2021年5月19日水曜日

日本人が知らないイスラエル・パレスチナ紛争の「実相」―【私の論評】イスラエルだけ悪魔化しハマスのテロ行為を隠蔽するメディア報道は、偏向し倫理的にも大問題(゚д゚)!

日本人が知らないイスラエル・パレスチナ紛争の「実相」

ハマスは本当に「か弱きパレスチナ人を守る正義の味方」なのか

(飯山 陽:イスラム思想研究者)

5月16日、パレスチナからのロケット弾をイスラエルの対空防衛システム「アイアンドーム」が迎撃する瞬間

 ここ1週間ほどSNSの書き込みやニュースのコメント欄を見ていると、日本人の多くがイスラエルとパレスチナの紛争について特定のイメージを持っていることがわかる。圧倒的多数の人が、「罪のない子供まで殺すなんてイスラエルは残酷なテロ国家だ!」「子供や女性まで巻き込むなんてイスラエルは許せない!」「歴史をさかのぼれば占領したイスラエルが悪いのは明白だ!」などイスラエルへの怒り、憤りを表現している。

 だが日本人は果たして、この紛争について事実を正確に認識しているのだろうか。おそらくその可能性は低いと言えよう。なぜなら日本人は多くの場合、この紛争についての情報を日本語で書かれたメディア報道からのみ得ており、それらの報道は「反イスラエル」方向に顕著に偏向しているからである。

  イスラエルの攻撃は軍事拠点を狙ったピンポイント攻撃

 例えば17日の夕刻の出稿の見出しは、NHK「イスラエル 米を後ろ盾に空爆を継続」、毎日新聞「イスラエル軍、ガザを集中空爆 住宅多数倒壊」、産経新聞「空爆下のガザ地区『住民標的、遺体が増え続けている』」となっている。これらの見出しを読むだけで、「イスラエルはガザで民間人を無差別に空爆する残虐非道な存在だ」と印象付けられる。

 一般に「空爆」という言葉から連想されるのは、住宅地に戦闘機が雨霰と爆弾を投下する状況であろう。しかしこれは現在、イスラエルがガザで展開している作戦の実態とは大きく異なる。

 イスラエル軍は、ガザからロケット弾攻撃を繰り返すイスラム過激派テロ組織ハマスの拠点やロケット弾発射台、武器庫、地下に張り巡らされたトンネル網、ハマス幹部の自宅などを標的とし、ピンポイントで攻撃している。また攻撃実行の1〜3時間前には、それらの建物の近隣住民に電話やテキストメッセージで退避するよう通告している。これはイスラエル軍がテロリストとテロのインフラだけを攻撃し、できるだけ民間人に被害が及ばないよう尽力しているからだ。

 しかしメディアはそうした詳細を伝えない。それどころか朝日新聞は17日、「突然、空爆されるまで『あと10分』そのときAP記者は」という、「外国人ジャーナリストまで空爆する非道なイスラエル」と印象付ける記事を掲載した。

 メディアは「強力な軍事力で民間人を無差別攻撃するイスラエル」という印象を与える「空爆」という言葉を繰り返し用い、「子供を含む〜人が死亡」とガザの死者数の多さを強調する。これにより人々には、「イスラエルは多数の民間人を空爆する鬼畜」「子供を殺すチャイルドキラー」というイメージが刷り込まれていく。

  パレスチナ人を搾取しているのは誰か

 「イスラエルの空爆」を非難する記事と比べると、ハマスのイスラエルに対するロケット弾攻撃の記事は圧倒的に少ない。そしてそれに言及する場合も、「多くはミサイル迎撃システム『アイアンドーム』が迎撃」(朝日新聞デジタル5月15日)などと記し、「イスラエル側にほとんど被害はない」と印象づけ、「圧倒的な軍事力を有するイスラエル軍」と「脆弱なロケット弾で応戦する弱きパレスチナの正義の味方」という構図を際立たせようとする。

 メディアはハマスが日本やアメリカ、EUなど主要国でテロ組織指定されていることにも言及せず、「イスラム組織」などと説明してはぐらかす。ハマスに資金や武器を提供しているのは、世界最大のテロ支援国家であるイランやトルコ、カタールであることも伝えない。ハマスがメンバーをUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)に送り込んで実質的に支配し、国際的な援助物資や資金を収奪していること、そのせいで一般のパレスチナ人に支援が全く行き届かないことも報道しない。

