2019年11月3日日曜日

中国共産党は「国際支配」求める、ポンペオ米国務長官―【私の論評】米国は中国による前代未聞の世界秩序への挑戦を阻止する(゚д゚)!

中国共産党は「国際支配」求める、ポンペオ米国務長官


香港(CNN) ポンペオ米国務長官は3日までに、中国共産党は「国際支配」を欲しており、外国諸国を自らの側へ引き込もうとする「世界的なキャンペーン」に着手したとの見方を表明した。

米ニューヨークのハドソン研究所での演説で述べた。増大する米中間の競争関係をめぐり今後数カ月間、複数回の演説を行う方針も示した。

長官はこれらの演説では「競合するイデオロギーと価値観が米国と世界に及ぼす影響力に言及する」とし、中国共産党は闘争と世界支配を狙うマルクス・レーニン主義の党であると強調。「我々は中国指導者の発言に注視する必要がある」とも主張した。

ただ、米国は中国を「戦略的な競争国家」と明瞭に位置付けながらも、「対立」は求めていないとも説明。「実際は反対のことを望んでおり、自国の国民や隣国の国民と平和な状態にある、繁栄する中国を目にしたい」と指摘。「自国民の非凡な才能が栄えることを許す自由化された中国を見てみたい」とも期待した。

ポンペオ長官の今回の発言に対し中国外務省の報道官は「悪意をもって中国を非難している」と反論。「米国の一握りの政治家が抱く根深い政治的偏見と反共産主義を十分に反映している」と反発した。

米中関係は過去2年間、貿易や香港情勢などを含めさまざまな分野で対立が目立っている。

【私の論評】米国は中国による前代未聞の世界秩序への挑戦を阻止する(゚д゚)!

中国では昨年6月22~23日に、外交政策に関する重要な会議である「中央外事工作会議」が開催されました。同会議は、これまで2006年と2014年の2回しか開催されたことがないです。

今回は、習近平(共産党総書記、国家主席)以下、中国共産党政治局常務委員7人全員、王岐山国家副主席、崔天凱駐米中国大使らが参加しており、会議の重要性が窺われます。

昨年6月22~23日に、開催された「中央外事工作会議」

会議で、習近平は、中国が今後のグローバル秩序の構築において主導的役割を果たすことを明確に打ち出す演説をしました。同年6月24日付け人民日報等が報じています。習近平の演説には、以下のような注目すべき内容が含まれていました。
・新時代の中国の特色ある社会主義外交思想を指導方針とする 
・グローバルな統治の刷新を主導、より完全なグローバルパートナー関係のネットワークを構築 
・中華民族復興と人類の発展を軸に、人類運命共同体の構築を推進 
・一帯一路構想、AIIB(アジアインフラ投資銀行)の推進 
・巧妙に策をめぐらし、安定した発展的な大国外交の新たな局面を開くよう努力 
・周辺国への外交工作をうまく行い、周辺の環境を中国に友好的で有利なものにする 
・国家の核心的利益と重大な利益を死守する 
・多くの途上国は、中国外交にとり天然の同盟軍である
これは、中国が既存の秩序に代わる国際秩序を構築するという宣言であると言えます。既存の秩序は、自由、民主主義、人権尊重、国際規範の遵守といった諸価値に基づくものです。

これに対し、習近平が演説で示す外交方針は、「社会主義外交思想」に基づくものであるということですから、既存の秩序とは大きく異なった、中国中心の秩序を目指すものと理解できます。

中国は、南シナ海問題への国際仲裁裁判所の判決を「紙くず」と評したような国です。また、「民族の復興」や「核心的利益」は、台湾の武力併合を含んでいます。そうした中国が目指す国際秩序に懸念を抱かざるを得ないです。

「人類運命共同体」は、重要なキーワードの一つです。これは、昨年3月の憲法改正で、新憲法にも盛り込まれた概念です。中国は「人類運命共同体」という言葉を精力的に国際社会に売り込もうとしています。

一昨年1月には、習近平はダボス会議と国連ジュネーブ本部で「人類運命共同体の構築」を謳った演説をしました。昨年3月には、中国の主導により、人権状況の批判に際して、地域の特性、歴史、文化、宗教などの背景に留意するよう求める「互恵協力決議」が、国連人権理事会で採択されましたが、同決議にも「人類運命共同体」の文言が含まれています。
「前進の道のりにおいて、われわれは平和発展の道を堅持、互恵ウィンウィンの開放戦略を遂行し、世界各国の人民と共に人類運命共同体の建設を推進していく」。
「人類運命共同体」の内容は、まだ、あまり具体的に示されているわけではないですが、相互尊重・平等な協議、相互理解、公正・公平、互恵、文明の多様性尊重、環境保護などが含まれているようです。

「文明の多様性尊重」は、一見もっともですが、「互恵協力決議」が示唆するように、自由、民主主義、人権尊重、国際規範の遵守を普遍的価値とみなす現行の国際秩序に注文をつけているとも解釈できます。

習近平は、一昨年の第19回党大会で「人類運命共同体」の説明として、冷戦思考の放棄、同盟の代わりにパートナーを組む、などのことも言っています。

これは、米国を中心とする同盟ネットワークへの対抗を意味するようです。なお、一昨年1月15日付けの人民日報は、人類運命共同体について「中華文明に根差した外交理念」と解説しています。華夷秩序を連想せざるを得ないような表現です。中国が目指す「人類運命共同体」の具体的内容が如何なるものになっていくのか、注視していく必要があります。

ちなみに「人類運命共同体」などの言葉最初にでてきたのは、2015年9月29日の人民日報のようです。人民日報は2015年9月28日に「中国国家主席習近平がニューヨークの国連本部で一般討論演説を行い、協力・ウィンウィンを核心とする新型の国際関係を構築し、人類運命共同体を築く必要性を強調した」と報道しています。

ただし、その頃は米国はオバマ政権であり、中国の危険な意図に脅威を抱くまでにはいかなかったようです。無論一部の人は、その頃から脅威に感じていましたが、大きな声にはなりませんでした。やはり、米国がこれを大きな脅威とみたのは、昨年の「中央外事工作会議」の後の習近平の演説によってです。これによって、米国では一気に超党派で中国に対峙しようという雰囲気が醸成されたようです。

先の中央外事工作会議における習近平の演説では、一帯一路、AIIBの推進とともに、「途上国は中国外交にとり天然の同盟軍」という表現も目を引きました。理念として「人類運命共同体」を掲げつつ、一帯一路やAIIBにより途上国を中国の影響下に置き、中国中心のグローバルガバナンスを目指すということであると推測できます。

中央外事工作会議に関しては、昨年もこのブロクで解説しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
中国がこれまでの国際秩序を塗り替えると表明―【私の論評】中華思想に突き動かされる中国に先進国は振り回されるべきではない(゚д゚)!

この記事は、2018年7月6日金曜日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に結論部分のみ引用します。
日本をはじめとした先進国は、様々な利害の衝突もありますが、それにしても中国による世界秩序に対して譲れない部分があるはずです。特に、民主化、経済と政治の分離、法治国家化という概念は、絶対に譲れないところでもあります。 
そうして、この部分が何が何でも譲るべきではありません。中国が、チベット、ウイグル、内蒙古、満州などの本来の外国の領土であるところを除く自国の本土のみで、中国の価値観を実現するのはある程度許容できるところもあるかもしれません。 
しかし、現在は19世紀ではなく、すでに21世紀です。現在に至るまで、古代の妄想を引き継いでいるのは、不合理だし、異様でもあります。 
そうして一帯一路やAIIBにより、他国にまで中華思想を押し付けるようなことが絶対あってはなりません。さらに、中国人民も中国の体制に虐げられることは本来防がなければならないはずです。 
やはり、先進国は、米国と協調して、中国の現体制を崩壊に向かわせるべく努力すべきです。特に、妄想ともいえる、中華思想は必ず打ち砕かなければなりません。
ポンペオ長官による"中国共産党は「国際支配」を欲している"という発言は、当然のことながら、習近平の「中国が既存の秩序に代わる国際秩序を構築するという宣言」を指しているものと思われます。

私は、中国が世界征服をしようとしているとまでは思いませんが、中国が自らにとって都合の良い新たな国債秩序をつくろうとしていることは明白であり、それを米国が排除しようとしているのは当然のことだと思います。

中国が新たな世界秩序をつくるということは、日本やEUなども含まれる、米国を頂点とする世界秩序を破壊して、中国による秩序を作り出すということであり、そんなことを中国の都合だけで実行されてはたまったものではありません。

演説するペンス副大統領

10月24日には、このブログにも掲載しましたが、ペンス米副大統領は「中国は人々の自由と権利を抑圧…結局は軍事だ」、対中強硬論を述べていましたが、今回のポンペオ長官の発言ともあわせて考えると、米国は中国による新たな世界秩序の構築を米国への挑戦と見据えて、これを阻止することを決断し、その意思には全く揺らぎがないことを宣言したと受け取るべきです。

そうして、この動きは、米国においては超党派の動きであり、すでに米国の固い意思となったと受け取るべきです。次の大統領がトランプ氏であろうが、誰であろうが、変わりません。

米中通商交渉等で一時妥協したようにみえることもあるかもしれませんが、もそれは一時の戦術的なものに過ぎず、戦略的には中国が現在の世界秩序にあわせて、自らを変えるか、それを中国が拒否するなら、世界秩序の変更に二度と挑戦できないくらいまで、中国経済ならびに軍事力が弱体化するまで、米国は対中国冷戦を継続するでしょう。

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2019年11月2日土曜日

【日本の解き方】「デジタル人民元」の発行はドルの基軸通貨体制に脅威 FBと米政府は手を組むか―【私の論評】基軸通貨にはなり得ないデジタル人民元の末路(゚д゚)!


