2023年7月3日月曜日

中国が東南アジアから撤退開始、経済問題に直面し―【私の論評】中国は、アフリカ、ラテンアメリカ、中央アジアでも撤退しつつある(゚д゚)!

中国が東南アジアから撤退開始、経済問題に直面し

東南アジアから撤退をはじめた中国 AI生成画像

 東南アジアにおける中国の経済的存在感が縮小し始めている。以前は中国がこの地域に最も多くの融資や援助を提供していたが、現在は他国に押されて影が薄くなっている。中国が東南アジアに向ける金を切り詰めることにより、中国の世界支配への夢は遠のくことになるだろう。

 2021年の中国の政府開発融資(ODF)は再び減少し、かつての最高額の半分強にとどまった。一方で、他の国や国際機関の投資が増えており、中国の存在感は低下している。日本の投資は特に増加しており、中国に追いつこうとしている。

 中国の投資減は海外の優先順位の転換を示すものではなく、中国自体が経済と金融の問題を抱えていることを示している。中国経済の回復が一時的で、再び減速している状況であることも考慮すべきだ。

 このような経済的制約に直面している中国が、東南アジアでかつての存在感をすぐに取り戻すことは難しいだろう。

これは、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】中国は、アフリカ、ラテンアメリカ、中央アジアでも撤退しつつある(゚д゚)!

中国の東南アジアでの経済的プレゼンスは上の記事にもあるように、確かに縮小しつつあります。

これについては、私も独自に調べましたので、それを以下に示します。
中国政府による東南アジアへの開発融資は、2015年の760億ドルから2021年には390億ドルに減少しまし。(出典:AidData)

中国の対東南アジア直接投資(FDI)シェアは、2015年の25%から2021年には14%に減少しました。(出典:UNCTAD)
他の地域でも、中国の経済的プレゼンスが縮小している地域があります。以下にあげます。

アフリカ: 中国は近年、アフリカへの主要な投資国であったのですが、その経済的プレゼンスはここ数ヶ月で低下しています。これは、COVID-19のパンデミック、ウクライナ戦争、中国自身の景気減速など、さまざまな要因によるものです。
中国の対アフリカ直接投資は、2015年の36億ドルから2021年には28億ドルに減少しました。(出典:UNCTAD)
中国の対アフリカ貿易は2015年の2,220億ドルから2021年には1,990億ドルに減少。(出典:世界銀行)

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ラテンアメリカ: 中国は近年、ラテンアメリカへの主要投資国でもあったのですが、ラテンアメリカでの経済的プレゼンスも低下しています。これは、COVID-19の流行、一部の国の政情不安、中国自身の景気減速など、さまざまな要因によるものです。
中国のラテンアメリカへの直接投資は2015年の105億ドルから2021年には83億ドルに減少しました。(出典:UNCTAD)
中国の対ラテンアメリカ貿易は2015年の3200億ドルから2021年には2790億ドルに減少。(出典:世界銀行)
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中央アジア: 中国は近年、中央アジアへの主要な投資国であったのですが、その経済的プレゼンスも低下しています。
中国の中央アジアにおける直接投資は、2015年の27億ドルから2021年には22億ドルに減少しました。(出典:UNCTAD)
中国の対中央アジア貿易は2015年の520億ドルから2021年には470億ドルに減少。(出典:世界銀行)
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注意しなければならないのは、これらは中国の経済的プレゼンスが縮小している地域のほんの一例にすぎないということです。このようなことが起きている地域は他にもたくさんあります。

中国が、東南アジアでかつての存在感をすぐに取り戻すことはなさそうなのと同じく、これらの地域でもすぐに取り戻すことはなさそうです。

だからといって、すぐに中国がこの地域からすべての投資などをひきあげるということはないでしょうが、年々先細りになっているのは事実です。これが、すぐに回復することはないでしょう。これは、日本、米国、欧州などの先進国にとって、これらの地域での経済的プレゼンスを回復する好機です。

先進国には、これらの地域と関わってきた長い歴史があり、貿易、投資、技術の面で提供できるものがたくさんあります。また、グッド・ガバナンス、人権、持続可能な開発の促進にも貢献できます。

もちろん、これらの地域で経済的プレゼンスを取り戻すには課題もあります。中国は近年、これらの地域で非常に積極的に活動しており、多くの関係を構築しています。しかし、先進国がこれらの地域に積極的に投資し、現地のパートナーと協力すれば、これらの課題を克服することができると思います。

私は、先進国がこれらの地域で経済的プレゼンスを取り戻すために協力することが重要だと思います。資源や専門知識をプールし、それぞれの努力を調整することができます。そうすることで、中国がこれらの地域を支配することがより難しくなり、これらの地域の人々にも利益をもたらすことができます。

経済的利益に加え、これらの地域で経済的プレゼンスを取り戻すことには政治的利益もあります。これらの地域は世界の安全保障と安定にとって重要であり、世界経済にとっても重要です。これらの地域での経済的プレゼンスを高めることで、先進国は平和の促進に貢献することができます。

私は、東南アジア、アフリカ、ラテンアメリカ、中央アジアにおける経済的プレゼンスを回復することが、先進国にとって最善の利益であると思います。これは自国の利益を促進する機会であり、またこれらの地域の発展と繁栄を助ける機会でもあります。

一方中国では、国家統計局が4月16日に発表した若年層の失業率は、前月比で0.8ポイント上昇し、20.4%となりました。これは、2021年夏に記録した19.9%を上回り、過去最高となりました。

調査対象全体の失業率は、前月比で0.1ポイント低下し、5.2%となりました。国家統計局の付凌暉報道官は、北京での記者会見で、「若者の雇用安定・拡大に向け、一段の取り組みが必要だ」と述べました。

統計局が同時に発表した他の経済統計は、軒並み予想を下回りました。これは、債務問題や民間セクターの弱い景況感が経済成長の重しになっていることを示しています。

今年大学を卒業する学生は約1158万人と見込まれていることもあり、若年層の高い失業率は大きな課題となっています。

一方、過去3年間で就業者数は4100万人余り減少しています。これは、新型コロナウイルス禍がもたらした経済的影響と国内の少子高齢化がいずれも響いています。

これだけ、雇用が、その中でも若者雇用が悪化しているのですから、本来なら中国人民銀行(中国の中央銀行)は大規模な量的緩和を行うべきですが、そうはしていません。

それには、やはり国際金融のトリレンマにより、人民銀行は、独立した金融政策ができなくなっているからとみられます。

国際金融のトリレンマとは、1980年代にロバート・マンデルによって提唱された理論です。これは、ある国が次の3つの政策を同時に達成することは不可能であると主張するものです。

  • 為替相場の安定(固定相場制)
  • 金融政策の独立性
  • 自由な資本移動

これらの3つの政策は、いずれも経済成長に重要であると考えられています。しかし、同時に達成することは不可能であり、3つのうち2つしか実行できないというものです。これは、数学的にも、経験的にも知られている事実です。

例えば、中国は為替相場の安定を重視しているため、金融政策の独立性や自由な資本移動を制限しています。これは、中国経済の安定に効果的である一方で、経済成長の可能性を制限しているとも言われています。

現在の中国は、独立した金融政策ができない状況になっており、若者の雇用が深刻になっていても、思い切った金融緩和ができません。それを実行すると、ハイパーインフレになったり、資本の海外逃避が深刻になることが考えられるため、やりたくてもできないのです。

深刻な若者の雇用状況を改善することすらできないのですから、他の経済問題を解消することもなかなかできないとみて良いでしょう。

これを解決にするには、変動相場制に移行するなどの大胆な改革が必要なのですが、習近平にはその気は全くないようです。それをするには、他の改革もせざるをなくなり、そうなると、中国共産党の統治の正当性を毀損しかねないので、改革をせず、その都度弥縫策を繰り返しているのでしょう。

これでは、ここしばらく、中国がこれらの地域でかつての存在感をすぐに取り戻すことは難しいでしょう。

これは、日本にとっても大きなチャンスであり、日本はこの機会を逃すべきでありません。

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2023年7月2日日曜日

中国や韓国の野党が「処理水放出」に非科学的な反対、一部マスコミも加担 受け取る賠償を引き上げる「公金チューチュー」の類か―【私の論評】「公金チューチュースキーム」の発見と根絶には、地方の当該業界に詳しい人こそ目を光らせるべき(゚д゚)!

高橋洋一「日本の解き方」

多数の福島第一原発の処理水タンク AI生成画像

 福島第一原発の処理水放出をめぐっては、中国や韓国の野党、国内の一部勢力などが反対している。夏にも放出開始とされるが、科学的な知見を無視して反対を続ける背景は何か。

 まず、「汚染水」と「処理水」は異なることを確認しておきたい。「汚染水」は、多くの放射性物質を含み、事故後に原発建屋内で発生したものだが、「処理水」は、ALPS(多核種除去設備)などを用いて浄化処理を行うことによって、トリチウム以外の放射性物質について環境放出の際の規制基準を満たすまで浄化した水だ。一部のマスコミは意図的なのか、両者を混同した記事が多かった。

 問題があるとすれば、除去しにくいトリチウムだ。除去しにくいのは一般的な水素と同じように酸素と化合して水分子を構成するからだ。実際に身の回りでは水分子に含まれる形で存在するものが多く、大気中の水蒸気、雨水、海水、水道水にも含まれている。

 トリチウムは放射線の一種であるベータ線を出すが、エネルギーは非常に弱く、空気中を5ミリしか進むことができないため紙1枚で遮蔽が可能だ。また、トリチウムを含む水は、生物学的半減期が10日で、体内に取り込んだ場合も速やかに体外に排出され、特定の臓器に蓄積することもない。なお、物理的半減期も12年と短い。

 このため、韓国や中国を含め世界中の原子力施設から、福島の処理水より高濃度のものが現に放出されている。それによる健康被害は報告されていない。ここまで説明すれば、科学的な問題のないことが分かるが、さらに念には念を入れ、政府はIAEA(国際原子力機関)の専門家らにも安全性の検証を要請している。

 これまでの検証作業では問題はないが、5月29日から6月2日まで最終的な報告に向けて、IAEAはアルゼンチン、オーストラリア、カナダ、中国、フランス、韓国、マーシャル諸島、ロシア、米国、英国、ベトナム出身の11人の国際専門家からなる調査団を福島に派遣して総括的な調査を行った。その包括的調査を踏まえて、IAEAは最終的な報告書を公表する予定だ。

 しかし、それまでは中国などは政治的理由で反対するだろう。それは科学でなく、単に日本の風評をおとしめるという外交戦、外交プロパガンダだ。日本政府は猛烈な反撃をしなければいけない。でないと、日本の国益が確保できない。

 IAEAによる最終的な報告書が出た後でも、一部の左派国内活動家は反対し続けるかもしれない。それはもはや科学でなく、一部関係者が受け取る賠償を引き上げる「公金チューチュー」の類ではないか。また、原発に関連することはなんでも反対することが「活動」という面もある。

 ここには、一部マスコミも加担している。言ってみれば、風評被害を拡大しているわけで「イジメ」と同じ構造だ。これまでどのようなジャーナリストやマスコミが、何をやってきたのかを検証することも必要だろう。

 福島第一原発の処理水放出は、科学的な問題がないことは明らかだ。しかし、政治的理由や風評被害を理由に反対する勢力は少なくない。日本政府は、これらの反対勢力に強く反撃し、処理水放出を進めなければならない。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】「公金チューチュースキーム」の発見と根絶には、地方の当該業界に詳しい人こそ目を光らせるべき(゚д゚)!

