2021年10月9日土曜日

損傷の米海軍潜水艦、世界有数の難易度の水中環境で活動 専門家が指摘―【私の論評】米軍は、世界最大級のシーウルフ級が南シナ海に潜んでいることを中国に公表し本気度をみせつけた(゚д゚)!

損傷の米海軍潜水艦、世界有数の難易度の水中環境で活動 専門家が指摘

南シナ海で水中の物体に衝突した米原潜。難易度の高い水中環境で活動中だったという

香港(CNN) 米海軍の原子力潜水艦「コネティカット」が先週末、南シナ海で物体に衝突した事故をめぐり、専門家からは、同艦は世界でも特に難易度の高い水中環境で活動していたとの指摘が出ている。艦の上方は大量の雑音で埋め尽くされ、海底地形も絶えず変化している海域だという。

米国防当局者は7日、コネティカットの事故について詳しい情報は示さず、南シナ海で潜航中に物体に衝突し、多数の乗組員が負傷したと述べるにとどめた。

海軍によると、負傷の程度はいずれも軽かった。コネティカットは8日、自力で米領グアムの海軍基地にたどり着いたという。

海軍報道官はCNNに対し、潜水艦の前部が損傷したと述べ、「完全な調査と分析」を行う方針を明らかにした。

コネティカットは米海軍が保有する3隻のシーウルフ級潜水艦のひとつ。1998年に就役した同艦は排水量9300トン、全長約107メートルを誇り、原子炉1基を動力とする。乗組員は海軍要員140人。

コネティカットの船体は最新のバージニア級攻撃型潜水艦よりも巨大で、米国の他の攻撃型潜水艦に比べ多くの兵器を搭載できる。米海軍の説明文書によると、この中には魚雷最大50発とトマホーク巡航ミサイルも含まれる。

艦齢は20年を超えるが、就役中にシステムの更新が施されており、技術的にも高度な艦とされる。

海軍はコネティカットについて「極めて静粛かつ高速であり、高度なセンサーを搭載している」と述べている。

それでは、どのようにして南シナ海でコネティカットに問題が発生したのか。

海軍はコネティカットが何に衝突したのか明らかにしていないが、専門家からは、南シナ海の環境は同艦の高度なセンサーにとっても難易度が高いとの声が上がっている。

英ロンドン大キングスカレッジのアレッシオ・パタラーノ教授は、「雑音の多い環境ではソナーで捉えきれないほど小さな物体だった可能性もある」との見方を示す。

米海洋大気庁(NOAA)によると、海軍の艦船は水中で周囲の物体を探知するのに「パッシブソナー」を使う。「アクティブソナー」が発信音を送り、反響音が戻ってくるまでの時間を記録するのに対し、「パッシブソナー」は自らに向かってくる音だけを探知する。

これにより潜水艦は静粛性を保って敵から身を隠すことできるが、その反面、他の装置や複数のパッシブソナーを頼りに、進路上にある物体の場所を三角測量で割り出す必要が出てくる。

南シナ海は世界で最も混雑した海上交通路や漁場の一つとなっているため、水上の船が発するあらゆる種類の雑音の影響で、その下の潜水艦に危険をもたらしかねない物体が覆い隠される場合もあるという。

「事故が起きた場所によっては、一種のノイズ干渉(通常は上方の船舶から来る)がセンサーやセンサーの操作に影響を与えた可能性もある」(パタラーノ氏)

しかも、南シナ海の潜水艦にとって問題になりうるのは船舶だけではない。そう語るのは米海軍の元大佐で、米太平洋軍統合情報センターの作戦責任者を務めたこともあるカール・シュスター氏だ。

シュスター氏は「この海域は音響環境が非常に悪い」と述べ、水の性質そのものが問題を引き起こす可能性にも言及した。

また、潜水艦の下にある何かが問題を引き起こした可能性もある。

「あの海域の環境や海底は、ゆっくりとだが確実に変化している」とシュスター氏は指摘。「絶えず海底地形の地図を作っておく必要がある海域だ。地図に記載されていない海底の山に衝突することもありうる」と語っている。

この地域で潜水艦がらみの事故が起きるのは今年2度目。4月にはインドネシアの潜水艦がバリ海峡で沈没し、乗組員53人全員が亡くなった。

インドネシア当局は「自然や環境面の要因」によって事故が起きたとしつつも、これ以外の詳細は明らかにしていない。

【私の論評】米軍は、世界最大級のシーウルフ級が南シナ海に潜んでいることを中国に公表し本気度をみせつけた(゚д゚)!

今回事故のあった潜水艦は、上にもある通り、シーウルフ級原子力潜水艦であり、米海軍の攻撃型原子力潜水艦です。潜水艦一隻というと、大した軍事力ではないと思われるかもしれませんが、シーウルフ級は世界最大級の巨大潜水艦であり、その攻撃力は空母に匹敵すると言っても過言ではありません。

メンテナンス中のシーウルフ級攻撃型原潜 巨大さがよくわかる

あらゆる分野で仮想敵であるソ連海軍の原子力潜水艦を凌駕する超高性能艦として設計されましたが、冷戦終結による必要性の低下や高額な建造費などによって当初29隻だった建造数は大幅に縮小され、結局同型艦2隻・準同型艦1隻の計3隻で建造は終了しました。

米海軍最後の冷戦型攻撃原潜となった本級は、静粛性、氷海行動力、弾量を重視し、「聖域」内への積極的攻勢すら可能な、あらゆる面でソ連原潜を凌駕する超高性能艦とするべく設計されました。

ロサンゼルス級と比較してみると、減少した運用深度を取り戻すべく高張力鋼HY-110を採用し、氷海行動力も当初から盛り込まれた点で対照を成しますが、一方で水上艦用原子炉から発展したS6W型を搭載する点は引き継がれています。

また、イギリス海軍での運用実績に学んで、ポンプジェット・プロパルサーを制式としては初めて装備し、キャヴィテーションを起こさずに20ktで航走可能になりました。魚雷発射管室内の弾庫の容量も根本的に見直され、冷戦後期から米原潜が悩まされてきた搭載兵器量の問題はついに解決されました。

米国には、オハイオ級の攻撃型原潜もありますが、この潜水艦はとにかく巨大です。この潜水艦は特殊部隊シールズを乗せることができるだけでなく、巡航ミサイルのトマホークを1隻で最大154発、水中から連射することができます。軍事機密なのか、詳細は発表されていなのですが、シーウルフ級はこれを上回るのは確かです。

2017年のシリアの攻撃の時に駆逐艦2隻で発射したトマホークの数が59発ですからその規模がとんでもないことがわかります。

1997年から就役するアメリカ海軍有する世界最強の攻撃型原子力潜水艦シーウルフ級

南シナ海において、シーウルフ型攻撃原潜が、緒戦で攻撃に出れば、中国軍は手も足も出ないです。同時に中国側としては、いくらミサイル戦力や海軍力、宇宙サイバー戦能力を充実させても、米海軍の虎の子のシーウルフ型原子力潜水艦を発見し攻撃するASW(対潜水艦戦闘能力)が欠如している現状ではいかんともし難いです。

上の記事では、"海軍はコネティカットについて「極めて静粛かつ高速であり、高度なセンサーを搭載している」と述べている"としていますが、このブログで掲載してきたように、原潜は構造上どうしても騒音が出るため、静寂性には難点があるのですが、それでもシーウルフ型は原潜としては、静寂性か高く、対潜哨戒能力の低い中国がこれを発見するのはかなり難しいです。

一方中国の原潜や通常型潜水艦は、現状でも静寂性は劣ります。さらに、攻撃力も米攻撃型原潜に比較すれば、かなり低いです。特にシーウルフ型とは比較の対象にもなりません。

深海に留まり続け、中国の動きを偵察し、人工島と本土を結ぶ補給線を脅かす米巨大攻撃型潜水艦の存在は中国にとっては、脅威そのものです。もし南シナ海で、米海軍と軍事衝突という事態になれば、米巨大攻撃型潜水艦が、緒戦で中国軍の艦艇、ミサイル基地、空軍基地、監視衛星の地上施設などを破壊し尽くした後に、空母打撃群の波状攻撃にあえば、勝ち目は全くありません。そこに、強襲揚陸艦で米海兵隊員が多数乗り込んできた場合どうなるでしょうか。

そこまでしなくても、複数の米潜水艦が南シナ海を包囲して、中国艦艇や航空機を近づけないようにすれば、南シナ海の中国軍基地には水・食糧・燃料その他を補充できなくなってお手上げになります。


中国軍側からみると、何の前触れもなくある日突然、多くの艦艇、潜水艦、環礁上の基地が、どこから攻撃されたかもわからないうちに、撃沈、撃破され、無力の状態になったところに、さらに空母打撃群によるミサイル、航空機の波状攻撃を受けることになります。

これは、中国にとって悪夢です。中国としては、オハイオ級の攻撃型原潜等が南シナ海に潜んでいることは予期していたかもしれません。しかし、米海軍の世界一の巨大潜水艦が潜んでいることまでは、予期していなかったかもしれません。

以上のことから、私は今回の潜水艦事故は事実だったのでしょうが、それを理由に米海軍は南シナ海にシーウルフ級を潜航させている事実を中国に知らしめて、米軍の本気度を示したものとと推察しています。中国海軍は、対潜哨戒能力が低いので、シーウルフ級が南シナ海に潜航している事実を今回始めて知ったのではないかと思います。

もともと潜水艦の行動は、公表しないのが普通であり、潜水艦が沈没して多数が死亡した場合などの例外を除いて、公表しないか、公表しても場所や潜水艦の種別や負傷者や被害の程度などまでは、公表しないのが普通です。

それを今回の事故では、潜水艦の種別、具体的な潜水艦名、負傷者数のほか、さらにご丁寧に、7日の事故の後に、コネティカットが8日、自力で米領グアムの海軍基地にたどり着いたことまで公表しています。

これでは、いかに対潜哨戒能力が低く、シーウルフ級の行動を探知できない中国海軍であっても、海図とコンパスがあれば、大体どの海域で事故にあったのか、類推できます。

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2021年10月8日金曜日

習近平への「個人崇拝」という統治の危険なレシピ―【私の論評】習近平がやろうとしているのは、自ら属する宗族を中国の支配階層にすること(゚д゚)!

習近平への「個人崇拝」という統治の危険なレシピ

岡崎研究所

 9月1日から始まった中国の新学期では、新たに小学校から大学まで、6歳児以上の生徒、学生に、「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」と題する教科書が配布された。個人名の付いた教育書が何億の民に配布されるのは、毛沢東時代以来だという。また、大人に対するスマホ・アプリによる「習近平思想」教育は、既に始まっている。


 次に、個人崇拝の対象となる人の政策は無謬であるとみなされる傾向がある。それを変えることはむつかしく、政策的な硬直性が出てくる。スターリンの死後、3年後の20回党大会でフルシチョフはスターリン批判演説をして、スターリン政策からの転換を図ったが、それに至る道筋は簡単ではなかった。外交面でフルシチョフは対西側との平和共存路線を打ち出したが、ベリアの逮捕、モロトフの追放などが必要であった。個人崇拝時代からの転換は容易ではない。

見当たらない習近平思想の本質

 中国が今後今までのように経済が成長し、ますます台頭してくるとは見ていない。人口は高齢化するし、経済政策はテク企業などの成長部門を「共同富裕」政策で押さえつける可能性が高いとみている。いまの勢いで成功されてはかなわないので、習近平がイデオロギー重視に向かうことは別に嫌うべきことでもないと考えている。

 なお、共産党と独裁、個人崇拝は親和性がある。レーニン主義は前衛としての共産党の組織論であるが、トロツキーは人民が中央委員会に、中央委員会は政治局に、政治局は書記局に、そして最後は書記長にとって代わられる、それで独裁になると警告していた。スターリンの権力確立過程はそういうものであった。

 なお、習近平思想というが、習近平は中華民族の復興、強国中国などのスローガンを掲げているが、思想というようなものは見当たらない。

【私の論評】習近平がやろうとしているのは、自ら属する宗族を中国の支配階層にすること(゚д゚)!

