2022年5月7日土曜日

戦闘継続見込みなし、ロシアの敗北「決定的」か〝最大の不確定要素〟中国の目に見えない軍事支援に警戒 戦勝記念日の事態打開は困難―【私の論評】プーチンはケミカル・アリと同じような運命をたどるかもしれない(゚д゚)!

ニュースの核心
習主席(左)とプーチン大統領の盟友関係は続くのか

 ウクライナでロシアの苦戦が続いている。来週9日には戦勝記念日を迎えるが、それまでに事態を大きく打開するのは難しい。

 それどころか、私は全体情勢がいまのままなら「ロシアの敗北は決定的」とみる。なぜなら、強力な経済制裁に締め上げられたロシアの継戦能力は改善する見通しがない一方、ウクライナの戦闘能力は西側諸国の支援で、逆に高まっていくからだ。

 ロシアはジリ貧状態で、敗北していくのか。最大の不確定要素は中国である。

 結論を先に言えば、中国はギリギリの局面でロシア支援に動く可能性が高い。

 習近平総書記(国家主席)にとって最大の同志は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領だ。近い将来、台湾をめぐって米国との対決が不可避とすれば、そのとき、ロシアが加勢するかどうかは、習氏の運命をも左右する。習氏は、ここで「プーチンのロシア」を失うわけにはいかないのだ。

 振り返れば、開戦直前の2月4日、習氏とプーチン氏は北京冬季五輪の開幕に合わせて北京で会談し、盟約を結んだ。それは、「米国による世界の一極支配を打破し、中国とロシアが加わった多極化体制を目指す」という誓いだった。これこそが、両氏の戦略目標にほかならない。

 ロシア軍がこれほど苦戦するとは、習氏にも意外だったにせよ、自分自身の目標達成を困難にするような選択はあり得ない。最悪でも、プーチン氏が失脚しないように背後から支えるはずだ。「いまはまだ、動く局面ではない」と見ているにすぎない。

 では、どんな対露支援が考えられるか。

 ロシアの決定的敗北を避けるためには、「継戦能力の維持」が目的になる。経済支援はもとより、西側諸国に見えない形での軍事支援だ。例えば、中露双方に近いカザフスタンのような国を経由して、武器を供給する可能性があるのではないか。

 中国にとっての不確定要素もある。最大の懸念材料は、プーチン氏が戦術核に手を伸ばした場合だ。

 中国は「敵に核攻撃されない限り、自分からは核を使わない」という、核の先制不使用ドクトリンを一応、掲げている。だが、ロシアは違う。

 プーチン氏は2020年6月、「通常兵器であっても、国の存続が脅かされれば、核で反撃する権利を留保する」という大統領令に署名した。これは「脱エスカレーションのためのエスカレーション」と呼ばれている。「戦術核を一発落とせば、敵は一挙に崩壊し、戦いは終わる」という考え方だ。

 プーチン氏は一発逆転を狙って、核の命令書にサインするかもしれない。そのとき、中国はどう動くか。

 それでも、ロシアを支援するなら「自らのドクトリンに反してでも、米国と対決する」という話になる。そうなれば、いよいよ、「米国を中心とする西側諸国と、中露の本格対決」は避けられない。

 米国は、そんな展開を避けるために、「ジワジワと真綿を締めるように」ロシア軍の戦闘能力を奪っていくだろう。当然、戦争の長期化は必至だ。最終的には、プーチン体制の崩壊を目指す。

 それが、ロイド・オースティン米国防長官が言った「ロシアの弱体化」である。

■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア―本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。

【私の論評】プーチンはケミカル・アリと同じような運命をたどるかもしれない(゚д゚)!

昨日は、揚陸艦「サラトフ」、黒海艦隊旗艦ミサイル巡洋艦「モスクワ」の撃沈に続き、フリゲート艦「アドミラル・マカロフ」が攻撃されたとのニュースがありました。これは、まだはっきりとはしていませんが、ウクライナ側は撃沈したとしています。



ウクライナには海軍はあるものの、潜水艦はなく、ロシア海軍から比較すれば、かなり規模は小さなものです。にもかかわらず、ロシアはこれだけ艦船にダメージを受けています。無論、これは、ウクライナ海軍による成果ではなく、陸上から発射されたミサイルによるものであるようです。

この他にも、ウクライナ軍はドローン使いロシア巡視艇2隻を破壊したことも伝えられて舞います。いずれにせよ、これだけロシア海軍の黒海艦隊はダメージを受けているということです。

様々な情報を総合すれば、東部地域でのロシアの作戦は、それほど成果を上げていないようです。戦勝記念日である5月9日までにマリウポリ全体を制圧することもできないでしょう。しかも、ウクライナには次々と西側の武器が入ってきています。このままでは、戦況を好転させることは無理でしょう。

ただ、ロシアの国内事情からいっもてもプーチンはなんらかの形で勝利宣言をしなければいけないです。そうすると、いくつかオプションが考えられます。例えば、東部にはロシアが独立国として認めた2つの人民共和国である、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国がありまず、その独立をさらに拡大したものとして承認するか、もしくはロシアに併合してしまうというオプションもあり得るでしょう。

もう1つのオプションとしては、ロシアがウクライナ宣戦布告をするという説もあります。 飯田)ありますね。 ただ、ロシアが兵員の総動員すると言っても、大した兵力は残っていません。

さらに、もしロシアがウクライナに宣戦布告をした場合には、ウクライナが主権国家であるということを認めることにもなります。そうなるとロシアは「NATOと戦争するのか」ということになります。

そうなればNATO条約の第5条、集団的自衛権の発動になりますから。これは、必ずしもロシアにとって得策だとは思えません。何をするにしても、ウクライナは二つの共和国の独立や併合は認められませんから、長期戦になります。

停戦は、負けそうだと思った側が考えるものです。いまは両方とも勝利を確信しているわけですから、当分は停戦はないです。

ではロシアはウクライナの南部を獲るのではないかと言う説もあります。しかし、先にあげたフリゲート艦「アドミラル・マカロフ」が撃沈されたかもしないことも含め、様々な情報を見ていると、とてもいまのロシア軍にオデッサを獲る力はないというのが、正しい見方ではないかと思います。


ロシアは、西部の方にミサイル攻撃をしているということですが、ミサイルを1~2発撃ったくらいで戦局が変わることはありません。ウクライナ軍が東部に集中させないためにやったのだと思います。

そういう意味では、ロシアは本当はアゾフスタリ製鉄所のウクライナ部隊を全滅させたいのでしょうが、 マリゥポリの3日間の停戦発表しています。攻防はこれからもずっと続くのです。

マリウポリのアゾフスタリ製鉄所にはまだ民間人がいて、あれだけ国連が動いています。これで総攻撃を行って大量に死者でも出したら、ますます状況が悪くなるため、民間人の退避のためと人道的なふりをしているのです。

しかし、心の底では、ロシアもウクライナを信用していません。ですから、停戦の間の時間は、軍事的に重要な意味を持つ場合があり得るわけですから、お互いに3日間どころか1日の停戦中だって相手が何をするかわからないと思っています。

もう少し民間人を脱出させたところで、ロシアが徹底的に攻撃するということも十分あり得ます。更に、それがうまくいかず、結果は出さなければいけなくなると、例えば大量破壊兵器を使って、戦局を少しでも有利にしようとするかも知れません。


しかし、そのときに核を使うかと言えば、流石に簡単には使わないと思います。 核兵器も搭載できるミサイル演習を実施したということですが、それは威嚇でしょう。やるのであれば、痕跡の残らない化学兵器の方が可能性があるのではないでしょうか。

いずれにしても、この苦境からロシアがどのように脱出するのか。プーチンは相当厳しい状態にあるといえるでしょう。

ただ、ロシア軍がバルト海沿岸の飛び地カリーニングラードで、「イスカンデル」というミサイルシステムの模擬発射を行ったということが報じられました。 戦術核兵器の使用について、昔よりも敷居が低くなっていることは事実です。

5月5日のニュースで、アメリカの戦略コマンド(核兵器担当のコマンド)の司令官が「ロシアの戦術核兵器の問題は、極めて抑止が難しくなっている」と言っています。ですから、まったく排除することはできません。ですが、核兵器よりも先に化学兵器を使う可能性のほうが高いと思います。

米国は戦争目的を明確化しています。目的は2つです。1つ目はウクライナの勝利。2つ目はロシアの弱体化。ロシアが今回と同じようなことはできないほど弱体化させるというのは、先日、米国のブリンケン国務長官とオースティン国防長官ががウクライナに行ったあと、ポーランドで明言していました。

現在ではもう、「弱体化」という言葉だけでなく非公式には「無力化」という言葉も使っています。ロシアを「無力化」することは無理だと思いますが、米国はそのような形で腹をくくっている部分があると思います。

米国は一度冷戦でソ連を崩壊させ、冷戦に勝利しているわけですから、その後のロシアに対する寛容な措置が今回の危機を招いてしまったわけですから、その二の舞いは舞いたくないのでしょう。今回は、ロシアを無力化に近づけるつもりなのでしょう。

これからいろいろな国際会議が続くでしょうが、米国はさらに制裁を強めていくでしょう。 ヨーロッパは、既にエネルギー分野での制裁、特に石油のロシアからの輸入をしない方向で制裁しています。石油を年内を目処に徐々に輸入を減らしていくことにするようです。すぐに効果があるわけではないですが、ロシアにとってはますます厳しい状況になるでしょう。


ロシア対して、一部、援助をしているのではないかと言われている中国ですが。 中国も困っているでしょう。オリンピック直前にロシアを支持するようなことを言ってしまいましたが、ロシアが勝つかと思いきや、現状のようになってしまい、世界中の批判がロシアに集中して、そこでロシアを支援したら中国も大変な目に遭います。現在は沈黙しています。

中国としては米国を敵に回すわけにもいかないし、ロシアを失うわけにもいかないです。しかし、中国がいまいちばん困っているのはコロナ対策です。ウクライナどころではないかもしれません。

北京全域でロックダウンということになれば、大変です。なぜなら、10月に党大会があります。 そこで習近平氏は「3期目」の国家主席の就任を 華々しく挙行するはずでしたか、ゼロコロナ政策が「失敗」したということになれば、さすがの習近平も持たないでしょう。

実際「ゼロコロナ」の綻びがいろいろなところに出ています。 ただ、これは徐々に緩和していくとは思います。あのよう状態をいつまでも維持できるわけがないです。北京で本格的なロックダウンをしたら大混乱になるでしょうから、緩和はしていくでしょう。

ただし、それには時間が掛かかるでしょう。10月までに完全撤廃というわけにはいかないでしょう。

10月までは、中国は国内に専念して、ロシアに対して援助はあまりしないという方針で臨むからもしれません。というより、国内問題のほうが大変でそうせざるをえなくなるでしょう。そうなると、ロシアの敗北は決定的になります。

ウクライナ大統領府のオレクシイ・アレストビッチ顧問は5日、戦況に関する報告で、「米欧から提供される武器がそろう6月中旬以降」にロシア軍への反転攻勢に乗り出すとの考えを示した。

アレストビッチ氏は「ウクライナ軍の前進が可能になる」と述べ、東部地域などで露軍の撃退を目指す考えを示唆しました。米欧の軍事支援を受けるウクライナは強気の姿勢に転じています。

ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は3日、ロシアが2014年に併合した南部クリミアの奪還を目指す方針を明らかにしました。

ゼレンスキー政権は3月29日のトルコ・イスタンブールでの停戦協議では、早期停戦を優先し、ロシア軍にクリミアや東部の親露派武装集団が実効支配する地域からの撤退を求めませんでした。

ロシアは侵攻後に制圧した南部ヘルソン州などでの実効支配を強化し、ウクライナの領土分断を図る構えを鮮明にしています。ただ、ここの支配もできなくなる可能性が大きいです。

ロシアの弱体化を目指す米国はそこまで支援するでしょう。ウクライナがクリミアを奪還したときには、プーチンは負けを認めざるを得なくなり失脚することになるかもしれません。

それに、もし戦況を好転させるために化学兵器を用いれば、いずれプーチンは、イラクの故サダム・フセイン(Saddam Hussein)大統領のいとこで側近だった「ケミカル・アリChemical Ali)」ことアリ・ハッサン・マジドと同じように「ケミカル・プーチン」と呼ばれ、同じような運命をたどることになるかもしれません。

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2022年5月6日金曜日

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【速報】ロシア太平洋艦隊が日本海で最新の対潜水艦ミサイル発射演習 水中の目標命中と発表


ロシア国防省は日本海で最新の対潜水艦ミサイルの発射演習を行ったと発表し、映像を公開しました。

これがロシア国防省が公開した最新の対潜水艦ミサイル「オトベット」の発射演習の映像です。ミサイルは水中の目標に命中したとしていて、演習の間、太平洋艦隊の艦船15隻が周辺海域を一時封鎖したということです。

インタファクス通信によりますと、ミサイル「オトベット」の最高速度はマッハ2.5で、最大で水深800メートルの対象を攻撃可能だとしています。演習は対ロシア制裁を科す日米などをけん制する狙いもあるとみられます。

【私の論評】日本人は、ロシアの経済力、軍事力を「等身大」で捉えるべき(゚д゚)!

