2022年9月10日土曜日

ウクライナ軍の北部進軍、ロシア軍の兵たん脅かす-既に補給路遮断か―【私の論評】今すぐ戦況を判断するのは、プロパガンダに踊らされるだけ、それは今の日本の政局も同じ(゚д゚)!

ウクライナ軍の北部進軍、ロシア軍の兵たん脅かす-既に補給路遮断か

南部ヘルソンの反攻は犠牲多く停滞か、WP紙やロシア側が伝える
北部では親ロシア派軍事ブロガーも驚く速度でウクライナ軍が進軍


  ロシア軍に対するウクライナ軍の反転攻勢は北部で進展している様子だが、より注目度の高い南部ヘルソン州ではロシア軍の配備立て直しもあり、苦戦を余儀なくされている。

  ウクライナ軍の北部での進撃は予想外のスピードだと、同国当局者だけでなくロシアの軍事ブロガーも8日、声を合わせて認めた。ウクライナ軍がロシアの防衛線を戦術的な越境にとどまらず本格的に突破したのは、戦争開始以来で初めてだ。

  ロシアのプーチン大統領が欧州のエネルギー市場への圧力を強めているさなかで、ウクライナとしては同盟国に戦争に勝利する能力があると緊急に示す必要もあった。

  ウクライナ軍報道官のオレクシー・フロモフ氏によると、北部の反攻は同国第2の都市ハルキウの南東約90キロに位置するバラクリヤでの戦いで開始。数日後にはロシア軍の占領地域内50キロの地点まで進軍し、20の集落を奪還したという。

  「敵の士気は一部で落ちているが、抗戦を続けている」と同報道官は8日の記者会見で語った。

  ゼレンスキー大統領は同日夜のオンライン演説で、9月に入ってからウクライナ軍が合計1000平方キロの被占領地を解放したと主張。親ロシア派の軍事ブロガー、アレクサンドル・コッツ氏によると、一部のウクライナ軍部隊は砲撃支援のレンジから外れるほど進撃速度が速い。

  ソーシャルメディアのテレグラムで50万人を超える視聴者を抱えるコッツ氏は、ドンバス地方のロシア軍にとって重要な兵たん拠点であるクピャンスクとの補給路をウクライナ軍が既に遮断したと懸念。ウクライナ軍はロシア国境に向かう道路を遮断するためクピャンスクの北方に進路を変えたようだと指摘し、「状況は厳しい」とテレグラムのチャンネルで述べた。

  ただ、南部のヘルソン戦線に関しては、ウクライナ軍の戦況がはるかに厳しい様子を一部の親ロシア派ブロガーらは伝えており、死傷者が多く、進軍が停滞しているという。こうした内容は、米紙ワシントン・ポスト(WP)がインタビューしたウクライナ軍負傷兵の話と符合する。

  ウクライナやロシアのブロガーの主張を独立して検証することはできていないが、両者の情報はいつになく一致している。

【私の論評】今すぐ戦況を判断するのは、プロパガンダに踊らされるだけ、それは今の安倍元総理を恐れる日本の政局も同じ(゚д゚)!

ロシアが占拠するウクライナ南部ヘルソン州で、ウクライナ軍が占領地奪還を目指し大規模な反攻に出ているもようだとされています。ウクライナ軍は29日、フェイスブックで「ロシア軍の防衛線を突破した」と主張。英国防省は30日、「ウクライナ軍が南部の最前線で砲撃を強化している」との見方を示しました。

ウクライナ軍は、ロシア軍が使用する大型の橋のほぼ全てを破壊したと説明。ロシアは一方的に併合したクリミア半島からの補給路を断たれたと述べ、「領土を取り戻す大きなチャンスだ」と強調しました。

ウクライナ南部ヘルソン周辺の前線で砲撃の準備をするウクライナ兵(7月)

これは、ウクライナ軍が南部で苦戦している、上の記事とは矛盾する内容です。ただし、冒頭の記事が信じられるかといえば、そうともいえないところがあります。

昔から軍隊でいわれていることがあります。

それは、「後でどんなに圧倒的な勝利を収めたとされた戦闘においても、戦闘時に現場に問い合わせると、悲観的な報告ばかりである。現場の報告のみを信じてすぐに撤退させれば、戦闘にまけてしまう。かといって現場の報告を一切信用しないで、そのままにしておけば、軍が壊滅することにもなりかねない。だからこそ、優秀な指揮官は5つ程度の判断基準をもたなければならない」というものです。

軍人ではない、米紙ワシントン・ポスト(WP)の記者が負傷兵から聴いたとしても、そもそも現場の意見は悲観的になりがちであり、しかも負傷兵に聴いたというのですから、それが正しい戦況を示しているかどうかなどわかりません。

そのため、南部でウクライナ軍が苦戦しているか、善戦しているのかなど、今の段階ではわからいないと判断すべきだと思います。

現状では、ウクライナ側、ロシア側の双方のプロパガンダが入っているとみるべきです。それこそ、ウクライナ側からすれば、南部侵攻をするようにみせかけて、北部での戦闘を有利に導くためにプロパガンダを流している可能性もあります。

ロシア側も何らかのブロパガンダを発しているのは間違いないでしょう。

このようなプロパガンダに左右されて、ウクライナが優勢とか、ロシアが優勢などとその時々で判断すべきではありません。そうすれば、期せずして、ロシアやウクライナのいずれかを応援することになりかねません。ウクライナ擁護になれば良いですが、そうではない場合もあり得ます。ただ、一月もすれば現状を後から追認できます。それに、戦争はいつかは終焉を迎えます。

その時に様々な情報を集めていずれの時点で戦況が変わって、戦争が終わることになったのか、より正確な分析ができると思います。軍事専門家は、そのようなことを丁寧にするので、戦況を正しく判断することができるのです。そうして、そのような分析は将来何らかの形で役に立つことになります。

ただ、多くの人は自分の仕事もありますし、自分自身が分析をするのは難しいです。であれば、軍事専門家の出す情報を検討するというのも一つの手です。最初は、複数の専門家の出す情報を検討すれば、誰が正しい情報を出し続けるのかを判断できるようになります。そうなれば、正しい情報を出す専門家の情報を信じるなどのことができるようになります。

このようなことをしない人は、ロシアやウクライナのプロパガンダに騙され続けることになります。

このようなこと、ウクライナ戦争だけではありません。政局などもそうです。「もり・かけ・桜」などのマスコミ報道を鵜呑みにする人たちは、これらの出来事を後から検証するとか、後から専門家などが検証した情報を吟味するなどということはしていないと思います。

こうしたことに関する報道もブロパガンダではないという保証はありません。後になって検証してみたり、検証した専門家の情報を吟味する、習慣のない人は、プロパガンダに煽り続けられることになりかねません。

最近の「国葬」「統一教会」問題とされる事柄についても、後から検証すべきです。その渦中にあるときのマスコミ報道や野党の言説などを単純に信じ込んでしまえば、ウクライナ戦争と同じく期せずして、ロシアのプロパガンダに載せられて、ロシアを擁護するこようなことと同じようなことになりかねません。

ウクライナ戦争自体は、日本に間接的な影響は及ぼしますが、「もり・かけ・桜」「国葬」「旧統一教会」に関しては、日本に間接的に影響を及ぼしかねません。

ただ、過去にも同じようなことが何度もありながら、安倍元首相の首相在職日数は憲政史上最長を記録しました。国政選挙も過去最多の6連勝でした。


この要因に関して、安倍政権勝利の秘訣は支持固めの手法と野党分断のタイミングを狙った解散にあり「戦略、政局観、タイミングの読み方が完璧」と評価するむきもありますが、それだけでしょうか。

無論そうした側面もないとはいいませんが、これだけが安倍政権勝利の秘訣だといわれると、そうとは言い切れないと思います。

やはり、有権者の多くの支持があったからこそ、長期政権になったのだと思います。有権者の支持の中には、積極的な支持の他にも「野党には任せれば大変なことになるから」という消極的な支持もあるでしょうが、それにしても支持がなければ、選挙に連戦し、憲政史上最長の政権になりえるはずはありません。

基本的には、そういう支持があった上に、「戦略、政局観、タイミングの読み方が完璧」だったからこそ、最長政権になり得たのです。

ということは、国民はさほどプロパガンダにのせられていないということを示しているのかもしれません。

マスコミや野党は、「安倍がー、安倍がー」と、何かといえば安倍元総理大臣を貶め政治利用しようと躍起になっているようですが、これは「安倍氏」を恐れているようにしかみえません。しかし、これは間違いです。

安倍政権が選挙で6連勝し、憲政史上最長になったのは有権者の支持があったからこそであり、マスコミや野党が恐れるべきは本当は多く「有権者」なのです。

こういうと、マスコミや野党は「ポピュリズム」に走れば良いと考えるかもしれません。しかし、安倍政権はそれで長期政権になれたわけではありません。

時によっては、支持率を下げてでも、やるべきことは実施しました。たとえば、2015 年の安保法制の改定で、集団的自衛権の部分的な行使をできるようにしました。このときは、「もり・かけ・桜」どころではなく、新聞テレビは毎日批判を繰り返し、多数の人が国会前の反対デモに押しかけました。


それでも、安倍政権はこれを断行しました。そうして、今になって振り振り返ってみると、あのときにあのような安保法改正を行わなければ、世界情勢が激変した現在とんでもないことになっていましたし、現在のように他国と連携しつつ、中露などに対峙することなどできなかったはずです。

これを保守派は評価したのでしょうし、保守派でない人でも当時から評価した人や、当時は反対しても後になってから賛成した人もいたでしょう。結局、国会前に集まった多数のデモ隊も、ノイジー・マイノリティーにすぎないことがはっきりしました。このような姿勢を多くの人が評価したからこそ、安倍政権は、長期政権になりえたのです。

ちなみに、現在の岸田政権が単純に「ポピュリズム」に走り、「戦略、政局観、タイミングの読み方が完璧」だったとして、それだけで安倍政権と同程度がそれ以上に長期政権になるなどということはとても考えられないと思います。

日本の多く国民は、執拗なマスコミや野党のプロパガンダには一時煽られても、ある程度の期間をおけば、そのようなものには振り回されることがなくなるのです。

だから、マスコミや野党は、安倍元総理を恐れるのでしょうが、恐れる相手が間違っています。恐れるべきは国民なのです。

その本質を一番良く知っていたのは、安倍元総理その人だったのではないかと思います。そうして、マスコミ、野党は未だに多くの国民を恐れることなく、安倍元総理が亡くなってしまった現在でも安倍元総理を恐れているのでしょう。この誤りを是正しない限り、マスコミ、野党はもとより、岸田政権も衰退することになるでしょう。

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2022年9月9日金曜日

マネタリーベースが減少傾向、日本経済を良くするためは コロナ対応がなくなっても国債購入増で金融緩和維持を―【私の論評】政府は国債を大量発行し、防衛費増額、需給ギャップを埋める政策を速やかに実行し国民の不安を解消せよ(゚д゚)!

