたチェコ・プラハに所在地がある言論サイト「ブロジェクト・シンジケート」の英文の論文「アジア民主主義防護のダイアモンド」構想をみてもはっきりしています。

安倍元総理と親交があったために、トランプ氏はそれをしっかりと認識することできたのだと思います。

トランプ大統領と安倍総理

このようなことがほとんど報道されないため、多くの国民は、安倍総理の海外からの評価が高いことを安倍総理が亡くなってはじめて知ったようです。ただ、未だになぜそうなのかというその本質は、一部の人が知っているだけのようです。

米国では、主要新聞はすべてリベラル派に占められています、大手テレビ局は、保守系のFOXTVを除いてすべてリベラルです。さらに、当然のことながら、エスタブリッシュメントの影響や圧力も強いでしょう。

日本では、マスコミのほとんど全部がリベラルです。大手新聞の産経新聞のみが保守系という状況です。日本には、米国のようなエスタブリッシュメントが存在するかどうかわかりませんが、左翼・リベラルは少数派のはずなのに、かなり強い影響力を行使しています。

日米ともに安倍・トランプ報道はまともに受け取るべきではありません。ただ、安倍報道に関しては、最近の米国の安倍元首相に関する報道はまともです。それに比較すると、日本の報道は、たとえは、朝日新聞の川柳などに象徴されるように、常軌を逸したものが目立ちます。

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2022年8月15日月曜日

こんな馬鹿馬鹿しい内閣改造があるか?岸田氏が断行した「脱安倍」昭和人事で防衛も経済も危ない―【私の論評】組閣の大失敗で、岸田政権は短期政権に(゚д゚)!

こんな馬鹿馬鹿しい内閣改造があるか?岸田氏が断行した「脱安倍」昭和人事で防衛も経済も危ない

髙橋 洋一
経済学者
嘉悦大学教授
プロフィール





折り鶴を手に持ち国連で演説する岸田首相


改造のせいでNSCの開催を忘れた?

 8月10日、自民党役員人事と内閣改造人事が行われた。

 それに至る経緯を振り返っておこう。自民党内では、改造は故安倍元首相の四十九日を経たお盆明けに行われるという見方が多かった。

 だが6日、岸田首相が10日に党役員人事・内閣改造を行うと発表したので、党内は驚いた。実をいうと、10日に改造するという首相の意向は、党内根回しをしていたことから、5日の段階で広がっていた。

 内閣改造人事は、衆院解散と並んで、首相の専権事項だ。岸田首相が改造人事を考えたのは4日以前のことだろう。

 4日は大変なことが起こっていた。2日から3日にかけてのペロシ下院議長の訪台日程が終わると、4日の午後以降、中国は台湾の「海上封鎖」ともいえる軍事演習を行った。

 4日午後には、日本のEEZ(排他的経済水域)に中国の弾道ミサイル5発が着弾した。中国側が「予定通り標的に着弾した」と言っている以上、狙って行ったものだ。国際法上、EEZ内で軍事演習を禁止する条項はないが、日本への迷惑行為であり、EEZの趣旨に反し国際法上限りなく危険な行為だ。

 これに対して日本は電話抗議をしたというが、それで十分だったのだろうか。北朝鮮の弾道ミサイルが日本のEEZ内に着弾したときはNSC(国家安全保障会議)を開いている。今回、中国の暴挙は初めてであったにもかかわらず、岸田首相がNSCを召集しなかったのはまったく不可解だ。

 5日午前中、訪日したペロシ氏と岸田首相は会談をしている。4日午後または5日午前中にNSCを召集したうえ、中国にはしっかりと抗議すべきだった。

 以上、10日改造までの経緯を4日午後のEEZへの着弾から考えてみると、筆者は、10日改造が頭にあったので、NSC開催の手順が抜けたのではないかと邪推している。

すべてが根回しの「オレ流」

 いずれにしても、日本がNSCを開催しなかった結果、EEZへミサイルを5発くらい打ち込んでもいいというメッセージを中国側に与えてしまった。しかも、中国は日本のEEZなど存在しないと言い放っている。これを許せば、そのうち日本の領海、領空、領土など存在しないとも言いだしかねない。

