2025年2月5日水曜日

支援の見返りに「レアアースを」、トランプ氏がウクライナに求める…「彼らは喜んで供給するだろう」―【私の論評】ウクライナ、資源大国から経済巨人への道を歩めるか

支援の見返りに「レアアースを」、トランプ氏がウクライナに求める…「彼らは喜んで供給するだろう」

まとめ
  • トランプ大統領は、ウクライナに支援の見返りとしてレアアースの供給を求めている。
  • ウクライナへの武器供与に関して、トランプ政権内で意見の対立があり、供与の一時中断と再開があった。


 米国のトランプ大統領は3日、ロシアの侵略を受けるウクライナに対し、支援の見返りに「レアアース(希土類)」を米国に供給するよう求めていると明らかにした。

 トランプ氏はホワイトハウスで記者団に、米国がウクライナに多額の支援をしてきたと強調し、「ウクライナがレアアースやその他の資源(との引き換え)で、我々の支援を得るような合意を結びたい」と述べた。すでに「取引」を進めていると説明し、「彼らは喜んでそう(供給)するだろう」と自信を示した。

 米紙ニューヨーク・タイムズなどによると、バイデン前政権時に、ウクライナ側から米国にレアアースの供給を提案していたが、「取引」を重視するトランプ氏の就任を待って、合意に向けた動きが本格化したとみられるという。

 一方、ロイター通信は3日、トランプ政権がウクライナへの武器供与を一度中断した後、すぐに再開したと報じた。政権内で軍事支援を巡る「意見の対立」があり、方針が定まっていないとの見方を伝えている。

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【私の論評】ウクライナ、資源大国から経済巨人への道を歩めるか

まとめ
  • 資源の宝庫: ウクライナはチタン、リチウム、ウランなどの希少金属を含む豊富な資源を持ち、特に希土類金属の産出地として重要。
  • 教育と産業の強み: EU基準の教育水準、ソ連時代からの重工業(軍事、航空、宇宙)、そして人口あたりのエンジニア数がEU諸国を上回る。
  • IT産業の成長: 「東欧のシリコンバレー」と呼ばれ、IT産業が急速に発展。ロシアの侵攻後もGDP成長を牽引し、サイバーセキュリティやソフトウェア開発で世界的に評価される。
  • 経済発展の可能性: 平和と安定が確立されれば、ウクライナの総GDPはスペインやオランダ並みに成長し、EUや米国の安全保障上のメリットとなる。
  • 長期戦略的重要性: トランプはウクライナの長期的な経済的・戦略的価値を理解し、希土類金属へのアクセスを確保することで、米国の技術競争力や軍事バランスを強化することを目指している。
ウクライナの地質図 赤い三角が希土類 クリックすると拡大します

ウクライナ。地政学の渦中で、その名が響く。地表下にはチタン、リチウム、ウランなど、未来を切り開く鍵となる鉱物が眠り、希土類金属の宝庫でもある。日本経済新聞が「隠された重要鉱物の宝庫」と評するように、この国は豊かさと可能性に満ちている。

しかし、その歴史は波乱に満ちている。かつては天然ガスや石油の産出国として知られていたが、ソ連崩壊後の経済的混乱が資源開発を阻み、今では自国のエネルギー需要を満たすため、ロシアや欧州からの輸入に頼る日々が続いている。

だが、ウクライナの価値はその資源だけでは終わらない。教育水準の高さが際立つ。EU基準に準じた教育システムは国際的に高い評価を受けており、PISA調査では数学、科学、読解力で欧州平均を上回る成績を収めている。重工業もソ連時代からの強みで、軍事、航空、宇宙産業が栄え、冷戦時代にはロケットやミサイルの開発で重要な役割を果たした。中国の軍事技術を支えた経験もある。人口あたりのエンジニア数はEU諸国を上回る。

そして、忘れてはならないのがIT産業だ。ウクライナは「東欧のシリコンバレー」と称され、ITの急速な発展がGDP成長を牽引している。ロシアの侵攻後も2023年に5.3%の成長を達成した。サイバーセキュリティやソフトウェア開発で世界から注目され、技術者は国際的に引く手あまただ。


ここで考えるべきシナリオがある。ウクライナが平和を取り戻し、腐敗を一掃し、ロシアの干渉がなくなった場合だ。その可能性は無限大だ。仮にウクライナの一人あたりのGDPがポーランドに匹敵すれば、ウクライナの総GDPは現在のスペインやオランダ並みに跳ね上がる。これは、平和が実現すれば、十分可能だ。人口4100万超の国が経済大国に変貌すれば、EUや米国にとっての安全保障上のメリットは計り知れない。

EUにとっては、東部国境での安定化要因となり、ロシアの影響を抑える強固なバッファーになる。ウクライナの資源はEUのエネルギー安全保障を強化し、ロシアへの依存度を減らす。米国はウクライナの経済力をロシアに対する抑止力として利用し、東欧での影響力を強固にできる。ITや軍事技術の進歩は、米国との更なる協力関係を深化させる。


トランプはこの戦略的価値を理解しているようだ。彼の政策は短期的な利益だけでなく、長期的な視点からウクライナを見ているようだ。ウクライナの希土類金属へのアクセスを確保することで、米国は未来の技術競争や軍事バランスで優位に立てる。ウクライナ問題は、単なる支援ではなく、未来への投資でもあるのだ。

トランプの見識が示すように、ウクライナの経済的可能性は、地政学的なゲームチェンジャーとなりうる。平和と安定が訪れれば、ウクライナはヨーロッパの中心へと飛躍する可能性を秘めている。そのとき、世界の力関係は大きく変わる。ウクライナの未来は、今この瞬間に始まっているのだ。そして、その未来は我々一人一人の手の中にある。世界が注目するこの国が、どのような道を選ぶのか、その選択が未来の地図を描く。

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2025年2月4日火曜日

イーロン・マスク氏 “USAIDの閉鎖 トランプ大統領が合意”―【私の論評】トランプの挑戦とマスクの戦い、世界に波及する衝撃!

イーロン・マスク氏 “USAIDの閉鎖 トランプ大統領が合意”

まとめ
  • イーロン・マスク氏は、トランプ大統領が海外援助機関USAIDの閉鎖に同意したと明らかにした。
  • トランプ大統領は、USAIDが「過激な愚か者」によって運営されていると批判し、必要なら新たな組織を作るべきだと述べた。
  • ルビオ国務長官は、USAIDの機能は外交方針に沿って継続されると強調し、税金を使用する重要性を指摘した。

 イーロン・マスク氏は、トランプ政権で政府支出の削減策を検討する組織「DOGE」のトップとして、海外援助を担当するUSAID(アメリカ国際開発庁)の閉鎖についてトランプ大統領が同意したことを明らかにしました。彼はSNSの音声配信で、USAIDの運用が不透明であるとの認識を示し、「彼も閉鎖すべきだということに同意した」と述べました。トランプ大統領は、USAIDが「過激な愚か者」によって運営されていると批判し、必要であれば新たに組織を作るべきだとも発言しています。

 トランプ政権はすでに海外援助の見直しを進めており、人道支援など一部を除いて停止していますが、USAIDはエイズ対策や紛争地での支援など幅広く人道支援を行っているため、閉鎖の影響は大きいと考えられます。さらに、アメリカのルビオ国務長官は、訪問先のエルサルバドルで自らがUSAIDのトップの代理を務めることを明らかにし、「USAIDの多くの機能は今後も継続されるが、アメリカの外交方針に沿った形で行われなければならない」と述べています。これは、税金を使っているという観点から、さらなる議論を呼ぶ可能性があります。 

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【私の論評】トランプの挑戦とマスクの戦い、世界に波及する衝撃!

まとめ
  • トランプ政権はUSAID改革を推進:2025年1月20日に就任したトランプ大統領は、90日間の対外援助凍結を宣言し、USAIDの効率化と無駄の削減を目指している。
  • 改革の影響は深刻:USAIDの活動停止が世界中の医療施設閉鎖や食糧支援の停止を引き起こす可能性があり、スーダンでは特に深刻な影響が予想される。
  • イーロン・マスクの批判:マスクはUSAIDを「犯罪組織」と呼び、CIAとの関連を指摘し、政府効率化省(DOGE)を通じてその腐敗を暴こうとしている。
  • USAIDの問題点:USAIDの活動は米国の保守派の価値観に反し、特に中絶や気候変動政策、ジェンダー政策などが問題視されている。
  • 日本への示唆:日本でも官庁の自己保身と政治への干渉が問題となっており、米国のUSAID改革が日本の官僚制度改革の参考になる。
米国際開発局(USAID)

トランプ政権が誕生したその瞬間から、米国際開発局(USAID)は改革の矢面に立たされた。背景には「米国第一」の大義がある。これは、政府機関の効率化と透明性を求める声だ。2025年1月20日、トランプ大統領は就任早々、90日間の対外援助凍結を宣言した。これはUSAIDの過去の活動を見直し、無駄な支出を削減するための英断である。

その影響は甚大だ。ロイターやNBC ニュースは、USAIDのウェブサイトがダウンし、活動が制限されたと報じている。しかし、サイトやXアカウントが本当に停止されているのかは謎のままだ。AP通信やPBS ニュースによると、プログラムの急停止は世界中で医療施設の閉鎖や食糧支援のストップを引き起こすかもしれない。スーダンでは、2,460万人もの人々が緊急の食糧支援を必要としている。

ここにイーロン・マスクが登場する。彼はXでUSAIDを「犯罪組織」と断じ、CIAとのつながりを指摘した。これは、DOGE(政府効率化省)を通じてUSAIDの腐敗を暴く意思表示だ。Washington PostやReutersの報道によれば、DOGEのチームはUSAID本部のセキュリティ役員を解任し、約60人の職員を休職扱いにした。


USAIDの活動が問題視される理由は明白だ。ヘリテージ財団(米の保守系シンクタンク)のProject 2025は、USAIDが「米国の主権を侵害している」と批判する。このProject 2025は、USAIDが「分断的な政治的・文化的アジェンダを推進している」として、特に中絶、気候変動、ジェンダー政策、そして「体系的な人種差別」への介入を批判している。これにより、USAIDの活動が米国の価値観や政策と相反するものと見なされている。マスクの発言は、USAIDが政治的な活動に手を染めているという認識を示している。

LGBTQ支援や気候変動対策が「左翼思想の押し付け」や「グローバリストの陰謀」と見なされる背景には具体的なエピソードがある。USAIDは43カ国で性教育プロジェクトを実施したが、これが特に保守的な地域で伝統的な家族観念や宗教観に反すると考えられ、「左翼思想の押し付け」と批判された。