米ドル(上)と人民元(下)

中国の政府系シンクタンク、中国国際経済交流センターの黄奇帆副理事長が講演で、「中国人民銀行が、世界で初めてデジタル通貨を発行する中央銀行になる可能性がある」と発言したことが話題になっている。

 技術的な観点では、デジタル通貨の技術はできているので、中央銀行がその発行者になることは可能だ。単純にいえば、多くの種類があるデジタル通貨も基本は同じであり、どれかをコピーすれば新たなデジタル通貨を作ることができる。

 政府や中央銀行がデジタル通貨の発行主体になれば、民間主体のデジタル通貨が抱える問題点の多くは解消されるとともに、駆逐される可能性も高い。

 民間企業の米フェイスブックが発行を目指しているデジタル通貨「リブラ」は、米国議会で苦労している。米政府や中央銀行はリブラの発行が及ぼす影響を警戒しており、リブラの規制法ができようとしている。そこで、フェイスブックが持ち出してきたのが、中国の脅威だ。

 これは、的外れな論点ではない。リブラは複数の法定通貨で構成されたバスケットに裏付けられるが、その中に中国の人民元は含まれていない。しかし、中国人民銀行が、リブラをコピーして、各国の法定通貨に人民元を加えたデジタル通貨を作るのは難しくない。この場合、このデジタル人民元は中国がコントロールするブロックチェーン上で稼働することとなるに違いない。

 日本や欧米などの民主主義国では、ブロックチェーンは分散化され政府が管理することはあり得ないが、同じ技術でも中国では全て政府が管理することとなるだろう。

 もしデジタル人民元ができれば、米国による金融制裁を回避することも実際に可能になる。現在はドルが国際金融で基軸通貨として支配的なので、米政府が米国の銀行を抑えれば、世界中でドル決済を事実上行えなくなるが、デジタル人民元でドル支配を乗り越えられる可能性がある。

 もちろん米国もデジタル人民元にドルの有用性が吸収され、基軸通貨の立場が損なわれるおそれがあることを承知している。

 そこで、フェイスブックその他の通貨の裏付けがある安定的なデジタル通貨を規制し、民間企業であっても米政府の意のままに操ろうとしているのだろう。フェイスブックがマイクロソフトのように物分かりがよければ、規制に服する代わりに利益を保証してもらえるというわけだ。

 もっとも、フェイスブックは、規制当局の支持が得られるまではリブラの発行を遅らせる姿勢を改めて示しており、フェイスブックと米国政府は条件闘争しているようにも見える。

 結局、国際基軸通貨としてのドルの立場を守るためにも、フェイスブックと米政府が最終的には協力し、デジタル人民元の台頭を許さないと、筆者はみている。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】基軸通貨にはなり得ないデジタル人民元の末路(゚д゚)!

アップルのティム・クックCEOが暗号通貨(仮想通貨)発行につき、否定的な見解を述べたことが報じられています。

今年6月、Facebookは暗号通貨プラットフォーム「Libra」を正式に発表。ブロックチェーンの管理団体「Libra Association」に参加するMastercardなどの共同創立者とともに、Libraを推進するとアナウンスしていました。

フランスの新聞Les Echosはインタビューの中で、アップルがこの動きに追随するのかと質問。それに対してクック氏は「通貨は国家の管理下に置かれるべきだと思います。民間企業グループが競合する通貨を創り出すアイディアには賛成できません」「民間企業は、このような形で権力を得ようとすべきではありません」と回答しています。

これに先立ってアップルの幹部は「暗号通貨を注視している」との趣旨を述べており、独自の暗号通貨を模索しているとの見方もありましたが、否定されたかたちです。

もっとも、クック氏の言葉は額面通りに受け取れないかもしれません。1つには、同氏がFacebookのザッカーバーグ氏とプライバシーの扱い等を巡って確執があり、当てつけを返した可能性も考えられるわけです。

もう1つは、Libraを取り巻く環境が危うさを増していること。米上院は消費者プライバシーの保護を懸念して公聴会を開催し、米政府もLibraが資金洗浄などに使われる恐れについて「非常に深刻な懸念」を表明、Libra担当者はスイスで26カ国の中央銀行幹部から質問攻めに遭うことに。そうした情勢を鑑みたのか、PayPalも撤退を表明していました。

さらに言えばクック氏は「事業を展開している現地の法律に従う」、つまり政府と対立しない方針を一貫しています。米国政府やEU諸国も大手ハイテク企業による暗号通貨に懸念を抱いているなかで、参入は問題外かもしれません。

アップルCEOティム・クック氏

ただし、仮にリブラ導入が阻止されても、他の主体が同様の仕組みを導入する可能性は残ります。

容易に想像できるのは、新興国で最初に導入される可能性です。金融システムが未発達で銀行取引にアクセスできない人が多い国々にとっては、既存の金融システムからの移行コストが相対的に小さいこともあり、スマートフォンと通信網だけで金融システムを高度化し得る可能性は魅力的でしょう。

この記事の冒頭に記事にもでてきた、リブラはビットコインと同様、ブロックチェーンの技術を使って開発される仮想通貨ですが、ビットコインとの最大の違いは、ドルやユーロなど既存通貨によって価値が担保される点である。要する、リブラはいつでもドルやユーロなどの既存通貨と交換できるということです。

リブラはリブラ協会と呼ばれるコンソーシアムが通貨を管理する予定ですが、リブラ協会はドルやユーロといった既存の法定通貨を保有し、この保有資産を裏付けにリブラを発行する仕組みとなっています。リブラと既存通貨の交換レートは変動するものの、各国通貨のバスケットになっているので、価格変動は穏やかなものになります。

IMF(国際通貨基金)には、主要通貨をバスケットにしたSDR(特別引出権)という、事実上の国際通貨がありますが、リブラはこれに近い仕組みと考えてよいです。主要通貨をベースに通貨を発行するという点では、保有するドル資産などを裏付けに、政府ではなく民間企業が通貨を発行している香港ドルとも似ています。
日本では政府が発行しないと通貨ではないといった議論をよく耳にしますが、それは単なる思い込みです。経済学的に見た場合、通貨は、それに価値があると多くの人が認識すれば、通貨として流通する性質を持っています。
政府の方が民間よりも信用度が高いので、法定通貨の方が流通しやすいのは事実ですが、民間が発行主体であっても、通貨の要件を満たさないわけではありません。
中国政府はリブラの計画をきっかけに、デジタル通貨の発行を進める決断を行ったようですが、その理由は、リブラが持つ潜在力が想像以上だったからです。

リブラについては、各国から様々な懸念が寄せられており、マネーロンダリング対策などで協議を進めていくとしています。しかし、リブラにはマネロンに関する懸念があるという各国通貨当局の説明は、額面通りには受け取らない方がよいでしょう。

もちろん、匿名性の高い仮想通貨が世界に流通すれば、犯罪資金などの温床になる可能性はありますが、現金とは異なり、仮想通貨は理屈上、その行方を電子的に追跡できます。

現金ほど匿名性が高く、犯罪やテロに利用しやすい決済手段はほかにないです。それにもかかわらず、現金が主な決済手段として全世界で使われている現状を考えますと、仮想通貨が普及するとマネロン対策ができなくなるというのは杞憂に過ぎません。

各国の通貨当局が本当に恐れているのは、マネロンなどではなく、リブラのような仮想通貨が普及することで、中央銀行が持つ巨大な権力が脅かされることです。

現代の金融システムは、中央銀行が通貨を一元的に管理し、傘下にある民間銀行を通じてマネーの流通をコントロールすることで成り立っています。

中央銀行はその気になれば、その国の経済を自由自在に操ることができるので、この仕組みは、中央銀行を頂点とした銀行による一種の産業支配システムと言い換えることができるかもしれません。

ところが、ここでリブラのような仮想通貨が広く流通する事態になると、状況が一変します。

中央銀行による統制が効かないマネーの比率が増えれば、金融政策の効果は半減し、中央銀行が持つ権力も大きく削がれることになります。金融機関にも十分な情報が入らなくなり、一般企業に対する支配力も大きく低下してしまうでしょう。

米国は常に巨額の貿易赤字を垂れ流していますが、それは多額のドルを世界にバラ撒いていることと同じです。つまり米国は貿易赤字を通じて全世界にドル経済圏を構築しているわけなのですが、世界経済におけるドル覇権の影響力はすさまじく、各国企業はドルなしでは経済活動を継続できません。

近年、グローバル化が進み、海外にも気軽に送金できるようになりましたが、銀行間の送金ネットワークも実は米国がドルベースで構築したものであり、ドル覇権と密接に関係しています。海外送金が簡単になったのはドルが普及したことが要因であって、多国籍という意味でのグローバル化が進んだ結果ではありません。

ドル覇権が続く限り、米国には金融機関を通じて世界のあらゆる情報が集まってきますが、インテリジェンス(諜報)の世界において、これほど有益な仕組みはほかにないでしょう。

米国のような通貨覇権国はお金の動きをチェックするだけで、全世界の情勢をほぼリアルタイムに把握できてしまうのです。そもそも、予算は国家意思といわれるように、すべての国家の政策には何らかの予算がついて初めて実行できるからです。

そうして、予算の実行にはすべてお金が絡むわけで、お金の流れをつかんでいれば、予算の実行過程まで把握できるのです。無論予算の実行には、ドルだけではなく自国通貨も使用するので、全部を把握できるとはいえませんが、それにしても全ての国が貿易をしており、その決済にはドルを使うことから、貿易に関しては把握できるわけで、その内容から自ずと、国内のこともかなりのところまで把握できるのです。

近年、このドル覇権に対して公然と挑戦状を叩き付けたのが中国です。中国は人民元をベースにした独自の銀行送金ネットワークの構築に乗り出しており、ドル覇権を周辺から突き崩そうとしています。ただし、これはいまのところ、成功しそうにはありません。

このような現実を考えると、全世界で27億人の利用者を持つフェイスブックが、本格的な仮想通貨の計画を打ち出したことのインパクトが、米中の通貨当局にとっていかに大きいことなのかお分かりいただけると思います。

これまで規模の小さい途上国は、ドル覇権の下にぶらさがる形でしか通貨システムを構築できませんでした。内戦が続き国土が荒廃したカンボジアでは、国連による暫定統治で経済を復活させましたが、金融システムはドルと現地通貨の二本立てとなっています。現在、カンボジアはめざましい経済発展を遂げていますが、これはカンボジアがドル経済圏であることと無縁ではありません。

中国はカンボジアを中国経済圏に引き入れようと、莫大な資金を投下していますが、企業における決済や預金、投資がドルになっている以上、中国もそのルールに従わざるを得ないです。通貨覇権を握っていることは、何兆円もの経済援助をはるかに上回る効果があるのです。

もしリブラが世界に普及した場合、自国通貨とリブラの二本立てで金融システムを構築する新興国が出てきても不思議ではないです。こうした新興国は、リブラを交渉材料に、ドル覇権を狙う米国と人民元覇権を狙う中国を上手くてんびんにかけ、双方から好条件を引き出そうとするでしょう。

つまりリブラという仮想通貨は、これまで構築してきたドル覇権を脅かす存在であり、そのドル覇権に対して挑戦状を叩きつけている中国にとっても、それは同じことです。

中国は発行を計画している人民元のデジタル通貨を用いて、国際的な人民元の普及を画策する可能性があります。表面上はリブラとは対立関係にありますが、この世界は「蛇の道は蛇」であり、リブラとデジタル人民元が共存することも十分にあり得ますし、米国政府が水面下でフェイスブックとの交渉を進めている可能性も否定できないです。

さらに言えば、ユーロ陣営や英国の動きにも注目する必要があります。

ユーロ圏各国は、表面的には仮想通貨規制で各国と足並みを揃えるというスタンスですが、ユーロ圏内では、ビットコインなどの仮想通貨を自由に流通させています(英国も同様)。欧州各国が、仮想通貨に対して警戒感を示しつつも、ドル経済圏に対する牽制球としての役割を仮想通貨に期待している面があるのは明らかです。

