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2026年1月24日土曜日

アブダビ三者会談が暴く「冷戦後秩序の終わり」──新秩序と排除できない国・日本


まとめ
  • アブダビの米・露・ウクライナ三者会談は、和平の兆しではなく、冷戦後30年続いた秩序が限界に達したことを示す最初の公式シグナルである。本稿は、この会談が「戦争の終わり」ではなく、秩序の清算交渉の始まりであることを、具体的な交渉内容から明らかにする。
  • ウクライナ戦争の真の原因は2022年ではない。1991年、ソ連崩壊後に世界が意図的に放棄した新秩序設計の失敗にある。本稿は、なぜこの戦争が避けられなかったのかを、30年の制度史から読み解く。
  • そして最大の焦点は日本である。日本は無視される国ではない。排除すればアジアの安定が崩れる中核国家である。本稿は、なぜ日本がすでに「受け身の国」ではなく、新秩序を選ぶ側の国になっているのかを示す。

ウクライナ戦争は、もはや単なる地域紛争ではない。それは、冷戦後30年にわたって維持されてきた国際秩序そのものが、ついに再編の局面に入ったことを意味している。ソ連崩壊によって凍結されたまま放置されてきた国境と勢力圏が、いま、武力と交渉によって現実の形に引き直され始めた。その象徴が、2026年1月23日、アブダビで行われたロシア・ウクライナ・米国の三者会談である。戦火が続く最中に、当事国と最大の介入国が公式に同席する協議が開かれるのは異例であり、ここで起きているのは和平の模索ではない。戦後秩序そのものの設計作業である。

1️⃣三者会談は何を決め、何を決めなかったのか

アラブ首長国連邦の首都アブダビ

多くのメディアは、この会談を「和平の兆し」と報じた。しかし、会談の中身を冷静に見れば、そこに「和平」と呼べる合意はほとんど存在しない。各国政府の発表を突き合わせると、議論の中心はきわめて実務的で限定的なものだったことが分かる。ここで行われたのは終戦交渉ではない。戦争を管理するための最初の本格的な実務会談であった。

第一に話し合われたのは、前線の現状凍結ラインである。どこまでを事実上の停戦線として固定するのか、どの地域を今後の交渉対象区域とするのかという戦線管理の問題であり、ここで扱われているのは領土の最終帰属ではない。まず武力の拡大を止めるために、どこで戦線を止めるかという、きわめて現実的な線引きが議題となったのである。

第二に議論されたのが、段階的停戦の条件である。全面停戦ではなく、エネルギー施設への攻撃停止、黒海沿岸での攻撃抑制、特定地域での重火器使用制限など、限定的な措置を積み上げる方式が検討された。これは和平交渉ではない。戦争を制御可能な規模に抑え込むための戦闘管理の協議である。

第三に確認されたのが、捕虜交換と人道回廊の拡充である。これは象徴的な合意であり、政治的成果として最も公表しやすい分野だが、本質ではない。交渉を継続するための最低限の信頼醸成措置にすぎない。

そして最も重要なのは、最終的な和平条件について、ほとんど何も合意されていないという点である。領土問題、NATO加盟、安全保障保証の枠組みについて、三者の立場は依然として大きく隔たったままであり、そこに踏み込む合意は意図的に避けられている。合意されたのは、戦争を終わらせる条件ではなく、戦争をこれ以上悪化させず、交渉を継続する枠組みだけである。

言い換えれば、アブダビで始まったのは終戦交渉ではない。長期戦を前提とした戦争管理体制の構築である。戦争を終わらせる前に、まず戦争を壊滅的な規模にしないことを優先する段階に、大国自身がようやく入ったのである。

2️⃣ソ連崩壊という歴史的好機は、なぜ放棄されたのか

現在でも維持されているロシアの圧倒的な核戦力

ここで初めて、この会談の歴史的位置づけが見えてくる。ウクライナ戦争の起点は2022年ではない。真の起点は1991年のソ連崩壊にある。ソ連の崩壊は、単なる一国の体制転換ではなかった。それは、第二次大戦後につくられた世界秩序を、根本から再設計できる歴史的好機であった。

本来であれば、この時点で、国連安全保障理事会の構成、常任理事国制度、拒否権の扱い、勢力圏と国境線の再定義を含めた、本格的な新秩序設計が行われるべきだった。だが、世界はそれをしなかった。より正確に言えば、意図的にしなかったのである。

冷戦は終わったが、戦後秩序の中核である常任理事国の構成は、ほとんど手をつけられないまま温存された。とりわけ、ロシアと中国を、拒否権を持つ常任理事国の地位に固定したまま新時代に移行したことは、後の不安定を制度として埋め込む決定だった。ロシアは敗戦国ではないまま帝国を失い、中国は民主化も法治化も経ないまま大国として承認された。この2国に、戦後秩序を拒否できる制度的権力を与え続けたことが、世界最大の制度的失策であった。

その結果、冷戦後秩序は、新秩序でもなければ旧秩序の清算でもない、曖昧なまま凍結された未完の秩序として出発することになった。NATOは拡大し、ロシアは後退した。国境線は形式的に固定されたが、勢力圏の実質的な線引きは意図的に先送りされた。その未清算部分が、ミンスク合意に象徴される凍結された紛争となり、30年後、ついに武力として噴き出したのが、ウクライナ戦争である。

今回の三者会談が意味するのは、この設計されなかった新秩序を、いまさらになって大国自身が、現実の力で書き直し始めたという事実である。

3️⃣この会談が我が国に突きつけている現実

横須賀港に停泊する米空母「ジョージ・ワシントン」

ここで、ロシアを正確に位置づける必要がある。ロシアはもはや経済大国ではない。GDP規模ではインドや韓国を下回り、産業基盤も技術力も、中国や欧米に大きく劣る。それでもロシアが交渉の主役に残るのは、世界最大級の核戦力を持ち、国連安保理常任理事国であり、欧州の安全保障とエネルギーを直接揺さぶれる地政学的位置を持っているからである。ロシアは成長する大国ではない。衰退しても排除できない大国である。

だからこそ、この戦争はロシアを倒す戦争にはならない。ロシアをどこに押し込め、どこまで許容するかを決める戦争になる。そしてその整理を行うのは、ウクライナではない。米国とロシアである。小国の戦争は、いつの時代も、経済力ではなく、強大な軍事力を持つ国の都合で整理される。それが国際政治の現実である。

この現実は、我が国にとって決して他人事ではない。ウクライナで起きていることは、台湾有事、朝鮮半島、そして日本周辺有事の構造とほぼ同型だからである。法的に正しい国境があり、同盟国が存在しても、抑止が崩れた瞬間に、現実は武力によって書き換えられる。その後に残されるのは、交渉の席に座れる国と、座れない国の差である。

ここで、我が国自身の位置を冷静に見つめ直す必要がある。我が国は、世界の中で決して小国ではない。GDP規模では長年にわたり世界上位にあり、現在でも主要7か国の一角を占める。外貨準備高は世界有数であり、国際金融市場における円の存在感はいまなお無視できない。半導体製造装置、素材、精密機械といった分野で、我が国は代替不能な地位を占めている。

さらに重要なのは、我が国の地政学的位置である。我が国は、台湾海峡、朝鮮半島、東シナ海、ロシア極東に囲まれた、アジアの安全保障の要衝に位置している。米国のアジア太平洋戦略は、在日米軍基地を中核に組み立てられており、これを欠いた安全保障構造は現実には成立しない。これは理念ではない。米軍の運用計画そのものが、我が国を前提に構築されているという動かしがたい事実である。

加えて、我が国は米国に取ってインド太平洋地域における最大級の同盟拠点であり、自由主義陣営の補給線と後方基盤を支える中心国家である。エネルギー輸送、シーレーン防衛、情報共有、ミサイル防衛、そのいずれにおいても、我が国を欠いた体制は機能しない。我が国は無視できない国ではない。排除できない国なのである。

それにもかかわらず、我が国自身が、その事実を十分に自覚してこなかった。我が国は長く、自らを受動的な同盟国と位置づけ、秩序の受益者であることに満足してきた。しかし現実には、我が国はすでに、秩序を支える側の大国である。自覚の有無にかかわらず、我が国はすでに、大国として扱われている。

もし、我が国がこの秩序形成の場から排除されるならば、その影響は一国にとどまらない。我が国が不在となれば、台湾海峡の抑止は一気に弱体化し、朝鮮半島の均衡は崩れ、東南アジアの安全保障は連鎖的に不安定化する。アジアの安定は、我が国を前提に組み立てられているからである。我が国が無視され、あるいは排除されるという事態は、すなわち、アジアの秩序そのものが崩れ去ることを意味する。

同盟は、国を守ってくれる制度ではない。交渉の席に座る資格を与えてくれる制度にすぎない。抑止を失った国は、理念でも国際世論でも最終的には救われない。救われるのは、軍事力と交渉力を持ち、自ら秩序の形成に関与できる国だけである。

冷戦後30年、我が国は秩序の受益者であることに満足してきた。しかし今始まっているのは、秩序が壊れ、再び作り直される時代である。その時代に、抑止を持たず、交渉力を持たず、現実の力を持たない国は、必ず整理される側に回る。それは今のウクライナを見れば、自明の理である。

世界秩序は正義によって作られない。理念によっても作られない。それを作るのは、抑止と交渉と、そして現実の軍事力を実装できる国である。

アブダビ三者会談は、ウクライナ戦争の終わりではない。戦後世界の設計図が、静かに書き始められた瞬間なのである。

我が国は、この制度設計の失敗の外側に、偶然踏みとどまってきただけにすぎない。

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2025年12月28日日曜日

停戦直前に撃つという選択──ロシアが示す戦争の文法は、なぜ許されないのか



 まとめ
  • 停戦直前の攻撃は偶発ではない。ロシアは停戦を「戦争の終わり」ではなく、「次の局面へ進むための工程」として使ってきた。国境と主権を曖昧にしたまま銃声だけを止めれば、その曖昧さは必ず次の戦争を生む。ミンスク合意もブダペスト覚書も、その失敗をすでに示している。
  • 「凍結された紛争」は安定ではなく、侵略を固定する仕組みだ。拡張ウティ・ポシデティスによる国境の曖昧化は、時間を味方につけた侵略者を利する。ロシア特使が語る「一年以内の和平」とは、戦争終結ではなく、侵略の既成事実化を狙う段階的シナリオにすぎない。
  • 戦争を本当に終わらせる条件は一つしかない。侵略前の国境を回復し、人々が国籍と居住地を自ら選べる状態を取り戻すことだ。回復的ウティ・ポシデティスを終戦原則として共有できなければ、世界は「やった者勝ち」に支配され続ける。ウクライナ、北方領土、台湾は、この一点でつながっている。
1️⃣停戦直前に撃つという選択──ロシアが示した戦争の文法

ロシア軍 ウクライナ首都キーウにミサイル攻撃 東部で攻勢強める

停戦交渉が語られ始めた、その直前。
ロシアはウクライナの首都キーウを攻撃した。

これは感情的な報復でも、統制の乱れでもない。ロシアが意図的に選び取った行動である。ロシアにとって停戦とは、戦争を終わらせる出口ではない。次の局面を有利に進めるための工程にすぎない。

