2010年5月30日日曜日

ラー油戦争勃発か?―ラー油戦争はすぐに終焉する?

ラー油戦争勃発か?(この内容すでにご存じの方は、この項は読み飛ばしてください)


話題の二大“食べるラー油”。右が桃屋(オープン価格・参考価格
400円、内容量110g)、左がエスビー(330円、内容量110g)。

ラー油市場はここ数年で急拡大している。2004年~08年の5年間で、マーケット規模は120%に拡大した(KSP-POSなどから推定/桃屋)というデータもある。その火付け役となったのが沖縄発のラー油。島唐辛子を使った「石垣島ラー油」や、久米島の素材を使った「くめじまラー油」など、ここ数年のうちに沖縄系ラー油が人気を博し、インターネット通販でも売り切れが続出している。

そして昨年(2009年)秋、桃屋のラー油が登場した。具だくさんの“食べるラー油”という斬新なコンセプトが受けて、爆発的な人気となり、市場ではすぐに品薄状態になった。生産が追いつかず、ラー油のテレビCM放送がいったん打ち切りになる事態に陥っている。販売開始から約半年たつ現在も、入手困難な商品なのだ。

そして、3月23日、ラー油市場がさらに熱くなった。ヱスビーのラー油が発売スタートしたのだ。同じく“食べるラー油”系の商品として桃屋の対抗馬となっており、こちらも店頭ではすでに品薄状態が続く。今回はそんな話題の桃屋とヱスビーのラー油を徹底的に比較してみたい。飲食関係の編集記者や料理研究家が集まって、原材料や味の違いを分析してみた。いったいどこが同じで、どこが違うのか…。

■桃屋は甘みのあるマイルド型ヱスビーはガッツリニンニク型



ラー油の色や具材は若干異なる。具沢山な点は共通。

まずは見た目から比べてみよう。
両方ともラー油に具材がたっぷり入った“食べるラー油”であることは間違いない。ラー油7に対して具材3といった割合だろうか。具材はどちらも茶色やこげ茶、白っぽいものが混在している状態。ヱスビーより桃屋の方が、白っぽい具材(フライドガーリック?)がやや多めで、粒も大きいようだ。

次に注目したいのはラー油の色。桃屋がややオレンジがかった赤色なのに対し、ヱスビーは純粋な赤色。原材料には両方ともパプリカが使われているということなので、その点は共通ということか…。

そして何より気になる味の違い。口に含んだ瞬間、最初に口中に広がるのは、両方ともなたね油やごま油の香ばしい風味。そして次に、両者とも強めの塩味が到来する。ここまではだいたい同じ味わいだ。でもその後がぜんぜん違う。 桃屋は具材を噛んでいくうちに、フライドオニオンとフライドガーリックの旨味が同時に口中に広がる。このバランスがとてもほどよい。噛むほどに言いようもない旨さが舌の上ではじける。ここまでくるともうやばい。

一方、ヱスビーの方は、具材を噛むと強烈なフライドガーリックの旨味がおし寄せる。そして焦がしニンニク特有の苦味が後味に残る。クセになりそうなインパクトあるニンニク風味だ。 どちらもラー油に入った具材なのに、サクサクとした食感を保っているのが不思議であり、魅力でもある。辛さはどちらも控えめ。

■桃屋は幅広い料理にヱスビーはラーメンや豚丼に

白飯にかけて"のっけめし"にするとおどくほど食が進む
原材料も比べてみよう。
両方とも食用なたね油やフライドガーリック、食用ごま油をメインに使っている。さらに食塩、砂糖、粉末醤油、オニオンパウダーなども使用。「ラー油+フライドガーリック」を基本にしているのは共通している。

桃屋のラー油にしか入っていないものは、フライドオニオンと唐辛子味噌、すりごまなど。一方、ヱスビーにしか入っていないのは、ラージャン(辣醤:唐辛子を発酵させた調味料)やアーモンド。この辺が味の違いになっているのだろう。
桃屋の方はフライドオニオンが入っているので、ほのかな甘味もあるが、ヱスビーの方では甘味はあまり感じられない。逆にヱスビーは焦がしニンニク特有の苦味が強く感じられるが、桃屋の方はそれほど苦味は感じられない。ここが違いのポイント。