とはいいながら、先に述べたように、リブラはいつでもドルやユーロなどの既存通貨と交換できる通貨です。特に、いつでもドルと交換できるというのが強みです。

対して、中国の人民銀行が発行する仮想通貨はおそらく、ドルといつでも交換できるようにしたいのは山々でしょうが、それは現状では不可能に近いです。

リーマンショック後、人民元発行残高の100%相当のドル資産を人民銀行は保有していました。ところが、バブル崩壊不安を背景に資本の流出が激しくなりました。ドル資産は大きく減り、海外からドルを借りてようやく3兆ドル台の外貨準備を維持するありさまです。それでも人民元発行残高ドル資産比は6割まで落ちたのです。


これでは、中国が仮想通貨を発行したとしても、当然のことながら、ドルで担保することなど全くできません。

さらには、今年は中国の国内債が記録的なペースでデフォルト(債務不履行)に陥っていますが、来年はオフショア市場の番かもしれないです。現時点で「ストレスト」に分類される企業が発行したドル建て債の大量償還が近づいているためです。

ブルームバーグの集計データによると、利回りが現在15%以上のオフショア債86億ドル(約9260億円)相当が2020年に償還を迎える。言い換えると、ストレスト企業のドル建て債発行残高の約40%が来年償還となるからです。

ルームバーグの集計データによると、利回りが現在15%以上のオフショア債86億ドル(約9260億円)相当が2020年に償還を迎える。言い換えると、ストレスト企業のドル建て債発行残高の約40%が来年償還となる。

これらのことを考えると、現状ではドル建での信用がない中国の仮想通貨は仮に発行したとしても、リブラほどは普及しないことが十分考えられます。

仮想通貨自体には、現在ではあまり信用が高くはありません。それは、当然といば当然です。これは、自分におきかえて考えてみるとわかると思います。自分の給料が全部仮想通貨で支払われたとしたらどうするでしょうか。

たいていの人は仮想通貨は便利とは思うでしょうが、自分の給料が全部仮想通貨で支払われたとしたら、やはり不安を感じると思います。やはり、少なくとも一部、もしくはかなりの部分を既存の通貨に変えて、銀行に預金したいと思うのではないでしょうか。

現在の現金だって、昔は金や、銀に変換できる時代があり、それぞれ金本位制とか銀本位制と呼ばれていました。ただし、政府の発行する貨幣が長い間使われてきた実績があるので、今はなくなりました。

仮想通貨も同じことです。最初はこれで貯蓄することなどに不安を感じる人は多いでしょう。長く使われるようになって、しばらくして多くの人が安心するようになれば、ドルの保証などいらなくなるでしょうが、それまでには長くかかると認識すべきです。

現状では、人民元建てだけの信用だけでは、使い手にとってはかなり不安です。であれば、なかなか普及しないでしょう。

これから、先10年くらい中国がかつての中国のように、毎年10%程度の成長を続けるとの信頼が市場から得られれば、中国発の仮想通貨も普及する可能性はありますが、それはあり得ません。


それでも、金融システムが未発達で銀行取引にアクセスできない人が多い国々にとっては、中国の仮想通貨を使う意味は大きいかもしれません。スマートフォンと通信網だけで金融システムを高度化し得る可能性は魅力的でしょう。ただし、このような国々の多くが、仮想通貨を使うようになって、経済発展したとして、どのくらいの規模になるかという問題があります。

さらには、デジタル人民元が普及していくと、現金とは異なり、仮想通貨は理屈上、その行方を電子的に追跡できることから、中国国内では困る人が大勢出てくる可能性が大です。

無論中国の暗黒社会の構成員を容易に摘発しやすくなるというメリットもありますが、役人の不正や、政府要人の不正なども把握しやすくなります。中国共産党の幹部らは、現状ではメリットばかり考えているのでしょうが、彼らにとってデメリットも大きいことをいずれ痛感するようになるでしょう。

そもそも、ブロックチェーンは、常にみんなにみはられている台帳のようなものです。中国政府だけが、見張るブロックチェーンによる、仮想通貨は本当に仮想通貨といえるのかという問題もあります。

以上のことを考えると、現状では中国の仮想通貨はそれほど危険な存在とはとても思えません。ただし、将来の危険な芽を潰すという意味では、高橋洋一氏の主張するように、やはり国際基軸通貨としてのドルの立場を守るためにも、フェイスブックと米政府が最終的には協力し、デジタル人民元の台頭を防ぐことになると思います。

フェイスブックCEOのザッカーバーグ氏

さらに、リブラはドルトの交換ができるということで、発行には自ずと限界があるので、FRBの権力を脅かすまでにはならないでしょうし、フェイスブックは米国による規制等を受け入れるでしょうから、リブラがドルにとって変わるような事態にはなることはないでしょう。

さらに、ザッカーバーグ氏も、ドルに変わる通貨などという大それたことは考えていないでしょう。そんなことより、リブラを用いて、フェイスブックのユーザーにさらなるベネフィトをどのように提供していくかということに関心があることでしょう。

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2019年11月1日金曜日

弾劾調査発表後、トランプ支持スーパーPACが1日に約100万ドルの資金を集める―【私の論評】米民主党もトランプ再選で、日本のような「腑抜け野党」になってしまうのか(゚д゚)!

弾劾調査発表後、トランプ支持スーパーPACが1日に約100万ドルの資金を集める

<引用元:FOXビジネス 2019.10.31

ナンシー・ペロシ下院議長(民主党)

ナンシー・ペロシ下院議長が弾劾調査を発表してから、トランプ大統領支持の献金額が急上昇しているとある支持者はいう。

トランプ政権の元中小企業庁長官でアメリカファースト・アクションPAC(政治活動委員会)理事のリンダ・マクマホンは10月31日、自身のトランプ支持団体がペロシの発表から数日で数百万ドルを集めたと、FOXビジネスのニール・キャビュートに語った。

アメリカファースト・アクションのようなスーパーPAC(特別政治活動委員会)は、広告が候補者の公式選挙運動と連携しないという条件で、候補者を支持する広告に利用できる資金を無制限に集めることが許可されている。

「ナンシー・ペロシが弾劾調査を進めると発表した時、それから7日間で700万ドルを集めました。1日約100万ドルです」とマクマホンは話した。

「それは大統領を味方する人がたくさんいることを物語っていると私は思います」とマクマホンは話した。

2020年の選挙サイクルが始まってから、トランプ陣営は1億6,530万ドルを集めており、共和党全国委員会は1億6,870万ドルを集めた。合計で約3億3,400万ドルになる。

民主党全国員会は、2019年から2020年のサイクルの間、これまでに6,650万ドルを集めている。2020年7月の大会まで正式な民主党候補者は選ばれないため、現在の民主党大統領候補者は全員、個々の資金集めの合計となる。

【私の論評】米民主党もトランプ再選で、日本のような「腑抜け野党」になってしまうのか(゚д゚)!

米議会下院が10月31日にトランプ大統領の弾劾調査の承認と前進を採決しました。

弾劾調査プロセスを巡る決議案はほぼ党派に沿って賛成232票、反対196票で可決されました。これは弾劾調査の公開段階に向かうロードマップを提示しただけではありません。トランプ大統領弾劾の訴追決議案採決と、上院での弾劾裁判がほぼ不可避だという明確なシグナルでもあるのです。

トランプ氏は正式な弾劾調査プロセスの対象となった4人目の大統領となります。ビル・クリントン氏と南北戦争後のアンドリュー・ジョンソン氏の2人は下院で弾劾訴追されたのですが、上院では有罪判断を受けませんでした。リチャード・ニクソン氏は下院が弾劾訴追の決議をする前に辞任しました。

1970年代当時のニクソン大統領は、あまりの
不人気のためトイレットペーパーの絵柄された

しかし、トランプ氏は弾劾訴追されてから再選を目指す初の大統領になるかもしれないです。しかし、これでトランプの再戦はなしとみるのは、あまりに時期尚早です。

米野党・民主党のペロシ下院議長は9月24日、トランプ大統領の弾劾に関する調査を開始すると発表しましたが、その直後から、2020年の大統領選で再選を目指すトランプ陣営は弾劾調査が再選に有利に働くと主張していました。

同陣営の広報担当ティム・マータフ氏は「民主党が馬鹿な真似をした場合に備えて、多くの準備を整えていた。実際、民主党は馬鹿だった」と発言しました。

「おそらく献金が急増するだろう。大統領が圧倒的勝利に大きく近づいたと考えている」と述べました。

同氏は、ペロシ議長が弾劾調査を発表した直後の15分間で25万ドルの献金を集めたと表明していました。

トランプ大統領も6週間前に撮影した動画を直ちにツイッターに投稿し、「(弾劾調査は)魔女狩りのくずだ」と批判しました。

トランプ大統領

同大統領はニューヨークで記者団に対し「再選にプラスになると誰もが言っている」ともコメントしました。

共和党全国委員会は8月下旬のモンマス大学の世論調査で弾劾に対する有権者の支持が低かったことを指摘。また、民主党主導の下院で弾劾決議が可決されても、共和党主導の上院で大統領が有罪にならないことはほぼ確実です。

このため、ペロシ議長も弾劾調査には消極的な姿勢を示してきました。

トランプ陣営を勢いづかせているのも、こうした「弾劾は逆効果」という見方です。

あるホワイトハウスの当局者は、大統領は懸念していないと一蹴。別の当局者も、民主党が2016年の大統領選でのトランプ氏の勝利をまだ受け入れられていない証拠だとコメントしました。

来年11月の米大統領選に向けた民主党候補指名争いで、トランプ大統領(73)に勝てそうな新たな候補の登場を待望する声が民主党の有力支持者の間で広がりつつあります。

本命視された中道穏健派のバイデン前副大統領(76)の勢いが衰える一方、左派系のエリザベス・ウォーレン上院議員(70)が支持を拡大していることを受け、「現状ではトランプ氏に勝てない」との危機感が強まっているためです。

ウォーレン氏の持論は国民皆保険や巨大企業分割です。しかし、これらは米国では多くの人が両手をあげて賛成するようなな政策ではありません。さらに、ウォーレン氏は国民皆保険のための、財源についても未だに語っていません。これでは、確かにトランプ氏には勝てそうもありません。

以前にもこのブログに掲載したように、クリントン大統領は弾劾裁判かけられた史上二人目の大統領ですが、下院で共和党が弾劾を可決し、上院がそれを否決した後、大統領への支持率が大きく伸びただけでなく、1998年の中間選挙で民主党が大躍進しました。

20年前の不倫弾劾の引き金となったモニカ・ルインスキー(左)と<クリントン大統領(右)

国民の弾劾への支持は充分でありません。9月18日発表のポリティコ/モーニング・ コンサルト世論調査によれば、議会が弾劾調査を開始することへの賛成はわずか37%で、半分が反対であす。米国人は、法を非常に重視するので、法に基づいて選出された大統領を裁く、それも議会が裁くことに強い抵抗があります。いずれの党が多数を占めようと国民の議会に対する信頼が常に低いことも影響しているでしょう。