習近平への「個人崇拝」という統治の危険を一言でいってしまえば、中国の北朝鮮化といことができるでしょう。

北朝鮮の「個人崇拝」の本質は、金王朝の存続です。金日成、金正日、金正恩が「個人崇拝」により目指したのは、これです。彼らにとって、一番重要なのは「金王朝」の存続です。

習近平もこれを目指しているようですが、習近平の目指しているのは、北朝鮮の金王朝の存続とも似ていますが、少し違うところもあります。金王朝は第二次世界大戦後につくられたものですし金家とそれに連なる者たちというと人数もある程度限られますが、習近平の王朝の本質は、金王朝などよりもはるかに長い歴史を持ち1家系に連なる親戚関係等よりもはるかに規模の大きい「宗族」です。

中国には、今でも全国各地に宗廟(そうびょう)が存在します。宗廟とは、中国において、氏族が先祖に対する祭祀を行う廟のことです。中国の歴代王朝においては、廟号が宗廟での祭祀の際に使われます。日本では、台湾の台中にある林氏宗廟や、世界遺産に登録されている朝鮮王朝(李氏朝鮮)の李氏宗廟が有名です。

中国三大宮殿建築のひとつ、孔廟・大成殿。孔子没後まもなく魯の哀公が孔子の住居を廟に改修したのがはじまり

宗族(そうぞく)とは、中国の父系の同族集団。同祖、同姓であり、祭祀を共通にし、同姓不婚の氏族外婚制をたてまえとするものです。同じく血縁でも母系は入らず、女系は排除されます。

したがっていわゆる親族のうちの一つであっても、親族そのものではありません。文献では前2世紀頃あるいは3世紀頃からみえます。同族を統率する1人の族長の支配下におかれ、族内の重要問題は、同族分派の各首長 (房長) らによる長老会議または族人による同族会議が召集され、協議決定されました。

宗族は往々集団をなして同族集落を構成し、その傾向は華中、華南に強く、1村をあげて同族であることも少くありませんでした。その場合、閉鎖的で排他性が強く、利害の衝突から集落相互間に争いを引起すこともありました。また同族結合の物的基礎として、共同の祖先を祀る宗祠設立のほか、義荘、祭田の設置、族譜 (宗譜) の編集なども行われました。

中国人にとって、今でも一族の利益、一族の繁栄はすべてであり、至高の価値なのです。それを守るためにはどんな悪事でも平気で働 くし、それを邪魔する者なら誰でも平気で殺してしまうのです。一族にとっては天下国家も公的権力もすべてが利用すべき道具であり、 社会と人民は所詮、一族の繁栄のために収奪の対象でしかないのです。

だから「究極のエゴイズム」を追い求め、一族の誰かが権力を握れば、それに群がり、もし失脚すれば、一族全員がその道連れ となって破滅するのです。

習近平も、正に宗族の論理によって突き動かされ、一族だけの利権を追 求し、一族だけが繁栄を究めているのです。

中国共産党は『宗族』を殲滅したのではなく、むしろ宗族の行動原理は生き残った上で、党の中国共産党政権自身を支配しているのです。中国における宗族制度の原理の生命力はそれほど堅忍不抜なものであり、宗族は永遠不滅なのです。

中国人は、現代日本人の感性や規範、道徳、しきたりとまったく異なる伝統を今でも保持しているのです。

いわゆる黒社会も、この宗族とは無縁ではないです。習近平の宗族は運良く、共産党を支配することができましたが、そうではない宗族で、これに反対したり、反対者とみなされる宗族が、黒社会を形成しているのです。

中国の黒社会

中国は昔から、そうして現在も宗族が中心となって、社会を構築してきました。こうした中国の本質にからみると、共産主義も、資本主義も、政府も、憲法も法律もいや国そのものですらどうでも良いことなのです。それらは、宗族が栄えるための道具にしか過ぎない魔です。一番重要なのは、自らから属する宗族なのです。

これは、華僑社会にもみられることです。中国から出て外国に行っても、宗族中心の社会を形成し、宗廟をつくるのが中国人なのです。

宗族は、共産主義になっても生き残りました。毛沢東は、宗族を潰すべく、荒っぽい農村改革に乗り出しましたが、それでは社会が機能しなくなるので、結局「人民公社」が宗族に取って代わっただけでした。

圏子(チェンズ)」と呼ばれる利益共有集団が構成され一族や内輪の繁栄のみが大事という伝統は脈々と続きます。習主席の腐敗キャンペーンも実は宗族同士の権力争い(械闘)に他ならないのです。つまり、宗族の原理が共産党政権を支配したのです。

今でも中国社会に息づく圏子

宗族のために生き、宗族のために働き、宗族のために死ぬのです。これが中国社会の本質であり、だからこそ、中国は現在先進国では当然とされている、国民国家とは程遠い組織であり、先進国では当たり前の、民主化、政治と経済の分離、法治国家化もできないのです。

そのため、先進国とは永遠に理解し合えることはないのです。台湾や「一国二制度」下の香港のように、宗族が互助組織のようなものとなり、実質的に政治と無関係になったような、国等とも理解しあえることもないのです。これを実現するためには、まずは宗族を廃止して、近代的な国民国家を設置しなければならないのです。しかし、そのようなことはできそうもありません。

習近平が目指しているのは、「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」などとは、全く関係なく、そのようなものは単なる道具にすぎず、習近平の属する「宗族」が、中国の支配階層なることです。

冷戦時代、2大強国として米国と並び立っているように見えたソ連邦は、実は異常に軍事と宇宙開発に費用をつぎ込んだ経済的にはボロボロの張り子の虎だということが、崩壊した後明らかになりました。

共産主義中国の鄧小平は、そのソ連の姿に自国の未来と恐怖を感じ、宗族間の争いに勝つことではなく強力に「改革・解放」を押し進めました。そのおかげで、中国は経済的に繁栄しソ連邦のような崩壊から逃れることができたのですが、習近平は「香港1国2制度破棄」し、毛沢東時代に戻る道を選びました。さらに、自らの宗族が中国の支配層になる道を選んだようです。

こうなると、習近平氏(中国共産党)には2つの道しか残されていません。

1) 毛沢東時代の「北朝鮮のような」貧しい鎖国をする国になる。ただし、習近平の属する宗族が、北朝鮮の「金王朝」が北朝鮮を支配しているように、中国の支配階層になる
2)従来のように国内で宗族間抗争を続けながら、国外では「人類の敵」として世界中の先進国から攻撃を受け滅亡する。

中国が、ここ数十年驚異的な発展を遂げることができたのは「改革開放」という資本主義・自由主義的政策を宗族社会の枠の中であっても採用したからです。そして、その宗族社会の中のささやかな自由の象徴が香港でした。そうして、「香港」でも台湾のように宗族は互助組織のような存在となり、政治的には力を持ちませんでした。

言ってみれば、宗族同士の権力闘争とは無縁の「改革・開放政策」が、中国大陸の中での「1国2制度」であったともいえるかもしれません。香港の1国2制度を破壊すれば、当然中国大陸の1国2制度である「改革開放」も死を迎えます。

「改革開放」が存在しない中国大陸は、宗族争いが激化し、習近平が宗族間の争いに勝利して、自らが属する宗族が中国の支配階階層となれば、北朝鮮と何ら変わりがないです。ただし、宗族の倫理からみれば、習近平のこの行動は正義なのです。

習近平氏の運が良ければ、北朝鮮のように貧しい国で宗族を支配階層とする王朝を築けるでしょうが、毛沢東時代と違って「自由と豊かさを知った」他宗族の中国人民を押さえつけるのは至難の技でしょう。

かなりの確率で、習近平政権は崩壊せざるを得ないでしょう。

日本人と中国人の顔は似ていますが、思考はまるで違います。外交でもビジネスでも、それを理解した上で対応しないと痛い目を見続けることになります。それは、宗族のような組織を過去に捨て去った西洋社会も同じことです。

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2021年10月7日木曜日

岸田首相に望む「アベノミクス」の徹底 緊縮財政に走らず、適切な分配政策で補完を―【私の論評】バブル当時の景気の良さを実現できるだけの潜在能力が日本経済にはある!それを令和日本で実現する鍵は「雇用」(゚д゚)!

岸田首相に望む「アベノミクス」の徹底 緊縮財政に走らず、適切な分配政策で補完を 
経済快説

経済政策が注目される岸田首相

 自民党総裁選で選出された岸田文雄氏が首相に就任した。同党の派閥と個々の議員の利害を考えると予想できる結果だったが、世論調査では支持率が高かった河野太郎氏に大差をつけた。

 河野氏は同僚である議員票が意外なまでに少なかった。日頃の「付き合い」や「面倒見」が悪かったのだろう。この結果を見て「社内の飲み会くらいは出た方がいいのかな」と思うサラリーマンがいるかもしれない。社内での出世がどれほど大切かは人によるだろうが、「社内の付き合いが悪い人は社長になれない」とは言えそうだ。

 岸田首相に望みたい政策は、読者にも数多くあるのではないか。しかし、今回は一つに絞る。岸田氏は、アベノミクスを分かりやすく継承・強化することを望みたい。

 今回の総裁選で岸田氏は、2%のインフレ目標を維持し、消費税を向こう10年間は上げない方針を述べた。いずれも、いわゆるアベノミクスを継承するものだ。しかし、昨年、菅義偉氏が選出された総裁選に挑んだ際の岸田氏はむしろアベノミクスの修正を唱えていた。

 アベノミクスの内容をどう定義するかが問題だが、(1)インフレ率2%を目指し、そのために(2)金融緩和政策を維持し、(3)金融緩和の後押しとして拡張的な財政政策を行い、こうした環境の下に、(4)規制緩和などの成長戦略を投入する経済政策だ。具体的には(2)(3)(4)の実施なのだが、特に(1)の条件が満たされるまで(2)(3)の施策を継続することが重要だ。

 今回の岸田氏の総裁選出に当たっては安倍晋三元首相の影響下にある自民党最大派閥の細田派の影響が大きかった。党役員や組閣にも同派への配慮が見られるので、安心していいのかもしれない。

 当面、財政を拡張することが金融緩和を後押しする構造になっているので、緊縮財政に傾かないことが重要だ。「財政再建の旗は降ろさない」といった無意味な念仏を唱えて増税を招かないことがまずは大切だ。

 やや長期的には2023年3月に予定されている日銀の正副総裁人事を、インフレ目標達成までの金融緩和政策の継続が確実視できるメンバーで行ってほしい。今や日銀の人事は、将来の金融政策を示唆する重要な「フォワード・ガイダンス」であり、重要な金融政策だ。

 岸田氏は、今回の総裁選で「分配政策」の重要性を訴えた。アベノミクスは分配政策を欠いた政策パッケージだったので、分配面の施策でこれを補完する方向性は適切だ。決して緊縮財政に走らずに、有効な再分配政策を実施してほしい。 (経済評論家・山崎元)

【私の論評】バブル当時の景気の良さを実現できるだけの潜在能力が日本経済にはある!それを令和日本で実現する鍵は「雇用」(゚д゚)!

