2021年12月26日日曜日

「日本も尿素水不足」報道は本当なのか? 韓国では需要逼迫し流通に打撃 経産省担当者「来年1月には緩和期待」―【私の論評】中国のような異常な社会ではまともな組織は生き残れない(゚д゚)!

 「日本も尿素水不足」報道は本当なのか? 韓国では需要逼迫し流通に打撃 経産省担当者「来年1月には緩和期待」

 韓国でトラックなどディーゼル車に使われる尿素水(アドブルー)の需要が逼迫(ひっぱく)し、流通に打撃を与えたことが話題になった。日本でもフリマアプリで高値で取引されており、韓国メディアでは、「日本も混乱の兆しがある」と報じたが、果たして本当なのか。

 韓国では、アドブルーの原材料となる産業用尿素の97%以上を中国に依存しているが、中国が輸出規制したことで物流や社会インフラが混乱し、詐欺事件まで発生した。

韓国で11月、尿素水確保のため列を作るトラック

 一方、中央日報(日本語電子版)は「韓国批判した日本も『尿素水大乱』の兆し…」と報じている。

 「価格が高騰していることは事実で、企業側から手に入りづらいと聞いている。ただ国内の製造メーカーはフル稼働していると聞いており、需要逼迫の明確な理由が分からず、われわれも困惑している」

 そう語るのは、全日本トラック協会の担当者だ。企業側が必要以上の在庫を抱えていることに加え、アドブルーの転売が横行している可能性があると推察する。

 フリマアプリ「メルカリ」を確認したところ、数多くのアドブルーが出品されており、従来1リットル当たり300円程度のものが1000円程度で取引されている。中には10リットルのアドブルー57個を約54万円で取引したものまであった。メルカリは21日、冷静な行動を取るよう呼び掛けた。出品者に入手経路を確認する可能性もあるという。

 そもそも日本は韓国と違って、アドブルーを国内で生産できるはずだが、なぜ逼迫しているのか。

 経済産業省は「10月15日からアドブルー用の尿素について中国が輸出を停止している状況のためだ。ネット上での高額な出品は把握しており、対策は不断に検討している」(素材産業課)と回答した。

 中国では尿素の原料となるアンモニアの生産に不可欠な石炭不足が輸出規制の背景にあった。

 一方、国内最大級の商用生産尿素プラントを持つ三井化学は「アドブルーの原材料が液化天然ガス(LNG)のため、中国の影響は受けていない。ただ10月中旬から11月末にかけて定期修理のため工場の稼働を停止していた。稼働停止中も在庫をお客さまに適切に供給しており、現在は高稼働を続けている」(コーポレートコミュニケーション部)と回答した。

 中国の影響と大手の一時的な稼働停止が重なったのが要因だと考えられるが、前出の経産省担当者は「早ければ来年1月を目途に需要逼迫の緩和が期待できる」と話す。

 国内での影響は限定的といえそうだ。

【私の論評】中国のような異常な社会ではまともな組織は生き残れない(゚д゚)!

日本ではまた転売ヤーが暗躍しているようではありますが、まだメルカリで転売して、小遣い稼ぎをしようという連中だけのようではあります。

どうやら、組織的に大掛かりに買い占めをしようとする大手転売ヤーや、中国企業でもその動きはないようです。

これにはやはり過去の苦い経験等が関係していると思います。そうです、あのマスクの転売です。日本でマスク不足になった背景には、日本国内の大掛かりな転売ヤーや中国の転売ヤーが比較的大きな資本を用いて、転売用マスクを買い占めたり、中国企業が多数マスク製造業に参入したうえで備蓄したりで、値上がりを待って売ろうとしていたことも大きな原因の一つです。

中国英字紙グローバル・タイムズの昨年7月の記事によると、新型コロナウイルスの流行が下火になった中国で、マスクの供給能力が需要を大幅に上回り、価格が急落していたと報道されています。

当時の価格は昨年2月の水準から80―90%も下落。年末までに95%の業者が経営破綻し、米食品医薬品局(FDA)や欧州連合(EU)の輸出許可を有する5%しか生き残れないとの予測も出ていました。

同紙によると、コロナ流行が本格化した昨年2月には数百社程度だった中国のマスクメーカーは1万社を突破。1―6月の繊維製品(マスク含む)輸出額は前年同期比32・4%も増加したそうです。

専門家によると、既に国内のマスク生産能力は世界全体の需要を上回り、「世界中の人が毎日1枚使ったとしてもなお、中国の生産能力は過剰だ」(大健康国際のバイ・ユ氏)としていました。

いわゆる、アベノマスクが配布されはじめたのが、4月の17日からですから、これもマスク転売ヤーや中国企業などに対して、インパクトを与えたのは間違いありません。アベノマスクは、布製でしたが、これもかなりインパクトがあったと思います。

もし、この布製マスクが日本で普及した場合、布自体は日本国内ではありふれたものなので、紙製が不足しても、布製で代替する可能性高いです。これに、あせった日中の転売ヤーや中国企業が4月あたりから買い占め、備蓄などをやめて、一斉に販売に転じたわけです。

日中の転売ヤーや中国のマスク業者がマスクで通常以上に儲けらた期間は、おそらく半年にも満たなかったでしょう。備蓄や、転売目的で買い占めをした組織の中には大損をしたところもかなりあるでしょう。

これについては、先日もブログに掲載したばかりです。私自身は、いわゆるアベノマスクは、日中の転売ヤーや中国企業などへの牽制になったものと確信しています。

このような状況を日中の組織的転売ヤーや中国企業などは見聞きしているはずです。マスク騒動の二の舞いにはなりたくないでしょうから、現在個人の転売ヤーのなかには転売するものもいるようですが、組織的な転売ヤーはまだ現れていないのでしょう。中国ではそもそも、原材料が少ないので、そもそもモノが入りにくい状況ですし、新規参入する企業もないのでしょう。

もし、マクス騒動とその後の組織的転売ヤーの没落がなければ、今ごろ日本でも転売ヤーが暗躍して尿素水の買い占め等を行っていたと思います。

かつて黄色いダイヤと呼ばれたカズノコ

日本ではかつて買い占めで大きな非難を浴び、会社が倒産したり、社名に傷がついたりする大事件がありました。それは、1980(昭和55)年の「カズノコ買い占め事件」です。

カズノコといえば、正月のおせち料理には欠かせない食べ物。ニシンの卵を原料にするカズノコは「黄色いダイヤ」とも呼ばれる高級品です。

カズノコが高級品となる理由は、漁期が短いことです。多くはカナダやアラスカで取れますが、だいたい3月から4月までの1か月間しか漁ができません。

そうして、取り扱う水産会社にとってもリスクの高い商品です。というのも、春ごろに取って加工し貯蔵できるにもかかわらず、売れるのは年末の1か月ぐらいしかないのです(卸は10~11月)。

そのため、買い付ける際は正月前にどれくらい売れるかを予測して価格を決めなければなりません。うまくいけば利ざやが稼げますが、売れなかったら大損です。

カズノコを仕入れる水産会社が利益を得るために考えるのは、市場価格だけではありません。為替相場も重要です。

仕入れたときよりも円高であれば、その分利益も増えます。いわゆる北商倒産事件の起こる1970年代後半は円高が進んでいる時期でしたから、いわゆる北商倒産事件前年の1979(昭和54)年も例年通り利益が得られるだろうと考えられていました。

北商の倒産を伝える当時の新聞紙面
三菱商事はそれを見越して、子会社である水産会社「北商」を通じて例年通り大量のカズノコを買い付けていました。ところが、1979年は思ったほど為替相場が円高になりません。

在庫を放出すればダメージを食い止められますが、カズノコの価格は暴落して業界全体に影響が出てしまいます。

そこで同社は卸の時期になっても在庫を売らず、年末が近づき価格が上がるのを待つことにします。そうなると、今度は市場への供給量が減り価格は高騰に転じます。

正月には欠かせないカズノコは、それでも売れるはずでした。しかし多くの人は買わず、「今年は高いから諦めよう」と思ったのです。

この予想だにしなかった「カズノコ離れ」によって、大量の在庫を抱えた北商は経営が悪化し、倒産してしまいます。

しかも大量の在庫を抱えての倒産だったことから、親会社である三菱商事はマスコミから買い占めをもくろんだとして大きな批判を浴びることになったのです。これは「カズノコ買い占め事件」として、今なお日本の経済史に残る事件として語り継がれています。

どんな理由や意図があったとしても、価格が高騰している中で大量の在庫を抱えていれば「買い占め人」のそしりを受けることは否めません。

転売ヤーやマスク事業に参入した中国企業の没落や、北商倒産事件の事例などをみているとドラッカーの「社会や経済はいかなる企業をも一夜にして消滅させる」という言葉を思い出してしまいます。

ドラッカーは、企業の社会的責任について以下のように述べています。
社会的責任の問題は、2つの領域において生ずる。第一に自らの活動が社会に対して与える影響から生ずる。第二に自らの活動とは関わりなく社会自体の問題として生ずる。(『マネジメント【エッセンシャル版】』)
工場の目的は、騒音を出し、有害なガスを出すことではありません。顧客のために高性能の製品をつくることである。そのために騒音を出し、熱を出し、煙を出す。これら社会に及ぼす影響は、組織の目的に付随して起こる。かかる副産物はゼロとすることが理想です。

他方、組織は社会環境のなかに存在します。それは社会の機関です。したがって社会自体の問題の影響を受けざるをえないのです。地域社会が問題視せずとも、社会の問題は組織にとって関心事たらざるをえないです。健全な企業、健全な大学、健全な病院は、不健全な社会では機能しえません。

あらゆる組織が、自らの本業を傷つけない限りにおいて、それら社会の問題の解決に貢献しなければならないのです。

社会や経済はいかなる企業をも一夜にして消滅させるとドラッカーは言います。企業は社会や経済の許しがあって存在しているのであり、社会と経済がその企業は有用かつ生産的な仕事をしていると見なす限りにおいて、その存続を許されているにすぎないのです。
社会性にかかわる目標が必要となるのは、マネジメントが社会に対して責任を負うからではない。企業に対して責任を負うからである。(『マネジメント【エッセンシャル版】』)

そもそも、組織的な転売ヤーとか、 短期的な儲けのためだけに新たな事業に参入するなどの組織は、組織ではあるものの、とてもまともな組織とは呼べません。

健全な社会においては、まともでない組織は生き残れないのです。たとえ、当初はまともな組織であっても、途中からまともでなくなった組織は生き残れないのです。そうして、不健全な社会ではまともな組織は機能しえません。

