2024年10月18日金曜日

空母にそっくりで大騒ぎに発展した、自衛隊所有の「ざんねんな乗り物」の名前…なにかと風当りも強かった―【私の論評】おおすみ型輸送艦の実力と日本の防衛戦略の未来

空母にそっくりで大騒ぎに発展した、自衛隊所有の「ざんねんな乗り物」の名前…なにかと風当りも強かった

まとめ
  • 「おおすみ」型輸送艦は空母に似た外観から誤解され、正当な評価を得られず「残念な乗り物」として扱われることがあるが、実際には固定翼機の運用はできない設計である。
  • その広い甲板とヘリコプター運用能力により、物資の輸送や揚陸作戦で優れた性能を発揮できるが、航空戦には不向きである。
  • 「おおすみ」型の本来の機能や活躍が過小評価されているため、正しい理解と評価を促すPRが必要である。

おおすみ型輸送艦と、エアクッション型揚陸艇(LCAC)(手前)

「おおすみ」型輸送艦は、その登場時に海上自衛隊が「ついに空母を保有したのか」と多くの人々に誤解され、大きな話題となった艦船だ。外見上の特徴として、艦首から艦尾までがフラットな全通式の甲板と、アイランド型と呼ばれる右端に配置された艦橋構造物が、第二次世界大戦中の空母に似ていたために、このような誤解を招く結果となった。しかし実際のところ、「おおすみ」型の甲板はヘリコプターの発着に対応しているだけで、戦闘機やその他の固定翼機を運用する設計にはなっていない。

このため、固定翼機を運用する空母とみなすことは無理があるが、「おおすみ」型の広い甲板は物資の輸送やヘリコプターの発着といった任務において優れた利便性を提供している。それにもかかわらず、そのシルエットや外観が原因で誤解され、正当な評価を受けることなく批判にさらされることが多く、その期待に十分に応えられなかった「残念な乗り物」として扱われている面がある。

拙著書籍『ざんねんなのりもの事典』では、このように優れた性能や可能性を持ちながらも、時代のニーズや世間の期待とズレてしまった乗り物を多く紹介している。「おおすみ」型もその一例として挙げられており、登場時には高い期待を寄せられたものの、その後の誤解や手のひら返しにより、正当な評価がなされていない。実際に軍艦の知識が少しでもある人であれば、「おおすみ」型で航空戦を展開することが無謀であることは明らかだろう。

「おおすみ」型は本来の性能と役割をもっとPRされて評価されるべきだとされ、無理解な批判を受け流し、真に評価されるための専守防衛の姿勢を持つべきだ。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】おおすみ型輸送艦の実力と日本の防衛戦略の未来

まとめ
  • 「おおすみ」型輸送艦は設計上、空母としての機能を果たせない。固定翼機の運用に必要な設備がないため、空母として扱うのは無理がある。
  • 一方で、ウェルドックやヘリコプターの発着能力を持ち、強襲揚陸艦としての機能は備えているため、その役割を果たすことが可能である。
  • 日本は「専守防衛」の原則に縛られているため、空母や強襲揚陸艦を建造することに対して国内の抵抗が強い。
  • 近年の安全保障環境の悪化により、「いせ」や「かが」の軽空母化が受け入れられ、防衛力の強化が必要とされる流れがある。
  • 日本は今こそ、防衛戦略を進化させ、より強力な防衛力を持ち、国の独立と安全を守るための決断をするべき時を迎えている。
巨大輸送船「おおすみ」の甲板

「おおすみ」型輸送艦を空母とみなすのは、どうしても無理がある。その理由は明白だ。設計そのものが根本的に違うからである。「おおすみ」型は、兵員や車両の輸送および揚陸作戦を主目的とした艦であり、空母のような固定翼機を運用するために作られたわけではない。空母とは、航空機の運用にすべてを捧げた存在だ。広大な飛行甲板、カタパルト、アレスティング・ギア、格納庫、整備施設、燃料供給設備に至るまで、すべてが航空戦力を最大限に発揮するために設計されている。「おおすみ」型には、そうした装備はどこにも見当たらない。

たしかに、F-35BのようなVTOL(垂直離発着機)を使えば、固定翼機の運用も理論的には可能だろう。しかし、それはあくまで「限定的な可能性」にすぎない。空母とは違い、「おおすみ」型には航空機の格納や整備、燃料補給などを行うための設備が充実しておらず、継続的な航空運用は困難を極める。また、空母には通常、航空機を守るための強力な防空システムと武装が求められるが、「おおすみ」型は軽武装であり、自衛力が限られている。空母としての役割を果たすには、圧倒的な防空能力が不可欠だが、それをこの艦に期待するのは無理な話だ。

しかし、一方で「おおすみ」型を強襲揚陸艦として見なすことには、一定の説得力がある。この艦にはウェルドックが装備され、エアクッション型揚陸艇(LCAC)の運用が可能である。ウェルドックとは、艦内部に設けられた乾ドックで、注水・排水が自在に行われ、上陸用舟艇の迅速な発進を支援する機能を持つ。これにより、兵員や装備を迅速に上陸させることができ、揚陸作戦の展開速度が飛躍的に向上する。

「おおすみ」のウェルドック

「おおすみ」型はさらに、ヘリコプターの発着能力を備えているため、ヘリボーン作戦にも対応可能である。これらの機能を考慮すれば、揚陸艦としての役割を担うには十分な資質を持っていると言える。確かに、強襲揚陸艦と比較した場合に限定的な武装や防空能力の面では劣るが、その揚陸および兵員輸送能力の点では、相応の役割を果たすことができるだろう。

問題は、日本の国防政策が長らく「専守防衛」の原則に縛られてきたことだ。だからこそ、空母や強襲揚陸艦を自ら建造することに対して、日本国内では強い抵抗がある。しかし、ここで注目すべきは、「いせ」や「かが」のように、ヘリコプター搭載護衛艦を軽空母に改装する動きが比較的スムーズに受け入れられたという事実だ。この背景には、急速に悪化する日本の安全保障環境が存在している。

中国の軍事的拡張や北朝鮮のミサイル開発が現実の脅威として迫る中、日本はもはや、旧来の防衛戦略だけでは対処できない状況に直面している。「いせ」や「かが」の軽空母化が受け入れられたのは、防衛力の強化が必要不可欠だという認識が広まったからにほかならない。これにより、日本は国際社会からも柔軟な防衛姿勢を求められ、防衛の「現実路線」を進むことに対する理解が得やすくなっている。


だからこそ、「おおすみ」を強襲揚陸艦へと改修するという選択肢が、将来的に排除されるべきではないという議論が生まれても不思議ではない。だが、そのためには日本国民自身が、専守防衛の枠を超えた新しい防衛戦略を受け入れる覚悟が必要だ。これは単なる軍事装備の問題ではなく、国家の未来と独立を守るための決断である。

同盟国、特に米国は、日本が強力な防衛力を持つことを期待している。今こそ、日本が「守り手」から「攻めの盾」へと進化する時なのだ。我が国は平和を守るために立ち上がり、自由と安全を確保するために、さらなる防衛力強化を進めるべき時を迎えているのだ。専守防衛に甘んじていては、日本の未来を切り開くことはできない。今こそ、日本が真に独立した国として、自らの手で運命を切り拓く時が来たといえる。

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アングル:中国のミサイル戦力抑止、イランによるイスラエル攻撃が教訓に―【私の論評】イスラエルへのミサイル攻撃の教訓:台湾防衛の現実と課題

アングル:中国のミサイル戦力抑止、イランによるイスラエル攻撃が教訓に

まとめ
  • イランのイスラエルに対する大量のミサイル攻撃は、米国とその同盟国のミサイル迎撃体制の課題を浮き彫りにし、現状の防衛システムの効力と限界を示唆している。
  • イランの攻撃を通じて、米国は中国のミサイル攻撃がイランのものより迎撃が困難であり、防御に加えて反撃能力の必要性があることが明らかになったといえる。
  • 従来の防御中心の抑止力だけでは不十分であり、懲罰的抑止力を重視する必要がある。
  • 中国のミサイルは高度で、長射程や精密誘導の能力を備えており、インド太平洋地域における米国とその同盟国の防衛体制にとって重大な脅威となっている。
  • 米国はインド太平洋地域で新たなミサイルシステムや兵器を配備しており、中国の対衛星攻撃やサイバー戦といった複合的な攻撃に対する防衛力を強化しようとしている。

ミサイルを迎撃するイスラエルの対空防衛システム「アイアン・ドーム」

イランが今月イスラエルに対して行った大量のミサイル攻撃は、4月の同様の攻撃と合わせて、インド太平洋地域における中国との潜在的紛争に関して、米国とその同盟国のミサイル防衛体制の効果と弱点を示唆している。複数のアナリストによれば、両シナリオには差異があるため得られる教訓は限られるものの、イランがイスラエルに向けて発射した400発近いさまざまなタイプのミサイルは、米中両国にとって重要な情報を提供している。

10月1日のイランによる攻撃は、近代的な防衛システムに対する弾道ミサイルによる攻撃として、これまでで最も多いサンプルを提供した。シンガポールのS・ラジャラトナム国際学院のコリン・コー氏は、米政府にとっての最大の教訓として、中国によるミサイル攻撃はイランに比べて迎撃が困難であり、大規模攻撃を阻止するには反撃能力が必要になる可能性を指摘している。コー氏は、純粋な防御による抑止力だけでなく、懲罰的抑止も重要になると述べている。

インド太平洋地域でのミサイル攻撃を伴う紛争の即時発生の懸念は低いが、中国の兵器はイランよりも高度で、機動式弾頭と精密誘導を採用している。米国は中国に対抗するため、インド太平洋地域で新たな兵器開発・配備を進めている。

米カーネギー国際平和財団のアンキット・パンダ氏は、イランの大量ミサイル一斉発射とその迎撃に関する情報が充実することで、紛争の可能性が低下する可能性を指摘している。パンダ氏は、ミサイル防衛システムの効果が不明確な場合、大幅なエスカレーションにつながる危険性を警告している。

イスラエルは多層的な防空・ミサイル防衛を展開しているが、インド太平洋地域における米国とその同盟国の状況は大きく異なる。米国側は「パトリオット」、THAAD、イージスシステムなどを使用している。中国のミサイル、特に東風26と東風21は、インド太平洋地域における米国及びその同盟国のほとんどの目標を攻撃可能で、高い精度を持つ。

戦略国際研究センターのミサイル防衛プロジェクトでは、中国が最も多く保有する通常型中距離弾道ミサイル「東風(DF)26」の命中精度を半径150メートルと推定している。また東風21は最大射程こそ劣るが、一部の改良型は50メートルの精度を誇る。米国防総省は、中国は東風26を数百発保有している可能性があると推測している。