岸田氏の主張する分配政策は、左翼政権がよく実施する政策なので、立憲民主党をはじめとする野党は岸田政権に対抗するのは難しいでしょう。立憲民主党が埋没せずに自己主張をするためには、さらに左よりになる必要があるのかもしません。そのせいでしょうか、最近の立民は共産党に接近しています。

なお、この分配政策はお隣韓国では、最低賃金をあげるという政策を実行しようとしましたが、金融緩和をせずに単純に最低賃金をあげてしまったので、雇用が激減して大失敗しました。

なぜ、このような失敗をするかというと、経済の中で一番重要なのは、雇用であることを認識していないからです。

この点に関しては、文在寅氏、枝野氏そうして、麻生氏、岸田総理も理解していないようです。

今回の総裁選で岸田氏は、2%のインフレ目標を維持すると語りました。そもそも、この考えが間違いです。インフレ目標の意味は他のところにあります。それは、雇用と密接に結びついています。

一方、麻生太郎氏は、4日の退任にあわせ、記者会見を開き、アベノミクスでデフレ脱却宣言を出せなかった理由について「(2014~15年の)原油価格の下落が大きかった」と説明し、当時、日銀の黒田東彦総裁に2%の物価安定目標の引き下げを打診したことを明らかにしました。

これも、大きな間違いです。物価目標とは、2%に達するためのものではなく、平たくというと金融緩和を加速すれば、インフレ傾向となり、雇用は改善されるのですが、ある時点をすぎると、雇用が伸びずにインフレだけが進んでいくことになります。そうならないようにするための、上限が2%ということです。

麻生氏も「雇用」こそが最も重要であるという認識が欠けているため、このような間違いを犯しているのだと思います。

これに関して、高橋洋一氏がYouTubeの動画でわかりやすく解説しています。その動画を以下に掲載します。


この動画をみると日銀は、「物価の安定」だけでなく、FRBのように「雇用の最大化」も目的とすべきということがよくわかります。高市さんは、全く正しいです。

バブルの問題は投機目的で不動産や一部の金融商品の価格が異常に上ったというだけで、マクロで見れば、一般物価はあがっておらず、理想的な経済状態だったのです。ということは、インフレを起こさず、バブル当時の景気の良さを実現できるだけの潜在能力が日本経済にはあることになります。

高橋洋一氏が、マクロ経済政策を解説する場合には、高橋氏が作られた以下のグラフを思い浮かべていただきたいと思います。このグラフは過去にこのブログでも何度か掲載しましたが、以下に再掲します。


このグラフについて、説明します。これは、元々は経験則から作成されたものですが、これはいずれの国の経済にも当てはまります。いずれの国もこのような形になります。まずは、インフレ率と失業率は逆相関になります。無論、NAIRUやインフレ目標はそれぞれの国によって違います。ただ、これらの値が違ったとしても、いずれの国でも上のグラフ通りの動きをします。

日銀はインフレ目標を2%としていますが、幅がある国も多いです。多くは目標プラスマイナス1%です。インフレ目標国は、このレンジに7割程度収まるのが通例です。

インフレ目標の数値自体は、失業率の下限であるNAIRU(インフレを加速しない失業率:ブログ管理人注:構造的失業率とも言われる。現状では2.5%程度と見積もられている)に対応するものとして設定されています。

インフレ目標の下限を設定するのはデフレを放置しないためです。そして上限は金融緩和で失業率を下げたいのですが、やりすぎて必要以上にインフレ率を高くしないように設定します。

マクロ政策のうち、財政政策は公的部門の有効需要へ直接働きかけるので即効性があるものの、持続性には欠けること、他方、金融政策は民間部門の有効需要へ実質金利を通じて働きかけるので、波及範囲は広いのですが、効果は即効的ではありませんが持続的であることを理解していれば、マクロ政策のほとんどは理解できます。

マクロ経済政策について重要なのは、このグラフが頭に入っていることが必要だと思いますが、雇用が他の何にも増して重要だという事実です。

雇用が悪ければ、他の指標が良くてもマクロ経済政策は失敗といえます。民主党政権のときのように、実質賃金が良くても、雇用が悪ければ落第です。実質賃金が多少低くても、雇用が良いほうが、マクロ経済政策としては良いです。

雇用が確保されていれば、他の指標が悪くても、いずれ改善していく可能性はありますが、雇用が悪くて他の指標が良くても、いずれ他の指標も悪くなります。

これは、常識的に考えてみても、わかります。実質賃金がかなり高くても、失業者が大勢いる社会は不安定です。GDPが伸びていても、輸出が伸びていても、失業率が高ければ、社会は安定しません。失業がより少ないほうが、より安定した社会になります。

そうして、雇用がよくなり続ければ、人手不足となり、企業は人を採用するために、賃金を上げざるを得なくなります。それでも、人手不足で、従来は労働力となっていなかった、就職を諦めていた人、女性・高齢者・身体障害者の人々も労働力とみなされるようになります。ブラック企業は存在の基盤を失います。

新総裁はこのあたりのことを理解していないようですが、安倍氏、高市氏などが理解しています。岸田氏が雇用を無視したり、雇用を悪化させるような政策をとりそうなときは、これを正していただきたいです。

マスコミもこれを理解しておらず、雇用というと日銀ではなく、厚生労働省に聞きに行くと動画で高橋洋一氏が、揶揄していましたが、マスコミに限らず、このように考える人が日本にはまだまだ多くいます。

民主党政権だったころに、あるハローワークの女性職員が、「課長が、私は雇用というものがよくわからない」と発言していたのを聞いて驚いたというような発言をネットでしていたのを覚えています。世間においては、このような見方をするのかもしれませんが、これは大きな間違いです。

ハローワークは雇用の創出はできない、職の仲介はできても、職そのものを増やすことはできない

この課長さんは、正直なのだと思います。厚生労働省の下部機関である、ハローワークの課長さんは、地元の雇用状況に関しては理解しているべきですが、雇用を創出することに関わることはできません。それができるのは、日銀です。

日銀が、2%インフレ率をあげると、他は何もしなくても日本なら数百万人分の雇用が他は何もせずともたちどころに生まれます。ただ、雇用が生まれただけでは、雇用のミスマッチが起こることもあります。これを是正するのが、厚生労働省であり、ハローワークなのです。無論これをやりすぎれば、先の述べたように、雇用は伸びず、インフレ率だけが上がるという結果を招くことになります。

厚生労働省は雇用に関してできることといえば、雇用統計をとりまとめることと、雇用のミスマッチを抑制できるくらいで、雇用そのものを主管しているわけではありません。雇用を主管しているのは本来日銀です。それが、世界の常識です。

しかし、これを周りの人に話したりすると、目を丸くして信じられないというような顔つきをする人が多いです。「金融と雇用」は関係ないと考える人が多いようですが、多いに関係あるるのです。それが世界の常識であり、それが常識になっていない日本は非常識です。

このことは、日本では総理大臣や元財務大臣でも知らないようですし、マスコミもほとんど理解していないようです。与野党の政治家も理解している人は少ないです。

このような有様では、いくら安倍元総理や高市早苗氏がこれを理解していて、総理がマクロ政策を間違いそうになってもそれを正すのは難しいかもしれません。

しかし、私達にもできることはあります。一人でも多くの人が、これを理解してマクロ経済政策に関する正しい世論を形成することです。そうして、それはさほど難しいことではありません。とにかく経済においては何をさておいても、「雇用」が何もよりも重要だという世論を形成すれば良いのです。これに、真っ向から意義を唱える人はあまりいないでしょう。

そうして、バブル崩壊から数十年という長い年月、高橋洋一をはじめとする、まともなエコノミストが、努力してきたおかげて、数十年前とは随分状況が変わっています。雇用の重要性への認識は、従来からみればかなり高まっています。

先程も述べたように、バブル当時の景気の良さを実現できるだけの潜在能力が日本経済にはあるのです。私達は、コロナによる経済悪化から回復だけではなく、あの当時の経済の水準にまで景気が良くなるまで、景気が良くなっても賃金が上がるまで「雇用が重要だ」と言い続けるべきなのです。その後も、「雇用が重要だ」と言い続けて、多くの政治家やマスコミの認識を変えてしまうべきなのです。そうなれば、日本経済も良くなります。雇用こそ、あらゆる経済局面において、最も重視されなければならなのです。

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2021年10月6日水曜日

ラテンアメリカの動向で注視すべき中国の存在―【私の論評】日本も本格的に、対中国制裁に踏み切れる機運が高まってきた(゚д゚)!

ラテンアメリカの動向で注視すべき中国の存在

岡崎研究所

 9月18日、ラテンアメリカ・カリブ共同体(CELAC)の第6回首脳会合がメキシコシティーで開催された。CELACは、元々、ベネズエラのユーゴ・チャベスが主導して、キューバを排除している米州機構(OAS)に対抗して、米国とカナダを排除したラテンアメリカとカリブの共同体として2011年に結成されたものであった。ラテンアメリカ諸国間の分裂により17年の第5回首脳会議以来4年振りの首脳会議であった。


 この間、対ベネズエラ制裁やボリビア大統領選挙などについて、米国がOASを政治的圧力の手段として用いることや、米国寄りのアルマグロ事務局長に対する左派側の反発もあり、議長国であるロペス・オブラドール(メキシコ大統領)としては、4年振りの首脳会議において、OASの在り方の見直し、将来的には、CELACがその役割を代替していくといった方向性を打ち出すことを構想していた。

 キューバは、米国による経済封鎖解除を要求する機会として利用すべく、ディアスカネル大統領がメキシコ独立記念日の賓客として16日からメキシコに乗り込み、また、出席が予定されていなかったベネズエラのマドゥロー大統領もCELACが米国の対ベネズエラ制裁解除を決議することを期待してが急遽参加するというサプライズもあった。

 しかし、OASに関する問題を正式議題とすることにコロンビアが強硬に反対するなど諸国間の意見対立があり、恐らくは米国に対する配慮もあり、ロペス・オブラドールも当初の構想を断念し、最終宣言では、内政不干渉などが国際法の原則として抽象的に強調されただけでOASの見直しには言及は無く、CELACの活動拡充・強化の方針が確認されたにとどまった。

 米国のキューバに対する制裁措置の撤廃に関する特別宣言は採択されたが、同趣旨の決議は国連総会決議でも採択されており、ベネズエラに対する米国の制裁撤廃の特別宣言は話題とはならなかった。

 むしろ注目されたのは、議場における首脳間の辛辣な応酬であり、ラテンアメリカ諸国間の分断を改めて印象付けた。一つは、ウルグアイ及びパラグアイの首脳が、キューバ、ベネズエラ、ニカラグアにおける非民主主義的状況を批判したのに対しこれらの国が強く反発したこと、また、もう一つは、意外なことにニカラグアがアルゼンチンが内政干渉したとして強く非難し、同国が次回議長国に就任することに唯一反対したという事態である。これは、ニカラグアのオルテガ政権が逮捕、投獄した野党指導者の解放を求める国連人権高等弁務官(バチュレ前チリ大統領)の報告書をアルゼンチンが支持したことが理由のようである。

 したがって、左派諸国を中心にCELACが結束して米国に対抗し、あるいは、米国に圧力をかけるどころではなかったわけである。また、メキシコには、米国との特別な関係があり、原油を武器にカリブ諸国などを取り込んだかつてのベネズエラのような資金力がある訳でもなく、左派ラテンアメリカ諸国の盟主として米国と正面から対立することは元々無理なのだと言えよう。

習近平がビデオメッセージで参加

 ラテンアメリカ諸国の左派政権の動向の懸念を指摘するとすれば、むしろ、チリ、コロンビア、ブラジルに左派政権ができることであるように思われる。CELAC発足時との大きな違いは中国の存在である。

 中国は、2015年に中国・CELAC閣僚会議を北京で開催し、今回のサミットでも習近平のビデオメッセージで参加した。中国はその資金力を背景にCELACを対ラテンアメリカ外交の1つのツールとして位置付けている。特にブラジルにルーラ政権が復活しCELACに復帰するようなこととなれば、雰囲気はかなり変わってくる可能性もあろう。

【私の論評】日本も対中国制裁で中国の世界中の国々への浸透を阻止すべき(゚д゚)!