このようなミサイル発射演習を日本の報道機関が報道する背後には、ロシアの脅威があることは間違いないです。ただ、なぜロシアがこのような演習をするのかということはよく考える必要があると思います。

それは、無論日米に対する牽制でしょう。しかし、これはロシア側からみれば、もともとあまり多くはない極東の兵員や武器などをウクライナに送っているため、極東の軍事力か手薄になっており、より日米のロシアに対する脅威が増していることを意味するものと思われます。

極東ロシア地上軍は崩壊前では、40数個師団あったものが、現在では、半数以下の12個旅団(師団の半分から2/3の規模)と2個師団合計8万人です。

これは、4分の1以下になったということになります。軍の地位も下がり、予算も多く削減され、兵員の士気は下がっています。そこからさらに、ウクライナに兵員や武器を送ったとなれば、いかに手薄な状態になったかわかります。

極東ロシアは人口が650万人程度で、ロシアにとっての最重要部分ではありません。産業は育っておらず、隣接する中国の東北部に比べたら人口は20分の1でGDPの格差はそれ以上だ。陸軍の兵力でも、瀋陽方面の中国陸軍に比べてロシア極東部の陸軍は弱体です。

そもそも、このブログで以前も述べたように、ロシアのGDPは韓国を若干下回る程度で東京都と同じくらいです。ロシアの一人あたりのGDPと中国のそれは、10000ドル(100万円)程度であり、人口は1億4千万人、中国の人口はロシアの10倍の14億人です。そのため、国全体では中国のGDPはロシアの10倍程度です。

日本と比べても、極東ロシアは経済面だけでなく、軍事的にも貧弱です。たとえ日本を攻めても、ロシア軍の揚陸作戦能力が乏しいことは、今回ウクライナの黒海岸にほとんど上陸できず、揚陸艦「サラトフ」も撃沈されてしまったことから明らかです。

撃沈された揚陸艦「サラトフ」

ロシアのASWは貧弱ではないと語る人もいますが、ではどうしてミサイル巡洋艦「モスクワ」は撃沈されたのでしょうか。ロシアにまともな哨戒能力があれば、あのようなことはなかったはすです。「モスクワ」の脆弱性が暴かれた今、ロシアの対潜哨戒能力だけが高いなどの議論は成り立たないと思います。

ロシア海軍はカムチャツカ半島に基地を置く原子力潜水艦が何隻も戦略核ミサイルを抱えてオホーツク海に潜っていますが、これは米国向けのものです。海上艦のほうはお粗末で、駆逐艦クラス以上の軍艦は7隻程度しかなく、海上自衛隊の陣容の10分の1程度です。日本海岸には海上自衛隊の主要な潜水艦基地があり、数と質でロシア海軍の潜水艦を圧倒しています。

さらに、日本の海自は対潜哨戒能力に優れているため、ロシアのASW(対潜水艦戦闘)能力ではるかにまさっています。そうして、日本の潜水艦は静寂性(ステルス性)でロシアの潜水艦をはるかに上回っており、ロシアは日本の潜水艦をなかなか発見できない一方、日本はロシアの潜水艦を発見するのは困難です。

そもそも、ロシアが最新の対潜水艦ミサイル「オトベット」を持っているとはいっても、発見できない相手には、ミサイルを発射してこれを破壊できるとは思えません。

ロシアの対潜水艦ミサイル「オトペット」

一方米国の潜水艦はすべて原潜であり、これは構造上どうしてもある程度の騒音は出ます。だから、ロシアにも発見できる可能性はあります。ただ、米国もロシアよりは対潜哨戒能力が格段に上ですし、攻撃力もかなりのものですから、先に「オトペット」を搭載している艦艇が撃沈される可能性が高いです。

仮に日露が有事になったとするとロシアの艦船は、日本の潜水艦が潜む宗谷海峡と津軽海峡は危なくて通れなくなるので、太平洋方面での作戦やウラジオストクから補給を受けるカムチャツカの基地の維持も難しくなります。

海戦では、日本はロシアを圧倒することになるでしょう。、実際もし第二次日露戦争が勃発したら「日本が海戦を制する」とロシアメディアが断言しています。

それでも、台湾有事などで中国の艦隊と連携行動を取られると、ロシア海軍も日米にとって煩わしい存在になるのだが、それも大したものにはならないでしょう。

中国は2014年のロシアのクリミア「併合」をまだ認めてもおらず、今回のウクライナ戦争でも様子見に徹している中国が台湾を併合すると言っても、ロシアはおいそれとは助けないでしょう。たとえロシア海軍が台湾周辺まで繰り出しても、日米潜水艦の格好の標的になるだけです。

ウクライナ戦争で、ロシアは西側諸国との関係を大きく悪化させています。孤立したロシアは、中国にとっては米国に対抗するための同盟相手というよりも、米国との不要な対立に中国を引き込みかねないお荷物的な存在になっています。

習近平国家主席はロシアを共産主義の先輩として尊敬の念を持って接しています。しかし彼が去るときやロシアに愛想をつかすときロシアが清朝から奪った沿海地方を含む日本の4倍の面積を持つ領土を突然返せと言い出さないとも限らないです。

ロシアのウクライナ侵攻は、戦後の国連体制をぶち壊すものです。その落とし前はロシアにつけさせなければならないです。他方、極東でのロシアは日本にとって、敵一辺倒な存在でもなありません。ロシアは「等身大」見ることが必要です。

ただ、「等身大」に見るにしても、最初から無理なウクライナ侵攻をしてしまったロシアです。日本に対して勘違いして攻撃を仕掛けてくるかもしれません。そうなっても、ロシアが本格的に北海道に侵攻することは不可能ですが、それにしても日本に損害がでることは確かです。

防衛大臣と海軍長官を率いるプーチン露大統領

さらに、以前もこのブログで指摘したように、ロシアの一人あたりのGDPは100万円前後にすぎす、日本のそれはロシアの数倍ですから、ロシア人からすれば日本人の暮らし向きは豊かです。

そうなると、ロシアの狼藉ものが、北海道のいずれかの町に上陸して、武力を用いて、日本人を脅し、金品を巻き上げたりすることもあり得ます。実際、数年前に北朝鮮の狼藉者が北海道の松前小島に上陸して、あらして、物品を強奪したという事件がありました。ロシアの狼藉者がそのようなことを未来永劫しないという保証はありません。

いずれにしても、今後ロシアが日本に対して攻撃を仕掛ければ、自分たちの被害が甚大なものになることを知らしめるためにも、特に海戦の優位性はこれからも保ち続けるべきですし、ロシアの狼藉者が侵入した場合どうするのか、その対処法も定めておき、国民が無用な被害を被ることがないよう、政府はこれからも安全保障に力をいれていくべきでしょう。

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2022年5月5日木曜日

防衛産業、基盤強化に本腰 相次ぐ撤退に危機感 政府―【私の論評】防衛費は安倍・菅両政権がコロナ対策で行った財務省の抜きの政府日銀連合軍で調達せよ(゚д゚)!

防衛産業、基盤強化に本腰 相次ぐ撤退に危機感 政府

 自衛隊の装備品を生産する防衛産業から企業の撤退が相次いでいる。

 背景には、低い利益率や調達数の減少があるが、これらの企業は有事に際しても装備品の維持・整備を担うため、撤退は日本の防衛力低下に直結する。政府は防衛産業を「防衛力の一部」と位置付け、対策に本腰を入れ始めた。


 この数年だけでも、防衛省から直接受注する主要企業の撤退が目立つ。2021年には三井E&S造船が艦艇建造をやめたほか、住友重機械工業は新型の機関銃事業から手を引いた。20年にもダイセルが航空機パイロットの緊急脱出装置の生産停止を決めた。

 撤退の理由の一つは、利益率の低さにある。現在、防衛省が発注する装備品は原価に7%程度の利益が上乗せされているが、10%を超えるとされる欧米諸国と比べると低い。納品後の利益率では、材料費の高騰や為替の影響により利益率が2~3%まで目減りしているケースもあるという。

 また、装備品の高度化・複雑化により調達単価が上がった一方、F35戦闘機などの高性能な米国製装備品の輸入が増え、国内からの調達数は減少。この結果、受注間隔が空く「お久しぶり生産」が増え、安定的な事業維持が難しくなっている。

 装備品を輸出できれば事業維持や価格抑制などの効果が期待できるが、高価で自衛隊のニーズに応じた装備品を買う国は少ない。これまでに完成装備品の輸出契約が実現したのは、フィリピンへのレーダー4基のみだ。

 こうした状況を打破すべく、防衛装備庁は企業の支援に乗り出している。防衛省は装備品の製造工程に3Dプリンターや人工知能(AI)などの先進技術を導入するための経費6億円や、中小企業のサイバーセキュリティーの脆弱(ぜいじゃく)性調査・設備導入などの費用8億円を22年度予算に盛り込んだ。

 さらに、鈴木敦夫装備庁長官の下に、装備品の利益率見直しや輸出に関するワーキンググループを設置し、具体策の検討を進めている。防衛省幹部は「以前は利益率が低くても『お国のため』と応じてくれたが、今では通用しなくなった」として、実効性のある対策が急務との認識を示した。 

【私の論評】防衛費は安倍・菅両政権がコロナ対策で行った財務省の抜きの政府日銀連合軍で調達せよ(゚д゚)!

財務省は先月20日、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の分科会を開き、政府が検討を進める安全保障政策の長期指針「国家安全保障戦略」などの改定に向けた課題を議論しました。経済や財政の構造強化は防衛力を充実させる観点からも重要だとの見解で一致。自民党内で広がる予算増額論を牽制しました。

財務省は「国民の生活や経済、金融の安定があってこそ防衛力が発揮できる」とし、指針などの見直しの議論では有事に備えた経済、財政の在り方も点検する必要があると主張しました。

しかし、考えてみて下さい、ロシアがウクライナに侵攻し、北朝鮮がミサイルを発射し、拉致引き会社問題は未だ解決せず、中国が台湾をいずれ併合しようとしているのは明らかであり、特に中国は毎年かなり防衛費を増額しつつある現在、今後安全保障関係の予算は増えてしかるべきであり、予算増額を牽制するというのは筋違いだと思います。

安倍元総理も、この財務省の牽制に呼応するかのように、防衛予算の拡張を訴えています。
自民党の安倍晋三元首相は21日、都内で開かれた日本戦略研究フォーラム主催のシンポジウムで講演しました。防衛予算を国内総生産(GDP)比2%まで増額すべきだとの考えを示したうえで、令和5年度については「当初予算で少なくとも6兆1700億円から上積みしていく方向性にしなければならない」と述べ、今年度当初予算に補正予算を加えた6兆1700億円以上の額を計上すべきだとの考えを示しました。

日本戦略研究フォーラム主催のシンポジウムで講演する安倍元総理

GDP比2%目標については「(アジア太平洋)地域の平和と安定へ世界各国の協力が必要だと言っている日本が予算を増やさないとなったら笑いものになる。ぜひ国家意思を示してほしい」と強調。党内にも「数字ありきでなく、必要額の積み上げでないといけない」との意見があることに触れて「政治家の発言とは思えない。財務省主計(局)の補佐みたいな発言だ」と批判しました。

「敵基地攻撃能力」の保有についても「(対象を)基地に限定する必要はない。北朝鮮を念頭に置いたとしても、TEL(移動式発射台)を全部つぶすことはできない。中枢地帯を狙っていく(べきだ)」との考えを示しました。

自民党は、ウクライナ事変を「天佑」と思うなら、今ほど国防力充実を行う好機はないといえることを自覚すべきです。これは裏を返せば、「攻勢限界点」でもあるということです。


「攻勢限界点」とは、紛争において、敵に対して優位に立った側(攻勢側)が優位を維持できる限界。 一般に、争いにあって優位を維持するためには継続的に攻撃を行わなければならない。 敵を攻撃すれば敵戦力の撃滅、士気への影響、領土の奪取などの戦果が得られ、その戦果によってさらなる優位を得られる。

ドイツはそれを理解しているからこそ、「来年から毎年、防衛費をGDP2%」、「足りない分は国債を刷って基金で対応」、「世界3位の軍事大国になる」と宣言したのです。

今以上にできるタイミングはないからです。

それに対して、自民党は、「5年以内に防衛費をGDP2%に」、「その他、戦後防衛政策を転換」としています。これを、全部実現したら100点といえるのでしょうか。この提言の内、何割が実現するのでしょうか。

極めて現実的な話をすると、財務省を説得できるのでしょうか。おそらく、財務省はこれに対して必死で、反撃に出るでしょう。そうして、説得は無理筋にされるかもしれません。


しかし、ここで発想を転換すべきです。安全保証は、国民の命・財産を守るために必要です。そもそも財務省のように「国民の生活や経済、金融の安定があってこそ防衛力が発揮できる」などと能天気なことを語っている連中には、もともな国防予算など考えられません。


ウクライナ事変が発生してからそのような呑気なことはいっておられないはずです。現に目の前で、ロシアがウクライナに侵攻したという事実があるわけで、日本よりは経済規模は小さいながらも、それなりに国民の生活や経済、金融が安定していたウクライナが、侵攻によってそれが破壊されているではありませんか。しかも、ロシアは我が国の隣国でもあるのです。

であれば、能天気な財務省を除外してでも、防衛費を工面すべきです。そうして、それにはすでに前例があります。

それは、安倍元総理が総理時代に語っていた「日銀政府連合軍」です。これは、政府が大量の国債発行によって財源調達を行うのですが、その一方で、日銀がその国債の買い入れを行う方式です。これによって政府が巨額の軍事費を創出でき、それを外国からの武器輸入ではなく、国内の防衛産業に発注するのです、これによって不況の下支えをすることもできます。まさに大恐慌スタイルの経済政策ともなります。