日本でも、LGBTQ支援が「左派の主張」と関連付けられ、特定の政治的立場を押し付ける行為と非難される例がある(例:松浦大悟『文藝春秋』2023年1月号)。また、アメリカの保守派メディアや政治家は、これらのプロジェクトが国内の価値観に干渉し、文化戦争の一環であると非難している。

気候変動対策では、USAIDが開発途上国への再生エネルギー導入支援を進めているが、これが「グローバリストの陰謀」とされるのは、気候変動政策が経済的な規制やグローバルな統制を強化する手段と見なされるからだ。特に、経済成長を優先する国々では、この政策が経済活動を阻害すると主張され、「西洋の価値観を強制する」として批判されている(例:Foreign Policy, 2024年)。X上では、USAIDが「CIAのフロント」として活動し、政治的目的で気候変動対策を推進しているという陰謀論が流布している。

だが、これらの改革には法的な障壁もある。上院外交委員会の民主党議員は、議会の承認なしにUSAIDの統合を進めることは違法だと警告する。しかし、トランプ政権はその決意を曲げず、改革を急ぐ。

この改革は、USAIDの役割と活動の再評価を超えて、米国の国際的な立場と国内政策の優先順位を問うものだ。国際社会は不安を募らせ、特に人道支援の停止がもたらす飢餓や健康問題への懸念が高まっている。トランプ政権は、USAIDの予算を削減し、国内政策を優先することで、政府の無駄を排除しようとしている。

これは、国家の利益を守るための戦いである。トランプ政権は、USAIDを効率的かつ透明に再構築し、より責任ある援助政策を打ち立てようとしている。ここに、米国の新たな物語が始まる。そうして、世界の他の国々にも大きな影響を与えるだろう。

国政の重要な機能が集積する霞が関

日本の官公庁は、財務省、日銀、国土交通省などを筆頭に、国民のためというよりは、自分たちのために仕事をし、さらには政治に干渉している。官僚たちは、自分たちの富と権力と地位を守るため、国民の利益を無視してきた。それはまさに、自己保身とエリート意識の象徴だ。

しかし、米国の動きを見れば、日本の新たな物語を編むための参考になるだろう。トランプ政権のUSAID改革は、官僚機構の肥大化と無駄を削減する一つのモデルである。アメリカが示す勇気と決断力は、日本でも必要とされる。これまでの日本の官僚主義は、国民の声を無視し、自分たちの都合で動いてきたが、今こそその改革の時だ。

結論として、米国がUSAIDを通じて行っている改革は、日本の政治家等にも大いに学ぶべき点がある。日本もまた、国民を本当の意味で第一に考えるための改革を、強い意志を持って進めるべきだ。それが、真の国家再生への道筋であり、日本の新たな物語を始める第一歩となるだろう。

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2025年2月3日月曜日

米国務長官、パナマ運河での中国の影響力は「容認できず」-条約違反―【私の論評】パナマ運河の真実: 米国だけでなく、日本にも迫る得る影響とは!

米国務長官、パナマ運河での中国の影響力は「容認できず」-条約違反

まとめ
  • ルビオ米国務長官がパナマを訪問し、中国関連企業の排除を求め、排除しない場合は米国の権利を保護する意向を示した。
  • 中国共産党の影響力が運河に対する脅威であり、条約違反であると指摘した。
  • ムリノ大統領は会談を友好的と評価しつつ、条約の有効性に脅威を感じていないと述べた。

 ルビオ米国務長官は、就任後初めての訪問先である中米パナマで、同国の指導者に対して重要な警告を発した。彼は、中国関連企業をパナマ運河から排除しない場合、米国は運河条約に基づく権利を保護するために必要な措置を講じる意向を伝えた。米国務省の発表によると、ルビオ長官はムリノ大統領やマルティネスアチャ外相との会談で、中国共産党がパナマ運河地域に対して影響力を行使している現状は、運河にとって脅威であり、条約違反にあたると強調した。

 また、彼はトランプ大統領が指摘している不満を繰り返し、「現状は容認できず、直ちに変更されなければ、米国は条約に基づく権利を保護するために必要な措置を取らざるを得ない」と明言した。一方、ムリノ大統領は会談後に記者団に対し、「敬意に満ちた、友好的な」会談だったと述べつつ、条約の有効性に対する脅威を感じていないと表明した。

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【私の論評】パナマ運河の真実: 米国だけでなく、日本にも迫り得る影響とは!

まとめ
  • パナマ運河は米国の外交政策や国際関係において重要な役割を果たしており、1904年から1914年にかけて米国の支援で建設された。
  • 運河は1999年にパナマに返還され、パナマは国際物流の重要なハブとしての地位を確立した。
  • 最近、中国がパナマのインフラプロジェクトに積極的に投資しており、米国の影響力が低下するリスクがある。
  • パナマは中米から北米への不法移民の通過点となっており、2021年には約13万人が通過した。
  • パナマの情勢は日本にも影響を及ぼし、運河の安定した運営やエネルギー供給にとって重要な要素となっている。

パナマ運河

パナマ運河の歴史は、米国の外交政策や国際関係において重要な役割を果たしている。運河の建設は19世紀末から始まり、フランスが1879年に試みたが、病気や技術的な問題で失敗した。フランスの試みでは、特にマラリアや黄熱病の影響が大きく、約2万人が命を落とした。この惨状を目の当たりにした米国は、運河の建設に乗り出すことにした。

1904年、米国がパナマの独立を支援し、パナマ政府と運河建設のための条約を結んだ。米国は運河の建設に約4000万ドル(現在の約1400億円)を投資した。この資金はインフラ整備や疾病対策に使われ、特に衛生環境の改善に力を入れた。米国は、蚊の駆除や病院の設立など、徹底的な対策を講じた結果、運河建設を成功に導いた。

運河の建設には約10年かかり、1914年に開通した。開通後、米国は経済的および戦略的利益を享受したが、1960年代から70年代にかけてパナマでの運河返還を求める声が高まった。1977年、カーター大統領とパナマのトリホス大統領が運河の返還に合意し、1999年に正式にパナマに返還された。この返還により、パナマは運河の管理権を持つことになり、国際的な物流の重要なハブとしての地位を確立した。

最近、中国企業がパナマのインフラプロジェクトに積極的に投資している。2016年には中国企業が「バルボア港」の運営権を取得し、港の拡張や設備の近代化を進めている。この動きは、中国の「一帯一路」イニシアティブの一環として位置づけられ、パナマの経済を強化し、国際貿易の重要な拠点としての役割を果たすことを目指している。

大統領時代のカーター氏

中国のパナマへの関与が深まることで、米国の影響力が低下し、両国の関係が緊張する可能性がある。トランプ大統領は在任中に「米国の船に法外な通航料を課している」と批判し、特に米国の軍艦や商業船舶にとって通航料が高すぎることを指摘した。実際、パナマ運河の通航料は船舶のサイズや種類に応じて異なり、商業船舶には高額な料金が課せられることがある。米国の艦艇には特別な減免措置があり、通常の商業船舶よりも低い料金で通航できるが、それでもなお、全体的な負担が大きいとの意見もある。

さらに、パナマは中米から北米への不法移民の重要な通過点となっている。特に、南米や中米の国々からの移民が、パナマを経由して米国に向かうケースが増えている。国連の報告によると、2021年には約13万人がパナマを通過し、米国を目指す不法移民の数が急増した。パナマ政府は、移民の流入に対処するために、国境警備を強化し、国際的な支援を求める動きも見せている。

米国は今、昨日もこのブログで述べたように内需拡大に舵を切り、国際貿易の競争から距離を置こうとしている。中米からの不法移民問題や中国の影響力の増大が絡む中で、米国がどのように自国の経済と安全を守るのか、国益を守るための戦略がどう進化するのか、その行方に注目したい。

パナマの行方は、米国のみならず日本にも大きな影響を及ぼす。パナマ運河は国際貿易の要であり、日本は米中に次ぐ利用国として、運河を通じて米国東部と多くの輸出入を行っている。そのため、運河の安定した運営は日本企業にとって重要だ。

日本はパナマ運河経由で米国からLNGを輸入している

さらに、パナマはエネルギー輸送の重要な拠点であり、運河を通じて供給される液化天然ガスや石油が日本のエネルギー安全保障に直結している。仮にパナマ経由のLGNとロシアからのそれが断たれれば大きな影響がある。パナマの情勢が不安定になれば、エネルギー供給に大きなリスクが生じる。

このように、パナマの情勢は日本にとっても決して無視できない問題であり、国際的な競争が激化する今、我が国は柔軟かつ迅速な戦略を講じる必要がある。日本の未来を守るために、パナマの動向をしっかりと見極めなければならない。

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2025年2月2日日曜日

トランプ氏、カナダ・メキシコ・中国に関税 4日発動―【私の論評】米国の内需拡大戦略が世界の貿易慣行を時代遅れに!日本が進むべき道とは?

トランプ氏、カナダ・メキシコ・中国に関税 4日発動

まとめ
  • トランプ大統領がカナダ・メキシコからの輸入品に25%の追加関税、中国には10%の追加関税を課す大統領令に署名した。
  • 薬物や不法移民の流入を「緊急事態」と認定し、課税は「危機が終わるまで」続けるとした。
  • カナダやメキシコは報復措置を講じる意向を示しており、関税の応酬が予想される。
  • 関税引き上げはIEEPAに基づく初の試みであり、米国・メキシコ・カナダ協定の貿易ルールが実質的に凍結される。
  • カナダ側は強く反発し、米国内でも懸念の声が上がっている。


トランプ米大統領は1日、カナダとメキシコからの輸入品に25%の追加関税を課す大統領令に署名した。中国にも10%の追加関税を適用することを発表した。この関税は、薬物や不法移民の流入を「緊急事態」と認定したことに基づいており、4日から発動される予定である。関税の課税は「危機が終わるまで」続けるとされている。

トランプ政権下で始まった貿易戦争は一段と激化しており、カナダやメキシコは報復措置を講じる姿勢を示しているため、関税の応酬が予想される。追加関税は米東部時間4日午前0時1分から適用され、報復措置が取られた場合は、さらなる税率の引き上げや対象品目の拡大が行われる可能性がある。

特にカナダ産の石油や重要鉱物に対しては税率を10%に抑える方針が示され、リチウムや天然ガス、石炭、ウランなども対象に含まれる予定である。トランプ氏は自身のSNSで、国民の安全を守ることが大統領の義務であり、選挙での約束に基づくものであると正当化した。

ホワイトハウスは、カナダが合成麻薬フェンタニルや医療用麻薬オピオイドの密輸業者の取り締まり、メキシコが薬物対策で米国に協力するまで課税を続けると表明している。米政府は、カナダ国内にメキシコの麻薬カルテルの麻薬製造工場が存在すると主張している。

今回の関税引き上げは、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づいており、不法移民と薬物の流入を「国家の緊急事態」と認定した上で実施されるもので、IEEPAを根拠とする関税引き上げは初めての試みである。緊急事態を宣言した上での関税引き上げは、1971年のニクソン・ショック以来の出来事となる。

また、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)における域内貿易の関税撤廃が実質的に凍結されることになり、自動車産業など企業の供給網に大きな影響が出ることが懸念されている。

カナダ側は強く反発しており、オンタリオ州のダグ・フォード州首相は「貿易関係からの離脱に非常に失望している。カナダにはもはや、激しく反撃するほかに選択肢はない」と述べている。また、元イングランド銀行総裁のマーク・カーニー氏は、米国による関税は貿易協定の明確な違反であり、厳しい経済的対応が必要であると強調した。

さらに、米国内からも懸念の声が上がっており、全米鉄鋼労働組合(USW)は、「カナダを責め立てることは前進への道ではない」と指摘し、トランプ氏に対してカナダの関税政策を撤回してほしいと求めている。毎年1.3兆ドル相当の製品が米―カナダ国境を行き来しているため、貿易に与える影響は大きいとされている。 

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【私の論評】米国の内需拡大戦略が世界の貿易慣行を時代遅れに!日本が進むべき道とは?

