2019年5月30日木曜日

財政破綻論が、降水確率0%で「外出を控えろ」と言う理由―【私の論評】確率論でなくても、日本国を家族にたとえれば、財政破綻するはずがないことがわかるが・・・(゚д゚)!

財政破綻論が、降水確率0%で「外出を控えろ」と言う理由

高橋洋一:嘉悦大学教授

「長期停滞」脱却に
財政赤字拡大を主張


 日本は悪性の『長期停滞』、つまり民間需要の不足に直面している。完全雇用を維持するには、金融政策は可能なことをすべて行った今、財政政策の役割が求められている――。

 国際通貨基金(IMF)の元チーフエコノミスト、オリビエ・ブランシャール氏が、公債発行額とその元利払いの公債費を除いた財政の基礎的収支(プライマリーバランス)の赤字を維持し、さらに拡大すべきだというツイートを日本語で行ったことが話題になっている。

 日本では相変わらずの「財政再建至上主義」の財務省や、財政健全化を唱える学者も多い。ブランジャール氏の一連のツイートでの主張との違いはどうして起きているのか。

 ツイートのもとになっているのは、ブランシャール氏と田代毅氏が、二人が席を置くピーターソン国際経済研究所で5月に出したペーパーだ。それは日本語でも読める

 田代氏については、筆者は面識がないが経産官僚のようだ。そのペーパーでは、結論にこう書かれている。

 「現在の日本の環境では、プライマリーバランス赤字を継続し、おそらくはプライマリーバランス赤字を拡大し、国債の増加を受け入れることが求められています」

 「プライマリーバランス赤字は、需要と産出を支え、金融政策への負担を和らげ、将来の経済成長を促進するものです。 要するに、プライマリーバランス赤字によるコストは小さく、高水準の国債によるリスクは低いのです」との結論が書かれている。

 ペーパーは、政府と中央銀行(日銀)の負債・資産を一体で見る「統合政府」論による分析がされており、「(政府の債務は)総債務ではなく純債務が正しい概念です(少なくとも良い概念です)」という前提だ。

 こうした考え方による主張は、財政省が、狭義の政府で見た総債務の分析から導き出す情緒的な結論よりは、筆者にとっては信頼できる。

 その内容も、筆者が本コラムなどでかねて主張しているおおよその方向性と同じだ。財政政策と金融政策の一体運用に基づいて、まだ財政政策の余地があるという主張に異論はない。

インフレ目標は
財政規律維持の枠組み


 つまり、今の日本は、「2%インフレ目標」に達していないという現実から考えても、金融政策で物価を上げる余地がまだあるとともに、財政政策で需要を喚起する余地がある。

 財政赤字拡大を問題視する論者がいるが、「統合政府」で見れば、政府が発行した国債を中央銀行が購入するのは、統合政府の負債としての国債と、日銀の供給するマネタリーベースの交換にしかならない。

 ここで、マネタリーベースは基本的には無利息無償還である。

 この場合、国債発行がやり過ぎかどうかはインフレ率に出てくる。

 つまり、インフレ率がインフレ目標を上回ることになれば、財政赤字は過大ということになる。インフレ目標は、財政規律を維持するものとしても意味があり、財政規律維持の枠組みになり得るのだ。

 日本では、こうした政府と中央銀行の連携を「財政ファイナンス」として禁じ手のように言う論者がいるが、インフレ目標の範囲であれば実体経済に弊害はなく、日銀の国債購入を否定する理由はない。

 また、現状の日本経済を考えると、プライマリー赤字を過度に恐れる必要はなく、それによる成長を目指したほうが、結果としての経済やその一部である財政にとっても好影響になると思う。

財政健全化は
成長の後からついてくる


 こうしてみると、財務省がマスコミや一般国民に垂れ流している考え方は、財政再建至上主義といえることがわかる。

 財政が経済を動かすという世界観で、プライマリーバランスの均衡化が最優先になる。

 一方、ブランシャール氏らの考え方の背景にあるのは、財政は経済の一部であり、マクロ経済学の基本通りに政策運営をすれば、経済成長で税収も増え財政(健全化)はおのずと後からついてくるという経済主義だ。

 この考え方では、日本経済には一時的なプライマリーバランス赤字は問題でなく、経済再建のほうが優先される。

 日本での議論を見ていくと、日本では財政再建至上主義の裏側に、「財政破綻論」が根強いのに気がつく。

 筆者が考えるその一例は、東大金融教育センター内にある、すごい名称の研究会である。その名前は、“「財政破綻後の日本経済の姿」に関する研究会”だ。

 代表は、井堀利宏(東京大学大学院経済学研究科教授)、貝塚啓明(東京大学名誉教授)、三輪芳朗(大阪学院大学教授)という日本の経済学会を代表する学者らだ。

井堀利宏氏

 活動内容はホームページに記載されており、2012年6月22日が第1回会合で、2014年10月3日まで22回も開催されていた。

 ホームページには、研究会発足にあたり、「われわれは日本の財政破綻は『想定外の事態』ではないと考える。参加メンバーには、破綻は遠い将来のことではないと考える者も少なくない」と書かれている。

 第1回会合では、三輪氏が「もはや『このままでは日本の財政は破綻する』などと言っている悠長な状況ではない?」という論点整理メモを出して、勇ましい議論をしている。

 要するに、財政破綻は当然起こるので、破綻後のことを考えようというわけだ。

 はじめのうちは、財務省、日銀らの実務家を呼んで議論をしていたようだが、その後、安倍政権が誕生し、アベノミクスに研究会の関心も移った。

 2013年4月12日の第11回では、インフレ激化、財政破綻が顕在化する問題が指摘され、アベノミクスにかなり懐疑的な様子だ。ところが、長期金利は一向に上がらず、歴史やテクニカルな金融分析を行うようになる。

 2014年8月27日の第21回会合では、〈8月末時点の長期債の最終利回りは0.5%を下回っている。ある意味、不可解な現象である。われわれは過去2年間「現状の日本でなぜ国債価格の大幅下落、急激なインフレを伴う「財政破綻」は現実化しない、その予兆も見えないのはなぜか…?」という問題意識を抱き、研究会を続けてきた〉と、もどかしさを隠しきれない様子だ。

 彼らの本音は、自分たちは正しいのに、世間の現実が間違っているということだろう。
 こうした研究がおかしいとは思わない。学者というのはどこか浮世離れしているもので、そこに存在意義があるともいえるからだ。
曖昧な政府債務の定義
「財政破綻本」の警鐘当たらず


 ただし、この研究会の危機感は、債務残高対GDP比が発散すると考えているようだ。

 日本の数字をいえば、「借金1000兆円でGDP500兆円の200%」というのが財務省の常套句だが、いつも疑問に思うのは、どうして資産を引いてネットで考えないのだろうか、ということだ。

 政府単体だけでも資産を相殺したネットで考えれば、対GDP比100%にはならない。ちなみにネットでアメリカと比較すれば、日本のほうが低い。

 政府単体ではなく、政府子会社(日銀は政府子会社である)も含めた連結ベースで見たらどうか。

 ブランシャール氏のように「統合政府」というのでもいい。

 その上でネットで見ると、債務は0%に近い。こうなると、先進国の中でトップクラスの出来である。

研究会で勉強をするのは結構なことだが、そもそも議論のスタートである「財政破綻があるはず」という認識がかなり怪しかったのだろう。

結局、研究会自体も今から4年半前の2014年10月3日の22回で終わり、現在は休止になっているようだ。

こうした議論の根本的な問題は、日本の財政状況をしっかりと数量的に把握していなかったことだ。

財政破綻というのは、債務残高対GDP比率が発散するということだとは認識していたと思うが、この場合の債務残高について、グロスなのか、ネットなのかさえ明確でない。

筆者にはなんとなくグロスと思い込んでいるように思える。

参加している経済学者は、会計的な知識が乏しく、国のバランスシートさえ頭に浮かばなかったようだ。

経済学者によるいわゆる「財政破綻本」もかなり出ている。

例えば『2020年、日本が破綻する日』(2010年8月)、『日本経済「余命3年」』(2010年11月)、『金融緩和で日本は破綻する』(2013年2月)などなどだ。

しかしこれらの本が“警鐘”を鳴らした「財政破綻」は現実に起こらなかった。財政破綻は面白い材料なのか、これらの本以外にも、それに類する本は少なくない。

ある国会議員は、財政破綻の問題を国会質疑で20年近くも主張しており、筆者が、予言は当たっていないと指摘すると、当たっていないことは認めるが、言わざるを得ないと言っていた。

実現したら困るので、根拠なしでも言う必要があるというものだ。この意味では、ノストラダムスの予言と大差ない。

一方で、財務省はこうした「財政破綻本」は増税の根拠にできるので、放置している。むしろ、財政破綻論を書きたい著者には財政資料をレクチャーするなどして後押しすることもある。

『絶対に受けたい授業「国家財政破綻」』(2010年6月)は興味深い本だ。財政破綻論が書かれている。

その本の筆者は、私にも見解を求めてきて、まず財政は破綻しないという私の意見も掲載されている希有な本だ。

破綻のリスク試算
「5年以内では確率1%未満」


筆者が日本財政はまず破綻しない、と言ってきたのには理由がある。

各国国債の信用度は、それらの関わる「保険料」(CDSレート、債券などの債務不履行のリスクを対象にした金融派生商品の取引レート)から算出される。

危ない国債に対する「保険料」は高くなるはずだからだ。

しかも、この「保険料」がもっともらしいのは、それがネット債務比率対GDPと、かなり(逆)相関の関係を持つことだ(下図)。



 これは、ファイナンス理論と整合的な結果である。

 これをもとに考えれば、筆者の試算では、今後5年間以内における日本の財政破綻の確率は1%未満だ。

 日本の財政破綻について言及する人について不思議に思うのは、財政破綻のリスクがあるという言い方をしている人が多いことだ。

 「財政破綻本」の中には、財政破綻までの期間を明示したものもなくはないが、リスクという表現は、もともと確率を表現できるものをいう。

 それにもかかわらず、ほとんどの財政破綻論者は確率表現を用いることができず、感覚的に使っている。

 天気予報の降水確率でも、「今日の降水確率○%」という言い方をし、地震でも「今後○年間以内に発生確率は○%」と言うのに、なぜか、財政破綻のリスクについては“雰囲気”でしか論じない。

 その割に、財政破綻がいかにもすぐに起こり得るかのようにいって、緊縮財政を目論むのが財務省であり、それをうのみにしているのがマスコミである。

 確率表現できないのに、財政破綻リスクを言うのは、筆者には考えられないことだ。

 今の財政破綻に関する議論の状況を例えれば、降水確率0%なのに、万が一天候が急変するかもしれないので、外出を控えましょうと言っているようなものだ。

(嘉悦大学教授 高橋洋一)

【私の論評】確率論でなくても、日本国を家族にたとえれば、財政破綻するはずがないことがわかるが・・・(゚д゚)!