これと似たようなことはコロナ対策でもすでに行われています。麻生太郎財務相(当時)と日銀の黒田東彦総裁は2020年5月22日午後、新型コロナウイルスへの対応を巡り面談しその後「事態収束のためにあらゆる手段を講じ、収束後に日本経済を再び確かな成長軌道に回復させるため、一体となって取り組んでいく」との共同談話を出しました。両者が共同談話を出したのは、英国の欧州連合(EU)離脱を巡って市場が混乱した2016年6月以来3年11カ月ぶりです。政府日銀連合軍が出来上がったのはこの時のようです。下の写真は、この共同談話発表の時のものです。


このやり方をとっていましたので、当時の第二次補正予算は、税金を用いていませんでした。マスコミや似非識者の中には、何かと言えば「血税」とか「バラマキ」などという人もいますが、これは大嘘です。緊縮病で頭が狂った財務省が言うのならわかりますが、バカもいい加減にしろと言いたいです。

この政策のリスクは、インフレ率が高まることです。しかし、日本はもともとコロナショック以前から、物価目標する達成しておらず、さらにコロナ・ショックは基本的に需要蒸発した需要ショックなので、当面はインフレというよりデフレを心配すべきときでした。

コロナ感染症が発生してからの、安倍政権と菅政権では主に「政府日銀連合軍」によってコロナ対策の資金を調達しました。両政権のコロナ感染が発生してから、菅政権が終わるまで、合計100兆円の補正予算を組みました。

これは、高橋洋一氏が語っていた、日本の需給ギャップに相当する額でした。そうして、これは大成功でした。菅政権は、コロナ対策においては、病床の確保に関しては、日本固有の鉄の三角形のなかでも、医療村の妨害にあってうまくはいきませんでしたが、脅威的にワクチン接種の速度を高め、結局医療崩壊も起こすことなく、なんとか収束する方向にもっていきました。

ちなみに、経済対策で最も重要な指標は失業率ですが、今年の3月の失業率は2.6%でした。これは、実は菅政権の成果です。


失業率は典型的な遅行指標です。景気に対し遅れて動く経済指数のことです。 内閣府が毎月作成している景気動向指数は、景気に先行して動く先行指数、ほぼ一致して動く一致指数と遅行指数の3本の指数があります。 景気の現状把握には一致指数、景気の動きを予測するには先行指数、事後的な確認には遅行指数が用いられます。

株価などは典型的な先行指標です。失業率は典型的な遅行指標であり、およそ半年前の景気の状況を表しているとされています。

3月の半年前というと、昨年の9月であり、岸田政権が成立したのは10月ですから、これは菅政権の成果によるものです。

上の表をみると、安倍政権、菅政権を通じて、コロナに見舞われてもあまり失業率が上昇していないことがわかります。これは、日本には米国等にはない雇用調整助成金があることと、安倍・菅両政権が政府日銀連合軍で巨額の補正予算を組み対策を行ったためです。

コロナ対策に関しては、国民の生命に直接関わることなので、財務省もこうした政府日銀連合軍の動きに対して真っ向か批判することもできなかったのでしょう。

こうした実例もあるわけですから、防衛費の増額に関しても、コロナ対策と同じどころか、場合によっては、コロナ対策よりも国民の生命や財産を守るために重要なわけですし、ウクライナの問題もあることから、政府日銀連合で、資金を調達すれば、これに対して財務省も真っ向からは否定できないでしょう。

夢々、財務省を説得するなどということはすべきではありません。ただ、安倍・菅両政権ではそれも可能だったかもしれませんが、財務省管理内閣岸田政権は無理かもしれません。それは、岸田政権の補正予算か2.5兆円に過ぎないことでもわかります。

それでも、まだま支持率が高い岸田内閣です。マスコミに守られています。しかし、そのようなものまるで信じられないです。なぜなら、マスコミは持ち上げて落とすのが大好きだからです。

国会でおとなしくしてさえいれば政権は維持できるし、参議院選挙に勝てばやりたい放題だし。岸田政権中枢はそう考えているのでしょうが、それを望まない勢力も動き始めています。

公明党が選挙協力に難色を示している件もありますし、それに、支持率が下がったタイミングで安倍、菅という2人の元首相が『岸田じゃダメだな』と握手したら、その瞬間に長期政権など夢で終わることになるでしょう。その「タイミング」は意外に遠くないのかもしれないです。

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2022年5月4日水曜日

ロシア、9日に「戦争宣言」か 大規模動員の可能性も―【私の論評】ロシアの宣戦布告でまたプーチンの誤算が始まる(゚д゚)!

ロシア、9日に「戦争宣言」か 大規模動員の可能性も

プーチン大統領

 米CNNテレビは3日までに、米欧の政府関係者の見方として、ロシアが早ければ今月9日にもウクライナに「宣戦布告」する可能性があると報じた。同日はロシアにとって第二次大戦の対ナチス・ドイツ戦勝記念日にあたる。これまで「特別軍事作戦」と称してきたウクライナでの軍事行動を「戦争」に格上げし、予備兵投入などの総動員をかける恐れがあるという。

 報道によると、ロシアのプーチン大統領が正式にウクライナ侵攻を戦争と宣言することのより、国内で予備兵を投入したり徴兵したりし、総力戦に乗り出すことが可能になるという。

 2月下旬の侵攻開始から露軍では人員や軍備に甚大な損失が出ており、兵力などの動員強化が「是が非でも必要」になっていると米欧関係者は分析している。

 これまで米欧の軍事・情報筋では、ロシアが5月9日の節目に何らかの「勝利」を示そうとしているとの分析があった。緒戦でウクライナの首都キーウ(キエフ)の攻略に失敗した露軍は、東部や南部に軍事行動の軸足を移している。

 ただCNNは、プーチン政権が9日に、東部ドネツク、ルガンスク両州の占領地域の併合や、東部の激戦地マリウポリの完全掌握を宣言する選択肢も残されているとしている。

ロシアの戦勝記念日をめぐっては、英国のウォレス国防相が先週、英ラジオ局の番組で、宣戦布告して総動員をかける可能性があるとの見方を示した。

【私の論評】ロシアの宣戦布告でまたプーチンの誤算が始まる(゚д゚)!

ロシアの相次ぐ方針転換は、対ウクライナ戦争が計画通り進んでいないことの裏返しといえます。早期にウクライナのゼレンスキー政権を屈服させることはできず、首都キエフを陥落させることもできず、南部からの大規模な部隊上陸もできず、ドンバス地方での戦車部隊による大規模攻勢も計画通りには進んでいません。


ウクライナに対する米欧からの重火器を含む武器支援と情報提供、ウクライナ軍の士気の高さが背景にあるのでしょう。しかし、プーチン大統領が「負け」を認めることはできません。国内で政治的求心力が低下し、独裁権力を維持できなくなる恐れがあるためです。5月9日に「戦争宣言」をして総動員をかける場合、背水の陣を敷くつもりでしょう。
国際社会で使われている戦争の始まりは宣戦布告。戦争の終わりは講和条約です。

 宣戦布告:戦争の開始
      戦争=戦闘+占領
 講和条約:戦争の終了

戦争は宣戦布告で正式に戦争が開始されます。戦争の中身は戦闘だけではなく占領も含まれています。

宣戦布告に関して、倉山満氏は現在ではそれが禁止されているがために、紛争と戦争の区別がつきにくくなったことを説明しています。そのた「戦争」は根絶されたとも言えるそうです。その代わり、すべて事変になったのですが、事変は現代ではほとんど使われず、「紛争」と言い換えられているそうです。これについては以下のリンクをご覧になってください。
宣戦布告がないのに、軍事衝突はある。これは紛争か、戦争か/倉山満
倉山氏は、’45年国連憲章で、宣戦布告は違法とされたので、以後は現在まで宣戦布告を行った国は存在しないとしています。「戦争」は根絶されたとも言えるとも語っています。その代わり、すべて事変になったが、ただし、事変は現代ではほとんど使われず、「紛争」と言い換えられているとしています。

また、"外交戦で及び腰なのがドイツとフランスだ。経済制裁にも、仏独は米英と比べ慎重だった。だからゼレンスキーは米英には満腔の感謝を示し、仏独では嫌みを交えつつ激烈な要求を繰り返した。日本でのオンライン演説は中間よりも米英寄りで、ご丁寧に「アジアのリーダーとしてロシアを制裁してくれてありがとう」とまで言って感謝してくれた。  

さて、これをプーチンが聞いたら、どう思う? 日本は、形式上は中立だが、既にウクライナの味方をしているのだ。覚悟すべし"とも語っています。まったくそのとおりだと思います。

確かに、先進国などは戦後宣戦布告をして戦争はしていないようですが、第二次世界大戦後に宣戦布告による戦争している国はあります。

ロシアは、南オセチア紛争 (2008年)において、 2008年8月9日 宣戦布告(戦争状態を宣言) を ジョージア に対してしています。ロシアが宣戦布告して、戦争したのは戦後これだけです。

ただ、先進国等はしていないことや、ロシアが現在も国連常任理事国であることから、この宣戦布告は対外向けという寄りは、ロシア国内向けという性格が大きいのではないかと思います。

ロシアがウクライナに宣戦布告をするということにより、国内を戦争体制に持っていけば、ロシア国内での予備役の動員が可能になり、軍事への優先的な物資の振り分けも可能になります。あるいは、もう既にやっていますが、情報統制なども含めて本格的に戦時体制に持っていくことが大きな目的としてあると考えられます。。

現状のロシアは、ウクライナで戦争をするための物資や人員が全く足りていません。 ウクライナと国境を接する旧来からのロシア領の方にも攻撃が始まっているという状況もあり、本格的に兵員を大量増員しないと押し返される可能性も出てきています。

そうでなくても西側諸国から、ウクライナに対して攻撃型の兵器が大量に提供されるような状況になり、ロシアとしても本腰を入れなければならなくなってきました。

ドイツがウクライナに対して、対空戦車「ゲパルト」という、自走高射機関砲の引き渡しを発表しました。またポーランドも200両ほどの戦車を提供するそうです。 

ゲバルト対空自走砲

これまではどちらかというと防御型の兵器で、向こうが攻めてきたときに撃破するための対空砲などが主体だったのですが、戦線を押し返すような武器が提供されるようになってきたのです。

開戦当初は「3日で落ちる」と言われていたキーウですが、結局落とすことができず、その兵力を東部戦線に送ったとされいますが、この東部戦線も膠着状態になる可能性が高かくなってきました。それに加えて、これまで中立的な立場を取ってきたスイスが、ロシアに対する経済制裁に向けて動いたということ、スウェーデンやフィンランドなども、NATO加盟を具体的に検討しているということで、ロシアにとっては誤算続きなのだろうと思います。

怖いのは、ロシアが、戦争状態を宣言することで、場合によってはウクライナ以外の国々への侵攻も可能になるということです。特別軍事作戦であれば、「ドンバス地方のロシア系住民の保護」という名目だったのですが、ウクライナ一国を対象にするという状況になります。 これに与する国も攻撃できるという理屈になります。

ウクライナ以外の国という意味で言うと、既にウクライナ西側のルーマニアとの間にあるモルドバ、特にウクライナとの国境にある「沿ドニエストル共和国」の辺りに向かって進軍し、「モルドバも獲る」というような話も出てきています。

当面のポイントになるのが、重要な港であるオデッサに対する攻略戦だと思います。すぐ北側はモルドバですので、そこを攻略するためには、モルドバも含めて攻撃することになると思います。 

黒海を大きく開いた口として、口蓋垂の部分をクリミア半島として見ると、その左奥にオデッサがあります。その先にモルドバがあるので、クリミア半島辺りから西に攻めていくと、全部獲ることができます。 そうするとウクライナの海岸線が全部ふさがってしまいますから、船舶による物資の供給ができなくなります。ウクライナに対しての供給を遮断することにもなります。

ウクライナはもともと穀物の輸出が盛んなところでした。輸出経路として、南側にある港から黒海を通り、ボスポラス海峡を渡って地中海に出て、そこから全世界に輸出しています。この交易ルートも遮断しようというのです。これは、「経済的な打撃を与える」ということも大きな狙いとしてあると思います。 

アゾフ海をロシアの配下にすれば、黒海がロシアの影響力下に置かれることになります。 そうすると黒海艦隊も含めて安泰になります。 加えて不凍港の確保にもなります。 これはロシア帝国の時代からのロシアの悲願でもあります。

ただ、プーチンは今までも多くの誤算をしています。この目論見どおり事が運ぶかどうかは未知数です。ロシアがウクライナに宣戦布告すると、これはロシア対ウクライナの戦争になります。

そうするとどうなるかといえば、今までウクライナはあくまで、ウクライナ国内でロシア軍と戦闘をしていたのですが、今度はウクライナがロシアに対して攻撃できるということになります。

かといって、ウクライナが戦線を拡大して、モスクワまで侵攻するということはないでしょうが、ウクライナがロシア国内の物資貯蔵所などを攻撃することは十分に考えられるわけで、現在のウクライナ軍は、NATO諸国の情報を活用できる状況にあり、そうした場所をピンポイントで正確に攻撃できます。

さらに悪いことには、ロシアには制裁により、様々な兵器の部品が入手できにくい状況になっています。なにしろ、ロシアは半導体はもとより、ボールベアリングですら精巧なものは自前で製造できません。工作機械は日本、ドイツが独壇場です。戦車や戦闘機の製造はおろか修理も、徐々にできにくい状況になりつつあります。

RPG-7(奥) とAK47(手前)

これが、またプーチンの誤算になりかねません。そうなると、いくら戦時体制で多くの人員をウクライナに派遣できるようになっても、ロシア軍の大部分は、カラシニコフ自動小銃(AK-47)と手榴弾と、せいぜいRPGミサイルで戦わざるを得ないことになるかもしれません。これでは、中東の民兵と同程度での戦力であり、とても戦争に勝てません。

それに現代の戦争は、様々な知識を必要とします。現在の戦争は、一昔前のスコップで汗まみれで塹壕をほって、小銃を構えるというのとは随分異なります。ロシアが国内で戦時体制を構築して、多くの人を戦争に参加させたにしても、その多くはあまり訓練も受けていない予備役か、素人です。あまり意味はありません。かえって、足手まといになるどころか、徒に大きな犠牲をだすことになりかねません。

ただ、そうなると戦術核や、化学兵器も使うかもしれません。その時は、ブーチンもロシアの現体制も崩壊することになるでしょう。

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2022年5月3日火曜日

財務省資料「防衛」を読んでみた:コスパだけで防衛を語る愚かしさ―【私の論評】財政の専門家集団ではなく、省益を追求する政治集団に成り果てたポンコツ財務省(゚д゚)!

