2017年4月9日日曜日

トランプ大統領のシリア攻撃をクリントン氏も支持―【私の論評】米民主党・メディアがトランプ大統領の政策をなぜ支持したのか理解不能の民進党(゚д゚)!

トランプ大統領のシリア攻撃をクリントン氏も支持
共和党も民主党も幅広く賛同の意を表明

米駆逐艦ポーターが地中海から行ったシリアへのミサイル攻撃。米海軍提供(4月7日撮影・公開)
「ドナルド・トランプ氏は初めて米国大統領になった」――トランプ大統領が実行したシリアの空軍基地攻撃に対して、民主党系の評論家がこんな賞賛の言葉を送った。

 共和党も民主党も支持
 4月4日、トランプ大統領がシリア政府軍の化学兵器使用への制裁として、59発のトマホーク巡航ミサイルによるシリアのシャイラト空軍基地への攻撃を断行した。

 この攻撃は米国内で共和、民主の両党側から幅広く支持されている。トランプ氏の施策が両党側からこれだけ支持されるのは、1月に大統領に就任して以来初めてである。この展開を機に、トランプ政権に対する一般の評価にも変化が起きるかもしれない。

 CNNテレビの国際問題評論家ファリード・ザカリア氏は4月7日の番組で、トランプ政権が実施したシリア攻撃について、「ドナルド・トランプ氏は就任以来78日目にして初めてアメリカ合衆国大統領となった」「トランプ氏は国際的な基準やルールを明確に述べ、世界の中で正義を行使する米国の役割を語った」と述べ、攻撃に賛成した。

ファリード・ザカリア氏 写真はブログ管理人挿入以下同じ
 ザカリア氏は民主党系リベラル派のベテラン記者である。これまではトランプ氏の言動や政策を選挙期間から厳しく批判してきた。だが今回は、国際法規に違反する化学兵器を使用したシリアへの武力行使を、「米国の大統領らしい行い」だと称讃した。

 「この攻撃は必要だった」とルビオ議員

 今回の米軍によるシリアの基地攻撃は、国際的には賛否が交錯している。自由民主主義陣営の各国は一様に同意を表明した。だが、シリアのアサド政権を支持するロシアは激しく反発し、米ロ両大国の対決という状況を生み出しつつある。当のアサド政権は化学兵器の使用を否定しており、米国の攻撃は国際法違反の侵略だと非難する。

 だが米国の国政レベルでは圧倒的に賛成の意見が多い。

 共和党側では、昨年の大統領選の共和党予備選でトランプ氏と激しく争ったマルコ・ルビオ上院議員が、「この攻撃はアサド政権軍の化学兵器の戦力を抑える重要な一歩であり、必要だった」と言明した。

マルコ・ルビオ上院議員
 同じ共和党のべテラン上院議員、ジョン・マケイン氏とリンゼイ・グラハム氏も、「トランプ大統領がオバマ前政権とは異なり、アサド政権の無法に対して断固たる軍事行動をとったことは賞賛されるべきである。米国民一般からも支持されるべきだ」と連名で声明を発表した。

 下院議長のポール・ライアン議員(共和党)もトランプ大統領の今回の実力行使を「適切であり、正統な行動だ」と評価した。

 クリントン氏も賛意を表明
 意外なことに、これまでトランプ氏の諸政策を徹底して非難してきた議会の民主党議員たちからも今回のシリア攻撃は支持されている。

 たとえば上院の民主党院内総務のチャック・シューマー議員は、「アサド大統領が憎むべき残虐行為を働いたことに代償を払わせるという意味で、今回の攻撃は正しい」と述べた。また、下院の民主党院内総務のナンシー・ペロシ議員は「この攻撃はアサド政権の化学兵器使用に対する順当な対応だ」とする声明を発表した。

 さらにトランプ氏と大統領の座を争ったヒラリー・クリントン氏も「アサド大統領の長年の残虐行為に対して、もっと早くこの種の軍事行動をとるべきだった」と述べた。

ヒラリー・クリントン氏
 CNNテレビのインタビューに応じたクリントン氏はシリア攻撃への賛意を表明しただけでなく、この種の武力行使を今後もアサド政権に対して続けていくべきだと語った。「容易な決断ではなかっただろう」として、トランプ氏への理解も示している。

 もちろん全員が賛同しているわけではなく、民主党議員のなかには、トランプ大統領の今回の措置が議会の承認を得なかったことや、国際法との整合性を明確にしていないことなどを批判する動きもある。

 だが全体としては、民主、共和両党からの圧倒的な支持が目立つ。就任以来、トランプ大統領が実施したさまざまな政策や措置の中で、今回のシリア空軍基地攻撃は最も多くの支持を集める結果となったようだ。

【私の論評】米民主党・メディアがトランプ大統領の政策をなぜ支持したのか理解不能の民進党(゚д゚)!

このブログには、以前から米国のメディアはリベラル・左派が90%を占めており、保守派は10%しかありません。

それは事実です。米国の場合は、特に新聞はひどく、大手新聞は100%がリベラル・左派が占めているという具合です。

そのため、保守派の声はかき消されてまるでなきがごとくであるということを掲載してきました。

しかし、それは日本も同じような状況にあります。日本の場合、産経新聞が保守派であるというのが、唯一米国よりは多少ましかもしれないという程度です。

しかし、今回のブログ冒頭の記事をみると、リベラル・左派が90%占める、メディアも今回のシリア攻撃を支持していますし、ヒラリー・クリントンをはじめとする民主党の議員も多くがこれを支持しています。

この有様は、日本とは大違いです。日本の場合は、野党は安倍政権のやることには何でも反対します。

この違いはいったい、どこから来るのでしょうか。それはやはり、米国と日本の政治体制の違いからくるものだと思います。

米国では、日本とは異なり二大政党制が根付いています。そうして、長年二大政党制が続いたことから、政治の継続性の原則も貫かれているようです。


政治の継続性の原則とは、たとえ政権交代があったにしても、旧政権の政策が60〜70%が引き継がれ、新政権は残り30%〜40%で新政権らしさを出すということで、政治的混乱を防ぐというものです。

これは、当然といえば当然のことです。米国のように共和党と民主党の二大政党制だと、政権交代することも頻繁にあります。その場合、政権交代するたびに180度、政策が異なるようなことがあれば、それによる混乱はとてつもないことになります。

また、二大政党制によって政権交代をすることが普通にある米国においては、政権交代された側の政権の閣僚や主要な地位についていた議員などは、その政党の考え方に近いシンクタンクに入ります。そこでシンクタンクの研究員などともに政策の研究を行い、シャドーキャビネットを築きます。

そうして、自分たちは米国という国や社会をどうしたいのかという理想をみつめつつ、具体的な政策の立案を行い目的・目標を定めて、政権に返り咲く時を待ちます。

日本のように、野党に下野すると、単なる議員で、党組織に属しているだけということではありません。そうして、下野していてもいずれ時が来て、また政権与党になったときも、シンクタンクが政権与党の政策立案などをサポートします。これは、実際に重責を担う人たちと一緒研究をした研究員などが、与党の政策立案などをサポートすることになるので、政策運営もかなり実行しやすいです。

このように政治的混乱をさけるため、政治の継続性の原則が貫かれているのです。無論、これは不文律のようなもので、法的な裏付けなどがあるわけではありません。

そうして、米国には強固な三権分立制が敷かれています。これと、政治の継続性の原則があいまって、政権交代がなされたとしても、新大統領がそれまでの政策と180度転換するような政策を行うとしても、それはなかなか容易なことではありません。


だからこそ、トランプ大統領はオバマケアの改廃を目指す立法の議会への提出を断念したのです。やはり、オバマケアの抜本的な改変は、オバマ大統領の時代の政策を180度転換するようなもので、民主党はもとより、共和党の中にも反対する議員が大勢でて、断念せざるを得なかったのです。

しかし、一方今回のトランプ大統領のシリア攻撃に関しては、野党である民主党やメデイアも支持しています。これは、民主党が政権与党だったとしてもシリア攻撃を実行したであろうという意思表示であります。これによって、米国民も共和党政権であろうと、民主党政権であろと、今回のシリア攻撃は実行したであろうことを知り、これが米国のコアな政策なのだと理解することになります。

しかし、日本の場合現在の安倍自民党政権の政策には、野党は何から何まで反対です。もともと、どう頑張っても政権与党にはなり得ない共産党が、何から何まで反対するというのはわかりますが、かつて民主党として政権与党だった現在の民進党がとにかく何から何まで反対というのは全く理解に苦しみます。

国会で、何から何まで反対する野党の姿勢に批判をした安倍総理大臣
私は、現在の日本のいわゆるリベラル左派は、民進党やメディアや知識人も含め、自分たちは日本という国や社会をどうしたいのかという理想も持たずに、単に「政権や権力と戦うのが自分たちの使命」であると思い込み続けてきたため、まともにものが考えられなくなり、「政権や権力」と戦うこと自体が目的、目標になってしまい、無限地獄に陥って堕落しているのだと思います。

そもそも、自分たち国や社会をどうしたいのかという理想がなければ、目的も定まらず、したがって目標も定められず、目標に沿った行動もできずに、ただただ日々を無為に過ごしているだけということに彼らは気づいていないのです。

このようなリベラル・左派のどん詰まり状況に閉塞感を感じ、リベラル・左派から離れる人も結構います。最近では、民進党の長島昭久元防衛副大臣が7日、離党する意向を固めたことがわかっています。「党執行部が進める共産党との共闘路線は容認できず、国民の理解も得られない」として、10日に離党届けを党本部に提出して記者会見する予定です。当面無所属で活動する予定だといいます。

現在の民進党であれば、このように将来に絶望する人たちもこれから出てくると思います。民進党はこのままだと限界的な存在から脱却することができず、ますます劣勢になるだけです。

民進党は、今回のトランプ大統領のシリア攻撃に対して、なぜ民主党やメディアが支持したのか真剣にその背景を学び、今後の国会での自らのありかたを真摯に考えるべきです。

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平和ボケに染まりたくないあなたへ… 韓国は崩壊への道まっしぐらか? 『さらば、自壊する韓国よ!』呉善花著―【私の論評】今日の有様をリー・クアンユーは予言していた(゚д゚)!



韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は逮捕され、1カ月後に後継者が選ばれることになりました。そんな激動する朝鮮半島情勢をいち早く分析したのが本書です。

ソウル拘置所に向かう韓国の前大統領、朴槿恵容疑者=31日未明
 呉善花氏は韓国から留学生として30年余前に来日。そのあと日本に帰化しています。それ故に透徹した眼で「母国」を観察しています。今回の一連のスキャンダルのキーパーソンである崔順実(チェ・スンシル)らと朴氏との長年の癒着や、朴親子(朴正煕(チョンヒ)・槿恵)の確執、韓国容共リベラル派の潮流(金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン))などを総ざらい。
崔順実被告
 さらに慰安婦問題の嘘、金正男暗殺事件、次期大統領選挙の予測など盛りだくさんです。これ一冊で、朝鮮半島をめぐる日本、韓国、北朝鮮、中国など各国間の厳しい国際情勢の動きが手にとるように理解できると思います。

 呉氏は、大統領選挙では容共リベラル派の候補者が一歩リードし「従北政権」誕生の可能性が高く、万が一、保守派の大統領が逆転勝利しても、日韓関係は今より冷え込み、韓国が北朝鮮にすり寄っていくのは必至とみています。

 それを阻止する道は、軍による「戒厳令」しかないだろうと……。かたや、日本海に向けてミサイルをぶっ放すしかノウのない北朝鮮。その北朝鮮と所詮は「五十歩百歩」の独裁国家中国。こんな厳しい国際情勢が目の前にあるのに、日本の国会は能天気に何を議論しているのやらと不安になります。

 そんな「平和ボケ」に染まらないためにもこの一冊をお手元へ。(ワック・920円+税)

 ワック株式会社「書籍部・歴史通」編集長 仙頭寿顕

【私の論評】今日の有様をリー・クアンユーは予言していた(゚д゚)!

北朝鮮には核・ミサイル問題について、中国の仲介を受け入れるつもりはなさそうです。だとすれば、昨日もこのブログに掲載したように、米国単独で北朝鮮に対して軍事行動に踏み切る可能性が出てきました。追い詰められた北朝鮮が最初に矛先を向けるのは、超大国の米中ではなく、むしろ日本と韓国です。

金正恩(キム・ジョンウン)・朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(ジョンナム)氏殺害には、毒ガスのVXが使われていました。金正恩氏は体制維持のためならば、同胞に対しても核や化学兵器の使用をためらいません。ご存じのように、北朝鮮はつい先日の5日にもミサイルを発射したばかりですし、6日には米軍がシリアに向けてミサイル攻撃をしました。

これで、いやがおうでも、韓国内にもかなり緊張が走るのではと思っていたのですが、ところが、まったく不思議なことにその韓国が、日本以上に「平和ボケ」の症状を呈しています。

来月に投開票される大統領選で最有力候補とされるのが、最大野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)氏(64)です。文氏は自分が大統領になれば、北朝鮮への経済援助を再開すると明言しています。在韓米軍に配備された迎撃ミサイルシステムには否定的です。日本には、慰安婦合意の再交渉を求めています。文氏には日韓両国で北朝鮮に立ち向かおうなどという考えがまったくありません。文氏を支持する人たちは、本気で現体制の北朝鮮との融和を望んでいるのでしょうか。

北欧のスウェーデンから先月、7年前に廃止した徴兵制を復活するとのニュースがありました。バルト海で軍事的圧力を強めるロシアの脅威に対抗するためだといいます。日本では安保法制をめぐって、徴兵制復活につながるとの批判がありました。ハイテク兵器を扱う現代の軍隊に、素人は不要である。ナンセンスな議論だった。スウェーデンも、国民の危機感を高めるのが目的でしょう。国民皆兵制により国民全員で国防を担おうという国家の姿勢を指す、イスラエルスイスの姿勢を見習ったのかもしれません。

徴兵制があり緊張が続いていたはずの韓国で、一体何が起きているのでしょうか?この疑問に、呉善花さんの書籍は応えてくれそうです。

さてこの韓国の現状を前から的確に予言をしていた人がいます。それは、シンガポールの前首相のリー・クアン・ユー氏です。それについては、このブログでも以前掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【野口裕之の軍事情勢】中国の代弁者に堕ちたシンガポール ―【私の論評】リー・クアンユー氏が語ったよように「日本はゆっくりと凡庸になる」ことはやめ、アジアで独裁は当たり前という概念を根底から覆すべき(゚д゚)!
リー・クアンユー氏
この記事は、2015年6月28日のものです。リー・クアンユー氏は、2015年3月23日に亡くなっています。

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事よりリー・クアン・ユー氏のアジアでは独裁は当たり前という考かにかかわる部分のみを引用します。
リー・クアンユー氏の「遺言」である、「日本はゆっくりと凡庸になっていく」という予言はある意味では正しかったのかもしれません。特に日本の過去においては・・・・。

それはさておき、シンガポール共和国の建国の父であり、同国首相を長く務めたリー・クアンユー。死後、その功績に対して多方面から賞賛の声が寄せられています。

リーの影響力は実際の政治権力が及ぶ範囲を大幅に超えて作用していました。その政治権力は、シンガポールがマレーシアから1965年に分離独立して以降、東南アジアの小さな都市国家の境界を越えて広がることはありませんでした。しかしその影響力は、急成長する企業経済と一党独裁の共産主義政府とが併存する、毛沢東以後の中国へと大きく波及しました。
繁栄する都市国家シンガポール 
リーは資本主義と強権政治とを結び付けた政治家の嚆矢でした。彼の人民行動党は、中国共産党に比べればまったくもって暴力的ではないとはいえ、事実上の独裁政党として国を統治してきました。

シンガポールの活発な経済、物質的豊かさ、効率のよさという面に目を向けると、独裁主義は資本主義よりもうまく機能する、世界にはそうした地域が存在するのだ、という多くの人の考えを裏打ちするかのように見えます。

しかしリー政権は、民主主義を形だけ維持するために選挙を実施しておきながら、反体制派については脅しや財政的な破綻で対処する選択をしました。リーに立ち向かった勇気ある男女は、膨大な額の賠償を請求されて破産に追い込まれました。

しかし、リーは決して、西洋の自由民主主義が誤りだとは主張しませんでした。ただ「アジア人」には向いていないとは述べていました。アジア人は、個人の利益よりも集団の利益を上に置く考え方に慣れていると主張しました。生来、権力者に対して従順で、こうした傾向はアジアの歴史に深く根差す「アジア的価値観」なのだと主張していました。

しかし、シンガポールが民主化を進めていたら、今よりも効率を欠き、繁栄を欠き、平和でもない社会となっていたでしょうか。韓国と台湾は1980年代に不十分とはいいなが民主化され、それぞれの独裁的資本主義に終止符を打ちました。それ以降、両国は非常に繁栄しています。ご承知のように、民主主義が日本経済に悪影響を及ぼしたということも全くありません。

リーは終始一貫して、シンガポールのような多民族社会では、高い能力を持つ官僚が上から調和を押し付けることを前提としなければならないと述べていました。エリートを厚遇することで、汚職がはびこる余地を最小限まで狭めました。 
しかしそれには副作用もありました。シンガポールは効率的で汚職も比較的少ないかもしれないのですが、一方で不毛な土地となってしまいました。知的な業績や芸術的な成果が生まれにくい国となってしまいました。 
わずか人口540万人の小規模な都市国家で、ある一時期有効であったにすぎない政策が、より大きく、より複雑な社会にとって有益なモデルとなるとは到底考えられません。 
資本主義と強権政治を組み合わせた国家資本主義を目指した中国の試みは、大規模な富の偏りを伴う腐敗の巨大システムを生み出しました。またプーチンは、自らの政策の社会的失敗、経済的失敗を覆い隠すため、極めて好戦的な国家主義に頼らざるをえなくなりました。

それを思うと、シンガポールの滑らかに流れるハイウェー、摩天楼が林立するオフィス街、磨き上げられたショッピングモールを賞賛せずにはいられません。しかしリーの遺産を評価する際は、金大中・元韓国大統領がリーに向けて書いた言葉に注意を払う必要があります。 
「最大の障壁は文化的な性向ではなく、独裁的指導者やその擁護者が示す抵抗だ」。
金大中氏
さて、長期の独裁政権を率いてきたリー・クァンユーからみれば、確かに過去の日本は自ら円高・デフレ政策をとり、日銀は金融引き締めを、政府は緊縮財政政策を取り続け、それこそ日本国民を塗炭の苦しみに追いやりつつ、中国の経済発展に力強く寄与してきたと当然看破していたと思います。全く、日本の政治家や官僚は無能と映っていたことでしょう。

また、軍事的に見ても、憲法典にある9条にもとづき、どんな場合にも戦力を行使すべきでないという愚かな言説がまかり通っており、これはあたかも、国連憲章でも認められ、西欧では人権と同じく自然権される集団的自衛権をなきものにするごときものであり、確かに生前のリー・クアンユー氏からみれば、日本はいずれ経済的にも、軍事的にも、凡庸な国になるのは必定と見えたと思います。

アジアのそれぞれの国の典型的な顔立ち

そうして、晩年のリー・クアンユーからみれば、デフレであるにもかかわらず、金融緩和の効果がまだ十分に出ないうちに、8%増税を決めざるを得なかった安倍政権、中国の脅威がはっきりしているにもかかわらず、安保法制の改定に拒絶反応を示す日本の野党や左翼の有様をみて、やはり西洋の自由民主主義は「アジア人」には向いていないとの確信を深めたことでしよう。 
日本政権与党が独裁政権であれば、自国経済が疲弊するデフレ・円高政策などそもそも最初から絶対に実行させず、誰が反対しようが鶴の一声で金融緩和、積極財政を行い、無用なデフレ・円高など発生させなかったと考えたことでしょう。にもかかわらず、平成14年には、8%増税をして、さらに 10%増税をするのが当然とする日本の識者や、マスコミの有様をみて、その馬鹿さ加減呆れはてたと思います。 
そうして、シンガポールは無論のこと、国連憲章でも認められ、西欧の自由主義的価値観からも、人権と同じように、自由権として、認められてるいる集団的自衛権など、最初から何の躊躇もなく行使する道を選ぶのが当たり前と考えたことでしょう。それすら、すぐに実行できない日本の状況にも呆れ果てたことでしょう。 
リー・クアンユーからすれば、アジアにおいは、人権は制限するのは当たり前としても、集団的自衛権を自由に行使することを制限するのが当然とする、日本の野党や左翼の存在や与党の中にもそのような者が存在する日本の状況をみて、やはり、アジア人である日本人にも西洋の自由主義など全く理解できず、土台無理であるとさらに自信を深めたことでしょう。 
ところで、リー・クアンユー氏は、今年の3月23日に亡くなっています。安部総理は、昨年の12月に10%増税を阻止することを公約の大きな柱として、衆院を解散して、選挙をすることを決定し、それを実行して、選挙で大勝利をしています。 
これは、戦後初で総理大臣が財務省(旧大蔵省)に真正面から挑み、勝利したということで、一部の識者からは高く評価されいます。そうして、安部総理はこの選挙のときにも、集団的自衛権行使を含む、安保法制の改正を公約に盛り込んでいました。 
この有様を見て、リー・クアンユー氏はひょっとすると、日本は独裁政権でなくとも、まともな国に変わるかもしれないと思ったかもしれません。しかし、これは何とも言えません。なにしろ、亡くなったのが、3月ですから、この状況を把握していなかったかもしれません。 
もし、リー・クアンユー氏があと1、2年長生きをしていたら、日本の今の有様を見て、同じアジアにおいても、ひよっとすると日本においては、西欧型の自由主義は成り立つかもしれないので、しばらく様子を見てみようと考えを変えたかもしれません。
リー・クアンユー氏は、 西洋の自由民主主義は、「アジア人」には向いていないとは述べていました。アジア人は、個人の利益よりも集団の利益を上に置く考え方に慣れていると主張しました。生来、権力者に対して従順で、こうした傾向はアジアの歴史に深く根差す「アジア的価値観」なのだと主張していました。