ただし、民主党支持者に限ってみると数字は全く違います。次の民主党大統領予備選で票を投じるとしている有権者の68%が弾劾調査を支持し、反対はわずか20%です。この数字とウクライナ疑惑を考慮すれば、民主党指導層は弾劾調査に踏み切らざるを得なかったのでしょう。

そうして、この弾劾の動きは完全に失敗したようです。先にもロシア疑惑で弾劾の動きをして失敗した民主党が今度は、ウクライナ疑惑で弾劾裁判に打って出た民主党は、大統領選挙選では、よほど窮地にたたされているとみられたのでしょう。

現在までに弾劾などを不安に感じていた、人もこれはトランプ圧倒的に有利と確信できるようになったのでしょう。この種の献金では、やはりせっかく献金するのだから、その献金が無駄になって欲しくはないと誰しもが願うと思います。だからこそ、トランプ大統領支持の献金額が急上昇したのでしょう。

さて正式に弾劾裁判になったとすると、トランプ氏にクリントン氏のときのように、かえって支持がますことが予想されます。しかし、トランプ氏も黙ってはいないでしょう。裁判の過程でさまざまな民主党に対するしっぺ返しが展開されるかもしれません。

トランプ氏は弾劾訴追されてから再選を目指し当選する米国史上初の大統領になるかもしれません。そうなれば、民主党の権威は地に落ちることになり、長期にわたって、政権与党になる道が閉ざされるかもしれません。民主党はかなり危険な賭けにでたといえます。

日本の野党あたりも、参院あたりで、まかり間違って、多数派になれば、このようなことをするかもしれません。しかし、現状では経済学者の田中秀臣氏が言うように、"景気悪化をダメ押しする「空っぽ保守」と「腑抜け野党」"という状況ですから、安倍政権が増税したにもかかわらず、それに対して攻勢をかけられない「腑抜け野党」ですから、まかりまちがってもそのようなことにはならないでしょう。

米国の民主党は現状では、日本の野党よりは酷くはなさそうにみえますが、そもそもあり得ない弾劾裁判を二度にわたって繰り出すなど、だんだん日本の野党に似てきました。

日本の野党は何度選挙で負けても、なぜ負けたのか、その真摯な反省をしていないようです。米国民主党も、なぜ大統領選挙に負けたのか真摯な反省をしていないようです。

もし、来年の大統領選挙でトランプ氏が再戦された場合、米国民主党も日本の野党なみに「腑抜け野党」になることでしょう。

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2019年10月31日木曜日

最悪の場合「東京開催」剥奪も!? 小池都知事、五輪マラソン問題でIOCと徹底抗戦も…識者「都がいつまでも不満述べるなら…」―【私の論評】あるある、オリンピック商業主義が見直されつつあるこれだけのワケ(゚д゚)!

最悪の場合「東京開催」剥奪も!? 小池都知事、五輪マラソン問題でIOCと徹底抗戦も…識者「都がいつまでも不満述べるなら…」

小池知事

2020年東京五輪で酷暑を避けるため、マラソンと競歩を札幌で開催する案が、30日から国際オリンピック委員会(IOC)調整委員会で協議される。札幌移転は「決定済み」とするIOCに対し、小池百合子都知事はあくまでも東京開催を求めて徹底抗戦するとみられるが、専門家は「IOCはマラソンの中止や東京の五輪開催剥奪という最悪の事態もあり得る」と危惧を示す。


 協議は3日間で、31日以降にIOC、大会組織委員会、都、政府で事務レベル協議を行い、その後にトップ級の会合で議論するプランもある。

 小池氏や都が不信感を強めているのは、札幌開催をめぐる議論で「カヤの外」だったことだ。IOCは16日に札幌開催案を発表したが、小池氏が組織委の武藤敏郎事務総長から移転案を伝えられたのは前日の15日。都は組織委に800人以上の人材を投入してきたが、IOCと組織委の事前協議や情報伝達のラインから外されていた。

 準備を急ぐ組織委などは具体的な議論に移りたいとの立場だ。当初、発着点として想定されていた札幌ドームには陸上競技用のトラックがないこともあり、市中心部の大通公園を発着とし、8月に行われる北海道マラソンをベースとする方向で検討を進めている。



【私の論評】あるある、オリンピック商業主義が見直されつつあるこれだけのワケ(゚д゚)!

私はマラソンと競歩を札幌で開催ことに大賛成賛です。その理由は以下の2つです。

一つは、このブログでもすでに述べているように、猛暑対策への賛同です。

夏の札幌も決して涼しいとはいえないですが、東京に比べたら安全性は遥かに高くなります。これを反対する理由はありません。

もう一つは、この決断がIOCのオリンピック商業主義に自らブレーキをかけることに通じる、という期待です。

オリンピック開催期間が7月から8月に限定されたのは、IOCの莫大な収入の約8割を占めるのが『テレビ放映権料』であり、現在はその半分以上が米国NBCとの契約料に依存しているからだといわれています。米国の視聴者がオリンピックに関心を持ってくれるだろう最適な季節がこの時期なのです。

秋になれば、アメリカンフットボールのNFLやバスケットボールのNBAが開幕します。MLBはポストシーズンで熱を帯びる。ヨーロッパはサッカーのシーズンです。

かつてマラソンは冬のスポーツでしたが、オリンピックが暑い季節に行われるようになって、暑さに強いマラソン・ランナーが台頭するようになりました。

その先駆けは1984年のロサンゼルスオリンピックでした。男子はカルロス・ロペス(ポルトガル)、初開催の女子はジョーン・ベノイト(アメリカ)が優勝しましたが、スイスのガブリエラ・アンデルセンがフラフラでゴールするアクシデントもありました。

フラフラでゴールしたガブリエラ・アンデルセン

当時、福岡、東京、ボストンなどのマラソンで5連続優勝を続け日本期待の星だった瀬古利彦は33キロ付近で先頭集団から遅れ、14位に終わりました。暑さが通常の実力と違うダメージを選手にもたらす現実を目の当たりにしました。夏マラソンの歴史はそれほど浅いものなのです。

私がオリンピック商業主義と批判する理由は、オリンピックがまるで世界のスポーツを司る総本山のような権威を持ち、『オリンピック基準』でスポーツのルールや本質を平気で変え続けているからです。IF(International Federationの略。国際競技連盟)と呼ばれる各競技団体もこの流れに追従しています。さらに、テレビ中継の都合で試合時間が決定されるということまで行わています。

ラグビーは15人制でなく7人制が採用されています。バスケットボールも5人制とは別に3人制の3X3が正式採用されました。トライアスロンは草創期、ハワイ・アイアンマンレースに象徴される鉄人レース(ロング・ディスタンス)が人気を集めましたが、やがて『オリンピック・ディスタンス』と呼ばれる計51.5kmの種目が普及していきました。

2時間以内に競技が終わることが「オリンピック採用の基準」になっているからです。野球がオリンピック種目として再び採用されることがあっても、その時は9回でなく7回制になっている可能性が高いです。柔道着は、「テレビで見やすい」という理由で一方が青に変更されました。その決定には、「なぜもともと白なのか」への理解も敬意もありません。


さらに、欧米で人気のスポーツは開催時間も、欧米にあわせるということが平然とまかりとおってきました。平昌五輪ではフィギュアスケートやスピードスケートなど欧米で人気の種目が、昼夜逆転でスケジュールを組まれたため日本勢はスケジュール調整に悩まされました。

スポーツ文化は踏みにじられ、五輪ビジネスだけが優先されてきました。それで失うものの大きさにこれまでIOCも日本オリンピック委員会(JOC)も、日本のメディアもスポーツファンも目を向けずにきました。

ここまで徹底したオリンピック商業主義ですが、それが実際に効果をあげてきたかといえば、甚だ疑問です。実際米国では1990年台をピークに、テレビでオリンピックを観戦する人の数が減っています。

米ギャラップの調査によると2016年のリオデジャネイロオリンピックで初めて、オリンピックのテレビ中継を見る人の割合が過半数を下回る48%となりました。

ピョンチャンオリンピックでは、65歳以上の層で「オリンピックを見る」と答えた割合が、半数以上の54%だったのに対し、18〜29歳の層では31%となっており、若年層の関心が薄れていることが、視聴者数減少の主な原因ではないかと読み取れます。

今回の東京オリンピック、マラソン&競歩の札幌移転は、こうした一方的なオリンピック商業主義に大きな転換期が訪れたこと、それを強行し続ける困難さをIOCのバッハ会長自らが表明したともみえます。だからこそ、「なぜ、今頃になって」と言いたい気持ちもあるでしょうが、ここはオリンピックの歴史的転換を後押しをすべきです。

IODトーマス・バッハ会長
本当なら、放映権に依存するビジネスモデルからの大転換を求め、代案を提示したいところですが、当初はマイナーチェンジでも良いです。

例えば、マラソンや競歩など、本来は低温の気象で行う競技は冬季五輪の時期に、相応しい地域で行うようにすべきです。

また各IFも、オリンピック依存から転換し、ゴルフの全英オープン、テニスのウィンブルドン、サッカーのワールドカップ、そして日本の大相撲のように(いまはその信頼度は怪しいですが)、オリンピック以外に「これぞこのスポーツの最高峰」「スポーツ文化と歴史の体現」と誇れるような大会を構築し主催するのがそれぞれの競技を愛する者たち、スポーツビジネスに携わる人たちの使命だと思います。

オリンピックは大切な『平和の祭典』です。今後も発展と成熟を重ねてほしいです。しかし、巨額ビジネスの威光で世界のスポーツを牛耳るような存在感は、およそ『平和の祭典』には相応しくないです。その見直しがいよいよ始まりつつあると思います。オリンピック商業主義は終焉を迎えつつあるようです。札幌でのマラソン・競歩の開催はまさにその象徴ともいえるのです。

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2019年10月30日水曜日

トランプのバグダディ作戦成功に旧来メディアがびくつく本当の理由―【私の論評】反トランプのためなら、人殺しを聖職者にする、焼きが回った米国メディア(゚д゚)!