まとめ
  • 米国の輸出は1960年の5%から2019年に12%に達したが、2023年時点では11.01%とパンデミック前の水準に回復していない。これは巨大な国内市場と堅調な個人消費が支えている。
  • 各国は輸出主導型成長戦略の限界を認識し、内需拡大に戦略転換している。特にEC諸国は「非市場リスク」に限定する規制を導入し、環境基準や労働条件に基づく輸出入制限を強化している。
  • 韓国では過去の輸出依存型経済が脆弱性を露呈し、中国は米国の規制を受けて内需拡大戦略を策定している。
  • 米国の輸入は2022年に過去最高を記録したが、2023年には減少し、輸入相手国の構成も変化。メキシコが最大の輸入国となったが、米国は過去の水準の内需拡大を目指しているようだ。
  • 日本は他国が内需拡大に走る中これにはに無関心であり、いずれ中国から日本の内需拡大と、中国からの輸入を迫られるとになるかもしれない。日本政府は自ら主体的に、デフレ克服と内需拡大をすべきである。

2015年当時の米国の50州のGDPを同等の他の国の国旗で表したもの クリックすると拡大します

米国の輸出と輸入の状況を振り返ると、興味深い事実が浮かび上がる。米国の輸出がGDPに占める割合は、1960年の5%から長い間10%未満が続いた。しかし、2019年には12%に達し、長期的に貿易依存度が上昇しているものの、他の主要国と比べると依然として低水準である。2023年時点では、輸出のGDP比は11.01%と、パンデミック前の水準には完全には回復していない。この背景には、米国の巨大な国内市場(2023年実質GDP成長率2.5%)と堅調な個人消費(第3四半期3.5%増)が持続的な経済成長を支えていることが挙げられる。

近年、輸出主導型成長戦略の限界が指摘されるようになり、各国が内需拡大へと戦略を転換している。ドイツの輸出信用保証は1990-2002年に輸出を1.7~6倍に促進したが、同制度は輸出企業に21億ユーロ(総輸出の2.9%)を保証する一方、政府債務残高は年平均115億ユーロに上り、財政負担の持続可能性が課題となっていた。

2010年代後半から2020年代初頭にかけてEC諸国は「非市場リスク」に限定する規制を導入したが、この背景には、過度な輸出支援が市場歪曲を招くリスクへの警戒があった。この規制は、環境基準を満たさない製品の輸出制限や、適切でない労働条件からの製品に対する輸入制限を含む。また、消費者保護の観点から、安全基準を満たさない製品やデータ保護規制に違反する企業のデータの国外持ち出しも制限される。

韓国では、朴正煕政権下で輸出目標達成企業に特恵を与える「不文律」が確立され、GDPに占める輸出比率は1960年代の5%未満から1980年には35%へと急拡大した。しかし、この過程で政商癒着が構造化され、1997年のアジア通貨危機では輸出依存型経済の脆弱性が露呈した。輸出拡大の代償として国内産業の多様性が損なわれ、これが後の経済危機の一因と指摘されている。

中国では、米国の先端技術輸出規制が半導体産業に打撃を与える中、2022年に「内需拡大戦略計画綱要(2022-2035年)」を策定し、国内大循環を基盤とした新発展構造の構築を宣言した。同計画は「人々の美好生活への憧れ」を原動力に、社会安全網の整備や都市農村格差是正を通じて消費拡大を目指し、2035年までに「世界クラスの国内市場」の形成を目指している。2023年の米中通商協議で王文涛商務相が「正常な貿易を阻害」と批判した背景には、こうした戦略転換の必要性が反映されている。

米国経済の強靭性は、2023年第3四半期に個人消費が3.5%増加し、最終民間国内需要が2.8%成長するなど、内需主導型モデルの有効性を示している。対照的に輸出依存度の高いドイツでは、2023年の財輸出が前年比2.1%減少し、特に天然ガス34.7%減、半導体14.4%減という大幅な落ち込みが発生した。これらの事例は、地政学リスクや技術覇権争いが先鋭化する現代において、内需基盤の強化が経済安全保障上不可欠であることを示唆している。

世界銀行の分析によれば、国内市場規模がGDPの60%を超える経済圏は外部ショックへの耐性が格段に高まる。米国の民間消費がGDPの68%を占める現状(2023年)は、この理論を実証する好例である。中国が「国内大循環」戦略で2035年までに中所得層を8億人に拡大する目標を掲げるのも、同様の経済構造転換を目指してのことである。国際分業の効率性追求から内需主導の安定性重視へとシフトすることは、新たなグローバル経済のパラダイムシフトを示している。

一方、米国の輸入は近年変動を続けている。2022年には前年比14.9%増の3兆2,729億ドルと過去最高額を記録したが、2023年には前年比4.9%減の3兆1,085億ドルと減少に転じた。輸入相手国の構成にも変化が見られ、2023年には長年首位だった中国が2位に後退し、メキシコが最大の輸入相手国となった。メキシコからの輸入は前年比5.1%増の4,752億ドル(構成比15.4%)で、自動車や電気機器が増加を牽引した。一方、中国からの輸入は20.4%減の4,269億ドル(構成比13.9%)と大幅に減少し、一般機械や電気機器の落ち込みが顕著である。

この輸入構造の変化は、米中貿易摩擦の影響や、バイデン政権下でのフレンドショアリング、ニアショアリング政策の推進によるものと考えられる。フレンドショアリングは、企業が友好国や政治的に安定した国にアウトソーシングや製造を移転することで、リスクを分散し安定した供給を確保することを目的としている。一方、ニアショアリングは自国に近い国や地域にアウトソーシングを行い、物流コストやコミュニケーションの効率を高めることを目指している。

これらにより、特に中国からの輸入シェアは、2017年の21.6%から2023年には13.9%まで縮小している。一方で、メキシコやカナダなど近隣国からの輸入シェアが拡大傾向にある。2023年後半からは資本財や消費財を中心に輸入が増加に転じ、全体として横ばいから増加傾向となっている。これらの変化は、世界経済の動向や米国の通商政策、企業の生産戦略の変化などが複合的に影響した結果である。

ホワイトハウスは、カナダが合成麻薬フェンタニルや医療用麻薬オピオイドの密輸業者の取り締まり、メキシコが薬物対策で米国に協力するまで課税を続けると表明しているが、これは本当に効果があるとは思えない。米国はメキシコと3000キロ以上、カナダと9000キロ近くの国境を接しており、すべての不法入国や密輸を防ぐことは現実的に困難である。フェンタニルの原料の多くが中国で製造されているとされるが、10%の追加関税で製造や輸出が抑制されるかは不透明である。

むしろこの関税政策は、フェンタニル問題に対する直接的な解決策というよりも、国境管理の強化や麻薬対策の徹底を求めるための外交的圧力として機能する可能性が高い。したがって関税政策単独ではフェンタニルの流入を効果的に防ぐことは難しく、より包括的な対策が必要である。

トランプ政権の本当の狙いは、米国のカナダ、メキシコへの関税措置や中国への追加関税措置によって、仮にこれに対する報復措置があったとしても、結果的に米国の対外輸出を減少させ、内需を増加させることにあるとみられる。これにより、輸出がGDPに占める割合をかつての10%以下にまで減少させ、米国の民間消費がかつてGDPの70%を占める状況に戻すことで、外部ショックへの耐性を高め、経済安全保障を一層確かなものにしようとしていると考えられる。トランプ政権としては、輸出入が減ったにしても、それを補う個人消費が70%台で推移し、輸出が7〜8%で推移するくらいまでなら、十分対処できると考えているのだろう。

米国の昨年8月の小売売上高は前の月から減少するとの市場予想に反し0.1%の増加となり個人消費の底堅さが改めて示された

米国がこのように内需拡大に方針転換をしていることは、各国にも影響を及ぼすだろう。各国も内需をできるだけ増やそうと努力するはずである。中国も例外ではなく、内需を拡大しようとする努力が続けられているが、さまざまな課題に直面しており、期待通りには進んでいない。

これは、消費者信頼感の低下が一因であり、2022年の小売売上高は前年比でわずか0.5%の増加にとどまった。また、不動産市場の不安定さも影響し、恒大集団のデフォルトが示すように、多くの不動産開発企業が危機に瀕している。さらに、所得格差の拡大と家庭の貯蓄志向が強まり、多くの家庭が将来の不安から消費を控えている。政府の政策も短期的な効果にとどまっており、持続的な成長には限界がある。これらの要因が複合的に作用し、中国の内需拡大は難航している。

こうなると、米国の輸入が減った分を他国への輸出で補おうとする動きが出てくるだろう。しかし、その中で内需拡大に関心が薄い国がある。それが日本である。日本はデフレから完全には抜け出しておらず、2023年時点でも消費者物価指数(CPI)は前年比で約3%上昇しているが、これは主にエネルギーや食料価格の影響によるもので、基礎的な物価上昇が持続しているわけではない。実質賃金の伸びが鈍く、賃上げが物価上昇に追いついていないため、消費者の購買力が圧迫されている。

さらに、日銀は利上げを行い、金利を引き上げることで金融環境を厳しくしているが、これが内需に対して逆効果をもたらす可能性がある。高金利は企業の投資意欲を削ぎ、消費者の借入コストを引き上げるため、内需の縮小を招く恐れがある。2023年の利上げ決定後、住宅市場や自動車販売への影響が懸念されている。

