2022年9月17日土曜日

比の潜水艦導入に仏が前向き―【私の論評】国軍近代化を目指している、フィリピンのマルコス政権に日本も協力すべき(゚д゚)!

比の潜水艦導入に仏が前向き

フランスとスペインが共同開発したスコルペヌ型潜水艦


【まとめ】

・フィリピンがフランスから潜水艦2隻を導入することについて、両国政府間で協議が開始。

・米がフィリピンへの通常型潜水艦供与に乗り出せば、フランスはまたもや米との潜水艦導入競争に直面する可能性も。

・南シナ海の海洋権益を主張してフィリピンと領有権問題が生じている中国からは、潜水艦導入への猛反発が予想される。

 フィリピン海軍の長年の夢である潜水艦の保有に関してフランスが前向きであることが明らかになった。東南アジアではインドネシア、マレーシア、シンガポール、ベトナム、ミャンマーの5カ国が潜水艦を導入し実際に運用している。

 このように東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国のうちすでに半数の国が潜水艦を導入しており、フィリピンはかねてから潜水艦取得に意欲をみせていたが、なかなか実現していなかった。

 9月13日にフランスは「フィリピン海軍の潜水艦を艦隊に含めた近代化計画に関してフィリピンを支援しかつ協力する準備が整っている」と前向きの姿勢を示し、フランスからの潜水艦導入が本格的に動き出す可能性が出てきた。

 フィリピンは南シナ海で中国との間で領有権問題を抱え、中国海軍艦艇や海警局船舶などによる領海侵犯や排他的経済水域(EEZ)内での違法操業などに長年悩まされているという問題がある。

 またフランス側にも2021年9月16日にオーストラリアがすでにフランスと契約していた潜水艦12隻の導入計画を破棄した。

 この時フランス政府は「我々は裏切られた」と怒りを爆発させた経緯がある。オーストラリアはその後米に原子力潜水艦を発注する事態に直面し、フランスとしては新たな契約先を模索しているという事情があり、フランスとフィリピン双方の思惑が一致した結果となったとの見方が有力だ。

★在比フランス大使が言及

 フィリピンの現地報道などによると、9月13日に在フィリピン・フランス大使館のミシェル・ボッゴズ大使がフィリピン海軍記念日の記念式典後の記者会見で「フランスはフィリピンと緊密に協力して戦略的な関係を構築することにコミットしているので準備はできている」として両国政府間ですでに潜水艦2隻の導入に関して協議を始めていることを明らかにした。

 具体的にはフランスの造船会社「ネイバル・グループ」との間で潜水艦とその関連施設を設計・建造することで協議が進んでいるという。

 さらにフランス側は「要員を派遣して潜水艦乗組員の教育、訓練、技術移転をすることも検討している」として全面的に支援する姿勢を示している。

 フィリピン政府はまだ潜水艦導入に関してフランス政府となんら合意、調印、契約には至っていないが、フランス側の積極的な「売り込み」に具体的な検討に着手する可能性が高いとみられている。

 フィリピンは2018年にロシアとの間で潜水艦導入を検討したことがあり2021年にも韓国との間で検討されたものの、いずれも正式な契約には至らなかった経緯があるという。

★米と競争か フランスの通常型潜水艦

 フランスがオーストラリアに総額500億ドルともいわれる潜水艦12隻の導入計画をキャンセルされた背景には、フランスの潜水艦は通常型潜水艦で原潜に比較すると潜水時間が限定的で長期間の潜航はできないことがあるのは間違いない。

 さらに米英豪による軍事同盟である「AUKUS」が2021年9月15日に設立が発表され、その直後にオーストラリアはフランスとの契約を破棄し、その後米原潜の導入を決めた。

 これは、南シナ海や太平洋での潜水艦作戦には長期潜航可能な原潜が必要との判断によるものとされている。

 もっともその理由以外に、遥か彼方のフランスより太平洋や南シナ海で共同訓練や作戦行動を共にする米海軍との関係を重視した結果の選択といわれている。

 フィリピン海軍が原潜を運用することはかなり非現実的だが、今後の進展次第では米がフィリピン海軍の近代化を含めて通常型潜水艦供与に乗り出してくる可能性も否定できず、フランスはオーストラリアに続いてフィリピンでも米との潜水艦導入競争に直面する可能性も予想されている。

★ASEANの潜水艦事情

 ASEAN各国ではシンガポールが6隻のスウェーデン製潜水艦を有用しているほか、インドネシアが韓国、西ドイツ、自国製の5隻を保有、マレーシアがフランスから2隻を導入、ベトナムは6隻をロシアから導入しているとされ、ミャンマーも2021年に中国製1隻を導入したとされている。

 このようにASEAN各国海軍の潜水艦戦力はその多くが旧式の通常型潜水艦とはいえ一定の能力を維持している。

 今後フィリピンがフランスから潜水艦を導入すればASEANでは最新鋭の潜水艦となる可能性が高く、南シナ海で一方的に広大な海域での海洋権益を主張してベトナム、マレーシア、ブルネイ、フィリピンとの間で領有権問題が生じ、一部の島嶼や環礁に港湾施設や空港、レーダーサイトなどの軍事施設を建設している中国が、フィリピンの潜水艦導入計画に対して猛反発してくることが予想されている。

【私の論評】国軍近代化を目指している、フィリピンのマルコス政権に日本も協力すべき(゚д゚)!

フィリピンは群島国家であり同時に海洋国家であり、特に南シナ海では中国との間で領有権を巡る争いを抱えており、海軍力の近代化、整備がドゥテルテ政権の喫緊の課題となっていました。

ドゥテルテ・フィリピン大統領と安倍総理

2018年にはフィリピンの国防相が「ロシアあるいは韓国」を念頭にして潜水艦導入計画があることを示唆したものの、その後計画は一向に具体化していませんでした。今回フランス製潜水艦導入が実現すればフィリピン海軍としては史上初の潜水艦保有となります。

フィリピンやインドネシアという群島国家、さらにマレー半島とボルネオ島に領土を持つマレーシア、南シナ海に面したベトナムなど東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国には海洋権益保護や海上警戒警備のために海軍力の整備近代化、多角的な運用が求められている国が存在します。

しかし潜水艦となるとシンガポール、マレーシア、インドネシア、ベトナムがそれぞれ新造艦や中古艦を保有しているものの、フィリピンはこれまで保有していなかったという経緯があります。

ASEANの潜水艦保有国の中でシンガポール以外のマレーシア、ベトナムは南シナ海で中国と直接領有権問題を抱え、インドネシアは南シナ海南端のインドネシア領ナツナ諸島の北方海域に広がる排他的経済水域(EEZ)への中国漁船の侵入、不法操業という問題に直面しています。

こうしたことから東で太平洋に面し、西で南シナ海に面しながら唯一潜水艦を持たないフィリピン政府や海軍にとって「潜水艦保有」は長年の宿願でした。

2018年6月にはフィリピンのデルフィン・ロレンザーナ国防相が潜水艦導入計画で「ロシアと韓国を視野に入れている」と発言したことが地元紙に報じられました。

ロレンザーナ国防相は「海軍近代化プログラムの中で潜水艦を導入する方針を決めた」と改めて強調し「ロシア、韓国そしてそれ以外の国も視野に入れている。潜水艦の建造には5~8年かかるため、なるべく早く発注したい」との意向を明らかにしました。

この時もロレンザーナ国防相は「隣国であるマレーシア、シンガポール、インドネシア、ベトナムは潜水艦を保有しているのに、フィリピンだけが持っていない。フィリピンの安全保障のためにも潜水艦は必要だ」として、潜水艦保有への熱い思いを語っていました。

フランスの造船会社「ネイバル・グループ」関係者は潜水艦導入計画が今後具体化すれば「乗組員の教育訓練に加えて潜水艦の運用、修理点検整備など全ての面でフィリピン海軍と協力関係を築くことができる」として全面的にサポートする姿勢を強調していました。

ただ、ドゥテルテ政権は他の主要ASEAN加盟国と同様に深刻なコロナ禍とそれに伴う経済不況に直面していました。新型コロナウイルスの感染者数、感染死者数ではフィリピンは域内でインドネシアに次ぐワースト2を記録し続けていました。

こうした未曾有の事態で一般国民がコロナ感染とそれに伴う失業や生活困窮などに喘ぐなか「いくら国防のためとはいえ潜水艦導入を今積極的に進める必要が本当にあるのか」との意見も根強く、結局はドゥテルテ政権では実現しませんでした。

自国の防衛力強化に関して、新マルコス政権は、ラモス政権期に制定されながら予算不足により空文化していた国軍近代化法を更新、空軍力と海軍力の強化に力点を置いた国軍近代化を目指すことになりました。

この海軍力の強化の一環として行われるのが、今回のフィリピンにおける潜水艦導入のフランスとの協議ということができます。


フィリピンの安全保証は、我が国にとっても重要です。日本のシーレンはフィリピンと台湾の間に位置します。日本では、台湾有事は日本の有事ということがいわれていますが、フィリピン有事も我が国に深刻な悪影響を及ぼすのは確実です。

そのため、フィリピンが潜水艦を保有するということは、我が国の安全保証にも寄与することとなり、我が国にとっても歓迎すべきことです。

フィリピと日本との間でも安全保障協力を進めています。2014年のシャングリラ・ダイアログにおける当時の安倍首相の演説は、海洋における法の支配を強調する内容であり、中国を名指しこそしないものの、南シナ海における中国の行動に焦点を当てる内容であり、当時のアキノ政権の立場と共鳴するものでありました。

2014年のシャングリラ・ダイアログにおける当時の安倍首相の演説

これ以降は、海上法執行機関に対する巡視船供与や専門家派遣に加え、防衛装備品移転や輸出が実現するなど、日比間の安全保障協力が強化されてきました。また、2012年の巨大台風ハイエンからの復興支援においては、自衛隊の艦艇が、第二次世界大戦の激戦地レイテに寄港し、復興支援に従事するなど、災害援助においても自衛隊の役割が拡大したといえます。