<引用元:フェデラリスト 2019.10.28>モリー・ヘミングウェイ編集主任による論説

旧来の報道機関は、米軍がISIS指導者のアブバクル・アル・バグダディに対する作戦に成功したというトランプ大統領の発表に、彼らのトレードマークである敵意と怒りで反応した。それというのも議論の余地なく良いニュースによって、外交政策を形成し、大統領を弾劾し、2020年にトランプを打倒するためのコーポレイト・メディア(企業の利益、価値観に支配された主流メディア)の目標が脅かされるためだ。

「昨晩は米国と世界にとって素晴らしい晩だった。残忍な殺人者、大変な困難と死を引き起こした人物が乱暴に抹殺された――彼が他の罪のない男性、女性、また子供を傷つけることは二度とない」「彼は犬のように死んだ。臆病者のように死んだ。世界は今はるかに安全になった」とトランプは27日、国民に伝えた。

ところがメディアは、アルカーイダ指導者のウサマ・ビンラディンに対する同様の作戦の成功を、オバマ大統領が発表した時のような称賛と興奮の反応は示さなかった。多くの報道機関は自分たちのベッドを汚すような態度を取ったが、その努力を代表するのがワシントン・ポストだ。まずバグダディを、政治的・宗教的反対者を残忍に強姦し殺害した人物ではなく、「厳格な宗教学者」として聖人のように扱い、バグダディの死をどうにかしてトランプにとっての否定的な話として偏向解釈するにまで及んだ。実際次のように:


トランプ政権の成功の純粋な良いニュースを、掛け値なしにマイナスであるように偏向解釈しようとするには努力が必要だが、コーポレイト・メディアは果敢に挑戦した。それというのも、このような成功は彼らが国民の話題に無理やりねじ込もうとしている作り話を弱めるからだ。

1)肯定的な報道はトランプを倒そうというメディアの努力を損なう
コーポレイト・メディアは、少なくとも本当のニュース報道のために関心を投影することから、臆面のない政治活動家に変わってしまった。そのため彼らは――これまでの微妙に偏った解釈とは対照的に――議論の余地のない事実を伴う主要ニュースさえ偏向して解釈できる。

2016年大統領選挙はヒラリー・クリントンにとって屈辱的敗北だったが、政治的なメディアにとってもそうだった。報道機関は自分たちが高い給料をもらってニュースを書き、放送している選挙民を全く理解していなかった。彼らはトランプが勝つ見込みはないと自信たっぷりに断言し、ジャーナリストの基準を放棄することは、トランプがもたらす明白な破滅を理由として正当化できるのだと自分たちを納得させた。

ところがトランプ政権は内政と外政で成功の兆候を示してきた。メディアがこれまで達成はほとんど不可能だろうとしてきた雇用と賃金上昇も含めて、経済は好調だ。これは減税、税制改革、そして前例のない規制撤廃によるものだ。新たな戦争は起きなかったし、ましてやメディアが予測した世界が滅亡するような核戦争もなかった。長く延び延びになっていた中国との再調整は行われているところだ。

国にとっての良いニュースは、メディアとその政治的な仲間にとって悪いニュースなのだ。

大統領に対する戦争で彼らが利用できるツールの1つが、大統領の成功を誠実に報道することを否定することであり、そうした成功を誠実な形で話題にするようなニュース編集をすることがますます困難になっている。

2)ISIS創設者の死がメディアのシリア報道を複雑にさせる

急襲ニュース前の旧来メディアの態度は、彼らの大好きな土曜の夜の番組のオープニング・コントが最もよく表しているかもしれない。サタデーナイト・ライブ(SNL)の最初の寸劇はトランプ支持者をばかにし、トランプ集会での演説者という設定だった。あるネタではISISメンバーが、「あなたが自由にしてくれるまでシリアで収容されていた・・・ISISに雇用を取り戻してくれて感謝の意を表したい。ISISを再び偉大にすることを約束する!」というものだった。

そのパロディーは、ニューヨーク・タイムズの10月21日の「ISIS Rejoices As U.S. Withdraws From Syria.(米国のシリア撤退でISIS歓喜)」という記事とそう変わらないものだった。

記事は、シリア――オバマ大統領が十数回以上「地上軍」はないと約束したにもかかわらず、また議会がその場所での武力の行使を許可していないにもかかわらず、何千名もの兵士がいた国――からの撤退が関係する全員にとって最悪の事態になる、とするものだ。

トルコ、シリアのクルド人、ロシアなどとの協力を必要とした作戦成功の後、バグダディの死は少なくともその話を複雑にしている。トルコとの最近の出来事がこの目標達成に寄与したかもしれないということが、話を複雑にしている。シリア外に駐留していた部隊からデルタ・フォース(米陸軍の対テロ特殊部隊)が入ったことが、話を複雑にしている。そしてSNLがISIS撃破について大統領を批判していたまさにその瞬間にこの全てが起きたという事実が、話を複雑にしている。

超党派の外交政策コンセンサスがISISの増大と米国に対する勝利を断言していた中で、米軍は実際バグダディを捕らえるか、殺害することを計画していた。トランプの外交政策のアプローチに「かかわらず」このことが起きたと、メディアは偏向して解釈しようとしているが、その議論にはトランプ錯乱レジスタンスを離れては、ほとんど説得力がないだろう。

3)トランプの外交政策の成功はメディアの弾劾促進を損なう
弾劾の最大の擁護者はメディアであり、2016年大統領選挙とロシア共謀の作り話の失敗後、面目を保とうとしている。彼らが民主党に、困難に満ちた道のりだというのに手続きを開始するよう強制したようなものだ。

昨日の日曜朝の番組は――どこの局もどの司会者も――全て、弾劾の火にさらに油を注ぐ予定だった。実際には、イスラミック・ステート打倒のための戦いにおける大成功を報じざるを得なかった。

作戦を監督した大統領を弾劾することは、メディア、民主党、また他のレジスタンスメンバーからのノンストップの、数年にわたる運動を生き延びた大統領をただ弾劾することよりもさらに悪く見える。弾劾を存続させるためには、メディアはその話を軽視して、迅速に批判能力なく繰り返される民主党の論点に戻る必要があるのだ。

そういうわけでメディアはバグダディ発表の日に、ワシントン・ナショナルズのワールドシリーズの試合で、ファンが大統領にブーイングした話に急速に方向転換した。2016年に96パーセント(誇張ではない!)がトランプに反対し、その後選挙区に対する反対運動をしている町が大統領にブーイングした事が報道価値のある事であるなら、その理由は国や大統領のことを問題にするからではなく、自分たちのことを問題にしているからだ。

それでもそれが、自分たちにとって望ましい弾劾の促進に戻り、自分たちが愚かに見えるようにする話から離れるための手段なのだ。

政敵を倒したいと考えるメディアがいることは理解できるが、米国にとって間違いなく良く、国をもっと安全にする成果に対しては、もっとうまく怒りを隠してもいいだろう。

【私の論評】反トランプのためなら、人殺しを聖職者にする、焼きが回った米国メディア(゚д゚)!

上の記事は、少し翻訳が難くて、理解しづらいものとなっていますが、結局のところ米国メディアも日本のメディアがとにかく安倍嫌いであるのと同じように、トランプ嫌いであることを示しています。

このブロクでは、過去にも何度か米国メデイアの特徴について掲載してきました。その内容を理解していないと上の記事の内容も十分に認識できないかもしれないので、再度米国のメディアについて掲載しておきます。

米国の大手新聞は、すべてがリベラル系です。日本でいうと、朝日新聞や読売新聞のようなリベラル系の新聞です。日本でいうと、産経新聞のような保守系の大手新聞はありません。

日本で、朝日新聞や読売新聞のような新聞だけを読んでいると相当偏向しているので、日本の実体がわからなくなるのと同じく、米国で大手新聞を読むと米国の実体がわからなくなってしまいます。今回のトランプ政権のバクダディ排除のニュースに関しても、米国大手新聞新聞を読んでいると実体がわからなくなります。

上の記事では、その実体をワシントン・ポストなどを例にとって解説しているのです。確かに、新聞でも保守系新聞は存在するのですが、その全部が小規模な新聞社です。全部が、地方紙です。

一方米国の大手テレビ局は、FOXnewsだけが保守であり、他はすべてがリベラルです。そのため、あまり力はなく、結局のところ米国のメデイアの力や能力も加味すると、90%がリベラルメディアに占められているといっても過言ではありません。

そのような米国の大手メデイアだけから、情報の収集をすれば、日本でいえば、朝日新聞や読売新聞だけを読んで、産経新聞などは読まないというのと同じで、読者の考え方が偏向するのは当然のことです。

バクダディの排除に成功した、トランプ大統領に対する米国メディアの反応に関しては、一昨日にもこのブログに掲載したばかりです。その記事のリンクを以下に掲載します。
アルバグダディ排除がトランプのシリア撤退に対する民主党の断固とした率直な批判に一石―【私の論評】劇的に有利となったトランプ氏の大統領選(゚д゚)!
排除されたISの指導者アブ・バクル・アルバグダディ
詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事の結論部分を以下に引用しておきます。
今回のアルバグダーディ容疑者死亡発表のタイミングですが、来年の大統領選に向けて与野党ともに盛り上がり始めた中でトランプ大統領はいわゆる「ウクライナ疑惑」をめぐって民主党から弾劾の追求を受け、またシリアからの米軍撤兵に対して与野党から批判を浴びているところでした。 
しかし、この奇襲作戦を命じ成功させたことで合衆国軍隊の「最高指揮官」としての役割を果たして「リーダーシップに欠ける」という批判をひとまず回避できそうです。また、今回の作戦ではトルコやロシア、さらにはクルド族の支援も受けたと発表して、先の米軍撤兵も正当化できるでしょう。 
世論調査で、すでにトランプ優勢となっています。今回の出来事は、オバマ前大統領のように、再選に向けての不利な潮目が変わる程度のことではすまないような気がします。トランプ圧倒的有利という具合になり、今後の米国政局はそれを前提にしないと考えられなくなるかもしれません。
ちなみに、世論調査では今年の春の時点から複数の調査会社でトランプ有利という結果でした。

今月に入ってからは、1980年の大統領選以来、一度しか予測を外したことのないムーディーズ・アナリティカがトランプ勝利を予測しています。

このような状況ですから、米国民主党ならびにこれを応援する米国メディアには、よほど余裕がないとみえます。

だから、トランプ氏をできもしないことが最初からわかっているのに、弾劾しようとしてみたり、あろうことか、トランプ政権による、バクダディ排除の手柄も、単純に称賛することもなく、「厳格な宗教学者」として聖人のように扱い、バグダディの死をどうにかしてトランプにとっての否定的な話として偏向解釈するにまで及んでしまったのです。

そもそも、今回のバグダディ排除の作戦は、ISの拘束下で死亡した援助活動家の米国人女性の名を冠した作戦名『カイラ・ミュラー作戦』でした。

ホワイトハウスは今回の作戦名が、2015年に死亡が確認されたカイラ・ジーン・ミューラー(Kayla Jean Mueller)さん(当時26)に敬意を表したものだったと述べました。

カイラ・ジーン・ミューラー

国際人道支援団体「デンマーク難民評議会(DRC)」で働いていたミューラーさんは、2013年にシリア北部アレッポで病院を訪問中に拉致され、翌14年に身柄をバグダディ容疑者に引き渡されました。その後ミューラーさんは、バグダディ容疑者から繰り返し性的暴行を受けていたとみられています。

ドナルド・トランプ米大統領はバグダディ容疑者の死を発表した会見の中で、ミューラーさんについて「若く美しい女性」だったと言及しました。

ISは、2015年2月にシリア北部ラッカ(Raqa)近郊で米軍主導の有志連合がISに対し実施した空爆でミューラーさんは死亡したとしています。ところが、ミューラーさんの死の具体的な状況は明らかになっておらず、遺体も発見されていないことから、両親のカールさんとマーシャさんは今も一抹の希望を抱いているそうです。

このような犠牲あり、さらにISによっては多大な犠牲を被った人たちが大勢います。命を落とした人も、多数です。

『カイラ・ミュラー』作戦でバグダディを追い詰めたとされる軍用犬

仮にも、米国のメディアがいくらトランプが大嫌いだからといって残忍な犯罪組織の指導者バグダディを、「厳格な宗教学者」として聖人のように扱うというのは、あり得ないことです。焼きが回ったとしか思えません。

米国リベラル・左翼の人たちでも、バグダディを聖職者のように扱うことには抵抗のある人も多いと思います。

次の大統領選挙でも、米国メディアはどのようなことでも、利用して、ネガティブなトランプ報道を続けた挙げ句に、また大統領選の報道に失敗して地に墜ちるのではないでしょうか。

このようなことを繰り返しているうち、米国メディアは多くの人から信頼を失い、崩壊するのではないでしょうか。

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2019年10月29日火曜日

【日本の選択】韓国の“反日”助長させた「悪しき歴史」と「国内勢力の存在」 文政権を甘やかさない!日本は今こそ「毅然対応」を―【私の論評】韓国は過去の歴史のくびきから自らを解放し、前に進め(゚д゚)!