 日本にもパレスチナを支援する組織や人が多くいる。しかし彼らの支援の多くはテロ組織の懐に入り、テロのインフラ建設に使用されたり、幹部の豪奢な生活に「転用」されたりするのが実情だ。米トランプ政権がパレスチナへの拠出金を停止した主な原因も、これである。

 メディアはイスラエルがガザを封鎖しているせいで、ガザの人々は貧困にあえいでいると強調する。しかしイスラエルがガザを封鎖したのは、ガザからパレスチナ自治政府の治安部隊を追放して武力制圧し、実効支配を続けているハマスのイスラエルに対する無差別攻撃が原因であり、ガザの人々の生活苦はハマスの「搾取」によるところも大きい。

  子供や女性を「人間の盾」にするのも正当化

 ハマスの罪は他にもある。パレスチナの子供の人権擁護NGOであるDCIPは5月11日、前日にガザから発射されたロケット弾が飛距離不足でイスラエルに届かずガザに着弾し、子供2人を含むパレスチナ人8人が死亡し、子供10人を含む34人が負傷したと伝えた。パレスチナ人の死者の中には死因が特定できないケースが多い、とも伝えている。ハマスは「弱きパレスチナ人を守る正義の味方」どころか、パレスチナ人を自ら殺しているのだ。

 ハマスは子供や女性を「人間の盾」として利用することも厭わない。イスラエル軍は今回の作戦でも、ガザの学校や病院にハマスの「テロ・トンネル」の入り口があるのを多く確認したと報告している。ハマスは弱者を隠れ蓑にする卑怯者でもある。

 ハマスのガザにおける指導者であるヤヒヤー・シンワールは、2018年にパレスチナ人の帰還権を求めてイスラエルとの境界線付近で行なわれた大規模デモ、いわゆる「帰還の行進」について、「これらの行進に乗り出すことを決めた際、私たちにとって最も大切なもの、つまり女性や子供たちの体を、アラブの現実の崩壊を阻止するダムにしようと決めたのだ」とアルジャジーラとのインタビューで語った。境界線付近はイスラエル軍との衝突が頻発する危険地帯である。

 つまりハマスの指導者は、女性や子供を人間の盾として利用したことを「有効な戦略」として堂々と認め、正当化しているのだ。ハマスこそ、正真正銘のチャイルドキラーなのである。

  イスラエル批判はハマスの思う壺

 ハマスは「弱きパレスチナ人を守る正義の味方」などでは全くない。パレスチナ人から搾取し、「正義」のためにはパレスチナの子供や女性を平然と利用する残虐なテロ組織だ。ハマスがイスラエルの殲滅を目標に掲げ、イスラエルの一般民衆を無差別攻撃し、今回の攻撃でもイスラエルの子供や女性を殺していることも忘れてはならない。
『イスム教再考-18億人が信仰する世界宗教の実相』(飯山陽著、扶桑社新書)
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 パレスチナ問題の本質は領土問題である。これについて日本政府は、パレスチナとイスラエルという二国家共存という解決法を公式に支持している。イスラエルにはハマスのテロ攻撃から国民と国土を守る権利がある。イスラエルが自衛権を行使しなければ900万人の国民はハマスによって殺戮され、イスラエルという国家は消滅することになる。だからアメリカをはじめとする主要先進国が、イスラエルの自衛権を認めると表明したのだ。

 本当にパレスチナ人をかわいそうだと思うならば、怒りを向けるべきはハマスである。メディアの偏向報道と印象操作にまんまと騙されてイスラエルに怒りを向けても、パレスチナの人々が「解放」されることはない。イスラエルに怒りを向けることは、テロ組織ハマスの思惑通りでもある。世界の世論がイスラエルを非難しハマスに同情的になれば、ハマスの思う壺だ。

【私の論評】イスラエルだけ悪魔化しハマスのテロ行為を隠蔽するメディア報道は、偏向し倫理的にも大問題(゚д゚)!

