2020年8月4日火曜日

【国家の流儀】「日米豪」対「中国」の対立構図が鮮明に! トランプ政権が描く「アフター・コロナ」の世界戦略 — 【私の論評】米大統領選は、トランプ若干優勢と見ておくのが妥当!(◎_◎;)

【国家の流儀】「日米豪」対「中国」の対立構図が鮮明に! トランプ政権が描く「アフター・コロナ」の世界戦略 

左寄り、トランプ米大統領、豪モリソン首相、安倍日本首相
 11月の大統領選挙を控え、国内対立が激化している米国だが、ドナルド・トランプ政権はそんな国内問題に足を引っ張られるどころか、コロナ危機の最中も「アフター・コロナ」の国際社会を見据えた大胆な手を次々と打っている。

 トランプ政権が描く「アフター・コロナ」の世界戦略、それは自由主義に基づく国際秩序を断固として守るために、米国を経済的軍事的に強くし、日本をはじめとする同盟国との関係を強化し、中国「共産党」政権の暴走を抑止する、ということだ。

 その世界戦略をまとめた報告書「中国に対する米国の戦略的アプローチ(United States Strategic Approach to the People’S Republic of China)」が5月下旬、発表された。

 日本のマスコミの扱いは小さいが、16ページからなるこの報告書は、経済、通商、安全保障、人権、環境など多岐にわたって中国の問題点を列記し、それらの課題への対抗策を列記している。

 その冒頭にはこう記されている。

 米国は1979年の中国との国交樹立以来、懸命に経済協力を行い、民主化を促してきたが、そうした対中関与政策は中国自身によって否定された。

 特に2001年に中国がWTO(世界貿易機関)に加盟した際、加盟国は、中国が経済改革の道を歩み、市場志向の経済・貿易体制へと変貌していくことを期待していたが、こうした期待は実現されなかった。

 それどころか13年、「資本主義は必ず滅び、社会主義は必ず勝利する」と述べた習近平総書記(国家主席)のもと中国は「一帯一路」を掲げてアジア太平洋諸国を影響下に置こうとする一方で、沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海、南シナ海、台湾海峡、中印国境地域で挑発的で強圧的な軍事・準軍事活動を繰り広げている。

 よって「過去20年間の対中関与政策は『誤り(false)』」だったと、トランプ政権は総括している。

 その歴史的な総括を踏まえて、トランプ政権は、米国を含む自由主義陣営の体制を強化し、同盟国を中国から守るため、今後、「米国は、自由で開かれたルールに基づく国際秩序を弱める北京の行動には応じないし、応じるつもりもない」と明言しているのだ。

 こうしたトランプ政権の動向に対して、日本では「親中派が横行する日本は果たして米国と協調できるのか。このままだと米国に見捨てられるのではないか」という声が聞こえてくる。

 だが意外なことに、トランプ政権のこの報告書には、米国と連携して日本とオーストラリアが、中国の横暴に懸命に立ち向かっている姿が描かれている。

 日本はもっと旗幟(きし)を鮮明にしてほしいと思うが、その一方で少なくともトランプ政権は、「日米豪」対「中国」という構図で国際社会を見ていることは理解しておきたいものである。

 ■江崎道朗(えざき・みちお) 評論家。1962年、東京都生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集や、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、現職。安全保障や、インテリジェンス、近現代史研究などに幅広い知見を有する。著書『日本は誰と戦ったのか』(KKベストセラーズ)で2018年、アパ日本再興大賞を受賞した。自著・共著に『危うい国・日本』(ワック)、『インテリジェンスと保守自由主義-新型コロナに見る日本の動向』(青林堂)など多数。

【私の論評】米大統領選は、トランプ若干優勢と見ておくのが妥当!(◎_◎;)

日本の報道では、何やらトランプが大統領戦で、再選されなければ良いような報道が多いですが、上の記事を見ていると、そうではないようです。

なぜなら、「米国は、自由で開かれたルールに基づく国際秩序を弱める北京の行動には応じないし、応じるつもりもない」と明言しているからです。

現在の米国は、中国に対抗することで、政府も議会も超党派でまとまっています。次の大統領選挙で有力視させているバイデン氏もその点では、変わりないように見えます。

しかしバイデン氏は、 大統領選への出馬を表明した直後の昨年5月2日、集会で次のように発言しました。

「中国に俺たちの昼飯を食べられてしまう(やっつけられてしまう)って? 冗談じゃない!」 トランプ大統領の対中強硬姿勢に対抗する意味で発言したものでしたが、逆にバイデン氏が中国に対して「弱腰」と批判されました。

 その対中姿勢に関連して、副大統領時代の2013年に中国を公式訪問した際、二男のハンター氏を同道させ中国側の要人に紹介したのですが、帰国後ハンター氏が経営する投資会社に中国銀行から15億ドル(約1500億円)が振り込まれたという話があり、トランプ陣営は選挙戦が本格化するとこの話でバイデン氏を攻撃することが目に見えています。

さらに、オバマ政権で対中政策の采配をふるっていたスーザン・ライスが要職に付くと見られています。

「副大統領候補の内、スーザン・ライスがバイデンと最も良い関係を築けるかもしれない」(ザ・ウィーク電子版5日)

 バイデン氏の副大統領にはアフリカ系女性が有望とされる中で、ライスの下馬評が高くなってきています。オバマ政権での安全保障問題担当補佐官としてバイデン副大統領とも通ずるところが多かったライスさんは、副大統領でなくとも国務長官として外交を仕切るのではないかと噂されていますが、これは日本とっては悪夢です。

ライスは2013年に補佐官就任直後の講演で「中国とは新たな大国関係を機能させようとしている」と言って注目されまし。習近平主席の太平洋を米中で2分割しようというG2論を容認したと受け取られたからです。

 また同じ講演会で記者から尖閣列島問題を訊かれると「米国は主権の問題には立ち入らない」と従来の米国政府の立場から後退した考えを示しました。 さらにライスは補佐官当時三回中国を単独訪問して習近平主席と会談しており「ライスにとって中国問題は最も重要な個人的課題になった」(ワシントン・ポスト紙)と言われました。

大統領選は3ヶ月先のことですが、政権が交代した場合の日本への影響と対策をも考えるべきです。

ただ、実際にはバイデンが圧倒的に有利とは言えないようです。米国調査会社トラファルガー・グループ(ジョージア州)は2016年の前回大統領選で激戦州ミシガンなどの結果を言い当て、トランプ氏勝利を予測した数少ない世論調査会社です。

同グループの、ロバート・カヘリー上級調査員は取材に対し「トランプ支持でも、そうとは言いにくい空気が4年前より強い」と指摘しています。

米国調査会社トラファルガー・グループのロバート・カヘリー上級調査員
カヘリー氏によると、電話など人対人の世論調査では、社会的に望ましいとみられる回答に反する場合、対象者がうそをつくことがあります。4年前、同社は「あなたはトランプ支持か」という質問に加え、「あなたの隣人の大半はトランプ支持か」を尋ねました。後者が本心を聞き出すための質問で、より実態を捉える効果があったといいます。

1日現在、各種調査の平均でバイデン氏の支持率はトランプ氏を7ポイント上回っていますが、同社の調査では、五分かトランプ氏やや有利の展開といいます。カヘリー氏は「人々がバイデン氏の楽勝を信じ、結果が異なれば、選挙の公正さを疑われかねない」と語り、精度向上の必要性を訴えています。

隠れトランプ支持者の存在をめぐっては論争があります。4年前、激戦州の直前世論調査の平均は、実際の選挙結果と最大7ポイント違っていました。米世論調査協会は半年後の17年5月、「なぜ間違ったのか」を検証する報告書を公表しました。

態度未定の有権者の多くが最終盤でトランプ氏に流れたことなどを理由に挙げましたが、「隠れ支持者」の存在は「証拠がない」として認めませんでした。

私は、このブログで先月バイデンが圧倒的有利とは米国メディアが作り出した幻想にすぎなく、 実態は五分五分と認識すべきだと主張しました。この考えは、今でも変わりありません。そのため、ロバート・カヘリー氏の主張は、まさに我が意味を得たりという思いがしました。

米国で連日のように行われているトランプ政権に対する抗議デモや暴動は実は、選挙にはほとんど関係がありません。なぜなら、黒人の若年層は投票権がないか、投票所に行かないからです。

若年層に投票権がないのには、二つの理由があります。一つは、無論18歳未満で、そもそも選挙権がないということです。もう一つは、選挙人名簿への登録を行っていない者が多いからです。

米国には日本のような住民基本台帳が無いため、自動的に選挙人名簿に登録されることは無く、選挙人名簿(Voter registrationがこれにあたる)に自己申告で登録しなければ選挙人名簿には登録されず、投票資格が生じないのです。 なお選挙権が無いにも関わらず選挙人登録をすると刑法犯罪になります。

以上のようなことを考えると、バイデン優勢どころか、トランプがリードしている可能性すらあるのです。その理由を以下にあげます。
(1)一般的な世論調査ではバイデン候補がトランプ大統領を7ポイント程度リードしています。しかし「投票する」と答えた有権者への調査では、逆に3~5ポイント、トランプ優勢。 
(2)選挙資金の潤沢さ(トランプ2億5000万ドル、バイデン6000万ドル)。選挙戦では高額なTVスポット広告で、攻撃されたら直ちに反撃できます。この差は大きいです。 
(3)中国たたき。米国民の67%が習近平体制に反感を持ち、反中政策は人気。特に共和党びいきの93%がトランプ支持です。
トランプ政権の中国攻撃は、民主党をたたくことにつながります。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(2020年4月22日)によると、バイデンの息子が中国との間に持つ利権をトランプ陣営は調査中です。同時に、民主党幹部の中に、中国に利権を持つ人物が複数浮上しています。

