2016年1月18日月曜日

AIIB「開店休業」状態 融資1号案件大幅遅れ 日米に参加“懇願”―【私の論評】日本のAIIB参加を呼びかけた奴らは、中国スパイか馬鹿のいずれか(゚д゚)!


AIIB開業式典であいさつする習主席。懸念材料は消えないままだ=16日

 中国が主導するアジアインフラ銀行(AIIB)はスタート早々、「開店休業」となりそうだ。6月の予定だった最初の融資案件承認が「年内」へ大幅に遅れる見込みとなったのだ。信用格付けを取得できない事態が尾を引いているとみられ、日米の参加を“懇願”するしかない状況だ。

 「中国は国際的な経済システムの改善を推進する」。16日の開業式典に出席した習近平国家主席は、AIIBを通じて戦後の国際金融秩序に挑戦する構えをみせたが、勇ましい言葉に内実は伴っていない。

 初代総裁に就任した金立群氏は17日の記者会見で最初の融資案件の承認は「年内になる」と述べ、今年半ばとしていた従来のスケジュールより遅れる可能性を示唆した。

 かねてから問題視されてきたように、AIIBは資金調達の際に発行する債券の格付けを取得できていない。当面は資本金だけで融資がまかなえるが、初の融資案件を含め、20億ドル(約2340億円)と見込む初年度案件が成功しなければ「習指導部がメンツをかけて関係部門に命じた最上級の『トリプルA』の格付け早期取得は難しい」(北京の経済学者)との見方がある。

 金氏は記者会見で「ドアはなお開かれている」と強調、参加を見送っている日米などの誘致を行う考えを示したのも、日米不在のままでは低い格付けしか取得できないためだとみられる。

 インフラ案件で「原資をいかに安く調達し、採算性や返済計画をどう詰めるかという国際金融機関の融資ノウハウがまだ何ひとつない」(国際金融筋)とされるAIIB。「仏作って魂入れず」というのが実情のようだ。
【私の論評】日本のAIIB参加を呼びかけた奴らは、中国スパイか馬鹿のいずれか(゚д゚)!

AIIBの失敗は、もう明らかです。これについては、最初からこのブログには失敗するであろうことを掲載しました。その記事のリンクを以下に掲載します。
麻生財務相の「参加見送り」見解、中国メディアは未練たらたら・・・「日本国内でもAIIB参加すべきの声」と報じる―【私の論評】中国小国化に向け追撃戦に転じた安倍総理(゚д゚)!
昨年AIIBに関して報道したテレビ番組のキャプチャー画像
この記事は、昨年の4月17日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、なぜこの時点でAIIBに参加すべきではないことを判断できたのか、それに関わる部分のみを以下にコピペします。

"
なぜそうなのか、その部分のみこの記事から下に箇条書きで抜粋します。
1.AIIBには、ガバナンスの点で大いに問題がある。たとえば、AIIBの融資について理事会の関与がほとんどない。中国トップがある国へのインフラ投資を政治判断したら、AIIBはプロジェクトの採算性などを度外視して融資する可能性がある
これは字面だけ見ていると何を意味するかわかりませんが、たとえば、北朝鮮への融資も十分あり得ます。あるいは、中国内や、中国近隣で中国にとって都合の良い融資を行う可能性もあります。

たとえば、鉄道・空港・港湾など、軍事施設としても有用なものですが、これらを中国の都合で行う可能性もあります。現状の中国は経済も停滞していますし、金融も空洞化していますから、軍事と言った場合、人員確保や兵器の配備にはお金をつかうかもしれませんが、鉄道・空港・港湾など大規模な投資はなかなかしにくい状況にあります。だからAIIBによって、人民解放軍が活動しやすいように、これらのインフラを整備するということも十分考えられます。

何のことはありません。どこかの国が、AIIBによって港をつくったら、そこが人民解放軍により占拠され、その国への侵略の拠点になるというとんでもないことになり得る可能性もあるのです。
2.AIIBは中国主導であり、中国がその後ろ盾になる。よって、その格付は中国と同等になる。中国の格付けは、トリプルAのアメリカ、ダブルAの日本より下のシングルAである。ということは、アメリカと日本が参加しない、AIIBの格付けは他の国際金融機関よりも低いということになる
AIIBの国際金融機関の格付けが低いということは、他の機関よりも資金調達コストが高くなり、当然貸出金利も他の国際金融機関よりも、高く設定せざるを得ないことを意味します。 アメリカと日本が参加しない限り、この問題は解決できません。このままだと、AIIBは、日米が主導するアジア開発銀行に比較すると圧倒的に不利ということになります。中国が、日米の参加を喉から手がでるほどに、欲しがっているわけです。
3.中国の金融システムは金利の自由化すら終了していない途上国並みの未熟なもので、国際金融業務のノウハウも乏しい
中国側は、国際金融業務のノウハウが乏しいため、日米が参加すれば、そのノウハウを入手できる可能性があります。日米はそれを提供しないということです。そんなものは、英国あたりができるだろうということになるかもしれませんが、確かに英国などのEU諸国は、アジアの投資に関するノウハウは乏しいです。その他の国は、そもそもそのようなノウハウはありません。

以上の3点を考えれば、日本や米国などがあせって、参加する必要性など全くありません。特に、ガバナンスの点が改善されない限り、検討する余地すら全くありません。
"
 
上の箇条書きの太字の部分三点を知ったうえで、さらにこれの意味することを理解すれば、AIIBなど最初から頓挫することは、理解できたはずてす。

最近の中国を見ていれば、AIIBに参加することの意義などほとんどないことが良くおわかりになると思います。何しろ、中国国内からの資金流失が止まらずとにかく、中国からドルがとめどもなく海外に流れています。

実態経済も、中国政府は7%台の成長などとしていますが、これは出鱈目です。李克強指数などからみれば、7%どころか、マイナス成長の可能性が高いです。

以下に李克強指数の推移のグラフを掲載します。


少し古い統計ですが、この李克強指数に基づき、経済成長率を推測したグラフを以下に掲載します。


これは、2013年7月当時精華大学准教授のパトリック・ショバネック氏による推計です。赤の線が李克強指数で、青の線がいわゆる「本当の」成長率です。

これをご覧いただけるとおわかりのように、2013年5月当時の成長率は2%ということです。この推計が正しいものとすれば、13年当時と比較すると、最近はかなり経済が落ち込んでいますから、おそらくはマイナス成長になっていると考えるのが妥当でしょう。

さて、中国内からの海外への資金流出に関するグラフを以下に掲載します。


これも、直近のデータはありませんが、2014年から資金流失は顕著となり、外貨準備高も減少傾向にあったことがわかります。現状では、もっと酷いことになっているはずです。

もう、2015年には、中国の実体経済はかなり悪く、資金流出も顕著であることがはっきりしていました。これを理解していれば、AIIBに参加すべきなどということは、軽々に言えるはずもありません。

2015年3月28日朝日新聞朝刊 馬鹿の証、それとも中国スパイの証?
それに最近では、株価も低迷しています。しかし、昨年は年頭から、実体経済の悪化や、資金流出がとんでもないことになっていることはわかっていましたから、株価も低迷してとてつもないことになることは、予測できたはずです。

中国のAIIBなど、ブラック企業の経営者が、会社の業績が酷く悪く、資金もとめどもなく流出して当座の金もなくなっているときに、派手な粉飾決算を行い、その粉飾決算を元に、銀行に金を出せと迫っているようなものです。

そうして、この文脈では、銀行は日米です。他のEUなどの国々は、ブラック企業でも、儲かりさえすればということで、ブラック企業の経営者の口車に乗ったようにみせかけ、様子見をしたというにすぎません。ブラック企業が、儲けにも何にもならないということになれば、実質離れていくのは目に見えています。

にもかかわらず、昨年AIIBに日本が参加すべきと主張した連中は、中国スパイか、もしそうでないというのなら、相当の馬鹿野郎です。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?