ここで押さえるべきなのは、停戦と終戦は別物だという点である。停戦は銃声を止める行為にすぎない。国境も主権も、何一つ自動的には解決しない。停戦を先行させ、国境を曖昧なまま放置すれば、その曖昧さそのものが次の戦争を生む。

ロシアが停戦直前に都市を叩くのは、その現実を相手に刻み込むためだ。交渉の席に着く前に、「どこまでを既成事実として受け入れさせるか」を、破壊と恐怖で示す。これはクリミア併合以降、一貫して繰り返されてきた行動様式であり、ロシアの戦争の文法である。

2️⃣国境を曖昧にした合意は、なぜ次の戦争を生むのか

アフリカ諸国の独立の年(黄色が1960年に独立した国家)。世界は、独立のたびに戦争が起こることを恐れた

停戦交渉の核心は、戦闘の停止ではない。真の争点は、国境をどう扱うかにある。

「凍結された紛争」という言葉は、現実的に聞こえる。しかし、国境は凍結できる対象ではない。回復されるか、奪われたまま固定されるか、そのどちらかしかない。

ここで重要なのが、ウティ・ポシデティスという国境原則である。本来これは、植民地独立の際に混乱を避けるため、独立時点の境界を国境として承認する考え方だった。そうでないと独立のたびに紛争が起こることになる。現状を法に取り込み、秩序を保つための暫定的な知恵である。

しかし現在語られる「凍結された紛争」は、この原則を戦争後に拡張適用したものだ。侵略によって生じた実効支配線を固定し、国境や主権の判断を先送りする。これが拡張ウティ・ポシデティスにほかならない。

ウクライナは、その危険性を身をもって示してきた。

1994年に締結された、ブダペスト覚書は。ウクライナは核兵器を放棄する代わりに、主権と国境の尊重を保証された。しかし、その保証には、侵害された国境をどう回復するのかという実効的な仕組みが存在しなかった。結果として、クリミアは併合された。
 
2015年に締結されたミンスク合意は、戦闘停止を優先し、東部地域の帰属を曖昧なまま棚上げした。その結果、侵略によって生じた現実は温存され、ロシアは時間を稼いだ。そして準備を整え、全面侵攻へと踏み切った。和平への橋ではなく、次の戦争への助走路だった。

現在議論されている和平構想も、この延長線上にある。停戦を優先し、国境と主権を曖昧にしたまま「和平」を語ることは、拡張ウティ・ポシデティスを追認することに等しい。

ロシア側は、そのことをよく理解している。ロシア直接投資基金総裁であり、対外交渉の実務を担うキリル・ドミトリエフは、2024年後半から2025年初頭にかけ、「一年以内に和平へ移行し得る」と発言してきた。これは戦争終結の宣言ではない。戦闘を一度区切り、国境と主権の問題を未解決のまま固定化し、制裁緩和と既成事実化を狙う時間設計である。

3️⃣回復的ウティ・ポシデティスという終戦原則──我が国が直視すべき現実

我が国の北方領土は第二次世界大戦直後はソ連に、現在はロシアに不法占拠されたままだ

この流れに対し、私がこのブログで提示してきたのが回復的ウティ・ポシデティスである。これは既存理論の言い換えではない。私が提案する、終戦のための原則だ。

第一に、国境は侵略直前の法的状態に回復されなければならない。侵略後に生じた実効支配線に正統性はない。

しかし、それだけでは足りない。国境は線ではなく、人が生きる空間である。

第二に、紛争地域に住んでいた人々は、自らの意思で国籍を選ぶ権利を持つ。武力による国籍の押し付けは、いかなる理由があろうとも許されない。

第三に、人々は住む場所を選ぶ自由を持つ。回復された国境の内側に残るのか、別の地域へ移るのか。その選択は国家ではなく個人に属する。

この回復的ウティ・ポシデティスが実現して、はじめて戦争は本当に終わる。拡張ウティ・ポシデティスによって国境が曖昧なまま凍結された状態は、あくまで停戦であり、終戦ではない。この区別を国際社会は明確に共有すべきである。

この原則が成立しない限り、侵略国は百年経っても千年経っても、終戦なき侵略国であり続ける。制裁は解除されず、国際的信認も回復しない。それは報復ではない。侵略によって得た利益を、時間で正当化させないための当然の帰結である。

もしこの線引きを曖昧にすれば、世界は「やった者勝ち」に支配される。侵略しても、停戦に持ち込めば勝ち逃げできる。国境は揺らぎ、戦争は断続的に繰り返され、世界は慢性的混乱に沈む。

北方領土は凍結された問題ではない。奪われたまま固定された問題である。台湾を巡る現状もまた、国境と主権を曖昧にすることで侵略のコストを下げようとする試みだ。ウクライナ、北方領土、台湾は一本の線でつながっている。

停戦直前の一撃が突きつけたのは、この冷酷な現実である。我が国が回復的ウティ・ポシデティスという終戦原則を直視し、国際社会と共有できるかどうか。それが、我が国自身の安全と、世界の秩序を左右する。

【関連記事】

凍結か、回復か──ウクライナ停戦交渉が突きつけた「国境の真実」 2025年12月23日
停戦が語られるほど、論点は「銃声」から「国境」に移る。本稿が主張する“停戦と終戦の峻別”を、国境の原則という一段深いレベルで読者に腹落ちさせる基礎記事だ。 

歴史と国際法を貫く“回復的ウティ・ポシデティス(ラテン語でそのまま)”──北方領土とウクライナが示す国境原則の行方 2025年11月26日
北方領土とウクライナを同じ座標で扱い、「国境は凍結ではなく回復で決着すべきだ」という軸を打ち立てた中核。今回の記事の“結論”を、より太い背骨にする一篇だ。 

米国の新和平案は“仮の和平”とすべき──国境問題を曖昧にすれば、次の戦争を呼ぶ 2025年11月21日
「和平」という言葉が最も危うくなる瞬間を、国境の曖昧化という一点で見抜いている。停戦を急ぐほど“やった者勝ち”が固定される構造を、読者に一撃で理解させる補強になる。 

すでに始まっていた中国の「静かな日台侵略」──クリミアと高市バッシングが示す“証左” 2025年11月20日
ウクライナの「国境の曖昧化」が、台湾・我が国周辺で“別の形”として先に進む危険を示した記事だ。停戦論を東アジアへ接続し、読者の危機感を一段引き上げられる。 (ゆたかカールソン)

ロシアの“限界宣言”――ドミトリエフ特使「1年以内に和平」発言の真意を読む 2025年10月1日
「一年以内の和平」という言葉の裏にあるロシア側の計算を読み解き、今回の“停戦直前攻撃”を「偶発ではなく工程」として捉える視点を補強する。本文中の特使言及に具体性を与えられる。 

2025年12月23日火曜日

凍結か、回復か──ウクライナ停戦交渉が突きつけた「国境の真実」


まとめ

  • 今回のウクライナ停戦論は、単なる呼びかけではない。水面下では、停戦線・再侵攻時の自動反応・国家機能維持までを同時に考えた「具体的な設計思想」が、文書レベルで実際に詰められている。これまでの停戦論とは質がまったく違う。
  • 国際社会は長年、「正しい国境」ではなく「凍結できる国境」を選び続けてきた。北方領土もウクライナも、その延長線上にある。これは正義の勝利ではなく、是正できなかった結果としての現実にすぎない。この構造を理解しない限り、戦争は形を変えて繰り返される。
  • それでも道はある──「回復的ウティ・ポシデティス」という視点だ。主権は元に戻す。人の人生は選ばせる。凍結に甘んじず、回復を最終目標として掲げ続ける国だけが、将来の選択肢を失わずに済む。ウクライナ、日本、台湾はいま、それぞれ異なる形でその分岐点に立っている。

1️⃣停戦が語られ始めた本当の理由

アメリカとウクライナが大筋合意 米メディア報道 トランプ氏とゼレンスキー氏が近く首脳会談へ


ウクライナ戦争をめぐって「停戦」という言葉が語られること自体は、これまで何度もあった。しかし、その多くは希望的観測か、外交上の建前にすぎなかった。ところが今、この言葉の重みが明らかに変わりつつある。戦争当事国の指導者自身が、「象徴的努力ではなく、現実的成果が見え始めている」と語り始めたからである。

これは戦況が好転したという意味ではない。むしろ逆だ。この戦争を完全な勝利で終わらせることが、どの当事者にとっても現実的ではなくなったという事実が、ようやく共有され始めたということである。ここから先は、善悪や感情の問題ではない。「戦争をどう終わらせるか」という制度と秩序の問題である。

今回の停戦論がこれまでと決定的に違うのは、具体的な設計思想が、実際に文書レベルで議論されている点にある。全面公開された停戦協定案は存在しない。しかし、ウクライナ・米国・欧州が協議している枠組みとして、いわゆる「二十項目プラン(20-point plan)」が存在することは、複数の信頼できる報道によって確認されている。

ロイター通信は、ゼレンスキー大統領が「戦争終結に向けた交渉が現実的な成果に近づいている」と述べ、複数項目から成る和平構造がすでに用意されていると報じている。
https://www.reuters.com/world/ukraines-zelenskiy-says-negotiations-war-settlement-close-real-result-2025-12-22/

またAP通信も、停戦線の設定、安全保証の枠組み、戦後復興を含む複数の文書が並行して検討されていることを伝えている。
https://apnews.com/article/d92b40dab1055df4e3512f77c27eb5c9

重要なのは、これが単なる理念的提案ではない点だ。戦闘停止、再侵攻時の自動的反応、国家機能の維持という三点を、同時に成立させようとする設計思想が明確に存在している。従来の停戦論が「止めよう」という呼びかけにとどまっていたのに対し、今回は「止めた後に崩れない構造」が現実に検討されている。

だからこそ、ウォロディミル・ゼレンスキーは、停戦論を「現実的成果」という言葉で表現する段階に入ったのである。

この変化を理解するには、国境をどう扱ってきたのかという、国際秩序の深層に目を向ける必要がある。

2️⃣凍結が支配してきた国際秩序の正体

 北方領土問題は事実上凍結されているが・・・・

ウティ・ポシデティスとは、「いま保持しているものを、そのまま保持せよ」という意味のラテン語である。国際法では、主に植民地独立の局面で用いられてきた。不自然な行政区画であっても、それを国境として固定しなければ、独立のたびに戦争が起きる。正しさよりも流血回避を優先した原則である。

この原則は、正義を実現するためのものではなかった。秩序崩壊を防ぐための応急処置であり、安全弁であった。

冷戦後、国際環境が変わると、この発想はさらに変質する。国際社会は「不法だと分かっていても是正できない実効支配」に繰り返し直面し、そのたびに事実上の凍結を選び続けた。これが、いわば拡張ウティ・ポシデティスと呼ぶべき慣行である。