福島第一原発の処理水の放出は、2013年に提案されて以来、物議を醸してきました。一部の国や勢力は、放出は危険であり、環境に悪影響を及ぼす可能性があるとして批判しています。しかし、科学的根拠はこうした主張を裏付けるものではありません。

処理水は、放射性同位元素のほとんどを除去する厳格なろ過プロセスを経ています。処理水中の放射能レベルは、海水中のレベルよりもはるかに低くなっています。実際、国際原子力機関(IAEA)は、処理水の放出は海洋の自然背景放射線レベルよりも「重要ではない」と述べています。

IAEAはまた、放出が環境に与える潜在的影響について多くの調査を行っています。これらの研究は、放出が海洋環境に与える影響はごくわずかであるとしています。処理水は膨大な量の海水によって希釈され、放射性同位元素は速やかに拡散するでしょう。

結論として、科学的根拠は、福島第一原発からの処理水の放出が危険であるという主張を支持していません。処理水は厳密なろ過プロセスを経ており、放射能レベルは海水に含まれるレベルよりはるかに低くなっています。IAEAはまた、放出による環境への潜在的影響について多くの調査を行ってきました。

結論として、福島第一原発からの処理水の放出が危険であるという主張は、科学的証拠からは支持されないです。処理水は厳密なろ過プロセスを経ており、放射能レベルは海水に含まれるレベルよりもはるかに低くなっています。IAEAはまた、放出が環境に与える潜在的な影響について多くの研究を行っており、これらの研究では、放出が海洋環境に与える影響はごくわずかであるとしています。

以下は、処理水放出の安全性を裏付ける追加的な証拠です。

処理水は10年以上にわたって福島第一原発のタンクに保管されてきましたが、周辺住民の被曝事例は報告されていません。

処理水は太平洋に放出されますが、太平洋は広大でよく混ざり合った水域です。放射性同位元素はすぐに希釈・拡散され、人間の健康や環境に大きなリスクをもたらすことはないと予想されています。

IAEAは処理水放出の安全性について何度も検証を行い、安全であるという結論を出しています。

もちろん、新しい技術や慣行には常に不確実性が伴います。しかし、現在までの科学的根拠は、福島第一原発からの処理水の放出が安全であることを示唆しています。

以上の包括的調査を踏まえて、IAEAは最終的な報告書を公表する予定です。最終報告書においても、以上の公表された内容をまとめるだけであり、新たな事実がでてくる可能性はありません。

上の記事で、高橋洋一氏が語る、「公金チューチュー」とは、簡単に言うと『公金(税金)をピンハネ(中抜き)する仕組み』です。

日本の公金チューチューシステム。多数のゴキブリが公金をチューチュー吸い込んでいる。Ai生成画像。

しっかり委託元が管理責任を果たしていればこのような問題は起きないのでしょうが、例えばワクチン接種に伴う問い合わせセンターの設置事業では、委託元であるパソナが委託した『エテル』という企業が本来100人の電話受付員を配置すべきところ、33人しか配置していなかったことが判明。全然電話がつながらないという事態が発生しました。

なぜ、公金チューチューのスキームが発生するかといえば、単純にいえば、これがお金がも儲かるスキームだからです。

例えば悪徳政治家Aが「日本の使われていない土地を活用して、田んぼを作る事業をやろう」と言い出したとします。

悪徳政治家Aはその為に予算100億円を組み、自分で作った会社、もしくは「見返り」がある仲良しの会社Bに100億円で事業を依頼します。これを「利権」といいます。

仲良しの会社Bは100億円のうち50億円をもらって、また別の土木業者Cに50億円で仕事を丸投げします。

土木業者Cは更にそこから49億円取って残りわずか1億円で働く人を集めます。このようなスキームでお金を儲け、政治家や会社が儲かる仕組みを「公金チューチュースキーム」というのです。

日本の悪徳政治家とトンネル会社と利権 AI生成画像

現代日本ではこんなことがそこかしこで発生しているのが現状です。

例えば東京オリンピックでは本来日当20万円が出るはずのアルバイトに時給1600円しか支払われなかったり、福島第一原発で働く除染員に、同じく高額な日当のはずがコンビニバイト程度のお金しか払われなかったり等のことがありました。

民間業者は自分たちで作った商品を一生懸命宣伝して顧客に買ってもらい、売上を得るのが一般的ですが、パソナなどの中抜き業者は何もせずに大金が入ってくるので、政府は昆虫食推進とか様々な事業を新しく実施しようとするのだと見られています。

処理水の放出が 賠償金など"公金をピンハネするための一種の仕組み "として利用されてるいる可能性はあると思います。この主張が事実であれば、対処すべき重大な問題です。しかし、無論放出に反対する一部の国内左派活動家の動機がこれだけではないでしょう。

原子力に対する不信感や潜在的な環境への影響への懸念など、他にもさまざまな要因があるでしょう。さらに、「倒閣運動」への利用という面もあると思われます。

ただ、IAEAの調査などを待つまでもなく、当初から福島第一原発の処理水放出は危険ではないことが、科学的に明らかであるにもかかわらず、反対運動がおこり、IAEAの調査が行われ、最終報告が出る直前になってさえ、科学的な知見を無視して反対をし続けるという現実をみれば、「公金チューチュースキー厶」存在を疑うのは自然な流れでもあるように思います。

日本では、上記の疑惑の他にも、公金チューチュースキームによって行われている可能性のある事業は数多くあります。

例えば、
  • 公共事業の受注をめぐる汚職
  • 政治家や官僚への献金
  • 不良債権の処理
  • 国有地の売却
  • 補助金の不正受給
などが挙げられます。

公金チューチュースキームによって、本来、国民のために使われるべき公的資金が、不正に私的利益のために使われてしまいます。その結果、国民の生活水準が低下したり、経済成長が鈍化したりするなどの悪影響が出る可能性があります。

また、公金チューチュースキームは、国民の税金に対する信頼を低下させる可能性があります。その結果、税収が減少したり、国民の投資意欲が低下したりするなどの悪影響が出る可能性があります。

公金チューチュースキームは、国民の税金が不正に使われるため、社会に大きな悪影響を与えます。公金チューチュースキームを防止するためには、国民一人ひとりが公金の使い道に目を光らせることが重要です。

色眼鏡をかけて他人を疑う人 AI生成画像

ただし、「公金チューチュースキーム」は、直接の補助金や賠償金等の申請窓口や、交付事務を行うのが、地方自治体なので、どのレベルで「スキーム」が決められているかは別にして、「スキーム」による不自然さは地方自治体の申請受付や実際の交付に現れてくることが多いようです。

当該地域の人であっても、当該業界に詳しくない人たちは、自治体への補助金申請や、自治体による補助金交付に関して、不自然さを見つけるのは難しいでしょう。

まさしく、地方における当該業界に属する人(属していてスキームの恩恵を受けていない人)や、当該業界に詳しい人々こそが、補助・賠償金の申請や、その交付の不自然さに気づきやすいが故に「公金チューチュースキーム」の発見と廃絶に強く関与できるのではないかと思います。

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2023年7月1日土曜日

中国が「対外関係法」を施行 米にらみ対抗姿勢を明記―【私の論評】中共が、何の制約も制限もなく、自由に外交問題に関与し、外国人を取り締まる体制を確立するその第一歩か(゚д゚)!

中国が「対外関係法」を施行 米にらみ対抗姿勢を明記
 中国は2023年7月1日、外交政策の基本原則を定めた「対外関係法」を施行しました。主権や安全を守るために報復措置をとる権限を明記するなど、対立の長期化が見込まれる米国への対抗姿勢を示す内容です。中国は同日にスパイ行為の定義を拡大し、取り締まりを徹底する「改正反スパイ法」も施行しており、習近平政権の対外強硬姿勢が法制面でも鮮明になっています。

 全45条の対外関係法は米国を念頭に「覇権主義と強権政治に反対する」とした上で「中国の主権、安全、発展の利益を損なう行為に対して相応の対抗・制限措置を講じる権利を有する」と定めました。外交担当トップの王毅共産党政治局員は6月末、党機関紙、人民日報への寄稿で「対外闘争の法的な『道具箱』であり、国際秩序の『安定器』の役割を果たす」と同法の意義を説明しました。

 習国家主席の外交思想を「法的な形で実行した重大な成果」と強調しており、権威強化の狙いもうかがわれます。同法には、巨大経済圏構想「一帯一路」や、グローバル安全保障イニシアチブ(GSI)といった習氏が提唱した国際戦略が盛り込まれています。香港メディアの「香港01」は6月末、同法制定について「習氏の外交思想がかなりの長期にわたって中国外交を指導することを暗示している」と指摘しました。

 習政権は共産党による指導強化を進めており、同法は「対外工作は党の集中統一指導を堅持する」と明記。党中央の指導機構が「国の対外戦略と、関係する重要方針や政策を指導し実施する」と明確化しました。

 中国共産党は1日、創建102年の記念日を迎えました。党中央組織部は同日までに、党員数が2022年末時点で約9,804万人に達したと発表。前年末から約132万人増えました。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】中共が、何の制約も制限もなく、自由に外交問題に関与し、外国人を取り締まる体制を確立するその第一歩か(゚д゚)!