 NSCを開催しなかったことと内閣改造の因果関係は、岸田首相しか分からない。だが両者は同時期の話だ。マスコミは内閣改造の話が出ると、それにばかり関心が向く。NSCを開催しなかったことを見過ごしたマスコミは、日本をとりまく安全保障がかなり危機的になっていることへの意識も希薄だ。

 これで分かるように、岸田政権は危機感にまったく欠けていると言っていい。それは、改造人事の結果にも現れている。岸田首相の意図は何か、安全保障や経済・財政政策の方向性はどうなるのかを考えてみよう。

 率直にいって今回の人事は、「岸田首相の『オレ流』脱安倍・昭和人事」だ。

 改造の前日に人事はすべて明らかになったが、これは各方面にしっかりとした根回しの結果だ。2001年の小泉政権以前にみられた、古き良き時代のやり方だ。

 「骨格は残す」と、外相・財務相・国交相・官房長官の留任を決めたが、外相の留任は即中国にも配慮するとのメッセージになった。岸田首相にとって、気を遣う「各方面」には、中国も含まれていたのだろう。財務相の留任は、財務官僚にこれまで通りに緊縮財政でやれとの指示にもなっている。

 政局的な面でいえば、高市早苗氏を経済安全相に、河野太郎氏をデジタル相につけたことがポイントだ。総裁選で戦った両氏を党から閣内に戻し、それぞれ内閣府大臣という官僚の人事権のない軽量ポストにつけた。軽量とはいえ閣僚なので、独自の意見を言えば閣内不一致になる以上、二人への牽制にもなる。

 安全保障では、林外相は留任したが、防衛相は故安倍元首相の実弟の岸信夫氏から元防衛相の浜田靖一氏へ変わった。中国にとっては歓迎だろう。浜田氏は防衛族であるが、石破茂氏に近いといわれている。

 防衛費の増額は、自民党の選挙公約にもなっていた。その手段として、安倍元首相は「防衛国債」を主張していたが、今回の人事でそれが実現する可能性はかなり少なくなっただろう。「防衛」増税を前提とする「つなぎ国債」であればその可能性は大いにある。

安倍氏の抗議も「反故」に

 安全保障では、「防衛国債」以外にも脱安倍の動きが出ていた。内閣改造に先立つ官僚人事で防衛事務次官や海上保安庁の交代で脱安倍の流れがはっきり出ていたが、今回の内閣改造はその仕上げといっていい。

 その証拠に、浜田防衛相は初仕事として、島田前防衛次官の大臣政策参与職を解いた。今年6月、島田氏が防衛次官を退任する人事に対し、安倍元首相が岸田首相に直接抗議した。その結果、事務次官は退任するが政策参与として残るという妥協策が示された。

 ところが、わずか1ヵ月足らずで浜田防衛相はそれを反故にしたわけだ。島田氏が「防衛国債」を主張したらマズいと考えたのだろう。

安倍元総理

 経済・財政政策でも、脱安倍だ。高市氏が党政調会長から閣内に回ったが、党の方が安倍流の反緊縮のメッセージが出しやすかった。閣内では所管外で発言は制約されることになるだろう。

 秋の補正予算で、どの程度財政支出を出せるかどうか。今回の改造人事によって、財務省は政治的な圧力を心配せずに、緊縮的な補正予算と来年度予算編成の態勢ができたことだろう。

 来年春の日銀人事でも、緊縮的な人事が予想される。直ちに金融引き締めに転じないが、流れは変わるだろう。昭和のあと、平成デフレに突入したが、それが繰り返されるのだろうか。

 実際、内閣改造後に政権支持率が下がっている。マスコミはこれを旧統一教会と自民党との不透明な関係のためというが、はたしてそうなのか。報道だけをみると、そうした印象操作の影響を受けるかもしれない。だが一定の人を岸田政権から排除するために、旧統一教会が持ちだされたと見えなくもない。