それは、特に中国にあてはまるでしょう。中国のような不健全な社会では、まともな組織は機能しえないのです。

特に最近の中国共産党の大企業に対する規制などは、いままで中国政府を支えてきた富裕層の反発を招くことになり、多くの一般国民からの反発に加え富裕層からの反発も招くことになれば、中国共産党の当地の正当性の基盤が揺らぐことにもなりかねません。

米中両サイドから中国デカップリンクがはじまり、チャイナ・リスクはさらに破滅的になりました。中国当局による中国企業への統制強化が新たな「チャイナ・リスク」となってるのですから、日本企業だけが安泰でいられるわけなどありません。

尿素は、石炭から作られますが、海外メディアなどによりますと、米中の対立によって、米国と歩調を合わせたオーストラリアに対し、中国は石炭の輸入を停止。尿素の原料となる石炭の不足に加え、中国国内では「農業の肥料」としての用途が高いため、そちらを優先し、尿素水の輸出を制限したのです。

中国の尿素水製造会社、特に海外輸出の多い企業は打撃を被っていることでしょう。中国ではこのようなことは、しょっちゅうおこります。現在は尿素水てすが、今後は様々な分野でこのようなことが起こり続け、中国の国内のあらゆる産業が毀損されることになるでしょう。

日本のような比較的まともな社会では、まともな企業こそが生き残るでしょうが、中国のような異常な社会ではまともな組織は生き残れないのです。だから、儲けを狙った新規参入が一般化しているのです。マスク騒ぎはその典型例です。誰もがまともに事業をして、成り立つのなら、このようなことはないはずです。

中国に拠点を持つ企業も、なるべくはやく撤退すべきです。もう、中国でまともにビジネスができると考えるのは大きな間違いです。

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2021年12月25日土曜日

岸田首相「1月訪米」“絶望” 外相・防衛相見送り、2プラス2はオンラインに切り替え 識者「ボイコット表明の遅れ影響」―【私の論評】岸田政権は、安倍・菅政権の方針を学び踏襲し両政権ができなかったことを成し遂げた後に独自カラーを出せ(゚д゚)!

岸田首相「1月訪米」“絶望” 外相・防衛相見送り、2プラス2はオンラインに切り替え 識者「ボイコット表明の遅れ影響」

バイデン米大統領は、岸田首相に不信感を持っているのか

 林芳正外相と岸信夫防衛相が来年1月上旬に予定していた訪米を見送る方向で調整に入った。米国側の提案で、新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の感染拡大を理由にしている。岸田文雄首相と、ジョー・バイデン米大統領による初の対面による日米首脳会談の1月開催も絶望的となった。岸田首相はやっと、北京冬季五輪の「外交的ボイコット」を表明したが、遅すぎて米国の不信感を高めたとの指摘もある。

 産経新聞は25日朝刊で、1月7日に開催予定だった日米外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)が、米国側からオンライン形式に切り替えるよう提案があったと報じた。

 菅義偉政権下の今年3月、東京で開催された日米2プラス2では、「自由で開かれたインド太平洋」の推進などで一致し、年内に改めて開催することで合意していた。

 バイデン氏は今月6日、中国当局による新疆ウイグル自治区などでの人権弾圧を受けて、北京冬季五輪に政府代表を派遣しない「外交的ボイコット」を表明した。英国やオーストラリアなどがすぐ同調した一方、岸田政権は「適切な時期に」「国益に照らして…」などと決断を先延ばし、24日になって表明した。

 首相周辺は「(米中間で)微妙なバランスをとった」と語っているが、人類の普遍的価値である「人権」と「損得」をてんびんにかけた、「米中二股外交」ではないのか。

 同盟国が即賛同しないことで、「米国の求心力を弱め、事実上、中国共産党を助けた」という指摘もある。

 日米2プラス2が対面で開催されなければ、外相らの微妙な事前調整も困難となり、岸田首相の通常国会開会前の「1月訪米」は相当厳しい。

 ジャーナリストの長谷川幸洋氏は、「日本が東アジアの当事者にもかかわらず、米国は『岸田首相は、ここまで中国に配慮するのか』と驚いているはずだ。2プラス2のオンライン開催は、米国の不快感を示すサインだ。『外交的ボイコット』の表明が、あまりにも遅れたことが影響している。これで1月の日米首脳会談は絶望的とみていい。岸田首相は10月に就任したが、通常国会閉会後の来年5月以降まで日米首脳会談が開催されない、極めて異例の事態に陥りそうだ」と語った。

【私の論評】岸田政権は、安倍・菅政権の方針を学び踏襲し両政権ができなかったことを成し遂げた後に独自カラーを出せ(゚д゚)!

米国での感染者数は増加傾向にあり、平均で1日191,326人の新規感染者が報告されています。1日平均人数のピークだった 1月8日の76%になります。

パンデミック(世界的大流行)開始以降、同国では感染者52,134,735人、死者819,218人が報告されています。以下に最近の日時統計のグラフを掲載しておきます。


確かに直近では、増えつつあることが認識できます。では、菅義偉政権下の今年3月、東京で開催された日米2プラス2(日米外務・防衛担当閣僚)時にはどうだったかといえば、以下のグラフが示すように、7間平均の死者数は3月15日では、7人ということで、かなり収束していました。


菅総理は、4月15日から16日まで、米国を訪問しています。その頃には死者数は2000人くらいとなっており確かに多くはありましたが、訪問の意思決定はその前になされており、その時には、感染者数・死者数とも少なかったといえます。

そのため、米国が「オミクロン株」などを理由に、2プラス2をオンラインで開催することにしたのは、格別不自然とは言えないと思います。

ただ、岸田首相は10月に就任しましたが、通常国会閉会後の来年5月以降まで日米首脳会談が開催されないという事態になりそうなことはあながちありえなくもない状況になってきました。

なぜなら、「外交的ボイコット」を表明したのが、24日と遅れたこともありますが、それ以前に林外相がしでかした、外交的不手際です。それは、このブログにも最近掲載したばかりです。その記事のリンクを以下に掲載します。
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林外相

詳細は、この記事をご覧いただくものとして一部を以下に引用します。
林芳正外務大臣は11月21日、フジテレビの番組に出演し、18日の中国・王毅外相との電話協議のなかで、中国訪問を打診されていたことを明らかにしていました。応じるかどうかについては、「現時点では何も決まっていない」としていました。

公式訪問は、招いた側が招かれた側の同意か感触を得たうえで発表するのが、普通の外交儀礼です。招いた側が友好姿勢を示す一方、応じるかどうかの選択を相手に委ねるのが普通です。ところが、今回は招かれた側の日本の外務大臣が3日遅れで、一方的にテレビで公表しました。これだけでも、十分に異例でした。

このことがあった上で、さらに 岸田政権の北京冬季五輪の「外交的ボイコット」を表明したが、遅すぎて米国の不興を買ってしまったおそれが十分にあります。

南アフリカ政府は24日、新型コロナウイルスの陽性者と接触しても無症状の場合は隔離や検査は不要との新方針を発表しました。コロナを巡る状況を勘案し、封じ込めから緩和策への移行が妥当としています。

南ア保健省は新たな方針の要因として、オミクロンなど感染力の高い変異株の出現、人口の60%がワクチン接種や感染したとの推計、無症状者が多いことや診断症例が少ないことなどを挙げました。南アでのオミクロン株騒ぎも収束しつつあります。

そうなると、5月あたりには米国でも収束している可能性があります。いまのところ、米国でコロナ禍により、感染者・死者数が増えているのは事実なので、岸田政権が米国の不興を買ったかどうかは、まだはっきりしない部分があります。

しかし上の記事でも指摘されているように、通常国会閉会後の来年5月以降、米国でコロナ感染が収束していても、日米首脳会談が開催されないということにでもなれば、極めて異例であり、米国の不興を買ったのは間違いないとみて良いでしょう。

そうならないように、岸田政権は今からでも失地を回復する努力をしていただきたいものです。

そうして、岸田政権はまずは、経済政策、外交政策に関しては、安倍・菅政権の政策をしばらくは踏襲するべきです。安倍・菅政権の政策がすべて満点とはいいませんが、方向性としては良かったです。

安倍政権は結局二度も増税してしまったとか、菅政権においては、コロナ病床確保には失敗たなどの失敗はありました。しかし、安倍政権下では、雇用が劇的に改善ました。菅政権においては、結局医療崩壊に陥ることもなく、ワクチン接種を強力に推し進め、結果としてコロナ収束に導いたほか、経済対策においては先進国中もっとも失業力を低くしたという偉業を達成しました。

外交政策においては、安倍政権においては、全方位外交で、特に中国包囲ということで成功しました。菅政権においては、安倍外交を踏襲するということで、目立った失点はなかったと思います。

岸田氏が属していた宏池会はしばらく総理を務める人がいなかったため、政権を担当したことがありません。その間に世界は激変しました。

そのことを考えれば、経済、外交、安全保障などの重要な政策は、まずは安倍・菅政権の政策の結果ではなく、その方針をよく研究して踏襲して、様子をみるべきでした。岸田カラーはそれ以外のことで出すべきでした。

これは、バイデン政権を参考にすべきでした。バイデン政権は現在のところ、結局トランプ政権を政策を踏襲しているところが多いです。移民政策では中途半端で、多くの国民から不興を買っています。経済対策についても踏襲していますが、さらに大きな対策を打とうとして、民主党の議員からも不興を買っています。

しかし当初は親中的政策に走るのではないかとも危惧されていましたが、対中政策に関してはトランプの政策を継承しています。バイデン政権がもしこれを外して、親中的な政策をうちだしていたら、政権の支持率は地に落ちたでしょう。

トランプのほうがより積極的だったとは思いますが、バイデンも中国に対して現状変更は絶対に許さないという厳しい姿勢で臨んでいます。

岸田政権は、まずは経済・外交政策、安全保障政策でも、安倍・菅政権の方針を真摯に学びとり、その精神まで自分のものとして、それを踏襲した上で、両政権ができなかったことを成し遂げその後に独自のカラーをだすべきでした。

安倍元総理大臣と菅前総理大臣

特に、安倍政権がなぜあのような長期政権になり得たのか、真摯に学ぶべきです。また両政権がなし得なかったことを実施することは、何もないところから始めるよりは、始めやすいですし、なぜなし得なかったのかも学べます。

岸田総理は、完全に順番を間違えてしまいました。しかし、いまならまだ間に合います。新しい資本主義なる、意味不明のキャッチフレーズは捨て去り、高市政調会長が総裁選で主張していた経済対策を参考にするとか、安倍総理の外交政策を参考にするなどして、政策の大転換をはかるべきです。

そうでないと米国の不興を買い続け、国内からも、特に保守層から不興を買ってしまうことになると思います。

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2021年12月24日金曜日

米、ウイグル輸入禁止法成立 強制労働防止、来年6月発効 日本企業に影響―【私の論評】ウイグル人への人権侵害をやめない限り、国際社会はより厳しい制裁を加えるだけ(゚д゚)!