これは、今日の韓国をみているとよくわかるような気がします。韓国で独裁制が終焉し、民主化がなされてから、最初のうちはまだ良かったのですが、最近ではどんどん北朝鮮に浸食されて、今まさに韓国に親北政権が生まれようとしています。

金大中氏は2009年に亡くなっています。もし、あの世というものがあったとして、後から来たリー・クアンユー氏と会話ができたとすれば、今頃金大中氏は、以下のようリー・クアンユー氏に語るかもしれません。

「やはり、リー氏の言ったことが正しかったようです。韓国人にも西洋の自由民主主義はむいていないようです、結局のところ韓国の今の動きを止めるには、現状では軍による戒厳令の発動しかありません。

しかし、それは一時的なものにすぎません、結局韓国に再度独裁軍事政権を成立させなければ、結局北朝鮮に飲み込まれてしまうだけです」

まさに今の韓国はこのような有様であり、リー・クアンユー氏の予言があたったような形です。中国、北朝鮮、韓国も自由民主主義は成り立たないのかもしれません。

そうして、日本でも呉善花氏が「こんな厳しい国際情勢が目の前にあるのに、日本の国会は能天気に何を議論しているのやらと不安になります」と指摘しているように、森友問題で無駄な時間を費やし、目前に迫っているかもしれない北朝鮮工作員の日本国内でのテロの脅威など全く目に入らないかのように野党はテロ等対策法には真向から反対しています。

そうして、昨日も以下のような報道がありました。
【テロ等準備罪】テロ準備罪めぐり誤認・扇動…野党が空騒ぎ 草野球チームも対象に…死んでいない限り共謀など
SEALDsの元メンバーらが結成した新団体「未来のための公共」の初集会=3月17日夜、国会前
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部引用します。
 共謀罪の構成要件を厳格化した「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案をめぐり、民進党や共産党など野党4党が事実に基づかない曲解や意図的な扇動で批判を強めている。改正案の問題点を突くのが野党の役割とはいえ、ミサイル発射を強行する北朝鮮情勢などが緊迫する中で、国会議員として無頓着な“空騒ぎ”に映る。(田中一世、酒井充) 
 7日夜、国会前で改正案に反対する集会が開かれた。主催は、安全保障関連法に反対し、昨年解散したグループ「SEALDs(シールズ)」の元メンバーの大学生らによる「未来のための公共」。ラップ調で「共謀罪は絶対反対!」などの絶叫が響く中、民進党の江崎孝参院議員がマイクを握り、こう訴えた。 
 「共謀罪を許してしまえば、この国の自由を奪うに違いない」 
 「皆さん方一人一人がもう監視の対象になっている」 
 既に国民全員が監視対象になっているという驚くべき発言に、異を唱える人はいなかった。むしろ「そうだ!」との声が上がり、江崎氏は「共謀罪廃案」に向け「命がけで戦う」と宣言した。社民党の福島瑞穂副党首が続いて発言した。 
 「人と相談し、社会をなんとか変えようとすることが、なんで犯罪になるのか」 
 相談だけで犯罪になることはあり得ず、改正案の趣旨をねじ曲げた解釈だ。共産党の岩渕友参院議員も「犯罪行為がなくても、相談しただけで処罰される恐れがある」と断定した上で次のように強調した。
このような、人たちは集団的自衛権の行使を含む安保法制のときも大反対しました。北朝鮮の暴発があったときには、この安保法制が効力を発揮することでしょう。北朝鮮工作員はによるテロの脅威や、東京オリンピックのときにもテロ対策は完璧にしなければなりません。

今回のテロ等準備罪にあたるような法律は、世界中の他の国々にも存在します。日本だけが存在しません。このようなことでは、テロの脅威に十分対応できません。

まさに、これらの人たち行動は、まるで今の韓国の有様のようです。これらの人々は、リー・クアンユー氏の言うように、まさに西欧的な自由民主主義は無理なのだと思います。

しかし、リー・クアンユー氏の予測は外れている側面もあります。それは、これらの頭がお花畑状態にある人々は、ごく少数であるということです。過去には、テレビなどが頻繁に報道したので、さも多く存在するように見えただけです。

特に、若い世代は安倍政権に賛成する人が多いです、一方頭がお花畑状態の人たちが支援する民進党政権などの野党支持者などはシルバー世代が多いです。特に、民進党はシルバー世代の支持者が多いです。

このまま、時がすぎれば、シルバー世代とともに、野党は消え去るか、お花畑をやめるしかないです。

日本は、歴史的にみても、他のアジアの国々とは違い西欧列強に植民地にされたことはありません。戦争に負けても、驚異的に発展して、先進国に仲間入りしました。

世界でもこのような事例はありません。発展途上国から先進国になった事例は、日本だけです。中国は未だ発展途上国です。一方、アルゼンチンは、日本とは逆に先進国から発展途上国になったただ一つの事例です。

このような歴史を持つ日本は、やはり韓国とは違います。いずれ、リー・クアンユー氏の予測とは異なり、「日本はゆっくりと凡庸になっていく」ことはないでしょう。

韓国は、急速に凡庸なアジアの一独裁国家の北朝鮮に飲み込まれることになるでしょう。中国も、図体が大きいだけのアジアの凡庸な一独裁国家に成り果てることでしょう。

そうして、両国とも先進国になることなく、中進国の罠にどっぷりとはまり、先進国になるそこねた国々として、後世の歴史にしるされることになるでしょう。

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2017年4月7日金曜日

米中会談、習氏土下座懇願 権力闘争も臨戦態勢 河添恵子氏緊急リポート―【私の論評】米による北の外科手術と正恩斬首を黙認する習近平?

米中会談、習氏土下座懇願 権力闘争も臨戦態勢 河添恵子氏緊急リポート

習近平
 ドナルド・トランプ大統領と、中国の習近平国家主席による米中首脳会談が6、7日、米フロリダ州パームビーチで開かれる。最大の焦点は、弾道ミサイルの発射に続き、「6回目の核実験」をチラつかせる、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮への対応だ。中国の動向が注目されるが、何と、正恩氏の強硬姿勢の裏には、中国共産党最高指導部の暗闘が潜んでいるという。「北朝鮮崩壊」を見据えた、安倍晋三首相とトランプ氏の日米首脳電話会談。習氏は、トランプ氏の「斬首作戦」「限定空爆」を黙認することで、「命乞い」するのか。ノンフィクション作家、河添恵子氏による衝撃の緊急リポート。

 結論から言えば、習氏には、正恩氏の軍事的暴発を阻止する力はない。

 なぜなら、金王朝(北朝鮮)との関係は、現在の「チャイナセブン」(=中国共産党最高指導部、中央政治局常務委員7人)の序列3位で、「朝鮮エキスパート」である張徳江・全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員長ら、江沢民派が掌握しているからだ。

張徳江・全国人民代表大会常務委員長
 江沢民派は別名「上海閥」と呼ばれる。だが、中華人民共和国の建国(1949年)から間もないころの江氏のキャリアは、北朝鮮に隣接する中国北東部・吉林省(省都・長春市)にある。

 江氏は50年代、長春第一汽車製造廠(自動車製造工場)に勤務し、モスクワのスターリン自動車工場で研修を受けた。江氏は昇格していく段階で、前出の張氏をドンとする「吉林バン」(ジーリンバン)を形成する。吉林省の幹部を、次々と高級幹部候補に抜擢(ばってき)していったのだ。

 張氏は中国・延辺大学朝鮮語学部で学び、北朝鮮・金日成総合大学経済学部に留学しており、朝鮮語が巧みだ。

 そして、江氏が国家主席就任翌年の1990年3月、初の外遊先は「兄弟国」の北朝鮮だった。金正日(キム・ジョンイル)総書記と会談した際に、張氏が通訳を務めた。正日氏が2006年1月に中国・広東州大学街を視察した際も、当時、広東省委員会書記だった張氏が随行し、江氏は同伴している。

 中朝友好協力相互援助条約の締結50周年を記念して、11年7月、中国から中朝友好協会や中国人民対外友好協会などが訪朝し、正日氏と後継者の正恩氏と面会した。このときも、親善代表団を引率したのは副首相だった張氏である。

江沢民(左)と金正日(右)
 金王朝との2代にわたる緊密な関係を築き、「金(正日)の中国の代理人」の異名まで持っていた張氏は、現政権で序列3位にまで昇格した。

 習政権は「(南北)朝鮮半島の植民地化」を目指して船出した。ただ、習氏は相性が悪い北朝鮮との関係を半ば放棄するかたちで、朴槿恵(パク・クネ)大統領(当時、現容疑者)率いる韓国の属国化に動いた。2015年9月、北京の天安門広場で行われた「抗日戦勝70年」の記念式典と軍事パレードで、朴氏は“異例の厚遇”を受けた。しかし、朴氏は昨年7月、米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備を決めた。つまり、習氏が主導した朝鮮半島工作は失敗したのだ。

