2019年2月15日金曜日

米中交渉の根本的な食い違い、中国を打ち負かす秘策とは?―【私の論評】米国による中国制裁は最早トランプ政権ではなく米国の意思となった(゚д゚)!


トランプを読み解く(4)

立花 聡 (エリス・コンサルティング代表・法学博士)

 米中貿易戦争をめぐる交渉期限の3月1日まで残りわずか2週間。果たして交渉が妥結し、貿易戦争は終了となるのだろうか。本稿の仮説が成立すれば、答えは「NO」になる。



 昨年12月9日付けの寄稿「休戦あり得ぬ米中貿易戦争、トランプが目指す最終的戦勝とは」にも書いた通り、90日間の交渉期間は、休戦でも停戦でもなく、激戦の先送りに過ぎない。さらに少々大胆な仮説として、トランプ氏が目指しているのは、最終的な「戦勝」であって、当面の妥協や平和といった短期的利益を前提とする「休戦」や「終戦」ではないはずだと説いた。この論点はいまでも変わらない。

交渉は必ずしも妥結するためのものとは限らない

 「君主は、自らの権威を傷つけるおそれのある妥協は、絶対にすべきではない。たとえそれを耐えぬく自信があったとしても、この種の妥協は絶対にしてはならない。なぜならほとんど常に、譲歩に譲歩を重ねるよりも、思いきって立ち向かっていったほうが、たとえ失敗に終わったとしても、はるかに良い結果を生むことになるからである」(『マキアヴェッリ語録(新潮文庫) 訳・塩野 七生』

 仕掛けられた衝突は基本的に回避できない。それを回避しようと一方的に譲歩に譲歩を重ねれば、相手に足元を見られる。相手は往々にして欲が出て予定よりもさらに過酷な要求を突きつけてくる。こういう弱腰で交渉の場に出ると、相手に敬意をもってもらえない。交渉にあたっては、まず原則を貫く手ごわい敵として相手に敬意をもってもらうことが大前提だ。このイメージを維持できなければ、衝突や交渉にすでに負けていると言っても過言ではない。

 交渉は、必ずしも妥結するためのものとは限らない。日本人の弱点(美点でもあるのだが)は、「話せば分かる」と思いこんでいるところにある。国際政治などの場合、話しても分からないどころか、分かっていても分からないふりをするのが常。一方的な誠意や妥協ではただただ相手につけ込まれるだけ、という場面が多々ある。

 米中貿易戦争はトランプ米大統領が仕掛けたものだ。中国が望んでいない争いであり、しかも中国は全般的に劣勢に立っている。中国が次々と譲歩しているため、交渉成立する可能性があると見ている学者や専門家も少なくない。私は当初から、この交渉は妥結する見込みがほとんどないと見ていた。この持論はいまでも変わらない。理由を言おう。

米中交渉の根本的な食い違い

 現時点の米中交渉の中身をよく見ると、中国が譲歩しているのは貿易の「量」であるのに対して、米国が求めているのは、中国の構造改革という「質」であった。中国は「おたくの農産品輸入をもっと増やす」と言っているが、米国は「うちの技術を盗むな」と要求している。量と質の食い違いがあり、そもそもこんな交渉は妥結するはずがない。
 大豆の輸入増などで騙されてはいけない。輸入の減少で困っているのは中国だ。国民食である豚肉の供給は、豚の餌の原料となる大豆に頼っている。豚肉の供給に支障が出て豚肉の価格が上がれば、中国人民の不満が一気に噴出する。ただでさえ今、豚コレラで大問題になっているくらいだから、泣き面にハチで大豆の輸入が減れば、豚肉の問題はただの食糧問題でなく、政治問題になる。故に米国からの大豆輸入を増やすのは何も譲歩ではない。中国の国益に合致しているのである。
習近平主席は2018年12月18日に開かれた中国改革開放40周年大会で、意味深長な一言を語った――。

「改めるべき事で改められる事は我々は断固改める。改めべからざる事で改めてならぬ事は我々は断固改めない」

中国改革開放40周年大会

 これはトランプ氏に語り掛けているようにも聞こえる。さて、何が「改めるべき事で改められる事」か、何が「改めべからざる事で改めてならぬ事」かは言及していない。この言葉をトランプ氏はどのように受け止めるのだろうか。「すべき事でできる事」と「すべからざる事でしてはならぬ事」をわきまえたうえで交渉に臨めと、至って真っ当なリマインドだ。

 これは要するに「量」の交渉には応じてもいいが、「質」の変更要求には応じられないという明確なメッセージとみていいだろう。「質」の変更は政権の統治基盤を揺るがすものである以上、習氏はそんな妥協をするはずがない。

 一方、トランプ氏が貿易戦争を仕掛けた根本的な意図は、中国の本質的な構造変更にある。そこで貿易の量を若干積み増しされたところで妥協するのなら、それこそ権威を傷つけられるだけで、応じるはずがない。

貿易交渉を決裂させたほうが有利だ

 フーヴァー研究所が昨年11月29日付けで発表したレポート「中国の影響力と米国の利益 積極的な警戒」はある意味、現在のトランプ政権の対中戦略を裏付けるものとみていいだろう。昨今の米中交渉は、少なくとも、大豆の輸出を少し増やしたところで、トランプ氏が「Our farmers are going to be very happy(我が国の農民は喜ぶでしょう)」と微笑んで応酬することで済む話ではない。

 貿易戦争とそれにまつわる双方の交渉はあくまで戦術レベルのものであり、特に最近報じられている一進一退の様子は、カモフラージュにすぎない。トランプ氏が仕掛けた変化球で本質を見失ってはいけない。

 中国側としても「質的部分はアンタッチャブルで、量の交渉ならいくらでも応じる」という原則を手放すことはあり得ない。いってみれば、「戦争賠償をしても、敗戦は受け入れられない」。なぜなら、敗戦を受け入れると、中国はそれ以上の賠償を支払わなければならなくなる可能性があるうえに、国内における政治的正統性まで失いかねないからだ。それなら、最後の一兵卒が息絶えるまで戦い抜き、「玉砕」したほうがマシだ。

 中国の戦術は引き延ばし戦術。2年弱引き延ばして、次の大統領選でトランプ氏が降板すれば挽回できる。そう目論んでいるだろう。

 この企みをトランプ氏はすでに見破っている。だから、何としてでも2020年夏頃までに、中国問題を片づけたいわけだ。このターゲットを達成するためにも、貿易戦争の交渉を決裂させ、関税を引き上げるのが得策だ。

トランプの対中政策、弱体化させてから取引を

 オーストリアの保守紙「Die Presse」は2017年1月20日付けで、「トランプは中国経済を傷つきやすくした(弱体化させた)」(Trump macht Chinas Wirtschaft verwundbar)という記事を掲載した。見出しはトランプ大統領の対中姿勢を本質的に捉えたものだった。

 記事は中国経済の現状について、当時発表されたばかりの2016年の経済データを挙げ、「この26年来の最悪を記録した」と述べ、さらに、ここ数年の経済低迷によって大きな恐慌が引き起こされなかった原因をも分析した。

 数十年にわたって続く中国の高速経済成長はいよいよペースを落とし始めた。中国政府は輸出から内需牽引に切り替えようと懸命だった。ところが、企業の負債率は改善が見られず、個人消費も一向に振るわない。

 タイミング悪く、その時期に米大統領に就任したトランプ氏は中国批判を繰り返し、為替操縦国と断じたうえで、保護的な通商政策を厳しく批判した。記事はこう指摘する。「トランプ氏は中国製品に対し45%の関税をかけると言っているが、これが現実になれば、中国は深刻なダメージを受けるだろう」。

 中国税関総署の黄頌平報道官は同年(2017年)1月13日、トランプ氏の保護主義的な通商政策によって中国の輸出が抑制される可能性を示し、記者団に対し、中国は反グローバル化政策の最大の被害者になると認めた。

 45%どころか、25%でも大変なことになる。いや、25%の前段階である10%だけでも、2018年後半の中国経済はすでにひどく弱ってきている。

計算ずくの貿易戦争

 2年前、2017年1月号の当社顧客向けレポートに私が寄稿した米中関係の分析記事の一節を抜粋する――。

 「トランプ政権が中国製品に高関税を課した場合、中国は対米報復に乗り出す。中国の対米輸出は年間4000‐5000億ドル規模、これに対して対米輸入は1500億ドル規模。貿易戦争になれば、中国は断然不利な立場に置かれる。中身を見ると、中国の対米輸出品は労働集約型製品が中心で、米国の対中輸出品の多くが技術集約型製品である。製品代替性の度合からしても中国に不利だ。中国は人件費の上昇で製造業の優位性を失いつつあるなか、貿易戦争になれば、むしろベトナムなどの新興国に大きな商機が舞い込む。一方で中国が受ける影響は深刻だ。労働集約型製品の受注が低迷すれば、雇用問題が浮上し、社会や政権の安定を脅かす事態になりかねない。通商・経済問題が一気に政治問題に発展する」

 僭越ながら、2年前に書いた予想はほぼ的中した。そして、トランプ氏が正確にシナリオを描けたことに感心せずにいられない。彼は決して無謀な貿易戦争を仕掛けたわけではない。さらに上記の当社レポートから次の一節を抜粋する――。

 「これ(貿易戦争)によって、米国は対中取引で優位に立てば、政治的攻勢を強めるだろう。対台関係や南シナ海問題、あるいは中国の政治的構造問題に踏み込むかもしれない。ふたを開けてみると、一連の取引によってチャイナ・パワーの抑制に成功すれば、もともとTPPに期待されていた対中けん制機能も実現できる」

 このくだりは今後の展開から徐々に見えてくるだろう。

人権カードの使い方

 トランプ大統領と中国の駆け引きは必ずしも、整合性の取れた形を見せているわけではない。議論の焦点を取り上げる際の濃淡も一定ではない。とりわけ具体的な案件として注目されるのは、「南シナ海問題」、「中国の為替操作国認定問題」と「中国製品に対する関税問題」だった。

 人権問題だけはあまり触れていない。オバマ時代でも、米国の立場上人権問題は幾度となく提起されてきたが、中国への攻撃に熱心なトランプ大統領なら、人権ほど都合のよい材料を看過するはずがない。では、なぜ触れようとしなかったのか。

 人権問題は最強カードであるだけに、中国の反発も強い。これを切り口にしてしまうと、対中交渉それ自体が行き詰まりかねないからだ。政治体制ないし政権の正統性といった根幹部分に触れる問題を交渉のカードにしてはいけない。それをやってしまうと、ビジネスの交渉で相手企業の社長に対しその地位の正統性を問題視するのと同等の愚策になる。しかし、トランプ氏は決して人権カードを捨てたわけではない。そのカードを出すタイミングを見計らい、しかもできれば他人にそのカードを出してもらおうと画策していた。

 後日談になるが、2018年夏頃からトランプ氏はようやく人身売買やウイグル人の弾圧問題を持ち出し、スポット的に人権外交を強化する姿勢を見せ始めた。時期的には、米中貿易戦争の展開に呼応したアクションであると見て間違いないだろう。

 さらについ数日前(2月9日付け報道)、トルコは中国のウイグル族に対する人権侵害がひどくなっているとして中国を批判し、ウイグル族の収容所の閉鎖を求めた。なんとも絶妙なタイミングではないか。

中国のウイグル族に対する人権侵害に関して懸念を表明したペンス米副大統領

 人権については、まず人権の定義・射程と計測尺度という問題がある。いくら普遍的な価値観とはいえ、いわゆる米国をはじめとする西側諸国における人権の計測尺度は必ずしも地球上唯一のものとは限らない。

 たとえばシンガポールの場合、公共秩序法の改正で当局の権限が拡大し、公的な集会を規制あるいは禁止できるようになった。司法当局を非難する弁護士や学者が起訴されたことが、表現の自由の権利に大きな打撃となった。報道の自由も制限された(「アムネスティ・レポート2017/2018より)。このような状況を欧米流の定義に照らせば、人権問題にされてもおかしくない。さらに、シンガポールの奇跡的な発展それ自体が開発独裁とも言える政治体制のもとで遂げられたものだという批判もある。米国はなぜシンガポールを非難せずに矛先を中国に向けるのか。

 この類の議論になると、トランプ氏も決して得意なほうではない。そもそも他国の人権問題は米国の国益に直接的な利害関係があるのか、ひいてはこれに強い関心を示す米国民はどのくらいいるのか。ここまでくれば、トランプ氏にとっての他国人権問題はある意味で国際政治や外交、通商面の交渉カードに過ぎないのである。

 サウジアラビア人記者ジャマル・カショギ氏殺害事件についても、トランプ氏は事件への関与が疑われるムハンマド・ビン・サルマン皇太子の責任を不問にする姿勢に徹していた。サウジへの1100億ドル相当の武器輸出合意を維持するために、つまり金で殺人行為も許されるのかというメディアの批判には、トランプ氏は動じる気配すら見せていない。

 トランプ氏は他国への介入について、理想主義的な介入はしないが、実利に基づく現実主義的な介入は辞さない、という姿勢である。人権問題も然り。

<第5回へ続く>

【私の論評】中国制裁は最早トランプ政権ではなく米国の意思となった(゚д゚)!