日本の解き方





 日銀が発表した8月のマネタリーベース(日銀が供給するお金の量)残高が前年同月比2・5%減と10年5カ月ぶりに前年同月の水準を下回った。

 マネタリーベースには、月中平均残高と月末残高があり、8月の平残は前年同月比0・4%増の659兆7138億円、末残は同2・5%減の644兆9826億円だった。末残の前年同月比がマイナスだったのは2012年3月以来だ。

 黒田東彦(はるひこ)氏が日銀総裁に就任した13年3月以降、1年ごとに、マネタリーベース平残の前年同月比の推移を見てみよう。13年が40・8%増、14年が41・3%増、15年が32・8%増、16年が24・0%増、17年が15・2%増、18年が6・5%増、19年が3・3%増、20年が11・7%増、21年が14・3%増、22年が4・4%増となっている。

 伸びが鈍ったのは、16年9月からイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)を行って以降だ。その後、20年5月から安倍晋三元首相のいう「政府と日銀の連合軍」で、政府が国債発行、日銀は市場でそれを購入するとともに、コロナ対応の日銀貸出により盛り返したが、最近また伸びを欠いている。末残は今年4月の683兆4030億円をピークとして、それ以降は減少している。

 マネタリーベースは日銀のバランスシート(貸借対照表)の負債であり、資産の国債と貸付金にほぼ対応している。日銀が金融機関から国債を購入すれば、金融機関の日銀当座預金増となる。また、日銀が金融機関に貸出をすれば、それも日銀当座預金増になるからだ。

 20年のコロナ禍以前には、マネタリーベース増は日銀の国債購入増にほぼ対応していた。しかし、コロナ禍以降、日銀貸出が増加し、マネタリーベース増は国債購入増と貸出増に対応している。ちなみに、日銀貸出残高は、20年3月末に54兆3286億円だったが、22年3月末に151兆5328億円まで増加した。その後は、コロナ禍が収まりつつあるので、8月末で102兆4236億円まで急減している。

 日銀の国債残高は、20年3月末に485兆9181億円、22年3月末に526兆1736億円、同8月末で547兆6088億円だ。マネタリーベースは20年3月末に509兆8069億円、22年3月末に688兆327億円、同8月末で644兆9826億円となっている。

 要するに、最近におけるマネタリーベースの減少は、コロナ禍での日銀貸出がコロナの落ち着きとともに減少したためだ。

 コロナが経済に与える影響が少なくなっているのは朗報であるが、コロナ対応のための金融緩和要因はなくなりつつある。

 ウクライナへのロシア侵攻により世界では物価高になっているが、日銀はその日本への波及を恐れて、金融緩和に積極的でないようにみえる。コロナ対応がなくなっても、国債購入増で金融緩和を維持したほうが、日本経済にとってはいいだろう。日銀も、長期国債買入オペについて入札回数を増やすなど微修正して買入増を狙っているが、それでも力不足である。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】政府は国債を大量発行し、防衛費増額、需給ギャップを埋める政策を速やかに実行し国民の不安を解消せよ(゚д゚)!

マネタリーベースとは、日本銀行が供給する資金量を示す指標です。「資金供給量」ともいい、紙幣と貨幣の発行高(現金)と、金融機関が決済などのために日銀に預けている当座預金残高の合計です。

マネタリーベース

国・金融機関以外の企業や家計など民間部門が保有する通貨の総量を示すマネーストック(旧マネーサプライ=通貨供給量)とは異なります。日銀は新たな量的緩和策で、金融政策の操作目標を従来の無担保コール翌日物の金利から、マネタリーベースに改めました。

日銀は不景気のときは金融機関が持つ国債を買い上げ、マネタリーベースを増やして経済を刺激しようとする。一方、景気が過熱しているときは、日銀が持つ国債を金融機関に売り払って資金を吸い上げる。マネタリーベースを減らすことで過度のインフレやバブルの発生を防ぎ、安定的な経済成長に誘導する。

日銀は国債の売り買いによって当座預金残高を直接動かせるので、マネタリーベースは金融政策の姿勢を示す一つの指標になります。2013 年3月のマネタリーベース(月中平均)は前年同月比19.8%増の134兆円で過去最高を記録しました。うち現金は87兆円で、当座預金は47兆円。従来の金融緩和でも既に大量の資金が供給されたことを示すものでした。

マネタリーベースを増やす背景には、利子が低い日銀の当座預金が積み上がれば、金融機関がもっと金利水準の高い企業への貸し出しや、収益率の高い株式や不動産投資信託(REIT)などに資金を回すようになり、経済が活性化するという考え方がありました。

さて今年8月のマネタリーベースの内訳は日銀当預が0.1%減の534兆4467億円、紙幣は3.0%増の120兆3622億円。貨幣は2.6%減の4兆9049億円と、現金両替時の手数料徴収が広がる中、上の記事にもあるように、過去最大の減少率が続いています。

8月末のマネタリーベース残高は644兆9826億円で、前月の665兆9614億円を大幅に下回りました。前年比2.5%減で12年3月以来のマイナス転換。日銀当座預金は519兆6523億円。

8月はコロナオペによる新規貸し出し1兆1713億円に対して、期落ちは約20兆5000億円に上りました。今後も期落ちが続き、マネタリーベースの平残は9月にも前年比マイナスに転じるとみられています。

日銀はマネタリーベースについて、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する「オーバーシュート型コミットメント」を掲げています。

その下でマネタリーベースは増加基調をたどり、コロナオペ導入後は、金融機関の積極的な利用で増加ペースが高まり、2020年8月から21年9月まで伸び率は10%を超えました。

コロナオペの制度縮小でマネタリーベースが減少しても、日銀はオーバーシュート型コミットメントには矛盾しないとの立場です。黒田東彦総裁は今年1月の記者会見で、オーバーシュート型コミットメントは「あくまでも(マネタリーベースの)拡大方針」と述べ、「短期的には振れたり一時的にマイナスになったりすることがあったとしても、基本的にマネタリーベースの拡大方針を続けることのコミットメントの意味は大きい」としました。

日銀黒田総裁

この言葉通りに、マネタリーベースの拡大を続けていただきたいものです。これを実行するために、政府は補正予算を組んで、防衛費増額やこのブログにも何度か掲載してきたように、需給ギャップ30兆円の解消などにあてるべきです。

そうして、財源は政府が国債を大量に発行して、日銀は国債購入増で金融緩和を維持すべきです。日本経済にとっては良いに決まっています。

ただ、そのような気配が全くみえず、「国葬」や「旧統一教会」などの問題といえるかも良くわからない問題に拘泥している政局に多くの人が不安を感じているようです。

これは、企業経営者は無論のこと、一般の人にも及んでいるようです。たとえば、結婚する意思があるかどうかを、独身の男女(18~34歳)に聞いたところ「一生結婚するつもりはない」と答えた男性は17・3%、女性は14・6%で、ともに過去最高だったことが2021年の「出生動向基本調査」で明らかになりました。国立社会保障・人口問題研究所が9日発表しました。男女とも、少子化の要因になっている未婚化・非婚化志向が一層加速していることをうかがわせました。


このことが、現在の政局の反映であるのかは、わかりませんが、それにしても現状のように、テレビをつければ、政府や野党は「国葬」、「旧統一教会」一色で、それに中露北の危険性についても煽られ、これでは不安を感じるなと言う方が無理だと思います。

政府は、国民の不安を払拭するためにも、エネルギー問題の解消、防衛費の増額、経済対策の実行などで、国民を安心させる政策を実行すべきです。これを実現するには、お金は必要不可欠であり、それを得るために、国債を大量に発行して、日銀は国債購入増で金融緩和を維持すべきです。

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2022年9月8日木曜日

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日本の解き方


財務省 国税庁

 財務省が発表した2021年度の法人企業統計で、全産業の経常利益が前年度比33・5%増の83兆9247億円と過去最大だった。企業の「内部留保」に当たる利益剰余金は6・6%増の516兆4750億円と初めて500兆円を超え、10年連続で最大を更新したという。

 統計をさらにみると、全産業の営業利益は30・2%増の54兆2156億円、設備投資は9・3%増の45兆6613億円。なお、設備投資は、有形固定資産(土地を除く)増減額、ソフトウエア増減額、減価償却費、特別減価償却費の合計である。

 利益剰余金の増加額は34兆3343億円なので、基本的には利益以上に他の金融資産を取り崩して設備投資したので、まずまずの数字である。

 金融緩和効果が出てきたものと思われる。それとともに、最近の「円安是正のために利上げ」というマスコミ論調がおかしいことを示している。

 国内総生産(GDP)統計を見ても、民間設備投資はまずまずだが、政府公共投資はさっぱりだ。政府が出てくれば、呼び水効果でさらに民間投資を伸ばすチャンスなのに残念で仕方ない。公共事業を評価する際に使われる社会的割引率は現在4%という法外な水準であり、その見直しなど政府がやるべきことは少なくなく、せっかくの民間投資が好調な状況を生かしていない。

 法人企業統計では、21年度のほか、22年4~6月の分も公表されている。全産業の営業利益は前年同期比13・1%増の17兆6716億円、経常利益は17・6%増の28兆3181億円。経常利益は製造業、非製造業のそれぞれでも過去最高である。

 営業利益が伸びているのは、コロナ禍からの経済・社会活動の正常化で業績回復が進んだからだ。

 また、経常利益が営業利益よりも伸びているのは、非営業利益の投資収益が伸びているからだ。受取利息等は7兆3573億円で過去最高だった。

 その主因は円安による海外投資収益の増加である。円安効果は輸出拡大という形でも現れるが、過去の海外投資収益という形でも表れる。

 一般に現地生産に移行していると輸出増にならないので、円安効果は限定的だといわれるが、現地生産なら海外投資を既に実施しているはずで、その場合には輸出増でなく海外投資収益増に替わっているはずだ。今回の法人企業統計では、その効果が強く表れている。

 設備投資は4・6%増の10兆6108億円だった。5期連続で前年比プラスで、民間設備投資の基調はいい。脱炭素やデジタル化への投資意欲は相変わらず堅調だ。

 円安でも企業収益は良くなったわけで、本コラムで筆者が円安ならGDPは伸びると主張していたことと整合的だ。

 企業収益増は法人税増になるので、その増収分を円安で困っているところ、例えば中小企業などに使うといい。いずれにしても、円安はGDP増になるので、その果実を有効に活用すればよく、角を矯めて牛を殺すような、円安是正という間違った対応をしてはいけない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】小鳥脳のマスコミと識者は、円高で日本が酷い目にあったことを、もう忘れたか(゚д゚)!

マスコミやいわゆる識者といわれる人々は、円高の時代はどうだったのかということをすっかり忘れているようです。高橋洋一氏が良くこれを揶揄して「小鳥脳」というのですが、本当に困ったものです。

民主党政権に政権交代があってからしばらくの間、日本は円高に悩まされたことなど、すっかり忘れたようです。本日は、このあたりのことを振り返っておきたいです。

2009年8月の衆院解散総選挙で自民党は歴史的大敗を喫し、民主党への政権交代が起こりました。民主党鳩山内閣の誕生しました。7月に亡くなられた、鳩山内閣の財務大臣の藤井裕久氏は円高原理主義者であると同時に、財政再建原理主義者でした。

藤井裕久氏

藤井氏が財務大臣ということで、民主党政権誕生の時点で円高は放置しつつ、国民生活よりも財政規律を優先するという極めて愚かな路線が確定してしまいました。

この超円高によって、製造業の海外移転がさらに進み、国内産業は衰退していきました。円高によって海外からの輸入品の競争力が相対的に強くなり、国内産業も大打撃を受けました。

この頃には、あまりの円高のため日本で部品を組み立てて、海外に輸出するより、中国や韓国で、日本から部品を購入して組み立てたほうがはるかにコストがかからないという状況になりました。

そのため、製造業の海外移転がすすみましたし、比較的日本に近い中国や韓国は、輸送費もあまりかからず、日本から部品や素材を輸入でき、それを前提として様々な製品開発ができたため、日本の製造業より圧倒的に有利となりました。

そのため、日本の製造業は衰退していきました。良く、日本企業は創造性が少ないとか、生産性が低いがために、衰退したなどといわれていましたが、それは日本の製造業の衰退の真の要因ではありません。行き過ぎた円高こそが日本の製造業を衰退させた最大の要因です。

さらに、リーマンショック後のさらなる超円高によって、日本の産業は衰退してしまいました。これを民主党政権は放置しまし、日銀に金融緩和を促すようなことは一切しませんでした。日銀も、マネタリーベースを増やすことはほとんどしませんでした。まさに、悪夢でした。

