2023年7月5日水曜日

プーチン政権による〝破壊秒読み〟か ザポロジエ原発、主要外部電源の接続切れる 周辺に爆発物搭載の兵器配備 ロシア軍の爆破攻撃に警戒―【私の論評】ロシアはウクライナの複数の原発を攻撃し、ウクライナの電力源を絶とうとするかもしれない(゚д゚)!

プーチン政権による〝破壊秒読み〟か ザポロジエ原発、主要外部電源の接続切れる 周辺に爆発物搭載の兵器配備 ロシア軍の爆破攻撃に警戒

ロシア軍に占領されたザポロジェ(ザポリージャ)原発


 ウクライナ南部のザポロジエ原発について、国際原子力機関(IAEA)は4日の声明で、主要な外部電源への接続が切れたと明らかにした。必要な電力をバックアップの送電線に頼る状態になったという。欧州最大のザポロジエ原発をめぐっては、ロシア軍が爆破する恐れがあるとして、ウクライナのゼレンスキー大統領らが警戒を呼びかけている。

 IAEAの声明によると、4日午前1時21分に接続が切れたという。原因や復旧にかかる時間は不明とした。グロッシ事務局長は、ザポロジエ原発の「不安定な安全性を示した」と訴えた。

 ウクライナ国防省情報総局のブダノフ局長は6月下旬、ロシア軍が同原発の原子炉6基のうち4基の周辺に爆発物搭載の兵器を配備したと明らかにした。爆発などで原子炉の冷却が停止した場合、最短10時間でメルトダウン(炉心溶解)に至る恐れがあるという。情報総局は、原発を支配下に置くロシア国営企業「ロスアトム」が原発作業員に対し、今月5日までの退避を勧告したとする諜報内容も公表済みだ。ロシア側は「事実無根」と否定した。

 ザポロジエ原発は昨年夏ごろからロシア軍の攻撃で外部電源を喪失する事態がたびたび起きた。原発事故の危険を避けるため、昨年9月に全原子炉の稼働が停止されたが、一部の原子炉はなお高温状態にあるとみられる。

 今年6月には同原発の冷却水の取水源となっていた南部ヘルソン州のカホフカ水力発電所ダムが決壊した。これについてもロシア軍の攻撃によるとの指摘がある。

 ロシア軍の現状は、ウクライナ軍の反転攻勢を受けているほか、内部でも民間軍事会社「ワグネル」の反乱による動揺が収まっていない。

 ロシアの独立系調査団体「ロシア・フィールド」の世論調査によると、ワグネルの創設者プリゴジン氏の行動を肯定的な態度を示したのは、2月時点の41%から反乱直前の6月中旬には55%まで上昇。反乱後には減少したものの29%は支持を続けている。

 兵士の損失や腐敗を訴えるプリゴジン氏の国防省に対する批判について計46%が「妥当だ」と答えている。

 これまでも非人道的な行為を重ねてきたプーチン政権とロシア軍だが、国内外に波乱要因を抱えるなかで、原発爆破という前代未聞の非道な攻撃に出る懸念は残る。

【私の論評】ロシアはウクライナの複数の原発を攻撃し、ウクライナの電力源を絶とうとするかもしれない(゚д゚)!

上の記事では、「ザポロジエ原発は昨年夏ごろからロシア軍の攻撃で外部電源を喪失する事態がたびたび起きた。原発事故の危険を避けるため、昨年9月に全原子炉の稼働が停止されたが、一部の原子炉はなお高温状態にあるとみられる」としていますが、これは誤解を招きやすいと思いますので、補足説明をしておきます。

ザポリツィア原発のすべての原子炉が、原発事故の危険を避けるために昨年9月に停止したというのは一時的なものであり、同原発は、ロシア軍が現場を掌握した3月以降も稼働率を下げて稼動しています。今日現在、同原発ではまだ4基の原子炉が稼働しています。

戦争が始まって以来、原発は何度か外部からの電力供給を失ったのですが、原発にはバックアップ用の発電機があり、原子炉を稼働させることができました。しかし、外部電源の喪失は、使用済み燃料プールを冷却できないなど、原発のいくつかの問題を引き起こしています。使用済み燃料プールは、原子炉で使用された後の核燃料を冷却するために使用される大きな水のプールです。使用済み燃料プールが適切に冷却されなければ、放射能漏れにつながる可能性があます。

国際原子力機関(IAEA)はザポリジェ原発の状況を注意深く監視しており、ただちに原発事故が起こる恐れはないとしている。しかし、状況は「非常に緊迫」しており、原発は「脅威にさらされている」とも警告しています。

IAEAグロッシ事務局長

ロシア軍がザポリツィア原発の爆破を計画しているという具体的な証拠はありません。しかし、こうした恐れを抱かせる要因はいくつかあります。

同原発はヨーロッパ最大の原子力発電所であり、そこで核爆発が起これば壊滅的な結果を招くでしょう。

ロシア軍はすでに何度か同原発を砲撃しており、敷地内に爆発物を仕掛けたとの情報もあります。

ロシアのプーチン大統領は人命軽視の姿勢を示しており、過去には核兵器を使用すると脅したこともあります。

注意しなければならないのは、これらは単なる懸念であり、ロシア軍が実際に原発を爆破するという保証はないということです。しかし、そのような攻撃がもたらす潜在的な影響は非常に大きいため、真剣に考える価値があります。

 国際原子力機関(IAEA)は原発の状況を注意深く監視しており、ただちに原発事故が起こる恐れはないとしています。しかし、状況は「非常に緊迫」しており、原発は「脅威にさらされている」とも警告しています。

 IAEAはロシアに対し、同原発での「あらゆる軍事活動を即座に停止」するよう求め、すべての関係者に「最大限の自制」を促しています。 ザポリツィア原発の状況は極めて憂慮すべきものであり、注視することが重要です。もし原発が攻撃されれば、ウクライナ、ヨーロッパ、そして世界にとって壊滅的な結果をもたらす可能性があります。

爆発する原発 AI生成画像

ロシアによるザポリツィア原子力発電所への攻撃は、ウクライナ、ヨーロッパ、そして世界にとって破滅的な結果をもたらす可能性があります。以下は、私が予測する具体的な結果の一部です。

核爆発: 原発には6基の原子炉があり、そのうちの1基が爆発すれば、大量の放射能が大気中に放出される。これは広範な死傷者をもたらし、今後何年にもわたって環境を汚染する可能性がある。

原発のメルトダウン: 原発が損傷した場合、メルトダウンに至る可能性がある。メルトダウンは、核爆発に比べればはるかにゆっくりとしたペースで起こる災害だが、それでも極めて危険であることに変わりはない。メルトダウンは大量の放射能を環境に放出し、水源を汚染する可能性があります。

火災: 原発には大量の可燃性物質が含まれており、爆発した場合、火災が発生する可能性があります。原発で火災が発生すれば、大量の放射線が大気中に放出され、原子炉がオーバーヒートしてメルトダウンする可能性もあります。

電力喪失:ザポロジェ原発は稼働時にはウクライナの数百万人に電力を供給しており、もし原発が破壊されれば、永久に電力を救急できない可能性がります。戦争が終わっても、発電所を設置するには、ある程度の時間を要します。これは経済や人々の日常生活に大きな影響を与えるでしょう。

ザポリツィア原子力発電所への攻撃がもたらす結果は壊滅的であり、ロシアにとっても大きな被害をもたらすでしょう。ロシアの広い地域でも放射能被害を免れないでしょう。そうして、ロシアへの経済制裁は現状よりさらに厳しくなり長期化するでしょう。

ロシア軍がザポリツィア原発を爆撃した場合、ロシアにどの程度の損害がもたらされるかを予測するのは難しいです。しかし、専門家たちは、その被害は甚大なものになると見ています。

原発はウクライナ南東部、ロシアとの国境近くに位置しています。もし原発が損傷すれば、大量の放射線が大気中に放出される可能性があります。この放射線は風に運ばれ、ロシアの一部にも到達する可能性があります。

被害の正確な程度は、原発の損傷の程度、気象条件、風の流れの位置など、多くの要因に左右されるでしょう。しかし、専門家たちは、ロシアの広い地域が影響を受ける可能性はあると考えています。

例えば、カーネギー国際平和財団の調査によると、ザポリツィア原発で原子力災害が発生した場合、発電所を起点に最大1,000平方キロメートルの地域(東京都全域に匹敵する)が汚染される可能性があるといいます。この地域には、現在のロシアの占領下にあるウクライナの都市を含み、たとえば15万人以上の人口を抱えるメリトポリ市が含ます。無論、元々ロシア領内だった地域にも影響は及びます。

ザポリツィア原発の事故がロシアに与えるダメージは大きいです。環境、経済、そして被災地に住む人々の健康に悪影響を及ぼすでしょう。このような攻撃の影響はウクライナだけにとどまらないことを忘れてはならないです。全世界が影響を受けるでしょう。

放射能汚染で人や動物が住めなくなった地域 AI生成画像

重要なのは、ザポリツィア原発が現在ロシア軍の支配下にあることです。つまり、原発はロシアによって意図的に狙われる危険性があるということです。

ロシア軍がザポリージャ原子力発電所を占拠した目的については、ウクライナの電力の65%は原子力でまかなっており。このうちの40%ほどはこのザポリージャ原発でつくられてきたもので、国内最大規模の原発をウクライナの電力供給からウクライナを遮断しようとしているとみられます。

ウクライナ各地で稼働する原発をめぐっては今後とも危険性があるでしょう。ロシア軍による直接的な破損、また占拠したロシアの軍人による不適切な扱いによる事故などが予想できます。現在の兵器工場なとを含めて、工場のほとんどは電気で稼働しています。電気を絶てばウクライナは兵器の製造、弾薬の製造、その他兵戦争に関わる製造ができない状態にあります。

現在ロシアはウクライナ戦争においては、劣勢に立ち、今までの攻撃から守勢に回っています。この戦況を打開するために、ロシアはザポロジェ原発を含めて、ウクライナの原発を攻撃し、ウクライナの電力源を絶とうとするかもしれないです。

ただ、そうしたとしても、ウクライナには西側諸国が加勢しているため、たとえ電力を絶たれても、西側諸国から武器弾薬が提供されることになるでしょう。それが、想定されるからこそ、なかなかロシア側も原発破壊に踏み切れないのでしょう。

IAEAはロシアに対し、原発から軍を撤退させ、IAEAが安全保障と技術支援を提供できるようにするよう求めています。

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2023年7月4日火曜日

13カ月連続マイナスの実質賃金をプラスにする方法 補正予算で税収上振れを還元、賃上げ特化の減税をすべきだ―【私の論評】本当は消費税減税が一番効果があるのだが、それを邪魔するのは誰か(゚д゚)!