米、ウイグル輸入禁止法成立 強制労働防止、来年6月発効 日本企業に影響

 バイデン米大統領は23日、人権侵害を理由に中国・新疆ウイグル自治区からの輸入を全面的に禁止する「ウイグル強制労働防止法案」に署名、同法が成立した。

中国・新疆ウイグル自治区で監視カメラの下を歩く子どもら=2019年6月4日

 180日後の2022年6月下旬に発効する予定。自治区全体を禁輸対象とするのは初めて。人権をめぐる米中の対立が制裁と報復の応酬に発展する可能性もあり、米国に進出する日本企業は厳しい対応を迫られる。

  同法は新疆ウイグル自治区で「全部または一部」が生産された製品の輸入を原則禁止。輸入企業に説明責任を負わせ、強制労働を利用していないことを「明確かつ説得力のある証拠」に基づき立証できなければ輸入できない。米政府に対し、強制労働に加担する海外の個人や団体の制裁リスト作成も求めている。 

【私の論評】ウイグル人への人権侵害をやめない限り、国際社会はより厳しい制裁を加えるだけ(゚д゚)!

同法案は今月、全会一致で上下両院を通過していました。民主・共和両党の間には大半の問題で大きな隔たりがあるが、対中国政策ではほぼ一致しています。

新疆ウイグル自治区は衣服に使用される綿花の主要産地で、太陽光パネルの原材料となるポリシリコンの生産でも重要な地位を占めています。世界的なサプライチェーンへの影響が大きい同地域で、イスラム系の少数民族ウイグル族らが抑圧されていることが懸念され、同法案の成立が後押しされました。

23日法案に署名するバイデン大統領

この成立で、新疆産の製品を米国で使用している企業は対応を迫られます。成立前からすでに、米インテルが新疆の労働力や製品を使用しないようサプライヤーに要請し、その後謝罪するなど、物議を醸していました。

新疆ウイグル自治区で2021年3月26日、綿花畑で働く労働者たち

同法は、新疆でのウイグル族や他の民族弾圧で中国政府に加担している企業・団体のリスト作成を国土安全保障省に義務付けています。米税関・国境警備局(CBP)局長が例外として認めない限り、同自治区からの全ての産品が強制労働で製造されていると見なす「反証を許す推定」も盛り込まれました。

これまで米国は、自治区で生産された綿製品や農産物の加工品などについて、強制労働で生産された疑いがあるとして輸入を停止してきましたが、この法律はすべての品目を対象としており、自治区で生産された製品などを米国に輸出してきた日本企業に影響が及ぶことになります。

一方日本では、新疆ウイグル、チベット、内モンゴルの各自治区や香港の出身者らで作る複数の民族団体は24日、中国政府による諸民族への迫害行為を黙認しないという日本政府の表明などを呼びかける要望書を中谷元首相補佐官(国際人権問題担当)に提出しました。

要望書は日本ウイグル協会やチベット亡命政権の代表機関ダライ・ラマ法王日本代表部事務所、南モンゴルクリルタイ(世界南モンゴル会議)など9団体が作成。ウイグル協会は「ウイグルジェノサイドに抗議の声を上げるタイミングはとっくに過ぎている」と訴えました。

自治区の出身者らが中谷氏に面会することは認められず、自民党の山田宏参院議員と長尾敬前衆院議員が代わりに要望書を手渡しました。山田氏によれば、中谷氏は「(海外での重大な人権侵害行為に制裁を科すための日本版)マグニツキー法も含めてしっかり検討する」と語ったといいます。

もう「検討」の時期はすでに終了したと思います。中谷氏には、日本版マグニツキー法成立に向けて努力すると、言い切ってほしかったです。

ウイグル人に対する人権侵害の実体は、様々なメディアで報道されていますが、以下のマンガでもその実体験が綴られています。ぜひご覧になってください。
私の身に起きたこと ~とある在日ウイグル人男性の証言2~

来年の北京オリンピック・パラリンピックへの対応をめぐり、24日松野官房長官は記者会見で、閣僚など政府関係者の派遣を見送り、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長ら3人が出席すると発表しました。

これは遅すぎです。中国と心中するという腹もない、現状の日本が、北京五輪に閣僚級を送り込むことなどできないことは、最初からはっきりしていました。閣僚送り込むだけの勇気もないのなら、もっと早い時期に決めるべきでした。

同盟国の米国、友好国のオランダなどが12月上旬に(外交的ボイコットを)表明していたのですから、同じ価値観外交を展開している日本としても早く表明しなければ、日本は人権より経済かという疑念を持たれかねないです。

中国外務省は24日に発表した報道官談話で、米国で中国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区を産地とする物品の輸入を原則禁止する「ウイグル強制労働防止法案」が成立したことに対し、「中国の内政に乱暴に干渉したものであり、強烈な憤慨と断固とした反対を示す」と強く反発しました。

談話は「米国の行為は市場ルールとビジネスのモラルに完全に背く。全世界のサプライチェーン(供給網)の安定を破壊し、国際貿易の秩序を妨げるだけだ」と非難しました。

新疆の問題については「人権問題ではなく、反テロ、反分裂の問題だ」と主張。「中国は事態の発展を見て、さらに反応をとる」と米国を牽制(けんせい)したが、具体的な対抗措置については明らかにしませんでした。

中国政府は「さらに反応をとる」と虚勢を張っていますが、実際のところ米国に対して有効な対抗措置を何一つも取れないでしょう。毛沢東のいう「張子の虎」とはまさに今の習近平のことです。ウイグル人に対するジェノサイドをやめない限り、国際社会はより一層の制裁を加えることになるだけでしょう。

行き着く先は、ドルと元の交換禁止措置などになると思います。そうなると、現在の貿易の決済はほとんどがドルで行わているので、中国は貿易決済ができなくなります。

米国は、貿易などでも、投資の面でも、中国にとって上客であるはずです。そもそも、中国人民元は、最近はそうでもなくなりつつありますが、中国が大量のドルや米国債を保有しているから信用されているという事実を中国は忘れているのではないでしょうか。

そのドルの胴元でもある米国を怒らせて、何のメリットがあるというのでしょうか。通常の感覚なら、上客の頼みだからといって何から何まで聞く必要まではありませんが、できる範囲ではなるべくお客の要望に沿おうとするというのが、まともな商売人の道だと思います。

中国には、その程度の倫理感もないようです。

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2021年12月23日木曜日

「アベノマスク廃棄」 国の調達は本当に無駄だったのか?―【私の論評】本当は失敗ではなかったアベノマスク(゚д゚)!

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
「アベノマスク廃棄」 国の調達は本当に無駄だったのか?

岸田文雄首相

「アベノマスク」は、昨年4月からマスク不足の解消を目的として、全世帯に配布されたものだ。その在庫について、岸田文雄首相は希望者に配布し有効活用を図った上で、2021年度内に廃棄する方針を表明し、報道もされている。

この問題が表面化したのは2021年11月5日の会計検査院20年度決算検査報告からだ。同報告で、「アベノマスク」と呼ばれた全世帯向けを含め、国が調達した布マスクは3月時点で8300万枚(約115億円相当)が倉庫で保管されていたと報じられた。マスク不足だった昨年、国が調達したのは無駄だったのか。

「アベノマスク」は1億3000万枚準備、1億2600万枚配布

この種の報道は、その後発表される政府資料を事前に政府が報道機関にリークしたもので、マスコミは政府からいわれるままに報道する。

10月末の報道によれば、昨年、「アベノマスク」といわれる世帯向け布マスクを約1億3000万枚、介護施設や妊婦向けには約1億5700万枚を調達。このうち、それぞれ約400万枚と約7900万枚が保管されていた。マスクの平均単価は約140円。

所管する厚生労働省は、介護施設向けはマスクの品薄状態が解消された後、希望する施設のみへの配布に方針を切り替えた。

「アベノマスク」は全世帯への配布を終え、保管されていた400万枚は余剰分という。

政府が2020年に配布した通称「アベノマスク」

介護施設向けは1億5700万枚準備し、当初は全施設にプッシュで配布したが、施設側が調達可能になった後、希望配布に切り替え。その時に7900万枚の在庫。「アベノマスク」は1億3000万枚準備し、1億2600万枚配布し、400万枚の在庫となった。

これでわかるだろう。「アベノマスク」については、全国民への配布だったが、予定どおり無駄なしで完了。一方、介護施設向けは多くが在庫になった。しかし、新聞の見出しでは「アベノマスクも」などと書かれて、「アベノマスク」が大量在庫になったかの印象となり、国民へのミスリードになった。

見込みを誤って介護施設でマスク不足になったら、その方が問題

介護施設向けについては、準備量が結果としては多かったが、当初のマスク不足への対応は出来た。マスク不足がどのように解消されるかを当時予測するのは不可能だ。後から過剰な準備だったと結果論で言うのは簡単だが、見込みを誤って介護施設でマスク不足になったら、その方が問題だろう。さらに、「アベノマスク」は当時売り惜しみをしていた業者に打撃を与えたともいわれている。

この20年度決算検査報告では、会計検査院法に基づく意見表示などは付されていない。つまり、会計検査院として調査をしたが、問題なしという見解だ。

マスコミは、10月末の報道で「アベノマスクも」という奇妙な見出しだったが、今回の報道では、介護施設向けまで含めて「アベノマスク」と称している。

マスコミは「アベノマスク」と揶揄したいがためか、事実は無駄なしで貶める余地がないのに、介護施設向けまで用語を広げているようだ。これでは、もはやまともな報道と言えない。そこまでしてでも元首相を話題にしたいのだろうか。

++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。

【私の論評】本当は失敗ではなかったアベノマスク(゚д゚)!