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2016年1月17日日曜日

やさしいデータと数字で語る「フクシマ」の虚と実 雇用は激増 離婚は減少 出生率もV字で回復―【私の論評】行動するなら感情ではなく、エビデンス(証拠・根拠、証言、形跡)に基づき行え(゚д゚)!




「福島は危険だ」「福島の人は怯え苦しんでいる」──震災から5年、未だ情緒的な文脈で語られる「フクシマ」。しかし、誰にでも入手可能なデータと数字を分析するだけで、そこには、容貌を異にした実態が見えてくる。福島出身、31歳の社会学者、開沼博が記す「福島の虚と実」。

***

はじめに3つの問いから。

(1)福島に暮らしていた人のうち、どれくらいの割合の人が震災によって、現在県外で暮らしているか?

(2)直近(2015年11月)の福島の有効求人倍率は、都道府県別で全国第何位か?

(3)3・11後の福島では「中絶や流産が増えた」「離婚率が上がった」「合計特殊出生率が下がった」のうち、どれが正しい?

答えは、

(1)約2・2%

(2)4位

(3)出生率のみ正しい

いかがでしょうか?

抱いていた「福島」のイメージと実際の姿との間には、かなりのギャップがあったのではないでしょうか?

今年で東日本大震災の発生から5年、節目の年を迎えます。3月11日には、大々的なマスコミ報道が為されることでしょう。

「福島の問題は絡(から)みにくいんですよね……」

私は震災後、福島大学の特任研究員や、復興庁の生活復興プロジェクト委員などを務め、社会学の観点からフィールドワークや統計の分析を続け、福島の動きについて研究してきました。その中で先のような言葉を耳にします。曰く、「福島難しい」「福島面倒くさい」──。善意もあるし、困難な問題を解決してきた実績もある人たちが、福島と付き合うことに高い壁を感じているようです。

なぜか?

ポイントは3つあります。福島の「過剰な政治化」「過剰な科学化」「ステレオタイプ&スティグマ化」。

「政治化」「科学化」についてはおわかりだと思います。

福島と言えばやはり思い浮かべるのは、「原発」「放射線」。二項対立化しやすく、違うイデオロギーを持つ人同士の溝を埋めることが困難に見える。「声の大きな人」に絡まれそうだから普通の人は意見を言わなくなる。


声の大きな人が必ずしも福島の真実を語っているわけではない

また、福島の問題に言及しようとすると、科学的に高度過ぎてわかりづらい。ヨウ素、セシウム134に137、汚染水や地下水バイパス……。今から勉強し直すのはかなり厳しい。

そして何より、福島は、過度に固定観念(=ステレオタイプ)化された中で語られています。福島は、「避難」「賠償」「除染」「原発」「放射線」「子どもたち」という6つのキーワードとしばしば結び付けられますし、逆にそれ以外と結び付けられて語られることは少ない。

しかし、福島の問題はこの「6点セット」が全てではありません。こればかりが語り続けられる中で、現場で常にアップデートされている様々な問題は看過され、一方で多くの人は福島に“飽きている”。

加えて、今、目の前にパソコンがあれば、googleの検索画面に「福島」「農家」と打ち込んでみてください。「人殺し」「死ね」というワードが自動的に表示されるでしょう。同様に「福島」「子ども」と打てば、「甲状腺がん」「奇形」、「福島」「病気」なら「放射能」「隠蔽」と出てくる。これはサジェスト機能と言って、一般に数多く検索されている語句の組み合わせが表示されるものです。既に福島には、相当強いスティグマ=負の烙印が押されている。つまり、それに言及しただけで、誰かを傷つけうると、タブー化され始めています。

かくして、「絡みにくさ」が増大し、福島について語ることは、大きな壁となって私たちの前にそびえ立ち、固定化されてしまっている。

他方、「福島では今もみんな避難したがっている。放射能に恐れおののき避難者は増え続けている」「福島では農林水産業、製造業、観光業など多くの産業に多大な影響が出て、失業者が急増している。ハローワークに行っても求人票がない」「原発事故のせいで、人々が分断され離婚が急増した。福島で子どもを持つことに不安を抱く女性ばかりになって“産み控え”が続いている」という「俗流フクシマ論」が蔓延(はびこ)っている。データを見れば明らかですが、全部大嘘です。多くの人が大嘘を真面目に信じこんでしまっている。

これが4年半経った今の現状と言えるでしょう。

これは憂うべき状況です。

そこで、私は2つの方針を立ててみました。一つは、先の6点セットをあえて外し、他のテーマから福島の現状をあぶり出してみること。そして、政治的な立場や予断ではなく、データと理論を用いながら福島について語ること。これを基に、私は『はじめての福島学』という本を上梓しました。それを下敷きに、改めて福島についての現状を捉え直してみたいと思います。

■1日何十件ものデマ

冒頭の問いに戻ります。

まず(1)の福島の人口について。私はこれまで講演会やシンポジウムの度にこの質問を繰り返してきましたが、「10%くらい」「3割」「40%とか」と、様々な答えが返ってきます。しかし、実際は4万3497人(15年12月10日時点)で「2・2%」ですから、福島の人口流出は10倍誤解されていると言って良い。人口の何十%もが県外に大流出しているなんてことはなく、多くの人は県内に住み、生活を続けている。これが福島の実態です。

もうひとつ重要なのは、この人口流出・減少が福島だけの問題なのか、ということです。福島の10年の人口は202万人、14年は193万人。減少率は4・5%です。一方、同じ時期の秋田県の減少率は、4・4%。青森や山形もこれに近い数字です。つまり、秋田や青森は、何もなくても、福島と同じくらいのレベルで人口減少が起きている。

農業についても、同じような誤解が生まれています。

「福島県の米の生産高は都道府県ランキングで、震災前の10年は何位で、震災後の11年には何位か?」

「福島県では放射線について、年間1000万袋ほどの米の全量全袋検査を行っています。そのうち放射線量の法定基準値(1キロあたり100ベクレル)を超える袋はどれくらい?」

答えは、それぞれ、「10年には4位、11年には7位」、「12年度が71袋、13年度が28、14年度が2、15年度がゼロ(15年12月30日時点)」。

前者については、そもそも作付面積自体が原発事故の影響で2割も減っていることから鑑みると、意外とうまくいっていると評価してもよいでしょう。後者については、1000万袋に対し、当初でも100袋未満。現在はゼロになっていることから見て、確実に良い方向に向かっています。しかし、SNSの世界では、数字を調べもしないで、毎日何十件も、「福島の作物を食べたらとんでもない被曝をする」といったデマを流している方が一定数いる。こうしたことから、「3・11で福島の農業は終わった。福島産の作物なんか“もう誰も買わない”“もう誰もつくらない”状況になっているに違いない」という偏見が生まれています。

同じ1次産業である漁業の数字は、より示唆的です。

「福島県の漁業の水揚量は、10年と比べてどれくらいに回復しているか?」

「76%」「15%」(14年)の2つの答えが出てきます。どういうことか?