高橋洋一「日本の解き方」
高橋洋一

実質賃金のマイナスに不安を感じる人々 AI生成画像

 厚生労働省が発表する毎月勤労統計によると、実質賃金は4月まで13カ月連続でマイナスとなっている。

 実質賃金は、名目賃金を消費者物価指数で割り戻して得られる。この伸びがマイナスというのは、名目賃金の伸びよりインフレ率が高いことを意味する。

 一般論として、物価は経済状況をすぐ反映して上がりやすいが、賃金は労使交渉などで決まる要素があり、物価より遅れがちだ。また、賃金は過去の物価状況をみて、生産性上昇分を加味して決まる傾向がある。

 実際の数字をみると、インフレ率は前年同月比で昨年4月から2%を超え、今年1月に4・3%とピークになった。その後、3%台に落ち着き、4月に3・5%、5月に3・2%となっている。

 実質賃金がマイナスになったのは昨年4月からだ。名目賃金の上昇は、昨年来2%程度の伸びであるが、インフレ率にはかなわない。しかも、今年に入り、名目賃金の伸びがいまいちだ。その結果、実質賃金はマイナスの伸びとなっている。今年1月には4・1%低下、4月は3・2%低下だった。

 今後のインフレ率は、徐々に伸びが弱まり、日銀によれば2023年度の見通しは2%弱だ。一方、今年の名目賃金は年後半にかけて上がっていくはずだ。となると、遅くとも今年度中には実質賃金がプラスになっているだろう。

 ただし、名目賃金が上がるためには、失業率が低位で維持されていることが必要だ。今の経済状況であれば、景気が維持され、そうした良い雇用環境である公算が大きい。

 だが、岸田文雄政権が緊縮財政に転じたりしてGDPギャップ(総需要と供給力の差)が拡大すると雇用環境が壊されるかもしれない。

 植田和男総裁体制の日銀は、岸田政権の緊縮度をみながら金融引き締めのタイミングを計るので、財政緊縮になると、金融政策も同時に引き締めとなりかねない。

 岸田政権は、今のところは「ステルス増税」かその準備段階なので、まだ増税・緊縮財政は顕在化していない。

 一方、22年度の国の税収は71兆円台と初めて70兆円を超えた。本コラムでは、既に税収が70兆円を超えることは予想しており、別に驚かないが、まさに円安のたまものだといえる。円安で法人企業収益が伸びるのは、筆者が財務官僚時代から変わらない。そのため、法人税や所得税も伸びた。さらに多少インフレ気味なので消費税の税収が伸びた。

 税収が3年連続で過去最高を更新しているにも関わらず、防衛増税、少子化対策でのステルス増税(扶養控除見直し、社会保険料引き上げなど)を引っ込める動きはまだない。

 ここは増税とは逆に、秋の補正予算で税収の上振れを還元すべきだ。賃上げに特化した減税などの景気対策を行えば、実質賃金はすぐにプラスに転じるだろう。絶好のチャンスを逃してはならない。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたいかたは、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】本当は消費税減税が一番効果があるのだが、それを邪魔するのは誰か(゚д゚)!

名目賃金とは、貨幣で受け取った賃金そのものを指します。一般的には、現金で支給された給与額がそれにあたります。そして、名目賃金とセットで考えられるのが実質賃金です。実質賃金とは、物価と賃金の関係を表したもので、労働者が実際に受け取る名目賃金から消費者物価指数をデフレートした値を指します。

現状のインフレ傾向の状況では、実質賃金を上げる工夫が必要です。それには以下のような対策があります。

実質賃金の上昇で喜ぶ人々 AI生成画像

賃上げを行った企業に対する法人税率の一時的引き下げ。これは企業にとって賃上げのインセンティブとなり、ひいては労働者の所得を押し上げ、消費を刺激します。

賃上げを行った企業に対する税額控除。これは、法人税率の一時的引き下げと同様の働きをするが、企業が賃上げを行うための、より的を絞ったインセンティブとなります。

消費税の引き下げ。税率が10%になった消費税の税率を5%等に引き下げる。これは一時的であっても効果があると考えられます。景気が加熱して、インフレ率が恒常的に4%〜5%になっても、雇用が改善されなくなった場合また、税率を段階的に上げることなどの措置が考えられます。

 税収の増加は、好調な経済や円安や消費増税など多くの要因によるものです。経済的に苦しい人々を助けるために政府が行動を起こす良い機会です。

 賃上げは景気回復計画の重要な一部です。賃金上昇を刺激する措置を講じることで、政府は所得を押し上げ、消費を刺激し、雇用を創出することができます。

特にその中でも、 消費税減税は、経済を刺激し、賃金を引き上げる非常に効果的な方法です。消費税減税は、消費者の懐に入るお金を増やし、支出の増加につながります。その結果、商品やサービスの需要が高まり、賃金上昇圧力が高まるでしょう。

 加えて、消費税減税は政府にとって比較的実施しやすい措置です。単純に消費税率を引き下げることもできるし、特定の商品やサービスに対する一時的な免税措置を導入することもできます。補助金や助成金と異なり、事務作業が増えることもありません。

上の記事で高橋洋一氏が減税を主張したのは、事務作業が増えて、対策が遅れることを危惧したためであると思われます。

実際、補助金や助成金制度において、審査や実際の配布を行うのは、地方自治体です。補助・助成金には審査もありますし、交付事務もあります。これが莫大な量となれば、地方自治体の負担は半端ではなくなります。

事務量が半端でなく増えた日本地方自治体のオフィスで呻吟する公務員達 AI生成画像

コロナ感染の初期から中期にかけての、クラスター確認のための保健所の負担が、半端なものではなかったことを思い返していただきたいです。

安倍・菅両政権においては、両政権あわせて100兆円の補正予算を組んで、コロナ対策にあたりましたが、これには岸田政権になってからも、かなり積み残しがあったとされています。

コロナ対策の補正予算の積み残しの具体例を以下にあげます。

リモートワーク推進費: 政府は2020年度補正予算でリモートワークの推進に1000億円を計上しました。しかし、2022年3月時点で300億円しか使われていませんでした。

中小企業支援資金: 政府は2020年度補正予算で中小企業支援のために1兆円を計上した。しかし、2022年3月時点で7000億円しか使われていませんでした。

ワクチンや治療法の開発資金: 政府は2020年度補正予算で、COVID-19のワクチン・治療法開発費として5,000億円を計上しました。しかし、2022年3月時点で3000億円しか使われていませんでした。

これらはコロナ対策の補正予算の使い残しのほんの一例です。他にも多くの例があり、未使用額の総額は数百億円に上ると推定されます。

これだけの金額が使われずに残っている理由はいくつかあります。ひとつは、政府の対策が遅かったこと。また、地方自治体がパンデミック対策に追われながら、補助金、助成金の審査を行い、交付事務も行ったため、事務作業が増え、外注しても追いつかなかったという事実もあります。それにご存知のように、補助金・助成金というと、不正を助長するということもあります。

以上のようなことから、 私は、日本政府は景気刺激策の一環として消費税減税を検討すべきだと思います。景気を押し上げ、賃金を上昇させるのに効果的な措置です。ただ、 消費税の大幅減税はインフレ率の急上昇を招きかねず、長期的には消費者に打撃を与える可能性もあります。

政府は、消費税減税がインフレに与える影響を慎重に検討した上で決断すべきです。しかし、小幅な消費税減税は、経済を刺激し、賃金を引き上げる非常に効果的な方法だと思われます。

こうしたことを与党の政治家が誰も言わないのは不思議です。これは箝口令でも敷かれているのではないかと疑ってしまいます。

だとしたら、言論の封殺としか言いようがありません。その背後には、財務省があると考えるのが、妥当だと思います。

財務省(MOF)は日本における強力な組織であり、経済政策に大きな影響力を持っています。財務省は徴税と国債管理を担当しており、安定した財政状況を維持することに強い関心を持っています。

消費税減税は大幅な財政刺激策であり、政府歳入の減少につながる可能性が高いです。そのため財務省は、消費税減税を自らの権力と影響力を脅かすものと考え、反対する可能性が高いです。ただ、これは杞憂にすぎず、たとえ消費税減税をしても小幅なものであれば、それによる経済成長が考えられるので、税収減は相殺されることが予想されます。

財務省はまた、与党の自民党にも強い影響力を持っています。自民党の政治家の中には、元財務省職員であり、経済政策に関して大蔵省の見解に同調する可能性が高いです。そのため、自民党の政治家が公然と消費税減税を支持する可能性は低いようです。

さらに、財務省はメディアや経済界に強力なネットワークを持っています。これらの味方は、消費税減税を支持する政治家を批判する可能性が高いです。このため、自民党の政治家が消費税減税を支持することは、政治家としてのキャリアを危険にさらすことになり、さらに難しくなるようです。

財務省の権力と影響力の結果、与党の政治家が公に消費税減税を支持する可能性は低いです。消費税減税は景気を回復させ、実質賃金を上昇させる非常に効果的な方法であるにもかかわらず、この機会を逃し続けているのです。

絶大な権力を持つ日本の財務省 AI生成画像

財務省の権力構造を改革することができるのは、現状では岸田首相以外には存在しないでしょう。そうして、岸田首相が長期安定政権を目指すために、財務省は邪魔な存在であると認識する可能性はあり得ます。

もし岸田首相が本気で財務省改革に取り組むのであれば、いくつかのステップを踏むことができるでしょう。第一に、財務省出身者ではない財務大臣を任命することです。そうすれば、もはや財務省だけが政府の経済専門家ではないというシグナルを送ることができます。現在の鈴木財務大臣は財務省出身ではありませんが、マクロ経済には疎く、力不足です。マクロ経済に通じた人を財務大臣に据えることか、改革の第一歩になるでしょう。

第二に、岸田首相は財務省から独立した新しい経済諮問会議を創設することができます。この諮問会議は、首相に経済政策に関する助言を提供する責任を負います。経済、ビジネス、学術などさまざまな分野の専門家で構成されます。現在の経済諮問会議は財務省のポチと言っても良い人達で構成されています。これらを、マクロ経済に通じた人たちに入れ替えるのです。