加えて、現政権は内需の拡大に無関心であり、財政健全化を重視するあまり、公共投資や消費刺激策を縮小しようとしている。これにより、内需のさらなる減少が懸念される。地方経済の疲弊が進む中で、政府が地方創生や支援策を十分に講じていないことが問題視されている。

これは、中国の安い製品を受け入れる素地をつくることになる。物価の安い日本は、中国の観光客にも人気で、それをインバウンドとして歓迎する向きもあるが、現在の日本はオーバーツーリングの状況にある。政府はこうしたことへの対応に消極的であり、国内の観光産業を伸ばすことには無関心なのだ。その結果、日本はデフレの底に深く沈むことになる。しかし、そうなれば、今度は中国が苦戦することになる。

かつて日本は超円高、超緊縮財政で、国内で部品を組み立てて輸出するよりも、韓国や中国で組み立てて輸出したほうがコスト的に断然有利になるという異常な状況を招き、国内で産業空洞化を進め、国外では韓国や中国の経済発展を助長した。しかし、今度の状況は全く異なる。

2012年当時の日本の47都道府県GDPを同等の他の国の国旗で表したもの クリックすると拡大します

米国を筆頭に各国が内需拡大に走る中で、今後世界的に輸出が伸びないと、日本が内需を拡大しなければ、中国は日本への輸出が難しくなるだろう。そうなると、いますぐではないにしても、いずれ中国は日本に内需を拡大しろとか、中国からの輸入を増やすよう強く要求するようになるかもしれない。いや、もっと露骨に金融緩和しろとか、積極財政をしろとか、内政干渉をしてくるかもしれない。無論中国側の安全保証からすれば、日本が経済的に低迷するほうが良いに決まっているが、中国経済が低迷し、背に腹は代えられない時がくるかもしれない。

そのような情けない事態を避けるためにも、政府はまずデフレ克服の観点から内需拡大に方向を転換すべきである。ただし、米国と同じく安全保障の観点から、中国からの輸入は関税を引き上げるなどの措置をし、控えるべきだろう。

そしてデフレから完全に脱却し、その後は経済安全保障の観点からも内需をできるだけ伸ばす必要がある。 日本はかつて長い間輸出がGDPに占める割合は米国と同じように10%を切る8%前後に過ぎなかったし、その頃は現在と違い、景気がかなり良かったことを忘れるべきではない。日本の輸出立国などは、元々幻想に過ぎず、過去の日本は紛れもなく内需大国だった。本気で内需拡大を目指すことこそ日本が今後取り組むべき大きな課題なのである。

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2025年2月1日土曜日

アラスカLNG開発、日本が支援の可能性議論 トランプ米政権が関心―【私の論評】日本とアラスカのLNGプロジェクトでエネルギー安保の新時代を切り拓け

アラスカLNG開発、日本が支援の可能性議論 トランプ米政権が関心

まとめ
  • トランプ米大統領のアラスカ州の440億ドル規模のガス開発計画に対し、日本政府が支援を検討しており、貿易赤字削減を狙っている。
  • 石破茂首相はトランプ氏との会談でこの計画を議題にする可能性があり、日本側には懐疑的な意見もあるが検討する意向がある。
  • 日本はLNGの供給源を多様化を従来からすすめており、アラスカ計画の実現がその一助となる可能性がある。
米アラスカ州ケナイ湖

トランプ米大統領が提唱するアラスカ州の440億ドル規模のガス開発計画について、日本政府が支援を検討していることが明らかになった。これは米国の貿易赤字を削減し、関税リスクを回避するための方策とされている。石破茂首相はトランプ大統領との初会談でこの計画を議題にする可能性がある。

この計画はアラスカのガス田と港を結ぶパイプラインを通じて、液化天然ガス(LNG)をアジアに輸出するもので、日本側には懐疑的な声もあるが、米国からの提案があれば検討する意向がある。日本はすでに十分なLNGを確保しているが、アラスカの計画が実現すればエネルギー供給の多様化につながるかもしれない。

政府関係者は、石破首相がトランプ氏との会談で具体的なLNGへの投資を約束することは難しいと強調し、価格の妥当性や転売の柔軟性が必要であると述べた。また、トランプ氏は日本との経済的関係にはあまり言及していないが、関税問題は日本にとって重要な課題である。

アラスカの計画に関しては米国の議員や専門家からの助言も受けており、日本がLNG購入を増やし、投資を申し出ることがトランプ氏の支持を得る手段になる可能性があると指摘されている。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】日本とアラスカのLNGプロジェクトでエネルギー安保の新時代を切り拓け

まとめ
  • トランプ米大統領のアラスカガスライン開発プロジェクト(AGDC)は、アラスカ北部のガス田から南部のプリンスウィリアム湾へパイプラインを敷設し、液化天然ガス(LNG)をアジア市場に輸出する計画である。
  • プロジェクトは、米国のエネルギー自給率を向上させ、対外的なエネルギー依存を減少させる施策の一環として位置づけられている。
  • 日本がこのプロジェクトを支援することで、エネルギー供給の多様化が進み、日本のエネルギー安全保障が強化される可能性がある。
  • 日本はエネルギー供給源の多様化を図ることで国際的な影響力を高めることが期待されている。
  • アラスカからのLNG輸出は、アジア全体のエネルギー安全保障を向上させ、地政学的な緊張の緩和にも寄与する。

トランプ米大統領のアラスカ州の440億ドル規模のガス開発計画は「アラスカガスライン開発プロジェクト(AGDC)」と呼ばれる。この計画は、アラスカ北部のガス田から南部の港へパイプラインを敷設し、液化天然ガス(LNG)をアジア市場に輸出することを目指している。パイプラインの長さは約800マイル(約1300キロ)に及び、具体的にはプリンスウィリアム湾に接続される。

プリンスウィリアム湾からは、液化ガスを船でアジア市場に輸送する計画だ。これにより、米国のLNGがアジアのエネルギー需要に応えることを狙っている。このプロジェクトは、トランプ政権がエネルギー自給率を向上させ、対外的なエネルギー依存を減少させるための重要な施策の一環である。

特にアジア市場はエネルギー需要が高く、LNGの輸出先として非常に魅力的であるため、米国の戦略的利益にも合致している。アラスカ州内からのLNG輸出は、アメリカ湾(旧メキシコ湾)経由での輸出よりもアジアに近く、輸送コストや時間の面で有利だ。実際、アラスカからアジアへの輸送は約8,000キロメートルと比較的短距離であり、一方、アメリカ湾からアジアへの輸送は約14,000キロメートルに達する。この距離の差は、輸送時間の短縮とコストの削減につながり、競争力を高める要因となる。

ただし、アラスカのパイプライン経路については基本的な計画があるが、具体的な詳細や最終的な経路は未確定である。北部のガス田から南部のプリンスウィリアム湾に向けて敷設する計画で、途中で重要な地点を通過する予定だ。しかし、環境影響評価や土地利用の問題などが影響し、経路の最終決定には時間がかかる可能性がある。また、地域住民や環境団体の意見も考慮されるため、調整や検討が必要である。

2019年アラスカ州アンカレジのエルメンドルフ・リチャードソン統合基地を訪問したトランプ大統領

この計画に日本の支援が決定された場合、いくつかのメリットが考えられる。第一に、エネルギー供給の多様化が進むことで、日本のエネルギー安全保障が強化される。日本は現在、LNGの多くをロシアや中東からも輸入しており、特定の国に依存するリスクがあるが、アラスカからの供給源を確保することでその依存度を低下させることができる。これにより、地政学的なリスクを分散できる。

第二に、アラスカのLNG購入によって、米国との経済関係が強化され、貿易赤字の削減や関税リスクの回避につながる可能性がある。特にトランプ政権の貿易政策において、日本がエネルギー分野での協力を示すことで、経済的な要求への対処が容易になると期待される。

日本のLNGによるエネルギー戦略は、主に2012年以降の安倍晋三政権の下で強化された。福島第一原発事故を受けて、エネルギー供給の安定性を確保するために、再生可能エネルギーの導入と共にLNGの利用を推進する政策が採られた。また、国際的なエネルギー市場への参入やLNG供給源の多様化を図るための取り組みも行われた。

その後も、菅義偉政権や岸田文雄政権、現政権においても、エネルギー安全保障の観点からLNG戦略は引き続き重要な政策課題とされている。特に地政学的リスクや環境問題に対処するため、LNGの役割が再評価されている。


日本は過去に実質的なエコノミック・ステートクラフト(後述)を実施しており、例えば2019年の初めからロシア産石油の買入量を一気に40.5%削減し、液化天然ガス(LNG)の輸入も前年同時期比で7.6%減少させた。一方で、米国の炭化水素の輸入は急増し、石油は328%、LNGは36.1%増加している。このような背景から、アラスカプロジェクトを支援することで、日本のエネルギー供給の手段がさらに多様化することが期待される。エコノミック・ステートクラフトを通じて、国際的なエネルギー市場における地位を向上させることができる。

エコノミック・ステートクラフトとは、国家が経済的手段を用いて自国の政策目標を達成する戦略を指す。これには貿易、投資、制裁、エネルギー供給の管理などが含まれ、特にエネルギー政策においては、他国との関係を調整しながら安定したエネルギー供給を確保するための重要なツールとなる。日本は、エネルギー供給源を多様化することで、エコノミック・ステートクラフトの手段を増やすことができ、国際的な影響力を高め、地政学的リスクを軽減できるようになるだろう。

アラスカのプロジェクトへの投資は、日本企業にとって新たなビジネスチャンスを提供する可能性がある。過去には、日本企業がアラスカのエネルギー開発に関与し、成功を収めた例も多く、将来的な投資や技術提供を通じて日本のエネルギー産業の競争力を高めることができる。

最後に、アラスカからのLNG輸出は、日本だけではなくアジア全体のエネルギー安全保障の観点でも重要な要素となる。依存度を減らすことで、特定の国に対するエネルギー依存を緩和し、戦略的な選択肢を広げることができる。これにより、アジア地域全体のエネルギー供給の安定性が向上し、地政学的な緊張の緩和にも寄与することになるだろう。 このプロジェクトに日本は参加するべきである。

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2025年1月31日金曜日

ドイツ、移民政策厳格化の決議案可決 最大野党の方針転換が物議―【私の論評】2025年ドイツ政治の激変:AfD台頭と欧州保守主義の新潮流

ドイツ、移民政策厳格化の決議案可決 最大野党の方針転換が物議

まとめ
  • ドイツの連邦議会は移民・難民政策の厳格化を求める決議案を可決したが、法的拘束力はなく、政府への影響は限定的である。
  • 決議の背景にはアフガニスタン出身男性による幼児襲撃事件があり、移民問題が選挙戦の重要な争点となっている。
  • 中道右派の最大野党「キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)」は右派「ドイツのための選択肢(AfD)」との協力を示唆しているが、主要政党は排外主義勢力への警戒感からAfDとの連立を否定している。