北方領土は、その完成形だ。我が国の主張は国際法上正しい。しかし、是正できなかった結果、実効支配は固定され、問題は凍結された。正義は否定されていないが、現実は動かなかった。この構図こそ、拡張ウティ・ポシデティスが支配する世界の本質である。

ウクライナの停戦論も、この延長線上にある。国境の最終的な正しさは先送りされ、まず殺し合いを止めるために線を固定する。決して美しい話ではないが、これが現代の国際秩序が選び続けてきた現実である。

しかし、凍結は正義ではない。是正できなかった結果として選ばれた管理策にすぎない。この点を曖昧にしたままでは、国境問題は永遠に「仕方のない現実」として固定されてしまう。

3️⃣回復的ウティ・ポシデティスと、いま各国が取るべき道

そこで私は、「拡張」ではなく「回復的」という言葉を用いる。これは既存慣行の説明ではない。凍結に代わる、別の原理を示すための言葉である。

回復的ウティ・ポシデティスとは、力による現状変更が起きる前の、正当な主権状態に戻すことを原則とする考え方である。この原則において、主権の帰属は曖昧にされない。

北方領土について言えば、結論は明確だ。四島すべてが日本に帰属する。この原則は一切動かない。回復的ウティ・ポシデティスは、我が国の立場を弱めるものではない。むしろ、それを国際秩序の言葉で整理し直す試みである。

住民選択権は、主権を分割するための装置ではない。主権回復後に、人が自らの人生を選ぶための人道的配慮である。主権は戻す。人生は選ばせる。この役割分担が中核だ。

ウクライナも同様である。2014年以前、全面侵攻以前に国際的に承認されていた国境線が正当な線である。クリミアを含む占領地域は、最終的にすべてウクライナに帰属する。停戦は管理策であって、主権決定ではない。

では、拡張ウティ・ポシデティスが支配する世界で、各国は今どう動くべきか。

ウクライナは、停戦を選ぶとしても、主権の最終帰属を曖昧にしてはならない。線は凍結されても、主権は凍結してはならない。国家として生き残り、回復の可能性を将来に残すことが最優先である。

我が国は、北方領土の凍結を既成事実にしてはならない。四島一括帰属という原則を下ろさず、正当性は時間で減衰しないという姿勢を保ち続ける必要がある。同時に、台湾有事を防ぐことが、我が国自身が新たな凍結の当事者にならないための最重要課題である。

台湾には凍結という選択肢がない。侵攻は即、国家消滅を意味する。だからこそ抑止が必要だ。それは台湾だけの問題ではない。我が国の安全保障そのものである。

台湾には凍結という選択肢はない

拡張ウティ・ポシデティスが支配する世界では、回復は待っていても訪れない。凍結を前提に生き延び、力を蓄え、主権を言葉として守り続けた国だけが、回復という選択肢を将来に残せる。

戦争は終わるのか。答えは条件付きで終わり得る。その条件とは、凍結を当然視せず、回復という視点を捨てないことである。国境を「仕方なく固定するもの」としてではなく、「回復されるべき秩序」として考え続ける。その思考を失ったとき、戦争は形を変えて繰り返される。

回復的ウティ・ポシデティスという言葉は、理想論ではない。拡張ウティ・ポシデティスが行き詰まった先に現れる、次の座標軸である。

【関連記事】

歴史と国際法を貫く“回復的ウティ・ポシデティス(ラテン語でそのまま)”──北方領土とウクライナが示す国境原則の行方 2025年11月26日
国境線は凍結されるべきか、それとも回復されるべきか。北方領土とウクライナを同時に扱い、国際法と歴史の両面から「正当な線とは何か」を問い直す。回復的ウティ・ポシデティスという概念を初めて明確に提示した中核的論考。

米国の新和平案は“仮の和平”とすべき──国境問題を曖昧にすれば、次の戦争を呼ぶ 2025年11月21日
米国主導の和平構想が抱える最大の問題点を「国境の曖昧化」に見出し、それが将来の紛争を不可避にする構造を解説。停戦と主権を切り分けて考える必要性を、現実主義の立場から論じている。

すでに始まっていた中国の「静かな日台侵略」──クリミアと高市バッシングが示す“証左” 2025年11月20日
クリミアで使われた手法が、台湾と日本周辺でも応用されつつある事実を指摘。国際法の隙間と世論工作を組み合わせた中国の戦略を読み解き、国境問題が「戦争以前」に決着される危険性を示す。

ロシアの“限界宣言”――ドミトリエフ特使「1年以内に和平」発言の真意を読む 2025年10月1日
ロシア側から発せられた「和平期限」発言を、国内事情と戦争継続能力の観点から分析。停戦が語られ始めた背景にあるロシアの限界と計算を冷静に読み解いている。

<解説>ウクライナ戦争の停戦交渉が難しいのはなぜ?ベトナム戦争、朝鮮戦争の比較に見る「停戦メカニズム」の重要性 2025年3月31日
過去の大戦争がどのように停戦へ至ったのかを比較し、停戦線・監視体制・主権未確定状態という「メカニズム」の重要性を解説。現代のウクライナ停戦論がなぜ難航するのかを歴史的に理解させる一篇。

2025年12月6日土曜日

中国の歴史戦は“破滅の綱渡り”──サンフランシスコ条約無効論が暴いた中国最大の矛盾


まとめ
  • 今回のポイントは、中国のサンフランシスコ講和条約無効論が、台湾から日本国憲法まで巻き込みながら、結局は“中国自身を追い詰める矛盾”を露呈した点である。
  • 日本にとっての利益は、この構造的な矛盾を正確に把握し、国際社会へ明瞭に示すことで、歴史戦で中国に対抗する“論理と正当性の主導権”を握れることである。
  • 次に備えるべきは、歴史戦・情報戦の本格化を見据え、事実と整合性を武器とする日本の発信体制を強化し、“揺るがない国家”として立ち続ける準備である。

1️⃣なぜ中国共産党はサンフランシスコ講和条約を嫌うのか

サンフランシスコ講和条約の調印。首席全権の吉田茂首相が最後に署名=1951年9月8日

中国共産党は、歴史の話になると急にアクロバットを始める癖がある。
普通なら安全な橋を渡ればいいところを、わざわざほつれた綱の上で走り出し、
「我々こそ歴史の正義だ」と声を張り上げる。その奇妙な芸の代表が、
「サンフランシスコ講和条約は無効だ」という主張である。

サンフランシスコ講和条約は1951年に調印され、翌52年に発効した。
日本はこれによって正式に主権を回復し、台湾・朝鮮半島・千島列島などの戦後処理が国際法上整理された。戦後アジアの秩序を支える“基礎杭”のような存在だ。これを抜けば、アジアの戦後秩序はたちまち傾く。

では、なぜ中国はこの条約を嫌うのか。

理由の一つは、自分がこの条約の場にいなかったという歴史的事情だ。当時は中華人民共和国と中華民国が並び立ち、国際社会はどちらを正統政府と認めるか決められなかった。宴会の席に「佐藤」が二人来て、どちらも本物だと言い張るような状況である。どちらか片方を呼べば大騒ぎになる。結局アメリカは「両方呼ばない」という判断をしたまでだ。

しかし本当の理由は別にある。

中国共産党は、戦後の国際秩序そのものを気に入っていない。
戦後秩序はアメリカを中心とした自由主義陣営がつくったもので、中国は“後から入った新参者”として、その枠に収まる気などさらさらない。だから習近平は2021年の国連演説で「国際秩序は特定の国が作ったルールであってはならない」と述べた。
言い換えれば、「今ある秩序は嫌だ。中国の都合のいいように作り直したい」という宣言である。

サンフランシスコ講和条約は、その戦後秩序の象徴だ。
だから中国は、何としてもこの条約を否定したいのである。

しかしここで重大な勘違いがある。
日本国憲法は明治憲法の改正として成立し、その後の主権回復はサンフランシスコ講和条約によって国際的に確認された。つまり、戦後日本の国家体制は、国内の憲法と、対外的な講和条約という両輪で成立している。

サンフランシスコ講和条約を無効と言い出すことは、日本の戦後国家の正統性そのものに難癖をつける行為だ。
まるで他人の家の基礎を壊そうとして、自分の足元が抜け落ちるようなものだ。その危険に気づかないまま、中国は綱渡りを続けている。
 
2️⃣無効論の破壊力

台湾も、朝鮮半島も、北方領土も、日本国憲法も巻き込んでしまう

では、中国が主張するようにサンフランシスコ講和条約が“無効”ならどうなるのか。
その帰結は想像以上に破壊的である。

まず台湾だ。
日本が台湾を放棄した法的根拠は、この条約にしかない。
ということは、条約が無効なら、

「日本は台湾を一度も正式に手放していない」

という、極めて皮肉な結論にたどり着く。

中国から見れば悪夢以外の何ものでもない。

かつて日本総督府だった現在の台湾総統府

次に朝鮮半島だ。
日本が朝鮮の独立を明確に承認したのもこの条約である。
もし条約が消えるなら、戦後処理の法的枠組みは出発点から揺らぐ。
もちろん韓国が日本に戻るなどという話にはならないが、
国際法上の整理が崩れれば議論そのものが混乱する。

さらに北方領土や千島列島、南樺太も同じ枠組みの中で扱われている。
条約無効論は、領土問題の前提を丸ごと吹き飛ばすことになる。

そして最も深刻なのは、日本国憲法だ。
日本国憲法は明治憲法の改正という形で成立したが、
その憲法を持つ日本が主権国家として正式に承認されたのは、
サンフランシスコ講和条約の発効による。

ここが抜ければ、

戦後日本の主権回復が曖昧になり
日本国憲法の国際法上の位置づけが揺らぎ
日本の法体系そのものの連続性が危うくなる

という、誰も望まない混乱が生じる。

中国は、日本を追い詰めているつもりで、
実は台湾、朝鮮半島、北方領土、さらには日本国憲法を巻き込んだ“大爆発”の導火線に火をつけているのだ。

これはもはや歴史戦でも外交戦でもない。
歴史事故である。
 
3️⃣ 歴史を弄べば歴史に殴られる


だが、事実が勝つとは限らないからこそ、日本は退いてはならない

中国は歴史戦を仕掛けるたびに「日本の軍国主義復活だ」と声を上げるが、
実際のところ、中国が相手にしているのは日本ではなく、戦後の国際秩序そのものだ。
その秩序を壊し、自分たちが主役になれる世界を作りたい――その野心が透けて見える。

しかし、歴史とはそんな都合よく書き換えられるものではない。
弄べば、最後に殴り返される。

ただし、ここで勘違いしてはいけない。
事実が必ずしも勝つとは限らない。
国際政治の世界では、嘘が繰り返され、宣伝が続けば、それが“常識”として定着してしまうことがある。
歴史のねつ造が、いつの間にか教科書に載ってしまうこともある。

だからこそ、日本は今回の中国の主張を甘く見てはならない。
サンフランシスコ条約無効論は、単なる戯れ言ではなく、
放置すれば日本の主権、領土、憲法、戦後秩序に深刻な影響を及ぼす。