ドル円相場は東日本大震災の直前の2011年2月には1ドル81円46銭という記録的水準に達しました。

2022年8月30日現在で1ドルは約138円です。当時と約60円も違ったのです。とんでもない違いです。

鳩山内閣は円高放置政策のみではなく、郵政民営化の見直しと称した逆回転政策を実行しました。完全民営化予定だった郵政三事業を半官半民の中途半端な状態に戻す法律も可決させました。

2010年6月に鳩山内閣が退陣し、菅直人氏を首班とする菅内閣が成立しました。菅首相は迷走するばかりで民主党が当初掲げたマニフェストは何一つ実現しませんでした。無論円高も放置です。

2011年3月、菅首相は外国人からの献金問題の発覚で追い詰められ、退陣までのカウントダウンが始まりました。これで民主党政権が終わるのでは、と思われたその時の3月11日に東北地方を中心とするマグニチュード8.1の大地震が起こってしまったのです。献金問題は、大震災でうやむやになってしまったのです。何と日本人にとって不幸なことだったことでしょう。


東日本大震災発生から2日しか経っていない3月13日、自民党の谷垣禎一総裁は菅首相に復興支援の財源を確保する目的で臨時増税することを提案します。なんという愚かなことをしたのでしょう。地震は天災、原発事故は天災と人災の組み合わせでしたが、この復興増税だけは完全な人災でした。

もちろん反対意見もありました。野党の自民党の中川秀直元幹事長は「はじめに増税ありきで、どうして国民が奮い立つようなビジョンを作ることができるのか」と述べていますし、連立与党の国民新党の亀井静香代表は「谷垣は気が狂っている」と痛烈に批判しています。ところが、彼らは少数派でした。

マスコミは、当時大増税キャンペーンをはり、日本中が増税一色に染まり、国民の側からも反対の声は上がらなくなりました。増税に反対する人はまるで「被災地を見捨てる非国民」であるかのような雰囲気さえありました。

そうして、復興増税法案はあっという間に国会を通ってしまったのです。これは今から考えると、日本人の優しさにつけ込んだ経済犯罪ともいえる暴挙です。復興財源として増税が適切でない理由は簡単です。国債と異なり、増税では財源の手当が遅すぎますし、あまりに少なすぎですし、世代間の応分な負担を図れないからです。

また、税率を上げても税収がその金額に達するかどうか確約することもできません。1998年に消費増税の影響で税収全体が落ち込んだ過去もあります。

阪神淡路大震災後は増税ではなく国債で復興しました。いや、それどころか自然災害などの復興を増税で賄ったのは、古今東西を問わずこのときの日本だけです。

震災対応で醜態をさらした菅首相の支持率は急落しました。憲政の常道に従うなら、ここで民主党は解散総選挙をすべきでしたが、もちろん彼らはそのような日本の伝統に従うわけがありません。

政権はたらい回しにされ、野田佳彦氏を首班とする野田内閣が成立しました。この野田内閣こそが後々禍根を残す最悪の決断をしてしまいました。かの「社会保障と税の一体改革」、いわゆる三党合意です。

いわゆるリフレ派といわれる人々の、「デフレ下での増税で税収は減る」「名目GDPの上昇なくして財政再建無し」「デフレは日銀が招いた人災」「金利が上がって財政破綻はウソ」というし主張はかき消され、消費税増税はもはや既定路線でした。

財務省が消費税増税の必要性として挙げる理由は、過去の少なくとも3回変っています。
  1. 消費税導入時の平成元年の時点→直間比率の見直し
  2. 橋本内閣の消費税増税から野田内閣以前まで→財政危機、財政再建
  3. 野田内閣以降→社会保障の安定財源
昭和の頃、日本の所得税の最高税率は住民税も含めて88%でした。消費税が導入された平成元年には、並行して所得税の大幅な減税も行われました。当時から、所得税の最高税率は住民税も含めて55%となっています。直間比率の見直しは既に終了していたと結論づけて良いでしょう。さすがに財務省も現在では直間比率などということは言わなくなりました。

財政危機説ですが、残念ながらこの説には根拠がありません。政府債務は完済する必要が無く、債務総額よりも債務の維持可能性が重要だからです。政府は永遠に生きると仮定されており、ある条件さえ満たせば永遠に借り換え続けることも可能です。また特別会計まで含めた政府のバランスシートからも、日本が財政危機ではないことが導き出せます。

政府が日銀に売却した国債は、買い戻す必要などありません。なぜなら金利は国庫納付金として政府に環流し、元本も同額の国債を渡すことで事実上永久に借り換えることが可能だからです。

さらに、このブログの読者であれぱ、おわかりのように、日銀と政府の連結である、統合政府ベースでは、そもそも日本の財政はそもそもそれほど不健全な内容ではありませんでした。私自身も、このブログで資産したように、統合政府レベルでは2018年あたりには、日本の順債務はゼロという結果になりました。

実際に2018年IMF財政モニターにおいて、日本の純債務はゼロだと認定されています。このことを繰り返しリフレ派などに、突かれて返答に窮した財務省は再び論点を変え、今度は社会保障の充実のために財源が必要だと言い始めたのです。

消費税の社会保障目的税化というのは、先進国では実例がありません。なぜなら、どの先進国においても社会保障財源は基本的に社会保険料だからです。

社会保障が保険で賄われる限り、それを負担する人と給付を受ける人は同一人物です。デタラメな給付はいずれ自分のクビを絞めるため、歳出に抑制が効きます。ところが、消費税を財源とした場合、負担する人が必ずしも恩恵を受けるわけでもなく、給付を受ける人も誰が負担しているか分かりません。こうなると歳出に抑制が効かず、給付が無制限に拡大する可能性があります。

直間比率の見直しもとっくに終わっていましたし、財政危機もウソ、社会保障財源というのもデタラメ。つまり、消費税を増税する正当な根拠は存在していないのです。ではなぜ消費税を増税するのでしょうか。それは財務省の権限が大きくなるからです。

2012年12月に誕生した安倍内閣はアベノミクス3本の矢を経済政策としました。第一の矢が金融緩和、第二の矢が大胆な財政出動、第三の矢が成長戦略です。変動相場制の国において最も重要なのは金融政策です。

2012年12月に誕生した第二次安倍内閣

安倍政権の期間には、残念ながら安倍総理をもってしてもさすがに三党合意を崩せず、結局2回の消費税増税をしてしまいましたが、金融緩和は今でも継続して行われています。そのせいもあってか、安倍政権の期間中には、雇用が劇的に改善しました。

経済が良くなる時というのは、徐々に良くなることが多いので、それを実感することはなかなかできないのですが、この劇的改善は、私自身ははっきり認識することができました。それは、民主党政権時代に会社で人事を担当したからだと思います。私の人生の中で、経済政策の効果をはっきり認識できたのはこの時が初めてです。

以上、財政の話も交えて、円高の過去の弊害を述べました。円高には、製造業の衰退と、雇用の悪化という大きな弊害があります。これを私達国民は、民主党政権の間に嫌というほど味わったはずです。しかし、「小鳥脳」のマスコミや識者はこれをすっかり忘れたようです。

「悪い円安」  と語る人々は、そもそも統計資料を参照していないようです。

以下に、総務省統計局のHPから2020年基準、消費者物価指数のポイント7月分(2022年8月19日公表)を掲載しておきます。
(1)  総合指数は2020年を100として102.3
    前年同月比は2.6%の上昇  
(2)  生鮮食品を除く総合指数は102.2
    前年同月比は2.4%の上昇   
(3)  生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は100.6
    前年同月比は1.2%の上昇  

日本の物価高を推進しているのは、エネルギー価格であり、エネルギー価格の高騰が生鮮食品などの物価高の原因になっているのです。コアコアCPIでは、2020年基準では1.2%しか上がっていないのです。 こちらの数字のほうが、日本の実体経済を現しています。

この場合、金融引締をしたらどうなるでしょうか。 まだ、コアコアCPIが2%にも達していないのに、そうすれば、また日本はデフレに逆戻りです。

そのようなことをすれば、また民主党時代のような悪夢の再現になるかもしれません。そのようなことをするくらいなら、高橋洋一氏が主張するように、円安はそのままにして、法人税増税分を中小企業の救済にあてるなどの措置をすべきです。

さらに、できれば、消費税減税、ガソリン税減勢などの減勢をすべきです。それとともに、それ以上金融緩和を継続しても雇用が良くならない状況に至るまでは、緩和を継続すべきです。

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2022年9月7日水曜日

中国軍がロシア軍事演習に参加 必要な日米欧の怒り―【私の論評】満面の笑みを浮かべてオホーツク海で、大演習をしたほうがよほど効果的(゚д゚)!

中国軍がロシア軍事演習に参加 必要な日米欧の怒り

岡崎研究所

 トム・ローガン(Washington Examiner 記者)が、8月22日付のウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)に、「中国は欧州連合(EU)の軸を失う危険を冒している。ロシアの軍事演習への人民解放軍(PLA)参加は欧州での怒りに火をつけるべきである」との記事を書いている。


 中国の国防省は、先週、PLAがロシアのVostok(東)軍事演習に参加すると述べた。ロシア軍によるウクライナ攻撃が続く中、欧州はこの演習への中国の参加にどう対応するのか。

 中国は、欧州企業の中国市場へのアクセスを制限したり、ウイグル人へのジェノサイド、香港民主主義の破壊を行ったり、台湾を威嚇したりしている。これらの行為は、中国の外交的傲慢さもあり、欧州を怒らせている。駐仏中国大使は、PLAが台湾に上陸した時には、台湾人は再教育されなければならないと述べた。

 人権侵害に不満を示した欧州議会議員に制裁を課すとの中国の決定に対して、欧州議会は怒った。中国は、昨年リトアニアが「台湾」代表処をヴィルニスに開設するのを許した後、リトアニアに圧力をかけた。

 PLAのVostok参加は単なる軍事パレードではない。これは戦争で指揮官が効果的に戦闘するための指揮・参謀演習である。

 Vostok2020に参加し、中国は、ウクライナで戦争しているロシア軍に支持を与えている。この戦争は国家主権の尊重を脅威にさらし、欧州の安定を脅かしている。

 欧州は共産中国は友人ではないことを認識しなければならない。欧州の指導者は中国のVostok冒険主義に怒るべきであり、中国との深い協力を拒否すべきである。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 この論説は、欧中関係が悪化していることを描写した記事であり、珍しいので取り上げた。中国が、ウクライナ戦争の最中に、今年もロシアのVostok演習に参加することについて、欧州に強い反発があることを示している。

 中国のウクライナ戦争に対する立場には欧米や日本と相当異なる側面がある。ロシアのウクライナ侵攻後の3月2日のロシア非難国連総会決議に中国は棄権をしたし、西側がロシアに課している経済制裁を「一方的制裁」と非難し、そのうえ、経済制裁の効果を掘り崩すロシアからの石油、ガスの輸入を増やしている。

欧州はどこまで踏み込めるのか

 対露武器供与はしていないようであるが、日本の周辺海域や空域での中露共同演習を行っている。このVostok演習も日本に近い東部ロシアで行われる。日本がこういう演習に今の状況で不快感を抱くのは当然であるが、ウクライナ戦争の関係で欧州諸国にもこういう中国のやり方に強い不満があることは想像に難くない。

 この論説の筆者は、欧州は怒るべきであるとか、共産中国は友人ではないと認識しなければならないとか言っている。しかし、事実として欧州が怒っているのか、共産中国は友人ではないと考えられているのかについては、事実を指摘したうえでの議論を残念ながら十分にしていない。

 欧中関係が今後どう推移するかは世界情勢に大きな影響があるが、日米欧は結束してウクライナ戦争への中国の対応への不満を示していくのが正解であると思われる。中国がロシアを支持し続けることについては、それなりの代償を日米欧は課していくべきであろう。


【私の論評】満面の笑みを浮かべてオホーツク海で、大演習をしたほうがよほど効果的(゚д゚)!