財務省資料「防衛」を読んでみた:コスパだけで防衛を語る愚かしさ


財務省の配布資料「防衛」(「歳出改革部会(令和4年4月20日開催)資料3」)が防衛関係者の反発を招いている。ちなみに、上記部会の委員名簿には、著名なエコノミストの名前が並ぶものの、防衛の専門家は一人も見当たらない。

資料は冒頭、
政府として、新たな国家安全保障戦略、防衛⼤綱、中期防衛⼒整備計画の「三⽂書」を策定しているところ。新たな「三⽂書」は、防衛・外交等に関するものであるが、この中で5か年間の防衛費の総額を⽰し、これに基づき各年度の予算を精査・計上することになるため、「予算」の⾯からも極めて重要な位置付け
と宣言。素人集団ながら、「新たな国家安全保障戦略」に物申しつつ、こう宣う。
防衛⼒は、国⺠⽣活・経済・⾦融などの安定が必須であり、財政の在り⽅も重要な要素。特に、三⽂書の⾒直しは、(中略)我が国財政(予算)全体への影響も⾮常に⼤きい。それゆえ、国⺠の「合意」と「納得」を得られるよう、議論を進めければならない。(中略)このような前提に⽴った上で、(中略)根本的な論点について、正⾯から議論をしていくべきではないか
防衛関係費について国⺠の合意と納得を得られるよう、真正面から議論すべきことに異論はない。だが、あまりに身勝手な「前提」ではないだろうか。なるほど「防衛⼒は、国⺠⽣活・経済・⾦融などの安定が必須であり、財政の在り⽅も重要な要素」ではあろう。

だが、こうも言えよう。国⺠⽣活はもとより、経済・⾦融、財政いずれの分野においても、平和と安定が必須である。平和を守り、安定を維持するための防衛力こそ必要不可欠であると。万が一、わが国が外国に侵略されれば、どうなるのか。ウクライナの現状を見るまでもあるまい。経済や⾦融、財政などを名目に、防衛分野の歳出を「改革」するなど本末転倒ではないのか。

資料は「我が国のような海洋に⾯した国においては、相⼿国軍の上陸・占領の阻⽌を重視した防衛態勢を構築することが重要」と謳ったうえで、「イギリスの防衛戦略」として「近年陸軍を削減しており、更なる削減⽅針を公表=⾃国の採る戦略・戦術に即した防衛態勢の⾃⼰改⾰を実施」とも書く。要は、陸上自衛隊の削減と防衛省の自己改革を促したに等しい。

「防衛装備の必要性に関する説明責任」と題した次のページも問題だ。

「⼀部の防衛装備に関して、環境変化への対応や費⽤対効果の⾯をはじめとして様々な課題を指摘する声もある。こうした課題を抱える装備品に引き続き依存することが最適と⾔えるのか、また⼤きなコストを投下しなければならないのか、防衛⼒を強化していく上で、その必要性について改めて国⺠に説明を尽くす必要があるのではないか」とのリード文を掲げ、「イージス・アショアの洋上化等(迎撃ミサイル)」と「陸上戦⾞・機動戦闘⾞(地上戦闘)」を取り上げている。

前者のアショア洋上化について【説明を求める声】を、①能力、②運用、③コストのそれぞれの面から並べ立てたうえで、「コスト面から見た非対称性」と題して、「弾道ミサイル防衛に係る経費」約2兆7,829億円注1)に加えて「アショア及び洋上化に係る経費」1,842億円以上注2)を明示したうえで、「弾道ミサイル(北朝鮮)3億円~10億円程度/1発(短距離~中距離)」と比較している。

要するに、弾道ミサイル防衛はコスパが悪いと言いたいわけだ。素人の皮算用にも程がある。北朝鮮の核ミサイルを迎撃するための装備品なのだ。コスパを語るほうが、どうかしている。そもそも経済合理性で軍事を語ること自体おかしい。しかも後者の北ミサイルは「(出所)報道情報による(注)⾦額は推定」ときた。バカも休みやすみ言え。

後者の「陸上戦⾞・機動戦闘⾞(地上戦闘)」も同様である。

「物量で勝るロシア軍に対し、ウクライナは⽶国製の携帯型対戦⾞ミサイル「ジャベリン」等を使⽤して激しく応戦。多くの戦⾞・装甲⾞の破壊に成功。戦⾞や機動戦闘⾞と⽐較して、ジャベリンは安価な装備品であり、コスト⾯において、両者はコスト⾮対称。物量で勝る敵⽅に対抗するために、対戦⾞ミサイル等を活⽤することはコストパフォーマンスを⾼める可能性」と明記。ここでも「コスト⾯から⾒た⾮対称性」と題し、陸上自衛隊の「戦⾞・機動戦闘⾞(R4予算)10式戦⾞:約14億円 / 1両」、「16式機動戦闘⾞:約7億円 / 1両」を、「ジャベリン(⽶国製)」の「ミサイル:2300万円程度 / 1発」「発射ユニット:2億7000万円程度 / 1機」と比較している。

要するに、陸自の戦車はコスパが悪いと言いたいわけだ。百歩譲って、そうだとしても、かつて「51大綱」で約1200両(定数)だった陸自の戦車が現大綱で300両まで減っている。上記はさらに減らすべき理由になっているだろうか。さらに言えば、各国がウクライナに戦車を提供している現状が、エコノミストらの眼には入らないようである。

続く「新たな装備品・運⽤法導⼊に当たって」と題したページでも、「特に、⻑期間に渡って、多額の開発・運⽤コストが⽣じかねない」として「次期戦闘機」と「敵基地攻撃能⼒」を指弾し、「被我のコスト負担のバランスはどうあるべきなのかといった点を含めて多⾯的に検証し(中略)説明責任を果たすべきではないか」と訴えている。

わが国は核保有国に囲まれている。すでに四桁の核ミサイルの射程下にある。軍事・防衛は国家の主権と、軍人(自衛官)を含む国民の生命にかかわるプライスレスな世界だ。なんでもかんでも「被我のコスト負担のバランス」で測れると思ったら、大間違いである。



注1)(直近3年度の予算(※))※ミサイル取得費⽤に加え、防衛に必要となる整備費⽤や訓練経費等を含む。弾道ミサイル関係の予算は、H16〜R4の総額で約2兆7,829億円

注2)「イージス・アショアの契約額:1,784億円」。「レーダーの洋上化経費:58億円(R4年度予算) -艦船建造や発射試験等のため今後も多額の費⽤が⽣じる可能性」

【私の論評】財政の専門家集団ではなく、省益を追求する政治集団に成り果てたポンコツ財務省(゚д゚)!

この資料「防衛」はネット上で公開された直後はマスコミも含めて見向きもされていなかったのですが、突然脚光を浴びました。そのきっかけは、ヤフーニュースで軍事解説をしているライターのJSF氏による1日未明のツイッター投稿で拡散されたことでした。JSF氏のその後のツイートによると、別の人物が提起した内容を拡散したものだそうです。

ただ、JSF氏がツイートしなければ、これほど拡散はされなかったかもしれません。

 ネット上に公開している資料を引き合いにして「日本の財務省は防衛費を抑制しようと、当のウクライナが「戦車を寄越せ」と要求していることを意図的に無視して、自衛隊も対戦車ミサイルで戦えと言い出した」と投稿しました。

この投稿は1日でリツイート数が1万件を超えるなどの反響を呼び、瞬く間にネット上で拡散しました。

一連の騒ぎには、昨今のウクライナ情勢で活躍中の専門家らも反応しました。日米の安全保障が専門の小谷哲男・明海大教授は「戦車は高いのでジャベリンの方が費用対効果が高いとか、北朝鮮の弾道ミサイルの迎撃は核搭載の可能性は無視して費用対効果が低いとか、論点満載」とツイートしました。

防衛副大臣を経験している自民党の長島昭久衆院議員は小谷氏の投稿に反応し、「この財務省文書を完膚なきまでに論破する必要がある」と怒り心頭のツイートをしています。

自民党の細野豪志衆院議員は「財務省の資料のジャベリンが話題になっているが、彼らの仕事は予算を枠内に収めること。国家的な危機における判断基準は全く次元が異なり、その判断こそが政治家の仕事だ。ここで政治が財務省に負けるようでは話にならない」と、政治判断の重要性を指摘しました。

ウクライナ戦争で有名になったジャベリンン


財務省は「一定の知識を持つ専門家集団」というイメージがありますが、それがまるで政治集団のようになってきています。

上記の「防衛」に関することもそのようですが、財政再建にしても、そのような傾向が目立ちます。

財務省は従来から、「緊縮財政」や「消費増税」の必要性を訴えていますが、具体的になぜ必要なのか理路整然とした説明をしていません。「しない」というより「出来ない」と言った方が正確なのかもしれないです。

数量政策学者でもある、高橋洋一氏が財務省で働いていた頃、財政がどのように大変なのかをきちんと説明しようと独力でバランスシートを作ったそうです。

当初、それは上層部の圧力により外部には出せなかったのですが、内部資料として小泉総理大臣(当時)にそれを見せたところ「そういうのがあるのならば出せばいい。」という一言を頂いたそうです。

そしてそのバランス・シートは現在でも財務省内で毎年使われています。そもそも財務諸表がなくて財政が語れる訳がないのです。

日本銀行も入れて政府と日銀の連結(統合政府)ベースでは、高橋洋一氏が独自に作ったバランスシートを見れば債務超過などないことは明らかであり、財政の危機や国債の暴落などあり得ません。

高橋洋一氏は30年前から財務省の中でバランスシートの重要性を語っていたのですが、「確かにそうかもしれないが、そんなこと言える訳ないだろう」ということばで終わったそうです。

都合の良いことも悪いことも財務諸表規則に基づいて開示するということが基本であるにもかかわらず、財務省にはそういう考えがないのです。現在の財政状況を具体的に言うと、日銀と政府の連結で、資産1500兆円、負債は国債1500兆円と銀行券500兆円です。

銀行券が無利子無徴税権が簿外資産にカウントされているという事と、無利子無償還の日銀券を負債とし、国債を資産とする日本銀行のバランスシートを組み込むと、500兆円の資産超過になります。実際にマーケットもそれを反映していて、いくら財務省が財政危機と煽っても金利は上がらないし、円の大暴落もしないのです。

矢野財務次官

にもかかわらず、財務省は財政危機を煽り、機会さえあれば消費税増税を煽るわけです。合理的説明なしにこれを言うのですから、これは専門家的立場から言っているのではなく、政治的言動であるとしか受け取りようががありません。では、何のために政治的な発言をするかといえば、それは省益のためでしょう。

しかし、財務省は本来政府の下部機関にすぎないわけですから、このような政治的発言はできないはずです。政治的発言ができるのは、本来政治家であるはずです。なぜなら、政治家は選挙で国民から選ばれていますが、財務官僚はそうではありません。

さらに、政府が国家安全保障戦略、防衛⼤綱、中期防衛⼒整備計画の「三⽂書」を作成しているわけですから、財務省とししてはこの三文書をもとに専門家的立場から、防衛予算をりつあんするのが仕事です。

無論、政府に対して助言などはできますが、財務省の配布資料「防衛」を作成し、しかもそれをサイトで一般公開したり、その資料を持参して各方面で説明をして歩くというような政治活動をするということは、本来ならば越権行為ともいえるでしょう。

なぜなら、財務省は政府の財務方針に従い、専門家的立場からどのような財務的手段を選ぶのかに責任を負うのであって、防衛に関しては全く責任を負う立場にはないからです。

特に、財務省が財政に関してさえも、越権行為をしているのに、防衛分野にまでこのようなことを許せば日本はとんでもないことになります。これが批判されずに放置されれば、エネルギー・食糧・その他の重要な分野に踏み入って政治的発言をすることを許すことになりますが、それはもう実はすでに行われていることです。

矢野康治事務次官と、国会で談笑する麻生太郎財務相(当時)。(2021年2月)

多くの国民があまり知らないだけで、それはすでに行われています。今回、防衛分野でそれがたまたま表にでてきたというだけです。

ただ、こういうことは外国でもある程度はありますし、日本の他の省庁でもそのようなことはありますが、日本の財務省はその度合がきつすぎるといえます。

この問題を自分の働く会社などの組織にあてはめて考えてみてください。財務部や経理部が会社全体ではなく、コストの観点からだけものを考えて会社の様々なことに口を出したらどうなるでしょうか。