中国は2023年1月28日、全国人民代表大会(全人代)の常務委員会で「対外関係法」を可決しました。この法律は、中国が対中制裁や「西側の覇権」に反撃するための法的根拠を提供するものと見られています。

対外関係法は、国家主権と安全保障、発展の利益を危うくする行為や国際法と「国際関係の基本的な規範」に反する行為に対して、「対抗・制限措置」を講じる権利を中国は有しているとしています。

中国はすでに、米国による台湾への武器売却を理由にロッキード・マーチンやレイセオン・テクノロジーズに報復制裁を科したことがあります。今回の新法はそうした措置の法的根拠を強化することになります。

対外関係法はまた、中国共産党の習近平総書記(国家主席)が中国の外交政策を個人的にコントロールすることを明文化しています。

習近平

同法は、グローバル安全保障イニシアチブ(GSI)やグローバル文明イニシアチブ(GCI)といった習氏の代表的な政策に言及することで、法律というよりも習氏の外交政策宣言に近いものです。これは法的プロセスを通じて中国の外交政策を個人化したものといえます。

対外関係法は、報復措置を実施する上で政府機関に対して部門間の調整と協力を強化するよう義務付けています。また、国務院には「関連実務機関を設立する」権限が与えられました。

中国は米国に比べ制裁の実施例が比較的少なく、2021年に初の対外制裁法「反外国制裁法」を成立させました。

共産党系の新聞、環球時報は対外関係法が制裁などに対する「外交闘争の法的根拠を提供する」と専門家の話を引用し報道。「西側の覇権に対する予防と警告、抑止の役割も果たし得る」との見方も示しました。

習氏は今年3月の演説で、「米国主導の西側諸国」が中国を「包括的に封じ込め、抑圧」しようとしていると非難していました。

ただ、対外関係法は中国政府に制裁への新たな対抗手段を与えるものではなく、より抽象的なレベルでの反外国制裁法の繰り返しに過ぎないようです。

対外関係法は政府機関に向けたものですが、中国による対外関係の行動は共産党指導部全体が統括することも強調。習氏はここ数年、政府機関に対する党の掌握を強めています。

同法は党が外交政策を担当し、外務省と国務院が実務機関であることを非常に明確にしています。

私は、これは独裁国や全体主義国家によく見られるように、外交は独裁者の胸先三寸で決められることを、法的に明確にしたに過ぎないように見えます。

中国共産党が常に中国の外交政策に強い影響力を持ってきたことを考えれば、これは驚くべきことではないかもしれません。

独裁国家や全体主義国家では、独裁者の意向で外交政策が決定されることが多いです。独裁者が最終的な権力と権威を持ち、他の誰にも相談することなく決定できるからです。中国の場合、中国共産党が独裁者に相当するのだから、彼らが外交政策について最終的な発言権を持っていてもおかしくはないです。

もちろん、外交関係法が単なる法的形式的なものであり、中国共産党が外交政策に関して外交部や国務院と協議を続けるという可能性もあります。しかし、この法律が外交政策における中国共産党の役割について具体的に言及していることは、中国共産党が外交政策により実践的なアプローチを取っていることを示唆しています。

外交関係法が実際にどのように実施されるかは、時間が経ってみなければわからないです。しかし、中国共産党が外交政策の主導権を本気で握ろうとしているというシグナルを送っていることは明らかです。このことは、中国と他国との関係だけでなく、世界秩序にも影響を及ぼす可能性があります。

「対外関係法」の施行とともに「改正スパイ防止法」が施行されたことは、中国共産党が、何の制約も制限もなく、自由に外交問題に関与し、外国人を取り締まることができる体制を確立する、その第一歩であると考えられます。

外国人を厳しく取り締まる中国 AI生成画像

対外関係法は中国共産党に、自国の利益を脅かすと見なした国に対して報復措置をとる権限を与えます。これには経済制裁、渡航制限、あるいは軍事行動も含まれます。改正反スパイ法では、スパイの定義を拡大し、中国国民や企業のデータ収集など、以前はスパイとみなされなかった活動を含めるようにしました。これにより中国共産党は、完全に合法的な活動に従事している外国人を取り締まる権限を得たといえます。

注意しなければならないのは、これらはまだ2つの法案に過ぎず、中国共産党の意図を断言するのは時期尚早だということです。中国共産党は、対外政策において自己主張を強めており、脅威とみなす外国人を取り締まる姿勢を強めている。これは世界秩序に重大な影響を与える可能性があります。

中国共産党(CCP)が対外政策を強化し、脅威とみなす外国人を弾圧しやすくしたことは、世界秩序に多くの深刻な影響を与える可能性があります。

まずは、中国と他国との緊張の高まりがあります。中国のより積極的な姿勢は、近隣諸国や米国をはじめとする西側諸国との緊張の高まりにつながる可能性があります。これは、経済制裁、軍備増強、さらには武力衝突など、さまざまな形で現れる可能性があります。

次に、中国が世界的な大国として台頭することで、世界の分断が進む可能性があります。その結果、気候変動や核拡散といったグローバルな課題の解決がより困難になる可能性があります。

さらに、中国の外国人取り締まりは、国内の人権低下にもつながる可能性があります。中国共産党が新たな権限を行使して、反体制派や政府批判者を取り締まる可能性があるからです。

日本にとって、中国の対外政策がもたらす影響は特に大きいです。日本は米国の緊密な同盟国であり、中国の隣国でもあります。つまり、日本は中国と米国の対立の渦中に巻き込まれる可能性があるのです。

かといって、もし日本が米国と対立して中国側についた場合、多くの深刻な事態に直面する可能性が高いです。

まずは、米国からの経済制裁です。米国は日本にとって最大の貿易相手国であり、日本が中国側についた場合、経済制裁を科す可能性があります。これは日本経済に大きな影響を与えるでしょう。

米国からの軍事的圧力。米国は、東アジア地域への増派を含め、日本への軍事的圧力を強める可能性もあります。これは日中間の緊張を高め、武力衝突に発展する可能性さえあります。

米国からの信頼の喪失もあります。日本が中国側についた場合、米国からの信頼を失う可能性が高いです。これは、日本の安全保障の礎のひとつである日米同盟にも悪影響を及ぼすことになります。同時に欧州や、豪州、インドからの信頼も失うことになります。

また、中国には脅威とみなす国に対して経済的強制力を行使してきた長い歴史があることも注目に値します。もし日本が中国側につけば、中国は経済力等を使って日本に圧力をかけ、要求を呑ませる可能性もあります。

天然でお花畑的な頭の日本人 AI生成画像

中国に関しては、こちらが味方につけば、まさか味方に悪いことはしないだろうという、日本人の天然でお花畑的理屈は通用しません。米国や欧州から距離を置いた日本に対して、中国は最初は微笑みで対応するでしょうが、それは束の間に過ぎず、すぐにここぞとばかり、今までよりもさらに強硬になり、様々な要求を突き付け日本を中国の支配下にできるように動くでしょう。拒否すれば、軍事的圧力をかけてくるでしょう。

それどころか、日本への中国の浸透がすすめば、様々な不平等条約を押し付け、日本の富を奪う挙に出てくるかもしれません。さらには、改憲を迫り、日本が軍隊を持てるようにして、中国軍と共同作戦ができるようにし、日本軍をインドやロシアとの国境地帯に派遣したり、中国軍とともに、台湾と戦争することを迫るようになるかもしれません。

無論、日本の科学技術などは中国のものにして、中国は科学技術においても、台頭するようになるかもしれません。その時に、親中派・媚中派の国会議員や、財界人などを呪っても手遅れです。その頃には、親中派・媚中派は、国家を裏切った信頼できないものどもとして資産など身ぐるみ剥がされて、日本から放逐されているか、拘束されているかもしれません。お花畑日本人には、想像もつかないことなのかもしれません。

結局のところ、米国と中国の対決において中国側につくかどうかの決断は、中国に味方した場合の結果が非常に深刻なものになることは明らかであり、日本にとって選択の余地はないとみられます。

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2023年6月30日金曜日

プリゴジンの乱が見事に炙り出した、ロシア地上軍の激しい損耗度―【私の論評】ウクライナ侵攻によりロシアの衰退が明らかになり、北方領土問題解決のチャンスが生じているのは間違いない(゚д゚)!

プリゴジンの乱が見事に炙り出した、ロシア地上軍の激しい損耗度

エフゲニー・プリゴジン

 エフゲニー・プリコジン氏と彼が率いるワグネル部隊は、2023年6月23日にロシア南部軍管区司令部を占拠し、モスクワに向かいました。ワグネル部隊は、200キロメートル離れたモスクワまで到達したが、6月25日にベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領との間で停戦合意が成立し、モスクワへの進撃を中止した。

 この事件は、ロシア軍の弱体化を示すものとして注目された。ロシア軍は、ワグネル部隊の進撃を阻止することができず、モスクワを守るために十分な戦力を配備していなかったのだ。また、ロシア軍は、ワグネル部隊の武装蜂起を止める措置を講じることができず、プーチン大統領は、映像と言葉で脅すことしかできなかった。

 この事件は、ロシア軍がウクライナでの戦いで大きな損害を被っていることを示している。ロシア軍は、ウクライナでの戦いで、戦車や歩兵戦闘車、装甲車などの兵器を大量に失っており、兵士も多数死亡している。ロシア軍は、ウクライナでの戦いが長期化すれば、さらに大きな損害を被る可能性がある。

この事件は、ロシアの政情にも影響を与える可能性がある。ワグネル部隊は、プーチン大統領の側近であるエフゲニー・プリコジン氏が率いる私兵部隊である。ワグネル部隊の武装蜂起は、プーチン大統領の権力基盤に揺さぶりをかけるものとして注目された。

この事件は、ロシアの今後の政情に大きな影響を与える可能性がある。ロシア軍がウクライナでの戦いで大きな損害を被れば、プーチン大統領の権力基盤が揺らぐ可能性がある。また、ワグネル部隊の武装蜂起は、プーチン大統領の権力基盤に揺さぶりをかけるものとして注目される。

この記事は元記事の要約です。詳細を知りたい方、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】ウクライナ侵攻によりロシアの衰退が明らかになり、北方領土問題解決のチャンスが生じているのは間違いない(゚д゚)!