桃屋は甘味があってマイルドで、味のバランスが良いのでどんな料理にも合わせやすい。もしかしたら小学生くらいの子供でも好んで食べる調味料かもしれない。塩分が効いているので炭水化物(ご飯・うどん)などにかけるのがおすすめだろう。

一方ヱスビーの方は、フライドガーリックの強烈な風味が特徴。辛味だけでなく、ニンニク風味も一緒にプラスしたい料理(例えばラーメンの仕上げにのせるなど)におすすめだろう。苦味もややあるので、「豚丼」など、パンチの効いたニンニク味が好きな“ガッツリ系”にはこちらの方がおすすめかもしれない。個性的な味なので、カレーや納豆など、風味の強い素材と合わせるのも良いと思う。

どちらをセレクトするかはもちろん好みによるが、両方を食べ比べながら自分流の食べ方を追求するのが楽しいはずだ。日によって両者を使い分けるのも楽しいと思う。

最近では桃屋のラー油を使った料理を提供する飲食店も登場してきているとか。ラー油の今後の動向が非常に気になるところでしたが、そこに、モスのニュースが飛び込んできたので、これも掲載します。

■モス、話題の"食べるラー油"を使ったハンバーガー販売

モスフードサービスは6月10日、日本テレビの情報番『スッキリ!! 』と共同開発したハンバーガー「テリー伊藤のざくざくラー油バーガー」(390円)と「テリー伊藤のざくざくラー油チーズバーガー」(420円)を「モスバーガー」店舗にて発売する。6月28日までの限定販売。
「テリー伊藤のざくざくラー油バーガー」
「テリー伊藤のざくざくラー油チーズバーガー」
同商品には、いま話題の"食べるラー油"を使用。モスバーガーのオリジナルで、ゴマ油や2種類の唐辛子、フライドガーリック、フライドオニオン、小粒のあられを合わせており、"ザクザク"とした食感が楽しめるという。さらにオリジナルトマトサルサも味付けに使っている。同ソースには、熊本県八千代産トマト、世界一辛い唐辛子とギネス世界記録に登録されているというジョロキア、ハバネロを燻製にしたチポトレ、米麹ペーストや西京味噌、沖縄産の島ラー油を用い、辛さの中にも甘さとコクのある味わいに仕上げているとのこと。

共通の具材はパティやトマト、みじん切りの玉ネギ。「テリー伊藤のざくざくラー油チーズバーガー」は、「テリー伊藤のざくざくラー油バーガー」にスライスチーズをプラスしたものとなっている。

ラー油戦争はすぐに終焉する?
このラー油戦争どこまで続くでしょうか。それに、この商品はどうなっていくのでしょう?私の考えでは、これはもうそろそろ終息します。なぜなら、これらの一見新商品のようにも見えますが、ラー油などをあえたもの、あるいはラー油で炒めたものということで結局、何ら新しくもないからです。

ラー油の作り方は、皆さんご存じだと思います。要するに、赤唐辛子を油で煮た後、赤唐辛子を濾して取り除いたものです。ご存じない方は、下の動画をご覧になってください。


だとすれば、何も、わざわざラー油を使わなくても、味としては大昔から中華料理や朝鮮料理などで、油と赤唐辛子を使った料理であれば、存在していることになります。これでは、何ら味としては、珍しいものでも何でもありません。

これは、トマトソースのようなものです。スーバーに行くと、いわゆるトマトソースや、ホールトマトの缶詰が売られています、この両者の違いはさほど大きくはありません。ホールトマト缶は、トマトを水煮が入っています。トマトソース缶には、トマト+ニンニク+塩+胡椒が入っています。だから、トマト味のスパゲティをつくるときには、フライパンにトマトソースを入れて、それに茹でたスパゲティと具をいれて両者を適度に炒めれは出来上がりと言うものです。トマトホール缶の場合は、刻みニンニク、刻みタマネギをフライパンで炒め、それに、ホールトマトを入れ、さらに、塩・胡椒で味付けして、そこにスバげティーと具を入れるという具合です。