私も、ブログ冒頭の記事のように、交渉が妥結し、貿易戦争は終了となることはないと思います。

中国側は米中首脳会談を提案し、トランプもこれに前向きのようです。中国側は経済が急失速しており、トランプの方は2020年の大統領選挙を控え貿易面で何らかの得点を挙げたいと考えているものと思われます。

中国から何らかの具体的譲歩を引き出し、それをトランプの駆け引きの勝利と宣伝し、米中の冷戦の一時的休止がもたらされる可能性は否定できないでしょう。

ただ、仮に首脳会談が開かれ短期的に妥協が成立したとしても、長期的には米中の経済競争が終わることはないでしょう。中国との対決は貿易から始まり、今や先端技術における覇権争いをはじめ、全面対決の様相を示しています。

米中の対決が先端技術にまで及んでいるのは、米国が、中国の挑戦は米国の卓越した地位を脅かしているとの危機感を抱いているからです。例えば、中国は、通信速度が現行の4G携帯電話の100倍となる、次世代の社会基盤となると見込まれる5G技術で、米国に引けを取らない開発をしていると言われます。

そういうわけで、米国は先端技術における中国の台頭の「封じ込め」にかかっており、中国が先端技術の開発を国策として推進する「中国製造2025」を非難するとともに、中国の先端技術製品の調達を禁止し、同盟国に対しても同様の措置を取るよう要請しています。米中の経済対立は、構造的に非常に根深いものです。

こうした根深い対立が、3月1日などに決着がつくはずもないし、仮にトランプ大統領が幕引きをはかりたいと思うことがあったとしても、トランプ政権内のドラゴンスレイヤー(帯中国強硬論者)たちが、なかなか"Yes"とは言わないでしょうし、仮にトランプ氏が政権内をまとめることができたとしても、今度は議会や、司法当局が"Yes"とは言わないでしょう。

米国は明確な三権分立制が樹立されていて、米国の大統領といえども、議会の了承がないと何もできません。米司法当局による、孟容疑者との司法取引が成立すれば、司法当局も中国によるあらゆる不正を暴き、ファーウェイやZTEだけに限らず、あらゆる中国による米国を毀損するような工作を処断することになるでしょう。米国議会は、「アジア再保証推進法」を超党派で成立させ、中国と対立する姿勢を露わにしています。

トランプ大統領


米国の大統領には強力な権限があると思い込んでいる人が日本には多いようですが、実際はそうではありません。米国では明確な三権分立が設立されているので、平時においては、世界で最も権限の少ないリーダーといわれています。

平時には、救急車一台ですら、大統領の意図で動かすことはできないと揶揄されているくらいです。ただし、戦時(特に第二次世界体制んのような総力戦) の場合には、大統領に大きな権限が集中するようなシステムになっています。

多くの人は、戦時の米国大統領を思い浮かべて、強大な権限があると思い込んでいるのかもしれません。もしそうなら、国境の壁などのトランプの意のままにすぐに予算を得て建設されているはずです。

このようなことから、トランプ氏が仮に幕引きを図りたいと考えたにしても、議会や司法当局は中国への処断を継続します。これでは、トランプ氏が仮にある程度のところで、幕引きを図りたいと考えても、到底無理です。もう米国の中国に対する経済制裁は容易にとどまることはなく、トランプ大統領の任期などとは関係なく、一定の結論が出るまで、継続されるとみて間違いないでしょう。最早、米国の対中国制裁は、トランプ政権の意思ではなく、米国に意思になったとみるべきです。

ただし、トランプ政権によって一時的に制裁が緩むということはあったとしても、ブログ冒頭の記事にもあるように、現時点の米中交渉の中身をよく見ると、中国が譲歩しているのは貿易の「量であるのに対して、米国が求めているのは、中国の構造改革という「質」なのです。中国は「おたくの農産品輸入をもっと増やす」と言っているのですが、米国は「うちの技術を盗むな」と要求しています。量と質の食い違いがあり、そもそもこんな交渉は妥結するはずがないのです。

特に「質」といった場合、これを中国が全面的に受け入れることにしたとしても、現状の体制ではほぼ不可能です。

これを受け入れるためには、中国は抜本的な構造改革をしなければなりません。このような構造改革のためには、中国政府が掛け声をかけて、資金を投下して、米国の技術を盗むななどと号令をかけても不可能です。

それには、中国の遅れた社会構造を改めなければなりません。米国などの先進国と比較して、圧倒的に遅れている、民主化、政治と経済の分離、法治国家化をすすめないことには、何も変えられません。

もし、これらを進めてしまえば、中国共産党はあっという間に統治の正当性を失い、崩壊することになります。

習近平が語った、「改めるべき事で改められる事は我々は断固改める。改めべからざる事で改めてならぬ事は我々は断固改めない」ことばのうち、「改めべからざる事で改めてならぬ事」とはまさにこのことです。
トランプ政権、米国議会、米国司法当局に追い詰められる習近平
中国が、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を推し進めれば、中共は崩壊し、中国は全く新しい体制にならざるを得ないことを習近平は周知しているのです。
であれば、この経済対立はどうなるかといえば、米国はあらゆる制裁を続け、短くても10年、長ければ20年は続き、その果てに中国が構造改革をして体制を変えるか、さもなくば経済的にかなり弱体化して、他国に影響を及ぼせなくなるといういずれかの結論が出ることによって終焉することになります。
もし、中国が経済弱体化の道を選べば、経済は現在の韓国レベルにまで落ち込むでしょう、これは東京都と同じくらいの規模であり、ロシアと同程度です。
現在のロシアや韓国がいくら頑張っても、米国と直接対峙できないのは明らかです。ロシアはソ連の核や軍事技術を継承しているため、侮ることはできず、大国とみられがちですが、実体はいくら強がって見せても、他国に大きな影響力を及ぼせる状況ではなくなっています。

いまのままではいずれ、中国は図体が大きいだけの、アジアの凡庸な一独裁国家と成り果てることになります。

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2019年2月14日木曜日

大嘘がバレた韓国国会議長。なぜ韓国は天皇侮辱を繰り返すのか?―【私の論評】日本にとって最良の韓国対処は無視すること(゚д゚)!

大嘘がバレた韓国国会議長。なぜ韓国は天皇侮辱を繰り返すのか?

天皇陛下に対する「戦争犯罪の主犯の息子」との発言が日本側に問題視されるや「戦時の日本の国王の息子という意味」と釈明も、インタビューを行なった通信社に音声データを公開されて言い逃れができない状況に追い込まれた韓国国会議長。2012年にも当時の韓国大統領・李明博氏が天皇に土下座を求め日本が強く反発したことが記憶に新しいですが、なぜこのような発言が繰り返されるのでしょうか。台湾出身の評論家・黄文雄さんが自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』でその理由について詳しく記しています。

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年2月12日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

黄文雄氏

【韓国】「日本に国王を奪われた」と嘘の主張で天皇侮辱を正当化する韓国


韓国国会議長「戦争犯罪の主犯の息子、天皇が謝罪を」発言に河野外相「発言には気をつけて」

韓国の文喜相国会議長が、ブルームバーグのインタビューに対して、現在の明仁天皇を「戦争犯罪の主犯の息子ではないか」とし、「天皇が一度おばあさんの手を握って『本当に申し訳なかった』と一言いえば(問題が)すっきり解消される」と話したことに対して、日本の河野太郎外相が「発言に気をつけてほしい」と批判しました。

さらに2月12日の国会答弁では、安倍首相がこの韓国国会議長発言に対して、謝罪と撤回を要求したと述べました。それほど日本人の虎の尾を踏むような内容だったということです。

【速報】韓国国会議長発言の謝罪・撤回要求 安倍首相が国会答弁

文議長は「戦争犯罪の主犯の息子」とは言っていないと反論していますが、いずれにせよ天皇に対して謝罪を求めるという非礼な態度には変わりがありません。

米ブルームバーグが“証拠”突きつけ 韓国・文議長「天皇は戦争犯罪の主犯の息子」音声公開

もちろん文氏は、天皇ではなく、「日王」という表現を使っていました。

この文喜相国会議長は、文在寅政権が誕生したときに特使として日本を訪問し、慰安婦合意について「世論が反対している」と伝えた人物です。日韓議連でもありますが、たびたび反日的な言動をしています。
天皇は日本人にとって「日本統合の象徴」であり、天皇を侮辱されることに対して強い拒否感があります。2012年には、李明博大統領が竹島に上陸したうえで、「日王が韓国を訪れたければ、日本が犯した悪行と蛮行に対して土下座して謝罪しなければならない」などと発言し、日本の世論が強く反発したことがありました。

竹島に上陸した李明博大統領(当時)

韓国が日本の皇室をたびたび侮辱するのは、理由があります。韓国は、日本が朝鮮半島から七つのものを奪ったという「七奪」の一つとして、「韓国の王族を日本が奪った」と主張しているからです。日韓併合(合邦)によって李氏朝鮮の王家を滅ぼしたというのです。

しかし、それは全くの歴史の捏造です。日本は日韓合邦時、朝鮮王朝の王家に皇族に準じる地位を与え、さらに皇族である梨本宮家の方子女王を、李氏朝鮮国王かつ大韓帝国初代皇帝・高宗の世子である李垠(イウン)へ嫁がせました。

日本が韓国を植民地にしたというなら、皇族を植民地の王に嫁がせるなどということは、ありえないことです。イギリスはビルマ王朝の男子を処刑、女子は兵士に与えて王朝を滅亡させましたし、1,000年以上も宗主国であった中華王朝にしても、皇帝の親族を朝鮮王朝に嫁がせたということはありませんでした。親族になるということは、同等の地位になることを意味しますから、属国や植民地の王族に嫁がせるなどということは、宗主国にとってありえないことなのです。

梨本宮家の方子女王(当時)

ところが日本はこうした国々と異なり、朝鮮半島に気を使って王族を残し、しかも皇族に準じる地位とし、親戚関係まで築いたのです。李垠の父・高宗は、日本に抵抗する意味で1897年に国号を李氏朝鮮から大韓帝国に改め、さらに自ら皇帝となりました。1907年にはオランダのハーグで開催されている万国平和会議に密使を送り、国際社会に対して日本批判とともに自国の外交権回復を訴えるという暴挙に出ています。しかし、東アジアのトラブルメーカーであり、財政的にも実質的に破綻していた大韓帝国の外交自主権を停止し、日本が保護国化するというのは、国際社会が望んでいたことであり、高宗の訴えは完全に無視されたのです。

このように、高宗は日本に対して敵対的な行動を取っていたものの、日本は朝鮮王室を断絶させることなく、李垠が皇太子となることを認め、さらに日本の皇室と親戚関係になって庇護したわけです。

しかし日本敗戦後、韓国大統領となった李承晩は、日本に留学していた李垠の帰国を認めませんでした。王室が復活し、政治の実権を握ることを恐れたからです。李垠は朴正熙の時代の1960年代になってようやく韓国へ帰国できましたが、王室が復活することはありませんでした。要するに、韓国国民が王室復活を望まなかったわけです。

ですから、韓国から国王を奪ったのは日本ではなく、李承晩であり、韓国国民なのです。ところがそのことは全く無視して責任を日本になすりつけ、「国王を奪われた恨み」として、天皇を「天皇」と呼ばず、わざわざ「日王」と呼んで軽んじているわけです。

もちろん、2000年以上も事大主義(大国に仕える)を続けてきた小中華の韓国にとって、「皇帝」とは中華帝国に君臨する存在であって、日本の「天皇」を認めていないという潜在意識もあるのだと思います。

李垠のお付き武官に安秉範(アン・ビョンボム)大佐という軍人がいましたが、彼は戦後、韓国で首都防衛を任されました。ところが朝鮮戦争が勃発、北朝鮮軍の猛攻撃によってソウルは陥落、安秉範はその責任を取って割腹自殺を果たします。