日本は堂々と言うべきである。

「歴史は力ではなく、整合性によって立つ。日本は揺るがない」

それを国際社会に向けてはっきり示すことこそ、
歴史の歪曲を防ぎ、日本の立場を守る唯一の道である。

そして何より――
歴史の事実が生き残るかどうかは、事実を守る者が退かずに立ち続けるかで決まる。

サンフランシスコ講和条約を壊したがる中国の主張は、
その真実を逆説的に浮かび上がらせている。

日本は退いてはならない。
この一点に、日本の未来がかかっているのである。

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2025年11月26日水曜日

歴史と国際法を貫く“回復的ウティ・ポシデティス(ラテン語でそのまま)”──北方領土とウクライナが示す国境原則の行方


まとめ
  • 国境の曖昧化は戦争の最大原因であり、独仏国境のアルザス・ロレーヌやウクライナの事例が示すように、国境確定こそ国際秩序を守る最低条件である。
  • 「ウティ・ポシデティス」は行政境界をそのまま国境にする原則で、独立期の混乱を防ぐため国際司法裁判所でも国際慣習法として認められたが、旧ソ連の人工的境界のような歪みには対応できない限界がある。
  • これを補完するため、私は「回復的ウティ・ポシデティス」を提唱する。これは、紛争前の国境に戻したうえで、住民にどちらの国に属するか選ぶ権利を与えることで「線」と「人」の矛盾を同時に解消する。
  • 北方領土は日本固有の領土であり、サンフランシスコ講和条約でも帰属は未確定のままで、ロシア系・ウクライナ系など多層的な住民構造を踏まえても“回復的ウティ・ポシデティス”で最も合理的に解決できる。
  • この新原則は北方領土だけでなく、南シナ海・バルカン・カシミールなど世界の火薬庫にも応用可能で、日本こそ二十一世紀の国境原則を国際社会に提示できる立場にある。

1️⃣国境の曖昧さは必ず戦争を呼ぶ──歴史が突きつける警告


ウクライナ戦争は、二十一世紀に突如として現れた地政学の逆流ではない。むしろ、国境とは何かという“国家の根本”を突きつけた出来事である。十九世紀から二十世紀にかけてフランスとドイツが争奪したアルザス・ロレーヌは、まさに「国境が曖昧だから戦争になる」という典型だった。取り返せば憎しみが積み上がり、奪われれば復讐が始まる。その怨念の連鎖がついに第一次世界大戦、そして第二次世界大戦へとつながった。

だからこそ国際社会は十九世紀の南米独立戦争の時代から、行政境界をそのまま国境として固定する「ウティ・ポシデティス」という知恵に辿り着いた。後にアフリカ独立でも採用され、二十世紀末には国際司法裁判所の判例によって、国際慣習法として確立していく。独立時の境界を固定することこそ、戦争を防ぐ“最低条件”であると世界が学んだからだ。

しかし旧ソ連の境界線は、民族や歴史を反映したものではなく、モスクワが統治しやすいように操作した人工的な線だった。ウクライナ東部やクリミアが不安定化した根本原因はそこにある。それでもロシアは1991年、ウクライナの既存国境を正式に承認している。この一点だけで、プーチン政権が後になって武力で国境を変更しようとした行為が、どれほど明確な国際法違反であるかがわかる。

にもかかわらず、一部の西側が提示する和平案は、国境を曖昧なまま停戦しようとする“仮の和平”でしかない。国境が曖昧な和平は、必ず次の戦争を呼ぶ。これはアルザス・ロレーヌでも、中東でも、バルカンでも、歴史が何度も証明してきた。ウクライナだけの問題ではない。国境を曖昧にした前例が生まれれば、日本が真っ先に狙われる。
 
2️⃣ウティ・ポシデティスの限界を超える──私が提唱する“回復的ウティ・ポシデティス”とは何か

前線付近の露軍に向けロケット弾を発射するウクライナ兵=ウクライナ南部ザポロジエ州で2023年7月13日

ウティ・ポシデティスは「線」を固定する原則であり、独立後の混乱を防ぐためには一定の合理性がある。しかし重大な弱点がある。国境線と、そこに住む“人々”が一致しない場合、国境は必ず爆発する。ドンバス、カシミール、ナゴルノ・カラバフ、コソボなど、世界の火薬庫のほぼ全てがこの問題に起因している。「線」だけ戻しても争いは終わらない。「住民意思」だけ優先しても国境が崩壊する。これが国境問題の根本的な矛盾だ。

この矛盾を解決するために、私は従来のウティ・ポシデティスを改革する「回復的ウティ・ポシデティス」を提唱する。その原則は極めてシンプルだ。国境線は紛争が起きる前の“元の線”に戻す。そして、その地域に暮らす人々には、どちらの国に属するかを自由に選ぶ“住民選択権”を与える。線と人を同時に解決する二段構えの方式である。

これは決して奇抜な案ではない。むしろ、歴史と国際法の矛盾をもっとも自然に解消する“二十一世紀の国境原則”である。もはや民族構成が流動化した現代において、「線だけ戻す」か「人だけ見るか」の二択では破綻する。線と人をセットで整合させて初めて争いが終わる。

「回復的ウティ・ポシデティス」に関して、私が自分で調べた限りでは、これをストレートに主張する見解などは見られなかった。どなたか、このような主張が他にもあることをご存知の方は、教えていただきたい。
 
3️⃣北方領土をどう扱うか──回復的ウティ・ポシデティスは日本にこそ必要だ


北方領土は日本固有の領土であり、サンフランシスコ講和条約でもソ連への帰属は一度も認められていない。つまり北方領土は“未確定領土”であり、国際法上は紛争前の線に戻せば日本領である。しかし問題は「誰が住んでいるか」だ。戦後のソ連移住政策によってロシア系住民が入植したが、実際にはロシア人だけではない。ウクライナ人、ベラルーシ人、タタール系、軍属由来の住民、さらには歴史の痕跡としての日本人や先住民族など、多層的で複雑な人口構造がある。

この現実を踏まえず、「ロシア人の意思」だけを議論するのは歴史的にも事実認識としても誤りである。だからこそ回復的ウティ・ポシデティスが必要になる。北方領土は日本に戻す。しかし、現在住むすべての住民に対して、日本国籍かロシア国籍かを選ぶ権利を保障する。さらに当然のことながら、もし必要なら自ら属する国への移動の権利を有するものとする。言語、財産権、教育、行政サービスを守る移行措置を設け、必要なら国際監視団で透明性を確保する。暴力的でも、非現実的でもない。歴史を尊重しながら、未来も守るための“現実解”である。

しかもこの原則は北方領土だけでなく、世界のどの火薬庫にも応用できる。南シナ海、バルカン、中東、カシミール──曖昧な国境と複雑な人口が生む紛争を一気に整理できる。日本こそ、この新原則を国際社会に提示する資格を持つ国家だ。北方領土という未解決問題を抱える日本だからこそ、二十一世紀の国境原則に貢献できる。

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米国の新和平案は“仮の和平”とすべき──国境問題を曖昧にすれば、次の戦争を呼ぶ 2025年11月21日
ウクライナ国境を曖昧にした和平案が、将来の紛争を呼び込む構造を解説。国境問題をめぐる本記事と最も強く連動する。

すでに始まっていた中国の「静かな日台侵略」──クリミアと高市バッシングが示す“証左” 2025年11月20日
「クリミア併合モデル」が東アジアに輸入されているという視点を提示し、国境の曖昧化が日本にも迫っている現実を論じる。

<解説>ウクライナ戦争の停戦交渉が難しいのはなぜ?ベトナム戦争、朝鮮戦争の比較に見る「停戦メカニズム」の重要性 2025年3月31日
停戦メカニズムを歴史比較で解説し、「曖昧な停戦=次の戦争」という構図を整理。国境確定の不可欠性を理解する基礎となる。

“ロシア勝利”なら米負担「天文学的」──米戦争研究所が分析…ウクライナ戦争、西側諸国は支援を継続すべきか? 2023年12月16日
ロシア勝利が世界に及ぼす軍事・財政コストを分析し、日本の安全保障に直結する「国境侵犯型の戦争」の危険性を示す。

四島「不法占拠」を5年ぶりに明記──北方領土返還アピール 2023年2月7日
北方領土問題を国際法と現実政治の双方から整理し、「国境確定の原則」が日本の将来を左右することを示す。

2024年5月29日水曜日

【攻撃性を増す中国の「茹でガエル」戦術】緊張高まる南シナ海へ、日本に必要な対応とは―【私の論評】同盟軍への指揮権移譲のリスクと歴史的教訓:自国防衛力強化の重要性

【攻撃性を増す中国の「茹でガエル」戦術】緊張高まる南シナ海へ、日本に必要な対応とは

まとめ
  • アキリーノ米インド太平洋軍司令官は、中国が「茹でガエル戦術」で徐々に圧力を強めており、南シナ海や台湾海峡での軍事行動が一層攻撃的で危険になっていると指摘した。
  • 中国の沿岸警備隊によるフィリピンの排他的経済水域内でのサンゴ礁周辺での威嚇行為に強く懸念を示した。
  • 北朝鮮とロシアの脅威、中露の協力関係深化にも警戒を要すると述べた。
  • 同盟国との連携が重要であり、新たな軍事能力の強化と相互運用態勢の早期確立が課題だと指摘した。
  • 日本としては、同盟国との連携強化に伴う指揮命令系統の問題など、主権にかかわる課題が将来的に生じる可能性があるため、自らの防衛能力強化を急ぐ必要がある。

アキリーノ米インド太平洋軍司令官

 アキリーノ米インド太平洋軍司令官は、退任を前に、中国の南シナ海や台湾海峡における軍事的圧力の強化を「茹でガエル戦術」と表現し、強く非難した。中国は徐々に温度を上げることで相手に危険性を過小評価させ、いつの間にか危機的状況に陥らせるこの戦術を追求しており、行動は次第に攻撃的かつ大胆になり、地域の不安定化を助長していると指摘した。

 特に、フィリピンの排他的経済水域内のサンゴ礁周辺での中国沿岸警備隊の威嚇行為は一線を越えた新たな段階に入ったとの懸念を示した。放水砲を用いてフィリピン軍への補給を妨害するなど、これまで以上に攻撃的な姿勢を見せているからだ。

 アキリーノ司令官はさらに、北朝鮮の度重なるミサイル発射や、北朝鮮・ロシアの協力関係、中国・ロシアの関係深化にも危惧の視線を向けた。これらの動きは地域の緊張をさらに高める要因になりかねないと警鐘を鳴らした。

 そして、中国を始めとするこれらの脅威に対抗するには、同盟国との連携が不可欠であり、各国の新たな軍事能力の強化とそれらの早急な相互運用態勢の確立が喫緊の課題だと力説した。アキリーノ司令官自身、台湾有事の際にも指揮を執っており、中国の一方的な行動に強い危機感を抱いていたことがうかがえる。

 こうした現状認識を踏まえ、日本としても自らの防衛能力の強化を急ぐ必要があるだけでなく、同盟国との連携強化に伴い、将来的には指揮命令系統の一体化など、主権にもかかわる重大な課題が生じる可能性も想定されるため、十分な検討が求められよう。