日本政府が財政破綻しないことは、確率論でなくても説明はできます。本日はそのような説明をします。

政府の財政を家計にたとえて、「給料等の収入が631万円しかないのに975万円も使っていて、不足分の344万円は銀行から借りているような家計は、早晩破産するでしょう」と言う人がいますが、これは大変ミスリーディングなたとえです。全くの誤りです。

財政を家計のように捉えるのは全くの間違い

家族が倹約した場合、家族の赤字は減ります。家族旅行を我慢すれば、ホテルや交通機関の収入が減る一方で、家族の家計は改善します。収入が減って困るのは、赤の他人(ホテルや交通機関の従業員等)ですから、気にする必要はありませんし、自分の収入に跳ね返ってくることもありません。したがって、「家計が赤字なら倹約しろ」というのは正しいのです。

これは、政府の財政とは全く状況が異なります。実際の経済では、政府が歳出を削減すれば、民間部門の収入が減ります。それにより、国民が貧しくなり、失業が増えたり、政府の税収が減ったり失業対策で歳出が膨らんだりするわけです。

政府にとっては、国民は赤の他人ではありません。国民が失業しようと貧しくなろうと、自分の財布が潤えば良い、というものではありません。そこを無視した議論は、現実的ではありません。

一方、日本国を4人家族(構成員はサラリーマンである夫、専業主婦である妻、夫の親、夫婦間の子)とすれば、上手に説明ができます。日本政府を夫、民間部門を親と妻と子にたとえるわけです。

日本国を四人家族にたとえると・・・・・

日本政府の一般会計予算の歳出(平成31年度)を見ると、社会保障が34兆587億円、国債費が223兆5082億円、地方交付税交付金等が15兆9850億円、となっています。

社会保障は主に高齢者への給付ですから、家計で言えば夫から親への小遣いに相当します。地方交付税交付金は、収入の多い人から少ない人への移転ですから、家計で言えば夫から妻と子への小遣いに相当します。国債費は、過去の借金の元利払いです。夫は親や妻や子から借金をしているので、その分の元利払いが必要なのです。公共投資等々は、電気ガス水道代、妻への家事担当の対価(後述)、等々に相当しますが、金額的には妻に支払う家事労働の対価が主です。

親は多額の預貯金を持っていますが、生活費を負担する気はありません。夫が給料の範囲で暮らせないことは知っていますが、不足分を親が貸すことはあっても、負担はお断り、というわけです。小遣いも、多額に要求します。「嫁が家事を担当していることで、それに対する対価を要求される。その分は預貯金を取り崩すのは嫌だから、その分くらいは小遣いをよこせ」というわけです。

妻は、家事労働の対価を要求します。それが相当高いので、夫の公共投資等々の支出の多くは、妻の手に渡ります。親や子からも、家事を担当していることの対価をもらうので、ますます妻は潤います。一方で妻は倹約家なので、収入はあってもあまり消費はせず、残りを夫に貸し出します。夫が借りない分は、銀行に貯金します。

子は、小遣いをもらいますが、倹約家なので、あまり使いません。妻に家事の対価を支払い、残りは夫に貸すか、銀行に貯金します。

夫は、稼いだ給料以上に金を使っているので、赤字です。その分は親や妻や子から借りています。借金の残高は膨大で、元利払い額も巨額です。

妻は、家事一切を担当し、夫や親や子から対価を得ていますが、電気ガス水道は全額夫が負担しているので、妻は家事労働の対価として得た収入を夫に貸しています。夫は、妻などからの借金に対し、元利払いを行なっています。

上記をよく見ると容易に理解できるように、給料として外部から得てきた金は、家庭内で動き回っているだけで、外部にはあまり出ていっていません。せいぜい電気ガス水道代と、家族の趣味の費用(皆が倹約するので、少額)くらいです。

夫は、親や子に小遣いをやりすぎているのかもしれません。妻に家事担当の対価を払い過ぎているのかもしれません。人気取りのためだとすれば、やめましょう。というわけで、ある時「借金が嫌だから、親と子の小遣いを半分にする」と宣言したとします。

親と子は妻に「家事は半分で良いから謝礼も半分にしてくれ」と言うでしょう。妻がそれを飲めば、妻の収入が減りますから、妻が夫に貸し出せる金額が減ります。夫としては、「借りる必要のある金額」と「借りることができる金額」が同時に減るだけなので、家計は何も変わりません。

もっとも、妻が仕事と収入を半分失い、親と子が手抜きの料理で我慢させられることになる分だけ、家族の生活水準は落ちます。場合によっては、親と子の栄養失調を気にして夫が親と子に御馳走してあげる必要が生じるかもしれませんね。そうなると、その分だけ家計が悪化する可能性さえ、あるわけです。

これは、夫にとっては由々しき事態です。夫にとっては、自分が破産しないことと同じくらい、妻や親や子の生活を守ることが重要で、家族を犠牲にして自分の財布を豊かにすることが重要なわけではないのです。

強いていえば、親も妻も子も貧しくなるので、家の外で使う金が一層減るかもしれません。その分は家計が改善されるでしょう。もっとも、もともと家の外での出費が収入に占める割合は大きくありませんから、これは無視しても良いでしょう。

家族の仲が悪くなれば、様々な問題が生じるでしょう。妻は夫に「金は貸さない」と言い、夫は親と子に「小遣いを払わない」と言い、家族は崩壊するかもしれませんが、各人がそれを知っているので、無茶は言いません。夫が不足している分は妻(および親および子)が借りたいだけ貸してあげます。夫もそれを知っているので、赤字を気にする必要もありません。

日本国債の見本

つまり、民間部門が喜んで国債を買い続けることを前提とすれば、政府の赤字は気にする必要が無いのです。

上記のように、政府の財政を夫の財布にたとえれば、夫が倹約した場合(親や子への小遣いを減らした場合)、親や子の収入が減ります。上の例では、妻が半分失業したり、親や子が手抜き料理で我慢させられたり、夫が親や子に御馳走したりする必要が出てくるかもしれないわけです。

それが望ましいことなのか否かは、「将来、家族の仲が悪くなり、もう貸さない、といった最悪の事態」が起きるか否かにかかっています。この最悪の自体が起これば、確かに政府の財政は破綻するかもしれません。

最悪の事態を避けるためならば、家族の生活水準を落としてでも、夫は親などへの小遣いを減らすべきでしょう。しかし、そうした必要性は今の日本では全くありません。

「将来、家族の仲が悪くなり、もう貸さない」という状況は現実にはどういう現象でしょうか。それは、政府の発行する国債の金利が高騰して大暴落してしまった状態です。しかし、多くの方もご存知のとおり、日本の国債は暴落するどころか、低金利の状態が続いています。

この状況では、どう考えてみても、財政が破綻することはほんどありえないのです。現実の世界でみても、国債の金利が突然大幅にあがった場合には、注意が必要ですが、現実にはそのようなことはありませんでした。これからも、そうなる見込みはほとんどありません。

無論、短期で0.5%とか、0.数%あがったとか、下がったとかで、大騒ぎしている人もいたようですが、そんなことで一喜一憂する必要もありまません。やはり、長期でみていくべきでしょう。

しかし、国債の金利の動きを見ていれば、どう考えても、現在の日本政府が近い将来に破綻するとは考えられません。

ほとんどの財政破綻論者は、財政を単純に家計のように考えているか、あるいは何かの目的のためにそのように見せかけているということなのでしょう。

ただし、政策論的にはやはり確率で語ることができないのは、問題であるとは思います。数%にすぎないのか、50%を超えているかでは、対処方法も大きく変わるはずです。そもそも、数値で語れば、危険か危険でないか誰にでもすぐにわかります。

これが、自然災害か地震予知のように、不確定要素が多すぎるならまだしも、財政破綻に関してはかなり容易に正確に計算できます。

確率抜きで財政破綻を語る人は、信用すべぎないです。

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2019年5月29日水曜日

レアアースは米中貿易戦争の切り札だ! 自信満々だが「過去には失敗」も=中国メディア―【私の論評】レアアースで再び自分の首を締める中国(゚д゚)!