朝鮮戦争では李承晩大統領が真っ先にソウルから逃げ出し、しかも敵が追いつけないように橋を爆破、そのために逃げ遅れた多くのソウル市民が犠牲となりました。軍のトップが早々に敵前逃亡した一方で、旧帝国軍人だった安秉範は最後まで自分の任務を遂行したわけですが、現在の韓国では旧日本軍で大佐まで昇格したことから、「親日名簿事典」にその名が刻まれ、売国奴扱いされています。



また、旧日本軍時代に多くの軍功を立て、戦後は北朝鮮の侵攻を予知していた武人に、金錫源将軍がいます。その勇名は北朝鮮軍にも聞こえていたため、彼と対戦することを北朝鮮軍は非常に恐れていたといいます。日本刀を振りかざして前線で指揮する姿は軍神そのもので、朝鮮戦争では彼の名を慕って、かつての戦友である朝鮮人軍人が多く集まったといいます。まさに「救国の士」ですが、そんな金錫源も現在では、「親日名簿事典」に入れられています。

かつて日本の皇軍で働いた過去のある人物は、たとえ戦後に救国戦士だったとしても、売国奴扱いされるのが韓国です。その一方で、日本と敵対した人物は、徹底的に義人扱いします。

最近では、閔妃(びんひ)(明成皇后)が「悲劇の王妃」として、ドラマなどで美化されているようです。1895年10月、日本の三浦梧楼を首謀者とする一団が王宮になだれ込み、反日派だった閔妃を殺害したと言われていますが、その実態はよくわかっていません。

一説では、閔妃と嫁舅の争いを続けていた興宣大院君が暗殺の黒幕だったと言われていますが、いずれにせよ、閔妃は王宮内で政争に明け暮れ、浪費によって李氏朝鮮の財政を破綻状態にまで追い込んだ張本人として、つい最近までは韓国でも「悪女」の代名詞のような存在でしたが、「日本に殺された」ということから、悲劇的なストーリーがでっち上げられ、「国母」のような扱いを受けるようになりました。

閔妃

このように、現在の韓国の歴史はすべて「反日」が基本となっているのです。強盗殺人を犯した過去があり、多くの同士をテロで葬った金九などは、三・一運動失敗後、上海で大韓民国臨時政府主席に就任して日本に宣戦布告を行ったものの、国際的にまったく認められませんでした。にもかかわらず、現在では「抗日活動家だった」という理由から、義人として顕彰されています。盧武鉉(ノ・ムヒョン)などは、リンカーンと並び称しているほどです。

文国会議長が「天皇が謝罪すれば、慰安婦問題はすぐ解決する」というのは、まったくの嘘です。もしもそのようなことがあれば、さらなる日本批判の道具にすることは目に見えています。

もともと慰安婦問題からして、韓国側から「強制性があったことを言ってくれれば、問題は一区切りできる、未来志向の関係が築ける」と言われ、慰安婦証言の裏付けも取らないまま、「河野談話」を発表してしまったことが、「慰安婦問題」を現在まで続く大問題にまで発展させてしまったのです。そのことは、2014年4月2日に国会で行われた、石原信雄元官房副長官の証言でも明らかです。

河野談話の作成時「韓国から要望」 石原元副長官

韓国側の「こうしてくれれば問題は解決する」という提言は、決して信じてはいけないのです。「泣く子は餅を一つ多くもらえる」ということわざがある国です。一つの要求に応じれば、それを既成事実としてさらなる要求をしてくるのが韓国という国であることを、日本人は忘れてはいけません。

かつて李明博大統領は「日本はかつてほど強くない」という発言をしましたが、事大(強国に仕える)の国からすると、弱い国に対しては徹底的に嫌がらせをするのが普通のことなのです。

【私の論評】日本にとって最良の韓国対処は無視すること(゚д゚)!

上の黄文雄の語るようことは、おそらく80歳以上の日本人や韓国人なら、周知の事実だったと思います。実際、私も亡くなった祖父などから聴いて、上記のようなことは知っています。

しかし、日韓の両方で、まともな歴史教育をしなかったので、上記のような事実があたかも闇にでも葬られたかのように、多くの人々の記憶から消えたのです。それ以前は、両国の年配の人々の記憶に残っていたものが、これらの人々の人数が少なくなるとともに、日本では過去の歴史が正しく伝承されることなく、韓国では反日という形で歴史が歪められてしまいました。しかも、それが本格的に行われたのは1990年代になってからです。

上記のような内容は、日本人も韓国人の歴史上の事実として知っておくべきです。

さて、あくまで中国へ従属しようとする韓国は、現在の日米にとっても、かなり厄介な存在です。



最近エドワード・ルトワック著・奥山真司訳の『日本4.0 国家戦略の新しいリアル』を読みました。北朝鮮の非核化は現実に可能なのでしょうか。ルトワック氏によれば、現時点で、北朝鮮が進む道は三つあるといいます。

まず、非核化した北朝鮮がアメリカの戦略的な保護の下で、経済的に発展するというシナリオ、いわゆる「ベトナム・モデル」です。この「北朝鮮のベトナム化」は、日本にとっても最善の選択肢といえます。

次の選択肢は、意外にも「現状維持」だといいます。金正恩の独裁体制が続き、もし米国による先制攻撃などによって強制的な非核化が実現しても、ダメージを受けた北朝鮮の政権が生き残る可能性はあります。それでも、第三の道、北朝鮮が非核化し、朝鮮半島が中国の支配下に入るよりは遥かにマシなのです。

北朝鮮の核兵器は、日本の安全保障にとって最大の脅威です。ところが、戦略面では日本にとってポジティブな要素なのです。なぜなら、それが北朝鮮の中国からの戦略的な独立を保障し、中国による朝鮮半島の支配を防いでいるからです。北京が平壌を制御できる状態になれば、韓国も支配下にされる可能性があります。

なぜなら韓国内には中国の冊封体制を受け入れたい勢力があるからです。換言すれば、平壌は中国から朝鮮半島の独立を実際に保障しているのですが、韓国政府、文在寅はその独立にまったく貢献していません。日本にとって核武装した北朝鮮は最悪ですが、中国に支配された朝鮮半島は、さらに最悪の安全保障上の脅威となります。

ここで問題となるのは、韓国という国の戦略的な脆弱さです。ソウルは北との国境線である非武装地帯から近く、対空防衛システムや防空シェルターなども十分ではないという脆弱性を晒しており、韓国の軍隊は自国をまったく守れない状態にありました。というのが40年前の状況でしたが、実は今も全く同じなのです。

政府機能や民間企業の本社などを、ソウルから遠くに分散するなどの対策を一切実行していません。空襲に対応するシェルターも不十分です。40年前と違うのは、北朝鮮が核兵器や長距離ミサイルを開発したことだけです。もし戦争が起きれば、北朝鮮は最初の一撃で韓国の指揮所や対戦車兵器などを潰せます。

40年前にアメリカが提案した、首都機能を南に移すことや、企業の光州への移動や、軍事面での72項目にものぼる細かい変更など、ほとんどなされていません。半島有事の際に作戦を指揮する権限は、いまだに韓国軍ではなく在韓米軍司令官にあります。米国側が長年、返還を示唆しても逃げ口上を駆使して延期し続けています。さらに韓国は、北朝鮮の核開発を阻止する動きは全く見せていません。

ルトワック氏は韓国を強く批判し、次のように述べています。
韓国は北朝鮮の非核化には殆ど興味がなく、金正恩体制の崩壊は望んでいない。日米が直面しているのは「朝鮮半島問題」で、二つの国で構成されている。一つは北朝鮮であり、どんな手段でも核武装解除を進めるべき国である。そしてもう一つは、韓国という無視すべき国である。
確かに、韓国は放っておいても日本にとって実害はほとんどないですし、静観するのが最も賢明な選択といえます。ただし、静観、ルトワック氏の言葉を借りれば、無視するにしても、日本としては韓国が日本に関する歴史の修正をすれば、それが事実ではないこと国際社会に訴えつつ、直接韓国と関わることはなるべく避けるべきです。
日米にとっては、たとえ韓国が中国に従属しようとしているにしても、そこに独立国として存在し、さらにその北に北朝鮮が存在し、核で中国も威嚇しているという状態は、決して最悪の状態ではないのです。
この状況のなかでは、韓国は日米にとって安全保障上は空地のような存在ではありますが、それでもこの空地があるという状態は決して悪い状況ではないのです。
最悪の状況は、北朝鮮が非核化し、朝鮮半島全体が中国の支配下に入ることです。こうなると、38度線は、対馬海峡になることになります。これだけは、避けるべきでしょう。韓国には何も期待できないですが、そこに安全保障上の空地があるということが重要なのです。
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韓国、通貨危機への警戒感高まる…日本と米国は支援せず、北朝鮮と経済逆転も―【私の論評】日米にとってどの程度韓国を飼い殺しにするかが重要な課題(゚д゚)!

2019年2月13日水曜日

中国によるアジア植民地構想、ほぼ頓挫へ―【私の論評】一帯一路は巨大な不良資産の山を積み上げて終わるだけ(゚д゚)!


1MDB事件への中国の関与が濃厚になり、反発強めるアジア各国


世界約70か国で進む中国の一帯一路プロジェクト。空港など各国の国の要所に、大きく
プロパガンダを張る中国政府(マレーシアのクアラルンプール国際空港、2019年2月)

 「(私の右肩が)いつでも風や雨からあなたを守り、(私の左肩も)あなたの支えになり続けるから、困難な山々を手を携えて乗り越えましょう!」

 2月5日の春節を目前に、中国政府がこう歌った友好国ソングを公表した。

 その友好相手国とはマレーシア。

 この歌は、今年が両国の国交45周年記念にあたり、中国政府が永遠の友好関係を切望して作ったという。

 言い換えれば、こんな陳腐なラブソングを作らざる得ないほど、両国関係において中国は切羽詰まった状況に置かれているといえるだろう。

 5年前の5月31日、中国・北京の天安門広場に面した人民大会堂では、「マレーシア・中国国交樹立40周年記念式典」が行われた。両国を代表して、マレーシアは親中のナジブ首相(当時)、中国は李克強首相が出席、両国は蜜月だった。

 それを象徴するかのように、式典にはマレーシア華人商工会などの経済団体代表約300人の大経済ミッションがナジブ首相に随行。

 さらに、生ドリアン輸入は禁止されているが、ナジブ首相からの大量のドリアン土産を中国政府はあっさりと「特例許可」、ドリアン外交が炸裂した。

(参考記事:http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52186「中国がドリアン爆買い マレーシア属国化への序章」)

 しかし、あれから5年。事態は急変した。

 不正や腐敗政治の一掃とその関連で中国主導の一帯一路の大型プロジェクト見直しを掲げたマハティール政権が昨年5月に誕生。「新植民地主義は受け入れない」と習近平国家主席や李首相に大型プロジェクトの延期や中止を次々に表明してきた。

 これまで小国から屈辱的な扱いを受けたことのない中国は、動揺を隠し、静観を標ぼうしてきた一方で、「内心は怒り心頭だった」(中国政治学者)らしい。

 しかし、マハティール・ショックは止まることはなかった。
マレーシアのマハティール首相

 ナジブ政権の汚職体質にもメスを入れ、昨年、米国やシンガポール、スイスなどでも捜査が続くマレーシアの政府系投資会社「1MDB」の巨額不正横領事件に関連し、ロスマ夫人ら家族や関係者ともども、ナジブ氏をマネーロンダリングや背任罪など、実に42の罪で起訴したのだ。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53479「アジアを腐敗まみれにして属国化する中国の罠」)

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54307「天国から地獄へ マレーシア・ロスマ前首相夫人に司直の手」)

 同事件では、ナジブ氏が首相在任中に同投資会社から約7億ドルを不正に受領していた疑惑だけでなく、家族や関係者を含め約45億ドルにも上る公的資金を横領したと見られてきた。

 本コラムでは、2015年3月、日本のメディアとして第1報を報じて以来、同事件の真相や背景について追及してきたが、ようやく、ナジブ氏の初公判が近く開かれることになっている(当初は、2月12日だったが、延期となった)。

 この時期に中国政府が面子そっちのけでマレーシアにラブソングを捧げるもう一つの理由が、実はこの裁判にある。

 公判での証拠、証言(約50人が証言台に立つ予定)いかんでは、ナジブ政権を支え、1MDBに深く関わってきたと疑惑のある中国にとって国際的に大きな信用を失墜させる事態に陥るからだ。