ロシアは極東での大規模な軍事演習「ボストーク」を予定より2日間、遅らせて実施することを決めました。ウクライナ侵攻の長期化が影響しているとみられ、規模も大幅に縮小します。

ロシアの国防省は29日、極東での大規模軍事演習「ボストーク2022」について、当初の開始予定の30日から2日間ずらして9月1日から7日まで実施すると発表しました。

ボストーク22に参加するためロシアに到着した人民解放軍

前回、2018年の演習はおよそ30万人が参加したとされていますが、今回は5万人以上に縮小しました。

こうした日程変更や規模の縮小は、ウクライナ侵攻の長期化が影響しているとみられます。

演習には中国をはじめ、アルジェリア、インド、ラオス、モンゴル、ニカラグア、シリアのほか、旧ソ連のアルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン等少なくとも13カ国が参加し、北方領土の択捉島なども使用されるとみられます。

国防省によると、今回の演習には140機の軍用機と5000以上の軍事兵器を投入。4年前の演習には軍用機1000機のほか、3万6000台の戦車や装甲車などが投入されていました。

ロチャン軍事コンサルタントのディレクター、コンラッド・ムジカ氏 本人のツイッターより

ポーランドに拠点を置くロチャン軍事コンサルタントのディレクター、コンラッド・ムジカ氏は「地上部隊の全戦力がウクライナでの作戦に従事しているため、今回の演習の規模はここ数年で最小になる」と指摘しました。

ロシア極東の東部軍管区の部隊の70─80%がウクライナに配備されているため、今回の演習に5万人を投入することも「不可能」とし、1万─1万5000人が妥当な規模になるとの見方を示しました。

規模が縮小されるとはいえ、今回の演習はロシアと中国の軍事的な動きを見極めるため、日本や韓国などが緊密に注視しています。

中国政府は2019年7月24日、4年ぶりに「新時代における中国国防」(国防白書)を発表し、対外軍事交流のトップに挙げたのが中ロ軍事交流でした。ロシア軍との協力は「世界の安定に重要な意義がある」と明記し、軍事訓練や装備、技術面での連携を深めるとうたっていました。

中国国防省報道官も白書の背景説明で「中ロは互いの核心的利益を支持し、実戦を想定した訓練で協力を深める」と強調しました。

白書は「中ロ両軍関係は高いレベルのオペレーションを引き続き保持し、両国の新時代における全面的戦略協力パートナーシップを不断に充実させるため、グローバルな戦略的安定にとって重要な意義を持つ」と位置付けています。

具体的には①2012年以来、中ロ両軍は計7次にわたって戦略協議を実施②18年8、9月、中国軍がロシア軍の求めに応じ初めて「ボストーク」(東方)戦略演習に参加しました。③中国軍は19年9月16~21日、ロシア軍の軍事演習「ツェントル2019」に参加―を挙げました。

「ボストーク」演習は元来、仮想敵の中国および日米の両面を想定した演習でした。中国軍の初参加で、中国は「仮想敵」ではなく「友軍」として扱われるようになったことになります。

「ツェントル」演習は「ロシア南部に侵入したイスラム系テロ組織が独立国家を樹立した」との想定に基づく対テロ合同作戦。人民解放軍の兵員1600人、航空機・ヘリ30機が参加しました。

中ロ軍事協力は、尖閣(中国名 釣魚島)周辺でも行われていまし。16年6月9日、中国フリゲート艦とロシア駆逐艦3隻が、約3時間の間に久場島と大正島の接続水域を航行したのも一例。この時中国側は「接続水域に入った自衛艦を追尾した」と説明しました。

一方、中国中央テレビは「日本は中ロ軍艦による『共同行動』を認めようとせず、政府発表でも中ロ軍艦が『同じ時間帯』に同じ海域に出現したとしか述べていない」と指摘。その理由として、安倍政権がプーチンと平和条約交渉を進めたいため「中ロ共同行動」を認めたくないからだ」と解説してみせました。

海上演習も、2014年に「海上連携2014」が東シナ海で実施され、15年には中国艦隊が黒海のロシア海軍基地を訪問しました。16年の「海上連携2016」は南シナ海で実施され、北極版の「氷上シルクロード」注4計画でも、ロシアとの協力を鮮明にしています。

「中ロ同盟」の仮想敵である米国はどう見ているでしょう。「新アメリカ安全保障センター」のアンドレア・ケンドール=テイラーは、「中ロパートナーシップは米国益の脅威か? 手遅れになる前に行動を」で「中ロパートナーシップをどう見るべきか、欧米専門家の間でコンセンサスがないため、ワシントンの政策決定者は中ロ関係の有害な作用を阻止できなくなるまで議論し続けるリスクを冒している」との問題意識から、幾つかの警告を発している。そのポイントを箇条書きにします。
1、 中ロはあらゆる領域で協力関係を強化している。軍事、投資、交通、宇宙航行、軍事転用可能な敏感な技術開発分野での連携・協力強化は、将来にわたって継続。
2、 両国の政治体制と、指導者に権力を集中する権威主義も共通
3、 中国の「一帯一路」とロシアの「ユーラシア経済連合」は連結。
4、 冷戦期とは異なり、中国が同盟のシニアパートナーになる
5、 両国が、南シナ海とウクライナで同時に連携行動をとったり、サイバー攻撃や情報戦で協力したりすれば、アメリカは効果的に対応できない―などを挙げている。
このため論文は「どちらかの行動が、もう一方の行動を増幅させる」と、危機感を募らせ「中ロを離間させる戦略が必要」と説いています。

「新アメリカ安全保障センター」のアンドレア・ケンドール=テイラー

露国防省の発表によると、ボストーク22の一環として、1日にはハバロフスク地方などで、複数の戦闘機による迎撃訓練を実施した。今後、日本海とオホーツク海で露軍太平洋艦隊などの艦艇50隻以上が参加し、対空・対艦を想定した砲撃、潜水艦の探索などの演習を実施するとしていました。

日本海では、中国海軍と共同でシーレーン(海上交通路)と経済水域の防衛訓練を行うとも強調しました。演習場には国後、択捉島も含まれており、日本政府は北方4島を除外するよう申し入れていました。

本来、中国に対して最も大きな怒りをぶつけるべきは、日本のはずです。

このような最中、安倍元総理大臣は、暗殺され、現在の日本の政局は、安倍元総理の国葬を巡る論戦と、旧統一教会の問題一色です。このようなことで良いのでしょうか。国葬に関しては、中露の行動を牽制する場ともなりえます。それを、何よりも安倍元総理は望んでいると思います。

本来であれば、日本が主導して、オホーツク海で、日米英豪などの大演習を行い、それもできれば、北海道の一部を北方領土にみたたて、日米英豪などで、北方領土奪還上陸作戦大演習など行うべきです。日米英も潜水艦隊を派遣して、中露の艦艇に見立てた艦艇を潜水艦で撃沈するなどすべきです。

特に、日米英は、ASW(対潜水艦戦争)では中露に対して格段に勝っていますから、日米英と中露が海戦になった場合、中露には全く勝ち目がないことを誇示すべきでしょう。

さらに、北方領土に近いところで、潜水艦による島嶼封鎖演習を実施し、中露が台湾や、北方領土に軍隊を送り、そこを占拠しようにも、潜水艦で包囲されてしまえば、補給が絶たれ、お手上げになることを実証してみせるなどのこともすべきです。日本が得意の機雷敷設も併用すれば、かなり実践的な演習になります。

中露の心胆を寒からしめる訓練をすべきと思います。それだけに及ばず、それぞれの国の国民にこうした演習の意味合いを周知すべきと思います。

中国に対する対抗策として、ロシアに対して融和的な行動をしていた安倍総理ですが、 ロシアがウクライナに侵攻した直後には以下のようなツイートをしていました。
安倍元総理の遺志を継ぐという意味でも、日本は中露のボストーク22に対抗する大演習の音頭をとり実行すべきです。

日米欧の怒りを表明しても、ほんど意味がありません。そんなことより、にっこり笑って大演習をしたほうがよほど効果的です。無論、怒りの表明が、大演習やさらに厳しい制裁であれば、怒るのも良いと思います。しかし、怒っているだけで、何も行動しないければ、かえって中露北をつけあがらせるだけになります。

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2022年9月6日火曜日

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エリザベス・トラス氏

 英国の与党保守党の新党首に選出されたエリザベス・トラス外相(47)は6日、エリザベス女王(96)の任命を受け新首相に就任する。マーガレット・サッチャー元首相、テリーザ・メイ前首相に続き、英国史上3人目の女性首相となる。日本政府は、外交・安全保障、経済面などで英国との関係強化を進めており、「日英同盟の絆」の復活が注目される。航空自衛隊の次期戦闘機の共同開発も加速しそうだ。

 「この厳しい時代を乗り越え、経済を成長させ、英国の潜在能力を発揮させるため、大胆な行動を起こす」

 トラス氏は党首選出後、ツイッターでこう決意表明した。

 首相への任命は、エリザベス女王が滞在する北部スコットランドのバルモラル城で行われる。任命後はロンドンに戻り、首相として初の演説に臨む。

 トラス氏は、「小さな政府」を志向して「英国病」と呼ばれた経済を新自由主義的な政策で立て直した「サッチャリズム」を信奉。党首選討論会でも、「最も尊敬する政治家はサッチャー氏」と明言するなど、「新・鉄の女」と評されている。

 岸田文雄首相は5日、自身のツイッターに「心から祝意を表します。トラス党首が強いリーダーシップの下、英国を導いていくことを期待しています」と投稿した。

 日英関係は近年、安全保障や経済分野での連携を強めている。

 昨年8月には、英海軍の最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を中核とする空母打撃群と海上自衛隊が沖縄南方で共同訓練を行い、同9月に、米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)に入港した。空自のF2戦闘機の後継機も、日英で共同開発する方針。英国は今年6月、東京電力福島第1原発事故後に導入した日本産食品の輸入規制を撤廃した。

 『日本が感謝された日英同盟』(産経新聞出版)という著書がある軍事ジャーナリストの井上和彦氏は「トラス氏が選ばれた背景には、欧州連合(EU)離脱以来、英国のリーダーには外交力が求められている側面がある。こうしたなか、安全保障上、最も重要な戦闘機を日英で共同開発するメリットは大きい。今後、共同開発する装備品が広がる可能性もある。これらを世界に販売して経済的利益も得られる。日英両国とも『日英同盟の時代』は絶頂期だった。利害が一致こそすれ、衝突することがなかった。『第2次日英同盟』が期待される」と語った。

【私の論評】トラス首相は前首相と同じか、それ以上に中露に厳しく対峙する(゚д゚)!