対照的に「ファタハ1」などイランが使用するミサイルは、理論上は数十メートル以内と命中精度には優れるが、最大射程ははるかに短い。ケネス・マッケンジー米中央軍司令官は昨年、連邦議会において、イランはすべての種類を合わせると3000発以上の弾道ミサイルを保有していると証言した。

オーストラリア戦略政策研究所のマルコム・デービス上級アナリストは、中国の能力がイランを上回っていると指摘し、ミサイル攻撃が対衛星攻撃やサイバー戦争と連携して行われる可能性を示唆している。デービス氏は、インド太平洋地域における西側の防衛システムが中国の大規模ミサイル攻撃を撃退するのは、イランの攻撃に対する防衛よりもはるかに困難になると予測している。

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【私の論評】イスラエルへのミサイル攻撃の教訓:台湾防衛の現実と課題

まとめ
  • イランのイスラエルへのミサイル攻撃からみて、中国の大規模ミサイル攻撃に対する台湾の防衛は極めて困難であり、完全な防御は現実的ではない。
  • 台湾は多層防衛システムや国産ミサイル開発を進めているが、中国の圧倒的な軍事力に対抗するには不十分である。
  • 台湾の戦略は完璧な防御ではなく、攻撃を遅らせ国際社会の介入を呼び込む時間を稼ぐこと、および中国への攻撃コストを高めることに焦点を当てている。
  • 日米の強固な連携と明確な軍事介入の意思表示、経済制裁の準備が台湾防衛には不可欠である。
  • 現在の日本の政治家は安全保障問題に真剣に取り組んでおらず、北朝鮮、中国、ロシアに囲まれた現実を直視し、国家戦略を議論する必要がある。
専門家たちの意見をまとめると、現実は厳しい。「中国による大規模なミサイル攻撃は、イランの攻撃を防ぐよりも遥かに難しい。ミサイル防衛システムの効果が不確かならば、迅速なエスカレーションを招く恐れがある。こうした状況下では、ただの防衛だけでなく、懲罰的抑止の概念も必要になってくる」というのが、総じての見解だろう。

中国軍が訓練で発射した大陸間弾道ミサイル(ICBM)=9月25日

この難題を、台湾を例にして考えてみよう。台湾が中国の大規模ミサイル攻撃を受けた場合、その迎撃には並々ならぬ困難が伴う。台湾は現在、防衛システムの強化を急ピッチで進めている。だが、それが中国の圧倒的なミサイル攻撃に対抗するためにどれだけ有効なのか、疑問が残る。

とはいいながら、台湾は短距離から長距離まで多様なミサイルを組み合わせた多層防衛システムを導入しており、「天剣III」や「天弓III」などの国産ミサイルの開発が進展している。これにより、台湾の防衛力は確かに向上している。しかし、このシステムが中国の大規模ミサイル攻撃に完全に対抗できるかというと、それは難しい現実だ。中国は圧倒的な数のミサイルを有しており、台湾の防御を突破することは決して不可能ではない。

さらに、台湾は中国のミサイル発射をいち早く察知するために、山岳地帯に強力なレーダー基地を配置し、早期警戒システムを整えている。だが、いくら事前に察知したところで、数百発にも及ぶミサイルの飽和攻撃を防ぎきるのは極めて困難である。中国の軍事技術は日々進化し、台湾のシステムの脆弱性を突いてくるだろう。

結論として、台湾の防衛システムは年々改善されているものの、中国の圧倒的な軍事力に完全に対抗するのは難しい。しかし、これらのシステムは攻撃を遅らせ、国際社会の介入を呼び込む時間を稼ぐための重要な役割を果たす。台湾の防衛戦略は、完璧な防御ではなく、相手にコストを強いることで抑止力を高め、戦局の主導権を握ることに焦点を当てている。

次に、台湾の懲罰的抑止力に焦点を移そう。台湾は長距離ミサイル「雄風2E」や「雲峰」を開発し、中国本土の主要都市や軍事施設を攻撃する能力を持っている。これらのミサイルは台湾の懲罰的抑止力の柱となり、中国に対して強力な威嚇材料となっている。また、2026年までに「天弓III」を12の発射施設に配備する計画も進行中であり、これにより台湾の防衛能力は一層強化されるだろう。

こうした防衛強化に加えて、台湾は地理的にも戦略的なアドバンテージを持っている。中央山脈に設置されたレーダー基地は、中国本土の深部まで監視可能であり、敵の動きをいち早く察知できる。こうした情報戦の強化は、台湾が中国の攻撃に対して迅速に対応するための鍵となる要素である。さらに、このブログでは何度か述べきたが、台湾は天然の要塞といっても良い地形であり、これを侵攻するのはいずれの国の軍隊も困難を極める。

日本でいえば、台湾は能登半島のような急峻な地形であり、さらに能登半島よりも急峻であり、しかも台湾は半島ではなく、島嶼である。能登半島に物資を人力で運ぶ姿をテレビ報道で見た人も大勢いるだろう。中国の軍隊も台湾では、あのような戦いを強いられるのである。

米国も、大東亜戦争末期に日本領であり、軍事的にも重要であったはずの台湾に侵攻していない。これは、かなりの犠牲が強いられることが、最初から分かりきっているので意図的避けたのであろう。賢い選択だったといえる。このようなことが、台湾の軍事的な立ち位置を高めているともいえる。このあたりが日本では、ほとんど理解されいないようなので、そのような方で興味のあるかたは、是非ともこのブログの他の記事を読んでほしい。下の【関連記事】のところに、URLを貼り付けてあるので、是非御覧ください。

急峻な台湾の地形 最高峰の玉山(新高山)は富士山より高い

しかしながら、中国との軍事力の差は依然として大きい。中国の急速な技術革新と圧倒的な戦力の前に、台湾への侵攻自体は難しいものの、台湾の国土が破壊を免れるのは難しい。台湾の戦略は、中国の台湾への攻撃を高コスト化し、国際社会の支持と介入を引き出すことにあるのだ。中国にとって台湾の国土破壊がどれほどのリスクを伴うかを認識させることこそ、真の抑止につながる。

そしてここで、ウクライナ戦争が我々に突きつけた現実を無視するわけにはいかない。ロシアは未だ戦争目的(それすら曖昧になりつつある)を果たせないまま、日々ウクライナにミサイルを撃ち続け、その国土を破壊し続けている。もし台湾が同じような状況に陥ったらどうなるのか。中国が台湾にミサイルを発射し続ける光景は、決して非現実的なシナリオではない。実際のところ、台湾がウクライナのような状態に追い込まれる可能性も十分にあり得る。さらに、現在のウクライナのように戦争が泥沼にはまり、長期になる可能性もある。

ロシア軍のミサイルで破壊されたキーウの郊外

このような事態を避けるためには、日米の強固な連携が不可欠だ。中国に対して、台湾の国土破壊のコストが高すぎることを明確に伝える必要がある。日本と米国は軍事介入の意思を明確にし、台湾周辺の防衛体制を強化しなければならない。特に、日本の南西諸島への自衛隊の配備や、米軍の前方展開の強化が求められる。また、台湾の防衛力を高めるために最新の防衛技術や装備の提供も急務だ。非対称戦力の強化を支援し、台湾の防御を強固なものにする必要がある。

経済制裁の準備も抜かりなく進めるべきである。中国が台湾を攻撃した場合、即座に発動できる制裁措置を整え、中国にその代償の大きさを思い知らせるべきだ。また、サイバー攻撃や偽情報キャンペーンにも対応できる体制を構築し、情報戦においても中国に優位を渡さないようにするべきだ。

これらの措置は短期的には地域の緊張を高めるかもしれないが、長期的には台湾海峡の安定とアジア太平洋地域の平和を守るための最善の策である。台湾の中国に対する懲罰的抑止力と、防衛力の強化、そして明確な日米の姿勢が、中国に対して侵攻のコストを高くする最も有効な手段となるだろう。

現状、日本国内の政治家たちは衆院選を控えても、こうした重大な安全保障問題に真剣に取り組んでいるとは言いがたい。まるで、イランによるイスラエル攻撃などなかったかのようである。北朝鮮、中国、ロシアという三つの全体主義国家に囲まれている現実を直視し、安全保障のあり方を真剣に議論する必要がある。今こそ、政治家たちは「裏金」や「統一教会」問題に目を奪われず、日本の未来を見据えた国家戦略を語るべきだ。日本も台湾も、そして地域全体も、平和を守るためには現実と向き合い、備えを怠らないことが求められるのだ。

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ハリス氏の“意味不明発言”をCBSが“差し替え” インタビューに応じるも逆効果に?「まさにフェイクニュース!」トランプ氏猛反発―【私の論評】カマラ・ハリスの言葉の迷宮:ワードサラダとその政治的影響

ハリス氏の“意味不明発言”をCBSが“差し替え” インタビューに応じるも逆効果に?「まさにフェイクニュース!」トランプ氏猛反発

まとめ
  • カマラ・ハリス副大統領がCBSテレビのインタビューで意味不明な発言をし、その部分が「60ミニッツ」で異なる内容に差し替えられたことで、トランプ陣営から批判を受けている。
  • ハリス氏は対イスラエル政策に関する質問に答える中で、論理的な繋がりのない抽象的な表現を用い、視聴者から「言葉のサラダ」として非難された。
  • トランプ前大統領はこの差し替えを「フェイクニュース」と呼び、CBSに謝罪を要求した。彼は、編集が選挙資金違反の可能性があると指摘した。
  • ハリス陣営は、好意的なマスコミへの出演を増やす「電撃メディア作戦」を展開しているが、逆に「言葉のサラダ」を露呈してしまった。
  • CBSの編集による影響で、ハリス陣営の信頼性やCBSの報道姿勢が問われる事態となっている。


カマラ・ハリス米副大統領がCBSテレビのインタビューで発言した内容が、意味不明だと指摘された後、CBSはその部分をより分かりやすい発言に差し替えて放送し、これが選挙干渉だとしてトランプ陣営などから強い批判を受けている。

インタビューは、CBSの報道番組「フェイス・ザ・ネーション」で初めて放映されました。その際、ハリス副大統領が米国の対イスラエル政策に関する質問に答えた部分が「意味不明」だとされ、多くの視聴者からSNS上で「ことばのサラダ」だと非難された。「ことばのサラダ」とは、文法的には正しいものの意味が支離滅裂で理解しづらい発言を指す。ハリス副大統領は以前から「ことばのサラダ」の使い手として知られており、今回もその特徴が際立っていたことが問題視された。

その後、このインタビューが別の番組「60ミニッツ」で再放送された際には、問題となった発言部分が大幅に編集されて、より整然とした内容に差し替えられていた。この編集が行われたことで、映像の内容が最初に放送されたものと大きく異なることに視聴者や批評家からの指摘が相次いだ。