「76%」は、「属人」による統計、つまり福島県に所在地をおく漁業経営体が水揚げした数字。県内に所在地をおく会社や個人の漁獲量は半分以上回復しているわけです。一方の「15%」は、「属地」による統計。福島県に水揚げされているものだけの数字です。

つまり、福島の漁師さんたちは、収穫物があっても他の県で水揚げする傾向にあることがわかります。その理由の一つは、風評被害によって福島に揚げても高い値段が付かないから。北海道でとったサンマや八丈島沖のカツオなど、沖合・遠洋でとれたものが福島で水揚げされたからと言って、リスクが上がるということは科学的にありえません。にもかかわらず、福島で水揚げされただけで、市場価格が下がってしまう。そのため、カツオの場合、11年に福島の小名浜で水揚げしても例年の半分以下、サンマも三陸などの6~7割の値段しかつきませんでした。こうして福島の漁港やその周辺の経済システムは停滞したまま。この点の復興はまだまだ途上段階だと言わざるをえないでしょう。

■人手不足の雇用市場

ここまで1次産業について述べてきました。が、これについても誤解がひとつ。実は、福島の1次、2次、3次産業従事者の割合は、それぞれ7・6%、29・2%、60%(10年)。3・11後、「土や水、風とともに生きる福島の人々の生活が根こそぎ奪われてしまった」みたいなノスタルジックな言い方が散々繰り返されましたが、あまりにステレオタイプなものの見方です。

では、その2次、3次産業はどうなっているのか?

冒頭の(2)の問い=「直近(15年10月)の福島の有効求人倍率は、都道府県別で全国第何位か?」

先に述べたように、答えは4位。数値は1・68倍。月によっては1位になることもあります。100人しか働き手がいないところに168人の求人が出ている状態です。つまり人手不足が起こっています。改めて言うまでもなく、背景にあるのは「復興需要による福島の雇用市場の活性化」です。

むしろ福島の製造業にとっては、震災よりリーマンショック(08年)の方が影響が大きかった。事業者数、従業者数、新製品出荷額、付加価値額、いずれもリーマンショック後の方が、震災後よりも落ち幅が大きいのです。逆に、福島の13年の企業の倒産件数は、10年の0・35倍。3分の1の値です。

昨年の11月の福島県の有効求人倍率を伝えるてれ

3次産業のうち、もっとも原発事故の影響を受けそうな観光についての数字も見てみましょう。

「10年と比べて、福島県に観光客はどれくらい戻ってきている?」

答えは「82%の水準まで回復している」(14年)です。原発のある「浜通り」は、やはり厳しく、6割弱の回復にとどまりますが、浜通りのいわき市にある「スパリゾートハワイアンズ」はかえって知名度を上げ、観光客を増やしています。「中通り」は9割以上、「会津地方」については、大河ドラマ『八重の桜』効果もあり、震災前よりも数字が伸びた時期もありました(14年は9割)。

他方、問題なのは、修学旅行客の数字が伸び悩んでいること。福島を修学旅行で訪れた人の数は、10年度の67万3912人に対し、14年度は35万704人。回復は52%に留まっています。この動きを指摘すると「被曝を避けたい親の不安を軽視するのか」などともっともらしいことを言う人が出てきます。ですが、例えば、飛行機で成田―NYを往復した時の被曝量は100マイクロシーベルトほど。これと同じレベルの被曝をするには福島第一原発の真横を走る国道6号線を50回以上通り抜ける必要があります。海外旅行をした方が、福島に行くより遥かに被曝する。不勉強と事なかれ主義を、「不安」などという言葉で正当化すべきではありません。

加えて、外国人観光客も回復していません。震災前に福島を積極的に訪れていた韓国、中国、香港、台湾、アメリカの観光客は、14年の数字で、10年の27%。特に、韓国は6%、香港は23%など、万単位の客が逃げてしまっています。これを呼び戻すことは不可欠の課題と言えるでしょう。

■善意の暴走
一番触れづらかった「家族や子ども」の問いについても、記しておきます。

冒頭の(3)の問い=「3・11後の福島では『中絶や流産が増えた』『離婚率が上がった』『合計特殊出生率が下がった』のうち、どれが正しい?」

答えは、先に述べた通り「出生率のみ正しい」です。

「震災離婚ってよく聞く」とか「チェルノブイリ事故の時には中絶が増えたって聞いた」という、俗流フクシマ論を耳にした人も多いのではないでしょうか。

しかし、流産は震災前後で変化はなく、中絶については、10年に妊娠100件あたり17・85だったのが、13年4~6月は16・24と、むしろ減少が認められました。離婚率も明確に下がり、10年の1・96に対し、14年は、1・64と全国平均より下。婚姻率も上がる気配を見せています。出生率については、確かに10年の1・52に対し、11、12年は1・48、1・41と「産み控え」とも見える現象がありました。しかし、13年には、1・53という全国最大幅のV字回復を示し、14年も1・58。震災前後で、先天奇形・異常の発生率に変化がないことは言うまでもありません。

ちなみに、福島の平均初婚年齢は、14年に夫が30・2歳で全国3位の若さ。妻は28・4歳で16年連続1位。ある面では、福島は、人が生まれないどころか、晩婚化、少子高齢化に抗するヒントが眠っているかもしれない県であるのです。

いかがでしょうか。

経産省の前に違法に設営された脱原発テント

私が述べたかったことは、「だから福島は元気です。ダメじゃありません」ということではありません。

依然、福島は重大な問題を抱えています。例えば、震災関連死。これは、建物の倒壊や火災、津波など地震による「直接死」ではなく、その後の避難生活での体調悪化や過労など間接的な原因で死亡することを指します。その数は15年9月30日の時点で1979人。福島県内の震災「直接死」の死亡者1612人、行方不明者199人に匹敵する数字です。避難者のケアが後手に回り、避難を続けることが心身に大きな負担を与えています。

また、放射線への恐怖感から、子どもを外に出さないことによって、子どもの体力低下や肥満、虐待の増加なども指摘されています。

福島のことを怖い顔して時に怒鳴りながら語ったり、ものすごく難しい言葉で議論し続けたりするような人ではなくて、「福島のこと、知っておきたいんだけど、何か取っつきにくいし、でも今更聞けないよな……」と思っている「普通の人」に、問題を考える糸口を提示する。明らかになっているデータを基に、ぼんやりと思ったことを立証、あるいは反証していく。私も時には「福島は絶対危険なのにそう言わないお前は国と電力会社の回しもの」と罵られることがありますが、このアプローチこそが、膠着状態になっている福島を語る議論に風穴を開けられると考えています。本当に福島を応援したい人、「福島をどうしたらいいんですか」という問いを持つ人が、この問題に向き合うための「引き出し」を作ることが出来ると考えているのです。

福島の子どもがかなり被爆していると頑なに信じこむ人々も多い

勝手に福島県民を犠牲者と見なして憐憫の情を向け、悦に入る。「福島の人は立ちあがるべきだ」と上から目線意識の高い説教をする。脱原発、被曝回避運動に利用しようとする──。こうした「善意の暴走」は単なる「ありがた迷惑」です。

いま必要なのは、具体策もないまま「福島を忘れない」と優等生的な理念を唱え続けることでも、人々の不安につけこんだデマを妄信することでもありません。

例えば、福島のものを買ったり観光に行ったりする。仕事の中で関わってみる。そんな、日常生活の中の「買う・行く・働く」を通して接点を少しでも作っていくことなら誰でも気軽にできるでしょう。震災から5年。福島は「正しく」現状を知りながら「楽しく」関わる方法を探求すべき時期を迎えているのです。

開沼博(かいぬま・ひろし)
1984年福島県いわき市生まれ。東京大学文学部卒業。同大学院の修士論文を書籍化した『「フクシマ」論』で毎日出版文化賞を受賞。他の著書に『フクシマの正義』『漂白される社会』がある。

【私の論評】行動するなら感情ではなく、エビデンス(証拠・根拠、証言、形跡)に基づき行え(゚д゚)!