そうして、今年4月には、日本とフィリピンの初めての「2プラス2」が開催されました。日本側から林外務大臣と岸防衛大臣が、フィリピン側からロクシン外相とロレンザーナ国防相が出席し、東京都内で行われました。

冒頭、林大臣は「中国による力を背景とした一方的な現状変更の試みは東シナ海や南シナ海でも継続しており、われわれは国際秩序に対する多くの挑戦に直面している」と述べました。

協議で取りまとめられた共同声明では、海洋進出を強める中国を念頭に、東シナ海や南シナ海の状況に深刻な懸念を表明し、緊張を高める行為に強く反対しました。

そして、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐり、悲惨な人道上の影響が出ていると非難するとともに、こうした侵攻は、力による一方的な現状変更を認めない国際秩序の根幹を危うくし、ヨーロッパにとどまらずアジアにも影響を及ぼすという認識を共有しました。

また、日本・フィリピン両国の間で防衛装備品や技術の移転を進めるとともに、自衛隊とフィリピン軍との間で物品などの相互提供を円滑にするための枠組みについて検討を始めるなど、防衛協力を強化していくことで一致しました。

日本は、今後もフィリピンのマルコス政権と安全保障面で協力し、 インド太平洋地域の安定に寄与していくべきです。

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2022年9月16日金曜日

同盟国のカザフスタン元首相がプーチン政権を批判―【私の論評】米中露の中央アジアでの覇権争いを理解しなければ、中央アジアの動きや、ウクライナとの関連を理解できない(゚д゚)!

同盟国のカザフスタン元首相がプーチン政権を批判

カザフスタンのアケジャン・カジェゲリディン元首相

 ロシアのウクライナ侵攻を巡り、ロシアの同盟国である中央アジアのカザフスタンの元首相がプーチン政権を批判し、ソ連崩壊を繰り返すことになると警告しました。

 カザフスタンのアケジャン・カジェゲリディン元首相は、ドイツメディアのインタビューに答え、ロシアのウクライナ侵攻を巡るロシア側の主張を「理解できない要求」だと批判しました。

 また、ロシア国内で中央政府に対する地方の不満が高まっていて、ソ連邦崩壊時と同じ状況に陥っているとし、ロシアが連邦制を維持できず政治的に分裂する可能性があると指摘しました。

 カザフスタンは、石油や天然ガスなど豊富な資源を有していて、ロシアにとって重要な同盟国です。

 先月には、カザフスタンだけでなくキルギス、タジキスタンもアメリカなどと共同軍事演習をするなど、中央アジアの国々のロシア離れが進んでいます。

【私の論評】米中露の中央アジアでの覇権争いを理解しなければ、中央アジアの動きや、ウクライナとの関連を理解できない(゚д゚)!

カザフスタンについては、今年の1月トカエフ大統領は11日、抗議デモを鎮圧するため先週派遣を要請したロシア主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構(CSTO)」の部隊が2日後に撤退を開始すると表明したことをこのブログに掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
カザフ、ロシア主導部隊が2日後に撤退開始 新首相選出―【私の論評】中露ともにカザフの安定を望む本当の理由はこれだ(゚д゚)!
カザフスタン トカエフ大統領

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事より結論部分を引用します。
中露としては、大統領がトカエフだろうが、誰だろうが、とにかく安定していて欲しいというのが本音でしょう。トカエフ政権が崩壊するようなことでもあれば、力の真空が生まれます。そこに乗じて米国が暗躍し、中露の両方に国境を接するカザフスタンに親米政権でも樹立されNATO軍が進駐することにでもなれば、それこそ中露にとって最大の悪夢です。

米国にとっては、アフガニスタンでの失地を大きく回復することになります。失地回復どころか、アフガニスタンは現状では、中国とは一部国境を接していますが、ロシアは国境を接しているわけではないのですが、カザフスタンは両国と長い国境線をはさんで隣接しています。

中露にとっては、かつての米国にとってのキューバ危機のように、裏庭に米軍基地ができあがることになります。それ以上かもしれません。冷戦中にカナダやメキシコに、親中露政権が樹立され、中露軍基地ができるような感じだと思います。そこに長距離ミサイル等を多数配備されることになれば、中露は戦略を根底から見直さなければならなくなります。ロシアはウクライナどころではなくなります。中国は海洋進出どころでなくなるかもしれません。
カザフスタン情勢は、プーチンや習近平にとって、鬼門ともいって良いような、恐るべき地政学上の脅威です。
バイデン氏が副大統領だった2013年11月、ウクライナのヤヌコーヴィチ大統領が率いる親露政権を転覆させようと、当時のバイデン副大統領やヌーランド国務次官補などマイダン革命を起こし、遂にヤヌコーヴィチをウクライナから追い出すことに成功しました。

こうして2014年6月に、バイデン氏は、米国の傀儡政権であるようなポロシェンコ政権を樹立させました。ただ、米国も予想していなかったようですが、ポロシェンコ政権はあまりに腐敗が酷すぎ、結局その後コメディアンであるゼレンスキーにとって変わられたのです。

ウクライナ大統領選におけるポロシェンコ(左)とゼレンスキー(右)

そうして、バイデンの画策というか、大括りでいえばオバマ政権の画策は、実はこれに留まりませんでした。その中の一つに、2015年11月に設立された「C5+1」があります。

これは米国が、プーチンが自らの「縄張り」と考える「中央アジア5ヵ国」に入り込んで、「5ヵ国」に支援をして、米国寄りにしていこうという目論見に基づき設立されたもので、「中央アジア5ヵ国+米国」外相会談を意味します。

バイデンとしてはウクライナをコントロールできるようにしたことだけでは不安を感じたのでしょう。プーチンの周りにはCSTOという軍事同盟もあるので、「中央アジア5ヵ国」を切り崩しておかないと不安だという思いがあったにちがいないです。


米シンクタンク、戦争研究所は今月15日の戦況分析で、ロシアがウクライナ侵攻に伴い旧ソ連諸国の基地に駐留する部隊を動員したことで、同諸国でロシアの影響力が弱まり、地域情勢が不安定化している可能性を指摘しました。

ウクライナ侵攻後に中央アジアのタジキスタンとキルギスの国境での軍事衝突や、アルメニアとアゼルバイジャンとの間で係争地ナゴルノカラバフを巡る争いが再燃しています。

戦争研究所は欧米メディアを引用し、タジキスタンのロシア軍基地からは約1500人がウクライナに派遣され、さらに600人が動員される予定としました。

米中露は、元々中央アジアで熾烈な争いをしていたのです。そうして、カザフスタンは中央アジアでは人口は最大であり、経済も一人あたりGDPでは1万ドルを少し超えたロシアよりは、低い9千ドル台にすぎないのですが、それにしても国全体では中央アジアで一番経済規模が大きいです。この国の動きは、中央アジア諸国に大きな影響を与えることになります。

現状では、プーチンはウクライナ戦争で手一杯ですし、ウクライナ戦争の本当の相手は、米国であることは十分に承知しているでしょう。最近もこのブログで示したように、こうした米国の存在がなければ、プーチンと習近平は、ユーラシア大陸の覇権を巡って戦うことになるでしょうが、今はそれどころではありません。

プーチンは、中央アジア5ヵ国の心が「バイデン」になびきさえしなければ、習近平にどんなことでも譲歩しようと考えているに違いありません。

日本では、米国の野心である、中央アジアでの「C5+1」のことがあまり報道されておらず、中央アジアの今日の動きや、ウクライナとの関連がが理解されていないようです。

これを理解しないと中央アジアの国々のロシア離れがなぜ進んでいるのか、その本質は理解できないです。なんの背景も説明せずに、カザフスタンの元首相がプーチン批判をしたことや、旧ソ連諸国の基地に駐留する部隊を動員したことで、同諸国でロシアの影響力が弱まり、地域情勢が不安定化ことだけを個別に報道したとしても、ほとんど無意味です。

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2022年9月15日木曜日

日米で「エネルギー・ドミナンス」確立せよ かじ切らなければ中国に打倒される 石炭生産で日本の2倍、原発の発電能力で米仏を追い抜く規模に―【私の論評】小粒な岸田・林には無理だが、安倍元総理なら、ポンペオ氏を凌駕する新概念を打ち出したかも(゚д゚)!

官製エネルギー危機

マイク・ポンペオ氏

 ドナルド・トランプ前米政権の国務長官を務めたマイク・ポンペオ氏が「ウクライナの戦争は、なぜ世界が米国の『エネルギー・ドミナンス(優勢)』を必要とするのかを明らかにした」という論説を発表した。これは米国共和党の考えをよく要約している。

 《バイデン米政権は、米国の石油、天然ガス、石炭、原子力を敵視してきた。これがなければ、米国も欧州も戦略的にはるかに有利な立場にあり、プーチンのウクライナでの戦争を抑止できた》《欧州はロシアのエネルギー供給に依存して脆弱(ぜいじゃく)性をつくり出してきた。だが、本来は、そのエネルギーは米国が供給すべきものだったのだ》

 《われわれは、米国のエネルギーの力を解き放たねばならない。天然ガスやクリーンコールなどのクリーンエネルギーを、欧州やインド太平洋地域の同盟国に輸出する努力を倍加させねばならない》《われわれ共和党は秋の中間選挙で大勝し、民主党の環境に固執したエネルギー政策を覆し、米国のエネルギー・ドミナンスを取り戻す》

 何と力強い言であろうか。

 これから秋の中間選挙、そして次の大統領選挙を経て、米国共和党が世界を変えてゆく可能性はかなり高い。日本は、そのときの対米関係まで予想して、バイデン政権下での「再エネ・EV一本やりの空想的なグリーンエネルギー政策」とは距離を置くべきだ。

 具体的にはどうするか。

 日本は資源に乏しいので単独ではエネルギー・ドミナンスを達成することはできない。だが、米国とともにアジア太平洋におけるエネルギー・ドミナンスを達成することはできる。それは、ポンペオ氏が指摘しているように、天然ガス、石炭火力、原子力などを国内で最大限活用すること、そして、友好国の資源開発および発電事業に協力することだ。

 いま日米が「エネルギー・ドミナンス」にかじを切らなければ、中国に打倒されるだろう。

 ウクライナ戦争後のエネルギー危機を受けて、中国は年間3億トンの石炭生産能力を増強することを決定した。これだけで日本の年間石炭消費量の2倍近くだ。また中国は25年に原発の発電能力を7000万キロワットまで増やす計画で、30年には1億2000万キロワットから1億5000万キロワットを視野に建設認可を進めている。これはフランスと米国を追い抜く規模である。

 安価で安定した電力供給を中国が確立する一方で、「脱炭素」で高コスト化し脆弱(ぜいじゃく)な電力しか日米になければ、われわれは戦えるだろうか?