 派閥均衡の話など、議論するのが馬鹿馬鹿しくなるくらいの酷い改造である。このような危機意識の欠如した内閣改造をやれば、政権支持率が下がるのは当然ともいえる。ひょっとすると、マスコミは故安倍元首相をもう叩けないから、岸田政権叩きに転じたのかもしれない。
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高橋洋一氏の近刊『安倍さんと語った世界と日本』(ワック)が9月1日発売
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髙橋 洋一(経済学者)

【私の論評】組閣の大失敗で、岸田政権は短期政権に(゚д゚)!

上の記事で高橋洋一氏は、「派閥均衡の話など、議論するのが馬鹿馬鹿しくなるくらいの酷い改造である。このような危機意識の欠如した内閣改造をやれば、政権支持率が下がるのは当然ともいえる」としていますが、そのとおりです。

そうして、有権者は実は大方の政治家などが考えているより、賢いと思います。参院選前までは、参院選で自民党か惨敗してしまえば、捻じれ状況が起きたり、まかり間違って野党が躍進して、政権交代への道筋をつけることになっては大変なことになると考えた多数の有権者が参院選までは、岸田政権を支持したのでしょう。

岸田政権には不満もあるのですが、それにしても野党よりは随分ましだと思っていたのでしょう。ただ、参院選で自民党が勝ったということで、しかも今後は「黄金の3年」ということで、しばらく選挙はないということで、今度は岸田政権への不満が表に出てきたのだと思います。

この動きは、岸田首相が何かを変えない限り続くと思います。安倍元総理を支持してきた、保守の岩盤支持層はすでに、岸田政権からは心が離れているでしょう。

読売新聞世帯調査

読売新聞世論調査では、岸田内閣を「支持する」と答えた人は51%で、8月5日から7日に行った前回の調査に比べ6ポイント下がり、政権発足以来、最低となりました。

7月11日から12日に行った調査では、「支持する」が65%だったので、およそ1か月で14ポイント下がりました。

「支持しない」と答えた人は34%で、発足以来、最も高い数値となりました。読売新聞の調査では、保守岩盤層などの分析を行っていないのが残念なところですが、たとえば、「安倍政権を支持していた人」という項目で調査すれば、保守岩盤層の離反がはっきり見えたのではないかと思います。

この調査は、他はあまり参考になるものはありませんでしたが、一番最後の項目だけ以下にあげておきます。


やはり、多くの人は、景気や物価対策に関心があるようです。それは、そうです。安倍政権が最長の政権となったのは、日銀が金融緩和を継続した結果、雇用が格段に良くなったからであり、もしこれがなければ、安倍政権はあのように長期政権にはならなかったでしょう。

上の記事で、高橋洋一氏は懸念を表明しています。
 秋の補正予算で、どの程度財政支出を出せるかどうか。今回の改造人事によって、財務省は政治的な圧力を心配せずに、緊縮的な補正予算と来年度予算編成の態勢ができたことだろう。

 来年春の日銀人事でも、緊縮的な人事が予想される。直ちに金融引き締めに転じないが、流れは変わるだろう。昭和のあと、平成デフレに突入したが、それが繰り返されるのだろうか。

この懸念は当然のことだと思います。私も以前このブログでそれを表明していました。

今後現状のまま、まともな経済対策をせず、しかも来年4月の黒田総裁の辞任にともない日銀総裁に、いわゆる反リフレ派の人間を据え、日銀が再度金融引締路線に戻れば、秋には失業率が本格的にあがりはじめますし、経済も本格的に悪くなります。そうなれば、内閣支持率はかなり低下するでしょう。

この内閣の陣容をみていると、あらためて「マクロ経済の原則を理解せず、派閥の力学と財務省との関係性だけで動けば岸田政権は2年目を迎えることなく、崩壊することになる」ことになりそうです。来年の秋ころには、自民党内に「岸田バッシング」の声が沸き起こりそうてす。 