バイデン氏(左)と息子
トランプ政権発足直後に、フリン大統領補佐官が辞任。その後、ロシア大使に接触したとして起訴されましたが、5月7日、司法省は起訴を取り下げました。

FBI(米連邦捜査局)がうそを強要したメモが見つかったとされ、トランプ大統領は「オバマゲート」と呼んでいます。トランプ政権にとって大勝利です。

5月12日、ワシントン連邦地裁は、起訴取り下げの承認を見送りました。今後、第三者の意見を参考に、事実関係を精査して結論を出す。2~3カ月かかるとみられていますが、トランプ側が有利な材料を手にしていることに変わりはないです。それに、もう8月です。今月にも結論が出されるかもしれません。

民主党指導部によるフリン起訴の仕掛けも、問題視されています。

2016年大統領選当時、ヒラリー・クリントン候補を勝たせるべく、国家権力を使ってトランプ陣営を妨害したとされます。しかし、トランプ当選で思惑は狂い、FBIを使ってフリン氏に罪を着せ、同時にトランプを陥れようとしたというのです。

司法省は「オバマ側がスパイ行為をしていた証拠を握っている」と発言。これも11月の大統領選の前に結論が出れば、トランプ側に有利になります。

オバマ氏
ただ、トランプ再選への大きな不安は、連邦最高裁に上がっているトランプの納税・銀行取引記録の開示問題です。

下院とニューヨーク市検察当局がトランプ取引銀行に開示を求め、大統領側は拒否しています。

米連邦最高裁は先月9日、トランプ大統領はニューヨーク州の検察当局が求めた納税申告書を含む財務記録の提出を拒否できないとの判断を示しました。一方で下院の調査委員会が求めていた開示は認めず、下級審に審理を差し戻しました。

いずれも最終決着までには時間がかかる見通しで、11月の米大統領選の前にトランプ氏の財務記録が公になる可能性は低くなりました。

以上のようなことを考えると、大統領選挙でトランプが不利で、バイデンが有利とは言えないと思います。いまだ五分五分どころか、トランプに若干有利かもしれません。

しかし、選挙は、水ものですから、蓋を開けてみるまでは、何とも言えないところがあります。そのため、バイデンが大統領、ライスが副大統領となった最悪の場合も想定しておくべきです。

そうして、それ以前に、米国は抜きにして、日本としては中国にどう対処するのか、戦略を立てておくべきです。そうすれば、大統領がトランプになろうが、バイデンになろうが、進むべき道ははっきりするはずです。

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2020年8月3日月曜日

李登輝氏、終生訴えた「自信持て、日本人」— 【私の論評】台湾民主化の道筋を見ると、大陸中国の民主化も、不可能ではない!大陸中国こそ、現在の台湾のあり方を学ぶべき!(◎_◎;)

李登輝氏、終生訴えた「自信持て、日本人」

関西空港に到着し、出迎えの人々に手を振る台湾前総統の李登輝先生=2001年4月22日

台湾の李登輝元総統が7月30日、台北市内の病院で亡くなった。97歳だった。総統任期期間には、台湾の民主化に多大な貢献を果たした。経済面でも、農業経済学者だった素養を生かし、1990年代の台湾の飛躍的な経済成長を支えた。日本統治時代の台湾で生まれ育ったことから、晩年は日台関係の強化に尽力。関係者によると、「日本人よ、自信を持て」と訴え続けていたという。

台湾民主化の父、李登輝元総統が7月30日に死去した=18年6月、沖縄(李登輝基金会のウェブサイトより)

李氏は30日午後7時24分、入院していた台北栄民総医院で、多臓器不全などのため死去した。台湾メディアによると、李氏は今年2月8日の食事中に、喉を詰まらせて入院。その後、肺や腎臓などの機能不全を併発したことで、入院は長期化。7月23日以降は昏睡状態に陥っていた。
台湾内外から哀悼の声が寄せられた。民主進歩党(民進党)の蔡英文総統は30日に李氏を追悼する声明を発表。「台湾民主化の過程で、李氏がもたらした貢献は他に取って代わることのできないもの」として、李氏の功績をたたえた。李氏が2001年まで籍を置いた中国国民党も同日、「李元総統は人々に新しい人生をもたらした」とする声明を発表した。

日本の安倍晋三首相は31日、「痛惜の念に堪えない」などとコメント。同時に「日本と台湾の親善関係に多大なご貢献をされた方」と李氏をしのんだ。

■無血の民主化推進

李氏は1971年に国民党に入党。88年に本省人(台湾出身者)として初めて総統に就任した。00年に退任するまでの約12年間で6度の憲法改正を行うなど、大々的な政治改革を推進。94年には初の旧台湾省長と直轄市長の直接選挙、96年には初の総統直接選挙(李氏自身が当選)をそれぞれ実施。就任時は中国国民党の事実上の独裁下にあった台湾を民主主義社会へと変貌させた。

李元総統の最大の功績は、血を一滴も流さず民主化を進めたこと――。そう指摘するのは、李氏が主催する李登輝基金会の早川友久顧問。当時の国民党幹部の多くは、戦後に中国から台湾に渡った外省人。早川氏によると、党内で孤立しそうな環境下にあっても、李氏は内部の保守派と対話をしつつ、政治改革に着手したという。

■1人当たりGDP約2.3倍に

李氏は政治面だけでなく、経済面でも台湾に多大な貢献を果たした。任期中の年間の経済成長率はおおむね6~9%を確保。88年に6,370米ドル(約67万円)だった1人当たり域内総生産(GDP)を00年には1万4,908米ドルまで押し上げた。

中国への投資規制を緩和し、中国経済の拡大を台湾経済の成長につなげた。一方、任期後半には中国への資金流出による台湾経済の空洞化を危惧。中国投資に制限を設ける「戒急用忍政策」を打ち出した。米中貿易摩擦を経て問題視された経済的な中国依存に、早くから警鐘を鳴らしていた人物とも言える。


早川氏は、「李氏は元々農業経済学者であり、国民党内では経済政策で結果を出すことで、地位を上げてきた部分がある」と説明。政治改革の陰に隠れがちだが、経済面でも成果を収めた政治家だった。

■「日本統治の光を見てほしい」

李氏は日本が統治していた1923年の台湾で生まれた。京都帝国大学(現在の京都大学)に進学するなど、日本語で教育を受けていることから、終生日本との関わりを重視してきた。

早川氏によると、特に晩年は日台の交流活動に心血を注いでいた。李登輝基金会は毎年2回、日本人50人前後を台湾に招き、台湾への理解を深めてもらう研修活動を開催。李氏は同研修で必ず講演を行い、日台の相互理解促進に尽力した。

中でも繰り返し口にしたのが、「日本の若者にもっと自信を持ってほしい」とのメッセージ。早川氏によると、李氏が日台交流を促進する背景には、日本人に日本統治が台湾にもたらした功績を見せ、自信を持ってもらいたいとの思いがあった。

日本の台湾統治に影がないとは言わない。ただ、より多くの光を与えてくれた――。日本語世代が減少し、日台の相互理解が希薄化することへの危機感を胸に、李氏は生前そう訴えていたという。


【私の論評】台湾民主化の道筋を見ると、大陸中国の民主化も、不可能ではない!大陸中国こそ、現在の台湾のあり方を学ぶべき!(◎_◎;)

李登輝総統が誕生する前までの台湾はどうだったのか、ということが意外と知られていないようです。上の記事にも掲載されていません。これはあまりにも当たり前なのか、それとも意図して意識して裂けたのかわかりませんが、その現実を知れば、さらに李登輝氏の偉大さがわかります。

日本時代の1919年に立てられた堅牢なレンガ造りの台湾総督府の建物(同時期に作られた東京駅にも似ている)は、国宝級古跡にまで指定され、現在は台湾総統府として大事に使われています。

こうした台湾のインフラ整備に意欲を傾けた偉人達と、台湾全土で忠実に任務にあたった警察官や学校教師達のおかげで、台湾人は次第に日本人を敬愛するようになっていきました。

しかし周知の通り、大東亜戦争は日本の敗北で幕を閉じました。台湾は領土未帰属の状態となり、とりあえずの措置として中華民国(国民党軍)がやってきて支配することになりました。台湾人は、当初は同じ漢民族である(と誤認していた)中華民国を歓迎するつもりでしたが、軍規粛正な日本軍とのあまりの落差にショックを受けることとなりました。

国民党政府は1947年から、全土に戒厳令を敷き、台湾人を白色テロにより殺害しました。 特に、元日本軍人や知識人などが狙われたため、このあと台湾は文化、経済的に大きく停滞することになりました。この虐殺による死者は3万人近いとも言われますが、正確な数字は未だに不明です。戒厳令が解除されたのは、何と1987年です。

3万人というと、現在の台湾の人口が、約2400万人ですから、当時はもっと人口が少なかったはずですし、夥しい数の人々が、虐殺されたのは間違いありません。この事実が今でも、台湾の人々に大きな影を落としています。

このような歴史を経て、日本統治時代を直接経験している世代は、流暢な日本語を話し、「自分は元日本人である」と胸を張ってくれている人が多いです。李登輝元総統や、司馬遼太郎『台湾紀行』にも出てくる蔡焜燦氏らの世代(2017年死去)です。これらの方々が徐々に亡くなられていることは、本当に寂しいです。

蔡焜燦先生
しかし、台湾の全人口が親日的なわけではありません。戦後やってきた外省人は、もちろん反日的です。外省人は少数派ですが、政権を掌握してきた彼らは中華民国の反日史観で国民を教育し、メディアを支配してきました。

これによって、本省人にも戦後世代には反日史観に影響されている人も増えてしまいました。

しかし台湾の民主化以降は言論、政治にも日本統治時代の自由な空気が戻り、1997年には日本統治時代を客観的に評価する『台湾史』の教科書が制定されました。それまでは「中華民国は大陸全土を支配している」という蒋介石の妄想に従って『中華民国史』しか教えられていなかったのですが、ようやく台湾を台湾として教えられる教育が始まったのです。