レアアースは米中貿易戦争の切り札だ! 自信満々だが「過去には失敗」も=中国メディア



米国と中国の貿易摩擦が激化し、米国側は中国製品に対する関税率の大幅引き上げや、大手通信機器メーカーであるファーウェイに対する規制を強化する方針を打ち出した。また、米国は中国製の小型無人機(ドローン)や監視カメラに対しても危機感を抱いていることを明らかにしている。

 エスカレートの一途を辿る米中貿易戦争について、中国メディアの今日頭条は24日、中国には米国による圧力に対して「切り札がある」と主張する記事を掲載した。

 記事は、現在の米中による貿易戦争は「中国の科学技術の急激な進歩に、米国が危機感を抱いたため」との見方を示す一方、「中国側は少しも脅威を感じてはいない」と主張し、なぜなら、「中国にはレアアースという切り札があるためだ」と主張した。レアアースが中国にとっての切り札になる理由は、現在までに確認されているレアアースの埋蔵量が圧倒的な世界一で、生産量も世界全体の7割を占めるという「独占的な地位」にあるようだ。

 続けて、レアアースは現代のあらゆる産業を支える、必要不可欠な資源だと指摘。たとえば需要が高まる電気自動車の電池やモーター、医療機器ではCTスキャナー、通信技術では光ファイバー、また身近なところでは家電のLED電球や蛍光灯、プラズマディスプレイなどその使用範囲は広く、「現代人の生活には欠かせない資源となっている」ゆえに、中国が生産し、世界中に輸出しているレアアースは強力な切り札となるのだと主張した。

 中国にとってレアアースが切り札になるカードであるのは間違いないが、中国が過去にレアアースの禁輸を行って、しっぺ返しを食らったことは記憶に新しい。中国は2010年、日本との尖閣諸島問題がエスカレートした際にレアアースの実質的な禁輸を行った。当時の日本や米国はレアアースの調達を中国に依存していたが、禁輸措置を受けて調達先の多元化やレアアースの代替材料の開発を進めた。そのため、現在の中国が再びレアアースを米中貿易戦争の切り札としようとしても、中国にとって大きな効果が見込めるかどうかは疑問と言えるだろう。(編集担当:村山健二)(イメージ写真提供:123RF)

【私の論評】レアアースで再び自分の首を締める中国(゚д゚)!

欧米の後手に回ることが多かった日本の資源戦略で、地味ながらも成功といってよい事例があります。それは、ハイブリッド車のモーターなどに使われてきたレアアース(希土類)の代替材料の開発です。2010年あたりより前までは、大半を中国からの輸入に頼ってきましたが、日本の官民を挙げた技術開発が奏功し、ここにきて輸入依存は大幅に減りました。そこから何を学べるのでしょうか。

「米国や欧州、中国も日本のまねをし始めた。日本発のレアアース代替戦略の先見性を物語っている」。東京都内で2015年3月末に開かれた次世代材料のシンポジウムで、奈良先端科学技術大学院大学の村井真二副学長(当時)はこう称賛しました。

村井氏が指すのは文部科学省が2007年度に着手した「元素戦略プロジェクト」のことです。このプロジェクトは高解像度の液晶技術「IGZO(イグゾー)」の開発で知られる細野秀雄東京工業大学教授が「身近な元素から未知の性質を引き出せば、新たな用途が開ける」と提唱し、20を超える大学や企業などが参加。ディスプレー電極に使うインジウムや触媒向けの白金などの代替技術を探ってきました。

なかでも進展があったのが、高性能磁石に不可欠だったジスプロシウムの代替技術です。日立金属と物質・材料研究機構がネオジム銅合金を使い、高い磁力を保つ新技術を開発。ジスプロシウムが要らない高性能磁石を先駆けて実現しました。

その成果が目に見えて表れたのが2012年。沖縄・尖閣諸島をめぐり日中関係が緊迫し、レアアースの世界生産量の9割を握っていた中国が一時、対日輸出を一方的に停止してからでした。

多くの日本企業が窮地に立たされるなか、自動車大手はハイブリッド車向けに新型磁石を即座に採用。家電各社もエアコンや洗濯機のモーターをフェライト磁石などに相次いで切り替えました。こうして脱レアアースが一気に進み、12年の日本のレアアース輸入量は前年に比べほぼ半減。価格も大幅に下落し、市場は落ち着きを取り戻しました。


元素戦略はなぜ奏功したのでしょうか。それを探ると、2つの要因が浮かび上がります。

まず将来予想される危機を予見し、官民がスピード感をもって対応したことです。元素戦略が始まった07年は商品市場に投機資金が流入し、資源価格が軒並み急騰した時期にあたります。政府はこれに危機感を強め、文科省が代替技術の基礎、経済産業省が応用研究と分担し、異例の連携体制を敷きました。

2つめが、日本が素材分野でもつ底力を引き出したことです。レアアースの代表的な用途の一つが触媒ですが、この分野は鈴木章北海道大学名誉教授らノーベル化学賞受賞者を輩出し、日本のお家芸といえます。元素戦略でも触媒分野で世界的に知られる研究者らが助言役になり、技術開発の進め方で知恵を出しました。



元素戦略は2014年から第2期に入り、自動車鋼板などに使う高張力鋼に不可欠なニオブやモリブデンの代替技術を重点テーマに据えました。これは、当時は安定調達できていましたが、輸入が中国に偏りリスクを無視できなかったからです。

レアアース対策の成功を他の資源戦略に生かせないのでしょうか。日本近海でメタンハイドレートの試験採掘が始まり、海底の希少金属資源も相次いで見つかっています。これらを商業ベースで採掘できるかは未知数ですが、技術力に磨きをかければ輸入品の価格交渉などで有利に働くことが期待できます。

政府は2015年4月に閣議決定した海洋基本計画で、海底資源開発に向け経産、文科、国土交通省などの連携を求めましたが、縦割りを排して効率的な開発に取り組めるかはなお課題が残ります。

2019年2月15日経済産業省は、海洋エネルギー・鉱物資源開発計画を改定しました。本計画は、海洋エネルギー・鉱物資源の具体的な今後の開発の計画などを示すため、海洋基本計画に基づき経済産業省が策定するものです。スピード感をもって挑むには、レアアース代替研究から学べる点があるはずです。

中国はこの重要な鉱物について、それを新たに貿易戦争の道具に使えば、世界中のその他の国から信頼できない貿易パートナーと見なされるようになるでしょう。そうなれば、代替資源の開発が急速に進むことになるでしょう。

  中国の習近平国家主席が20日、江西省内のレアアース企業を視察した。同視察については、
  米中の経済対立に関連しているとの見方が中国内外から出た。

米国は、中国以外の供給国を捜すこともできます。これはベトナムやメキシコといった新興国が、市場にできた穴を埋める機会にもなるでしょう。さらに、驚いたことには、北朝鮮にも豊富なレアアースが埋蔵されているとされています。米地質調査所(USGS)や、日本貿易振興機構(JETRO)などの「資料」によると、半端ない量のマグネサイト、タングステン、モリブデン、レアアースなどのレアメタル(希少金属)が埋蔵されているといいます。

そうして、以前からこのブログにも掲載しているように、韓国は機会があるごとに中国に従属しようとしますが、北朝鮮は中国の干渉を嫌っています。北朝鮮の存在そのものと北朝鮮の核が、結果として中国の朝鮮半島全体への浸透を防いでいます。

中国が、レアアースを貿易戦争の道具にした場合、日米および他の先進国は、代替物の開発を急ぐことになるでしょう。さらに、現状では手詰まりの北朝鮮問題を解決(必ずしも平和的な解決だけではなく、武力攻撃も含む)し、北のレアアースを輸入できる体制を整えることになるかもしれません。

2010年の中国によるレアアース禁輸は3つの点で逆効果となりました。

第1に、世界貿易機関(WTO)が中国の禁輸をルール違反と判断しました。中国は国際貿易における自らの信頼性を喧伝しているだけに、新たにWTOの係争を抱えると政治的に厄介なことになります。

第2に、禁輸はレアアース価格の急騰を引き起こしました。中国政府は国内でレアアース産業の管理を目指していますが、値上がりで違法生産を主体とする生産が急増し、しっぺ返しを受けました。その後、レアアースの価格は急落しましたが、違法生産は減らず、中国は業界の管理に手を焼いています。

第3に、中国が強硬な手段に訴えたことで中国産レアアースの需要が落ち込みました。ホンダやトヨタ自動車など日本の自動車メーカーは電気自動車用磁石で中国産レアアースの利用を抑える新技術を開発し、オーストラリアなど他国産の採用を増やしました。アウディがSUV型電気自動車「eトロン」で磁石モーターではなく誘導モーターを採用するなど、エンドユーザーの反応は今も続いています。

今回も、レアアース禁輸措置をした場合は、同じような逆効果を招くことでしょう。いや、もうすでに日米をはじめ、世界の国々がこれを予期して対策に走っていることでしょう。結局貿易戦争の対抗手段としては、かなり歩が悪くなるだけに終わることでしょう。

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2019年5月28日火曜日

最低賃金引き上げの「公式」 韓国のやり過ぎは反面教師! 日本経済に有効な3%路線 ―【私の論評】驚くべきことに、政府財政諮問会議、文韓国大統領、枝野立憲民主党代表の頭の中には、NAIRUという概念がない(゚д゚)!