開沼博氏
上の記事現状の福島を等身大に知るためには、非常に良い資料だと思います。これを読んでいて、私は経営学の大家ドラッカー氏が、後世の歴史家が、第二次世界大戦中の統計資料をだけを見た場合、第二次世界大戦があったことなど気づかないかもしれないということを語っていたことを思い出しました。それについては、以前このブログにも掲載したことがあるので、その記事のリンクを以下に掲載します。
【堀江貴文氏ブログより】私がSEALDsをdisる理由―【私の論評】ホリエモンも瀬戸内寂聴も見えない、安保の当たり前のど真ん中(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部引用させていただきます。
"
経済学の大家ドラッカー氏は、経済統計だけをみたとしてら、後世の歴史家は、第二次世界大戦が起こったことなど、気づかないだろうとしています。


確かに、第二次世界大戦は世界中に大惨禍をもたらし、大勢の人が亡くなり、社会が混乱しましたが、経済統計だけを見ているとそうではないというのです。

これは、にわかには信じがたいことですが、第二次世界大戦で敗北した、ドイツや日本でも、確かに戦争の惨禍で、とんでもない状況にはなりましたし、物資も不足はしましたが、それでも、戦争中には普段よりもかなり多く、兵器を製造したり、軍隊にそれを支給したりして、大きな経済活動が営まれました。

さらに、日本を例をとり、後世の歴史家が経済指標だけ見ていたら、大東亜戦争があったことなど気づかないかもしれないことを実証してみせようと思います。

以下は、最近読んだ古谷経衡氏の『戦後イデオロギーは日本人を幸せにしたか』という書籍に掲載されていた、統計資料です。

クリックすると拡大します
この統計資料に関して、古谷氏は、以下のような説明をしています。
 これを見ると、日本は先の大戦で、すべての国富のうち、その4分の1を失ったことになるが、逆説的に言えば、4分の3は残存していると見なすことができ、その水準はおおむね1935年のそれであった。

簡単に言えば、日本は1935年から1944年までの拡大分が戦争最後の1年、つまり戦争末期の大空襲であらかた吹き飛び、日本の敗戦時の国富は終戦時点の10年前である1935年の水準に逆戻りしたと考えればわかりやすい。 
 よって、「日本は敗戦でゼロからのスタート」を余儀なくされたのではなく、「敗戦により、おおむね1935年の国富水準からスタート」と言い換えることができるのだ。
1935年のレベルといえば、言うまでもなくアジアの中ではトップクラスです。戦後の日本の復興は、「ゼロからのスタート」とするのは程遠い実態です。

終戦直後にこの状況であり、温存された国富の源となった、爆撃されなかった町や村などは生産活動を継続し、さらに戦争遂行のための様々な経済活動なども加えれば、日本も経済指標だけみていれば、戦争のあったことなど後世の歴史家は気づかないかもしれません。
"
現在の福島も同じことです。津波の被害が甚大だった、原発事故が甚大だったにしても、福島県全部が甚大な被害にあったということはないし、被害を受けたところだって、直後からかなりのスピードで復興しているわけですから、「ゼロからのスタート」とするのは程遠い実態であり、ブログ冒頭の記事はそれを数値的に裏付けているわけです。

ブログ冒頭の記事では、経済的あるいは、人口動態的に福島か回復していることを示していまたが、被爆実態については示していません。これに関しては、以前このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
被ばく量「国内外で差はない」 福島高生、英学術誌に論文―【私の論評】発言するならこの高校生たちのように感情ではなく、エビデンス(証拠・根拠、証言、形跡)に基づき行え(゚д゚)!

 この記事では、福島の高校生らが、福島や県外、外国の放射線被ばく量を体系的に組織だって計測をして、その結果をまとめましたが、その調査結果が英国の放射能に関する学術誌に掲載が決まったことを掲載しました。

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この高校生らが計測してわかった事実のみ以下に掲載します。


この結果から、福島県内、県外、海外においても、ほとんど差がないことが明らかになりました。

この事実を踏まえ、私はこの記事を以下のように締めくくりました。
いずれにせよ、何か発言したり行動するならこの高校生たちのように感情ではなく、エビデンス(証拠・根拠、証言、形跡)に基づき行えと、声を大にして言いたいです。

そうして、こうした若者にさらに大きな機会を与える社会にしていきたいものです。
無論、上の記事で指摘しているように、依然、福島は重大な問題を抱えています。このようなことは、統計数値だけを眺めていてはみえないところがあります。

大東亜戦争のときも、経済などは瞬く間に復活したわけですが、戦争が人々の心に残した傷はなかなか癒えませんでした。福島でも、震災が人々の心に残した傷はまだ癒えていない部分があるのも確かです。

しかし、いずれにせよ、私達が福島と関わるときには、上のブログでも指摘していたように、いま必要なのは、具体策もないまま「福島を忘れない」と優等生的な理念を唱え続けることでも、人々の不安につけこんだデマを妄信することでもなく、「正しく」現状を知りながら「楽しく」関わる方法を探求すべき時期を迎えているということを十分に考えるべきと思います。

まずは、「正しく」現状を知ることが必要不可欠です。福島産の農産物や、漁獲物が危険だとか、現地に行けば大量に被爆すると思い込んでいては、そもそも、行動など起こせません。

やはり、行動するなら、この高校生たちのように感情ではなく、エビデンス(証拠・根拠、証言、形跡)に基づき行えということを強調したいです。そうでなければ、いくら善意で行動したとしても、かえつて悪影響を与えかねないです。

善意だけでは何も変わりません。行動するなら、何らかの成果があることをすべきです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

【関連記事】

【堀江貴文氏ブログより】私がSEALDsをdisる理由―【私の論評】ホリエモンも瀬戸内寂聴も見えない、安保の当たり前のど真ん中(゚д゚)!




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2016年1月16日土曜日

【日本の解き方】民主党が主張する経済政策はブラック企業と既得権益者を利するだけだ ―【私の論評】ブラック政党に成り果てた民主党には今年の夏にとてつもない危機が(゚д゚)!


今年の夏には過酷な運命が待っている民主党。枝野氏はそれを知る由もない。

8日、衆院予算委員会で民主党の枝野幸男幹事長が質問に立ち、物価の変動を考慮した実質賃金について、民主党時代は高かったが、安倍晋三政権で低くなっていると批判した。

まず、事実を確認しておこう。実質賃金については、枝野氏のいうとおりだが、就業者数では民主党時代には30万人程度減少し、安倍政権では100万人以上増加している。

次に、雇用の経済学を復習しよう。名目賃金は物価より硬直的だが、金融政策は物価に影響を与えられる。このため、金融緩和すると実質賃金は低下し、就業者数が増加する。さらに金融緩和を継続すると、ほぼ失業がなくなる完全雇用の状態となる。そうなると今度は実質賃金も上昇に転じてくる。

経済の拡大によって就業者数は増加するが、逆に金融引き締めを行うと、実質賃金が高くなり、就業者数が減少。完全雇用からほど遠くなる。

民主党政権と安倍政権の実質賃金と就業者数のデータは、民主党政権では事実上の金融引き締め、安倍政権では金融緩和が実施され、その通りの効果が現れてきたことを示しているわけで、雇用政策から見れば、安倍政権の方が優れている。

民主党政権時代に就業者数の減少を招いたにもかかわらず、実質賃金の高さを誇るのは、雇用政策からみれば滑稽だ。就業者数が減り、実質賃金が上昇することで喜ぶのは「既得権雇用者」たちだ。つまり、既得権者保護の政治を民主党は公言していることになる。非正規雇用者、新卒者、失業者という「非既得権雇用者」の利益は考えていない、ということだ。

国際的な基準からみれば、金融引き締めをした民主党政権は、金融緩和をした安倍政権より「右派」で労働者に厳しい。民主党はすべての労働者の権利を守ろうとする「左派」政党とは思えない。この見解が間違っていると思うなら、欧州の左派政党に意見照会してみればいい。

ブラック企業の経営者は、金融引き締めに賛成しがちである。その方が、失業が多くなり、賃金を安く設定して労働者を買いたたけるので、多少のデフレには対応できるからだ。

民主党も、金融緩和に否定的で、金融引き締めを求めるところは、くしくもブラック企業の経営者と共通点がある。

そういえば、枝野氏は以前、テレビ朝日系の討論番組『朝まで生テレビ!』で、「金利を上げれば景気がよくなる」という趣旨の珍説を披露したこともある。それは、どのような経済学の教科書を読んでも分かるように、間違いである。

ブラック企業の経営者が、労働者を買いたたいたことで手元の資金を膨らませているために、金利収入を増やそうとして金利を引き上げよと主張することがある。この点でも、民主党はブラック経営者と似たような発想になっている。

民主党には経済政策で頑張ってもらわないと、国会がつまらなすぎて国民のためにならない。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】ブラック政党に成り果てた民主党には今年の夏にとてつもない危機が(゚д゚)!