第三に、岸田首相は予算編成プロセスを改革することができます。現在の予算編成プロセスは財務省の影響を強く受けています。岸田首相は国会に予算プロセスに対する権限を与え、財務省が支持しないプログラムへの支出に拒否権を行使することをより困難にすることができるでしょう。

これらは、岸田首相が財務省の権力構造を改革するために取りうる措置のほんの一部です。もし岸田首相が本気で財務省改革に取り組むのであれば、大胆な行動を起こす必要があります。

上記の措置に加えて、岸田首相は財務省改革のために以下の措置を取ることもできます。

財務省の透明性と説明責任を高める。これは、財務省の活動に関するより多くの情報を公開し、より独立した監査機構を設けることによって行うことができます。

経済政策決定における国会の役割を強化する。これは、国会に予算編成プロセスに対する権限を与えることや、財務省から独立した新たな経済諮問会議を設けることによって行うことができます。

金融部門の競争を促進する。これは、新規銀行やその他の金融機関の参入障壁を低くし、消費者が銀行を切り替えやすくすることで実現できます。

財務省は日本の金融セクターを監督する責任があります。財務省は大手銀行の利益を守ってきた長い歴史があり、金融セクターの競争促進には消極的でした。

しかし、金融セクターの競争促進が日本経済の長期的な健全性にとって不可欠であるというコンセンサスが高まっています。競争は金利の低下、技術革新の促進、消費者へのサービス向上につながります。

財務省が競争促進に消極的なのは、それが権力の一部を放棄することを意味するからです。金融セクターの競争を促進されることになれば、財務省はこの支配の一部を放棄しなければならないです。

銀行は、さらに、新商品や新サービスの提供など、現在許されていないことができるようになります。このことは、財務省が銀行をコントロールできなくなり、銀行の利益を守ることができず、よって銀行は従来のように居心地の良い天下り先ではなくなります。

また、財務省は競争促進にも消極的です。なぜなら、そうなれば、財務省は意思決定についてよりオープンにならざるを得なくなり、国民に対してより説明責任を果たさなければならなくなります。このことは、財務省が密室での意思決定する力を弱めることを意味します。

これらは、岸田首相が財務省を改革し、日本国民のニーズにもっと応えられるようにするために取り得る措置のほんの一部です。

岸田首相が本気で財務省改革をするようにはいまのところ全く見えません。しかし、長期安定政権を維持するために、財務省が最大の障害になりえることを認識した場合は、あり得ると思います。

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2023年7月3日月曜日

中国が東南アジアから撤退開始、経済問題に直面し―【私の論評】中国は、アフリカ、ラテンアメリカ、中央アジアでも撤退しつつある(゚д゚)!

中国が東南アジアから撤退開始、経済問題に直面し

東南アジアから撤退をはじめた中国 AI生成画像

 東南アジアにおける中国の経済的存在感が縮小し始めている。以前は中国がこの地域に最も多くの融資や援助を提供していたが、現在は他国に押されて影が薄くなっている。中国が東南アジアに向ける金を切り詰めることにより、中国の世界支配への夢は遠のくことになるだろう。

 2021年の中国の政府開発融資(ODF)は再び減少し、かつての最高額の半分強にとどまった。一方で、他の国や国際機関の投資が増えており、中国の存在感は低下している。日本の投資は特に増加しており、中国に追いつこうとしている。

 中国の投資減は海外の優先順位の転換を示すものではなく、中国自体が経済と金融の問題を抱えていることを示している。中国経済の回復が一時的で、再び減速している状況であることも考慮すべきだ。

 このような経済的制約に直面している中国が、東南アジアでかつての存在感をすぐに取り戻すことは難しいだろう。

これは、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】中国は、アフリカ、ラテンアメリカ、中央アジアでも撤退しつつある(゚д゚)!

中国の東南アジアでの経済的プレゼンスは上の記事にもあるように、確かに縮小しつつあります。

これについては、私も独自に調べましたので、それを以下に示します。
中国政府による東南アジアへの開発融資は、2015年の760億ドルから2021年には390億ドルに減少しまし。(出典:AidData)

中国の対東南アジア直接投資(FDI)シェアは、2015年の25%から2021年には14%に減少しました。(出典:UNCTAD)
他の地域でも、中国の経済的プレゼンスが縮小している地域があります。以下にあげます。

アフリカ: 中国は近年、アフリカへの主要な投資国であったのですが、その経済的プレゼンスはここ数ヶ月で低下しています。これは、COVID-19のパンデミック、ウクライナ戦争、中国自身の景気減速など、さまざまな要因によるものです。
中国の対アフリカ直接投資は、2015年の36億ドルから2021年には28億ドルに減少しました。(出典:UNCTAD)
中国の対アフリカ貿易は2015年の2,220億ドルから2021年には1,990億ドルに減少。(出典:世界銀行)

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ラテンアメリカ: 中国は近年、ラテンアメリカへの主要投資国でもあったのですが、ラテンアメリカでの経済的プレゼンスも低下しています。これは、COVID-19の流行、一部の国の政情不安、中国自身の景気減速など、さまざまな要因によるものです。
中国のラテンアメリカへの直接投資は2015年の105億ドルから2021年には83億ドルに減少しました。(出典:UNCTAD)
中国の対ラテンアメリカ貿易は2015年の3200億ドルから2021年には2790億ドルに減少。(出典:世界銀行)
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中央アジア: 中国は近年、中央アジアへの主要な投資国であったのですが、その経済的プレゼンスも低下しています。
中国の中央アジアにおける直接投資は、2015年の27億ドルから2021年には22億ドルに減少しました。(出典:UNCTAD)
中国の対中央アジア貿易は2015年の520億ドルから2021年には470億ドルに減少。(出典:世界銀行)
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注意しなければならないのは、これらは中国の経済的プレゼンスが縮小している地域のほんの一例にすぎないということです。このようなことが起きている地域は他にもたくさんあります。

中国が、東南アジアでかつての存在感をすぐに取り戻すことはなさそうなのと同じく、これらの地域でもすぐに取り戻すことはなさそうです。

だからといって、すぐに中国がこの地域からすべての投資などをひきあげるということはないでしょうが、年々先細りになっているのは事実です。これが、すぐに回復することはないでしょう。これは、日本、米国、欧州などの先進国にとって、これらの地域での経済的プレゼンスを回復する好機です。

先進国には、これらの地域と関わってきた長い歴史があり、貿易、投資、技術の面で提供できるものがたくさんあります。また、グッド・ガバナンス、人権、持続可能な開発の促進にも貢献できます。

もちろん、これらの地域で経済的プレゼンスを取り戻すには課題もあります。中国は近年、これらの地域で非常に積極的に活動しており、多くの関係を構築しています。しかし、先進国がこれらの地域に積極的に投資し、現地のパートナーと協力すれば、これらの課題を克服することができると思います。

私は、先進国がこれらの地域で経済的プレゼンスを取り戻すために協力することが重要だと思います。資源や専門知識をプールし、それぞれの努力を調整することができます。そうすることで、中国がこれらの地域を支配することがより難しくなり、これらの地域の人々にも利益をもたらすことができます。

経済的利益に加え、これらの地域で経済的プレゼンスを取り戻すことには政治的利益もあります。これらの地域は世界の安全保障と安定にとって重要であり、世界経済にとっても重要です。これらの地域での経済的プレゼンスを高めることで、先進国は平和の促進に貢献することができます。

私は、東南アジア、アフリカ、ラテンアメリカ、中央アジアにおける経済的プレゼンスを回復することが、先進国にとって最善の利益であると思います。これは自国の利益を促進する機会であり、またこれらの地域の発展と繁栄を助ける機会でもあります。

一方中国では、国家統計局が4月16日に発表した若年層の失業率は、前月比で0.8ポイント上昇し、20.4%となりました。これは、2021年夏に記録した19.9%を上回り、過去最高となりました。

調査対象全体の失業率は、前月比で0.1ポイント低下し、5.2%となりました。国家統計局の付凌暉報道官は、北京での記者会見で、「若者の雇用安定・拡大に向け、一段の取り組みが必要だ」と述べました。

統計局が同時に発表した他の経済統計は、軒並み予想を下回りました。これは、債務問題や民間セクターの弱い景況感が経済成長の重しになっていることを示しています。

今年大学を卒業する学生は約1158万人と見込まれていることもあり、若年層の高い失業率は大きな課題となっています。

一方、過去3年間で就業者数は4100万人余り減少しています。これは、新型コロナウイルス禍がもたらした経済的影響と国内の少子高齢化がいずれも響いています。

これだけ、雇用が、その中でも若者雇用が悪化しているのですから、本来なら中国人民銀行(中国の中央銀行)は大規模な量的緩和を行うべきですが、そうはしていません。

それには、やはり国際金融のトリレンマにより、人民銀行は、独立した金融政策ができなくなっているからとみられます。

国際金融のトリレンマとは、1980年代にロバート・マンデルによって提唱された理論です。これは、ある国が次の3つの政策を同時に達成することは不可能であると主張するものです。

  • 為替相場の安定(固定相場制)
  • 金融政策の独立性
  • 自由な資本移動

これらの3つの政策は、いずれも経済成長に重要であると考えられています。しかし、同時に達成することは不可能であり、3つのうち2つしか実行できないというものです。これは、数学的にも、経験的にも知られている事実です。

例えば、中国は為替相場の安定を重視しているため、金融政策の独立性や自由な資本移動を制限しています。これは、中国経済の安定に効果的である一方で、経済成長の可能性を制限しているとも言われています。

現在の中国は、独立した金融政策ができない状況になっており、若者の雇用が深刻になっていても、思い切った金融緩和ができません。それを実行すると、ハイパーインフレになったり、資本の海外逃避が深刻になることが考えられるため、やりたくてもできないのです。

深刻な若者の雇用状況を改善することすらできないのですから、他の経済問題を解消することもなかなかできないとみて良いでしょう。

これを解決にするには、変動相場制に移行するなどの大胆な改革が必要なのですが、習近平にはその気は全くないようです。それをするには、他の改革もせざるをなくなり、そうなると、中国共産党の統治の正当性を毀損しかねないので、改革をせず、その都度弥縫策を繰り返しているのでしょう。

これでは、ここしばらく、中国がこれらの地域でかつての存在感をすぐに取り戻すことは難しいでしょう。

これは、日本にとっても大きなチャンスであり、日本はこの機会を逃すべきでありません。

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2023年7月2日日曜日

中国や韓国の野党が「処理水放出」に非科学的な反対、一部マスコミも加担 受け取る賠償を引き上げる「公金チューチュー」の類か―【私の論評】「公金チューチュースキーム」の発見と根絶には、地方の当該業界に詳しい人こそ目を光らせるべき(゚д゚)!