 「米国史上最大の泥棒政治による横領事件」(セッション米前司法長官)と称された世界を舞台に大胆に、かつ、複雑な手法で実行された国際的公金不正横領事件。
今年の春節の中国人の海外渡航先一番人気のタイのプーケットには、相変わらず、
お騒がせ中国人観光客が大挙して、地元の不評を買っている(タイのプーケット島、2019年2月)

 習国家主席肝いりの一帯一路の目玉プロジェクトであるECRLは、総工費550億リンギをかけ、南シナ海側のタイ国境近くからマラッカ海峡まで、マレー半島を東西横断する、すなわち「南シナ海とマラッカ海峡を結ぶ鉄道」だ。

 クアラルンプール近郊と東西の重要港を結ぶ総距離約700キロになる一大プロジェクトで、2024年7月の完成を目指していた。

 しかし、マレーシアの与党関係者によると「工事は約20%ほどでとん挫している状態だ」という。
 しかし、中国は、自国の輸入原油の80%が通過するマラッカ海峡の安全保障を、米国が管理するという「マラッカ・ジレンマ」を抱えている。

 南シナ海のシーレーンが脅かされた場合のバックアップとして、マレーシアとの協力関係を築き、マラッカ海峡のルートを確保したい考えだ。

 ECRLは、(米海軍の環太平洋の拠点がある)シンガポールを封鎖された場合、中東、アフリカ地域からマレー半島東海岸側に抜ける戦略的な鉄道網で、地政学的に極めて重要拠点となるマレーシアを取り込む中国の「一帯一路」の生命線である。

 しかし、マハティール首相は筆者との単独インタビューでも「ECRLは、マレーシアにとって国益にならない。凍結するのが望ましい」と発言している。

(参考記事: http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53065「マハティールの野党勝利 61年ぶりマレーシア政権交代」)

 一方、1月末の計画廃止の発表後、「中国政府は、融資の利子や工事費などを半額にするなど、計画の廃止を再考させるようあの手この手でマレーシア政府と交渉している」(マレーシア政府関係者)とされる。

 このこと自体、中国の劣勢状況を反映しているといえる。
また先月には、米メディアなどが、中国がこの件に深く関与していたとされる2016年の会議の議事録を暴露している。

 それによると、中国が1MDB関連の巨額流用汚職疑惑の渦中にあったナジブ政権に対し、一帯一路への協力と引き換えに1MDBの救済を申し出たとされる。

 さらに、不正事件の捜査を中止させるよう、中国政府が米国政府に対して影響力を行使できると提案していたことも明らかにした。

 これに対しナジブ氏は、数カ月以内に中国の銀行がその資金を融資し中国人労働者が建設作業に従事することを条件に、中国国有企業との約350億ドルの鉄道・パイプライン建設契約に署名したという。

 そのプロジェクトには、マハティール政権が廃止を先月いったん決定したとされる「東海岸鉄道計画」や、ボルネオ島・サバ州に建設予定のパイプライン事業が含まれていたという。

 また、同会議では中国の軍艦をマレーシアの2つの港に停泊させるための極秘協議もされたと議事録に記されているという。

 中国が一帯一路を通じ、過剰債務に陥っている新興国や発展途上諸国への影響力や支配を強め、融資の罠をはびこらせ、軍事的目的を果たそうとする思惑が浮き彫りになった。

 折しも、マレーシアと中国の国交樹立は、今から45年前の5月31日。

 ナジブ首相の父親、ラザク首相(マレーシア第2代首相)と周恩来首相(当時)の間で、同じく中国の人民大会堂で調印されたものだ。

 実は、ASEAN(東南アジア諸国連合)と中国との国交樹立は、マレーシアが先陣を切る形で始まり、その後、各国が続く形となった。

 しかし、マレーシアのマハティール首相が中国へ反旗を翻したいま、ほかのアジア諸国も追随する勢いを見せている。

 中国は“新植民地時代”を友好国ラブソングに期待を込めたのかもしれないが、あまりに前途は多難である。

【私の論評】一帯一路は巨大な不良資産の山を積み上げて終わるだけ(゚д゚)!

中国主導の現代版シルクロード構想「一帯一路」は、関係国のインフラ建設で、返済能力を度外視する融資を結ばせているとして、英語圏有力紙は酷評しています。

中国官製紙は最近、この「債務トラップ外交」と呼ばれる批判をかわすため、発展途上国に借款を結ぶ日本を例にあげ「なぜ西側諸国は日本を責めないのか?」と矛先を日本に向けました。専門家は、「日本と中国の手法は違う」と反論しました。

ブログ冒頭の記事では、マレーシアを事例にしていましたが、スリランカでも、マレーシアに先駆けて一帯一路構想に基づくインフラ整備を受け入れ、巨額融資を受けて同国第3の国際港コロンボ港を建設しました。

しかし、国の経済規模にふさわしくない巨大港の未熟な運営計画により、返済目途が立てられないでいます。このため政府は2017年7月、同国主要の国際港であるハンバントタ港を、中国側に99年契約で運営権を貸し出したのです。

共産党機関紙・環球時報は昨年7月15日、中国国内シンクタンクの中国現代国際関係研究所のワン・シー準研究員のオピニオン記事で、このスリランカの債務過多問題について「西側メディアは誤解を招いている」と反論しました。

ワン氏は、インドの戦略研究家ブレーマ・チェラニー氏が、一帯一路は債務トラップ外交だと批判していることを例にあげて、「中国陰謀論は、欧米メディアの根拠のない誇大広告だ」と主張しました。

ブレーマ・チェラニー氏

負債過多はスリランカの政治的不安定さと低収入、福祉政策などによるもので、「中国はその責任を負えない」としました。

さらに、2017年の同国統計を引用して、スリランカの借款(国家間の融資契約)は日本が12%、中国が10%だが、「日本を批判しない西側メディアはダブルスタンダード(二重基準)だ」と述べました。

2017年1月、スリランカのハンバントタ港近くに建設される中国資本の工業区域の設置に反対する、仏僧ら抗議者たち (AP Photo/Eranga Jayawardena)

中国側の主張には共感が得られていません。ブレーマ・チェラニー氏は、同日中にSNSで返答しました。「環球時報さん、私の名前が挙がった以上、答えますね。あなたはスリランカが中国により背負わされた負担を過小評価しています。日本によるプロジェクトの金利は0.5%に過ぎないのに、中国は6.3%です」。

ほかにも、ワシントン拠点のシンクタンク南アジア遺産基金の研究員ジェフ・スミス氏は、中国の一帯一路に関する問題を列挙しました。

ジェフ・スミス氏

「日本は(外国における)インフラ計画の取引で、機密を犯したり、主権を侵害したりするような内容を盛り込まない。腐敗を促す違法な政治献金や、債務をほかの港の見返りに差し出させるようなことはしていない。コロンボ港のような高額計画にも、(政治)宣伝に利用したりしない」。

環球時報の記事のコメントには、中国側の意見に反論がほとんどを占めました。「日本は友好を築こうとしている、中国は支配しようとしている」「日本は、植民地主義に基づいて海洋戦略上重要な位置にある地域を借金漬けにし、港を99年契約で貸し出させるよう迫ってない」「普通の融資国なら、情報提供や共有を要求したり、返済できないことが明らかな、腐敗しきった国のリーダーと融資を結んだりしない」。

あるユーザは「中国は、一帯一路の評判が悪くなっていることに焦っているのではないか」と指摘しました。

インドのメディア、ポストカードは2017年7月、スリランカの国の債務は6兆4000億円にも上り、全政府収入の95%が、借金の返済にあてられていると伝えました。そのうち中国からの借入は8000億円。同国財務相は「完済に400年かかる、非現実的だ」と同紙に答えました。

そもそも、一帯一路構想とはかつて日本がやっていた「円圏構想」のパクリです。「円圏構想」とは、「東アジア共同体構想の目的として、アジア共通通貨単位の導入による為替レート安定」を目指すものでした。

主に大蔵省を中心として1980年代の後半に本気で検討されていたようです。しかし、この構想には大きな問題があります。早稲田大学教授の若田部昌純氏は次のように指摘している。
これが経済学的にいかに問題かは、通貨バスケット制やドルペッグ制のような広い意味での固定相場制の問題点を考えてみればよい。国際経済学には、安定的な為替相場、国際間の資本移動の自由、および金融政策の自立的な運営の三つが確立しないという「不整合な三角形」と呼ばれる関係がある。この関係のもつ政策的な意味はきわめて大きい。すなわち、固定相場制(安定的な為替相場)を維持しようとすれば、資本移動を規制するか、金融政策の自立性を放棄するしかない。そして、固定相場制というのは投機攻撃にさらされやすいのである。(若田部昌澄『経済学者たちの闘い』東洋経済新報社)
産経新聞の北京支局に9年勤務し、2016年末に帰国した矢板明夫記者によると、中国共産党幹部は総じて元高を歓迎しているといいます。なぜなら人民元の価値が高い方が外国企業を買収するのに都合が良いと考えているからだそうです。まさに円圏構想的な発想にとらわれていると言っていいでしょう。

彼らは基軸通貨というものの本質が全く分かっていないようです。為替レートを高く維持することと、その通貨の利便性が高いことは必ずしも一致しないからです。実際に、彼らが頭でっかちに考えているほど、プロジェクトは進んでいないです。フィナンシャル・タイムズは次のように報じていました。
中国商務省のデータによると、一帯一路の沿線国家に対する中国からの直接投資は昨年、前年比で2%減少し、今年は現時点で18%減となっている。沿線53カ国に対する昨年の金融を除く直接投資は総額145億ドルで、対外投資全体のわずか9%だった。しかもこの投資の減少は、中国の対外直接投資が前年と比べて40%も増え、過去最高を更新する状況の中で起きた。中国当局が資本流出を止めるために対外取引の制限に動いたほどだ。(日本経済新聞 2017.5.12)
それともう一つ、海外直接投資の常識として、自国よりも経済成長が相当高い国に対して投資すれば利益が多くなるというものがあります。1〜数%の成長率の先進国等が、10%以上も成長をしている発展途上国に投資すると利率もかなり高いということです。日本の高度成長期やかつての中国がそうでした。

現在の中国のGDPの伸び率は6%台などとされていますが、実際はかなり低いようです。最近、唯一信じられる貿易統計をもとに高橋洋一氏が計算した中国のGDP成長率は1.5%としています。

最新の統計数値だと、各国のGDPの伸び率は、スリランカ3.1%、マレーシア5.9%、インドネシア5.1%、シンガポール3.6%ですから、もし中国のGDPの統計が正しかった場合は、全く儲からないということになりますし、仮に高橋洋一氏の計算が正しいとすれば、利益はあるはずですが、それにしてもかつての中国ようなわけにはいかないです。

このようなことを考えると、やはり一対一路は最初から収益率が少ないことがいえそうです。元々儲けがすくないところに、たとえ中国人労働者を働かせたりして、利益を根こそぎ奪おうとしても、あまり儲けにはならないということです。一帯一路がかつての中国のように、大成長するための起爆剤となることはないということです。

やはり、一帯一路は巨大な不良資産の山を積み上げて終わるだけになるのは目に見えています。かつて、日本が円圏構想でバブル崩壊を迎え、その後長期停滞に陥った歴史が被って見えてきます。

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2019年2月12日火曜日

ファーウェイ問題を米中貿易交渉の取引材料にしてはいけない―【私の論評】米国は政府・議会・司法の三位一体で、中国の不正を暴き処断する体制を整えた(゚д゚)!