新首相がまず直面する課題は、ウクライナ侵攻への対処となります。ジョンソン政権は8月下旬、最新型無人機2千機を含む5400万ポンド(約87億円)相当の追加支援を発表。英国の軍事援助は米国に次ぐ2位の累計約23億ポンドに上り、英国は米国とともにウクライナ支援を牽引してきました。

トラス氏は党首選で「露軍をウクライナ全土から押し出さなければならない」と述べ、支援を拡大すると強調。「民主主義国家を弱体化させようとするロシアの企てを明らかにする」として、露内部の情報収集も強化する姿勢も示しました。

ウクライナ侵攻の影響は国民生活を直撃していま。エネルギーを中心に物価高騰が収まらず、7月のインフレ率は10%に達し、1982年以来約40年ぶりの高水準を記録。2022年後半にも景気後退入りする恐れが強まりました。


「経済がさらに悪化すれば、ウクライナ支援の勢いが鈍る」(保守党党員)との懸念もくすぶりだしています。トラス氏は対策として年間300億ポンド規模の減税を公約に掲げました。法人税率引き上げを凍結する方針も示していますが、減税で消費が刺激されれば逆にインフレを招く恐れがあります。

サッチャー誕生のきっかけとなった1970年代のインフレは25%に達し、4つの政権と4人の首相が交代した。光熱費、食費は300%近く上昇した。金利が17%に達した時、インフレは初めて終焉したが、その代償として大量の失業者が街にあふれました。

トラス氏がインフレ退治を怠って慢性化させれば、英国経済は大ダメージを受けます。トラス氏はかつて核軍縮運動に参加し、オックスフォード大学では弁論団体オックスフォード・ユニオンで自由民主党のリーダーを務めたこともある。リベラルから保守への変節と首相就任を一番嘆いているのは左翼でリーズ大学名誉教授の父ジョン・トラス氏なのかもしれないです。

ジョンソン政権は昨春発表した新たな外交・安全保障政策指針に、中国の影響力拡大をにらんで、インド太平洋地域への関与強化を明記。日本との連携も重視してきました。ところが、ウクライナ侵攻や経済低迷が長引けば、「インド太平洋に関与しようという英国の野心が抑制される可能性がある」(英王立国際問題研究所のデビッド・ローレンス特別研究員)とも分析されまています。

国内では中国に対する経済的依存からの脱却の可否も注目されています。通信機器や衣料品などの対中依存は高まっており、物品・サービスの中国からの年間輸入額(21年)はジョンソン氏が首相に就任した19年から150億ポンド以上増えました。

英メディアによると、トラス氏は中国を国家安全保障に対する「脅威」と定義し、対中依存脱却に注力する方針です。中国を含めた権威主義国家への技術輸出を制限するほか、中国当局への利用者情報の流出が懸念される動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」など、中国系IT企業の取り締まりを強化する考えも示しています。

サッチャー氏(左)とトラス氏

旧ソ連から「鉄の女」と恐れられた故マーガレット・サッチャー首相を意識するトラス氏は昨年12月、権威主義国家の中国とロシアを念頭に「今こそ自由世界は反撃し、経済とテクノロジーの力を使って恐怖ではなく自由を促進する時だ」と呼びかけました。

トラス氏は中露の冒険主義を抑える方法として西側が安全保障だけでなく、経済、テクノロジーで団結する「自由のフロンティア」を築き、「同じ考えを持つ」世界中の国々が協力する必要性を強調する。保守党下院議員には、首相になった暁には中国新疆ウイグル自治区での少数民族弾圧を「ジェノサイド(民族浄化)」と公式に認めると約束したとされます。


対中国抑止のために日米と連携したインド太平洋戦略の継承も焦点となっています。世界で影響力の拡大を目指す「グローバル・ブリテン」戦略を発展させられるかが問われます。

トラス氏の外相時代の発言など、【私の論評】にその内容を含む記事をいくつか掲載しましたが、中露に対しては「地政学的」な立場からその危険性を主張しています。

トラス首相はジョンソン前首相と同じく、あるいはそれ以上に中露に厳しく対峙するのは間違いなさそうです。

【私の論評】

英は「自由で開かれたインド太平洋」の良きパートナー【私の論評】日本は、ロシアはウクライナだけではなく北方領土からも撤退すべきと主張すべき(゚д゚)!


英国政府、TPP参加で“中国包囲網” 日米豪印「クアッド」にも参加検討 識者「親中懸念のバイデン米政権の不安埋めてくれる」 ―【私の論評】日本と英国は、ユーラシアのランドパワーに対峙している(゚д゚)!

2022年9月5日月曜日

ロシア軍、給与未払いで士気低下 英国防省分析―【私の論評】ロシアの実態を探るには、ソ連崩壊を予想したエマニュエル・トッドのように出生率に注目せよ(゚д゚)!

ロシア軍、給与未払いで士気低下 英国防省分析

ウクライナ南東部マリウポリで、警備に当たるロシア軍兵士=2022年5月18日

 英国防省は4日、ウクライナに侵攻するロシア軍兵士に十分な給与が支払われておらず、不満を持つ兵士の士気が低下しているとの分析を明らかにした。

 ロシア軍の兵士には本給に加え、さまざまなボーナスや手当が支給されることになっているが、ウクライナでは多額の戦闘ボーナスが支払われていない可能性が高いという。英国防省は、非効率な軍の官僚機構や司令官の間にはびこる腐敗などが原因だと指摘した。

 また、ロシア軍はこれまでも、給与のほか制服や武器、食料など基本物資の供給が恒常的に不足しており、これらが間違いなく多くの部隊の士気に影響していると強調した。

【私の論評】ロシアの実態を探るには、ソ連崩壊を予想したエマニュエル・トッドのように出生率に注目せよ(゚д゚)!

ウクライナに侵攻しているロシア兵は、給料未払いどころか、もっと深刻な事態に見舞われているようです。すでに6月の時点で以下のようなことが報道されていました。

ウクライナの情報機関によれば、ウクライナに配備されたロシア軍の兵士たちは、物資不足で食べるものがなく、犬を食べて飢えをしのいでいるというのです。ウクライナ保安庁(SBU)は声明の中で、ロシアの占領下にある南部ヘルソンに駐留しているロシア兵が、友人へのテキストメッセージの中で犬を食べたと明かしたと述べたとされています。

この兵士は、SBUが傍受した友人とのやり取りの中で、「最悪だよ。ウクライナ人たちにボコボコに殴られているし、食べ物がなくて犬を食べている。今日はヨーキーを食べた。ヨークシャー・テリアだ」と愚痴っていたといいます。またこの兵士は友人に、ロシア軍には兵站能力がなくて「単純に食料を運ぶことができず」、それが食料不足を招いているのだと説明していました。

ロシアは2月24日にウクライナ侵攻を開始したが、戦闘開始当初から、軍は物資不足の状態にあったと報じられていました。

SBUによれば、ロシア軍の兵士たちが「携行保存食(MRE)」ではなく犬を食べるようになったのは、MREにはもう「うんざり」だからだといいます。

侵攻当初には、「腹を空かせた」ロシア軍の兵士たちが(ウクライナの)食料品店で略奪をする様子がカメラに捉えられました。食料の「国有化」を主張して、ウクライナの農場から食料を奪った者もいました。またウクライナの複数の村で、ロシア兵が住民に食べ物をくれと懇願したとも報じられていました。

給料未払いというと、ロシア軍により一時的被占領下にあるウクライナ東部マリウポリにて、給与未払いを受けて、市の水道局職員が抗議を行っていたということもありました。

ロシアがウクライナに侵攻するとまもなく、米国や欧州各国は矢継ぎ早にロシアに経済制裁を科しました。

これを受け、ロシア国家統計局をはじめとする政府機関は、さまざまな経済統計の公表を停止しました。輸出入、債務、原油生産量、銀行、航空会社や空港の利用者数など、それまで定期的に報告されていたデータが次々に姿を消しました。

ところが戦争が長引くにつれ、不可解なことが起きました。ロシア経済は予想以上に堅調だとメディアが報じ始めたのです。4-6月期の国内総生産(GDP)が前年同期比4%減にとどまったことや、失業率が3.9%と過去最低を更新したことなどがそれを裏付けているといいます。

このデータの出どころは、米政府や欧州連合(EU)が制裁の効果を測れないよう、わずか6カ月前に経済データの公表をやめたロシア国家統計局です。

しかし、これを額面通りに受け取るのは全くの間違いです。そのようなことより、上のような記事を集めて、仔細に分析するほうが、より正確にロシア経済を分析することができると思います。

エマニュエル・トッド氏

参考になるのは、ソ連崩壊を予想した、エマニエル・トッドの推論方法です。1976年に出版(邦訳は2012年)された『最後の転落』の中で、当時25歳のトッドはミハイル・ゴルバチョフの辞任に伴って1991年に生じることになるソ連の崩壊を予言しました。

ちなみに、エマニュエル・トッドは、この著書を書いたときには、一度もソ連を訪問したことはありません。

そもそも、押さえておきたい事実が2つあります。

ひとつは、当時のソ連は前年終結したベトナム戦争でアメリカが敗北を喫し、また軍拡を続けるブレジネフ政権下という状況でまだまだ安定したシステムを構築しているという主張も根強かったこと。もうひとつは、当時ソ連から西側へ渡ってくる情報は隠ぺいや改ざんの含まれる不確かなものであったということです。

しかし、トッドはソビエト社会主義システム崩壊の兆しをはっきりと感じ取りました。そのきっかけは「乳児死亡率」です。食料供給や暖房・輸送システム、医療・保健条件などを直接に反映する乳児死亡率は、ソ連においても順調に低下していたにもかかわらず、1971年~1974年までの間上昇を続け、そしてとうとうそれ以降は発表されなくなったのです。

食物の生産高や実質所得といった経済的な指標に比べ、シンプルで他国と比較しやすい人口統計。だからこそ、変造は難しく、またそれを見破ることは相対的に容易だと考えられるようです。


ソ連崩壊後の1990年代にロシアを苦しめた出生率の低下と人口減少が、再び深刻化する様相を見せています。新型コロナウイルス禍でロシアの人口は昨年、ソ連崩壊後で最悪の年間100万人以上が減少。さらにウクライナ侵略が長期化するなか、ロシアはプーチン政権発足後で最大の経済の落ち込みが見込まれており、社会不安の高まりが女性の出産を抑制すると予想されているためのようです。

プーチン大統領は10人以上の子供を育てた母親を「英雄」として表彰しているが、その効果は大きくなさそうだ

ただ、人口減少は移民を除いた人数であり、移民を含めればロシアの人口は必ずしも減少傾向にはありません。ただ、ロシアに流入する移民の大半は単純労働を目的とした旧ソ連の中央アジアからとみられ、ロシアからの頭脳流出を補う動きとはいえません。欧米やほかの先進国の多くはウクライナ侵略を受け、ロシアとの対立を深めており、これらの国々からは移民どころかロシアに入国することすらままならない状況です。

そのようななか、ロシア当局が不気味ともいえる動きを見せているのがウクライナにおけるロシア軍の占領地域でのパスポート付与や、住民拉致の動きです。

街を完全に破壊し、占領下においた南東部マリウポリでは、攻撃で行き場を失った市民らが露軍の誘導で親ロシア派武装勢力の支配地域に連れていかれ、さらにそこからロシア各地に送られている実態が明るみに出ています。

プーチンはさらに、占領地域の保護施設にいる子供へのロシア国籍付与を簡素化する大統領令に署名したとも報じられています。戦争で親を失った子供たちが、何も知らないままにロシア人になることを強要するもので、取り返しのつかない人権侵害につながるのは必至です。

ウクライナの戦線に駆り出される兵士の多くは地方都市や少数民族出身者である実態が明るみに出ており、モスクワなど大都市は一見、平穏が保たれているといいます。ただ、幼い子供を育てる親たちは社会の変化を敏感に感じ取り、無理な出産を避けるなど家庭を守る行動に出るのは確実です。プーチン政権がソ連時代さながらの手法で出産をあおっても、若い親たちの心を動かすことは容易ではないようです。

今後、ロシアの現状を知るには、出生率などに注目すべきと思います。ロシア政府の出す、GDPなどの資料を真に受けていては、みすみすロシアのプロパガンダに手を貸すようなものです。

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2022年9月4日日曜日

国葬やアフリカへの4兆円支援、本当に税金の無駄遣いなのか 反対派の批判は的外ればかり―【私の論評】私達保守派は、老害から若者と自分自身、社会を守らなければならない(゚д゚)!