高橋洋一「日本の解き方」

多数の福島第一原発の処理水タンク AI生成画像

 福島第一原発の処理水放出をめぐっては、中国や韓国の野党、国内の一部勢力などが反対している。夏にも放出開始とされるが、科学的な知見を無視して反対を続ける背景は何か。

 まず、「汚染水」と「処理水」は異なることを確認しておきたい。「汚染水」は、多くの放射性物質を含み、事故後に原発建屋内で発生したものだが、「処理水」は、ALPS(多核種除去設備)などを用いて浄化処理を行うことによって、トリチウム以外の放射性物質について環境放出の際の規制基準を満たすまで浄化した水だ。一部のマスコミは意図的なのか、両者を混同した記事が多かった。

 問題があるとすれば、除去しにくいトリチウムだ。除去しにくいのは一般的な水素と同じように酸素と化合して水分子を構成するからだ。実際に身の回りでは水分子に含まれる形で存在するものが多く、大気中の水蒸気、雨水、海水、水道水にも含まれている。

 トリチウムは放射線の一種であるベータ線を出すが、エネルギーは非常に弱く、空気中を5ミリしか進むことができないため紙1枚で遮蔽が可能だ。また、トリチウムを含む水は、生物学的半減期が10日で、体内に取り込んだ場合も速やかに体外に排出され、特定の臓器に蓄積することもない。なお、物理的半減期も12年と短い。

 このため、韓国や中国を含め世界中の原子力施設から、福島の処理水より高濃度のものが現に放出されている。それによる健康被害は報告されていない。ここまで説明すれば、科学的な問題のないことが分かるが、さらに念には念を入れ、政府はIAEA(国際原子力機関)の専門家らにも安全性の検証を要請している。

 これまでの検証作業では問題はないが、5月29日から6月2日まで最終的な報告に向けて、IAEAはアルゼンチン、オーストラリア、カナダ、中国、フランス、韓国、マーシャル諸島、ロシア、米国、英国、ベトナム出身の11人の国際専門家からなる調査団を福島に派遣して総括的な調査を行った。その包括的調査を踏まえて、IAEAは最終的な報告書を公表する予定だ。

 しかし、それまでは中国などは政治的理由で反対するだろう。それは科学でなく、単に日本の風評をおとしめるという外交戦、外交プロパガンダだ。日本政府は猛烈な反撃をしなければいけない。でないと、日本の国益が確保できない。

 IAEAによる最終的な報告書が出た後でも、一部の左派国内活動家は反対し続けるかもしれない。それはもはや科学でなく、一部関係者が受け取る賠償を引き上げる「公金チューチュー」の類ではないか。また、原発に関連することはなんでも反対することが「活動」という面もある。

 ここには、一部マスコミも加担している。言ってみれば、風評被害を拡大しているわけで「イジメ」と同じ構造だ。これまでどのようなジャーナリストやマスコミが、何をやってきたのかを検証することも必要だろう。

 福島第一原発の処理水放出は、科学的な問題がないことは明らかだ。しかし、政治的理由や風評被害を理由に反対する勢力は少なくない。日本政府は、これらの反対勢力に強く反撃し、処理水放出を進めなければならない。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】「公金チューチュースキーム」の発見と根絶には、地方の当該業界に詳しい人こそ目を光らせるべき(゚д゚)!

福島第一原発の処理水の放出は、2013年に提案されて以来、物議を醸してきました。一部の国や勢力は、放出は危険であり、環境に悪影響を及ぼす可能性があるとして批判しています。しかし、科学的根拠はこうした主張を裏付けるものではありません。

処理水は、放射性同位元素のほとんどを除去する厳格なろ過プロセスを経ています。処理水中の放射能レベルは、海水中のレベルよりもはるかに低くなっています。実際、国際原子力機関(IAEA)は、処理水の放出は海洋の自然背景放射線レベルよりも「重要ではない」と述べています。

IAEAはまた、放出が環境に与える潜在的影響について多くの調査を行っています。これらの研究は、放出が海洋環境に与える影響はごくわずかであるとしています。処理水は膨大な量の海水によって希釈され、放射性同位元素は速やかに拡散するでしょう。

結論として、科学的根拠は、福島第一原発からの処理水の放出が危険であるという主張を支持していません。処理水は厳密なろ過プロセスを経ており、放射能レベルは海水に含まれるレベルよりはるかに低くなっています。IAEAはまた、放出による環境への潜在的影響について多くの調査を行ってきました。

結論として、福島第一原発からの処理水の放出が危険であるという主張は、科学的証拠からは支持されないです。処理水は厳密なろ過プロセスを経ており、放射能レベルは海水に含まれるレベルよりもはるかに低くなっています。IAEAはまた、放出が環境に与える潜在的な影響について多くの研究を行っており、これらの研究では、放出が海洋環境に与える影響はごくわずかであるとしています。

以下は、処理水放出の安全性を裏付ける追加的な証拠です。

処理水は10年以上にわたって福島第一原発のタンクに保管されてきましたが、周辺住民の被曝事例は報告されていません。

処理水は太平洋に放出されますが、太平洋は広大でよく混ざり合った水域です。放射性同位元素はすぐに希釈・拡散され、人間の健康や環境に大きなリスクをもたらすことはないと予想されています。

IAEAは処理水放出の安全性について何度も検証を行い、安全であるという結論を出しています。

もちろん、新しい技術や慣行には常に不確実性が伴います。しかし、現在までの科学的根拠は、福島第一原発からの処理水の放出が安全であることを示唆しています。

以上の包括的調査を踏まえて、IAEAは最終的な報告書を公表する予定です。最終報告書においても、以上の公表された内容をまとめるだけであり、新たな事実がでてくる可能性はありません。

上の記事で、高橋洋一氏が語る、「公金チューチュー」とは、簡単に言うと『公金(税金)をピンハネ(中抜き)する仕組み』です。

日本の公金チューチューシステム。多数のゴキブリが公金をチューチュー吸い込んでいる。Ai生成画像。

しっかり委託元が管理責任を果たしていればこのような問題は起きないのでしょうが、例えばワクチン接種に伴う問い合わせセンターの設置事業では、委託元であるパソナが委託した『エテル』という企業が本来100人の電話受付員を配置すべきところ、33人しか配置していなかったことが判明。全然電話がつながらないという事態が発生しました。

なぜ、公金チューチューのスキームが発生するかといえば、単純にいえば、これがお金がも儲かるスキームだからです。

例えば悪徳政治家Aが「日本の使われていない土地を活用して、田んぼを作る事業をやろう」と言い出したとします。

悪徳政治家Aはその為に予算100億円を組み、自分で作った会社、もしくは「見返り」がある仲良しの会社Bに100億円で事業を依頼します。これを「利権」といいます。

仲良しの会社Bは100億円のうち50億円をもらって、また別の土木業者Cに50億円で仕事を丸投げします。

土木業者Cは更にそこから49億円取って残りわずか1億円で働く人を集めます。このようなスキームでお金を儲け、政治家や会社が儲かる仕組みを「公金チューチュースキーム」というのです。

日本の悪徳政治家とトンネル会社と利権 AI生成画像

現代日本ではこんなことがそこかしこで発生しているのが現状です。

例えば東京オリンピックでは本来日当20万円が出るはずのアルバイトに時給1600円しか支払われなかったり、福島第一原発で働く除染員に、同じく高額な日当のはずがコンビニバイト程度のお金しか払われなかったり等のことがありました。

民間業者は自分たちで作った商品を一生懸命宣伝して顧客に買ってもらい、売上を得るのが一般的ですが、パソナなどの中抜き業者は何もせずに大金が入ってくるので、政府は昆虫食推進とか様々な事業を新しく実施しようとするのだと見られています。

処理水の放出が 賠償金など"公金をピンハネするための一種の仕組み "として利用されてるいる可能性はあると思います。この主張が事実であれば、対処すべき重大な問題です。しかし、無論放出に反対する一部の国内左派活動家の動機がこれだけではないでしょう。

原子力に対する不信感や潜在的な環境への影響への懸念など、他にもさまざまな要因があるでしょう。さらに、「倒閣運動」への利用という面もあると思われます。

ただ、IAEAの調査などを待つまでもなく、当初から福島第一原発の処理水放出は危険ではないことが、科学的に明らかであるにもかかわらず、反対運動がおこり、IAEAの調査が行われ、最終報告が出る直前になってさえ、科学的な知見を無視して反対をし続けるという現実をみれば、「公金チューチュースキー厶」存在を疑うのは自然な流れでもあるように思います。

日本では、上記の疑惑の他にも、公金チューチュースキームによって行われている可能性のある事業は数多くあります。

例えば、
  • 公共事業の受注をめぐる汚職
  • 政治家や官僚への献金
  • 不良債権の処理
  • 国有地の売却
  • 補助金の不正受給
などが挙げられます。

公金チューチュースキームによって、本来、国民のために使われるべき公的資金が、不正に私的利益のために使われてしまいます。その結果、国民の生活水準が低下したり、経済成長が鈍化したりするなどの悪影響が出る可能性があります。

また、公金チューチュースキームは、国民の税金に対する信頼を低下させる可能性があります。その結果、税収が減少したり、国民の投資意欲が低下したりするなどの悪影響が出る可能性があります。

公金チューチュースキームは、国民の税金が不正に使われるため、社会に大きな悪影響を与えます。公金チューチュースキームを防止するためには、国民一人ひとりが公金の使い道に目を光らせることが重要です。

色眼鏡をかけて他人を疑う人 AI生成画像

ただし、「公金チューチュースキーム」は、直接の補助金や賠償金等の申請窓口や、交付事務を行うのが、地方自治体なので、どのレベルで「スキーム」が決められているかは別にして、「スキーム」による不自然さは地方自治体の申請受付や実際の交付に現れてくることが多いようです。

当該地域の人であっても、当該業界に詳しくない人たちは、自治体への補助金申請や、自治体による補助金交付に関して、不自然さを見つけるのは難しいでしょう。

まさしく、地方における当該業界に属する人(属していてスキームの恩恵を受けていない人)や、当該業界に詳しい人々こそが、補助・賠償金の申請や、その交付の不自然さに気づきやすいが故に「公金チューチュースキーム」の発見と廃絶に強く関与できるのではないかと思います。

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2023年7月1日土曜日

中国が「対外関係法」を施行 米にらみ対抗姿勢を明記―【私の論評】中共が、何の制約も制限もなく、自由に外交問題に関与し、外国人を取り締まる体制を確立するその第一歩か(゚д゚)!

