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岡崎研究所
世論調査の結果も振れており、目下の選挙戦は混とんとしている。1月17日発表の韓国の世論調査会社リアルメーターの支持率調査では、尹錫悦(保守野党、前検事総長)40.6%、李在明36.7%、安哲秀(中道野党、実業家、政治家)12.9%となり、再び尹錫悦リードに反転した。この発表の10日前の7日の韓国ギャラップの結果は、李在明36%、尹錫悦26%、安哲秀15%だった。
尹錫悦の急落は、保守野党に衝撃を与えていた。尹錫悦を支持してきた若者層が安哲秀に流れたといわれる。尹錫悦の急落には理由があった。ひとつは12月来に激化した野党選対委の内部分裂だった。もう一つは尹錫悦の夫人金建希の略歴詐称・誇張(結婚前のものだが)のスキャンダルだった。夫人は12月26日記者会見を行い謝罪、国民の許しを請った。
支持率急落を受けて急遽党内で和解した。また尹錫悦と安哲秀の間の野党候補統一化の可能性が取り沙汰されるようになった。しかしそれは保守野党にとっては一つの可能性にはなるが、過去の例を見ても実現はそう簡単ではない。
主要候補者はどちらも特徴的である。2人とも国会議員の経験はなく、いずれも党内政治的にはアウトサイダー、パラシュート型の候補者であり、党内基盤も強固ではない。
李在明は、文在寅派、李洛淵の非主流派のいずれでもない、謂わば「その他」に属する。尹錫悦は朴槿恵前大統領訴追の際の検事で、今回選挙前に保守野党「国民の力」に入党したばかりだ。両者ともにスキャンダルを抱えている(李在明は大庄洞開発疑惑等、尹錫悦は上述の通り)。人格的には、李在明は直情的、実用主義、ポピュリスト等、尹錫悦は優柔不断とも言われる。
選挙まで1カ月少々となったが、選挙の帰趨はまだまだ分からない。世論調査の結果は非常に不安定だ。保守党寄りになっていた若者層の帰趨も不安定である。他方、政権交代論は非常に強い(世論調査でもそれを望むとの数字が高い)。これは野党に有利になるが、自責点をしないでそれを生かせるかどうかは野党次第である。
また今後経済が大きなイシューになると思われ、両候補の経済政策が注目される。尹錫悦も効果的な経済政策が必要となる。外交問題では既にある程度の議論は出ている。李在明は、今のところ文在寅政権の政策の範囲内のことしか言っていない(南北や対中関係を重視、対日・対米関係は慎重)。尹錫悦は、現実主義で、日米韓や日韓関係重視、対中警戒、南北警戒と言える。
候補者が日本大使と会見という異例事態も
日韓関係については、今後実際の行動を見る必要があるものの、李在明は対日強硬、尹錫悦は現実的である。李在明は、対日強硬のイメージ払拭のため11月下旬頃より実用主義で行くとスタンスを修正したが、これまでの強硬な発言は消し難く、ポピュリズムの動向や党の枠の規制も受けるだろう。尹錫悦については日米韓、日米関係重視の発言は安心感を与える。
今回選挙で異例のことは両候補が日本大使と会見したことだ。11月下旬、尹錫悦は相星駐韓大使と会見した。日韓関係改善のカードを公式化した。
それから1カ月後の12月下旬には李在明も日本大使と会見した。日韓関係が選挙の直接のイシューになっている訳ではないが、日韓関係の改善の一般的必要性は多くの国民の間に一定の底流として共有されていると思われる。
しかし、特にいわゆる「労働者問題」(徴用工問題と呼ばれたりもするが適切ではない)は、解決案の中味が問題であり、韓国側が「国内措置」として解決しようとしない限り、解決はなかなか見通せない。それにしても文在寅政権の過去5年の責任は大きく、「労働者問題」と「慰安婦問題」の二つの問題が日韓の「永遠のトゲ」となって歴史に残らないよう、文在寅には残る数カ月の間にもそれを解決する責任があると言わざるを得ない。
朴槿恵前韓国大統領とプーチン・ロシア大統領 |
●国家は普通は独立を尊ぶものだが、従属したがる国もある。それが韓国だ。
●彼らは中国と中国人にたいして、文化面で深い敬意を持っている。中国の「マーケットの将来性」にもその原因がある。
●韓国における中国と中国人への尊敬の念は明の時代にまでさかのぼることができる。その一番の担い手は、知的エリートとしての官僚である両班だ。
●面白いことに、中国文化の影響が非難されるのは北朝鮮。北では漢字は事実上禁止され、ハングルの使用だけが許されているほど。
●韓国では教育水準が高ければ高いほど反米の傾向が強まる。しかも最近はアメリカが衰退していると考えられているために、中国の重要性のほうが相対的に高まっている。個人で中国でビジネスを行っている人が多いという事情もある。