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】同盟軍の指揮権移譲のリスクと歴史的教訓:自国防衛力強化の重要性

まとめ
  • 軍隊の指揮権を他の同盟国などに移譲すると、現場の実情が正確に伝わらず、同盟国全体の利益が優先されることで、自国の利益が損なわれる可能性がある。
  • 自衛隊が米軍の指揮下に入ることで、日本の防衛任務や戦略的利益が適切に反映されないリスクが高まる。
  • 第二次世界大戦中の英国の例では、第二次世界大戦中の指揮権移譲により戦略的利益が損なわれ、戦後の国力低下にもつながった。
  • ソ連は指揮権を維持し続けた結果、戦中には最大の損害を被りながらも、戦後に領土拡大と国際的な主導権を獲得し、最も利益を得た国となった。
  • 自国の防衛力を自助努力で高めつつ、同盟国と対等な関係を保ち連携することが重要であり、軽々な指揮権移譲は避けるべきである。
上の記事の元記事の最後のほうでは、「古来、同盟軍の戦いでは指揮権を移譲した側の損害が大きくなるとの定評に鑑み、その観点からもわが国は自らの能力強化を早急に進めるべきだという声は傾聴に値する」としています。

これは、指揮権を移譲すれば、意思決定の場が離れた司令部に移ったとすれば、現場の実情を正確に伝えきれず、状況に適さない判断がなされる可能性があります。また、自国の利益よりも同盟国全体の利益が優先されがちになります。このような懸念から、自国の指揮権を最大限維持し、独自の能力を強化すべきだという主張がなされているものと思われます。

台湾有事の場合を想定して、より具体的に説明します。

頼清徳台湾新総統

仮に中国が台湾に武力侵攻した場合、日米同盟に基づき、自衛隊は米軍と共に対処にあたることになるでしょう。しかし、この際に自衛隊の指揮権を完全に米軍に移譲してしまうと、以下のようなリスクが生じる可能性があります。
  1. 現場の実情が適切に伝わらない 台湾有事における自衛隊の活動は、日本の領土、領海、領空の防衛という自国の防衛任務と深く関わっています。しかし、指揮権を米軍に移譲してしまえば、そうした日本の主権的利益が必ずしも十分に反映されない可能性があります。
  2. 自国の戦略的利益が損なわれる 米軍の司令部は、同盟国全体の戦略的利益を最優先します。一方で日本は、例えば中国との関係修復などの将来的な国益を考慮する必要があります。指揮権を移譲すれば、そうした自国の長期的な利益が無視される恐れがあります。
  3. 現場の機動性が失われる 有事における自衛隊の機動的な活動には、政府の迅速な判断と指示が不可欠です。しかし指揮権を移譲してしまえば、意思決定のプロセスが遅延し、機動性が失われてしまう可能性があります。
こういった理由から、自国の防衛能力を強化し、最大限の主体性を維持することが重要であり、安易に指揮権を移譲すべきではないという主張が出てくるのです。台湾有事のように、自国の主権的利益が深く関わる事態では、この点は特に重要になってくるでしょう。

指揮権の移譲によって、不利益を被った国の例としては、英国があげられます。

第二次世界大戦中の英国首相 チャーチル

第二次世界大戦の欧州戦線において、英国と米国の間でこのような事態が生じました。
1942年にドイツ領内への本格的な侵攻を開始した時点で、英国よりも兵力と装備で優位にあった米軍が事実上の主導権を握りました。それにより英軍は以下の不利益を被りました。
 
作戦計画の立案段階から英国側の意見が尊重されない事態が生じました。米軍中心の作戦計画になり、英国軍の犠牲が無視される側面がありました。

航空機や戦車、兵員の割り当てで不利な扱いを受け、英国軍の戦力が十分に生かされませんでした。ノルマンディー上陸作戦では、英国軍の提案する上陸地点が米軍の希望で変更され、不利な展開を強いられました。

このように、同盟国内での指揮権の主導権を持った米軍が、自国の都合を優先する形で作戦を指揮したため、英国軍は戦略的利益を損ねる事態に陥りました。

戦後も同様です。インドをはじめ、連合国内で英国の植民地独立運動が活発化し、戦後に英帝国は瓦解に追い込まれました。他の連合国に比べ、植民地喪失の打撃が最も大きかったと言えます。

戦時下の莫大な費用と戦後の経済的疲弊により、英国は深刻な国力低下に見舞われました。この間、他の米ソなど連合国の国力は向上しており、格差が開きました。

このように、戦時中の連合国内での影響力喪失と、戦後の国力低下が相まって、英国は第二次世界大戦の連合国内で最大の損失を被った国と評価されているのです。

では、米国が第二次世界大戦でもっとも利益を得たかというと、そうとは言い切れないところがあります。

米国は、第二次世界大戦中にナチス・ドイツと戦うソビエト連邦(以下ソ連と略す)に支援を行いました。

支援内容は以下の通りです。
  • 武器・軍需品の供与 米国はレンドリース法に基づき、ソ連に戦車、航空機、艦船、食料品、石油製品等の軍需品を大量に供与しました。金額にして現在の換算で1,800億ドル相当とされています。
  • 資金支援 ソ連への借款や信用供与を行い、戦費の一部を肩代わりしました。合計で109億ドル相当の資金援助がありました。
  • 戦略物資の提供 非鉄金属、燃料、機械類、車両など、ソ連が不足していた戦略物資を米国から供給を受けました。
  • 輸送路の開設 同盟国からソ連へのルートとして、北極海航路・ペルシャ湾ルート・極東ルートなどを開設し、物資の輸送を支援しました。
この大規模な軍事・経済援助によって、ソ連の対ドイツ戦線が物資的に支えられ、持久戦を可能にしたと評価されています。

しかし、結局のところ、もっとも被害の大きかった国でもある、当時のソ連が最大の利益を得たと言えます。その主な理由は、当時のイギリスとは異なり、ソ連は軍の指揮権を一片たりとも、米国に譲らなかったことにつきるでしょう。

これは、ソ連と米国は地理的、歴史的、文化的にも隔絶していたため、米国として指揮のとりようもなかったということに起因してはいるのですが、これが戦後に英国との大きな差を生み出すことになるのです。

第二次世界大戦中のソ連の指導者 スターリン

ソ連が東方戦線の作戦指揮権を完全に自国が掌握し続け、他国に決して権限を譲らなかったことが、戦後の勢力圏拡大と冷戦構造における主導権の獲得につながったといえます。

指揮権の一元的な維持が、戦後のソ連の"利益"獲得に大きく寄与したと言えるでしょう。

ソ連は戦後、日本の現在「北方領土」といわれる地域を領土とし、東欧諸国をソ連の影響下に置き、バルト3国などを事実上の一部領土化しました。領土を大幅に拡大することができました。

ソ連は、ナチス・ドイツ撃滅の最大の功労者となり、戦後は米国とともに超大国の座に着くことができました。東西冷戦構造の一方の中心的存在になりました。戦後設立された、国際連合では、中国とともに常任理事国となっています。

東欧を中心に社会主義圏が大きく広がり、ソ連の影響力が最大化しました。イデオロギー的にも大きな勝利を収めたと言えます。
 
ソ連は、連合国側で主導的な役割を果たし、戦後の東西ドイツ分割や東欧での影響力拡大などを主導できました。

このように、領土的・イデオロギー的な大幅な拡大と、戦後の国際秩序形成における主導権の獲得という意味で、ソ連が第二次世界大戦から最も利益を得た国であると評価できます。

このように、軽々な指揮権移譲は避け、自国の防衛力は自助努力で高めつつ、同盟国とは対等な関係を保ち、緊密に連携する。この二つの側面を両立させることが、軍事力の最大発揮につながるとともに、戦後に不利益を被らないための対策ともなるのです。

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2023年12月16日土曜日

“ロシア勝利”なら米負担「天文学的」 米戦争研究所が分析…ウクライナ全土の占領「不可能ではない」―【私の論評】ウクライナ戦争、西側諸国は支援を継続すべきか?ISWの報告書が示唆するもの

“ロシア勝利”なら米負担「天文学的」 米戦争研究所が分析…ウクライナ全土の占領「不可能ではない」

まとめ
  • ロシアがウクライナ全土を占領した場合、ロシア軍はNATO加盟国への脅威となる。
  • アメリカはこれに備え、ヨーロッパに大規模な兵力を配置する必要があり、そのコストは膨大なものとなる。
  • ウクライナへの軍事支援を継続し、戦線を維持させるだけでも、これらのコストに比べれば「はるかに安上がりだ」という。
  • ウクライナが勝利すれば、アメリカはヨーロッパ大陸で最大かつ最も戦闘力の高い友軍を獲得し、NATO防衛を強化することができる。


 米国の政策研究機関「戦争研究所(ISW)」は、西側諸国がウクライナへの軍事支援を打ち切りロシアが勝利した場合、アメリカは「天文学的」な軍事的・経済的負担を強いられると分析した。

 具体的には、ロシアがウクライナ全土を占領した場合、ロシア軍は豊富な戦闘経験を積み、NATO加盟国への脅威となる。アメリカはこれに備え、ヨーロッパに大規模な兵力を配置する必要があり、そのコストは膨大なものとなる。また、ステルス戦闘機の多くをヨーロッパに配置すると、台湾有事への対応能力が低下する可能性もある。

 一方、ウクライナへの軍事支援を継続し、戦線を維持させるだけでも、これらのコストに比べれば「はるかに安上がりだ」という。ウクライナが勝利すれば、アメリカはヨーロッパ大陸で最大かつ最も戦闘力の高い友軍を獲得し、NATO防衛を強化することができる。

 戦争研究所は、アメリカなどで支援継続の先行きが不透明になるなか、ウクライナが敗北した場合の軍事的・経済的コストについても真剣な議論を促した。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】ウクライナ戦争、西側諸国は支援を継続すべきか?ISWの報告書が示唆するもの

まとめ
  • 戦争研究所は、ウクライナが勝利するためには、西側諸国の支援が不可欠であると主張している。
  • 米国議会では、ウクライナへの巨額の支援を継続すべきかどうか、議論が続いている。
  • 欧州議会では、ウクライナへの支援を継続すべきだという意見が主流だが、具体的な金額や内容については、まだ合意に至っていない。
  • 米国や欧州が現段階で、支援の有無をはっきりさせていないため、日本への支援への圧力が高まる可能性がある。
  • バイデン政権は、ウクライナ支援を国際社会で共有していくことが重要だと繰り返し強調しており、日本にも支援の拡大を働きかけているとの見方もある。

ロシアが勝った場合のISWによる想定地図

The Institute for the Study of War(戦争研究所)は、伝統的な米国の価値観を推進する保守系シンクタンクです。彼らは、米国が築き上げられた原則を尊重する観点から、外交政策と国家安全保障問題について貴重な研究と分析を提供しています。米国の民主主義、自由、人権などの価値観を支持しています。