トランプ前大統領も、この件に対して激しく反発し、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で「フェイクニュースだ」と強く非難した。彼は、「60ミニッツ」の制作者たちがハリス副大統領の発言を切り貼りして編集し、意味不明な発言を意図的に整えて報道したと主張し、これが選挙干渉にあたる可能性があると批判している。トランプ氏は、CBSがこの編集について説明し、国民に対して謝罪すべきだとも訴えている。

今回の編集に関して、CBS側からはその理由や意図についての公式な説明は出ておらず、透明性の欠如が批判をさらに強めている。ハリス副大統領は、選挙終盤に向けてメディア露出を強化している時期にあり、このインタビューもその一環だったとみられている。しかし、編集によって彼女の「ことばのサラダ」を排除したことが明らかになり、逆に批判を浴びる結果となってしまった

ハリス氏の発言が編集されることで、メディアが彼女を意図的に支援しているとの見方が広がり、特に保守系メディアやトランプ支持者からの強い非難を引き起こしている。これに対し、CBSのジャーナリズムに対する信頼性も問われる事態となっており、「フェイクニュース」としての批判がますます強まっている。

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【私の論評】カマラ・ハリスの言葉の迷宮:ワードサラダとその政治的影響

まとめ
  • ことばのサラダの定義: 文法的には正しいが意味が支離滅裂な発言を指し、カマラ・ハリス副大統領がその使い手として知られている。
  • 例示された文章: 一見すると政治的テーマに触れているが、論理的繋がりがなく、抽象的で具体性が欠ける内容。
  • 検索エンジンとの関係: ワードサラダはSEO対策として利用されたが、現在はスパムとして認識され、逆に評価を下げるリスクがある。
  • ハリスのレトリック: 彼女の発言は華やかだが中身がスカスカであり、リベラル派の主張を寄せ集めたようなものである。
  • リーダーの役割: リーダーは明快で率直な言葉で人々に訴えるべきであり、カマラ・ハリスのスタイルにはそれが欠けている。
word salad

皆さんは上の記事にもでてくる「ことばのサラダ」という言葉を知っているだろうか。 文法的には正しいが、意味がまったく分からない支離滅裂な発言を指す。カマラ・ハリス副大統領がこの「ことばのサラダ」の使い手として知られているのは、もはや驚きではない。今回も彼女の発言が「ことばのサラダ」として際立っていたことが批判の的となっている。

そもそも「ことばのサラダ」はWeb界隈で使われる用語で、英語では"word salad"という。例えば、「自由の権利が憲法に基づき実行される限り、国家の透明性は無限であり、社会主義的な理想が右傾化する現象は民主主義の相互依存性に依存している。すべての市民が集団的な平等性を維持するためには、インフレと人権の尊重が不可欠であり、グローバル経済における民族主義はエコロジカルな観点からも再分配的な義務を促進するべきである。」(無論これは、「ことばのサラダ」の事例として出したものであり、私の主張ではない)

この文章は、一見すると政治的なテーマに触れているようでありながら、実際には無関係な概念を混在させ、論理的な繋がりがない点が特徴だ。抽象的で曖昧な表現を多用し、それぞれの言葉の意味が具体的でないため、全体としての主張が見えない。

こうしたワードサラダは、検索エンジン最適化やコンテンツ量の増加を狙ったものだが、内容の乏しさから実際には何の情報価値も持たない。そのため、現在の検索エンジンではスパムと判断され、評価が下がることが多い。言葉の内容そのものは置いておいて、なにやら石破総理大臣や小池東京都知事の発言にも似たところがあるのではないかと感じてしまう。

ワードサラダが登場した背景には、検索エンジンを騙すという意図がある。昔の検索エンジンは、リンクの数でサイトの評価を決めていた。これを利用して、サイト運営者たちは自分のサイトにリンクを貼るためだけの専用サイトを量産(下の図)した。そこに必要だったのが「テキストの塊」で、内容の充実度などは二の次であった。ここで活躍したのがワードサラダだ。意味のない文章を大量に生成し、あたかも内容があるかのように見せかけたのだ。


しかし、検索エンジンも馬鹿ではなかった。アルゴリズムを進化させ、ワードサラダのような無意味な文章をスパムとして弾き出すようになった。現在、ワードサラダを使ってもSEO効果はゼロ。むしろサイトの評価を大きく下げるリスクがある。検索エンジンにスパムと認定されたサイトは、インデックスされず、検索結果からも完全に姿を消す羽目になるのだ。

カマラ・ハリスの発言も、このワードサラダと似たところがある。彼女のレトリックは華やかで耳障りのいい言葉を並べるが、中身はスカスカである。進歩的なフレーズを次々と口にするが、どれも本質的な政策には触れていない。まるでリベラル派の主張を一つの鍋でぐちゃぐちゃにかき混ぜたような、無味無臭のスープといったところだ。

小池東京都知事の外来語多用もワードサラダの一環か?

ハリス副大統領が選挙対策本部から言葉遣いや想定問答集の指導を受けているのは確かだ。しかし、それを自分の言葉として使いこなせず、ただの言葉の羅列になっているのが実情だ。トランプ元大統領が「60ミニッツ」でハリスの発言が意図的に編集されていると主張したのも、こうした背景が透けて見えるからだ。

リーダーはもっと腹を割って本音を語るべきである。政治的な言い回しや専門用語で煙に巻くのではなく、真っ直ぐで明快な言葉で人々に訴える必要がある。衆院選を間近に控えた日本でも、必要とされているのは、政治的な二枚舌ではなく、正直で率直な対話である。残念ながら、それがカマラ・ハリスのスタイルには見当たらないのである。

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2024年10月15日火曜日

最高裁の裁判官を国民がチェック 国民審査が告示、6人が対象―【私の論評】日本の未来を左右しかねない国民審査の重大な意義

最高裁の裁判官を国民がチェック 国民審査が告示、6人が対象

まとめ
  • 国民審査の告示: 10月15日に、総務省が最高裁判所裁判官6人に対する国民審査を告示。投票日は10月27日で、新たに在外投票が導入された。
  •  審査の方法: 解職を求める場合は対象の裁判官の欄に×印を入れ、過半数の×印で解職。信任の場合は何も記入しない。 -
  •  審査対象者: 対象の裁判官6人は、裁判官や弁護士、外交官出身で、審査公報や最高裁ホームページで情報提供される。

最高裁判所

10月15日に総務省の中央選挙管理会から、最高裁判所の裁判官15人のうち、2022年6月から2024年9月に就任した6人の裁判官に対する国民審査が告示された。国民審査は10月27日に行われ、これには18歳以上の全市民が参加可能で、期日前投票も可能。今回からは在外投票も導入され、在外投票用紙には裁判官の名前の代わりに数字が記載されている。

審査では、解職を望む裁判官の名前または番号の上の欄に×印を入れる。×印が有効投票の過半数を超えるとその裁判官は解職される。信任する場合は何も記入せず、○印などは無効。

審査の参考として、各世帯に「審査公報」が配布され、最高裁のホームページでも情報を得ることができます。審査対象の裁判官は以下の通りです:
  1. 尾島明氏(裁判官出身)
  2. 宮川美津子氏(弁護士出身)
  3. 今崎幸彦氏(裁判官出身)
  4. 平木正洋氏(裁判官出身)
  5. 石兼公博氏(外交官出身)
  6. 中村慎氏(裁判官出身)
この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】日本の未来を左右しかねない国民審査の重大な意義

まとめ
  • 国民審査の制度:最高裁判所裁判官の国民審査は、本来✕を記入する制度だが、何も記入しないと自動的に信任される仕組みになっている。
  • 問題のある裁判官:中村慎、宮川美津子、尾島明など、保守派から問題視される裁判官が含まれており、彼らの過去の判決は保守的価値観に反する。
  • 司法の重要性:司法は民主主義の最後の砦であり、国民審査において意識的に意思表示をする必要がある。白紙提出では司法の力が形骸化する。
  • トランスジェンダー判決:最近、最高裁判所はトランスジェンダーに関する判決を下した。彼らの判断はトランスジェンダーの権利に大きな影響を与える。この判断を下した裁判官の中には今回の国民審査の対象の裁判官全員がふくまれる。
  • 憲法と生殖不能要件:生殖不能要件を排除することは時期尚早であり、憲法第24条が結婚を両性の合意に基づくものと定義している以上、トランスジェンダーの権利に関する判決を出す前に憲法改正が必要だ。その観点からすると、私は国民審査対象の裁判官全員に✕をつける
来る衆議院選挙と同時に行われる最高裁判所裁判官国民審査は、本来✕を記入する制度である。しかし、何も記入しなければ自動的に信任されたことになる仕組みだ。つまり、驚くべき判決を下した裁判官も、理解に苦しむ判決を下した裁判官も、何も記入しなければ信任されてしまう。それで本当にいいのか。


国民審査の対象となっている裁判官には、保守派からすれば問題があるとされる者がいる。たとえば、中村慎という裁判官だ。彼は、死刑判決に対して被告の人権や再犯の可能性を過度に考慮し、実質的な減刑を行ったケースがあった。保守派からすれば、重大な犯罪には厳罰が求められるべきであり、こうした判決は犯罪抑止力を弱め、被害者やその遺族への配慮が欠如しているとの批判を受けている。

また、宮川美津子は夫婦別姓に関する訴訟で、従来の家族制度に変革を促す立場に近い判断を示し、家族制度の崩壊を危惧する保守派からは「左寄り」と非難された。さらに、尾島明という裁判官は、外国人労働者の権利保護を重視する判決を下し、国の安全保障や社会の安定を揺るがすとして、保守派から強い反発を受けたこともある。

司法は、民主主義の最後の砦である。立法や行政が暴走したとき、唯一それを止めることができるのが司法の力だ。しかし、国民審査で何も考えずに白紙のまま提出すれば、その力は形骸化してしまう。最高裁の判決が私たちの生活にどれほどの影響を与えるかを忘れてはいけない。こうした過去の判決が示すように、保守的な価値観を持つ者から見て、不可解な判決を下した裁判官が信任され続けることになるのだ。


だからこそ、国民審査ではしっかりと意思表示をすべきである。「なんとなく」で済ませるのではなく、私たちの社会の未来を左右する重要な選択肢として真剣に向き合うべき時なのだ。

最近、日本の最高裁判所は、性別変更を希望するトランスジェンダーの人々に対して、強制的な不妊手術の要件(生殖不能要件)を違憲とする判決を全会一致で下した。この判決は、リプロダクティブ・キャパシティを排除する法律の規定を無効とし、個人が性別を変更する際に外科手術を受けることを強制されるのは不適切であると認定した。

ただし、別の要件については結論が保留されたため、判決を受けた本人が正式に性別を変更できるかどうかは依然として不明である。この判決には、国民審査の対象となっている裁判官が参加している。具体的には、尾島明、宮川美津子、今崎幸彦、平木正洋、石兼公博、中村慎のいずれもが判事として名を連ねている。したがって、彼らの判断がトランスジェンダーの権利に大きな影響を与えたことは否定できない。