●極めて奇妙なことに、韓国は大規模な北朝鮮の攻撃を抑止するのは、グローバル規模の軍事力を持つアメリカの役目だと考えられており、実際に天安沈没事件や延坪島の砲撃事件にたいしても(死者が出たにもかかわらず)ほとんど報復は行っていない。
●つまり実際のところ、韓国政府は米国と中国に依存する従属者となってしまっている。米国には全面戦争への抑止力、そして中国には一時的な攻撃にたいする抑止力を依存しているのだ。
●ところがこれは、米国にとって満足できる状況ではない。韓国を北朝鮮から庇護するコストとリスクを、米国は独力で背負わなければならないからだ。
●その上、韓国への影響力は中国と折半しなければならない。中国は北朝鮮への統制を中止すると脅かすことで、常に韓国政府を締め上げることができるからだ。今のところ韓国が中国に声を上げることはない。
●米韓同盟を形成しているものが何であれ、そこには共通の「価値観」は含まれていない。なぜなら韓国はダライラマの入国を中国に気兼ねして堂々とビザ発給を拒否しているからだ。
●現在のような政策を保ったままの韓国は、いわゆる「小中華」の属国として、しかも米韓同盟を続けたまま、中国による「天下」体制の一員となることを模索しているのかもしれない。韓国が自国の安全保障のコストとリスクを受け入れず、かわりに従属者になろうとしているのは明らかだ。
●このような韓国の安全保障の責任を逃れようとする姿勢は、「日本との争いを欲する熱意」という歪んだ形であらわれている。ところが日本との争いには戦略的に何の意味もないし、日本へ無理矢理懲罰を加えても、韓国側はリスクを背負わなくてすむのだ。
1.米国に従属している韓国は、同時に中国にもすり寄っていこうとしている。
2.その大きな理由は二つ:歴史的・文化的な面での尊敬と、ビジネスのチャンスだ。
3.安全保障面では、北のコントロールを中国に、そして全面戦争の抑止は米国に依存。
4.その責任逃れの憂さ晴らしとして、日本にたいする情熱的な敵対心を展開。
政府機能や民間企業の本社などを、ソウルから遠くに分散するなどの対策を一切実行していません。空襲に対応するシェルターも不十分です。40年数年前と違うのは、北朝鮮が核兵器や長距離ミサイルを開発したことだけです。もし戦争が起きれば、北朝鮮は最初の一撃で韓国の指揮所や対戦車兵器などを潰せます。
40年前にアメリカが提案した、首都機能を南に移すことや、企業の光州への移動や、軍事面での72項目にものぼる細かい変更など、ほとんどなされていません。半島有事の際に作戦を指揮する権限は、いまだに韓国軍ではなく長い間在韓米軍司令官にありました。米国側が長年、返還を示唆しても逃げ口上を駆使して延期し続けていました。これについては、2017年ようやっと韓国軍に引き継がれました。ただ韓国は、北朝鮮の核開発を阻止する動きは今でも全く見せていません。
韓国は北朝鮮の非核化には殆ど興味がなく、金正恩体制の崩壊は望んでいない。日米が直面しているのは「朝鮮半島問題」で、二つの国で構成されている。一つは北朝鮮であり、どんな手段でも核武装解除を進めるべき国である。そしてもう一つは、韓国という無視すべき国である。
ただ、現在北は表には出しませんが、コロナ感染症で経済・社会かなり痛めつけらており、これに乗じて中国が北朝鮮に浸透しようとするかもしれないとの危惧の念を抱いており、これに対する牽制の意味もあって、ミサイルを連発している可能性もあるとみています。
1 月5日に発射したとみられる北朝鮮の超音速ミサイル |
韓国紙、中央日報は17日、韓国政府筋の話として、国連が北朝鮮へ新型コロナウイルスワクチン6千万回分(を支援する案を打診したと報じました。昨年10~11月に米ニューヨークで、国連関係者が北朝鮮の金星国連大使に提案し、金氏は平壌の返答を待っているとしていました。この打診がその後どうなっかについての報道はありません。
この状況のなかでは、韓国は日米にとって最早安全保障上は空地のような存在ではありますが、それでもこの空地があるという状態は決して悪い状況ではないのです。
最悪の状況は、北朝鮮が非核化し、米国側につくのであれば良いですが、そうではなく北が中国に飲み込まれ、ついで韓国も飲み込まれ、結果として朝鮮半島全体が中国の支配下に入ることです。こうなると、38度線は、対馬海峡になることになります。これだけは、避けるべきでしょう。韓国には何も期待できないですが、そこに安全保障上の空地があるということが重要なのです。これからも、日米の空き地であり続けるべきです。