■杉山大志(すぎやま・たいし) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。1969年、北海道生まれ。東京大学理学部物理学科卒、同大学院物理工学修士。電力中央研究所、国際応用システム解析研究所などを経て現職。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)、産業構造審議会、省エネルギー基準部会、NEDO技術委員などのメンバーを務める。産経新聞「正論」欄執筆メンバー。著書に『「脱炭素」は嘘だらけ』(産経新聞出版)、『中露の環境問題工作に騙されるな』(かや書房)など。

【私の論評】小粒な岸田・林には無理だが、安倍元総理なら、ポンペオ氏を凌駕する新概念を打ち出したかも(゚д゚)!

英語の dominanceとは、「支配的な立場」ということです。日米がこれを取らなければ、中国に負けてしまうというのです。これは、確かにそうです。私達は、未だ空想科学小説の域を出ない、再生可能エネルギーなどに頼ることはできません。

ポンペオ氏の英語の論文は以下のリンクからご覧になれます。
War in Ukraine Shows Why World Needs US Energy Dominance
以下にこの論文のポイントを掲載します。
・ロシアのウクライナ戦争が激化する中、バイデン政権は混乱と弱腰で対応し続けている。この危機の最中もそれ以前も、バイデン大統領の失敗の中心は、同政権が米国のエネルギーを敵視してきたことだ。

・トランプ政権では、同盟国がロシアのエネルギーに依存しないようにしてきた。 パイプライン「ノルドストリーム2」の完成を制裁して阻止し、米国のエネルギーの独立性と優位性を確立することで、世界で最もクリーンな化石燃料を安価かつ効率的にパートナーに輸送することができた。

・我々は米国エネルギー産業の能力を解き放った。エネルギーの優位性は米国に大きな外交力を与えた。

・バイデン大統領がこの政策を放棄したことで、プーチンは欧州で即座に力を持ち、影響力を持つようになった。 ロシアの石油、天然ガス、石炭の流れは、プーチンの周りを潤し、国内権力を強固にする一方で、消費国、特にドイツに対して直接的な影響力を与え、最悪の場合、戦争への準備資金を調達することになった。

・これは、十分に回避できた状況だった。例えば、欧州諸国は石炭をロシアに依存しており、ロシアは石炭生産量の3分の1以上をEUに出荷してきた。本来、米国はこのような重要なニーズを満たさねばならない。だがバイデン政権は、なおも空疎なグリーンディールのレトリックを続け、国内の石炭産業を潰し続けるのか?

・気候変動について金切り声を上げる進歩的な活動家に後押しされ、バイデン大統領の政権はアメリカの石油、天然ガス、石炭、原子力を敵対視してきた。 もし、これらの経済の重要な部門を妨げるような政策が実施されていなければ、米国も欧州も戦略的にはるかに有利な立場にあり、プーチンのウクライナでの違法な戦争を抑止できたかもしれない。

・アメリカ人がクリーンエネルギーを懸念していることは理解しており、だからこそ、人類のための電力という新しい国策の重要な要素として、自然エネルギーと原子力を支持し続ける必要がある。だが一方で、

・アメリカの石油と天然ガスは短期的にも、長期的にも答えとなるものだ。

・バイデン政権の歪んだ現実観は、アメリカ経済や安全保障ではなく、気候変動を最優先事項としており、これは悲しいかな変わりそうもない。

・われわれは、米国のエネルギーの力を解き放たなければならない。液化天然ガスやクリーンコールなどのクリーンエネルギーを、欧州やインド太平洋地域の同盟国に輸出する努力を倍加させなければならない。

・もしバイデン大統領がこれを実行する気がなく、現在ホワイトハウスの失敗した政策を動かしている一点集中型の気候変動活動家の言うことばかりを聞いて、国を真にリードする気がないのであれば、我々はそれを共和党の識見によって方向転換させねばならない。それは、我々が次の中間選挙で大勝し、彼の環境に固執したエネルギー政策を覆し、米国のエネルギー・ドミナンスを取り戻すことによって達成される。
そうして、日本はどうすべきかということは、上の記事に掲載されています。
日本は資源に乏しいので単独ではエネルギー・ドミナンスを達成することはできない。だが、米国とともにアジア太平洋におけるエネルギー・ドミナンスを達成することはできる。それは、ポンペオ氏が指摘しているように、天然ガス、石炭火力、原子力などを国内で最大限活用すること、そして、友好国の資源開発および発電事業に協力することだ。

発展途上国においては、ウクライナ戦争以前からエネルギー問題に直面していました。それについては、このブログでも以前解説したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

破産宣言のスリランカ 債務再編主導を日本に依頼へ―【私の論評】スリランカは、日本に開発途上国から化石燃料を奪う事の非を欧米に理解させ、その開発・利用への支援を再開して欲しいと願っている(゚д゚)!

スリランカの最大都市コロンボで最近みられる、ガソリンスタンドでたくさんの車やバイクが行列ぎょうれつをつくる光景

ご存知のようにスリランカは財政破綻しましたが、その背景にはエネルギー危機がありました。そうしては、これはスリランカに限らず多くの途上国でみられることです。この記事より、これに関わる部分を引用します。

"
いまの開発途上国でのエネルギー危機は、単にウクライナの戦争のせいではありません。近年になって、欧米の圧力によって化石燃料事業への投資が停滞していたことが積み重なって、今日の破滅的な状態を招いているのです。

インド人の研究者である米国ブレークスルー研究所のビジャヤ・ラマチャンドランは科学雑誌Natureに書いています。
「近代的なインフラを最も必要とし、世界の気候変動問題への責任が最も軽い国々に制限を課すことは、気候変動の不公正の極みである」。
ラマチャンドランは、国際援助において、気候変動緩和をすべての融資の中心に据えるという近年の方針について、偽善であり、二枚舌だとして、猛烈に抗議しています。
「それは、経済開発に使える資源を必然的に減らすことになり、しかも地球環境にはほとんど貢献しない。・・なぜそのような努力をするのか。世界銀行とIMFの主要株主である富裕国は、これまでのところ、エビデンスや合理的なトレードオフに基づく気候変動政策の策定にはほとんど関心を示していない。 
それどころか、天然ガスを含む化石燃料への融資を制限し、自国では思いもよらないような制限を世界の最貧国に対して課すことを、自画自賛しているのである。その規制の中には、化石燃料への開発金融をほぼ全面的に禁止することも含まれている。 
世界銀行は、気候変動緩和政策と貧困削減の間の急激なトレードオフを最もよく理解しているはずである。しかし、国内の環境保護団体を喜ばせたい資金提供者が課した条件には従うしかなかったようだ。・・欧州連合は、自分たちはクリーンエネルギーの原子力発電所を停止し、天然ガスの輸出入を増やし、国内の石炭発電所を新たに稼働させる一方で、開発金融機関に対しては、貧困国でのすべての化石燃料プロジェクトを直ちに排除するよう主張している。」
「さらに悪いことに、EUの官僚たちは現在、『何がクリーンエネルギーか』をめぐって一進一退の攻防を繰り広げている。燃料不足に直面する加盟国から、原子力や天然ガスまで定義(タクソノミー)を拡大するよう圧力がかかっている。その一方でEUの広報担当者は、“EUの柔軟な分類法は、開発政策に反映されることはない”と明言した。つまり天然ガスはヨーロッパ人にとってはグリーンだが、アジアやアフリカの人々にとっては事実上禁止されるということだ。」
何十億人の人々が、先進国のエリートたちによって、化石燃料のない、貧困に満ちた未来へと組織的に強制されているのです。気候危機説を信奉する指導者たちが、開発途上国の化石燃料使用を抑圧しているからです。哲学者のオルフェミ・O・タイウォは、この現象を「気候植民地主義」と呼んでいます。
"
さらに中国に関わる部分を引用します。
"

他方で、能力を有する諸国は、エネルギー増産に励んでいます。国際価格が暴騰したのだから、当然の行動です。

中でも、すでに世界最大の石炭消費国である中国は、エネルギー不足を食い止めるため、生産量の増加に躍起になっています。昨年は世界最多の41億トンの石炭を生産していたのですが、2022年には更に3億トンの生産を追加する計画です。

2021年7月から10月にかけては、年間2億7000万トンの生産能力を追加しており、これは南アフリカの全年間生産量(年間約2億4000万トン)を上回ります。

また、中国には新たな炭鉱計画があり、今後数年間でさらに年間5億5900万トンの生産能力を追加する予定である。これは、世界第3位の石炭生産国であるインドネシアの年間生産量(年間5億6400万トン)よりも多いです。

中国は資金も技術もあるので増産できます。ところが殆どの開発途上国は資金も技術も欠いていて、たとえ資源を有していても、エネルギー不足と価格高騰の窮状にあえいでいまう。これを助けないならば、一体何のための国際支援なのでしょうか。

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発展途上国の成長を妨げる、エネルギー問題に終止符を打つためにも、日米で「エネルギー・ドミナンス」確立するという考え方は、有効です。

