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岡崎研究所
2001年の9・11同時多発テロが与えた衝撃は大きく、米国をはじめ、パニックに見舞われた状況であった。その中で、本来はそうではないはずのイスラムのテロが、戦略的脅威であるかのように見られるようになっていた。しかし、イスラム過激派によるテロは、かつては国際政治の中心的な課題であったが、今はそうではなく、若干の国において、その国の問題としてくすぶっているような問題になったと言ってよい。したがって、バイデン大統領がアフガンからの米軍の9月撤退を決めたのも是認される状況であると思われる。
イスラム過激派の脅威がこのように小さくなったのは、米国を先頭に各国がその抑え込みに努力したことも大きいが、政治的イスラムの自壊という側面も大きいように思われる。ワシントン・ポスト紙コラムニストのファリード・ザカリアは、イスラム過激派のテロがローカルな存在に縮小した原因について、4月30日付けの同紙コラム‘Ten years later, Islamist terrorism isn’t the threat it used to be(10年経ち、イスラム・テロはかつてのような脅威ではない)’において、政治的イスラムが一部のイスラム教国の国家権力の一部分になったが実績が芳しくなく大多数のイスラム教徒を幻滅させたためである、という説を紹介している。このザカリアの論説には賛成できる。
ザカリアは、「政治的イスラムを育てた土壌、現在の政権への不平、不満と宗教指導者への盲目的信頼は急速に減少した」、「今あるのはローカルな問題、不満であるが、これは世界的な運動の一部ではない」などとも指摘する。その通りであろう。
アラブ諸国が今後どう発展していくのか、そこで近代化とイスラムがどう折り合っていくのかは難しい問題である。宗教の自由を尊重する自由民主主義は、一つの回答になり得ると思われる。
なお、ザカリアは、米国には脅威を誇張する伝統があるが、それは避けるべきである、と言っている。これ自体は適切な指摘であるが、対中政策を念頭に置いてそう言っているのであるとすれば異論がある。米国の今の対中脅威認識は誇張されているとは思われない。香港の1国2制度は国際条約で2047年まで続くことになっていた。この条約を破った上に、香港政策はすべて中国の内政事項という主張は全く認められないことである。台湾への武力行使も内政問題ではありえない。米国の現在の対中政策は、脅威の誇張とは評価しがたい。
社会においてリーダー的な階層にあるということは、本来の機能を果たすだけではすまないということである。成果をあげるだけでは不十分である。正統性が要求される。社会から、正統なものとしてその存在を是認されなければならない。(『マネジメント──基本と原則[エッセンシャル版]』)企業、政府機関、非営利組織など、あらゆる組織にとって、本来の機能とは、社会のニーズを事業上の機会に転換することです。つまり、市場と個人のニーズ、消費者と従業員のニーズを予期し、識別し、満足させることです。
さらに具体的にいうならば、それぞれの本業において最高の財・サービスを生み出し、そこに働く人たちに対し、生計の資にとどまらず、社会的な絆、位置、役割を与えることです。
しかしドラッカーは、これらのものは、それぞれの組織にとって存在の理由ではあっても、活動を遂行するうえで必要とされる権限の根拠とはなりえないとしています。神の子とはいえなくとも、少なくともどなたかのお子さんである貴重な存在たる人間に対し、ああせい、こうせいと言いえるだけの権限は与えないといいます。
ここにおいて、存在の理由に加えて必要とされるものが、正統性です。ドラッカーは
かつて権限は、腕力と血統を根拠として行使されました。近くは、投票と試験と所有権を根拠として行使されています。
しかしドラッカーは、マネジメントがその権限を行使するには、これらのものでは不足だといいます。
社会と個人のニーズの充足において成果を上げることさえ、権限に正統性は与えないというのです。一応、説明はしてくれます。だが、それだけでは不足なのです。腹の底から納得はされないのです。
マネジメントの権限が認知されるには、所有権を超えた正統性、すなわち組織なるものの特質、すなわち人間の特質に基づく正統性が必要とされるというのです。
そのような正統性の根拠は一つしかない。すなわち、人の強みを生かすことである。これが組織なるものの特質である。したがって、マネジメントの権限の基盤となるものである。(『マネジメント[エッセンシャル版]』)
3月18日 米中外相会談 |
中国国営の新華社によりますと、会談で中国側は台湾問題に触れ、「いかなる妥協の余地もない」と述べ、米国が進める政府高官の台湾訪問や武器売却の中止を求めました。
香港を巡っては「選挙制度の変更は内政問題だ」として民主派の排除を進める愛国者による統治の決定を尊重するよう要求しました。
また、米国がウイグル族への弾圧をジェノサイド(大量虐殺)と認定したことには「今世紀最大の嘘だ」と反発しました。
こうした主張に先立ち、中国側は「中国共産党は人民が選び14億人に心から支持されている」と述べ、共産党体制を正当性を強調しました。
中国の王毅外相は米国を強く牽制(けんせい)したと明らかにし、外交担当トップの楊潔篪(ようけつち)政治局委員は会談は有益だったとしつつ、「双方に重要な相違点がある」とも指摘しました。
さて、中国共産党政権には、統治の正当性があるのでしょうか。私は、そうではないことが、今後中国が経済成長しないことによって立証されると思います。無論、中国の経済統計はほとんどデタラメなので、中国政府は政治的メッセージとして、これからもデタラメな統計を出して、他国を幻惑し続けるでしょうが、真実を変えることはできません。
他国に比較して、ほとんど変動しない中国の不思議な経済成長率 |
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