経済諮問会議に参加した安倍総理

最低賃金について、政府は毎年3%程度を目途に引き上げる方針を掲げているが、14日の経済財政諮問会議では、内需の下支えに向けて、それを上回る5%程度を目指すべきだという意見が出たという。現状の日本でどの程度引き上げるのが妥当なのだろうか。

 最低賃金の水準については、「あるべき論」が強調されがちだ。最低賃金が高ければ、その分消費支出が増えるので、経済成長にプラスだという意見すらある。

 もっとも最低賃金の引き上げによる消費増の恩恵がどの企業に還元されるかは定かではない。引き上げは企業のコスト増だが、それが企業収益増に直結するかどうかも分からない。

 このため、最低賃金引き上げは労働の逼迫(ひっぱく)に対応する程度にとどめた方が経済全体には好都合なことが多い。最低賃金も賃金の一種であるので、労働市場の状況と無関係に決めるのは無理だという、至極妥当な話だ。

 この原理を具体的にいえば、最低賃金は前年の失業率を受けた無理のない水準にし、賃金は雇用確保の後からついてくるという経済原則を曲げないようにさえすればいい。大ざっぱな計数であるが、最低賃金の上昇率は、5・5から前年の失業率を差し引いた数値程度が結果としていい。

 この点、安倍晋三政権はかなり狡猾(こうかつ)だといえる。雇用を増やし、失業率が下がるような環境を作っておき、最低賃金は失業率の低下に合わせて、毎年上がっていくように調整してきた。

 3%程度というこれまでの最低賃金の引き上げ方針も、NAIRU(インフレ率を加速しない失業率。事実上最低の失業率)が2%台半ばから考えると経済合理的である。

 安倍首相は、このメカニズムを「政治的」にうまく利用してきた。「政労使会議」を利用し、あたかも首相主導で最低賃金を引き上げたように見せ、政治的なプレゼンスを高めているようだ。

 要するに、最低賃金の引き上げは、雇用創出の成果であるが、その果実を安倍政権は政治的に生かしたといえる。

 この観点からみると、経済財政諮問会議での5%引き上げの議論には首をかしげざるを得ない。今の諮問会議は事実上、霞が関の役人が主導しており、消費増税も賛成だし、そもそもマクロ経済を理解しているのか疑問だ。最低賃金の議論でもマクロ経済オンチの部分が出たようにみえる。

     文在寅大統領による最低賃金の引き上げすぎで古窯が激減した韓国の
     テレビ報道。しかし、なせか金融政策については全くふれない

 隣国の韓国で、文在寅(ムン・ジェイン)政権は最低賃金を引き上げすぎて雇用の創出に失敗した。最低賃金を野放図に上げる失政は、マクロ経済学が分からないまま政治的な成果を求める左派政権によくある話だ。

 この程度の経済政策を分からない経済財政諮問会議はもはや不要ではないか。存在感が少なかったのでパフォーマンスに必死なのかもしれないが、「5%」の議論は無視し、これまでの安倍政権による政治的・実務的な「3%」の方が、日本経済のためになるだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】驚くべきことに、政府財政諮問会議、文韓国大統領、枝野立憲民主党代表の頭の中には、NAIRUという概念がない(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事では、NAIRU(インフレ率を加速しない失業率。事実上最低の失業率)という言葉がでてきていますが、これに対する解説がでていませんので、簡単にこれを補っておきます。

この言葉については以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
完全失業率2・4%の意味 異常値ともいえる大幅下落、賃金本格上昇はこれから 高橋洋一 日本の解き方―【私の論評】日本経済にはまだまだ、まだ!量的緩和と積極財政が必要(゚д゚)!
NAIRUを理解するには、この記事にも掲載した以下のグラフを理解することが必須です。労務ではなくて、雇用のことがわからないのは下のグラフが頭に入っていないからです。これを理解すれば、マクロ的な雇用に関しては、大概のことは理解できます。


 

経済財政諮問会議のメンバーは、このグラフが頭からすっかり欠落しているのだと思います。だから、最低賃金のことでも、増税のことでも頓珍漢なことをいい、存在意義をなくしているのでしょう。

このグラフからは、NAIRU(2.5%)並びにインフレ目標2%を達成するためには、積極財政と金融緩和が必要であることがわかります。

韓国の分在寅大統領は、金融緩和をせずに最低賃金を上げるというとんでもないことをしたため、雇用が激減したのです。韓国でも、日本とは経済のファンダメンタルズなどが異なるので、NAIRUやインフレ目標の値そのものは異なるかもしれませんが、それにしても、韓国でもインフレ率、失業率、NIRU、インフレ目標の関係は変わりません。このような関係は、どこの国でも変わりません。

そのことは、まともなマクロ経済学のテキストで当たり前に教えていることです。雇用が悪化したときには、まずは金融緩和と積極財政をして、NAIRU、インフレ目標を達成すべきなのです。金融感をせず、最低賃金だけを増やせば、雇用が激減するのは当たり前のことです。

金融緩和をしないで、最低賃金だけをあげるというのは、同じパイの中で賃金を上げるというのと同義です。そうなれは、雇用が減るのは当然の理屈です。

最低賃金をあげるのは、やはりブログ冒頭の高橋洋一の言っている通り、まずは金融緩和をしつつ、前年の実績をみながら、決めるというのが妥当です。現状では、3%が妥当です。

3%というと誤差のように感じる人もいますが、デフレでなかった他の国々もこのようなものです。ただし、これが20年、30年と続くと給料が2倍から、3倍になるという当たり前の状態になるのです。

韓国の大失敗の事例があるにも関わらず、政府の財政諮問会議は、最低賃金5%アップを低減しているだけではなく、消費税にも賛成というのですから、本当に首を傾げざるを得ません。

立憲民主党代表枝野氏

そうして、このようなことは不幸なことに日本では与党だけではなく、野党もおなじようなところがあります。たとえば立憲民主党の枝野氏も、韓国で文在寅が大失敗した後の今でもあいかわらず、金融緩和などお構いなしに最低賃金をあげることを主張しています。

彼の頭の中には、NAIRUなどはないのでしょう。ひたすら、最低賃金の上昇だけ主張して、文在虎の主張する雇用悪化への道を提唱しています。

それにしても、経済諮問会議、文在虎大統領、枝野代表の頭の中にもNAIRUという観点が全くないということは驚くべきことです。これは、政治家なら当然わきまえていないければならないことのはずです。

雇用と労務は、違います。多くの政治家は、労務のことを雇用と勘違いしているのでないでしょうか。そもそも、雇用の主務官庁はどこと聴かれて、厚生労働省と答えるのは間違いです。厚生労働省は労務の主務官庁です。この質問には「日銀」と答えなければなりません。このように答えられる政治家が一体日本には何人いるのでしょうか。

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高橋洋一 日本の解き方 物価目標2%は実現できる 黒田日銀の壁は消費再増税、財政出動で景気過熱が必要だ―【私の論評】次の総理はやはり安倍晋三氏しか考えられない(゚д゚)!


2019年5月27日月曜日

中韓震撼…狙い撃ち! トランプ政権「為替報復関税」で不透明な為替介入“逃げ道”ふさぐ―【私の論評】為替報復関税はまともな国同士では有り得ないが、米中冷戦で使われる可能性は否定できない(゚д゚)!

中韓震撼…狙い撃ち! トランプ政権「為替報復関税」で不透明な為替介入“逃げ道”ふさぐ

人民元も米国の標的になりそうだ

新たなトランプ砲となるか。米商務省は、自国通貨を割安にする国からの輸入品に対し、相殺関税をかけるというルール改正案を発表した。中央銀行の金融政策による影響は含まないため日本が対象となる可能性は低いが、不透明な為替介入を指摘されているうえ、自国通貨が急落している中国と韓国は格好の標的となりそうだ。

 改正案は、自国通貨を割安にすることを輸出国側による補助金と見なし、関税で対抗するという仕組み。割安かどうかは米財務省が判定するとしている。貿易赤字を減らしたいトランプ政権は、中国製品への関税引き上げを行っているが、通貨安で関税引き上げ効果を打ち消すという中国側の逃げ道をふさぐ狙いがうかがえる。

 米財務省は半年ごとに主要な貿易相手の通貨政策を分析した外国為替報告書を発表している。自国通貨を安値に誘導している「為替操作国」に相殺関税を課す仕組みはすでにあるが、基準が厳しく、最近は認定された国はない。

 2018年10月発表の報告書では、日本、中国、ドイツ、韓国、インド、スイスを監視対象国と指定していることから、日本も狙ったとの報道もあるが、日本は旧民主党政権時代を最後に為替介入を行っておらず、日銀の金融緩和で円高が修正されたというのが実態だ。最近の為替動向も、米中貿易戦争を受けて、やや円高方向で推移している。

 一方、人民元は対ドルで約4カ月ぶり安値をつけているが、市場の見方は「中国当局は通貨下落を積極的に止めようとはしていない」(為替ストラテジスト)。韓国のウォンに至っては、約2年4カ月ぶりの安値水準が続いている。

 前出の米財務省の報告書で、不透明な為替介入をヤリ玉に挙げられる常連の中韓両国だが、どうするのか。

【私の論評】為替報復関税はまともな国同士では有り得ないが、米中冷戦で使われる可能性は否定できない(゚д゚)!