会社には社長をはじめ、取締役もいますが、それらの人々を差し置いて、財務部長等が権力を持ち、社内のあらゆる部分に影響力を行使した場合、それもコストの面からのみ行使した場合、会社はどうなるでしょうか。おそらく崩壊します。なぜなら、コストだけを考えたら、新人採用も、設備投資もしないほうがよいことになるからです。

ただ、政府の場合は、各省庁の職員の給料など税収などで賄われているので、倒産しないだけです。しかし、この状況はいずれ是正されなければなりません。

そのためにも、財務省のこのような政治的な振る舞いに関しては、私達も絶対に許さないという構えで世論を形成していく必要があると思います。

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2022年5月2日月曜日

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ウクライナの教訓


自衛官は、日本と国民を守るために日々任務と訓練を続ける

 ロシアによるウクライナ侵攻の教訓として、多くの論者が「自分の国は自分で守る」重要性を語る。しかし、不安が募る。この国は大丈夫なのかと。

 NHKはじめ地上波には、ウクライナの応戦を批判する大学教授や弁護士コメンテーターが連日出演する。BS放送も例外でない。

 東大先端科学技術研究センター専任講師の小泉悠氏が、男性司会者に次のように問うた。「自国が侵略されたときに、国民が抵抗するのが、そんなに不思議ですか」(3月16日放送)。後は推して知るべし。

 問題はメディアだけではない。当初、在日ウクライナ大使館がツイッター上で、「自衛隊など専門的な訓練の経験を持つ人」を対象に「義勇兵」を募ったが、日本政府は「ウクライナ全土に退避勧告を発しており、目的のいかんを問わず渡航を止めていただきたい」と冷や水を浴びせた。

 ならば、現地で取材を続ける日本人特派員らはどうなのか。なぜ、NHKにも「渡航を止めていただきたい」と言わないのか。

 あるいは、ウクライナが組織した「ITアーミー」への〝リモート義勇兵〟なら許されるのか。それとも、日本政府はサイバー空間での〝参戦〟すら止めるのか。あるいは平和憲法がそれを許さないのか。

 日本には、米電気自動車大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)らと交渉した、ウクライナのミハイロ・フェドロフ副首相(兼デジタル担当)のような政治家もいない。それどころか、パソコンも使えない高齢者が平然とIT担当相に就く。

 最大の問題は、命と平和の大切さだけが語られる日本の現状だ。

 例えば、「人間は避けることのできない死を避けようとして、避けることのできる罪を犯す」(アウグスティヌス)とは、決して考えない。

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は英議会での演説で『ハムレット』を引き、「生きるべきか、死ぬべきか」と問うた。だが、後に続く以下のセリフを、多くの日本人は知らない。

 「どちらが男らしい生きかたか、じっと身を伏せ、不法な運命の矢弾を耐え忍ぶのと、それとも剣をとって、押しよせる苦難に立ち向い、とどめを刺すまであとには引かぬのと、一体どちらが」(シェークスピア『ハムレット』新潮文庫)

―いまは「男らしい」ではなく、「高貴な」と訳した方がよいかもしれない。

 いずれにせよ、英国エリザベス朝時代を代表する作家と、(国際法上許された自衛権行使すら批判する)令和日本の学者やコメンテーターとの乖離(かいり)は本質的である。

 「戦争反対」しか言えない連中は男らしくない。いや、高貴でない。つまり卑しい。

 「自分は守るが他人は助けない」。命が助かれば、それでよし…。何とも卑しい。少なくとも私は剣を取り、後には引かぬ。 =おわり


■潮匡人(うしお・まさと) 評論家・軍事ジャーナリスト。1960年、青森県生まれ。早大法学部卒業後、航空自衛隊に入隊。第304飛行隊、航空総隊司令部、長官官房勤務などを経て3等空佐で退官。拓殖大学客員教授など歴任し、国家基本問題研究所客員研究員。著書・共著に『安全保障は感情で動く』(文春新書)、『誰も知らない憲法9条』(新潮新書)、『尖閣諸島が本当に危ない!』(宝島社)など。

【私の論評】ねじ曲がった憲法解釈から生まれた「すべての戦争に反対」という考えは根底から間違えている(゚д゚)!

日本でのウクライナ戦争への反応で目立つのは「戦争反対」の声です。村上春樹氏のような著名な作家までもが「ウクライナでの戦争に反対!」と主張する活動を展開しています。

日本での「戦争反対」の源流をたどれば、日本国憲法の異様な解釈にぶつかるでしょう。憲法9条は日本に対して戦争を禁じ、交戦権を否定し、戦力の保持をも禁止していると思い込む人が多いからです。

しかし、この考えは、昨日も指摘したように、根本的に間違いです。

国連憲章にも明示され、パリ不戦条約にまで遡る「国際紛争を解決する手段としての戦争の放棄」を憲法典に盛り込んでいる国は、日本以外にも多数あり、それらの国々は軍隊を持ち、無論自衛権を放棄していません。日本だけが特異なねじ曲がった憲法解釈をしているだけです。これはもうやめるべきです。

なぜそのこのようなことがほとんど気づかれないで、日本は自衛権を放棄しているとか、自衛隊は違憲であるなどという間違った憲法会社が日本には横行しているのでしょうか。

それは、無論昨日も掲載したように、日本の根性がひねまがり、頭がいかれた憲法学者らの責任も大きいことでしよう。

しかし、それだけではないです。日本の主流といわれる憲法学者らの、憲法解釈が、異常であることなど、少し他国の憲法をみてみたり、国連憲章やパリ不戦条約をしらべてみれば、誰もが容易に理解できることです。

しかし、多くの人、特に上の記事にもある、「戦争反対」しか言えない卑しい連中は、憲法学者のねじ曲った憲法解釈を鵜呑みにして、何ひとつ疑うこともなく「国民として、とにかく戦うことは一切、禁止というのが日本国憲法の真髄である」と思い込み、「戦争反対」と叫ぶための根拠としているのです。


この「戦争反対」の概念には「平和」という言葉が一体となって、からんでいるようです。平和のために戦争を止める、その平和こそ人類、あるいは人間にとって最高至上のあり方なのだ、というわけです。現在の日本で作家の村上春樹氏のような人たちはそのような日本の基準をウクライナにも当てはめ、「戦争反対」を叫んでいるのでしょう。

しかし、ウクライナに対して、「戦争反対」、つまり戦うことを止めろと、号令をかければ、自国の防衛に命を賭けるウクライナの国民、あるいは軍人に対して、ロシアへの抵抗をもう止めろ、と命じることに等しいです。

現在多くの国々の人々が、ウクライナ情勢に関して反対しているのは戦争自体に反対ではなく、ロシアの侵略です。ロシアによるウクライナへの侵攻です。侵攻とは、挑発もされないのに、先制武力攻撃を行うことです。プーチンは色々と言い訳をして「ウクライナが先に挑発してきた」と言っているが、国際社会の圧倒的多数は「それは挑発と認められない」と評価しています。まず起こるべき声は「侵攻」のはずです。

この侵攻に対して、日本流に「戦争はよくないから」と非戦を実行すれば、戦争をためらわないロシアの意図どおりになってしまうだけです。

ウクライナが戦いを止めれば、ウクライナという国家が失わてしまいます。国民の自由や独立、自主性、主体性、そして国家としての主権もなくしてしまうのです。戦争さえなければ、それでもよいのでしょうか。無抵抗、そして全面降伏となる戦いの停止を求めることは、当事者からすればあまりに無責任です。

ウクライナの国家も国民もロシアの侵略に直面して、戦ってその侵略を防ぐという道を選んだことは明白です。にもかかわらず、遠い日本にいて、戦いを止めろ、と声をかけるのは、あまりに無責任な言動だといえます。浴びせるべきはロシアであり、プーチンであり、それも「戦争反対」ではなく「侵攻反対」であるべきです。

ウクライナ軍 女性兵士

日本は、戦後の「戦争反対論」や「平和主義」を再考し、「戦争反対」などの言動は破棄すべきです。なぜなら日本の「戦争反対」や「平和を」という主張はすべての戦いを否定するという立場に立脚しているからです。

しかし国家であろうとも、人間の集団や個人にしても、生存していくうえで、その生存自体への危機や脅威とも戦ってはいけないとなれば、それは命を脅かすものに対して格好の理屈、理由を与えるるだけ、あとは死を待つのみです。

人間が自分を守るために戦う。これは国ならば個別の自衛権の発動です。人間が愛する他者を守るために戦う。これは国ならば集団的自衛権の発動となります。人間はさらに正義を守るためにも戦う。これが同盟の考え方であり、国連の平和維持活動の実践でしょう。

しかし日本の憲法9条は、ねじり曲がった憲法学者の解釈により、上記のいずれの戦いも禁じているように解釈しています。これは無理もないかもしれません。日本国憲法の異常な解釈は、その目的のために作られたからです。そうして、米国はそのことを知りながらも、日本を弱体化するという立場から、それを許容し放置してきたのだと思います。

しかし、このような認識は空想に過ぎず、世界の現実には戦って守るしかないという状況がいくらでもあることは、あまりに明白です。

しかし、いまやウクライナに「戦わなければ滅亡する」という現実の状況が出現し、日本はそれでもなお「戦うな」と叫ぶべきなのでしょうか。そんな馬鹿な話があるはずはありません。それを認めれば、中国やロシア、北朝鮮も大喜びでしょう。

憲法解釈を変更すれば、そもそもこのような要件など必要ない

特に、今の日本では左翼だけではなく、いわゆる保守層の中にも日本国憲法は「すべての戦争」を禁じていると解釈しているのか、解釈しているようにみせている人たちも大勢います。

そのように解釈している人たちは、結局こと戦争においては、左翼の人とあまり変わりないと思います。

そのように解釈しているようにみせかけている人たちは、何らかの意図があるのでしょう。それは、おそらく実質的米国が作成した「日本国憲法」が気に入らないのでしょう。その気持は良くわかります。そうして「日本国憲法」が自衛まで禁じているということにして、憲法を根本的につくり変えたいのでしょう。

もし憲法改正ではなく、憲法解釈の変更によって自衛権の正当化、自衛隊の合憲化が実現してしまえば、日本国憲法改正の論議が止まってしまい、日本人の手による「日本国憲法」が成立する可能性がなくなってしまうと危惧しているのかもしれません。

ただ、それは心配しすぎかもしれません。現行の日本国憲法は、実質的に米国によって作成されたこと、憲法9条は、日本独自のものではなく、これは国連憲章にも明示され、パリ不戦条約にまで遡る「国際紛争を解決する手段としての戦争の放棄」を憲法典に盛り込んでいるだけであり、これは他の国でも憲法典に盛り込んでいることを訴えれば、多くの人の思い込み、思い違いを是正でき、意外とそのほうが憲法改正の早道になるかもしれません。

それよりも何よりも、憲法解釈を国際法を根拠とした、国連憲章にそったものにしなければ、日本国憲法は「すべての戦争に反対」しているという思い込みは、これからもはびこり、日本国の存立自体を危うくし、憲法論議どころではなくなるかもしれません。

それに新憲法に、まかり間違えて「すべての戦争に反対」的なものが明確に盛り込まれてしまえば、日本は確実に滅びます。



2022年5月1日日曜日

日本には憲法9条があるから、自衛隊は違憲である…そんな「憲法解釈」は根底から間違っている―【私の論評】集団的自衛権の行使を「限定」せず、現時点で備えうるすべての機能を備えられるように、憲法解釈を是正すべき(゚д゚)!