民主党の国会での安倍総理などに対する質問は、衆院の枝野幹事長のものは無論のこと、他の衆院の質問も、参院での質問も、本当にマクロ経済や雇用のことが理解していないので、全く奇妙奇天烈で頓珍漢なものばかりでした。

この枝野氏は昨年2月、民主党は政権交代可能な政党であると述べていました。その動画を以下に掲載します。



この動画、動画が削除されてしまう場合もあるので、そのの音声を文章にしたものを以下に、掲載しておきます。
民主党の枝野幹事長は、安倍総理大臣を引き合いに出して、民主党が政権交代可能な政党だという考えを示し、政権復帰に全力を挙げる姿勢を強調しました。 
 民主党・枝野幹事長:「あの安倍総理でさえ、1回目は政権回せなくてごちゃごちゃだったのが、さすがに2度目は、やっている中身は僕は問題だと思いますけれども、うまいよねと、政権運営については」 
 枝野氏は、安倍総理が2度目の総理就任後、安定した政権運営を行っていることを引き合いに出しました。そのうえで、「我々も3年3カ月の政権の経験を積ませて頂いたなかで、経験ノウハウは十分得させて頂いた」と述べて、民主党が政権交代可能な政党の1つだと強調しました。 
さらに枝野氏は、「もう1つの柱としてしっかり立っていく。そのために党一丸となって頑張っていこうと決意した」と述べて、岡田代表のもとで、民主党の政権復帰に全力を挙げる考えを強調しました。民主党は29日、岡田代表就任後初めての党大会を開き、政権交代に向けて今年が「党再生の重要な年」と位置付ける活動方針を確認する予定です。
もし民主党が、3年3ヶ月で経験を積んだというのであれば、国会審議でもっとまともな議論、国の進路に関する論戦を戦わせることができるはずです。しかし、昨年毎日報道を賑わせていた民主党の国会審議は、政治とカネと安保法制審議における安直な「戦争法案」というレッテル貼りでした。

政治とカネは、野党の立場として取り上げるのは、ある程度はやむを得ないことだとは思います。ですが正直なところ、たとえば昨年のはじめころのNHK会長のハイヤー代など、私には、国の喫緊課題を議論する予算委員会に持ち出したこと自体が非常識であるとすら思えました。この問題など、もう大多数の国民が記憶の彼方にすっかり消え去っていると思います。


恐らく、安保法制に関しても、党内をまとめることができなかったため、真っ向勝負を挑めず、「戦争法案」一点張りで終始したのだと思います。そのため、国会ではほとんどまともな審議できませんでした。マスコミは、それがあたかも安倍民主党政権に責任があるかのような報道ぶりでしたが、それは全く違います。それは、民主党をはじめとする野党の側にこそ大きな責任があります。

「戦争法案廃案!強行採決反対!7.14大集会」で民主党を代表してあいさつする枝野氏
安倍政権とて、ひとたび支持率が落ちるようなことがあれば、自民党のような政党はすぐさま安倍降ろしにかかることでしょう。安倍総理が2度目で概ね成功し、長期政権の道を開きつつあるのは、経済、外交、安全保障等の政策、政治理念等々が、国民に一定の理解を得ているからでしょう。

誰もが2度目に成功するわけではありません。枝野氏の思考は度し難いほど単純ですが、それは「ほとぼりが冷めれば国民はまた騙せる」と考えているからではないでしょうか。

民主党にとっての3年3ヶ月の政権の経験とは、国民にとっては不満、ストレスと怒りの経験でしかありません。民主党に2度目の政権運営などないし、そんな機会は与えるべきではないです。

年が開けてからは、先に示したように、枝野氏をはじめとする、民主党の国会での質問は、マクロ経済を根本から理解してないため、奇妙奇天烈、頓珍漢の域を出ないものばかりでした。

枝野氏は、実質賃金も実質金利も引き上げよといっている点で、皮肉にも見事に整合性がとれています。ただし、残念ながら、二つともに経済成長のためには誤りです。これは、景気が過熱したときに、沈静化するには役立つでしょうが、景気を浮揚はさせません。

二つともに、既得権雇用者、資産家に有利な政策です。非既得権雇用者や資産を持たない挑戦者には全く優しくないです。特に若者にとっては、厳しい政策です。

雇用確保と倒産予防は、ともに政府の最も重要な仕事です。この二つを提示されると、枝野氏は「都合のいい数字を出す」と国会で厳しく追及します。枝野氏は、この二つが国民にとって最重要であることを全く理解していないようです。

考え方の根本が間違っていれば、弁舌爽やかに語っても意味がなくなる!
この重要な施策について、民主党は完全に安倍政権に完璧に負けています。これは、金融政策を正しく理解しているかいないか、という問題です。特に、金融政策が、雇用と不可分に結びつているという常識を知らないようです。これでは、民主党が政権の座につけば、再び雇用が悪化し、ブラック企業が跋扈することになります。多くの人々、特に若者に途端の苦しみをもたらす意味では、民主党こそブラック政党といえるかもしれません。

民主党が自民党に正しく対抗するための策は、安倍政権が掲げるインフレ目標2%ではなく、左翼政党としてのグローバル・スタンダードでもある、当面インフレ目標4%の金融緩和を行い、雇用確保と倒産予防をもっと強化してやっていくとともに、財政政策も増税という緊縮財政を捨てて、大規模な積極財政というものであるべき姿のはずです。

これが、労働者の雇用を安定させる一里塚のはずです。しかし、民主党はほんの一握りの、金子洋一参議院議員のような例外は別として、大方の議員がそのようなことには無頓着だし、真面目に勉強をしようという気もないようです。

自民党の議員にもそのような議員が多いですし、幹部でもそのような人がいますが、少なくとも安倍総理大臣とそのブレーンはそうではありません。党としても、安倍晋三氏が総理大臣であるかぎりは、あるいは安倍晋三氏の考えを引き継ぐ総理大臣がでてくれば、これからも財務省などに幻惑されることなく、正しい経済政策をとり続けるでしょう。

この基本がわからないようでは、民主党は政権交代どころか、今年7月の参院選、場合によってダブル選で、大敗北し、旧社会党のように存続の危機に見舞われることでしょう。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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日本経済に関する書籍二冊を以下にあげました。これをご覧いただくと、いかに民主党の経済政策が出鱈目かよく理解できます。さらに、政治家に関する書籍を一冊あげていただきました。これをごらんいただくと、いかに民主党政権が酷かったのか再確認いただけると思います。

Japan's Great Stagnation and Abenomics: Lessons for the World
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世界が日本経済をうらやむ日
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2016年1月15日金曜日

【お金は知っている】中国が世界にまき散らす市場不安と習政権が恐れるリスク ―【私の論評】福島原発報道で醜態をさらしたドイツメディアにまで、愛想をつかされた中国(゚д゚)!