為替報告関税というと、為替条項のことを連想します。為替条項とは、貿易相手国・地域が輸出競争力の向上を狙い、為替介入などを通じて自国通貨を下落させようとするのを禁止する条項のことです。

米国はカナダ、メキシコと昨秋に改定・署名した北米自由貿易協定(NAFTA)の新協定に盛り込みました。ムニューシン米財務長官は「どんな貿易協定にも為替に関する条項を導入したい」と、繰り返し発言しています。無論日米の貿易協定にも盛り込みたいようです。

ムニューシン米財務長官

日米間の貿易協議が始まっています。まず4月中旬に茂木敏充経済再生担当相とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が初会合を開き、農産物と自動車を含む物品貿易から議論を開始し、適切な時期にサービス分野も話し合うことで合意しました。

その後、麻生太郎財務相とムニューシン米財務長官が25日に会談。米国が導入を求めている為替条項については、財務相同士で協議することになりました。

以下、今後のドル円相場に与える影響について、考えてみたいです。

まず米国が導入を望んでいる為替条項については、交渉相手がそれを求めてきている以上、議論すること自体を拒むのは難しいです。日米両国が為替条項導入の是非について話し合っている間、相手の了解が無い為替介入は互いにできなくなりそうです。

為替条項への懸念は杞憂

ただ、冒頭の記事にもあるように、日本は為替介入の実績を毎月公表しており、2011年11月に実施したドル買い/円売りを最後に7年半も介入を封印しています。

現在、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に参加している主要国間では、「為替介入を実施する前には相手国に通知の上、可能な限り合意を得る」との紳士協定が存在しており、今後の日米交渉で為替条項が導入されたとしても、介入に際して守るべき国際的な規範は今とあまり変わらないです。

現在ドル円が取引されている110円前後の水準は、かつて日米両国が協調して最後のドル売り介入を行った140円台半ばや、ドル買い介入を行った70円台後半とかけ離れています。為替介入の是非が喫緊のテーマではない現下の局面で為替条項が導入されても、自然体の需給で決まるドル円の自由な上下動が束縛されることはないでしょう。

実際、日本より先に米国との協議に臨み、為替条項に相当する合意文や条文の導入を強いられた韓国、メキシコ、カナダの先例をみると、交渉期間中も、合意成立後も、当該国通貨の対ドルレートは市場メカニズムに委ねられて柔軟に動く日々が続いており、通貨安方向への動きが制限されたような痕跡は認められないです。

なぜなら、米国がこれまで上記3カ国と合意した為替条項は、人為的な介入による通貨安誘導の自粛を求めているだけで、「市場が決める為替レート」を双方が受け入れることをむしろ推奨しており、相場が動く方向や水準をコントロールすることを目的にしていないからです。

事実、米国がメキシコ、カナダと合意した新貿易協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」に盛り込まれた為替条項の条文をみると、米国だけが都合よく相手の通貨安誘導を一方的に封じることが出来るような仕組みにはなっていません。双方に同等の情報開示や介入の自粛が義務付けられており、当然の話ですが、為替条項を導入すると米国も人為的なドル安誘導はできなくなります。

2018年11月30日 USMCA

同条項では、当事国間で通貨安誘導の疑惑が生じた場合の紛争解決の制度も定めているが、対象になるのはあくまでも為替需給の人為的な操作です。

国内向けに実施される財政・金融政策は対象になっておらず、仮に需給操作の疑いが浮上しても30日以内に協議して60日以内に解決しない場合は、国際通貨基金(IMF)に調査を頼む手順になっています。嫌疑だけで制裁が発動できる訳ではありません。

米国が日本に対して求める為替条項に金融政策が含まれる可能性を懸念する声もありますが、杞憂に終わることでしょう。もし互いの金融政策に対する干渉が可能と解釈されるような条文を挿入した場合には、将来どこかで米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げに踏み切った際、日本が「ドル安誘導」と非難して自粛を求めることも可能になります。

政治の口先介入効果は限定的

日米双方とも、自国の金融政策の自由度を縛るような条文は望まないと思われます。実際、ムニューシン財務長官は日本に求める為替条項も、USMCAとほぼ同じだと言っています。もし日本が条項を受け入れたとしても、すぐに強烈な円高ショックが走ったり、政府・日銀の国内政策が制約されたりする可能性は低いです。

為替条項の導入を求める米国政府やトランプ大統領はドル安を強く望んでおり、市場が米国の意向を忖度(そんたく)した場合には、円高/ドル安が進行するとの見方もあります。ただ、そのような発送は、昭和の時代から平成中頃までのものだと思います。

国境をまたぐ自由な資本移動に為替変動を委ねる制度を45年以上も維持した上、市場参加者の多様性と取引規模が増大し続けている近年のドル円市場においては、政府要人が自らの希望を口頭や文書で伝えるだけでは、為替レートに一時的なノイズを混入させることしかできないです。為替相場の基調的な方向感や水準を自在に操ることは、いかなる権力者でも不可能です。

過去の日本では、いくら為替介入を大々的に行ったとしても、恒常的に金融引き締め政策をやっていたのですから、円高・デフレになるのが当たり前で為替介入は一時的な効果しかなかったのです。実際私達は過去には、恒常的に円安になったのを見た試しがありません。

そうして、これは先進国同士では特にあてはまるものです。かろうじて韓国もあてはまるでしょう。さすがに、文在寅氏でもそれを自在に操ることは不可能でしょう。それは、習近平も同じでしょう。

そもそも、このブログにも掲載したように、通貨戦争などという考えは幻想です。中国が何が何でも、人民元安を実現するために、市場からドルを買い続けたり、あるいはどこまでも、金融緩和をし続けた場合どうなるでしょうか、行き着く先はハイパーインフレです。

そうなってしまえば、国内の経済が混乱するので、どの国でも不当に自国通貨を安くし続けることなどできません。

ただし、中国という国は、常識のあてはまる国ではありません。普通の国なら、ハイパーインフレになっても為替操作をするなどということはなく、適当なところで収束するはずですが、中国の場合だと国民が騒ぎだしたとしても、それを人民解放軍で弾圧して、為替操作を実行できます。

ただし、中国でさえ、そのようなやり方をしても、いずれは限界がくるはずです。そのため、為替操作は比較的短期間しかできないのです。これは、まともな国なら、急激な為替の変動を避けて、ソフトランディングさせるために用いるものです。一つの国が、長期にわたって為替操作をして自国を有利に導き続けるなどということはできません。

そんなことはわかりきっています。だからこそ、為替条項とか、為替操作の話はあまり人気がないのかもしれません。

ただひとついえるのは、今回の米中経済冷戦では、為替報復関税もあり得るかもしれいないということです。

皆さんもご存知のように、健常の日米対立は、関税による貿易戦争などの次元を超えて、米中の覇権争いの経済冷戦となっています。もはや、貿易赤字がどうのこうのという次元ではありません。


現状の報復関税だけでは、あまり効き目がなければ、米国は為替報復関税を発動する可能性は十分あると思います。

たとえ、短期間であっても中国が明らかに為替操作をしていることが、明白になった場合は、米国は為替報復関税を発動するでしょう。

それに対応して、中国も報復関税を米国にかけて対抗するということも十分あるでしょう。ただ、いずれにしても、中国は米国からの輸入が、米国が中国から輸入する物品よりはるかに小さいですし、さらには米国が中国から輸入する物品は中国からでないと輸入できないものはなく、すべて他国からの輸入で代替できるので、これは、いずれに転んでも、中国には不利です。

米国としては、現状の関税では中国を弱らせるには不十分と考えれば、次の段階では為替報復関税も実施し、さらには金融制裁も実行するでしょう。この冷戦は、中国が体制を変えるか、中国が経済的に疲弊して他国に対して影響力を行使できなくなるまで続きます。

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2019年5月26日日曜日

「国の借金」だけを報告し続ける、財務省のおかしな体質―【私の問題】財務省に騙されず、会計も理解できる人材が、令和日本では重宝される(゚д゚)!

「国の借金」だけを報告し続ける、財務省のおかしな体質

もともとは国民のお金ですが…



過去最大の「国の借金」…

財務省は、国債と借入金などを含めた、いわゆる「国の借金」を3ヵ月ごとに発表している。これが2019年3月末時点で1103兆3543億円となり、過去最大を更新したと5月10日に発表した。

      財務省は国借金(正確には政府の借金)については公表するが
      同時に政府の資産も増えていることは一切公表しない

NHKなどのテレビ、日経などの新聞は律儀にこの「国の借金」報道をし続けている。先の額を国民一人当たりで割ると、およそ874万円になる、という定番の「脅し」も付け加えられることがほとんどだ。

「財政再建が必要」という財務省の言葉とセットで、さすがに国民は耳にタコだろう。本コラムで度々触れているとおり、「国の借金」だけをニュースで取り上げるのは間違っていると筆者は考えている。

このニュースに対し、「『国の借金』ではなく、『政府の借金』で、国民にとっては逆に『資産』だ」と反論する向きもある。もっともらしい言い方のように見えるが、実はあまり意味をなさないロジックだ。

たしかに国債は国民にとって「資産」であるが、所有している一般人はほんのわずかなものだ。財務省の資料によると、'18年12月末の国債等の保有者別内訳は、日本銀行43%、銀行等16・7%、生損保等18・8%、海外12・1%となっていて、家計はわずか1・2%である。それも銀行や生命保険会社を通じて間接的に保有しているから、自分の資産だと実感している人は少ないだろう。

さらに、「政府の借金」という考え方で政府を叩いても、むしろ政府がカネを借りている側なのだから意味をなさない。「増税に応じないなら借金(国債)を返さない」と開き直られたらおしまいだ。「借金は借りた側が偉い」というのがビジネスでの常識だが、国債においてもまさしくそのとおりだ。

財務省が「公表しない」こと

政府に限らず、財務状況をしっかりと理解するためには、資産と負債を包括的に示したバランスシートをきちんと見ることが第一だ。むろん、サラリーマンでも自分の会社のバランスシートすら読んだことないという人も多いだろう。

財務省はこうした弱みに付け込んで、バランスシートでいえば負債の数字だけを年4回も公表し、財政再建の必要性を煽り続けるのである。簡単に言えば、「国の借金」だけでなく、「国の資産」も公表し、その両方が報じられるべきなのだ。

財務省がこのデータを公表していないのはおかしい。

上場企業であれば、四半期報告について、毎四半期末日から45日以内の提出が義務付けられている。民間は縛り付けておいて、政府は公表しないというのでは道理が立たない。

さらにいえば、民間企業はグループ会社全体の決算も行う。政府も同じように、国全体の資産と負債をつまびらかにした「グループ決算」を是非行うべきなのだ。もちろん、マスコミがそれを適切に解釈して国民に知らせ、会計に関するリテラシーを高めていくことが必要なのだが。

負債は増えているが、資産も増えていて、それが政府や財務省の利権となる、というのが不都合な真実だ。先の消費増税がまかり通ろうとするのも、財務省が「知らしむべからず」の姿勢で国民に事実を伝えていないことが大きな問題なのである。

『週刊現代』2019年6月1日号より

【私の論評】財務省に騙されず、会計も理解できる人材が、令和日本では重宝される(゚д゚)!