岡崎研究所

 2019年1月28日、米国司法省は、中国に本社があり世界中でビジネスをしている世界最大の通信機器メーカーであるファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)会社と、その子会社2社―ファーウェイ機器米国会社とイランの子会社であるスカイコム・テク会社―及びファーウェイのCFO(最高財務責任者)である孟晩舟(Meng Wanzhou)―46歳でCathy MengとSabrina Mengの異名も持つーを起訴したと発表した。起訴の理由には、金融詐欺、マネー・ロンダリング、米国に対する詐欺共謀及び制裁違反が含まれる。

参考:Office of Public Affairs, Department of State, Press Release, January 28, 2019



 この問題は、既に何年も前から起こっていることだったが、2018年8月22日、ニューヨークの連邦裁判所は、孟晩舟に対して逮捕状を出していて、彼女は、カナダのヴァンクーバーで12月1日に逮捕された。

 これに対して、中国は、報復するかのように、中国内でカナダ人を複数逮捕し、そのうち一人は、麻薬を理由に死刑判決を受けた。

 1月22日及び25日、カナダのマッカラム駐中国大使は、米国が孟晩舟の引き渡し要求を拒否することを望む、と述べた。これに対して、トルドー首相は、25日、マッカラムの大使の職を解任した。司法に政治が介入して、法的手続きを侵害しないことが重要であり、本人の認めるようにカナダ大使の発言は失言だった。

 カナダは、米国の孟晩舟の引き渡し要求と、中国の脅しの間で難しい立場にある。中国は、もし今後、孟晩舟が米国に引き渡された場合、中国にいる米国人を逮捕するのだろうか。こういうことが頻繁に起きると、安心して中国に行くことが出来なくなる。日本人に対しても、かつて尖閣諸島が国有化された際等に、人質的に逮捕されたことがあったし、現在もスパイ容疑等で、日本人が中国内で逮捕されることがある。

 トランプ大統領は、米中首脳会談が2月中に開催されるという中、本件に対して介入するという発言をしている。しかし、米国司法省は、きっぱり言った。「我々は、法の執行を行うのであり、貿易交渉の材料ではない。」と。

 確かに、3月1日に、米中貿易交渉の結果として、米国が中国からの輸入品に対して追加関税をかけるかどうかの判断が下される。一方、カナダから米国への孟晩舟の引き渡しの決定は、2月中には行われよう。水面下で、中国が必死にトランプ大統領を含め、米国側に交渉をしかけてきているのは容易に想像できる。

 米国は、ファーウェイを起訴した以上、司法手続きをたんたんと進めていくべきである。米中通商交渉における一つの取引材料にするというようなことはよくない。トランプ大統領は、「司法省に任せてある。」の一言で良いと思う。

 中国に民主主義国における司法の独立をよくわからせる必要がある。 カナダで逮捕され、米国に引き渡されるかどうかが問題になっている孟晩舟・華為技術副会長・CFO のケースも、米加間の犯罪人引渡条約とそれに付随する諸法律に従って処理されるべきであろう。これに対応して中国がカナダ人を恣意的に逮捕したように、在中国の米会社やその役員を起訴するなどをする場合にも、そういう人質作戦のようなものには、断固拒絶の姿勢を貫くべきである。そういう姿勢が、中国に世界的ルールを守らせることにつながる。これまでのところ、カナダはよく筋を通している。

 中国のような共産党優位の国には、本当の意味で三権分立はない。行政権も司法権も立法権も共産党の指示に従うのが正しい在り方である。したがって、中国はこういう話を政治化することが正しく、政治的に解決できない問題はないと考えている。今回の米中通商交渉でも、ファーウェイ起訴問題は取り上げられるだろう。米国が司法の独立を主張しても、中国側には、言い逃れにしか聞こえないだろう。米中間のこういう認識の差は容易に解消されないから、この問題は米中通商交渉の進展への障害になると思われる。

 ただ、中国側には米中通商摩擦を、取引により、終結ではなくとも緩和したいとの動機がある。米国は、多少強気で、米中交渉に臨むように思われる。 日本でもファーウェイへの警戒心が出てきているが、こういう起訴を見ると、しっかりと警戒していくのが正しいと思われる。

【私の論評】米国は政府・議会・司法の三位一体で、中国の不正を暴き処断する体制を整えた(゚д゚)!

このブログにも過去に何度か掲載したように、中国は日米を含める他の先進国のように、民主化、政治と経済の分離、法治国家化がなされていません。無論先進国も十分といえない面もありますが、中国はほとんどなされていません。

そのため、ブログ冒頭の記事にあるように、米中通商交渉でも、ファーウェイ起訴問題は取り上げら、米国が司法の独立を主張しても、中国側には、全く理解できない可能性があります。米中間のこういう認識の差は中国には容易に解消されないでしょうから、この問題は米中通商交渉の進展への障害になることでしょう。

ただし、平時においては米国司法はかなり強いので、ファーウェイ問題をトランプ政権が米中貿易交渉の取引材料にするということはないというより、できないでしょう。米司法当局は粛々と法律に従い中国の米国に対する不正を暴き、処断することでしょう。


すべてが共産党に仕切られる中国くとは異なり米国には厳格な三権分立が設立されている

中国の通信機器大手ファーウェイ(華為技術)と副会長兼最高財務責任者(CFO)の孟晩舟(メン・ワンツォウ)を、米司法省が起訴しました。有罪が確定した場合、ファーウェイは多額の罰金の支払いを命じられる可能性が高いです。

だが、ファーウェイにとって罰金は序の口にすぎないです。その先には、さらに恐ろしい事態が待っているかもしれないのです。

起訴の内容は2件に分かれており、1件目はイランとの取引を巡るものです。ファーウェイと孟を含む経営幹部、米子会社などが絡んでおり、罪状は金融詐欺、マネーロンダリング(資金洗浄)、イランへの経済制裁に対する司法妨害など多岐にわたります。

孟は昨年12月にカナダで身柄を拘束され、カナダ政府は米政府から身柄の引き渡し要求があったことを認めています。孟がファーウェイ創業者で最高経営責任者(CEO)の任正非(レン・ツェンフェイ)の娘であることを考えれば、今回の事件のダメージは計り知れないでしょう。

もう1件はまったくの別件で、ファーウェイの関連会社がTモバイルから企業秘密を盗んだ容疑がかけられています。訴状によると、従業員が競合他社から機密情報を得た場合、特別な報酬が支払われていました。また、機密性の高い情報をやり取りする場合は暗号化した電子メールを用いるなどの指示があったとされています。

ファーウェイがTwitterで発表した声明には、「訴状で指摘されたような違法行為に、自社や子会社、および関連組織が関与していたことを、完全に否定します。孟氏については、いかなる不正行為も一切把握していません。米国の裁判所も同様の結論に達するよう願っています」と書かれています。

ファーウェイは現在も米国で企業秘密の窃盗を巡る民事訴訟を複数抱えています。ただ今回、司法省から起訴されたことで、特に孟は窮地に立たされたことになります。元連邦検察官で、いまはディキンソン・ライト法律事務所で働くライアン・K・ハート氏は、「企業を収監することはできませんが、経営幹部が有罪になれば話は別です」と話しています。

参考までに、やはり中国の通信機器大手であるZTE(中興通訊)の場合を考えてみましょう。ZTEは2017年にイランへの経済制裁違反を受け入れ、約9億ドル(988億円)の罰金を支払ったほか、幹部社員4人を解雇し、ほかにも多くの従業員に対し減給などの処分を下しました。

ところが商務省は昨年、ZTEが米政府との取り決めに違反したとして新たな輸出規制措置をとりました。この結果、ZTEは米企業から部品を調達することが不可能になり、一時的に営業活動を停止するところまで追い込まれました。

この問題は最終的に、ZTEが罰金など総額19億ドル(2,081億円)を支払い、経営幹部をすべて入れ替えることで決着しました。ZTEはこれに加え、米政府の選んだ「コンプライアンスチーム」の受け入れも余儀なくされています。

シカゴの特許訴訟専門事務所McDonnell Boehnen Hulbert & Berghoffのジョシュア・リッチは、「有罪と判断されればファーウェイにも同じ運命が待っている可能性はあります」と指摘しています。

一方で、ファーウェイの立場はZTEより多少は強いのではないかとの見方を示す専門家もいます。業界コンサルティング会社で働くチェタン・シャルマは、ファーウェイは財務基盤が安定しているだけでなく、米国製の部品を必要とするスマートフォン事業への依存度も、ZTEと比べれば低いと説明しています。

ただ、ファーウェイも制裁が科されればもちろん業績悪化は免れないはずです。特に、金融機関との取引が禁じられれば影響は大きいです。リッチは「米国の金融システムにアクセスできなくなると、世界中のどこでも製品を販売するのが実質的に不可能に等しくなります」と話しています。

ディキンソン・ライトのハートによれば、イラン関連の罪状のうち13件で有罪が認められれば、罰金は最大で1億ドル(109億円)になるといいます。機密情報の窃盗の罰金はさらに高く、数億ドルになるといいます。

しかも司法省は罰金だけでなく、イランとの取引で得た利益やTモバイルの技術を使ってつくられた製品の販売益も、差し押さえることを求めています。すべて合わせるとどれくらいの額になるかは明らかになっていません。

ハートはこれについて、「総額が不明なのは、双方の主張がどこまで認められるかによって変わってくるからです。ただ、司法省はどんな小さな違法行為でも追及していくはずです」と説明しています。

孟やほかの経営幹部に関しては、実刑判決が出て収監される可能性もあります。訴状によると、イランとの取引のうち1億ドル超が米国の金融機関を通じて送金されています。

この1億ドルの流れについて孟が責任を問われるかは不明ですが、そうなれば過去の事例から判断して、11年から14年程度の懲役判決が下される見通しです。ほかの罪状でも有罪となれば、収監年数は増えます。

ただ、ハートもリッチも、政治的背景を考えれば司法取引が行われるはずだとの見方を示しています。そうなればファーウェイは最悪の事態は避けることができるますが、それでも同社にとって現状が極めて深刻であることに変わりはないです。

ファーウェイの創業者で最高責任者(CEO)を務める任正非氏は、中国の人民解放軍出身で、同社は軍や政府との密接な関係が指摘されています。任氏の娘で同社幹部の孟容疑者も当然、「中国軍と中国ハイテク企業の関係」など、機密事項に熟知しているとみられます。

孟容疑者が、中国政府や軍との関係を含めて、知りうるすべての情報を話せば、司法取引が成立し、証人保護プログラムが適用される可能性は十分にあります。

主な国の司法取引制度

ファーウェイや、同じ中国の通信機器大手「中興通訊(ZTE)」に対し、米司法当局は重大な懸念を抱いています。

中国製通信機器を通じ、米国や同盟国の政府や軍事、企業の機密情報が盗まれて、共産党独裁国家が「軍事・ハイテク分野での覇権」を握る恐れがあるからです。

実際、中国では昨年6月、恐るべき法律が施行されました。

国家の安全強化のため、国内外の「情報工作活動」に法的根拠を与える「国家情報法」です。2010年に中国では、有事の際に軍務を優先し、国と軍が民間の人とモノを統制する「国防動員法」が施行されており、国家情報法は、情報戦に備えた動員法ともいえます。

中国製通信機器のハード面でのリスクに『国家情報法』という膨大なヒューマン・インテリジェンス(人的情報活動)の脅威が重なったことで、米国では中国への警戒感がかつてなく強まっています。

米国は8月に成立した「国防権限法」で、ファーウェイやZTEなど、中国IT5社を「米国の安全保障上の脅威」と名指しし、政府機関や政府と取引のある企業・団体に対し、5社の製品を使うことを禁止しました。さらに、同盟国にも要請して「中国ハイテク排除」を進めています。

中国IT企業はこれまで、低価格で世界中に製品を普及させて情報を盗み取っていました。米国は中国IT企業がいかに中国政府、人民解放軍との関係が深いのか、あらゆる不正を暴くために全力を尽くすでしょう。

米国の対中国冷戦は、トランプ政権から始まりました。今や米国議会も、トランプ政権の動きに関係なく、冷戦に取り組む体制を整えました。

このブログでも以前掲載したように、トランプ米大統領は31日、アジア諸国との安全保障や経済面での包括的な協力強化を盛り込んだ「アジア再保証推進法(ARIA:Asia Reassurance Initiative Act)」に署名し、法律が成立しました。

台湾への防衛装備品の売却推進や南シナ海での航行の自由作戦の定期的な実行を明記し、中国をけん制します。2019年3月1日に期限を迎える米中貿易協議も見据え、政権と議会が一体となって、中国に圧力をかける狙いがあります。

新法は議会の対中強硬派が主導し、18年4月に上院に提出されました。12月上旬の上院での法案採決では野党・民主党を含む全ての議員が賛成しました。中国の安保・経済面での台頭に対する米議会の危機感を象徴する法律といえます。

米国政府、議会、司法から追い詰められる習近平

これに、今回の米司法当局による、孟容疑者との司法取引が成立すれば、司法当局も中国によるあらゆる不正を暴き、ファーウェイやZTEだけに限らず、あらゆる中国による米国を毀損するような工作を処断することになるでしょう。

まさに、米国は政府、議会、司法ともに三位一体となり、中国の不正を暴き、処断する体制を整えつつあるのです。

たとえトランプ政権が米中通商交渉をある程度で幕引きにしたいと考えたとしても、米国議会や司法当局がそれを許さないでしょう。この冷戦は中国が体制を、米国政府・議会・司法当局が認めることができる程度に変えるか、さもなくば経済的に弱体化して、他国に対する影響力を行使できなくなるまで続くと考えるべきです。時間はかかるかもしれませんが、必ず結論がでるまで継続されるということです。

2019年2月11日月曜日

韓国、通貨危機への警戒感高まる…日本と米国は支援せず、北朝鮮と経済逆転も―【私の論評】日米にとってどの程度韓国を飼い殺しにするかが重要な課題(゚д゚)!