このようなことを考えると、李登輝氏がいかに偉大であったのか、良く理解できます。李登輝氏の前までが、現在の大陸中国ともあまり変わりないようにも見られる、政権が台湾を統治していたものを、そこから武力も行使せずに、民主台湾を築いたのです。

こうして、台湾民主化の道筋を見ると、大陸中国の民主化も、不可能ではないと思えてきます。大陸中国こそ、現在の台湾のあり方を学ぶべきです。

そうして、李登輝先生がおっしゃったように、日本人はもっと自信を持つべきです。

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2020年8月2日日曜日

中国、漁船群の尖閣領海侵入を予告 「日本に止める資格ない」— 【私の論評】日本の潜水艦のステルス性、哨戒・掃海能力が中国を遥かに凌駕している限り、中国の列島線等単なる妄想に過ぎない!(◎_◎;)

中国、漁船群の尖閣領海侵入を予告 「日本に止める資格ない」

    尖閣諸島周辺の接続水域を航行する中国の公船や漁船に対応する海上保安庁の
    巡視船(左端)=平成28年8月(海上保安庁提供)
中国政府が日本政府に対し、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺での多数の漁船による領海侵入を予告するような主張とともに、日本側に航行制止を「要求する資格はない」と伝えてきていたことが2日、分かった。16日に尖閣周辺で中国が設定する休漁期間が終わり、漁船と公船が領海に大挙して侵入する恐れがある。日本の実効支配の切り崩しに向け、挑発をエスカレートさせる可能性もあるとみて日本政府内では危機感が高まっている。(半沢尚久)

 大挙侵入予告といえる主張を伝えてきたのは、7月2~5日に中国公船2隻が尖閣周辺の領海に侵入して操業中の日本漁船1隻に接近し、平成24年の尖閣諸島国有化以降で最長の39時間以上も領海にとどまった時期だ。

  中国政府当局は「日本の海上保安庁は(尖閣周辺で)1隻の日本漁船すら航行するのを止められなかった」と批判。「数百隻もの中国漁船の(尖閣周辺での)航行を制止するよう(日本が)要求する資格はない」と述べた。

  日本政府高官はこの主張を「意趣返しの意思表示で休漁明けの挑発を正当化する布石だ」と指摘する。 

 尖閣周辺では28年の休漁明けに4日間で延べ72隻の漁船と延べ28隻の公船が領海侵入した。30年以降は中国当局が尖閣周辺に漁船が近づかないよう指示していたとされる。

  今年は、4月に予定していた中国の習近平国家主席の来日の延期が3月に決まると、4月14日から尖閣周辺で公船が確認され続け、今月2日も接続水域を航行。111日連続の確認で、国有化以降で最長の連続日数を更新している。

  中国政府は、5月8~10日に公船が領海に侵入して日本漁船を追尾した際には「『中国の領海』で違法操業」している日本漁船を「法に基づき追尾・監視」したとの見解を示した。法執行を強調することで尖閣に対する日本の実効支配を弱め、中国の領有権主張を強める狙いがあった。

尖閣諸島周辺で外国漁船に対応する海上保安庁巡視船

  漁船の大挙侵入予告にも同じ意図がある。尖閣をめぐり日本政府が「存在しない」とする領有権問題が存在し、日中が対等な立場にあると喧伝(けんでん)するため、意趣返しとして漁民に領海侵入を促し、公船も随伴させる可能性があり、休漁明けを前に海保と国境離島警備隊を4月に新設した沖縄県警は警戒感を強めている。 

 挑発の新たな形態も懸念される。漁民らで組織される海上民兵の投入で、昨年7月にベトナムの排他的経済水域で公船とともに海上民兵船が活動した前例がある。今年6月の法改正で公船が所属する海警局と海軍が同じ指揮系統で運用可能になり、尖閣周辺で軍艦艇と公船、民兵船を試験的に一体運用する機会をうかがっているとの見方もある。

  日本政府高官は、公船の背後に控える中国海軍艦艇をマークしている海上自衛隊艦艇に加え、海自の哨戒機と空自の早期警戒機の飛行頻度を増やし、「中国側が認識できるレベルまで警戒態勢を引き上げるべきだ」と指摘している。

【私の論評】日本の潜水艦のステルス性、哨戒・掃海能力が中国を遥かに凌駕している限り、中国の列島線等単なる妄想に過ぎない!(◎_◎;)

令和2年版防衛白書は、尖閣諸島(沖縄県石垣市)やコロナ禍をめぐる中国の動向に強い危機感を示し、北朝鮮の核・ミサイル開発については「重大かつ差し迫った脅威」と指摘しました。

白書は、尖閣周辺での中国公船の領海侵入について、力を背景とした一方的な現状変更の試みを「執拗(しつよう)に」継続していると批判しはました。中国がコロナ禍を利用し、「自らに有利な国際秩序」の形成を図っているとも分析しました。

これが新型ウイルス感染症が広がるさなかの現実なのです。白書から隣人中国の振る舞いを知れば平和を保つ抑止力の充実が急務だとわかります。白書は、中国は「安全保障上の強い懸念」であり、「強い関心をもって注視していく必要がある」と位置づけました。産

この記述自体は当然のことですが、踏み込みが足りなすぎです。『安全保障上の脅威』と明記すべきでした。

白書は、北朝鮮を「脅威」とし、かつてはソ連を「潜在的脅威」と評したこともあります。今日の中国は核搭載可能なミサイルを日本に向け、台湾に軍事的圧力をかけ、南シナ海の軍事拠点化を進めています。

日本と中国の経済的関係は昔の日ソ間よりもはるかに深いですが、日本の島や海を狙っている中国に対し必要のない遠慮を政府が続け、脅威とさえ指摘できないようでは日本の防衛意志が疑われ、抑止力を弱めるばかりです。

中国は、ブログ冒頭の記事にもあるように、漁船群の尖閣領海侵入の予告さえしてきています。中国は、現状中国の公船が頻繁に出入りするのが恒常化しているように、漁船群の尖閣領域侵入を恒常化させるつもりのようです。

その次の段階では、尖閣に侵入した漁船群を守ると称して、日本の船舶等を尖閣水域から、追い出すようなことをするものと思います。

なぜこのようなことをするかといえば、軍事力では尖閣水域を自分たちのものにできないからです。このブログでは、何度か述べいるように、日本の潜水艦は、ステルス性能に優れており、中国はこれを発見することはできないからです。

その上、中国の潜水艦はステルス性能が劣るため、日本側にすぐ発見されてしまうからです。この意味するところ、日本の潜水艦は、中国の潜水艦を含む艦艇を中国側に感知されず、自由に攻撃してこれを撃沈できるのですが、中国側は手も足も出ないということです。

このような日本の優位性があるからこそ、中国は尖閣諸島を奪取できないのです。中国海軍のロードマップでは、今年は第二列島線まで確保することになっていますが、現実には尖閣諸島を含む第二列島線ですら確保出来ていないのです。

中国海警局の巡視船が尖閣諸島(沖縄県石垣市)の領海に侵入する際、中国海軍のミサイル艇が巡視船に連動して台湾付近に展開していることが1日、分か利ました4月14日から今月1日まで110日連続で巡視船が尖閣周辺を航行した期間にも同様の動きがあり、中国本土ではミサイル部隊が展開していることも判明。不測の事態に備え、周辺海域を警戒する海上自衛隊の護衛艦を牽制(けんせい)する狙いがあるとみられます。




ミサイル艇が展開するようになる以前から中国軍艦艇の動きはありました。海警局の巡視船が尖閣諸島周辺を航行する際は海軍のフリゲート艦や駆逐艦が周辺海域に展開しています。  

ただ、フリゲート艦などは尖閣諸島から約90キロ北東の北緯27度線以北を航行しており、27度線を越えて南下するのは例外的な動きにとどまっています。海自護衛艦は27度線以南の海域に展開しており、日本側の動きを観察するためとみられています。これに対し、ミサイル艇は基本的に27度線以南の海域を航行しています。

ミサイル艇は27度線以南の海域を航行しているのに、なぜフリゲート艦や、駆逐艦が27度線以南の海域を航行しないかといえば、その海域には、いやそれよりももっとはるかに広範囲の水域に日本の潜水艦が潜んでいると見ているからでしょう。

日本政府としては、中国側が現在以上の威嚇をしてきた場合、どのようにするのか、撃沈などを含むブロトコルを定めでおいて、実際に中国海等がそのような行動をした場合は、実行すべきでしょう。

さらに、日本にはそのようなプロトコルがあることを中国に公表して、挑発を激化すれば、とんでもないことになることを通達すべきです。無論、プロトコルの詳細まで知らせる必要はありません。そんなことをすれば、軍事機密を漏らすようなものです。

そのような公表したとしても、反対したり憤慨するのは、中国、ロシア、北朝鮮くらいなものです。それ以外の国は、反対しないどころか、賛成する国も多いと思います。国際法上まったく何の問題もないです。

さらに、まかり間違って、中国の漁船員などが上陸した場合は、何やら色々なことを主張する人もいますが、私は、複数の潜水艦で、尖閣諸島を包囲し、水、燃料、食料などを補給できないようにすれば。すぐにお手上げになるだけだと思います。潜水艦だけでは、普段が大きければ、機雷による封鎖も考えるべきです。

海上自衛隊の掃海艇
これも、日本は掃海能力が世界一ですが、中国は格段に劣っています。中国海軍が、機雷を敷設しても日本側は、これをすぐに除去できますが、日本が機雷を敷設すれば、中国にはこれなかなか除去できません。

日本の潜水艦のステルス性、哨戒・掃海能力が中国を遥かに凌駕している限り、中国の列島線等単なる妄想に過ぎないのです。これが、ある限り、中国海軍のロードマップは、絵に描いた餅にすぎないです。

