2023年7月31日月曜日

「最低賃金1000円越え」への強烈な違和感…数字に基づいた「正しい水準」があったはずだ―【私の論評】今後岸田政権は民主党政権のように迷走し続ける可能性もでてきた(゚д゚)!

「最低賃金1000円越え」への強烈な違和感…数字に基づいた「正しい水準」があったはずだ





岸田首相

 7月末の先週、日本では以下の4つの大きな出来事があった。
  1. 松野博一官房長官は、サラリーマン増税を否定。
  2. 日銀は、長短金利操作の柔軟化を決定。
  3. 厚労省の中央最低賃金審議会は、今年度の地域別最低賃金額改定の目安を答申。
  4. 木原誠二官房副長官の妻の当時の夫の2006年の怪死事件について、妻を担当した取調官が実名で記者会見。
 これらの出来事について、以下に詳しく説明する。
  • 松野博一官房長官は、7月26日(木)、「サラリーマン狙い撃ちした増税行わない」とした。これは、夕刊フジが報じた、岸田首相がサラリーマンを狙い撃ちした増税を検討しているという報道に対する反論だ。松野官房長官は、政府税調が提出した答申には、サラリーマンを狙い撃ちした増税は含まれていないとし、政府はサラリーマンを守るために政策を講じていくと述べた。
  • 日銀は、7月28日(金)、金融政策決定会合で、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール。YCC)の柔軟化を決定した。これは、YCCの目標とする長期金利の上限を0.5%から1.0%へと引き上げることを意味する。日銀は、この決定は、インフレ目標2%の達成に向けて必要な措置であると説明している。しかし、市場からは、日銀がインフレを恐れて金融引き締めに転じているとの懸念が広がっている。
日銀植田総裁
  • 厚労省の中央最低賃金審議会は、7月27日(金)、今年度の地域別最低賃金額改定の目安について答申を取りまとめた。これによると、全国平均の最低賃金は、昨年度の961円から1002円に引き上げられる方向となった。これは、2016年以降で最大の引き上げ幅だ。厚労省は、今回の引き上げにより、低所得者層の生活を改善し、消費を拡大させることを目指している。
  • 木原誠二官房副長官の妻の当時の夫の2006年の怪死事件について、妻を担当した取調官が実名で記者会見を行った。取調官は、妻が当時の夫を殺害した疑いがあると述べ、警察が捜査を続けていることを明らかにした。木原官房副長官は、妻の事件についてコメントを控えている
 これらの出来事は、いずれも日本にとって重要な問題です。

 松野官房長官は、サラリーマン増税を否定し、政府はサラリーマンを守るために政策を講じていくと述べた。

 日銀は、インフレ目標2%の達成に向けて必要な措置として、YCCの柔軟化を決定した。

 厚労省は、低所得者層の生活を改善し、消費を拡大させることを目指して、今年度の地域別最低賃金額を大幅に引き上げた。

 木原官房副長官の妻の事件については、警察が捜査を続けています。これらの出来事が今後どのように展開していくか注目だ。

これは、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】今後岸田政権は民主党政権のように迷走し続ける可能性もでてきた(゚д゚)!

本当に、先週はかなり大きな動きがありました。この4つはどれも大きなものであり、大勢の人が消化不良気味になっているのではないかと思います。

1.松野博一官房長官は、サラリーマン増税を否定。

本当にサラリーマン増税をするつもりがないのなら、政府税調の答申を受け取らないというパフォーマンスをすべきでした。宮澤喜一首相は、1995年6月21日、政府税調の答申を受け取らなかったことを明らかにしました。これは、答申に消費税の増税が含まれていたためです。喜一首相は、消費税の増税を断固として拒否し、答申を受け取らなかったのです。

これらは、当時の新聞で明らかにされています。
  • 朝日新聞 1995年6月22日朝刊 1面
  • 読売新聞 1995年6月22日朝刊 1面
  • 毎日新聞 1995年6月22日朝刊 1面
  • 日本経済新聞 1995年6月22日朝刊 1面
こういうパフォーマンスをしなかったのですから、岸田政権としては増税の懸念を払拭するのは難しく、岸田首相としては、先日もこのブログで指摘したように、増税疑念を払拭するために、24年度GDP600兆円実現(かつて安倍首相がこれを約束、現状のままなら達成する可能性がかなり高い)を前提に、30年度までにGDPを700兆円にすることを打ち出すべきです。そうして、安倍首相の外交でも経済政策でも、安倍元首相の路線を引き継ぐことを表明し実行すべきです。


松野博一官房長官

2.日銀は、長短金利操作の柔軟化を決定。

日銀が許容する長期金利の上限は0.5%から1.0%へと引き上げられたといつて良いでしょう。実質上の利上げといって良いと思います。

今回のYCC修正前 実質金利=0.5-2%=-1.5% 修正後 実質金利=1~0.5ー1.9=-1.4%~-0.9%となります。実質金利を植田総裁は強調しますが、将来時点の物価見通しが低下ないし同じ(25年度)中で、予想実質金利の上昇幅を拡大する政策は、緩和を抑制するスタンスと理解されても不思議ではありません。

理由はマクロ経済よりも一部金融機関の「副作用」対応が優先したということとかもしれません。あとは自然利子率が上昇していると判断したのかもしれません。そうだと良いのですが。

しかし、すでに影響もで始めています。

大手銀行5行は31日、8月の住宅ローン金利を発表し、全行が代表的な固定期間10年の基準金利を引き上げた。日銀による大規模金融緩和策の修正を受け、金利上昇圧力が高まっており、住宅ローン金利は9月以降さらに上昇する可能性が出てきています。

8月の10年固定の最優遇金利は、三菱UFJ銀行が0.09%上昇の0.78%、三井住友銀行は0.10%高い0.89%、三井住友信託銀行が0.07%上昇の1.15%、みずほ銀行は0.05%高い1.20%、りそな銀行が0.05%上昇の1.39%。

5行がそろって上げたのは、昨年12月に日銀が長期金利の変動容認幅を0.25%から0.5%に拡大した直後の今年1月以来となります。変動金利は全行が据え置きました。

3.厚労省の中央最低賃金審議会は、今年度の地域別最低賃金額改定の目安を答申。

これは、高橋洋一氏が元記事でも解説されていましたが、当時までの数量分析から、最低賃金引き上げ率は、5.5から前年の失業率を引いた程度がいいと、安倍氏に進言したそうです。

実体経済を無視して、機械的に賃上げをすることは危険です。文在寅時代の韓国では機械的に賃上げをしたことにより、雇用が激減しました。賃上げも、ほどほどにしないと、とんでもないことになります。岸田政権は、これは目安として、実際には先程の穏便な賃上げにすべきでしょう。

4.木原誠二官房副長官の妻の当時の夫の2006年の怪死事件について、妻を担当した取調官が実名で記者会見。

木原誠二官房副長官の妻の当時の夫の2006年の怪死事件について、妻を担当した取調官が実名で記者会見しましたが、私は、この件については再捜査になることはないと考えています。なぜなら、この事件は、2006年にすでに警察によって捜査が終了し、不起訴処分となっているからです。また、取調官が記者会見で述べた内容は、警察の捜査結果とは異なるものであり、新たな証拠も提出されていないことから、再捜査を行う必要はないと考えています。

ただし、この事件は、木原誠二官房副長官の政治生命に大きな影響を与える可能性があります。なぜなら、この事件が再び注目されることで、木原官房副長官の妻に対する疑惑が再燃する可能性があるからです。また、木原官房副長官自身も、この事件について説明責任を果たす必要があるでしょう。

木原官房副長官が、この事件を乗り越え、政治生命を維持するためには、国民からの信頼を回復することが重要です。そのためには、妻の事件について、真摯に説明するとともに、国民に安心感を与えるような行動をとることが必要になるでしょう。それにしても、ここしばらくは政治の表舞台にでてくることはないと思われます。


木原誠二官房副長官

木原誠二官房副長官は、2021年10月4日に就任し、現在も務めています。木原官房長官は、岸田文雄首相の側近であり、首相の信頼が厚い人物です。木原官房長官は、岸田政権における重要な役割を担っています。

木原官房長官の主な役割は、以下のとおりです。
  • 首相の補佐
  • 内閣の運営
  • 国会との調整
  • 行政の統括
  • 外交・安全保障
木原官房副長官は、これらの役割を果たすために、首相や他の閣僚、国会議員、行政官、外交官、安全保障関係者など、多くの関係者と密接に連携しています。木原官房長官は、岸田政権の円滑な運営に貢献しています。

現在この木原官房長官の役割は、機能していないとみられます。無論、怪死事件に対する対応などて、木原氏の時間や能力がこれに割かれているためとみられます。これが機能していれば、本当にサラリーマン増税をするつもりがないのなら、政府税調の答申を受け取らないというパフォーマンスができたと思います。

日銀は、長短金利操作の柔軟化を決定に関しても、これを理解するのは難しく、政権内でも理解するのは木原氏くらいであり、木原氏が機能していないのを見越して、このようなことをしている可能性があると思います。地域別最低賃金額改定の目安も木原氏が機能していれば、もっと穏当になった可能性もあります。

木原氏機能不全で、岸田政権はここしばらく、迷走をつづけそうです。心配なのは、木原氏にかわる人物がいなかった場合、今後岸田政権は民主党政権のように迷走し続ける可能性もでてきたことです。

ビジネスの世界でも、政治の世界でも、一人の才能に頼るということは非常に危険だということがよくわかります。

経営学の大家ピーター・ドラッカーが「優秀なエンジニアが欲しければ、6人のエンジニアを雇うべきだ」と述べています。この名言の出典は、『エッセンシャル・ドラッカー:60年にわたるピーター・ドラッカーのマネジメントに関するエッセンシャルな著作のベストを一冊にまとめたもの』という本です。

その中でドラッカーはこう書いています。

「優秀なエンジニアが欲しければ、6人のエンジニアを雇え。一人は天才、二人は優秀、三人は平均的だろう。しかし、6人目は他の者を生産的にする者になる」。

ドラッカーが言いたいのは、1人か2人のエンジニアを雇えば、運が良ければ天才が手に入るかもしれないが、平均的なエンジニアが手に入る可能性の方が高いということです。しかし、6人のエンジニアを雇えば、ほぼ確実に少なくとも1人の天才を得ることができ、他の5人のエンジニアも意欲的に働き、天才から学ぶことができるようになるということです。

この言葉は、良い仕事をするための最善の方法は、才能ある人々に囲まれることだということを思い出させてくれます。エンジニアリング・チームを成功させたいなら、最高のエンジニアを雇う必要があります。また、最高の人材を雇う余裕がなくても、優秀なエンジニアを数人雇い、一緒に仕事をさせることで、素晴らしいチームを作ることができます。

この言葉は、チームにおける多様性の重要性を強調している。長所も短所も異なる6人のエンジニアからなるチームは、全員が同じエンジニアからなる6人のチームよりも生産性が高いです。

この言葉はまた、メンターシップの重要性も強調しています。ドラッカーの例にある天才エンジニアは、他の5人のエンジニアを指導し、彼らのスキルや知識の向上を助けることができます。

ただし、たとえ6人の優秀なエンジニアを雇ったとしても、その全員が生産的になるという保証はないです。しかし、ドラッカーのアドバイスに従うことで、成功の可能性は高まるでしょう。

木原氏の他にも多くの人材がいれば、岸田政権が迷走することもなかったでしょう。

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2023年7月30日日曜日

「外国人との共生」 社会に痛み伴う恐れ 欧米に追随の必要なし 高橋洋一―【私の論評】首相が行うべきは「外国人との共生」という蜃気楼ではなく、AI・ロボット化推進により国民の生活水準を最大化すること(゚д゚)!

