台湾南部・嘉義基地で行われた台湾軍の演習=1月6日 |
【まとめ】
・李先念元国家主席の娘婿である劉亜洲上将が「執行猶予付き死刑判決」を受けるだろうと報じられた。
・劉は、重大な金融腐敗に関与した疑いがあるという。
・「台湾侵攻」について書いた論文が習主席の逆鱗に触れた可能性がある。
最近、李先念・元国家主席の娘婿、劉亜洲上将(70歳)が「執行猶予付き死刑判決」を受けるだろうと香港メディアが報じた(a)。
2021年12月下旬以降、劉は姿を消していたが、重大な金融腐敗―財団や協会の名義で巨額の富を蓄財―に関与した疑いがあるという。
劉亜洲は1968年に人民解放軍に入隊し、1997年から北京軍区空軍政治部主任、成都軍区空軍政治委員、空軍副政治委員兼規律委員会書記等を歴任した。 2009年12月に国防大学政治委員となり、2017年に軍を退役している。
劉は、江沢民・胡錦濤時代に、時事問題をテーマにした記事を書き、「国と人民を憂う」人物として、知識人界では好感を持たれていた。
まもなく劉亜洲が「執行猶予付き死刑判決」を受けた事が確認(b)された。劉亜洲は経済汚職に手を染めたとされるが、これは“政治問題”を“経済問題”として扱う共産党の“定石”である。
習近平主席が劉亜洲に対し激怒したというが、その理由は劉の論文「金門戦役の検討」の中身である。中国共産党が台湾との平和的統一の希望を失い、台湾への武力攻撃のタイムテーブルが提出された昨今、この軍事研究論文の重要性は言い尽くせないだろう。
ただ、その研究結果は「台湾解放」を目指す習主席に冷水を浴びせるモノだった。そのため、主席の逆鱗に触れた。
「金門戦役の検討」(c)は以下の通りである。
―今日、台湾軍はかつての蔣介石軍と同じではないし、台湾島は金門と同じでもない。しかも、天険(自然の地勢が険しい)が横たわっている。台湾海峡での戦いは、金門戦役の1万倍も困難なものになるだろう。また、目下、台湾を守るのは台湾自らだけではなく、西側諸国全体である。
―ある者はこう言った。「(台湾と)戦え!できるだけ早く!」と。また、ある者は、「台湾軍は我々(人民解放軍)の一撃に耐えられない。我が軍は朝攻めて夕方には勝つ」と主張した。
―昨年、私(劉亜洲)は台湾との戦闘が議論された会議に出席して質問した。「頭上には衛星があり、下にはレーダーのある今、丸見えの状態でどのように軍を福建省に部隊へ輸送できるのか?」
ある男性は「簡単だよ!長期休暇があるだろう。その長期休暇に兵士を私服へ着替えさせ、列車で福建省に向かえばいいんだ。」私が最後に呟いたのは、「最大の敵は自分自身だ」だった。
実際、劉亜洲将軍は、「台湾侵攻」の難しさを軍事的、国際政治的観点から分析し、「台湾侵攻」に対する自身の認識を幾つもの角度から検証(d)している。
(一)台湾の地形分析:台湾は海峡の片側(西側)に近く、上陸に適した海岸が少ない。 海岸線から10kmも離れていない山林には、長年にわたって築かれた要塞がある。仮に、中国軍が上陸できたとしても、遠くの高台からの火力兵器で簡単に制圧でき、上陸地点は屠殺場と化すだろう。
(二)台湾東部軍事空港は洞窟の中に構築され、海に面した外部滑走路はわずか100m~200m、加速滑走路の約1000mは洞窟の中にある。そこから出撃した航空機に、ミサイル攻撃しても無駄である。台湾空軍は強力で、パイロットは皆、米国で高度な訓練を受け、陸上・海上での飛行と空母離着陸の経験は中国空軍に劣らない。
(三)台湾はほぼ「国民皆兵制」を採用し、200万人以上の予備役兵士は、毎年集中訓練を行っている。戦争になれば、24時間以内に募集・編成され、特に訓練しなくても、そのまま戦闘に入ることが可能である。
しかも、台湾はすでに先進的防衛兵器を大量に購入し、米国から訓練を受けており、最近ではMQ9ドローンやハープーン対艦ミサイルを購入し、中国軍の上陸作戦にも十分に対応できる。
したがって、米軍や周辺国が戦闘に参加せず、台湾が自国軍隊だけで戦っても、中国軍は、1、2の上陸地点確保のために多大な犠牲を払うだろう。たとえ、陸海空軍にロケット部隊を加えたとしても、台湾全土の「解放」はおろか、戦闘にも勝利できないかもしれない。
(四)国際情勢の分析:米韓は共同防衛条約を、日米は安全保障条約を結んでいる。ひとたび有事が起これば、米国が介入し、日米、米韓の条約は自動的に発効し、共同戦線に参加することになるだろう。
日韓はアジアの経済大国、かつ、空海軍の強国である。韓国の海軍・空軍力は、中国と互角に戦える。また、日本の自衛隊は中国軍より数では劣るが、その実力や戦闘力は間違いなく中国に劣らない。
((d)『毎日文摘』(解放台湾,谈何容易!刘亚洲泼冷水)の引用ここまで)
〔注〕
(a)『聯合早報』
「中国軍作家・劉亜洲が重大な汚職に関与し、『執行猶予付きの死刑判決』が下される可能性」
(2023年3月25日付)
(https://www.kzaobao.com/shiju/20230325/135817.html)。
(b)『中国瞭望』
「『金門戦役の検討』が習近平の逆鱗に触れて、怒りの劉亜洲切り」
(2023年3月28日付)
(https://news.creaders.net/china/2023/03/28/2592122.html)。
(c)『禁聞網』
「劉亜洲:金門戦役の検討(2004年4月14日)」
(2023年1月23日付)
(https://www.bannedbook.org/bnews/wp-content/plugins/down-as-pdf/generate.php?id=1609505)。
(d)『毎日文摘』
「台湾解放は言うは易く行うは難し! 劉亜洲が冷水を浴びせる」
(2023年3月30日付)。
(解放台湾,谈何容易!刘亚洲泼冷水)。
劉亜州は、人民解放軍(PLA)国防大学の政治委員を務めた中国の退役上級将校です。1951年、中国陝西省に生まれました。劉亜州は、中国で著名な軍人であり、中国共産党(CCP)内の「改革派」とも評されています。
ロシア軍に破壊されたバフムト |
そういう場合も想定したのか、たとえば哨戒機P-8Aとコンビを組む無人航空機として、ノースロップ・グラマンのMQ-4C「トライトン」を採用しています。米軍は、有人哨戒機に比べて連続作戦時間が長い「トライトン」で洋上を監視し、「トライトン」が不審な目標を発見したらP-8Aが急行して対処するという運用方法を構想しています。こうした着想がでてきたのも、米軍の様々なシミレーションの結果だと思います。
哨戒活動をしているMQ-4C「トライトン」 |