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2020年8月1日土曜日

大事なのは重症者の数、東京都は減少している=コロナ感染拡大で官房長官— 【私の論評】大量のPCR検査をせよという人は、無知か、嘘つきか、PCR検査によってお金を儲けたいだけの人!(◎_◎;)

大事なのは重症者の数、東京都は減少している=コロナ感染拡大で官房長官





菅義偉官房長官は31日午後の記者会見で、東京都で同日に確認された新型コロナウイルスの感染者数が463人と過去最多になったが、大事なのは重症者の数であり、東京都の重症者数は前日比6人減少の16人にとどまっているとの見解を示した。

菅官房長官は、東京都の重症数がかつては105人まで増加していたことも指摘。4月に緊急事態宣言を出した時とは状況が違うとの見解を重ねて示した。

一方、米国やドイツの2020年4─6月期の国内総生産(GDP)が大幅なマイナス成長となり、リーマン・ショック後の落ち込みを上回る規模の打撃を受けていることについて、菅官房長官は「(日本政府としても)リーマン・ショックよりも(落ち込みは)大きいとの認識は同じである」と指摘。大規模な2020年度1次、2次補正予算を編成したと説明した。

また、自民党が同日、ミサイル防衛に関して敵基地攻撃能力の保有を含む提言案をまとめ、8月上旬にも政府に申し入れることになったことに対して菅官房長官は、憲法の枠内や専守防衛の考え方の下で「与党の議論を受け止め、しっかりと議論していきたい」と述べた。

【私の論評】大量のPCR検査をせよという人は、無知か、嘘つきか、PCR検査によってお金を儲けたいだけの人!(◎_◎;)

こういう場合には、まずは客観的数字を見ることが重要だと思います。そこで、以下に東京都のサイトよりグラフを引用します。


死者数は昨日までの累計で332名でした。死者数は特に増えていることもないようです。なお、死者数は、グラフにはされていないようです。これは、グラフにしても意味がないほど、死者数が少ないことを意味していると思います。

死者数がグラフにできるほど増えてきたとすれば、これはかなり大変で、それこそ米国や欧州の状態に近づいたとも言えるかもしれません。

重傷者数がかなり増えた場合も、かなり危険と考えられますが、これも6月の頃とほとんど変わっていません。

まあ、これで心配ないから、気を緩めても良いとは言いませんが、恐怖に駆られる必要はないとはいえそうです。

少し前まで、最近まはPCR検査をどんどん実施すべきだという論者も出てきましたが、これは大いに疑問です。

マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏は、米国内で実施されている新型コロナウイルスのPCR検査について、結果判明までに時間がかかりすぎるとし、「全くの無駄」だと批判しました。複数の米メディアのインタビューで語りました。

CNNテレビが当局者の話として伝えたところによると、米国内のPCR検査の約半数を担う民間の試験所では、結果判明までに平均4・27日かかるといいます。

感染者はこの間に感染を広げる恐れがあるため、ゲイツ氏は「感染者が行動を変えるよう、もっと結果通知を急がなければならない」と語りました。結果判明まで48時間以上かかる検査にはコストをかけるべきではないとも主張しました。

ゲイツ氏は妻と設立した慈善基金団体を通じ、ワクチンの開発支援や途上国への支給など、世界の感染症対策に力を入れています。

私も現状では、そうだと思います。さらに、この検査が短時間でできるようになったとしても、まだ不安定な部分があります。これについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを掲載します。
PCR検査「リスクゼロ信仰」の危険性…簡易検査だと「5割は誤判断」 医療現場は崩壊?イタリアや韓国の轍を踏むな ―【私の論評】ウイルスの特性を知れば、PCR検査の誤判定の率が高さを理解できる(゚д゚)!


詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。
コロナウイルスは「菌」ではなく「ウイルス」であること。ウイルスは単体では増殖ができず、新型コロナのような新参者は、細菌に接種・感染して増殖する方法が確立されていないこと。 
そこで遺伝子を直接チェックして、確認同定するため、PCRという遺伝子チェックの方法に頼っているのが現状なのです。 
しかし、この検査では、遺伝子だけを見ているので、ウイルスのカプセルが破壊されて、機能していなくても「PCR検査で陽性」と言われてしまうことがあるのです。 
わかりやすい例えて言うなら、家の中のダストを分析したら、大昔に死んだおじいさん、おばあさんの毛髪が混ざっていて、そのDNAが検出されるようなものだと思ってください。 
遺髪には、すでに生きていない人の遺伝情報だけはしっかり残っています。それを解読したからといって、死んだおじいさんやおばあさんが生き返ってくるわけではありません。 
同じような原理的な困難が、PCR検査には伴っているのです。

コロナウイルスPCR検査の感度は、上記のように誤判断の確率はだいたい3~5割です。簡易検査だとこれをさらに上回ります。偽陰性、偽陽性もあり得ます。つまり、軽症や無症状の人に対しても広く検査を行うことは、偽陽性者の絶対数が増えることになり、感染率がいまだ低い状態下では、陽性的中率が低下します。罹患していないのに検査で陽性となる人が増えるのです。
コロナウイルスPCR検査の誤判断の確率はだいたい3〜5割です。ということは、仮にどんなに正確無比に判定できる機器が登場したとしても、正しく判断できる確率は7割ということです。

私は、現在の感染者の中には、偽陽性の人も大勢いると思います。まずは、偽陽性が増えているのか否か調査する必要があると思います。仮に、偽陽性が増えているとしたら、PCR検査を増やしたということもありますが、ただ、無論それだけではないと考えられますので、いずれ調査すべきとは思います。ただし、直近ではそのようなことに力を入れるよりは、重傷者が増えることを予想して、医療体制を整えるのが先決だと思います。

現在、コロナウィルスの変異の情報が蓄積されつつあります。中国などとは異なり、日本のように検体をきちんと保存したり報告したりする国では、後にかなり正確にウイルスの伝播の状況や、それに対する様々な対策がかなり、正確に追跡できるようになっています。後に分析すれば、かなりのことがわかるはずです。

それに、PCR検査は、検査であって治療ではないのです。検査をしても、検査結果が分かるまでの間に、陽性だったとしたら、他の人にうつすかもしれないですし、陰性だったにしても、他の人からうつされるかもしれないです。検査をするために多くの人が集まるところに行くことは、こうしたリスクを増やすことにもなります。

であれば、PCR検査はよりその可能性が高いと思われる人に実施し、そうでない人にはむやみやたらと実施すべきではないということが言えると思います。

中国武漢でのPCR検査
むやみやたらと、PCR検査をするくらいなら、疑いのある人にCT検査などをして、肺炎があるとわかった人には、PCR検査とともに治療を始めるというのが正しいあり方だと思います。

肺炎の治療は、コロナ肺炎だろうとなかろうと似たようなところがありますし、検査して陽性でコロナ肺炎が濃厚ということになれば、コロナ肺炎治療に切り替えれば良いのです。

このようなことをしないで、とにかくまずは、大量のPCR検査を行うというのは、第一波のときは間違いであ つたことは明らかになりましたし、今回の感染者数の増加が第二波と言えるかどうかは、わかりませんが前後の脈絡なく大量のPCR検査を行うというのは間違いと言わざるを得ません。

とにかく大量のPCR検査をせよという人は、無知なのか、嘘つきか、PCR検査によってお金を儲けたいだけの人だと思います。

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2020年7月31日金曜日

消費税めぐり自民党内に減税論 時限措置で経済刺激、英独は引き下げ— 【私の論評】今こそ大規模な積極財政、異次元の量的金融緩和を実行すべき時、今やらないでいつやる!(◎_◎;)

消費税めぐり自民党内に減税論 時限措置で経済刺激、英独は引き下げ

    自民党内で時限的な消費税減税論がくすぶっている。新型コロナウイルス感染拡大によって大きく落ち込む景気を刺激するためだ。英国やドイツなどは日本の消費税に当たる付加価値税の減税に乗り出した。現段階で政府は否定的だが、安倍晋三首相が消費税減税の判断を大義名分にして、年内にも衆院解散に踏み切るとの見方は消えていない。

 「減税すると税収は減るが、消費は活発化する」。首相の経済ブレーンとして知られた本田悦朗・元内閣官房参与は28日、国会内で講演し、コロナ禍の経済対策に消費税減税は有効だと指摘した。

 講演会を主催したのは自民党の若手有志30人でつくる議員連盟「日本の未来を考える勉強会」。党の保守系グループ「日本の尊厳と国益を護る会」(56人)と共に、消費税減税を求める緊急声明を3月に発表した。

 党内には、財政赤字が増えても問題なしとする「現代貨幣理論」(MMT)を支持する議員もいる。そのため消費税減税を容認する自民党議員は100人近くに達するとみられている。

 コロナ禍での経済復興を優先するため、欧州各国は「消費税」減税に相次いで取り組んでいる。英国はレストランやパブで飲食する場合などの付加価値税率を期間限定で20%から5%に下げた。財政規律を重んじるドイツも19%から16%に引き下げ、食品などに適用される軽減税率は7%から5%になった。

 オーストリアでは、アルコールを含む飲料の付加価値税が20%から5%になった。議連の若手は「日本も流れに乗り遅れてはいけない」と話す。

 衆院議員の任期満了は来年10月だ。首相は2014年11月に衆院を解散したが、消費税率10%への増税先送りの是非を問うものだった。議連メンバーはこの時と同様、税に関する判断は解散の大義になると踏む。
 野党では国民民主党が消費税率5%への引き下げを主張。所得の低い人ほど恩恵があるとして、共産党もコロナ禍での消費税減税を訴えている。自民党の中堅議員は「選挙の争点をつぶせる」と自信を示す。


 ただ政府は消費税について「社会保障のために必要なもの」(菅義偉官房長官)との立場を堅持している。首相は21日発売の月刊誌のインタビューで「減税を考えていない」と強調した。