上の記事を読むと、ハマスの現実の姿がよくわかります。これは、日本では他ではなかなか手に入れられない貴重な情報だと思います。

ハマスとは「イスラム抵抗運動」のことです。源流はエジプトのイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」で、1987年12月にアハメド・ヤシンがガザ地区で創設しました。その最終目標は「イスラム原理主義国家」の樹立であり、イラク、シリアを席巻したあの「イスラム国」(IS)と目指すところは基本的には同じです。

ハマスはイスラエルの生存権を認めていませんし、武装闘争の旗も降ろしていません。このため米国はハマスをテロ組織に指定しています。パレスチナの現状を規定することとなった93年のオスロ合意により、ヨルダン川西岸と地中海沿いのガザ地区がパレスチナ自治区となりました。イスラエルは当初、ガザ地区に駐留していましたが、その後撤退。ガザ地区とイスラエルの境界にフェンスをめぐらし遮断しました。

ガザ地区は東京都23区の面積の6割程度しかありません。イスラエルのガザ隔離政策によって、地中海に面するガザの出入り口はイスラエル側の検問所とエジプト側の検問所の2カ所だけとなりました。海上もイスラエル艦船が常時監視しているため、海からのガザへの出入りは不可能になりました。

ハマスはこうした閉塞状態の中、ガザのパレスチナ人の支持を受けるようになりました。2006年に行われたパレスチナ評議会選挙(議会選挙)で、ハマスはパレスチナ自治政府を牛耳る主流派の政党ファタハに圧勝、過半数を超える74議席を獲得しました。ファタハは45議席にとどまりました。

翌07年にガザでハマスとファタハの内戦がぼっ発したのですが、ハマスの勝利に終わり、それ以降ハマスはガザの実効支配を確立しました。ハマスは貧困層などへの教育、医療、福祉事業といった社会活動も進め、パレスチナ人の人気を高めていきました。アラブ諸国の中では、カタールがハマスを支援しています。

こうしたハマスの勢力拡大を懸念したイスラエルはハマス幹部の暗殺や軍事拠点への空爆を常時実施、09年1月に軍をガザに地上侵攻させて衝突しました。イスラエル軍は2014年7月にも地上侵攻。1カ月に及ぶ戦闘で、パレスチナ人2250人が死亡、イスラエル側も兵士ら70人が犠牲になりました。

イスマイル・ハニヤ

ハマスの現在の指導者はカタールに亡命中のイスマイル・ハニヤ。ハマスは政治部門と軍事部門「カッサム旅団」に分かれており、同旅団の司令官はモハメド・デイフ。戦闘員は約3万人。ハマスは今回のイスラエルとの交戦を、パレスチナ人社会の中でその存在を誇示できるとして歓迎しているとの見方も強いです。

ハマスが保有するロケット弾は1万発とも3万発とも言われますが、実態は不明です。ほとんどが射程10キロ~20キロの短距離ロケットと見られています。ところが、ガザ地区から約80キロのテルアビブやエルサレムに着弾したロケット弾もあり、イスラエル側を驚かせました。米紙によると、ハマスのスポークスマンはテルアビブに撃ち込んだ新型ロケット弾を「アイシュ250」と呼び、射程距離が240キロあるとしています。

米ワシントン・ポストなどによると、ロケットはかつてエジプトとガザをつなぐ秘密トンネルを通してイランのファジル・ロケットやシリアのM302などが密輸されたとしています。現在は自前の兵器工場で生産しているとされています。ノウハウなどはイランやレバノンの武装組織ヒズボラが支援していると見られています。

ロケット弾と並ぶハマスのもう1つの武器はガザの地下に張り巡らした“メトロ”(地下鉄)と呼ばれる地下網だ。ハマスの指導者ハニヤは数年前、ガザの地下トンネルはベトナム戦争時にベトコンが建設したものより2倍ある、と豪語していたという。

ハマスは過去、イスラエル領内にまでトンネルを掘り進め、兵士や市民を誘拐したことがある。イスラエルはこれまでに、多くのトンネルを破壊し、ガザの境界にはトンネルを掘り進めることができないよう、地中に防護壁まで建設した。ハマスは2014年の戦争では、トンネルを使って戦闘員を神出鬼没に出現させ、イスラエル軍を翻弄した。

パレスチナ自治区ガザの地下トンネルで銃を持つイスラム原理主義組織ハマスの戦闘員=2014年8月

ハマスは現在、ガザ北部の地下トンネルからロケット弾を発射しており、トンネル網はイスラエルの最優先攻撃目標の1つ。イスラエルは14日、いったんは地上部隊のガザ侵攻を発表しながら、後にまだ侵攻していないと修正した。イスラエルのメディアではこの軍の発表がハマスをだます策略だったのではないかとの見方も浮上している。