日本の解き方


 岸田文雄首相は「外国人と共生する社会を考えていかなければならない」と述べ、政府が「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」をまとめていることが話題になっている。首相は人口減少への対策として少子化対策とデジタル化を両輪で対応し、外国人受け入れも大きな課題として認識している。

 共生社会については、参院選公約や首相の発言で、多文化共生社会の実現を目指す意向が示されている。ただし、首相が挙げたアラブ諸国の例については、中東の研究者から聞いた話として、熱中症で多数の外国人労働者が亡くなっているという問題が指摘されており、不適切だとの意見もある。

 現在の「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」は、日本語学習など基本的な取り組みに終始しており、具体的な外国人受け入れの数値は示されていない。

 一方、「国立社会保障・人口研究所」の推計では、将来的に外国人の人口比率が増加するとしており、特に都市部ではかなり高い数字になる見込みである。他の先進7カ国(G7)と比べると、日本の外国人受け入れ率はまだ低いが、外国人の受け入れは社会に痛みを伴うため、欧米の国々に追随する必要はないという意見もある。

 最後に、外国人の受け入れには経済界の要望もあるが、一部の専門家は日本人優先の考え方を支持しているという意見が述べられている。

【私の論評】首相が行うべきは「外国人との共生」という蜃気楼ではなく、AI・ロボット化推進により国民の生活水準を最大化すること(゚д゚)!

昨日は、このブログで岸田政権に実施してほしいことを述べました。その筆頭は私の中では、増税疑念を払拭するために、24年度GDP600兆円実現(かつて安倍首相がこれを約束、現状のままなら達成する可能性がかなり高い)を前提に、30年度までにGDPを700兆円にすることを打ち出すべきことです。

岸田政権に実施してほしくないことの筆頭は、LGBT法の成立ですが、これはすでに成立してしまいました。成立してしまった現状では、できることは、この法律を理念法の範囲にとどめていただくことです。

女性を似非トランスジェンダーから護るための法律や、自治体が学校でLGBT教育をすることを禁ずる法律や政令を出していただきたいものです。無論、このようなことをするくらいなら、最初からこの法律を成立させるべきではありませんでした。

次に実施してほしくないことは、移民の大量受け入れです。これは、移民を大量に受け入れた国々がどのような状況になっているのかみれば良く理解できます。

上の記事にもあるように、国際労働機関(ILO)は2017年、アラブ首長国連邦(UAE)における外国人の労働条件が世界最悪レベルであるとの報告書を発表しました。報告書によると、UAEの外国人労働者は強制労働や借金による束縛、その他の形態の搾取を受けることが多いそうです。また、結社の自由や公正な賃金を受ける権利など、基本的な権利も否定されることが多いそうです。

アラブ首長国連邦、ドバイのホテル

報告書は、移民労働者を雇用主と結びつけるスポンサーシップ制度であるカファラ制度が、UAEにおける外国人労働者の搾取の主な要因であることを明らかにしました。カファラ制度の下では、移民労働者は雇用主の許可なく転職したり出国したりすることは許されません。このため、雇用主は労働者に対して大きな権力を持ち、労働者が搾取から逃れることを困難にしているのです。

報告書はまた、UAE政府が外国人労働者の搾取問題にほとんど取り組んでいないことも明らかにしました。政府は労働法を効果的に執行しておらず、外国人労働者に十分な保護を与えていません。

湾岸諸国における外国人労働者の労働環境の現実は、非常に劣悪であることが多いです。労働者はしばしば、長時間労働、低賃金、危険な労働条件にさらされています。また、結社の自由や公正な賃金を受ける権利など、基本的な権利を否定されることもあります。

湾岸諸国における外国人労働者の労働環境がこれほど劣悪な理由はいくつかあります。その一つは、カファラ制度が雇用者に労働者に対する大きな権力を与えていることです。もう一つの理由は、湾岸諸国には多数の移民労働者がいるため、労働者が組織化して労働条件の改善を要求することが難しいことです。

UAE政府は外国人労働者の搾取問題に対処するため、いくつかの措置を講じています。2018年、政府はカファラ制度を廃止すると発表しました。しかし、これがいつ実現するかは明らかではなく、新制度がどのようなものになるかは不明です。

湾岸諸国における外国人労働者の労働環境は深刻な問題です。これらの国の政府がこの問題に取り組み、外国人労働者が公平に扱われるようにするための措置を講じることが重要です。

首相がUAEなどを「外国人との強制」の事例としてあげるということは、これらの現実を知っている人たちからみれば、日本も多数の外国人労働者を強制労働させるつもりであるとも受け取らねかねず、不適切な発言だと思います。

「外国人との共生」ということではEUなどの移民政策はほとんど参考にはならないですが、カナダは、大量の移民を計画的に大量受け入れています。その目的はGDPを押し上げることです。これは参考になりそうです。

これについては、ロイターの『アングル:移民受け入れ拡大のカナダ、経済繁栄は「蜃気楼」か』という記事が参考になりそうです。この記事の要約を以下に掲載します。
2015年の政権発足以来、カナダのトルドー首相は約250万人の新規永住者を受け入れ、人口を4000万人以上に増やしました。人口増加は1957年以来最も速いペースであり、経済成長率も世界のトップ20に入るほどです。この移民の増加により、高齢化による労働人口の減少を一部相殺しています。

一方、急速な移民増加による問題も顕在化しています。カナダ銀行は経済成長を抑制する金融政策を実施していますが、その中で新規移民の影響を評価することが難しいとしています。移民は労働力不足を緩和し、個人消費と住宅需要を増加させる一方で、交通機関、住宅、医療面などのインフラへの負担増大を引き起こしています。

カナダ政府は移民を積極的に受け入れており、トロントの新市長からの要請にも応じ、難民の収容を支援するための資金を拠出しています。しかし、一部の専門家は移民による経済成長はあるものの、1人当たりのGDPは他の国に比べてあまり増えていないと指摘しています。

移民の増加はカナダの経済と社会に影響を与える一方で、インフラや医療の面で課題も抱えているとされています。
カナダ銀行(カナダの中央銀行)のマックレム総裁は、移民は需要と供給の両面を押し上げるが、総じて見れば利上げの必要性を高めたと述べています。移民は労働力不足を緩和する一方で、個人消費と住宅需要を増加させたのです。

ローゼンバーグ・リサーチのチーフエコノミスト兼ストラテジスト、デービッド・ローゼンバーグ氏は「カナダ経済は1人当たりで見ると横ばい状態だ」とし、人口増加によって「経済の繁栄という蜃気楼を作り出すことはできるが、結局は蜃気楼(しんきろう)にすぎない」と語りました。

蜃気楼 AI生成画像

移民の大量受け入れによって「移民と日本人が共生」して、経済を発展させようと言う試みも蜃気楼で終わる可能性が高いです。

外国人の受け入れには経済界の要望もありますが、日本では経営者が賃金が上がることを忌避する傾向があります。そのためこのような要望を政府に伝えるのでしょうが、これは正しいのでしょうか。賃金が低い外国人労働者を大量に受け入れることよって企業は本当儲かるのでしょうか。

安価な移民労働力に依存することは、日本の経済成長にとって長期的に持続可能な戦略でありません。賃金の低下は短期的には企業収益を押し上げるかもしれないですが、経済全体の賃金の停滞は最終的に需要を損ない、デフレ圧力につながることになります。

日本はすでに慢性的なデフレと消費需要の低迷に苦しんできました。それが、安倍・菅両政権の時に増税なしで合計で100兆円(当時のデフレギャプに相当する)の補正予算を組んでコロナ対策にあたったこと、岸田政権になってからは、他国がインフレ傾向になり利上げなどの金融引締策を実施するさなか、日本はデフレ気味だったので金融緩和政策を続けたため、円安になり、輸出産業が繁栄したことなどが要因となり、景気が落ち込まず、どちらかというと良い状況にあります。

政府としては、輸出企業の繁栄によって、景気が上向いているし、法人税や消費税の税収もかつてない程増えているのですから、これを輸入企業とか国内産業の支援に用いるなどのことをすれば、ベストでしょう。

しかし、ここで大量の移民を受け入れて賃金を低く抑えることは、さらに自らデフレを招くことになります。経済が成長するためには、国内消費が拡大する必要があります。そうして消費が成長するためには、日本の労働者は賃金の上昇と生活水準の向上を必要としています。

移民は合法的かつ責任を持って行われれば、一定の経済的利益をもたらすことができます。しかし、主に賃金を抑制する方法として移民の労働力を利用するのは見当違いであり、逆効果となります。それは国内ではデフレを招き国内産業を弱体化し、超円高により、輸出産業を毀損し、さらに国内産業の空洞化を招くことになります。

そのようなことは、原因は日銀官僚や財務官僚の誤謬で平成年間のほとんどがデフレだった時代を経験した日本人なら理解できるはずです。それを理解しない経営者は愚かとか言いようがありません。

大量の低賃金労働者を受けいることは、日本の労働者を傷つけ、彼らの消費力を低下させ、経済全体を弱体化させることになります。そうして、結局のところ、経営者にとっても一つも良いことはありません。

解決策は、日本企業がAIやロボットに投資し、生産性を向上させ、従業員の賃金を進んで引き上げることてす。経済学でいうところの、装置化をより一層推進することです。政府はこれを推進するために積極財政と金融緩和策を行うとともにインフラを整備すべきです。そのインフラの上で企業がAI・ロボット化で競い合う体制を築くべきです。中国のように、政府が中心となって推進するような体制は長続きしませんし、効果的でもありません。

賃金上昇は需要を押し上げ、経済成長を促進し、社会全体に利益をもたらすことになります。短期的な企業利益は犠牲になるかもしれないですが、経済と生活水準に対する長期的な利益は、一時的な損失をはるかに上回るでしょう。

安価な外国人労働者に頼ることは、生産性の向上、技術革新、自国民の賃金上昇に代わる実行可能な手段ではありません。日本が持続可能な経済的成功を収めるためには、企業は利益の最大化に時間を費やすのではなく、賃金上昇と生活水準の向上を通じて日本の平均的労働者の幸福を最大化することに時間を費やさなければならないです。

豊な日本国民 AI生成画像

低コストの労働力ではなく、広範な繁栄が目標であるべきです。

低賃金労働者の大規模な移民受け入れが長期的に日本経済にプラスになるとは思えないです。それは、需要の低迷と経済停滞のより深い根源への対処を避ける、近視眼的な解決策にすぎません。日本経済を活性化する鍵は、金融緩和を積極財政をしつつ生産性を向上させ、賃金を引き上げ、既存の国民の生活水準を最大化することにあります。この順番を間違えるべきではありません。

賃金を機械的にあげるだけで、政府が金融緩和や積極財政をしない生産性向上のためのインフラを整備しなければ、文在寅が韓国で雇用を激減させたのと同じように大失敗します。その後経済が加熱すれば、金融引締、緊縮財政に転ずれば良いのです。順番を間違えるべきではありません。

ただ、低賃金労働者の大規模な移民受け入れだけを実行するのでは、日本の労働者にも経営者にも中長期的には何の利益ももたらさないことは明らかです。


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2023年7月29日土曜日

下げ止まらない内閣支持率の背景 衆院解散も簡単にはいかない…「岸田降ろし」が始まるのか―【私の論評】岸田首相はこれ以上支持率を下げないため起死回生策を打つべき(゚д゚)!