中国が「対外関係法」を施行 米にらみ対抗姿勢を明記
 中国は2023年7月1日、外交政策の基本原則を定めた「対外関係法」を施行しました。主権や安全を守るために報復措置をとる権限を明記するなど、対立の長期化が見込まれる米国への対抗姿勢を示す内容です。中国は同日にスパイ行為の定義を拡大し、取り締まりを徹底する「改正反スパイ法」も施行しており、習近平政権の対外強硬姿勢が法制面でも鮮明になっています。

 全45条の対外関係法は米国を念頭に「覇権主義と強権政治に反対する」とした上で「中国の主権、安全、発展の利益を損なう行為に対して相応の対抗・制限措置を講じる権利を有する」と定めました。外交担当トップの王毅共産党政治局員は6月末、党機関紙、人民日報への寄稿で「対外闘争の法的な『道具箱』であり、国際秩序の『安定器』の役割を果たす」と同法の意義を説明しました。

 習国家主席の外交思想を「法的な形で実行した重大な成果」と強調しており、権威強化の狙いもうかがわれます。同法には、巨大経済圏構想「一帯一路」や、グローバル安全保障イニシアチブ(GSI)といった習氏が提唱した国際戦略が盛り込まれています。香港メディアの「香港01」は6月末、同法制定について「習氏の外交思想がかなりの長期にわたって中国外交を指導することを暗示している」と指摘しました。

 習政権は共産党による指導強化を進めており、同法は「対外工作は党の集中統一指導を堅持する」と明記。党中央の指導機構が「国の対外戦略と、関係する重要方針や政策を指導し実施する」と明確化しました。

 中国共産党は1日、創建102年の記念日を迎えました。党中央組織部は同日までに、党員数が2022年末時点で約9,804万人に達したと発表。前年末から約132万人増えました。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】中共が、何の制約も制限もなく、自由に外交問題に関与し、外国人を取り締まる体制を確立するその第一歩か(゚д゚)!

中国は2023年1月28日、全国人民代表大会(全人代)の常務委員会で「対外関係法」を可決しました。この法律は、中国が対中制裁や「西側の覇権」に反撃するための法的根拠を提供するものと見られています。

対外関係法は、国家主権と安全保障、発展の利益を危うくする行為や国際法と「国際関係の基本的な規範」に反する行為に対して、「対抗・制限措置」を講じる権利を中国は有しているとしています。

中国はすでに、米国による台湾への武器売却を理由にロッキード・マーチンやレイセオン・テクノロジーズに報復制裁を科したことがあります。今回の新法はそうした措置の法的根拠を強化することになります。

対外関係法はまた、中国共産党の習近平総書記(国家主席)が中国の外交政策を個人的にコントロールすることを明文化しています。

習近平

同法は、グローバル安全保障イニシアチブ(GSI)やグローバル文明イニシアチブ(GCI)といった習氏の代表的な政策に言及することで、法律というよりも習氏の外交政策宣言に近いものです。これは法的プロセスを通じて中国の外交政策を個人化したものといえます。

対外関係法は、報復措置を実施する上で政府機関に対して部門間の調整と協力を強化するよう義務付けています。また、国務院には「関連実務機関を設立する」権限が与えられました。

中国は米国に比べ制裁の実施例が比較的少なく、2021年に初の対外制裁法「反外国制裁法」を成立させました。

共産党系の新聞、環球時報は対外関係法が制裁などに対する「外交闘争の法的根拠を提供する」と専門家の話を引用し報道。「西側の覇権に対する予防と警告、抑止の役割も果たし得る」との見方も示しました。

習氏は今年3月の演説で、「米国主導の西側諸国」が中国を「包括的に封じ込め、抑圧」しようとしていると非難していました。

ただ、対外関係法は中国政府に制裁への新たな対抗手段を与えるものではなく、より抽象的なレベルでの反外国制裁法の繰り返しに過ぎないようです。

対外関係法は政府機関に向けたものですが、中国による対外関係の行動は共産党指導部全体が統括することも強調。習氏はここ数年、政府機関に対する党の掌握を強めています。

同法は党が外交政策を担当し、外務省と国務院が実務機関であることを非常に明確にしています。

私は、これは独裁国や全体主義国家によく見られるように、外交は独裁者の胸先三寸で決められることを、法的に明確にしたに過ぎないように見えます。

中国共産党が常に中国の外交政策に強い影響力を持ってきたことを考えれば、これは驚くべきことではないかもしれません。

独裁国家や全体主義国家では、独裁者の意向で外交政策が決定されることが多いです。独裁者が最終的な権力と権威を持ち、他の誰にも相談することなく決定できるからです。中国の場合、中国共産党が独裁者に相当するのだから、彼らが外交政策について最終的な発言権を持っていてもおかしくはないです。

もちろん、外交関係法が単なる法的形式的なものであり、中国共産党が外交政策に関して外交部や国務院と協議を続けるという可能性もあります。しかし、この法律が外交政策における中国共産党の役割について具体的に言及していることは、中国共産党が外交政策により実践的なアプローチを取っていることを示唆しています。

外交関係法が実際にどのように実施されるかは、時間が経ってみなければわからないです。しかし、中国共産党が外交政策の主導権を本気で握ろうとしているというシグナルを送っていることは明らかです。このことは、中国と他国との関係だけでなく、世界秩序にも影響を及ぼす可能性があります。

「対外関係法」の施行とともに「改正スパイ防止法」が施行されたことは、中国共産党が、何の制約も制限もなく、自由に外交問題に関与し、外国人を取り締まることができる体制を確立する、その第一歩であると考えられます。

外国人を厳しく取り締まる中国 AI生成画像

対外関係法は中国共産党に、自国の利益を脅かすと見なした国に対して報復措置をとる権限を与えます。これには経済制裁、渡航制限、あるいは軍事行動も含まれます。改正反スパイ法では、スパイの定義を拡大し、中国国民や企業のデータ収集など、以前はスパイとみなされなかった活動を含めるようにしました。これにより中国共産党は、完全に合法的な活動に従事している外国人を取り締まる権限を得たといえます。

注意しなければならないのは、これらはまだ2つの法案に過ぎず、中国共産党の意図を断言するのは時期尚早だということです。中国共産党は、対外政策において自己主張を強めており、脅威とみなす外国人を取り締まる姿勢を強めている。これは世界秩序に重大な影響を与える可能性があります。

中国共産党(CCP)が対外政策を強化し、脅威とみなす外国人を弾圧しやすくしたことは、世界秩序に多くの深刻な影響を与える可能性があります。

まずは、中国と他国との緊張の高まりがあります。中国のより積極的な姿勢は、近隣諸国や米国をはじめとする西側諸国との緊張の高まりにつながる可能性があります。これは、経済制裁、軍備増強、さらには武力衝突など、さまざまな形で現れる可能性があります。

次に、中国が世界的な大国として台頭することで、世界の分断が進む可能性があります。その結果、気候変動や核拡散といったグローバルな課題の解決がより困難になる可能性があります。

さらに、中国の外国人取り締まりは、国内の人権低下にもつながる可能性があります。中国共産党が新たな権限を行使して、反体制派や政府批判者を取り締まる可能性があるからです。

日本にとって、中国の対外政策がもたらす影響は特に大きいです。日本は米国の緊密な同盟国であり、中国の隣国でもあります。つまり、日本は中国と米国の対立の渦中に巻き込まれる可能性があるのです。

かといって、もし日本が米国と対立して中国側についた場合、多くの深刻な事態に直面する可能性が高いです。

まずは、米国からの経済制裁です。米国は日本にとって最大の貿易相手国であり、日本が中国側についた場合、経済制裁を科す可能性があります。これは日本経済に大きな影響を与えるでしょう。

米国からの軍事的圧力。米国は、東アジア地域への増派を含め、日本への軍事的圧力を強める可能性もあります。これは日中間の緊張を高め、武力衝突に発展する可能性さえあります。

米国からの信頼の喪失もあります。日本が中国側についた場合、米国からの信頼を失う可能性が高いです。これは、日本の安全保障の礎のひとつである日米同盟にも悪影響を及ぼすことになります。同時に欧州や、豪州、インドからの信頼も失うことになります。

また、中国には脅威とみなす国に対して経済的強制力を行使してきた長い歴史があることも注目に値します。もし日本が中国側につけば、中国は経済力等を使って日本に圧力をかけ、要求を呑ませる可能性もあります。

天然でお花畑的な頭の日本人 AI生成画像

中国に関しては、こちらが味方につけば、まさか味方に悪いことはしないだろうという、日本人の天然でお花畑的理屈は通用しません。米国や欧州から距離を置いた日本に対して、中国は最初は微笑みで対応するでしょうが、それは束の間に過ぎず、すぐにここぞとばかり、今までよりもさらに強硬になり、様々な要求を突き付け日本を中国の支配下にできるように動くでしょう。拒否すれば、軍事的圧力をかけてくるでしょう。

それどころか、日本への中国の浸透がすすめば、様々な不平等条約を押し付け、日本の富を奪う挙に出てくるかもしれません。さらには、改憲を迫り、日本が軍隊を持てるようにして、中国軍と共同作戦ができるようにし、日本軍をインドやロシアとの国境地帯に派遣したり、中国軍とともに、台湾と戦争することを迫るようになるかもしれません。

無論、日本の科学技術などは中国のものにして、中国は科学技術においても、台頭するようになるかもしれません。その時に、親中派・媚中派の国会議員や、財界人などを呪っても手遅れです。その頃には、親中派・媚中派は、国家を裏切った信頼できないものどもとして資産など身ぐるみ剥がされて、日本から放逐されているか、拘束されているかもしれません。お花畑日本人には、想像もつかないことなのかもしれません。

結局のところ、米国と中国の対決において中国側につくかどうかの決断は、中国に味方した場合の結果が非常に深刻なものになることは明らかであり、日本にとって選択の余地はないとみられます。

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2023年6月30日金曜日

プリゴジンの乱が見事に炙り出した、ロシア地上軍の激しい損耗度―【私の論評】ウクライナ侵攻によりロシアの衰退が明らかになり、北方領土問題解決のチャンスが生じているのは間違いない(゚д゚)!