 それだけではない。張氏は一昨年6月、韓国大統領選(5月9日投開票)の世論調査でトップを走る、最大野党「共に民主党」の公認候補、文在寅(ムン・ジェイン)前代表とも面談している。文氏は「親北・反日」で知られる人物だ。

 もう1つ注目すべきは、中国人民解放軍の再編である。

 中国は昨年2月、7大軍区から5大戦区に再編された。だが、習氏の「5大戦区すべてを北京で管轄したい」という思惑はかなわなかった。

 逆に、正日氏が生前、何度も訪れている張氏のテリトリー、中国北東部を管轄する旧瀋陽軍区は「北部戦区」となって拡大増強したのだ。

 中国国内外の軍事専門家の間では「瀋陽軍区が正恩体制を支援している」「中国の核開発拠点は成都軍区だが、瀋陽軍区が北朝鮮とともに核開発を進めていた」「食糧もエネルギーも瀋陽軍区や遼寧省の国境町、丹東市周辺の軍産企業から北朝鮮へ流れている」というのが一致した見解だ。

 習一派はここ数年、李克強首相ら共産主義青年団派(共青団派)とも結託しながら、朝鮮半島につながる江沢民派の企業摘発と責任者逮捕、東北3省の幹部の首のすげ替えなどに邁進(まいしん)してきた。その結果、中国は現在、想像を絶する事態に直面している。

 北朝鮮の弾道ミサイルは、米国や日本だけでなく、習氏がいる北京も射程に入れている。中南海(=中国政府や中国共産党の本部がある北京の中心部)への核・ミサイル攻撃や、金正男(キム・ジョンナム)氏暗殺事件と同じ、猛毒の神経ガスVXなどの生物化学兵器攻撃の危険性が高まっているのだ。

 中国一党独裁政権-。この表看板はメッキのごとく剥げ落ちた。北朝鮮の強硬姿勢の「核・ミサイル恫喝」の陰で、「習一派と江沢民派との権力闘争」は、朝鮮半島の38度線にも匹敵する臨戦態勢といえる。

とすれば、習氏は米国へ密かに「命乞い」するしかない。

河添恵子(かわそえ・けいこ)

【私の論評】米による北の外科手術と正恩斬首を黙認する習近平?

北朝鮮が今月5日強行した弾道ミサイルの発射の内容

北朝鮮が5日強行した弾道ミサイルの発射は、米中首脳会談に衝撃を与えました。北朝鮮「単独解決」に傾いている米国と、中国のメンツを省みない北朝鮮の強硬姿勢の間で、習近平国家主席は窮地に立たされ会談に臨みました。

両者は約1時間、双方の夫人と通訳のみで会談した後、夕食会を開きましたた。米政府関係者によると、会談でトランプ氏は習氏に対し、北朝鮮の対外貿易の約9割を占める中国に対し、圧力を強めるよう要求。中国が協力しない場合は、米政府が独自に北朝鮮と取引がある中国企業を制裁対象に加える新たな政策を検討していることを伝えたといいます。

トランプ氏は夕食会の冒頭、習氏のそばで「我々はすでに長く話し合ってきているが、私はまだ何も得ていない。全く何もだ」と強調。トランプ氏の要請に対し、習氏が同調しなかったことにいらだちを見せました。

そうして、米軍のシリアへのミサイル攻撃が、米中首脳の夕食会とほぼ同時に行われたことで、習近平国家主席は、トランプ大統領との会談議題である北朝鮮の核・ミサイル開発阻止をめぐっても、同様の結末が中朝国境を流れる鴨緑江の対岸で現実に起き得ることを認識せざるを得なくなりました。

米軍によるシリアへのミサイル攻撃
一方、中国国営新華社通信によると、習氏はこうした双方の意見が異なる敏感な問題について「適切に処理し、建設的に管理しなければならない」とかわしました。さらに米側が批判を強めている対中貿易赤字を意識し、「両国間で貿易や投資をさらに進め、インフラやエネルギー分野での協力を推進する」と訴えました。トランプ氏に年内の訪中を提案し、快諾を得たといいます。

また、新華社によると、習氏は「良好な中米関係は両国民だけでなく、世界に利益となる。関係を良くするには千の理由があるが、悪くする理由は一つもない」と述べ、まずは両国の関係改善という大きな方向性で一致を目指していく方針を強調しました。

一方トランプ米大統領は6日米中首脳会談に先立ち、米中会談のため滞在先の南部フロリダ州パームビーチで記者団に対し、アサド政権軍の飛行場への軍事攻撃を命じたと述べた上で、「化学兵器の拡散と使用を阻止し抑止することは、米国の安全保障にとり死活的に重要だ」と強調しました。

トランプ氏はまた、「アサド大統領の態度を変えさせようとする過去の試みは全て失敗し、そのせいで地域の不安定化が進んだ」と指摘。その上で国際社会に対し、「シリアでの流血を終わらせ、あらゆる形のテロを終結に導こう」と呼びかけました。

NBCテレビによると、米軍の攻撃では、シリア中部ホムスにある空軍基地が標的となりました。この基地は、化学兵器による空爆で使われたとみられています。


米国はシリアでイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)掃討作戦を展開しているが、アサド政権を対象にした直接攻撃は初めてです。

トランプ氏は6日、ティラーソン国務長官、マティス国防長官らと対抗措置を協議。米艦船から巡航ミサイルを発射し、レーダー施設などアサド政権軍の防空システムを破壊する案が検討されていたといいます。

米軍の攻撃に先立ち、ティラーソン氏は6日、ロシアに対してアサド政権への支援を見直すよう要求し、トランプ政権として対抗措置の検討に入ったと明らかにしていました。CNNテレビによると、米政府はロシア側に攻撃を事前に通告していたそうです。

それにしても、和やかな宴席が衝撃の舞台に急転した例は、中国の史書に多く登場しています。明の永楽帝が帝位を奪取したクーデターも朝廷の役人と宴会中に突然、役人を斬殺したことが始まりでした。

米中首脳の夕食会は予定通り終了したのですが、習氏の心中はどうだったのでしょうか。北朝鮮の弾道ミサイルが北京なども射程に収め、朝鮮労働党指導部が中国に反感を抱く現状は、中国の安全保障を脅かすレベルです。

会談を前に、中国の対米安保専門家の間では、米国の「外科手術」との言葉が頻繁(ひんぱん)に交わされ始めていました。中朝国境付近に多い北朝鮮の核・ミサイル関連施設に対して、米軍が精密誘導兵器によるピンポイント爆撃を加える可能性が「現実味を帯びた」との認識です。

中国は「朝鮮半島の非核化」を掲げつつも、緩衝地帯として北朝鮮を存続させる必要から、労働党政権を追い詰めきませんでした。

米中間では、2013年6月に行われた習氏とオバマ前大統領の初会談でも北の核開発阻止を「米中の共通目標」と表明していました。今まさに4年後の現実が習氏の眼前に突きつけられています。

ところが、王毅・中国外相は、北の大量破壊兵器開発と米韓軍事演習を同列において「同時停止」を提案するなど、なおも“内科治療”での対話解決をめざしています。

中国側は「核問題の主要当事者は米朝だ」(王氏)という逃げ腰で首脳会談に臨みましたが、逆に米朝の強硬姿勢の板挟みで会談を迎える事態となりました。

王毅・中国外相
そうして、北朝鮮による会談直前を狙ったミサイル発射で、米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備をめぐる中国の反発は、さらに説得力を失った形になりました。

外交筋は「この状況認識が準備不足の中で対米会談に応じた主な理由だ」と指摘しています。ただ、中国が北朝鮮への米軍攻撃を認めれば、同国を緩衝地帯としてきた朝鮮戦争以来の安保指針が揺らぐことになります。

訪米に先立ち、習氏は「主権や領土、核心的利益の相互尊重」を表明。訪米を前に強硬手段への難色を米側に示唆した形となっていました。北朝鮮問題で、会談では米の強硬策と中国の実効的な制裁をめぐる米中の駆け引きが見込まれます。

米のシリア攻撃という「宴席の衝撃」は、さらに習近平を追い詰めた可能性があります。習近平は、北朝鮮問題で米国と一定の合意が形成されたとしても、張徳江のような強いパイプを持っているわけではないので、北朝鮮の暴走を止めることはできません。

その状況で、江沢民派との権力闘争を勝利に導かなければなりません。中国共産党大会を控え、習氏は米への弱腰を国内には見せられません。もともと強硬論の強い軍部も対米硬化を深めることは確実であり、中国の軍拡はさらに強まることも懸念されます。

そうして、ブログ冒頭の中国通の河添恵子氏の記事に"北朝鮮の強硬姿勢の「核・ミサイル恫喝」の陰で、「習一派と江沢民派との権力闘争」は、朝鮮半島の38度線にも匹敵する臨戦態勢といえる。とすれば、習氏は米国へ密かに「命乞い」するしかない"とあります。

これだけ、権力闘争が激烈になれば、習近平としては、北朝鮮という江沢民派と強く結びついた、不安要素を一つでも減らしたいと望んでいるかもしれません。

それに関するヒントになるような記事を昨年台湾メディアが報じています。台湾中国時報は昨年9月18日、外交関係者と学者の言葉を引用し、「すでに中国政府は北朝鮮が崩壊しないという前提のもと『金正恩(キム・ジョンウン)除去』策略を完成し、該当計画には米国が北朝鮮の核兵器施設に対する『外科手術式』打撃と金正恩委員長を除去する『斬首作戦』を黙認するという内容も含まれている」と報じました。

中国外交消息筋は「米国のオバマ政権は今年初めに北朝鮮核施設打撃計画を出したが、中国の反対で確定できなかった」とし「しかし北朝鮮が9日、豊渓里(プンゲリ)核実験場で5回目の核実験を敢行し、実戦配備を控えて中国の立場が変わった」と説明しました。

今回の会談では、この中国政府=習近平の米国による外科手術と、斬首作戦の黙認が、習近平に確認されることになるかもしれません。ただし、これは、直接表に出ることはないかもしれません。

これによって、北朝鮮には江沢民派に近い、金正恩に変わって、習近平に近い指導者が生まれるかもしれません。そうなると、習近平が北朝鮮を御しやすくなります。そうなると、権力闘争で習近平に有利な状況が展開されることも予想されます。

米国による外科手術と斬首作戦は、トランプ大統領と習近平の双方にとって、利益をもたらすことになりそうです。

トランプ大統領にとっても、まずは北朝鮮問題を解決して、今度は南シナ海問題を解消しようとしていると考えられます。

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2017年4月6日木曜日

失業率2%台で油断するな! 賃金の本格上昇にまだ時間、追加金融緩和でより力強く―【私の論評】反リフレ・アベノミクス派につけ入る隙を与えるな(゚д゚)!