高橋洋一「日本の解き方」

岸田首相

 産経新聞社とFNNが実施した世論調査で、内閣支持率は前回よりも4.8ポイント低下し、41.3%となり、自民党支持率も2.8ポイント低下して31.4%となった。朝日新聞の調査でも内閣支持率は5ポイント低下し、37%となり、自民党支持率も5ポイント低下して28%となった。読売新聞と毎日新聞の調査でも内閣支持率の低下が報じられている。

 内閣支持率の低下要因として、マイナンバーカードの混乱が挙げられるが、筆者はそれに疑問を持っている。実際には問題が少なく、マスコミが不安を煽りすぎていると指摘している。また、マイナンバーカードの導入によって本人確認のコストが低減されているため、騒ぎはこの夏までに収束するとの見方もある。

 内閣支持率の低下の要因は、政府税調答申での「サラリーマン増税」やLGBT法によって岩盤保守層が離れたことも考えられる。さらに、日本維新の会が支持率を上げており、自民党の支持率を減らしていると指摘されている。

 10月にはインボイス制度がスタートする見通しであり、混乱が予想される。これによって内閣支持率がさらに低下する可能性もある。支持率を回復させるためには拉致問題の解決が重要であるが、北朝鮮の反応次第では真の解決にはならない可能性もある。

 衆院解散は容易ではなく、岸田首相に対する批判が高まる可能性もあると述べている。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

これは元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】岸田首相はこれ以上支持率を下げないため起死回生策を打つべき(゚д゚)!

非接触型カード・リーダー・ライターとマイナカード

私も、上の記事で高橋洋一氏が語るように、支持率低下の原因がマイナンバーカードを巡る混乱だとは思っていません。当初はマスコミの煽りに幻惑された人たちも、そもそも紙の保険証の悪用などの問題が明らかにされてからは、幻惑から覚醒したものと思われます。

LGBT法案と、サラリーマン増税に関しては分けて考える必要があるものと思います。サラリーマン増税に関しては、生活に直接大きな影響があるため有権者のほとんどが反発したものと思います。その後岸田首相は「サラリーマン減税をするつもりはない」と否定していますが、未だその疑念は多くの有権者から払拭されていないと思います。

LGBT法案に関しては、自民党を支持してきた私自身も含めた保守岩盤層の多くが離反したと考えられるものの、保守岩盤層でない多くの人、そもそもLGBT法案に関しては周知されおらず、あまり影響はなかったのではないかと思います。

日本のLGBT運動

ただ、LGBT法案に関しては、保守岩盤層ほんどとが反対してきたにもかかわらず、成立してしまったため、増税を否定する岸田総理の表明に対しても、疑心暗鬼になっているのではないかと思います。

保守岩盤層の一部や、増税に反対する従来の自民党支持層が、維新の会に流れている可能性があります。

ちなみに、安倍政権で支持率が30%を切ったことはほとんどなかったことから、この約30%の有権者が保守岩盤層ではないかとみられます。

安倍政権の時に支持率が20%台になったのは2回しかありません。1度目は森友問題と共に学校法人「加計学園」による獣医学部新設問題を野党から追及される中で「共謀罪」創設を柱とする改正組織犯罪処罰法が成立した後の17年7月の26%。そして2度目は閣議決定で定年延長された東京高検の検事長が賭けマージャン問題で辞職した20年5月の27%です。それでも20%台後半で踏みとどまりました。

安倍元総理

しかし、現在この保守岩盤層の中からも、自民党を支持することをためらう人々がでてきたのだと思います。岸田政権の支持率が20%台になれば、自民党内で岸田おろしが始まる可能性は高まるでしょう。

私自身は、積極的に岸田政権を支持しているわけではありませんが、茂木氏、林氏、河野氏、林氏がポスト岸田になる可能性が高く、これでは岸田政権よりも、さらにリベラル的になる可能性が高いです。

それだけは避けたいところです。ただ、今のまま、岸田首相が増税疑念を払拭できなかったり、LGBT法案の成立により、女性への被害が増えたり、複数の自治体で小学校などでLGBT運動団体のメンバーが講師となりLGBT研修が行われるような事態になったり、韓国や中国に対して無用の譲歩したりすれば、やむなしとして、自民党支持の有権者も自民党を支持しないという選択肢も選ぶかもしれません。

岸田首相もしくは、自民党はそうならないために、起死回生策を打つべきです。岸田首相としては、先日もこのブログで指摘したように、増税疑念を払拭するために、24年度GDP600兆円実現(かつて安倍首相がこれを約束、現状のままなら達成する可能性がかなり高い)を前提に、30年度までにGDPを700兆円にすることを打ち出すべきです。そうして、安倍首相の外交でも経済政策でも、安倍元首相の路線を引き継ぐことを表明し実行すべきです。

岸田政権の凋落が止まらない場合は、自民党は岸田おろしをしても良いとは思いますが、次期総裁としては、安倍元総理の路線を確実に引き継くと見られる人を選び、それだけではなく、自民党幹部らは、自分の主義主張はせずに、その人物を挙党一致で支持・支援する体制を築くべきです。

自民党は、1955年(昭和30年)に日本社会党の台頭を危惧したかつての、自由党と日本民主党が合同(いわゆる保守合同)して結成された保守政党です。自民党は保守政党であり続けるべきです。ここで私がいう保守とは、立場や政策や考え方をいうのではありません、エドマンド・バークににまで遡る、真の保守主義のことです。

そうして、安倍政権は憲政史上最長の政権になったのですから、現代日本では安倍政権の継承こそ、もっとも自民党政権を長期安定化させる道であるということを理解すべきです。これが現実なのですから、自民党内のリベラル左派もこれに従うべきです。どうしても嫌なら、自民党に在籍し続けるべきではありません。それは、公明党も同じです。

公明党が自民党と連立を組み続けたいなら、リベラル左派的な考えを貫くのはやめるべきです。それがどうしても嫌なら自ら、連立を解消すべきです。

自民党岩盤支持層もこれで納得するでしょうし、他の自民党支持者もこれで納得するでしょう。

これ以外の道を選択すれば、岸田政権は凋落し続けるでしょうし、岸田首相以外の人が総裁になっても、自民党の凋落は止まらなくなるでしょう。その先は、自民党は再び下野するしかなくなるでしょう。そのくらいの瀬戸際にあることを自民党は理解すべきです。

多くの自民党員はそれを理解しているのでしょうが、まだ派閥の力学だけで動こうとする政治家が存在しており自民党としての起死回生策に踏み切れないでしょう。

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2023年7月28日金曜日

第2四半期の独GDP、前期比横ばい 予想下回る―【私の論評】岸田首相は、人の話を聞くだけではなく、ドイツをはじめとするEU諸国の失敗から学ぶべき(゚д゚)!

第2四半期の独GDP、前期比横ばい 予想下回る

景気が低迷するドイツ AI生成画像

 ドイツ連邦統計庁が28日発表した第2・四半期の国内総生産(GDP)速報値は前期比(季節調整後)で横ばいとなった。

 第1・四半期のGDPは0.3%減から0.1%減に、昨年第4・四半期のGDPは0.5%減から0.4%減に修正された。冬季に緩やかな景気後退に陥ったことになる。

 家計消費は冬季の低迷から第2・四半期に安定を取り戻した。

 第2・四半期のGDPは前年比(物価・日数調整後)で0.2%減だった。

 INGのマクロ担当グローバルヘッド、カーステン・ブルゼスキ氏は「ドイツ経済は停滞と後退の中間地帯にはまっているとの見方を変えていない」と指摘。購買力の低迷、鉱工業受注の縮小、過去数十年で最も積極的な金融引き締めの影響、予想される米経済の減速が、経済活動の低迷を示唆していると述べた。

 パンテオン・マクロエコノミクスのユーロ圏チーフエコノミスト、 クラウス・ビステセン氏は「ドイツ経済は当面、ぬかるみから抜け出せないだろう」と述べた。

 ドイツ経済は現在リセッション(景気後退)にあり、2四半期連続でマイナス成長と定義されている。2023年第1四半期は0.1%、第2四半期は0.3%経済が縮小した。ドイツが景気後退に陥るのは、COVID-19パンデミックによって経済活動が急激に低下した2020年以来である。

【私の論評】岸田首相は、人の話を聞くだけではなく、ドイツをはじめとするEU諸国の失敗から学ぶべき(゚д゚)!

ドイツの景気後退にはいくつかの要因があります。最大の要因のひとつは、エネルギー価格の高騰だ。これが企業や消費者に負担をかけ、投資や支出の減少につながっています。

ドイツの経済的苦境は、誤ったリベラル的政策とロシアのエネルギーへの過度の依存が招いたものです。2018年にトランプ大統領が国連の演説で賢明にも指摘したように、ドイツは原子力を放棄し、天然ガスをロシアに依存することで自らを脆弱にしてきました。

原子力発電の段階的廃止はエネルギーコストを高騰させ、ドイツの産業界を疲弊させました。これにウクライナ紛争によるエネルギー価格の高騰が重なれば、ドイツ経済が低迷するのも当然です。

ドイツの緑の党は愚かな環境保護政策をとってきましたが、それがついにしっぺ返しとなって我が身に振り返ってきたともいえます。原発を停止し、エネルギーのためにプーチンに寄り添ったことで、彼らは自らを破滅に追い込んだともいえます。

ドイツの緑の党による環境保護政策

グリーン・エネルギーとロシアの好意を信じる彼らの甘すぎる認識は、ドイツを不況に導くだろうことは、容易に想像できました。トランプ大統領を馬鹿にするのではなく、賢明な警告に耳を傾けてさえいれば、今日のようなことはなかったでしょう。

第73回国連総会での演説で、トランプ大統領はドイツがロシアの石油輸出に依存していることを批判しました。
「単独の海外供給国に依存すれば、強要や脅迫を受けやすくなる恐れがあります。ですから我々は、ポーランドのように、ヨーロッパの国がエネルギー需要を満たすためにロシアに依存しないようバルチック・パイプ建設を主導していることを祝福します。ドイツは直ちに方針を変えなければ、完全にロシアのエネルギーに依存するようになるでしょう」とトランプは述べた。

「この西半球で、我々は拡大を進める外国勢力の侵害からの独立性を維持することに全力で取り組みます」とトランプが続けると、ドイツ代表団にカメラが向けられ笑っている様子が映った。 以下にのそのときの動画を掲載します。

トランプは2018年のドイツとNATOリーダーとの会談中にも同様に、ドイツのエネルギー依存について警告するコメントを発していました。
「ドイツがロシアと莫大な石油・天然ガス取引を行うのはとても残念だ。ロシアを警戒すべきであるのに、ドイツはロシアに年間何十億ドルも支払おうというのだ。そういうわけで我々はあなたたちをロシアから守ることになっているのに、ロシアに何十億ドルも支払っているのだから、それはとても不適切だと思う」とトランプは述べた。

「ドイツはロシアと新パイプラインから60ー70パーセントのエネルギーを得ることになるので、ロシアに完全に支配される。そしてそれが適切かといえば、否だと私は思う」とトランプは、イェンス・ストルテンベルグNATO事務総長に呼びかけた。
トランプは、ノルドストリーム2パイプラインの完成を阻止するための制裁を許可しました。パイプラインができれば、ロシアはウクライナをバイパスして天然ガスをヨーロッパに送ることができ、ロシアのウラジミール・プーチン大統領にとって地政学的な大勝利となります。