その狙いは、ハマス戦闘員が侵攻という発表にあわてて地下に潜りこむのをドローンなどで監視し、トンネルの入り口を突き止めるためだった、というもの。事実かどうかは不明だが、ネタニヤフ首相は「ハマスはトンネルに隠れることができると思ったろうが、隠れることはできなかった」と意味深長な発言をしています。

さて、上の記事では飯山氏は、イスラエル批判はハマスの思うつぼであるとしていますが、私もそう思います。

そもそも、イスラエルを武力攻撃しているのはハマスというイスラム過激派テロ組織であり、一般のパレスチナ人ではありまん。日米やEUなどはハマスをテロ組織指定しています。今回の武力衝突がイスラエルとパレスチナ人一般の衝突であるかのように伝える報道は明らかな間違いであり、ハマスがテロ組織であることへの言及を避けることはハマスのテロの正当化に他ならないものです。

さらに、ハマスは「聖地エルサレムの守護者にしてパレスチナ人の擁護者」を自称しているのですが、実際はパレスチナ人も多く居住する「聖地」であるはずのエルサレムにロケット弾を撃ち込み、ガザ地区でもロケット弾の誤射や飛距離不足などで多数のパレスチナ人を殺傷しています。

メディアはハマスがあたかも「イスラエルによって抑圧されたかわいそうなパレスチナ人のために戦う正義の戦士」であるかのように報道していますが、パレスチナ人のために戦うどころかパレスチナ人を人間の盾として利用し、彼らのための支援を横取りするいわば「貧困ビジネス」で財をなしているのがハマスです。

ハマスの主張と行動が大いに矛盾していることも、メディアは決して伝えません。

ハマスのロケット弾攻撃とイスラエル軍の報復の空爆を同列に捉えるのは誤りです。ハマスのロケット弾攻撃は子供や女性、老人を含む一般のイスラエル人を狙った無差別テロです。ハマスはもちろん、イスラエルの子供も殺していますが、メディアはその事実も軽視あるいは無視しています。

一方イスラエル軍が空爆しているのはハマスの拠点やロケットランチャー、トンネル、幹部の家などであり、上の飯山氏の記事にもあるように、空爆前には近隣住民に電話やテキストメッセージなどにより退避を要請しています。

またハマスは拠点を意図的に住宅地に設置し、あるいは学校や病院など民間施設にトンネルの入り口を作ったり、武器庫として使ったりすることにより、イスラエル軍にそうした民間施設を空爆させ、それを世界的なメディアに取材させ、国際的な非難をイスラエルに向けさせるという戦略を長年とっています。

イスラエルの女性兵士

ハマスとメディアが「グル」であることは、多くの記者や研究者が指摘しているところです。

そうして、イスラエル・パレスチナ紛争をあたかも「聖地エルサレム」をめぐる宗教戦争のように報道するのも大きな誤りです。この問題の本質は領土問題です。

領土問題には双方に言い分があり、日本政府はこれについて「難民、入植地、エルサレム、国境画定など個々の問題の解決を図って、イスラエルとともに共存共栄するパレスチナ国家を建設すること」すなわち「二国家解決」を支持すると表明しています。これは国際的に多くの支持を集めている考え方でもあります。

一方ハマスは、武力攻撃によりイスラエルという国家を消滅させることを目標に掲げています。イスラエルは900万人の国民を抱える歴とした国家であり、当然、国民と国土を守る自衛権を有しています。米国やドイツ、フランス、カナダなど主要先進国はハマスのテロ攻撃に対するイスラエルの自衛権を支持すると明言しています。

イスラエルだけを悪魔化しハマスのテロ行為を隠蔽する報道は、大きく偏向しており、イスラエルの自衛権を否定し、900万人のイスラエル人は殺されて然るべきなのだと主張するに等しく、倫理的に大きな問題のあるものといわざるを得ません。

昨日は、このブログでは、そもそも統治の正当性がなかったイスラム過激派が衰退したと主張したばかりですが、ハマスもどう考えても、単なるテロ組織であり、イスラエルのように統治の正当性を持つ国家とはいえません。

これでは、他のイスラム過激派が衰退したように、いくらマスコミが応援しようとも、ハマスもいずれ衰退すると思います。

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