「今、米国と世界は、中国の共産主義に立ち向かわなければ、南米を失うだろう」

中国共産党政府は、ここ数十年南米で密かにプレゼンスを高めてきている。

フジモリ政権で外務大臣を務めたフランシスコ・トゥデラ氏は、スティーブン・バノンのポッド・キャストの人気番組「ウォー・ルーム」で語りました。

スティーブン・バノン氏

以下に抜粋を掲載します。
決選投票で、ケイコ・フジモリ氏にごく僅差で勝利した急進左派政党「自由ペルー党」のペドロ・カスティージョ候補は、7月28日に大統領就任を宣言した。フジモリ氏は、「いくつかの重要な選挙区で不正があった」と証言に基づいて抗議をしたが、最終的に選挙結果を受け入れた。
これに対してアルベルト・フジモリ元大統領の外務大臣を務めたフランシスコ・トゥデラ氏はバノンのインタビューで、以下のように語った。
「もし、今米国と世界が立ち上がらなければ中国共産党が南米を占拠するだろう。」

米国の南北大陸の中国共産党によるマルクス主義化は、南米をステップとして準備されてきた。
現在のペルー憲法は、自由経済を認める民主と自由主義を認めている。
しかし、この新政権は、カスティージョ氏は否定しているが、共産党政権だ。同党の書記長は、「我々はマルクス、レーニン、毛沢東主義者だ」と認めている。
この社会主義者政権は、自由主義憲法を社会主義憲法へと改変を狙っている。そのために、議員の半数だけは選挙で選出され、残りの半数は自分たちの指名した議員にして、有効な選挙が行われない制度を確定させようとしている。 
ペルーで、ついに完全な全体主義の政権が誕生した。 
彼らは全ては「人民のため」という名目で、全ての彼らの政策を正当化しようとしている。 
彼らのやり方は、多くの経済的混乱を作り出し、争いを人々の間に起こし、人々を分断し、自らが権力に永久にとどまれるような制度に法律を変えている。 
彼らは、民主主義という名前を一応は語るが、たった一つの目的は、憲法の改変と議会を使っての一党独裁政治だ。 
なぜこのようなことが起きたのか? 最大の罪はメディアにある。 メディアがこれらの事実を「報道しない」ことを続けてきたからだ。 
「ペルーの天然資源の63%は中国に買収された」ペルーは天然資源の豊かな国だ。
しかし、数十年前から、中共政府は天然資源鉱山を密かに買い占めていった。中共政府は最初は「経済支援」のようなフリをして入ってくる。中国商業銀行など既に170社の中国企業が進出している。 
中国資本は、ペルーの63%の天然資源を既に買収した。特に銅(世界最大の埋蔵量と言われる)と鉄を中心にして、既に大半が中国に買収されている。 
彼らは、その次には港を押さえにかかった。最初の商業用港を押さえた。 
リマからも近い1マイルの幅を持つ大きな港だ。ここはペルー発展の鍵となると中国政府は語って貸借を進めた。
フランシスコ・トゥデラ氏

 不正選挙はどのように起きたかとの質問に対して、フランシスコ・トゥデラ氏は次のように答えています。

中国政府は、最初文化面から侵入する。それも20年間かけて、大学や高校などの学校の教科書の歴史や事実を意図的に変えてきた。共産主義ドクトリンを時間をかけて広めてきた。
そして、社会主義の影響下にあるマスコミは、自由を求める国民を貶め攻撃し、まるで愛国者を恥ずかしい存在であるかのような報道を続けた。メディアは、ペドロ・カスティーヨの対抗馬であったケイコ・フジモリを徹底的に攻撃した。
現在、南米では米国か中国政府か、どちらが大きな影響力を持っているのか、との質問には、以下のように答えています。
「既に中国が米国より遥かに大きな影響力を持っているのが現実だ。」と答えた。

 しかし、なぜ米国はこの事実を知らないのか?

それは、米国のメディアが「真実を報道しない」からだ。 
既に、アルゼンチン、ボリビア(リチウムが豊富なことで既に中共政府が浸透している)も同様に中国共産主義の侵入が激しい。 
ペドロ・カスティーヨはファアで公正な選挙で勝利していない。ペルー人の選挙後の統計で、75%は不正があったと統計で出ている。
私はこのトゥデラ氏の発言を聞いて、この共産主義者の進める原理は、新マルクス主義フランクフルト学派が教科書通りの侵略方法であると思いました。「教育機関」「メディア」「社会」に侵入するという基本を忠実に南米と米国でも行っていると感じました。

そうして、このペルーで過去起きていたことは、米国でも同様のことが起きており、昨年の大統領選挙、今年バイデン 政権が誕生してから次々と発表される社会主義政策と、社会主義者が民主党の枢要を担うところに既視感を感じました。

この老練なペルー外交官は、自らの国で起きたことが現在米国でも起きており、もし今立ち上がらなければ、その結果は破滅的な結果を招くだろうと警告しています。

1980年代中南米で、世界最大の埋蔵量を持つ石油資源を背景に最も豊かだったベネズエラは、共産主義マデューロ政権によって、現在ハイパーインフレから国民の90数%が最貧の状態まで追い込まれています。

1980年代、大勢の共産国キューバからベネズエラに亡命してきたキューバ人が共産主義の脅威をベネズエラ人に語ったのですが、ベネズエラ人はそれを信じませんでした。そんなことは自分たちの国で起こるわけはないと信じていたのです。

現在、ベネズエラは、水、食糧、薬という最低必要な生活必需品がほぼ入らないところまで追い込まれています。

しかし、これは米国や中南米だけの問題ではありません。同じことが日本でも既に起きています。

本日は、ZAKZAKに以下のような記事が掲載されていました。
日本の弱体化狙い「沖縄などで独立運動をあおっている」 仏軍事研究所「中国の影響力」報告書

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、一部を引用します。 

 IRSEMは仏国防省傘下の研究機関。報告書は「中国の影響力作戦」と題して、9月に発表された。約650ページあり、在外華人を使った共産党の宣伝工作、国際機関への浸透、インターネットの情報操作などの事例を分析している。
 沖縄への関与は、中国にとって「日本や在日米軍を妨害する」意味を持つと指摘。沖縄の一部住民には日本政府への複雑な気持ちが残り、米軍基地への反発も強いため、中国にとって利用しやすい環境にあるとした。中国が独立派を招いて学術交流を促したり、中国人が米軍基地近辺で不動産投資を進めるなどの動きがあると列記した。
 中国は独立派と同様に、「憲法9条改正への反対運動」「米軍基地への抗議運動」を支援しており、その背景には日本の防衛力拡大を阻止しようという狙いがあるとも指摘した。

このようなことは、すでに日本国内でも随分前から多くの人によって指摘されていたことですが、 フランスの軍事研究所という、日本とは直接利害関係のない機関が、このような報告書を公表したということで、改めて示された形です。

フランシスコ・トゥデラ氏は、「自らの国で起きたことが現在米国でも起きており、もし今立ち上がらなければ、その結果は破滅的な結果を招くだろう」と警告しています。

少し前の米国、特に民主党オバマ政権では、このようなことが進行しつつあったのは確かです。それを止めようとして登場したのがトランプ大統領です。トランプ氏は、昨年の大統領選挙では敗北しましたが、米国議会においては、共和党も民主党も中国に対抗する勢力があり、これが対中国制裁法案を議会に提出し、次々と成立しています。

これからもこの動きを止めることはできないでしょう。日本では、親中派の二階幹事長が自民党内で、大きな権力を持ち、つい最近の6月には、中国当局による新疆ウイグル自治区などでの人権弾圧を非難する国会決議案が通常国会で採択されなかったということが起こりました。これは、無論二階氏による妨害工作によるものです。

自民党の幹事長は、自民党に配布される政党助成金を配分する権限を持ち、これを傘にきて党内で強力な権力を誇示することができます。

親中派の二階幹事長は、3Aと呼ばれる、反中派の安倍・麻生・甘利氏との対決しなければならなくなりました。ただ、総裁選挙の前までは、互いを意識しながらも、穏やかな対立に終始していました。

それは、何といっても総裁選の後に控える衆院選を意識したからでしょう。あの時点で、両者の争いが表面化してしまえば、衆院選に悪影響を与えるのは必至でした。

しかし、総裁選に菅総理が出馬しないことを表明した後には、状況が全く異なることになりました。総裁選を通じて、両者の争いが先鋭化したのです。総裁選は、3Aが協力した岸田氏が勝利しました。

そうして、二階氏と3A対立も、3A側の勝利に終わり、二階派は現在退潮ムードにあります。岸田新政権においては、閣僚は、環境大臣と、経済安全保障担当大臣の2名のみです。そうして、何といっても、党内人事では、甘利氏が幹事長になったことが、3Aの大勝利を雄弁に物語っています。小石河連合は、安倍元総理の努力により、結局自民党内の多くの議員によって拒絶されました。

そうして、この対立は角福戦争のような大きな抗争になることなく終焉しました。これで、数の力の意味を知る自民党は最終的にはまとまり、衆院選を戦える状態になったと思います。自民党はこれで、次の衆院選で、少なくとも過半数を維持できる可能性が高まってきました。

岸田政権においては、安倍元総理が、これからもキャスティングボーダーとなり、様々なことに挑戦できます。安倍元総理は、総理だった時代より、より多くのことを成就できる機運が高まってきました。

これからは、日本でも欧米並に、甘利幹事長のもと自民党が中心となり、対中制裁法案が次々と提出され、議決される体制が整うでしょう。

これで、日本でも中国と、共産主義に対抗する、体制が整うことになるでしょう。

このブログでも何度か指摘したように、中国は軍事力を増強しつつあり、艦艇数などでは米国を上回るようにまでになりましたが、それでも、質的には劣っています。特に、日米に比較すると対潜戦闘力はかなり劣っているため、海戦では日米にまともに対峙することはできません。海戦においては、日本単独とでも、戦えば負けます。対峙して、軍事行動を起こせば、中国海軍は壊滅します。

軍事力では日米にかなわない中国は、今後ますます世界中の国々に対して浸透工作を強めていくでしょう。それに対抗するすべは日本でも整いつつあります。

日米およびその同盟国は、今こそ立ち上がり、中国の浸透工作をラテンアメリカも含む世界中で阻止すべきです。

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2021年10月5日火曜日

「悠然」から「策士」へ 岸田首相、不意打ち総選挙の“奇襲作戦” 「甘利氏が軍師として支え…人事も絶妙な配置」と識者―【私の論評】岸田総理面目躍如!総裁選で二階幹事長はずし、小石河連合潰し、選挙前倒しで小池「ファーストの会」潰し実現(゚д゚)!