ジョー・バイデン大統領は、就任に際して制裁を取り消したのですが、ロシアのウクライナ侵攻後最近になってからようやく制裁を元に戻しました。ロシアがウクライナに侵略し、ドイツ経済が低迷し、回復の見込みもない現在、このトランプの演説の内容を聴いて、笑うもの等一人もいないでしょう。

 現在、このときの動画を視聴すると、当時のドイツ代表団は、間抜けとしか言いようがありません。まさに、ドイツはロシアにエネルギーを依存することにより、ロシアのウクライナ侵略を促した可能性も否定できません。

ドイツを牛耳る左派は、この苦境を自分たち以外のせいにすることはできません。彼らの急進的な考え方と常識からの逸脱は、以前は好調だったドイツ経済に深刻なダメージを与えましたた。

ドイツ政府は現在、景気浮揚策を講じる必要に迫られています。しかし、ドイツ政府は多くの課題に直面しています。ウクライナでの戦争はまだ続いており、世界的なサプライチェーン危機は収束の兆しを見せていません。また、財政赤字が大きいため、景気刺激策を実施するにも限界があります。

その結果、ドイツの景気後退がいつまで続くかは不透明です。政府は2023年後半からの景気回復を期待していますが、その保証はありません。ウクライナ戦争が長引き、世界的なサプライチェーン危機が悪化する可能性もあります。この場合、ドイツ経済は今後も縮小を続ける可能性があります。

他のEU諸国も現在、経済的苦境に立たされています。 

EU諸国の経済的苦境

イタリアは、肥大化した福祉プログラム、高い税金、過剰な政府支出のために、何年も停滞と高い失業率と戦ってきました。巨額の国家債務と財政赤字が経済成長を阻害しています。

 フランス経済は、高い税金、融通の利かない労働法、威圧的な政府の介入といった同様の問題により、ほとんど成長していません。マクロン大統領の改革は行き詰まり、「黄色いベスト」デモはさらに景況感を悪化させています。 

スウェーデンの経済は、住宅危機、輸出の減少、世界的な貿易戦争の影響により著しく減速しています。グリーンエネルギーへの過度の依存と高いエネルギー税が企業のコストを引き上げています。

スペイン経済は一時的に回復したものの、政情不安、分離独立運動、金融危機の影響を引きずる脆弱な銀行システムにより、再び低迷しています。若者の失業率の高さは依然として慢性的な問題です。

ギリシャは債務危機と経済破綻から完全には回復していません。救済措置や緊縮財政によって財政赤字は縮小したものの、政治的混乱や脱税、ビジネスチャンスの欠如が続いているため、経済成長はまだ達成されていません。

景気後退に見舞われている国々は、過剰な支出と債務、過剰な規制、高い税金、グリーン・エネルギー政策によるエネルギーコスト上昇、経済の柔軟性の欠如、景況感を損なう政治的・社会的不安定性など、同じような根本原因を抱えています。

さて、日本を振り返ると、ドイツや他のEU諸国などと比較すると、良い状況にあると考えられます。

その要因としては、安倍・菅両政権においてあせわて、100兆円(安倍政権60兆円、菅政権40兆円、合計100兆円は当時の受給ギャップに匹敵する)にも及ぶ補正予算を増税なしで組み、コロナ対策を実行したことがあげられます。

さらに、他国が、最近ではかなりのインフレに見舞われたため、利上げなどの金融引締策を実行したさなかにあり、日本はデフレ気味であったので、金融緩和政策を継続したことが考えられます。これにより、円安になったことから輸出産業が好調になったことが、現在の日本の景気を支えています。

岸田首相は、安倍・菅政権の政策に支えられ、現在の好調な経済を引き継ぐことができたのです。今後、岸田首相が配慮すべきは、ドイツなどの失敗でも明らかになったように、エネルギー政策を間違わないこと、EU諸国の現在の経済低迷の背景ともなっている、リベラル左派的な政策をとらないこと、後もう一つは増税などの緊縮財政などを実施しようとする財務省を中心とする一派の策略に乗らないことです。

岸田首相は、人の話をよく聞くだけではなく、ドイツをはじめとするEUの国々の失敗から学ぶべきです。米国のつきあい方なども考えるべきでしょう。

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2023年7月27日木曜日

ハンター氏の司法取引「保留」 米地裁、異例の展開 バイデン氏次男―【私の論評】 ハンター・バイデン氏の裁判次第で、日本はバイデン政権とつきあい方を変えることになるか(゚д゚)!

 ハンター氏の司法取引「保留」 米地裁、異例の展開 バイデン氏次男

デラウェア州の裁判所に出廷したハンター・バイデン氏

 バイデン米大統領の次男ハンター・バイデン氏が海外企業から多額の報酬を得ていた問題で、東部デラウェア州の連邦地裁で審理が開かれた。ハンター氏は脱税の罪を認める司法取引を検察側と合意していたが、判事は免責範囲に銃不法所持を含めることに憲法上の疑義があるとして、追加の説明資料の提出を要求した。

 ハンター氏は2014年から2019年まで、ウクライナのエネルギー企業「ブリスマ」の役員を務め、多額の報酬を得ていた。また、中国のエネルギー複合企業「中国華信能源」と取引関係にあったことも明らかになっている。

 ハンター氏は2018年、違法薬物依存症だったにもかかわらず、銃を違法に所持していた容疑もある。薬物乱用者による銃不法所持は、裁判で有罪となれば最大10年の禁錮刑が科される重罪だ。

 この日の審理で判事は、ハンター氏側と検察側に対し、司法取引の内容について質問。双方は認識に齟齬があったことから再協議し、ハンター氏が2017年と2018年の収入でそれぞれ約150万ドル(約1億9000万円)の脱税を認める代わりに、2014年から2019年までの他の税務関連の罪や銃不法所持と薬物使用に関する罪について免責されるという合意を行った。

 しかし判事は、免責範囲に銃不法所持を含めることに憲法上の疑義があるとし、追加の説明資料を30日以内に提出するよう指示した。

 ハンター氏はこの日、脱税の罪で「無罪」を主張したが、司法取引が成立すれば「有罪」を認める方向だ。

 一連の疑惑では、野党・共和党や保守派団体が、ハンター氏が無届けの「外国代理人」としてウクライナや中国の利益のために活動した疑いもあるなどとして、司法省に捜査範囲の拡大を求めている。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】ハンター・バイデン氏の裁判次第で、日本はバイデン政権とつきあい方を変えることになるかもしれない(゚д゚)!

ハンター・バイデン司法取引の不成立はバイデン政権にとって後退であることは間違いなく、大統領選まで引きずることになりそうです。判事がこの取引に懸念を示したということは、ハンター・バイデンの行為に重大な疑問が残っていることを示唆しています。

ハンター・バイデン問題が、トランプ氏の脱税スキャンダル以上にバイデン政権にダメージを与えるかどうかを判断するのは時期尚早です。しかし、バイデン政権にとってこの問題がふりになっていることは明らかであり、共和党が2024年の選挙に向けて確実に利用することでしょう。

ハンター・バイデンの税金未納問題がトランプ大統領の脱税スキャンダルより悪質かどうかについては、意見が分かれるところです。しかし、どちらの問題も金銭的不正行為という重大な疑惑を含んでいることは明らかです。また、どちらの問題もバイデン家とトランプ家の評判を落とす可能性があることも明らかです。

最終的に、これらの問題が2024年の大統領選挙で投票を左右するほど重要かどうかを決めるのは、米国民です。しかし、これらの問題が選挙戦の主要な焦点になることは間違いないです。

2024年米国大統領選挙

上の記事では、野党・共和党や保守派団体が、ハンター氏が無届けの「外国代理人」としてウクライナや中国の利益のために活動した疑いもあるなどとして、司法省に捜査範囲の拡大を求めています。

これが事実だとすれば、非常に厄介なことです。ハンター・バイデンが父親の当時の副大統領の地位から多大な利益を得ており、ウクライナや中国の外国団体から数百万ドルを巻き上げていたことは、すでにかなりの証拠があるとされています。

もし彼が未登録の外国代理人としても活動していたとしたら、それは重大な連邦犯罪となります。

米国法で定義される外国代理人とは、外国政府、政府関係者、政党のために米国内で活動する人のことです。外国代理人登録法(FARA)に基づき、外国の利益のために政治活動やロビー活動を行う個人は、司法省に登録し、その関係、資金、活動を開示しなければなりません。

FARAの目的は、米国の政治や政策立案に対する外国からの干渉を防ぐことです。外国人エージェントは、その活動意図や、誰が資金提供や指示をしているのかについて透明性を提供しなければならないです。

外国代理人として必要な登録を適切に行わなかった場合は、連邦の重大な犯罪となります。

FARAの対象となる政治活動の例には、以下のようなものがあります。
  • 外国の利益を代表して政府高官にロビー活動を行うこと。
  • 外国政府の利益のために米国世論に影響を与えようとすること。
  • 外国の政権に代わってプロパガンダや政治資料を配布すること。 外国の政党や政府機関のために資金を調達すること。 
  • 米国政府に対するロビー活動や影響力の行使方法について、外国公務員に助言すること。
FARAの目的は、透明性を高めることによって、外国の裏工作や裏取引を抑制することです。

米国人は、誰かが外国勢力の代理人として行動していることを知れば、その忠誠心や動機を適切に判断することができます。つまり、外国代理人登録は米国の主権と民主主義制度を守るための重要な要素なのです。

外国代理人登録は米国の主権と民主主義制度を守るための重要な要素 AI生成画像

外国代理人は外国政府のために働いていることを公表しなければならないのですが、ハンター・バイデンはそれをしなかったようです。その理由はおそらく以下のようなものでしょう。

オバマ政権は、副大統領の息子がどのように、このようなこをしていたのか、隠蔽したかつたのでしょう。バイデン夫妻はジョーの事務所を私腹を肥やすために利用していたと考えられ、外国代理人登録はその不正行為を暴露することになるからです。

オバマ時代の司法省が見て見ぬふりをしたのも無理はないかもしれません。このスキャンダルは、ワシントンの溝浚いがある必要があることを示しています。政治エリートたちは、米国民を犠牲にして自分たちとその家族を豊かにしていたかもしれいないのです。

もし司法省が調査を拡大し、ハンター・バイデンが外国の諜報員として法律に違反した明確な証拠を見つければ、オバマ-バイデン政権がいかに腐敗していたかを証明することになります。

米国民には真実を知る権利があり、正義は果たされなければならないです。

ハンター・バイデンが外国のエージェントとして法律に違反したという明確な証拠が出てくれば、バイデン政権にとっては大打撃となるでしょう。

リベラルメディアはそのような違法行為を報道せざるを得なくなり、バイデンの支持率はかなり下落するでしょう。米国民は汚職に寛容ではないです。ジョー・バイデンの判断力に疑問が生じ、国を率いる彼の能力にダメージを与えることになりかねないです。

バイデン政権への具体的な影響は、違反の内容やハンター・バイデンに関連する証拠によって異なってくるでしょう。彼が重大な不正行為に関与したことが判明した場合、刑事責任を問われる可能性もあります。これは長期の法廷闘争につながり、バイデン政権の評判を傷つける可能性があります。