【日本の選択】韓国の“反日”助長させた「悪しき歴史」と「国内勢力の存在」 文政権を甘やかさない!日本は今こそ「毅然対応」を

安倍首相と、韓国の李首相(左)の個別会談は平行線で終わった=24日、首相官邸

 日米両国が、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権との「決別」をも視野に入れている。国際情勢の激変を受けても、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄決定を取り消そうとしないからだ。特に、安倍晋三政権は、国家間の約束を反故(ほご)にし、数々の「反日」暴挙を繰り返してきた文政権を決して甘やかさない決意を固めている。韓国を増長させてきた「悪しき歴史」と、注目すべき「国内勢力の存在」とは。新進気鋭の政治学者、岩田温氏が集中連載「日本の選択」で迫った。


 漢の時代(前漢=紀元前206年-8年、後漢=25年-220年)、中国の隣国に「夜郎国」という小さな国家が存在した。中国の歴史書『史記』によれば、あるとき漢からの使者に対して、夜郎国王が「自国と漢とではどちらが大国か」を問い、使者をあきれさせたことがあった。自らの力を過信して、実力ある相手を侮るような振る舞いを「夜郎自大」というようになったのは、この時の逸話からである。

 韓国の文政権による、常軌を逸したとしか思えない数々の非礼な「反日」行動を眺めていると、現代における夜郎国に見えてくる。いわゆる「元徴用工」の異常判決の問題にせよ、慰安婦の問題にせよ、すでに決着が着いた問題を蒸し返し、居丈高に日本政府、日本企業を強請り、たかるような反日行動は日本政府、日本国民が怒った際のことをまるで考慮していない夜郎自大な態度と言わざるを得ない。

 だが、われわれは、ただ韓国を批判しているだけであってはならない。

 なぜ、韓国がここまで異常な反日行動をとることになったのかを考えてみると、過去の日本政府の対応に問題があったことに気付かされる。日本政府が、韓国政府の言い掛かりとしか思えない主張に対して毅然とした対応をしてこなかったことが、韓国政府の反日行動を助長してきた一面があるといっても過言ではない。

 明治維新の立役者、西郷隆盛の言葉を集めた『南洲翁遺訓』には、次のような指摘がある。現代語にすれば、次のような意味になる。

 「正しい道を歩み、いざとなれば国の命運を賭してでも闘う覚悟がなければ、外国との交際などできない。相手国の強大さに萎縮して、自らの主張を曲げ、円滑な関係のみを優先させようとするならば、軽蔑を招き、友好関係はうまくゆかず、最終的には相手の言うことに従わされることになる」

 至言というべきだろう。

 夜郎国のごとく、現実を見つめずに自らを恃(たの)むのも問題だが、自らの主張すべきことを主張しないのも問題なのである。

 安倍首相は24日、韓国の李洛淵(イ・ナギョン)首相と会談した際、「徴用」の問題に関して次のように発言した。

 「韓国の大法院判決は、日韓関係の法的基盤を根本から崩すもので、国交正常化の基礎となった国際条約を一方的に破っている。健全な関係に戻すきっかけをつくってもらいたい」

 日本の主張を堂々と韓国の首相に指摘したのだから、これは快挙と言ってよい。自国のために主張するのが日本政府の役割なのだから、当然の仕事を果たしたのみに過ぎないともいえる。

 だが、つねに韓国の不当な主張に譲歩してきたのが歴代の政権だったことを思えば、こうした堂々たる発言はまことに頼もしいといってよいだろう。日本国民の一人として非常に嬉しく思った。

 日韓関係を考えるうえで、大きな障壁となっているのが、こうした毅然とした日本政府の対応を非難する「リベラル」と称する人々だ。

 7月25日、「韓国は『敵』なのか」と題する声明が出され、77人の呼びかけ人が署名を呼び掛けた。呼びかけ人を調べてみると、法政大学教授の山口二郎氏、東京工業大学教授の中島岳志氏、武蔵大学教授の永田浩三氏、東京大学名誉教授の和田春樹氏、精神科医の香山リカ氏といった、いつもの面々なのだ。

 この共同声明なるものを読むと、眩暈(めまい)がしてくるような気分に陥る。

 例えば、この共同声明では次のように主張している。

 「特別な歴史的過去をもつ日本と韓国の場合は、対立するにしても、特別慎重な配慮が必要になります。それは、かつて日本がこの国を侵略し、植民地支配をした歴史があるからです」

 この「特別慎重な配慮」こそが、韓国の「反日」行動を助長していることに、なぜ気づかないのか。日本が特別慎重な配慮をし続けた結果こそが、現在の日韓関係なのである。主張すべきを主張してこそ、日韓関係は正常な状態になることを忘れてはならない。

 多くの日本国民は、安倍首相のような毅然とした態度を待ち望んでいた。謝罪し、土下座までした鳩山由紀夫元首相のような態度では、相手に軽蔑されるだけだということを忘れてはなるまい。

 ■岩田温(いわた・あつし) 1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。拓殖大学客員研究員などを経て、現在、大和大学政治経済学部政治行政学科専任講師。専攻は政治哲学。著書に『平和の敵 偽りの立憲主義』(並木書房)、『「リベラル」という病』(彩図社)、『偽善者の見破り方 リベラル・メディアの「おかしな議論」を斬る』(イースト・プレス)など。

【私の論評】韓国は過去の歴史のくびきから自らを解放し、前に進め(゚д゚)!

リベラル・左翼の方々は、今でも日本が朝鮮を侵略したと思い込んでいるのでしょうか。だとしたら、目眩を感じるのは上の記事を書いた岩田氏だけでなく、多くの人が目眩を感じると思います。そもそもそうではないことは、日本史や、世界史などを少しまともに学べばそうではないことがわかります。

そうして、このようなことを主張するとレイシストと言われるのなら、さらに大きな目眩がしそうです。リベラル・左翼の方々は、韓国をどのように認識されているのでしょうか。彼らの「韓国は『敵』なのか」と題する声明は、決して韓国にとって良いことではなく、私には、単に韓国を自らのために政治利用しているようにしかみえません。そうして、その目的はあくまで「反安倍」です。

なぜ当時の朝鮮(大韓帝国)は日本の領土になったのでしょうか。これを1910年の日韓併合で語るのは間違いで、そのときすでに大韓帝国は日本の保護国になっていたので、実質的な違いはないです。

いいかえると日韓併合がなくても韓国は日本の支配下にあり、日本でも伊藤博文は当初は併合に反対していたのです。伊藤博文は、諸外国の植民地経営の実体を知っており、ほとんどコスト倒れであったことを認識していたのでしょう。

伊藤博文

では第2次日韓協約で韓国が保護国になった1905年はどうでしょうか。このとき韓国統監府ができ、これが朝鮮半島の(大韓帝国を超える)最高意思決定機関となったのですが、これは日露戦争の結果、ポーツマス条約で日本の支配権が追認されたもので、侵略とはいえないです。日露戦争では、朝鮮半島は戦場になりませんでした。すでに日本の実効支配が確立していたからです。

では1895年の下関条約はどうでしょうか。これは日清戦争で日本と李氏朝鮮の連合軍が東学党の乱を鎮圧して独立を守った結果で、少なくとも李氏朝鮮にとっては日本は友軍であり、侵略とはいえないです。李氏朝鮮を属国のままにしておきたかった中国(清)にとっては既得権の侵害だったかもしれないですが、これはどっちの属国になるかの問題で、侵略とはいえないです。

このように、さかのぼっていくと、韓国人のいう「日帝の侵略」も「独立戦争」も見当たらないです。ソウル大学教授の時の李榮薫(イ・ヨンフン)氏の『大韓民国の物語』にもこう書かれています。
一揆の波は1860年代からさらに大きく膨れ上がり、これが1894年の東学党の乱においてクライマックスに達しました。その過程で、李朝の政治的な統制力はみるみる弱まりました。私は東学党の乱の1894年に前後して、李朝は事実上の死に体だったと考えています。何か外部からの強い衝撃があったからというわけではありません。すでに19世紀の初めからそのような方向への変化が進行していたのです。(p.65)


そもそも、この時期には侵略という言葉もありませんでした。これは1928年の不戦条約で定められた「国際紛争の解決手段として戦争に訴えない」というルールの違反、つまり他国の領土の侵犯や先制攻撃などをさすものですが、これ以前には侵略という概念がないので、テクニカルにはどんな戦争も侵略(国際法違反)ではありません。

不戦条約以降に行なわれた満州事変や日中戦争については侵略だという議論もあり得ますが、朝鮮半島についてはそもそも侵略という概念のない時代の話で、さらに、実質的にも日本が武力で朝鮮の政権を打倒して領土を占領するという意味の侵略は行なわれていないのです。これは韓国でも、李教授のような知識人は知っている事実ですが、政治的に危険なので公言できないようです。

日本が韓国を統治したことは事実ですが、しかしそれは英国の大規模な植民地支配や、アメリカの4000万人にのぼる奴隷貿易などに比べれば紳士的でした。それに、日本が朝鮮を支配しなければロシアが(そしてソ連が)支配したでしょうし、ここを起点にして世界大戦が起こっても不思議ではありませんでした。

太平洋戦争を「侵略戦争」と規定するのは、それをアジア解放のための「大東亜戦争」と規定するのと同様に誤りです。世界大戦には多様で複雑な要因があり、日韓関係はその一つにすぎません。