プリゴジンの乱が見事に炙り出した、ロシア地上軍の激しい損耗度

エフゲニー・プリゴジン

 エフゲニー・プリコジン氏と彼が率いるワグネル部隊は、2023年6月23日にロシア南部軍管区司令部を占拠し、モスクワに向かいました。ワグネル部隊は、200キロメートル離れたモスクワまで到達したが、6月25日にベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領との間で停戦合意が成立し、モスクワへの進撃を中止した。

 この事件は、ロシア軍の弱体化を示すものとして注目された。ロシア軍は、ワグネル部隊の進撃を阻止することができず、モスクワを守るために十分な戦力を配備していなかったのだ。また、ロシア軍は、ワグネル部隊の武装蜂起を止める措置を講じることができず、プーチン大統領は、映像と言葉で脅すことしかできなかった。

 この事件は、ロシア軍がウクライナでの戦いで大きな損害を被っていることを示している。ロシア軍は、ウクライナでの戦いで、戦車や歩兵戦闘車、装甲車などの兵器を大量に失っており、兵士も多数死亡している。ロシア軍は、ウクライナでの戦いが長期化すれば、さらに大きな損害を被る可能性がある。

この事件は、ロシアの政情にも影響を与える可能性がある。ワグネル部隊は、プーチン大統領の側近であるエフゲニー・プリコジン氏が率いる私兵部隊である。ワグネル部隊の武装蜂起は、プーチン大統領の権力基盤に揺さぶりをかけるものとして注目された。

この事件は、ロシアの今後の政情に大きな影響を与える可能性がある。ロシア軍がウクライナでの戦いで大きな損害を被れば、プーチン大統領の権力基盤が揺らぐ可能性がある。また、ワグネル部隊の武装蜂起は、プーチン大統領の権力基盤に揺さぶりをかけるものとして注目される。

この記事は元記事の要約です。詳細を知りたい方、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】ウクライナ侵攻によりロシアの衰退が明らかになり、北方領土問題解決のチャンスが生じているのは間違いない(゚д゚)!

ロシアは現在、ウクライナ侵攻による戦費と経済制裁による経済的困窮に直面しています。経済紙フォーブスによると、ウクライナ軍の情報に基づく兵器の損失額は約51億ドルに上り、戦費はさらに膨らんでいます。

経済制裁により外貨獲得が難しくなる中、ロシアの財政は直撃されています。さらに、頭脳流出が進んでおり、有識者や文化人が国外に逃れています。

ロシアからの頭脳流出 AI生成画像

流出者の大部分は高い技能や知識を持つ頭脳労働者であり、これによりロシアの経済は長期的な低迷に陥る可能性があります。この混乱と困窮により、ロシアは領土の割譲や勢力圏の縮小などを余儀なくされる可能性もあります。日本はこの状況を見逃さず、北方領土問題の好機を逃すべきではありません。

ただし、北方領土は現在ロシアの軍事支配下にあり、日本が武力で奪還しようとすれば、軍事衝突に発展する可能性が高いことに留意する必要があります。

ロシアが極東からウクライナに軍隊を派遣し、北方領土の防衛が手薄になっている事実を裏付ける事実があります。

『モスクワ・タイムズ』紙は2023年6月21日、ロシアが極東サハ共和国で「戦争をテーマにした」地元の祝日を開催していると報じ、一部の地元民の怒りを買ったと報道しています。同紙はまた、この祝日が「ウクライナ戦争への支持を喚起するためのものだと見る向きもある」と指摘しました。

ラジオ・フリー・ヨーロッパは2023年2月25日、ロシア軍の動きに関する情報をウクライナ情報部に提供した疑いで、ロシア極東地域の住民が反逆罪で拘束されたと報じました。この拘束は "ロシアがウクライナで戦争をする中で、極東の治安を懸念している最新の兆候 "だといいます。

BBCは2023年3月8日、ロシアがウクライナ軍を強化するために極東から軍の一部を撤退させたと報じました。同報道は、この撤退は "ロシアが多面的な圧力に直面していることの表れ "だと伝えました。

これらは、ロシアが極東からウクライナに軍隊を派遣しており、北方領土の防衛が手薄になっているという事実を裏付ける情報源のほんの一部です。重要なのは、これらは単なる疑惑であり、ロシアは極東からウクライナに軍隊を派遣していることを確認してはいないものの、これが事実であると判断できます。

以下は、私が紹介した情報源へのリンクです。
モスクワ・タイムズ紙 戦争をテーマにした先住民の祝日、ロシア極東で憤慨を呼ぶ https://www.themoscowtimes.com/2023/06/21/war-themed-indigenous-holiday-sparks-outrage-in-russias-far-east-a81577
ラジオ・フリー・ヨーロッパ ロシア極東の別の住民が反逆罪で拘束される: https://www.rferl.org/a/russia-treason-case-far-east-ukraine/32448445.html
BBCニュース ウクライナ紛争: ロシア軍はどこにいるのか: https://www.bbc.com/news/world-europe-60158694
上の記事にもあるように、ロシア軍は、ワグネル部隊の進撃を阻止することができず、モスクワを守るために十分な戦力を配備していなかった程なのですが、なおさら北方領土の守備は手薄になっていることが予測できます。

ロシアがウクライナに侵攻している間は、北方領土の防備は手薄でありつづけるでしょうし、ウクライナ侵攻が終了したにしても、ロシアは当面は西側の防備を固めるでしょうから、北方領土の防備は従来よりは手薄になるでしょう。

これは、明らかに日本にとって北方領土を奪還するチャンスといえます。

日本が北方領土を奪還するために取りうる手段としては、以下のようなことが考えられます。

外交: 紛争の平和的解決を目指し、ロシアとの外交協議を継続する。
経済制裁: ロシアに経済制裁を科し、北方領土返還を迫る。
国際協力: 日本は米国など他国と協力し、ロシアに北方領土返還の圧力をかけることができる。

注意しなければならないのは、いずれの手段も北方領土返還に成功するという保証はないといいうことです。しかし、これらはすべて、日本がこの長年の紛争を解決するために検討しうる選択肢です。

昨年初めて行われた北方領土択捉島でのロシア軍による戦勝パレード

ウクライナにおけるロシア軍の弱体化によって、ロシアは北方領土をめぐる日本との交渉に前向きになるかもしれないです。

ロシアが地域の安全保障に対する脅威とみなされ続ければ、国際社会は北方領土を取り戻すための日本の努力をより支持するようになるでしょう。特に、クリミアを含めて、ウクライナが失った領土を取り戻した場合、この支持は大きなものになるでしょう。

結局のところ、日本による北方領土奪還の試みが成功するかどうかは、ロシアの交渉意欲、日本に対する国際的な支持の度合い、日本の国内政治状況など、多くの要因に左右されるでしょぅ。

私は、ロシアが経済的にかなり疲弊し、ロシアが現状のテリトリーを掌握し続ける事が難しくなり、ロシア連邦内の共和国などの独立の機運が高まった場合、現在の北方領土を取り戻す最大のチャンスが訪れると思います。

2014年のプーチンのクリミア併合は、プーチンが信頼できるパートナーではないことを示しており、日本は彼が約束を守ることを信用すべきではありません。ロシアの指導者がプーチンから他の指導者に変わったときが最大のチャンスでしょう。

ソ連の解体後、エリツィン大統領時代に北方領土問題に光明が差すものの、プーチンの登場でそれが無視されました。エリツィン時代は民主主義への移行期で、合理的な主張が必要でした。

プーチンも初期には領土問題を解決する姿勢を見せましたが、後に強硬な姿勢を示し、領土問題が膠着状態に陥りました。

プーチン

島々の返還と引き換えに、日本がロシアもしくは、極東の新たな独立国に経済協力を提供するという可能性もあり得ます。

ウクライナ侵攻によりロシアの衰退が明らかになり、北方領土問題解決のチャンスが生じているのは間違いありません。日本の交渉力が問われる状況です。

全体として、日本が北方領土を取り戻す可能性は高いと思いますが、保証はされていません。日本が北方領土を取り戻せるかどうかは、これまで述べてきたようなことが重要な役割を果たすでしょう。

北方領土問題の解決は、日本にとって、国益にかなうだけでなく、国際社会の平和と安定にも大きく貢献するものです。日本政府は、北方領土問題の早期解決に向けて、引き続き全力を尽くしていく必要があります。

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2023年6月29日木曜日

税収上振れ3年連続 「菅内閣レガシー」岸田首相に刺さった中西質問―【私の論評】岸田首相は現状では、「増税しない」選択肢を持っていることはだけは間違いない(゚д゚)!

税収上振れ3年連続 「菅内閣レガシー」岸田首相に刺さった中西質問

岸田首相

 日本の税収は、新型コロナウイルスの影響にもかかわらず、3年連続で過去最高を更新し、2022年度は初の70兆円台に達する見通しです。岸田文雄首相は、この好調な税収の動向を踏まえ、防衛力の強化や少子化対策に充当する考えを示しています。また、菅義偉前首相の内閣の功績として評価する声もあります。この上振れ分の使途を巡っては、与野党間で論争が活発化することが予想されます。

 2022年2月4日、衆議院財務金融委員会で、自民党の中西健治議員は、菅内閣下の20年度の税収が上振れ、21年度も同傾向の見通しとなることを指摘し、政府に対して「巣ごもり需要で好調な製造業と、対面抑制で苦戦しているサービス業との二極化を認識し、対応してほしい」と求めました。

中西健治議員

 中西議員は、菅前首相が懇意にする小此木八郎元国家公安委員長の地盤を引き継いで参院からくら替えを果たし、麻生太郎副総裁の派閥で財政金融政策を取り仕切っています。そのため、官僚の間には「菅、麻生両氏が予算先議権を持つ衆院へ移った中西議員を介して『ちゃんと手を打て』と岸田首相へサインを送った」との観測が広がりました。

 首相に近い自民党議員によると、答弁した鈴木俊一財務相が中西議員の指摘を岸田首相に伝えたとのことです。岸田首相は、中西議員の指摘に心を打たれたようで、財源策の一つとして上振れを念頭に置くようになったとのことです。また、2022年6月16日に閣議決定された骨太方針で、防衛増税の先送りを示唆したのも、直近の税収見通しを見極めるためだったとのことです。

これは、神奈川新聞の元記事を要約したものです。詳細を知りたい方は元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】岸田首相は現状では、「増税しない」選択肢を持っていることはだけは間違いない(゚д゚)!