 国葬やアフリカへの4兆円支援、本当に税金の無駄遣いなのか 反対派の批判は的外ればかり

写真でみる限り、集会に参加している若者はいない

 安倍晋三元首相の国葬やアフリカへの官民合わせて4兆円投資の方針などについて、ネットの一部では「税金の無駄遣い」との声がある。

 税金の無駄遣いかどうかは、どのように判断すべきものなのか。一般論で言えば、財政支出に対して国民の主観的な評価があり、それに見合うかで無駄遣いかどうかとなる。もちろん、主観的な評価は人それぞれであるが、法令に基づく適切な支出でない場合、それが税金の無駄遣いとされるのは、ほとんどの人が納得できるだろう。

 会計検査院の検査では、法令などに違反したら不当事項を含む指摘事項がある。指摘事項のうち不当事項はまさに法令違反なので、指摘事項を税金の無駄遣いと報道されても不思議ではない。

 だが、安倍元首相の国葬やアフリカへの4兆円支援は、それぞれ内閣府設置法や外務省設置法に法的根拠がある。

 国葬に反対する人は、法的根拠がないとして裁判所に対し差し止め請求しているが、裁判所がそのような理由で差し止め請求を認めることはないだろう。

 差し止め請求では、費用の支出を予備費としていることや、国民への弔意の強要になるとの理由も掲げている。しかし、予備費は、予見しがたい支出について、国会の議決で設け、内閣の責任で支出することができる(憲法87条)ものなので、その規定通りである。

 国民への弔意の強要という主張は理解できない。内面の自由があるので、弔う気持ちのない人まで強要しない。一方、国葬の反対は、弔う気持ちのある人を妨害するだけで、むしろ他人の内面の自由の侵害にもなりかねない。

 国葬に反対する人は、しばしば費用が大きいとも指摘する。国葬にかかる費用は2・5億円とされたが、警備費が含まれていないことを問題視し、40億円程度の費用がかかるはずという主張もある。国葬で特別な警備体制になるのは事実であるが、各地から警官の応援があり、それらの警備費は既存の警察予算の範囲内である。要するに、国葬について追加的な警備費用はあまりかからない。費用の二重計上はミスリーディングだ。

 アフリカへの4兆円支援についても誤解がある。現時点で詳細は分からないが、追加的な支出であれば、補正予算などでの対応になり、そのときにはっきり分かる。これまでの例でいえば、4兆円のほとんどは融資であり、税金は原資ではないだろう。

 具体的な仕組みの概略は、国債を発行しそれを原資としてアフリカ諸国へ貸し付ける。国債の償還は国民の税金ではなくアフリカ諸国からの貸し付け返済で行われる。であれば、アフリカへの4兆円支援を税の無駄遣いというのは的外れだ。

 国葬費用の2・5億円は、日本で20カ国・地域(G20)級の国際会議を開催できると考えれば問題ないどころか、日本の立場を世界にアピールできるので、またとないチャンスでもある。これを税金の無駄遣いというのは、結局国葬を阻止したい人たちの単なる口実だろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)

【私の論評】私達保守派は、老害から若者と自分自身、社会を守らなければならない(゚д゚)!

アフリカへの4兆円支援についての誤解は、あまりに馬鹿馬鹿しい内容なので、ここでは述べません。ただ、以下のような見解もあることを皆さんにも知っておいていただきたいものです。

【金子恵美の本音】 アフリカ4兆円投資は日本の成長に不可欠

国葬に関しては、いくつかの世論調査をみると、全体では反対が多いようです。しかし、10代~20代は6割くらいが国葬に賛成していますが、70代になると賛成しているのは3割しかおらず、反対は60%以上です。

20歳くらいの人たちからすれば、小学4~5年生くらいのときに総理が安倍さんになり、それ以来ずっと安倍さんでした。「日本の総理イコール安倍総理」という印象も強いのでしょう。。

このことからすれば、若い人は、意外と安倍さんに対して、我々が驚くくらいの思いを持っているのです。ですから閉会中審査で岸田総理の口から、「なぜ国葬を行うのか」をしっかり伝えることが大事だと思います。弔意を強制するようなことは、当然ながらありません。

世代間の違いが何に起因するのでしょうか。もしかすると新聞、テレビの報道、テレビのワイドショーの影響なのかもしれません。確かに10代~20代はほとんどテレビを観ていないし、新聞も読んでいません。

70代などになると、情報の取得先が新聞やテレビにどっぷりの世代ですから。その差が世論の違い、世代間対立の違いに表れてきているのではないかと考えられます。

慶應大学に田中辰雄先生という、計量経済学を専門とする方がいます。その先生が60~70代の新聞・テレビ世代は、新聞やテレビの情報は「だいたい確からしい」と考え、ネットから流れてきた情報も同じように「正しい」と信じ込んでしまうところがあります。そのため陰謀論などにはまりやすいのだと語っておられます。

現在の10代~20代はSNSが子どものころからあるので、嘘も交えてさまざまな情報が流れてくることを前提にしています。意外と極端な情報が入っても、あまり真に受けず、「左右両方の情報を見て考える」という所作が身に付いているのではないかと指摘されていました。

ある意味、この世代は情報リテラシーがあるといえるのです。時代が変化してインターネットが当たり前、SNSが当たり前の時代になればなるほど、もう少しバランスの取れた世論に変わっていくのではないかという期待もあります。

高齢者になるほど「安倍元総理の国葬儀」に反対している傾向が強く。この結果は年代別の政党支持率(下グラフ)に似ています。今の混沌とした日本を作ったのは多くの老害で、これからの日本は期待できるかもしれません。


ただ、まともなご老人を含めた、保守派の我々としては、現在の老人たちが、寿命により亡くなり、現在の若者が、40歳前後の社会の中核になるまで、この日本を守っていかなければなりません。

ちなみに、20~40代の男女2000人にアンケートを実施したところ、「身の回りに『老害だなぁ』と感じる人がいる」と回答したのは66.7%。超高齢化社会と叫ばれて久しい日本ですが、実に多くの人が老害化した高齢者に頭を悩ませていることがわかります。

今、社会全体に“老害”がはびこっているのです。 Q. 身の回りに「老害だなぁ」と感じる人はいますか? YES…66.7% NO…33.3% ※20~40代の男女2000人にアンケートを実施。回答期間:2022年6月8日(水)~6月14日(火)

もちろん、高齢者が全員老害化するわけではありません。ですが、会社員時代に得た地位やプライドを引退後も捨てきれない人や、脳機能の衰えによって感情のコントロールが利かなくなった人が一定数いるのは事実です。

高齢者の数が右肩上がりで増えているため、そのぶん必然的に老害化による傍若無人ぶりも目立っているのかもしれません。 

世界保健機関の定義によると、高齢者とは65歳以上を指します。この定義に鑑みれば、日本では総人口の29.1%が高齢者ということになります(’21年時点。総務省統計局の発表より)。

迷惑行為のみならず、日本は高齢者優遇の政策に偏る「シルバー民主主義」に陥っているとの指摘もあり、政治や企業の中枢ではいまだに高齢者が幅を利かせているのが実情です。

写真はイメージです

こうした状況を放置すれば、老害と呼ばれる高齢者が増えるのも当然で、社会全体が老害に蝕まれる前に対処法を学ばなければいけないです。 老害(ろうがい)とは、組織や社会で幅を利かせすぎて言動が疎まれる高齢者、また、傍若無人な振る舞いによって他人に必要以上の負担や迷惑をかけている高齢者などを指す表現です。

そうして、誰もが年を重ねれば、老害となる可能性もあるのです。自分自身が老害にならないために、周りのご老人たちが老害とならないようようにする方法はあるはずです。老害によって、若者だけではなく、日本社会が蝕まれていくことは避けなければなりません。今後、このブログではその方面にも踏み入っていこうと思います。

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2022年9月3日土曜日

台湾有事が起きた時、日本は主導権をとれるのか―【私の論評】台湾・尖閣有事のシミレーションに潜水艦を登場させれば、全く異なる風景がみえてくる(゚д゚)!

台湾有事が起きた時、日本は主導権をとれるのか

長尾 賢 (米ハドソン研究所 研究員)

 今、台湾情勢の緊張が続いている。そんな中、2022年8月6~7日、日本戦略研究フォーラム主催で、台湾危機に関するシミュレーションが行われた。

 台湾周辺で危機が高まり、尖閣諸島へも武装した漁民などが上陸し、次第に台湾への攻撃が開始されるシナリオに基づいて、首相役、各大臣役の政治家が、どういった対応が可能なのか、検証していく取り組みだ。

 首相役には、小野寺五典元防衛相がつき、各大臣役も現役の名だたる政治家であり、国家安全保障局長には元国家安全保障局にいた専門家が務めるなど、内部事情に詳しい人が行った検証である。そこから問題点を洗い出し、実際の危機において、日本の対応能力を高めることができ、大変有意義な取り組みであった。

シミュレーションには、筆者(中央後ろ)もオブザーバーとして参加した

 筆者もオブザーバーとして入れてもらったので、その意義を感じ、勉強になったところが多い。その上でこのシミュレーションをさらにリアリティーを持たせるため、本稿では、筆者が感じた改善点として次の3つの点を指摘しておきたい。

意思ある人の意向をどう反映させるか

 1点目は本シミュレーションでは、日本の民間人が協力するということがシナリオになかったことである。例えば、台湾有事が迫り、台湾にいる日本人、中国にいる日本人、沖縄の先島諸島や与那国島にいる日本人を避難させようとするときである。

 日本の民間航空会社やフェリー会社などが、攻撃を受けるかもしれず、協力しないことが想定に入る。たしかに、これは問題としてしばしば指摘されている。しかし、危機になって、生命が危うい状況に陥った人がいるとき、本当に日本人は協力を拒否するだろうか。

 例えば、第2次世界大戦初期にダンケルクで起きたことは、日本では起きないのだろうか。当時、フランスに派遣された何万人もの英国軍が、ドイツ軍に追い詰められ、海岸で皆殺しになろうとしていた。

 その時、英国の民間人は自らの船を出して、助けに行ったのである。国が協力を求めて動いた船もあるが、自ら出ていった船もあった。

 英国人だけではない。2020年に中国の襲撃を受けて、インド兵100人近くが死傷した時、インドでも起きた。貧しい子供たちが、国境地域に行って中国と戦う、といいはじめ、集団で家出をして、国境へ行ってしまったのだ。

 親たちが慌て、警察へ行き、警察官らが説得して、家に連れ戻した。戦争という危機に瀕し、何かしなければならないと思った人の、自然な反応をよく示している。

 そういったことは日本でもあるかもしれない。日本人もロシアがウクライナに侵攻して以降、安全保障に関して見方が変わり、ウクライナ人支援を積極的に行っている。東日本大震災の時に、多くの日本人が、被害者のことを思い、協力しようとした時と同じだ。そういう人は珍しいだろうか。

 日本の場合、もし仮に、全人口のたった10%しか、協力しようとしなかったとしても、それは1200万人が協力することを意味する。24万人しかいない自衛隊に、1200万人の意志が支援するのであれば、例え10%にすぎなくても、それは無視しえない力になるはずだ。

 その1200万人をどう使うのか、検討しても良いのかもしれない。やる気のない人をどう説得するか、という視点のみならず、やる気のある人にどう答えるか、である。

柔軟で国際的な発想をもっているか

 2点目は、日本が対策を検討した際に、国際的な見地が十分にあったかどうかだ。台湾にいる日本人、中国にいる日本人、沖縄の先島諸島や与那国島にいる日本人を避難させようとする時、船や飛行機が足りない状態になった。日本の民間航空会社やフェリー会社が協力しないからだ。

 その時、閣僚役の一人から「日米豪印『クアッド』の各国から輸送機を出してもらえないか検討する」という提案が出た。素晴らしい提案だと思う。ただ、この発想は、もっと先に進んだものにしてもいい。

 もし軍用輸送機が必要なら、世界には、民間軍事会社がある。そういったところに依頼して、輸送機と乗員を送ってもらうこともできるのではないか。

 そもそも、日本の船についても、船員の多くには外国人が沢山いるのではないのか。そのリスクに見合う給料を受け取ることができるならば、多少のリスクは覚悟のうえで、船を操縦することに挙手する船員が出てくる可能性がある。

 外国人に、日本のために命を懸けろと要求するような任務は無理かもしれない。しかし、戦争が始まる直前に、避難民を避難させるための乗員だとすれば、よりリスクは低い。もし日本人が、日本人を助けるために、その程度のリスクも負えないのならば、外国人ではどうか。そういった国際的で、柔軟な発想が、もっとあってもいいのではないか。