最近では、SNSなどに国民審査対象の裁判官に関する情報をまとめた一覧表が流布している。以下に掲載するのはその典型的なものである。

下の一覧表は、現在の最高裁判所の裁判官の一覧である。この中で、背景が黒の裁判官は、今回の国民審査の対象ではない裁判官であり、カーキ色が今回の国民審査の対象の裁判官である。それぞれ、トランスジェンダーに関連する生殖不能要件、外見要件、女子トイレ制限についてどのような立場をとっているか、明記されている。(クリックすると拡大)

クリックすると拡大します

私は、生殖不能要件を排除することは、現状では時期尚早であると考えている。そもそも結婚に関する条文は、日本国憲法の第24条に明記されており、この条文では、「結婚は両性の合意に基づくものであり、夫婦の平等を基本として相互の協力により維持される」と定義されている。

具体的には、第24条第1項が、結婚が両者の同意によるものであること、そして第2項では、配偶者の選択、財産権、相続、住居の選択、離婚など、結婚と家族に関する事項が個人の尊厳や両性の平等に基づいて法律で規定されるべきであると述べている。この条文は、どう読んでも男と女という両性の合意に基づくものとしか受け取れない。憲法のたてつけが男女を基本にしている以上、私は、トランスジェンダーの権利についての裁判をするのであれば、まずはその前に憲法を改正すべきと考える。

にもかかわらず、最高裁判所の裁判官がトランスジェンダーの権利に大きな影響を与えるような判決をすべきではないと思う。私自身は、以上のことから国民審査において全裁判官に✕をつけるつもりである。このブログを読んでいる読者の方々も、このような一覧表を参考に、判断されるとよいだろう。

以下にもっと詳しい表もあります。是非参考にしてください。


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2024年10月14日月曜日

トランプ氏集会近くで男を逮捕 車内に散弾銃所持か―【私の論評】日本では安倍元総理暗殺事件の解明こそが政治的暴力を防ぐ鍵

トランプ氏集会近くで男を逮捕 車内に散弾銃所持か


 米西部カリフォルニア州リバーサイド郡の保安官事務所は13日、トランプ前大統領が郡内で12日に開いた集会の会場付近で、車内に散弾銃や拳銃、大容量の弾倉を持った男(49)を逮捕したと発表した。男は訴追され、12日に釈放された。トランプ氏や参加者に危害はなかった。

 男の車は会場近くの検問で止められ、車内の拳銃には銃弾が装填されていた。

 トランプ氏は7月に東部ペンシルベニア州で演説中に銃撃され右耳を負傷。9月には男が南部フロリダ州のゴルフ場で待ち伏せて殺害しようとしたとされ、トランプ氏の暗殺未遂事件が続いた。

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事を御覧ください。

【私の論評】日本では安倍元総理暗殺事件の解明こそが政治的暴力を防ぐ鍵

まとめ
  • トランプ元大統領の集会で、会場近くにて武器を所持していた男が逮捕されたが、トランプ氏や参加者には危害は加えられなかった。
  • トランプ氏への暗殺未遂事件が相次いでいる中、安全対策が強化され、バイデン大統領の指示で軍事的保護も提供された。
  • アメリカでは政治的暴力や暗殺未遂事件が増加しており、特にトランプ氏に対する暴力を容認する意見が一定数存在することが問題視されている。
  • 日本でも安倍元総理の暗殺事件に関連して、一部の左派系人物の過激な発言や暗殺犯を称賛する動きが見られ、政治的対立が激化している。
  • 政治的暴力の根本的な解決には、警備の強化だけでなく、民主主義への信頼回復や透明性ある情報公開が不可欠。日本でも、まずは安倍元総理暗殺事件の十分な解明が行われなければ、政治的暴力の根本的な解決にはつながらないだろう。
集会で演説するトランプ氏

トランプ元大統領の集会がカリフォルニア州リバーサイド郡で開催された。その会場近くで、拳銃や散弾銃、大容量の弾倉を所持していた男が逮捕された。この男は訴追された後に釈放されたが、トランプ氏や集会の参加者に対して危害を加えることはなかった。男の車は集会場近くの検問で止められ、装填された銃弾を含む拳銃が発見された。

また、X(旧Twitter)上では、この集会に関する投稿が多く見られた。集会には過去最多の参加者が集まったと報告される一方、警備の厳重さが指摘されている。さらに、集会の雰囲気や参加者の反応、メディアの報道に対する懐疑的な視点も散見された。

今回の事件は、トランプ元大統領が最近経験した複数の暗殺未遂事件に続くものであり、7月にペンシルベニア州で受けた銃撃や9月のフロリダ州での事件と関連して注目を集めている。これらの出来事は、トランプ氏の政治活動に対する脅威と見なされ、その安全対策が再び問われている。

トランプ氏は、自身の安全確保のため、さらなる警護強化を求めていた。イランと関連のあるパキスタン国籍のアシフ・マーチャント容疑者(46歳)が、トランプ氏らの暗殺を企てたとして2023年7月に米当局に逮捕された。この容疑者は、ニューヨーク市で暗殺を計画し、覆面捜査官を殺し屋と勘違いして接触したとされる。

ワシントンDCの米司法省本部

この事件は、イランによるソレイマニ司令官殺害への報復の可能性があると考えられており、これを受けてトランプ氏の警護が一層強化された。バイデン大統領の指示により、軍用機や装甲車を含む軍事的保護も提供されるようになった。

近年、アメリカでは政治家や市民に対する襲撃や暗殺未遂が増加している。象徴的な例として、トランプ元大統領が三度の暗殺未遂に直面したことが挙げられる。シカゴ大学の調査によれば、トランプ氏への暴力を容認する意見が一定数存在し、その割合は有権者の約8.2%に達している。特に極右による過激派事件が頻発し、政治家だけでなく選挙管理委員会や一般市民も標的にされている。

政治的暴力の背景には、党派的イデオロギーやフェイクニュース、精神疾患、銃所有、善悪の単純化、対立を煽るリーダーの存在などが挙げられる。しかし、最も注目すべきは、政治や選挙に対する信頼の低下だ。この信頼の喪失こそが、政治的暴力を助長している可能性が高い。単に警備を強化するだけでなく、民主主義への信頼回復が必要だ。

日本もこうした状況に無縁ではない。例えば、安倍元総理の暗殺事件に関連して、一部の左派系の人物から過激な発言が相次いだ。作家や政治家たちが、暗殺事件を政治的批判の材料に使おうとする傾向が見られたことは、言論空間における問題点を浮き彫りにしている。

代表的なものをあげると、芥川賞選考委員であり、自身も作家で、法政大学国際文化学部教授の島田雅彦氏(62:当時)は、2023年4月14日に生配信した自身のインターネット番組「エアレボリューション」で、昨年7月の安倍晋三元首相暗殺事件を念頭に、「暗殺が成功して良かった」などと発言した。

望月衣塑子と島田雅彦

テロや殺人を容認したと受け取れるうえ、新たなテロを誘発しかねないだけに、ネット上だけでなく言論界からも「とんでもない発言」「リベラリズムからもかけ離れている」などと激しい批判が相次いでいる。発言翌日には、岸田文雄首相(当時)の選挙応援演説会場に爆発物が投げ込まれる事件も発生した。

さらに「山上ガールズ」と呼ばれる暗殺犯のファンクラブのような動きが出現し、一部では暗殺を「やったぜ」と喜ぶ声さえあったという。これらの発言や動きは、日本の政治的対立が激化する中で、言論の自由と表現の適切さのバランスが問われる状況を示している。

さらに、安倍元総理の暗殺事件については、捜査の透明性や背景の解明が不十分だとする声が強まっている。この事件が単なる個人の犯行ではなく、国家レベルの問題と関連している可能性も指摘されている。

事件の解決に向けては、いわゆる犯人とされる人物を罰するだけでなく、政治的な安全保障の見直しや情報管理の改革が求められている。国民の知る権利を尊重しつつ、透明性のある情報公開を行うことが不可欠だ。

アメリカでは、政治への信頼の喪失が政治的暴力を助長している現状がある。日本でも状況同様は異なるものの同様である。しかし、日本においては、まずは安倍元総理暗殺事件の十分な解明が行われなければ、政治的暴力防止の根本的な解決にはつながらないだろう。

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2024年10月13日日曜日

海自の護衛艦に「SFの兵器」搭載!? 防衛省が“レーザーシステム”研究へ 大群で襲ってくるドローンも無力化―【私の論評】安倍総理の貢献と安保新時代:日米協力と先進技術が描く未来

海自の護衛艦に「SFの兵器」搭載!? 防衛省が“レーザーシステム”研究へ 大群で襲ってくるドローンも無力化

まとめ
  • 防衛省は、小型無人機やドローン・スウォーム攻撃に対応するため、2024年度から「艦載用レーザーシステム」の研究試作を開始し、コスト効果の高いソフトキル能力を開発する予定です。
  • 2025年度から2029年度まで研究試作を行い、2027年度から2030年度に試験を実施して成果を検証し、既存の艦艇にも搭載可能な小型化・モジュール化を目指します。

防衛省は、小型無人機の脅威に対応するため、「艦載用レーザーシステム」の研究試作を2024年度から開始することを発表しました。無人機の発展や「ドローン・スウォーム攻撃」に対する費用対効果の課題を解決するため、レーザーによるソフトキル能力を持つ新兵器を開発します。

レーザーは連続発射が可能で、弾薬を必要とせず、対処コストが低いのが特徴です。2025年度から2029年度まで研究試作を行い、2027年度から2030年度にかけて試験を実施し、成果を検証する予定です。

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【私の論評】安倍総理の貢献と安保新時代:日米協力と先進技術が描く未来

まとめ
  • 新時代の防衛戦略: 陸上自衛隊が弾道ミサイルや極超音速兵器への対策を強化。10年以内の導入を見据え、無人機への対抗手段として高出力レーザー兵器の研究が進行中。
  • 日米防衛協力の深化: IBCSとADCCSの統合運用を通じて、日米防衛協力が一層強化。共同訓練と装備の相互運用性がキーとなる。
  • 艦載用レーザーシステムの開発: 小型無人機やドローン・スウォーム攻撃に対抗するため、艦載レーザーシステムの研究が進展。
  • 安保法制改正の影響: 集団的自衛権の限定的行使を可能にした改正が、日米の防衛協力と統合運用を支える。
  • 技術革新と戦略的対応: 三菱電機が無人機対策技術を開発し、防衛戦略の新たな局面を切り開く。

ドローンのスウォーム(集団)攻撃の想像図

陸上自衛隊は、弾道ミサイル防衛や極超音速兵器への対策を強化する計画を進めている。これらの新世代システムは、来るべき10年以内に実装される予定だ。しかし、現状では無人機のようなコストパフォーマンスに優れた兵器が大きな脅威と化しており、防空システムもこれに対応する必要が増している。