ハンター・バイデンが罪に問われなかったとしても、このスキャンダルはバイデン政権にダメージを与えかねないです。ジョー・バイデンの辞任や弾劾を求める声が高まる可能性もあります。また、バイデン政権が法案を通したり、国際協定を交渉したりすることが難しくなる可能性もあります。

バイデン政権 AI生成画像

日本への影響は、スキャンダルの深刻さと日本での受け止め方次第でしょう。スキャンダルがバイデン政権にとって大きな脅威と見なされれば、日米関係にダメージを与えかねないです。また、日米両国が相互に関心のある問題で協力することが難しくなる可能性もあります。

ただ、事態はまだ発展途上であり、どのような結果になるかを語るのは時期尚早であることに注意する必要があります。ただ、もしハンター・バイデンが法律に違反したという明確な証拠が出てくれば、バイデン政権と日米関係にとって大きな試練となるでしょう。

ハンター・バイデンが外国のエージェントとして法律に違反したという明確な証拠が出てきた場合、バイデン政権に起こりうることをいくつか挙げます。
  • ジョー・バイデンは辞任や弾劾を求められる可能性がある。
  • バイデン政権は国民の支持を失う可能性がある。
  • バイデン政権は、法案の通過や国際協定の交渉が困難になる可能性がある。
  • 日米関係が損なわれる可能性がある。
注意しなければならないのは、これらは起こりうるいくつかの結果にすぎないということです。実際の結果は、ハンター・バイデン氏に対する具体的な証拠や、スキャンダルが国民にどのように受け止められるかによって異なるでしょう。

ハンター・バイデン氏の司法取引「保留」になったのですから、本格的裁判になる可能性でできたのです。日本としては、このことも念頭に入れて、米国の動向を見極め、米国との関係を考えていくべきでしょう。

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2023年7月26日水曜日

岸田首相、突然〝憤慨の裏〟「サラリーマン増税まったく考えていない」 政府税調中期答申「全261ページ」増税派の理屈満載―【私の論評】首相は24年度GDP600兆円実現を前提に、30年度までにGDPを700兆円にすることを打ち出せ(゚д゚)!

岸田首相、突然〝憤慨の裏〟「サラリーマン増税まったく考えていない」 政府税調中期答申「全261ページ」増税派の理屈満載


 岸田文雄首相は、自民党税制調査会の宮沢洋一会長と官邸で会い、「サラリーマン増税はまったく考えていない」と伝えた。しかし、政府税制調査会(政府税調)が提出した中期答申には、幅広い分野での「増税・負担増」候補が盛り込まれており、将来的な増税の懸念が残ったままだ。

 政府税調は、首相の諮問機関であり、中期答申は、2025年度から30年度までの10年間の税制改革の方向性を示すもの。答申では、通勤手当だけではなく、退職金や控除の見直しなど、サラリーマンの生活に関わる問題だけでも別表のような項目が列挙されている。

 田中秀臣上武大学教授は、「歴史的に党税調が税制改正の方針を決めてきた経緯からも、『今は考えていない』というのは本当だろう。しかし、政府税調が中長期的な方針を打ち出してもおかしくない。安倍晋三、菅義偉政権下で陰に隠れていた政府税調が最近、注目されるようになった。岸田首相に定まった経済政策観がない中、財務省が好機ととらえ、政府税調を利用し、観測気球を飛ばしたのではないか」とみる。

 高橋洋一嘉悦大学教授は、「政府税調の答申についてメディアや世論が黙っていれば増税に向けて動き出す可能性もあった。党税調が増税を考えていないというのなら結構なことだが、国民に不安を与えたのは、政府税調の答申を棚上げしたり、もっと短い答申を出すよう調整したりしなかった政権側のミスだといえる」と指摘した。

 岸田首相は、国民の怒りを買うような増税はあり得ないと強調しているが、今後も増税派の動きが注目される。

【私の論評】首相は24年度GDP600兆円実現を前提に、30年度までにGDPを700兆円にすることを打ち出せ(゚д゚)!

上の記事を読んでいて、やはり党税調と、政府税調の違いが気になるところだと思います。

1950年、自民党は税制調査会(党税調)を設置しました。党税調は、税制改正の方針を決める党の諮問機関であり、現在では、税制改正の際には、党税調の答申を参考にして、税制改正大綱が作成されています。

党税調が税制改正の方針を決めてきた経緯には、いくつかの理由があります。まず、税制は、国民生活に大きな影響を与えるものであり、その改正には慎重な議論が必要です。党税調は、与党の議員で構成されており、国民の声を反映した税制改正の方針を決めることができます。

また、党税調は、税制改正の際には、政府税制調査会(政府税調)と協力して、税制改正大綱を作成しています。政府税調は、専門家で構成されており、党税調と政府税調の協力により、より良い税制改正大綱が作成されています。

今後も、党税調は、税制改正の方針を決める重要な役割を果たしていくと考えられます。

政府税制調査会は、1949年に設立されました。当時、日本の財政は戦後復興期にあり、税制の抜本的な改革が必要でした。そこで、政府は、税制調査会を設置し、税制の在り方について議論してもらうことにしました。

政府税制調査会は、学識経験者や実務家で構成されており、税制の現状や課題について調査・研究を行った上で、答申を提出しました。政府は、この答申を参考にして、税制改正を行いました。

政府税制調査会は、税制の在り方について議論する場として重要な役割を果たしてきました。今後も、税制の抜本的な改革が必要な場合には、政府税制調査会が議論の場として活用されることになるでしょう。

政府税制調査会は、意見を聞く会という性格が強いと思います。これは、政府税制調査会が、学識経験者や実務家で構成されており、税制の専門家であるからです。政府税制調査会は、税制の在り方について、専門的な意見を述べることができます。

政府税制調査会は、意見を聞く会という性格が強いですが、その意見は、政府の税制改正に大きな影響を与えます。政府は、政府税制調査会の答申を参考にして、税制改正を行います。そのため、政府税制調査会は、税制の在り方について議論する場として、重要な役割を果たしています。

政府税制調査会は、学識経験者や実務家で構成されており、税制の在り方について議論する場として重要な役割を果たしてきました。しかし、政府税制調査会の答申は、あくまでも参考意見であり、政府は、最終的に、政府税制調査会の答申を参考にして、税制改正を行うかどうかを判断します。

一方、党税調は、与党の議員で構成されており、税制改正の方針を決める党の諮問機関です。党税調は、政府税制調査会の答申を参考にして、税制改正の方針を決めますが、最終的には、党税調が税制改正の方針を決定します。

そのため、党税調は、実質上税に関する自民党の意思決定機関と言えます。

さて、政府税制調査会(政府税調)が提出した中期答申には、幅広い分野での「増税・負担増」候補が盛り込まれていますが、これがすべて実現したとすれば、国民の負担は大きく増加すると考えられます。具体的には、次のようなものが考えられます。
  • 所得税の引き上げ
  • 社会保険料の引き上げ
  • 消費税の引き上げ
  • 資産課税の強化
  • 環境税の導入
これらの増税・負担増により、国民の所得は減少し、消費は落ち込むと考えられます。また、企業の投資も減少し、経済成長が鈍化する可能性があります。

さらに、増税・負担増は、国民の経済的格差を拡大させる可能性もあります。所得税の引き上げや社会保険料の引き上げは、低所得層に大きな影響を与えると考えられます。また、資産課税の強化は、富裕層に大きな影響を与えると考えられます。

このように、政府税制調査会の中期答申に盛り込まれている増税・負担増は、国民の生活に大きな影響を与えると考えられます。国民の中でも、特にサラリーマン世帯にかなりの負担になることが予想されるため、岸田文雄首相は、自民党税制調査会の宮沢洋一会長と官邸で会い、「サラリーマン増税はまったく考えていない」と伝えたのです。


これは、無論伝えるために岸田首相は、自民党税制調査会の宮沢氏を呼んだわけではなく、この物議を醸した政府税調の増税案を否定してみせたのでしょう。それは、無論これを広く周知して、国民の懸念を払拭して、政権支持率のさらなる低下を防ぐ意味合いがあったものと考えられます。

岸田首相が増税案を否定しただけでは政権の支持率を上げることは不可能だと思います。

岸田文雄首相は、2023年度までにGDPを700兆円に増やすことを打ち出せば、支持率がかなり上がると私は思います。

日本経済は、2023年前半+1%台の堅調な成長が続いています。他国と比べてインフレ率が低い日本では、22年からの通貨安(円安)が経済成長を支えています。さらにコロナ収束で外国人訪日客が戻り、円安がインバウンド消費を刺激しているので、観光資源を持つ地方を含め経済回復に大きく貢献しています。23年1-6月のインバウンド消費は2.2兆円、GDPの0.8%に相当します。

日本のインバウンド消費 AI生成画像

日銀の金融緩和が円安を後押ししていますが、日本のインフレは他国対比でかなり低いままなので金融緩和継続は当然でしょう。22年以来の米欧の高インフレ、そして金利上昇が主たる円安要因です。米欧の高インフレは当事国にとって大きな経済問題だが、円安は日本経済にとっては追い風となりコロナ禍の収束とあいまって、世界経済が減速する中でも日本経済は底堅さを保っています。

経済政策については一定程度成果を挙げているのですが、岸田政権の支持率上昇要因になってはいないようです。7月に入り内閣支持率は、大臣の辞任などが続いた2022年末と同水準まで再び低下しています。支持率が低下する要因はいくつかありますが、「成長重視の政策対応が今後も続くか」との疑念が払拭されないので、政権への信認が高まらない事が一因と思われます。

例えば、恒久的な歳出拡大が決まる中で、増税による緊縮財政政策への転換が政府税調などから提唱されています。我が国には財政規律を最重視すべきとの信念を持つ政治勢力が存在します。岸田政権がこれらを採用するかは政治判断次第ですが、岸田官邸には経済政策に確たる軸がないため、いつ緊縮的な財政政策に転じても不思議ではありません。

岸田政権が経済成長を重視し続ける場合、これが信認されるにはどうすればいいだろうか?第2次安倍政権は2015年に名目GDP600兆円を目標に掲げました。最新の政府見通しでは2024年度に名目GDPは600兆円台に達しますが、これは楽観的ではなく十分達成可能です。この意味でも、岸田政権は安倍・菅内閣の経済政策を部分的に継承し、予定より遅れたが成果が出始めています。

岸田政権は、24年度GDP600兆円実現を前提に、2030年度までにGDPを700兆円に増やすことを打ち出せば良いでしょう。これは、名目3%成長が2025年~2030年続けば達成可能です。安倍政権を超えるGDP目標を掲げれば、増税を優先して緊縮財政に早期に転じるとの疑念は薄れるのではないでしょうか。

日本が目指すGDP700兆円 AI生成画像

名目GDP拡大ともに税収も持続的に増えるので公的債務の持続性が高まり、経済安全保障政策の自由度も高まる。安倍政権を超える目標を設定し、岸田政権が経済成長を重視し続けるのであれば、日経平均株価は2,3年以内に史上最高値まで上昇してもおかしくないです。

具体的には、以下の政策を打ち出せば良いでしょう。企業の設備投資を促進する税制優遇措置を導入するのです。
  • 成長戦略の策定と実行
  • 規制改革の推進
  • 科学技術イノベーションの推進
  • 人材育成の強化
  • インフラ投資の拡大
  • 国際協調の強化
これらの政策を実施し、現在数兆円存在する受給ギャップを早急に埋めるようにすれば、日本経済は持続的な成長を遂げ、GDPは700兆円に達する可能性が高いでしょう。

1─3月GDPギャップは-0.9%、約5兆円の需要不足と内閣府は試算しています。高橋洋一氏は、内閣府の試算はいつも低めと指摘しています。10兆円くらいの財政支出をすることにより、このギャップは完璧に埋めさらに、経済を上向きにさせるには十分です。

岸田政権は、これを実現する方向性を打ち出すことにすれば、支持率を上げることもでき、さらに長期政権への目処もつくかもしれません。

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2023年7月25日火曜日

釜山に寄港した米戦略原子力潜水艦のもう一つの目的は「中国抑止」―【私の論評】核を巡る北朝鮮やウクライナの現実をみれば、日本には最早空虚な安保論議をする余地はない(゚д゚)!