危機における主導権をとれていたか

 3点目は、中国がすべてを決めて、日本がそれに対応するために奔走するという、受け身の姿勢だったことだ。つまり、戦いなのに、主導権をとれていないのである。これでは、負けるのではないか。

 フォークランド紛争について描いた映画に『マーガレット・サッチャー鉄の女の涙』(2013年)があり、当時の議論を短くまとめている。そこの議論で、「エスカレーションが起きるなら、われわれから起こした方がましだ」という表現が出てくる。

 これはどういう意味だろうか。これは戦いにおいては、主導権をとらないと勝てない、という意味である。

 今回のシミュレーションを見てみると、常に中国が攻撃して、日本は対応に追われる。どのような状況を作り出すかは、中国がすべて決めるのである。これで、いいのだろうか。

 サッカーであれば、防御しかしていないチームは、勝つことができない。攻撃しているチームが、常にどこを攻撃するか、決める。どのような試合運びにするか、も決める。防御だけでは勝てないことは、常に考えておく必要がある。

 そのような状況において、日本側の問題点は何か。それは、法的にも、装備にもあるだろう。

 日本では、自衛隊の行動に関する法律は、「ポジティブリスト」で書かれている。どのような状況で何をしていいか書いてある方式だ。これは逆に言えば、そこに書いていないことは、やってはいけないのである。

 一方、他国では、「ネガティブリスト」で書かれている。軍隊が何をやってはいけないか、書かれており、それ以外は、やっていいのである。これだと政府は、柔軟に軍隊を動かして対応する。柔軟に動ければ、戦いで、より主導権をとれる。

 装備品についても、問題がある。今回のシミュレーションにおける日本は、防御しかしていない。攻撃力がなければ主導権は取れない。

 今、日本は、敵の攻撃に対して反撃する能力の保有を検討している。例えば、長射程で、陸地を攻撃できる、巡航ミサイルの保有を考えている。つまり、防御だけでなく、攻撃を行うことを考えているのだ。

 それは戦いにおいて主導権をとることにつながる。日本に攻撃力があれば、中国は、日本から攻撃を受けるかもしれない、そう想定して、駆け引きを考えるだろう。中国としては、日本が中国のどこを攻撃するか、わからないから、かなり広い範囲を防御せざるを得ず、困るだろう。

 ただ、日本の攻撃力は限定的だ。中国に比べ、予算がないからだ。だから、効率的な方法を考える必要がある。

 巡航ミサイルを水上艦に搭載すれば、中国は、その位置を正確に把握してしまい、日本がどこを攻撃するか、簡単に予測されてしまう。しかし、同じ巡航ミサイルを日本の潜水艦に搭載して運用するならば、中国は、日本がどこを攻撃するか、わからない。

 仕方ないから、中国は広い範囲に防衛線をはり、戦力を分散させるだろう。巡航ミサイルを潜水艦に搭載するほうが、水上艦に搭載するよりも、日本が主導権を握りやすいことになる。

 シミュレーションでも、こうした反撃能力の運用についても検証してほしかった。

「負けない」ために準備を

 今回のシミュレーションは、大変意義あるものであった。しかし、実際に検討してみると、日本が台湾有事に対応できるのか、不安になるものでもあった。戦争が避けたくても避けられない可能性が出てきたとき、日本には、重要な問いがあるはずだ。

 次の戦争も負けたいか……。それだけは、避けたい。

【私の論評】台湾・尖閣有事のシミレーションに潜水艦を登場させれば、全く異なる風景がみえてくる(゚д゚)!

この手の記事を読んでいつもがっかりするのは、必ずといってよいほど、台湾有事のシミレーションに潜水艦が登場しないことです。日本戦略研究フォーラム主催で、台湾危機に関するシミュレーションにも登場していないようです。

これは、米国の国防総省や海軍大学のシミレーションでも同じことです。米海軍は強力な攻撃型原潜を持っているにもかかわらず、彼らのシミレーションにはそれは登場することはありません。

それはなぜなのかについては、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
ペロシ米下院議長、アジア歴訪を発表も訪台は明示せず 割れる賛否―【私の論評】ペロシの台湾訪問は米国による対中国「サラミスライス戦術」の一環(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとし、以下にこれに関わる部分のみを引用します。

米国国防省や米海大の台湾有事のシミレーションでは、なぜか米軍は、攻撃型原潜を用いることはありません。なぜそのようなことをするかといえば、米国の攻撃力に優れた攻撃型原潜をシミレーションに参加させれば、米海軍の中国に対する絶対優位性が証明されることになり、シミレーションの本来の目的が達成されなくなってしまうからです。

本来の目的は何かとえば、米海軍の脆弱な部分を補うための予算を獲得すること、さらに米海軍の脆弱な点に対して、世間の耳目を惹き付けることです。

そのシミレーションの目的は、十分とはいえないものの、ある程度は効果を現しているようです。しかし、そこにたとえば、オハイオ型攻撃型原潜を参加させれば、これは比較的大型の艦体や動力ゆえに、トマホーク巡航ミサイルを154基も搭載でき、これは米誘導ミサイル駆逐艦の1.5倍以上、米海軍の最新鋭攻撃型潜水艦の4倍近いです。
米オハイオ級攻撃型原潜
トマホーク1基では、爆発力の高い弾頭を最大1000ポンド(約450キロ)搭載可能です。さらに、現在の米国の大型原潜は、巡航ミサイル以外にも、対艦ミサイル、対空ミサイル、魚雷等を多数配備し、さながら海中の大型ミサイル基地のようであり、その攻撃力は半端ではありません。

このような大型攻撃型原潜が1隻でも、台湾近海に潜んでいれば、台湾有事には最初の一撃で、多くの艦艇、航空機、中国の防空施設、監視衛星の地上施設を攻撃すれば、中国海軍は壊滅的打撃を受けることになります。

それを覚悟の上で、無理に中国が台湾に上陸部隊を上陸させたにしても、米攻撃型原潜が台湾近海に潜んでいれば、中国海軍の艦艇や航空機が、台湾に近づけばこれがことごとく破壊され、上陸部隊への補給ができず、上陸部隊はお手上げ状態になります。

中国はASW(Anti Submarine Warfarea:対潜戦)においては日米に著しく劣る中国海軍には、これに対抗する術はほとんどありません。中国軍は、米攻撃型原潜が台湾沖に恒常的に潜むことになり、米軍がそれを公表する事態になれば、第三次台湾海峡危機(1995年-1996年)において、米軍の空母に対応できず、軍事恫喝を継続することができなかったときのように、再度米国の攻撃型原潜に屈服することになります。
このことに関しては、米国の著名な戦略家ルトワック氏も語っていますが、他の複数の著名軍事専門家も同じようなことを語っています。

日本でも、台湾有事というと、判で押したように、必ずと言ってよいほど、潜水艦は登場しません。上の記事でもわかるように、日本戦略研究フォーラム主催で、台湾危機に関するシミュレーションにも登場していないようです。

これは、米国防省や海軍大と同じく、潜水艦を登場させてしまえば、圧倒的に日本が有利なるため、それでは海自の脆弱な部分を補うための予算を獲得すること、さらに海自の脆弱な点に対して、世間の耳目を惹き付けることができないからなのでしょうか。

それとも、潜水艦の行動は昔から秘匿するというのが普通なので、その慣例に従っているからだけなのでしょうか。あるいは、単に中国を刺激したくないだけなのでしょうか。

その真偽は定かではありませんが、皆さんも少し調べてみれば、台湾有事や尖閣有事での日本の対応ということになると、ほとんどのメディアや軍事専門家たちの論説には潜水艦が含まれていないことに気づくでしょう。

米国の攻撃型原潜など、攻撃力は高いですが、原潜は構造上どうしてもある程度は騒音が出てしまうので、発見されやすいです。ただ、スクリューの駆動を止めて、深海に潜んだり、潮流に乗っていたりすると、これは発見しにくいです。

ただし、この状態であっても、魚雷やミサイルを発射すると、発射の時点で、さらに発射地点から退避行動をとるためスクリューを駆動させると、発見されやすくなります。ただ、米軍は対潜哨戒能力が中国軍よりはるかに高いので、中国軍に対してはるかに有利に戦うことができます。

それに大型の攻撃型原潜であれば、一度の攻撃でかなりの中国の艦艇、潜水艦、地上施設を破壊してしまうので、攻撃型原潜への攻撃も防ぐことになり、かなり有利に戦闘を進めることができます。

これに対して、日本の通常型潜水艦は、最近はハープーンミサイルも発射できるなど攻撃力も増しましたが、それでも米国の大型攻撃型潜水艦と比較すれば、劣ります。

しかし、利点もあります。先に述べたように、日本の潜水艦はステルス性がかなり高いので、魚雷などを発射するとその瞬間は発見されやすくなりますが、退避行動で全速力で逃避行動をとったにしても対潜哨戒能力の低い中国には、かなり発見しずらいのです。

「おやしお」型潜水艦「まきしお」の発令所。艦尾から艦首方向を見ている。右手の円筒形は潜望鏡

そのため、現在22隻体制になった潜水艦をうまく運用すると、かなりのことができます。

まずは、台湾や尖閣などの島嶼が中国軍に攻撃された場合、これらの島嶼を複数の潜水艦で包囲してしまえば、中国軍はステルス性の高い日本の潜水艦を発見するのが困難であるため、これを恐れ、補給のための艦船等を台湾に近づけることができなくなります。近づけば撃沈されることになります。そのため、中国軍は陸上部隊に補給ができなくなりお手上げ状態になります。いずれ、投降することになります。

次に、上の記事にある、戦争に協力する意思ある人の意向をどう反映するかというところでも、言われていたように、たとえば台湾有事で邦人や、台湾の人々が非難するのを助けるために、民間人が船を出したとき、それを日本の潜水艦が守ると宣言すれば、中国海軍はこれに手を出すことがかなり難しくなります。

このように潜水艦をシミレーションの中に含めるか否かで、現在でも大きな違いがあります。

さらに上の記事では、将来的に潜水艦を利用することも提言しています。それが、いままでの記事とは大きく異なっているといえると思います。その部分に以下に再掲します。
 巡航ミサイルを水上艦に搭載すれば、中国は、その位置を正確に把握してしまい、日本がどこを攻撃するか、簡単に予測されてしまう。しかし、同じ巡航ミサイルを日本の潜水艦に搭載して運用するならば、中国は、日本がどこを攻撃するか、わからない。
 仕方ないから、中国は広い範囲に防衛線をはり、戦力を分散させるだろう。巡航ミサイルを潜水艦に搭載するほうが、水上艦に搭載するよりも、日本が主導権を握りやすいことになる。
これは、かなり有効だと思います。これを装備すれば、日本の潜水艦も米国の攻撃型原潜の攻撃力に近づくことになります。日本は第2次世界大戦中もかなり優秀で航空機を3機搭載できる大型の潜水艦も製造できました。

ただ、その運用方法はあまり上手くはなく、米軍は潜水艦は当時の水準からすると至って凡庸なものだったそうですが、それでも運用方法が優れており、多方面で活躍したとさてれています。たとえば、第2次世界大戦中には米軍潜水艦は、東京湾の深くまで踏み入り、情報収集活動を行っていたそうです。

さらに、米軍は潜水艦を用いて、日本の通商破壊を徹底しましたが、日本海軍の戦争戦略に通商破壊という概念がなく、これをほとんど実施していませんでした。偶発的なものはありましたが、日本海軍がこれを戦略的に実行したことはありません。日本の優れた潜水艦を用い、これを実施していれば、戦況がかなり変わった可能性があります。

上の記事では、「次の戦争も負けたいか……。それだけは、避けたい」と結論づけています。私もそう思います。であれば、日本はせっかくの22隻をどのように使うかを真剣に考える必要があると思います。