 上海株は暴落、日米の株価の足を引っ張る。グラフが示すように株安を先導するのは人民元安だ。

 元安は「管理変動相場制」と呼ばれる中国特有の外国為替制度の限界を示している。同制度は、中国人民銀行が前日の元相場終値を基準とし、元の対ドル相場の変動を基準値の上下各2%以内にとどめるよう市場介入する。人民銀行は、わずかずつ元高に誘導してきた。元がドルに対して強くなれば、中国の元資産に投資している華僑など海外の投資家や国内の富裕層はドルなど外貨資産への転換を思いとどまるからだ。

 ところが、元高は国内産業の競争力を低下させると同時に、デフレ圧力を招き入れ、企業の製品価格を押し下げる。生産設備や不動産は過剰となり、企業や地方政府の債務が膨れ上がる。中国の企業債務(金融機関を除く)残高はダントツの世界一で、国内総生産比でバブル時代の日本企業の水準をはるかに超える。

 習近平政権はもはや、やけっぱちだろう。元安政策に転換したが、元安を嫌う華僑や国内の資産家は元資産を売って、外貨資産を買う。上海や深●(=土へんに川)の株価が暴落するわけである。

 人民銀行は資本逃避が起きるたびに外貨準備を取り崩して元を買い支える。この結果、外貨準備高は2015年末時点で3兆3000億ドル(約388兆7000億円)、前年同期から1080億ドル(約12兆7000億円)減った。香港やシンガポールの金融関係者の間では、このペースで資本逃避が続けば、外準は早晩3兆ドル台を割り込むとの見方が多い。

 元安は外貨建ての巨額債務を抱えている中国企業の実質債務負担を増やす。当局がいくら株式市場を管理、売買を規制しても、中国株売り圧力が高まる。こうなると、際限のない元安、株安の連鎖となる。

 打開策はただ一つ。管理変動相場制を廃棄して、先進国は当たり前の自由変動相場(フリーフロート)制に転換することだ。となると、当局の介入はなく、元相場は市場の需給を忠実に反映する。相場の変動は激しくなるが、投資家は為替の変動リスクを考慮して投機を控えるようになり、いずれ市場需給に合致する水準に元相場が落ち着く。

 習政権が恐れるのは、元が底なしの下落に見舞われるリスクである。資本逃避ラッシュが起き、外準は雲散霧消、輸入物価は急上昇し、悪性インフレに見舞われるかもしれない。すると、党独裁体制崩壊の危機である。それは、習政権の膨張主義を妨げるので、世界にとってはよいことだが、日本の財務官僚や親中メディアは管理変動相場制維持を支持する。中国の市場危機で日本も大きく揺れるとの懸念による。近視眼の平和ぼけの論理だ。

 考えてもみよ。現行制度維持では、習政権は大気汚染物質PM2・5同様、市場不安を世界に途方もなくまき散らす。解消のめどは立たない。安倍晋三政権は国際通貨基金(IMF)の場で、元のフロート即時移行を主張すべきだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

【私の論評】福島原発報道で醜態をさらしたドイツメディアにまで、愛想をつかされた中国(゚д゚)!

中国の経済もうかなり、酷い状態で救いようがないです。昨日も掲載したように、まともなやり方でまだ中国が実行していないというか、できない方法があります。昨日のブログからそのまま引用します。
(ブログ管理人追加:中国経済復活のために)合理的に考え得る戦略としては、金融緩和とインフラ支出で時間を稼ぎつつ、一般世帯の購買力を強化する方向に経済改革を進めて行くという方針があったはずでしたが、残念ながら中国が実行したのは同戦略の前半部分だけでした。その結果、一方では負債が急増し、 その多くを保有しているのは規制の杜撰な 『影の銀行』です。 他方で金融崩壊の恐れも出てきました。自由変動相場 
中国では過去5回の利下げでも、効果はなかった
ブログ冒頭の田村氏の記事のように、中国はいずれ自由変動相場制に移行すべきです。しかし、他に何もしないで、これをすぐにやってしまっても、中国経済は回復しません。まずは、金融緩和策やインフラ支出などをしながら、時間を稼ぎ、それと同時か少し後からでも一般世帯の購買力を強化することが必要不可欠です。

これが、中国経済を救う唯一の根本的な政策です。そうして、それには数字的裏付けもあります。それは、中国のGDPに占める個人消費の割合が、現状では35%しかないということです。これは、このブログにも何度か掲載してきました。個人消費がGDPに占める割合は、日本などの先進国では60%以上です。米国では70%以上です。

中国の35%はあまりに少なすぎです。しかし、逆のほうからみれば、中国では個人消費を伸ばせる伸びしろがまだまだあるということです。

しかし、これを実行するのに一番てっとりはやい方法としては、このブログにも以前から掲載しているように、現在のように貧富の差が極端にある状況を打開するために、経済的な中間層を多くつくりだし、それらが活発な社会・経済活動ができるように仕向けていく必要があります。

これに成功すれば、個人消費を40%以上に伸ばすことも可能です。おそらく、40%でも、中国経済は一息つけるものと思います。50%程度にすれば、結構余裕がでてきて、いろいろと前向きな対策が取れる余裕がでてくるものと思われます。

誰一人、人が住まない中国のゴーストタウン 鬼城 国内のインフラ投資は限界を超えた
しかし、これが中国にはできないのです。なぜなら、中国は一党独裁の全体主義国家だからです。中間層を増やすためには、現成の中国の社会体制の欠陥を是正しなければなりません。

その欠陥とは、民主化、政治と経済の分離、法治国家化が全く不十分だということです。これらがある程度なされていなけば、中間層はなかなか育ちません。天安門事件があったときから、中国の民主化は一歩も進んでいません。政治と経済の分離についても、最近の中国を見ていると分離どころか、不可分に結びついています。法治国家化も全く不十分です。

これらがある程度整備されない限り、経済的な中間層が、社会を良くしようとしても、できるものではありません。となれば、社会の改善や変革はなおざりにされてしまいます。そうなれば、当然経済活動も停滞します。

中国の共産党幹部はこれを全く理解していません。これらによって、経済が良くなるなどとは夢にも思っていません。だから、結局短期的な手しか打つことができません。結局金融緩和とインフラ支出を繰り返すだけです。それでは、先ほど述べたように、時間稼ぎ以上のことはできません。

時間稼ぎするなとはいいません、しないよりはしたほうがましです。しかし、彼らは、これをうまくやりさえすれば、また昔のように、力強い経済発展ができるものと勘違いしています。

日本や、EUなどの先進国がなぜ先進国になれたのか、正面から見つめようとしません。これらの国々は日本も含めて、中国に欠けている、民主化、政治と経済の分離、法治国家化を随分昔から進めていました。EUの先進国は、数百年前から進めていました。日本は、少し遅れましたが、明治以来一貫してこれを進めてきました。

日本や、EUもまだまだ不十分なところがありますが、それでも、中国や他の一党独裁の国々から比較すれば、かなり進んでいます。これが、経済的中間層の社会・経済活動を担保する形となり、彼らが熱心に活動するからこそ、日米を含む先進国では、個人消費が中国などよりはるかに大きく、GDPというとまずは個人消費が注目されるのです。

これらは、国を強くし、富ませるために必要不可欠な事です。少数の富裕層が贅沢の限りを尽くしたとしても、経済的には限界があります。やはり、星の数ほどの中間層が社会・経済活動を活発化させることにより、実体経済は発展します。