廬武鉉(ノムヒョン)失脚の翌年に書かれた「大韓民国の物語」で李栄薫教授は、「先ず批判の標的を明確にしておくため」として、1979年から89年にかけて全六巻が刊行された「解放前後史の認識」なる本を次のように紹介しています。
解放前後史を民族主義の観点から解釈した決定版で・・1980年代から90年代に大学に通った韓国人に大きな影響を及ぼし・・六巻を合わせて百万部が売れ…在野時代の廬武鉉氏も耽読し、…(その政権の)要所に陣取るいわゆる三八六世代という政治家の現代史認識はこの本を通じ形成されました。
(廬武鉉)政権が・・甚だしくは1984年の東学農民蜂起までを対象にして、何と十六にも達する特別法を制定し、いわゆる「過去史清算」を前面に押し出していることも、同書を読むことによってその歴史的な背景を理解することができます。
「解放前後の認識」全六巻の背表紙

つまり「解放前後史の認識」の否定こそが「大韓民国の物語」の目的ということです。そしてその目次は以下です。
第一部 歴史への視線
1 食い違う歴史認識
2 民族主義の陥穽から抜け出よ
第二部 文明史の大転換
3 李朝はなぜ滅んだのか
4 「植民地収奪論」批判
5 植民地進化論の正しき理解
6 協力者たち
7 日本軍慰安婦問題の実相
8 あの日、私はなぜあのように言ったのか
9 日帝がこの地に残した遺産
第三部 くに作り
10 「解放」とはどのようにもたらされたか
11 分断の原因とその責任
12 建国の文明的な意義
13 李承晩大統領を直視する
14 反民特委を振り返る
15 朝鮮戦争はなぜ起こったか
16 1950年代の再評価
17 新たなる開発の時代のために
終言:歴史からの自由を
ソウル大学元教授の李榮薫氏(下写真)は、最近ではその著書『反日種族主義』が韓国内でベストセラーになっています。


李榮薫氏と反日種族主義の表紙

残念ながら、私はハングル語は読めないので、この本をまだ読んではいません。ただしこれは、ハンギョレの記事で凡その見当はつきます。日本語版は「文学や芸術関連の書籍を主に出版する日本の中堅出版社」の「文藝春秋から年内出版予定」と8月26日のハンギョレにあります。

早く読みたいが、概略がネットで紹介され、李栄薫教授の李承晩学堂なるサイトでも凡その内容が推測できます。

アノニマスポストからこの書籍に関する記事を以下に引用します。

李承晩(イ・スンマン)学堂(校長イ・ヨンフン)が日本に対する韓国人の否定的な歴史観を打破する<反日種族主義>を発刊すると明らかにした。この本はユーチューブのイ・スンマンTVにアップロードされた「危機韓国の根源、反日種族主義」講義と「日本軍慰安婦問題の真実」講義を要約したものだ。 
李承晩学堂は去る27日、報道資料を通じて「反日種族主義は20世紀前半、日本が韓国を支配した歴史に関し今日の韓国人らが持つ通念として、何の事実の根拠なしに嘘で積み上げたシャーマニズム的世界観」としながら「李承晩学堂は反日種族主義の起源、形成、拡散、猛威の全過程を国民に告発し、その危険性を警戒するためにこの本を企画した」と明らかにした。 
同書の著者はイ・ヨンフン元ソウル大教授、キム・ヨンサム、ペンマイク論説委員、ジュイク・ジョン元大韓民国歴史博物館学芸室長などイ・スンマン学堂所属員の他にもキム・ナクニョン東国大教授とチョン・アンキ、ソウル大経済研究所客員研究員、イ・ウヨン落星垈(ナクソンデ)経済研究所研究委員など合計6人だ。 
本はプロローグと本文3部、エピローグで構成される。プロローグでは大韓民国が嘘の国になったことを痛駁し、国が破滅しかねないという危機意識でこの本を読んで欲しいと頼む。 
第1部「種族主義の記憶」は反日種族主義の起源を説明しながら、「土地・米収奪説」、「強制動員説」等に正面反論する。第2部「種族主義の象徴と幻想」は反日種族主義の形成と拡散について書く。合わせて白頭山(ペクトゥサン)神話、独島(ドクト、日本名:竹島)問題と亡国責任問題、過去の歴史清算問題も扱う。 
第3部「種族主義の牙城、慰安婦」は反日種族主義の中核、日本軍慰安婦問題に関し真実を暴いて「日本軍慰安婦=強制動員された性的奴隷説」に反論する。朝鮮王朝のキーセン制が日帝によって公娼制に再編されたこと、それを戦争期に日本軍が軍慰安所として活用したことが日本軍慰安婦制度であるというのが3部の主な内容だ。また、挺身隊対策協など慰安婦活動家の宣伝扇動のために慰安婦問題が増幅され韓日間外交関係が破綻の危機に直面したことも明らかにした。 
李承晩学堂はこの本について「日本の植民地支配とその後の韓日関係に対する今日の韓国人の既成通念を正面否定する。今日、大多数の韓国人が『日本が植民支配35年間、韓国人を抑圧、搾取、収奪、虐待し、日本はそれを反省、謝罪しなかった』と考える。しかし、この本はこの通念が事実に基づいていないことを示す」と強調した。 
引き続き「この本は韓国人に非常に不快で拒否感をおぼえるかもしれない。しかし、イ・ヨンフン教授など著者一同はあくまでも研究によって検証された事実に立って既存通念を批判し自身の主張を展開した」と強調した。 
合わせて「この本に不満を抱く人々はこの本の主張が結果的に現在の韓日対立状況で日本に肩入れするものと非難するかも知れないが、著者らは学問を職業とする研究者として学者的良心に従ってこの本を書いたことを自負する」と付け加えた。 
<反日種族主義>は現在、教保(キョボ)文庫、永豊文庫、アラジン、yes24等大型オンライン書店で購入できる。来月1日からはオフライン書店でも購入できる。価格は20,000ウォン。
韓国でこのような書籍が爆発的に売れている最中、 「韓国は『敵』なのか」と題する、日本が朝鮮を侵略したという前提で、声明が出され、77人の呼びかけ人が署名を呼び掛けているわけですから、何をかいわんやという感がします。

「解放前後史の認識」が6巻で100万部なら1巻当たり16万部、目下10万部の「反日種族主義」がそれを超える暁に、果たして韓国は「歴史からの自由を」取り戻すのでしょうか。いずれにせよ日本での出版が待たれます。

韓国が未だに何の事実の根拠なしに嘘で積み上げたシャーマニズム的世界観に浸っていては、日韓関係がいつまでも悪化したままというだけではなく、韓国自身も過去の歴史のくびきにつながれたまま、前に進むことができないと思います。

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2019年10月28日月曜日

アルバグダディ排除がトランプのシリア撤退に対する民主党の断固とした率直な批判に一石―【私の論評】劇的に有利となったトランプ氏の大統領選(゚д゚)!

アルバグダディ排除がトランプのシリア撤退に対する民主党の断固とした率直な批判に一石

排除されたISの指導者アブ・バクル・アルバグダディ

<引用元:FOXニュース 2019.10.27

27日、トランプ大統領がイスラミック・ステートのアブ・バクル・アルバグダディ指導者の排除作戦に成功したことで、民主党に混乱が生じている。複数の党幹部は最近、ホワイトハウスはシリアでの米国撤退後にテロ組織と戦うための「確かな計画」を持っていない、と公に不満を漏らしていた。

民主党のメッセージが裏目に出たことを印象付ける兆しとして、NBCの「サタデー・ナイト・ライブ」は、トランプがISISのために「雇用」を生み出したと示唆するタイミングの悪いコントを放送していた――大統領が記者会見を開いてアルバグダディの死亡を発表するわずか数時間前のことだ。コントはシリア北西部での2時間にわたる深夜の急襲が実行されている頃に放送されていた。

「民主党がこれについて何というべきか考え出そうとリアルタイムで悪戦苦闘しているのを見るのは、本当に興味をそそる」とジャーナリストのグレン・グリーンウォルドは27日に話した。「彼らは愛国的で反ISISでありたいと思っているが、(ウサマ・ビンラディンのことで)オバマを褒めちぎったことと矛盾しないようにトランプを中傷する方法も必要としている。容易な綱渡りではない。健闘を祈る!」

その日、民主党は――ナンシー・ペロシ下院議長、上院外交委員会幹部のボブ・メネンデス、ジョー・バイデン元副大統領を含めて――新戦略に落ち着いたようだ。歴史的急襲を実行した兵士を称賛しながら、多少なりとも大統領を称賛することをあからさまに避けたのだ。

民主党の一部では、ロシア軍は空域が利用できるように通知されていたのに、自分たちは作戦のことを事前に知らされなかったという不満の声もあった。民主党議員が実施している大統領の弾劾調査は、メディアへの情報のリークが多かったが、大統領は27日、急襲前に民主党議員に知らされなかったのは、作戦がリークされる懸念があったためだと示唆した。

「特殊部隊とインテリジェンス・コミュニティ、そして勇敢な軍の専門家がテロリストのアブ・バクル・アルバグダディに裁きを下したことについてお祝いを述べる」と、2020年にトランプの座を奪おうとしている多くの民主党の1人であるバイデンは述べた。またバイデンはトランプに「ISISが再結集したり、米国に再び脅威をもたらすことを防ぐために圧力を保つ」よう求めた。

一方ペロシは「軍とインテリジェンス専門家の勇敢な行為、献身、技能」を称賛し、「地域のパートナーの働きに感謝の念を示し」、それからトランプが「シリアのクルド人パートナーに対するトルコの侵攻にゴーサインを出した」ことを非難した。

ところが2011年5月にオバマ大統領がウサマ・ビンラディンの死亡を発表した時、ペロシは最高司令官を称賛するのをそれほど渋っていなかった

コメンテーターの中には、ワシントン・ポストもビンラディンが殺された時と異なる基準を27日に適用したと指摘する声もあった。同紙の注目を集めた、修正後の見出しは「イスラミック・ステートを指揮する厳格な宗教学者、アブ・バクル・アルバグダディが48歳で死亡」というものだ。

同情的な死亡記事ではテロ指導者を、「サッカー好きだが自由な時間を地元のモスクで過ごすのを好んだ内気で短絡的な若者」と説明し、「組織の過激主義的な見方と悪質な戦術にもかかわらず、バグダディ氏は指導者として抜け目のない実用主義を保った」と指摘した。

だが2011年、ビンラディンの死を発表したワシントン・ポストの見出しでは、きっぱりと「テロ組織」の指導者と呼んでいた。

ペロシは27日の声明の中でさらに、「下院は議会指導部ではなくロシアが事前に通知されたこの急襲について、また地域での政権の総合的な戦略について説明を受けなければならない」と要求した。

そうした不満はすでに、ツイッター上で進歩主義のコメンテーターとジャーナリストの間で共感を呼んでいた。CNBCのジョン・ハーウッド記者は、「トランプはペロシに事前に話しておらず、ペロシが機密情報を守ると信頼していなかったということだ。ペロシは情報委員会の民主党幹部だった。・・・トランプはホワイトハウスでロシア高官に機密情報を与えた」と述べた。