韓国、通貨危機への警戒感高まる…日本と米国は支援せず、北朝鮮と経済逆転も

軍事境界線を越え、北朝鮮側に入る金正恩氏(左)と文在寅氏=4月27日、板門店

米中貿易戦争で中国経済はおろか、徐々に日本経済への影響も懸念され始めているが、日本よりも先に韓国経済が大きなダメージを被っており、1997年に韓国を襲った通貨危機再来への警戒感が高まっている。

 かつて韓国の経済危機では、米国や日本が助けの手を差し伸べたが、文在寅政権に対して日米両政府は抜きがたい不信感を抱いているという構図は、97年の通貨危機の際の日米韓3国関係と同じ状況だけに、韓国が経済的に没落するなか、今月27、28日の米朝首脳会談の結果次第では、米国の経済支援を受けた北朝鮮が経済的に韓国を凌駕する可能性も出てきている。

悪化する日韓・米韓関係

 韓国産業通商資源部が今月1日に発表した2019年1月の貿易統計(通関ベース)によると、輸出は463.5億ドルで前年同月比5.8%減となった。輸出の20%前後を担う半導体の市況悪化に加え、米中貿易戦争のあおりを受けて総輸出の4分の1を占める中国向けの輸出額減少が大きな要因だ。

 しかも、輸出の減少は2カ月連続だけに、マーケットでは再び通貨危機への懸念が高まっているようだ。韓国は97年の通貨危機以外でも、2008年の貿易赤字の際も経済危機が囁かれたほか、11年にも輸出不振と欧州の金融危機の2つの大きな要因が重なり、通貨危機に陥りかけている。

 しかし、韓国が08年と11年に通貨危機を回避できたのは、日米両国が韓国にドルを融通したことが大きい。逆に97年の通貨危機では、「米韓関係が悪化していたため、米国は日本にもドルを貸さないよう指示し、韓国はIMF(国際通貨基金)に救済されるという不名誉を被った」と元日本経済新聞の鈴置高史が著書『米韓同盟消滅』(新潮新書)のなかで指摘している。

 今回も日米の支援は期待しにくい。なぜならば、日韓、米韓関係が悪化しているからだ。
 
 米国のトランプ大統領は韓国の文大統領が北朝鮮の核放棄を待たずに経済支援を急ごうとする姿勢を強く批判しており、米政権内では場合によっては米韓同盟の打ち切りを主張する声も出ているほどだ。
 
 また、日本は米国以上に文政権に強い不信感を抱いているが、これは言わずもがなだろう。文氏は1月の年頭の記者会見で、徴用工をめぐり韓国最高裁が日本企業に賠償を命じた判決について、「徴用工問題は韓国がつくったものではなく、不幸な歴史のため生じた問題」などと断じており、1965年の日韓請求権協定を度外視しており、まさに一国の大統領が2国間協定を無視するという極めて無責任な態度を示したからだ。

 さらに、ここにきて韓国の文喜相国会議長が米メディア「ブルームバーグ通信」のインタビューで、従軍慰安婦問題に関して「日本を代表する首相か、あるいは間もなく退位する天皇が(謝罪するのが)望ましいと思う」と述べたうえで、「(天皇は)戦争犯罪の主犯の息子ではないか。その方が一度(慰安婦だった)おばあさんたちの手を握って『心から申し訳なかった』とひとこと言えば(慰安婦問題による確執は)すっきり解消されるだろう」と指摘したのだ。まったく日本の国民感情を理解していない暴言といえるだろう。

 日本の自民党内では駐韓大使の一時帰国や訪日ビザの免除停止、韓国製品の輸入関税引き上げ、日本にある韓国企業の資産差し押さえなどの対抗措置を求める声も出ているのだが、さまざまな制限があり、実行は難しい。

 現在、文政権の支持率は低迷しており、その最大の原因が景気低迷だ。さらに先にも指摘したように、通貨危機の可能性も出ている。
 
 だが、日本国民の対韓イメージは確実に悪化しており、韓国が通貨危機に陥ろうが、かつてのように支援の手を差し伸べようとは思わないだろう。それはトランプ米政権も同じだ。

北朝鮮の経済成長

 トランプ氏は今月27、28日にベトナムのハノイで、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との首脳会談を行う予定で、自身のツィッターで「北朝鮮は金委員長のリーダーシップのもとで経済大国になるだろう。北朝鮮は経済のロケットになるだろう」と書き込んだ。これは会談が順調に進めば、米国が北朝鮮への経済支援を進める可能性を示唆したものとも受け取れよう。

 そうなれば、韓国が景気低迷状態をさまよっているうちに、北朝鮮の経済成長が進展すれば、南北経済の逆転現象が現実のものとなることも考えられる。それは、社会主義国の中国、ベトナムが急成長をした例からも否定できない。そして、もし逆転が現実のものとなれば、北朝鮮による韓国併呑もまったく可能性がないとはいえないだろう。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)

【私の論評】日米にとってどの程度韓国を飼い殺しにするかが課題(゚д゚)!

海上自衛隊のP1哨戒機が韓国海軍の駆逐艦に火器管制用レーダーを照射された問題は、日本国民を激怒させただけではなく、米国との関係悪化にもとどめを刺し「韓国崩壊」を決定づけました。

2015年に起こった、リッパート駐韓米国大使襲撃事件は、あと1~2センチ傷がずれていれば死に至ったかもしれないという深刻なものであり、入院先の病院で大使は「これは私個人への攻撃ではなく米国への攻撃である」と語りました。

2015年のリッパート駐韓米国大使襲撃事件

そもそも、この事件の犯人は10年に日本の駐韓大使だった重家俊範氏襲撃事件で捕まっていました。しかし、同行していた女性が負傷したにも関わらず、収監されずに野放しにされました。韓国政府(裁判所)の責任です。

当時はオバマ政権であったため、穏便な処理が行われましたが、今回のレーダー照射事件はトランプ政権下での事件です。

少なくとも安倍晋三首相とトランプ大統領のコンビになってからは、日本は米国にとっての最重要同盟国の一つであり、ドイツや、マクロン政権になってから急速に関係が悪化しているフランスよりも戦略的に重要です。

その米国の最重要同盟国に「攻撃」を仕掛けたのですから、米国と韓国の同盟関係は事実上終了したといえまう。「現場の暴走」と思われますが、その背景には北朝鮮あるいは共産主義者の工作活動があるはずです。日米韓の絆に亀裂が入って一番得をするのは共産主義国家です。

この韓国の悲惨な様子を見ていると、ベトナム戦争時の南ベトナム・サイゴン政権の姿と重なります。米国がベトナム戦争で「負けた」理由はいくつかあります。

サイゴン政権の腐敗・堕落ぶりが激しく、米国の若者の命を犠牲にして助けることが疑問視されただけではなく、サイゴン政権よりは共産主義・北ベトナムの方がまだましだという南ベトナム国民が多数を占めたのです。彼らの破壊工作活動によって内部から崩壊せざるを得なかったのです。

韓国で北朝鮮を賛美する人々が多いのも、自国の大統領が代わるたびに敵対勢力によって投獄・処刑されるような南米の軍事政権と大して違わない国情があります。

さらに、米国の機密情報が韓国を通じて北朝鮮にダダ漏れであったり、平気で制裁破りをしたりなど、米国の若者の血を流して守るに値しない国とみられるのは当然といえば当然です。

それよりも、北朝鮮の「悪の帝国」である金王朝の方が、きちんと仕込めば共産主義中国に対する番犬としては役に立つと米国は考えるでしょう。番犬は獰猛(どうもう)で主人に忠実なほうが役に立つし、実際米国は、南米や中東では、民主主義政権よりも独裁政権を飼いならすことが多いです。

それに以前からこのブログにも掲載しているように、韓国は元々中国に従属しようとする国ですが、北朝鮮はあくまで中国からの独立を希求しています。これは、様々な筋から明らかです。

そうして、結果として北朝鮮と北朝鮮の核が、朝鮮半島全体に中国の影響が浸透するのを防いでいます。これは逆に考えると、良く理解できます。北がもし、核を開発していなかったとしたらどうなっていたでしょう。

おそらく、朝鮮半島に対する中国の浸透は今よりももっと深く広範囲に行われ、今頃北朝鮮は中国の傀儡政権が樹立されていたかもしれません。金一族は抹殺されていたかもしれません。そうして、もうすでに朝鮮半島は中国の自治区か省になっていたかもしれません。

「ムスダン」発射直後

しかし、北朝鮮があることで、朝鮮半島はそうならないで現在に至っているのです。これを考えると、北朝鮮がすぐに核を全部放棄することは考えられません。

であれば、米国が韓国はあきらめて、北を中国に対する番犬にする可能性は十分あります。ただし、北朝鮮は人権問題が深刻であり、金正恩は権力を掌握するため、叔父や血の繋がった兄を殺すということまでしています。

その意味では、北朝鮮は番犬どろこから、猛獣です。この猛獣を使いこなすのは、容易なことではありません。トランプ大統領はそれこそ、猛獣使いにならなければ、北朝鮮を容易に従わせることはできないでしょう。

しかし、それでも、米国が対中経済冷戦を挑んでいる最中にも、中国に従属する韓国は、米国にとっては全く当てにならない存在です。それでも、韓国が存在する事自体は、日米にとって有利なことにはかわりありません。

ただし、韓国自体はあくまで、中国に従属しようとしています。しかし、韓国のすぐ北には、中国に対する敵愾心をむき出しの北朝鮮が控えていて、中国はなかなか韓国に対して直接影響力を及ぼすことはできません。最早、韓国は安全保障上では日米にとって単なる空地に過ぎなくなっています。

北朝鮮側も、あくまで中国従属しようとする韓国や文在寅を心の底では軽蔑しているでしょう。ただし、制裁を受けている現在、韓国を自分たちにとって都合の良いように利用しているだけです。

しかし、いずれサイゴンのようにソウルが北朝鮮によって陥落させられた後、当然生まれるであろう難民は、日本にとって脅威となるでしょう。日本を含めた世界中の国々には必ず一定割合の犯罪者が存在し、彼らも当然、というよりは、たぶん善良な人々よりも我先に、日本にやってくるかもしれません。

「韓国が崩壊したのは日本のせいだ!」と主張し暴れる人も出てくるかもしれないです。

韓国の人口は約5000万人であり、その1%でも50万人、5%なら250万人である。大挙して日本に押し寄せてきた際の対応策を真剣に考えるべきです。

やはり、一番良いのは、韓国が日米にとって安全保障上の空地になっていることが最上だと思われます。北をうまく御して、韓国は生かさず殺さず程度にして空地を維持することが、今の日米にとっては最上の戦略だといえます。

日本に関しては、米朝交渉で米国に到達するICBMの撤去が先に行われ、短・中距離核ミサイルの撤去が廃棄されるのが、後回しされるととんでもないことなると騒ぐ人もいますが、こういう人はすでに中国の核ミサイルが日本を照準にしていることを忘れています。

中国の核ミサイルは日本を照準にしている

いずれにせよ、今更ながら北朝鮮の核が恐ろしいなら、中国の核もその数倍恐ろしいのであり、日本も何らかの形でこれに対処すべきなのです。これについては、以前もこのブログで触れています。以下にそこから引用します。
ドイツには、昔から米国が置いている「戦術」核弾頭が今でも数十発ありますが、これはDual Keyと言って、実戦に使用する時にはドイツ、米国両国政府の合意が必要になっています。ドイツ政府も、これの使用を積極的に米国に発議できるようになっているのです。そして米政府はドイツ政府の了解なしには、これを使用できないです。日本もこのような権利を得ることを検討すべきです。 
そして将来的には、日本も核兵器を開発する可能性の余地を残すのです。その「可能性」自体が抑止力になります。インドが、核ミサイルを保有していながら米国と原子力協力協定を結んでいることを念頭に置くべきです。
このようなことを検討する事自体が、中国や北朝鮮に対する牽制になります。それとともに、日米にとって、どの程度に韓国を飼い殺しにするかが重要な課題となります。言葉はエゲツないですが、そう仕向けたのは韓国ですから、これは致し方ないです。

現在、中国は米国の経済冷戦を真っ向から受けているので、韓国を支援することはほとんどできないでしょう。そうなると、かなり低い水準で良いのかもしれません。

冒頭の記事では、北朝鮮と経済逆転とありますが、これもあながち有りえないことではないかもしれません。実は、大東亜戦争直後からしばらくは、北朝鮮のほうが経済は良かったということがあります。

日本の統治時代に、北には様々な産業があり、それを北は受け継いだのですが、南のほうはさしたる産業もなく農業地帯でした。韓国のほうが経済が良くなったのは、1960年代に日本の支援で、韓国が漢江の奇跡を成し遂げ、経済的に発展してしばらくしてからの1970年代に入ってからです。日米の手によってこれを元に戻すのは意外とたやすいのかもしれません。

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2019年2月10日日曜日

「G20大阪サミット」財務官僚が絶対に失敗できない「内部事情」―【私の論評】二ヶ月後に消費税「再々延期」が決定されるこれだけの理由(゚д゚)!