国会閉会を受けて21日、岸田首相が首相官邸で会見を行いました。そのときに、岸田文雄首相は昨年政府が配布した布製マスクについて、希望者に配布し有効活用を図った上で、2021年度内に廃棄する方針を表明しました。新聞やテレビの報道の情報源はこれです。

この方針表明の動画を以下に掲載します。


この動画をご覧いただければ、冒頭の部分で、岸田首相は昨年政府が配布したマスクについて語っていますが、無駄だったなどとは一言も言っていません。布製マスクに関しては、簡単にまとめると以下のように語っています。
・国民の不安を解決した ・布製マスクの配布の後、マスクの製造・流通が回復 ・初期の目的を達成 ・現在5億枚を超える高性能マスクに備蓄に至った ・財政資金効率性に基づき見直し

この部分をマスコミは見事にスルーしています。しかも、高橋洋一氏も語るように、 20年度決算検査報告では、会計検査院法に基づく意見表示などは付されていません。つまり、会計検査院として調査をしたのですが、問題なしという見解です。問題とみなせば、必ず意見表示をすはずです。

「アベノマスク」については、上の高橋洋一氏の記事にもあるように、全国民への配布だったのですが、予定どおり無駄なしで完了。一方、介護施設向けは多くが在庫になったということです。

介護施設向けなどもあわせると、かなりの多さともみえますが、国家レベルの事業と考えると、この程度の余剰はむしろ、配布漏れを防ぐためには、致し方なかったと思います。

ただこれを、とんでもない余剰と受け取る人は、これが国家レベルの事業であったことを認識していないのではないでしょうか。自宅のマスク、あるいはせいぜい1介護施設や学校、あるいは大きくても市町村レベルなどのマスク等しか想定していないのではないでしょうか。

日本の人口は約1億2千万人です。世帯数は5340万世帯です。これらに、行き渡るように配布するというのは壮大な事業です。それに付随する保管費用なども、一家庭内や一企業内のレベルよりは、はるかに大きくなるのは当然です。

10年くらい前だったと思いますが、プーチンが北方領土に数千億円かけて支援するなどを公表したことがあって、これに対して「ものすごい」と評価する人がいましたが、数千億というと個人的には天文学的な数字と感じるかもしれませんが、日本ではこのくらいのこと以上のことを各自治体(都道府県単位)に対して普通にしています。

ただ、人口では1/3以下の韓国よりもGDPでは若干を若干下回る程度の現在のロシアでは、この国家事業はたしかに大判ぶるまいだったのでしょう。

国家レベルの事業と、個人事業や家計を同次元でみるととんでもないことになります。特にマクロ経済などはそうです。これに関しては、過去に何度か述べてきたので、ここでは詳細は述べませんが、マスク一つとってもそうだということです。

そうして、この国家事業をあの時期にあえて実行したということに大きな意義があったのです。

安倍政権でのマスク配布が組織的にマスクを買い占めていた日本国内の転売ヤーは無論、中国の企業も慌てて在庫を吐き出すしかなくなり、日本国内でもマスクが誰にでも手に入るようになったのです。費用対効果は絶大でした。私自身は、物理的マスクの効果もありがたいですが、こちらのほうが余程すごいことだと思いました。


私自身は、当時の安倍総理は、当然このことを意識していたと思います。そうして布マスクにしたということも意図があったと思います。不織布マスクは、確かに布製のマスクよりは効果があり衛生的でもありますが、布は洗えば何度でも使えますし、これが日常的に使われるようになれば、布そのものは日本国内にありふれたものですから、手作りも可能です。

これに気がついた、日本国内の転売ヤーや中国の企業も、恐慌状態になったと思います。だから手持ちの在庫を、吐こうとして躍起になったのです。大損したものも大勢いました。これからも、似たようなことが起こった場合、特に国内転売ヤーや中国の企業などにも、また悪巧みをしようと企てることを防ぐ抑止力になると思います。

これは、明らかな成功事例だからこそ、マスコミは大失敗だと歴史改竄に必死なのではと勘繰りたくもなってしまいます。

アベノマスクが配布されだしてから、儲からなくなった転売ヤーの悲惨な事例が報道されたり、転売ヤーと思しき人が道路上で安売りしている姿などみて、「ざまー見やがれ」と思ったものです。

ところで、岸田政権のアベノマスク廃棄宣言に“もらえるのか?”との問い合せ殺到。担当部署は昼食もとれない忙しさとフジTVのイットが報道しました。廃棄ならもし近くに在庫されている場所があるなら、取りに行くので私も頂戴したいです。


このアベノマスク、他の見方もできると思います。このブログでは、兵站のことをしばしば語っています。 兵站とは、軍隊の戦闘力を維持し、作戦を支援するために、戦闘部隊の後方にあって、人員・兵器・食糧などの整備・補給・修理や、後方連絡線の確保などにあたる機能です。

どの国の軍隊、日本では自衛隊は、兵站がなければ戦えません。いかに屈強な兵士であっても、一日3000キロカローの食料、水、兵器、弾薬は欠かせません。このブログも掲載したように、戦争の素人は戦略を語り、プロは兵站を語るといわれるくらい兵站は重要です。

日本では、戦後は戦争に直接見舞われたことがないので、国家レベルの兵站などどの程度なのかわかりませんでしたが、アベノマスクは無論戦略物資ではありませんが、国家レベルで物資を集め、全世帯に配布したということでは、兵站とも似たところがあり、日本の兵站の力量をみる上ではかなり参考になります。

日本はいざとなれば、あのようなことができる底力があるということが十分に示されたと思います。東日本大震災では、自衛隊の素早い展開力が海外から評価されました。アベノマスクでは、日本の兵站の能力を現在各国の軍事専門家が評価していることでしょう。そうして、その評価は決して低くはないでしょう。

そうして、安倍元首相をどうしてもマスコミは貶めたくて仕方がないことがわかり、本当はマスコミは安倍氏がまた総理に返り咲くことを恐れているのではないかと思ってしまいました。二度あることは三度あるという諺どおりに・・・・・・・・・。

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2021年12月22日水曜日

山口県職員ら公選法違反か 林外相の後援会に勧誘で県警が事情聴取―【私の論評】外交の失態をしでかした、林外相は失態を重ね岸田政権が揺らぐことになる可能性も(゚д゚)!

山口県職員ら公選法違反か 林外相の後援会に勧誘で県警が事情聴取

林芳正外相

 10月末に投開票された衆院選山口3区で当選した自民党の林芳正外相の後援会に入るよう勧誘活動をしたとして、山口県職員らが県警に事情聴取されていることが分かった。村岡嗣政知事が記者団に明らかにした。山口市職員も聴取対象になっていることも判明。県警は公選法に抵触するかどうか慎重に捜査しているもようだ。

山口3区をめぐっては、自民前職の河村建夫元官房長官と参院議員からくら替え出馬する意向を示した岸田派の林氏が激しい公認争いを繰り広げた。自民党本部は最終的に林氏を公認し、河村氏は政界を引退した。

林外相は21日の記者会見で「捜査機関の活動に関わることなので答えを差し控えさせていただく」と述べた。

【私の論評】外交の失態をしでかした、林外相は失態を重ね岸田政権が揺らぐことになる可能性も(゚д゚)!

一般職地方公務員については、地方公務員法第 36 条により、一定の政治的 行為が制限されています。 

地方公務員法第 36 条第 2 項においては「政治的目的」と「政治的行為」を 規定しており、「政治的目的」をもってする「政治的行為」に限り、制限の 対象となります。

詳細は以下の文書を御覧ください。


この事件では、小松一彦山口県副知事が、衆院山口3区の林芳正候補の後援会に入るよう県庁内で勧誘活動した公選法違反の疑いで書類送検されます。同副知事は無論辞任でしょうがが、林外相にも政治責任が生じる可能性はあります。


林氏が後援会への加入勧誘を公務員に依頼した事実が判明すれば、大臣辞職はもとより、議員辞職にも発展しかねないです。

林芳正外務大臣は11月21日、フジテレビの番組に出演し、18日の中国・王毅外相との電話協議のなかで、中国訪問を打診されていたことを明らかにしていました。応じるかどうかについては、「現時点では何も決まっていない」としていました。

公式訪問は、招いた側が招かれた側の同意か感触を得たうえで発表するのが、普通の外交儀礼だ。招いた側が友好姿勢を示す一方、応じるかどうかの選択を相手に委ねるのが普通です。ところが、今回は招かれた側の日本の外務大臣が3日遅れで、一方的にテレビで公表しました。これだけでも、十分に異例でした。

11月21日フジテレビ日曜報道 THE PRIMEに出演する林芳正外相

そもそも、いま中国と日本は、どういう関係なのか林外相は認識しているのでしょうか。

中国は沖縄県・尖閣諸島周辺で挑発行動を繰り返す一方、11月19日には中国軍艦が鹿児島県・屋久島沖の領海を侵犯しました。中国とロシアの艦隊が日本列島を一周したかと思えば、中ロ爆撃機の4機編隊が同月19日、日本上空を飛行していました。

一言で言えば、中国は日本を一段と脅しにかかっていました。 脅している中国が、脅かされた側の日本の外相を招待するというなら、日本の外務大臣なら「ふざけるな。まずオマエの態度を改めろ」と強く指摘して、招待を断るのが普通の対応でしよう。

強盗に襲われそうな家の人間が、強盗の招待を受けるなど、ありえないです。

ところが、林外相は番組で日程は未定としたものの、「招請を受けたので、調整はしていく」「ただ待っているのではなく、米中両方と話ができるのが日本の強みだ」などと、招請を受ける方向で前のめりに語ったのです。

林大臣には、「国家としての矜持」はないのでしょうか。事務方が慎重だったにもかかわらず、なぜ林大臣は公表したのか。

林氏は日中友好議員連盟の会長を務めており、自民党親中派の代表格です。外相就任に当たって、会長職を辞任しましたが、それで政治姿勢が変わるはずもないです。林氏には「米中の仲介役」「橋渡し」をしよう、という意図があったのではないでしょうか。

そんな思惑は「米中両方と話ができるのが日本の強み」という発言ににじみ出ている。そうだとしたら、訪中前から、中国の掌中に乗ったも同です。

中国は日米豪インド4カ国の協力枠組みである「クアッド(QUAD)」や、米英豪の軍事同盟である「オーカス(AUKUS)」に神経を尖らせています。そんな中国包囲網で、もっとも中国に近い日本が中核になるのを阻止するのは、中国の最重要課題といえるでしょう。

日米同盟の分断こそが、彼らの戦略目標です。林氏は「過去の田中角栄氏の中国訪問のように、政治家として、名を上げる絶好のチャンス」とみたかもしれないです。緊張関係が高まる米中の間に立って、緊張緩和のきっかけがつかめれば、大きな功績になると思ったのかもしれません。しかし、それは大きな勘違いです。

中国を訪問をして周恩来(右)と食事する田中角栄(左)

当時と今では、状況が全く異なります。当時は中ソ国境紛争があり、ソ連核攻撃を恐れる中国は、米国を仲間にしたいと考え、冷戦でソ連と対峙する米国は、中国を対ソということで、仲間に引き入れようとして、互いの利益が一致し、当時のニクソン米大統領が中国を電撃訪問した直後です。今思えば、これがその後の間違いの始まりだったかもしれません。