「悠然」から「策士」へ 岸田首相、不意打ち総選挙の“奇襲作戦” 「甘利氏が軍師として支え…人事も絶妙な配置」と識者

記者会見を終えて降壇する岸田首相(左)と、官房長官や官房副長官ら=4日夜、首相官邸

 岸田文雄首相が、奇襲作戦に出た。次期衆院選の日程を、当初の想定より早めて、「19日公示-31日投開票」に一気に前倒したのだ。「衆院議員の空白」「新型コロナの現状」を理由に挙げたが、新政権発足直後の勢いのまま選挙戦に突入した方が有利と判断した面もありそうだ。岸田氏は従来、悠然とした雰囲気だったが、先の総裁選以降、「二階俊博幹事長外し」や「河野太郎氏潰し」などでも、策士の一面を見せつけている。

 「衆院議員の空白を、できるだけ短くしなければいけないのは当然だ」「国民に判断をいただくのだから、コロナの現状も念頭に置いた」

 岸田氏は4日の就任会見で、衆院選の日程について、こう語った。衆院議員の任期は21日までであり、大きく減ったコロナの新規感染者数を見ると、確かに一理ある。

 ただ、政権発足直後は「ご祝儀相場」という支持率上昇が期待できる。一方、コロナの感染者が増えれば、支持率は下落しかねない。野党が選挙準備を終えていないのを狙った動きともいえる。

 岸田氏は党内で「お公家集団」と呼ばれる宏池会(岸田派)を率いて、「永田町で一番、人柄が良い」(ベテラン秘書)と言われてきた。

 ところが、8月末の総裁選出馬会見で、党役員の任期を「1期1年、3期まで」という党改革案を打ち出し、イメージを変えた。5年以上、党の人事とカネを握ってきた「二階幹事長の交代」を求めたもので、菅義偉首相も同調せざるを得なくなり、菅首相退陣につながった。

 総裁選でも、河野氏が「年金制度改革」を打ち出したところ、岸田氏は「消費税が何%上がるのか、はっきり答えてほしい」と迫った。河野氏は「大増税批判」を受けて、白紙撤回を余儀なくされた。最後は岸田氏に大敗し、党広報本部長という格落ちポストに追い込まれた。

 政治評論家の伊藤達美氏は「岸田氏は昨年秋の総裁選で敗退後、『もう後はない』と一念発起した。甘利明氏が軍師として支え、中堅・若手が知恵を出してきた。岸田氏自身も大きく変わった。人事も絶妙な配置で、したたかだった」と語っている。

【私の論評】岸田総理面目躍如!総裁選で二階幹事長はずし、小石河連合潰し、選挙前倒しで小池「ファーストの会」潰し実現(゚д゚)!

上の記事では、触れられていませんが、第100代の総理大臣による、岸田政権は超短期政権になります。現在の岸田政権は、次の衆院選が終了するまでの間だけに、成立する政権です。

次の選挙では、よほどのことがない限り自公が勝利し、岸田氏が総理大臣になるでしょうが、そうなっても101代総理大臣になり、甘利幹事長などの党内人事は変わることはないでしょうが、新たに組閣することになります。

そのため、現在の岸田内閣を評価することはできません。本当の評価は、次の選挙後の評価ということになります。これに関しては、高橋洋一氏が理解しやすく動画で解説しています。その動画を以下に掲載します。


ただし、選挙後も党内人事はそのままでしょう。この人事は先日も述べたようにように、3Aの一画である、甘利氏を幹事長に据えたということは評価できると思います。

そうして、上の記事にも高橋洋一の動画にもありませんでしたが、今回の不意打ち総選挙でもっとも割をくった人のことが掲載されていないので、ここに掲載しようと思います。

それは、現在の東京都知事の小池百合子氏です。

小池百合子東京都知事

小池都知事が特別顧問を務める都民ファーストの会(都ファ)が立ち上げた国政新党「ファーストの会」。3日、結党会見を開いたばかりなのに、岸田新首相の“奇策”によって前途多難のスタートを強いられています。

次期衆院選は既定路線の「10月26日公示、11月7日投開票」を念頭に、誰もが準備を進めていたでしょう。しかし、岸田首相はいきなり選挙日程を丸1週間前倒しました。公示日、投開票日ともに仏滅です。さらには、上の高橋洋一氏の動画にもあるように、岸田総理がG20に参加しないということもあり、誰もが「まさか」と思ったことでしょう。

その割をおそらく最も食ったのは、小池知事の顔がチラつくファーストの会でしょう。なにしろ、今月3日、地域政党「都民ファーストの会」は、国政新党として「ファーストの会」を設立すると発表したばかりです。ただし、特別顧問を務める小池百合子都知事は次期衆院選に出馬しないとのことでした。

結党と同時に都ファ公式サイトで始めた候補者公募の締め切りを今月17日に設定したのですが、たった2日後に衆院選が公示され、選挙戦に突入するハメになるのです。

これでは、ただでさえ、準備不足の上、選挙前倒しでこの選挙日程は「ファーストの会」は絶望的です。公募で新人候補を選んでも、ポスターの印刷さえ間に合わないでしょう。とても“台風の目”にはなり得ません。

結党会見で代表の荒木千陽都議

結党会見で代表の荒木千陽都議は「東京の25選挙区はすべて(候補を)立てたい」と豪語しました。その願望をかなえるには荒木都議以下、都ファ都議の大半を擁立するしかないでしょう。

そんなことをすれば党内でも「執行部は節操がない」と国政進出に疑問の声が上がる中、都政は大混乱。小池知事の政治生命すら危うくなるでしょう。

もともと特別顧問を務める小池百合子都知事は次期衆院選に出馬しないと、表明していましたが、小池氏のことですから、当然マスコミなどで、風が大きく吹けば出馬したかもしれません。出馬しないまでも、出馬する日まで、選挙応援やその後に続く様々な活動でマスコミの話題をさらい、大きな風を維持しようとしたのでしょうが、その目論見は潰えたといえます。

どうやら小池知事の出る幕ないでしょう。新党騒動はほぼ1日で終焉しそうです。荒木都議は「選挙目当てに『左旋回』を強めていく野党に強い危機感を持って立ち上がった」と語っていました。

ただ、これでは右から左まで守備範囲の広い、自民党には太刀打ちできないでしょう。「ファーストの会」ならでの、コンセプトを打ち出すべきでした。「ファーストの会」は、一人も当選しないかもしれません。

これから、小池知事が国政に打って出て、台風の目になることはないかもしれません。

岸田総理は、この短期間で総裁選で、二階幹事長はずし、小石河連合潰しを、そうして今回の選挙前倒しで、実質的な「ファーストの会」潰しを実現してしまったのです。まさに、面目躍如です。

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2021年10月4日月曜日

河野太郎は「小石」に躓き、「中庸」岸田が新総理へ…野党が「やりづらい」と感じるワケ―【私の論評】安倍元総理、総理時代よりより多くのことを成し得る機運が高まってきた(゚д゚)!

河野太郎は「小石」に躓き、「中庸」岸田が新総理へ…野党が「やりづらい」と感じるワケ


 拒絶された「小石河連合」

9月29日、自民党新総裁として岸田文雄氏が選出された。岸田氏の他に、河野氏、高市氏、野田氏が争った自民党総裁選は、1回目投票で、岸田氏は国会議員票146、党員党友票110の計256、河野氏はそれぞれ86、169の計255、高市氏はそれぞれ114、74の計188、野田氏はそれぞれ34、29の計63。決選投票は、岸田氏はそれぞれ249、8の計257、河野氏はそれぞれ131、39の計170だった。

事実上3候補の三つ巴戦だったが、政治的な立ち位置は、岸田氏が中庸、河野氏はやや左、高市氏はやや右だ。

小石河連合

 党員党友の票数が物語るように、河野氏の人気が高かった。一方、国会議員票では、岸田氏が優勢だった。

 菅首相が総裁選に出馬しないことがわかると、岸田氏と河野氏が出馬に意欲を出した。この二人の戦いになれば、河野氏の優位は否めない。そこに、高市が安倍氏の働きかけで出馬した。安倍氏の応援の威力はすさまじく、保守系を中心として高市氏は支持を集めていった。

  1回目の国会議員票を事前の予想と比較してみると、岸田氏は5票程度多く、河野氏は35票程度少なく、高市氏は15票程度多く、野田氏は15票程度多い。 

 それは河野氏の戦略ミスが大きいのだろう。一つは、政策で消費税による最低年金構想を話したことだ。これは民主党が主張したが実現できなかったものと類似していた。まもなく事実上の撤回に追い込まれた。 

 もう一つは、政局がらみだ。「小石河」連合と言われ、国民的な人気のある小泉進次郎氏と石破茂氏が河野陣営に入った。これに、多くの保守系関係者は拒絶反応を示した。筆者流に言えば、河野氏は「小石」につまずいた。  こうして、中庸の岸田氏が自民党総裁になった。

 細田派・麻生派への配慮が濃厚

(注)10月3日のNHK速報ベース

 岸田政権は、自民党内派閥では1991-93年の宮澤政権以来の宏池会の政権誕生だ。宏池会は、池田勇人元首相が作った派閥で官僚出身者が多い名門派閥だ。歴代会長から、池田勇人、大平正芳、鈴木善幸、宮澤喜一、そして今回の岸田文雄各氏が首相になった。このうち池田、大平、宮澤氏は財務(大蔵)官僚出身だ。

  宏池会は、官僚出身が多く政策には強いが政局に弱いので公家集団とも言われてきた。伝統的に対米協調でハト派的だ。対中姿勢は、経済重視であるので、これまで摩擦は少なかった。

  岸田文雄氏は、華麗なる「政治家・官僚家系」だ。父の岸田文武氏は、通産官僚出身の元衆議院議員。長女、次女の夫は元財務官僚。叔父の岸田俊輔氏は、大蔵官僚出身で元広島銀行頭取だ。元首相の宮澤喜一氏を叔父とする宮澤洋一氏は、大蔵官僚出身で参議院議員で、岸田文雄氏の従兄弟である。

  今回の自民党総裁選でも、岸田氏の回りには、ブレーンとして宏池会の山本幸三、木原誠二、村井英樹氏らがいたが、彼らはいずれも大蔵(財務)官僚出身の政治家だ。筆者にはなじみの人ばかりがいる。