日米は、発展途上国に中露よりも優れたエネルギー生産技術や省エネ技術を提供することにより、特に日本はエネルギーを確保するとともに、米国とともに「エネルギー・ドミナンス」を確立することができます。

特に日本は、世界一クリーンといわれる石炭火力発電技術、その他にも高度な化石燃料の掘削技術もあります。 CO2の排出を抑える技術もあります。

この技術を提供して、発展途上国のエネルギー産業の振興に努め、日本はそれらの国々からエネルギー資源を獲得するという双方にとって良い関係を築くことができます。

日本もその方向に舵を切るべきです。まずは、原発の再稼働です。それに関しては、高橋洋一の以下の動画をご覧いただければ、御理解いただけるものと思います。


高橋洋一氏によれば、検査中も含めた稼働予定の原発と廃炉予定の原発を除いて、現在日本には残りの16基の原発があり、トータル33基動かせる可能性がある原発があるということです。

岸田首相は、この残り16基の原発には触れずじまいで、新たな原発の建造等について語っているわけです。現状では新原発建造にはかなりの年月を要します。既存の原発はすべて数十年を費やしています。

無論、最近は小型原発も開発されており、それが使えるようになれば、かなり建造期間は短くなりますが、それはあくまで将来の話しです。現状では未だかなり時間がかかると見て良いです。

やはり、現状のエネルギー危機に対応するには、既存の16基も稼働できるものは稼働すべきです。

このことに触れない、岸田総理はやはりエネルギー問題に関しては、疎いとしか言いようがありません。そうして、これに触れないマスコミも小鳥脳と謗られても反論できないと思います。ポンペオ氏とは対照的です。

安倍元総理が存命であれば、ポンペオ氏の「エネルギー・ドミナンス」の論文の発表があれば、それに呼応するか、いや、それに先立って発展途上国のエネルギー危機についても、考慮して、先進国だけではなく発展途上国も含めた「世界エネルギー安全保証」等の新概念を打ち出したかもしれません。


それを、かつて安倍氏が総理大臣に就任したばかりのときに、安全保証のダイヤモンドを投降したProject Syndicateに公表し、もし総理大臣であれば、それに基づき行動し、世界に新たな秩序をもたらしたかもしれません。

それによって、インド太平洋戦略が、世界を変えたように、世界を変えたかもしれません。省エネ技術、化石燃料関連技術も優れた日本ならば、それができた可能性があります。

岸総理、林外務大臣にはそれは無理でしょうが、それでも、ポンペオ氏の「エネルギー・ドミナンス」に呼応して、日本のエネルギー政策を見直し、日米や他の先進国とも協同して、中露の「エネルギー・ドミナンス」に対抗して、エネルギー安全保証に貢献することはできるはずです。

是非その方向に舵を切っていただきたいもてのず。

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2022年9月14日水曜日

トラス英首相の積極財政路線 日本との経済面では緊密関係 安全保障でも対中包囲網の強化を―【私の論評】本格的な「地政学的戦争」の先駆者英国と日本は、これからも協力関係を深めていくべき(゚д゚)!

日本の解き方


リズ・トラスト英首相

 英国でリズ・トラス首相が誕生したが、中国やロシア、欧州連合(EU)などとの関係は変わるのか。日本はどのように連携すべきか。

 就任したばかりのトラス氏は、早速1500億ポンド(約25兆円)規模のエネルギー費対策を発表した。

 トラス氏は保守党の党首争いで、リシ・スナク前財務相と争ったが、スナク氏が財務相経験者らしく緊縮路線だったので、党首争いの流れのまま、積極財政路線を貫いたのだろう。

 具体的には、家計のエネルギー料金の上限を2年間、年2500ポンド(約42万円)程度に抑える計画を発表した。

 家計の年間エネルギー代の平均は4月に54%値上がりして1971ポンド(約33万円)となり、10月には80%上昇して3549ポンド(約59万円)に達する見通しだった。今回の措置は4月よりは高いが、当初予定より引き下げる形になっている。

 英国では、インフレがひどい状況になっている。インフレ率は7月時点で10・1%と1982年2月以来の高水準だ。ロシアによるウクライナ侵攻が主原因であるが、英国がEUを離脱したため、安価な労働力が利用できなくなって、供給サイドの拡大もままならないことも背景にある。

 イングランド銀行(英中央銀行)は10月のインフレ率が13%を超えると予想している。政府は今回の措置がインフレ率を最大5ポイント押し下げると期待する。

 大規模財政出動を懸念する声もあるが、家計や企業が直面している問題の解決には財政出動は大きくないといけない。トラス氏は正しい方向の経済政策を実行しようとしている。

 経済面でいえば、EU離脱後の英国が各国との経済連携を模索する中、日本と経済連携協定(EPA)を締結した。当時の担当大臣はトラス氏だった。このため、経済関係では日本にとってなじみが深い。

 さらに、英国は日本主導の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)にも参加の意向を示している。これらの英国の取り組みは、日英にとって好ましいもので、経済関係ではかなり緊密になっているといえるだろう。

 筆者は、日英関係を経済だけに限らず、安全保障まで広げたらいいと思っている。

 もともと経済圏と安全保障圏は、EUと北大西洋条約機構(NATO)との関係を見ればわかるように、かなりオーバーラップしている。経済関係と安全保障関係は互いに補完的であるので当然のことだ。

 であれば、日英が安全保障関係でも連携するのは自然だ。日米安保の関係は揺るぎないが、日本としては英国との関係があってもいい。かつて、日英同盟があり、当時の日本は輝いていた。いま第2の日英同盟があれば、対中包囲網がより強化されるだろう。これをオーストラリアやニュージーランド、さらにはインドまで広げると、対中戦略はかなり万全になるはずだ。

 日本の周辺には、中国、ロシア、北朝鮮と3つも専制国家があり、世界の危険地帯だ。日本の安全保障のためには、民主主義の同盟国が多いほどいい。そのカギを英国は持っている。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】本格的な「地政学的戦争」の先駆者英国と日本は、これからも協力関係を深めていくべき(゚д゚)!

実は、日英には大きな共通点があります。それについては、あまり語られることもないのですが、本当に重要な共通点があります。それについては、以前このブログでも述べたこがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米空母カールビンソン、ベトナム・ダナンに寄港 戦争終結後初 BBC―【私の論評】新たな日米英同盟が、中国の覇権主義を阻む(゚д゚)!
この記事は、2018年のものです。詳細は、この記事ご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
日本と英国といえば、昨年は事実上の日英同盟の復活がありました。2017年8月30日、英国のテリーザ・メイ首相が日本を訪問しました。アジア諸国の歴訪でもなく、メイ首相はただ日本の安倍晋三首相らと会談するためにだけに、日本にまで出向いて来たのです。その目的は、英国と日本の安全保障協力を新たな段階に押し上げることにありました。
日本を訪問した英メイ首相と安倍首相
英国は1968年、英軍のスエズ運河以東からの撤退を表明しました。以来、英国はグローバルパワー(世界国家)の座から退き、欧州の安全保障にだけ注力してきました。ところが、その英国は今、EUからの離脱を決め、かつてのようなグローバルパワーへの返り咲きを目指しています。

そして、そのために欠かせないのが、アジアのパートナー、日本の存在です。日本と英国は第二次世界大戦前後の不幸な時期を除いて、日本の明治維新から現代に至るまで最も親しい関係を続けてきました。

日本の安倍首相とメイ首相は「安全保障協力に関する日英共同宣言」を発表し、その中で、「日英間の安全保障協力の包括的な強化を通じ、われわれのグローバルな安全保障上のパートナーシップを次の段階へと引き上げる……」と述べ、日英関係をパートナーの段階から同盟の関係に発展させることを宣言しました。

そして、「日本の国際協調主義に基づく『積極的平和主義』の政策と英国の『グローバルな英国』というビジョンにより」と述べ、英国がグローバルパワーとして、日本との同盟関係を活用して、インド太平洋地域の安定に関与していく方針を明確にしました。

この突然ともいえる、日英同盟の復活ですが、これにはそれなりの背景があります。日英はユーラシア大陸の両端に位置しているシーパワーであり、その安全のためにユーラシアのランドパワーを牽制(けんせい)する宿命を負っているといえます。
ユーラシア大陸の両端に位置する海洋国家、英国と日本
日本は中国の海洋進出を警戒しているし、英国はロシアの覇権を抑え込んできました。英国はロシア、日本は中国と別々の脅威に対峙しているようにも見えますが、日本と英国は、ユーラシアというひとかたまりのランドパワーを相手にしているのであって、本質的には同じ脅威に対峙しているのです。

そうして日英同盟は結局、日英米の三国による同盟関係の追求に発展することでしょう。それは覇権の三国同盟ではなく、新しい安全保障の枠組みとしての「平和と安定の正三角形」になることでしょう。そうして、それこそ、新日英同盟の本当の意味があり、それが実現すれば、日本の国際的地位と外交力は飛躍的に向上することになるでしょう。

昨日は、このブログでユーラシア大陸の中国とロシアについて述べました。 これも以下に引用します。

NATOには、ベルギーに欧州連合軍最高司令部という司令部があります。しかし、両国にはこれに相当するような両国統一の司令部がないですから、一緒に戦えるとは考えられませんし、戦おうともしていないと考えられます。
欧州連合軍最高司令部
 
両国による合同軍事演習や訓練は、政治的なデモンストレーションに過ぎないと考えられます。もちろん政治的な意味はありますし、それを無視するべきでもありませんが。しかし、彼らの動きは極めて戦術的で便宜的な部分が多いと考えられます。ただ、これからロシアや中国を追い込めば追い込むほど、お互いの絆は強まることにはなるでしょう。

しかし、仮にロシアが米国との関係を改善できるのなら、中国そっちのけで米国に専念することになるでしょう。中国も同じでしょう。現在は、米国と対立しているから互いに相手を利用しようとしているだけです。