状況が変われば、互いに親しかった国々が反目しあようになったり、その逆に互いに反目しあっていた国々が親しくなるというような事例は過去にいくらでもありました。人間関係でさえも、一度親しくなったから、未来永劫親しくあり続けることなどないのです。特に相手が裏切った場合はそうです。そのような当たり前のことが、林氏には理解できないようです。

そもそも、日本は米国の同盟国です。しかも、このブログにも以前から掲載しているように、日本は冷戦戦勝国です。ロシア、中国、北朝鮮、東欧諸国は冷戦敗戦国です。中国は、米国などと国交を回復したこともあり、敗戦国といえるかどうかは、微妙なとこもありますが、冷戦前からの体制を維持した中国は、やはり敗戦国といえるでしょう。

日本は、冷戦中には、米国に基地を提供するほか、米国の要請にもとづきオホーツク海(ソ連原潜の聖域)において大規模な対潜哨戒を実施し、ソ連の原潜の行動を封じ込めました。そのため、日本の対潜哨戒能力は今日世界のトップクラスです。

日本も大きな貢献をしたのです。そうして、西側諸国は冷戦に勝利して、日本の国際社会における地位も高まり、国内も安定しました。

そのような日本が米中と等距離を置いて、仲介者になれるわけがないです。そんな思惑をにじませたからには、米国は当然、警戒します。仲介者どころか、二股外交の韓国のように、米国と中国の双方から信頼を失うことになるでしょう。それどころか、裏切り者とみられることになりかねません。

林外相の訪中発言は、米国の疑念に火を点けたに違いないです。そんな状況で訪中すれば、米国を怒らせ、逆に訪中しなければ、中国の面子を丸潰れにしてしまいます。どちらに転んでも、日本に良いことはありません。

これは明らかに「外交的失態」です。 いずれ結論は必ず、出さなければならないです。大臣自ら表面化させた外相訪中問題は、自民党の基盤である保守層を強く刺激して、岸田政権を揺るがす騒動になる可能性が高いです。

そこに降って湧いたのが、今回の山口県職員ら公選法違反の疑いです。警察が捜査に着手するのは、時間を掛ける価値と、それなりの手がかりや根拠があるからです。

後援会への加入勧誘を、林氏が公務員に依頼するなどということが通常まったくありえないことです。しかし、外交でも通常ありえないことをしでかしてしまった林氏です。選挙活動でも、ありえないことをしでかした可能性はあながち否定できません。

これが、きっかけとなって、岸田政権が揺らぐことになる可能性は十分あると思います。今回のことが大事にならなかったとしても、さらに何か大失態を起こしそうな予感がします。今後の趨勢を見守りたいです。

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2021年12月21日火曜日

武蔵野市条例案否決 八木秀次氏「全国波及の恐れ」―【私の論評】認識されてしかるべき「住民投票条例」と「自治基本条例」の末恐ろしさ(゚д゚)!

武蔵野市条例案否決 八木秀次氏「全国波及の恐れ」

八木秀次氏

東京都武蔵野市議会で21日、日本人と外国人を区別せずに投票権を認める住民投票条例案が否決されたことについて、麗澤大の八木秀次教授(憲法学)は「根源的な問題は自治基本条例にある」との考えを示した。


今回の条例案の根拠となるのは自治基本条例だ。国家以前に自治体が存在するとし、自治体外交や『無防備都市宣言』に代表される独自の防衛政策も想定する。法律より上位に位置付けられるとする、革命的な条例だ。

外国人投票権は、あくまで表面上の問題に過ぎない。さまざまな立場の活動家がやってきて街宣活動を繰り広げる中で、反対派の主張がヘイトスピーチ扱いされる状況が生まれてしまった。そもそもの根源である自治基本条例の問題に、土俵を変える必要がある。

自衛隊・米軍の基地や原発がある自治体、国境離島の自治体で同様の条例ができたらどうなるか。今回の条例案は否決されたが、市はこのまま断念すると思えないし、全国に波及する恐れもある。引き続き注視が必要だ。

【私の論評】認識されてしかるべき「住民投票条例」と「自治基本条例」の末恐ろしさ(゚д゚)!

八木氏の上の記事でも示されている、自治基本条例とは、「自治体の自治(まちづくり)の方針と基本的なルールを定める条例」であり、「他の条例や施策の指針となることから、自治立法の体系上の最高法規とであり、『自治体の憲法』ともいわれる。」とされます(礒崎初仁「自治体政策法務講義(改訂版)」(第一法規 平成30年3月)62頁)。

なお、全国で最初に自治基本条例を制定したニセコ町の取組みを紹介した木佐茂男・逢坂誠二編著「わたしたちのまちの憲法-ニセコ町の挑戦」(日本経済評論社2003)は、「その自治体の地方自治(住民自治・団体自治)のあり方について規定し、かつ、その自治体における自治体法の頂点に位置づけられる条例」と定義づけています(164頁)。

自治基本条例を推進する立場からの記事については、詳細は以下のリンクをご覧ください。


この記事によれば、最近自治基本条例を定める自治体は減少傾向にあります。以下にそれを示すグラフを掲載します。


クリックすると拡大します

確かに、平成20年代後半以降はその伸びは鈍化しています。これは、自民党政務調査会が作成したパンフレット「チョット待て‼“自治基本条例”~つくるべきか、もう一度考えよう~」が平成24年1月に公表されるなどした結果、制定の勢いが下火になったとの見方もあります。確かに、これも大きいですが、多くの保守界隈の人々がその恐ろしさを伝え続けてきた結果でもあると思います。

ただ、上の八木秀次氏の記事にもあるとおり、自治基本条例は、国家以前に自治体が存在するとし、自治体外交や『無防備都市宣言』に代表される独自の防衛政策も想定します。法律より上位に位置付けられるとする、革命的な条例です。

この危険性については、北海道を事例として、その危険性をこのブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
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詳細はこの記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。

外国人参政権こそまだですが、日本に住んで、その市町村に住民票があれば、外国人でも事実上、政治に参加できるようになりました。「住民投票条例」と「自治基本条例」のためです。

あらかじめ投票方法や有資格者を条例で定め、請求要件さえ満たせばいつでも、どんな些細なことでも実施できるというもので、市町村体位で独自に制定されています。外国人にも投票権が保証されるケースがあり、地方行政に直接参加できるわけです。

北海道内ですでにこうした条例を定めている自治体は、芦別市、北広島市、増毛(ましけ)町、稚内市、安平(あびら)町、むかわ町、猿払(さるふつ)村、美幌町、遠軽(えんがる)町の9自治体で、2015年以降は、新たに北見市、苫小牧市、占冠村が続きました。この2市1村は、いずれも外国人に対して、居住期間など条件付きで投票権を認めています。

これら12の自治体はある意味、地雷を抱えているといえます。条例を根拠に、多数派の居住者(外国人)が首長のリコールを成立させることもできるとなると地方自治が将来、多数派に牛耳られることもあり得ます。そうした懸念を道議会に忠告したのが米国総領事館だったというところに、行政機構の弛緩が窺えます。

やはり、人口という数の力は厳然とした力であり、武力にも匹敵します。

かつて「北海道人口1千万人戦略」という構想が話題になったことがありました。国交省と道開発局が主催する講演会(2005年)において発表されたもので、北海道チャイナワークの張相律代表が提唱しました。

当時は荒唐無稽なプランという受け止め方でしたが、昨今の北海道を見ていると、単なる個人の思いつきレベルではなかったことがわかってきます。「1千万人のうち200万人が中国移民」というのがポイントでした。

5人に1人が中国移民、という「戦略」が14年前に提唱されていたのです。そして土地が次々と買収され、実際に人数も増えています。このことが何を意味するのか、少なくとも政治家や官僚は警戒心を持つべきです。

このブログでも述べたことですが、たとえば中国が北海道のいずれかの市町村に、多数の中国人を意図的に送り込んで、住民投票条例」と「自治基本条例」を活用して、いずれかの市町村の植民化に成功したとしても、最後には手放すことになります。

なぜなら、西洋列強などの事例でもわかるように、植民化はほとんどの場合大失敗して、何の利益ももたらさないどころか、金食い虫となってしまうからです。オランダの東インド株式会社などは、例外中の例外です。だからこそ、ほとんどの西洋列強国は、最終的には植民地を手放したのです。

ただ、列強が植民地を手放すまで、植民地とその宗主国との軋轢は、虐殺・虐待・弾圧など凄まじいものとなりました。だから、植民されないほうが良いに決まっています。植民する側も、利益がでないどころか、損をした上に、被植民地の住民からは恨まれることになります。こういうこともあり、かつての宗主国も新たな植民などしないのでしょう。

北海道の市町村も、「住民投票条例」と「自治基本条例」などを制定して、外国人が多くなればその次の段階では外国人参政権が施行されるようになり、そのいきつく先は、実質的な中国の植民地ということになりかねません。

しかも、中国は過去に本格的な植民の経験がありません。だから、「一帯一路」などで大儲けできるという幻想を抱いています。日本の市町村も中国の植民地になれば、とんでもないことになりかねません。大陸中国のように植民地の日本人が弾圧されることになるでしょう。

ただ、日本という国は、このような危機からは様々な理由や、時の運から免れることが多いです。その根拠となることが、渡邉哲也氏の以下の記事に掲載されていました。
日本の「不動産価格」がいよいよ下がり始める理由
中国人はしばらく日本には戻ってこない
渡邉哲也

 

渡邉哲也氏


この記事で、渡辺氏は、「コロナ禍が収束して「元のように通勤しなさい」と命じる会社はどのくらいあるだろうか。最もリモートワークに適した業種であるIT系の企業が多い渋谷区の空室率の高さがそれを物語っている。都心のオフィス需要は、コロナ前の7掛け程度になると予想される」と語っています。

一方中国人によるインバウンドについては、以下のように述べています。
中国は、海外からの文化輸入をさせたくない。現在の中国は文化的な鎖国状況に近い。習近平が恐れるのはズバリ「自由の味」だ。香港の例を挙げるまでもなく、一度自由の味をしめれば、中国政府に反旗を翻す者が増加するのは当然の成り行きだ。そのため、国民を外国になど自由に行かせたくない。こうした中国政府の姿勢に最も素早い反応をしたのが、いまや中国企業傘下となったラオックスである。