【私の論評】今こそ大規模な積極財政、異次元の量的金融緩和を実行すべき時、今やらないでいつやる!(◎_◎;)
消費を喚起するための定額給付金をやってはみたのですが、政府のITがお粗末すぎたので、給付するまでに余分の資金がかかってしまいました。そうなると、経済を浮揚する効果は、削がれてしまいます。そこで脚光を浴びてくるのが、減税です。

安倍の10万よりも、減税の方が経済浮揚効果がある
減税は、定額給付金と似た効果がある上に、国会の手続きや、実務を考えても、はるかに早く実現でき、効果が出るものです。そもそも、給付金のように申請手続きや、送付の手間もありません。簡単に言えば、2次補正予算で10兆円の予備費を作ったので、秋に3次補正で3兆円分の国債を発行して13兆円にすれば、1%を減税した場合の歳入減が2.6兆円分なので、5%の減税分に相当することになるので、1年間、10%から5%にすることは可能です。

マクロ経済政策で重要なのは、景気が落ち込んだときには、とにかく市中にお金をつぎ込むことです。ここでお金をつぎ込まないと、GDPが落ち失業が増えてしまうことになります。後で手当てすれば手遅れになりかねないので、先回りするのが普通の経済政策です。社会保険料の徴収を止めるといったこととあわせて、必要になってくる政策です。

消費減税に伴う、社会保障費などの財源の懸念などありません。国債を発行すれば良いだけです。国債を発行すると将来世代の負担になるという言い方をされますが、それは間違いです。

22日に出た、麻生財務大臣と黒田日銀総裁の共同声明を読めば、国債は全て日本銀行が買うと約束をしています。そうすれば、利払い費や償還の負担が発生しません。

ただし、インフレ率が高まる可能性はありますが、現状これだけ消費が落ちこみ、需要が消失している状況なので、そう簡単にはインフレ率は高まらないです。こういう時にこういう政策をするのが世界の常識です。

さらにもう一つ付け加えると、国債を大量に発行し、日銀がそれを全部買い取るということになれば、市中に出回る円が増えることになります。そうなると、相対的に日本円が世界の金融市場で低下することになります。

これによって、円高を食い止めることができます。もし、日銀が一切政府の政策に関与しせず、かつ減税などの積極財政を実行したらどうなるかと言えば、当然のことながら、円の需要が高まり、円高状況になります。そうなると、せっかく経済を良くするために、実行した減税などの積極財政が円高という結果につながり裏目に出ることになります。

しかも、現状は、以下のグラフを見ても分かるように、日銀の国債保有額は、減少しています。現状では、かなり買い増すことが可能です。これを考えると、日銀が政府の発行した国債を買い取るという方式は、非常に良い方式です。


西欧では景気が落ち込んだときには、政府の積極財政と、中銀の金融緩和の両方を同時に実行することが、常道になっています。これを同時に行って、インフレになれば、やめれば良いのです。

日本では、なぜか両方を一辺にやるというのではなく、積極財政だけとか、金融緩和だけど考える人が多いようですが、それは明らかに間違いです。両方やって、インフレが高進した場合、金融緩和をやめ、それでもインフレの亢進がやまない場合には積極財政を辞めるのです。

それでも、インフレの亢進がやまない場合は、金融引き締めをします。それでもやまなければ、今度は増税などの緊縮財政を行い、物価を安定させるのです。

このように、その時々の経済状況に応じて、臨機応変に金融政策、財政政策を変えるのがマクロ経済政策の正しいあり方です。

しかし、日本には不思議な人が大勢いて、とにかくその時々の日本経済がどうであろうとも、増税などの緊縮財政が正しいと信奉する財務省ならびに、その走狗の人々が大勢います。

また、白川総裁以前の、日銀は、その時々の日本経済の状況がどうであろうとも、とにかく金融緩和すれば負け、金融引き締めする勝ちと考えるような人が主流を占めていました。そうして、今の日銀官僚にもそういう類の人は多いです。本当に、信じがたいことです。

私は、このブログにおいては、積極財政をせよとか、金融緩和をせよと、主張してきましたが、無論永遠にこれを実行すべきなどとは、思っていません。その時々で、ふさわしい、金融政策、財政政策を実行せよと言っているのです。

コロナでは、かなり景気が落ち込み続けるのは、明らかです。積極財政と、金融緩和を同時に行い、減税はもとより、政府は休業補償や家賃の負担も行い、早期にコロナの終息を図り、その後の経済の回復に注力すべきです。

今、積極財政、大規模な金融緩和を行わず、いつ実施するのかと言いたいです。

安倍総理は、どうしても反対勢力がいてできないというのなら、秋に積極財政、金融緩和を公約として、衆院解散総選挙に打って出るべきです。

このような最中、菅官房長官は29日の記者会見で消費税減税に触れました。

菅官房長官

記者:消費税の引き下げを検討する選択肢は、少しでもあるのか。

官房長官:現在、一連の補正予算などで全国民に一律10万円の給付、そして収入が減少した事業者に最大200万円の給付に加えて家賃などの支援を行うなど、総額230超円を超える規模の対策を実施しております。その中で収入が減少した事業者については、税、社会保険料を1年間猶予しており、消費税についても納税猶予の対象になりますが、消費税自体については、社会保障のために必要なものである、と思っている(http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/202007/29_a.html)。

この発言に関して、

時事通信は「消費税減税に慎重 菅官房長官」(https://www.jiji.com/jc/article?k=2020072900561&=pol)、日本経済新聞は「官房長官、消費減税に慎重姿勢『社会保障に必要』」(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62028980Z20C20A7PP8000/)、NHKは「官房長官 消費税率引き下げに否定的な考え コロナ影響めぐり」(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200729/k10012538501000.html)といった具合に報道しています。

官房長官発言をどう読めば、こういう報道になるのでしょうか。菅氏は「消費税自体については、社会保障のために必要なものである」と語っていますが「減税は考えない」などとは、一言も言っていません。

社会保障のために消費税が必要という発言は、社会保障はそもそも保険であり、明らかに間違いだと思いますが、それはそれとして、菅氏は「消費税の必要性」を語っただけで、税率の引き下げについては、一言もコメントしていません。

この発言を「減税に慎重」と報じるのは、記者たちの問題意識と理解力が足りないです。「引き下げを検討するか」と聞いたのに、税の必要論で答えたのは、記者たちが「はぐらかされた」のです。経済というと、財務省や日銀の発表を何も吟味せずにただ、垂れ流すような経済記者が多いので、このようなことになったのかもしれません。

では、なぜ菅氏は答えをはぐらかしたのでしょうか。理由は1つだけです。減税を選択肢に残しておきたいからです。しかし、正直にそう答えてしまったら、世間が、特に財務省とその取り巻きたちが、大騒ぎになるのは目に見えています。だから、税の建前論にとどめたのでしょう。

そうして、選択肢を残したのは、菅氏の一存でもないと思います。私は、政権内部ですでに減税の検討が始まっていると思います。それほど、事態は切迫しているのです。このまま何も手を打たずに、夏に突入すれば、飲食、観光などバタバタと倒産ラッシュが始まるのは避けられないです。

解散しなくても、安倍晋三首相は来年9月に自民党総裁の任期を終える。衆院議員の任期は1カ月後の同10月までだ。安倍首相は任期満了で退任し、新しい自民党総裁が首相になって、すぐ総選挙というシナリオも考えられます。

あるいは、自民党が緊急避難として「連続3期9年まで」とする総裁規定を変えて、安倍氏が総裁に4選し、コロナ制圧に目処をつけるまで首相を務めるシナリオもあるかもしれません。いずれにせよ、経済政策も政局も鍵を握っているのは、新型コロナの行方いかんと言えそうです。

とはいいなが、新型コロナ等で経済がかなり落ち込んだ時の脱出方法は、先ほど述べたように、大規模な積極財政と、異次元の量的緩和を同時に実行する以外にありません。それと、これはMTTとは無関係です。

そのような理論抜きで、現在のまともなマクロ経済学では、景気が落ち込んだ時の、政策は、大規模な積極財政と,大規模な量的緩和を実施すべきことを教えています。無論、規模や実際のやり方などは、種々様々ですが、方向性としてはこれ以外はありません。これ以外を実施すれば、失敗するだけです。

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2020年7月30日木曜日

領事館閉鎖では終わらない…米国が握る「対中最終兵器」 中国の息の根を止めかねない劇薬“ドル取引制限”に一歩近づく — 【私の論評】ドル使用禁止措置は、事実上中国の貿易禁止、輸出入ができなくなる!(◎_◎;)

領事館閉鎖では終わらない…米国が握る「対中最終兵器」 中国の息の根を止めかねない劇薬“ドル取引制限”に一歩近づく 
高橋洋一 日本の解き方

トランプ大統領

 米トランプ政権が、ヒューストンの中国総領事館を閉鎖させた。中国も対抗し、四川省成都の米総領事館を閉鎖させる事態となっている。

 領事館は、大使館と並ぶ在外公館の柱だ。自国民の保護、査証の発行、証明書の発行、他国の情報収集という重要業務を行っている。

 米国内の中国領事館は、ヒューストンのほか、カリフォルニア州サンフランシスコ、ロサンゼルス、イリノイ州シカゴ、ニューヨークに置かれ、ワシントンには中国大使館がある。

 一方、中国にある米領事館は、四川省成都のほか、香港、広東省広州、上海、遼寧省瀋陽にある。

 領事館ではなく大使館の閉鎖を要求するとしたら、それは宣戦布告にも等しい。大使館ほどではないが、外交特権もある領事館の閉鎖は、大使館の閉鎖に次いで強烈な外交的な意思表示であることに間違いない。

 米政府高官の話として、在米中国領事館は米国の知的財産を窃取する一大拠点だったという。米研究機関にいる中国人のスパイにどんな情報を盗むべきかを具体的に指示したり、捜査から逃れる方法を伝授したりしていたという。米研究機関への米国ビザに関し軍歴を隠蔽して不正取得していた中国人4人が訴追されたという報道もあった。