ロシアは現在、ウクライナ侵攻による戦費と経済制裁による経済的困窮に直面しています。経済紙フォーブスによると、ウクライナ軍の情報に基づく兵器の損失額は約51億ドルに上り、戦費はさらに膨らんでいます。

経済制裁により外貨獲得が難しくなる中、ロシアの財政は直撃されています。さらに、頭脳流出が進んでおり、有識者や文化人が国外に逃れています。

ロシアからの頭脳流出 AI生成画像

流出者の大部分は高い技能や知識を持つ頭脳労働者であり、これによりロシアの経済は長期的な低迷に陥る可能性があります。この混乱と困窮により、ロシアは領土の割譲や勢力圏の縮小などを余儀なくされる可能性もあります。日本はこの状況を見逃さず、北方領土問題の好機を逃すべきではありません。

ただし、北方領土は現在ロシアの軍事支配下にあり、日本が武力で奪還しようとすれば、軍事衝突に発展する可能性が高いことに留意する必要があります。

ロシアが極東からウクライナに軍隊を派遣し、北方領土の防衛が手薄になっている事実を裏付ける事実があります。

『モスクワ・タイムズ』紙は2023年6月21日、ロシアが極東サハ共和国で「戦争をテーマにした」地元の祝日を開催していると報じ、一部の地元民の怒りを買ったと報道しています。同紙はまた、この祝日が「ウクライナ戦争への支持を喚起するためのものだと見る向きもある」と指摘しました。

ラジオ・フリー・ヨーロッパは2023年2月25日、ロシア軍の動きに関する情報をウクライナ情報部に提供した疑いで、ロシア極東地域の住民が反逆罪で拘束されたと報じました。この拘束は "ロシアがウクライナで戦争をする中で、極東の治安を懸念している最新の兆候 "だといいます。

BBCは2023年3月8日、ロシアがウクライナ軍を強化するために極東から軍の一部を撤退させたと報じました。同報道は、この撤退は "ロシアが多面的な圧力に直面していることの表れ "だと伝えました。

これらは、ロシアが極東からウクライナに軍隊を派遣しており、北方領土の防衛が手薄になっているという事実を裏付ける情報源のほんの一部です。重要なのは、これらは単なる疑惑であり、ロシアは極東からウクライナに軍隊を派遣していることを確認してはいないものの、これが事実であると判断できます。

以下は、私が紹介した情報源へのリンクです。
モスクワ・タイムズ紙 戦争をテーマにした先住民の祝日、ロシア極東で憤慨を呼ぶ https://www.themoscowtimes.com/2023/06/21/war-themed-indigenous-holiday-sparks-outrage-in-russias-far-east-a81577
ラジオ・フリー・ヨーロッパ ロシア極東の別の住民が反逆罪で拘束される: https://www.rferl.org/a/russia-treason-case-far-east-ukraine/32448445.html
BBCニュース ウクライナ紛争: ロシア軍はどこにいるのか: https://www.bbc.com/news/world-europe-60158694
上の記事にもあるように、ロシア軍は、ワグネル部隊の進撃を阻止することができず、モスクワを守るために十分な戦力を配備していなかった程なのですが、なおさら北方領土の守備は手薄になっていることが予測できます。

ロシアがウクライナに侵攻している間は、北方領土の防備は手薄でありつづけるでしょうし、ウクライナ侵攻が終了したにしても、ロシアは当面は西側の防備を固めるでしょうから、北方領土の防備は従来よりは手薄になるでしょう。

これは、明らかに日本にとって北方領土を奪還するチャンスといえます。

日本が北方領土を奪還するために取りうる手段としては、以下のようなことが考えられます。

外交: 紛争の平和的解決を目指し、ロシアとの外交協議を継続する。
経済制裁: ロシアに経済制裁を科し、北方領土返還を迫る。
国際協力: 日本は米国など他国と協力し、ロシアに北方領土返還の圧力をかけることができる。

注意しなければならないのは、いずれの手段も北方領土返還に成功するという保証はないといいうことです。しかし、これらはすべて、日本がこの長年の紛争を解決するために検討しうる選択肢です。

昨年初めて行われた北方領土択捉島でのロシア軍による戦勝パレード

ウクライナにおけるロシア軍の弱体化によって、ロシアは北方領土をめぐる日本との交渉に前向きになるかもしれないです。

ロシアが地域の安全保障に対する脅威とみなされ続ければ、国際社会は北方領土を取り戻すための日本の努力をより支持するようになるでしょう。特に、クリミアを含めて、ウクライナが失った領土を取り戻した場合、この支持は大きなものになるでしょう。

結局のところ、日本による北方領土奪還の試みが成功するかどうかは、ロシアの交渉意欲、日本に対する国際的な支持の度合い、日本の国内政治状況など、多くの要因に左右されるでしょぅ。

私は、ロシアが経済的にかなり疲弊し、ロシアが現状のテリトリーを掌握し続ける事が難しくなり、ロシア連邦内の共和国などの独立の機運が高まった場合、現在の北方領土を取り戻す最大のチャンスが訪れると思います。

2014年のプーチンのクリミア併合は、プーチンが信頼できるパートナーではないことを示しており、日本は彼が約束を守ることを信用すべきではありません。ロシアの指導者がプーチンから他の指導者に変わったときが最大のチャンスでしょう。

ソ連の解体後、エリツィン大統領時代に北方領土問題に光明が差すものの、プーチンの登場でそれが無視されました。エリツィン時代は民主主義への移行期で、合理的な主張が必要でした。

プーチンも初期には領土問題を解決する姿勢を見せましたが、後に強硬な姿勢を示し、領土問題が膠着状態に陥りました。

プーチン

島々の返還と引き換えに、日本がロシアもしくは、極東の新たな独立国に経済協力を提供するという可能性もあり得ます。

ウクライナ侵攻によりロシアの衰退が明らかになり、北方領土問題解決のチャンスが生じているのは間違いありません。日本の交渉力が問われる状況です。

全体として、日本が北方領土を取り戻す可能性は高いと思いますが、保証はされていません。日本が北方領土を取り戻せるかどうかは、これまで述べてきたようなことが重要な役割を果たすでしょう。

北方領土問題の解決は、日本にとって、国益にかなうだけでなく、国際社会の平和と安定にも大きく貢献するものです。日本政府は、北方領土問題の早期解決に向けて、引き続き全力を尽くしていく必要があります。

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2023年6月29日木曜日

税収上振れ3年連続 「菅内閣レガシー」岸田首相に刺さった中西質問―【私の論評】岸田首相は現状では、「増税しない」選択肢を持っていることはだけは間違いない(゚д゚)!

税収上振れ3年連続 「菅内閣レガシー」岸田首相に刺さった中西質問

岸田首相

 日本の税収は、新型コロナウイルスの影響にもかかわらず、3年連続で過去最高を更新し、2022年度は初の70兆円台に達する見通しです。岸田文雄首相は、この好調な税収の動向を踏まえ、防衛力の強化や少子化対策に充当する考えを示しています。また、菅義偉前首相の内閣の功績として評価する声もあります。この上振れ分の使途を巡っては、与野党間で論争が活発化することが予想されます。

 2022年2月4日、衆議院財務金融委員会で、自民党の中西健治議員は、菅内閣下の20年度の税収が上振れ、21年度も同傾向の見通しとなることを指摘し、政府に対して「巣ごもり需要で好調な製造業と、対面抑制で苦戦しているサービス業との二極化を認識し、対応してほしい」と求めました。

中西健治議員

 中西議員は、菅前首相が懇意にする小此木八郎元国家公安委員長の地盤を引き継いで参院からくら替えを果たし、麻生太郎副総裁の派閥で財政金融政策を取り仕切っています。そのため、官僚の間には「菅、麻生両氏が予算先議権を持つ衆院へ移った中西議員を介して『ちゃんと手を打て』と岸田首相へサインを送った」との観測が広がりました。

 首相に近い自民党議員によると、答弁した鈴木俊一財務相が中西議員の指摘を岸田首相に伝えたとのことです。岸田首相は、中西議員の指摘に心を打たれたようで、財源策の一つとして上振れを念頭に置くようになったとのことです。また、2022年6月16日に閣議決定された骨太方針で、防衛増税の先送りを示唆したのも、直近の税収見通しを見極めるためだったとのことです。

これは、神奈川新聞の元記事を要約したものです。詳細を知りたい方は元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】岸田首相は現状では、「増税しない」選択肢を持っていることはだけは間違いない(゚д゚)!

上の記事で中西議員が発言した内容は、2022年2月4日、衆議院財務金融委員会のものであり、税収が増えていることにはかわりがありませんが、その後状況は随分変わっています。最近では、円高が亢進して、輸出産業には有利、輸入産業には不利な状況になっています。ただ、全体としては、企業の収益は上がっています。

輸出産業は、いわゆる優良大企業が多く、輸入産業は中小企業が多いです。この状況は今後も続くことになりそうです。そのため、税収も伸びていることですから、それを活用しつつ、中小企業対策も実施していくべきでしょう。

それと、中西議員は菅内閣レガシーと言っていますが、現在の日本経済の好調は、安倍・菅内閣のときに合わせて100兆円の補正予算を増税なしで組むことを決断した結果によるものであり、正しくは安倍・菅内閣レガシーと呼ぶのが正しいと思います。ただ、神奈川新聞の記事なので、やはり地元の菅義偉氏を持ち上げたいという気持ちもあるのでしょう。

ただ、安倍首相の経済政策を継承した菅氏も、素晴らしいと思いますし、岸田首相には是非安倍政権の経済政策を継承して頂きたいです。ただし、無論消費税増税はのぞき、100兆円の補正予算の財源を増税ではなく、国債としたことなどを継承していただきたいです。