9月15日からウズベキスタンで習主席とプーチン大統領の会談が行われることになっていますが、これは、どちらから声を掛けたかはわかりませんが、習近平がプーチンに会いたくて会いに行くというわけではないでしょう。

むしろ中国としては、ここまで来てしまった以上、ロシアをある程度は支援せざるを得ないのですが、米国との関係もあり、ロシアを支援しすぎると米国との関係がこじれるので、それ以上リスクを取ってまでロシアにのめり込むことはしないでしょう。

ただ、習近平は、北京オリンピックの直前に、北京でプーチンと首脳会談をし、そうして共同声明を出し、「中国とロシアの友情にリミットはない」と発言してしまいました。

当初はもっと早くロシアのウクライナ侵攻はは、終わると考えていたのでしょう。しかし、これだけ戦争が長続きしてロシアに対する反発が高まれば、当然、ロシアに関与しているとみられる中国に対する批判が激しくなることになります。

中国はそのことにやっと気が付いたようで、ずいぶん軌道修正をしました。それ以来、中国はロシアに対して必ずしも完全に支持しているわけではありません。急に状況が変わったとは考えられず、ロシアとはつかず離れずになると思います。

ただ、ロシアを完璧に切るわけにはいかないでしょう。そうすれば、米国が中国に強く出る可能性もあるので、ロシアに頑張ってもらわないといけないです。でも、中国がロシアを最後まで支持して運命を共にすることはないでしょう。

何しろ、中露はかつて中ソ国境紛争で戦った仲です。現状では、戦術的には結びついてはいますが、元々はユーラシア大陸で覇権を争う、隣国同士です。現状では、人口でも経済でも、中国がロシアを圧倒しているということと、米国との関係が、両国とも悪くなっているので、今は結びついていますが、いずれかが米国との関係さえ良くなれば、米国側に近づくことが戦術ということになります。

今は、影を潜めていますが、根の部分では敵対していると見るのが、正しい見方であると考えられます。両国とも米国との関係が改善されなくても、中国の経済がかなり悪くなれば、その根の部分が表に出てきて、両国関係は悪化することになるでしょう。
中国とロシアは、根底ではユーラシア大陸の覇権をめぐり互いに争う、覇権国家ですが、現在では、ロシアのGDPは韓国より若干下回る程度です。中露ともに一人あたりのGDPは1万度を若干上回る程度に過ぎませんが、ロシアの人口は1億4千万人であり、中国の人口は14億人であり、経済では中国が、ちょうどロシアの十倍程度の規模です。

この状態では、中露が現状で対峙することは得策ではないことが明らかであり、そのため中露は戦術的に結びついています。

そうして、中露はいずれもランドパワーの国であり、中露ともに海軍を有していますが、その実力はやはり未だランドパワーの国の海軍であり、いまでも日英におよばないです。

特に、日英には強力な潜水艦隊が存在しています。日本は、通常動力のステルス性に優れた22隻の潜水艦艦隊を持ち、これは対潜哨戒能力が未だ低い、中露を脅かしています。英国はアスチュート級を7隻建造する計画で、2007(平成19)年6月に1番艦「アスチュート」が進水、2010(平成22)年8月に就役して以降、これまでに4番艦「オーディシャス」までが同海軍に引き渡されていました。

さらに、今年就役した「アンソン」は2011(平成23)年10月13日に起工。約10年後工期を経て2021年に進水し、今年8月31日に就役し海上公試に入りました。

水中排水量は約7700トン、全長97m、全幅11.3m。乗員数は約100名(最大109名)で、ロールス・ロイス製の加圧水型原子炉「PWR2」を1基搭載し、速力は30ノット(約55.6km/h)。533mm魚雷発射管を6門備え、国産の「スピアフィッシュ」魚雷のほか、アメリカ製の「トマホーク」巡航ミサイルなどを装備しています。

これらは、攻撃型原潜であり、現在の攻撃型原潜として最新型であるとともに、かなりの攻撃力があります。米国にも攻撃型原潜が多数あるのですが、旧式化しつつあるため、今後の製造計画から、一時的に攻撃型原潜の数が減るこどか予想され、まさにそれを補うのが英国の攻撃型原潜であるといえます。

英国はいわゆる「グローバル・ブリテン」を標榜していますが、現在では空母「クイーン・エリザベス」による空母打撃群だけでは、役不足であり、この裏付けとなるのが、まさにアスチュート型攻撃型原潜であるといえます。

日英は、対潜哨戒能力でも中露を大幅に上回る能力を有しており、そのため対潜戦闘力はかなり強いです。実際に日英・中露が海戦ということになれば、中露はかなり不利です。中国は艦艇数は多いですが、対潜哨戒力が劣っており、実際に海戦ということになれば、かなり苦しい戦いを余儀なくされることになります。ロシアも同じです。

これに、シーパワーの雄である、米国が加わり、日米英で、中露と対峙ということになれば、中露としては絶望的です。中国海軍のロードマップによれば、2020年には第二列島線を確保することになっていましたが、それどころか、2022年の今年になってすら、台湾や尖閣諸島を含む第一列島線すら確保できていないという現実が、それを如実に示しています。

ランドバワー国が、シーパワー国になるのは、そう簡単なことではないのです。ランドパワー国が、多数の艦艇を建造して、海洋に乗り出したからと言ってそれで、すぐにシーパワー国になれるわけではありません。そうして、ランドパワーの国と、シーパワーの国が海で戦えば、ランドパワー国にはほとんど勝ち目はないのです。

現在の中国は鄧小平が劉華清(中国海軍の父)を登用し、海洋進出を目指した時から両生国家の道を歩み始めました。そして今、それは習近平に引き継がれ、陸海併せ持つ一帯一路戦略として提示されるに至っています。しかしこれは、マハンの「両生国家は成り立たない」とするテーゼに抵触し、失敗に終わるでしょう。

劉華清(中国海軍の父)

事実、両生国家が成功裏に終わった例はありません。海洋国家たる大日本帝国は、大陸に侵攻し両生国家になったため滅亡しました。大陸国家たるドイツも海洋進出を目指したため2度にわたる世界大戦で滅亡しました(ドイツ第2、第3帝国の崩壊)。ソビエト帝国の場合も同じです。よもや、中国のみがそれを免れることはないでしょう。一帯一路を進めれば進めるほど、地政学的ジレンマに陥り、崩壊への道を早めてゆくことになります。

そうして、もう一つ忘れてはならないことがあります。英国は、地政学的戦いの先駆者であるという事実です。

地経学的な戦いとは、兵士によって他国を侵略する代わりに、投資を通じて相手国の産業を征服するというものです。経済を武器として使用するやり方は、過去においてもしばしば行われてきました。

米中の争いも、軍事的なもので本格的に対峙すれば、互いに核保有国であり、最終的には核ミサイルの打ち合いになりかねません。そのため、軍拡競争的なことはするでしょうが、互いに真正面から軍事衝突することはしないとみられます。そうなると、米中の本格的な争いの領域は「地政学的」なものにならざるをえません。

ところが中国が特殊なのはそれを公式に宣言していることです。その典型が「中国製造2025」です。これは単なる産業育成ではなく、たとえばAIの分野に国家が莫大な投資を行うことで、他国の企業を打倒すること、そして、それによって中国政府の影響力を強めることが真の狙いなのです。

その意味で、中国は国営企業、民間企業を問わず、「地経学的戦争における国家の尖兵(せんぺい)」なのです。これは、かつての英国がアジアを侵略する際の東インド会社のような存在なのです。

中国企業がスパイ行為などにより技術の窃盗を繰り返したり、貿易のルールを平然と破ったりするのは、それがビジネスであると同時に、国家による戦争だからです。

トランプ政権になって、米国がそうした行為を厳しく咎(とが)め、制裁を行うようになったのも、それを正しく「地経学的戦争」だと認識したからであり、だからこそ政権が交代しても、対中政策は変わらなかったのです。

そうして、英国は本格的な「地政学的戦争」における、先駆者であるのです。香港を中国に蹂躙された英国としては、その憤りをいずれ何らかの形で晴らそうとするのは当然であり、その意味でも日英は手を携えるべきです。

日本にとっては、これから中国と対峙していく上で、英国は強力な助っ人となるのは確かであり、EUを脱退した英国としてもTPP加入は、念願であり、日英の協力関係は、今後ますます強めていくべきです。

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ロシアが北朝鮮に頼るワケ 制裁と原油価格低下で苦境 「タマに使うタマがないのがタマに傷」日本の自衛隊も深刻、切羽詰まる防衛省―【私の論評】中国がロシアを最後まで支持して運命を共にすることはない(゚д゚)!


2022年9月13日火曜日

ロシアが北朝鮮に頼るワケ 制裁と原油価格低下で苦境 「タマに使うタマがないのがタマに傷」日本の自衛隊も深刻、切羽詰まる防衛省―【私の論評】中国がロシアを最後まで支持して運命を共にすることはない(゚д゚)!