ブログ冒頭の記事で「政府に限らず、財務状況をしっかりと理解するためには、資産と負債を包括的に示したバランスシートをきちんと見ることが第一だ」とあります。

企業、特に上場企業には、バランスシートは無論こと、他の財務諸表も作成して公開義務があります。

私自身も、元々は理工系出身で、財務諸表からは縁遠かったのですが、自らが所属していた会社が上場の準備をはじめ、しかも自分が上場準備に関わることになり、そこで財務諸表の分析の仕方や、作成の仕方(会計)を初めて勉強しはじめました。

そうして、わかったことですが、企業の財務諸表を分析することができなけれれば、企業の内容を本当に把握することはできないということでした。いくら現場で努力したとしても、顧客のことをよく知っていたにしても、まずは財務諸表を分析できなければ、とても経営者(ただしまともな経営者)の考えなどわかりませんし、企業の本当の姿を知ることはできません。

財務諸表には、貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書、株主資本等変動計算書の主に4種類があります。

会社の財務状況を理解する上で、財務諸表のつながりは非常に大切です。今回は財務諸表のつながりについて、説明します。

財務諸表には大きく2種類ある

財務諸表には、主に二種類あり、フローの財務諸表としては、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書、株主資本等変動計算書があります。

ストックとは、一定時点の状況を示すものです。貸借対照表のみがストックに関する財務諸表で、その他の3つはすべてフローの財務諸表ということです。

貸借対照表を中心として考える

現在は財務諸表が4つありますが、最も重視されるのが貸借対照表です。現在どれだけの財産があり,どれだけ借金があるのかということが企業分析のスタート地点になるからです。

それでは具体的に貸借対照表をみてみましょう、細かいところまで、掲載すると、非常に煩雑になりますので、ざっくりと模式的なものにします。現実の貸借対照表ではさらに細かく、様々な勘定科目があるのはいうまでもありません。


貸借対照表から現在の企業の情報がわかります。

さらに前期の貸借対照表も用意し2年分を並べてみます。

こうすると情報量が増えます。「1年間で現金が30増えた」というように増減までわかりますので、企業分析にさらに役立てることができます。


他の財務諸表は貸借対照表を補完している

ストックの財務諸表である貸借対照表(英語で、バランスシート)だけでもフローの額はわかります。ではフローの財務諸表は不必要なのでしょうか。無論、そのようなことはありません。

なぜなら貸借対照表のフローには限界があるからです。それは「現金がどういう活動で増えたのか?」というように増減理由がわからないということです。(上記の貸借対照表を見ても、何で現金が増えたかはわからないです。)

そこで、他の財務諸表の出番です。

損益計算書などフローの財務諸表はフローの理由を示すという役割があるのです。

損益計算書は利益剰余金の増減理由を、キャッシュ・フロー計算書は現金の増減理由を,そして、株主資本等変動計算書は純資産の増減理由を示しているのです。

これらをまとめると以下のようになります。


どうでしょうか?

4つの財務諸表は、貸借対照表が中心でそれ以外の財務諸表はその情報を補完していると捉えることができるのです。

いずれにしても、財務諸表の中でも、貸借対照表が最も重要であることをご理解いただけたと思います。

ここで、また政府の財務の話に戻しますが、政府の貸借対照表などとは無関係に、財務省は政府の借金ばかり、報告し続けているのが、財務省のおかしな本質というのが、上の記事の要旨です。

冒頭の記事では、「さらにいえば、民間企業はグループ会社全体の決算も行う。政府も同じように、国全体の資産と負債をつまびらかにした「グループ決算」を是非行うべきなのだ」としています。

それは当然のことです。そうでないと、負債が小会社に財務的に隠蔽されたりして、企業グループの正しい姿を見ることはできなくなります。

政府の場合も、本当は日銀等も含めた、政府全体の財務諸表を作成し、公表し説明すべきです。無論、財務省もバランスシートは作成しているのですが、日銀等を含めたもの(これを統合政府という)は作成しておらず、その上内容が良く説明されていないか、著しく作為的であり、結局のところ財政赤字を煽るようなものになっています。

財務省は政府の貸借対照表を公表しているのだが・・・・・・

これは、本当におかしいです。会社の状況を知るためには、負債だけではなく、資産もみるのが当然です。

もし、会社の取締役会で、毎年負債ばかり言い続け、危機感を煽るだけの取締役がいたとしたら、それはとても会社にの正しい財務状況を表明しているとはいえず、そのような取締役は辞任させられると思います。

これは、政府の財政状況をみる最も同じことです。財務省は、この面で説明責任を果たす必要があります。

それと、我々国民のほうも、財務諸表等を理解して、財務省の詭弁を暴けるようにすべきです。そうでないと、自分の会社の状況もわからず、果は財務省の詭弁も見抜けず、財務省のいいなりの誤った財政政策で、日本経済が悪化して、ある日気づいてみたら、会社をリストラされていたとか、そこまでいかなくても、何十年たっても給料が上がらないなどという事態に直面しかないです。

私自身は、先程の述べたように、理工系出身だったので、高校のときは無論のこと、大学でも財務諸表について学ぶ機会は全くありませんでした。

おそらく、商業高校(簿記を学ぶ)とか、経済学部(まったく会計に触れないところもある)とか商学部などにでもいかなければ、そのような機会に恵まれることはないのだと思います。

子供の頃にお小遣い帳をつけるように言われた人もいると思います。現金の出入りを記録するのですが、多くの役所の会計もそういう感じです。

企業の会計では、「発生主義」といってその事実が発生したときに記録します。例えば、ある時に掛け売りをしたら売掛金を計上し、回収したときに現金に振り替える、というようにします。

ところが役所ではお小遣い帳ですから、現金のやりとりがなければ記録されません。しかし、道路整備など作業と支払いに間があるようなことでは管理が難しいので、他の管理項目も使われます。

このようなことでは、本当の意味でお金の流れを把握することはできないです。財務省も日々の会計はこのようなことをしているようです。

財務省自体も、会計にはうといのではないでしょうか。こういうことを見抜くためにも、会計は必須だと思います。

現状では、会計を良く理解してない大手の経営者もいるようで、彼らは財務省の発表をそのまま鵜呑みにして、財務省よりの発言をしているようです。彼らは、財務省と顧客を両天秤にかけているのでしょうか。その上で、財務省のスポークスマンをしているのなら、良いですが、そうでなければ、経営者失格です。

どう考えてみても、普通は財務省と顧客を天秤にかければ、顧客のほうが数段上のはずです。顧客に離反されれば、企業はなりたちません。財務省は、自分が都合が悪くなれば、企業を守り通すようなことはしません。

両者を正しく両天秤にかけるためには、会計的な能力は必須だと思います。そのような見方ができない経営者はこれからどんどん排除されていくと思います。排除しないような企業は、社会から見捨てられ、淘汰されることになるでしょう。

このような状況をみていると、会計を本当に理解した上で、オペレーションや運営に関わることができれば、そのような人物は企業にとって希少価値が大きくなると考えられます。

会計だけが専門だと、カネの流れだけを重視するようになりがちだと思います。そうなると、企業経営や、日々のオペレーションに支障がでかねません。無論、会計を専門としても柔軟な考え方ができる人は別であるとは思います。

いくら、AIが自動的に会社の財務諸表を作成するようになったとしても、あるいはそれに基づき、改善点を示唆するようになったとしても、それを読み解き、会社運営や日々のオペレーションを改善・改革するのは人間です。財務諸表もそれだけでは、ただのデータに過ぎません。

しかし、我が国には、そのような人材は稀なようです。

これからは、財務省に騙されず(会計が専門でも、財務省の詭弁に騙される人もいる)、自分の専門分野だけではなく、会計も理解できる人材が、これから日本では重宝されるようになるでしょう。

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2019年5月25日土曜日

【日本の解き方】日本の「対韓国制裁シナリオ」 仲裁委応じなければ提訴へ! カネでの締め付けが有効に―【私の論評】日本は、文政権時に断交していればポスト文政権と有利に交渉がすすめられる(゚д゚)!