釜山に寄港した米戦略原子力潜水艦のもう一つの目的は「中国抑止」

マイケル・マッコール米下院外交委員長

 マイケル・マッコール米下院外交委員長は、米国の戦略原子力潜水艦が釜山(プサン)に寄港したのは、北朝鮮だけでなく中国を抑止する狙いもあると述べた。

 マッコール委員長は、米国がなぜ今韓国に戦略原子力潜水艦を展開したと考えるかという質問に「攻撃を抑止するために今必要な戦力投射だ」としたうえで、「我々は日本海(東海)にロケットを発射する北朝鮮だけでなく、中国の攻撃性も注視している」と答えた。また、中国が台湾を訪問した自分をはじめとする米国議員たちを威嚇するため、艦艇と戦闘機で台湾を包囲した事例が中国の攻撃的な態度を示していると述べた。

 マッコール委員長はさらに「北朝鮮は我々がそこにいて、原子力潜水艦を持つ我々の方が優位に立っていることを認識すべきだ」とし、「我々は北朝鮮と習(近平)主席に、軍事的に攻撃的な行動には代償が伴うことを信じさせなければならない」と語った。米議会の代表的な対中タカ派のマッコール委員長のこのような発言は、核ミサイルを装着した戦略原子力潜水艦の韓国への寄港が、北朝鮮だけでなく中国をけん制する意図と効果を持っていることを示したものといえる。

 マッコール委員長はこのような脈絡で、朝鮮半島に配備あるいは展開される米軍の戦力の役割は、中国の台湾侵攻の可能性と関連し北朝鮮を抑止するためだと説明した。また「そこ(韓国)に(米軍)太平洋司令部艦隊がいるのは、(中国と)台湾の衝突発生時に北朝鮮を阻止するため」だとし、「そのような衝突時に北朝鮮がミサイルを発射すること」を韓国とともに抑止しなければならないと述べた。台湾有事(戦争)と朝鮮半島有事は事実上連動しているため、韓米がともにこれを抑止しなければならないという見解だ。マッコール委員長は、北朝鮮は米国に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)を保有しているが、ここに装着できる核弾頭はまだ保有していないと説明した。

 一方、戦略原子力潜水艦が釜山に寄港し、韓米初の核協議グループ(NCG)会議が開かれた18日、板門店(パンムンジョム)の軍事境界線を越えて越北した在韓米軍のトラビス・キング二等兵については、亡命したというよりは「自らの問題から逃げた」と語った。また「ロシア、中国、イランは米国人を抑留した際、特に軍人を抑留した際、(送還の)見返りを求めてきた。私はそれを懸念している」と述べた。

この記事は、元記事の引用です。詳細を知りたい方は元記事をご覧になってください。

【私の論評】核を巡る北朝鮮やウクライナの現実をみれば、日本には最早空虚な安保論議をする余地はない(゚д゚)!

上の記事で、「マイケル・マッコール米下院外交委員長は、米国の戦略原子力潜水艦が釜山(プサン)に寄港したのは、北朝鮮だけでなく中国を抑止する狙いもあると述べた」とされていますが、これと同じような主張は従来からこのブログでも何度かしてきました


しかし、このような発言は、私の知る限りでは、今回のマッコール米下院外交委員長が初めてではないかと思います。

ただ、軍事的にはこれは当然のことであり、韓国に原潜などの戦略資産を配置することは、当然のことながら北朝鮮だけではなく中国を意識したものでもあり、中国に対する牽制という意味あいもあります。多くの軍事筋の専門家は当然このようにみてきましたが、今回改めてそれが公に示された形となりました。

朝鮮半島というと、もう一つ、一般に知られていないというか認識されていないこともあります。それは、北朝鮮とその存在が、結果として朝鮮半島に中国が浸透するのを防いできたということです。これは、米国の戦略家ルトワックも主張しています。

エドワード・ラトワックは、地政学や国際関係について幅広い著作を持つ著名なアメリカの軍事戦略家です。ルトワック氏は北朝鮮について、その核兵器開発が中国の朝鮮半島支配を抑止していると主張しています。

中国が北朝鮮の経済と政府を支配しているようにみえながら、現実には北朝鮮の核兵器は中国が北朝鮮を完全に吸収することを妨げているのです。

エドワード・ルトワック氏

ルトワックは以下のように語っています。

「北朝鮮の核兵器は、どんな条約よりも確実に北朝鮮の主権を保証している。 金正恩の核瀬戸際外交は、あらゆる方向からの金正恩の支配に対する脅威を抑止している。 北朝鮮の通常兵力は中国にとって深刻な挑戦にはならないが、その核兵器は、中国がそうでなければかけうる圧力から北朝鮮を守っている」。

言い換えれば、もし北朝鮮に核兵器がなければ、中国は北朝鮮を意のままに操り、事実上、中国の衛星国家として、はるかに大きな影響力を持つことになります。しかし、金正恩は中国を攻撃できる核兵器を持っているため、習近平は慎重に行動しているのです。

中国は、金正恩を過度に追い詰めることによる不安定化と、それによる中国の犠牲を恐れています。だから、現状を維持するために金正恩体制を支え続けているのです。これはなかなか理解しにくいかもしれませんが、ルトワックによれば、北朝鮮の核による抵抗は、中国が朝鮮半島全体を支配することを実際に妨げているのです。

中国と交流する北朝鮮人民 AI生成画像

北朝鮮の核兵器は、中国が北朝鮮を慎重に扱うべき独立した存在として扱いつつも、関与しつづけるというアプローチを取らざるを得なくしたのです。つまり、金正恩の核兵器は、他の面で中国に深く依存しながらも、この意味で北朝鮮の自主性を強化したのです。

核瀬戸際政策による抑止力が、北朝鮮の主権を存続させているのです。これは挑発的な議論でありますが、北朝鮮と中国、そして核兵器の影響力の間の地政学的力学に対する戦略的論理と洞察に満ちたものです。

ルトワックは、米国が半島の非核化を目指しているとしても、国家間の複雑な関係がいかに意図しない結果を招きかねないかを浮き彫りにしています。

北朝鮮とその核が結果的に、中国の朝鮮半島への浸透を防いでいることを考えると、ウクライナがソ連崩壊後にも核兵器を保持していれば、現在のような苦境に陥らなかった可能性が高かったかもしれません。

北朝鮮と同じように、核兵器はロシアのウクライナに対する侵略を抑止できたかもしれないです。ウクライナが1991年にソ連の核兵器を継承した当時、ウクライナは世界第3位の核兵器保有国でした。しかし、ウクライナは1994年のブダペスト覚書で、ロシア、アメリカ、イギリスからの安全保障の保証と引き換えに、これらの核兵器を放棄しました。

これは致命的な誤りでした。もしウクライナが核兵器を保持していれば、ロシアが2014年にクリミアを併合したり、ウクライナ東部の親ロシア派分離主義者を支援したりすることはなかったでしょう。

ロシアがウクライナに侵攻すれば、北朝鮮と同じ抑止力である核報復を受けることになります。核保有国が侵略されることはほとんどありません。しかし、ウクライナは北朝鮮とはいくつかの重要な違いがあります。

ウクライナは西側諸国との緊密な関係を求めており、核兵器を放棄するのは信頼を築くためだでした。核兵器を保持することは、ウクライナを孤立させることになりかねませんでした。また、ウクライナがソ連の核を適切に確保し、維持できたという保証もありませんでした。

ロシアはソ連の後継国として、武力で核を奪おうとしたかもしれないです。それでも、ウクライナが核武装すれば、東欧の戦略的景観とロシアの計算が決定的に変わっていたでしょう。キエフが核兵器で対応できるのであれば、プーチンが直接対決を選ぶとは思えません。

そのため、厄介な複雑さが生じたかもしれないですが、核抑止力理論によれば、ウクライナがそのような兵器を保有していれば、ロシアはそう簡単にウクライナの主権を侵すことはないでしょう。

この教訓は、核拡散は時として、強力な敵対勢力を抑止することで安全保障を強化する可能性があるということです。これはすぐには理解し難いことではありますが、「安全のための核兵器」という論理は明らかに北朝鮮にも当てはまるし、ウクライナの場合にも当てはまるでしょう。

現在の状況を考えると1994年のウクライナの決断は重大な過ちであり、ロシアの侵攻の余地を残してしまったようです。このような複雑な地政学的問題には、意図せざる結果の法則が立ちはだかります。もしウクライナが核兵器を放棄せずに保持していたら、おそらくロシアはクリミアやウクライナ東部に干渉することはなかったかもしれません。

北朝鮮と同じように、核兵器がウクライナを守っていたかもしれないです。ただ、結局のところ、どのような展開になったかを確実に知る方法はないです。

しかし、これについて我々が参考にすることはできます。核武装国ロシアが非核武装国ウクライナを侵略しても米国はロシアとの戦争に参加しませんでした。ブダペスト協定があるにも拘らずバイデン大統領はエスカレートして米露の核戦争になっては困るからだと言い訳をしました。これは、核武装国中国が非核武装国日本を侵略しても米国は戦闘に参加しない可能性があることを明らかにしたと思います。

これは日本の非核政策に疑問を投げかけるものです。日本が核抑止力を持つことは、自国の核兵器によってであれ、米国との核シェアリング協定に参加することによってであれ、大きな利益をもたらすと考えられます。

中国が北朝鮮からの核報復を恐れているように、日本が核兵器を持てば、中国は武力で日本の領土を奪おうとはしないでしょう。議論の余地はありますが、核兵器は、核武装した敵対国に直面したときに、究極の国家安全保障を提供するものでもあります。

日本には、その気になれば核兵器を迅速に開発できる技術的能力があります。インフラと濃縮ウランが整備され、安全保障環境が悪化した場合にのみ核兵器が組み立てられる「閾(しきい)値能力」を主張する人もいます。

しかし、核兵器開発の検討でさえ、中国を刺激し、関係を悪化させる可能性もうあります。安倍元総理の主張した米国との核シェアリングという選択肢は、良い妥協案かもしれないです。米国は、共同管理の下で日本国内に核兵器を配備し、日本へのいかなる攻撃にも同盟国が核で対抗することを明確にすることができます。

安倍元総理

これは、抑止力を維持しつつ、日本の単独行動に対する懸念に対処するものであります。日本の核武装への動きは、日本の平和主義憲法や世界的な核不拡散の努力を傷つけるという批判がもあります。

また、日本が独自の核兵器を保有すれば、エスカレーションの危険性もあります。しかし、日本の安全保障は高邁な理想以上の現実であり、中国の野望を抑止できなければ、存亡に関わる結果を招きかねないものです。

日本は自国の防衛を確保するために、核シェアリング、または独立した核抑止力を含むあらゆる選択肢を模索することが賢明です。空虚な保証に基づいた政策は、国家の自殺行為となる危険があります。もし中国が、侵略される同盟国をジョー・バイデンが助けないと見れば、日本の核兵器だけが最終的に中国の核兵器からの安全を保証するかもしれないです。

核拡散が進む世界は望ましくないですが、耐え難い脅威に直面したときには必要なこともあります。日本の指導者たちは、他国の征服から国を守るという第一の義務を考えなければならないです。

二大政党制のせいで、日本支援に関しても一枚岩とはいえない、日本にとっては気まぐれとも見える米国の支援に頼るのは、あまりにも危険であるといえます。賛否両論はありますが、核シェアリングや日本独自の核兵器開発は、日本にとって最も安全な選択肢かもしれないです。日本にはもはや北朝鮮やウクライナの現実をみてもなお、空虚な安保論をする余地はないと思います。

私は、もし安倍元総理がご存命であれば、上で述べたのと同じような論議をして、核シェアリングを重要性をさらに説いていたと思います。

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2023年7月24日月曜日

維新 馬場代表「第1自民党と第2自民党が改革競い合うべき」―【私の論評】日本の政治に必要なのは、まずは与野党にかかわらず、近代政党としての要件を満たすこと(゚д゚)!