2021年8月、早々と全国13店舗のうち7店舗を閉店してしまった。コロナ禍の影響で外国人が入国できず、売り上げ回復の目処が立たないからとしている。2020年2月に111人が希望退職に応じたのに続き、同年夏には社員、契約社員を対象に250人程度の希望退職者を募っている。かなりあわただしい撤退戦である。

コロナ禍の影響による撤退に擬態しているが、中国企業傘下にあるラオックスが真っ先に逃げ出したことには注目したほうがいい。この先、中国からのインバウンドに未来はないと知る「上からの指示」に違いなく、中国系企業の日本撤退の連鎖は止まらないだろう。

今後中国によるインバウンドは期待できないでしょうし、「 国民を外国になど自由に行かせたくない」というのが習近平政権の方針であれば、今後日本の市町村の土地を買い漁っても無駄になるだけなので、その動きも鈍化するでしょう。

私自身は、東京の不動産価格については、まだはっきり断定はできないとは思っているのですが、中国によるインバウンドは戻って来ないのは確かだと思います。インバウンドに再び期待を寄せるのは間違いだと思います。

そうして、中国による日本の土地などの購入も鈍化することになると思います。そうなれば、「住民投票条例」と「自治基本条例」を活用した、日本の市町村の中国による実質的植民化への動きも鈍化するでしょう。

これにより、当面の脅威はなくなるかもしれません。しかし、潜在的な脅威はいまなお存在し続けているわけであり、中国の情勢が変わった場合は、またその脅威が増大するかもしれません。それに、中国の植民化が鈍化しても、他の国が植民化をすすめるかもしれません。

そもそも、国民国家において地方自治体がまるで憲法のような「自治基本条例」を定め、「住民投票条例」で外国人差政権に道を開くというのは、国民国家の趣旨からしてもまったくおかしなことであり、それを阻止するように、法律を改正するなり、新たな立法すべきと思います。

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2021年12月20日月曜日

統計書き換え問題 集計方法変更、民主党政権時に決定―【私の論評】先進国としてはお粗末な日本政府の統計(゚д゚)!

統計書き換え問題 集計方法変更、民主党政権時に決定

多くの人は、また野党やマスコミにより、この出来事を「政治利用」するのだろうなと考えて憂鬱になったことでしょう。

彼らにとって、この出来事そのものもあまり関心がないでしょう。それよりも「安倍叩き」ができるということでぬか喜びしていたのでしょう。

ただ、「集計方法変更の検討を開始し、決めたのは鳩山由紀夫政権の時期と重なる」わけですから、「アベガー」「アベガー」とばかり叫ぶわけにもいかず、残念というのが正直なところでしょう。

もうそんなことは、多くの国民が見抜いています。上の望月氏のツイートも「このようなことがなくなるよう現政権はきちんと対応してほしい」などの趣旨の発言はありません。

このようなことをしても無駄であることは、 18、19日に実施した朝日新聞社の全国世論調査(電話)で、立憲民主党の新代表に泉健太氏(47)が選ばれたことについて、立憲への期待感を聞いたところ、「期待する」は40%で、「期待しない」は43%だったという結果をみても明らかだと思います。

泉健太立憲民主党代表

そんなことよりも、多くの国民は、なぜこのようなことが置きたのか、正しい統計値はどうなのか、このようなことが今後起きないために、政府はどうするつもりなのかということに関心があるでしょう。与党はもとより、野党やマスコミはこのような国民の関心に応えるべきです。


今回の不適切な扱いは、事業者から集めた調査票のうち、期限に間に合わなかった分の受注実績で起きた。書き換えが始まったのが2013年度からという。期限に間に合わなかった分を翌月以降の分と合算して計上するよう都道府県に調査票を書き換えさせていたという。しかも、期限に間にあわなかった分を推計値としていたが、それに実際の受注実績を加えて二重計上しているもののあったという。

通常統計調査にすべての業者が回答してくれることはないので、回収率調整を行うのですが、それは回答しなかった業者の受注額その自体を推計するのではなく、全体の回収結果額について回収率の差で補正すべきものです。いずれにしても、報道では調査票を消しゴムで計していたという報道もありましたが、まともな統計実務者からすればありえないことです。

2019年には、厚生労働省の毎月勤労統計でも統計処理で不適切な問題がありましたが、これもまともな統計の実務者なら簡単に間違いであるとわかるものでした。これは、統計委員会への報告もなしで行われていたことが判明しています。今回もおそらくは報告なしで行われたのてしょうか。

ただ、会計検査院は、2019年11月に国交省に指摘をしていました。その指摘を受け、国交省は20年1月に都道府県に対して書き換えをやめるように指示しました。しかし、書き換えそのものは国交省本省職員が今年3月まで行っていたとされています。2021年4月以降は書き換えやめ、正しい集計になっているとれています。

今後、検事経験者や弁護士などによる第三者委員会を設置し、経緯や原因を究明することとしていますが、しっかり検証すべきです。

統計法では、基幹統計の作成に従事する者は、「基幹統計をして真実に反するものたらしめる行為」をすれば、統計法60条により6月以下の懲役または50万円以下の罰金となっています。

「基幹統計をして真実に反するものたらしめる行為」には、「基幹統計調査の実施に当たって、架空の調査票を捏造する行為、調査票に記入された報告内容を改ざんする行為、基幹統計調査の集計過程においてデータを改ざんする行為」が含まれると解されています。

統計改ざんをすれば、統計法による処分を受けます。法令に照らして、国の信頼を根本から失墜させるので関係者には厳しい処罰をすべきです。

ただし、調査票を書き直した上、その保存期間が短く、過去に遡って統計を正しく直すのはかなり難しいです。

さらに悪いことに、厚労省の毎月勤労統計問題が起きた後、2019年7月内閣官房統計改革推進室が作られました。ところが、岸田政権になってから、安倍政権下で作られた他の三つの推進室とともに、先月、看板が下ろさてしまったのです。

たとえ、一部が間違っていたにしても、他の数字から正しい数字に近い数字を推計することもできます。そのようなことも、この推進室は担っていたものと思います。

統計がしっかりとしてなければ、様々な経済対策にも悪影響を及ぼすだけではなく、国際的な信用にも悪影響がでるおそれがあります。

たとえば、中国では、2010前後まで約10年間にわたり、中国全体のGDPと、中国全省のGDPとの合計が乖離しているという珍事がありました。省の合計のほうが、全体のGDPよりはるかに大きいという不思議な事態が発生していたのです。

私自身は、これより前から中国の統計、GDPの統計資料は出鱈目であるらしいということは知っていたのですが、当時実際に省の合計を計算してみて、全体と比較してみたのですが、見事に食い違っていました。それ以来、中国の公表するGDPなど信用したことがありません。

ただ、最近はこのような食い違いはないですが、それにしても現在でも出鱈目であることは下のグラフをみてもわかります。


上のグラフは、今や懐かしのBRICs諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)、および韓国の経済成長率の推移を見たものです。中国以外の国々の経済成長率が四半期ごとに変動する様子と、あまりにも「直線的」な中国の経済成長率が確認できます。

あまりに当たり前ですが、経済成長率が毎四半期、これほどまでに一定を維持するなどということは決してあり得ないです。

もともと中国の経済統計などプロパガンダに過ぎないのです。その数値を信用して、中国経済は〇〇年までに米国経済を追い抜くなどと予測するのは、本当に無意味で愚かなことです。

日本の統計はこれほど酷くはないですが、それにしても、お粗末です。欧米だと、統計の責任者は、統計学の博士号を持った人がなるのが普通ですが、日本の役人のほとんどは文系出身で、統計の素人がほとんどです。

さらには、財務省の緊縮により、統計部署に人員が十分に割りふりされないという現実もあるようです。そのようなことのも改善も含めて、日本でも、今後間違いが起こらないようにしっかり対応していただきたいものです。

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2021年12月19日日曜日

台湾の国民投票、全て不成立 蔡総統「民主主義は最も強力な後ろ盾」―【私の論評】中国の侵入を防いだ台湾は、将来東洋のスイスになるか(゚д゚)!

台湾の国民投票、全て不成立 蔡総統「民主主義は最も強力な後ろ盾」

記者会見に臨む蔡総統

台湾で18日に行われた国民投票で、4件全てが不成立となった。蔡英文(さいえいぶん)総統は同日夜、総統府で記者会見を行い「台湾が課題に直面する際、民主主義はわれわれの最も強力な後ろ盾になると信じている」と語った。

国民投票にかけられたのは、成長促進剤「ラクトパミン」使用の豚肉などの輸入全面禁止▽第4原子力発電所(新北市貢寮区)の稼働▽液化天然ガス(LNG)受け入れ基地の建設地の移転▽全国を対象とした選挙と国民投票(住民投票)の同日実施―についてそれぞれの賛否を問う4件。

最大野党・国民党が4件全ての賛成を求める一方で、蔡氏が率いる与党・民進党は反対を呼び掛けていた。いずれも成立条件となる賛成票が有権者数の4分の1に達しなかったほか、反対票を下回り、不成立となった。

蔡氏は、今回の投票結果が示した国民のメッセージとして、国際社会への積極的な参加▽エネルギー転換と電力の安定供給および経済成長の維持▽経済と環境保護両立の重視▽公共政策に関する情報の透明化と理性的な議論―を求めているとした。


一方、朱立倫(しゅりつりん)国民党主席(党首)は同日、党全体に向け謝罪。責任を負うと述べた。

また、われわれの前には多くの課題に向き合わなければならないと強調。引き続き努力して台湾人の期待に応えたいと意気込んだ。

【私の論評】中国の侵入を防いだ台湾は、将来東洋のスイスになるか(゚д゚)!