文在寅氏

韓国のいわゆる徴用工判決を受けて、日本政府は日韓請求権協定に基づく仲裁付託を通告したが、これはどういう意図があるのか。今後、日韓首脳会談など歩み寄りの可能性はあるのだろうか。

 河野太郎外相は、パリで開かれた経済協力開発機構(OECD)の閣僚理事会に合わせて、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相と会談した。「徴用工」問題については、仲裁委の開催を要請したが、韓国側は同意しなかった。

 日本は今年1月から、日韓請求権協定に基づき、2国間協議を申し入れていたが、韓国の李洛淵(イ・ナギョン)首相が、三権分立を理由として「政府としてやれることに限界がある」などの発言をしていた。

23日、韓国の康京和外相(右)と会談に臨む河野外相(パリ)

 これは三権分立を履き違えたものだ。国際協定を履行するためには、必要に応じて立法措置を講ずればよく、その不作為は国際協定を守る意思がないといわれても仕方ない。日本大使館前のいわゆる慰安婦像も、ウイーン条約違反で、しかも公道の不法占拠なので、行政上の措置を取るべきなのに不作為を決め込んでいるのと同じ構造だ。

 いくら韓国政府に誠意がなくても、国際関係では適正な手順、手続きが重要であり、日本は事を急ぐことはできない。そこで、国家間の約束である日韓請求権協定上、次の段階である仲裁委の開催要求に進んだ。

 1月から4カ月経過したこのタイミングは、6月末の20カ国・地域(G20)首脳会議を控えている。日韓首脳会談は「見送り」と日本側から明確な意思表明がなされているが、これは韓国が会いたければ仲裁委を開けとの、日本からの強烈なメッセージでもある。

 しかし、これまでの韓国のスタンスから見て、このまま応じない可能性も高い。

 それに韓国が応じなければ、国際社会の前で赤っ恥をかくに違いない。日本はG20議長国であり、国際社会へのアピールの機会も多い。

 そして、韓国が応じない場合、次の段階として国際司法裁判所(ICJ)への提訴が検討されるのだろう。その後には、日本企業の資産の現金化が進んだ場合、韓国への対抗措置として制裁へ移行するのではないか。

 日韓請求権協定や国際司法の手順を尽くした後であれば、制裁の大義名分は十分に立つ。

 対抗措置はいろいろなメニューが考えられる。(1)ヒト(2)モノ(3)カネ(4)その他に対する規制に大別されるが、(1)はビザの発給停止、(2)は関税引き上げ、フッ化水素などの輸出禁止、(3)は送金停止、貿易保険の適用からの除外、日本国内の韓国企業の資産差し押さえ、韓国への直接投資規制、韓国機器への与信リスク引き上げ、(4)は駐韓大使帰国、断交などの具体的な方策が考えられる。

 このうち、日本人や日本企業への「誤爆」が少ないのは(3)のカネだ。特に、韓国のカントリーリスクを高め、韓国企業の外資取り入れコストを高くする方策が最もコストパフォーマンスがよいのではないか。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】日本は、文政権時に断交していればポスト文政権と有利に交渉がすすめられる(゚д゚)!

これまで日本は、「韓国をいたずらに刺激しては、北朝鮮、中国、ロシアと日本の関係も悪化してしまう」等と懸念し、日韓関係の構築に努めてきました。地図を見れば、朝鮮半島は大陸が日本に突きつける“匕首であることが簡単に理解できます。

我が国は常に「朝鮮半島にユーラシア大陸との緩衝地帯を作る」ことを最優先にしてきました。これは、戦争の歴史が最も雄弁に物語っています。これが、白村江の戦い(663年)、日清戦争(1894~95年)、日露戦争(1904~05年)が起きた理由なのです。

「対馬海峡を日本の防衛戦にしてはいけない」という理屈で日韓関係を憂慮するむきもありますが、これに何の問題があるというのでしょうか。確かに現在、中国の軍事力増強は脅威かもしれません。しかし今の日本は、韓国に仲介を依頼しなくとも、北朝鮮、中国、ロシアと外交を結ぶことは可能です。

逆にこの特ア3国が韓国を先兵として日本への侵略を企てるというシナリオは、日米安保が機能している以上、机上の空論に過ぎません。日本が韓国と国交を断絶すれば、多くのメリットが得られますが、デメリットはありません。

仮に左派の文在寅(66)と金正恩(35)が手を結んだなら、史上最強の“反日国家”が誕生してしまうと心配するむきもありますが、これも杞憂に過ぎません。

朝鮮半島が南北に分裂しているメリットも無視できないことを忘れてはいけません。そもそも韓国は、中国に従属しようとしてますが、明らかに北は中国の干渉を嫌っています。

北朝鮮の核は、日米にとって脅威ではありますが、中国にとっても脅威です。現実は、北の核、北朝鮮の存在そのものが、中国の朝鮮半島への浸透を防いでいます。

そうして、米国、中国、露はいずれも、現状維持を望んでいます。北朝鮮も本当はそうです。この状況を変えようとしているのは、韓国だけです。これについては以前このブログにも掲載したことなので、詳細はその記事をご覧になってください。以下にその記事のリンクを掲載します。
北朝鮮『4・15ミサイル発射』に現実味!? 「絶対に許さない」米は警告も…強行なら“戦争”リスク―【私の論評】北がミサイル発射実験を開始すれば、米・中・露に圧力をかけられ制裁がますます厳しくなるだけ(゚д゚)!
金正恩氏は東倉里から“人工衛星”を発射しなかった。短距離弾道弾にお茶を濁したか・・・・

半島が統一してしまい、半島全体が中国側についてしまえば、中国にとっては最高ですが、米国にとっては最悪です。統一して、半島全体が米国側についてしまえば、中露にとっては最悪です。この最悪の事態よりは、現状のうが両陣営にとってずっと良いことなのです。

そうして何よりも、朝鮮戦争の再来は、米中露ともに避けたいと考えています。現在の露はすでにGDPが韓国より若干小さいくらいの規模にまで落ち込んでいます。とても、朝鮮戦争に干渉するだけの力はありません。中国も現状では経済が落ち込んでいますし、さらに米国から経済冷戦を挑まれたうえで、さらに朝鮮戦争を実行する余力はありません。

米国とて、かつてのように余力がある状態ではないし、現状では対中国経済冷戦を挑んでいる最中ですから、できれば朝鮮戦争の再来は避けたいです。米国にとっての本命は北朝鮮ではなく、中国です。米国が冷戦に勝てば、朝鮮半島問題も自動的に解消されるでしょう。

米中露は、当面は朝鮮半島は現状維持を望んでいるです。北朝鮮も、いかにも統一を望んでいるような素振りを見せることはありますが、もし統一すれば、国内に金王朝に対して何の敬意もなく、恩義もない韓国人が多数北朝鮮に入ってきたり国内で大きな影響力を持つことになるわけですから、これはどう考えても望ましいことではありません。

それでも、時折統一を望んでいるようにみせかけるのは、単に文在寅を喜ばせ、少しでも北朝鮮制裁が緩まれば良いからです。そのような金正恩の籠絡に、文在寅が有頂天になって舞い上がっているだけです。

日本企業の資産が実際に差し押さえられたら、日本としても、もうこれ以上韓国とは付き合えないです。

政治家、学者、弁護士など一部の頓珍漢な人達が韓国に理解を示したり、甘い顔を見せたりしていますが、さすがに今回は多くの国民の理解は得られないでしょう。

この事態を避けるにはどうしたら良いのでしょうか。韓国政府が今後徴用工裁判と同様の裁判を開かせないようにするのは無理でしょうし、賠償金を負担することもないでしょう。

だとすれば、日韓関係はいったん完璧に破綻しないとどうしようもないところにきたといえると思います。結局のところ、国交断絶です。そこまでやらないと事の深刻さ韓国は気付かないです。その先にしか日韓の未来はないです。

ブログ冒頭の高橋洋一氏記事のように、まずはカネによる制裁をすれば、一時は制裁が奏功する可能背もありますが、韓国政府の過去の出方をみれば、到底信用などできません。またすぐに元通りなるでしょう。最終的には国交を断絶するしかないです。



最近は、分政権の支持率は、落ちており、文政権は、どう考えてみても長期政権にはならず、近い将来に文政権は崩壊する可能性もあるものと思います。韓国の大統領は1期5年なので、朴槿恵大統領のように弾劾罷免されない限り、2022年5月9日までは大統領として任期が設定されています。文大統領の任期は最大限そこまで終わるでしょう。

いずれにせよ、文政権が終了したときに、すでに日本が韓国と断交していれば、ポスト文政権は、日本との関係を回復しようとするでしょう。日本としては、それでもしばらくは様子をみて、本気て相手が回復するつもりがあれば、国交断絶を解除すれば良いのです。おそらく、いままで一番交渉がしやすくなるでしょう。

もし、文政権が崩壊したときに、日韓が国交断絶していなければ、新たな政権も、文政権の反日を引き継ぐだけになり何も変わりません。その時になって、国交断絶するよりは、文政権時代に断絶しておくことのほうが、日本にとって有利なのは言うまでもありません。

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2019年5月24日金曜日

米議会、中国人留学生“排除”に本腰 「ビザ発給禁止」共和党議員が法案提出…日本に同じ措置要請も? 最先端技術の流出阻止へ―【私の論評】日本も米国に倣い中国人留学生を大幅に制限すべき(゚д゚)!


トランプ氏

 米中貿易戦争の激化を受け、世界規模で中国通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」を排除する動きが広がっている。共産党独裁国家による世界覇権の阻止を目指す、ドナルド・トランプ米政権の強硬姿勢が続くなか、米議会で注目すべき対中規制法案が提出された。中国人民解放軍に支援・雇用されている中国人留学生や研究者への「ビザ発給禁止」を求めるものだ。米国の大学や企業から、中国に最先端技術が流出することを防ぐ狙いで、トランプ政権の姿勢とも合致している。法案は、英国やカナダなどにも同様の措置を求めており、10万人を超える中国人留学生を抱える日本にも今後、影響する可能性がありそうだ。

「中国人民解放軍は、米国の大学やハイテク企業の助けを受け、武装している。人民解放軍の科学者を研究所から遠ざけることは、基本的な自衛行為だ」

 法案の提出メンバーであるトム・コットン上院議員はホームページで、法案の目的をこう説明した。

トム・コットン上院議員

 コットン氏は、ハーバード大学大学院修了の弁護士でありながら米陸軍経験もあり、ジェームズ・マティス前国防長官の後任候補としても名前の挙がった有力議員。ほかのメンバーには、2016年大統領選の共和党候補指名争いで、トランプ氏と争ったテッド・クルーズ上院議員や、上院司法委員長などを歴任したチャック・グラスリー氏らが名を連ねた。

 法案では、国務長官が、人民解放軍から雇われたり、支援を受けている個人について、学生用ビザや研究用ビザ発給を禁じるよう定めている。

 注目すべきは、英国やオーストラリア、カナダ、ニュージーランドにも同様の施策を求めたことだ。米国とともに、最高の機密情報を共有する「ファイブ・アイズ」と呼ばれている。