日本の解き方


 ロシアに北朝鮮が砲弾などを提供すると報じられた。その背景や、日本への影響を考えてみたい。

 米国防総省のライダー報道官は6日の記者会見で、ウクライナへの侵攻を続けるロシアが、北朝鮮から武器を購入せざるを得なくなっているとの見方を示した。「ロシアが侵攻の維持や後方支援で困難を抱えていることを示している」と指摘した。西側諸国の制裁により、ロシアの軍用品などの供給能力が低下しているためだと別の政府高官は明らかにしている。

 ウクライナとロシアの紛争は長期化している。2週間で侵攻完了というロシアの当初のもくろみはかなり外れて、武器供給までも行き詰まってきているのだろう。それとともに、経済制裁の効果がじわりじわりと出てきている。

 ロシアは欧米など先進国との交易が経済制裁の対象となっているものが多いため、経済制裁を実施していない新興国との貿易を拡大させている。原油などの輸出だけでなく、家電や機械、食品といった輸入も増やしている。ロシアの石油は本来禁輸されているはずの欧州にも「裏」輸出されているという指摘もある。これも、ロシア経済が苦しいという傍証である。

 原油価格の指標であるWTI原油先物は、2月のロシア侵攻時に1バレル=90ドル程度だったのが、130ドル程度まで急騰した。その後は100~120ドルあたりで推移していたが、7月以降、100ドルを割り込み、今では侵攻時の水準より低い80ドル程度だ。

 エネルギー価格の低下は、西側の経済制裁とともにロシア経済を苦境に陥らせている。ある意味で、ロシア経済は抜け道の多い経済制裁よりも直接的に交易収入減となるエネルギー価格の下落のほうが効果が大きい。

 一方、経済制裁をしている西側諸国の経済にとってはメリットが大きい。さらに言えば、西側諸国からのウクライナ支援も継続できるチャンスでもある。

 エネルギー価格の低下は、エネルギーの大半を海外に依存している日本経済にもプラスである。しかし、安全保障面でみると、ロシアですら弾不足になるという現実は、日本の防衛を考えると、空恐ろしいともいえる。

 日本の自衛隊では、自嘲ともいえるジョークがあるという。「タマに使うタマがないのがタマに傷」というものだ。ただし、笑っている場合ではない。

 これまではこのような深刻な話が外に出にくかったが、さすがに防衛省としても切羽詰まってきているのだろう。来年度予算について財務省への概算要求が8月末に行われたが、その中で、「共食い」と言われる実態が要求資料の中にある。ある装備の備品が足らなくなると、新規に調達するのではなく、他の装備から部品を取ってくるというのだ。

 当然のことながら、部品を取られた装備は使用できない。なお、この概算要求の資料は防衛省のウェブサイトにあるので、興味のある方は参照していただきたい。まともに防衛力強化を考える時期だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】中国がロシアを最後まで支持して運命を共にすることはない(゚д゚)!

ロシアが北朝鮮に頼ることはロシアの窮地を表す象徴的に表しています。ロシアが窮地に追い込まれているのは間違いありません。

ただ、ロシアが最も頼りにしたいのは、ロシアの極東地域で実施した大規模軍事演習「ボストーク2022」にも参加した軍事大国・中国のはずです。国防費を毎年上げ続け、世界屈指の陸軍力を誇っています。

ただ、中国外務省は侵攻が始まった当日に「武器の提供はない」と明言していました。

中国外務省・華春瑩報道局長「我々は、アメリカがウクライナに軍事物資を提供したように、相手国(ロシア)に武器を提供することはない。ロシアも実力ある大国として、中国や他の国からの武器支援は必要ないでしょう」

中国外務省・華春瑩報道局長

ロシアがウクライナへの侵攻を開始した2月24日、中国外務省は定例の記者会見でロシア支援の可能性について問われた際、「武器の提供はない」と明言していました。

ロシアは大国で支援は必要ないとの認識も示しています。

ただ、ロシアが中国に支援を要請したと欧米メディアが報じた3月13日以降は、「偽の情報だ」と反発はするものの、前回のように支援を否定する発言はしていません。

中露ともに、当初は、ロシアのウクライナ侵攻は、数週間で何らかの形で決着がつくものと考えていたのでしょうが、その予想は完璧に外れた形になっています。

中国共産党機関紙、人民日報(海外版)は12日付で、中国共産党序列3位で、習氏の最側近として知られる栗戦書・全人代常務委員長が7~10日、ロシアを訪問してプーチン氏と会談したと伝えました。栗氏からウクライナに関する直接的な言及はなかったようで、習政権の慎重な姿勢は継続されているようです。

栗戦書(左)とプーチン

習氏は、プーチン氏から支援要請があった場合、動くのでしょうかか。

ただ、欧米などの監視もあり、中国が直接の支援に動く可能性は低いです。一方、中国やロシアと並び「新・悪の枢軸」という枠組みで語られるイランや北朝鮮は、戦闘用の無人機(ドローン)や弾薬の販売に積極的です。

中国がロシアに武器を供与するとすれば、イランや北朝鮮を経由することになるでしょう。中国としては、ロシアから石油や天然ガスを安く購入できる利益もある。現在の両国関係は、中国が完全に優位なかたちに傾いているようです。

習近平は、そもそも米国の制裁自体が一般人を苦しめ、制裁が拡大すれば世界経済が大混乱に陥るとして、制裁自体に反対しています。しかし、中国・ロシア関係に世界の注目が集まっている状況において、ロシアを支援すれば中国は国際社会からロシアの戦争犯罪の共犯者と批判されることを覚悟しなければならないでしょう。

中国が本気でロシアと同盟を組み、米国と対峙しようとしているとは到底思えません。 ロシアにとっても中国にとっても、米国との関係こそが戦略的に重要で、逆に言うと、米国との関係が悪いときには、お互いが必要なのです。ロシアと中国の関係自体は「戦略的同盟関係」というより、「戦術的なパートナー」でしかありません。

ロシア軍と中国軍の艦艇が日本列島を周回したり、中国ボストーク22の軍事演習に参加したのも戦術的なものです。 NATOには、ベルギーに欧州連合軍最高司令部という司令部があります。しかし、両国にはこれに相当するような両国統一の司令部がないですから、一緒に戦えるとは考えられませんし、戦おうともしていないと考えられます。

欧州連合軍最高司令部

両国による合同軍事演習や訓練は、政治的なデモンストレーションに過ぎないと考えられます。もちろん政治的な意味はありますし、それを無視するべきでもありませんが。しかし、彼らの動きは極めて戦術的で便宜的な部分が多いと考えられます。ただ、これからロシアや中国を追い込めば追い込むほど、お互いの絆は強まることにはなるでしょう。

しかし、仮にロシアが米国との関係を改善できるのなら、中国そっちのけで米国に専念することになるでしょう。中国も同じでしょう。現在は、米国と対立しているから互いに相手を利用しようとしているだけです。

9月15日からウズベキスタンで習主席とプーチン大統領の会談が行われることになっていますが、これは、どちらから声を掛けたかはわかりませんが、習近平がプーチンに会いたくて会いに行くというわけではないでしょう。

むしろ中国としては、ここまで来てしまった以上、ロシアをある程度は支援せざるを得ないのですが、米国との関係もあり、ロシアを支援しすぎると米国との関係がこじれるので、それ以上リスクを取ってまでロシアにのめり込むことはしないでしょう。

ただ、習近平は、北京オリンピックの直前に、北京でプーチンと首脳会談をし、そうして共同声明を出し、「中国とロシアの友情にリミットはない」と発言してしまいました。

当初はもっと早くロシアのウクライナ侵攻はは、終わると考えていたのでしょう。しかし、これだけ戦争が長続きしてロシアに対する反発が高まれば、当然、ロシアに関与しているとみられる中国に対する批判が激しくなることになります。

中国はそのことにやっと気が付いたようで、ずいぶん軌道修正をしました。それ以来、中国はロシアに対して必ずしも完全に支持しているわけではありません。急に状況が変わったとは考えられず、ロシアとはつかず離れずになると思います。

ただ、ロシアを完璧に切るわけにはいかないでしょう。そうすれば、米国が中国に強く出る可能性もあるので、ロシアに頑張ってもらわないといけないです。でも、中国がロシアを最後まで支持して運命を共にすることはないでしょう。

何しろ、中露はかつて中ソ国境紛争で戦った仲です。現状では、戦術的には結びついてはいますが、元々はユーラシア大陸で覇権を争う、隣国同士です。現状では、人口でも経済でも、中国がロシアを圧倒しているということと、米国との関係が、両国とも悪くなっているので、今は結びついていますが、いずれかが米国との関係さえ良くなれば、米国側に近づくことが戦術ということになります。

今は、影を潜めていますが、根の部分では敵対していると見るのが、正しい見方であると考えられます。両国とも米国との関係が改善されなくても、中国の経済がかなり悪くなれば、その根の部分が表に出てきて、両国関係は悪化することになるでしょう。

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2022年9月12日月曜日

中国「北部戦区」で内戦勃発か?―【私の論評】中国は、易姓革命前夜か(゚д゚)!

中国「北部戦区」で内戦勃発か?

【まとめ】

・一部報道によると、9月8日、「北部戦区」の遼寧省瀋陽市于洪軍用飛行場で、激しい銃声、爆発音、戦闘機の音が聞こえたという。

・習主席は、数年前から軍改革を進め、軍事委主席の責任体制を強化している。

・習主席が計画的に登用してきた部下の中には、“習近平に対する個人的な忠誠心”と組織としての“党中央軍事委員会への忠誠心”の間で葛藤している人も。


目下、中国共産党は、10月16日開催の第20回党大会を控え、デリケートな時期を迎えている。

習近平主席のカザフスタン訪問(9月14日)直前、中国国内では、不穏な事件が起きた。9月8日午前2時頃、「北部戦区」の遼寧省瀋陽市于洪軍用飛行場で、激しい銃声、爆発音、戦闘機の音が聞こえた(a)という。

当日、習近平主席は、突然、王強を上将へ昇進させ、新「北部戦区」司令官に任命している。他方、李橋銘・前「北部戦区」司令官は、行方不明だという。この唐突な人事は、8月2日のペロシ訪台直前、「東部戦区」で王仲才が同戦区の新海軍司令官に就任した(b)話を想起させる。

8月17日、北戴河会議直後、習主席は、まず、遼寧省錦州市の遼瀋戦役記念館を視察した。次に、「北部戦区」駐屯地の瀋陽市へ移動し、瀋陽軍の大佐以上の将校と接見している。だが、その際、李橋銘は「改革・開放」を支持し、主席の3選には賛同しなかった(c)という。