「G20大阪サミット」財務官僚が絶対に失敗できない「内部事情」
悲願の消費税10%にまっしぐら


「財務トラック」にかける意地

2019年6月のG20サミットが大阪で開催されるため、日本は昨年末から初の議長国を務めている。

1月17日、議長国になって初の会合である財務相・中央銀行総裁代理会議が行われた。財務省と日銀が合同で開催したシンポジウムで、テーマは高齢化が経済成長に与える影響についてなど、さまざまな方面から経済について論じられた。

G20開催にあたり、「存在感を示したい」と一際張り切っているのが、麻生太郎財務相だ。昨年は自身の発言の追及や財務省高官のスキャンダルに苦しめられ、名誉挽回のチャンスを窺っている。

先日、少子高齢化問題に対して「子どもを産まなかった方が問題」
という発言が非難され、発言を撤回した麻生太郎副総理

G20は世界各国の大統領、首相が一堂に会する会議だが、これに合わせて関係閣僚の間でも日本各地で会議が開かれる。

列挙すると、財務大臣・中央銀行総裁会議は福岡県福岡市、労働雇用大臣会合は愛媛県松山市、観光大臣会合は北海道倶知安町、農業大臣会合は新潟県新潟市、貿易・デジタル経済大臣会合は茨城県つくば市、エネルギー・環境関係閣僚会合は長野県軽井沢町、保健大臣会合は岡山県岡山市、外務大臣会合は愛知県名古屋市といった具合だ。

安倍首相は1月23日のダボス会議で、大阪のG20サミットを「大阪トラック」と表現した。これになぞらえるように、財務省もG20財務大臣・中央銀行総裁会議を「財務トラック」と呼んでいる。

本来であれば「福岡トラック」なのだろうが、あえて「財務トラック」というところに意地を感じる。

失敗は許されない

この財務トラックでは、

(1)世界経済のリスクと課題
(2)成長力強化のための具体的取り組み
(3)技術革新・グローバル化がもたらす経済社会の構造変化への対応

が話し合われる予定だ。

今年の世界経済はかなり不透明で、経済の鈍化が見られる中国では大規模な減税に取り組むという。これが世界経済にどのような影響を与えるかは未知数だ。またイギリスのEU離脱も世界経済にとって大きな波乱要因となる。

こんなときに、今年10月から消費増税するという財務省は、世界経済の動きから見ればまったく逆行している。しかし、財務省は、そうした議論は避け、世界経済は悪くないという印象を国民に与えて、G20を乗り切る腹づもりなのだ。

当然、あくまで印象づけが目的の財務トラックなので、たいした提言は出ない。

(1)世界経済のリスクと課題といっても、よく「注視」しようというだけだ。

(2)成長力強化のための具体的取り組みでは、インフラ投資をやりましょうというが、肝心の増税政策をやめるとはいわない。

(3)技術革新・グローバル化については、国際租税に強い浅川雅嗣財務官の手前味噌感が強い。財務省の対外部門トップである浅川財務官は麻生氏が総理時代の'08年9月に秘書官に就任していて、麻生氏の信頼は厚い。

浅川氏は一時財務次官への就任も噂されていたが、まだ叶っていない。

財務官は4年目を迎え準備は万端、大舞台を切り盛りするのが花道になるだろう。と同時に、国内の問題で権威の失墜した財務省の復権にもなる。

財務省がいちばん避けたいのは、G20の運営が消費増税に影響すること。国際会議という大舞台、財務省は失敗できない。

【私の論評】二ヶ月後に消費税「再々延期」が決定されるこれだけの理由(゚д゚)!

年初から株式や為替相場が大荒れとなる中、市場関係者らの間で今年10月に予定される消費税率10%への引き上げが再び延期されるのでは、との観測が浮上しています。

過剰との指摘が絶えないさまざまな増税対策も、政権にとっては茶番に過ぎないのでしょうか。気になるのは、日本経済を取り巻く環境が、前回増税延期が決まった16年と似通ってきていることです。

増税再々延期される6つの理由

実際、日本経済を取り巻く環境は、安倍晋三首相が増税再延期を表明した16年の前半と大きく6つの点で似通ってきているようにみえます。

一つ目は、日本経済の停滞感が強まってきたことです。物価変動の影響を除いた実質GDP(国内総生産)は4半期ベースで見て18年に、1~3月期に続き、直近発表の7~9月期が二度目のマイナス成長(前期比、季節調整済み)を記録。景気拡大の長さが今月をもって08年2月までの戦後最長景気(いざなみ景気)を上回る局面にあるとはいいながら、回復ペースは非常に緩やかです。

人手不足でもなかなか賃上げ加速につながらないことを取っても、日本経済は決して盤石ではありません。さらに、為替市場ではこの1ヵ月で急速な円高・ドル安が進み、年明けには一時1ドル=104円台まで急騰。足元では108円ほどまで戻していますが、自動車はじめ主力の輸出企業への逆風となっており、増益を続けた企業収益に19年度は黄信号が灯っています。

一方で振り返れば前回の増税の先送り表明前の16年2月に発表された15年10~12月期のGDPもマイナス成長(同)となり、市場予想を上回る減速ぶりを示していました。しかも同期間の速報値発表時は18年と同様、15年の4半期ベースで見た成長率では、4~6月期に続く二度目のマイナスとなっていたのです。

2つ目は、16年の「チャイナショック(中国ショック)」の再来が現実化しつつあることです。同年初頭は中国国家統計局が発表した12月の製造業購買担当者景気指数(PMI)の悪化を引き金として投資家心理が悪化し、年明け直後から世界同時株安の様相を呈する事態を招き、リスクオフ(リスク資産の敬遠)の雰囲気が広がる中で外国為替市場でも急速な円高・ドル安が進みました。

1月30日と31日、ワシントンで米中閣僚級貿易協議

今年はどうかといえば、日本市場の大発会が大幅安となった主因は米アップルの売上高見通しの下方修正でしたが、その理由こそは中国経済の減速に他ならないです。

米中貿易戦争の影響も重荷となって中国経済は内外需とも勢いを欠いており、直近でも1月2日に財新・マークイットが発表した18年12月の中国PMIは、19ヵ月ぶりに景気判断の分かれ目となる50を下回りました。経済状況の厳しさを物語るように中国株は下落局面が続き、上海総合指数は16年のチャイナショック時の安値を下回る状況にあります。

3つ目、参議院議員選挙(参院選)を控えるタイミングであることです。16年は6月の増税延期表明を経て、7月の参院選では自民、公明の与党が改選定数の過半数を確保し大勝。安倍首相の悲願とする改憲に向けて、改憲派勢力は憲法改正発議に必要な3分の2の議席数を得ることになりました。
今年に目を向けると、7月に安倍首相の自民党総裁任期である21年9月までで最後の参院選を迎えます。現職中に憲法改正を発議したいなら、残された時間は多くないです。19年は4月に統一地方選も控える中、是が非でも改憲を実現したい安倍首相にとって、増税延期を追い風とした16年の“成功体験”はまだ記憶に新しいことでしょう。
4つ目は、日本が開催国として首脳会議(サミット)の議長国を務める点にあります。16年は5月下旬に伊勢志摩で開いたG7(主要7ヵ国)首脳会議(サミット)の場で、安倍首相が「世界経済はリーマンショック前と似ている」などと主張。幾つかのデータを示しながら消費増税の先送りの条件としていました。

「リーマンショック級」の危機をことさらに強調したほか、財政政策でのG7の協調を訴え、明らかに増税延期への地ならしを進めていました。

一方、今年は6月下旬に日本がG20(主要20ヵ国)では発足以来、初の議長国を務めるサミットが控えています。そこで気になるのは、関連会合として重要な存在である同月上旬のG20財務相・中央銀行総裁会議(福岡)に向けて、麻生太郎財務相が「経常収支の不均衡是正」を主要議題の一つに挙げていることですだ。
G20各国の経常収支の動向を見ると、トランプ大統領が行った減税策も影響する形で、米国の経常赤字額が圧倒的に大きくなっています。一方で、EU(欧州連合)や日本は17年に潤沢な経常黒字を確保しています。

経常収支の不均衡に焦点を絞った場合、内需拡大による貿易収支悪化が日本の経常収支の悪化、ひいてはG20の間の経常収支不均衡にも通じるのは事実です。

つまり伊勢志摩サミットで繰り出された論理展開も踏まえると、日本は経常収支の不均衡是正に向けてリーダーシップを取るために、財政政策の一環として内需の重荷となる消費増税「再々延期」を決めるのではないかとの観測につながります。

さらに、これは以前このブログにも掲載したことですが、トランプ大統領は、日本の消費税は輸出産業への補助金だと見なしています。米国が日本に対して貿易赤字を抱えているのは、日本が輸出産業に消費税という名の補助金を出し、消費税のない米国で有利にクルマなどを売るからであって、日本はダンピングしているとさえ言っています。

そうして、米国議会も、消費税は不公平な税制であるとみなしています。

5つ目は、今年も英国のEU離脱(ブレグジット)を巡る不透明感がくすぶっている。16年は6月23日にEU離脱の是非を問う英国民投票を実施。市場では残留派の勝利が見込まれていただけに金融市場には大きなショックをもたらし、為替市場では離脱決定後、対ポンドのみならず対ドルでも円相場は急騰しました。

国旗を掲げながらブレグジットを支持するデモ隊

結果的に増税延期の表明後にブレグジットが現実化した形ですが、伊勢志摩サミットでも英国民投票の行方は各国間で大きなリスク要因との認識が広がっていました。

今年は3月29日に英国がEUとの交渉期限を迎えますが、英国内で議会承認が進んでおらず、このままいくと英EU間の物流寸断など大混乱必至の「ハードブレグジット(合意なき離脱)」に至る可能性が未だに払拭されていません。

しかも、これら5つの類似点に加え、足元は昨年から本格的な“貿易戦争”に突入した米国と中国の経済摩擦、トランプ米大統領の不安定な政権運営、世界経済のけん引役となってきた米国の景気減速懸念、米利上げを巡る金融市場の緊張といった海外発のリスクが懸念される状況にあります。

直近では、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長が市場の状況次第で利上げペースを鈍らせる可能性に言及し、株高を演出した形ですが、トランプ氏がパウエル議長の解任までちらつかせるような状況を踏まえると不安の緩和は一時的に過ぎないといえます。

6つ目は、さらに国内に目を向けると、消費増税と同時に導入する軽減税率制度への対応を巡って、中小事業者の間でシステム改修などの遅れが伝わっており、何が外食に当たるかの線引きの議論一つを取っても既に混乱の声が多数聞こえてきます。

中小店でキャッシュレス決済した場合のポイント還元制度についても世論の反応は芳しくないです。ある市場関係者は「うがった見方をすれば、それぞれの増税対策が問題を抱えること自体が増税延期の理由となってもおかしくない」と話しています。これと似たようなことは、前回の消費税延期や再延期のときもありました。

評判の悪い軽減税率
増税延期表明はいつか?