 米中貿易戦争も、中国による米国の知的財産権の窃取がメインテーマであったが、今回のコロナ危機に際し、それが明白になってきている。知的財産権というが、その中心は軍事に転用可能な新技術である。

ただし、軍事転用のあるなしに関わらず、日本を含む外国企業は、中国に進出すると新技術が盗まれるとこぼす。中国国内で、海外のパクリとおぼしき事案は至るところでみられる。

 中国は、海外でも知的財産権の窃取に一生懸命のようだ。ただし、海外では、中国国内のように振る舞えないので、各地にある領事館が中心的な役割を果たしてきたというのが、米政府の見立てだ。米政府から、これからいろいろな「証拠」が提示されるだろう。

 そして、少なくとも11月の大統領選挙までは、米中の報復措置が繰り返されるだろう。当初中国は湖北省武漢市の米総領事館を閉鎖すると伝えられたが、それでは米国への影響も少ないので、ウイグル・チベットの情報収集を担当する四川省成都の米総領事館の閉鎖に至ったともいわれる。

 米中間では、モノ・ヒト・カネのつながりがある。モノで関税引き上げの応酬があり、決着が付かないでヒトの制限に移ってきた。普通はビザ発給の制限になるが、いきなり領事館閉鎖になった。カネについてはドル取引制限が考えられるが、これは中国の息の根を止めかねない劇薬で、米国の「最終兵器」だ。

 世界経済を巻き込むかしれないので、慎重に対応されるべきだが、また一歩、近づいたのは間違いないだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】ドル使用禁止措置は、事実上中国の貿易禁止、輸出入ができなくなる!(◎_◎;)

中国の企業は、場合に世では米国金融機関との取引ができなくなり,ドル決済が停止されることすらあり得るのです。米国財務省は敵対国に対する制裁対象としてSDN(Special Designated Nationals)リストというブラックリストを設けていますが、その制裁項目の中には米国・国際金融機関との取引停止、ドル送金など外為取引の禁止、米国内資産凍結などの劇薬も含まれています。

貿易に代表される国際取引の多くは米国の通貨であるドルを介して行われています。国際取引の多くは米国政府やFRB(連邦準備制度)の監視を免れない。そして米国政府やFRBは、「ドル利用禁止」等の経済制裁を通じて「望ましくない取引」を止めることができる。以下、現行の国際決済システムを概観し、米国政府やFRBの国際取引における影響力を確認します。



図表1は貿易など国際決済の様子を簡略化した概念図です。ごく一般的な国際決済の例を挙げます。例えばロシアのケチャップ会社がトルコの農業企業からトマトを輸入するとします。ロシアのケチャップ会社からトルコの農業企業への支払いがドルで決済される場合、代金はルーブルからドルに交換された後、ロシアのケチャップ会社の取引金融機関からトルコの農業企業の取引金融機関へと支払わレます(その後、トルコの農業企業がドルをリラに交換して受け取る場合もあります)。

その際、国際資金決済には「カバー」と言われる仕組みがあり、決済を行なう金融機関どうしが通常は決済通貨の母国(ドルの場合、米国)にある金融機関に有する口座を介して決済資金の付け替えが行われています。すなわちドル決済の場合、「ロシアのケチャップ会社の取引金融機関が在米金融機関に持つ口座」から「トルコの農業企業の取引金融機関が在米金融機関に持つ口座」に支払われることになります。トルコ・ロシア間の取引でありながら、決済は在米金融機関の間で行われているのです。

なぜルーブルを(ドルを介さず)直接リラに交換しないのかといえば、ルーブルからリラへの直接交換は、「ルーブル⇒ドル⇒リラ」という間接交換と比較した場合、容易ではないのです。

これは通貨に対する需給の問題です。「ルーブル⇒リラ」という直接交換が成立するためには、その反対取引となる「リラ⇒ルーブル」取引も必要となります。つまり、「ルーブル⇒リラ」あるいは「リラ⇒ルーブル」の取引が成立するためには、双方向の取引が常時相当の規模で行われているような、厚みのある「リラ・ルーブル間の外国為替取引市場」が必要なのです。そしてそのような市場が存在しない場合、図表1で示したように、リラとルーブルはドルを介して決済されることになります。

このようにごく一部の例外を除いて、ほとんどの国際決済は実は「ドルを介して」行われています。そして多くの場合、ドルを介した取引のほうが、マイナー通貨間の直接交換よりも、手数料が少なく済む場合が多いのです。

なぜならドルが絡む外国為替市場では相当額の取引が行われているため、「ドル以外の通貨⇒ドル」「ドル⇒ドル以外の通貨」2つの取引の手数料を合わせても直接交換した際の手数料を下回るからです。このような手数料の安さも「ドルを介した国際決済」の優位性のひとつです。

そうして政治的に重要なのは、この「ドルを介した国際決済」が、図表に示したとおり米国内の決済システムを通じて行われていることです。米国政府やFRBは、米国内の銀行・金融機関の取引を厳しく管理・監督しています。

従って、「ドルを介した国際決済」は米国内の決済システムを通じて全て米国政府やFRBの知るところとなっています。そうして米国政府やFRBが望ましくないと判断した取引は、「ドル利用禁止」といった手段を使って差し止められることになるのです。つまり「ドル利用禁止」とは事実上「貿易禁止」と同じ意味を持つのです。

このように、「ドルを介した国際決済」という制度を通じて、米国政府やFRBは世界全体の取引を監視し、必要に応じて望ましくない取引を止める権力を有しているのです。これは、どの程度の監視なのかといえば、日本のマイナンバーカードなどとは比較にならないものです。金融取引の全部が詳細に監視されているのです。

米国の財務省には金融犯罪を担当する次官(Under Secretary of the Treasury for Terrorism and Financial Intelligence=テロリズム金融犯罪情報分析担当次官)が存在しますが、対ロ制裁でよく名前が挙がるOFAC(米国財務省外国資産管理室)は正にこの次官が管轄しています。


以上、「ドル利用禁止」が持つ意味の大きさを説明しました。一方、最近は中国経済の台頭、米国経済の停滞、米国による経済制裁の多用を受けて、いわゆる「ドル離れ」が進むといった論調が多くみられます。

確かにドル決済の強みである市場の厚みは米国経済の大きさによるもので、米国経済が衰退すればこの相対的優位は長期的には揺らぐかもしれないです。しかし、ドル決済を支えているのは市場の厚みだけでなく、ドルを決済する米国内決済システムの安定性や利便性、透明性による部分も大きいです。このように一定の厚み・安定性・利便性・透明性を併せ持つ市場が、米国以外に新たに出現するとは中期的には考えにくいです。

実際、IMFが1969年に国際準備資産としてSDR(Special Drawing Rights:特別引出権)を創設して50年近く経過しますが、決済手段として使えないSDRの普及は極めて限定的です。米国経済そのものの先行きは別にして、ドル決済の優位性と、そこから得られる情報を通じた米国経済制裁の優位性は、当面揺るぎません。ドルはこれからも基軸通貨であり続けます。
米国が、大々的に中国に「ドル利用禁止」をすれば、それは中国にとって「貿易禁止」と同じ意味になります。無論、貿易ができなくなっても、中国は人口が多いので、内需を喚起することにより、ある程度GDPは拡大できるでしょうが、それにしても、ハイテク関連の部品や、機材など全く輸入できなくなることになるでしょう。

そうなると、いわゆる中国製ハイテク機器等ほとんど作れなくなります。無論このような制裁を今すぐに実施すると、現状では当の米国にまで大きな影響が出ることになるでしょう。

そのため、昨日も述べたようにすぐに、米国が中国に対して、大規模な財務的な制裁措置を実行することはないでしょうが、米国が受ける悪影響とのバランスを図りつつも中共を震撼させるような凄まじい措置が、大統領選挙の前の8月,9月あたりには発動される可能性が高いです。そうなると、中国は経済的にも、技術的にも、社会的にも毛沢東時代に逆戻りすることになります。

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中国の暴挙に釘を刺すポンぺオ国務長官声明— 【私の論評】南シナ海の中国軍基地を米軍が攻撃する可能性はあるし、攻撃すれば大勝利間違いなし!(◎_◎;)


2020年7月29日水曜日

中国の暴挙に釘を刺すポンぺオ国務長官声明— 【私の論評】南シナ海の中国軍基地を米軍が攻撃する可能性はあるし、攻撃すれば大勝利間違いなし!(◎_◎;)


岡崎研究所 

 6月13日、ポンペオ米国務長官は、「南シナ海における海洋権益主張に関する米国の立場」と題するブレス声明を発表した。中国の南シナ海での一方的な活動で困っているフィリピン、ベトナム、マレーシア、インドネシア及びブルネイ等ASEAN諸国とともに米国が同じ立場にあることを表明したものである。その要点を紹介する。
(参考:https://www.state.gov/u-s-position-on-maritime-claims-in-the-south-china-sea/)



・中国がフィリピンに対し、スカボロー環礁及びスプラトリー諸島に関する排他的経済水域(以下EEZ)を含む海洋権益の主張を行うことは法的に許されない。これらの地域は、国際仲裁裁判所によって、フィリピンのEEZないし大陸棚と認められたものである。この海域でのフィリピンの漁船に対する中国の嫌がらせや中国の一方的な資源開発は違法である。国際仲裁裁判所の判決によれば、ミスチーフ環礁やセカンド・トーマス礁はフィリピンの主権及び管轄権の下にあり、中国の法的領有権も海洋権益もない。

・従って、米国は、スプラトリー諸島の中国が主張する12海里の領海を認めない。同様に、米国は、中国が主張するベトナム沖のヴァンガード・バンク、マレイシア沖のルコニア環礁、ブルネイのEEZ及びインドネシア沖のナツナ諸島の海洋権益を認めない。中国による他国の漁業活動への嫌がらせや炭化水素開発等は違法である。