その彼らが、以上のようなレポートを出しているわけですから、ウクライナ戦争においてウクライナ側が負けるようなことがないように、西側諸国は支援を継続すべきなのでしょう。

米国議会においては、ウクライナへの巨額の支援を継続すべきかどうか、議論が続いています。欧州議会においては、ウクライナへの支援を継続すべきだという意見が主流ですが、具体的な金額や内容については、まだ合意に至っていません。

米国議会においては、2023年11月に、ウクライナへの118億ドルの支援を盛り込んだ歳出補正法案が提出されました。しかし、共和党議員の中には、この金額が過剰だと主張する声があり、法案は可決に至りませんでした。

2023年12月現在、米国議会では、ウクライナへの追加支援を盛り込んだ歳出補正法案の再提出が検討されています。しかし、共和党議員の反対をどう乗り越えるかが課題となっています。

欧州議会においては、2023年10月に、ウクライナへの500億ユーロ(約780億ドル)の支援を盛り込んだ財政支援パッケージが採択されました。しかし、このパッケージは、あくまでも4年間にわたる計画であり、毎年125億ユーロ(約180億ドル)の支援を継続するかどうかについては、まだ合意に至っていません。

欧州議会では、ウクライナへの支援を継続すべきだという意見が主流ですが、ロシアとの経済関係を維持したいという意見もあり、具体的な金額や内容については、まだ議論が続いています。

このように、米国議会においても、欧州議会においても、ウクライナへの巨額の支援を継続すべきかどうか、議論が続いています。今後の戦況や、米国と欧州の経済状況などによって、支援の継続や規模が決まっていくと考えられます。

米国や、欧州が現段階で、支援の有無をはっきりさせていない現状では、日本への支援への圧力が高まる可能性もあります。

バイデン政権は、日本の巨額のウクライナ支援を肩代わりさせるため、岸田首相にかわる、米国が御しやすい総理大臣を擁立させたいのではないかと、現在の岸田総理の支持率低下や、検察の不自然な動きなどに結びつけて語る識者もいますが、それに関しては現状では肯定も否定もできません。いずれ、何かの情報がでてくれば、このブログにも掲載することとします。

林官房長官は記者会見で、米国 が ウクライナ 支援を削減した場合、日本政府がこれを肩代わりするのかについて、質問に答えなかった。

実際、バイデン政権による日本にウクライナ支援を肩代わりさせるような具体的な発言、行動は、現時点では確認されていません。

しかし、バイデン政権は、ウクライナ支援を国際社会で共有していくことが重要だと繰り返し強調しています。また、日本は、アメリカの同盟国であり、民主主義や人権の価値観を共有する国であり、ウクライナ支援に積極的に貢献することが期待されています。

こうした背景から、バイデン政権が日本にウクライナ支援の拡大を働きかけているとの見方もあります。

具体的には、以下のようなものが挙げられます。
  • 2023年11月、バイデン大統領は、日米首脳会談において、岸田首相に対し、ウクライナへの支援を強化するよう要請しました。
  • 2023年12月、アメリカ国務省は、日本を含むG7諸国に対し、ウクライナへの追加支援を呼びかけました。
日本政府は、2023年11月15日、ウクライナへの人道支援として、10億ドルの追加支援を決定しました。また、2023年12月20日には、ウクライナへの防衛支援として、1億ドルの追加支援を決定しました。

日本国内では、ウクライナ支援を巡って、自民党と野党の間で意見の相違が生じています。自民党は、ウクライナ支援を拡大すべきだと主張していますが、野党からは、財政負担や経済への影響を懸念する声が上がっています。

こうした状況を踏まえると、バイデン政権が日本にウクライナ支援の拡大を働きかけていることは、十分に考えられます。しかし、日本がそれに応じるかどうかは、国内の政治状況や、今後の戦況などによっても左右されると考えられます。

北朝鮮のICBM

ただ、日本は中国や北朝鮮との間で独自の課題に直面しており、資源は限られています。より良いアプローチは、米国が模範を示して支援をリードすることです。米国自身がウクライナに強力な援助を提供し、同盟国にもできる限りの支援を行うよう促すべきです。

ISWの報告書は、同盟国にウクライナ支援を押し付けるのではなく、同盟国に情報を与え、支援を説得するものであるべきと思います。

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2023年6月19日月曜日

ウクライナ戦争で中国への不信感を強める欧州―【私の論評】日米欧は、中国の都合よく規定路線化する姿勢には疑いの目で迅速に対処すべき(゚д゚)!

ウクライナ戦争で中国への不信感を強める欧州

岡崎研究所


 中国は、ウクライナ戦争の停戦を促すため、ウクライナ、ロシア、欧州諸国に働きかけている。しかし、中国の和平計画は、ロシアがウクライナ領土の20%近くを占領している現状をそのままにしたままで、まず停戦をしてはどうかというものであり、ウクライナにもウクライナ支援をしている欧州諸国にも到底受け入れられる提案ではない。

 中国はこういう提案をすることで、ロシアの侵略とその成果を認める姿勢を示したが、これで仲介できると考えるのは中国の情勢判断能力に疑問を抱かせるものであると言わざるを得ない。さらに、今はウクライナが反転攻勢を加えようとしている時期であり、ピントの外れた仲介であると言わざるを得ない。

 欧州側が李特使の考え方に強く反発したのは当然であり納得できるが、ウクライナ戦争とそれへの対応を見て、欧州の対中不信や姿勢はより厳しくなると思われる。そのこと自体は歓迎できることであろう。

 フランスは、今なお中国のウクライナでの永続する平和への役割がありうるとしているが、何を念頭においているのか、理解しがたい。マクロン大統領の訪中の際の共同声明、その後のマクロンの対露、対米姿勢、特に北大西洋条約機構(NATO)や台湾問題に関する発言等には、要注意である。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事を御覧ください。

【私の論評】日米欧は、中国の都合よく規定路線化する姿勢には疑いの目で迅速に対処すべき(゚д゚)!

元記事では、「最近、中国は状況対応型で原理原則のない国になり、信用できない国であると思わざるを得ないことが多くなった。北方領土問題についても、1964年、毛沢東が日本の立場への支持を打ち出したが、最近それを取り下げ、日本の立場を支持することはやめると言った。立場を平気でころころと変えるような国、首尾一貫しない国を信用するのは大きな間違いにつながる。中国を不信の目で見ることが必要と思われる」としています。

これについては、以前からこのブログでも主張してきたことです。その記事のリンクを以下に掲載します。
習近平の反資本主義が引き起こす大きな矛盾―【私の論評】習近平の行動は、さらに独裁体制を強め、制度疲労を起こした中共を生きながらえさせる弥縫策(゚д゚)!

AI生成画像

 これは、2021年7月の記事です。この記事の結論部分を以下に引用します。

中国の路線変更は大きな問題であり、「毛沢東主義への回帰」とか「鄧小平路線の変更」というよりも、もっと細かく見ていく必要があります。ただ、習近平の今のやり方は中国経済にとってはよい結果をもたらさないということと、中国はますます独裁的な国になることは確かです。共産党と独裁には元々強い親和性があります。

しかし、国民の不満は爆発寸前です。私自身は、習近平の一連の行動は、結局のところさらに独裁体制を強め、国民の不満を弾圧して、制度疲労を起こした中国共産党を生きながらえさせるための弥縫策と見るのが正しい見方だと思います。実際は本当は、単純なことなのでしょうが、それを見透かされないように、習近平があがいているだけだと思います。

習近平に戦略や、主義主張、思想などがあり、それに基づいて動いていると思うから、矛盾に満ちていると思えるのですが、習近平が弥縫策を繰り返していると捉えれば単純です。2〜3年前までくらいは、戦略などもあったのでしょうが、現在は弥縫策とみるべきと思います。

無論、多くの国の指導者が、国際関係や国内の問題に関して、思いがけないことは頻繁に起こります。そのため、思いがけないことに関しては、弥縫策を取るのは普通のことだと思います。それにしても、長期の戦略がありながらも、当面弥縫策をとるのならわかりますが、習近平の行動は、単なる弥縫策と見るべきかもしれません。

特に経済面では、それは顕著です。過去に何度か述べたように、中国は国際金融のトリレンマにより、独立した金融政策ができない状況に陥っています。独立し金融政策ができないことは、中国経済に深刻な打撃を与えつつあります。

対処法は、いたって簡単で、人民元を固定相場制から変動相場制に移行させることです。あるいは、資本の自由な移動をさせないようにするかです。ただ、こちらのほうはできないでしょう。

だとすれば、変動相場制に移行するしかないのです。ただ、習近平はこれは実行せず、経済面においては弥縫策を繰り返すのみです。構造要因を取り除かない限り、中国経済が成長軌道に乗ることはありません。中国経済に関しては、様々な論評がなされていますが、それは現象面を語っているだけであって、中国経済が悪化し回復しないのは、独立した金融政策ができないことが根本原因です。

そうして、習近平は対外関係、国内でも弥縫策を繰り返しています。ただ、習近平の弥縫策は、様々な事柄を既成事実化するという手法で実行されていることが、より他国から信頼されないのと、危険な兆候を生み出しています。

習近平の政策を既成事実化する形で弥縫策を実施した例としては、以下のようなものがあります。

国家主席の任期制限の廃止。これは2018年の憲法改正によって行われ、習近平は無期限で政権を維持できるようになりました。これは、多くの人が習近平による権力奪取と見なし、物議を醸した。

反対意見の取り締まり。 習近平は、中国における反対意見を取り締まり、活動家、ジャーナリスト、弁護士を逮捕・投獄してきました。これは、「国家安全保障」を理由に人々を拘束する広範な権限を政府に与える国家安全法の拡大を含む、多くの手段によって行われてきました。

中国の軍隊の拡大。習近平は、新しい兵器システムの開発や南シナ海における中国の海軍プレゼンス拡大を含む、中国軍の大幅な拡張を監督してきました。これは、中国が世界の舞台で自己主張を強めていることの表れであるとの見方もあります。

一帯一路構想。一帯一路構想は、中国が世界の発展途上国に数十億ドルを投資する大規模なインフラプロジェクトです。この構想は、経済成長を促進し、貧困を削減する可能性があると一部で評価されていますが、中国の債務負担を増大させる可能性や地政学的野心から批判されることもあります。

これらは、習近平の弥縫策を既成事実化する形で実施されたほんの一例に過ぎないです。

習近平の弥縫策は、最近の琉球列島に関する発言にもみられます。

2023年3月8日に中国中央テレビ(CCTV)で放送されたテレビ番組「中国文化の生命力」。番組では、琉球諸島に関する習近平主席のコメントや、中国の主張を支持する学者たちの解説が紹介されました。

AIによる生成イメージ

習近平はコメントの中で、琉球諸島(現代の沖縄諸島)は "中国領土の不可分の一部 "であると述べました。また、中国は "琉球諸島を支配してきた長く継続的な歴史がある "とも述べています。