台湾で直接参政権が強化された背景にはスイスとの関わりがあります。立法院で2003年に初の「公民投票法」が可決されてからというもの、スイスと台湾の間で活発な意見交換が行われました。

スイスが持つ民主主義に関する豊富な知識が台湾へと伝わった結果、台湾では住民投票の実施基準が緩和されました。こうして03年以降、台湾では有権者1900万人の1.5%に相当する28万人の署名を集めれば住民投票が請求できるようになりました。

ちなみにスイスでは提案を国民投票にかけるには有権者の約2%に当たる10万人の署名が必要だ。台湾の人口は、2357万 (2020年)です。一方スイスの人口は、2020年末のスイス人口は866万7100人で、前年比6万1100人(0.7%)増となりました。

スイスの直接民主制には長い歴史があります。スイス中部の山岳地帯の自治体では、中世の時代から「ランツゲマインデ」という直接投票による青空議会で自治体が運営されてきました。こうした山岳の自治体に、チューリヒやルツェルンなどの都市の自治体が加わってできたのが中世のスイスでした。

当時、ハプスブルク家とサヴォイア家という2大勢力がスイスの支配を狙っていました。この2大勢力と対抗するために、スイスでは13世紀頃から、自主独立を守るための「話し合い」の手法が編み出さたのです。

同盟を組んだスイス諸邦の間で戦争が皆無だったわけではありませんが、妥協を通してお互いの違いを乗り越えてきました。たとえ自分たちが弱くても、外国勢力の言いなりにならないためです。

近代的な直接民主制が考案されたのは、ナポレオンが没落した後の復古王政期でした。この時期にスイスでは自由主義者の運動が盛り上がりました。当時、主権在民の原則は認められていましたが、人民が主権を行使する方法はまだ定まっていませんでした。

自由主義派の左翼が1848年に近代スイスを誕生させた後、1860年代から、前述の「ランツゲマインデ」を理想としながら、それを社会の変化に合わせながら直接民主制の制度を作り出していったのです。

スイスでは議会不要論が盛り上がったことは一度もありません。ただ、1874年に、議会が通した法律を国民投票でひっくり返せる仕組みが採択されました。また、1891年には、国民の発議で連邦憲法を部分改正できる仕組みも加わりました。

スイスにはもう一つ台湾にとって、参考になる考え方があります。まず、スイスの憲法は、民兵によって構成される軍隊を持つこと(第58条)、すべてのスイス人は兵役の義務を負うこと(つまり徴兵制、第59条)などを定めています。

これは、もともとスイスの人口が少ないことにも要因があるでしょう。何しろ、国全体でも、日本でいえば地方自治体なみの人口しかありません。だからこそ、現在でも徴兵制を維持せざるをえないのでしょう。

一方台湾は2018年12月26日、軍の徴兵制から志願制へ全面移行が完了し、60年以上続けてきた徴兵制を事実上終えました。台湾は2012年に志願制への移行方針を決め、当初は3年後に徴兵制を廃止する計画でしたが、少子化などで十分な兵員数を確保できずに延期されていました。4カ月間の軍事訓練の義務は今も残っています。
スイスと日本はともに平和に徹することを国是としており、スイスの「永世中立」は、日本国憲法が第9条で日本が「国際紛争」に巻き込まれることを厳禁していることと対比できます。 

実は、スイス憲法には「中立」とはどこにも書いてありません。古い話ですが、1815年、ナポレオン戦争後のヨーロッパの新秩序を決定したウィーン体制においてスイスの中立が周辺の諸国との条約において規定されたのです。 

そうなったのは、スイスが当時軍事強国であり、スイスと同盟した国が軍事的に優位に立ち、そうなるとヨーロッパが不安定になるので、スイスを中立にしておくのがよいと考えられたのです。また、スイスとしても中立は望むところだったので各国の考えを受け入れたのです。

スイスは第二次世界大戦中においてもドイツと国境を接していながら、多くの国々が侵攻されたにも関わらず、スイスはドイツ軍に侵攻されることはありませんでした。


ドイツにはタンネンバウム作戦というスイス侵攻計画があったのですが、結局これは発動されませんでした。

ドイツはフランス侵攻作戦が長引いた場合、スイスからフランスに侵攻することも考えていたのでスイス侵攻作戦はいずれ必要と考えていたのですが、フランスが早期に降伏したのでその必要性がなくなったということも幸いしました。

ただ、当時スイスはドイツが侵攻して来た場合徹底抗戦をすると宣言しており、それは単なる張ったりではありませんでした。平坦なオランダやベルギーと比べるとスイスは狭小ですが山岳地帯にあり、小規模ながらも軍事力もあり、地の利を最大限に活かして防衛できると考えたのでしょう。強力なドイツ軍も気楽には手を出すことは出来なかったのです。

そうして他にもスイスがドイツの侵攻を免れた要因がありました。第二次世界大戦中、日本やイタリア、その他の少数の国々を除いてドイツは世界中を敵にまわしました。そのスイスはドイツにとって価値のある存在でした。

スイスは現在にいたる国際銀行決済システムBISの本部のある場所です。ナチスドイツの金はスイスを窓口として貿易決済に使われ、ドイツの戦争継続を助けました。

さらに、スイスはナチスの財産を秘匿することにも役立ちました。スイスの銀行の秘密主義は戦後もナチスの戦争犯罪者たちの財産を守ったのです。ただし、スイスはユダヤ人の財産の秘密も守りました。

小国なりに軍事力を持ち、様々な知恵も工夫も用いて、結局スイスはドイツから侵攻されることはなかったのです。そうして、そのようなDNAは今もスイスに引き継がれています。

スイスは山岳地帯にあり、台湾は島嶼国という違いはありますが、現在中国からの脅威が増している台湾にとっては、その考え方は参考になるでしょう。

民主主義敵な直接民主主義や、安全保障の点で、台湾はスイスから学び取れることが多々あります。

その台湾は、他の面でもさらに民主化が進む可能性もででききました。それは、以前もこのブログで指摘したよう、台湾においてまともな二大政党制が根付く可能性です。それについては、以前この記事でも述べたことがあります。その記事の
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晩年の李登輝元総統

詳細は、この記事をご覧いただものとして、以下に結論部分のみを引用します。

見方を変えれば、国民党は、目先の利益よりも長期的利益に着目し、より大きなビジョンを掲げることができます。台湾民主主義の父である李登輝元総統は、「反攻大陸」のスローガンを下ろしたものの、台湾の民主化を推進した国民党の政治家であり、蒋介石を補佐していたことを思い起こすべきです。
そうして、蔡英文率いる民主進歩党も、紛れもなく、民主化の産物なのです。国民党がまともになれば、台湾にまともな二大政党制が根付くことになるかもしれません。そうなれば、米国の二大政党制よりまともなそれが、台湾に出来あがることになるかもしれません。

現在、国民党が元々は、反中的どころか、「反攻大陸」といって、中国大陸に侵攻して、中国をとりもどそう考えていたような政党なのです。その国民党は長い間に、腐敗していつの間にか親中色を強めていきました。

しかし、国民党が原点回帰して、「反攻大陸」は放棄するものの、親中国路線を脱却すれば、二大政党の条件は整います。そうして、その機運は高まりつつあります。国民党は最近では、親中国路線を強く打ち出せば、国民の支持が受けられず、選挙で負けてしまうという現実に気が付きつつあるからです。

スイスの政党政治は非常に安定しています。国家政治を支配しているのは4つの政党で、これらの成立は19世紀までさかのぼります。一方台湾は、建国当初は国民党の独裁政治でしたが、民主化の産物として、民主進歩党が生まれました。

ただ、台湾ではまとな二大政党制が根付き、政党政治が安定し、さらに中国からの脅威を跳ね返し、独立を維持し続ければ、いずれスイスが世界で占めるような地位を世界で占めることになるかもしれません。

スイスはEU加盟国ではないですが、1972年に自由貿易協定を結んで以来、移動の自由など数々のEUの政策に参加している。両者の関係は120以上の協定で成り立っており、これを1つの条約にまとめる努力が長年続けられてきたが、スイスは5月26日これを打ち切りました。

台湾が今後どのような道を選ぶかわかりませんが、多くの国々と、様々な協定などをしつつあるのは事実です。これを積み木のように多数積み重ねることにより、我が国日本などの国交がない国々と様々な協定を結んだと同じようにするという道はあります。これが、まさしくスイスがつい最近まで選んできた道です。

このブログでは、何度か中国が台湾武力侵攻するのは不可能であることをその背景となるデータも含めて掲載してきました。ただ、軍事力では不可能でも、中国が軍事力以外の手を用いて台湾併合しようとしているのは間違いありません。

台湾が、それを防ぎ、スイスのように独立を維持し、安定した政党政治を実現し、さらに直接民主主義などをさらに民主主義充実させ、社会や経済を繁栄させた場合、現在スイスが世界で占めるような特異な地位(たとえばスイスの一人あたりGDPは世界第二位、87,367ドル)を台湾も占めることになるでしょう。

もし台湾がそのようなことになれば、その頃には民主化の遅れた大陸中国は、図体が大きいだけの、他国に対する影響力はまるでない、凡庸なアジアの独裁国家に成り果てていることでしょう。

日本もこうした台湾の姿勢を学ぶべきです。特に、最近では、東京都武蔵野市の松下玲子市長が提出した「外国人住民投票条例案」が、市議会最終日の21日の本会議で採決されるという危機的状況にあります。

日本は、スイスや台湾よりもはるかに人口が多い(1億2千万人)ですから、国政レベルで直接民主政を実施するのは難しいところがありまずか、地方自治レベルではできるはずです。

「外国人住民投票」などの重要な案件は、市議会だけで採決するというのではなく、住民投票などで決めるべきと思います。ちなみに、スイスはもとより台湾でも、いやほとんどの国で「外国人住民投票」などありません。認めている国も例外的にありますが、それでもその根拠は、はっきりしており、無制限に認めているわけではありません。

それは、国民国家とは、元々国籍を有す国民のための国家であり、「外国人住民投票」や「外国人参政権」を認めてしまえば、外国からの干渉を受けやすくなるからです。

そもそも、国民が属する国家から、外国人よりも恩恵を受けられたり権利を保証されるのは当然であり、国民ではない人が、国民が受けられる恩恵や権利等に制限がつけられるのは致し方ないことです。

外国人が他の国の国民と同じ恩恵を受けたり、権利を保証されたければ、その国の国民となるしかないのです。それは、いずれの国民国家でも同じことです。その原則を崩せば、国民国家は成り立たなくなります。

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2021年12月18日土曜日

対中非難決議また見送り…「外交的ボイコット」対応決まらず 茂木氏、採択に難色 門田隆将氏「親中対応続けば、自民は厳しい」―【私の論評】日本は、新冷戦で戦勝国になるか、敗戦国になるかの瀬戸際にある(゚д゚)!