日本には憲法9条があるから、自衛隊は違憲である…そんな「憲法解釈」は根底から間違っている

篠田 英朗

 ロシアのウクライナ侵攻に対し、日本はどのような態度をとるべきなのか。東京外国語大学の篠田英朗教授は「日本国憲法は、国際協調主義を掲げており、国際法に沿って行動する『軍隊』の存在を否定していない。そうした前提のうえで、日本も国際秩序を維持するために努力するべきだ」という――。(後編/全2回)

■憲法9条1項の文言は、素直に国際法に調和している

 (前編から続く)日本国憲法は、前文において、「恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想」を自覚して、「平和を愛する諸国民の公正(justice)と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意」し、「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたい」とうたっている。

 そして「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認」して、国際協調主義の「政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務」だという信念を披露している。

 「平和を愛する諸国民(peace-loving peoples)」は、1940年大西洋憲章から1945年国連憲章に至るまで、一貫して連合国(United Nations)のことを指す概念として用いられていた。したがってここで「平和を愛する諸国民の公正(justice)と信義に信頼」するとは、アメリカを筆頭国とする連合国が作った国際法体系を信頼し、それに沿った安全保障政策をとっていくという趣旨であり、つまり日米安全保障条約に裏付けられた将来のサンフランシスコ講和条約を見通したものだった。(参考記事:「英語で読めばわかる『憲法解釈』の欺瞞」)

 日本国憲法9条の冒頭の「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」、という文言は、前文の内容を再強調する意図を持つものであった。1928年の不戦条約と、1945年国連憲章の文言を切り貼りしただけと言ってもよい、憲法9条1項の文言は、素直に国際法に調和しているものとして読むべきである。国際法に挑戦して、侵略に正当に対抗するために用意されている自衛権を否定するものだ、と読むことは、不可能だ。

■憲法9条が定めたのは「大日本帝国軍の解体」である

 憲法9条2項は、「戦力不保持」と「交戦権否認」を定めている。ここで「戦力」は、もともとは「war potential」という連合国が使用していた行政用語であり、大日本帝国軍の解体に伴って接収対象となった違法な「戦争」をする潜在力のことである。すでに1項で国際法に沿って「戦争」の違法が定められているので、2項でその潜在力の保持も否定するのは、全く当然のことである。

 つまり、憲法9条が、ポツダム宣言受諾に沿って、大日本帝国軍を解体する国内法上の根拠を提供している、ということである。将来にわたって国際法において合法である自衛権行使の手段もついでに保持しない、という意表を突いた含意は、認められない。

 「国の交戦権(the right of belligerency of the state)」という概念は、実際には国際法において存在しない。それを「認めない」と宣言したところで、いわば「幽霊の存在を認めない」と宣言するのと同じなので、現実の世界には何も変化をもたらさない。単に「国際法を遵守する」と宣言することと同じである。

■9条が否定した「交戦権」とは何か

 それではなぜあえて「交戦権」なるものの存在を否認するかというと、戦中に権威ある戦時国際法のマニュアルを作っていた信夫淳平らが、大日本帝国憲法の「統帥権」規定などを根拠に、主権者は自由に宣戦布告をして戦争を行う「交戦権」を持っているなどと主張していたからである。日本も加入していた国際連盟規約および不戦条約に反した考え方であったが、真珠湾攻撃後の日本における軍部主導の政治状況の下では、出版を目指すのであればとらざるをえない立場であった。

 憲法9条2項が否定しているのは、戦中の日本に存在していた、国際法を否定するこの「交戦権」なる概念である。それによって憲法は、国際法遵守の態度をよりいっそう明確にする。憲法9条に、国際法に留保を付す意図はない。

 素直に日本国憲法典を読めば、憲法が国際法に合致したものであることは、自明である。そもそも日本を、国際法を遵守する国に生まれ変わらせるために制定されたのが、日本国憲法である。その背景と趣旨を考えれば、憲法が国際法を否定するはずはないのは当然であり、留保の要素もあるはずがない。

■憲法学者の陰謀論めいた「絶対平和主義」説

 ところがほとんど陰謀論者めいた憲法学者のイデオロギー的解釈によって、本来の憲法の国際協調主義的は埋没させられることになった。

 連合国軍総司令部(GHQ)総司令官であったダグラス・マッカーサーは、回顧録において、次のように述懐した。「第九条は、国家の安全を維持するため、あらゆる必要な措置をとることをさまたげていない。……第九条は、ただ全く日本の侵略行為の除去だけを目指している。私は、憲法採択の際、そのことを言明した。」

 ところが憲法学者は、マッカーサーは冷戦の勃発によって態度を変えたのだ、と主張する。当初は、国際法から乖離(かいり)した絶対平和主義を標榜していたはずだ、というのである。その根拠は、いわゆる「マッカーサー・ノート」と呼ばれる憲法草案起草を部下に命じた際の走り書きだけである。

 しかし、単なる走り書きの内部メモの文言を拡大解釈させて憲法解釈の指針とまでしてしまうのは、全く不適切である。マッカーサーは、部下たちが国際法に合致するように文言を整備した憲法草案に、何も異議を唱えていない。

 憲法学者は、憲法9条の冒頭に国際協調主義の前文の趣旨を確認する文言を挿入した芦田均(憲法改正小委員会の委員長)を、憲法9条を捻(ね)じ曲げる姑息(こそく)な行動をとった人物だと非難したうえ、その画策は憲法学通説によって打ち破られたといった「物語」も広めている。

 だが、憲法そのものの一貫した趣旨を明確にしようとした芦田が、なぜ非難されなければならないのか。根拠のない解釈を「憲法学者の大多数の意見だ」という理由で押し付けようとする、憲法学者のほうが横暴なのではないか。

■日本国憲法は国際法上の自衛権を否定したのか

 1946年に憲法案が審議された際、共産党の野坂参三議員が、新憲法は「自衛戦争」を認めないのか、という質問をしたのは有名である。これに対して当時首相であった吉田茂は、次のように答えた。

 「私は斯(か)くの如きことを認むることが有害であると思ふのであります(拍手)近年の戦争は多く国家防衛権の名に於(おい)て行はれたることは顕著なる事実であります、故に正当防衛権を認むることが偶々(たまたま)戦争を誘発する所以(ゆえん)であると思ふのであります」(第90回帝国議会 衆議院 本会議 第8号 昭和21年6月28日)

 これをもって憲法学者は、吉田は国際法上の自衛権を否定し、絶対平和主義をとっていた、などと主張する。「自分は国際法上の自衛権を否定したことはない」という後の吉田の説明を、憲法学者は否定する。

 だがこれは、国際法の概念構成を無視した、悪質で不当な糾弾である。そもそも質問者の野坂が、憲法は「自衛戦争」を認めているのか、と聞いた時点で、戦前の日本の軍部が自己正当化の道具として用いたあの「自衛戦争」を、憲法は認めているのかという問いになってしまっている。

 戦前の軍部が主張した「自衛戦争」なるものを、日本国憲法は国際法の考え方に沿って、認めない。吉田の回答はごく原則的なもので、何らおかしなところがない。しかしそれは国際法上の自衛権の否定とは、全く違う。

 戦前・戦中の日本の軍部が主張した「国家防衛権」や「国家の正当防衛権」なるものは、いずれも国際法に存在しない概念だ。「交戦権」や「自衛戦争」も同様である。吉田が否定したのは、国際法に存在しないそうした概念を振り回し、現代国際法では認められない行為が許されるかのような詭弁(きべん)を使うことであって、国際法上の自衛権を否定したわけではない。

 そもそも国際法では認められていない概念を、ドイツ国法学の擬人法的な「国家は生きる有機体で、自然人と同じような権利義務の主体だ」といった考え方で強引に採用しようとするから、「自衛戦争」といった奇妙な概念を認める否か、という押し問答が生まれる。混乱は、戦前にプロイセンに留学した者たちが学界を寡占的に支配し、ドイツ国法学に沿った憲法理論があたかも人類普遍の真理であるかのように思い込みがちだったところから、生まれてきている。つまり学者たちの陰謀あるいは誤解の所産でしかないのである(参考記事:「東大名誉教授が掲げる『憲法学者最強説』のウソ」)

■国際法概念に沿った憲法解釈や改憲を

 日本国憲法は、国際法を遵守することを求めている。したがって憲法解釈も、国際法に沿って素直に行えばよい。そうすれば、国際法にも憲法にも存在しない奇異な概念から成り立つ「『交戦権』や『自衛戦争』を日本国憲法は認めているか否か」といった類いの問いを、深刻に受け止める必要もなくなってくる。「戦争は一般的に違法であり、そのため対抗措置としての自衛権の行使は合法である」、という国際法の原則だけを淡々と述べ、それに沿って憲法を理解すれば十分だということになってくる。

 ウクライナにおける具体的かつ深刻な国際的な危機を目撃して、今や日本社会にも、憲法学通説の憲法解釈では現実に対応できないという認識が広がっている。それは憲法典がおかしいからではない。冷戦時代の左右のイデオロギー対立の構図の中で、素直な憲法解釈がないがしろにされたことが、諸悪の根源なのである。今こそ、国際法に沿った、素直な憲法の理解を確立したい。

 イデオロギー対立の結果、憲法解釈が混乱してきている事情はある。それを改善するには、憲法改正を行うべきだということであれば、それはそれで歓迎である。例えば9条3項を新設し、国際法に沿って行動する「軍隊」が、憲法9条の規定にも憲法全体の理念にも反していないことを明らかにするのは、適切だろう。

 いつまでも冷戦時代のイデオロギー対立にとらわれ、素直に憲法を理解することを恐れたままでは、日本の安全保障政策および国家としての体系性は、いよいよ近い将来に壊れていく。現実を直視すべきだ。

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篠田 英朗(しのだ・ひであき)
東京外国語大学教授
1968年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大学大学院政治学研究科修士課程修了、ロンドン大学(LSE)大学院にて国際関係学Ph.D取得。専門は国際関係論、平和構築学。著書に『国際紛争を読み解く五つの視座 現代世界の「戦争の構造」』(講談社選書メチエ)、『集団的自衛権の思想史――憲法九条と日米安保』(風行社)、『ほんとうの憲法―戦後日本憲法学批判』(ちくま新書)など。
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【私の論評】まずは、集団的自衛権の行使を「限定」せず、現時点で備えうるすべての機能を備えられるように、憲法解釈を是正すべき(゚д゚)!

上の記事の前編は以下のリンクからご覧になれます。


わたし自身は、上の論考に近いもの憲法学の京都学派の論考をもとに何度かこのブログに掲載したことがあります。その典型的な記事のリンクを以下に掲載します。
佐々木惣一の「憲法第九条と自衛権」―【私の論評】安保法制=戦争法案としてデモをする人々は、まるで抗日70周年記念軍事パレードをする人民解放軍の若者と同じか?

「戦争したくなくて震える」というキャッチで札幌で挙行された安保法制改正反対のデモ

 これは、安保法制改正の審議が行われていた、2015年7月26日の記事です。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の一部分を掲載します。

私自身は、日本国憲法はGHQ により定められたものであり、日本人の手によるものではないのですが、さすがにいくら当時のGHQが日本の弱体化を図っていて、日本国憲法は彼らの草案によるものではありますが、どう考えでも、自衛のための戦争、戦力保持、交戦権を完全否定しているとは考えられません。
いくら当時のGHQが、コミンテルンのというソ連のスパイに浸透されていたという歴史的事実があるにしても、ソ連にしても、いかなる国であろうと、自衛権まで完璧に否定するような憲法などあり得ないと考えていたし、それが常識だと思います。
当時のソ連としては、国際的紛争の手段として、将来日本が復活して再度強大な軍事力を用いれば、過去には関特演に圧倒され怯えていたソ連もいずれまた脅威に晒されることになる恐れも十分あったので、これは完全に否定したものの、自衛権まではさすがに否定しきれなかったと思います。
自衛権を否定する憲法を草案したとしたら、それは採用されるはずもないという判断というか、そもそもそんなことはあり得ないということで、少なくとも潜在意識中にはそのような観念があったと思います。だからこそ、日本国憲法9条も、佐々木惣一氏の指摘するように、自衛権そのものまで否定するものではないと私は、考えます。

その後、このブログには、日本国憲法は、国連憲章やパリ不戦条約などを前提としたものであり、そのような憲法は日本だけではなく、他の国の憲法にも存在することも掲載したことがあります。 

パリ不戦条約とは、第一次世界大戦後に締結された多国間条約で、国際紛争を解決する手段として、締約国相互で戦争の放棄を行い、紛争は平和的手段により解決することを規定したものです。パリ条約(協定)、パリ不戦条約、ケロッグ=ブリアン条約(協定)とも言います。


当条約には期限や、脱退・破棄・失効条項が予定されていないため、この条約は現在でも有効との論があります。

当条約と類似の著名な主張、各国憲法、国際条約などには以下があります。

●1713年 サン・ピエール『永久平和の草案』(国際法による戦争放棄を主張)

●1791年 フランス憲法(1848年憲法の前文、1946年憲法の前文に復活)
フランス国民は、征服の目的をもって、いかなる戦争をも行うことを放棄し、またいかなる国民の自由に対しても決して武力を行使しない。— 1791年 フランス憲法

●1931年 スペイン憲法(国際紛争を解決する手段としての戦争の放棄)

●1935年 フィリピン憲法(国際紛争を解決する手段としての戦争の放棄)

●1945年 国際連合憲章
いかなる紛争でもその継続が国際の平和及び安全の維持を危くする虞のあるものについては、その当事者は、まず第一に、交渉、審査、仲介、調停、仲裁裁判、司法的解決、地域的機関又は地域的取極の利用その他当事者が選ぶ平和的手段による解決を求めなければならない。— 国際連合憲章第33条 (1945年6月)
●1946年 日本国憲法
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。— 日本国憲法第9条第1項 1946年 
●イタリア共和国憲法
イタリアは、他人民の自由に対する攻撃の手段としての戦争及び国際紛争を解決する手段としての戦争を放棄する(以下略)— イタリア憲法第11条1946年 
●ブラジル憲法

●1947年 東ドイツ憲法

●1949年 西ドイツ憲法
諸国民の平和的共存を阻害するおそれがあり、かつこのような意図でなされた行為、とくに侵略戦争の遂行を準備する行為は、違憲である。これらの行為は処罰される。— ドイツ基本法第26条第1項
以上の国々では、日本を除いてすべて軍隊が存在しますし、日本以外の国で自衛権を放棄している国などありません。こういう現実をみれば、日本だけが軍隊も持てない戦争もできないなどという日本の憲法解釈は単なる錯誤であることがおわかりいただけると思います。

ただ、京都学派の佐々木惣一氏は、1965年に亡くなられていますし、現代的な見地からこの問題に踏み込んだ論考は私には、できませんでしたし、似たようなことは当時から何人かの人たちがしていたのですが、それでも大きな動きになるようなことはありませんでした。

佐々木惣一氏

ただ、ロシアによるウクライナに対する武力侵攻により、憲法問題にも関心が集まり、篠田 英朗の現代的な観点からの、上記のような論考が公表され、まさに我が意を得たりという思いまがします。

今後保守、リベラル・左派を問わず、篠田 英朗のこの論考を無視して論を展開することは許されないと思います。既存の憲法学者らはこれを無視するでしょうが、それは傲慢不遜というものです。