無人機への対抗策として、コスト効率の高い装備が求められる。そのため注目されているのが高出力レーザー兵器である。高出力レーザーは無人機に対して非常に有効だが、その効果を最大限に発揮するためには、少なくとも5秒以上の連続照射と、正確な追尾能力が不可欠だ。三菱電機は他企業と協力しながら、レーザー兵器の効果的な運用のためのセンサー技術や大気計測技術の開発を推進している。

さらに、現代の戦闘は各軍種が独立して活動する時代ではなく、陸海空を統合的に運用することが求められる。この「統合運用」を実現するためには、各種装備をネットワークで結びつけ、リアルタイムで情報を共有するシステムが必要となる。

そのため、米ノースロップ・グラマン社が開発した「統合防空ミサイル防衛戦闘指揮システム(IBCS)」と、三菱電機が開発した「対空戦闘指揮統制システム(ADCCS)」の統合が不可欠である。

陸自のADCCS(対空戦闘指揮統制システム)指揮車

三菱電機はノースロップ・グラマン社と協力し、日本の防空システムと米軍のIBCSの連携に取り組んでいる。特に、有事に米軍がIBCSを日本に持ち込む可能性を想定し、日米が共同で防空を行うために、これらのシステムが連携する必要がある。この協力は単なるシステムの結合ではなく、日米の防空戦略を一体化するための重要な取り組みだ。

この提携は日米同盟下での防衛産業の新たなステップであり、両国の防空体制を強化することを目指している。こうして日米が装備を連携させ、将来的な脅威に対し迅速かつ柔軟に対応できる防衛システムを構築しようとしている。

艦載用レーザーシステムの研究試作と、日米両国の防空システムの統合は、異なる取り組みではあるが、将来的な脅威への防衛能力の強化を目指す点で関連がある。

艦載用レーザーシステムの開発は、小型無人機やドローン・スウォーム攻撃に対する直接的な対策を目的としている。これは日本が自国の防空能力を強化し、費用対効果の高い新兵器を導入することに焦点を当てた取り組みだ。

一方で、日米両国の防空システムの統合に向けた取り組みは、広範なミサイル防衛や航空機に対する防空能力の向上を目指しており、ノースロップ・グラマン社のIBCSと三菱電機のADCCSの協力関係を含む。この統合の背景には、陸海空の各軍種が連携して戦闘を行う「統合運用」の必要性がある。

したがって、「艦載用レーザーシステム」の開発と日米防空システムの統合は、直接的に同じプロジェクトではないものの、どちらも将来的な脅威への対応を強化し、効果的な防衛を実現するという共通の目標を持っている。両者が最終的に統合されるかどうかは明確ではないが、全体的な防衛戦略において相互に影響を与える可能性は十分にある。

IBCSとADCCSの統合運用の根拠は、日米同盟に基づく防衛協力に強く支えられている。日米安全保障条約とそれに基づく防衛協力の指針が、両国間の防衛関係を基盤としており、これにより日米は防衛資産やシステムを緊密に連携させる体制を築いている。現代の防空戦略では、陸海空の各軍種が情報と装備をリアルタイムで共有する「統合運用」が求められており、IBCSとADCCSの統合はこの要請に応えるものである。

また、日米両軍は定期的に共同訓練を行い、これを通じて指揮統制システムの運用実績を積み重ねている。こうした実績が、システム間の信頼性と相互運用性を高める要素となっており、日本が防衛装備品の共同開発に関する規制を緩和したことで、ノースロップ・グラマンと三菱電機のような防衛産業の協力が進み、これが統合運用の実現を支える技術的な土台となっている。


この背景には、2015年に安倍総理によって行われた安全保障関連法制の改正が大きく影響している。安保法制の改正により、日本は集団的自衛権の限定的な行使を認め、日米間の防衛協力をより広範囲かつ実質的に行えるようになった。これにより、自衛隊が米軍と連携して行動できる範囲が広がり、統合防空システムの運用においても相互連携が強化された。安保法制の改正は、日米の防衛戦略がより一体的に進化するための重要な基盤となり、IBCSとADCCSの統合運用にも大きな寄与をしている。

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2024年10月12日土曜日

高市早苗氏 「ポスト石破」への党内基盤固めへ全国応援行脚 既に100人超の依頼―【私の論評】高市早苗と安倍晋三の「雨降って地固まる」状況:日本政治の新たな転換点に

高市早苗氏 「ポスト石破」への党内基盤固めへ全国応援行脚 既に100人超の依頼

まとめ
  • 高市早苗氏は衆院選で全国を応援するため飛び回り、旧安倍派を含む候補者の支援を行う予定。
  • 彼女の動きは党内での基盤固めと多数派形成を狙ったもので、依頼があれば非公認候補も応援する可能性がある。
高木けい衆議院議員【東京12区/北区・板橋区】『高市早苗先生との2連ポスター』

 高市早苗前経済安全保障担当相は、地元の奈良県庁で開いた記者会見で衆議院選挙において全国を応援するため奔走することを表明した。彼女は旧安倍派の議員や他の派閥の候補者も支援する予定で、特に自民党の裏金事件で重複立候補が認められなかった旧安倍派の議員の選挙区を回る可能性がある。この動きは、党内での影響力強化と多数派形成を目指すものと見られる。

 高市氏は、全国遊説に力を入れる考えを示し、自身の選挙区に割ける時間は1日弱、数時間程度と語った。また、総裁選で旧安倍派から支援を受けたことを背景に、依頼があれば応援に赴く意向を明言し、すでに100人以上の候補者から依頼を受けている。党内からは、非公認でも党員、非公認候補への応援も反党行為とはいえず、あり得るという意見も出ている。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】高市早苗と安倍晋三の「雨降って地固まる」状況:日本政治の新たな転換点に

まとめ
  • 「雨降って地固まる」の状況: 高市早苗氏と安倍晋三氏は、それぞれの困難な状況を乗り越え、政治的基盤を強化している。
  • 安倍晋三氏の復活: 第一次政権での失敗を経て、健康を回復した安倍氏は巧妙な戦略で再登場し、長期政権を築いた。
  • 安倍氏の政策の影響: 「アベノミクス」により日本経済をデフレから脱却させ、安保法制の改正やインド太平洋戦略の提唱、QUADの設立を通じて国際的な地位を強化した。
  • 高市早苗氏の挑戦: 高市氏は総裁選での敗北や閣内の制約を経験しつつも、保守派の支持を固めて次期選挙での逆襲を目指している。
  • 次期衆院選への期待: 高市氏の戦略と進撃が新たな政治の地図を描く可能性があり、彼女の行動が歴史的な転換点を導くことになるだろう。
以前、このブログで「雨降って地固まる」という言葉で現代政治の様相を分析した。その記事のリンクを以下に貼る。
詳細は記事に譲るが、その結論部分を以下にまとめてみよう。

高市早苗氏がもし総裁選で勝利し総理となっていた場合、彼女の政策実行は極めて困難なものとなっただろう。党内の反対勢力や財務省という強大な壁が立ちはだかっていたからだ。彼女が岸田内閣の経済安全保障担当大臣として、不本意ながらもLGBT理解増進法案に賛成せざるを得なかったことが、その圧力の強さを如実に示している。

しかし、時代は変わりつつある。次回の選挙では、従来の抵抗勢力が弱体化し、保守派の台頭が予想されている。日本保守党の影響力拡大や他の保守系野党の動きも期待され、まさに「雨降って地固まる」状況が到来しようとしている。

日本保守党 代表 百田尚樹氏(左)と事務総長 有本香氏

自民党の高市氏への敵対勢力である、リベラル・左派系の議員たちは、行き場を失い多数落選する可能性もでてきた。わたしたちは、今、この状況を目の当たりにしているのだ。すでに高市氏には100人以上の候補者から支援依頼が殺到している。これは単なる偶然ではない。彼女が培ってきた信念と戦略が、まさに保守派結集の磁石となりつつある証だ。

さて、「雨降って地固まる」という言葉がこれほどまでにピタリと当てはまる政治家といえば、やはり安倍晋三を置いて他にいない。彼の復活劇は伝説そのものだ。第一次政権では、彼は健康問題や政権運営の混乱により失脚を余儀なくされた。しかし、それがかえって彼の政治家としてのキャリアを強化するターニングポイントとなった。安倍はその後、持病であった潰瘍性大腸炎の治療法を見つけ、見事に体調を回復。そして、自民党内での地道な人脈再構築とともに、戦略的に再起の道を進んでいった。


ここで忘れてはならないのが、2012年の総裁選における安倍の驚異的な政治的駆け引きだ。民主党政権への国民の失望が頂点に達し、経済は停滞し、日本全体が不安に包まれていた時期。党内には新しいリーダーを求める声が強く、過去に挫折した安倍に対する懸念も少なからずあった。

だが、安倍は一歩も引かず、「アベノミクス」という大胆な経済政策を掲げて党内外の支持を獲得。さらに、盟友たちとの連携を再構築し、党内保守派を結束させた。そして、石破茂氏という強敵を相手に総裁選を勝ち抜いたのだ。この戦略的な動きこそが、彼を長期政権の座に押し上げた原動力となった。

安倍の再登場は単なる個人の復活劇ではない。彼が掲げた「アベノミクス」は、日本経済に新たな息吹を吹き込み、国内外の市場に影響を与えた。大胆な金融緩和、機動的な財政政策、成長戦略の三本柱は、日本をデフレから救い出す転換点となり、政治の安定ももたらした。さらに、安倍は安全保障政策においても重要な役割を果たし、集団的自衛権の行使を認めるため安保法制を改正した。

この決断は、日本の安全保障政策において大きな転換をもたらし、国際的な信頼を高めることにつながった。また、QUAD(米国、オーストラリア、インド、日本の戦略的対話)を設立し、インド太平洋戦略を提唱することで、地域の安定に寄与し、日本の国際的な立場を強化する基盤を築いた。これらの政策は、安倍政権が日本の安全保障においても新たな時代を切り開いた証拠となる。

進撃する高市早苗

このように、安倍晋三と高市早苗は、異なる困難を乗り越えながらも、共に「雨降って地固まる」という状況を生み出している。安倍が第一次政権での失敗を乗り越えて再登場し、長期政権を築き上げた姿は、日本政治に安定感をもたらし、経済政策の刷新にまで影響を及ぼした。そして今、高市早苗もまた、総裁選での敗北や閣内での制約を経験しつつ、保守派の支持を確固たるものとし、次の選挙での逆襲を狙っている。彼女がこの困難な状況から得た経験が、必ずや新たな政治の地図を描く力となるだろう。