失業率2%台で油断するな! 賃金の本格上昇にまだ時間、追加金融緩和でより力強く

 2月の完全失業率が2・8%と、22年ぶりに2%台となった。この結果はもちろん喜ばしいが、今後も低位に安定するかどうかについては、数カ月間の観察を要する。

 筆者は、これ以上下げにくいとされる「構造失業率」を2・7%程度と推計してきたが、これは、きっちり2・7%が下限になるという精密科学のようなものではなく、2・7%程度のところに長期的に超えられない岩盤があるという意味である。したがって、今の失業率がその岩盤近くになっているのかどうかは、ちょっと観察が必要だ。

 一方、日銀が長い間主張していた「構造失業率は3%半ばである」というのは、間違っていたといえる。日銀の物価リポートなどでは「構造失業率が3%半ば」という主張は本文への記載から注釈に格下げされるなど、徐々に強調されなくなってきたが、これを機にフェードアウトしてもらいたいものだ。そして、日銀が構造失業率をいまもその程度と考えているのかを明らかにすべきだろう。

 もっとも、今の方向としては、失業率が構造失業率に近づきつつあるのは、ほぼ間違いないだろう。これは日銀が金融緩和を継続しているからである。

 そして、賃金も各業種において徐々に上がりつつある。非正規労働者のアルバイトでは多くの業種で既に高くなっているようだが、正社員の給与に伝播するにはちょっと時間を要する。少なくとも、正社員の賃金については、実質的に春闘が終わったばかりなので、上昇のチャンスはあと1年待つしかない。

 今年の春闘でも、正社員の賃上げ額は昨年をわずかに下回ったが、中小企業では、昨年を上回る水準になっている。3月29日までに1954の労働組合の交渉結果を連合がまとめたものによれば、正社員の賃上げ額は、ベースアップと定期昇給を合わせて平均で月額6147円で、昨年同時期を92円下回った。このうち、従業員300人未満の中小企業では、月額4971円と昨年を17円上回った。

 日銀は、今の金利管理政策を最善だと思っているようだ。たしかに金融は緩和基調であり、失業率も低下傾向になっているのはいいことだ。

 ただし、失業率と表裏一体の関係にあるインフレ率は上がっていない。2月のインフレ率を前年同月比でみると、消費者物価総合が0・3%、生鮮食品を除く総合が0・2%、生鮮食品及びエネルギーを除く総合が0・1%にとどまっている。もちろん、失業率が下がってインフレ率が上がっていないのは悪いことではないが、もう少しインフレ率が高ければ、経済はより力強くなるだろう。

 今の金融緩和をもう少し強化できないだろうか。そうすれば、少しインフレ率は高まり、安定的に3%を切る失業率が達成できるだろう。

 今一段の金融緩和は、賃金上昇をさらにもたらす可能性もあり、経営者には不評だろう。だが、日本経済には必要だ。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】反リフレ・アベノミクス派に付け入る隙を与えるな(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事で、高橋洋一氏が指摘している構造失業率に関しては、このブログでもその意味や過去の推移を掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
日銀 大規模な金融緩和策 維持を決定―【私の論評】日銀は批判を恐れずなるべくはやく追加金融緩和を実行せよ(゚д゚)!


この記事は、2016年6月16日のものです。以下にこの記事から、構造失業率に関する部分のみを引用します。

"

構造的失業率などについて以下に簡単に解説しておきます。

総務省では、失業を発生原因によって、「需要不足失業」、「構造的失業」、「摩擦的失業」の3つに分類しています。 
  • 需要不足失業―景気後退期に労働需要(雇用の受け皿)が減少することにより生じる失業 
  • 構造的失業―企業が求める人材と求職者の持っている特性(職業能力や年齢)などが異なることにより生じる失業 
  • 摩擦的失業―企業と求職者の互いの情報が不完全であるため、両者が相手を探すのに時間がかかることによる失業(一時的に発生する失業)
日銀は、構造失業率が3%台前半で、直近の完全失業率(4月時点で3・2%)から下がらないので、これ以上金融緩和の必要がないという考えが主流のようです。

過去の失業率をみてみると、以下のような状況です。

過去20年近くは、デフレなどの影響があったので、あまり参考にならないと思ういます。それより前の過去の失業率をみると、最低では2%程度のときもありました。過去の日本では、3%を超えると失業率が高くなったとみられていました。

このことを考えると、日本の構造失業率は3%を切る2.7%程度ではないかと考えられます。

であるとすれば、現在の完全失業率3.2%ですから、まだ失業率は下げられると考えます。だとすれば、さらに金融緩和をすべきでした。

しかし、日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は、すでに実際の失業率が構造失業率に近い水準まで下がっているのに、なぜ賃金が上昇しないのか、疑問を持っていたようです。にもかかわらず、今回は追加金融緩和を見送ってしまいました。
"

高橋洋一氏の記事にもあるように、昨年6月時点での日銀の構造失業率が3%台前半という見立ては、間違いであることが、今回実証されたわけです。

以下に、日経新聞の経済指標ダッシュボードから消費者物価指数の推移のグラフを掲載します。


上の高橋氏の記事には、2月末消費者物価の前年比は、0.3%となっていますが、日経の資料では0.2%です。統計のとりかたが違うのか、実測値と予測値の差異なのか、よくわかりませんが、このくらいだと誤差の範囲です。どのみち、かなり低い伸びであることには代わりありません。

上のグラフをみると、消費者物価指数が2014年度からそれまで、かなり順調に上昇していた物価が、下がり始めています。これは、無論8%増税の悪影響です。しかし、この悪影響も2016年から17年にかけて上昇しつつあります。

やはりさらに金融緩和を継続する必要があります。もし、日銀が昨年時点で追加金融緩和に踏み切っていれば、もっとはやくに失業率が3%台をきり、インフレ率もあがっていたことでしょう。

このように、日銀がグズグスしていて、物価目標がなかなか達成できないのと、実質賃金があまりあがらないことから、反リフレ派や、反アベノミクス派に、リフレやアベノミックスは失敗だったなどと論評されるなど、つけいる隙を与えてしまっています。

無論、反リフレ・アベノミクス派の論点は、すべて論破できる程度の幼稚なものですが、それにしてもそれに引きづられる政治家やメディア関係者も多数存在するのですから、日銀としては、これを牽制するためにも、さらなる追加金融緩和を実行していただきたいものです。

今からでも、遅くないです。日銀は、追加金融緩和を実行して、早期に物価目標ならびに、実質賃金の力強い上昇による、日本経済の復活を目指していただきたいです。

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2017年4月5日水曜日

北朝鮮「テロ支援国家」再指定なら金正恩氏の「破れかぶれ」が加速する―【私の論評】北が日本に報復の場合、野党はそれを政治利用する?

北朝鮮「テロ支援国家」再指定なら金正恩氏の「破れかぶれ」が加速する

高英起 | デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

金正恩

米下院は3日、北朝鮮をテロ支援国家に再指定するよう求める法案を圧倒的な賛成多数(賛成394:反対1)で可決した。法案は今後、上院を通過し、大統領が署名すれば成立する。

可決後、法案を発議したテキサス州選出のテッド・フォー議員は金正恩党委員長を「Little Kim(キムの坊や)」と呼んで小馬鹿にし、敵意をむき出しにした。

法案の内容は、ティラーソン国務長官に対し法案成立から90日以内に北朝鮮がテロ支援国家の要件を満たしているかどうかを調査し、議会に報告することを求めるものだ。

その後、再指定を求める声はあちこちで上がっていたが、北朝鮮と対立を深めたオバマ前政権下においても、その要求は通らなかった。理由はいくつかあるが、北朝鮮が現在進行形でテロに関わっている具体的な証拠がなかったこともそのひとつだろう。

しかし、金正恩氏の異母兄・金正男(キム・ジョンナム)氏殺害の背後に北朝鮮がいるのは確実と見られている上、同事件で化学兵器の神経剤VXが使用されたこともあり、トランプ政権ならば、この法案が成立することは十分にあり得る。

北朝鮮は1988年1月から米国政府によりテロ支援国家に指定されていたが、核問題をめぐる6者協議の進展を受けて2008年10月に解除された。当初は米朝関係改善の足掛かりになるとの見方もあったが、結局のところ、状況に対した変化は起きなかった。米国は北朝鮮に対して多数の法律で何重にも制裁をかけており、ひとつを解除しただけではほとんど意味がないのだ。

そこで2009年7月、オバマ前政権のクリントン国務長官(当時)は次のような提案を行った。

「完全かつ後戻りできない非核化に同意すれば、米国と関係国は北朝鮮に対してインセンティブ・パッケージを与えるつもりだ。これには(米朝)国交正常化が含まれるだろう」

インセンティブ・パッケージとは、米国が国交正常化、体制保障、経済・エネルギー支援などを、北朝鮮は核開発プログラム、核関連施設はもちろん、ミサイルなどすべての交渉材料をテーブルに載せ、大規模な合意を目指すことを念頭に置いていたものとみられる。

ところが、北朝鮮はこれにも乗らなかった。理由はおそらく、人権問題である。米国にはブッシュ政権時代に出来た、北朝鮮人権法という法律がある。日本人拉致問題も含め、北朝鮮の人権状況が改善されない限り、米国から北朝鮮への人道支援以外の援助を禁止すると定めたものだ。

恐怖政治で国民を支配する北朝鮮の体制にとって、人権問題は体制の根幹に触れるものであり、交渉のテーブルに乗せることなどできるはずがない。

(参考記事:謎に包まれた北朝鮮「公開処刑」の実態…元執行人が証言「死刑囚は鬼の形相で息絶えた」

同じ理由から、仮にテロ支援国家に再指定されたとしても、正恩氏はさして痛痒を感じない可能性がある。北朝鮮の人権侵害は、正恩氏の時代になって悪化している部分もあり、「人道に対する罪」に問われかねない立場にある同氏は、国際社会に華々しくデビューすることなどかなわなくなっているのだ。

(参考記事:「家族もろとも銃殺」「機関銃で粉々に」…残忍さを増す北朝鮮の粛清現場を衛星画像が確認

正恩氏がその状況を理解しているのならば、「テロ支援国家だろうが何だろうが、好きにしやがれ」という心境であるはずなのだ。そしてそうでなければ、衆人環視の中で兄を殺させるようなことはしないだろう。

こう考えてくると、正男氏殺害は核兵器開発や弾道ミサイル発射と同じく、正恩氏の「あきらめ」あるいは「破れかぶれ」による暴走だったとも見ることができる。

いずれにせよ、北朝鮮がテロ支援国家に再指定されれば、正恩氏の暴走は拍車がかかる可能性がある。米国の政治家はこのことをよく考え、正恩氏の暴走に対する「次の一手」を用意しつつ行動してもらいたい。

【私の論評】北が日本に報復の場合、野党はそれを政局利用する?