 高速大容量の第5世代(5G)移動通信システムの導入をめぐっても、トランプ政権は、ファイブ・アイズ諸国に対し、ファーウェイの排除を要請した。

 中国との貿易戦争に突入したトランプ政権は以前から、中国が知的財産を盗もうとしていると警鐘を鳴らしてきた。

 マイク・ペンス副大統領は昨年10月、ワシントンのハドソン研究所での演説で、「中国政府は官僚や企業に対し、あらゆる必要な手段を使い、米国の経済的リーダーシップの基礎である知的財産を取得するよう指示した」「最悪なことに、中国の安全保障機関が、最先端の軍事計画を含む米国技術の大規模窃盗の首謀者だ」などと非難した。

トランプ氏の進める対中圧迫政策に議会も同調し、習近平国家主席(写真)は
    追い詰められつつある

 米国政治に詳しい福井県立大学の島田洋一教授は「ペンス演説に沿った動きが、議会で出てきている。中国政府が、国家の情報活動に協力するよう義務付けた『国家情報法』などで留学生らを縛り、スパイ行為を働かせることを全面的に締め上げていく狙いがあるのだろう。審議には時間がかかるだろうが、有力議員の考えを各方面にアピールし、政治をその方向に動かそうとしているのではないか」と説明する。

 法案に、ファイブ・アイズ諸国の名前が挙げられた意味は大きい。日本も将来、このインテリジェンス・コミュニティーに参加する可能性があるのだ。現に、米国は日本にファーウェイ排除を求めている。

 島田氏は「米国と同様の措置を取らない国は『情報共有のレベルを下げる』というメッセージではないか。日本も、中国人留学生を無制限に受け入れていると、情報提供のレベルを下げられる恐れがある。中国の知的財産窃盗も含めて、日米首脳会談のテーマになるのではないか」と話す。

 日本学生支援機構の調査によると、日本国内の高等教育機関などに在籍する外国人留学生数は昨年5月時点で、約29万8980人に上り、このうち中国が約11万4950人で1位である。

 国際政治学者の藤井厳喜氏は「米国は、日本にも足並みを合わせるように要請してくるだろう。ただ、日本には親中派議員も多く、経営的に中国人留学生に頼っている大学もあり、簡単ではない。中国のIT・ハイテク企業は、人民解放軍のネットワークで仕事をしている。留学生らに、最先端技術を入手するよう指令を発することはあり得る」と語っている。

【私の論評】日本も米国に倣い中国人留学生を大幅に制限すべき(゚д゚)!

日本に来ている中国人留学生の全員が悪人ではないですが、全員中国共産党の監視下にあり、定期的に大使館や領事館に何かしらの報告義務があります。即ちスパイとも言えます。

日本企業を狙う中国の産業スパイ活動はますます活発かつ巧妙になっています。何度も機密情報が流出してきたにもかかわらず日本側の備えはまだまだ足りないです。

日本を狙った中国の産業スパイ活動の一端を担わされているのが10万人以上いる中国人留学生とされています。

多くの中国人留学生は真面目に勉強する志を持って日本に来ています。しかし、特に国費留学生の場合はたとえ本人が望んでいなくても、いつの間にか中国の情報工作に組み込まれてしまっているケースがあるのです。

中国の情報機関では、本国で訓練を受けたプロの工作員を「基本同志」と呼び、諜報活動の中での協力者を「運用同志」と呼びます。留学生は「運用同志」となることを求められています。

日本の主な大学では中国からの留学生や研究員が情報交換する集まりがあります。それ自体は何の問題もないのですが、彼らは定期的に中国大使館に集められます。

国費留学生は政府から学費や生活費を出してもらっていますから、そこで研究分野などについて報告します。その中で大使館側が、産学連携を進める研究室に所属する学生などに「より詳しい内容を提出するように」と指示を出すケースがあります。

大学と企業が連携して進める最先端の研究内容は中国側が喉から手が出るほど欲しい情報です。博士課程に在籍する留学生に、「所属する研究室の教授のパソコンから論文原稿を持ち出すように」といった指示が出るようてす。留学生側はあくまで大使館への活動報告の範囲と考えているようですが、それが同じ分野を研究する中国の大学や企業へ流れてしまうようです。

2013年4月には防衛省情報本部の女性事務官が部外秘の資料を持ち出そうとしていたことが発覚し、調査の結果中国人留学生と接触していたことが判明しました。こうした例から類推できるように、表向きは留学生の身分で情報のプロが入ってくるケースもあるのです。

2007年にデンソーに勤める中国人エンジニアが13万件にも及ぶ機密設計情報を不正に持ち出していた事件では、当該エンジニアは中国国営の軍事関連会社に勤務した後、留学生として来日して大学を卒業し、デンソーに入社していました。

2012年に工作機械大手のヤマザキマザックで中国人社員が工作機械用図面情報約2万点を不正に持ち出した事件でも、逮捕(不正競争防止法違反)された社員は日本の大学を卒業していました。

最初からスパイ目的で送り込まれている者もいますし、日本企業が中国人社員を幹部候補生として扱わず昇進が遅れたことなどに不満を募らせた結果、社の利益に背いて情報を持ち出そうと考えるケースも少なくないです。日本人の管理職が「彼は真面目だ」と判断しても、それとは別次元の力を働かせる勢力がいるのです。

日本でも、中国人スパイは深刻なのです。日本のマスコミではほとんど報道されませんでしたが、中国では2010年7月1日に国防動員法が制定されました。同法は、1997年3月に施行された国防法を補完するものです。


中国が有事の際に「全国民が祖国を防衛し侵略に抵抗する」ため、金融機関、陸・海・空の交通輸送手段、港湾施設、報道やインターネット、郵便、建設、水利、民生用核関連施設、医療、食糧、貿易など、あらゆる分野を統制下に置き、これら物的・人的資源を徴用できるとしています。

実際には、すでに国防法を補完する形で国防交通条例、民用船舶動員法、交通動員法などの条例や法律が作られています。たとえば、民用船舶の動員で言えば、中国軍は90年に瀋陽軍区で、初めて旅客船・貨物船を使用した海上輸送訓練を行なっています。

中国は82年に英国がアルゼンチンとのフォークランド紛争で商船などを動員し、兵員の輸送と上陸作戦に活用したことに早くから着目し、民用船舶の動員を軽視できない第2の海軍と位置づけてきました。そのため民用船舶動員法の制定後は、1年のなかで1カ月間は、民用船舶を動員・徴用し、訓練・演習を実施しています。

中国の軍事力を評価する場合、民間資産(民用船舶等の輸送力)も加味して判断する必要性があるのです。

一方、「有事」の規定が曖昧である国防動員法が発令された場合、日本を含めた中国内の外資や合弁会社も法律の適用対象になります。国防動員法の条項にある「民間企業には、戦略物資の準備と徴用、軍関連物資の研究と生産に対する義務と責任がある」に該当します。

国防動員法には「国防の義務を履行せず、また拒否する者は、罰金または、刑事責任に問われる」とう条項があります。この条項も日本を含めた外資企業に適用されるのでしょうか。適用されれば、もし中国が日本に対する攻撃を仕掛け、国防動員法が発令された場合、中国に協力する義務が生じることになります。日本企業は、中国に人質にされたも同然となります。

さらに厄介なのが「国防義務の対象者は、18歳から60歳の男性と18歳から55歳の女性で、中国国外に住む、中国人も対象となる」という条項です。現在、日本には90万人以上の中国人が住み、年間約100万人(香港を合わせると約150万人)の中国人が観光目的で日本に来ています。

これらの中国人に国防動員法が発令された場合には、その瞬間から人民解放軍の兵士として日本国内で一斉に蜂起することが予想されます。それは無論、留学生も例外ではありません。中国の政治体制から考えれば当然起こりうる行動です。2008年の北京五輪の際に、長野市で行なわれた聖火リレーの沿道に集まった中国人の集団行動(暴動)を思い起こせば、その恐ろしさがわかるはずです。

             明らかに道路交通法違反(車の窓から旗出し、箱乗り、定員オーバーなど)
            だった2008年の北京オリンピックの歳の中国人の集団行動

国防動員法が制定された同じ日に、日本では、これまで富裕層に限っていた中国人の個人観光客向けの査証(ビザ)の発給要件が中間層にまで緩和されました。年収ベースでは従来の年収25万元(約340万円)程度から、10万元程度まで引き下げられました。要件を満たす人口は世帯ベースで従来の10倍に当たる1,600万人になる計算です。

さらに11年7月1日からは、沖縄を訪れる中国人個人観光客に対して、マルチビザ(有効期限内であれば、何度でも出入りできる査証)が発給されるようになりました。日本政府が観光を目的で入国する外国人に対してマルチビザを発給するのは中国が初です。

ビザの有効期限は3年間で、ビザ保有者はこの間に何度でも日本を訪問することができます。1回の訪問につき最長90日まで日本に滞在可能で、中国人訪日客の個人観光ビザによる最大日数は、これまでの15日から大幅に伸びることになりました。

マルチビザ発給は、第1回目は沖縄から入国することが条件となっていますが、2回目以降は、日本のどこからでも入国することが可能となっています。また、観光に限らず、親族・友人訪問や遊学などさまざまな活動も、日本訪問の目的として認められることになりました。

中国の国防動員法をふまえて、中国人留学生や中国人観光客が大挙して人民解放軍の兵士として蜂起(暴動)した場合の恐ろしさを考え、ビザ発給の要件の緩和や、マルチビザ発給に関し、再度見直すべきです。そうして、日本も米国に倣って、中国人留学生の受け入れを大幅に制限すべきです。

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