そうして、本気でそれを考えれば、かなり日本の潜水艦隊は、専守防衛には有効であることがわかると思います。最近中露海軍は、日本を挑発していますが、実際に海戦ということになれば、日本の潜水艦にかなり痛めつけられることを覚悟していると思います。実際に海戦になれば、日本側は、宗谷海峡、対馬海峡、豊後水道、対馬海峡など主な海峡等々を潜水艦を配置し封鎖するでしょう。また、機雷封鎖もすることになるでしょう。

たとえば、ロシア極東軍はウラジオストックから補給を受けており、宗谷海峡が封鎖されれば、その補給はかなり難しくなります。

ただ、専守防衛だけでは、日本の独立が守れたにしても、日本の国土が攻撃にされてしまい、多くの国民の人名や財産が失われてしまいかねません。それを抑止するためにも、日本の潜水艦もトマホークのような巡航ミサイルを装備できるようにすべきです。

専守防衛だけでは、国民の命や財産は守れないことが、ウクライナ戦争で明らかに・・・・

そうして、台湾有事、尖閣有事のシミレーションには潜水艦を登場させるべきですし、そうすれば、戦況はいままでとは全く異なることになることが理解できるでしょうし、これをさらに強化するには何が必要になるかがはっきり、みえてくると思います。

日米とも台湾有事のシミレーションには潜水艦を参加させ、細かいことは発表しなくてよいですから、その結果が潜水艦なしのときとではどのような変わったかくらいは発表すべきと思います。

その上で、米海軍は米海軍の本当の危機とも言える、米空母などの艦艇や潜水艦の稼働率の低下を招いている工廠の問題などを明確にして、それを是正するための予算獲得に尽力すべきと思います。米国民も台湾有事に米海軍が有効に対応ができないというのなら、さらに大金を投入するのはためらわれると思います。

日本でも、自衛隊が尖閣有事、台湾有事に自衛隊がせっかく長い間かけて巨費を投じて、潜水艦隊を育ててきたにも関わらす、これを参加させずに、その結果現状ではあまり有効な手立てを示すことができなければ、中国と海で戦えば、日本はすぐに負けると思い込む人もでてくるかもしれません。

すぐ負ける自衛隊に大金を投じることは、無意味と感じる人も大勢出てくるかもしれません。そうなれば、中国の思う壺です。そのようなことは避けるべきです。

中国軍は張り子の虎 米台日で連合を―【私の論評】中国海軍最大の弱点、黄海を既に2017年から監視活動を続け中国を牽制していた日本(゚д゚)!

ペロシ訪台の陰で“敗北”した人民解放軍―【私の論評】海中の戦いでも負けていたとみられる中国海軍(゚д゚)!

2022年9月2日金曜日

オーストラリア海軍要員、英の最新鋭原潜で訓練へ AUKUSで関係深化―【私の論評】豪州は、AUKUSをはじめ国際的枠組みは思惑の異なる国々の集まりであり、必ず離散集合する運命にあることを認識すべき(゚д゚)!

オーストラリア海軍要員、英の最新鋭原潜で訓練へ AUKUSで関係深化

英国の攻撃型原潜「HMSアンソン」

 韓国・ソウル(CNN) 米英豪3カ国による安全保障協力の枠組み「AUKUS(オーカス)」の下で防衛面の関係が深化するなか、オーストラリア海軍の要員が近く英国の原子力潜水艦で訓練を始める見通しとなった。英政府が8月31日に明らかにした。

 ウォレス英国防相は「インド太平洋を始めとする地域で自由民主主義秩序への脅威が高まるなか、今日はこれに対抗する英国とオーストリアの準備作業において重要な節目になった」と述べた。

 英海軍がイングランド北部バロー・イン・ファーネスで最新鋭の攻撃潜水艦「HMSアンソン」を就役させた際の発言。就役式にはオーストラリアのマールズ副首相兼国防相も参加した。

 ウォレス氏は就役式で、国内の造船業や国際的な提携を称賛。国内の造船所で建造されたアンソンは英国産業の粋を示すものであり、「AUKUSに基づき緊密な同盟国であるオーストラリアや米国などとの共同安全保障に貢献する英国の意欲を明確に示している」と述べた。

オーストラリアのマールズ副首相兼国防相

 マールズ氏も「オーストラリアの潜水艦要員がHMSアンソンで訓練を受けるという今日の発表は、AUKUSの協力関係を構築する我々の将来の計画について全てを物語っている」と語った。

 昨年締結されたAUKUS協定に基づき、オーストラリアは2040年までに原子力潜水艦を取得したい考えを示している。

 建造予定のオーストラリアの原潜の設計はまだ不明。英国のアスチュート級潜水艦や米海軍のバージニア級攻撃潜水艦に似たものになる可能性があるが、オーストラリア独自の仕様の新型艦になる可能性もある。

【私の論評】豪州は、AUKUSをはじめ国際的枠組みは、必ず離散集合する運命にあることを認識すべき(゚д゚)!

英国海軍は2021年5月17日(月)、アスチュート級原子力潜水艦の5番艦「アンソン」を、イングランド北部の都市バロー=イン=ファーネスにあるBAEの造船所で進水させていました。

アスチュート級原子力潜水艦は、魚雷や対艦ミサイルなどで敵の水上艦や潜水艦などを攻撃するのが主任務の、いわゆる攻撃型原潜と呼ばれるタイプであり、大陸間弾道弾などを搭載する、いわゆる戦略ミサイル原潜ではありません。

イギリス国防省はアスチュート級を7隻建造する計画で、2007(平成19)年6月に1番艦「アスチュート」が進水、2010(平成22)年8月に就役して以降、これまでに4番艦「オーディシャス」までが同海軍に引き渡されていました。

今回、就役した「アンソン」は2011(平成23)年10月13日に起工。約10年後工期を経て2021年に進水し、今年8月31日に就役し海上公試に入りました。

水中排水量は約7700トン、全長97m、全幅11.3m。乗員数は約100名(最大109名)で、ロールス・ロイス製の加圧水型原子炉「PWR2」を1基搭載し、速力は30ノット(約55.6km/h)。533mm魚雷発射管を6門備え、国産の「スピアフィッシュ」魚雷のほか、アメリカ製の「トマホーク」巡航ミサイルなどを装備しています。

英国のように、原潜を製造する能力があっても、起工してから就役するまで10年以上もの歳月を必要とするのです。そうして、就役したからといってすぐに実戦に参加するわけではありません。

その後に海上公試があります。海上公試は、建造された艦船を海上で実際に運航し、要求通りの機能・性能が発揮できるかを確認するために、建造所から軍への引き渡し前に実施される試験です。

海上公試は、船の性能を調べる艦船公試と搭載兵器の性能を調べる武器公試(軍艦などの場合)に大別されます。試験期間は1泊2日、5泊6日など船の種類によって様々です。

 海自の場合だと、数十回の海上公試を行い、トータルシステムとしての艦船の完成検査を受け、合格して引き渡しを行い、契約の履行が完了という運びになります。

防衛省に引き渡された艦船は、ただちに防衛大臣により自衛艦旗が授与され、自衛艦としての位置付けが確立し、部隊に配属され、任務に就くことになります。

一隻の艦艇を製造するにしても、起工してから、任務につくまではこれだけの期間を要するのです。

オーストラリアには、そもそも自前で潜水艦建造の技術もなく、原子力産業も存在しません。そのオーストラリアが原子力潜水艦を持つということは、文字通り一つの産業を起こすくらいの大事業です。

オーストラリア政府が、原子力潜水艦を2040年までに取得したいとしている理由が、これでおわかりになると思います。それだけ、原潜の開発には、手間と時間がかかるのです。

それを早めるために、潜水艦を最初から建造するのではなく、建造されたものを購入するという手もあります。それにしても、すぐに運用するには、乗組員を訓練しておく必要があります。今回のオーストラリアの潜水艦要員がHMSアンソンで訓練を受けるという発表は、そうしたことも視野に入れている可能性もあります。

ただ、2040年までというとかなり長期です。その期間中誰が首相になろうが、英豪間の強いコミットメントが必要です。さらに、20年後までAUKUS内でオーストラリアを機能させないままにするのかという議論にもなると思います。それは、あり得ないでしょう。

このことから、元トランプ政権高官シュライバー氏は、豪州に原潜は来ないかもしれないと警告しています。それは、多いにありえることです。

これについては、このブログにも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
AUKUSで検討されている新戦略―【私の論評】AUKUS内で豪が、2040年最初の原潜ができるまでの間、何をすべきかという議論は、あってしかるべき(゚д゚)!

2020年2月、蔡英文台湾総統(右)を表敬訪問したシュライバー氏(左)

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、シュライバー氏は以下のような提案をしています。

シュライバー氏は「両国の政治指導者の持続的なコミットメントが必要であり、それがなくなれば豪州の原潜展開の可能性は50%以下になる」と述べた上で、①原潜計画が旨く行かない場合に備えプランB(代替案)が必要だ、②B-21(最新長距離爆撃機)の調達を検討すべきだと主張しています。

B-21は高い柔軟性、早い補充性等の利点を有するといいます。しかし、B-21も最新技術を使用しており、米国の技術供与同意は簡単ではないでしょう。

いずれにしても、AUKUSという組織をつくったにしても、その組織の一員である、オーストラリアが2040年に原潜を取得するまで、何もしないというわけにはいかないでしょう。

原潜計画は進めるにしても、2024年まで、オーストラリアが何かに貢献すべきことは明らかです。

現在中国に対抗するため、様々な軍事的あるいは経済的な枠組みが作られています。ただ、これらの枠組みが将来にわたって不変で継続し続けるかどうかなどわかりません。それを考えると、シュライバーの指摘は正しいと思います。

これについても、以前このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

AUKUSを読む上で重要な地政学的視点―【私の論評】同盟は異なった思惑の集合体であり必ず離合集散する。AUKUS、QUAD、CPTPPも例外ではない!我々は序章を見ているに過ぎない(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下にこの記事の結論部分を掲載します。

インド太平洋には、もう一つ、QUAD(クアッド)という対話の枠組みがあります。日本が主導して始めたもので、米国、オーストラリア、インドが加盟しており、9月には初めての対面形式の首脳会議がホワイトハウスで開催されました。首脳会議は今後、毎年開催される予定です。

AUKUSが今後、発展していくにつれて、QUADとどのように連携していくのかが、大きなテーマになるでしょう。

英国はCPTPPへの加盟を検討していますし、日本も将来、AUKUSへの加盟を検討しなくてはならない時期が来るでしょう。やがて、インド太平洋では、政治はQUAD、安全保障はAUKUS、経済はCPTPPという役割分担が成立するかもしれないです。

歴史を見ればわかるように、同盟は異なった思惑の集合体ですから、必ず離合集散します。これらの枠組みもいつかは統合し、分裂し、さらにNATOや日米同盟もこれらに吸収されることになるかもしれないです。

AUKUS、QUAD、CPTPP、それらはやがて一つにまとまり、作り替えられて、将来、インド太平洋同盟として花開く可能性を秘めています。

今、われわれが目にしているのはその始まりにすぎないのです。

ただ、オーストラリアには潜水艦を所有したいという強い意思があるのも事実です。中国の艦艇がオーストラリアの近くの海域を航行するのは珍しいことではなくなりました。オーストラリア国防省は2月19日、豪州北部沖合の上空を飛行していた哨戒機が海上の中国軍艦艇からレーザー照射を受けたと発表しています。

中国の潜水艦が航行している可能性もあります。こうしたことに備えるためには、中国は対潜哨戒能力がオーストラリアよりも低い(米国より対潜哨戒機P-8等を導入し対潜哨戒能力を高めている)ことを考えると、攻撃力に優れる攻撃型原潜を手に入れることは理にかなっています。

それにしても、同盟は異なった思惑の国々の集合体ですから、必ず離合集散します。現在の国際的な枠組みもいつかは統合し、分裂し、さらにNATOや日米同盟もこれらに吸収されることになるかもしれないです。

オーストラリアも、こうした国際的枠組みの離合集散に備えておくべきと思いますし、現在のAUKUSへの貢献も考えるべきでしょう。

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