上の記事で中西議員が発言した内容は、2022年2月4日、衆議院財務金融委員会のものであり、税収が増えていることにはかわりがありませんが、その後状況は随分変わっています。最近では、円高が亢進して、輸出産業には有利、輸入産業には不利な状況になっています。ただ、全体としては、企業の収益は上がっています。

輸出産業は、いわゆる優良大企業が多く、輸入産業は中小企業が多いです。この状況は今後も続くことになりそうです。そのため、税収も伸びていることですから、それを活用しつつ、中小企業対策も実施していくべきでしょう。

それと、中西議員は菅内閣レガシーと言っていますが、現在の日本経済の好調は、安倍・菅内閣のときに合わせて100兆円の補正予算を増税なしで組むことを決断した結果によるものであり、正しくは安倍・菅内閣レガシーと呼ぶのが正しいと思います。ただ、神奈川新聞の記事なので、やはり地元の菅義偉氏を持ち上げたいという気持ちもあるのでしょう。

ただ、安倍首相の経済政策を継承した菅氏も、素晴らしいと思いますし、岸田首相には是非安倍政権の経済政策を継承して頂きたいです。ただし、無論消費税増税はのぞき、100兆円の補正予算の財源を増税ではなく、国債としたことなどを継承していただきたいです。

22年度一般税収が、70兆を超すとみられるのは、4月時点ですでにこのブログに掲載しています。その記事のリンク以下に掲載します。
防衛財源確保法案のカラクリ 本当は「増税なしでも手当可能」だ 透けてみえる財務省の思惑―【私の論評】確実に税収が上ブレする現状で防衛財源確保法案は、財務省の増税の意図を隠す表看板に過ぎない(゚д゚)!
この記事は、4 月29日のものです。この記事より結論部分を以下に引用します。
さらに足元の月次税収の趨勢を踏まえ、2022 年度は 72 兆円程 度への着地を予想されています。22 年度税収は当初予算時点で 65.2 兆円のところ、昨年 11 月の補正予算時点 で 68.4 兆円と上方修正がなされましたが、ここから更なる上振れ着地が予想されます。
一般会計税収(4~翌 2 月の累計値)
背景にはインフレ・円安、賃金・雇用の回復などがあります。足元で特徴的なのが景気の振幅に影響 されにくい消費税が大きく伸びている点です。およそ 40 年ぶりの物価急上昇は、税収にもこれまでに ない変化をもたらしています。

このような状況でも、わざわざ防衛財源確保法案を出すのは、これを財務省は増税の隠れ蓑にするためだと判断するのが妥当だと思います。
この状況で、いずれ増税することになれば、反発は必至とみられます。

天下り先でスーパーリッチな生活をする財務官僚たち AI生成画

さて、本当に増税されるかどうか、これには財務省人事がヒントを与えてくれそうです。

政府は6月27日、国税庁の阪田渉長官が勇退し、後任に住沢整主税局長を充てる人事を正式発表した。 

主税局長には青木孝徳官房長を起用。首相官邸で少子化対策に携わった宇波弘貴首相秘書官が財務省に戻り、官房長に就きます。

28日の人事では、 理財局長には奥達雄総括審議官が就き、後任には坂本基官房審議官が就任。関税局長には江島一彦財務総合政策研究所長を充て、後任には渡部晶政策立案総括審議官が就任します。 

茶谷栄治事務次官、神田真人財務官、新川浩嗣主計局長、三村淳国際局長は留任します。人事の骨格を維持し、防衛力強化や異次元の少子化対策を巡る財源問題、ロシアによるウクライナ侵攻への対応などに注力する。この人事は何を意味するのか、特に財務省の権力の観点から解説します。

2023年度の日本の財務省人事異動は、岸田政権が、防衛力強化や異次元の少子化対策を巡る財源問題、ロシアによるウクライナ侵攻への対応などに注力することを示唆しています。また、この人事異動は、岸田政権が、財務省の権力構造を変更し、財務省をより効率的に運営しようとしていることを示唆しています。

具体的には、斎藤理財局長の退任と奥総括審議官の就任は、財務省の権力構造に変化をもたらす可能性があります。斎藤理財局長は、安倍政権時代に理財局長を務め、財政政策の立案に大きな影響力を持っていました。奥総括審議官は、財務省の官僚であり、財政政策の立案に携わってきました。

しかし、奥総括審議官は、斎藤理財局長ほど財政政策の立案に影響力を持っていないと考えられます。そのため、斎藤理財局長の退任と奥総括審議官の就任は、財務省の財政政策の立案に影響を与える可能性があります。

また、奥総括審議官は、安倍政権の財政政策に対して、より柔軟な姿勢をとってきたと考えられます。そのため、斎藤理財局長の退任と奥総括審議官の就任は、財政政策の方向性に変化をもたらす可能性があります。

方向性の変化とは、財政出動の拡大や増税の抑制につながる可能性があります。

斎藤理財局長は、財政出動よりも増税を重視していました。一方、奥総括審議官は、財政出動を重視していると考えられます。そのため、斎藤理財局長の退任と奥総括審議官の就任は、財政出動の拡大や増税の抑制につながる可能性があります。

ただし、これらの変化が実際に起こるかどうかは、今後の情勢次第です。

また、岸田政権は、財政政策の方向性について、まだ明確な方針を示していません。そのため、斎藤理財局長の退任と奥総括審議官の就任が、どのように財政政策に影響を与えるかは、今後の政権の動向を見守る必要があります。

そうして、斎藤理財局長は、財務省の省内序列で2番目のポストである理財局長を務めていました。奥総括審議官は、財務省の省内序列で3番目のポストである総括審議官を務めていました。そのため、斎藤理財局長の退任と奥総括審議官の就任は、財務省の省内序列に変化をもたらす可能性があります。

ただ、これらの人事異動が、実際に財務省の権力構造にどのような影響を与えるかは、今後の情勢次第です。

一方、自民党内の積極財政派は、近年、勢力を拡大しています。その背景には、次のようなものがあります。
  • 少子高齢化や人口減少による経済成長の鈍化
  • 中国の台頭による安全保障環境の悪化
  • 新型コロナウイルス感染症による経済の混乱
積極財政派は、これらの課題に対応するために、財政支出を拡大し、経済を活性化させることが必要だと主張しています。また、財政赤字を心配する声に対しては、将来の成長への投資として、赤字を容認すべきだと主張しています。

増税に反対する自民党積極財政派議員 AI生成画

積極財政派の勢力拡大は、岸田政権の財政政策にも影響を与えています。岸田首相は、当初は財政再建を重視する姿勢を示していましたが、積極財政派の支持を獲得するために、財政支出の拡大に転換する可能性が高まっています。

積極財政派の勢力拡大は、日本経済にどのような影響を与えるでしょうか。積極財政派の主張通り、現状では、このブログで指摘した通り、財政支出の拡大が経済を活性化させ、成長につながるのは間違いありません。一方、需給ギャップがある現場で、増税してしまえば、経済は沈滞し、低成長どころか、縮小することになります。

これについては、過去20年以上にもわたって、多くのまともな世界標準のエコノミストが繰り返し主張してきました。このブログでも、同じくらいの期間、これを主張してきました。

今や20年前とは異なり、マクロ経済を理解する政治家も増えてきています。財務省も、20年前と同じ感覚で、簡単に「増税」とはいえない雰囲気になってきているのは確かです。

税収の上振れは以前から予想されたことであり、自民党内では防衛費の増額に伴う増税の先送りを求める声が一層強まっていました。政府は6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」でも、自民党内の積極財政派の声に配慮して従来は「24年以降」としていた増税開始時期を「25年以降も可能となるよう、柔軟に判断する」と先送りを示唆していました。

岸田首相は現状では、「増税しない」とはっきり意思決定はしてはいないでしょうが、「増税しない」選択肢も持っていることはだけは間違いないと考えられます。


「悪い円安論」がやはり下火に…株価は上昇、埋蔵金も増える マスコミも忖度、政府が儲かる「不都合な事実」―【私の論評】いわゆる「悪い円高」を主張した人々の言説は今後信じるべきではない(゚д゚)!

防衛財源確保法案のカラクリ 本当は「増税なしでも手当可能」だ 透けてみえる財務省の思惑―【私の論評】確実に税収が上ブレする現状で防衛財源確保法案は、財務省の増税の意図を隠す表看板に過ぎない(゚д゚)!

『安倍晋三回顧録』を批判した「大物」大蔵次官の文春インタビュー記事に反論しよう―【私の論評】需要の低迷に対処せず、緊縮に走るのは、氷風呂で風邪を直そうするようなもの。全く馬鹿げている(゚д゚)!

2023年6月28日水曜日

中国核軍拡で危惧される中印パ3国の核軍拡スパイラル―【私の論評】核に関する論議は、日本を本気で守ろうとした場合避けて通ることはできない(゚д゚)!