公開資料(a)によると、王強は1963年四川栄県出身で、2018年7月に「西部戦区」副司令官に昇進し、2020年4月には「西部戦区」空軍司令官を兼任した。

一方、李橋銘・前「北部戦区」司令官は1961年4月生まれ、河南省出身である。2016年1月、「北部戦区」副司令官兼「北部戦区」陸軍司令官となった。そして、2017年8月、「北方戦区」司令官に昇進した。現在、李橋銘は61歳なので、65歳定年にはまだ早い。したがって、李橋銘は“失脚”したのではないかと噂される。

▲写真 中国で新たに設置された五大戦区 出典:防衛研究所


実際、習主席は2012年秋の総書記就任以降、軍の腐敗撲滅に取り組み、当時の軍事委員会元副主席から軍事委員会委員まで、腐敗した大量の「反習派」の首を切った。

更に、数年前から軍改革を進め、軍事委主席の責任体制を強化している。習主席は、2012年11月から軍を指揮して以来、68人を上将に昇進させた。この数は、前任者の2人(江沢民元主席と胡錦濤前主席)よりも多い。

今年1月21日、習主席は「北方戦区」政治委員である劉青松を含む7人を上将に昇進させ、全員の新役職を明らかにした。

ただし、短期間のうちに「西部戦区」で3回、「中部戦区」で2回の司令官交代が行われるなど、奇妙な事が起きている。

例えば、2020年12月、張旭東が上将に昇進し、「西部戦区」司令官に就任した。しかし、2021年10月、張旭東は58歳で病死している。そこで、2021年7月、前「西部戦区」陸軍司令官の徐起零が上将に昇格し、張旭東に代わり、「西部戦区」司令官になった。

その後、徐起零は癌に冒されていると報道された。そして、わずか2ヶ月で「西部戦区」司令官を辞し、中央軍事委員会統合参謀部副参謀長として北京へ戻って来た。徐起零のあと、新疆戦区司令官だった汪海江・上将が「西部戦区」司令官を継承している。

米国へ亡命した蔡霞(元中央党校・党建教研部教授)は『フォーリン・アフェアーズ』(2022年9月6日)で、次のように指摘(d)した。

習近平は長年にわたって自分の部下を計画的に登用してきた。だが、軍将官の言葉を見ると、彼らは“習近平に対する個人的な忠誠心”と組織としての“党中央軍事委員会への忠誠心”の間で葛藤している。

実は、昨年12月、習政権のウイグル政策を批判して習主席に批判された劉亜洲将軍が、同じ将軍の弟と同時に家宅捜索を受けて、行方不明になっているという。

他方、オーストラリアの法学者、袁紅冰の党内情報によれば、劉亜洲が内部統制下にあるのは、太子党を代表して公然と「反習」を掲げ、主席の3選を阻もうとしたからだ(e)という。報の通り、今年5月7日、浙江省舟州市夜空が真っ赤に染まった。翌8日午後1時過ぎ、浙江省杭州市で原因不明の大きな音が2回続けて鳴り響いている。

2日後の10日朝、首都・北京市大興区楡垡橋で戦車が走っているのが目撃された。更に、翌11日、今度は福建省福州市で夜空が真っ赤に染まっている。

以上のように、5月前半に続き、第20回党大会が開催直前に再び内戦が勃発した。これは、習主席が完全には軍権を掌握していない証しではないか。仮に、軍をしっかり握っていれば、そもそも瀋陽軍区へ行って、3選支持を訴える必要はなかったのではないだろうか。

〔注〕

(a)『中国瞭望』「突然!習近平が北部戦区司令官を代える、瀋陽で銃声が聞こえる」(2022年9月8日付)

https://news.creaders.net/china/2022/09/08/2523453.html

(b)『東方網』「東シナ海にまた新たな将軍が現れた:東部戦区海軍司令官に王忠才中将が任命される」(2022年8月4日付)

https://j.eastday.com/p/1659622895037304

(c)《万維読報》「軍に変化? 習近平、李首相の軍事的“盟友”を素早く排除」(2022年9月10日付)

(https://video.creaders.net/2022/09/11/2524347.html)

(d)「習近平の弱点―傲慢と偏屈 パラノイアが脅かす中国の未来―」

(https://www.foreignaffairs.com/china/xi-jinping-china-weakness-hubris-paranoia-threaten-future)。

(e)『中国新聞中心』「劉亜洲、第20回党大会での総書記交代を推進…習近平の内部統制で? 習近平の3選に対し、鄧樸方ら太子党が劉亜洲支持に動き出す」(2021年12月30日付)

https://chinanewscenter.com/archives/28906


【私の論評】中国は、易姓革命前夜か(゚д゚)!


中国公式メディアの報道によると、中国共産党中央軍事委員会の上将昇進式は8日、北京の「八一大楼」で行われました。八一大楼は8月1日の建軍節にちなんで命名されたもので、中国共産党の最高軍事機関である「党中央軍事委員会」の執務ビルです。

習近平中央軍事委員会主席は、上将に昇進した王強氏に、北方戦区司令官の任命書を授与しました。しかし、これまで、王強氏が北部戦区司令官に昇進したことも、前任の李橋銘北部戦区司令官が更迭されたことも、公式には報道されませんでした。そのため、今回の北部戦区司令官の人事異動は異例といえます。李橋銘氏は、通常の解任手続きを経ずに定年を迎える前に突然更迭され、現在は行方不明です。

8日、王強北部戦区司令員(右)と記念撮影する習近平氏

これまで、中国共産党の5つの戦区司令官はいずれも陸軍上将です。王強氏は空軍上将であり、戦区司令官の中で唯一陸軍出身ではない司令官となっています。

情報筋によると、習近平氏が今年8月17日、瀋陽市を視察した際、北部戦区司令部を訪問したといいます。習近平氏は瀋陽市を視察する時に、すでに北部戦区司令官の更迭を決めていた可能性があり、そうでなければ、瀋陽市にも北部戦区にも訪問しかなっただろうという分析がありました。

中国語ウィキペディアの「中国人民解放軍北部戦区」によると、李橋銘氏の任期は今年8月までで、王強氏は今年8月から北部戦区司令官に就任していることが分かります。これは情報筋が明らかにした情報と一致しています。

ところが、9月7日以降、瀋陽市では異常な事件が相次いでいます。

ネット上の動画では、7日午前2時から瀋陽市於洪区の軍用空港の方角で、戦闘機が飛行する様子が映っています。銃砲の音と複数の大きな爆発音が聞こえ、閃光も伴っていることが分かります。

遼寧省瀋陽市鉄西区で8日未明も、爆発音が聞こえ、上空には戦闘機が通過する轟音(ごうおん)が絶えませんでした。ネットユーザーが投稿した動画によると、8日午前2時ごろ、遼寧省瀋陽市鉄西区上空を通過する戦闘機の轟音と、遠くで大きな爆発音が聞こえ、それに伴って爆発の閃光が確認できたといいます。

瀋陽市の街頭に9日午前4時すぎから、高速道路から降りてきた警察の白バイに護衛される軍用車の長い車列が現れました。各軍用車両は幌(ほろ)で厳密に覆われ、その両側には白バイに乗った警察官が付き添っています。しかし、中国の公式メディアは、このことについて一切報道しませんでした。


中国のネットユーザーによると、死刑囚の護送や軍人の遺体搬送の際に、このような光景がよく見られるといいます。白バイクが軍用車を護送していることを考えると、逮捕されたクーデター軍人や軍人の遺体ではないかと疑われます。

中国では以前もきな臭い動きがありました。

5月初旬、38軍2個機動師団が上京し、27軍9師団が上海に進入し、5月4日、習近平主席は政治局常務委員拡大会議で条件付きながら、退位に同意したという噂がありました。

同月7日夜、浙江省舟山市で夜空が赤く染まっていたとされています。ただ、異常気象等で夜空が赤くなることも考えられるでしょう。

5月7日夜、夜空が真っ赤に染まった浙江省舟山市

翌8日午後1時過ぎ、浙江省杭州市で原因不明の大きな音が2回続けて鳴り響いたとされています。なお、同市では、今年3月にも同様な大音響に包まれています。

さらに、5月10日朝、北京市大興区楡垡橋で戦車が走っていました。さすがに、北京市民もこれには驚いたに違いないです。

さらに、翌11日夜、福建省福州市でも夜空が真っ赤に染まった。確かに、夜、漁船が沖に出て一斉に赤色灯をつければ、かかる状況となるかもしれないです。だが、福州市ではこれが初めてではないそうです。

習政権下では「改革・開放」路線(資本主義)をやめて、社会主義へ回帰しました。そのため、「国進民退」(効率の悪い国有セクターが伸長し、効率の良い民間セクターが縮小)が起きています。この状況の中で、成長は難しいでしょう。

個人崇拝を是とする習主席は「第2文革」を発動し、国内への締め付けを厳しく行っています。成長するには自由な発想が不可欠です。そのため、発展は困難でしょう。

「反習派」が完全に(軍権を含む)実権を掌握していれば、今後静かに物事が運ばれる可能性もあります。その際、「習派」と「反習派」との間で、多少の軍事衝突はあるかもしれないです。しかし、規定の如く、今秋の第20回党大会で、習近平主席が退位し、李克強首相が総書記(共産党トップ)に就任するという政権移譲が行われることになるかもしれません。

そうはならなかったにしても、今後も「戦狼外交」(対外強硬路線)を継続すれば、中国は世界からますます孤立します。すると、他国との友好的な関係による経済的恩恵を期待できないでしょう。

したがって、将来、中国は経済破綻する公算が大きいです。その際には、同国特有の「易姓革命」(王朝名を変える革命)が起こるかもしれないです。

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2022年9月11日日曜日

宗教法人の「解散命令」は可能だ 実際に発動するか決めるには被害状況の実態考慮すべき 消費者契約法など対応できるか合わせて検討を―【私の論評】安倍路線を引き継ぐべきと考えている勢力が自民党内で台頭し、安倍元総理のように、岸田政権に睨みを利かすべき(゚д゚)!