ドイツの野党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)を率いるメルツ党首

 ドイツの連邦議会は2月下旬の前倒し総選挙を控え、29日に移民・難民政策の厳格化を求める決議案を賛成多数で可決した。この決議は中道右派の最大野党「CDU・CSU」が提案し、排外主義的な右派「AfD」も支持したが、法的拘束力はなく、政府方針への影響は少ないと見られている。

 背景には、22日に発生したアフガニスタン出身の男性による幼児襲撃事件があり、移民問題が選挙戦の重要な争点となっている。CDU・CSUの提案には、国境の持続的な管理、入国許可証を持たない者の入国拒否、国外退去対象者の拘束などが含まれている。

 CDUのメルツ党首は移民対策強化を公約に掲げ、AfDとの協力も辞さない姿勢を示した。しかし、ドイツではナチス政権の反省から、排外主義勢力への警戒感が強く、主要政党はAfDとの連立や政策協力を否定している。与党の中道左派・社会民主党もメルツ氏の発言に強い反対を示した。

 また、EU加盟国のドイツが国境管理を恒常化することは、EUのシェンゲン協定に反するため、今回の決議は実現可能性が低いとの指摘もある。現在、CDU・CSUは支持率が高く、2月23日の前倒し総選挙で第1党となる可能性が大きいが、AfDに対する拒否感を持つ支持者からの反発も懸念されている。メルツ氏は公約の実現に向けた強い姿勢をアピールしているが、内部での不満が高まる可能性もある。 

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【私の論評】2025年ドイツ政治の激変:AfD台頭と欧州保守主義の新潮流

まとめ
  • ドイツの連邦議会で移民政策厳格化の決議案が可決され、AfDの支持率が20%を超えるなど、保守系政党の台頭が顕著になっている。
  • EU全体で保守系勢力が台頭しており、2024年の欧州議会選挙でも保守系会派が勢力を拡大した。
  • イーロン・マスク氏がAfDを支持を表明、集会にリモート参加するなど、物議を醸している。
  • 保守系政党台頭の背景には、移民問題、経済的不安、気候変動政策への不満、伝統的価値観の喪失感などがある。
  • 日本でも既存の政治体制への不信感が高まりつつあり、日本の政治地図も大きく塗り替えられる可能性もある。
イーロン・マスク氏とのインタビューに臨むAfDのアリス・ワイデル共同党首

ドイツの政界に、変革の風が吹き始めた。2025年1月29日、連邦議会で移民政策の厳格化を求める決議案が可決された。これは、2月23日の総選挙を前に、国民の声が政治に反映された瞬間だ。

この決議案を提出したのは、中道右派の最大野党CDU・CSUだ。そして、「ドイツのための選択肢(AfD)」も、この決議案を支持した。AfDの支持がなければ、この決議案は可決されなかっただろう。

現在のドイツは、社会民主党(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)による「信号」連立政権が統治している。この名称は、各党のシンボルカラー(赤、緑、黄)に由来する。しかし、この政権は移民問題に対して十分な対策を講じられずにいた。

AfDの支持率が20%を超え、SPDを上回っているのは、こうした現状に国民が危機感を抱いているからだ。2024年9月の旧東ドイツ3州での州議会選挙でAfDが躍進したのも、当然の結果と言える。

しかし、この潮流はドイツだけの現象ではない。EU全体で保守系勢力が台頭している。2024年6月の欧州議会選挙では、EU加盟各国で保守系や国家主義的な政党が大きく勢力を拡大した。フランスでは「国民連合」が熱狂的支持を集め、ベルギー下院選挙では北部オランダ語圏で「フラームス・ベラング」が第二党となった。

オランダでは昨秋の下院選挙で「自由党」が第一党となり、7月に連立内閣が発足した。オーストリアでも、9月末の下院選挙で「自由党」が第一党となった。

欧州議会選挙の結果を見ると、保守系会派である欧州保守改革(ECR)やアイデンティティと民主主義(ID)が勢力を拡大した一方で、環境会派の緑の党・欧州自由同盟(Greens/EFA)や中道リベラル会派の欧州刷新(Renew Europe)が大幅に勢力を落とした。

この保守化の背景には、移民問題だけでなく、リーマン・ショック後の欧州債務危機の影響もある。経済的不安が、既存の政治への不信感を高め、保守政党の支持拡大につながっているのだ。

アメリカの実業家イーロン・マスク氏も、「ドイツを救えるのはAfDだけだ」と発言し、AfDの集会にリモートで参加した。この行動は国内外で物議を醸している。

イーロン・マスク氏

マスク氏がAfDを支持するに至った背景には、複雑な要因がある。2024年12月、マスク氏はトランプ氏やJ.D.ヴァンス氏らとマールアラーゴで会談し、ドイツの主流政党の指導者たちを批判した。マスク氏のドイツ政治への批判的な見方は、この会談以前から形成されていたという。

マスク氏は、ドイツでの事業展開における政府規制への不満や、ドイツの政治文化に対する観察から、批判的な見解を持つようになった。また、AfDを支持する政治活動家や、ドイツのリベラルな政策や過剰規制に不満を持つ起業家たちとの交流も、彼の見解に影響を与えたとされる。

さらに、マスク氏は「過去の罪悪感に焦点を当てすぎ」というドイツの姿勢を批判し、AfD支持者から喝采を浴びた。この発言は、ドイツの「自虐史観」の払拭を狙ったものだとの見方もある。

2月23日の総選挙で、ドイツ国民は重大な選択を迫られる。このまま「信号」連立政権に国の舵取りを任せるのか。それとも、AfDとともに新しいドイツを築くのか。

ドイツの、そして欧州の未来がかかった選挙が、今、始まろうとしている。AfDは、国民の声に耳を傾け、真のドイツの利益のために戦う。そして、この動きはEU全体に広がっている。変革の時は、今だ。

この保守系政党台頭の背景には、より深い構造的な問題がある。EUの経済的停滞、移民問題、気候変動政策への不満、伝統的価値観の喪失感が、有権者の不安を加速させているのだ。

特に注目すべきは、若年層の間でこうした保守系政党への支持が拡大していることだ。2024年の調査によれば、18〜35歳の有権者の中で、AfDを支持する割合が25%に達している。これは、従来のリベラル層が政治的無関心や既存政党への失望から、急進的な選択肢に傾いていることを示している。

気候変動政策も、保守系政党台頭の重要な要因となっている。緑の党が推進する厳格な環境規制は、特に中小企業や地方の労働者に経済的負担を強いてきた。この結果、伝統的な産業地域で保守系政党への支持が急速に拡大している。

EUは歴史的な転換点に立っている。伝統的な政治構造が揺らぎ、新たな政治的可能性が開かれつつある。AfDをはじめとする保守系政党の台頭は、単なる一時的な現象ではなく、より深い社会変容の兆候なのだ。

さらに、ドイツのエネルギー政策の転換も、この政治的変化に拍車をかけている。2022年までに全ての原子力発電所を閉鎖するという決定は、エネルギー供給の不安定化と電力価格の高騰をもたらした。2021年には、ガス価格の高騰と石炭火力への逆戻りにより、電力価格が記録的に上昇した。

現政権は原発を恒久的につかえなくするため原発冷却塔を爆破

この原発廃止政策は、ドイツの競争力を低下させ、経済成長を阻害する可能性があるという懸念が産業界から上がっている。特に、産業向けの電気料金の上昇は、企業の生産拠点の海外移転を加速させ、経済を悪化させる恐れがある。

また、再生可能エネルギーへの移行も順調とは言えない。風力発電の不安定さに対応するためのコストが予想以上にかかっており、技術開発の進展次第では、将来的に脱原子力政策の見直しを迫られる可能性もある。

これらのエネルギー政策の問題は、国民の不安と不満を高め、AfDのような保守系政党の支持拡大につながっている。エネルギー安全保障と経済成長の両立を求める声が、従来の政党への不信感と相まって、新たな政治勢力への期待を高めているのだ。

欧米でのリベラル・左派政権の失敗は明らになりつつある。既存の政治体制への不信感の高まりがその証左となっている。これらの教訓を踏まえると、日本でも保守派の台頭が起こる可能性は十分に考えられる。既存の政治への不満や、伝統的価値観への回帰を求める声が高まれば、日本の政治地図も大きく塗り替えられる可能性があるだろう。

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2025年1月30日木曜日

トランプ米政権、職員200万人に退職勧告 在宅勤務禁止などに従わない場合―【私の論評】統治の本質を問う:トランプ政権の大胆な行政改革

トランプ米政権、職員200万人に退職勧告 在宅勤務禁止などに従わない場合

まとめ
  • トランプ米政権は連邦政府職員に在宅勤務を禁止し、従わない場合は退職を勧奨する方針を通知した。対象は約200万人で、退職者には9月末までの給与が支払われる。
  • 政権高官は5~10%の退職者が出ることで約1千億ドルの歳出削減が期待されている。この方針は政府の効率化を目指すものである。
  • 人事管理局は週5日の出勤を求め、職員に忠誠心と信頼性を強調し、2月6日までに退職の意向を返信するよう求めている。職位の存続は保証できないとされている。

トランプ大統領

 トランプ米政権は28日、連邦政府職員に対し、在宅勤務を禁止し、これに従わない場合は退職を勧奨する方針を通知した。対象となる職員は約200万人で、退職に応じた職員には9月末までの給与が支払われる予定である。政権高官によれば、退職者が5~10%出ることで、約1千億ドル(約15兆5千億円)の歳出削減につながると見込んでいる。

 この方針は、トランプ大統領が進める連邦政府改革の一環であり、「政府効率化省」の設置や新型コロナウイルス禍で進んだ在宅勤務の原則禁止を盛り込んだ大統領令に基づいている。政権は官僚機構に対する支配を強化することを狙っているが、大幅な人員削減が政府機能の不全を招く恐れもある。

 人事管理局はメールで職員に対し、週5日の出勤を求め、「忠誠心があり、信頼に足る人材で構成されるべき」と強調している。また、2月6日までに退職するかどうかの返信を求めており、政府機関の大半で職場の統廃合を通じて人員削減が進められることも示唆している。職位や所属機関の存続については、確実に保証できないとも付言されている。

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【私の論評】統治の本質を問う:トランプ政権の大胆な行政改革