今こそ、次の衆院選で彼女がどのような勝利を掴み取るのか、その瞬間に日本政治がどれほど大きく変わるのかを見届けよう。高市早苗の進撃が、まさに新たな時代の幕開けとなるのだ。挫折を糧に変え、再び立ち上がる力。それが真のリーダーシップであり、我々はその現場に立ち会おうとしている。「雨降って地固まる」、その意味がいかに重いか、この瞬間が歴史を証明することになるだろう。

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まとめ
  • 戦略的互恵関係の確認 - 石破首相と李強首相が「戦略的互恵関係」を推進することで合意しつつ、両国間の緊張感が会談全体に漂った。
  • 中国軍事活動への懸念 - 中国の軍事行動、特に領空侵犯に対して深刻な懸念を表明。会談はこの問題を中心に緊迫した雰囲気で進んだ。
  • 福島第一原発の処理水問題 - 処理水海洋放出を巡る禁輸措置について議論。双方の立場の違いから会談は緊張感を伴った。
会談した石破首相と中国李強首相

石破茂首相は10日、ラオスで中国の李強首相と会談し、「戦略的互恵関係」の推進を確認。中国軍機の領空侵犯や邦人保護などをめぐり懸念を表明。初めての日中首脳会談で、双方は事務当局に具体的な成果を出すよう指示。日本の処理水放出を巡る禁輸措置の撤廃も求めた。会談は緊張感があったが、率直な意見交換が行われた。

初の日中首脳会談に臨んだ石破首相は、中国の李強(リーチアン)首相に「ニーハオ」と小声であいさつしながら歩み寄って握手したが、表情は硬めで笑顔はなかった。同席した外務省幹部は「会談はピリッとした雰囲気で、お互いが問題を指摘するため緊張感が走っていたが、それでもいろんな課題について率直な意見交換ができた」と振り返る。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】岸田首相が継承し石破首相も変えられない安倍首相の置き土産:日本の対中戦略

まとめ
  • 石破は「タカ派」や「親台派」として中国から警戒されつつも、歴史問題では対話の余地があると見られている。
  • 中国は石破の「アジア版NATO」構想を強く警戒し、アジア太平洋地域での対中包囲網の強化につながる可能性に注目している。
  • 石破が台湾総統と会談したことにより、中国では「親台分子」と見なされ、強い警戒と反発が生まれている。
  • 自衛隊護衛艦の台湾海峡通過やQUAD構想の継承など、岸田政権は安倍の対中戦略を受け継ぎ、日本の対中国政策の継続性を示している。
  • 次の総裁選では、安倍のように国益を守る「置き土産」を残せる人物が求められており、選挙での冷静な判断が必要とされている。
自民党の石破茂に対する中国の評価は、まさに微妙な綱渡りを見せている。中国は、石破が外交・安全保障政策において「タカ派」であり、台湾問題では「親台派」としての立場を鮮明にしていることに強く警戒している。しかし、一方では歴史問題や対話の余地がある部分に関して、一定の期待感を抱いているのだ。これが、石破を親中派だと評価する日本国内の声を生んでいる。

だが、中国の警戒心は一筋縄ではいかない。石破が推進する「アジア版NATO」構想には特に敏感だ。中国共産党のプロパガンダを担う人民日報系の環球時報(電子版)は、27日に「中国側は警戒を保つべきだ」との専門家の見解を掲載し、米国を中心としたアジア太平洋地域での対中包囲網の形成を懸念している。この構想に向けて石破が動き出せば、石破は中国にとって「要注意人物」となるだろう。

台湾頼清徳総統

さらに、石破は今年8月、台湾を訪問して頼清徳総統と会談している。これにより中国では「親台分子」との見方が強まっている。中国の政策研究機関が関与するニュースサイト「観察者網」は、台湾問題を「戦争リスクをはらむ地雷原」と位置付け、石破の動きに強い警告を発した。このように中国の警戒感は相当なものだ。

とはいえ、中国メディアの環球時報は、石破の立場について「保守派でありながらも、比較的穏健でバランスが取れている」とし、中国との対話の可能性も示唆する。一筋縄ではいかない彼のスタンスに対し、中国側も単純な「敵」扱いをしているわけではない。石破の歴史問題に対する態度や、靖国神社への距離感などが評価されているのも、こうした側面があるからだ。

ところが、先月25日、自衛隊の護衛艦「さざなみ」が初めて台湾海峡を通過した。これは岸田首相の指示によるもので、オーストラリアやニュージーランドの艦艇と共に通過している。これにより、日本は「自由で開かれたインド太平洋」構想を具体的に実践し、対中政策における一貫性を示した。これは次期政権にとっても、まさに「置き土産」としての価値を持つ。

日米豪共同訓練を実施中の「さざなみ」 先頭の艦艇

岸田政権の姿勢をさらに際立たせたのが、安倍晋三元首相の遺産とも言える「QUAD」構想である。日米豪印の海軍が行う共同訓練「マラバール2024」は、まさに中国へのけん制として機能している。訓練の目的は、中国の海洋進出を抑え込むことにあり、各国が協力して対潜水艦戦を強化している。これも、安倍が作り上げた戦略の一環として、岸田政権が受け継いだものだ。

こうした戦略は、石破が仮に親中的な立場を取ろうとしても、簡単には動かせないほど強固なものとなっている。安倍の「置き土産」がなければ、自民党内の親中派が勢力を増し、対中政策が大きく変わる可能性もあっただろう。しかし、安倍はこれを阻止するための礎を築いてくれたのだ。われわれは、この事実に感謝するべきであろう。


ただし、安倍自身も完全無欠ではなかった。消費税増税の延期を二度も試みながら、最終的には在任中に増税を実行してしまった。そして、日本の移民受け入れ政策についても、安倍以前から始まり、現在も続いている。その結果、いくつもの問題が噴出している。

次の自民党総裁選では、安倍首相のように政権が終わった後でも国益を守る「置き土産」を残せる人物が求められている。我々は、日本の将来を見据え、誰がその役割を担えるのか、冷静に見極めなければならない時に来ているのだ。そうして、来る衆院選では、これに寄与できる人物を選ばなければならない。

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2024年10月10日木曜日

ドイツ、24年は0.2%のマイナス成長見通し=経済省報道官―【私の論評】ドイツ経済の危機を招いた脱原発政策:日本が学ぶべき教訓

ドイツ、24年は0.2%のマイナス成長見通し=経済省報道官

まとめ
  • ドイツ経済省は、2024年の経済成長率見通しを0.3%のプラス成長から0.2%のマイナス成長に下方修正し、これにより2年連続のマイナス成長が予測されている。
  • ドイツの主要経済研究所も、2024年のGDP成長率予測を0.1%減に修正しており、経済省はこれらの予測を反映した見通しを10月9日に発表予定。
  • 経済省の報道官は、今回の経済予測が経済情勢や基礎データに基づいた包括的な評価であり、詳細な説明を提供するためのものであると述べた。

ドイツのフォルクスワーゲンの工場

ドイツ経済省は、2024年の経済成長率見通しを従来の0.3%のプラス成長から0.2%のマイナス成長へと下方修正することを発表した。この発表は南ドイツ新聞の報道を確認する形で行われ、ドイツ経済が今後さらに厳しい状況に直面することを示唆している。2023年の国内総生産(GDP)はすでに0.3%減少しており、ユーロ圏の主要国の中でも特に低迷していたことから、これで2年連続のマイナス成長となる見通しだ。

また、ドイツの主要経済研究所であるIFO経済研究所、ドイツ経済研究所(DIW)、ハレ経済研究所(IWH)、キール世界経済研究所(IfW)、およびライプニッツ経済研究所(RWI)の5つの研究機関も、2024年のGDP成長率を0.1%減に下方修正する予測を示しており、これを踏まえてドイツ経済省は新たな経済見通しを10月9日に公表する予定だ。

経済省の報道官は、この経済予測が経済情勢や見通し、そしてその背後にあるデータや分析に基づいた包括的な評価を提供するものであり、より詳細な説明が可能になるようにする意図があると述べた。

【私の論評】ドイツ経済の危機を招いた脱原発政策:日本が学ぶべき教訓

まとめ
  • 最近マスコミは、ドイツが日本のGDPを追い越したと報道していたが、それは名目GDPのことである。名目GDPは物価変動を考慮しないため、実質GDPと比較すると経済の実態を反映しない。名目GDPの高低で国の経済力を判断することは無意味である。
  • 現実のドイツは不況にあえいでいる。ドイツは「脱原発」を進めた結果、エネルギー不足や高騰する電力料金に直面し、経済成長が損なわれている。
  • さらに再生可能エネルギーへの過剰依存がエネルギー供給の不安定さを引き起こし、企業や家庭にさらなる経済的負担をかけている。
  • 移民問題の経済的影響: 大量の移民や難民を受け入れたことで、ドイツの社会が混乱し、経済的な負担が増大している。
  • ドイツが全原発を廃炉にしたことは、新しい原子力技術への道を閉ざし、エネルギー安全保障を脅かす結果となっている。日本も同様の誤りを繰り返すべきではない。

テレビで報道されたテロップ

最近、マスコミでは「ドイツが日本のGDPを追い抜いた」と報じられることがあるが、実はそれは名目GDPの話である。名目GDPとは、物価変動を考慮しないそのままの数字であり、実質GDPとはインフレーションを調整したもので、経済の実際の成長を反映するものだ。名目GDPの比較は、物価の違いや経済構造の違いを無視しているため、あまり意味がないとされている。

国際通貨基金(IMF)のデータでも、名目GDPは短期的な変動に敏感であり、経済の実体を示すものではないとされている。このため、名目GDPが高いからといって、その国の経済が強いわけではないのだ。名目GDPでドイツの経済が大きくなったようにみえたのは、物価の高騰によるところが大きい。

上の記事にもあるように、今やかつての経済大国ドイツが不況の泥沼にはまり込んでいるのをご存じだろうか。その原因の一つは、はっきり言って「脱原発」という愚策の極みとも言える選択にある。ドイツは、エネルギー政策において左翼的な思想に基づいた判断をしてしまい、その結果、現在の苦境に陥っているのだ。

原子力は、非常に安定したエネルギー源であり、多くの国々が経済成長の土台として活用してきたものである。実際、国際エネルギー機関(IEA)のデータによれば、原子力はCO2排出量が少なく、安定した供給能力を持つエネルギー源であるとされている。

しかし、ドイツの左派勢力は、科学的事実や合理的な視点を無視し、いわゆる「グリーン・アジェンダ」という環境主義の名のもとに恐怖を煽り立て、原発の廃止を強引に進めた。その結果、ドイツは貴重なエネルギー源を自ら手放すという、大きなミスを犯してしまったのだ。

その影響はどうだったのか?第一に、ドイツはエネルギー不足という深刻な問題に直面している。原発を閉鎖したことで、代わりにロシアからの天然ガスなど、外国からのエネルギーに依存するようになった。2021年のドイツの天然ガス輸入量のうち約55%がロシア産であり、この依存がもたらすリスクは、ウクライナ情勢をきっかけに痛感されることとなった。これはまさに自ら首を絞める行為であり、世界の市場や地政学的なリスクに対して脆弱な立場に追いやられたのだ。