こんなことは、明らかなのに、中国共産党中央政府の幹部たちは、結局何も改めようとせず、その場しのぎの対策でなんとかしのぐことしかしません。結局彼らは、自分たちの保身と、自分たちが潤うことしか考えられないのだと思います。彼にとって、中国とは自分たちと、それに連なる子分たちのことであり、大多数の人民など関係ないのです。

こんなことでは、中国経済の復活は難しく、中国は、他の中進国と同じく、ある程度以上経済発展すると、そこからなかなか抜け出せず、いわゆる中進国の罠にはまり、図体がでかいだけの、経済も軍事的にもあまりパッとしない、凡庸なアジアの一独裁国家への道を歩むことになるでしょう。

こんな中国に愛想をつかしたのでしょうか、中国に擦り寄り姿勢を見せてきたドイツが最近変わってきました。それに関する記事が、ドイツ、シュトットガルト在住の川口マーン恵美さんが、書いています。その記事のリンクを以下に掲載します。
ドイツがついに中国を見捨てた!? 激変したメディア報道が伝える独中「蜜月時代の終焉」
昨年10月末にも北京を訪問したメルケル首相だが
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部のみコピペさせていただきます。
ドイツ経済は日本のように内需が大きくなく、輸出に多くを頼っている。日本の輸出依存率はGDPのわずか1割強に過ぎないが、ドイツは3割以上。しかも中国依存が強く、中国が、フランス、アメリカ、イギリスについで4番目の輸出相手国だ(日本の対中輸出はGDP比で3%にも達していない)。 
今、そうでなくてもロシア経済制裁で輸出が鈍っているため、中国の不況はドイツにとってギリシャの金融危機よりも怖い。これまでフォルクスワーゲンの3台に1台は、中国に輸出されていたのだ。 
つまり、最近ドイツメディアが一斉に中国経済の実態を書き始めたのは、これ以上、綺麗事を書いてはいられないという危機感の表れかもしれない。
ドイツのメディアは、従来は中国批判をあまりしかなったのですが、最近はかなり様変わりしてきたということです。ドイツ国内には、これを許容する空気が醸成されたということで、ドイツの中国への対応も変わっていくと思います。

このブログでは、以前ドイツのメルケル首相が、習近平に毒入プレゼントしたという記事も掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
メルケル独首相、習近平主席に“毒入り”プレゼントを贈る―中国―【私の論評】メルケルは、当面の目先の商売の相手先としてか中国を見ていないことを、習近平と世界に伝えたかったのか(゚д゚)!
メルケルが習近平に贈ったとされる中国の古地図

この記事は、2014年4月7日のものです。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。

3月末、習近平(シー・ジンピン)国家主席はドイツを訪問し、メルケル首相と会談。独中両国は緊密なパートナーシップをアピールした。一見すると、良好な関係を築いているかのように見える。しかしメルケル首相が習主席に贈ったプレゼントが“毒入り”だと話題になっている。 
贈られたのは中国の古地図。宣教師がもたらした情報をもとにフランス人が描いたもので、1735年時点での清朝の領域を示している。しかし地図では新疆、チベット、内モンゴル、尖閣諸島は清朝の領域外とされている。表向きは中国との関係強化をうたいながら、領土問題や人権問題できついお灸をすえたとの見方が広がっている。

・・・・・・・・ 〈中略〉・・・・・・・・・・・・・ 
このブログにも以前から掲載してきたように、中国の金融システムはガタガタで、崩壊寸前です。暴動も年間10万件を超える勢いです。

こんなときに、商売としては旨味がなくなっている中国に対して、すり寄り姿勢のみを強調されては、たまったものではないので、毒入りプレゼントを送りつけ、メルケル首相の腹の内をみせ、「あまり好い気になるなよ、旨味のある商売ができなくなったら、すぐにも手を切るぞ」という姿勢を習近平と世界にみせつけてみせたというところだと思います。

そのまま放置しておけば、中国あたりつけあがって、中国が何をしても、世界に向かってドイツやイギリスの世論が味方だなどと言いかねず、それを牽制する意味もあったものと思います。
ドイツが中国に擦り寄り姿勢を見せたときには、日本側からみていると、中国の経済は、日本の維持権の包括的金融緩和で、それまでまるで中国にとって麻薬漬けの政策から麻薬が打ち切られたような状況になり、さっそく経済に種々の異変が発生し、中国経済の悪化が確実になっていました。

しかし、日本でも一部の識者など、まだまだ中国の経済は発展すると見るものもいた時ですから、ドイツではまだまだ、中国経済の実態が把握されていな買ったのだと思います。

しかし、最近ではどう考えても、誰が見ても、中国の経済が悪化しているのは明らかで、さすがにドイツのマスコミも、経済の悪化や、先進国の常識では考えれない、異形の中国の実態を報道するようになったとみえます。

ドイツのメデイアというと、日本の福島原発事故報道においては、とんでない報道を繰り返し、世界に醜態をさらしましたが、ようやっと、中国の実態に気づき、まともな報道をしつつあるようです。

いずれにしても、ドイツにも愛想をつかされる中国です。習近平の恐れる元が底なしの下落に見舞われるというリスクは、現実のものになったとみて間違いないです。

私は、そう思います。皆さんは、どう思われますか?

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【脱中国元年】英、独の中国擦り寄りと反日暴動の深い意味 複雑怪奇な世界情勢―【私の論評】 対中国政策が示す日が沈むEU、日が昇る日本。すでに不退転の決意を示している日本国民!!


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2016年1月14日木曜日

「世界の工場・中国」は終わった リーマン以来の貿易前年割れ…トドメはTPP―【私の論評】世界の工場が消えるだけのはずが、10%増税なら日本経済回復は中国より遅れる(゚д゚)!

「世界の工場・中国」は終わった リーマン以来の貿易前年割れ…トドメはTPP

夕刊フジ

かつて世界の工場と呼ばれた中国だが・・・・
 中国が「世界の工場」と呼ばれた時代は完全に終わった。輸出と輸入を合わせた2015年の貿易総額が前年比8・0%減の3兆9586億ドル(約468兆円)とリーマン・ショック後の09年以来の前年割れ。16年以降もさらなる下振れが予想されている。

15年の輸出は2・8%減。原材料や部品を輸入して安価に組み立て大量輸出する加工貿易で急成長してきた中国だが、人件費高騰や労使紛争の頻発などで競争力が失われ、繊維や衣料品、機械・電子部品など外資系の工場が相次いで中国から撤退した。

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)が発効すれば有望な輸出拠点となるベトナムなどへのシフトが加速するとみられ、中国の輸出産業は地盤沈下が止まらない。

輸入に至っては14・1%減の1兆6820億ドルと落ち込んだ。不動産市況や株式市場の低迷で内需が低迷、人民元安で輸入価格も上昇した。

輸入の動きは国内総生産(GDP)と連動するといわれ、19日に発表される15年の中国のGDPでは統計数字の信憑(しんぴょう)性も問われている。

貿易失速を受けて、13日の上海株式市場で、総合指数の終値は2015年8月下旬以来、約4カ月半ぶりに終値が3000を下回った。

過去30年間で中国の貿易総額がマイナスとなるのは、アジア通貨危機のあった1998年とリーマン・ショックの影響を受けた2009年の2回しかない。

政府系の中国社会科学院も16年の輸出は前年比0・6%減、輸入は3・0%減と予想しており、中国経済はさらに沈みそうだ。

【私の論評】世界の工場が消えるだけのはずが、10%増税なら日本経済回復は中国より遅れる(゚д゚)!