まとめ
  • トランプ大統領が設立したDOGE(政府効率化省)は、連邦政府の無駄を削減し行政改革を推進する革命的な取り組みだ。
  • ドラッカーの理論によれば、政府の本質的役割は「統治」であり、実行とは明確に区別されるべきだ。
  • 真の改革とは、政府が効率化されるだけでなく、本来の「統治」の役割に立ち返ることだ。
  • ドラッカーの提唱する「再民間化」概念は、政府の力を弱めるのではなく、その能力と力を回復させる方法だ。
  • この改革の成否は、アメリカの未来だけでなく、21世紀の世界秩序をも左右する可能性がある。

アメリカが新たな時代の幕開けを迎えようとしている。トランプ大統領の就任演説で発表された政府効率化省(DOGE)の設立だ。これは単なる行政改革ではない。アメリカの根幹を揺るがす大改革の始まりだ。上の記事にある連邦政府職員に在宅勤務を禁止し、従わない場合は退職を勧奨する方針は、DOGEの助言を受け入れたものとみられる。

DOGEは、イーロン・マスクとビベック・ラマスワミという二人の実業家が共同で率いる。彼らの目標は明確だ。連邦政府の無駄を徹底的に削ぎ落とし、行政を根本から変えることだ。マスク氏は、ブロックチェーン技術の活用を検討している。政府の支出を透明化し、データを守り、建物管理まで効率化する。まさに革命的な発想だ。

DOGEは、ホワイトハウスのアイゼンハワー行政府ビル内にオフィスを構え、各連邦機関に少なくとも4人から成るチームを配置する。その姿勢は、まさに政府全体を変革する気概に満ちている。

だが、課題も山積みだ。DOGEの法的位置づけは不透明だ。複数の団体が訴訟を起こしている。公的権限もほとんどない。それでも、トランプ大統領は「マンハッタン計画」になぞらえ、その重要性を強調する。DOGEの活動は、米国の独立250周年となる2026年7月4日までに完了する予定だ。

この改革の背景には、共和党の「小さな政府」志向がある。さらに、トランプ氏の「ディープステート撲滅」という野心的な目標がある。マスク氏とラマスワミ氏も、以前から政府の規制権限に批判的で、連邦政府の大幅な縮小を主張してきた。

小さな政府そのものがゴールではない

しかし、ここで立ち止まって考えてみよう。そもそも政府とは何か。経営の神様ドラッカーは、政府の役割の本質を「統治」だと喝破した。社会に方向性を示し、エネルギーを結集させる。それが政府の役割だと。

ドラッカーは警告する。統治と実行を混同すれば、政府は麻痺する。意思決定機関に実行を委ねても、貧弱な結果しか生まれない。その逆も然りだ。企業は統治と実行を分離することで成功した。政府も同じだ。政府は統治に専念し、実行は他の組織に任せるべきだと。

ドラッカーは、政府の役割を次のように定義している。「政府の役割は、社会のために意味ある決定と方向付けを行うことである。社会のエネルギーを結集することである。問題を浮かびあがらせることである。選択を提示することである」。これこそが、真の「統治」の姿だ。

さらに、ドラッカーは「再民間化」(現代では民営化)という概念を提唱した。これは、政府の力を弱めるのではなく、むしろその能力と力を回復させる方法だ。実行は現場ごとの目的の下にそれぞれの現場に任せ、政府は決定と方向付けに専念する。これにより、政府は本来の役割に立ち返ることができる。

この視点は、今の改革にも重要だ。効率化や撲滅に走るあまり、政府の本来の役割を見失ってはいけない。DOGEが活動し、トランプ大統領がその助言を受け入れるならば、政府が効率化され、ディープステートが撲滅されるかもしれない。しかし、それだけでは不十分だ。政府を小さくすることだけに焦点を絞れば、改革はうまくいかない。

真の改革とは、政府が本来の役割である「統治」に立ち返ることだ。社会のために意味ある決定を行い、エネルギーを結集し、問題を浮かび上がらせ、選択肢を提示する。それこそが、政府の本質的な使命なのだ。

ドラッカー氏

ドラッカーの言葉を借りれば、「この300年間、政治理論と社会理論は分離されてきた。しかしここで、この半世紀に組織について学んだことを、政府と社会に適用することになれば、この二つの理論が再び合体する」。つまり、非政府組織(NGO)が成果を上げるための機関となり、政府が社会の諸目的を決定するための機関となる。そして、政府は多様な組織の指揮者となるのだ。この方向にトランプ大統領の改革が進んでほしい!

アメリカは今、歴史的な岐路に立っている。この改革が成功するか否か、世界中が固唾を呑んで見守っている。トランプ大統領の決断が、アメリカの、そして世界の未来を左右する。政府の効率化と本質的な役割の両立。それが実現できれば、アメリカは真の意味で「再び偉大に」なるだろう。

我々は今、歴史の大きな転換点に立ち会っている。この改革の行方が、21世紀の世界秩序を決定づけるかもしれない。G7の他の国々でも、似たような潮流がすでにあるが、現状でもっとも進み、可能性があるのはアメリカだといえる。トランプ大統領の手腕が、今ほど試されているときはない。政府の本質を見失わず、真の統治を実現できるか。その答えが、アメリカの、そして世界の未来を形作るのだ。

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2025年1月29日水曜日

オープンAIアルトマン氏、ディープシークのモデル「目を見張る」―【私の論評】AI覇権競争の裏で:DeepSeekの衝撃と私たちの選択?

オープンAIアルトマン氏、ディープシークのモデル「目を見張る」

まとめ
  • OpenAIのアルトマンCEOは中国ディープシークのAIモデルを高く評価しつつ、OpenAIの成功には大規模なコンピューティングパワーが必要だと強調した。
  • ディープシークの低コスト高性能AIモデルの登場により、米ハイテク企業の巨額AI投資計画に疑念が生じ、関連企業の株価に影響を与えた。

OpenAIのサム・アルトマンCEO

サム・アルトマンCEOは中国のディープシークが開発したAIモデル「R1」を「目を見張る」と評価した。特に低コストで高性能を実現した点を称賛している。ディープシークはNVIDIAの比較的安価なH800チップを使用し、600万ドル以下で「V3」モデルを訓練したと発表。さらにR1モデルはOpenAIの「o1」より20-50分の1のコストで使用可能だという。

一方でアルトマンCEOは、OpenAIの成功にはより大きなコンピューティングパワーが不可欠だと強調した。ディープシークの台頭により、米ハイテク企業の巨額AI投資計画に疑念が生じ、NVIDIAなどの株価が急落した。

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【私の論評】AI覇権競争の裏で:DeepSeekの衝撃と私たちの選択?

まとめ
  • DeepSeekは、わずか600万ドルで世界最高レベルのAIモデルを開発し、アメリカのIT巨人を驚かせた中国の新興AI企業である。
  • 中国のAI技術は、人権侵害や監視社会の強化に利用される可能性があり、国際的な技術競争と倫理的課題を提起している。
  • DeepSeekは約5万台のNVIDIA H100 GPUを保有するとされ、その技術力は米国のトップ企業も注目するレベルに達している。
  • AIは核兵器のような破壊的な力を持ちながら、同時に医療、教育、環境保全などの分野で人類を救う可能性も秘めている。
  • 技術の進歩と人権保護のバランスを取ることが、現代社会における最も重要な課題であり、その選択は私達一人一人にかかっている。
皆さん、想像してほしい。あなたの隣人が突然、超人的な力を手に入れたとしたら。その力で世界を良くすることもできるし、逆に支配することもできる。そんな状況が、今まさに現実となりつつあるのだ。

中国のAI技術が驚異的な速さで発展している。DeepSeekという新興企業が、わずか600万ドルで世界最高レベルのAIモデルを開発したというニュースが飛び込んできた。これは驚くべき快挙だ。アメリカのIT巨人たちが数十億ドルを投じて開発したモデルと互角以上の性能を持つという。

中国政府は2030年までに世界のAI開発をリードする野心的な目標を掲げている。2021年には政府のAI関連支出が約150億ドルに達したという。しかし、問題はその技術が誰の手に渡るかだ。

新疆ウイグル自治区での人権侵害や香港での民主活動家の弾圧。これらはAI技術によって更に強化される恐れがある。顔認識技術を使った監視システム、SNS上での世論操作。そして、「社会信用システム」という名の下で行われる市民の監視と統制。これらは、もはやSFの世界の話ではない。

香港での民主活動家の弾圧

DeepSeekは約5万台のNVIDIA H100 GPUを保有しているとされる。これは驚異的な数字だ。H100は現在、最先端のAI研究に不可欠な高性能GPUであり、その大量保有は、DeepSeekの研究開発能力が想像以上に高いことを示している。

この状況は、トランプ政権の警戒心を強く刺激する可能性が高い。トランプ大統領は、DeepSeekの技術を「米企業にとって警鐘となるべき」と述べ、中国企業がAIでより高速な手法を考案したことを評価しつつも、米国の競争力強化の必要性を強調した。

この両刃の剣は、米国側だけでなく、中国にとっても同様だ。DeepSeekのような企業の台頭は、中国のAI産業に活力を与え、国際競争力を高める可能性がある。しかし同時に、こうした技術の急速な発展は、すべてを管理しようとする中国政府の管理能力をはるかに超える可能性もあり、社会的・政治的な不安定要因となる恐れもある。

さらに、DeepSeekが、米国製のNVIDIA H100 GPUを多数用いているとされることも危機を生み出す懸念材料だ。これは、米国政府の規制により、中国への合法的な輸出は基本的に不可能。ただし、非公式な迂回ルートを通じた流入が完全に防げているわけではない。しかし、これを米国がさらに規制を厳しくして、完璧に断つことになれば、開発どころか現状を維持することすらできなくなる。それに現時点では、公にされていないが、低コストでの生成AI開発には何か裏がある可能性もある。

アメリカのシリコンバレーは今、必死に対抗策を練っている。OpenAIのサム・アルトマンは公然と「我々はより優れたモデルを作る」と豪語するが、その裏には焦りと危機感が隠されている。まさに、新たな「技術冷戦」の様相を呈しているのだ。

この技術競争は、単なる企業間の戦いではない。それは文明の未来を左右する壮大な闘いなのだ。中国のAI技術は、計算機能を遥かに超えた、人間社会を根本から変革する可能性を秘めた最先端兵器なのである。


ファーウェイの5G技術が世界中で警戒されたように、DeepSeekのAI技術も同様の地政学的インパクトを持つ可能性がある。それは、単なる技術的な優位性だけでなく、世界の権力構造そのものを揺るがす可能性を秘めているのだ。

日本はこの状況でどう立ち位置を取るべきか。技術大国として、この激しい競争に傍観者であってはならない。「人間中心のAI社会原則」を掲げるだけでなく、具体的な技術開発と倫理的枠組みの構築が求められている。