では、延期表明をするならいつなのでしょうか。これまでの経緯を振り返ると、消費税率10%への引き上げは当初15年10月に予定されていましたが、安倍首相は14年11月、17年4月へ1年半の先送りを表明。さらに16年6月1日、19年10月へ2年半延期する方針を発表しましました。

今年は次期通常国会が1月下旬に召集され、19年度予算が国会で成立するのは、例年通りなら3月下旬頃となります。さすがに国会審議中にその予算を否定するような方針は示しにくいです。

消費増税が予定される10月まであまり猶予はないものの、市場では「予算成立直後の4月初頭に延期を表明し、財源の不足分は補正予算を組むことで賄う」(みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト)との見立てが出ています。このシナリオ想定の元、上野氏は6~7割の確率で今回も消費増税が先送りされると読んでいます。

実際、1月3日のラジオ番組では菅義偉官房長官が、19年の消費増税を取りやめる場合の判断時期について予算成立直後がめどになると発言。まだ増税先送りの判断があり得ることをにおわせています。

そうすれば、安倍政権としてはその後のG20会合で、日本が経常収支の不均衡是正に向けた旗振り役として、内需拡大に逆行する消費増税先送りや積極財政の方向に動いたとの訴えかけもできるでしょう。

前回の増税延期後の17年9月、安倍首相が消費税の使途変更の方針を表明したことは以前からの大きな変化として念頭に置かなければならないです。消費税の増収分を幼児教育無償化などに充てる方針を表明し、「使途変更の信を問う」として同年10月に衆議院を解散。総選挙に臨み、結果的に自民党が単独過半数を確保する圧勝に終わりました。

上野氏は今回、安倍首相が選挙のマイナスとなるような行動を避けるため、消費増税を延期した上で幼児教育無償化などの方針は変えず、バラマキ色を強めていくとみています。

一方で、国内株式市場の売買を主導する外国人投資家の意見は割れているようです。今回こそは消費増税に動かなければ財政健全化に向けた信認を失いかねないとの見方がある一方、完全にデフレ脱却を果たしていない現状で内需の逆風となる増税を課すのはナンセンスだとの姿勢も見受けられます。

確かにどれだけ対策を講じても今後、消費増税が少なからず個人消費の重荷となるのは避けがたいです。新聞各紙の世論調査でも「消費増税を予定通り実施すべき」と考える人は、3年前より増加傾向にある様が見て取れます。

現政権のキーマンの考え方を見ると、麻生氏が財務相という立場的にも消費増税を行うべきとの立場を貫く一方、菅義偉官房長官は慎重姿勢が根強いとみられています。

政権で不動の地位を築く両氏の姿勢も一枚岩でない中、あらゆる要素を加味した上で最終的に安倍首相が今回どのような決断を下すのか。この先の政権の命運をも大きく揺さぶりかねない大きな決断が、2ヵ月後には訪れることになります。

結論

「二度あることは三度ある」のでしょうか、「三度目の正直」となるのでしょうか。このブログに掲載してきたように、財政赤字は財務省が創作する妄想に過ぎず、もう日本の財政再建は終わったにも等しい状況にあります。

その意味では、財務省は別として、国民の側はもとより、政治家にとっても増税など全く意味がありません。私は、今回増税すれば、個人消費が落ち、またデフレに舞い戻るのは必定とみています。

そうなれば、安倍政権は政権末期でレイムダックになるのは必定です。安倍総理が念願している憲法改正もかなわる夢となりかねません。これを考えると、今回も、安倍首相が増税延期に動く可能性は、十分過ぎるほどあるように思えてならないです。

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2019年2月9日土曜日

【日本の解き方】ベネズエラめぐり米中が分断…冷戦構造を想起させる構図に 「2人の大統領」で混迷深まる―【私の論評】社会主義の実験はまた大失敗した(゚д゚)!

【日本の解き方】ベネズエラめぐり米中が分断…冷戦構造を想起させる構図に 「2人の大統領」で混迷深まる

ワシントンの在米中国大使館でスピーチする崔天凱駐米中国大使=6日

 南米のベネズエラで政情不安が続いている。マドゥロ現政権を中国とロシアが支持する一方、暫定大統領就任を宣言したグアイド国会議長を米国が支援する構図だ。

 かつては世界一の石油埋蔵量を誇り、豊かな大自然と莫大な富を抱え、「地上の楽園」といわれたベネズエラだが、昨年のインフレ率は100万%を超え、今年中には1000万%に達すると国際通貨基金(IMF)は警告している。食料や医薬品などが不足し、300万人ほどの難民が発生、コロンビアやブラジルなどの周辺国に逃げているようだ。

 経済学では、月率50%、年率1万3000%を超えるインフレをハイパーインフレと定義しているので、ベネズエラは正真正銘のハイパーインフレになっている。過去のハイパーインフレは五十数例とされるが、その多くはインフレ目標がないまま金融政策を行い、共産・社会主義体制の崩壊に伴って生じたもので、ベネズエラもその一例といえる。

グアイド暫定大統領(左)とマドゥロ現政権大統領(右)

 1999年に誕生したチャベス政権は、格差是正を目標にして「新しい社会主義国」を目指した。豊富な石油収入を財源とした医療、教育の無償化のほか、各種交付金など猛烈なバラマキ政策を実施した。

 2013年にがんでチャベス氏が死亡し、マドゥロ副大統領が引き継いだ。社会問題が解決できないまま、チャベス政権時代からの財政赤字が膨らみ、そのあげく中央銀行がカネを刷りすぎるという典型的なハイパーインフレになった。

 昨年5月に行われた大統領選挙でマドゥロ氏は再選されたが、その際、野党有力指導者を逮捕するなど対抗馬に妨害工作を行ったといわれている。これに対して反政府派や米国をはじめ諸外国が選挙の無効を主張、大統領不在だとしてグアイド国会議長を暫定大統領とした。

 この結果、ベネズエラには、チャベス前政権派のマドゥロ氏と反チャベス派のグアイド氏という「2人の大統領」がいるという異常事態になっている。

 「2人の大統領」に世界も割れている。マドゥロ大統領を支持しているのは、中国、ロシア、シリア、イラン、キューバ、トルコなど。グアイド暫定大統領を支持しているのは、米国、英国、欧州連合(EU)、カナダ、オーストラリア、ブラジルなど欧米諸国と南米諸国が中心だ。この分断は、かつての冷戦構造を想起させる。

 中国がマドゥロ氏を支持しているのは、07年から12年間で500億ドル(約5兆5000億円)以上の融資をつぎ込んでいるからだ。ここでマドゥロ政権が倒れれば、融資の返済に支障が出る恐れがある。

 一方、欧州諸国はグアイド暫定大統領を承認するだろう。中国などが内政干渉だと批判しても、ベネズエラの「2人の大統領」による政治経済の混迷がさらに深まることは避けられない。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】社会主義の実験はまた大失敗した(゚д゚)!

活気ある新興市場経済を崩壊の危機に追い込むのに必要なものは、汚職と革命、そしてインフレーションの3つです。ベネズエラの国民は、これら全ての影響が時間をかけて国内に広がっていくさまを目の当たりにしてきました。

さらに国民は、カルロス・アンドレス・ペレスからウゴ・チャベス、そしてニコラス・マドゥロまで、何人もの「革命家」たちの数々の政策の失敗を目にしてきました。彼らはいずれも、天然資源も人的資源も豊富なこの国が崩壊寸前の状態に陥ったことに対する責任を負っています。

ドイツの社会学者で歴史学者でもあるライナー・ツィテルマンによれば、失敗した政策ばかりが並ぶベネズエラの「プレイブック」が採用されたのは、1970年代後半です。問題は国有化と労働市場に関する規制の波から始まったといいます。それは、「チャベスが政権の座に就き、事態を一層悪化させるよりずっと以前のことだ」。

労働市場の規制に大きな問題があったとするツィテルマンは、「賃金を除いた労働者1人当たりの人件費は、1972年には賃金5.35カ月分だった。それが1992年には同8.98カ月分にまで大幅に上昇した」と指摘します。ちなみに、人件費の中には、賃金の他、福利厚生費、厚生年金などが含まれます。

このプレイブックは、2度にわたって大統領となり(1969~74年、1994~99年)、価格統制や手厚い補助金の提供などを行ったラファエル・カルデラ・ロドリゲスと、その「奇妙な仲間たち」によって使われ続けました。彼らは原油価格を水より安くし、財政赤字をますます拡大させました。それだけではありません。外国の製造業者に有利になる為替管理制度も導入しました。

キューバのカストロ主義と、チェ・ゲバラやサルバドール・アジェンデの反米主義の一部を借りた現代版ボリバル主義(社会主義)は、ベネズエラ経済にさらなる問題を引き起こしました。

2013年に死去したウゴ・チャベス

2013年にチャベスが死去した後には、その後継者とされていたニコラス・マドゥロが新大統領に就任。酪農やコーヒー、肥料、靴などの生産、スーパーマーケットの事業などを相次ぎ国営化しました。だが、多くはその後、「縮小または完全に停止」しています。

原油価格が下落すると、事態は一層悪化しました。価格は2013年後半の1バレル当たり111ドルから、1年後には同57.60ドルまで急落。さらにその1年後には同37.60ドルとなり、2016年には同27.10ドル~57.30ドル(約2900~6200円)の水準で推移しました。

ツィテルマンによれば、「これにより、チャベスの社会主義政策の致命的な影響が決定的なものとなった。(ベネズエラの)システム全体が崩壊した。その他の国々でも明らかにされてきたとおり、価格統制はインフレと闘うための効率的な手段にはなり得ないだけでなく、事態を悪化させるだけだ」。

ベネズエラの急激なインフレはこうして始まり、「インフレ率は2016年、225%に達した。南スーダンを除いて、世界中のどこよりも高い水準となった」。

「中央銀行の内部報告書によると、2016年は国内総生産(GDP)が前年比マイナス19%となっていた。実質的なインフレ率は、恐らく800%近くになっていたと考えられる」

このような状況になれば何が起きるか、経済学者たちは嫌というほどよく知っている。ツィテルマンはさらに、次のように指摘します。

「人々は非常に安価で売られているものを買い、それらをため込み始める。また、繰り返し何時間も行列に並んでモノを買い、ずっと高い値段でそれらを闇市で売る」

「要するに、社会主義の実験が再び行われ、再び失敗したということだ。過去100年のほど間に行われたその他の全ての実験がそうだったように──」

国が崩壊の危機にひんする中で、ベネズエラの国民は多大な犠牲を払っています。

ベネズエラの現体制は堅固であり、指導者たちの顔ぶれを変える方が、体制を変革するよりも現実味があります。キューバはベネズエラにおけるキューバの覇権をより持続可能なものにするために、マドゥロよりは少しはましなリーダーに置き換えるかもしれないです。

しかしそれが民主主義への回帰を意味することはなく、外国が支配する、より安定した石油資源に巣くう泥棒政治をもたらすに過ぎないです。

たとえ野党勢力、あるいはアメリカ主導の軍事介入によって、全く新しい体制の政権が誕生しても、彼らが直面する課題は途方もなく大きいはずです。公共部門のあらゆる領域で、軍が果たしている大きな役割を縮小し、医療や教育、法執行の基本サービスをゼロから再構築しなければならないです。

石油産業を再建するとともに、他の経済部門の成長を刺激する一方で、麻薬ディーラー、刑務所で運営される恐喝ビジネス、略奪的な鉱山業者、金持ちの闇金融業者、そして国のあらゆる部分を食い物にしてきた略奪者を排除しなければならないです。しかもこうした改革のすべてを、無政府状態に近い政治環境と、深刻な経済危機のなかで遂行する必要があるのです。

こうした問題の大きさを考えると、ベネズエラは今後も長期にわたって不安定であり続けるでしょう。市民と指導者、そして国際社会にとっての目先の課題は、この国の衰退の余波を封じ込めることです。

悲惨な事態に直面しつつも、ベネズエラ民衆が失政に対する闘いをやめたことはありません。2018年夏の時点でも、人々は、依然として月に数百件の抗議行動に繰り出していました。

マドゥロ政権に反対するカラカスでのデモ参加者

その大部分は地域密着型の草の根運動で、政治的リーダーシップはほとんどないですが、それでも、これはベネズエラの民衆が、自分のために立ち上がる意志を強くもっていることを示しています。

だが、これだけで、ベネズエラが現在の厳しい状況から抜け出すのに十分でしょうか。おそらくそうではありません。絶望ゆえに、トランプが求める軍事介入を心待ちにする人は増える一方です。たしかにそれは、長い間苦しんできた人々が熱望するデウス・エクス・マキナ(機械仕掛けの神)かもしれないですが、まともな戦略ではなく、報復という妄想に過ぎないです。

ベネズエラにとって最善の希望は、軍事介入ではなく、抗議行動や社会の反対意見の炎が完全に消えないようにし、独裁体制に対する抵抗が維持されることです。その見通しは絶望的に思えるかもしれないです。

しかしベネズエラの抗議の伝統が、いつか市民制度と民主的慣行を回復する基盤を提供するでしょう。簡単ではないし、短期間では実現しないでしょうが、これまでも、国家を破綻の瀬戸際から救い出すことが、簡単だったことは一度もありません。


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