  岸田自民党総裁は、本日10月4日に召集された国会で首班指名され、同日中に組閣する予定だ。

  本稿を書いているときには、NHKのニュース速報で新内閣の陣容はでている。それに基づけば、岸田新内閣は、目玉やサプライズの乏しい「暫定内閣」のようだ。

  新内閣で首相を除く閣僚20名を出身派閥で分けると、岸田3、細田4、麻生3、竹下4、二階2、無所属3、公明1。正直言って聞き慣れない名前が多いと思っていたら、初入閣者は13名。出身派閥でみると、細田派と麻生派への配慮は否めない。

 まるで左派政党のスローガン

 今国会では、所信表明と代表質問だけを行い、その後に解散するというと見込まれている。その意味で、初入閣でも国会答弁をすることもないので、党主導で衆院選を戦うだけの「暫定政権」ともいえる。

 組閣で、安倍晋三、麻生太郎氏に配慮し、党幹事長に甘利明氏がいるので、この3A(安倍、麻生、甘利各市)が岸田政権へ大きな影響力を持っているといえる。

 そうした意味では、内政も外政も、安倍政権とそれほど大きな変更はないだろう。まさに、「安定」の岸田政権の真骨頂だ。それは、初入閣以外の大臣とその出身派閥をみるとわかる。財務大臣は鈴木俊一(麻生)、外務大臣は留任の茂木敏充(竹下)、経産大臣は横滑りの萩生田光一(細田)、国交大臣は斉藤鉄夫(公明)、防衛大臣は岸信夫(細田)、官房長官は松野博一(細田)、少子化担当大臣は野田聖子(無)。政治的な任用である国交大臣と少子化担当大臣を除くと、財務、外務、経産、防衛、官房長官という重要ポストに経験者をあて、そのほかは初入閣なのだ。

 これの組閣人事の意味するところは、11月にも予定されている衆院選に自民党として全力で対応するが、新内閣での仕事は最低限にとどめ、選挙結果では再び組閣する構えなのだろう。

 おそらく、先ほどの自民党総裁選で、議論を戦わせた高市氏らが各地の選挙戦に応援演説でかり出されるのだろう。  

 岸田氏は、小泉改革以降の新自由主義政策を転換するとし、分配を重視すると自民党総裁選で主張した。

 ここだけ聞いていると、まるで左派政党のスローガンのようだ。

 実際には、自民党なので、現状からの差異は必ずしも大きくない。当面の経済政策を考えると、菅政権の下で来年度概算要求は作られ、既に予算編成作業が行われている。

 もっとリアルな議論を

 甘利幹事長は、総選挙後に補正予算を出すと明言している。岸田氏は筆者との対談においても数十兆円規模の大型景気対策が必要との見解を述べていた。こうした中では、ブレーンとして財務省関係者が多くても、経済政策の幅は限られる。

 もっとも、岸田氏は、「補正予算」とは言わずに「経済対策」と表現していた。元財務官僚からみれば、既存の予算の未消化分なのを活用し、いわゆる「真水」を少なくして、小さな「補正予算」で数十兆円の「経済対策」を作るのは比較的容易だ。

 しかし、当面大規模な増税はやりにくいだろう。まして、11月にも総選挙を控えているという事情もあり、岸田氏も消費増税を当面考えないとしている。あるとすれば、例年行われる税制改正大綱の中での、金融所得課での増税策だろう。実際に市場は既に警戒している。

 野党としてどう対処するのか。リベラル色としては似通ってくるのでやりにくいだろう。

 立憲民主党は、さらにリベラル色を強めるために、所得1000万円以上無税、5%への消費減税を言い出した。その財源として金持ち所得税増税、大企業法人税増税だ。これは30兆円近い大増税になるので、とても経済がもたないだろう。まるで、政権を取る気がない共産主義スローガンのようだ。

 安全保障では憲法9条さえ言えば日本が守れるという「お花畑論」だったが、経済政策まで、金持ち大企業への大増税という、現実無視の「夢物語」になってしまった。

 野党に求められるのは、安全保障も経済ももっとリアルな議論である。リアルな議論にならないと、政権交代なんて誰も思わないし、何しろ政策議論に国民がそっぽを向いてしまい、国民への選択肢にならない。

髙橋 洋一(経済学者)

【私の論評】安倍元総理、総理時代よりより多くのことを成し得る機運が高まってきた(゚д゚)!


自民党の歴史には、大小含めてさまざまな権力闘争がありました。「角福戦争」「四十日抗争」など、今も語り継がれる熾烈な戦いも少なくないです。近年の安倍1強時代は安倍氏に表だって楯突く人もおらず、深刻な党内のもめごとはほとんどありませんでした。

現在の政局にも影響を及ぼす「角福戦争」

これまでの歴史を見ると長期政権の後は短命政権が続いています。事実菅政権は、短命政権に終わりました。ただ岸田政権には「貯金」と「お土産」があります。

「貯金」は安倍元首相が残した「雇用の改善」と「国政選挙6連勝」です。このおかげで衆参ともに自公で過半数をがっちり確保しており、一度の選挙で多少負けても毎年の予算は通ります。

こうした「貯金」を築いた安倍元首相に表だって反旗を翻せる人等誰もいませんでした。

だから短命になりにくいでしょう。政権が長く続くと成果も出ます。

「お土産」は退陣する菅首相からもあり、ワクチン接種を強力に進めたおかげでコロナは終息しつつありますし、先にも述べたように、コロナで雇用が激減することもなく、菅政権下で東京オリパラも開催してもオリパラが感染を加速することもなく終えたので、国内では大きな懸案事項もありません。安倍・菅路線を継承すれば、大やけどすることもないでしょう。

ただ菅政権の支持率が低下してから、3Aとも称される安倍元総理やその盟友麻生氏、そうしてこれに使い甘利氏と、こわもて現職幹事長の二階幹事長によるまぎれもない権力闘争が勃発したようです。


二階議連(「自由で開かれたインド太平洋」推進議連)では、3A、二階氏双方に軸足を置く格好となっている安倍氏が1人、元気でした。首相を辞め自由に発言する機会が増える中、「周囲が安倍氏の活動を支援するため」ともいわれるほどの議員連盟乱立で、最高顧問などの立場で前面に登場しました。

首相時代と違ってよほどのテーマでよほどの失言でもしない限り、明確な責任は生じないこともあり、一方で「3A」の1人として物事を動かす可能性がある立場=キャスティングボーダーになっているように見えました。そうして、前首相ながら、3Aと二階氏の対立という生々しい権力抗争のさなかにいたといえます。

対立や分裂を繰り返す野党とは異なり、数の力の意味を知る自民党は最終的にはまとまるのが文化です。3Aと二階氏の対立の動きは、自民党総裁選や衆院解散・総選挙が行われる今年秋に向けて、新しい政局的な流れを生むことになりそうな気配になっていました。

この対立は、菅総理が総裁選に出馬しないことを公表したことにより、すべてが白紙状態となり、総裁選で一気に表面化しました。そうして、この対立とは別に、小石河連合の動きがありましたが、これは安倍一強に不満をいだいていた一派の動きの一つでしょう。

菅政権が安定していなかったときには、表面化しなかったものが、菅政権の支持率が低迷し、菅総理が出馬しない、総裁選のガラガラポンで一気に表面化したものでしょう。

二階氏と3A対立は、3A側の勝利に終わり、二階派現在退潮ムードにあります。岸田新政権においては、閣僚は、環境大臣と、経済安全保障担当大臣の2名のみです。そうして、何といっても、党内人事では、甘利氏が幹事長になったことが、3Aの大勝利を雄弁に物語っています。小石河連合は、安倍元総理の努力により、結局自民党内の多くの議員によって拒絶されました。

そうして、この対立は角福戦争のような大きな抗争になることなく終焉しました。一歩間違えば、そうなった可能性もあります。これは、岸田政権にとっても良いことだと思います。3A、二階対立が長引けば、小石河連合が息を吹き替えしたり、そうではなくても似たような動きもでたかもしれません。岸田政権は難しい政権運営を迫られたはずです。しかし、このような動きは、見事封じられました。

これで、数の力の意味を知る自民党は最終的にはまとまり、衆院選を戦える状態になったと思います。自民党はこれで、次の衆院選で、少なくとも過半数を維持できる可能性が高まってきました。

岸田氏は先月8日の産経新聞のインタビューで、総裁任期中に憲法改正を目指すと強調。皇位継承は「『女系天皇』以外の方法で考えるべきだ」と明言しました。安全保障分野では弾道ミサイルを相手領域内で阻止する「敵基地攻撃能力」の保有を主張し、安倍氏と歩調を合わせていました。

岸田政権においては、安倍元総理が、これからもキャスティングボーダーとなり、様々なことに挑戦できます。安倍元総理は、総理だった時代より、より多くのことを成就できる機運が高まってきました。

安倍元総理、第一次政権が崩壊した後には、不死鳥のように蘇り長期政権を実現し、その後今度は自ら引退し現在はキャステングボードを握りました。只者ではありません。

「現行憲法の自主的改正」は結党以来の党是であり、安倍元総理の長年にわたる宿願でもあります。是非とも実現していただきたいものです。

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2021年10月3日日曜日

甘利幹事長人事が持つ外交安全保障上の意味―【私の論評】間もなく日本でも欧米先進国と同じように、対中国制裁法案ラッシュが始まる(゚д゚)!

甘利幹事長人事が持つ外交安全保障上の意味


<幹事長の席に誰が座るのかは、日本政府の対外政策・国内政策の全てに影響を与えることになる>

岸田文雄新総裁・新総理が誕生し、党役員人事及び組閣が進んでいる。今回の人事で日本の行く末を左右する最も重要な人事は自民党幹事長だ。

自民党幹事長は党公認権や政党助成金の扱いに関して絶大な権限を持つ。したがって、幹事長の席に誰が座るのかは、日本政府の対外政策・国内政策の全てに影響を与えることになる。

 親中派として揶揄されてきた二階氏

日本の財界が自民党を支持していることは自明だ。そして、自民党幹事長が財界の意向を踏まえた意識決定を行うことは当然のことと言える。巨大な中国市場で鎬を削っている日本企業が反中姿勢を取ることは考え難く、米中対立が激化していく中、自民党幹事長は中国との適度な協力関係を維持する困難な仕事が求められてきた。

2016年から幹事長ポストは二階俊博議員によって長期間独占されてきた。二階氏は自民党幹事長に求められる役割をこなしてきた人物であり、それ故に同氏は親中派として揶揄される立場に置かれていたと言えるだろう。ただし、安倍政権時代のように官邸の保守色が強い場合、二階氏による党運営が対中政策でバランスを取ることは必然であったように思う。

 甘利新幹事長、日本の未来を変える出来事となる可能性

岸田総理の誕生によって、この幹事長ポストが二階氏から甘利明氏に受け渡されることになった。これは単なる権力の入れ替えというだけでなく、日中関係などに多大な影響をもたらすことになり、日本の未来を変える出来事となる可能性がある。