北朝鮮国営の朝鮮中央通信は4日、米国下院外交委員会所属の議員らが発議した従来の北朝鮮に対する制裁法をさらに強化した法案に対して、「日増しに非常に強化されるわが共和国の政治的・軍事的威力にあわてふためいた者らのたわいない妄動」と非難する論評を配信しました。

論評は、「敗れた制裁の太鼓をいくら力いっぱい叩いてもまともな音が出るはずがない。 米帝の『制裁万能論』はこの地ですでに粉みじんになり、敵対勢力内でまで対朝鮮『制裁無用論』が台頭しているのが厳然たる現実である」と主張しました。
また、「敵対勢力が決めておいた『時限』内にわれわれは地対地中・長距離戦略弾道ロケット『火星10』の試射、戦略潜水艦弾道弾水中試射、新型の静止衛星運搬ロケット用大出力エンジンの地上噴出実験、核弾頭爆発実験の相次ぐ大成功で世界を驚かし、核強国の威容を全世界に誇示した」と強調しました。
さらに、「領土があり、党と共和国政府があり、この地に流れる水と空気だけあれば、いかなる制裁・圧迫も粉砕し、自力自強で強盛復興することができるということがわが軍隊と人民の信念、意志である」としながら「われわれには、制裁が絶対に通じない。米国には『新しい法案』が必要であるのではなく、新しい思考、新しい戦略が必要である」と述べたまし。
新しい思考と戦略が必要である 朝鮮中央通信社論評 
【平壌4月4日発朝鮮中央通信】最近、米議会下院が「対北朝鮮取引関連制裁強化法案」を通過させようとしている。 
わが国を国際金融システムから完全に排除しようとする悪らつな目的を追求することを骨子とするこの「法案」は、米国の旧態依然とした反共和国制裁圧殺策動の連続として、別に新しいものではない。 
にもかかわらず、何らの意義でもあるかのように採択劇を考案して奔走するのは、日増しに非常に強化されるわが共和国の政治的・軍事的威力にあわてふためいた者らのたわいない妄動としかほかには見られない。 
特に、問題の「法案」が対朝鮮政策で完全な失敗を自認した前オバマ行政府時期の「2016年対北朝鮮制裁および政策強化法」を修正、補充してつくられたという事実は、米国が窮余の策に執着しているということを自らさらけ出したことになる。 
しかし、敗れた制裁の太鼓をいくら力いっぱい叩いてもまともな音が出るはずがない。 米帝の「制裁万能論」はこの地ですでに粉みじんになり、敵対勢力内でまで対朝鮮「制裁無用論」が台頭しているのが厳然たる現実である。
破たんしきった「制裁強化」騒動で名実相伴う核保有国の政治的・軍事的威信を阻んでみるということ以上に無駄な妄想はない。 
米帝とその追随勢力が昨年3月、新しい「制裁決議」を作り上げて未曾有の制裁を加えれば6カ月内にわれわれが屈すると豪語したが、その判断がいかに愚かだったのかを振り返ってみろ。 
まさに、敵対勢力が決めておいた「時限」内にわれわれは地対地中・長距離戦略弾道ロケット「火星10」の試射、戦略潜水艦弾道弾水中試射、新型の静止衛星運搬ロケット用大出力エンジンの地上噴出実験、核弾頭爆発実験の相次ぐ大成功で世界を驚かし、核強国の威容を全世界に誇示した。
勇ましい挑戦中央通信社論評なのですが、北朝鮮が国際金融システムから完全に排除されることをかなり恐れていることが、にじみでています。

再度テロ支援国家に再指定された場合には、確かに北朝鮮は核開発どころではなくなります。

アジア大会でのシンクロ北朝鮮チームの演技
北朝鮮の場合、核開発とはいっても国外から工作機械や部品などを購入しなければ、自国だけでは何もできません。北朝鮮のミサイル、核兵器は実は日本製と言っても良いくらのものです。

このことは、昨年の出来事をみても明らかです。北朝鮮のミサイル関連企業に関与した在日研究者が、再入国禁止の対象者とされたのです。

日本政府による北朝鮮への独自制裁で、訪朝後の再入国を原則禁止した在日本朝鮮人科学技術協会(科協)の5人のうち、1人はロケットエンジン開発の権威とされる東大出身の博士号を持つ研究者で、北朝鮮のミサイル関連企業に関わっていた。共同通信による公安関係者への取材で昨年の3月19日、明らかにされたのです。

公安関係者によると、これに関係する企業は北朝鮮の元山市にある「金剛原動機」で、ミサイルのエンジン開発に関与している疑いがあります。経済産業省は大量破壊兵器開発の懸念があるとして、機械や技術を輸出する場合には許可が必要となる「外国ユーザーリスト」に載せています。

このような事実からもわかるように、北朝鮮のミサイルや核兵器の開発の為に、日本国内にある在日社会と、その支援者が物心両面で広く手助けしたに違いないのです。

不思議なことに、日本社会が北朝鮮と在日社会の密接な繋がりを知りながら黙認し続けています。朝鮮総連も朝鮮学校も、何故かそのまま容認されているのです。

かつて北の二代目独裁者、金正日は、「在日朝鮮人の70%が、30兆円市場である日本のパチンコ産業に関わっており、その送金がわが国を支えている」とまで語っていたました(「日本のパチンコ産業が北朝鮮を支えている」…金正日会談議事録)。

日本はそれを放置し続け、ついに北朝鮮は核とミサイルを手にし、日本をその標的とし、いずれ米国をも標的内に収めようとしているのです。

今となっては、手遅れな感もありますが、この問題はなんとかすべきです。

金正恩がまともに論理的に合理的に物事を判断できれば良いのですが、「破れかぶれ」が加速すれば、何をするかわかったものではありません。

このブログにも掲載したように、米国が北朝鮮を攻撃をする可能性が高まっています。その場合、北朝鮮の報復の可能性は高いです。50万発の砲弾が韓国の首都ソウルに降り注ぐといわれていますし、日本には核ミサイルを打ち込むことも懸念されています。さらには、すでに日本に潜伏している北朝鮮の工作員が日本国内で、テロ活動を行う可能性もあります。

北朝鮮による砲撃訓練
そのような最中に、日本の国会では森友問題にばかり時間が割かれ、テロ等防止法の審議も遅れていますし、民進党をはじめとする野党はこれに反対するばかりです。そうして反対する目的は、安倍政権打倒です。

一体野党は、日本と日本人を守るという考えがあるのでしょうか。私が仮に彼らの立場なら、一触即発の北朝鮮情勢を踏まえて、この危機に備えるために、テロ等防止法の時限立法などを立案して、成立を急ぎ今そこにある危機に備えると思います。

このままだと、日本に北朝鮮のミサイルが打ち込まれたり、北の工作員がテロ活動を甚大な被害が出た場合野党は、安倍政権が悪いと糾弾し、政権打倒の道具にしようとするのではないでしょうか。恐ろしいことです。しかし、今のテロ等防止法などへの対応をみているとそのような雰囲気です。

そのようなことは、絶対にないと思いたいところですが、何でも政局に利用する最近の民進党をみていると、本当に人非人のような仕業をするのではないかと思えてきます。

米軍が北朝鮮を先制攻撃したとしても、日本にはほとんど北朝鮮の報復が及ばないということも十分にありえます。その反対に、北朝鮮の報復にあって、日本が甚大な被害にあったとしても、日本国がそれで消滅することはないです。日本はまた立ち直り、復興することになるでしょう。

いずれの場合においても、当面の脅威が過ぎ去るまで、私たちは政治の動きをしっかり見守り、駄目な政党、駄目な政治家のことをしっかり把握しておき次の選挙の判断材料にすべきです。

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2017年4月4日火曜日

米韓軍の最高機密軍事作戦が流出か 北がハッキング…過去最悪の被害 韓国メディア報道―【私の論評】米軍による北朝鮮攻撃は、首脳会談での習近平の対応いかんで決まる(゚д゚)!

米韓軍の最高機密軍事作戦が流出か 北がハッキング…過去最悪の被害 韓国メディア報道

3月6日、韓国の北朝鮮との国境線近くで、軍事訓練の準備を進める米軍の兵士ら
 韓国KBSテレビは3日、韓国軍の内部ネットワークに対する北朝鮮のハッキングで、朝鮮戦争が全面再開された際に適用となる米韓軍の軍事作戦「作戦計画5027」が流出していたと報じた。韓国政府関係者の話としている。

 同計画は最高機密とみられ、流出が事実なら韓国軍の受けた過去最悪のハッキング被害となり、米韓軍の展開に深刻な影響が及ぶ可能性がある。

 ハッキングは昨年9月に発生し、12月に発覚した。しかし、韓民求国防相は当時「深刻な影響をもたらすものではない」とし、被害は軽微だと主張していた。

 韓国政府関係者によると、最近になって軍内部の捜査機関が被害状況を国防相に報告したという。

 軍事筋や韓国メディアによると、作戦計画5027は北朝鮮の朝鮮人民軍の南侵による朝鮮戦争再開を想定し、1970年代から改定が重ねられてきた。

 米韓軍が陸上で北朝鮮の進撃をとどめて北上すると同時に、北朝鮮の日本海と黄海の東西両海岸に海兵隊を上陸させ、平壌一帯を制圧するとのシナリオとみられている。

【私の論評】米軍による北朝鮮攻撃は、首脳会談での習近平の対応いかんで決まる(゚д゚)!