この戦いの本質を理解するには、歴史を振り返る必要がある。20世紀、人類は二度の世界大戦と冷戦を経験した。技術が戦争と支配の道具となり、何百万もの命が奪われた。今、私たちは新たな戦場に立っている。今回の戦場は、サーバールームであり、データセンターであり、そして一人一人のスマートフォンの中なのだ。

サーバールーム、データセンター、そして一人一人のスマートフォンの中の戦場 AI生成画像

AIは、核兵器のように破壊的な力を持ちながら、同時に人類を救う可能性も秘めている。医療、教育、環境保全。これらの分野でAIは革命を起こす可能性がある。しかし、その刃は常に両刃なのだ。DeepSeekは、まさにその象徴だ。ただし、これは単なる政治的メッセージである可能性もあり得る、実際よりもかなり優れているように体裁を繕っているが、これが見せかけであり、米国や西側諸国を混乱させることを目的にしている可能性も捨てきれない。混乱させることに特化したAIという事もありえる。現時点で結論を出すことは、尚早かもしれない。

いずれにせよ、私たちの選択は、未来の子供たちの自由と尊厳を左右する。AIという巨大な力は、人類を解放することもできれば、全体主義的な監視社会に陥れることもできる。その分岐点に、今、私たちは立っているのだ。

結論は明確だ。技術の進歩と人権保護のバランスを取ることが、私たちの世代に課された最も重要な使命なのである。私たちには選択肢がある。技術に振り回されるのか、それとも技術を人類の幸福のために方向づけるのか。それは、一人一人の意識と行動にかかっているのだ。AIも例外ではない。

さあ、行動しよう。無関心は最大の敵だ。未来は、私たち一人一人の選択にかかっているのだ。そして忘れてはいけない。技術は道具であり、その使い方は私たち次第だということを。

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2025年1月28日火曜日

リベラル左派の将来は暗い?!―【私の論評】覚醒思想(WOKE)の危機とポピュリズムの復権:米国政治の未来を占う

リベラル左派の将来は暗い?!

まとめ
  • トランプ氏の再登場により、米国内外で政策や情勢が大きく変化。
  • 保守主義の台頭に伴い、進歩派は重税や規制が批判され支持を失いつつある。
  • 米欧では一般国民に直接に訴える本来の「大衆直訴主義」としてポピュリズムの政治主導が効果を上げてきた。
ファリード・ザカリア氏

ドナルド・トランプ氏が第47代アメリカ大統領として再登場し、国内外で大きな変化をもたらしている。国内では、不法入国者の追放やLGBT文化の抑制、さらにはエネルギー政策の復活が進行中であり、これらの政策は保守的な支持層からの期待を集めている。国際的には、イスラエルとハマスの停戦やロシア、中国との関係改善が見られるなど、トランプ氏の強硬な外交姿勢がさまざまな面で影響を及ぼしていることは明らかである。

選挙前には、トランプ氏への厳しい批判が多く存在したが、最終的にはアメリカ国民の多数が彼を支持する結果となった。これは、リベラル派によるトランプ氏への攻撃が必ずしも国民の共感を得ていないことを示している。リベラル派の著名な評論家であるファリード・ザカリア氏は、トランプ氏の圧勝は進歩的な政治に対する不満から生じたものであり、保守主義の方が住民に満足を与えていると分析している。ザカリア氏は、特に民主党統治のニューヨーク州と共和党統治のフロリダ州の政治状況を比較し、フロリダ州の方が税負担や治安、教育などにおいて住民に満足感を提供していることを強調している。

さらに、ポピュリズムに関する議論も重要である。ザカリア氏は、トランプ氏の手法が一般的に「大衆迎合主義」とされる解釈とは異なり、既存の政治エリートに対する反発が根底にあることを強調している。このような視点は、トランプ氏の支持が単なる感情的反応ではなく、実際の政策に対する期待と不満の表れであることを示唆している。

最後に、文化的エリートを守り、覚醒(ウォーク)思想を保ち、膨張した政府を続ける限り、永遠の野党の立場に甘んじる可能性が高いと警告している。このように、トランプ氏の再登場がもたらす影響は多岐にわたり、今後の展開に注目が集まっている。アメリカの政治情勢は変化の真っただ中にあり、その行方は全世界に影響を及ぼす重要な要素となるであろう。

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【私の論評】覚醒思想(WOKE)の危機とポピュリズムの復権:米国政治の未来を占う

まとめ
  • 覚醒思想(ウオーク:英語はWOKE)はアイデンティティ政治やDEIと結びつき、特定の社会的グループの権利を中心に据えるが、社会の分断を招くことになった。
  • リベラル派は社会の不平等を解消しようとするが、トランプ支持者は過剰な規制が自由を脅かすと批判している。
  • リベラル・左派の政策は社会工学実験の領域にまで踏み込んでおり、予期しない弊害や反発を招いている。
  • ポピュリズムは19世紀に一般市民の利益を代表する運動として発展したが、20世紀に入ってからは左翼によって「大衆迎合主義」として貶められた。
  • 米民主党は社会工学実験にまで踏み入ってしまった政策を見直し、ポピュリズムの元来の意味を再評価しなければ、万年野党の座から抜け出せない可能性が高く、それは米国にとって良いことではない。
覚醒思想(WOKE)は米国の分断を促進

覚醒(ウォーク)思想は、社会的不正や差別に対する意識と行動を促す考え方であり、特に、人種、性別、LGBTQ+の権利、経済的不平等などの問題に焦点を当てる。アイデンティティ政治やDEI(多様性、公平性、包括性)と深く結びついている。アイデンティティ政治は特定の社会的グループ(人種、性別、性的指向など)の経験や権利を中心に据えた政治的アプローチであり、マイノリティの声を政治の場に反映させることを目指している。

しかし、これらのアプローチは同時に分断を招く危険性もはらんでいる。DEIは、組織や社会における多様性を促進し、すべての人が公平に扱われる環境を作ることを目的としているが、その実践にはさまざまな課題が伴う。

リベラル派の支持者たちは、これらの理念を通じて社会の不平等を解消しようと奮闘しているが、トランプ氏の支持者はこれに対し、過剰な規制が一般市民の自由を脅かすものだと批判している。トランプ氏の再登場に関する文脈において、覚醒思想やアイデンティティ政治、DEIはリベラル派の主要な信条として位置づけられ、保守主義政策と対立する立場を形成している。

さらに、リベラル・左派の政策には、社会正義や環境正義、フェミニズム、LGBTQ+権利、人権擁護、公共サービスの拡充、富の再分配などが含まれる。これらの施策は一見、美辞麗句に飾られた素晴らしい理念のように見えるが、実際にはリベラル・左派の価値観を実現するための社会工学実験にまで至っている。社会工学実験とは、社会の構造や人々の行動を意図的に変えようとする試みであり、理想的な社会を実現するためにさまざまな政策やプログラムを推進することを指す。

しかし、このような実験には予期しない弊害が伴うことが多く、保守派だけでなく、多くの人々からの賛同を得ることができなかった。過剰な規制や重税、自由の制限などが一般市民に影響を及ぼし、反発を招いている。社会工学実験は、実施するにしても限られた空間で安全を確保した形で行うべきであり、決して地方自治体レベルや国レベルで行うべきものではない。共産主義もまた、社会工学実験の一つとして位置づけられ、理想とされる社会を実現しようとした結果、多くの人々に深刻な影響を及ぼした歴史を持っている。

実際に行われた社会工学実験が引き起こした衝撃的な事例として、アメリカの「禁酒法」を挙げることができる。1920年から1933年にかけて施行された禁酒法は、アルコールの製造、販売、輸送を禁止したが、結果的には地下経済の拡大や犯罪の増加を招いた。この期間中、ギャングの台頭や暴力事件が相次ぎ、社会が混乱した。

さらに禁酒法が終了した後、国民の間に法律への不信感が広がり、法治主義の根底を揺るがす結果となった。これに関する研究としては、ハーバード大学の経済学者による分析(例:Mark Thornton, "The Economics of Prohibition," 1991)があり、禁酒法がもたらした社会的影響について詳細に論じられている。

禁酒法時代に酒を捨てる人々

また、1971年に行われた「スタンフォード監獄実験」も忘れてはならない。この実験では、18人の男子学生を看守役と囚人役に分け、刑務所生活を再現したが、予想以上に早く暴力的な行動や精神的な苦痛を引き起こし、わずか6日で中止された。この実験は、人間の行動が環境や役割によってどれほど影響を受けるかを示す一方で、倫理的な問題も引き起こし、心理学界における倫理基準の見直しを促す結果となった。

スタンフォード監獄実験を題材にした映画『ザ・スタンフォード・プリズン・エクスペリメント』は、2015年に公開され、監督はアビー・ルーサー、主演はタロン・エジャトンやオスカー・アイザックである。この映画は、実験の影響や結果についての関心を一層高めた。

最近のトランスジェンダーの女性スポーツへの進出も、過激な社会工学実験だ。これは、スポーツ自体を破壊することになるとんでもない暴挙と言わざるを得ない。社会変革は、失敗すれば大きな悪影響をもたらす、慎重に行うべきであり、すでに成功してその効果が実証されている手法を取り入れることによって実行されるべきである、決して実験的に行うべきではない。

ザ・スタンフォード・プリズン・エクスペリメントの一シーンのスティル写真

ザカリア氏の警告にも見られるように、民主党が過剰な覚醒主義の理念を守り続け、過剰な規制や重税を課す限り、彼らは選挙での支持を失う可能性が高い。さらに、ザカリア氏は米欧いずれでもポピュリズムの政治主導が効果をあげてきたことを強調している。

ポピュリズムは19世紀のアメリカで発展し、当初は中産階級や農民の利益を代表する運動として位置づけられた。元々の意味は「一般市民の利益を代表する」という広義の概念であり、これには中産階級だけでなく、労働者階級やマイノリティの声も含まれる。ポピュリズムは、エリートや権力者に対する反発の姿勢を持ち、一般市民の感情や不満に訴えかけるスタイルの政治として、特に経済的不平等や社会的な不公正に対する反発から生まれた。

しかし、20世紀に入ると、ポピュリズムという言葉は特に左翼によって「大衆迎合主義」として貶められていく過程が見られた。これは、ポピュリズムが単に感情や不満に訴えることで、理性的な政策や理念を欠いた政治を指すものとして使われるようになったためである。このようにして、ポピュリズムは軽視される存在となり、特にエリート層や知識人からは批判の対象となった。一方で、トランプ氏や米国の保守派は、現代でも元来の意味でのポピュリズムを使用しており、一般市民の利益を代表し、エリートに対抗する姿勢を強調している。