岸田総理は必ずしも対中姿勢で強い姿勢を取ってきた人物とは言えない。総裁選挙中に、岸田総理は中国の人権問題に対して強気の姿勢を示す発言をしていたが、言葉に真実味を帯びさせるだけの政治的の裏付けは十分ではない。

一方、甘利幹事長は自民党における経済安全保障の第一人者である。同氏は自民党で経済安全保障政策を主導する「ルール形成戦略議員連盟」会長として、対中サプライチェーンの見直しなどを積極的に打ち出してきた人物だ。同連盟は2017年に設立されて以来、感情的な反中議論ではなく、対中国を念頭に貿易・投資に関する法案策定や国際機関人事での競争力強化などを打ち出し、冷静かつ理知的に日本が国際社会でリーダーシップを発揮する動きを推し進めている。

甘利幹事長の誕生は経済安全保障議論を急速に加速させる可能性があり、日本が同盟国・友好国に対して同分野で主導権を発揮する動きが活発化になるだろう。財界の意向を考慮しつつも、安全保障上の観点から現実的な政策が党から打ち出されていくものと思う。

 今後は党側からの経済安全保障の政策提言の重みが増す

また、対中世論を喚起するため、保守強硬派からの支持が厚い高市早苗氏が政調会長ポストについたことから、自民党内の対中融和を求める声が大きく後退することは自明だ。この面でも党内に対中強硬政策を止める要素は減少していくことになる。

したがって、安倍・菅政権時代と異なり、岸田政権では日米同盟を基軸とすることは当然として、官邸は中国をある程度安心させながら、党が対中強硬策を主導する形に転換する形となると筆者は予測している。

そして、安倍・菅時代は日本の安全保障政策の方向性を見極めるためには主に官邸の動きを追うことが重要であった。外交安全保障上の重要な方針のフレームワークは官邸側から打ち出されてきたが、今後は党側からの経済安全保障の政策提言の重みが増す形となるだろう。

我々は頭のスイッチを切り替えて、日本の外交安全保障政策の政策形成過程の枠組みを捉え直す必要がある。今回の幹事長人事が意味する外交安全保障上の変化のシグナルを敏感に感じ取ることは、日本の未来を考える上で極めて重要なことだ。

【私の論評】間もなく日本でも欧米先進国と同じように、対中国制裁法案ラッシュが始まる(゚д゚)!

甘利氏が幹事長になったのは、要は的を射たまともな『経済安保を実施するための内閣と党の布陣』であり、日本の生き残り戦略のための政策を実行する政府与党をつくるための布陣です。 今まで何がそれを阻害してきたのか、その阻害をなくするには、どうすればよいのかを検討した結果による当然の帰結であるとみるべきです。

これが理解できなければ、上の記事にあるように、新政権の日本の外交安全保障政策の政策形成過程の枠組みを捉え直すことはできないでしょう。

今回の党内人事、最終決裁は無論岸田総裁ですが、岸田氏は、総裁選選挙の協力に答えるかたちで、安倍氏、麻生氏、甘利氏等にも打診し、無論すべてが彼らの思い通りになるはずもないですが、少なくとも許容の範囲であるということで、承諾したものとみなすべきです。


自民党甘利明幹事長は3日午前、フジテレビ番組に出演し、4日に発足する岸田文雄新政権が新設する「経済安全保障担当相」について「全省庁に対して指示が出せるポジションになる必要がある。経済インテリジェンスを含め、すべてに関与できる仕組みにすべきだ」と述べ、外交・安保の司令塔を担う国家安全保障局(NSS)も所管させる考えを示しました。

岸田総裁は、4日に発足させる新内閣で、新たに設ける経済安全保障を担当する大臣に二階派の小林鷹之氏を起用する意向を固めました。小林氏は初めての入閣です。

小林鷹之氏

小林氏は、衆議院千葉2区選出の当選3回で46歳。

自民党二階派に所属しています。

岸田総裁と同じ開成高校の出身で、財務省の職員を経て、平成24年の衆議院選挙で初当選し、これまでに防衛政務官などを務めています。

小林氏は、自民党の戦略本部で、座長を務めた甘利幹事長のもと、経済安全保障に関する法整備の必要性を盛り込んだ提言の取りまとめに当たりました。

岸田総裁としては、小林氏の高い実務能力を評価して、意欲を示す経済安全保障に関する法整備にあたらせるとともに、当選3回の小林氏を抜てきして、若手議員登用の象徴としたいねらいもあるとみられます。

二階氏

米国では、議会主導で議員による中国に対峙する法案が提出され、続々と成立してきましたが、日本でも二階院政が外れて、幹事長が甘利氏になり、自民党主導で様々な対中国法案が出されることになるでしょう。

岸田内閣の来年通常国会の目玉は「経済安全保障包括法案」と「人権問題」 つまり、甘利氏の経済安全保障包括法案(事実上対中国)とウイグル香港問題への対処日本版の「グローバルマグニツキー法」の成立ということになりそうです。

これを皮切りに、日本でも欧米先進国と同じように、対中国制裁法案ラッシュが始まることでしょう。

そうして、これは民意に沿っています。何しろ、昨年の米国ピュー・リサーチ・センターの調査では日本人の89%が中国に対してネガティブなイメージを持っていることが明らかになっています。

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2021年10月2日土曜日

【日本の解き方】菅首相1年間の大きな功績 懸案を次々処理した「仕事師内閣」、対韓国でも厳しい姿勢貫く―【私の論評】新政権は、雇用の維持、迅速な鉄の三角形対策ができる体制を整えれば、長期安定政権となる(゚д゚)!

【日本の解き方】菅首相1年間の大きな功績 懸案を次々処理した「仕事師内閣」、対韓国でも厳しい姿勢貫く

退任することが決まった菅首相

 19都道府県に発令されていた新型コロナウイルス緊急事態宣言と8県に適用されていた蔓延(まんえん)防止等重点措置が解除された。菅義偉首相は9月28日の衆院議院運営委員会で全面解除を表明したが、自身の自民党総裁任期までに、やり残した仕事をやったので、スッキリした様子だった。

 菅政権の1年の実績についてまとめてみよう。時系列でみると、不妊治療の保険適用(2020年9月)、学術会議任用拒否(20年10月)、日米豪印の枠組み「クアッド」の推進(20年10月に東京で外相会談、21年9月にワシントンで首脳会談)、カーボンニュートラル宣言(20年10月)、携帯電話料金の値下げ(21年2~3月)、日米首脳会談で台湾明記(21年4月)、ワクチンの供給(21年4月にファイザー社と直談判、接種の超法規的措置など)、「従軍慰安婦」という不適切表現に関する閣議決定(21年4月)、重要土地利用規制法成立(21年6月)、東京五輪、パラリンピック(21年7~9月)、デジタル庁の設置(21年9月)、米国の福島産輸入規制の撤廃(21年9月)などだ。

 こう並べてみると、菅政権は実務能力が高く、やはり「仕事師内閣」だった。菅首相が新たにイニシアチブを取ったのは携帯電話料金の値下げくらいで、残りは以前の政権からの懸案・宿題案件ばかりだ。デジタル庁の設置も、筆者が20年前の役人時代に、全ての行政手続きをオンライン化する目標があったくらいだから、20年越しの積み残し案件といってもいい。

 要するに、菅首相は、国家観を語りながら大きな方向性を論じる理念型政治家ではなく、歴代政権がやれなかった案件を地道にこなす実務的政治家だったのだ。

 菅首相には、確たる国家観がないなどと批判され、外交での対中姿勢を疑問視された。親中とされる二階俊博幹事長がいるからで、そのために国会での対中非難決議ができなかったともいわれる。しかし、国会の決議は、政府の責任ではない。政府としては、日米首脳会談での共同声明に「台湾海峡の平和と安定」を明記したのは国会決議より大きな意味があった。国会決議には政府に対する拘束力はないが、共同声明は政府そのものの方針を示しているからだ。

 しかも、安倍政権でも二階幹事長のクビは切れなかったが、菅首相は二階氏と差し違えた形となった。

 外交姿勢は、韓国に対しても厳しかった。21年6月に英コーンウォールで開催された先進7カ国(G7)首脳会議や7月の東京五輪をとらえて、韓国政府は日韓首脳会談をやりたかったが、菅首相は「国と国との約束が守られない状況で、首脳会談をする環境にはない」と言い切り、誘いに乗らなかった。

 次の政権は、新型コロナを含む国内問題については菅政権が「大掃除」をしてくれたので楽だろう。政権の大きな目標を達成するために政治資源を残務処理に充てないですむ。

 一方、外交では、中国と韓国とどのように向き合うか、なかなか難しいかじ取りが求められるだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】新政権は、雇用の維持、迅速な鉄の三角形対策ができる体制を整えれば、長期安定政権となる(゚д゚)!

菅政権の功績は、正しく認識すべきでしょう。これを認識せずに、岸田新政権は前には進めないでしょう。

安倍政権と、菅政権の功績を忘れては、岸田政権は安定しないでしょう。安倍政権と、菅政権のお土産については、以前このブログでも述べました。その記事のリンクを以下に掲載します。
本文わずか“2ページ”立民の残念なアベノミクス検証 雇用創出の実績を分析できず、支持母体の労働者に響くのか ―【私の論評】安倍・菅両氏の「お土産」と立憲民主党の体たらくで、新政権は安定(゚д゚)!


詳細は、この記事をご覧いただくものとして、一部を以下に引用します。
これまでの歴史を見ると長期政権の後は短命政権が続いています。ただ岸田政権には「貯金」と「お土産」があります。

「貯金」は安倍元首相が残した「雇用の改善」と「国政選挙6連勝」です。このおかげで衆参ともに自公で過半数をがっちり確保しており、一度の選挙で多少負けても毎年の予算は通ります。

だから短命になりにくいでしょう。政権が長く続くと成果も出ます。

「お土産」は退陣する菅首相からもあり、ワクチン接種を強力に進めたおかげでコロナは終息しつつありますし、先にも述べたように、コロナで雇用が激減することもなく、菅政権下で東京オリパラも開催してもオリパラが感染を加速することもなく終えたので、国内では大きな懸案事項もありません。安倍・菅路線を継承すれば、大やけどすることもないでしょう。

そうして、今後自民党はさらにコロナ対策のために、補正予算を組むことになるでしょう。それは、様々な日程を考えると、衆院選後になるでしょう。そうして、日本経済は復活するでしょう。 つまりこれだけの貯金とお土産があれば、当面首相は誰でも務まるかもしれません。

ただし、最初の1年は安倍・菅政権の「お土産」で、岸田政権は安定するでしょうが、その後は、安倍政権がなぜ長期政権になり得たのか、菅政権は短期でなぜ成果をあげられたのか、そうしてなぜ短期政権に終わってしまったのかを真摯に分析して、政権運営に役立てることをしなければ、難しくなるでしょう。
このブログにも示したように、安倍政権が長期政権になり得たのは、何といっても雇用の劇的な改善だったことは間違いありません。その他にも様々な理由がありましたが、私はこれが最大であったと思います。

これは、その後の菅政権に受け継がれ、コロナ禍にあってさえ、世界的にみれば、先進国中では、失業率を最低に抑えることができました。それは、上のグラフをご覧いただければ、一目瞭然です。

経済政策においては、雇用が最優先で、雇用に関する統計が良ければ、他の指標が悪くても、経済政策は成功とみなすべきものです。他の指標がいくら良くても、雇用関連の統計が悪ければ、経済政策は失敗です。