朝鮮半島有事をめぐっては、在韓米軍はどう動くべきかについて、複数のシミュレーションが存在します。これに関する4つのコードとその簡単な説明を以下に掲載します。この他にもコードが存在しますが、現在実施される可能性があるものに絞ります。
5027:北朝鮮が韓国に侵攻した状況に対応する対応 
5029:クーデターや革命などが起こったさいの対応 
5030:必要物資を枯渇させて政変を起こさせる対応 
5015:北朝鮮の核・ミサイル基地への先制限定攻撃
5027については、ブログ冒頭の記事にも一部掲載されていますが、無論のこと詳細は示されていません。以下に防衛筋な、軍事評論家などによる推測を掲載しておきます。
まず北のレーダーをかいくぐってステルス型のB2爆撃機が、迎撃ミサイルの基地を爆撃して無力化する。続いてF22戦闘機が、レーダー施設を攻撃。これで敵の“目”を完全にふさぐ。米グアム基地からB52爆撃機、韓国軍もF15K戦闘機を発進させて北の軍事拠点に絨毯爆撃を仕掛ける。 
これに対抗する北の主力戦闘機はロシア製の「ミグ29」戦闘機。情報筋によると、実戦で使えるのは十数機で「北は米韓両軍の圧倒的な戦力差になすすべがない」(防衛筋)という。 
攻撃は空に留まらず、「日本海に展開するオハイオ級原潜から巡航ミサイル『トマホーク』が発射され、軍事拠点を狙う。海と空からの一斉攻撃が終わると、米韓連合の陸軍部隊が38度線を越えて平壌に向けて進軍する」。 
すべての作戦が終了して平壌が陥落するまでに「中国軍の(北への)加勢がなければ、長くても2週間程度。
5027に関しては、北朝鮮が韓国に侵攻した場合のコードです。以下に述べるように、これは今回米軍がトランプ大統領の決断によって実行しようとしているとみられる金正恩斬首作戦とは直接は関係ありません。

しかし、金正恩斬首を米軍が実行すれば、北朝鮮が韓国に侵攻する可能性は十分にあります。それに対する防衛措置が5027ですから、重要といえば重要です。しかし、私は今回漏れたのは、フェイク情報かもしれないと思っています。

オバマ大統領のときの昨年のこの情報が漏れたとされているときよりも前から、米軍は金正恩斬首作戦の準備を具体的に進めていました。そのような時期に、いくら韓国といえども米軍との関わりのある情報をやすやすとハッキングされるようなようなことはないと思います。

また、実際にハッキングされたとしても、これは軍事機密情報ですから、本来は発表しないのが当たり前だと思います。それをわざわざ発表するということは、そもそもハッキングされたのが、フェイク情報なのか、あるいは現時点ではハッキングされたとしても支障がない程度に「作戦計画5027」が改定されたからだと思います。

それよりも何よりも、最初からフェイク情報を流す目的で、北朝鮮に何があっても韓国に侵攻することを思いとどまらせるような、内容を流したのかもしれません。

5030についても、以下に簡単に掲載しておきます。これは以下のリンクから引用しました。詳細を知りたい方は、以下をご覧になってください。


以下に一部引用します。以下は、金正日が存命だったときのプランであり、金正日の名前もでてきますが、これは無論現在では金正恩と読み替えてください。
作戦計画5030は、北朝鮮の限定的な軍事資源を枯渇させ、金正日に対する軍事クーデターなどを誘発させる事態、あるいは最終的に金正日の「除去」に繋がる雰囲気を醸成させることを目的としており、「撹乱工作作戦」と呼ぶべきものである。 
こうした謀略工作は、かつてはCIA(米中央情報局)が担当していたが、作戦計画5030の特長は、謀略工作を軍事オペレーションとして組み込み、DIA(米国防情報局)が主体となって軍が実施することにある。以下はその工作内容である。 
(1) 食糧、水、及びその他の戦時備蓄を枯渇させる目的で軍事演習を実施
(2) スクランブルにより貴重な航空燃料を消費させる目的で頻繁な偵察飛行を実施
(3) 戦略的な偽情報により内部混乱を助長
(4) 政権中枢の幹部たちの亡命を積極的に支援
(5) 金正日の資金源を壊滅させる目的で外貨の流入径路を遮断(合法措置) 
戦闘ではなく謀略によって、北朝鮮の金正日独裁体制を瓦解させるのが、作戦計画5030の特徴である。実際、米軍の撹乱工作である作戦計画5030により、金正 日に対する攻撃作戦はすでに開始されている。 
ブッシュ大統領は、戦争ではなく謀略 によって「危険な男」を除去しようとしているようである。また、作戦計画5026 と5030を統合することによって、金正日個人をピンポイント攻撃できる態勢は、 すでに整っていると思われる。外交交渉の場で金正日が国際協約を無視するような態 度に出れば、国際世論の後押しを受けて、金正日の抹殺という選択肢もあり得るのか もしれない。
5015は、2015年6月に策定されています。その内容について、ジャーナリストの山口敬之氏は、『週刊文春』3月30日号で、次のように説明していま。
 これは(5015)は、最新兵器の特性を活用した核・ミサイル基地への先制攻撃や指導部の排除も含まれる作戦だ。軍事施設を徹底的に破壊するため、攻撃対象は700ヵ所に上り、いずれも基本的に壊滅させることが求められている。ミサイルや特殊爆薬で爆撃しては、攻撃の成果を偵察機で検証し、必要ならば再攻撃を仕掛ける。攻撃完了には数週間から数ヶ月からかかると見られる。──『週刊文春』3月30日号より
現在、トランプ大統領が実行しようとしている軍事作戦は、以上のどの作戦コードとも違うようです。

作戦の目的は、5015の目的である北朝鮮の核・ミサイル基地への限定攻撃ではなく金正恩委員長の「司令部システム」への限定攻撃です。したがって、攻撃対象は5015でいう700ヵ所ではなく、20~40ヵ所に過ぎないのです。司令部システムへの限定攻撃で狙うのは、あくまで金正恩委員長自身であり、いわゆる「金正恩斬首」なのです。金委員長による「核による断末魔の反撃」を抑えることを目的にするものです。
米国が「斬首作戦」を展開するのは、オサマ・ビン・ラディンを処刑したさいのオペレーションと同じです。現在、米韓合同軍事演習で、そのときの特殊部隊要員はすべて米空母カールビンソンに乗船して韓国周辺にやってきています。

トランプ米大統領が「金正恩斬首作戦」にこだわっている証拠といえるものがあります。それは、民主党のラッセル国務次官補を3月8日まで続投させたことです。ラッセル氏は、30年以上の経験を持つ職業外交官で、日韓両国で勤務した経験を持つアジ
アのスペシャリストです。
トランプ大統領はオバマ政権時代の幹部を根こそぎ解任していますが、ラッセル国務次官補だけは留任させたのです。それはラッセル国務次官補が「金正恩斬首作戦」の考案者だからなのです。ラッセル氏は、2016年10月に安全保障記者を前に次のような衝撃的な発言をしています。

金正恩は核攻撃能力を強化するだろうが、そうすれば金正恩は即死する。──ラッセル国務次官補

ラッセル元国務次官補
「即死」という言葉は、非常に強い響きを持っています。昨年10月の時点でラッセル国務次官補がこの発言をしていたことはオバマ政権のときから「金正恩斬首作戦」が周到に練られていたことを物語っています。そのラッセル氏も3月8日にはひっそりと退任しています。

これは、彼がいなくても作戦を実行できる体制が国務省にできたことを意味します。ここで重要なのは、「金正恩斬首作戦」は北朝鮮という国を崩壊させるのではなく、トップの首をすげ替えることを意味していることです。つまり、別のトップを用意する必要があります。

このトップに最もふさわしい人物は金正男氏以外いないのです。北朝鮮も米国が金生恩委員長の暗殺を企てていることは当然わかっています。そのため北朝鮮は、米国の動きを注視し、その動きに合わせていちいち反応しています。そうして、日米首脳会談が行われたのは今年の2月のことですが、それを狙うように、北朝鮮は、移動車両から弾道ミサイルを発射して牽制しています。

そして、安倍首相が帰国の途についた頃に、金正男氏がマレーシアでVXガスで暗殺されたのです。金正恩委員長は、自分に代わり、北朝鮮のトップの座につく可能性の高い金正
男氏を暗殺したのです。

3月1日に米韓合同軍事演習が始まると、それを牽制するかのように、北朝鮮は3月6日に弾道ミサイル4発を同時に打ち上げています。そして3発のミサイルが日本のEEZ(排他的経済水域)に落下したのです。軍事専門家の分析によると、長崎県の米海軍佐世保基地と、山口県の米海兵隊岩国基地が標的だったのではないかとされています。

そして3月15日から19日まで、ティラーソン国務長官は日本、韓国、中国の3ヶ国を訪問しました。これは、作戦が実行される可能性があることを伝える歴訪であったと思われます。このティラーソン国務長官をサポートするためか、3月17日にトランプ大統領は、北朝鮮について次のツイートを発信しています。

北朝鮮の行動は非常に悪い。アメリカを長年愚弄し続けた。中国は事態を放置してきた。──トランプ大統領

このトランプ大統領のツイートに呼応して、北朝鮮は19日に弾道ミサイル推進エンジンの燃焼実験を公開して米国を牽制したのです。非常にきわどい火遊びであるといえます。 

そうして、以前このブログに掲載したように、“新”正恩氏斬首作戦 トランプ氏「最終決断」秒読み段階に入っているのです。

これについては、以前このブログにも掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
【スクープ最前線】“新”正恩氏斬首作戦 トランプ氏「最終決断」秒読み…特殊部隊の単独作戦で「すでに待機」―【私の論評】正恩は、習近平によって斬首される(゚д゚)!
トランプ大統領
北朝鮮情勢が緊迫している。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(キム・ジョンナム)氏殺害事件などを受け、ドナルド・トランプ米大統領が最終決断を迫られているのだ。「兄殺し」もいとわない狂気のリーダーに、核・化学兵器搭載可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)を握らせれば世界の平和と安定が脅かされかねない。ジャーナリスト、加賀孝英氏の独走リポート。
「あいつ(正恩氏)は異常だ!テロリストだ!トランプ大統領は、そう吐き捨てたようだ」。旧知の米情報当局関係者はそう語った。驚かないでいただきたい。朝鮮半島有事が秒読みで迫っている。米国は、国連安保理決議を無視した新型中距離弾道ミサイルの発射(12日)や、猛毒の神経剤VXを使用したマレーシアでの残忍な正男氏殺害事件(13日)を受け、新たな「作戦計画=正恩氏斬首作戦」を準備した。米国はこれまで、北朝鮮に対して「作戦計画5015」を用意してきた。
  