さらに、エネルギー価格が急騰し、一般家庭も企業もその影響を受けている。2022年のエネルギー危機の際には、ドイツの電力料金は過去最高を記録し、欧州の中でも最も高い水準に達した。ドイツ人は高騰するエネルギー料金に苦しみ、企業はコストの高騰により、製造業や化学産業などが深刻なダメージを受けている。これにより、フォルクスワーゲンなど一部の企業は、エネルギーコストがもっと安く済む国への移転を検討するという、まさに国の産業基盤が揺らぐような事態に陥っているのだ。

ドイツでは、2014年時点で再生可能エネルギーの占める発電割合が、過去最高となっていた

そして、ここに追い打ちをかけているのが、再生可能エネルギーへの過剰な依存である。再生可能エネルギーは、クリーンで環境に優しいと言われているが、その一方で非常に不安定なエネルギー源でもある。

風力や太陽光は天候に左右されるため、安定した電力供給が難しく、2022年にはエネルギー供給の不安定さが原因で電力不足の危機が何度も訪れた。これはドイツの産業界にとって致命的であり、結局は石炭火力やガス火力といった化石燃料への依存を再び高めざるを得ないという皮肉な結果を招いているのだ。

再生可能エネルギーの不安定さが引き起こす問題は、エネルギーの安定供給を妨げ、さらには価格の急騰を引き起こしている。国際エネルギー機関の報告によれば、エネルギー価格の不安定化は欧州全域に影響を与え、特にエネルギーを大量に消費する産業にとって大きな打撃となっているとのことだ。これによって、ドイツ国内の企業や家庭はさらなる経済的負担を強いられている。環境に優しいという名のもとに導入されたはずの再エネが、皮肉にもドイツ経済を揺るがす一因となってしまっているのだ。

さて、こうした経済的混乱に拍車をかけているのが、移民や難民問題である。2015年の移民危機以降、ドイツは大量の難民を受け入れてきたが、その結果、社会が混乱し、経済的な負担も増大している。ドイツ政府によると、2021年だけでも移民にかかる費用は約220億ユーロに上り、これが社会保障制度に大きな圧力をかけている。

移民の多くは、十分な教育や職業スキルを持たず、労働市場に適応するのが難しいため、失業率の上昇や治安の悪化といった問題も引き起こしている。経済的な側面だけでなく、社会の安定をも脅かす結果となっているのだ。

ドイツ・ベルリンで行われた親パレスチナデモ=2023年11月4日

さらに、原発を廃炉にしたとしても、そのプロセスには時間がかかり、核物質の管理は依然として大きな課題である。例えば、原子炉の廃炉には通常、数十年もの長い年月が必要であり、その間、放射性物質の管理が必要だ。これに関する研究によれば、廃炉作業が完了するまでには、原発のリスクが依然として存在することが示されている。また、廃炉を決めただけではリスクは低減されず、適切な管理がなければ、放射性物質が環境に漏れる危険性も残るのだ。

そんな中、比較的新しい技術である小型モジュール炉(SMR)が期待されている。SMRは、小型でありながら高い安全性を兼ね備えており、事故が起こりにくい設計がされている。例えば、アメリカのエネルギー省によると、SMRは従来の原発よりも安全性が高く、導入が進むことで電力供給の安定化が図られるとされている。

また、将来的には核融合炉の技術も期待されている。核融合炉は、燃料が豊富で環境への負荷が極めて少ないという特性を持ち、これが実用化されればエネルギー問題は根本的に解決する可能性があるのだ。

しかし、ドイツが全原発を廃炉にし、新たな原発を設置しないことで、新たな小型モジュール炉や核融合炉への道も閉ざしてしまった。国際原子力機関(IAEA)の見解によれば、原子力技術の進化には既存の知識と経験が不可欠であり、過去の原発技術を無視して新しい技術を開発することは非常に難しい。そのため、ドイツが全ての原発を廃炉にすることは、大きな誤りであり、エネルギーの安定供給を図り、経済成長を促進するためにも原子力は重要な選択肢であり続けるべきである。

このように、ドイツの状況は、左翼イデオロギーが国家経済に現実的かつ有害な影響を及ぼす可能性を明確に示している。安定したエネルギー源を放棄することで、ドイツのエネルギー安全保障と繁栄は危機に瀕しているのだ。

こうした時代錯誤の政策に対して、私たちは強く立ち向かわなければならない。原子力発電は、経済成長と国家安全保障を保証する強固なエネルギー戦略の重要な一部である。左翼的な決定がもたらす結果は、広範囲に及び、大きな代償を払うことになるのだ。

したがって、日本はドイツのようになってはいけない。左翼的な政策が経済や社会に及ぼす影響を直視し、正しい選択をすることが求められている。日本の未来のためにも、原子力を含む信頼できるエネルギー源を守り、国家の繁栄を確保していく必要がある。

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2024年10月9日水曜日

日本保守党、百田尚樹氏が比例代表の近畿ブロック 有本香氏が東京ブロックから出馬へ 次期衆院選―【私の論評】次期衆院選と高市早苗氏:保守派の台頭と財務省の抵抗、雨降って地固まる政治転換の可能性

日本保守党、百田尚樹氏が比例代表の近畿ブロック 有本香氏が東京ブロックから出馬へ 次期衆院選

まとめ
  • 日本保守党が次期衆院選で百田尚樹氏と有本香氏の出馬を発表し、百田氏は「日本を守りたい」という意気込みを示した。
  • 各ブロックに複数の候補者を擁立しており、地域ごとの代表も明らかにされた。

街頭演説する百田氏と有本氏

 政治団体「日本保守党」は8日、次期衆院選に向けて記者会見を開き、党代表の百田尚樹氏が比例代表の近畿ブロックから、有本香氏が東京ブロックから出馬することを発表した。百田氏は「日本を守りたい、日本の良さを残したい」と述べ、理念に賛同する候補者と共に戦う意気込みを示した。

 また、北海道ブロックには元北海道議の小野寺まさる氏、東京ブロックには元仙台市長の梅原克彦氏、南関東ブロックには荒川区議の小坂英二氏、近畿ブロックには島田洋一氏が名を連ねている。

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【私の論評】次期衆院選と高市早苗氏:保守派の台頭と財務省の抵抗、雨降って地固まる政治転換の可能性

まとめ
  • 保守派である私にとって、今回の衆院選では自民党議員と日本保守党候補への投票を迷わず決断できる状況である。
  • 高市早苗氏に対する危害を示唆する投稿が確認されたことから、警護措置が強化され、これは彼女の政治的存在感が全国で増していることも示している。
  • 石破政権の低迷を背景に、高市氏への期待が高まり、次期総裁選での動向が注目されている。麻生太郎氏からの助言もあり、高市氏の将来的なリーダーシップが期待されている。
  • 安倍晋三氏が総理在任中に消費税増税を延期しながらも最終的に増税を強いられた背景には、財務省や財務省寄り政治家たちの強力な抵抗があった。この点は安倍晋三回顧録にも詳細に記され、財務省の影響力の強さが政治決定に大きく関与していることが示されている。
  •  次の選挙で抵抗勢力の議員が落選し、保守党が国政政党として台頭すること他の野党の保守派の連動で、日本の政治が大きく変わる転換点を迎える可能性がある。「雨降って地固まる」という状況が現実のものとなる可能性が大である。
私の住む選挙区では、自民党の議員が再び立候補する。この議員は高市早苗氏の推薦人であり、総裁選では2度とも高市氏に投票している筋金入りの支持者だ。一方、比例では地元から日本保守党の候補者が出る。保守派である私にとって、今回は迷わず投票先が決まっている。

日本保守党の北海道ブロックから立候補する小野寺まさる氏

過去の市長選や知事選では悩みに悩み抜いて投票先を決めたが、今回の衆院選挙はまったく迷いがない。この点だけを見れば、本当にありがたい話だ。

さて、話を高市早苗氏に戻す。次期衆院選に向け、高市氏には異例の警護措置が取られることになったという。サイバーパトロールにより、高市氏への危害を示唆する投稿が確認され、選挙期間中にはSPが常に付き添うことが決まった。これは、高市氏の存在感が全国で増していることを示す一つの証左だろう。

高市氏は自民党総裁選で1回目の投票でトップに立ち、その存在を改めて誇示した。警護の強化は、要人襲撃事件が相次ぐ昨今、彼女の身の安全を確保するための措置でもある。こうした背景を考えると、高市氏の影響力は今後さらに増していくことが予想される。

だが、一方で石破政権の支持率が低迷する中で、高市氏への期待が日増しに高まっている。麻生太郎党最高顧問からは次期総裁選に向けての準備を求められたとも言われ、政局は大きく動きつつある。先月末の総裁選で高市氏が敗北したことは残念だったが、それがむしろ逆風を追い風に変える結果になるかもしれない。


石破政権が成立したことは、私たち保守派にとって衝撃だった。リベラル派や新中派、財務省寄りの勢力に押される形での政権成立であり、保守派の思惑とは大きく異なるものだった。だが、この状況こそ、我々にとってチャンスの到来だと捉えるべきだ。

次の衆院選では、自民党にとって決して楽観できない選挙戦が待っている。そのため、一部には来年夏の参院選前に石破政権が崩壊するというシナリオすらささやかれている。我々保守派はこの流れを確実にするべく、総裁選で高市氏を支援した議員たちを守り抜く戦略で次の選挙に臨むべきだ。

高市氏が総裁選で勝利していたなら、私たち保守派は歓喜に沸いていただろう。しかし、それでも半年や1年で失望の淵に立たされたかもしれない。自民党内部には、安倍政権の影響を払拭しようとする勢力が強く、高市氏がその中で自由に政権運営を行うのは至難の業だったに違いない。

現に、高市氏が経済安全保障担当大臣だった時も、その立場でLGBT理解増進法案に対して反対の立場を貫けなかった。記者からの質問に対して、「賛成」と述べるしかなかったのだ。もしここで「反対」と答えていれば、閣内不一致となり、大臣辞任という事態に追い込まれていた可能性もある。

これは、高市氏に限った話ではない。安倍晋三氏も同様に、消費税増税を二度延期するも最終的には実行せざるを得なかった。その背景には、財務省や財務省寄りの政治家たちによる強力な抵抗があったからだ。総理大臣の地位にあってすら、財務省の圧力に逆らうことがいかに難しいかは、安倍晋三回顧録にも詳しく記されている。


そう考えると、高市氏が仮に総裁選で勝利して総理になっていたとしても、党内の抵抗や財務省の影響を押し返すのは容易ではなかっただろう。だが、それでも彼女はきっと粘り強く戦ったに違いない。それでもなお、政策の進展が遅々として進まなかった可能性は高い。