22年度一般税収が、70兆を超すとみられるのは、4月時点ですでにこのブログに掲載しています。その記事のリンク以下に掲載します。
防衛財源確保法案のカラクリ 本当は「増税なしでも手当可能」だ 透けてみえる財務省の思惑―【私の論評】確実に税収が上ブレする現状で防衛財源確保法案は、財務省の増税の意図を隠す表看板に過ぎない(゚д゚)!
この記事は、4 月29日のものです。この記事より結論部分を以下に引用します。
さらに足元の月次税収の趨勢を踏まえ、2022 年度は 72 兆円程 度への着地を予想されています。22 年度税収は当初予算時点で 65.2 兆円のところ、昨年 11 月の補正予算時点 で 68.4 兆円と上方修正がなされましたが、ここから更なる上振れ着地が予想されます。
一般会計税収(4~翌 2 月の累計値)
背景にはインフレ・円安、賃金・雇用の回復などがあります。足元で特徴的なのが景気の振幅に影響 されにくい消費税が大きく伸びている点です。およそ 40 年ぶりの物価急上昇は、税収にもこれまでに ない変化をもたらしています。

このような状況でも、わざわざ防衛財源確保法案を出すのは、これを財務省は増税の隠れ蓑にするためだと判断するのが妥当だと思います。
この状況で、いずれ増税することになれば、反発は必至とみられます。

天下り先でスーパーリッチな生活をする財務官僚たち AI生成画

さて、本当に増税されるかどうか、これには財務省人事がヒントを与えてくれそうです。

政府は6月27日、国税庁の阪田渉長官が勇退し、後任に住沢整主税局長を充てる人事を正式発表した。 

主税局長には青木孝徳官房長を起用。首相官邸で少子化対策に携わった宇波弘貴首相秘書官が財務省に戻り、官房長に就きます。

28日の人事では、 理財局長には奥達雄総括審議官が就き、後任には坂本基官房審議官が就任。関税局長には江島一彦財務総合政策研究所長を充て、後任には渡部晶政策立案総括審議官が就任します。 

茶谷栄治事務次官、神田真人財務官、新川浩嗣主計局長、三村淳国際局長は留任します。人事の骨格を維持し、防衛力強化や異次元の少子化対策を巡る財源問題、ロシアによるウクライナ侵攻への対応などに注力する。この人事は何を意味するのか、特に財務省の権力の観点から解説します。

2023年度の日本の財務省人事異動は、岸田政権が、防衛力強化や異次元の少子化対策を巡る財源問題、ロシアによるウクライナ侵攻への対応などに注力することを示唆しています。また、この人事異動は、岸田政権が、財務省の権力構造を変更し、財務省をより効率的に運営しようとしていることを示唆しています。

具体的には、斎藤理財局長の退任と奥総括審議官の就任は、財務省の権力構造に変化をもたらす可能性があります。斎藤理財局長は、安倍政権時代に理財局長を務め、財政政策の立案に大きな影響力を持っていました。奥総括審議官は、財務省の官僚であり、財政政策の立案に携わってきました。

しかし、奥総括審議官は、斎藤理財局長ほど財政政策の立案に影響力を持っていないと考えられます。そのため、斎藤理財局長の退任と奥総括審議官の就任は、財務省の財政政策の立案に影響を与える可能性があります。

また、奥総括審議官は、安倍政権の財政政策に対して、より柔軟な姿勢をとってきたと考えられます。そのため、斎藤理財局長の退任と奥総括審議官の就任は、財政政策の方向性に変化をもたらす可能性があります。

方向性の変化とは、財政出動の拡大や増税の抑制につながる可能性があります。

斎藤理財局長は、財政出動よりも増税を重視していました。一方、奥総括審議官は、財政出動を重視していると考えられます。そのため、斎藤理財局長の退任と奥総括審議官の就任は、財政出動の拡大や増税の抑制につながる可能性があります。

ただし、これらの変化が実際に起こるかどうかは、今後の情勢次第です。

また、岸田政権は、財政政策の方向性について、まだ明確な方針を示していません。そのため、斎藤理財局長の退任と奥総括審議官の就任が、どのように財政政策に影響を与えるかは、今後の政権の動向を見守る必要があります。

そうして、斎藤理財局長は、財務省の省内序列で2番目のポストである理財局長を務めていました。奥総括審議官は、財務省の省内序列で3番目のポストである総括審議官を務めていました。そのため、斎藤理財局長の退任と奥総括審議官の就任は、財務省の省内序列に変化をもたらす可能性があります。

ただ、これらの人事異動が、実際に財務省の権力構造にどのような影響を与えるかは、今後の情勢次第です。

一方、自民党内の積極財政派は、近年、勢力を拡大しています。その背景には、次のようなものがあります。
  • 少子高齢化や人口減少による経済成長の鈍化
  • 中国の台頭による安全保障環境の悪化
  • 新型コロナウイルス感染症による経済の混乱
積極財政派は、これらの課題に対応するために、財政支出を拡大し、経済を活性化させることが必要だと主張しています。また、財政赤字を心配する声に対しては、将来の成長への投資として、赤字を容認すべきだと主張しています。

増税に反対する自民党積極財政派議員 AI生成画

積極財政派の勢力拡大は、岸田政権の財政政策にも影響を与えています。岸田首相は、当初は財政再建を重視する姿勢を示していましたが、積極財政派の支持を獲得するために、財政支出の拡大に転換する可能性が高まっています。

積極財政派の勢力拡大は、日本経済にどのような影響を与えるでしょうか。積極財政派の主張通り、現状では、このブログで指摘した通り、財政支出の拡大が経済を活性化させ、成長につながるのは間違いありません。一方、需給ギャップがある現場で、増税してしまえば、経済は沈滞し、低成長どころか、縮小することになります。

これについては、過去20年以上にもわたって、多くのまともな世界標準のエコノミストが繰り返し主張してきました。このブログでも、同じくらいの期間、これを主張してきました。

今や20年前とは異なり、マクロ経済を理解する政治家も増えてきています。財務省も、20年前と同じ感覚で、簡単に「増税」とはいえない雰囲気になってきているのは確かです。

税収の上振れは以前から予想されたことであり、自民党内では防衛費の増額に伴う増税の先送りを求める声が一層強まっていました。政府は6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」でも、自民党内の積極財政派の声に配慮して従来は「24年以降」としていた増税開始時期を「25年以降も可能となるよう、柔軟に判断する」と先送りを示唆していました。

岸田首相は現状では、「増税しない」とはっきり意思決定はしてはいないでしょうが、「増税しない」選択肢も持っていることはだけは間違いないと考えられます。


「悪い円安論」がやはり下火に…株価は上昇、埋蔵金も増える マスコミも忖度、政府が儲かる「不都合な事実」―【私の論評】いわゆる「悪い円高」を主張した人々の言説は今後信じるべきではない(゚д゚)!

防衛財源確保法案のカラクリ 本当は「増税なしでも手当可能」だ 透けてみえる財務省の思惑―【私の論評】確実に税収が上ブレする現状で防衛財源確保法案は、財務省の増税の意図を隠す表看板に過ぎない(゚д゚)!

『安倍晋三回顧録』を批判した「大物」大蔵次官の文春インタビュー記事に反論しよう―【私の論評】需要の低迷に対処せず、緊縮に走るのは、氷風呂で風邪を直そうするようなもの。全く馬鹿げている(゚д゚)!

2023年6月28日水曜日

中国核軍拡で危惧される中印パ3国の核軍拡スパイラル―【私の論評】核に関する論議は、日本を本気で守ろうとした場合避けて通ることはできない(゚д゚)!

中国核軍拡で危惧される中印パ3国の核軍拡スパイラル

岡崎研究所

大型ミサイルの発射実験の光景 AI生成画像

 5月26日付の米国の外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」は「南アジアでの核兵器を巡る衝突」との米ハドソン研究所シニアフェローのアンドリュー・クレピネビッチによる論説を掲げ、米カーネギー国際平和基金のアシュリー・テリスが新著で論じた、中国の核軍拡がインドとパキスタンの核軍拡と地域の緊張増大を誘発する可能性につき解説している。

 中国の核軍拡は、インドとパキスタンの核軍拡と地域の緊張増大を誘発する可能性がある。中国は、米国との世界的競争に関心を移し、その結果大規模な核軍拡に踏み切った。インドに対し通常戦力で大幅に劣るパキスタンは、中国の支援を得て、最小限の抑止から段階的な抑止に舵を切ろうとしている。

 この2つの核軍拡に挟まれ、中国との対抗を主な関心事項とするインドは、コストも念頭に最小限の抑止を維持する可能性が高いが、中国の核兵器が大幅に拡充し、早期反撃のために警戒レベルが上がることや、精密攻撃能力の改善も相まったインドの残存核能力への脅威が増大し、更には防空・ミサイル防衛能力が強化されインドの核反撃の防止などが進めば、そのままではいかなくなるかもしれない。

 現状でも、中国とパキスタンの双方の核威嚇に対抗するためには、インドは一定の核軍拡が必要と言うのがテリスの見立てだ。が、そうなると当然パキスタンも核軍拡に走るので、中国の核軍拡が3カ国全てに核軍拡のスパイラルを起こすということになる。あまり見たくない世界である。

 そして、この状況へのインドの対応策として、米国によるインドへの戦略的協力の可能性を示唆していることが、正にテリスの慧眼の素晴らしいところだと思う。核実験数が十分でないことからインドの水爆の信頼性には限界がある。水爆の実証のためにインドが核実験を再開すれば、各国からの制裁は免れないし、日米豪印4カ国の枠組み「Quad(クアッド)」の崩壊にまで繋がりかねない。

 逆に、中国のパキスタンへの各種核兵器関連技術の協力に対応する意味からも、米国が、水爆の設計情報や、インドの核兵器の残存能力を高めるために必要な核搭載原潜建造に不可欠な海軍原子炉設計情報をインドに提供する可能性をテリスは示唆している。正に、AUKUSのインド版だ。

 インドがAUKUSに入るというのはあまりありそうにないが、インド用に新たな米国他との協力の枠組みを作るという可能性は排除されないだろう。この論説が指摘するように、そのためにインドが戦略的自律性を放棄する必要があるかどうかは、その枠組みの内容次第かもしれない。ともかく、極めて大胆で貴重な問題提起であることは間違いない。そして、米国が自身の戦略的優先度を真剣に考え抜くことができれば、これは、一つのあり得る選択ではないかと思う。

【私の論評】核に関する論議は、日本を本気で守ろうとした場合避けて通ることはできない(゚д゚)!