その点からすると、安倍政権もそれに続く菅政権も、成功したといえます。このことからすると菅政権は長期政権になっても良かったと思いますし、私はそうなることを願っていました。

なぜなら、コロナ禍などの未曾有の危機がある場合は、よほどのことがない限り政権交代はしないほうが良いからです。私自身は、菅政権の成果が十分評価されず辞任に至ったのには、単なる説明不足を超えて大きな理由があると思います。

日本には様々なルールや規制があります。それに守られ、いわゆる“既得権益”を受けている人たちがいます。農業の分野で言えば、日本は零細農家を守るため、株式会社は農地を持つことができません。

当初は意味のある制度だったのでしょうが、農業が国際化されてきた今日日本は世界的にみても良い作物を作れるのですから、株式会社に農業にも参入してもらい、生産性を上げ、輸出もしたほうが良いはずです。

ところが“入ってはいけない”という人たち、そこに結びついた政治家たち=族議員、そして業界の既得権益を持った人をつなぐ役割を担っている官僚がいます。この三角形がスクラムを組み、新しいことをやろうとするときに妨害するのです。こうした三角形はどこの国にもありますが、日本の場合はそれを取り持つ官僚組織がかなり強い状態で維持されています。


それは、医療の世界にも厳然として存在します。医師会、族議員、厚生官僚による三角形(医療ムラ )は厳然として存在してるのです。これは、ある意味「加計問題」と本質は同じです。

1年以上も前から、コロナ病床は、かなり増床すべきことはわかっていました。そうして、昨年の補正予算でも、それに関する予算は潤沢につけられていたにもかかわらず、この医療ムラの猛反撃にあい、現在に至るまで大きく増床されることはありませんでした。感染症対策分科会も、こうした医療ムラの圧力に対抗できなかったのか、結局対策といえば、病床の増床ではなく、人流抑制ばかりを提言していました。

尾身会長

そのため、コロナ感染者数が増えるたびに、野党・マスコミは、医療ムラを批判するのではなく、菅政権を批判しました。尾身会長は、マスコミに利用された形になったといえます。これは、間違いなく菅政権を追い詰めていきました。特に、マスコミは感染者数が増えるたびに、不安を煽り、様々な印象操作で菅政権を追い詰めました。

特に日本では、まだまだマスコミの報道を信じる人が多いので、強力な医療ムラを崩壊させるには、仕事人内閣の菅内閣ですら、時間と労力がかかることは無視して、菅内閣を責め立てました。野党もその尻馬にのり、菅内閣を糾弾しました。

マスコミが、菅内閣ではなく、医療ムラを批判していたら、状況は変わっていたかもしれません。まさに、短命政権が多い理由は煽るマスコミとのせられる人たちなのです。それについて、以下の動画で高橋洋一が明確に語っています。

自ら一次資料にあたったり、ニュースソースとして信頼できる人を探す手間を惜しみ、ワイドショーなど、ヨダレを垂らしながら視聴して「アベがー、スガがー」などとつぶやいている人たちが多数いる限りにおいては、これからも短命政権が繰り返されることも十分ありえるでしょう。

新政権が、長期安定政権を目指すなら、雇用の確保、それに三角形の対策をすべきでしょう。とにかく、コロナのような深刻な問題が起こったときには、それに関連する三角形を一時的にでも機能できなくする仕組みを早期に導入すべきです。

日本では、もともと患者数がかなり少なく、すでに米国を追い越した強力なワクチン接種で、諸外国に比較すれば、ダメージははるかに少なくなりましたが、一歩間違えば大変なことになっていたかもしれません。

もし、英米なみの損害を受けていれば、医療ムラの住人たちも、マスコミも自分たちや家族などの命が惜しいですから、対応が変わっていたかもしれません。菅政権による強力なワクチン接種政策が、医療ムラの温存に繋がった可能性もあるかもしれないと思うと複雑な気持ちがします。

マスコミが煽った割には、ダメージが少なかったからこそ、現在のような状況になっているのだと思います。

新政権は、雇用を維持すること、鉄の三角形対策を一時的にでも迅速にできる体制を構築すれば、長期安定政権となるでしょう。逆に、他は良くてもこの2つができなければ、短期政権になることも覚悟しておくべきでしょう。

すぐに鉄の三角形を崩壊させるのは不可能です。いずれは鉄の三角形を欧米レベルの緩やかなものにするのは当然のことですが、それ以前に何か重大な問題が起こったときに、鉄の三角形一時的にでも機能させないようにできる措置を構築しておくべきです。

医療ムラの場合だと、医師免許制度を利用して、緊急時に政府の指示に従わない場合、医師免許を一時的に停止したり、悪質な場合は停止できるようにしておくべきでしょう。これは、相当効き目があると思います。医師免許がなくなれば、利権どころではなくなります。

自ら短期政権になっても、自民党政権を守った菅総理そうして安倍元総理の思慮深さに学ぶべきです。政権交代に耐えられるような、まともな野党が存在しないし共産党に浸透されつつある立憲民主党が存在する、現在これは非常に重要なことです。現状では、場合によっては短期政権になっても、国民のため、自民党政権存続のためなどに何かを確実に変えるという覚悟も新総裁には必要になると思います。

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2021年10月1日金曜日

立憲民主党、共産党と“限定的な閣外協力”合意 政治学者・岩田氏「枝野氏はルビコン川を渡った」―【私の論評】理念も信念も何もない立憲民主党は、岸田新政権の強力な助っ人か(゚д゚)!

立憲民主党、共産党と“限定的な閣外協力”合意 政治学者・岩田氏「枝野氏はルビコン川を渡った」


協力関係を深める枝野氏(右)と志位氏

 立憲民主党の枝野幸男代表は9月30日、共産党の志位和夫委員長と国会内で会談し、次期衆院選での政権交代が実現した場合に、共産党が「限定的な閣外協力をする」ことで合意した。安全保障関連法の廃止を訴える「市民連合」の仲介で9月8日、社民党やれいわ新選組も含めた4党で結んだ政策協定の範囲内で協力しあうという。

 「政権を獲得できた場合の共産党との枠組みはこれで明確になった」

 枝野氏は会談後、記者団にこう語った。

 志位氏も「政策実現のための協力が合意された意義は大きい」と胸を張った。

 だが、立憲民主党内には、党綱領に「自衛隊の解消」「日米安保条約の廃棄」を掲げる共産党との連携を、枝野氏が加速することを疑問視する議員もいる。最大の支持団体である連合も、理念や国家観が異なる共産党には警戒感を持っている。

 政治学者の岩田温氏は「立憲民主党は、かつての社会党化している。リベラルながらも、極左政権ではなかった『旧民主党』の方がまだ良かった。枝野氏はついにルビコン川を渡った。共産党はいまは『閣外』『限定的』としているが、革命実現のために一歩ずつ前進してくるはずだ。その危険性に、枝野氏は気付くべきだ」と語っている。

【私の論評】理念も信念も何もない立憲民主党は、岸田新政権の強力な助っ人か(゚д゚)!

立憲民主党の最大の支持団体である連合の神津里季生会長が23日、都内で講演し、立憲を中心とする政権が誕生した場合、共産党との閣外協力は「あり得ない」との考えを示した。立憲の枝野幸男代表が共産との「パーシャル(部分的)な連携」に言及したことを踏まえ、神津氏は「非共産」の立場を鮮明にしました。

連合の神津里季生会長

講演で神津氏は、「共産は民主主義のルールにのっとって物事を進める組織と言えない」とし、「(立憲が)連立するなんて意味不明だ」と述べた。「安全保障や日米同盟など国のあり方の根幹にかかわる考え方が違う。閣外であっても(協力は)あり得ない」と語った。一方、次期衆院選に向けた候補者の一本化は、「そういう努力は政治の世界でしっかりやってほしい」とも述べました。

連合は2017年の衆院選以降、傘下の労働組合で支援する政党が分かれる「股裂き」状態となっています。次期衆院選でも立民、国民両党を支援する方針を決めています。

股裂き解消に向けた道筋をつけるため、当初は立民、国民と3者での政策協定合意を目指していました。しかし、7月4日に投開票された東京都議選で、立民が共産の候補者を支援するなど連携を強めたことから、国民が3者での協定締結を拒否。国民を支援する民間企業系産業別労働組合も反対の姿勢を鮮明にしたため、同じ内容の協定を別々に結ぶこととなりました。

立民、共産、社民、れいわ新選組の4野党の党首は9月8日、市民連合の政策提言書に連名で署名した。提言書には新型コロナウイルスの感染拡大のなか「自公政権の統治能力の喪失は明らか」だとして「衆院選で野党協力を広げ、自公政権を倒し、新しい政治を実現することは市民の命を守るために不可欠だ」と主張しました。

「市民連合」の関係者から政策提言を受け取る(奥中央左から)立憲民主党の枝野幸男代表、共産党の志位和夫委員長、社民党の福島瑞穂党首、れいわ新選組の山本太郎代表=参院議員会館で2021年9月8日午前8時53分

「コロナ禍に乗じた憲法改悪」への反対や消費税減税を掲げ、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設計画は中止を求めた。次期衆院選の事実上の共通政策と位置づけられます。これが衆院選の共通公約になるのでしょうか。それにしては、中身があまりに空疎です。

市民連合とは、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」の略で、 2015年12月20日に発足。個人の尊厳が擁護される政治を目指すなどとしています。

ただ、「市民連合」の実態は必ずしも明らかではありません。その主義主張や政治的傾向、代表者や幹部の氏名経歴、組織の有無と実態、財政基盤、政治団体としての届け出の有無、全国における構成員、人数などは不明であり、いわばその「正体」は必ずしも明白とは言えません。

上記主要野党4党派は、このような「市民連合」政策提言書に連名で署名をすれば、当然、選挙後においても一定の政治的拘束や影響を受けるであろうから、投票する有権者としては、上記主要野党4党派の背後にあり、一定の政治的拘束や影響を及ぼす「市民連合」の実態についても把握しておく必要があると言えます。

その意味では、上記主要野党5党派及び「市民連合」自体においても、上記の諸点につき、投票する有権者に対する積極的な情報公開をすべきです。

このように、もっぱら選挙のための上記主要野党4党派による候補者「一本化」は、自衛隊、日米安保など、国の存立と国の根幹にかかわる安全保障に関する基本理念や基本政策が上記主要野党間で根本的に異なるうえ、選挙後における共通の確たる「政権構想」もないのですから、単なる目先の選挙における「自民党政権打倒」のための手段たる「野合」でしかないです。


このような「野合」も考えられないことなのですが、立憲民主党が共産党と「限定的な閣外協力をする」ということは、ありえないことです。これでは、一昨日もこのブログで述べたように、立憲民主党には、理念も信念も何もないと謗られても致し方ないと思います。

ただただ、自分が議員バッヂをつけて国会議員でいられさえすればそれでいいようです。そのためだったらイデオロギーもポリシーもかなぐり捨てて、共産党であろうと手を組むというような姿勢が、次の衆院選で良い結果をもたらすことはないと思います。

野党第一党がこの有様ですから、自民党岸田政権はよほどのことがない限り、安定政権になるのではないでしょうか。

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