番組に出演した学者たちも、習近平の発言に共鳴していました。彼らは、琉球諸島は常に中国の一部であり、日本が同諸島を領有することは違法であると述べました。

中国メディアのキャンペーンは、琉球諸島の主権を主張する中国によるより大きな努力の一部です。中国はまた、この地域での軍事的プレゼンスを高めており、ロシアとの合同軍事演習を実施しています。

日本政府は、中国のメディアキャンペーンに懸念を持って反応しています。日本政府は、琉球諸島の領有権を放棄することはないと述べています。

そもそも琉球王国は中国の朝貢国ではありましたが、中国に支配されたことはありませんでした。

17世紀に書かれた琉球王国の歴史書『琉球国記』には、14世紀以降、中国の朝貢国であったと記されています。

また、清朝時代に編纂された法律書『清法』では、琉球王国は中国の朝貢国であったとされています。

琉球王国公文書館に保存されている琉球王国の外交記録には、中国との交流の記録が数多く残されています。これらの記録は、琉球王国が中国に定期的に朝貢団を送ったこと、中国皇帝が琉球王に "琉球王 "という称号を与えたことを示しています。

しかし、琉球王国は決して中国に支配されたわけではありません。王国には独自の政府があり、独自の法律があり、独自の軍隊がありました。琉球王は王国の最高統治者であり、中国皇帝に服従することはありませんでした。

琉球王国の中国への朝貢は500年以上続きました。1879年、琉球王国は日本に併合され、その歴史は終わったのです。

琉球諸島は "中国領土の不可分の一部 "であるという習近平の発言は間違いです。

琉球諸島を巡って中国と日本の間には何の問題もないのですが、習近平は軍事的にも経済的にも行き詰まってるため、弥縫策で両国には長い対立の歴史があり、琉球諸島の問題は敏感なものであると、発言し、国内の注意をそちらに向けていると考えられます。普通の国のトップなら、恥ずかしくてできないことです。事態がどのように進展するかは不明ですが、注視すべき弥縫策といえるかもしれません。

以下、中国メディアのキャンペーンについて補足します。

このキャンペーンは、少なくとも2020年から実施されています。新聞、雑誌、テレビ番組、ソーシャルメディアなど、さまざまなメディアで実施されてきました。

特に若い人たちに焦点を当てたキャンペーンです。中国人に琉球への郷愁を抱かせるように設計されています。

また、中国の琉球諸島に対する主張について、特に若い人たちを印象操作しようとするものです。この中国メディアのキャンペーンは、さまざまな反響を呼んでいます。一部の人々は、琉球諸島と中国の主張に対する認識を高めたと賞賛しています。また、ジンゴイズム的である、歴史を歪曲しているという批判もあります。

中国のメディアキャンペーンが長期的にどのような影響を及ぼすかについては、時期尚早と言わざるを得ません。しかし、このキャンペーンが、琉球諸島に対する主権を主張する中国によるより大きな努力の一部であることは明らかです。

テレビ番組「中国文化の生命力」のほか、中国メディアは、琉球諸島に対する中国の主張を宣伝する記事やソーシャルメディアへの投稿を数多く流しています。これらの記事や投稿は、中国の主張を支持するために歴史的・文化的な論拠を用いることが多い。また、日本が琉球諸島を支配していることを批判することもしばしばあります。

中国はまた、沖縄付近での中国とロシアとの航空機による合同飛行を行うなどの異常な行動をとっています。

中国中央電視台の建物

対外関係においても、弥縫策を繰り返す習近平ですが、その弥縫策がうまくいきそうであれば、長い年月をかけてでも、南シナ海を実効支配したように、規定化路線を取るのが中国のやりかたです。弥縫策がうまくいくと、不合理な理由であろうと何であろうと、屁理屈ともいえるような幼稚な理論で、規制路線化を押し通し、うまくいかないと、コロコロを態度を変えるので、信頼されなくなるのです。

日米欧は、中国の弥縫策による規制化路線に関しては、最初から猜疑心を持って見て、放置せずすぐに何らかの反応をすべきと思います。南シナ海においても、1980年代に中国が環礁に粗末な掘っ立て小屋を建てた時期に、米国が場合によっては、戦争も厭わない強い姿勢で臨めば、今日のようなことにはならなかったと考えられます。

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2023年6月5日月曜日

クリントン元大統領の「衝撃告白」…実は「プーチンの野望」を10年以上前から知っていた!―【私の論評】平和条約を締結していても、平和憲法を制定しても、条件が整えば他国は侵攻してくる(゚д゚)!

クリントン元大統領の「衝撃告白」…実は「プーチンの野望」を10年以上前から知っていた!


 米国のビル・クリントン元大統領が5月4日、ニューヨークでの講演で「ロシアによるウクライナ侵攻の可能性」を2011年にロシアのウラジーミル・プーチン大統領から直接、聞いていたことを明らかにした。 

 米国は、なぜ戦争が起きる前にしっかり対応しなかったのか。 

 戦争開始から1年以上も経ったいまになって、こんな話が飛び出すとは、まったく驚きだ。 

 これは、「リベラリズム(理想主義)の失敗」と言ってもいい。 

 5月5日付の英「ガーディアン」によれば、クリントン氏は2011年にスイス・ダボスで開かれた世界経済フォーラムでプーチン氏と会談した。 

 プーチン氏はそこで、ウクライナとロシア、米国、英国が1994年に結んだ「ブダペスト覚書」の話を持ち出し、自分は合意していないと語ったといいます。

 だが、クリントン氏は、それより3年前の時点で、ロシアによるウクライナ侵攻の可能性を認識していたことになる。

 それによれば、プーチン氏は2008年4月に開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で「クリミア半島は1954年に旧ソ連からウクライナに移譲されました。 

 いま振り返れば、その時点で「ウクライナ侵攻も時間の問題だった」と言って良いです。 クリントン氏は、論文で自己弁護に終始していたのに、いまになって「実は、プーチンが侵攻する可能性は、本人から聞いていたので知っていた」「ウクライナの核放棄は残念だ」などと言うのは、批判されても当然ともいえます。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は是非元記事をご覧になってください。

【私の論評】平和条約を締結していても、平和憲法を制定しても、条件が整えば他国は侵攻してくる(゚д゚)!

2023年5月4日、ビル・クリントン元米大統領は、ニューヨークで開催された「クリントン・グローバル・イニシアチブ年次総会」で講演を行った。その中でクリントン氏は、2011年にロシアのプーチン大統領から "ロシアによるウクライナ侵攻の可能性 "について直接聞いたことがあると明かしました。

クリントン氏は、モスクワでプーチン大統領と会談した際、大統領のほうからウクライナ問題を持ちかけられたといいいます。プーチン氏は、ウクライナは「ロシアの歴史的な一部」であり、同国が西側との結びつきを強めていることを懸念していると述べました。クリントン氏は、ウクライナはロシアにとって脅威ではなく、安定し繁栄するウクライナは両国の利益になるとプーチン氏を安心させようとしたといいいます。

しかし、プーチンは納得していませんでした。ウクライナのNATO加盟を「許さない」、ウクライナが加盟しようとすれば「行動を起こす」と言い出しました。クリントンは、プーチンの発言に「深く悩まされた」とし、「来るべき事態の予兆である」と考えていたといいます。

この情報の出所は、ビル・クリントン自身です。彼は、クリントン・グローバル・イニシアチブ年次総会でのスピーチで、この事実を明らかにした。この主張には、他に独立した裏付けはないです。しかし、プーチンのウクライナに対する見解について我々が知っている他の事柄と一致しています。

上の記事もでてくる「プタペスト合意」について以下に掲載します。

ブダペスト安全保障覚書は、1994年12月5日にハンガリーのブダペストで開催されたOSCE会議において、ベラルーシ、カザフスタン、ウクライナの核兵器不拡散条約(NPT)への加盟に関連して、署名国が安全を保証するために締結した政治協定です。この3つの覚書は、もともとロシア連邦、英国、米国の核保有3カ国によって署名されたものです。中国とフランスは、別の文書でやや弱い個別保証をした。

覚書の条項の下で、3つの核保有国は以下のことに合意しました。

  • ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタン(以下3国と記載)の独立と主権、既存の国境線を尊重する。
  • 3国の独立と主権、および既存の国境を尊重する。3カ国の領土保全や政治的独立に対する武力による威嚇や使用を控える。
  • 3国の政治的又は経済的意思決定に影響を与えるために、経済的、政治的又はその他の圧力を行使することを差し控える。
3国のいずれかが武力攻撃またはその安全に対するその他の脅威の犠牲となった場合、相互に協議する。

その見返りとして、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンは以下のことに合意しました。
  • 核兵器問題の解決に向けた国際的な取り組みに、あらゆる側面から貢献する。
  • NPTの下での義務を誠実に履行すること。
  • 核兵器開発のための援助を求めたり受けたりしない。
ブダペスト合意は、あまりにも曖昧で、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンに真の安全保障を提供しないとの批判があります。しかし、これら3カ国の安全保障に特化した唯一の国際協定であることに変わりはない。

ブダペスト合意は、締結後、何度も違反されています。2014年、ロシアはウクライナからクリミア半島を併合しました。2022年、ロシアはウクライナに侵攻しました。いずれの場合も、ロシア政府は、ウクライナは主権国家ではなく、ブダペスト協定の条件を遵守していないため、これらの行動を取ることは正当であると主張してきました。

ブダペスト覚書の将来は不透明です。専門家の中には、ウクライナの現状を考えると、もはや意味がないと考える人もいます。また、まだ重要であり、強化すべきと考える人もいます。米国とその同盟国は、ブダペスト合意書を守ることを約束すると言っていますが、それができるかどうかは未知数です。

プーチンはプダペスト合意を認めていないと発言しており、だからこそ、現在ロシアはウクライナに侵攻しているのです。

ある国が平和条約を結んだり、平和憲法を定めているからといって、侵略されないという保証はありません。平和条約を結んでいるにもかかわらず、侵略された国の例はたくさんあります。

以下はその例です。

古い事例としては、第二次世界大戦末期、日ソ不可侵条約を締結して板にも関わらず、ソ連は当時のソ満国境を超えて、侵攻しました。

ソ連は1979年にアフガニスタンに侵攻しました。アフガニスタンは1969年のジュネーブ協定に調印しており、この協定ではアフガニスタンからすべての外国軍を撤退させることを求めていました。

ソ連がアフガンに侵攻したときのソ連兵

米国は2003年にイラクに侵攻しました。イラクは安全保障理事会の承認なしに他国に対して武力を行使することを禁止する国連憲章の署名国であったにもかかわらずです。

イラクに侵攻した米軍

さらにすでに述べたように、ロシアは、ウクライナが核兵器の放棄と引き換えにウクライナの安全を保証する1994年のブダペスト覚書に署名していたにもかかわらず、昨年ウクライナに侵攻しました。

いずれのケースでも、侵略国は自国に正当な理由があると主張しました。しかし、これらの侵略が国際法に違反するものであったことに変わりはないです。

平和条約や憲法が、戦争を防ぐために必ずしも有効でないことを忘れてはならないです。政情不安、経済的苦境、ナショナリズムの台頭など、戦争勃発の要因はさまざまです。平和条約を締結していても、平和憲法を制定していても、条件が整えば他国が侵略してくる可能性もあるのです。

結局のところ、いかなる国もまずは自国は自国で守るという気概がなければ、他国から侵略される可能性を否定できなくなってしまうのです。これは、現在のウクライナでも証明されたと思います。

ウクライナにその気概なければ、戦争の初期にキーウをロシア軍に占領され、今頃ウクライナにはロシアの傀儡政権ができていたかもしれません。ゼレンスキー大統領がウクライナにとどまり徹底抗戦をする姿勢を見せたので、そうはならなかったのです。他国からの支援も得られることになったのです。

私たちは、中露北という、3国の独裁国に囲まれた日本こそ、そのような気概が多くの国民になければ、条件が整えば、侵略される危険と隣り合わせであることを認識すべきです。

それにしても、悔やまれるのは、クリントン元大統領が、戦争の可能性を察知したのなら、はやめにそれを公表して、警告を出すべきでした。そうすれば、事態は変わっていたかもしれません。返す返すも悔やまれます。

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2023年5月3日水曜日

ロシア 爆発で2日連続の列車脱線「破壊工作」とみて捜査―【私の論評】あらゆる兆候が、ウクライナ軍の反転大攻勢が近く始まることを示している(゚д゚)!