中国、インド、パキスタンの核軍拡は「核のトリレンマ」ともいうべき状況を生み出しています。

「核のトリレンマ」という言葉は、アシュリー・J・テリスが2013年に出版した著書『インドの核政策』で初めて使用した。テリスは、南アジアの3つの核保有国(中国、インド、パキスタン)が、それぞれの核政策において「トリレンマ」と呼ばれる課題に直面していると主張しました。

インド、パキスタン、中国は互いに国境を接しており国境紛争もある

 核抑止力:これらの国は、互いに、あるいは他国からの攻撃を抑止するために、信頼できる核抑止力を維持する必要がある。

核の安全性: 事故や不正使用を防ぐため、核兵器や核物質の安全性とセキュリティを確保する必要がある。

核不拡散: これらの国々は、核兵器が地域の他の国々に拡散するのを防ぐ必要がある。

テリス氏は、これら3つの課題はしばしば相反すると主張しています。例えば、信頼できる核抑止力を維持するためには、その国の核兵器の規模を拡大し、高度化する必要があるかもしれないです。同様に、域内の他国への核兵器の拡散を防ぐ努力は、これらの国々が自国の核戦力を制限することを必要とするかもしれないです。

核のトリレンマは、これらの国々が自国の安全保障と地域の安全保障を確保するために慎重に管理しなければならない複雑な課題です。

核のトリレンマは、これらの国が協力して取り組むべき深刻な課題です。協力することによって、これらの国々は軍拡競争や事故、核兵器拡散のリスクを軽減することができます。また、この地域により安定した安全な核環境を発展させるために協力することもできます。

テリスのほかにも、南アジアにおける核のトリレンマについて執筆した学者がいます。
  • ヴィピン・ナラン『印パ紛争における核戦略』(2014年)
  • マイケル・クレポン『安定性と不安定性のパラドックス:南アジアにおける核兵器と抑止力』(2003年)
  • スコット・セーガン『動く標的 変化する世界における核の安全と核セキュリティ (2009)
核のトリレンマは複雑で困難な問題ですが、南アジアの安全保障を確保したいのであれば、理解することが不可欠です。

以下に、核のトリレンマも踏まえた上で、上記の様な米国の動きがなかったとすれば、インド・パキスタンは中国の核軍拡に対してどのように考えどのような動きをするかについて考察した内容を掲載します。


中国の核軍備増強がインドやパキスタンの核軍備増強の引き金となり、地域の緊張が高まる可能性は確かにあります。中国の最近の核兵器増強は著しく、インドとパキスタンが自国の安全保障への影響を懸念するのは理解できます。

もしインドとパキスタンが、自国の核兵器が中国を抑止するには不十分だと感じれば、自国の核戦力を増強したくなるかもしれないです。そうなれば、この地域での軍拡競争につながりかねず、緊張を高めるだけです。

重要なのは、これはひとつの可能性にすぎないということです。インドとパキスタンが、中国の核兵器増強がもたらす課題に対処するために、互いに協力する方法を見つけることができる可能性もあります。しかし、軍拡競争のリスクは無視できず、国際社会が認識しておく必要があります。

以下は、軍拡競争の可能性を高めるいくつかの要因です。
中国が急速なペースで核兵器を増やし続ける場合。

インドとパキスタンが、安全保障を米国やその他の国に頼ることができないと感じた場合。インドとパキスタン、あるいは中国との間で大きな紛争が発生した場合。
以下は、軍拡競争の可能性を低くするいくつかの要因です。
インドとパキスタンが核安全保障に関して互恵的な合意に達することができた場合。

米国やその他の国が、インドとパキスタンに安全保障を提供できる場合。

インド、パキスタン、中国の関係が全般的に改善すれば。
南アジアで軍拡競争が起こるかどうかを断言するのは時期尚早です。しかし、軍拡競争のリスクは国際社会が認識すべきものであり、その防止に積極的に取り組むべきものです。

確かに、軍拡競争の可能性を高める要因のなかに、インドとパキスタンが安全保障を米国やその他の国に頼ることができない場合や、中国のとの間で大きな紛争が発生した場合、軍拡競争の可能性を高めることになります。

上の記事では、インドの安全保障に対して、米国が何らかの形で関与することを示唆しています。その一つの方法が、インドがAUKUSに入るというものですが、これあまりありそうにないですが、インド用に新たな米国他との協力の枠組みを作るという可能性はあり得るとしています。そうすることにより、南アジアにおける軍拡競争を制限できる可能性は十分にあると思われます。

結局重要なのは、そのような可能性を検討しておくことです。検討しつつ、実際に軍拡競争が起こり、地域のバランスが崩れそうになれば、その検討事項を実際に試してみることができます。しかし、検討しておかなければ、軍拡競争が激しくなっても、おろおろするしかありません。その場しのぎで何かをしたとしても、あまりうまくいくとは考えられません。

そこで、不安なのが日本です。上の記事でも、中国の急速な核軍拡が日米同盟の抑止力に対して持つ意味についての議論は多々されてきたとされていますが、実際にどのような議論がされてきたのか、以下に掲載します。

第一に、中国の核兵器保有量は、ほんの数年前よりもはるかに増大しています。これは、中国が米国やその同盟国からの攻撃を抑止する能力をはるかに高めていることを意味します。

第二に、中国は極超音速ミサイルや原子力潜水艦など、新しいタイプの核兵器を開発しています。これらの新型兵器は、中国の攻撃を抑止する日米同盟の能力にとって大きな挑戦となる可能性があります。

第三に、中国は核兵器運搬能力を拡大しています。これは、中国が米国と日本のより多くの標的に核兵器を運搬できるようになったことを意味します。

中国の急速な核軍拡が日米同盟の抑止力にとってどのような意味を持つのかについては、まだ議論が続いています。しかし、中国の核兵器が日米同盟にとって、ほんの数年前よりもはるかに大きな脅威となっていることは間違いないです。

中国の核拡大の脅威を日本ではタブー視すべきではありません。リスクを理解し、効果的な対応策を練るためには、この問題についてオープンで率直な議論をすることが重要です。

日本が中国の核拡大の脅威について議論することに消極的な理由はいくつかあります。そのひとつは、日本には長い平和主義の歴史があり、多くの日本人が核兵器について議論することに抵抗を感じていることです。もうひとつの理由は、日本は貿易面で中国に大きく依存しており、日本企業のなかには、その関係を危うくするようなことをしたがらないところもあるだろうということです。

しかし私は、中国の核兵器拡大のリスクは無視できないほど大きいと考えています。日本は、この脅威に対処するための包括的な戦略を策定するために、この問題について率直でオープンな議論を行う必要がります。

以下は、中国の核拡大の脅威に対処するために日本ができることです。

日本は米国との同盟関係を強化することができます。米国は世界で最も強力な核兵器保有国であり、日本は米国との同盟関係によって、中国の攻撃に対する強力な抑止力を得ることができるはずです。この議論の中で、安倍元総理が主張していた、日米の核共有に関しては、有効な手立てとして、十分議論すべきと思います。

首相の時の安倍晋三氏

安倍元首相は、旧ソ連崩壊後にウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンの旧ソ連諸国3カ国が核兵器保有を放棄する代わりに米英露の核保有3カ国が主権と安全保障を約束した1994年の「ブダペスト覚書」に言及し、ウクライナが「もしあの時、戦術核を一部残し、活用できるようになっていればどうだったかという議論も行われている」ことを紹介していました。

ウクライナが核を全部放棄していなければ、今日ウクライナ戦争はなかったかもしれません。そのウクライナは今日、ロシアによる核攻撃の脅威にさらされています。

「被爆国として核廃絶という目標は掲げなければいけないし、それに向かって進んでいくことが大切だ。日本は核拡散防止条約(NPT)の加盟国で非核3原則があるが、世界ではどのように安全が守られているかという現実について議論していくことをタブー視してはならない。現実に国民の命、国をどうすれば守れるか、様々な選択肢を視野に議論すべきだ」と述べました。

日本は独自の核兵器を開発することもできます。これは賛否両論あるでしょうが、日本が自国の安全保障をより高度に管理できるようになります。

日本は、中国の核の脅威に対抗するために、インドやオーストラリアのような国々と協力して、地域の核安全保障の枠組みを構築することができます。

重要なことは、中国の核の脅威に対する簡単な解決策はないということです。しかし、この問題についてオープンで誠実な議論を行うことで、日本はこの脅威に対処するための包括的な戦略を策定することができます。

核に関する論議は、日本を本気で守ろうとした場合避けて通ることはできません。

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2023年6月27日火曜日

日本経済の大敵 不況を放置する「緊縮主義」のゾンビ理論 学者たちの関心は自分たちのムラ社会の話題だけ―【私の論評】ゾンビ企業の駆逐を叫ぶ輩はすでに、自らがゾンビであると認識せよ(゚д゚)!

ニュース裏表

ゾンビによる経済再生諮問会議 AI生成画像

 緊縮主義が日本経済に悪影響を及ぼす。緊縮主義とは、景気が悪い時や、あるいは十分に経済が回復していない段階で、増税や社会保障の負担などを増やす政策だ。しかし、緊縮主義は不況を深め、失業や倒産を再び増加させる。また、経済が失速すれば税収が悪化することから、緊縮主義者は、「財政再建が必要だ」とまた不況の中で増税しようとする。このように、緊縮主義は不況と増税の悪循環を招くことになるため、良い政策ではない。

 緊縮主義には、「ゾンビ企業退治論」というバージョンがあり、政府や日本銀行が不況を解消してしまうと、いいかげんな経営をしているゾンビ企業が生き残ってしまい日本の成長を妨げることになる。不況はできるだけ放置して、ゾンビ企業を撲滅するのがいい、という理論だ。だが、不況を放置すれば、経営努力が実を結ぶ可能性は低い。

 緊縮主義は日本の経済学者やエコノミストたちに大人気である。日本の経済学者たちの大半は、テレビのワイドショーなどを見て「岸田さんはダメだねえ」と愚痴を言っているレベルであり、日本経済や国民の生活のことは考えていない。また、日本の経済学者たちは、ツイッターで「僕の論文が一流ジャーナルに掲載されました!」という自慢話に花を咲かせているだけであり、自分のムラ社会の話題にしか関心がない。このように、日本の経済学者たちは、緊縮主義に偏った考えを持っており、日本経済の改善には貢献していない。

 緊縮主義は不況の時に不況をさらに悪化させる政策であり、良い政策ではない。緊縮主義は日本の経済学者やエコノミストたちに大人気だが、彼らは日本経済や国民の生活のことは考えていない。(上武大学教授・田中秀臣)

 これは元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】ゾンビ企業の駆逐を叫ぶ輩はすでに、自らがゾンビであると認識せよ(゚д゚)!