・マレーシアから50海里にすぎず中国から1000海里以上あるジェームス環礁に対する領有権またはそれに由来する海洋権益への適法な請求権を中国は有していない。中国のプロパガンダでは、ジェームス環礁が「最南端の領土」として出てくる。が、国際法は明確である。ジェームス環礁は、水面下約20メートルに位置するが、ここはいかなる国も海洋主張できないと国際法は定める。

 7月13日のポンぺオ国務長官の南シナ海に関する声明は極めて重要な意味を持つものである。国連海洋法条約に認められている権利を超えた中国の権利主張を包括的に否定したものであって、南シナ海問題に対する極めて適切な声明である。

 中国は猛反対をしているが、南シナ海ほぼ全域が中国が主権を有する地域であるかのような主張、いわゆる9段線の主張などは荒唐無稽と言わざるを得ず、こういう主張は厳しく反論すべきものである。中国外務省の報道官は「国際法上、中国の主張が正しい」と述べているが、単にそう述べたと言うだけで、それを立証することを何一つ言っていない。

 正当な主張はまず打ち出していくことが大切である。日本もポンぺオ声明を歓迎する声明でも出せばよい。

 1984年の中英共同声明を簡単に破るような中国を牽制していく必要がある。ヒトラーが1936年、非武装地帯とされていたラインラントに進駐した時に、米英仏が強硬に対応したら、ヒトラーがその後に起こったようなことを起こしたのかという歴史のIFを考えることがあるが、とんでもない主張に対しては時宜を得て、反対しておくことが大事であると思っている。

 南シナ海問題はまさにそういう問題である。中国に国際法違反、約束違反の代償を払わせる姿勢が今後の平和につながる。

【私の論評】南シナ海の中国軍基地を米軍が攻撃する可能性はあるし、攻撃すれば大勝利間違いなし!(◎_◎;)

豪政府は23日、中国が南シナ海における領有権や海洋権益を主張していることついて、「法的根拠がない」として中国の主張を正式に退けました。中国との緊張が高まる中、米国と今まで以上に足並みをそろえるかたちとななりました。

環礁を埋め立てて作った中国の軍事基地
オーストラリアはこの日、国連に宛てた宣言の中で、南シナ海の大部分を占める中国側の主張には「法的根拠がない」としました。中国側は反応を示していません。

何世紀も前から領有権があると主張する中国は近年、南シナ海の南沙諸島で人工島に基地を建設している。

ブルネイやマレーシア、フィリピン、台湾、ヴェトナムは中国の主張に反発しています。中国を批判する各国は数十年にわたり、領有権を争ってきました。しかし近年、海上での衝突がたびたび発生し、緊張は着実に高まっています。

中国は「九段線」として知られる広大な海域の領有権を主張し、人工島の建設や哨戒活動を通じてその主張を既成事実化しようとしてきました。中国は大がかりな軍事インフラを整備してきましたが、目的は平和的だと強調しています。


菅義偉官房長官は29日午後の会見で、南シナ海を巡り中国の広範な領有権主張は無効である指摘した米豪の共同声明に対し、日本政府として支持し歓迎するとの見解を示しました。

 菅官房長官は今回の声明に関し、地域の安全保障環境が厳しさを増す中で「米国と豪州の揺るぎないコミットメントを示すものである」と指摘。わが国として「歓迎し支持する」と明言しました。

 また、日本政府は法の支配の重要性を強調してきたとし、今後も関係国と緊密に連携していく方針を改めて示しました。 米国と豪州は28日、ワシントンで外務・防衛閣僚協議(2プラス2)を開催し、終了後に発表した共同声明の中で、中国による南シナ海での広範な領有権主張は「国際法に照らして無効だ」と指摘しました。

29日付の共産党機関紙・人民日報系の環球時報英語版は「南シナ海で軍事衝突の危険性が高まっている」という分析を伝えました。

中国軍をけん制するため米軍が南シナ海で軍事演習を実施し緊張が高まっており、中国が埋め立てた南シナ海の人工島を「米軍が攻撃するのではないか」という臆測も広がっています。

 北京のシンクタンクによると、米軍機が7月中旬以降、頻繁に南シナ海や中国周辺を飛行しているそうです。26日には米軍の哨戒機P8Aが福建省の領海まで約76キロの地点に接近しました。中国外務省の汪文斌副報道局長は28日の記者会見で「今年前半、米軍機は南シナ海で2000回以上の活動を行った」と述べました。

米軍の哨戒機P8A
北京大米国研究センターの王勇主任はポンペオ長官の声明について「米国が11月の大統領選挙の前に南シナ海で武力を使用する可能性を排除できない」と述べました。多維新聞は13日の声明が米国の南シナ海奇襲に対する法律的根拠を与えたものだと解釈しました。

 ポンペオ長官は25日にはツイッターで「南シナ海は中国の海洋帝国でない」とコメントしました。これを受け、米国が中国の総領事館を閉鎖したのに続き、次は中国のどこを狙うかを表したという評価が出ています。

 香港サウスチャイナモーニングポスト(SCMP)は26日、米軍が南シナ海にほぼ毎日3-5機の偵察機を送るなど、南シナ海と中国の海岸に対する偵察飛行を記録的な水準に増やしていると報じました。

 多維新聞は中国の専門家らを引用し、米国の最初の奇襲打撃対象は、現在中国軍が駐留していないスカボロー礁(中国名・黄岩島)になる可能性が高いと報じました。その次のターゲットは中国で南沙諸島と呼ばれるスプラトリー諸島と予想しました。

 中国が滑走路などを建設したファイアリー・クロス礁 (中国名・永署礁)とミスチーフ礁(中国名・美済礁)、スビ礁(中国名・渚ま碧礁)を攻撃した後、周辺暗礁をミサイルと大砲で破壊する可能性が高いということです。

最後には中国以外の国が支配を主張する暗礁などをB-52Hなど戦略爆撃機を動員して爆破し、南シナ海関連国の領有権主張紛争を解決するという手順だそうです。パラセル(西沙)諸島のウッディー島(永興島)などに戦闘機などを布陣した中国がどのように出るのかがカギになるとしています。

これに関し北京の外交筋は、米国がまず中国に南シナ海人工島に設置した施設の撤去を要求するはずであり、中国がこれを受け入れない場合は戦争を覚悟して武力を行使する手続きに入る可能性が高いと述べました。


私自身は、すぐに米中が南シナ海で軍事衝突するようなことはないと思いますが、周辺諸国と中国との紛争に米軍が巻き込まれ、軍事衝突にまでエスカレートする可能性は十分にあると思います。

それに、現状は選挙選で不利とも見られるトランプ氏が、それを打開することも目的として、環礁を爆撃などするということあり得ると思います。

何しろ、中国の軍事基地などというと、日本人の中には、屈強の兵士や軍人たちが、最新兵器を携えて待ち構えているかのように考えるところがありますが、そんなことはなく、米国の戦略家ルトワック氏は、「この中国軍の基地は、象徴的な意味しかなく、米軍なら5分で吹き飛ばせる」と語っていました。

そのような基地ですが、それでも、周辺の国々から見れば、大きな軍事的脅威ですが、米軍にとっては脅威でも何でもありません。

そもそも、この海域で、米中が本格的に武力対立をした場合、このブログでも述べたことがありますが、米中の対潜哨戒能力や、潜水艦のステルス性能が中国のそれより格段に混ざっているため、米軍の潜水艦は、南シナ海を中国に発見されることなく自由に動き回れるのに対して、中国の潜水艦はすぐに米軍に発見されてしまいます。

その後どういうことになるかといえば、中国の潜水艦も含む全ての艦艇があっという間に米軍により魚雷等で沈められしまうことになります。地上の兵器なども、潜水艦から攻撃できます。おそらく、今も南シナ海の深海に米軍の原潜が潜んでいるのはまちがい無いでしょう。

日本の潜水艦も、米軍よりもステルス性能では優っているので、東シナ海や南シナ海で中国側に探知されず自由に行動できるのですが、中国の潜水艦は日本にすぐに探知されてしまいます。日本の潜水艦は、南シナ海で哨戒活動など、米軍にかなりの手助けができるはずです。

この状況では、米中が南シナ海で、本格的に衝突すれば、中国艦艇は、即日南シナ海から姿を消すことになるでしょう。あとは、環礁を爆撃したり、しなくても、環礁の中国軍基地は、燃料も食料も水もなくなって、お手上げになるだけです。

米軍が勝利するのは、最初から決まっています。ただ、なるべく犠牲は出さないようにする必要があります。

それに、いずれかの時点で、局地戦で中国が実際にどのような動きをするのか、見極めておく機会も必要になるでしょう。

そのようなことを考えると、全くあり得ないことではないです。特に戦時中の大統領は、かなり選挙に有利なるという事実も忘れるべきではありません。

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2020年7月28日火曜日

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米国、中国に“宣戦布告”…米英が水面下で戦争の準備、テロ支援国家に指定の可能性も
文=渡邉哲也/経済評論家

アメリカのマイク・ポンペオ国務長官

 アメリカと中国の対立が、お互いの総領事館を閉鎖し合うという異例の事態に発展している。

 アメリカがテキサス州ヒューストンの中国総領事館を「スパイ活動および知的財産窃盗の拠点」という理由で閉鎖し、対抗措置として、中国は四川省成都の米総領事館を閉鎖した。そのため、今度はアメリカが次に何をするかが注目される。仮に追加の制裁に動けば、中国も再び対抗し、応酬がエスカレートしていくだろう。

 ここで問題になるのは、「タイミング」と「さじ加減」だ。アメリカとしても、自国への悪影響を考えれば、時間をかけて段階的にデカップリング(切り離し)を進める方が得策だと思われる。マスク問題などにみられるように、日本を含む西側諸国は中国に依存している部分もあるため、急激なデカップリングは危険をはらむことになる。生産や調達の代替が可能になってからでないと、国内への影響が大きくなりすぎてしまうわけだ。