 維新 馬場代表「第1自民党と第2自民党が改革競い合うべき」

日本維新の会の馬場代表

 日本維新の会の馬場代表は、立憲民主党との連携を否定しました。馬場代表は、「われわれが目指しているのはアメリカのような二大政党制だ。立憲民主党はカラスを白と言う人と黒と言う人が一緒にひとかたまりになるという主張だが、われわれは黒と言う人だけで集まり、自民党と対決していく」と述べました。また、「第1自民党と第2自民党が改革合戦をして国家・国民のために競い合うことが、政治をよくしていくことにつながる」と述べ、自民党と維新の会が政権の座をかけて争うべきだと強調しました。

 立憲民主党の泉代表も、日本維新の会との連携を否定しました。泉代表は、「日本維新の会は、党名を『第2自民党』に変えるとよりわかりやすいのではないか。どんどん『第2自民党』を名乗り、頑張ってもらえればと思う」と述べました。また、「日本維新の会との連携は未来永劫ないだろう」と述べたうえで、次の衆議院選挙に向けた候補者調整については「相手があってのことで、相手に全くやる気がなく自民党をサポートし、自民党と戦う気がないということであれば協力のしようがない」と述べました。

 このように、日本維新の会と立憲民主党は、今後も連携する予定はありません。両党は、それぞれが自民党と対決していく方針です。

 これは、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】日本ではまずは与野党に関わらず、政党の近代化を推進すべき(゚д゚)!

上の記事の、日本維新の会の馬場代表の発言は、維新が自民党に投票したくはないものの、他の野党にも投票したくない有権の受け皿になり得ることを示すか、そうなることを目指していることの表明であると考えられます。

自民は公明に依存しなければいけないので、各種の政策について不満を持つ自民支持層も存在います。

それに対し、維新は大阪・兵庫で公明とガチンコなので、公明に依存することをよしとしない自民支持層の受け皿になりうるかもしれません。

確かに、米国のような二大政党制には多くの利点があります。以下にそれをあげます。

米国の二大政党制 AI生成画像

まず、 有権者に明確な選択肢を提供することができます。有権者は、重要な問題についての政党間の違いを容易に理解することができます。

そのため、人々は自分の価値観に最も近い方を支持しやすくなります。 政治の安定につながります。いずれかの政党が政権を握れば、悲愁流派と連立を組む必要がなく、実際に政治を行うことができます。そのため、首尾一貫した政策を追求することができます。

極端な意見を緩和することができます。政党は選挙に勝つために無党派層や穏健派にアピールしなければならないです。そのため、多くの有権者を疎外するような急進的な立場を取ることが抑制されることになります。

 説明責任が高まります。ある政党が政権を握っている場合、有権者は誰が決定の責任を負うのか、その良し悪しを正確に知ることができます。そして、次の選挙でそれを判断することができます。

 野党が強くなります。主要政党が2つしかないため、政権与党が優位に立つことが難しくなります。野党は政府を厳しくチェックし、牽制することができます。

 政策やリーダーが有権者によって吟味されやすくなります。二大政党間の激しい競争は、選挙プロセスを通じて、欠陥のある候補者や非効率な政策アイデアを排除するのに役立ちます。最も強く、最も人気のあるものが現れるチャンスがあります。

もし日本が真の二大政党制を採用すれば、選択肢の提供、安定性、説明責任など、多くのメリットをもたらす可能性があります。もちろん、党派間の対立が激化するなどのマイナス面もありますが、バランスを考えれば、二大政党制民主主義は、米国でうまく機能してきた試行錯誤のモデルでもあります。日本もこのようなシステムから恩恵を受ける可能性が高いと私は、思います。

一方、米国の現状の二大政党制の主な欠点をいくつか挙げてみます。 端的に言えば、二大政党は権力を掌握しており、実際に問題を解決するよりも党派間のいがみ合いに関心があるといえます。両党は極端な派閥や利権にとらわれています。

両党の妥協は汚いというイメージが定着しており、これがワシントンの閉塞感と機能不全につながっています。もっと具体的に言えば - 有権者は選択肢が限られていると感じている。

多くの米国人は穏健派や無党派層を自認していますが、二極化した政党のどちらかを選ばざるを得ないと感じています。彼らの声や関心は無視されているのです。

 超党派主義と部族主義。有権者も政治家も、あらゆる問題で自分たちの党の立場に固執しなければならないと感じています。相手側を異なる意見を持つ仲間ではなく「敵」とみなしがちです。そのため、協力や妥協はほとんど不可能となります。

 特別な利害関係が支配する。二大政党は、企業PACや裕福な献金者、ロビー団体からの資金に大きく依存しています。ちなみに、PAC(政治活動委員会:Political Action Committeeの略称)とは、企業や労働組合、事業者団体、一般市民グループなどが設立し、政府の連邦選挙委員会(FEC)に登録します。個人から広く活動資金を募り、政治家への献金や広告などへの支出配分を決めます。個人1人からの集金額や政治家1人への献金額には、法律で上限が設けられています。そのため、一般市民よりも特別な利害関係者に反応しやすいです。

重要な問題は軽視されがちになります。各政党は、国の借金や医療費などの複雑な問題に取り組むよりも、感情的な面に焦点を当て、政治的な得点を稼ごうとします。解決策を練るのではなく、お互いを非難し、攻撃し合うことになりがちです。

 政府機関の閉鎖と妨害。一方の政党が他方との協力を拒むと、政府サービスの悲惨なシャットダウンにつながりかねないです。あるいは、行政措置や妨害主義によって、まったく進展しないこともあります。

 有権者の無関心と冷笑。多くの米国人は政治の現状に幻滅を感じています。政党が国益よりも私利私欲を優先していると見ているのです。そのため投票率は低下し続け、人々はうんざりして投票に行かなくなります。

米国の二大政党制は深刻なひずみを見せています。多くの有権者の関心をそぎ、重要な問題に対する行動を妨げる有害な政治文化につながっています。システムを開放し、合意形成を促す改革が必要かもしれないです。

以上から、米国の二大政党制が必ずしも良いことばかりではなさそうです。

日本の議員内閣制

しかし、米国の政治から学べることもあります。それは、米国の政党は近代政党だということです。

米国は近代政党によって政治運営されており、日本も見習うべき点は多々あります。近代政党には、三つの要素があります。

それは綱領、組織、議員です。

明確な理念をまとめた綱領があり、綱領に基づいて全国組織が形成されます。全国の政党支部が議員を当選させます。

その議員たちは政策の内容で競い合い、自由で民主的な議論で党首を決めます。選ばれた党首は直属のシンクタンクとスタッフを有し、全国組織に指令を下します。

自民党にもシンクタンクもどきはありますが、とても米国の政策作成シンクタンクには及びません。その他、シンクタンクを名乗る組織もありますが、米国のものと比較するとかなり貧弱です。

米著名シンクタンク「ヘリテージ財団」創設者 ポール・ウェイリッチ

残念ながら、日本の自民党も野党も近代政党とはいえません。先進民主主義国の政党の主要な特徴の多くが欠けています。 まず 明確な政策綱領がありません。自民党にも雇うにもイデオロギー的に非常に曖昧です。

日本の政党には、党員を一致させるための一貫した政策の優先順位やビジョンがありません。政策アジェンダ(課題項目)を積極的に追求するのではなく、場当たり的な対応で政治を行う傾向があります。

内部民主主義が弱いです。自民党は強力な派閥や利益団体に支配されています。党首や候補者は、真の議論や競争よりも、裏取引や年功序列によって選ばれる傾向があります。一般党員の発言力は弱いです。

 利権に依存しています。特に自民党はそうです。自民党は、大企業グループ、公益法人、ロビー団体、その他の特別利益団体からの献金、推薦、支援に大きく依存しています。そのため、自民党は市民よりもむしろ、こうした利害関係者に主に奉仕する傾向があります。

 頻繁にリーダーが入れ替わります。自民党は政策や理念の一貫性ではなく、派閥の利害に基づくため、派閥が主導権を争う中で、そのリーダーシップは常に流動的です。首相の交代が激しく、長期的な政策の進展が妨げられます。

専門知識と説明責任の欠如。自民党には、証拠に基づく解決策を開発する強力で独立した政策組織がありません。また、明確な綱領や指導者の権限もないため、厳しい問題に対する立場を取ることを避け、有権者から結果に対する説明責任を効果的に問われることもありません。

非競争的選挙。日本の選挙制度は、特別な利害関係者や農村部の有権者と密接な関係を持つ自民党に大きく有利といわれてきました。真の政策論争や権力競争がありません。野党は弱く、意味のある形で自民党に挑戦することができません。

自民党は近代的で政策主導型の民主主義政党の特徴がほとんどありません。日本の政治システムをより競争的で民主的なものにし、日本の問題に対する首尾一貫した政策的解決策を生み出すことができるものにするためには、改革が必要です。

日本は、米国のような近代政党の主要な特質をいくつか取り入れることで、大きな恩恵を受けるでしょう。主な利点は以下の通りです。

 明確な綱領とビジョン。政党は、政策の優先順位と哲学的原則の首尾一貫したセットを持つことができる。有権者は各政党の主張を正確に知ることができ、十分な情報に基づいた選択が可能になる。

 強力な国内組織。政党は、国レベルでも地方レベルでも強固な組織機構を持つことになります。これにより、政党は効果的にメッセージを広め、候補者を募り、有権者を動員し、政権を握った際には効果的に統治することができます。

 競争的な指導者選挙。党の指導者が討論を通じて、また党員の支持を得ることによって、その役割を競わなければならないのであれば、候補者のより良い審査と選出につながります。また、リーダーの正統性と権威も高まる。

政策の専門知識。独自のシンクタンク、政策スタッフ、アドバイザーを持つ政党は、問題に対処するための詳細な政策提案を作成することができます。ただ相手の意見に反応し批判するだけでなく、証拠に基づいたアイデアで議論を形成することができます。

責任の所在を明確にする。ある政党が過半数を獲得し、その党首が首相となった場合、その政党は自分たちの綱領を実行する権力と権限を持つことになります。有権者は、その結果に基づいて、誰を評価すべきか、誰を非難すべきかを知ることができます。

説明責任はより良い統治につながる。党内民主主義。党員、特に選挙で選ばれた議員は、綱領、指導者、候補者選定などの重要な決定について発言権を持ちます。このボトムアップのプロセスが党に生命を与え、党の指導者や政策が党員や有権者の望むものを実際に反映していることを保証します。

全体として、このような特徴を持つ近代的な政党を作ることは、日本に大きな利益をもたらすことでしょう。それは、真の政策論争を伴う民主的プロセスの再活性化につながり、首相が頻繁に入れ替わることを防止し、有権者に発言権と選択肢を与え、政府が国民の支持を得て首尾一貫した方法で問題に取り組むことを可能にします。米国のモデルは、日本も学ぶ価値があると思います。

維新 馬場代表は日本も二大政党を目指すべきとしていますが、政治体制を単純に真似るだけでは何も変わりません。日本ではまずは与野党に関わらず、政党の近代化を推進すべきです。

無論、日本の政党が近代政党化したからといって、現在の米国や英国の政治が理想からは程遠く、すぐに日本の政治が薔薇色になるということはありませんが、それにしても、日本の政党が近代政党ではないがために、同じ政党の中に、保守層から、リベラル層、さらには左翼までが混在していており、その正体は近代政党ではなく、選挙互助会に過ぎないよう状態になっていることは、改善・改革をすべきです。

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2023年7月23日日曜日

バイデン氏、CIA長官を閣僚に格上げ 中ロ対応を評価―【私の論評】バイデンの新人事により、日本は、米国の国家安全保障戦略や意思決定について、より不確実性を抱えることもあり得る(゚д゚)!