現行憲法下で侵略に抵抗する自衛権の行使は何ら問題がない事は自明といえます。であれば今必要な議論は、本来は戦力によっての日本の自衛力を高め、実際に侵略された時にどう抵抗するかの議論すべきであると考えます。

そうして、保守派の9条改正論議は、リベラル・左派さらには一部の保守派による自衛権の行使に問題ありとする根拠なき誤解、曲解を完璧になくすために、改正するというように展開していくべきではないかと思います。

ただ、現在の日本国憲法は「連合国=国連」を「信頼」しています。国連安全保障理事会の常任理事国であるロシアはもちろん、国連加盟国である北朝鮮も含む、「諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」ことになっているのです。

そうして、これは「国連が定める武力行使禁止一般原則」および集団安全保障や個別的・集団的自衛権の仕組みを信頼して、自分たちの安全と生存を維持する、ということを意味しているのです。

ところが、今回のロシアのウクライナ侵攻によって、「国連が定める武力行使禁止一般原則」は平然と安保理の常任理事国によって破られたのです。

もはや国連の「集団安全保障」が機能していないのです。「個別的・集団的自衛権の仕組み」(日米同盟)が重要性を増すことになりました。

やはり集団的自衛権の行使を「限定」せず、現時点で備えうるすべての機能を備えられるように、憲法解釈を是正する必要があります。それが今回の教訓です。

そうして、憲法改正をするなら、日本には自衛権があることはもとより、集団的自衛権の行使を「限定」しないことをはっきりとさせる内容とすべきです。そうして、これは国連憲章でも認められた独立国の固有の権利であることもはっきりさせるべきです。

それとバイデンが大統領選挙選でヒラリーを応援しているときの応援演説で、「トランプは日本の憲法は米国が作ったことを知らないようだ」と発言していたように、日本国憲法は実質的に米国がつくったものなのですから、これを日本国憲法として国民が認めるかどうかという国民投票によって確認する必要があります。

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2022年4月30日土曜日

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シュレーダー元独首相に批判 プーチン氏友人、ロシアで巨額報酬

シュレーダー氏と韓国人妻

 ドイツのシュレーダー元首相(78)への批判が高まっている。ロシアのプーチン大統領の長年の友人で、ロシア軍によるウクライナ侵攻開始後も、ロシアの複数のエネルギー企業幹部にとどまり巨額報酬を得ているためだ。所属する社会民主党(SPD)からの離党や、シュレーダー氏個人に制裁を科すことを求める声も強まってきた。

 1998~2005年に首相を務めたシュレーダー氏は、プーチン氏の求めに応じ、パイプライン事業「ノルドストリーム」を推進。ドイツが天然ガスの「ロシア依存」を強める契機となった。シュレーダー氏は首相退任後も、同パイプライン運営会社の株主委員会会長や石油大手ロスネフチ取締役会会長など、数々のロシア企業の役員を務め、ロビー活動に協力してきた。ショルツ首相らによるポスト返上の求めにも応じていない。

 シュレーダー氏は23日の米紙ニューヨーク・タイムズのインタビューで、ロシアとの関係を「過ちとは認めない」「過去30年はうまくいってきた」などと強弁。戦争は過ちとしつつ、戦争を終えられる唯一の人物の信を失ってはならないと、プーチン氏との関係を続ける意向を示した。実際に両氏は3月にモスクワで面会したが、成果は何もなく終わったもようだ。

 ウクライナ侵攻後、独連邦議会(下院)内のシュレーダー氏の事務所職員は、長年の側近も含め全員辞任。エスケンSPD党首は、シュレーダー氏のプーチン氏擁護は「全くばかげている」と離党を求めたほか、複数の与野党議員が制裁を科すことを主張。ビルト紙が28日公表した世論調査でも、59%が制裁に賛成した。

【私の論評】シュレーダーだけを悪魔化することなく、メルケルやバイデン等の責任も追求せよ(゚д゚)!

シュレーダーは今日のロシアのウクライナ侵攻の要因の一つを作り出した人物でもあります。

ロシアの前身であるソ連は、冷戦中もずっとウクライナ、ポーランド、ベラルーシなどを経由する陸上パイプラインで西ヨーロッパにガスを供給していたのですが、ソ連崩壊後は、そのパイプラインからウクライナにガスを抜かれるという問題を絶えず抱えていたといいます。

1970年代からウクライナは欧州でも有数の天然ガス産出国であり、まだソ連邦の一部であった75年のピークには、年産651億m³を産出する純輸出地域だったとの記録があります。その後次第に生産量が減少し、2012年ごろには黒海でのガス田を中心に年産120億m³の水準にまで落ち込み、現在ウクライナは天然ガスの純輸入国になっています。

天然ガスが不足してきたこのウクライナとロシアの間には、ソ連邦の一部であったウクライナに旧ソ連が格安でガスを提供していたものの、その後ソ連邦の解体とウクライナの独立に続く西側傾斜を受けて、ロシアが天然ガス価格を大きく引き上げるという確執が始まりました。

その後パイプラインでウクライナを通って欧州に輸出されるロシアの天然ガスを、ウクライナが中間抜き取りしているのではないかという疑惑が起き、ロシアはウクライナを通過するパイプラインのロシアによる管理権を主張したのですが、ウクライナ政府はこれを拒否しました。

ウクライナとロシア間のガスを巡る対立から、ロシアが06年と09年の2度にわたり、ウクライナ向けガス供給を停止したことから、同国を経由するEU向けガス供給も止まることになり国際問題となりました。

14年のクリミア紛争以降、ウクライナはロシアからの直接輸入を止め、ロシアから一旦西欧に輸出されたガスを再輸入するという変則的な形でガスを調達し、一方ロシアはウクライナを迂回して直接西欧にガスを送るパイプライン、ノルドストリーム1,2やトルコストリームを建設して、ウクライナ離れを加速してきたのです。

ただ、2019年に稼働するはずだったこのパイプライン計画には、当初から、1本目の時とは比べ物にならないほどの反発がありました。米国はもちろん、東欧の国々も南欧の国々も、皆、それぞれの理由で反対しました。

しかし、何と言っても一番激しく反対していたのがウクライナでした。これが開通すれば、ウクライナのパイプラインは今度こそ完全に用済みです。それにより、EUにとってのウクライナの存在価値は急低下し、ロシアに軍事的に飲み込まれても、誰も助けてくれない可能性は高いと考えられました。

つまり、ノルドストリーム2は、ウクライナにとって国家の存亡が掛かった案件であったのですが、それをドイツは強引に進めたのです。これによってウクライナのドイツに対する不信感がさらに募ったことは、不思議でも何でもありませんでした。

ロシアからEUへのパイプライン

2014年にはロシアがクリミアを併合しました。しかし、ドイツ政府の親ロシア姿勢は揺らぐことなく、まさに先々月のロシアのウクライナ侵攻まで連綿と続きました。ちなみに、2020年の時点で、ドイツのロシアガスへの依存は55%を超えていました。ノルドストリーム2が運開すれば、それは70%を超える予定でした。

 2019年、しかし、米トランプ政権の実施した強硬な制裁により、ノルドストリーム2の工事は一時ストップしました。ところが20年の5月、新しく大統領となったバイデン氏が5月末にメルケル首相(当時)を訪問し、「プロジェクトはすでにほぼ完成しており、これを妨害するのは米欧関係にとって生産的ではない」という彼の鶴の一声で工事が再開されたのです。 

ただ、バイデン大統領が何と言おうが、米国議会は超党派でパイプラインに反対していたため、この年の夏、ドイツ政府は米国との間で困難な調整を、秘密裏に、しかもウクライナ抜きで続けていたと言われています。 

ところが、それから2年余りで、世界情勢は激変しました。2021年の末には、ロシアの軍事的脅威の膨張のため、ドイツは親ロシア政策を続けることが困難になりました。そして、ついに22年2月22日、ノルドストリーム2の認可手続きの凍結を発表しました。 

すると、その2日後の24日、ロシアはウクライナに攻め込んだ。これにより、ドイツのエネルギー政策は完全に破綻し、米国がかねてより警告していたロシアエネルギーへの過度な依存による安全保障上の問題が現実のものとなったのです。

3月17日、ゼレンスキー大統領はドイツ議会でのオンラインスピーチで、激しい口調でドイツの対ロシア政策を責めました。ドイツの議員たちは自分の耳が信じられなかったに違いない。この小国の大統領に罵倒されながら、しかし最後には皆が立ち上がって拍手をしていたのは少々滑稽にさえ見えました。 

ゼレンスキー大統領のドイツ攻撃はそれだけではない。ブチャで大量虐殺が行われたという報道があった後、4月4日に現地を視察した氏は、こう言いました。

 「私はメルケル氏とサルコジ氏をブチャに招待する。ロシアに対する14年間もの譲歩が、我々をどこへ導いたかを見てもらうために」 

その日、社民党のシュタインマイヤー大統領は公式に、「これまでの自分のロシアに対する認識、およびノルドストリーム2を継続しようと思っていた態度は間違いであった」と認めた(もっともウクライナに対する謝罪はしていない)。 

大統領にしてみれば、潔いと褒められると思っていたかもしれないですが、そうは問屋がおろしませんでした。

現在のドイツ大統領は、社民党のフランク=ヴァルター・シュタインマイヤー氏。氏は、シュレーダー政権下では官房長官を、また、第1次、第3次メルケル政権では外相を務めました。大統領に就任したのは2017年で、最近2期目の続投が決まりました。ちなみに生粋の親露派です。

 4月12日、前代未聞の出来事が起こった。そのシュタインマイヤー大統領が、ポーランド、およびバルト3国の首脳と共にキーウを訪問しようとしたところ、氏だけがウクライナ側から「来てくれるな」と断られたというのです。

13日、ポーランドとバルト3国の首脳はシュタインマイヤー大統領抜きで予定通りキーウを訪れ、勇ましい記念写真を公表しました。ただシュタインマイヤー氏が同行できないことを残念がる首脳はいないようでした。 

ゼレンスキー大統領に会ったポーランド、およびバルト3国の首脳

一方、ゼレンスキー大統領はドイツに対し、当然のように戦車や対空ミサイルといった兵器の供与を求めています。ウクライナは今や世界の民主主義のために戦っているのであり、民主主義を標榜する国はウクライナを支援しなければならないと言わんばかりです。 

ショルツ首相はこれまで色々な理由をつけて殺傷兵器の供与を拒んできたのですが、今、緑の党のベアボック外相が供与を主張し始めました。社民党よりもさらに平和主義者だった緑の党にしては、驚くべき豹変です。

ウクライナ側は現在、兵器供与の決定権を持つショルツ首相のキーウ訪問を強く要請しているといいます。シュタインマイヤー大統領の件が解決しないうちは、首相のキーウ訪問はあり得ないですが、解決は時間の問題でしょう。 

では、その後、ウクライナ側から正式な招聘があれば、ショルツ首相はキーウへ行き、兵器の供与を軌道に乗せるのでしょうか。 

右手でロシアのエネルギーを輸入し、1日に6億ユーロもの大金を送金しながら、左手でロシア兵を殺傷する兵器をウクライナに供与するというのは、大いなる矛盾ではないでしょうか。しかも、それを理由にロシアがガスを止めれば、ドイツの経済は崩壊するというのにです。 

ショルツ首相をはじめ、ドイツの政治家たちは、これまでにも増してウクライナとの連帯を強調しています。であれば、武器は、そうしてガスはどうするのでしょうか。

ドイツは今、あたかも罠に落ちたかのように、八方塞がりの中で呻吟しています。

その呻吟の最中、冒頭の記事にもあるように、ドイツのシュレーダー元首相への批判が高まっているわけですが、シュレーダー氏はこれは制裁の対象にもなり得ると思います。

ただ、シュレーダー氏だけを悪魔化し、全部の責任を彼だけになすりつけるようなことはすべきではないです。メルケル首相やその他、ロシアにタイルエネルギー依存に拍車をかけた人たちの責任も追求すべきです。そうして、できれはバイデンの責任も追求すべきです。

ドイツにはこういうことに対する前科があります、それは第二次世界大戦の戦争責任をナチスを悪魔化し、全部の責任をナチスになすりつけ、自分たちもその被害者であるという立場をとり、今にいたるまで真摯に反省していません。ドイツの知識人、言論人もそのような立場の人が多いです。

これは、第二次世界大戦の戦争責任を特定の人物や集団の責任とはしなかった、日本とは大きく異なります。日本では、ドイツのような合理化はしませんでした。ただし、誤解を招かないように言いますが、当時日本はナチスドイツのような全体主義国家にあったわけではありません。当時の日本をナチス・ドイツと同列に並べて論じるのは間違いです。無論これは、極東軍事裁判などが不当なものであったこととはまた別の問題です。

そうして今日のドイツの苦悩に、加担したともいえるバイデンは、米国内でシェールオイル・ガスの採掘を再開すれば、それをEUに輸出すれば、EUの窮地を救い、自国のエネルギー価格の高騰を抑えることにもなり、今年秋の中間選挙にも有利になると思うのですが、なぜかこれを実施しません。私は、このブログでも何度か述べてきたように、これは期限つきでも良いから実行すべきと思います。

日本の岸田首相もこれについては煮えきらない態度を続けています。日本はEUのようにロシアにエネルギーを依存していることはないですが、エネルギー価格は高騰しつつあります、夏にには電力不足か懸念されています。

岸田首相とバイデン大統領

日本でも動かせる原発はすぐに稼働すれば、電力不足は解消されますし、エネルギー価格の高騰を抑えることもできます。にもかかわらず、岸田首相はそれをしようとしません。それに、サハリン1,2の事業からの撤退も決めません。

日米両政権とも、このままでは長期政権にはなりえず、短期で終わることになりそうです。

現役の政治家は、選挙によって国民から評価がされることになりますが、シュレーダー氏やメルケル氏など現役ではない元政治家などは、ウクライナ戦争が歴史となった頃には、徹底的に責任を追求すべきです。現在それを行えは、それこそロシアのプロパガンダに加担することになりかねません。

ロシアのウクライナ侵略自体は、プーチンがその責を負わねばならないです。しかし、戦後に客観的にプーチン以外の戦争を助長した人々の責任も問わずに、シュレーダーのみを悪魔化するようなことがあれば、同じことがまた繰り返されることになりかねません。

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2022年4月29日金曜日

鳥インフル「H3N8型」ヒト感染初確認、中国からの入国拒否検討を 当局は「偶発的」「リスク低い」とコメントも…コロナと同じ轍許すな!―【私の論評】岸田政権が続けば、いつか来た道を繰り返し、中国のインバウンド頼みを繰り返すことに(゚д゚)!