中国核軍拡で危惧される中印パ3国の核軍拡スパイラル

岡崎研究所

大型ミサイルの発射実験の光景 AI生成画像

 5月26日付の米国の外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」は「南アジアでの核兵器を巡る衝突」との米ハドソン研究所シニアフェローのアンドリュー・クレピネビッチによる論説を掲げ、米カーネギー国際平和基金のアシュリー・テリスが新著で論じた、中国の核軍拡がインドとパキスタンの核軍拡と地域の緊張増大を誘発する可能性につき解説している。

 中国の核軍拡は、インドとパキスタンの核軍拡と地域の緊張増大を誘発する可能性がある。中国は、米国との世界的競争に関心を移し、その結果大規模な核軍拡に踏み切った。インドに対し通常戦力で大幅に劣るパキスタンは、中国の支援を得て、最小限の抑止から段階的な抑止に舵を切ろうとしている。

 この2つの核軍拡に挟まれ、中国との対抗を主な関心事項とするインドは、コストも念頭に最小限の抑止を維持する可能性が高いが、中国の核兵器が大幅に拡充し、早期反撃のために警戒レベルが上がることや、精密攻撃能力の改善も相まったインドの残存核能力への脅威が増大し、更には防空・ミサイル防衛能力が強化されインドの核反撃の防止などが進めば、そのままではいかなくなるかもしれない。

 現状でも、中国とパキスタンの双方の核威嚇に対抗するためには、インドは一定の核軍拡が必要と言うのがテリスの見立てだ。が、そうなると当然パキスタンも核軍拡に走るので、中国の核軍拡が3カ国全てに核軍拡のスパイラルを起こすということになる。あまり見たくない世界である。

 そして、この状況へのインドの対応策として、米国によるインドへの戦略的協力の可能性を示唆していることが、正にテリスの慧眼の素晴らしいところだと思う。核実験数が十分でないことからインドの水爆の信頼性には限界がある。水爆の実証のためにインドが核実験を再開すれば、各国からの制裁は免れないし、日米豪印4カ国の枠組み「Quad(クアッド)」の崩壊にまで繋がりかねない。

 逆に、中国のパキスタンへの各種核兵器関連技術の協力に対応する意味からも、米国が、水爆の設計情報や、インドの核兵器の残存能力を高めるために必要な核搭載原潜建造に不可欠な海軍原子炉設計情報をインドに提供する可能性をテリスは示唆している。正に、AUKUSのインド版だ。

 インドがAUKUSに入るというのはあまりありそうにないが、インド用に新たな米国他との協力の枠組みを作るという可能性は排除されないだろう。この論説が指摘するように、そのためにインドが戦略的自律性を放棄する必要があるかどうかは、その枠組みの内容次第かもしれない。ともかく、極めて大胆で貴重な問題提起であることは間違いない。そして、米国が自身の戦略的優先度を真剣に考え抜くことができれば、これは、一つのあり得る選択ではないかと思う。

【私の論評】核に関する論議は、日本を本気で守ろうとした場合避けて通ることはできない(゚д゚)!

中国、インド、パキスタンの核軍拡は「核のトリレンマ」ともいうべき状況を生み出しています。

「核のトリレンマ」という言葉は、アシュリー・J・テリスが2013年に出版した著書『インドの核政策』で初めて使用した。テリスは、南アジアの3つの核保有国(中国、インド、パキスタン)が、それぞれの核政策において「トリレンマ」と呼ばれる課題に直面していると主張しました。

インド、パキスタン、中国は互いに国境を接しており国境紛争もある

 核抑止力:これらの国は、互いに、あるいは他国からの攻撃を抑止するために、信頼できる核抑止力を維持する必要がある。

核の安全性: 事故や不正使用を防ぐため、核兵器や核物質の安全性とセキュリティを確保する必要がある。

核不拡散: これらの国々は、核兵器が地域の他の国々に拡散するのを防ぐ必要がある。

テリス氏は、これら3つの課題はしばしば相反すると主張しています。例えば、信頼できる核抑止力を維持するためには、その国の核兵器の規模を拡大し、高度化する必要があるかもしれないです。同様に、域内の他国への核兵器の拡散を防ぐ努力は、これらの国々が自国の核戦力を制限することを必要とするかもしれないです。

核のトリレンマは、これらの国々が自国の安全保障と地域の安全保障を確保するために慎重に管理しなければならない複雑な課題です。

核のトリレンマは、これらの国が協力して取り組むべき深刻な課題です。協力することによって、これらの国々は軍拡競争や事故、核兵器拡散のリスクを軽減することができます。また、この地域により安定した安全な核環境を発展させるために協力することもできます。

テリスのほかにも、南アジアにおける核のトリレンマについて執筆した学者がいます。
  • ヴィピン・ナラン『印パ紛争における核戦略』(2014年)
  • マイケル・クレポン『安定性と不安定性のパラドックス:南アジアにおける核兵器と抑止力』(2003年)
  • スコット・セーガン『動く標的 変化する世界における核の安全と核セキュリティ (2009)
核のトリレンマは複雑で困難な問題ですが、南アジアの安全保障を確保したいのであれば、理解することが不可欠です。

以下に、核のトリレンマも踏まえた上で、上記の様な米国の動きがなかったとすれば、インド・パキスタンは中国の核軍拡に対してどのように考えどのような動きをするかについて考察した内容を掲載します。


中国の核軍備増強がインドやパキスタンの核軍備増強の引き金となり、地域の緊張が高まる可能性は確かにあります。中国の最近の核兵器増強は著しく、インドとパキスタンが自国の安全保障への影響を懸念するのは理解できます。

もしインドとパキスタンが、自国の核兵器が中国を抑止するには不十分だと感じれば、自国の核戦力を増強したくなるかもしれないです。そうなれば、この地域での軍拡競争につながりかねず、緊張を高めるだけです。

重要なのは、これはひとつの可能性にすぎないということです。インドとパキスタンが、中国の核兵器増強がもたらす課題に対処するために、互いに協力する方法を見つけることができる可能性もあります。しかし、軍拡競争のリスクは無視できず、国際社会が認識しておく必要があります。

以下は、軍拡競争の可能性を高めるいくつかの要因です。
中国が急速なペースで核兵器を増やし続ける場合。

インドとパキスタンが、安全保障を米国やその他の国に頼ることができないと感じた場合。インドとパキスタン、あるいは中国との間で大きな紛争が発生した場合。
以下は、軍拡競争の可能性を低くするいくつかの要因です。
インドとパキスタンが核安全保障に関して互恵的な合意に達することができた場合。

米国やその他の国が、インドとパキスタンに安全保障を提供できる場合。

インド、パキスタン、中国の関係が全般的に改善すれば。
南アジアで軍拡競争が起こるかどうかを断言するのは時期尚早です。しかし、軍拡競争のリスクは国際社会が認識すべきものであり、その防止に積極的に取り組むべきものです。

確かに、軍拡競争の可能性を高める要因のなかに、インドとパキスタンが安全保障を米国やその他の国に頼ることができない場合や、中国のとの間で大きな紛争が発生した場合、軍拡競争の可能性を高めることになります。

上の記事では、インドの安全保障に対して、米国が何らかの形で関与することを示唆しています。その一つの方法が、インドがAUKUSに入るというものですが、これあまりありそうにないですが、インド用に新たな米国他との協力の枠組みを作るという可能性はあり得るとしています。そうすることにより、南アジアにおける軍拡競争を制限できる可能性は十分にあると思われます。

結局重要なのは、そのような可能性を検討しておくことです。検討しつつ、実際に軍拡競争が起こり、地域のバランスが崩れそうになれば、その検討事項を実際に試してみることができます。しかし、検討しておかなければ、軍拡競争が激しくなっても、おろおろするしかありません。その場しのぎで何かをしたとしても、あまりうまくいくとは考えられません。

そこで、不安なのが日本です。上の記事でも、中国の急速な核軍拡が日米同盟の抑止力に対して持つ意味についての議論は多々されてきたとされていますが、実際にどのような議論がされてきたのか、以下に掲載します。

第一に、中国の核兵器保有量は、ほんの数年前よりもはるかに増大しています。これは、中国が米国やその同盟国からの攻撃を抑止する能力をはるかに高めていることを意味します。

第二に、中国は極超音速ミサイルや原子力潜水艦など、新しいタイプの核兵器を開発しています。これらの新型兵器は、中国の攻撃を抑止する日米同盟の能力にとって大きな挑戦となる可能性があります。

第三に、中国は核兵器運搬能力を拡大しています。これは、中国が米国と日本のより多くの標的に核兵器を運搬できるようになったことを意味します。

中国の急速な核軍拡が日米同盟の抑止力にとってどのような意味を持つのかについては、まだ議論が続いています。しかし、中国の核兵器が日米同盟にとって、ほんの数年前よりもはるかに大きな脅威となっていることは間違いないです。

中国の核拡大の脅威を日本ではタブー視すべきではありません。リスクを理解し、効果的な対応策を練るためには、この問題についてオープンで率直な議論をすることが重要です。

日本が中国の核拡大の脅威について議論することに消極的な理由はいくつかあります。そのひとつは、日本には長い平和主義の歴史があり、多くの日本人が核兵器について議論することに抵抗を感じていることです。もうひとつの理由は、日本は貿易面で中国に大きく依存しており、日本企業のなかには、その関係を危うくするようなことをしたがらないところもあるだろうということです。

しかし私は、中国の核兵器拡大のリスクは無視できないほど大きいと考えています。日本は、この脅威に対処するための包括的な戦略を策定するために、この問題について率直でオープンな議論を行う必要がります。

以下は、中国の核拡大の脅威に対処するために日本ができることです。

日本は米国との同盟関係を強化することができます。米国は世界で最も強力な核兵器保有国であり、日本は米国との同盟関係によって、中国の攻撃に対する強力な抑止力を得ることができるはずです。この議論の中で、安倍元総理が主張していた、日米の核共有に関しては、有効な手立てとして、十分議論すべきと思います。

首相の時の安倍晋三氏

安倍元首相は、旧ソ連崩壊後にウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンの旧ソ連諸国3カ国が核兵器保有を放棄する代わりに米英露の核保有3カ国が主権と安全保障を約束した1994年の「ブダペスト覚書」に言及し、ウクライナが「もしあの時、戦術核を一部残し、活用できるようになっていればどうだったかという議論も行われている」ことを紹介していました。

ウクライナが核を全部放棄していなければ、今日ウクライナ戦争はなかったかもしれません。そのウクライナは今日、ロシアによる核攻撃の脅威にさらされています。

「被爆国として核廃絶という目標は掲げなければいけないし、それに向かって進んでいくことが大切だ。日本は核拡散防止条約(NPT)の加盟国で非核3原則があるが、世界ではどのように安全が守られているかという現実について議論していくことをタブー視してはならない。現実に国民の命、国をどうすれば守れるか、様々な選択肢を視野に議論すべきだ」と述べました。

日本は独自の核兵器を開発することもできます。これは賛否両論あるでしょうが、日本が自国の安全保障をより高度に管理できるようになります。

日本は、中国の核の脅威に対抗するために、インドやオーストラリアのような国々と協力して、地域の核安全保障の枠組みを構築することができます。

重要なことは、中国の核の脅威に対する簡単な解決策はないということです。しかし、この問題についてオープンで誠実な議論を行うことで、日本はこの脅威に対処するための包括的な戦略を策定することができます。

核に関する論議は、日本を本気で守ろうとした場合避けて通ることはできません。

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