どこが違うのか。米軍関係者が明かす。「5015は、北朝鮮の核・軍事施設など約700カ所をピンポイント爆撃し、同時に、米海軍特殊部隊(ネービーシールズ)などが正恩氏を強襲・排除する。新作戦計画は、特殊部隊の単独作戦だ。国際テロ組織『アルカーイダ』の最高指導者、ウサマ・ビンラーディン殺害時と同じだ」。
この記事では、私は【私の論評】で、正恩が、習近平によって斬首される可能性についても示唆しました。

実際習近平がこのくらいの気構えで北朝鮮問題を打開しようとすれば、トランプ大統領も金正恩斬首作戦の実行を踏みとどまるかもしれません。

習近平
トランプ米政権の発足後、最初の米中首脳会談が今週開かれます。6日から7日にかけてはトランプ大統領の招聘で訪米し、フロリダ州の海辺の別荘で会談することになっています。

米国は、これまでの北朝鮮政策が失敗だったと表明しています。技術を高める北朝鮮への核・ミサイルへの対処に時間はかけられないです。時間をかければ、いずれ北朝鮮はアメリカ全土を核ミサイルの射程距離に収めてしまうことになります。

この問題に関して、トランプ氏は英紙のインタビューで「中国が解決しようとしない場合は、われわれが対処する」と語りました。これは、米国単独での対応も辞さない意味です。

すでに、トランプ政権は北朝鮮をテロ支援国家に再指定することを検討中です。中国企業などへの追加制裁も発動しています。

中国は対話路線に固執しています。それによる非核化は非現実的なことについて、習近平国家主席とどれだけ認識を共有できるかが今回の会談の最重要課題になることでしょう。

この会談で、習近平が北朝鮮に対する態度を改めることを確約すれば、トランプ氏は様子見をすることでしょう。しかし、その後中国の態度が改まらなければ、北のミサイルが米国全土を射程内に収める以前に必ず、トランプ大統領は、金正恩斬首作戦を実行します。

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2017年4月3日月曜日

長嶺安政駐韓国大使らが4日に韓国帰任へ 岸田文雄外相が表明―【私の論評】大使の帰任は、朝鮮半島有事の際在韓邦人4万人の命を守るため(゚д゚)!


長嶺安政駐韓大使
岸田文雄外相は3日、外務省で記者団に対し、日本に一時帰国させている長嶺安政駐韓大使と森本康敬釜山総領事を4日に韓国へ帰任させる方針を明らかにした。岸田氏は帰任に理由として、朴槿恵前大統領の逮捕や5月9日に大統領選が実施されることを踏まえ、「情報収集に一層力を入れ、十分備える必要がある」などと説明した。

 日本政府は1月9日、韓国・釜山(プサン)の日本総領事館前に慰安婦像が設置されたことへの対抗措置の一環として、長嶺氏と森本氏を日本に帰国させていた。

 慰安婦像の問題に進展がみられない中での帰任となるが、岸田氏は「(長嶺)大使から(黄教安)大統領権限代行に直接日本の考えを伝えさせる」とした。

【私の論評】大使の帰任は、朝鮮半島有事の際在韓邦人4万人の命を守るため(゚д゚)!

さて韓国駐在大使が、韓国からひきあげていたのは皆さんご存知だと思います。慰安婦問題などで不誠実な態度をみせる韓国に大使が戻るということに、異を唱える人も多いことでしょう。

しかし、私自身は今回の大使らの帰任は止む終えない事情によるものだと思います。それに関する説明の前に、大使や領事が一時帰国した場合、韓国は具体的にどの様な不都合が生じるのか、韓国がどのような事で困るのかということについて最初に掲載しておきます。

まずは、韓国にとっては大使は日本国代表、すなわち首相代理です。韓国と日本の間の事案で、大使が承諾すればそれは日本が承諾したのと同じ意味を持ちます。日本首相は1人なので韓国一国の事のために避ける時間は少ないです。しかし、その代理として大使が韓国の事だけを見てお相手をします、という事です。

駐韓大使がいなくなると韓国にはどのような不都合があるのか?

大使がいなくなると韓国は日本政府、首相に対して直接話をするしかありません。当然、順番待ちになりますし、東京でしか話せなくなります。

大使館自体がなくなるわけではないので日常業務的には支障がないかもしれませんが、大使の承認がいるような話が韓国内では出来なくなるので重要案件が滞るようになってしまうことになります。

大使の召喚は、このようなことは『普通はあり得ない』という前提で『そんな事もある』というレベルの出来事です。

国同士が揉めた時に各国政府が直接的に取れる手段としては、まずは相手国に対して抗議、その後に大使召還、国交断絶、最終的には戦争のような流れになります。

抗議についてはそれこそ、毎日のようにありますが抗議し合いながらも妥協点を探り協力し合うのが日常の外交です。大使召還は「抗議はこれ以上しない、お前が折れるかさもなくば国交断絶、もしくは戦争への道を歩むかだ」というような意思表示とも読み取れます。

そのため大使召還は簡単に使うべき手段ではありません。とはいいながら、大使召還の与えるインパクトが大きいので奥の手として使われることがありますが、普通は旧東側諸国と旧西側諸国の間で使われるような手段です。

さて、この措置はかなり大きなものであり、現状では日本から韓国に対する意思表示としては、最大級のものであると考えられます。親密な国同士では考えられない厳しい措置です。

長嶺大使に無礼を働く韓国のマスコミ関係者
韓国は、竹島問題が大きくなった時、このような非常識な手段を日本に対して使おうとしました。日韓両国が領有を主張する竹島(韓国名・独島)について、日本政府が中学校の新学習指導要領の解説書で日本の領土と明記する方針を伝えたことを受け、韓国外交通商省は2008年7月14日、駐日韓国大使を召還する意向を発表しました。

韓国外交通商省の報道担当官は、日本政府の方針に抗議して駐日大使を召還すると発表ししました。大使引き上げの時期や期間については言及されませんでしたが、外交筋によると、日本政府から韓国政府に対し、解説書での記述について正式に伝達があったのを受けた動きだといいます。しかし、結局は駐日大使は召喚されませんでした。

今回は、過去のこのようなこと受けるとともに、慰安婦問題の日韓合意も履行しない韓国に対して、日本が駐韓大使を召喚して、韓国が折れるかさもなければ国交断絶も辞さない、という報復的な側面もあります。特に日韓合意に関しては、米国も関与し、日韓の間だけではなく、世界に向けて発信された合意です。

これを守らないということは、極めて無礼な振る舞いであり、たとえ日本が韓国に対して国交断絶を宣言したとしても、国際的に責められるのは韓国であり、日本ではありません。

韓国と国交断絶しても日本への影響は軽微

それに、仮に韓国と日本が国交を断絶したとしても、日本としては特にそれによって大きな影響を被ることはないという判断でしょう。

実際そうです。仮に日本が韓国と国交断絶したとしても、日本はGDPの60%が個人消費によるものであり、輸出がGDPに占める割合は十数%にすぎません。そのうちの、韓国の比重はさらに低いです。そもそも韓国のGDPは、日本の東京と同じ程度のものです。東京のGDPが日本のGDPに占める割合は、17%です。

このように考えると、韓国と国交を断絶したとして、韓国への輸出がなくなったにしても、日本が受けるダメージはさほどではありません。輸入がなくなっても、韓国に作れて日本には作れないものはほとんどないので、全く困りません。輸出も、他国のものを増やすことなどで十分に埋め合わせができると思います。

韓国の青年失業率は9.8% 新卒の内定率が空前の水準となった日本とは対照的だ
それに対して、韓国では、輸出がGDPの40%以上を占めているという特殊な経済構造をしています。もともと、経済規模も小さいですから、日本と国交断絶した場合は、かなり苦しくなるのは明らかです。しかも、現在の韓国は経済的にも瀕死状態にあります。

このようなことから、日本が駐韓大使を召喚したということは、当然といえば、当然です。

そうして、このような背景を知れば、今回長嶺安政駐韓国大使らが明日韓国に帰任するということは、なかなか納得のいかない人多いでしょう。

朝鮮半島有事の可能性が高まっている

しかし、現在の朝鮮半島状況がそれを許さないという現実があります。その現実は何かといえば、以前このブログにも掲載したように、現状ではまさに朝鮮半島有事が現実になるかもしれない状況です。

これについては、以前このブログでも何度か掲載したことがあります。その記事の典型的なものを以下に掲載します。
北朝鮮有事が日本に突きつける8つのリスク【評論家・江崎道朗】―【私の論評】 森友学園問題で時間を浪費するな!いまそこにある危機に備えよ(゚д゚)!
先月1日に始まった米韓合同演習「フォールイーグル」
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、北朝鮮有事の場合の日本のリスクについて掲載しました。北朝鮮有事の場合は、最悪の場合は日本もかなり悪影響を蒙ります。しかし、真っ先に悪影響を被るのは当然のことながら在韓法人です。

この記事より、それに関する部分を以下に引用します。
 第1に、在韓邦人約4万人をいかにして避難させるのか、という課題だ。とくに韓国に支社を持つ日本企業は、事態を深刻に受け止め、直ちに対策を講じておくべきだろう。
そうです。日本側としては、朝鮮半島有事の時に、在韓法人4万人の命を守らなければなりません。 ここしばらく、米軍による金正恩斬首作戦と、限定爆撃が行われる可能性が徐々に高まってきました。

米軍がこのような行動に打ってでたとき、当然のことながら北朝鮮が報復に打ってでる可能性はかなり高いです。その時、韓国の首都ソウルは、38度線(韓国・北朝鮮の国境)からかなり近いですから、砲撃を受けたりして火の海になることも考えられます。

これを防止すためには、そもそも韓国と国交を断絶して、在韓邦人の数をゼロにしてしまえば、完璧ですが、それにしても現実に4万人も在韓邦人が存在していて、ソウルにもかなり多くが在住しています。

しかも、朝鮮半島有事の可能性は、さらに高まっています。このようなときには、やはり駐韓大使が韓国にいて、韓国側と意思の疎通を十分に図っておき、いざというときにどのように在韓邦人を救出すべきか、話し合う必要があります。そのために、まさに駐韓大使が韓国にいる必要があるのです。

有事の可能性がある一定水準に下がった場合には、即座に駐韓大使を再度召喚すべきでしょう。

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