両者にさほどの違いはありません。だから、レストランの厨房ではほとんどといっていいくらい、ホールトマト缶をつかいます。ちなみに、イタリアなどでは、トマトがある季節にはホールトマト缶も使わずに、トマトをつかうレストランがほとんどです。ただし、大きなレストランなどでは、季節による味の変動を防ぐために、周年でホールトマト缶を使っているところも多いです。日本の場合は、現在日本で栽培されているトマトのほとんどが、果物のように甘くっなってしまったために、酸っぱみがないので、イタリア料理には使えないためほとんどが、トマトホール缶詰を使っています。

では、このトマトーソースなど、イタリアやアメリカなどイタリア料理を家庭でもつくる国で売られているいるとかといえば、ほとんど売られていません。多少はありますが、いろいろなトマトソース缶のバリエーションなどあるかといえばほとんどありません。それは、トマトの季節にはトマトが、そうでないときにはホールトマト缶があれば、ほとんど必要がないからだと思われます。


このトマトソースのアナロジーからも、食べるラー油も同じように、まずは、これからいろいろなバリエーションが生まれてくるなどということは考えられません。また、顧客にもすぐに飽きられてしまうことでしょう。


モスでは、食べるラー油を使ったハンバーガーを出そうとしていますが、これも、新しいものではなく、油と赤唐辛子を使ったような中華風味のハンバーガーなど前からあったものです。それに、何を混ぜようが味として同じなので、特に新しいものでも何でもないわけです。


しかし、こうしたハンバーガーを試験的にでも売り出すモスバーガーは、よほど開発に窮しているのではないかと思います。このブログでは、以前にマクドナルドの開発に関しても掲載してきました。その中で、マクドナルドが、日本的な開発に挑戦していることを掲載しまた。モスは、ライスバーガーなどを販売してきた会社です。このような、見込みのない食べるラー油に挑戦しているなど、一体どうしてしまったのかと、首をかしげてしまいます。かつて、モスこそ、日本的な商品で日本の顧客を魅了いたと思います。残念なことです。それこそ、自分たちの強みを見失っているのではないかと思います。

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2 件のコメント:

damian さんのコメント...

この手の流行というのに辟易します。
地元に根付いたものであればずっと続いていくわけですが、全国的に一瞬だけ流行してその後はフォローをしない・・・
北海道の人間としては数年前の「ジンギスカンブーム」を思い出させます。

山田 豊 さんのコメント...

damian様 コメント有難うございます。確かにおっしゃる通りだと思います。
ジンギスカンについては、それなりに食べかたが広まって良かったのではないかと思います。昔は、東京に行って「ジンギスカン」などといっても、怪訝な顔をされただけですが、今ではほとんどの方が知っているので、喜ばしいことだと思います。
ジンギスカンにつきましては、そのルーツを知らない人も多いようなので、それについて簡単に記しておきます。
ジンギスカンは、北海道の生活改善の一環として普及されたものです。終戦直後の未だ食料が乏しい時代に、道庁の生活改善委員の方が、農家の人たちの栄養不足をどう補うかを考えて考案したものです
当時、北海道には羊は、たくさんいたものの、そのまま食べたのでは、臭みがあって、とてもいただけるものではありませんでした。
そこで、北海道の生活改善委員の方(名前は失念)が、醤油ベースで、林檎や、玉ねぎのすりおろしを加えて調整した、現在たれとほぼ同じようなものを開発し、普及させたものです。
これのおかげで、北海道の農家の栄養不足も随分と解消されたようです。時代が移りゆくにつれて、そのルーツは完全に忘れ去られ、今の状況になっています。
北海道の生活改善といえば、結婚式の会費制もそうです。当時、低所得で生活に窮していた若者たちのため、お金があまりなくても、結婚できようにと普及促進させたものです。
それが、根付いて今では、北海道では一部の例外を除いては、会費制の結婚式がほとんどとなています。
しかし、今と比較すれば、北海道のお役人も、昔は、本当に地元に根付いた立派な活動をしていたものだと、いまさら感激します。

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