 有本香の以読制毒

鳥インフル「H3N8型」ヒト感染初確認、中国からの入国拒否検討を 当局は「偶発的」「リスク低い」とコメントも…コロナと同じ轍許すな!


習近平総書記

  中国で鳥インフルエンザ「H3N8型」の、最初のヒト感染が確認されたという。中国の国家衛生健康委員会が26日、河南省駐馬店市に住む4歳の男児の感染を確認したと発表。同委員会は、同型のヒトへの感染確認は初だが、「偶発的に鳥類からヒトへの感染が起きたもので、大規模流行のリスクは低い」としている。

何しろ中国当局のコメントだ。額面通り受け取って安閑とするわけにもいくまい。「ヒトへの感染は偶発的」「リスクは低い」などの文言を見ると、既視感とともに悪い記憶が蘇る。2020年1月、新型コロナウイルス始まりの頃に、同様の表現が繰り返されたからである。

2年前の同年1月9日、筆者はまさに本コラムで「中国で「謎の肺炎」発生! SARSの惨禍繰り返すな」と書いて警鐘を鳴らした。しかし、この時点で日本政府は完全ノーガード。中国の春節(旧正月)という、インバウンドのかき入れ時を目前に控えていたためだが、政府は頑として通常通りの構えを崩さず、水際対策も後れをとった。

筆者のコラムでの警告から約2週間後の同月23日に、中国湖北省武漢市で前代未聞の「都市封鎖」がなされたところから大騒ぎとなったが、この直前まで日本政府は「特に問題はない」かのようなアナウンスを繰り返していた。

 当時の報道を読み返すと、武漢市封鎖の5日前、加藤勝信厚労相(当時)は「持続的なヒト→ヒト感染の明らかな証拠はない」「新たな発症者が出ているということではない」などと強調、国民に「冷静な対応を呼び掛けた」とある。

 コロナとインフルエンザの違いはあるものの、新たな感染症を侮って同じ轍を踏むことは許されない。今回こそ正確かつ迅速な状況把握と先手先手の対策、その一方、状況変化に応じた柔軟な対応が求められる。

 現状の報道で、「H3N8型」のリスクは低いかのように伝えられているが、そうとも言い切れない。1889~91年に世界的に流行した「ロシア風邪」「アジア風邪」と呼ばれた感染症の例だ。この原因となったウイルスは特定されていないものの、H3N8によるとする報告が後年(2006年)に出されている。

 鳥インフルエンザは渡り鳥などが運ぶため、人や物の出入りだけを厳しくしても意味がないという声がある。しかし、歴史的にみても中国大陸は「流行病の火薬庫」だ。その国からわが国への入国渡航に、特段の注意を要することは言うまでもない。

 現在、新型コロナ対策のために、中国との出入国者は他国と同様に制限されているが、これを開放すべきという声は高い。「観光目的の入国」再開を望む提言もある。経済再生のためには、他国と比べて厳しすぎるわが国の水際対策に変更が必要だという意見は分かる。

 しかし、中国ではいまもロックダウンが行われ、新たな感染症の報告もあったとなれば、しばらく他国よりも厳しい措置で望むしかなかろう。

 私見を言うなら、当面の間、中国からの「入国拒否」も視野に入れるぐらいの厳格な措置を検討すべきだ。「馬鹿な。それでは干上がる業界が出る」という声が上がるだろうが、そんな声は聞き飽きた。中国頼みの金もうけがいかなる結果を生むか。この2年で学ばなかった業界があるなら、それは自ら選んだ「滅びへの道」だと言っておく。

■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。

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【私の論評】岸田政権が続けば、いつか来た道を繰り返し、中国のインバウンド頼みでコロナに厳格に対応できなくなる(゚д゚)!

上の有本氏の記事と似たような記事をこのブログではすでに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

中国の新型コロナ『武漢で感染拡大したおととしに匹敵』 封鎖ラッシュの上海は“ゼロコロナ”強化も―【私の記事】中国でいつ致死率の高いコロナ感染症が爆発してもおかしくない理由。警戒を強めよ(゚д゚)!

この記事では、新しい伝染病ではなく、中国でいつ致死性の高いコロナ感染症が爆発してもおかしくないことを解説しました。ただ、新しい伝染病が発生する可能性も否定できません。それについては、コロナが発生して、日本でも患者が出始めた頃にこのブログに掲載したことがあります。

そうして、その原因はいずれも、有本氏が上の記事に掲載しているように、歴史的にみても中国大陸は「流行病の火薬庫」だということです。

その部分をこの記事から少し長いですが引用します。

現在、世界を震撼(しんかん)させている新型コロナウイルスのような新興感染症が、中国を起点に多数登場しているのはなぜでょうか。背景には、20世紀末から急速に経済成長した中国が、人類が1万年かけて経験した開発や都市化をわずか30年ほどの間で経験したことがあるとみるむきもあります。

ただ、この30年説は正しくはないかもしれません。それは、冒頭の記事で示されている日本軍の雲南省でどんな感染症が発生しているかを示した地図の存在からも明らかです。この地図は、1935年あたりに作成されたものです。

この頃は中国はまだ完全に発展途上国といって良い状況でした。となると、中国発の伝染病が多発する原因は、都市化以前に農業のために森林を切り開き、野生動物を家畜化するといった生態系への働きかけ(開発)によって流行したことが考えられます。そうして、今でもそのようなことが繰り返されている可能性があります。

ただし、今回のコロナに関しては、「世界の工場」となった中国が、国際貿易や人の移動の面でその存在感を高めていることも、新型コロナ感染症をグローバルに拡大させる要因となりました。

流行の中心地となった中国の武漢市や湖北省などでは、大規模なロックダウン(都市封鎖)が行われ、人々の活動を制限して感染症の抑え込みを行いました。流行の中心が欧州や米国に移ると、多くの国で外出制限や学校の休校措置がとられ、世界はなかば鎖国のような状態となりました。

ほぼ同時にこれほど大規模な活動の制限が求められたことは、感染症の歴史においても、経済社会の歩みの中でも初めてのことです。

「疫病史観」を紐解けば、私たちが想像している以上に、感染症が人類の歴史に大きな影響を及ぼしてきたことが理解できます。考えてみると、農業化や工業化、さらに都市化という人類史の基本的なトレンドは、人々が集まって大きく生産や消費を行うことを前提としてきました。

しかし、今回の新興感染症は、私たちがそうした行動をとることを許しません。経済社会を成り立たせている基本的な活動が、感染症流行の要因になっているのです。現在、起きていることは、経済社会のあり方が根本から変わる転換点と後に位置づけられるのかもしれないです。

ただ、現在の先進国の都市では、伝染病の発信源になることはほとんどありません。それだけ、先進国は、上下水道を整えたり、防疫・医療体制を強化してきたのです。

それよりも、同じ一つの国で、奥地では農業のために森林を切り開き、野生動物を家畜化する等といった生態系への働きかけ(開発)によって元々伝染病が流行しやすくなった中国が、20世紀末から急速に経済成長し、沿岸部では人類が1万年かけて経験した開発や都市化をわずか30年ほど成し遂げたことが流行に拍車をかけたといえるでしょう。

まさに、中国は、伝染病の「ゆりかご」と言っても良い状況なのです。

 中国では、現在もコロナ感染症ウイルスが変異を起こして、致死性が高くなることもありえますし、さらに新たな伝染病が発生する可能性も否定できないのです。 

だとすれば、有森香氏が上の記事で述べている、結論通りにするしかないのかもしれません

私見を言うなら、当面の間、中国からの「入国拒否」も視野に入れるぐらいの厳格な措置を検討すべきだ。「馬鹿な。それでは干上がる業界が出る」という声が上がるだろうが、そんな声は聞き飽きた。中国頼みの金もうけがいかなる結果を生むか。この2年で学ばなかった業界があるなら、それは自ら選んだ「滅びへの道」だと言っておく。

 確かに、私達日本人は 私見を言うなら、中国頼みの金もうけがいかなる結果を生むか学んできました。中国のアウトバウンドを期待するのは本当に危険なことです。

ただ、それを期待せざるを得なかったのには理由もあります。それについては、他の記事で詳しく説明しています。その記事のリンクを以下に掲載します。

日銀審議委員人事に悪い予感…インフレ目標軽視は「雇用軽視」 金融政策は旧体制に逆戻りか―【私の論評】今後日銀が金融政策を間違えば、制裁中のロシアのように景気が落ち込みかねない日本(゚д゚)!

この記事のタイトルには中国という文字が含まれておらず、一見中国とは関係ないようにみえますが、中国についても述べています。これも少し長いですが、その部分を以下に引用します。

過去のデフレの真っ最中には、実は円が異様に高くなり日本で原材料を組み立てて、輸出するよりも、中国や韓国で組み立てて、そこから輸出したほうがコストがかからないという異常事態が発生しました。当然のことながら、日本から原材料を輸入しそれを組み立てて、輸出する中国や韓国のほうがさらに安いという状況でした。これでは、日本の国際競争力が落ちるのも必然でした。

このような状況では、国内で様々な製品を製造するよりも、国外で製造した方が安いということになり、日本国内の産業の空洞化がすすみ、中国や韓国の多数の富裕層を生み出すことになりました。

中国富裕層

 特に韓国では、原材料を製造する技術も高くないし、そういうことをしようとする地道な技術者や経営者を馬鹿にし卑しみ、組み立てる人間が一番偉いという文化があり、日本のデフレはまさにこうした韓国にとっては、うってつけであり、日本がデフレの底に沈んでいるときには、優れた部品や素材を開発する日本を卑しみ、我が世の春を謳歌していたといっても過言ではありません。

挙げ句のはてに、日本では中国の富裕層をインバウンドともてはやし、これに頼るしかなくなる事業者も生まれでる始末でした。何これ?日本人あまりに惨めじゃないですか?なんで金持ちにしてやって、さらに奉仕までしなくてはないのですか?中韓が得ていた莫大な利益は、本来は日本企業や日本国民が得るものだったのではないですか?日銀がまともな金融政策さえしていれば、このようなことは起こらなかったはずです。

さすがに現在のロシアは制裁対象でないのでこのようなことはできないですが、もしロシアがそれができるなら、極東に様々な工場や工場団地を造成して、日本企業を誘致し、そこで組みたてと製造輸出を行い、儲けまくってニューオルガリヒが生まれることになるかもしれません。

このようなことはあり得ませんが、ただ制裁などの対象になっていない国である程度産業基盤のある国では、中国や韓国の大成功にあやかり、日本から安い原材料を輸入し、それを組み立てて大儲けする国も現れるかもしれません。そうして、そうした国で富裕層を生み出し、日本人がその富裕層を大歓迎するなどという、過ちが繰り返されるかもしれません。

そうなれば、現在コロナ禍からも立ち直りきっておらず、ロシアによる制裁による原油高などの悪影響を受けたうえ、さらにデフレということで、2重パンチで、景気が落ち込みデフレスパイラルのどん底に沈み、それこそ制裁を受けているロシアのように経済がどん底に沈み、失われた20年が再現されることにもなりかねません。

ウクライナに侵略したロシアが景気の落ち込みによって苦しむのは、自業自得で致し方ないですが、日本が自分の首を自分でしめるような真似をすることは、まっぴらごめんです。

有森氏の記事の結論もあわせて、以上の内容も踏まえて結論を述べるとすれば、以下のようなことになるでしょう。

日本は中国のインバウンドに頼らなくても良いように、積極財政と金融緩和でデフレがすみやかに脱却して中国からの「入国拒否」も視野に入れるぐらいの厳格な措置を検討すべきということになるでしょう。

ただ、来年の3月には、日銀総裁人事があり、黒田総裁に変わる新しい総裁が誕生します。岸田氏がどのような人物を選ぶのかで、日本はまたとんでもないことになり、中国インバウンド頼みの事業者が増え、中国で危険な伝染病が発生しても、厳格な態度を取れないかもしれません。

岸田首相

このブログでも先に述べましたが、岸田政権の補正予算はあまりにしょぼくて、需給ギャップが30兆円以上もあるとみられる、現状では焼け石に水です。

このまま岸田政権にまかせておけば、また1〜2年もすれば、同じことの繰り返しになるでしょう。

いつか来た道のように、中国のインバウンド頼みでコロナに厳格に対応できなくなります。

それを避ける意味でも、岸田政権は短期政権にすべきです。

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