日本の解き方

高橋洋一 

河野太郎消費者相

 河野太郎消費者相がテレビ番組で、霊感商法の被害対策をめぐる消費者庁の有識者検討会について「解散命令まで消費者庁が関わったり、解散命令まで踏み込めと文部科学省に働きかけたりすることになるかもしれない」と話した。

 宗教法人法は、宗教団体が礼拝の施設その他の財産を所有し、これを維持運用し、その他その目的達成のための業務および事業を運営することに資するため、宗教団体に法律上の能力を与えることを目的(1条)として1951年に制定された。

 同法は、宗教法人制度が信教の自由と政教分離の原則に密接にかかわるものであり国による関与が最小限にとどめられるべきなので、所轄庁の権限が民法の法人の主務官庁に比べて限られている。なお、宗教法人に対しては、法人税、地方税などについて優遇措置がある。

 宗教法人に対する解散命令の事例は、旧オウム真理教に対するものだ。東京地検と東京都は、95年6月30日それぞれ東京地方裁判所に対し、オウムに対する宗教法人の解散命令を申し立てた。申し立ての理由は、教団によるサリン事件が「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」(同法81条1項1号)および「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたこと」(同法2条)だ。

 東京地裁は、95年10月30日、申し立てを理由があるものと認め、教団を解散する旨の決定を下した。同年12月19日、これに対する教団の東京高等裁判所への抗告が棄却され、続く最高裁判所への特別抗告も棄却された(96年1月30日)。これまで休眠状態の宗教法人に対して解散を命じた事例はあるが、法令違反・目的逸脱行為を理由に解散を命じたのは初めだった。

 オウム事件を契機として、宗教法人法が改正され、95年12月15日に公布された。改正の主な点は、①2以上の都道府県で宗教活動を行う宗教法人の所轄庁を文部大臣とする②信者その他の利害関係人は、宗教法人の備え付け書類、帳簿について閲覧を求めることができる③宗教法人は収支計算書等作成、備え付け義務のある書類のうち一定のものを定期的に所轄庁に提出しなければならない④収益事業の停止命令、認証の取り消し、解散命令の請求のために所轄庁に報告を求め質問をする権限を付与したことなどである。

 以上のとおり、解散命令は法的に可能だ。実際に発動するかどうかは、被害状況の実態との関係で決めたらいい。その際、宗教法人法の他の条項、消費者契約法その他の法律や新たな立法で対応できるかどうかも合わせて検討するのは当然である。

 オウムの例はあってもハードルは相当高く、抜けない宝刀の面もある。違法行為が一定程度なされている場合には対処できるよう基準を明確化すべきだ。解散命令の前段階で改善指事や活動停止命令を出し、その後、解散命令といった制度もいい。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】安倍路線を引き継ぐべきと考えている勢力が自民党内で台頭し、安倍元総理のように、岸田政権に睨みを利かすべき(゚д゚)!

高橋洋一氏が、宗教法人の「解散命令」は可能という発言を現在なぜするのでしょうか。

高橋洋一氏は、以下のようなツイートをしていました。

《魔女狩り。旧統一教会の行為は違法行為であれば法律で対処するのは当然だが、関係を絶つというのは魔女狩り。ワイドショーのいうことを聞く必要なし》

内閣改造について、高橋洋一氏は「こんな馬鹿馬鹿しい内閣改造があるか?岸田氏が断行した「脱安倍」昭和人事で防衛も経済も危ない」という酷評していましたが、安倍元首相の影響力をそぐという点で岸前防衛相を外すのが主眼の改造だったといえます。実際、統一教会に関係している人は新内閣に選ばないといっていました。


岸田総理および岸田総理に近い人達は、財務省にも近く、反財務省の政策を主張する安倍元主張は煙たい存在だったのでしょう。そこで、内閣改造では反安倍・脱安倍人事を仕掛けたかったのではないでしょうか。

ところが、実際に蓋を開けてみると、「関係」というあいまいなところで線を引こうとしたことに無理があり、新閣僚にも統一教会との「関係」がある人が出てしまったのです。

このあたりから、マスコミの統一教会バッシングが制御不能となって、岸田政権にも「ブーメラン」となって返ってくるようになってしまったのです。

しかも、旧統一教会「接点」議員に関して、「接点」だけ取り上げても意味はないものの、安倍派は人数で最多ですが、派閥別割合では3番目という調査結果もでています。

 森山派42・9% 、麻生派41・2%、 安倍派38・1%、 二階派37・2%、 岸田派34・9%、 茂木派25・9%、 無派閥17・9% であり、旧統一教会、自民派閥横断的に接点があり、安倍派が特に突出していないことが明らかになっています。

こうなると、安倍派が特に旧統一教会の接点が多いということはなく、そもそも安倍派排除の根拠が薄弱になってしまいました。

そうして、統一教会と自民党の関係を絶つと発言した、岸田政権には大きな逆風が吹くという結果になってしまいました。


しかも、「統一教会バッシングと国葬反対論が、なぜつながってしまう傾向が見られるようにもなりました。

安倍元首相の暗殺で、テレビが安倍元首相と統一教会の繋がりを繰り返し報じた後で、テレビで統一教会をケシカランものだと報じると、安倍元首相の国葬に反対する流れが出てきたのです。

そうして、安倍元首相は統一教会を嫌っていたとの意見に対して、国葬反対派から猛烈な反論が出てくるようになりました。安倍元首相は統一教会と関係が深いからビデオメッセージを送ったのだと。しかし、現実にはトランプ大統領が送ったから、トランプ大統領と同調しただけであることが知られています。

実際、統一教会にとって不都合な法改正(2013年消費者裁判手続特例法や2018年改正消費者契約法)が安倍政権によって行われています。そうして、霊感商法被害が近年少なっています。

そうなると、安倍元首相と統一教会の繋がり否定した途端に国葬反対派がしゃかりきになって反論する理由が解せないです。おそらく、統一教会バッシングを梃子にして国葬反対までもっていきたい勢力があるのでしょう。


国葬反対派は、国葬には三権の了承必要という論法で批判していますが、それが当てはまるのは法律根拠が曖昧だった吉田元首相の時の話で、その後、1999年立法解決し内閣府設置法となったのです。法律制定は立法府の了承になるし、行政府の権限の範囲内です。そのときに国葬は内閣府設置法の儀式と整理されました。それを今になって難癖を垂れるのは嫌がらせ以外の何ものでもありません。

現在、様々な地域の地裁で、安倍元首相の国葬、国費支出差し止め求めた申し立てが却下されています。これは、他の地裁でも同じ判断をすることでしょう。 

現状では、岸田首相が魔女狩りをするということを言ってしまったことにより、自民党自体が逆風を受ける結果となっています。この発言さえなければ、日テレのがワイドショーで統一教会批判をやりつつも、文書回答では相手の思想信条を問わないとしたこともあり、事態の収拾の目処もたったと思いますが、岸田首相の発言でとんでもないことになってしまいました。

こういうことが災いして、沖縄知事選で、玉城デニー氏が当選しました。岸田首相の魔女狩り発言に関しては、高橋洋一氏は株式会社読売新聞グループ本社代表取締役主筆渡邉恒雄氏の影響があったのではないかと推論をしていますが、私自身は渡邉恒雄氏もあり得るとは思いますが、岸田首相のまわりには財務省に近い人も大勢いますから、渡邉恒雄氏もそうですが、複数の人が岸田首相に影響力を行使した可能性があるとみています。

だからこそ、岸田氏が魔女狩り発言をしても、自民党内から表立ってこれを批判する人がいなかったのだと思います。

しかし、これは、安倍派排除だけではすまなくなり、自民党そのものが大きく毀損される可能性がでてきました。魔女狩りによって不利益を受けた、統一教会関係者、政治家、その他の人が政府を相手どって訴訟などすれば、勝ち目はありません。

高橋洋一氏は、現状を打破しなければ、岸田政権だけではなく、自民党そのものが大きく毀損される懸念もも生じてきたため、宗教法人の「解散命令」は可能という発言をしたものと考えられます。

そうして、上の記事で以下のように述べています。
実際に発動するかどうかは、被害状況の実態との関係で決めたらいい。その際、宗教法人法の他の条項、消費者契約法その他の法律や新たな立法で対応できるかどうかも合わせて検討するのは当然である。
オウムの例はあってもハードルは相当高く、抜けない宝刀の面もある。違法行為が一定程度なされている場合には対処できるよう基準を明確化すべきだ。解散命令の前段階で改善指事や活動停止命令を出し、その後、解散命令といった制度もいい。
こうしたことによって、現在の旧統一教会問題の不毛な論議を終わらせ、一日もはやくまともな政権運営、国会運営ができるようにすべきであると考えているのでしょう。

そうすれば、自民党自体はあまり毀損されることはなく、岸田首相や岸田派の勢力は相対的に弱まり、また、安倍派や安倍路線を踏襲しようとする勢力が相対的に台頭し、まともな政権運営、まともな国会運営ができる可能性が高まると考えているのでしょう。

これは、私もそう思います。とにかく、今のままでは、自民党への逆風が強まるばかりです。岸田首相は、魔女狩り発言中に中国のミサイルが日本のEEZ 内に着弾してもすぐに国家安全保証会議(NSC)を開催しないなど、危機管理能力がないことがはっきりしました。

ミサイル着弾のときには、岸田首相は内閣改造で頭がいっぱいだったのでしょう。本当に情けないです。このあたりの状況は、現状の政局がおちついて、統一教会などの問題が、党内でほとんど派閥争い等に関係なくなったときに、明らかにされるのではないかと思います。

ただ、この問題はしばらく自民党に影響を与え続けるでしょうから、明らかにされるのは10年後以降になるかもしれません。それまでは、当て推量をしてもあまり意味がないと思います。

安倍派であるないは別にして、とにかく今しばらく、安倍路線を引き継ぐべきと考えている勢力が自民党内で再び台頭し、安倍元総理のように、岸田政権に睨みを利かし、自民党を毀損しかねない岸田政権を短期政権で終わらせて欲しいものです。

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