しかし、今は状況が変わりつつある。次の選挙では、抵抗勢力に属する議員たちが多数落選する可能性が出てきている。さらに、保守党が国政政党として台頭し、国政において影響力を持ち始めるかもしれない。他の野党の保守派もこれに連動する可能性もでてきた。この状況こそ、我々保守派が待ち望んでいた転換点ではないか。

まさに、私たちは日本の政治史の転換点を目の当たりにしつつあるのかもしれない。使い古された言葉ではあるが、「雨降って地固まる」という現象が、来年には確実に起こるのだと信じてやまない。

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高橋洋一「日本の解き方」

まとめ
  • 石破茂首相が掲げる2020年代の最低賃金1500円目標は、左派的政策であり、実現可能性が低い
  • 最低賃金の大幅引き上げは、韓国の文在寅政権や日本の民主党政権の例から、失業率上昇や雇用悪化を招く可能性が高い
  • 目標達成には5年連続7.4%の引き上げが必要だが、過去の実績(最高6.9%、平均2.6%)から見て非現実的
  • 最低賃金引き上げは、インフレ率と失業率に依存しており、目標達成には5年連続で2桁以上のインフレが必要
  • 安倍政権は専門家の計算に基づく現実的なアプローチを取っていたのに対し、石破政権は理念先行で具体的手順を欠いている

 石破茂首相は2020年代に最低賃金平均1500円を目指すと表明し、政権の左派的性格が明確になった。左派政党は雇用重視だが、金融政策の重要性を理解せず、賃金にのみ注目する傾向がある。雇用を作るため重要なのは金融緩和なのだが、金利の引き下げが「モノへの設備投資」を増やすとともに、「人への投資」である雇用を増やすことを左派の人は分からない。

 韓国の文在寅前政権は2018年に最低賃金を16.4%引き上げた結果、失業率が3.6%から4.4%に上昇した。日本の民主党政権も2010年に、本来0.3%程度が適切だった引き上げ率を2.4%まで上げ、就業者数が約30万人減少した。一方、金融政策を重視した第2次安倍政権では300万人以上増加し、対照的な結果となった。

 石破政権の目標達成には5年連続で7.4%の引き上げが必要だが、1980年以降の最高実績は6.9%、平均2.6%であり、実現は困難と考えられる。最低賃金の引き上げ率は前年のインフレ率と失業率に依存し、失業率には下限がある。失業率の下限を2%台半ばとすると、目標達成には5年連続で2桁以上のインフレ率が必要となる。

 安倍政権時代は、首相が毎年のように最低賃金引き上げの可能性を専門家に確認し、インフレ率と失業率の関係フィリップス関係を用いて慎重に検討していた。一方、2019年の参院選では、立憲民主党が「5年以内に最低賃金1300円」、れいわ新選組が「1500円」を掲げており、今や与党からも同様の政策が提案されている。

 石破政権は理念先行で具体的な手順を欠いており、文政権や民主党政権のような失敗を繰り返す可能性が高い。安倍元首相が最低賃金引き上げの現実的な可能性を重視していたのと対照的に、石破政権の左派的アプローチは経済的な悪影響をもたらす可能性がある。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】フィリップス曲線の真髄:安倍政権の置き土産を食い潰す愚かな自民と立民

まとめ
  • フィリップス曲線は経済政策の重要な指針だが、多くの政治家はその本質を理解していない。
  • NAIRU(インフレを加速しない失業率)の概念を無視し、単純に数値目標だけを追求することは経済政策として不適切。
  • 日本が一度も陥ったことのないスタグフレーションに対する誤解が根強く、日本経済の実態を正しく理解していない政治家が多い。
  • 立憲民主党の「物価目標を0%超に変更」など、現実の経済状況を無視した政策提案が見られる。
  • 安倍政権の経済政策の成果を理解せず、その遺産を台無しにしようとする愚かな政治家たちの暴走を断固として阻止しなければならない
コロナ直前までのフィリップス曲線 ー 出展:独立行政法人経済産業研究所

上の記事にもでてくる、インフレ率と失業率の関係フィリップス関係とはフィリップス曲線と呼ばれるものだ。これはインフレ率と失業率の関係を示したもので、ざっくり言えば「インフレ率が高くなると失業率が下がり、インフレ率が下がると失業率が上がる」という理屈だ。

この理論は1958年にアルバン・ウィリアム・フィリップスという英国の経済学者が提唱したが、未だに経済政策の指針として重宝されている。現代の経済政策も、多かれ少なかれこのフィリップス曲線の影響を受けているわけだ。しかし、理論がわかっているふりをしているだけの政治家が多いこと多いこと。まるで、教科書の一節を暗記しただけで、実戦経験がない素人のようなものです。

例えば、アベノミクスも、このフィリップス曲線を背景にした政策と言えますが、その真髄を理解している政治家がどれほどいるでしょうか?表面だけを見て、「インフレを上げれば景気が良くなる」とか、「失業率を下げれば全て解決だ」なんて言っている人は、正直言って話になりません。

高橋洋一氏が言っている「NAIRU(ナイル)」の概念、つまり「インフレを加速しない失業率」の重要性を見落としているのだ。経済の舵取りをする上で、これを無視することは致命的な過ちである。さらに、数字だけを盲信しているようでは、経済政策を語る資格などない。以下に高橋洋一氏の「マクロ政策・フィリップス曲線」についての説明をあげておく。
 NAIRU(インフレを加速しない失業率)がマクロ経済政策、とりわけ金融政策において重要だと指摘してきた。一般的に、インフレ率と失業率は逆相関であり、NAIRUを達成する最小のインフレ率をインフレ目標に設定するからだ。ここから導かれる金融政策は、失業率がNAIRUに達するほど低くない場合、インフレ率もインフレ目標に達しないので金融緩和、失業率がNAIRUに達すると、その後はインフレ率がインフレ目標よりも高くなれば金融引き締めというのが基本動作である。

 そして、筆者の推計として、NAIRUを「2%台半ば」としてきた。国会の公聴会でも説明したが、経済学は精密科学でないので、小数点以下に大きな意味はないが、あえてイメージをハッキリさせるために、「2%台半ば」を2・5%ということもある。これは、2・7%かもしれないし2・3%かもしれない。2・5%程度というと数字が一人歩きするので、普通は「2%台半ば」といっている。
しかし「失業率が2.5%、インフレ率が2%」という数値目標を立てたとしても、その数値だけに囚われてはならない。数字というのはあくまで目安に過ぎないのだ。経済は生き物だから、ちょっとやそっとの数値の変動で右往左往していたら、経済全体がどんどん不安定になる。

たとえインフレ率が2%を超えたとしても、失業率が上がらなければ、緩和策を続けてじっくり様子を見るべきなのだ。反対に、失業率が2.5%に達したとしても、物価がまだ低迷していれば、安易にブレーキを踏むべきではない。経済は、急に冷やしたり、壊してしまったら再び温めるのがとんでもなく大変なことになる。

しかし、そもそも、フィリップス曲線すら理解せず、頓珍漢なことを言う人がいかに多いことか。これは、古今東西いずれの国のにもあてはまる原則だ。いい加減これだけは、認めたらどうなのか。これを認められてないということは、世界標準のマクロ経済を理解していないということであり、世界の檜舞台では馬鹿にされることはあっても褒められことはない。

そして、スタグフレーションに対する誤解も根深い。フィリップス曲線の話になると、必ず「インフレと失業が同時に悪化するスタグフレーションが起きたらどうするんだ!」と騒ぎ立てる人たちが出てくるが、正直言って、彼らは何もわかっていない。日本経済の歴史を振り返っても、スタグフレーションと呼べるような状況に陥ったことは一度もない。

1970年代のオイルショックで似たような状況になったことはあったが、それも一過性のものだった。スタグフレーションがどうこうと言う前に、まず自分たちが経済の理論をきちんと理解しているのかを考え直してほしいものだ。

さらに、立憲民主党が次期衆院選の公約で掲げた「物価目標を2%から0%超に変更する」という案には、正直言って耳を疑った。現状の物価が2%前後に達している中で、なぜ突然「0%超」などという荒唐無稽、奇妙奇天烈な発想が飛び出してくるのか。彼らは一体、どの次元に住んでいるのだろうか?

現実の日本経済をまるで見ていないことは明らかだ。経済政策の基本的な理屈を理解していれば、そんな発言は絶対に出てこないはずだ。物価が上がっているのは、国内の需要だけではなく、海外からのエネルギー・資源価格の高騰が大きく影響していることを見ればわかるはずだ。

立憲民主党は次期衆院選の公約を公表したが・・・・・

このような状況下で、石破茂氏や立憲民主党、さらには野田元首相までもが経済の基本をわかっていないように見える。彼らが掲げる政策は、経済の仕組みを理解しているとは到底思えない内容ばかりで、どうにも信頼がおけない。

経済の機微を感じ取れないということは、すなわち国民の生活の実態もわかっていないということだ。政治家として最も重要なのは、経済を語るだけでなく、国民の暮らしを直接感じ取り、そのために必要な政策を実行するセンス。これが欠けているようでは、政治家として存在する意味すら疑われる。

日本経済の舵を取るには、ただ数字を並べるだけではなく、その背後にある複雑な動きを読み解く力が必要だ。現状の経済を本当に理解しているのか、経済政策を本気で考えているのか、それが見えてこない政治家たちに未来を託すわけにはいかない。

経済政策の本質を捉えず、安易に緩和策をやめろと言う連中は、経済の停滞を招きかねない。これでは、国民の暮らしを守るどころか、逆に生活を苦しめる結果になる。こんな政策を掲げる政治家たちに、本当にこの国の未来を任せていいのか、大いに疑問だ。

安倍政権が残した素晴らしい経済政策の遺産を、岸田、石破、野田といった輩が台無しにしようとしているようだ。フィリップス曲線に基づく安倍政権の卓越した経済戦略を理解できない彼らの愚かさには呆れるばかりだ。

岸田首相のときは、安倍・菅両政権の経済政策の恩恵(特に100兆円の補正予算)の余波が続いていたが、石破首相にはもうそれはなく、本来自分で開拓していかなければならいはずだ。しかし、経済に疎い彼にはそれはできない。ましてや、野田氏にもその力量はない。政権交代をしても何も変わらない。

アベノミクスによって日本経済は見事に蘇ったというのに、その成果を無にしようとする彼らの行為は、許すことはできない。政治家としての器の小ささを露呈し、国民の期待を裏切り続ける彼らに、もはや日本の未来を託すことはできない。

真の愛国者なら、安倍政権の経済政策を継承し、さらに発展させるべきだ。このままでは日本は再び暗黒の時代に逆戻りしてしまう。我々国民は、こうした愚かな政治家たちの暴走を断固として阻止しなければならない。

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