現状では、有権者のうち保守岩盤層はすでに岸田政権から離反したようですが、岸田政権が財政で緊縮路線に走れば、支持率はさらにおちます。さらに日銀総裁人事で金融引締派を総裁に据えれば、雇用もみるみる悪化して、支持率はかなり落ちて、来秋あたりには30%を切るとなどという事態にもなりかねません。

クリックすると拡大します

岸田派は自民党内では、第五派閥にすぎません。最大は、安倍派です。そうして、今回の人事では、安倍元首相の政策の継承者である菅前総理大臣を閣内に取り込まなかったことは大失敗でした。

菅氏を取り込めば、安倍元総理の政策をある程度は取り込まなければならなくなりますし、そうすれば、そういう方向性であることを表明することにもなりましたが、そうしなかったので自民党内の保守派は、いつ離反してもおかしくないと思います。

これから岸田首相は、安倍氏がいかに党内の不満や反発のマトになってくれていたかを実感することになるでしょう。今後も、岸田政権が何らの抜本的な手を打たなければ、景気は悪化しつづけるでしょう。

菅前首相は、岸田政権では無役ですが、わずか1年の首相時代に、新型コロナワクチンの確保と接種に心血を注ぎ、東京五輪・パラリンピック開催、携帯電話料金の値下げ、デジタル庁創設など、数々の成果を挙げた手腕は高く評価されています。

また、米軍普天間飛行場の辺野古移設問題など、沖縄の基地負担軽減と振興政策には、今も強い関心を寄せています。県知事選(25日告示、9月11日投開票)を控えた沖縄県は、菅氏への期待が大きいといわれます。

 昨年の衆院選、先の参院選とも、菅氏の人気は衰えず応援演説に全国を回りました。 菅氏は、盟友である安倍氏から引き継ぐべきことについて、大手新聞の取材に次のように語っています。

「経済や安全保障は、自民党としてきっちりやっていかないといけない。2012年衆院選で訴えた『日本を、取り戻す』という原点を忘れないようにしなければいけない」(読売新聞8月3日付) 

「今回の事件で、我が国が安倍さんを失った損失は計り知れない。(中略)安倍さんは日本の進むべき道筋を残してくれました。(中略)その道筋から外れてしまわぬよう、安倍さんの遺志を継いでゆく責務があると思っています」(週刊新潮8月11・18日号)

 岸田首相には内閣改造で、「菅氏の副総理案」があったといわれます。政権の後ろ盾だった安倍氏亡きいま、麻生太郎副総裁と、菅氏の副総理が実現すれば、党と政府の強力な両輪となり、政権の安定感は増すとみられました。

 しかし、菅氏は立場に縛られるより、目の前の政治課題に自由な立場で柔軟に対応し、安倍氏の遺志を継いでゆくことが責務と考えているようにも見えます。

 こうしたなか、菅氏と緊密な人間関係を持つ森山裕氏が、選対委員長として党4役に入ったことは注目です。 菅氏はこれを機に、岸田首相と距離を置く、二階俊博元幹事長ら長老・実力者とのパイプ役として政権に協力することで、安倍氏の遺志を継いでいくのでしょうか。

それとも、岸田首相が日本の進むべき道から外れないよう、対峙(たいじ)・牽制(けんせい)することで、安倍氏の「日本を、取り戻す」という遺志を継ぐ覚悟なのでしょうか。

この10年、自民党は安倍という偉大な人物を戴いて安定を保ってきました。しかし凡人の岸田氏に、安倍のような箍(たが)の役割が果たせるとは考えらません。安倍派が瓦解すれば、自民党全体の空中分解をも招きかねないです。

安倍元首相の国葬が終了するまでは、あまり大きな動きはないでしょう。私は、たとえば安倍派と菅元総理が協力関係に入るなどの、大きなサプライズが、年内に起こるのではないかと思います。そうして来年に向けて、政局が動いていくのではないかと思います。

今後の推移をみる必要があるとは思いますが、岸田内閣は今回の人事の大失敗で、短期政権になる可能性が高まったと思います。

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