昨年は、ホンダ が新型原付スクーター「ジョルノ」の生産を中国から日本の熊本製作所に移しました。ホンダのような大手に限らず、中小の日系工場でも、日本生産回帰や東南アジアへの進出など中国生産縮小の動きが進行しつつあります。特に人件費の安さを理由に進出した労働集約型や、中国国内での販売を考慮していない輸出専業型の場合は、撤退さえ選択肢に入れていることでしょう。


食料品、繊維製品など生活必需品の対日輸出に強い、山東省の最低賃金を見てみましょう。この数値が初めて発表されたのは1994年でした。このとき月例の賃金はわずか170元でした。それが2015年3月の改定では1600元となりました。20年で約10倍の上昇です。

しかし、実際にはこの最低賃金で労働者を雇うことは難しいです。外資系なら2000~3000元は必要でしょう。上海、深センでは最低賃金が2000元の大台を初めて超えました。この間、日本市場はデフレが続いており、店頭販売価格はむしろ下落していました。労働コスト的にはとっくに限界に達していたのですが、2012年まで続いていた日本の円高が延命治療の役割を果たしていました。

しかし、アベノミクスによる急速な円安がこのそれ以前の麻薬漬け状態を外した格好になり、東南アジアへの産地移動が急加速しました。続いて日本回帰の動きも始まりました。

この麻薬漬け状態の中国については、以前このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。この記事は、2012年11月4日のものです。まだ、民主党政権だった頃です。この直後に衆院選があり、安倍自民党政権が圧勝しました。
中国は世界で最もストレスの大きい国に―【私の論評】日本の円高・デフレを終わらせ、中国麻薬漬け政策を終わらせ、中国に新社会秩序を打ちたてよ!!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、中国の麻薬漬け状態に関する部分に関する部分のみ以下にコピペします。
中国を支えているのは為替操作によるキャッチアップ型の経済成長であり、円高とデフレを放置する日本銀行によるものだ。からくりはこうだ。 
慢性的な円高に苦しむ日本企業は、過度な「元安」政策をとる中国に生産拠点を移し、出来上がった製品の一部を逆輸入している。国内で一貫生産するより、わざわざ中国を経由した方がもうかる構造になっているのだ。つまり日銀は、「デフレ政策で日本の産業空洞化を促進し、雇用と技術を中国に貢ぎ続けた」ことになる。 
これ以上、日本経済が中国に振り回されないで済むにはどうしたらいいか。答えは簡単だ。日銀にデフレ政策をいますぐやめさせることである。
・・・・・・・・・〈中略〉・・・・・・・・・ 
日銀は、はからずも、中国を人間でいえば、麻薬漬けにしてしまったといえるかもしれません。しかし、先に述べたようにこのような麻薬漬け政策をつづけたとしても、日本を、デフレと円高で苦しめるし、中国は麻薬漬け体質からなかなか抜け出しにくくするだけです。日銀の白川総裁も、いい加減、中国麻薬漬け政策など、中国を駄目にしていずれ人民に恨まれるだけであろうことを認識していただきたいものです。 
やはり、日本の円高・デフレを終わらせ、中国麻薬漬け政策をおわらせ、中国に新社会秩序を早期に打ちたてるためにも、日銀のとんでもない金融政策は、一刻もはやく終わらせるべきだと思います。そう思うのは私だけでしようか?
日銀の中国麻薬漬け政策により、金融・経済が過度に蝕まれた中国は、麻薬が切れた今とんでもないことになっています。実体経済は悪化、株安、金融の空洞化と、とんでもない状況です。

そうして以前、中国への進出コンサルタントをしていた連中が、今や中国撤退コンサルタントをしているという有様です。

こんな状況では、もはや中国は世界の工場でいられるわけもありません。

中国の経済モデルはもともと非常に高い貯蓄と非常に低い消費の特徴を持っていました。中国のGDPに占める個人消費の割合は35%に過ぎません。日本をはじめとする先進国は、60%台が普通です。アメリカに至っては、70%台です。

これは中国が非都市部に不完全就業者労働力  の膨大な貯えをもっていた時には可能でした。しかしこの状況は最早一変していて、 中国はいま、 不況に陥ることなく相当大きく成長率を引き下げた体勢に移行するという綱渡りのような課題に直面しています。

合理的に考え得る戦略としては、金融緩和とインフラ支出で時間を稼ぎつつ、一般世帯の購買力を強化する方向に経済改革を進めて行くという方針があったはずでしたが、残念ながら中国が実行したのは同戦略の前半部分だけでした。その結果、一方では負債が急増し、 その多くを保有しているのは規制の杜撰な 『影の銀行』です。 他方で金融崩壊の恐れも出てきました。

そうするとやはり中国の状況は予断を許さぬもののようです。

しかし、中国が世界各国から購入する 「財やサービス」 は、毎年2兆ドルを超えています。とはいいながら、世界は広いです。各国国内総生産合計は、中国のそれを除いても、60兆ドルを超えています。中国の輸入が劇的な落ち込みをみせたとしても、世界全体の支出への衝撃はさほどのことはないと思います。

日本もその例外ではありません。日本の対中輸出はGDPの2.7%程度であり、これが劇的に低下したとしても、あまり大きな影響があるとは考えられません。以下に、各国の対中輸出・輸入がGDPに占める割合のグラフを掲載します。


この程度であれば、日本の内需が拡大したり、他国への輸出に振り向けることにより、たとえ中国の経済が停滞してもその影響は軽微だと考えられます。

金融関係については、どうかといえば、 中国は資本規制を敷いています。そのため株価が急落し、或いは中国内国債のデフォルトが生じた場合でも、直接的な波及効果は極めて小さいです。

だから、中国経済の長期にわたる不振が続いたにしても、さらには、中国の金融がさらに空洞化したにしても、世界に及ぼす影響や、日本に対する影響も軽微で終わることでしょう。日本を含めた、世界の先進国などが、困ることは中国に変わる世界の工場を探すことくらいのものだと思います。

ただし、日本に関しては、一つだけ条件があります。それは、現在日本に厳然として存在する10兆円のデフレギャップを早期に解消するということです。

金融緩和をしたことにより、このギャップも縮まる傾向にはあるのですが、それにしても、このギャップを無視して、8%増税をしてしまった結果、このギャップは縮まることなく温存されたままです。

これを、早目に解消するには、10%増税などとんでもないです。まずは、10%増税は絶対にしないことが、中国の経済悪化を軽微にすることの最低条件です。

そうして、できうれば、3兆円などとチマチマしたことをせずに、10兆円規模の財政政策を早期に打てば、中国経済悪化の悪影響など、なきが如しの程度で済んでしまうことでしょう。

このあたりについて、以前このブログにも詳しく掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
衝撃!中国経済はすでに「マイナス成長」に入っている〜データが語る「第二のリーマン・ショック」―【私の論評】中国経済の悪化をだしに、日本の積極財政を推進せよ(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、とにかく来年からの10%増税などという馬鹿なことは、絶対にやめるべぎてす。そうすれば、中国の経済悪化の影響など日本にとっては軽微なものになるはずです。

しかし、増税してしまい、さらに中国経済がさらに悪化すれば、またリーマン・ショックのように、日本が一人負けになることは必定です。リーマン・ショックのときは、日本だけが、緩和をしなかっのですが、他国は大規模な金融緩和を行ったため、本来ほんど影響がなかったはずの日本が、震源地のアメリカや、サブプラム・ローンの悪影響をかなり受けたEUなどよりも立ち直りが遅く、一番長くその影響を被ってしまいました。

今回の中国経済の悪化に対しても、他国はこの時期を狙ってわざわざ増税するなどという愚策は絶対しませんから、日本だけが実行するということにでもなれば、またまた、日本がひとり負けという状況になり、震源地の中国よりも回復が遅れる馬鹿げたことにもなりかねません。

私としては、安倍政権はそのような愚策を実行するとはとても思えませんので、先の私の中国経済の悪化が日本に及ぼす影響は軽微という予測が是非ともあたって欲しいものと思っています。




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