 しかし、時間がかかりすぎると、その間に中国はさまざまな方法でアメリカへの対抗手段を確保し、安全保障上のリスクが拡大しかねない。そのため、猶予期間は限られており、今は嵐の前の静けさとも言える状況なのだ。

 これらの背景には、中国が香港国家安全維持法を一方的に施行した問題がある。これは、香港に保障されていた「一国二制度」を反故にすると同時に、自由主義社会への挑戦状とも言えるものである。

 アメリカのマイク・ポンペオ国務長官は演説で「習近平国家主席は破綻した全体主義思想の真の信奉者」「中国共産党から自由を守ることは私たちの時代の使命」などと語り、対中強硬路線を改めて打ち出した。これは、事実上の宣戦布告といえる発言だろう。

米英と中国の対立が激化、戦争の準備へ

 また、悪化する米中関係に、香港問題の当事者であるイギリスおよびイギリス連邦が加わる形で混迷を極めている。

 イギリスは香港に居住する約290万人の「英海外市民」について、ビザなしでイギリスに滞在できる期間を6カ月から5年間に延長し、市民権の取得を促す緩和策を発表した。また、香港政府と結んだ犯罪人の引き渡し条約の停止を表明し、2027年までに中国企業の華為技術(ファーウェイ)を次世代通信規格「5G」から完全排除する方針を決定した。

 これらの動きに猛反発した中国は、英海外市民が持つ旅券を「有効な旅券として認めない」と表明し、さらに追加措置の行使も示唆している。イギリスおよびイギリス連邦としては自国の旅券を否定されたことになり、これは戦争の理由として十分なものだ。今後は、相互主義に基づき、中国の旅券を無効化するかどうかが注目されるが、その場合は香港市民の出国に大きな制限が課せられることになってしまう。

 また、ポンペオ国務長官はイギリスのボリス・ジョンソン首相、ドミニク・ラーブ外務大臣と会談を行い、香港問題などでの連携を確認し、中国と対峙するための連合構築も示唆した。さらに、アメリカのマーク・エスパー国防長官は年内に訪中し、対話の手段を探る意向を示しているが、これらの動きは戦争の準備行為とみることもできるだろう。


 そもそも、領事館や大使館の閉鎖というのは宣戦布告の正当な理由となる行為であり、戦争の前段階と言える動きだ。


 また、中国が国家的に、全米の領事館を通じて極左暴力集団「ANTIFA」や黒人差別に対する抗議デモ「「Black Lives Matter」を主導し、援助したとの報道も出てきている。アメリカはこれらの動きに対して背後関係を含めて徹底的に調査するとしており、事実関係が確認されれば、国内のテロ行為の陽動および支援ということで、テロ支援国家の指定に向けて動き出すことも考えられる。


 テロ支援国家に指定された場合、輸出管理におけるアメリカ原産の割合が25%から10%にまで引き下げられ、ハイテク関連製品などの輸入はほぼできなくなる。また、金融制裁など追加オプションを発動する大義名分にもなり、中国に対して北朝鮮と同様の処置が可能になるわけだ。

 米中対立は、今後も予断を許さない状況が続きそうである。

(文=渡邉哲也/経済評論家)

【私の論評】トランプの5人の騎士が、中共の息の根を止める!(◎_◎;)


トランプの5人の騎士が中共をこらしめる?

ここ最近立て続けに、オブライエン補佐官、FBIのレイ長官、バー司法長官が、相次いで対中政策の演説を行ないました。また、中国共産党を厳しく批判してきたポンペオ国務長官も、上の記事にあるように、演説をしました。

オブライエン氏は6月24日、アリゾナ州フェニックス市での講演で、「中国共産党がマルクス・レーニン主義を信奉する全体主義の政党である」「習近平主席は自分をスターリンの後継者としている」と述べ、「米国が中国共産党に対して受動的で未熟な時代は終わった」「中国共産党の信条と陰謀を暴くことは、米国人だけでなく、中国人や世界の人々の福祉のためでもある」としました。

FBIのレイ長官は今月7日、米シンクタンク・ハドソン研究所での演説で、中国共産党の対米攻勢について、民主国家への勢力浸透、秘密情報網の構築、大量のサイバー攻撃などあらゆる手段を用いたことで、米国経済および国家安全に計り知れないダメージをもたらしたと述べました。

同氏によると、中国共産党によるスパイ活動は2500件に達し、この10年で中国がらみの経済スパイは1300%増加したそうです。約10時間ごとに中国人が関わるスパイ事案が発生しているといいます。

バー司法長官は16日、ミシガン州での講演で、中国共産党の世界征服の野望にいかに対応するかが、21世紀に向けて全米ひいては全世界が直面する最も重要な議題であるとし、「世界の偉大な古代文明の一つを鉄拳で支配する中国共産党は、中国の人々の計り知れない力、生産性、創造性を悪用し、ルールに基づいて構築された世界秩序を覆そうとしており、それによって世界で独裁政権が定着することを目指している」と述べました。

それに続き、ブログ冒頭の記事にもある、27日のポンペオ長官の演説です。

米トランプ大統領の元首席戦略官のスティーブ・バノン氏は7月20日、米FOXニュースとのインタビューで、トランプ大統領は中国共産党に対して「一貫性のある計画」を持っており、それによって中国共産党を解体していくとの見解を述べました。

同氏によると、まず中国共産党と「対抗」し、次に中国共産党を「崩壊させる」という2つのステップで計画を進めている。「最初に立ち向かい、それから中国共産党を打ち負かし、彼らの虚勢を暴くという総合的な作戦を目にすることになるだろう」というのです。

バノン氏は、トランプ大統領の陣営が、中国共産党の脅威に対抗するため、ロバート・オブライエン国家安全保障担当大統領補佐官、クリストファー・レイ連邦捜査局(FBI)長官、マイク・ポンペオ国務長官、そしてウィリアム・バー司法長官という「四騎士」を配置していると述べました。

「この4人は、技術や情報戦、経済戦で中国共産党と対峙するほか、同盟国とともに南シナ海で開放的な海洋秩序を構築し、中印国境紛争でインド側を支援するなど、一貫性のある包括的な戦争計画を立てている」

トランプ政権が、中国共産党の脅威に対抗するため、配置した「四騎士」

また、バノン氏は「私は財務長官の参戦を望んでいる」と述べ、「この戦争計画はすでに目の前に浮かんでいる。米国に侵入した中共ウイルス(CCP Virus、新型コロナウイルス)と同じレベルの一貫性を維持する必要がある」としました。

南シナ海では依然として緊張の高まりが続いています。17日付けの米政府系メディア、ラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、最新の衛星画像で、中国当局が南シナ海のパラセル諸島最大の島であるウッディー島(中国名・永興島)に、戦闘機8機を配備していることが確認されたといいます。

米軍も南シナ海への軍事関与を強化しています。米海軍の「ニミッツ」と「ロナルド・レーガン」のニミッツ級航空母艦(原子力空母)2隻は17日、南シナ海で2回目の演習を行いました。また、米空軍のE-8C偵察機1機が過去1週間で4回も、中国の海岸に対して接近偵察飛行活動を行ったのは極めて異例のことです。

マーク・エスパー米国防長官は21日、中国共産党が過去1年間に南シナ海で軍事的挑発行為を繰り返し、地域的緊張を高めているとし、中国共産党と対峙する可能性に備え、アジア全域に米軍を配置していると述べました。

このブログでは、様々な根拠から中国は、世界のいずれかで局地戦を行う可能性が高いことを主張してきました。

トランプ政権による、四騎士の配置は、これに対する牽制と、中国が何らかの局地戦や米国へのテロ攻撃、浸透工作などを実施した時の、備えであると考えられます。

安全保障関連だけではなく、司法や、国内の治安維持も含めた総合的対応を目指していることを示すものです。従来は、中国にはサラミ戦術などでしてやられてきた米国ですか、今度はたとえサラミ戦術であろうとなんであろうと、中国が何か行動に出た場合、それを最終的には軍事力を用いてでも絶対に阻止するという意思の現れです。

さて、バノン氏は5番面の騎士としての財務長官の登場を望んでいるようですが、これはどういうことかといえば、中国による対米投資の本格的な制限等を実行することを意味していると解釈できます。いやそれどころか、中国が所有する米債権の無効化や、ドルと人民元の交換停止などの、措置もあり得るかもしれません。

5人目の騎士? ムニューシン米財務長官
ただし、現状では、ブログ冒頭の渡邊氏の記事にもあるように、「タイミング」と「さじ加減」から行って、本格的な財務的措置は、今のところ米国にとっても害が大きすぎると考えているのでしょう。

米国としては、米国と中国デカップリング(切り離し)が進んだ段階で本格的な財務的制裁措置を行えば、米国にとっても害が少なくなると考えているのでしょう。

今の段階では、四人の騎士が、中国が米国外であろうと、米国内であろうと、何か手を打って来た場合、迅速に対応できる体制ができていることを表明したという段階でしょう。そうして、実際に何かが起きれば、迅速に手を打つでしょう。

そうして、何かが起これば、この四人は互いに緊密に連携して対応をするというような、愚かなことはしないでしょう。そんなことをすれば、”Too Late”ということになりかねません。

この四人は、何かが起これば、自分ができる範囲の中ですぐに行動を起こし、その後に連絡を取り合うことになるでしょう。これで、どのような中国の迅速な動きも、制することができるでしょう。

そうして、いずれ5人目の騎士、ムニューシン米財務長官が加わり、米国による中国への本格的制裁が始まることになるでしょう。

最後の財政的制裁措置に関しては、すぐに全部を展開することはないとしても、大統領選挙の前に、かなり衝撃的な手を一つくらいは、打つ可能性があると思います。

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