このように、米民主党は覚醒思想やアイデンティティ政治、DEI、さらにはリベラル・左派の政策を見直す必要がある。米国社会を破滅に導きかねない、社会工学実験的な暴挙を慎み、ポピュリズムの本来の意味を再評価して自らの政治手法に取り入れなければ、万年野党の座から抜け出すことは不可能だろう。これは米国にとって決して好ましい状況ではない。米国は、健全な二大政党制の時代に戻るべきである。しかし、二大政党制であっても、社会工学実験を厭わない政党にその責任を託すべきではない。真に国民の声を反映させる政治が求められているのだ。

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2025年1月27日月曜日

コロンビア、送還を一転受け入れ 関税で「脅す」トランプ流に妥協―【私の論評】トランプ外交の鍵『公平』の概念が国際関係を変える 、 コロンビア大統領への塩対応と穏やかな英首相との会談の違い

コロンビア、送還を一転受け入れ 関税で「脅す」トランプ流に妥協

まとめ
  • トランプ米大統領がコロンビアからの輸入品に25%の関税を課すと発表した。
  • コロンビアが不法移民を乗せた米軍機の着陸を拒否したことが発端。
  • トランプ氏は不法移民の強制送還を強調し、他国に対する同様の手法への警戒が広がっている。
  • コロンビアのペトロ大統領は報復関税を発表し、移民の扱いについて尊厳を強調した。
  • トランプ氏は関税を50%に引き上げる可能性も示唆した。

 トランプ米大統領は26日、コロンビアが不法移民を乗せた米軍機の着陸を拒否したことに対抗し、同国からの全輸入品に25%の関税を課すと発表した。しかし、その後コロンビア側が妥協し、米軍機の受け入れを決定した。この結果、トランプ氏の「脅し」が効果を発揮した形となり、今後も他国に対して同様の手法が使われる可能性があることへの警戒が広がっている。

 トランプ氏は不法移民の強制送還を「史上最大の強制送還」として掲げ、就任早々からその実行に移しており、成果を強調している。今回の事態は、トランプ氏がSNSで移民を乗せた米軍機2機がコロンビアへの着陸を拒否されたと発表したことが発端であり、彼は「米国の安全保障と公共の安全が脅かされた」と主張した。そして、25%の関税や政府高官に対する渡航禁止、ビザの剥奪を行う意向を示し、「1週間経っても事態が変わらなければ、関税を50%に引き上げる」とも強調した。

 これに対し、コロンビアのペトロ大統領は米国からの製品に対して25%の報復関税を課す意向を表明した。また、米軍機の着陸拒否については自身のX(旧ツイッター)で、送還された移民が犯罪者のように扱われていると述べ、「人間として尊厳をもって扱わなければならない」と主張した。彼は、米軍機は追い返したが、民間機は受け入れると説明している。

朝日新聞

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【私の論評】トランプ外交の鍵『公平』の概念が国際関係を変える 、 コロンビア大統領への塩対応と穏やかな英首相との会談の違い

まとめ
  • ペトロ・コロンビア大統領は、米軍機の着陸拒否について、「移民」と「不法滞在者」を混同し、不適切な発言をした。
  • トランプ大統領は、ペトロ大統領の発言に対し、コロンビアからの輸入品に25%の関税を課す可能性を示唆した。
  • 一方、トランプ大統領とスターマー英首相の会談は、意見の相違はあるものの、「公平」という概念を基に良好な関係を築こうとする努力が見られた。
  • 「公平」という概念は、今後の国際関係において重要な役割を果たすと考えられ、特に貿易や経済関係における相互利益を強調するものとなる。
  • トランプ政権との交渉においては、「公平」というキーワードを念頭に置き、相手国の立場や利益を理解する姿勢が求められる。

コロンビアのペトロ大統領

コロンビアのペトロ大統領は米軍機の着陸拒否について、以下のようにツイートしている。

「アメリカはコロンビアの移民を犯罪者として扱うべきではない。私はコロンビアの移民を乗せたアメリカの軍用機の入国を禁止した。私たちは、市民の尊厳ある扱いを保証する民間機のみを受け入れるつもりである。」

大統領自身が「移民」という言葉を使っているため、朝日新聞の記事もこれに従ったものとみられる。しかし、ペトロ大統領の言葉遣いは明らかに間違いである。「アメリカはコロンビアの移民を犯罪者として扱うべきではない」という発言は誤りだ。移民とは、合法的手続きを経て米国に入国した人を指しており、トランプ政権が送還したのはコロンビア籍の「不法滞在者(Undocumented immigrant または Illegal alien)」である。

さらに、「移民を犯罪者として扱うべきでない」という発言は、米国を不当に攻撃していると受け取られても仕方ない。トランプ政権は移民を拒否しているのではなく、あくまでも不法滞在者を拒否しているのである。そして、不法滞在者は全員、法的には犯罪者である。それに、不法滞在者の増加により、米国社会は混乱し、不法滞在者に保護プログラムを提供することで経済的にも不利益を受けており、これは本来コロンビア政府が行うべきことであ米国側からみれば、不公平と言わざるを得ない。

無論、犯罪者であろうとなかろうと、尊厳ある扱いを受けるべきであるが、その尊厳の扱いは一般市民と犯罪者では異なるのは明白である。このような言葉遣いをしたペトロ大統領は、無頓着に発言したのかもしれないが、これは一国の大統領としてあまりにも軽薄であり、不法滞在問題に関する認識が極めて薄いことを示している。これがトランプ大統領の逆鱗に触れたと考えられる。一方、一国の大統領がこのような認識しか持っていないことは、トランプ政権にとって非常に対処しやすかったであろう。

そのため、トランプ米大統領はコロンビアからの輸入品に25%の関税を課すという脅しとも取れる反応を示した。ペトロ大統領がもっとまともな対応をしていれば、トランプ大統領もより穏やかな反応を示した可能性が高い。

スターマー英首相とトランプ米大統領

実際、トランプ大統領は、英国首相には穏やかな対応をしている。スターマー首相とトランプ大統領は26日、電話で45分にわたり会談した。この両者の間には、性格や政治的姿勢の違いがあり、大きな隔たりが存在する。しかし、表向きは両首脳の言葉遣いや外交表現は通常通りで、最近のこの電話会談は「とても温かく」、「とても親密なもの」とされている。この会談は政策の詳細よりも大局的な視点やお互いを理解することが主な目的だったようであり、首相は数週間以内にワシントンを訪れる予定である。

会談後、両政府は「リードアウト」と呼ばれる概要を発表するのが慣例であり、これによって会談の内容や双方の受け止め方が示される。意見の相違は続くものの、良好な関係を築く努力が見られる。特にダウニング街(首相官邸)からの報道では、スターマー首相が経済成長のために規制緩和に取り組んでいると説明されており、これは左派政党の党首としては意外だが、トランプ大統領に対しては効果的な表現となる。

また、ホワイトハウスの報道官は、両首脳が「両国がいかに公平な二国間の経済関係を推進できるか」について話し合ったと説明している。この「公平」という言葉は、貿易における相互利益を強調するものであり、両国間の経済関係をより効果的にするための基盤となる。トランプ大統領は、アメリカの友好国や敵国に対しても関税を脅しとして利用することが知られているため、「公平」という表現は、今後の難しい交渉を円滑に進めるための重要なキーワードとなるだろう。

両国が言及する「公平」は、無論最近日本でもいわれるようになったDEIの「公平」とは異なる。米英の首脳会談における公平とは、競争や機会が平等であるべきだという考えに基づいており、個々の努力や才能に基づく成功や失敗を尊重するものである。トランプ氏は政策として規制緩和や税制改革をこの「公平」の実現手段と位置づけている。

このように、米英の会談において「公平」というキーワードが使用されたことは、今後米国が他国との外交においても重要な概念となる可能性がある。この「公平」という概念は、単なる道徳的な理想にとどまらず、貿易や経済関係における相互利益を強調するものであり、各国との交渉においても重要な基盤となるだろう。

コロンビアのペトロ大統領の発言は、トランプ大統領にとってその「公平性」に欠けると見られた可能性がある。ペトロ大統領は、合法的に入国した移民と不法滞在者を混同し、アメリカの移民政策を一方的に批判することで、米国との関係において不必要な緊張を生じさせた。彼の発言は、米国に対して公平な理解を欠いたものであったため、トランプ大統領がコロンビアに対して厳しい姿勢を取る根拠となり得た。

このような背景において、「公平」という概念は、ただの言葉以上のものである。各国が互いの利益を尊重し、理解し合うことが、国際関係の安定を図る鍵となるからである。したがって、今後の外交においては、単なる利益追求ではなく、相手国に対する敬意や理解をもったアプローチが求められるだろう。

ペトロ大統領の失敗も、「公平」という概念が国際的な交渉の場においてますます重要であることを浮き彫りにした。各国がこの概念を意識し、外交政策に組み込むことが、より良い国際関係を築くための必要条件となるであろう。

トランプ大統領

トランプ大統領が中国と対峙する背景もこの「公平」というキーワードで理解できる。トランプ大統領が中国が米国に対して公平でないと考える理由は、主に貿易不均衡に起因する。彼は、中国からの輸入が米国からの輸出を大きく上回っていることを問題視している。また、中国が米国企業の知的財産を盗む行為や、不正な貿易慣行、政府による補助金、為替操作、中国市場へのアクセスが制限されていることも懸念している。さらには、労働者の低賃金や過酷な労働条件、強制労働の問題を米国との貿易交渉において中国の「不公平」な競争優位性につながると主張している。

トランプ氏は「カナダやメキシコは不公平だ」「NATOは不公平だ」「WTOは不公平」「WHOは不公平」だと、しばしば口にしている。今後、トランプ政権との交渉にあたっては「公平」というキーワードを念頭に入れておかないと、うまくはいかないだろう。特に、貿易や経済関係、安全保障、不法滞在、強制労働においては米国とのバランスを考慮し、相手の立場や利益を理解する姿勢が求められる。

トランプ大統領は、自国の利益を強く主張する一方で、相手国にも同様の公平性を求めているため、この点を無視すると交渉は失敗に終わる可能性が高い。しかし、一方的にいずれかの国が利益を得ることを「公平」とは呼ばない。相手に対して「公平」を主張する者は、自らも相手に対して「公平」であらねばならない。トランプ大統領も、その点は理解を示すだろうし、そこに大きな交渉の余地がある。

結論として、国際関係における「公平」という概念は、今後ますます重要な役割を果たすであろう。各国がこの概念を意識し、互いの利益を尊重する姿勢を持つことで、より安定した国際社会が築かれることを期待したい。

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