メネデス(民主党、ニュージャージー)に関しては、やはりトランプを称賛したり、敬意を表したりすることは避け、その代わりに「米国人の命を無慈悲に奪い、中東の人々を恐怖に陥れ、地域の平和と安全を脅かした残忍な殺人者に対する攻撃を成功させた軍隊の男女」を称賛した。

メネデスは、作戦が「我が国を守るために日々命を懸ける軍人の勇気の証拠であり、シリア民主軍とイラク軍を含めて、現場の信頼でき能力のあるパートナーと共に、米国の持続するリーダーシップが重要であることをはっきり思い出させてくれるものだ」と述べた。

また一方で共和党は、ISIS指導者の死をテロ組織に対するトランプ政権のキャンペーンの頂点と呼んだ。イラクを占領していたいわゆるISISカリフェイト(カリフ制国家)は、地域の米軍と同盟軍からの空軍力の集中攻撃で大部分が崩壊した。

共和党テネシー州のマーク・グリーン下院議員は、下院国土安全保障委員会のメンバーであるが、急襲を実行した兵士を称賛し、「いうまでもないが、私は大統領を称賛する。・・・今朝の大統領の声明は素晴らしかった」と述べた。

他の共和党員も、幾分控えめな表現ではあるが同じ感情を表した。

「トランプ大統領とトランプ政権はすでにISISという蛇の体の大部分を打倒していた。だが昨日、バグダディを殺したことで蛇の頭を切り落とした」と共和党テキサス州のジョン・ラトクリフ下院議員は、FOXニュースの「サンデー・モーニング・フューチャーズ」に語った。

下院司法委員会の共和党幹部であるジョージア州のダグ・コリンズ下院議員は、急襲前に民主党議員に知らせないというトランプの判断は正当だと示唆した。

「現在ISISに注目する人々は誰でも、窮地に陥って自爆した自分たちの指導者に注目するはずだ」とコリンズは話した。コリンズは「もっと重要な話」は、トランプが「シリアに関して情報委員会から情報を得られない」ことであり、「この10カ月間弾劾支持者によって攻撃され、嫌がらせを受けてきたこの大統領が、こうしたことが全て下院で行われている間に、委員会を遮断したということを示している」と続けた。

混乱が始まったのは、トランプが27日の朝、国民に演説を行ってからのことだ。大統領はその時ISIS指導者――トランプが「腰抜けのけだもの」と呼ぶ悪名高い殺人者でレイプ犯――が、「悪質で暴力的に、臆病者として、逃げ叫びながら」死んだと発表した。

米国特殊部隊がイドリブの居住地を急襲した際に、アルバグダディは自爆用のベストを起爆させ、子供3人を道連れに自殺したとトランプは述べた。

「バグダディの多数の戦闘員と仲間が一緒に殺されたが、作戦では1人も犠牲者が出なかった」とトランプは発表し、米国がISISに関する「非常に敏感な」資料を回収したと付け加えた。トランプはそれから米部隊のことを「君たちは世界中で本当に最高だ」と述べた。

トランプは、アルバグダディは米部隊にトンネルに追い詰められて死亡し、ISIS指導者は「ずっとめそめそと泣き叫んでいた」と述べた。

【私の論評】劇的に有利となったトランプ氏の大統領選(゚д゚)!

2017年にトランプ大統領がシリアを攻撃したときには、共和党は無論のこと、民主党からも大絶賛されました。それについては、このブログにも掲載しました。以下にその記事のリンクを掲載します。
トランプ大統領のシリア攻撃をクリントン氏も支持―【私の論評】米民主党・メディアがトランプ大統領の政策をなぜ支持したのか理解不能の民進党(゚д゚)!
    米駆逐艦ポーターが地中海から行ったシリアへのミサイル攻撃。
    米海軍提供(2017年4月7日撮影・公開)

この記事は2017年4月9日のものです。 詳細はこの記事をご覧いただくものとして、この記事から一部を引用します。
 4月4日、トランプ大統領がシリア政府軍の化学兵器使用への制裁として、59発のトマホーク巡航ミサイルによるシリアのシャイラト空軍基地への攻撃を断行した。 
 この攻撃は米国内で共和、民主の両党側から幅広く支持されている。トランプ氏の施策が両党側からこれだけ支持されるのは、1月に大統領に就任して以来初めてである。この展開を機に、トランプ政権に対する一般の評価にも変化が起きるかもしれない。
米国では、米国の敵とみなされるような敵に対してこのような攻撃を敢行して、成功を収めた場合、与野党に限らず、超党派で称賛の嵐が起こることがあります。

当時はトランプ政権のシリア攻撃を手放しで絶賛していたクリントン氏

このようなことは、日本では耐えて久しいことなので、このブログにもとりあげ、解説したものです。最近の日本の野党は、与党政権が何をしても、反対するばかりで、なにか良いことをしたとしても、全く評価しないどころか、良いことに関しても、重箱の隅をつつくように、なにやら良くないところを探して批判するばかりです。

この記事では、そうした日本の野党の異常ぶりについて解説しました。

しかし、上のFOXニュース記事を読んでいると、最近の米民主党は日本の野党とあまり変わりないようです。本来なら、米国の敵、世界の敵である、アブ・バクル・アルバグダディが排除されたのですから、これは両手をあげて喜ぶべきことです。

しかし、なんというか余裕がないというか、とにかくトランプ大統領やトランプ政権を称賛する声は、米国民主党からは、ほとんど漏れ聞こえてきません。

これは、米国の民主党も日本の野党のように、余裕がなくなってきたということを示しているのではないでしょうか。日本の野党の場合は、どうあがいても、政権を奪取することなど、誰がみても明らかです。何かを変えない限り、とても政権与党になることなど、考えられません。

米国民主党もそれに近いような状態になっているのではないでしょうか。それについては、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
トランプは大差で再選される──最も当たる調査会社が予測―【私の論評】現時点で、トランプの再選はないと、どや顔で語るのは最悪(゚д゚)!
フロリダ州オーランドの選挙集会で再選への出馬表明をしたトランプ大統領夫妻(6月18日)

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の結論部分のみ引用させていただきます。
今年はじめの複数の調査会社の調査結果や、今回のムーディーズ・アナリティカの調査においても、トランプ大統領が大統領選で大差で再選されると予測しているわけですから、よほどのことがない限り、トランプ氏が再選されるとみて間違いないのではないでしょうか。 
ただし、選挙は水ものですから、最後の最後までどうなるかはわかりはしません。ただし、現時点で、トランプは弾劾されるとか、トランプの再選はないと、さしたる裏付けもないにもかかわらず、日米のテレビや新聞の情報だけで判断して、どや顔で語るのはやめておいたほうが良いと思います。 
はっきりいいますが、そのようなことをすれば、馬鹿と思われるだけでなく、信用を失います。
大統領選においては、不利このような状況ですから、米民主党が焦燥感を感じるのも無理からぬところがあると思います。

米国においては、大手新聞は全部リベラルであり、大手テレビ局はFOXニュースを除いた他局もリベラルです。大手新聞も大手テレビ局も、どちらかといえば民主党よりです。その他、教育機関もエンターティンメント業界も、民主党よりです。

そのため、共和党よりの声など、あまり新聞やテレビなどでも報道されません。共和党の中でも保守派の声などかき消されてしまいます。

だから、トランプ政権が登場したばかりの頃は、トランプが大統領に選ばれたのは、番狂わせくらいの感覚があったのでしょう。米国民主党としては、次の大統領選挙では当然のことながら、また民主党が勝ち、政権を奪還できるに違いないという楽観的な気分があったのだと思います。

そうして、米国でも日本でも、米国民主党よりのメディアがトランプ氏についてのネガティブな情報を大量に流すので、多くの人が無意識に「トランプ不利」と思い込んでいるところがあるのですが、そうではないことが、様々な調査機関の調査の結果より明らかになっています。だから、米民主党は相当の危機感を持つようになったのでしょう。そこにきて今回の、アルバグダディ排除です。

これから行われる世論調査で、トランプ大統領の支持率がさらに、上がるのはまず間違いないでしょう。

2011年5月、米軍がアルカイダの首領ウサマ・ビンラディンのパキスタン国内の隠れ家を急襲して殺害した時も、当時のオバマ大統領の支持率が急上昇しました。殺害発表の翌日ワシントン・ポスト紙が行った世論調査で同大統領の支持率は56%で9ポイント上昇し約1年半ぶりの高水準になりました。


当時オバマ大統領は1期目でしたが内政、外交共に手詰まりで、前年に行われた中間選挙では民主党が大敗し2012年の再選選挙も危ぶまれる状況にありましたが、この支持率回復で体制を立て直し、共和党のロムニー候補を大差で破って再選を果たしています。

この時、オバマ大統領は再選に向けての活動を開始した直後のことだったのでこのビンラディン殺害作戦は「選挙対策」ではないかとも言われました。現に、この作戦に参加した米海軍特殊部隊SEALの隊員の一人マット・ビソネッティ氏は雑誌「ワイヤード」電子版にこう語っていました。

「我々はこの作戦が選挙のためだと知っていました。我々は道具箱の中の道具みたいなものなんです。我々の作戦が成功すれば、政治家はその成果をできるだけ膨らませ、自分たちの功績にします」

さらに2003年12月、湾岸戦争の敗北の後逃亡していたサダム・フセイン元イラク大統領が隠れ家の地下穴に隠れているところを米軍に確保され米国民への「大きなクリスマス・プレゼント」と言われたことがありました。この時もジョージ・ブッシュ(子)大統領は翌年の再選選挙で苦戦が予想されていましたが、この一件をきっかけに支持を取り戻し民主党のジョン・ケリー候補に激戦の末勝利していました。

今回のアルバグダーディ容疑者死亡発表のタイミングですが、来年の大統領選に向けて与野党ともに盛り上がり始めた中でトランプ大統領はいわゆる「ウクライナ疑惑」をめぐって民主党から弾劾の追求を受け、またシリアからの米軍撤兵に対して与野党から批判を浴びているところでした。

しかし、この奇襲作戦を命じ成功させたことで合衆国軍隊の「最高指揮官」としての役割を果たして「リーダーシップに欠ける」という批判をひとまず回避できそうです。また、今回の作戦ではトルコやロシア、さらにはクルド族の支援も受けたと発表して、先の米軍撤兵も正当化できるでしょう。

世論調査で、すでにトランプ優勢となっています。今回の出来事は、オバマ前大統領のように、再選に向けての不利な潮目が変わる程度のことではすまないような気がします。トランプ圧倒的有利という具合になり、今後の米国政局はそれを前提にしないと考えられなくなるかもしれません。


民主党へのしっぺ返しもあるトランプ弾劾調査―【私の論評】トランプ弾劾は不可能、禁じ手を複数回繰り出す民主党は相当追い詰められている(゚д゚)!

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