バイデン氏、CIA長官を閣僚に格上げ 中ロ対応を評価

バーンズ中央情報局(CIA)長官



 バイデン米大統領は、23日までに、バーンズ中央情報局(CIA)長官を閣僚に格上げする措置を発表した。ロシアによるウクライナ侵略を受ける中で、米国の国家安全保障対策で果たしている重要な役割を評価した昇格となっている。

 バイデン氏は声明で、「彼の指導力で、CIAは中国との間の賢明な競争の管理など米国が直面する安全保障上の最大の挑戦に対する明確かつ長期的な対応を打ち出すことが出来ている」とその手腕をたたえた。

 CIAは昨年2月に始まったウクライナ侵略に絡む関連情報の真偽の選別で主導的な役割を果たし、米国の対ロシア戦略の構築に大きな存在感を示したとされる。

 長官自身、ウクライナの戦争への米国の対応を見極めるため、他の諸国と共にウクライナやロシアへ足を運んでもいた。

 CIA長官を閣僚職として位置づける動きは過去数年間、あったりなかったりした。トランプ前政権に仕えたポンペオ元長官やハスペル前長官は閣僚として処されたが、バイデン氏は就任時に同じ対応をしていなかった。

 バーンズ長官はバイデン氏の今回の対応を受け、「CIAが毎日果たしている米国の安全保障に対する重要な貢献を認め、我々の業務への大統領の信頼感を反映したものだ」と感謝。「我々が擁する要員による多大な貢献を代表する長官職にあることを名誉に思う。ヘインズ国家情報長官の指揮で優秀な情報機関網と共に奉仕出来ることは光栄である」と続けた。

【私の論評】バイデンの新人事により、日本は、米国の国家安全保障戦略や意思決定について、より不確実性を抱えることもあり得る(゚д゚)!

日米の政治体制はかなり異なるので、もしこの人事を日本に当てはめようとした場合、日本でCIA長官に最も近いのは国家安全保障局(NSS)でしょう。NSSは日本の国家安全保障政策を調整する内閣レベルの機関です。NSSのトップは内閣の一員である国家安全保障アドバイザ(NSA)である。

現在、国家安全保障局の局長は、秋葉 剛男氏です。

NSAは厳密には官僚ではないですが、国家安全保障に関する情報を提供し、首相に助言を与えるという点で、CIA長官と同じような役割を担っています。したがって、日本でCIA長官が閣僚になるとすれば、NSAが閣僚になるのと最も似ているといえるでしょう。

このたとえは正しくはないのですが安倍政権時代に「官邸のアイヒマン」と呼ばれた大物警察官僚の北村滋前局長が閣僚になったとしたら、日本でもこれはかなり物議を醸すことになったかもしれません。

北村滋氏

ただし、これはあくまでも大まかな比較であることに注意する必要があります。CIA長官とNSAの具体的な役割は同一ではないし、日本には他にも閣僚級の機関があります。

保守派の私としては、バイデン大統領がCIA長官を閣僚級に昇格させる決定を下したことに、いくつかの懸念を抱いています

1. CIAは行政府の権限下にある機関にとどまるべきで、事実上の政策決定機関になるべきではないです。CIA長官に他の閣僚との席を与えることは、情報機関を政治化し、政策決定に対する影響力を増幅させる危険性があります。

2. 監視と説明責任が低下するリスクがある。官房長官となったCIA長官は、国家情報長官からの直接の監視を受けなくなり、より自律性と独立性を得ることになります。これはCIAの行動やプログラムに対する説明責任を低下させる可能性があります。

3. バイデン政権が、より介入主義的な外交政策をとる予定であることを示す可能性があります。CIA長官を昇格させるということは、バイデン政権の外交政策において、諜報活動や秘密作戦がより大きな役割を果たす可能性を示唆しています。バイデン政権は、対外介入を減らし、より抑制的な外交政策をすべきです。

4. オバマ政権下で国務副長官を務めたウィリアム・バーンズ氏には懸念があります。彼はオバマ政権下で国務副長官を務めたが、その経歴から、客観的な分析のみに焦点を当てるのではなく、諜報活動に対して過度に政治的なアプローチを取る可能性があります。

イラン核合意における彼の役割も、その欠陥の多さを考えると気になるところです。

バイデン大統領が自分の思うように政権を組織する権限は尊重しますが、CIA長官を閣僚に昇格させることは望ましくないと思われます。情報コミュニティは、政策立案者に政治的でない、事実に基づいた分析を提供すべきであり、自ら政策立案者になるべきではないです。

ウィリアム・バーンズ氏のオバマ政権での経歴や役割を考えると懸念があります。彼は国務副長官としてオバマの外交政策、特にイラン、ロシア、中国といった外交政策の形成に重要な役割を果たしました。保守派からみれば、彼のこれらの国々に対する政策は甘すぎと受け取られるものでした。

大統領時代のオバマ氏

保守層は、政治や政策立案ではなく、客観的な諜報活動だけに集中するCIA長官を望んでいると考えられます。CIAのバーンズのリーダーシップの下で、事態がどのように展開するか見守る必要がありそうです

上の記事にもあるように、トランプ政権において、ポンペオCIA前長官は国務長官となり、ポンペオ氏がCIA長官をやめたあと、CIA長官に昇格したハスペル氏も閣僚として、処されていました。

ポンペオ国務長官を評価できる点を以下にあげます。

 ポンペオ国務長官は、中国とその悪質な影響力に対して、強く、原則的な姿勢をとりました。また、中国に対抗するため、インドのような同盟国との関係強化にも努めました。

これらは中国の地政学的脅威に立ち向かうための重要な一歩でした。ポンペオ氏はイランに対して「最大限の圧力」キャンペーンを展開し、欠陥だらけのイラン核合意から離脱しました。この厳しいアプローチはイランに対抗するために必要でした。

ポンペオ国務長官の懸念点を以下にあげておきます。

ポンペオ氏は外交において過度に党派的で政治的なアプローチをとっていると批判されることもありました。国務省の伝統的な使命を犠牲にして、トランプ個人への過度の忠誠を示したと感じる人もいました。

また、ポンペオ長官のもとでは職員の離職率が高く、士気にも問題があったとされました。

トランプ政権ではハスペルCIA長官も閣僚として処せられました。ハスペル氏について 評価できる点をあげます。 

 CIA長官として、ハスペル氏はテロ対策プログラムを継続・拡大し、米国が再び大規模な攻撃を回避できるようにしました。彼女は数十年のキャリアを持つ情報将校です。

 ハスペル氏の懸念を以下にあげます。9.11後のCIAの「尋問強化」プログラムにおけるハスペルの役割は、依然として物議を醸し、懸念されています。彼女の倫理基準へのコミットメントには疑問がありました。

 ポンペオと同様、ハスペルも客観的に情報機関を率いるのではなく、トランプ大統領の個人的な優先順位に寄り添いすぎているとの批判がありました。

全体として、ポンペオとハスペルは保守派の原則に沿った強力な国家安全保障への方向性を追求しましたが、トランプとの緊密な連携とリーダーシップの問題は懸念されました。閣僚は、大統領に客観的な情報と助言と提供すべきであり、彼らの政治的な考えを優先させるべきではありません。

しかし、ポンペオとハスペルの在任期間は、国内の安全保障を維持しつつ、中国やイランと対峙するといった保守派の主要目標を前進させました。閣僚は、本来非政治的なアプローチをすることが理想的です。たたこのバランスを維持することは、実際にはしばしば非常に困難を伴います。

トランプ政権の国務大臣だった頃のポンペオ氏

バイデン政権でCIA長官を閣僚に昇格させることは、日本のような同盟国に何らかの影響を与える可能性があります。

 評価できる点としては 、 バイデン政権下でも、情報共有と協力が米国の最優先事項であることを示す可能性があります。CIAは日本を含む外国の情報機関と緊密な関係にあります。バイデンは伝統的な同盟関係を重視しており、安全保障上の協力について同盟国を安心させたいのかもしれないです。

 CIA長官により高いレベルの役割を与えることは、バイデンが諜報活動とテロ対策に強い焦点を当てることを示す可能性があります。これは北朝鮮のような脅威に直面している同盟国にとっては歓迎すべきことかもしれないです。

一方懸念される点をあげます。 CIAの地位向上が、安全保障問題に対するバイデン氏の、より主張的あるいは介入的な米国外交政策アプローチを反映する可能性もあります。

もしCIAが海外で積極的な諜報活動を行なえば、同盟国をより危険な状況に引きずり込むことになりかねないです。

 情報当局に政策決定権が集中すれば、透明性や監視の目が行き届かなくなる危険性があります。その結果、日本のような同盟国は、米国の国家安全保障戦略や意思決定について、より不確実性を抱えることになりかねないです。

バイデン氏が指名したウィリアム・バーンズ氏は、多くの同盟国が批判するイランとの取引のような政策を支持していました。もし彼がCIA長官として同盟国と対立する政策的立場をとれば、協力関係や信頼関係にひずみが生じるかもしれないです。

情報機関がより大きな権限と自治権を得ることに不快感があるかもしれないです。強固な安全保障上の結びつきを重視する一方で、同盟国はCIAが政策に口を出したり、他の地域を不安定化させたりすることを望まないでしょう。

CIA長官の地位の向上は、バイデン政権下での米国の安全保障政策のより積極的な姿勢を反映し、時として同盟国の考えと乖離する可能性もあります。結果として、米国の民主党政権の他同盟国とは異質な価値観を押し付けることになるかもしれません。

情報当局に権限を与えることは、意思決定における透明性や監視機能を低下させる危険性があります。同盟国は安全保障に関する米国との緊密な協力関係を重視しますが、同時に協議や政策の一致も重要視します。

バイデンは、日本のような同盟国を情報共有や戦略面で安心させる一方で、CIAが外交政策に一方的な影響力を持ちすぎないようにする必要があります。このバランスをとることが、同盟国に対するバイデンのアプローチの鍵となるでしょう。

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