緊縮財政は、財政赤字を減らすために政府支出を減らし、増税することを目的とした一連の経済政策です。これらの措置は、投資、消費、雇用の減少を招くため、経済成長に悪影響を及ぼす可能性があります。

長期間にわたる緊縮財政と金融引締による、経済停滞の長い歴史を持つ日本の場合、さらなる緊縮財政は特に悪影響を及ぼす可能性が高いです。日本経済はすでに伸び悩んでおり、緊縮財政は景気回復をさらに困難にする可能性が高いです。

緊縮財政がいつまでも続けば、日本経済は長期不況に陥る可能性が高いです。この不況は税収の減少につながり、政府はさらなる緊縮策を実施せざるを得なくなります。不況と緊縮財政の悪循環を断ち切るのは難しくなるでしょう。

日本における無期限の緊縮財政の最終結果は、高い失業率と貧困を伴う経済の停滞となるでしょう。日本国民は大きな被害を受け、日本の国際的地位は低下するでしょう。

緊縮財政で経済が低迷し、貧乏になった日本の目抜き通り。途方にくれた人々が、水や食料を求めてさまよい歩いている。AI生成画像。

以下は、日本における無期限の緊縮財政の具体的に予想し得る悪影響です。

失業の増加: 緊縮財政は政府支出の減少につながり、公共部門の解雇につながります。また、投資の減少も民間部門の解雇につながります。
経済成長の低下: 緊縮財政は投資、消費、雇用の減少につながります。これは経済成長の低下につながります。
貧困の増加: 緊縮財政は失業率の上昇と経済成長の低下を招く可能性があります。これは貧困の増加につながります。
社会不安: 緊縮財政は、人々が政府の政策に不満を募らせ、社会不安を引き起こす可能性があります。抗議行動や暴動、その他の市民不安につながる可能性があります。

結論として、日本における無期限の緊縮財政は、日本の経済と国民に壊滅的な影響を与えるでしょう。緊縮財政によらない経済問題の解決策を見つけることが重要です。

緊縮財政を続けて大失敗した古今東西国の例をいくつか挙げてみます。

古代ギリシャ: 紀元前4世紀、アテネは財政危機に対応して一連の緊縮策を実施しました。これらの措置には、増税、歳出削減、公共資産の売却などが含まれました。その結果、経済活動は急激に落ち込み、貧困が蔓延し、社会不安に陥りました。

古代ギリシャの極貧人 AI生成画像

アイスランド :2008年、アイスランドは深刻な金融危機に見舞われました。これを受けて政府は、増税、歳出削減、公的資産の売却など一連の緊縮策を実施しました。その結果、経済活動は急激に落ち込み、失業が蔓延し、深刻な不況に陥りました。

ギリシャ :2010年、ギリシャは欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)から救済を受けるため、一連の緊縮財政を余儀なくされました。これらの措置には、増税、歳出削減、国有資産の民営化などが含まれました。その結果、経済活動は急激に落ち込み、貧困が蔓延し、深刻な不況に陥りました。

アルゼンチン:2001年、アルゼンチンは債務不履行に陥り、一連の緊縮財政を実施しました。増税、歳出削減、銀行口座の凍結などです。その結果、経済活動は急激に落ち込み、貧困が蔓延し、深刻な不況に陥りました。

アイルランド :2008年、アイルランドは深刻な金融危機に見舞われました。これを受けて政府は、増税、歳出削減、国有資産の売却など一連の緊縮策を実施しました。その結果、経済活動は急激に落ち込み、失業者が蔓延し、深刻な不況に陥りました。

これらは、緊縮財政を続けて大失敗した国のほんの一例にすぎません。緊縮財政が必ずしも失敗とは限らないことに注意する必要があるかもしれません。場合によっては、政府債務や財政赤字の削減に成功することもあります。しかし、緊縮財政はあくまでも最後の手段として用いるべきであり、経済成長を刺激するための他の措置を伴うべきです。

日本では、江戸時代に景気が落ち込むと、質素・倹約令などを幕府が出して、さらに景気を落ち込ませるなどのことをしました。

江戸時代の極貧生活をする人々 AI生成画像

しかし、多くの国で過去から現在に至るまで、緊縮財政が行われ失敗した事例は枚挙に暇がありません。

失敗の実績があるにもかかわらず、緊縮財政が繰り返されてきたのにはいくつかの理由があります。

経済音痴: 多くの政策立案者やエコノミストは、緊縮財政がもたらす経済的悪影響を理解していません。彼らは、たとえ短期的に経済的苦難を招くことになっても、政府の債務と赤字を減らすためには緊縮財政が必要だと信じています。

政治的圧力: 緊縮財政は、銀行や債券保有者など強力な利益団体によって支持されることが多いです。緊縮策は政府支出を減らし、政府歳入を増やすので、これらのグループは緊縮策から利益を得ることができます。

イデオロギー: 政府の規模を縮小し、個人の責任を促進するために緊縮財政が必要だと考える政策立案者もいます。緊縮財政によって人々は貯蓄を増やし、支出を減らすことができ、それが経済成長につながると信じているのです。

恐怖: 経済危機の時代には、政策立案者はリスクを取ることを恐れるかもしれないです。政府の財政を安定させるには緊縮財政しかないと考えるかもしれないです。

日本だけではなく、緊縮財政が有効な場合もあると考えるエコノミストも海外には存在することに注意する必要があります。しかし、こうしたエコノミストたちは、緊縮財政は最後の手段としてのみ用いるべきであり、経済成長を刺激するための他の措置を伴うべきであるという点でおおむね一致しています。

緊縮財政の繰り返しは深刻な問題です。多くの国で経済的苦難と社会不安を引き起こしています。政策立案者は緊縮財政がもたらす悪影響を理解し、緊縮財政を実施する圧力に抵抗することが重要です。

それにしても、緊縮財政にこだわる、多くの経済学者らや財務省の官僚、多くの政治家、識者らや、マスコミ等は一体何を考えているのでしょうか。

自分だけ、あるいは自分たちの一派だけが良ければ、それで良いのでしょうか。自分たちの子どもや孫、ひ孫、あるいは何代か先の子孫など、自分が属している一派に入れるとは限りません。そう人たちが、緊縮財政で苦しんでも、どうでも良いとでもいうのでしょうか。

やはり、まともな財政政策、金融政策によって、日本経済を強くし、将来の人たちが希望を持って生きられるようにすべきではないでしょうか。どのような人でも、努力さえすれば、その努力が報われ、生計を立て、普通に生きられる社会を構築し、若者に希望が持てる社会にすることこそ重要だと思います。

そういう社会でこそ、いわゆるゾンビ企業は消えていくでしょう。緊縮ばかり実施していれば、その逆になります。いわゆるブラック企業やゾンビ企業が生じやすくなり、継続しやすくなります。

なぜなら、景気が良ければ、新たな雇用先が多く生じ、ゾンビ企業やブラック企業で働いていたひとたちの再就職の間口が広がり、転職する可能性が高まるからです。逆に不景気であれば、雇用が悪化し、ゾンビ企業やブラック企業で働いている人たちも、仕方なしにそこで働き続けることになる可能性が高まります。

さらに、ゾンビ企業撲滅論には欠陥があると言わざるを得ません。

ゾンビ企業は必ずしも非効率的ではないです。ゾンビ企業の中には、単に衰退産業で経営しているものもあります。利益を上げているかもしれないですが、成長はしていません。これらの企業は、その業界が回復すれば、長期的には存続可能です。

ゾンビ企業は雇用と経済活動を提供することができます。ゾンビ企業が利益を上げていなくても、雇用や経済活動を提供することはできます。なぜなら、ゾンビ企業は他の企業から商品やサービスを購入する必要があるからです。

ゾンビ企業はリストラ(クビを切るという意味ではなく、元々の意味でリストラ)して復活させることができます。コスト削減、効率化、新市場の開拓などです。

ゾンビ企業の破綻を許すと、マイナスの結果を招く可能性があります。ゾンビ企業の倒産を許すと、雇用が失われ、経済が不安定になる可能性があります。というのも、ゾンビ企業にはサプライヤーや顧客もゾンビ企業であることが多いからです。これらの企業が同時に倒産すれば、経済全体にダメージを与える波及効果が生まれる可能性があります。

ゾンビ企業撲滅論は、ゾンビ企業は非効率であり、経済の足を引っ張るという仮定に基づいています。しかし、この仮定を裏付ける証拠はありません。実際には、ゾンビ企業が長期的に存続可能であり、雇用や経済活動を提供できることを示唆する証拠があります。

日本銀行の調査によると、日本のゾンビ企業は平均10年間存続しています。これは、これらの企業が必ずしも非効率的ではなく、長期的に存続可能であることを示唆しています。

欧州中央銀行の調査によると、欧州のゾンビ企業は雇用と経済活動を提供しています。同調査によると、ゾンビ企業はその国の労働人口の平均10%を雇用しています。

国際通貨基金(IMF)の調査によると、ゾンビ企業はリストラによって再生することができます。この研究では、リストラはゾンビ企業がより効率的になり、市場で競争するのに役立つことがわかりました。

これらの研究は、ゾンビ企業が必ずしも経済の足を引っ張るものではないことを示唆しています。実際、長期的には存続可能であり、雇用や経済活動を提供することができます。

ただ、注意すべきは、本当に非効率で経済の足を引っ張るゾンビ企業が存在することです。しかし、このような企業はむしろ例外です。ほとんどの場合、ゾンビ企業は単に衰退産業で経営しているか、リストラが必要なだけなのです。

ゾンビ企業駆逐論は、日本経済に悪影響を及ぼす欠陥政策です。ゾンビ企業を再生させ、新たな雇用を生み出す政策に焦点を当てることが重要です。

それに、ゾンビ企業を撲滅するために、不景気にすれば、ゾンビ企業でない企業まで悪影響を受けてしまいます。真のゾンビ企業とそうではない企業を見分けるのは至難の技です。これらを区分して、経済政策を行うことなどできません。

私は、町でみかける、良心的な飲食業や、100年以上も続く老舗で現状は経営状態が悪い企業など、条件が整えば、存続可能だと思います。これらの企業を単なるゾンビ企業と切って捨てるような真似はすべきでありません。

私は、経営コンサルタント会社でコーディネータをしていたこともありますので、多くの企業が再生したことを現実に目にした経験があります。財務諸表上ではすでに潰れたと思われるような企業でも再生している事例はあります。

「お前はすでに死んでいる」 AI生成画像

そもそも経営の本質もわからないような、役人やエコノミストが何を根拠にゾンビ企業と定義するのか、理解できません。そのようなバカ真似をするような人たちこそ、ゾンビなのではないかと思います。こういう人達には、「おまえはすでに死んでいる」と言いたいです。

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2023年6月26日月曜日

マイナンバー反対の落とし穴 トラブルめぐり「大きな数字」強調するマスコミ 移行しないデメリットに注意、保険証一体化は不正使用防ぐ―【私の論評】元々導入すべきという前提での批判なら理解できるが廃止せよというなら、一体誰の味方なのか(゚д゚)!




