“ロシア勝利”なら米負担「天文学的」 米戦争研究所が分析…ウクライナ全土の占領「不可能ではない」
まとめ
- ロシアがウクライナ全土を占領した場合、ロシア軍はNATO加盟国への脅威となる。
- アメリカはこれに備え、ヨーロッパに大規模な兵力を配置する必要があり、そのコストは膨大なものとなる。
- ウクライナへの軍事支援を継続し、戦線を維持させるだけでも、これらのコストに比べれば「はるかに安上がりだ」という。
- ウクライナが勝利すれば、アメリカはヨーロッパ大陸で最大かつ最も戦闘力の高い友軍を獲得し、NATO防衛を強化することができる。
米国の政策研究機関「戦争研究所(ISW)」は、西側諸国がウクライナへの軍事支援を打ち切りロシアが勝利した場合、アメリカは「天文学的」な軍事的・経済的負担を強いられると分析した。
具体的には、ロシアがウクライナ全土を占領した場合、ロシア軍は豊富な戦闘経験を積み、NATO加盟国への脅威となる。アメリカはこれに備え、ヨーロッパに大規模な兵力を配置する必要があり、そのコストは膨大なものとなる。また、ステルス戦闘機の多くをヨーロッパに配置すると、台湾有事への対応能力が低下する可能性もある。
一方、ウクライナへの軍事支援を継続し、戦線を維持させるだけでも、これらのコストに比べれば「はるかに安上がりだ」という。ウクライナが勝利すれば、アメリカはヨーロッパ大陸で最大かつ最も戦闘力の高い友軍を獲得し、NATO防衛を強化することができる。
戦争研究所は、アメリカなどで支援継続の先行きが不透明になるなか、ウクライナが敗北した場合の軍事的・経済的コストについても真剣な議論を促した。
この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。
【私の論評】ウクライナ戦争、西側諸国は支援を継続すべきか?ISWの報告書が示唆するもの
まとめ- 戦争研究所は、ウクライナが勝利するためには、西側諸国の支援が不可欠であると主張している。
- 米国議会では、ウクライナへの巨額の支援を継続すべきかどうか、議論が続いている。
- 欧州議会では、ウクライナへの支援を継続すべきだという意見が主流だが、具体的な金額や内容については、まだ合意に至っていない。
- 米国や欧州が現段階で、支援の有無をはっきりさせていないため、日本への支援への圧力が高まる可能性がある。
- バイデン政権は、ウクライナ支援を国際社会で共有していくことが重要だと繰り返し強調しており、日本にも支援の拡大を働きかけているとの見方もある。
|
ロシアが勝った場合のISWによる想定地図 |
The Institute for the Study of War(戦争研究所)は、伝統的な米国の価値観を推進する保守系シンクタンクです。彼らは、米国が築き上げられた原則を尊重する観点から、外交政策と国家安全保障問題について貴重な研究と分析を提供しています。米国の民主主義、自由、人権などの価値観を支持しています。
その彼らが、以上のようなレポートを出しているわけですから、ウクライナ戦争においてウクライナ側が負けるようなことがないように、西側諸国は支援を継続すべきなのでしょう。
米国議会においては、ウクライナへの巨額の支援を継続すべきかどうか、議論が続いています。欧州議会においては、ウクライナへの支援を継続すべきだという意見が主流ですが、具体的な金額や内容については、まだ合意に至っていません。
米国議会においては、2023年11月に、ウクライナへの118億ドルの支援を盛り込んだ歳出補正法案が提出されました。しかし、共和党議員の中には、この金額が過剰だと主張する声があり、法案は可決に至りませんでした。
2023年12月現在、米国議会では、ウクライナへの追加支援を盛り込んだ歳出補正法案の再提出が検討されています。しかし、共和党議員の反対をどう乗り越えるかが課題となっています。
欧州議会においては、2023年10月に、ウクライナへの500億ユーロ(約780億ドル)の支援を盛り込んだ財政支援パッケージが採択されました。しかし、このパッケージは、あくまでも4年間にわたる計画であり、毎年125億ユーロ(約180億ドル)の支援を継続するかどうかについては、まだ合意に至っていません。
欧州議会では、ウクライナへの支援を継続すべきだという意見が主流ですが、ロシアとの経済関係を維持したいという意見もあり、具体的な金額や内容については、まだ議論が続いています。
このように、米国議会においても、欧州議会においても、ウクライナへの巨額の支援を継続すべきかどうか、議論が続いています。今後の戦況や、米国と欧州の経済状況などによって、支援の継続や規模が決まっていくと考えられます。
米国や、欧州が現段階で、支援の有無をはっきりさせていない現状では、日本への支援への圧力が高まる可能性もあります。
バイデン政権は、日本の巨額のウクライナ支援を肩代わりさせるため、岸田首相にかわる、米国が御しやすい総理大臣を擁立させたいのではないかと、現在の岸田総理の支持率低下や、検察の不自然な動きなどに結びつけて語る識者もいますが、それに関しては現状では肯定も否定もできません。いずれ、何かの情報がでてくれば、このブログにも掲載することとします。
|
林官房長官は記者会見で、米国 が ウクライナ 支援を削減した場合、日本政府がこれを肩代わりするのかについて、質問に答えなかった。 |
実際、バイデン政権による日本にウクライナ支援を肩代わりさせるような具体的な発言、行動は、現時点では確認されていません。
しかし、バイデン政権は、ウクライナ支援を国際社会で共有していくことが重要だと繰り返し強調しています。また、日本は、アメリカの同盟国であり、民主主義や人権の価値観を共有する国であり、ウクライナ支援に積極的に貢献することが期待されています。
こうした背景から、バイデン政権が日本にウクライナ支援の拡大を働きかけているとの見方もあります。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- 2023年11月、バイデン大統領は、日米首脳会談において、岸田首相に対し、ウクライナへの支援を強化するよう要請しました。
- 2023年12月、アメリカ国務省は、日本を含むG7諸国に対し、ウクライナへの追加支援を呼びかけました。
日本政府は、2023年11月15日、ウクライナへの人道支援として、10億ドルの追加支援を決定しました。また、2023年12月20日には、ウクライナへの防衛支援として、1億ドルの追加支援を決定しました。
日本国内では、ウクライナ支援を巡って、自民党と野党の間で意見の相違が生じています。自民党は、ウクライナ支援を拡大すべきだと主張していますが、野党からは、財政負担や経済への影響を懸念する声が上がっています。
こうした状況を踏まえると、バイデン政権が日本にウクライナ支援の拡大を働きかけていることは、十分に考えられます。しかし、日本がそれに応じるかどうかは、国内の政治状況や、今後の戦況などによっても左右されると考えられます。
|
北朝鮮のICBM |
ただ、日本は中国や北朝鮮との間で独自の課題に直面しており、資源は限られています。より良いアプローチは、米国が模範を示して支援をリードすることです。米国自身がウクライナに強力な援助を提供し、同盟国にもできる限りの支援を行うよう促すべきです。
ISWの報告書は、同盟国にウクライナ支援を押し付けるのではなく、同盟国に情報を与え、支援を説得するものであるべきと思います。
【関連記事】
戦争ドミノに入った世界情勢 いかに秩序を守るか―【私の論評】自由世界の守護者としてのトランプ:米国第一主義が拓く新たな世界秩序再編(゚д゚)!
四島「不法占拠」を5年ぶりに明記 北方領土返還アピール―【私の論評】ウクライナ侵攻によるロシア弱体化で、北方領土返還の可能性が巡ってきた(゚д゚)!