対中非難決議また見送り…「外交的ボイコット」対応決まらず 茂木氏、採択に難色 門田隆将氏「親中対応続けば、自民は厳しい」

高市早苗政調会長

 中国当局の新疆ウイグル自治区などでの人権弾圧を非難する国会決議案が、先の通常国会に続き、21日に閉幕する今国会でも採択が見送られることになった。自民党の高市早苗政調会長らが採択に向けて動いたが、茂木敏充幹事長が、北京冬季五輪に政府代表を派遣しない「外交的ボイコット」をめぐる岸田文雄政権の対応が決まらないなかでの採択に難色を示したという。岸田自民党は大丈夫なのか。

 「臨時国会こそは、と思って公明党との文言の調整も含めてやってきた。茂木氏の署名がないと国会に出せない。大変悔しい。本当は今のタイミングだ」

 高市氏は17日、党本部で茂木氏に面会後、記者団にこう語った。

 この日、高市氏は党内有志による「南モンゴルを支援する議員連盟」会長として、超党派の「日本ウイグル国会議員連盟」の古屋圭司会長や、「日本チベット国会議員連連盟」の下村博文会長らと、茂木氏に今国会での採択を申し入れた。

 だが、古屋氏によると、茂木氏は「決議案の内容はいいが、タイミングの問題だ。五輪に政府関係者を派遣するかの問題に今一番、世論が注目するなか、今はタイミングが良くない」と受け入れなかったという。

 同様の決議案は先の通常国会でも、他党との文面づくりを終えていながら、当時の党執行部の「承認」が得られず、提出されなかった。

 今回の党執行部の対応について、党内保守系グループ「日本の尊厳と国益を護(まも)る会」幹事長の山田宏参院議員は18日朝、「国会決議を先にすれば、岸田政権も、政府代表派遣をめぐる判断をやりやすいはず。茂木氏のいう『タイミング』は意味不明だ。順番が違う」と語った。

 岸田政権はいつまで、「対中」で煮え切らない姿勢をとり続けるのか。

 作家でジャーナリストの門田隆将氏は「欧米諸国が、中国の暴走を食い止めようと非難決議や制裁を発動するなか、日本は何周も遅れている。『人権を重視する国際社会の輪から離脱しようとしている』とみられても仕方がない。世界に恥ずかしくないのか。こんな『親中』対応が続けば、自民党は来年夏の参院選は、かなり厳しくなる」と語っている。

【私の論評】日本は、新冷戦で戦勝国になるか、敗戦国になるかの瀬戸際にある(゚д゚)!

わずか半年前にも、似たようなことがありました。当時の二階幹事長らが、対中非難決議文案への「承認」サインを求めた自民党の下村博文政調会長と古屋圭司元国家公安委員長らと、同党の二階俊博幹事長と林幹雄幹事長代理による応酬があり、結局都議選での公明党との連携を見据えて、二階氏のサインを制止したのは林氏だとされました。

これについては、このブログでも掲載しました。以下に当該記事のリンクを掲載します。
「自民党の風当たり強くなる」有本香氏のコラム「以読制毒」詳報で波紋 対中非難決議見送り 本紙ツイッターには「日本人として申し訳ない気持ちだ」―【私の論評】中国共産党と似ている自民媚中"三人組"(゚д゚)!

17日発行の夕刊フジに掲載された有本香氏のコラム「以読制毒」の紙面

これは今年6月18日の記事です。ちょうど半年前の記事です。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事より長くなってしまいますが一部を引用します。
本当に情けないです。自民には、親中的な公明が採択に及び腰だったことが見送りの原因との声がある一方、公明は閉会間近まで自民から正式な交渉の呼びかけがなかったとして、「根回し不足」(幹部)を指摘しています。

「根回し不足」どころか、林幹事長代理が、これを意識して止めたというのですから、問題外です。無論、止められる二階氏にも大きな問題があります。
二階俊博幹事長、林幹雄幹事長代理、森山裕国対委員長
この三人、中国共産党に非常に似てきたと思います。まずは、一党独裁ということで、中国は多くの人民の意向など完璧に無視します。その不満のマグマがたまって、自らに跳ね返りそうになれば、城管、警察それで事足りなければ、人民解放軍で人民を弾圧して黙らせます。

日本は、民主主義体制ですから、さすがにそこまではできませんが、それにしても長期政権が続き、国民の声を聴くということをしなくなってきたという点では似ています。この三人と、中国共産党の違いは、民主主義体制と全体主義という政治体制によるものだけかもしれません。

この三人は、昨年の米ピュー・リサーチ・センターの世論調査では、日本人の86%もが、中国に対して否定的な考えを持っていることが明らかになっていることなど気にもしていないのかもしれません。この三人も、自民党や公明党も、国民に顔を向けた政治をすべきです。

今回の決議案は、野党は全部賛成していたというのですから、この三人の態度は国民をないがしろにしていると言わざるを得ません。このようなことを平気でできるということは、中国共産党の人間と親しく交わっているうちに、知らず知らずに彼らの影響を受けているのではないでしょうか。

さらに、海外よりも、自国内を優先するということでも似ています。中国ではこのブログでも以前示したように、元々外交があまり重視されず、対外関係も自国内の都合や中国共産党の都合で動く度合いがかなり強いです。そのため、中国の外交政策は、ほとんどが失敗ばかりです。いっとき中国外交を「したたかな外交」と褒めそやす向きもありましたが、私自身は、昔から中国は外交ベタというか、外交劣等生だと思います。結局この三人も、党内事情などで、中国との対応を決めるなど、中国共産党と似た動きをしています。

また、中国共産党が内部で派閥闘争にあけくれるということでも、この三人は似ていると思います。彼らも、多くの議員を籠絡して味方につけたり、場合によっては恫喝してみせたりと、党内政治に明け暮れているようです。そのためでしょうか、中国共産党は夢のようなことを言うのですが、結局何をやりたいのかさっぱりわかりません。

戦略などなく、ただその時々で派閥抗争に勝利するために行動するというのが、中国共産党の本質です。その実自分たちは、「孫氏の兵法」の継承者であると悦にいっているところがあります。古代の戦略が現代に通用すると思っているところが、共産党の最大の弱点だと思います。この三人も腹黒く様々な姦計をめぐらして、権力を手中におさめていると悦にいっているところがあると思います。この点でも、中国共産党と似たり寄ったりのようです。
9月に総裁選があり、岸田総裁が誕生し、二階氏が幹事長を退き、新たなに甘利幹事長が誕生して、金輪際無用な中国忖度はなくなると思っていたところ、衆院選で甘利氏が小選挙区で落選し、比例で復活はしたものの、辞任してしまいました。

その後、岸田総理は新幹事長は茂木氏、外務大臣は林氏という、重要なポストに中国と距離の近い人物を選んでしまいました。

いくら中国に近いとはいっても、まさか茂木幹事長が、北京五輪の「外交的ボイコット」を受け入れない等の事態が発生するとは思いも寄りませんでした。

林外務大臣と茂木幹事長

ただ、なぜ、岸田首相は中国に対して煮えきらないのかを考えると、納得できるところもあります。

最大の理由は、岸田派=宏池会に染み込んだ「親中DNA」でしょう。同派の生みの親である池田勇人元首相は「日中友好」を唱え、日中貿易を推進しました。大平正芳元首相も、田中角栄内閣で外相として、「日中国交回復」に尽力しました。

宮沢喜一元首相に至っては、官房長官時代に歴史教科書検定をめぐって、中国の批判に応える談話を発表し、天安門事件の後には「天皇訪中を実現」して、中国の国際社会復帰に道筋を付ける役割を果たしました。

こうした「親中DNA」を受け継いだ岸田首相が、中国に腰が引けた振る舞いをするのは、ごく自然なことなのかもしれません。

ただ、現状の中国は一昔前の中国とは違います。一昔前の中国は、経済的にも軍事的にもとるに足りない存在でした。現在の中国は一人あたりのGDPでは世界で72位と100ドルを切るレベルで、現在でもとるに足りない存在ですが、人口が14臆人であり、全体では米国に次ぐ第二位となっており、近年は軍事力を強化し続けています。

そうして、何よりも南シナ海の環礁を埋め立て軍事基地化するなど、海洋進出に地道を上げています。経済発展の原動力の一つともなった、WTOのルールも無視しています。

そのような中国は、習近平が世界秩序を変えるとはっきりと宣言しています。それに対抗するため、米国は中国に経済制裁を課し、それにEUなども同調し、今や世界は中国対世界という対立軸で新たな冷戦状態になっています。

民主国家であり、米国と同盟国でもあり冷戦戦勝国日本は、中国共産党と対峙する以外に道はありません。

ロシア、中国、北朝鮮、東欧諸国などは、冷戦敗戦国であり、冷戦敗戦の直後には、中国や北朝鮮は経済的にも軍事的にもとるに足りない存在だったので、失うものはあまりありませんでしたが、ロシアや東欧諸国は失うものが大きく、経済的にもかなり疲弊しました。


冷戦戦勝国である日本は、経済的にも国際的な地位ということでも、戦勝で大きな恩恵を受けてきたのは間違いありません。安倍氏が総理大臣のときに、「自由で開かれたインド太平洋戦略構想」を提唱したり、QUAD構想を提唱したりできたのは、そのような背景があったからに他なりません。

その日本が、米国でさえも、中国に対峙する道を選んだにかかわらず、親中的な態度を継続していれば、冷戦戦勝国からすれば、裏切り以外のなにものでもありません。

冷戦のさらなる進展により、日本は中国とともに沈み、今度は新冷戦敗戦国になるかもしれません。このような厳しい現実に対応することもなく、「親中DNA」をそのまま引き継ぎ親中的な行動をし続ければ、そうなります。


安倍氏は、岸田首相が中国に対して毅然とした姿勢に改まるまで、圧力をかける続けるでしょう。それでも、首相が動かなければ、自民党内の保守派を本格的に動員して、党内世論を主導することになるでしょう。

高市氏は党内有志による「南モンゴルを支援する議員連盟」会長として、超党派の「日本ウイグル国会議員連盟」の古屋圭司会長や、「日本チベット国会議員連連盟」の下村博文会長らが、14日、岸田首相に北京冬季五輪の外交的ボイコットを求めたのは、その手始めでしょう。

この、3つの国会議員連盟の代表は、17日茂木氏に今国会での「人権弾圧非難決議案」の採択を申し入れました。 ところが、古屋氏によると、茂木氏は「決議案の内容はいいが、タイミングの問題だ。五輪に政府関係者を派遣するかの問題に今一番、世論が注目するなか、今はタイミングが良くない」と受け入れなかったといいます。

岸田政権が行動を改めない限り、今後このようなことが頻発し、岸田政権では参院選を戦えない、ねじれ国会だけは避けたいという声がまきおこり、政局に発展する可能性が大です。

これを機会に、既存政党の枠組みを超えて、親中派と反中派が完璧に分かれる大規模なガラガラぽんが起これば良いと思います。そうなれば、親中派は少数派ですから、必ず反中派が優位になります。

今まさに日本は、新冷戦戦勝国になるか、敗戦国になるかの瀬戸際です。このくらいの政局の波乱が置きても不思議ではありません。親中派は、いままでやってきたことを繰り返しているだけだし、純粋な党内派閥抗争くらいに思っているでしょうから、あまり危機感はないでしょうが、反中派はかなりの危機感を感じていることでしょう。

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