ロシア 爆発で2日連続の列車脱線「破壊工作」とみて捜査


 ウクライナと国境を接するロシア・ブリャンスク州で2日夜、爆発が起こり、貨物列車が脱線しました。ブリャンスク州では前日も爆発による列車の脱線が起きたばかりでした。


 タス通信などによりますと、ブリャンスクの州都に近い駅の付近で2日夜、爆発が起き、貨物列車およそ20両が脱線したということです。けが人はいませんでしたが、当局は何者かが意図的に爆発物を仕掛けたものとみて、調べています。

 ブリャンスク州では前日も爆発により、ベラルーシから石油製品などを運んでいた貨物列車が脱線していて、ロシア当局は破壊工作とみて調べています。

 ブリャンスクでは今年3月、ウクライナから侵入したとみられるグループが、市民2人を殺害する事件が起きていて、プーチン大統領は、テロとの見方を示していました。

【私の論評】あらゆる兆候が、ウクライナ軍の反転大攻勢が近く始まることを示している(゚д゚)!

ウクライナのロシア侵攻は、現状では東部と南部に限定されています。であれば、こちらの地域の鉄道を破壊するならわかりますが、なせブリャンスク州なのでしょうか。

3月には武装集団がウクライナから国境を越えてブリャンスク州西部の村を襲撃。直後にロシアからウクライナに移住した極右活動家が率いる組織が犯行声明を出すなど、不穏な事態が相次いでいます。これをロシア側は「ウクライナ側」の仕業としましたが、ウクライナ側は否定しています。

上の記事にもあるように、前日の1日にも、ブリャンスク州で同様の爆発が起きていました。ボゴマズ州知事は1日、テレグラムを通じて「ブリャンスクとウネーチャをつなぐ線路の136キロ地点で午前10時17分頃、正体不明の爆発装置が炸裂し、貨物列車が脱線した」と伝えました。

この事故でも人命被害はありませんでしたが、事故現場の写真を見ると、線路脇の草むらに倒れた列車に火がつき、煙が立ち上る様子が確認できる。この列車は石油と建築資材を運んでいたといいます。

同日、ロシアの第2の都市サンクトペテルブルクから南に60キロ離れたスサニノ村の近くでは、送電塔が破壊された。レニングラード州のアレクサンドル・ドロスデンコ州知事は、一晩の間に送電塔1基が爆破され、他の送電塔近くでも爆発装置が発見されたと明らかにした。ロシア当局はソーシャルメディアとマスコミを通じてこのニュースを伝えたが、誰の仕業かについては言及しなかった。


ブリャンスク州は、ロシア西部に位置し、ベラルーシ、ウクライナと国境を接する地域である。モスクワと西ヨーロッパ、ロシアとウクライナを結ぶ主要な交通路に位置し、戦略的な立地です。

ソ連時代、ブリャンスク州は軍事兵站の重要な拠点として、西部戦線への兵員や物資の輸送の拠点となっていました。ソビエト連邦崩壊後、この地域の軍事的プレゼンスは低下しましたが、輸送インフラは維持されたままでした。

近年、ロシア軍はブリャンスク州のインフラに投資し、物流能力を向上させているとの報告があります。鉄道や道路網の拡張、保管施設や物流センターの新設などです。

ロシアのウクライナ侵攻において、ブリャンスク州が兵員や物資を前線に輸送するための物流拠点として機能する可能性はあります。ただ、先にも述べたように、現状の戦線はウクライナ東部、南部に集中しています。

ただ、懸念されるのは、ロシアのプーチン大統領は昨年12月、ベラルーシのルカシェンコ大統領との会談で両国軍の合同演習の継続で一致するなど、ベラルーシとの結束を誇示しました。ベラルーシ国防省は6日、新たに露軍部隊が到着したとして、鉄道で運ばれてきたとみられる多数の軍用車の写真を公開しました。ベラルーシ大統領府は同日、ルカシェンコ氏が露軍部隊も駐留するウクライナ国境近くの演習場を視察したと発表しました。

ロシア軍が再度、キーフへの侵攻をする可能性も捨てきれません。その場合、ブリャンスク州がロシア軍の兵站基地になることが考えられます。しかも、ブリャンスク州はベラルーシとも国境を接しています。

ベラルーシの軍隊や軍事物資等、ブリャンスク州を経由して運ばれることも懸念されます。そのため、今回のテロはこれに対する牽制であるとも受け取れます。

ただ、米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は1日の記者会見で、情報機関の分析として、ウクライナに侵攻するロシア側の兵士・戦闘員の昨年12月以降の死者数が2万人以上、負傷者数が8万人以上にのぼるとの見方を示していました。

ロシアはウクライナ東部ドネツク州バフムトの攻略を目指しており、ここ数カ月で死傷者数が加速度的に増加しているとみられます。これでは、ロシアにはもうすでに、ウクライナ東部・南部戦線と、キーウを狙う北部戦線のすべで攻勢に出るのはかなり難しいでしょう。

カービー氏は、ウクライナ側の死傷者数は明らかにしませんでした。ロシア側の死傷者の多くは、民間軍事会社「ワグネル」の戦闘員といいます。刑務所からリクルートされた受刑者らが、十分な戦闘訓練や指導もないままバフムトなどに投入されているとしました。

この状況だと、ブリャンスク州やクルスク州などは軍事的にはかなり手薄になっていると考えられます。これは、ロシアもしくはウクライナの武装グループが仕掛けたものでしょう。あるいは、両方かもしれません。

武装グループにとっては、まずは攻撃しやすいということがあるのでしょう。さらに、今後のウクライナ軍による大反抗が予想されるなか、ブリャンスク州で頻繁にテロを起こして、こちらのほうにロシア軍をひきつけて、少しでもウクライナに有利になるようにするという意図もあるとみえます。

先月29日には、2014年3月にロシアが合併を宣言したクリミア半島のロシア黒海艦隊の拠点であるセバストポリの油類貯蔵庫で、ドローンによるものとみられる攻撃で爆発が発生しました。ウクライナ軍はこれに対して、異例にもウクライナ軍の大規模反撃攻勢のための「準備過程」だったと発表しました。

軍ではない、武装グループもこれに呼応して、自分たちの裁量で、破壊活動をしている可能性があります。

モスクワの軍事政治研究センターで責任者を務めるアンドレイ・クリンチェビッチ氏は「敵軍(ウクライナ軍)は今月9日(戦勝記念日)にロシア領土深くに入る込む大規模な挑発を準備している」と述べました。

モスクワで、戦勝記念日に行う軍事パレードのリハーサルをするロシア軍(4月28日)

同メディアは「(ウクライナは彼らの)勝利について欧米など世間の耳目を惹く動きを必要としている」と伝え、反撃の時期を戦勝記念日と予測した理由について説明しました。

同メディアは「ウクライナの反転攻勢によりロシアの都市を狙った小規模なテロ攻撃が数十回行われる可能性がある」とも予測しているとも伝えています。

旧ソ連による対独戦勝記念日である5月9日にモスクワの「赤の広場」で行う軍事パレードに、外国の首脳が一人も出席しない見通しとなりました。露大統領報道官が4月末、ロシア通信などに明らかにしました。

参加者や登場する兵器も減らす予定で、ウクライナ侵攻の影響が、プーチン大統領が特に重視する行事にも及んでいます。

報道官は、戦勝記念日は「我々ロシア人にとっての祝日だ」と述べ、「外国首脳を招待しなかった」と説明しました。戦勝75年の節目だった2020年には米欧や日本の首脳も招待してました。

やはり、ロシアはウクライナ反転攻勢を警戒しているでしょう。さらに、軍事パレードなどもテロの対象になる可能性を懸念しているのでしょう。

米ニューヨーク・タイムズも1日付で「ウクライナによる反転攻勢が近い徴候が相次いで捕捉された」と報じました。

ニューヨーク・タイムズは「この徴候には双方の軍事攻撃強化、ロシア軍による防衛陣地の移動、ウクライナと接するロシア西部の都市で発生した爆発による列車脱線事故なども含まれる」と伝えています。

ウクライナのレズニコフ国防相も先月28日に国営テレビに出演し「反撃の準備は最後の段階に入った」「その方法や位置、時期については指揮官たちが決めるだろう」と述べ、反転攻勢を予告しました。

これに対してロシア軍もウクライナの反転攻勢に備えるため、南部の防衛陣地に部隊を移動させています。英国の国防情報参謀部はロシアが最前線近くだけでなく、現在統制している地域でも「最も広範囲な軍事防衛システムを構築した」と説明しました。

米カペラ・スペース社の衛星写真に映し出された、ウクライナ・ザポロジエ州のロシア占領地域に築かれた3層構造の防衛線=4月11日 クリックすると拡大します

実際露側は進軍を妨害する約800キロメートルにも及ぶ防衛線(塹壕)の構築を急ぎ、完成間近か、完成されいることが分かっています。露軍は、占領地域の防衛に徹することに戦術を切り替え、持久戦に持ち込む狙いとみられます。

しかし、防衛線を保つには、乱れのない指揮系統や空中戦での優位が必須条件とされ、時代がかった長大な塹壕は無用の長物と化す可能性もあります。

さらにロシアはミサイルによる奇襲攻撃を行うことで大攻勢を阻む意図を伝えるとみられるシグナルを送っています。 ロシア軍は1日未明、ウクライナ全土に3日間で2回目となるミサイル攻撃を行いました。 東部の地区で大規模な火災が発生し、当局者によると34人が負傷、住宅数十棟が損害を受けました。 ウクライナ軍は、防空部隊がロシア軍のミサイル18発のうち15発を破壊したと発表しました。

これらは、本当に今月9日(戦勝記念日)に反転大構成があるかどうかは別にしてウクライナ軍の反転大攻勢を近いことを示している兆候であると考えられます。

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