 マイナンバーカードに関する議論では、野党やメディアから保険証の廃止に反対する声が多く上がっています。マイナンバーのデジタル化と用途拡大の進展に対して、反対派の意図はどのようなものがあるのか疑問視されている。

 トラブルの類型化によると、①公金口座の誤登録や別人登録②マイナポイントの誤付与③マイナ保険証の誤登録④別人の証明書が発行される、という問題がある。

 ①~③の問題は本来避けるべきだが、これらは従来からの人為ミスであり、対処方法も存在する。公金口座の誤登録は13万件あるが、全体の公金受け取り口座数の0.2%に過ぎない。誤登録の件数である748件は0.001%だ。

 問題となるのは④であり、これはマイナンバーを所有する人には責任がなく、システム会社や地方自治体が責任を負うべきミスだ。どちらにせよ、マスメディアはミスを大きく報道する。ミスは避けるべきだが、新しいことに取り組む際には避けられないものだ。

 筆者は、マスメディアが数字を報じる際には注意を払っています。大きな数字を強調する場合は、比率も確認するべきです。逆に、大きな比率を強調する場合は元の数字も見るべきです。つまり、13万件といった大きな数字を提示する場合は、0.2%の比率も同時に考慮すべきですが、この比率はほとんど報道されません。

 また、新しい制度に移行する際には一時的なミスに注目が集まりがちだが、移行しないことによるデメリットを忘れがちだ。例えば、コロナ禍で他の国では迅速に行われた給付金の国民への即時振り込みなどの政策ができないといった永続的なデメリットもある。一時的なミスと永続的なデメリットの両方を比較検討すべきだ。

筆者自身は、約20年前に

 私は官僚としてe-Taxシステムの構築に関与した。このシステムは国民からの税金徴収に利用される仕組みであり、一部改良すれば国民への資金配布も可能だった。しかし、税金徴収システムの構築は早く行われ、資金配布システムの構築には20年もの時間がかかったた。これは筆者にとって、新しいシステムへの移行を行わないことによるデメリットだと考えている。

 保険証の廃止(マイナンバーへの一本化)に反対する理由は理解しづらい。現行の保険証は通名で利用することができ、本人の写真も含まれていない。そのため、不正利用が行われ、善良な国民が損害を被っているとされている。例えば、健康保険の資格を失っているにもかかわらず、自身の保険証を使用して日本の医療機関で診察を受ける人も存在する。

 現行の保険証は通名で使用可能であり、顔写真も含まれていないため、こうした不正利用を徹底的にチェックすることはできない。マイナンバーカードと保険証が一体化したマイナ保険証がなければ、根本的な対策を取ることはできない。

 報道によれば、マイナ保険証に別人の医療情報が登録された事例は7000件以上あるが、これは全人口の約1.8万人に1人程度であり、年間交通事故死亡率の2倍程度の少ない数だ。一方、健康保険の不正利用は善良な国民にとってデメリットとなる。

これは元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】元々導入すべきという前提での批判なら理解できるが廃止せよというなら、一体誰の味方なのか(゚д゚)!

上の記事にある、健康保険の不正利用にはどのようなデメリットがあるのか以下に列挙してみます。

保険料の値上げ: 政府は、不正請求に対してより多くの保険金を支払わなければならなくなると、すべての人の保険料を値上げせざるを得なくなります。つまり、制度を悪用していない善良な市民は、より多くの保険料を支払わなければならなくなります。

補償範囲の縮小: 不正行為のコストを相殺するために、政府は提供する補償額を減らしたり、特定のサービスの料金を引き上げざるをえなくなることがあります。その結果、善良な市民が必要な医療を受けることが難しくなる可能性があります。

待ち時間の増加: 政府が不正請求を調査しなければならない場合、正当な請求の処理に時間がかかることがあります。その結果、医療を受けるまでの待ち時間が長くなり、緊急の医療が必要な人にとっては特に困難となることもあり得ます。

医療制度の評判を落とす: 健康保険の不正利用が蔓延すると、医療システム全体の評判を落とすことになります。その結果、人々が医師や病院を信頼することが難しくなり、必要な治療を受けることが難しくなる可能性がります。

マイナンバーカードと健康保険との紐づけにより、政府が不正の兆候に気づき、不正の疑いが確認しやすくなり、善良な市民は健康保険制度を守り、誰もが必要な医療を受けられるようにすることができるようになります。

外国人による国民健康保険(国保)の不正利用については、在留資格の真偽を医療機関や保険者である自治体では把握しづらいことや、すでに国保に加入している家族や知人になりすましても医療従事者が加入者本人かどうか識別するのは困難など、解決に向けたハードルはかなり高いものでしたが、マイナンバーの登場により、これが一気に解決される可能性がでてきたのです。

マイナンバーの制度を導入しないことのデメリットを以下に掲載します。

行政コストの増加: 単一の識別子がなければ、政府機関や企業は個人ごとに個人情報を収集し、保管しなければならないです。そのため、行政コストが増大し、情報の追跡や管理が困難になります。

効率の低下: 単一の識別子がなければ、政府機関と企業の間で情報を共有することが難しくなる。これは、サービス提供の遅延や非効率につながります。

不正行為の増加: 単一のIDがなければ、犯罪者によるなりすましや詐欺が容易になります。これは個人を危険にさらし、政府や企業に損失を与えることになります。

日本の評判の低下: 日本がセキュリティーやプライバシーに真剣でない国とみなされれば、日本の評判が落ち、海外からの投資を呼び込むことが難しくなる可能性があります。

マスコミは、マイナンバー制度はプライバシーを脅かし、政府の監視に利用されかねないという批判を繰り返していますが、しかし日本政府は、マイナンバー制度はプライバシーを保護するためのものであり、合法的な目的にのみ使用されると述べています。

結局のところ、マイナンバー制度を導入するかどうかの決定は複雑なものかもしれません。考慮すべきメリットとデメリットの両方があります。しかし、効率性の向上や不正行為の減少といったシステムの潜在的なメリットは、リスクを上回る可能性のほうが大きいと考えられます。

メディアは、マイナンバーが危険だとと騒いでいますが、ビッグデータの売買や個人情報の持ち出し規制こそ必要なはずなのに、民間の持つビッグデータや「EU一般データ保護規則」(GDPR:General Data Protection Regulation)の議論は見て見ぬふりです。本当に不思議です。

マイナンバーは、ビッグデータの国有化とは全く異なるものです。実は、政府は繰り返し説明しているのですがメディアはまともに報じず、ミスリードを繰り返しています。マスコミは、財務省や日銀の発表は、ほとんど吟味もせず間違っていようが、正しかろうが関係なく、ほぼそのまま掲載するのに、マイナンバーに関しては、そうはしません。

AI生成画像

マイナンバーやマイナンバーカードは、新しいシステムなのですから、まずは、政府の発表をそのまま公表すべきでしょう。そのうえで、批判するならすれば良いのに、最初から批判ばかりしています。

 そもそもマスコミは、マイナンバーで得られるのは特定分野の情報のみであり、それぞれはリンクされていないし、それを集約することは不可能に近く、仮に無理にやろうとすれば、コスト的にも合わないことをほとんど報道しません。

マイナンバーは、国内での分野別分散管理です。マイナンバーは鍵で番号と暗証番号で各サーバから呼び出し、横の紐付けはされていません。使い勝手は悪いですが、セキュリティは担保されています。ビッグデータ化した方が効率は良いのですが、法的にできないように縛られているのです。


民間企業の持つビッグデータの方がよほど危険です。Twitterでツイートしている時点で情報は流れています。

 AppleかAndroid でプラウザを使って、アマゾンのクレジットカード決済するほうが、はるかに危険です。クレジットカードやスマホ決済、ネット取引等のデータはビッグデータになっており、売買されています。利用履歴で位置情報や利用パターンも解析され、信用情報で年収や購買額まで丸見えなのです。

マイナンバーでプライバシーが心配というほうが、変です。マスコミはそもそも、セキリティーというものを理解していないようです。

お馬鹿なことをしそうなマスコミ AI生成画像

マイナンバーカードを嫌がる人もいますが、これも理解不能です。希望者にはマイナンバーカードの代わりのカードも発行されます。どうしてもいやなら、代わりのカードを申請すれば良いだけです。マイナンバーは義務ですが、マイナンバーカードは義務ではありません。カードは利便性を高めるもの、便利な道具でしかありません。

マスコミのいう、マイナンバーの弊害と何なのでしょうか。貸し借りができなくなる事や不正が難しくなる事でしょうか。だとすれば、本末転倒です。それどころか、不正を誘発しかねません。

岸田政権は、LGBT法案の導入を急ぐという、とんでもないことを仕出かしましたし、増税することを決めているようなのに、それを先延ばしして支持率の低下を防いでいるようにもみえます。だからといって、岸田政権のやることは何もかも間違いとするのは間違いです。

マイナンバー制度は岸田政権であろうが、何政権であろうが、元々導入すべきものです。これを正面から批判しているマスコミや、一部の識者や政治家など、マイナンバー制度が廃止になれは、良いとでも思っているように見受けられます。

だとしたら、異常です。本来ならば、元々導入すべきものだという前提で、批判するのならわかりますが、そうでないとしたら問題です。とても、日本国民や日本国の味方とは思えません。

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